説明

SnOを製造する方法

【課題】スズめっき浴を調製するのに使用されることができ、かつスズ(II)イオン含有めっき浴に望まれない有機材料を付与しない、長期間の貯蔵の後でさえ低減された水準の酸化第二スズ含量を有する酸化第一スズ粒子の提供。
【解決手段】a)複数の酸化第一スズ粒子を提供し、前記複数の粒子の少なくとも一部分が酸化第二スズの表面被膜を含んでおり;並びにb)金属スズを実質的に形成することなく、前記酸化第二スズ被膜の少なくとも一部分を酸化第一スズに還元するのに充分な期間にわたって前記複数の粒子を還元剤で処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属酸化物の分野に関し、特に酸化第一スズ(SnO)の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
スズのような様々な金属が電子デバイスの製造において使用されている。例えば、純粋なスズおよびスズ合金、例えば、スズ−鉛、スズ−ビスマス、スズ−銀およびスズ−銀−銅などが相互接続パッケージにおけるはんだとして使用されている。このような金属は多くの場合電気めっきによって電子デバイス基体上に堆積される。典型的には、スズ電気めっき浴は二価のスズイオンを含み、場合によっては銀、銅、ビスマスおよびこれらの組み合わせのような合金形成金属のイオン、酸電解質、並びに場合によっては1種以上の様々な有機添加剤を含む。有機添加剤は、特定の所望の特性を有する堆積されたスズ層を提供するために選択される。
【0003】
電気めっきの過程中では、スズ堆積物の電気めっきが続くにつれて、溶液中のスズ(II)イオンの量が低下する。溶液中のスズ(II)イオンが補充されなければならない場合に到達し、そして追加の二価スズ塩がめっき浴に添加される。純粋なスズ堆積物の堆積においては、所望の厚さのスズ層を堆積させるのに充分なスズが存在するならば、めっき浴中のスズ(II)イオンの正確な濃度はあまり重要ではない。しかし、スズ−銀、スズ−ビスマス、スズ−銅およびスズ−銀−銅のようなスズ合金の堆積においては、所望の合金組成を達成するために、めっき浴中のスズイオンの濃度が重要である場合がある。よって、めっき浴中のスズ(II)イオンの濃度がわかっていることが望まれる。
【0004】
スズ電気めっき浴は、アルカンスルホン酸スズのような任意の適切なスズ塩でありうる二価スズイオン源を用いて調製されうる。このスズ塩は典型的には、酸化第一スズ(すなわち、酸化スズ(II))を適切な酸に溶かして、二価スズイオン源として使用されうる所望のスズ塩を形成することにより調製される。酸化第一スズは、典型的には粒子として提供されるが、酸性スズ電気めっき浴に直接溶解させられることができ、または別途酸に溶解させられ、次いで二価スズ溶液としてめっき浴に添加されうる。
【0005】
時間の経過と共に、酸化第一スズ粒子は、所定量の酸化第一スズ中に、酸化第二スズ(すなわち、酸化スズ(IV))の少なくとも部分的な表面層を形成する。酸化第二スズは酸に比較的不溶性であり、それをめっき浴用途に非現実的にしている。よって、酸化第二スズの少なくとも部分的な被膜を有する酸化第一スズ粒子が、スズ、特にスズ合金めっき浴を調製するために使用される場合には、浴中のスズ(II)イオンの正確な濃度を知るのが困難である。さらなる問題は、この不溶性酸化第二スズが濁った溶液を形成し、そしてろ過などによってこの溶液から除かれなければならないことである。この望まれない不溶性酸化第二スズを除去するこの余計な工程は全体的なコストを増大させ、かつそのような非常に酸性の溶液をろ過するのは追加の困難さを生じさせる。酸化第一スズ粒子の表面の酸化第二スズの量を制御しもしくは低減させる必要性が存在している。
【0006】
特開平11−310415号はSnClを塩酸に溶かし、その溶液をアンモニア水と炭酸水素アンモニウムとの混合物で中和して、中和された溶液が6〜10のpHを有しており、その後その中和された溶液を50℃を超えて加熱し、次いで、生じた酸化第一スズを様々な有機材料、例えば、L−アスコルビン酸、グルコン酸、ヒドロキシルアミン、フェノール類、アルデヒドおよび亜硝酸ナトリウムなどで処理して、酸化第二スズへの表面酸化を妨げることにより、酸化第一スズを製造する方法を開示する。この有機表面処理材料は長期間の貯蔵中の酸化を妨げるのに効果的でない場合があり、かつそれら有機材料はスズめっき浴中に蓄積される場合があり、これがスズ含有堆積物の特性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0007】
ドラウディー(Drawdy)らのSurface and Interface Analysis(表面および界面分析)第16巻、369〜374ページ(1990)は白金めっきされた酸化スズ触媒をCOからCOの生産に使用する前に、その触媒を様々な温度でCOで前処理することを開示する。この白金めっきされた触媒はSnO中に2%のPtであるが、スズ水酸化物も存在すると思われる。この前処理の後には、金属スズおよび金属白金の両方、並びにスズ−白金合金が生じる。すなわち、触媒中の酸化スズ(IV)の少なくとも幾分かはスズ金属に完全に還元される。この論文は酸化第一スズを生じさせることを論じておらず、かつ酸化第二スズを部分的にすら低減させる必要性を認識していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−310415号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ドラウディーらのSurface and Interface Analysis第16巻、369〜374ページ(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
