説明

TFTマトリックスを製造するためのエッチングプロセス

液晶ディスプレー(LCD)用の薄膜トランジスタ(TFT)マトリックスは、数回の層を形成するステップおよび数回の層を部分的にエッチングするステップの実行によって、用意することができる。フッ素および好ましくはフッ化カルボニルが、好ましくは酸素、NO、および/またはアルゴンと共に、エッチングガスとして使用される。本発明はさらにFもしくはフッ化カルボニル、NOおよび任意選択によりアルゴンからなるガス混合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2009年10月26日出願の欧州特許出願第09174034.0号明細書の利益を主張し、その出願の全内容を参照により本特許出願に組み込む。
【0002】
本発明は、液晶ディスプレー(LCD)用の薄膜トランジスタ(TFT)マトリックスを製造するためのプロセスに関し、さらに詳細には、削減されたマスキングステップを有するTFTマトリックスを形成するための、簡略化されたバックチャネルエッチングプロセス、および特にそのようなプロセス用のエッチングガスとして適したガス混合物に関する。
【背景技術】
【0003】
TFTマトリックスの製造は、物質の若干数の層、たとえばフォトレジスト層、導電層、エッチング停止層、半導体層および不活性化層を形成する数回のステップを含む。TFTマトリックスを得るために、これらの層が設けられ、次に、エッチングされる。(特許文献1)に言及されているように、不活性化層のエッチングは、トリフルオロメタンを使用して行なうことができ、一方、半導体層のエッチングは、四フッ化炭素、三塩化ホウ素、塩素、六フッ化硫黄またはそれらの混合物を使用して行なうことができる。
【0004】
これらのエッチング剤には不利な点がある。たとえば、トリフルオロメタン、四フッ化炭素および六フッ化硫黄は、環境上の理由で不利であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,406,928号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、液晶ディスプレー(LCD)用の薄膜トランジスタ(TFT)マトリックスの製造のために改善されたプロセスを提供し、またこのプロセスに役立つ改善されたエッチングガスを提供することにある。この目的および他の目的は、本発明のプロセスおよびエッチングガス混合物によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
TFTマトリックスの製造用の本発明のプロセスは、層がガス体のエッチング剤によりエッチングされ、また、このエッチング剤がフッ化カルボニル(COF)、Fまたはそれらの混合物を含んでいる、少なくとも1つのステップを含む。
【0008】
フッ素(F)はGWPがゼロであり、オゾン層への影響がない。それは非常に反応性があるが、あまり選択性がなく、したがって、希釈方式で適用されるべきである。それは、たとえばタングステン(W)をエッチングするために使用できる。
【0009】
フッ化カルボニルは、GWPが1であり、オゾン層への影響がないという利点を有する。それは、本発明の枠組みにおいて非常に適切であり、本発明のプロセスにおいて好ましいエッチングガスである。特別な一実施形態において、特にフッ化カルボニルを含むエッチングガスが使用される場合、エッチングガスには元素状フッ素がないことが好ましい。
【0010】
一実施形態において、エッチング剤はフッ化カルボニルを含むか、またはフッ化カルボニルからなる。他の実施形態において、エッチング剤はフッ素を含むか、フッ素からなる。
【0011】
この実施形態は、アモルファスシリコンまたは窒化ケイ素の速いエッチングに特に適している。
【0012】
フッ素もしくはフッ化カルボニルおよび窒素もしくはアルゴンを含むか、それらからなる混合物は、アモルファスシリコンまたは窒化ケイ素のエッチング、特に窒化ケイ素のエッチングに非常に適している。
【0013】
特別の一実施形態において、窒素、アルゴン、NOおよび酸素からなる群から選択される少なくとも1つのガスとのフッ化カルボニル混合物が、本発明によるプロセスでエッチングガスとして使用される。
【0014】
この実施形態の第1の態様において、フッ化カルボニル、酸素およびアルゴンを、含むか、それらからなる混合物がエッチングガスとして適用される。この実施形態の第2の態様において、フッ化カルボニル、NOおよびアルゴンを、含むか、それらからなる混合物がエッチングガスとして適用される。
【0015】
本発明によるプロセスの特別の態様において、エッチングステップはプラズマ支援される。
【0016】
本発明によるプロセスは、窒化ケイ素、酸化ケイ素、オキシ窒化ケイ素およびそれらの2つ以上の組合せからなる群から選ばれる材料から形成される層がエッチングされるとき、有利に使用される。本発明によるプロセスは、層が窒化ケイ素を含むかそれからなるとき、より有利に使用される。本発明によるプロセスの特定の態様において、a−Siの層の上の、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素および両方の組合せを含むかそれらからなる層の選択エッチングに適用された、フッ化カルボニルおよびNO、および任意選択によりアルゴン、および任意選択によりoxygenareを含む混合物。好ましくは、フッ化カルボニル、NOおよびアルゴンを含むか、特にそれらからなる混合物、またはフッ化カルボニル、NO、酸素およびアルゴンを含むか、特にそれらからなる混合物が適用される。シリコンは、通常、隣接した4つのシリコン原子に四面体的に結合される、4価配位結合の原子である。結晶シリコンにおいて、この四面体構造は大きな範囲にわたり続き、したがって秩序立った結晶格子を形成する。
