Tヘルパー(TH)細胞の発生および機能を調節するための方法および組成物
【課題】IL−21(例えば、ヒトIL−21)活性またはレベルのモジュレーターを用いてTヘルパー(Th)細胞の発達および機能を調節する方法および組成物を提供すること。
【解決手段】IL−21(例えば、ヒトIL−21)活性またはレベルのモジュレーターを用いてTヘルパー(Th)細胞の発達および機能を調節する方法および組成物。本発明は、部分的には、サイトカインインターロイキン−21(IL−21)がTヘルパー(Th)細胞のサブセット(Th2細胞)によって発現され、そして、Th1細胞発生の間に、選択的にインターフェロンγ(IFNγ)レベルを阻害するという発見に、一部基づく。より具体的には、本明細書において、IL−21が、インビトロおよびインビボにおいて生成されたTh2細胞によって優先的に発現されることが、示された。
【解決手段】IL−21(例えば、ヒトIL−21)活性またはレベルのモジュレーターを用いてTヘルパー(Th)細胞の発達および機能を調節する方法および組成物。本発明は、部分的には、サイトカインインターロイキン−21(IL−21)がTヘルパー(Th)細胞のサブセット(Th2細胞)によって発現され、そして、Th1細胞発生の間に、選択的にインターフェロンγ(IFNγ)レベルを阻害するという発見に、一部基づく。より具体的には、本明細書において、IL−21が、インビトロおよびインビボにおいて生成されたTh2細胞によって優先的に発現されることが、示された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL−21、例えば、ヒトIL−21の活性またはレベルのモジュレーター、および、T細胞、例えば、Tヘルパー(Th)細胞の発生および機能の調節におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Tヘルパー(Th)サブセットは、異なるサイトカインパターンを産生し、そして特異的な免疫応答を促進するその能力によって、識別される。Th1細胞は、IFNγを産生し、そして、細胞内病原体に対する、細胞媒介性免疫を促進する。対照的に、Th2細胞は、サイトカインIL−4、IL−5、およびIL−13を産生し、そして、肥満細胞および好酸球を活性化して、B細胞を細胞外病原体に対して指向させる。Th応答の調節不全は、免疫病理を生じ得る。免疫病理においては、異常なTh1応答が、器官特異的自己免疫疾患の原因であり得、そして、過大なTh2応答が、アレルギー疾患に関連する。
【0003】
極性化Th細胞によって産生される特異的なサイトカインは、前駆Th細胞の分化を促進する主要なエフェクターであるが、これらの細胞はまた、他の機能的活性のサブセットをもまた、交差調節する。例えば、IL−4は、Thp細胞のTh2エフェクターへの分化を促進することにおける、強力な因子であることが報告されている。さらに、IL−4は、IFNγの産生をアンタゴナイズする。IL−10(Th2細胞によって産生される別のサイトカイン)もまた、Th1発生、およびIFNγ誘導性のマクロファージ機能を阻害することが、記載されている。その逆に、Th1細胞によって産生されるIFNγは、Th1発生を増幅し、そして、Th2細胞の増殖を阻害する。これらのサイトカインが、特異的なTh細胞のサブセットの発生を促進する能力は、同時に、代替的な発生の運命を阻害しながら、次第に、極性化された応答を生じる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、部分的には、サイトカインインターロイキン−21(IL−21)がTヘルパー(Th)細胞のサブセット(Th2細胞)によって発現され、そして、Th1細胞発生の間に、選択的にインターフェロンγ(IFNγ)レベルを阻害するという発見に、一部基づく。より具体的には、本明細書において、IL−21が、インビトロおよびインビボにおいて生成されたTh2細胞によって優先的に発現されることが、示された。1つの実施形態において、発生中のTh細胞のIL−21への暴露は、発生中のTh1細胞からのIFNγレベルを特異的に減少し、従って、Th2応答を増強する。さらに、発生中のTh細胞のIL−21への暴露は、Stat4シグナル伝達を減少し(例えば、Stat4タンパク質および/またはmRNA発現を減少することによる)、それによって、他のサイトカイン(例えば、IL−12)に対するTh細胞応答を調節する。従って、Th細胞発生および活性を調節する方法および組成物が、開示される。本明細書に記載される方法および組成物(例えば、IL−21のアゴニストまたはアンタゴニスト)は、Th2関連障害のようなTh細胞関連および/またはIFNγ関連障害または状態(例えば、喘息、アレルギー、および抗体成分と関連する障害(例えば、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、および狼瘡));およびTh1関連障害(例えば、自己免疫障害(例えば、とりわけ、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、クローン病、乾癬および重症筋無力症)の、処置(例えば、治癒、寛解、発症の遅延もしくは予防、または、再発予防もしくは置換)、あるいは、予防において有用である。
【0005】
1つの局面において、本発明の特徴は、T細胞または細胞集団におけるインターフェロンγ(IFNγ)レベルの、阻害(例えば、減少または除去)のための方法である。本発明は、例えば、T細胞(T細胞前駆細胞(Thp細胞)またはTh1細胞(例えば、分化するTh1細胞またはエフェクターTh細胞)またはそのT細胞集団におけるIFNγの活性、発現、分泌、または処理の阻害を提供する。本発明の方法は、T細胞または細胞集団を、T細胞または細胞集団中の、IFNγを阻害(例えば、減少または除去)するのに十分な量のIL−21アゴニストに接触させ、その結果、アゴニストが、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含有するIL−21ポリペプチドであり、そして、このIL−21ポリペプチドがIL−21Rの結合を阻害し得る、工程を包含する。いくつかの実施形態において、本方法は、さらに、IFNγレベルの阻害が所望されるT細胞または細胞集団を同定する工程を包含する。
【0006】
別の局面において、本方法はTh前駆細胞(Thp)細胞または細胞集団の、Th2細胞または細胞集団への分化を促進する方法を特徴とする。1つの実施形態において、この方法は、Thp細胞または細胞集団を、Thp細胞または細胞集団のTh2細胞または細胞集団への分化を誘導するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程であって、このアゴニストが、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するIL−21ポリペプチドであり、そして、このポリペプチドは、IL−21Rへ結合し得る工程、を包含する。いくつかの実施形態において、この方法はさらに、Th2細胞または細胞集団への分化が所望される、Thp細胞または細胞集団を同定する工程を、包含する。
【0007】
別の局面において、本発明は、Thp細胞または細胞集団の、Th1細胞または細胞集団への分化を阻害する方法を、特徴とする。この方法は、Thp細胞または細胞集団を、Thp細胞または細胞集団のTh1細胞または細胞集団への分化を阻害するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程を包含し、そして、このアゴニストは、配列番号2と少なくとも85%同一なアミノ酸配列を有するIL−21ポリペプチドであり、そして、このポリペプチドは、IL−21Rに結合し得る。1つの実施形態において、この方法はさらに、Thp細胞または細胞集団のTh1細胞または細胞集団への分化の阻害が所望される、T細胞集団を同定する工程を包含する。
【0008】
これらの方法のいくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。これらの方法のいくつかの実施形態において接触工程が、エキソビボ、インビトロ、またはインビボにおいて行われる。エキソビボまたはインビボの方法における適切な被験体としては、哺乳動物被験体(例えば、ヒト)が挙げられる。
【0009】
別の局面において、本発明は、Th前駆(Thp)細胞または細胞集団の、Th2細胞または細胞集団への分化を阻害する方法を、特徴とする。この方法は、Thp細胞または細胞集団を、Thp細胞または細胞集団のTh2細胞集団への分化を阻害するのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)/IL−21レセプター(IL−21R)アゴニストと接触させる工程を、包含する。そして、アゴニストは、抗IL−21R抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群から選択される。この方法は、必要に応じて、Thp細胞または細胞集団のTh2細胞または細胞集団への分化の阻害が所望される、T細胞または細胞集団を同定する工程を、さらに包含する。いくつかの実施形態において、T細胞集団は、少なくとも1つのTh1細胞を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、IL−21Rの可溶性フラグメントは、IL−21レセプターの細胞外領域を含む。例えば、可溶性フラグメントは、配列番号4のアミノ酸20〜235と少なくとも85%同一なアミノ酸配列を含み得、そしてIL−21に結合し得るか、あるいは、可溶性フラグメントは、配列番号4のアミノ酸1〜235を含む。関連する実施形態において、可溶性フラグメントは、さらに、Fcフラグメントを含む。なお別の実施形態において、アンタゴニストは、抗IL−21R抗体であるか、または、抗IL−21R抗体の抗原結合フラグメントである。
【0011】
なお別の実施形態において、接触工程は、エキソビボ、インビトロ、またはインビボにおいて、行われる。接触工程は、哺乳動物被験体において行われ得、例えば、哺乳動物被験体は、ヒトである。
【0012】
別の局面において、本発明は、T細胞または細胞集団中のインターフェロンγ(IFNγ)レベルを増加する方法に特徴を有する。1つの実施形態におけるこの方法は、T細胞または細胞集団を、T細胞または細胞集団中のIFNγレベルを増加するのに十分な量のIL−21/IL−21Rのアゴニストと接触させる工程を包含し、そして、アンタゴニストは、抗IL−21R抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群から選択される。この方法の実施形態はさらに、IFNγレベルの増加が所望されるT細胞集団を同定する工程を包含する。
【0013】
いくつかの実施形態において、IL−21Rの可溶性フラグメントは、IL−21レセプターの細胞外領域を含む。例えば、いくつかの実施形態において、可溶性フラグメントは、配列番号4のアミノ酸20〜235と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を包含し、IL−21に結合し得るか、あるいは、可溶性フラグメントは、配列番号4のアミノ酸1〜235を含む。関連する実施形態において、可溶性フラグメントはさらに、Fcフラグメントを含む。なお別の実施形態において、アンタゴニストは、抗IL−21抗体または抗IL−21R抗体の抗原結合フラグメントであり得る。
【0014】
なお別の関連する実施形態において、接触工程は、エキソビボ、インビトロ、または、インビボにおいて行われる。いくつかの実施形態において、接触工程は、哺乳動物被験体(例えば、ヒト)において行われる。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
T細胞またはT細胞集団においてインターフェロンγ(IFNγ)レベルを阻害するための方法であって、該方法は、以下:
該T細胞または細胞集団を、該T細胞または細胞集団中においてIFNγを阻害するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程であって、ここで、該アゴニストは、配列番号2と少なくとも85%であるアミノ酸を含むIL−21ポリペプチドであり、そして該アゴニストは、IL−21Rに結合し得る、工程、
を包含する、方法。
(項目2)
IFNγレベルの阻害が所望されるT細胞または細胞集団を同定する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
Th前駆(Thp)細胞または細胞集団の、Th2細胞または細胞集団への分化を促進するための方法であって、該方法は、以下:
該Thp細胞または細胞集団を、該Thp細胞または細胞集団のTh2細胞または細胞集団への分化を誘導するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程であって、ここで、該アゴニストは、配列番号2と少なくとも85%であるアミノ酸を含むIL−21ポリペプチドであり、そして該アゴニストは、IL−21Rに結合し得る、工程、
を包含する、方法。
(項目4)
さらに、Th2細胞または細胞集団への分化が所望されるThp細胞または細胞集団を同定する工程を包含する、項目3に記載の方法。
(項目5)
Thp細胞または細胞集団の、Th1細胞または細胞集団への分化を阻害するための方法であって、該方法は、以下:
該Thp細胞または細胞集団を、該Thp細胞または細胞集団のTh1細胞または細胞集団への分化を阻害するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程であって、ここで、該アゴニストは、配列番号2と少なくとも85%であるアミノ酸を含むIL−21ポリペプチドであり、そして該アゴニストは、IL−21Rに結合し得る、工程、
を包含する、方法。
(項目6)
さらに、Th1細胞または細胞集団への前記Thp細胞または細胞集団の分化の阻害が所望されるT細胞集団を同定する工程を包含する、項目5に記載の方法。
(項目7)
項目1、3、または5のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、方法。
(項目8)
項目1、3、または5のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記接触工程が、エキソビボ、インビトロ、またはインビボにおいて行われる、方法。
(項目9)
項目1、3、または5のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記接触工程が、哺乳動物被験体において行われる、方法。
(項目10)
項目9に記載の方法であって、ここで、前記哺乳動物被験体がヒトである、方法。
(項目11)
Th前駆(Thp)細胞または細胞集団の、Th2細胞または細胞集団への分化を阻害するための方法であって、該方法は、以下:
該Thp細胞または細胞集団を、該Thp細胞または細胞集団のTh2細胞集団への分化を阻害するのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)/IL−21レセプター(IL−21R)のアンタゴニストと接触させる工程であって、ここで、該アンタゴニストは、抗−IL21R抗体、抗−IL21R抗体の抗原結合フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群から選択される、工程、
を包含する、方法。
(項目12)
さらに、Thp細胞または細胞集団のTh2細胞または細胞集団への分化の阻害が所望される、T細胞または細胞集団を同定する工程を包含する、項目11に記載の方法。
(項目13)
T細胞または細胞集団においてインターフェロンγ(IFNγ)レベルを増加する方法であって、以下:
該T細胞または細胞集団を、該T細胞または細胞集団のIFNγレベルを増加するのに十分な量のIL−21/IL−21Rアンタゴニストと接触させる工程であって、ここで、該アンタゴニストは、抗−IL21R抗体、抗−IL21R抗体の抗原結合フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群から選択される、工程、
を包含する、方法
(項目14)
さらに、IFNγレベルの増加が所望されるT細胞集団を同定する工程を包含する、項目13に記載の方法。
(項目15)
項目11または13に記載の方法であって、ここで、前記IL−21Rの可溶性フラグメントが、IL−21レセプターの細胞外領域を含む、方法。
(項目16)
項目15に記載の方法であって、前記可溶性フラグメントが、配列番号4のアミノ酸20〜235と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、そして、IL−21に結合し得る、方法。
(項目17)
項目15に記載の方法であって、ここで、前記可溶性フラグメントが、配列番号4のアミノ酸1〜235を含む、方法。
(項目18)
項目15に記載の方法であって、ここで、前記可溶性フラグメントが、さらにFcフラグメントを含む、方法。
(項目19)
項目11または13に記載の方法であって、ここで、前記アンタゴニストが、抗−IL21R抗体またはその抗原結合フラグメントである、方法。
(項目20)
項目12に記載の方法であって、ここで、前記T細胞集団が、少なくとも1つのTh1細胞を含む、方法。
(項目21)
項目11または13に記載の方法であって、ここで、前記接触工程が、エキソビボ、インビトロ、またはインビボにおいて行われる、方法。
(項目22)
項目21に記載の方法であって、ここで、前記接触工程が、哺乳動物被験体において行われる、方法。
(項目23)
項目22に記載の方法であって、ここで、前記哺乳動物被験体がヒトである、方法。
【0015】
他に定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語、および科学的用語は、本発明が属する技術分野において当業者によって一般に理解される意味と、同一の意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と、類似または等価の方法および材料は、本明細書の実施または試験において使用されるが、適切な方法および材料が以下に記載される。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献が、その全体が、本明細書において参考として援用される。意味が対立する場合は、定義を含む本明細書の意味が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示のみのためであり、本発明を限定することを意図しない。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、および添付の請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、添付の実施例に記載される、種々のTh1およびTh2をゆがめる条件下での、IL−21、IL−4、IFNγ、およびβアクチンの発現を試験する、ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析を示す。
【図1B】図1Bは、初期の刺激および第2の刺激後に、Th1細胞およびTh2細胞中のGAPDH mRNAのレベルと比較した、IL−21 mRNAのレベルを示す棒グラフである。
【図1C】図1Cは、EL−4およびIFNγの存在下および非存在下において培養した、初期および第2のTh1細胞およびTh2細胞中のGAPDH mRNAのレベルと比較した、IL−21 mRNAのレベルを示す棒グラフである。
【図1D】図1Dは、L.majorによる感染後のC57BL/gマウスおよびBALB/cマウス中のGAPDH mRNAに対する、IL−21 mRNA、IL−4 mRNA、およびIFNγ mRNAのレベルを示す棒グラフである。
【図2A】図2Aは、中和条件下、またはTh1をゆがめる条件下で培養したThp細胞におけるIL−4産生およびIL−21サイトカイン産生を示すグラフである。
【図2B】図2Bは、IL−21処理したThp細胞、およびモック(mock)処理したThp細胞中のIFNγ産生を示す、棒グラフである。
【図3A】図3Aは、IL−22の存在下および非存在下での、Th1をゆがめる条件下で培養したThp細胞中のEL−4産生およびIFNγ産生を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、野生型マウスおよびStat6−/−マウスからの、Th1をゆがめる条件下で処理された、IL−21処理Thp細胞またはモック(mock)処理マウス中の、EL−4産生およびIFNγ産生を示すグラフである。
【図3C】図3Cは、IFNγ、IL−2、およびTNFαの発現を示すグラフである。
【図4A】図4Aは、Th1またはTh2をゆがめる条件下で培養された、Thp細胞中の、T−betおよびアクチンタンパク質レベルのウェスタンブロット分析を示す。
【図4B】図4Bは、Th1細胞中における、レベルに対する、IL−21Rβ2 mRNAのレベルを示す棒グラフである。
【図4C】図4Cは、IL−21またはモック上清の存在下における、抗CD−3にて刺激したThp細胞中の、リン酸化Stat4、Stat4、Stat1、およびIL−21ポリペプチドレベルのウェスタンブロット分析を示す。
【図4D】図4Dは、IL−21存在下、またはモック(mock)上清存在下において、48時間、抗CD3で刺激した、モック処理Thp細胞およびIL−21 Thp細胞中のgAPDH mRNAレベルに対する、Stat4 mRNAレベルを示す棒グラフである。IL−4 mRNAおよびIFNγ。
【図5A】図5Aは、その後にTNP−KLHまたはPBSを注入した、TNP−KLH免疫化野生型マウス、およびIL21−21R−/−マウスにおける、特異的膨張を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、抗原を用いて再度刺激した、TNP−KLH免疫化野生型マウスおよびIL21−21R−/−マウスの排出されたリンパ節から精製されたCD4+ T細胞中のIFNγ産生を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、Tヘルパー細胞の分化、発生、および活性を、IL−21とIL−21レセプターとの間の相互作用を調節することによって調節するための方法および、組成物を提供する。細胞集団中のIL−21、またはIL−21レベルもしくはIL−21レセプターレベルを増加する試薬が、Tヘルパーの集団に添加されて、Thp細胞またはTh1細胞の集団におけるIFNγレベルを抑制する。IL−21、またはIL−21レベルを増加する試薬をまた使用して、Th2発生を促進し得るか、またはTh2媒介性免疫応答を増強し得るか、および/もしくはTh1発生を抑制し得る。
【0019】
IL−21またはIL−21レベルを増加する試薬をまた使用して、Tヘルパー細胞集団に対するIL−21の効果を阻害し得る。IL−21、またはIL−21レベルを増加するか、もしくはそうでなければIL−21アゴニストとして作用する試薬を使用して、Th1媒介性疾患(例えば、自己免疫疾患、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、およびI型糖尿病)を抑制し得る。
【0020】
1つの局面において、本発明は、細胞(例えば、T細胞)または細胞集団(例えば、T細胞集団)内のインターフェロンγ(IFNγ)の活性またはレベルを、調節(例えば、増加、または減少または阻害)するための方法に特徴がある。例えば、T細胞(例えば、T細胞前駆細胞(Thp細胞)またはTh1細胞(例えば、分化しつつあるTh1細胞またはエフェクターTh細胞)、あるいは、そのT細胞集団中の、IFNγ活性、発現、分泌またはプロセッシングの1つ以上を調節する方法が、提供される。本発明の方法は、以下:
(必要に応じて)IFNγ活性レベルの調節(例えば、増加または減少)が所望される細胞(例えば、T細胞)または細胞集団(例えば、T細胞集団)を同定する工程;および
その細胞または細胞集団を、その細胞または細胞集団中のIFNγの活性またはレベルを調節(例えば、増加または減少)するのに十分な量のIL−21モジュレーター(例えば、IL−21アゴニストまたはアンタゴニスト)と接触させる工程、を包含する。
【0021】
この方法を、培養中の細胞(例えば、インビトロまたはエキソビボ)において使用し得る。例えば、免疫細胞(例えば、本明細書に記載されるT細胞)を、培養培地でインビトロ培養し得、そして、1つ以上のIL−21モジュレーター(例えば、IL−21アゴニストまたはアンタゴニスト)を培養培地に添加することによって、接触工程を行い得る。あるいは、この方法は、被験体中に存在する細胞(例えば、本明細書に記載の免疫細胞またはT細胞)において(例えば、インビボプロトコールの一部として(例えば、治療的に、または、予防的に))実施され得る。
【0022】
1つの実施形態において、細胞(例えば、T細胞(例えば、T細胞前駆細胞(Thp)、またはTh1細胞(例えば、分化しつつあるTh1細胞またはエフェクターTh細胞)、あるいはその細胞集団)中のIFNγの活性またはレベルを、減少させるか、または阻害する方法が、提供される。この方法は(必要に応じて)、IFNγの活性またはレベルの減少または阻害が所望される、細胞(例えば、T細胞)または細胞集団(例えば、T細胞集団)を同定する工程;およびその細胞または細胞集団を、その細胞または細胞集団中のIFNγの活性またはレベルを減少または阻害するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程、を包含する。好ましくは、IL−21アゴニストは、IFNγレベルまたは活性を、特異的に阻害する(例えば、IL−2またはTNFαのような他のサイトカインの活性も、レベルも、減少も阻害もしない)。1つの実施形態において、IL−21アゴニストは、IFNγ産生細胞(例えば、IFNγ産生Th1細胞)による、IFNγの産生を阻害する。
【0023】
他の実施形態において、本発明は、被験体におけるIFNγレベルまたは活性を減少するための方法を提供する。この方法は(必要に応じて)、IFNγのレベルまたは活性の減少が所望される被験体を同定する工程;および、その被験体に対して、IFNγのレベルまたは活性を減少するのに十分な量のIL−21を投与する工程、を包含する。IFNγは、当該分野において公知の技術(例えば、細胞内サイトカイン染色、または、細胞上清中のレベルを決定する、ELISA技術)を使用して、測定し得る。
【0024】
IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド、ヒトIL−21ポリペプチド、またはその活性フラグメント(例えば、ヒトIL−21ポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、または、配列番号1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるか、またはこれらと実質的にホモログである)。他の実施形態において、IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチド)、または別のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンポリペプチドまたはその部分(例えば、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域))と融合したそのフラグメント;IL−21レセプターに対するアゴニスト抗体;あるいは、小分子アゴニストである。別の実施形態において、IL−21アゴニストは、IL−21の活性またはレベルを増加する薬剤である(例えば、IL−21の発現、プロセッシング、および/または分泌を増加することによる)。
【0025】
好ましくは、被験体は、哺乳動物(例えば、ヒト被験体)であって、異常な(例えば、増加したIFNγレベルまたは活性に関連する障害(例えば、免疫障害(例えば、T細胞媒介性障害))に罹患する被験体であり、その障害を寛解または予防するために十分な量である。
【0026】
IL−21のアゴニストを用いて、処置(例えば、寛解)または予防することができる例示的な免疫障害としては、例えば、Th1関連障害(例えば、自己免疫疾患(多発性硬化症、慢性関節リウマチ、およびI型糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬および重症筋無力症が挙げられるが、これらに限定されない))が挙げられる。
【0027】
本発明はさらに、細胞(例えば、T細胞)または細胞集団(T細胞集団)においてIFNγのレベルまたは活性を増加する方法に、特徴がある。例えば、本発明は、T細胞(例えば、T細胞前駆細胞(Thp細胞)、またはTh1細胞(例えば、分化しつつあるTh1細胞またはエフェクターTh細胞)またはそのT細胞集団における、IFNγ活性、発現、またはプロセシングを増加する方法を包含する。この方法は(必要に応じて)、IFNγ発現の増加が所望される、細胞(例えば、T細胞)または細胞集団(例えば、T細胞集団)を同定する工程;および、その細胞を、IL−21の結合または活性を阻害(例えば、IL−21のIL−21レセプターへの結合を阻害し、それによって、その細胞中のIFNγ発現レベルを増加する)するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程を包含する。
【0028】
IL−21アンタゴニストは、例えば、IL−21(例えば、ヒトIL−21)、またはIL−21レセプター(例えば、ヒトIL−21レセプターポリペプチド)に対する抗体(例えば、モノクローナル抗体または単一の特異的抗体)であり得る。好ましくは、抗体は、ヒトIL−21、またはヒトIL−21レセプターポリペプチドに対する、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはインビトロで生成された抗体である。別の実施形態において、アンタゴニストとしては、IL−21ポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21ポリペプチドのIL−21レセプター結合ドメイン)が挙げられる。あるいは、アンタゴニストとしては、IL−21レセプターポリペプチド(例えば、IL−21レセプターポリペプチドのIL−21結合ドメイン)が挙げられる。1つの実施形態において、アンタゴニストは、第2の部分(例えば、ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン鎖)と融合した、上記のIL−21またはIL−21レセプターポリペプチドあるいはそのフラグメントを含む融合タンパク質である。
【0029】
別の局面において、本発明は、Th2細胞活性および/または細胞数を調節(例えば、増加または減少)するための方法に、特徴がある。1つの実施形態において、増殖、生存および/またはTh2細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆体(Thp)の分化))の1つ以上が、提供される。
【0030】
(必要に応じて)増殖、生存および/または分化が所望される細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはTh2細胞))、または細胞集団を同定する工程;ならびにその細胞または細胞集団を、増殖、生存および/またはTh2細胞への分化を調節する(例えば、Thp細胞のTh2細胞への分化を調節する)ために十分な量のIL−21モジュレーター(例えば、IL−21アゴニストまたはアンタゴニスト)と接触し、それによって、Th2細胞活性および/または細胞数を調節する工程、を包含する。
【0031】
本方法は、培養中の細胞に対して、使用し得る(インビトロまたはエキソビボ)。例えば、免疫細胞(例えば、本明細書に記載されるT細胞)を培養培地中でインビトロ培養し得、そして、接触工程を、培養培地に1つ以上のIL−21モジュレーター(例えば、1つ以上のIL−21アゴニストまたはアンタゴニスト)を添加することによって、行い得る。あるいは、この方法を、被験体中に存在する細胞(例えば、インビボプロトコール(例えば、治療または予防)の一部として)において行い得る。
【0032】
