説明

TABテープ及びその製造方法

【課題】補強板を貼り付けることなくコネクタに接続できるTABテープを提供する。
【解決手段】絶縁テープ32上に金属箔34aからなる電気配線を具備したTABテープ11であって、その端部48aを折り畳んでコネクタ41に差し込むためのTABテープ11において、コネクタ41に接続する電気配線の各導体33aが端部48aまで延ばして形成され、その導体33a間に複数の折曲げ用孔12が幅方向に配列されて設けられると共に、端部48aの幅方向にソルダーレジスト35aが形成され、折曲げ用孔12に沿って端部48aが折り畳まれて前記コネクタ41に差し込まれるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はTABテープ、特にコネクタ部品と接続するTABテープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話に搭載される液晶画面などと、本体基板とを好適に接続できるものとして、TAB(Tape Automated Bonding)テープがよく用いられている。
【0003】
図3(a)は、従来のTABテープを用いて液晶画面と本体基板とを接続した接続構造を示す構成図であり、(b)は、従来のTABテープの構造を示す上面図である。
【0004】
図3(a)および(b)に示すように、TABテープ31は、ポリイミドテープなどの可撓性を有する絶縁テープ32上に、銅箔などからなる電気配線が形成される。
【0005】
電気配線は、絶縁テープ32上に積層された後に光感光剤を応用したフォトリソグラフィ技術により回路パターンを形成される金属箔34aと、その金属箔34aに施される錫などの金属メッキ34bと、からなる導体33により構成される。その後、絶縁と機械強度向上のためソルダーレジスト35が、半導体素子37を設置するための半導体設置部36の周囲に印刷される。
【0006】
さらに、液晶画面40などの出力装置への電気信号を制御するための半導体素子37が、Au−Sn共晶合金などからなるハンダバンプ38(あるいは、ハンダボール)を介し半導体設置部36の導体33と接続される。
【0007】
TABテープ31の一端は、ACF(Anisotropic Conductive Film;異方性導電フィルム)39を介して液晶画面40に接続され、他端は、コネクタ41を介して本体基板42へ接続される。
【0008】
コネクタ41は、断面コ字状の溝を有するコネクタ部材43と、その内側面の一方に設けられた金属バネピン44と、それに対面して設けられた支持部45と、金属バネピン44と本体基板42とを電気的に接続するべく、本体基板42の上面から下面へ突出するように配されるコネクタ導体46とを備え、本体基板42の下面から突出したコネクタ導体46と本体基板42とがハンダ接合部47を介して電気的に接続される。
【0009】
このようにされることで、本体基板42からの電気信号はコネクタ41を介してTABテープ31上の半導体素子37に伝達され、さらに半導体素子37から発せられる電気信号はTABテープ31とACF39とを介して液晶画面40に伝達され、液晶画面40が制御される。
【0010】
TABテープ31のコネクタ41への差し込みの際には、その作業を容易にするため、TABテープ31の端部48に一定以上の厚さが求められる。
【0011】
このため従来のTABテープ31においては、コネクタ41に接続するTABテープ31の端部48の裏面側(絶縁テープ側)に補強板49を貼り付けて端部48の厚さを調節し、これをコネクタ41に差し込むことで、コネクタ41内の金属バネピン44に導体33が押圧されて、TABテープ31と本体基板42とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−148018号公報
【特許文献2】特開2005−217022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来のTABテープの構造では、補強板の材料費と補強板を貼り付ける加工費とが、TABテープとそれを用いたデバイスの製造コストに加算されるという課題がある。
【0014】
また、一般的にTABテープのコネクタへの差し込みは作業者の指により行われており、TABテープをコネクタへ差し込むに際し、作業者の皮脂が配線に付着すると、導体が腐食されるという問題がある。
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、補強板を貼り付けることなくコネクタに接続できるTABテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、絶縁テープ上に金属箔からなる電気配線を具備してなり、その端部を折り畳んでコネクタに差し込むためのTABテープにおいて、コネクタに接続する電気配線の各導体が前記端部まで形成され、その導体間に複数の折曲げ用孔が幅方向に配列されて設けられると共に、前記端部の幅方向にソルダーレジストが形成され、前記折曲げ用孔に沿って前記端部が折り畳まれて前記コネクタに差し込まれるTABテープである。
【0017】
また本発明は、絶縁テープ上に金属箔からなる電気配線を具備してなり、その端部を折り畳んでコネクタに差し込むためのTABテープの製造方法において、コネクタに接続する電気配線の各導体を前記端部まで形成し、その導体間に複数の折曲げ用孔を幅方向に配列させて設けると共に、前記端部の幅方向にソルダーレジストを形成するTABテープの製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、補強板を貼り付けることなくコネクタに接続できるTABテープを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】折曲げ用孔を具備するTABテープの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るTABテープの構成図である。
【図3】従来のTABテープを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るTABテープは、その基本構造を従来のTABテープと同じくするため、同じ部材には同じ符号を附して説明を省略する。
【0021】
