説明

SYNUCLEIN病の予防および治療

【課題】患者の脳内のα-synucleinのLewy小体を含む、synuclein病と関連する疾患の治療のための改善された物質および方法の提供。
【解決手段】ある用量のalpha-SNまたはその活性なフラグメントを患者に対して投与して、免疫応答を誘導することが含まれる。ある方法においては、alpha-SNまたはその活性なフラグメントを、複数用量で少なくとも6箇月の期間にわたって投与する。alpha-SNまたはその活性フラグメントを、例えば、末梢性、腹腔内、経口的、皮下、頭蓋内、筋肉内、局所的、鼻内または静脈内で投与することができる。ある方法においては、alpha-SNまたはその活性フラグメントを、alpha-SNまたはその活性フラグメントに対する免疫応答を増強するアジュバントと共に投与する。ある方法においては、免疫原性応答は、alpha-SNまたはその活性フラグメントに対する抗体を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連する出願の相互参照
[0001]本明細書は、U. S. 出願No. 60/423,012(2002年11月1日に出願、この内容をす
べての目的で本明細書中に参考文献として援用する)の35 U. S. C. 119 (3)に基づく利
益を主張する。
【0002】
発明の背景
[0002]α-synuclein(alphaSN)脳病変は、パーキンソン病(PD)、Lewy小体による痴
呆(DLB)、アルツハイマー病のLewy小体変異体(LBVAD)、多臓器萎縮(MSA)、脳鉄蓄
積を伴う神経変性-1型(NBIA-1)を含むいくつかの神経変性性疾患の顕著な特徴である。synuclein病と呼ばれるこれらの疾患のすべてに共通するものは、主としてalphaSNを構成するニューロンおよびグリア中の、タンパク質性非可溶性封入体である。
【0003】
[0003]Lewy小体およびLewy神経突起は、主としてalphaSNからなるニューロン内封入体
である。Lewy小体およびLewy神経突起は、パーキンソン病(PD)の神経病理学的特徴である。PDおよびその他のsynuclein病疾患は、総称してLewy小体疾患(LBD)と呼ばれた。LBDは、ドーパミン作動性システムの変性、運動性変化、認知障害、およびLewy小体(LBs)の形成を特徴とする(McKeith et al., Clinical and pathological diagnosis of dementia with Lewy bodies(DLB) : Report of the CDLB International Workshop, Neurology
(1996) 47 : 1113-24)。その他のLBDには、散在性Lewy小体疾患(DLBD)、アルツハイ
マー病のLewy小体変異体(LBVAD)、PDとアルツハイマー病(AD)との合併症、および多
臓器萎縮が含まれる。Lewy小体を伴う痴呆(DLB)は、LBDの専門用語の相違をうまく折り合いをつけるために考え出された用語である。
【0004】
[0004]LBを伴う障害は、老人個体群における運動性障害や認知鈍化の一般的な原因であり続けている(Galasko et al., Clinical-neuropathological correlations in Alzheimer's disease and related dementias. Arch. Neurol. (1994) 51 : 888- 95)。それら
の発生率は増加し続けており、重大な公衆衛生的問題を発生しているが、現在までのところ、これらの症状は治療可能でも予防可能でもなく、そしてPDの原因および病因を理解することは、新しい治療法を開発するために重要である(Tanner et al., Epidemiology of
Parkinson's disease and akinetic syndromes, Curr. Opin. Neurol. (2000) 13 : 427-30)。PDについての原因は議論のあるところであり、そして様々な神経毒や遺伝的感受
性因子を含む複数の因子が役割を果たしていることが提案された。
【0005】
[0005]近年、PDの病因を理解するための新たな望みが生じた。具体的には、いくつかの研究により、シナプスタンパク質であるalpha-SNが、PDの病因において中心的な役割を果たしていることが示された。というのも:(1)このタンパク質がLB中に蓄積されるため
(Spillantini et al., Nature (1997) 388:839-40; Takeda et al., AM. J. Pathol. (1998) 152. 367-72, Wakabayashi et al., Neurosci. Lett. (1997) 239 : 45-8)、(2)alpha-SN遺伝子の変異がパーキンソン病のまれな家族性形態とともに分離するため(Kruger et al., Nature Gen. (1998) 18 : 106-8 ; Polymeropoulos MH, et al., Science (1997) 276 : 2045-7)、そして(3)トランスジェニックマウス(Masliah et al., Science (2000) 287 : 1265-9)およびDrosophila(Feany et al., Nature (2000) 404 : 394-8)におけるその過剰発現が、PDのいくつかの病理学的側面を模倣しているため、である。したがって、脳内におけるalpha-SNの蓄積が、ヒト、マウス、およびハエと同様な多様性を有する種におけるものと同様の形態学的変化および神経学的変化と関連しているという事実から、この分子がPDの発症に寄与していることが示唆される。
【0006】
[0006]alpha-SNフラグメントは、以前はADアミロイド斑の構成成分として決定されたものであるが、ADアミロイドの非-アミロイド-β(non-Aβ)構成成分(NAC)と呼ばれた(Iwai A., Biochim. Biophys. Acta (2000) 1502 : 95-109);Masliah et al., AM. J. Pathol (1996) 148 : 201-10 ; Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90 : 11282-6)。NACの正確な機能は示されないが、シナプスでの事象、たとえば、LBD、AD、
およびその他の症状における病理学的条件下での発生中の神経可塑性、および神経末端の学習および変性、において中心的な役割を果たしている可能性がある(Hasimoto et al.,
α-Synuclein in Lewy body disease and Alzheimer's disease, Brain Pathol (1999) 9 : 707-20 ; Masliah, et al., (2000))。
【0007】
[0007]AD、PD、およびLewy小体を有する痴呆(DLB)は、老人においてもっとも一般的
に見いだされる神経変性性症状である。それらの発生率は増加し続けており、重大な公衆衛生的問題を発生しているが、現在までのところ、これらの障害症状は治療可能でも予防可能でもない。最近の疫学的研究から、約30%のアルツハイマー病患者がPDでもある、というADとPDとの間の緊密な臨床的関連性が示された。残りの老人個体群と比較して、ADを有する患者は、このように、付随性のPDをより発症しやすい。さらに、痴呆症になったPD患者は、通常、古典的なADを発症していた。神経変性性疾患のそれぞれが、特異的な脳領域および細胞集団に偏在して、結果として明りょうな病理学的特徴を示すようであるが、PD、AD、DLBおよびLBDは、共通する病理学的特徴も共有している。家族性AD、Down症候群、または散在性ADを有する患者は、小脳扁桃部(amygdala)にLBを発症するが、これはPDの古典的な神経病理学的特徴である。さらに、それぞれの疾患は、ニューロンの変性、ニューロン間シナプス結合、および結局は細胞死、神経伝達物質の枯渇、そして正常な中枢神経系機能に前駆体が参加しているタンパク質が誤って畳み込まれたものが異常蓄積すること、に関連している。生化学的研究により、AD、PDおよびDLBの関係が確認された。
【0008】
[0008]ADの古典的な病理学的特徴である神経炎性プラークは、β-アミロイド(Aβ)ペプチドおよび非-βアミロイド構成成分(NAC)ペプチドを含有する。Aβは、アミロイド
前駆タンパク質(APP)と呼ばれるより大型の前駆タンパク質に由来する。NACは、APPの
非-βアミロイド構成成分と呼ばれ、現在はより一般的にはalpha-SNと呼ばれる、より大
型の前駆タンパク質に由来する。NACは、alpha-SNのアミノ酸残基60〜87または61〜95を
含む。AβおよびNACの両方とも、初めは、それらそれぞれの完全長タンパク質のタンパク質分解性フラグメントとして、アミロイド斑中で同定されたが、それらに関しては、完全長cDNAが同定されそしてクローニングされていた。
【0009】
[0009]Alpha-SNは、β-synucleinおよびγ-synucleinおよびsynoretinを含むタンパク
質の大きなファミリーの一部である。Alpha-SNは、シナプスと関連する正常な状態において発現され、そして神経の可塑性、学習および記憶において役割を果たしていると考えられている。alpha-SNの凝集を亢進するヒト(h)alpha-SNの変異が同定され(Ala30Proお
よびAla53Thr)そしてPDの常染色体性優性の形態という稀な形態と関連している。これらの変異がalpha-SNが凝集するという傾向を増強するメカニズムは、知られていない。
【0010】
[0010]個体群におけるAPPおよびalpha-SNにおいて多数の変異が見いだされうるという
事実にも関わらず、ADおよびPDのほとんどのケースは、散在性である。これらの疾患のもっとも頻度の高い散在性の形態は、Aβおよびalpha-SNの異常な蓄積とそれぞれ関係して
いる。しかしながら、これらのタンパク質の過剰蓄積の理由は知られていない。Aβは、
ニューロンから分泌され、そして細胞外アミロイド斑中に蓄積される。さらに、Aβをニ
ューロン内部で検出することができる。Alpha-SNは、LBと呼ばれるニューロン内封入体中に蓄積する。2種のタンパク質が典型的には、細胞外神経炎性AD斑中に同時に見いだされ
るが、それらは、時折、細胞内封入体中に同時にも見いだされる。
【0011】
[0011]alpha-SNの蓄積が神経変性およびPDの特徴的な症候を引き起こすメカニズムは、明確ではない。しかしながら、alpha-SN凝集を促進しおよび/または阻止する因子の役割を同定することは、LBDの病因を理解する上で、そしてそれに関連する症状に対する新し
い治療法を開発する上では、重要である。治療法を同定するための研究は、alpha-SN凝集を減少させる化合物を探索することに対するか(Hashimoto, et al.)または主として影
響を受ける細胞であるドーパミン作動性ニューロンの再生および/または生存を促進しうる成長因子を試験することに対する(Djaldetti et al., New therapies for Parkinson's disease, J. Neurol (2001) 248 : 357-62 ; Kirik et al., Long-term rAA V-mediated gene transfer of GDNF in the rat Parkinson's model : intrastriatal but not intranigral transduction promotes functional regeneration in the lesioned nigrostriatal system, J. Neurosci (2000) 20: 4686-4700)。ADのトランスジェニックマウスモ
デルにおける最近の研究により、Aβの1〜42に対する抗体が、脳からのアミロイドの除去を促進しそして刺激すること、AD-様病理を改善しそしてその結果認知行動を改善するこ
とが示された(Schenk et al., Immunization with amyloid-fl attenuates Alzheimer-disease-like pathology in PDAPP mouse, Nature (1999) 408 : 173-177 ; Morgan et al., A-beta peptide vaccination prevents memory loss in an animal model of Alzheimer's disease, Nature (2000) 408 : 982-985 ; Janus et al., A-beta peptide immunization reduces behavioral impairment and plaques in a model of Alzheimer's disease, Nature (2000) 408 : 979-82)。アルツハイマー病患者の脳内に見られる細胞外アミ
ロイド斑とは対照的に、Lewy小体は細胞内のものであり、そして抗体は一般的には細胞内に侵入しない。
【0012】
[0012]驚くべきことに、脳内組織中のLBの細胞内特性を見た場合、本発明者らは、synucleinで免疫化されたトランスジェニックマウスにおける封入体の数を減少させることに
成功した。本発明は、とりわけ、synuclein、synucleinのフラグメント、synucleinまた
はそのフラグメントを模倣した抗原、またはsynucleinの特定のエピトープに対する抗体
を、患者に対して、有益な免疫反応を患者体内にて生成させる条件下にて投与することにより、PDおよびLBが関連するその他の疾患を治療することに関する。本発明者らはまた、驚くべきことに、Aβにより免疫化したトランスジェニックマウスにおける封入体の数を
減少させることに成功した。本発明は、とりわけ、Aβ、Aβのフラグメント、Aβまたは
そのフラグメントを模倣する抗原、Aβの特定のエピトープに対する抗体を、患者に対し
て、患者において有益な免疫反応を生成する条件下で投与することにより、PDおよびLBに関連するその他の疾患を治療することに関する。本発明は、このように、神経病理を予防しまたは減弱化するための、そしてある患者においては、PDおよびLBに関連するその他の疾患に関連する認知障害を予防しまたは減弱化するための、治療処置計画に関する長い間求められてきた要求を満足するものであ。
【0013】
発明の概要
[0013]一側面において、脳内のLewy小体またはalpha-SN凝集を特徴とする疾患を予防しまたは治療するための方法を提供する。そのような方法は、alpha-SNに対する免疫原性応答を誘導することを含む。そのような誘導は、免疫源の積極的な投与またはsynucleinに
対する抗体または抗体の誘導体の投与による受動的なものにより、達成することができる。ある方法において、患者は、無症候性である。ある方法においては、患者は、疾患を有するが無症候性である。ある方法においては、患者は、疾患についてのリスク因子を有するが無症候性である。ある方法においては、疾患がパーキンソン病である。ある方法においては、疾患はパーキンソン病であるが物質を投与することにより患者の運動特性が改善される。ある方法においては、疾患はパーキンソン病であり物質を投与することにより患者の運動特性の衰退を防止する。ある方法においては、患者はアルツハイマー病を有さない。
【0014】
[0014]脳内にLewy小体またはalpha-SN凝集を患っている患者を治療するため、1つの治
療処方計画には、ある用量のalpha-SNまたはその活性なフラグメントを患者に対して投与して、免疫応答を誘導することが含まれる。ある方法においては、alpha-SNまたはその活性なフラグメントを、複数用量で少なくとも6箇月の期間にわたって投与する。alpha-SN
またはその活性フラグメントを、例えば、末梢性、腹腔内、経口的、皮下、頭蓋内、筋肉内、局所的、鼻内または静脈内で投与することができる。ある方法においては、alpha-SNまたはその活性フラグメントを、alpha-SNまたはその活性フラグメントに対する免疫応答を増強するアジュバントと共に投与する。ある方法においては、免疫原性応答は、alpha-SNまたはその活性フラグメントに対する抗体を含む。
【0015】
[0015]ある方法においては、物質は、alpha-SNのアミノ酸35〜65である。ある方法においては、物質は、alpha-SNのアミノ酸130〜140を含み、そして全体で40アミノ酸未満を有する。ある方法においては、物質のC-末端アミノ酸は、alpha-SNのC-末端アミノ酸である。上述した方法のいくつかにおいて、alpha-SNまたはその活性フラグメントは、キャリア分子と結合して複合体を形成する。上述した方法のいくつかにおいて、alpha-SNまたはその活性フラグメントは、alpha-SNまたはその活性フラグメントのN-末端にキャリアが結合される。
【0016】
[0016]脳内のLewy小体またはalpha-SN凝集を患う患者を治療するため、1つの治療処方
計画には、alpha-SNまたはその活性フラグメントに対するある用量の抗体を患者に投与して、免疫応答を誘導することが含まれる。使用される抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはポリクローナル抗体であってもよく、そしてモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよい。ある方法においては、抗体のアイソタイプは、ヒトIgG1である。ある方法においては、抗体は、alpha-SNペプチドで免疫化したヒトから調製し、そしてヒトは、抗体を用いて治療すべき患者であってもよい。ある方法においては、抗体は、Lewy小体を有する神経細胞の外側表面に対して結合し、それによりLewy小体を消失させる。ある方法においては、抗体をLewy小体を有する神経細胞中に内在化させ、それによりLewy小体を消失させる。
【0017】
[0017]ある方法においては、抗体を、医薬組成物として、医薬的担体と共に投与する。ある方法においては、抗体を、0.0001〜100 mg/kg、好ましくは少なくとも1 mg/kg体重抗体の用量で投与する。ある方法においては、抗体を、複数用量で長期間にわたって、例えば少なくとも6箇月にわたって、投与する。ある方法においては、抗体を、持続性放出組
成物として投与することができる。例えば、抗体を、局所的、腹腔内、経口的、皮下、頭蓋内、筋肉内、局所的、鼻内または静脈内に投与することができる。ある方法においては、患者を、患者の血液中に投与された抗体レベルに関してモニターする。
【0018】
[0018]ある方法においては、抗体を、少なくとも1つの抗体鎖をコードするポリヌクレ
オチドを患者に対して投与することにより投与する。ポリヌクレオチドを発現して、患者体内で抗体鎖を生成する。場合により、ポリヌクレオチドは、抗体の重鎖および軽鎖をコードし、そしてポリヌクレオチドを発現させて、患者体内で重鎖および軽鎖を生成する。
【0019】
[0019]本発明はさらに、alpha-SNに対する抗体と医薬的に許容可能なキャリアとを含む医薬組成物を提供する。
[0020]別の側面において、本発明は、脳内のLewy小体またはalpha-SN凝集を特徴とする疾患を予防または治療するための、alpha-SNに対する免疫原性応答を誘導する物質を投与することを含み、そしてさらに、Aβに対する免疫原性応答を誘導する第二の物質を患者
に対して投与することを含む方法を提供する。ある方法においては、物質は、Aβまたは
その活性なフラグメントである。ある方法においては、物質は、Aβに対する抗体である

