説明

Soxに基づくキナーゼセンサー

本発明は、蛍光を読み取ってプロテインキナーゼの活性を連続的にモニターするためのセンサーを提供する。本発明は、Mg2+に結合した後、キレート化増大蛍光(chelation−enhanced fluorescence)(CHEF)を示す新規な金属結合性化合物を提供する。さらに、本発明は、本発明の金属結合性ペプチド、およびキナーゼの存在下でリン酸化され得るヒドロキシアミノ酸を有する少なくとも1つのキナーゼ認識配列を含むペプチジルセンサーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Soxに基づくキナーゼセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、蛍光を読み取ってプロテインキナーゼの活性を連続的にモニターするためのセンサーを提供する。該センサーは、プロテインキナーゼペプチド基質の最小限の摂動を必要とする。反応過程にわたる時間に関係する蛍光反応は、酵素活性に対応する。本発明のセンサーは、阻害物質または基質の高処理能スクリーニング、細胞抽出物または酵素精製物での活性の検出、細胞中のキナーゼ活性の空間的または時間的局在化、および複雑なシグナル伝達経路の解明に使用できる。
【0003】
プロテインキナーゼは、細胞内調節のすべての局面に関与している。プロテインキナーゼは、アデノシン三リン酸(ATP)からペプチドまたはタンパク質配列中のセリン、トレオニンまたはチロシン残基へのリン酸基の転移を触媒する。各キナーゼは、リン酸化される残基の周囲にあるアミノ酸に対して特異的である。キナーゼ活性をアッセイするための従来法は、不連続的であり、特殊な取り扱いを必要とする32Pで標識されたATPを必要とする。多くの企業が、特化した蛍光キナーゼアッセイシステムを上市しているが、そのすべては不連続的であり、反応混合物をサンプリングし、続いて反応生成物を蛍光部分で標識する追加の処理ステップを必要とする(例えば、Promega、Panvera、Calbiochem、Cell Signaling Technology、Molecular Devices、DiscoveRx、Upstate、PerkinElmer)。リアルタイムで実施できる連続的蛍光アッセイは、大きな有用性を有する。現在、このようなアッセイが可能なセンサーの例は、ほとんど存在しない。手法には、リン酸化部位の近傍の環境感受性フルオロフォア(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)、リン酸化後に高次構造変化を受ける配列に隣接するFRET対(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)、またはPET−クエンチングの妨害を引き起こすリン酸と内部キレーターとの間のCa2+キレート化(非特許文献13)が含まれる。Lawrenceとその共同研究者によって報告されたプローブで1.5〜2.5倍増加する顕著な例外はあるが、これらのセンサーの大部分は、極めてわずかな蛍光増大を示すか、あるいは時によっては蛍光の低下を示す(非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15)。しかし、リン酸化される残基に隣接したフルオロフォアまたは極めて大きなフルオロフォアを有するこれらのタイプのプローブは、特定のキナーゼ類によるそれらのプローブの認識、および特定のキナーゼとそれらのプローブとの反応に干渉する可能性がある。
【0004】
特許文献1では、金属結合性アミノ酸残基、およびキナーゼの存在下でリン酸化され得るヒドロキシアミノ酸を有するキナーゼ認識配列を含む直鎖状Soxペプチドセンサーが開示された。金属結合性アミノ酸残基は、ヒドロキシアミノ酸のどちらかの側(N−末端またはC−末端)に位置し、好ましくは、βターン構造(「βターン配列」)を想定することが可能なペプチドによってその認識配列から分離する。場合によっては、該βターン配列は、別のアミノ酸によってヒドロキシアミノ酸から分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0080243号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Wright,D.E.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1981年、78巻、6048〜6050頁
【非特許文献2】McIlroy,B.K.ら、Anal.Biochem.、1991年、195巻、148〜152頁
【非特許文献3】Higashi,H.ら、FEBS Lett.、1997年、414巻、55〜60頁
【非特許文献4】Post,P.L.ら、J.Biol.Chem.、1994年、269巻、12880〜12887頁
【非特許文献5】Nagai,Y.ら、Nat.Biotech.、2000年、18巻、313〜316頁
【非特許文献6】Ohuchi,Y.ら、Analyst、2000年、125巻、1905〜1907頁
【非特許文献7】Zhang,J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2001年、98巻、14997〜15002頁
【非特許文献8】Ting,A.Y.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、2001年、98巻、15003〜15008頁
【非特許文献9】Hofmann,R.M.ら、Bioorg.Med.Chem.Lett.、2001年、11巻、3091〜3094頁
【非特許文献10】Kurokawa,K.ら、J.Biol.Chem.、2001年、276巻、31305〜31310頁
【非特許文献11】Sato,M.ら、Nat.Biotech.、2002年、20巻、287〜294頁
【非特許文献12】Violin,J.D.ら、J.Cell Biol.、2003年、161巻、899〜909頁
【非特許文献13】Chen,C.A.ら、J.Am.Chem.Soc.、2002年、124巻、3840〜3841頁
【非特許文献14】Yeh、R.H.ら、J.Biol.Chem.、2002年、277巻、11527〜11532頁
【非特許文献15】Wang,Q.ら、J.Am.Chem.Soc.、2006年、128巻、1808〜1809頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、Mg2+に結合した後、キレート化増大蛍光(chelation−enhanced fluorescence)(CHEF)を示す式(I)〜(XII)の新規な金属結合性化合物を提供する。
【0008】
