説明

T細胞、免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン1(TIM−1)抗原に対する抗体およびその使用。

【課題】抗原TIM−1に結合する抗体、およびかかる抗体の使用を提供すること。
【解決手段】抗原TIM−1に結合する完全ヒトモノクローナル抗体が提供され、重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子をコードする単離されたポリヌクレオチド配列およびそれらの分子を含むアミノ酸配列、特にフレームワーク領域(FR’s)および/または相補性決定領域(CDR’s)、とりわけFR1ないしFR4、またはCDR1ないしCDR3にわたる、隣接した重鎖および軽鎖の配列に対応する配列が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は35U.S.C.セクション119(e)のもと、米国仮出願第60/456,652号(出願日2003年3月19日)に対する優先権を主張し、これにより明確に参考文献に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書中に開示される発明は、T細胞抗原、免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン1(TIM−1)タンパク質へ結合する抗体およびかかる抗体の使用に関連している。特に、抗原TIM−1に結合する完全ヒトモノクローナル抗体が提供される。重鎖および軽鎖の免疫グロブリン分子をコードするヌクレオチド配列、およびそれらを含むアミノ酸配列であって、特にフレームワーク領域および/または相補性決定領域(CDRs)、とりわけFR1ないしFR4、またはCDR1ないしCDR3にわたる、隣接した重鎖および軽鎖の配列に対応する配列が提供される。かかる免疫グロブリン分子およびモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマまたは他の細胞株も提供される。
【0003】
関連技術の説明
T細胞、免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン(TIM)タンパク質(ヒト中3つ、マウス中8つ)をコードする新しい遺伝子ファミリーが、免疫において最近明らかになった性質とともに説明されている(Kuchroo et al.,Nat Rev Immunol :454−462(2003);McIntire et al.,Nat Immunol :1109−1116(2001))。TIM遺伝子ファミリーメンバーは染色体領域(ヒト中5q33.2およびマウス中11B1.1)中に存在し、またアレルギーおよび自己免疫疾患に関連している(Shevach,Nat Rev Immunol :389−400(2002);Wills−Karp et al.,Nat Immunol :1050−1052(2003))。
【0004】
TIMファミリーメンバーの1つであるTIM−1は、A型肝炎ウイルス細胞受容体(HAVcr−1)としても知られており、もともとA型肝炎ウイルス(HAV)受容体として見出された((Kaplan et al,EMBO J 15(16):4282−96(1996))。この遺伝子はその後、腎臓損傷の分子1(KIM−1)としてクローニングされた(Ichimura et−al.,J Biol Chem 273:4135−4142(1998);Han et al.,Kidney Int 62:237−244(2002))。
【0005】
Kaplanらは、該受容体を発現する主要なアフリカングリーンモンキー(African Green Monkey)腎臓(AGMK)細胞株のcDNAライブラリーから、A型肝炎ウイルスに関する細胞受容体を単離した(米国特許第5,622,861号参照)。ポリペプチドおよび核酸の有用性が開示されており、それはA型肝炎ウイルスによる感染を診断し、試料中の不純物からA型肝炎ウイルスを分離し、A型肝炎ウイルスによる感染を治療し、さらに予防することだった。さらには、該ポリペプチドは形質転換細胞中で発現させることができ、抗A型肝炎ウイルス結合アッセイにおいて、化合物の効力を試験するために用いることが可能である。
【0006】
ヒト相同体、hHAVcr−1(aka TIM−1)は、Feigelstockらにより(J Virology 72(8):6621−6628(1998))で説明された。同じ分子がPCTの公開番号:WO 97/44460およびWO 98/53071、および米国特許第6,664,385号で腎臓損傷−関連分子(KIM)として説明されており、この分子は腎臓損傷後に腎臓組織中で上方制御されていることが見出された。この分子は様々な治療診断、特に腎臓疾患、障害または損傷において有用であるものとして説明された。例えばPCTの公開番号WO 02/098920は、KIMの抗体を説明し、また例えば腎臓細胞または腎臓癌細胞のごときKIM−1発現細胞からのKIM−1ポリペプチドの流出を阻害する抗体を説明している。
【0007】
TIM−1は、新規の6−システイン免疫グロブリン様ドメインおよびムチンスレオニン/セリン/プロリン(T/S/P)リッチなドメインを含む、タイプ1型の膜タンパク質である。TIM−1はもともとラット中で同定された。TIM−1はマウス、アフリカングリーンモンキーおよびヒトにおいても見出されている(Feigelstock et al.,J Virol 72(8):6621−8(1998))。アフリカングリーンモンキーの相同分子種はもっとも密接にヒトTIM−1に関わっていて、並置した358のアミノ酸にわたる77.6%のアミノ酸同一性を示す。ラットおよびマウスの相同分子種はそれぞれ50%(155/310)および45.6%(126/276)のアミノ酸同一性を示すが、並置した配列部分はアフリカングリーンモンキーについてのものより短い。TIM−1のIg様ドメインに対するモノクローナル抗体は、インビトロでA型肝炎ウイルスの感染に対して保護的であるということが示されている(Silberstein et al.,J Virol 75(2):717−25(2001))。加えて、Kim−1は正常な腎臓では低いレベルで発現することが示されたが、この発現は虚血後の腎臓において急激に増大する(Ichimura et al.,J Biol Chem 273(7):4135−42(1998))。HAVCR−1もまた、明細胞癌およびそれに由来する癌細胞株において高レベルで発現する。
【0008】
TIM−1はP型「シロツメクサ」ドメインに相同性を示し、このことは他のP型シロツメクサファミリーメンバーと同様の生物学的活性を有してもよいということを意味する。いくつかのタンパク質を含むシロツメクサドメインは、腎臓、直腸および乳房腫瘍の細胞株を治療するために用いられる場合に、細胞拡散および侵入を誘発するということが示された(Prest et al.,FASEB J 16(6):592−4(2002))。加えて、いくつかのシロツメクサ含有タンパク質は、アノイキス、上皮中の足場−関連アポトーシス現象へ耐性を与える(Chen et al.,Biochem Biophys Res Commun 274(3):576−82(2000))。
【0009】
TIM−1は、喘息に関連するマウスのシテニック(sytenic)領域中のTaprとして知られているヒト染色体5領域に位置する。主要なT細胞制御遺伝子座であるTaprは、気道過敏症の発症を制御する(Wills−Kaip,Nature Immunology :1095−1096(2001);McIntire et al.,Nature Immunology :1109−1116(2001))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO97/44460
【特許文献2】WO98/53071
【特許文献3】米国特許第6,664,385号明細書
【特許文献4】WO02/098920
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Kuchroo et al.,Nat Rev Immunol 3:454−462(2003)
【非特許文献2】McIntire et al.,Nat Immunol 2:1109−1116(2001)
【非特許文献3】Shevach,Nat Rev Immunol 2:389−400(2002)
【非特許文献4】Wills−Karp et al.,Nat Immunol 4:1050−1052(2003)
【非特許文献5】Kaplan et al,EMBO J 15(16):4282−96(1996)
【非特許文献6】Ichimura et−al.,J Biol Chem 273:4135−4142(1998)
【非特許文献7】Han et al.,Kidney Int 62:237−244(2002)
【非特許文献8】J Virology 72(8):6621−6628(1998)
【非特許文献9】Feigelstock et al.,J Virol 72(8):6621−8(1998)
【非特許文献10】Silberstein et al.,J Virol 75(2):717−25(2001)
【非特許文献11】Ichimura et al.,J Biol Chem 273(7):4135−42(1998)
【非特許文献12】Prest et al.,FASEB J 16(6):592−4(2002)
【非特許文献13】Chen et al.,Biochem Biophys Res Commun 274(3):576−82(2000)
【非特許文献14】Wills−Kaip,Nature Immunology 2:1095−1096(2001)
【非特許文献15】McIntire et al.,Nature Immunology 2:1109−1116(2001)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本明細書記載の発明の具体例は、TIM−1に結合し、TIM−1機能に影響するヒトモノクローナル抗体またはその結合フラグメントの発展に基づいている。TIM−1は腫瘍および炎症性疾患のごとき病状において高レベルで発現する。よって、TIM−1の生物学的活性を阻害することで、炎症およびTIM−1誘発細胞増殖を含む他の起こりうる影響を防ぐことが可能である。発明の具体例は、TIM−1に特異的に結合する単離された抗体またはその結合フラグメントの産生および同定に基づいている。
【0013】
したがって、本発明の1つの具体例は、TIM−1に特異的に結合する単離された抗体またはその抗体のフラグメントを含む。この分野で知られているように、該抗体は例えば、モノクローナル、キメラおよび/または完全ヒト抗体に有利でありうる。明細書に記載する本発明の具体例は、これらの抗体を産生する細胞も提供する。
【0014】
明細書に記載する本発明の具体例のいくつかは、TIM−1に結合し、TIM−1機能に影響するモノクローナル抗体に関連している。他の具体例は、治療的観点から望ましい性質を有する完全ヒト抗−TIM−1抗体および抗−TIM−1抗体製剤に関連しており、該性質はTIM−1に対する強い結合アフィニティー、インビトロおよびインビボにおけるTIM−1の中和力、およびTIM−1誘発細胞増殖の阻害力を含む。
【0015】
好ましい具体例において、本明細書記載の抗体は、非常に高いアフィニティー(Kd)でTIM−1に結合する。例えば、ヒト、ウサギ、マウス、キメラまたはヒト化抗体は、10−7、10−8、10−9、10−10、10−11、10−12、10−13または10−14M、もしくは本明細書中のいずれの範囲または値より低いがこれらに限定されないKdでTIM−1に結合することができる。アフィニティーおよび/または結合力は、本明細書で述べるように、KinExA(登録商標)および/またはBIACORE(登録商標)により測定することが可能である。
【0016】
ある具体例において、本発明は、T細胞、免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン1(TIM−1)に特異的に結合する単離された抗体を提供する。いくつかの具体例において、単離された抗体は、配列番号:2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドを有する。
【0017】
別の具体例において、本発明は、T細胞、免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン1(TIM−1)に特異的に結合する単離された抗体を提供し、これらは配列番号:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを有する。
【0018】
しかしながら、別の具体例において本発明は、TIM−1に特異的に結合する単離された抗体を提供し、これらは配列番号:2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドを有し、さらに配列番号:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを有する。
【0019】
本発明の別の具体例は完全ヒト抗体であって、この抗体はTIM−1に特異的に結合し、表4に示す配列の1つを伴う相補性決定領域(CDR)を含むアミノ酸配列を包含する重鎖ポリペプチドを有する。CDRの決定は当業者によって容易に達成することができるということが注目される。例えば、Kabat et al.,Sequencesof Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda MD[1991],vols.1−3を参照せよ。
【0020】
しかしながら別の具体例は、TIM−1に特異的に結合し、表5に示す配列の1つを含むCDRを含むアミノ酸配列を包含する軽鎖ポリペプチドを有する。ある具体例において抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0021】
さらなる具体例は、TIM−1に結合し、表4に示すCDR配列の1つを含むアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドを包含し、さらに表5に示すCDR配列の1つを含むアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを包含する抗体である。ある具体例において抗体は完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0022】
別の本発明の具体例は、TIM−1の相同分子種に結合する完全ヒト抗体である。本明細書中のさらなる具体例は、本明細書記載の完全ヒト抗体とともに、TIM−1への結合に関してクロス競合する抗体である。
【0023】
他の具体例は、TIM−1に高いアフィニティーをもつ抗体の産生方法であって、ヒトTIM−1またはそのフラグメント、および1つまたはそれ以上の相同分子種の配列またはそれらのフラグメントで哺乳類を免疫する方法を含む。
【0024】
発明の具体例が抗体の特定の型に限定されないということは理解されよう。例えば、抗−TIM−1抗体はフルレングスの抗体(例えばインタクトなヒトFc領域を有する)または抗体フラグメント(例えばFab、Fab’、F(ab’)、Fvまたは単鎖抗体)であってよい。加えて、抗体は、抗体を分泌するハイブリドーマ、または抗体をコードする1つまたは複数の遺伝子で形質転換または形質移入された組み換え細胞から製造可能である。
【0025】
本発明の具体例のいくつかは、本明細書記載のいずれの抗−TIM−1抗体をコードする単離された核酸分子、抗−TIM−1抗体をコードする単離された核酸分子を有するベクター、およびかかる核酸分子で形質転換されたホスト細胞を含む。加えて、本発明の1つの具体例は、抗−TIM−1抗体を産生する方法であって、核酸分子が発現される条件下でホスト細胞を培養して抗体を得て、その後ホスト細胞から抗体を回収する条件下でホスト細胞を培養することによる方法である。
【0026】
他の具体例において、本発明は抗体またはその機能性フラグメント、および医薬上許容される担体を含む組成物を提供する。
【0027】
いくつかの具体例において、本発明は医薬上許容される担体または希釈剤に混合した有効量の抗−TIM−1抗体を有する医薬組成物を含む。しかしながら他の具体例において、抗−TIM−1抗体またはそのフラグメントが治療剤にコンジュゲートする。治療剤は例えば毒素、放射性同位元素または化学療法剤である。好ましくは、かかる抗体は例えば腫瘍および癌を含む病状の治療のために用いられることが可能であり、該腫瘍および癌は、例えば卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、直腸、結腸直腸、甲状腺、膵臓、前立腺および膀胱癌、ならびに他の炎症状態を含む。より好ましくは、抗体は腎臓および卵巣癌の治療に用いられることが可能である。
【0028】
さらなる具体例において、本明細書記載の抗体は、動物においてTIM−1誘発細胞増殖を効果的に治療するための薬剤調製のためにも用いられることが可能であり、該モノクローナル抗体は特異的にTIM−1に結合する。
【0029】
しかしながら別の具体例は、腫瘍および炎症状態のごとき疾患の治療のための薬剤調製における抗−TIM−1抗体の使用である。ある具体例において腫瘍は、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、直腸、結腸直腸、甲状腺、膵臓、前立腺および膀胱癌のごとき腫瘍および癌を含むが、これらに限らない。
【0030】
しかしながら別の態様において、本発明はTIM−1の発現に関連する病状の有効な治療法を含む。これらの方法は、TIM−1の発現に関連する状態について治療の必要のある動物を選択し、該動物へ治療上有効量の、TIM−1に特異的に結合する完全ヒトモノクローナル抗体を投与することを含む。
【0031】
好ましくは哺乳類、またより好ましくはヒトが抗−TIM−1抗体を受け取る。好ましい具体例において、腎臓および膵臓の腫瘍、頭部および頚部癌、卵巣癌、胃癌、黒色腫、リンパ腫、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、直腸癌、食道癌および脳腫瘍を含むがこれらに限らない腫瘍が治療される。
【0032】
さらなる発明の具体例は、動物の腫瘍疾患の有効な治療のための薬剤調製における抗体の使用を含み、ここでモノクローナル抗体は特異的にTIM−1に結合する。治療可能な腫瘍疾患は、例えば、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、グリア芽細胞腫、胃癌、子宮内膜癌、腎臓癌、直腸癌、膵臓癌および前立腺癌を含む。
【0033】
いくつかの具体例において、本発明は、TIM−1の発現に関連する細胞増殖を阻害する方法を含む。これらの方法は、TIM−1誘発細胞増殖について治療の必要のある動物を選択し、該動物へ治療上有効量の、TIM−1に特異的に結合する完全ヒトモノクローナル抗体を投与することを含む。他の具体例において、TIM−1を発現する細胞は、有効量の抗−TIM−1抗体またはそのフラグメントで治療される。該方法はインビボで行うことも可能である。
【0034】
該方法はインビボで行うことが可能であり、好ましくは、患者はヒトである。好ましい具体例において、該方法は腫瘍疾患の治療に関連していて、該疾患は、例えば腎臓癌、膵臓癌、頭部および頚部癌、卵巣癌、胃癌、黒色腫、リンパ腫、前立腺癌、肝臓癌、乳癌、肺癌、膀胱癌、直腸癌、食道癌および脳腫瘍のごとき腫瘍および癌である。
【0035】
いくつかの具体例において、抗−TIM−1抗体は患者に投与され、その後血液に循環している過剰な抗体を除くために洗浄剤を投与する。
【0036】
いくつかの具体例において、抗−TIM−1抗体は、補体を修復し、補体依存性細胞障害(CDC)に関与する力を高めるために修飾されることができる。ある具体例において、抗−TIM−1抗体は、例えばアミノ酸置換により修飾され、体のクリアランスを変化させることができる。あるいは、他のアミノ酸置換のいくつかは、体からの抗体のクリアランスを遅くすることができる。
【0037】
別の具体例において、本発明は容器を含む製品を提供する。容器は、抗−TIM−1抗体を含む組成物、またTIM−1の過剰発現に特徴づけられる腫瘍または炎症性疾患を治療するために組成物が用いられることができるということを示す添付文書またはラベルを含む。
【0038】
しかし別の具体例は、患者サンプル中のTIM−1のレベルを分析し、患者の生物学的サンプルに抗−TIM−1抗体を接触させることを含み、サンプル中の抗体およびTIM−1間の結合レベルを検出するための方法を提供する。より具体的な例において、生物サンプルは血液である。
【0039】
ある具体例において、本発明は、腫瘍疾患または炎症状態をスクリーニングするために、哺乳類の組織または細胞中のTIM−1およびTIM−1相同分子種を検出するためのアッセイキットを含む。該キットは、TIM−1に結合する抗体、またTIM−1が存在する場合にTIM−1と抗体の反応を示すための方法を含む。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。ある具体例において、TIM−1に結合する抗体は標識されている。別の具体例において、抗体は非標識一次抗体であり、キットはさらに一次抗体を検出するための方法を含む。ある具体例において、該方法は、抗免疫グロブリンである標識二次抗体を含む。好ましくは、抗体は蛍光色素、酵素、放射性核種および放射線不透過性物質からなる群から選択されるマーカーで標識されている。
【0040】
本発明の別の具体例は、本明細書記載のように調製された抗体を、患者サンプル中のTIM−1レベルを検出するために利用する、疾患または状態の診断方法を含む。ある具体例において、患者サンプルは血液または血液血清である。さらなる具体例において、危険因子の同定、疾患の診断および疾患の分類のための方法が提供され、該方法は、抗−TIM−1抗体を用いてTIM−1の過剰発現を同定することを含む。
【0041】
本明細書記載の発明の具体例は、TIM−1アゴニスト(擬態物)またはTIM−1アンタゴニストとして機能するTIM−1タンパク質の変異体にも関連している。
【0042】
本発明の別の具体例は、TIM−1抗原に結合するモノクローナル抗体の使用であり、該抗体は、細胞障害の化学療法剤または抗腫瘍治療剤のごとき放射線療法剤とカップリングされる。
【0043】
ある具体例は、同時にTIM−1抗原へ結合することを遮断する単離された抗体を提供し、これは配列番号:2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46および50からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む重鎖配列を有する抗体による。別の具体例は、TIM−1抗原に結合し、配列番号:2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖配列を有する抗体と交差反応する単離された抗体を提供する。
【0044】
本発明の別の具体例は、配列番号:54のTIM−1抗原上で配列番号:87のエピトープと結合し、配列番号:2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖配列を有する抗体と交差反応する単離された抗体を提供する。さらに別の具体例において、本発明は、配列番号:54のTIM−1抗原上で配列番号:87のエピトープと結合する抗体を提供し、該抗体は配列番号:2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42、46および50からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖配列を有する抗体による、TIM−1抗原に対する同時結合を遮断する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1はTIM−1抗原に対する、抗−TIM−1モノクローナル抗体1.29、2.56.2、2.59.2、および2.45のELISAアッセイの結果の棒グラフである。
【図2】図2は無関係なタンパク質に対する、抗−TIM−1モノクローナル抗体1.29、2.56.2、2.59.2、および2.45.1ののELISAアッセイの結果の棒グラフである。
【図3A】図3Aは、抗−TIM−1 mAb2.59.2での腎臓細胞癌(3A)の染色を示す。
【図3B】図3Bは、抗−TIM−1 mAb2.59.2での膵臓癌(3B)の染色を示す。
【図4】図4は、ACHN腎臓癌細胞系における抗−TIM−1モノクローナル抗体仲介の毒素殺傷のクローン形成アッセイの結果の棒グラフである。
【図5】図5は、BT549乳癌細胞系における抗−TIM−1モノクローナル抗体仲介の毒素殺傷のクローン形成アッセイの結果の棒グラフである。
【図6】図6は、アウリスタチン(Auristatin)E(AE)結合抗体で治療したCAKI−1細胞のクローン形成アッセイの結果の棒グラフである。
【図7】図7は、アウリスタチン E(AE)結合抗体で治療したBT549細胞のクローン形成アッセイの結果の棒グラフである。
【図8】図8は、抗−TIM−1モノクローナル抗体2.59.2、2.56.2および2.45.1が対照PK16.3 mAbと比べてThl細胞からのIL−4放出を有意に阻害することを示す棒グラフである。
【図9】図9は、抗−TIM−1モノクローナル抗体2.59.2および2.45.1が対照PK16.3 mAbと比べてTh2細胞からのIL−4放出を有意に阻害することを示す棒グラフである。
