T7プロモーターをベースとする発現システム
【課題】pETシステムの提供にかかわらず、更に改善されたT7プロモーター駆動性発現システムが必要である。
【解決手段】T7プロモーター配列の下流に1個のオペレーター配列を有し、T7プロモーター配列の上流に他のオペレーター配列を有しているT7プロモーター駆動性タンパク質発現システムを提供する。
【解決手段】T7プロモーター配列の下流に1個のオペレーター配列を有し、T7プロモーター配列の上流に他のオペレーター配列を有しているT7プロモーター駆動性タンパク質発現システムを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリペプチドの組み換え合成のための発現システム、特にT7プロモーター駆動性タンパク質発現システム(T7 promoter-driven protein expression system)に関する。また本発明はかかるシステムでの使用のための発現ベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの哺乳類、酵母および細菌を宿主とする発現システムは公知である(Methods in Enzymology(1990),185,Editor:D.V.Goeddel)。特に関心が持たれているものはT7RNAポリメラーゼを使用するものである。適当なプロモーターに結合する任意のDNAをT7RNAポリメラーゼおよびT7様ファージからの同等のRNAポリメラーゼが選択的に転写する能力を、所望のRNAのインビトロおよび細胞内の両者での非常に特異的かつ十分な生産のための基礎として使用することができる。
【0003】
US−A−4952496号(Studier)はT7RNAポリメラーゼを発現させ、これを使用して特定のタンパク質を産生できる、全てを宿主であるE.coli細胞内で実施する方法を開示している。関心のある特定のタンパク質はワクチンのための抗体、ホルモン、酵素または医薬もしくは商業的価値のある他のタンパク質である。潜在的にはファージのRNAポリメラーゼの選択性および効率はかかる産生を非常に効率よくすることができる。更にこれらのファージのRNAポリメラーゼの唯一の特性は、該ポリメラーゼが他のRNAポリメラーゼによって非効率的にのみ発現するかまたは全く発現しない遺伝子を効率的に発現させることを可能にすることができる。これらのファージのポリメラーゼは、宿主細胞のRNAポリメラーゼを選択的に阻害できるという更なる利点を有しており、その結果、細胞中での全ての転写は前記のファージのRNAポリメラーゼによるものになる。
【0004】
前記のものに基づく発現システムは現在市販されている。これはNovagen Inc.597 Science Drive(マディソン、WI53711)から入手できるpETシステムである。このシステムはE.coli中でのクローニングおよび組み換えタンパク質の発現のために適当である。Moffat et al,J.Mol.Biol.,1986,189,113−130;Rosenberg et al,Gene,56,125−135;およびStudier et al,Meth.Enzymol.1990,185,60−89参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US−A−4952496号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Methods in Enzymology(1990),185,Editor:D.V.Goeddel
【非特許文献2】Moffat et al,J.Mol.Biol.,1986,189,113−130
【非特許文献3】Rosenberg et al,Gene,56,125−135
【非特許文献4】Studier et al,Meth.Enzymol.1990,185,60−89
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、pETシステムの提供にかかわらず、更に改善されたT7プロモーター駆動性発現システムが必要である。
【0008】
入手できるT7に基づく発現システムと比較した場合に発現の改善された制御およびタンパク質発現の改善されたレベルを提供するようなシステムを考案している。インデューサーの不在下の基礎的発現を現在入手できるT7に基づく発現システムによっては不可能であるクローニングおよび毒性遺伝子産物の発現を可能にするレベルに低下させ、誘導された生産性に影響を与えないT7プロモーター駆動性の発現システムを提供している。更に本願発明は広範な発現レベルにわたりインデューサー濃度に依存する方法で異種タンパク質の生産の制御を可能にし、結果として最適な発現レベルを特定することができる。異種タンパク質の発現および生産におよぶ制御のレベルは現在入手できるT7に基づく発現システムによっては不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って第1の態様においては、T7プロモーター配列の下流に1個のオペレーター配列を有し、T7プロモーター配列の上流に他のオペレーター配列を有しているT7プロモーター駆動性タンパク質発現システムを提供することである。
【0010】
有利には他のオペレーターが本来のlacオペレーター(lacO)配列であることが見出されている。または完全なパリンドロームオペレーター(ppop)配列であることが見出されている。より有利にはT7プロモーター配列の下流の本来の(lac)オペレーター配列をppop配列によって交換し、二連のppopオペレーターを提供する。
【0011】
T7プロモーター駆動性発現システムは適当には以下のように構築される:関連のターゲット遺伝子はバクテリオファージ転写および翻訳シグナルのコントロール下でプラスミド中にクローニングされる。最初にターゲット遺伝子を、T7RNAポリメラーゼ遺伝子を有さない宿主、例えばE.coliDH5α、HB101を使用してクローニングする。得られたらプラスミドをT7RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを有する発現宿主中に、例えばlacUV5のコントロール下に移行する。他の適当なプロモーターはlac、trp、tac、trcおよびバクテリオファージλプロモーター、例えばpLおよびpRである。次いで発現をインデューサー、例えばIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)、ラクトースもしくはメリビオースの添加によって誘導する。他のインデューサーを使用してもよく、これらは他の文献により詳細に記載されている。The Operon,eds MillerおよびReznikoff(1978)を参照のこと。インデューサーは個々にまたは組み合わせて使用してもよい。
【0012】
有利にはプラスミドは以下の1種以上を含む:選択可能な抗生物質耐性配列、cer安定エレメント(cer stability element)、およびマルチクローニングサイト。適当なプラスミドの構築は当業者に公知である。1つ以上の前記の特徴を有している有利なプラスミドの例は添付図中のプラスミドのpZT7#3系列によって図解されている。欧州特許出願第0502637号(ICI)中に開示された(pICI0042として)pZEN0042ベクターから出発して構築された。本願発明の3シリーズのプラスミドはpZT7#3.0、pZT7#3.1、pZT7#3.2およびpZT7#3.3である。本願発明の特に有利なプラスミドはpZT7#3.3プラスミドである。
【0013】
例えばlacUVのコントロール下のT7RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを有利には宿主細胞にλバクテリオファージ構築物、Novagenから入手できるλDE3によって導入する。T7RNAポリメラーゼ発現カセットを、該遺伝子(CE6, US-A-4952496参照)を有する特定化されたバクテリオファージλ形質導入ファージでの感染によって細胞に移行した。
【0014】
和合性のプラスミド(compatible plasmid)、例えばpLysSおよびpLysE(Novagenから入手できる)を発現宿主中に導入してもよい。これらのプラスミドは天然かつ選択的なT7RNAポリメラーゼのインヒビターであるT7リゾチームをコードし、従って未誘導細胞中でターゲット遺伝子を転写する能力を減少させる。pLysS宿主は少量のT7リゾチームを産生するが、一方pLysE宿主はより多くの酵素を産生し、従ってよりストリンジェントなコントロールを提供する。
【0015】
任意の適当な適合した原核または真核の宿主細胞を使用してよい。最も通常に使用される原核宿主はE.coliの株であるが、他の原核宿主、例えばSalmonella typhimurium、Serratia marsescens、Bacillus subtilisまたはPseudomonas aeruginosaを使用してもよい。哺乳類(例えばチャイニーズハムスターの卵巣細胞)または他の真核の宿主細胞、例えば酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae, Pichia pastoris, Hansenula polymorpha, Schizosaccharomyces pombeまたはKluyveromyces lactis)、糸状菌、植物、昆虫、両生類もしくは卵巣の種類の宿主細胞を使用してもよい。特定の宿主生物は細菌、有利にはE.coli(例えばK12またはB株)である。
【0016】
使用される宿主生物によって任意の適当な増殖培地を使用してもよい。E.coliのためには、本発明の実施であるが、天然増殖培地(complex growth media)、例えばLブロスまたは最少増殖培地、例えばM9(以下に記載する)に制限されない。
【0017】
本発明を以下の実施例、表および図により詳細に説明するが、実施例は本発明を制限するものではない:
表1は実施例で使用されるh−TNFαを発現するプラスミドの詳細である。
【0018】
表2〜4は実施例および関連の実施で使用されるベクターの詳細である。
【0019】
表5はM9最少増殖培地の組成の詳細である。
【0020】
表6は種々の増殖培地でのh−TNFα発現の詳細である。
【0021】
表7は実施例で使用されるベクターに関する宿主/形質転換効率の詳細である。
【0022】
表8はpZT7#3.3:DNaseIベクターに関連するDNaseI生産性の詳細である。
【0023】
表9〜11は実施例で使用されるLARd1(aa1275−1623)、ZAP70(4−260)6HISおよびMCP−1{9−76}に関する蓄積レベル(accumulation level)の詳細である。
【0024】
表12はpZT7#3.3および中間ベクター(intermediate vector)の構築で使用されるオリゴヌクレオチドの配列を示す。
【0025】
表13はhTNFαの核酸配列を示す。
【0026】
表14はZAP70(4−260)6HISの核酸配列を示す。
【0027】
表15はLARd1(aa1275−1623)の核酸配列を示す。
【0028】
表16はウシ膵臓のDNaseIの核酸配列を示す。
【0029】
表17はヒトのカルボキシペプチダーゼB(ミュータントD253>K)6His cmycの配列を示す。
【0030】
表18は種々のE.coliの発現株を示す。
【0031】
表19はヒトの単球走化性タンパク質MCP−{9−76}の配列を示す。
【0032】
表20はA5B7F(ab′)2の核酸配列を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1はpZEN0042プラスミドを示す。
【図2】図2はpZEN0042からのpZEN0042#aの構築を示す。
【図3】図3はpZEN0042#bプラスミドを示す。
【図4】図4はpZEN0042#cプラスミドを示す。
【図5】図5はpZEN0042#dプラスミドを示す。
【図6】図6はpZEN0042#eプラスミドを示す。
【図7】図7はpZT7#2.0プラスミドを示す。
【図8】図8はpZT7#2.1プラスミドを示す。
【図9】図9は本発明のpZT7#3.0プラスミドを示す。
【図10】図10は本発明のpZT7#3.2プラスミドを示す。
【図11】図11は本発明のpZT7#3.1プラスミドを示す。
【図12】図12は本発明のpZT7#3.3プラスミドを示す。
【図13】図13は種々のIPTG濃度で達成される最大の比生産性を示す。
【図14】図14は種々のIPTG濃度で達成される最大のhTNFαの蓄積レベルを示す。
【図15】図15は種々のIPTG濃度で達成される生物学的に活性のCPB[D253K]−6His−cmyc(活性の物質(μg)/培地(L)として)の蓄積を示す。
【図16】図16は種々のIPTG濃度で達成される生物学的に活性なA5B7(Fab′)2/A5B7(Fab′)(活性物質(mg)/培地(L)として)のE.coliのペリプラズム中での蓄積を示す。
【0034】
特定の記載:
1.pZT7系列のベクターの作成
pZT7#3.3の作成のための出発ベクターはpZEN0042であり、これは自社の欧州特許出願の公開第0502637号に記載されている。簡単には、該ベクターはpAT53由来のバックグラウンドにおいてプラスミドRP4からのtetA/tetR誘導性テトラサイクリン耐性配列およびプラスミドpKS492からのcer安定配列(stability sequence)を有している(図1)。
【0035】
1(i)lacIのクローニング
lacリプレッサーをコードする配列およびlacIプロモーターを有するlacIの配列をE.coli株MSD101(W3110)から調製したゲノムDNAを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって作成した。NsiI制限エンドヌクレアーゼ部位を配列の両末端にPCRプライマー#1および#2(表12)中に組み込むことによって作成した。得られたPCR産物をNsiIで消化し、PstI部位でpZEN0042中にクローニングした(PstIおよびNsiIは両部位の破壊を惹起する適合性の粘着末端(compatible cohesive end)を有している)。両方向のlacIが得られた。反時計回り方向で正しい配列lacIを有するクローンが同定された(=pZEN0042#a)(図2)。
