説明

Staphylococcusaureus5型および8型の莢膜糖の精製

本発明は、S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞から莢膜多糖を放出させるための方法であって、前記細胞を酸で処理するステップを含む方法を提供する。本発明は、この方法を含む、S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞から莢膜多糖を精製するためのプロセスもさらに提供する。例えば核酸、タンパク質および/またはペプチドグリカン混入物を除去するための酵素処理;例えば低分子量混入物を除去するためのダイアフィルトレーション;例えば残存タンパク質を除去するためのアニオン交換クロマトグラフィー;ならびに濃縮のようなその他の処理ステップが、プロセスに含まれてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2009年10月30日に出願された米国仮出願第61/256,905号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
本発明は、細菌の莢膜多糖、特にStaphylococcus aureus5型および8型のもの、ならびに特にワクチンの調製に用いるためのものの精製の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
細菌の莢膜糖は、莢膜細菌(capsulated bacteria)に対するワクチンにおいて長年用いられている。しかし、糖類は、T非依存性抗原であるので、これらは免疫原性に乏しい。担体へのコンジュゲーションは、T非依存性抗原をT依存性抗原に変換でき、このことにより記憶応答が増進され、防御免疫が発達することが可能になる。最も効果的な糖ワクチンは、よって、複合糖質に基づき、原型のコンジュゲートワクチンは、Haemophilus influenzae b型(「Hib」)に対するものであった[例えばref.96の第14章を参照されたい]。
【0004】
それに対するコンジュゲートワクチンが記載されている別の細菌は、Staphylococcus aureus(S.aureus)である。様々な多糖が、複合糖質で用いるためにS.aureusから単離されている。特に対象となる2つの多糖は、5型および8型莢膜多糖である。ヒトS.aureus株のおよそ60%が8型であり、およそ30%が5型である。5型および8型コンジュゲートに対する研究の多くはFattomらにより行われ、参考文献1〜9のような文書に記載されている。
【0005】
多糖ベースワクチンについての開始点は多糖自体であり、これは、通常、標的細菌から精製される。Fattomらは、5型および8型莢膜多糖の精製のための複雑なプロセスを開発し、これは、参考文献1に詳細に記載されており、細菌培養の後に以下の鍵となるステップを含む:緩衝液中での細菌細胞の懸濁、リソスタフィンでの処理、DNアーゼおよびRNアーゼでの処理、遠心分離、緩衝液に対する透析、プロテアーゼでの処理、さらなる透析、ろ過、混入物を沈殿させるための塩化カルシウムと一緒に25%までのエタノールの添加、多糖を沈殿させるための75%までのエタノールのさらなる添加、沈殿物の回収および乾燥、アニオン交換クロマトグラフィー、透析、凍結乾燥、サイズ排除クロマトグラフィー、透析ならびに最後の凍結乾燥。
【0006】
Fattomプロセスは、細菌細胞壁を溶解し、そのことにより莢膜多糖を放出させるためにリソスタフィンの使用を含む。しかし、このステップは時間がかかり、プロセスを工業的な設定までスケールアップすることを困難にする。これは、プロセスの全体的な費用および複雑さも増加させる。他の研究者らは、このステップを省き、より単純でより効率的な多糖精製方法を開発することを試みている。例えば、参考文献[10]は、S.aureus細胞のオートクレーブ処理、多糖含有上清の限外ろ過、濃縮、凍結乾燥、メタ過ヨウ素酸ナトリウムでの処理、さらなる限外ろ過、ダイアフィルトレーション、高性能サイズ排除液体クロマトグラフィー、透析および凍結乾燥を含む代替プロセスについて記載している。著者らは、この方法が良好な収率をもたらし、多糖の大規模生成に適切であることを示唆している。この方法では、リソスタフィン処理は、莢膜多糖を放出させるためのオートクレーブ処理で置き換えられている。この方法は、参考文献[11]でさらに進展した。これらの代替法で重要なステップは、メタ過ヨウ素酸ナトリウムでの処理である。このステップは、莢膜多糖のテイコ酸混入を除去するために行われる。しかし、再度、このステップは、プロセスの持続期間、複雑さおよび全体的な費用を増加させる。参考文献[12]は、これもまた、莢膜多糖を放出させるためのオートクレーブ処理と、テイコ酸を除去するためのメタ過ヨウ素酸ナトリウムでの処理とを含む同様のプロセスを記載している。対照的に、他のグループのほとんどは、リソスタフィン処理を保持し(例えば参考文献13、参考文献14(特許文献1)、参考文献15(特許文献2)、参考文献16(特許文献3)、参考文献17(特許文献4)および参考文献18(特許文献5)を参照されたい)、メタ過ヨウ素酸ナトリウムでの処理を時に含む(例えば参考文献13および参考文献14(特許文献1)において)プロセスを用いている。
【0007】
上記の方法は複雑であり、得られる多糖に混入を残すことがある。よって、S.aureus5型および8型莢膜多糖を精製するためのさらなる改善されたプロセス、特により少ない混入をもたらすあまり複雑でないプロセスが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/080490号
【特許文献2】国際公開第2006/032475号
【特許文献3】国際公開第2006/032500号
【特許文献4】国際公開第2006/065553号
【特許文献5】国際公開第2006/114500号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多糖が、細菌細胞から、酸での処理により初期に放出される精製プロセスに基づく。このステップは、リソスタフィン処理の必要性を除き、上記のプロセスと同様にオートクレーブ処理の代替として用いることができる。本発明者らは、このプロセスが、テイコ酸混入が低い精製多糖をもたらすことを見出した。このことは、多糖をメタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理する必要がないことを意味する。この精製多糖は、ペプチドグリカン混入も低く、このことにより、それは医療への使用のために特に適切になる。本発明者らのプロセスは、迅速で単純になることができる。なぜなら、以前のプロセスにおける面倒なステップが必要ないからである。
【0010】
本発明は、S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞から莢膜多糖を放出させるための方法であって、前記細胞を酸で処理するステップを含む方法を提供する。本発明は、この方法を含む、S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞から莢膜多糖を精製するためのプロセスもさらに提供する。例えば核酸、タンパク質および/またはペプチドグリカン混入物を除去するための酵素処理、例えば低分子量混入物を除去するためのダイアフィルトレーション、例えば残存タンパク質を除去するためのアニオン交換クロマトグラフィーならびに濃縮のようなその他の処理ステップが、プロセスに含まれてよい。
【0011】
したがって、本発明は、多糖を、S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞から、前記細胞を酸で処理することにより放出させるステップを含む、S.aureus5型または8型莢膜多糖を精製するためのプロセスを提供する。同様に、本発明は、S.aureus5型または8型莢膜多糖を精製するためのプロセスにおいて、細胞から多糖を放出させるためのS.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞の酸処理の使用からなる改善を提供する。酸処理による放出は、多糖を放出させるためのリソスタフィン処理またはオートクレーブ処理の必要性を除く。
【0012】
本発明は、リソスタフィン処理のステップを含まない、S.aureus5型または8型莢膜多糖を精製するためのプロセスも提供する。同様に、本発明は、メタ過ヨウ素酸ナトリウム処理のステップを含まない、S.aureus5型または8型莢膜多糖を精製するためのプロセスを提供する。典型的には、プロセスは、これらのステップの一方または両方を含まない。
【0013】
本発明は、S.aureus5型または8型莢膜多糖を精製するためのプロセスであって、多糖と、多糖の全重量に対して5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%など)のペプチドグリカンであるレベルのペプチドグリカン混入とを含む組成物を提供するプロセスも提供する。典型的に、組成物は、4重量%未満、特に3重量%未満のペプチドグリカンを含む。本発明者らは、本発明の方法を用いて、約2%または約1%のレベルさえ得ることができることを見出した。本発明者らは、このレベルのペプチドグリカンを有する組成物は、ワクチン製造において有用であることを見出した。対照的に、参考文献17は、5%を上回るレベルをこの目的のために用いるべきであることを教示している。ペプチドグリカン混入のレベルは、本明細書で記載する方法を用いて測定できる。
【0014】
同様に、本発明は、S.aureus5型または8型莢膜多糖を精製するためのプロセスであって、多糖と、多糖の全重量に対して5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.5%など)のタンパク質であるレベルのタンパク質混入とを含む組成物を提供するプロセスを提供する。典型的に、組成物は、3重量%未満、特に約2.4重量%のタンパク質を含む。タンパク質混入のレベルは、MicroBCAアッセイ(Pierce)を用いて測定できる。
【0015】
本発明は、S.aureus5型または8型莢膜多糖を精製するためのプロセスであって、多糖と、多糖の全重量に対して1重量%未満(例えば≦0.75%、≦0.50%、≦0.25%、≦0.10%、≦0.01%など)の核酸であるレベルの核酸混入とを含む組成物を提供するプロセスも提供する。典型的に、組成物は、0.25重量%未満、特に約0.09重量%の核酸を含む。核酸混入のレベルは、分光光度計における260nmでの吸収により測定できる。
【0016】
本発明は、S.aureus5型または8型莢膜多糖を精製するためのプロセスも提供し、ここで(a)ペプチドグリカン酸混入のレベルが5%未満(上記のとおり)であり、(b)タンパク質混入のレベルが5%未満(上記のとおり)であり、(c)核酸混入のレベルが1%未満(上記のとおり)である。
【0017】
本発明は、本発明のプロセスのいずれかにより得ることができる、S.aureus5型または8型莢膜多糖を含む組成物も提供する。
【0018】
特に、本発明は、S.aureus5型または8型莢膜多糖を含む組成物であって、多糖の全重量に対して5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%など)のペプチドグリカンであるレベルのペプチドグリカン混入を含む組成物を提供する。典型的に、組成物は、3重量%未満、特に2重量%未満のペプチドグリカンを含む。約2%または約1%のレベルさえ有する組成物が、本発明により具体的に提供される。
【0019】
同様に、本発明は、S.aureus5型または8型莢膜多糖を含む組成物であって、多糖の全重量に対して5重量%未満(例えば≦4%、≦3%、≦2%、≦1%、≦0.5%など)のタンパク質であるレベルのタンパク質混入を含む組成物を提供する。典型的に、組成物は、3重量%未満、特に約2.4重量%のタンパク質を含む。
【0020】
本発明は、S.aureus5型または8型莢膜多糖を含む組成物であって、多糖の全重量に対して1重量%未満(例えば≦0.75%、≦0.50%、≦0.25%、≦0.10%、≦0.01%など)の核酸であるレベルの核酸混入を含む組成物も提供する。典型的に、組成物は、0.25重量%未満、特に約0.09重量%の核酸を含む。
【0021】
本発明は、S.aureus5型または8型莢膜多糖を含む組成物であって、a)ペプチドグリカン酸混入のレベルが5%未満(上記のとおり)であり、(b)タンパク質混入のレベルが5%未満(上記のとおり)であり、(c)核酸混入のレベルが1%未満(上記のとおり)である組成物も提供する。
【0022】
莢膜多糖
本発明は、S.aureus5型および8型の莢膜多糖に基づく。5型および8型莢膜多糖の構造は、参考文献19および20に:
5型
→4)−β−D−ManNAcA(3OAc)−(1→4)−α−L−FucNAc(1→3)−β−D−FucNAc−(1→
8型
→3)−β−D−ManNAcA(4OAc)−(1→3)−α−L−FucNAc(1→3)−β−D−FucNAc−(1→
のように記載された。
【0023】
最近のNMR分光法データ[21]は、これらの構造を:
5型
→4)−β−D−ManNAcA−(1→4)−α−L−FucNAc(3OAc)−(1→3)−β−D−FucNAc−(1→
8型
→3)−β−D−ManNAcA(4OAc)−(1→3)−α−L−FucNAc(1→3)−α−D−FucNAc(1→
のように改訂している。
【0024】
S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞から放出された後に、多糖は、天然で見出される莢膜多糖と比較して化学的に改変されることがある。例えば、多糖は、脱O−アセチル化(部分的または完全に)、脱N−アセチル化(部分的または完全に)、N−プロピオン化(N−propionated)(部分的または完全に)などされることがある。脱アセチル化は、その他の処理ステップの前、処理ステップ中または処理ステップの後に行ってもよいが、典型的に、任意のコンジュゲーションステップの前に行う。具体的な多糖に依存して、脱アセチル化は、免疫原性に影響することがあるかまたは影響しないことがあり、例えばNeisVac−C(商標)ワクチンは脱O−アセチル化多糖を用いる一方、Menjugate(商標)はアセチル化されているが、これらのワクチンはともに有効である。脱アセチル化などの効果は、日常的なアッセイにより評価できる。例えば、S.aureus5型または8型莢膜多糖に対するO−アセチル化に関して、参考文献6で議論される。天然の多糖は、この文書において75%がO−アセチル化されていると言われている。これらの多糖は、多糖主鎖およびO−アセチル基の両方に対する抗体を誘導した。0%のO−アセチル化を有する多糖は、多糖主鎖に対する抗体を依然として誘発した。両方のタイプの抗体は、それらのO−アセチル含量が変動しているS.aureus株に対してオプソニン性であった。したがって、本発明で用いる5型または8型莢膜多糖は、0から100%までの間のO−アセチル化を有してよい。例えば、5型莢膜多糖のO−アセチル化の程度は、10〜100%、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60%〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%または80〜90%であってよい。代わりに、0%O−アセチル化5型莢膜多糖を用いてよい。同様に、8型莢膜多糖のO−アセチル化の程度は、10〜100%、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60%〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%または80〜90%であってよい。代わりに、0%O−アセチル化8型莢膜多糖を用いてよい。一実施形態では、5型および8型莢膜多糖のO−アセチル化の程度は、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60%〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%または80〜90%であってよい。他の実施形態では、0%O−アセチル化5型および8型莢膜多糖が用いられる。本発明で用いる5型莢膜多糖のN−アセチル化の程度は、0〜100%、50〜100%、75〜100%、80〜100%、90〜100%または95〜100%であってよい。典型的に、5型莢膜多糖のN−アセチル化の程度は、100%である。同様に、本発明で用いる8型莢膜多糖のN−アセチル化の程度は、0〜100%、50〜100%、75〜100%、80〜100%、90〜100%または95〜100%であってよい。典型的に、8型莢膜多糖のN−アセチル化の程度は、100%である。一実施形態では、5型および8型莢膜多糖のN−アセチル化の程度は、0〜100%、50〜100%、75〜100%、80〜100%、90〜100%または95〜100%であってよい。典型的に、5型および8型莢膜多糖のN−アセチル化の程度は、100%である。
【0025】
多糖のO−アセチル化の程度は、当該技術において公知の任意の方法、例えばプロトンNMR(例えば参考文献22、23、24または25に記載されるとおり)により決定できる。さらなる方法は、参考文献26に記載されている。同様の方法を用いて、多糖のN−アセチル化の程度を決定してよい。O−アセチル基は、加水分解により、例えば、無水ヒドラジン[27]またはNaOH[6]のような塩基での処理により除去できる。同様の方法を用いて、N−アセチル基を除去してよい。5型および/または8型莢膜多糖上の高いレベルのO−アセチル化を維持するために、O−アセチル基の加水分解を導く処理、例えば極端なpHでの処理は最小限にする。
【0026】
出発物質
本発明のプロセスは、S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞を用いて開始する。典型的に、細胞は、発酵により成長した後に莢膜多糖を放出する。S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞を培養する適切な方法は、当業者に周知であり、例えば参考文献1〜21およびそこで引用される参考文献に開示される。細胞成長の後に、細胞は、通常、不活性化される。不活性化のための適切な方法は、例えば参考文献1に記載されるようなフェノール:エタノールでの処理である。
【0027】
細胞は、莢膜多糖の放出前に遠心分離してよい。プロセスは、よって、湿潤細胞ペーストの形の細胞を用いて開始してよい。典型的には、しかし、細胞は、プロセスの次のステップに適切な水性媒体、例えば緩衝液または蒸留水中に再懸濁される。細胞は、再懸濁の前にこの媒体で洗浄してよい。別の実施形態では、細胞は、それらの元の培養培地中に懸濁して処理してよい。代わりに、細胞は、乾燥された形で処理される。
【0028】
酸処理
本発明の方法では、S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞を酸で処理する。このステップは、細胞からの莢膜多糖の放出をもたらす。対照的に、以前の方法は、多糖を放出させるためにリソスタフィン処理またはオートクレーブ処理を用いていた。本発明の酸処理は、多糖に対する損傷を最小限にするために、穏やかな酸、例えば酢酸を用いて行うことが好ましい。当業者は、多糖の放出のための適切な酸および(例えば濃度、温度および/または時間の)条件を同定することが可能である。例えば、本発明者らは、蒸留水中に約0.5mg/mlにて懸濁された細胞を、1%酢酸(v/v)で100℃にて2時間処理することが適切であることを見出した。その他の酸、例えばトリフルオロ酢酸またはその他の有機酸での処理も適切であり得る。
【0029】
異なる酸処理の効力は、日常的な方法を用いて試験してよい。例えば、酸処理の後に、細胞を単離し、S.aureus5型または8型莢膜多糖放出の公知の方法(例えば参考文献1のリソスタフィンベースの方法)を用いて処理して、追加の莢膜多糖が放出され得るかを見ることができる。追加の莢膜多糖が放出されるならば、酸処理中により大きい割合の莢膜糖が放出されるように、酸処理条件を変更してよい。この方法で、最適量の莢膜糖が放出されるように酸処理条件を最適化することが可能である。例えば、本発明者らは、蒸留水中に約0.5mg/mlにて懸濁された細胞を1%酢酸(v/v)で100℃にて2時間処理した後に、その後のリソスタフィン処理によりほとんど追加の莢膜糖が細胞から放出され得ないことを見出した。
【0030】
本発明者らは、酸処理の後に、5型莢膜多糖のO−アセチル化の程度が、60%〜100%の間であり得ることを見出した。特に、O−アセチル化の程度は、65〜95%、特に70〜90%の間であり得る。典型的に、O−アセチル化の程度は、75〜85%の間、例えば約80%である。同様の値を8型莢膜糖について得ることができる。所望により、莢膜糖のO−アセチル化の程度は、上で論じたさらなる処理ステップにより、次いで、変更してよい。
【0031】
酸処理の後に、反応混合物は、典型的に中和される。このことは、塩基、例えばNaOHを加えることにより達成してよい。細胞は遠心分離し、多糖含有上清を、貯蔵および/または追加の処理のために回収してよい。
【0032】
酵素処理