1つの実施形態において、Th2細胞活性および/または細胞数を減少または阻害する方法が提供される。例えば、増殖、生存、および/またはTh2細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆体(Thp)の分化)の1つ以上を阻害するか、または減少することによって、Th2細胞活性および/または細胞数を、減少または阻害し得る。この方法は(必要に応じて)、増殖、生存、および/または分化が所望される、細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはTh2細胞))または細胞集団を同定する工程;ならびに、その細胞または細胞集団を、増殖、生存、および/またはTh1細胞への分化(例えば、Thp細胞のTh2細胞への分化を阻害または減少する)の1つ以上を阻害または減少し、それによってTh2細胞の活性および/または細胞数を阻害または減少するのに十分な量のIL−21アンタゴニストと接触させる工程、を包含する。
【0033】
この方法を、例えば、インビトロまたはエキソビボの、細胞(例えば、培養中のT細胞(例えば、Thp細胞またはTh2細胞))に対して、使用し得る。
【0034】
あるいは、この方法は、被験体中に存在する細胞(例えば、本明細書に記載される、免疫細胞またはT細胞)において(例えば、インビボ(例えば、治療的または予防的)プロトコールにおいて)、行い得る。例えば、この方法を、被験体におけるTh2媒介性障害(例えば、喘息およびアレルギー)を処置、または、予防するために、使用し得る。従って、本発明は、本発明は、被験体におけるTh2関連障害を処置(例えば、治癒、抑制、寛解、開始の遅延もしくは予防、または、再発(recurrence)もしくは再発(relapse)の予防)、あるいは予防のための方法を提供する。この方法は、被験体に対して、Th2細胞活性および/または細胞数を阻害または減少し、それによって、Th2関連障害を処置または予防するのに十分な量のIL−21アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0035】
好ましくは、被験体は、異常なTh2細胞数または活性に関連する障害(例えば、免疫障害(例えば、Th2関連障害))に罹患する哺乳動物(例えば、ヒト)である。細胞活性および/または細胞数を阻害または減少するために十分な量は、その障害を寛解するのに十分な量である。
【0036】
IL−21アンタゴニストは、例えば、IL−21(例えば、ヒトIL−21)、またはIL−21レセプター(例えば、ヒトIL−21レセプターポリペプチド)に対する抗体(例えば、モノクローナル抗体または単一特異的抗体)であり得る。好ましくは、抗体は、ヒトIL−21またはヒトIL−21レセプターポリペプチドに対する、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはインビトロにおいて生成された抗体である。他の実施形態において、アンタゴニストとしては、IL−21ポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21ポリペプチドのIL−21レセプター結合ドメイン)が挙げられる。あるいは、アンタゴニストとしては、IL−21レセプターポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21レセプターポリペプチドのIL−21結合ドメイン)が挙げられる。1つの実施形態において、アンタゴニストは、上記のIL−21またはIL−21レセプターポリペプチド、あるいは、第2の部分(例えば、免疫グロブリン鎖)と融合したそのフラグメントを含む融合タンパク質である。
【0037】
なお別の実施形態において、Th2細胞活性および/または細胞数を増加する方法が、提供される。例えば、Th2細胞活性および/または細胞数は、増殖、生存および/またはTh2細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆(Thp)の分化))の1つ以上を増加することによって、増加され得る。この方法は(必要に応じて)、増加した増殖、生存および/または分化が所望される細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはTh2細胞))、または細胞集団を同定する工程;ならびにその細胞または細胞集団を、増殖、生存および/またはTh2細胞への分化の1つ以上を増加する(例えば、Thp細胞のTh2細胞への分化を増加する)ために十分な量のIL−21アゴニストと接触させ、それによって、Th2細胞活性および/または細胞数を増加する工程、を包含する。
【0038】
IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチドもしくはその活性フラグメント(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むヒトIL−21ポリペプチド、または配列番号1に示される核酸配列によってコードされるIL−21ポリペプチド、あるいは、それらに対して実質的に相同な配列)であり得る。他の実施形態において、IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチド)、または、別のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンポリペプチドまたはその部分(例えば、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域))と融合されたそのフラグメントを含む融合タンパク質;あるいは、;IL−21レセプターに対するアゴニスト抗体;あるいは、低分子アゴニストである。
【0039】
なお別の局面において、Th1細胞数および/または活性を調節(例えば、増加または減少)するための方法が、提供される。1つの実施形態において、増殖、生存および/またはTh1細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆(Thp)の分化))の1つ以上を調節(例えば、促進または阻害)する方法が、提供される。この方法は、(必要に応じて)増殖、生存および/または分化の調節が所望される細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはTh1細胞))、または細胞集団を同定する工程;ならびにその細胞または細胞集団を、増殖、生存および/またはTh1細胞への分化の1つ以上を調節し(例えば、Thp細胞のTh1細胞への分化を調節し)、それによってTh1細胞活性および/または細胞数を調節するために十分な量のIL−21モジュレーター(例えば、アゴニストまたはアンタゴニスト)と接触させる工程、を包含する。
【0040】
この方法を培養中の細胞(例えば、インビトロまたはエキソビボ)に対して、使用し得る。例えば、免疫細胞(例えば、本明細書に記載されるT細胞)を、培養培地中でインビトロで培養して、接触させる工程を、1つ以上のIL−21モジュレーター(例えば、IL−21アゴニストまたはアンタゴニスト)を、培養培地に添加することによって、実行し得る。あるいは、この方法は、被験体中に存在する細胞(例えば、本明細書に記載される免疫細胞またはT細胞)に対して実行し得る(例えば、インビボ(例えば、治療的または予防的)プロトコールの一部として)。
【0041】
1つの実施形態において、Th1細胞の活性および/または細胞数を減少する方法が提供される。例えば、Th1細胞活性および/または細胞数を、増殖、生存および/またはTh1細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆(Thp)の分化))の1つ以上を阻害または減少することによって、減少または阻害し得る。この方法は(必要に応じて)、増殖、生存および/または分化の阻害が所望される細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはIFNγ産生細胞(例えば、Th1細胞))、または細胞集団を同定する工程;ならびにその細胞または細胞集団を、増殖、生存および/またはTh1細胞への分化の1つ以上を阻害または減少し(例えば、Thp細胞のTh1細胞への分化を阻害または減少し)、それによって、Th1細胞活性および/または細胞数を阻害または減少するために十分な量のIL−21アゴニストと接触する工程、を包含する。
【0042】
この方法は、培養中の細胞(例えば、T細胞(例えば、Th1細胞またはTh2細胞))に対して、インビトロまたはエキソビボにおいて使用し得る。
【0043】
あるいは、この方法を、被験体中に存在する細胞(例えば、本明細書に記載の免疫細胞またはT細胞)に対して、実施し得る(例えば、インビボ(例えば、治療または予防)プロトコールの一部として)。例えば、この方法は、被験体におけるTh1媒介性障害(例えば、自己免疫障害(例えば、とりわけ、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、クローン病、乾癬および重症筋無力症)の処置のために使用し得る。従って、本発明は、被験体中のTh1関連障害の処置方法(例えば、治癒、抑制、寛解、発症の遅延もしくは予防、または、再発(recurrence)または再発(relapse)の予防)、あるいは、予防方法を提供する。この方法は、被験体に対して、Th1細胞活性および/または細胞数を阻害または減少して、それによってTh1関連障害を処置または予防するのに十分な量のIL−21アゴニストを投与する工程を包含する。
【0044】
好ましくは、被験体は哺乳動物、例えば、異常なTh1細胞数または活性に関連する障害(例えば、免疫障害(例えば、本明細書に記載されるTh1関連障害))に罹患するヒトである。Th1細胞活性および/または細胞数を阻害または減少するために十分な量は、その障害を寛解または予防するのに十分な寮である。
【0045】
IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチド)またはその活性フラグメント(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むIL−21ポリペプチド、または配列番号1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるIL−21ポリペプチド、あるいは、これらの配列と実質的に相同な配列)であり得る。他の実施形態において、IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチド)または別のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンポリペプチドまたはその部分(例えば、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域))と融合したそのフラグメント;IL−21レセプターに対するアゴニスト抗体;あるいは、低分子アゴニストである。別の実施形態において、IL−21アゴニストは、例えば、機能的IL−21の発現、プロセッシングおよび/または分泌を増加することによって、IL−21の活性またはレベルを増加する因子である。
【0046】
なお別の局面において、Th1細胞活性および/または細胞数を増加する方法が提供される。例えば、Th1細胞活性および/または細胞数を、増殖、生存、および/またはTh1細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆体(Thp)の分化)の1つ以上を増加することによって、Th1細胞活性および/または細胞数を、増加し得る。この方法は、以下を包含する:
(必要に応じて)、増殖、生存、および/または分化が所望される、細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはTh1細胞))または細胞集団を同定する工程;ならびに、
その細胞または細胞集団を、増殖、生存、および/またはTh1細胞への分化(例えば、Thp細胞のTh1細胞への分化を増加する)の1つ以上を増加し、それによってTh1細胞の活性および/または細胞数を増加するのに十分な量のIL−21アンタゴニストと接触させる工程。
【0047】
IL−21アンタゴニストは、例えば、IL−21(例えば、ヒトIL−21)、またはIL−21レセプター(例えば、ヒトIL−21レセプターポリペプチド)に対する抗体(例えば、モノクローナル抗体または単一特異的抗体)であり得る。好ましくは、抗体は、ヒトIL−21またはヒトIL−21レセプターポリペプチドに対する、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはインビトロにおいて生成された抗体である。他の実施形態において、アンタゴニストとしては、IL−21ポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21ポリペプチドのIL−21レセプター結合ドメイン)が挙げられる。あるいは、アンタゴニストとしては、IL−21レセプターポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21レセプターポリペプチドのIL−21結合ドメイン)が挙げられる。1つの実施形態において、アンタゴニストは、上記のIL−21またはIL−21レセプターポリペプチド、あるいは、第2の部分(例えば、免疫グロブリン鎖)と融合したそのフラグメントである。
【0048】
なお別の局面において、本発明は、細胞、細胞集団または被験体において、インターロイキン12(IL−21)の活性またはレベルを調節(例えば、減少、阻害または増加)する方法において特徴を有する。この方法は、以下を包含する:
(必要に応じて)IL−21の調節が所望される細胞(例えば、T細胞)、細胞集団、または被験体を同定する工程;および
その細胞または細胞集団とIL−21モジュレーターを接触させるか、またはIL−21モジュレーターをその被験体に投与して、その細胞、細胞集団、または被験体におけるIL−21活性またはレベルを調節する工程。
【0049】
1つの実施形態において、IL−21の活性またはレベルを、その細胞または細胞集団をIL−21アゴニスト(例えば、本明細書に記載されるIL−21アゴニストを、IL−21の活性またはレベルを減少するのに十分な量において)と接触させるか、またはその被験体にIL−21アゴニストを投与することによって、減少する。
【0050】
別の実施形態において、IL−21の活性またはレベルを、その細胞または細胞集団を、IL−21アゴニストと接触させるか、または被験体にIL−21アゴニストを投与することによって、増加する(例えば、本明細書に記載されるIL−21アゴニストを、IL−21の活性またはレベルを増加するのに十分な量において)。
【0051】
なお別の局面において、本発明は、細胞、細胞集団、または被験体におけるStat(例えば、Stat4)の活性またはレベルを調節(例えば、減少または阻害、あるいは増加)する方法に特徴を有する。この方法は、以下を包含する:
(必要に応じて)Stat活性またはレベルの調節が所望される細胞(例えば、T細胞)細胞集団または被験体を同定する工程、および;
その細胞または細胞集団を、IL−21モジュレーター(例えば、IL−21のアゴニストまたはアンタゴニストを、その細胞、細胞集団、または、被験体において、Stat活性を調節するのに十分な量において)と接触するか、またはその被験体にIL−21モジュレーターを投与する工程。
【0052】
1つの実施形態において、Statの活性またはレベルを、その細胞または細胞集団とIL−21アゴニスト(例えば、本明細書に記載されるIL−21アゴニスト(例えば、Statタンパク質またはmRNA)を、Statの活性またはレベルを減少するのに十分な量において)を接触させるか、あるいは、その被験体にIL−21アゴニストを投与することによって、減少する。
【0053】
別の実施形態においてStatの活性またはレベルを、その細胞または細胞集団をIL−21アゴニスト(例えば、本明細書に記載されるIL−21アゴニスト(例えば、Statタンパク質またはmRNA)を、Statの活性またはレベルを増加するのに十分な量において)と接触させるか、あるいは、被験体にIL−21アゴニストを投与することによって、増加する。
【0054】
なお別の局面において、本発明は、被験体において、自己免疫応答(例えば、Th1媒介性自己免疫応答)を減少、阻害、抑制、寛解または遅延する方法に特徴がある。この方法は、その投与を必要とする被験体において、IL−21アゴニスト(例えば、本明細書に記載されるIL−21アゴニストを、その被験体において自己免疫応答を減少、阻害、抑制、寛解または遅延するのに十分な量において)を投与する工程を包含する。
【0055】
なお別の局面において、本発明は、被験体におけるTh2関連応答(例えば、アレルギー性応答または喘息性応答)を、減少、阻害、抑制、寛解または遅延する方法に特徴を有する。この方法は、投与を必要とする被験体に対して、IL−21アンタゴニストを(例えば、本明細書に記載されるアンタゴニストを、被験体におけるTh2関連応答を、減少、阻害、抑制、寛解または遅延するのに十分な量において)投与する工程を包含する。
【0056】
別の局面において、本発明は、細胞集団(例えば、Th細胞集団)においてTh2細胞手段を選択的に同定する方法に特徴を有し、この方法は、試験サンプル(例えば、Th細胞、および参照細胞(例えば、Th1細胞))中のIL−21核酸(例えば、IL−21遺伝子産物)またはポリペプチドのレベルを決定する工程;ならびに、その試験サンプル中のそのIL−21核酸のレベルを、参照サンプル(例えば、Th細胞)中のIL−21核酸のレベルと比較する工程であって、ここで、参照サンプルと比較した試験サンプル中の、そのIL−21核酸レベルの増加は、試験サンプルがTh2細胞であることを示す、工程、を包含する。
【0057】
本明細書において使用する場合、「Th1関連障害」は、参照(例えば、正常コントロール)と比較した、異常な(例えば、増加した、または減少した)Th1細胞活性(例えば、増加したか、または減少したTh1細胞応答)、またはTh1細胞数に関連する疾患または状態である。Th1関連障害の例としては、例えば、自己免疫疾患(例えば、とりわけ、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、クローン病、乾癬および重症筋無力症)が挙げられる。
【0058】
本明細書において使用する場合、「Th2関連障害」は、参照(例えば、正常コントロール)と比較した、異常な(例えば、増加した、または減少した)Th2細胞活性(例えば、増加したか、または減少したTh2細胞応答)、またはTh2細胞数に関連する疾患または状態である。Th2関連障害の例としては、例えば、喘息、アレルギー、および抗体成分に関連した障害(例えば、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、および狼瘡)が挙げられる。
【0059】
本明細書において記載される方法において使用されるIL−21ポリペプチドは、例えば、哺乳動物IL−21ポリペプチド(例えば、げっ歯類、ヒト、または、非ヒト霊長類)のアミノ酸配列を含み得る。例えば、IL−21ポリペプチドは、ヒトIL−21のポリペプチドをアミノ酸配列を含み得る。適切なアミノ酸配列は、配列番号2(以下)に示されるIL−21ポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0060】
IL−21およびIL−21レセプターポリペプチド(ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を含む)が、例えば、米国特許第6,057,128号、Parrish−Novakら、Nature 408:57−63,15 2000;Vosshenrichら、Curr.Biol.11:R157−77,2001,Asaoら、J.Immunol.167:1−5,2001;およびOzakiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:11439−44,2000に記載される。IL−21ポリペプチドのアミノ酸配列は、公知である。例えば、ヒトIL−21のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列が、GenBankアクセッション番号X_011082において利用可能である。このエントリーにおいて開示されるIL−21ヌクレオチド配列を、以下に表す:
【0061】
【化1】
【0062】
この開示されたIL−21核酸配列によって開示されたアミノ酸配列を、以下に示す:
【0063】
【化2】
【0064】
ヒトIL−21レセプター核酸のヌクレオチド配列を、以下に示す:
【0065】
【化3】
【0066】
開示されたIL−21レセプター核酸配列は、以下のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする:
【0067】
【化4】
【0068】
核酸配列の相同性は、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の同一性の程度として決定され得る。相同性は、当該分野で公知のコンピュータプログラム(例えば、GCGプログラムパッケージにおいて提供されるGAPソフトウェア)を用いて決定され得る。NeedlemanおよびWunsch 1970 J.Mol.Biol.48:443を参照のこと。核酸配列比較のために、以下の設定:5.0のGAP生成ペナルティ、および0.3のGAP伸長ペナルティ、において、GCG GAPソフトウェアを使用して、上記にて参照された類似核酸配列のコード領域は、配列番号1または配列番号3において示されたDNA配列のCDS(コーディング)部分を用いて、好ましくは、少なくとも、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性の程度を示す。同様に、本明細書において言及されるアミノ酸配列は、配列番号5、または、配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して、好ましくは、少なくとも、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または、99%の同一性の程度を示す。
【0069】
用語「配列同一性」とは、2つのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列が、比較する特定の領域にわたって、残基と残基との比較において、同一である程度をいう。用語「配列同一性パーセンテージ」は、2つの最適に整列された配列を、比較の領域にわたって比較して、両方の配列の生じる同一の核酸塩基(例えば、核酸の場合は、A、T、C、G、U、またはI)の位置の数を決定してマッチした位置の数を生じ、マッチした位置の数を比較の領域の位置の総数で割り算をして、そして結果に100を掛けて、配列同一性パーセントをもたらすことによって、計算される。本明細書において使用する場合、用語「実質的に同一」は、ポリヌクレオチドが、比較の領域にわたって参照配列に対して比較した場合、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは、少なくとも85パーセントの配列同一性、そして、しばしば、90〜95パーセントの配列同一性、より通常は、少なくとも98または99パーセントの配列同一性を有する配列を含む、ポリヌクレオチド配列の特徴を示す。用語「ポジティブ残基のパーセント」は、2つの最適に整列された配列を、比較の領域にわたって比較し、上記のように規定された同一性および保存的アミノ酸置換が両方の配列に生じる位置の数を決定して、マッチした位置の数をもたらし、マッチした位置の数を比較の領域の位置の総数で割り算し、そして結果に100を掛けて、ポジティブ残基のパーセントを生じることによって決定される。
【0070】
さらに、細胞または細胞集団においてIL−21またはIL−21レセプターレベルを増加する因子としては、IL−21アゴニストまたはIL−21レセプターアゴニストが挙げられる。そのようなアゴニストは、1つ以上のIL−21活性がTヘルパー細胞集団において発揮される試験化合物を同定することによって、同定され得る。
【0071】
被験体は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタまたはげっ歯類(ラットまたはマウスを含む)であり得る。IL−21の任意の所望の投与経路が、使用され得る。適切な投与経路としては、静脈内経路(ボラスおよび注入)、腹腔内、皮下、または筋肉内形態が挙げられ、これら全ては、薬学の分野において当業者に周知の形態を用いる。注入物は、従来の形態(液体溶液または懸濁液のいずれか)において調製され得る。
【0072】
非経口注入可能な投与は、一般に、皮下、筋肉内、または、静脈内注射および注入のために、使用される。
【0073】
(IL−21アンタゴニスト)
IL−21媒介性Tヘルパー細胞効果を阻害するために、IL−21とIL−21レセプターとの相互作用をブロックするか、そうでなければ阻害する因子を、T細胞またはT細胞(例えば、Tヘルパー細胞)の集団に添加し得る。便利さのために、これらのインヒビターを本明細書において、「IL−21アンタゴニスト」という。IL−21アンタゴニストの例としては、例えば、IL−21またはIL−21レセプターの可溶性フラグメント、これらのフラグメントを含む融合タンパク質、およびこれらのフラグメントに対する抗体が挙げられる。IL−21アンタゴニストは、Th2媒介性疾患(抗体媒介性疾患を含む)におけるIL−21のブロッキングのために有用である。これらの疾患としては、喘息、アレルギー、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、および狼瘡が挙げられる。
【0074】
(IL−21およびIL−21レセプター融合タンパク質)
IL−21またはIL−21レセプター、あるいはこれらタンパク質の活性フラグメントを、本明細書に記載の方法における使用のために、免疫グロブリンのようなキャリア分子を融合し得る。例えば、IL−21レセプターの可溶性形態を、「リンカー」配列を介して免疫グロブリンのFc部分か、または免疫グロブリンのFc部分に対して融合し得る。他の融合タンパク質(例えば、GST(すなわち、グルタチオンS−トランスフェラーゼ)、LexA、またはMBP(すなわち、マルトース結合タンパク質)との融合タンパク質)もまた、使用され得る。
【0075】
さらなる実施形態において、IL−21またはIL−21レセプター融合タンパク質を、1つ以上のさらなる部分と連結し得る。例えば、IL−21またはIL−21レセプター融合タンパク質を、さらに、GST融合タンパク質と連結し得る(IL−21レセプター融合タンパク質配列が、GST配列のC末端に融合する)。そのような融合タンパク質は、IL−21またはIL−21レセプター融合タンパク質の精製を容易にし得る。
【0076】
別の実施形態において、融合タンパク質としては、異種シグナル配列(すなわち、IL−21核酸またはIL−21レセプター核酸によって天然にコードされるポリペプチド中には存在しないポリペプチド配列)を、そのN末端において含む。例えば、天然のIL−21またはIL−21レセプターシグナル配列を除去して、別のタンパク質のシグナル配列によって、置換し得る。
【0077】
本発明のキメラまたは融合タンパク質を、標準的な組換えDNA技術によって産生し得る。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントを、従来技術に従って、インフレームでともに連結する(例えば、連結のための平滑末端または粘着末端(stagger)の使用、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切な場合に粘着末端を埋めること、望まれない連結を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的連結による)。別の実施形態において、融合遺伝子を、自動化DNA合成機を含む従来技術によって、合成し得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅を、2つの連続した遺伝子フラグメントの間の相補的な突出を生じるアンカープライマーを用いて、その後、相補的な突出をアニーリングして、再増幅して、キメラ遺伝子配列を生成し得る(例えば、Ausubelら、(編)CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons,1992を参照のこと)。さらに、融合部分(例えば、免疫グロブリン重鎖のFc領域)をコードする多くの発現ベクターが、市販されている。IL−21またはIL−21レセプターをコードする核酸を、そのような発現ベクター中にクローニングして、融合部分を、インフレームで、免疫グロブリンタンパク質と連結し得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、IL−21またはIL−21レセプターポリペプチド部分を、天然に生じるIL−21またはIL−21レセプター配列(野生型)中に変異を有する改変体IL−21レセプターポリペプチドとして提供して、IL−21レセプターに対する高親和性(変異をしていない配列と比較して)結合の改変IL−21、または、IL−21に対する高親和性(変異をしていない配列と比較して)改変IL−21レセプターポリペプチドを生じる。
【0079】
いくつかの実施形態において、IL−21ポリペプチドまたはIL−21レセプターポリペプチド部分は、天然に生じるIL−21またはIL−21レセプター配列(野生型)において変異を有する改変体IL−21またはIL−21レセプターポリペプチドとして提供され、タンパク分解に対してより耐性な(変異を有さない配列と比較して)、IL−21またはIL−21レセプター配列を生じる。
【0080】
融合タンパク質中に含むことができるシグナルペプチドは、MPLLLLLLLLPSPLHP(配列番号5)である。所望される場合、1つ以上のアミノ酸を、さらに、第1のポリペプチド部分(IL−21またはIL−21レセプター部分を含む)と第2のポリペプチド部分との間に挿入し得る。
【0081】
第2のポリペプチドは、好ましくは、可溶性である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、連結したポリペプチドの半減期(例えば、血清半減期)を増強する。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、融合ポリペプチドと第2のIL−21レセプターポリペプチドとの会合を促進する配列を含む。好ましい実施形態において、第2のポリペプチドは、少なくとも免疫グロブリンポリペプチド領域を含む。免疫グロブリン融合ポリペプチドは、当該分野で公知であり、そして例えば、米国特許第5,516,964号;同第5,225,538号;同第5,428,130号;同第5,514,582号;同第5,714,147号;および同第5,455,165号に記載される。
【0082】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、全長免疫グロブリンポリペプチドを含む。あるいは、第2のポリペプチドは、全長未満の免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖、軽鎖、Fab、Fab2、Fv、またはFc)を含む。好ましくは、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの重鎖を含む。より好ましくは、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域を含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能よりも、より少ないエフェクター機能を有する。Fcエフェクター機能としては、例えば、Fcレセプター結合、補体固定化およびT細胞枯渇活性が挙げられる(例えば、米国特許第6,136,310号を参照のこと)。T細胞枯渇活性、Fcエフェクター機能、および抗体安定性をアッセイする方法は、当該分野で公知である。1つの実施形態において、第2のポリペプチドは、Fcレセプターに対して低い親和性を有するか、または、親和性を有さない。代替的な実施形態において、第2のポリペプチドは、補体タンパク質C1qに対して、低い親和性を有するか、または、親和性を有さない。
【0084】
好ましい第2のポリペプチド配列は、配列番号6のアミノ酸配列を含む。この配列は、Fc領域を含む。下線を引いたアミノ酸は、野生型免疫グロブリン配列の対応する位置において見出されるアミノ酸と異なるアミノ酸である。
【0085】
【化5】
【0086】
(IL−21およびIL−21レセプター抗体)
