説明

SYN3組成物およびその方法

【課題】導入遺伝子の送達の効率を改良する治療用途のための処方物を提供すること。
【解決手段】癌を処置するのに有用な薬剤を含む、水性および非水性の溶液処方物を開示する。一局面では本発明は薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせてSYN3を含む薬学的組成物を提供する。本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な非水性のキャリアと組み合わせたSYN3を含む、薬学的な組成物である。本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な水性のキャリアと組み合わせたSYN3を含む、薬学的な組成物である。本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能なキャリアおよび少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤と組み合わせたSYN3を含む、薬学的な組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許出願番号60/342,329(2001年12月20日出願)に基づいて優先権主張している。この米国特許出願の開示は、その全体が、全ての目的で本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は形質導入増強剤と組み合わせた、組み換えウイルスベクター送達系のような遺伝子送達系によって送達される、腫瘍抑制遺伝子のような治療のための遺伝子を使用した、遺伝子治療により癌を処置する組成物に関する。特に本発明はSYN3のような形質導入増強剤と組み合わせて安定化緩衝液中で処方される、組換アデノウイルスベクター送達系を用いた、腫瘍抑制遺伝子(例えば、p53または網膜芽細胞腫遺伝子(RB))の癌化した上皮組織や膀胱のような器官への送達に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
上皮の癌は潜行性の疾患である。例えば、上皮の癌の一種である膀胱癌腫は病的状態と死亡の重要な原因となっている。膀胱癌は癌による死因の内で男性では10位、女性では12位に位置すると報告されている。膀胱癌の処置のために、利用可能な療法としては、補助的な化学療法、または免疫療法、表面の疾患の経尿道切除、根本的な膀胱切開、あるいは全身化学療法と併用して行われることの多い放射線療法が挙げられる。これらの治療選択肢にも関わらず、全体の生存率は明らかに変化しているわけではない。従って、膀胱癌の処置のための新しい治療方法が開発されねばならない。
【0004】
遺伝子治療ストラテジーはこれまでの方法に変わる治療アプローチとして開発されてきたと報告されている。遺伝子導入方法に基づく、異なったアプローチが新生物を処置するために開発されてきた。新生物の形質転換および発達を引き起こす、規定された遺伝子座に存在する特異的な欠陥を正すための方法も開発されていると報告されている。優性の癌遺伝子の過剰発現は、遺伝子や遺伝子産物の形質転換を阻害する技術を用いて取り組まれ得る。腫瘍抑制遺伝子の機能の喪失が、野生型腫瘍抑制遺伝子の再形成を行う方法を用いてアプローチされ得ることが、報告されている。突然変異の代償を達成するこれらの方法の他に、腫瘍細胞を特異的かつ選択的に根絶する遺伝的な技術が開発されてきたと報告されている。分子的な化学療法のこれらのアプローチは新生物細胞への毒素遺伝子の特異的な発現に依存していると報告されている。最後に、遺伝子導入法は抗腫瘍免疫を達成するために使用されていると報告されている。これらの遺伝的な免疫増強方法は腫瘍の免疫性の認識力を高めるために、遺伝的な免疫調節の技術を用いていると報告されている。その結果、様々な異なったアプローチが癌の遺伝子治療を成し遂げるために開発されてきたと報告されている。
【0005】
膀胱の癌において、突然変異の高い発生率が、p53または、RBのような腫瘍抑制遺伝子で観察されたことが報告されてきた。腫瘍抑制遺伝子のそのような遺伝的欠除に対して、対応する野生型の腫瘍抑制遺伝子の置換により、新生物の表現型の復帰が示され得る。
【0006】
ヒトの膀胱組織に由来する細胞株を用いたインビトロの研究により、組換え型アデノウイルスによる感染後の導入遺伝子が、効果的な発現を示したことが報告されている。げっ歯目の膀胱内への送達後、膀胱でアデノウイルスによる導入遺伝子が発現することを示す、インビボでの実験が報告されている。野生型のアデノウイルスを用いたインビトロの実験により、ウイルスの付加および内在化は、ベンジルアルコールには影響されないが、ビリオンの被覆の剥離の増加を示すことが報告されている。薬剤(例えばアセトン、DMSO、プロラミン硫酸塩)を用いたインビボの実験により、薬剤が、細菌、ウイルス、および他の病原体から膀胱の上皮を保護する、保護的な「ムチン」層を壊し得ることが報告されている。
【0007】
米国特許第5,789,244号は、導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列を挿入したウイルスベクターを含む組成物を特許請求している。そこでは、ウイルスベクターは約1%〜50%(v/v)の濃度範囲のエタノールを含む緩衝液中で処方される。米国特許第5,837,520号は、放出された(unencapsulated)DNAおよびRNAの両方を選択的に分解する酵素試薬で、完全なウイルス粒子を含む細胞の溶解産物を処理すること;最初の樹脂に対して最初の段階から処理した溶解産物をクロマトグラフすること;および2番目の樹脂に対して2番目の段階から溶出した物質をクロマトグラフすること;を含む、細胞の溶解物からの完全なウイルス粒子の精製のための方法を特許請求している。1つの樹脂はアニオン交換樹脂および、もう1つは固定化した金属イオン結合樹脂である。米国特許第5,932,210号は、アデノウイルス発現ベクターの組換体、および薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を表記する。そのベクターは、(a)異種生物のタンパク質をコードする遺伝子を含む異種生物のDNAの挿入部分;および(b)E1a、E1bおよびタンパク質IXのコード配列全て、および少なくともE3の一部が欠失した、アデノウイルスDNAを含む。米国特許第6,165,779号は活性剤を含む緩衝液中で処方された組換ウイルスベクターを含む組成物を開示する。米国特許第6,210,939号は(a)外因性のタンパク質をコードする遺伝子を含む外因性のDNAの挿入部分、および(b)ヌクレオチド357で開始しそしてヌクレオチド4020から4050で終わる部分に欠失を受けたアデノウイルスDNA、を含む組換アデノウイルスの発現ベクターを特許請求する。最後に米国特許第6,312,681号は導入遺伝子を含むアデノウイルスベクターを膀胱の上皮(epithehial)膜にある癌細胞に送達する方法を開示し、この方法はアデノウイルスベクターおよび1%から50%(v/v)の間の濃度のエタノールを上皮の膜に与えることを含み、ここで、アデノウイルスベクターは細胞に感染し、導入遺伝子は感染した細胞で発現する。これらの参考文献は全てその全体が本明細書中で参考として援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記にもかかわらず、導入遺伝子の送達の効率を改良する治療用途のための処方物に対する必要性が存在する。不安定なベクターは所望の治療試薬の患者への投与を困難にする。インビボの不安定さのため、投与された治療試薬の導入を増加させるようなベクターの安定化に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
従って、一局面では本発明は薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせてSYN3を含む薬学的組成物を提供する。
【0010】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な非水性のキャリアと組み合わせたSYN3を含む、薬学的な組成物である。
【0011】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な水性のキャリアと組み合わせたSYN3を含む、薬学的な組成物である。
【0012】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能なキャリアおよび少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤と組み合わせたSYN3を含む、薬学的な組成物である。