【0017】
a−Siまたはα−Siと表記するアモルファスシリコンにおいて、この長距離秩序は存在しない。むしろ、原子は連続した不規則網目構造を形成する。さらに、アモルファスシリコン内のすべての原子が4価配位結合するとは限らない。材料の無秩序な性質により、いくつかの原子はダングリングボンドを有する。したがって、用語「a−Si」は、シリコン原子が連続した不規則網目構造を形成するシリコンを表す。
【0018】
O、酸素、または、NOと酸素の混合物の存在は、エッチングの選択性を提供する。すなわち、a−Si層を覆う窒化ケイ素層がエッチング除去され、また、a−Siの層がエッチングガス混合物と接触すると、層の表面のa−Siは、NOに接触し酸化され、したがって、a−Siがエッチングされないように保護する酸化ケイ素層が生ずるので不活性化される。
【0019】
さらに他の態様において、本発明によるプロセスは、真性アモルファスシリコン、微晶質シリコンおよびポリシリコンからなる群から選択される材料から形成した層をエッチングするのに適用される。微晶質のシリコン(ナノ結晶シリコンとも呼ばれる)は小さな結晶を含んでいる。それは、光のより広いスペクトルを吸収し、また柔軟である。多結晶シリコン(または半結晶シリコン、ポリシリコン、ポリ−Si)は、多数の小さなシリコン結晶からなる材料である。
【0020】
さらに他の態様において、本発明によるプロセスは、高度にドープしたアモルファスシリコン、高度にドープした微晶質シリコンおよび高度にドープしたポリシリコンからなる群から選択される材料から形成した層をエッチングするのに適用される。エッチングされる。
【0021】
真性アモルファスシリコン、微晶質シリコンおよびポリシリコン、高度にドープしたアモルファスシリコン、高度にドープした微晶質シリコンおよび高度にドープしたポリシリコンの高速のエッチングを行なうことは、フッ化カルボニル、フッ素からなるエッチガスの使用によって、または、好ましくは、フッ化カルボニルおよびアルゴン、および任意選択により窒素からなる混合物の使用によって可能である。
【0022】
他の実施形態において、真性アモルファスシリコン、微晶質シリコンおよびポリシリコン、高度にドープしたアモルファスシリコン、高度にドープした微晶質シリコンおよび高度にドープしたポリシリコンの上に被覆として存在する、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素またはそれらの混合物の選択エッチングを以下の混合物の使用によって行なうことができる。
・前記Siに、ガス混合物に接している場合に不活性化を提供する、アルゴンの存在下のフッ化カルボニルと随意のNOとを含む混合物、
・前記Siに、ガス混合物に接している場合に不活性化を提供する、フッ化カルボニルとNOとアルゴンとを含む混合物、
・前記Siに、ガス混合物に接している場合に不活性化を提供する、アルゴンの存在下のフッ化カルボニル、NOおよび随意の酸素を含む混合物
・前記Siに、ガス混合物に接している場合に不活性化を提供する、フッ化カルボニル、N2O、酸素およびアルゴンを含む混合物。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を、好ましい実施形態を考慮して詳細に記述する。TFT LCDの製造プロセスにおいて、層を形成し、また、層を部分的にエッチング除去する、連続した数回のステップが必要である。特許文献1は、TFTの製造のための方法について記述している。そこで、従来のプロセスにおいてTFTマトリックスの形成のために6〜9回のマスキングステップが必要であると言及している。6回マスクプロセスは、たとえば、次のステップ、すなわち、
ガラス基板上に第1の導電層を設け、また、第1のフォトマスキングとリソグラフィの手順を実行し、第1の導電層にパターニングを施しエッチングを行い、TFTユニットの走査ラインおよびゲート電極からなる活性領域を形成するステップと、
絶縁被膜、アモルファスシリコン(a−Si)層、nアモルファスシリコン層および結果として得られる構造上にフォトレジストを順次に形成し、さらに、基板の裏側から、結果として得られる構造に露光するステップであり、自己整合の効果を示すように、ある領域の上のフォトレジストの部分はその領域によって露光から遮蔽されるステップと、
露光されたフォトレジスト、その下の層の部分、および残りのフォトレジストをエッチング除去し、その結果、存続する層の各々が上記の領域と実質的に同一の形状を有し、さらに、第2のフォトマスキングとリソグラフィの手順を実行し、再び前記層にパターニングを施しエッチングを行いTFTユニットを分離するステップと、
第3のフォトマスキングとリソグラフィの手順を実行し、前記層にパターニングを施しエッチングを行いテ−プによる自動ボンディング(TAB)の電極窓または走査ラインを形成するステップと、
結果として得られる構造上に酸化インジウムスズ(ITO)層を設け、さらに、第4のフォトマスキングとリソグラフィの手順を実行し、ITO層にパターニングを施しエッチングを行い、TFTユニットの片側にピクセル電極を形成するステップと、
結果として得られる構造上に第2の導電層を設け、第5のフォトマスキングとリソグラフィの手順を実行し、第2の導電層にパターニングを施しエッチングを行ない、データ線、TFTユニットとデータ線の間の第1の接続ライン、およびTFTユニットとピクセル電極の間の第2の接続ラインを一体的に形成し、さらに、存続する第2の導電層を遮蔽として使用し、ドープしたa−Si層の、接続ライン間の部分をエッチング除去し、TFTユニットのソースとドレインの電極の分離をするステップと、および