【0020】
[0021]別の側面において、本発明は、脳内のLewy小体またはalpha-SN凝集を特徴とする疾患を予防しまたは治療するための、Aβに対する免疫原性応答を誘導する物質を患者に
対して投与することを含む方法を提供する。ある方法においては、物質は、Aβまたはそ
の活性なフラグメントである。ある方法においては、物質は、Aβに対する抗体である。
ある方法においては、疾患は、パーキンソン病である。ある方法においては、患者は、アルツハイマー病を有さず、そしてそのリスク因子を有さない。ある方法においては、患者におけるパーキンソン病の兆候または症候をモニターすることをさらに含む。ある方法においては、疾患はパーキンソン病であり、物質を投与することにより、結果としてパーキンソン病の兆候または症候に改善がみられる。
【0021】
[0022]本発明はさらに、上述したような、患者におけるLewy小体の構成成分に対する免疫原性応答を誘導するために有効な物質および医薬的に許容可能なアジュバントを含む、医薬組成物を提供する。ある化合物において、物質は、alpha-SNまたはたとえばNACなど
の活性なフラグメントである。ある化合物において、物質は6CHC-1または活性なフラグメントである。本発明はまた、Lewy小体の構成成分に対して特異的な抗体を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
[0023]別の側面において、本発明は、Lewy小体に関連する疾患を予防または治療する際の活性に関して抗体をスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は、synucleinを発現する神経細胞を抗体と接触させることを含む。その後、前記接触により、細胞中
のsynuclein沈着が、抗体と接触させない対照細胞と比較して減少されるかどうかを決定
する。
【0023】
[0024]別の側面において、本発明は、患者の脳内のLewy小体疾患を治療しまたは予防する際の活性について抗体をスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は、抗体をalpha-SN の少なくとも5つの連続するアミノ酸を含むポリペプチドと接触させることを含む。その後、抗体がポリペプチドに対して特異的に結合するかどうかを決定し、ここで特異的な結合であれば抗体が疾患を治療する際に活性を有することの示唆を提供する。
【0024】
定義
[0032]用語“実質的に同一”は、2つのペプチド配列を、たとえば、デフォルトのギャ
ップ加重(gap weights)を使用するプログラムGAPまたはBESTFITにより最適にアライン
メントさせた場合、少なくとも65%の配列同一性、好ましくは少なくとも80または90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%またはそれ以上の配列同一性(たとえば、99%またはそれ以上の配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置が、保存的なアミノ酸置換により異なっている。
【0025】
[0033]配列比較のため、典型的には、一つの配列が、参照配列として作用し、それに対して試験配列を比較させる。配列比較アルゴリズムを使用した場合、試験配列および参照配列をコンピュータ中に入力し、必要であれば部分配列座標を示し、そして配列アルゴリズムプログラムパラメータが示される。次に、示されたプログラムのパラメータに基づいて、配列比較アルゴリズムが、参照配列との関係での(1または複数の)試験配列に関し
て%配列同一性を計算する。
【0026】
[0034]比較される配列の最適なアラインメントを、たとえば、Smith & Waterman(Adv.
Appl. Math. 2: 482 (1981))の局所的ホモロジーアルゴリズムにより、Needleman & Wunsch(J. Mol. Biol. 48: 443 (1970))のホモロジーアラインメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman(Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85: 2444 (1988))の類似性検索方
法により、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)におけるこれらのアルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピュータ化手段により、または視覚的検査により(一般的には、Ausubel et al.、上述を参照)、行うことができる。%配列同一性および配列類似性を決定するた
めに適しているアルゴリズムの一例は、BLASTアルゴリズムであり、これはAltschulら(J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))に記載されている。BLAST解析を行うためのソフト
ウェアは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイトを通
じて公衆が利用可能である。特注のパラメータを使用することもできるが、典型的には、デフォルトプログラムパラメータを使用して、配列比較を行うことができる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムを、単語長(W)を3、期待値(E)を10、そしてBLOSUM62スコア化マトリクスをデフォルトとして使用する(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89,10915 (1989)を参照)。
【0027】
[0035]アミノ酸置換を保存的なものとして、または非保存的なものとして分類するため、アミノ酸を以下の通りグループ分けする:グループI(疎水性側鎖):ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸性側鎖):asp、glu;グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;グル
ープV(鎖の方向に影響を与える残基):gly、pro;およびグループVI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換には、同一のグループのアミノ酸との間での置換が含まれる。非保存的置換は、これらのグループの一つの構成要素を、他のグループの構成要素に置換することからなる。
【0028】
[0036]本発明の治療剤は、典型的には、望まれないコンタミネーション物質から実質的に純粋である。このことは、物質が、典型的には、少なくとも約50%w/w(重量/重量)の精製度であり、ならびに妨害性タンパク質およびコンタミネーション物質を実質的に含まないことを意味している。しばしば、物質は、少なくとも約80%w/wであり、そしてより
好ましくは、少なくとも90または約95%w/wの精製度である。しかしながら、従来からの
タンパク質生成技術を使用して、少なくとも99%w/wの均質なペプチドを得ることができ
る。
【0029】
[0037]分子が標的に対して“特異的に結合する”という言い回しは、他の生物製剤(biologics)のヘテロな集団の存在下にて、分子の存在の決定因子となる結合反応のことを
いう。このように、示された免疫アッセイ条件下では、特定された分子は、優先的に特定の標的に結合し、そしてサンプル中に存在するその他の生物製剤に対しては、有意な量では結合しない。そのような条件下での抗体の標的に対する特異的結合には、抗体が、標的に対する特異性について選択されることが必要である。様々な種類の免疫アッセイフォーマットを使用して、特定のタンパク質に特異的に免疫反応性である抗体を選択することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイを通常使用して、タンパク質に特異的に免疫反
応性であるモノクローナル抗体を選択する(特異的な免疫活性を決定するために使用することができる免疫アッセイフォーマットおよび条件の記載については、たとえば、Harlow
and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照)。2種の存在の間での特異的結合は、少なくとも106、107、108、109M-1、または1010 M-1の親和性であることを意味する。108 M-1より大きい親和性であることが好ましい。
【0030】
[0038]用語“抗体”または“免疫グロブリン”を、無傷抗体およびその結合性フラグメントを含むものとして使用する。典型的には、フラグメントは、抗原フラグメントに対する特異的結合のために導き出された無傷抗体と競合するが、これには別々の重鎖、軽鎖Fab、Fab'F (ab') 2、Fabc、およびFvが含まれる。フラグメントは、組換えDNA技術により
生成するか、または無傷免疫グロブリンの酵素的または化学的分離により生成する。用語
“抗体”にはまた、その他のタンパク質との融合タンパク質に化学的に抱合されているか、または融合タンパク質として発現される、1またはそれ以上の免疫グロブリン鎖が含ま
れる。用語“抗体”にはまた、二特異性抗体が含まれる。二特異性抗体または二機能性抗体は、2種の異なる重鎖/軽鎖対を有し2種の異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗
体である。二特異的抗体を、ハイブリドーマの融合または複数のFab'断片の結合を含む、様々な方法により生成することができる(例えば、Songsivilai & Lachmann, Clin. Exp.
Immunol. 79: 315-321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148,1547-1553 (1992)
を参照)。
【0031】
[0039]APP695、APP751、およびAPP770は、それぞれ、ヒトAPP遺伝子によりコードされ
る695、751、および770アミノ酸残基の長さのポリペプチドのことをいう(Kang et al., Nature 325,773 (1987);Ponte et al., Nature 331,525 (1988);およびKitaguchi et al., Nature 331, 530 (1988))。ヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)内部のアミノ
酸は、APP770異性体の配列にしたがって、番号を割り当てる。Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42およびAβ343などの用語は、アミノ酸残基1〜39、1〜40、1〜41、1〜42および1〜43を
含有するAβペプチドのことをいう。
【0032】
[0040]“抗原”は、抗体が特異的に結合する成分である。
[0041]用語“エピトープ”または“抗原決定基”は、B細胞および/またはT細胞が反応する抗原の部位のことをいう。B細胞エピトープは、連続するアミノ酸からまたはタンパ
ク質の三次元的折り畳みにより近接する非連続アミノ酸からの両方から形成することができる。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒に対する曝露にも保持されるが、一方、三次元的折り畳みにより形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒による処置で失われる。エピトープには、典型的には、少なくとも3、そし
てより一般的には少なくとも5または8〜10アミノ酸が、独特な空間的立体構造で含まれる。エピトープの空間的立体構造を決定する方法には、例えば、x線結晶学、および2次元核磁気共鳴が含まれる(たとえば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed. (1996)を参照)。同一のエピトープを認識す
る抗体を、単純な免疫アッセイで同定することができることから、ある抗体が別の抗体と標的抗原との結合をブロックする能力が示される。T細胞は、CD8細胞については約9アミ
ノ酸のまたはCD4細胞については約13〜15アミノ酸の連続したエピトープを認識する。エ
ピトープを認識するT細胞は、抗原依存性増殖を測定するin vitroアッセイにより、エピ
トープに反応したプライム化T細胞による3H-チミジン取り込みにより決定されるものとして(Burke et al., J. Inf : Dis. 170, 1110-19 (1994))、抗原依存的細胞傷害により
決定されるものとして(細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、Tigges et al., J. Immunol. 156,3901-3910)、またはサイトカイン分泌により決定されるものとして、同定することが
できる。
【0033】
[0042]用語“免疫学的”反応または“免疫”反応は、レシピエント患者においてアミロイドペプチドに対して向けられる、有益な体液性(抗体媒介性)反応および/または細胞性(抗原特異的T細胞またはその分泌生成物により媒介されるもの)反応である。そのよ
うな反応は、免疫源の投与により誘導される積極的な反応であっても、または抗体の投与またはプライム化されたT細胞の投与により誘導される受動的な反応であってもよい。細
胞性免疫反応は、I型MHC分子またはII型MHC分子と一緒になってポリペプチドエピトープ
の提示により誘導され、抗原特異的CD4+ Tヘルパー細胞および/またはCD8+細胞傷害性T
細胞を活性化させる。この反応には、単球、マクロファージ、NK細胞、好塩基球、樹状細胞、アストロサイト、ミクログリア細胞、好酸球、または生得的な免疫のその他の構成成分の活性化が含まれてもよい。細胞媒介性免疫学的反応が存在することを、増殖アッセイ(CD4+T細胞)またはCTL(細胞傷害性Tリンパ球)アッセイにより決定することができる
(Burke、上述;Tigges、上述を参照)。免疫源の防御的作用または治療的作用に対する
体液性反応および細胞性反応の相対的な寄与を、抗体とT細胞とを、免疫化した同系動物
から別々に単離し、そして第二の被検体における防御的または治療的作用を測定することにより、識別することができる。
【0034】
[0043]“免疫原性物質”または“免疫源”は、哺乳動物に投与された場合、場合により、アジュバントと共に投与された場合、それ自体に対する免疫学的反応を誘導することができる。
【0035】
[0044]用語“all-D”は、≧75%、≧80%、≧85%、≧90%、≧95%、そして100%D-立体構造のアミノ酸を有するペプチドのことをいう。
[0045]用語“むき出しのポリヌクレオチド”は、コロイド状物質と共に複合体化されていないポリヌクレオチドのことをいう。むき出しのポリヌクレオチドは、しばしば、プラスミドベクター中にクローニングされる。
【0036】
[0046]用語“アジュバント”は、抗原と共に投与された場合、抗原に対する免疫応答を引き起こす化合物であるが、単独で投与された場合抗原に対する免疫応答を引き起こさない化合物のことをいう。アジュバントは、リンパ球誘導、B細胞の刺激および/またはT細胞の刺激、およびマクロファージの刺激を含むいくつかの機構により免疫反応を誘導することができる。
【0037】
[0047]用語“患者”には、予防的処置または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよびその他の哺乳動物被検体が含まれる。
[0048]抗体間の競合は、試験に供される免疫グロブリンが、参照抗体と共通抗原(例えばalpha-SN)との特異的結合を阻害するアッセイにより決定する。多数のタイプの競合的結合アッセイが知られており、たとえば:固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli et al., Methods in Enzymology 9: 242-253 (1983)を参照);固相直接ビオチン-ア
ビジンEIA(Kirkland et al., J. Immunol. 137: 3614-3619 (1986)を参照);固相直接
標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988)を参照);I-125標識を用いた固相
直接標識RIA(Morel et al., Molec. Immunol. 25 (1): 7-15 (1988)を参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176: 546-552 (1990));および直接
標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32: 77-82 (1990))が含まれる。典型的には、そのようなアッセイには、固相表面に結合させた精製抗原を使用すること、またはこれらのいずれかを保持する細胞を使用すること、非標識試験免疫グロブリンおよび標識参照免疫グロブリンを使用することが含まれる。競合的阻害を、試験免疫グロブリンの存在下にて固相表面または細胞に対して結合した標識量を決定することにより測定する。通常は、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。競合的アッセイにより同定された抗体(競合抗体)には、参照抗体と同一のエピトープに結合する抗体、および参照抗体により結合されるエピトープに対して立体的な妨害を生じるために十分に近接した隣接するエピトープに結合する抗体が含まれる。通常は、競合抗体が過剰量で存在する場合、それは参照抗体の共通抗原に対する特異的を、少なくとも50または75%阻害するであろう。
【0038】
[0049]用語“症候”または“臨床的症候”は、患者が感じるところの異常歩様(altered gait)などの疾患の自覚的な事実のことをいう。“兆候”は、医師により観察される場合の疾患の客観的事実のことをいう。
【0039】
[0050]1またはそれ以上の記載された構成要素を“含む”組成物または方法には、具体
的に記載されていないその他の構成要素が含まれうる。たとえば、alpha-SNペプチドを含む組成物は、単離されたalpha-SNペプチドおよびより大型のポリペプチド配列の構成成分
としてのalpha-SNペプチドの両方を包含する。
【0040】
発明の詳細な説明
I. 一般的事項
[0051]本発明は、患者の脳内で不溶性塊と凝集しているLewy小体の形態でのalpha-SNペプチドの沈着の存在を特徴とするいくつかの疾患および症状を予防しまたは治療する方法を提供する。そのような疾患を、集合的にLewy小体疾患(LBD)と呼び、そしてそれには
パーキンソン病(PD)が含まれる。そのような疾患は、β-プリーツシート構造を有しそ
してチオフラビン-Sおよびコンゴレッドで染色されるalpha-SNの凝集物を特徴とする(Hasimoto, Ibisを参照)。本発明は、alpha-SNに対して免疫原性応答を引き起こすことができる物質を使用して、そのような疾患を予防しまたは治療する方法を提供する。免疫原性応答は、脳内の細胞中のsynuclein沈着の形成を予防しまたはそれを除去する様に作用す
る。機構の理解は本発明の実施には本質的なものではないが、免疫原性応答は、細胞内に内在化されるsynucleinに対する抗体および/またはそのような細胞の表面と相互作用を
し、それによりsynucleinの凝集を妨害するsynucleinに対する抗体により、除去を誘導するようである。ある方法においては、除去反応は、少なくとも部分的には、Fc受容体媒介性貪食作用により、達成することができる。synucleinでの免疫化により、脳内のシナプ
スでのsynuclein蓄積を減少させることができる。メカニズムの理解は本発明を実施する
ために必須ではないが、この結果を、シナプス小胞中に取り込まれるsynucleinに対する
抗体により説明できる。
【0041】
[0052]場合により、alpha-SNに対する免疫原性応答を引き起こす物質を、Aβに対する
免疫原性応答を引き起こす物質と組み合わせて使用することができる。免疫原性応答は、Aβの沈着物を有する個体(たとえば、アルツハイマー病およびパーキンソン病の両方を
有する個体)においてその様な沈着物を除去する際に有用である;しかしながら、免疫原性応答はまた、synuclein沈着物を除去する活性も有している。このように、本発明は、
このような物質を単独で使用するか、またはLBDを有するがアルツハイマー病を罹患して
いるかまたはアルツハイマー病を発症させるリスクを有する個体においてalpha-SNに対する免疫原性応答を引き起こす物質と組み合わせて使用する。
【0042】
II.α-synucleinに対する免疫原性応答を誘導する物質
[0053]免疫原性応答は、免疫源が患者においてalpha-SNに反応性の抗体を誘導するために投与される場合には能動的であってもよく、または抗体が投与され、それ自体が患者においてalpha-SNに結合する場合には受動的であってもよい。
【0043】
1.能動的免疫反応を誘導する物質
[0054]治療剤は、alpha-SNペプチド中の特定のエピトープに特異的に対する免疫原性応答を誘導する。好ましい物質は、alpha-SNペプチドそれ自体およびそのフラグメントである。そのようなフラグメントの変異体、alpha-SNペプチドの好ましいエピトープに対する抗体を誘導しおよび/またはそのような抗体と交叉反応する、天然のalpha-SNペプチドの類似体および模倣物を、使用することもできる。
【0044】
[0055]α-synucleinは、元々、AD斑の非-β-アミロイド構成成分(NAC)の前駆体タン
パク質として、ヒトの脳内で同定された(Ueda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 90 (23): 11282-11286 (1993))。Alpha-SN、これはADアミロイドの非-Aβ構成成分の前駆体(NACP)とも呼ばれるが、140アミノ酸のペプチドである。Alpha-SNは、以下のア
ミノ酸配列を有する:
【0045】
【化1】

[0056]ADアミロイドの非-Aβ構成成分(NAC)は、alpha-SNに由来する。NACは、α-synuclein内部の高度に疎水性のドメインであるが、少なくとも28アミノ酸残基(残基60〜87)(SEQ ID NO: 3)からなり、そして場合により35アミノ酸残基(残基61〜95)(SEQ ID
NO: 2)からなるペプチドである(図1を参照)。NACは、β-シート構造を形成する傾向
を示す(Iwai, et al., Biochemistry, 34: 10139-10145)。Jensenらは、NACが以下のアミノ酸配列を有することを報告した:
【0046】
【化2】

