TECマップ及び受信機バイアスの作成及び測定方法及び装置
【課題】少ない演算量及びメモリ量で高精度に、TECマップの作成と受信機バイアスの測定を共に得る。
【解決手段】測位用衛星受信機の受信機バイアス、および、測位用衛星の衛星バイアスを予め測定または入手する。測位用衛星と測位用衛星受信機とのパスからピアスポイントを算出し、そのピアスポイントが、予め区分けしたどのブロックに属するかを判定する。測位用衛星受信機から出力される搬送波位相及び疑似距離を用いて、衛星及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数(STEC)を算出し、そのSTECから衛星バイアス及び受信機バイアスを減算し、測位用衛星受信機と測位用衛星との位置関係から真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を算出する。各ピアスポイントにおけるVTECを、各ピアスポイントの属するブロック毎に平均して求めた値を、ブロックVTECとする。各ブロックVTECによりTECマップを作成する。
【解決手段】測位用衛星受信機の受信機バイアス、および、測位用衛星の衛星バイアスを予め測定または入手する。測位用衛星と測位用衛星受信機とのパスからピアスポイントを算出し、そのピアスポイントが、予め区分けしたどのブロックに属するかを判定する。測位用衛星受信機から出力される搬送波位相及び疑似距離を用いて、衛星及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数(STEC)を算出し、そのSTECから衛星バイアス及び受信機バイアスを減算し、測位用衛星受信機と測位用衛星との位置関係から真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を算出する。各ピアスポイントにおけるVTECを、各ピアスポイントの属するブロック毎に平均して求めた値を、ブロックVTECとする。各ブロックVTECによりTECマップを作成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数(TEC)を推定する方法において、少ない演算量及びメモリ量で精度よく、TECマップを作成する方法と、受信機バイアスを測定する方法、並びに、その方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電離層や超高層大気の擾乱が、通信・放送システムや航空機の管制業務に与える影響等を予測するために、リアルタイムで日本全国の鉛直方向の電離層全電子数をマップ表示することが必要とされている。電離層は、GPS衛星などの測位用衛星の信号に対して分散媒として作用するため、電波の伝播に群遅延と進相をもたらす。
視線方向の電離層全電子数(STEC)は、測位用衛星からの2つの異なる周波数の搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離から計算することができる。ただし、このSTECには衛星バイアス及び受信機バイアスが含まれるため、真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を得るためには、STEC値から衛星バイアス及び受信機バイアスを補正したのち、電離層の平面平板モデルや球殻モデル等によって定まる仰角に応じた補正係数を乗じる必要がある。
【0003】
一般には、衛星バイアスと受信機バイアスは分離して求めることができない。そのため、VTECは、衛星バイアスと受信機バイアスの和を未知数とした連立一次方程式から最小自乗法で求めることとなる。
従来技術には、日本全国各地に設置された多数の2周波GPS受信機を用い、衛星バイアスと受信機バイアスをそれぞれ時不変な未知数とし、日本全国を緯度経度毎に一定の間隔でメッシュ状に区切り、同一のブロック内ならどこでもVTECが一定であると仮定し、その値を時変化する未知数として、最小自乗法で解くという方法があった(非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】通信総合研究所季報, Vol.48, No.4,pp.107-119
【0005】
しかし、この方法では、搬送波位相の観測時間間隔が短くなるほど、未知数の数が増加し、演算量が急激に膨大となるという問題点がある。すなわち、演算量が、時間分解能(受信サンプリング間隔)と空間分解能(ブロックの数)と受信機の台数の積の2〜3乗に比例して急激に増大してしまう。また、計算に必要なメモリ量も時間分解能と空間分解能の積に比例して増大していく。また、ブロックの大きさや形状を必要に応じて変えようとすると、連立方程式の項を変えなければならなくなり、非常に煩雑になってしまう。
【0006】
また、TECマップを作成するためには、全国各地でのVTECが必要となるので、多数の測位用衛星受信機を設置する必要がある。そのため、受信機バイアスを受信データから受信機毎に短時間に効率よく測定することが求められるが、従来の最小自乗法による方法では実現が困難である。
【0007】
受信機バイアスの測定やTECマップの作成に関する従来技術には、非特許文献2〜3や特許文献1〜5があり、本発明者も特許文献6に、測位用衛星受信機毎に受信機バイアスを少ない演算量で短時間に精度よく求める手段を開示している。
【0008】
【非特許文献2】DAVIDS. COCO,Variability of GPSSatellite Differential Group Delay Biases,IEEE Transactions on Aerospace and Electronic Systems,米国,1991年11月,27巻6号,931-938
【非特許文献3】通信総合研究所季報,1995年12月,41巻4号,333-338
【特許文献1】特公平7−46138
【特許文献2】特公平7−48078
【特許文献3】特開平9−96668
【特許文献4】特表平11−509322
【特許文献5】特開2000−310674
【特許文献6】特開2003−43128(特許3598372)
【0009】
しかし、十分少ない演算量及びメモリ量で高精度に、TECマップの作成と受信機バイアスの測定を共に得ることは困難であった。特に、前者(TECマップ)の結果を用いることで、後者(受信機バイアス)の精度を向上させたり、或いは精度の向上した後者の結果を利用して再度前者を計算するとより精度のよい結果が得られる、という一連の繰り返し処理についてはこれまでは全く開示も示唆もされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数を推定するに当たって、十分少ない演算量及びメモリ量で高精度に、TECマップの作成と受信機バイアスの測定を共に得ることができる方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のTECマップの作成方法は次の構成を備える。
すなわち、測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数を推定する方法において、測位用衛星受信機の受信機バイアスを予め測定または入手して初期設定する受信機バイアス初期設定ステップと、測位用衛星の衛星バイアスを予め測定または入手して初期設定する衛星バイアス初期設定ステップと、測位用衛星と測位用衛星受信機とのパスから電離層貫通点(ピアスポイント)を算出し、そのピアスポイントが、予め区分けしたどのブロックに属するかを判定するブロック判定ステップと、測位用衛星受信機から出力される搬送波位相及び疑似距離を用いて、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数(STEC)を算出するSTEC算出ステップと、そのSTECから衛星バイアス及び受信機バイアスを減算し、測位用衛星受信機と測位用衛星との位置関係から真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を算出するVTEC算出ステップと、得られた各ピアスポイントにおけるVTECを、各ピアスポイントの属するブロック毎に平均して求めた値を、そのブロックのVTECとするブロックVTEC算出ステップとを有し、そのブロックVTEC算出ステップを、各ブロックについて行うことによりTECマップを作成することを特徴とする。
【0012】
このTECマップの作成方法によって得られたTECマップを用いて、受信機バイアスを求めてもよい。
【0013】
また、それらのTECマップの作成方法と、受信機バイアスの測定方法とを、繰り返すことによって、TECマップの精度の更なる向上に寄与させてもよい。
【0014】
同様に、それらのTECマップの作成方法と、受信機バイアスの測定方法とを、繰り返すことによって、受信機バイアスの精度の更なる向上に寄与させてもよい。
【0015】
ここで、ブロックVTEC算出ステップにおいて、ブロック毎の平均値を求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正して精度向上に寄与させてもよい。
【0016】
同様に、ブロックVTEC算出ステップにおいて、ブロック毎の平均値を求める際に、重み係数を適宜かけて加重平均して精度向上に寄与させてもよい。
【0017】
また、TECマップから受信機バイアスを求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正して精度向上に寄与させてもよい。
【0018】
また同様に、TECマップから受信機バイアスを求める際に、重み係数を適宜かけて加重平均して精度向上に寄与させてもよい。
【0019】
本発明のTECマップの作成装置は、測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数を推定する装置において、測位用衛星受信機の受信機バイアスを予め測定または入手して初期設定する受信機バイアス初期設定手段と、測位用衛星の衛星バイアスを予め測定または入手して初期設定する衛星バイアス初期設定手段と、測位用衛星と測位用衛星受信機とのパスからピアスポイントを算出し、そのピアスポイントが、予め区分けしたどのブロックに属するかを判定するブロック判定手段と、測位用衛星受信機から出力される搬送波位相及び疑似距離を用いて、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数(STEC)を算出するSTEC算出手段と、そのSTECから衛星バイアス及び受信機バイアスを減算し、測位用衛星受信機と測位用衛星との位置関係から真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を算出するVTEC算出手段と、得られた各ピアスポイントにおけるVTECを、各ピアスポイントの属するブロック毎に平均して求めた値を、そのブロックのVTECとするブロックVTEC算出手段とを有し、そのブロックVTEC算出ステップを、各ブロックについて行うことによりTECマップを作成することを特徴とする。
