TAP媒介のレオロジー変性されたポリマーおよび製造方法
本発明は、トリアリルホスフェート(TAP)媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、および(b)TAPから製造されるか、またはこれらを含有する反応混合物からの反応において製造され、このフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1超大きい、ヘンキー歪における伸張粘度、および/またはこのフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、TAP媒介のレオロジー変性されたポリマーを産生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル反応を受けるポリマー系であって、鎖切断可能ポリマーのレオロジー変性が望ましいポリマー系に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を製造する時、溶融ポリマーのレオロジー特性を制御することは重要である。多くの場合、ポリマー鎖のカップリングは、溶融強度を高め、このポリマーを所望の物品の調製に有用なものにするために必要である。
【0003】
ペルオキシドおよび放射線の使用を通したフリーラジカルカップリングは、従来からポリマーをカップリングするために用いられている。残念ながら、これらの研究方法は、カップリングと鎖切断との競合反応を受けるポリマーの場合、大体は効果がない。有害な鎖切断反応の衝撃を最小限にしつつ、有利なカップリング反応を促進する必要性が存在する。
【0004】
特に、非選択的フリーラジカル化学を用いてポリマーのレオロジーを変える試みが頻繁に行なわれている。しかしながら、高温におけるフリーラジカル反応は、第三水素を含有するポリマー、例えばポリプロピレンおよびポリスチレンの分子量を低下させることがある。
【0005】
ポリプロピレンのフリーラジカル分解を緩和するために、ペルオキシドおよびペンタエリトリトールトリアクリレートの使用が、ワン(Wang)らによって、Journal of Applied Polymer Science, Vol. 61, 1395-1404 (1996)において報告されている。これらは、アイソタクチックポリプロピレンの枝分かれが、ジ−、およびトリ−ビニル化合物のポリプロピレンへのフリーラジカルグラフト化によって実施することができることを教示している。しかしながらこの研究方法は、比較的高い鎖切断速度が、発生する鎖カップリングの限定量を決定付ける傾向があるので、実際の実施において良好に機能しない。
【0006】
観察されるよりも低い分子量および高いメルトフローレートにおける鎖切断結果は、切断をともなわない鎖カップリングであった。切断が均一でないので、分子量分布は、当分野において「テール(tail)」と呼ばれる、より低い分子量ポリマー鎖が形成されるにつれて増加する。
【0007】
レオロジー変性ポリマーを生成するためのもう1つの研究方法は、米国特許第3,058,944号;第3,336,268号;および第3,530,108号に記載されている。すなわち、C−H結合中へのニトレン挿入による、あるいくつかのポリ(スルホニルアジド)化合物とアイソタクチックポリプロピレンまたはほかのポリオレフィンとの反応である。米国特許第3,058,944号に報告されている生成物は、架橋されている。米国特許第3,530,108号において報告されている生成物は、発泡され、シクロアルカン−ジ(スルホニルアジド)で硬化されている。米国特許第3,336,268号において、結果として生じた反応生成物は、ポリマー鎖がスルホンアミドブリッジで「橋掛けされている(bridged)」ので、「橋掛けポリマー」と呼ばれている。
【0008】
これに加えて例えば、ポリプロピレンの溶融伸張特性を改良するために、フリーラジカル発生をともなう、2またはそれ以上の末端炭素−炭素二重結合または三重結合を含有する助剤を用いる努力がなされてきた。残念ながら、最もよく確立された助剤は、アクリレートまたはメタクリレートであり、これらは、ホモ重合を受ける傾向があり、これによって非効果的カップリングを結果として生じる。
【0009】
鎖切断可能ポリマーの分解を克服し、実質的に架橋ポリマーを生じるために、助剤の存在下にフリーラジカル反応を用いたものもある。これらの架橋ポリマーは、本明細書に規定されているように溶融加工性ではない。さらにはこれらの架橋ポリマーは、これらのポリマーを現在記載されている用途への使用に不適なものにする量の重量パーセントゲルを有する。DE3133183A1を参照されたい。
【0010】
鎖切断の程度を埋め合わせるために、ポリマーをカップリングすることによって、様々なポリマーの溶融粘度および溶融強度を増加させることが望ましい。
【0011】
低レベルのゲルおよび優れた清澄性を有する、レオロジー変性されたポリマーを生じることが望ましい。同様に、これはカップリング反応を受けるので、ポリマーの分子構造を制御することも望ましい。
【0012】
溶融強度が重要であるプロセス、例えば押出し発泡およびブロー成形において特に有用な、カップリングされたポリマーを生じることが望ましい。
【0013】
さらに、フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーからのTAP媒介のレオロジー変性されたポリマーの製造方法を提供することも望ましい。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、その好ましい実施形態において、TAP媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、および(b)トリアリルホスフェート(TAP)を含む反応混合物からの反応において調製され、このフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1超大きい、ヘンキー歪における伸張粘度、および/またはこのフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、TAP媒介のレオロジー変性されたポリマーを生じる。
【0015】
本発明は、電線・ケーブル、履物、フィルム(例えば温室、収縮性、および弾性フィルム)、エンジニアリング熱可塑性、高充填、難燃性、反応性混合、熱可塑性エラストマー、熱可塑性バルカニゼート、自動車、加硫ゴム置換、建築、家具、フォーム、湿潤、接着剤、ペイント可能基体、染色可能ポリオレフィン、湿分−硬化、ナノ複合、適合化、ワックス、カレンダードシート、医学、分散、同時押出し、セメント/プラスチック強化、食品包装、不織布、紙変性、多層容器、スポーツ用品、延伸構造、および表面処理用途において有用である。
【0016】
本発明はさらに、下に例示されているTAP媒介のレオロジー変性されたポリマーの製造方法を提供する。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明は、レオロジー変性可能なポリマー組成物から製造された製品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書において用いられる、「幾何拘束触媒で触媒されたポリマー」、「CGC触媒ポリマー」、または同様な用語は、制約された幾何学形状の触媒の存在下に製造されるあらゆるポリマーを意味する。本明細書において用いられているような、「幾何拘束触媒」または「CGC」は、この用語が米国特許第5,272,236号および第5,278,272号において規定され、記載されている用語と同じ意味を有する。
【0019】
本明細書において用いられる「ゲル数」とは、ポリマーをフィルムダイを通して押出し、オプティカル・カウンター・システム(OCS)からのフィルム走査システム(FS−3)を用いることによって測定された場合、1平方メートルの評価されたポリマー組成物あたりの平均ゲル数を意味する。本明細書において用いられる「GS−300」とは、少なくとも300マイクロメートルの粒子サイズを有する、1平方メートルあたりの平均ゲル数を意味する。GN−300は、300〜1,600マイクロメートル測定値についての総ゲル数を表わす。本明細書において用いられる「GN−600」とは、少なくとも600マイクロメートルの粒子サイズを有する、1平方メートルあたりの平均ゲル数を意味する。GN−600は、600〜1,600マイクロメートル測定値についての総ゲル数を表わす。
【0020】
本明細書において用いられ、真の歪と呼ばれることもある「ヘンキー歪」とは、ポリマーメルトおよび固体の両方へ当てはまる伸び変形の尺度である。伸び粘度は、180℃において、セントマナート伸張レオメーター(SER)フィクスチャー((米国)オハイオ州トールマッジのXpansionInstrumentsで、1秒−1および10秒−1のヘンキー歪率で測定された。末端分離装置、例えばインストロンテスターが用いられるならば、ヘンキー歪は、ln(L(t)/L0)(L0は初期長さであり、L(t)はt時における長さである)として計算することができる。ヘンキー歪率はその場合、1/L(t)・dL(t)/dtとして規定され、サンプルの長さが指数関数的に増加される場合にのみ一定である。
【0021】
他方、SER、すなわちセントマナートの二重巻き上げ装置に基づいた一定ゲージ長さを有する伸び装置(米国特許第6,691,569号)を用いて、一定ヘンキー歪率は、一定巻取り速度を設定することによって簡単に得られる。SERは、アレス(ARES)レオメーター((米国)デラウエア州ニューカッスルのTAインストルメンツ)の環境室の内側に取り付けられる。この中で、温度は熱い窒素流によって制御される。
【0022】
伸び粘度(または一軸応力成長係数)ηEは、応力をヘンキー歪率で割ることによって得られる。
【0023】
本明細書において用いられる「均質にカップリングされた」とは、枝分かれが、ゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)分析の結果生じたマーク−ホウインクプロットによって示されているように存在する分子量範囲のことを指す。より広い範囲は、より均質なカップリングを示している。
【0024】
本明細書において用いられる「長鎖枝分かれ(LCB)」とは、例えば、エチレン/α−オレフィンコポリマーの場合、ポリマー主鎖中へのα−オレフィンの組み込みの結果生じた短鎖分枝よりも長い鎖長を意味する。各長鎖分枝は、ポリマー主鎖と同じコモノマー分布を有し、これが接着されているポリマー主鎖と同じ長さであってもよい。
【0025】
本明細書において用いられる「溶融加工処理可能な」とは、レオロジー変性された後のポリマーが、溶融を受け、かつ粘性的に流れ得るポリマーを特徴とするような熱可塑性挙動を示し続け、したがってこのポリマーは、従来の加工処理設備、例えば押出し機および造形ダイにおいて加工処理され得るということを意味する。
【0026】
メルトフローレートは、230℃の温度および2.16kgの負荷で、ASTM 1238にしたがって測定された。
【0027】
本明細書において用いられる「溶融強度」とは、破断または引取共振の発生の時の最大引張り力のことを指す。溶融強度は、レオテンス(Rheotens)(米国サウスカロライナ州ロックヒルのGoettfert Inc.)溶融強度方法にしたがって測定される。これは、毛管レオメーターまたは押出し機のどちらかを用い、一組のホイール間にストランドを引き下ろすことによって、一定出力でポリマーの溶融ストランドを押出すことからなる。これらのホイールは、一定の加速で回転され、時間とともに直線的に増加する圧伸速度を生じる。このプロセスの間、ホイールへ作用するストランドの引張り力が記録される。レオテンス溶融強度実験は、190℃で実施される。メルトは、38.2秒−1のせん断率で、平らな30mm長さ/2mm直径のダイを備えたゲットファート・レオテスター2000毛管レオメーターによって生成された。レオメーターのバレル(12mm直径)に1分未満で充填され、10分の遅延が、適切な溶融のために許される。レオテンスホイールの巻取り速度は、2.4mm/秒2の一定加速で様々に変えられた。圧伸ストランドの引張りは、ストランドが破断するまで経時的に監視される。センチニュートン(cN)単位の定常状態力、および「圧伸性」とも呼ばれる破断における速度(mm/s)が報告される。
