説明

Sykチロシンキナーゼタンパク質が関与している代謝経路を阻害する分子および前記分子を同定するための方法

本発明は、C-13 分子(メチル 2-{5-[(3-ベンジル-4-オキソ-2-チオキソ-l,3-チアゾリジン-5-イリデン)メチル]-2-フリル}ベンゾアート)および抗体または抗体断片とヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質との結合を阻害する能力のあるC-13分子と機能上均等な有機分子, Sykが関与している代謝経路に依存的な疾患を予防および治療する医薬品を製造するためのこれらの分子の使用, および係る分子を同定するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の説明】
【0001】
本発明は、抗体または抗体断片とヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質との結合を阻害する能力のある有機分子, Sykが関与している代謝経路に依存的なコンディションを予防および治療する医薬品を製造するための前記分子の使用, および係る分子を同定するための方法に関する。
【0002】
Syk (Spleen tyrosine kinase) チロシンキナーゼ タンパク質 (PKT)は、炎症に関与している細胞(例えば、Bリンパ球, マスト細胞, マクロファージ および 好中球)の免疫レセプター依存的なシグナル伝達において鍵となるメディエータの細胞質タンパク質である。マスト細胞および好塩基球において、FcεRI レセプター(免疫グロブリン Eに高親和性のレセプター)とIgEおよび抗原とのクロスリンキングによって、Sykの結合サイトを形成するFcεRI ITAM (Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motif)モチーフのリン酸化が誘導され、活性化される。Syk タンパク質の活性化によって、LAT (linker for activation of T cells), SLP-76 〔Src homology 2 (SH2) domain-containing leukocyte protein of 76 kD〕 および Vav アダプタータンパク質を含む多数の基質がリン酸化され、PLC-γ (phospholipase Cγ), PI3K (phosphatidylinositol 3-kinase), Erk (extracellular signal-regulated kinase), JNK (c-jun N-terminal kinase) および p38などの複数のシグナル伝達カスケードの活性化を生じる(図 9を参照されたい)。これらのカスケードは、最終的に脱顆粒, 脂質メディエータの合成および放出 およびサイトカイン, ケモカインおよび成長因子のマスト細胞および好塩基球による産生および分泌を生じる1, 2
【0003】
Syk タンパク質は、特に白血球の炎症反応を制御している免疫レセプターシグナル伝達複合体の上流の決定的に重要なポジションにあることが原因で、アレルギー性鼻炎, じんま疹, 喘息 および アナフィラキシーを含むI型過感受性反応の治療のための潜在的な薬学的な標的として認識される。SykがFcεRI シグナル伝達をポジティブに制御するとの事実3は、特にアレルギー性障害の治療のための優れた指標であろうことを示唆する。さらにまた、FcεRI-依存的なシグナル伝達において中心的な役割を担うことから、薬学的なSykとの相互作用が、アレルギー性のコンディションに関連している急性および慢性の症状に寄与する前記複合体カスケードから一段階下流を阻害している抗ヒスタミンまたはロイコトリエン レセプターアゴニストの従来の使用よりも有利であると証明できるだろう。
【0004】
Syk 活性に干渉するエアロゾルまたは小分子の形態でのSyk-特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの治療上の潜在性を有しているSyk キナーゼ活性の薬理学的なインヒビター(例えば、ER-27139, BAY-613606, ピセアタノールおよび R112)は、既に開発されている1, 4。しかしながら、Sykを発現している複数のタイプの細胞が考慮される場合、免疫系をSyk キナーゼドメインをターゲットとする医薬品に全身性に曝露することに関連する潜在的な副作用を考慮する必要がある。実際、Syk タンパク質は、様々な細胞タイプに広く分布するので、細胞の分化, 付着 および 増殖などの様々な生理的な機能における阻害の有害な影響を説明することは必須である5, 6
【0005】
発明者は、Syk タンパク質インヒビターを同定し、これはSyk タンパク質の触媒部位をターゲティングするというよりむしろ、Syk タンパク質とその天然での細胞パートナーとの相互作用を妨げることにより作用し、この化合物は特に化合物 C-13 および表 1に記載される化合物 1から87である。
【0006】
本発明は、ヒトまたは動物においてSykが関与している代謝経路に依存するコンディションの予防または治療のための医薬品として、以下の式を有している分子 C-13 (メチル 2-{5-[(3-ベンジル-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-5-イリデン)メチル]-2-フリル}ベンゾアート)に関する:
【0007】
【化1】