[0057]Uedaらは、NACが以下のアミノ酸配列を有することを報告した:
【0047】
【化3】

[0058]NACを含む脱凝集化されたalpha-SNまたはそのフラグメントは、単量体ペプチド
ユニットを意味する。脱凝集化されたalpha-SNまたはそのフラグメントは、一般的に可溶性であり、そして自己凝集化して可溶性オリゴマーを形成することができる。alpha-SNとそのフラグメントのオリゴマーは、通常可溶性であり、そしてα-ヘリックスとして主と
して存在する。単量体alpha-SNは、凍結乾燥したペプチドを正味のDMSO中で超音波処理により溶解することにより、in vitroで調製することができる。得られた溶液を遠心分離し、いずれかの不溶性粒子を除去する。NACを含む凝集化したalpha-SNまたはそのフラグメ
ントは、不溶性β-シート部品中に関連性を有するalpha-SNまたはそのフラグメントのオ
リゴマーを意味する。NACを含む凝集化したalpha-SNまたはそのフラグメントは、筋原線
維状ポリマーをも意味する。筋原線維は、通常は不溶性である。ある抗体は、可溶性alpha-SNまたはそのフラグメントまたは凝集化alpha-SNまたはそのフラグメントのいずれかに結合する。ある抗体は、可溶性alpha-SNまたはそのフラグメントと凝集化alpha-SNまたはそのフラグメントの両方に結合する。
【0048】
[0059]Alpha-SNは、PDの特徴であるLewy小体の主要な構成成分であるが、例えば、NAC
、またはNAC以外のフラグメントなどのそのエピトープ性フラグメントであるが、これを
使用して免疫原性反応を誘導することができる。好ましくは、そのようなフラグメントは、alpha-SNまたはその類似体の4またはそれ以上のアミノ酸を含む。ある活性なフラグメ
ントには、alpha-SNのC-末端またはそのそばのエピトープが含まれる(たとえば、アミノ酸70〜140、100〜140、120〜140、130〜140、または135〜140内)。いくつかの活性なフ
ラグメントにおいて、エピトープのC末端残基は、alpha-SNのC-末端残基である。Lewy小
体のその他の構成成分、例えばシンフィリン(synphilin)-1、Parkin、ユビキチン、ニ
ューロフィラメント、β-クリスタリン、およびそれらのエピトープ性フラグメントを使
用して、免疫原性反応を誘導することもできる。
【0049】
[0060]それ以外に示さない限り、alpha-SNとの言及には、上述した天然のヒトアミノ酸
配列、ならびに対立遺伝子性変異体、種変異体および誘導変異体を含む類似体、完全長型およびその免疫原性フラグメントが含まれる。類似体は、典型的には、天然に存在するペプチドとは、しばしば、保存的置換により、1個、2個または数個の位置で異なっている。類似体は、典型的には、天然のペプチドとは、少なくとも80または90%の配列同一性を示す。いくつかの類似体にはまた、1個、2個または数個の位置で、N末端またはC末端アミノ酸の非天然のアミノ酸または修飾が含まれる。例えば、alpha-SNの139番での天然のグル
タミン酸残基を、イソ-アスパラギン酸と置換することができる。非天然のアミノ酸の事
例は、D,α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホス
ホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、ω-N-メチルアルギニン、β-アラニン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、チロキシン、γ-アミノ酪酸、ホモセリン、シトルリン、およ
びイソアスパラギン酸である。治療剤には、alpha-SNフラグメントの類似体も含まれる。本発明のいくつかの治療剤は、all-Dペプチド、たとえば、all-D alpha-SNまたはall-D NAC、およびall-Dペプチド類似体のall-Dペプチドである。フラグメントおよび類似体を、以下に示すように、非処理対照またはプラセボ対照と比較して、トランスジェニック動物モデル中で、予防的効力または治療的効力に関して、スクリーニングすることができる。
【0050】
[0061]Alpha-SN、そのフラグメント、および類似体を、固相ペプチド合成または組換え発現により合成することができるか、または天然の供給源から得ることができる。自動化ペプチド合成機は、例えば、Applied Biosystems(Foster City, California)などの、
多数の製造業者から商業的に入手可能である。組換え発現を、E. coliなどのバクテリア
、酵母、昆虫細胞または哺乳動物細胞中で行うことができる。組換え発現のための手順は、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual (C. S. H. P. Press, NY 2d ed., 1989)により記載される。いくつかの型のalpha-SNペプチドもまた、例えば、BACHEMおよびAmerican Peptide Company, Incなどから、商業的に利用可能である。
【0051】
[0062]治療剤には、例えば、alpha-SNペプチドの活性フラグメントを、その他のアミノ酸と組み合わせて含むより長いポリペプチドもまた含まれる。例えば、好ましい物質には、ヘテロなアミノ酸配列に対するヘルパーT-細胞反応を誘導し、それによりalpha-SN部分に対するB細胞反応を誘導する、ヘテロなアミノ酸配列と融合したalpha-SNの部分を含む
融合タンパク質が含まれる。そのようなポリペプチドを、以下に記載するような非処置対照またはプラセボ対照と比較して、動物モデルにおいて、予防的効力または治療的効力についてスクリーニングすることができる。alpha-SNペプチド、類似体、活性フラグメントまたはその他のポリペプチドを、結合した状態で、多量体の状態で、または解離した状態で、投与することができる。治療剤には、単量体免疫原性物質の多量体も含まれる。本発明の治療剤には、ポリリジン配列も含まれる。
【0052】
[0063]さらなるバリエーションにおいて、alpha-SNのフラグメントなどの免疫原性ペプチドを、免疫原性組成物の一部として、ウィルスまたはバクテリアにより提示することができる。免疫原性ペプチドをコードする核酸は、ウィルスまたはバクテリアのゲノムまたはエピソーム中に取り込まれる。場合により、核酸は、免疫原性ペプチドが分泌タンパク質としてまたはウィルスの外被表面タンパク質またはバクテリアの膜貫通タンパク質との融合タンパク質として、共に発現され、その結果、ペプチドが提示されるという方法で、取り込まれる。そのような方法で使用されるウィルスまたはバクテリアは、非病原性であるかまたは減弱化されているべきである。適切なウィルスには、アデノウィルス、HSV、
ベネズエラウマ脳炎ウィルスおよびその他のαウィルス、水疱性口内炎ウィルス、およびその他のラブドウィルス、ワクシニアウィルスおよび鶏痘ウィルスが含まれる。適切なバクテリアには、SalmonellaおよびShigellaが含まれる。免疫原性ペプチドのHBVのHBsAgに対する融合は、特に好ましい。
【0053】
[0064]治療剤には、必ずしもalpha-SNとの間で顕著なアミノ酸配列類似性を有さないが、それにもかかわらずalpha-SNの模倣物として機能し、そして同様な免疫応答を誘導するペプチドおよびその他の化合物が含まれる。例えば、いずれかのペプチドおよびタンパク質形成性β-プリーツシート構造を、適合性についてスクリーニングすることができる。alpha-SNまたはその他のLewy小体構成成分に対するモノクローナル抗体に対する抗-イディオタイプ抗体を使用することもできる。そのような抗-Id抗体は、抗原を模倣し、そして
それに対する免疫応答を誘導する(Essential Immunology, Roit ed., Blackwell Scientific Publications, Palo Alto, CA 6th ed., p. 181を参照)。alpha-SN以外の物質は、1またはそれ以上の上述したalpha-SNの好ましい部分(たとえば、NAC)に対する免疫原性応答を誘導すべきである。好ましくは、そのような物質は、alpha-SNのその他の部分に対することなく、これらの部分の一つに特異的に対する免疫原性応答を誘導する。
【0054】
[0065]ペプチドまたはその他の化合物のランダムライブラリを、適合性についてスクリーニングすることもできる。コンビナトリアルライブラリを、段階的な様式で合成することができる多数の型の化合物について生成することができる。そのような化合物には、ポリペプチド、β-ターン模倣体、多糖類、リン脂質類、ホルモン、プロスタグランジン類
、ステロイド類、芳香族化合物類、ヘテロ環式化合物類、ベンゾジアゼピン類、オリゴマーN-置換グリシンおよびオリゴカルバメート類が含まれる。化合物の大規模なコンビナトリアルライブラリを、Affymax(WO 95/12608)、Affymax(WO 93/06121)、Columbia University(WO 94/08051)、Pharmacopeia(WO 95/35503)、およびScripps(WO 95/30642
)(それぞれを、すべての目的のために参考文献として援用する)中に記載されたコード化合成ライブラリ(ESL)法により構築することができる。ペプチドライブラリを、ファ
ージディスプレイ法により生成することもできる(たとえば、Devlin(WO 91/18980)を
参照)。
【0055】
[0066]コンビナトリアルライブラリおよびその他の化合物を、alpha-SNまたはその他のLewy小体構成成分に特異的であることが知られている抗体またはリンパ球(BまたはT)に対して結合するそれらの能力を決定することにより、適合性についてはじめにスクリーニングする。例えば、最初のスクリーニングを、alpha-SNまたはそのフラグメントに対する、いずれかのポリクローナル血清またはモノクローナル抗体を用いて行うことができる。次いで、化合物を、alpha-SN内部の特異的エピトープ(たとえば、NAC内部のエピトープ
)に対する結合についてスクリーニングすることができる。化合物を、抗体エピトープ特異性をマッピングするために記載された同一の手順により試験することができる。次いで、そのようなスクリーニングにより同定される化合物を、alpha-SNまたはそのフラグメントに対する抗体または反応性リンパ球を誘導する能力についてさらに解析する。例えば、血清の複数回希釈を、alpha-SNまたはそのフラグメントを用いて事前にコートしたマイクロタイタープレート上で試験することができ、そして標準的ELISAを行って、alpha-SNま
たはそのフラグメントに対する反応性抗体について試験することができる。次いで、化合物を、実施例に記載するように、Lewy小体の存在と関連する疾患の素因を有するトランスジェニック動物において、予防的効力および治療的効力について試験することができる。そのような動物には、例えば、WO 98/59050、Masliahら(Science 287: 1265-1269 (2000))、およびvan der Putterら(J. Neuroscience 20: 6025-6029 (2000))により記載さ
れるような、alpha-SNまたはその変異体を(例えば、53番でのアラニンからトレオニンへの変換)を過剰に発現するトランスジェニックマウス、または同時にAPPまたはその変異
体を過剰発現する様なトランスジェニックマウスが含まれる。特に好ましいのは、APPの717番に変異を有するGamesら(Nature 373, 523 (1995))により記載されたsynucleinトランスジェニックマウス、およびMcConlogueら(US 5,612,486)および以下の文献(Hsiao et al., Science 274,99 (1996);Staufenbiel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 13287-13292 (1997);Sturchler-Pierrat et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 1
3287-13292 (1997) ;Borchelt et al., Neuron 19, 939-945 (1997))により記載されたものなどのAPPの670/671番にSwedish変異を有するマウスである。そのようなsynuclein/APPトランスジェニック動物の例は、WO 01/60794中に提示される。PDの追加的な動物モデ
ルには、6-ヒドロキシドーパミン、ロテノン(rotenone)、および1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)動物モデル(M. Flint Beal, Nature Reviews Neuroscience 2: 325-334 (2001))である。同一のスクリーニンアプローチを、alpha-SNのその他の可能性のある類似体および上述したalpha-SNのフラグメントおよびその他のLewy小体構成成分およびその類似体またはフラグメントを含むより長いペプチドに対して、使用することができる。
【0056】
2.受動的免疫応答のための物質
[0067]本発明の治療剤には、alpha-SNまたはLewy小体のその他の構成成分に対して特異的に結合する抗体も含まれる。alpha-SNに対して免疫反応性である抗体は、既知である(例えば、Arima, et al., Brian Res. 808: 93-100 (1998) ;Crowther et al., Neuroscience Lett. 292: 128-130 (2000);Spillantini, et al. Nature 388: 839-840 (1997)を参照)。そのような抗体は、モノクローナルであってもまたはポリクローナルであってもよい。いくつかのそのような抗体は、可溶性単量体型に対して結合することなく、alpha-SNの不溶性凝集物に対して特異的に結合する。いくつかは、不溶性の凝集化型とは結合することなく、可溶性単量体型に特異的に結合する。いくつかは、凝集化型および可溶性単量体型の両方共に結合する。いくつかのそのような抗体は、天然に存在する完全長alpha-SNとは結合することなく、天然に存在する短縮型のalpha-SN(例えば、NAC)と結合する
。いくつかの抗体は、短縮型とは結合することなく、長型と結合する。いくつかの抗体は、LBのその他の構成成分とは結合することなく、alpha-SNと結合する。治療方法において使用される抗体は、通常は、無傷定常領域またはFc受容体と相互作用するために少なくとも十分な定常領域を有する。食細胞上のFcRI受容体に対するヒトアイソタイプの親和性が最高であるため、ヒトアイソタイプIgG1が好ましい。二機能性Fabフラグメントも使用す
ることができ、その場合、抗体の片腕がalpha-SNに対して特異性を有し、そしてもう一方がFc受容体に対して特異性を有する。いくつかの抗体は、106、107、108、109、または1010M-l以上またはそれと同等の結合親和性で、alpha-SNに対して結合する。
【0057】
[0068]ポリクローナル血清は、典型的には、alpha-SNの長さにわたるいくつかのエピトープに結合する抗体の混合集団を含有する。しかしながら、ポリクローナル血清は、alpha-SNの特定の部分、例えばNACなど、に対して特異的であってもよい。モノクローナル抗
体は、立体的(conformational)エピトープまたは非立体的エピトープであってもよいalpha-SN内部の特異的エピトープに対して結合する。抗体の予防的効力および治療的効力を、実施例に記載したトランスジェニック動物モデル手順を使用して試験することができる。好ましいモノクローナル抗体は、NAC内部のエピトープに対して結合する。ある方法に
おいては、異なるエピトープに対する結合特異性を有する複数のモノクローナル抗体を使用する。そのような抗体を、順番にまたは同時的に投与することができる。alpha-SN以外のLewy小体構成成分に対する抗体もまた、使用することができる。例えば、抗体は、神経フィラメント、ユビキチン、またはシンフィリン(synphilin)に対するものであっても
よい。治療剤には、alpha-SNの類似体またはそのフラグメントに対して引き起こされた抗体も含まれる。本発明のいくつかの治療剤は、all-Dペプチド、たとえば、all-D alpha-SNまたはall-D NACである。
【0058】
[0069]抗体が、例えば、alpha-SN 1-5などの特定の残基内部のエピトープに対して結合すると言われる場合、意味されることは、抗体が、特定の残基(すなわち、この場合には、alpha-SN 1-5)を含有するポリペプチドに対して特異的に結合するということである。そのような抗体は、必ずしも、alpha-SN 1-5のすべての残基に結合するわけではない。alpha-SN1-5内部のすべての一アミノ酸置換または欠失が、結合親和性に対して必ずしも顕
著に影響するという訳ではない。抗体のエピトープ特異性を、例えば、異なる構成成分がalpha-SNの異なる部分配列を表示する、ファージディスプレイライブラリを形成することにより決定することができる。次いで、ファージディスプレイライブラリを、試験中の抗体に特異的に結合する構成成分について選択する。配列のファミリーを単離する。典型的には、そのようなファミリーは、共通のコア配列を含有しおよび異なる構成分子において長さが異なる隣接配列を含有する。抗体に対する特異的結合を示すもっとも短いコア配列は、エピトープ境界を抗体により規定される。抗体を、エピトープ特異性が既に決定された抗体を用いた競合アッセイにおいて、エピトープ特異性について試験することもできる。
【0059】
[0070]本発明のいくつかの抗体は、NAC内部のエピトープに対して特異的に結合する。
いくつかの抗体は、synucleinの22-キロダルトングリコシル化型、例えばP22-synuclein
内部のエピトープに対して特異的に結合する(H. Shimura et al., Science 2001 Jul 13: 293 (5528): 224-5)。いくつかの抗体は、alpha-SNのC-末端またはその近くのエピト
ープ(たとえば、アミノ酸70〜140、100〜140、120〜140、130〜140または135〜140内部
)に対して結合する。いくつかの抗体は、エピトープのC-末端残基がalpha-SNのC-末端残基であるエピトープに結合する。ある方法においては、抗体は、完全長alpha-SNに対して結合することなく、NACに対して特異的に結合する。
【0060】
[0071]alpha-SNのその他の領域に結合することなく、alpha-SNの好ましい部分に特異的に結合するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、その他の領域に対して結合するモノクローナル抗体または無傷alpha-SNに対するポリクローナル血清と比較して、多数の利点を有する。第一に、同等量の投与量について、好ましい部分に特異的に結合する抗体の用量は、アミロイド斑を除去する際に有効なより高いモル用量の抗体を含有する。第二に、好ましい部分に特異的に結合する抗体を、無傷のalpha-SNに対する除去反応を誘導することなく、LBに対する除去反応を誘導することができ、それにより副作用の可能性を減少させることができる。
【0061】
i.免疫グロブリンの一般的特徴
[0072]基本的な抗体構造は、サブユニットの四量体であることが知られている。それぞれの四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一な対からなり、それぞれの対が1本の“軽”鎖(約25 kDa)および1本の“重”鎖(約50〜70 kDa)を有する。それぞれの鎖のアミノ末
端部分には、主として抗原認識に関与する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域が含まれる。それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に関与する定常領域を規定する。
【0062】
[0073]軽鎖は、κまたはλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、δまたはεとして分類され、そしてIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEとして抗体のアイソタイプをそれ
ぞれ規定する。軽鎖および重鎖内部において、可変領域および定常領域は、約10またはそれ以上のアミノ酸の“D”領域をも含む重鎖と、約12またはそれ以上のアミノ酸の“J”領域により結合される(一般的には、Fundamental Immunology, Paul, W. , ed. , 2nd ed.
Raven Press, N. Y. , 1989, Ch. 7(その全体をすべての目的のために参考文献として
援用する)を参照)。
【0063】
[0074]軽鎖/重鎖対のそれぞれの可変領域は、抗体結合部位を形成する。このように、
無傷の抗体は、2つの結合部位を有する。二機能性または二特異的抗体の場合以外では、2つの結合部位はドイツである。鎖はすべて、3つの超過変領域により結合された比較的保
存されたフレームワーク領域(FR)(相補性決定領域、またはCDRとも呼ばれるる)の同
一の一般構造を示す。それぞれの対の2つの鎖に由来するCDRをフレームワーク領域とアラインメントし、それにより特異的エピトープへの結合が可能になる。N-末端からC-末端ま
で、軽鎖および重鎖の両方とも、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。それぞれのドメインに対するアミノ酸の割り当ては、以下の文献の定義にしたがっている(Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1987 and 1991);Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. 196:
901-917 (1987); or Chothia et al., Nature 342: 878-883 (1989))。
【0064】
ii.非ヒト抗体の生成
[0075]キメラ抗体およびヒト化抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体の構築のための開始物質を提供するマウスまたは非ヒト抗体として、同一または類似の結合特異性および親和性を有する。キメラ抗体は、典型的には、軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子を、遺伝子工学により、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子部分から構築した抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変領域(V)部分を、ヒト定常領域(C)部分、例えば、IgG1およびIgG4と結合させることができる。ヒトアイソタイプIgG1が好ましい。ある方法においては、抗体のアイソタイプは、ヒトのIgG1である。ある方法においては、IgM抗体を使用することもできる。このように、典型的なキメラ抗体は、Vまたはマウス抗体由来の抗原結合ドメイン、およびCまたはヒト抗体由来のエフェクタードメインから
なる、ハイブリッドタンパク質である。
【0065】
[0076]ヒト化抗体は、実質的にヒト抗体(アクセプター抗体と呼ばれる)に由来する可変領域フレームワーク残基、そして実質的にマウス抗体(ドナー免疫グロブリンと呼ばれる)に由来する相補性決定領域を有する(Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 10029-10033 (1989)、WO 90/07861、US 5,693,762、US 5,693,761、US 5,585,089、US
5,530,101、およびWinter、US 5,225,539(これらのそれぞれの全体を、すべての目的で参考文献として援用する))。(1または複数の)定常領域もまた、存在する場合、実質
的にまたは完全に、ヒト免疫グロブリンに由来する。ヒト可変ドメインは、通常、フレームワーク配列がCDRの由来であるマウス可変領域ドメインと、高度の配列同一性を示すよ
うなヒト抗体から選択される。重鎖および軽鎖の可変領域フレームワーク残基を、同一のまたは異なるヒト抗体配列から誘導することができる。ヒト抗体配列は、天然に存在するヒト抗体の配列であってもよく、またはいくつかのヒト抗体のコンセンサス配列であってもよい(Carter et al., WO 92/22653を参照)。ヒト可変領域フレームワーク残基に由来する特定のアミノ酸は、CDR立体構造および/または抗原に対する結合に影響を与えるそ
れらの可能性に基づいて、置換について選択される。そのような影響を与える可能性についての研究は、モデリング、特定位置でのアミノ酸の特性の調査、または特定のアミノ酸の置換または変異生成の作用についての経験的な観察によるものである。
【0066】
[0077]例えば、アミノ酸がマウス可変領域フレームワーク残基と選択されたヒト可変領域フレームワーク残基との間で相違している場合、ヒトフレームワークアミノ酸は:
(1)アミノ酸が、非共有結合的に直接的に抗原に結合する、
(2)アミノ酸が、CDR領域に隣接する、
(3)そうでなければ、アミノ酸がCDR領域と相互作用する(例えば、アミノ酸がCDR領
域の約6 Aの内部のものである)、または
(4)アミノ酸がVL-VH境界に参加している、
ことが合理的に予想される場合、マウス抗体由来の同等のフレームワークアミノ酸により、通常は置換されるべきである。
【0067】
[0078]その他の置換の候補は、ヒト免疫グロブリンにはその位置では珍しいアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸を、マウスドナー抗体の対応する位置由来のアミノ酸またはより典型的なヒト免疫グロブリンの対応する位置由来のアミノ酸と置換することができる。その他の置換の候補は、ヒト免疫グロブリンにはその位置では珍しいアクセプターヒトフレームワークアミノ酸である。ヒト化免疫グロブリンの可
変領域フレームワークは、通常、ヒト可変領域フレームワーク配列とまたはそのような配列のコンセンサスと少なくとも85%の配列同一性を示す。
【0068】
iv. ヒト抗体
[0079]alpha-SNに対するヒト抗体を、以下に記載する様々な技術により提供する。いくつかのヒト抗体を、競合的結合実験により選択し、またはそうでなければ、実施例XIにおいて記載されるマウスモノクローナル抗体の一つなどの特定のマウス抗体と同一のエピトープ特異性を有するものとして選択する。ヒト抗体を、alpha-SNのフラグメントのみを免疫源として使用することによりおよび/またはalpha-SNの欠損変異の集合物に対する抗体をスクリーニングすることにより、特定のエピトープ特異性についてスクリーニングすることができる。ヒト抗体は、好ましくは、アイソタイプ特異性ヒトIgG1を有する。
【0069】
(1)トリオーマ(Trioma)法
[0080]基本的なアプローチそしてこのアプローチで使用するための例示的な細胞融合パートナー、SPAZ-4、は、以下の文献(Oestberg et al., Hybridoma 2: 361-367 (1983);Oestberg, US Patent No. 4,634,664;およびEngleman et al., US Patent 4,634,666(
これらのそれぞれの全体を、すべての目的で参考文献として援用する))により記載された。この方法により得られた抗体生成細胞株をトリオーマ(Trioma)と呼ぶ。というのも、3種類の細胞(2種類のヒトおよび1種類のマウス)に由来するからである。はじめに、
マウスミエローマ株を、ヒトBリンパ球と融合させて、Oestberg(上述)により記載され
るSPAZ-4細胞株などの非-抗体生成性異種ハイブリッド細胞を得る。次いで、異種細胞を
免疫化ヒトBリンパ球と融合させて、抗体生成性トリオーマ細胞株を得る。トリオーマは
、ヒト細胞から作製される通常のハイブリドーマと比較して、より安定に抗体を生成することが見いだされた。
【0070】
[0081]免疫化Bリンパ球を、ヒトドナーの血液、脾臓、リンパ節、または骨髄から得る
。特異的抗原またはエピトープに対する抗体が望まれる場合、その抗原またはそのエピトープを免疫化のために使用することが好ましい。免疫化は、in vivoまたはin vitroのい
ずれで行ってもよい。in vivo免疫化のため、B細胞は、典型的には、alpha-SN、そのフラグメント、alpha-SNまたはフラグメントを含有するより大型のポリペプチド、またはalpha-SNに対する抗体に対する抗-イディオタイプ抗体により免疫化されたヒトから単離され
る。ある方法においては、B細胞を、究極的には抗体治療を投与すべき同一の患者から単
離する。in vitro免疫化のため、Bリンパ球を、典型的には、10%ヒト血漿を添加したRPMI-1640などの培養液(Engleman、上述を参照)中で、7〜14日の期間にわたり、抗原に対
して曝露する。
【0071】
[0082]免疫化Bリンパ球を、SPAZ-4などの異種ハイブリッド細胞と、周知の方法により
融合する。例えば、細胞を、MW 1000〜4000の40〜50%のポリエチレングリコールにより
、約37℃にて、約5〜10分間処理する。細胞を、融合混合物から分離し、そして所望のハ
イブリッドについて選択的な培養液(たとえば、HATまたはAH)中で増殖させる。必要な
結合特異性を有する抗体を分泌するクローンを、alpha-SNまたはそのフラグメントに対して結合する能力について、トリオーマ培養液をアッセイすることにより同定する。所望の特異性を有するヒト抗体を産生するトリオーマを、限界希釈技術によりサブクローニングし、そしてin vitroで培養液中で増殖させる。次いで、得られたトリオーマ細胞株を、alpha-SNまたはそのフラグメントに対して結合する能力について試験する。
【0072】
[0083]トリオーマは遺伝的に安定であるが、非常に高レベルで抗体を産生するというわけではない。発現レベルを、抗体遺伝子をトリオーマから1またはそれ以上の発現ベクタ
ー中にクローニングし、そしてそのベクターを標準的な哺乳動物細胞株、バクテリア細胞株、または酵母細胞株にトランスフォームすることにより、増大させることができる。
【0073】
(2)トランスジェニック非ヒト哺乳動物
[0084]alpha-SNに対するヒト抗体を、ヒト免疫グロブリン座の少なくとも部分をコードするトランスジーンを有する非ヒトトランスジェニック哺乳動物から産生することもできる。通常は、そのようなトランスジェニック哺乳動物の内在性免疫グロブリン座は機能的には不活性化されている。好ましくは、ヒト免疫グロブリン座の部分には、重鎖および軽鎖構成成分の再構成されていない配列が含まれる。内在性免疫グロブリン遺伝子の不活性化および外来性免疫グロブリン遺伝子の導入を両方とも、標的化相同組換えにより、またはYAC染色体の導入により、行うことができる。この方法により得られたトランスジェニ
ック哺乳動物は、免疫グロブリン構成成分配列を機能的に再配列させることができ、そして内在性免疫グロブリン遺伝子を発現することなく、ヒト免疫グロブリン遺伝子によりコードされる様々なアイソタイプの抗体レパートリーを発現させることができる。これらのレパートリーを有する哺乳動物の産生および特性は、例えば、LonbergらのW093/1222、US
5,877,397、US 5,874,299、US 5,814,318、US 5,789,650、US 5,770,429、US 5,661,016、US 5,633,425、US 5,625,126、US 5,569,825、US 5,545,806、Nature 148,1547-1553 (1994)、Nature Biotechnology 14,826 (1996)、KucherlapatiのWO 91/10741(これらのそれぞれの全体を、すべての目的で参考文献として援用する)により、詳細に記載されている。トランスジェニックマウスが特に適している。抗-alpha-SN抗体を、LonbergまたはKucherlapati(上述)により記載される方法などにより、トランスジェニック非ヒト哺乳動物をalpha-SNまたはそのフラグメントにより免疫化することにより得る。モノクローナル抗体を、例えば、そのような哺乳動物から得られたB細胞に、適したミエローマ細胞株を
、従来からのKohler-Milstein法を用いて融合させることにより調製する。ヒトポリクロ
ーナル抗体を、免疫原性物質により免疫化したヒト由来の血清の形態で提供することができる。場合により、そのようなポリクローナル抗体を、alpha-SNまたはその他のアミロイドペプチドを親和性試薬として使用することにより、親和性精製により濃縮することができる。
【0074】
(3)ファージディスプレイ法
[0085]ヒト抗-alpha-SN抗体を得るためのさらなるアプローチは、Huseら(Science 246: 1275-1281 (1989))により概説された一般的プロトコルにしたがって、ヒトB細胞由来
のDNAライブラリをスクリーニングすることである。トリオーマ法について記載したよう
に、そのようなB細胞を、alpha-SN、フラグメント、alpha-SNまたはフラグメントを含有
するより長いポリペプチドまたは抗イディオタイプ抗体により免疫化したヒトから得ることができる。場合により、そのようなB細胞を、最終的に抗体処置を受ける患者から得る
。alpha-SNまたはそのフラグメントに結合する抗体が選択される。ついで、そのような抗体(または結合性フラグメント)をコードする配列をクローニングしそして増幅する。Huseにより記載されるプロトコルにより、ファージディスプレイ技術と組み合わせてより効率的になる(たとえば、Dower et al., WO 91/17271およびMcCafferty et al., WO 92/01047、US 5,877,218、US 5,871,907、US 5,858,657、US 5,837,242、US 5,733,743およびUS 5,565,332(これらのそれぞれの全体を、すべての目的で参考文献として援用する))
。これらの方法において、構成成分がその外部表面上に異なる抗体をディスプレイするファージのライブラリを作製する。抗体は通常は、FvまたはFabフラグメントとしてディス
プレイされる。ファージディスプレイされる所望の特異性を有する抗体を、alpha-SNペプチドまたはそのフラグメントに対する親和性濃縮により、選択する。
【0075】
[0086]ファージディスプレイ法の変法において、選択されるマウス抗体の結合特異性を有するヒト抗体を作製することができる(Winter, WO 92/20791を参照)。この方法にお
いて、選択されるマウス抗体の重鎖または軽鎖可変領域のいずれかを、開始物質として使用する。たとえば、軽鎖可変領域が開始物質として選択される場合、構成分子が同一の軽鎖可変領域(すなわち、マウス開始物質)および異なる重鎖可変領域をディスプレイする
ファージディスプレイを構築する。重鎖可変領域を、再配列させたヒト重鎖可変領域のライブラリから得る。alpha-SNに対して強力に特異的な結合を示すファージ(たとえば、少なくとも108および好ましくは少なくとも109M-1)を選択する。ついで、このファージか
ら得たヒト重鎖可変領域が、さらなるファージライブラリを構築するための開始物質として機能する。このライブラリにおいて、それぞれのファージは、同一の重鎖可変領域(すなわち、第一のディスプレイライブラリから同定された領域)および異なる軽鎖可変領域をディスプレイする。軽鎖可変領域を、再配列されたヒト可変軽鎖領域のライブラリから得る。もう一度繰り返すと、alpha-SNに対して強力な特異的結合を有するファージが選択される。これらのファージが、完全なヒト抗-alpha-SN抗体の可変領域をディスプレイす
る。これらの抗体は、通常、マウスの開始物質と同一または類似のエピトープ特異性を有する。
【0076】
v. 定常領域の選択
[0087]キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体の重鎖および軽鎖可変領域を、ヒト定常領域の少なくとも部分に連結することができる。定常領域の選択は、部分的には、抗体依存性補体および/または細胞媒介性傷害性が所望されるかどうかに依存する。例えば、アイソタイプIgG1およびIgG3は補体活性を有し、そしてアイソタイプIgG2およびIgG4は有さない。アイソタイプの選択が、脳内への抗体の通過にも影響を与える可能性がある。ヒトアイソタイプIgG1が好ましい。軽鎖定常領域は、λまたはκであってもよい。抗体を、2本の軽鎖および2本の重鎖を含有する四量体として、別々の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFvとして、または重鎖および軽鎖可変ドメインがスペーサーを介して連結される一本鎖抗体として、発現することができる。
vi.組換え抗体の発現
[0088]キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体を、典型的には、組換え発現により生成する。組換えポリヌクレオチド構築物には、典型的には、天然に関連する領域または異種プロモータ(heterologous promoter)領域を含む抗体鎖のコード配列に機能可能に連結
された発現調節配列が含まれる。好ましくは、発現調節配列は、真核宿主細胞を形質転換することができるかまたはトランスフェクトすることができるベクター中の真核細胞プロモータシステムである。一旦ベクターを適切な宿主中に取り込ませると、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベルの発現に適した条件下で、そして交叉反応する抗体の回収および精製に適した条件下で維持される。
【0077】
[0089]これらの発現ベクターは、典型的には、エピソームとしてまたは宿主染色体DNA
の構成部分として、宿主生物中で複製可能である。一般的に、発現ベクターは、たとえば、アンピシリン-耐性またはハイグロマイシン-耐性などの選択マーカーを含有し、それにより、所望のDNA配列を用いて形質転換されたこれらの細胞の検出を可能にする。
【0078】
[0090]E. coliは、本発明のDNA配列をクローニングするために特に有用な原核細胞宿主の一つである。例えば酵母などの微生物もまた、発現に有用である。Saccharomycesは、
発現調節配列、複製開始点、終止配列、および所望のものを有する適切なベクターを持つ、好ましい酵母宿主である。典型的なプロモータには、3-ホスホグリセリン酸キナーゼおよびその他の解糖酵素が含まれる。誘導可能な酵母プロモータには、とりわけ、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソチトクロームC、およびマルトースおよびガラクトース利用に
寄与する酵素由来のプロモータが含まれる。
【0079】
[0091]哺乳動物細胞は、免疫グロブリンまたはそのフラグメントをコードするヌクレオチド部分を発現するための好ましい宿主である(Winnacker, From Genes to Clones, (VCH Publishers, NY, 1987)を参照)。無傷異種タンパク質を分泌することができる多数の
適した宿主細胞株が、当該技術分野において開発され、それらにはCHO細胞株、様々なCOS細胞株、HeLa細胞、L細胞、ヒト胚性腎細胞、およびミエローマ細胞株が含まれる。好ま
しくは、細胞は非ヒトである。これらの細胞のための発現ベクターには、発現調節配列、例えば複製開始点、プロモータ、エンハンサが含まれていてもよく(Queen et al., Immunol. Rev. 89: 49 (1986))、そして必要なプロセッシング情報部位、たとえばリボゾー
ム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位、および転写終止配列が含ま
れていてもよい。好ましい発現調節配列は、内在性遺伝子、サイトメガロウィルス、SV40、アデノウィルス、ウシパピローマウィルスなどに由来するプロモータである(Co et al., J. Immunol. 148: 1149 (1992)を参照)。
【0080】
[0092]あるいは、抗体コード配列を、トランスジェニック動物のゲノム中へ導入するためにトランスジーン中に組み込んで、そして引き続いてトランスジェニック動物の乳中に発現させることもできる(たとえば、US 5,741,957、US 5,304,489、US 5,849,992を参照)。適切なトランスジーンには、カゼインやβラクトグロブリンなどの乳腺特異的遺伝子由来のプロモータおよびエンハンサと、機能可能に結合させた、軽鎖および/または重鎖のためのコード配列が含まれる
[0093]目的のDNA部分を含有するベクターは、細胞宿主のタイプに依存して、周知の方
法により宿主細胞中に移送することができる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは、原核細胞に対して一般的に利用され、一方、リン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、リポフェクション、パーティクルガン(biolistics)ベースのまたはウィルスベースのトランスフェクションは、その他の細胞宿主に対して使用することができる。哺乳動物細胞を形質転換するために使用されるその他の方法には、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション、そしてマイクロインジェクションを使用することが含まれる(一般的には、Sambrook et al.、上述を参照)。トランスジ
ェニック動物を産生するため、トランスジーンを、受精卵子中にマイクロインジェクションすることができ、または胚性幹細胞のゲノム中に取り込ませること、そして脱核卵子中に移送されたそのような細胞の核中に導入することができる。
【0081】
[0094]一旦発現されたら、抗体を、HPLC精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などの当該技術分野の標準的な手法にしたがって精製することができる(一般的には、Scopes, Protein Purification (Springer-Verlag, NY, 1982)を参照)。
【0082】
3. 抱合体
[0095]免疫応答を誘導するためのいくつかの物質は、LBに対する免疫応答を誘導するための適切なエピトープを含有するが、しかしそれは非常に小さく、免疫原性ではない。この状況の下、ペプチド免疫源を、適切なキャリア分子と結合させて、免疫応答を誘導する補助をする複合体を形成することができる。適当なキャリアには、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風毒素、またはジフテリア、E. coli、コレラ、またはH. pyloriなどのその他の病原性バクテリアに由来するトキソイド、または減弱毒素誘導体が含まれる。T細胞エピ
トープはまた、適切なキャリア分子でもある。いくつかの抱合体を、本発明の物質を、免疫促進性ポリマー分子(例えば、トリパルミトイル-S-グリシンシステイン(Pam3Cys)、マンナン(マンノースポリマー)、またはグルカン(β1→2ポリマー))、サイトカイン(たとえば、IL-1、IL-1αおよびβペプチド、IL-2、γ-INF、IL-10、GM-CSF)、および
ケモカイン(たとえば、MIP 1αおよびβ、およびRANTES)と結合させることにより、形
成することができる。免疫原性物質を、O'Mahony、WO 97/17613およびWO 97/17614に記載されるように、組織をまたぐ輸送を促進するペプチドにも結合させることができる。免疫源を、スペーサーアミノ酸(たとえば、gly-gly)ありまたはなしで、キャリアに対して
結合させることができる。
【0083】
[0096]いくつかの抱合体を、本発明の物質を少なくとも1つのT細胞エピトープと結合させることにより形成させることができる。いくつかのT細胞エピトープは無差別的なもの
であるが、一方、その他のT細胞エピトープは普遍的なものである。無差別的T細胞エピトープは、様々なHLA型をディスプレイする幅広い対象においてT細胞免疫の誘導を促進することができる。無差別的T細胞エピトープとは対照的に、普遍的T細胞エピトープは、異なるHLA-DR対立遺伝子によりコードされる様々なHLA分子をディスプレイする被検体の多く
の割合、たとえば、少なくとも75%、において、T細胞免疫の誘導を促進することができ
る。
【0084】
[0097]多数の天然に存在するT細胞エピトープとしては、例えば、破傷風毒素(例えば
、P2エピトープおよびP30エピトープ)、B型肝炎表面抗原、百日咳毒素、はしかウィルスFタンパク質、Chlamydia trachomitis majorの外膜タンパク質、ジフテリアトキソイド、Plasmodium falciparumスポロゾイト周囲T、Plasmodium falciparum CS抗原、Schistosoma mansoniトリオースリン酸イソメラーゼ、Escherichia coli TraT、およびインフルエンザウィルスヘムアグルチニン(HA)が存在する。本発明の免疫原性ペプチドを、以下の文献(Sinigaglia F. et al., Nature, 336: 778-780 (1988);Chicz R. M. et al., J. Exp. Med., 178: 27-47 (1993);Hammer J. et al., Cell 74: 197- 203 (1993);Falk K. et al., Immunogenetics, 39: 230-242 (1994);WO 98/23635;およびSouthwood S. et al. J. Immunology, 160: 3363-3373 (1998)(これらのそれぞれの全体を、すべての目的
で参考文献として援用する))に記載されるT細胞エピトープに対して複合体化すること
ができる。さらなる例には、以下のもの:
【0085】
【化4】