【0020】
このTECマップの作成装置によって得られたTECマップを用いて、受信機バイアスを求める受信機バイアス更新手段を設けてもよい。
【0021】
ブロックVTEC算出手段に、ブロック毎の平均値を求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正するか、或いは、重み係数を適宜かけて加重平均する平均演算手段を設けてもよい。
【0022】
また、受信機バイアス更新手段に、TECマップから受信機バイアスを求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正するか、或いは、重み係数を適宜かけて加重平均する平均演算手段を設けてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記構成を備えることにより次の効果を奏する。すなわち、非常に少ない演算量及びメモリ量で高精度にTECマップを作成することができると共に、そのTECマップを利用することで受信機バイアスが未知または概略値である受信機に対して、非常に少ない演算量及びメモリ量によって高精度に受信機バイアスを求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記の例示に限らず、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、前記特許文献など従来公知の技術を用いて適宜設計変更可能である。例えば、ここでは航法用衛星としてGPS衛星を挙げるが、GLONASS衛星など、地球側位システムに用いられる任意の衛星に利用できる。
【0025】
本発明ではまず、TECマップ作成に利用しうる受信機全てについて、簡易な方法(例えば特許文献6に記載の方法)を用いて一旦受信機バイアスを初期値として設定し、衛星バイアスについてはインターネットを介した公知の手段などから入手し、これらの値を用いて日本全国の各ピアスポイントにおけるVTECを求める。
ピアスポイントの近い地点同士ではVTECもほぼ同じになるので、日本全国を緯度経度毎に一定または予め設定した所定の間隔で、メッシュ状など所定の形状で区切り、同一のブロック内ではVTECが一定であるとみなして、そのブロック内に含まれる全てのVTECをアンサンブル平均し、その値をそのブロックにおけるVTECとする。これを全てのブロックについて行うことによりTECマップを作成する。
【0026】
逆に、このTECマップから各受信機の受信機バイアスを再度求めると、最初に設定した受信機バイアスよりも精度がよくなるので、このような操作を繰り返すことにより、精度の高いTECマップが得られると共に、受信機バイアスが未知の受信機の受信機バイアスも精度よく測定することができる。
【0027】
この手法によると、演算量は、時間分解能(受信サンプリング間隔)と受信機の台数の積に比例するのみで、空間分解能(ブロックの数)が増えても演算量はほとんど増えない。同様に、必要となるメモリ量も時間分解能に比例するのみで、ブロックの数が増えてもほとんど増えない。
そのため、ブロックの形状や大きさにも制約を受けることがなく、必ずしも同じ大きさの正方形である必要もなく、例えば正六角形や円や楕円状などでもよい。また、一般的に全電子数の濃度分布は、緯度の違い(南北方向)による影響は大きいが、経度の違い(東西方向)による影響は小さいので、横長のブロックとしてもよい。さらに、受信機の多くある地域ではブロックの大きさを小さくするなど、多様な形態に柔軟に対応できる。
【0028】
図1は、本発明の要部構成を示す説明図であり、図2は、GPS信号処理部の要部構成を示す説明図である。
図1は、日本全国をm個のブロックに区切り、N台の2周波GPS受信機を用いた場合の例である。少なくとも、GPS信号処理部1,2,…,N 、TECマップ計算部A、受信機バイアス計算部1,2,…,N及びTECマップ計算部Bなどを備える。
【0029】
図2は、GPS受信機1に対応したGPS信号処理部1の構成を示すが、他のGPS信号処理部2,…,Nも同様である。
まず、受信機1から出力される航法メッセージから、衛星位置座標を計算し、これと受信機1の既知位置座標から、ピアスポイントとそのピアスポイントの属するブロック番号並びに後で必要になる鉛直方向/視線方向(V/S)換算値等を計算し、その結果をTECマップ計算部A、受信機バイアス計算部1及びTECマップ計算部Bなどの各部へ出力する。
次に、受信機1から出力される搬送波位相及び疑似距離 L1 、L2 、C1 、P2 を用いて(受信機の機種によっては、C1 の代わりにP1 を用いることもできる)、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけのSTECを計算し、この値から予め入手または計算しておいた衛星バイアス分を減算し、この値を見かけのSTEC’として受信機バイアス計算部1及びTECマップ計算部Bなどの各部に出力する。更に、この値から、予め入手または計算しておいた受信機バイアスR1 を減算し、V/S換算値を乗算し、この値を仮のVTECとしてTECマップ計算部Aにのみ出力する。
これらの出力信号は、例えば衛星毎に30秒サンプリングで24時間にわたる信号列となり、後段の各部で利用するのでメモリに蓄積しておく。
【0030】
TECマップ計算部Aでは、以下のような処理を行う。
同一時刻に同一ブロック内にあるVTECはみなほぼ同じ値になるとみなして、各GPS信号処理部から入力される仮のVTEC信号列と対応するブロック番号から、ブロック毎に同一時刻毎の仮のVTECのアンサンブル平均を計算する。
【0031】
この際、もしこの平均値より大きく乖離した仮のVTECがあった場合には、その値を除去して再度平均を求めたり、適切な補正をしてから再度平均を求めるような従来公知の例外処理を必要に応じて行う。或いは、仮のVTECに適宜重み係数をかけて加重平均するような従来公知の手段を適用することもできる。
このようにして得られた各ブロックの平均VTECを、VTEC11,VTEC21,…,VTECm1とおいてTECマップと呼び、次段の受信機バイアス計算部1,2,…,Nに出力する。これらの出力信号は、例えばブロック毎に30秒サンプリングで24時間にわたる信号列となる。
【0032】
図3は、受信機バイアス計算部の要部構成を示す説明図である。
図3は、GPS信号処理部1に対応した受信機バイアス計算部1の構成を示すが、受信機バイアス計算部2,…,Nも同様である。
入力側から見てn個目の受信機バイアス計算部1においては、TECマップ計算部AまたはTECマップ計算部Bから出力されるTECマップ(VTEC1n,VTEC2n,…,VTECmn)を入力とし、入力側から見てn個目のTECマップ計算部Bに受信機バイアスR1nを出力する機能をもつ。すなわち、入力信号列であるVTEC1n,VTEC2n,…,VTECmnの中から、GPS信号処理部1から出力されるブロック番号に対応した信号列を選択(例えば、ブロック番号が5であったらVTEC5nを選択)し、この値を対応するV/S換算値で除算したのち、GPS信号処理部1から入力される見かけのSTEC’信号列から減算すると受信機1の受信機バイアスのみが残るので、受信機バイアスは時間変化しないとみなして時間平均を求める。
この際にも、必要に応じて上記のような例外処理を行い、更新された受信機バイアスR1nとして次段のTECマップ計算部Bに出力する。この出力信号R1nは、もし受信機バイアスが24時間は一定であるとすると、24時間ごとに出力されることになる。
【0033】
TECマップ計算部Bでは、TECマップ計算部Aとほとんど同様の以下のような処理を行う。
入力側から見てn個目のTECマップ計算部Bにおいては、入力側から見てn個目の受信機バイアス計算部1,2,…,Nからそれぞれ出力される受信機バイアスR1n,受信機バイアスR2n,…,受信機バイアスRNnを入力とし、入力側から見てn+1個目の受信機バイアス計算部1,2,…,NにTECマップ(VTEC1n+1,VTEC2n+1,…,VTECmn+1)を出力する機能をもつ。すなわち、同一時刻に同一ブロック内にあるVTECはみなほぼ同じ値になるとみなして、各GPS信号処理部から入力される見かけのSTEC’信号列から対応する受信機バイアス分を減算してから対応するV/S換算値を乗算した値を、対応するブロック番号に応じて、ブロック毎に同一時刻毎にアンサンブル平均する。
この際、必要に応じてTECマップ計算部Aと同様の例外処理を行う。
【0034】
このようにして得られた各ブロックの平均VTECを、VTEC1n+1,VTEC2n+1,…,VTECmn+1として、入力側から見てn+1個目の受信機バイアス計算部1,2,…,Nに出力する。これらの出力信号は、例えば各ブロック毎に30秒サンプリングで24時間にわたる信号列となる。
【0035】
これらの処理を繰り返し行うことで、TECマップ及び受信機バイアスの精度が向上していく。その理由は、各受信機に最初に設定しておいた受信機バイアスの値が、真の値と比べて誤差があったとしても、全ての受信機の受信機バイアスの誤差が正または負のいずれかというわけではなく、受信機毎に正や負に独立にランダムな誤差になっていると考えられるので、ブロック毎にVTECのアンサンブル平均を取ることでこの誤差の影響を軽減することができ、そのため比較的精度のよいTECマップが得られる。
そして、この比較的精度のよいTECマップを用いて、逆に各受信機の受信機バイアスを求めれば、最初に設定した値より精度がよくなる。従ってこの再計算された受信機バイアスに基づいてもう一度同様の方法でTECマップを作成すれば、もっと精度のよいTECマップが得られる。以下この繰り返しにより一層精度が向上する。
【0036】
なお、もし例えば、GPS受信機1のみその受信機バイアスが未知または概略値であった場合には、図2のGPS信号処理部から分かるように仮のVTEC信号列は出力できないが、この信号列を用いるのは、図1の構成図からも分かるように、TECマップ計算部Aのみであるので、それ以降のTECマップ計算部Bや受信機バイアス計算部1に、見かけのSTEC’信号列やブロック番号列やV/S換算値を出力することで、受信機バイアスを求めることができる。またこれにより、GPS受信機1のデータも用いたTECマップも容易に得られる。
