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Skn−1a/iノックアウトマウスを用いた味蕾細胞マーカー分子の探索方法
説明

Skn−1a/iノックアウトマウスを用いた味蕾細胞マーカー分子の探索方法

【課題】I, II及びIII型味蕾細胞マーカー分子の探索方法、塩味受容に関与する遺伝子/タンパク質、塩味代替もしくは増強物質の同定のための該遺伝子/タンパク質の使用、および、塩味代替もしくは増強物質/塩味受容体をスクリーニングするためのノックアウトマウスもしくは培養細胞の使用を提供する
【解決手段】Skn-1a/iノックアウトマウスに味物質の候補物質を摂取させ、前記マウスの行動解析を行うことを含み、前記味物質が塩味物質、甘味物質、旨味物質、苦味物質および酸味物質からなる群から選択されることを特徴とする、味物質のスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本5味(塩味・酸味・甘味・旨味・苦味)のスクリーニング方法、基本5味の味質の分類方法、基本5味を認識する味蕾細胞のマーカー分子の探索方法、及び基本5味に関与する味蕾細胞のマーカー分子に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内に取り込まれた味物質は、舌の表面、咽頭、喉頭に分布する味蕾と呼ばれる組織中の味細胞により受容される。舌上においては、味蕾は乳頭と呼ばれる部位に存在している。舌の前半部には茸状乳頭が散在しており、舌後方側部には葉状乳頭、舌後方中央部には有郭乳頭が存在する。茸状乳頭には1つの味蕾が存在し、葉状乳頭と有郭乳頭には多数の味蕾が存在している。味物質が味細胞に存在する味覚受容体にて受容されると、細胞内シグナル伝達を経て、味細胞に投射している味神経に情報伝達物質が放出される。味神経に伝達された情報は最終的に脳に到達し、味として認知される。近年、甘味・旨味・苦味・酸味の受容体や、それらの細胞内シグナル伝達にかかわる因子が多数同定され、味蕾における味物質の受容と味細胞内情報伝達の分子機構が明らかとなりつつある。
【0003】
個々の味蕾は約50〜100個の細胞から構成されており、電子顕微鏡観察による細胞形態と細胞内微細構造に基づいて、紡錘形をしたI型、II型、III型細胞と基底部に存在するIV型細胞に分類されている。味覚受容体やシグナル伝達因子の発現様式から、II型細胞は甘味・旨味・苦味を認識する細胞であり、III型細胞は酸味を認識する細胞であることが明らかとなっている。
【0004】
甘味・旨味物質の受容体としては、Gタンパク質と共役した受容体(GPCR)の1つT1R (TAS1Rとも呼ぶ)ファミリーの分子種が機能している。これは、T1R1、 T1R2、 T1R3の3つの分子種からなり、T1R1+T1R3 のヘテロマーで旨味物質を含めたL-アミノ酸を、T1R2+T1R3 のヘテロマーで糖、D-アミノ酸、人工甘味料および甘味タンパク質などの甘味物質を受容する(非特許文献1)。苦味物質もまたGPCRの一種であるT2R (TAS2Rとも呼ぶ)ファミリーの分子種によって受容され、ヒトでは25種類のT2R分子種が報告されている。酸味物質については、イオンチャネルであるPKD1L3 およびPKD2L1 のヘテロマーがその受容を担っている候補分子であると報告されている(非特許文献2)。
【0005】
味覚受容体やシグナル伝達因子の発現解析において、T1R1あるいはT1R2を発現する味細胞はT1R3を共発現し、T1R1とT1R2は異なる味細胞に発現すること、T1RsとT2Rsは排他的な発現様式を示すことが明らかになっている。また、PKD2L1を発現する味細胞は、T1RsおよびT2Rs発現細胞に発現するシグナル伝達因子PLC-β2およびTRPM5を発現する味細胞とは異なることが報告されている。これらのことから、甘味・旨味・苦味・酸味受容体は味蕾において異なる味細胞に発現している、つまり、甘味・旨味・苦味・酸味は異なる味細胞により受容されていると換言できる。このことは、発現解析だけではなく、ジフテリア毒素を用いてPKD2L1発現細胞を消失させたマウスは酸味のみに対する神経応答を消失し、他の味に対する応答は残存したという実験結果 (非特許文献2)および、T1R1-KO、 T1R2-KO、 T2R-KOマウスはそれぞれ旨味、甘味、苦味の刺激に対する神経応答を消失するがそれ以外の味刺激に対する神経応答は変化しなかった(非特許文献1)という実験結果からも証明されている。これらのことから、塩味の受容に関わる細胞は、甘味・旨味・苦味・酸味を受容する味細胞とは異なること、つまり、塩味の認識がI型味蕾細胞により行われると考える事は妥当な予想である。
【0006】
塩味受容体の候補分子として、ノックアウトマウスを用いた解析から、ENaC(Epithelial Sodium Channel)が低濃度のNaClのセンサーとして機能している事を示唆する報告がなされている(非特許文献3)。しかしながら、ENaCノックアウトマウスが高濃度の塩味嗜好性に及ぼす影響は見出されておらず、またENaCは、ナトリウムチャネルであるため、食塩(NaCl)中の塩化物イオンが塩味の嗜好性にどのような影響を与えているかなど、味蕾における塩味の受容に関しては完全に明らかになった訳ではない。
【0007】
特許文献1において、塩味受容体についての開示があるが、受容体の効果は実施例で実証されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2009-539377
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nature Vol.444, November 16, 2006 288-294
【非特許文献2】Nature Vol.442, August 24, 2006 934-938
【非特許文献3】Nature Vol.464、March 11, 2010, 297-301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、基本5味(塩味・酸味・甘味・旨味・苦味)の味質の分類方法、基本5味物質のスクリーニング方法、I, II及びIII型味蕾細胞マーカー分子の探索方法、塩味受容に関与する遺伝子/タンパク質、塩味代替もしくは増強物質の同定のための該遺伝子/タンパク質の使用、受容体発現培養細胞及び両生類卵母細胞、および、塩味代替もしくは増強物質/塩味受容体をスクリーニングするためのノックアウト動物もしくは受容体発現培養細胞及び両生類卵母細胞の使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
舌上皮層の有郭乳頭では一つの乳頭中に多数の味蕾が集約的に存在することから、味蕾に発現する遺伝子の探索は有郭乳頭上皮組織と乳頭以外の舌上皮組織(非乳頭上皮)を用いた比較解析が行われることが多い。しかし、これらの比較解析では味蕾以外の乳頭上皮に特異的に発現する遺伝子などが多数得られ、味蕾の特性を反映する遺伝子を同定することは容易ではなく、味蕾特異的に発現する遺伝子が得られたとしても味蕾中の特定の細胞に発現する遺伝子を同定することはさらに困難であった。そのため、味蕾を構成する細胞の割合を変化させた変異マウスを作製することにより、野生型マウス(以下、「WTマウス」という)との乳頭における遺伝子発現の比較解析を行うことは、味蕾中の特定の細胞に発現する遺伝子を同定するのに非常に有効な手法であると考えられる。
【0012】