【図10】図10は、抗−TIM−1モノクローナル抗体2.59.2が対照PK16.3 mAbと比べてThl細胞からのIL−5放出を有意に阻害することを示す棒グラフである。
【図11】図11は、抗−TIM−1モノクローナル抗体2.59.2および1.29対照PK16.3 mAbと比べてTh2細胞からのIL−5放出を有意に阻害することを示す棒グラフである。
【図12】図12は、抗−TIM−1モノクローナル抗体2.59.2、1.29および2.56.2が対照PK16.3 mAbと比べてThl細胞からのIL−10放出を有意に阻害することを示す棒グラフである。
【図13】図13は、抗−TIM−1モノクローナル抗体2.59.2、1.29および2.45.1が対照PK16.3 mAbと比べてTh2細胞からのIL−10放出を有意に阻害することを示す棒グラフである。
【図14】図14は、抗−TIM−1モノクローナル抗体2.59.2、1.29および2.56.2が対照PK16.3 mAbと比べてThl細胞からのIL−13放出を有意に阻害することを示す棒グラフである。
【図15】図15は、抗−TIM−1モノクローナル抗体2.59.2および1.29が対照PK16.3 mAbと比べてTh2細胞からのIL−13放出を有意に阻害することを示す棒グラフである。
【図16】図16は、抗−TIM−1モノクローナル抗体が対照PK16.3 mAbと比べてThl細胞からのiIFNγ放出を阻害しないことを示す棒グラフである。
【図17】図17は、抗−TIM−1モノクローナル抗体2.59.2および2.45.1が、対照PK16.3 mAbと比べてTh2細胞からのiIFNγ放出を阻害したことを示す棒グラフである。
【図18A】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18B】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18C】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18D】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18E】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18F】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18G】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18H】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18I】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18J】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18K】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18L】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18M】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18N】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18O】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18P】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18Q】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18R】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18S】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図18T】図18Aないし18Tは、様々なヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和を評価した実験の、BrdU取り込みアッセイ結果を示す棒グラフである。
【図19A】図19Aないし19Dは、TIM−1特異的抗体または無関係な抗体にコンジュゲートする植物毒素サポリンを用いて行った抗体コンジュゲート研究の結果を示す折れ線グラフである(図19Aないし19C)。加えて負の対照として毒素のない無関係の抗体を単独で含めた(図19D)。
【図19B】図19Aないし19Dは、TIM−1特異的抗体または無関係な抗体にコンジュゲートする植物毒素サポリンを用いて行った抗体コンジュゲート研究の結果を示す折れ線グラフである(図19Aないし19C)。加えて負の対照として毒素のない無関係の抗体を単独で含めた(図19D)。
【図19C】図19Aないし19Dは、TIM−1特異的抗体または無関係な抗体にコンジュゲートする植物毒素サポリンを用いて行った抗体コンジュゲート研究の結果を示す折れ線グラフである(図19Aないし19C)。加えて負の対照として毒素のない無関係の抗体を単独で含めた(図19D)。
【図19D】図19Aないし19Dは、TIM−1特異的抗体または無関係な抗体にコンジュゲートする植物毒素サポリンを用いて行った抗体コンジュゲート研究の結果を示す折れ線グラフである(図19Aないし19C)。加えて負の対照として毒素のない無関係の抗体を単独で含めた(図19D)。
【発明を実施するための形態】
【0046】
好ましい具体例の詳細な説明
本明細書記載の発明の具体例は、T細胞、免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン1(TIM−1)に特異的に結合する単離された抗体の産生および同定に基づいている。下記するように、TIM−1は明細胞癌およびそれに由来する癌細胞株中、高レベルで発現する。したがって、TIM−1に結合する抗体は癌の治療および阻害に有用である。加えて、TIM−1に結合する抗体は、細胞遊走を減少し、また腎臓癌細胞のアポトーシスを高めるために有用でもある。
【0047】
したがって、本明細書記載の発明の具体例は、TIM−1に結合する単離された抗体またはそれらの抗体のフラグメントを提供する。この分野で知られているように、該抗体は有利には、例えばモノクローナル、キメラおよび/またはヒト抗体でありうる。本明細書記載の発明の具体例は、これらの抗体を産生する細胞も提供する。
【0048】
本発明の別の具体例は、診断または治療目的のためのこれらの抗体を提供する。例えば、発明の具体例は、細胞増殖に関連するTIM−1の発現を阻害するための方法および抗体を提供する。好ましくは、抗体は、腎臓および膵臓腫瘍、頭部および頚部癌、卵巣癌、胃癌、黒色腫、リンパ腫、前立腺癌、肝臓癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、直腸癌、食道癌および脳腫瘍のごとき腫瘍を治療するために用いられる。かかる治療に関連して、これらの抗体を含む製品が提供される。加えて、これらの抗体を含むアッセイキットが、癌または腫瘍をスクリーニングするために提供される。
【0049】
加えて、本明細書記載の核酸、ならびにそのフラグメントおよび変異体が用いられてもよく、例えば(a)組み換えまたは異種遺伝子産物として、対応するコードされたタンパク質、ポリペプチド、フラグメントおよび変異体の生合成の指示(b)本明細書記載の核酸の検出および定量化のためのプローブとして(c)アンチセンス分子を調製するための配列テンプレートとして、などであるがこれらに限定されない。かかる使用は下記の開示においてより十分に説明されている。
【0050】
さらに、本明細書記載のTIM−1タンパク質およびポリペプチド、ならびにそのフラグメントおよび変異体が用いられてよく、その様式は(a)抗−TIM−1抗体の産生を刺激するために免疫原として役立つ(b)かかる抗体のための免疫原アッセイにおいて抗原を捕獲する(c)本明細書記載のTIM−1ポリペプチドに結合する物質のスクリーニングのための標的として、および(d)TIM−1特異的抗体のための標的であって、かかる抗体での治療が標的によって仲介される分子および/または細胞機能に影響することを含むものである。TIM−1ポリペプチド発現または活性は、細胞生存および/または転移能を促進することができる。逆に、TIM−1ポリペプチド発現における減少またはその機能の阻害は、腫瘍細胞の生存および侵襲性を、治療上有利な様式で減少する。
【0051】
TIM−1に特異的である単鎖抗体(scFv’s)および二重特異性抗体が特に有用であり、というのも、全IgG分子に比べてより小さいサイズのために、腫瘤により容易に貫通してもよいからである。全IgG分子およびscFv’s間の腫瘍貫通の比較研究が明細書中に説明されている。scFvは、TIM−1抗原を発現する腫瘍細胞を破壊するために、毒素または放射性核種で誘導体化することができ、その様式は、抗−TIM−1毒素標識したIgG2またはIgG4、またはすでに述べた放射性核種で誘導体化された全抗体と同様のものであるが、より十分に腫瘍に貫通することができるという利点を有し、翻訳されて、腫瘍を根絶する効力を増大してもよい。生物学的活性のある抗−TIM−1 scFvの具体例が本明細書で提供される。
【0052】
配列表
典型的なヒト抗−TIM−1抗体の重鎖および軽鎖可変領域の核酸およびアミノ酸配列が配列表で提供され、その内容は下記の表1にまとめられる。
【0053】
表1
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【0054】
定義
特記しない限り、本明細書記載の発明に関連して用いる科学的および技術的用語は、当業者により一般的に理解されている意味を有するだろう。さらに、文脈上必要とされない限り、単数形は複数形を含み、複数形は単数形を含むだろう。通常は、本明細書記載の細胞および組織培養、分子生物学、タンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学、およびハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法およびそれらの技法は、この分野でよく知られており、一般的に用いられているものである。標準的な技法が、組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、さらに組織培養および形質転換(例えば電気穿孔法およびリポフェクション)のために用いられる。酵素反応および精製技法が、製造者の説明に従って、この分野で一般的に達成されているように、あるいは本明細書中の説明のように行われる。通常は、前記の技法および製法は、この分野でよく知られている慣用法、および本明細書に引用し述べている様々な一般的およびより具体的な参考文献で説明されている方法で行われる。例えば、Sambrookらの(Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照とし、この参照により本明細書中に組み込まれる。本明細書で説明する分析化学、有機合成化学、医化学および薬化学に関連して利用する命名法、およびそれらの実験室製法および技法は、この分野でよく知られており、一般的に用いられているものである。標準的な技法が化学合成、化学分析、薬剤調製、処方、デリバリー、および患者の治療のために用いられる。
【0055】
本開示に従って利用されるように、下記の語は特記しない限り、下記の意味を有すると理解されよう。
【0056】
「TIM−1」なる語は、T細胞、免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン1を言う。ある具体例において、TIM−1は配列番号:54のアミノ酸配列を含むポリペプチドを言う。
【0057】
「ポリペプチド」なる語は本明細書では属名として用いられ、未変性タンパク質、フラグメントまたはポリペプチド配列の類似体を言う。よって、未変性タンパク質、フラグメントおよび類似体はポリペプチド属の種である。好ましいポリペプチドは、本発明にしたがって、ヒト重鎖免疫グロブリン分子およびヒトカッパ軽鎖免疫グロブリン分子、さらに例えばカッパ軽鎖免疫グロブリン分子のごとき軽鎖免疫グロブリン分子とともに重鎖免疫グロブリン分子を含む組み合わせにより形成される抗体分子、およびその逆、またはそのフラグメントおよび類似体を含む。
【0058】
本明細書中で用いる「ポリヌクレオチド」なる語は、少なくとも長さ10塩基の重合型ヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチド、あるいは修飾されたいずれかの型のヌクレオチドを意味する。この語は、単鎖および二重鎖DNA型を含む。
【0059】
本明細書中で用いる「単離されたポリヌクレオチド」なる語は、ゲノム、cDNAまたは合成由来、もしくはそのいくつかの組み合わせのポリヌクレオチドを意味し、これらは、その由来によって、単離されたポリヌクレオチドは(1)単離されたポリヌクレオチドが自然界で見出されたポリヌクレオチドのすべてまたは一部分と関連していない(2)自然界で連結していないポリヌクレオチドと操作可能なものとして連結している(3)より大きな配列の部分として自然界に存在しない。
【0060】
本明細書中で用いる「単離されたタンパク質」なる語は、cDNA、組み換えRNA、または合成由来、もしくはそのいくつかの組み合わせのタンパク質を意味し、これらは、その由来または派生源によって、「単離されたタンパク質」は(1)自然界で見出されたタンパク質と関連していない(2)同じ起源からの他のタンパク質がない、例えばマウスタンパク質がない(3)異なる種由来の細胞によって発現する、または(4)自然界に存在しない。
【0061】
本明細書中で用いる「オリゴヌクレオチド」なる語は、天然に存在するオリゴヌクレオチド、および天然に存在するオリゴヌクレオチド結合および天然に存在しないオリゴヌクレオチド結合により結合された修飾ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、通常は長さが200塩基またはそれより少ない塩基から成るポリヌクレオチドサブセットである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは長さが10ないし60塩基、およびもっとも好ましくは、長さが12、13、14、15、16、17、18、19または20ないし40塩基である。オリゴヌクレオチドは例えばプローブのためにはたいてい単鎖であり;しかしながらオリゴヌクレオチドは例えば遺伝子変異体の構築に用いるためには二重鎖である。本明細書に記載するオリゴヌクレオチドは、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドでありうる。
【0062】
同様に、特記しない限り、単鎖ポリヌクレオチド配列の左末端は5’末端であり;二重鎖ポリヌクレオチド配列の左方向は5’方向を言う。新生RNA転写の5’ないし3’の付加方向は転写方向を言い;RNAと同配列を有し、RNA転写の5’ないし5’末端である、DNA鎖上の配列領域は、上流配列を言い;RNAと同配列を有し、RNA転写の3’ないし3’末端である、DNA鎖上の配列領域は、下流配列を言う
【0063】
対象に適用されるように、本明細書中で用いる「天然に存在する」なる語は、その対象が自然界で見出すことが可能であるという事実を言う。例えば、生物中に存在する(ウイルスを含む)か、自然界起源のものから単離可能か、また実験室またはその他で人間によって意図的に修飾されないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は天然に存在する。
【0064】
本明細書中で用いる「天然に存在するヌクレオチド」なる語は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。本明細書中で用いる「修飾ヌクレオチド」なる語は、修飾または置換された糖基などをもつヌクレオチドを含む。本明細書中で用いる「オリゴヌクレオチド結合」なる語は、例えばホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート,ホスホロアニラダート、ホスホロアミダートなどのオリゴヌクレオチド結合を含む。例えば、LaPlanche et al.,Nucl.Acids Res.14:9081(1986);Stec et al.,J.Am.Chem.Soc.106:6077(1984);Stein et al.,Nucl.Acids Res.16:3209(1988);Zon et al.,Anti−Cancer Drug Design :539(1991);Zon et al.,Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,pp.87−108(F.Eckstein,ed.,Oxford University Press,Oxford England(1991));Stec et al.,米国特許番号第5,151,510号;Uhlmann and Peyman,Chemical Reviews 90:543(1990)であり、この参照により本明細書中に組み込まれる。オリゴヌクレオチドは所望により検出のための標識を含む。
【0065】
本明細書中で用いる「操作可能的に結合した」なる語は、記載されているように、意図した様式でそれらに機能を与えることのできる関係にある構成成分の位置を言う。コード配列に操作可能的に結合した対照配列は、対照配列と両立できる条件下でコード配列の発現を達成できるような様式で結合される。
【0066】
本明細書中で用いる「対照配列」なる語は、結合しているコード配列の発現およびプロセシングをもたらすために必要であるポリヌクレオチド配列を言う。かかる対照配列の性質はホスト生物によって異なり;原核生物中、通常はかかる対照配列は、プロモーター、リボソーム結合部位および転写終止配列を含み;真核生物中、通常はかかる対照配列は、プロモーターおよび転写終止配列を含む。対照配列なる語は、発現およびプロセシングにその存在が必須であるすべての構成成分を最小限で含むことを意図され、またその存在が有利であるさらなる構成成分も含み、例えばリーダー配列および融合パートナーの配列である。
【0067】
本明細書中で用いる「選択的ハイブリダイズ」なる語は、検出可能および特異的結合を意味する。本明細書に記載のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびそのフラグメントを、大量の検出可能な非特異的核酸への結合を最小化するハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で、核酸鎖に選択的ハイブリダイズさせる。この分野で知られていて、また本明細書に記載するように、高ストリンジェンシーの条件が選択的ハイブリダイゼーション条件を達成するために用いられることが可能である。通常は、本明細書で説明するポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびフラグメントと目的とする核酸配列間の核酸配列相同性は、少なくとも80%、より典型的には、少なくとも85%、90%、95%、99%および100%の好ましくも増大した相同性を有する。
【0068】
配列間に部分的または完全な同一性があるならば、2つのアミノ酸配列は相同である。例えば85%相同性は、2つの配列が最大のマッチングで並置されている場合に、85%のアミノ酸が同一であるということを意味する。(マッチした2つの配列のどちらかにおける)ギャップは、最大のマッチングであってよく;長さ5またはそれ未満のギャップが好ましく、2またはそれ未満のものはより好ましい。あるいは、また好ましくは、もしALIGNプログラムを、変異データマトリックスおよび6またはそれ以上のギャップペナルティーとともに用いて、5(標準偏差単位)以上のアライメントスコアを有するならば、2つのタンパク質配列(または少なくとも長さが30アミノ酸のもの由来のポリペプチド配列)は相同であり、この語は本明細書で用いるとおりである。Dayhoff,M.O.,in Atlas of Protein Sequence and Structure,pp.101−110(Volume5,National Biomedical Research Foundation(1972))and Supplement 2 to this volume,pp.1−10を参照せよ。より好ましくは、ALIGNプログラムを用いて最適に並置している場合に、アミノ酸の同一性が50%以上かまたは同等であるならば、2つの配列またはその一部分は相同である。
【0069】
本明細書中で用いる「対応する」なる語は、ポリヌクレオチド配列が参照のポリヌクレオチド配列のすべてまたは一部と相同である(すなわち厳密に進化的に関連はしていないが同一である)か、またはポリペプチド配列が参照のポリペプチド配列と同一であるということを意味する。
【0070】
対照的に、本明細書中で用いる「相補的である」なる語は、相補的配列が参照のポリヌクレオチド配列のすべてまたは一部と相同であるということを意味する。例としては、ヌクレオチド配列「TATAC」は参照の配列「TATAC」に対応し、また参照の配列「GTATA」と相補的である。
【0071】
下記の語は、2またはそれ以上のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の配列関係を説明するために用いられる:「参照の配列」「比較ウィンドウ」「配列同一性」「配列同一性の割合」および「実質上同一」。「参照の配列」は配列比較のための基礎として用いられる確定した配列であり;参照の配列は、例えば配列表中の完全長cDNAまたは遺伝子配列のセグメントのごとき、より大きな配列のサブセットであってよく、または完全長cDNAまたは遺伝子配列を含んでもよい。通常は参照の配列は長さが少なくとも18ヌクレオチドまたは6アミノ酸であり、高い頻度で長さは少なくとも24ヌクレオチドまたは8アミノ酸であり、また多くの場合長さは少なくとも48ヌクレオチドまたは16アミノ酸である。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列はそれぞれ(1)2分子間で同様である配列(すなわち、完全長ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)を含み、また(2)さらに2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間で異なる配列を含んでもよいので、典型的に、2つ(またはそれ以上)の分子間の配列比較は、比較ウィンドウ上の2分子の配列を比較することにより行い、部分領域の配列の類似性を同定しまた比較する。
【0072】
本明細書中で用いる「比較ウィンドウ」は、少なくとも18の連続したヌクレオチドの位置または6アミノ酸の概念的なセグメントを言い、ここでポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は少なくとも18の連続したヌクレオチドまたは6アミノ酸配列の参照の配列と比較されてよく、また比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列部分は2つの配列の最適なアライメントに関して、参照の配列(付加または欠失を含まない)と比較して、20パーセントまたはそれ未満の付加、欠失、置換など(すなわちギャップ)を含んでよい。比較ウィンドウを並置するための最適なアライメントは、SmithおよびWatermanの部分的相同性アルゴリズム(Adv.Appl.Math.,2:482(1981))によってか、NeedlemanおよびWunschの相同性アライメントアルゴリズム(J.Mol.Biol.,48:443(1970))によってか、PearsonおよびLipmanの同様の方法に関する探求(Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A),85:2444(1988))によってか、これらのアルゴリズムのコンピューターソフト(ウィスコンシンジェネティクスソフトウェアパッケージリリース7(ジェネティクスコンピューターグループ、575 サイエンス Dr.、マディソン、ウィスコンシン)、ジーンワークスまたはマックベクターソフトウェアパッケージ)中の、GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)によってか、またはインスペクション法により行われてよく、さらに様々な方法によって生み出される最善のアライメント(すなわち、比較ウィンドウ上でもっとも高い割合の相同性を生じる)が選択される。
【0073】
「配列同一性」なる語は、2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列が比較ウィンドウ上で同一である(すなわちヌクレオチドに対してヌクレオチド、または残基に対して残基に基づいて)ということを意味する。「配列同一性の割合」なる語は、2つの最適に並置した配列を比較ウィンドウ上で比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、UまたはI)または残基が両配列中に存在する位置数を決定して、マッチした位置数を得て、比較ウィンドウ中の全位置数(すなわちウィンドウサイズ)でマッチした位置数を割り、結果を100倍して配列同一性の割合を出すことによって、算出される。
【0074】