【0008】
さらに本発明は、Syk チロシンキナーゼ タンパク質と結合し、特に少なくとも 5%, 好ましくは 少なくとも 10%、例えば、 少なくとも 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80または85%インビトロ結合を阻害する能力のある分子である、C-13分子と機能上均等な有機分子に関し、そのインビトロ結合とは:
(i) 抗体断片 G4G11(配列番号 2),または
(ii) 抗体断片 G4E4(配列番号 3),または
(iii) ヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質と、配列番号 1で表されるヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質のアミノ酸配列の残基65から74の少なくとも一つを含むエピトープ上で結合する抗体または抗体断片,または
(iv) ヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質と結合し、抗体断片G4G11またはG4E4とヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質 (配列番号 1)との結合を少なくとも10%阻害する抗体または抗体断片、
とヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質または動物における任意のそのバリアント(例えば、マウスの Syk チロシンキナーゼ タンパク質)との結合であり、前記配列は図 8B (配列番号 4)に記載され、これはヒトまたは動物においてSykが関与している代謝経路に依存する状態の予防または治療のための医薬品として用いられる。
【0009】
「機能上均等な分子」の用語は、50 および 2500 Daの間の分子量を有し、細胞内または細胞外の媒体においてインビトロまたはインビボで、任意に所与の分子と異なる強度で、同じ効果を生じる能力のある有機分子などの分子を参照する。特に、本発明の範囲内で、「C-13分子と機能上均等な分子」の用語は、配列番号 1 (図 8A)で表されるヒト チロシンキナーゼ タンパク質において、C-13分子と、細胞内または細胞外の媒体においてインビトロまたはインビボで、任意に異なる強度で、同じ効果を産生する能力のある分子を参照する。特に、前記用語は、SH2 ドメインを含んでいるSyk 領域で生じるSyk と別のタンパク質との結合を阻害する分子を参照する。より具体的には、これらの分子は、Sykのキナーゼ酵素活性に影響しない。例えば、これは、ヒト Syk タンパク質 (配列番号1)において、Syk チロシンキナーゼ タンパク質と、抗体断片 G4G11 (配列番号2), 抗体断片 G4E4 (配列番号3),または抗体断片 G4G11またはG4E4と同じエピトープに結合する抗体または抗体断片との相互作用を阻害する能力のある分子からなる。
【0010】
抗体または抗体断片 とSyk タンパク質との結合の「阻害のパーセンテージ」の用語は、特に比 [(A - B) / (A x 100)]を参照する。式中で、Aは本発明の分子の非存在下で抗体または抗体断片がSyk タンパク質に結合した量と比例したシグナルの強度およびBは同じ条件下で本発明の分子の存在下での同じシグナルの強度である。抗体または抗体断片 とSyk タンパク質との結合の阻害は、特に国際特許出願のWO 2005106481などに記載されるELISA技術に基づいて抗体置換検査でインビトロで実証されえる。この検査は、例えば、以下の例 3-2)に記載されるプロトコールにしたがって実施されてもよい。
【0011】
「動物におけるSykバリアント」の用語は、配列番号 1 (図 8Aを参照されたい)で表されるヒト Sykタンパク質と強い配列の相同性または同一性を有しているタンパク質、例えば、同じチロシンキナーゼ活性を有し、同じ機能的なカスケード(特に、マスト細胞の脱顆粒を生じる機能的なカスケードに)に関与し、配列番号 1 のヒト Sykタンパク質と少なくとも 70, 75, 80, 85, 90または95% の配列相同性または同一性を有しているタンパク質をコードしている様々な動物種(例えば、マウス, ラット, イヌ, ネコまたは別の哺乳類)の遺伝子を参照する。前記用語は、特に、種分化のイベントにつづいて同じ先祖遺伝子から進化しているオルソロガス遺伝子(即ち、異なる生物体に見つけられる遺伝子)を参照しえる。
【0012】
また、本発明は、本発明によるC-13または均等な分子の薬学的に許容される塩、および該当する場合、立体異性体およびラセミ体に関する。
【0013】
「薬学的に許容される塩」の用語は、本発明による分子の生物活性を保存している比較的に非毒性の無機および有機の酸または塩基の付加塩を参照する。薬学的に許容される塩の例は、特にBerge等(S. M. Berge et al., "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci, 1977, 66:p.1-19)40に記載される。本発明の分子の薬学的に許容される付加塩は、例えば、臭化水素酸塩, 塩酸塩, 硫酸塩, 重硫酸塩, リン酸塩, 硝酸塩, 酢酸塩, シュウ酸塩, 吉草酸塩, オレイン酸塩, パルミチン酸塩, ステアリン酸塩, ラウリン酸塩, ホウ酸塩, 安息香酸塩, 乳酸塩, リン酸塩, トシル酸塩, クエン酸塩, マレイン酸塩, フマル酸塩, コハク酸塩, 酒石酸塩, ナフチレート, メシレート, グルコヘプトン酸塩, ラクトビオナート, スルファミン酸塩, マロン酸塩, サリチル酸塩, プロピオン酸塩, メチレンビス-b-ヒドロキシナフトアート, ゲンチシン酸塩, イセチオン酸塩, di-p-トルオイル酒石酸塩, メタンスルホネート, エタン-スルホネート, ベンゼンスルホン酸塩, p-トルエンスルホン酸塩, シクロヘキシル スルファミン酸塩およびキナテスラウリルスルホン酸塩, および均等物であってもよい。適切であろう他の薬学的に許容される塩は、金属塩、例えば、薬学的に許容される アルカリ金属またはアルカリ土類の塩、例えば、ナトリウム, カリウム, カルシウムまたはマグネシウムの塩を含む。
【0014】
これらの薬学的に許容される塩は、最終的な分子の単離および精製の間にインサイチューで調製されてもよい。代わりに、酸または塩基の付加塩は、精製分子を別々にその酸または塩基の形態に塩基または有機または無機の酸と反応させることにより及び形成された塩を単離することにより調製されてもよい。例えば、薬学的に許容される酸付加塩は、本発明の分子を、任意で適切な溶剤(例えば、有機溶媒)において、適切な有機または無機の酸(例えば、臭化水素酸, 塩酸, 硫酸, 硝酸, 燐酸, コハク酸, マレイン酸, 蟻酸, 酢酸, プロピオン酸, フマル酸, クエン酸, 酒石酸, 乳酸, 安息香酸, サリチル酸, グルタミン酸, アスパラギン酸, p-トルエン-スルホン酸, ベンゼン-スルホン酸, メタン-スルホン酸, エタン-スルホン酸, ヘキサンまたはナフタレン-スルホン酸、例えば、2-ナフタレンスルホン酸)と反応させることにより及び形成された塩を単離することにより調製されてもよい。塩基付加塩は、適切な酸性団が存在する場合、本発明の分子を、任意で適切な溶剤(例えば、有機溶媒)において、適切な有機または無機の塩基(例えば、トリエチル-アミン, エタノール-アミン, トリエタノール-アミン, コリン, アルギニン, リジンまたはヒスチジン)と反応させることにより調製されてもよい。このように生成された塩は、次に結晶化および濾過の手段で単離されてもよい。
【0015】
幾つかの態様において、薬学的に許容される塩は、本発明の分子に優れた安定性または溶解性を提供し、その形成を促進することにおいて好適である。
【0016】
特に好適な態様によると、本発明の有機分子は、Syk チロシンキナーゼ タンパク質と触媒ドメインの外側に位置する部位で結合する。
【0017】
好ましくは、本発明の有機分子は、50 および2500 ダルトン、例えば、50 および2000 Da, 50 および1500 Daまたは50 および1000 Daの間の分子量を有する。
【0018】
特定の態様によると、本発明の分子は、少なくとも 5%, 好ましくは少なくとも10%、ヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質 (配列番号 1)の65 から74のアミノ酸配列の少なくとも2(好ましくは、少なくとも 3, 4または5、例えば、5, 6, 7, 8, 9または10)の残基を含んでいるエピトープにおいて抗体または抗体断片とヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質の結合を阻害する能力がある。好適な態様によると、抗体または抗体断片は、ヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質において抗体断片 G4G11または抗体断片 G4E4と同じエピトープでヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質(このタンパク質の配列は配列番号 1で示される)と結合する。
【0019】
更なる特定の態様によると、本発明の分子は、少なくとも 5%, 好ましくは少なくとも10%、Syk チロシンキナーゼ タンパク質に結合する抗体または抗体フラグメントの結合を阻害する能力があり、少なくとも 15%, 好ましくは少なくとも20, 30, 40, 50, 60, 70または80%、抗体断片 G4G11またはG4E4とヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質 (配列番号 1)の結合を阻害する。
【0020】
好ましくは、本発明の分子は、ヒト Syk タンパク質と、Syk タンパク質のポジション 68に位置するアルギニン残基およびポジション121 および 155に位置する二つのグルタミン酸残基を含んでいる立体的な腔で結合する(その配列は配列番号 1に示される)。なお好ましくは、前記立体的な腔は、更にヒト Syk タンパク質のポジション9に位置するセリン残基, ポジション 43に位置するグルタミン残基, ポジション51に位置するフェニルアラニン残基, ポジション66に位置するイソロイシン残基, ポジション 67 および 69に位置するグルタミン酸残基, ポジション 70に位置するロイシン残基, ポジション 71に位置するアスパラギン残基, ポジション 72に位置するグリシン残基, ポジション 73に位置するスレオニン残基, ポジション 74に位置するチロシン残基およびポジション 75に位置するアラニン残基を含む(その配列は配列番号 1で示される)。
【0021】
より好ましくは、Syk タンパク質に関する本発明の分子の解離定数(またはKd)で測定されるインビトロ 親和性は、100 μM未満, より好ましくは, 50 μM未満, 特に好ましくは 25 μM未満である。Syk タンパク質に対する本発明の分子の親和性は、例えば、0.01および100 μMの間, 0.1および50 μMの間または0.5および25 μMの間である。Syk タンパク質に対する本発明の分子の解離定数は、特にインビトロで蛍光分光学 (または分光蛍光分析)の手段で測定されてもよい。
【0022】
さらに本発明は、ヒトまたは動物においてSykが関与している代謝経路に依存するコンディションを予防または治療する医薬品の製造における本発明の分子の使用に関する。
【0023】
特に好適な態様によると、本発明の分子または塩は、I型過感受性反応の予防または治療する医薬品の製造における使用である。
【0024】
「過感受性」の用語は、中等度のアレルギー反応 (皮疹, 鼻炎, 結膜炎, など)から重篤な全身性の反応(幾つかのケースにおいて、潜在的にアナフィラキシーショックを生じ、潜在的に生命を危うくする)の範囲にわたる影響をともなうアレルゲン(例えば、花粉, 粉塵, 動物の毛髪または特定の食品)に対する不適切な又は過剰な免疫応答を参照する。即時型および遅延型の過敏症反応は、それぞれGell および Coombs (Gell PGH, Coombs RRA, eds. Clinical Aspects of Immunology. 1st ed. Oxford, England: Blackwell; 1963 39 )が規定した分類でI型およびIV型に分類される。この分類によると、「I型(アトピー性またはアナフィラキシー性の)過感受性」は、特異的な抗原またはアレルゲンへの曝露(例えば、嚥下, 吸入, 注射または直接の接触による), およびプラズマ細胞による免疫グロブリン E (IgE)分泌の惹起に関連する即時型のアレルギー反応である。IgEは、組織のマスト細胞および血液の好塩基球の表面に見つけられるFc レセプターと結合する。同じアレルゲンで感作されたマスト細胞および好塩基球への引き続く曝露によって、対応するIgEを有している細胞の脱顆粒、周囲の組織に作用(特に、血管拡張および平滑筋の収縮の上昇を与える)するメディエータ(例えば、ヒスタミン, ロイコトリエンまたはプロスタグランジン)の放出を生じる。前記反応は局所性または全身性の可能性があり、症状は中等度の刺激作用からアナフィラキシーショックが原因での突然死まで変動する。I型過感受性により生じるコンディションの例には、アレルギー性喘息, アレルギー性結膜炎, アレルギー性鼻炎(枯草熱), アナフィラキシー, 血管性浮腫, じんま疹, 好酸球増加症, 抗生物質(例えば、ペニシリンまたはセファロスポリン)へのアレルギーが含まれる。「II型過感受性」または「抗体依存性の免疫応答」は、一般に数時間から一日を必要とする反応であり、抗体(IgG, IgM) および 抗原の間での、この抗原を保持している患者の細胞の表面における相互作用と関連し、これらの細胞の破壊およびBリンパ球の増殖を生じ、前記抗原に対する抗体を産生する。「III型過感受性」または「免疫複合体病」は、数時間, 数日または数週にかけて進展する反応であり、抗体および抗原の類似する量の存在と関連し、血管において排出循環に適切ではない免疫複合体の形成、血管の壁への沈着を生じ、局所性または全身性の炎症応答を生じる。「IV型過感受性」または「細胞性免疫」または「遅延過敏症反応」は、一般に発生に二から三日を必要とし、抗体応答と関連しないが、主要組織適合複合体 IまたはII 抗原を発現する細胞およびT リンパ球により媒介されるリンフォカインの放出および/または細胞毒性を生じるT リンパ球の間の複合体の形成と関連する免疫反応である。
【0025】
好ましくは、本発明の分子または塩は、IgE依存的なマスト細胞の脱顆粒を阻害するI型過感受性反応の予防または治療のための医薬品を製造するための使用である。より好ましくは、本発明の分子は、1ng/ml および1 mg/mlの間の濃度、例えば、1 ng/ml および500 μg/mlの間, 1 ng/ml および250 μg/mlの間, 1 ng/ml および100 μg/mlの間, 1 ng/ml および50 μg/mlの間, 1 ng/ml および10 μg/mlの間, 1 ng/ml および5 μg/mlの間または1 ng/ml および2 μg/mlの間の濃度でインビトロでマスト細胞の脱顆粒を50%阻害する能力がある。好ましくは、本発明の分子の1 nM および1 mMの間、例えば、1 nM および100 nMの間, 10 nM および100 nMの間または1 nM および10 nMの間の量は、インビトロでマスト細胞の脱顆粒を50%阻害する能力がある。
【0026】
より好ましくは、本発明の分子または塩のSykが関与している代謝経路は、マスト細胞または好塩基球の活性化経路である。
【0027】
より好ましくは、本発明の分子または塩が作用するコンディションは、アレルギー性喘息, アレルギー性結膜炎, アレルギー性鼻炎, アナフィラキシー, 血管性浮腫, じんま疹, 好酸球増加症または抗生物質アレルギーである。
【0028】
好適な態様によると、本発明の分子または塩は、マスト細胞の脱顆粒および/または I型過感受性反応を生じるもの以外、ヒト Syk タンパク質 (配列番号 1)が関与している代謝経路に影響を有さない。より好ましくは、本発明の分子または塩は、胸腺依存性の抗原による免疫化につづく抗体応答またはSyk依存性の好中球のリクルートに影響を有さない。
【0029】
また、Syk チロシンキナーゼ タンパク質は、Bリンパ球, T リンパ球, 好中球, 好酸球, NK 細胞, 血小板, 赤血球, 破骨細胞, 上皮細胞または癌細胞の表面に見出される。代替的な態様によると、本発明の分子または塩が作用するSykが関与している代謝経路は、Bリンパ球, Tリンパ球, 好中球, 好酸球, NK細胞, 血小板, 赤血球, 破骨細胞, 上皮細胞または癌細胞の活性化経路である。この態様によると、本発明の分子または塩が作用するコンディションは、関節リウマチ, 自己免疫疾患, 炎症または癌であってもよい。
【0030】
特定の態様によると、本発明の分子または塩は、別の治療上の分子と組み合わせて使用してもよい。例えば、Sykが関与している代謝経路に依存的なコンディションの予防または治療に使用される治療上の分子または他方でSykが関与している代謝経路に依存的ではないコンディションの予防または治療に使用される治療上の分子からなってもよい。好適な態様によると、本発明の分子または塩は、アレルギーまたはI型過感受性の治療に又はそれらと関連する症状の治療に使用される分子と組み合わせて使用される。より好ましくは、本発明の分子または塩は、エピネフリン (またはアドレナリン), H1 抗ヒスタミン薬、例えば、ジフェンヒドラミン, メクリジン, フルフェナジン, ペルフェナジン, プロクロルペラジン, トリフロペラジン, アクリバスチン, アステミゾール, セチリジン, レボセチリジン, フェキソフェナジン, ロラタジン, デスロラタジン, ミゾラスチン, アゼラスチン, レボカバスチン, オロパタジン, クロモグリカート, ネドクロミル, 非ステロイド性の抗炎症剤(NSAID)またはステロイド性の抗炎症剤、例えば、コルチゾン, ヒドロコルチゾン (またはコルチゾール), 酢酸コルチゾン, プレドニゾン, プレドニゾロン, メチルプレドニゾロン, デキサメサゾン, ベタメタゾン, トリアムシノロン, ベクロメタゾン, フルドロコルチゾン, 酢酸デオキシコルチコステロンまたはアルドステロンと組み合わせて使用される。更なる好適な態様によると、本発明の分子または塩は、アレルギー性の脱感作 (または抗アレルギー性のワクチン接種)(即ち、アレルゲンの用量の規則的な増加に基づいた治療)と組み合わせて使用される。特定の態様によると、本発明の分子は、糖質コルチコイド レセプター アゴニストと組み合わせて使用されない。
【0031】
本発明の分子または塩は、任意の投与経路、特に口, 舌下, 鼻, 眼球, 局所, 静脈内, 腹腔内, 皮下の経路, エアロゾルまたは吸入で投与されてもよい。
【0032】
本発明の分子または塩は、特に成人, 子供または新生児のヒトの患者に投与されてもよい。また、本発明の分子または塩は、動物の患者, 特に哺乳類(例えば、 イヌ, ネコ, ラット, マウス)に投与されてもよい。
【0033】
特に、本発明の分子または塩は、特に患者のコンディション, 病歴および年齢に基づいて決定される用量(例えば、0.1 mg/kg および 200 mg/kgの間の用量)でヒトの患者に投与される。
【0034】
また、本発明は、ヒトまたは動物の患者におけるSykが関与している代謝経路に依存的なコンディションの治療または予防のための治療上の方法に関し、該方法は本発明の分子を患者に患者のコンディション, 病歴および年齢に基づいて決定される用量, インターバル および 期間で投与することを含む。
【0035】
特に好適な態様によると、本発明の分子は、全てのC-13からなる分子, 表1に与えられる番号1 から87の分子および次の式(I), (II), (III)または(IV)のいずれかを有している分子から選択される:
【0036】
【化2】