本発明者は、味蕾の細胞構成を変化させるための手法として、まず、味蕾に特異的に発現する転写調節因子の探索を行った。その中にSkn-1a/i遺伝子があり、この遺伝子が甘味・旨味・苦味受容細胞特異的に発現していることを確認した。このSkn-1a/iのノックアウトマウスはすでに作製されており(Genes & Development, 11:1873-1884, 1997)、同様の手法により作成したSkn-1a/iノックアウトマウス(以下、「S-KOマウス」という)を用いて行動解析を行ったところ、甘味・旨味・苦味に対する感受性が消失しており、in situ hybridization(ISH)解析においても、甘味・旨味・苦味を受容する細胞のマーカー分子は完全に消失していた。一方で、in situ hybridization(ISH)解析において、酸味を受容するマーカー分子(PKD2L1およびPKD1L3)はWTマウスより発現が増加していることが認められた。塩味に対する神経応答解析では、S-KOマウスとWTマウス間に差は認められなかった。以上の結果は、S-KOマウスは甘味・旨味・苦味の受容に関与する味細胞を消失し、その分、酸味を受容する味細胞が増加すること、また、甘味・旨味・苦味・酸味を受容する味細胞以外の細胞(ほとんどがI型細胞であると考えられる)の割合はWTマウスとS-KOマウスで差がないことを示唆している。
【0013】
そこで本発明者は、このS-KOマウスとWTマウスの有郭乳頭上皮組織における遺伝子発現量の比較、および、WTマウスの有郭乳頭上皮組織と非乳頭上皮組織の比較することにより、I型細胞に特異的に発現する遺伝子(その中には、塩味受容に関与しているものが含まれると考えられる)を効率的に見出した。
【0014】
具体的には、
(i) S-KOマウスとWTマウスの有郭乳頭上皮の遺伝子発現量の比が大きくない遺伝子(S-KO/WTが0.7〜1.5のものを選択)の抽出
(ii)有郭乳頭に特異的に発現している遺伝子(有郭乳頭上皮組織における発現量が非乳頭上皮組織の発現量より5倍以上大きい遺伝子)の抽出
(iii) in situ hybridization(ISH)により、味蕾での発現が確認できると想定される発現量を示した遺伝子(WTマウスでの発現量>100)の抽出
の3つの基準で遺伝子発現を検討し、395個の遺伝子を選択した。
【0015】
さらに、これらの遺伝子のうちで、複数回の貫膜領域を持つものを選定後、重複した遺伝子を排除して、34遺伝子を選択した(表1)。
【0016】
これらの中から、さらにin situ hybridization(ISH)での味蕾における遺伝子発現パターンと遺伝子の機能から、I型味蕾細胞の膜表面に発現し、塩味の受容に関与している可能性がある分子として、Ano1、Kcnk16、Mfsd3、Tmc5、Trpc1、Gpr63、Gpr161、Gpr177、Slc16a7、Slc25a14、Slc35a1、Slc9a7、Sec61a1、Hsd3b7、Mal、Ptch1、Tm4sf1を同定した。このうち、Ano1、Hsd3b7、Slc35a1、Gpr63、Kcnk16、Mal、Ptch1、Tm4sf1、Sec61a1がさらに好ましく(ISHにより味蕾での発現が確認できたもの)、これらの中で、味蕾の一部の細胞(I型味蕾細胞)に特異的に強く発現し、かつ、塩化物イオンチャネルという塩味受容への関与が予想される機能を持つ、Ano1が塩味の受容に関与している分子として最も好ましいと考えられた。
【0017】
なお、上記はI型細胞に特異的に発現する遺伝子を見出す手法であるが、S-KOマウスとWTマウスの有郭乳頭上皮の遺伝子発現量の比を変更することで、II型細胞に特異的に発現する遺伝子、II型細胞に特異的に発現する遺伝子を同様に見出すことができる。
【0018】
【表1】

【0019】
本発明は、以下の基本5味(塩味・酸味・甘味・旨味・苦味)の味質の分類方法、基本5味物質のスクリーニング方法、I, II及びIII型味蕾細胞マーカー分子の探索方法、塩味受容に関与する遺伝子/タンパク質、塩味代替もしくは増強物質の同定のための該遺伝子/タンパク質の使用、受容体発現培養細胞及び両生類卵母細胞、および、塩味代替もしくは増強物質/塩味受容体をスクリーニングするためのノックアウト動物もしくは受容体発現培養細胞及び両生類卵母細胞の使用を提供するものである。
項1. Skn-1a/iノックアウトマウスに味物質の候補物質を摂取させ、前記マウスの行動解析を行うことを含み、前記味物質が塩味物質、甘味物質、旨味物質、苦味物質および酸味物質からなる群から選択されることを特徴とする、味物質のスクリーニング方法。
項2. 前記味物質が塩味物質である、項1に記載のスクリーニング方法。
項3. 前記味物質が甘味物質もしくは旨味物質である、項1に記載のスクリーニング方法。
項4. 前記味物質が苦味物質である、項1に記載のスクリーニング方法。
項5. 前記味物質が酸味物質である、項1に記載のスクリーニング方法。
項6. 前記Skn-1a/iノックアウトマウスとともに、さらに野生型マウスにも味物質の候補物質を摂取させ、両マウスの行動解析を行うことを特徴とする、項1に記載のスクリーニング方法。
項7. Skn-1a/iノックアウトマウスの味物質のスクリーニングのための使用であって、前記味物質が塩味物質、甘味物質、旨味物質、苦味物質および酸味物質からなる群から選択される、味物質のスクリーニングのための使用。
項8. 前記味物質が塩味物質である、項7に記載のスクリーニングのための使用。
項9. 前記味物質が甘味物質もしくは旨味物質である、項7に記載のスクリーニングのための使用。
項10. 前記味物質が苦味物質である、項7に記載のスクリーニングのための使用。
項11. 前記味物質が酸味物質である、項7に記載のスクリーニングのための使用。
項12. 試験物質を塩味、甘味もしくは旨味、苦味、酸味のいずれかの味質に分類する方法であって、Skn-1a/iノックアウトマウスと、必要に応じて野生型マウスに試験物質を摂取させ、前記マウスに対する行動解析を行うことを特徴とする、方法。
項13. Skn-1a/iノックアウトマウスを用いた味蕾細胞のマーカー分子の探索方法。
項14. 前記味蕾細胞が、塩味を認識するI型味蕾細胞であるか、甘・旨・苦味を認識するII型味蕾細胞であるか、酸味を認識するIII型味蕾細胞であるかを判定する項13に記載のマーカー分子の探索方法。
項15. Skn-1a/iノックアウトマウスと野生型マウスの有郭乳頭上皮細胞に発現する遺伝子の比較解析を行い、野生型マウスにのみ発現するマーカー分子はII型味蕾細胞のマーカー分子であると決定する項13又は14に記載のマーカー分子の探索方法。
項16. Skn-1a/iノックアウトマウスと野生型マウスの有郭乳頭上皮細胞における発現遺伝子量を比較する工程、有郭乳頭上皮組織と非乳頭上皮組織の発現遺伝子量を比較する工程を含み、それによりI型味蕾細胞、又はIII型味蕾細胞のマーカー分子であると決定する項13又は14に記載のマーカー分子の探索方法。
項17. (i) Skn-1a/iノックアウトマウスと野生型マウスの有郭乳頭上皮細胞における発現量が大きく変わらない遺伝子の抽出工程
(ii)有郭乳頭もしくは有郭乳頭と有郭乳頭上皮の両方に特異的に発現している遺伝子の抽出工程
(iii)in situ hybridization(ISH)による味蕾での発現が確認できる遺伝子の抽出工程
を含む、項16に記載のI型味蕾細胞のマーカー分子の探索方法。
項18. (i) Skn-1a/iノックアウトマウスと野生型マウスの有郭乳頭上皮細胞における発現量が大きい遺伝子の抽出工程
(ii)有郭乳頭もしくは有郭乳頭と有郭乳頭上皮の両方に特異的に発現している遺伝子の抽出工程
