説明

SiCO−Li系複合体及びその製造方法並びに非水電解質二次電池用負極材

【解決手段】架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物の架橋物を焼結、無機化して得たSi−C−O系コンポジットに金属リチウム又は有機リチウム化合物をドープすることによって得られたSiCO−Li系複合体。
【効果】本発明のSiCO−Li系複合体は、非水電解質二次電池用負極材として用いた場合、良好な初期効率を有し、良好なサイクル性、特異な放電特性を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池の負極材として好適なSiCO−Li系複合体及びその製造方法、並びにこのSiCO−Li系複合体を用いた非水電解質二次電池用負極材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型の電子機器、通信機器等の著しい発展に伴い、経済性と機器の小型化、軽量化の観点から、高エネルギー密度の二次電池が強く要望されている。従来、この種の二次電池の高容量化策として、例えば、負極材料にV,Si,B,Zr,Snなどの酸化物及びそれらの複合酸化物を用いる方法(特開平5−174818号公報:特許文献1、特開平6−60867号公報:特許文献2他)、溶融急冷した金属酸化物を負極材として適用する方法(特開平10−294112号公報:特許文献3)、負極材料に酸化珪素を用いる方法(特許第2997741号公報:特許文献4)、負極材料にSi22O及びGe22Oを用いる方法(特開平11−102705号公報:特許文献5)等が知られている。また、負極材に導電性を付与する目的として、SiOを黒鉛とメカニカルアロイング後、炭化処理する方法(特開2000−243396号公報:特許文献6)、Si粒子表面に化学蒸着法により炭素層を被覆する方法(特開2000−215887号公報:特許文献7)、酸化珪素粒子表面に化学蒸着法により炭素層を被覆する方法(特開2002−42806号公報:特許文献8)、更には、ポリイミド系バインダーを用いて成膜後焼結する負極の製造方法がある(特開2004−22433号公報:特許文献9)。
【0003】
しかしながら、上記従来の方法では、充放電容量が上がり、エネルギー密度が高くなるものの、サイクル性が不十分であったり、充放電に伴う負極膜そのものの容積変化が大きく、また集電体からの剥離などの問題があり、市場の要求特性には未だ不十分であったりし、必ずしも満足できるものではなかった。このような背景より、サイクル性が高くかつエネルギー密度の高い負極活物質が望まれていた。
【0004】
特に、特許第2997741号公報(特許文献4)では、酸化珪素をリチウムイオン二次電池負極材として用い、高容量の電極を得ているが、本発明者らがみる限りにおいては、未だ初回充放電時における不可逆容量が大きかったり、サイクル性が実用レベルに達していなかったりし、改良する余地がある。また、負極材に導電性を付与した技術についても、特開2000−243396号公報(特許文献6)では、固体と固体の融着であるため、均一な炭素皮膜が形成されず、導電性が不十分であるといった問題があるし、特開2000−215887号公報(特許文献7)の方法においては、均一な炭素皮膜の形成が可能となるものの、Siを負極材として用いているため、リチウムイオンの吸脱着時の膨張・収縮があまりにも大きすぎて、結果として実用に耐えられず、サイクル性が低下するためにこれを防止するべく充電量の制限を設けなくてはならず、特開2002−42806号公報(特許文献8)の方法においては、微細な珪素結晶の析出、炭素被覆の構造及び基材との融合が不十分であることより、サイクル性の向上は確認されるも、充放電のサイクル数を重ねると徐々に容量が低下し、一定回数後に急激に低下するという現象があり、二次電池用としてはまだ不十分であるといった問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−174818号公報
【特許文献2】特開平6−60867号公報
【特許文献3】特開平10−294112号公報
【特許文献4】特許第2997741号公報
【特許文献5】特開平11−102705号公報
【特許文献6】特開2000−243396号公報
【特許文献7】特開2000−215887号公報
【特許文献8】特開2002−42806号公報
【特許文献9】特開2004−22433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、よりサイクル性の高いリチウムイオン二次電池の負極の製造を可能とするSi−C−O系コンポジットであって、この欠点である初期効率の低さを改善するべくリチウムをドープしたSiCO−Li系複合体及びその製造方法並びに非水電解質二次電池用負極材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、容量的には珪素や酸化珪素には若干劣るが、酸化珪素、珪素などを主体とした材料と比較してサイクル性が高く、珪素系負極活物質での課題であった充放電時の体積変化の少ない非水電解質二次電池負極用の活剤として有効なSi−C−O系材料を見出した。この背景には、リチウムイオン二次電池の中にリチウム金属及び/又は有機リチウム化合物を組み込むことによって初期不可逆容量分を補填することができるという技術が公知のこととなっていたことによる(リチウム金属の添加:特開平11−86847号公報、特開2004−235057号公報、特開2004−303597号公報;有機リチウムの添加:特開平5−226003号公報、GS News Technical Report, Vol.62−2, p.63(2003)など)。
【0008】
そして、当初は、この添加工程を組み込むという問題を差し引いても、その効果が大きいものと評価されていたが、実際にリチウムイオン二次電池製造工程で、リチウムの添加工程を組み込むことには多くの問題があり、実用的ではないことから、負極材としてSi−C−O系材料の特性を維持しつつ、かつ初期効率の高い材料が必須となっていた。
【0009】
即ち、充放電容量の大きな電極材料の開発は極めて重要であり、各所で研究開発が行われている。このような中で、リチウムイオン二次電池負極活物質として珪素、酸化珪素(SiOx)、及び珪素系合金はその容量が大きいということで大きな関心を持たれているが、繰り返し充放電をしたときの劣化が大きい、即ちサイクル性に劣ること、また、特に酸化珪素では初期効率が低いことから、ごく一部のものを除き実用化には至っていないのが現状であった。このような観点より、このサイクル性及び初期効率の改善を目標に検討した結果、酸化珪素粉末に熱CVDにより炭素コートを施すことによって、従来のものと比較して格段にその性能が向上することを見出した(特開2004−063433号公報)。更に、リチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化を緩和した安定な構造について鋭意検討を行った結果、珪素又は珪素系合金の微粒子表面を不活性で強固な物質、例えばSi−C系、Si−C−O系、Si−N系コンポジットなどで被覆して造粒し、更にこの内部に空隙を有する構造とすることによって、リチウムイオン二次電池負極活物質としての上記問題を解決し、安定して大容量の充放電容量を有し、かつ充放電のサイクル性及び効率を大幅に向上させることができることを見出した(特開2005−310759号公報)。
しかし、その反面、珪素系材料では用途によっては充放電容量が大きすぎるので、容量的には現状のカーボン系の1.5〜3倍程度であればよく、よりサイクル性に優れる材料も期待されていた。
【0010】