逆に、マルチパスやサイクルスキップなどが原因で大幅にエラーが含まれる受信機のデータを削除した方が好ましいと思われる場合も、TECマップを求める際にその受信機が寄与した分を考慮して再計算をするだけでよく、最初から全て計算をやり直す必要はない。
【0037】
これに対し、従来方式では、一度最小自乗法によって、TECマップ及び受信機バイアス、衛星バイアスの値が得られたとしても、新たに受信機を1台追加して、それも含めたTECマップやその受信機の受信機バイアスを求めようとすると、もう一度最初から計算し直さなければならなかった。
最初の計算で利用した受信機のうち特定の受信機を削除したい場合も同様に、最初からその受信機を除いた状態でもう一度計算をし直さなければならなかった。
【0038】
なお、この点については、2007年8月に過去の全国の電子基準点の受信データアーカイブのうち一部のデータ(例えば、2004年8月30日のNo.0706や2004年10月9日のNo.3009など)について修正されたことがアナウンスされ、また、2008年8月にも2004年1月31日のNo.0675と2004年2月13日のNo.0621のデータが修正されており、このためもし当該日のTECマップを計算し直したい場合、本発明方式ならそのデータのみ読み込めばよいのに対し、従来方式ではこのデータも含めた全てのデータを再度読み込んで計算し直さなければならず、現実に本発明方式の優位性が具体的に示される。
【0039】
上述の処理を式で表すと以下のようになる。
図4は、GPS衛星と受信機との関係を示す説明図であり、図5は、日本上空でのブロックと受信機の配置の実例を示す説明図であり、丸囲み数字はそのブロックのブロック番号を示す。
受信機(1)は、外部通信機器を備え、予め測定または入手したGPS衛星(2)の衛星バイアスを入力する入力手段を有する。また、受信機(1)によって測定される衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ視線方向の電離層全電子数(STEC)と、受信機(1)からGPS衛星(2)を仰ぐ仰角(θ)とから、所定の関係式を用いて受信機バイアスを求める計算手段も備え、演算手段や、記録手段、表示手段、通信手段等のPCに相当する手段も備えている。
【0040】
受信機i(i=1,2,…,N)における受信機バイアスをRi、GPS衛星j(j=1,2,…,J)の衛星バイアスをBj とする。時刻tにおける真の鉛直方向の電離層全電子数Vij (t)は、受信機iによって測定される、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数Sij (t)と受信点iから衛星jを仰ぎ見たときの仰角θij (t)とから、次のように求められる。
【0041】
(式1)
【0042】
ただし、M(θij(t))は、鉛直方向/視線方向(V/S)換算値を表す仰角θの関数であり、電離層を平面平板モデルで近似した場合は、M(θ)=sinθとなり、球殻モデルで近似した場合は、M(θ)=(1−{(E+h)/(E+H)cosθ}2)1/2となる。ここで、Eは地球の半径、hは地上から受信機までの高さ、Hは地上から電離層までの高さである。
【0043】
衛星バイアスBj を予めインターネットなどから入手しておき、受信機バイアスRi も初期値として得られていれば、上式(1)からVij (t)が求められる。
【0044】
時刻tにおいて受信点iから衛星jを仰ぎ見たときのピアスポイントの座標をPij(t)とすると、Pij(t)は受信点iの位置座標と衛星jの位置座標から容易に求めることができるので、Pij(t)がどのブロックに属するかも容易に分かる。
そこで、時刻tにおけるk番目のブロックにおける平均VTECの値Vk(t)は、以下のような簡単なアンサンブル平均を計算することによって求められる。
【0045】
(式2)
【0046】
ただし、δij(t, k) は、もしPij(t)がブロックkに属していれば1、そうでなければ0となるデルタ関数を表す。 また、Nは用いる受信機の台数、Jは全衛星の個数を表す。
【0047】
上式(2)からTECマップ(V1 (t),V2 (t),…,Vm(t))が求められるが、逆にこのTECマップから各受信機の受信機バイアスを以下のようにして求めることもできる。
すなわち、時刻tにおいて受信点iから衛星jを仰ぎ見たときのピアスポイントがブロックkに属する場合には、受信機バイアスRi は、S' ij(t)−Vk(t)/M(θij(t)) として求められるが(ここで、S' ij(t)=Sij(t) −Bj である)、もしブロックk内で電子密度の濃度勾配があった場合、すなわちVTECがブロックk内で均一でない場合には、その影響を受ける。また受信機の受信環境や受信状態等によってはマルチパスやサイクルスキップなどによる影響を受けることも考えられる。
そこで、これらの影響を軽減して受信機バイアスの精度を高めるため、受信機バイアスは全衛星に共通で、かつ時不変であるとして、以下のような簡単な時間平均を計算することによって求める。
【0048】
(式3)
【0049】
ただし、E {} は、時刻tについての時間平均を表す。
上式(3)には、式(1)によって得られるVij(t)が含まれないことからも分かるように、もし受信機iの受信機バイアスが未知であったとしてもRi が求まる。
また、式(2)や式(3)において平均値計算を行う際、例えば標準偏差σなども計算しておき、もし±σ以上平均値から乖離しているデータがあった場合には、そのデータを取り除いて再度平均値を計算すれば、精度の向上が得られる。
【0050】
式(2)によってTECマップが得られているとき、新たに受信機aを1台追加して、TECマップを再計算したい場合は、再計算後のTECマップをV' k (t) として、次式によって簡単に求まる。
【0051】
(式4)
【0052】
ここで、もし受信機aを削除したい場合には、上式において、δaj(t, k)=−δaj(t, k) とすればよい。
【0053】
本発明を用いた具体的実施例として、同じ国土地理院の電子基準点網のデータを使って、一例として2004年11月8日における両方式による計算結果の違いを以下に示す。
図6は、従来方式によるTECマップの計算結果を示すグラフである。
338台のGPS受信機のデータを用いて計算したこの日の日本上空のVTECの時変化であり、非特許文献1に記述されているように32のブロック毎に15分間隔のものである。受信機の台数が338台(場合によっては209台)と少ないのは、前述の通り計算量が膨大になってしまうからである。
【0054】
一方、図7は、本発明によるTECマップの計算結果を示すグラフである。
前記従来方式で用いた338台を全て含む約950台の受信機のデータを用いて計算した結果であり、時間分解能は30秒であり、空間分解能は図6の従来例の4倍の128のブロックである。なお、図では、凡例を128種類の色に分けることができないので、どのグラフがどのブロックのものかは省略した。
これら図6と図7の比較から、本発明方式の方が従来方式よりはるかに細かくプロットされることが分かり、なおかつ計算量や必要とするメモリ量は格段に少なくて済ませた。
【0055】
図8は、従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表である。
この表1には、2004年11月8日14:30UTにおけるブロック番号29〜32(日本列島の北端部)の両方式の計算結果を抜き出した。
2゜×2゜の場合には、両方式でそれほど大きな差はないものの、本発明方式による1゜×1゜の結果と従来方式による2゜×2゜の結果を比較すると、例えばブロック番号32において、北東側と南東側の小ブロック(1゜×1゜)では12tecu(距離換算で1.1m)以上も差があることが分かり、本発明方式の方が高精度であることが分かる。
すなわち、従来方式では2゜×2゜の範囲内ならVTECはどこも均等と仮定しているが、この場合には、全電子数の急激な増減があったためその仮定が成り立たない。更に、本発明方式なら1゜×1゜だけでなく必要なら例えば0.5゜×0.5゜で算出することも容易にできることは前述の通りである。
【0056】
また、本発明なら、始めに例えば128個の1゜×1゜の小ブロックのVTECが計算されていれば、32個の2゜×2゜のブロックにおけるVTECは、4つの小ブロックにおけるVTECの加重平均により非常に簡単に求めることができる。これに対し従来方式では、最小自乗法を用いて計算しているので、たとえ128個の1゜×1゜の小ブロックでのVTECが計算されていたとしても、もし32個の2°×2°のブロックにおけるVTECも必要となる場合には、別途同様の計算を最初からしなければならず、本発明のような柔軟性がない。
【0057】
図9も、従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表である。
この表2には、2004年2月10日6:30UTにおけるブロック番号1〜7(日本列島の南端部)の両方式の計算結果を抜き出した。
この場合においても、2°×2°の場合には、両方式による差は、-1.6〜-6tecu程度であるが、本発明方式による1゜×1゜の結果と従来方式による2°×2°の結果を比較すると、例えばブロック3において、北側と南側では、東西どちらの小ブロック(1゜×1゜)においても9〜11tecuも差があることが分かる。また本発明方式による1゜×1゜におけるブロック1の結果を見ても、北側と南側で13〜17tecu も差があることが分かる。
すなわち、2°×2°の範囲において電子密度に大きな濃度勾配があることが分かり、この場合も同様に、本発明方式の方が従来方式よりもその分だけ正確にVTECを求めることができた。
【0058】
なお、この時刻に950台の受信機で、ブロック2内の東側の2つの小ブロック(1°×1°)及びブロック5内の南東の小ブロック(1°×1°)を、仰角30°以上で貫通するパスの個数はどれも0個である(すなわち、ピアスポイントが存在しない)ため、VTECが得られない(ND)のは当然であるが、受信機台数338台で2°×2°におけるブロック1及びブロック5を仰角30°以上で貫通するパスの個数はそれぞれ4個と13個であるのに、従来方式ではVTECが算出されていない。このように従来方式では、ピアスポイントがあるにもかかわらずVTECが得られないということが1年を通じて定常的に多々発生したが、本発明方式ではこの点が解消した。