が含まれる。
【0086】
[0098]あるいは、複合体を、本発明の物質を、大多数のMHCクラスII分子を結合するこ
とができる、汎DRエピトープ(“PADRE”)などの少なくとも1つの人工的T細胞エピトー
プと結合させることにより形成することができる。PADREは、以下の文献(US 5,736,142
、WO 95/07707、およびAlexander J et al., Immunity, 1: 751-761 (1994)(これらのそれぞれの全体を、すべての目的で参考文献として援用する))中に記載される。好ましいPADREペプチドは、
【0087】
【化5】

であり(共通残基を太字にした)、ここで、Xは、好ましくは、シクロヘキシルアラニン
、チロシン、またはフェニルアラニンであり、シクロヘキシルアラニンがもっとも好ましい。
【0088】
[0099]免疫原性物質を、化学的架橋により、キャリアと結合させることができる。免疫源をキャリアに結合させる技術には、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジル-チオ)プロピオネート(SPDP)およびスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-
カルボキシレート(SMCC)を用いたジスルフィド結合の形成が含まれる(ペプチドがスルフヒドリル基を欠損する場合、これをシステイン残基の追加により提供することができる)。これらの試薬は、それら自体と1つのタンパク質上のペプチドシステイン残基との間
でジスルフィド結合およびリジン上のε-アミノを介したアミド結合、またはその他のア
ミノ酸のその他の遊離のアミノ基を生成する。様々なそのようなジスルフィド/アミド-
形成性物質は、以下の文献(Immun. Rev. 62,185 (1982))に記載される。その他の二機
能性カップリング剤は、ジスルフィド結合ではなく、チオエーテルを形成する。多数のこれらのチオエーテル-形成性物質は、商業的に入手可能であり、そしてそれには、6-マレ
イミドカプロン酸、2-ブロモ酢酸、および2-ヨード酢酸、4-(N-マレイミド-メチル)シ
クロヘキサン-1-カルボン酸の反応性エステルが含まれる。カルボキシル基を、それらを
スクシンイミドまたは1-ヒドロキシル-2-ニトロ-4-スルホン酸、ナトリウム塩と組み合わせることにより活性化することができる。
【0089】
[0100]免疫原性を、Thエピトープと本発明のペプチド免疫源との間にスペーサー残基(たとえば、Gly-Gly)を追加することを通じて、改良することができる。ThエピトープをB細胞エピトープ(すなわち、ペプチド免疫源)から物理的に分離させることに加えて、グリシン残基は、Thエピトープをペプチド免疫源とつなげ、それによりT細胞応答および/
またはB細胞応答のあいだでの妨害を排除することにより作成した、いずれかの人工的二
次構造を破壊することができる。このように、ヘルパーエピトープと抗体誘導性ドメインとの間の立体構造的分離により、提示された免疫源と適切なThおよびB細胞との間のより
効率的な相互作用が可能になる。
【0090】
[0101]様々なHLAタイプを本発明の物質に対してディスプレイする対象の大半においてT細胞免疫の誘導を促進するため、抱合体と異なるTh細胞エピトープとの混合物を調製することができる。混合物は、少なくとも2つの抱合体と異なるTh細胞エピトープの混合物、
少なくとも3つの抱合体と異なるTh細胞エピトープの混合物、または少なくとも4つの抱合体と異なるTh細胞エピトープとの混合物を含有していてもよい。混合物を、アジュバントとともに投与してもよい。
【0091】
[0102]免疫原性ペプチドを、キャリアを有する融合タンパク質(すなわち、異種ペプチド)として発現することもできる。免疫原性ペプチドを、そのアミノ末端で、そのカルボキシ末端で、またはその両方で、キャリアに対して結合させることができる。場合により、免疫原性ペプチドの複数リピートが、融合タンパク質中に存在していてもよい。場合により、免疫原性ペプチドを、複数コピーの異種ペプチドと、たとえばペプチドのN末端お
よびC末端の両方で結合させることができる。いくつかのキャリアペプチドは、キャリア
ペプチドに対するヘルパーT細胞応答を誘導するように機能する。誘導されたヘルパーT細胞は、ついで、キャリアペプチドに結合させた免疫原性ペプチドに対するB細胞応答を誘
導する。
【0092】
[0103]本発明のいくつかの物質は、alpha-SNのN末端側フラグメントが、そのC末端にてキャリアペプチドに結合されている融合タンパク質を含む。そのような物質において、alpha-SNのフラグメントのN末端残基は、融合タンパク質のN末端残基を構成する。したがって、そのような融合タンパク質は、遊離形状であるべきalpha-SNのN末端残基を必要とす
るエピトープに結合する抗体を誘導する際に有効である。本発明のいくつかの物質は、C
末端にて1またはそれ以上のコピーのキャリアペプチドと結合されるNAC複数のリピートを含む。いくつかの融合タンパク質は、alpha-SNの異なる部分を直列的に含む。
【0093】
[0104]いくつかの融合タンパク質において、NACを、そのN末端終末で異種キャリアペプチドと融合させた。NACを、C-末端融合物とともに使用することができる。いくつかの融
合タンパク質は、NACのN末端またはC末端に結合させ、これが続いて、1またはそれ以上のalpha-SNのさらなるNAC部分と直列的に結合させた異種ペプチドを含む。
【0094】
[0105]本発明において使用するために適している融合タンパク質のいくつかの事例は、以下に示す。これらの融合タンパク質のいくつかは、US 5,196,512、EP 378,881およびEP
427,347に記載されているものなど、破傷風トキソイドエピトープに結合させたalpha-SNの部分を含む。いくつかの融合タンパク質は、少なくとも1つのPADREに結合させたalpha-SNの部分を含む。いくつかの異種ペプチドは、無差別的T細胞エピトープであり、一方そ
の他の異種ペプチドは、普遍的T細胞エピトープである。ある方法においては、投与する
ための物質は、単に、直鎖構造の異種部分に連結されるalpha-SN部分との融合タンパク質である。本発明の治療剤を、式を用いて示すことができる。たとえば、ある方法においては、物質は、式2xにより表される融合タンパク質の多量体であり、ここでxは、1〜5の整
数である。好ましくは、xは、1、2、または3であり、2がもっとも好ましい。xが2の場合
、そのような多量体は、MAP4と呼ばれる好ましい立体構造で結合される4つの融合タンパ
ク質を有する(US 5,229,490を参照)。
【0095】
[0106]MAP4構造を以下に示すが、ここで分岐構造が、ペプチド合成をN末端およびリジ
ンの側鎖アミンの両方で開始することにより生成する。リジンが配列中に取り込まれる回数および認められる分岐にしたがって、得られた構造は、複数のN末端を提示しうる。こ
の事例において、4つの同一のN末端は、分岐リジン含有性コア上に生成された。そのような複数性により、同系B細胞の反応性が非常に促進される。
【0096】
【化6】