【0036】
1(ii)ポリリンカーのクローニング
新規のマルチクローニングサイトをpZEN0042#a中に作成し、引き続きのT7発現カセットのクローニングを可能にした。これはEcoRIおよびBamHIでのpZEN0042#aの消化ならびにアニーリングした合成オリゴマー#3および#4(表12)によるライゲーションによって達成された。
【0037】
得られたベクターpZEN0042#bのポリリンカーは以下の制限部位を有していた:EcoRI−NdeI−Kpn−ScaI−SpeI−BamHI−XhoI−PstI−HindIII−BglII。
【0038】
pZEN0042#bは図3に示されている。
【0039】
2.T7発現エレメントのクローニング
2(i)T7ターミネーター
T7gene10からのT7ターミネーター配列をアニーリングした合成オリゴマー#5および#6(表12)としてpZEN0042#bのHindIIIおよびBglII部位の間にクローニングしてpZEN0042#c(図4)を作成した。
【0040】
2(ii)tRNAarg5
tRNAarg5転写リポーター配列(Lopez, et al, (1994), NAR 22, 1186-1193, and NAR 22, 2434)をアニーリングした合成オリゴマー#7および#8(表12)としてpZEN0042#c中のXhoIおよびPstI部位の間にクローニングしてpZEN0042#d(図5)を作成した。
【0041】
2(iii)上流のターミネーター
tetA配列は認識可能なターミネーターを有さないので、T4ターミネーター配列をEcoRI部位の上流で(EcoRI部位の下流にクローニングされるべき)T7発現カセット中にクローニングしてtetA(または任意の他の同定されていないプロモーター配列)からの潜在的な転写における読み通しを減少させた。T4ターミネーター配列および付加的なNcoI部位を有するアニーリングした合成オリゴマー#9および#10(表12)をpZEN0042#d中のStuIおよびEcoRI部位の間にクローニングし、pZEN0042#e(図6)を作成した。。
【0042】
2(vi)T7lacプロモーター
T7プロモーターおよびlacオペレーター配列をアニーリングした合成オリゴヌクレオチド#11および#12(表12)としてpZEN0042#eのEcoRIおよびNdeI部位の間にクローニングしてpZT7#2.0(図7)を作成した。T7プロモーターおよびlacオペレーターの配置はpET11aと同じである。
【0043】
2(v)完全なパリンドロームオペレーターを有するT7プロモーター
完全なパリンドロームlacオペレーター配列を導入しているT7gene10プロモーター(Simons et al(1984), PNAS 81, 1624-1628)をアニーリングした合成オリゴマー#13および#14(表12)としてpZEN0042#eのEcoRIおよびNdeI部位の間にクローニングしてpZT7#2.1(図8)を作成した。
【0044】
2(vi)上流のlacオペレーター
第2の本来のlacオペレーター配列をpT7#2.0中のlacオペレーター配列の94塩基対上流でアニーリングした合成オリゴマー#15および#16(表12)としてpZT7#2.0のNcoIおよびEcoRI部位の間にクローニングしてpZT7#3.0(図9)を作成した。
【0045】
同じlacオペレーター配列を類似にpZT7#2.1中にクローニングしてpZT7#3.2(図10)を作成した。
【0046】
2(vii)上流の完全なパリンドロームlacオペレーター
完全なパリンドロームオペレーター配列を、アニーリングした合成オリゴマー#17および#18(表12)をpZT7#2.0のNcoIおよびEcoRI部位の間でクローニングすることによってpZT7#2.0のlacオペレーター配列の94塩基対上流に配置してpZT7#3.1(図11)を作成した。
【0047】
同一の完全なパリンドロームオペレーター配列を類似にpZT7#2.1中にクローニングしてpZT7#3.3(図12)を作成した。
【0048】
3.試験構築物の作成
pET11a
T7発現ベクターpET11aをNovagen Incから入手し、pZT7ベクターの試験のための対照群として使用した。
【0049】
3(i)hTNFα
ヒトTNFαのコーディング配列を有するNdeI−BamHIのDNA配列をベクターpZT7#2.0、pZT7#2.1、pZT7#3.0、pZT7#3.1、pZT7#3.2、pZT7#3.3およびpET11a中のNdeIおよびBamHI部位の間にクローニングした。クローニングした配列は表13に示している。
【0050】
3(ii)ZAP70(4−260)6HIS
C末端のヘキサヒスチジンタグ配列を有するヒトタンパク質のチロシンキナーゼZAP70のアミノ酸4〜260をコードしているDNA断片をNdeI−BglII断片としてpET11aおよびpZT7#3.3のNdeIおよびBamHIクローニングサイトの間にサブクローニングした。クローニングした配列は表14中に示した。
【0051】
3(iii)LARd1(aa1275−1623)
白血球抗原関連タンパク質のチロシンホスファターゼドメイン1(aa1275−1613)をNdeI−BglII断片としてpET11aおよびpZT7#3.3(NdeI−BamHI)中にサブクローニングした。クローニングした配列は表15に示している。
【0052】
3(iv)ヒトカルボキシペプチダーゼB(ミュータントD253>K)6His cmyc
C末端のヘキサヒスチジンcmycタグ配列を有するミュータントのヒトカルボキシペプチダーゼ(D253>K)のコーディング配列をエルウィニア カロトボーラ pel B分泌のリーダー配列の下流に配置し、pZT7#3.3およびpET11a中にクローニングした。クローニングした配列は表17に示している。
【0053】
3(v)ウシ膵臓DNaseI
ウシ膵臓DNaseIののコーディング配列をNdeI−BglII断片としてNdeIおよびBamHIの間でpZT7#3.3中にクローニングした。クローニングした配列は表16に示している。
【0054】
この配列はpET11a中に突然変異なしにクローニングできない。
【0055】
しかしながらウシ膵臓DNaseI配列は以前にpET11(pET11aではない)中にクローニングされている(Doherty et al (1993) Gene, 136, pp337-340)。この構築物において、リボソーム結合部位を有する5′の非翻訳領域は、pT7#3.3中にあるようなT7gene10からよりもむしろ本来のウシ膵臓DNaseI配列から得られる。この構築物pAD10はpT7#3.3のためのコントロールとして使用した。
【0056】
3(vi)ヒト単球走化性タンパク質MCP−1{aa9−76}
ヒト単球走化性タンパク質(aa9−76)のコーディング配列をpET11aのNdeIおよびBamHI部位の間でクローニングした。クローニングした配列は表19に示している。
【0057】
3(vii)A5B7 F(ab′)2
A5B7 F(ab′)2のコーディング配列をエルウィニア カロトボーラのpelB分泌リーダー配列の下流に配置し、pZT7#3.3およびpET11aのNdeIおよびBamHI部位の間にクローニングした。
【0058】
4.T7発現のための宿主株の作成
λDE3溶原化キット(λDE3 lysogenisation kit)をNovagen Incから入手し、説明書に従って使用して表18に列記したE.coli株からT7発現宿主を作成した。プラスミドpLysSおよびpLysEならびにE.coli発現宿主BL21およびBL21(DE3)はNovagen Incから入手した。
【0059】
例1
E.coli株BL21(DE3)、BL21(DE3)pLysS、BL21(DE3)pLysEを、ヒトTNFαを発現するプラスミド(以下に記載、表1)で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、グリセロール保存液中で−80℃で保持した。宿主株BL21(DE3)、BL21(DE3)pLysSおよびBL21(DE3)pLysEはこの分野で広範に使用されており、一般の機関、例えばNovagen Inc(マディソン、USA)で容易に入手できる。BL21(DE3)の遺伝子型はF-、ompT、hsdSB(rB- mB-)、gal、dcm、(DE3)である。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
各組み換え株のアリコートを保存液から取り出し、Lアガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)および/またはクロラムフェニコール(1μg/ml)を場合により供給して選択可能にする)上にストリークし、37℃で16時間インキュベートした。次いで各培養のアリコートを滅菌PBS(ホスフェートで緩衝させた生理食塩水溶液;8g/Lの塩化ナトリウム、0.2g/Lの塩化カリウム、0.2g/Lのオルトリン酸二水素カリウム、1.15g/Lの塩化マグネシウム)10ml中に再懸濁し、これを使用して、テトラサイクリン(10μg/ml)またはアンピシリン(50μg/ml)および/またはクロラムフェニコール(1μg/ml)を場合により供給したL−ブロス(10g/Lのトリプトン(Difco)、5g/Lの酵母エキス(Difco)、5g/Lの塩化ナトリウム;pH7.2)75mlを含有する2個の250mlエルレンマイヤーフラスコそれぞれにOD550=0.1で播種した。次いでフラスコを往復運動型振盪機(reciprocating shaker)上で37℃でインキュベートした。増殖をOD550=0.4〜0.5まで観察した。この時点で培養を、インデューサーのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)を最終濃度1mMで各組み換え株に関して各(2個の)セットからの1個のフラスコに添加することによって誘導した。第2のフラスコは誘導しなかった。各組み換え株のための両者のフラスコを前記の条件で更に24時間インキュベートした。誘導された培養中でのhTNFαの蓄積レベルを、試料の細菌のSDS−PAGEの後にクーマシーブルー染色したゲルのレーザーデンシトメトリースキャニング(laser densitometory scanning)によって測定した。誘導していない培養中のhTNFαの基礎的蓄積レベルは試料の細菌のSDS−PAGEの後のウエスタンブロット分析(抗hTNFα抗原を使用する)によって測定した。次いで細胞あたりのhTNFα分子における蓄積レベルを、この分野においてよく確立されているようにブロット("未知のもの"と一緒に公知のスタンダードを使用して準備した)のレーザーデンシトメトリースキャニングによって測定した。結果を以下にまとめる(表2)。
【0063】
【表3】
(1):本文中でより完全に記載した
(2):TMP=全微生物タンパク質
(3):モル/細胞=細胞あたりのhTNFα分子;検出限界:250分子/細胞
(4):nd=検出されず(ウエスタンブロット)
【0064】
前に明確に示したデータは、異種タンパク質の基礎的発現レベルは最近に確立された技術(単一の本来のlacプロモーター:ベクターpET11a/pZT7#2.0)を使用すると依然として高いということを示している。基礎的発現はpET11a/pZT7#2.0発現システムで、T7リゾチームを発現するプラスミド(pLysS/pLysE)で同時形質転換した宿主株の使用によって低下させることができる。しかしながら誘導される生産性は激しく損なわれる。
【0065】
意想外にも、2個の本来のlacオペレーター配列は、基礎的発現レベルを大きく低下させるT7プロモーター駆動性システムと一緒にはたらくが、誘導された生産性に影響を及ぼさない。
【0066】
より意想外にも、2個の完全なパリンドロームオペレーターは、誘導された生産性を損なうことなく基礎的発現レベルを低下させる際に最も良好に機能する。T7プロモーター駆動性システムを有する単一の完全なパリンドロームオペレーターの使用が基礎的発現の低下に重大な改善をもたらすことは予想され得なかった。本来のppopのlacオペレーターの他の組合せ、例えばpZT7#3.2およびpZT7#3.1を使用してもよい。
【0067】
例2
E.coli株MSD623(DE3)、MSD624(DE3)、MSD68(DE3)、MSD101(DE3)およびMSD522(DE3)−表18参照−を、ヒトTNFαを発現するpET11a:TNF、pZT7#2.0:TNF、pZT7#2.1:TNF、pZT7#3.0:TNF、pZT7#3.1:TNF、pZT7#3.2:TNFおよびpZT7#3.3:TNF(既に記載した(表1))によって別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、グリセロール保存液中に−80℃で保持した。hTNFαの基礎的発現/蓄積および誘導した発現/蓄積を例1に記載のように厳密に測定した。hTNFαの発現/蓄積の基礎的(誘導していない)レベルおよびIPTGで誘導したレベルを以下に表3および表4にそれぞれまとめる。例1に記載した宿主株BL21(DE3)を使用して得られたデータは参考のために含んでいる。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
*検出限界:250分子/細胞
【表6】
(*):TMP=全微生物タンパク質
【0070】
前記のデータは、pZT7#3.0、pZT7#3.1、pZT7#3.2およびpZT7#3.3が誘導した生産性に悪影響を与えずに全ての試験した宿主株の使用で基礎的発現レベルを(pET11a/pZT7#2.0に比して)低下させることを示している。pZT7#3.3は全ての試験した宿主株より一貫して優れている。
【0071】
例3