【0059】
図10も、従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表である。
この表3には、2006年7月27日18:45UTにおけるブロック番号29〜32(日本列島の北端部)の両方式の計算結果を抜き出した。
従来方式による計算結果は、約-3.2〜0tecuとなり電子密度に濃度勾配はほとんどないものの、そもそも全電子数が負になることは物理的にあり得ない。従来方式では、このように夜間にVTECが負になってしまうことが1年を通じて時々発生していた。 一方、本発明方式の2°×2°の結果は、約1.3〜3.9tecuでありわずか2.6tecu(距離換算で約24cm)程度の濃度勾配しかみられないが、1°×1°の結果では、約1〜6tecuと広がっていて、夜間といえどもこの領域には濃度勾配があることが分かり、それだけ正確なVTECが得られた。
【0060】
図5に示した32のブロックでは、緯度または経度方向に連続しているブロックの数はどちらも最大6個であり、前者はブロック番号21〜26(各ブロックの中心の経度141°)、後者はブロック番号8,10,12,14,16,21(各ブロックの中心の緯度35°)である。地球物理学などの見地から一般的に、電離層における全電子数の濃度分布は、緯度の違いによる影響は大きいが、経度の違いによる影響は小さい。この点について従来方式と本発明の比較を行うため、2004年3月25日4:15UTにおけるこれらのブロックにおける両方式の計算結果をグラフに示した。
【0061】
図11は、従来方式(2°×2°)と本発明(2°×2°及び1°×1°)における経度の違いによるVTECの計算結果を示すグラフであり、図12は、従来方式(2°×2°)と本発明(2°×2°及び1°×1°)における緯度の違いによるVTECの計算結果を示すグラフである。
図11から従来方式でも本発明方式でも、経度の違いによるVTECにはあまり差がないことが分かる。
また、本発明における2°×2°の結果は1°×1°の結果とおおむね一致していることも分かる。
図12から従来方式でも本発明方式でも、緯度の違いによるVTECへの影響は大きく、高緯度になる程VTECが小さくなる。また、図11と同様、本発明における2°×2°の結果は1°×1°の結果とよく一致している。
【0062】
また、従来方式では、前述したように夜間にVTECが負になるなど全体的に小さめの計算結果となることがあるが、図11と図12のどちらにおいても、やはり本発明による計算結果より小さくなっていることも分かる。
これらのことからも特に全電子数に大きな濃度勾配がある場合に、本発明の方が従来方式より精度のよい結果が得られることが示される。
また、図11のような場合、横(経度)方向に連接する6つの2゜×2゜のブロックを2°×12°の1つのブロックとすることもできるが、その場合には、本発明なら2°×2°の6つのブロックのVTECを加重平均するだけで簡単に求められるが、従来方式では、前述したように最小自乗法を用いているため、ブロックの数が減る分だけ演算量が減るものの依然として多くの演算量を必要とする。
【0063】
図13は、従来方式による衛星バイアスの計算結果を示すグラフである。
従来方式で計算した2001年の1年間における各GPS衛星の衛星バイアスを示す。図から分かるように、かなり頻繁に衛星バイアスの値が、本来の値の数百倍ほどまで大きく発散している。
従来方式では、計算量が多いだけでなく、逆行列を求める過程で、行列式の値が0に近くなるほど解が発散してしまい、誤差が大きくなってしまうという問題点がある。
【0064】
一方、図14は、米国JPLによる衛星バイアスの計算結果を示すグラフである。
JPLが計算してインターネットで公開している2001年の1年間における各GPS衛星の衛星バイアスを示す。この計算値は非常に精度よくかつ1年を通じて安定している。本発明では、JPLをはじめ、各機関が計算し、公開している各GPS衛星の衛星バイアス値を利用しているので、従来方式のように計算の結果、その値が大きく発散してしまうということが起こらない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によると、非常に少ない演算量及びメモリ量で、高精度のTECマップと受信機バイアスが得られるので、安定した通信・放送システムや航空機の管制業務などに寄与し、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の要部構成を示す説明図
【図2】GPS信号処理部の要部構成を示す説明図
【図3】受信機バイアス計算部の要部構成を示す説明図
【図4】GPS衛星と受信機との関係を示す説明図
【図5】日本上空でのブロックと受信機の配置の実例を示す説明図
【図6】従来方式によるTECマップの計算結果を示すグラフ
【図7】本発明によるTECマップの計算結果を示すグラフ
【図8】従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表
【図9】従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表
【図10】従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表
【図11】従来方式と本発明によるVTECの比較を示すグラフ
【図12】従来方式と本発明によるVTECの比較を示すグラフ
【図13】従来方式による衛星バイアスの計算結果を示すグラフ
【図14】JPLによる衛星バイアスの計算結果を示すグラフ
【符号の説明】
【0067】
1 測位用衛星受信機
2 測位用衛星
3 受信点
4 電離層
5 地表
6 鉛直方向の電離層全電子数
7 視線方向の電離層全電子数
8 受信機バイアス
9 衛星バイアス
θ 仰角
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数(TEC)を推定する方法において、少ない演算量及びメモリ量で精度よく、TECマップを作成する方法と、受信機バイアスを測定する方法、並びに、その方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電離層や超高層大気の擾乱が、通信・放送システムや航空機の管制業務に与える影響等を予測するために、リアルタイムで日本全国の鉛直方向の電離層全電子数をマップ表示することが必要とされている。電離層は、GPS衛星などの測位用衛星の信号に対して分散媒として作用するため、電波の伝播に群遅延と進相をもたらす。
視線方向の電離層全電子数(STEC)は、測位用衛星からの2つの異なる周波数の搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離から計算することができる。ただし、このSTECには衛星バイアス及び受信機バイアスが含まれるため、真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を得るためには、STEC値から衛星バイアス及び受信機バイアスを補正したのち、電離層の平面平板モデルや球殻モデル等によって定まる仰角に応じた補正係数を乗じる必要がある。
【0003】
一般には、衛星バイアスと受信機バイアスは分離して求めることができない。そのため、VTECは、衛星バイアスと受信機バイアスの和を未知数とした連立一次方程式から最小自乗法で求めることとなる。
従来技術には、日本全国各地に設置された多数の2周波GPS受信機を用い、衛星バイアスと受信機バイアスをそれぞれ時不変な未知数とし、日本全国を緯度経度毎に一定の間隔でメッシュ状に区切り、同一のブロック内ならどこでもVTECが一定であると仮定し、その値を時変化する未知数として、最小自乗法で解くという方法があった(非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】通信総合研究所季報, Vol.48, No.4,pp.107-119
【0005】
しかし、この方法では、搬送波位相の観測時間間隔が短くなるほど、未知数の数が増加し、演算量が急激に膨大となるという問題点がある。すなわち、演算量が、時間分解能(受信サンプリング間隔)と空間分解能(ブロックの数)と受信機の台数の積の2〜3乗に比例して急激に増大してしまう。また、計算に必要なメモリ量も時間分解能と空間分解能の積に比例して増大していく。また、ブロックの大きさや形状を必要に応じて変えようとすると、連立方程式の項を変えなければならなくなり、非常に煩雑になってしまう。
【0006】
また、TECマップを作成するためには、全国各地でのVTECが必要となるので、多数の測位用衛星受信機を設置する必要がある。そのため、受信機バイアスを受信データから受信機毎に短時間に効率よく測定することが求められるが、従来の最小自乗法による方法では実現が困難である。
【0007】
受信機バイアスの測定やTECマップの作成に関する従来技術には、非特許文献2〜3や特許文献1〜5があり、本発明者も特許文献6に、測位用衛星受信機毎に受信機バイアスを少ない演算量で短時間に精度よく求める手段を開示している。
【0008】
【非特許文献2】DAVIDS. COCO,Variability of GPSSatellite Differential Group Delay Biases,IEEE Transactions on Aerospace and Electronic Systems,米国,1991年11月,27巻6号,931-938
【非特許文献3】通信総合研究所季報,1995年12月,41巻4号,333-338
【特許文献1】特公平7−46138
【特許文献2】特公平7−48078
【特許文献3】特開平9−96668
【特許文献4】特表平11−509322
【特許文献5】特開2000−310674
【特許文献6】特開2003−43128(特許3598372)
【0009】
しかし、十分少ない演算量及びメモリ量で高精度に、TECマップの作成と受信機バイアスの測定を共に得ることは困難であった。特に、前者(TECマップ)の結果を用いることで、後者(受信機バイアス)の精度を向上させたり、或いは精度の向上した後者の結果を利用して再度前者を計算するとより精度のよい結果が得られる、という一連の繰り返し処理についてはこれまでは全く開示も示唆もされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数を推定するに当たって、十分少ない演算量及びメモリ量で高精度に、TECマップの作成と受信機バイアスの測定を共に得ることができる方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のTECマップの作成方法は次の構成を備える。