[0107]Zは、上述したセクション1、2に記載したように、NACペプチド、NACペプチドの
フラグメント、またはalpha-SNその他の活性なフラグメントのことをいう。Zは、1つ以上の活性フラグメント、たとえば:
【0097】
【化7】

を示すことができる。
【0098】
[0108]融合タンパク質のその他の例には:
【0099】
【化8】

が含まれる。
【0100】
[0109]PADREペプチド(すべては直鎖構造である)は、
【0101】
【化9】

ここで、Xは好ましくは、シクロヘキシルアラニン、チロシンまたはフェニルアラニンで
あり、シクロヘキシルアラニンがもっとも好ましいZである:
である。
【0102】
[0110]融合タンパク質のさらなる事例には:
【0103】
【化10】

が含まれる。
【0104】
[0111]同一または類似のキャリアタンパク質および結合方法を、受動免疫において使用するためのalpha-SNに対する抗体を生成する際に使用すべき免疫源を生成するために使用することができる。たとえば、キャリアに結合したalpha-SNまたはフラグメントを、alpha- SNに対するモノクローナル抗体を生成する際に、実験動物に対して投与することがで
きる。
【0105】
4. 治療剤をコードする核酸
[0112]Lewy小体に対する免疫応答を、alpha-SNペプチドの部分、およびそのフラグメント、その他のペプチド免疫源、または受動免疫のために使用される抗体およびその構成鎖をコードする核酸を投与することにより、誘導することもできる。そのような核酸は、DNAであってもRNAであってもよい。免疫源をコードする核酸部分は、典型的には、制御要素、たとえば患者の目的とする標的細胞中でDNA部分の発現を可能にするプロモータおよび
エンハンサ、に対して連結させる。血球細胞中での発現のため、免疫応答の誘導のために
所望されるのと同様に、軽鎖または重鎖免疫グロブリン遺伝子由来のプロモータおよびエンハンサ要素、またはCMVメジャー中間初期プロモータおよびエンハンサが、発現を駆動
するためには適している。結合された制御要素およびコード配列はしばしば、ベクター中にクローニングされる。二本鎖抗体の投与のため、2本の鎖を、同一のベクターまたは別
々のベクター中にクローニングすることができる。本発明の治療剤をコードする核酸は、少なくとも1つのT細胞エピトープをコードすることもできる。アジュバントを使用することに関する本明細書中の開示は、必要な変更(mutatis mutandis)を本発明の治療剤をコードする核酸と共に使用するために適用する。
【0106】
[0113]レトロウィルスシステム(たとえば、Lawrie and Tumin, Cur. Opin. Genet. Develop. 3,102-109 (1993)を参照);アデノウィルスベクター(たとえば、Bett et al., J. Virol. 67,5911 (1993)を参照);アデノ関連ウィルスベクター(たとえば、Zhou et al., J. Exp. Med. 179,1867 (1994)を参照)、ワクシニアウィルスおよびトリポックス
ウィルスを含むポックスウィルス科由来のウィルスベクター、SindbisおよびSemliki Forest Virusesに由来するものなどを含むαウィルス属由来のウィルスベクター(たとえば
、Dubensky et al., J. Virol. 70,508-519 (1996)を参照)、ベネズエラ馬脳炎ウィルス(US 5,643,576を参照)、および水疱性口炎ウイルス(WO 96/34625)およびパピローマ
ウィルス(Ohe et al., Human Gene Therapy 6,325-333 (1995);Woo et al., WO 94/12629およびXiao & Brandsma, Nucleic Acids. Res. 24,2630-2622 (1996)を参照)などのラブドウィルス、を含む多数のウィルスベクターシステムが、利用可能である。
【0107】
[0114]免疫源をコードするDNA、または同一物を含有するベクターを、リポソーム中に
包み込むことができる。適切な脂質および関連する類似体は、US 5,208,036、US 5,264,618、US 5,279,833、およびUS 5,283,185により記載される。免疫源をコードするベクターおよびDNAを、粒子状キャリアに吸着させるか、またはそれと結合させることもでき、そ
のようなものの例としては、ポリメチルメタクリレートポリマーおよびポリラクチドおよびポリ(ラクチド-co-グリコリド)が含まれる(たとえば、McGee et al., J. Micro Encap. 1996を参照)。
【0108】
[0115]遺伝子治療ベクターまたはむき出しのDNAを、個々の患者に対して、典型的には
全身的投与(たとえば、静脈内、腹腔内、鼻内、胃内、皮内、筋肉内、真皮下、または頭蓋内注入)または局所的投与(たとえばUS 5,399,346を参照)により、投与することにより、in vivoで送達することができる。そのようなベクターには、さらにブピバカインな
どの促進剤をさらに含んでいてもよい(たとえば、US 5,593,970を参照)。DNAを、遺伝
子銃を用いて投与することもできる(Xiao & Brandsma、上述を参照)。免疫源をコード
するDNAを、微小金属ビーズの表面上に沈殿させる。マイクロプロジェクタイル(microprojectiles)を衝撃波またはヘリウムガスを膨張させることにより、加速し、そして組織
を貫通させて数個の細胞深度にまで達する。たとえば、Agacetus, Inc.(Middleton, WI
)により製造されるAccel Gene Delivery Deviceが適切である。あるいは、むき出しのDNAを、単にDNAを皮膚上に化学的刺激または機械的刺激とともにスポットすることにより、皮膚を通過させ血流中に通す(WO 95/05853を参照)。
【0109】
[0116]さらなるバリエーションにおいて、免疫源をコードするベクターを、ex vivoで
、たとえば個々の患者から体外培養された細胞(たとえば、リンパ球、骨髄吸飲物、そして組織バイオプシー)または普遍的なドナー造血幹細胞などの細胞に対して送達し、その後、通常は、ベクターを取り込んだ細胞について選択した後、細胞を患者中に再移植することができる。
【0110】
III. Aβに対する免疫原性応答を誘導するための物質
[0117]β-アミロイドペプチド、またはA4ペプチド(US 4,666,829;Glenner & Wong, B
iochem. Biophys. Res. Commun. 120,1131 (1984)を参照)としても知られるAβは、39〜43アミノ酸のペプチドであり、これは、アルツハイマー病の特徴的な斑の主要な構成要素である。Aβは、より大きなタンパク質APPをβセクレターゼおよびγセクレターゼと呼ばれる2種の酵素によりプロセッシングすることにより生成される(Hardy, TINS 20,154 (1997)を参照)。アルツハイマー病と関連するAPPにおける既知の変異は、βまたはγセク
レターゼの部位に隣接して生じるか、またはAβ中に生じる。例えば、位置717は、Aβに
プロセッシングする際のAPPのγ-セクレターゼ切断部位に隣接しており、そして位置670/671は、β-セクレターゼ切断部位に隣接している。変異は、生成されるAβの42/43アミノ酸型の量を増大させるためにAβを形成させる切断反応との相互作用により、ADを引き起
こすと考えられている。
【0111】
[0118]Aβは、古典的カスケードおよび代替の補体カスケードの両方を固定化しそして
活性化することができるという、珍しい特徴を有している。特に、それは、C1qおよび究
極的にはC3biに結合する。この結合は、マクロファージとの結合を容易にし、その結果、B細胞の活性化が引き起こされる。さらに、C3biはさらに分解され、そしてその後B細胞上のCR2とT細胞依存的な様式で結合し、この結果、これらの細胞の活性化を10,000に増加させる。このメカニズムにより、Aβがその他の抗原での免疫応答を上回って免疫応答を生
成する。
【0112】
[0119]Aβは、いくつかの天然に存在する形態を有する。ヒトのAβ型は、Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42、およびAβ43と呼ばれる。これらのペプチドの配列およびそれらとAPP前駆体との関係は、以下の文献(Hardy et al., TINS 20,155-158 (1997))中の図1に示さ
れる。例えば、Aβ42は、以下の配列:
[0120]
【0113】
【化11】

を有する。
【0114】
[0121]Aβ41、Aβ40、およびAβ39は、C-末端終端から、Ala、Ala-Ile、およびAla-Ile-Valがそれぞれ排除されることによりAβ42とは異なっている。Aβ43は、Aβ42とはC-末
端のThr残基の存在により異なる。
【0115】
[0122]alpha-SNについて上述したようなものに類似する物質は、Aβについて以前に記
載した(WO 98/25386およびWO 00/72880を参照、両方のそれぞれの全体を、すべての目的で参考文献として援用する)。これらの物質には、Aβおよびその活性なフラグメント、Aβの抱合体、およびAβ活性フラグメントの抱合体、Aβに対する抗体、そしてその活性なフラグメントが含まれる(たとえば、マウス抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、およびキメラ抗体)、および抗体鎖をコードする核酸が含まれる。AβのN末端側半分に由来する活性なフラグメントが好ましい。好ましい免疫原性フラグメントには、Aβ1〜5、1〜6、1〜7、1〜10、3〜7、1〜3、および1〜4が含まれる。例えば、Aβ1〜5の記載は、Aβの残基1〜5を含むフラグメントであってAβのその他の残基を欠損することを意味する。Aβの残基1〜3で始まるフラグメントであってAβの残基7〜11をコードするものが特に好ましい。
【0116】
[0123]活性な免疫応答を誘導する物質、受動免疫応答を誘導するための物質、抱合体、および治療剤をコードする核酸に関する本明細書中の開示(上述の節II. 1、2、3、およ
び4を参照)は、Aβおよびそのフラグメントの使用に対して必要に応じた変更(mutatis mutandis)を適用する。活性な免疫応答を誘導する物質、受動免疫応答を誘導するための
物質、抱合体、および治療剤をコードする核酸に関する本明細書中の開示(上述の節II. 1、2、3、および4を参照)は、Aβおよびそのフラグメントの使用に対して必要に応じた
変更(mutatis mutandis)を適用する。治療および治療処置計画に改善の余地がある患者に関する本明細書中の開示(以下の節IVおよびVを参照)は、Aβおよびそのフラグメントの使用に対して必要に応じた変更(mutatis mutandis)を適用する。
【0117】
[0124]脱凝集化されたAβまたはそのフラグメントは、モノマーペプチド単位を意味す
る。脱凝集化されたAβまたはそのフラグメントは、一般的に可溶性であり、そして自己
凝集化することができ、可溶性オリゴマーを形成することができる。Aβおよびそのフラ
グメントのオリゴマーは、通常可溶性であり、そしてα-ヘリックスまたはランダムコイ
ルとして優先的に存在する。凝集化Aβまたはそのフラグメントは、不溶性β-シート部品中に結合する、alpha-SNまたはそのフラグメントのオリゴマーを意味する。凝集化Aβま
たはそのフラグメントはまた、微小繊維性ポリマーも意味する。微小繊維は、通常不溶性である。いくつかの抗体は、可溶性Aβまたはそのフラグメントかまたは凝集化Aβまたはそのフラグメントかのいずれかを結合する。いくつかの抗体は、可溶性Aβまたはそのフ
ラグメントおよび凝集化Aβまたはそのフラグメントの両方を結合する。
【0118】
抱合体のいくつかの事例には、以下のもの:
【0119】
【化12】

が含まれる。
【0120】
[0125]PADREペプチド(すべては直鎖構造である)、ここで、Xは、好ましくはシクロヘキシルアラニン、チロシン、またはフェニルアラニンであり、シクロヘキシルアラニンがもっとも好ましい:
[0126]
【0121】
【化13】

