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Sn又はSn合金めっき材及びその製造方法
説明

Sn又はSn合金めっき材及びその製造方法

【課題】 プレス加工時の粉発生を抑制し、低接触抵抗及び高はんだ濡れ性を有し、長時間加熱後もこれら特性を保持するSn又はSn合金めっき材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 金属基材11、金属基材11上に形成されたSn又はSn合金めっき13、及び、Sn又はSn合金めっき13上に形成された表面処理層14を備え、前記Sn及びSn合金めっき13のめっき厚が0.2μm以上であり、XPS(X線光電子分光装置)のSurvey測定で前記表面処理層表面の元素分析を行ったとき、リン(P)の2S軌道の結合エネルギー(P2S)のピークが186〜192eVにあり、Pを0.5at%以上5.0at%未満含有し、カーボン(C)の1S軌道の結合エネルギー(C1S)のピークが284〜290eVにあり、Cを35at%以上80at%未満含有するSn又はSn合金めっき材10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Sn又はSn合金めっき材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用又は電子機器用接続部品であるコネクターには、黄銅やリン青銅の表面にNiやCuの下地めっきを施し、さらにその上にSn又はSn合金めっきを施した材料が使用されている。Sn又はSn合金めっきは、一般的に低接触抵抗及び高はんだ濡れ性という特性が求められ、更に近年めっき材をプレス加工で成形したオス端子及びメス端子勘合時の挿入力の低減化も求められている。また、Sn又はSn合金めっきは数多くある金属めっきの中ではめっきが柔らかいため、めっき材が他の物体と接触するとめっきに傷がつき、粉が発生しやすいという欠点もある。
【0003】
これに対し、めっき材に0.01〜10mg/dm2の有機潤滑剤を施し、挿入力を下げる技術が知られている(特許文献1)。また、Sn又はSn合金めっき材に10Å以上100Å以下の油性保護膜を施し、プレス加工時にめっき層表面に傷を発生させるおそれを少なくするという技術も知られている(特許文献2)。
【0004】
更に、Sn又はSn合金めっき材は、高温環境下で放置されるとSnが酸化され、接触抵抗が増加したり、めっき表面が変色するといった問題がある。このようなことから、めっき材最表面に存在する酸素原子(O)の存在形態をESCA(X線光電子分光装置)で分析した際に、酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーのトップが531eV以上532eV以下にあり、Sn層の厚みが0.4μm以上2.0μm以下とすることで低接触抵抗、高はんだ濡れ性及び高耐熱性を有するSn被覆技術も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−183882号公報
【特許文献2】特開2010−149261号公報
【特許文献3】特開2010−202903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2記載の技術の場合、有機潤滑剤や油性保護膜の種類によっては長時間加熱後に表面が変色して接触抵抗が高く、はんだ濡れ性も悪くなるという問題がある。
また、特許文献3の技術の場合、Snめっき材のプレス加工時にSn粉が多く発生し、プレスしためっき材に粉起因の打根が多く発生するという問題がある。
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、プレス加工時の粉発生を抑制し、低接触抵抗及び高はんだ濡れ性を有し、長時間加熱後もこれら特性を保持するSn又はSn合金めっき材及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、Sn又はSn合金めっき上にP及びCを含む表面処理液により適切な表面処理を施して、P及びCの結合エネルギーのピーク、及び、P及びCの存在領域及び濃度を適切に制御した表面処理層を形成することで、プレス加工時の粉発生を抑制し、低接触抵抗及び高はんだ濡れ性を有し、長時間加熱後もこれら特性を保持するSn又はSn合金めっき材を作製することができることを見出した。
【0008】