本明細書において使用する場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分(すなわち、抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子)をいう。そのような抗体としては、例えば、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fab、Fab’、およびF(ab’)2フラグメント、ならびにFab発現ライブラリーが挙げられる。一般に、ヒトから得られた抗体分子は、IgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのいずれかのクラスに関連し、そして、分子に存在する重鎖の性質によって、お互いに異なる。特定のクラスは、サブクラスも有する(例えば、IgG1、IgG2および他のサブクラス)。さらに、ヒトにおいて、軽鎖は、κ鎖またはλ鎖であり得る。本明細書における抗体に対する言及は、ヒト抗体種の全てのクラス、サブクラス、およびタイプへの言及を含む。IL−21またはIL−21レセプターポリペプチドに対する抗体は、IL−21またはIL−21レセプターポリペプチドあるいはIL−21またはIL−21レセプターポリペプチドのフラグメントを含む融合タンパク質に対する抗体をもまた、含む。
【0087】
IL−21ポリペプチドまたはIL−21レセプターポリペプチドを、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製の標準的な技術を用いて、抗原、抗原の部分またはフラグメントとして使用し得、そして、さらに、その抗原に免疫特異的に結合する抗体を生成するための免疫原として使用し得る。免疫原としての使用のための抗原の抗原性ペプチドフラグメントは、例えば、アミノ末端領域(例えば、配列番号1または3に示されるアミノ酸配列)のアミノ酸配列の少なくとも7アミノ酸残基を含み、そして、そのエピトープを含み、その結果、そのペプチドに対して惹起された抗体は、全長タンパク質またはエピトープを含む任意のフラグメントとの特異的免疫複合体を形成する。好ましくは、抗原性ペプチドは、少なくとも10アミノ酸残基、または少なくとも15アミノ酸残基、または少なくとも20アミノ酸残基、または少なくとも30アミノ酸残基を含む。抗原性ペプチドに含まれる好ましいエピトープは、タンパク質の表面に位置するタンパク質の領域であり、一般に親水性の領域である。
【0088】
いくつかの実施形態において、抗原性ペプチドに含まれる少なくとも1つのエピトープは、タンパク質の表面に位置するIL−21またはIL−21レセプターポリペプチドの領域(例えば、親水性領域)である。IL−21またはIL−21レセプターポリペプチドの疎水性分析は、IL−21またはIL−21レセプタータンパク質のどの領域が特に親水性であり、従って、抗体産生の標的として有用な表面残基をコードする可能性が高いことを示す。抗体産生を標的化する手段として、親水性および疎水性の領域を示すハイドロパシープロットが、当該分野で周知の任意の方法(例えば、フーリエ変換を用いるか、または用いない、Kyte Doolittle法またはHopp Woods法)によって作成され得る。例えば、HoppおよびWoods(1981)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 78:3824−3828;KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−42を参照のこと。抗原タンパク質内の1つ以上のドメインに対して特異的な抗体、あるいは、その誘導体、フラグメント、アナログ、またはホモログがまた、本明細書において提供される。
【0089】
本発明のタンパク質、あるいはその誘導体、フラグメント、アナログ、ホモログまたはオルソログを、これらタンパク質成分に免疫特異的に結合する抗体の生成における免疫原として利用し得る。
【0090】
当該分野で公知の種々の手順を、本発明のタンパク質、またはその誘導体、フラグメント、アナログ、ホモログもしくはオルソログに対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の産生のために使用し得る。例えば、ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL,Harlow and Lane(1988)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY.を参照のこと。これらの抗体のいくつかが、以下に考察される。
【0091】
(ポリクローナル抗体)
ポリクローナル抗体の産生のために、種々の適切な宿主動物(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、または他の哺乳動物)が、ネイティブタンパク質、その合成改変体、またはそれらの誘導体の1回以上の注射により免疫され得る。適切な免疫原性調製物は、例えば、天然に存在する免疫原性タンパク質、免疫原性タンパク質を表す化学合成ポリペプチド、または組み換え発現された免疫原性タンパク質を含み得る。さらに、このタンパク質は、免疫される哺乳動物において免疫原性であることが公知の第2のタンパク質に結合体化され得る。このような免疫原性タンパク質の例としては、キーホールリンペットヘモシアン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、およびダイズトリプシンインヒビターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0092】
この調製物はさらに、アジュバントを含み得る。免疫学的応答を増大させるのに使用される種々のアジュバントとしては、フロイント(完全および不完全)、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リソレクチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、ジニトロフェノールなど)、ヒトにおいて有用なアジュバント(例えば、Bacille Calmette−GuerinおよびCorynebacterium parvum)、または同様の免疫刺激因子が挙げられるがこれらに限定されない。使用され得るアジュバントのさらなる例としては、MPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。
【0093】
免疫原性タンパク質に対するポリクローナル抗体分子は、哺乳動物から(例えば、血液から)単離され得、周知技術(例えば、主に、免疫血清のIgGフラクションを提供する、プロテインAまたはプロテインCを用いるアフィニティークロマトグラフィー)によりさらに精製され得る。その後、またはあるいは、探している免疫グロブリンの標的である特定の抗原またはそのエピトープがカラムに固定され、イムノアフィニティークロマトグラフィーにより免疫特異的抗体が精製される。免疫グロブリンの精製は、例えば、Wilkinson(2000)The Scientist,14:25−28により議論されている。
【0094】
(モノクローナル抗体)
本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」(MAb)または「モノクローナル抗体組成物」は、単一の軽鎖遺伝子産物および単一の重鎖遺伝子産物からなる1分子種のみの抗体を含む抗体分子の集団をいう。特に、モノクローナル抗体の相補性決定部位(CDR)は、この集団の全ての分子において同一である。従って、MAbは、それに対する固有の結合親和性により特徴付けられる抗原の特定のエピトープと免疫反応し得る抗原結合部位を含む。
【0095】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature,256:495に記載される)を用いて調製され得る。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物は、代表的に、免疫因子で免疫され、その免疫因子に特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生し得るリンパ球が惹起される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫され得る。
【0096】
免疫因子としては、代表的に、タンパク質抗原、そのフラグメント、またはその融合タンパク質が挙げられる。一般的には、ヒト起源の細胞が所望の場合、脾臓細胞または末梢血リンパ球が使用され、また、非ヒト哺乳動物起源が所望の場合、リンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、適切な融合因子(例えば、ポリエチレングリコール)を用いて不死化細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞が形成される。Goding,MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE,Academic Press(1986)pp.59−103。不死化細胞株は通常、形質転換哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシ、およびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含む適切な培養培地中で培養され得る。例えば、親細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、代表的に、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む(「HAT培地」)。これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
【0097】
好ましい不死化細胞株は、効果的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を支持し、かつHAT培地のような培地に感受性である細胞株である。より好ましい不死化細胞は、マウス骨髄腫株(例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,CaliforniaおよびAmerican Type Culture Collection,Manassas,Virginia)から入手可能)であり得る。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒト骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor(1984)J.Immunol.,133:3001;Brodeurら,MONOCLONAL ANTIBODY PRODUCTION TECHNIQUES AND APPLICATIONS,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63)。
【0098】
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地は次いで、その抗原に対するモノクローナル抗体抗体の存在についてアッセイされ得る。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ(例えば、放射性イムノアッセイ(RIA)または酵素連結イムノソルベントアッセイ(ELISA))により決定される。このような技術およびアッセイは、当該分野で公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonおよびPollard(1980)Anal.Biochem.,107:220のScatchard分析により決定され得る。好ましくは、標的抗原に対する高い程度の特異性および高い結合親和性を有する抗体が単離される。
【0099】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、そのクローンは、限界希釈手順によりサブクローニングされ得、標準的な方法により増殖される。この目的にとって適切な培養培地としては、例えば、Dulbecco’s Modified Eagle’s MediumおよびRPMI−1640培地が挙げられる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物における腹水として、インビボで増殖され得る。
【0100】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインA−Sepharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィー)により培養培地または腹水から単離または精製され得る。
【0101】
モノクローナル抗体はまた、組み換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号に記載される方法)により作製され得る。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いて)容易に単離および配列決定され得る。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として使用できる。一旦単離されると、DNAは発現ベクターに配置され得、次いで、宿主細胞(例えば、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞)にトランスフェクトされ得、組み換え宿主細胞において、モノクローナル抗体が合成される。DNAはまた、例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を、相同なマウス配列の代わりに置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrison(1994)Nature 368,812−13)、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部をコードする免疫グロブリンに共有結合することにより、改変され得る。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、キメラ二価抗体を作製するため、本発明の抗体の定常ドメインと置換され得、または本発明の抗体の抗原結合部位の可変ドメインで置換され得る。
【0102】
(ヒト化抗体)
本発明のタンパク質抗原に対する抗体はさらに、ヒト化抗体またはヒト抗体を含み得る。これらの抗体は、ヒトへの投与に適しており、投与された免疫グロブリンに対するヒトによる免疫応答を引き起こさない。抗体のヒト化形態は、主に、ヒト免疫グロブリンの配列で構成され、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖またはフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合部分配列)である。ヒト化は、Winterら(Jonesら(1986)Nature,321:522−525;Riechmannら(1988)Nature,332:323−327;Verhoeyenら(1988)Science,239:1534−1536)の方法に従い、げっ歯類CDRまたはCDR配列とヒト抗体の対応する配列を置換することにより実施され得る(米国特許第5,225,539号を参照のこと)。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても移植したCDRもしくはフレームワーク配列においても見出されない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらである少なくとも1つ、および代表的には2つの改変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、代表的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む(Jonesら,1986;Riechmannら,1988;およびPresta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596)。
【0103】
(ヒト抗体)
完全ヒト抗体は、軽鎖および重鎖の本質的に全体の配列(CDRを含む)が、ヒト遺伝子から生じた抗体分子に関する。このような抗体は、本明細書中で「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」と呼ばれる。ヒトモノクローナル抗体は、トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら(1983)Immunol Today 4:72を参照のこと)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら,1985,MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R,Liss,Inc.,pp.77−96を参照のこと)により調製され得る。ヒトモノクローナル抗体は、本発明の実施において使用され得、ヒトハイブリドーマを用いることにより(Coteら(1983)Proc Natl Acad Sci USA 80:2026−2030)またはエプスタイン−バーウイルスでヒトB細胞をインビトロ形質転換することにより(Coteら(1985),MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)生成され得る。
【0104】
さらに、ヒト抗体はまた、さらなる技術(ファージディスプレイライブラリーを含む)を用いて生成され得る。HoogenboomおよびWinter(1991)J.Mol.Biol.,227:381;Marksら(1991)J.Mol.Biol.,222:581を参照のこと。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物(例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にかまたは完全に不活性化されたマウス)に導入することにより、作製され得る。チャレンジによって、全ての局面(遺伝子配置、アセンブリ、および抗体レパートリーを含む)においてヒトに見られるものと緊密に類似するヒト抗体産物が生成される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,611,016号;およびMarksら(Bio/Technology 10,779−783(1992));Lonbergら(Nature 368,856−859(1994));Morison(Nature 368,812−13(1994));Fishwildら(Nature Biotechnology 14,845−51(1996));Neuberger(Nature Biotechnology 14,826(1996));ならびにLonbergおyびHuszar(Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995))に記載されている。
【0105】
ヒト抗体はさらに、抗原によるチャレンジに応答して、動物の内因的な抗体ではなく完全ヒト抗体を生成するよう改変されたトランスジェニック非ヒト動物を用いて生成され得る。PCT公報WO94/02602を参照のこと。非ヒト宿主において重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする内因性遺伝子は不活性化され、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする活性な遺伝子座が、宿主ゲノムに挿入される。ヒト遺伝子は、例えば、必要なヒトDNAセグメントを含む酵母人工染色体を用いて組み込まれる。次いで、全ての所望の改変を提供する動物は、この改変の全部より少数の相補体を含む中間トランスジェニック動物を交差交配することにより子孫として得られる。このような非ヒト動物の好ましい実施形態はマウスであり、PCT公報WO96/33735およびWO96/34096に記載されるようにXenomouseTMと呼ばれる。この動物は、完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を生成する。この抗体は、目的の免疫原で免疫した後、この動物から、例えば、ポリクローナル抗体の調製物として直接的に得られるか、あるいは、この動物由来の不死化B細胞(例えば、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞)から得られる。さらに、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子は、抗体を直接的に得るために回収および発現されるか、または抗体アナログ(例えば、単鎖Fv分子)を得るためにさらに改変され得る。
【0106】
内因性免疫グロブリン重鎖の発現を欠く非ヒト宿主(マウスに代表される)を生成する方法の例は、米国特許第5,939,598号に開示されている。これは、胚性幹細胞における少なくとも1つの内因性重鎖からJセグメント遺伝子を欠失させて、この遺伝子座の再配置を防止しかつ再配置した免疫グロブリン重鎖遺伝子座の転写物の形成を防止する工程(欠失は、選択マーカーをコードする遺伝子を含む標的化ベクターによりもたらされる)、およびその体細胞および生殖細胞が選択マーカーをコードする遺伝子を含むトランスジェニックマウスを胚性幹細胞から生成する工程、を包含する方法により入手され得る。
【0107】
目的の抗体(例えば、ヒト抗体)を生成する方法は、米国特許第5,961,771号に開示されている。この方法は、重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを1つの哺乳動物宿主細胞に導入する工程、軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを別の哺乳動物宿主細胞に導入する工程、および2つの細胞を融合してハイブリッド細胞を形成する工程を包含する。このハイブリッド細胞は、重鎖および軽鎖を含む抗体を発現する。
【0108】
免疫原上の化学的に関連するエピトープを同定する方法、および高い親和性を有する関連エピトープに免疫特異的に結合する抗体を選択する相関関係のある方法は、PCT公報99/53049に開示されている。
【0109】
(Fabフラグメントおよび単鎖抗体)
本発明によれば、本発明の抗原性タンパク質に特異的な単鎖抗体の産生のための技術が適用され得る(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)。さらに、Fab発現ライブラリーを構築する方法が適用され得(例えば、Huseら(1989)Science 246:1275−1281を参照のこと)、タンパク質またはその誘導体、フラグメント、アナログ、もしくはホモログに対する所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ効率的な同定が可能となる。タンパク質抗原に対するイディオタイプを含む抗体フラグメント((i)抗体分子のペプシン消化により生成されるF(ab’)2フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成されるFabフラグメント;(iii)パパインおよび還元剤による抗体分子の処理により生成されるFabフラグメント;ならびに(iv)Fvフラグメントが挙げられるがこれらに限定されない)は、当該分野で公知の技術により産生され得る。
【0110】
(二特異的抗体)
二特異的抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体(好ましくは、ヒト抗体またはヒト化抗体)である。本発明においては、結合特異性のうちの1つは、本発明の抗原性タンパク質に対する特異性である。第2の結合標的は、任意の他の抗原であり、細胞表面タンパク質またはレセプターもしくはレセプターサブユニットが有利である。
【0111】
二特異的抗体を作製する方法は、当該分野で公知である。従来法では、二特異的抗体の組み換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対(ここで、2つの重鎖は異なる特異性を有する)の同時発現に基づいている(MilsteinおよびCuello(1983)Nature,305:537−539)。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為な仕分けが理由で、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を生成し、これらのうちの1つのみが、二特異的構造を生成する。正確な分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により達成される。同様の手順が、WO93/08829、およびTrauneckerら(1991)EMBO J.,10:3655−3659に記載されている。
【0112】
所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合され得る。融合体は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインを有する。この融合体の少なくとも1つに存在する軽鎖結合部位に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、および、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別の発現ベクターに挿入され、そして適切な宿主生物中に同時トランスフェクトされる。二特異的抗体作製のさらなる詳細については、Sureshら(1986)Methods in Enzymology,121:210を参照のこと。
【0113】
WO96/27011に記載される別のアプローチに従って、抗体分子対の間の界面は、組み換え細胞培養物から回収されるヘテロダイマーの割合を最大にするよう操作され得る。好ましい界面は、抗体定常領域のCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法において、第1抗体分子の界面からの1つ以上の小さなアミノ酸側鎖が、より大きな側さ(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置換される。この大きな側さと同一または類似の大きさの補償的「空洞」(Acompensatory “cavity”)が、大きなアミノ酸側鎖とより小さな側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)を置換することによって、第2抗体分子の界面に作製される。これにより、望ましくない最終産物(例えば、ホモダイマー)よりもヘテロダイマーの収率を増大させる機構が提供される。
【0114】
二特異的抗体は、全長抗体または抗体フラグメント(例えば、F(ab’)2二特異的抗体)として調製され得る。抗体フラグメントから二特異的抗体を生成する技術は、文献に記載されている。例えば、二特異的抗体は、化学的連結を用いて調製され得る。Brennanら(1985)Science 229:81は、インタクトな抗体をタンパク質分解切断してF(ab’)2フラグメントを生成する手順を記載している。これらのフラグメントは、ビシナルのジチオールを安定化させ、分子内ジスルフィド形成を防止するために、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元される。次いで、生成されるFab’フラグメントは、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab’−TNB誘導体のうちの1つは、メルカプトエチルアミンによる還元により、Fab’−チオールに再変換され、そして等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合されて、二特異的抗体が形成される。生成された二特異的抗体は、酵素の選択的免疫のための因子として使用され得る。
【0115】
さらに、Fab’フラグメントは、E.coliから直接回収さ得、そして化学的にカップリングされて二特異的抗体が形成される。Shalabyら(1992)J.Exp.Med.175:217−225は、完全ヒト化二特異的抗体F(ab’)2分子の生成を記載している。各Fab’フラグメントを、E.coliから別々に分泌させ、そしてインビトロで指向性化学カップリングに供して、二特異的抗体を形成した。このようにして形成された二特異的抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞および通常のヒトT細胞に結合し得、かつヒト乳癌標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の溶解活性を誘導し得る。
【0116】
組み換え細胞培養物から直接的に二特異的抗体フラグメントを作製および単離するための種々の技術もまた記載されている。例えば、二特異的抗体は、ロイシンジッパーを用いて生成される。Kostelnyら(1992)J.Immunol.148(5):1547−1553.FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合により、2つの異なる抗体のFab’部分に連結した。この抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、次いで、再酸化してヘテロダイマーを形成させた。この方法はまた、抗体ホモダイマーの産生のためにも使用され得る。Hollingerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448によって記載される「ダイアボディ(diabody)」技術は、二特異的抗体フラグメントを作製する代替機構を提供する。このフラグメントは、同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成するには短すぎるリンカーにより、軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つのフラグメントのVHドメインおよびVLドメインは、別のフラグメントの相補的なVLドメインおよびVHドメインと対形成され、それによって、2つの抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二特異的抗体フラグメントを作製する別のストラテジーもまた報告されている。Gruberら(1994)J.Immunol.152:5368を参照のこと。
【0117】
2価以上を有する抗体が、考慮される。例えば、三価抗体が調製され得る。Tuttら(1991)J.Immunol.147:60。
【0118】
例示の二特異的抗体は、2つの異なるエピトープに結合し得、そのうちの少なくとも1つは、本発明のタンパク質抗原に由来する。あるいは、特定の抗原を発現する細胞に対する細胞防御機構に注目するため、免疫グロブリン分子の抗抗原性アームは、白血球上のトリガー分子(例えば、T細胞レセプター分子(例えば、CD2、CD3、CD28、またはB7)またはIgGに対するFcレセプター(FcR)(例えば、FcRI(CD64)、FcRII(CD32)、およびFcRIII(CD16)))と組み合わされ得る。二特異的抗体はまた、細胞障害性因子を、特定の抗原を発現する細胞に向かわせるのに使用され得る。これらの抗体は、抗原結合アーム、および細胞障害性因子または放射性核種キレーター(例えば、EOTUBE、DPTA、DOTA、またはTETA)に結合するアームを有する。別の目的の二特異的抗体は、本明細書中に記載されるタンパク質抗原に結合し、かつ組織因子(TF)にさらに結合する。
【0119】
(薬学的組成物)
本明細書中に記載されるIL−21モジュレーターは、従来法により、薬学的組成物として提供され得る。この組成物は、好ましくは、内部使用に適しており、かつ有効量の薬理学的に活性な本発明の化合物を単独でかまたは1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む。この化合物は特に、毒性があるとしても非常に低い点で有用である。
【0120】
実施する際に、この化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩は、所望の変化(すなわち、IL−21レベルの増加または減少)をもたらすのに十分な量で投与され、かつそのような目的に最も適した薬学的形態で使用される。