【0028】
本明細書において用いられる「引落とし安定性」とは、ウエブまたはバブル振動が発生する可能性がある臨界速度を意味する。本明細書において用いられる「引取共振」とは、溶融ポリマーフィルムまたはストランドの断面積における持続的周期性振動を意味する。
【0029】
本明細書において用いられる「メタロセン」とは、金属へ結合した少なくとも1つの置換または非置換シクロペンタジエニル基を有する金属含有化合物を意味する。「メタロセン触媒ポリマー」または同様な用語は、メタロセン触媒の存在下に製造されるあらゆるポリマーを意味する。
【0030】
本明細書において用いられる「規格化された(normalized)回復可能クリープコンプライアンス」とは、1,000秒でその値へ規格化されたクリープコンプライアンスJcを意味する。クリープは、180℃(ほかの指摘がなければ10Pa負荷を用いる)で、20mm直径の平行プレートを備えたレオロジカ・ビスコテック(Reologica Visco Tech)制御された応力レオメーターを用いて決定される。その結果生じたレオロジー変性されたポリマーは好ましくは、0.90未満、より好ましくは0.85未満、最も好ましくは0.80未満の規格化された回復可能クリープコンプライアンスを有する。
【0031】
本明細書において用いられる「多分散度」、「分子量分布」、および同様な用語は、重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を意味する。
【0032】
本明細書において用いられる「ポリマー」とは、同一または異なる型のモノマーを重合することによって調製された高分子化合物を意味する。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどを含む。「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの型のモノマーまたはコモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これは、コポリマー(通常、2つの異なる型のモノマーまたはコモノマーから調製されたポリマーのことを指す。ただしこれは、3またはそれ以上の異なる型のモノマーまたはコモノマーから製造されたポリマーのことを指すための「インターポリマー」という用語と互換的に用いられることが多い)、ターポリマー(通常、3つの異なる型のモノマーまたはコモノマーから調製されたポリマーのことを指す)、テトラポリマー(通常、4つの異なる型のモノマーまたはコモノマーから調製されたポリマーのことを指す)などを含むが、これらに限定されるわけではない。「モノマー」または「コモノマー」は、互換的に用いられ、これらはポリマーを生成するために反応器へ添加される、重合性部分を有するあらゆる化合物のことを指す。ポリマーが1またはそれ以上のモノマーを含むものとして記載されている場合、例えばプロピレンおよびエチレンを含むポリマーの場合、このポリマーは当然ながら、モノマーに由来する単位、例えば−CH2−CH2−を含むのであり、モノマーそれ自体、例えばCH2=CH2を含むのではない。
【0033】
本明細書において用いられる「P/E*コポリマー」および同様な用語は、次の特性、(i)約14.6および約15.7ppmにおける位置誤差(regio-error)に対応する13C NMRピークであって、ほぼ等しい強度のピーク、および(ii)本質的に同一にとどまるTme、およびコモノマーの量、すなわちコポリマー中のエチレンおよび/または1またはそれ以上の不飽和コモノマーが増加されるにつれて減少するTpeakを有する示差走査熱量測定(DSC)曲線の少なくとも1つを有するものとして特徴付けられるプロピレン/不飽和コモノマー(例えばエチレン)コポリマーを意味する。「Tme」とは、融解が終了する温度を意味する。「Tpeak」とは、ピーク融解温度を意味する。典型的には、この実施形態のコポリマーは、これらの特性の両方を特徴とする。これらの特性の各々、およびこれらのそれぞれの測定値は、2002年5月5日に出願された米国特許出願番号第10/139,786号(WO2003040442)に詳細に記載されている。本特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
これらのコポリマーはさらに、約−1.20超の歪み指数Sixを有するものとしても特徴付けることができる。この歪み指数は、温度上昇溶離分別(TREF)から得られたデータから計算される。このデータは、溶離温度の関数としての重量フラクションの規格化されたプロットとして表示される。アイソタクチックプロピレン単位のモル含量は主として、溶離温度を決定する。
【0035】
この曲線の形状の顕著な特徴は、より高い溶離温度におけるこの曲線の鮮明さまたは急勾配と比較して、より低い溶離温度におけるテーリングである。この型の非対称を反映する統計は、歪みである。式1は、数学的に歪み指数Sixをこの非対称の尺度として示している。
【数1】
【0036】
値Tmaxは、TREF曲線において50〜90℃で溶離する最大重量フラクションの温度として規定される。Tiおよびwiは、TREF分布におけるそれぞれ任意のi番目のフラクションの溶離温度および重量フラクションである。これらの分布は、30℃を上回って溶離する曲線の全面積に対して規格化されている(wiの合計は100%に等しい)。このようにしてこの指数は、結晶化ポリマーの形状のみを反映する。あらゆる非結晶化ポリマー(30℃またはそれ未満で依然として溶液にあるポリマー)は、式1に示されている計算から省かれる。
【0037】
P/E*コポリマーについての不飽和コモノマーは、C4−20α−オレフィン、特にC4−12α−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなど;C4−20ジオレフィン、好ましくは1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、およびジシクロペンタジエン;スチレン、o−、m−、およびp−メチルスチレンを含むC8−40ビニル芳香族化合物、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン;およびハロゲン置換C8−40ビニル芳香族化合物、例えばクロロスチレンおよびフルオロスチレンを含む。エチレンおよびC4−12α−オレフィンが好ましいコモノマーであり、エチレンは、特に好ましいコモノマーである。
【0038】
P/E*コポリマーは、P/Eコポリマーの独特のサブセットである。P/Eコポリマーは、P/E*コポリマーだけでなく、プロピレンのすべてのコポリマー、および不飽和コモノマーを含む。P/E*コポリマー以外のP/Eコポリマーは、メタロセン−触媒されたコポリマー、幾何拘束触媒で触媒されたコポリマー、およびZ−N触媒されたコポリマーを含む。本発明の目的のためには、P/Eコポリマーは、50重量パーセントまたはそれ以上のプロピレンを含み、一方、EP(エチレン−プロピレン)コポリマーは、51重量パーセントまたはそれ以上のエチレンを含む。ここで用いられているように、「・・・プロピレンを含む」、「・・・エチレンを含む」、および同様な用語は、このポリマーが、これらの化合物それ自体を含むのとは対照的に、プロピレン、エチレンなどに由来する単位を含むことを意味する。
【0039】
「プロピレンホモポリマー」および同様な用語は、単独でまたは本質的に、プロピレンに由来する単位のすべてからなるポリマーを意味する。「プロピレンコポリマー」および同様な用語は、プロピレンおよびエチレン、および/または1またはそれ以上の不飽和コモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味する。
【0040】
本明細書において用いられる「緩和スペクトル指数(RSI)」は、20mm直径の平行プレートを備えたレオロジカ・ビスコテック制御された応力レオメーターを用いて、振動メルトレオメトリーによって決定された、緩和時間スペクトルの幅の尺度を意味する。この機器は、180℃で窒素雰囲気下、周波数(ω)0.01<ω<30Hzにわたって1.5mmのギャップで操作された。応力掃引(stress sweeps)が、直線粘弾性レジーム内でデータが確実に得られるように用いられた。最小二乗回帰アルゴリズムを用いて、緩和スペクトルおよびスペクトル分布モーメントの比(RSI)を発生させるために、マックスウエル(Maxwell)シリーズモデルが、測定された貯蔵弾性率および損失弾性率(G’,G”)へ適合させられた。結果として生じたレオロジー変性されたポリマーは、フリーラジカル鎖切断可能ポリマー(非変性ベースのポリマー)のものよりも大きいRSIを有する。好ましくは、結果として生じたレオロジー変性されたポリマーは、9超、より好ましくは10超、最も好ましくは11超のRSIを有する。
【0041】
本明細書において用いられる「レオロジー変性された」とは、動的機械的分光法(DMS)によって測定されたポリマーの溶融粘度の変化を意味する。溶融粘度の変化は、100rad/秒のせん断で測定された高せん断粘度について、および0.1rad/秒のせん断で測定された低せん断粘度について評価される。
【0042】
レオロジー変性されたポリマーは好ましくは、そのフリーラジカル鎖切断可能ポリマーに等しいかまたはこれ未満のGN−300を達成する。同様に好ましくは、レオロジー変性されたポリマーは、そのフリーラジカル鎖切断可能ポリマーに等しいかまたはこれ未満のGN−600を達成する。同様に好ましくは、レオロジー変性されたポリマーのGNは、そのフリーラジカル鎖切断可能ポリマーの約50パーセント未満である。
【0043】
あるいはまた、および好ましくはまた、レオロジー変性されたポリマーは、100ゲル未満のGN−300を達成する。より好ましくは、このレオロジー変性されたポリマーは、50ゲル未満のGN−300を達成する。
【0044】
この文脈におけるゲル数「GN」は、本明細書のほかのところで議論されている「重量パーセントゲル」とは異なり、これと混同されるべきではないことは、当業者には明らかである。
【0045】
あるいはまた、および好ましくはまた、結果として生じたレオロジー変性されたポリマーは、約30重量パーセント未満、好ましくは約10重量パーセント未満、より好ましくは約5重量パーセント未満の、トリクロロベンゼンまたはデカリンまたはキシレン中の抽出(ASTM 2765)によって測定されたゲル含量を有する。同様に好ましくは、このレオロジー変性されたポリマーのゲル含量は、フリーラジカル鎖切断可能ポリマー(非変性ポリマー)のゲル含量よりも大きい絶対5重量パーセント未満である。
【0046】
本明細書において用いられ、かつ伸張増粘とも呼ばれる「歪硬化」とは、分子がストレッチされ、さらなる変形への抵抗と対抗するのに十分なほど高い歪における伸張粘度の突然の増加のことを指す。
【0047】
好ましい実施形態において、本発明は、TAP媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、および(b)トリアリルホスフェート(TAP)を含む反応混合物からの反応において製造され、このフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1超大きい、ヘンキー歪における伸張粘度、および/またはこのフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、TAP媒介のレオロジー変性されたポリマーである。
【0048】
多様なフリーラジカル鎖切断可能ポリマーは、本発明においてレオロジー変性することができる。適切なフリーラジカル鎖切断可能ポリマーは、ブチルゴム、ポリアクリレートゴム、ポリイソブテン、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、ビニル芳香族モノマーのポリマー、ビニルクロライドポリマー、およびこれらのブレンドを含む。