本発明は、さらに、本発明の金属結合性ペプチド、およびキナーゼの存在下でリン酸化され得るヒドロキシアミノ酸を有する少なくとも1つのキナーゼ認識配列を含むペプチジルセンサーを提供する。該ペプチドセンサーは、同様に、ヒドロキシアミノ酸の硫酸化を検出する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】Soxに基づくキナーゼセンサーの概略図である。
【図2A】PKCアイソザイムに対する1μMの基質での反応勾配のプロットである。
【図2B】PKCアイソザイムに対する1μMの基質での反応勾配のプロットである。
【図2C】PKCアイソザイムに対する1μMの基質での反応勾配のプロットである。
【図2D】PKCアイソザイムに対する1μMの基質での反応勾配のプロットである。
【図3】PKCアイソザイムとPKCα−S10の交差反応性
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、キナーゼ活性を検出するためにキナーゼ認識モチーフを含むセンサーを構築するのに有用である金属結合性化合物を提供する。本発明によるセンサーは、図1で例示される。該センサーは、金属結合部位、リン酸化部位、および少なくとも1つのキナーゼ認識モチーフを含む。
【0011】
定義
用語「ヒドロキシ」は、−OH基を意味する。
【0012】
用語「アミノ」は、−NR’R’’基(ここで、R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはアルキルである)を意味する。
【0013】
用語「チオール」は、−SR’基(ここで、R’は水素である)を意味する。
【0014】
用語「ハロゲン」は、塩素、臭素、ヨウ素、またはフッ素原子を意味する。
【0015】
用語「アルキル」は、示された数の炭素原子(すなわち、C1〜8は1〜8個の炭素原子を意味する)を有する線状、環状または分枝の、あるいはそれらの組合せでよい炭化水素基を意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンなどが含まれる。アルキル基は、特記しない限り、置換または非置換でよい。置換アルキル基の例には、ハロアルキル、チオアルキル、アミノアルキルなどが含まれる。
【0016】
用語「アリール」は、単一環(単環式)、または相互に縮合され得るまたは共有結合で連結され得る複合環(2環式または多環式)を有する多不飽和の芳香族炭化水素基を意味する。アリール基の例には、フェニルおよびナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イル、ビフェニルなどが含まれる。アリール基は、特記しない限り、置換または非置換でよい。
【0017】
用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1個のへテロ原子を含む芳香族基を意味し、ここで該へテロアリール基は、単環式または二環式でよい。例には、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、ベンゾトリアジニル、プリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、イソベンゾフリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾトリアジニル、チエノピリジニル、チエノピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリジン、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プテリジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピロリル、チアゾリル、フリルまたはチエニルが含まれる。
【0018】
用語「ヘテロシクリル」または「複素環」は、本明細書で使用される場合には同義語であり、窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のへテロ原子(典型的には1〜5個のヘテロ原子)を含む飽和または不飽和環を意味する。ヘテロシクリル環は、単環式または二環式でよい。複素環基の例には、ピロリジン、ピペリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジノン、ヒダントイン、ジオキソラン、フタルイミド、ピペリジン、1,4−ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、チオモルホリン−S−オキシド、チオモルホリン−S,S−ジオキシド、ピペラジン、ピラン、ピリドン、3−ピロリン、チオピラン、ピロン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、キヌクリジンなどが含まれる。
【0019】
用語「電子吸引基」は、該基の方向に双極子モーメントを生じさせる基を意味する。適切な電子吸引基には、限定はされないが、ハロ(好ましくはクロロ)、ハロアルキル(好ましくはトリフルオロメチル)、ニトロ、シアノ、スルホンアミド、スルホン、およびスルホキシドが含まれる。
【0020】
用語「環」は、その原子が環形態の式中に配置されている化合物を意味する。環式化合物は、炭素環式または複素環式でよい。
【0021】
用語「炭素環式」は、炭素原子のみから構成される環を意味する。
【0022】
用語「置換基」は、分子中の別の原子または基に取って代わる原子または基を意味する。
【0023】
用語「N−末端保護基」は、後に続く変換中でのアミノ官能基の望ましくない反応を防止する基を指し、限定はされないが、ベンジル、置換ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、トリチル、N−ベラチルオキシカルボニル(N−Voc)、N−アリルオキシカルボニル(N−Alloc)およびN−ペンテノイル(N−Pent)が含まれる。
【0024】
用語「C−末端保護基」は、カルボキシル官能基の望ましくない反応を防止する基を指し、限定はされないが、C1〜12アルキル(例えば、tert−ブチル)およびC1〜12ハロアルキルが含まれる。
【0025】
用語「キレート化増大蛍光(CHEF)」は、その化合物への金属イオンの結合(キレート化)の結果としての該化合物の蛍光増大を意味する。
【0026】
用語「キャッピング基」は、ペプチドの分解を防止するために、該ペプチドのN−またはC−末端に連結される化学基を意味する。
【0027】
化合物
本発明の化合物は、金属に結合する部分を含む。該化合物は、一般に「Sox」化合物と呼ばれる。
【0028】
一実施形態において、本発明の金属結合性化合物は、式(I)
【0029】
【化1】