【0013】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な非水性のキャリアおよび少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤と組み合わせたSYN3を含む、薬学的な組成物である。
【0014】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な水性のキャリアおよび少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤と組み合わせたSYN3を含む、薬学的な組成物である。
【0015】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能なキャリア、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤および少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤と組み合わせたSYN3を含む、凍結乾燥薬学的組成物である。
【0016】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な水性のキャリア、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤および少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤と組み合わせたSYN3を含む、薬学的組成物である。
【0017】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な水性のキャリア、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤、少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤および少なくとも1つの薬学的に受容可能な緩衝剤と組み合わせたSYN3を含む、薬学的組成物である。
【0018】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能なキャリアおよびベクターに挿入された外来のDNA配列を含む発現ベクターと組み合わせたSYN3を含む、薬学的組成物である。
【0019】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な非水性のキャリアおよびベクターに挿入された外来のDNA配列を含む発現ベクターと組み合わせたSYN3を含む、薬学的組成物である。
【0020】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な水性のキャリアおよびベクターに挿入された外来のDNA配列を含む発現ベクターと組み合わせたSYN3を含む、薬学的組成物である。
【0021】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能なキャリア、ベクターに挿入された外来のDNA配列を含む発現ベクターおよび少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤と組み合わせたSYN3を含む、薬学的組成物である。
【0022】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な非水性のキャリア、ベクターに挿入された外来のDNA配列を含む発現ベクターおよび少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤と組み合わせたSYN3を含む、薬学的組成物である。
【0023】
本発明のさらに他の局面は、薬学的に受容可能な水性のキャリア、ベクターに挿入された外来のDNA配列を含む発現ベクターおよび少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤と組み合わせたSYN3を含む、薬学的組成物である。
【0024】
本発明のさらなる局面は、薬学的に受容可能な水性キャリア、ベクターに挿入された外来のDNA配列を含む発現ベクター、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤、および少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤と組み合わせたSYN3を含む、薬学的組成物である。
【0025】
本発明のさらなる局面は、薬学的に受容可能な水性キャリア、ベクターに挿入された外来のDNA配列を含む発現ベクター、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤、少なくとも1つの薬学的に受容可能な、充填剤、および少なくとも1つの薬学的に受容可能な緩衝液と組み合わせたSYN3を含む、薬学的組成物である。
【0026】
本発明のさらなる面は、膀胱癌の処置のための医薬の調製におけるSYN3の使用である。
【0027】
本発明のさらなる局面は、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせたSYN3を含む治療的有効量の薬学的組成物の投与する工程を包含する、哺乳動物の疾患を処置する方法である。
本発明は例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせてSYN3を含む、薬学的組成物。
(項目2)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤を含む、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目3)
前記組成物が凍結乾燥された、項目2に記載の薬学的組成物。
(項目4)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤を含む、項目3に記載の凍結乾燥薬学的組成物。
(項目5)
前記組成物がさらに、発現ベクターを含み、該発現ベクターは、該ベクターに挿入された外来のDNA配列を含む、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目6)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤を含む、項目5に記載の薬学的組成物。
(項目7)
前記薬学的に受容可能なキャリアが非水性のキャリアである、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目8)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤を含む、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目9)
前記組成物がさらに、発現ベクターを含み、該発現ベクターは、該ベクターに挿入された外来のDNA配列を含む、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目10)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤を含む、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目11)
前記薬学的に受容可能なキャリアが水性のキャリアである、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目12)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤を含む、項目11に記載の薬学的組成物。
(項目13)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤を含む、項目12に記載の薬学的組成物。
(項目14)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な緩衝剤を含む、項目13に記載の薬学的組成物。
(項目15)
前記組成物がさらに、発現ベクターを含み、該発現ベクターは、該ベクターに挿入された外来のDNA配列を含む、項目11に記載の薬学的組成物。
(項目16)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な可溶化剤を含む、項目15に記載の薬学的組成物。