スズめっき浴を調製するのに使用されることができ、かつスズ(II)イオン含有めっき浴に望まれない有機材料を付与しない、長期間の貯蔵の後でさえ低減された水準の酸化第二スズ含量を有する酸化第一スズ粒子を提供する必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、a)複数の酸化第一スズ粒子を提供し、前記複数の粒子の少なくとも一部分が酸化第二スズの表面被膜を含んでおり;並びにb)金属スズを実質的に形成することなく、前記酸化第二スズ被膜の少なくとも一部分を酸化第一スズに還元するのに充分な期間にわたって前記複数の粒子を還元剤で処理する;ことを含む方法を提供する。
【0012】
本発明によって、a)複数の酸化第一スズ粒子を提供し、前記複数の粒子の少なくとも一部分が酸化第二スズの表面被膜を含んでおり;b)金属スズを実質的に形成することなく、前記酸化第二スズ被膜の少なくとも一部分を酸化第一スズに還元するのに充分な期間にわたって前記複数の粒子を還元剤で処理し;c)前記還元剤を前記複数の粒子から分離させ;並びにd)前記処理された粒子を酸に溶解させる;ことを含む酸性スズめっき浴を製造する方法も提供される。
【0013】
本発明は、酸化第一スズ粒子の処理に適する装置であって、前記装置は、還元剤で処理される複数の酸化第一スズ粒子を保持するためのチャンバーを含む容器と、前記チャンバーを100℃以上の温度に加熱するための手段とを含み;前記チャンバーは少なくとも1000kPaまで加圧されることができ;前記容器は、前記チャンバーに流体連通している前記複数の酸化第一スズ粒子を導入するための充填ポート、還元剤のソースと前記チャンバーとの間を流体連通している還元剤入口、前記チャンバーと流体連通している還元剤出口、および処理された酸化第一スズ粒子を取り出すための出口を有しており;前記還元剤入口および前記還元剤出口のそれぞれは場合によっては計量手段を有しており;並びに、前記還元剤出口は場合によっては前記還元剤の酸化の程度を監視するための手段を有する;
酸化第一スズ粒子の処理に適する装置をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は気体還元剤が使用される本方法での使用に適する装置の概略描写である。
【図2A】図2Aは液体還元剤が使用される本方法での使用に適する装置の概略描写である。
【図2B】図2Bは液体還元剤が使用される本方法での使用に適する装置の概略描写である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図においては、同様の数字は同様の構成要素を表す。他に示されない限りは全ての量は重量パーセンテージ(重量%)であり、全ての比率はモル比である。全ての数値範囲は包括的であり、かつそのような数値範囲が合計で100%になることに制約されるのが明らかである場合を除いて任意に組み合わせ可能である。用語「アルファ粒子放射体」および「アルファ粒子放射性材料」は交換可能に使用される。本明細書において使用される場合、ある品目を「実質的に含まない」の用語は、材料もしくは組成物がその品目を0.5%未満しか含まないことを意味する。以下の略語は以下の意味を有する:ca.=約、m=メートル;mm=ミリメートル;μm=マイクロメートル;nm=ナノメートル;Å=オングストローム;ppm=100万分率;g=グラム;mL=ミリリットル;重量%=重量パーセント;A=アンペア;V=ボルト;eV=電子ボルト;keV=キロeV;kPa=キロパスカル;psi=ポンド/インチ;および℃=摂氏度。
【0016】
新たに製造された酸化第一スズ粒子は、一般的には、酸、例えば、有機スルホン酸、特にメタンスルホン酸に容易に可溶である。時間の経過につれて、酸化第一スズ粒子の表面がさらに酸化して酸化第二スズ(すなわち、酸化スズ(IV))を形成するであろう。酸化第二スズ(SnO)は酸化第一スズと比較して相対的に酸に不溶性である。酸化第一スズ粒子の表面における酸化第二スズの形成はその材料の可溶性に悪影響を及ぼす。酸化第二スズ表面層を有するこのような酸化第一スズを、酸スズ電気めっき浴の作成または補充に使用することは、結果的に不溶性材料(SnO)を生じさせ、これが濁った溶液を形成し、この溶液は有用であるためにろ過を必要とし、かつ出発酸化第一スズ材料の全てが溶解され得うるわけではないので溶液中でのスズ(II)イオンの量を不明にする。
【0017】
本発明は酸化第一スズの存在下での酸化第二スズの選択的部分的還元によってこの課題に取り組み、酸化第一スズをスズ金属に実質的に還元することなく、酸化第一スズ粒子の表面の酸化第二スズの量を低下させる。この方法においては、酸化第一スズ粒子の表面上の酸化第二スズのパーセンテージが低下させられる。本明細書において使用される場合、「部分的還元」とは、スズ(IV)からスズ(II)になるような、1酸化段階だけ金属を還元することをいう。「酸化第一スズをスズ金属に実質的に還元することなく」の語句は、全スズ(II)イオンの1%未満、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.25%以下、さらにより好ましくは0.1%以下、およびさらにより好ましくは0.05%以下しかスズ金属に還元されないことを意味する。
