説明

TACI融合分子を使用する自己免疫疾患を治療するための方法

【課題】必要とする患者にTACI−Ig融合分子を投与することを含む、関節リウマチを含む自己免疫疾患の治療のための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】ある態様において、当該TACI−Ig融合分子は、BIyS及びAPRILの増殖誘導機能を鈍く、抑制又は阻害するために十分量で投与される。即ち患者の関節リウマチの治療方法であって、以下の:(i)BlySに結合するTACI細胞外ドメイン又はその断片;並びに(ii)ヒト免疫グロブリン定常領域、を含む融合分子を含む組成物を、当該関節を治療するために有効量で投与する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2006年5月15日に出願された米国仮出願第60/747,270号に基づく利益を主張し、当該基礎出願をここに全体として本願明細書中に援用する。
【0002】
本発明の分野
様々な態様において、本発明は、TNFファミリーの増殖因子の機能を阻害するTACI−Ig融合タンパク質を投与することを含む、自己免疫疾患又は免疫系の障害を治療するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
BlySリガンド/受容体ファミリー
3つの受容体、TACI(膜貫通活性化因子又はカルシウム変調サイクロフィンリガンド相互作用因子)、BCMA(B細胞成熟抗原)、及びBAFF−R(TNFファミリーに属する、B細胞活性因子のための受容体)は、2つの増殖因子、BlyS(Bリンパ球刺激因子)及びAPRIL(増殖誘導リガンド)の固有の結合親和力を有するものと同定されている(Marstersら,Curr Biol 2000;10(13):785−788;Thompsonら,Science 2001;293:2108−2111)。結果として、BlySは、3つの受容体を通じてシグナルを伝達することができるが、一方APRILは、TACI及びBCMAのみを通じてシグナルを伝達することが可能である。さらに、BLyS及びAPRILの循環ヘテロ三量体複合体(3つのタンパク質の集団、BLyS及びAPRILの各々の1又は2のコピーを含む)は、全身性免疫ベースのリウマチ障害の患者から摂取された血清サンプル中に同定され、インビトロでB細胞増殖を導くことが示されている(Roschkeら,J immunol 2002;169:4314−4321)。全3つの受容体のためのIg融合タンパク質のうち、TACI−Fc5のみが、前記ヘテロ三量体複合体の生物活性を阻害した(Roschkeら,J immunol 2002;169:4314−4321)。
【0004】
BLyS、及びAPRILは、B細胞成熟、増殖、及び生存の強力な刺激因子である(Grossら,Nature 2000;404:995−999.Grossら,Immunity 2001;15(2):289−302.Groomら,J Clin Invest 2002;109(1):59−68)。BLyS、及びAPRILは、自己免疫疾患、特にB細胞に関するものの持続性のための必要となり得る。高レベルのBLySを発現するように処理されたトランスジェニックマウスは、免疫細胞障害を示し、全身性紅斑性狼瘡の患者にみられるものと似たような症状を示す(Chesonら,Revised guidelines for diagnosis and treatment.Blood 1996;87:4990−4997.Cheemaら,Arthritis Rheum 2001;44(6):1313-1319)。
【0005】
同様に、BLyS/APRILの増大レベルは、SLE患者、及び関節リウマチのような様々な自己免疫疾患の患者から採られた血清サンプル中に測定されており(Roschkeら,J immunol 2002;169:4314−4321;Mariette X.,Ann Rheum Dis 2003;62(2):168−171;Hahneら,J Exp Med 1998;188(6):1185−1190)、動物モデルからヒトへのBLyS及び/又はAPRIL、及びB細胞媒介疾患の協会を拡大している。
【0006】
関節リウマチ
関節リウマチ(RA)は、末梢関節の非特異的で、通常左右対称の炎症により特徴付けられる慢性炎症性疾患であり、関節及び関節周辺の構造の進行性破壊をもたらす。人口の約1%が影響を受け、男性の2〜3倍超が女性である。当該疾患の正確な因果関係はわかりにくいが、強力な証拠はRAが自己免疫疾患であることを示唆する。いくつかの自己抗体は、より重篤な疾患に頻繁に関連するリウマチ因子(RF)、抗核因子、及び天然コラーゲンII型とシトルリン化ペプチドに対する抗体を含むRAに関連する。
【0007】
RAの発症において重要となり得る顕著な免疫異常は、滑液細胞及び血管炎にみつかった免疫複合体を含む。これらの複合体への寄与は、滑膜組織に浸透する及び炎症性サイトカインを産生する血しょう細胞、及びTヘルパー細胞により産生される抗体(例えばRF)である。マクロファージ、及びそのサイトカイン(例えば、TNF、GMCS−F)も、罹患滑膜において豊富である。接着分子の増大レベルは、炎症細胞移動、及び滑膜組織内の滞留に寄与する。増大されたマクロファージ由来の上皮細胞も、いくつかのリンパ球と共に、有名である。
【0008】
RAの発症におけるT細胞の役割は既に確立されている一方、B細胞の役割は、よく知られていない。にもかかわらず、B細胞は、RA発症において多くの潜在的役割を果たし、抗原提示細胞として作用すること、炎症性サイトカインを分泌すること、リウマチ因子自己抗体産生すること、及びT細胞を活性化することを含む。B細胞の潜在的な役割は、RA患者において、CD20に関するモノクローナル抗体であるリツキシマブを試験する臨床試験の陽性結果によりさらに支持され、メトトレキサート又はシクロホスファミドとの組み合わせで与えられるとき最も顕著である。これらの発見は、B細胞がRAの治療的介入ための適切な標的であることを示唆する。
【0009】
RAの確立された治療は、ヒドロキシクロロキン、スルファラジン、メトトレキサート、レフルノミド、リツキシマブ、インフリキシマブ、アザチオプリン、D−ペニシラミン、ゴールド(経口又は筋肉内)、ミノサイクリン、及びシクロスポリン、プレドニゾンの如きコルチコステロイドの如き疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、並びに非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)を含む。これらの治療は、通常非特異的であり、重大な副作用に頻繁に関連し、そして関節破壊の進行に著しくは影響を与えない。結果として、RAを治療するための新たな方法を開発するための必要性が、当該分野において長年に渡り必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