すなわち、測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数を推定する方法において、測位用衛星受信機の受信機バイアスを予め測定または入手して初期設定する受信機バイアス初期設定ステップと、測位用衛星の衛星バイアスを予め測定または入手して初期設定する衛星バイアス初期設定ステップと、測位用衛星と測位用衛星受信機とのパスから電離層貫通点(ピアスポイント)を算出し、そのピアスポイントが、予め区分けしたどのブロックに属するかを判定するブロック判定ステップと、測位用衛星受信機から出力される搬送波位相及び疑似距離を用いて、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数(STEC)を算出するSTEC算出ステップと、そのSTECから衛星バイアス及び受信機バイアスを減算し、測位用衛星受信機と測位用衛星との位置関係から真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を算出するVTEC算出ステップと、得られた各ピアスポイントにおけるVTECを、各ピアスポイントの属するブロック毎に平均して求めた値を、そのブロックのVTECとするブロックVTEC算出ステップとを有し、そのブロックVTEC算出ステップを、各ブロックについて行うことによりTECマップを作成することを特徴とする。
【0012】
このTECマップの作成方法によって得られたTECマップを用いて、受信機バイアスを求めてもよい。
【0013】
また、それらのTECマップの作成方法と、受信機バイアスの測定方法とを、繰り返すことによって、TECマップの精度の更なる向上に寄与させてもよい。
【0014】
同様に、それらのTECマップの作成方法と、受信機バイアスの測定方法とを、繰り返すことによって、受信機バイアスの精度の更なる向上に寄与させてもよい。
【0015】
ここで、ブロックVTEC算出ステップにおいて、ブロック毎の平均値を求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正して精度向上に寄与させてもよい。
【0016】
同様に、ブロックVTEC算出ステップにおいて、ブロック毎の平均値を求める際に、重み係数を適宜かけて加重平均して精度向上に寄与させてもよい。
【0017】
また、TECマップから受信機バイアスを求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正して精度向上に寄与させてもよい。
【0018】
また同様に、TECマップから受信機バイアスを求める際に、重み係数を適宜かけて加重平均して精度向上に寄与させてもよい。
【0019】
本発明のTECマップの作成装置は、測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数を推定する装置において、測位用衛星受信機の受信機バイアスを予め測定または入手して初期設定する受信機バイアス初期設定手段と、測位用衛星の衛星バイアスを予め測定または入手して初期設定する衛星バイアス初期設定手段と、測位用衛星と測位用衛星受信機とのパスからピアスポイントを算出し、そのピアスポイントが、予め区分けしたどのブロックに属するかを判定するブロック判定手段と、測位用衛星受信機から出力される搬送波位相及び疑似距離を用いて、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数(STEC)を算出するSTEC算出手段と、そのSTECから衛星バイアス及び受信機バイアスを減算し、測位用衛星受信機と測位用衛星との位置関係から真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を算出するVTEC算出手段と、得られた各ピアスポイントにおけるVTECを、各ピアスポイントの属するブロック毎に平均して求めた値を、そのブロックのVTECとするブロックVTEC算出手段とを有し、そのブロックVTEC算出ステップを、各ブロックについて行うことによりTECマップを作成することを特徴とする。
【0020】
このTECマップの作成装置によって得られたTECマップを用いて、受信機バイアスを求める受信機バイアス更新手段を設けてもよい。
【0021】
ブロックVTEC算出手段に、ブロック毎の平均値を求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正するか、或いは、重み係数を適宜かけて加重平均する平均演算手段を設けてもよい。
【0022】
また、受信機バイアス更新手段に、TECマップから受信機バイアスを求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正するか、或いは、重み係数を適宜かけて加重平均する平均演算手段を設けてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記構成を備えることにより次の効果を奏する。すなわち、非常に少ない演算量及びメモリ量で高精度にTECマップを作成することができると共に、そのTECマップを利用することで受信機バイアスが未知または概略値である受信機に対して、非常に少ない演算量及びメモリ量によって高精度に受信機バイアスを求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記の例示に限らず、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、前記特許文献など従来公知の技術を用いて適宜設計変更可能である。例えば、ここでは航法用衛星としてGPS衛星を挙げるが、GLONASS衛星など、地球側位システムに用いられる任意の衛星に利用できる。
【0025】
本発明ではまず、TECマップ作成に利用しうる受信機全てについて、簡易な方法(例えば特許文献6に記載の方法)を用いて一旦受信機バイアスを初期値として設定し、衛星バイアスについてはインターネットを介した公知の手段などから入手し、これらの値を用いて日本全国の各ピアスポイントにおけるVTECを求める。
ピアスポイントの近い地点同士ではVTECもほぼ同じになるので、日本全国を緯度経度毎に一定または予め設定した所定の間隔で、メッシュ状など所定の形状で区切り、同一のブロック内ではVTECが一定であるとみなして、そのブロック内に含まれる全てのVTECをアンサンブル平均し、その値をそのブロックにおけるVTECとする。これを全てのブロックについて行うことによりTECマップを作成する。
【0026】
逆に、このTECマップから各受信機の受信機バイアスを再度求めると、最初に設定した受信機バイアスよりも精度がよくなるので、このような操作を繰り返すことにより、精度の高いTECマップが得られると共に、受信機バイアスが未知の受信機の受信機バイアスも精度よく測定することができる。
【0027】
この手法によると、演算量は、時間分解能(受信サンプリング間隔)と受信機の台数の積に比例するのみで、空間分解能(ブロックの数)が増えても演算量はほとんど増えない。同様に、必要となるメモリ量も時間分解能に比例するのみで、ブロックの数が増えてもほとんど増えない。
そのため、ブロックの形状や大きさにも制約を受けることがなく、必ずしも同じ大きさの正方形である必要もなく、例えば正六角形や円や楕円状などでもよい。また、一般的に全電子数の濃度分布は、緯度の違い(南北方向)による影響は大きいが、経度の違い(東西方向)による影響は小さいので、横長のブロックとしてもよい。さらに、受信機の多くある地域ではブロックの大きさを小さくするなど、多様な形態に柔軟に対応できる。
【0028】
図1は、本発明の要部構成を示す説明図であり、図2は、GPS信号処理部の要部構成を示す説明図である。
図1は、日本全国をm個のブロックに区切り、N台の2周波GPS受信機を用いた場合の例である。少なくとも、GPS信号処理部1,2,…,N 、TECマップ計算部A、受信機バイアス計算部1,2,…,N及びTECマップ計算部Bなどを備える。
【0029】
図2は、GPS受信機1に対応したGPS信号処理部1の構成を示すが、他のGPS信号処理部2,…,Nも同様である。
まず、受信機1から出力される航法メッセージから、衛星位置座標を計算し、これと受信機1の既知位置座標から、ピアスポイントとそのピアスポイントの属するブロック番号並びに後で必要になる鉛直方向/視線方向(V/S)換算値等を計算し、その結果をTECマップ計算部A、受信機バイアス計算部1及びTECマップ計算部Bなどの各部へ出力する。
次に、受信機1から出力される搬送波位相及び疑似距離 L1 、L2 、C1 、P2 を用いて(受信機の機種によっては、C1 の代わりにP1 を用いることもできる)、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけのSTECを計算し、この値から予め入手または計算しておいた衛星バイアス分を減算し、この値を見かけのSTEC’として受信機バイアス計算部1及びTECマップ計算部Bなどの各部に出力する。更に、この値から、予め入手または計算しておいた受信機バイアスR1 を減算し、V/S換算値を乗算し、この値を仮のVTECとしてTECマップ計算部Aにのみ出力する。
これらの出力信号は、例えば衛星毎に30秒サンプリングで24時間にわたる信号列となり、後段の各部で利用するのでメモリに蓄積しておく。
【0030】
TECマップ計算部Aでは、以下のような処理を行う。
同一時刻に同一ブロック内にあるVTECはみなほぼ同じ値になるとみなして、各GPS信号処理部から入力される仮のVTEC信号列と対応するブロック番号から、ブロック毎に同一時刻毎の仮のVTECのアンサンブル平均を計算する。
【0031】
この際、もしこの平均値より大きく乖離した仮のVTECがあった場合には、その値を除去して再度平均を求めたり、適切な補正をしてから再度平均を求めるような従来公知の例外処理を必要に応じて行う。或いは、仮のVTECに適宜重み係数をかけて加重平均するような従来公知の手段を適用することもできる。
このようにして得られた各ブロックの平均VTECを、VTEC11,VTEC21,…,VTECm1とおいてTECマップと呼び、次段の受信機バイアス計算部1,2,…,Nに出力する。これらの出力信号は、例えばブロック毎に30秒サンプリングで24時間にわたる信号列となる。
【0032】
図3は、受信機バイアス計算部の要部構成を示す説明図である。