結果として得られる構造上に不活性化層を設け、さらに、第6のフォトマスキングとリソグラフィの手順を実行し、不活性化層にパターニングを施しエッチングを行い、走査ライン用のTAB電極窓の露出させ、データ走査ライン用のTAB電極窓を作成し、また、ピクセル電極用の開口窓を作成するステップと、
を含み得る。このプロセスは、米国特許第6,406,928号明細書に記述および図示されており、その内容は参照により本明細書に組み込む。
【0024】
前記米国特許は、この多段ステップのプロセスに関する改善を開示している。LCDのためのTFTマトリックスを形成する、その改善プロセスにおいて、絶縁材料で作られた基板が提供され;第1の導電層が基板の第1の側に形成され、さらに、第1のマスキングとパターニング手順が実行され、第1の導電層の一部を除去し、走査ラインおよびTFTユニットのゲート電極の画定を行い;次いで、走査ラインとゲート電極を備えた基板上に、絶縁被膜、半導体層、ドープした半導体層およびフォトレジスト層が、連続的に形成され;露光領域と非露光領域を得るために、走査ラインとゲート電極を遮蔽として使用することによって、露光源が、基板の第1の側の反対の第2の側から提供され;次いで、露光された領域のフォトレジスト層および半導体層が除去され、その結果、非露光の領域の半導体層の存続する部分が、ゲート電極と共に走査ラインの形状に相似の特定の形状を有し;次いで、透明導電層および第2の導電層が、基板上で連続的に形成され、次いで、第2のマスキングとパターニング手順が実行され、透明導電層の一部および第2の導電層の一部が除去され、それぞれがピクセル電極領域およびデータ線および接続線を画定し;第2の導電層の残りの部分を遮蔽として用いて、ドープした半導体層の他の部分を除去し、ソースとドレインの領域の画定を行うこと;基板上に不活性化層を形成し、さらに、第3のマスキングとパターニング手順が実行され、不活性化層の一部を除去すること;さらに、パターニングを施された不活性化層を遮蔽として用いて第2の導電層の他の部分を除去し、ピクセル電極領域を露出すること。
【0025】
露光源が光放射である場合、絶縁材料はガラスなどの光を透過する材料とする。
【0026】
好ましくは、第1と第2の導電層の各々は、クロミウム、モリブデン、タンタル、タンタルモリブデン、タングステンモリブデン、アルミニウム、アルミニウムシリサイド、銅またはそれらの組合せで形成する。これらの金属用のエッチャントは公知である。クロミウムとモリブデンはCCl/Oプラズマにより、銅はClプラズマの処理に続いてHプラズマにより、アルミニウムはBClプラズマにより、タングステンはFプラズマにより、エッチングすることができる。
【0027】
好ましくは、絶縁層は、窒化ケイ素、酸化ケイ素、オキシ窒化ケイ素またはそれらの組合せから形成する。
【0028】
好ましくは、エッチング停止層は窒化ケイ素、酸化ケイ素またはオキシ窒化ケイ素から形成する。
【0029】
好ましくは、半導体層は真性アモルファスシリコン、微晶質シリコンまたはポリシリコンから形成し、また、ドープした半導体層は、高度にドープしたアモルファスシリコン、高度にドープした微晶質シリコンまたは高度にドープしたポリシリコンから形成する。
【0030】
好ましくは、透明導電層は、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛または酸化インジウム鉛から形成する。必要な場合には、酸化インジウムスズ(「ITO」)層は、HBrを、任意選択によりBClと共に、使用して、エッチングすることができる。酸化インジウム亜鉛(「IZO」)はAr/Clプラズマを使用してエッチングすることができる。
【0031】
好ましくは、不活性化層は窒化ケイ素またはオキシ窒化ケイ素から形成する。
【0032】
好ましくは、第3のマスキングとパターニング手順は、TFTマトリックスのまわりの複数のTABパッド領域をさらに画定する。
【0033】
第3のマスキングとパターニング手順の後に、ピクセル電極を囲む第2の導電層の一部はブラックマトリクスとして存続することが好ましい。
【0034】
フッ化カルボニルを含むエッチングガスは、層(不活性化層、絶縁層および半導体層)をエッチングする上記のステップで、エッチングを実行するのに適切である。米国特許第6,406,928号明細書の図2Iに引用符号28で描かれているように、フッ化カルボニルを含むエッチングガスを用いて、分離窓を作成することは可能である。
【0035】
エッチングは、プラズマの下で臨機に実行され、プラズマは直接プラズマ(現場(in situ)プラズマ)もしくは遠隔プラズマまたは両方の組合せであり得る。
【0036】
フッ化カルボニルはニート(neat)の物質として、または他の活性または不活性のガス、たとえば窒素またはヘリウムとの混合物で適用することができる。好ましくは、それは、アルゴンと共に適用される。アモルファスシリコンまたは他の形態のシリコンの層の上で、窒化ケイ素の層を選択的にエッチングしなければならない場合、エッチングガス混合物は、付加的に酸素および/またはNOを含み、窒素は必要としない。上記のように、窒化ケイ素の被覆層がエッチング除去されるとすぐに、酸素と窒素酸化物がアモルファスシリコンの層の上に酸化ケイ素の不活性化層を提供する。
【0037】
所望の場合、フッ化カルボニルを含むガス混合物は、他のエッチャントガス、たとえば炭素、水素、フッ素および任意選択により塩素を含む他のガスと共に適用することができる。それが炭素、水素、フッ素を含むガスと共に適用される場合、ガスは好ましくはフルオロメタン、ジフルオロメタン、四フッ化炭素およびCF=CHからなる群から選択する。しかしながら、これらのガスは若干のGWPを有し、また、不活性化はエッチングガスに酸素および/またはNOを加えることにより達成することができることに留意しなければならない。
【0038】