(項目17)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な充填剤を含む、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目18)
前記組成物がさらに、少なくとも1つの薬学的に受容可能な緩衝剤を含む、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目19)
哺乳動物における疾患を処置する方法であって、該方法が、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせてSYN3を含む薬学的組成物の、治療的有効量を投与する工程を包含する、方法。
以下の添付の詳細な説明を読むと、これらおよび他の局面、目的および利点は、より明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1はSYN3の化学的構造式を例示する。
【図2】図2はSYN3の合成のための1つの方法を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
従って、本発明の一つの局面は、独特な界面活性剤様分子SYN3が、溶解性および安定性ならびにアデノウイルスに対する適合性を維持するために賦形剤を用いて処方されることである。
【0030】
本発明のさらなる局面は、SYN3処方物が、治療レベルで接触する、例えば膀胱のような組織に対して非毒性であることである。実際、浸透エンハンサーとして作用する界面活性剤は、しばしば、膜刺激性のために、ある程度の毒性を生じる。このように、SYN3の使用はさらに、この毒性を避けるという利点を提供する。Connorら、Gene Therapy、第8巻 pp41〜48(2001)。
【0031】
本発明のさらなる局面は、ベクターの安定性が、SYN3との組み合わせにより、影響を受けないことである。しばしば、形質導入の改良に必要な界面活性剤レベルは、ベクターに不安定性を与え得る。アデノウイルスおよびSYN3調製物の組み合わせは、アデノウイルスに比較して、より強力な混合物を生じる。
【0032】
緩衝化され、凍結乾燥された水性の処方物およびSYN3の非水性溶液処方物が生成された。SYN3は(N−(3−コラミドプロピル)−N−(3(アクトビオナミドプロピル))−コラミド(図1)である。当業者には明らかなように、SYN3は、様々な光学異性体、互変異性体(tautomeric)、立体異性体および異性体の形態が存在する。図1は好ましい異性体を例示する。しかしながら、本発明の組成物は、任意の割合のこのような全ての形態、またはこれらのラセミ混合物を包含する。
【0033】
SYN3は、上皮組織および腫瘍、またはより詳細には、膀胱腫瘍の処置のための組換えアデノウイルス/治療遺伝子ベクターの形質導入を高める、界面活性剤様分子である。SYN3は約0.001mg/ml〜約150mg/mlの濃度で存在し得る。
【0034】
用語「治療的導入遺伝子」とは、標的細胞でのその発現が、治療的効果を生み出すヌクレオチド配列を指す。用語、治療的導入遺伝子は、腫瘍抑制遺伝子、抗原性遺伝子、細胞傷害性遺伝子、細胞増殖抑制遺伝子、前薬剤活性化遺伝子、アポトーシス遺伝子、薬学的遺伝子、または抗血管形成遺伝子に限られない。本発明のベクターはIRESエレメントの使用、または独立して調節されるプロモーターのいずれかによりタンデムで、1つ以上の治療的導入遺伝子を生成するために使用され得る。
【0035】
用語「腫瘍抑制遺伝子」とは、標的細胞でのその発現が、新生物表現型を抑制し得、そして/またはアポトーシスを誘導し得るヌクレオチド配列を指す。本発明の実施に有用な腫瘍抑制遺伝子の例としては、p53遺伝子、APC遺伝子、DPC−4遺伝子、BRCA−1遺伝子、BRCA−2遺伝子、WT−1遺伝子、網膜芽腫遺伝子(Leeら、Nature、329:642(1987))、MMAC−1遺伝子、大腸腺腫性ポリポーシスタンパク質(Albertsenら、米国特許第5,783,666号 1998年7月21日発行)、欠失結腸癌腫(DCC)遺伝子、MMSC−2遺伝子、NF−1遺伝子、染色体3p21.3.に位置する鼻咽頭癌腫腫瘍抑制遺伝子(Chengら、Proc.Nat.Acad.Sci.,95:3042−3047(1998))、MTS1遺伝子、CDK4遺伝子、NF−1遺伝子、NF2遺伝子、およびVHL遺伝子が挙げられる。
【0036】
用語「抗原性遺伝子」とは、標的細胞でのその発現が、免疫系による認識能力のある、細胞表面抗原性タンパク質を生成するヌクレオチド配列を指す。抗原性遺伝子の例としては、癌胎児性抗原(CEA)、p53(Levineにより記載される、PCT国際公開第WO94/02167号、1994年2月3日公開)が挙げられる。免疫認識を促進するために、抗原性遺伝子はMHCクラスI抗原に融合され得る。
【0037】
用語「細胞傷害性遺伝子」とは、細胞でのその発現が、毒性効果をもたらすヌクレオチド配列を指す。そのような細胞傷害性遺伝子の例としては、シュードモナス体外毒素、リシン毒素、ジフテリア(diptheria)毒素などをコードするヌクレオチド配列が挙げられる。
【0038】
用語「細胞増殖抑制遺伝子」とは、細胞でのその発現が、細胞サイクルの停止をもたらすヌクレオチド配列を指す。そのような細胞増殖抑制遺伝子の例としては、p21、網膜芽腫遺伝子、E2F−Rb遺伝子、P16、p15、p18およびp19のようなサイクリン依存性キナーゼインヒビターをコードする遺伝子、Branellecら(PCT公開第 WO97/16459号、1997年5月9日公開および、PCT公開第 WO96/30385号、1996年10月3日公開)に記載されるような、成長阻害特異的なホメオボックス(GAX)遺伝子が挙げられる。
【0039】
用語「サイトカイン遺伝子」とは、細胞でのその発現が、サイトカインを生み出すヌクレオチド配列を指す。そのようなサイトカインの例としては、GM−CSF、インターロイキン、特にIL−1、IL−2、IL−4、IL−12、IL−10、IL−19、IL−20、α、β、γのサブタイプのインターフェロン、特にインターフェロンα−2b、およびインターフェロンα−2α−1のような融合物が挙げられる。
【0040】
用語「ケモカイン遺伝子」とは、細胞でのその発現がサイトカインを生み出すヌクレオチド配列を指す。用語、ケモカインとは、細胞により分泌され、マイトジェン(mitogenic)活性、走化性(chemotactic)活性、炎症性活性を有する構造的に関連したサイトカイン重量因子に構造的に関連した低分子のサイトカインの群を指す。それらは主に、4つの保存されたシステインを共有する70から100のアミノ酸残基のカチオン性タンパク質である。これらのタンパク質は、2つのアミノ末端システインの間隔に基づいて2つの群に分けられ得る。最初の群において、2つのシステインが単一の残基により、分けられている(C−x−C)。それに対して、2番目の群において、それらは隣接している(C−C)。「C−x−C」ケモカインのメンバーの例としては、血小板因子4(PF4)、血小板塩基性タンパク質(PBP)、インターロイキン−8(IL−8)、黒色腫増殖刺激活性化タンパク質(MGSA)、マクロファージ炎症性タンパク質2(MIP−2)、マウスMig(m119)、ニワトリ9E3(またはpCEF−4)、ブタ肺胞マクロファージ走化性因子IおよびI(AMCF−Iおよび−II)、前B細胞増殖刺激因子(PBSF)ならびにIP10が挙げられるが、これらに限定されない。「C−C」群のメンバーの例としては、単球走化性タンパク質1(MCP−1)、単球走化性タンパク質2(MCP−2)、単球走化性タンパク質3(MCP−3)、単球走化性タンパク質4(MCP−4)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP−1−α)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP−1−β)、マクロファージ炎症性タンパク質1γ(MIP−1−γ)、マクロファージ炎症性タンパク質3α(MIP−3−α)、マクロファージ炎症性タンパク質3β(MIP−3−β)、ケモカイン(ELC)、マクロファージ炎症性タンパク質4(MIP−4)、マクロファージ炎症性タンパク質5(MIP−5)、LD78β、RANTES、SIS−ε(p500)、胸腺および活性化−調節ケモカイン(TARC)、エオタキシン(eotaxin)、I−309、ヒトタンパク質HCC−1/NCC−2、ヒトタンパク質HCC−3、マウスタンパク質C10が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