様々な態様において、本発明は、自己免疫疾患を治療する方法に関する。例証として、本発明の方法は、ヒト免疫グロブリン定常領域、並びにBlyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメイン又はその断片を含む組成物を患者に投与することを含む。
【0011】
他の態様において、本発明は、TACI細胞外ドメイン、又はBlyS及び/又はAPRILに結合する能力を保持するそのいずれかの断片を含むTACI−Ig融合分子を使用して、RAを含む自己免疫疾患を治療する方法を含む。
【0012】
他の態様において、本発明は、ヒト免疫グロブリン定常鎖、及びTACI細胞外ドメイン、あるいはBlyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメインの断片を含む融合分子の有効量を必要とする患者に投与することを含む、RAを治療する方法を含む。ある態様において、TACIの細胞外ドメインの断片は、1又は2のシステイン反復モチーフを含む。他の態様において、前記断片は、TACIの細胞外ドメインの30〜110のアミノ酸を含む断片である。さらに他の態様において、前記断片は、TACIの細胞外ドメインの1〜154のアミノ酸を含む断片である(配列番号1)。
【0013】
他の態様において、本発明は、配列番号2の配列を有するヒト免疫グロブリン定常領域であるFc5、及び配列番号1の配列を有するTACI細胞外ドメインを含む融合ポリペプチドTACI−Fc5を含む組成物を患者に投与することによりRAを治療する方法を含む。
【0014】
本発明の他の態様において、本発明は、配列番号2の配列を有するヒト免疫グロブリン定常領域。並びにBlyS、及び/又はAPRILに結合し、配列番号1の配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%一致するポリペプチドを含む融合ポリペプチドを含む組成物を患者に投与することによりRAを治療する方法を含む。
【0015】
他の自己免疫疾患は、ヒト免疫グロブリン定常鎖、並びにTACI細胞外ドメイン又はBlyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメインの断片を含む融合ポリペプチドを患者に投与することによる本発明の方法により治療され得る。かかる自己免疫疾患は、非制限的に、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、グレーブス病、I型及びII型糖尿病、多発性硬化症、シェーグレン症候群、強皮症、糸球体腎炎、移植による拒絶反応、例えば、器官及び組織同種並びに異種移植による拒絶反応、そして移植片対宿主拒絶反応を含む。
【0016】
他の態様において、本発明の方法は、患者の体重1kgにつき約0.01mg〜約10mg/kg体重の量でTACI−Ig融合分子をRAの患者に投与することを含む。当該TACI−Ig融合分子は、所定の間隔で繰り返し投与され得る。例証として、当該分子は、12週間の間に7回又はそれ超の回数、投与され得る。このTACI−Ig融合ポリペプチドによる初期治療に続いて、少なくともさらに2週間超の間に隔週(1週間おき)頻度でポリペプチドが投与され得る、例えば、当該ポリペプチドは、さらに2〜30週間の間に隔週頻度で投与され得る。あるいは、当該ポリペプチドは、週1回又は毎日の頻度で投与され得る。
【0017】
本発明の方法に従って、TACI−Ig融合ポリペプチドは、皮下、経口又は静脈内で、並びに他の薬剤と組み合わせで、RAの患者に投与され得る。かかる薬剤は、非制限的にヒドロキシクロロキン、スルファラジン、メトトレキサート、レフルノミド、リツキシマブ、インフリキシマブ、アザチオプリン、D−ペニシラミン、ゴールド(経口又は筋肉内)、ミノサイクリン、及びシクロスポリンの如きDMARD、プレドニゾンの如きコルチコステロイド、NSAIDS、サイトカイン、抗サイトカイン、並びにインターフェロンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、TACI−Fc5治療の用量漸増樹形図を示す。
【図2】図2は、TACI−Ig分子の皮下注射のために使用され得る患者の体部の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の詳細な説明
様々な態様において、本発明は、BlyS、及び/又はAPRILとそれらの受容体との相互作用を阻害することによる、患者の自己免疫疾患を治療するための方法に関する。当該患者は、ヒトの如き哺乳類となり得る。
【0020】
ある態様において、前記方法は、(1)TACI細胞外ドメイン又はBlyS及び/若しくはAPRILと結合するその断片と少なくとも部分的に一致するドメインを含むポリペプチド、並びに(2)ヒト免疫グロブリン定常鎖を含む阻害剤を利用する。
【0021】
ある態様において、本発明の方法は、ヒト免疫グロブリン定常鎖、及びTACI細胞外ドメインとの少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、あるいは少なくとも約99%の配列同一性を有するいずれかのポリペプチドを含む融合分子を利用する。米国特許番号第5,969,102号、同第6,316,222号、及び同第6,500,428号、並びに米国特許第特許出願第09/569,245号、及び同第09/627,206号(その全内容は、本願明細書中に援用される。)は、TACIの細胞外ドメインのための配列、並びにBlyS及びAPRILを含むTACIリガンドと相互作用するTACI細胞外ドメインの特異的断片を開示する。TACIの細胞外ドメインのある例証的な断片は、1又は2のシステイン反復モチーフを含む。他の例証的な断片は、TACIの細胞外ドメインの30〜100アミノ酸又はその断片を含む断片である。さらに他の例証的な断片は、TACI(配列番号1)の細胞外ドメインの1−154アミノ酸又はその断片を含む断片である。
【0022】
本発明の方法に有用な他の融合分子は、以下の:ヒト免疫グロブリン定常鎖と完全TACI細胞外ドメイン又はそのオルソログとの融合ポリペプチド、あるいはヒト免疫グロブリン定常鎖とBlyS及びAPRILリガンドと結合できる細胞外TACIドメインのいずれかの断片との融合ポリペプチドを含む。本発明の方法において使用される当該融合分子のいずれかは、TACI−Ig融合分子として言及される。
【0023】