そこで、このようなことに基づいて、リチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化を更に緩和した安定な構造について鋭意検討を行ったところ、付加反応などによって高度に架橋させたシラン及び/又はシロキサン化合物を、不活性気流下で加熱することによって得られる焼結物を粉砕して得られるSi−C−O系コンポジットが、酸化珪素系などと比較して、リチウムイオン電池負極材としての容量はやや劣るものの、長期安定性において、はるかに優れたものであることを見出した。また、未硬化状態のシラン及び/又はシロキサンに、現在、リチウムイオン二次電池負極用活物質として使用されているグラファイト系材料をあらかじめ添加した後、同様に硬化、焼結・粉砕することによって得られるSi−C−O系コンポジット材料は、更にグラファイト系材料以上の容量で、任意に容量をコントロールできるものであり、かつ、このものはサイクル性などの特性が向上することを見出した(特開2006−062949号公報)。しかし、Si−C−O系コンポジットに起因する初期効率の低さがネックとなっていた。
【0011】
このような観点より、Si−C−O系コンポジットをベースに、この容量及びサイクル性を維持しつつ初期効率の改善を目標に検討した結果、このSi−C−O系コンポジットにリチウム金属及び/又は有機リチウム化合物をドープして得られるSiCO−Li系複合体は容量、サイクル性はもちろん、初期効率も高い材料となることを見出した。更に、SiCO−Li系複合体に熱CVDにより炭素コートを施すことによって、従来のものと比較して格段にその性能が向上することを見出すに至り、リチウムイオン二次電池負極活物質としての上記問題を解決し、安定して大容量の充放電容量を有し、かつ充放電のサイクル性及び効率を大幅に向上させることができることを可能にした。また、この材料の有効な製造方法を見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記のSiCO−Li系複合体及びその製造方法並びに非水電解質二次電池用負極材を提供する。
請求項1:
架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物の架橋物を焼結、無機化して得たSi−C−O系コンポジットに金属リチウム又は有機リチウム化合物をドープすることによって得られたSiCO−Li系複合体。
請求項2:
上記架橋物が球状シリコーン粉末である請求項1記載のSiCO−Li系複合体。
請求項3:
上記架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物にグラファイト及び珪素粉並びに有機珪素系表面処理剤で表面処理したグラファイト及び珪素粉から選ばれる添加粒子を添加して上記架橋物を形成した請求項1又は2記載のSiCO−Li系複合体。
請求項4:
反応性シラン又はシロキサンが、下記一般式(1)〜(5)で表されるシラン又はシロキサンの1種又は2種以上である請求項1、2又は3記載のSiCO−Li系複合体。
【化1】


(式中、R1〜R7は、独立して水素原子、水酸基、加水分解性基、又は1価炭化水素基を示すが、上記式(1)〜(5)の各化合物において、珪素原子に結合する置換基の少なくとも2個は水素原子、水酸基、加水分解性基又は脂肪族不飽和炭化水素基である。また、m,n,kは0〜2,000であり、p,qは0〜10であるが、p,qは同時に0になることはない。)
請求項5:
反応性シラン又はシロキサンが、平均式CwxSiOyz(w及びxは正数、y及びzは0又は正数)で表され、架橋点が珪素原子4個に対して少なくとも1個以上あり、かつ(w−y)が0より大きなシラン又はシロキサンを原料とする請求項1、2又は3記載のSiCO−Li系複合体。
請求項6:
平均粒子径が0.1〜30μmである請求項1乃至5のいずれか1項記載のSiCO−Li系複合体。
請求項7:
請求項1乃至6のいずれか1項記載のSiCO−Li系複合体表面をカーボンで被覆してなる表面導電化SiCO−Li系複合体。
請求項8:
架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物を熱硬化又は触媒反応によって硬化させて架橋物とし、これを不活性気流中700〜1,400℃の温度範囲で焼結させて無機化してSi−C−O系コンポジットを製造し、これに金属リチウム又は有機リチウム化合物を添加してドープすることを特徴とするSiCO−Li系複合体の製造方法。
請求項9:
架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物を原料として、エマルション法によって架橋して球状シリコーン粉末を製造し、これを不活性気流中700〜1,400℃の温度範囲で焼結させて無機化してSi−C−O系コンポジットを製造し、これに金属リチウム又は有機リチウム化合物を添加してドープすることを特徴とするSiCO−Li系複合体の製造方法。
請求項10:
上記反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物に、導電化材及び/又はリチウム吸蔵材としてグラファイト及び/又は珪素粉、又はシランカップリング剤、その(部分)加水分解物、シリル化剤、シリコーンレジンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素系表面処理剤で表面処理したグラファイト及び/又は珪素粉を添加して架橋物を製造する請求項8又は9記載の製造方法。
請求項11:
反応性シラン又はシロキサンが、下記一般式(1)〜(5)で表されるシラン又はシロキサンの1種又は2種以上である請求項8、9又は10記載の製造方法。
【化2】


(式中、R1〜R7は、独立して水素原子、水酸基、加水分解性基、又は1価炭化水素基を示すが、上記式(1)〜(5)の各化合物において、珪素原子に結合する置換基の少なくとも2個は水素原子、水酸基、加水分解性基又は脂肪族不飽和炭化水素基である。また、m,n,kは0〜2,000であり、p,qは0〜10であるが、p,qは同時に0になることはない。)
請求項12:
反応性シラン又はシロキサンが、平均式CwxSiOyz(w及びxは正数、y及びzは0又は正数)で表され、架橋点が珪素原子4個に対して少なくとも1個以上あり、かつ(w−y)が0より大きなシラン又はシロキサンを原料とする請求項8、9又は10記載の製造方法。
請求項13:
金属リチウム又はリチウム化合物を添加して還元し、リチウム化した後に、0.1〜30μmの平均粒子径に粉砕する請求項8乃至12のいずれか1項記載の製造方法。
請求項14:
請求項8乃至13のいずれか1項記載の製造方法によって得られたSiCO−Li系複合体表面にCVDによりカーボンを被覆する表面導電化SiCO−Li系複合体の製造方法。
請求項15:
請求項1乃至7のいずれか1項記載のSiCO−Li系複合体を用いた非水電解質二次電池用負極材。
請求項16:
請求項1乃至7のいずれか1項記載のSiCO−Li系複合体と導電剤の混合物であって、混合物中の導電剤が5〜60質量%であり、かつ混合物中の全炭素量が5〜90質量%である混合物を用いた非水電解質二次電池用負極材。
【発明の効果】
【0013】