用語「薬学的なタンパク質遺伝子」とは、その発現が、標的細胞における薬学的効果を有するタンパク質の生成をもたらすヌクレオチド配列を指す。そのような薬学的な遺伝子の例としては、プロインスリン(proinsulin)遺伝子およびそのアナログ(PCT国際特許出願第WO98/31397号、成長ホルモン遺伝子、ドーパミン、セロトニン、表皮成長因子、GABA、ACTH、NGF、VEGF(標的組織への血液灌流を増加し、新脈管形成を誘導するため、PCT公開第WO98/32859号 1998年7月30日公開)、トロンボスポンジンなどが挙げられる。
【0042】
用語「アポトーシス促進遺伝子(pro−apoptotic gene)」とは、その発現が細胞のプログラム細胞死をもたらすヌクレオチド配列を指す。アポトーシス促進遺伝子の例としては、p53、アデノウイルスE3−11.6K、アデノウイルスE4orf4遺伝子、p53経路遺伝子、およびカスパーゼをコードする遺伝子が挙げられる。
【0043】
用語「プロドラッグ活性化遺伝子(pro−drug activating gene)」とは、その発現が、非治療的化合物を治療的化合物へ変換する能力のあるタンパク質の生成をもたらすヌクレオチド配列を指す。その治療的化合物は細胞を外的因子による死に影響されやすくするか、または細胞に毒性状態をもたらす。プロドラッグ活性化遺伝子の例は、シトシンデアミナーゼ遺伝子である。シトシンデアミナーゼは、5−フルオロシトシンを、強力な抗腫瘍剤である5−フルオロウラシルに変換する。腫瘍細胞の溶解は、腫瘍の局在する点で、5FCを5FUに変換することができるシトシンデアミナーゼの局在性の破壊を提供し、多くの周辺の腫瘍細胞の死をもたらす。このことにより、これらの細胞にアデノウイルスを感染させる必要なく、腫瘍細胞の多くは死んでしまう(いわゆる、傍観者効果(bystander effect))。さらに、TK遺伝子産物を発現する細胞がガンシクロビルの投与による選択的殺傷に感受性である、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子(例えば、Wooら 米国特許第5,631,236号、 1997年5月20日発行、およびFreemanら 米国特許第5,601,818号、 1997年2月11日発行)が用いられ得る。
【0044】
用語「抗血管形成」遺伝子とは、その発現が、抗血管形成因子の細胞外分泌をもたらすヌクレオチド配列を指す。抗血管形成因子としては、アンギオスタチン、Tie2(PNAS(USA)(1998)95:8795−8800に記載される)のような血管内皮増殖因子(VEGF)のインヒビター、エンドスタチンが挙げられる。
【0045】
当業者には、野生型タンパク質の機能的サブフラグメントをコードするように、上で言及した遺伝子を、改変すること、および/または欠失させることは、本発明の実施において使用するために容易に適合され得ることが、容易に明らかになる。例えば、p53遺伝子に対する言及は、野生型のタンパク質だけでなく、修飾したp53タンパク質も含む。そのような改変したp53タンパク質の例としては、p53を核への保持を増加するようにする改変(Wahlら、Nat.Cell Biol.,3(12):E277〜86(2001)により記載)、Δ13−19アミノ酸のカルパインコンセンサス切断部位を除去するための、欠失、オリゴマー化したドメインへの改変(Braccoら、PCT公開第WO97/0492号、または米国特許第5,573,925号に記載されるような)が挙げられる。
【0046】
当業者には、シグナルペプチドまたは核局在化シグナル(NLS)のような標的化部分を含むことにより、上記治療遺伝子は、培地中に分泌され得るか、または特定の細胞内位置に局在され得ることが容易に明らかになる。治療用導入遺伝子の定義には、単純ヘルペスウイルスタイプ1(HSV−1)の構造タンパク質であるVP22を伴った治療導入遺伝子の融合タンパク質が含まれる。VP22シグナルを含む融合タンパク質は、感染した細胞において合成される場合、感染細胞の外に運ばれ、およそ16細胞分の広さの直径の範囲にある周囲の感染していない細胞に効率的に入る。このシステムは、転写活性タンパク質(例えばp53)と組み合わせて、特に有用である。というのは融合タンパク質は周辺細胞の核に効率的に運ばれるからである。例えば、参照、Elliott,G.およびO’Hare,P.Cell.,88:223−233(1997);Marshall,A.およびCastellino,A.Research News Briefs.,Nature Biotechnology、15:205(1997);O’HareらPCT公開第WO97/05265号(1997年2月13日公開)。HIV Tatタンパク質に由来する同様の標的化部分もまた、Vivesら、J.Biol.Chem.272:16010〜16017(1997)において、記載されている。
【0047】
本明細書中で使われる場合、「遺伝子送達システム」とは、特定の上皮組織または、器官へ治療遺伝子を送達する任意の手段をいい、例えば、組換えウイルスベクターおよび非ウイルスベクターシステムを含む。非ベクターシステムの例としては、任意の脂質ベースの脂質でカプセル化されたDNA、またはカチオン化脂質/DNA複合体が挙げられるが、それに限られない。組換えウイルスベクターの例としては、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスが挙げられるが、それらに限られない。
【0048】
「組換え体」とは、核酸が、「遺伝子工学」とも呼ばれる、組換えDNA技術の方法により構築される核酸およびその核酸にコードされたタンパク質をいう。好ましい組換えウイルスベクターは、タンパク質IX遺伝子の欠損のある、アデノウイルスベクター送達システムである。国際特許出願WO95/11984(これは、本明細書中にその全体が参考として援用される)を参照のこと。治療遺伝子(例えば、腫瘍抑制遺伝子)を含む組換えベクター送達システムは、ベクターを安定化する緩衝液中で処方され、ベクターと適合性の送達増強因子と組み合わせられる。
【0049】
「送達増強因子」とは、腫瘍抑制遺伝子の癌組織または器官への送達のような、治療遺伝子の送達を高める任意の因子をいう。そのような増強された送達は、様々なメカニズムにより達成され得る。1つのそのようなメカニズムは、膀胱の上皮表面上の保護的なグリコサミノグリカン層の崩壊を包含し得る。
【0050】
そのような送達増強因子の例は、界面活性剤(detergent)、アルコール、グリコール、界面活性剤(surfactant)、胆汁酸塩、ヘパリンアンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼインヒビター、高浸透圧の塩溶液、および酢酸類である。アルコールとしては、例えば、脂肪族アルコール(例えばエタノール、N−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、アセチルアルコール)が挙げられる。グリコールとしては、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびチオグリセロールが挙げられる。酢酸類(例えば、酢酸、酢酸グルコノール、および酢酸ナトリウム)はさらに、送達増強因子の例である。1MのNaClのような、高浸透圧の塩溶液もまた、送達増強因子の例である。界面活性剤の例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびリゾレシチン、ポリソルベート80、ノニルフェノキシポリオキシエチレン、リゾホスファチジルコリン、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート20、ポリオキシエチレンエーテル、およびポリグリコールエーテル系界面活性剤である。胆汁酸塩(例えば、タウロコール酸塩、タウロデオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸塩、ケノデスオキシコール酸塩(chenodesoxycholate)、グリココール酸、グリコケノデオキシコール酸)および硫酸銀のような他の収斂剤が使用され得る。4級アミン(例えば、硫酸プロタミン)のようなヘパリンアンタゴニストもまた、使用され得る。シクロオキシゲナーゼインヒビター(例えば、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸、および、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)インドメタシン、ナプロキセン、ジクロフェナクのような)も使用され得る。
【0051】