−80℃のグリセロール保存液からのE.coli株MSD101(DE3)pZen1798(pET11a:TNF)およびMSD101(DE3)pZen1827(pZT7#3.3:TNF)のアリコートをL−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給して選択可能にする)上にストリークし、37℃で16時間インキュベートした。次いで各培養のアリコートを滅菌PBS10ml中に再懸濁し、これを使用して、75mlの:
1.L−ブロス(グルコース不含)
2.L−ブロス+1g/Lのグルコース
3.2g/Lグルコースを含有するM9最少培地
4.4g/Lのグリセロールを含有するM9最少培地
を含有する250mlエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で播種した。
【0072】
前記で使用した全ての増殖培地に場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を供給した。M9最少培地の組成は以下の表5に挙げている。L−ブロス培地の組成は以前に記載した。
【0073】
【表7】
(*最終pHをpH7に調整した)
【0074】
次いでフラスコを往復運動型振盪機上で37℃で24時間インキュベートした。誘導していない培養中でのhTNFαの基礎的蓄積レベル(以下の表6でまとめた)を前記のように厳密に測定した。
【0075】
【表8】
*検出限界:250分子/細胞
【0076】
この例はベクターpZT7#3.3の広範な有用性を証明するものである。pET11aは増殖培地に依存した発現の抑制を示すが、ベクターpZT7#3.3はそれに著しく反してL−ブロスおよびM9最少増殖培地の両者において厳しい抑制を示す。このことは意想外であり、完全に予想外であった。L−ブロスおよびM9最少増殖培地は微生物の増殖培地の2種の基本的な形態である:天然(L−ブロス)および最少塩(M9)。
【0077】
例4
クローニングおよび毒性タンパク質の大量生産のためのベクターpZT7#3.3の有用性はこの例において組み換えウシ膵臓デオキシリボヌクレアーゼ(DNaseI)を使用して例示している。宿主株BL21(発現しない宿主のバックグラウンド)およびBL21(DE3)(発現するバックグラウンド)を以下のように形質転換した。CaCl2法(Sambrook, Fritsch and Maniatis, 1989, "Molecular Cloning", 2nd Edition, Cold Spring Harbour Press, New York)を使用して調製したコンピテント細胞を、"ヒートショック"法(Sambrook, Fritsch and Maniatis, 1989, "Molecular Cloning", 2nd Edition, Cold Spring Harbour Press, New York)を使用して、pZen2006(pAD10、前記のDNaseIを発現するpET11誘導体)、pZen1980(pZT7#3.3:DNaseI)およびhTNFα(コントロールとして使用した:比較的毒性のない遺伝子産物)を発現するpZen1827(pZT7#3.3:TNF)によってプラスミドDNA濃度の範囲で形質転換した。各宿主−プラスミドの組合せの形質転換効率をこの分野でよく記載されるように測定した。結果は以下に表7でまとめた。
【0078】
【表9】
【0079】
【表10】
*3種の別々の試験からのデータ(n=3)
【0080】
前記のデータはpZT7#3.3を使用して達成された基礎的発現の厳密な制御を例示している。この結果は、pZT7#3.3:DNaseIが抑制され、細胞の生存度に悪影響を及ぼさずにT7のRNAポリメラーゼを発現する細胞(BL21(DE3))への移行をサポートすることを示している。達成された形質転換効率はBL21(T7のRNAポリメラーゼを有さない)中への形質転換によって得られるものか、または比較的毒性のない遺伝子産物pZT7#3.3:hTNFαを有するものに相当する。DNaseIの発現が漏出性であったならば細胞は生存していない。このことはpET11aおよびpAD10によって得られた結果と対照的である。組み換え細胞の増殖時に異種タンパク質が有することがある有害な作用および生産性の問題を回避するためにどのようにpZT7#3.3を使用できるかは当業者には公知である。
【0081】
BL21(DE3)pZen1980(pZT7#3.3:DNaseI)を使用するDNaseIの発現/蓄積を前記の試験からBL21(DE3)pZen1980形質転換体の単コロニーを採り、これを使用してL−ブロス(1g/Lのグルコース、10μg/mlのテトラサイクリン)75mlを含有する単一のエルレンマイヤーフラスコに播種することによって測定した。このフラスコを往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートした。次いでこの培養を使用し、新しいL−ブロス(1g/Lのグルコース、10μg/mlのテトラサイクリン)にOD550=0.1で播種した。次いでフラスコを増殖がOD550=0.5になるまで往復運動型振盪機上で37℃でインキュベートした。次いで培養をIPTG(0.5mM最終)の添加によって誘導し、前記の条件下で更に4時間インキュベートし続けた。細胞を回収し、細胞のペレットを−20℃で保管した。細胞のペレットを解凍し、リシス緩衝液(10mMトリス;pH7.6、2mMの塩化カルシウム、100μMのベンズアミジンおよび100μMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF))中に再懸濁(10%w/v(湿重量))した。次いで細胞の懸濁液を、光学検鏡法による懸濁液の検定による細胞の破壊が>95%を示すまで音波処理(氷上で20〜30秒のバースト)した。細胞の破片を遠心分離(4℃、25000×g、20分)によって除去し、上清でのDNaseI活性を澄明な上清100μlのクニッツ(Kunitz)アッセイ緩衝液(10mMトリス;pH8.0、0.1mMの塩化カルシウム、1mMの塩化マグネシウムおよび50μgの子ウシ胸腺DNA)1mlへの添加によって測定した。1"クニッツ単位"はA260nm0.001/分の増加をもたらすDNaseIの量である。結果は以下に表8でまとめた。
【0082】
【表11】
【0083】
Doherty他(Gene, 1993, 136, pp337-340)は、pAD10によるBL21(DE3)の形質転換によって生存可能な細菌コロニーが得られないことを見出した。このことは実質的に本願の観察(表7に前記)と(データにおける標準偏差を想定すれば)類似している。BL21(DE3)pLysSによっても、Doherty他は、形質転換体は液体培地への移動による生存度が乏しいことを見出した。これと著しく異なって、pZen1980(pZT7#3.3:DNaseI)で形質転換したBL21(DE3)は発現しない宿主バックグラウンドを使用して達成されたものに相当する高い形質転換効率を達成し、更にBL21(DE3)pZen1980形質転換体は液体培養において生存度が高く、継代培養後でさえも生物学的に活性のDNaseIを発現する能力を保持する。
【0084】
例5
−80℃でのグリセロール保存液からのE.coli株MSD101(DE3)pZen1798(pET11a:TNF)およびMSD101(DE3)pZen1827(pZT7#3.3:TNF)をL−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により選択のために供給した)上にストリークし、37℃で16時間インキュベートした。各培養のアリコートを使用して、これをM9最少培地(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給した2g/Lのグルコース)75mlを含有する2つの250mlエルレンマイヤーフラスコそれぞれに播種した。培養を往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートし、これを使用してM9最少培地(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給した2g/Lのグルコース)600mlを含有する各5つの2Lのエルレンマイヤーフラスコに別々にOD550=0.1で播種した。M9最少培地の組成は表5に挙げられている。前記フラスコを往復運動型振盪機上で37℃でインキュベートし、増殖を培養のOD550の測定により経時的に観察した。増殖がOD550=0.5に達した際に、培養を、インデューサーIPTGを各フラスコ(0.25mM、0.075mM、0.05mM、0.025mMおよび0.01mM(最終))に添加することによって誘導した。これを前記の条件下で更に10時間インキュベートし続け、その間に試料を採取し、細菌細胞中の増殖、hTNFαの蓄積および全微生物タンパク質を測定した。hTNFαの蓄積レベルを、この分野でよく知られているように試料の細菌の全体の細胞溶解産物のクーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲルのスキャニングによって測定した。全微生物タンパク質のレベルを、製造者の解説書に従って使用されるBCAタンパク質アッセイ試薬(BCA Protein Assay Reagent)を使用して測定した。バイオマスの蓄積レベルを、この分野で容易に達成されるようにOD550測定からのバイオマスの乾燥重量を計算することによって測定した。hTNFαの比生産性(Qp)(生産されたhTNFα(g)/細胞の乾燥重量(g)/時間)を、この分野でよく達成されているプロトコールを使用して誘導期間の間に各標本点に関して計算した。誘導のために使用される各IPTG濃度で達成されるQp(max)(ピークの比生産性)および最大のhTNFα蓄積レベル(全微生物タンパク質%)を図13および図14にそれぞれまとめた(*TMP=全微生物タンパク質)。
【0085】
これらの結果は、濃度を増加させてIPTGを培地に添加することでpZT7#3.3により用量に依存して発現が誘導されることを示している。しかしながら、pET11aによって発現は非常に低い濃度のインデューサーでさえも殆ど最大のレベルに誘導される。pZT7#3.3の意想外かつ予想できない特性によって当業者が広範な発現レベルにわたり異種タンパク質の生産を制御でき、その結果として最適な発現レベルを特定できることは明らかである。これは例9および例10に例示した。
【0086】
例6
E.coli株BL21(DE3)およびBL21(DE3)pLysSを、LARd1(1275−1613)を発現するプラスミドpZen1911(pET11a:LARd1(1275−1613))で別々に形質転換した。E.coli株MSD460(DE3)およびMSD460(DE3)pLysSを、ZAP70(4−260)−6Hisを発現するプラスミドpZen1914(pET11a:ZAP70(4−260)−6His)で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、−80℃でグリセロール保存液中に保持した。各培養のアリコートを保存液から採り、L−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはアンピシリン(50μg/ml)およびクロラムフェニコール(1μg/ml)を場合により供給して選択可能にした)上にストリークし、37℃で16時間の増殖後に単コロニーを分離した。次いで各培養の単コロニーを、L−ブロス(+1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはアンピシリン(50μg/ml)およびクロラムフェニコール(1μg/ml))75mlを含有する250mlのエルレンマイヤーフラスコ中に別々に播種した。フラスコを往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートした。次いでこれらの各播種した培養(seeder culture)を使用して、これをL−ブロス(1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはアンピシリン(50μg/ml)およびクロラムフェニコール(1μg/ml))75ml含有の250mlのエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で別々に播種した。次いでフラスコを、OD550=0.5に達するまで往復型振盪機上で20℃でインキュベートした。次いで培養をIPTG(LARd1(1275−1613)のためには0.5mMおよびZAP70(4−260)−6Hisのためには2mM)の添加によって誘導し、前記の条件下で更に24時間インキュベートし続けた。LARd1(1275−1613)およびZAP70(4−260)−6Hisの蓄積を、前記の播種した培養およびIPTGで誘導した培養においてこの分野でよく知られているように試料の細菌の全体の細胞分解産物のクーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲルをスキャニングすることによって測定した。結果を以下に表9でまとめた。
【0087】
【表12】
*TMP:全微生物タンパク質
1. クーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲル上では検出されなかった
この例は高い基礎的発現に関するpET11aの乏しい能力を例示している。インデューサーの不在下でのpLysSを使用する基礎的発現の低下は基礎的発現レベルを低下させるが、誘導された生産性に悪影響を及ぼさない。
【0088】
例7