酸処理の後に得られる多糖は、純粋でなく、細菌の核酸およびタンパク質が混入していることがある。これらの混入物は、酵素処理により除去できる。例えば、RNAはRNアーゼでの、DNAはDNアーゼでの、そしてタンパク質はプロテアーゼ(例えばプロナーゼ)での処理により除去できる。当業者は、混入物の除去のための適切な酵素および条件を同定することが可能である。例えば、本発明者らは、多糖含有上清を、各50μg/mlのDNアーゼおよびRNアーゼで、37℃にて6〜8時間処理することが適切であることを見出した。その他の適切な条件は、文献、例えば参考文献1に開示されている。
【0033】
酸処理の後に得られる多糖は、ペプチドグリカンもまたは代わりにペプチドグリカンが混入していることがある。この混入物も、酵素処理により除去できる。本発明者らは、ムタノリシンでの処理が、ペプチドグリカン混入を除去するのに有効であることを見出した。当業者は、ムタノリシンを用いてペプチドグリカンを除去するための適切な条件を同定することが可能である。例えば、本発明者らは、多糖含有上清を、各180U/mlのムタノリシンで、37℃にて16時間処理することが適切であることを見出した。処理の後に、懸濁物を遠心分離により清澄化し、多糖含有上清を、貯蔵および/または追加の処理のために回収してよい。
【0034】
ダイアフィルトレーション
本発明のプロセスは、ダイアフィルトレーションのステップを含んでよい。このステップは、典型的には、上で論じた酸処理および/または酵素処理の後に行われる。本発明者らは、特にタンジェンシャルフローろ過によるダイアフィルトレーションステップが、多糖から不純物を除去するために特に有効であることを見出した。不純物は、典型的には、テイコ酸および/またはペプチドグリカンの断片のような低分子量混入物である。タンジェンシャルフローろ過は、1M NaCl(例えば約10容量に対して)、および次いでNaPi 10mM pH7.2緩衝液(例えば別の10容量に対して)に対して適切に行われる。ろ過膜は、よって、莢膜多糖を保持しながら小分子量混入物の通過を可能にするものであるべきである。10kDa〜30kDaの範囲のカットオフが典型的である。本発明者らは、30kDaカットオフ膜を用いるタンジェンシャルフローろ過が、大規模プロセスのために特に適切であることを見出した。
【0035】
少なくとも5サイクル、例えば6、7、8、9、10、11またはそれより多いタンジェンシャルフローダイアフィルトレーションを、通常行う。
【0036】
ダイアフィルトレーションからの多糖含有保持液(retentate)を、貯蔵および/または追加の処理のために回収する。
【0037】
アニオン交換クロマトグラフィー
多糖は、アニオン交換クロマトグラフィーのステップによりさらに精製してよい。本発明者らは、アニオン交換クロマトグラフィーが、多糖の良好な収率を維持しながら残存タンパク質および核酸の混入を除去するのに特に有効であることを見出した。
【0038】
アニオン交換クロマトグラフィーステップは、上で論じた酸処理、酵素処理および/またはダイアフィルトレーションステップの後に行ってよい。
【0039】
アニオン交換クロマトグラフィーは、任意の適切なアニオン交換マトリクスを用いて行ってよい。一般的に用いられるアニオン交換マトリクスは、Q−樹脂(第4級アミンに基づく)およびDEAE樹脂(ジエチルアミノエタンに基づく)のような樹脂である。本発明者らは、DEAE樹脂(例えばDEAE−Sepharose(商標)Fast Flow樹脂(GE Healthcare))が特に適切であることを見出したが、その他の樹脂も用い得る。
【0040】
アニオン交換クロマトグラフィーのための適当な開始緩衝液および移動相緩衝液も、過度の負担なく日常的な実験により決定できる。アニオン交換クロマトグラフィーで用いるための典型的な緩衝液は、N−メチルピペラジン、ピペラジン、L−ヒスチジン、ビス−Tris、ビス−Trisプロパン、トリエタノールアミン、Tris、N−メチル−ジエタノールアミン、ジエタノールアミン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミン、ピペリジン、塩化ナトリウムおよびリン酸塩の緩衝液を含む。本発明者らは、リン酸塩緩衝液、例えばリン酸ナトリウム緩衝液が、アニオン交換クロマトグラフィーのための開始緩衝液として適切であることを見出した。緩衝液は、任意の適切な濃度であってよい。例えば、10mMリン酸ナトリウムが適切であると見出された。アニオン交換樹脂と結合する物質は、適切な緩衝液を用いて溶出できる。本発明者らは、NaCl 1Mの勾配が適切であることを見出した。
【0041】
多糖を含有する溶離液画分は、215nmにてUV吸収を測定することにより決定できる。多糖を含有する画分は、貯蔵および/または追加の処理のために回収され、通常一緒に併せられる。
【0042】
アニオン交換クロマトグラフィーステップは、例えば1、2、3、4または5回繰り返してよい。典型的に、アニオン交換クロマトグラフィーステップは、1回行われる。
【0043】
ゲルろ過
本発明のプロセスは、ゲルろ過の1またはそれより多いステップ(複数可)を含み得る。このゲルろ過は、特定の長さの多糖分子を選択し、特にタンパク質による混入をさらに低減するために用いる。しかし、本発明者らは、参考文献1〜9のもののような以前の方法とは対照的に、ゲルろ過ステップが、高純度の多糖を得るために要求されないことを見出した。したがって、このステップは、本発明のプロセスから省いてよい。このステップを省くことは、プロセスを単純化し、全体的な費用を低減するので、有利である。
【0044】
存在する場合、ゲルろ過ステップ(複数可)は、上で論じた酸処理、酵素処理、ダイアフィルトレーションおよび/またはアニオン交換クロマトグラフィーステップの後に行ってよい。典型的に、いずれのゲルろ過ステップ(複数可)も、上で論じたアニオン交換クロマトグラフィーステップの後に行う。
【0045】
ゲルろ過ステップ(複数可)は、任意の適切なゲルろ過マトリクスを用いて行ってよい。一般的に用いられるゲルろ過マトリクスは、デキストランゲル、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリアクリロイルモルホリンゲルおよびポリスチレンゲルなどに基づく。架橋デキストランゲルおよび混合ポリアクリルアミド/アガロースゲルも用いてよい。本発明者らは、デキストランゲル(例えばSephacryl(商標)S300ゲル(GE Healthcare))が特に適切であることを見出したが、その他のゲルも用い得る。
【0046】
ゲルろ過のための適当な移動相緩衝液は、過度の負担なく日常的な実験により決定できる。ゲルろ過で用いるための典型的な緩衝液は、N−メチルピペラジン、ピペラジン、L−ヒスチジン、ビス−Tris、ビス−Trisプロパン、トリエタノールアミン、Tris、N−メチル−ジエタノールアミン、ジエタノールアミン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミン、ピペリジン、塩化ナトリウムおよびリン酸塩の緩衝液を含む。例えば、塩化ナトリウム緩衝液が適切であり得る。緩衝液は、任意の適切な濃度であってよい。例えば50mM塩化ナトリウムを移動相のために用いてよい。
【0047】
多糖を含有する溶離液画分は、215nmにてUV吸収を測定することにより決定できる。多糖を含有する画分は、貯蔵および/または追加の処理のために回収され、通常一緒に併せられる。
【0048】
濃縮
ゲルろ過の1もしくは複数のステップ(複数可)に加えてまたはその代わりに、本発明のプロセスは、多糖を濃縮する1またはそれより多いステップを含んでよい。この濃縮は、以下に記載するような担体分子への多糖の任意の後続のコンジュゲーションのための正確な濃度の試料を得るために有用である。しかし、本発明者らは、この濃縮ステップが、高純度の多糖を得るために要求されないことを見出した。したがって、このステップは、本発明のプロセスから省いてよい。
【0049】
存在する場合、濃縮ステップ(複数可)は、上で論じた酸処理、酵素処理、ダイアフィルトレーション、アニオン交換クロマトグラフィーおよび/またはゲルろ過ステップの後に行ってよい。典型的に、いずれの濃縮ステップ(複数可)も、上で論じたアニオン交換クロマトグラフィーステップの後に行う。上で論じたゲルろ過ステップ(複数可)に加えて用いるならば、濃縮ステップ(複数可)は、上で論じたゲルろ過ステップ(複数可)の前または後に行ってよい。しかし、典型的には、濃縮ステップ(複数可)は、ゲルろ過ステップ(複数可)の代わりに用いる。
【0050】
濃縮ステップ(複数可)は、任意の適切な方法により行ってよい。例えば、本発明者らは、濃縮ステップ(複数可)が、上記のダイアフィルトレーションステップ(複数可)、例えば30kDaカットオフ膜を用いるタンジェンシャルフローろ過であってよいことを見出した。例えば、Hydrosart(商標)(Sartorius)30kDaカットオフ膜(200cm膜面積を有する)を用いてよい。
【0051】
濃縮多糖試料を、貯蔵および/または追加の処理のために回収する。
【0052】
莢膜多糖のさらなる処理
精製の後に、多糖は、混入物を除去するためにさらに処理してよい。これは、わずかな混入さえ許容できない(例えばヒトワクチン生成のため)状況において特に重要である。
【0053】
精製S.aureus5型または8型莢膜多糖の分子質量は、Polymer Standard Serviceから入手可能なもののような[28]プルラン標準物質に対するゲルろ過により測定できる。典型的に、精製多糖は、ある範囲内の値の質量を有する多糖の混合物である。5型莢膜多糖について、精製多糖の分子質量は、典型的に、2〜3500kDaの間、例えば10〜2000kDaの間、特に20〜1000kDaの間、より特に100〜600kDaの間である。同様に、8型莢膜多糖について、精製多糖の分子質量は、2〜3500kDaの間、例えば10〜2000kDaの間、特に20〜1000kDaの間、より特に100〜600kDaの間であってよい。
【0054】
精製多糖は、解重合してオリゴ糖を形成してよい。オリゴ糖は、ワクチンにおいて用いるために好ましいことがある。オリゴ糖への解重合は、上記の任意のステップの前または後に生じてよい。典型的に、解重合は、上記のアニオン交換クロマトグラフィーの後に起こる。多糖がこのクロマトグラフィーの後に濃縮されるならば、解重合は、典型的に、この濃縮の後に起こる。本発明の組成物が解重合された多糖を含む場合、解重合は、任意のコンジュゲーションに先行することが好ましい。
【0055】
全長多糖は、様々な方法により解重合して、本発明で用いるためのより短い断片を得てよい。好ましくは、参考文献29に記載される方法を用いる。代わりに、多糖の解重合のためのその他の方法を用いてよい。例えば、多糖を加熱するかまたは顕微溶液化(microfluidisation)[30]もしくは音波照射(sonic radiation)[3]に供してよい。代わりに、酸化−還元[31]またはオゾン分解[32]による解重合を用いてよい。
【0056】
オリゴ糖は、クロマトグラフィー、例えばサイズ排除クロマトグラフィーにより同定できる。生成物を、長さが短いオリゴ糖を除去するために分類(size)してよい。このことは、ゲルろ過のような様々な方法で達成できる。比分子質量(specific molecular mass)は、Polymer Standard Serviceから入手可能なもののような[33]プルラン標準物質に対するゲルろ過により測定できる。
【0057】
天然莢膜多糖中のN−アセチル基が脱N−アセチル化されているならば、本発明のプロセスは、再N−アセチル化のステップを含んでよい。制御された再N−アセチル化は、例えば5%重炭酸アンモニウム中の無水酢酸(CHCO)Oのような試薬を用いて簡便に行うことができる[34]。
【0058】
さらなる回のろ過、例えば滅菌ろ過も行うことができる。
【0059】
これらの追加のステップは、一般的に、室温で行うことができる。
【0060】
貯蔵
S.aureus5型または8型莢膜多糖調製物は、精製プロセス中の任意の段階での貯蔵のために、例えば真空下での凍結乾燥または溶液中での凍結(例えば、含まれるならば最終濃縮ステップからの溶離液として)により凍結乾燥してよい。したがって、調製物は、プロセスのあるステップから別のステップへすぐに移す必要がない。例えば、多糖調製物をダイアフィルトレーションにより精製する場合、これは、この精製の前に凍結乾燥または溶液中で凍結させてよい。同様に、多糖は、アニオン交換クロマトグラフィーステップの前に凍結乾燥または溶液中で凍結させてよい。多糖調製物がゲルろ過により精製されるならば、これは、このステップの前に凍結乾燥または溶液中で凍結させてよい。同様に、多糖調製物が濃縮されるならば、これは、このステップの前に凍結乾燥または溶液中で凍結させてよい。凍結乾燥調製物は、適当な溶液中で、さらなる処理の前に再構成される。同様に、凍結溶液は、さらなる処理の前に解凍される。
【0061】
本発明のプロセスにより得られる精製多糖は、任意の適切な方法で貯蔵のために処理してよい。例えば、多糖は、上記のように凍結乾燥してよい。代わりに、多糖は、水溶液中で、典型的には低温、例えば−20℃にて貯蔵してよい。簡便には、多糖は、アニオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過または濃縮ステップからの溶離液として貯蔵してよい。
【0062】
コンジュゲーション
本発明の最終的な精製莢膜多糖は、さらなる改変なしで、例えばin vitro診断アッセイで用いるため、免疫化で用いるためなどの抗原として用いることができる。
【0063】
免疫化の目的のために、しかし、多糖を、タンパク質のような担体分子にコンジュゲートすることが好ましい。一般的に、担体に多糖を共有結合的にコンジュゲーションすることは、多糖の免疫原性を増進する。なぜなら、このことにより、多糖がT非依存性抗原からT依存性抗原に変換し、よって、免疫学的な記憶のために初回刺激(priming)することが可能になるからである。コンジュゲーションは、小児科ワクチン[例えばref.35]のために特に有用であり、周知の技術である[例えばref.36〜44において概説されている]。よって、本発明のプロセスは、精製多糖を担体分子にコンジュゲートするさらなるステップを含み得る。
【0064】
S.aureus5型および8型莢膜多糖のコンジュゲーションは、広く報告されており、例えば参考文献1〜9を参照されたい。コンジュゲーションのための文献で用いられている典型的なプロセスは、シスタミンを用いる精製多糖のチオール化を含む。この反応は、莢膜多糖中のカルボキシレート基の存在に依存する。これらの基は、シスタミンと、カルボジイミド、例えばEDACの存在下で反応する。誘導体化された多糖は、次いで、Pseudomononas aeruginosa内毒素A(ETA)のような担体タンパク質に、典型的にはリンカーを介してコンジュゲートする[2]。この様式で調製されるコンジュゲートワクチンは、ヒトにおいて安全で免疫原性であることが示されている[5]。他の研究者らは、還元的アミノ化[45および12];グルタルアルデヒド(glutaradehyde)カップリング[45];または多糖上のヒドロキシル基とCDAP[46]もしくは三塩化シアヌル[11]のようなシアニル化剤との反応による精製5型および8型莢膜多糖のコンジュゲーションを行った。好ましくは、参考文献29に記載されるプロセスを用いる。
【0065】
好ましい担体タンパク質は、ジフテリアもしくは破傷風毒素のような細菌毒素、またはそのトキソイドもしくは変異体である。本発明者らは、CRM197ジフテリア毒素変異体[47]が適切であることを見出した。Pseudomonas aeruginosa外毒素A(ETA)およびその非毒性変異体組換えエキソタンパク質A(rEPA)は、S.aureus5型または8型莢膜多糖のための担体タンパク質として用いられている([1]および[2])。S.aureusα−ヘモリシン(α−毒素)([45]および[48])、オボアルブミン[11]およびヒト血清アルブミン[12]も用いられている。これらの担体は、本発明で用いてよい。
【0066】
その他の適切な担体タンパク質は、N.meningitidis外膜タンパク質複合体[49]、合成ペプチド[50、51]、熱ショックタンパク質[52、53]、百日咳タンパク質[54、55]、サイトカイン[56]、リンホカイン[56]、ホルモン[56]、増殖因子[56]、ヒト血清アルブミン(典型的には組換え)、N19[58]などのような様々な病原体由来抗原からの複数のヒトCD4T細胞エピトープを含む人工タンパク質[57]、H.influenzaeからのタンパク質D[59〜61]、肺炎球菌表面タンパク質PspA[62]、ニューモリシン[63]もしくはその非毒性誘導体[64]、鉄取り込みタンパク質[65]、C.difficileからの毒素AもしくはB[66]、GBSタンパク質[67]、GASタンパク質[68]を含む。
【0067】
その他の適切な担体タンパク質は、S.aureusタンパク質抗原、例えば以下に示すS.aureusタンパク質抗原を含む。
【0068】
担体との付着は、好ましくは、例えば担体タンパク質のリシン残基またはアルギニン残基の側鎖中の−NH基を介する。付着は、例えばシステイン残基の側鎖中の−SH基を介してもよい。
【0069】
例えば担体抑制(carrier suppression)の危険性を低減するために、1より多い担体タンパク質を用いることができる。つまり、異なる担体タンパク質を、5型および8型莢膜多糖のために用いることができ、例えば5型多糖をCRM197にコンジュゲートし、8型多糖をrEPAにコンジュゲートする。特定の多糖抗原について1より多い担体タンパク質を用いることもでき、例えば5型多糖が2つの群にあり、一方の群がCRM197にコンジュゲートし、他方がrEPAにコンジュゲートする。典型的には、しかし、同じ担体タンパク質を全ての多糖について用いる。
【0070】
単一の担体タンパク質は、1より多い多糖抗原を持つことがある[69、70]。例えば単一の担体タンパク質は、5型および8型莢膜多糖にコンジュゲートされることがある。この目的を達成するために、異なる多糖を、コンジュゲーションプロセスの前に混合できる。典型的には、しかし、各多糖について別々のコンジュゲートがあり、異なる多糖はコンジュゲーションの後に混合される。別々のコンジュゲートは、同じ担体に基づいてよい。
【0071】
1:20(すなわち過剰のタンパク質)から20:1(すなわち過剰の多糖)までの間の多糖:タンパク質の比(w/w)を有するコンジュゲートを、典型的に用いる。1:10〜1:1の比、特に1:5から1:2までの間の比が好ましく、最も好ましくは約1:3である。対照的に、文献において用いられる5型および8型莢膜多糖コンジュゲートは、より高い比、例えば参考文献1、2および3における0.73から1.08までの間を有する傾向にある。本発明の特定の実施形態では、5型莢膜多糖コンジュゲートについての多糖:タンパク質の比(w/w)は、1:10から1:2までの間であり、かつ/または8型莢膜多糖コンジュゲートについての多糖:タンパク質の比(w/w)は、1:5から7:10までの間である。
【0072】
コンジュゲートは、遊離担体とともに用いてよい[71]。所定の担体タンパク質が、本発明の組成物において遊離およびコンジュゲートの形の両方で存在する場合、コンジュゲートしていない形は、好ましくは、組成物における全体としての担体タンパク質の合計量の5%以下であり、より好ましくは2重量%未満で存在する。
【0073】
コンジュゲーションの後に、遊離多糖とコンジュゲート多糖とを分離できる。疎水性クロマトグラフィー、タンジェンシャル限外ろ過、ダイアフィルトレーションなどを含む多くの適切な方法がある[ref.72および73なども参照されたい]。
【0074】
コンジュゲートとその他の抗原との組み合わせ
本発明の方法により調製された多糖(特に上記のコンジュゲーションの後)は、例えば互いにおよび/またはその他の抗原と混合できる。よって、本発明のプロセスは、多糖を、1またはそれより多いさらなる抗原と混合するさらなるステップを含み得る。本発明は、よって、本発明の方法により調製された多糖と、1またはそれより多いさらなる抗原とを含む組成物を提供する。組成物は、典型的に、免疫原性組成物である。
【0075】
さらなる抗原(複数可)は、本発明の方法により調製されたさらなる多糖を含んでよく、よって、本発明は、本発明の1より多い多糖を含む組成物を提供する。特に、本発明は、本発明の5型莢膜多糖と、本発明の8型莢膜多糖とを含む組成物を提供する。代わりに、さらなる抗原(複数可)は、本発明のもの以外の方法、例えば上記の参考文献1〜18の方法により調製された5型または8型莢膜多糖であってよい。したがって、本発明は、5型莢膜多糖と8型莢膜多糖とを含む組成物であって、多糖の一方(5型多糖または8型多糖)が本発明の多糖であり、他方の多糖が本発明の多糖でない組成物を提供する。
【0076】
複数の異なるS.aureusコンジュゲートを混合する場合、これらは、同じS.aureus血清型からの異なるタイプのコンジュゲートおよび/または異なるS.aureus血清型からのコンジュゲートを含み得る。例えば、コンジュゲートは、S.aureus5型および8型からであってよい。組成物は、別々のコンジュゲートを調製し(例えば各血清型について異なるコンジュゲート)、次いで、コンジュゲートを組み合わせることにより生成される。
【0077】
さらなる抗原(複数可)は、以下に示す糖およびタンパク質抗原を含むその他のS.aureus抗原を含んでよい。
【0078】
さらなる抗原(複数可)は、非S.aureus病原体からの抗原を含んでよい。よって、本発明の組成物は、追加の細菌抗原、ウイルス抗原もしくは寄生生物抗原を含む1またはそれより多い非S.aureus抗原をさらに含んでよい。これらは、以下から選択してよい:
− ref.74〜80におけるもののようなN.meningitidis血清群Bからのタンパク質抗原、タンパク質「287」(以下を参照されたい)および誘導体(例えば「ΔG287」)が特に好ましい。
− ref.81、82、83、84などに開示されるもののようなN.meningitidis血清群Bからの外膜小胞(OMV)調製物。
− 血清群Cからのref.85に開示されるオリゴ糖またはref.86のオリゴ糖のようなN.meningitidis血清群A、C、W135および/またはYからの糖抗原。
− Streptococcus pneumoniaeからの糖抗原[例えばref.87〜89;ref.96の第22および23章]。
− 不活化ウイルス[例えば90、91;ref.96の第15章]のようなA型肝炎ウイルスからの抗原。
− 表面および/またはコア抗原[例えば91、92;ref.96の第16章]のようなB型肝炎ウイルスからの抗原。
− C型肝炎ウイルスからの抗原[例えば93]。
− パータクチンならびに/または凝集原2および3とも場合によって組み合わされた[例えばref.94および95;ref.96の第21章]B.pertussisからの百日咳ホロ毒素(PT)および繊維状ヘマグルチニン(FHA)のようなBordetella pertussisからの抗原。
− ジフテリアトキソイド[例えばref.96の第13章]のようなジフテリア抗原。
− 破傷風トキソイド[例えばref.96の第27章]のような破傷風抗原。
− Haemophilus influenzae Bからの糖抗原[例えばref.96の第14章]。
− N.gonorrhoeaeからの抗原[例えば74、75、76]。
− Chlamydia pneumoniaeからの抗原[例えば97、98、99、100、101、102、103]。
− Chlamydia trachomatisからの抗原[例えば104]。
− Porphyromonas gingivalisからの抗原[例えば105]。
− IPVのようなポリオ抗原(複数可)[例えば106、107;ref.96の第24章]。
− 凍結乾燥不活化ウイルス[例えば109、RabAvert(商標)]のような狂犬病抗原(複数可)[例えば108]。
− 麻疹、耳下腺炎および/または風疹抗原[例えばref.96の第19、20および26章]。
− ヘマグルチニンおよび/またはノイラミニダーゼ表面タンパク質のようなインフルエンザ抗原(複数可)[例えばref.96の第17および18章]。
− Moraxella catarrhalisからの抗原[例えば110]。
− Streptococcus pyogenes(A群連鎖球菌)からの抗原[例えば111、112、113]。
− Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)からの抗原[例えば68、114〜116]。
− S.epidermidisからの抗原[例えばref.117、118および119に記載されるようなATCC−31432株、SE−360株およびSE−10株から得ることができるI、IIおよび/またはIII型莢膜多糖]。
【0079】
糖または炭水化物抗原を用いる場合、これは、免疫原性を増進するために、担体にコンジュゲートするのが好ましい。H.influenzae B、髄膜炎菌および肺炎球菌の糖抗原のコンジュゲーションは、周知である。
【0080】
毒性タンパク質抗原は、必要であれば解毒化してよい(例えば、化学的および/または遺伝子的手段による百日咳毒素の解毒化[95])。
【0081】
ジフテリア抗原が組成物に含まれる場合、破傷風抗原および百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、破傷風抗原が含まれる場合、ジフテリアおよび百日咳抗原も含むことが好ましい。同様に、百日咳抗原が含まれる場合、ジフテリアおよび破傷風抗原も含むことが好ましい。
【0082】
抗原は、アルミニウム塩に吸着されてよい。
【0083】
1つのタイプの好ましい組成物は、免疫無防備状態に影響するさらなる抗原を含み、よって、本発明のS.aureus多糖は、以下の非S.aureus病原体からの1またはそれより多い抗原と組み合わせることができる:Steptococcus agalactiae、Staphylococcus epidermis、インフルエンザウイルス、Enterococcus faecalis、Pseudomonas aeruginosa、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、Neisseria meningitidisおよびパラインフルエンザウイルス。
【0084】
別のタイプの好ましい組成物は、院内感染と関連する細菌からのさらなる抗原を含み、よって、本発明のS.aureus多糖は、以下の非S.aureus病原体からの1またはそれより多い抗原と組み合わせることができる:Clostridium difficile、Pseudomonas aeruginosa、Candida albicansおよび腸外病原性Escherichia coli。
【0085】
組成物中の抗原は、典型的に、それぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在する。一般的に、任意の所定の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘発するのに十分である。
【0086】
本発明の組成物においてタンパク質抗原を用いる代わりに、抗原をコードする核酸を用いてよい[例えばref.120〜128]。本発明の組成物のタンパク質成分は、よって、タンパク質をコードする核酸(好ましくは例えばプラスミドの形のDNA)により置き換えることができる。
【0087】
実際上の状況では、本発明の組成物に含まれる抗原の数に上限があることがある。本発明の組成物中の抗原の数(S.aureus抗原を含む)は、20未満、19未満、18未満、17未満、16未満、15未満、14未満、13未満、12未満、11未満、10未満、9未満、8未満、7未満、6未満、5未満、4未満または3未満であり得る。本発明の組成物中のS.aureus抗原の数は、6未満、5未満または4未満であり得る。
【0088】
薬学的組成物および方法
本発明は、(a)本発明の多糖(場合によってコンジュゲートの形)を(b)薬学的に許容される担体と混合するステップを含む、薬学的組成物を調製するためのプロセスを提供する。典型的な「薬学的に許容される担体」は、それ自体が、組成物を受容する個体に有害な抗体の生成を誘導しない任意の担体を含む。適切な担体は、典型的に、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、ラクトースおよび脂質凝集体(例えば油滴またはリポソーム)のような大きく、緩慢に代謝される高分子である。このような担体は、当業者に周知である。ワクチンは、水、食塩水、グリセロールなどのような希釈剤も含有してよい。さらに、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝物質などのような補助物質が存在してよい。発熱物質を含まない滅菌リン酸塩緩衝生理食塩水が典型的な担体である。薬学的に許容される賦形剤についての詳細な議論は、参考文献129で入手可能である。
【0089】
本発明の組成物は、水性の形(すなわち溶液または懸濁液)または乾燥された形(例えば凍結乾燥された)であってよい。乾燥ワクチンを用いるならば、これは、注射の前に液体媒体中で再構成される。コンジュゲートワクチンの凍結乾燥は、当該技術において公知であり、例えばMenjugate(商標)製品は凍結乾燥された形であり、NeisVac−C(商標)およびMeningitec(商標)は、水性の形で提示される。凍結乾燥中にコンジュゲートを安定化するために、組成物中に糖アルコール(例えばマンニトール)または二糖(例えばスクロースまたはトレハロース)を、例えば1mg/mlから30mg/mlまでの間で(例えば約25mg/ml)含むことが典型的であることがある。
【0090】
薬学的組成物は、バイアルまたはシリンジに包装してよい。シリンジは、針とともにまたは針なしで供給してよい。シリンジは、組成物の単回用量を含むが、バイアルは単回用量または複数回用量を含み得る。
【0091】
本発明の多糖の水性組成物は、凍結乾燥された形からの他のワクチンを再構成するために適切である。本発明の組成物をこのような即時再構成のために用いる場合、本発明は、凍結乾燥された物質を本発明の水性組成物と混合するステップを含む、このような凍結乾燥されたワクチンを再構成するためのプロセスを提供する。再構成された物質は、注射のために用いることができる。
【0092】
S.aureus抗原
上記のように、1またはそれより多いさらなるS.aureus抗原を、本発明の組成物に含めることができる。抗原は、タンパク質または糖抗原であってよい。S.aureusタンパク質抗原は、本発明のコンジュゲートのための担体タンパク質、他のコンジュゲートのための担体タンパク質、またはコンジュゲートしていないタンパク質抗原として用いてよい。S.aureus糖抗原は、他のコンジュゲートのための糖として、またはコンジュゲートしていない糖抗原として用いてよい。
【0093】
適切なS.aureus糖抗原は、ポリ−N−アセチルグルコサミン(PNAG)であるS.aureusの菌体外多糖(exopolysaccharide)を含む。この多糖は、S.aureusおよびS.epidermidisの両方に存在し、いずれの供給源からでも単離できる[130、131]。例えば、PNAGは、S.aureus MN8m株から単離できる[132]。糖抗原は、細菌からの菌体外多糖の精製中に現れるサイズを有する多糖であってよいか、またはこれは、このような多糖の断片化により達成される多糖であってよく、例えばサイズは400kDaを超えるものから、75から400kDaまでの間または10から75kDaまでの間または30反復単位まで変動し得る。糖抗原は、様々なN−アセチル化の程度を有することができ、参考文献133に記載されるように、PNAGは、40%より少なくN−アセチル化されていることがある(例えば35、30、20、15、10または5%未満のN−アセチル化;脱アセチル化PNAGは、dPNAGとしても公知である)。PNAGの脱アセチル化されたエピトープは、オプソニン性の殺傷を媒介できる抗体を誘発できる。dPNAGの調製は、参考文献134に記載されている。PNAGは、O−スクシニル化されていることがあるかまたはされていないことがあり、例えば、これは、25、20、15、10、5、2、1または0.1%未満の残基でO−スクシニル化されてよい。PNAGは、上記の担体分子にコンジュゲートしているか、または代わりにコンジュゲートしていないことがある。
【0094】
別の適切なS.aureus糖抗原は、336型抗原であり、これは、O−アセチル化がないβ−連結ヘキソサミンである[135、136]。336型抗原は、336株(ATCC55804)に対して産生された抗体と交差反応性である。336型抗原は、上記の担体分子にコンジュゲートしているか、または代わりにコンジュゲートしていないことがある。
【0095】
適切なS.aureusタンパク質抗原は、以下のS.aureus抗原(またはその免疫原性断片(複数可)を含む抗原)を含む[例えば参考文献137〜144を参照されたい]:AhpC、AhpF、自己溶解素アミダーゼ、自己溶解素グルコサミニダーゼ、コラーゲン結合タンパク質CAN、EbhB、GehDリパーゼ、ヘパリン結合タンパク質HBP(17kDa)、ラミニン受容体、MAP、MntC(SitCとしても公知)、MRPII、Npase、ORF0594、ORF0657n、ORF0826、PBP4、RAP(RNAIII活性化タンパク質)、Sai−1、SasK、SBI、SdrG、SdrH、SSP−1、SSP−2およびビトロネクチン結合タンパク質。
【0096】
さらに適切なS.aureusタンパク質抗原は、以下に記載するようなclfA抗原;clfB抗原;sdrE2抗原;sdrC抗原;sasF抗原、emp抗原;sdrD抗原;spa抗原;esaC抗原;esxA抗原;esxB抗原;sta006抗原;isdC抗原;Hla抗原;sta011抗原;isdA抗原;isdB抗原;およびsta073抗原を含む。これらの抗原の1または複数(すなわち1、2、3、4、5、6またはそれより多い)が、本発明の組成物に存在してよい。これらの抗原のうち、esxA抗原;esxB抗原;sta006抗原;Hla抗原;sta011抗原;および/またはsta073抗原の1または複数(すなわち1、2、3、4、5、6またはそれより多い)の使用が特に構想される。
【0097】
例えば、本発明の組成物は、S.aureusタンパク質抗原の以下の組み合わせの1つを含んでよい:
(1)esxA抗原、esxB抗原、sta006抗原およびHla抗原。esxAおよびesxB抗原は、以下で論じるハイブリッドポリペプチド、例えばesxB抗原がesxA抗原の下流にあるEsxABハイブリッドとして有用に組み合わせることができる。Hla抗原は、例えばH35L変異を含む解毒化変異体であってよい。
(2)esxA抗原、esxB抗原、sta006抗原およびsta011抗原。esxAおよびesxB抗原は、以下で論じるハイブリッドポリペプチド、例えばEsxABハイブリッドとして組み合わせてよい。
(3)esxA抗原、esxB抗原およびsta011抗原。esxAおよびesxB抗原は、以下で論じるハイブリッドポリペプチド、例えばEsxABハイブリッドとして有用に組み合わせることができる。
(4)esxA抗原、esxB抗原、Hla抗原、sta006抗原およびsta011抗原。esxAおよびesxB抗原は、以下で論じるハイブリッドポリペプチド、例えばEsxABハイブリッドとして組み合わせてよい。Hla抗原は、例えばH35L変異を含む解毒化変異体であってよい。
(5)esxA抗原、esxB抗原およびHla抗原。esxAおよびesxB抗原は、以下で論じるハイブリッドポリペプチド、例えばEsxABハイブリッドとして有用に組み合わせることができる。Hla抗原は、例えばH35L変異を含む解毒化変異体であってよい。
(6)Hla抗原、sta006抗原およびsta011抗原。Hla抗原は、例えばH35L変異を含む解毒化変異体であってよい。
(7)esxA抗原およびesxB抗原。esxAおよびesxB抗原は、以下で論じるハイブリッドポリペプチド、例えばEsxABハイブリッドとして有用に組み合わせることができる。
(8)esxA抗原、esxB抗原およびsta006抗原。esxAおよびesxB抗原は、以下で論じるハイブリッドポリペプチド、例えばEsxABハイブリッドとして有用に組み合わせることができる。
(9)esxA抗原、esxB抗原、sta011抗原およびsta073抗原。esxAおよびesxB抗原は、以下で論じるハイブリッドポリペプチド、例えばEsxABハイブリッドとして組み合わせてよい。
(10)sta006抗原およびsta011抗原。
【0098】
さらなるStaphylococcus aureus抗原は、参考文献145に開示されている。
【0099】
clfA
「clfA」抗原は、「凝集因子(clumping factor)A」と注釈されている。NCTC8325株では、clfAはSAOUHSC_00812であり、配列番号1のアミノ酸配列(GI:88194572)を有する。Newman株では、これはnwmn_0756(GI:151220968)である。
【0100】
有用なclfA抗原は、配列番号1を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号1と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号1の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのclfAタンパク質は、配列番号1の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号1からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号1のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号1の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号1の最後の368のC末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号1の最初の39のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。
【0101】
配列番号2は、配列番号1の有用な断片である(「ClfA40−559」)。この断片は、配列番号1のC末端に向かう長い反復領域が省かれる。
【0102】
clfB
「clfB」抗原は、「凝集因子B」と注釈されている。NCTC8325株では、clfBはSAOUHSC_02963であり、配列番号3のアミノ酸配列(GI:88196585)を有する。Newman株では、これはnwmn_2529(GI:151222741)である。
【0103】
有用なclfB抗原は、配列番号3を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号3と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号3の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのclfBタンパク質は、配列番号3の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号3からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号3のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号3の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号3の最後の40のC末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号3の最初の44のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。ClfBは、天然で、長いタンパク質であるので、断片の使用が、例えば精製、取り扱い、融合、発現などのために助けとなる。
【0104】
配列番号4は、配列番号3の有用な断片である(「ClfB45−552」)。この断片は、ClfBの最も曝露されるドメインを含み、工業的な規模でより容易に用いられる。これは、ヒトタンパク質との抗原の類似性も低減する。ClfBの3ドメインモデルに基づくその他の有用な断片は、ClfB45−360(CLfB−N12としても公知;配列番号5);ClfB212−542(CLfB−N23としても公知;配列番号6);およびClfB360−542(CLfB−N3としても公知;配列番号7)を含む。
【0105】
sdrE2
「sdrE2」抗原は、「Ser−Aspリッチフィブリノゲン/骨シアロタンパク質結合タンパク質SdrE」と注釈されている。Newman株では、sdrE2はNWMN_0525であり、配列番号8のアミノ酸配列(GI:151220737)を有する。
【0106】
有用なsdrE2抗原は、配列番号8を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号8と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号8の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのsdrE2タンパク質は、配列番号8の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号8からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号8のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号8の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号8の最後の38のC末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号8の最初の52のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。sdrE2は、天然で、長いタンパク質であるので、断片の使用が、例えば精製、取り扱い、融合、発現などのために大いに助けとなる。
【0107】
配列番号9は、配列番号8の有用な断片である(「SdrE53−632」)。この断片は、SdrE2の最も曝露されるドメインを含み、工業的な規模でより容易に用いられる。これは、ヒトタンパク質との抗原の類似性も低減する。
【0108】
sdrC
「sdrC」抗原は、「sdrCタンパク質」と注釈されている。NCTC8325株では、sdrCはSAOUHSC_00544であり、配列番号10のアミノ酸配列(GI:88194324)を有する。
【0109】