【0049】
好ましくは、フリーラジカル分解可能炭化水素ベースポリマーは、イソブテン、プロピレン、およびスチレンポリマーからなる群より選択される。
【0050】
好ましくは、本発明のブチルゴムは、イソブチレンおよびイソプレンのコポリマーである。イソプレンは典型的には、約1.0重量%〜約3.0重量%の量で用いられる。
【0051】
本発明において有用なプロピレンポリマーの例は、プロピレンホモポリマーおよびP/Eコポリマーを含む。特に、これらのプロピレンポリマーは、ポリプロピレンエラストマーを含む。これらのプロピレンポリマーは、あらゆる方法によって製造することができ、チーグラー−ナッタ、CGC、メタロセン、および非メタロセン、金属中心、ヘテロアリールリガンド触媒作用によって製造することができる。
【0052】
有用なプロピレンコポリマーは、ランダム、ブロック、およびグラフトコポリマーを含む。例示的なプロピレンコポリマーは、Exxon−MobilのVISTAMAX)、三井のTAFMER、およびThe Dow Chemical CompanyによるVERSIFY(商標)を含む。これらのコポリマーの密度は典型的には、1立方センチメートルあたり少なくとも約0.850、好ましくは少なくとも約0.860、およびより好ましくは少なくとも約0.865g(g/cm3)である。
【0053】
これらのプロピレンポリマーは典型的には、少なくとも約0.01、好ましくは少なくとも約0.05、より好ましくは少なくとも約0.1のメルトフローレート(MFR)を有する。最大MFRは典型的には、約2,000を超えず、好ましくはこれは約1,000を超えず、より好ましくはこれは約500を超えず、さらにより好ましくは約80を超えず、最も好ましくはこれは約50を超えない。プロピレンおよびエチレン、および/または1またはそれ以上のC4−C20α−オレフィンのコポリマーについてのMFRは、ASTM D−1238、条件L(2.16kg、230℃)にしたがって測定される。
【0054】
本発明において有用なスチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーは、相分離系である。スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーもまた、本発明において有用である。
【0055】
ビニル芳香族モノマーのポリマーは、本発明において有用である。適切なビニル芳香族モノマーは、重合プロセスにおける使用のために公知のこれらのビニル芳香族モノマー、例えば米国特許第4,666,987号;第4,572,819号、および第4,585,825号に記載されているものを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0056】
好ましくはこのモノマーは、式
【化1】
を有する(式中、R’は水素、または3またはそれ以下の炭素を含有するアルキル基であり、Arは、アルキル、ハロ、またはハロアルキル置換をともなうかまたはともなわない、1〜3芳香環を有する芳香族環構造であり、あらゆるアルキル基は、1〜6の炭素原子を含有し、ハロアルキルとは、ハロ置換アルキル基のことを指す)。好ましくはArは、フェニルまたはアルキルフェニルであり、アルキルフェニルとは、アルキル置換フェニル基のことを指し、フェニルが最も好ましい。用いることができる典型的なビニル芳香族モノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、特にパラビニルトルエンのすべての異性体、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどのすべての異性体、およびこれらの混合物を含む。
【0057】
ビニル芳香族モノマーはまた、ほかの共重合性モノマーと組み合わされてもよい。このようなモノマーの例は、アクリルモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メチルメタクリレート、アクリル酸、およびメチルアクリレート;マレイミド、フェニルマレイミド、および無水マレイン酸を含むが、これらに限定されるわけではない。これに加えて、重合は、衝撃変性されるかまたはグラフト化されたゴム含有生成物を製造するために、予め溶解されたエラストマーの存在下に実施されてもよい。これらの生成物の例は、米国特許第3,123,655号、第3,346,520号、第3,639,522号、および第4,409,369号に記載されている。
【0058】
本発明はまた、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物の剛性、マトリックス、または連続相ポリマーへも適用可能である。
【0059】
TAP−媒介のレオロジー変性されたポリマーを製造する反応混合物はまた、切断不可能ポリマーも含有し得る。特に有用な切断可能有機ポリマーおよび切断不可能ポリマーブレンドは、ポリプロピレンおよびポリエチレンである。
【0060】
本発明における使用のためには、トリアリルホスフェート(TAP)は好ましくは、約0.05重量パーセント〜約20.0重量パーセントの範囲の量で存在する。より好ましくはこの助剤は、約0.1重量パーセント〜約10.0重量パーセントの範囲の量で存在する。さらになお好ましくは、この助剤は、約0.3重量パーセント〜約5.0重量パーセントの量で存在する。
【0061】
本発明における使用のためのフリーラジカルは、多様な方法で形成されてもよい。例えば酸素中心フリーラジカルは、有機ペルオキシド、アゾフリーラジカル開始剤、ビクメン、酸素、および空気の使用を通して発生し得る。この点に関して、反応混合物はさらに、有機ペルオキシド、アゾフリーラジカル開始剤、ビクメン、酸素、または空気を含んでいてもよい。有機ペルオキシドが用いられる時、この有機ペルオキシドは一般に、約0.005重量パーセント〜約20.0重量パーセント、より好ましくは約0.01重量パーセント〜約10.0重量パーセント、さらになお好ましくは約0.03重量パーセント〜約5.0重量パーセントの量で存在する。例えば炭素中心フリーラジカルは、アルコキシラジカルフラグメンテーション、アリル助剤活性化、およびフリーラジカル反応性ポリマーへの連鎖移動を通して発生し得る。
【0062】
フリーラジカルを形成するための添加剤の使用に加えて、またはその代替方法として、このポリマーは、せん断エネルギー、熱、または放射線へ付された時、フリーラジカルを形成し得る。したがってせん断エネルギー、熱、または放射線は、フリーラジカル誘発剤として作用し得る。
【0063】
これらのフリーラジカルが、有機ペルオキシド、酸素、空気、せん断エネルギー、熱、または放射線によって発生させられる時、トリアリルホスフェートとフリーラジカル源との組み合わせが、ポリマーのカップリングのために必要とされると考えられる。この組み合わせの制御は、カップリングされたポリマー(すなわち、レオロジー変性されたポリマー)の分子構造を決定する。トリアリルホスフェートの連続添加、次いでフリーラジカルの段階的開始は、分子構造上全体へある程度の制御を与える。
【0064】
グラフト化部分は、ポリマー上で開始させることができ、トリアリルホスフェートでキャップして、懸垂的にグラフト化された構造を形成し得ることも考えられる。あとで、この懸垂的にグラフト化された構造は、その後に形成されたフリーラジカルとカップリングすることができ、結果として生じたレオロジー変性ポリマーへ所望レベルの均質性を付与する。その後に形成されたフリーラジカルは、追加量のフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、または1またはそれ以上のほかのフリーラジカル鎖切断可能ポリマーからのものであってもよい。
【0065】
さらに別の実施形態において、本発明は、フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーからのTAP−媒介のレオロジー変性されたポリマーの製造方法である。
【0066】
好ましい実施形態において、本発明は、レオロジー変性可能ポリマー組成物から調製された製品である。これらの製品を製造するために、あらゆる方法を用いることができる。特に有用な方法は、射出成形、押出し、圧縮成形、回転成形、熱成形、ブロー成形、粉末コーティング、バンバリーバッチミキサー、繊維スピニング、およびカレンダリングを含む。
【0067】
適切な製品は、電線・ケーブル絶縁材、電線・ケーブル半導体品、電線・ケーブルコーティングおよびジャケット、ケーブル付属品、靴底、多成分靴底(異なる密度および型のポリマーを含む)、気密用充填材、ガスケット、異形材、耐久性商品、剛性超圧伸(ultradrawn)テープ、ランフラット(run flat)タイヤインサート、建築用パネル、複合材料(例えば木材複合材料)、パイプ、フォーム、インフレーションフィルム、および繊維(バインダー繊維および弾性繊維を含む)を含む。
【0068】
フォーム製品は例えば、押出しされた熱可塑性ポリマーフォーム、押出しされたポリマーストランドフォーム、膨張可能な熱可塑性フォームビーズ、膨張熱可塑性フォームビーズ、膨張および融合熱可塑性フォームビーズ、および様々な型の架橋フォームを含む。これらのフォーム製品は、あらゆる公知の物理的コンフィギュレーション、例えばシート、円形、ストランド形状、ロッド、ソリッド厚板、ラミネート厚板、合着ストランド厚板、異形材、およびバンストック形状を取ってもよい。
【0069】
本発明のレオロジー変性されたプロピレンポリマーから製造されたフォームは、特に有用である。一例は、全プロピレンコポリマーを基準にして少なくとも50重量パーセントの、プロピレンに由来する単位、およびエチレン、アクリレート、ビニルアセテート、またはこれらの組み合わせに由来する単位を含む、レオロジー変性されたプロピレンコポリマーを含むフォームである。好ましくはコモノマー単位は、エチレン性不飽和コモノマーに由来し、このコポリマーは、0.5〜8g/10分の範囲のメルトフローレート(ASTM 1238、230℃、2.16kg荷重)および少なくとも5センチニュートンのレオテンス溶融強度を有する。例示されたフォームはさらに、800kg/m3またはそれ以下の密度を有してもよい。
【実施例】
【0070】
次の非限定例は、本発明を例証する。
【0071】
比較例1〜8および実施例9および10
これらの実施例のために、The Dow Chemical Companyによって製造されている実験反応器アイソタクチックホモポリマーポリプロピレン粉末(i−PP)が用いられた。この樹脂の特性は、次のとおりであった。3.14g/10分のメルトフローレート(MFR);167.1℃のDSC融点;および0.47g/ccの嵩密度。
【0072】
表1は、比較例1〜8および実施例9および10のために用いられた助剤およびルペロックス(Luperox)130ペルオキシド(L130)の量を示し、ここですべての量は、重量パーセントで列挙されている。簡単に言えば、これらの助剤は、次の省略形によって識別される。トリアリルホスフェート(TAP)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTAc)、およびトリアリルトリメセート(TAM)。
【0073】
【表1】
【0074】
これらの実施例は、所望量のL130および/または助剤を含有するヘキサン溶液(8ml)で、i−PP(3g)をコーティングすることによって調製した。ヘキサン溶媒を蒸発させ、得られた混合物を、アトラス・ラボラトリー・ミキシング・モールダー(Atlas Laboratory Mixing Molder)(ミニミキサー)の溶融シールされた空洞部へ、200℃で6分間装入した。このミニミキサーから出てくる組成物はその後、このポリマーを、170℃で薄いシートにプレスし、カルシウムステアレート(500ppm)、Irganox 1010(商標)テトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルヒドロシンナメート)メタン(Ciba Specialty Chemicals Inc.から入手し得る)(500ppm)、およびIrgafos 168トリス(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)ホスファイト(1,000ppm)のマスターバッチと、反復して折り畳み、170℃でプレスすることによって混合して安定させた。