E.coli株BL21(DE3)をMCP−1(9−76)を発現するプラスミドpZen1977(pET11a:MCP−1(9−76))およびpZen1848(pZT7#3.3:MCP−1(9−76))で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、−80℃でグリセロール保存液中に保持した。各培養のアリコートを保存液から採り、L−アガープレート(アンピシリン(50μg/l)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給して選択可能にした)上に別々にストリークし、37℃で16時間増殖した後に単コロニーを分離した。次いで各培養の単コロニーを、L−ブロス(+1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する2つのそれぞれの250mlエルレンマイヤーフラスコ中に播種した。フラスコを往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートした。次いで、これらの培養のそれぞれを使用して、これらをL−ブロス(1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する3つの250mlのエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で播種した。次いでフラスコを、増殖がOD550=0.5に達するまで往復運動型振盪機上で37℃、30℃および20℃でインキュベートした。次いで培養をIPTG(0.25mM最終)の添加により誘導し、前記の条件下で更に5〜24時間インキュベートし続けた。MCP−1(9−76)の蓄積を、この分野でよく知られているように試料の細菌の全体の細胞分解産物のクーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲルをスキャニングすることによって測定した。細胞の細胞質(可溶)およびペレット(不溶)のフラクションにおけるMCP−1(9−76)の分割(partitioning)(可溶性)をこの分野でよく知られているように試料の細菌に音波処理によるリシスを実施することによって測定した。結果を以下に表10でまとめた。
【0089】
【表13】
*TMP=全微生物タンパク質
MCP−1(9−76)の高レベルの可溶性蓄積のためのベクターpZT7#3.3の有用性は前記のデータから明らかである。
【0090】
例8
E.coli株MSD460(DE3)をZAP70(4−260)−6Hisを発現するプラスミドpZen1914(pET11a:ZAP70(4−260)−6His)およびpZen1913(pZT7#3.3:ZAP70(4−260)−6His)で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、−80℃でグリセロール保存液に保持した。各培養のアリコートを保存液から採り、L−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給し選択可能にした)上にストリークし、37℃で16時間増殖させた後に単コロニーを分離した。次いで各培養の単コロニーを、L−ブロス(+1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する2つの250mlのエルレンマイヤーフラスコそれぞれに播種した。フラスコを往復運動型振盪機上で30℃で16時間インキュベートした。次いで、これらの培養のそれぞれを使用して、これをL−ブロス(1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する250mlのエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で播種した。次いでフラスコを、増殖がOD550=0.5に達するまで往復運動型振盪機上で20℃でインキュベートした。次いで培養をIPTG(2mM(最終))の添加により誘導して、前記の条件下で更に24時間インキュベートし続けた。
【0091】
誘導後のZAP70(4−260)−6Hisの蓄積を、この分野でよく知られているように試料の細菌の全体の細胞の分解産物のクーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲルのスキャニングによって測定した。細胞の細胞質(可溶)およびペレット(不溶)のフラクションにおけるZAP70(4−260)−6Hisの分割(可溶性)をこの分野で公知のように試料の細菌に音波処理によるリシスを実施することによって測定した。音波処理によるリシス緩衝液は、試料のプロセス中にZAP70(4−260)−6Hisのタンパク質分解を低下させるためにプロテアーゼインヒビター(1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、1mMのベンズアミジンおよび1mMのヨードアセトアミド)を含んでいた。結果を以下に表11でまとめた。
【0092】
【表14】
*TMP=全微生物タンパク質
ZAP70(4−260)−6Hisの可溶性蓄積のためのベクターpZT7#3.3の有用性を以下の表のデータによって例示する。
【0093】
例9
E.coli株MSD624(DE3)をCPB[D253K]−6His−cmycを発現するプラスミドpZen1953(pET11a:CPB[D253K]−6His−cmyc)およびpZen1954(pZT7#3.3:CPB[D253K]−6His−cmyc)で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、−80℃でグリセロール保存液中に保持した。各培養のアリコートを保存液から採り、L−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給して選択可能にした)上に別々にストリークし、37℃での16時間の増殖後に単コロニーを分離した。次いで各培養の単コロニーを、L−ブロス(+1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する2つの250mlのエルレンマイヤーフラスコそれぞれに播種した。フラスコを往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートした。次いでこれらの培養それぞれを使用して、これを600mlのL−ブロス(1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))を含有する10個の2LのエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で播種した。次いでフラスコを、増殖がOD550=0.5に達するまで往復運動型振盪機上で20℃でインキュベートした。次いで培養をIPTG(IPTG0.001、0.0025、0.005、0.0075、0.01、0.025、0.05、0.075、0.1および0.25mM(最終))の添加によって誘導し、以下の条件下で更に48時間インキュベートし続けた。次いで細胞を回収し(4℃、25000×g、20分)、浸透圧ショック細胞分画(この分野でよく知られているように)を実施し、可溶性のE.coliペリプラズムのフラクションに分割されるタンパク質を含有する細胞フラクションを単離した。可溶性のE.coliペリプラズムの抽出物における生物学的に活性のCPB[D253K]−6His−cmycの蓄積を以下のように基質のヒプリル−L−グルタミンからの馬尿酸の放出の測定によって決定した。
【0094】
細胞不含のペリプラズムの抽出物(125μl)を、25mMのトリス緩衝液(pH7.5)100μl、100mMの塩化亜鉛および0.5mMの基質(ヒプリル−L−グルタミン)2.5μlを含有する試験管に添加した。これを37℃で24時間インキュベートした。反応を、"停止溶液"(40%のメタノール(HPLC純度)、60%の50mMリン酸緩衝液(シグマP8165)、0.2%w/vのトリクロロ酢酸)250μlの添加によって停止させた。混合後に、形成した任意の沈殿物を遠心分離(4℃、16000×g、3分)によって分離した。次いで澄明な上清中の馬尿酸の量をこの分野でよく達成されているようにHPLCを使用して測定した。
【0095】
生物学的に活性なCPB[D253K]−6His−cmycの蓄積を精製した活性な組み換えCPB[D253K]−6His−cmycおよび馬尿酸(シグマH6375)によって作成した検量線を参考に測定した。
【0096】
生物学的に活性なCPB[D253K]−6His−cmycのE.coliのペリプラズム中の蓄積(活性物質(μg)/培養(L))を図15に表した。
【0097】
例10
E.coli株MSD624(DE3)を、A5B7(Fab′)2を発現するプラスミドpZen1999(pET11a:A5B7(Fab′)2)およびpZen1997(pZT7#3.3:A5B7(Fab′2))で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、−80℃でグリセロール保存液中に保持した。各培養のアリコートを保存液から採り、L−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給して選択可能にした)上に別々にストリークし、37℃での16時間の増殖後に単コロニーを分離した。次いで各培養の単コロニーを、L−ブロス(+1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する2つの250mlエルレンマイヤーフラスコそれぞれに播種した。フラスコを往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートした。次いでこれらの培養それぞれを使用して、L−ブロス(1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))600mlを含有する13個の2LのエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で播種した。次いでフラスコをIPTG(IPTG0.005、0.01、0.025、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2および0.25mM(最終))の添加によって誘導し、前記の条件下で更に48時間インキュベートし続けた。次いで細胞を回収(4℃、25000×g、20分)し、浸透圧ショック細胞分画(この分野でよく知られているように)を実施し、可溶性のE.coliペリプラズムのフラクションに分割されるタンパク質を含有する細胞フラクションを単離した。可溶性のE.coliペリプラズムの抽出物における生物学的に活性なA5B7(Fab′)2/A5B7(Fab′)の蓄積をA5B7(Fab′)2/A5B7(Fab′)とヒト腫瘍癌胎児性抗原(CEA)とのELISAアッセイでの結合の測定により評価した。生物学的に活性なA5B7(Fab′)2/A5B7(Fab′)のE.coliのペリプラズムにおける蓄積(活性物質(mg)/培養(L))を図16に表した。
【0098】
両者の(前記の例9および例10に記載の)タンパク質によって、pZT7#3.3はpET11aよりもE.coliのペリプラズム中に高レベルの活性産物を蓄積する。図15〜16に示されるデータは、pZT7#3.3の制御特性を組み換えタンパク質の収量を最適化するためにどのように活用できるかを示している。これらの例は分泌のためのpTZ7#3.3ベクターの使用を例示している。しかしながら、pZT7#3.3の発現特性の基礎的レベルの発現/調節が異種の膜タンパク質の発現および蓄積をどのように促進するかを当業者は容易に理解することができる。
【0099】
【表15】
【0100】
【表16】
【0101】
【表17】
【0102】
【表18】
【0103】
【表19】
【0104】
【表20】
【0105】
【表21】
【0106】
【表22】
【0107】
【表23】
【0108】
【表24】
【0109】
【表25】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリペプチドの組み換え合成のための発現システム、特にT7プロモーター駆動性タンパク質発現システム(T7 promoter-driven protein expression system)に関する。また本発明はかかるシステムでの使用のための発現ベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの哺乳類、酵母および細菌を宿主とする発現システムは公知である(Methods in Enzymology(1990),185,Editor:D.V.Goeddel)。特に関心が持たれているものはT7RNAポリメラーゼを使用するものである。適当なプロモーターに結合する任意のDNAをT7RNAポリメラーゼおよびT7様ファージからの同等のRNAポリメラーゼが選択的に転写する能力を、所望のRNAのインビトロおよび細胞内の両者での非常に特異的かつ十分な生産のための基礎として使用することができる。
【0003】
US−A−4952496号(Studier)はT7RNAポリメラーゼを発現させ、これを使用して特定のタンパク質を産生できる、全てを宿主であるE.coli細胞内で実施する方法を開示している。関心のある特定のタンパク質はワクチンのための抗体、ホルモン、酵素または医薬もしくは商業的価値のある他のタンパク質である。潜在的にはファージのRNAポリメラーゼの選択性および効率はかかる産生を非常に効率よくすることができる。更にこれらのファージのRNAポリメラーゼの唯一の特性は、該ポリメラーゼが他のRNAポリメラーゼによって非効率的にのみ発現するかまたは全く発現しない遺伝子を効率的に発現させることを可能にすることができる。これらのファージのポリメラーゼは、宿主細胞のRNAポリメラーゼを選択的に阻害できるという更なる利点を有しており、その結果、細胞中での全ての転写は前記のファージのRNAポリメラーゼによるものになる。
【0004】
前記のものに基づく発現システムは現在市販されている。これはNovagen Inc.597 Science Drive(マディソン、WI53711)から入手できるpETシステムである。このシステムはE.coli中でのクローニングおよび組み換えタンパク質の発現のために適当である。Moffat et al,J.Mol.Biol.,1986,189,113−130;Rosenberg et al,Gene,56,125−135;およびStudier et al,Meth.Enzymol.1990,185,60−89参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US−A−4952496号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Methods in Enzymology(1990),185,Editor:D.V.Goeddel