有用なsdrC抗原は、配列番号10を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号10と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号10の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのsdrCタンパク質は、配列番号10の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号10からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号10のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号10の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号10の最後の38のC末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号10の最初の50のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。sdrCは、天然で、長いタンパク質であるので、断片の使用が、例えば精製、取り扱い、融合、発現などのために助けとなる。
【0110】
配列番号11は、配列番号10の有用な断片である(「SdrC51−518」)。この断片は、SdrCの最も曝露されるドメインを含み、工業的な規模でより容易に用いられる。これは、ヒトタンパク質との抗原の類似性も低減する。
【0111】
sasF
「sasF」抗原は、「sasFタンパク質」と注釈されている。NCTC8325株では、sasFはSAOUHSC_02982であり、配列番号12のアミノ酸配列(GI:88196601)を有する。
【0112】
有用なsasF抗原は、配列番号12を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号12と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号12の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのsasFタンパク質は、配列番号12の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号12からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号12のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号12の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号12の最後の39のC末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号12の最初の37のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。
【0113】
emp
「emp」抗原は、「細胞外基質および血漿結合タンパク質」と注釈されている。NCTC8325株では、empはSAOUHSC_00816であり、配列番号13のアミノ酸配列(GI:88194575)を有する。Newman株では、これはnwmn_0758(GI:151220970)である。
【0114】
有用なemp抗原は、配列番号13を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号13と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号13の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのempタンパク質は、配列番号13の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号13からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号13のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号13の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号13の最初の26のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。
【0115】
配列番号14、15、16および17は、配列番号13の有用な断片である(それぞれ、「Emp35−340」、「Emp27−334」、「Emp35−334」および「Emp27−147」)。
【0116】
sdrD
「sdrD」抗原は、「sdrDタンパク質」と注釈されている。NCTC8325株では、sdrDはSAOUHSC_00545であり、配列番号18のアミノ酸配列(GI:88194325)を有する。
【0117】
有用なsdrD抗原は、配列番号18を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号18と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号18の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのsdrDタンパク質は、配列番号18の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号18からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号18のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号18の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号18の最後の38のC末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号18の最初の52のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。sdrDは、天然で、長いタンパク質であるので、断片の使用が、例えば精製、取り扱い、融合、発現などのために大いに助けとなる。
【0118】
配列番号19は、配列番号18の有用な断片である(「SdrD53−592」)。この断片は、SdrDの最も曝露されるドメインを含み、工業的な規模でより容易に用いられる。これは、ヒトタンパク質との抗原の類似性も低減する。同じC末端残基を有する別の有用な断片は、SdrD394−592(SdrD−N3としても公知;配列番号20)である。
【0119】
spa
「spa」抗原は、「プロテインA」または「SpA」と注釈されている。NCTC8325株では、spaはSAOUHSC_00069であり、配列番号21のアミノ酸配列(GI:88193885)を有する。Newman株では、これはnwmn_0055(GI:151220267)である。全てのS.aureus株は、その細胞壁に繋留された表面タンパク質生成物がE、D、A、BおよびCとよばれる5つの高度に相同性の免疫グロブリン結合ドメインを有する[146]、詳細に特徴づけられた毒性因子(virulence factor)であるspaについての構造遺伝子を発現する。これらのドメインは、アミノ酸レベルで約80%の同一性を示し、56〜61残基の長さであり、タンデムリピートとして組織化されている[147]。SpAは、N末端シグナルペプチドとC末端局在化シグナル(sorting signal)とを有する前駆体タンパク質として合成される[148、149]。細胞壁に繋留されたspaは、ブドウ球菌表面上で非常に豊富に提示される[150、151]。その免疫グロブリン結合ドメインのそれぞれは、3ヘリックスの束に組み立てられる逆平行α−ヘリックスで構成され、免疫グロブリンG(IgG)のFcドメイン[152、153]、IgMのVH3重鎖(Fab)(すなわちB細胞受容体)[154]、そのA1ドメインにてフォンウィルブランド因子[155]および/または気道上皮の表面上に提示されるTNF−α受容体I(TNFRI)[156]と結合できる。
【0120】
有用なspa抗原は、配列番号21を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号21と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号21の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのspaタンパク質は、配列番号21の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号21からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号21のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号21の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号21の最後の35のC末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号21の最初の36のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。参考文献157は、個別のIgG結合ドメインが、単独または組み合わせて有用な免疫原である可能性があることを示唆している。
【0121】
配列番号22は、配列番号21の有用な断片である(「Spa37−325」)。この断片は、5つのSpA Ig結合ドメイン全てを含有し、SpAの最も曝露されるドメインを含む。これは、ヒトタンパク質との抗原の類似性も低減する。その他の有用な断片は、天然のA、B、C、Dおよび/またはEドメインの1、2、3または4つを省いてよい。参考文献157に報告されるように、その他の有用な断片は、天然のA、B、C、Dおよび/またはEドメインの1、2、3または4つだけを含んでよく、例えばSpA(A)ドメインのみを含むがB〜Eを含まないか、またはSpA(D)ドメインのみを含むがAもBもCもEも含まないなどである。よって、本発明で有用なspa抗原は、1、2、3、4または5つのIgG結合ドメインを含み得るが、理想的には4つ以下を有する。抗原が、spaドメインのうち1つの型のみ(例えばSpa(A)またはSpA(D)ドメインだけ)を含むならば、これは、このドメインの1より多いコピー、例えば単一ポリペプチド鎖中に複数のSpA(D)ドメインを含んでよい。抗原内の個別のドメインは、配列番号21に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多いアミノ酸にて変異され得る(例えば、ドメインDの残基3および/または24、ドメインAの残基46および/または53などでの変異を開示する参考文献157を参照されたい)。このような変異体は、配列番号21を認識する抗体を誘発する抗原の能力を除去すべきではないが、IgGとの抗原の結合を除去し得る。いくつかの態様では、spa抗原は、(a)IgG Fcとの結合を破壊するかもしくは減少させる、SpAドメインA、B、C、Dおよび/またはEのIgG Fc結合サブドメインにおける1またはそれより多いアミノ酸置換と、(b)V3との結合を破壊するかもしくは減少させる、SpAドメインA、B、C、Dおよび/またはEのV3結合サブドメインにおける1またはそれより多いアミノ酸置換とでの置換を含む。いくつかの実施形態では、改変体SpAは、少なくともまたは多くて1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多い改変体SpAドメインDペプチドを含む。
【0122】
esaC
「esaC」抗原は、「esaC」と注釈されている。NCTC8325株では、esaCはSAOUHSC_00264であり、配列番号23のアミノ酸配列(GI:88194069)を有する。
【0123】
有用なesaC抗原は、配列番号23を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号23と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号23の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのesaCタンパク質は、配列番号23の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号23からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号23のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号23の少なくとも1つのエピトープを保持している。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。
【0124】
esxA
「esxA」抗原は、「タンパク質」と注釈されている。NCTC8325株では、esxAはSAOUHSC_00257であり、配列番号24のアミノ酸配列(GI:88194063)を有する。
【0125】
有用なesxA抗原は、配列番号24を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号24と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号24の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのesxAタンパク質は、配列番号24の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号24からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号24のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号24の少なくとも1つのエピトープを保持している。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。
【0126】
esxB
「esxB」抗原は、「esxB」と注釈されている。NCTC8325株では、esxBはSAOUHSC_00265であり、配列番号25のアミノ酸配列(GI:88194070)を有する。
【0127】
有用なesxB抗原は、配列番号25を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号25と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号25の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのesxBタンパク質は、配列番号25の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号25からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号25のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号25の少なくとも1つのエピトープを保持している。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。
【0128】
sta006
「sta006」抗原は、「フェリクローム結合タンパク質」と注釈され、文献中で「FhuD2」ともよばれている[158]。NCTC8325株では、sta006はSAOUHSC_02554であり、配列番号26のアミノ酸配列(GI:88196199)を有する。Newman株では、これはnwmn_2185(GI:151222397)である。
【0129】
有用なsta006抗原は、配列番号26を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号26と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号26の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのsta006タンパク質は、配列番号26の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号26からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号26のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号26の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号26の最初の17のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。sta006の変異体形態は、参考文献159で報告されている。sta006抗原は、例えばアシル化N末端システインで脂質化されてよい。
【0130】
isdC
「isdC」抗原は、「タンパク質」と注釈されている。NCTC8325株では、isdCはSAOUHSC_01082であり、配列番号27のアミノ酸配列(GI:88194830)を有する。
【0131】
有用なisdC抗原は、配列番号27を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号27と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号27の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのisdCタンパク質は、配列番号27の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号27からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号27のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号27の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号27の最後の39のC末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号27の最初の28のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。IsdBの有用な断片は、参考文献165に開示されている。参考文献160は、IsdBおよびIsdHの両方からのエピトープを有用に含む抗原を開示している。
【0132】
Hla
「Hla」抗原は、「アルファ毒素」または単に「溶血素」としても公知の「アルファ溶血素前駆体」である。NCTC8325株では、HlaはSAOUHSC_01121であり、配列番号28のアミノ酸配列(GI:88194865)を有する。Newman株では、これはnwmn_1073(GI:151221285)である。Hlaは、S.aureusのほとんどの株により生成される重要な病毒性決定基であり、孔形成および溶血活性を有する。抗Hla抗体は、動物モデルにおける毒素の有害な影響を中和でき、Hlaは、肺炎に対する防御のために特に有用である。
【0133】
有用なHla抗原は、配列番号28を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号28と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号28の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのHlaタンパク質は、配列番号28の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号28からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号28のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号28の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号28の最初の26のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。C末端での切断を用いて、例えば50アミノ酸だけ(配列番号28の残基27〜76)を残すこともできる[161]。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。
【0134】