【0075】
安定化させた例示組成物は、20mm直径の平行プレートを備えたレオロジカ・ビスコテック制御された応力レオメーターを用いて、振動メルトレオメトリーによって分析した。この機器を、180℃で、窒素雰囲気下、周波数(ω)0.01<ω<30Hzにわたって1.5mmのギャップで操作した。応力掃引を、直線粘弾性レジーム内でデータが確実に得られるように用いた。最小二乗回帰アルゴリズムを用いて、緩和スペクトルおよびスペクトル分布モーメントの比(RSI)を発生させるために、マックスウエルシリーズモデルを、測定した貯蔵弾性率および損失弾性率(G’,G”)へ適合させた。
【0076】
クリープ実験もまた、前記レオメーターを用いて180℃で(特に明記しない限り10Pa荷重)、安定化させた例示組成物に対して実施した。このデータは、ゼロ−せん断粘度および回復可能コンプライアンスを計算するために分析した。(1,000秒後に記録されたクリープコンプライアンスは、ゼロ−せん断粘度の推定値を与えるのであって、実際の値ではない)。これらの結果は、図1〜8に示されている。
【0077】
【表2】
【0078】
これらの組成物の伸張粘度も測定された。
【0079】
これらのサンプルは、0.5mmスペーサー、および10トンの圧力を用いて、350°Fの温度で15分間、非制約圧縮成形によって調製され、その後20mm長さ、6mm幅の寸法のストリップにカットされた。一定のヘンキー歪率が適用され、時間依存性応力が、測定されたトルク、およびサンプル時間依存性断面積から決定された。
【0080】
図9〜12に示されているように、実施例9および実施例10は、(比較例に対して)劇的に増加したε=1を上回る歪における伸張粘度を示した。同じペルオキシド荷重において、TAPは、最大程度の歪硬化を結果として生じ、サンプルが場合により破断する前に、ピークにおける最大伸張粘度を生じた。圧伸性は犠牲にされなかった。
【0081】
これに対して、変性前のフリーラジカル鎖切断可能ポリプロピレン(比較例1)は、歪硬化の兆候をまったく示さず、その他の助剤(比較例4、比較例5、比較例6、および比較例7)は、有意に劣る歪硬化を示した。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】ポリプロピレン樹脂についてのせん断薄化に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図2】ポリプロピレン樹脂についてのせん断薄化に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図3】ポリプロピレン樹脂についてのクリープコンプライアンスに対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図4】ポリプロピレン樹脂についてのクリープコンプライアンスに対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図5】ポリプロピレン樹脂についての相対回復可能クリープコンプライアンスに対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図6】ポリプロピレン樹脂についての相対回復可能クリープコンプライアンスに対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図7】ポリプロピレン樹脂についての規格化されたせん断薄化に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図8】ポリプロピレン樹脂についての規格化されたせん断薄化に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図9】ポリプロピレン樹脂の伸張粘度に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図10】ポリプロピレン樹脂の伸張粘度に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図11】ポリプロピレン樹脂の伸張粘度に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図12】ポリプロピレン樹脂の伸張粘度に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル反応を受けるポリマー系であって、鎖切断可能ポリマーのレオロジー変性が望ましいポリマー系に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を製造する時、溶融ポリマーのレオロジー特性を制御することは重要である。多くの場合、ポリマー鎖のカップリングは、溶融強度を高め、このポリマーを所望の物品の調製に有用なものにするために必要である。
【0003】
ペルオキシドおよび放射線の使用を通したフリーラジカルカップリングは、従来からポリマーをカップリングするために用いられている。残念ながら、これらの研究方法は、カップリングと鎖切断との競合反応を受けるポリマーの場合、大体は効果がない。有害な鎖切断反応の衝撃を最小限にしつつ、有利なカップリング反応を促進する必要性が存在する。
【0004】
特に、非選択的フリーラジカル化学を用いてポリマーのレオロジーを変える試みが頻繁に行なわれている。しかしながら、高温におけるフリーラジカル反応は、第三水素を含有するポリマー、例えばポリプロピレンおよびポリスチレンの分子量を低下させることがある。
【0005】
ポリプロピレンのフリーラジカル分解を緩和するために、ペルオキシドおよびペンタエリトリトールトリアクリレートの使用が、ワン(Wang)らによって、Journal of Applied Polymer Science, Vol. 61, 1395-1404 (1996)において報告されている。これらは、アイソタクチックポリプロピレンの枝分かれが、ジ−、およびトリ−ビニル化合物のポリプロピレンへのフリーラジカルグラフト化によって実施することができることを教示している。しかしながらこの研究方法は、比較的高い鎖切断速度が、発生する鎖カップリングの限定量を決定付ける傾向があるので、実際の実施において良好に機能しない。
【0006】
観察されるよりも低い分子量および高いメルトフローレートにおける鎖切断結果は、切断をともなわない鎖カップリングであった。切断が均一でないので、分子量分布は、当分野において「テール(tail)」と呼ばれる、より低い分子量ポリマー鎖が形成されるにつれて増加する。
【0007】
レオロジー変性ポリマーを生成するためのもう1つの研究方法は、米国特許第3,058,944号;第3,336,268号;および第3,530,108号に記載されている。すなわち、C−H結合中へのニトレン挿入による、あるいくつかのポリ(スルホニルアジド)化合物とアイソタクチックポリプロピレンまたはほかのポリオレフィンとの反応である。米国特許第3,058,944号に報告されている生成物は、架橋されている。米国特許第3,530,108号において報告されている生成物は、発泡され、シクロアルカン−ジ(スルホニルアジド)で硬化されている。米国特許第3,336,268号において、結果として生じた反応生成物は、ポリマー鎖がスルホンアミドブリッジで「橋掛けされている(bridged)」ので、「橋掛けポリマー」と呼ばれている。
【0008】
これに加えて例えば、ポリプロピレンの溶融伸張特性を改良するために、フリーラジカル発生をともなう、2またはそれ以上の末端炭素−炭素二重結合または三重結合を含有する助剤を用いる努力がなされてきた。残念ながら、最もよく確立された助剤は、アクリレートまたはメタクリレートであり、これらは、ホモ重合を受ける傾向があり、これによって非効果的カップリングを結果として生じる。
【0009】
鎖切断可能ポリマーの分解を克服し、実質的に架橋ポリマーを生じるために、助剤の存在下にフリーラジカル反応を用いたものもある。これらの架橋ポリマーは、本明細書に規定されているように溶融加工性ではない。さらにはこれらの架橋ポリマーは、これらのポリマーを現在記載されている用途への使用に不適なものにする量の重量パーセントゲルを有する。DE3133183A1を参照されたい。
【0010】
鎖切断の程度を埋め合わせるために、ポリマーをカップリングすることによって、様々なポリマーの溶融粘度および溶融強度を増加させることが望ましい。
【0011】
低レベルのゲルおよび優れた清澄性を有する、レオロジー変性されたポリマーを生じることが望ましい。同様に、これはカップリング反応を受けるので、ポリマーの分子構造を制御することも望ましい。
【0012】
溶融強度が重要であるプロセス、例えば押出し発泡およびブロー成形において特に有用な、カップリングされたポリマーを生じることが望ましい。
【0013】
さらに、フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーからのTAP媒介のレオロジー変性されたポリマーの製造方法を提供することも望ましい。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、その好ましい実施形態において、TAP媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、および(b)トリアリルホスフェート(TAP)を含む反応混合物からの反応において調製され、このフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1超大きい、ヘンキー歪における伸張粘度、および/またはこのフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、TAP媒介のレオロジー変性されたポリマーを生じる。
【0015】
本発明は、電線・ケーブル、履物、フィルム(例えば温室、収縮性、および弾性フィルム)、エンジニアリング熱可塑性、高充填、難燃性、反応性混合、熱可塑性エラストマー、熱可塑性バルカニゼート、自動車、加硫ゴム置換、建築、家具、フォーム、湿潤、接着剤、ペイント可能基体、染色可能ポリオレフィン、湿分−硬化、ナノ複合、適合化、ワックス、カレンダードシート、医学、分散、同時押出し、セメント/プラスチック強化、食品包装、不織布、紙変性、多層容器、スポーツ用品、延伸構造、および表面処理用途において有用である。
【0016】
本発明はさらに、下に例示されているTAP媒介のレオロジー変性されたポリマーの製造方法を提供する。
【0017】
好ましい実施形態において、本発明は、レオロジー変性可能なポリマー組成物から製造された製品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書において用いられる、「幾何拘束触媒で触媒されたポリマー」、「CGC触媒ポリマー」、または同様な用語は、制約された幾何学形状の触媒の存在下に製造されるあらゆるポリマーを意味する。本明細書において用いられているような、「幾何拘束触媒」または「CGC」は、この用語が米国特許第5,272,236号および第5,278,272号において規定され、記載されている用語と同じ意味を有する。
【0019】