本明細書中で用いる「実質上同一」なる語は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の特徴を意味し、ここでポリヌクレオチドまたはアミノ酸は、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)の位置の比較ウィンドウ上で、より頻繁には、少なくとも24ないし48ヌクレオチド(8ないし16アミノ酸)の位置のウィンドウ上で比較して、少なくとも85パーセントの配列同一性、好ましくは、少なくとも90ないし95パーセントの配列同一性、より一般的には、少なくとも99パーセントの配列同一性を有する配列を含み、ここで、配列同一性の割合は、参照の配列を、比較ウィンドウ上の参照の配列と比べて20パーセントまたはそれ未満の欠失または付加を含んでよい配列と比較することによって算出される。参照の配列は、より大きい配列のサブセットであってよい。
【0075】
本明細書で用いるように、20の慣用的なアミノ酸およびそれらの省略形は慣用的な使用に従う。Immunology−A Synthesis(2nd Edition,E.S.Golub and D.R.Gren,Eds.,Sinauer Associates,Sunderland,Mass.(1991))を参照とし、この参照によって本明細書に組み込まれる。20の慣用的なアミノ酸、α−,α−二置換アミノ酸のごとき非天然アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸および他の慣用的でないアミノ酸の立体異性体(例えばD−アミノ酸)もまた本明細書で記載するポリペプチドのための適当な構成成分であってよい。慣用的でないアミノ酸の例は:4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニンおよび他の同様のアミノ酸およびイミノ酸(例えば4−ヒドロキシプロリン)である。本明細書で用いるポリペプチド記号において、標準的な使用および慣例に従って、左方向はアミノ末端方向であり、右方向はカルボキシ末端方向である。
【0076】
ポリペプチドに適用するとして、「実質上同一」なる語は、例えばデフォルトギャップウェイトを用いるプログラムGAPまたはBESTFITによってのように最適に並置した場合に、2つの配列が少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは、少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは、少なくとも95パーセントの配列同一性、もっとも好ましくは、少なくとも99パーセントの配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は保存的アミノ酸置換によって異なる。保存的アミノ酸置換は、同様の側鎖を有する残基の互換性を言う。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;側鎖に脂肪族ヒドロキシルを有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり;側鎖にアミドを含むアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニンおよびヒスチジンであり;また側鎖に硫黄を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン酸−グルタミン酸である。
【0077】
本明細書で説明するように、アミノ酸配列における変異が、本明細書に記載する抗体または免疫グロブリン分子に少なくとも75%、より好ましくは、少なくとも80%、90%、95%、またもっとも好ましくは99%の配列同一性を維持するので、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列中の小さな変異は、本明細書に記載する発明によって包含されることが意図される。特に保存的アミノ酸置換が意図される。保存的置換は、側鎖に関連するアミノ酸ファミリー内で起こるものである。
【0078】
遺伝的にコードされたアミノ酸は、通常は、次のファミリーに分けられ、それは:(1)酸性=アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;また(4)無電荷極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンである。より好ましいファミリーは:セリンおよびトレオニンは脂肪族ヒドロキシファミリーであり;アスパラギンおよびグルタミンはアミドを含むファミリーであり;アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは脂肪族ファミリーであり;またフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは芳香族ファミリーである。例えば、ロイシンをイソロイシンまたはバリンで、アスパラギン酸塩をグルタミン酸塩で、トレオニンをセリンで単独で置換すること、またはアミノ酸を構造的に関連のあるアミノ酸で同様に置換することは、生じた分子の結合または性質に重要な影響は有さないだろうということを期待することは、特にもしその置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を含まないのならば、妥当である。アミノ酸変化が結果として機能性ペプチドを生じるかどうかは、ポリペプチド誘導体の特異的活性を分析することにより容易に決定することが可能である。分析は本明細書で詳細に述べる。抗体または免疫グロブリン分子のフラグメントまたは類似体は、当業者によって容易に調製することが可能である。フラグメントまたは類似体の好ましいアミノ−およびカルボキシ−末端は、機能ドメインの境界近くに存在する。構造および機能ドメインはヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを公または特許の配列データベースと比較することにより同定が可能である。好ましくは、既知の構造および/または機能をもつ他のタンパク質中に存在する配列モチーフまたは予想されるタンパク質コンフォメーションのドメインを同定するために、コンピューターによる比較方法が用いられる。既知の三次元構造へ折り重なっているタンパク質配列を同定する方法が知られている(Bowie et al.,Science,253:164(1991))。よって、前記の例は、当業者が、本明細書に記載する構造および機能ドメインを定義するために用いられてよい配列モチーフおよび構造コンフォメーションを認識することができるということ実証する。
【0079】
好ましいアミノ酸置換は:(1)タンパク質分解への感受性を減少する(2)酸化への感受性を減少する(3)タンパク質複合体を形成するための結合アフィニティーを変える(4)結合アフィニティーを変える、および(5)かかる類似体の他の物理化学的または機能的性質を与えるかまたは修飾する。類似体は天然に存在するペプチド配列以外の配列の様々な突然変異タンパク質を含むことができる。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(好ましくは保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列中(好ましくは、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチド部分)でなされてよい。保存的アミノ酸置換は、実質的には、親配列の構造的特徴を変化すべきではない(例えば、アミノ酸置換はどちらかといえば親配列中に存在するらせんを壊すべきではないし、または親配列を特徴づける他の二次構造の型を破壊するべきでもない)。当該分野で認知されているポリペプチドの二次および3次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));およびThon−toil et al.,Nature,354:105(1991)であり、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
本明細書で用いる「ポリペプチドフラグメント」なる語は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端を欠失を有するポリペプチドを言うが、ここで残存するアミノ酸配列は、例えば全長cDNA配列に由来する天然に存在する配列中の対応する位置と同じである。典型的に、フラグメントの長さは、少なくとも5、6、8または10アミノ酸、好ましくは、少なくとも14アミノ酸、より好ましくは、少なくとも20アミノ酸、通常は、少なくとも50アミノ酸、またさらにより好ましくは、少なくとも70アミノ酸である。
【0081】
本明細書で用いる「類似体」なる語は、由来のアミノ酸配列部分と実質上同一である、少なくとも25アミノ酸のセグメントからなり、また下記性質の少なくとも1つを有するポリペプチドを言う:(1)適当な結合条件のもとでのTIM−1への特異的結合(2)適当なTIM−1結合を遮断する能力、または(3)インビトロまたはインビボにおいてTIM−1発現細胞の成長および/または生存を阻害する能力。典型的に、ポリペプチド類似体は、天然に存在する配列に関して、保存的アミノ酸置換(もしくは付加または欠失)を含む。典型的に、類似体の長さは、少なくとも20アミノ酸、好ましくは、少なくとも50アミノ酸またはそれ以上であり、またしばしば全長の天然に存在するポリペプチドと同じ長さであることができる。
【0082】
一般的にペプチド類似体は、鋳型ペプチドの性質に類似の性質を有する非ペプチド薬として医薬産業で用いられる。これらの型の非ペプチド化合物は、ペプチド擬態物または擬態ペプチドと言われる。Fauchere,J.Adv.Drug Res.,15:29(1986);Veber and Freidinger,TINS,p.392(1985);およびEvans et al.,J.Med.Chem.,30:1229(1987)は、参照により本明細書に組み込まれる。かかる化合物はコンピューター分子モデルのおかげにより、たびたび発展をとげている。治療上有用であるペプチドに構造的に同様である擬態ペプチドは、同等の治療または予防効果を生み出すために用いられてよい。通常は、擬態ペプチドは、ヒト抗体のごとき模範的なポリペプチド(すなわち生化学的性質または薬理活性を有するポリペプチド)と構造的に同様であるが、−−CHNH−−、−−CHS−−、−−CH−CH−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−−および−CHSO−−:からなる群から選択される結合で、またこの分野でよく知られている方法を用いて、所望により置換されてよい、1つまたはそれ以上ペプチド結合を有する。
【0083】
同じ型のD−アミノ酸でコンセンサス配列の1つまたはそれ以上アミノ酸を系統的に置換すること(例えばL−リジンの代わりにD−リジン)は、より安定なペプチドを産生するために用いられてよい。加えて、コンセンサス配列または実質的に同一であるコンセンサス配列の変異形を含む拘束性ペプチドは、この分野で知られている方法により産生されてよく(Rizo and Gierasch,Ann.Rev.Biochem.,61:387(1992):参照により本明細書に組み込まれる);例えば、ペプチドを環化する分子間ジスルフィド架橋を形成することのできる内部システイン残基を付加することによる。
【0084】
「抗体」または「抗体ペプチド」は、特異的結合に関してインタクトな抗体と競合するインタクトな抗体、またはその結合フラグメントを言う。結合フラグメントは、組み換えDNA技法、またはインタクトな抗体の酵素的または化学的分解により生成される。結合フラグメントはFab、Fab’、F(ab’)、Fvおよび単鎖抗体を含む。二重特異性または二重機能性以外の抗体は、その結合部位のそれぞれが同一であると理解される。過剰な抗体が、受容体とカウンター受容体間の結合量を、少なくとも約20%、40%、60%または80%、より一般的には、約85%以上(インビトロ競合結合アッセイで測定するとして)で減少する場合に、実質的に、抗体は受容体がカウンター受容体に接着するのを阻害する。
【0085】
パパイン酵素での抗体の消化は、結果として2つの同一の抗原−結合フラグメントを生じ、これらは「Fab」フラグメントおよび「Fc」フラグメントとして知られており、抗原結合活性を有さないが、結晶化力は有する。ペプシン酵素での抗体の消化は、結果として「F(ab)」フラグメントを生じ、該フラグメントにおいて、抗体分子の2つのアームは結合したままであり、2つの抗原結合部位を含む。F(ab’) フラグメントは抗原と架橋することができる。
【0086】
本明細書で用いる「Fv」は、抗原認識および抗原結合部位間に保持される抗体の最小フラグメントを言う。
【0087】
本明細書で用いる「Fab」は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖のCH1ドメインを含む抗体のフラグメントを言う。
【0088】
「エピトープ」なる語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合ができるタンパク質決定因子を含む。エピトープの決定因子はたいてい、アミノ酸や糖側鎖のごとき分子の表面に化学的に活性のある基からなり、たいていは、荷電の特徴が特異的であることに加えて、特異的三次元構造という特徴を有する。解離定数が1μM以下、好ましくは、100nM以下、もっとも好ましくは10nM以下の場合に、抗体は特異的に抗原に結合すると言われている。
【0089】
本明細書では、「剤」なる語は、化学物質、化学物質の混合物、生物のマクロ分子または生物物質の抽出物を意味する。
【0090】
本明細書で用いる「薬剤」または「薬」なる語は、患者に適当に投与される場合に、望ましい治療効果を生じることのできる化学物質または組成物を言う。本明細書中他の化学用語は、この分野での慣用的な使用にしたがって用いられ、例えばThe McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker,S.,Ed.,McGraw−Hill,San Francisco(1985))により例証され、また参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
本明細書で用いる「抗腫瘍剤」なる語は、ヒト中の腫瘍、特に癌腫、肉腫、リンパ腫または白血病のごとき悪性(癌性)障害の発症および進行を阻害する機能的性質を有する剤を言う。転移の阻害は、抗腫瘍剤のよくある性質である。
【0092】
本明細書で用いるように、「実質的に純粋」は、対象種が存在している優性種であり(すなわちモルベースで、組成物中いずれの他の個々の種より豊富である)、また好ましくは、実質的に精製された画分が、対象種が存在するすべてのマクロ分子種の少なくとも約50パーセント(モルベースで)を構成する組成物であることを意味する。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物中、存在するすべてのマクロ分子種の約80パーセント以上、より好ましくは約85%、90%、95%および99%以上を含む。もっとも好ましくは、対象種は精製されて、本質的に同種となり(汚染種は慣用的な検出方法により組成物から検出することはできない)、該組成物は、本質的に単一のマクロ分子種から成る。
【0093】
TIM−1ポリペプチドに関しての「有効な」または「活性」は、天然のTIM−1ポリペプチドの生物または免疫活性を有する、TIM−1ポリペプチドの部分を言う。本明細書で用いられる場合に、「生物学的」なる語は、天然のTIM−1ポリペプチドの活性に由来する生物学的機能を言う。好ましい生物学的活性は、例えば、細胞増殖の調節である。
【0094】
本明細書で用いる「標識」または「標識された」なる語は、ポリペプチドに検出可能な部分を付加することを言い、例えば、放射標識、蛍光標識、酵素標識、化学ルミネセンス標識またはビオチン標識である。放射性同位元素または放射性核種は、H、14C、l5N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131Iを含んでよく、蛍光標識はローダミン、ランタニドのリン光またはFITCを含んでよく、また酵素標識はセイヨウワサビペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼを含んでよい。
【0095】
本明細書で用いられる場合に、「哺乳類」は、哺乳類とみなされるいずれの動物も言う好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0096】
本明細書で用いられる場合に、「リポソーム」は、本明細書に記載するTIM−1ポリペプチドまたはかかるTIM−1ポリペプチドに対する抗体をはじめとする薬剤のデリバリーに有用でありうる小胞をいう。
【0097】
「患者」なる語は、ヒトおよび動物の対象を含む。
【0098】
抗体の構造
基本的な完全抗体の構造ユニットは4量体を含むことが知られている。各々の4量体は2つの同一なポリペプチド鎖の対から成り、各々の対は「軽鎖」(約25kDa)および「重鎖」(約50ないし70kDa)を有する。各々の鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100ないし110またはそれ以上のアミノ酸可変ドメインを含む。各々の鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を定義する。ヒト軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖に分類される。ヒト重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプは各々IgM、IgG、IgAおよびIgEで定義される。軽鎖および重鎖内では、可変および定常領域は、約12またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、また重鎖は、約10またはそれ以上のアミノ酸の「D」領域も含む。一般的に、Fundafnental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2d ed. Raven Press,N.Y.(1989))を参照せよ(参照によりすべての目的のために完全に本明細書に組み込まれる)。軽鎖/重鎖対の各々の可変領域は、抗体結合部位を形成する。
【0099】
可変ドメインはすべて、3つの超可変領域により連結されている、相補鎖決定領域またはCDRsとも呼ばれる、相対的に保存されているフレームワーク領域(FR)と同一の一般構造を示す。各々の対の重鎖および軽鎖のCDRsは、フレームワーク領域によって並べられており、特異的エピトープに結合することが可能である。
【0100】
N−末端ないしC−末端の軽鎖および重鎖は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各々の領域へのアミノ酸の帰属は、Kabatの定義による〔Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987and1991))〕または(Chothia&Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987);Chothia et al.,Nature342:878−883(1989))。
【0101】
二重特異性または二重機能をもつ抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対、および2つの異なる結合部位を有する、人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結を含む様々な方法で産生されることが可能である。例えば、Songsivilai&Lachmann,Cxp.Immunol.79:315−321(1990),Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547−1553(1992)を参照せよ。二重特異性抗体は、単一の結合部位を有するフラグメントの形態(例えばFab、Fab’およびFv)では存在しない。
【0102】
かかる二重機能または二重特異性抗体が本発明により熟考され包含されることは理解されよう。細胞毒性Tリンパ球上のTIM−1およびCD3抗原に特異的である、二重特異性単鎖抗体は、TIM−1を発現する腫瘍細胞にこれらのT細胞を結合し、腫瘍のアポトーシスおよび撲滅を起こすために用いられることが可能である。この目的のための2つの二重特異性scFv構築物は本明細書中に記載されている。TIM−1に特異的であるscFv成分は、本明細書に記載する抗−TIM−1抗体由来であることができる。
【0103】
いくつかの具体例において、表4および5中に開示されている抗−TIM−1抗体成分は、TIM−1に結合する生物学的活性のあるscFvbeを産生するために用いられることが可能である。好ましい具体例において、scFv成分は、mAb2.70に由来する。治療上二重特異的であるscFvの抗−CD3 scFv成分は、ジェンバンク中に置かれている配列(アクセス番号CAE85148)に由来していた。CD3を標的することが知られている別の抗体または他のT細胞抗原は、単鎖バックボーンかまたは完全型IgG上で抗−TIM−1とカップリングさせる場合に、悪性腫瘍の治療に同様に有効である。
【0104】
ヒト抗体および抗体のヒト化
本明細書に記載する本発明の具体例は、ヒト抗体を熟考し、包含する。ヒト抗体は、マウスまたはラットの可変および/または定常領域を有する抗体に関連する特定の問題を回避する。かかるマウスまたはラット由来のタンパク質の存在により、抗体の迅速なクリアランスを導き、また齧歯類以外の哺乳類による抗体に対して、免疫反応を生じさせることが可能である。
【0105】
ヒト抗体
YACs中のメガベースの大きさのヒトlociを単離し、再構築し、それをマウス生殖系列へ導入する力は、ヒト疾患の有用なモデルを生み出すことに加えて、非常に大きくまたは粗くマッピングされたlociの機能成分を解明するための、強力なアプローチを提供する。かかる戦略の重要で実際的な応用は、マウス体液性免疫システムの「ヒト化」である。ヒト免疫グロブリン(Ig)lociを、内因性Ig遺伝子が不活性であるマウスへ導入することにより、マウス中にヒト抗体を発現する機会が提供される。完全ヒト抗体は、マウスまたはマウス由来のMabsに本来備わっている免疫およびアレルギー応答を最小化し、ヒトへ投与される抗体の効力および安全性を増大することが期待される。完全ヒト抗体の使用は、炎症、自己免疫疾患および癌のごとき、慢性および再発性のヒト疾患の治療において実質的な利点を提供することを期待することができ、該治療においては、繰り返し抗体を投与することが必要とされる。
【0106】
この目的に対する1つのアプローチは、マウスが、マウス抗体がないために多量のヒト抗体を産生するだろうということを予測して、ヒトIg lociの大きなフラグメントを用いて、マウス抗体産生が欠損したマウス株を得ることだった。この一般的な戦略は、1994年に公開された我々の初めてのXenoMouseX(登録商標)株の産生に関連して、実証された。Green et al.,Nature Genetics :13−21(1994)を参照せよ。XenoMouseX(登録商標)株は、それぞれヒト重鎖遺伝子座およびカッパ軽鎖遺伝子座にある、245kbおよび190kbの大きさの生殖系列配置のフラグメントを含む、酵母人工染色体(YACs)で操作し、該フラグメントは核となる可変および定常領域配列を含んでいた。XENOMouse(登録商標)株はアブジェニック社(フリモント、CA)から入手可能である。ヒト抗体量のおよそ80%以上が、XENOMouse(登録商標)マウスを作り出すために、各々ヒト重鎖遺伝子座およびカッパ軽鎖遺伝子座にあるメガベースの大きさの生殖系列配置のYACフラグメントを用いて、導入された。
【0107】
XENOMouse(登録商標)の産出は、以下の特許でさらに議論され詳しく描写されている:米国特許出願第07/466,008号(出願日1990年1月12日)、第07/610,515号(出願日1990年11月8日)第07/919,297(出願日1992年7月24日)、第07/922,649号(出願日1992年7月30日)第08/031,801号(出願日1993年3月15日)、第08/112,848号(出願日1993年8月27日)第08/234,145号(出願日1994年4月28日)、第08/376,279号(出願日1995年1月20日)、第08/430,938号(1995年4月27日)、第08/464,584号(出願日1995年6月5日)、第08/464,582号(出願日1995年6月5日)、第08/463,191号(出願日1995年6月5日)、第08/462,837号(出願日1995年6月5日)、第08/486,853号(出願日1995年6月5日)、第08/486,857号(出願日1995年6月5日)、第08/486,859号(出願日1995年6月5日)、第08/462,513号(出願日1995年6月5日)、第08/724,752(出願日1996年10月2日)および第08/759,620号(出願日1996年12月3日)、ならびに米国特許第6,162,963号、第6,150,584号、第6,114,598号、第6,075,181号および第5,939,598号、ならびに日本特許第3068 180 B2号、第3068 506 B2号および第3 068 507 B2号。Mendez et al.,Nature Genetics 15:146−156(1997)およびGreen and Jakobovits,J Exp.Med.188:483−495(1998)もまた参照せよ。ヨーロッパ特許第EP 0 463 151B1号(公告日1996年6月12日)、国際特許出願WO 94/02602(公開日1994年2月3日)、国際特許出願WO 96/34096(公開日1996年10月31日)、WO98/24893(公開日1998年6月11日)、WO 00/76310(公開日2000年12月21日)もまた参照せよ。上で引用した特許、特許出願および参考文献の各々の開示は、参照により本明細書にそのすべてが組み込まれる。