【0037】
式中で
R1は、任意に置換された芳香族基,または任意に置換された少なくとも 一つのS, OまたはN 原子を含んでいる複素環であり;
R2は、任意に置換された芳香族基, 任意に置換された複素環, アミン基を含んでいる任意に飽和の炭素鎖, 任意に置換された芳香族基を含んでいる任意に飽和の炭素鎖または少なくとも 一つのS, OまたはN 原子を含んでいる任意に置換された複素環を含んでいる任意に飽和の炭素鎖であり;
R3は、任意に置換されたフェニル, 2-ピリジニル, 3-ピリジニルまたは4-ピリジニル基であり;
【0038】
【化3】

【0039】
式中で
n = 0または1; n' = 0または1であり;
R4は、1 から5の炭素原子を含み、任意に芳香族基で置換された任意で飽和の炭素鎖;
R5は、任意に置換された芳香族基または任意に置換されたアミン基であり;
R6は、水素原子, アルコキシ 基, アルキル基またはハロゲンであり;
R7は、水素原子, アルコキシ 基, アルキル基またはハロゲンであり;
R8は、水素原子, アルコキシ 基, アルキル基またはハロゲンであり;
【0040】
【化4】

【0041】
式中で
m = 0, 1または2であり;
R9は水素原子であり、R10は任意に置換されたフェニル基であり,またはR9およびR10は同じ任意に置換された複素環の部分であり,またはR9およびR10は同じ任意に置換された芳香族基の部分であり;
R11は、水素原子, アルコキシ基またはアルキル基であり;
R12は、水素原子, アルコキシ基またはアルキル基であり;
R13は、水素原子またはアルキルまたはアルコキシ基であり;
R14は、水素原子またはアルキルまたはアルコキシ基であり;
【0042】
【化5】

【0043】
式中で
Aは、酸素またはイオウ原子であり;
R15は、1, 2または3つの炭素原子を含み、任意に置換された芳香族基, 任意に置換された複素環または任意に置換された複素環に属しているアミン 基で任意に置換された任意に飽和の炭素鎖であり;
R16は、水素原子, ハロゲンまたはアルコキシ基であり;
R17は、水素原子, アルコキシ基またはアセトキシ基である。
【0044】
特定の態様によると、式 (I)を有している分子のR1基は、以下に記載する基から選択される、即ち:
FまたはCl 原子, メチルまたはエチル基, N,N-ジメチル-スルホンアミドまたはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基から選択される二つの基で任意に置換されたフェニル基,
以下の基,
【0045】
【化6】

【0046】
メチル, エチル, ヒドロキシル, メトキシまたはエトキシ基で任意に置換されたフラン基,
メチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基で任意に置換されたチオフェン基;
式 (I)を有している分子のR2基は、以下に記載する基から選択される、即ち:
以下の基,
【0047】
【化7】

【0048】
式中でR21 および R22は、各々が1, 2または3の炭素原子を含んでいるアルキル鎖に属している,または両方が酸素原子または第二の窒素原子を含んでいる同じ任意に飽和の複素環に結合する窒素原子に属している炭素原子である,または
以下の基,
【0049】
【化8】

【0050】
式中でR23 および R24は、各々が1, 2または3の炭素原子を含んでいるアルキル鎖に属している,または両方が酸素原子または第二の窒素原子を含んでいる同じ任意に飽和の複素環に結合する窒素原子に属している炭素原子である,または
以下の基,
【0051】
【化9】

【0052】
および式 (I)を有している分子のR3基は、以下に記載する基から選択される、即ち:
非置換の2-ピリジニル, 3-ピリジニルまたは4-ピリジニル基,
ベンゾキシ基, および/またはヒドロキシル基, および/またはメチル基, および/またはエチル基, および/またはプロピル基, および/または一または二のBr, FまたはCl 原子, および/または一ないし三のヒドロキシル, メトキシまたはエトキシ基で任意に置換されたフェニル基。
【0053】
特定の態様によると、式 (I)を有している分子のR3基がフェニル基である場合、式 (I)を有している分子のR2基は芳香族基または複素環ではない。
【0054】
特定の態様によると、式 (II)を有している分子のR4基は1, 2または3の炭素原子を含んでいる任意で飽和の炭素鎖であり; R5基はフェニル基または任意に置換されたフェニル基で,または以下の基で置換された二級アミン基であり、
【0055】
【化10】

【0056】
式 (II)を有している分子のR6基は水素または塩素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシル, メトキシまたはエトキシ基であり; 式 (II)を有している分子のR7基は水素または塩素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ 基であり; 式 (II)を有している分子のR8基は水素または塩素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基である。
【0057】
特定の態様によると、
式 (III)を有している分子のR9基は水素原子であり、R10基は任意に置換されたフェニル基であり,またはR9およびR10基は2の窒素原子および4の炭素原子を含んでいる同じ任意に置換された複素環に属し;
式 (III)を有している分子のR11基は、水素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり;
式 (III)を有している分子のR12基は、水素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり;
式 (III)を有している分子のR13基は、水素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり;
および式 (III)を有している分子のR14基は、水素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基である。
【0058】
更なる特定の態様によると、式 (IV)を有している分子のR15基が以下の基であり、
【0059】
【化11】

【0060】
式 (IV)を有している分子のR16基は水素または塩素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり、式 (IV)を有している分子のR17基はメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシ, エトキシ, アセトキシ, メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル基である。
【0061】
特定の態様によると、本発明の分子は、以下のグループではない、
【0062】
【化12】