Hlaの毒性は、本発明の組成物において、化学的不活化(例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドまたはその他の架橋試薬を用いて)により回避できる。しかし、代わりに、その免疫原性を保持しながら毒性活性が除去されたHlaの変異体形態を用いることが好ましい。このような解毒化変異体は、当該技術において既に公知である。ある有用なHla抗原は、配列番号28の残基61(これは、成熟抗原の残基35である(すなわち、最初の26のN末端アミノ酸を省いた後))にて変異を有する。よって、残基61はヒスチジンではないことがあり、代わりに例えばIle、Valまたは好ましくはLeuであり得る。この位置でのHis−Arg変異を用いることもできる。例えば、配列番号29は、成熟変異体Hla−H35L配列であり、有用なHla抗原は、配列番号29を含む。別の有用な変異は、長いループを短い配列で置き換えて、例えば配列番号28の残基136〜174での39マーを、配列番号31(H35L変異も含む)および配列番号32(H35L変異を含まない)でのようにPSGS(配列番号30)のようなテトラマーで置き換える。
【0135】
さらに有用なHla抗原は、参考文献162および163に開示されている。
【0136】
配列番号33、34および35は、配列番号28の3つの有用な断片である(それぞれ「Hla27−76」、「Hla27−89」および「Hla27−79」)。配列番号36、37および38は、配列番号29からの対応する断片である。
【0137】
sta011
「sta011」抗原は、「リポタンパク質」と注釈されている。NCTC8325株では、sta011はSAOUHSC_00052であり、配列番号39のアミノ酸配列(GI:88193872)を有する。
【0138】
有用なsta011抗原は、配列番号39を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号39と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号39の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのsta011タンパク質は、配列番号39の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号39からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号39のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号39の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号39の最初の23のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。sta006抗原は、例えばアシル化N末端システインで脂質化されてよい。
【0139】
sta011抗原を調製するために用い得る配列番号39の改変体形は、それらに限定されないが、様々なIle/Val/Leu置換を有する配列番号40、41および42を含む。
【0140】
isdA
「isdA」抗原は、「IsdAタンパク質」と注釈されている。NCTC8325株では、isdAはSAOUHSC_01081であり、配列番号43のアミノ酸配列(GI:88194829)を有する。Newman株では、これはnwmn_1041(GI:151221253)である。
【0141】
有用なisdA抗原は、配列番号43を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号43と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号43の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのisdAタンパク質は、配列番号43の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号43からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号43のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号43の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号43の最後の38のC末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号43の最初の46のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号43のC末端38マー(LPKTGモチーフで始まる)を排除するための切断も有用である。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。
【0142】
配列番号44は、配列番号43の有用な断片であり(配列番号43のアミノ酸40〜184;「IsdA40−184」)、これは、天然タンパク質のヘム結合部位を含み、抗原の最も曝露されるドメインを含む。これは、ヒトタンパク質との抗原の類似性も低減する。その他の有用な断片は、参考文献164および165に開示されている。
【0143】
IsdAは、水酸化アルミニウムアジュバントに良好に吸着しないので、組成物に存在するIsdAは、吸着されないでよいか、または代替アジュバント、例えばリン酸アルミニウムに吸着されてよい。
【0144】
isdB
「isdB」抗原は、「神経フィラメントタンパク質isdB」と注釈されている。NCTC8325株では、isdBはSAOUHSC_01079であり、配列番号45のアミノ酸配列(GI:88194828)を有する。IsdBは、それ自体でワクチン抗原として用いることが提案されているが[166]、これは、肺炎を予防しないことがある。
【0145】
有用なisdB抗原は、配列番号45を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号45と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号45の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのisdBタンパク質は、配列番号45の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号45からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号45のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号45の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号45の最後の36のC末端アミノ酸を有用に省くことができる。配列番号45の最初の40のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。IsdBの有用な断片は、参考文献165および167に開示され、例えば配列番号45の37の内部アミノ酸を欠失している。
【0146】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、isdB抗原を含まない。
【0147】
sta073
「sta073」抗原は、「二機能性自己溶解素前駆体」と注釈されている。NCTC8325株では、sta073はSAOUHSC_00994であり、配列番号46のアミノ酸配列(GI:88194750)を有する。Newman株では、これはnwmn_0922(GI:151221134)である。プロテオミクス解析により、このタンパク質は、分泌されるかまたは表面に曝露されることが明らかになっている。
【0148】
有用なsta073抗原は、配列番号46を認識する抗体(例えばヒトに投与された場合)を誘発でき、かつ/または(a)配列番号46と50%またはそれより高い同一性(例えば60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれより高い)を有し、かつ/もしくは(b)配列番号46の少なくとも「n」連続アミノ酸の断片(ここで、「n」は7またはそれより大きい(例えば8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250またはそれより多い))を含むアミノ酸配列を含み得る。これらのsta073タンパク質は、配列番号46の改変体を含む。(b)の好ましい断片は、配列番号46からのエピトープを含む。その他の好ましい断片は、配列番号46のC末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)および/またはN末端から1またはそれより多いアミノ酸(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25またはそれより多い)を欠失しているが、配列番号46の少なくとも1つのエピトープを保持している。配列番号46の最初の24のN末端アミノ酸を有用に省くことができる。その他の断片は、1またはそれより多いタンパク質ドメインが省かれる。
【0149】
sta073は、水酸化アルミニウムアジュバントに良好に吸着しないので、組成物に存在するSta073は、吸着されないでよいか、または代替アジュバント、例えばリン酸アルミニウムに吸着されてよい。
【0150】
ハイブリッドポリペプチド
本発明で用いられるS.aureusタンパク質抗原は、個別の分離したポリペプチドとして組成物に存在してよい。1より多い抗原を用いる場合、しかし、これらは、分離したポリペプチドとして提示される必要はない。代わりに、少なくとも2(例えば2、3、4、5またはそれより多い)の抗原は、単一ポリペプチド鎖として発現され得る(「ハイブリッド」ポリペプチド)。ハイブリッドポリペプチドは、2つの主な利点を提供する。第1に、それ自体では不安定または発現が乏しいことがあるポリペプチドが、この問題を克服する適切なハイブリッドパートナーを付加することにより援助され得る。第2に、商業的な製造が単純化される。なぜなら、ともに抗原的に有用な2つのポリペプチドを生成するために、1回だけの発現および精製の使用しか必要としないからである。
【0151】
ハイブリッドポリペプチドは、上に列挙した抗原のそれぞれからの2またはそれより多いポリペプチド配列、または配列が株間で部分的に変動している場合は同じ抗原の2またはそれより多い改変体を含んでよい。
【0152】
2、3、4、5、6、7、8、9または10の抗原からのアミノ酸配列からなるハイブリッドが有用である。特に、2もしくは3の抗原のような2、3、4または5の抗原からのアミノ酸配列からなるハイブリッドが好ましい。
【0153】
異なるハイブリッドポリペプチドを、単一製剤中に一緒に混合してよい。ハイブリッドは、第1、第2または第3抗原群より選択される非ハイブリッド抗原と組み合わせてよい。このような組み合わせのうち、抗原は、1より多いハイブリッドポリペプチド中に、および/または非ハイブリッドポリペプチドとして存在してよい。しかし、抗原が、ハイブリッドまたは非ハイブリッドのいずれかとして存在するが、これらの両方として存在しないことが好ましい。
【0154】
ハイブリッドポリペプチドは、式NH−A−{−X−L−}−B−COOH(式中、Xは、上記のようなS.aureus抗原のアミノ酸配列であり、Lは、場合によって存在するリンカーアミノ酸配列であり、Aは、場合によって存在するN末端アミノ酸配列であり、Bは、場合によって存在するC末端アミノ酸配列であり、nは、2またはそれより大きい整数(例えば2、3、4、5、6など)である)で表すことができる。通常、nは2または3である。
【0155】
−X−部分がこの野生型の形においてリーダーペプチド配列を有するならば、これは、ハイブリッドタンパク質に含めてよいか、またはハイブリッドタンパク質から省いてよい。いくつかの実施形態では、リーダーペプチドは、ハイブリッドタンパク質のN末端にある−X−部分のものを除いて削除され、すなわち、Xのリーダーペプチドは保持されるが、X・・・Xのリーダーペプチドは省かれる。このことは、全てのリーダーペプチドを削除し、Xのリーダーペプチドを−A−部分として用いることと等価である。
【0156】
{−X−L−}のnの場合のそれぞれについて、リンカーアミノ酸配列−L−は、存在してよいかまたは存在しなくてよい。例えば、n=2である場合、ハイブリッドは、NH−X−L−X−L−COOH、NH−X−X−COOH、NH−X−L−X−COOH、NH−X−X−L−COOHなどであってよい。リンカーアミノ酸配列(複数可)−L−は、典型的には短い(例えば20以下のアミノ酸、すなわち20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、クローニングを容易にする短いペプチド配列、ポリ−グリシンリンカー(すなわちGly(n=2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多い)を含む)およびヒスチジンタグ(すなわちHis(n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多い))が含まれる。その他の適切なリンカーアミノ酸配列は、当業者に明らかである。有用なリンカーは、GSGGGG(配列番号47)またはGSGSGGGG(配列番号48)であり、Gly−SerジペプチドがBamHI制限部位から形成されるので、クローニングおよび操作の助けとなり、(Gly)テトラペプチドが、典型的なポリ−グリシンリンカーである。特に最後のLとして用いるためのその他の適切なリンカーは、ASGGGS(例えば配列番号50によりコードされる配列番号49)またはLeu−Gluジペプチドである。
【0157】
−A−は、場合によって存在するN末端アミノ酸配列である。これは、典型的には短い(例えば40またはそれより少ないアミノ酸、すなわち40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、タンパク質輸送を誘導するリーダー配列、またはクローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド配列(例えばヒスチジンタグ、すなわちHis(n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多い))が含まれる。その他の適切なN末端アミノ酸配列は、当業者に明らかである。Xがそれ自体のN末端メチオニンを欠失している場合、−A−は、好ましくは、N末端メチオニンを提供するオリゴペプチド(例えば1、2、3、4、5、6、7または8アミノ酸を有する)、例えばMet−Ala−Ser、または単一Met残基である。
【0158】
−B−は、場合によって存在するC末端アミノ酸配列である。これは、典型的には短い(例えば40またはそれより少ないアミノ酸、すなわち39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1)。例としては、タンパク質輸送を誘導する配列、クローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド配列(例えばヒスチジンタグ、すなわちHis(n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多い)を含む、例えば配列番号51)、またはタンパク質安定性を増進する配列が含まれる。その他の適切なC末端アミノ酸配列は、当業者に明らかである。
【0159】
本発明のあるハイブリッドポリペプチドは、EsxA抗原およびEsxB抗原をともに含んでよい。これらは、N末端からC末端のいずれの順序でもよい。配列番号52(「EsxAB」;配列番号53によりコードされる)および54(「EsxBA」)は、このようなハイブリッドの例であり、これらはともにヘキサペプチドリンカーASGGGS(配列番号49)を有する。
【0160】
一般
本発明の実施は、そうでないと記載しない限り、当該技術の技量内の化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来の方法を採用する。このような技術は、文献に詳細に説明されている。例えば参考文献168〜175などを参照されたい。
【0161】
「GI」番号付けを上記で用いている。GI番号または「GenInfo識別子」は、そのデータベースに配列が加えられた場合に、NCBIにより処理されるそれぞれの記録された配列に連続的に割り当てられる一連の数字である。GI番号は、記録された配列の受託番号に似ていない。配列がアップデートされたとき(例えば修正のため、またはさらなる注釈もしくは情報を加えるため)に、新しいGI番号が与えられる。よって、所与のGI番号に付随する配列は、決して変更されない。
【0162】
2つのアミノ酸配列間のパーセンテージ配列同一性についての言及は、整列させたときに、アミノ酸のそのパーセンテージが、2つの配列の比較において同じであることを意味する。このアラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当該技術において公知のソフトウェアプログラム、例えばref.176の7.7.18節に記載されるものを用いて決定できる。好ましいアラインメントは、12のギャップ開始ペナルティおよび2のギャップ伸長ペナルティでのアフィンギャップ検索、62のBLOSUM行列を用いるSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムにより決定される。Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、ref.177に開示されている。
【0163】
本発明が「エピトープ」に関する場合、このエピトープは、B細胞エピトープおよび/またはT細胞エピトープであってよい。このようなエピトープは、経験的に同定できる(例えばPEPSCAN[178、179]または類似の方法を用いて)か、またはこれらは予想できる(例えばJameson−Wolf抗原インデックス(antigenic index)[180]、行列に基づくアプローチ[181]、MAPITOPE[182]、TEPITOPE[183、184]、ニューラルネットワーク(neural network)[185]、OptiMer&EpiMer[186、187]、ADEPT[188]、Tsites[189]、親水性[190]、抗原インデックス[191]または参考文献192〜196に開示される方法などを用いて)。エピトープは、抗体またはT細胞受容体の抗原結合部位により認識され、それと結合する抗原の部分であり、これらは、「抗原決定基」とよぶこともできる。
【0164】
抗原「ドメイン」が省かれる場合、このことは、シグナルペプチド、細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞外ドメインなどが省かれることを含み得る。
【0165】
「含む(comprising)」との用語は、「含む(including)」および「からなる(consisting)」を包含し、例えばXを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなり得るか、または何か追加のもの、例えばX+Yを含み得る。
【0166】
数値xに関する「約」との用語は、例えばx±10%を意味する。
【0167】
「実質的に」との語句は、「完全に」を除外せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないことがある。必要であれば、「実質的に」との語を、本発明の定義から省くことができる。
【0168】
本発明が複数の逐次的なステップを含むプロセスを提供する場合、本発明は、ステップの合計数より少ないものを含むプロセスも提供することができる。異なるステップは、非常に異なる回数で異なる人により異なる場所(例えば異なる国)で行うことができる。
【0169】
糖の環は、開放または閉鎖された形で存在でき、閉鎖形を本明細書において構造式で示すが、開放形も本発明に包含されることが認識される。同様に、糖は、ピラノースおよびフラノース形で存在でき、ピラノース形を本明細書において構造式で示すが、フラノース形も包含されることが認識される。糖の異なるアノマー形も包含される。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】図1は、参考文献13の方法に基づくS.aureus5型および8型莢膜多糖を精製するためのプロセスを示す図である。
【図2】図2は、莢膜多糖のDEAE Sepharoseクロマトグラムおよび図1の方法に従って調製した莢膜多糖含有画分(画分68〜80)のH NMRスペクトルを示す図である。
【図3】図3は、莢膜多糖のS300 Sephacrylクロマトグラムおよび図1の方法に従って調製した莢膜多糖含有画分(画分22〜44)のH NMRスペクトルを示す図である。
【図4】図4は、S.aureus5型および8型莢膜多糖を精製するための本発明の例示的なプロセスを示す図である。
【図5】図5は、本発明の方法に従って調製した莢膜多糖のDEAE Sepharoseクロマトグラムを示す図である。
【図6】図6は、精製S.aureus5型莢膜多糖のH NMRスペクトルを示す図である。
【図7】図7は、参考文献197、198、199および200に基づくS.aureusのペプチドグリカンの化学構造を示す図である。反復単位を強調する。
【発明を実施するための形態】
【0171】
A.S.aureus5型莢膜多糖の精製(比較例)
S.aureus5型莢膜多糖を、参考文献13の方法に基づく図1に示すスキームに従って精製した。この方法の様々なステップについての条件および原理的説明を、表1に記載する。
【0172】
【表1】