「増強された(enhanced)」という用語は、治療遺伝子(例えば、腫瘍抑制遺伝子)の癌組織または器官への送達の増加を表している。治療遺伝子(例えば、腫瘍抑制遺伝子)の送達の増加は、様々な手段によって測定され得る。この手段は、例えば、腫瘍抑制遺伝子が、送達増強因子を含まない緩衝液中のアデノウイルスベクター送達システムにおいて送達された時の発現レベルと比較して、腫瘍抑制遺伝子の発現を測定することによる。治療遺伝子の例は、腫瘍抑制遺伝子およびチミジンキナーゼ自殺遺伝子である。腫瘍抑制遺伝子の例としては、p53、網膜芽腫遺伝子、(全長(例えば、p110B)またはそのフラグメント(例えば、p94RBまたはp56RB)のいずれか)、Rb56、Rb遺伝子の機能的な改変体、p53遺伝子の機能的な改変体およびp16が挙げられるが、それらに限られない。他の治療遺伝子としては、CFTR、サイトカイン(例えば、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、δインターフェロン、インターロイキン(例えば、IL−4、IL−10、IL−2)、GM−CSF)をコードする遺伝子、および膀胱炎のような膀胱の非癌性疾患の処置に治療的能力のあるタンパク質をコードする他の任意の遺伝子が挙げられるが、それに限られない。本発明のいくつかの実施形態では、治療遺伝子はアンチセンスRNAをコードしている。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、治療有効量の治療遺伝子(例えば、腫瘍抑制遺伝子)を含み、その治療遺伝子は組換え増強因子を含む緩衝液中の組換えウイルスベクター送達システム中に含まれる。本明細書中で使われる場合、「治療的に効果のある(therapeutically effective)」とは、疾病の状態に関連した症状の予防、低減、治療をいう。
【0053】
治療有効量の薬学的組成物(これは、送達増強因子を含む緩衝液中で処方された組換えウイルスベクター送達システム中に、治療遺伝子(例えば、p53)または網膜芽腫腫瘍抑制遺伝子を含む)が、本発明の教示に従って投与される。例えば、送達増強因子を含む緩衝液中に処方された組換えアデノウイルスベクター送達システム中のp53腫瘍抑制遺伝子の治療有効量は、約1×10粒子/mlから2×1012粒子/ml、の範囲にある。より典型的には、約1×10粒子/mlから9×1011粒子/ml、もっとも典型的には、1×1010粒子/mlから9×1011粒子/mlの範囲にある。
【0054】
ACN53としても知られているp53は、野生型のp53腫瘍抑制タンパク質をコードする組換えアデノウイルスタイプ5であり、例えば、PCT特許出願WO95/11984に記載されている。本発明の1つの局面では、処方されたSYN3は、p53の注入物と組み合わせられ、そしてその混合物が膀胱に点滴される。この調剤物は、上皮の癌腫を処置することが意図される。p53は約5×1013粒子〜約8×1013粒子の量で存在するのが好ましい。
【0055】
本発明の範囲内で使用する界面活性剤は、例えば、アニオン、カチオン、両性、および非イオン性の界面活性剤を含む。典型的な界面活性剤としては、例えば、タウロコール酸塩、デオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、セチルピリジウム、塩化ベンザルコニウム(benalkonium chloride)、ZWITTERGENT3−14界面活性剤、CHAPS(3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオール]−1−プロパンスルホネート水和物(Aldrichから入手できる)、Big CHAP、Deoxy Big CHAP、TRITON−X−100界面活性剤(Union Carbideから入手できる)、C12E8、オクチル−B−D−グルコピラノシド、PLURONIC−F64、PLURONIC−F68、PLURONIC−F69界面活性剤(BASFから入手できる)、TWEEN20界面活性剤、およびTWEEN80界面活性剤(ICIから入手できる)が挙げられるが、それに限られない。
【0056】
一実施形態では、送達増強因子は、組換えアデノウイルスベクター送達システムが処方されている、緩衝液中に含まれる。送達増強因子は組換えウイルスの前に投与され得るか、またはウイルスと付随して投与され得る。ある実施形態では、送達増強因子は、患者への投与直前に、送達増強因子処方物とウイルス調製物を混合することによって、ウイルスと一緒に提供される。他の実施形態では、送達増強因子およびウイルスは、ひとつのバイアル中で、投与のために治療を施す人(caregiver)に提供される。
【0057】
送達増強因子をさらに含む緩衝液中で処方された組換えアデノウイルスベクター送達システム中に含まれる腫瘍抑制遺伝子を含む、薬学的な組成物の場合、薬学的な組成物は、およそ5分から3時間、好ましくは、約10分から120分、および好ましくは約15分から90分の範囲で経時的に投与してもよい。他の実施形態では、送達増強因子は、腫瘍抑制遺伝子を含む、組換えアデノウイルスベクター送達システムの投与の前に投与してもよい。送達増強因子の事前の投与は、腫瘍抑制遺伝子を含むアデノウイルスベクター送達システムの投与の前、およそ30秒から1時間、好ましくは、およそ1分から10分、および好ましくは、およそ1分から5分の範囲である。
【0058】
本発明の処方物のために使用され得る溶媒は、例えば、水性の溶媒(例えば、注入用の水)および/または非水性の溶媒(例えば、DMSO、およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAとしても知られる))および、共溶媒の混合物(例えば、グリセロールおよび水、好ましくはUSP標準に従って調製される)を含む。
【0059】
処方物は、好ましくは、ポリソルベート、またはポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えば、とりわけポリソルベート80およびポリソルベート20を含む、非イオン性界面活性剤のクラス、とりわけ、プルロニック、またはポリエチレンポリプロピレングリコールブロックコポリマー、とりわけ、プルロニックL68およびL92を含んだ非イオン性の界面活性剤のクラス、およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、多置換ヒドロキシアルキル−β−シクロデキストリン、(これは、例えば、HPβCDおよびBigCHAPを含む非イオン性の複合体化薬剤のクラスである)を含む。可溶化剤としては、HPβCD、BigCHAP、ポリソルベート80、ポリソルベート20、プルロニックL64、およびプルロニックL92が好ましい。可溶化剤は、例えば、単独で、または組み合わせて用いられ得る。可溶化剤の濃度は以下に記載される。HPβCDは、約50〜500mg/mlの濃度で存在し得、BigCHAPは約20〜約360mg/mlの濃度で存在し得、ポリソルベート80は約1〜36mg/mLの濃度で存在し得、プルロニックは約1〜約150mg/mlの濃度で存在し得、および、他の成分は後に述べる濃度で存在し得る。
【0060】
送達増強因子の濃度は、当業者に公知である、多くの因子(例えば、使用された特定の送達増強因子、緩衝液、pH、標的組織または標的器官および、投与の方法)に依存している。送達増強因子の濃度は、0.01%から50%(w/v)、好ましくは10%から40%(w/v)、好ましくは14%から19%(w/v)および、好ましくは0.01%から30%の範囲内にある。好ましくは、界面活性剤の濃度は、混合前の処方中において、およそ1%から12%(w/v)であり、好ましくは、混合した場合に処方物のおよそ0.1%(w/v)である。好ましくは、患者に投与される最終処方物における界面活性剤の濃度は、臨界ミセル化濃度(CMC)のおよそ0.5〜2倍である。このCMCは、組換えアデノウイルス処方物中の0.001mg/mlに等しい。
【0061】
凍結乾燥SYN3処方物は、好ましくは、クエン酸緩衝系を含む。より好ましくは、クエン酸緩衝系は、例えば、クエン酸一水和物(薬局方(USP))またはクエン酸ナトリウム二水和物(薬局方(USP))のような、少なくとも1つのクエン酸緩衝液を含み得る。より好ましくは、クエン酸緩衝系は、クエン酸一水和物(薬局方(USP))およびクエン酸ナトリウム二水和物(薬局方(USP))の組み合わせを含む。組み合わせて用いる場合には、クエン酸一水和物(薬局方(USP))の量は、およそ0.005から2mg/ml、より好ましくは、0.016からおよそ1.35mg/ml、好ましくは、0.016からおよそ0.72mg/ml、好ましくは、およそ0.005から1.35mg/mlの濃度で存在し得る。クエン酸ナトリウム二水和物(薬局方(USP))は、およそ0.02から5.37mg/ml、好ましくは、0.05から3.00mg/ml、好ましくは、0.05から2.31mg/mlの濃度で存在し得る。他の適した緩衝系は、クエン酸緩衝系のかわりまたは、クエン酸緩衝系と組み合わせて、例えば、リン酸塩、グリシン、および上記の全ての様々な組み合わせを含む。