TACI−Fc5は、本発明の方法において有用なTACI−Ig融合分子の内の1つである。TACI−Fc5は、配列番号1における約1番のアミノ酸から約154番のアミノ酸の受容体TACIの細胞外、リガンド結合部分、並びにヒトIgGのFc修飾部分であるFc5(配列番号2)を含む組換え融合ポリペプチドである。本発明の方法に有用な他のTACI−Ig分子は、配列番号2のポリペプチドを含む融合分子と、BlySに結合し得、かつ配列番号1と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、あるいは少なくとも約99%の一致するポリペプチドを含む。
【0024】
本発明の態様は、RAを治療するためのTACI−Ig融合分子を使用する方法を含む。本発明の方法により治療されうる他の自己免疫疾患は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、グレーブス病、I型及びII型糖尿病、多発性硬化症、シェーグレン症候群、強皮症、糸球体腎炎、器官及び組織の同種や異種拒絶の如き移植による拒絶反応、移植片対宿主拒絶反応、あるいはかかる疾患に関する循環成熟B細胞、及び免疫グロブリン分泌細胞、及び溶解性免疫グロブリンの数を低減することにより治療され得るいずれかの他の自己免疫疾患を含む。
【0025】
本発明の態様は、ヒト免疫グロブリン−定常領域、並びにBlyS、及び/又はAPRILに結合し得るTACI細胞外ドメインのいずれかの断片を含むポリペプチドを含む融合分子を患者に投与することによる治療方法を含む。
【0026】
TACI−Ig融合分子は、経口、静脈内又は皮下を非制限的に含む、いずれかの好適な投与経路により患者に投与され得る。
【0027】
本発明の方法に有用なTACI−Ig製剤は、製造され、冷凍、滅菌、等張液として保存され得る。かかる製剤は、塩化ナトリウム、リン酸緩衝液、及び水酸化ナトリウム又はO−リン酸(pH6.0)を含み得る。TACI−Ig製剤は、他の薬剤との組み合わせで患者に投与され得る。かかる薬剤は、非制限的に、ヒドロキシクロロキン、スルファラジン、メトトレキサート、レフルノミド、リツキシマブ、インフリキシマブ、アザチオプリン、D−ペニシラミン、ゴールド(経口又は筋肉内)、ミノサイクリン、及びシクロスポリンの如きDMARD、プレドニゾンの如きコルチコステロイド、NSAIDS、並びに痛みを緩和するための薬剤を含む。本発明の方法は、自己免疫疾患を治療する他の方法との組み合わせで使用され得る。かかる他の治療方法は、非制限的に、外科手術、針治療、理学療法、及び遺伝子療法を含む。TACI−Ig製剤は、他の治療方法の前、同時又は続いて投与され得る。
【0028】
TACI−Fc5は、in vitroで、B細胞増殖のBlyS活性化を阻害することを示している。TACI−Fc5によるマウスの治療は、骨髄、及び抹消血T細胞、単球、及び好中球を含む他の細胞系統におけるB細胞前駆体にわずかな影響を与えるB細胞の成長における部分的阻害をもたらす。血液中にTACI受容体の可溶型を過剰発現するように処理されたトランスジェニックマウスは、より少ない成熟B細胞を産生し、低減されたレベルの循環抗体を示す。TACI−Fc5トランスジェニックは、胸腺、骨髄、及び腸間膜リンパ節において正常な数の細胞を有した。胸腺、リンパ節、及び脾臓内のT細胞数において著しい違いはなかった(Grossら,Immunity 2001;15(2):289−302)。
【0029】
さらに、TACI−Igは、抗原に対する一次応答間に投与されようと2次応答間に投与されようと、マウスの免疫応答において抗原特異的抗体産生を阻害し得る。これらの研究において、生体外抗原投与に対するT細胞応答に影響は観察されなかった。全身性紅斑性狼瘡の動物モデルにおいて、TACI−Ig融合タンパク質による治療は、当該疾患の発現及び進行を制限することに効果的であった(Grossら,Nature 2000;404:995−999)。同様に、コラーゲン誘導関節炎のマウスモデルにおいて、TACI−Igは、コラーゲン特異的抗体の成長を阻害可能であり、炎症事例と疾患の発生率の両方を低減可能であった(Grossら,Immunity 2001;15(2):289−302)。
【0030】
TACI−Ig融合分子を含む組成物は、ある期間にわたり、患者に1回投与され得るか、繰り返し投与され得る。例えば、患者は、患者の症状が観察され得たあとに、TACI−Ig分子の1回の皮下注射を受けるかもしれない。症状の改善又は少なくとも安定を実証する患者は、さらなる期間にわたり、TACI−Ig融合分子を繰り返し投与され得る。当該さらなる期間は、約2〜約30週間となり得る。例えば、患者は、4週間の間に、TACI−Ig融合分子を3回投与され得る。あるいは、患者は、12週間の間にTACI−Ig融合分子を7回投与され得る。患者へのTACI−Ig分子の投与は、毎日、一日おき、毎週、隔週、毎月、隔月などとなり得る。
【0031】
TACI−Ig融合分子は、患者の症状を治療するために効果的な量で、患者に投与される。ある態様において、与えられた疾患又は障害に関する用語「治療」は、非制限的に、疾患又は障害の発達を止めることの如き当該疾患又は障害を阻害すること;疾患又は障害の回帰を引き起こすことの如き当該疾患又は障害を阻害すること;あるいは、疾患又は障害の徴候を緩和、阻害、治療することの如き当該疾患又は障害により引き起こされるかそれによりもたらされる症状を緩和することを含む。他の態様において、量は、患者の体重1kgあたり0.01mg〜10mg/kg体重の範囲となり得る。TACI−Ig融合分子による治療の最適な用量は、実施例5においてさらなる詳細を記載するが、図1の図表を使用することにより改良され得る。
【0032】
融合TACI−Ig分子は、好適な方法においてデリバリーされ得る。ある態様において、分子は腹膜注入によりデリバリーされる。ある態様において、腹膜注入は、皮下注射を介する。他の態様において、腹膜注入は、腹部前壁に投与される。用量を投与するために複数の注入が必要とされるとき、当該注入は、できるだけ近くのように、数センチメートル離れて時間内にかなり近くに投与され得る。繰り返し薬剤投与のために、腹部前壁上の投与部位は、循環又は変化させられ得る。腹部前壁への皮下注射の例示的領域を図2に示し、それは、右上外部領域、左下外部領域、右下外部領域、左上外部領域、中央下外部領域、並びに右及び左の大腿部及び上腕を含む(図2)。あるいは、本発明のTACI−Ig融合分子は、タブレット、カプレット、液組成又はゲルなどの形態で、静脈注射又は経口を介してデリバリーされ得る。
【実施例】
【0033】
実施例1
実験動物モデルにおけるTACI−Fc5の薬理学、毒物学、及び薬物動態学試験