細菌ペレット遠心分離および酵素反応(リソスタフィンおよびRNアーゼ/DNアーゼ)
S.aureusを固体培地で成長させて、600〜800mlの細菌懸濁物を得た。8000rpmにて遠心分離することにより採集した湿潤細胞ペレットは、約30〜50gの質量を有した。採集したペレットを50mM Tris−2mM MgSO pH7.5で3回洗浄し、次いで、1mlあたり0.25〜0.5gにて50mM Tris−2mM MgSO pH7.5に懸濁し、0.1〜0.13mg/mlのリソスタフィン(Sigma−Aldrich)で処理した。反応混合物は、37℃にて16時間(ON)穏やかに撹拌しながらインキュベートした。0.05mg/mlのDNアーゼ/RNアーゼ(Sigma−Aldrich)を懸濁物に加え、37℃にて5〜7時間インキュベートした。懸濁物を、次いで、遠心分離により清澄化した。
【0173】
NaIOとの反応
物質を、50mM NaIO(Sigma−Aldrich)と、暗所にて5〜7時間インキュベートした。NaIOを、次いで、過剰のグリセロールを明所にて撹拌しながら30分間加えることにより除去した。
【0174】
30kDaタンジェンシャルフローろ過
タンジェンシャルフローろ過を、表2に示すようにして行った。
【0175】
【表2】