【0018】
a)複数の酸化第一スズ粒子を提供し、前記複数の粒子の少なくとも一部分が酸化第二スズの表面被膜を含んでおり;並びにb)金属スズを実質的に形成することなく、前記酸化第二スズ被膜の少なくとも一部分を酸化第一スズに還元するのに充分な期間にわたって前記複数の粒子を還元剤で処理する;ことを含む本方法によって、酸化第一スズ粒子の表面の酸化第二スズは還元される。
【0019】
本方法において有用な酸化第一スズは任意の適切な手段によって製造されることができ、かつ任意の適切な粒子サイズおよび形状を有することができる。酸化第一スズは従来は、スズ金属を鉱酸、例えば、塩酸に溶かし、次いで塩基、例えば、水酸化ナトリウムもしくはアンモニア水/重炭酸アンモニウムで中和し、そして得られた生成物が所望の酸化スズ(II)を形成するように加熱される。得られたSnOは様々な形態、例えば、フレーク、ボール、ディスク、ロッドなど、並びに様々な粒子サイズ、例えば、1〜50μmを有することができるが、より小さなおよびより大きな粒子も適切に使用されうる。酸化第一スズ中の追加の金属の存在は酸化第二スズの酸化第一スズへの還元に悪影響を及ぼしうる。例えば、このような追加の金属は、スズ(II)イオンの還元をさらに触媒するように機能する場合があり、または他の方法でスズ(IV)のスズ(II)への還元を妨げる場合がある。好ましくは、本発明において使用される酸化第一スズは白金を実質的に含まず、より好ましくは白金を含まない。酸化第一スズ粒子が貴金属(白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、銀および金)を実質的に含まないことがさらに好ましく、そして貴金属を含まないことがより好ましい。さらにより好ましいのは、スズ以外の金属を実質的に含まない酸化第一スズである。
【0020】
電子デバイスの製造に使用される金属のいくつかはアルファ粒子を放射する特定の放射性同位元素(アルファ粒子放射体)を低濃度で含む場合がある。このような放射性同位元素の例には、210Pbが挙げられ、これはウラン崩壊系列のメンバーであり、これはバルク金属材料(例えば、銀およびスズ)内の不純物としてのアルファ粒子放射体の主たる原因物質であり、並びに鉛の様々な一般的な汚染物質、例えば、ウラン(234,238U)、トリウム(230Th)、ラジウム(226Ra)、ラドン(222Rn)、ポロニウム(210,218Po)およびビスマス(211,212Bi)の同位体などが挙げられる。はんだは、集積回路(IC)チップをパッケージまたは基体に取り付けるために半導体デバイスパッケージングにおいて一般的に使用される。IC回路を取り付けるはんだがアルファ粒子放射体を含む場合には、このICのごく近傍にアルファ粒子が放射され、パッケージ半導体デバイスにダメージを引き起こしうる。具体的には、これら放射されるアルファ粒子は「ソフトエラー」と称される電気的状態の変化を引き起こしうる。このエラーは永続的ではないので「ソフト」と称される。しかし、これらのエラーは典型的には、少なくとも1ラウンドの誤った計算を引き起こす。これらソフトエラーは集積回路チップ製造についてますます大きな問題となっている。よって、酸化第一スズ粒子が低いアルファ粒子放射体含量を有することが好ましい。金属中に存在するアルファ粒子放射体の量は典型的には、アルファフラックス測定によって決定され、結果はアルファ粒子カウント/単位面積(平方センチメートル)/時間(cts/cm/hr、またはcph/cm)で示される。複数の酸化第一スズ粒子が0.05cts/cm/hr以下のアルファ粒子放射(アルファフラックスとも称される)を有するのが好ましく、より好ましくは0.0001〜0.02cts/cm/hrである。
【0021】
酸化第一スズ粒子の表面は酸化第二スズの存在を測定するための任意の適切な方法によって分析されうる。特に適切な方法はX線光電子分光法(XPS)であり、これは表面酸化(10nmの深さまで)の量を定量的に測定するために使用されうる。酸化第二スズ(SnO)のSn 3d 5/2電子結合エネルギーはSnOのよりもわずかに高く、それぞれ486.9eVおよび486.2eVである。これら結合エネルギーでのXPSシグナルの比率はスズ対酸素(Sn:O)の比率に変換され、SnOは0.5の値を有し、SnOは1.0の値を有する。このSn:O比が1.0に近づくほど、酸化第一スズ粒子の表面のSnOの量がより少ない。
【0022】