【0063】
,または
これらの分子の何れかである場合、糖質コルチコイド アゴニストと組み合わせて使用されない。
【0064】
炭素鎖の用語は、ネットワークとしての共有結合性の結合により連結された直鎖状または環状, 任意に分枝状の隣接する炭素原子の鎖形成を有している有機物の鎖を参照する。本発明の炭素鎖は、例えば、一から二十、好ましくは 1 から12, 1 から10, 1 から6, 1 から5または1 から4の炭素原子の直鎖状の鎖形成であってもよい。特に、アルキル基〔即ち、水素原子の欠損によりアルカン(直鎖状または分枝状の飽和炭化水素分子)から由来する〕、例えば、メチル 基, エチル基, 直鎖状または分枝状のプロピル基または直鎖状または分枝状のブチル基または直鎖状または分枝状の不飽和の炭化水素鎖、例えば、エテニルまたはエチニル基からなってもよい。炭素鎖ネットワークを形成している各々の炭素原子の外層(数の上で4)の電子は、更なる炭素原子またはヘテロ原子との共有結合に関与していなく、水素原子との共有結合に関与することが理解される。
【0065】
「ヘテロ原子」の用語は、炭素または水素以外の非金属性の原子を参照し、例えば、酸素, 窒素, イオウ, リンまたはハロゲンである。
【0066】
「芳香族またはアリール基」の用語は、芳香族性のヒュッケル則が観察される不飽和の環系を参照する。例えば、フェニル基(ベンゼン核から由来する基)からなってもよい。
【0067】
「複素環」の用語は、一または複数の炭素原子がヘテロ原子(例えば、酸素, 窒素またはイオウ)で置換された環系を参照する。特に、芳香族複素環(例えば、ピロール, チオフェン, フランおよび ピリジン)または飽和複素環(例えば、糖,または炭水化物)からなってもよい。例えば、本発明の複素環は、2 から8 の炭素原子 および 1 から4のヘテロ原子を含む, 好ましくは 2, 3, 4または5の炭素原子 および 1, 2, 3または4のヘテロ原子を含む。
【0068】
本発明の炭素鎖, 芳香族基, 環または複素環に属している各原子は、一または複数のハロゲン、例えば、フッ素, 塩素, ヨウ素または臭素, および/または一または複数の有機基、例えば、一または複数の芳香族 (例えば、フェニル基), 環, 複素環 (例えば、フランまたはチオフェン基), アルキル (例えば、メチル基, エチル基, 直鎖状または分枝状のプロピル基または直鎖状または分枝状のブチル基), アルコキシ (例えば、メトキシ (OCH3)またはエトキシ (OCH2CH3) 基), カルボキシル (例えば、カルボキシル(COOH) 基), カルボニル (例えば、アセトキシ (OCOCH3)またはメトキシカルボニル (COOCH3)またはエトキシカルボニル (COOCH2CH3) 基), 一, 二または三級アミン, アミド (例えば、アセトアミド基)またはスルホンアミド (例えば、N,N-ジメチル-スルホンアミド基)基による共有結合を介して置換されてもよい。飽和, 不飽和または芳香族の環または複素環がさらなる環と、二の炭素原子の間を一または二重結合などで結合しえることが理解される。
【0069】
また、本発明は、本発明の分子および薬理学的に許容される賦形剤を含んでいる薬学的組成物に関する。
【0070】
一態様によると、本発明の薬学的組成物は、さらなる治療上の分子を含む。例えば、Sykが関与している代謝経路に依存的なコンディションの予防または治療に使用される治療上の分子または他方でSykが関与している代謝経路に依存的ではないコンディションの予防または治療に使用される治療上の分子からなってもよい。特定の態様によると、本発明の薬学的組成物は、糖質コルチコイド レセプター アゴニストを含まない。
【0071】
更なる特定の態様によると、本発明の薬学的組成物は、一または複数の更なる薬学的組成物と組み合わせて使用しえる。例えば、Sykが関与している代謝経路に依存的なコンディションの予防または治療に使用される薬学的組成物または他方でSykが関与している代謝経路に依存的ではないコンディションの予防または治療に使用される薬学的組成物であってもよい。この態様によると、本発明の薬学的組成物および更なる薬学的組成物は、同時または交互に、同じ投与経路または異なる経路で投与されてもよい。特定の態様によると、本発明の薬学的組成物は、糖質コルチコイド レセプター アゴニストと組み合わせて使用されない。
【0072】
また、本発明は、Syk チロシンキナーゼタンパク質と結合し、50 および2500 ダルトンの間の分子量を有し、(i) 抗体断片 G4G11 (配列番号2),または(ii) 抗体断片 G4E4 (配列番号3),または(iii) ヒトSyk チロシンキナーゼタンパク質と少なくとも一つの配列番号1で表されるヒトSyk チロシンキナーゼタンパク質のアミノ酸配列の残基 65 から74を含んでいるエピトープにおいて結合する抗体または抗体断片,または(iv) ヒトSyk チロシンキナーゼタンパク質と結合し、少なくとも 10%抗体断片 G4G11またはG4E4とヒトSyk チロシンキナーゼタンパク質 (配列番号1)との結合を阻害する抗体または抗体断片と、ヒトSyk チロシンキナーゼタンパク質または動物における任意のそのバリアントとの結合をインビトロで少なくとも 5%, 好ましくは 少なくとも 10%、例えば、少なくとも 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80または85%阻害する能力のある有機分子を同定するための方法に関し、該方法は少なくとも以下の工程を含む:
a) 50 および2500 Daの間の分子量を有している候補の有機分子バンクから、Syk タンパク質とSyk タンパク質の立体的な腔において結合しやすく、上記の式 C-13, I, II, III, IVまたは1 から87を有している分子から選択される分子をスクリーニングすることと;
b) a)で同定された分子から、抗体または抗体断片 (i), (ii), (iii)または(iv) とSyk タンパク質との結合をインビトロで少なくとも 5%, 好ましくは 少なくとも 10%、例えば、 少なくとも 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50, 55, 60, 65, 70, 75, 80または85 %阻害する能力のあるものから選択すること。
【0073】
特に好適な態様によると、上記の式 C-13, I, II, III, IVまたは1 から87を有している分子から選択される工程a)からの分子は、分子C-13, 分子(59)または分子(61)である。
【0074】
好適な態様によると、本発明の方法は、工程 a)の前に、式 C-13, I, II, III, IVまたは1 から87を有している分子から選択される分子のSyk タンパク質における立体的な腔を同定するための付加的な工程を含む。この前の工程は、「インシリコ ドッキング」で実施されてもよい。
【0075】
「インシリコ ドッキング」または「分子ドッキング」または「バーチャル ドッキング」の用語は、高分子におけるリガンドのポジションを予測およびモデリングするためのバイオインフォマティクスのツールの使用を参照する。特に、インシリコ ドッキングのツールを使用して、所与の化学物質が活性な標的タンパク質と(例えば、以前に同定された立体的な腔において)ドッキングできることに関する確率を計算できる。
【0076】
好適な態様によると、本発明の方法は、1ng/ml および1mg/mlの間の濃度、例えば、 1 ng/ml および500 μg/mlの間, 1 ng/ml および250 μg/mlの間, 1 ng/ml および100 μg/mlの間, 1 ng/ml および50 μg/mlの間, 1 ng/ml および10 μg/mlの間, 1 ng/ml および5 μg/mlの間または1 ng/ml および2 μg/mlの間の濃度でインビトロでマスト細胞の脱顆粒を50%阻害する能力がある(IC50)ものをb)において同定された分子から選択するための付加的な工程 c)を含む。
【0077】
上記の使用および方法の特に好適な態様によると、本発明の分子は分子 C-13 および表 1に与えられる分子 No. 1 から87からなる群から選択される。
【0078】
これらの分子は、以前の研究 (Dauvillier et al., 2002 7)につづくプロジェクト領域において発明者により同定され、その研究で彼らはscFv(「単鎖可変ドメイン」) (または「細胞内抗体」または「イントラボディー」), G4G11 (配列番号2) および G4E4 (配列番号3)の抗体断片をマスト細胞株において発現させた。この研究は、マスト細胞膜におけるFcεRI 刺激により誘導されたアレルギー性メディエータの放出におけるこれらの「細胞内抗体」または「イントラボディー」の阻害効果を実証した。scFv G4G11 および G4E4 抗体断片は、SykのSH2 ドメインおよび同じそれを分けているインタードメイン A 領域(即ち、Syk キナーゼ ドメインを含んでいないSyk タンパク質の部分)を含んでいる組換えタンパク質に対してスクリーニングされたコンビナトリ バンクから単離された 8
【0079】
ADA (「抗体置換アッセイ」)法は、発明者により開発され、WO2005106481に記載された(特に、標的が関与している機能的なカスケードを選択的に変化させる能力のあるリガンドを同定するための)方法であり、標的と結合する能力のある細胞内抗体を同定し、所望の機能的なカスケードを変化させるための第一の工程、標的および細胞内抗体(潜在的に細胞外の検査においてインビトロで実施される)の間の結合を変化させる小さい有機分子, リガンドをバンクからスクリーニングするための第二の工程、および第二の工程で得られた変化させるリガンドから細胞において機能的なカスケードを変化させる能力のあるものを同定するための第三の工程を含む。
【0080】
抗体断片 G4G11 および G4E4が、脱顆粒を生じる機能的なカスケードにおける一以上の必須のパートナーと相互作用するSykの領域に結合するとの理論を発明者は提案した。治療における細胞内抗体の使用の制限(例えば、標的細胞において抗体をコード化している遺伝子の効率的な転移9)を考慮して、発明者はイントラボディーG4G11を機能的に模倣するものとして作用し、治療に簡便に使用される適切な有機分子を単離することを考えた。この目的を達するために、彼等は3000の小有機分子のバンクをスクリーニングし、潜在的なアレルギー反応インヒビターのためADA法を使用した。
【0081】
試験した3000の小型の有機分子のなかで、発明者は、小分子 C-13 (メチル 2-{5-[(3-ベンジル-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-5-イリデン)メチル]-2-フリル}ベンゾアート)を同定し、抗体断片 G4G11またはG4E4 とSykとのインビトロの相互作用を変化させ、インビトロでFcεRIにより誘導されたマスト細胞の脱顆粒を阻害する能力を実証した。
【0082】