TACI−Fc5を、免疫系の機能的制限を直接評価する機会を提供する宿主抵抗モデルにおいて評価した。マウスを、TACI−Fc5治療の間、インフルエンザウイルスで負荷した。ポジティブ対照として使用されるデキサメタゾンは、強化及び延長されたウイルス感染をもたらした。皮下経路によるTACI−Fc5の単回投与は、循環B細胞、総IgG及びIgM、並びにインフルエンザ特異的IgG及びIgMを低減したが、ウイルス感染を除去する動物の能力を低減しなかった。
【0034】
主要安全性薬理学試験は、TACI−Fc5が、最大80mg/kgのSC用量まで、マウス又はサルにおける神経系、呼吸器系、及び循環系の主要な変化を導かないことを示した。マウスにおいてのみ、80mg/kgで軽微で一時的な刺激効果を提示し得る僅かに増大した超覚醒かつ自発運動を示したが、20mg/kgと等しい無影響量(NOEL)であった。
【0035】
静脈内(IV)又はSC経路による単回投与としてマウスに投与したとき、TACI−Fc5は、最も高い技術的に可能な用量の1200mg/kgまで、動物の死亡又はかなりの全般的又は局所的異常効果を誘発しなかった。
【0036】
240mg/kgの用量レベルでのSC経路による単回投与としてのTACI−Fc5のサルへの投与は、死亡又は他の主要な毒作用をもたらさなかった。
【0037】
2日おきに5、20、及び80m/kgの用量でマウスに皮下経路でTACI−Fc5を投与した2又は4週間後に得られた結果に基づいて、この化合物は最大80mg/kgまでの用量でこの種において許容され得ることが結論づけられ得る。
【0038】
免疫系に限定される治療関連変化を、全用量で明らかとした。これらの変化は、B細胞の総数、及び成熟B細胞の数、及びIgG及びIgM血清レベルにおける低減に関係した。脾臓、及びリンパ節において実施された免疫組織学試験は、T細胞の数を変化させることなく、B細胞に限定された減少を裏付けた。これらの全変化、ある場合には時間及び用量関連の変化は、非常に高用量のTACI−Fc5の投与後の反応種において期待されるのと同程度に拡大された薬理効果と考えられた。全体としては、これらの効果は、経時的な進行の主な徴候なしで、治療の2及び4週間後に示された。それらは、低減されたB細胞数を除き、治療停止の4週間後、ほぼ完全に元に戻った。
【0039】
B細胞の変化可逆性を確認するために、マウスにおけるさらなる試験を、1日おきに4週間与えられた5及び20mg/kgの用量で、より長い回復期間において実施した。総B細胞数及び成熟循環B細胞数の回復は、5mg/kgの停止2ヶ月後、及び20mg/kgの停止4ヵ月後に達成された。さらに、注入は、媒体対照と比較して、全用量における注入部位での炎症性変化の僅かな増大を導いた。
【0040】
サルにおけるTACI−Fc5の皮下投与は、連続4週間与えたとき、2日おきに5、20又は80mg/kgのいずれの用量でも、毒性の主な徴候を導かなかった。
【0041】
局所的な忍容性は、最も高用量の試験まで及びそれを含むと十分に考えられた。炎症源(主に血管周囲単核細胞、及び好酸性細胞浸潤物)の用量関連かつ可逆的な僅かな又は中程度の変化を導入したが、外因性タンパク質の局所的存在に主に関連すると考えられた。高用量でのみ、数匹の動物が、それらの内の1つにおけるのう胞形成に関連する僅かな又は中程度の亜急性炎症を示した。
【0042】
リンパ球サブセット定量での循環B細胞数減少、並びに脾臓辺縁帯領域(B細胞依存領域として知られる)の組織学的減少、そして総IgG及びIgM血清レベルを示した。それらは、in vitro及びin vivoの薬理実験により示されたように、TACI−FcSの薬理特性の結果とみなされた。それらの程度を、動物に高用量の試験化合物を投与する毒物学試験において予想されるように、拡大した。低血清IgG及びIgMレベルと脾臓リンパ球枯渇は停止後1ヶ月内に明らかな回復傾向を示したが、総B細胞数及び成熟循環B細胞数は、回復のためのより長期間の必要性を示唆し、似たような状態を示さなかった。
【0043】
治療期間(4週間)の最後に、高用量群(80mg/kg)の雌雄は、対照と比較して、平均総タンパク質値において、僅かなしかし統計的に有意な減少を示した。減少への僅かな傾向も、週に2回の同用量で、及び回復期間の最後で見られた。
【0044】
投与期間の終了時の高用量の雌における血清蛋白質の変化は、グロブリンの減少、並びにアルブミンパーセンテージ及びアルファ−1−グロブリン画分の増大を含んだ。アルファ−1−グロブリン画分も、第3群の雌(20mg/kg)における対照よりも高く示された。
【0045】
TACI−Fsの免疫原性は、マウス(数匹の雌のみが、治療期間中及び治療期間後、低い値の循環結合抗体を示した。)、及びサル(数匹において回復期間後に低い値がみられた)の両方のおいて低かった。いずれの種においても抗体を無力化する証拠はなかった。
【0046】
TACI−Fc5を、再生及び生殖能力(雌雄のマウスにおける生殖能力試験、交配の前と最中から注入期間まで、5、20、及び80mg/kg/一日おきの用量でSC経路により処理した)、並びに胚−胎生期発達(雌のマウス及びウサギにおける胚−胎児発達試験、器官形成期に5、20、及び80mg/kg/一日おきの用量でSC経路により処理した)の毒物を検出するためにin vivo試験の標準バッテリーで試験した。
【0047】
マウスにおける受胎試験は、対照群と比較して、TACI−Fc5の20及び80mg/kg/一日おきの暴露後、注入前と後の死において、用量依存的増大を示した。
【0048】
胚−胎児発達試験のマウスにおいて得られたデータの評価は、いずれの用量においても胚−毒作用がみられず、化合物依存性胎児の奇形を導かなかったことを示した。
【0049】
ウサギにおいて、胚−胎児発達試験は、20又は80mg/kg/1日おきで処理された妊娠動物において、用量依存的低体重増量、及び低飼料消費を引き起こしたことを示した。上記母体変化を、2つの高用量において、吸収と低胎児体重との増大比と関連付けた。
【0050】
これらの結果は、子宮におけるマウス胚盤胞の移植に関するTACI−Fc5の可能性のある効果を示唆する。母体体重増量と飼料消費に関するTACI−Fc5の観察される効果は、器官形成の間20又は80mg/Kg/1日おきに曝されたウサギにおけるに同腹生存能力関する観察効果に適当に関与し、胎児に関するTACI−Fc5の直接的毒性はなかった。これらの2つの動物種において、奇形はTACI−Fc5処理のせいではなかった。
【0051】
さらに、雌雄性腺と副性器の組織学的検査を、マウスとサルにおいて、SC経路により行われる2週間及び1ヶ月の毒性試験において実施した、当該試験において、TACI−Fc5を各々1日おき又は2日おきに投与し、処理依存的効果の証拠はなかった。
【0052】
ウサギにおける局所耐性試験は、70mgmLで、TACI−Fc5製剤を皮下経路によりウサギに注入するときに局所的に耐えることを示した。