【0062】
この緩衝系は、安定性を改善するような、凍結乾燥処方物のpHを提供する。好ましくは、pHは約5から6の範囲にある。SYN3の混合水性処方物は、好ましくは、pH約7から約8.5にて、好ましくは約7.4で緩衝化される。SYN3は、脱水した粉末の状態で、40℃で少なくとも3ヶ月安定である。
【0063】
凍結乾燥処方物は、好ましくは、凍結乾燥充填剤として、グリシンまたはマンニトールを含む。使用され得る他の適した凍結乾燥充填剤としては、例えば、ラクト−ス、組換えゼラチン、およびメチルセルロースが挙げられる。凍結乾燥充填剤は、その薬剤がマンニトールのときは、およそ5から100mg/ml、そして薬剤がグリシンのときはおよそ10から200mg/mlの濃度で存在し得る。
【0064】
凍結乾燥処方物は、好ましくは、抗酸化剤として、アスコルビン酸を含む。用いられ得る他の適した抗酸化剤としては、例えば、クエン酸が挙げられる。アスコルビン酸が抗酸化剤のときには、およそ0.001から0.6mg/mlの濃度で存在してもよい。
【0065】
本発明の組成物はさらに、例えば、安定剤、向上剤、または、薬学的に受容可能なキャリアもしくはビヒクルを含んでもよい。薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、腫瘍抑制遺伝子を含む組換えアデノウイルスベクター送達システムを安定化するために作用する、生理学的に受容可能な化合物を含んでもよい。生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、糖質(例えば、グルコース、スクロース、もしくはデキストラン)、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、もしくはグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げられ得る。
【0066】
他の生理学的に受容可能な化合物としては、例えば、湿潤剤、乳化剤、分散剤、または微生物の成長もしくは作用を妨げるのに特に有用な防腐剤が挙げられる。様々な防腐剤が周知であり、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸が挙げられる。当業者は、薬学的に受容可能なキャリアの選択が投与の経路および組換えアデノウイルスベクター送達システム、およびそこに含まれる特定の腫瘍抑制遺伝子の特定の生理化学的な性質に依存することを知っている。キャリア、安定化剤または補助剤の例は、Gennaro,Remingston’s:The Science and Practice of Pharmacy、第19版(Mack Publishing.Co.,Easton,Pa.1995)(これは参考として援用される)において見出され得る。
【0067】
送達増強因子を含む緩衝液中に処方された治療遺伝子を含む組換えウイルスベクター送達システムは、当業者に公知である任意の送達方法(例えば、腫瘍内投与または膀胱内投与)を用いて、任意の癌組織または癌器官に送達されてもよい。癌組織および癌器官は、例えば、胃腸管、膀胱、呼吸管、および肺のような、上皮膜を持つ任意の組織または器官を含む。例としては、膀胱および上部呼吸管、外陰、子宮頚部、膣または気管支の癌腫;腹膜の局所的転移性腫瘍;気管支肺胞癌腫;転移性の肋膜の癌腫;口および扁桃の癌腫;鼻咽頭、鼻、咽頭、食道、胃、結腸および直腸、胆嚢もしくは、皮膚の癌腫;または黒色腫が挙げられるが、それに限られない。
【0068】
本発明の送達増強因子はまた、タンパク質、核酸、アンチセンスRNA、低分子など、他の薬学的薬剤を、上皮膜を持つ任意の組織、または器官への投与のための他の薬剤を処方するために用いられ得る。
【0069】
(処方物の投与)
ある実施形態では、送達増強因子は、発現ベクターが処方された緩衝液に含まれる。送達増強因子は、発現ベクターの前にかまたは発現ベクターとともに投与され得る。ある実施形態では、送達増強因子は患者への投与の直前に、送達増強因子処方物とともに発現ベクターを混合することにより、発現ベクターとともに提供される。他の実施形態では、送達増強因子および発現ベクターは、投与のために、1つのバイアルにて、介護者に提供される。
【0070】
送達増強因子をさらに含む緩衝液中に処方された組換えアデノウイルスベクター送達システムに含まれる腫瘍抑制遺伝子を含む薬学的組成物の場合には、薬学的組成物は、約5分間から3時間の範囲で、好ましくはおよそ10分間から120分間、および最も好ましくは約15分間から90分間の範囲で経時的に投与され得る。別の実施形態において、送達増強因子は、腫瘍抑制遺伝子を含む組換えアデノウイルスベクター送達システムの投与の前に、投与してもよい。送達増強因子の前投与は、腫瘍抑制遺伝子を含むアデノウイルスベクター送達システムの投与前、およそ30秒間から1時間、好ましくは、約1分間から10分間、より好ましくは約1分間から5分間の範囲である。
【0071】
送達増強因子を含む緩衝液中に処方された発現ベクターは、癌組織のような新生物組織を含む任意の組織または器官に、当業者には公知である任意の送達方法(例えば、腫瘍内投与または膀胱内投与)を用いて送達されてもよい。組織および器官は、例えば、胃腸管、膀胱、呼吸器管、および肺のような、上皮膜を持つ任意の組織または器官を含む。例としては、膀胱および上部呼吸器管、外陰、子宮頚部、膣または気管支の癌腫;腹膜の局所的転移性腫瘍;気管支肺胞の癌腫;転移性肋膜癌腫、口および扁桃の癌腫;鼻咽頭、鼻、咽頭、食道、胃、結腸および直腸、胆嚢もしくは、皮膚の癌腫;または黒色腫が挙げられるが、それに限られない。
【0072】
本発明のある実施形態では、発現ベクターは、粘膜処方物、局所処方物および/または頬処方物中に、特に粘膜粘着性ゲル処方物および局所ゲル処方物中に、処方される。経皮送達のための例示的な透過向上組成物、ポリマーマトリックスおよび粘膜粘着性ゲル調製物が、米国特許第5,346,701号にて開示されている。そのような処方物は、口、頭部、および頚部の癌(例えば、気管気管支上皮の癌)、皮膚癌(例えば、メラノーマ、基底細胞癌、および扁平上皮癌)、腸粘膜、膣粘膜、および子宮頸管の癌の処置のために、特に有用である。
【0073】
本発明のある実施形態では、治療薬剤は、眼への投与のための眼用処方物として処方される。そのような処方物は、必要に応じて、p53の送達と組み合わせて、網膜芽腫(RB)遺伝子の眼への送達に有用である。
【0074】
(処置方法)
本発明の組成物は、典型的には、細胞への遺伝子の移入を高めるために投与される。細胞は、上皮膜のような組織の一部としてまたは、例えば組織培養中の単離細胞として、提供され得る。細胞は、インビボで、エキソビボで、インビトロで提供され得る。
【0075】
組成物は、様々な方法により、インビボまたはエキソビボで、対象となる組織に導入され得る。本発明のある実施形態では、マイクロインジェクション法、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム融合、または、微粒子銃(biolistics)のような方法により、調節剤が細胞に導入される。さらなる実施形態では、治療剤は、対象となる組織に直接、吸収される。
【0076】
本発明のある実施形態では、本発明の組成物は、患者から移植された細胞および組織にエキソビボで投与され、その後、患者に戻される。治療遺伝子構築物のエキソビボ投与の例としては、以下が挙げられる:Arteagaら、Cancer Research 56(5):1098〜1103(1996);Noltaら、Proc Natl.Acad.Sci.USA 93(6)2414〜9(1996);Kocら、Seminars in Oncology 23(1):46〜65(1996);Raperら、Annals of Surgery 223(2):116〜26(1996);Dalesandroら、J.Thorac.Cardi.Surg.、11(2)416〜22(1996);およびMakarovら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(1):402〜6(1996)。
【実施例】
【0077】
以下の実施例は、本発明をさらに例証する。
【0078】
(実施例1)
以下の表は本発明の、非水性の液体処方の成分の範囲を示す。投与前(膀胱癌に対して)に、SYN3溶液を、患者に投与する混合物をつくるために、組換アデノウイルス調製物と1:50(v/v)の比で組み合わせる。
【0079】
【表1】