【非特許文献2】Moffat et al,J.Mol.Biol.,1986,189,113−130
【非特許文献3】Rosenberg et al,Gene,56,125−135
【非特許文献4】Studier et al,Meth.Enzymol.1990,185,60−89
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、pETシステムの提供にかかわらず、更に改善されたT7プロモーター駆動性発現システムが必要である。
【0008】
入手できるT7に基づく発現システムと比較した場合に発現の改善された制御およびタンパク質発現の改善されたレベルを提供するようなシステムを考案している。インデューサーの不在下の基礎的発現を現在入手できるT7に基づく発現システムによっては不可能であるクローニングおよび毒性遺伝子産物の発現を可能にするレベルに低下させ、誘導された生産性に影響を与えないT7プロモーター駆動性の発現システムを提供している。更に本願発明は広範な発現レベルにわたりインデューサー濃度に依存する方法で異種タンパク質の生産の制御を可能にし、結果として最適な発現レベルを特定することができる。異種タンパク質の発現および生産におよぶ制御のレベルは現在入手できるT7に基づく発現システムによっては不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って第1の態様においては、T7プロモーター配列の下流に1個のオペレーター配列を有し、T7プロモーター配列の上流に他のオペレーター配列を有しているT7プロモーター駆動性タンパク質発現システムを提供することである。
【0010】
有利には他のオペレーターが本来のlacオペレーター(lacO)配列であることが見出されている。または完全なパリンドロームオペレーター(ppop)配列であることが見出されている。より有利にはT7プロモーター配列の下流の本来の(lac)オペレーター配列をppop配列によって交換し、二連のppopオペレーターを提供する。
【0011】
T7プロモーター駆動性発現システムは適当には以下のように構築される:関連のターゲット遺伝子はバクテリオファージ転写および翻訳シグナルのコントロール下でプラスミド中にクローニングされる。最初にターゲット遺伝子を、T7RNAポリメラーゼ遺伝子を有さない宿主、例えばE.coliDH5α、HB101を使用してクローニングする。得られたらプラスミドをT7RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを有する発現宿主中に、例えばlacUV5のコントロール下に移行する。他の適当なプロモーターはlac、trp、tac、trcおよびバクテリオファージλプロモーター、例えばpLおよびpRである。次いで発現をインデューサー、例えばIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)、ラクトースもしくはメリビオースの添加によって誘導する。他のインデューサーを使用してもよく、これらは他の文献により詳細に記載されている。The Operon,eds MillerおよびReznikoff(1978)を参照のこと。インデューサーは個々にまたは組み合わせて使用してもよい。
【0012】
有利にはプラスミドは以下の1種以上を含む:選択可能な抗生物質耐性配列、cer安定エレメント(cer stability element)、およびマルチクローニングサイト。適当なプラスミドの構築は当業者に公知である。1つ以上の前記の特徴を有している有利なプラスミドの例は添付図中のプラスミドのpZT7#3系列によって図解されている。欧州特許出願第0502637号(ICI)中に開示された(pICI0042として)pZEN0042ベクターから出発して構築された。本願発明の3シリーズのプラスミドはpZT7#3.0、pZT7#3.1、pZT7#3.2およびpZT7#3.3である。本願発明の特に有利なプラスミドはpZT7#3.3プラスミドである。
【0013】
例えばlacUVのコントロール下のT7RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを有利には宿主細胞にλバクテリオファージ構築物、Novagenから入手できるλDE3によって導入する。T7RNAポリメラーゼ発現カセットを、該遺伝子(CE6, US-A-4952496参照)を有する特定化されたバクテリオファージλ形質導入ファージでの感染によって細胞に移行した。
【0014】
和合性のプラスミド(compatible plasmid)、例えばpLysSおよびpLysE(Novagenから入手できる)を発現宿主中に導入してもよい。これらのプラスミドは天然かつ選択的なT7RNAポリメラーゼのインヒビターであるT7リゾチームをコードし、従って未誘導細胞中でターゲット遺伝子を転写する能力を減少させる。pLysS宿主は少量のT7リゾチームを産生するが、一方pLysE宿主はより多くの酵素を産生し、従ってよりストリンジェントなコントロールを提供する。
【0015】
任意の適当な適合した原核または真核の宿主細胞を使用してよい。最も通常に使用される原核宿主はE.coliの株であるが、他の原核宿主、例えばSalmonella typhimurium、Serratia marsescens、Bacillus subtilisまたはPseudomonas aeruginosaを使用してもよい。哺乳類(例えばチャイニーズハムスターの卵巣細胞)または他の真核の宿主細胞、例えば酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae, Pichia pastoris, Hansenula polymorpha, Schizosaccharomyces pombeまたはKluyveromyces lactis)、糸状菌、植物、昆虫、両生類もしくは卵巣の種類の宿主細胞を使用してもよい。特定の宿主生物は細菌、有利にはE.coli(例えばK12またはB株)である。
【0016】
使用される宿主生物によって任意の適当な増殖培地を使用してもよい。E.coliのためには、本発明の実施であるが、天然増殖培地(complex growth media)、例えばLブロスまたは最少増殖培地、例えばM9(以下に記載する)に制限されない。
【0017】
本発明を以下の実施例、表および図により詳細に説明するが、実施例は本発明を制限するものではない:
表1は実施例で使用されるh−TNFαを発現するプラスミドの詳細である。
【0018】
表2〜4は実施例および関連の実施で使用されるベクターの詳細である。
【0019】
表5はM9最少増殖培地の組成の詳細である。
【0020】
表6は種々の増殖培地でのh−TNFα発現の詳細である。
【0021】
表7は実施例で使用されるベクターに関する宿主/形質転換効率の詳細である。
【0022】
表8はpZT7#3.3:DNaseIベクターに関連するDNaseI生産性の詳細である。
【0023】
表9〜11は実施例で使用されるLARd1(aa1275−1623)、ZAP70(4−260)6HISおよびMCP−1{9−76}に関する蓄積レベル(accumulation level)の詳細である。
【0024】
表12はpZT7#3.3および中間ベクター(intermediate vector)の構築で使用されるオリゴヌクレオチドの配列を示す。
【0025】
表13はhTNFαの核酸配列を示す。
【0026】
表14はZAP70(4−260)6HISの核酸配列を示す。
【0027】
表15はLARd1(aa1275−1623)の核酸配列を示す。
【0028】
表16はウシ膵臓のDNaseIの核酸配列を示す。
【0029】
表17はヒトのカルボキシペプチダーゼB(ミュータントD253>K)6His cmycの配列を示す。
【0030】
表18は種々のE.coliの発現株を示す。
【0031】
表19はヒトの単球走化性タンパク質MCP−{9−76}の配列を示す。
【0032】
表20はA5B7F(ab′)2の核酸配列を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1はpZEN0042プラスミドを示す。
【図2】図2はpZEN0042からのpZEN0042#aの構築を示す。
【図3】図3はpZEN0042#bプラスミドを示す。
【図4】図4はpZEN0042#cプラスミドを示す。
【図5】図5はpZEN0042#dプラスミドを示す。
【図6】図6はpZEN0042#eプラスミドを示す。
【図7】図7はpZT7#2.0プラスミドを示す。
【図8】図8はpZT7#2.1プラスミドを示す。
【図9】図9は本発明のpZT7#3.0プラスミドを示す。
【図10】図10は本発明のpZT7#3.2プラスミドを示す。
【図11】図11は本発明のpZT7#3.1プラスミドを示す。
【図12】図12は本発明のpZT7#3.3プラスミドを示す。
【図13】図13は種々のIPTG濃度で達成される最大の比生産性を示す。
【図14】図14は種々のIPTG濃度で達成される最大のhTNFαの蓄積レベルを示す。
【図15】図15は種々のIPTG濃度で達成される生物学的に活性のCPB[D253K]−6His−cmyc(活性の物質(μg)/培地(L)として)の蓄積を示す。
【図16】図16は種々のIPTG濃度で達成される生物学的に活性なA5B7(Fab′)2/A5B7(Fab′)(活性物質(mg)/培地(L)として)のE.coliのペリプラズム中での蓄積を示す。
【0034】
特定の記載:
1.pZT7系列のベクターの作成
pZT7#3.3の作成のための出発ベクターはpZEN0042であり、これは自社の欧州特許出願の公開第0502637号に記載されている。簡単には、該ベクターはpAT53由来のバックグラウンドにおいてプラスミドRP4からのtetA/tetR誘導性テトラサイクリン耐性配列およびプラスミドpKS492からのcer安定配列(stability sequence)を有している(図1)。
【0035】
1(i)lacIのクローニング
lacリプレッサーをコードする配列およびlacIプロモーターを有するlacIの配列をE.coli株MSD101(W3110)から調製したゲノムDNAを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって作成した。NsiI制限エンドヌクレアーゼ部位を配列の両末端にPCRプライマー#1および#2(表12)中に組み込むことによって作成した。得られたPCR産物をNsiIで消化し、PstI部位でpZEN0042中にクローニングした(PstIおよびNsiIは両部位の破壊を惹起する適合性の粘着末端(compatible cohesive end)を有している)。両方向のlacIが得られた。反時計回り方向で正しい配列lacIを有するクローンが同定された(=pZEN0042#a)(図2)。
【0036】
1(ii)ポリリンカーのクローニング
新規のマルチクローニングサイトをpZEN0042#a中に作成し、引き続きのT7発現カセットのクローニングを可能にした。これはEcoRIおよびBamHIでのpZEN0042#aの消化ならびにアニーリングした合成オリゴマー#3および#4(表12)によるライゲーションによって達成された。
【0037】
得られたベクターpZEN0042#bのポリリンカーは以下の制限部位を有していた:EcoRI−NdeI−Kpn−ScaI−SpeI−BamHI−XhoI−PstI−HindIII−BglII。
【0038】
pZEN0042#bは図3に示されている。
【0039】
2.T7発現エレメントのクローニング
2(i)T7ターミネーター
T7gene10からのT7ターミネーター配列をアニーリングした合成オリゴマー#5および#6(表12)としてpZEN0042#bのHindIIIおよびBglII部位の間にクローニングしてpZEN0042#c(図4)を作成した。
【0040】
2(ii)tRNAarg5
tRNAarg5転写リポーター配列(Lopez, et al, (1994), NAR 22, 1186-1193, and NAR 22, 2434)をアニーリングした合成オリゴマー#7および#8(表12)としてpZEN0042#c中のXhoIおよびPstI部位の間にクローニングしてpZEN0042#d(図5)を作成した。
【0041】
2(iii)上流のターミネーター
tetA配列は認識可能なターミネーターを有さないので、T4ターミネーター配列をEcoRI部位の上流で(EcoRI部位の下流にクローニングされるべき)T7発現カセット中にクローニングしてtetA(または任意の他の同定されていないプロモーター配列)からの潜在的な転写における読み通しを減少させた。T4ターミネーター配列および付加的なNcoI部位を有するアニーリングした合成オリゴマー#9および#10(表12)をpZEN0042#d中のStuIおよびEcoRI部位の間にクローニングし、pZEN0042#e(図6)を作成した。。
【0042】
2(vi)T7lacプロモーター
T7プロモーターおよびlacオペレーター配列をアニーリングした合成オリゴヌクレオチド#11および#12(表12)としてpZEN0042#eのEcoRIおよびNdeI部位の間にクローニングしてpZT7#2.0(図7)を作成した。T7プロモーターおよびlacオペレーターの配置はpET11aと同じである。
【0043】
2(v)完全なパリンドロームオペレーターを有するT7プロモーター
完全なパリンドロームlacオペレーター配列を導入しているT7gene10プロモーター(Simons et al(1984), PNAS 81, 1624-1628)をアニーリングした合成オリゴマー#13および#14(表12)としてpZEN0042#eのEcoRIおよびNdeI部位の間にクローニングしてpZT7#2.1(図8)を作成した。