【0053】
IV及びSC経路による雄マウスにおける単回投与の薬物動態学試験を、1mg/kgの用量での静脈内経路、又は1、5、15mg/kgの皮下経路のいずれかにより、実施した。
【0054】
最大吸収までの時間(tmax)を、約40〜50時間となるように計算されるt1/2と共に、4時間〜16時間で見積もった。
【0055】
融合様プロフィールを、IVボーラス投与後、最初の30分間に観察し、その後、44時間の排出半減期でTACI−Fc5を体から除去した。皮下投与後、1、5、及び15mg/kgの3回投与で得られたAUC(曲線下面積)間の比は、1:5:8対1:5:15の用量比であって、高用量での用量比例性の損失を示唆する。
【0056】
皮下経路によるTACI−Fc5の生物学的利用能は、マウスにおいて、1、及び5mg/kgの用量で76、及び89%だったが、15mg/kgで予想されたよりも低かった(0、42;静脈内1mg/kg用量に対して計算した)。明らかな排出半減期が変化しないので、高用量で観察されるより低い生物学的利用能を、クリアランスと分布量の両方の増大により、より可能性があるのは注入部位での製剤沈殿に起因する低減された吸収により、説明できた。
【0057】
IV及びSC経路による雄サルにおける単回投与の薬物動態学試験を、1mg/kgの用量での静脈内経路、又は1、5、15mg/kgの皮下経路のいずれかにより、実施した。
【0058】
6匹の雄サルを3匹の2つの群に分け、2週間のウォッシュアウト期間により分離された2回の投与を受けさせた。第1期間の処理は1mg/kgIV(第1群)、及び1mg/kgSC(第2群)であり、第2期間の処理は5mg/kgSC(第1群)、及び15mg/kgSC(第2群)であった。
【0059】
最大吸収までの時間(tmax)を、約120〜190時間となるように計算されるt1/2と共に、6時間〜8時間で見積もった。
【0060】
融合様プロフィールを、IVボーラス投与後、最初の15分間、3匹のサルの内2匹において観察し、その後、179±29時間の排出半減期でTACI−Fc5を体から除去した。定常状態で分配量、Vssは、382±82mL/kgの細胞内液量に近い量であった。
【0061】
皮下投与後、AUC対1用量比例性はよかった、すなわち、5、及び15mg/kgのSC投与について216、1182、及び2732μg/mLだった。皮下経路によるTACI−Fc5生物学的利用能(1mg/kgのIV用量に対して計算された)は、低、中、及び高用量で、0.92、1.02、及び0.77だった。それ故、TACI−Fc5は、皮下経路によりほとんど完全に吸収された。
【0062】
低レベルのTACI−Fc5は、全6匹のサルについて、第2期間の投与前サンプル中に見出された(IV又はSC経路による1mg/kg用量、第1期間と、各々5又は15mg/kgの用量、第2期間の間)、というのは、2週間のウォッシュアウト期間にたった2半減期が経過するだけなので、投与された化合物の完全除去に不十分だからである(5半減期が必要である)。しかしながら、以前の投与のAUC寄与を、第2期間での総AUCのたった約2%を表すように見積もることができる。
【0063】
IgGの血清レベルは、IV投与後、10.2%の減少を示した。15mg/kgのSC投与は僅かに高い効果を示したが、1と5mg/kgの間のSC投与では違いが観察されなかった(1、5、及び15mg/kgで投与後、各々、8.6%、8.4%、及び12.3%の減少)。IgMの血清レベルは、IV投与後、18.0%の減少を示した。3つのSC投与の間においては違いが観察されなかった(1、5、及び15mg/kgで投与後、各々、23.5%、23.0%、及び24.2%)。
【0064】
実施例2
健康な志願者におけるTACI−FcS耐線量の検出
TACI−Fc5の第1相研究は、現在のところ完了している。これは、健康な男性志願者に皮下投与されたTACI−Fc5の単回投与の二重盲検法、プラセボ対照試験、用量漸増法、安全性を調査する逐次投与研究、薬物動態学、及び薬理学である。研究計画の概要を有用なデータの要約と共に以下に示す。
【0065】
TACI−Fc5を、健康な男性志願者に皮下投与されたTACI−Fc5の単回投与の二重盲検法、プラセボ対照試験、用量漸増法、安全性を調査する逐次投与研究、薬物動態学、及び薬理学において、健康な志願者に投与した。
【0066】
4群の対象を採用した。各用量群において、プラセボ注入を受けるために1の対象を無作為に選び、他はTACI−Fc5を受けた。投与後24時間で研究棟から退院した後、対象者に、計画された7週間の評価を基に、外来患者の用件を聞いた。TACI−Fc5の全身性、及び局所耐容性を、理学的検査所見、注入部位の痛み、注入部位での局所的耐容性(赤み、腫れ、損傷、及びそう痒)、生命兆候、12−リードECG(心電図)、安全性臨床検査評価、及び有害事象の記録により測定した。
【0067】
薬物動態及び薬力学マーカーを、投与後7週間を通して測定した。TACI−Fc5の薬力学効果を、FACS分析によるリンパ球サブセット{プラズマ細胞(CDl38+)、未成熟B細胞(CD19+、IgD−)、成熟B細胞(CD19+、IgD+)、Tヘルパー細胞(CD5+、CD4+)、細胞障害性T細胞(CD5+、CD8+)、総T細胞(CD5+)}、遊離BIyS、BLyS/TACI−Fc5複合体、IgG、IgM、抗TACI−Fc5抗体を含む多くのマーカーを使用して測定した。
【0068】
投与後3週間のデータの再検討に基づいて、用量増加を、研究プロトコールのアルゴリズムにより導いた。4つの群:2.1mgを受けた第1群;70mgを受けた第2群;210mgを受けた第3群;630mgを受けた第4群に投与した。
【0069】
結論:健康な男性の志願者に、0.03mg/kg〜9mg/kgの範囲の用量で、TACI−Fc5を単回皮下投与した。安全性及び耐容性データを、3週間のリンパ球サブセットのFACS分析と共に使用し、群間の用量増加を導いた。4つの群を試験し、表1に示した。
【0070】
【表1】

各投与レベルで、対象が標準的な投与を受けるように70kgの通常体重を仮定した。
希釈の間違いにより、第1群に投与された用量が計画(0.3mg/kg)していたよりも10分の1になった。この間違いは第1群の薬物動態データの再検討により発覚したが、第2群の投与後だった。
プラセボの1の対象を含む。
注入前に1の対象が退場した。
【0071】
人口学的基準特性を群による母集団として要約し、表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
全体として、平均+;SD年齢は30.7+7.4年で、平均体格指数は24.8kg/m2だった。
【0074】