特に高出力プラズマを備えた装置の中で、高速のエッチング用にニートのフッ化カルボニルを使用することは多くの場合可能である。より低いプラズマ出力を備えたプラズマ装置の中では、フッ化カルボニルおよびアルゴン(任意選択により窒素と共に)の混合物を適用することが望ましいことがあり得る。アルゴンは、たとえばプラズマを安定させることにおいて肯定的な効果があるからである。
【0039】
それが他のガス、特に、上記のようにアルゴン、酸素、および/または、NOと共に適用される場合、好ましくは、フッ化カルボニルは、50体積%以上の量で、好ましくは79体積%以下で、含まれ得る。100体積%までの残余は、好ましくは酸素、アルゴン、および/または、NOによって構成する。フッ化カルボニルとアルゴンを含むかそれらからなる混合物を、高速のエッチングのために好適に適用する。フッ化カルボニルとNOを含むかそれらからなる混合物、フッ化カルボニルと酸素を含むかそれらからなる混合物、フッ化カルボニル、酸素およびアルゴンを含むかそれらからなる混合物、フッ化カルボニル、NOおよびアルゴンを含むかそれらからなる混合物、およびフッ化カルボニル、酸素、窒素酸化物およびアルゴンを含む混合物を、シリコンを覆う層、特に、アモルファスシリコンを覆う窒化ケイ素層のための選択エッチング用のエッチングガスとして非常に好適に適用する。これらの混合物において、フッ化カルボニルの含有量は、特にアモルファスシリコンがエッチングガスに接触する危険がない、窒化ケイ素層の選択エッチングの初期に、好ましくは、50体積%以上であり得る。ニートのフッ化カルボニルまたはフッ化カルボニルのアルゴンとの混合物でさえ、不活性化する酸素またはNOがなくとも、適用されてもよい。窒素酸化物の層が部分的にエッチング除去される、エッチングプロセスの後の段階において、好ましくは、フッ化カルボニルは50体積%以下の量で、また好ましくは15体積%以上の量で、含まれ得る。NO、ならびに、(存在する場合)酸素およびアルゴンは、それぞれ、100体積%までの残りとする。これによって、窒化ケイ素が、アモルファスシリコンに対して選択的にエッチングされることが守られる。
【0040】
したがって、本発明のエッチングプロセスの好ましい実施形態において、エッチングプロセスの初期段階におけるFまたはCOFの濃度は、最終段階におけるよりも高くする。
【0041】
本発明は、さらに、フッ化カルボニルもしくはフッ素およびNO、ならびに任意選択によりアルゴンを含むかそれらからなる混合物であり、フッ化カルボニルまたはフッ素の含有量が好ましくは50体積%以上である混合物に関し、またフッ化カルボニルもしくはフッ素、酸素およびNO、ならびに任意選択によりアルゴンを含むかそれらからなる混合物であり、フッ化カルボニルまたはフッ素の含有量が好ましくは50体積%以上である混合物に関する。これらの混合物は、これらが適用されるツールにおいて現場で(in situ)好適に製造される。フッ素ガスもしくはフッ化カルボニルおよびNO、ならびに随意のアルゴンの適正量は、たとえばTFTまたは光電池のためのエッチング室であり得るツールに供給される。あるいは、これらの混合物は、好ましくは、1.5bar(abs)以上の圧力で、また好ましくは、15bar(abs)以下で、容器へそれらを提供することにより従来の方法で用意することができる。
【0042】
その混合物は、好ましくは0.1mbar(abs)〜15bar(abs)の圧力とする。
【0043】
これらの混合物において、フッ化カルボニルが好ましいエッチング剤である。
【0044】
これらの混合物は、窒化ケイ素層、たとえばアモルファスシリコン上のシリコン層のエッチングのプロセスの初期段階において非常に適切である。
【0045】
本発明は、さらにフッ化カルボニルもしくはフッ素およびNO、ならびに任意選択によりアルゴンを含むかそれらからなる混合物であり、フッ化カルボニルまたはフッ素の含有量が好ましくは50体積%以下である混合物に関し、また、フッ化カルボニルもしくはフッ素、酸素およびNO、ならびに任意選択によりアルゴンを含むかそれらからなる混合物であり、フッ化カルボニルまたはフッ素の含有量が好ましくは50体積%以下である混合物に関する。これらの混合物は、これらが適用されるツールにおいて現場で(in situ)好適に製造される。フッ素ガスもしくはフッ化カルボニルおよびNOの適正量は、たとえばTFTまたは光電池のためのエッチング室であってもよいツールに供給される。この実施形態におけるFまたはCOFの含有量は、好ましくは15体積%以上とする。
【0046】
その混合物は、好ましくは0.1mbar(abs)〜15bar(abs)の圧力とする。
【0047】
これらの混合物は、窒化ケイ素層、特にアモルファスシリコン上のシリコン層の選択エッチングのプロセスの最終段階において、アモルファスシリコンがエッチングガスに接触寸前である場合、非常に適切である。
【0048】
第1の態様において、本発明による混合物は、フッ化カルボニルおよびNOを含むか、これらからなる混合物、または、フッ化カルボニル、NOおよびアルゴンからなる混合物である。これらの混合物において、COF含有量は一般に50体積%以上とする。アルゴンの含有量は、好ましくは0〜20体積%とする。NOならびにNOおよびアルゴンは、それぞれ、100体積%までの残りを構成する。これらの混合物は、上記のようにアモルファスシリコン上の窒化ケイ素被覆の選択エッチングのために、エッチングプロセスの初期段階で特に適切である。これらの混合物の代表例を表1にまとめる。
【0049】
【表1】

【0050】