タンジェンシャルフローろ過は、0.1mカセットのためのSartorius(商標)ホルダーにおいて、WatsonMarlon(商標)蠕動ポンプを用いて行った。その後、膜をNaOH 1Mで洗浄し、NaOH 0.1M中で+2〜8℃にて貯蔵した。
【0176】
DEAE Sepharose Fast Flowクロマトグラフィー
残存タンパク質、核酸およびその他の不純物を、表3に従って行ったアニオン交換クロマトグラフィーにより除去した。
【0177】
【表3】

クロマトグラフィーを、Akta(商標)システム(G&E Healthcare)を用いて行い、莢膜多糖を、UV吸収を215nmにて測定することにより検出した。莢膜多糖溶液をまず、100mM NaPi緩衝液pH7.2に加えて、10mM NaPi pH7.2の最終緩衝液濃度を得た。DEAE樹脂を、100mM NaPi緩衝液pH7.2でpH7.2に予め平衡化し、次いで、10mM NaPi緩衝液pH7.2で平衡化して、示す伝導率(10mM NaPi緩衝液pH7.2伝導率)を達成した。得られた画分をNMRにより分析し、莢膜多糖を含有するものを一緒に貯留した(図2)。
【0178】
S300 Sephacrylクロマトグラフィー
多糖を、表4に従って行ったゲルろ過クロマトグラフィーによりさらに精製した。
【0179】
【表4】