以上の知見を基礎として完成した本発明は一側面において、金属基材、前記金属基材上に形成されたSn又はSn合金めっき、及び、前記Sn又はSn合金めっき上に形成された表面処理層を備え、前記Sn及びSn合金めっきのめっき厚が0.2μm以上であり、XPS(X線光電子分光装置)のSurvey測定で前記表面処理層表面の元素分析を行ったとき、リン(P)の2S軌道の結合エネルギー(P2S)のピークが186〜192eVにあり、Pを0.5at%以上5.0at%未満含有し、カーボン(C)の1S軌道の結合エネルギー(C1S)のピークが284〜290eVにあり、Cを35at%以上80at%未満含有するSn又はSn合金めっき材である。
【0009】
本発明に係るSn又はSn合金めっき材は一実施形態において、XPSのDepth測定で前記表面処理層表面の元素分析を行ったとき、Cが前記表面処理層の表面から0.5nmまでの領域に35at%以上80at%未満存在し、且つ、Cを20at%以上含む領域が前記表面処理層の表面から15nm未満であり、酸素(O)を30at%以上含む領域が前記表面処理層の表面から15nm未満である。
【0010】
本発明に係るSn又はSn合金めっき材は別の一実施形態において、XPSのSurvey測定で前記表面処理層表面の元素分析を行ったとき、Cを50at%以上80at%未満含有し、XPSのDepth測定で前記表面処理層表面の元素分析を行ったとき、Cが前記表面処理層の表面から0.5nmまでの領域に50at%以上80at%未満存在し、且つ、Cを20at%以上含む領域が前記表面処理層の表面から2nm以上15nm未満である。
【0011】
本発明に係るSn又はSn合金めっき材は更に別の一実施形態において、前記めっきの厚さが0.2μm以上である。
【0012】
本発明に係るSn又はSn合金めっき材は更に別の一実施形態において、前記金属基材と前記めっきとの間に下地めっきが形成されている。
【0013】
本発明は別の一側面において、Sn又はSn合金めっきが形成された金属基材の前記Sn又はSn合金めっき上に、リン及びカーボンを含有する表面処理液で表面処理を施す工程を含む本発明に係るSn又はSn合金めっき材の製造方法である。
【0014】
本発明に係るSn又はSn合金めっき材の製造方法は一実施形態において、前記表面処理液が、リン酸エステル系化合物及びメルカプトベンゾチアゾール系化合物を含有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プレス加工時の粉発生を抑制し、低接触抵抗及び高はんだ濡れ性を有し、長時間加熱後もこれら特性を保持するSn又はSn合金めっき材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るSn又はSn合金めっき材の構成を示す模式図である。
【図2】実施例1に係るXPS(X線光電子分光装置)のSurvey測定結果である。
【図3】実施例1に係るXPS(X線光電子分光装置)のDepth測定である。
【図4】実施例の粉発生試験に関する略図である。
【図5】実施例の動摩擦係数測定に関する試験装置略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るSn又はSn合金めっき材について説明する。図1に示すように、本実施形態に係るSn又はSn合金めっき材10は、金属基材11の表面に下地めっき12が形成され、下地めっき12の表面にSn又はSn合金めっき13、Sn又はSn合金めっき13表面にリン(P)及びカーボン(C)を含んだ表面処理層14が施されている。なお、下地めっき12は必須の構成要素ではない。
【0018】
(金属基材)
金属基材11としては、特に限定されないが、例えばコネクター材料に用いる場合は、銅又は銅合金が好ましい。銅又は銅合金は、導電性が高い、展延性に富む、及び、ばね特性が良好という利点を有するためである。
【0019】
(下地めっき)
下地めっき12としては、特に限定されないが、例えば、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群より選択される1種類以上の金属で形成することができる。下地めっき12の厚みは、0.2〜5.0μmであることが好ましい。下地めっき12の厚みが0.2μm未満の場合には、金属基材成分がSn又はSn合金めっきに拡散し、接触抵抗が高くなり、且つ、はんだ濡れ性を悪くする恐れがある。一方、下地めっき12の厚みが5.0μm超えた場合には特性上の問題はないが、コストが高くなるといった問題が生じる。
【0020】
(Sn又はSn合金めっき)