【0108】
別のアプローチは、「ミニ遺伝子座」アプローチを利用しており、該アプローチにおいて、外来性のIg遺伝子座は、Ig遺伝子座からのフラグメント(個々の遺伝子)を含むために擬態物である。よって、1つまたはそれ以上のV遺伝子、1つまたはそれ以上のD遺伝子、1つまたはそれ以上のJ遺伝子、ミュー定常領域および第二の定常領域(好ましくは、ガンマ定常領域)が、動物へ挿入するための構築物を形成する。このアプローチは、下記に記載されている:米国特許第5,545,807号(Suranietら)、および米国特許第5,545,806号、第5,625,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号、第5,770,429号、第5,789,650号、第5,814,318号、第5,877,397号、第5,874,299号、および第6,255,458号(各々LonbergおよびKay)、また米国特許第5,591,669号および第6,023,010号(KrimpenfortおよびBerns)、米国特許第5,612,205号、第5,721,367号、および第5,789,215号(Bernsら)、および米国特許第5,643,763号(ChoiおよびDunn)、およびジェンファームインターナショナル社の米国特許第07/574,748号(出願日1990年8月29日)、第07/575,962号(出願日1990年8月31日)、第07/810,279号(出願日1991年12月17日)、第07/853,408号(出願日1992年3月18日)、第07/904,068号(出願日1992年6月23日)、第07/990,860号(出願日1992年12月16日)、第08/053,131号(出願日1993年4月26日)、第08/096,762号(出願日1993年7月22日)、第08/155,301号(出願日1993年11月18日)、第08/161,739号(出願日1993年12月3日)、第08/165,699号(出願日1993年12月10日)、第08/209,741号(出願日1994年3月9日)。これらの開示は参照によって本明細書に組み込まれる。ヨーロッパ特許第0 546 073 B1号、国際特許WO 92/03918、WO 92/22645、WO 92/22647、WO 92/22670、WO 93/12227、WO 94/00569、WO94/25585、WO 96/14436、WO97/13852およびWO98/24884、ならびに米国特許第5,981,175号も参照とし、これらの開示は参照によって本明細書に完全に組み込まれる。さらにTaylorら(1992)、Chenら(1993)、Tuaillonら(1993)、Choiら(1993)、Lonbergら(1994)、Taylorら(1994)、Tuaillonら(1995)、およびFishwildら(1996)を参照とし、これらの開示は参照によって本明細書に完全に組み込まれる。
【0109】
キメラ抗体はヒト定常領域およびマウス可変領域を有しているが、特に抗体を慢性的に、または複数投与で利用する場合に、特定のヒト抗−キメラ抗体(HACA)応答が観察されるだろうことが期待される。よって、ヒト抗−マウス抗体(HAMA)またはHACA応答の関係および/または効果を損なうために、TIM−1に対する完全ヒト抗体を提供することは望ましいだろう。
【0110】
ヒト化およびディスプレイ技法
推定の免疫原性を有する抗体は、ヒト化およびライブラリーディスプレイ技法を用いて産生されることが可能である。この分野でよく知られている技法を用いて、抗体をヒト化または霊長類化することが可能であることは理解されよう。例えばWinter and Harris,Immnol Today 14:43−46(1993)、およびWright et al.,Crit,Reviews in Immunol.12:125−168(1992)を参照せよ。目的の抗体は組み換えDNA技法により操作され、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメインおよび/またはフレームワークドメインを、対応するヒト配列で置換することが可能である(WO 92/02190ならびに米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,792号、5,714,350号および第5,777,085号参照)。キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためのIg cDNAの使用もまたこの分野で知られている(Liu et al.,P.N.A.S.84:3439(1987)およびJ.Immunol.139:3521(1987))。mRNAは抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞から単離され、cDNAを作成するために用いられる。目的のcDNAは、特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応により増幅可能である(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号)。あるいは、抗体の可変領域をコードする目的の配列を単離するために、発現ライブラリーが作られ、またスクリーニングされ、ついでヒト定常領域配列に融合される。ヒト定常領域遺伝子の配列は、Kabatらの(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,N.I.H.publication no.91−3242(1991))中に見出すことが可能である。ヒトC領域遺伝子は、既知のクローンから容易に手に入る。アイソタイプの選択は、抗体依存性細胞障害活性の補体修復または活性のごとき所望のエフェクター機能により導かれるだろう。好ましいアイソタイプは、IgG1、IgG2およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、カッパまたはラムダのいずれかも使用可能である。ついで、キメラヒト化抗体は慣用法により発現する。発現ベクターは、プラスミド、レトロウィルウス、YACs、EBV由来エピソームなどを含む。
【0111】
Fv、F(ab’)およびFab抗体フラグメントは、例えばプロテアーゼまたは化学分解による、インタクトなタンパク質の分解によって調製可能である。あるいは、切断型遺伝子がデザインされる。例えば、F(ab’)フラグメント部分をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列を含み、その後、翻訳終止コドンにより、切断型分子を産出する。
【0112】
HおよびL J領域のコンセンサス配列は、V領域セグメントをヒトC領域セグメントへ引き続き連結するために、J領域へ有用な制限部位を導入するためのプライマーとして用いるためのオリゴヌクレオチドを設計するために用いられることができる。C領域cDNAは部位特異的変異誘発によって修飾され、ヒト配列中の類似の位置にある制限部位に位置することができる。
【0113】
発現ベクターは、プラスミド、レトロウィルス、YACs、EBV由来エピソームなどを含む。便利なベクターは、VHまたはVL配列が容易に挿入されまた発現することが可能なように操作された適当な制限部位を有する完全ヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列を機能的にコードするものである。かかるベクターにおいて、スプライシングは、たいてい挿入されたJ領域中のスプライスドナー部位およびヒトC領域の前にあるスプライスアクセプター部位の間、およびヒトCHエキソン内に存在するスプライス領域でも起こる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域下流のネイティブな染色体部位で起こる。生じたキメラ抗体は、例えば、SV−40初期プロモーター(Okayama et al.,Mol.Cell.Bio.:280(1983)),Rous sarcoma virus LTR(Gorman et al.,P.N.A.S.79:6777(1982))、およびモロニーマウス白血病ウィルスLTR(Grosschedl etal.,Cell 41:885(1985))などのレトロウィルスLTRsを含む、いずれの強力なプロモーターに結合されることが可能である。ネイティブIgプロモーターなどが使用可能であることもまた理解されよう。
【0114】
さらに、ヒト抗体または他の種由来の抗体は、ファージディスプレイ、レトロウィルスディスプレイ、リボソームディスプレイおよび他の技法を含むがこれらに限らないディスプレイ型の技法によって、この分野でよく知られている技法を用いて、産生されることが可能であり、生じた分子は、アフィニティーマチュレーションのごときさらなるマチュレーションにさらすことができ、かかる技法はこの分野でよく知られている[Wright and Harris,supra.,Hanes and Plucthau,PNAS USA94:4937−4942(1997)(ribosomal display),Parmley and Smith,Gene73:305−318(1988)(phage display),Scott,TIBS 17:241−245(1992),Cwirla et al.,PNAS USA87:6378−6382 (1990),Russel et al.,Nucl.Acids Res.21:1081−1085(1993),Hoganboom et al.,Immunol.Reviews130:43−68(1992),Chiewell and McCafferty, TIBTECH 10:80−84(1992),and U.S.Patent No.5,733,743]。ディスプレイ技法がヒトでない抗体を産生するために利用されるならば、かかる抗体は上記のようにヒト化されることが可能である。
【0115】
これらの技法を用いて、抗体が、TIM−1発現細胞、TIM−1そのもの、TIM−1の型、それらのエピトープまたはペプチドおよびその発現ライブラリー(例えば米国特許第5,703,057号参照)に対して産生されることが可能であり、その後上記の活性について上記のようにスクリーニングされることが可能である。
【0116】
抗体治療剤
ある点において、TIM−1に対する治療剤候補としての抗体の産生に関連して、抗体は補体を修復し、また補体依存性細胞障害(CDC)に関与することができるということが望ましくありうる。かかる抗体は、下記:マウスIgM、マウスIgG2a、マウスIgG2b、マウスIgG3、ヒトIgM、ヒトIgG1およびヒトIgG3を含むがこれらに限らない。産生された抗体は、初めにかかるアイソタイプを持つ必要はないが、産生された抗体は、いずれのアイソタイプを持つことが可能であり、また抗体は、その後この分野でよく知られている技法を用いてスイッチされるアイソタイプであることができるということが理解されよう。かかる技法は、直接組み換え技法の使用を含み(例えば米国特許第4,816,397号参照)、特に細胞融合技法(例えば米国特許第5,916,771号および第6,207,418号)である。
【0117】
細胞−細胞融合技法において、いずれの所望のアイソタイプを有する重鎖を持つ骨髄腫または他の細胞株が調製され、および軽鎖を有する別の骨髄または他の細胞株が調製される。その後かかる細胞は融合され、インタクトな抗体を発現する細胞株を単離することができる。
【0118】
実施例によって、本明細書に記載するTIM−1抗体は、ヒト抗TIM−1 IgG2抗体である。かかる抗体が所望のTIM−1分子との結合を有するならば、容易にアイソタイプはスイッチされ、ヒトIgM、ヒトIgGIまたはヒトIgG3アイソタイプを産出し、一方で同じ(抗体特異的およびそのアフィニティーのいくつかを決定する)可変領域を依然として有している。かかる分子は、補体を修復し、またCDCに関与することができるだろう。
【0119】
他の治療剤の設計および製造
腎臓および膵臓の腫瘍、頭部および頚部癌、卵巣癌、胃癌、黒色腫、リンパ腫、前立腺癌、肝臓癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、直腸癌、食道癌および脳腫瘍に関連するために、抗−TIM−1抗体を含む抗悪性腫瘍剤は本発明によって熟考されまた包含される。
【0120】
さらに、TIM−1に関して本明細書中で産生されまた特徴付けられる抗体活性に基づいて、抗体部分を超えた他の治療様式の設計が促進される。かかる様式は、二重特異性抗体、免疫毒素および放射標識治療剤のごとき発展した抗体治療剤、ペプチド治療剤の産出、遺伝子治療、特に細胞内抗体、アンチセンス治療剤および低分子を含むがこれらに限らない。
【0121】
補体修復が所望の特性である、発展した抗体治療剤の産生に関連して、例えば二重特異性、免疫毒素または放射標識の使用を通して、細胞殺傷のための補体依存を回避することが可能である。
【0122】
例えば、二重特異性抗体に関連して、二重特異性抗体が産生されることが可能であり、該抗体は(i)1つはTIM−1に特異的なものであり、またもう1つは一緒にコンジュゲートしている2番目の分子に特異的なものである、2つの抗体(ii)TIM−1に単鎖特異的であって、2番目の分子に二本鎖特異的である単一抗体、または(iii)TIM−1に特異的である単鎖抗体および他の分子を含む。かかる二重特異性抗体は、よく知られている技法を用いて産生することが可能であり、例えば(i)および(ii)に関連しては、例えばFanger et al.,Immunol Methods :72−81(1994)and Wright and Harris,supraを参照に、また(iii)に関しては例えば、Traunecker et al.,Int J:Cancer(Suppl.) :51−52(1992)を参照せよ。各々の場合において、第二の特異性は、CD16またはCD64(例えばDeo et al.,18:127(1997)参照)またはCD89(例えばValerius et al.,Blood 90:4485−4492(1997)参照)を含むがこれらに限らない、重鎖活性化受容体である。前記にしたがって調製された二重特異性抗体は、TIM−1を発現する細胞、特に本明細書に記載するTIM−1抗体が有効である細胞を殺すだろう。
【0123】
免疫毒素に関して、抗体は修飾され、この分野でよく知られている技法を利用して免疫毒素として作用することができる。例えばVitetta,immunol Today 14:252(1993)を参照せよ。米国特許第5,194,594もまた参照せよ。放射標識抗体の製剤に関連して、かかる修飾抗体はこの分野でよく知られている技法を利用して容易に調製することも可能である。例えばJunghans et al.,in Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655−686(2d ed.,Chafner and Longo,eds.,Lippincott Raven(1996))を参照せよ。米国特許第4,681,581号、第4,735,210号、第5,101,827号、第5,102,990号(RE35,500)、第5,648,471号および第5,697,902号もまた参照せよ。各々の免疫毒素および放射標識分子はTIM−1発現細胞、特に本明細書記載の抗体が有効である細胞を殺すだろう。
【0124】
治療ペプチドの産生に関連して、本明細書記載の抗体(低分子に関連して下で述べるように)またはペプチドライブラリーのスクリーニングのごとき、TIM−1およびその抗体に関連する構造情報の利用によって、TIM−1に結合する治療ペプチドが産生可能である。ペプチド治療剤の設計およびスクリーニングはHoughten et al., Biotechniques 13:412−421(1992),Houghten,PNAS USA 82:5131−5135(1985),Pinalla et al.,Biotechniques 13:901−905(1992),Blake and Litzi−Davis,BioConjugate Chem.:510−513(1992)に関連して論じられている。免疫毒素および放射標識分子もまた、抗体に関連して上記したようにペプチド部分に関して同様の様式で、調製可能である。
【0125】
TIM−1分子(またはスプライスバリアントまたはその代替型のような型)は疾患プロセスにおいて機能的に有効であるということを想定して、慣用法を用いて遺伝子およびそのアンチセンス治療剤を設計することも可能であろう。かかる様式は、TIM−1機能の調節に関して利用可能である。それとともに抗体に関連して、本明細書に記載するように、それに関連する機能アッセイの設計および使用を促進する。アンチセンス治療剤のための設計および戦略は、国際特許の出願WO 94/29444で詳しく述べられている。遺伝子治療のための設計および戦略はよく知られている。しかしながら、特に細胞内抗体を含む遺伝子治療技法の使用は、とくに有利であると証明することができる。例えば、Chen et al.,Human Gene Therapy :595−601(1994)and Marasco,Gene therapy :11−15(1997)を参照せよ。遺伝子治療剤に関する一般的な設計および熟考は、国際特許の出願WO 97/38137にも論じられている。
【0126】
低分子治療剤もまた構想することができる。薬剤は本明細書記載のように、TIM−1活性を調節するように設計されることができる。本明細書記載のように、TIM分子の構造および本明細書記載の抗体のごとき他の分子との相互作用から集められた知見およびその他は、さらなる治療様式を設計するために合理的に利用されることができる。この観点において、X線結晶学、コンピューターによる分子モデリング(CAMM)、定量的または定性的構造活性相関(QSAR)および同様の技法のごとき合理的な薬剤設計技法が利用されることができ、薬剤発見の努力を集結する。合理的な設計によって、分子またはその特異型と相互作用でき、TIM−1活性を修飾または調節するために用いられることができるタンパク質または合成構造を予想することができる。かかる構造は、化学的に合成されるか、または生物学的なシステムにおいて発現されることができる。このアプローチは、[Capsey et al.,Genetically Engineered Human Therapeutic Drugs(Stockton Press,NY(1988))]で論じられている。さらに、ライブラリーの組み合わせが設計、合成され、ハイスループットスクリーニングエフォート(high throughput screening efforts)のごときスクリーニングプログラムにおいて用いられることができる。
【0127】
TIM−1アゴニストおよびアンタゴニスト
本明細書記載の発明の具体例は、TIM−1アゴニスト(擬態物)か、またはTIM−1アンタゴニストとして機能するTIM−1タンパク質変異体にも関連している。TIM−1タンパク質変異体は、例えばTIM−1タンパク質別個のポイントミューテーションまたは切断のごとき突然変異誘発により産生されることが可能である。TIM−1タンパク質アゴニストは実質的には、天然に存在する形態のTIM−1タンパク質の生物学的活性と同じものか、またはそのサブセットを保持できる。TIM−1タンパク質アゴニストは、天然に存在する型のTIM−1タンパク質の活性の1つまたはそれ以上を、例えばTIM−1タンパク質を含む細胞シグナルカスケードの上流または下流メンバーに競合結合することによって、阻害することができる。よって、特異的生物学的な効果が、限定された機能の変異体での治療により導かれることができる。ある具体例において対象を、天然に存在する形態のタンパク質の生物学的活性のサブセットを有する変異体で治療することは、天然に存在する形態のTIM−1タンパク質での治療と比べて、対象中により低い副作用しか起こさない。
【0128】
TIM−1アゴニスト(擬態物)またはTIM−1アンタゴニストとして機能するTIM−1タンパク質の変異体は、タンパク質アゴニストまたはアンタゴニスト活性について、例えば、切断変異体のごときTIM−1タンパク質の変異体のライブラリーの組み合わせをスクリーニングすることにより同定可能である。ある具体例において、TIM−1変異体の多彩なライブラリーは、例えば核酸レベルでの突然変異誘発の組み合わせにより作成でき、また多彩な遺伝子ライブラリーによりコードされる。TIM−1変異体の多彩なライブラリーは、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲーションする。該遺伝子配列は、縮重した潜在的なTIM−1配列のセットが、個々のポリペプチドとして、あるいはTIM−1配列のセットを含むより大きな融合タンパク質(例えばファージディスプレイのための)として発現が可能であるようなものである。変性オリゴヌクレオチド配列から潜在的なTIM−1変異体のライブラリーを作成するために用いることのできる様々な方法がある。変性遺伝子配列の化学合成は、自動DNAシンセサイザー中で行われることができ、ついで合成遺伝子は、適当な発現ベクターにライゲートされる。縮重した遺伝子のセットにより、潜在的にTIM−1変異体配列を有する所望のセットをコードする配列のすべての1つの混合物において提供されてよい。変性オリゴヌクレオチドの合成方法はこの分野で知られている(例えばNarang,Tetrahedron 39:3(1983);Itakura et al.,Annu.Rev.Biochem.53:323(1984);Itakura et al.,Science 198:1056(1984);Ike et al.,Nucl.Acid Res.11:477(1983)。
【0129】
放射免疫および免疫化学治療の抗体
癌の細胞毒の化学療法または放射線療法は、悪性細胞に選択的ではないために、毒性ないし感度のいい正常細胞に起こる、重大で時には命をおびやかすこともある副作用によって制限されている。よって、選択性を促進する必要がある。1つの戦略は、治療剤を、腫瘍関連抗原を認識する抗体へカップリングさせることである。このことは、悪性細胞をリガンド標的治療剤にさらすことを増大させるが、同じ剤に正常細胞をさらすことを減少させる。Allen,Nat.Rev.Cancer (10):750−63(2002)を参照せよ。
【0130】
TIM−1抗原は、FACSおよびIHCによる腫瘍細胞の細胞膜状での特異的発現によって示されるように、これらの腫瘍関連抗原の1つである。よって、本発明の1つの具体例は、TIM−1抗原に結合しているモノクローナル抗体の使用であり、該抗原は、抗腫瘍治療剤として細胞毒素化学療法剤または放射線療法剤にカップリングしている。
【0131】
放射標識はこの分野で知られており、診断または治療放射免疫コンジュゲートに関して用いられてきた。放射標識の例は、下記:放射性同位元素または放射性核種(例えば3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc9、lllInn、125I、131I、177Lu、Rhenium−186、Rhenium−188、Samarium−153、Copper−64、Scandium−47)を含むが限定されない。例えば、臨床診断に導かれる放射免疫コンジュゲートにおいて用いられてきた放射性核種は:131I、125I、123I、99Tc、67Gaおよび111Inを含むが限定されない。
【0132】
抗体は、標的免疫療法において用いられうる様々な放射性核種でも標識されている(Peirersz et al.,1987参照)。モノクローナル抗体のコンジュゲートは、癌の診断および治療に関しても用いられる(例えばImmunol.Cell Biol.65:111−125)。これらの放射性核種は、例えば188Re、186Reおよび90Yを含み、またより限定的には、199Auおよび67Cu.I−(131)もまた治療目的で用いられる。米国特許第5,460,785号は、かかる放射性同位元素のリストを提供する。放射療法のキレートおよびキレートコンジュゲートがこの分野で知られている。米国特許第4,831,175号、第5,099,069号、第5,246,692号、第5,286,850号および第5,124,471号を参照せよ。
【0133】
抗−TIM−1抗体を利用する免疫放射薬剤は、この分野でよく知られている技法を利用して調製される。例えばJunghans et al.,in Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655−686(2d ed.,Chafner and Longo,eds.,Lippincott Raven(1996))、米国特許第4,681,581号、第4,735,210号、第5,101,827号、RE35,500号、第5,648,471号および第5,697,902号を参照せよ。
【0134】