還元剤が、酸化第一スズをスズ金属に実質的に還元することなく処理条件下で、スズ(IV)をスズ(II)に還元するであろうように、還元剤が選択される。適切な還元剤は0.15V未満の標準還元電位(E)を有する。好ましい還元剤は−0.14<E<0.15Vの範囲の標準還元電位を有する。標準還元電位は標準水素電極を用いて測定される。還元剤は気体または液体形態であることができ、好ましくは還元剤は気体である。典型的な還元剤はCO、Hおよびこれらの混合物である。COおよびHの混合物は「合成ガス(syngas)」表示の下で市販されている。「合成ガス」とは、COおよびH、場合によってはCOを含む様々な混合物をいう。COおよびHが好ましく、COがより好ましい。このような還元ガスは1種以上の不活性ガス、例えば、アルゴン、ヘリウムまたは窒素とさらに一緒にされうる。このような不活性ガスは還元工程中の圧力をさらに調節するために使用されうる。典型的な液体還元ガスには、亜硝酸銀;水素化ホウ素(boronhydride);アルカリ金属チオ硫酸塩、例えば、チオ硫酸ナトリウムおよびチオ硫酸カリウム;アルカリ金属次亜リン酸塩、例えば、次亜リン酸ナトリウムおよび次亜リン酸カリウム;並びに、次亜リン酸が挙げられる。アルカリ金属チオ硫酸塩が好ましく、チオ硫酸ナトリウムがより好ましい。この液体還元剤は典型的には、水または他の適切な溶媒のような液体媒体中にある。気体還元剤が使用される場合には、酸化第一スズ粒子はこの還元剤の静的雰囲気と、またはこの還元剤の連続流れと接触させられうる。液体還元剤が使用される場合には、酸化第一スズ粒子は液体還元剤の連続流れと接触させられうるか、または代替的には、静的状態の液体還元剤と接触させられることができ、すなわち酸化第一スズ粒子が動いていない液体還元剤と接触させられうる。
【0023】
酸化第一スズ粒子は、金属スズを実質的に形成することなく、酸化第二スズ被膜(または、クラスト(crust))の少なくとも一部分を酸化第一スズに還元するのに充分な期間にわたって還元剤と接触させられる(または、処理される)。0.5〜24時間、好ましくは1〜20時間、より好ましくは1〜18時間、さらにより好ましくは1〜12時間、最も好ましくは1〜8時間のような多岐にわたる時間が使用されうる。具体的な時間は、部分的には、使用される温度および圧力、SnO粒子の平均粒子サイズ、並びにSnO粒子の充填密度に応じて決まるであろう。温度および圧力がそれぞれ上昇する場合には、接触時間は典型的には短くなる。より小さなSnO粒子は、酸化スズ(IV)に酸化されうる表面積を、より大きなSnO粒子が有するよるよりも、より多くの割合で有し、そして、その粒子表面のスズ(IV)の量を充分に低下させるために、より長い接触時間を必要とする場合がある。SnO粒子がより密に充填されるほど、還元剤が全ての表面に効率的に到達するのがより困難になる場合がある。
【0024】
酸化第一スズ粒子は様々な温度で還元剤と接触させられうる。好ましくは、酸化第一スズは20℃以上、より好ましくは35〜500℃、さらにより好ましくは50〜350℃、さらにより好ましくは50〜350℃の温度に維持される。還元剤が気体である場合には、温度が100℃以上、より好ましくは125℃以上、さらにより好ましくは150℃以上、さらにより好ましくは175℃以上、さらにより好ましくは200℃以上であるのが好ましい。温度の適切な範囲は100〜500℃、好ましくは125〜500℃、より好ましくは150〜350℃である。特に好ましい温度範囲は150〜225℃である。還元剤が液体である場合には、好ましい温度範囲は20〜150℃、より好ましくは35〜105℃、さらにより好ましくは50〜105℃である。液体還元剤が使用される場合には、酸化第一スズ粒子、還元剤が加熱され、またはこれらの混合物が加熱されるのが好ましい。
【0025】
還元剤が気体である場合には、複数の酸化第一スズ粒子が還元剤で適切な圧力で処理されるのが好ましい。700kPa以上、および好ましくは700kPa(約100psi)〜3500kPa(約510psi)、またはそれより大きいなどの様々な圧力が使用されることができる。より好ましくは、この圧力は800〜3500kPa、さらに好ましくは1000〜3500kPa、さらにより好ましくは1350〜3500kPa、さらにより好ましくは2000〜3500kPa、および最も好ましくは2500〜3500kPaである。還元性気体が使用される場合には、酸化第一スズがこの還元性気体と、150〜300℃、の温度で、2500〜3500kPaの圧力で、および1〜8時間の期間にわたって接触するのが特に好ましい。酸化第一スズ粒子は閉じた(静的)システム中で圧力下で還元性気体と接触させられることができ、または代替的には、加圧気体流れが使用されうる。加圧気体流れが使用される場合には、それは適切な流量、例えば、1〜230,000sccm(標準cm/分)および好ましくは1〜30,000sccmを有することができる。還元性気体と不活性ガスとの混合物が使用されてもよい。
【0026】
図1はCOまたはHのような還元性気体が使用される場合の本発明における使用に適する装置の概略図である。複数の酸化第一スズ粒子(その複数の粒子の少なくとも一部分が酸化第二スズの表面被膜を含んでいる)は任意のポート20を通して容器15内に配置される。典型的には、容器15はあらゆる適切な非反応性材料、例えば、インコネル(INCONEL)耐腐食性合金、ステンレス鋼、例えば、304もしくは316、石英などからなる。ポート20は容器15の頂部上に示されているが、それは容器15のどの適切な部分に配置されていてもよい。あるいは、ポート20の代わりに、容器15は取り外し可能に結合され、かつ結合が外されて容器15を開放し、その中に酸化第一スズが添加されることができる2つの部分から構成されていてもよい。容器15は場合によっては加熱されうる。図1は容器15の周りに配置された加熱手段18を示す。加熱手段18は油浴のような流体浴であることができる。COのような還元性気体がソース30から入口25を通って容器15に供給される。入口25は場合による計量手段、バルブ27を含む。操作においては、バルブ27は開かれて、還元性気体を容器15に入らせる。還元性気体は出口35を通って容器15を出て、出口35は場合による計量手段、バルブ37を含んでおり、監視手段40に送られ、その監視手段は還元剤の酸化の程度を監視する。バルブ37は容器15内の圧力を調節するために使用されてもよい。出口35は容器15の任意の適切な位置に配置されうるが、容器の上部表面に典型的に配置される。COの場合には、容器15を出るCO気体流れ中のCOの程度を測定する。Hの場合には、監視手段は気体流れ中のHOを検出するであろう。様々な市販の検出器が監視手段として使用されうる。CO(または、Hが使用される場合にはHO)の程度が低下し始めたら、酸化第一スズ粒子の表面の酸化第二スズの還元が完了に近く、そしてその処理が停止させられうる。還元工程の完了後に、酸化第一スズ粒子は容器15から取り出されうる。