本明細書において用いられる「ゲル数」とは、ポリマーをフィルムダイを通して押出し、オプティカル・カウンター・システム(OCS)からのフィルム走査システム(FS−3)を用いることによって測定された場合、1平方メートルの評価されたポリマー組成物あたりの平均ゲル数を意味する。本明細書において用いられる「GS−300」とは、少なくとも300マイクロメートルの粒子サイズを有する、1平方メートルあたりの平均ゲル数を意味する。GN−300は、300〜1,600マイクロメートル測定値についての総ゲル数を表わす。本明細書において用いられる「GN−600」とは、少なくとも600マイクロメートルの粒子サイズを有する、1平方メートルあたりの平均ゲル数を意味する。GN−600は、600〜1,600マイクロメートル測定値についての総ゲル数を表わす。
【0020】
本明細書において用いられ、真の歪と呼ばれることもある「ヘンキー歪」とは、ポリマーメルトおよび固体の両方へ当てはまる伸び変形の尺度である。伸び粘度は、180℃において、セントマナート伸張レオメーター(SER)フィクスチャー((米国)オハイオ州トールマッジのXpansionInstrumentsで、1秒−1および10秒−1のヘンキー歪率で測定された。末端分離装置、例えばインストロンテスターが用いられるならば、ヘンキー歪は、ln(L(t)/L0)(L0は初期長さであり、L(t)はt時における長さである)として計算することができる。ヘンキー歪率はその場合、1/L(t)・dL(t)/dtとして規定され、サンプルの長さが指数関数的に増加される場合にのみ一定である。
【0021】
他方、SER、すなわちセントマナートの二重巻き上げ装置に基づいた一定ゲージ長さを有する伸び装置(米国特許第6,691,569号)を用いて、一定ヘンキー歪率は、一定巻取り速度を設定することによって簡単に得られる。SERは、アレス(ARES)レオメーター((米国)デラウエア州ニューカッスルのTAインストルメンツ)の環境室の内側に取り付けられる。この中で、温度は熱い窒素流によって制御される。
【0022】
伸び粘度(または一軸応力成長係数)ηEは、応力をヘンキー歪率で割ることによって得られる。
【0023】
本明細書において用いられる「均質にカップリングされた」とは、枝分かれが、ゲル透過クロマトグラフィー(「GPC」)分析の結果生じたマーク−ホウインクプロットによって示されているように存在する分子量範囲のことを指す。より広い範囲は、より均質なカップリングを示している。
【0024】
本明細書において用いられる「長鎖枝分かれ(LCB)」とは、例えば、エチレン/α−オレフィンコポリマーの場合、ポリマー主鎖中へのα−オレフィンの組み込みの結果生じた短鎖分枝よりも長い鎖長を意味する。各長鎖分枝は、ポリマー主鎖と同じコモノマー分布を有し、これが接着されているポリマー主鎖と同じ長さであってもよい。
【0025】
本明細書において用いられる「溶融加工処理可能な」とは、レオロジー変性された後のポリマーが、溶融を受け、かつ粘性的に流れ得るポリマーを特徴とするような熱可塑性挙動を示し続け、したがってこのポリマーは、従来の加工処理設備、例えば押出し機および造形ダイにおいて加工処理され得るということを意味する。
【0026】
メルトフローレートは、230℃の温度および2.16kgの負荷で、ASTM 1238にしたがって測定された。
【0027】
本明細書において用いられる「溶融強度」とは、破断または引取共振の発生の時の最大引張り力のことを指す。溶融強度は、レオテンス(Rheotens)(米国サウスカロライナ州ロックヒルのGoettfert Inc.)溶融強度方法にしたがって測定される。これは、毛管レオメーターまたは押出し機のどちらかを用い、一組のホイール間にストランドを引き下ろすことによって、一定出力でポリマーの溶融ストランドを押出すことからなる。これらのホイールは、一定の加速で回転され、時間とともに直線的に増加する圧伸速度を生じる。このプロセスの間、ホイールへ作用するストランドの引張り力が記録される。レオテンス溶融強度実験は、190℃で実施される。メルトは、38.2秒−1のせん断率で、平らな30mm長さ/2mm直径のダイを備えたゲットファート・レオテスター2000毛管レオメーターによって生成された。レオメーターのバレル(12mm直径)に1分未満で充填され、10分の遅延が、適切な溶融のために許される。レオテンスホイールの巻取り速度は、2.4mm/秒2の一定加速で様々に変えられた。圧伸ストランドの引張りは、ストランドが破断するまで経時的に監視される。センチニュートン(cN)単位の定常状態力、および「圧伸性」とも呼ばれる破断における速度(mm/s)が報告される。
【0028】
本明細書において用いられる「引落とし安定性」とは、ウエブまたはバブル振動が発生する可能性がある臨界速度を意味する。本明細書において用いられる「引取共振」とは、溶融ポリマーフィルムまたはストランドの断面積における持続的周期性振動を意味する。
【0029】
本明細書において用いられる「メタロセン」とは、金属へ結合した少なくとも1つの置換または非置換シクロペンタジエニル基を有する金属含有化合物を意味する。「メタロセン触媒ポリマー」または同様な用語は、メタロセン触媒の存在下に製造されるあらゆるポリマーを意味する。
【0030】
本明細書において用いられる「規格化された(normalized)回復可能クリープコンプライアンス」とは、1,000秒でその値へ規格化されたクリープコンプライアンスJcを意味する。クリープは、180℃(ほかの指摘がなければ10Pa負荷を用いる)で、20mm直径の平行プレートを備えたレオロジカ・ビスコテック(Reologica Visco Tech)制御された応力レオメーターを用いて決定される。その結果生じたレオロジー変性されたポリマーは好ましくは、0.90未満、より好ましくは0.85未満、最も好ましくは0.80未満の規格化された回復可能クリープコンプライアンスを有する。
【0031】
本明細書において用いられる「多分散度」、「分子量分布」、および同様な用語は、重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を意味する。
【0032】
本明細書において用いられる「ポリマー」とは、同一または異なる型のモノマーを重合することによって調製された高分子化合物を意味する。「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、インターポリマーなどを含む。「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの型のモノマーまたはコモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これは、コポリマー(通常、2つの異なる型のモノマーまたはコモノマーから調製されたポリマーのことを指す。ただしこれは、3またはそれ以上の異なる型のモノマーまたはコモノマーから製造されたポリマーのことを指すための「インターポリマー」という用語と互換的に用いられることが多い)、ターポリマー(通常、3つの異なる型のモノマーまたはコモノマーから調製されたポリマーのことを指す)、テトラポリマー(通常、4つの異なる型のモノマーまたはコモノマーから調製されたポリマーのことを指す)などを含むが、これらに限定されるわけではない。「モノマー」または「コモノマー」は、互換的に用いられ、これらはポリマーを生成するために反応器へ添加される、重合性部分を有するあらゆる化合物のことを指す。ポリマーが1またはそれ以上のモノマーを含むものとして記載されている場合、例えばプロピレンおよびエチレンを含むポリマーの場合、このポリマーは当然ながら、モノマーに由来する単位、例えば−CH2−CH2−を含むのであり、モノマーそれ自体、例えばCH2=CH2を含むのではない。
【0033】
本明細書において用いられる「P/E*コポリマー」および同様な用語は、次の特性、(i)約14.6および約15.7ppmにおける位置誤差(regio-error)に対応する13C NMRピークであって、ほぼ等しい強度のピーク、および(ii)本質的に同一にとどまるTme、およびコモノマーの量、すなわちコポリマー中のエチレンおよび/または1またはそれ以上の不飽和コモノマーが増加されるにつれて減少するTpeakを有する示差走査熱量測定(DSC)曲線の少なくとも1つを有するものとして特徴付けられるプロピレン/不飽和コモノマー(例えばエチレン)コポリマーを意味する。「Tme」とは、融解が終了する温度を意味する。「Tpeak」とは、ピーク融解温度を意味する。典型的には、この実施形態のコポリマーは、これらの特性の両方を特徴とする。これらの特性の各々、およびこれらのそれぞれの測定値は、2002年5月5日に出願された米国特許出願番号第10/139,786号(WO2003040442)に詳細に記載されている。本特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
これらのコポリマーはさらに、約−1.20超の歪み指数Sixを有するものとしても特徴付けることができる。この歪み指数は、温度上昇溶離分別(TREF)から得られたデータから計算される。このデータは、溶離温度の関数としての重量フラクションの規格化されたプロットとして表示される。アイソタクチックプロピレン単位のモル含量は主として、溶離温度を決定する。
【0035】
この曲線の形状の顕著な特徴は、より高い溶離温度におけるこの曲線の鮮明さまたは急勾配と比較して、より低い溶離温度におけるテーリングである。この型の非対称を反映する統計は、歪みである。式1は、数学的に歪み指数Sixをこの非対称の尺度として示している。
【数1】
【0036】
値Tmaxは、TREF曲線において50〜90℃で溶離する最大重量フラクションの温度として規定される。Tiおよびwiは、TREF分布におけるそれぞれ任意のi番目のフラクションの溶離温度および重量フラクションである。これらの分布は、30℃を上回って溶離する曲線の全面積に対して規格化されている(wiの合計は100%に等しい)。このようにしてこの指数は、結晶化ポリマーの形状のみを反映する。あらゆる非結晶化ポリマー(30℃またはそれ未満で依然として溶液にあるポリマー)は、式1に示されている計算から省かれる。
【0037】
P/E*コポリマーについての不飽和コモノマーは、C4−20α−オレフィン、特にC4−12α−オレフィン、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなど;C4−20ジオレフィン、好ましくは1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、およびジシクロペンタジエン;スチレン、o−、m−、およびp−メチルスチレンを含むC8−40ビニル芳香族化合物、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン;およびハロゲン置換C8−40ビニル芳香族化合物、例えばクロロスチレンおよびフルオロスチレンを含む。エチレンおよびC4−12α−オレフィンが好ましいコモノマーであり、エチレンは、特に好ましいコモノマーである。
【0038】
P/E*コポリマーは、P/Eコポリマーの独特のサブセットである。P/Eコポリマーは、P/E*コポリマーだけでなく、プロピレンのすべてのコポリマー、および不飽和コモノマーを含む。P/E*コポリマー以外のP/Eコポリマーは、メタロセン−触媒されたコポリマー、幾何拘束触媒で触媒されたコポリマー、およびZ−N触媒されたコポリマーを含む。本発明の目的のためには、P/Eコポリマーは、50重量パーセントまたはそれ以上のプロピレンを含み、一方、EP(エチレン−プロピレン)コポリマーは、51重量パーセントまたはそれ以上のエチレンを含む。ここで用いられているように、「・・・プロピレンを含む」、「・・・エチレンを含む」、および同様な用語は、このポリマーが、これらの化合物それ自体を含むのとは対照的に、プロピレン、エチレンなどに由来する単位を含むことを意味する。
【0039】
「プロピレンホモポリマー」および同様な用語は、単独でまたは本質的に、プロピレンに由来する単位のすべてからなるポリマーを意味する。「プロピレンコポリマー」および同様な用語は、プロピレンおよびエチレン、および/または1またはそれ以上の不飽和コモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味する。
【0040】