を有し、式中、
は、ヒドロキシ、アミノ、またはチオールであり、
およびRは、それぞれ独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであるか、あるいはRおよびRは、それらが置換している炭素原子と一緒になって5または6員環を形成し、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここでRは、構造(I)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
Yは、ハロゲン(好ましくは、−Brまたは−Cl)、−SH、−NR’R’’’、−CHO、または−COHであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、またはN−保護基であり、
nは、0、1、2または3であり、かつ
mは、1、2、3、4、5、6または7であり、
ここで、R、RまたはRの少なくとも1つは−SOXであり、R、RまたはRの少なくとももう1つは電子吸引基である。
【0030】
別の実施形態において、本発明の金属結合性化合物は、式(VIII)
【0031】
【化2】

を有し、式中、
は、水素または−NR’R’’’であり、
は、−OH、−NR’R’’、または−Hであり、
pは、1、2または3であり、
、R、R、R、R’、R’’、R’’’およびmは、式(I)で定義した通りである。
【0032】
1つの好ましい実施形態において、金属結合性化合物は、式(IV)
【0033】
【化3】

の化合物であり、式中、
、m、nおよびYは、式(I)で定義した通りである。
【0034】
式(I)および(VIII)中で、RおよびRは、それらが置換している炭素と一緒になって環を形成することができる。RおよびRが環を形成する場合、金属結合性化合物は、5または6員の複素環化合物あるいは5または6員の炭素環化合物を含むことができる。好ましくは、RおよびRは、5または6員のN含有複素環を形成する。
【0035】
好ましい実施形態において、金属結合性化合物は、式(V)または(X)
【0036】
【化4】

を有することができ、式中、Zは、−CH−または−N−であり、R、R、X、R、R、R’、R’’、R’’’、Y、m、nおよびpは、式(I)および(III)に関して前述した通りであり、ここで、少なくとも1つのRは−SOXである。
【0037】
式(I)、(IV)および(V)において、Yは、好ましくはハロゲンである。
【0038】
前述の様々な実施形態において、Rは、好ましくは−OHである。Xは、好ましくは−NR’R’’’(より好ましくは−NMe)である。mは、好ましくは1である。nは、好ましくは0、1または2(より好ましくは0または1)である。pは、好ましくは1、2または3である。少なくとも1つのRは、好ましくはRに対してパラ位に存在する。Rは、好ましくは−SOXである。
【0039】
式(VIII)および(X)において、Rは、好ましくは−NHR’’’(より好ましくはNH−Fmoc)である。Rは、好ましくは−OHである。
【0040】
前述の様々な実施形態において、電子吸引基は、アルキル、ハロゲン、−NRii、−OR、−SR、−CN、−NO、=O、−OC(O)R、−C(O)R、−C(O)NRii、−OC(O)NRii、−NRiiC(O)R、−NRC(O)NRiiiii、−CO、−NRii、−NRiiCO、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)NRii、−NRS(O)ii、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、および非置換または置換ヘテロシクリルでよく、ここで、R、RiiおよびRiiiは、それぞれ独立に水素またはC1〜6アルキルである。
【0041】
本発明の金属結合性化合物は、Mg2+に結合した後、キレート化増大蛍光(CHEF)を示す。本発明によるアミノ酸残基の蛍光は、Mg2+に結合した場合に、少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約400%、より好ましくは少なくとも約800%増大する。
【0042】
ペプチド
式(VIII)および(X)などの金属結合性化合物は、標準的なペプチド合成(固相または溶液相)を使用してペプチド中に形成できる。標準的なペプチド合成は、当技術分野で周知である。例えば、「Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis − A Practical Approach」Oxford University Press、2003年、W.C.ChanおよびP.D.White編(ISBN 0 19 963 724 5);および「The Chemical Synthesis of Peptides」Clarendon Press、Oxford、1994年、Jones,J.(ISBN 0 19 855839 2)を参照されたい。
【0043】
SOX化合物を、合成後にペプチドと連結する場合には、ペプチドをまず合成し、該ペプチドの側鎖上の保護基を選択的に除去する。次いで、式(I)などの金属結合性SOX化合物を、形成されたペプチドの側鎖に標準的カップリング法を使用して連結することができる。例えば、Yがハロゲンである場合には、該化合物を、その側鎖中にチオール基を含む残基(Cysなど)にチオエーテル結合を形成して連結することができる。別法として、Yがアミンである場合には、それを、その側鎖中にカルボン酸を含む残基(AspまたはGluなど)にアミド結合を形成して連結することができる。別法として、Yがチオールである場合は、それを、その側鎖中にチオール基を含む残基(Cysなど)にジスルフィド結合を形成して連結することができる。別法として、Yがカルボン酸である場合には、それを、その側鎖中にアミンを含む残基に連結することができる。次いで、SOXを含むペプチドを、脱保護し、精製する。別法として、Yがアルデヒドである場合には、それを、アミンを含む残基に還元アミノ化により連結することができる。別法として、SOX残基を含む構成ブロックを、標準的ペプチド合成ステップを使用して合成し(すなわち、実施例の部を参照されたい)、組み込むことができる。
【0044】
アミノ酸の選択的脱保護は、当技術分野で周知である。好ましい方法は、(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸の側鎖中のカルボキシル基に対して)アリル(OAll)、(例えば、リシンまたはオルニチンの側鎖中のアミノ窒素に対して)アリルオキシカルボニル(Alloc)、(システインのスルフヒドリルに対して)p−メトキシトリチル(MMT)またはアセトアミドメチル(Acm)などの直交性側鎖保護を使用するものである。OAllおよびAllocは、Pdにより容易に除去され、Acmはヨウ素処理により容易に除去され、MMTは、極めて穏やかな酸処理により容易に除去される。
【0045】
本発明の金属結合性化合物は、好ましくは、キナーゼ認識配列から−5、−4、−3、−2、−1、1、2、3、4または5残基内に存在する(マイナス(−)の位置は、該化合物がキナーゼ認識配列のN−末端側に位置することを示す。プラス(+)の位置は、該化合物がキナーゼ認識配列のC−末端側に位置することを示す)。場合によっては、金属結合性化合物は、キナーゼ認識配列からさらに遠くに位置してもよい。
【0046】
本発明によるリン酸化部位には、キナーゼ認識モチーフ内のヒドロキシル含有アミノ酸が含まれる。例には、セリン、トレオニンおよびチロシンなどの天然に存在するヒドロキシル含有アミノ酸残基、ならびに天然に存在しないヒドロキシル含有アミノ酸残基が含まれる。
【0047】
当技術分野で周知の任意のキナーゼ認識モチーフを、本発明により使用できる。非リン酸化ペプチドのMg2+に対する親和性は塩基性条件下で増加するので、酸性残基を有する認識配列は、リン酸化されると類似配列に比べてより小さい蛍光増大度を示す可能性がある。本発明の金属結合性ペプチドを使用してリン酸化をモニターできる認識モチーフの例を表Iに示す。
【0048】
【表1】