【0044】
2(vi)上流のlacオペレーター
第2の本来のlacオペレーター配列をpT7#2.0中のlacオペレーター配列の94塩基対上流でアニーリングした合成オリゴマー#15および#16(表12)としてpZT7#2.0のNcoIおよびEcoRI部位の間にクローニングしてpZT7#3.0(図9)を作成した。
【0045】
同じlacオペレーター配列を類似にpZT7#2.1中にクローニングしてpZT7#3.2(図10)を作成した。
【0046】
2(vii)上流の完全なパリンドロームlacオペレーター
完全なパリンドロームオペレーター配列を、アニーリングした合成オリゴマー#17および#18(表12)をpZT7#2.0のNcoIおよびEcoRI部位の間でクローニングすることによってpZT7#2.0のlacオペレーター配列の94塩基対上流に配置してpZT7#3.1(図11)を作成した。
【0047】
同一の完全なパリンドロームオペレーター配列を類似にpZT7#2.1中にクローニングしてpZT7#3.3(図12)を作成した。
【0048】
3.試験構築物の作成
pET11a
T7発現ベクターpET11aをNovagen Incから入手し、pZT7ベクターの試験のための対照群として使用した。
【0049】
3(i)hTNFα
ヒトTNFαのコーディング配列を有するNdeI−BamHIのDNA配列をベクターpZT7#2.0、pZT7#2.1、pZT7#3.0、pZT7#3.1、pZT7#3.2、pZT7#3.3およびpET11a中のNdeIおよびBamHI部位の間にクローニングした。クローニングした配列は表13に示している。
【0050】
3(ii)ZAP70(4−260)6HIS
C末端のヘキサヒスチジンタグ配列を有するヒトタンパク質のチロシンキナーゼZAP70のアミノ酸4〜260をコードしているDNA断片をNdeI−BglII断片としてpET11aおよびpZT7#3.3のNdeIおよびBamHIクローニングサイトの間にサブクローニングした。クローニングした配列は表14中に示した。
【0051】
3(iii)LARd1(aa1275−1623)
白血球抗原関連タンパク質のチロシンホスファターゼドメイン1(aa1275−1613)をNdeI−BglII断片としてpET11aおよびpZT7#3.3(NdeI−BamHI)中にサブクローニングした。クローニングした配列は表15に示している。
【0052】
3(iv)ヒトカルボキシペプチダーゼB(ミュータントD253>K)6His cmyc
C末端のヘキサヒスチジンcmycタグ配列を有するミュータントのヒトカルボキシペプチダーゼ(D253>K)のコーディング配列をエルウィニア カロトボーラ pel B分泌のリーダー配列の下流に配置し、pZT7#3.3およびpET11a中にクローニングした。クローニングした配列は表17に示している。
【0053】
3(v)ウシ膵臓DNaseI
ウシ膵臓DNaseIののコーディング配列をNdeI−BglII断片としてNdeIおよびBamHIの間でpZT7#3.3中にクローニングした。クローニングした配列は表16に示している。
【0054】
この配列はpET11a中に突然変異なしにクローニングできない。
【0055】
しかしながらウシ膵臓DNaseI配列は以前にpET11(pET11aではない)中にクローニングされている(Doherty et al (1993) Gene, 136, pp337-340)。この構築物において、リボソーム結合部位を有する5′の非翻訳領域は、pT7#3.3中にあるようなT7gene10からよりもむしろ本来のウシ膵臓DNaseI配列から得られる。この構築物pAD10はpT7#3.3のためのコントロールとして使用した。
【0056】
3(vi)ヒト単球走化性タンパク質MCP−1{aa9−76}
ヒト単球走化性タンパク質(aa9−76)のコーディング配列をpET11aのNdeIおよびBamHI部位の間でクローニングした。クローニングした配列は表19に示している。
【0057】
3(vii)A5B7 F(ab′)2
A5B7 F(ab′)2のコーディング配列をエルウィニア カロトボーラのpelB分泌リーダー配列の下流に配置し、pZT7#3.3およびpET11aのNdeIおよびBamHI部位の間にクローニングした。
【0058】
4.T7発現のための宿主株の作成
λDE3溶原化キット(λDE3 lysogenisation kit)をNovagen Incから入手し、説明書に従って使用して表18に列記したE.coli株からT7発現宿主を作成した。プラスミドpLysSおよびpLysEならびにE.coli発現宿主BL21およびBL21(DE3)はNovagen Incから入手した。
【0059】
例1
E.coli株BL21(DE3)、BL21(DE3)pLysS、BL21(DE3)pLysEを、ヒトTNFαを発現するプラスミド(以下に記載、表1)で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、グリセロール保存液中で−80℃で保持した。宿主株BL21(DE3)、BL21(DE3)pLysSおよびBL21(DE3)pLysEはこの分野で広範に使用されており、一般の機関、例えばNovagen Inc(マディソン、USA)で容易に入手できる。BL21(DE3)の遺伝子型はF-、ompT、hsdSB(rB- mB-)、gal、dcm、(DE3)である。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
各組み換え株のアリコートを保存液から取り出し、Lアガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)および/またはクロラムフェニコール(1μg/ml)を場合により供給して選択可能にする)上にストリークし、37℃で16時間インキュベートした。次いで各培養のアリコートを滅菌PBS(ホスフェートで緩衝させた生理食塩水溶液;8g/Lの塩化ナトリウム、0.2g/Lの塩化カリウム、0.2g/Lのオルトリン酸二水素カリウム、1.15g/Lの塩化マグネシウム)10ml中に再懸濁し、これを使用して、テトラサイクリン(10μg/ml)またはアンピシリン(50μg/ml)および/またはクロラムフェニコール(1μg/ml)を場合により供給したL−ブロス(10g/Lのトリプトン(Difco)、5g/Lの酵母エキス(Difco)、5g/Lの塩化ナトリウム;pH7.2)75mlを含有する2個の250mlエルレンマイヤーフラスコそれぞれにOD550=0.1で播種した。次いでフラスコを往復運動型振盪機(reciprocating shaker)上で37℃でインキュベートした。増殖をOD550=0.4〜0.5まで観察した。この時点で培養を、インデューサーのIPTG(イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド)を最終濃度1mMで各組み換え株に関して各(2個の)セットからの1個のフラスコに添加することによって誘導した。第2のフラスコは誘導しなかった。各組み換え株のための両者のフラスコを前記の条件で更に24時間インキュベートした。誘導された培養中でのhTNFαの蓄積レベルを、試料の細菌のSDS−PAGEの後にクーマシーブルー染色したゲルのレーザーデンシトメトリースキャニング(laser densitometory scanning)によって測定した。誘導していない培養中のhTNFαの基礎的蓄積レベルは試料の細菌のSDS−PAGEの後のウエスタンブロット分析(抗hTNFα抗原を使用する)によって測定した。次いで細胞あたりのhTNFα分子における蓄積レベルを、この分野においてよく確立されているようにブロット("未知のもの"と一緒に公知のスタンダードを使用して準備した)のレーザーデンシトメトリースキャニングによって測定した。結果を以下にまとめる(表2)。
【0063】
【表3】
(1):本文中でより完全に記載した
(2):TMP=全微生物タンパク質
(3):モル/細胞=細胞あたりのhTNFα分子;検出限界:250分子/細胞
(4):nd=検出されず(ウエスタンブロット)
【0064】
前に明確に示したデータは、異種タンパク質の基礎的発現レベルは最近に確立された技術(単一の本来のlacプロモーター:ベクターpET11a/pZT7#2.0)を使用すると依然として高いということを示している。基礎的発現はpET11a/pZT7#2.0発現システムで、T7リゾチームを発現するプラスミド(pLysS/pLysE)で同時形質転換した宿主株の使用によって低下させることができる。しかしながら誘導される生産性は激しく損なわれる。
【0065】
意想外にも、2個の本来のlacオペレーター配列は、基礎的発現レベルを大きく低下させるT7プロモーター駆動性システムと一緒にはたらくが、誘導された生産性に影響を及ぼさない。
【0066】
より意想外にも、2個の完全なパリンドロームオペレーターは、誘導された生産性を損なうことなく基礎的発現レベルを低下させる際に最も良好に機能する。T7プロモーター駆動性システムを有する単一の完全なパリンドロームオペレーターの使用が基礎的発現の低下に重大な改善をもたらすことは予想され得なかった。本来のppopのlacオペレーターの他の組合せ、例えばpZT7#3.2およびpZT7#3.1を使用してもよい。
【0067】
例2
E.coli株MSD623(DE3)、MSD624(DE3)、MSD68(DE3)、MSD101(DE3)およびMSD522(DE3)−表18参照−を、ヒトTNFαを発現するpET11a:TNF、pZT7#2.0:TNF、pZT7#2.1:TNF、pZT7#3.0:TNF、pZT7#3.1:TNF、pZT7#3.2:TNFおよびpZT7#3.3:TNF(既に記載した(表1))によって別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、グリセロール保存液中に−80℃で保持した。hTNFαの基礎的発現/蓄積および誘導した発現/蓄積を例1に記載のように厳密に測定した。hTNFαの発現/蓄積の基礎的(誘導していない)レベルおよびIPTGで誘導したレベルを以下に表3および表4にそれぞれまとめる。例1に記載した宿主株BL21(DE3)を使用して得られたデータは参考のために含んでいる。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
*検出限界:250分子/細胞
【表6】
(*):TMP=全微生物タンパク質
【0070】
前記のデータは、pZT7#3.0、pZT7#3.1、pZT7#3.2およびpZT7#3.3が誘導した生産性に悪影響を与えずに全ての試験した宿主株の使用で基礎的発現レベルを(pET11a/pZT7#2.0に比して)低下させることを示している。pZT7#3.3は全ての試験した宿主株より一貫して優れている。
【0071】
例3
−80℃のグリセロール保存液からのE.coli株MSD101(DE3)pZen1798(pET11a:TNF)およびMSD101(DE3)pZen1827(pZT7#3.3:TNF)のアリコートをL−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給して選択可能にする)上にストリークし、37℃で16時間インキュベートした。次いで各培養のアリコートを滅菌PBS10ml中に再懸濁し、これを使用して、75mlの:
1.L−ブロス(グルコース不含)
2.L−ブロス+1g/Lのグルコース
3.2g/Lグルコースを含有するM9最少培地
4.4g/Lのグリセロールを含有するM9最少培地
を含有する250mlエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で播種した。
【0072】
前記で使用した全ての増殖培地に場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を供給した。M9最少培地の組成は以下の表5に挙げている。L−ブロス培地の組成は以前に記載した。
【0073】
【表7】
(*最終pHをpH7に調整した)
【0074】
次いでフラスコを往復運動型振盪機上で37℃で24時間インキュベートした。誘導していない培養中でのhTNFαの基礎的蓄積レベル(以下の表6でまとめた)を前記のように厳密に測定した。
【0075】
【表8】
*検出限界:250分子/細胞
【0076】
この例はベクターpZT7#3.3の広範な有用性を証明するものである。pET11aは増殖培地に依存した発現の抑制を示すが、ベクターpZT7#3.3はそれに著しく反してL−ブロスおよびM9最少増殖培地の両者において厳しい抑制を示す。このことは意想外であり、完全に予想外であった。L−ブロスおよびM9最少増殖培地は微生物の増殖培地の2種の基本的な形態である:天然(L−ブロス)および最少塩(M9)。
【0077】
例4
クローニングおよび毒性タンパク質の大量生産のためのベクターpZT7#3.3の有用性はこの例において組み換えウシ膵臓デオキシリボヌクレアーゼ(DNaseI)を使用して例示している。宿主株BL21(発現しない宿主のバックグラウンド)およびBL21(DE3)(発現するバックグラウンド)を以下のように形質転換した。CaCl2法(Sambrook, Fritsch and Maniatis, 1989, "Molecular Cloning", 2nd Edition, Cold Spring Harbour Press, New York)を使用して調製したコンピテント細胞を、"ヒートショック"法(Sambrook, Fritsch and Maniatis, 1989, "Molecular Cloning", 2nd Edition, Cold Spring Harbour Press, New York)を使用して、pZen2006(pAD10、前記のDNaseIを発現するpET11誘導体)、pZen1980(pZT7#3.3:DNaseI)およびhTNFα(コントロールとして使用した:比較的毒性のない遺伝子産物)を発現するpZen1827(pZT7#3.3:TNF)によってプラスミドDNA濃度の範囲で形質転換した。各宿主−プラスミドの組合せの形質転換効率をこの分野でよく記載されるように測定した。結果は以下に表7でまとめた。