第2の態様において、本発明による混合物は、フッ化カルボニルおよびNOを含むかこれらからなる混合物、または、フッ化カルボニル、NOおよびアルゴンからなる混合物である。これらの混合物において、COF含有量は一般に50体積%以下とする。アルゴンの含有量は、好ましくは0〜20体積%とする。NOならびにNOおよびアルゴンは、それぞれ、100体積%までの残りを構成する。フッ化カルボニルの含有量は、好ましくは15体積%以上とする。これらの混合物は、アモルファスシリコン上の窒化ケイ素被覆の選択エッチングのために、アモルファスシリコンがエッチングガスに接触する可能性がある、エッチングプロセスの最終段階で特に適切である。そのような混合物の代表例を表2にまとめる。
【0051】
【表2】

【0052】
特別の態様において、本発明による混合物はさらに酸素を含む。この場合、フッ化カルボニルの含有量は上に示された通りとし、アルゴンの含有量は、好ましくは0〜20体積%であり、またガス混合物中の酸素およびNOの含有量の和は、100体積%までの残りとする。したがって、酸素とNOの含有量は、合計すると、100体積%までの残りになる。酸素の含有量を0体積%より大きく、また、NOの含有量も0より大きくする。好ましい実施形態において、O:NOのモル比は0.1:1〜1:0.1とする。その混合物はさらに窒素を含んでもよく、好ましくは、それらは窒素を含まない。
【0053】
この態様の特別な一実施形態において、フッ化カルボニルの含有量を50体積%以上とする。それは、好ましくは、90体積%以下とする。酸素含有量を、好ましくは、0体積%より大きく、20体積%以下とする。NO、および、(存在する場合)アルゴンを100体積%までの残りとする。これらの混合物は、上記のようにアモルファスシリコン上の窒化ケイ素被覆の選択エッチングのために、エッチングプロセスの初期段階で特に適切である。これらの混合物の代表例を表3にまとめる。
【0054】
【表3】

【0055】
この態様の他の特別の実施形態において、フッ化カルボニルの含有量を50体積%未満とする。それは、好ましくは、15体積%以上とする。酸素含有量を、好ましくは、0体積%より大きく、20体積%以下とする。NO、および、(存在する場合)アルゴンを、100体積%までの残りとする。これらの混合物は、上記のようにアモルファスシリコン上の窒化ケイ素被覆の選択エッチングのために、エッチングプロセスの最終段階で特に適切である。これらの混合物の代表例を表4にまとめる。
【0056】
【表4】

【0057】
一実施形態によれば、本発明の混合物は、フッ化カルボニルとNO、ならびに任意選択により他のガス、たとえば窒素または、特にアルゴンもしくは酸素を含む、液体の混合物である。他の実施形態において、混合物はガス体である。圧力は0.1mbar(abs)以上、15bar(abs)以下であってもよい。エッチングツールの中で現場で(in situ)提供されるか用意される場合、ガス混合物は、好ましくは、0.1mbar(abs)以上〜1bar(abs)以下の圧力とする。ガス混合物が貯蔵容器に貯蔵される場合、それらは、好ましくは、1bar(abs)以上〜15bar(abs)以下の圧力とする。
【0058】
第2の態様において、本発明による混合物は、フッ素およびNO、または、フッ素、NOおよびアルゴンからなる混合物、を含むかそれらからなる混合物である。これらの混合物において、F含有量は通常50体積%以上とする。アルゴンの含有量は、好ましくは0〜20体積%とする。NOならびにNOおよびアルゴンは、それぞれ、100体積%までの残りを構成する。
【0059】
第3の態様において、本発明による混合物は、フッ素およびNOを含むかそれらからなる混合物、または、フッ素、NOおよびアルゴンからなる混合物である。これらの混合物において、F含有量は、通常50体積%以下とする。アルゴンの含有量は、好ましくは0〜20体積%とする。NOならびにNOおよびアルゴンは、それぞれ、100体積%までの残りを構成する。フッ素の含有量は、好ましくは25体積%以上とする。
【0060】
特別の態様において、フッ素を含む本発明による混合物は、さらに酸素を含む。この場合、ガス混合物中の酸素の含有量は、通常、体積で0を超え20までで、またNO、および、(存在する場合)アルゴンは100体積%までの残りである。
【0061】
次の表5〜8において、本発明のF含有混合物を詳細に記述する。
【0062】
第1の態様の中で、本発明による混合物は、FおよびNOを含むかそれらからなる混合物、または、F、NOおよびアルゴンからなる混合物である。これらの混合物において、F含有量は、通常50体積%以上とする。アルゴンの含有量は、好ましくは0〜20体積%とする。NOならびにNOおよびアルゴンは、それぞれ、100体積%までの残りを構成する。これらの混合物は、上記のようにアモルファスシリコン上の窒化ケイ素被覆の選択エッチングのために、エッチングプロセスの初期段階で特に適切である。これらの混合物の代表例を表5にまとめる。
【0063】
【表5】

【0064】
第2の態様において、本発明による混合物は、FおよびNOを含むかそれらからなる混合物、または、F、NOおよびアルゴンからなる混合物である。これらの混合物において、F含有量は、通常50体積%以下とする。アルゴンの含有量は、好ましくは0〜20体積%とする。NOならびにNOおよびアルゴンは、それぞれ、100体積%までの残りを構成する。Fの含有量は、好ましくは15体積%以上とする。これらの混合物は、アモルファスシリコン上の窒化ケイ素被覆の選択エッチングのために、アモルファスシリコンがエッチングガスに接触する可能性がある、エッチングプロセスの最終段階で特に適切である。そのような混合物の代表例を表6にまとめる。
【0065】
【表6】

【0066】