特に、化合物 C-13が経口的に投与された場合にアナフィラキシーショックを阻止し、有望な抗-アレルギー性の特性を有し、本願に記載のアプローチを用いて単離された医薬品候補の強い治療上のポテンシャルが示されることを発明者は実証した。
【0083】
また、C-13がSykとSykの両方のSH2 ドメイン および インタードメイン Aの間に位置する新しく同定された腔において結合するとの事実を発明者は実証した(図1)。C-13の結合腔は、Sykに特異的なユニークな相互作用ゾーンを形成し、Sykの生理的なリガンドの既知の結合サイド(例えば、チロシン残基における二重にリン酸化されたITAM ペプチド)と対応しない(図 1A)。C-13がSyk と幾つかの高分子の基質との相互作用を、Sykのパートナーが直接の接触を確立できるだろう表面をC-13が占有することで直接的に及び/又はアロステリック効果の何れかで阻害することを得られた結果は示唆する。
【0084】
マスト細胞で行われる生化学的な研究は、実際にC-13がSLP-76のチロシン残基におけるFcεRI-依存的なリン酸化を阻害し、Btk, PLC-γ および VavとLAT で形成された高分子のシグナル伝達複合体との結合および/または安定化のための機能の適合に寄与することを実証した22, 28-30 (図2)。これは、カルシウムの流れおよびエキソサイトーシスを維持するため必要とされる完全なリン酸化のためのSyk および/または Btkの近傍におけるBtkのリン酸化および触媒活性およびPLC-γ のリニューアルに影響する31-35。実際、C-13は、FcεRI レセプターにおける凝集により誘導された早期性(β-ヘキソサミニダーゼ放出) および 遅延性(TNF-α 分泌)のマスト細胞応答を2 μMの推定IC50で阻害した(図 3)。
【0085】
有意に、C-13の単一用量の経口投与は、IgE-誘導性の受動全身アナフィラキシー (PSA)を110 mg/kgの推定IC50で阻害し(図 4)、この化合物の有望な抗-アレルギー特性が確認された。これに対し、100 mg/kg のC-13の単一の経口投与は、百日咳菌トキシンの存在下で腹腔におけるチオグリコレートにより誘導されたSyk-依存的な好中球のリクルートに影響しなかった(図 5A)。さらにまた、BCR-依存的なBリンパ球のインビトロ増殖がC-13で用量依存的な様式で阻害されたとの事実にもかかわらず(図 5B)、胸腺依存性抗原で免疫したマウスの抗体応答が150mg/kg のC-13の経口投与で影響されなかったことを発明者は実証した(図5C)。従って、分子 C-13は、インビボで重篤なアレルギー性反応を阻害しやすい投与の用量および期間で、幾つかのSykに依存的な応答に影響しなく、マスト細胞に依存的ではない。
【0086】
一時間から12 日の範囲の期間でのC-13の経口または局所投与につづいて毒性効果が見かけ上ないことを考慮すると、C-13は、経口投与に適切な新しい ファミリーのSyk インヒビターの潜在的な最初のメンバーであり、抗炎症性効果を有している薬理学的に活性な分子と考えられる。本願に記載の薬学的な分子スクリーニングアプローチは、抗体の初期の使用により治療上のポテンシャルを有している標的分子のドメインの検出が可能となり、機能的な抗体模倣体として及び潜在的なタンパク質タンパク質相互作用のインヒビターとして作用する能力のある化学的な分子の(インシリコおよび/またはインビトロのスクリーニングを介した)デザインを促進する一般的なプラットフォームを提示する。さらにまた、これらの小分子が細胞および動物のモデルにおいて所望の応答を誘導できることを発明者は実証し、投与することが困難な大きい高分子を経口投与に適切な小さい有機分子で置換することが望まれるとの着想を支持している。
【0087】
Sykとの可能な結合サイトは、インシリコで予測され、G4G11のエピトープの位置によりガイドされる。Sykの二つのSH2 ドメインおよび インタードメイン結合の間に位置するインターフェースにおいてG4G11のエピトープと隣接し、残基 Ser 9, Gln 43, Phe 51, Ile 66, Glu 67, Arg 68, Glu 69, Leu 70, Asn 71, Gly 72, Thr 73, Tyr 74, Ala 75, Glu 121 および Glu 155を含んでいる一つの候補の腔が、同定された(図 1C)。ヒト Syk タンパク質の残基 Arg 68, Glu 121 および Glu 155はC-13との相互作用に重要な役割を有し、前記残基の変異がC-13によって生じた阻害を抑制し、他方でscFv G4G11の結合は維持されることが標的部位の突然変異誘発実験により確認された(図 1A, 1C)。これらの結果によって、C-13またはSykの結合腔がイントラボディーG4G11の結合サイトの近傍に局在するとの理論が確認される。
【0088】
次に発明者は、分子バンクにおいてバーチャル ドッキングを行って、前記立体的な腔において最大の結合特性を有している候補分子を同定し、前記候補分子のscFv G4G11 とSykとの結合を阻害する能力を試験した。これらの分子は、表 1に与えられる(例 2を参照されたい)。また、インビトロでこれらの分子のマスト細胞の脱顆粒を阻害する能力を試験した。特に分子 No. 59 および 61に関して、マスト細胞の脱顆粒をインビトロで50%阻害する濃度は、5μMの領域にある(図 6を参照されたい)。
【0089】
実験の部分および特に表 1に与えられる結果は、本発明の分子または塩がI型過感受性反応(特に、IgE-依存的なマスト細胞の脱顆粒)を阻害し、インビボでBALB/cマウスにおける受動皮膚および全身性のアナフィラキシーに干渉する能力があることを実証する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】C-13 とSykのインビトロでの結合。A. C-13の化学構造。残基 Ser 9, Gln 43, Phe 51, Arg 68, Glu 121 および Glu 155を含むC-13 (または「化合物 13」)に関して予測および確認された3D構造の腔(メッシュ表現); G4G11 エピトープは配列番号 1で表されるヒト Syk タンパク質の残基 65 から74を含む。B. C-13の存在下でADA法を用いて測定されたscFv G4G11 断片とSykの結合(□)。蛍光分光学を用いて測定されたC-13とSykの結合(○) (Kd = 4.8 ± 0.2 μM)。C. ADA法でのG4G11 とSyk 変異体の結合。C-13 対 DMFの有意な阻害: **P<.01。
【図2】C-13は、FcεRI-誘導性のマスト細胞活性化を阻害する。A. RBL-2H3の細胞ライセートで作出された免疫ブロットを、特定の抗体での免疫ブロットで分析した。Syk, Btk および Lyn の免疫ブロットのインビトロキナーゼ活性を検査した。B. RBL-2H3細胞溶解産物、および C. BMMCsが電気泳動法に供試され、タンパク質が免疫ブロットで分析された。これらのデータは、少なくとも二つの実験の代表である。
【図3】C-13は、FcεRI-依存性のカルシウム遊離 および 脱顆粒を阻害する。A. RBL-2H3細胞における、IgE-依存性のカルシウム流のFACS分析。B. IgE/DNPで感作したRBL-2H3 細胞におけるβ-ヘキソサミニダーゼの放出。C. β-ヘキソサミニダーゼの放出、および, D. IgE/DNPで感作したBMMCs 細胞におけるTNF-αのタイトレーション(C-13: 3 μM)。E. RBL-2H3 細胞におけるFcεRI 表面発現のFACS分析。(0=0.25% DMF)。C-13 対 DMFの有意な阻害: **P<.01および*P<.05。
【図4】BALB/c マウスにおけるインビボ試験。A-C. PSA 反応。A. 温度の経過, B. Evansブルーでの血管外遊出の定量, C. C-13の130 mg/kgの経口投与によるエバンスブルー血管外遊出を示している写真〔非関連の化合物 (IR)またはベクター (T); 無処置の動物(NT)〕。非関連の化合物 (IR)またはベクター単独(T)を受けたマウスの耳および尾は顕著な青色となり、C-13で処理されたマウスのものは淡青色となり、無処置のマウスは通常の色である; D. PCA反応: エバンスブルー血管外遊出の定量。C-13での有意な阻害 対 非関連性の化合物: **P < .01; 対 ビヒクル +DNP-KLH: *P < .05。
【図5】C-13の好中球 および Bリンパ球におけるインビボ および インビトロの効果。A. 百日咳菌トキシンの存在下でチオグリコレートまたはビヒクルを注射した後の腹腔における好中球のリクルート(定められている場合)(n=4)。B. 抗-IgMで誘導されたインビトロでのBリンパ球の増殖。C. TNP-KLHで免疫化後12 日の血清免疫グロブリン濃度(n=4)。
【図6】分子 No. 59 (ref.Chembridge 7501888) および 61 (ref. Chembridge 7722851)のRBL-2H3 細胞の脱顆粒における効果。IgE/DNPで感作したRBL-2H3 細胞におけるβ-ヘキソサミニダーゼ放出のレベルを、分子 No. 59(A.)および分子 No. 61(B.)の存在下で0 から40 μMの濃度で測定した。
【図7】イントラボディーscFv A. G4G11 (配列番号 2) および B. G4E4 (配列番号 3)のアミノ酸配列。
【図8】アクセッション番号NP_003168 (NCBI)に対応するヒト (A.)(配列番号1)およびアクセッション番号NP_035648 (NCBI)に対応するマウス(B.)のSykタンパク質のアミノ酸配列。ヒト Syk タンパク質におけるC-13の立体的な腔に属していると同定された残基(A)およびマウスの Syk タンパク質の均等物(B)は、太字および下線で示される。
【図9】マスト細胞におけるSyk チロシンキナーゼが関与している代謝経路の模式的な表現。
【図10】BMMC 細胞におけるC-13の毒性試験。BMMC 細胞を、2.5 μMまたは5 μM のC-13, 0.25% DMFまたはスタウロスポリンの存在下で、37℃でインキュベーションした。3 時間後および5 日後の生きた BMMC 細胞のパーセンテージを、アネキシン-V および プロピジウム ヨウ化物の二重の標識化で検出した。2.5 μMまたは5 μM のC-13または0.25% DMFの存在下でインキュベーションしたBMMC 細胞の生存度は、3 時間 (それぞれ78%, 74% および 79%)または五 日(それぞれ62, 56 および 57%)後に顕著な程度では影響されなかった。他方で、同じ条件下でスタウロスポリンで処理されたBMMC 細胞の生存度は、僅か3 時間後に16%のレベルに減少した。
【0091】
[例]
例 1 アナフィラキシーショックを予防するための経口投与に潜在的に適切な分子 C-13の同定。
【0092】
1) 化合物 13 (C-13)の同定およびSykにおけるその結合腔