細胞毒性免疫コンジュゲートはこの分野で知られており、また治療剤として用いられている。かかる免疫コンジュゲートは、例えばメイタンシノイド(米国特許第6,441,163号)、チューブリンの重合反応阻害剤、アウリスタチン(auristatin)(Mohammad et al.,Int.J.Oncol.15(2):367−72(1999);Doronina et al.,Nature Biotechnology21(7):778−784(2003))、ドラスタチン誘導体(Ogawa et al.,Toxicol Lett.121(2):97−106(2001);21(3)778−784)、マイロターグ(登録商標)(ワイスラボラトリーズ、フィラデルフィア);メイタンシノイド(DM1)、タキサンまたはメルタンシン(mertansine)(ImmunoGen社)を用いてよい。抗−TIM−1抗体を利用する免疫毒素は、この分野でよく知られている技法により調製されてよい。例えばVitetta,Immnol.Today14:252(1993);米国特許第5,194,594号を参照せよ。
【0135】
二重特異性抗体は、例えばこの分野でよく知られている技法を用いて産生されてよく、例えばFanger et al.,Immunol Methods :72−81(1994);Wright and Harris,supra;Traunecker et al.,Int.J.Cancer(Suppl.) :51−52(1992)を参照せよ。各々の場合において、はじめの特異性はTIM−1に対してであり、2番目の特異性はCD16またはCD64(例えばDeo et al.,18:27(1997))またはCD89(例えばValerius et al.,Blood90:4485−4492(1997))を含むがこれらに限らない重鎖活性化受容体に対して生じてもよい。前記にしたがって調製される二重特異性抗体はTIM−1発現細胞を殺傷するだろう。
【0136】
抗体の目的とされる使用、すなわち診断または治療試薬としての使用によって、放射標識はこの分野で知られており、また同様の目的のために用いられる。例えば、臨床診断で用いられる放射性核種は:sup.131I、.sup.125I、.sup.123I、.sup.99Tc、.sup.67Gaおよびsup.111In.を含むが限定されない。抗体は、標的免疫療法において用いられうる様々な放射性核種で標識もされる。Peirersz et al.,(1987)を参照せよ。モノクローナル抗体のコンジュゲートもまた、癌の診断および治療のために用いられる。例えばImmunol.Cell Biol.65:111−125を参照せよ。これらの放射性核種は、例えばsup.188Re、.sup.186Reおよび.sup.90Yを含み、より限定的には.sup.199Auおよび.sup.67Cu.I−(131)は治療目的のためにも用いられる。米国特許第5,460,785号はかかる放射性同位元素のリストを提供する。
【0137】
放射療法のキレートおよびキレートコンジュゲートに関連する特許はこの分野で知られている。例えばGansowの米国特許第4,831,175号は、多置換ジエチレントリアミン五酢酸のキレート、および同じものを含むタンパク質コンジュゲート、ならびにそれらの調製方法に関連している。Gansowの米国特許第5,099,069号。第5,246,692号、第5,286,850号および第5,124,471号もまた多置換DTPAキレートに関連している。
【0138】
細胞毒性の化学療法がこの分野で知られており、また同様の目的のために用いられる。例えば、米国特許第6,441,163号は、メイタンシノイドs and 抗体 のcytotoxic コンジュゲートの製造方法について説明している。チューブリンの重合反応抗阻害剤、アウリスタチン(auristatin)PEの腫瘍活性もまたこの分野で知られている(Mohammad et al.,Int.J.Oncol.15(2):367−72(Aug 1999))。
【0139】
抗体の調製
簡潔にいうと、マウスのXenoMouse(登録商標)株は、TIM−1タンパク質で免疫され、リンパ細胞(例えばB細胞)は抗体を発現するマウスから取り出され、不死化ハイブリドーマ細胞株を調製するために骨髄型細胞株と融合し、またかかるハイブリドーマ細胞株は、TIM−1特異的抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するためにスクリーニングされ、また選択される。あるいは、骨髄腫細胞と融合しハイブリドーマを産生する代わりに、TIM−1に対する活性(例えばTIM−1−Hisタンパク質を用いるELISAによって決定される)を有する、マウスの免疫XenoMouse(登録商標)株から単離して取り出したB細胞は、ついでTIM−1特異的溶血プラークアッセイを用いて単離される。Babcook et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:7843−7848(1996)。このアッセイにおいて、ヒツジ赤血球細胞(SRBCs)のごとき標的細胞は、TIM−1抗原でコーティングされる。抗−TIM−1抗体および補体を分泌するB細胞培養のもとで、プラーク形成は、標的細胞の特異的TIM−1−仲介の溶解を示す。プラークの中心の単一の抗原−特異的形質細胞を単離し、単一の形質細胞から単離された抗体の特性をコードする遺伝情報を得た。
【0140】
逆転写PCRを用いて、分泌される抗体の可変領域をコードするDNAをクローニングし、適当な発現ベクター、好ましくは、pcDNAのごときベクターカセット、より好ましくは、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の定常ドメインを含むpcDNAベクター、へ挿入する。生じたベクターは、ついでホスト細胞、好ましくは、CHO細胞に形質移入され、またプロモーターの誘発、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適当なように変更した、慣用的な栄養培地中で培養した。
【0141】
一般に、抗体は上記の細胞株により産生され、ヒトカッパ軽鎖とともに完全ヒトIgG2重鎖を有する。固相かまたは液相のどちらかによって測定される場合に、抗体は、高いアフィニティーを有し、典型的に約10−6から約10−11MのKd値を有する。これらのemAbsは、下で述べるように、抗原結合競合研究に基づいて、群または「ビン」に分類されることができる。
【0142】
本明細書に記載する抗体は、ハイブリドーマ細胞株以外の細胞株で発現することができるということは理解されよう。特定の抗体をコードする配列は、適当な哺乳類のホスト細胞の形質転換のために用いることができる。形質転換は、例えばウィルス(またはウィルス性のベクター)中のポリヌクレオチドのパッケージングを含む、ポリヌクレオチドをホスト細胞へ導入するためのいずれの既知法により、または米国特許第4,399,216号、第4,912,040号、第4,740,461号および第4,959,455号(ここで、これらの特許は参照により本明細書に組み込まれる)により実証されているごときこの分野で知られている形質移入法により行われてよい。用いられる形質転換法は、形質転換されるホストに依存する。異種ポリヌクレオチドを哺乳類細胞へ導入するための方法はこの分野で知られており、デキストラン仲介形質移入、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン仲介形質移入、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リポソーム中のポリヌクレオチドの被覆、および核酸へのDNAのダイレクトマイクロジェクションを含む。
【0143】
発現に関してホストとして有効である哺乳類細胞株はこの分野で知られており、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝臓(hepato)細胞癌細胞(例えばHep G2)および多くの他の細胞株を含むが限定されない、American Type Culture Collection (ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を含む。特に好ましい細胞株は、どの細胞株が高い発現レベルを有し、本質的にTIM−1結合特性をもつ抗体を産生するのかを決定することをとおして、選択される。
【0144】
治療的投与および処方
標準的慣習に従って、例えば担体、賦形剤中に本発明の化合物を処方する。用語「医薬上許容される担体」は、それとともに変異プロト−癌遺伝子または変異癌タンパク質が混合されて適用を容易ならしめる、1またはそれ以上の有機または無機成分を意味し、それは天然物であっても合成品であってもよい。適当な担体は、滅菌セイラインを包含するが、医薬上許容されることが知られている他の水性および非水性等張滅菌溶液ならびに滅菌懸濁液が当業者に知られている。この点において、用語「担体」はリポソームおよび抗体(Chen et al., Anal. Biochem. 227:168−175(1995)参照)ならびにプラスミドおよびウイルス発現ベクターを包含する
【0145】
本発明のいずれの新規ペプチドを医薬上許容される塩の形態として使用してもよい。本発明のポリペプチドとともに塩を形成しうる適当な酸および塩基は当業者によく知られており、無機および有機酸および塩基を包含する。
【0146】
治療上有効量の本発明の化合物を対象に投与する。該量は、処置すべき個々の状態に対して医学的に望ましい結果、作用または影響を生じさせる化合物の量を意味する。有効量の本発明の化合物は、疾病のある、変性した、あるいはダメージを受けた状態を改善し、あるいはその進行を遅延させうる。有効量は個体に応じて決定でき、一部には対象の特質、処置すべき徴候および求められる結果に基づくであろう。有効量は、かかる因子を用いて、そして常套的な実験以上のことをせずに、当業者により定められ得る。
【0147】
本医学的に許容されるいずれの方法により発明の化合物を投与してもよい。これには静脈内、血管内、動脈内、皮下、筋肉内、腫瘍内、腹腔内、脳室内、硬膜内その他のごとき非経口経路による注射のほか、経口、鼻腔内、目からの、直腸からの、あるいは局所的投与が含まれる。デポット注射または崩壊可能インプラントのごとき手段による持続的放出投与もまた、特に本発明に用いられる。カテーテルによる腎動脈または局在化した腫瘍への血管のごとき1またはそれ以上の動脈への局部的デリバリーが特に企図される。
【0148】
本明細書に記載の生物学的に活性のある抗−TIM−1抗体を滅菌医薬調合物または処方中に処方して、設計TIM−1レベルを低下させ、そのことにより、例えばTIM−1が異常に上昇したごとき病的状態を効果的に処置することができる。好ましくは、抗−TIM−1抗体はTIM−1を標的治療レンジにまで強力に抑制するための十分なアフィニティーを有するものであり、そして好ましくは、頻繁でない投与を可能にする十分な作用時間を有するものである。長い作用持続時間により、皮下または筋肉内注射のごとき交互の(alternate)非経口経路による、より頻繁でなく、より便利な投与計画が可能となるであろう。
【0149】
インビボ投与に用いる場合、抗体処方を滅菌しなくてはならない。例えば、凍結乾燥および復元を行う前あるいいは後に滅菌済み濾過膜で濾過することにより、このことは容易に達成される。通常には、抗体を凍結乾燥形態または溶液として保存する。一般的に、治療抗体組成物は、例えば、皮下注射針により貫通可能なストッパーのごとき処方の回収を可能にするアダプターを有する静脈溶液バッグまたはバイアルのごとき滅菌アクセスポートを有する容器中に入れられる。
【0150】
抗体投与経路は既知の方法に従うものであり、例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内、鞘内からの注射または輸液、吸入または傷の中への経路、あるいは下記の持続性放出系による。好ましくは、輸液またはボーラス注射により抗体を連続的に投与する。
【0151】
治療的に用いられる抗体の有効量は、例えば、治療目的、投与経路、および患者の状態に左右されるであろう。したがって、治療担当者が必要に応じて用量を決定し、投与経路を変更して、最適治療効果を得ることが好ましい。典型的には、医師が、所望効果を達成する用量に至るまで抗体を投与するであろう。この治療の進行は、慣用的なアッセイにより、あるいは本明細書記載のアッセイにより、容易にモニターされる。
【0152】
本明細書記載の抗体を、医薬上許容される担体との混合物として調製することができる。この治療組成物を静脈内投与し、あるいは鼻または肺を通して、好ましくは液体または粉末エアロゾル(凍結乾燥品)として投与することができる。全身投与する場合、治療組成物は滅菌済みのパイロジェン不含のものであり、pH、等張性および安定性の点で満足すべき非経口的に許容される溶液中にあるべきである。これらの条件は当業者に知られている。簡単に説明すると、本明細書記載の化合物の投与処方を、所望程度の純度を有する化合物を医薬上許容される担体、賦形剤または安定化剤と混合することにより調製し、保存または投与する。かかる材料は、使用される用量および濃度において受容者に無毒であり、Tris HCl、リン酸、クエン酸、酢酸および他の有機酸のごときバッファー;抗酸化剤;ポリアルギニンのごとき低分子量(約10残基未満の)ペプチド、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのごときタンパク質;ポリビニルピロリドンのごとき親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンのごときアミノ酸;単糖類、二糖類、およびセルロースまたはその誘導体を包含する他の炭水化物、グルコース、マンノースまたはデキストリン類;EDTAのごときキレート剤マンニトールまたはソルビトールのごとき糖アルコール類;ナトリウムのごとき対イオンおよび/またはTWEEN、PLURONICSまたはポリエチレングリコールのごとき非イオン性界面活性剤を包含する。
【0153】
Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed, Lippincott Williams&Wilkens Publishers(2003))中に記載されたような慣用的な製薬慣習に従って注射用滅菌組成物を処方することができる。例えば、水またはゴマ油、ピーナッツ油もしくは綿実油のごとき天然植物油またはオレイン酸エチル等のごとき合成油脂担体中への活性化合物の溶解が望ましい。許容されている製薬慣習に従ってバッファー、保存料、抗酸化剤等を含めることができる。
【0154】
持続性放出調合物の適当な例は、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半分透過性マトリックスであって、成型物、フィルムまたはマイクロカプセルの形態のものである。持続性放出マトリックスの例は、ポリエステル、Langer et al.,J. Biomed Mater.Res.,(1981)15:167−227およびLanger,Chem.Tech.,(1982)12:98−95に記載のようなヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリアクチド(米国特許第3773919号、欧州特許第58481号)、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタメートとのコポリマー(Sidman et al.,Biopolymers,(1983)22:547−556)、非分解性エチレン−ビニルアセテート(Langer et al.,上記文献)、LUPRON DepotTM(乳酸−グリコール酸コポリマーおよびリュープロリドから構成される注射可能な微小球)およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸のごとき分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(欧州特許第133988号)を包含する。
【0155】
エチレン−ビニルアセテートおよび乳酸−グリコール酸のごときポリマーは100日間以上にわたる放出を可能にし、ある種のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。カプセル封入されたタンパク質が長時間体内に留まる場合、37℃における水分にさらされた結果としてそれらは変性または凝集し、生物学的活性を失い、免疫原性が変化しうる。関与する機構に応じてタンパク質安定化のための合理的な戦略を工夫することができる。例えば、凝集機構が分子間ジスルフィド交換によるS−S結合形成によるものとわかった場合、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分含量を制御し、適当な添加剤を使用し、そして特別なポリマーマトリックス組成物を開発することにより安定化を行うことができる。
【0156】
持続性放出組成物は、懸濁状態で結晶を維持しうる適当な処方中に懸濁された抗体の結晶の調合物も包含する。これらの調合物は、皮下または腹腔内注射された場合、持続性放出効果を生じうる。他の組成物はまた、リポソームに封入された抗体包含する。かかる抗体を含有するリポソームは、自体公知の方法:米国特許第3218121号;Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(1985)82:3688−3692;Hwang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(1980)77:4030−4034; 欧州特許第52332号;欧州特許第36676号;欧州特許第88046号;欧州特許第143949号;欧州特許第142641号;日本国特許出願第83−118008号;米国特許第4485045号および米国特許第4544545号;ならびに欧州特許第102324号に記載の方法により調製される。
【0157】
患者に対する抗体処方の用量は、担当医が、疾病の重さおよびタイプ、体重、性別、食事療法、投与時間および経路、他の投与薬剤ならびに他の関連した臨床的因子を包含する薬剤の作用を変化させることが知られている種々の因子を考慮することにより、決定されるであろう。インビトロまたはインビボ法により治療上有効な用量を決定することができる。
【0158】
治療的に用いられる本明細書記載抗体の有効量は、例えば、治療目的、投与経路、および患者の状態に左右されるであろう。したがって、治療担当者が必要に応じて用量を決定し、投与経路を変更して、最適効果を得ることが好ましい。典型的な1日の用量は、上記因子にもよるが、約0.001mg/kgないし100mg/kgまであるいはそれ以上の範囲であろう。典型的には、臨床医が、所望効果が達成される用量となるまで、治療抗体を投与するであろう。この治療の進行は慣用的なアッセイまたは本明細書記載のようにして容易にモニターされる。
【0159】
本明細書記載の組成物および方法により、改善された輸送、デリバリー、耐性等を提供するために処方中に含有される適当な担体、賦形剤および他の剤とともに治療物質が投与されるであろうことが理解されるであろう。これらの処方は、例えば、粉末、パスタ、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、小胞を含有する油脂(LipofectinTMのごとき)(カチオン性またはアニオン性)、DNA抱合体、無水吸収性パスタ、水中油および油中水エマルジョン、エマルジョンカルボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカルボワックスを含有する半固体混合物を包含する。上記マトリックスのいずれもが本発明による処置および治療に適当であり得るが、ただし、処方中の活性成分が処方により不活性化されないこと、ならびに処方が投与経路に関して生理学的に適合性を有し、耐えられるものであることが条件となる。薬化学者によく知られた処方、賦形剤および担体に関するさらなる情報についてはBaldrick P.“Pharmaceutical excipient development:the need for perclinical guidance”Regul.Toxocol.Pharmacol.32(2):210−8(2000)、Wang W.“Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.”Int.J.Pharm.203(1−2):1−60(2000)、Charman WN “Lipids,liophilic drugs,and oral drug delivery−some emerging concepts.”J Pharm.Sci.89(8):967−78(2000)、Powell et al.“Compendiu of excipients for parenteral formations”PDA J Pharm Sci Technol.52:238−311(1998)およびそれらの中の引用文献も参照のこと。
【0160】
本明細書記載の抗体はTIM−1発現から生じる徴候および症状の処置において治療上有効性を有すると考えられる。特別な具体例において、本明細書記載の抗体および方法は、癌の徴候を包含するTIM−1発現から生じる徴候の処置に関するものである。さらなる具体例は、肺、大腸、胃、腎臓、前立腺または卵巣癌のごとき癌を処置するための本明細書記載の抗体および方法の使用を包含する。
【0161】
診断用途
TIM−1は、正常腎臓において低レベルで発現されるが、虚血後の腎臓においてその発現が劇的に増大することが見出されている。Ichimura et al.,J.Biol.Chem.273(7):4135−42(1998)。抗−TIM−1抗体を用いた免疫組織学的染色は、腎臓、前立腺および卵巣の癌腫の陽性染色を示すので(下記参照)、正常組織と比較した場合のTIM−1の過剰発現は、かかる疾病の診断マーカーとして役立ちうる。
【0162】
抗体フラグメントを包含する抗体を用いて、TIM−1タンパク質の発現を定性的または定量的に検出することができる。上記のごとく、好ましくは、抗体に検出可能な、例えば蛍光標識を付して、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、フルオロメトリーまたは当該分野において知られた他の方法により結合をモニターすることができる。これらの方法は、増幅された遺伝子が細胞表面タンパク質、例えば成長因子をコードしている場合に、特に適したものである。かかる結合アッセイは、当該分野において知られているようにして行われる。
【0163】
TIM−1タンパク質への抗体結合のin situ検出を、例えば、免疫蛍光または免疫電子顕微鏡により行うことができる。この目的のために、組織標本を患者から採取し、好ましくは生物学的試料上に抗体を重層することにより標識抗体をそれに適用する。この手順は、試験すべき組織中のマーカー遺伝子産物の分布を調べることも可能にする。広範な組織学的方法をin situ検出に利用できることが、当業者に明かであろう。
【0164】
エピトープマッピング
抗体により認識されるタンパク質免疫原の特定部分を、タンパク質の部分、例えばN末端側半分およびC末端側半分に対する抗体の反応性をアッセイすることにより決定してもよい。そして、得られた反応性フラグメントをさらに分断し、その後、最小の反応性ペプチドが決定されるまで、抗体を用いて免疫原の小さい部分についてアッセイすることができる。抗原配列から設計された重複ペプチドに対する反応性に関して抗−TIM−1 mAb 2.70.2をアッセイし、TIM−1免疫原のアミノ酸189−202(配列番号:54)に対応するアミノ酸配列PLPRQNHE(配列番号:96)を特異的に認識することがわかった。さらにそのうえ、アラニンスキャンニング法を用いて、第2のプロリンおよびアスパラギン残基がmAb 2.70.2の結合に重要であろうと決定された。
【0165】
別法として、還元剤の不存在または存在下におけるSDS−PAGEにTIM−1免疫原を付し、免疫ブロッティングにより分析することにより、本発明の抗−TIM−1抗体により結合されるエピトープを決定してもよい。SELDIを用いてエピトープマッピングを行ってもよい。SELDI ProteinChip(登録商標)(LumiCyte)アレイを用いてタンパク質−タンパク質相互作用部位を決定してもよい。PROTEINCHIPアレイ表面上に共有結合により固定化された抗体によりTIM−1タンパク質抗原またはそのフラグメントを特異的に捕捉してもよい。レーザー誘導脱離法により結合抗原を検出し、それらの分子量を直接分析し決定してもよい。
【0166】
線状ファージ上にディスプレイされるランダムペプチド12量体のコンビナトリアルライブラリー(New England Biolabs)にPROTEINCHIPアレイを曝露することにより本明細書記載の抗−TIM−1抗体により認識されるエピトープを決定してもよい。抗体−結合ファージを溶離し、次いで、増幅し、さらなる結合および増幅サイクルを経て、結合配列に関してプールを豊富化させてもよい。3または4ラウンド後に、抗体被覆ウェル上で行われるファージELISAアッセイにより個々の結合クローンを結合に関してさらに試験し、陽性クローンの特定のDNA配列により特徴づける。
【実施例】
【0167】
実施例
行われた実験および得られた結果を含む下記実施例は、説明のためだけに提供され、本明細書記載の発明を限定するものとは解されない。
【0168】
実施例1
TIM−1に結合するモノクローナル抗体の製造
TIM−1の可溶性細胞外ドメインを免疫原として用いて、XenoMouse(登録商標)動物における免疫応答を刺激した。TIM−1細胞外ドメインのアミノ酸配列(推定N末端シグナルペプチドを除く)をコードするDNA(CG57008−02)をサブクローンし、pBlueBacバキュロウイルス発現系(Invitrogen Corp, Carlsbad, CA)を用いて発現させ、ウエスタンブロット分析により確認した。下記ヌクレオチド配列は、抗体を得るために用いたポリペプチドをコードしている。
【表2】