特別の態様において、本発明による混合物はさらに酸素を含む。この場合、Fの含有量は上に示された通りであり、アルゴンの含有量は、好ましくは0〜20体積%とし、またガス混合物中の酸素およびNOの含有量の和は、100体積%までの残りとする。したがって、酸素とNOの含有量は、合計すると、100体積%までの残りになる。酸素の含有量は0体積%より大きく、また、さらに、NOの含有量は0より大きくする。好ましい実施形態において、O:NOのモル比を0.1:1〜1:0.1とする。その混合物はさらに窒素を含んでもよく、好ましくは、それらは窒素を含まない。
【0067】
この態様の特別の一実施形態において、Fの含有量は、50体積%以上とする。それは、好ましくは、90体積%以下とする。酸素含有量を、好ましくは、0体積%より大きく、20体積%以下とする。NO、および、(存在する場合)アルゴンは、100体積%までの残りとする。これらの混合物は、上記のようにアモルファスシリコン上の窒化ケイ素被覆の選択エッチングのために、エッチングプロセスの初期段階で特に適切である。これらの混合物の代表例を表7にまとめる。
【0068】
【表7】

【0069】
この態様の他の特別の実施形態において、Fの含有量を50体積%以下とする。好ましくは、それは15体積%以上とする。酸素含有量を、好ましくは、0体積%より大きく、20体積%以下とする。NO、および、(存在する場合)アルゴンは100体積%までの残りとする。これらの混合物は、上記のようにアモルファスシリコン上の窒化ケイ素被覆の選択エッチングのために、エッチングプロセスの最終段階で特に適切である。これらの混合物の代表例を表8にまとめる。
【0070】
【表8】

【0071】
上記の表1〜8に示された組成は好ましい組成であるが、それらは好ましい組成の範囲の上限または下限でもあり得ると理解される。そのため、表の中の限度は、本発明による組成の好ましい範囲を開示するために結合可能である。空欄は、それぞれのガスが0体積%であることを開示する。
【0072】
混合物は、冷えてFを凝縮させなかったならば、ガス体である。圧力は0.1mbar(abs)以上〜15bar(abs以下)であり得る。エッチングツールの中で現場で(in situ)提供されるか用意される場合、ガス混合物は、好ましくは、0.1mbar(abs)以上〜1bar(abs)以下の圧力とする。ガス混合物が貯蔵容器に貯蔵される場合、それらは、好ましくは、1bar(abs)以上〜15bar(abs)以下の圧力とする。
【0073】
ツールへそれぞれの個別のガス流を提供することによって、混合物は、ツールの中で現場で(in situ)用意することができる。あるいは、混合物は、ツールにそれらを供給する前に、前もって混合することができる。
【0074】
好ましい一実施形態によれば、フッ化カルボニルの400sccmの流れ、窒素酸化物の50sccmの流れおよびアルゴンの流れを供給することにより得られた混合物が放出され、また好ましくは、フッ化カルボニルの400sccmの流れ、窒素酸化物の50sccmの流れおよびアルゴンの流れを供給することにより得られた、1mbarの圧力を有する混合物が放出される。
【0075】
本発明は、本発明による混合物の、エッチングガスまたはクリーニングガスとしての使用にも関する。好ましくは、窒化ケイ素、酸化ケイ素もしくはオキシ窒化ケイ素、a−Si真性アモルファスシリコン、微晶質シリコンおよびポリシリコン、高度にドープしたアモルファスシリコン、高度にドープした微晶質シリコンならびに高度にドープしたポリシリコンからなる群から選択される材料をエッチングするために、混合物は適切に使用される。これらの混合物は、本発明によるプロセスにおいて特に適切である。
【0076】
本発明は、本発明による混合物の、SF代替またはNF代替としての使用にも関する。
【0077】
共同で適用される、フッ化カルボニルおよび任意の他のガスはお互いとは別々にプラズマ室へ導入することができる。ここで、相異なるガスを段階的に導入することは可能である。たとえば、アルゴンを導入し、遠隔プラズマによりエッチングプロセスを始めることができる。次いで、フッ化カルボニル、または、それと他のガス、たとえば酸素、アルゴン、および/または、NOとの混合物を導入することができる。これには、エッチングガスが導入される時に安定状態にある、安定したプラズマを、アルゴンが提供するという利点がある。
【0078】
好ましくは、プラズマ室へ導入される前に、フッ化カルボニルは、他のガス、たとえば窒素、酸素、アルゴン、および/または、NOと混合される。均質な予混合物を導入することは、それがプラズマ室で現場(in situ)プラズマを始めるための一定の状態を保証するので好ましい。
【0079】
層成形ステップおよびエッチングステップは、公知の装置で、たとえば、Applied Materials,Inc.の子会社であるAKT,IncのPECVDツールで、実行することができる。プラズマ誘起エッチング処理は、減圧下でしばしば実行される。以下、圧力は絶対圧力値で示す。好ましくは、圧力は0.1mbar以上とする。好ましくは、圧力は100mbar以下とする。特に好ましくは、圧力は50mbar以下とする。
【0080】
エッチング処理は、所望のエッチングの度合いを提供するのに十分な時間、実行される。好ましくは、その処理は1秒以上の間、実行する。好ましくは、その処理は10分以下の間、好ましくは5分以下の間、実行する。
【0081】
プラズマ反応装置を出るガスは、未反応のエッチャント、HF、SiF4または金属フッ化物、および他の反応生成物を含む。すべてのHF、フッ化カルボニル、SiF4またはフッ素、および凝結金属フッ化物を除去するために、これらの排ガスを水、特にアルカリ水で洗浄することができる。洗浄機を通る、すべての酸素、窒素、ヘリウムまたはアルゴンは、回収するか、または自然環境に渡すことができる。他のエッチングガスと比べて、アルカリ水中で、または他の周知の方法により、HF、フッ化カルボニルおよびフッ素を簡単に除去できることが、一層の利点である。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、本発明を限定することなく、本発明について説明するものとする。