発明者は、scFv G4G11 とSykとの会合を置換する能力のある小分子を同定するためのADA (抗原置換アッセイ)法を開発した。3000の化学的な分子バンクのメンバーのなかで、15の小分子がscFv G4G11およびSykの結合と競合する能力があることが証明された。これらの化合物のなかで以下C-13 (図 1A)と称される化合物は、推定のIC50が4 μM の最大の阻害ポテンシャルを示した(図 1B)。この結果は、蛍光分光学 (または分光蛍光分析)の手段でC-13のSykに対するインビトロ親和性を測定することで得られた4.8 μMと等しい解離定数値 (またはKd)と一致している(図 1B)。C-13の作用様式を理解するため、発明者は最初にSPOT法を用いてG4G11の結合サイトを同定した16。SykのN末端 SH2 ドメインに位置し、アミノ酸 65-74を含み、マウス, ラット およびヒトの配列において100%保存されたエピトープが同定された。
【0093】
この情報およびSykのSH2 ドメインおよびITAMモチーフにより形成されたペプチド複合体の既知の3D構造を基礎として17、発明者は、C-13に関する推定上の結合サイトを位置を突き止めるためコンピュータを利用したアプローチを使用した。ヒト Syk タンパク質の残基 Ser 9, Gln 43, Phe 51, Ile 66, Glu 67, Arg 68, Glu 69, Leu 70, Asn 71, Gly 72, Thr 73, Tyr 74, Ala 75, Glu 121 および Glu 155を含み(図 8A, 配列番号 1を参照されたい)、G4G11 エピトープの近傍に位置する候補の腔が同定された(図 1C)。構造の分析によって、残基 Ser 9, Gln 43, Phe 51, Arg 68, Glu 121 および Glu 155がリガンドの結合に関与するだろうこと, およびタンパク質の3D 構造を損なうことなく変異させることができるだろうことが示された。腔をより詳細に確認するため、これらの六つのアミノ酸を個々に変異させ、Syk 変異体をADA検査に供試した。変異によりC-13で生じた阻害がキャンセルされ、scFv G4G11の結合が維持されることから、残基 Arg 68, Glu 121 および Glu 155は小分子との相互作用に重要な役割があることが証明された(図 1C)。これらのデータによって、SykにおけるC-13の結合腔がG4G11の結合サイトの近傍に局在するとの事実が確認された。
【0094】
2) FcεRI-誘導性のマスト細胞の活性化
G4G11との機能的な類似性を検査するために、発明者はマスト細胞の活性化におけるC-13の生物学的効果を探索した。RBL-2H3 細胞をC-13とインキュベーションすることによって、Sykのリン酸化およびFcεRI-誘導性のキナーゼ活性は影響されなかった(図2A)。それ故、基本的にSyk-依存性であることが知られている全ての細胞タンパク質のチロシンリン酸化の全体的なレベルは正常であった(図2B, C)。イントラボディーG4G11と類似して、C-13は、Btkのリン酸化およびFcεRI-誘導性のキナーゼ活性(図2A)およびPLC-γ1 および PLC-γ2(マスト細胞に発現される二つのPLC-γ アイソフォーム)のリン酸化を阻害した(図2A, C)。PTK Lynは、Syk および Btkの双方をリン酸化し、完全な活性化を生じ、引き続きPLC-γのリン酸化を生じる18。C-13がFcεRI-依存性の Lyn 活性化に影響しないならば(図2A)、Btk および PLC-γ リン酸化のレベルの減少が上流のPTKの近傍におけるそれらの正しい位置に関連する欠陥に起因させることができることを結論付けることができる。
【0095】
3) Fyn- および Lyn-依存的なシグナル伝達カスケードの分析
マスト細胞において、シグナル伝達 カスケード Fyn/Gab2/PI3Kは、PI3Kの活性化および原形質膜にプレクストリン相同ドメイン (PH)を含んでいる幾つかのタンパク質(Btk および PLC-γを含む)をリクルートするPI-3,4,5-P3の産生を生じる19。Akt(PI3Kの活性マーカー)のリン酸化の分析によって、C-13が、Fyn-依存的な カスケードに影響しないことが示され(図2B, C)、Btk および PLC-γのリン酸化のレベルの減少はそれらの膜の配置における欠陥が原因ではないことを示唆している(これはカルシウム流の増加に必須の因子であることが知られている)20
【0096】
膜におけるBtk および PLC-γのリクルートは、標準的なシグナル伝達カスケード Lyn/Syk/LAT/SLP-76も必要としている。SykによるLATのリン酸化は、LATにより組織化された複合体へのSLP-76のトランスロケーションを生じ21、ここでSLP-76はSykと共局在する22。この配置によって、SykがSLP-76のN末端チロシンをリン酸化することが可能となり23、ここがVav, Nck および Btkの結合部位となる。LAT および SLP-76 (そのプロリンリッチドメインを介してPLC-γをリクルートする)は、相互作用してPLC-γを膜複合体に配置し、Btk 24 および/または Syk 25によるPLC-γのリン酸化 および 活性化が可能となる。リン酸化(phospho-)特異的抗体の使用によって、C-13がSLP-76のリン酸化を阻害するが、用量依存的な様式でLATのリン酸化を増加させることが実証された(図2A)。発明者は、SLP-76 リン酸化の阻害によって大量のLATがSykと相互作用することが可能となり、そのリン酸化レベルの増加を生じるとの理論を示唆した。これらの結果は、次の事項を実証している:つまり、SLP-76のリン酸化の減少は、SLP-76のLATへのリクルートの欠陥が原因ではなく、Btkの共局在の欠陥を生じ、また低い程度で、Vav とSLP-76との同様の欠陥を生じる(図2A)。それでも、SLP-76へのリクルートに非依存的であることが知られているVavのリン酸化は26、阻害されなかった(図2A)。
【0097】
4) MAPK活性化
SLP-76 とVav および/または Nckとの会合は、マスト細胞における至適な MAPキナーゼ 活性化に役割がある27。C-13が僅かにMAPキナーゼ活性化に影響することを発明者は実証した(リン酸化 レベルを介した評価)、つまり: 高い C-13 濃度はERK1/2のリン酸化レベルを減少させ、他方でp38 および JNKのリン酸化レベルは正常なままである(図2B, C)。
【0098】
5) カルシウム流および脱顆粒
Btk および VavとSLP-76の結合は、膜, カルシウムの移動性および顆粒のエキソサイトーシスにおけるPLC-γ 活性の制御に重要である27, 28。PLC-γ とLATの会合がC-13で用量依存的な様式で阻害されたことを発明者は実証した(図2A)。PLC-γ1およびPLC-γ2 のリン酸化における欠陥と一致して、マスト細胞は、FcεRI 結合に応答したカルシウム流の範囲が減少したこと(図3A)、BMMC (「骨髄由来のマスト細胞」)細胞における及びRBL-2H3 細胞株における早期及び遅延性のFcεRI-誘導性のアレルギー応答も、β-ヘキソサミニダーゼ 放出およびTNF-α 分泌の測定に基づいて、用量依存的な様式で弱くなったことを示した(図3B, C, D)。また、C-13がマスト細胞に毒性作用がないことを結果は実証した。実際、イオノマイシン-誘導性の脱顆粒 (図3B),またはBMMC 細胞の生存度 (図 10を参照されたい)は、C-13での治療により検出可能な程度に影響されなかった。さらにまた、マスト細胞の活性化で観察された欠陥は、FcεRI 表面発現のレベルの減少が原因ではなく、フローサイトメトリー分析はC-13とインキュベーションした細胞が対照細胞のものと類似するFcεRIレベルを発現することを指摘している(図3E)。
【0099】
6) 受動性の全身 (PSA) および 皮膚のアナフィラキシー(PCA)
最終的に、これらの観察をインビボでのマスト細胞の機能に拡張するために、発明者は、BALB/cマウスにおいてDNP-特異的な IgE 分子の投与とつづくDNP-KLH ハプテンでの静脈内刺激により誘導した受動性の全身 (PSA) および 皮膚のアナフィラキシー (PCA)におけるC-13の効果を試験した。これによって、即時型の心肺の変化および血管透過性の増加により示されるような全身性アナフィラキシーが模倣された。全身性アナフィラキシーの強度は、抗原投与につづく体温の降下および血管透過性の増加の両方を測定することによって決定された。C-13の経口投与後(抗原刺激の前)、動物は、毒性の明らかな兆候もなく健常であるように思われた。100 mg/kgのC-13の単一経口用量の投与によって、低体温が阻止され、動物の回復が促進された(図4A)。エバンスブルーの血管外遊出の定量に基づいて、C-13が血管透過性の増加を110 mg/kgの推定IC50で阻害することが決定された(図4B および 4C)。C-13は、25 μMの推定IC50のPCAにおける阻害効果を実証した(図4D)。
【0100】
例 2 C-13の結合腔を用いた更なる潜在的なマスト細胞の脱顆粒インヒビターの同定。
【0101】
例 1-1)で同定された結合腔を用いて、バーチャルのドッキングスクリーニングを、ChemBridge Corporation (San Diego, USA)の化学バンクに含まれる350,000 分子のセットで行って、前記腔において最高の結合を示している1000 分子が同定された。
【0102】
ADA法をこれらの1000 分子の各々に適用して、scFv G4G11 とSykの結合を阻害する能力を測定した。最高の阻害割合(11 および 86.5%の間)を有している87の分子は、表 1に提供される。
【0103】
これらの87 分子をインビトロで試験して、RBL-2H3 細胞の脱顆粒を阻害する能力を評価した(表 1を参照されたい)。最高のポテンシャルを示している二つの分子(分子 No. 59 および 61)を、RBL-2H3 細胞において様々な濃度で試験して、脱顆粒を50%阻害する濃度を詳細に評価した(図 6を参照されたい)。
【0104】
最終的に、Syk タンパク質に関する上記の分子C-13および87 分子の幾つかのインビトロ親和性を蛍光分光学(または分光蛍光分析)で測定し、μモル/litre (μM)の解離定数(またはKd)で表した。
【0105】
表 1: C-13 およびC-13および抗体断片 G4G11を用いて同定された87 分子
CB ref: ChemBridge reference;
Rank: インシリコドッキング後の1000の最良の分子のリストにおける各分子のランク;
In vit. inhib.: 各分子でのscFv G4G11 とSykとのインビトロ結合の置換をADA法で取得した際の平均阻害%;
Degran.IC50: マスト細胞の脱顆粒を50%阻害する濃度;
Kd: Sykについてインビトロで分光蛍光分析で測定された解離定数
No.: 発明者により割り当てられたナンバー;
Gp: 分子が所属するグループ。
【0106】
【表1−1】