(iii)in situ hybridization(ISH)による味蕾での発現が確認できる遺伝子の抽出工程
を含む、項16に記載のIII型味蕾細胞のマーカー分子の探索方法。
項19. 貫膜領域が複数回である遺伝子を選択する項13〜18のいずれかに記載のマーカー分子の探索方法。
項20. Ano1、Kcnk16、Mfsd3、Tmc5、Trpc1、Gpr63、Gpr161、Gpr177、Slc16a7、Slc25a14、Slc35a1、Slc9a7、Sec61a1、Hsd3b7、Mal、Ptch1、Tm4sf1から選ばれる少なくとも1種の遺伝子もしくは分子のI型味蕾細胞マーカー分子としての使用。
項21. Ano1、Kcnk16、Mfsd3、Tmc5、Trpc1、Gpr63、Gpr161、Gpr177、Slc16a7、Slc25a14、 Slc35a1、Slc9a7、Sec61a1、Hsd3b7、Mal、Ptch1、Tm4sf1から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の塩味受容体としての使用或いは塩味代替もしくは増強物質スクリーニングのための使用。
項22. 塩味物質スクリーニング用のAno1、Kcnk16、Mfsd3、Tmc5、Trpc1、Gpr63、Gpr161、 Gpr177、Slc16a7、Slc25a14、Slc35a1、Slc9a7、Sec61a1、Hsd3b7、Mal、Ptch1、Tm4sf1から選ばれる少なくとも1種の外来遺伝子を発現した培養細胞もしくは、両生類卵母細胞。
項23. 項22に記載の培養細胞もしくは両生類卵母細胞に塩味代替物質もしくは塩味増強物質を作用させ細胞応答を観測することによる、塩味代替物質もしくは塩味増強物質のスクリーニング方法。
項24. 項22に記載の細胞の塩味代替物質もしくは塩味増強物質による細胞応答をパッチクランプ法、全細胞電流の測定、放射標識イオン流束アッセイ、膜電位感受性色素及びイオン濃度感受性色素を用いてモニタリングする、項21に記載のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によりヒトの塩味受容に関与する遺伝子ないしタンパク質が明らかになったため、全く新しい塩味代替もしくは増強物質を探索することが可能になる。
【0021】
さらに、本発明によれば、S-KOマウスは甘味・旨味・苦味に対する感受性が消失し、酸味を受容するマーカー分子(PKD2L1およびPKD1L3)はWTマウスより発現が増加していることを見出しており、これらを利用して基本5味の味物質のスクリーニングが行うことができる。また、I 型、II型、III型の受容体で特異的に発現する遺伝子を同定することで、該遺伝子を導入した細胞を用いて基本5味のいずれかの味物質を同定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】塩化物イオンチャネルの阻害剤を用いたWTマウスによるリッキング試験各濃度のNaCl、KClもしくはNH4Cl溶液に阻害剤を添加し、リッキング試験に供した。阻害剤濃度は500μMに固定し、塩化物イオンチャネルの阻害剤として、DIDS (4,4'-diisothiocyanostilbene-2,2'-disulfonic acid, ジイソチオシアノスチルベンジスルホン酸)および、NFA (Niflumic acid, ニフルミン酸)を、またENaCの阻害剤として、amiloride(アミロライド)を用いた。
【図2】WTマウス(+/+)とS-KOマウス(Skn-1-/-)の味蕾における遺伝子発現解析。a: 甘味・旨味・苦味受容細胞マーカー分子(T1R1、T1R2、T1R3、T2R5、Ggust、PLC-β2、TRPM5)の発現解析。b: 酸味受容細胞マーカー分子(PKD2L1、PKD1L3)の発現解析。S-KOマウスの、甘味・旨味・苦味認識を担うII型味蕾細胞が消失し、その代わりに酸味認識を担うIII型細胞が増加したことを示す。
【図3】WTマウス(WT; +/+)及びSkn-1a/iノックアウトマウス(S-KO; Skn-1-/-)を用いた鼓索神経解析(A)及び舌咽神経解析(B)(S-KOマウスにおいて、甘味・旨味・苦味刺激に対する各神経応答が有意に抑制され、酸味及び塩味刺激に対する神経応答はWTと有意差がないことを示す)。
【図4】WTマウス(+/+)とS-KOマウス(Skn-1-/-)を用いた2瓶選択テスト(行動解析)(S-KOマウスは甘味・旨味・苦味物質に対する嗜好性を失うが、酸味及び塩味物質に対する嗜好性はWTと有意差がないことを示す)。
【図5A】I型味蕾細胞に特異的に発現する遺伝子の発現解析。各遺伝子の有郭乳頭上皮層における遺伝子の発現パターンを示す。左:WTマウス有郭乳頭、右: S-KOマウス有郭乳頭。
【図5B】I型味蕾細胞に特異的に発現する遺伝子の発現解析。各遺伝子の有郭乳頭上皮層における遺伝子の発現パターンを示す。左:WTマウス有郭乳頭、右: S-KOマウス有郭乳頭。
【図5C】I型味蕾細胞に特異的に発現する遺伝子の発現解析。各遺伝子の有郭乳頭上皮層における遺伝子の発現パターンを示す。左:WTマウス有郭乳頭、右: S-KOマウス有郭乳頭。
【図6】S-KOマウスのコンストラクトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
各味覚受容体を欠損したマウスを用いた神経応答解析を行った先行報告や、上述のS-KOマウスの行動解析、神経応答解析および遺伝子発現解析結果から、塩味を受容する細胞は甘味・旨味・苦味および酸味受容体を発現しない細胞群、すなわちI型味蕾細胞(の一部)であると考えられ、塩味受容に関与している分子種はI型味蕾細胞に発現していると考えられる。
【0024】
塩味に対する行動解析において、マウスは低濃度の塩味は嗜好し、高濃度の塩味は忌避という特徴を示す。塩味の受容体候補分子として、ENaCは低濃度の塩味の受容に深く関与する分子として報告されている。ENaCはアミロライド感受性ナトリウムチャネルで、α、β、γの3つのサブユニットがそろうことで初めて機能する。3つのサブユニットがともに発現している細胞は、甘味・旨味・苦味・酸味受容細胞とは異なる細胞であり、上述の予測に矛盾しない。
【0025】
一方で、KClやNH4Cl、CH3COONaやGluNa(MSG)は塩味のほかに苦味、渋味、酸味、旨味等の味として認識されることから、塩味とはナトリウムイオンあるいは塩化物イオンの単一の味ではなく、この両方が塩味を引き出すのに必要であると考えられる。しかしながら、現段階において、高濃度の塩味の受容に関与する分子や、食塩中の塩化物イオンを感知している分子についての知見は全くない。
【0026】
本発明者が、NaCl、KCl、NH4Clの3つについて、WTマウスを用いてリッキング試験を行ったところ、塩化物イオンチャネルの阻害剤であるDIDS、NFAあるいはENaCの阻害剤であるアミロライド(amiloride)のみを用いても300mM以上の高濃度のNaClに対する忌避行動を緩和することはできなかった。一方、DIDSとアミロライドを併用することで、高濃度NaClに対する忌避行動を有意に抑制できることを見出した(図1)。このことから、高濃度の塩味の受容にはナトリウムイオンと塩化物イオンの両方が関与しているといえる。一方で、KCl、NH4Clによる高塩濃度の忌避行動は、塩化物イオンチャネル阻害剤で抑制できたが、アミロライドでは抑制できなかったことから、高濃度のKClもしくはNH4Clの忌避性には塩化物イオンの関与が大きいことが示唆された。
【0027】