TACI−Fc5は、全群においていい耐容性だった。理学的検査所見、生命兆候又は12リードECGに関する明確な作用はなかった。
【0075】
【表3】

【0076】
数人の患者において、投与部位で一時的な赤みや腫れを観察し、第3群及び第4群の全対象に赤みがでた。注入部位の事象はより高用量群において明らかに増大していたが、このことは注入の増大された量(及び回数)に関することだと思われる。
【0077】
48の処置における緊急有害事象が、7週間後に報告された。これらの大部分(44事象、91.7%)は軽度であり、残りは中程度であった(4事象、8.3%)を含めて、だった。この期間内に重篤な有害事象、及び重大な有害事象はなかった。投与されたTACI−Fc5の用量と有害事象の発生、強度又は指定関係の間には明らかに関連がなかった。期日までに報告された当該有害事象を表3に要約した。
【0078】
TACI−Fc5は、生じる著しい安全上の注意もなく、最大630mgまでの用量で良い耐容性を示すと考えられる。これらのデータは、提案された対象試験の目的用量を支持する。
【0079】
TACI血清濃度のノンコンパートメント分析を実施した。この予備的分析を、仮のサンプリング時間を使用して実施した。対象2、6、及び13は、測定可能な投与前濃度を有し、それ故、分析前に、投与後の全測定から基準濃度を差し引いた。2.1、70、210、及び630mgの単回皮下投与後の薬物動態パラメーターを表4に要約する。薬物濃度は、この用量レベルでデータ値を制限するTACI−Fc5の2.1mg投与後のアッセイの定量の限界に近かった。70mg及び上記の用量で、Tmax(最大吸収までの時間)は16〜36時間の範囲であり、全ての中間t1/2(曲線の終末部から計算される)は303時間だった。さらに、AUC(無限まで外挿される)及びCmaxは、用量比法よりも増大した。
【0080】
【表4】

【0081】
薬力学分析は、70、210又は630mgの単回投与後7週間における基準IgMレベルにおいて減少を示した。明確な用量反応関係は少ないサンプルサイズで確立され得なかったけれども、IgM減少の程度は、高用量群において最も高かった。70mg用量群における対象は、投与後7週間までに基準に対してIgMレベルの回復を明らかに示した。残りのより多い用量群におけるレベルは、この点において、抑制された。FACSにより測定されたIgGレベル又はリンパ球亜集団に関する明らかな効果はなかった。
【0082】
サンプリング期間のBLyS/TACI−Fc5複合体のレベルにおいて比例した増大があり、投与後約600時間までに安定に達した。結論として、健康な男性志願者において得られたヒトデータは、最大630mgまでの投与でTACI−Fc5が安全であり被験者が耐えられることを示した。自然で、起こりやすく、重篤な有害事象は、TACI−Fc5処置群とプラセボとの間で同程度だった。理学的検査所見、生命兆候、12−リードECGにおいて又は安全性研究所パラメーターにおいて、臨床的に重大な変化はなかった。投与部位の局所的耐容性は良かった。これらのデータは、BCMの被験者における提案された用量を支持する。
【0083】
健康な男性被験者における単回投与後、TACI−Fc5は、用量比例法において増大された16〜20時間のAUCでTmaxに達した。TACI−Fc5の平均半減期は、約300時間だった。薬力学効果は、70、210、及び630mgの用量でのIgMレベルに関して注目される。TACI−Fc5の単回投与後のIgG又はリンパ球亜集団に関する処置の明らかな効果はなかった。設定された試験プロトコールにおいて既に考慮されていない特に重篤又は重大な既知の若しくは予想されるリスクはなかった。
【0084】
実施例3
TACI−Fc5組成物によるRA患者の治療
RA患者を、TACI−Fc5の投与前に臨床的に評価する。基礎評価を、TACI−Fc5の最初の投与の直前に行われる評価として定義する。TACI−Fc5投与の最初の日を「第1日」として設定する。以下の手順を、TACI−Fc5薬剤を患者に最初に投与する前に完了する:ECG;バイタルサイン(VS)測定;身体検査;疾患活動性の評価(実施例6を参照のこと);身長と体重の測定(最初の投与及び追加の者のみ);日常検査(表5を参照のこと);尿中ヒドロキシピリジノリン/リジルピリジノリン(HP/LP)比の計算;遊離及び総TACI−Fc5血清濃度、遊離のAPRIL及びBlyS、BlyS/TACI−Fc5複合体の血清レベルの薬物動態(PK)及び薬力学(PD)測定、フローサイトメトリーによる細胞カウント、並びにTACI抗体の測定(最初の投与のみ);そして、リンパ球サブセット(血液は3つの管に分けられ、表6のようにFACS分析により表現される)、IgA、IgM、IgG(サブタイプを含む)、抗シトルリン化ペプチド自己抗体、リウマチ因子(IgA−RF、IgM−RF、IgG−RF)、C−反応性タンパク質(CRP)、TNF−α、IFN−γ、IL−6、IL−1、IL−12、及びIL−8を含む血液中のバイオマーカーの測定。患者のサブセットにおいて、針穿刺による関節鏡視誘導滑膜生検又は滑液サンプリングを実施し、その滑液中、PK、PD、及びバイオマーカー評価を実施する。反復投与群において、これら測定の多くの又は全てを、TACI−Fc5の次の投与の直前に実施する。
【0085】
【表5】

1:患者は、トリグリセリド測定前の約10時間絶食すべきである。
2:白血球数は、分化白血球数を含むべきである。
3:もしタンパク質、血液又は白血球(RBC又はWBC)が存在するならば、標本の顕微鏡検査を実施する。
【0086】
【表6】

【0087】
投与後約6時間、第6群を除いて、以下の評価:ECG;VS;並びにPK及びPDサンプリング(単回投与群に対してのみ)を実施する。
【0088】
TACI−Fc5による処置は、図1に概要を示した逐次投与増加群の設定の後である。第1群は第1日にTACI−Fc5の単回70mg投与を受ける。以下の群は、最大2940mgの投与量まで用量増加アルゴリズムに基づく投与を受ける。第2群は、1ヶ月の間に3回のTACI−Fc5の70mg投与を受ける。第3群は、210mgのTACI−Fc5の単回投与を受ける。第4群は1ヶ月の間に3回のTACI−Fc5の210mg投与を受ける。第5群は630mgのTACI−Fc5の単回投与を受ける。第6群は3ヶ月の間に3回のTACI−Fc5の420mg投与を受ける。
【0089】