【0027】
図2Aは液体還元剤が使用される場合の本発明における使用に適する装置の概略図である。図2Aにおける装置は、出口35が容器15の下部に配置されていて、液体還元剤を取り出すのがより容易であり、かつ加熱手段18が容器15と一体化されうるかまたは加熱テープ、加熱コイルなどであり得ることを除いて図1に示されるのと類似する。図2Aにおいては、液体還元剤はソース30から入口25を通って容器15に運ばれる。酸化第一スズ粒子は液体還元剤の連続流れと接触させられうるか、または容器が液体還元剤で満たされることができ、かつ計量バルブ37が閉められて、液体還元剤を複数の酸化第一スズ粒子と接触したままにする。
【0028】
図2Bは容器15の断面Aを示す概略図である。容器15の内部は穴あき手段10、例えば、多孔板またはワイヤメッシュを収容しており、これは容器15の内部を第一の部分16と第二の部分17とに分けている。酸化第一スズ粒子が第一の部分16に入れられ、かつ穴あき手段10上に配置される。次いで、液体還元剤が入口25を通って容器15に入り、そして第一の部分16に入り、酸化第一スズ粒子と接触し、次いで、穴あき手段10を通って、第二の部分17に入り、次いで、出口35を通って容器15を出る。バルブ37は容器15内の還元剤の水準を調節するために使用されうる。
【0029】
あるいは、酸化第一スズ粒子は、ステンレス鋼ワイヤメッシュ袋のような「ティーバッグ」内に入れられ、そして、容器内に入れられ、そして還元剤と接触させられてもよい。気体または液体還元剤がこの「ティーバッグ」中の酸化第一スズ粒子と接触させられうるか、または液体還元剤を収容する容器中にこの「ティーバッグ」が浸漬されうる。酸化第一スズと還元剤との接触は、金属スズを実質的に形成することなく、酸化第二スズ被膜の少なくとも一部分を酸化第一スズに還元するのに充分な期間にわたって起こるであろう。この「ティーバッグ」と共に使用される温度および圧力は、上述のように選択され、かつ酸化第二スズ被膜の少なくとも一部分を酸化第一スズに還元するのに充分なものである。
【0030】
充分な時間の接触の後で、酸化第一スズ粒子は還元剤から分離させられる。気体還元剤が使用される場合には、この分離は単に、還元剤の流れを停止させるか、または処理容器を還元性気体でパージすることによって達成されうる。液体還元剤が使用される場合には、この分離は、図2Aおよび2Bにおいて示されるもののような、液体還元剤を容器から排出させることによって、または酸化第一スズ粒子を収容している「ティーバッグ」を、液体還元剤を収容している容器から取り出すことによってもたらされうる。
【0031】
本発明の処理された酸化第一スズが直ちに使用されるものではない場合には、非常に低い酸素透過率を有する材料中にそれが包装されるのが好ましい。この包装材料は<100cm/645cm・24hr(<100cm/100in・24hr以下)の酸素透過率を有するのが好ましい。適する材料には、ポリエチレンテレフタラート(PET)、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタラート、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリフッ化ビニリデン、並びに金属化ポリマー、例えば、金属化ポリエチレンテレフタラート、金属化ナイロン、金属化ポリエチレン、および金属化ポリプロピレンが挙げられる。金属化ポリマーに典型的に使用される金属には、これに限定されないが、アルミニウム、ニッケル、クロムおよび金が挙げられる。包装材料として金属化ポリマーが使用される場合には、多層包装システムにおける外側包装材料として金属化ポリマーが使用され、かつ酸化第一スズが最初に非金属化ポリマー、例えば、PETもしくは高密度ポリエチレンの中に包装されるのが好ましい。すなわち、金属化ポリマーから酸化第一スズへの金属漏出の可能性を低減させるために、包装された酸化第一スズが、次いで、金属化ポリマー包装内に入れられる。好ましい材料はポリエチレンテレフタラート、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリフッ化ビニリデン、および金属化ポリエチレンテレフタラートである。好ましくは、本発明の酸化第一スズは、酸素を実質的に含まない雰囲気、好ましくは酸素を含まない雰囲気において包装される。適する包装には、袋、ボトルおよびアンプルが挙げられる。
【0032】
本発明の酸化第一スズは、スズ電気めっき浴の製造に特に有用であり、より好ましくはスズ合金電気めっき浴、例えば、スズ−銀、スズ−ビスマス、スズ−銅、およびスズ−銀−銅電気めっき浴の製造および補充に有用である。低いアルファ粒子放射性の酸化スズが使用される場合には、得られる酸化第二スズの表面被膜が低減された複数の酸化第一スズ粒子は、低いアルファ粒子放射性でもある。好ましくは、複数の酸化第一スズ粒子は0.05cph/cm以下のアルファ粒子放射性を有する。