上記のように本発明者は、Skn-1a/i遺伝子のノックアウトマウス(S-KOマウス)に着目し、その行動解析、神経応答解析、味覚関連遺伝子の発現解析を行い、S-KOマウスは甘味・旨味・苦味の受容細胞が消失し、甘味・旨味・苦味は知覚できないが、酸味と塩味は知覚することができることを見出した(図2〜5、表2〜3)。
【0028】
次いで、WTマウスとS-KOマウスのDNAマイクロアレイ解析により、I型味蕾細胞に発現している遺伝子を抽出した。具体的には、(i) S-KOマウスとWTマウスの有郭乳頭上皮における遺伝子発現量の比が大きくなく(S-KO/WTが0.7〜1.5のものを選択)、(ii) 有郭乳頭上皮に特異的に発現しており(有郭乳頭上皮組織における発現量が非乳頭上皮組織の発現量より5倍以上大きい遺伝子)、(iii) in situ hybridization(ISH)により、味蕾での発現が確認できると想定される発現量を示した遺伝子(WTでの発現量>100)を抽出することで395個の遺伝子を選択した。さらに、過去に知られているイオンチャネルは全て複数の膜貫膜領域を有するため、これらの遺伝子のうちで、膜貫膜領域が複数回のものであって重複した遺伝子を排除することで、34遺伝子を選択した(表1)。
【0029】
この34個の遺伝子を対象として、in situ hybridization(ISH)により味蕾での発現を観察し、その結果から(図5)、味蕾細胞に強くかつ特異的に発現している遺伝子が塩味受容に関与している候補遺伝子として有望であると考えられ、ISH解析の結果から、以下の遺伝子が有望であると考えられた:
塩化物イオンチャネル: Ano1
陽イオンチャネル(候補): Kcnk16、Mfsd3、Tmc5、Trpc1
GPCR: Gpr63、Gpr161、Gpr177
イオントランスポーター(候補): Slc16a7、Slc25a14、Slc35a1、Slc9a7
味蕾に発現していたもの
I型味蕾細胞に特異的に発現: Ano1、Sec61a1
味蕾全体の細胞に多く発現: Hsd3b7、Slc35a1、Gpr63、Kcnk16、Mal、Ptch1、Tm4sf1
これらの遺伝子のうち、Ano1は、I型味蕾細胞に特異的に発現し、塩化物イオンチャネルの機能を有することから考えても、塩味の認識を担う分子として可能性が高いものの1つである。
【0030】
上記の塩味の認識に関係する可能性の高い遺伝子は、これらの少なくとも1つの遺伝子のノックアウト、ノックイン又はトランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製することで、塩味代替もしくは増強物質のスクリーニングに使用することができる。あるいはこれらの遺伝子を発現させた培養細胞にルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリフォスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、ジアホラーゼ、ペルオキシダーゼなどのレポーター遺伝子を共発現させ、これらのレポーター遺伝子の発現量を測定することで、塩味受容体の発現量ないし感受性を増大させる化合物(塩味(増強)物質)をスクリーニングすることができる。或いはこれらの遺伝子の発現産物すなわち、タンパク質と特異的に結合若しくは相互作用する物質、これら遺伝子の機能を調節する物質(例えばナトリウムイオン、塩化物イオンによるシグナル応答を阻害若しくは増強する物質、これら遺伝子に結合する物質など)を探索することで、塩味(増強)物質)をスクリーニングすることができる。
【0031】
本明細書における「味蕾細胞」には、I, II, IIIおよびIV型味蕾細胞すべてを含む。
【0032】
本明細書において、「培養細胞」は、ヒト、サル、ブタ、ウシ、マウス、ラット、ウサギ、イヌなどの哺乳類細胞、ニワトリなどの鳥類細胞などの脊椎動物細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、昆虫細胞などの動物細胞、酵母を含む。
【0033】
「塩味物質」とは、塩味代替物質及び/又は塩味増強物質を意味し、塩味代替物質は塩化ナトリウムと同等もしくは類似した味質を有する物質であり、塩味増強物質は、それ自身は塩味を有していても有していなくてもよいが、食塩もしくは塩味代替物質の塩味を増強する物質を意味する。
【0034】
「酸味物質」とは、酸味代替物質及び/又は酸味抑制物質を意味し、酸味代替物質はクエン酸や酢酸に代表される酸味物質と同等もしくは類似した味質を有する物質であり、酸味抑制物質は、酸味物質もしくは酸味代替物質の酸味を抑制する物質を意味する。
【0035】
「甘味物質」とは、甘味代替物質及び/又は甘味増強物質を意味し、甘味代替物質は糖やD-アミノ酸、あるいは人工甘味料などに代表される甘味物質と同等もしくは類似した味質を有する物質であり、甘味増強物質は、それ自身は甘味を有していても有していなくてもよいが、上述のような甘味物質もしくは甘味代替物質の甘味を増強する物質を意味する。
【0036】
「旨味物質」とは、旨味代替物質及び/又は旨味増強物質を意味し、旨味代替物質はMSG等に代表される旨味物質と同等もしくは類似した味質を有する物質であり、旨味増強物質は、それ自身は旨味を有していても有していなくてもよいが、上述のような旨味物質もしくは旨味代替物質の旨味を増強する物質を意味する。
【0037】
「苦味物質」とは、苦味代替物質及び/又は苦味抑制物質を意味し、苦味代替物質は苦味ペプチドやカテキンなどに代表される苦味物質と同等もしくは類似した味質を有する物質であり、苦味抑制物質は、上述のような苦味物質もしくは苦味代替物質の苦味を抑制する物質を意味する。
【0038】
また、「マーカー分子」とは、「各味蕾細胞」がどの型の味蕾細胞であるかを容易に判定することを可能にする各型の味蕾細胞に特異的に発現する分子を意味する。例えば、本発明のマーカー分子の探索方法により見出された、Ano1、Kcnk16、Mfsd3、Tmc5、Trpc1、Gpr63、Gpr161、Gpr177、Slc16a7、Slc25a14、Slc35a1、Slc9a7、Sec61a1、Hsd3b7、Mal、Ptch1、Tm4sf1は塩味を認識すると考えられるI型味蕾細胞のマーカー分子である。
【0039】
S-KOマウスは、甘味、旨味、苦味を認識する味細胞が消失するが酸味および塩味を認識する細胞は残るため、甘味、旨味、苦味を認識できず、一方で酸味、塩味は知覚できる。この特性に着目すれば、S-KOマウスを用いた2瓶選択テストやリッキング試験のような行動解析により、水と嗜好性が変わらないものは、甘味、旨味、苦味を呈する、もしくは無味の素材であるとまず大きく試験物質の味質を判断することができる。さらに、WTマウスを用いた行動解析を組み合わせれば、その忌避もしくは嗜好性のいずれの行動をその試験物質の摂取により起こすか否かを見ることで、試験物質が甘味もしくは旨味を示すか、苦味を示すかを見極めることも可能となる。一方で、酸味物質はpHが低いことから、素材のpHを測定することによりその素材が酸味を呈しているかを判断することができる。このように、S-KOマウスとWTマウスの行動解析を組み合わせれば、実際に官能評価を行うことなく、試験物質の味質を分類することが可能となるため、毒性が不明の化学合成品や天然物の味質評価に対し、非常に有用な手段となりうる。
【0040】
【表2】

【0041】