本発明のSiCO−Li系複合体は、非水電解質二次電池用負極材として用いた場合、良好な初期効率を有し、良好なサイクル性、特異な放電特性を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極活物質として、充放電容量が現在の主流であるグラファイト系のものと比較して、その数倍の容量であることから期待されている反面、リチウムの吸脱に伴う大きな体積変化とこれによる繰り返しの充放電による電極膜の破壊などによる性能低下が大きなネックとなっている珪素系負極材のサイクル性及び効率を改善したSi−C−O系コンポジットの欠点であった初期効率を改善したSiCO−Li系複合体を提供するものであり、本発明のSiCO−Li系複合体は、結合が強固なSi−C結合による珪素のネットワークとリチウムの吸脱可能な珪素を有するもので、高度に架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物を熱硬化又は触媒反応によって硬化させて高度な架橋物とし、これを不活性気流中700〜1,400℃の温度範囲で焼結させて無機化した後にリチウム金属及び/又は有機リチウム化合物を添加してリチウムドープする(即ち、リチウム化(lithiation)する)ことにより得られるものである。また、粒子内部の導電性を高めるために、導電性炭素、グラファイトなどを添加してもよい。更に好ましくは、その粒子表面をその少なくとも一部がカーボンと融合した状態でカーボンがコーティング(融着)してなるものである。
【0015】
なお、本発明において、「高度に架橋基を有する」とは、珪素原子10個に対して平均的に少なくとも1個、好ましくは2個以上、より好ましくは2.5個以上の架橋基、例えば、ハイドロシリレーション反応により架橋構造を形成し得るSiH基とアルケニル基、アルキニル基等の脂肪族不飽和基との組み合わせ、縮合反応により架橋構造を形成し得る珪素原子に結合した水酸基(シラノール基)及び/又はアルコキシ基等のオルガノオキシ基と珪素原子に結合したアルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基(イミノキシ基)等の加水分解性基との組み合わせ、ラジカル反応(典型的には有機過酸化物を用いた反応)により架橋構造を形成し得る珪素原子に結合したアルケニル基、紫外線などの光反応により架橋構造を形成し得る(メタ)アクリロキシ官能性基、あるいはメルカプト官能性基とアルケニル基との組み合わせなどを有することを意味し、「高度な架橋物」とは、上記高度な架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物を熱硬化又は触媒反応によって硬化させた硬化物(架橋物)を意味する。
【0016】
本発明のSiCO−Li系複合体は、下記性状を有していることが好ましい。
i.SiCO−Li系複合体は一般式LipSiCnmで表すことができるが、この一般式において、p,m,nはそれぞれ正数であり、p/m≦2、0<n≦10であることが好ましい。
ii.X線回折において、グラファイトなど添加剤に起因する回折線以外は無定形か無定形に近いものである。
【0017】
ここで、本発明のSiCO−Li系複合体のもとになるSi−C−O系コンポジットの原料である有機珪素化合物(シラン、シロキサン)としては、分子中に珪素原子に結合したアルケニル基等の脂肪族不飽和基、水酸基、水素原子(SiH基)、加水分解性基等の架橋性官能基を2個以上有するものであればよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これは直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよく、具体的には、下記一般式(1),(2)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン、式(3)で表される分岐状のオルガノポリシロキサン、式(4)で表される環状のオルガノポリシロキサン、式(5)で表されるシランやシリコーンレジン等が例示される。
【0018】
これらの有機珪素化合物は、室温(25℃)で液状であることが好ましいが、シリコーンレジン等で軟化点を有するものであれば固体であってもよい。また、有機珪素化合物を溶解させることができる有機溶剤や非反応性のシリコーンオイルで希釈して使用してもよい。有機溶剤としては、ヘキサン、トルエンやキシレン等が例示され、非反応性のシリコーンオイルとしてはジメチルポリシロキサンオイル等が例示される。
【0019】
また、既に架橋した形態で提供されるシリコーン粉末などのうち、高度に架橋した構造のものも使用できる。
【0020】
【化3】

【0021】
上記式中、R1〜R7は、独立して水素原子、水酸基、加水分解性基、又は1価炭化水素基を示すが、上記式(1)〜(5)の各化合物において、珪素原子に結合する置換基の少なくとも2個は水素原子、水酸基、加水分解性基又は脂肪族不飽和炭化水素基である。この場合、加水分解性基としては、アルコキシ基、アルケニロキシ基、アシロキシ基等の炭素数1〜6のものが好ましい。また、1価炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が例示される。
【0022】
また、上記式において、m,n,kは0〜2,000、特に0〜1,000であり、p,qは0〜10であるが、p,qは同時に0になることはなく、p+qが3〜10であることが好ましい。
【0023】
本発明における原料である架橋可能なシラン、シロキサンなどの有機珪素化合物は、一般的なシリコーン製造などで用いるものであれば特に限定されないが、通常、有機シロキサンポリマーのごとき有機珪素系高分子の鎖状ポリマーは、特に非酸化性気流中での加熱によって、その主鎖結合が容易に熱解裂を起こして低分子物(例えば、環状の3〜6量体)に分解することにより揮散し易くなってしまう。これに対して、例えばハイドロシリレーション反応により形成される珪素−炭素結合は、熱に対して強いことから、このようなハイドロシリレーションによって高度に架橋した場合は低分子化が起こりにくく、起こったとしても高度に架橋しているので揮散しにくいものになる。これによって、焼成過程においても揮散することなく有効に無機物化することができることから、特に上記一般式(1)〜(5)で表されるシラン又はシロキサンにおいて、分子内にSiH基を好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、更に好ましくは4〜2,000個有するシラン及び/又はシロキサンと、分子内にアルケニル基、アルキニル基といった脂肪族不飽和基を好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、特に4〜50個有し、かつ、珪素原子10個あたりの脂肪族不飽和基が2個以上、特に2.5〜10個であるシロキサンとを使用し、白金、白金化合物などの白金族金属触媒等の公知のハイドロシリレーション触媒の存在下に、黒鉛内でハイドロシリレーション反応して架橋物を形成する付加反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いることが好ましい。
【0024】
即ち、反応性シラン及び/又はシロキサンが、分子内にSiH基を2個以上有するシラン及び/又はシロキサンと、分子内に脂肪族不飽和基を2個以上有し、かつ、珪素原子10個あたりの脂肪族不飽和基が2個以上であるシロキサンとの組み合わせであって、ハイドロシリレーション触媒の存在下にハイドロシリレーション反応して架橋物を形成するものであることが好ましい。
【0025】
この場合、脂肪族不飽和基に対するSiH基の割合がモル比で0.8〜2、特に0.9〜1.2となるように反応させることが好ましい。なお、ハイドロシリレーション触媒の添加量は触媒量であり、上記架橋可能なシラン、シロキサンの全量に対して、通常白金質量換算で5〜1,000ppm、特に10〜200ppm程度であることが好ましい。反応温度(硬化温度)は室温(25℃)〜300℃、特に60〜200℃が好ましく、反応時間(硬化時間)は、通常5分〜1時間程度である。
【0026】
また、分子内に水酸基やアルコキシ基、アシロキシ基等の加水分解性基を有し、触媒反応又は無触媒反応によって縮合し、高度に架橋することが可能なシリコーンレジンを使用することも好ましい。この場合、触媒としては、縮合硬化型オルガノポリシロキサン組成物で公知な縮合触媒、例えばジアルキルスズジ有機酸などの有機スズ化合物が使用できる。