[0127]
【0122】
【化14】

[0128]融合タンパク質のその他の事例(Aβの免疫原性エピトープを太字にした)には
、以下のもの:
【0123】
【化15】

が含まれる
[0129]好ましいモノクローナル抗体は、Aβの残基1〜10内部のエピトープに対して結合する(天然のAβの最初のN末端残基を1と示す)。いくつかの好ましいモノクローナル抗
体は、アミノ酸1〜5内部のエピトープに対して結合し、そしていくつかは5〜10内部のエ
ピトープに対して結合する。いくつかの好ましい抗体は、アミノ酸1〜3、1〜4、1〜5、1
〜6、1〜7または3〜7内部のエピトープに結合する。いくつかの好ましい抗体は、残基1〜3で始まるエピトープであって、ADの残基7〜11をコードするものに対して結合する。その他の抗体には、残基13〜280を有するエピトープに対して結合するもの(たとえば、モノ
クローナル抗体266)が含まれる。好ましい抗体は、ヒトIgG1アイソタイプを有する。
【0124】
IV.活性を明らかにするための抗体のスクリーニング
[0130]本発明は、Lewy小体またはいずれかその他の抗原、または除去活性が望まれる関連する生物学的成分を除去する活性について抗体をスクリーニングする方法を提供する。Lewy小体に対する活性についてスクリーニングするため、PDを有する患者の脳由来の組織サンプルまたはパーキンソンの特徴的な病態を有する動物モデルの脳由来の組織サンプルを、Fc受容体を有する貪食性細胞、例えばミクログリア細胞およびin vitroの培養液中で試験中の抗体と接触させる。貪食性細胞は、初代培養またはBV-2、C8-B4、またはTHP-1などの細胞株であってもよい。ある方法においては、構成要素を、顕微鏡スライド上で組み合わせ、顕微鏡モニタリングを容易にする。ある方法においては、複数の反応を、マイクロタイターディッシュのウェル中で平行して行う。そのようなフォーマットにおいて、別々の微小顕微鏡スライドを、別々のウェル中にマウントし、またはalpha-SNのELISA検出
などの非顕微鏡的検出フォーマットを使用することができる。好ましくは、一連の測定は、ベースライン値から初めて反応が進行しきるまでのin vitro反応混合物中のLewy小体の量、および反応中の1またはそれ以上の試験値から構成される。抗原を、例えば、蛍光標
識したalpha-SNまたはアミロイド斑のその他の構成要素に対する抗体で染色することにより、検出することができる。染色のために使用される抗体は、除去活性について試験された抗体と同一であってもそうでなくてもよい。LBの反応中のベースラインに対する減少から、試験中の抗体が除去活性を有することが示される。そのような抗体は、PDおよびその他のLBDを予防しまたは治療する際に有用である可能性がある。
【0125】
[0131]類似する方法を使用して、他のタイプの生物学的成分を除去する活性について抗体をスクリーニングすることができる。このアッセイを使用して、実質的にはいずれの種類の生物学的成分に対する除去活性を検出することができる。典型的には、生物学的成分は、ヒトまたは動物の疾患において何らかの役割を有している。生物学的成分を、組織サンプルとして、または単離された形態として、提供することができる。組織サンプルとして提供される場合、組織サンプルは好ましくは、固定化されておらず、組織サンプルの構成要素に容易に接近可能であり、そして固定化に付随して起こる構成成分の混乱を回避する。このアッセイで試験することができる組織サンプルの例としては、癌組織、前癌性組織、いぼや黒子などの良性増殖組織を含有する組織、病原性微生物に感染された組織、炎症性細胞が浸潤した組織、細胞間に病原性マトリクスを有する組織(たとえば、線維性心膜炎など)、異常抗原を有する組織、そして、瘢痕組織が含まれる。使用することができる単離された生物学的成分の例としては、alpha-SN、ウィルス抗原またはウィルス、プロテオグリカン類、その他の病原性微生物の抗原、腫瘍抗原、および接着分子が含まれる。そのような抗原を、中でも、天然の供給源、組換え発現または化学的合成を得ることができる。組織サンプルまたは単離された生物学的成分を、単球またはミクログリア細胞などのFc受容体を有する貪食性細胞および培地中で試験すべき抗体と接触させる。抗体を、試験中の生物学的成分に対してまたは成分と結合した抗原に向けることができる。後者の状況において、目的は、生物学的成分が抗原と共に代償性に貪食されるかどうかを試験することである。通常は、必ずしも必要ないにもかかわらず、抗体および生物学的成分(しばしば、結合した抗原とともに)を、貪食性細胞を添加する前に、互いに接触させる。存在する場合、培地中に残存する生物学的成分および/または結合した抗原の濃度を、その後モニターする。培地中の抗原または結合した生物学的成分の量または濃度の減少は、抗体が、抗原および/または結合した生物学的成分に対する除去反応を、貪食性細胞と組み合わせて有することを示す。
【0126】
[0132]抗体またはその他の物質を、実施例IIに記載されるin vitroアッセイを使用して、Lewy小体を除去する活性についてスクリーニングすることもできる。神経細胞を、顕微鏡的に視覚化することができるsynuclein封入体に由来するsynucleinを発現する発現ベクターにてトランスフェクトした。そのような封入体を除去する際の抗体またはその他の物質の活性を、物質で処理されたトランスフェクトされた細胞におけるsynucleinの出現ま
たはレベルを、物質で処理していない対照細胞におけるsynucleinの出現またはレベルと
比較することにより、決定することができる。synuclein封入体のサイズまたは濃度の減
少またはsynuclein を除去する際のsynucleinシグナル活性のレベルの減少。活性は、synuclein封入体を顕微鏡的に視覚化することによるか、または細胞抽出物をゲル上で泳動しそしてsynucleinバンドを視覚化することによるか、のいずれかによりモニターすること
ができる。実施例1、第2節においても示すように、synucleinレベルの変化は、抽出物が
細胞質画分および膜画分に分画される場合にもっとも顕著であり、そして膜画分を解析する。
【0127】
V. 治療になじみやすい患者
[0133]治療になじみやすい患者には、synuclein病のリスクを有するが症候は示してい
ない個体、ならびに現在症候を示している患者が含まれる。治療になじみやすい患者にはまた、LBDの疾患のリスクを有するが症候を示していない個体、ならびに現在症候を示し
ている患者が含まれる。そのような疾患には、パーキンソン病(特発性パーキンソン病を含む)、DLB、DLBD、LBVAD、純粋な自律神経失調、Lewy小体嚥下障害、随伴性LBD、遺伝
性LBD(たとえば、alpha-SN遺伝子の変異、PARK3およびPARK4)および多発性萎縮症(例
えば、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性、およびShy-Drager症候群)が含まれる。したがって、本発明の方法を、LBDの既知の遺伝的リスクを有する個体に対して予防的に
投与することができる。そのような個体には、この疾患を経験したことがある親族を有する個体、およびリスクを遺伝的マーカーおよび生化学的マーカーを解析することにより決定した個体が含まれる。PDに対するリスクの遺伝的マーカーには、synucleinまたはParkin、UCHLI、およびCYP2D6遺伝子における変異が含まれる;特に、synuclein遺伝子の位置53での変異が含まれる。現在パーキンソン病を罹患する個体を、静止振戦、筋硬直、運動
緩慢および体位不安定を含むその臨床的な発現から認識することができる。
【0128】
[0134]ある方法においては、患者は、いずれかのアミロイド生成性疾患の臨床的症候、兆候および/またはリスク因子を有さず、少なくとも1つのsynuclein病を罹患している。ある方法においては、患者は、細胞外アミロイド沈着を特徴とするいずれかの疾患の臨床的症候、兆候および/またはリスク因子を有さない。ある方法においては、患者は、Aβ
ペプチドのアミロイド沈着を特徴とする疾患を有さない。ある方法においては、患者は、アルツハイマー病の臨床的症候、兆候および/またはリスク因子を有さない。ある方法においては、患者は、アルツハイマー病、認知障害、中程度認知障害およびダウン症候群の臨床的症候、兆候および/またはリスク因子を有さない。ある方法においては、患者は、併発性アルツハイマー病を有し、Lewy小体を特徴とする疾患を有する。ある方法においては、患者は、併発性アルツハイマー病を有し、およびsynuclein蓄積を特徴とする疾患を
有する。ある方法においては、患者は、併発性アルツハイマー病を有し、およびパーキンソン病を有する。
【0129】
[0135]無症候性患者において、治療を、どのような年齢でもはじめることができる(例えば、10代、20代、または30代)。しかしながら、通常は、患者が40代、50代、60代、または70代に到達するまでは治療を開始する必要はない。治療には、典型的には、ある期間にわたって複数回投与することが含まれる。治療を、ある期間にわたって、抗体をアッセイすることにより、または治療剤(たとえば、alpha-SNペプチドまたはAβ、または両方
)に対するT細胞またはB細胞反応の活性化をモニターすることにより、モニターすること
ができる。反応が低下する場合、ブースト投与が示唆される。
【0130】
[0136]場合により、疾患の症候、兆候またはリスク因子の存在または不存在を、治療を開始する前に決定する。
VI. 治療計画
[0137]一般的には、治療計画には、alpha-SNに対する免疫原性応答を誘導するために有効な物質および/またはAβに対する免疫原性応答を誘導するために有効な物質を、患者
に対して投与することを含む。予防的適用の場合、医薬組成物または医薬を、LBDに感染
しやすい患者またはそうでない場合にはLBDのリスクを有する患者に、リスクを除去また
は低減するため、重症度を低下させるため、または疾患の生理学的症候、生化学的症候、組織学的症候および/または行動的症候、その合併症および疾患の発症の間提示される中間病原性表現型、を含む疾患の発症を遅らせるために十分な量および頻度を含む計画で、投与する。治療的適用において、組成物または医薬を、そのような疾患が疑われる患者または既に罹患している患者に対して、その合併症および疾患の発症の間提示される中間病原性表現型を含む、疾患の症候(生理学的症候、生化学的症候、組織学的症候および/または行動的症候)を治癒するか、または少なくとも部分的には捕捉させるのに十分な組成物の投与量および投与頻度を含む計画で、投与される。治療的処置または予防的処置を行うために適切な量を、治療的有効量または予防的有効量として規定する。治療的処置または予防的処置を行うために適切な量および投与頻度の組み合わせを、治療的に有効な計画または予防的に有効な計画として規定する。予防計画および治療計画の両方において、通常は、物質を、十分な免疫応答が得られるまで、数回投与で投与する。典型的には、免疫応答をモニターし、そして免疫応答が衰退しはじめる場合には繰り返し投与を行う。
【0131】
[0138]ある方法においては、物質の投与の結果、凝集化synucleinの細胞内レベルの減
少が引き起こされる。ある方法においては、物質の投与の結果、パーキンソン病の場合の運動機能などの、LBDの臨床的症候の改善が引き起こされる。ある方法においては、凝集
化synucleinの細胞内レベルの減少または疾患の臨床的症候の減少を、物質の投与後に間
隔をあけてモニターする。
【0132】
[0139]上述した条件の治療についての本発明の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態(ここで患者はヒトであっても動物であってもよい)、その他の投与されている投薬、および治療が予防的かまたは治療的か、を含む、多数の異なる因子に依存して変動する。通常は、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物を治療することもできる。治療投与には、安全性および有効性を最適化するために、力価測定が必要である。免疫源の量は、アジュバントなしの場合に必要とされるよりも高い用量でアジュバントも投与するかどうかに依存する。投与のための免疫源の量は、時々、患者当たり1〜500μgのあいだで変動し、そしてより通常には、ヒトに投与
する場合一回注射当たり5〜500μgで変動する。場合により、注射当たり1〜2 mgのより高い用量を使用する。典型的には、約10、20、50または100μgをそれぞれのヒト注射に使用する。免疫源の質量はまた、全体としての免疫源の質量に対する免疫源内部の免疫原性エピトープの質量比に依存する。典型的には、マイクログラムの免疫源に対して、10-3〜10-5μモルの免疫原性エピトープを使用する。注射のタイミングは、1日1回、から1年に1回、10年に1回まで、大幅に変更することができる。免疫源の用量を与える所定のいずれか
の日に、用量は1μg/患者以上であり、そして通常はアジュバントも投与される場合には10μg/患者以上であり、そしてアジュバントなしの場合には、10μg/患者以上、そして通
常は100μg/患者以上である。典型的な計画は、免疫化に続いて、時間間隔(例えば6週間の間隔)をあけてブースター注射をすることからなる。その他の計画は、免疫化に続いて、1、2および12箇月後にブースター注射を行う。別の計画には、死ぬまで2ヶ月毎に注射
することも含まれる。あるいは、ブースター注射を、免疫応答をモニターすることにより示される様に、不定期に行うことができる。
【0133】
[0140]抗体を用いた受動免疫に関して、用量は、約0.0001〜100 mg/kg宿主体重、およ
びより通常には0.01〜5 mg/kg宿主体重の範囲である。例えば、用量は、70 kgの患者あたり、1 mg/kg体重または10 mg/kg体重であってもよく、あるいは1〜10 mg/kgの範囲内であってもよく、または言い換えれば、70 mgsまたは700 mgsであってもよく、または70〜700
mgsの範囲内であってもよい。例示的な治療計画には、2週間に1回、または1箇月に1回、または3〜6ヶ月毎に1回、投与することが含まれる。ある方法においては、異なる結合特
異性を有する2またはそれ以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、その場合、それぞ
れの投与される抗体の用量は、示された範囲内に落ち着く。通常は、抗体を何度も投与する。1回投与間の間隔は、1週間、1箇月、または1年であってもよい。間隔は、患者におけるalpha-SNに対する抗体の血液レベルを測定することにより示される様に、不定であってもよい。ある方法においては、用量を、1〜1000μg/mlの血漿抗体濃度を、そしてある方
法においては、25-300μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調整する。あるいは、抗体を、持続放出製剤として投与することができ、その場合には、より低頻度での投与が必要である。用量および頻度は、患者における抗体の半減期に依存して変動する。一般的には、ヒト抗体は、最長の半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体、そして非ヒト抗体と続くことが示された。投与用量および頻度を、処置が予防的かまたは治療的かに依存して変動させることができる。予防的適用において、比較的低容量を、比較的不定な間隔で、長期間にわたって投与する。数名の患者は、残りの人生のあいだ、処置を受け続ける。治療的適用の場合、疾患の進行を減少させるかまたは停止させ、そして好ましくは患者が部分的にまたは完全に疾患の症候を改善したことを示すまで、比較的短い間隔での比較的高用量を、しばしば必要とする。その後、患者に予防的計画を適用することができる。
【0134】
[0141]免疫源をコードする核酸の用量は、患者当たり約10 ng〜1 g、100 ng〜100 mg、1μg〜10 mg、または30〜300μgのDNAの範囲である。感染性ウィルスベクターに対する用量は、投与当たり10〜100ビリオン、またはそれ以上のあいだで変動する。
【0135】
[0142]免疫応答を誘導するための物質を、予防的処置および/または治療的処置について、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、クモ膜下、腹腔内、鼻内、または筋肉内手段により投与することができる。もっとも典型的な免疫原性物質の投与経路は皮下であるが、その他の経路も同様に有効であり得る。2番目に一般的な経路は、筋肉
内注射である。このタイプの注射は、もっとも典型的には、腕または足の筋肉に行われる。ある方法においては、物質を、沈着物が蓄積された特定の組織中(例えばに頭蓋内注射)直接的注射する。筋肉内注射または静脈内点滴が、抗体の投与のために好ましい。ある方法においては、特定の治療用抗体を、頭蓋中に直接的に投与する。ある方法においては、抗体を、持続放出組成物またはMedipadTM装置などの装置として投与する。
【0136】
[0143]上述したように、alpha-SNおよびAβのそれぞれに対する免疫原性応答を誘導す
る物質を、組み合わせて投与することができる。物質を、同時的使用、順次的使用、または別々の使用のため、単回調製品中にまたはキット中に混合することができる。物質を、調製品またはキット中に別々のバイアルを備えることもでき、または一つのバイアル中に混合することもできる。本発明のこれらの物質は、場合により、少なくとも部分的にLBD
の治療に有効なその他の物質と組み合わせて投与することができる。パーキンソン病およびダウン症候群の場合、LBが脳内に生じるが、本発明の物質を、本発明の物質を血液脳関門を介した通過を増大させるその他の物質と組み合わせて投与することもできる。
【0137】
[0144]例えばペプチドなどの本発明の免疫原性物質を、しばしば、アジュバントと組み合わせて投与する。様々なアジュバントを、alpha-SNなどのペプチドと組み合わせて使用して、免疫応答を誘導することができる。好ましいアジュバントは、免疫源の立体構造に変化を生じさせることなく、免疫源に対する固有の反応を増大させ、その結果、反応の定
量的形式に影響を与える。好ましいアジュバントには、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、3 De-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPLTM)が含まれる(GB 2220211 (RIBI ImmunoChem Research Inc., Hamilton, Montana、現在はCorixaの一部を参照)
。StimulonTM QS-21は、トリテルペングリコシドまたは南アフリカで見いだされたQuillaja Saponaria Molinaの木の樹皮から単離されたサポニンである(Kensil et al., in Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach (eds. Powell & Newman, Plenum Press, NY, 1995);US特許No. 5,057,540を参照)(Aquila BioPharmaceuticals, Framingham, MA)。その他のアジュバントは、水中油エマルジョン(例えば、スクアレンまたはピーナッツ油)であり、場合により免疫刺激物質、例えばモノホスホリルリピドA(Stoute et al., N. Engl. J. Med. 336,86-91 (1997)を参照)、pluronicポリマー、および不活
化マイコバクテリアなどと組み合わせる。その他のアジュバントは、CpG(WO 98/40100)である。あるいは、alpha-SNまたはAβを、アジュバントに対して結合させることができ
る。しかしながら、そのような結合は、実質的にalpha-SNの構造を変化させず、その結果それに対する免疫応答の性質に影響を与える。アジュバントを、活性剤を有する治療用組成物の構成成分として投与することができ、または治療剤を投与することとは別に、その投与の前に、その投与と同時に、またはその投与の後に、投与してもよい。
【0138】
[0145]アジュバントの好ましい群は、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(alum)である。そのようなアジュバントを、MPLまたは3-DMP、QS-21、ポリグルタミン酸またはポリリジンなどのアミノ酸ポリマーま
たはアミノ酸単量体を含む、その他の特異的免疫刺激物質と共にまたは伴わずに使用することができる。アジュバントのその他の群は、水中油エマルジョン製剤である。そのようなアジュバントを、ムラミルペプチド(たとえば、N-アセチルムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)、N-アセチルグルコサミニル-N-アセチルムラミル-L-Al-D-イソグル-L-Ala-ジパルミトオキシプロピルアミド(DTP-DPP)テラマイド(theramide)TM)、またはその他のバクテリア細胞壁構成成分などの、その他の特異的免疫刺激物質と共にまたは伴わずに使用することができる。水中油エマルジョンには、(a)5%スクアレン、0.5%Tween 80、および0.5%Span 85(場合により、様々な量のMTP-PEを含有する)を含有し、Model 110Yマイクロ
フルイダイザー(Microfluidics, Newton MA)などのマイクロフルイダイザー(microfluidizer)を用いて、ミクロン以下の粒子に製剤化されるMF59(WO 90/14837)、(b)ミクロン以下のエマルジョンにするようにマイクロフルイダイザーにかけるか、またはボルテックスにかけるかのいずれかにより、より大きな粒子サイズのエマルジョンを生成する、10%スクアレン、0.4%Tween 80、5%pluronic-ブロックポリマーL121、およびthr-MDPを含有するSAF、(c)2%スクアレン、0.2%Tween 80、およびモノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(DetoxTM)からなる群から選択される1またはそれ以上のバクテリア細胞壁構成成分を含有するRibiTMアジュバントシステム(RAS)(Ribi ImmunoChem, Hamilton, MT)、が含まれる。
【0139】
[0146]好ましいアジュバントの別の群は、StimulonTM(QS-21, Aquila, Framingham, MA)またはそれから生成される粒子、例えばISCOMs(免疫刺激性複合体)およびISCOMATRIXなどのサポニンアジュバントである。その他のアジュバントには、RC-529、GM-CSFおよ
び完全フロイントのアジュバント(CFA)および不完全フロイントのアジュバント(IFA)が含まれる。その他のアジュバントには、インターロイキン類(たとえば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-12、IL-13、およびIL-15)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、および腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカインが含まれる。アジュバントの別の群は、N-グリコシルアミド、N-グリコシ
ルウレアおよびN-グリコシルカルバメートを含む糖脂質類似体であり、そのそれぞれは免疫調節物質またはアジュバントとして糖残基中でアミノ酸により置換される(US特許No. 4,855,283)。熱ショックタンパク質、たとえば、HSP70およびHSP90もまた、アジュバン
トとして使用することができる。
【0140】
[0147]アジュバントを、免疫源と共に、単一組成物として投与することができ、または、免疫源の投与の前に、投与と同時にまたは投与の後に、投与することができる。免疫源およびアジュバントを、同一バイアル中にパッケージしそしてその中で供給することができ、または別々のバイアル中にパッケージし、そして使用前に混合することができる。免疫源およびアジュバントは、典型的には、意図される治療用途を指示する標識と共にパッケージされる。免疫源およびアジュバントが別々のパッケージされる場合、パッケージングには、典型的には、使用前に混合するための指示書が含まれる。アジュバントおよび/またはキャリアの選択は、アジュバントを含有する免疫原性製剤の安定性、投与経路、投薬スケジュール、ワクチン摂取する種についてのアジュバントの有効性、およびヒトの場合、医薬的に許容可能なアジュバントが、関係がある制御性物質(regulatory bodies)
により、ヒトの投与に対して認可されたか認可することができるものであるかどうかに依存する。例えば、完全フロイントのアジュバントは、ヒトへの投与には適していない。Alum、MPLおよびQS-21が好ましい。場合により、2またはそれ以上の異なるアジュバントを
同時に使用することができる。好ましい組み合わせには、alumとMPLとの組み合わせ、alumとQS-21との組み合わせ、MPLとQS-21との組み合わせ、MPLまたはRC-529とGM-CSFとの組
み合わせ、およびalum、QS-21、およびMPLの組み合わせが含まれる。同様に、不完全フロイントのアジュバントを使用することができ(Chang et al., Advanced Drug Delivery Reviews 32,173-186 (1998))、場合により、alum、QS-21、およびMPL、およびそれらのすべての組み合わせ、と一緒に使用することができる。
【0141】
[0148]本発明の物質は、しばしば活性治療用物質、および様々なその他の医薬的に許容可能な構成成分を含む医薬組成物として投与される(Remington's Pharmaceutical Science(15th ed. , Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 1980))。好ましい形態は、意図される投与様式および治療用途に依存する。組成物には、所望される製剤に依存して、動物またはヒトへの投与のために医薬組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される、医薬的に許容可能な、非毒性の担体またはキャリアを含んでもよい。希釈剤を、この組み合わせの生物学的活性に影響を与えないように選択する。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝塩類溶液、リンガー溶液、デキストラン溶液、およびHank's溶液である。さらに、医薬組成物または製剤には、その他のキャリア、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫原性の安定化剤なども含まれうる。
【0142】
[0149]医薬組成物には、大型のゆっくりと代謝される高分子、例えばタンパク質、キトサン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびコポリマー(例えば、ラテックス官能化セファロース(functionalized sepharose)(TM)、アガロース、セルロース、など)などの多糖類、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)が含まれていてもよい。さらに、これらのキャリアは、免疫刺激性物質(すなわち、アジュバント)として機能することができる。
【0143】
[0150]非経口投与のため、本発明の物質を、注射可能剤形を、水、油、塩類溶液、グリセロール、またはエタノールなどの無菌液体であってもよい医薬的なキャリアと共に医薬的に許容可能な希釈物中の物質の溶液またはサスペンジョンとして投与することができる。さらに、湿潤剤または乳化剤などの補助的物質、界面活性剤、pH緩衝化物質などが組成物中に存在していてもよい。医薬組成物のその他の構成成分は、例えば、ピーナツ油、大豆油、およびミネラル油など、石油、動物、植物、または合成起源のものである。一般的
には、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなどのグリコール類が好ましく、特に注射可能溶液には好ましい。抗体を、活性成分の持続放出を可能にする様な様式で製剤化することができるデポー注入物またはインプラント調製品の形状で投与することができる。例示的な組成物は、モノクローナル抗体を5 mg/mLで含み、50 mM L-ヒスチ
ジン、150 mM NaCl(HClを用いてpH 6.0に調整)からなる水性緩衝液中で製剤化される。非経口的投与用組成物は、典型的には、実質的に無菌であり、実質的に等張であり、そしてFDAのGMP条件下でまたは同様の物質のもと、製造される。例えば、生物製剤を含有する組成物は典型的に、フィルター滅菌により滅菌する。組成物を、一回投与用に製剤化することができる。
【0144】
[0151]典型的には、組成物を、注射可能製剤として、液体溶液またはサスペンジョンとして;液体ビヒクル中の溶液にまたは液体ビヒクル中のサスペンジョンに適した固体形状として、調製し、その後注射剤を調製することもできる。調製物を、乳化し、またはリポソームまたは微小粒子(ポリラクチド、ポリグリコリド、または上述したようにアジュバント作用を増強するためのコポリマー)中にカプセル化することもできる(Langer, Science 249,1527 (1990)およびHanes, Advanced Drug Delivery Reviews 28,97-119 (1997)
を参照)。本発明の物質を、活性成分の持続性放出またはパルス状放出を可能にする様な方法で製剤化できるデポー注入物またはインプラント調製品の形状で投与することができる。
【0145】
[0152]その他の投与様式のために適したさらなる製剤には、経口製剤、鼻内製剤、および肺製剤、座剤、および経皮投与剤が含まれる。
[0153]座剤に関して、結合剤およびキャリアには、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが含まれる;そのような座剤を、活性成分を0.5%〜10%、好まし
くは1%〜2%の範囲で含有する混合物から形成することができる。経口製剤には、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、および炭酸マグネシウムなどの賦形剤が含まれる。これらの組成物は、溶液、サスペンジョン、錠剤、ピル、カプセル、持続放出製剤または粉末の形状をとり、そして10%〜95%の活性成分、好ましくは25%〜70%の活性成分を含有する。
【0146】
[0154]局所投与の結果、経皮的または皮内送達ができる。局所投与を、物質を、コレラ毒素または無毒化誘導体またはそのサブユニット、またはその他の類似する細菌毒素と共に供投与することにより、促進することができる(Glenn et al., Nature 391,851 (1998)を参照)。供投与を、混合物として、または化学的架橋または融合タンパク質として発
現により得られる結合された分子として構成成分を使用することにより、達成することができる。
【0147】
[0155]あるいは、経皮的送達を、皮膚通路を使用して、またはトランスファーソーム(transferosome)を使用して、行うことができる(Paul et al., Eur. J. Immunol. 25,3521-24 (1995);Cevc et al., Biochem. Biophys. Acta 1368,201-15 (1998))。
【0148】
VII. モニター方法および診断方法
[0156]本発明は、LBDに罹患しているかまたはそれに罹りやすい患者における、alpha-SNペプチドおよび/またはAβペプチドに対する免疫応答を検出する方法を提供する。この方法は、患者に対して適用すべき治療の経過をモニターするために特に有用である。この方法を使用して、症候性患者での治療的処置および無症候性患者での予防的処置の両方をモニターすることができる。この方法は、活性な免疫化(たとえば、免疫源の投与に応答して産生される抗体)および受動免疫(たとえば、投与抗体のレベルを測定すること)の両方をモニターするために有用である。
【0149】
1. 能動的免疫化
[0157]いくつかの方法は、患者における免疫応答のベースライン値を測定し、その後物質の剤形を投与し、そしてこれを治療後の免疫応答に関する値と比較することに関する。免疫応答の値における顕著な増加(すなわち、同一サンプルの繰り返し測定において、そのような測定値の平均から1標準偏差として表現される実験誤差の典型的な外延以上)が
、積極的な治療結果のシグナルとなる(すなわち、そのような物質の投与により、免疫応答が得られるかまたは増強される)。免疫応答についての価が顕著には変化しないかまたは減少しないなら、陰性の治療結果を示す。一般的には、免疫原性物質を用いた治療の初期経過を経験している患者は、継続的な投薬により免疫応答が増強させることが示されることが期待され、それは最終的にはプラトーに達する。物質の投与は、一般的に、免疫応答が増強しつつあるあいだ、継続される。プラトーへの到達は、与えられた治療を中止することができるか、または用量または頻度を減少させることができることの指標である。
【0150】
[0158]その他の方法において、免疫応答の対照値(すなわち、平均および標準偏差)を、対照集団について決定する。典型的には、対照集団における個体は、事前処置を受けていない。次いで、患者において治療剤の投与後の免疫応答の測定値を、対照値と比較する。対照値と比較して顕著な増加(たとえば、平均から1標準偏差以上)を、陽性の治療結
果のシグナルとする。顕著な増加、または顕著な減少が見られない場合、陰性の治療結果のシグナルとする。物質の投与は、一般的に、免疫応答が対照値と比較して増加しつつある間、継続される。前述したとおり、対照値と比較してプラトーに到達することは、治療の適用を中止することができるかまたは用量または頻度を減少させることができることの指標である。
【0151】
[0159]その他の方法において、免疫応答の対照値(たとえば、平均および標準偏差)を、治療剤での治療を受け、そしてその免疫応答が治療に反応してプラトーに達した個体の対照集団から決定した。患者における免疫応答の測定値を、対照値と比較する。患者における測定レベルが、対照と顕著には(たとえば、1標準偏差以上)異ならない場合は、治
療を中断することができる。患者におけるレベルが対照値を顕著に下回る場合、物質の継続的投与が保証される。患者におけるレベルが対照値よりも低い値で持続する場合、例えば、治療計画を別のアジュバントを使用することへ変更することなどを示している可能性がある。
【0152】
[0160]その他の方法において、現在は治療を受けていないが、以前に治療過程を受けたことがある患者を、免疫応答についてモニターし、治療の再開が必要かどうかを決定する。患者における免疫応答の測定値を、以前に行った治療過程の後、患者において以前に得られた免疫応答の値と比較することができる。以前の測定値と比較した場合の顕著な減少(すなわち、同一サンプルの繰り返し測定値における誤差の典型的な外延以上)は、治療を再開する可能性があることを示唆している。あるいは、患者において測定された値を、治療経過を行った後の患者集団において決定された対照値と比較することができる(平均+標準偏差)。あるいは、患者における測定値を、疾患の症候を示さない予防的処置した患者の集団または疾患の特徴の改善を示す治療的処置した患者の集団において、対照値と比較することができる。すべてのこれらの事例において、対照レベルと比較して顕著な減少(すなわち、標準偏差以上)が、患者において治療を再開すべきかどうかの指標である。
【0153】
[0161]解析用の組織サンプルは、典型的には、患者由来の、血液、血漿、血清、粘液、または脳脊髄液である。サンプルを、いずれかの型のalpha-SNに対する免疫応答の指標について、典型的にはNACまたはAβについて、解析する。免疫応答を、例えば、alpha-SNまたはAβに対して特異的に結合する抗体またはT細胞の存在から、決定することができる。alpha-SNに対して特異的な抗体を検出するためのELISA法は、実施例の項に記載される。
反応性T細胞を検出する方法は、上述した(定義の項を参照)。ある方法においては、免
疫応答を、上述のIIIの節において記載するものなどの除去アッセイを用いて決定する。
そのような方法において、試験すべき患者由来の組織サンプルまたは血液サンプルを、LB(たとえば、synuclein/hAPPトランスジェニックマウス由来のもの)およびFc受容体を有する貪食性細胞と接触させる。それに引き続いて、その後、LBの除去をモニターする。除去反応の存在および程度は、試験中の患者の組織サンプル中におけるalpha-SNを除去するために有効な抗体の存在およびレベルの指標を提供する。
【0154】
2. 受動免疫
[0162]一般的には、受動免疫をモニターするための手順は、上述した能動免疫をモニターするための手順と同様である。しかしながら、受動免疫後の抗体プロファイルは、典型的には、抗体濃度の急激なピークを示し、その後指数的な減衰を示す。さらに投薬することなく、この減衰は、投与された抗体の半減期に依存して、数日から数ヶ月の期間以内に、処置前レベルに近づく。例えば、いくつかのヒト抗体の半減期は、20日程度である。
【0155】
[0163]ある方法においては、患者におけるalpha-SNに対する抗体のベースライン測定を、投与前に行い、2回目の測定を、そのすぐ後に行ってピーク抗体レベルを測定し、およ
び1またはそれ以上のさらなる測定を、抗体レベルの減衰をモニターするために、間隔を
あけて行う。抗体レベルが、ベースラインまで減少するか、またはベースライン下の予め設定したピーク%(たとえば、50%、25%または10%)まで減少した場合、抗体のさらなる用量の投与を行う。ある方法においては、ピークまたは引き続いて測定されるバックグラウンド以下のレベルを、以前に測定した参照レベルと比較して、その他の患者における有益な予防的処置計画または治療的処置計画を構成する。測定された抗体レベルが参照レベルと比較して顕著に低い場合(例えば、処置から利益を得る患者において、平均マイナス参照値の1標準偏差)、抗体の追加用量を投与することが示唆される。
【0156】
3. 診断キット
[0164]本発明は、さらに、上述した診断方法を行うための診断キットを提供する。典型的には、そのようなキットは、alpha-SNに対する抗体に特異的に結合する物質を含有する。このキットにはまた、標識が含まれていてもよい。alpha-SNに対する抗体を検出するため、標識は典型的には、標識抗-イディオタイプ抗体の形態である。抗体の検出のため、
物質は、予め固相、例えば、マイクロタイターディッシュのウェル、に結合させた状態で供給することができる。キットは、典型的には標識化が含有されており、キットの使用のため方向付けを提供する。ラベリングには、測定された標識レベルをalpha-SNに対する抗体レベルと相関づける、図表またはその他の対応するレジュメが含まれうる。用語「ラベリング」は、その製造、輸送、販売、または使用のあいだのいずれの時でも、キットに添付されるか、または付随する、いずれかの記載された資料または記録された資料のことをいう。例えば、用語「ラベリング」は、広告リーフレットおよびブローシャー、パッケージ材料、指示書、オーディオカセットおよびビデオカセット、コンピュータディスク、ならびにキットに直接的に書き込むこと、が包含される。
【0157】
[0165]本発明はまた、in vivo画像化を行うための診断キットも提供する。そのような
キットは、典型的には、alpha-SNのエピトープ、好ましくはNAC内部のもの、に結合する
抗体を含有する。好ましくは、抗体を標識化するか、または二次標識化試薬をキット中に含ませる。好ましくは、キットを、in vivo画像化アッセイを行うための指示にしたがっ
て標識する。
【0158】
VIII. In Vivo画像化
[0166]本発明は、患者におけるLBをin vivo画像化する方法を提供する。そのような方
法は、PDまたは脳内のLBの存在と関連しているその他の疾患、もしくはそれらに対する感
受性を、診断するため、またはそれらの診断を確認するために有用である。例えば、この方法を、痴呆の兆候を示す患者に対して使用することができる。患者がLBを有している場合、患者は、例えばPDに罹患している可能性が高い。この方法を、無症候性患者に対しても使用することができる。アミロイドの異常な沈着の存在は、将来的な症候性疾患の感受性を示唆する。この方法は、疾患の進行および/または以前にパーキンソン病と診断された患者における治療に対する反応をモニターするために有用でもある。
【0159】
[0167]この方法は、患者におけるalpha-SNに結合する抗体などの試薬を投与すること、そしてその後その試薬をそれが結合した後に検出することにより機能する。好ましい抗体は、完全長NACPポリペプチドに対して結合することなく、患者におけるalpha-SN沈着物に結合する。NAC内部のalpha-SNのエピトープに結合する抗体が特に好ましい。所望される
場合、Fabsなどの完全長定常領域を欠損する抗体フラグメントを使用することにより、除去反応を回避することができる。ある方法においては、同一の抗体が、治療試薬および診断試薬の両方として機能することができる。一般的には、alpha-SNのN-末端のエピトープに結合する抗体は、C-末端のエピトープに結合する抗体と同等の強さのシグナルは示さない。これはおそらく、N-末端エピトープは、LB中では到達できないものだからである(Spillantini et al PNAS, 1998)。したがって、このような抗体は、あまり好ましくない。
【0160】
[0168]診断試薬を、患者の体内に静脈注射により投与するか、または頭蓋内注射により、頭蓋骨を貫通する穴をドリルで開けることにより、脳内に直接注入することができる。試薬の投与量は、治療方法と同一の範囲内にすべきである。典型的には、試薬を標識するが、ある方法においては、alpha-SNに対する親和性を有する一次試薬を標識せず、そして二次標識化試薬を使用して一次試薬に結合させる場合もある。標識の選択は、検出手段に依存する。例えば、蛍光標識は、光学的検出に適している。常磁性標識を使用することが、外科的な侵襲なく断層X線写真装置検出をおこなうために適している。放射活性標識を
、PETまたはSPECTを使用して検出することもできる。
【0161】
[0169]標識化部位の数、サイズおよび/または強度を、対応するベースライン値と比較することにより、診断を行う。ベースライン値は、病気のない個体の集団における平均レベルを示すことができる。ベースライン値はまた、同一患者において以前に測定されたレベルを示すこともできる。例えば、ベースライン値を、治療をはじめる前に患者において測定することができ、そしてその後、測定値をベースライン値と比較する。ベースラインと比較した値の減少は、治療に対する積極的反応のシグナルである。
【0162】
実施例
実施例1.ヒトα-Synucleinトランスジェニックマウスのヒトα-Synucleinによる免疫化の結果、血液脳関門を通過する高力価抗-α-Synuclein抗体の産生を引き起こす
[0170]完全長組換えヒトalpha-SNを、1 mg/mlの濃度で、1×リン酸緩衝塩類溶液(PBS
)中に再懸濁させた。それぞれの注射に対して、50μlのalpha-SNを使用した;150μlの1×PBSを添加する1注射あたり50μgの最終濃度とした。ついで、完全フロイントのアジュ
バント(CFA)を、alpha-SNまたはPBSのみ(対照)のいずれかに対して1:1で添加し、ボルテックスにかけ、そして超音波にかけて完全にエマルジョンを再懸濁させた。初回の注射のため、8種のD系ヒトalpha-SNトランスジェニック(tg)単独のトランスジェニック4
〜7ヶ月齢マウス(Masliah, et al. Science 287: 1265-1269 (2000))に、CFA中ヒトalpha-SNを注射し、そして対照として、4種のD系ヒトalpha-SN tgマウスにCFA中PBSを注射した。全6回の注射をマウスは受けた。3回の注射を、2週間間隔で行い、ついで3回の注射を1ヶ月間隔で行った。実験開始から5ヶ月後の動物の人道的処理に関するNIHガイドライン
を使用して、動物を犠死させた。抗体力価を測定するために血液サンプルを回収した後、脳を、PBS中4%パラホルムアルデヒド中で4日間、浸漬固定した。ELISAによるヒトalpha-SNに対する抗体レベルを表1に示す。処置されたマウスを、力価により2群に分ける。第一
群は、2〜8,000の中程度力価を示した。第二群は、12000〜30000の高力価を示した。対照マウスでは力価はみられなかった。神経病理学的解析では、高力価を示したマウスで、synuclein封入体のサイズが顕著に減少したことが示された。中程度の力価を示すマウスで
は、減少はより少ないものであることが示された。図2(パネルa〜d)は、(a)非トランスジェニックマウス、(b)CFAのみで処理されたトランスジェニックマウス、(c)中程
度の力価を示す、α-synucleinおよびCFAで免疫化されたトランスジェニックマウス、お
よび(d)高力価を示す、α-synucleinおよびCFAで免疫化されたトランスジェニックマウス、におけるsynuclein封入体を示す。サンプルを、抗ヒトalpha-SN抗体を用いて免疫染
色することにより可視化した。図2は、パネル(b)におけるsynuclein封入体(パネル(a)ではない)を示す。パネル(c)において、処置されたマウス、中程度の力価、、封入
体は、いくらか強度が低下している。パネル(d)においては、封入体は強度がかなり弱
まった。パネル(e)〜(h)は、パネル(a)〜(d)と同一の4種のマウスにおける脳内
の抗-IgGのレベルをそれぞれ示す。IgGがパネル(g)中に存在すること、そしてパネル(h)中により強い程度で存在することを見て取ることができる。データは、予防的に投与
されたalpha-SNに対する抗体が、血液脳関門を通過し、そして脳に到達することを示す。アストログリア細胞のマーカーであるGAPについての、図の最初の2列におけるように同一の4匹のマウスについての、染色を示すパネル(i)〜(l)は対するものである。パネル
(k)および(l)は、(i)および(j)と比較して、染色が中程度増強されたことを示すことを見て取れる。これらのデータは、synuclein沈着の除去は、穏やかなアストログリ
ア反応およびミクログリア反応が付随することを示す。
【0163】
【表1】