本明細書において用いられる「緩和スペクトル指数(RSI)」は、20mm直径の平行プレートを備えたレオロジカ・ビスコテック制御された応力レオメーターを用いて、振動メルトレオメトリーによって決定された、緩和時間スペクトルの幅の尺度を意味する。この機器は、180℃で窒素雰囲気下、周波数(ω)0.01<ω<30Hzにわたって1.5mmのギャップで操作された。応力掃引(stress sweeps)が、直線粘弾性レジーム内でデータが確実に得られるように用いられた。最小二乗回帰アルゴリズムを用いて、緩和スペクトルおよびスペクトル分布モーメントの比(RSI)を発生させるために、マックスウエル(Maxwell)シリーズモデルが、測定された貯蔵弾性率および損失弾性率(G’,G”)へ適合させられた。結果として生じたレオロジー変性されたポリマーは、フリーラジカル鎖切断可能ポリマー(非変性ベースのポリマー)のものよりも大きいRSIを有する。好ましくは、結果として生じたレオロジー変性されたポリマーは、9超、より好ましくは10超、最も好ましくは11超のRSIを有する。
【0041】
本明細書において用いられる「レオロジー変性された」とは、動的機械的分光法(DMS)によって測定されたポリマーの溶融粘度の変化を意味する。溶融粘度の変化は、100rad/秒のせん断で測定された高せん断粘度について、および0.1rad/秒のせん断で測定された低せん断粘度について評価される。
【0042】
レオロジー変性されたポリマーは好ましくは、そのフリーラジカル鎖切断可能ポリマーに等しいかまたはこれ未満のGN−300を達成する。同様に好ましくは、レオロジー変性されたポリマーは、そのフリーラジカル鎖切断可能ポリマーに等しいかまたはこれ未満のGN−600を達成する。同様に好ましくは、レオロジー変性されたポリマーのGNは、そのフリーラジカル鎖切断可能ポリマーの約50パーセント未満である。
【0043】
あるいはまた、および好ましくはまた、レオロジー変性されたポリマーは、100ゲル未満のGN−300を達成する。より好ましくは、このレオロジー変性されたポリマーは、50ゲル未満のGN−300を達成する。
【0044】
この文脈におけるゲル数「GN」は、本明細書のほかのところで議論されている「重量パーセントゲル」とは異なり、これと混同されるべきではないことは、当業者には明らかである。
【0045】
あるいはまた、および好ましくはまた、結果として生じたレオロジー変性されたポリマーは、約30重量パーセント未満、好ましくは約10重量パーセント未満、より好ましくは約5重量パーセント未満の、トリクロロベンゼンまたはデカリンまたはキシレン中の抽出(ASTM 2765)によって測定されたゲル含量を有する。同様に好ましくは、このレオロジー変性されたポリマーのゲル含量は、フリーラジカル鎖切断可能ポリマー(非変性ポリマー)のゲル含量よりも大きい絶対5重量パーセント未満である。
【0046】
本明細書において用いられ、かつ伸張増粘とも呼ばれる「歪硬化」とは、分子がストレッチされ、さらなる変形への抵抗と対抗するのに十分なほど高い歪における伸張粘度の突然の増加のことを指す。
【0047】
好ましい実施形態において、本発明は、TAP媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、および(b)トリアリルホスフェート(TAP)を含む反応混合物からの反応において製造され、このフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1超大きい、ヘンキー歪における伸張粘度、および/またはこのフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、TAP媒介のレオロジー変性されたポリマーである。
【0048】
多様なフリーラジカル鎖切断可能ポリマーは、本発明においてレオロジー変性することができる。適切なフリーラジカル鎖切断可能ポリマーは、ブチルゴム、ポリアクリレートゴム、ポリイソブテン、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー、スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、ビニル芳香族モノマーのポリマー、ビニルクロライドポリマー、およびこれらのブレンドを含む。
【0049】
好ましくは、フリーラジカル分解可能炭化水素ベースポリマーは、イソブテン、プロピレン、およびスチレンポリマーからなる群より選択される。
【0050】
好ましくは、本発明のブチルゴムは、イソブチレンおよびイソプレンのコポリマーである。イソプレンは典型的には、約1.0重量%〜約3.0重量%の量で用いられる。
【0051】
本発明において有用なプロピレンポリマーの例は、プロピレンホモポリマーおよびP/Eコポリマーを含む。特に、これらのプロピレンポリマーは、ポリプロピレンエラストマーを含む。これらのプロピレンポリマーは、あらゆる方法によって製造することができ、チーグラー−ナッタ、CGC、メタロセン、および非メタロセン、金属中心、ヘテロアリールリガンド触媒作用によって製造することができる。
【0052】
有用なプロピレンコポリマーは、ランダム、ブロック、およびグラフトコポリマーを含む。例示的なプロピレンコポリマーは、Exxon−MobilのVISTAMAX)、三井のTAFMER、およびThe Dow Chemical CompanyによるVERSIFY(商標)を含む。これらのコポリマーの密度は典型的には、1立方センチメートルあたり少なくとも約0.850、好ましくは少なくとも約0.860、およびより好ましくは少なくとも約0.865g(g/cm3)である。
【0053】
これらのプロピレンポリマーは典型的には、少なくとも約0.01、好ましくは少なくとも約0.05、より好ましくは少なくとも約0.1のメルトフローレート(MFR)を有する。最大MFRは典型的には、約2,000を超えず、好ましくはこれは約1,000を超えず、より好ましくはこれは約500を超えず、さらにより好ましくは約80を超えず、最も好ましくはこれは約50を超えない。プロピレンおよびエチレン、および/または1またはそれ以上のC4−C20α−オレフィンのコポリマーについてのMFRは、ASTM D−1238、条件L(2.16kg、230℃)にしたがって測定される。
【0054】
本発明において有用なスチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーは、相分離系である。スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレンコポリマーもまた、本発明において有用である。
【0055】
ビニル芳香族モノマーのポリマーは、本発明において有用である。適切なビニル芳香族モノマーは、重合プロセスにおける使用のために公知のこれらのビニル芳香族モノマー、例えば米国特許第4,666,987号;第4,572,819号、および第4,585,825号に記載されているものを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0056】
好ましくはこのモノマーは、式
【化1】
を有する(式中、R’は水素、または3またはそれ以下の炭素を含有するアルキル基であり、Arは、アルキル、ハロ、またはハロアルキル置換をともなうかまたはともなわない、1〜3芳香環を有する芳香族環構造であり、あらゆるアルキル基は、1〜6の炭素原子を含有し、ハロアルキルとは、ハロ置換アルキル基のことを指す)。好ましくはArは、フェニルまたはアルキルフェニルであり、アルキルフェニルとは、アルキル置換フェニル基のことを指し、フェニルが最も好ましい。用いることができる典型的なビニル芳香族モノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、特にパラビニルトルエンのすべての異性体、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどのすべての異性体、およびこれらの混合物を含む。
【0057】
ビニル芳香族モノマーはまた、ほかの共重合性モノマーと組み合わされてもよい。このようなモノマーの例は、アクリルモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メチルメタクリレート、アクリル酸、およびメチルアクリレート;マレイミド、フェニルマレイミド、および無水マレイン酸を含むが、これらに限定されるわけではない。これに加えて、重合は、衝撃変性されるかまたはグラフト化されたゴム含有生成物を製造するために、予め溶解されたエラストマーの存在下に実施されてもよい。これらの生成物の例は、米国特許第3,123,655号、第3,346,520号、第3,639,522号、および第4,409,369号に記載されている。
【0058】
本発明はまた、ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマー組成物の剛性、マトリックス、または連続相ポリマーへも適用可能である。
【0059】
TAP−媒介のレオロジー変性されたポリマーを製造する反応混合物はまた、切断不可能ポリマーも含有し得る。特に有用な切断可能有機ポリマーおよび切断不可能ポリマーブレンドは、ポリプロピレンおよびポリエチレンである。
【0060】
本発明における使用のためには、トリアリルホスフェート(TAP)は好ましくは、約0.05重量パーセント〜約20.0重量パーセントの範囲の量で存在する。より好ましくはこの助剤は、約0.1重量パーセント〜約10.0重量パーセントの範囲の量で存在する。さらになお好ましくは、この助剤は、約0.3重量パーセント〜約5.0重量パーセントの量で存在する。
【0061】
本発明における使用のためのフリーラジカルは、多様な方法で形成されてもよい。例えば酸素中心フリーラジカルは、有機ペルオキシド、アゾフリーラジカル開始剤、ビクメン、酸素、および空気の使用を通して発生し得る。この点に関して、反応混合物はさらに、有機ペルオキシド、アゾフリーラジカル開始剤、ビクメン、酸素、または空気を含んでいてもよい。有機ペルオキシドが用いられる時、この有機ペルオキシドは一般に、約0.005重量パーセント〜約20.0重量パーセント、より好ましくは約0.01重量パーセント〜約10.0重量パーセント、さらになお好ましくは約0.03重量パーセント〜約5.0重量パーセントの量で存在する。例えば炭素中心フリーラジカルは、アルコキシラジカルフラグメンテーション、アリル助剤活性化、およびフリーラジカル反応性ポリマーへの連鎖移動を通して発生し得る。
【0062】
フリーラジカルを形成するための添加剤の使用に加えて、またはその代替方法として、このポリマーは、せん断エネルギー、熱、または放射線へ付された時、フリーラジカルを形成し得る。したがってせん断エネルギー、熱、または放射線は、フリーラジカル誘発剤として作用し得る。
【0063】
これらのフリーラジカルが、有機ペルオキシド、酸素、空気、せん断エネルギー、熱、または放射線によって発生させられる時、トリアリルホスフェートとフリーラジカル源との組み合わせが、ポリマーのカップリングのために必要とされると考えられる。この組み合わせの制御は、カップリングされたポリマー(すなわち、レオロジー変性されたポリマー)の分子構造を決定する。トリアリルホスフェートの連続添加、次いでフリーラジカルの段階的開始は、分子構造上全体へある程度の制御を与える。
【0064】
グラフト化部分は、ポリマー上で開始させることができ、トリアリルホスフェートでキャップして、懸垂的にグラフト化された構造を形成し得ることも考えられる。あとで、この懸垂的にグラフト化された構造は、その後に形成されたフリーラジカルとカップリングすることができ、結果として生じたレオロジー変性ポリマーへ所望レベルの均質性を付与する。その後に形成されたフリーラジカルは、追加量のフリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、または1またはそれ以上のほかのフリーラジカル鎖切断可能ポリマーからのものであってもよい。
【0065】