また、塩味代替品もしくは増強素材を官能評価によって探索する際の問題点として、評価物質自体が有する味の影響でその素材が持つ効果を正確に判断できないということが挙げられる。特に、甘味や旨味は一般的に味をマスキングする傾向がある。また、現在塩味代替品として、最も使用されているKClやMgCl2には苦味や収斂味を有するため、本来塩味代替品となりうる素材の中には、塩味受容体だけではなく苦味受容体も同時に活性化する性質をもつものが多く存在するのかもしれない。そのような観点から考えるならば、これらの味質を感じることができない実験動物を用いた塩味代替物質もしくは塩味増強物質のスクリーニングは大変有用である。マウスの塩味に関する嗜好性は濃度により変化することが分かっている(低濃度では嗜好、高濃度では忌避)ため、同様の行動パターンを示す素材は塩味代替品としての候補となりうる。上述のとおり、S-KOマウスは、甘味、旨味、苦味を知覚することができないことから、このマウスを用いれば、素材が持つ甘味、旨味、苦味による忌避および嗜好性の影響は考慮する必要がない。以上のことから、S-KOマウスに試験物質を摂取させ、行動解析を行う手法は、WTマウスを用いた塩味代替物質もしくは塩味増強物質の候補物質の探索方法では見つけることができなかった新たな素材を見出すことを可能にする新しいスクリーニング方法といえる。
【0042】
本発明で特定された塩味受容体候補分子は、塩味代替物質もしくは塩味増強物質のスクリーニングに有用である。例えば、これらの少なくとも1種の遺伝子(外来遺伝子)を細胞内に導入した培養細胞に塩味代替物質もしくは塩味増強物質を作用させ、NaCl刺激と同様の細胞応答が観測されれば塩味代替物質もしくは塩味増強物質の候補物質と考えられる。塩味増強物質とは、例えば、閾値以下の塩味物質に共存させることで感じることができなかった塩味を感じさせる効果を持つ物質や、添加することにより強い塩味を誘導するような効果を有する物質などのことを指す。
【0043】
培養細胞や両生類卵母細胞などを用いたin vitroの系における機能解析は、例えばパッチクランプ法、全細胞電流の測定、放射標識イオン流束アッセイ、並びに膜電位感受性色素(例えば、Vestergarrd−Bogind他、J.Membrane Biol.88:67〜75(1988);Daniel他、J.Pharmacol.Meth.25:185〜193(1991);Hoevinsky他、J.Membrane Biol.137:59〜70(1994)参照)及びイオン感受性色素を用いた蛍光アッセイにより実施できる。例えばイオンチャネルをコードしている分子をアフリカツメガエル卵母細胞内に発現させ、その後、試験物質刺激による膜電流の変化を測定することによってチャネルの活性を評価することができる。電気生理学的測定値を得るための一手段は、パッチクランプ法、例えば「セルアタッチ」法、「インサイドアウト」法、及び「全細胞」法を用いて電流を測定する方法などが考えられる(例えば、Ackerman他、New Engl.J.Med.336:1575〜1595、1997参照)。全細胞電流は、Hamil他、Pflugers.Archiv.391:185(1981)に記載のものなどの方法を用いて測定することができる。
【0044】
Ano1等の塩味受容体候補分子を遺伝子導入した培養細胞を用いた塩味代替物質もしくは塩味増強物質のスクリーニングは、上述の電気生理学的な実験手法のほかに、膜電位感受性色素を用いた機能解析でも実現可能であると考えられる。塩味受容体候補分子を発現した培養細胞に膜電位感受性色素を負荷させた後、塩味代替物質もしくは塩味増強物質を作用させた場合、NaCl刺激によるものと同等以上の効果が認められれば、その素材の塩味代替物質もしくは塩味増強物質としての使用が強く期待される。一実施形態では、色素は最終濃度の約2μM〜約5μMで用い得る。さらに、最適な色素負荷時間は、ほとんどの細胞において室温〜37℃で約30〜約60分間の範囲で実施される。好ましい実施形態としては、膜電位感受性色素としてMolecular Devices(カタログ番号R8034)を用いる方法である。他の実施形態として、適切な色素には、DiBAC、DiSBAC(Molecular Devices)、及びDi−4−ANEPPS(Biotium)などの単一波長系色素、又はDiSBAC2、DiSBAC3、及びCC−2−DMPE(Aurora Biosciences)などの二重波長FRET系色素が含まれる。[化学名:Di−4−ANEPPS(ピリジニウム、4−(2−(6−(ジブチルアミノ)−2−ナフタレニル)エテニル)−1−(3−スルホプロピル)−、水酸化物、内部塩)、DiSBAC4(2)(ビス−(1,2−ジバルビツール酸)−トリメチンオキサノール)、DiSBAC4(3)(ビス−(1,3−ジバルビツール酸)トリメチンオキサノール)、CC−2−DMPE(Pacific Blue(商標)1,2−ジテトラデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩)及びSBFI−AM(1,3−ベンゼンジカルボン酸、4,4’−[1,4,10−トリオキサ−7,13−ジアザシクロペンタデカン−7,13−ジイルビス(5−メトキシ−6、12−ベンゾフランジイル)]ビス−,テトラ−キス[(アセチルオキシ)メチル]エステル]。
【0045】
一実施形態では、色素を負荷させた受容体発現細胞に、試験化合物(又は対照)刺激を行い、膜電位の変化をVIPR又はFLIPR(登録商標)などの蛍光分析装置を用いて測定する。NaCl又は受容体の活性化剤(すなわち塩味代替品)が培養細胞に発現している受容体を活性化させると膜電位の変化が誘発されるため、この変化を蛍光変化値として蛍光強度プレートリーダー(例えばFLIPR)又は電位強度プレートリーダー(例えばVIPR)で観測する。このように、Ano1等の塩味受容体候補分子を発現させた培養細胞に対する試験物質刺激に対する応答を観測することによって塩味代替品もしくは塩味調節性化合物をスクリーニングすることが可能となる。例えば、NaClとともに試験化合物を作用させた場合、NaClのみを作用させたものより蛍光強度が減少したものは塩味ブロッカー、一方、蛍光が増加したものは塩味増強物質となりうる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。
実施例1:Skn-1a/i遺伝子ホモ欠損マウス(S-KOマウス;Skn-1a/i-/-)の作製
以下の手順により、Skn-1a/i遺伝子が欠損した細胞を有するキメラマウス(S-KOマウス)を作製した。
【0047】
(1)キメラマウスの作製
129SvEvマウス由来のES細胞においてSkn-1a/i遺伝子を欠損させるために、まず、ターゲティングベクターを作製した。マウスSkn-1a/i遺伝子のエキソン7からエキソン9までを含む約4kbpの領域を除去し、代わりにネオマイシン耐性遺伝子を導入するコンストラクトを作製した。すなわち、Skn-1a/i遺伝子を含むBAC DNA(RP22-526M22)を用い、エキソン7の5'側2 kbp、TK-neo遺伝子、エキソン9の3'側6 kbpを連結させて挿入したプラスミドベクターを作製した。ターゲティングベクターの5'側にはジフテリア毒素遺伝子を導入した(図6)。このターゲティングベクターを、エレクトロポレーションでES細胞に導入した。ES細胞は、G418選択(ネオマイシン選択)した後、サザンブロット解析により、相同組換えを起こしたES細胞を選別した。相同組換えの認められた陽性クローン(ES細胞)を胚盤胞に導入して仮親に移植することによりキメラマウスを作製した。
【0048】
(2)ヘテロ欠損(Skn-1a/i+/-)マウスの作製
上記(1)により得られたキメラマウスをC57BL6系統マウスとの交配によってF1マウスを作製した。F1マウスの遺伝型をPCRで解析することにより、生殖系列への変異の導入が確認され、ヘテロ欠損マウス(Skn-1a/i+/-マウス)が作製された。