【0121】
例えば、錠剤またはカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル)の形態での経口投与については、この活性薬物成分は、経口非毒性の薬学的に受容可能な不活性キャリア(例えば、エタノール、グリセロール、水など)と組み合わされ得る。さらに、望ましいかまたは必要とされる場合、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、および着色剤もまた、この混合物中に組み込まれ得る。適切な結合剤としては、デンプン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプンペースト、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン、天然糖(例えば、グルコースまたはβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味物質、天然ガムおよび合成ガム(例えば、アカシア、トラガント、またはアルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ワックス)などが挙げられる。これらの投薬形態において使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、シリカ、滑石粉、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、および/またはポリエチレングリコールなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムデンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または沸騰混合物などが挙げられるがこれらに限定されない。希釈剤としては、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、セルロース、および/またはグリシンが挙げられる。
【0122】
注射可能な組成物は、好ましくは、水性の等張溶液または懸濁液であり、脂肪エマルジョンまたは懸濁物から坐薬が有利に調製される。この組成物は、滅菌され得、かつ/または、アジュバント(例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調節のための塩、および/または緩衝剤)を含む。さらに、これらはまた、他の治療上価値のある物質を含み得る。この組成物は、それぞれ、従来の混合、顆粒化、またはコーティング方法に従って調製され、かつ約0.1〜75%、好ましくは、約1〜50%の活性成分を含む。
【0123】
本発明の化合物はまた、指定時刻放出および持続放出性の錠剤またはカプセル剤、ピル剤、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ、懸濁物、シロップ、およびエマルジョンとして、このような経口形態で投与され得る。
【0124】
液体、特に、注射可能な組成物は、例えば、溶解、分散等による調製され得る。活性化合物は、薬学的に純粋な溶媒(例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール等)に溶解されるかまたはこれらと混合され、それによって、注射可能な溶液または懸濁液が形成される。さらに、注射前に液体に溶解するのに適した固体形態が処方され得る。注射可能な組成物は、好ましくは、水性等張溶液または懸濁液である。この組成物は、滅菌され得、かつ/またはアジュバント(例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調節のための塩、および/または緩衝剤)を含む。さらに、これらはまた、他の治療上価値のある物質を含み得る。
【0125】
本発明の組成物は、静脈内形態(ボーラスおよび注入の両方)、腹腔内形態、皮下形態、または筋内形態で投与され得る。これらは全て、薬学分野の当業者に周知の形態を用いる。注射可能物質は、液体溶液または懸濁物のいずれかの従来形態で調製され得る。
【0126】
非経口注射による投与は、一般的に、皮下、筋内、または静脈内注射および注入のために使用される。さらに、非経口投与のための1つのアプローチは、米国特許第3,710,795号(本明細書中に参考として援用される)に従って、一定レベルの投薬を維持することを確実にする遅延放出系または持続放出系の移植を用いる。
【0127】
さらに、本発明にとって好ましい化合物は、適切な鼻内ビヒクルの使用を通じて、または当業者に周知の経皮用皮膚パッチの形態を用いて経皮経路を通じて、鼻内形態で投与され得る。経皮送達系の形態で投与するために、用量投与は、当然、投薬レジメンを通じて連続的であり、間欠的ではない。他の好ましい局所調製物としては、クリーム、軟膏、ローション、エアロゾルスプレー、およびゲルが挙げられ、ここで、活性成分の濃度は、0.1%〜15%(w/wまたはw/v)の範囲である。
【0128】
固体組成物については、賦形剤として、薬学等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石粉、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられ、使用され得る。上記の活性化合物はまた、例えば、キャリアとしてポリエチレングリコール、例えば、プロピレングリコールを用いて坐薬として処方され得る。いくつかの実施形態において、坐薬は、脂肪エマルジョンまたは懸濁物から調製されるのが有利である。
【0129】
本発明の組成物はまた、リポソーム送達系の形態(例えば、小さな単層ビヒクル、大きな単層ビヒクル、および多層ヒビクル)で投与され得る。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンを含む、種々のリン脂質から形成され得る。いくつかの実施形態において、脂質成分のフィルムは、米国特許第5,262,564号に記載されるように、薬物の水性溶液と水和され、薬物を取り囲む脂質層が形成される。
【0130】
本発明の化合物はまた、化合物分子とカップリングされる個々のキャリアとしてのモノクローナル抗体の使用により送達され得る。本発明の化合物はまた、標的化薬物キャリアとして可溶性ポリマーとカップリングされ得る。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパナミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンが挙げられ得る。さらに、本発明の化合物は、薬物の制御放出を達成するのに有用な生分解ポリマーのクラス(例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマー)と連結され得る。
【0131】
本発明の核酸分子は、ベクターに挿入され得、遺伝子療法ベクターとして使用され得る。遺伝子療法ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与によるか(例えば、米国特許第5,328,470号を参照のこと)、または定位注射により(例えば、Chen,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054−3057を参照のこと)被験体に送達され得る。遺伝子療法ベクターの薬学的調製物は、受容可能な希釈剤中の遺伝子療法ベクターを含み得るか、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれた遅延放出マトリクスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターは、組み換え細胞からインタクトに生成され得る場合(例えば、レトロウイルスベクター)、この薬学的調製物は、遺伝子送達系を生じる1つ以上の細胞を含み得る。
【0132】
所望の場合、投与される薬学的組成物はまた、微量の非毒性補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および他の物質(例えば、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等))を含み得る。
【0133】
この化合物を用いる投薬レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別、および医学的状態;処置される状態の重篤度;投与経路;患者の腎機能および肝機能;ならびに用いられる特定の化合物またはその塩を含む、種々の要因に従って選択される。通常の技術を有する医師または獣医は、その状態の進行を予防、抵抗、または休止させるのに必要とされる薬物の有効量を容易に決定し、処方し得る。
【0134】
本発明の経口用量は、示される効果について使用される場合、約0.05〜1000mg/日の間の範囲(経口)である。この組成物は、好ましくは、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100.0、250.0、500.0、および1000.0mgの活性成分を含む等級付けされた錠剤の形態で提供される。本発明の化合物の有効血漿レベルは、0.002mg〜50mg/kg体重/日の範囲である。
【0135】
本発明の化合物は、単一の一日用量で投与され得るか、または総一日用量が、一日に2、3、または4回の分割された用量で投与され得る。
【0136】
上記薬学的組成物のいずれも、0.1〜99%、好ましくは、1〜70%のIL−21、IL−21レセプター、IL−21アゴニスト、またはIL−21アンタゴニストを含み得る。
【0137】
所望の場合、この薬学的組成物は、アジュバントと共に提供され得る。アジュバントは、上述されている。いくつかの実施形態において、アジュバントは、宿主種に依存して、免疫学的応答を増加するために使用され得、フロイント(完全および不完全)、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リソレクチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール)、およびヒトにおいて有用なアジュバント(例えば、BCG(Bacille Calmette−Guerin)およびCorynebacterium parvum)が挙げられる。一般的には、動物は、連続するいくつかの注射可能物(好ましくは、少なくとも3つのブースター注射を含む)を用いて、抗原を注射される。
【0138】
本発明はさらに、以下の非限定的な例において例示される。実施例1〜8は、以下の物質および方法を用いて実施した。
【実施例】
【0139】
(マウス)
そうでないことが示されない限り、6〜8週齢のC57BL/6マウスを全ての実験に使用した。C57BL/6欠損バックグラウンドのStat6欠損マウスを、Kaplan,M.H.ら,Immunity 4:313−9,1996に記載されるようにして作製した。
【0140】
(リンパ球の調製および培養)
リンパ球を、(Kaplan,M.H.ら,Immunity 4:313−9,1996)に記載されるように補充したRPMI1640中で培養した。抗CD4および抗CD26Lを用いたセルソーティングにより、未処理のThp細胞をリンパ節および脾臓から、95〜98%純度まで精製した。
【0141】
(抗体およびサイトカイン)
T−bet特異的抗血清を、(Szabo,S.J.ら,Cell 100:655−69,2000)に記載されるようにして調製した。Stat4、Stat1、およびアクチンに特異的な抗体を、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)から入手した。リン酸化Stat4に特異的な抗体を、Zymed(South San Francisco,CA)から得た。Th分化培養物において使用した抗CD3、抗CD28、抗IL−4、およびIFNγに対する抗体を、Pharmingenから入手した。組み換えIL−4を、Preprotechから入手した。組み換えIL−2は、Chiron(Emeryville,CA)から提供された。組み換えIL−12は、Hoffman−LaRoche(Nutley,NJ)から提供された。COS上清中において発現したマウスIL−21を調製および濃縮した。1ユニットの活性を、IL−21でトランスフェクトしたBAF3細胞の50%最大増殖を誘導するのに必要とされる上清濃度と定義した。IL−21と平行して調製および濃縮したモックトランスフェクトCOS上清を、コントロールとして使用した。
【0142】
(インビトロTヘルパー細胞分化)
未処理のT細胞を、抗CD3、抗CD28(1μg/ml)をコーティングしたプレート上に、10ng/ml IL−4、10μg/ml抗IFNγ(Th2条件)、または1ng/ml IL−12、10μg/ml 抗IL−4(Th1条件)の存在下、1〜2×106/mlでプレーティングした。3日後に、細胞をIL−2(100U/ml)中で拡張した。培養1週間後、細胞を、PMA/Ionomycinで刺激し、サイトカイン産生を、(Brid,J.J.ら,Immunity 9:229−37,1998)に記載されるような細胞内サイトカイン染色により決定した。
【0143】
(RNA分析)
総RNAを、RNeasy(Qiagen;Valencia,CA)を用いて単離した。ノザン分析のために、このRNAを、1.5%アガロース/6%ホルムアルデヒドゲル上で分離し、GeneScreenメンブレン(New England Nuclear)に移した。このメンブレンを、IL−21、Il−4、IFNγ、γ−アクチンに対する放射標識cDNAプローブとハイブリダイズさせた。リアルタイムPCRのために、1μgのRNAを、オリゴ(dT)でプライムし、Superscript(Invitrogen Life Technologies;Carlsbad,CA)を用いてcDNAに変換した。25ngのcDNAを、SYBR Green 2×またはTaqMan 2× PCRミックス(Applied Biosystems;Foster City,CA)を用いるPCR反応においてテンプレートとして使用し、以下のプライマーを用いてABI Prism 7700 Sequence Detector(Applied Biosystems)により分析した。
【0144】
【化6】
【0145】
IL−4、IFNγ、およびGAPDHに対するプライマーおよびTaqManプローブは、以前から公開されている(Overbergh,L.ら,Cytokine 11:305−12 1999)。
【0146】
(イムノブロット分析)
細胞を50mM Tris、0.5% NP40、5mM EDTA、50mM NaCl中に溶解し、溶解物を遠心分離により洗浄することによって、全細胞抽出物を調製した。タンパク質抽出物を、8〜10%ポリアクリルアミドゲル上で分離し、Optitranメンブレン(SchleicherおよびSchuell;Keene,NH)に移した。イムノブロットを、室温にて1時間、5%ミルクを含有するTBST(50mM Tris Ph7.5、100mM NaCl、0.03% Tween 20)中でブロックし、そして示される抗体と共に、4℃で一晩インキュベートした。ブロットをTBSTで洗浄し、抗ウサギHRP結合抗体(Zymed)と共に室温にてインキュベートした。ブロットをTBSTで洗浄した後、強化化学発光(Amersham;Piscataway,NJ)を用い、販売元の指示に従って検出を実施した。
【0147】
(実施例1.IL−21は、インビトロでTh2経路に沿って発達するよう誘導されたTh細胞において優先的に発現される)
ThサブセットにおけるIL−21の発現を決定した。ノザン分析を、1週間かけてTh1またはTh2細胞に分化させ、サイトカイン産生を誘導するため4時間再刺激した未処理のThp(Th前駆細胞)由来のmRNAを用いて実施した。その結果を図1A〜1Dに示す。図1Aに示される結果について、Thp細胞は、6日間、Th1およびTh2をゆがめる条件(Th1 and Th2 skewing conditions)下で培養した。この細胞を、静止させる(−)か、またはPMA/Ionomycin(P+I)と共に4時間再刺激した。RNAを精製し、ノザンブロットによりサイトカイン発現について評価した。示される結果は、3回の独立した実験の代表例である。IL−21をコードするメッセージを、刺激したTh2細胞においてのみ検出した。対照的に、IL−21メッセージは、Th1培養物では検出されなかった。これらの結果は、IL−21がTh2特異的サイトカインであることを示している。
【0148】
IL−21を発現する能力がTh2経路に沿った細胞の発達と共に増加するか否かを決定するため、一次刺激Thp細胞におけるIL−21発現を、二次刺激Th2細胞におけるIL−21メッセージ発現と比較した。その結果を図1Bに示す。示される結果について、Thp細胞は、中立のTh1条件(neutral Th1 condition)およびTh2をゆがめる条件下で培養した。RNAを、一次および二次抗CD3刺激の24時間後に精製した。サイトカイン発現を、リアルタイムPCRにより評価し(二連)、GAPDHと比較して示した。IL−4と同様に、IL−21メッセージは、一次刺激後にThp細胞において比較的低度で観察された。対照的に、IL−21の発現は、細胞がTh2経路に沿って分化した後に顕著に増加した。これらの結果は、IL−21遺伝子の発現が、他のTh2特異的サイトカインと同様に調節されることを実証している。
【0149】
分化した細胞におけるIL−21発現に対するサイトカイン環境(milieu)の効果を決定した。Th1およびTh2細胞を、それぞれ、二次刺激の前にIL−4およびIFNγの存在下で培養した。細胞は、IL−4およびIFNγによるStat6およびStat1の活性化により証明される通り、これらのサイトカインに応答性であった。
【0150】
IL−21の発現を回復させるIL−4の能力を試験した。結果を図1Cに示す。Thp細胞を、5日間、Th1およびTh2をゆがめる条件下で培養した。IL−4またはIFNγを、抗CD3による二次刺激の24時間前に、示された培養物に添加した。RNAを、二次刺激の24時間後に精製し、リアルタイムPCRによりGAPDHと比較してIL−21の発現を評価した(二連)。Th1へのIL−4の添加によって、Th2細胞に見られるレベルにまでIL−21発現を回復することはできなかった。さらに、Th2培養物へのIFNγの添加は、IL−21の発現に対して阻害効果を有さなかった。これらの結果は、Th2細胞におけるIL−21の発現が、Th2分化の初期で固定されるようであり、IL−4またはIFNγによって直接調節されないことを実証している。
【0151】
(実施例2.Th2細胞は、インビボでのTh2免疫応答の間にIL−21を発現する)
Th2細胞におけるインビボ免疫応答の間のIL−21の発現を、病原性原生生物モデル系において決定した。原生生物Leishmania majorの感染は、Th細胞のインビボ応答を研究するための十分に特徴付けられたモデルを提供する(Reiner,S.L.ら,Annu Rev Immunol 13:151−77,1995)。L.majorを感染させてた、いつくかの同系交配マウス系統(例えば、C57BL/6)は、病原体に対する保護的および効果的Th1応答を惹起する。逆に、他の同系交配マウス系統(例えば、BALBマウス系統)は、主に、Th2応答を生じ、感染を除去できない。
【0152】
C57BL/6およびBALB/cマウスの両方に、L.majorを感染させた。8匹のBALB/cおよびC57BL/6マウスのコホートの後ろ足のフットパッドにL.majorを感染させた。6週間後、枯渇したリンパ節からのCD4+T細胞を精製し、抗CD3で刺激した。RNAを刺激6時間後に精製し、サイトカイン発現を、リアルタイムPCRによりGAPDHと比較して評価した。
【0153】
結果を図1Dに示す。予想された通り、C57BL/6感染マウス由来のCD4+細胞は、BALB/c感染マウス由来の細胞よりも多くのIFNγを発現した。優勢Th2応答と同じく、感染BALB/cマウス由来のCD4+T細胞は、C57BL/6マウス由来のT細胞よりも有意に多くのIL−4を生成した。インビトロTh2をゆがめる条件下で観察されたものと同様に、IL−21もまた、BALB/cマウスにおけるインビボTh2応答の間に優先的に発現された。これらの結果は、インビトロでの発見(図1)と合わせて、IL−21はTh2サイトカインであることを実証している。
【0154】
(実施例3.IL−21は、Th細胞の発達の際にIFNγの産生を特異的に阻害する)
IL−21は、IL−4と、Th細胞における類似の発現プロフィールおよび構造的類似性を共有しているので、IL−4と同様に、Th分化に直接影響を及ぼすIL−21の能力を決定した。
【0155】
Thp分化に対するIL−21の影響を決定するために、Thp細胞を、中立のTh1条件およびTh2をゆがめる条件下で培養した。
【0156】
精製した未処理のThp細胞を、中立のTh1条件およびTh2をゆがめる条件下、IL−21の存在下および非存在下でプライムした。これらの細胞のサイトカイン力を、培養1週間後の細胞内サイトカイン染色により評価した。
【0157】
結果を図2Aおよび2Bに示す。図2Aに示される結果について、細胞は、IL−21の存在下またはモック上清中で1週間培養した。サイトカイン産生を、PMA/Ionomycinによる再刺激の4時間後の細胞内サイトカイン染色により評価した。結果は、少なくとも10回の実験の代表例である。
【0158】
IL−4と同様、中性およびTh1培養物へのIL−21の添加は、IFNγ産生細胞数を顕著に減少させた(図2A、中性およびTh1条件)。Th1細胞における減少した数のIFNγ産生細胞は、ELISPOT分析により確認された。しかし、IL−4を用いて観察されたものと異なり、IL−21自体は、IL−4産生Th2細胞の産生を強化できなかった(図2A、中性条件)。IL−21処理は、Th2をゆがめる条件下でのIL−4産生細胞の発生に対して刺激効果も阻害効果も有さなかった(図2A、Th2)。
【0159】
最近刺激したThp細胞からのIFNγ産生に影響を与えるIL−21の能力を決定した。精製した未処理のThp細胞を、中性およびTh1条件下、IL−21の存在下または非存在下で、48時間培養した。得られた培養上清を、ELISAを用いてIFNγ産生について試験した。IL−21は、分化している培養物中で早期に生じるIFNγの量を減少させることが見出された(図2B)。従って、Thプライミングの間のIL−21の存在は、分化Th1細胞およびエフェクター細胞の両方がIFNγを産生する能力に影響を及ぼす。
【0160】
(実施例4.IL−21は、Th1エフェクター細胞からのIFNγ産生を直接的に阻害しない)
IL−21が、IL−21産生を直接的に抑制するか、または代わりに、IFNγ細胞の分化に影響を与えるかを決定するため、精製した未処理のThp細胞を、Th1をゆがめる条件下で培養した。IL−21またはモック上清を、培養開始時(第0日)または再刺激および分析の24時間前(第5日)に添加した。サイトカイン産生を、細胞内サイトカイン染色により評価した。結果を図3Aに示す。
【0161】
IL−21を第0日に添加した際に観察されたものと異なり、分化期間の最後におけるTh1培養物へのIL−21の添加は、IFNγ産生に対する効果を有さなかった(Th1細胞はIL−21Rを発現し、IL−21に対して応答性であるけれども)。この発見は、IL−21が、Thp細胞のIFNγ産生Th1細胞へと分化する能力に損傷を与えるが、Th1エフェクター細胞からのIFNγ産生を直接的に阻害しないことを実証している。
【0162】
(実施例5.IFNγのIL−21阻害は、Stat6から独立している)
Th1細胞の分化を阻害するIL−4の能力は、Stat6の発現に依存する(Kaplan,M.H.,ら,Immunity 4:313−9,1996,Takeda,K.ら,Nature 380:627−30 1996,およびShimoda,K.ら,Nature 380:630−3,1996)。
【0163】
IFNγのIL−21媒介阻害もまたStat6に依存するか否かを決定するため、Stat6欠損細胞におけるTh1分化に影響を与えるIL−21の能力を決定した。野生型マウスまたはStat6欠損マウスから精製したThp細胞を、Th1をゆがめる条件下、IL−21の存在下またはモック上清中で1週間培養した。サイトカイン産生を、細胞内サイトカイン染色により評価した。
【0164】
結果を図3Bに示す。Stat6の非存在下では、Il−21は、Stat6の存在下の場合とほぼ同じ程度、IFNγ産生細胞の発生を防止するのに有効であった。従って、IL−4と異なり、IL−21は、IFNγ産生Th1細胞の発生を防止するのに、Stat6シグナル伝達に依存しない。さらに、これらの結果は、IL−21により誘導されるIFNγの抑制が、直接IL−4の作用を通じて媒介されないことを実証している。
【0165】
(実施例6.IL−21は、他のTh1サイトカインを阻害しない)
IL−21が、IFNγ産生を阻害するのに加えて、Th1の発達の局面に影響を及ぼすか否かを決定するため、IL−21処理したTh1細胞が、他のTh1関連サイトカインを産生する能力を試験した。
【0166】
Thp細胞を、Th1をゆがめる条件下、IL−21の存在下またはモック上清中で培養し、その後、これらを、二次刺激後に、細胞内サイトカイン染色によりサイトカイン産生について評価した。
【0167】
結果を図3Cに示す。驚くべきことに、IFNγ産生細胞の数は、IL−21がプライミング条件下で誘導された際に有意に減少したが、同じ細胞集団は、正常な数のIL−2およびTNFα産生細胞を有していた。これらの結果は、IL−21が、Th1細胞のIFNγ産生能を効果的に抑制するが、同じ細胞は、Th1細胞産生能を維持しており、Th2サイトカインを産生するように戻らないことを実証している。
【0168】
(実施例7.T−bet発現は、IL−21により影響を受けない)
T−betは、分化Th1細胞において特異的に発現され、かつIFNγを強力に誘導することもできる、最近同定された転写因子である。分化Th1細胞のIL−21処理が、Th細胞におけるT−bet発現の誘導に影響を及ぼすか否かを決定するため、Thp細胞を、Th1またはTh2をゆがめる条件下で培養した。タンパク質抽出物を、開始時(未処理)および培養48時間後(Th1およびTh2)に回収した。T−betおよびアクチンの発現を、ウェスタンブロットにより決定した。
【0169】
結果を図4Aに示す。IL−21またはモック上清が、示される培養物中に含まれていた。予想された通り、T−betの発現は、Th1培養物において誘導され、Th2条件下では低度に維持されていた。IL−21の添加は、Th1細胞におけるT−betの発現に対して効果を有さなかった。この結果は、IFNγ発現のIL−21媒介発現が減少したT−bet発現の結果ではないことを示している。
【0170】
(実施例8.IL−21は、IL−12シグナル伝達を阻害する)
IL−12シグナル伝達は、Th1細胞の発達において重要な役割を果たすことが報告されている。IL−12R欠損Th細胞は、IFNγを生成する能力が大きく損なわれている(Wu,C.ら,J Immunol 159:1658−65,1997)。さらに、IL−12Rβ2鎖は、Th2細胞の発達において、IL−4により媒介される効果を特異的に失活させる(Szabo,S.J.ら,J Exp Med 185:817−24,1997)。IL−21が、IL−4と同様に、Th1細胞においてIL−12b2鎖の発現に影響を及ぼすか否かを決定するために、Th1およびTh2をゆがめる条件下、IL−21の存在下および非存在下で培養したナイーブThp細胞由来のRNAを、リアルタイムPCRによって、12Rβ2発現について分析した。Thp細胞を、Th1またはTh2をゆがめる条件下で1週間培養した。IL−21またはモック上清が、示される培養物中に含まれた。RNAを、抗CD3による二次刺激の24時間後に回収し、リアルタイムPCRによりIL−12Rβ2について評価した。
【0171】
結果を図4Bに示す。この結果は、3回の独立した実験の代表例である。予想された通り、IL−12Rβ2の発現は、Th2細胞と比較した場合、Th1細胞において高かった。しかし、Th1培養物へのIL−21の添加は、IL−12Rβ2の発現に影響を及ぼさなかった。従って、IL−4について報告された結果と異なり、IL−21は、IL−12Rβ2の発現の減少を引き起こさなかった。さらに、高いTNFαおよびIL−2レベルと結び付けると、IL−12Rβ2の高発現は、IL−21処理Th1細胞が、多くのTh1の特徴を維持している(減少したIFNγ産生を除く)ことを示唆している。
【0172】
Stat4は、IL−12により特異的に活性化され、そしてIFNγ産生Th1細胞の発生にとって重要なメディエーターであることが報告されている(Wurster,A.L.ら,Oncogene 19:2577−84,2000)。IL−21が、STAT−4を活性化するIL−12の能力に影響を及ぼすか否かを決定するため、未処理のThp細胞を、IL−21の存在下または非存在下で48時間活性化した。その後、この細胞をIL−12で刺激し、Stat4のリン酸化の程度を、ウェスタンブロット分析によって決定した。Thp細胞を、Il−21の存在下またはモック上清中で、48時間、抗CD3を用いて刺激した。タンパク質抽出物を、ウェスタンブロットにより、リン酸化Stat4(p−Stat4)、Stat4、およびStat1について評価した。結果は、4回の独立した実験の代表例である。
【0173】
結果を図4Cに示す。IL−21処理細胞は、通常レベルのIL−12Rβ2を発現することが見出されたが、IL−12刺激に応答したStat4のリン酸化は、IL−12処理細胞において減少していた。この減少したレベルのリン酸化Stat4はまた、総Stat4タンパク質レベルにおける減少により反映された。比較として、Stat1タンパク質は、IL−21処理による影響を受けなかった。
【0174】
Stat4 RNAレベルもまた試験した。Thp細胞を、図4Cに記載されるようにして培養し、その後、RNAを回収して、リアルタイムPCRによりStat4発現について評価した(二連)。
【0175】
結果を図4Dに示す。結果は、3回の独立した実験の代表例である。より低レベルのStat4 RNAレベルを検出した。Stat4タンパク質レベルにおけるIL−21により誘導された減少は、Stat4 mRNAの減少に起因する可能性がある。これらの発見は、IL−21が、Stat4遺伝子発現の減少を通じて、IL−12に対する発達中のTh1細胞の応答を妨害することを示唆している。
【0176】
(実施例9.IL−21シグナル伝達は、インビボでのTh1応答を制限するために必要とされる)
内部産生したIL−21は、インビボでのTh1細胞の機能を制限する上で役割を果たすか否かを決定するため、遅延型過敏応答(DTH)の程度を、IL−21R欠損マウスにおいて試験した。DTHは、古典的なTh1細胞媒介炎症応答である。C57BL/6系に戻し交配したIL−21R欠損マウスを、Kasianら,Immunity 16:559−60,2002に記載されるようにして作製した。100mg TNP−KLH(2,4,6−トリニトロフェニル−キーホールリンペットヘモシアン;Biosearch Techologies,Novato,CA)を乳化させたDFAを用いて、8週齢の雌マウスの尻尾の基部を皮下免疫した。6日後に、マウスの一方の後ろ足のフットパッドに50μgのTNP−KLHを、反対側の後ろ足のフットパッドにPBSをチャレンジした。フットパッドの厚さを、チャレンジの24時間後に測定した。
【0177】
結果を図5Aに示す。野生型マウスおよびIL−21R欠損(IL−21R−/−)マウスの特異的なフットパッドの肥大を、TNP−KLHにより誘導された肥大からPBSを注射したフットパッドの非特異的肥大を差し引くことにより決定した。各々のデータポイントは、1匹のマウスを表している。水平線は、平均を示す。結果は、2回の独立した実験からのデータの蓄積を反映している。この結果は、野生型動物が、抗原チャレンジに応答し、フットバッドが大きく肥大したことを実証している。驚くべきことに、IL−21R欠損マウスは、ずっと強力なDTH応答(平均2倍の肥大)を惹起した。
【0178】
IFNγ産生をまた、免疫したマウスにおいても試験した。結果を図5Bに示す。免疫マウスの枯渇リンパ節から精製したCD4+T細胞を、250mg/ml TNP−KLHを用いてインビボで刺激した。上清を、ELISAによってIFNγレベルについて分析した。示される結果は、二連で実施した各遺伝子型からの2匹のマウスのデータの平均である。IL−21R欠損動物における増加したDTH応答は、枯渇リンパ節から精製されインビトロで抗原によって再刺激したCD4+細胞からのIFNγ産生における顕著な増加と相関した。