リン酸化できるその他のペプチド(および対応するキナーゼ)のリストは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、PinnaおよびDonella−Deana、Biochimica et Biophysica Acta、1222巻、415〜431頁(1994年)の表I中に見出される。もう1つのリストは、オンラインでwww.neb.com/neb/tech/tech_resource/protein_tools/substraye_recognition.htmlに見出される(2003年9月26日に存在したこのウェブサイトのコピーは、本出願と同時に提出された情報開示書中に提供され、参照によりその全体が組み込まれる)。
【0049】
本発明によるペプチドセンサーは、少なくとも1つのキナーゼ認識配列を有する。いくつかの場合では、リン酸化されるの側鎖の一方の側にある残基がより重要ではあるが、より多くの残基が、さらなる特異性を付与する可能性があることは明白である。この特異性は、複雑な媒体中の、特に、すべての細胞内酵素が基質ペプチドと相互作用する潜在性を有する生存細胞または細胞溶解物中のキナーゼを評価する任意のアッセイで重要な役割を果たす可能性がある。付加される認識エレメントは、いくつかの異なるキナーゼまたはあるキナーゼのアイソザイムが存在する競合アッセイにおいて、センサーをより特異的に所望のキナーゼに向けることができる。
【0050】
アッセイ
ペプチドの蛍光を、Mg2+の存在下または不在下で測定する。レポーター官能基は、金属に結合した後、キレート化増大蛍光(CHEF)を示す非天然のSox発色団である。化学センサーのMg2+親和性は、リン酸基が存在しない場合に低く(K=100〜300mM)、一方、リン酸化は、Mg2+親和性を有意に増強する(K=0.1〜20mM)。したがって、選択されたMg2+濃度で、大部分のリンペプチドは、拘束され、蛍光状態で存在する。飽和MgClの存在下で、Soxペプチドは、485nmに極大発光を、360nmに極大励起を示す。さらに、これらのペプチドは、フルオロフォアの顕著なルミネセンス特性を維持する。代表的な化学センサー−Mg2+錯体に関する消光係数および量子収量は、定量的アミノ酸分析に続いて決定される。
【0051】
この反応に関する酵素の動態パラメーターを求めるには、蛍光強度の増加から生成物形成の初期速度を決定する必要がある。このセンサーの場合、初期勾配から生成物形成の速度を決定するには、出発物質が消費されることによる蛍光強度の低下に関する補正が必要である。任意の所定時点での蛍光強度は、次式
I(t)=fS(t)+fP(t) (1)
から決定することができ、式中、I(t)は蛍光強度であり、S(t)は基質の量(μM)であり、P(t)は生成物の量(μM)であり、fは、基質1μM当たりの蛍光強度であり、fは生成物1μM当たりの蛍光強度である。任意の所定時点での基質および生成物の量は、
S(t)+P(t)=S (2)
で関連付けられ、式中、Sは基質の初期量である。(2)を(1)に代入し、続いて整理すると、
【0052】
【化5】