【0049】
(3)Skn-1a/i遺伝子ホモ欠損マウスの作製
Skn-1a/i+/-のF1マウスどうしを交配させて、Skn-1a/i遺伝子ホモ欠損マウス(S-KOマウス)を作製した。得られたF2マウスの遺伝子型は、ほぼメンデル律に従っていた。マウスの遺伝型の解析は、尻尾からDNAを抽出し、以下のように、PCRで行った。野生型の遺伝子の検出には、primer1 (5’-CATGCTGAGATTTGTCCCAAGCTG-3’;配列番号1)とprimer2 (5’-ATCTGCGCACAGCCTTGTATCTTC-3’ ;配列番号2)の組み合わせで、変異型遺伝子の検出には、primer3 (5’-ACAAGATGGATTGCACGCAGGTTC-3’ ;配列番号3)とprimer4 (5’-GTCCAGATCATCCTGATCGACAAG-3’ ;配列番号4)の組み合わせでゲノムDNAを鋳型にPCRを実施し、野生型遺伝子では0.8 kbpのDNAが、変異型では0.47 kbpのDNAが、それぞれ増幅された。PCRの反応は、94℃20秒間、60℃30秒間、72℃45秒間のサイクルを30回繰り返すことにより実施した。得られたDNA産物は、TAE緩衝液で作製した1%アガロースゲルで電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色することにより検出した。
【0050】
実施例2:S-KOマウスの機能解析
ISHに使用する有郭乳頭切片には、野生型C57BL/6Jマウス(埼玉実験動物供給所より購入)のオスを用いた。S-KOマウスはホモ欠損マウスを掛け合わせることにより自家繁殖させた6週齢のオスを用いた。新鮮なマウス舌から有郭乳頭を摘出し、クリオモルド1号(Sakura)中にO.C.T.コンパウンド(Sakura)で包埋し、液体窒素で凍結した。凍結ブロックはクライオスタットHM500-OM (Leica)を用いて7μmに薄切し、MASコートスライドグラス(Matsunami Glass)に貼りつけた。作成した切片は-80℃で保存した。
マウス遺伝子由来のcDNA断片は、有郭乳頭上皮、脳、精巣のtotal RNAを用いてRT-PCRにより取得した。クローニングした遺伝子名および取得に用いたプライマーの配列を表3に示した。増幅したcDNA断片をpBlueScript II SK- vector(Stratagene)にクローニングし、自動DNAシークエンサー310A(Applied Biosystems)を用いて塩基配列を確認した。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
ISHで用いたプローブはジゴキシゲニンまたはフルオロセインで標識したアンチセンスRNAプローブであり、前者はDIG RNA Labeling Mix (Roche Diagnostics)、後者はFluorescein RNA Labeling Mix (Roche Diagnostics)を用いて、T3またはT7 RNA polymerase (Stratagene)でin vitro transcriptionを行い、合成した。プローブ長が1000 塩基を超えるものは、sizing溶液中(42 mM NaHCO3, 63 mM Na2CO3, 5 mM dithiothreitol(DTT))60℃で断片化を行い、約500 塩基の長さにして用いた。
マウス有郭乳頭の新鮮凍結切片は4%パラホルムアルデヒド(PFA)/PBS溶液中室温で10分間固定した後、15分間ずつ0.1% ジエチルピロカルボナート(DEPC)/PBSで処理し、5×SSCにbufferを置換した。その後、プレハイブリダイゼーション溶液(40μg/ml salmon sperm DNA, 5×SSC, 50%ホルムアミド溶液)で58℃ 2時間プレハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション溶液(5×SSC, 50%ホルムアミド溶液, 5×Denhardt’s solution, 500 μg/ml salmon sperm DNA, 250 μg/ml yeast tRNA, 1 mM DTT, 20-200 ng/ml アンチセンスRNAプローブ)を切片上に乗せ、58℃または65℃で2晩行った。ハイブリダイゼーション後、いずれも58℃あるいは65℃のまま、5×SSCで5分間の洗浄を2回、0.2×SSCで30分間の洗浄を2回行った。さらに室温において0.2×SSCで5分間洗浄した後、TBSにbufferを置換した。ブロッキング溶液(0.5% blocking reagent(Roche Diagnostics)/TBS)で1時間ブロッキングを行った。
【0054】
アルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ジゴキシゲニン抗体Fab断片 (AP-anti-DIG Ab, Roche Diagnostics)をブロッキング溶液で1000倍に希釈し、室温で1時間抗原抗体反応を行った。TBSによる15分間の洗浄を室温で3回行い、アルカリフォスファターゼバッファー(100 mM Tris/HCl(pH 9.5), 50 mM MgCl2, 100 mM NaCl)にバッファーを置換した。基質溶液(200μg/ml NBT, 50μg/ml BCIP /アルカリフォスファターゼバッファー)と室温で反応させ発色させた。反応時間は用いたプローブによって異なり、3時間から16時間であった。
【0055】
ISHの結果を図5に示す。
【0056】
c) 2瓶選択テスト
味溶液は味物質を脱イオン水に溶解して調製した後、オートクレーブ滅菌したものを使用した。また、WTマウスおよびS-KOマウスはいずれも1匹ずつ個別に飼育し、餌は固形飼料(ラボMRブリーダー、埼玉実験動物供給所)を自由摂取させ試験に供した。
【0057】
各マウスに15 mlの各飲水瓶を2本提示し、一方にはオートクレーブ滅菌した脱イオン水、もう一方には味溶液を入れて48時間自由摂取させた。位置による偏りを除くために24時間経過した時点で2本の飲水瓶の位置を入れ替えた。48時間後に脱イオン水および味溶液の飲水量をそれぞれ測定し、味溶液の嗜好率(preference ratio)を全飲水量に対する味溶液の割合として求めた。
【0058】
(preference ratio) = (tastant solution consumed) / (total liquid consumed)
この数値が0.5の時、水と嗜好性が変わらず、高いほど味溶液を好み、低いほど嫌うことを示す。
【0059】
得られたpreference ratioの値に対して、WTとS-KO群の間でStudentのt検定を行い、差が統計的に有意であるかを調べた。
【0060】
結果を図4に示す。
【0061】
d) 神経応答解析
ネンブタール麻酔下で神経線維を露出させて白金電極を接続し、舌に味刺激を行った際の神経電位変化を測定した。電気生理解析システムclampex(Molecular Devices)を用いてデータの取得および分析を行った。味刺激は、スクロース(300mM)、グルタミン酸ナトリウム(MSG 30mM(+IMP 0.5mM))、デナトニウム(Denatonium, 1mM)、クエン酸(Citric acid, 30mM)、NaCl(100mM)を用いた。
【0062】