【0179】
これらの結果は、IL−21が、IFNγの産生を抑制することにより、TH1細胞応答の制限に関与することを実証している。
【0180】
さらなる実施形態は、各請求項に示されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL−21、例えば、ヒトIL−21の活性またはレベルのモジュレーター、および、T細胞、例えば、Tヘルパー(Th)細胞の発生および機能の調節におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Tヘルパー(Th)サブセットは、異なるサイトカインパターンを産生し、そして特異的な免疫応答を促進するその能力によって、識別される。Th1細胞は、IFNγを産生し、そして、細胞内病原体に対する、細胞媒介性免疫を促進する。対照的に、Th2細胞は、サイトカインIL−4、IL−5、およびIL−13を産生し、そして、肥満細胞および好酸球を活性化して、B細胞を細胞外病原体に対して指向させる。Th応答の調節不全は、免疫病理を生じ得る。免疫病理においては、異常なTh1応答が、器官特異的自己免疫疾患の原因であり得、そして、過大なTh2応答が、アレルギー疾患に関連する。
【0003】
極性化Th細胞によって産生される特異的なサイトカインは、前駆Th細胞の分化を促進する主要なエフェクターであるが、これらの細胞はまた、他の機能的活性のサブセットをもまた、交差調節する。例えば、IL−4は、Thp細胞のTh2エフェクターへの分化を促進することにおける、強力な因子であることが報告されている。さらに、IL−4は、IFNγの産生をアンタゴナイズする。IL−10(Th2細胞によって産生される別のサイトカイン)もまた、Th1発生、およびIFNγ誘導性のマクロファージ機能を阻害することが、記載されている。その逆に、Th1細胞によって産生されるIFNγは、Th1発生を増幅し、そして、Th2細胞の増殖を阻害する。これらのサイトカインが、特異的なTh細胞のサブセットの発生を促進する能力は、同時に、代替的な発生の運命を阻害しながら、次第に、極性化された応答を生じる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、部分的には、サイトカインインターロイキン−21(IL−21)がTヘルパー(Th)細胞のサブセット(Th2細胞)によって発現され、そして、Th1細胞発生の間に、選択的にインターフェロンγ(IFNγ)レベルを阻害するという発見に、一部基づく。より具体的には、本明細書において、IL−21が、インビトロおよびインビボにおいて生成されたTh2細胞によって優先的に発現されることが、示された。1つの実施形態において、発生中のTh細胞のIL−21への暴露は、発生中のTh1細胞からのIFNγレベルを特異的に減少し、従って、Th2応答を増強する。さらに、発生中のTh細胞のIL−21への暴露は、Stat4シグナル伝達を減少し(例えば、Stat4タンパク質および/またはmRNA発現を減少することによる)、それによって、他のサイトカイン(例えば、IL−12)に対するTh細胞応答を調節する。従って、Th細胞発生および活性を調節する方法および組成物が、開示される。本明細書に記載される方法および組成物(例えば、IL−21のアゴニストまたはアンタゴニスト)は、Th2関連障害のようなTh細胞関連および/またはIFNγ関連障害または状態(例えば、喘息、アレルギー、および抗体成分と関連する障害(例えば、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、および狼瘡));およびTh1関連障害(例えば、自己免疫障害(例えば、とりわけ、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、クローン病、乾癬および重症筋無力症)の、処置(例えば、治癒、寛解、発症の遅延もしくは予防、または、再発予防もしくは置換)、あるいは、予防において有用である。
【0005】
1つの局面において、本発明の特徴は、T細胞または細胞集団におけるインターフェロンγ(IFNγ)レベルの、阻害(例えば、減少または除去)のための方法である。本発明は、例えば、T細胞(T細胞前駆細胞(Thp細胞)またはTh1細胞(例えば、分化するTh1細胞またはエフェクターTh細胞)またはそのT細胞集団におけるIFNγの活性、発現、分泌、または処理の阻害を提供する。本発明の方法は、T細胞または細胞集団を、T細胞または細胞集団中の、IFNγを阻害(例えば、減少または除去)するのに十分な量のIL−21アゴニストに接触させ、その結果、アゴニストが、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含有するIL−21ポリペプチドであり、そして、このIL−21ポリペプチドがIL−21Rの結合を阻害し得る、工程を包含する。いくつかの実施形態において、本方法は、さらに、IFNγレベルの阻害が所望されるT細胞または細胞集団を同定する工程を包含する。
【0006】
別の局面において、本方法はTh前駆細胞(Thp)細胞または細胞集団の、Th2細胞または細胞集団への分化を促進する方法を特徴とする。1つの実施形態において、この方法は、Thp細胞または細胞集団を、Thp細胞または細胞集団のTh2細胞または細胞集団への分化を誘導するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程であって、このアゴニストが、配列番号2と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するIL−21ポリペプチドであり、そして、このポリペプチドは、IL−21Rへ結合し得る工程、を包含する。いくつかの実施形態において、この方法はさらに、Th2細胞または細胞集団への分化が所望される、Thp細胞または細胞集団を同定する工程を、包含する。
【0007】
別の局面において、本発明は、Thp細胞または細胞集団の、Th1細胞または細胞集団への分化を阻害する方法を、特徴とする。この方法は、Thp細胞または細胞集団を、Thp細胞または細胞集団のTh1細胞または細胞集団への分化を阻害するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程を包含し、そして、このアゴニストは、配列番号2と少なくとも85%同一なアミノ酸配列を有するIL−21ポリペプチドであり、そして、このポリペプチドは、IL−21Rに結合し得る。1つの実施形態において、この方法はさらに、Thp細胞または細胞集団のTh1細胞または細胞集団への分化の阻害が所望される、T細胞集団を同定する工程を包含する。
【0008】
これらの方法のいくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。これらの方法のいくつかの実施形態において接触工程が、エキソビボ、インビトロ、またはインビボにおいて行われる。エキソビボまたはインビボの方法における適切な被験体としては、哺乳動物被験体(例えば、ヒト)が挙げられる。
【0009】
別の局面において、本発明は、Th前駆(Thp)細胞または細胞集団の、Th2細胞または細胞集団への分化を阻害する方法を、特徴とする。この方法は、Thp細胞または細胞集団を、Thp細胞または細胞集団のTh2細胞集団への分化を阻害するのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)/IL−21レセプター(IL−21R)アゴニストと接触させる工程を、包含する。そして、アゴニストは、抗IL−21R抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群から選択される。この方法は、必要に応じて、Thp細胞または細胞集団のTh2細胞または細胞集団への分化の阻害が所望される、T細胞または細胞集団を同定する工程を、さらに包含する。いくつかの実施形態において、T細胞集団は、少なくとも1つのTh1細胞を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、IL−21Rの可溶性フラグメントは、IL−21レセプターの細胞外領域を含む。例えば、可溶性フラグメントは、配列番号4のアミノ酸20〜235と少なくとも85%同一なアミノ酸配列を含み得、そしてIL−21に結合し得るか、あるいは、可溶性フラグメントは、配列番号4のアミノ酸1〜235を含む。関連する実施形態において、可溶性フラグメントは、さらに、Fcフラグメントを含む。なお別の実施形態において、アンタゴニストは、抗IL−21R抗体であるか、または、抗IL−21R抗体の抗原結合フラグメントである。
【0011】
なお別の実施形態において、接触工程は、エキソビボ、インビトロ、またはインビボにおいて、行われる。接触工程は、哺乳動物被験体において行われ得、例えば、哺乳動物被験体は、ヒトである。
【0012】
別の局面において、本発明は、T細胞または細胞集団中のインターフェロンγ(IFNγ)レベルを増加する方法に特徴を有する。1つの実施形態におけるこの方法は、T細胞または細胞集団を、T細胞または細胞集団中のIFNγレベルを増加するのに十分な量のIL−21/IL−21Rのアゴニストと接触させる工程を包含し、そして、アンタゴニストは、抗IL−21R抗体、抗IL−21R抗体の抗原結合フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群から選択される。この方法の実施形態はさらに、IFNγレベルの増加が所望されるT細胞集団を同定する工程を包含する。
【0013】
いくつかの実施形態において、IL−21Rの可溶性フラグメントは、IL−21レセプターの細胞外領域を含む。例えば、いくつかの実施形態において、可溶性フラグメントは、配列番号4のアミノ酸20〜235と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を包含し、IL−21に結合し得るか、あるいは、可溶性フラグメントは、配列番号4のアミノ酸1〜235を含む。関連する実施形態において、可溶性フラグメントはさらに、Fcフラグメントを含む。なお別の実施形態において、アンタゴニストは、抗IL−21抗体または抗IL−21R抗体の抗原結合フラグメントであり得る。
【0014】
なお別の関連する実施形態において、接触工程は、エキソビボ、インビトロ、または、インビボにおいて行われる。いくつかの実施形態において、接触工程は、哺乳動物被験体(例えば、ヒト)において行われる。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
T細胞またはT細胞集団においてインターフェロンγ(IFNγ)レベルを阻害するための方法であって、該方法は、以下:
該T細胞または細胞集団を、該T細胞または細胞集団中においてIFNγを阻害するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程であって、ここで、該アゴニストは、配列番号2と少なくとも85%であるアミノ酸を含むIL−21ポリペプチドであり、そして該アゴニストは、IL−21Rに結合し得る、工程、
を包含する、方法。
(項目2)
IFNγレベルの阻害が所望されるT細胞または細胞集団を同定する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
Th前駆(Thp)細胞または細胞集団の、Th2細胞または細胞集団への分化を促進するための方法であって、該方法は、以下:
該Thp細胞または細胞集団を、該Thp細胞または細胞集団のTh2細胞または細胞集団への分化を誘導するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程であって、ここで、該アゴニストは、配列番号2と少なくとも85%であるアミノ酸を含むIL−21ポリペプチドであり、そして該アゴニストは、IL−21Rに結合し得る、工程、
を包含する、方法。
(項目4)
さらに、Th2細胞または細胞集団への分化が所望されるThp細胞または細胞集団を同定する工程を包含する、項目3に記載の方法。
(項目5)
Thp細胞または細胞集団の、Th1細胞または細胞集団への分化を阻害するための方法であって、該方法は、以下:
該Thp細胞または細胞集団を、該Thp細胞または細胞集団のTh1細胞または細胞集団への分化を阻害するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程であって、ここで、該アゴニストは、配列番号2と少なくとも85%であるアミノ酸を含むIL−21ポリペプチドであり、そして該アゴニストは、IL−21Rに結合し得る、工程、
を包含する、方法。
(項目6)
さらに、Th1細胞または細胞集団への前記Thp細胞または細胞集団の分化の阻害が所望されるT細胞集団を同定する工程を包含する、項目5に記載の方法。
(項目7)
項目1、3、または5のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、方法。
(項目8)
項目1、3、または5のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記接触工程が、エキソビボ、インビトロ、またはインビボにおいて行われる、方法。
(項目9)
項目1、3、または5のいずれか1項に記載の方法であって、ここで、前記接触工程が、哺乳動物被験体において行われる、方法。
(項目10)
項目9に記載の方法であって、ここで、前記哺乳動物被験体がヒトである、方法。
(項目11)
Th前駆(Thp)細胞または細胞集団の、Th2細胞または細胞集団への分化を阻害するための方法であって、該方法は、以下:
該Thp細胞または細胞集団を、該Thp細胞または細胞集団のTh2細胞集団への分化を阻害するのに十分な量のインターロイキン−21(IL−21)/IL−21レセプター(IL−21R)のアンタゴニストと接触させる工程であって、ここで、該アンタゴニストは、抗−IL21R抗体、抗−IL21R抗体の抗原結合フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群から選択される、工程、
を包含する、方法。
(項目12)
さらに、Thp細胞または細胞集団のTh2細胞または細胞集団への分化の阻害が所望される、T細胞または細胞集団を同定する工程を包含する、項目11に記載の方法。
(項目13)
T細胞または細胞集団においてインターフェロンγ(IFNγ)レベルを増加する方法であって、以下:
該T細胞または細胞集団を、該T細胞または細胞集団のIFNγレベルを増加するのに十分な量のIL−21/IL−21Rアンタゴニストと接触させる工程であって、ここで、該アンタゴニストは、抗−IL21R抗体、抗−IL21R抗体の抗原結合フラグメント、およびIL−21Rの可溶性フラグメントからなる群から選択される、工程、
を包含する、方法
(項目14)
さらに、IFNγレベルの増加が所望されるT細胞集団を同定する工程を包含する、項目13に記載の方法。
(項目15)
項目11または13に記載の方法であって、ここで、前記IL−21Rの可溶性フラグメントが、IL−21レセプターの細胞外領域を含む、方法。
(項目16)
項目15に記載の方法であって、前記可溶性フラグメントが、配列番号4のアミノ酸20〜235と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含み、そして、IL−21に結合し得る、方法。
(項目17)
項目15に記載の方法であって、ここで、前記可溶性フラグメントが、配列番号4のアミノ酸1〜235を含む、方法。
(項目18)
項目15に記載の方法であって、ここで、前記可溶性フラグメントが、さらにFcフラグメントを含む、方法。
(項目19)
項目11または13に記載の方法であって、ここで、前記アンタゴニストが、抗−IL21R抗体またはその抗原結合フラグメントである、方法。
(項目20)
項目12に記載の方法であって、ここで、前記T細胞集団が、少なくとも1つのTh1細胞を含む、方法。
(項目21)
項目11または13に記載の方法であって、ここで、前記接触工程が、エキソビボ、インビトロ、またはインビボにおいて行われる、方法。
(項目22)
項目21に記載の方法であって、ここで、前記接触工程が、哺乳動物被験体において行われる、方法。
(項目23)
項目22に記載の方法であって、ここで、前記哺乳動物被験体がヒトである、方法。
【0015】
他に定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語、および科学的用語は、本発明が属する技術分野において当業者によって一般に理解される意味と、同一の意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と、類似または等価の方法および材料は、本明細書の実施または試験において使用されるが、適切な方法および材料が以下に記載される。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献が、その全体が、本明細書において参考として援用される。意味が対立する場合は、定義を含む本明細書の意味が優先する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示のみのためであり、本発明を限定することを意図しない。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、および添付の請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、添付の実施例に記載される、種々のTh1およびTh2をゆがめる条件下での、IL−21、IL−4、IFNγ、およびβアクチンの発現を試験する、ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析を示す。
【図1B】図1Bは、初期の刺激および第2の刺激後に、Th1細胞およびTh2細胞中のGAPDH mRNAのレベルと比較した、IL−21 mRNAのレベルを示す棒グラフである。
【図1C】図1Cは、EL−4およびIFNγの存在下および非存在下において培養した、初期および第2のTh1細胞およびTh2細胞中のGAPDH mRNAのレベルと比較した、IL−21 mRNAのレベルを示す棒グラフである。
【図1D】図1Dは、L.majorによる感染後のC57BL/gマウスおよびBALB/cマウス中のGAPDH mRNAに対する、IL−21 mRNA、IL−4 mRNA、およびIFNγ mRNAのレベルを示す棒グラフである。
【図2A】図2Aは、中和条件下、またはTh1をゆがめる条件下で培養したThp細胞におけるIL−4産生およびIL−21サイトカイン産生を示すグラフである。
【図2B】図2Bは、IL−21処理したThp細胞、およびモック(mock)処理したThp細胞中のIFNγ産生を示す、棒グラフである。
【図3A】図3Aは、IL−22の存在下および非存在下での、Th1をゆがめる条件下で培養したThp細胞中のEL−4産生およびIFNγ産生を示すグラフである。
【図3B】図3Bは、野生型マウスおよびStat6−/−マウスからの、Th1をゆがめる条件下で処理された、IL−21処理Thp細胞またはモック(mock)処理マウス中の、EL−4産生およびIFNγ産生を示すグラフである。
【図3C】図3Cは、IFNγ、IL−2、およびTNFαの発現を示すグラフである。
【図4A】図4Aは、Th1またはTh2をゆがめる条件下で培養された、Thp細胞中の、T−betおよびアクチンタンパク質レベルのウェスタンブロット分析を示す。
【図4B】図4Bは、Th1細胞中における、レベルに対する、IL−21Rβ2 mRNAのレベルを示す棒グラフである。
【図4C】図4Cは、IL−21またはモック上清の存在下における、抗CD−3にて刺激したThp細胞中の、リン酸化Stat4、Stat4、Stat1、およびIL−21ポリペプチドレベルのウェスタンブロット分析を示す。
【図4D】図4Dは、IL−21存在下、またはモック(mock)上清存在下において、48時間、抗CD3で刺激した、モック処理Thp細胞およびIL−21 Thp細胞中のgAPDH mRNAレベルに対する、Stat4 mRNAレベルを示す棒グラフである。IL−4 mRNAおよびIFNγ。
【図5A】図5Aは、その後にTNP−KLHまたはPBSを注入した、TNP−KLH免疫化野生型マウス、およびIL21−21R−/−マウスにおける、特異的膨張を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、抗原を用いて再度刺激した、TNP−KLH免疫化野生型マウスおよびIL21−21R−/−マウスの排出されたリンパ節から精製されたCD4+ T細胞中のIFNγ産生を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明は、Tヘルパー細胞の分化、発生、および活性を、IL−21とIL−21レセプターとの間の相互作用を調節することによって調節するための方法および、組成物を提供する。細胞集団中のIL−21、またはIL−21レベルもしくはIL−21レセプターレベルを増加する試薬が、Tヘルパーの集団に添加されて、Thp細胞またはTh1細胞の集団におけるIFNγレベルを抑制する。IL−21、またはIL−21レベルを増加する試薬をまた使用して、Th2発生を促進し得るか、またはTh2媒介性免疫応答を増強し得るか、および/もしくはTh1発生を抑制し得る。
【0019】
IL−21またはIL−21レベルを増加する試薬をまた使用して、Tヘルパー細胞集団に対するIL−21の効果を阻害し得る。IL−21、またはIL−21レベルを増加するか、もしくはそうでなければIL−21アゴニストとして作用する試薬を使用して、Th1媒介性疾患(例えば、自己免疫疾患、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、およびI型糖尿病)を抑制し得る。
【0020】
1つの局面において、本発明は、細胞(例えば、T細胞)または細胞集団(例えば、T細胞集団)内のインターフェロンγ(IFNγ)の活性またはレベルを、調節(例えば、増加、または減少または阻害)するための方法に特徴がある。例えば、T細胞(例えば、T細胞前駆細胞(Thp細胞)またはTh1細胞(例えば、分化しつつあるTh1細胞またはエフェクターTh細胞)、あるいは、そのT細胞集団中の、IFNγ活性、発現、分泌またはプロセッシングの1つ以上を調節する方法が、提供される。本発明の方法は、以下:
(必要に応じて)IFNγ活性レベルの調節(例えば、増加または減少)が所望される細胞(例えば、T細胞)または細胞集団(例えば、T細胞集団)を同定する工程;および
その細胞または細胞集団を、その細胞または細胞集団中のIFNγの活性またはレベルを調節(例えば、増加または減少)するのに十分な量のIL−21モジュレーター(例えば、IL−21アゴニストまたはアンタゴニスト)と接触させる工程、を包含する。
【0021】
この方法を、培養中の細胞(例えば、インビトロまたはエキソビボ)において使用し得る。例えば、免疫細胞(例えば、本明細書に記載されるT細胞)を、培養培地でインビトロ培養し得、そして、1つ以上のIL−21モジュレーター(例えば、IL−21アゴニストまたはアンタゴニスト)を培養培地に添加することによって、接触工程を行い得る。あるいは、この方法は、被験体中に存在する細胞(例えば、本明細書に記載の免疫細胞またはT細胞)において(例えば、インビボプロトコールの一部として(例えば、治療的に、または、予防的に))実施され得る。
【0022】
1つの実施形態において、細胞(例えば、T細胞(例えば、T細胞前駆細胞(Thp)、またはTh1細胞(例えば、分化しつつあるTh1細胞またはエフェクターTh細胞)、あるいはその細胞集団)中のIFNγの活性またはレベルを、減少させるか、または阻害する方法が、提供される。この方法は(必要に応じて)、IFNγの活性またはレベルの減少または阻害が所望される、細胞(例えば、T細胞)または細胞集団(例えば、T細胞集団)を同定する工程;およびその細胞または細胞集団を、その細胞または細胞集団中のIFNγの活性またはレベルを減少または阻害するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程、を包含する。好ましくは、IL−21アゴニストは、IFNγレベルまたは活性を、特異的に阻害する(例えば、IL−2またはTNFαのような他のサイトカインの活性も、レベルも、減少も阻害もしない)。1つの実施形態において、IL−21アゴニストは、IFNγ産生細胞(例えば、IFNγ産生Th1細胞)による、IFNγの産生を阻害する。
【0023】
他の実施形態において、本発明は、被験体におけるIFNγレベルまたは活性を減少するための方法を提供する。この方法は(必要に応じて)、IFNγのレベルまたは活性の減少が所望される被験体を同定する工程;および、その被験体に対して、IFNγのレベルまたは活性を減少するのに十分な量のIL−21を投与する工程、を包含する。IFNγは、当該分野において公知の技術(例えば、細胞内サイトカイン染色、または、細胞上清中のレベルを決定する、ELISA技術)を使用して、測定し得る。
【0024】
IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド、ヒトIL−21ポリペプチド、またはその活性フラグメント(例えば、ヒトIL−21ポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、または、配列番号1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるか、またはこれらと実質的にホモログである)。他の実施形態において、IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチド)、または別のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンポリペプチドまたはその部分(例えば、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域))と融合したそのフラグメント;IL−21レセプターに対するアゴニスト抗体;あるいは、小分子アゴニストである。別の実施形態において、IL−21アゴニストは、IL−21の活性またはレベルを増加する薬剤である(例えば、IL−21の発現、プロセッシング、および/または分泌を増加することによる)。
【0025】
好ましくは、被験体は、哺乳動物(例えば、ヒト被験体)であって、異常な(例えば、増加したIFNγレベルまたは活性に関連する障害(例えば、免疫障害(例えば、T細胞媒介性障害))に罹患する被験体であり、その障害を寛解または予防するために十分な量である。
【0026】
IL−21のアゴニストを用いて、処置(例えば、寛解)または予防することができる例示的な免疫障害としては、例えば、Th1関連障害(例えば、自己免疫疾患(多発性硬化症、慢性関節リウマチ、およびI型糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬および重症筋無力症が挙げられるが、これらに限定されない))が挙げられる。
【0027】
本発明はさらに、細胞(例えば、T細胞)または細胞集団(T細胞集団)においてIFNγのレベルまたは活性を増加する方法に、特徴がある。例えば、本発明は、T細胞(例えば、T細胞前駆細胞(Thp細胞)、またはTh1細胞(例えば、分化しつつあるTh1細胞またはエフェクターTh細胞)またはそのT細胞集団における、IFNγ活性、発現、またはプロセシングを増加する方法を包含する。この方法は(必要に応じて)、IFNγ発現の増加が所望される、細胞(例えば、T細胞)または細胞集団(例えば、T細胞集団)を同定する工程;および、その細胞を、IL−21の結合または活性を阻害(例えば、IL−21のIL−21レセプターへの結合を阻害し、それによって、その細胞中のIFNγ発現レベルを増加する)するのに十分な量のIL−21アゴニストと接触させる工程を包含する。
【0028】
IL−21アンタゴニストは、例えば、IL−21(例えば、ヒトIL−21)、またはIL−21レセプター(例えば、ヒトIL−21レセプターポリペプチド)に対する抗体(例えば、モノクローナル抗体または単一の特異的抗体)であり得る。好ましくは、抗体は、ヒトIL−21、またはヒトIL−21レセプターポリペプチドに対する、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはインビトロで生成された抗体である。別の実施形態において、アンタゴニストとしては、IL−21ポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21ポリペプチドのIL−21レセプター結合ドメイン)が挙げられる。あるいは、アンタゴニストとしては、IL−21レセプターポリペプチド(例えば、IL−21レセプターポリペプチドのIL−21結合ドメイン)が挙げられる。1つの実施形態において、アンタゴニストは、第2の部分(例えば、ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン鎖)と融合した、上記のIL−21またはIL−21レセプターポリペプチドあるいはそのフラグメントを含む融合タンパク質である。
【0029】
別の局面において、本発明は、Th2細胞活性および/または細胞数を調節(例えば、増加または減少)するための方法に、特徴がある。1つの実施形態において、増殖、生存および/またはTh2細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆体(Thp)の分化))の1つ以上が、提供される。
【0030】
(必要に応じて)増殖、生存および/または分化が所望される細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはTh2細胞))、または細胞集団を同定する工程;ならびにその細胞または細胞集団を、増殖、生存および/またはTh2細胞への分化を調節する(例えば、Thp細胞のTh2細胞への分化を調節する)ために十分な量のIL−21モジュレーター(例えば、IL−21アゴニストまたはアンタゴニスト)と接触し、それによって、Th2細胞活性および/または細胞数を調節する工程、を包含する。
【0031】
本方法は、培養中の細胞に対して、使用し得る(インビトロまたはエキソビボ)。例えば、免疫細胞(例えば、本明細書に記載されるT細胞)を培養培地中でインビトロ培養し得、そして、接触工程を、培養培地に1つ以上のIL−21モジュレーター(例えば、1つ以上のIL−21アゴニストまたはアンタゴニスト)を添加することによって、行い得る。あるいは、この方法を、被験体中に存在する細胞(例えば、インビボプロトコール(例えば、治療または予防)の一部として)において行い得る。
【0032】
1つの実施形態において、Th2細胞活性および/または細胞数を減少または阻害する方法が提供される。例えば、増殖、生存、および/またはTh2細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆体(Thp)の分化)の1つ以上を阻害するか、または減少することによって、Th2細胞活性および/または細胞数を、減少または阻害し得る。この方法は(必要に応じて)、増殖、生存、および/または分化が所望される、細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはTh2細胞))または細胞集団を同定する工程;ならびに、その細胞または細胞集団を、増殖、生存、および/またはTh1細胞への分化(例えば、Thp細胞のTh2細胞への分化を阻害または減少する)の1つ以上を阻害または減少し、それによってTh2細胞の活性および/または細胞数を阻害または減少するのに十分な量のIL−21アンタゴニストと接触させる工程、を包含する。
【0033】
この方法を、例えば、インビトロまたはエキソビボの、細胞(例えば、培養中のT細胞(例えば、Thp細胞またはTh2細胞))に対して、使用し得る。
【0034】
あるいは、この方法は、被験体中に存在する細胞(例えば、本明細書に記載される、免疫細胞またはT細胞)において(例えば、インビボ(例えば、治療的または予防的)プロトコールにおいて)、行い得る。例えば、この方法を、被験体におけるTh2媒介性障害(例えば、喘息およびアレルギー)を処置、または、予防するために、使用し得る。従って、本発明は、本発明は、被験体におけるTh2関連障害を処置(例えば、治癒、抑制、寛解、開始の遅延もしくは予防、または、再発(recurrence)もしくは再発(relapse)の予防)、あるいは予防のための方法を提供する。この方法は、被験体に対して、Th2細胞活性および/または細胞数を阻害または減少し、それによって、Th2関連障害を処置または予防するのに十分な量のIL−21アンタゴニストを投与する工程を包含する。