さらに別の実施形態において、本発明は、フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーからのTAP−媒介のレオロジー変性されたポリマーの製造方法である。
【0066】
好ましい実施形態において、本発明は、レオロジー変性可能ポリマー組成物から調製された製品である。これらの製品を製造するために、あらゆる方法を用いることができる。特に有用な方法は、射出成形、押出し、圧縮成形、回転成形、熱成形、ブロー成形、粉末コーティング、バンバリーバッチミキサー、繊維スピニング、およびカレンダリングを含む。
【0067】
適切な製品は、電線・ケーブル絶縁材、電線・ケーブル半導体品、電線・ケーブルコーティングおよびジャケット、ケーブル付属品、靴底、多成分靴底(異なる密度および型のポリマーを含む)、気密用充填材、ガスケット、異形材、耐久性商品、剛性超圧伸(ultradrawn)テープ、ランフラット(run flat)タイヤインサート、建築用パネル、複合材料(例えば木材複合材料)、パイプ、フォーム、インフレーションフィルム、および繊維(バインダー繊維および弾性繊維を含む)を含む。
【0068】
フォーム製品は例えば、押出しされた熱可塑性ポリマーフォーム、押出しされたポリマーストランドフォーム、膨張可能な熱可塑性フォームビーズ、膨張熱可塑性フォームビーズ、膨張および融合熱可塑性フォームビーズ、および様々な型の架橋フォームを含む。これらのフォーム製品は、あらゆる公知の物理的コンフィギュレーション、例えばシート、円形、ストランド形状、ロッド、ソリッド厚板、ラミネート厚板、合着ストランド厚板、異形材、およびバンストック形状を取ってもよい。
【0069】
本発明のレオロジー変性されたプロピレンポリマーから製造されたフォームは、特に有用である。一例は、全プロピレンコポリマーを基準にして少なくとも50重量パーセントの、プロピレンに由来する単位、およびエチレン、アクリレート、ビニルアセテート、またはこれらの組み合わせに由来する単位を含む、レオロジー変性されたプロピレンコポリマーを含むフォームである。好ましくはコモノマー単位は、エチレン性不飽和コモノマーに由来し、このコポリマーは、0.5〜8g/10分の範囲のメルトフローレート(ASTM 1238、230℃、2.16kg荷重)および少なくとも5センチニュートンのレオテンス溶融強度を有する。例示されたフォームはさらに、800kg/m3またはそれ以下の密度を有してもよい。
【実施例】
【0070】
次の非限定例は、本発明を例証する。
【0071】
比較例1〜8および実施例9および10
これらの実施例のために、The Dow Chemical Companyによって製造されている実験反応器アイソタクチックホモポリマーポリプロピレン粉末(i−PP)が用いられた。この樹脂の特性は、次のとおりであった。3.14g/10分のメルトフローレート(MFR);167.1℃のDSC融点;および0.47g/ccの嵩密度。
【0072】
表1は、比較例1〜8および実施例9および10のために用いられた助剤およびルペロックス(Luperox)130ペルオキシド(L130)の量を示し、ここですべての量は、重量パーセントで列挙されている。簡単に言えば、これらの助剤は、次の省略形によって識別される。トリアリルホスフェート(TAP)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTAc)、およびトリアリルトリメセート(TAM)。
【0073】
【表1】
【0074】
これらの実施例は、所望量のL130および/または助剤を含有するヘキサン溶液(8ml)で、i−PP(3g)をコーティングすることによって調製した。ヘキサン溶媒を蒸発させ、得られた混合物を、アトラス・ラボラトリー・ミキシング・モールダー(Atlas Laboratory Mixing Molder)(ミニミキサー)の溶融シールされた空洞部へ、200℃で6分間装入した。このミニミキサーから出てくる組成物はその後、このポリマーを、170℃で薄いシートにプレスし、カルシウムステアレート(500ppm)、Irganox 1010(商標)テトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルヒドロシンナメート)メタン(Ciba Specialty Chemicals Inc.から入手し得る)(500ppm)、およびIrgafos 168トリス(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)ホスファイト(1,000ppm)のマスターバッチと、反復して折り畳み、170℃でプレスすることによって混合して安定させた。
【0075】
安定化させた例示組成物は、20mm直径の平行プレートを備えたレオロジカ・ビスコテック制御された応力レオメーターを用いて、振動メルトレオメトリーによって分析した。この機器を、180℃で、窒素雰囲気下、周波数(ω)0.01<ω<30Hzにわたって1.5mmのギャップで操作した。応力掃引を、直線粘弾性レジーム内でデータが確実に得られるように用いた。最小二乗回帰アルゴリズムを用いて、緩和スペクトルおよびスペクトル分布モーメントの比(RSI)を発生させるために、マックスウエルシリーズモデルを、測定した貯蔵弾性率および損失弾性率(G’,G”)へ適合させた。
【0076】
クリープ実験もまた、前記レオメーターを用いて180℃で(特に明記しない限り10Pa荷重)、安定化させた例示組成物に対して実施した。このデータは、ゼロ−せん断粘度および回復可能コンプライアンスを計算するために分析した。(1,000秒後に記録されたクリープコンプライアンスは、ゼロ−せん断粘度の推定値を与えるのであって、実際の値ではない)。これらの結果は、図1〜8に示されている。
【0077】
【表2】
【0078】
これらの組成物の伸張粘度も測定された。
【0079】
これらのサンプルは、0.5mmスペーサー、および10トンの圧力を用いて、350°Fの温度で15分間、非制約圧縮成形によって調製され、その後20mm長さ、6mm幅の寸法のストリップにカットされた。一定のヘンキー歪率が適用され、時間依存性応力が、測定されたトルク、およびサンプル時間依存性断面積から決定された。
【0080】
図9〜12に示されているように、実施例9および実施例10は、(比較例に対して)劇的に増加したε=1を上回る歪における伸張粘度を示した。同じペルオキシド荷重において、TAPは、最大程度の歪硬化を結果として生じ、サンプルが場合により破断する前に、ピークにおける最大伸張粘度を生じた。圧伸性は犠牲にされなかった。
【0081】
これに対して、変性前のフリーラジカル鎖切断可能ポリプロピレン(比較例1)は、歪硬化の兆候をまったく示さず、その他の助剤(比較例4、比較例5、比較例6、および比較例7)は、有意に劣る歪硬化を示した。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】ポリプロピレン樹脂についてのせん断薄化に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図2】ポリプロピレン樹脂についてのせん断薄化に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図3】ポリプロピレン樹脂についてのクリープコンプライアンスに対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図4】ポリプロピレン樹脂についてのクリープコンプライアンスに対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図5】ポリプロピレン樹脂についての相対回復可能クリープコンプライアンスに対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図6】ポリプロピレン樹脂についての相対回復可能クリープコンプライアンスに対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図7】ポリプロピレン樹脂についての規格化されたせん断薄化に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図8】ポリプロピレン樹脂についての規格化されたせん断薄化に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図9】ポリプロピレン樹脂の伸張粘度に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図10】ポリプロピレン樹脂の伸張粘度に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図11】ポリプロピレン樹脂の伸張粘度に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【図12】ポリプロピレン樹脂の伸張粘度に対する有機ペルオキシドおよび様々な助剤の効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、
(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、および
(b)トリアリルホスフェート
を含む反応混合物から調製され、
前記フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項2】
前記反応混合物がさらに、切断不可能ポリマーも含む、請求項1に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項3】
10重量パーセント以下のゲルを含む、請求項1に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項4】
5重量パーセント以下のゲルを含む、請求項1に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項5】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、
(a)第一量の第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーであって、トリアリルホスフェートで懸垂的にグラフト化されているポリマー、および
(b)第二量の前記第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、またはある量の第二フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー
を含む反応混合物から調製され、
第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項6】
10重量パーセント以下のゲルを含む、請求項5に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項7】
5重量パーセント以下のゲルを含む、請求項5に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項8】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーの製造方法であって、
(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーと、
(b)トリアリルホスフェート
との反応工程を含み、
前記トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーは、前記フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、方法。
【請求項9】
前記トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーは、10重量パーセント以下のゲルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーは、5重量パーセント以下のゲルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーから製造される製品。