【0083】
実施例1:酸素を含むエッチャントガス混合物の製造
フッ化カルボニル、酸素およびアルゴンを70、10および20の体積割合で、加圧下でボンベへ導入する。このガス混合物は、TFTマトリックス用エッチング組成物として適用することができる。
【0084】
実施例2:NOを含むエッチャントガス混合物の製造
フッ化カルボニル、NOおよびアルゴンを70、20および10の体積割合で、加圧下でボンベへ導入する。このガス混合物は、TFTマトリックス用エッチング組成物として適用することができる。
【0085】
実施例3:NOを含む、予混合したガスを用いたSiNのエッチング
ガラスプレート上に、PECVDプロセスによって、SiNを堆積する。次いで、プレートにフォトレジストでパターニングを施し、プラズマエッチツール内へ動かす。ツールを真空引きし、実施例2のガス混合物をツールへ導入し、圧力を1mbarに調節し、プラズマのスイッチを入れる。1分後、窒素をツールへ導入し、エッチングされたサンプルをツールから取り出す。SiNがエッチングされた。
【0086】
実施例4:酸素を含む予混合したガスを用いたSiNのエッチング
ガラスプレート上に、SiNをPECVDプロセスによって堆積する。次いで、プレートにフォトレジストでパターニングを施し、プラズマエッチツール内へ動かす。ツールを真空引きし、実施例1のガス混合物をツールへ導入し、圧力を1mbarに調節し、プラズマのスイッチを入れる。1分後、窒素をツールへ導入し、エッチングされたサンプルをツールから取り出す。SiNがエッチングされた。
【0087】
実施例5:適用の直前に製造された酸素含有のガス混合物を用いたSiNのエッチング
ガラスプレート上に、SiNをPECVDプロセスによって堆積する。次いで、プレートにフォトレジストでパターニングを施し、プラズマエッチツール内へ動かす。ツールを真空引きする。フッ化カルボニル、酸素および窒素を個別のボンベに貯蔵する。それらを70、10および20の体積割合で、プラズマツールに接続した共通ラインへ導入する。結果として得られるガス混合物をツールへ導入し、圧力を1mbarに調節し、プラズマのスイッチを入れる。1分後、窒素をツールへ導入し、エッチングされたサンプルをツールから取り出す。SiNがエッチングされた。
【0088】
実施例6:適用の直前に製造されたNO含有のガス混合物を用いたSiNのエッチング
ガラスプレート上に、SiNをPECVDプロセスによって堆積する。次いで、プレートにフォトレジストでパターニングを施し、プラズマエッチツール内へ動かす。ツールを真空引きする。フッ化カルボニル、NOおよび窒素を個別のボンベに貯蔵する。それらを70、20および10の体積割合で、プラズマツールに接続した共通ラインへ導入する。結果として得られるガス混合物をツールへ導入し、圧力を1mbarに調節し、プラズマのスイッチを入れる。1分の後、窒素をツールへ導入し、エッチングされたサンプルをツールから取り出す。SiNがエッチングされた。
【0089】
実施例7:NOを含む予混合したガスを用いたSiOのエッチング
ガラスプレート上に、SiOをPECVDプロセスによって堆積する。次いで、プレートにフォトレジストでパターニングを施し、プラズマエッチツール内へ動かす。ツールを真空引きし、実施例2のガス混合物をツールへ導入し、圧力を1mbarに調節し、プラズマのスイッチを入れる。1分後、窒素をツールへ導入し、エッチングされたサンプルをツールから取り出す。SiOがエッチングされた。
【0090】
実施例8:適用の直前に製造された酸素含有のガス混合物を用いたSiOのエッチング
ガラスプレート上に、SiOをPECVDプロセスによって堆積する。次いで、プレートにフォトレジストでパターニングを施し、プラズマエッチツール内へ動かす。ツールを真空引きする。フッ化カルボニル、酸素および窒素を個別のボンベに貯蔵する。それらを70、10および20の体積割合で、プラズマツールに接続した共通ラインへ導入する。結果として得られるガス混合物をツールへ導入し、圧力を1mbarに調節し、プラズマのスイッチを入れる。1分後、窒素をツールへ導入し、エッチングされたサンプルをツールから取り出す。SiOがエッチングされた。
【0091】
実施例9:適用の直前に製造されたNO含有のガス混合物を用いたSiOのエッチング
ガラスプレート上に、SiOをPECVDプロセスによって堆積する。次いで、プレートにフォトレジストでパターニングを施し、プラズマエッチツール内へ動かす。ツールを真空引きする。フッ化カルボニル、NOおよび窒素を個別のボンベに貯蔵する。それらを70、20および10の体積割合で、プラズマツールに接続した共通ラインへ導入する。結果として得られるガス混合物をツールへ導入し、圧力を1mbarに調節し、プラズマのスイッチを入れる。1分後、窒素をツールへ導入し、エッチングされたサンプルをツールから取り出す。SiOがエッチングされた。
【0092】
実施例10:予混合したガス混合物を用いたアモルファスシリコンのエッチング
ガラスプレート上に、アモルファスシリコンをPECVDプロセスによって堆積する。次いで、プレートにフォトレジストでパターニングを施し、プラズマエッチツール内へ動かす。ツールを真空引きし、実施例1のガス混合物をツールへ導入し、圧力を1mbarに調節し、プラズマのスイッチを入れる。1分後、窒素をツールへ導入し、エッチングされたサンプルをツールから取り出す。シリコンがエッチングされた。
【0093】
実施例11:適用の直前に製造された酸素含有のガス混合物を用いたアモルファスシリコンのエッチング