II. Synuclein封入体を除去する抗体についてのIn Vitroスクリーニング
[0171]GT1-7神経細胞(Hsue et al. Am. J. Pathol. 157: 401-410 (2000))を、マウ
スalpha-SNを発現するpCR3.1-T発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)でトランスフェクトし、そして発現ベクター単独でトランスフェクトした細胞と比較した(図3、それ
ぞれ、パネルBおよびA)。ベクター単独でトランスフェクトした細胞(パネルA)は、線
維芽細胞的な外観を有するが、一方、alpha-SNでトランスフェクトした細胞は球状をしており光学顕微鏡および共焦点スキャニング顕微鏡の両方でみることができる細胞表面に封入体を有する。ついで、トランスフェクト細胞を、ウサギ免疫前血清(パネルC)または
マウスalpha-SN C末端残基131-140に対する親和性精製ウサギポリクローナル抗体67-10(Iwai, et al., Neuron 14: 467 (1995))(パネルD)で処置した。封入体は、パネルCよ
りもパネルDにおいて、より弱く染色されることが見て取れて、このことから、α-synucl
einに対する抗体が、封入体を除去しまたはその発生を予防する際に効果的であったこと
が示唆される。図4は、ウサギ免疫前血清および67-10ポリクローナル抗体で処置したGT1-7トランスフェクト細胞の粒子および細胞質画分のゲル解析を示す。細胞質画分におけるsynucleinレベルは、免疫前血清またはalpha-SNに対する抗体での処置によっても、多くの場合変化しなかったことが見て取れる。しかしながら、alpha-SNのバンドは、alpha-SNに対する抗体で処置したGT1-7細胞の膜画分においては消失している。これらのデータから
、α-synuclein抗体活性は、結果として細胞膜に結合したsynucleinの除去を引き起こす
ことが示される。
【0164】
[0172]トランスフェクトしたGT1-7細胞を使用して、図3におけるような免疫組織化学的解析、光学顕微鏡によるか、または図4におけるようなゲル解析によるか、のいずれかに
より検出することにより、synuclein封入体を除去する際の活性について抗体をスクリー
ニングすることができる。
【0165】
III.α-Synucleinを用いた免疫化の予防的効果および治療的効果
i.ヒトα-synuclein tgマウスの免疫化
[0173]この研究に関して、ヘテロ接合性ヒトalpha-SNトランスジェニック(tg)マウス(D系統)(Masliah et al., Am. J. Pathol (1996) 148: 201-10)および非トランスジェニック(nontg)対照を使用する。実験動物は、3群に分割する。第I群については、2ヶ月齢に初めて8ヶ月のあいだマウスに免疫化することにより、初期免疫化の予防的効果を試
験する。第II群については、若齢成体マウスには、6ヶ月齢から初めて8ヶ月のあいだ、ワクチン接種し、いったん中程度の病原性が確立された後、免疫により疾患の進行を低減することができるかどうかを調べる。第III群については、より老齢のマウスを12ヶ月齢か
ら初めて4ヶ月のあいだ免疫化し、いったん強い病原性が確立されてしまった後、免疫に
より症候の重症度を低減することができるかどうかを調べる。すべての群について、マウスを、組換えヒトalpha-SN+CFAまたはCFA単独のいずれかで免疫し、そしてそれぞれの実験につき、20匹のtgマウスおよび10匹のnontgマウスを使用する。それらのうち、10匹のtgマウスをヒトalpha-SN+CFAを用いて免疫化し、そしてその他の10匹のtgをCFA単独で免
疫化する。同様に、5匹のnontgマウスをヒトalpha-SN+CFAを用いて免疫化し、そしてそ
の他の5匹をCFA単独で免疫化する。簡単に述べると、免疫化プロトコルは、CFA中精製組
換えヒトalpha-SN(2 mg/ml)を用いて初回注射すること、続いてヒトalpha-SNをIFAと組み合わせて1ヶ月後に再注射すること、からなる。続いて、マウスにこの混合物を1ヶ月に一回、再注射する。ヒトalpha-SN tg(n=3/それぞれについて;6ヶ月齢)およびnontg(n=3/それぞれについて;6ヶ月齢)マウスの小規模な部分集合において、マウス(m)alpha-SN、ヒトβsynucleinまたは変異体(A53T)ヒトalpha-SNを用いた免疫化からなる追加の実験を行う。
【0166】
[0174]alpha-SN 抗体レベルは、ウェルあたり0.4μgの精製された完全長alpha-SNでコ
ーティングされた96ウェルマイクロタイタープレートを使用して、4℃にて炭酸ナトリウ
ムバッファー、pH 9.6中で一晩インキュベートすることにより、決定する。ウェルを、各200μLの0.1%Tweenを含有するPBSを用いて4回洗浄し、そしてPBS-1%BSA中で37℃にて1時
間ブロッキングする。血清サンプルを、A列から初めて“ウェル内”で1:3連続希釈し、1:150〜1:328,050希釈の範囲とする。対照実験のため、マウスモノクローナル抗体のサ
ンプルを、alpha-SN、タンパク質なし、そしてバッファーのみブランクに対して実行する。サンプルを、4℃にて一晩インキュベーションし、その後ヤギ抗-マウスIgGアルカリホ
スファターゼ結合抗体(1:7500、Promega, Madison, WI)を用いて2時間インキュベーションする。ついで、Atto-phos(商標)アルカリホスファターゼ蛍光基質を、30分間のあ
いだ、室温にて添加する。プレートを、450 nmの励起波長および550 nmの放射波長で読みとる。結果を、縦座標に相対蛍光単位をそして横座標に血清希釈度をとり、片対数グラフ上にプロットする。抗体力価を、最大抗体結合から50%減少した希釈として規定する。
【0167】
[0175]それぞれの群について、処置の最後に、記載されているとおり、マウスに回転棒(rotarod)中での運動評価を行った(Masliah, et al. (2000))。解析の後、マウスを
安楽死させ、そして以下に示すような詳細な神経化学的解析および神経病理学的解析のために、脳を取り出す。簡単に記載すれば、凝集化および非凝集化ヒトalpha-SNの免疫反応性をウェスタンブロットにより調べるため、脳の右半球を凍結し、そしてホモジナイズする(Masliah, et al. (2000))。脳の左半球は、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、免疫細胞化学および超微細構造解析のため、ビブラトーム(vibratome)で連続切片にする