クロマトグラフィーを、Akta(商標)システム(G&E Healthcare)で行い、莢膜多糖を、UV吸収を215nmにて測定することにより検出した。得られた画分をNMRにより分析し、莢膜多糖を含有するものを一緒に貯留した(図3)。
【0180】
B.S.aureus5型および8型莢膜多糖の精製(実施例)
S.aureus5型および8型莢膜多糖を、図4に示すスキームに従って精製した。この方法の様々なステップについての条件および原理的説明を、表5に記載する。
【0181】
【表5】

細菌ペレット遠心分離ならびに酸および酵素反応(酢酸、RNアーゼ/DNアーゼおよびムタノリシン)
S.aureusを固体培地で成長させて、600〜800mlの細菌懸濁物を得た。8000rpmにて遠心分離することにより採集した湿潤細胞ペレットは、約30〜50gの質量を有した。採集したペレットを50mM Tris−2mM MgSO pH7.5で3回洗浄し、次いで、1mlあたり0.5〜0.6gにて蒸留水に懸濁し、激しく撹拌しながら温度を100℃まで上昇させた。次いで、酢酸を1%の最終濃度まで加え、混合物を100℃にて2時間保った。混合物をNaOH 1Mで中和し、8000rpmにて遠心分離した。
【0182】
上清をペレットからデカントし、0.05mg/mlのDNアーゼ/RNアーゼ(Sigma−Aldrich)を組み合わせた。混合物を、次いで、37℃にて5〜7時間インキュベートし、その後、遠心分離により清澄化した。180U/mlのムタノリシン(Sigma−Aldrich)を次いで懸濁物に加え、混合物を1晩(16時間)、37℃にて穏やかに撹拌しながらインキュベートした。懸濁物を、次いで、遠心分離により再び清澄化した。
【0183】
30kDaタンジェンシャルフローろ過
タンジェンシャルフローろ過を、表6に示すようにして行った。
【0184】
【表6】

タンジェンシャルフローろ過は、0.2mカセットのためのSartorius(商標)ホルダーにおいて、WatsonMarlon(商標)蠕動ポンプを用いて行った。その後、膜をNaOH 1Mで洗浄し、NaOH 0.1M中で+2〜8℃にて貯蔵した。
【0185】
DEAE Sepharose Fast Flowクロマトグラフィー
残存タンパク質、核酸およびその他の不純物を、表7に従って行ったアニオン交換クロマトグラフィーにより除去した。
【0186】
【表7】

クロマトグラフィーを、Akta(商標)システム(G&E Healthcare)を用いて行い、莢膜多糖を、UV吸収を215nmにて測定することにより検出した。莢膜多糖溶液をまず、100mM NaPi緩衝液pH7.2に加えて、10mM NaPi pH7.2の最終緩衝液濃度を得た。DEAE樹脂を、100mM NaPi緩衝液pH7.2でpH7.2に予め平衡化し、次いで、10mM NaPi緩衝液pH7.2で平衡化して、示す伝導率(10mM NaPi緩衝液pH7.2伝導率)を達成した。得られた画分をNMRにより分析し、莢膜多糖を含有するものを一緒に貯留した(図5)。
【0187】
30kDaタンジェンシャルフローろ過
タンジェンシャルフローろ過を、アニオン交換クロマトグラフィーから残されたNaClを除去し、精製多糖を濃縮するために行った。ろ過は、表8に示すようにして行った。
【0188】
【表8】

タンジェンシャルフローろ過は、0.2mカセットのためのSartorius(商標)ホルダーにおいて、WatsonMarlon(商標)蠕動ポンプを用いて行った。その後、膜をNaOH 1Mで洗浄し、NaOH 0.1M中で+2〜8℃にて貯蔵した。精製多糖をNMRにより分析した(例えば5型莢膜多糖について図6)。
【0189】
C.精製多糖中のペプチドグリカン混入の決定
上記のAおよびB節における方法に従って得られた精製5型多糖のペプチドグリカン(図7)含量を、製造者の使用説明に従ってDionex AAA−Direct(商標)システム(AminoPac(商標)PA10 AAA−Direct(商標)、Dionex)によりHPAEC−PADを用いるアミノ酸分析により決定した。簡単に述べると、20μLの100μMノルロイシンを、水中で250μg/mLの200μLの多糖に、400℃処理ガラスチューブ中で加え、Speedvacシステムを用いて乾燥した。ノルロイシンは、内部標準として役立つ。残存タンパク質およびペプチドグリカン混入からの遊離アミノ酸を得るために、試料を、減圧下で沸騰塩化水素酸/フェノールの蒸気を用いて加水分解した。遊離アミノ酸の分離は、AminoPac(商標)PA10ガードカラム(2×50mm)を備えたAminoPac(商標)PA10カラム(2×250mm)で、製造者の推奨に従うアミノ酸および炭水化物の勾配条件を用いて行った。これらの勾配条件を、表9にまとめる。
【0190】
【表9】

検出は、AAA−Direct波形電位を用いて行った(表10)。
【0191】
【表10】

定量は、非加水分解17アミノ酸標準溶液(Fluka P/N 09428)を2.5〜50μMの範囲で用いて行った。標準試料は、ノルロイシンとともにおよびノルロイシンなしで、同じ試料濃度にて分析した。試料中のノルロイシンピーク面積を標準物質中の平均ノルロイシンピーク面積で除した比を、加水分解ステップにおける可能性のあるアミノ酸喪失についての補正係数として用いた。BSA試料を対照試料として用いた。
【0192】
ペプチドグリカン含量の見積り
ペプチドグリカン含量は、2つの異なる方法を用いて見積もった。第1の方法(方法1)は、参考文献17で用いられた方法に基づき、これは、リシン、アラニン、グリシンおよびグルタミン酸含量の総和を含む。第2の方法(方法2)では、以下の式に従って各アミノ酸についての変換係数を計算する。
(アミノ酸の分子質量)×(ペプチドグリカン構造における残基の数)/(ペプチドグリカンの反復単位の分子質量) 。
【0193】
ペプチドグリカンの反復単位の分子質量は、1233.27Daである(図7)。ペプチドグリカン含量は、よって、アミノ酸濃度と変換係数の比を計算することにより得られる平均ペプチドグリカン濃度として計算した。
【0194】
アニオン交換クロマトグラフィー後の精製5型莢膜多糖のペプチドグリカン含量を表11に示す。
【0195】
【表11】

本発明の方法は、精製多糖中の非常に低い含量のペプチドグリカンをもたらす。
【0196】
D.精製多糖のコンジュゲーションおよび免疫原性
上記のAおよびB節の方法から得られた精製5型多糖を、CRM197に、参考文献29の方法に従ってコンジュゲートした。コンジュゲート中の糖の合計を、HPAEC−PAD分析により、そしてタンパク質含量をMicroBCAアッセイにより決定した(表12)。
【0197】
【表12】

本発明の方法により精製された多糖を用いて調製されたコンジュゲート(ロット4および5)は、より高い多糖:タンパク質の比を有した。
【0198】
ロット5の免疫原性を、S.aureus感染のマウス致死モデルにおいて試験した。簡単に述べると、CD1マウスを、腹腔内注射により、2μg用量の抗原で、200μlの注射容量で免疫化した。免疫化は、以下のスキームに従って12匹のマウスの群で行い、その後、5×10CFUの5型S.aureusの細菌懸濁物の腹腔内注射により攻撃(challenge)した。S.aureusの培養物を遠心分離し、2回洗浄し、攻撃の前にPBSで希釈した。さらなる希釈が、所望の接種材料について必要であり、これは、寒天播種およびコロニー形成により実験的に確認した。動物を14日間監視し、致死疾患を記録した。
群1−PBSとミョウバン
群2−5型莢膜多糖−CRMコンジュゲート(ロット5)とミョウバン
群4−5型莢膜多糖−CRMコンジュゲート(ロット5)とEsxAB、Sta006およびSta011タンパク質ならびにミョウバン
群5−5型莢膜多糖−CRMコンジュゲート(ロット5)とHlaH35L、Sta006およびSta011タンパク質ならびにミョウバン 。
【0199】
生存データを表13に示す。
【0200】
【表13】

本発明の方法により精製された多糖を用いて調製されたコンジュゲートは、高いレベルの生存をもたらした。生存は、S.aureusタンパク質抗原の添加により増進された。
【0201】
本発明が例によってのみ記載され、本発明の範囲および精神内にとどまったまま改変を行うことができることが理解される。
【0202】
【化1】

【0203】
【化2】

【0204】
【化3】

【0205】
【化4】

【0206】
【化5】

【0207】
【化6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞から莢膜多糖を放出させるための方法であって、前記細胞を酸で処理するステップを含む方法。
【請求項2】
前記細胞が、S.aureus5型細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が、S.aureus8型細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞が、湿潤細胞ペーストの形であるか、または水性媒体に懸濁されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸処理が、酢酸を用いて行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸処理が、O−アセチル化の程度が60%〜100%の間である前記莢膜多糖をもたらす、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
中和するステップをさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞を遠心分離し、前記多糖を含有する上清を回収するステップをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法を含む、S.aureus5型細胞またはS.aureus8型細胞から莢膜多糖を精製するためのプロセス。
【請求項10】
前記莢膜多糖をDNアーゼおよび/またはRNアーゼで処理するステップをさらに含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記莢膜多糖をムタノリシンで処理するステップをさらに含む、請求項9または請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
ダイアフィルトレーションのステップをさらに含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ダイアフィルトレーションが、タンジェンシャルフローろ過である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
アニオン交換クロマトグラフィーのステップをさらに含む、請求項9〜13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
ゲルろ過のステップをさらに含む、請求項9〜14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記多糖を濃縮するステップをさらに含む、請求項9〜15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
精製された前記多糖の分子質量が、2〜3500kDaの間である、請求項9〜16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記精製多糖を解重合してオリゴ糖を形成するステップをさらに含む、請求項9〜17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
滅菌ろ過のステップをさらに含む、請求項9〜18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記多糖と、前記多糖の全重量に対して5重量%未満のペプチドグリカンであるレベルのペプチドグリカン混入とを含む組成物を提供する、請求項9〜19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
ペプチドグリカン混入の前記レベルが、約2%である、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記多糖と、前記多糖の全重量に対して5重量%未満のタンパク質であるレベルのタンパク質混入とを含む組成物を提供する、請求項9〜21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記多糖と、前記多糖の全重量に対して1重量%未満の核酸であるレベルの核酸混入とを含む組成物を提供する、請求項9〜22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
担体分子へのコンジュゲーションのステップをさらに含む、請求項9〜23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
請求項9〜23のいずれか一項に記載のプロセスにより得ることができるS.aureus5型莢膜多糖もしくはS.aureus8型莢膜多糖または請求項24に記載のプロセスにより得ることができるコンジュゲートを含む組成物。
【請求項26】
clfA抗原;clfB抗原;sdrE2抗原;sdrC抗原;sasF抗原;emp抗原;sdrD抗原;spa抗原;esaC抗原;esxA抗原;esxB抗原;sta006抗原;isdC抗原;Hla抗原;sta011抗原;isdA抗原;isdB抗原;およびsta073抗原からなる群より選択される1またはそれより多いS.aureusタンパク質抗原(複数可)をさらに含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
1またはそれより多い前記S.aureusタンパク質抗原(複数可)が、esxA抗原;esxB抗原;sta006抗原;Hla抗原;sta011抗原;およびsta073抗原からなる群より選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
以下:
(1)esxA抗原、esxB抗原、sta006抗原およびHla抗原;
(2)esxA抗原、esxB抗原、sta006抗原およびsta011抗原;
(3)esxA抗原、esxB抗原およびsta011抗原;
(4)esxA抗原、esxB抗原、Hla抗原、sta006抗原およびsta011抗原;
(5)esxA抗原、esxB抗原およびHla抗原;
(6)Hla抗原、sta006抗原およびsta011抗原;
(7)esxA抗原およびesxB抗原;
(8)esxA抗原、esxB抗原およびsta006抗原;
(9)esxA抗原、esxB抗原、sta011抗原およびsta073抗原;ならびに
(10)sta006抗原およびsta011抗原
の(1)〜(10)の組み合わせの1つに従うS.aureusタンパク質抗原を含む、請求項27に記載の組成物。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−509397(P2013−509397A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536006(P2012−536006)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054934
【国際公開番号】WO2011/051917
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】