【0027】
更に、本発明で原料として用いる有機珪素化合物(シラン、シロキサン又はこれらの混合物)としては、下記平均組成式
wxSiOyz
(式中、w及びxは正数、y及びzは0又は正数であり、w−y>0である。)
で示され、架橋点が珪素原子4個に対して少なくとも1個有し、かつ(w−y)が0より大きいものが好ましい。また、Nは珪素と直接結合又は炭素などを介して間接的に結合していてもよい。
【0028】
本発明のSiCO−Li系複合体には、導電化材及び/又はリチウム吸蔵材としてカーボン系材料及び/又は珪素などを上記有機珪素化合物と共に添加することができる。ここで、添加するカーボン系材料の特性については特に限定されないが、リチウムイオン二次電池用負極材として使用されている球状又は鱗片状のグラファイト系粒子が好ましい。
【0029】
カーボン系材料の添加量は、原料となり得る有機珪素化合物又はその混合物とカーボン系材料の合計量に対して1〜80質量%、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは5〜70質量%、更に好ましくは10〜50質量%であることが望ましい。5質量%未満では導電性が十分発現しない場合があり、80質量%を超えると容量の低下を招く場合がある。なお、本発明のSiCO−Li系複合体を用いた非水電解質二次電池用負極材の容量は、グラファイト単独の容量と、SiCO−Li系複合体の容量との混合比で決まるので、容量の小さなグラファイト系材料の添加量が増えると、初期効率には影響はないが容量が低下することになる。また、容量の向上が期待される珪素材料としては金属珪素、半導体用シリコン、多結晶シリコンの粉末などを使用できる。
【0030】
更に、グラファイト系粒子及び/又は珪素粉を添加する場合、添加粒子と、SiCO−Li系複合体間の密着性を改良するために、あらかじめ該粒子表面を下記式(6)〜(8)で表されるシランカップリング剤、その(部分)加水分解縮合物、シリル化剤、シリコーンレジンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素系表面処理剤などで処理することは有効である。なお、(部分)加水分解縮合物とは、加水分解縮合物又は部分加水分解縮合物であることを意味する。
【0031】
8(4-a)Si(Y)a (6)
8bSi(Z)(4-b)/2 (7)
(但し、R8は1価の有機基、Yは1価の加水分解性基又は水酸基、Zは2価の加水分解性基、aは1〜4の整数、bは0.8〜3、好ましくは1〜3の正数である。)
9c(R10O)dSiO(4-c-d)/2 (8)
(但し、R9は水素原子又は炭素数が1〜10の置換もしくは非置換の1価炭化水素基、R10は水素原子又は炭素数が1〜6の置換もしくは非置換の1価炭化水素基であり、c,dはそれぞれ0≦c≦2.5、0.01≦d≦3、0.5≦c+d≦3を満足する0又は正数である。)
【0032】
ここで、R8としては、炭素数1〜12、特に1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などの非置換1価炭化水素基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(塩素、フッ素、臭素原子等)、シアノ基、オキシエチレン基等のオキシアルキレン基、ポリオキシエチレン基等のポリオキシアルキレン基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、エポキシ基などの官能基で置換した置換1価炭化水素基、これら非置換又は置換1価炭化水素基において、酸素原子、NH基、NCH3基、NC65基、C65NH−基、H2NCH2CH2NH−基などが介在した基を挙げることができる。
【0033】
8の具体例としては、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−などのアルキル基、CH2=CH−、CH2=CHCH2−、CH2=C(CH3)−などのアルケニル基、C65−などのアリール基、ClCH2−、ClCH2CH2CH2−、CF3CH2CH2−、CNCH2CH2−、CH3−(CH2CH2O)s−CH2CH2CH2−(sは1〜3の整数)、CH2(O)CHCH2OCH2CH2CH2−(但し、CH2(O)CHCH2はグリシジル基を示す)、CH2=CHCOOCH2−、
【0034】
【化4】


HSCH2CH2CH2−、NH2CH2CH2CH2−、NH2CH2CH2NHCH2CH2CH2−、NH2CONHCH2CH2CH2−などが挙げられる。好ましいR8としては、γ−グリシジルオキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−アミノプロピル基、γ−シアノプロピル基、γ−アクリルオキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−ウレイドプロピル基などである。
【0035】
Yの1価の加水分解性基としては、−OCH3、−OCH2CH3などのアルコキシ基、−NH2、−NH−、−N=、−N(CH32などのアミノ基、−Cl、−ON=C(CH3)CH2CH3などのオキシミノ基、−ON(CH32などのアミノオキシ基、−OCOCH3などのカルボキシル基、−OC(CH3)=CH2などのアルケニルオキシ基、−CH(CH3)−COOCH3、−C(CH32−COOCH3などが挙げられる。これらは全て同一の基であっても異なる基であってもよい。好ましいYとしては、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、イソプロペニルオキシ基等のアルケニルオキシ基である。また2価の加水分解性基であるZとしては、イミド残基(−NH−)、非置換又は置換のアセトアミド残基、ウレア残基、カーバメート残基、サルファメート残基などである。
【0036】
aは1〜4の整数、好ましくは3又は4であり、bは0.8〜3、好ましくは1〜3の正数である。
【0037】
また、R9の1価炭化水素基としては、R1〜R7で例示した炭素数1〜10の1価炭化水素基と同様のものが例示され、R10の1価炭化水素基としては、R1〜R7で例示した炭素数1〜6の1価炭化水素基と同様のものが例示される。
【0038】
また、c,dはそれぞれ0≦c≦2.5、0.01≦d≦3、0.5≦c+d≦3を満足する0又は正数であり、好ましくは1≦c≦2、1≦d≦2、2≦c+d≦3を満足する数である。
【0039】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−シアノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。シランカップリング剤は単独でもよいし、2種類以上を混合してもよい。又はその加水分解縮合物及び/又はその部分加水分解縮合物であってもよい。
【0040】
また、一般式(7)のシリル化剤の具体例としては、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、テトラビニルジメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン等のオルガノシラザン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)カーバメート、N,O−ビス(トリメチルシリル)サルファメート、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフロロアセトアミド、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア等が挙げられるが、特にジビニルテトラメチルジシラザンが好適である。
【0041】