WTマウスおよびS-KOマウスそれぞれに対して、甘味、旨味、酸味、苦味、塩味の5味質について応答を計測した。味溶液は味物質を脱イオン水に溶解して調製した後、オートクレーブ滅菌したものを使用した。各味刺激は3回ずつ行い、その平均を粗応答値として算出した。コントロールとして300 mM NH4Cl水溶液を用い、各味溶液の粗応答値をコントロールの応答値で割ったものを応答強度として用いた。得られた値に対して、それぞれの味溶液についてWTマウスとS-KOマウス群の間でStudentのt検定を行い、差が統計的に有意であるかを調べた。
【0063】
結果を図3に示す。
【0064】
実施例3:DNAマイクロアレイ解析
DNAマイクロアレイ実験は、野生型C57BL/6Jマウス(埼玉実験動物供給所より購入)(WT) およびS-KOマウス各5個体を用いて行った。WTマウスの有郭乳頭上皮組織および非乳頭上皮組織、S-KOマウスの有郭乳頭上皮組織を摘出した。10ngの全RNAを用い、Two-Cycle Target Labeling and Control Reagents Kit (Affymetrix)を用い、ビオチン化cRNAを合成した。アルカリ溶液によるcRNAの断片化を行い、Expression Analysis Technical Manual (Affymetrix) に従い、DNAマイクロアレイ(Mouse Genome 430 2.0, Affymetrix)と45℃で16 時間ハイブリダイゼーションを行った。洗浄、フィコエリスリン標識、および蛍光シグナルの読み取りは、Affymetrix社のGene Chip Systemを用いて行った。読み取ったデータはGene Chip Operation Software (Affymetrix社)で解析した。 データの統計処理は統計解析ソフトウェアRを使用して行った。表1は、下記の分析によって同定された遺伝子を記載する。
【0065】
まず、遺伝子を同定し、下記の基準を満たす味覚特異的遺伝子に分類した。
ロバストマルチチップアルゴリズム(robust multichip algorithm:RMA)正規化データを使用
野生型有郭乳頭上皮 対 舌上皮細胞発現率 > 5倍
野生型有郭乳頭上皮 対 舌上皮細胞発現率 FDR値 < 0.1
有郭乳頭上皮細胞の粗発現値 > 100
次に、遺伝子は、下記の特定の組み入れ基準を使用してS-KOマウスとWTマウスで遺伝子発現量に大きな差が無い遺伝子、すなわちI型味蕾細胞に特異的な遺伝子の候補として同定した。
【0066】
組み入れ基準:
RMA正規化データを使用
野生型有郭乳頭上皮 対skn-1 KO有郭乳頭上皮発現率 0.7倍から1.5倍
野生型有郭乳頭上皮 対skn-1 KO有郭乳頭上皮発現率 FDR値 > 0.1
395の遺伝子(正確にはprobe sets)を同定
【0067】
次に、遺伝子は、下記の特定の組み入れ基準を使用して膜貫通ドメインを有するタンパク質をコードするもの遺伝子として同定した。
【0068】
膜貫通領域を持つタンパク質をコードするとして注釈付けされている
または膜貫通領域予測プログラムSOSUIにより膜貫通領域を複数持つことが予想された62 probe sets(53遺伝子)を同定
このうち、既存の特許または非特許論文に記載されているもの19遺伝子を除き表1に示す34遺伝子を選定した。
【0069】
実施例4: in situ hydridyzation
ISHに使用する有郭乳頭切片には、野生型C57BL/6Jマウス(埼玉実験動物供給所より購入)(WT)のオスを用いた。S-KOマウスはホモ欠損マウスを掛け合わせることにより自家繁殖させたものを用いた。新鮮なマウス舌から有郭乳頭を摘出し、クリオモルド1号(Sakura)中にO.C.T.コンパウンド(Sakura)で包埋し、液体窒素で凍結した。凍結ブロックはクライオスタット HM500-OM (Leica)を用いて7 μmに薄切し、MASコートスライドグラス(Matsunami Glass)に貼りつけた。作成した切片は-80℃で保存した。
【0070】
マウス遺伝子由来のcDNA断片は、有郭乳頭上皮、脳、精巣のtotal RNAを用いてRT-PCRにより取得した。クローニングした遺伝子名および取得に用いたプライマーの配列を表4に示した。増幅したcDNA断片をpBlueScript IISK-vector(Stratagene)にクローニングし、自動DNAシークエンサー310A(Applied Biosystems)を用いて塩基配列を確認した。
【0071】
【表5】



【0072】
ISHで用いたプローブはジゴキシゲニンまたはフルオロセインで標識したアンチセンスRNAプローブであり、前者はDIG RNA Labeling Mix (Roche Diagnostics)、後者はFluorescein RNA Labeling Mix (Roche Diagnostics)を用いて、T3またはT7 RNA polymerase (Stratagene)でin vitro transcriptionを行い、合成した。プローブ長が1000 塩基を超えるものは、sizing溶液中(42 mM NaHCO3、63 mM Na2CO3、5 mM dithiothreitol(DTT))60℃で断片化を行い、約500 塩基の長さにして用いた。
【0073】
マウス有郭乳頭の新鮮凍結切片は4%パラホルムアルデヒド(PFA)/PBS溶液中室温で10分間固定した後、15分間ずつ0.1% ジエチルピロカルボナート(DEPC)/PBSで処理し、5×SSCにbufferを置換した。その後、プレハイブリダイゼーション溶液(40μg/ml salmon sperm DNA, 5×SSC、50%ホルムアミド溶液)で58℃ 2時間プレハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション溶液(5×SSC, 50%ホルムアミド溶液, 5×Denhardt’s solution, 500μg/ml salmon sperm DNA, 250μg/ml yeast tRNA, 1 mM DTT, 20-200ng/ml アンチセンスRNAプローブ)を切片上に乗せ、58℃または65℃で2晩行った。ハイブリダイゼーション後、いずれも58℃あるいは65℃のまま、5×SSCで5分間の洗浄を2回、0.2×SSCで30分間の洗浄を2回行った。さらに室温において0.2×SSCで5分間洗浄した後、TBSにbufferを置換した。ブロッキング溶液(0.5% blocking reagent(Roche Diagnostics)/TBS)で1時間ブロッキングを行った。
【0074】
アルカリフォスファターゼ結合ヤギ抗ジゴキシゲニン抗体Fab断片 (AP-anti-DIG Ab, Roche Diagnostics)をブロッキング溶液で1000倍に希釈し、室温で1時間抗原抗体反応を行った。TBSによる15分間の洗浄を室温で3回行い、アルカリフォスファターゼバッファー(100mM Tris/HCl(pH 9.5), 50mM MgCl2, 100mM NaCl)にバッファーを置換した。基質溶液(200μg/ml NBT, 50μg/ml BCIP /アルカリフォスファターゼバッファー)と室温で16時間反応させ発色させた。
【0075】
ISHの結果を図2に示す。
【0076】
実施例5:阻害剤試験(リッキング試験)
マウスの味覚に対する各種チャネル阻害剤の影響を行動学的手法により調べるリッキング試験(brief access test: 味物質の短時間摂取による嗜好性評価テスト)の例である。WTマウス(n=10, オス)を使用した。マウスは1匹ずつ個別に飼育し、餌は固形飼料(ラボMRブリーダー、埼玉実験動物供給所)を自由摂取させた。各濃度の味溶液は調整後オートクレーブ滅菌して使用した。阻害剤 として以下のものを使用した DIDS(ジイソチオシアノスチルベンジスルホン酸; SIGMA), NFA(ニフルミン酸; SIGMA): Clイオンチャネルの阻害剤、amiloride(アミロライド; SIGMA):ENaCの阻害剤。阻害剤はジメチルスルホキシド(DMSO; 関東化学)に溶解し、使用直前に最終濃度500μMとなるように味溶液に添加して使用し、阻害剤、DMSOのみでは忌避しないことを確認した。