【0033】
よって、本発明は、a)複数の酸化第一スズ粒子を提供し、前記複数の粒子の少なくとも一部分が酸化第二スズの表面被膜を含んでおり;b)金属スズを実質的に形成することなく、前記酸化第二スズ被膜の少なくとも一部分を酸化第一スズに還元するのに充分な期間にわたって前記複数の粒子を還元剤で処理し;c)前記還元剤を前記複数の粒子から分離させ;並びにd)前記処理された粒子を酸に溶解させる;ことを含む酸性スズめっき浴を製造する方法も提供する。スズ含有電気めっき浴中の電解質として有用な任意の酸が使用されうる。典型的な酸は、硫酸、フルオロホウ酸、および有機スルホン酸、例えば、アルカンスルホン酸およびアリールスルホン酸である。有機スルホン酸が好ましい。典型的な有機スルホン酸はメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、フェニルスルホン酸、フェノールスルホン酸、トルエンスルホン酸およびクレゾールスルホン酸が挙げられる。
【実施例】
【0034】
以下の一般的な手順が使用された。
エネルギー分散型X線分光(EDS)分析:
Bruker(ブルカー)4030XFlash(シリアル番号1873)シリコンドリフトエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)を用いて、10keVで、30秒間の各スペクトル、および5分間の各マップで、元素スペクトルおよびマップが得られた。結果は100%に正規化された。検出限界は典型的には約0.5重量%の範囲である。
【0035】
X線光電子分光(XPS)分析:
XPSデータを集めるために、モノクロマチックAl Kα225ワット(14kV、15mA)X線源を備えたクラトス(Kratos)AXIS HSi S/N 332272/01 X線光電子分光分析装置が使用された。この分析装置通過エネルギーが定性的サーベイスペクトルのために80eVに、高解像スペクトルのために20eVに設定された。テイクオフ(take−off)角度は90°であり、マグネチックレンズモードが使用された。アパーチャスロットは3×10mmで、5ターンのアイリスで設定された。分析領域は400×600μmに設定された。フラッドガン(Flood gun)条件は、1.60〜1.65Aのフィラメント電流および2.25Vのチャージバランス(charge balance)に設定された。
【0036】
ガスクロマトグラフィヘッドスペース分析:
アジレント(Agilent)6890ガスクロマトグラフィがこの分析のために使用された。この分析使用されたGCカラムはバリアンモルシーブ(Varian MoleSieve)5A(50m×0.53mm、50μm厚さ)およびバリアンポラプロット(Varian Poraplot)U(25m×0.32mm、10μm厚さ)であった。ガスクロマトグラフィは以下のガス標準を用いて行われた:エア−リキッドシリンダー(5%酸素、5%メタン、5%一酸化炭素、4%二酸化炭素、4%水素、4%窒素および残部のヘリウム)およびエアガスシリンダー(2%アルゴン、40%水素、5%窒素、6%二酸化炭素、40%一酸化炭素、3%メタン、5000ppmエタンおよび残部のヘリウム)。インジェクションは各標準について3〜4回繰り返された。得られたキャリブレーションから良好な精度および直線性が観察された。
【0037】
粉体X線回折(XD)分析::
X線回折パターンを集めるために、銅密閉管線源およびバンテック(Vantec)−1リニア光位置検出器を備えたブルカー(Bruker)D−8アドバンスθ−θX線回折装置が使用された。この管は30kVおよび50mAで操作され、サンプルは銅K−アルファ放射線(波長=1.541Å)で照射された。XRDデータは5〜110°(2θ)で1.02°/分のスキャン速度および6°の検出器ウィンドウで集められた。得られたX線回折パターンの分析は、JADE X線パターン分析ソフトウェアV9.1を用いて行われた。5°〜110°の全体のパターンフィッティングはパターンの定量化フェイズに対して行われた。
【0038】
実施例1
オーバーヘッド機械式攪拌装置(ガラスシャフトおよびインペラ、45PBTブレード)、還流凝縮器、アクティブ窒素スイープおよび苛性スクラバー(10% NaOH)を備えた、ジャケット付きボトムドレインガラス反応器に100gの顆粒スズ金属、340gの水および462g濃塩酸(水性37%)が入れられた。この不均質混合物は110℃に加熱され、そして固体が完全に溶解するまで激しく攪拌された。この溶液は周囲温度まで冷却され、次いで、別のフラスコに調製された炭酸ナトリウムの飽和水溶液(605gのNaCOおよび2700gのHO)に添加された。得られた乳白色溶液が100℃に加熱され、周囲温度に冷却する前に、3時間にわたって攪拌された。得られた青黒色粗生成物混合物が反応器から取り出された。所望の生成物は生成物混合物を中程度多孔ガラスフリットフィルタを通して真空濾別され、等しい容積の18mΩHOで(5回)洗浄された。ウェットケーキが乾燥トレイに移され、70℃に設定された不活性雰囲気乾燥オーブンの中で12時間にわたって乾燥させられた。所望のSnO生成物は組成確認のためにXRDによって分析された。