なお、上記表面処理剤の使用量は、グラファイト及び/又は珪素粉の質量に対し、通常、0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%、より好ましくは1〜3質量%とすることができる。
【0042】
また、本発明のSiCO−Li系複合体は、その表面がカーボンで被覆されていてもよい。ここで、本発明におけるSiCO−Li系複合体粉末の被覆(蒸着)炭素量は、上記SiCO−Li系複合体粉末(即ち、熱化学蒸着処理により表面が導電性皮膜で覆われたSiCO−Li系複合体粉末)中、1〜50質量%が好ましく、特に5〜30質量%が好ましく、更に5〜20質量%が好ましい。被覆(蒸着)炭素量が1質量%未満では、当該SiCO−Li系複合体粉末を単独で負極活物質として用いた場合、負極膜の導電性が少なく、カーボンコートの意味がなく、50質量%を超えると、炭素の割合が多くなりすぎ、負極容量が減少してしまい、効果が減少してしまう場合がある。
【0043】
更に、SiCO−Li系複合体粒子中の空隙率は、1〜70体積%、特に10〜50体積%であることが好ましい。空隙率が1体積%未満であると充放電に伴う体積変化による粒子の破壊が増大する場合があり、70体積%を超えると容量が低下したり、電解液もれ現象を招く場合がある。この場合、空隙率は、比重により測定した値である。
【0044】
また、SiCO−Li系複合体粒子の平均粒子径は、0.5〜50μm、特に5〜20μmであることがリチウムイオン二次電池用負極材として用いた場合、負極膜としての成膜性及びサイクル性向上の点から好ましい。この場合、平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における重量平均値D50(即ち、累積重量が50%となるときの粒子径又はメジアン径)として測定した値である。
【0045】
次に、本発明におけるSiCO−Li系複合体粒子の製造方法について説明する。
本発明のSiCO−Li系複合体粒子は、上記架橋基を有する反応性有機珪素化合物又はその混合物を熱硬化又は触媒反応によって硬化させ、この硬化物(架橋物)を不活性気流中700〜1,400℃、好ましくは800〜1,300℃、より好ましくは900〜1,200℃の温度範囲で焼結させて無機化したものであれば、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば下記I〜IVの方法を好適に採用することができる。
【0046】
I:平均粒子径が1〜20μm、特に3〜10μmに分級されたグラファイト及び/又は珪素粉などの添加粒子の表面を、上述したシランカップリング剤、その(部分)加水分解縮合物、シリル化剤、シリコーンレジンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素系表面処理剤などであらかじめ処理し、グラファイト及び/又は珪素粉など添加粒子と有機珪素化合物又はその混合物間の密着性を増すことによって、サイクル性を改善する方法。
【0047】
II:上述した有機珪素化合物又はその混合物、特に白金触媒、ビニルシロキサン、水素シロキサンからなる付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物、必要に応じて上記Iの方法で得られたグラファイト及び/又は珪素粉を添加し、よく混合後、300℃以下、特に60〜200℃の温度でプレキュアする。この場合、必要に応じて有機溶剤を添加してよく均一になるようにする。
この段階で、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは1〜20μmの粒度に粉砕しておくと、以後の粉砕・分級が容易になる。なお、粉砕方法は特に問わないが、ここでの粉砕では、静電気を帯び易いので、分散媒中での粉砕が好適である。好ましい分散媒としては、ヘキサン、トルエン、メタノール、メチルイソブチルケトン、ジブチルエーテル、酢酸イソブチルなどの有機溶媒が好ましいが、特に限定はされない。
また、球状シリコーン微粒子などの形態で提供されるシリコーン微粒子のうち、高度に架橋したシリコーン粉末を出発原料としてもよい。
【0048】
III:その後、不活性雰囲気下で700〜1,400℃、好ましくは800〜1,300℃、より好ましくは900〜1,200℃の温度域で熱処理することにより、内部に空隙を有するSi−C−O(C)系コンポジット(Si−C−O(C)系コンポジットはグラファイト及び/又は珪素粉を添加したSi−C−O系コンポジットを意味する。)が得られる。この後、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは1〜20μmの粒度に再粉砕、分級してSi−C−O(C)系コンポジット粒子を得るが、粉砕方法は特に問わない。なお、プレキュア時の雰囲気は特に制限されない。また、不活性ガス雰囲気は、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等とすることができる。
【0049】
IV:こうして得たSi−C−O(C)系コンポジット粒子に不活性雰囲気下でリチウム金属及び/又は有機リチウム化合物を添加してドープする(即ち、リチウム化する)。ここで使用するリチウム金属は塊状、粉末状、箔状などで提供されるが、その形態は問わない。また、有機リチウム化合物も、ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、フェニルリチウムなどのアリールリチウムなど提供されるが、化合物の形態は特に制限されない。
【0050】
リチウム化は具体的には、例えば、不活性雰囲気下でSi−C−O系コンポジット粒子に金属リチウム粉、箔、塊を所定量添加し、ボールミル等の高せん断応力のかかる装置で混合し、反応させる方法により行うか、あるいは有機リチウム化合物の場合は、一般的な粉粒のリチウム化と同様に、トルエン等の有機溶剤にSi−C−O系コンポジット粒子を分散させたところに有機リチウム化合物を添加して高せん断下に混合し、反応させる方法などにより行うことができる。
【0051】
上記IIの方法に関し、白金触媒などのハイドロシリレーション触媒を含む反応性のビニルシロキサンと水素シロキサン混合物と、必要によりグラファイト及び/又は珪素粉など添加粒子を混合した後、300℃以下の温度でプレキュアをせずに、高温の焼成温度まで温度を上昇させた場合、低分子シロキサン、シロキサンのクラッキングなどが先行して、ロス分が多くなってしまう。
【0052】
上記IIIの方法に関し、700℃より低い温度の場合、硬化シロキサンの無機化が不十分となり、初期効率やサイクル性の低下を招く。1,400℃より高温すぎる場合は、リチウムイオン二次電池用負極材として不活性な炭化珪素SiC化が進み、電池特性的な問題が発生する。
【0053】
上記IVの方法に関し、急激な発熱反応が起こるので、特にリチウム金属を添加する場合、除熱に留意した反応装置や混合装置を使用しなければならない。また、有機リチウム化合物を添加する場合には、併せて分解生成蒸気の除去にも注意が必要である。
【0054】
本反応は、固体であるSi−C−O系コンポジットへのリチウムの拡散が律速となるので、未反応なリチウムが残存すると、特性的にも安全面においても好ましくないので、リチウム金属としての添加量はLi/O<2で行い、かつ、リチウムが均一に分布するようにする必要がある。
【0055】
このために、被リチウム化剤であるSi−C−O系コンポジットはもちろん、リチウム金属も、粉末状、箔状、塊状などの形態で供給されるが、好ましくは粉末状のもの(例えば、FMC社製SLMP(安定化リチウム粉))が好ましい。
【0056】