【0078】
【表9】
【0079】
【表10】
*3種の別々の試験からのデータ(n=3)
【0080】
前記のデータはpZT7#3.3を使用して達成された基礎的発現の厳密な制御を例示している。この結果は、pZT7#3.3:DNaseIが抑制され、細胞の生存度に悪影響を及ぼさずにT7のRNAポリメラーゼを発現する細胞(BL21(DE3))への移行をサポートすることを示している。達成された形質転換効率はBL21(T7のRNAポリメラーゼを有さない)中への形質転換によって得られるものか、または比較的毒性のない遺伝子産物pZT7#3.3:hTNFαを有するものに相当する。DNaseIの発現が漏出性であったならば細胞は生存していない。このことはpET11aおよびpAD10によって得られた結果と対照的である。組み換え細胞の増殖時に異種タンパク質が有することがある有害な作用および生産性の問題を回避するためにどのようにpZT7#3.3を使用できるかは当業者には公知である。
【0081】
BL21(DE3)pZen1980(pZT7#3.3:DNaseI)を使用するDNaseIの発現/蓄積を前記の試験からBL21(DE3)pZen1980形質転換体の単コロニーを採り、これを使用してL−ブロス(1g/Lのグルコース、10μg/mlのテトラサイクリン)75mlを含有する単一のエルレンマイヤーフラスコに播種することによって測定した。このフラスコを往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートした。次いでこの培養を使用し、新しいL−ブロス(1g/Lのグルコース、10μg/mlのテトラサイクリン)にOD550=0.1で播種した。次いでフラスコを増殖がOD550=0.5になるまで往復運動型振盪機上で37℃でインキュベートした。次いで培養をIPTG(0.5mM最終)の添加によって誘導し、前記の条件下で更に4時間インキュベートし続けた。細胞を回収し、細胞のペレットを−20℃で保管した。細胞のペレットを解凍し、リシス緩衝液(10mMトリス;pH7.6、2mMの塩化カルシウム、100μMのベンズアミジンおよび100μMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF))中に再懸濁(10%w/v(湿重量))した。次いで細胞の懸濁液を、光学検鏡法による懸濁液の検定による細胞の破壊が>95%を示すまで音波処理(氷上で20〜30秒のバースト)した。細胞の破片を遠心分離(4℃、25000×g、20分)によって除去し、上清でのDNaseI活性を澄明な上清100μlのクニッツ(Kunitz)アッセイ緩衝液(10mMトリス;pH8.0、0.1mMの塩化カルシウム、1mMの塩化マグネシウムおよび50μgの子ウシ胸腺DNA)1mlへの添加によって測定した。1"クニッツ単位"はA260nm0.001/分の増加をもたらすDNaseIの量である。結果は以下に表8でまとめた。
【0082】
【表11】
【0083】
Doherty他(Gene, 1993, 136, pp337-340)は、pAD10によるBL21(DE3)の形質転換によって生存可能な細菌コロニーが得られないことを見出した。このことは実質的に本願の観察(表7に前記)と(データにおける標準偏差を想定すれば)類似している。BL21(DE3)pLysSによっても、Doherty他は、形質転換体は液体培地への移動による生存度が乏しいことを見出した。これと著しく異なって、pZen1980(pZT7#3.3:DNaseI)で形質転換したBL21(DE3)は発現しない宿主バックグラウンドを使用して達成されたものに相当する高い形質転換効率を達成し、更にBL21(DE3)pZen1980形質転換体は液体培養において生存度が高く、継代培養後でさえも生物学的に活性のDNaseIを発現する能力を保持する。
【0084】
例5
−80℃でのグリセロール保存液からのE.coli株MSD101(DE3)pZen1798(pET11a:TNF)およびMSD101(DE3)pZen1827(pZT7#3.3:TNF)をL−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により選択のために供給した)上にストリークし、37℃で16時間インキュベートした。各培養のアリコートを使用して、これをM9最少培地(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給した2g/Lのグルコース)75mlを含有する2つの250mlエルレンマイヤーフラスコそれぞれに播種した。培養を往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートし、これを使用してM9最少培地(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給した2g/Lのグルコース)600mlを含有する各5つの2Lのエルレンマイヤーフラスコに別々にOD550=0.1で播種した。M9最少培地の組成は表5に挙げられている。前記フラスコを往復運動型振盪機上で37℃でインキュベートし、増殖を培養のOD550の測定により経時的に観察した。増殖がOD550=0.5に達した際に、培養を、インデューサーIPTGを各フラスコ(0.25mM、0.075mM、0.05mM、0.025mMおよび0.01mM(最終))に添加することによって誘導した。これを前記の条件下で更に10時間インキュベートし続け、その間に試料を採取し、細菌細胞中の増殖、hTNFαの蓄積および全微生物タンパク質を測定した。hTNFαの蓄積レベルを、この分野でよく知られているように試料の細菌の全体の細胞溶解産物のクーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲルのスキャニングによって測定した。全微生物タンパク質のレベルを、製造者の解説書に従って使用されるBCAタンパク質アッセイ試薬(BCA Protein Assay Reagent)を使用して測定した。バイオマスの蓄積レベルを、この分野で容易に達成されるようにOD550測定からのバイオマスの乾燥重量を計算することによって測定した。hTNFαの比生産性(Qp)(生産されたhTNFα(g)/細胞の乾燥重量(g)/時間)を、この分野でよく達成されているプロトコールを使用して誘導期間の間に各標本点に関して計算した。誘導のために使用される各IPTG濃度で達成されるQp(max)(ピークの比生産性)および最大のhTNFα蓄積レベル(全微生物タンパク質%)を図13および図14にそれぞれまとめた(*TMP=全微生物タンパク質)。
【0085】
これらの結果は、濃度を増加させてIPTGを培地に添加することでpZT7#3.3により用量に依存して発現が誘導されることを示している。しかしながら、pET11aによって発現は非常に低い濃度のインデューサーでさえも殆ど最大のレベルに誘導される。pZT7#3.3の意想外かつ予想できない特性によって当業者が広範な発現レベルにわたり異種タンパク質の生産を制御でき、その結果として最適な発現レベルを特定できることは明らかである。これは例9および例10に例示した。
【0086】
例6
E.coli株BL21(DE3)およびBL21(DE3)pLysSを、LARd1(1275−1613)を発現するプラスミドpZen1911(pET11a:LARd1(1275−1613))で別々に形質転換した。E.coli株MSD460(DE3)およびMSD460(DE3)pLysSを、ZAP70(4−260)−6Hisを発現するプラスミドpZen1914(pET11a:ZAP70(4−260)−6His)で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、−80℃でグリセロール保存液中に保持した。各培養のアリコートを保存液から採り、L−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはアンピシリン(50μg/ml)およびクロラムフェニコール(1μg/ml)を場合により供給して選択可能にした)上にストリークし、37℃で16時間の増殖後に単コロニーを分離した。次いで各培養の単コロニーを、L−ブロス(+1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはアンピシリン(50μg/ml)およびクロラムフェニコール(1μg/ml))75mlを含有する250mlのエルレンマイヤーフラスコ中に別々に播種した。フラスコを往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートした。次いでこれらの各播種した培養(seeder culture)を使用して、これをL−ブロス(1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはアンピシリン(50μg/ml)およびクロラムフェニコール(1μg/ml))75ml含有の250mlのエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で別々に播種した。次いでフラスコを、OD550=0.5に達するまで往復型振盪機上で20℃でインキュベートした。次いで培養をIPTG(LARd1(1275−1613)のためには0.5mMおよびZAP70(4−260)−6Hisのためには2mM)の添加によって誘導し、前記の条件下で更に24時間インキュベートし続けた。LARd1(1275−1613)およびZAP70(4−260)−6Hisの蓄積を、前記の播種した培養およびIPTGで誘導した培養においてこの分野でよく知られているように試料の細菌の全体の細胞分解産物のクーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲルをスキャニングすることによって測定した。結果を以下に表9でまとめた。
【0087】
【表12】
*TMP:全微生物タンパク質
1. クーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲル上では検出されなかった
この例は高い基礎的発現に関するpET11aの乏しい能力を例示している。インデューサーの不在下でのpLysSを使用する基礎的発現の低下は基礎的発現レベルを低下させるが、誘導された生産性に悪影響を及ぼさない。
【0088】
例7
E.coli株BL21(DE3)をMCP−1(9−76)を発現するプラスミドpZen1977(pET11a:MCP−1(9−76))およびpZen1848(pZT7#3.3:MCP−1(9−76))で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、−80℃でグリセロール保存液中に保持した。各培養のアリコートを保存液から採り、L−アガープレート(アンピシリン(50μg/l)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給して選択可能にした)上に別々にストリークし、37℃で16時間増殖した後に単コロニーを分離した。次いで各培養の単コロニーを、L−ブロス(+1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する2つのそれぞれの250mlエルレンマイヤーフラスコ中に播種した。フラスコを往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートした。次いで、これらの培養のそれぞれを使用して、これらをL−ブロス(1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する3つの250mlのエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で播種した。次いでフラスコを、増殖がOD550=0.5に達するまで往復運動型振盪機上で37℃、30℃および20℃でインキュベートした。次いで培養をIPTG(0.25mM最終)の添加により誘導し、前記の条件下で更に5〜24時間インキュベートし続けた。MCP−1(9−76)の蓄積を、この分野でよく知られているように試料の細菌の全体の細胞分解産物のクーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲルをスキャニングすることによって測定した。細胞の細胞質(可溶)およびペレット(不溶)のフラクションにおけるMCP−1(9−76)の分割(partitioning)(可溶性)をこの分野でよく知られているように試料の細菌に音波処理によるリシスを実施することによって測定した。結果を以下に表10でまとめた。
【0089】
【表13】
*TMP=全微生物タンパク質
MCP−1(9−76)の高レベルの可溶性蓄積のためのベクターpZT7#3.3の有用性は前記のデータから明らかである。
【0090】
例8
E.coli株MSD460(DE3)をZAP70(4−260)−6Hisを発現するプラスミドpZen1914(pET11a:ZAP70(4−260)−6His)およびpZen1913(pZT7#3.3:ZAP70(4−260)−6His)で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、−80℃でグリセロール保存液に保持した。各培養のアリコートを保存液から採り、L−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給し選択可能にした)上にストリークし、37℃で16時間増殖させた後に単コロニーを分離した。次いで各培養の単コロニーを、L−ブロス(+1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する2つの250mlのエルレンマイヤーフラスコそれぞれに播種した。フラスコを往復運動型振盪機上で30℃で16時間インキュベートした。次いで、これらの培養のそれぞれを使用して、これをL−ブロス(1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する250mlのエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で播種した。次いでフラスコを、増殖がOD550=0.5に達するまで往復運動型振盪機上で20℃でインキュベートした。次いで培養をIPTG(2mM(最終))の添加により誘導して、前記の条件下で更に24時間インキュベートし続けた。