Sn又はSn合金めっき13は、0.2μm以上の厚みに形成されている。0.2μm未満の厚みの場合には、接触抵抗が高く、はんだ濡れ性も悪くする恐れがある。一方、厚みが厚くなると共に挿入力が高くなるため、厚みは好ましくは3.0μm未満、より好ましくは2.0μm未満、更に好ましくは1.0μm未満である。Sn合金めっきの構成材料としては、特に限定されないが、例えば、Sn合金めっきとして一般的なSb、Pb、Ni、Mo、Mn、Fe、Cu、Cr、Co及びBiからなる群より選択される1種類以上の金属を含むことが好ましい。その場合、Sn合金めっきのSnが90質量%以上存在することが、接触抵抗の抑制、及び、はんだ濡れ性の向上、更には長時間加熱(155℃×16h×大気)におけるそれらの特性の保持の点からより好ましい。
【0021】
(表面処理層)
表面処理層14は、リン(P)及びカーボン(C)を含んでいる。表面処理層14がリンを含んでいないと、長時間加熱(155℃×16h×大気)によってSn又はSn合金めっきが変色して接触抵抗やはんだ濡れ性が悪くなるおそれがある。また、リンは耐熱性を改善させる効果がある。また、カーボンを含んでいないと、プレス加工時に粉発生が多く、挿入力も低下しないおそれがある。
【0022】
(表面処理層の定性分析)
本発明の実施形態に係るSn又はSn合金めっき材10は、XPS(X線光電子分光装置)のSurvey測定で表面処理層14の元素存在分析を行ったとき、リン(P)の2S軌道の結合エネルギー(P2S)のピークが186〜192eVにあり、Pを0.5at%以上5.0at%未満含有し、カーボン(C)の1S軌道の結合エネルギー(C1S)のピークが284〜290eVにあり、Cを35at%以上80at%未満含有する。
プレス加工時の粉発生を抑制し、低接触抵抗及び高はんだ濡れ性を有し、長時間加熱後もこれら特性を保持するSn又はSn合金めっき材を得るためには、Pの2S軌道の結合エネルギー(P2S)のピークが186〜192eVにあることが必須であるが、このような範囲に結合エネルギー(P2S)のピークがあっても、Pが0.5at%未満であると、長時間加熱(155℃×16h×大気)によってSn又はSn合金めっきが変色して、接触抵抗が加熱前と比較して増加し、耐熱性が悪くなる。また、Pが5.0at以上存在すると、Pの低導電性により接触抵抗が高くなる。
さらに、プレス加工時の粉発生を抑制し、低接触抵抗及び高はんだ濡れ性を有し、長時間加熱後もこれら特性を保持するSn又はSn合金めっき材を得るためには、Cの1S軌道の結合エネルギー(C1S)のピークが284〜290eVにあることが必須であるが、このような範囲に結合エネルギー(C1S)のピークがあっても、Cが35at%未満であるとプレス加工時に粉が多く発生し、Cが80at%以上であると接触抵抗が高くなる。また、Cが50at%以上80at%未満であると、更にめっき材の特性が改善し、挿入力も低くなるため好ましい。
【0023】
(表面処理層の層構造分析)
本発明の実施形態に係るSn又はSn合金めっき材10は、XPSのDepth測定で表面処理層14の元素存在分析を行ったとき、Cが表面処理層14の表面から0.5nmまでの領域に35at%以上80at%未満存在し、且つ、Cを20at%以上含む領域が表面処理層14の表面から15nm未満であり、酸素(O)を30at%以上含む領域が表面処理層14の表面から15nm未満であるのが好ましい。
Cが表面処理層14の表面から0.5nmまでの領域に最表面に35at%未満で存在するとプレス加工時に粉が多く発生し、80at%以上で存在すると接触抵抗が高くなる。また、Cを20at%以上含む領域が表面処理層14の表面から15nm以上で存在する場合には長時間加熱(155℃×16h×大気)の接触抵抗が加熱前と比較して増加し、耐熱性が悪くなる。
さらに、Oを30at%以上含む領域が表面処理層14の表面から15nm以上で存在する場合には、接触抵抗が高く、長時間加熱(155℃×16h×大気)の接触抵抗が加熱前と比較して増加し、耐熱性も悪くなる。
また、Cが表面処理層14の表面から0.5nmまでの領域に50at%以上80at%未満存在し、且つ、Cを20at%以上含む領域が表面処理層14の表面から2nm以上15nm未満であると、更にめっき材の特性が改善し、挿入力も低くなるため好ましい。
【0024】
(Sn又はSn合金めっきの製造方法)