図3は、GPS信号処理部1に対応した受信機バイアス計算部1の構成を示すが、受信機バイアス計算部2,…,Nも同様である。
入力側から見てn個目の受信機バイアス計算部1においては、TECマップ計算部AまたはTECマップ計算部Bから出力されるTECマップ(VTEC1n,VTEC2n,…,VTECmn)を入力とし、入力側から見てn個目のTECマップ計算部Bに受信機バイアスR1nを出力する機能をもつ。すなわち、入力信号列であるVTEC1n,VTEC2n,…,VTECmnの中から、GPS信号処理部1から出力されるブロック番号に対応した信号列を選択(例えば、ブロック番号が5であったらVTEC5nを選択)し、この値を対応するV/S換算値で除算したのち、GPS信号処理部1から入力される見かけのSTEC’信号列から減算すると受信機1の受信機バイアスのみが残るので、受信機バイアスは時間変化しないとみなして時間平均を求める。
この際にも、必要に応じて上記のような例外処理を行い、更新された受信機バイアスR1nとして次段のTECマップ計算部Bに出力する。この出力信号R1nは、もし受信機バイアスが24時間は一定であるとすると、24時間ごとに出力されることになる。
【0033】
TECマップ計算部Bでは、TECマップ計算部Aとほとんど同様の以下のような処理を行う。
入力側から見てn個目のTECマップ計算部Bにおいては、入力側から見てn個目の受信機バイアス計算部1,2,…,Nからそれぞれ出力される受信機バイアスR1n,受信機バイアスR2n,…,受信機バイアスRNnを入力とし、入力側から見てn+1個目の受信機バイアス計算部1,2,…,NにTECマップ(VTEC1n+1,VTEC2n+1,…,VTECmn+1)を出力する機能をもつ。すなわち、同一時刻に同一ブロック内にあるVTECはみなほぼ同じ値になるとみなして、各GPS信号処理部から入力される見かけのSTEC’信号列から対応する受信機バイアス分を減算してから対応するV/S換算値を乗算した値を、対応するブロック番号に応じて、ブロック毎に同一時刻毎にアンサンブル平均する。
この際、必要に応じてTECマップ計算部Aと同様の例外処理を行う。
【0034】
このようにして得られた各ブロックの平均VTECを、VTEC1n+1,VTEC2n+1,…,VTECmn+1として、入力側から見てn+1個目の受信機バイアス計算部1,2,…,Nに出力する。これらの出力信号は、例えば各ブロック毎に30秒サンプリングで24時間にわたる信号列となる。
【0035】
これらの処理を繰り返し行うことで、TECマップ及び受信機バイアスの精度が向上していく。その理由は、各受信機に最初に設定しておいた受信機バイアスの値が、真の値と比べて誤差があったとしても、全ての受信機の受信機バイアスの誤差が正または負のいずれかというわけではなく、受信機毎に正や負に独立にランダムな誤差になっていると考えられるので、ブロック毎にVTECのアンサンブル平均を取ることでこの誤差の影響を軽減することができ、そのため比較的精度のよいTECマップが得られる。
そして、この比較的精度のよいTECマップを用いて、逆に各受信機の受信機バイアスを求めれば、最初に設定した値より精度がよくなる。従ってこの再計算された受信機バイアスに基づいてもう一度同様の方法でTECマップを作成すれば、もっと精度のよいTECマップが得られる。以下この繰り返しにより一層精度が向上する。
【0036】
なお、もし例えば、GPS受信機1のみその受信機バイアスが未知または概略値であった場合には、図2のGPS信号処理部から分かるように仮のVTEC信号列は出力できないが、この信号列を用いるのは、図1の構成図からも分かるように、TECマップ計算部Aのみであるので、それ以降のTECマップ計算部Bや受信機バイアス計算部1に、見かけのSTEC’信号列やブロック番号列やV/S換算値を出力することで、受信機バイアスを求めることができる。またこれにより、GPS受信機1のデータも用いたTECマップも容易に得られる。
逆に、マルチパスやサイクルスキップなどが原因で大幅にエラーが含まれる受信機のデータを削除した方が好ましいと思われる場合も、TECマップを求める際にその受信機が寄与した分を考慮して再計算をするだけでよく、最初から全て計算をやり直す必要はない。
【0037】
これに対し、従来方式では、一度最小自乗法によって、TECマップ及び受信機バイアス、衛星バイアスの値が得られたとしても、新たに受信機を1台追加して、それも含めたTECマップやその受信機の受信機バイアスを求めようとすると、もう一度最初から計算し直さなければならなかった。
最初の計算で利用した受信機のうち特定の受信機を削除したい場合も同様に、最初からその受信機を除いた状態でもう一度計算をし直さなければならなかった。
【0038】
なお、この点については、2007年8月に過去の全国の電子基準点の受信データアーカイブのうち一部のデータ(例えば、2004年8月30日のNo.0706や2004年10月9日のNo.3009など)について修正されたことがアナウンスされ、また、2008年8月にも2004年1月31日のNo.0675と2004年2月13日のNo.0621のデータが修正されており、このためもし当該日のTECマップを計算し直したい場合、本発明方式ならそのデータのみ読み込めばよいのに対し、従来方式ではこのデータも含めた全てのデータを再度読み込んで計算し直さなければならず、現実に本発明方式の優位性が具体的に示される。
【0039】
上述の処理を式で表すと以下のようになる。
図4は、GPS衛星と受信機との関係を示す説明図であり、図5は、日本上空でのブロックと受信機の配置の実例を示す説明図であり、丸囲み数字はそのブロックのブロック番号を示す。
受信機(1)は、外部通信機器を備え、予め測定または入手したGPS衛星(2)の衛星バイアスを入力する入力手段を有する。また、受信機(1)によって測定される衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ視線方向の電離層全電子数(STEC)と、受信機(1)からGPS衛星(2)を仰ぐ仰角(θ)とから、所定の関係式を用いて受信機バイアスを求める計算手段も備え、演算手段や、記録手段、表示手段、通信手段等のPCに相当する手段も備えている。
【0040】
受信機i(i=1,2,…,N)における受信機バイアスをRi、GPS衛星j(j=1,2,…,J)の衛星バイアスをBj とする。時刻tにおける真の鉛直方向の電離層全電子数Vij (t)は、受信機iによって測定される、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数Sij (t)と受信点iから衛星jを仰ぎ見たときの仰角θij (t)とから、次のように求められる。
【0041】
(式1)
【0042】
ただし、M(θij(t))は、鉛直方向/視線方向(V/S)換算値を表す仰角θの関数であり、電離層を平面平板モデルで近似した場合は、M(θ)=sinθとなり、球殻モデルで近似した場合は、M(θ)=(1−{(E+h)/(E+H)cosθ}2)1/2となる。ここで、Eは地球の半径、hは地上から受信機までの高さ、Hは地上から電離層までの高さである。
【0043】
衛星バイアスBj を予めインターネットなどから入手しておき、受信機バイアスRi も初期値として得られていれば、上式(1)からVij (t)が求められる。
【0044】
時刻tにおいて受信点iから衛星jを仰ぎ見たときのピアスポイントの座標をPij(t)とすると、Pij(t)は受信点iの位置座標と衛星jの位置座標から容易に求めることができるので、Pij(t)がどのブロックに属するかも容易に分かる。
そこで、時刻tにおけるk番目のブロックにおける平均VTECの値Vk(t)は、以下のような簡単なアンサンブル平均を計算することによって求められる。
【0045】
(式2)
【0046】
ただし、δij(t, k) は、もしPij(t)がブロックkに属していれば1、そうでなければ0となるデルタ関数を表す。 また、Nは用いる受信機の台数、Jは全衛星の個数を表す。
【0047】
上式(2)からTECマップ(V1 (t),V2 (t),…,Vm(t))が求められるが、逆にこのTECマップから各受信機の受信機バイアスを以下のようにして求めることもできる。
すなわち、時刻tにおいて受信点iから衛星jを仰ぎ見たときのピアスポイントがブロックkに属する場合には、受信機バイアスRi は、S' ij(t)−Vk(t)/M(θij(t)) として求められるが(ここで、S' ij(t)=Sij(t) −Bj である)、もしブロックk内で電子密度の濃度勾配があった場合、すなわちVTECがブロックk内で均一でない場合には、その影響を受ける。また受信機の受信環境や受信状態等によってはマルチパスやサイクルスキップなどによる影響を受けることも考えられる。
そこで、これらの影響を軽減して受信機バイアスの精度を高めるため、受信機バイアスは全衛星に共通で、かつ時不変であるとして、以下のような簡単な時間平均を計算することによって求める。
【0048】
(式3)
【0049】
ただし、E {} は、時刻tについての時間平均を表す。
上式(3)には、式(1)によって得られるVij(t)が含まれないことからも分かるように、もし受信機iの受信機バイアスが未知であったとしてもRi が求まる。
また、式(2)や式(3)において平均値計算を行う際、例えば標準偏差σなども計算しておき、もし±σ以上平均値から乖離しているデータがあった場合には、そのデータを取り除いて再度平均値を計算すれば、精度の向上が得られる。
【0050】
式(2)によってTECマップが得られているとき、新たに受信機aを1台追加して、TECマップを再計算したい場合は、再計算後のTECマップをV' k (t) として、次式によって簡単に求まる。
【0051】
(式4)
【0052】
ここで、もし受信機aを削除したい場合には、上式において、δaj(t, k)=−δaj(t, k) とすればよい。
【0053】
本発明を用いた具体的実施例として、同じ国土地理院の電子基準点網のデータを使って、一例として2004年11月8日における両方式による計算結果の違いを以下に示す。
図6は、従来方式によるTECマップの計算結果を示すグラフである。
338台のGPS受信機のデータを用いて計算したこの日の日本上空のVTECの時変化であり、非特許文献1に記述されているように32のブロック毎に15分間隔のものである。受信機の台数が338台(場合によっては209台)と少ないのは、前述の通り計算量が膨大になってしまうからである。
【0054】
一方、図7は、本発明によるTECマップの計算結果を示すグラフである。