調製のために、およそ75%のDMAをガラスビーカーに量る。別のビーカーに、界面活性剤(ポリソルベート80、ポリソルベート20、プルロニック L64、または、プルロニック L92)を入れ、少量(最終容量のおよそ10%)のDMAに溶解する。DMA/界面活性剤溶液を、継続してかき混ぜながらDMAに入れる。SYN3は別の容器で予め重量を量っておく。SYN3を溶液にかき混ぜながらゆっくり入れる。SYN3が溶解すると、十分なDMAを重量で、最終容量まで添加する(25℃の比重=0.962g/ml)。ラテックス製でないプランジャを伴ったシリンジに付けた0.22フィルターで溶液をろ過し、溶液を、きつく封をしたガラス容器で4℃で保管する。
【0080】
以下の実施例は実施例1に従って調製され得る。
【0081】
(実施例2)
【0082】
【表2】

(実施例3)
【0083】
【表3】

(実施例4)
【0084】
【表4】

(実施例5)
【0085】
【表5】

以下の25mlバッチを同じ方法に従って調製した。
【0086】
(実施例6)
【0087】
【表6】

(実施例7)
【0088】
【表7】

(実施例8)
【0089】
【表8】

(実施例9)
【0090】
【表9】

以下は実施例2、3、4、および5の安定性分析である。
【0091】
(実施例10)
【0092】
【表10】

安定性試験はHPLCにより、行った。溶液処方物は示した温度条件下に置き、明記した期間インキュベートし、濃度をHPLCにより決定し、初期濃度(−80℃)と比較した。非水性のSYN3溶液処方物は、SYN3をN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)に溶解している場合、55℃で少なくとも1週間安定なままであった。
【0093】
(実施例11)
以下の表は、本発明の、凍結乾燥処方物の成分の範囲を示す。調合した溶液は示したように、20mlの容量のタイプIIのガラスバイアルに入れ、凍結乾燥した。投与の準備には、SYN3の再溶解のために、凍結乾燥したかたまりを含むバイアルへの20mLのWFIの添加が必要である。SYN3溶液はv/v比1:5の割合で、p53と組み合わされ、または、任意の組替えアデノウイルス調製物と組み合わされる。その後、混合物は例えば、膀胱癌の患者に投与される。
【0094】
【表11】

以下の実施例は、凍結乾燥処方物の調製方法である。
【0095】
(実施例12)
【0096】
【表12】

入れられるSYN3の実際の量は、薬剤のバッチの純度に従って、次の式を用いて、調整される。
グラムSYN3=24.0×100/(純度%)
例えば:
SYN3薬剤=97.0%の純度
24.0×100/97.0=24.7グラムのSYN3が1リッターのバッチに添加される。
【0097】
従って、そのバッチに添加されるSYN3の量は次の式に従って、決める:
SYN3の量[g]/l=24.0g/l×[100/(SYN3のバッチの純度%)]
そのバッチに投入する注射するための水の量は、次の式に従って決める。
注射する水の体積(l)=バッチの体積(l)×0.5
上の式を用いて計算した注射するため水の体積を、攪拌機のついた、空の混合容器に投入する。BigCHAPを投入し、攪拌しながら溶解させる。注射用滅菌水を用いて、重量を測った容器をすすぎ、物質を全て回収する。BigCHAPを完全に溶解するには、中程度の攪拌速度でおよそ30分から60分継続して攪拌する必要がある。SYN3をBigCHAP溶液へ、攪拌しながら添加および溶解(中程度の攪拌速度で)する。注射用滅菌水を用いて、重量を測った容器をすすぎ、物質を全て回収する。SYN3を完全に溶解するには、1時間の混合が必要であり得る。BigCHAPおよびSYN3の両方を含む溶液に、グリシン、アスコルビン酸、クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム二水和物を順番に、攪拌しながら添加および溶解する。注射用水を用いて、重量を測った容器をすすぎ、物質を全て回収する。注射用水を添加して、バッチを最終容量(溶液の密度は25℃で、およそ1.051g/ml)にする。溶液を最低15分間混合する。
【0098】
溶液の少量サンプル(<5ml)をpHの測定のために採取する。pHは5.0と6.0との間になるはずである。pH調整は必要ない。当業者は、得られた産物のpHを容易に確かめることができる。
【0099】
配合を完了するために、溶液を無菌的に、ろ過する。もし必要なら、調合されたバッチはバイアルに入れる前に、2℃から8℃で24時間、密閉した無菌状態のステンレスの圧力容器で保存し得る。バッチは無菌状態を保証するために、さらにもう一度ろ過してもよい。
【0100】
無菌的に、5.3±0.1mlの溶液を、洗浄し滅菌した20mlのタイプ1フリントガラスのバイアルに入れる。洗浄し、シリコン処理し、滅菌した、20mmのWestの4416/50凍結乾燥状態の(lyo−shape)ゴムの栓を、バイアルに凍結乾燥した状態で、無菌的に挿入した。
【0101】
凍結乾燥機の棚を、4±2℃で予め冷却する。充填したバイアルのトレーを凍結乾燥機
の棚に、無菌的にのせる。全てのトレーにのせたあと、棚を−40℃で1時間冷却し、その後、次の段階に進む前に、製造物を−35℃で、またはそれ以下で少なくとも4時間維持する。凝縮装置を冷却し始める。凝縮装置の温度が−45℃またはそれ以下になった場合、装置内を真空にし始める。50〜70mmHgの減圧になったとき、棚の温度を0.5時間かけて−20℃まで上げる。棚の温度を−20℃で、36時間、およそ150mmHg(100から200mmHgの圧力)の圧力で維持する。産物の温度は、次の段階に進む前に、−20℃、またはそれ以上で、少なくとも6時間維持しなければならない。1時間かけて25℃まで棚を熱し、圧力をおよそ50mmHgまで減少させる。棚の温度を25℃で、およそ50mmHgの圧力で14時間維持する。チャンバ内を滅菌ろ過した窒素でおよそ950mmHgまで満たす。凍結乾燥機の中でバイアルに栓をする。凍結乾燥機からバイアルを取り出し、20mmのアルミニウムシールで圧着する。バイアルは検査が終わるまで、2℃から8℃で保存すべきである。
【0102】
産物は白色からわずかに灰色がかった白色のかたまりである。バイアルは検査の後、2℃から8℃の間で保存すべきである。ラベルを貼る、および検査の目的のために、バイアルは6時間まで19℃〜25℃においても良い。
【0103】
以下の実施例は、上記実施例12に示したバッチの調製に従って調製した。
【0104】
(実施例13)
【0105】
【表13】

生じた産物のpHは5.34であった。
【0106】
【表14】

生じた産物のpHは5.45であった。
【0107】
(実施例15)
【0108】
【表15】

生じた産物のpHは5.76であった。
【0109】
実施例13、14、および15の、生じた凍結乾燥産物の安定性試験の結果は、次のようになった。
【0110】
(実施例16)
【0111】
【表16】

安定性試験はHPLCにより、行った。凍結乾燥処方物は19.5mlのWFIを用いて再構成した(再溶解させた)。サンプルは、示した温度条件に置き、明記した期間インキュベートし、そして濃度をHPLCにより測定し、初期濃度と比較した。
【0112】
(実施例17)
【0113】
【表17】