Sn又はSn合金めっきは、金属基材の表面に、下地めっき、厚みが0.2μm以上のSn又はSn合金めっき、表面潤滑処理を順に施すことによって得られる。なおSn又はSn合金めっき後に必要応じてリフロー処理を施しても良い。また、表面潤滑処理は、リン及びカーボンを両方含有しており、具体的にはリン酸エステル系化合物及びメルカプトベンゾチアゾール系化合物を含有していることが好ましい。これらの濃度は、化合物の形態によって異なるが、例えば、ラウリル酸性リン酸モノエステルの場合には0.1〜3.0質量%、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩等の場合には0.010〜0.100質量%とする。リフロー処理条件としては、めっき厚やSn又はSn合金めっきの種類により異なるが、230〜700℃で0.3〜120秒間行うのが適切である。リン酸エステル系化合物は、化合物中のリンがSn又はSn合金めっきと反応してめっきの表面に保護膜を生成し、この保護膜が、Sn又はSn合金めっきの変色防止として機能する。また、メルカプトベンゾチアゾール系化合物は、Sn又はSn合金めっきと反応してめっきの表面に保護膜を生成し、この保護膜が、Sn又はSn合金めっきの粉発生を抑制し、更に挿入力を低下する効果がある。リン酸エステル系化合物としては、ラウリル酸性リン酸モノエステル、ラウリル酸性リン酸ジエステル等が挙げられる。メルカプトベンゾチアゾール系化合物としては、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩等挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を示すが、これらは本発明をより良く理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
【0026】
金属基材として、厚み0.3mmの黄銅(C2680)を準備した。次に、金属基材の表面に電気めっきを用いて所定の目標厚みとなるように、下地めっきとしてNiまたはCuめっきを施した。次に、下地めっき表面に電気めっきを用いて所定の目標厚みとなるようにSnめっきを施した。その後、ホットプレート上でリフロー処理を施し、徐冷した。次に、リフロー処理を施したSnめっき上にラウリル酸性リン酸モノエステル(リン酸エステル系化合物)及びメルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩(メルカプトベンゾチアゾール系化合物)を含有した潤滑処理液を用いて電解処理により、潤滑処理を施した。より具体的には、上記金属基材に以下の工程を順に行った。各工程の処理条件は、表1に示す。
めっき材の作製手順:電解脱脂→水洗→酸洗→水洗→Ni又はCuめっき→水洗→Snめっき→水洗→リフロー処理→徐冷→潤滑処理→湯洗→水洗
【0027】
【表1】

【0028】
めっきの目標厚みは以下のように定めた。Niめっき及びSnめっきは、蛍光X線膜厚計(Seiko Instruments製 SEA5100、コリメータ0.1mmΦ)で実際のめっき厚みを測定した。Cuめっきは、金属基材として厚み10nmの金めっきを施した厚み0.1mmのステンレス材(SUS304)にCuめっきを施して、蛍光X線膜厚計で実際のめっき厚みを測定した。
【0029】
(表面処理層の最表面定性分析及び層構造分析)
得られた試料の表面は、XPS分析によるSurvey測定にて定性分析を行った。定性分析濃度の分解能を0.1at%とした。また、Pの2S軌道の結合エネルギー(P2S)のピークやCの1S軌道の結合エネルギー(C1S)のピークの有無が分かりにくい場合には、分析の積算回数を必要に応じ増やして測定した。今回実施例では積算回数を10回にして測定した。
層構造は、XPS分析による深さ(Depth)プロファイルを測定し、Sn、O、Cuの濃度分析を行って表面処理層の層構造を決定した。XPSによる濃度検出は、指定元素の合計を100%として、各元素の濃度(at%)を分析した。また、XPS分析で厚み方向への距離(nm)は、XPS分析によるチャートの横軸の距離(SiO2換算での距離)に対応する。
XPS装置としては、アルバック・ファイ株式会社製5600MCを用い、到達真空度:2.1×10-9Torr、励起源:単色化AlKα、出力:210W、検出面積:800μmΦ、入射角:45度、取り出し角:45度、中和銃なしとし、以下のスパッタ条件で、測定した。
イオン種:Ar+
加速電圧:3kV
掃引領域:3mm×3mm
レート:2nm/min.(SiO2換算)
【0030】
図2は、実施例1のXPS分析によるSurvey測定結果である。図2より、Pの2S軌道の結合エネルギー(P2S)のピークが186〜192eVにあり、Pが1at%存在することが分かる。また、Cの1S軌道の結合エネルギー(C1S軌道)のピークが284〜290eVにあり、Cが45at%存在することも分かる。
図3は、実施例1のXPS分析による深さ(Depth)プロファイルの測定結果である。図3より、カーボン(C)が最表面に50at%以上存在し、20at%以上のカーボン(C)が1.5nm存在することが分かる。