前記従来方式で用いた338台を全て含む約950台の受信機のデータを用いて計算した結果であり、時間分解能は30秒であり、空間分解能は図6の従来例の4倍の128のブロックである。なお、図では、凡例を128種類の色に分けることができないので、どのグラフがどのブロックのものかは省略した。
これら図6と図7の比較から、本発明方式の方が従来方式よりはるかに細かくプロットされることが分かり、なおかつ計算量や必要とするメモリ量は格段に少なくて済ませた。
【0055】
図8は、従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表である。
この表1には、2004年11月8日14:30UTにおけるブロック番号29〜32(日本列島の北端部)の両方式の計算結果を抜き出した。
2゜×2゜の場合には、両方式でそれほど大きな差はないものの、本発明方式による1゜×1゜の結果と従来方式による2゜×2゜の結果を比較すると、例えばブロック番号32において、北東側と南東側の小ブロック(1゜×1゜)では12tecu(距離換算で1.1m)以上も差があることが分かり、本発明方式の方が高精度であることが分かる。
すなわち、従来方式では2゜×2゜の範囲内ならVTECはどこも均等と仮定しているが、この場合には、全電子数の急激な増減があったためその仮定が成り立たない。更に、本発明方式なら1゜×1゜だけでなく必要なら例えば0.5゜×0.5゜で算出することも容易にできることは前述の通りである。
【0056】
また、本発明なら、始めに例えば128個の1゜×1゜の小ブロックのVTECが計算されていれば、32個の2゜×2゜のブロックにおけるVTECは、4つの小ブロックにおけるVTECの加重平均により非常に簡単に求めることができる。これに対し従来方式では、最小自乗法を用いて計算しているので、たとえ128個の1゜×1゜の小ブロックでのVTECが計算されていたとしても、もし32個の2°×2°のブロックにおけるVTECも必要となる場合には、別途同様の計算を最初からしなければならず、本発明のような柔軟性がない。
【0057】
図9も、従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表である。
この表2には、2004年2月10日6:30UTにおけるブロック番号1〜7(日本列島の南端部)の両方式の計算結果を抜き出した。
この場合においても、2°×2°の場合には、両方式による差は、-1.6〜-6tecu程度であるが、本発明方式による1゜×1゜の結果と従来方式による2°×2°の結果を比較すると、例えばブロック3において、北側と南側では、東西どちらの小ブロック(1゜×1゜)においても9〜11tecuも差があることが分かる。また本発明方式による1゜×1゜におけるブロック1の結果を見ても、北側と南側で13〜17tecu も差があることが分かる。
すなわち、2°×2°の範囲において電子密度に大きな濃度勾配があることが分かり、この場合も同様に、本発明方式の方が従来方式よりもその分だけ正確にVTECを求めることができた。
【0058】
なお、この時刻に950台の受信機で、ブロック2内の東側の2つの小ブロック(1°×1°)及びブロック5内の南東の小ブロック(1°×1°)を、仰角30°以上で貫通するパスの個数はどれも0個である(すなわち、ピアスポイントが存在しない)ため、VTECが得られない(ND)のは当然であるが、受信機台数338台で2°×2°におけるブロック1及びブロック5を仰角30°以上で貫通するパスの個数はそれぞれ4個と13個であるのに、従来方式ではVTECが算出されていない。このように従来方式では、ピアスポイントがあるにもかかわらずVTECが得られないということが1年を通じて定常的に多々発生したが、本発明方式ではこの点が解消した。
【0059】
図10も、従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表である。
この表3には、2006年7月27日18:45UTにおけるブロック番号29〜32(日本列島の北端部)の両方式の計算結果を抜き出した。
従来方式による計算結果は、約-3.2〜0tecuとなり電子密度に濃度勾配はほとんどないものの、そもそも全電子数が負になることは物理的にあり得ない。従来方式では、このように夜間にVTECが負になってしまうことが1年を通じて時々発生していた。 一方、本発明方式の2°×2°の結果は、約1.3〜3.9tecuでありわずか2.6tecu(距離換算で約24cm)程度の濃度勾配しかみられないが、1°×1°の結果では、約1〜6tecuと広がっていて、夜間といえどもこの領域には濃度勾配があることが分かり、それだけ正確なVTECが得られた。
【0060】
図5に示した32のブロックでは、緯度または経度方向に連続しているブロックの数はどちらも最大6個であり、前者はブロック番号21〜26(各ブロックの中心の経度141°)、後者はブロック番号8,10,12,14,16,21(各ブロックの中心の緯度35°)である。地球物理学などの見地から一般的に、電離層における全電子数の濃度分布は、緯度の違いによる影響は大きいが、経度の違いによる影響は小さい。この点について従来方式と本発明の比較を行うため、2004年3月25日4:15UTにおけるこれらのブロックにおける両方式の計算結果をグラフに示した。
【0061】
図11は、従来方式(2°×2°)と本発明(2°×2°及び1°×1°)における経度の違いによるVTECの計算結果を示すグラフであり、図12は、従来方式(2°×2°)と本発明(2°×2°及び1°×1°)における緯度の違いによるVTECの計算結果を示すグラフである。
図11から従来方式でも本発明方式でも、経度の違いによるVTECにはあまり差がないことが分かる。
また、本発明における2°×2°の結果は1°×1°の結果とおおむね一致していることも分かる。
図12から従来方式でも本発明方式でも、緯度の違いによるVTECへの影響は大きく、高緯度になる程VTECが小さくなる。また、図11と同様、本発明における2°×2°の結果は1°×1°の結果とよく一致している。
【0062】
また、従来方式では、前述したように夜間にVTECが負になるなど全体的に小さめの計算結果となることがあるが、図11と図12のどちらにおいても、やはり本発明による計算結果より小さくなっていることも分かる。
これらのことからも特に全電子数に大きな濃度勾配がある場合に、本発明の方が従来方式より精度のよい結果が得られることが示される。
また、図11のような場合、横(経度)方向に連接する6つの2゜×2゜のブロックを2°×12°の1つのブロックとすることもできるが、その場合には、本発明なら2°×2°の6つのブロックのVTECを加重平均するだけで簡単に求められるが、従来方式では、前述したように最小自乗法を用いているため、ブロックの数が減る分だけ演算量が減るものの依然として多くの演算量を必要とする。
【0063】
図13は、従来方式による衛星バイアスの計算結果を示すグラフである。
従来方式で計算した2001年の1年間における各GPS衛星の衛星バイアスを示す。図から分かるように、かなり頻繁に衛星バイアスの値が、本来の値の数百倍ほどまで大きく発散している。
従来方式では、計算量が多いだけでなく、逆行列を求める過程で、行列式の値が0に近くなるほど解が発散してしまい、誤差が大きくなってしまうという問題点がある。
【0064】
一方、図14は、米国JPLによる衛星バイアスの計算結果を示すグラフである。
JPLが計算してインターネットで公開している2001年の1年間における各GPS衛星の衛星バイアスを示す。この計算値は非常に精度よくかつ1年を通じて安定している。本発明では、JPLをはじめ、各機関が計算し、公開している各GPS衛星の衛星バイアス値を利用しているので、従来方式のように計算の結果、その値が大きく発散してしまうということが起こらない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によると、非常に少ない演算量及びメモリ量で、高精度のTECマップと受信機バイアスが得られるので、安定した通信・放送システムや航空機の管制業務などに寄与し、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の要部構成を示す説明図
【図2】GPS信号処理部の要部構成を示す説明図
【図3】受信機バイアス計算部の要部構成を示す説明図
【図4】GPS衛星と受信機との関係を示す説明図
【図5】日本上空でのブロックと受信機の配置の実例を示す説明図
【図6】従来方式によるTECマップの計算結果を示すグラフ
【図7】本発明によるTECマップの計算結果を示すグラフ
【図8】従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表
【図9】従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表
【図10】従来方式と本発明によるVTECの比較を示す表
【図11】従来方式と本発明によるVTECの比較を示すグラフ
【図12】従来方式と本発明によるVTECの比較を示すグラフ
【図13】従来方式による衛星バイアスの計算結果を示すグラフ
【図14】JPLによる衛星バイアスの計算結果を示すグラフ
【符号の説明】
【0067】
1 測位用衛星受信機
2 測位用衛星
3 受信点
4 電離層
5 地表
6 鉛直方向の電離層全電子数
7 視線方向の電離層全電子数
8 受信機バイアス
9 衛星バイアス
θ 仰角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数を推定する方法において、
測位用衛星受信機の受信機バイアスを予め測定または入手して初期設定する受信機バイアス初期設定ステップと、
測位用衛星の衛星バイアスを予め測定または入手して初期設定する衛星バイアス初期設定ステップと、
測位用衛星と測位用衛星受信機とのパスから電離層貫通点(ピアスポイント)を算出し、そのピアスポイントが、予め区分けしたどのブロックに属するかを判定するブロック判定ステップと、
測位用衛星受信機から出力される搬送波位相及び疑似距離を用いて、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数(STEC)を算出するSTEC算出ステップと、
そのSTECから衛星バイアス及び受信機バイアスを減算し、測位用衛星受信機と測位用衛星との位置関係から真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を算出するVTEC算出ステップと、