PK、PD、及びバイオマーカーサンプルの回収、並びに安全性及び疾患活動性評価を含む投与後評価を、投与後最長14週間まで(単回投与群)、最長18週間(反復投与群2及び4)、最長26週間(反復投与群6)の事前に設定された間隔で、全群から完了する。表7は、第1、3、及び5群の、第2日から始まる投与後評価計画を記載する。表8は、第2、及び4群の、最終投与日(第30日)後の第1日から始まる投与後評価計画を記載する。表9は、第6群の、第2投与(第15日)の日から始まる投与後評価計画を記載する。注入部位反応、有害事象及び併用薬、並びに手順を全群に対する試験を通して測定する。有害事象データを、患者により同時に提供される情報に基づき患者の質問を通じて、身体検査の後、計画された又は無計画の試験訪問者で得る。
【0090】
因果関係にもかかわらず、たとえ治験薬を投与していなくても、しるし、兆候、異常検査所見又は基準(すなわち初回訪問時)と比較して問題となるか悪化している疾患の形でいずれかの厄介な医学的発生として、有害事象を定義する。有害事象の重篤度は、以下の定義を使用して評価され得る:(1)軽度、患者が事象又は兆候に気づいている;(2)中程度、日常活動レベルを妨げる又は低減するような不快感を患者が十分経験する;(3)重篤、患者が日常生活をできないほどの機能の著しい障害;及び(4)非常に重篤、その事象により患者の生命が危険にさらされる。
【0091】
TACI−Fc5の投与と有害事象の関係は、以下の定義を使用して評価され得る:(1)そう推定される、因果関係が臨床的/生物学的に非常にもっともらしく、有害事象の始まりとTACI−Fc5の投与と間のもっともらしい時間系列がある;(2)可能性あり、因果関係が臨床的/生物学的にもっともらしく、有害事象の始まりとTACI−Fc5の投与と間のもっともらしい時間系列がある;(3)関係ありそうにない、因果関係が関係ありそうになく、有害事象の別の確認された理由が最も関係ありそうである;及び(4)関係なし、因果関係が決定的に排除され得、有害事象の別の確認された理由が最も関係ありそうである。TACI−Fc5の投与の間、重篤度又は頻度においてより悪化しない基準で存在する病状は、有害事象と考えない。そう推定されるか又は可能性があることがTACI−Fc5の投与と関係ある場合を除き、RAの悪化を疾患評価の一環としてとらえ、有害事象とは考えない。
【0092】
【表7】

【表8】

A:病気に関する身体検査
B:ADA=血清中のCRP、ESR、及び尿中HP/LP比により測定される疾患活動性の評価
C:VIS=ワクチン接種状態
【0093】
【表9】

A:病気に関する身体検査
B:ADA=血清中のCRP、ESR、及び尿中HP/LP比により測定される疾患活動性の評価
C:VIS=ワクチン接種状態
【0094】
【表10】

A:病気に関する身体検査
B:ADA=血清中のCRP、ESR、及び尿中HP/LP比により測定される疾患活動性の評価
C:VIS=ワクチン接種状態
【0095】
TACI−Fc5の用量、投与計画、及び投与経路を、表10に示した。簡単に、18〜70歳の72人の男女のRA患者が含まれる。当該患者は、少なくとも6ヶ月間、活動的、中程度から重篤なRAの確定診断を受け、5以下のDMARDが機能せず、第1日より4週間又はそれ超の間、メトトレキサート以外のDMARDを使用していない。さらに、当該患者は、RF陽性であり、試験の間、及びTACI−Fc5の最終投与後3ヶ月まで、妊娠していない。これらの患者を6つの群に分ける。その群の3つは、8人の患者であり、2つの群は12人の患者であり、1つの群は24人の患者である。
【0096】
【表11】

【0097】
実施例4
TACI−Fc5注入手順
TACI−Fc5をデリバリーするためにもし皮下投与経路を選択したならば、分子は、以下の図(図2)に従って循環される腹壁、及び腹部に皮下に注入される。血管内に注入しないように注意する。皮膚を健康に保つには部位を循環することが非常に重要である。同じ部位における反復注入は、脂肪組織の傷や硬化を引き起こす。以下の領域は、注入のために使用され、下記のように循環されるべき(図2)である:左上外部領域への第1注入(図2、位置1);右下外部領域への第2注入(図2、位置2);左下外部領域への第3注入(図2、位置3);右上外部領域への第4注入(図2、位置4);及び中央下領域への第5注入(図2、位置5)。上述の循環スキームは、さらなる注入のために繰り返される。
【0098】
1用量につき1回超の注入を必要とする患者について、注入は、前記注入のために設定された部位領域(図2、位置1〜5)の12時の位置で始まり、1用量についての注入の必要な回数に応じて2時間、4時間、6時間、8時間、及び/又は10時間の位置といったように、連続して時計回りに循環する。注入は、互いに少なくとも2.5cm(1インチ)離し、時間内にできるだけ間に合わせて注入する必要がある。1の注入部位に1.5ml超の注入はできない。もし患者の腹部への注入が困難ならば、注入し得る別の領域は、大腿部と上腕である。
【0099】
注入反応部位の共通兆候は、当該注入部位でのそう痒、圧痛、高温、及び/又は赤みを含む。
【0100】
実施例5
TACI−Ig分子を投与するための用量増加プロトコール
RAにおけるTACI−Fc5の評価のためのこの用量増加プロトコールで、第1群における6人の患者への投与を実施した。第1群は70mgの単回投与を受け、その後4週間を観察期間とする。安全性審査委員会(SRB)が投与後4週間で回収される安全性データを審査し、SRBの推薦で、用量を、210mgに増加させ、1ヶ月間に渡り(第2群)又は単回投与として(第3群)投与する。第2群として9人の患者に投与し、第3群として6人の患者に投与する。次いで、SRBが投与後6週間で第3群から回収される安全性データを審査し、SRBの推薦で、用量を、630mgに増加させ、1ヶ月間に渡り(第4群)又は単回投与として(第5群)投与する。第4群として9人の患者に投与し、第5群として6人の患者に投与する。次いで、SRBが投与後6週間で第5群から回収される安全性データを審査し、SRBの推薦で、3ヶ月間に渡り2940mgを第6群に投与する。第6群として18人の患者に投与する。
【0101】
選択された用量は、TACI−Fc5は5、20、及び80mg/kgで耐容性があることを示す、カニクイザル及びマウスにおける反復SC毒物学試験に合理的に基づく。TACI−Fc5薬力学活性の予想結果である免疫細胞における効果は別として、唯一見出されるものは、サルにおける80mg/kgの最も高用量のSC投与での血しょう総タンパク質の著しい低減及び僅かな皮下反応、並びに80mg/kgの用量でのマウスにおけるIrwin試験の一時的多動性であった。それ故、20mg/kgが、両方の種において、不都合な調査結果と関連しない最も高用量である。
【0102】
さらに、2.1、70、210、及び630mgの用量を、健康な志願者に単回皮下投与で投与する。これらの用量で見られた安全性又は耐容性の問題はない。健康な志願者における前臨床データ及び予備研究結果に基づいて、RAの患者に対する適当な出発用量として70mgを選択している。
【0103】