【0169】
それによりコードされるアミノ酸配列は以下のとおり:
【表3】

【0170】
組み換えTIM−1の精製を容易にするために、発現構築物にV5結合ドメインV5およびHISタグのコーディング配列を含ませることができる。Yang et al., Cancer Res.(1999)に記載されたようにして、マウス抗体を産生しないように、そしてヒト重鎖およびカッパ軽鎖遺伝子座由来のメガベースサイズのフラグメント上のヒト抗体遺伝子レパートリーの大部分を含むように処理加工されたヒト抗体産生XenoMouse(登録商標)株から、TIM−1に指向された完全なヒトIgG2およびIgG4モノクローナル抗体(mAb)を得た。2つのXenoMouse(登録商標)株、hIgG2(xmg−2)株およびIgG4(3C−1)株をTIM−1抗原(配列番号:54)で免疫した。両方の株は免疫に対して十分に応答した(表2および3)。
【表4】

【表5】

【0171】
免疫したマウスからハイブリドーマ細胞系を得た。1.29、1.37、2.16、2.17、2.24、2.45、2.54、2.56、2.59、2.61、2.70および2.76と命名された選択されたハイブリドーマ(およびそれらのサブクローン)をさらに特徴づけた。細胞系1.29および1.37により産生された抗体は、ヒトカッパ軽鎖を伴う完全なヒトIgG2重鎖を有しており、細胞系2.16、2.17、2.24、2.45、2.54、2.56、2.59、2.61、2.70および2.76により産生された抗体は、ヒトカッパ軽鎖を伴う完全なヒトIgG4重鎖を有していた。
【0172】
12種の抗−TIM−1抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を、それらの生殖系の配列とともに下表4に示す。対応する軽鎖可変ドメイン領域のアミノ酸配列を下表5に示す。「X」はいずれかのアミノ酸、好ましくは対応アミノ酸位置における生殖系の配列を示す。免疫グロブリン中のCDRs(CDR1、CDR2およびCDR3)およびFRs(FR1、FR2およびFR3)を個々の欄の上部に示す。
【表6】

【表7】

【0173】
ヒト抗体の重鎖VH3−33が、TIM−1と首尾よく結合する抗体を産生するための生産的再構成において、高い頻度で選択された。TIM−1に対する抗体を産生する生産的再構成におけるヒト抗体VH3−33生殖細胞系列のいずれの変種も本発明の範囲内にある。TIM−1結合抗体にて選択される他の重鎖V領域として、VH4−31、VH3−15、VH4−61、VH3−7およびVH3−48が挙げられる。選択される軽鎖V領域として、A27、A3、A30、A23、O12、O1およびA26が挙げられる。λκXenoMouse(登録商標)を用い、ラムダV領域を利用して抗−TIM−1抗体を生成してもよいことが理解される。
【0174】
12種の抗−TIM−1抗体の重鎖可変ドメインの生殖細胞系の使用を表6に示す。軽鎖可変ドメインの生殖細胞系の使用を表7(後記する)に示す。
【表8】

【表9】

【0175】
重鎖ヌクレオチド配列(A)、重鎖アミノ酸配列(B)および軽鎖ヌクレオチド配列(C)を含む、モノクローナル抗体1.29、1.37、2.16、2.17、2.24、2.45、2.54、2.56、2.59、2.61、2.70および2.76の各々をコード化する配列を、コード化されたアミノ酸配列(D)と一緒に、上記した表1に要約される配列表にて提供する。特定のモノクローナル抗体2.70をさらにサブクローンに付して、それを2.70.2と称する。表1を参照のこと。
【0176】
実施例2
FACSによる膜結合TIM−1タンパク質との抗体反応性
蛍光活性化細胞選別装置(FACS)分析を行って、細胞膜結合のTIM−1抗原に対する抗−TIM−1抗体の特異性を実証し、治療薬または診断薬として用いるための好ましい抗体を同定した。分析を2種の腎臓癌の細胞系、ACHN(ATCC番号:CRL−1611)およびCAKI−2(ATCC番号:HTB−47)について行った。TIM−1抗原を発現しない乳癌の細胞系、BT549を対照として用いた。表8は抗体2.59.2と2.70.2が共にACHNおよびCAKI−2細胞上で発現されるTIM−2抗原と特異的に結合したが、負のBT549細胞上の抗原には結合しなかったことを示す。無関係の抗体、アイソタイプ対照(PK16)に対して標準化された幾何平均比率を基に、ACHN細胞はCAKI−2細胞よりもTIM−1タンパク質のより高い細胞表面発現を有した。
【表10】

【0177】
実施例3
抗−TIM−1モノクローナル抗体の特異性
ELISAアッセイにおいて抗−TIM−1抗体はTIM−1タンパク質に特異的に結合したが、無関係のタンパク質には結合しなかった。4種の抗−TIM−1モノクローナル抗体(1.29、2.56.2、2.59.2および2.45.1)ならびにアイソタイプ対応の対照であるmAb PK16.3についてのTIM−1抗原(V5−HISタグを有する)特異的結合の結果を図1に示す。X軸は上記したオーダーで使用される抗体を表し、Y軸は光学密度である。これら抗体の無関係なタンパク質(これもV5−HISタグを有する)との個々の結合を図2に示す。
【0178】
ELISAプロトコル
96−ウェルの高タンパク質結合ELISAプレート(コーニング・コスター(Corning Costar)カタログ番号3590)に、コーティングバッファー(0.1M炭酸塩、pH9.5)に希釈した5μg/mLの濃度のTIM−1抗原(50μL)を被覆し、4℃で一夜インキュベートした。ついで、該ウェルを200−300μLの0.5%ツィーン−20/PBSで5回洗浄した。次に、プレートを200μLのアッセイ希釈剤(Pharmingen、サンジエゴ、CA、カタログ番号26411E)で少なくとも1時間室温にて遮断した。ついで、抗−TIM−1モノクローナル抗体をアッセイ希釈剤にて7、15、31.3、62.5、125、250、500および1000ng/mLの最終濃度に希釈した。抗−V5−HHRP抗体を1:1000で用い、このELISAの正の対照として、V5含有ペプチドを検出した。ついで、プレートを再び上記したように洗浄した。次に、50μLの各抗体希釈物を適当なウェルに加え、ついで、少なくとも2時間室温でインキュベートした。プレートを再び上記したように洗浄し、ついで50μLの第二抗体(ヤギ抗−ヒト−HRP)を1:1000で加え、室温で1時間インキュベートした。プレートを再び上記したように洗浄し、ついで100μLのTMB基質溶液/ウェル(溶液A+Bが1:1の割合)(Pharmingen、サンジエゴ、CA、カタログ番号2642KK)で発現させた。最後に、50μLの硫酸で反応を停止させ、550nmで矯正を行いながら、プレートを450nmにて読み取った。
【0179】
実施例4
抗体配列
本明細書記載の抗体の構造を解析するために、特定のハイブリドーマの範囲外にある重鎖および軽鎖フラグメントをコード化する遺伝子をクローンした。遺伝子のクローニングおよび配列決定は以下のように行った。ポリ(A)+mRNAをFast−Trackキット(Invitrogen)を用いて免疫化XenoMouse(登録商標)マウスより由来の約2x10ハイブリドーマ細胞から単離した。ランダム・プライム化したcDNAの生成をPCRにより追跡した。ヒトVHまたはヒトVκファミリー特異的可変ドメインのプライマー(Marksら、1991)または万能ヒトVκプライマー、MG−30(CAGGTGCAGCTGGAGCAGTCIGG)(配列番号:83)を、ヒトに特異的なプライマー:
Cγ2定常領域(MG−40d;5’−GCT GAG GGA GTA GAG TCC TGA GGA−3’(配列番号:84));
Cγ1定常領域(HG1;5’ CAC ACC GCG GTC ACA TGG C(配列番号:85));または
Cγ3定常領域(HG3;5’ CTA CTC TAG GGC ACC TGT CC(配列番号:86))またはヒトCκ定常領域(hκP2;前に、Greenら、1994にて記載されている)
と組み合わせて用いた。ハイブリドーマからのヒトMAb誘導の重鎖およびカッパ鎖の転写物の配列を上記したプライマーを用いてポリ(A)RNAから生成されるPCR産生物を直接配列決定することにより得た。また、TAクローニングキット(Invitrogen)を用いてPCR産物をpCRIIにクローニングし、両方の鎖をプリズム色素−ターミネーターシーケシングキットおよびABI377シーケシング装置を用いて配列決定した。すべての配列をMac Vector and Geneworksソフトウェアプログラムを用いて「V BASE配列ディレクトリー」(Tomlinsonら、MRC Centre for Protein Engineering、ケンブリッジ、UK)にアライメントさせることで分析した。
【0180】
上記した表4−7の各々において、Kabat番号付けシステムに従ってCDRドメインを測定した。Kabat、Sequence of Proteins of Immunological Interest(Md、ベテスダ、国立衛生研究所(1987および1991))を参照のこと。
【0181】
実施例5
エピトープビンニング(epitope binning)およびBiaCore(登録商標)アフィニティー測定
エピトープビンニング
本明細書記載のある抗体を、2003年8月21日付け公開の米国特許出願公開番号20030157730「発明の名称:結合特性に基づく抗体の分類」に記載のプロトコルに従って「ビンニング」に付した。
【0182】
一次抗体にカップリングさせるのに、MxhIgGコンジュゲートのビーズを調製した。必要とされる上清の容量を次式:(n+10)x50μL(ここで、nはプレート上のサンプルの総数である)を用いて算定した。濃度が分かっている場合、0.5μg/mLを用いた。ビーズストックをゆっくりとかき混ぜ、ついで上清にてウェル当たり各ビーズが2500の濃度となるまで、または0.5x10個/mLの濃度となるまで希釈し、振盪器上、暗所にて、室温で一夜、濃度が0.5μg/mLと分かっている場合には、2時間、インキュベートした。吸引後、50μLの各ビーズをフィルタープレートの各ウェルに添加し、ついで100μL/ウェルの洗浄バッファーを添加することで一度洗浄して吸引した。抗原および対照を各フィルタープレートに50μL/ウェルにて添加し、ついでカバーして振盪器上、暗所にて1時間インキュベートさせた。洗浄工程に付した後、未知の二次抗体を一次抗体に用いたのと同じ希釈度(または既知であるならば、同じ濃度)を用いて50μL/ウェルにて添加した。ついで、該プレートを振盪器上、暗所、室温で2時間インキュベートし、つづいて洗浄工程に付した。次に、50μL/ウェルの1:500に希釈されたビオチニル化mxhIgGを添加し、振盪器上、暗所、室温にて1時間インキュベートさせた。洗浄工程に付した後、50μL/ウェルのストレプトアビジン−PEを1:1000で加え、振盪器上、暗所、室温で15分間インキュベートさせた。洗浄工程に付した後、各ウェルを80μLのブロッキングバッファーに再び懸濁させ、ルミネックスシステムを用いて読み取った。
【0183】
表9は生産されたモノクローナル抗体が8種のビンに属することを示す。抗体はTIM−1抗原上の少なくとも3種の異なるエピトープに結合した。
【0184】
BiaCore(登録商標)分析を用いる抗−TIM−1mAbアフィニティーの測定
BiaCore(登録商標)分析方法を用いて抗−TIM−1抗体とTIM−1抗原との結合アフィニティーを測定した。この分析を、リサーチグレードCM5センサーチップが備えられている、BiaCore(登録商標)2000バイオセンサーを用いて25℃で行った。通常のアミン結合法を用いてCM5BiaCore(登録商標)チップ上に高密度のヤギαヒト抗体表面を調製した。抗体の上清を100μg/mLのBSAおよび10mg/mLのカルボキシメチルデエキストラン含有のHBS−P泳動バッファー中にて約5μg/mLに希釈した。ついで、2分間の接触時間、および抗体の基線を安定化させるための5分間の洗浄時間を用いて抗体を個々に別個の表面に捕獲させた。
【0185】
TIM−1抗原を292nMで各表面にわたって75秒間注入し、つづいて3分間解離させた。対照となるフローセルからシグナルを引き、TIM−1を注入する直前のバッファー注入の基線のドリフトを減じることにより、二重照合の結合データを得た。各mAbについてのTIM−1結合データを各表面に捕獲されたmAbの量について正規化した。正規化されたドリフト修正の応答も測定した。25℃での抗−TIM−1mAb結合の動態分析結果を以下の表9に列挙する。
【表11】

【0186】
実施例6
エピトープマップ作製
抗−TIM−1mAb2.70.2を、TIM−1抗原配列より設計された重複ペプチドに対する反応性について検定した。アッセイプレートにTIM−1フラグメントペプチドをコートし、対照として無関係のペプチドをコートし、またはペプチドなしで用いた。抗−TIM−1mAb2.70.2をプレートに加え、インキュベートし、洗浄し、ついで結合した抗体を抗−ヒトIg HRPコンジュゲートを用いて検出した。TIM−1に特異的でないヒト抗体、アイソタイプの対照抗体または非抗体を対照に供した。結果は、mAb2.70.2が、TIM−1イムノゲン(配列番号:54)のアミノ酸189−202に対応する、アミノ酸配列:PMPLPRQNHEPVAT(配列番号:87)を有するペプチドと特異的に反応することを示した。
【0187】
mAb2.70.2の特異性を以下のペプチドに対して検定することでさらに限定した:
A)PMPLPRQNHEPVAT(配列番号:87)
B)PMPLPRQNHEPV(配列番号:88)
C)PMPLPRQNHE(配列番号:89)
D)PMPLPRQN(配列番号:90)
E)PMPLPR(配列番号:91)
F)PLPRQNHEPVAT(配列番号:92)
G)PRQNHEPVAT(配列番号:93)
H)QNHEPVAT(配列番号:94)
I)HEPVAT(配列番号:95)
【0188】
結果は、mAb2.70.2がペプチドA、B、CおよびFに特異的に結合することを示し、それは抗体エピトープをPLPRNHE(配列番号:96)に制限するものである。
【0189】
表10に示されるように、エピトープの各アミノ酸残基がアラニンで置換されている合成ペプチドを造り、mAb2.70.2との反応性について検定した。この実験において、第3のプロリンおよびアスパラギン残基がmAb2.70.2との結合に臨界的であると決定された。さらには、付加的なNまたはC末端残基を除去したペプチドを検定することで、mAb2.70.2との結合が最小エピトープ:LPRQNH(配列番号:97)により保持されていることが示された。
【表12】