【0031】
(各試料の作製)
黄銅基材(金属基材)に対し、表面処理時の下地めっき厚の種類、Snめっきの厚み、リフロー条件及び潤滑処条件を種々変更して実施例1〜13の試料を作製した。
比較例14として、潤滑処理液にリン酸エステル系化合物入れないで潤滑処理を行い、試料を作製した。
比較例15として、実施例1よりも潤滑処理液のリン酸エステル系化合物濃度を高くして潤滑処理を行い、試料を作製した。
比較例16として、実施例1よりも潤滑処理液のメルカプトベンゾチアゾール系化合物の濃度を低くして潤滑処理を行い、試料を作製した。
比較例17として、実施例1よりも潤滑処理液のメルカプトベンゾチアゾール系化合物の濃度を高くして潤滑処理を行い、試料を作製した。
比較例18として、実施例1よりもリフロー温度を高く、リフロー時間を長くしてリフローを行い、試料を作製した。
比較例19として、実施例9と比較して潤滑処理液にリン酸エステル系化合物入れないで潤滑処理を行い、試料を作製した。
比較例20として、実施例9よりも潤滑処理液のリン酸エステル系化合物濃度を高くして潤滑処理を行い、試料を作製した。
比較例21として、実施例9よりも潤滑処理液のメルカプトベンゾチアゾール系化合物の濃度を低くして潤滑処理を行い、試料を作製した。
比較例22として、実施例9よりも潤滑処理液のメルカプトベンゾチアゾール系化合物の濃度を高くして潤滑処理を行い、試料を作製した。
比較例23として、実施例8、9よりもSnめっき厚を薄くして、試料を作製した。
比較例24として、実施例1と比較して潤滑処理を行わないで、試料を作製した。
【0032】
(評価)
各試料について以下の評価を行った。
A.粉発生試験
図4に示す方法で粉発生試験を行った。鉄板(スチールディスク)上にサンプルを貼り付け、サンプル上にBWF(ドイツ)社製の厚み3mmのBCフエルト(商品名)を巻きつけた4.8mmΦの鉄球(スチールボール)を置いた。この鉄球に30gの荷重を加え、鉄球を走査距離10mm、往復走査回数15回で粉発生試験した。試験後にパットに目視で粉が確認できた場合には粉が発生したとして評価結果を×にした。一方粉が確認できなかった場合には粉が発生しなかったとして評価結果を○にした。
B.接触抵抗
接触抵抗は大気加熱試験(155℃×16h)前後のサンプルを評価した。測定は、山崎精機製接点シミュレーターCRS−1を使用し、接点荷重50g、電流200mAの条件で4端子法にて測定した。なお目標とする特性は大気加熱前後で接触抵抗が変化せず、10mΩ以下である。
C.はんだ濡れ性
はんだ濡れ性はめっき後のサンプルを評価した。ソルダーチェッカ(レスカ社製SAT−5000)を使用し、フラックスとして市販のRMA級フラックスを用い、メニスコグラフ法にてはんだ濡れ時間を測定した。なお、はんだはSn−3Ag−0.5Cu(250℃)を用いた。目標とするはんだ濡れ時間は3秒以下である。
D.挿入力
挿入力は動摩擦係数を代替として評価した。測定装置として薪東科学株式会社製HEIDEN−14型を使用し、圧子荷重500g、走査距離100mm、走査速度50mm/minの条件で測定した。目標特性は、比較例24のNi(0.3μm)/Sn(1.0μm)と比較して動摩擦係数が20%以上の減少である。
なお、測定は、粉発生試験、接触抵抗及びはんだ濡れ性が良好なサンプルで、動摩擦係数はSnめっき厚により異なるため、比較例24と同じSn1.0μmのみ測定した。
各条件及び評価結果を表2〜4に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
表2、表3及び表4から明らかなように、次の条件を満たす各実施例の場合、粉発生試験で粉が発生せず、目標とする接触抵抗やはんだ濡れ性を有した。
・XPSのSurvey測定で、表面処理を施した金属基材最表面のP存在形態を分析した際に、Pの2S軌道の結合エネルギー(P2S)のピークが186〜192eVにあり、Pが0.5at%以上5.0at%未満であり、また表面処理を施した金属基材最表面のC存在形態を分析した際に、Cの1S軌道の結合エネルギー(C1S)のピークが284〜290eVにあり、Cが35at%以上80at%未満である。
・XPSのDepth測定で、Cが最表面に35at%以上80at%未満存在し、20at%以上のCの領域が最表から15nm未満であり、また最表面から30at%以上のOの領域が15nm未満である。
・Sn及びSn合金めっきのめっき厚が0.2μm以上であるSn及びSn合金めっき材。
さらに、次の条件を満たす実施例5、6は目標とする低挿入力も得られた。