が得られる。
【0053】
反応の初期速度は、経時的な生成物量の変化であり、それゆえ、(3)を時間で微分すれば、
【0054】
【化6】

が得られる。
【0055】
反応の初期勾配dI(t)/dtを、基質代謝回転の最初の5%以内で測定した。それぞれPおよびSの濃度に対する蛍光強度直線の勾配から、定数fおよびfを計算した。Hanesプロット([S]/V対V)の直線近似を使用してKおよびVmaxを求めた。
【0056】
本発明のセンサーは、キナーゼ活性の検出法で使用できる。本発明の方法は、リン酸化部位を含む1つまたは2つのキナーゼ認識モチーフ、および側鎖が式(I)の化合物で修飾されているアミノ酸残基を含む金属結合性ペプチドを含むセンサーを提供するステップと、該センサーをMg2+、リン酸供給源(例えばATP)、およびキナーゼを含むサンプルと接触させるステップと、リン酸化されたペプチド生成物の存在について分析するステップとを含む。
【0057】
本発明の方法は、インビトロまたはインビボで使用できる。インビトロでの応用では、反応は、典型的には、Mg2+およびリン酸供給源を含む緩衝液中で実施される。適切な緩衝液には、HEPESおよびTRISが含まれる。好ましいMg2+供給源はMgClである。好ましいリン酸供給源はATPである。
【0058】
本発明では、セリン/トレオニンおよびチロシンキナーゼを使用できる。典型的なSer/Thrキナーゼには、cAMP依存性プロテインキナーゼ、プロテインキナーゼC、Ca/カルモジュリン依存性キナーゼ、AMP活性化キナーゼ、s6キナーゼ、eIF−2キナーゼ、p34cdc2プロテインキナーゼ、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、カゼインキナーゼ−2、カゼインキナーゼ−1、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3、AURORA、Akt、Erk、Jnk、CDK2が含まれ、Tyrに特異的な典型的プロテインキナーゼには、Src、Abl、インスリン受容体キナーゼ、およびEGFRが含まれる。
【0059】
インビトロでの応用では、キナーゼの濃度は、約0.5nM〜約1μMの範囲でよく、典型的には約500nMを超えず、好ましくは約250nMを超えない。センサーの濃度は、変え得るが、通常、約0.01μM〜0.1mMの範囲でよい。アデノシン5’−三リン酸(ATP)は、約10〜100mMのストック溶液中での好ましいリン酸供給源である。ほとんどのキナーゼは、ATPに対して約10〜150μMの範囲のK値を有するので、飽和濃度のATPを使用して、その基質に関するKおよびVmax値に到達する。インビボでの応用では、センサーが細胞中に内部移行すると、十分なキナーゼ、Mg2+、およびリン酸供給源が、細胞質ゾル中に存在する。インビボで検知する場合には、細胞内部移行配列をセンサーの設計に含めることができる。適切な細胞内部移行配列には、ペネトラチン、HIV−Tatドメイン、およびポリアルギニン配列が含まれる(Lindgren,M.ら、Trends Pharmacol.Sci.2000年、21巻、99〜103頁;Wadia,J.S.ら、Curr Opin.Biotech.、2002年、13巻、52〜56頁:Carrigan,C.N.、Analyt.Biochem.、2005年、341巻、290〜298頁)。
【0060】
キナーゼが補因子に依存する応用では、補因子の供給源もサンプル中に含める。例えば、PKCの場合では、Ca2+、リン脂質およびジアシルグリセロールの供給源が必要とされる。
【0061】
本発明のセンサーは、金属結合性アミノ酸残基が、光退色を受けないので、キナーゼ反応を連続的に測定するのに使用できる。
【実施例】
【0062】
化合物の合成:
金属結合性化合物は、Skraupのキノリン合成、変法であるFriedlanderのキノリン合成、またはo−2,4−ジニトロフェニルオキシム誘導体のNaHおよびDDQを用いる環化に基づいて調製することができる。
【0063】
【化7】

Skraupのキノリン合成法では、2−アミノ−ナフタレン−1−オール(6)を酸性条件下でブタ−2−エナールで処理して所望の伸長した三環系(7)を得る。フェノール部分をメトキシ基として保護して環化を促進できる。別法として、伸長した三環系(7)は、経路Bにより得ることもでき、その経路では、2−アミノ−ナフタレン−1−オール(6)をメシル化し、ブタ−2−エナールと縮合し、次いで、酸処理で環化して10を得る。次いで、芳香族化およびメシル基の脱保護を実施して7を得る。次いで、伸長したキノリン環系をスルホンアミド部分の組込みに付し、伸長した直鎖状Sox発色団類似体8を得る。さらなるキレート形成官能基を所持する伸長した直鎖状Sox発色団類似体14は、経路C(スキーム2)中に示す市販の5−クロロ−8−ヒドロキシキノリンから調製される。
【0064】
【化8】