【0039】
実施例2
様々な酸化第一スズサンプルの表面特性を検査するために高解像XPSが使用された。実施例1において製造されたSnO粒子(サンプル1)についての、および低アルファ粒子放射体含量の市販のSnO粒子(サンプル2)についてのXPSデータがSnOおよびSnOの標準(シグマ−アルドリッチより)に対して比較された。予想されたように、SnO標準は、486.9eVの3d 5/2電子結合エネルギーを有すると認められ、これは文献値と良好な一致を示していた。SnO標準からの当初結果は3d 5/s電子結合エネルギーがSnOのそれと同じであったことを示し、これは実質的な表面酸化を示した。サンプル2はSnO標準のとほぼ同じXPSプロファイルを有していたが、サンプル1は486.2eV(これは、SnOについての報告されている文献値とよく一致する)のSnO 3d 5/s結合エネルギーを有し、他のサンプルとは顕著に異なっていたXPSプロファイルを有していた。
【0040】
酸化第一スズ粒子の表面のスズ物質種の相対的化学組成はその元素の原子電子結合エネルギーに対応する文献値でのシグナル強度を平均化することにより決定された。SnOおよびSnOについてのSn:Oの理想的な比率はそれぞれ1.0および0.5である。表1に報告されたデータはSnOサンプルの全てが0.5の理想的な値に近くなく、その表面上の多量のSnOを示している;しかし、新たに製造されたSnO粒子(サンプル1)は0.7という最も大きなSn:O値を有しており、これは最も少ない量の表面SnOを示す。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例3
概して実施例1の手順に従いおよび不活性雰囲気下での乾燥が2つのフラクションに分けられたことに従ってSnO粒子が再び製造された。一方のフラクションは、雰囲気酸素を除去するためのバイアル内のヘッドスペースのパージング無しで、ベンチトップ上のガラスシンチレーションバイアル中に貯蔵された。第二のフラクションはSnO粒子を入れる前に窒素でパージされ、かつSnO粒子が入れられた後で、再びパージされ、その後密封可能なポリテトラフルオロエチレンキャップでそのバイアルを閉じ、次いでそのキャップがパラフィン膜で包まれたガラスシンチレーションバイアル中に貯蔵された。これら2つのサンプルは、それぞれ、「サンプル3」および「サンプル4」と標識され、一ヶ月の期間にわたって老化させられた。この一ヶ月の終わりに、2つの新たなサンプルサンプル5および6が同じように製造された。サンプル5は周囲酸素下でガラスシンチレーションバイアル中に入れられ、一方、サンプル6はN下でガラスバイアル中に入れられた。これら4つのサンプルはXPSで分析されて、周囲雰囲気および不活性雰囲気下での貯蔵の影響を測定した。XPSデータは不活性雰囲気内で貯蔵されたSnOは、周囲雰囲気内で貯蔵されたSnOよりも少ししか表面酸化を受けなかった。不活性バイアル内で貯蔵されたSnO粒子(サンプル4)でさえ、一ヶ月の貯蔵の過程で有意な表面酸化を示した。これらデータは表2に示される。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例4
様々なSnOサンプル(以下に示される)が以下の一般的な手順に従って還元剤と接触させられた。圧力ゲージおよびニードルバルブ入口および出口ポートを備えたJ−チューブステンレス鋼(316SS)反応器に、10gのSnOサンプルを入れた。この反応器は密閉され、COでパージされ、所望のCO圧力への加圧前に3450kPa(500psi)COで加圧チェックされた。次いで、この反応器は所望の温度の高温油浴内に沈められ、所望の反応期間にわたってインキュベートされた。次いで、この反応器はこの高温油浴から取り出され、周囲温度に冷却された。GCグラブバッグ内で、さらなる分析のために反応ヘッドスペースが注意深く集められた。SnOはこの反応器から取り出され、次いでSnO−MSAめっき浴反応性およびXPSによる表面組成について分析された。
【0045】
上記還元の後で、処理されたSnOサンプルが、以下の一般的な手順に従って、酸電解質中でのその溶解性について評価された。マグネチック攪拌棒を備えたガラスシンチレーションバイアルに1.2gのmΩHOおよび8.1gの70重量%メタンスルホン酸(MSA)が入れられた。この溶液は2分の期間にわたって激しい攪拌を用いて適切に混合させられ、次いで、激しく攪拌しつつ、その溶液に3.59gの処理されたSnOサンプルを添加した。この溶液は完全に溶解する時間、最終溶液色および最終溶液透明度について観察された。
【0046】
データは表3に報告される。サンプル7〜12は市販のSnOサンプルであり、全ては同じソースからのものであり、かつサンプル13は実施例1に従って製造されたSnOサンプルであった。これらSnO−MSAサンプルは濁度および色について目視観察された。SnO−MSAサンプルが濁りを示さないのが好ましい。SnO−MSAの色がMSA中でのSnOの溶解の程度の指標であり、最も明るい色が最も大きい溶解性を示し、よってSnOの最も低い程度を示す。よりくらい色は「+」で表示され、最も明るい色は「++++」で表示される。
【0047】
【表3】

【0048】
このデータはサンプル10〜13はMSA中でのより大きな溶解度を示し、よって、粒子表面により少ない量のSnOしか有しないことを示す。
【0049】
実施例5