【0035】
好ましくは、被験体は、異常なTh2細胞数または活性に関連する障害(例えば、免疫障害(例えば、Th2関連障害))に罹患する哺乳動物(例えば、ヒト)である。細胞活性および/または細胞数を阻害または減少するために十分な量は、その障害を寛解するのに十分な量である。
【0036】
IL−21アンタゴニストは、例えば、IL−21(例えば、ヒトIL−21)、またはIL−21レセプター(例えば、ヒトIL−21レセプターポリペプチド)に対する抗体(例えば、モノクローナル抗体または単一特異的抗体)であり得る。好ましくは、抗体は、ヒトIL−21またはヒトIL−21レセプターポリペプチドに対する、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはインビトロにおいて生成された抗体である。他の実施形態において、アンタゴニストとしては、IL−21ポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21ポリペプチドのIL−21レセプター結合ドメイン)が挙げられる。あるいは、アンタゴニストとしては、IL−21レセプターポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21レセプターポリペプチドのIL−21結合ドメイン)が挙げられる。1つの実施形態において、アンタゴニストは、上記のIL−21またはIL−21レセプターポリペプチド、あるいは、第2の部分(例えば、免疫グロブリン鎖)と融合したそのフラグメントを含む融合タンパク質である。
【0037】
なお別の実施形態において、Th2細胞活性および/または細胞数を増加する方法が、提供される。例えば、Th2細胞活性および/または細胞数は、増殖、生存および/またはTh2細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆(Thp)の分化))の1つ以上を増加することによって、増加され得る。この方法は(必要に応じて)、増加した増殖、生存および/または分化が所望される細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはTh2細胞))、または細胞集団を同定する工程;ならびにその細胞または細胞集団を、増殖、生存および/またはTh2細胞への分化の1つ以上を増加する(例えば、Thp細胞のTh2細胞への分化を増加する)ために十分な量のIL−21アゴニストと接触させ、それによって、Th2細胞活性および/または細胞数を増加する工程、を包含する。
【0038】
IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチドもしくはその活性フラグメント(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むヒトIL−21ポリペプチド、または配列番号1に示される核酸配列によってコードされるIL−21ポリペプチド、あるいは、それらに対して実質的に相同な配列)であり得る。他の実施形態において、IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチド)、または、別のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンポリペプチドまたはその部分(例えば、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域))と融合されたそのフラグメントを含む融合タンパク質;あるいは、;IL−21レセプターに対するアゴニスト抗体;あるいは、低分子アゴニストである。
【0039】
なお別の局面において、Th1細胞数および/または活性を調節(例えば、増加または減少)するための方法が、提供される。1つの実施形態において、増殖、生存および/またはTh1細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆(Thp)の分化))の1つ以上を調節(例えば、促進または阻害)する方法が、提供される。この方法は、(必要に応じて)増殖、生存および/または分化の調節が所望される細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはTh1細胞))、または細胞集団を同定する工程;ならびにその細胞または細胞集団を、増殖、生存および/またはTh1細胞への分化の1つ以上を調節し(例えば、Thp細胞のTh1細胞への分化を調節し)、それによってTh1細胞活性および/または細胞数を調節するために十分な量のIL−21モジュレーター(例えば、アゴニストまたはアンタゴニスト)と接触させる工程、を包含する。
【0040】
この方法を培養中の細胞(例えば、インビトロまたはエキソビボ)に対して、使用し得る。例えば、免疫細胞(例えば、本明細書に記載されるT細胞)を、培養培地中でインビトロで培養して、接触させる工程を、1つ以上のIL−21モジュレーター(例えば、IL−21アゴニストまたはアンタゴニスト)を、培養培地に添加することによって、実行し得る。あるいは、この方法は、被験体中に存在する細胞(例えば、本明細書に記載される免疫細胞またはT細胞)に対して実行し得る(例えば、インビボ(例えば、治療的または予防的)プロトコールの一部として)。
【0041】
1つの実施形態において、Th1細胞の活性および/または細胞数を減少する方法が提供される。例えば、Th1細胞活性および/または細胞数を、増殖、生存および/またはTh1細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆(Thp)の分化))の1つ以上を阻害または減少することによって、減少または阻害し得る。この方法は(必要に応じて)、増殖、生存および/または分化の阻害が所望される細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはIFNγ産生細胞(例えば、Th1細胞))、または細胞集団を同定する工程;ならびにその細胞または細胞集団を、増殖、生存および/またはTh1細胞への分化の1つ以上を阻害または減少し(例えば、Thp細胞のTh1細胞への分化を阻害または減少し)、それによって、Th1細胞活性および/または細胞数を阻害または減少するために十分な量のIL−21アゴニストと接触する工程、を包含する。
【0042】
この方法は、培養中の細胞(例えば、T細胞(例えば、Th1細胞またはTh2細胞))に対して、インビトロまたはエキソビボにおいて使用し得る。
【0043】
あるいは、この方法を、被験体中に存在する細胞(例えば、本明細書に記載の免疫細胞またはT細胞)に対して、実施し得る(例えば、インビボ(例えば、治療または予防)プロトコールの一部として)。例えば、この方法は、被験体におけるTh1媒介性障害(例えば、自己免疫障害(例えば、とりわけ、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、クローン病、乾癬および重症筋無力症)の処置のために使用し得る。従って、本発明は、被験体中のTh1関連障害の処置方法(例えば、治癒、抑制、寛解、発症の遅延もしくは予防、または、再発(recurrence)または再発(relapse)の予防)、あるいは、予防方法を提供する。この方法は、被験体に対して、Th1細胞活性および/または細胞数を阻害または減少して、それによってTh1関連障害を処置または予防するのに十分な量のIL−21アゴニストを投与する工程を包含する。
【0044】
好ましくは、被験体は哺乳動物、例えば、異常なTh1細胞数または活性に関連する障害(例えば、免疫障害(例えば、本明細書に記載されるTh1関連障害))に罹患するヒトである。Th1細胞活性および/または細胞数を阻害または減少するために十分な量は、その障害を寛解または予防するのに十分な寮である。
【0045】
IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチド)またはその活性フラグメント(例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むIL−21ポリペプチド、または配列番号1に示されるヌクレオチド配列によってコードされるIL−21ポリペプチド、あるいは、これらの配列と実質的に相同な配列)であり得る。他の実施形態において、IL−21アゴニストは、IL−21ポリペプチド(例えば、ヒトIL−21ポリペプチド)または別のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンポリペプチドまたはその部分(例えば、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域))と融合したそのフラグメント;IL−21レセプターに対するアゴニスト抗体;あるいは、低分子アゴニストである。別の実施形態において、IL−21アゴニストは、例えば、機能的IL−21の発現、プロセッシングおよび/または分泌を増加することによって、IL−21の活性またはレベルを増加する因子である。
【0046】
なお別の局面において、Th1細胞活性および/または細胞数を増加する方法が提供される。例えば、Th1細胞活性および/または細胞数を、増殖、生存、および/またはTh1細胞への分化(例えば、T細胞前駆体(例えば、Th前駆体(Thp)の分化)の1つ以上を増加することによって、Th1細胞活性および/または細胞数を、増加し得る。この方法は、以下を包含する:
(必要に応じて)、増殖、生存、および/または分化が所望される、細胞(例えば、T細胞(例えば、ThpまたはTh1細胞))または細胞集団を同定する工程;ならびに、
その細胞または細胞集団を、増殖、生存、および/またはTh1細胞への分化(例えば、Thp細胞のTh1細胞への分化を増加する)の1つ以上を増加し、それによってTh1細胞の活性および/または細胞数を増加するのに十分な量のIL−21アンタゴニストと接触させる工程。
【0047】
IL−21アンタゴニストは、例えば、IL−21(例えば、ヒトIL−21)、またはIL−21レセプター(例えば、ヒトIL−21レセプターポリペプチド)に対する抗体(例えば、モノクローナル抗体または単一特異的抗体)であり得る。好ましくは、抗体は、ヒトIL−21またはヒトIL−21レセプターポリペプチドに対する、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはインビトロにおいて生成された抗体である。他の実施形態において、アンタゴニストとしては、IL−21ポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21ポリペプチドのIL−21レセプター結合ドメイン)が挙げられる。あるいは、アンタゴニストとしては、IL−21レセプターポリペプチドのフラグメント(例えば、IL−21レセプターポリペプチドのIL−21結合ドメイン)が挙げられる。1つの実施形態において、アンタゴニストは、上記のIL−21またはIL−21レセプターポリペプチド、あるいは、第2の部分(例えば、免疫グロブリン鎖)と融合したそのフラグメントである。
【0048】
なお別の局面において、本発明は、細胞、細胞集団または被験体において、インターロイキン12(IL−21)の活性またはレベルを調節(例えば、減少、阻害または増加)する方法において特徴を有する。この方法は、以下を包含する:
(必要に応じて)IL−21の調節が所望される細胞(例えば、T細胞)、細胞集団、または被験体を同定する工程;および
その細胞または細胞集団とIL−21モジュレーターを接触させるか、またはIL−21モジュレーターをその被験体に投与して、その細胞、細胞集団、または被験体におけるIL−21活性またはレベルを調節する工程。
【0049】
1つの実施形態において、IL−21の活性またはレベルを、その細胞または細胞集団をIL−21アゴニスト(例えば、本明細書に記載されるIL−21アゴニストを、IL−21の活性またはレベルを減少するのに十分な量において)と接触させるか、またはその被験体にIL−21アゴニストを投与することによって、減少する。
【0050】
別の実施形態において、IL−21の活性またはレベルを、その細胞または細胞集団を、IL−21アゴニストと接触させるか、または被験体にIL−21アゴニストを投与することによって、増加する(例えば、本明細書に記載されるIL−21アゴニストを、IL−21の活性またはレベルを増加するのに十分な量において)。
【0051】
なお別の局面において、本発明は、細胞、細胞集団、または被験体におけるStat(例えば、Stat4)の活性またはレベルを調節(例えば、減少または阻害、あるいは増加)する方法に特徴を有する。この方法は、以下を包含する:
(必要に応じて)Stat活性またはレベルの調節が所望される細胞(例えば、T細胞)細胞集団または被験体を同定する工程、および;
その細胞または細胞集団を、IL−21モジュレーター(例えば、IL−21のアゴニストまたはアンタゴニストを、その細胞、細胞集団、または、被験体において、Stat活性を調節するのに十分な量において)と接触するか、またはその被験体にIL−21モジュレーターを投与する工程。
【0052】
1つの実施形態において、Statの活性またはレベルを、その細胞または細胞集団とIL−21アゴニスト(例えば、本明細書に記載されるIL−21アゴニスト(例えば、Statタンパク質またはmRNA)を、Statの活性またはレベルを減少するのに十分な量において)を接触させるか、あるいは、その被験体にIL−21アゴニストを投与することによって、減少する。
【0053】
別の実施形態においてStatの活性またはレベルを、その細胞または細胞集団をIL−21アゴニスト(例えば、本明細書に記載されるIL−21アゴニスト(例えば、Statタンパク質またはmRNA)を、Statの活性またはレベルを増加するのに十分な量において)と接触させるか、あるいは、被験体にIL−21アゴニストを投与することによって、増加する。
【0054】
なお別の局面において、本発明は、被験体において、自己免疫応答(例えば、Th1媒介性自己免疫応答)を減少、阻害、抑制、寛解または遅延する方法に特徴がある。この方法は、その投与を必要とする被験体において、IL−21アゴニスト(例えば、本明細書に記載されるIL−21アゴニストを、その被験体において自己免疫応答を減少、阻害、抑制、寛解または遅延するのに十分な量において)を投与する工程を包含する。
【0055】
なお別の局面において、本発明は、被験体におけるTh2関連応答(例えば、アレルギー性応答または喘息性応答)を、減少、阻害、抑制、寛解または遅延する方法に特徴を有する。この方法は、投与を必要とする被験体に対して、IL−21アンタゴニストを(例えば、本明細書に記載されるアンタゴニストを、被験体におけるTh2関連応答を、減少、阻害、抑制、寛解または遅延するのに十分な量において)投与する工程を包含する。
【0056】
別の局面において、本発明は、細胞集団(例えば、Th細胞集団)においてTh2細胞手段を選択的に同定する方法に特徴を有し、この方法は、試験サンプル(例えば、Th細胞、および参照細胞(例えば、Th1細胞))中のIL−21核酸(例えば、IL−21遺伝子産物)またはポリペプチドのレベルを決定する工程;ならびに、その試験サンプル中のそのIL−21核酸のレベルを、参照サンプル(例えば、Th細胞)中のIL−21核酸のレベルと比較する工程であって、ここで、参照サンプルと比較した試験サンプル中の、そのIL−21核酸レベルの増加は、試験サンプルがTh2細胞であることを示す、工程、を包含する。
【0057】
本明細書において使用する場合、「Th1関連障害」は、参照(例えば、正常コントロール)と比較した、異常な(例えば、増加した、または減少した)Th1細胞活性(例えば、増加したか、または減少したTh1細胞応答)、またはTh1細胞数に関連する疾患または状態である。Th1関連障害の例としては、例えば、自己免疫疾患(例えば、とりわけ、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、クローン病、乾癬および重症筋無力症)が挙げられる。
【0058】
本明細書において使用する場合、「Th2関連障害」は、参照(例えば、正常コントロール)と比較した、異常な(例えば、増加した、または減少した)Th2細胞活性(例えば、増加したか、または減少したTh2細胞応答)、またはTh2細胞数に関連する疾患または状態である。Th2関連障害の例としては、例えば、喘息、アレルギー、および抗体成分に関連した障害(例えば、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、および狼瘡)が挙げられる。
【0059】
本明細書において記載される方法において使用されるIL−21ポリペプチドは、例えば、哺乳動物IL−21ポリペプチド(例えば、げっ歯類、ヒト、または、非ヒト霊長類)のアミノ酸配列を含み得る。例えば、IL−21ポリペプチドは、ヒトIL−21のポリペプチドをアミノ酸配列を含み得る。適切なアミノ酸配列は、配列番号2(以下)に示されるIL−21ポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0060】
IL−21およびIL−21レセプターポリペプチド(ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を含む)が、例えば、米国特許第6,057,128号、Parrish−Novakら、Nature 408:57−63,15 2000;Vosshenrichら、Curr.Biol.11:R157−77,2001,Asaoら、J.Immunol.167:1−5,2001;およびOzakiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:11439−44,2000に記載される。IL−21ポリペプチドのアミノ酸配列は、公知である。例えば、ヒトIL−21のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列が、GenBankアクセッション番号X_011082において利用可能である。このエントリーにおいて開示されるIL−21ヌクレオチド配列を、以下に表す:
【0061】
【化1】
【0062】
この開示されたIL−21核酸配列によって開示されたアミノ酸配列を、以下に示す:
【0063】
【化2】
【0064】
ヒトIL−21レセプター核酸のヌクレオチド配列を、以下に示す:
【0065】
【化3】
【0066】
開示されたIL−21レセプター核酸配列は、以下のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする:
【0067】
【化4】
【0068】
核酸配列の相同性は、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の同一性の程度として決定され得る。相同性は、当該分野で公知のコンピュータプログラム(例えば、GCGプログラムパッケージにおいて提供されるGAPソフトウェア)を用いて決定され得る。NeedlemanおよびWunsch 1970 J.Mol.Biol.48:443を参照のこと。核酸配列比較のために、以下の設定:5.0のGAP生成ペナルティ、および0.3のGAP伸長ペナルティ、において、GCG GAPソフトウェアを使用して、上記にて参照された類似核酸配列のコード領域は、配列番号1または配列番号3において示されたDNA配列のCDS(コーディング)部分を用いて、好ましくは、少なくとも、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性の程度を示す。同様に、本明細書において言及されるアミノ酸配列は、配列番号5、または、配列番号6に示されるアミノ酸配列に対して、好ましくは、少なくとも、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または、99%の同一性の程度を示す。
【0069】
用語「配列同一性」とは、2つのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列が、比較する特定の領域にわたって、残基と残基との比較において、同一である程度をいう。用語「配列同一性パーセンテージ」は、2つの最適に整列された配列を、比較の領域にわたって比較して、両方の配列の生じる同一の核酸塩基(例えば、核酸の場合は、A、T、C、G、U、またはI)の位置の数を決定してマッチした位置の数を生じ、マッチした位置の数を比較の領域の位置の総数で割り算をして、そして結果に100を掛けて、配列同一性パーセントをもたらすことによって、計算される。本明細書において使用する場合、用語「実質的に同一」は、ポリヌクレオチドが、比較の領域にわたって参照配列に対して比較した場合、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは、少なくとも85パーセントの配列同一性、そして、しばしば、90〜95パーセントの配列同一性、より通常は、少なくとも98または99パーセントの配列同一性を有する配列を含む、ポリヌクレオチド配列の特徴を示す。用語「ポジティブ残基のパーセント」は、2つの最適に整列された配列を、比較の領域にわたって比較し、上記のように規定された同一性および保存的アミノ酸置換が両方の配列に生じる位置の数を決定して、マッチした位置の数をもたらし、マッチした位置の数を比較の領域の位置の総数で割り算し、そして結果に100を掛けて、ポジティブ残基のパーセントを生じることによって決定される。
【0070】
さらに、細胞または細胞集団においてIL−21またはIL−21レセプターレベルを増加する因子としては、IL−21アゴニストまたはIL−21レセプターアゴニストが挙げられる。そのようなアゴニストは、1つ以上のIL−21活性がTヘルパー細胞集団において発揮される試験化合物を同定することによって、同定され得る。
【0071】
被験体は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタまたはげっ歯類(ラットまたはマウスを含む)であり得る。IL−21の任意の所望の投与経路が、使用され得る。適切な投与経路としては、静脈内経路(ボラスおよび注入)、腹腔内、皮下、または筋肉内形態が挙げられ、これら全ては、薬学の分野において当業者に周知の形態を用いる。注入物は、従来の形態(液体溶液または懸濁液のいずれか)において調製され得る。
【0072】
非経口注入可能な投与は、一般に、皮下、筋肉内、または、静脈内注射および注入のために、使用される。
【0073】
(IL−21アンタゴニスト)
IL−21媒介性Tヘルパー細胞効果を阻害するために、IL−21とIL−21レセプターとの相互作用をブロックするか、そうでなければ阻害する因子を、T細胞またはT細胞(例えば、Tヘルパー細胞)の集団に添加し得る。便利さのために、これらのインヒビターを本明細書において、「IL−21アンタゴニスト」という。IL−21アンタゴニストの例としては、例えば、IL−21またはIL−21レセプターの可溶性フラグメント、これらのフラグメントを含む融合タンパク質、およびこれらのフラグメントに対する抗体が挙げられる。IL−21アンタゴニストは、Th2媒介性疾患(抗体媒介性疾患を含む)におけるIL−21のブロッキングのために有用である。これらの疾患としては、喘息、アレルギー、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、および狼瘡が挙げられる。
【0074】
(IL−21およびIL−21レセプター融合タンパク質)
IL−21またはIL−21レセプター、あるいはこれらタンパク質の活性フラグメントを、本明細書に記載の方法における使用のために、免疫グロブリンのようなキャリア分子を融合し得る。例えば、IL−21レセプターの可溶性形態を、「リンカー」配列を介して免疫グロブリンのFc部分か、または免疫グロブリンのFc部分に対して融合し得る。他の融合タンパク質(例えば、GST(すなわち、グルタチオンS−トランスフェラーゼ)、LexA、またはMBP(すなわち、マルトース結合タンパク質)との融合タンパク質)もまた、使用され得る。
【0075】
さらなる実施形態において、IL−21またはIL−21レセプター融合タンパク質を、1つ以上のさらなる部分と連結し得る。例えば、IL−21またはIL−21レセプター融合タンパク質を、さらに、GST融合タンパク質と連結し得る(IL−21レセプター融合タンパク質配列が、GST配列のC末端に融合する)。そのような融合タンパク質は、IL−21またはIL−21レセプター融合タンパク質の精製を容易にし得る。
【0076】
別の実施形態において、融合タンパク質としては、異種シグナル配列(すなわち、IL−21核酸またはIL−21レセプター核酸によって天然にコードされるポリペプチド中には存在しないポリペプチド配列)を、そのN末端において含む。例えば、天然のIL−21またはIL−21レセプターシグナル配列を除去して、別のタンパク質のシグナル配列によって、置換し得る。
【0077】
本発明のキメラまたは融合タンパク質を、標準的な組換えDNA技術によって産生し得る。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントを、従来技術に従って、インフレームでともに連結する(例えば、連結のための平滑末端または粘着末端(stagger)の使用、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切な場合に粘着末端を埋めること、望まれない連結を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的連結による)。別の実施形態において、融合遺伝子を、自動化DNA合成機を含む従来技術によって、合成し得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅を、2つの連続した遺伝子フラグメントの間の相補的な突出を生じるアンカープライマーを用いて、その後、相補的な突出をアニーリングして、再増幅して、キメラ遺伝子配列を生成し得る(例えば、Ausubelら、(編)CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons,1992を参照のこと)。さらに、融合部分(例えば、免疫グロブリン重鎖のFc領域)をコードする多くの発現ベクターが、市販されている。IL−21またはIL−21レセプターをコードする核酸を、そのような発現ベクター中にクローニングして、融合部分を、インフレームで、免疫グロブリンタンパク質と連結し得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、IL−21またはIL−21レセプターポリペプチド部分を、天然に生じるIL−21またはIL−21レセプター配列(野生型)中に変異を有する改変体IL−21レセプターポリペプチドとして提供して、IL−21レセプターに対する高親和性(変異をしていない配列と比較して)結合の改変IL−21、または、IL−21に対する高親和性(変異をしていない配列と比較して)改変IL−21レセプターポリペプチドを生じる。
【0079】
いくつかの実施形態において、IL−21ポリペプチドまたはIL−21レセプターポリペプチド部分は、天然に生じるIL−21またはIL−21レセプター配列(野生型)において変異を有する改変体IL−21またはIL−21レセプターポリペプチドとして提供され、タンパク分解に対してより耐性な(変異を有さない配列と比較して)、IL−21またはIL−21レセプター配列を生じる。
【0080】
融合タンパク質中に含むことができるシグナルペプチドは、MPLLLLLLLLPSPLHP(配列番号5)である。所望される場合、1つ以上のアミノ酸を、さらに、第1のポリペプチド部分(IL−21またはIL−21レセプター部分を含む)と第2のポリペプチド部分との間に挿入し得る。
【0081】
第2のポリペプチドは、好ましくは、可溶性である。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、連結したポリペプチドの半減期(例えば、血清半減期)を増強する。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、融合ポリペプチドと第2のIL−21レセプターポリペプチドとの会合を促進する配列を含む。好ましい実施形態において、第2のポリペプチドは、少なくとも免疫グロブリンポリペプチド領域を含む。免疫グロブリン融合ポリペプチドは、当該分野で公知であり、そして例えば、米国特許第5,516,964号;同第5,225,538号;同第5,428,130号;同第5,514,582号;同第5,714,147号;および同第5,455,165号に記載される。
【0082】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、全長免疫グロブリンポリペプチドを含む。あるいは、第2のポリペプチドは、全長未満の免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖、軽鎖、Fab、Fab2、Fv、またはFc)を含む。好ましくは、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドの重鎖を含む。より好ましくは、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域を含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能よりも、より少ないエフェクター機能を有する。Fcエフェクター機能としては、例えば、Fcレセプター結合、補体固定化およびT細胞枯渇活性が挙げられる(例えば、米国特許第6,136,310号を参照のこと)。T細胞枯渇活性、Fcエフェクター機能、および抗体安定性をアッセイする方法は、当該分野で公知である。1つの実施形態において、第2のポリペプチドは、Fcレセプターに対して低い親和性を有するか、または、親和性を有さない。代替的な実施形態において、第2のポリペプチドは、補体タンパク質C1qに対して、低い親和性を有するか、または、親和性を有さない。
【0084】
好ましい第2のポリペプチド配列は、配列番号6のアミノ酸配列を含む。この配列は、Fc領域を含む。下線を引いたアミノ酸は、野生型免疫グロブリン配列の対応する位置において見出されるアミノ酸と異なるアミノ酸である。
【0085】
【化5】
【0086】
(IL−21およびIL−21レセプター抗体)
本明細書において使用する場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分(すなわち、抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子)をいう。そのような抗体としては、例えば、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fab、Fab’、およびF(ab’)2フラグメント、ならびにFab発現ライブラリーが挙げられる。一般に、ヒトから得られた抗体分子は、IgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのいずれかのクラスに関連し、そして、分子に存在する重鎖の性質によって、お互いに異なる。特定のクラスは、サブクラスも有する(例えば、IgG1、IgG2および他のサブクラス)。さらに、ヒトにおいて、軽鎖は、κ鎖またはλ鎖であり得る。本明細書における抗体に対する言及は、ヒト抗体種の全てのクラス、サブクラス、およびタイプへの言及を含む。IL−21またはIL−21レセプターポリペプチドに対する抗体は、IL−21またはIL−21レセプターポリペプチドあるいはIL−21またはIL−21レセプターポリペプチドのフラグメントを含む融合タンパク質に対する抗体をもまた、含む。
【0087】
IL−21ポリペプチドまたはIL−21レセプターポリペプチドを、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製の標準的な技術を用いて、抗原、抗原の部分またはフラグメントとして使用し得、そして、さらに、その抗原に免疫特異的に結合する抗体を生成するための免疫原として使用し得る。免疫原としての使用のための抗原の抗原性ペプチドフラグメントは、例えば、アミノ末端領域(例えば、配列番号1または3に示されるアミノ酸配列)のアミノ酸配列の少なくとも7アミノ酸残基を含み、そして、そのエピトープを含み、その結果、そのペプチドに対して惹起された抗体は、全長タンパク質またはエピトープを含む任意のフラグメントとの特異的免疫複合体を形成する。好ましくは、抗原性ペプチドは、少なくとも10アミノ酸残基、または少なくとも15アミノ酸残基、または少なくとも20アミノ酸残基、または少なくとも30アミノ酸残基を含む。抗原性ペプチドに含まれる好ましいエピトープは、タンパク質の表面に位置するタンパク質の領域であり、一般に親水性の領域である。