【0190】
実施例7
正常および腫瘍組織におけるTIM−1発現の免疫組織化学(IHC)分析 正常および腫瘍組織種におけるTIM−1発現の免疫組織化学(IHC)分析を当該分野にて既知の手法を用いて行った。十分にビオチニル化したヒト抗−TIM−1抗体2.59.2、2.16.1および2.45.1を分析した。ストレプトアビジン−HRPを検出するのに使用した。
【0191】
簡単に言えば、組織を一般的技法を用いてパラフィンを除去する操作に付し、ついで熱誘発のエピトープ回復プロセスを用いて処理して組織サンプル中の抗原エピトープを露呈させた。セクションを10%正常ヤギ血清と一緒に10分間インキュベートした。正常なヤギ血清溶液を排出し、拭き取って、過剰な溶液を除去した。セクションを5μg/mLのビオチニル化した抗−TIM−1mAbと一緒に25℃で30分間インキュベートし、PBSで徹底的に洗浄した。ストレプトアビジン−HRPコンジュゲートと一緒に10分間インキュベートした後、ジアミノベンジジン(DAB)の溶液をそのセクションに塗布し、免疫活性を可視化させた。アイソタイプ対照の場合、ビオチニル化した抗−TIM−1mAbの代わりに、セクションを5μg/mLのビオチニル化したアイソタイプ適合の負の対照のmAbと一緒に25℃で30分間インキュベートした。IHC実験の結果を表11および12に要約する。
【0192】
組織種を0−3のスケールで等級分けし、1+の評点は染色がアイソタイプの対照である無関係の抗体で染色される対照の組織にて観察される染色よりも上であることを示す。腎臓腫瘍および膵臓腫瘍からの対応する組織学的種を図3(AおよびB)に示す。これらの腎臓および膵臓腫瘍に加えて、頭部および頚部癌、卵巣癌、胃癌、黒色腫、リンパ腫、前立腺癌、肝臓癌、乳癌、肺癌、膀胱癌、直腸癌、食道癌、および脳腫瘍、ならびに対応する正常な組織を抗−TIM−1mAb2.59.2で染色させた。抗−TIM−1mAb2.59.2で染色させた場合、全体として腎臓癌組織サンプルおよび膵臓癌組織サンプルが高度に陽性であった。正常な組織では染色は認められなかった。これらの結果は、TIM−1がこれら組織の癌のマーカーであり、癌を正常な組織と区別し、かつインビボでのTIM−1発現細胞を標的とするために抗−TIM−1mAbを用い得ることを示す。
表11
抗−TIM−1mAb2.59.2で検出されるTIM−1タンパク質の腎臓腫瘍の発現における免疫組織学
【表13−1】

【表13−2】

表12
抗−TIM−1mAb2.59.2での正常なヒト組織免疫学
【表14−1】

【表14−2】

【0193】
実施例8
抗体介在性毒素殺傷
当該技術分野に記載のクローン形成(clonegenic)アッセイを用いて、一次抗体が、サポニン毒素と結合した二次抗体試薬と組み合わせて用いたときに、癌細胞死を誘導できるか否かを決定した。Kohls and Lappi,Biotechniques,28 (1):162−5(2000)参照。
【0194】
アッセイ プロトコル
ACHNおよびBT549細胞を、平底組織培養プレートに1ウェル当たり3000個の細胞密度で播種した。2日目または細胞が集密度〜25%に達したときに、100ng/ウェル 二次mAb−毒素(ヤギ抗ヒトIgG−サポリン;Advanced Targeting Systems;HUM−ZAP;カタログ番号IT−22)を添加した。次に、正の対照抗EGFR抗体、mAb2.7.2、mAb2.59.2、またはアイソタイプ対照mAbを、各ウェルに所望の濃度(典型的には、1から500ng/mL)で添加した。5日目に、細胞をトリプシン処理し、150mmディッシュに移して、37℃でインキュベーションした。プレートを毎日調べた。10〜12日目に、全プレートをギムザ染色し、プレート上のコロニーをカウントした。プレーティング効率を、150mmプレートに移す前の細胞数を、最終的に形成されたコロニー数と比較して、決定した。
【0195】
抗原陽性ACHNおよび抗原陰性BT549細胞株における生存率を、図4および図5にそれぞれ示す。本研究において、細胞毒性化学療法試薬5フルオロウラシル(5−FU)を正の対照として用い、これはほぼ完全な殺傷を誘導したが、サポリン結合ヤギ抗ヒト二次抗体単独では効果がなかった。両細胞株により発現されるEGF受容体に対して生成されたモノクローナル抗体(NeoMarkers MS−269−PABX)を用いて、一次抗体および二次抗体−サポニン結合体特異的殺傷を決定した。結果は、両細胞株が100ng/mLにおいてEGFR mAb介在性毒素殺傷の影響を受けやすいことを示している。同じ用量において、抗TIM−1 mAb2.59.2および抗TIM−1 mAb2.70.2は共に90%より多くのACHN細胞死を誘導し、一方BT549細胞死は0%であった。
【0196】
抗体毒素結合体介在性殺傷:クローン形成アッセイ
CAKI−1およびBT549細胞を、平底組織培養プレートに1ウェル当たり3000個の細胞密度で播種した。2日目または細胞が集密度〜25%に達したときに、種々の濃度(典型的には、1から1000ng/ml)の、抗EGFR、抗TIM−1 mAb2.7.2、抗TIM−1 mAb2.59.2、またはアイソタイプ対照mAbを含む非結合およびアウリスタチン(Auristatin)E(AE)結合mAbを、細胞に添加した。これらの抗体それぞれをAEと結合させた。両細胞株により発現されるEGF受容体に対して生成されたモノクローナル抗体(NeoMarkers MS−269−PABX)を正の対照として用い、これはAE結合抗体により介在させる特異的殺傷を示した。5日目に、細胞をトリプシン処理し、150mm組織培養ディッシュに移して、37℃でインキュベーションした。プレートを毎日調べた。10〜12日目に、全プレートをギムザ染色し、プレート上のコロニーをカウントした。プレーティング効率を、細胞を150mmプレートに移す前にカウントし、次に、最終的に形成されたコロニー数と比較して、決定した。
【0197】
抗原陽性CAKI−1および抗原陰性BT549細胞株における生存率を、図6および図7にそれぞれ示す。
【0198】
結果は、非結合およびAE結合アイソタイプ対照mAbは、CAKI−1およびBT549細胞両方の成長に影響しないことを示している。しかしながら、両細胞株は、用量に依存してAE−EGFR mAb介在性毒素殺傷の影響を受けやすかった。最大用量において、両方の抗TIM−1 mAb(2.59.2および2.70.2)が、それらの非結合相当物と比較して、CAKI−1細胞死を90%より多く誘導した。応答は用量依存性であった。同じ用量範囲において、抗TIM−1 mAb2.59.2および2.70.2共に、BT549細胞の生存に影響しなかった。
【0199】
実施例9
ヒト腫瘍異種移植成長遅延アッセイ
腫瘍成長阻害モデルを標準的試験方法に従い用いた。Geran et al.,Cancer Chemother.Rep.3:1−104(1972)参照。胸腺欠損ヌードマウス(nu/nu)に、生存ホスト由来の腫瘍細胞または腫瘍フラグメントのいずれかを移植する。具体的には、腎臓癌腫(CaKi−1)または卵巣癌腫(OVCAR)の腫瘍フラグメントを用いる。次に、これらの動物を抗TIM−1抗体免疫毒素結合体、例えば、mAb2.70.2AE結合体を用いて、体重当たり1から20mg/kgの範囲の用量で、1週間に2回、2週間処置した。被検動物の腫瘍体積を評価し、無処置対照腫瘍と比較し、これにより腫瘍成長遅延を決定する。
【0200】
体積が100mmに達したら、動物を無作為化し、1ケージ当たり5個体の群に個々に識別する。対象のタンパク質または抗体を、通常の経路(腹腔内、皮下、静脈内、または筋肉内)を介して2週間投与する。1週間に2回、動物を、側径器を用いて腫瘍の大きさについて評価する。個々の動物の体重を、投薬期間を通じて毎日、そしてその後は1週間に2回記録する。腫瘍体積を、式:腫瘍体積(mm)=(全長×幅×高さ)×0.536を用いて決定する。処置群の体積決定値を、無処置腫瘍担持対照群と比較する。処置腫瘍が特定の体積に達するまでの時間差を、500、1000、1500、および2000mmについて計算する。体重を、無処置腫瘍担持対照群と比較したときの変化について評価する。データは、時間に対してプロットした体積における腫瘍成長として報告する。各実験群の体重もグラフの形でプロットする。
【0201】
結果は、処置がマウスに十分に耐容されることを示している。抗TIM−1 mAB AE結合体を用いた処置は、確立されたCaKi−1およびOVCAR腫瘍の腫瘍成長を阻害する。
【0202】
実施例10
抗TIM−1抗体を用いた腎臓癌腫の処置
腎臓癌腫の処置の必要な患者に、細胞毒性化学療法剤または放射線療法剤と結合した抗TIM−1抗体を静脈注射する。患者の経過をモニターし、抗TIM−1抗体を、腎臓癌腫の成長を阻害するために、必要に応じてさらに投与する。かかる処置後、患者の癌腫レベルは低減される。
【0203】
実施例11
CD4+細胞上でのTIM−1タンパク質発現のFACS分析
単核細胞を、PBS中に1:1希釈したヒト血液から、フィコール上での20分間のスピンにより単離した。単核細胞を、1000rpmにてPBS−MgおよびCaを用いて2回洗浄し、Miltenyiバッファー(MiltenyiBiotec Inc., Auburn,CA);PBS、0.5% BSA、5mM EDTAに約10細胞/mLで再懸濁した。CD4 Miltenyiビーズを10細胞当たり20μL添加し、15分間氷上でインキュベーションした。細胞を、10倍の過剰量のMiltenyiバッファーを用いて洗浄した。陽性選択カラム(タイプ VS+)(Miltenyi BiotecInc., Auburn, CA)を、Miltenyiバッファー3mLを用いて洗浄した。ペレット化した細胞を、Miltenyiバッファー1mL当たり10細胞数で再懸濁し、洗浄したVSカラムにアプライした。次に、カラムをMiltenyiバッファー3mLを用いて3回洗浄した。この後、VSカラムを磁場から取り出し、CD4+細胞を、カラムからMiltenyiバッファー5mLを用いて溶出した。単離したCD4+リンパ球をペレット化し、添加剤(非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、メルカプトエタノール、グルタミン、ペニシリン、およびストレプトマイシン)をプラスした5% FCS DMEMに10細胞/mLにて再懸濁した。1×10個の新たに単離した休止期CD4+T細胞を、フローサイトメトリーチューブに移し、2mL/チューブ PBS、1% BSA、および0.05% NaN含有FACS染色バッファー(FSB)を用いて洗浄した。細胞をスピンダウンし、上清を除去した。細胞を、FSB中20% ヤギ血清を用いて、30分間氷上でブロッキングした。細胞を上述の通り洗浄し、PBS(200μL)中の10μg/mL 一次ヒト抗TIM−1 mAbまたは対照PK16.3 mAbと共に、45分間氷上でインキュベーションし、次に洗浄した。二次ヤギ抗ヒトPE結合抗体を1:50希釈で添加し、45分間氷上暗所に放置し、洗浄し、1% ホルムアルデヒド含有PBS 500μLに再懸濁し、フローサイトメトリー分析を行うまで4℃に保った。
【0204】
FACS分析を行い、ヒトおよびマウス休止期CD4+T細胞、ならびにヒト活性化およびヒト分極化(polarized)CD4+T細胞上のTIM−1タンパク質発現を、5種類の抗TIM−1モノクローナル抗体(2.59.2、1.29、2.70.2、2.56.2、2.45.1)を用いて検出し、決定した。これらの分析は、新たに単離した休止期ヒトCD4+T細胞はTIM−1を発現していないが、主要分画である分極化ヒトTh2およびTh1細胞はTIM−1を発現していることを示している。
【0205】
5種類の抗TIM−1モノクローナル抗体を用いたヒトCD4+Th2細胞上のTIM−1タンパク質発現のFACS分析を、表13に示す。実験を左側の列に記載し、標識抗体を1番上の行に沿って特定する。データは蛍光強度の幾何平均値として報告する。
【0206】
表13
ヒトCD4+Th2細胞上のTIM−1タンパク質発現のFACS分析
【表15】

【0207】
表14は、5日間の過程にわたり、T細胞の連続刺激がTIM−1発現の増大(抗TIM−1 mAb2.70.2により測定し、対照PK16.3抗体と比較したもの)を生じることを示している。さらに、基質メタロプロテアーゼ阻害剤(MMPI)の添加は、TIM−1発現を計れる程度には増大しなかった。このことは、受容体がこれらの実験条件下でT細胞上に存在しないことを示している。従って、TIM−1タンパク質の発現および特異的抗体結合は、活性化Th1およびTh2細胞に特異的であり、言い換えると、炎症応答、特に喘息の特徴である。
【0208】
表14
TIM−1を発現している活性化T細胞の割合
【表16】

【0209】
実施例12
サイトカインアッセイ
活性化Th1およびTh2細胞によるIL−4、IL−5、IL−10、IL−13、およびIFNγ産生レベルを、抗TIM−1抗体で処理した培養上清において、標準的ELISAプロトコルを用いて測定した。抗TIM−1抗体で処理したTh1またはTh2細胞によるサイトカイン産生を、対照PK16.3抗体で処理したTh1またはTh2細胞と比較した。さらに、次の試料を内部対照として並行して実施した:i)抗CD3処理Th1またはTh2細胞(同時刺激がないので、サイトカイン産生はないと予測される)、ii)抗CD3/抗CD28刺激Th1またはTh2細胞(検出可能なサイトカイン産生を示すと予測される)、およびiii)無処理Th1またはTh2細胞。CD4+T細胞を上記の実施例に記載の通り単離した。次に、単離CD4+リンパ球をスピンダウンし、添加剤(非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、メルカプトエタノール、グルタミン、ペニシリン、およびストレプトマイシン)をプラスした5% FCS DMEMに10細胞/mLにて再懸濁した。ファルコン(Falcon)の6ウェル非組織培養処理プレートを、抗CD3(2μg/mL)および抗CD28(10μg/mL)(ダルベッコPBS中計600μL)を用いて一晩4℃で事前コートした。プレートをPBSを用いて洗浄し、CD4+リンパ球を、Th2培地:添加剤、および5ng/mL IL−2、5ng/mL IL−4、および5μg/mL 抗IFNγをプラスした10% FCS DMEMに500,000細胞/mLにて懸濁し、次に、細胞を4〜6日間、37℃かつ5% CO中、5μg/mL TIM−1タンパク質認識mAbまたはアイソタイプ一致負の対照mAb PK16.3の存在下で刺激した。
【0210】
別の一連の実験において、CD4+リンパ球を、500,000細胞/mLにて、Th1培地:添加剤、および5ng/mL IL−2、5ng/mL IL−12、5μg/mL 抗IL−4をプラスした10% FCS DMEMに懸濁し、4〜6日間、37℃かつ5% COにて、5μg/mL TIM−1またはアイソタイプ一致対照mAb PK16.3の存在下で刺激した。細胞をDMEM中で2回洗浄し、5μg/mL TIM−1 mAbまたは対照PK16.3 mAbの存在下、添加剤、および2ng/mL IL−2をプラスした10% FCS DMEMに懸濁(500,000個/mL)し、4〜6日間、37℃かつ5% COにて培養した(休止させた)。活性化と休止期の過程を、細胞のFAS介在性アポトーシスを防ぐために抗CD95L(抗FASリガンド)を添加して、上述の通りに少なくともさらに1回繰り返させた。一晩、500ng/mL 抗CD3 mAbおよび5μg/mL 共刺激分子B7H2(B7相同体2)で事前にコートしたファルコン96ウェル非組織培養処理プレートを洗浄し、TIM−1 mAb 100μLで処理したTh1またはTh2(200,000個)を1ウェル毎に添加した。3日間培養した後、上清を取り出し、IL−4、Il−5、IL−10、IL−13、およびIFNγレベルをELISA(Pharmingen,San Diego,CA or R&D Systems,Minneapolis,MN)により決定した。
【0211】
以下に示す通り、抗TIM−1 mAbは、Th1またはTh2細胞による試験したサイトカインの放出を有意に阻害した(図8〜17参照)。サイトカイン産生の阻害が有意(p=.02〜.008)である結果を、棒グラフ上アスタリスクを用いてマークする。表15および16は図8〜17の棒グラフを要約したものである。
【0212】
表15
2人の独立したヒトドナーにおける抗TIM−1抗体を用いたCD4+Th1細胞でのサイトカイン阻害
サイトカイン産生の有意な阻害を示す実験を、アスタリスクを用いてマークする:p=0.01から0.05*;p=0.005から0.009**;p=0.001から0.004***
【表17】

【0213】
表16
2人の独立したヒトドナーにおける抗TIM−1抗体を用いたCD4+Th2細胞でのサイトカイン阻害
サイトカイン産生の有意な阻害を示す実験を、アスタリスクを用いてマークする:p=0.01から0.05*;p=0.005から0.009**;p=0.001から0.004***
【表18】

【0214】
異なるドナーを用いた複数の実験から得られたTh2サイトカイン阻害の要約を、表17において提供する。各実験では、2人の独立したドナー由来の全血試料から単離した精製CD4+細胞を用いた。サイトカイン産生は、対照PK16.3 mAbを用いて検出したサイトカイン産生の割合として報告する。各実験において用いた抗TIM−1 mAbを、一番下の列に沿って特定する。有意なサイトカイン阻害を報告する結果に、以下の表17において下線を付す。「ND」の使用は実験が行われなかったことを示している。これらの結果は、ドナー依存性の変動を表すが、mAb2.59.2および1.29が、1種またはそれ以上のTh2サイトカインを再現可能にブロックすることを示している。
【0215】
表17
5人の独立したヒトドナー群における抗TIM−1 mAb 2.59.2および1.29を用いたサイトカイン阻害の要約
対照PK16.3抗体を用いて観察されるものの50%より高い阻害を報告する実験の結果に下線を付している。
【表19】

【0216】
実施例13
抗TIM−1 scFvの構築、発現、および精製
mAb2.70のVLおよびVHドメインを用いて、scFv構造物を生成した。抗TIM−1 scFvの配列を当該技術分野に既知の方法により合成した。
【0217】
抗TIM−1 scFvのヌクレオチド配列は次の通りである:
【表20】

【0218】
成熟抗TIM−1 scFvのアミノ酸配列は次の通りである:
【表21】

【0219】
合成したDNAを、E.coliでの細胞質周辺発現のためのpET−20b(+)発現ベクターに挿入する。細胞を成長させ、細胞質周辺タンパク質を標準的プロトコルを用いて調製した。抗TIM−1 scFvの精製を、抗FLAG M2アフィニティーカラムを用いて、製造元の指示に従い行った。成熟タンパク質の予測分子量は、30222.4ダルトンである。この精製scFvを、後述のアッセイにおいて用い、生物学的活性について試験する。scFv構造物は、シグナルペプチド(SP)、mAb2.70由来VL(VL1)、25アミノ酸リンカー205Cベースのリンカー(L4)、mAb2.70由来VH(VH1)、およびTag(この場合、FLAG tag)を含む。他のSP、リンカー、およびtag配列を利用して、本明細書記載の抗TIM−1 scFv抗体と同じ活性が得られることは、当業者にとって明らかであろう。
【0220】
実施例14
抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv1の構築、発現および精製
【0221】
この治療用タンパク質の構築の基本式は下記の通りである:
SP1−VL1−L1−VH1−L2−VH2−L3−VL2−Tag
【0222】
シグナルペプチドSP1は、医学研究審議会(MRC)センター、英国ケンブリッジ大学タンパク質工学からのIgGカッパシグナルペプチドVKIII A27と同じである。
【0223】
また、他のシグナルペプチドを用いることもでき、これは当業者には明らかだろう。このタンパク質は、哺乳類の細胞から発現されるように設計される。成熟開裂タンパク質の推定分子量は、54833.3ダルトンである。L1は、(Gly4Ser)3リンカーに対応し、リンカー2(L2)は、短リンカー配列:GGGGSに対応する。L3は18個のアミノ酸のリンカーである。VH2は、Genbankからの抗−CD3可変重鎖ドメイン(寄託番号CAE85148)に対応し、VL1は、Genbankからの抗−CD3可変軽鎖ドメイン(寄託番号CAE85148)に対応する。この構築に用いられるタグは、Hisタグであり、この新規タンパク質の精製および検出を容易にする。標準的なプロトコルを用いて、このHisタグ化タンパク質を発現し、精製し、下記するプロトコルで活性および腫瘍細胞殺滅に関して試験する。
【0224】
抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv1を含む成分のアミノ酸および核酸ナンバリングは下記の通りである:
SP:−20〜−1aa;−60〜−1nt
VL1:1〜113aa;1〜339nt
L1:114〜128aa;340〜384nt
VH1:129〜251aa;385〜753nt
L2:252〜256aa;754〜768nt
VH2:257〜375aa;769〜1125nt
L3:376〜393aa;1126〜1179nt
VL2:394〜499aa;1180〜1497nt
Tag:500〜505aa;1498〜1515nt
【0225】
抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv1のヌクレオチド配列は下記の通りである:
【表22】