【0091】
誘導後のZAP70(4−260)−6Hisの蓄積を、この分野でよく知られているように試料の細菌の全体の細胞の分解産物のクーマシーブルー染色したSDS−PAGEゲルのスキャニングによって測定した。細胞の細胞質(可溶)およびペレット(不溶)のフラクションにおけるZAP70(4−260)−6Hisの分割(可溶性)をこの分野で公知のように試料の細菌に音波処理によるリシスを実施することによって測定した。音波処理によるリシス緩衝液は、試料のプロセス中にZAP70(4−260)−6Hisのタンパク質分解を低下させるためにプロテアーゼインヒビター(1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、1mMのベンズアミジンおよび1mMのヨードアセトアミド)を含んでいた。結果を以下に表11でまとめた。
【0092】
【表14】
*TMP=全微生物タンパク質
ZAP70(4−260)−6Hisの可溶性蓄積のためのベクターpZT7#3.3の有用性を以下の表のデータによって例示する。
【0093】
例9
E.coli株MSD624(DE3)をCPB[D253K]−6His−cmycを発現するプラスミドpZen1953(pET11a:CPB[D253K]−6His−cmyc)およびpZen1954(pZT7#3.3:CPB[D253K]−6His−cmyc)で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、−80℃でグリセロール保存液中に保持した。各培養のアリコートを保存液から採り、L−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給して選択可能にした)上に別々にストリークし、37℃での16時間の増殖後に単コロニーを分離した。次いで各培養の単コロニーを、L−ブロス(+1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する2つの250mlのエルレンマイヤーフラスコそれぞれに播種した。フラスコを往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートした。次いでこれらの培養それぞれを使用して、これを600mlのL−ブロス(1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))を含有する10個の2LのエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で播種した。次いでフラスコを、増殖がOD550=0.5に達するまで往復運動型振盪機上で20℃でインキュベートした。次いで培養をIPTG(IPTG0.001、0.0025、0.005、0.0075、0.01、0.025、0.05、0.075、0.1および0.25mM(最終))の添加によって誘導し、以下の条件下で更に48時間インキュベートし続けた。次いで細胞を回収し(4℃、25000×g、20分)、浸透圧ショック細胞分画(この分野でよく知られているように)を実施し、可溶性のE.coliペリプラズムのフラクションに分割されるタンパク質を含有する細胞フラクションを単離した。可溶性のE.coliペリプラズムの抽出物における生物学的に活性のCPB[D253K]−6His−cmycの蓄積を以下のように基質のヒプリル−L−グルタミンからの馬尿酸の放出の測定によって決定した。
【0094】
細胞不含のペリプラズムの抽出物(125μl)を、25mMのトリス緩衝液(pH7.5)100μl、100mMの塩化亜鉛および0.5mMの基質(ヒプリル−L−グルタミン)2.5μlを含有する試験管に添加した。これを37℃で24時間インキュベートした。反応を、"停止溶液"(40%のメタノール(HPLC純度)、60%の50mMリン酸緩衝液(シグマP8165)、0.2%w/vのトリクロロ酢酸)250μlの添加によって停止させた。混合後に、形成した任意の沈殿物を遠心分離(4℃、16000×g、3分)によって分離した。次いで澄明な上清中の馬尿酸の量をこの分野でよく達成されているようにHPLCを使用して測定した。
【0095】
生物学的に活性なCPB[D253K]−6His−cmycの蓄積を精製した活性な組み換えCPB[D253K]−6His−cmycおよび馬尿酸(シグマH6375)によって作成した検量線を参考に測定した。
【0096】
生物学的に活性なCPB[D253K]−6His−cmycのE.coliのペリプラズム中の蓄積(活性物質(μg)/培養(L))を図15に表した。
【0097】
例10
E.coli株MSD624(DE3)を、A5B7(Fab′)2を発現するプラスミドpZen1999(pET11a:A5B7(Fab′)2)およびpZen1997(pZT7#3.3:A5B7(Fab′2))で別々に形質転換した。得られた組み換え株を精製し、−80℃でグリセロール保存液中に保持した。各培養のアリコートを保存液から採り、L−アガープレート(アンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml)を場合により供給して選択可能にした)上に別々にストリークし、37℃での16時間の増殖後に単コロニーを分離した。次いで各培養の単コロニーを、L−ブロス(+1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))75mlを含有する2つの250mlエルレンマイヤーフラスコそれぞれに播種した。フラスコを往復運動型振盪機上で37℃で16時間インキュベートした。次いでこれらの培養それぞれを使用して、L−ブロス(1g/Lのグルコースならびに場合によりアンピシリン(50μg/ml)またはテトラサイクリン(10μg/ml))600mlを含有する13個の2LのエルレンマイヤーフラスコにOD550=0.1で播種した。次いでフラスコをIPTG(IPTG0.005、0.01、0.025、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2および0.25mM(最終))の添加によって誘導し、前記の条件下で更に48時間インキュベートし続けた。次いで細胞を回収(4℃、25000×g、20分)し、浸透圧ショック細胞分画(この分野でよく知られているように)を実施し、可溶性のE.coliペリプラズムのフラクションに分割されるタンパク質を含有する細胞フラクションを単離した。可溶性のE.coliペリプラズムの抽出物における生物学的に活性なA5B7(Fab′)2/A5B7(Fab′)の蓄積をA5B7(Fab′)2/A5B7(Fab′)とヒト腫瘍癌胎児性抗原(CEA)とのELISAアッセイでの結合の測定により評価した。生物学的に活性なA5B7(Fab′)2/A5B7(Fab′)のE.coliのペリプラズムにおける蓄積(活性物質(mg)/培養(L))を図16に表した。
【0098】
両者の(前記の例9および例10に記載の)タンパク質によって、pZT7#3.3はpET11aよりもE.coliのペリプラズム中に高レベルの活性産物を蓄積する。図15〜16に示されるデータは、pZT7#3.3の制御特性を組み換えタンパク質の収量を最適化するためにどのように活用できるかを示している。これらの例は分泌のためのpTZ7#3.3ベクターの使用を例示している。しかしながら、pZT7#3.3の発現特性の基礎的レベルの発現/調節が異種の膜タンパク質の発現および蓄積をどのように促進するかを当業者は容易に理解することができる。
【0099】
【表15】
【0100】
【表16】
【0101】
【表17】
【0102】
【表18】
【0103】
【表19】
【0104】
【表20】
【0105】
【表21】
【0106】
【表22】
【0107】
【表23】
【0108】
【表24】
【0109】
【表25】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T7プロモーター配列の下流にオペレーター配列を有し、かつT7プロモーター配列の上流に更なるオペレーター配列を有するT7由来のプロモーター駆動性タンパク質発現システム。
【請求項2】
更なるオペレーター配列が本来のlacオペレーター(lacO)配列である、請求項1記載のタンパク質発現システム。
【請求項3】
更なるオペレーター配列が完全なパリンドロームオペレーター(ppop)配列である、請求項1記載のタンパク質発現システム。
【請求項4】
T7プロモーター配列の下流の本来のオペレーター配列をppop配列に置き換え、二連のppopオペレーターを提供する、請求項3記載のタンパク質発現システム。
【請求項5】
T7プロモーターコントロール下のターゲット遺伝子を有し、T7プロモーター配列の下流にオペレーター配列を有し、かつT7プロモーター配列の上流に更なるオペレーター配列を有するプラスミド。
【請求項6】
更なるオペレーター配列が本来のlacオペレーター(lacO)配列である、請求項5記載のプラスミド。
【請求項7】
更なるオペレーター配列が完全なパリンドロームオペレーター(ppop)配列である、請求項5記載のプラスミド。
【請求項8】
T7プロモーター配列の下流の本来のオペレーター配列をppop配列に置き換えて、二連のppopオペレーターを提供する、請求項4記載のプラスミド。
【請求項9】
pZT7#3.0、pZT7#3.1、pZT7#3.2およびpZT7#3.3から選択されるプラスミド。
【請求項10】
プラスミドpZT7#3.3。
【請求項11】
請求項5から10までのいずれか1項記載のプラスミドによって形質転換された宿主細胞。
【請求項12】
プラスミドpZT7#3.3によって形質転換された宿主細胞。
【請求項13】
pZT7#3.3によって形質転換されたE.coli。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の発現システムまたは宿主細胞を組み換えタンパク質の製造において使用する方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法によって製造する組み換えタンパク質。
【請求項1】
T7プロモーター配列の下流にオペレーター配列を有し、かつT7プロモーター配列の上流に更なるオペレーター配列を有するT7由来のプロモーター駆動性タンパク質発現システム。
【請求項2】
更なるオペレーター配列が本来のlacオペレーター(lacO)配列である、請求項1記載のタンパク質発現システム。
【請求項3】
更なるオペレーター配列が完全なパリンドロームオペレーター(ppop)配列である、請求項1記載のタンパク質発現システム。
【請求項4】
T7プロモーター配列の下流の本来のオペレーター配列をppop配列に置き換え、二連のppopオペレーターを提供する、請求項3記載のタンパク質発現システム。
【請求項5】
T7プロモーターコントロール下のターゲット遺伝子を有し、T7プロモーター配列の下流にオペレーター配列を有し、かつT7プロモーター配列の上流に更なるオペレーター配列を有するプラスミド。
【請求項6】
更なるオペレーター配列が本来のlacオペレーター(lacO)配列である、請求項5記載のプラスミド。
【請求項7】
更なるオペレーター配列が完全なパリンドロームオペレーター(ppop)配列である、請求項5記載のプラスミド。
【請求項8】
T7プロモーター配列の下流の本来のオペレーター配列をppop配列に置き換えて、二連のppopオペレーターを提供する、請求項4記載のプラスミド。
【請求項9】
pZT7#3.0、pZT7#3.1、pZT7#3.2およびpZT7#3.3から選択されるプラスミド。
【請求項10】
プラスミドpZT7#3.3。
【請求項11】
請求項5から10までのいずれか1項記載のプラスミドによって形質転換された宿主細胞。
【請求項12】
プラスミドpZT7#3.3によって形質転換された宿主細胞。
【請求項13】
pZT7#3.3によって形質転換されたE.coli。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の発現システムまたは宿主細胞を組み換えタンパク質の製造において使用する方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法によって製造する組み換えタンパク質。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−213496(P2009−213496A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157677(P2009−157677)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【分割の表示】特願2000−504267(P2000−504267)の分割
【原出願日】平成10年7月21日(1998.7.21)
【出願人】(300022113)アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】15 Stanhope Gate, London W1K 1LN, United Kingdom
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【分割の表示】特願2000−504267(P2000−504267)の分割
【原出願日】平成10年7月21日(1998.7.21)
【出願人】(300022113)アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】15 Stanhope Gate, London W1K 1LN, United Kingdom
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]