【0088】
いくつかの実施形態において、抗原性ペプチドに含まれる少なくとも1つのエピトープは、タンパク質の表面に位置するIL−21またはIL−21レセプターポリペプチドの領域(例えば、親水性領域)である。IL−21またはIL−21レセプターポリペプチドの疎水性分析は、IL−21またはIL−21レセプタータンパク質のどの領域が特に親水性であり、従って、抗体産生の標的として有用な表面残基をコードする可能性が高いことを示す。抗体産生を標的化する手段として、親水性および疎水性の領域を示すハイドロパシープロットが、当該分野で周知の任意の方法(例えば、フーリエ変換を用いるか、または用いない、Kyte Doolittle法またはHopp Woods法)によって作成され得る。例えば、HoppおよびWoods(1981)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 78:3824−3828;KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−42を参照のこと。抗原タンパク質内の1つ以上のドメインに対して特異的な抗体、あるいは、その誘導体、フラグメント、アナログ、またはホモログがまた、本明細書において提供される。
【0089】
本発明のタンパク質、あるいはその誘導体、フラグメント、アナログ、ホモログまたはオルソログを、これらタンパク質成分に免疫特異的に結合する抗体の生成における免疫原として利用し得る。
【0090】
当該分野で公知の種々の手順を、本発明のタンパク質、またはその誘導体、フラグメント、アナログ、ホモログもしくはオルソログに対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の産生のために使用し得る。例えば、ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL,Harlow and Lane(1988)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY.を参照のこと。これらの抗体のいくつかが、以下に考察される。
【0091】
(ポリクローナル抗体)
ポリクローナル抗体の産生のために、種々の適切な宿主動物(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、または他の哺乳動物)が、ネイティブタンパク質、その合成改変体、またはそれらの誘導体の1回以上の注射により免疫され得る。適切な免疫原性調製物は、例えば、天然に存在する免疫原性タンパク質、免疫原性タンパク質を表す化学合成ポリペプチド、または組み換え発現された免疫原性タンパク質を含み得る。さらに、このタンパク質は、免疫される哺乳動物において免疫原性であることが公知の第2のタンパク質に結合体化され得る。このような免疫原性タンパク質の例としては、キーホールリンペットヘモシアン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、およびダイズトリプシンインヒビターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0092】
この調製物はさらに、アジュバントを含み得る。免疫学的応答を増大させるのに使用される種々のアジュバントとしては、フロイント(完全および不完全)、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リソレクチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、ジニトロフェノールなど)、ヒトにおいて有用なアジュバント(例えば、Bacille Calmette−GuerinおよびCorynebacterium parvum)、または同様の免疫刺激因子が挙げられるがこれらに限定されない。使用され得るアジュバントのさらなる例としては、MPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。
【0093】
免疫原性タンパク質に対するポリクローナル抗体分子は、哺乳動物から(例えば、血液から)単離され得、周知技術(例えば、主に、免疫血清のIgGフラクションを提供する、プロテインAまたはプロテインCを用いるアフィニティークロマトグラフィー)によりさらに精製され得る。その後、またはあるいは、探している免疫グロブリンの標的である特定の抗原またはそのエピトープがカラムに固定され、イムノアフィニティークロマトグラフィーにより免疫特異的抗体が精製される。免疫グロブリンの精製は、例えば、Wilkinson(2000)The Scientist,14:25−28により議論されている。
【0094】
(モノクローナル抗体)
本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」(MAb)または「モノクローナル抗体組成物」は、単一の軽鎖遺伝子産物および単一の重鎖遺伝子産物からなる1分子種のみの抗体を含む抗体分子の集団をいう。特に、モノクローナル抗体の相補性決定部位(CDR)は、この集団の全ての分子において同一である。従って、MAbは、それに対する固有の結合親和性により特徴付けられる抗原の特定のエピトープと免疫反応し得る抗原結合部位を含む。
【0095】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature,256:495に記載される)を用いて調製され得る。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物は、代表的に、免疫因子で免疫され、その免疫因子に特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生し得るリンパ球が惹起される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫され得る。
【0096】
免疫因子としては、代表的に、タンパク質抗原、そのフラグメント、またはその融合タンパク質が挙げられる。一般的には、ヒト起源の細胞が所望の場合、脾臓細胞または末梢血リンパ球が使用され、また、非ヒト哺乳動物起源が所望の場合、リンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、適切な融合因子(例えば、ポリエチレングリコール)を用いて不死化細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞が形成される。Goding,MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE,Academic Press(1986)pp.59−103。不死化細胞株は通常、形質転換哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシ、およびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合不死化細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含む適切な培養培地中で培養され得る。例えば、親細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、代表的に、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む(「HAT培地」)。これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
【0097】
好ましい不死化細胞株は、効果的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を支持し、かつHAT培地のような培地に感受性である細胞株である。より好ましい不死化細胞は、マウス骨髄腫株(例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,CaliforniaおよびAmerican Type Culture Collection,Manassas,Virginia)から入手可能)であり得る。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒト骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor(1984)J.Immunol.,133:3001;Brodeurら,MONOCLONAL ANTIBODY PRODUCTION TECHNIQUES AND APPLICATIONS,Marcel Dekker,Inc.,New York,(1987)pp.51−63)。
【0098】
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地は次いで、その抗原に対するモノクローナル抗体抗体の存在についてアッセイされ得る。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ(例えば、放射性イムノアッセイ(RIA)または酵素連結イムノソルベントアッセイ(ELISA))により決定される。このような技術およびアッセイは、当該分野で公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonおよびPollard(1980)Anal.Biochem.,107:220のScatchard分析により決定され得る。好ましくは、標的抗原に対する高い程度の特異性および高い結合親和性を有する抗体が単離される。
【0099】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、そのクローンは、限界希釈手順によりサブクローニングされ得、標準的な方法により増殖される。この目的にとって適切な培養培地としては、例えば、Dulbecco’s Modified Eagle’s MediumおよびRPMI−1640培地が挙げられる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物における腹水として、インビボで増殖され得る。
【0100】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順(例えば、プロテインA−Sepharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィー)により培養培地または腹水から単離または精製され得る。
【0101】
モノクローナル抗体はまた、組み換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号に記載される方法)により作製され得る。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いて)容易に単離および配列決定され得る。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として使用できる。一旦単離されると、DNAは発現ベクターに配置され得、次いで、宿主細胞(例えば、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞)にトランスフェクトされ得、組み換え宿主細胞において、モノクローナル抗体が合成される。DNAはまた、例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を、相同なマウス配列の代わりに置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrison(1994)Nature 368,812−13)、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部をコードする免疫グロブリンに共有結合することにより、改変され得る。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、キメラ二価抗体を作製するため、本発明の抗体の定常ドメインと置換され得、または本発明の抗体の抗原結合部位の可変ドメインで置換され得る。
【0102】
(ヒト化抗体)
本発明のタンパク質抗原に対する抗体はさらに、ヒト化抗体またはヒト抗体を含み得る。これらの抗体は、ヒトへの投与に適しており、投与された免疫グロブリンに対するヒトによる免疫応答を引き起こさない。抗体のヒト化形態は、主に、ヒト免疫グロブリンの配列で構成され、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖またはフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合部分配列)である。ヒト化は、Winterら(Jonesら(1986)Nature,321:522−525;Riechmannら(1988)Nature,332:323−327;Verhoeyenら(1988)Science,239:1534−1536)の方法に従い、げっ歯類CDRまたはCDR配列とヒト抗体の対応する配列を置換することにより実施され得る(米国特許第5,225,539号を参照のこと)。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても移植したCDRもしくはフレームワーク配列においても見出されない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらである少なくとも1つ、および代表的には2つの改変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、代表的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む(Jonesら,1986;Riechmannら,1988;およびPresta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596)。
【0103】
(ヒト抗体)
完全ヒト抗体は、軽鎖および重鎖の本質的に全体の配列(CDRを含む)が、ヒト遺伝子から生じた抗体分子に関する。このような抗体は、本明細書中で「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」と呼ばれる。ヒトモノクローナル抗体は、トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら(1983)Immunol Today 4:72を参照のこと)、およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら,1985,MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R,Liss,Inc.,pp.77−96を参照のこと)により調製され得る。ヒトモノクローナル抗体は、本発明の実施において使用され得、ヒトハイブリドーマを用いることにより(Coteら(1983)Proc Natl Acad Sci USA 80:2026−2030)またはエプスタイン−バーウイルスでヒトB細胞をインビトロ形質転換することにより(Coteら(1985),MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)生成され得る。
【0104】
さらに、ヒト抗体はまた、さらなる技術(ファージディスプレイライブラリーを含む)を用いて生成され得る。HoogenboomおよびWinter(1991)J.Mol.Biol.,227:381;Marksら(1991)J.Mol.Biol.,222:581を参照のこと。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物(例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にかまたは完全に不活性化されたマウス)に導入することにより、作製され得る。チャレンジによって、全ての局面(遺伝子配置、アセンブリ、および抗体レパートリーを含む)においてヒトに見られるものと緊密に類似するヒト抗体産物が生成される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,611,016号;およびMarksら(Bio/Technology 10,779−783(1992));Lonbergら(Nature 368,856−859(1994));Morison(Nature 368,812−13(1994));Fishwildら(Nature Biotechnology 14,845−51(1996));Neuberger(Nature Biotechnology 14,826(1996));ならびにLonbergおyびHuszar(Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995))に記載されている。
【0105】
ヒト抗体はさらに、抗原によるチャレンジに応答して、動物の内因的な抗体ではなく完全ヒト抗体を生成するよう改変されたトランスジェニック非ヒト動物を用いて生成され得る。PCT公報WO94/02602を参照のこと。非ヒト宿主において重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする内因性遺伝子は不活性化され、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする活性な遺伝子座が、宿主ゲノムに挿入される。ヒト遺伝子は、例えば、必要なヒトDNAセグメントを含む酵母人工染色体を用いて組み込まれる。次いで、全ての所望の改変を提供する動物は、この改変の全部より少数の相補体を含む中間トランスジェニック動物を交差交配することにより子孫として得られる。このような非ヒト動物の好ましい実施形態はマウスであり、PCT公報WO96/33735およびWO96/34096に記載されるようにXenomouseTMと呼ばれる。この動物は、完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を生成する。この抗体は、目的の免疫原で免疫した後、この動物から、例えば、ポリクローナル抗体の調製物として直接的に得られるか、あるいは、この動物由来の不死化B細胞(例えば、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞)から得られる。さらに、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子は、抗体を直接的に得るために回収および発現されるか、または抗体アナログ(例えば、単鎖Fv分子)を得るためにさらに改変され得る。
【0106】
内因性免疫グロブリン重鎖の発現を欠く非ヒト宿主(マウスに代表される)を生成する方法の例は、米国特許第5,939,598号に開示されている。これは、胚性幹細胞における少なくとも1つの内因性重鎖からJセグメント遺伝子を欠失させて、この遺伝子座の再配置を防止しかつ再配置した免疫グロブリン重鎖遺伝子座の転写物の形成を防止する工程(欠失は、選択マーカーをコードする遺伝子を含む標的化ベクターによりもたらされる)、およびその体細胞および生殖細胞が選択マーカーをコードする遺伝子を含むトランスジェニックマウスを胚性幹細胞から生成する工程、を包含する方法により入手され得る。
【0107】
目的の抗体(例えば、ヒト抗体)を生成する方法は、米国特許第5,961,771号に開示されている。この方法は、重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを1つの哺乳動物宿主細胞に導入する工程、軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを別の哺乳動物宿主細胞に導入する工程、および2つの細胞を融合してハイブリッド細胞を形成する工程を包含する。このハイブリッド細胞は、重鎖および軽鎖を含む抗体を発現する。
【0108】
免疫原上の化学的に関連するエピトープを同定する方法、および高い親和性を有する関連エピトープに免疫特異的に結合する抗体を選択する相関関係のある方法は、PCT公報99/53049に開示されている。
【0109】
(Fabフラグメントおよび単鎖抗体)
本発明によれば、本発明の抗原性タンパク質に特異的な単鎖抗体の産生のための技術が適用され得る(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)。さらに、Fab発現ライブラリーを構築する方法が適用され得(例えば、Huseら(1989)Science 246:1275−1281を参照のこと)、タンパク質またはその誘導体、フラグメント、アナログ、もしくはホモログに対する所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ効率的な同定が可能となる。タンパク質抗原に対するイディオタイプを含む抗体フラグメント((i)抗体分子のペプシン消化により生成されるF(ab’)2フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成されるFabフラグメント;(iii)パパインおよび還元剤による抗体分子の処理により生成されるFabフラグメント;ならびに(iv)Fvフラグメントが挙げられるがこれらに限定されない)は、当該分野で公知の技術により産生され得る。
【0110】
(二特異的抗体)
二特異的抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体(好ましくは、ヒト抗体またはヒト化抗体)である。本発明においては、結合特異性のうちの1つは、本発明の抗原性タンパク質に対する特異性である。第2の結合標的は、任意の他の抗原であり、細胞表面タンパク質またはレセプターもしくはレセプターサブユニットが有利である。
【0111】
二特異的抗体を作製する方法は、当該分野で公知である。従来法では、二特異的抗体の組み換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対(ここで、2つの重鎖は異なる特異性を有する)の同時発現に基づいている(MilsteinおよびCuello(1983)Nature,305:537−539)。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の無作為な仕分けが理由で、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の潜在的な混合物を生成し、これらのうちの1つのみが、二特異的構造を生成する。正確な分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により達成される。同様の手順が、WO93/08829、およびTrauneckerら(1991)EMBO J.,10:3655−3659に記載されている。
【0112】
所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)は、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合され得る。融合体は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインを有する。この融合体の少なくとも1つに存在する軽鎖結合部位に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、および、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別の発現ベクターに挿入され、そして適切な宿主生物中に同時トランスフェクトされる。二特異的抗体作製のさらなる詳細については、Sureshら(1986)Methods in Enzymology,121:210を参照のこと。
【0113】
WO96/27011に記載される別のアプローチに従って、抗体分子対の間の界面は、組み換え細胞培養物から回収されるヘテロダイマーの割合を最大にするよう操作され得る。好ましい界面は、抗体定常領域のCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法において、第1抗体分子の界面からの1つ以上の小さなアミノ酸側鎖が、より大きな側さ(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置換される。この大きな側さと同一または類似の大きさの補償的「空洞」(Acompensatory “cavity”)が、大きなアミノ酸側鎖とより小さな側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)を置換することによって、第2抗体分子の界面に作製される。これにより、望ましくない最終産物(例えば、ホモダイマー)よりもヘテロダイマーの収率を増大させる機構が提供される。
【0114】
二特異的抗体は、全長抗体または抗体フラグメント(例えば、F(ab’)2二特異的抗体)として調製され得る。抗体フラグメントから二特異的抗体を生成する技術は、文献に記載されている。例えば、二特異的抗体は、化学的連結を用いて調製され得る。Brennanら(1985)Science 229:81は、インタクトな抗体をタンパク質分解切断してF(ab’)2フラグメントを生成する手順を記載している。これらのフラグメントは、ビシナルのジチオールを安定化させ、分子内ジスルフィド形成を防止するために、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元される。次いで、生成されるFab’フラグメントは、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab’−TNB誘導体のうちの1つは、メルカプトエチルアミンによる還元により、Fab’−チオールに再変換され、そして等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合されて、二特異的抗体が形成される。生成された二特異的抗体は、酵素の選択的免疫のための因子として使用され得る。
【0115】
さらに、Fab’フラグメントは、E.coliから直接回収さ得、そして化学的にカップリングされて二特異的抗体が形成される。Shalabyら(1992)J.Exp.Med.175:217−225は、完全ヒト化二特異的抗体F(ab’)2分子の生成を記載している。各Fab’フラグメントを、E.coliから別々に分泌させ、そしてインビトロで指向性化学カップリングに供して、二特異的抗体を形成した。このようにして形成された二特異的抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞および通常のヒトT細胞に結合し得、かつヒト乳癌標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の溶解活性を誘導し得る。
【0116】
組み換え細胞培養物から直接的に二特異的抗体フラグメントを作製および単離するための種々の技術もまた記載されている。例えば、二特異的抗体は、ロイシンジッパーを用いて生成される。Kostelnyら(1992)J.Immunol.148(5):1547−1553.FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合により、2つの異なる抗体のFab’部分に連結した。この抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、次いで、再酸化してヘテロダイマーを形成させた。この方法はまた、抗体ホモダイマーの産生のためにも使用され得る。Hollingerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448によって記載される「ダイアボディ(diabody)」技術は、二特異的抗体フラグメントを作製する代替機構を提供する。このフラグメントは、同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成するには短すぎるリンカーにより、軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つのフラグメントのVHドメインおよびVLドメインは、別のフラグメントの相補的なVLドメインおよびVHドメインと対形成され、それによって、2つの抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二特異的抗体フラグメントを作製する別のストラテジーもまた報告されている。Gruberら(1994)J.Immunol.152:5368を参照のこと。
【0117】
2価以上を有する抗体が、考慮される。例えば、三価抗体が調製され得る。Tuttら(1991)J.Immunol.147:60。
【0118】
例示の二特異的抗体は、2つの異なるエピトープに結合し得、そのうちの少なくとも1つは、本発明のタンパク質抗原に由来する。あるいは、特定の抗原を発現する細胞に対する細胞防御機構に注目するため、免疫グロブリン分子の抗抗原性アームは、白血球上のトリガー分子(例えば、T細胞レセプター分子(例えば、CD2、CD3、CD28、またはB7)またはIgGに対するFcレセプター(FcR)(例えば、FcRI(CD64)、FcRII(CD32)、およびFcRIII(CD16)))と組み合わされ得る。二特異的抗体はまた、細胞障害性因子を、特定の抗原を発現する細胞に向かわせるのに使用され得る。これらの抗体は、抗原結合アーム、および細胞障害性因子または放射性核種キレーター(例えば、EOTUBE、DPTA、DOTA、またはTETA)に結合するアームを有する。別の目的の二特異的抗体は、本明細書中に記載されるタンパク質抗原に結合し、かつ組織因子(TF)にさらに結合する。
【0119】
(薬学的組成物)
本明細書中に記載されるIL−21モジュレーターは、従来法により、薬学的組成物として提供され得る。この組成物は、好ましくは、内部使用に適しており、かつ有効量の薬理学的に活性な本発明の化合物を単独でかまたは1つ以上の薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む。この化合物は特に、毒性があるとしても非常に低い点で有用である。
【0120】
実施する際に、この化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩は、所望の変化(すなわち、IL−21レベルの増加または減少)をもたらすのに十分な量で投与され、かつそのような目的に最も適した薬学的形態で使用される。
【0121】
例えば、錠剤またはカプセル剤(例えば、ゼラチンカプセル)の形態での経口投与については、この活性薬物成分は、経口非毒性の薬学的に受容可能な不活性キャリア(例えば、エタノール、グリセロール、水など)と組み合わされ得る。さらに、望ましいかまたは必要とされる場合、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、および着色剤もまた、この混合物中に組み込まれ得る。適切な結合剤としては、デンプン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプンペースト、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン、天然糖(例えば、グルコースまたはβ−ラクトース)、トウモロコシ甘味物質、天然ガムおよび合成ガム(例えば、アカシア、トラガント、またはアルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ワックス)などが挙げられる。これらの投薬形態において使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、シリカ、滑石粉、ステアリン酸、そのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、および/またはポリエチレングリコールなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムデンプン、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または沸騰混合物などが挙げられるがこれらに限定されない。希釈剤としては、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、セルロース、および/またはグリシンが挙げられる。