取り外し可能なろ過トラップ上に配置された、窒素ブランケットフィルタるつぼ/容器にバルクSnO(1000g)が入れられる。次いで、このフィルタるつぼ/容器に1Lの9.9mM亜硝酸銀溶液(1Lの水中に1.5gの亜硝酸銀が溶かされて調製される)を入れる。この混合物は激しく攪拌され、かつ所望の時間量にわたって、50〜105℃の温度に加熱される。次いで、ウェットケーキ上に不活性ガスブランケットを維持しつつ、この液体はろ過またはデカンテーションによって除かれる。このウェットケーキは1Lの精製(すなわち、脱イオンされかつ有機不純物を含まない)水で洗浄され、そしてその液体は、ウェットケーキ上に不活性ガスブランケットを維持しつつ、ろ過またはデカンテーションによって除かれる。バルクSnO材料と比較して、低減された量のSnOを粒子の表面上に有する複数のSnO粒子が期待される。
【0050】
実施例6
5kgのバルクSnOが使用され、フィルタるつぼ/容器に5Lの9.9mMチオ硫酸ナトリウム溶液(5Lの水中に7.8gのチオ硫酸ナトリウムが溶かされて調製される)が入れられることを除いて、実施例5の一般的手順が繰り返される。バルクSnO材料と比較して、低減された量のSnOを粒子の表面上に有する複数のSnO粒子が期待される。
【0051】
実施例7
実施例4の一般的手順に従って、複数のSnO粒子がCOと接触させられる。還元工程の後で、SnO粒子は不活性雰囲気(N)下で集められ、高密度ポリエチレンボトル内での包装、次いで金属化ポリエチレンテレフタラート袋内にヒートシールするために乾燥ボックスに移される。
【符号の説明】
【0052】
10 穴あき手段
15 容器
16 第一の部分
17 第二の部分
18 加熱手段
20 ポート
25 入口
35 出口
27 バルブ
37 バルブ
30 ソース
40 監視手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)複数の酸化第一スズ粒子を提供し、前記複数の粒子の少なくとも一部分が酸化第二スズの表面被膜を含んでおり;並びにb)金属スズを実質的に形成することなく、前記酸化第二スズ被膜の少なくとも一部分を酸化第一スズに還元するのに充分な期間にわたって前記複数の粒子を還元剤で処理する;
ことを含む方法。
【請求項2】
前記複数の粒子が実質的に白金を含まない請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記還元剤が0.15V未満の還元電位(E)を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記還元剤が気体である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記還元剤がCO、Hおよびこれらの混合物から選択される気体を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記還元剤が液体である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記還元剤が、亜硝酸銀、水素化ホウ素、アルカリ金属チオ硫酸塩、アルカリ金属次亜リン酸塩、および次亜リン酸から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
a)複数の酸化第一スズ粒子を提供し、前記複数の粒子の少なくとも一部分が酸化第二スズの表面被膜を含んでおり;b)金属スズを実質的に形成することなく、前記酸化第二スズ被膜の少なくとも一部分を酸化第一スズに還元するのに充分な期間にわたって前記複数の粒子を還元剤で処理し;c)前記還元剤を前記複数の粒子から分離させ;並びにd)前記処理された粒子を酸に溶解させる;
ことを含む酸性スズめっき浴を製造する方法。
【請求項9】
前記酸が有機スルホン酸である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
装置であって、
前記装置は、還元剤で処理される複数の酸化第一スズ粒子を保持するためのチャンバーを含む容器と、前記チャンバーを100℃以上の温度に加熱するための手段とを含み;前記チャンバーは少なくとも1000kPaまで加圧されることができ;前記容器は、前記チャンバーに流体連通している前記複数の酸化第一スズ粒子を導入するための充填ポート、還元剤のソースと前記チャンバーとの間を流体連通している還元剤入口、前記チャンバーと流体連通している還元剤出口、および処理された酸化第一スズ粒子を取り出すための出口を有しており;前記還元剤入口および前記還元剤出口のそれぞれは場合によっては計量手段を有しており;並びに、前記還元剤出口は場合によっては前記還元剤の酸化の程度を監視するための手段を有する;装置。
【請求項11】
前記チャンバーが、前記チャンバーの第一の部分と前記チャンバーの第二の部分とを分ける穴あき手段をさらに含み;前記入口が前記チャンバーの第一の部分と流体連通しており、並びに前記出口が前記チャンバーの第二の部分と流体連通している、請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2013−95660(P2013−95660A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−217127(P2012−217127)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)