得られた各ピアスポイントにおけるVTECを、各ピアスポイントの属するブロック毎に平均して求めた値を、そのブロックのVTECとするブロックVTEC算出ステップとを有し、
そのブロックVTEC算出ステップを、各ブロックについて行うことによりTECマップを作成する
ことを特徴とするTECマップの作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のTECマップの作成方法によって得られたTECマップを用いて、受信機バイアスを求める
ことを特徴とする受信機バイアスの測定方法。
【請求項3】
請求項1に記載のTECマップの作成方法と、請求項2に記載の受信機バイアスの測定方法とを、繰り返すことによって、TECマップの精度を上げる
ことを特徴とするTECマップの作成方法。
【請求項4】
請求項1に記載のTECマップの作成方法と、請求項2に記載の受信機バイアスの測定方法とを、繰り返すことによって、受信機バイアスの精度を上げる
ことを特徴とする受信機バイアスの測定方法。
【請求項5】
ブロックVTEC算出ステップにおいて、
ブロック毎の平均値を求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正する
請求項1ないし4に記載のTECマップの作成方法または受信機バイアスの測定方法。
【請求項6】
ブロックVTEC算出ステップにおいて、
ブロック毎の平均値を求める際に、重み係数を適宜かけて加重平均する
請求項1ないし4に記載のTECマップの作成方法または受信機バイアスの測定方法。
【請求項7】
TECマップから受信機バイアスを求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正する
請求項2ないし6に記載のTECマップの作成方法または受信機バイアスの測定方法。
【請求項8】
TECマップから受信機バイアスを求める際に、重み係数を適宜かけて加重平均する
請求項2ないし6に記載のTECマップの作成方法または受信機バイアスの測定方法。
【請求項9】
測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数を推定する装置において、
測位用衛星受信機の受信機バイアスを予め測定または入手して初期設定する受信機バイアス初期設定手段と、
測位用衛星の衛星バイアスを予め測定または入手して初期設定する衛星バイアス初期設定手段と、
測位用衛星と測位用衛星受信機とのパスからピアスポイントを算出し、そのピアスポイントが、予め区分けしたどのブロックに属するかを判定するブロック判定手段と、
測位用衛星受信機から出力される搬送波位相及び疑似距離を用いて、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数(STEC)を算出するSTEC算出手段と、
そのSTECから衛星バイアス及び受信機バイアスを減算し、測位用衛星受信機と測位用衛星との位置関係から真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を算出するVTEC算出手段と、
得られた各ピアスポイントにおけるVTECを、各ピアスポイントの属するブロック毎に平均して求めた値を、そのブロックのVTECとするブロックVTEC算出手段とを有し、
そのブロックVTEC算出ステップを、各ブロックについて行うことによりTECマップを作成する
ことを特徴とするTECマップの作成装置。
【請求項10】
請求項9に記載のTECマップの作成装置によって得られたTECマップを用いて、受信機バイアスを求める受信機バイアス更新手段を有する
ことを特徴とする受信機バイアスの測定装置。
【請求項11】
ブロックVTEC算出手段に、
ブロック毎の平均値を求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正するか、或いは、重み係数を適宜かけて加重平均する平均演算手段を設けた
請求項9または10に記載のTECマップの作成装置または受信機バイアスの測定装置。
【請求項12】
受信機バイアス更新手段に、
TECマップから受信機バイアスを求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正するか、或いは、重み係数を適宜かけて加重平均する平均演算手段を設けた
請求項10または11に記載のTECマップの作成装置または受信機バイアスの測定装置。
【請求項1】
測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数を推定する方法において、
測位用衛星受信機の受信機バイアスを予め測定または入手して初期設定する受信機バイアス初期設定ステップと、
測位用衛星の衛星バイアスを予め測定または入手して初期設定する衛星バイアス初期設定ステップと、
測位用衛星と測位用衛星受信機とのパスから電離層貫通点(ピアスポイント)を算出し、そのピアスポイントが、予め区分けしたどのブロックに属するかを判定するブロック判定ステップと、
測位用衛星受信機から出力される搬送波位相及び疑似距離を用いて、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数(STEC)を算出するSTEC算出ステップと、
そのSTECから衛星バイアス及び受信機バイアスを減算し、測位用衛星受信機と測位用衛星との位置関係から真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を算出するVTEC算出ステップと、
得られた各ピアスポイントにおけるVTECを、各ピアスポイントの属するブロック毎に平均して求めた値を、そのブロックのVTECとするブロックVTEC算出ステップとを有し、
そのブロックVTEC算出ステップを、各ブロックについて行うことによりTECマップを作成する
ことを特徴とするTECマップの作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のTECマップの作成方法によって得られたTECマップを用いて、受信機バイアスを求める
ことを特徴とする受信機バイアスの測定方法。
【請求項3】
請求項1に記載のTECマップの作成方法と、請求項2に記載の受信機バイアスの測定方法とを、繰り返すことによって、TECマップの精度を上げる
ことを特徴とするTECマップの作成方法。
【請求項4】
請求項1に記載のTECマップの作成方法と、請求項2に記載の受信機バイアスの測定方法とを、繰り返すことによって、受信機バイアスの精度を上げる
ことを特徴とする受信機バイアスの測定方法。
【請求項5】
ブロックVTEC算出ステップにおいて、
ブロック毎の平均値を求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正する
請求項1ないし4に記載のTECマップの作成方法または受信機バイアスの測定方法。
【請求項6】
ブロックVTEC算出ステップにおいて、
ブロック毎の平均値を求める際に、重み係数を適宜かけて加重平均する
請求項1ないし4に記載のTECマップの作成方法または受信機バイアスの測定方法。
【請求項7】
TECマップから受信機バイアスを求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正する
請求項2ないし6に記載のTECマップの作成方法または受信機バイアスの測定方法。
【請求項8】
TECマップから受信機バイアスを求める際に、重み係数を適宜かけて加重平均する
請求項2ないし6に記載のTECマップの作成方法または受信機バイアスの測定方法。
【請求項9】
測位用衛星から周波数の異なる複数の搬送波を測位用衛星受信機によって受信し、その搬送波位相と、測位用衛星と測位用衛星受信機との疑似距離とから電離層全電子数を推定する装置において、
測位用衛星受信機の受信機バイアスを予め測定または入手して初期設定する受信機バイアス初期設定手段と、
測位用衛星の衛星バイアスを予め測定または入手して初期設定する衛星バイアス初期設定手段と、
測位用衛星と測位用衛星受信機とのパスからピアスポイントを算出し、そのピアスポイントが、予め区分けしたどのブロックに属するかを判定するブロック判定手段と、
測位用衛星受信機から出力される搬送波位相及び疑似距離を用いて、衛星バイアス及び受信機バイアスを含んだ見かけの視線方向の電離層全電子数(STEC)を算出するSTEC算出手段と、
そのSTECから衛星バイアス及び受信機バイアスを減算し、測位用衛星受信機と測位用衛星との位置関係から真の鉛直方向の電離層全電子数(VTEC)を算出するVTEC算出手段と、
得られた各ピアスポイントにおけるVTECを、各ピアスポイントの属するブロック毎に平均して求めた値を、そのブロックのVTECとするブロックVTEC算出手段とを有し、
そのブロックVTEC算出ステップを、各ブロックについて行うことによりTECマップを作成する
ことを特徴とするTECマップの作成装置。
【請求項10】
請求項9に記載のTECマップの作成装置によって得られたTECマップを用いて、受信機バイアスを求める受信機バイアス更新手段を有する
ことを特徴とする受信機バイアスの測定装置。
【請求項11】
ブロックVTEC算出手段に、
ブロック毎の平均値を求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正するか、或いは、重み係数を適宜かけて加重平均する平均演算手段を設けた
請求項9または10に記載のTECマップの作成装置または受信機バイアスの測定装置。
【請求項12】
受信機バイアス更新手段に、
TECマップから受信機バイアスを求める際に、平均値から乖離している値を除去または補正するか、或いは、重み係数を適宜かけて加重平均する平均演算手段を設けた
請求項10または11に記載のTECマップの作成装置または受信機バイアスの測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図7】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図7】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−112842(P2010−112842A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285869(P2008−285869)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]