【0122】
注射可能な組成物は、好ましくは、水性の等張溶液または懸濁液であり、脂肪エマルジョンまたは懸濁物から坐薬が有利に調製される。この組成物は、滅菌され得、かつ/または、アジュバント(例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調節のための塩、および/または緩衝剤)を含む。さらに、これらはまた、他の治療上価値のある物質を含み得る。この組成物は、それぞれ、従来の混合、顆粒化、またはコーティング方法に従って調製され、かつ約0.1〜75%、好ましくは、約1〜50%の活性成分を含む。
【0123】
本発明の化合物はまた、指定時刻放出および持続放出性の錠剤またはカプセル剤、ピル剤、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ、懸濁物、シロップ、およびエマルジョンとして、このような経口形態で投与され得る。
【0124】
液体、特に、注射可能な組成物は、例えば、溶解、分散等による調製され得る。活性化合物は、薬学的に純粋な溶媒(例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール等)に溶解されるかまたはこれらと混合され、それによって、注射可能な溶液または懸濁液が形成される。さらに、注射前に液体に溶解するのに適した固体形態が処方され得る。注射可能な組成物は、好ましくは、水性等張溶液または懸濁液である。この組成物は、滅菌され得、かつ/またはアジュバント(例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調節のための塩、および/または緩衝剤)を含む。さらに、これらはまた、他の治療上価値のある物質を含み得る。
【0125】
本発明の組成物は、静脈内形態(ボーラスおよび注入の両方)、腹腔内形態、皮下形態、または筋内形態で投与され得る。これらは全て、薬学分野の当業者に周知の形態を用いる。注射可能物質は、液体溶液または懸濁物のいずれかの従来形態で調製され得る。
【0126】
非経口注射による投与は、一般的に、皮下、筋内、または静脈内注射および注入のために使用される。さらに、非経口投与のための1つのアプローチは、米国特許第3,710,795号(本明細書中に参考として援用される)に従って、一定レベルの投薬を維持することを確実にする遅延放出系または持続放出系の移植を用いる。
【0127】
さらに、本発明にとって好ましい化合物は、適切な鼻内ビヒクルの使用を通じて、または当業者に周知の経皮用皮膚パッチの形態を用いて経皮経路を通じて、鼻内形態で投与され得る。経皮送達系の形態で投与するために、用量投与は、当然、投薬レジメンを通じて連続的であり、間欠的ではない。他の好ましい局所調製物としては、クリーム、軟膏、ローション、エアロゾルスプレー、およびゲルが挙げられ、ここで、活性成分の濃度は、0.1%〜15%(w/wまたはw/v)の範囲である。
【0128】
固体組成物については、賦形剤として、薬学等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石粉、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられ、使用され得る。上記の活性化合物はまた、例えば、キャリアとしてポリエチレングリコール、例えば、プロピレングリコールを用いて坐薬として処方され得る。いくつかの実施形態において、坐薬は、脂肪エマルジョンまたは懸濁物から調製されるのが有利である。
【0129】
本発明の組成物はまた、リポソーム送達系の形態(例えば、小さな単層ビヒクル、大きな単層ビヒクル、および多層ヒビクル)で投与され得る。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンを含む、種々のリン脂質から形成され得る。いくつかの実施形態において、脂質成分のフィルムは、米国特許第5,262,564号に記載されるように、薬物の水性溶液と水和され、薬物を取り囲む脂質層が形成される。
【0130】
本発明の化合物はまた、化合物分子とカップリングされる個々のキャリアとしてのモノクローナル抗体の使用により送達され得る。本発明の化合物はまた、標的化薬物キャリアとして可溶性ポリマーとカップリングされ得る。このようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパナミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリジンが挙げられ得る。さらに、本発明の化合物は、薬物の制御放出を達成するのに有用な生分解ポリマーのクラス(例えば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマー)と連結され得る。
【0131】
本発明の核酸分子は、ベクターに挿入され得、遺伝子療法ベクターとして使用され得る。遺伝子療法ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与によるか(例えば、米国特許第5,328,470号を参照のこと)、または定位注射により(例えば、Chen,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:3054−3057を参照のこと)被験体に送達され得る。遺伝子療法ベクターの薬学的調製物は、受容可能な希釈剤中の遺伝子療法ベクターを含み得るか、または遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれた遅延放出マトリクスを含み得る。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターは、組み換え細胞からインタクトに生成され得る場合(例えば、レトロウイルスベクター)、この薬学的調製物は、遺伝子送達系を生じる1つ以上の細胞を含み得る。
【0132】
所望の場合、投与される薬学的組成物はまた、微量の非毒性補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および他の物質(例えば、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等))を含み得る。
【0133】
この化合物を用いる投薬レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別、および医学的状態;処置される状態の重篤度;投与経路;患者の腎機能および肝機能;ならびに用いられる特定の化合物またはその塩を含む、種々の要因に従って選択される。通常の技術を有する医師または獣医は、その状態の進行を予防、抵抗、または休止させるのに必要とされる薬物の有効量を容易に決定し、処方し得る。
【0134】
本発明の経口用量は、示される効果について使用される場合、約0.05〜1000mg/日の間の範囲(経口)である。この組成物は、好ましくは、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100.0、250.0、500.0、および1000.0mgの活性成分を含む等級付けされた錠剤の形態で提供される。本発明の化合物の有効血漿レベルは、0.002mg〜50mg/kg体重/日の範囲である。
【0135】
本発明の化合物は、単一の一日用量で投与され得るか、または総一日用量が、一日に2、3、または4回の分割された用量で投与され得る。
【0136】
上記薬学的組成物のいずれも、0.1〜99%、好ましくは、1〜70%のIL−21、IL−21レセプター、IL−21アゴニスト、またはIL−21アンタゴニストを含み得る。
【0137】
所望の場合、この薬学的組成物は、アジュバントと共に提供され得る。アジュバントは、上述されている。いくつかの実施形態において、アジュバントは、宿主種に依存して、免疫学的応答を増加するために使用され得、フロイント(完全および不完全)、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リソレクチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール)、およびヒトにおいて有用なアジュバント(例えば、BCG(Bacille Calmette−Guerin)およびCorynebacterium parvum)が挙げられる。一般的には、動物は、連続するいくつかの注射可能物(好ましくは、少なくとも3つのブースター注射を含む)を用いて、抗原を注射される。
【0138】
本発明はさらに、以下の非限定的な例において例示される。実施例1〜8は、以下の物質および方法を用いて実施した。
【実施例】
【0139】
(マウス)
そうでないことが示されない限り、6〜8週齢のC57BL/6マウスを全ての実験に使用した。C57BL/6欠損バックグラウンドのStat6欠損マウスを、Kaplan,M.H.ら,Immunity 4:313−9,1996に記載されるようにして作製した。
【0140】
(リンパ球の調製および培養)
リンパ球を、(Kaplan,M.H.ら,Immunity 4:313−9,1996)に記載されるように補充したRPMI1640中で培養した。抗CD4および抗CD26Lを用いたセルソーティングにより、未処理のThp細胞をリンパ節および脾臓から、95〜98%純度まで精製した。
【0141】
(抗体およびサイトカイン)
T−bet特異的抗血清を、(Szabo,S.J.ら,Cell 100:655−69,2000)に記載されるようにして調製した。Stat4、Stat1、およびアクチンに特異的な抗体を、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)から入手した。リン酸化Stat4に特異的な抗体を、Zymed(South San Francisco,CA)から得た。Th分化培養物において使用した抗CD3、抗CD28、抗IL−4、およびIFNγに対する抗体を、Pharmingenから入手した。組み換えIL−4を、Preprotechから入手した。組み換えIL−2は、Chiron(Emeryville,CA)から提供された。組み換えIL−12は、Hoffman−LaRoche(Nutley,NJ)から提供された。COS上清中において発現したマウスIL−21を調製および濃縮した。1ユニットの活性を、IL−21でトランスフェクトしたBAF3細胞の50%最大増殖を誘導するのに必要とされる上清濃度と定義した。IL−21と平行して調製および濃縮したモックトランスフェクトCOS上清を、コントロールとして使用した。
【0142】
(インビトロTヘルパー細胞分化)
未処理のT細胞を、抗CD3、抗CD28(1μg/ml)をコーティングしたプレート上に、10ng/ml IL−4、10μg/ml抗IFNγ(Th2条件)、または1ng/ml IL−12、10μg/ml 抗IL−4(Th1条件)の存在下、1〜2×106/mlでプレーティングした。3日後に、細胞をIL−2(100U/ml)中で拡張した。培養1週間後、細胞を、PMA/Ionomycinで刺激し、サイトカイン産生を、(Brid,J.J.ら,Immunity 9:229−37,1998)に記載されるような細胞内サイトカイン染色により決定した。
【0143】
(RNA分析)
総RNAを、RNeasy(Qiagen;Valencia,CA)を用いて単離した。ノザン分析のために、このRNAを、1.5%アガロース/6%ホルムアルデヒドゲル上で分離し、GeneScreenメンブレン(New England Nuclear)に移した。このメンブレンを、IL−21、Il−4、IFNγ、γ−アクチンに対する放射標識cDNAプローブとハイブリダイズさせた。リアルタイムPCRのために、1μgのRNAを、オリゴ(dT)でプライムし、Superscript(Invitrogen Life Technologies;Carlsbad,CA)を用いてcDNAに変換した。25ngのcDNAを、SYBR Green 2×またはTaqMan 2× PCRミックス(Applied Biosystems;Foster City,CA)を用いるPCR反応においてテンプレートとして使用し、以下のプライマーを用いてABI Prism 7700 Sequence Detector(Applied Biosystems)により分析した。
【0144】
【化6】
【0145】
IL−4、IFNγ、およびGAPDHに対するプライマーおよびTaqManプローブは、以前から公開されている(Overbergh,L.ら,Cytokine 11:305−12 1999)。
【0146】
(イムノブロット分析)
細胞を50mM Tris、0.5% NP40、5mM EDTA、50mM NaCl中に溶解し、溶解物を遠心分離により洗浄することによって、全細胞抽出物を調製した。タンパク質抽出物を、8〜10%ポリアクリルアミドゲル上で分離し、Optitranメンブレン(SchleicherおよびSchuell;Keene,NH)に移した。イムノブロットを、室温にて1時間、5%ミルクを含有するTBST(50mM Tris Ph7.5、100mM NaCl、0.03% Tween 20)中でブロックし、そして示される抗体と共に、4℃で一晩インキュベートした。ブロットをTBSTで洗浄し、抗ウサギHRP結合抗体(Zymed)と共に室温にてインキュベートした。ブロットをTBSTで洗浄した後、強化化学発光(Amersham;Piscataway,NJ)を用い、販売元の指示に従って検出を実施した。
【0147】
(実施例1.IL−21は、インビトロでTh2経路に沿って発達するよう誘導されたTh細胞において優先的に発現される)
ThサブセットにおけるIL−21の発現を決定した。ノザン分析を、1週間かけてTh1またはTh2細胞に分化させ、サイトカイン産生を誘導するため4時間再刺激した未処理のThp(Th前駆細胞)由来のmRNAを用いて実施した。その結果を図1A〜1Dに示す。図1Aに示される結果について、Thp細胞は、6日間、Th1およびTh2をゆがめる条件(Th1 and Th2 skewing conditions)下で培養した。この細胞を、静止させる(−)か、またはPMA/Ionomycin(P+I)と共に4時間再刺激した。RNAを精製し、ノザンブロットによりサイトカイン発現について評価した。示される結果は、3回の独立した実験の代表例である。IL−21をコードするメッセージを、刺激したTh2細胞においてのみ検出した。対照的に、IL−21メッセージは、Th1培養物では検出されなかった。これらの結果は、IL−21がTh2特異的サイトカインであることを示している。
【0148】
IL−21を発現する能力がTh2経路に沿った細胞の発達と共に増加するか否かを決定するため、一次刺激Thp細胞におけるIL−21発現を、二次刺激Th2細胞におけるIL−21メッセージ発現と比較した。その結果を図1Bに示す。示される結果について、Thp細胞は、中立のTh1条件(neutral Th1 condition)およびTh2をゆがめる条件下で培養した。RNAを、一次および二次抗CD3刺激の24時間後に精製した。サイトカイン発現を、リアルタイムPCRにより評価し(二連)、GAPDHと比較して示した。IL−4と同様に、IL−21メッセージは、一次刺激後にThp細胞において比較的低度で観察された。対照的に、IL−21の発現は、細胞がTh2経路に沿って分化した後に顕著に増加した。これらの結果は、IL−21遺伝子の発現が、他のTh2特異的サイトカインと同様に調節されることを実証している。
【0149】
分化した細胞におけるIL−21発現に対するサイトカイン環境(milieu)の効果を決定した。Th1およびTh2細胞を、それぞれ、二次刺激の前にIL−4およびIFNγの存在下で培養した。細胞は、IL−4およびIFNγによるStat6およびStat1の活性化により証明される通り、これらのサイトカインに応答性であった。
【0150】
IL−21の発現を回復させるIL−4の能力を試験した。結果を図1Cに示す。Thp細胞を、5日間、Th1およびTh2をゆがめる条件下で培養した。IL−4またはIFNγを、抗CD3による二次刺激の24時間前に、示された培養物に添加した。RNAを、二次刺激の24時間後に精製し、リアルタイムPCRによりGAPDHと比較してIL−21の発現を評価した(二連)。Th1へのIL−4の添加によって、Th2細胞に見られるレベルにまでIL−21発現を回復することはできなかった。さらに、Th2培養物へのIFNγの添加は、IL−21の発現に対して阻害効果を有さなかった。これらの結果は、Th2細胞におけるIL−21の発現が、Th2分化の初期で固定されるようであり、IL−4またはIFNγによって直接調節されないことを実証している。
【0151】
(実施例2.Th2細胞は、インビボでのTh2免疫応答の間にIL−21を発現する)
Th2細胞におけるインビボ免疫応答の間のIL−21の発現を、病原性原生生物モデル系において決定した。原生生物Leishmania majorの感染は、Th細胞のインビボ応答を研究するための十分に特徴付けられたモデルを提供する(Reiner,S.L.ら,Annu Rev Immunol 13:151−77,1995)。L.majorを感染させてた、いつくかの同系交配マウス系統(例えば、C57BL/6)は、病原体に対する保護的および効果的Th1応答を惹起する。逆に、他の同系交配マウス系統(例えば、BALBマウス系統)は、主に、Th2応答を生じ、感染を除去できない。
【0152】
C57BL/6およびBALB/cマウスの両方に、L.majorを感染させた。8匹のBALB/cおよびC57BL/6マウスのコホートの後ろ足のフットパッドにL.majorを感染させた。6週間後、枯渇したリンパ節からのCD4+T細胞を精製し、抗CD3で刺激した。RNAを刺激6時間後に精製し、サイトカイン発現を、リアルタイムPCRによりGAPDHと比較して評価した。
【0153】
結果を図1Dに示す。予想された通り、C57BL/6感染マウス由来のCD4+細胞は、BALB/c感染マウス由来の細胞よりも多くのIFNγを発現した。優勢Th2応答と同じく、感染BALB/cマウス由来のCD4+T細胞は、C57BL/6マウス由来のT細胞よりも有意に多くのIL−4を生成した。インビトロTh2をゆがめる条件下で観察されたものと同様に、IL−21もまた、BALB/cマウスにおけるインビボTh2応答の間に優先的に発現された。これらの結果は、インビトロでの発見(図1)と合わせて、IL−21はTh2サイトカインであることを実証している。
【0154】
(実施例3.IL−21は、Th細胞の発達の際にIFNγの産生を特異的に阻害する)
IL−21は、IL−4と、Th細胞における類似の発現プロフィールおよび構造的類似性を共有しているので、IL−4と同様に、Th分化に直接影響を及ぼすIL−21の能力を決定した。
【0155】
Thp分化に対するIL−21の影響を決定するために、Thp細胞を、中立のTh1条件およびTh2をゆがめる条件下で培養した。
【0156】
精製した未処理のThp細胞を、中立のTh1条件およびTh2をゆがめる条件下、IL−21の存在下および非存在下でプライムした。これらの細胞のサイトカイン力を、培養1週間後の細胞内サイトカイン染色により評価した。
【0157】
結果を図2Aおよび2Bに示す。図2Aに示される結果について、細胞は、IL−21の存在下またはモック上清中で1週間培養した。サイトカイン産生を、PMA/Ionomycinによる再刺激の4時間後の細胞内サイトカイン染色により評価した。結果は、少なくとも10回の実験の代表例である。
【0158】
IL−4と同様、中性およびTh1培養物へのIL−21の添加は、IFNγ産生細胞数を顕著に減少させた(図2A、中性およびTh1条件)。Th1細胞における減少した数のIFNγ産生細胞は、ELISPOT分析により確認された。しかし、IL−4を用いて観察されたものと異なり、IL−21自体は、IL−4産生Th2細胞の産生を強化できなかった(図2A、中性条件)。IL−21処理は、Th2をゆがめる条件下でのIL−4産生細胞の発生に対して刺激効果も阻害効果も有さなかった(図2A、Th2)。
【0159】
最近刺激したThp細胞からのIFNγ産生に影響を与えるIL−21の能力を決定した。精製した未処理のThp細胞を、中性およびTh1条件下、IL−21の存在下または非存在下で、48時間培養した。得られた培養上清を、ELISAを用いてIFNγ産生について試験した。IL−21は、分化している培養物中で早期に生じるIFNγの量を減少させることが見出された(図2B)。従って、Thプライミングの間のIL−21の存在は、分化Th1細胞およびエフェクター細胞の両方がIFNγを産生する能力に影響を及ぼす。
【0160】
(実施例4.IL−21は、Th1エフェクター細胞からのIFNγ産生を直接的に阻害しない)
IL−21が、IL−21産生を直接的に抑制するか、または代わりに、IFNγ細胞の分化に影響を与えるかを決定するため、精製した未処理のThp細胞を、Th1をゆがめる条件下で培養した。IL−21またはモック上清を、培養開始時(第0日)または再刺激および分析の24時間前(第5日)に添加した。サイトカイン産生を、細胞内サイトカイン染色により評価した。結果を図3Aに示す。
【0161】
IL−21を第0日に添加した際に観察されたものと異なり、分化期間の最後におけるTh1培養物へのIL−21の添加は、IFNγ産生に対する効果を有さなかった(Th1細胞はIL−21Rを発現し、IL−21に対して応答性であるけれども)。この発見は、IL−21が、Thp細胞のIFNγ産生Th1細胞へと分化する能力に損傷を与えるが、Th1エフェクター細胞からのIFNγ産生を直接的に阻害しないことを実証している。
【0162】
(実施例5.IFNγのIL−21阻害は、Stat6から独立している)
Th1細胞の分化を阻害するIL−4の能力は、Stat6の発現に依存する(Kaplan,M.H.,ら,Immunity 4:313−9,1996,Takeda,K.ら,Nature 380:627−30 1996,およびShimoda,K.ら,Nature 380:630−3,1996)。
【0163】
IFNγのIL−21媒介阻害もまたStat6に依存するか否かを決定するため、Stat6欠損細胞におけるTh1分化に影響を与えるIL−21の能力を決定した。野生型マウスまたはStat6欠損マウスから精製したThp細胞を、Th1をゆがめる条件下、IL−21の存在下またはモック上清中で1週間培養した。サイトカイン産生を、細胞内サイトカイン染色により評価した。
【0164】
結果を図3Bに示す。Stat6の非存在下では、Il−21は、Stat6の存在下の場合とほぼ同じ程度、IFNγ産生細胞の発生を防止するのに有効であった。従って、IL−4と異なり、IL−21は、IFNγ産生Th1細胞の発生を防止するのに、Stat6シグナル伝達に依存しない。さらに、これらの結果は、IL−21により誘導されるIFNγの抑制が、直接IL−4の作用を通じて媒介されないことを実証している。
【0165】
(実施例6.IL−21は、他のTh1サイトカインを阻害しない)
IL−21が、IFNγ産生を阻害するのに加えて、Th1の発達の局面に影響を及ぼすか否かを決定するため、IL−21処理したTh1細胞が、他のTh1関連サイトカインを産生する能力を試験した。
【0166】
Thp細胞を、Th1をゆがめる条件下、IL−21の存在下またはモック上清中で培養し、その後、これらを、二次刺激後に、細胞内サイトカイン染色によりサイトカイン産生について評価した。
【0167】
結果を図3Cに示す。驚くべきことに、IFNγ産生細胞の数は、IL−21がプライミング条件下で誘導された際に有意に減少したが、同じ細胞集団は、正常な数のIL−2およびTNFα産生細胞を有していた。これらの結果は、IL−21が、Th1細胞のIFNγ産生能を効果的に抑制するが、同じ細胞は、Th1細胞産生能を維持しており、Th2サイトカインを産生するように戻らないことを実証している。
【0168】
(実施例7.T−bet発現は、IL−21により影響を受けない)
T−betは、分化Th1細胞において特異的に発現され、かつIFNγを強力に誘導することもできる、最近同定された転写因子である。分化Th1細胞のIL−21処理が、Th細胞におけるT−bet発現の誘導に影響を及ぼすか否かを決定するため、Thp細胞を、Th1またはTh2をゆがめる条件下で培養した。タンパク質抽出物を、開始時(未処理)および培養48時間後(Th1およびTh2)に回収した。T−betおよびアクチンの発現を、ウェスタンブロットにより決定した。
【0169】
結果を図4Aに示す。IL−21またはモック上清が、示される培養物中に含まれていた。予想された通り、T−betの発現は、Th1培養物において誘導され、Th2条件下では低度に維持されていた。IL−21の添加は、Th1細胞におけるT−betの発現に対して効果を有さなかった。この結果は、IFNγ発現のIL−21媒介発現が減少したT−bet発現の結果ではないことを示している。
【0170】
(実施例8.IL−21は、IL−12シグナル伝達を阻害する)
IL−12シグナル伝達は、Th1細胞の発達において重要な役割を果たすことが報告されている。IL−12R欠損Th細胞は、IFNγを生成する能力が大きく損なわれている(Wu,C.ら,J Immunol 159:1658−65,1997)。さらに、IL−12Rβ2鎖は、Th2細胞の発達において、IL−4により媒介される効果を特異的に失活させる(Szabo,S.J.ら,J Exp Med 185:817−24,1997)。IL−21が、IL−4と同様に、Th1細胞においてIL−12b2鎖の発現に影響を及ぼすか否かを決定するために、Th1およびTh2をゆがめる条件下、IL−21の存在下および非存在下で培養したナイーブThp細胞由来のRNAを、リアルタイムPCRによって、12Rβ2発現について分析した。Thp細胞を、Th1またはTh2をゆがめる条件下で1週間培養した。IL−21またはモック上清が、示される培養物中に含まれた。RNAを、抗CD3による二次刺激の24時間後に回収し、リアルタイムPCRによりIL−12Rβ2について評価した。
【0171】
結果を図4Bに示す。この結果は、3回の独立した実験の代表例である。予想された通り、IL−12Rβ2の発現は、Th2細胞と比較した場合、Th1細胞において高かった。しかし、Th1培養物へのIL−21の添加は、IL−12Rβ2の発現に影響を及ぼさなかった。従って、IL−4について報告された結果と異なり、IL−21は、IL−12Rβ2の発現の減少を引き起こさなかった。さらに、高いTNFαおよびIL−2レベルと結び付けると、IL−12Rβ2の高発現は、IL−21処理Th1細胞が、多くのTh1の特徴を維持している(減少したIFNγ産生を除く)ことを示唆している。
【0172】
Stat4は、IL−12により特異的に活性化され、そしてIFNγ産生Th1細胞の発生にとって重要なメディエーターであることが報告されている(Wurster,A.L.ら,Oncogene 19:2577−84,2000)。IL−21が、STAT−4を活性化するIL−12の能力に影響を及ぼすか否かを決定するため、未処理のThp細胞を、IL−21の存在下または非存在下で48時間活性化した。その後、この細胞をIL−12で刺激し、Stat4のリン酸化の程度を、ウェスタンブロット分析によって決定した。Thp細胞を、Il−21の存在下またはモック上清中で、48時間、抗CD3を用いて刺激した。タンパク質抽出物を、ウェスタンブロットにより、リン酸化Stat4(p−Stat4)、Stat4、およびStat1について評価した。結果は、4回の独立した実験の代表例である。
【0173】
結果を図4Cに示す。IL−21処理細胞は、通常レベルのIL−12Rβ2を発現することが見出されたが、IL−12刺激に応答したStat4のリン酸化は、IL−12処理細胞において減少していた。この減少したレベルのリン酸化Stat4はまた、総Stat4タンパク質レベルにおける減少により反映された。比較として、Stat1タンパク質は、IL−21処理による影響を受けなかった。
【0174】
Stat4 RNAレベルもまた試験した。Thp細胞を、図4Cに記載されるようにして培養し、その後、RNAを回収して、リアルタイムPCRによりStat4発現について評価した(二連)。
【0175】
結果を図4Dに示す。結果は、3回の独立した実験の代表例である。より低レベルのStat4 RNAレベルを検出した。Stat4タンパク質レベルにおけるIL−21により誘導された減少は、Stat4 mRNAの減少に起因する可能性がある。これらの発見は、IL−21が、Stat4遺伝子発現の減少を通じて、IL−12に対する発達中のTh1細胞の応答を妨害することを示唆している。
【0176】
(実施例9.IL−21シグナル伝達は、インビボでのTh1応答を制限するために必要とされる)
内部産生したIL−21は、インビボでのTh1細胞の機能を制限する上で役割を果たすか否かを決定するため、遅延型過敏応答(DTH)の程度を、IL−21R欠損マウスにおいて試験した。DTHは、古典的なTh1細胞媒介炎症応答である。C57BL/6系に戻し交配したIL−21R欠損マウスを、Kasianら,Immunity 16:559−60,2002に記載されるようにして作製した。100mg TNP−KLH(2,4,6−トリニトロフェニル−キーホールリンペットヘモシアン;Biosearch Techologies,Novato,CA)を乳化させたDFAを用いて、8週齢の雌マウスの尻尾の基部を皮下免疫した。6日後に、マウスの一方の後ろ足のフットパッドに50μgのTNP−KLHを、反対側の後ろ足のフットパッドにPBSをチャレンジした。フットパッドの厚さを、チャレンジの24時間後に測定した。
【0177】
結果を図5Aに示す。野生型マウスおよびIL−21R欠損(IL−21R−/−)マウスの特異的なフットパッドの肥大を、TNP−KLHにより誘導された肥大からPBSを注射したフットパッドの非特異的肥大を差し引くことにより決定した。各々のデータポイントは、1匹のマウスを表している。水平線は、平均を示す。結果は、2回の独立した実験からのデータの蓄積を反映している。この結果は、野生型動物が、抗原チャレンジに応答し、フットバッドが大きく肥大したことを実証している。驚くべきことに、IL−21R欠損マウスは、ずっと強力なDTH応答(平均2倍の肥大)を惹起した。
【0178】
IFNγ産生をまた、免疫したマウスにおいても試験した。結果を図5Bに示す。免疫マウスの枯渇リンパ節から精製したCD4+T細胞を、250mg/ml TNP−KLHを用いてインビボで刺激した。上清を、ELISAによってIFNγレベルについて分析した。示される結果は、二連で実施した各遺伝子型からの2匹のマウスのデータの平均である。IL−21R欠損動物における増加したDTH応答は、枯渇リンパ節から精製されインビトロで抗原によって再刺激したCD4+細胞からのIFNγ産生における顕著な増加と相関した。
【0179】
これらの結果は、IL−21が、IFNγの産生を抑制することにより、TH1細胞応答の制限に関与することを実証している。
【0180】
さらなる実施形態は、各請求項に示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【公開番号】特開2010−90133(P2010−90133A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270851(P2009−270851)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【分割の表示】特願2004−521793(P2004−521793)の分割
【原出願日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【分割の表示】特願2004−521793(P2004−521793)の分割
【原出願日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【出願人】(502072134)プレジデント アンド フェロウズ オブ ハーバード カレッジ (92)
【氏名又は名称原語表記】President and Fellows of Harvard College
【Fターム(参考)】
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