本発明のRA患者において見られる用量及び投与計画は、月に2回、1mg/kg〜9mg/kgの範囲であり(70kgの人間を標準とした場合である)、サルにおいて試験された用量範囲とよく合致するものである。サルにおける反復投与は、明らかな用量反応関係を示している。
【0104】
実施例6
疾患進行の評価
疾患の進行は、疾患活動性指数、疾患活動性の医師の全体的評価、疾患活動性の患者の全体的評価、朝のこわばり、並びに痛み、疾患活動性、及び身体機能の患者の評価、により測定される。
【0105】
疾患活動性指数(DAS)は、RAの患者における疾患活動性を測定するために開発された統合インデックスである。それは、EULAR応答基準との組み合わせにおける臨床試験における使用のために、広範囲にわたって有効とされる。原型のDASは、リッチー関節指数、44関節腫脹数、ESR、及びVASに対する全体的な健康評価を含んだ。圧痛及び腫れに対する28非等級関節数の検証後、DAS28は28関節指数を含むように開発されている。DAS及びDAS28の結果について、直接的に互換性はない。
【0106】
DASを使用するとき、いくつかの閾値は、高疾患活動、低疾患活動又は寛解のために開発されている。さらに、応答基準はDASに基づき開発されており、それ故、患者のDASを2つの時点で測定するとき、応答基準を評価し得る。
【0107】
前記DAS28を計算するために必要とされる疾患変数は、以下の:関節腫脹数(28関節);圧痛関節数(28関節);ESR(1時間後、mm);患者の全体的健康(GH)又は全体的疾患活動性{100mmの視覚アナログ尺度(VAS)}、本発明において疾患活動性の患者の全体的評価と名付けられている、である。28関節腫脹指数及び圧痛間接指数は、以下の関節:肩;肘;手首;中手指節関節;近位指節間関節;及びひざを含む。
【0108】
DASを計算するために使用される式は、以下の:DAS28=0.56*sqrt(圧痛28)+0.28*sqrt(腫脹28)+0.70*In(ESR)+0.014*GHである。当該DASは、関節リウマチの現在の活動を含む0〜10の大きさの数を提供する。5.1超のDAS28は高疾患活動性を意味し、3.2未満のDAS28は、低疾患活動性を示す。寛解は、2.6未満のDAS28により達成される。2つの時点上の1人の患者からのDAS28を比較して、改善又は応答を定義することが可能である。
【0109】
痛みの患者の評価、及び疾患活動性の患者の全体的評価を、視覚アナログ尺度(VAS)を使用して評価する。
【0110】
疾患活動性の医師の全体的評価は、5ポイントの等級化した尺度を使用して、患者の現在の疾患活動性を測定する、ここで当該等級化した尺度{リッカート(Likert)尺度}とは、0=無症候、1=軽度、2=中程度、3=重篤、4=非常に重篤である。
【0111】
身体機能の患者の評価は、前週に渡る、身支度や身づくろい、食べること、歩くこと、及びかその患者が前記動作のいずれかをするために助力又は道具を必要とするかどうかの如き、日常動作を実施する患者の能力に関して患者に質問する健康状態質問表(HAQ)に対する患者の応答に基づいて、測定される。
【0112】
朝のこわばりの存在は、患者へのインタビューにより評価され、もしあれば持続時間を記録する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の関節リウマチの治療方法であって、以下の:
(i)BlySに結合するTACI細胞外ドメイン又はその断片;並びに
(ii)ヒト免疫グロブリン定常領域、
を含む融合分子を含む組成物を、当該関節を治療するために有効量で投与することを含む、上記方法。
【請求項2】
前記TACI細胞外ドメインが配列番号1に示される配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TACI細胞外ドメインが、配列番号1の配列と少なくとも50%一致する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒト免疫グロブリン定常領域が、配列番号2に示される配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、患者の体重1kgあたり約0.01mg〜約10mgの量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、前記量で、12週間間隔の間に7回投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が前記量で12週間間隔の間に7回投与され、その後、前記組成物が前記量でさらに投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、前記量で、4週間間隔の間に3回投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が前記量で4週間間隔の間に3回投与され、その後、前記組成物が前記量でさらに投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、2〜30週間の間に隔週、前記量で投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、前記患者に第2薬剤を併用投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2薬剤が、ヒドロキシクロロキン、スルファラジン、メトトレキサート、レフルノミド、リツキシマブ、インフリキシマブ、アザチオプリン、D−ペニシラミン、ゴールド(経口又は筋肉内)、ミノサイクリン、シクロスポリン、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、サイトカイン、抗サイトカイン、及びインターフェロンからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、皮下、経口又は静脈内で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が人間である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−100313(P2013−100313A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−231(P2013−231)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2009−511209(P2009−511209)の分割
【原出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】