【請求項12】
フォームである、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
前記フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーは、全プロピレンコポリマーを基準にして、少なくとも50重量パーセントのプロピレンに由来する単位、および不飽和モノマーに由来する単位を含むプロピレンコポリマーである、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
前記不飽和モノマーが、エチレン、アクリレート、ビニルアセテート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
前記プロピレンコポリマーが、10分あたり約0.5g〜10分あたり約8gの範囲のメルトフローレート、および少なくとも約5センチニュートンのレオテンス溶融強度を有する、請求項11に記載の製品。
【請求項16】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、
(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、および
(b)トリアリルホスフェート
を含む反応混合物から調製され、
前記フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1以上大きい、ヘンキー(Hencky)歪における伸張粘度を有する、トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項17】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、
(a)第一量の第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーであって、トリアリルホスフェートで懸垂的にグラフト化されているポリマー、および
(b)第二量の前記第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、またはある量の第二フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー
を含む反応混合物から調製され、
前記第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1超大きい、ヘンキー歪における伸張粘度を有する、トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項18】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーの製造方法であって、
(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーと、
(b)トリアリルホスフェート
との反応工程を含み、
前記トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーは、前記フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1超大きい、ヘンキー歪における伸張粘度を有する、方法。
【請求項19】
請求項16に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーから製造される、製品。
【請求項20】
電線・ケーブルである、請求項19に記載の製品。
【請求項1】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、
(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、および
(b)トリアリルホスフェート
を含む反応混合物から調製され、
前記フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項2】
前記反応混合物がさらに、切断不可能ポリマーも含む、請求項1に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項3】
10重量パーセント以下のゲルを含む、請求項1に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項4】
5重量パーセント以下のゲルを含む、請求項1に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項5】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、
(a)第一量の第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーであって、トリアリルホスフェートで懸垂的にグラフト化されているポリマー、および
(b)第二量の前記第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、またはある量の第二フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー
を含む反応混合物から調製され、
第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項6】
10重量パーセント以下のゲルを含む、請求項5に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項7】
5重量パーセント以下のゲルを含む、請求項5に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項8】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーの製造方法であって、
(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーと、
(b)トリアリルホスフェート
との反応工程を含み、
前記トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーは、前記フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも大きい緩和スペクトルインデックス(RSI)を有する、方法。
【請求項9】
前記トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーは、10重量パーセント以下のゲルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーは、5重量パーセント以下のゲルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーから製造される製品。
【請求項12】
フォームである、請求項11に記載の製品。
【請求項13】
前記フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーは、全プロピレンコポリマーを基準にして、少なくとも50重量パーセントのプロピレンに由来する単位、および不飽和モノマーに由来する単位を含むプロピレンコポリマーである、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
前記不飽和モノマーが、エチレン、アクリレート、ビニルアセテート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の製品。
【請求項15】
前記プロピレンコポリマーが、10分あたり約0.5g〜10分あたり約8gの範囲のメルトフローレート、および少なくとも約5センチニュートンのレオテンス溶融強度を有する、請求項11に記載の製品。
【請求項16】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、
(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、および
(b)トリアリルホスフェート
を含む反応混合物から調製され、
前記フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1以上大きい、ヘンキー(Hencky)歪における伸張粘度を有する、トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項17】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーであって、
(a)第一量の第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーであって、トリアリルホスフェートで懸垂的にグラフト化されているポリマー、および
(b)第二量の前記第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー、またはある量の第二フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマー
を含む反応混合物から調製され、
前記第一フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1超大きい、ヘンキー歪における伸張粘度を有する、トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマー。
【請求項18】
トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーの製造方法であって、
(a)フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーと、
(b)トリアリルホスフェート
との反応工程を含み、
前記トリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーは、前記フリーラジカル鎖切断可能有機ポリマーのものよりも1超大きい、ヘンキー歪における伸張粘度を有する、方法。
【請求項19】
請求項16に記載のトリアリルホスフェート媒介のレオロジー変性されたポリマーから製造される、製品。
【請求項20】
電線・ケーブルである、請求項19に記載の製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−515010(P2009−515010A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539063(P2008−539063)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/042980
【国際公開番号】WO2007/053771
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【出願人】(391018835)クイーンズ ユニバーシティ アット キングストン (9)
【氏名又は名称原語表記】QUEEN’S UNIVERSITY AT KINGSTON
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/042980
【国際公開番号】WO2007/053771
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【出願人】(391018835)クイーンズ ユニバーシティ アット キングストン (9)
【氏名又は名称原語表記】QUEEN’S UNIVERSITY AT KINGSTON
【Fターム(参考)】
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