【0107】
【表1−2】

【0108】
【表1−3】

【0109】
【表1−4】

【0110】
【表1−5】

【0111】
【表1−6】

【0112】
【表1−7】

【0113】
【表1−8】

【0114】
【表1−9】

【0115】
【表1−10】

【0116】
【表1−11】

【0117】
【表1−12】

【0118】
【表1−13】

【0119】
【表1−14】

【0120】
【表1−15】

【0121】
【表1−16】

【0122】
【表1−17】

【0123】
【表1−18】

【0124】
【表1−19】

【0125】
【表1−20】

【0126】
【表1−21】

【0127】
【表1−22】

【0128】
【表1−23】

【0129】
【表1−24】

【0130】
例 3 材料および方法。
【0131】
1) 化学的な産物および抗体。
【0132】
3000 分子(様々なサブセット)の化学バンクを、ChemBridge, Inc. (San Diego, CA)から取得した。小分子のストック溶液を、10 mMの割合でDMSO(ジメチルスルホキシド)で調製した。但し、C-13 (メチル2-{5-[(3-ベンジル-4-オキソ-2-チオキソ-1,3-チアゾリジン-5-イリデン)メチル]-2-フリル}ベンゾアート, ChemBridge ID No. 6197026)は、DMF (ジメチルホルムアミド)に調製した。他で規定しない限り、全ての試薬はSigmaから供給された。ジニトロフェニル (DNP) ハプテンをCalbiochemから取得した。セファロース GammaBind G および 全ての二次の抗体は、GE Health Amersham Biosciencesから供給された。抗-Syk, 抗-Lyn, 抗-Btk, 抗-PLC-γ1, 抗-PLC-γ2, 抗-LAT, 抗-SLP-76, 抗-p38, 抗-JNK, 抗-Vav, 抗-Akt1 および 9E10 抗体をHRPと抱合したものを、Santa Cruz Biotechnologyから取得した。抗-リン酸化-p44/42 MAPキナーゼ, 抗-p44/42 MAPキナーゼ, 抗-リン酸化-p38, 抗-リン酸化-JNK, 抗-リン酸化-Akt1 抗体を、Cell Signalingから取得した。抗-リン酸化-LAT および 抗-リン酸化-PLC-γ1 抗体はBiosourceから供給され、抗-リン酸化-SLP-76 抗体はBD Pharmingenから供給された。4G10 抗-リン酸化-チロシン モノクローナル抗体を、Upstate Biotechnologyから取得した。
【0133】
2) ADA法: 抗体置換(WO 2005106481)に基づいたELISA型の高速度分子スクリーニング検査。
【0134】
図 8Bに記載されたマウスの Syk チロシンキナーゼタンパク質の残基 6 から242を含んでいる組換え型の融合タンパク質 GST:Syk 6-242 8(配列番号 4)を、ELISA プレートで10 μg ml-1の終濃度で固定化した。化学的な分子バンクのスクリーニングに関して、10 μMの終濃度にPBSで希釈した小分子を、断片 scFv G4G11を終濃度100 nMで付加的な時間添加する前に、ウェルに一時間、周囲温度で添加した。G4G11 とSykの結合を、scFv 断片のC末端に位置するヒト c-myc タンパク質のアミノ酸配列 EQKLISEEDLNを検出する9E10 モノクローナル抗体とHRPの抱合体を添加して評価した。Syk 変異体を産生するため、標的部位の突然変異誘発をGST:Syk 6-242 タンパク質で使用し、G4G11 と変異体の結合を5 μM のC-13の存在下で評価した。
【0135】
3) 細胞、培養条件および機能的な試験。
【0136】
抗-DNP 2682-I マウスモノクローナル抗体を、1 μg/ml のIgEを含んでいるハイブリドーマの培養上清として使用した。大腿の骨髄細胞を、標本とし、10%の胎児ウシ血清および4%のマウスの IL-3を分泌しているX63トランスフェクタントの上清を添加したOpti-MEM 培地(Gibco)において培養した。RBL-2H3 (ATCC) 白血病ラット好塩基球細胞を、10% 胎児ウシ血清 (Gibco)を添加したRPMI 1640培地において単層培養で維持した。RBL-2H3 細胞によって放出されたβ-ヘキソサミニダーゼの測定を、以前の記載7とおり行った〔但し、抗-DNP IgE (0.5μg/ml)でのインキュベーションの12-16 時間後に、細胞を規定の濃度のC-13またはDMF (0.25%)を添加したRPMIにおいて90 minで37℃でインキュベーションした〕。細胞を、DNP-BSA (50 ng ml-1)またはイオノマイシン (1.5 μM)で45 min刺激した。 BMMC 細胞を、一時間、37℃で抗-DNP IgE (100ng/ml)でインキュベーションした。それらを次にC-13 (3 μM)またはDMF (0.3%)で3 時間、37℃でインキュベーションし、様々な濃度のDNP-BSAで刺激した。以前の記載10のとおり、放出されたβ-ヘキソサミニダーゼのレベルを10 min後に測定し、TNF-αのタイトレーションを刺激の3 時間後L929 細胞において細胞毒性検査で行った。図 3に記載された結果は、三つの独立の実験の代表である。
【0137】
4) 免疫沈降, インビトロ キナーゼ アッセイおよび免疫検出。
【0138】
全ての実験を、以前の記載7のとおり行った〔但し、DNP-BSA (50 ng ml-1, 3 min)での刺激前に、RBL-2H3 細胞を90 min、37℃で規定の濃度のC-13またはDMFを添加したRPMI培地でインキュベーションした〕。細胞を、DOC修飾溶解緩衝剤(1% NP-40, 0.25% デオキシコール酸ナトリウム, 0.1% SDSをPBS緩衝剤に含み、プロテアーゼ および ホスファターゼ インヒビターを添加したもの)において可溶化し、タンパク質濃度を決定した(BCA タンパク質 アッセイ, PIERCE)。免疫沈降に関して、非刺激およびIgE/DNPで刺激した細胞ライセートを、事前に形成された抗体およびセファロース GammaBind Gの複合体でインキュベーションし、Syk, Btk およびLyn免疫沈降物のインビトロ キナーゼ活性を検査した。SDS-PAGE分離前に、ライセートまたは免疫沈降物をSDS サンプル 緩衝剤(60 mM Tris, pH 6.8, 2.3% SDS, 10% グリセロール, 0.01% ブロモフェノールブルー)を添加して調製した。タンパク質を、ニトロセルロース膜 (Schleicher & Schuell)に転写し、適切な抗体および改善された化学発光システム(ExactaCruz, Santa Cruz Biotechnology)を用いて検出した。
【0139】
5) レベル および カルシウム移動性および FcεRI 膜発現のフローサイトメトリー分析。
【0140】
細胞内の遊離カルシウム濃度を、事前に0.2% Pluronic F-127存在下で1x106 細胞を5 mM のFluo-3 AM (Molecular Probes, Invitrogen)を30 min、周囲温度で充填して決定した。DNP-BSAまたはイオノマイシン刺激前に、細胞を90 min、37℃でC-13またはDMF (0.25%)を添加したRPMI培地で処理し、細胞内の遊離カルシウム濃度をフローサイトメーター(Beckton Dickinson)で測定した。FcεRI 表面発現の評価に関して、細胞を抗-DNP IgEで2 時間、37℃ でインキュベーションした。膜結合型の IgEを、ビオチン化抗-マウス Ig, およびFitcを抱合させたストレプトアビジンを用いて決定した。
【0141】
6) アナフィラキシー誘導。
【0142】
雌BALB/cマウス (6-8 週齢)を、Charles Riverから取得し、病原体のいない条件下でIRCM動物小屋で維持した。Ig-依存的な受動全身アナフィラキシー (PSA) および 受動皮膚アナフィラキシー (PCA) プロトコールを以前の記載11のとおり行った。要約すると、PSAに関して静脈内注射で100 μg のIgE (SPE-7, Sigma)を200 μlのPBSに含むもの又はPSAに関して皮内注射で25 ng のIgEを10 μl のPBSに含むものをマウスに投与し、24 時間後に1 mg のDNP-KLHを2% のエバンスブルーに含むもので静脈内注射で刺激した。C-13, 非関連の化学的な分子またはビヒクルを、刺激1 時間前に、経口的(PSA)に200 μl の1% カルボキシメチルセルロースで,または局所的に耳にアセトン/オリーブ油混合物(4:1)において皮内注射(PCA)で投与した。動物を、刺激の20 min 後に殺傷した。ホルムアミドで80℃の一晩のインキュベーション後に、耳を除去し、磨砕し、エバンスブルーを抽出した。PSAにおける温度測定に関して、C-13 (100mg/kg)またはビヒクルを、エバンスブルーの非存在下で行う刺激の3 時間前に経口的に投与した。温度を、直腸プローブを有する電気的な温度計(YSI, Yellow Springs, OH)を用いて刺激前に屠殺する前に60 分間測定した。吸光度を、610 nmで測定した。実験を、4-5 マウス/条件で行った。図 4に記載されたデータは、三つの異なる実験の代表である。
【0143】
7) 構造の研究
薬学的な標的になりそうな立体的な腔を、Q-SiteFinder 12 および ICM 13を用いて予測した。分子 C-13を、LigおよびFit 14 およびSurflex 15を用いてドッキングさせた。最初の 20 ポジションを分析し、コンセンサスポジションを図1Aに示した。イメージをPyMolで作製した。
【0144】
8) 腹膜炎(図 5)。
【0145】
Syk-依存的な腹膜の好中球のリクルートを、8-週齡の雌性BALB/cマウスで記載36のとおり、4μg の百日咳菌トキシン(Dr D. Raze, Inserm, Lille, Franceによる提供)の静脈内注射および 2 時間後に4% チオグリコレート(滅菌水中)の腹腔内注射で誘導した。腹膜潅流を5ml のPBSで4 時間後に行い、好中球のトータル数がAPC抱合型の抗-Gr1(Becton-Dickinson)で標識およびフローサイトメトリー 分析後に決定された。CMCにおけるC-13 (100 mg/kg)またはビヒクル単独を、百日咳菌トキシンを注射する一時間前に経口的に投与した。
【0146】
9) インビトロでのBリンパ球の精製および増殖。
【0147】
脾臓のBリンパ球細胞を、以前の記載37のとおり、8-週齡の雌性BALB/cマウスから磁気ビーズに精製した、この際CD43で被覆されたミクロ-ビーズおよびLSカラム(Miltenyi Biotec)を用いたネガティブ選択を用いた。様々な濃度のC-13またはビヒクルでの二 時間のインキュベーション後に、50,000 細胞を、10 μg/ml のロバ 抗-マウス IgM F(ab')2 断片 (Jacson Immunoresearch)の存在下または非存在下で48 時間96ウェルプレートで培養した。Alamar blue (Serotec)を、製造者の指示にしたがって、試薬の還元型 対 酸化型を570 および 620 nmで測定する24時間前に培養に添加した。
【0148】
10) 抗体産生(図 5C)。
【0149】
本実験を記載38のとおり行った。経口用量の1% CMC中のC-13 (150 mg/kg)またはビヒクル単独を受けた八週齡の雌性BALB/cマウスは、3 時間後に、10 μg のトリニトロフェニル-キーホールリンペット ヘモシアニン (TNP-KLH) をRehydragel alum (Reheiss)において腹腔内注射で免疫した。血清を、免疫化前および12日目に収集した。抗原特異的な免疫グロブリンレベルを、10 μg/ml のプレート結合TNP-OVA (Biosearch technologies)を捕獲因子としたELISAで測定した。IgM, IgG1, IgG2a, IgG2b, IgG3 および IgAのレベルを、サンプルを1:5000に希釈してペルオキシダーゼを抱合したヤギ抗体およびアイソタイプ特異的な因子(Southern Biotechnology)を用いて測定した。他方で、IgE レベルを、サンプルを1:50 に希釈してビオチン化抗-マウス IgE ラット 抗体 (Becton Dickinson) および ペルオキシダーゼ抱合型のストレプトアビジン(R&D Systems)を用いて測定した。TMB基質でインキュベーション後に、光学密度 (OD)を450nmで測定した。
【0150】
11) 統計学的分析
平均の数値データを、平均±標準偏差(SD)として表した。スチューデントのt-検定を使用して、グループ間の統計学的な有意差を決定した。
【0151】
12) BMMC細胞におけるC-13の毒性試験。
【0152】
マスト細胞におけるC-13の潜在的な毒性作用を評価するため、BMMC細胞を5 日、37℃で2.5 μMまたは5 μM のC-13,または0.25% DMF (5 μM のC-13で使用されたDMF濃度に対応する)の存在下で、機能的な試験と同じ条件下でインキュベーションした。アネキシン-V および プロピジウムヨウ化物での二重標識化によって、3 時間後および5 日後のBMMCの細胞の生存度のレベルが示された。スタウロスポリンと同じ条件下で処理されたBMMC 細胞の生存度を、同じ条件下で測定した。
【0153】
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【0154】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト Syk タンパク質のポジション 68に位置するアルギニン残基およびポジション121 および 155に位置する二つのグルタミン酸残基を含んでいる立体的な腔においてSyk チロシンキナーゼ タンパク質(その配列は配列番号 1に示される)と結合し、少なくとも 10%のインビトロ結合を阻害する能力があり、該インビトロ結合は、
(i) 抗体断片 G4G11(配列番号 2),または
(ii) ヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質と、配列番号 1で表されるヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質のアミノ酸配列の残基65から74の少なくとも一つを含むエピトープで結合する抗体または抗体断片,または
(iii) ヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質と結合し、抗体断片G4G11とヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質 (配列番号 1)との結合を少なくとも10%阻害する抗体または抗体断片、
とヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質または動物における任意のそのバリアントとの結合であり、ヒトまたは動物においてSykが関与している代謝経路に依存するコンディションの予防または治療のための分子であって、次の式を有している分子 C-13;
【化1】

または、50 および2500 ダルトンの間の分子量を有し、以下の式の何れかを有している分子から選択される分子C-13と機能上均等な有機分子または、C-13または前記均等な分子の立体異性体, ラセミ化合物または薬理学的に許容される塩:
【化2】

式中で
R1は、任意に置換された芳香族基,または任意に置換された少なくとも 一つのS, OまたはN 原子を含んでいる複素環であり;
R2は、任意に置換された芳香族基, 任意に置換された複素環, アミン基を含んでいる任意に飽和の炭素鎖, 任意に置換された芳香族基を含んでいる任意に飽和の炭素鎖または少なくとも 一つのS, OまたはN 原子を含んでいる任意に置換された複素環を含んでいる任意に飽和の炭素鎖であり;
R3は、任意に置換されたフェニル, 2-ピリジニル, 3-ピリジニルまたは4-ピリジニル基であり;
又は
【化3】