・XPSのSurvey測定で、Cが50at%以上80at%未満であり、XPSのDepth測定で、Cが最表面に50at%以上80at%未満存在し、20at%以上のCの領域が最表から2nm以上15nm未満である。
【0037】
Survey測定で、Pの2S軌道の結合エネルギー(P2S)のピークが186〜192eVにない比較例14は、大気加熱後の接触抵抗が加熱前と比較して増加した。
Survey測定で、Pのat%が高かった比較例15は接触抵抗が高かった。
Survey測定で、Cのat%が低かった比較例16は粉発生試験で粉が発生した。
Survey測定で、Cのat%が高かった比較例17は大気加熱後の接触抵抗が加熱前と比較して増加した。
実施例1と比較して、リフロー温度が高く、リフロー時間が長い比較例18は深さ(Depth)プロファイルで30at%以上の酸素領域が深いため、大気加熱後の接触抵抗が加熱前と比較して増加した。
Survey測定で、Pの2S軌道の結合エネルギー(P2S)のピークが186〜192eVにない比較例19は、大気加熱後の接触抵抗が加熱前と比較して増加した。
Survey測定で、リンのat%が高かった比較例20は接触抵抗が高かった。
Survey測定で、カーボンのat%が低かった比較例21は粉発生試験で粉が発生した。
Survey測定で、カーボンのat%が高かった比較例22は大気加熱後の接触抵抗が加熱前と比較して増加した。
実施例8、9と比較してSnめっき厚の厚みが薄い比較例23は深さ(Depth)プロファイルで30at%以上の酸素領域が深いため、大気加熱後の接触抵抗が加熱前と比較して増加した。
Survey測定で、カーボンのat%が低かった比較例24は粉発生試験で粉が発生した。
【符号の説明】
【0038】
10 Sn又はSn合金めっき材
11 金属基材
12 下地めっき
13 Sn又はSn合金めっき
14 表面処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材、前記金属基材上に形成されたSn又はSn合金めっき、及び、前記Sn又はSn合金めっき上に形成された表面処理層を備え、
前記Sn及びSn合金めっきのめっき厚が0.2μm以上であり、
XPS(X線光電子分光装置)のSurvey測定で前記表面処理層表面の元素分析を行ったとき、
リン(P)の2S軌道の結合エネルギー(P2S)のピークが186〜192eVにあり、Pを0.5at%以上5.0at%未満含有し、
カーボン(C)の1S軌道の結合エネルギー(C1S)のピークが284〜290eVにあり、Cを35at%以上80at%未満含有するSn又はSn合金めっき材。
【請求項2】
XPSのDepth測定で前記表面処理層表面の元素分析を行ったとき、
Cが前記表面処理層の表面から0.5nmまでの領域に35at%以上80at%未満存在し、且つ、Cを20at%以上含む領域が前記表面処理層の表面から15nm未満であり、
酸素(O)を30at%以上含む領域が前記表面処理層の表面から15nm未満である請求項1に記載のSn又はSn合金めっき材。
【請求項3】
XPSのSurvey測定で前記表面処理層表面の元素分析を行ったとき、Cを50at%以上80at%未満含有し、
XPSのDepth測定で前記表面処理層表面の元素分析を行ったとき、Cが前記表面処理層の表面から0.5nmまでの領域に50at%以上80at%未満存在し、且つ、Cを20at%以上含む領域が前記表面処理層の表面から2nm以上15nm未満である請求項2に記載のSn又はSn合金めっき材。
【請求項4】
前記めっきの厚さが0.2μm以上である請求項1〜3のいずれかに記載のSn又はSn合金めっき材。
【請求項5】
前記金属基材と前記めっきとの間に下地めっきが形成されている請求項1〜4のいずれかに記載のSn又はSn合金めっき材。
【請求項6】
Sn又はSn合金めっきが形成された金属基材の前記Sn又はSn合金めっき上に、リン及びカーボンを含有する表面処理液で表面処理を施す工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載のSn又はSn合金めっき材の製造方法。
【請求項7】
前記表面処理液は、リン酸エステル系化合物及びメルカプトベンゾチアゾール系化合物を含有する請求項6に記載のSn又はSn合金めっき材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−201942(P2012−201942A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68630(P2011−68630)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】