【0168】
ii.免疫細胞化学的解析および神経病理学的解析
[0176]免疫が低下するかどうかを決定するため、ヒトalpha-SN凝集切片を、ヒトalpha-SNに対するウサギポリクローナル抗体を使用して免疫染色する(1:500)。4℃にて一晩
インキュベーションした後、切片をビオチニル化抗-ウサギ二次抗体とインキュベートし
、その後アビジンD-ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)複合体とインキュベー
トする(1:200, ABC Elite, Vector)。切片はまた、ビオチニル化抗-ウサギ、マウス、またはヒト二次抗体のみを用いて、免疫染色される。抗-マウス二次抗体を用いた実験で
は、ヒトalpha-SNに対する抗体が、脳内で交差反応するかどうかを決定する。0.001% H202を含む50 mM Tris-HCl(pH 7.4)中の0.1% 3,3,-ジアンミノベンジジンテトラヒドロク
ロリド(DAB)を用いて、反応を可視化し、そしてその後、切片をEntellanを用いてスラ
イド上にマウントする。免疫反応性のレベルは、Quantimet 570Cを用いた光学的濃度測定により、半定量的に評価する。これらの切片はまた、画像解析によっても研究され、多数のalpha-SN免疫反応性封入体を決定し、そしてこの信頼性のあるalpha-SN凝集測定は、ワクチン摂取の抗-凝固性作用の価値のある指標として作用する(Masliah, et al. (2000)
)。
【0169】
[0177]神経変性のパターンの解析は、海馬、前頭皮質、側頭皮質および基底核におけるシナプス密度および樹状細胞密度を、シナプトフィジンと微小管結合タンパク質2(MAP2
)についての二重免疫標識したビブラトーム切片を使用して、そしてLSCMで可視化することにより解析することによって行う。神経変性の追加の解析は、尾側果核(caudoputamen)および黒質(SN)におけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)免疫反応性を、以前に記載されたとおり決定することにより行う(Masliah, et al. (2000))。切片を、LSCMを用いて画像化し、そしてそれぞれの個々の画像を、直線範囲内でピクセル強度を示すTH-免疫
反応性末端が含まれるように、相互作用的に閾値を設定する。スケールは、ピクセル対μm比を決定するために設定する。ついで、この情報を使用して、TH-免疫反応性末端によりカバーされる神経網の%領域を計算する。これらの同一の切片を使用して、SN中のTHニュ
ーロンの数もまた評価する。
【0170】
[0178]免疫化に対する免疫応答のパターンを評価するため、ヒトGFAP、MHCクラスII、Mac 1、TNF-α、IL1βおよびIL6に対する抗体を用いた免疫細胞化学的解析および超微細構造解析を、nontgの脳切片および組換えヒトalpha-SNで免疫化したalpha-SN tgマウス、および対照免疫源で免疫化したマウスの脳切片中で行う。
【0171】
iii. 行動解析.
[0179]運動活性について、マウスを、以前に記載されたように(Masliah, et al. (2000))、回転棒(rotarod)(San Diego Instruments, San Diego, CA)中で、2日間、解析する。第1日目に、マウスを、5つの試行についてトレーニングする:最初のものは10 rpmで、2番目は20 rpmで、そして3番目〜5番目は40 rpmである。第2日目には、マウスを、それぞれ40 rpmで、7回の試行について試験した。マウスを、シリンダーに個別に入れ、そ
して回転スピードを240秒間以上かけて0から40 rpm間で増加させる。マウスが棒の上に居
続ける時間の長さ(落ちるまでの時間)を記録し、そして運動機能の測定値として使用する。
【0172】
IV.α-Synucleinフラグメントを用いた免疫化
[0180]10〜13ヶ月齢のヒトalpha-SNトランスジェニックマウスを、alpha-SNの9箇所の
異なる領域を用いて免疫化し、どのエピトープが効率的な反応を引き起こすかを決定する。9種の異なる免疫源 および一つの対照を、上述したように、腹腔内注射する。免疫源には、4種のヒトalpha-SNペプチド抱合体が含まれ、これらすべてはシスチン結合を介して
、ヒツジ抗-マウスIgGに結合する。Alpha-SNおよびPBSを、それぞれ陽性対照および陰性
対照として使用する。上述したように力価をモニターし、そしてマウスを3〜12ヶ月の注
射の最後に安楽死させる。組織化学、alpha-SNレベル、そして毒性学的解析を、死後決定する。
【0173】
i. 免疫源の調製
[0181]共役alpha-SNペプチド:H alpha-SNペプチド抱合体の調製品を、alpha-SNペプチドに対して添加される人工的システインを介して、架橋剤スルホ-EMCSを使用して結合さ
せることにより、調製する。alpha-SNペプチド誘導体を、以下の最後のアミノ酸配列を用いて合成する。それぞれの場合、挿入されたシステイン残基の位置を、下線により目立たせる。
【0174】
【化16】

[0182]カップリング反応を調製するため、10 mgのヒツジ抗-マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を、10 mMのホウ酸ナトリウムバッファー、pH 8.5に一晩透析
する。ついで、Amicon Centriprepチューブを使用して、透析された抗体2 mL用量にまで
濃度を上昇させた。10 mgのスルホ-EMCS。
【0175】
[0183][N(ε-マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド](Molecular Sciences
Co.)を、1 mL脱イオン水中に溶解する。40倍モル過剰のスルホ-EMCSを、ヒツジ抗-マウスIgGに対して攪拌しながら滴加し、その後溶液をさらに10分間攪拌する。活性化ヒツジ
抗-マウスIgGを、0.1 M NaP04、5 mM EDTA、pH 6.5を用いて平衡化した10 mLゲル濾過カ
ラム(Pierce Presto Column, Pierce Chemicalsから入手)上を通過させることにより、精製し、そしてバッファー交換を行う。280 nmの吸光度により同定される抗体含有性画分をプールし、そしてODあたり1.4 mgを消失係数として使用して、約1 mg/mLの濃度に希釈
化する。40倍モル過剰のalpha-SNペプチドを、10 mgをはじめは0.5 mLのDMSO中に溶解し
、その後10 mM NaP04バッファを用いて20 mLにまで希釈するalpha-SNペプチド以外は、20
mLの10 mM NaP04、pH 8.0中に、溶解する。ペプチド溶液を、10 mLの活性化ヒツジ抗-マウスIgGに対してそれぞれ添加し、そして室温にて4時間震盪させる。得られた抱合体 を
、10 mL未満の最終容量となるように、Amicon Centriprepチューブを使用して濃縮し、そしてその後PBSに対して透析して、バッファー交換をしそして遊離のペプチドを取り除く
。抱合体を、滅菌のために0.22μmのポアサイズのフィルターを通し、そして次いで1 mg
の画分に分注し、そして-20℃で冷凍保存する。複合体の濃度を、BCAタンパク質アッセイ(Pierce Chemicals)を標準曲線用のウマIgGと共に使用して測定する。抱合を、活性化
ヒツジ抗-マウスIgGの分子量の増加と比較して、複合体化ペプチドの分子量の増加により実証する。
【0176】
V. α-Synucleinに対する抗体を使用する受動免疫
[0184]ヒトalpha-SNマウスに、以下の様にして、PBS中0.5 mgの抗-alpha-SNモノクローナル抗体を注射する。すべての抗体調製物を精製し、低エンドトキシンレベルにする。alpha-SNのフラグメントまたはそのより長い型をマウス体内に注射し、ハイブリドーマを作製し、そして、ハイブリドーマをalpha-SNのその他の重複しないフラグメントに結合することなく、alpha-SNの所望するフラグメントに対して特異的に結合する抗体についてスクリーニングすることにより、フラグメントに対するモノクローナル抗体を調製することができる。
【0177】
[0185]必要とされる場合、4ヶ月間にわたってマウスの腹腔内に注射し、ELISA力価により測定される循環中抗体濃度を、alpha-SNまたはその他の免疫源に対するELISAにより規
定されるものと比較して、1:1000以上となるように維持する。力価を上述したようにモ
ニターし、そしてマウスを6箇月の注射の最後に安楽死させる。組織化学的には、alpha-SNレベルおよび毒性学を、致死後に行う。
【0178】
VI. Syn/APPトランスジェニックマウスのAβ免疫化
[0186]この実験は、3種のトランスジェニックマウス:α-synuclein導入遺伝子を有す
るトランスジェニックマウス(SYN)、APP導入遺伝子を有するAPPマウス(Games et al.
)、および単独のトランスジェニック動物を交配させて作出する二重トランスジェニックSYN/APPマウス;に対するAβ免疫化の作用を比較する。二重トランスジェニックマウスは、Masliahら(PNAS USA 98: 12245-12250 (2001))に記載される。これらのマウスは、アルツハイマー病およびパーキンソン病の両方ともを有する個体のモデルであることを示す。表2は、異なる群、研究において使用されるマウスの齢、処置手順、およびAβに対する抗体の力価を示す。顕著な力価が、3種のマウスすべてにおいて生成されたことが見て取
れる。図5は、処置被検体由来の脳切片を顕微鏡により調べることにより測定した、脳内
のAβのアミロイド斑により覆われる領域%を示す。実質的な沈着物は、APPマウスおよびSYN/APPマウスにおいて蓄積するが、しかしながらSYNマウスまたは非トランスジェニック対照においては蓄積しない。沈着物は、SYN/APP二重トランスジェニックマウスにおいて
より多い。Aβ1〜42で免疫化すると、APPマウスおよびSYN/APPマウスの両方において沈着物が減少する。図6は、共焦点レーザースキャニングおよび光学顕微鏡により検出される
ように、様々な種類のマウスにおけるsynuclein沈着物を示す。Synuclein沈着物は、CFA
のみで処置したSYNマウスおよびSYN/APPマウスにおいて蓄積する。しかしながら、Aβ1〜42およびCFAで処置したマウスの同一の種類のマウスにおいては、synuclein沈着レベルにおける顕著な減少が生じる。これらのデータは、Aβでの処置が、Aβ沈着物の除去だけでなく、synucleinの除去にも有効であることを示唆している。したがって、Aβまたはそれに対する抗体での処置は、アルツハイマー病 だけでなく、アルツハイマー病とパーキン
ソン病との合併症、およびアルツハイマー病を有さない患者におけるパーキンソン病の治療に有用である。SYN/APPマウスにおける抗Aβ抗体の力価は、synuclein封入体の形成の
減少と相関していた(r=-0.71、p<0.01)。
【0179】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】[0025]図1は、alpha-SN(SEQ ID: 1)のアミノ酸配列を、2種のNACアミノ酸配列、SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 3とそれぞれ整列させて示す。
【図2】[0026]図2は、非トランスジェニックマウス(パネルA、E、およびI)、アジュバントのみで免疫化したalpha-SNトランスジェニックマウス(パネルB、F、J)、およびalpha-SNに対する低力価の抗体(パネルC、G、およびK)、および高力価の抗体(パネルD、H、およびI)を生み出したalpha-SNで免疫化したalpha-SNトランスジェニックマウス由来の脳切片を、免疫組織化学染色したことを示す。切片を、抗-alpha-synuclein抗体での染色に供し、synucleinレベル(パネルA-D)、切片中に存在する全IgGレベルを決定するための抗-IgG 抗体(パネルE-H)、および星状膠細胞のマーカーであるグリア原線維性酸性タンパク質(GFAP)を検出する。
【図3】[0027]図3は、光学顕微鏡により観察した場合の、トランスフェクトGT1-7細胞におけるsynuclein凝集に対する、抗-mSYNポリクローナル抗体の作用を示す。
【図4】[0028]図4は、免疫前血清および67-10抗体とで、(1:50)の濃度で解析前48時間、処置したGT1-7α-syn細胞の細胞質(C)および膜(P)におけるsynucleinレベルのウェスタンブロットである。
【図5】[0029]図5は、Aβ1-42免疫化の、非トランスジェニック、SYNトランスジェニックマウス、APPトランスジェニックマウスおよびSYN/APPトランスジェニックマウスの脳におけるアミロイド沈着に対する作用の研究の結果を示す。APPマウスおよびSYN/APPマウスにおいてみられる検出可能なアミロイドレベルは、Aβ1-42免疫化により減少する。
【図6】[0030]図6は、Aβ1-42免疫化の、非トランスジェニックマウス、SYNトランスジェニックマウス、APPトランスジェニックマウスおよびSYN/APPトランスジェニックマウスの脳におけるsynuclein封入体形成に対する作用の研究の結果を示す。SYNマウスおよびSYN/APPマウスにおいて検出されるSynuclein封入体は、Aβ1-42免疫化により、減少する。
【図7】[0031]図7は、抗体がalpha- SN凝集化を防止する直接的なおよび間接的なメカニズムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳内のLewy小体またはα-synuclein凝集を特徴とする疾患を予防または治療する方法であって、α-synucleinに対する免疫原性応答を誘導する物質の有効な処方計画を、患者に対して投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
免疫原性応答が、α-synucleinに対する抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
物質がα-synucleinである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
物質が、α-synucleinについての免疫原性α-synucleinフラグメントである、請求項1
に記載の方法。
【請求項5】
免疫原性フラグメントが、α-synuclein(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸35〜65である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
免疫原性フラグメントが、α-synuclein(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸130〜140を含み、そして全40アミノ酸未満を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
フラグメントのC-末端アミノ酸が、α-synucleinのC-末端アミノ酸である、請求項4に
記載の方法。
【請求項8】
患者が、Lewy小体を特徴とする疾患に罹患しているかまたはそのリスクがあることを決定することをさらに含み、ここで決定する工程が、投与する工程よりも前に生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
決定する工程が、患者が、Lewy小体を特徴とする疾患の臨床的症候を罹患することを決定する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
患者が、Aβのアミロイド沈着を特徴とする疾患の臨床的症候を含まないことを決定す
ることをさらに含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
α-synucleinを、アジュバントとともに投与する、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
免疫原性α-synucleinフラグメントを、アジュバントとともに投与する、請求項4に記
載の方法。
【請求項13】
α-synucleinを、キャリア分子と連結し、複合体を形成させる、請求項3に記載の方法

【請求項14】
α-synucleinを、α-synucleinのN-末端にてキャリア分子と結合させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
免疫原性α-synucleinフラグメントを、キャリア分子と連結し、複合体を形成させる、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
免疫原性α-synucleinフラグメントを、免疫原性α-synucleinフラグメントのN-末端にてキャリア分子に連結させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
物質が、α-synucleinまたはその免疫原性フラグメントに対する抗体である、請求項1
に記載の方法。
【請求項18】
抗体が、ヒト化抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
抗体がヒト抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
抗体が、ヒトIgG1異性体の抗体である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
抗体が、モノクローナル抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
抗体が、ポリクローナル抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
抗体を、α-synucleinペプチドにより免疫化したヒトから調製する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
ヒトが、抗体により処置すべき患者である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
抗体を、医薬組成物として医薬的担体とともに投与する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項26】
抗体を、0.0001〜100 mg/kg、好ましくは少なくとも1 mg/kg体重の用量で抗体を投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
抗体を、長期間にわたり、たとえば、少なくとも6ヶ月にわたり、複数回投与する、請
求項17に記載の方法。
【請求項28】
抗体を、徐放性組成物として投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
抗体を、腹腔内、経口的、皮下、頭蓋内、筋肉内、局所的、鼻内、または静脈内で投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
抗体を、少なくとも1つの抗体鎖をコードするポリヌクレオチドを、患者に対して投与
するにより投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
ポリヌクレオチドを、患者体内で抗体鎖を産生するために発現する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ポリヌクレオチドが、抗体の重鎖および軽鎖をコードし、そしてポリヌクレオチドが患者体内で発現されて、重鎖および軽鎖を生成する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
患者について、患者血液中の投与された抗体のレベルをモニターすることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項34】
抗体を、Lewy小体を有する神経細胞内に内在化させ、それによりLewy小体を消散させる、請求項17に記載の方法。
【請求項35】
抗体を、Lewy小体を有する神経細胞の外部表面に結合させ、それによりLewy小体を消散させる、請求項17に記載の方法。
【請求項36】
Aβに対する免疫原性応答を誘導する物質の有効な処方計画を患者に対して投与するこ
とをさらに含む、請求項1-4または17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
物質が、Aβまたはその免疫原性フラグメントである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
物質が、Aβまたはその免疫原性フラグメントに対する抗体である、請求項36に記載の
方法。
【請求項39】
疾患がパーキンソン病である、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
患者がアルツハイマー病を有さず、そしてそのリスク因子を有さない、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
α-synucleinに対する免疫原性応答を誘導する物質の投与およびAβに対する免疫原性
応答を誘導する物質の投与が、同時的、別々または連続的である、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
脳内でのLewy小体またはα-synuclein凝集を特徴とする疾患を予防しまたは治療する方法であって、Aβに対する免疫原性応答を誘導する物質の有効な処方計画を患者に対して
投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
物質が、Aβまたはその免疫原性フラグメントである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
物質が、Aβまたはそのフラグメントに対する抗体である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
Lewy小体またはα-synuclein蓄積を特徴とする疾患を予防しまたは治療する方法であって、α-synucleinに対する免疫原性応答を誘導する物質およびAβに対する免疫原性応答
を誘導する物質の有効な処方計画を、患者に対して投与することを含む、前記方法。
【請求項46】
物質が、末梢的に投与される、請求項1または45に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも6ヶ月の期間にわたり、複数用量投与することを含む、請求項1または45に記載の方法。
【請求項48】
患者が無症候性である、請求項1または45に記載の方法。
【請求項49】
患者が、疾患に関するリスク因子を有する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
患者が疾患を有する、請求項1または42に記載の方法。
【請求項51】
疾患がパーキンソン病である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
患者がパーキンソン病を有し、そして投与の結果、パーキンソン病の兆候または症候の改善をもたらす、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
患者がパーキンソン病を有し、そして投与により患者の運動神経特性(motor characteristics)を改善する、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
患者におけるパーキンソン病の兆候または症候をモニターすることをさらに含む、請求項1〜4、17、42、または45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
患者が、アルツハイマー病を有さない、請求項1-4、17、42、または45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
患者が、アルツハイマー病を有さず、そしてそのリスク因子を有さない、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
患者におけるLewy小体の構成要素に対する免疫原性応答を誘導するために有効な物質を含む、医薬組成物
【請求項58】
物質が、Lewy小体の構成要素に対して特異的な抗体またはそのフラグメントである、、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項59】
物質が、α-synuclein、免疫原性α-synucleinフラグメント、6CHC-1、または免疫原性6CHC-1フラグメントである、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項60】
物質が、免疫原性α-synucleinフラグメントである、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項61】
免疫原性α-synucleinフラグメントがNACである、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
物質がキャリア分子に連結され、複合体を形成する、請求項57〜61のいずれか1項に記
載の医薬組成物。
【請求項63】
Aβに対する免疫原性応答を誘導するために有効な物質をさらに含む、請求項57-62のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項64】
医薬的に許容可能なアジュバントをさらに含む、請求項57-63のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項65】
Lewy小体が関連する疾患を予防しまたは治療する際の活性について抗体をスクリーニングする方法であって、
synucleinを発現する神経細胞を抗体と接触させる工程;
接触させることにより、抗体と接触させなかった対照細胞と比較して、細胞内のsynuclein蓄積が減少するかどうかを決定する工程;
を含む、前記方法。
【請求項66】
患者の脳内のLewy小体疾患を治療または予防する際の活性について抗体をスクリーニングする方法であって、
α-synucleinの少なくとも5つの連続したアミノ酸を含むポリペプチドと抗体とを接触
させる工程;そして
抗体が前記ポリペプチドに対して特異的に結合するかどうかを決定する工程、ここで、特異的な結合が、抗体が疾患を治療する際に活性を有することの示唆を提供する;
ことを含む、前記方法。
【請求項67】
物質がLewy小体を特徴とする疾患を治療する際に有効な活性を有するかどうかを決定するために物質をスクリーニングする方法であって、
前記物質を、前記物質によりLewy小体疾患の特徴を発生する傾向があるトランスジェニック非ヒト動物と接触させる工程;
前記物質が、対照トランスジェニック非ヒト動物に関連した特徴を発生する程度または速度に影響を与えるかどうかを決定する工程;
ここで前記物質が、α-synucleinの免疫原性フラグメントまたはα-synucleinに対する
抗体である、前記方法。
【請求項68】
トランスジェニック非ヒト動物が、α-synucleinを発現するトランスジーンを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
α-synucleinトランスジーンが全長α-synucleinである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
トランスジェニック非ヒト動物が、アミロイド前駆体タンパク質を発現するトランスジーンをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
(a)α-synuclein、α-synucleinの免疫原性フラグメント、α-synucleinに対する抗
体、α-synucleinフラグメントに対する抗体;または(b)Aβ、Aβの免疫原性フラグメ
ント、Aβに対する抗体、またはAβフラグメントに対する抗体;の、Lewy小体またはα-synuclein凝集を特徴とする疾患の治療のための調製品の製造の際の使用。
【請求項72】
(a)および(b)が、疾患の同時的な治療、別々な治療、または連続的な治療のための調製品の製造に対して使用される、請求項71に記載の使用。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−280663(P2010−280663A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143890(P2010−143890)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【分割の表示】特願2004−550268(P2004−550268)の分割
【原出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】