Friedlanderのキノリン合成法では、まず、ヨウ化メチルを用いて市販の2−アミノ−ナフタレン−1−オール(6)のフェノール基を保護してメトキシ誘導体15を得る。続いて、二炭酸ジ−tert−ブチルを用いてアニリン基を保護してアミド16を得る。16のtert−ブチルオキシオキシカルボニルに対するリチオ化、ジメチルホルムアミドを用いるアルキル化、およびその後のTFAを用いるtert−ブチルオキシカルボニルの脱保護で、o−アミノベンズアルデヒド誘導体18を生じさせる。アルデヒド18を得た後、アセトンとの環化を、ZnClまたはBi(OTf)での処理により行うことによって、伸長したキノリン環系19を得る。BBrを用いてメトキシ基を脱保護し、続いて前述のようにスルホンアミド部分を組み込むと、伸長したSoxキノリン類似体系8がうまく得られる。
【0065】
【化9】

三環性発色団を合成した後、伸長した8−ヒドロキシキノリン(8)をtert−ブチルジフェニルシリルエーテルとして保護し、続いて、3ステップ法でブロモメチル誘導体(21)を得る。tert−ブチルエステル22を用いる21の不斉アルキル化により、それぞれのSoxで修飾されたアミノ酸23が得られ、次いで、該アミノ酸をFmoc誘導体24に転換できる。
【0066】
【化10】

ペプチドの合成:
センサーペプチドは、文献から選択された最適なPKCαペプチド基質(RRRKGS*FRRKA、K=3.8μM)に基づく標準的な固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。ペプチドは、樹脂上で優先的に除去されてSox−Brを用いるスルフヒドリル側鎖のアルキル化を可能にする直交性保護基を有するCys残基を含めて合成される(スキーム5)。
【0067】
【化11】

別法として、標準的なペプチド合成技術を使用して、構成ブロックを合成し、ペプチドに、Fmocで保護され、SOXで修飾されたシステイン残基(Fmoc−Cys(Sox)−OH)を導入できる。
【0068】
【化12】

ペプチドの特徴付け:
合成を完了した後、ペプチドを切断し、Fmocに基づくペプチド合成のための標準的手順(前述を参照)に従って全体的に脱保護し、HPLCで精製に付し、それらの質量をESI(エレクトロスプレーイオン化)またはMALDI−TOF(マトリックス支援レーザー脱離イオン化、飛行時間型)質量分光計を使用して確認した(表III)。(a)PKCα−S10およびP10を除くすべてのペプチドでは、逆相分取C18カラムを15mL/分の流速で使用した。溶媒A:0.1%v/vのTFAを含むHO;溶媒B:0.1%v/vのTFAを含むCHCN。Bを5%で溶出を開始し(5分超)、Bを直線的に50%まで増加し(30分超)、続いてBを95%まで増加し(1分超)、Bを95%で維持した(5分)。PKCα−S10およびP10では、Bを5%で溶出を開始し(5分)、Bを15%まで増加し(1分)、続いてBを直線的に30%まで増加した(30分)。(b)PKCα−S10およびP10を除くすべてのペプチドでは、逆相分析C18カラムを1ml/分の流速で使用した。溶媒A:0.1%v/vのTFAを含むHO;溶媒B:0.1%v/vのTFAを含むCHCN。Bを5%で溶出を開始し(5分超)、Bを直線的に95%まで増加し(30分超)、Bを95%で維持した(5分)。PKCα−S10およびP10では、Bを5%で溶出を開始し(5分)、Bを15%まで増加し(1分)、続いてBを30%まで直線的に増加した(30分)。(c)すべてのペプチドについて、PE Biosystems Mariner質量分光計でESI−MSデータを収集した。
【0069】
【表3】

ストック溶液:
リン酸化ペプチドのZn2+に対する親和性のため、調製後に金属イオン不純物を除去する必要性を回避するために、純度が最も高く金属含有量が最も低い試薬を使用した。
【0070】
すべてのストック溶液は、特記しない限り、アッセイ当日に先立って調製し、室温で貯蔵した。
【0071】
蛍光実験:
蛍光実験は、Jobin YvonのFluoromax3を用いて実施した。5nmの発光および励起スリット幅を使用した。すべての実験で、360nmの励起波長を使用した。酵素アッセイは、485nmの発光をモニターすることによって実施した。
【0072】
リン酸化および非リン酸化ペプチドのスペクトル比較:
ペプチドを特徴付けた後、非リン酸化およびリン酸化ペプチドについて適切な条件下で発光スペクトルを得た。スペクトルは、一般に、10mMのMg2+(より低いMg2+濃度も同様に使用可能であり、使用された)、および0、0.1または1mM ATP/事前に選択した緩衝液(通常は20mM HEPES、pH7.4)の存在下で取得した。発光スペクトルに依拠して、485nmでのリンペプチドの蛍光強度をその非リン酸化対照物の蛍光強度で除算することによって、倍率蛍光差を比較した。図2に、適切なアッセイ混合物中でのリン酸化および非リン酸化ペプチドの蛍光スペクトルを示す。(A)PKCβI−1(10μM)、10mM Mg(II)での発光走査、3x;(B)PKCβI−1(10μM)、10mM Mg(II)、0mM ATPでの発光走査、3x;(C)PKCβI−1(10μM)、10mM Mg(II)での蛍光差、3x。
【0073】
センサーの生物物理学的特性および動態特性:
PKCα、PKCα−S1に対する「直鎖状」センサーの生物物理学的特性は良好であるが(表IV)、細胞溶解物中で使用すると、PKCα−S1は、細胞中に存在するPKCアイソザイムの多くに対して反応性がある。比較として、PKCα、PKCα−S9、およびPKCα−S10に対して本発明中で開示されるような伸長した認識ドメインを有する化学センサーは、やはり良好な生物物理学的特性を有する(表IV)。さらに、これらのセンサーは、動態パラメーター(表V)を得ることによって判定されるように、PKCαに対してより一層選択的であり、そのため、細胞アッセイにおいてより高い特異性を提供できる。
【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