【0077】
事前に24時間絶水させたマウスに各味溶液を提示し、optical licometer (Coulbourn Instruments マウスが溶液を舐める行動を光学的に検出する装置) を用いて5秒間に舐める回数を測定した。
【0078】
味溶液の嗜好性(preference ratio)を、味溶液を舐めた回数の水を舐めた回数に対する割合として求めた。この数値が1の時、水と嗜好性が変わらず、低いほど味溶液を嫌うことを示す。
【0079】
(嗜好率) = (味溶液を舐めた回数 ) / (水を舐めた回数)
得られた嗜好率の値に対して、Studentのt検定を行い、阻害剤の有無による差の統計的有意性を検証した。結果を図1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Skn-1a/iノックアウトマウスに味物質の候補物質を摂取させ、前記マウスの行動解析を行うことを含み、前記味物質が塩味物質、甘味物質、旨味物質、苦味物質および酸味物質からなる群から選択されることを特徴とする、味物質のスクリーニング方法。
【請求項2】
前記味物質が塩味物質である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記味物質が甘味物質もしくは旨味物質である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記味物質が苦味物質である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
前記味物質が酸味物質である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
前記Skn-1a/iノックアウトマウスとともに、さらに野生型マウスにも味物質の候補物質を摂取させ、両マウスの行動解析を行うことを特徴とする、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項7】
Skn-1a/iノックアウトマウスの味物質のスクリーニングのための使用であって、前記味物質が塩味物質、甘味物質、旨味物質、苦味物質および酸味物質からなる群から選択される、味物質のスクリーニングのための使用。
【請求項8】
前記味物質が塩味物質である、請求項7に記載のスクリーニングのための使用。
【請求項9】
前記味物質が甘味物質もしくは旨味物質である、請求項7に記載のスクリーニングのための使用。
【請求項10】
前記味物質が苦味物質である、請求項7に記載のスクリーニングのための使用。
【請求項11】
前記味物質が酸味物質である、請求項7に記載のスクリーニングのための使用。
【請求項12】
試験物質を塩味、甘味もしくは旨味、苦味、酸味のいずれかの味質に分類する方法であって、Skn-1a/iノックアウトマウスと、必要に応じて野生型マウスに試験物質を摂取させ、前記マウスに対する行動解析を行うことを特徴とする、方法。
【請求項13】
Skn-1a/iノックアウトマウスを用いた味蕾細胞のマーカー分子の探索方法。
【請求項14】
前記味蕾細胞が、塩味を認識するI型味蕾細胞であるか、甘・旨・苦味を認識するII型味蕾細胞であるか、酸味を認識するIII型味蕾細胞であるかを判定する請求項13に記載のマーカー分子の探索方法。
【請求項15】
Skn-1a/iノックアウトマウスと野生型マウスの有郭乳頭上皮細胞に発現する遺伝子の比較解析を行い、野生型マウスにのみ発現するマーカー分子はII型味蕾細胞のマーカー分子であると決定する請求項13又は14に記載のマーカー分子の探索方法。
【請求項16】
Skn-1a/iノックアウトマウスと野生型マウスの有郭乳頭上皮細胞における発現遺伝子量を比較する工程、有郭乳頭上皮組織と非乳頭上皮組織の発現遺伝子量を比較する工程を含み、それによりI型味蕾細胞、又はIII型味蕾細胞のマーカー分子であると決定する請求項13又は14に記載のマーカー分子の探索方法。
【請求項17】
(i) Skn-1a/iノックアウトマウスと野生型マウスの有郭乳頭上皮細胞における発現量が大きく変わらない遺伝子の抽出工程
(ii)有郭乳頭もしくは有郭乳頭と有郭乳頭上皮の両方に特異的に発現している遺伝子の抽出工程
(iii)in situ hybridization(ISH)による味蕾での発現が確認できる遺伝子の抽出工程
を含む、請求項16に記載のI型味蕾細胞のマーカー分子の探索方法。
【請求項18】
(i) Skn-1a/iノックアウトマウスと野生型マウスの有郭乳頭上皮細胞における発現量が大きい遺伝子の抽出工程
(ii)有郭乳頭もしくは有郭乳頭と有郭乳頭上皮の両方に特異的に発現している遺伝子の抽出工程
(iii)in situ hybridization(ISH)による味蕾での発現が確認できる遺伝子の抽出工程
を含む、請求項16に記載のIII型味蕾細胞のマーカー分子の探索方法。
【請求項19】
貫膜領域が複数回である遺伝子を選択する請求項13〜18のいずれかに記載のマーカー分子の探索方法。
【請求項20】
Ano1、Kcnk16、Mfsd3、Tmc5、Trpc1、Gpr63、Gpr161、Gpr177、Slc16a7、Slc25a14、 Slc35a1、Slc9a7、Sec61a1、Hsd3b7、Mal、Ptch1、Tm4sf1から選ばれる少なくとも1種の遺伝子もしくは分子のI型味蕾細胞マーカー分子としての使用。
【請求項21】
Ano1、Kcnk16、Mfsd3、Tmc5、Trpc1、Gpr63、Gpr161、Gpr177、Slc16a7、Slc25a14、Slc35a1、Slc9a7、Sec61a1、Hsd3b7、Mal、Ptch1、Tm4sf1から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の塩味受容体としての使用或いは塩味代替もしくは増強物質スクリーニングのための使用。
【請求項22】
塩味物質スクリーニング用のAno1、Kcnk16、Mfsd3、Tmc5、Trpc1、Gpr63、Gpr161、 Gpr177、Slc16a7、Slc25a14、Slc35a1、Slc9a7、Sec61a1、Hsd3b7、Mal、Ptch1、Tm4sf1から選ばれる少なくとも1種の外来遺伝子を発現した培養細胞もしくは、両生類卵母細胞。
【請求項23】
請求項22に記載の培養細胞もしくは両生類卵母細胞に塩味代替物質もしくは塩味増強物質を作用させ細胞応答を観測することによる、塩味代替物質もしくは塩味増強物質のスクリーニング方法。
【請求項24】
請求項22に記載の細胞の塩味代替物質もしくは塩味増強物質による細胞応答をパッチクランプ法、全細胞電流の測定、放射標識イオン流束アッセイ、膜電位感受性色素及びイオン濃度感受性色素を用いてモニタリングする、請求項21に記載のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154661(P2012−154661A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11601(P2011−11601)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】