更に述べると、所望の粒度分布を有するSi−C−O系コンポジットとリチウム化剤であるリチウム金属を不活性ガス雰囲気下でプレミックスし、除熱が効果的に行われる混合装置で機械的によく混合・反応させる。なお、この混合において、除熱が十分に行われない状態、例えば鉄製乳鉢中で比較的大量に混合したような場合、混合物が急激に反応を開始し、灼熱状態を呈するようになる。こうして反応してしまうと、急激な不均化によって珪素が大きな結晶に成長してしまう。即ち、逆に酸素化合物として残存する珪酸リチウム層が厚くなり、これが絶縁体として働くことによって集電性が低下し、結果として容量の低下を招くので、急激な反応は避けなければならない。
【0057】
反応装置は、大きな発熱反応を伴うので、不活性ガスでシールされて、十分な除熱が行われ、かつ、高せん断力での混合が可能な装置であれば、特に限定されない。小型装置としては、密閉度が高く、ボールを介しての除熱が可能で、かつ高せん断力が働く遊星ボールミルが例示される。
【0058】
混合・反応は不活性ガス雰囲気下で、高せん断力がかかり、かつ除熱が十分に確保される装置であれば特に限定はされないが、小型装置としては遊星ボールミルが例示される。具体的には、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、酸化珪素及び/又は酸化珪素系材料とリチウム金属を所定量ずつ秤取し、プレミックスした後に所定量のボールを入れた遊星ボールミルのポット内に入れ、密栓する。こうして準備したポットを遊星ボールミル装置にセットして、所定時間、撹拌・反応させる。なお、この反応において、生成物の特性は発熱量、伝熱、せん断力などがポイントとなり、仕込み量及び/又は回転速度、時間によって生成物の特性は変化するので、あらかじめ予備試験を行い、X線回折などでその物性を確認して決められる。
【0059】
本反応は、固体であるSi−C−O系コンポジットとリチウム金属との固体反応(又は、リチウム金属は反応時は融解することもあるので固−液反応もあり得る)である。しかしながら、固体内への拡散速度は一般的に小さいので、リチウム金属が完全に固体である酸化珪素など珪素系材料内に均一に侵入することは困難であるので、安全のためにリチウム金属の添加量は全不可逆容量分を補填するのではなく、低めに抑えることが必要である。この不足分を補う方法として、リチウム金属を添加・反応後、アルキルリチウム化合物、アリールリチウム化合物などの有機リチウム化合物を添加してリチウム分を補うことは有効である。この場合、分解生成物の除去などに対する配慮も必要であるので、不足分の補填法として有効である。
【0060】
なお、IVのリチウム化工程後、SiCO−Li系複合体を0.1〜30μm、特に1〜20μmの平均粒子径に再粉砕することが好ましい。
【0061】
IVによって得たSiCO−Li系複合体粒子は、有機物ガス及び/又は蒸気を含む雰囲気下、700〜1,300℃、好ましくは800〜1,200℃、より好ましくは900〜1,150℃の温度域で熱処理して表面を化学蒸着(CVD)することができる。
【0062】
ここで、本発明における有機物ガスを発生する原料として用いられる有機物としては、特に非酸化性雰囲気下において、上記熱処理温度で熱分解して炭素(黒鉛)を生成し得るものが選択され、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン等の炭化水素の単独もしくは混合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセン、フェナントレン等の1環乃至3環の芳香族炭化水素もしくはこれらの混合物が挙げられる。また、タール蒸留工程で得られるガス軽油、クレオソート油、アントラセン油、ナフサ分解タール油も単独もしくは混合物として用いることができる。
【0063】
なお、上記熱CVD(熱化学蒸着処理)は、非酸化性雰囲気において、加熱機構を有する反応装置を用いればよく、特に限定されず、連続法、回分法での処理が可能で、具体的には流動層反応炉、回転炉、竪型移動層反応炉、トンネル炉、バッチ炉、ロータリーキルン等をその目的に応じて適宜選択することができる。この場合、(処理)ガスとしては、上記有機物ガス単独あるいは有機物ガスとAr、He、H2、N2等の非酸化性ガスの混合ガスを用いることができる。
【0064】
本発明で得られたSiCO−Li系複合体粉末は、これを負極材(負極活物質)として用いることにより、図3に例示するように、特異な放電特性を有する高容量でかつサイクル特性の優れた非水電解質二次電池、特に、リチウムイオン二次電池を製造することができる。
【0065】
なお、上記SiCO−Li系複合体粉末を用いて負極を作製する場合、SiCO−Li系複合体に黒鉛等の導電剤を添加することができる。この場合においても導電剤の種類は特に限定されず、構成された電池において、分解や変質を起こさない電子伝導性の材料であればよく、具体的には、Al,Ti,Fe,Ni,Cu,Zn,Ag,Sn,Si等の金属粉末や金属繊維、又は天然黒鉛、人造黒鉛、各種のコークス粉末、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、各種の樹脂焼成体等の黒鉛を用いることができる。
【0066】
ここで、導電剤は、グラファイト系材料を添加したもの及び/又は熱CVDによってカーボンコートしたものにおいては、必ずしも必要としないが、無添加・未処理のものでは、導電剤の添加量はSiCO−Li系複合体粉末を含む負極材混合物中5〜60質量%が好ましく、特に10〜50質量%、とりわけ20〜40質量%が好ましい。5質量%未満だと電極膜の導電性が不十分である場合があり、60質量%を超えると充放電容量が小さくなる場合がある。
【0067】
また、この場合、SiCO−Li系複合体粉末を含む負極材混合物中の全炭素量は、5〜90質量%、好ましくは5〜70質量%、特に10〜50質量%であることが好ましい。5質量%未満では導電性に劣ったり、体積変化に伴い粒子の破壊が増大する場合があり、90質量%を超えると容量が低くなる場合がある。
【0068】
得られたリチウムイオン二次電池は、上記負極活物質を用いる点に特徴を有し、その他の正極、負極、電解質、セパレータなどの材料及び電池形状などは限定されない。例えば、正極活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、V25、MnO2、TiS2、MoS2などの遷移金属の酸化物及びカルコゲン化合物などが用いられる。電解質としては、例えば、過塩素酸リチウムなどのリチウム塩を含む非水溶液が用いられ、非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフランなどの単体又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、それ以外の種々の非水系電解質や固体電解質も使用できる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、下記例で%は質量%を示し、grはグラムを示す。また、下記例において、平均粒子径はレーザー光回折法による粒度分布測定における累積重量平均値D50(又はメジアン径)として測定した値である。
【0070】
[実施例1]
テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン[信越化学工業(株)製、LS−8670]120gr、メチル水素シロキサン[信越化学工業(株)製、KF−99]80grからなる硬化性シロキサン混合物に塩化白金酸触媒[塩化白金酸1%溶液]0.1grを添加して、よく混合した。その後、60℃で一昼夜プレキュアした。塊状のまま、ガラス容器に入れて、雰囲気コントロール可能な温度プログラム付マッフル炉で窒素雰囲気下にて、200℃×2時間加熱して、完全に硬化させた。この硬化物を粗砕した後、ヘキサンを分散媒としてボールミルにより、平均粒子径10μmになるように微粉砕した。その後、蓋付のアルミナ製容器に入れて、雰囲気コントロール可能な温度プログラム付マッフル炉で窒素雰囲気下にて、1,000℃×3時間という温度条件で焼成を行った。十分冷却後、クリアランスを20μmに設定した粉砕機(マスコロイダー)で粉砕し、平均粒子径約10μmのSi−C−O系コンポジット粉末を得た。このSi−C−O系コンポジット粉末をアルゴン雰囲気のグローブボックス内で内容積約50mlのガラス瓶に8.5gr秤取した。ここに、FMC社製安定化リチウム粉SLMPを1.5gr添加し、蓋をして手で振とう混合した。この混合物をRetsch製遊星ボールミルPM−100用SUS製500ml(32g/1ヶのSUS製ボールを10個)のポットに仕込み、密栓後グローブボックスより取り出し、遊星ボールミルPM−100本体にセットした。回転速度500rpmで正方向逆方向に各10分ずつ回転し、ポットが十分に冷却した後に珪素−珪素酸化物−リチウム系複合体を取り出した。このもののX線回折データを図1に示したが、無定形であった。その後、縦型管状炉(内径約50mmφ)を用いて、メタン−アルゴン混合ガス通気下で1,100℃×3時間の条件で熱CVDを行った。こうして得られた黒色塊状物をらいかい機で解砕した。得られた炭素コートSiCO−Li系複合体粉末の表面コート炭素量は14%、平均粒子径は13μmであった。メタン−アルゴン混合ガスに、1,100℃×3時間接触させてCVDを行い、炭素を約14%コートした。
【0071】
[電池評価]
リチウムイオン二次電池負極活物質としての評価は全ての実施例、比較例共に同一で、以下の方法・手順にて行った。
まず、得られたSiCO−Li系複合体などの珪素系負極材85grに新日本理化製リカコートSN−20を固形物換算で15%加え、20℃以下の温度でスラリーとした。更にN−メチルピロリドンを加えて粘度調整を行い、速やかにこのスラリーを厚さ20μmの銅箔に塗布し、120℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形し、最終的には2cm2に打ち抜き負極とした。
作製したリチウムイオン二次電池は、一晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用いて、テストセルの電圧が0Vに達するまで3mAの定電流で充電を行い、0Vに達した後は、セル電圧を0Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が100μAを下回った時点で充電を終了した。放電は3mAの定電流で行い、セル電圧が2.0Vを上回った時点で放電を終了し、放電容量を求めた。
以上の充放電試験を繰り返し、評価用リチウムイオン二次電池の充放電試験50回を行った。結果を表1に示す。また、初回及び二回目の充放電曲線を図3に示す。
【0072】
[実施例2]
一般式(CH3SiO3/2nで表される三官能の高度に架橋した球状メチルシロキサンポリマーであり、平均粒子径が約10μmである信越化学工業(株)製シリコーンパウダー(X−52−1621)を、蓋付のアルミナ製容器に入れて、雰囲気コントロール可能な温度プログラム付マッフル炉で窒素雰囲気下にて、1,000℃×3時間という温度条件で焼成を行った。十分冷却後、クリアランスを20μmに設定した粉砕機(マスコロイダー)で粉砕し、平均粒子径約10μmのSi−C−O系コンポジット粉末を得た。このSi−C−O系コンポジット粉末をアルゴン雰囲気のグローブボックス内で内容積約50mlのガラス瓶に17.0gr秤取した。ここに、FMC社製安定化リチウム粉SLMPを3.0gr添加し、蓋をして手で振とう混合した。この混合物をRetsch製遊星ボールミルPM−100用SUS製500ml(32g/1ヶのSUS製ボールを10個)のポットに仕込み、密栓後グローブボックスより取り出し、遊星ボールミルPM−100本体にセットした。回転速度500rpmで正方向逆方向に各10分ずつ回転し、ポットが十分に冷却した後に珪素−珪素酸化物−リチウム系複合体を取り出した。このもののX線回折データを図2に示したが、若干結晶性も認められたが、無定形に近いものであった。その後、縦型管状炉(内径約50mmφ)を用いて、メタン−アルゴン混合ガス通気下で1,100℃×3時間の条件で熱CVDを行った。こうして得られた黒色塊状物をらいかい機で解砕した。得られた炭素コートSiCO−Li系複合体粉末の表面コート炭素量は15%、平均粒子径は11μmであった。
こうして得られた炭素コートSiCO−Li系複合体粉末について、実施例1と全く同様に、リチウムイオン二次電池負極活物質としての評価を行った結果を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
鱗片状天然黒鉛(平均粒子径6μm)50grに、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン[信越化学工業(株)製LS−8670]120gr、メチル水素シロキサン[信越化学工業(株)製KF−99]80gr及び塩化白金酸触媒[塩化白金酸1%溶液]0.5grからなる硬化性シロキサン混合物を添加し、更にヘキサンを100ml添加して、パテ状の状態でよく混合した。その後、60℃で脱溶剤・プレキュアし、更に200℃×1時間空気中でキュアした。こうして得られた塊状のものを、粗砕した後、ヘキサンを分散媒としてボールミルにより、平均粒子径15μmになるように微粉砕した。脱溶剤後、蓋付のアルミナ製容器に入れて、雰囲気コントロール可能な温度プログラム付マッフル炉で窒素雰囲気下にて、1000℃×3時間という温度条件で焼成を行った。十分冷却後、クリアランスを20μmに設定した粉砕機(マスコロイダー)で粉砕し、平均粒子径約10μmの珪素複合体を得た。このSi−C−O系コンポジット粉末をアルゴン雰囲気のグローブボックス内で内容積約50mlのガラス瓶に9.3gr秤取した。ここに、FMC社製安定化リチウム粉SLMPを0.7gr添加し、蓋をして手で振とう混合した。この混合物をRetsch製遊星ボールミルPM−100用SUS製500ml(32g/1ヶのSUS製ボールを10個)のポットに仕込み、密栓後グローブボックスより取り出し、遊星ボールミルPM−100本体にセットした。回転速度500rpmで正方向逆方向に各10分ずつ回転し、ポットが十分に冷却した後に珪素−珪素酸化物−リチウム系複合体を取り出した。このもののX線回折データは、実施例1と同様に無定形であった。その後、縦型管状炉(内径約50mmφ)を用いて、メタン−アルゴン混合ガス通気下で1,100℃×3時間の条件で熱CVDを行った。こうして得られた黒色塊状物をらいかい機で解砕した。得られた炭素コートSiCO−Li系複合体粉末の表面コート炭素量は14%、平均粒子径は13μmであった。メタン−アルゴン混合ガスに、1,100℃×3時間接触させてCVDを行い、炭素を約14%コートした。
こうして得られた炭素コートSiCO−Li系複合体粉末について、実施例1と全く同様に、リチウムイオン二次電池負極活物質としての評価を行った結果を表1に示す。
【0074】
[比較例1]
実施例2と同様に、一般式(CH3SiO3/2nで表される三官能の高度に架橋した球状メチルシロキサンポリマーであり、平均粒子径が約10μmである信越化学工業(株)製シリコーンパウダー(X−52−1621)を、蓋付のアルミナ製容器に入れて、雰囲気コントロール可能な温度プログラム付マッフル炉で窒素雰囲気下にて、1,000℃×3時間という温度条件で焼成を行った。十分冷却後、クリアランスを20μmに設定した粉砕機(マスコロイダー)で粉砕し、平均粒子径約10μmのSi−C−O系コンポジット粉末を得た。このSi−C−O系コンポジット粉末を、縦型管状炉(内径約50mmφ)を用いて、メタン−アルゴン混合ガス通気下で1,100℃×3時間の条件で熱CVDを行った。こうして得られた黒色塊状物をらいかい機で解砕した。得られた炭素コートSi−C−O系複合体粉末の表面コート炭素量は14%、平均粒子径は12μmであった。