【0226】
成熟抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv1のタンパク質配列は下記の通りである。
【表23】

【0227】
実施例15
抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv2の構築、発現および精製
【0228】
この治療用タンパク質の構築の基本式は下記の通りである:
SP1−VL1−L4−VH1−L2−VH2−L4−VL2−Tag
【0229】
シグナルペプチドSP1は、医学研究審議会(MRC)センター、英国ケンブリッジ大学タンパク質工学からのIgGカッパシグナルペプチドVKIII A27である。より多くの情報は、mrc−cpe.cam.ac.uk/ALIGNMENTS.php?menu=901を参照のこと。また、他のシグナルペプチドおよびリンカーを用いて、さらなる生物学的に活性な二重特異性単鎖抗体を得ることができる。また、実施例に記載のタンパク質は、哺乳類の細胞から発現されるように設計され、抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv1と、上記基本式に示されているような異なるリンカー(最初に記載されているL4)を用いること、および最初の例のように、Hisタグの代わりにFlagタグを用いること以外は同じである。
【0230】
成熟開裂タンパク質の推定分子量は、58070.0ダルトンである。この構築に用いられるタグは、FLAGタグであり、この新規タンパク質の精製および検出を容易にする。標準的なプロトコルを用いて、この分泌タグ化タンパク質を発現し、精製し、下記するプロトコルで活性および腫瘍細胞殺滅に関して試験する。
【0231】
抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv2を含む成分のアミノ酸および核酸ナンバリングは下記の通りである:
SP:−20〜−1aa;−60〜−1nt
VL1:1〜113aa;1〜339nt
L1:114〜138aa;340〜414nt
VH1:139〜261aa;415〜783nt
L2:262〜266aa;784〜798nt
VH2:267〜385aa;799〜1155nt
L3:386〜410aa;1156〜1230nt
VL2:411〜516aa;1231〜1548nt
Tag:517〜524aa;1549〜1572nt
【0232】
抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv2のヌクレオチド配列は下記の通りである:
【表24】

【0233】
成熟抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv2のタンパク質配列は下記の通りである:
【表25】

【0234】
実施例16
抗−TIM−1 scFv種生物学的活性
ELISA分析:
抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv1およびscFv2抗体が特異的に抗原に結合しているかどうかを確認するために、ELISA分析を行う。1μg/mlの特異抗原(TIM−1抗原(CG57008−02)を、炭酸/重炭酸緩衝液(約pH9.2〜9.4)において一晩ELISAプレートに結合させる。プレートを、Pharmingen San Diego, CA)から購入した希アッセイ緩衝液でブロックし、種々の濃度の抗−TIM−1 scFv1二重特異性抗体を室温で1時間添加する。プレートを、PBS中0.01%のTween20で洗浄し、ついで、HRP−コンジュゲートmAbを、アッセイ希釈液中の6−Hisタグ(Invitrogen,Carlsbad,CA)またはFLAGペプチドタグ(Sigma,St.Louis,MO)のいずれかに室温で60分間添加する。TMB基質(Pharmingen)で着色し、HSOで反応を停止させる。プレートを、A450nmで読み取り、O.D.値を、タンパク結合の指標として得る。
【0235】
FACS分析
抗−TIM−1および抗−CD3二重特異性scFv1およびscFv2抗体の結合を、抗−TIM−1ヒトmAbsにより認識される抗原を発現する細胞に対する抗−TIM−1 scFv抗体と同様に、FACS分析により試験する。細胞(例えばACHN)をPBSで洗浄し、1%のBSAまたは1%のFBSを添加した氷冷PBSからなるFACS緩衝液中に再懸濁する。ついで、再懸濁した細胞を氷上で、種々の濃度の二重特異性抗体と30分間インキュベートする。細胞を洗浄して非結合抗体を除去する。結合した抗体を、二重特異性抗体配列に関して人工的に作られた6−hisタグまたはFLAG−タグを特異的に認識する第2の標識化mAb(フィコエリトリンまたはFITC標識化)の結合により測定する。細胞を洗浄し、抗−タグmAbの結合をFACS分析により分析する。抗−タグmAbを加えた二重特異性mAbの結合を、抗−タグmAb単独の結合と比較する。
【0236】
細胞毒性分析
二重特異性抗体が、正常または腫瘍細胞を発現するTIM−1に対する標的T細胞に二重特異的でありうることにより定義されるような機能的活性を有するかどうかを確認するために、二重特異性抗体を、細胞促成アッセイで試験する。T細胞を、密度分離培地での血液の遠心分離由来の低密度細胞(特定密度1.077)から得る。T細胞は、末梢血単核細胞フラクション(また、B細胞、NK細胞および単球も含有する)からの異種混合物に用いることができ、または、MACS分離およびネガティブまたはポジティブセレクションを用いて低密度細胞から精製することができる。アッセイにおける血液由来のT細胞の殺滅されたものは、インビトロで、PHA、サイトカイン、活性化モノクローナル抗体または他のポリクローナルT細胞活性化の刺激剤により刺激された細胞よりも劣った細胞溶性活性を有するだろう。したがって、これらのアクチベーターは、機能的アッセイにおけるT細胞の活性化をさらに引き上げるのに用いられるだろう。多種の細胞毒性アッセイを行うことができる。細胞毒性アッセイにより、溶解での細胞代謝物の天然産生物、例えばLDHの放出を測定する。他のアッセイは、細胞を、種々の薬剤、例えば、放射性クロム(51Cr)、DELFIA BATDA、CSFEまたは同様の標識化剤で標識化することおよびこの薬剤により結合された生存細胞の放出または変化に基づく。
【0237】
DELFIA細胞毒性アッセイ(PerkinElmer Life および Analytical Sciences,Inc.Boston,MA)は、細胞媒介細胞毒性研究に用いられるべき非放射性法を提供する。この方法は、蛍光増感リガンドのアセトキシメチルエステルを細胞にローディングすることに基づく。リガンドが細胞膜を突き抜けた後、エステル結合は、細胞内で加水分解され、親水性リガンドを形成し、これはもはや膜を通り抜けない。細胞融解の後、放出されたリガンドは、ユーロピウム溶液に導かれ、蛍光性キレートを形成する。測定したシグナルを、融解した細胞の量と直接的に関連する。標的細胞を再懸濁して、濃度を2×10/mlとする。10μlのDELFIA BATDAを、2mlの標的細胞と一緒に、業者の指示に従ってチューブに混合した。種々の濃度のT細胞を、96ウェルU底プレート中の固定濃度の標識化標的細胞(5000細胞/ウェル)に加え、37℃で少なくとも2時間インキュベートする。プレートを約200gで回転させ、ついで、20μlの上清を吸引し、ついで、別個のプレート中のユーロピウム溶液(200μl)に加えた。プレートを室温で15分間インキュベートし、ついで、SAFIRE(Tecan,Maennedorf,Switzerland)で、業者の指示に従って分析する。試験ウェルにおけるシグナルを、100%溶解ウェル(T細胞の代わりに10%の溶解緩衝液)および培地単独での細胞(自然放出)におけるシグナルと比較する。%特異的溶解を、下記式
%特異的溶解=(試験−自然放出)/100%溶解×100
で計算する。
【0238】
scFv構築物のBIAcore動力学的分析
scFv構築物(モノマー、ならびに二重特異性、TIM−1に結合する少なくとも1つのscFvを含有する)に対するアフィニティーを決定するための動力学的測定を、本発明の全ての抗体に関して前に記載した方法を用いて測定する。TIM−1に対するscFv−含有抗体タンパク質アフィニティーは、mAbのアフィニティー1.70の10倍の範囲内、すなわち、0.271〜27.1nMであると予想される。
【0239】
実施例17
抗−TIM−1 mAbのヒト卵巣癌細胞の増殖を阻害する能力
いくつかの完全なヒトモノクローナル抗体クローンを、上記した免疫法から単離し、これらのOVCAR−5(ヒト卵巣癌)細胞を阻害するそれらの能力を、5−ブロモ−2−デオキシウリジン(BrdU)取り込みアッセイ(国際特許の出願番号 WO01/25433号に記載されている)を用いて分析した。
【0240】
BrdUアッセイにおいて、OVCAR−5癌細胞(Manassas,VA)を、10%のウシ胎児血清または10%のウシ血清をそれぞれ補足した、ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)で培養した。卵巣癌細胞株を、10%のCO/空気中37℃で集密的に増殖した。ついで、細胞を、DMEM中で24時間飢餓させた。富栄養条件培地を18時間加えた(10μL/100μLの培養物)。ついで、BrdU(10μL)を加え、5時間細胞とインキュベートした。BrdU取り込みを、業者の指示(Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN)に従って比色免疫学的アッセイによりアッセイした。
【0241】
種々のヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体の中和能力を評価した。図18A〜17Tに与えられた結果を、本明細書に記載の種々のヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体への曝露でのOVCAR5細胞中のBrdU取り込みのレベルを比較するのを補助するため棒グラフ形態で提供する。ポジティブおよびネガティブ制御のように、OVCAR5細胞を、完全培地(完全)または制限血清含有培地(飢餓)のいずれかの存在下で培養する。加えて、モノクローナル抗体PK16.3を、ヒトIgG抗体の無関連特異性を示すネガティブ処理対照として含ませた。本明細書に記載のヒト抗−TIM−1モノクローナル抗体を、種々の濃度を利用する対照操作と比較しながら、種々の投与量(10〜1000ng/mL)で用いた。
【0242】
実施例18
抗体コンジュゲート研究
付加的な抗体コンジュゲート研究を、抗−TIM−1−特異性mABs(1.29および2.56.2)およびPK16.3を含む無関連抗体とコンジュゲートした特物毒性サポリンを用いて行った(図19A〜19C)。付加的な負の対照は、抗−TIM−1−特異性mAB2.56.2および無関連抗体PK16.3を毒素無しで含む(図19D)。4つのガン細胞株、3つの腎臓癌細胞株(ACHN、CAKIおよび786−O)および1つの乳癌細胞株(BT549)を、サポリン−抗体コンジュゲートまたは抗体単独で72時間処理し、この後、BrdUを24時間にわたって増殖を観察するために加えた。結果を、腎臓癌細胞株に関して図19A〜20Cに、乳癌細胞株に関して図19Dに記載する。3つすべての腎臓癌細胞株は、BrdU取り込みを適度に減少させることにより明らかなように、サポリン−TIM−1−特異抗体コンジュゲートでの処理に感受性であった。同様の細胞株のコンジュゲートした無関係抗体での処理は、抗体依存性抗増殖効果を示す効果がわずかしかないか、あるいは全くなかった。BT549細胞株を用いて行った同様の研究により、TIM−1−特異性抗体2.56.2が、単独またはサポリンとコンジュゲートした場合に抗増殖効果を示さないことが示された。これらの研究の負の対照は、毒性効果が無くよく作用すると考えられる。
【0243】
実施例19
配列
下記は、TIM−1に対するモノクローナル抗体に関連する配列である。アミノ酸配列に関して、太字はフレームワーク領域を示し、下線はCDR領域を示し、斜体は定常領域を示す。
【0244】
抗−TIM−1 mABs1.29
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表26】

【0245】
配列番号1によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表27】

【0246】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表28】

【0247】
配列番号3によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表29】

【0248】
抗−TIM−1 mAb1.37
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表30】

【0249】
配列番号5によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表31】

【0250】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表32】

【0251】
配列番号7によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表33】

【0252】
抗−TIM−1 mAb2.16
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表34】

【0253】
配列番号9によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表35】

【0254】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表36】

【0255】
配列番号11によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表37】

【0256】
抗−TIM−1 mAb2.17
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表38】

【0257】
配列番号13によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表39】

【0258】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表40】

【0259】
配列番号15によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表41】

【0260】
抗−TIM−1 mAb2.24
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表42】

【0261】
配列番号17によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表43】

【0262】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表44】

【0263】
配列番号19によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表45】

【0264】
抗−TIM−1 mAb2.45
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表46】

【0265】
配列番号21によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表47】

【0266】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表48】

【0267】
配列番号23によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表49】

【0268】
抗−TIM−1 mAb2.54
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表50】

【0269】
配列番号25によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表51】

【0270】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表52】

【0271】
配列番号27によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表53】

【0272】
抗−TIM−1 mAb2.56
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表54】

【0273】
配列番号29によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表55】

【0274】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表56】

【0275】
配列番号31によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表57】

【0276】
抗−TIM−1 mAb2.59
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表58】

【0277】
配列番号33によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表59】

【0278】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表60】

【0279】
配列番号35によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表61】

【0280】
抗−TIM−1 mAb2.61
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表62】

【0281】
配列番号37によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表63】

【0282】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表64】

【0283】
配列番号39によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表65】

【0284】
抗−TIM−1 mAb2.70
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表66】

【0285】
配列番号41によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表67】

【0286】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表68】

【0287】
配列番号43によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表69】

【0288】
抗−TIM−1 mAb2.70.2
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表70】

【0289】
配列番号136によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表71】

【0290】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表72】

【0291】
配列番号138によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表73】

【0292】
抗−TIM−1 mAb2.76
重鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表74】

【0293】
配列番号45によりコードされる、重鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表75】

【0294】
軽鎖可変領域および定常領域の一部のヌクレオチド配列:
【表76】

【0295】
配列番号47によりコードされる、軽鎖可変領域および定常領域の一部のアミノ酸配列:
【表77】

【0296】
本発明の具体的態様
(1) T細胞、免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン1(TIM−1)に特異的に結合する単離されたヒト抗体またはその結合フラグメント、
(2) TIM−1が配列番号:54に示されるアミノ酸配列を含む、(1)の抗体、
(3) モノクローナル抗体である、(1)の抗体、
(4) 結合フラグメントがFab、Fab’、F(ab’)またはFvフラグメントを含む、(1)の抗体、
(5) 単鎖抗体である、(1)の抗体、
(6) 医薬上許容される担体または希釈剤と組み合わされている、(1)の抗体または結合フラグメント、
(7) 治療剤にコンジュゲートしている、(1)の抗体または結合フラグメント、
(8) 治療剤が毒素である、(7)の抗体または結合フラグメント、
(9) 治療剤が放射性同位元素である、(7)の抗体または結合フラグメント、
(10) 治療剤が化学療法剤である、(7)の抗体または結合フラグメント、
(11) TIM−1に結合する抗体と結合競合する、ヒト抗体またはその結合フラグメント、
(12) (1)の抗体またはその結合フラグメントを産生する、ハイブリドーマ細胞株、
(13) (1)の抗体または結合フラグメントをコードする遺伝子を含む、形質転換細胞、
(14) チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、(13)の形質転換細胞、
(15) TIM−1の発現に関連する細胞増殖の阻害方法であって、TIM−1を発現する細胞を、T細胞、免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン1(TIM−1)に特異的に結合する有効量のヒト抗体またはその結合フラグメントで処理することを含む方法、
(16) インビボで行われる、(15)の方法、
(17) 哺乳類において行われる、(16)の方法、
(18) 哺乳類がヒトである、(17)の方法、
(19) 哺乳類が上皮細胞増殖を含む癌にかかっている、(17)の方法、
(20) 肺、直腸、胃、腎臓、前立腺または卵巣癌である、(19)の方法、
(21) 腎臓癌の有効な治療法であって、腎臓癌治療の必要がある動物を同定し、該動物へ治療上有効量の(1)の抗体を投与することを含む方法、
(22) 卵巣癌の有効な治療法であって、卵巣癌治療の必要がある動物を同定し、該動物へ治療上有効量の(1)の抗体を投与することを含む方法、
(23) 容器、容器に入っている組成物、および組成物をTIM−1の過剰発現に特徴づけられる癌の治療に用いることができるということを示す添付文書またはラベルを含む製品であって、該組成物が(1)の抗体または結合フラグメントを含む、製品、
(24) 肺、直腸、胃、腎臓、前立腺または卵巣癌である、(23)の製品、
(25) 肺、直腸、胃、腎臓、前立腺または卵巣癌をスクリーニングするために、哺乳類の組織または細胞中のTIM−1を検出するためのアッセイキットであって、TIM−1が肺、直腸、胃、腎臓、前立腺または卵巣癌によって発現される抗原であり、抗原タンパク質に結合する抗体および抗原抗体反応を示すための手段を含むキット、
(26) モノクローナル抗体である、(25)のアッセイキット、
(27) 抗原に結合する抗体が標識されている、(25)のアッセイキット、
(28) 非標識一次抗体である(25)のアッセイキット、および反応が抗免疫グロブリンである標識二次抗体を含むことを示すための方法、
(29) 抗原に結合する抗体が、蛍光色素、酵素、放射性核種および放射線不透過性物質から成る群から選択されるマーカーで標識されている、(27)のアッセイキット、
(30) 二次抗体が、蛍光色素、酵素、放射性核種および放射線不透過性物質から成る群から選択されるマーカーで標識されている、(28)のアッセイキット、
(31) 配列番号:87のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する、単離されたヒト抗体またはその結合フラグメント、
(32) TIM−1に結合し、またVH3−33生殖系列の遺伝子でコードされる、単離されたヒト抗体、および
(33) 抗体が10−7ないし10−14Mの間のKdでTIM−1に結合する、(32)の単離されたヒト抗体。
【0297】
引用文献の組み入れ
本明細書に記載の、特許、特許出願、文書、テキストブック等を含むすべての引用文献およびそれに記載された引用文献は、ここに出典明示することにより全体を本明細書に組み入れる。
【0298】
均等物
本発明の好ましい具体例を説明し、記載するが、本発明は当業者により適切であるように改変および修飾されることが可能であり、したがって、示した正確な用語にだけでなく、種々の使用法および条件に本発明を適合させるために生じうる変化および変法にもまた限定されるものではないことは理解されるべきである。したがって、かかる変化および変法も均等物の全範囲内であり、したがって、特許請求の範囲内に含まれる。
【0299】
本発明およびその製造および使用方法およびプロセスは、これらに関連するすべての当業者が同じように製造および利用できるように、完全、明確、簡潔および正確な用語で記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞、免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン1(TIM−1)に特異的に結合する単離されたヒト抗体またはその結合フラグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図18D】
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【図18E】
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【図18F】
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【図18G】
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【図18H】
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【図18I】
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【図18J】
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【図18K】
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【図18L】
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【図18M】
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【図18N】
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【図18O】
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【図18P】
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【図18Q】
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【図18R】
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【図18S】
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【図18T】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【公開番号】特開2012−1561(P2012−1561A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203584(P2011−203584)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【分割の表示】特願2006−507388(P2006−507388)の分割
【原出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【出願人】(501343271)アブジェニックス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】