まず本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、補強板を設けることなく容易にコネクタへ接続できる構造として、TABテープの端部を折り畳むことで端部の厚さを調節し、この端部をそのままコネクタへ差し込む構造を考えた。
【0022】
この構造を実現すべく、図1(a)および(b)に示すように、TABテープ11には複数の折曲げ用孔12が幅方向(図1(b)では上下方向)に配列して形成される。
【0023】
折曲げ用孔12は、絶縁テープ32上に電気配線が形成された後に、パンチング加工などにより形成される。この際、端部48aの各導体33aの間隔が、形成する折曲げ用孔12の寸法にあわせて設定されていると、パンチング加工時に導体33aを損傷するなどせず、好ましい。ただし、折曲げ用孔12を形成する時期は特に限定されるものではなく、例えば絶縁テープ32上に電気配線を形成するよりも前に、予め形成するようにされてもよい。
【0024】
また、導体33aと折曲げ用孔12との形状は特に限定されるものではなく、導体33aの電気的特性や、TABテープ11の機械的強度を損なわない程度に適宜変更可能である。
【0025】
TABテープ11を用いて液晶画面40などの出力装置を本体基板42へ接続する際には、TABテープ11の端部48aを折曲げ用孔12に沿って、絶縁テープ32を内側として折り畳むようにされる。
【0026】
折曲げ用孔12を形成した部分では、周囲と比較して部材の強度が低くなるためTABテープ11の端部48aを容易に折り畳むことができ、これによって端部48aの厚みを調節することができる。
【0027】
なお、図1(b)に示すように、TABテープ11の両側端(図1(b)では上下側端)に、折曲げ用孔12と断続する切欠孔12eを形成すると、端部48aをより容易に折り畳めるようになるため、好ましい。
【0028】
この切欠孔12eを形成する時期は特に限定されず、折曲げ用孔12と同時に形成したり、あるいはTABテープ11をコネクタ41に接続する直前に作業現場で形成するようにされてもよい。
【0029】
このようにされることで、図3に示す従来のTABテープ31のように端部48に補強板49を貼り付けるなどすることなく、TABテープ11を容易にコネクタ41へ差し込み、かつこれを固定することができる。
【0030】
ところで、TABテープ11は、その製造コストを低減すべく、長尺の絶縁テープ32上に所定寸法の電気配線を長尺方向に繰り返して形成し、かつ、各電気配線間を繋げて連続的に形成し、これを切断して製造されるため、電気配線が形成された絶縁テープ32を切断したとき、電気配線の各導体33aは切断された端部48aまで形成されていることが想定される(すなわち、TABテープ11の端部48aまで導体33aが形成される)。
【0031】
したがって、TABテープ11をコネクタ41に差し込んで固定すべく折り畳まれる端部48a上には、導体33aが露出することになる。
【0032】
TABテープ11の端部48aを折り畳んでコネクタ41に差し込む作業は、作業者が素手で行うことが想定され、端部48aを折り畳む際に、端部48aの導体33aに作業者の指から皮脂が付着し、導体33aが腐食されるというおそれがあった。
【0033】
そこで本発明者は、端部上に露出した導体に作業者が直接触れることなく、TABテープを折り畳み、かつ、これをコネクタに差し込むことができる構造について検討した結果、本発明に至った。
【0034】
すなわち、本発明に係るTABテープ21では、図2(a)および(b)に示すように、絶縁テープ32上に形成される電気配線の各導体33aが、コネクタ41への差込側の端部48aまで形成されると共に、各導体33a間に複数の折曲げ用孔12がTABテープ21の幅方向(図2(b)では上下方向)に配列して形成され、さらに端部48aの幅方向に、ソルダーレジスト35aが形成される。
【0035】
このようにされることで、本発明に係るTABテープ21では、折曲げ用孔12に沿って端部48aを折り畳むことでコネクタ41への差し込みを容易にできると共に、端部48aの折曲げの際には、作業者がソルダーレジスト35aを介してTABテープ21を取り扱うようにでき、作業者の皮脂がTABテープ21の導体33aに付着し、これにより導体33aが腐食されることを抑止できる。
【0036】
なお、図2(b)に示すように、TABテープ21の両側端(図では上下側端)までソルダーレジスト35を形成するようにされると、両側端の強度が増し、作業者が容易にTABテープ21を取り扱えるようになるため、さらに好ましい。
【0037】
以上要するに、本発明に係るTABテープにおいては、TABテープの端部に折曲げ用孔を形成すると共に、その端部にソルダーレジストを幅方向に形成することで、従来のTABテープの構造のように補強板を貼り付けることなく、端部を折り畳むことでその厚さを調整してコネクタへの差し込みを容易にでき、かつ、端部の折り畳みの作業の際に作業者の皮脂が付着して導体が腐食されることを防止することができる。
【符号の説明】
【0038】
11 TABテープ
12 折曲げ用孔
32 絶縁テープ
33a 導体
34a 金属箔
41 コネクタ
48a 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁テープ上に金属箔からなる電気配線を具備してなり、その端部を折り畳んでコネクタに差し込むためのTABテープにおいて、コネクタに接続する電気配線の各導体が前記端部まで形成され、その導体間に複数の折曲げ用孔が幅方向に配列されて設けられると共に、前記端部の幅方向にソルダーレジストが形成され、前記折曲げ用孔に沿って前記端部が折り畳まれて前記コネクタに差し込まれることを特徴とするTABテープ。
【請求項2】
絶縁テープ上に金属箔からなる電気配線を具備してなり、その端部を折り畳んでコネクタに差し込むためのTABテープの製造方法において、コネクタに接続する電気配線の各導体を前記端部まで形成し、その導体間に複数の折曲げ用孔を幅方向に配列させて設けると共に、前記端部の幅方向にソルダーレジストを形成することを特徴とするTABテープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−15370(P2012−15370A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151177(P2010−151177)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】