こうして得られたリチウム未ドープの炭素コートSi−C−O系コンポジット粉末について、実施例1と全く同様に、リチウムイオン二次電池負極活物質としての評価を行った結果を表1に示す。
【0075】
[比較例2]
ブロック状又はフレーク状の酸化珪素をヘキサンを分散媒としてボールミルで粉砕し、得られた懸濁物を濾過し、窒素雰囲気下で脱溶剤後、平均粒子径が約10μmの粉末を得た。この酸化珪素粉について、縦型管状炉(内径約50mmφ)を用いて、メタン−アルゴン混合ガス通気下で1,100℃×3時間の条件で熱CVDを行った。こうして得られた黒色塊状物をらいかい機で解砕した。得られた炭素コート酸化珪素系複合体粉末の表面コート炭素量は16%、平均粒子径は12μmであった。リチウムイオン二次電池負極活物質としての評価を、実施例1と全く同じ条件で行った。その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】


*1:CVD炭素を含む珪素系活物質あたりの容量。電池試験において導電性付与のために添加した黒鉛分は除いた数字。
実施例1はSiCO−Li系(ハイドロシリレーション法高架橋体)炭素コート複合体粒子。
実施例2はSiCO−Li系(MeSiO3/2系高架橋シリコーンパウダー)炭素コート複合体粒子。
実施例3は炭素(グラファイト)/SiCO−Li系炭素コート複合体粒子。
比較例1はSiCO系(MeSiO3/2系高架橋シリコーンパウダー)炭素コート粒子。
比較例2は酸化珪素の炭素コート。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】実施例1のSiCO−Li系複合体(CVD炭素被覆前)のX線回折データである。
【図2】実施例2のSiCO−Li系複合体(CVD炭素被覆前)のX線回折データである。
【図3】実施例1のSiCO−Li系複合体の初回及び二回目の充放電曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物の架橋物を焼結、無機化して得たSi−C−O系コンポジットに金属リチウム又は有機リチウム化合物をドープすることによって得られたSiCO−Li系複合体。
【請求項2】
上記架橋物が球状シリコーン粉末である請求項1記載のSiCO−Li系複合体。
【請求項3】
上記架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物にグラファイト及び珪素粉並びに有機珪素系表面処理剤で表面処理したグラファイト及び珪素粉から選ばれる添加粒子を添加して上記架橋物を形成した請求項1又は2記載のSiCO−Li系複合体。
【請求項4】
反応性シラン又はシロキサンが、下記一般式(1)〜(5)で表されるシラン又はシロキサンの1種又は2種以上である請求項1、2又は3記載のSiCO−Li系複合体。
【化1】


(式中、R1〜R7は、独立して水素原子、水酸基、加水分解性基、又は1価炭化水素基を示すが、上記式(1)〜(5)の各化合物において、珪素原子に結合する置換基の少なくとも2個は水素原子、水酸基、加水分解性基又は脂肪族不飽和炭化水素基である。また、m,n,kは0〜2,000であり、p,qは0〜10であるが、p,qは同時に0になることはない。)
【請求項5】
反応性シラン又はシロキサンが、平均式CwxSiOyz(w及びxは正数、y及びzは0又は正数)で表され、架橋点が珪素原子4個に対して少なくとも1個以上あり、かつ(w−y)が0より大きなシラン又はシロキサンを原料とする請求項1、2又は3記載のSiCO−Li系複合体。
【請求項6】
平均粒子径が0.1〜30μmである請求項1乃至5のいずれか1項記載のSiCO−Li系複合体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のSiCO−Li系複合体表面をカーボンで被覆してなる表面導電化SiCO−Li系複合体。
【請求項8】
架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物を熱硬化又は触媒反応によって硬化させて架橋物とし、これを不活性気流中700〜1,400℃の温度範囲で焼結させて無機化してSi−C−O系コンポジットを製造し、これに金属リチウム又は有機リチウム化合物を添加してドープすることを特徴とするSiCO−Li系複合体の製造方法。
【請求項9】
架橋基を有する反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物を原料として、エマルション法によって架橋して球状シリコーン粉末を製造し、これを不活性気流中700〜1,400℃の温度範囲で焼結させて無機化してSi−C−O系コンポジットを製造し、これに金属リチウム又は有機リチウム化合物を添加してドープすることを特徴とするSiCO−Li系複合体の製造方法。
【請求項10】
上記反応性シラン、シロキサン又はこれらの混合物に、導電化材及び/又はリチウム吸蔵材としてグラファイト及び/又は珪素粉、又はシランカップリング剤、その(部分)加水分解物、シリル化剤、シリコーンレジンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素系表面処理剤で表面処理したグラファイト及び/又は珪素粉を添加して架橋物を製造する請求項8又は9記載の製造方法。
【請求項11】
反応性シラン又はシロキサンが、下記一般式(1)〜(5)で表されるシラン又はシロキサンの1種又は2種以上である請求項8、9又は10記載の製造方法。
【化2】


(式中、R1〜R7は、独立して水素原子、水酸基、加水分解性基、又は1価炭化水素基を示すが、上記式(1)〜(5)の各化合物において、珪素原子に結合する置換基の少なくとも2個は水素原子、水酸基、加水分解性基又は脂肪族不飽和炭化水素基である。また、m,n,kは0〜2,000であり、p,qは0〜10であるが、p,qは同時に0になることはない。)
【請求項12】
反応性シラン又はシロキサンが、平均式CwxSiOyz(w及びxは正数、y及びzは0又は正数)で表され、架橋点が珪素原子4個に対して少なくとも1個以上あり、かつ(w−y)が0より大きなシラン又はシロキサンを原料とする請求項8、9又は10記載の製造方法。
【請求項13】
金属リチウム又はリチウム化合物を添加して還元し、リチウム化した後に、0.1〜30μmの平均粒子径に粉砕する請求項8乃至12のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項14】
請求項8乃至13のいずれか1項記載の製造方法によって得られたSiCO−Li系複合体表面にCVDによりカーボンを被覆する表面導電化SiCO−Li系複合体の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至7のいずれか1項記載のSiCO−Li系複合体を用いた非水電解質二次電池用負極材。
【請求項16】
請求項1乃至7のいずれか1項記載のSiCO−Li系複合体と導電剤の混合物であって、混合物中の導電剤が5〜60質量%であり、かつ混合物中の全炭素量が5〜90質量%である混合物を用いた非水電解質二次電池用負極材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−294422(P2007−294422A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70103(P2007−70103)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】