装填される実際のSYN3量は、薬物物質のバッチの純度に従って以下の式を用いて補
正した:
SYN3[g]=24.0×100/(純度%)
(サンプルの計算)
SYN3薬物物質=純度97.0%
24.0×100/97.0=24.7gのSYN3を1リットルのバッチに装填した。
【0114】
以下の実施例を、以下のように調製した。最初に、以下の式に従って、そのバッチに装填されるSYN3の量を決める。
SYN3[g]/リットル=24.0g/リットル×[100/(SYN3バッチ純度[%])
次に、そのバッチに装填される注入用水の体積を、以下の式に従って決定する。
投入する水の体積[l]=バッチ体積[l]×0.5
注入する体積の水を、風袋を計量した攪拌機を備えた調合用の容器に投入する。ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを投入し、攪拌して溶解する。ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンの完全な溶解にはおよそ30から45分の、中程度の攪拌速度の継続した攪拌が必要であることに注意する。注入用の水は、重量を測った容器をすすぎ、物質を全て回収するために用いられ得る。ポリソルベート80を溶液に投入し、溶解する。ポリソルベート80は0.1倍の注入用の全量の水(l)に前溶解され得、溶液に投入する。
【0115】
SYN3を溶液に投入し、攪拌しながら溶解する。SYN3の完全な溶解には1時間の混合が必要であり得る。注入用の水は、重量を測った容器をすすぎ、物質を全て回収するために用いられ得る。
【0116】
以下の順で溶液に投入し、攪拌しながら溶解する:アスコルビン酸、クエン酸一水和物、およびクエン酸ナトリウム二水和物。注入用の水は、重量を測った容器をすすぎ、物質を全て回収するために用いられ得る。注入用の水を添加し、バッチを最終容積にする(溶液の密度は25℃で1.058g/ml)。溶液は最低15分混合する。
【0117】
溶液の少量サンプル(<5ml)をpHの測定のために採取する。pHは5.0および6.0の間になるはずである。pH調整は必要ない。洗浄し、無菌を検査された滅菌したステンレス鋼の圧力容器、または使用すべき等価物に入れられた無菌的にろ過された溶液を使用するべきである、。もし必要なら、調合されたバッチは、充填する前に、2℃から8℃で24時間、密閉し、無菌状態で、ステンレス鋼の圧力容器で保存され得る。バッチは無菌状態を保証するために、さらにもう一度ろ過してもよい。
【0118】
無菌的に、5.3±0.1mlの溶液を、洗浄および滅菌した20ml型1フリントガラスのバイアルに充填する。洗浄し、シリコン処理し、滅菌した、凍結乾燥状態の(lyo−shape)ゴムの栓を、バイアルに凍結乾燥した状態で、無菌的に挿入した。
【0119】
凍結乾燥するために、凍結乾燥機の棚を4±2℃で予め冷却する。充填したバイアルのトレーを凍結乾燥機の棚に、無菌的にのせる。全てのトレーにのせたあと、棚を−40℃で1時間冷却し、その後、次の段階に進む前に、生成物を−35℃以下で4時間以上維持する。凝縮装置を冷却し始める。凝縮装置の温度が−45℃またはそれ以下になった時、装置内を真空にし始める。減圧気圧が50〜70mmHgになった時、棚の温度を0.5時間かけて−20℃まで上げる。棚の温度を−20℃で、36時間、およそ150mmHg(100から200mmHgの圧力)の圧力で維持する。生成物の温度は、次の段階に進む前に、−20℃、またはそれ以上で、6時間以上維持しなければならない。1時間かけて25℃まで棚を熱し、圧力をおよそ50mmHgまで減少させる。棚の温度を25℃で、およそ50mmHgの圧力で14時間維持する。チャンバ内を滅菌ろ過した窒素でおよそ950mmHgまで満たす。凍結乾燥機の中でバイアルに栓をする。凍結乾燥機からバイアルを取り出し、20mmのアルミニウムで密閉する。バイアルは検査が終わるまで、2℃から8℃で保存すべきである。
【0120】
生成物は白色からわずかに灰色がかった白色のかたまりである。バイアルは検査の後、2℃から8℃の間で保存すべきである。標識および検査の目的のために、バイアルは6時間までは19℃〜25℃においても良い。
【0121】
p53(rAD/p53)は凍結乾燥したSYN3の処方物と組み合わせた時、37℃で少なくとも2時間、および25℃で24時間安定なままであった。p53は水溶性のSYN3処方物と組み合わせた時、37℃で少なくとも4時間、および25℃で24時間安定安定なままであった。
【0122】
(実施例18)
この実施例はSYN3の合成を示す。
【0123】
(1部:化合物IIIの合成)
SYN3の合成概要を図2に示す。それは、米国特許第6,392,069号から適合される。バイオニック乳酸(II)(lactobionic acid(II))のラクトンは、1g(2.8mmol)のバイオニック乳酸(I)(lactobionic acid(I))を50mlのメタノールに溶解し、回転式エバポレーターで蒸発乾燥させ、この過程を6回繰り返すことにより合成した。化合物IIIを得るために、得られた残留物(II)を50℃まで熱して、50mlのイソプロパノールに溶解した。この溶液に1.2ml(8.4mmol)のN−(3−アミノプロピル)−1,2−プロパンジアミンを添加した。温度は100度まで加温し、溶液は3時間攪拌した。溶媒を回転式エバポレーターにより取り除き、得られた残留物をクロロホルムで数回洗浄し、過剰の未反応のN−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンを取り除いた。残った残留物(III)は下記3部で用いた。
【0124】
(2部:化合物IVの合成)
化合物IVを2.28gのコール酸(5.6nmol)をN,N−ジメチルホルムアミドに、60℃に熱して溶解することにより合成した。トリエチルアミン(0.78ml(5.6nmol))を添加し、溶液をアイスバス中で冷却した。その後、クロロギ酸イソブチル(0.73ml(5.6nmol))を添加し、攪拌を10分間継続すると、白色の沈殿物を形成した。
【0125】
(3部:SYN3の合成(化合物V))
化合物IIIをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、アイスバスで冷却し、攪拌した。化合物IVの合成でできた懸濁液をろ過し、化合物IIIを含む溶液に添加した。得られた溶液を室温で6時間攪拌した。溶媒を高真空回転式エバポレーターを用いて除去し、残留物を100mlのクロロホルム/メタノール(50/50)に溶解した。25mlのこの溶液をクロロホルム/メタノール(60/40)を溶出溶媒として用いて、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。カラムから溶出した画分の分析を、クロロホルム/メタノール/水/濃縮水酸化アンモニウム(100/80/10/5)からなる移動相を用いて、シリカゲル薄層クロマトグラフィーにより行った。化合物を硫酸エタノールを噴霧し、黒焦げにすることにより、視覚化した。生成物を含む画分は、固化し、溶出溶媒としてクロロホルム/メタノール/水/濃縮水酸化アンモニウム(100/80/10/5)を用いる、フラッシュクロマトグラフィーにより、再精製した。生成物を含む画分は固化し、白色の粉末になるまで乾燥した(300mgの化合物V)。生成物のH−NMRおよびMALDI質量分光分析は、示した構造と一致した。
【0126】
本発明が関する当業者に明らかなように、本発明は、本発明の精神および本質の特性から離れることなく、以上に特に開示される以外の形態で、具体化され得る。それゆえに、上記の本発明の特定の実施形態は、例証であって制限ではないものとして考えられる。本発明の範囲は、先に記述したものに含まれる実施例に限られるというよりは、むしろ添付の特許請求の範囲に記載のものである。
【0127】
本明細書に記載した実施例および実施形態は説明するためだけのものであって、その観点に含まれる、様々な改変および変化は当業者に示唆され、そして本願の精神および範囲、および添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることが理解される。本明細書に引用した全ての刊行物および特許出願は、その全体が、個人それぞれの刊行物または特許出願が特におよび個別に示され、参考として援用されるように、全ての目的で本明細書中に参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−95549(P2010−95549A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22598(P2010−22598)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【分割の表示】特願2003−554125(P2003−554125)の分割
【原出願日】平成14年12月20日(2002.12.20)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】