Soxペプチドの交差反応性:
手元にある動態パラメーターを用いて、PKCα−S10とPKCアイソザイムとの交差反応性を試験することが可能である。12の別個の反応で、PKCα−S10(1μM)を、PKCα、PKCβI、PKCβII、PKCγ、PKCδ、PKCε、PKCζ、PKCη、PKCθ、PKCι、PKCμおよびPKCν(2ng)と一緒のリン酸化に付す。これらの条件下で、PKCβIおよびPKCθは、PKCαに比べてわずかにより活性があり、一方、PKCβIIおよびPKCγは、PKCαのそれと同等の活性を有する。これに反して、PKCδ、PKCμおよびPKCγと一緒では活性が観察されず、PKCε、PKCζ、PKCηおよびPKCιと一緒では極めて小さい活性が検出される(図3)。
【0076】
3種のアイソザイムは、PKCα−S10上で反応を実施せず、さらなる4種は、ほんのわずかに活性があることが示された。したがって、11種のアイソザイム(PKCαを含まない)中の4種のみが、PKCαと同程度またはわずかに良好にリン酸化を実施することができる。この傾向は、文献中で以前から認められている。Cantleyらは、PKCα−S10に類似したペプチドのPKCα、PKCβI、PKCδ、PKCζ、およびPKCμとのK値を測定し、PKCαは最低のKを有するが、基質は、PKCμ以外のすべてのアイソザイムによってほとんど同様に受け入れられることを示した。このことは、これらのアイソザイムが極めて類似した基質を有するので、驚くべきことではない。本発明中で開示されるような伸長した認識ドメインを用いるこの手法は、任意の他のアイソザイムからのリン酸化を心配することのない、いくつかのPKCアイソザイムに対して特異的な基質の合成を可能にする。
【0077】
本発明をいくつかの実施形態に関して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱しないでその他の特徴を含むことができる。したがって、前述の詳細な説明は、限定ではなく例示と見なされることを意味し、本発明の精神および範囲を画定すると見なされるものは、すべての等価形態を含む以下の特許請求の範囲であると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化13】

[式中、
は、ヒドロキシ、アミノ、またはチオールであり、
およびRは、それぞれ独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであるか、あるいはRおよびRは、それらが置換している炭素原子と一緒になって5または6員環を形成し、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(I)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
Yは、ハロゲン、−SH、−NR’R’’’、−CHO、または−COHであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
nは、0、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4、5、6または7であり、
ここで、R、RまたはRの少なくとも1つは−SOXであり、R、RまたはRの少なくとももう1つは電子吸引基である]。
【請求項2】
式(II)
【化14】

[式中、
は、ヒドロキシ、アミノ、またはチオールであり、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(II)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
Yは、ハロゲン、−SH、−NR’R’’’、−CHO、または−COHであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
nは、0、1、2または3であり、
mは、1、2、3または4であり、
ここで、少なくとも1つのRは電子吸引基である]を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(III)
【化15】

[式中、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(III)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
Yは、ハロゲン、−SH、−NR’R’’’、−CHO、または−COHであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
nは、0、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4または5であり、
ここで、少なくとも1つのRは−SOXであり、少なくとももう1つのRは電子吸引基である]を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(IV)
【化16】

[式中、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(IV)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
Yは、ハロゲン、−SH、−NR’R’’’、−CHO、または−COHであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
nは、0、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4または5であり、
ここで、少なくとも1つのRは電子吸引基である]を有する、請求項1、2、または3に記載の化合物。
【請求項5】
およびRが、それらが置換している炭素原子と一緒になって、5または6員の複素環または炭素環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式(V)
【化17】

[式中、
Zは、−CH−または−N−であり、
は、ヒドロキシ、アミノ、またはチオールであり、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(V)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
Yは、ハロゲン、−SH、−NR’R’’’、−CHO、または−COHであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
nは、0、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4、5、6または7であり、
ここで、少なくとも1つのRは−SOXである]を有する、請求項1または5に記載の化合物。
【請求項7】
式(VI)
【化18】

[式中、
Zは、−CH−または−N−であり、
は、ヒドロキシ、アミノ、またはチオールであり、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(VI)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
Yは、ハロゲン、−SH、−NR’R’’’、−CHO、または−COHであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
nは、0、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4、5、6または7である]を有する、請求項1、5または6に記載の化合物。
【請求項8】
式(VII)
【化19】