式中で
n = 0または1; n' = 0または1であり;
R4は、1 から5の炭素原子を含み、任意に芳香族基で置換された任意で飽和の炭素鎖;
R5は、任意に置換された芳香族基または任意に置換されたアミン基であり;
R6は、水素原子, アルコキシ 基, アルキル基またはハロゲンであり;
R7は、水素原子, アルコキシ 基, アルキル基またはハロゲンであり;
R8は、水素原子, アルコキシ 基, アルキル基またはハロゲンであり;
又は
【化4】

式中で
m = 0, 1または2であり;
R9は水素原子であり、R10は任意に置換されたフェニル基であり,またはR9およびR10は同じ任意に置換された複素環の部分であり,またはR9およびR10は同じ任意に置換された芳香族基の部分であり;
R11は、水素原子, アルコキシ基またはアルキル基であり;
R12は、水素原子, アルコキシ基またはアルキル基であり;
R13は、水素原子またはアルキルまたはアルコキシ基であり;
R14は、水素原子またはアルキルまたはアルコキシ基であり;
又は
【化5】

式中で
Aは、酸素またはイオウ原子であり;
R15は、1, 2または3つの炭素原子を含み、任意に置換された芳香族基, 任意に置換された複素環または任意に置換された複素環に属しているアミン 基で任意に置換された任意に飽和の炭素鎖であり;
R16は、水素原子, ハロゲンまたはアルコキシ基であり;
R17は、水素原子, アルコキシ基またはアセトキシ基であり;
又は
【化6−1】

【化6−2】

【化6−3】

【化6−4】


【請求項2】
請求項1に記載の分子であって、Syk チロシンキナーゼ タンパク質とその触媒ドメインの外側に位置する部位で結合する分子。
【請求項3】
前記抗体または抗体断片は、ヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質と、配列番号 1に表されるヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質のアミノ酸配列の残基65から74の少なくとも5つを含むエピトープ上で結合する、請求項1または2に記載の分子。
【請求項4】
請求項1, 2または3に記載の分子であって、前記立体的な腔は、更にヒト Syk タンパク質のポジション9に位置するセリン残基, ポジション 43に位置するグルタミン残基, ポジション51に位置するフェニルアラニン残基, ポジション66に位置するイソロイシン残基, ポジション 67 および 69に位置するグルタミン酸残基, ポジション 70に位置するロイシン残基, ポジション 71に位置するアスパラギン残基, ポジション 72に位置するグリシン残基, ポジション 73に位置するスレオニン残基, ポジション 74に位置するチロシン残基およびポジション 75に位置するアラニン残基を含む(その配列は配列番号 1で示される)分子。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の分子であって、I型過感受性反応の予防または治療のため使用される分子。
【請求項6】
請求項5に記載の分子であって、IgE-依存的なマスト細胞の脱顆粒を阻害する分子。
【請求項7】
請求項6に記載の分子であって、1ng/ml および 1 mg/mlの間の濃度でインビトロでマスト細胞の脱顆粒を50%阻害(IC50)する能力がある分子。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか一項に記載の分子であって、前記Sykが関与している代謝経路は、マスト細胞または好塩基球の活性化経路である分子。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか一項に記載の分子であって、前記コンディションは、アレルギー性喘息, アレルギー性結膜炎, アレルギー性鼻炎, アナフィラキシー, 血管性浮腫, じんま疹, 好酸球増加症または抗生物質のアレルギーである分子。
【請求項10】
請求項5〜9の何れか一項に記載の分子であって、マスト細胞の脱顆粒および/または I型過感受性反応を生じるもの以外のヒト Syk タンパク質 (配列番号 1)が関与している代謝経路に影響を有さない分子。
【請求項11】
請求項10に記載の分子であって、胸腺依存性の抗原による免疫化につづく抗体応答または好中球依存的Sykリクルートに影響を有さない分子。
【請求項12】
請求項1〜4の何れか一項に記載の分子であって、前記Sykが関与している代謝経路は、Bリンパ球, Tリンパ球, 好中球, 好酸球, NK細胞, 血小板, 赤血球, 破骨細胞, 上皮細胞または癌細胞の活性化経路である分子。
【請求項13】
請求項12に記載の分子であって、前記コンディションは、関節リウマチ, 自己免疫疾患, 炎症または癌である分子。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の分子であって、更なる治療上の分子と組み合わせて使用される分子。
【請求項15】
請求項14に記載の分子であって、前記更なる治療上の分子は、Sykが関与している代謝経路に依存するコンディションの予防または治療にも使用される分子。
【請求項16】
前記更なる治療上の分子はSykが関与している代謝経路に非依存のコンディションの予防または治療のため使用される分子である、請求項14に記載の分子。
【請求項17】
請求項1〜16の何れか一項に記載の分子であって、口, 舌下, 鼻, 眼球, 局所, 静脈内, 腹腔内, 皮下の経路, エアロゾルまたは吸入で投与されることが意図される分子。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか一項に記載の分子であって、成人, 子供または新生児のヒトの患者に投与されることが意図される分子。
【請求項19】
請求項1〜18の何れか一項に記載の分子であって、0.01 mg/kg および 200mg/kgの間の用量で投与されることが意図される分子。
【請求項20】
請求項19に記載の分子であって、前記均等な分子は、以下の式の何れかを有している分子から選択される分子:
式 (I) 中で
R1 は、
FまたはCl 原子, メチルまたはエチル基, N,N-ジメチル-スルホンアミドまたはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基から選択される二つの基で任意に置換されたフェニル基, または
以下の基
【化7】

メチル, エチル, ヒドロキシル, メトキシまたはエトキシ基で任意に置換されたフラン基,
メチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基で任意に置換されたチオフェン基であり;
R2 は、
以下の基
【化8】

式中でR21 および R22は、各々が1, 2または3の炭素原子を含んでいるアルキル鎖に属している,または両方が酸素原子または第二の窒素原子を含んでいる同じ任意に飽和の複素環に結合する窒素原子と属している炭素原子である,または
以下の基
【化9】

式中でR23 および R24は、各々が1, 2または3の炭素原子を含んでいるアルキル鎖に属している,または両方が酸素原子または第二の窒素原子を含んでいる同じ任意に飽和の複素環に結合する窒素原子と属している炭素原子である,または
以下の基
【化10】

であり、R3 は、
非置換の2-ピリジニル, 3-ピリジニルまたは4-ピリジニル基,
ベンゾキシ基, および/またはヒドロキシル基, および/またはメチル基, および/またはエチル基, および/またはプロピル基, および/または一または二のBr, FまたはCl 原子, および/または一ないし三のヒドロキシル, メトキシまたはエトキシ基で任意に置換されたフェニル基である,
又は、
式 (II) 中で
R4 は、1, 2または3の炭素原子を含んでいる任意で飽和の炭素鎖であり;
R5 は、フェニル基または任意に置換されたフェニル基で,または以下の基で置換された二級アミン基であり;
【化11】

R6 は、水素または塩素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシル, メトキシまたはエトキシ基であり;
R7 は、水素または塩素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり;
R8 は、水素または塩素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり;
又は、
式 (III) 中で、
R9 は水素原子であり、R10基は任意に置換されたフェニル基であり,またはR9およびR10基は2の窒素原子および4の炭素原子を含んでいる同じ任意に置換された複素環に属し;
R11 は、水素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり;
R12 は、水素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり;
R13 は、水素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり;
R14 は、水素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり;
又は、
式 (IV) 中で
A は、酸素またはイオウ原子であり;
R15 は、以下の基であり;
【化12】

R16 は、水素または塩素原子またはメチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシまたはエトキシ基であり;
R17 は、メチル, エチル, ヒドロキシ, メトキシ, エトキシ, アセトキシ, メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル基である。
【請求項21】
前記均等な分子が以下の分子から選択される、請求項20に記載の分子:
【化13−1】

【化13−2】

【化13−3】

【化13−4】

【化13−5】

【化13−6】

【化13−7】

【化13−8】


【請求項22】
Syk タンパク質に対する前記分子のインビトロ親和性が25 μM未満である、請求項1〜21の何れか一項に記載の分子。
【請求項23】
ヒトまたは動物においてSykが関与している代謝経路に依存するコンディションの予防または治療のための、請求項1〜22の何れか一項に記載の分子および薬理学的に許容される賦形剤を含んでいる組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の組成物であって、さらなる治療上の分子を含む組成物。
【請求項25】
Syk チロシンキナーゼタンパク質と結合し、50 および2500 ダルトンの間の分子量を有し、少なくとも10%のインビトロ結合を阻害する能力のある有機分子を同定するための方法であって、該インビトロ結合は、
(i) 抗体断片 G4G11(配列番号 2),または
(ii) ヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質と、配列番号 1で表されるヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質のアミノ酸配列の残基65から74の少なくとも一つを含むエピトープ上で結合する抗体または抗体断片,または
(iii) ヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質と結合し、抗体断片G4G11とヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質 (配列番号 1)との結合を少なくとも10%阻害する抗体または抗体断片、
とヒト Syk チロシンキナーゼ タンパク質または動物における任意のそのバリアントとの結合であり、少なくとも以下の工程を含む方法:
a) 50 および2500 Daの間の分子量を有している候補の有機分子バンクから、Syk タンパク質とSyk タンパク質の立体的な腔において結合しやすく、上記の式 C-13, I, II, III, IVまたは1 から87を有している分子から選択される分子をスクリーニングすることと;
b) a)で同定された分子から、抗体または抗体断片(i)または(ii)とSyk タンパク質との結合をインビトロで少なくとも 10%阻害する能力のあるものを選択すること。
【請求項26】
工程 a)における分子は分子C-13, 分子(59)または分子(61)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項25または26に記載の方法であって、付加的に工程 a)の前に、式 C-13, I, II, III, IVまたは1 から87を有している分子から選択される分子のSyk タンパク質における立体的な腔を同定するための工程を含む方法。
【請求項28】
前記の前の工程はインシリコ ドッキングで実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項25〜28の何れか一項に記載の方法であって、付加的に1ng/ml および 1mg/mlの間の濃度でマスト細胞の脱顆粒を50%阻害(IC50)する能力があるものをb)において同定された分子から選択するための工程 c)を含む方法。
【請求項30】
ヒトまたは動物においてSykが関与している代謝経路に依存するコンディションの予防または治療のための医薬品を製造するための、請求項1〜22の何れか一項に記載の分子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−518133(P2011−518133A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503472(P2011−503472)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000414
【国際公開番号】WO2009/133294
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】