[式中、
Yは、ハロゲン、−SH、−NR’R’’’、−CHO、または−COHであり、
R’は、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
nは、0、1、2または3である]を有する、請求項1、5、6または7に記載の化合物。
【請求項9】
電子吸引基が、アルキル、ハロゲン、−NRii、−OR、−SR、−CN、−NO、=O、−OC(O)R、−C(O)R、−C(O)NRii、−OC(O)NRii、−NRiiC(O)R、−NRC(O)NRiiiii、−CO、−NRii、−NRiiCO、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)NRii、−NRS(O)ii、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、および非置換または置換ヘテロシクリルからなる群から選択され、R、RiiおよびRiiiは、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルである、請求項1、2、3、4または5に記載の化合物。
【請求項10】
式(VIII)の化合物
【化20】

[式中、
は、ヒドロキシ、アミノ、またはチオールであり、
およびRは、それぞれ独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであるか、あるいはRおよびRは、それらが置換している炭素原子と一緒になって5または6員環を形成し、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(VIII)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
は、水素または−NR’R’’’であり、
は、−OH、−NR’R’’、または−Hであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
pは、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4、5、6または7であり、
ここで、R、RまたはRの少なくとも1つは−SOXであり、R、RまたはRの少なくとももう1つは電子吸引基である]。
【請求項11】
式(IX)
【化21】

[式中、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(IX)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
pは、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4または5であり、
ここで、少なくとも1つのRは電子吸引基である]を有する、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
およびRが、それらが置換している炭素原子と一緒になって5または6員の複素環または炭素環を形成する、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
式(X)
【化22】

[式中、
Zは、−CH−または−N−であり、
は、ヒドロキシ、アミノ、またはチオールであり、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(X)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
は、水素または−NR’R’’’であり、
は、−OH、−NR’R’’、または−Hであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
pは、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4、5、6または7であり、
ここで、少なくとも1つのRは−SOXである]を有する、請求項10または12に記載の化合物。
【請求項14】
式(XI)
【化23】

[式中、
Zは、−CH−または−N−であり、
は、ヒドロキシ、アミノ、またはチオールであり、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(XI)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
は、水素または−NR’R’’’であり、
は、−OH、−NR’R’’、または−Hであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
pは、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4、5、6または7である]を有する、請求項10、12または13に記載の化合物。
【請求項15】
式(XII)
【化24】

[式中、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
pは、1、2または3である]を有する、請求項10、12、13または14に記載の化合物。
【請求項16】
電子吸引基が、アルキル、ハロゲン、−NRii、−OR、−SR、−CN、−NO、=O、−OC(O)R、−C(O)R、−C(O)NRii、−OC(O)NRii、−NRiiC(O)R、−NRC(O)NRiiiii、−CO、−NRii、−NRiiCO、−SR、−S(O)R、−S(O)、−S(O)NRii、−NRS(O)ii、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロアリール、および非置換または置換ヘテロシクリルからなる群から選択され、R、RiiおよびRiiiは、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルである、請求項10、11または12に記載の化合物。
【請求項17】
側鎖が、式(I)の化合物
【化25】

[式中、
は、ヒドロキシ、アミノ、またはチオールであり、
およびRは、それぞれ独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであるか、あるいはRおよびRは、それらが置換している炭素原子と一緒になって5または6員環を形成し、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(I)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
Yは、ハロゲン、−SH、−NR’R’’’、−CHO、または−COHであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
nは、0、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4、5、6または7であり、
ここで、R、RまたはRの少なくとも1つは−SOXであり、R、RまたはRの少なくとももう1つは電子吸引基である]で修飾されているアミノ酸残基を含むペプチド。
【請求項18】
さらに、キナーゼ認識配列を含む、請求項17に記載のペプチド。
【請求項19】
さらに、2つのキナーゼ認識配列を含む、請求項17に記載のペプチド。
【請求項20】
キナーゼ活性の検出方法であって、
(a)側鎖が式(I)の化合物
【化26】

[式中、
は、ヒドロキシ、アミノ、またはチオールであり、
およびRは、それぞれ独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであるか、あるいはRおよびRは、それらが置換している炭素原子と一緒になって5または6員環を形成し、
各Rは、独立に、水素、電子吸引基、または−SOXであり、ここで、Rは、構造(I)内のいずれかの環の任意の空位原子価を置換することができ、
Xは、−OR’または−NR’R’’であり、
Yは、ハロゲン、−SH、−NR’R’’’、−CHO、または−COHであり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素またはC1〜6アルキルであり、
R’’’は、水素、C1〜6アルキル、tBoc、またはFmocであり、
nは、0、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4、5、6または7であり、
ここで、R、RまたはRの少なくとも1つは−SOXであり、R、RまたはRの少なくとももう1つは電子吸引基である]を用いて修飾されたアミノ酸残基を含むペプチドを提供するステップと、
(b)該ペプチドをMg2+、リン酸供給源、およびキナーゼを含むサンプルと接触させるステップと、
(c)リン酸化されたペプチド生成物の存在について分析するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−503617(P2010−503617A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526861(P2009−526861)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/076959
【国際公開番号】WO2008/082715
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】