ガラスプレート上に、アモルファスシリコンをPECVDプロセスによって堆積する。次いで、プレートにフォトレジストでパターニングを施し、プラズマエッチツール内へ動かす。ツールを真空引きする。フッ化カルボニル、酸素および窒素を個別のボンベに貯蔵する。それらを70、10および20の体積割合で、プラズマツールに接続した共通ラインへ導入する。結果として得られるガス混合物をツールへ導入し、圧力を1mbarに調節し、プラズマのスイッチを入れる。1分後、窒素をツールへ導入し、エッチングされたサンプルをツールから取り出す。シリコンがエッチングされた。
【0094】
実施例12:F/NOを用いたアモルファスシリコン層上の窒化ケイ素層のエッチング
アモルファスシリコン層上に、窒化ケイ素層をPECVDプロセスによって堆積する。
【0095】
最初に、純粋なFをエッチング室に200sccmの流量で供給する。600ワットの13.56MHzの高周波電力をプラズマツールに供給する。ある時間の後、NOを、40〜60sccmの流量でツールへ付加的に入れる。最後に、NOの流れを500sccmに増加する。窒化ケイ素の所望のエッチングが達成された時、エッチングプロセスを止めることができる。
【0096】
実施例13:アルゴンの存在下でF/NOを用いたアモルファスシリコン層上の窒化ケイ素層のエッチング
アモルファスシリコン層上に、窒化ケイ素層をPECVDプロセスによって堆積する。
【0097】
最初に、Fとアルゴンをエッチング室に200sccm(F)および40sccm(アルゴン)の流量で供給する。600ワットの13.56MHzの高周波電力をプラズマツールに供給する。ある時間の後、NOを、40〜60sccmの流量でツールへ付加的に入れる。最後に、NOの流れを500sccmに増加する。窒化ケイ素の所望のエッチングが達成された時、エッチングプロセスを止めることができる。
【0098】
実施例14:COF/NOを用いたアモルファスシリコン層上の窒化ケイ素層のエッチング
アモルファスシリコン層上に、窒化ケイ素層をPECVDプロセスによって堆積する。
【0099】
最初に、純粋なCOFをエッチング室に200sccmの流量で供給する。600ワットの13.56MHzの高周波電力をプラズマツールに供給する。ある時間の後、NOを、40〜60sccmの流量でツールへ付加的に入れる。最後に、N2Oの流れを600sccmに増加する。窒化ケイ素の所望のエッチングが達成された時、エッチングプロセスを止めることができる。
【0100】
実施例15:アルゴンの存在下でのCOF/NOを用いたアモルファスシリコン層上の窒化ケイ素層のエッチング
アモルファスシリコン層上に、窒化ケイ素層をPECVDプロセスによって堆積する。
【0101】
最初に、COFとアルゴンをエッチング室に200sccm(F)および40sccm(アルゴン)での流量供給する。600ワットの13.56MHzの高周波電力をプラズマツールに供給する。ある時間の後、NOを、40〜60sccmの流量でツールへ付加的に入れ、流れを徐々に600sccmまで増加する。窒化ケイ素の所望のエッチングが達成された時、エッチングプロセスを止めることができる。予混合したガス混合物を使用することの利点は、高い均質性が守られ、また、適用がより簡単であり、成分の混合が不要になるということにある。プラズマツールへの導入の直前に製造されたガス混合物を使用することの利点は、成分の量に関する高い柔軟性と精密性にある。
【0102】
アモルファスシリコン上の窒化ケイ素層のエッチングは、最初にCOFまたはFのより高い濃度を備えたエッチングガスを適用し、上記のようにエッチングプロセスの後の段階に、NOおよび/または酸素を追加することによって有利に実行され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ケイ素またはa−Siを含む層がガス体のエッチング剤によりエッチングされ、また前記エッチング剤がフッ化カルボニル(COF)、Fまたはそれらの混合物を含んでいる、少なくとも1ステップを含む、TFTマトリックスの製造のための方法。
【請求項2】
前記エッチング剤がフッ化カルボニルを含むかそれからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッチングステップがプラズマ支援される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記層が窒化ケイ素からなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
フッ化カルボニル、または、フッ化カルボニルと、窒素、アルゴン、NOおよび酸素からなる群から選択される少なくとも1つのガスとの混合物がエッチングガスとして使用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フッ化カルボニル、酸素およびアルゴンを含むかそれらからなる混合物が、エッチングガスとして適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
フッ化カルボニル、NOおよびアルゴンを含むかそれらからなる混合物が、エッチングガスとして適用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フッ化カルボニルの400sccmの流れ、窒素酸化物の50sccmの流れおよびアルゴンの流れを供給することにより得られた混合物を放出し、また好ましくは、フッ化カルボニルの400sccmの流れ、窒素酸化物の50sccmの流れおよびアルゴンの流れを供給することにより得られた、1mbarの圧力を有する混合物を放出する、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
フッ素、または、フッ素と、窒素、アルゴン、酸素およびNOからなる群から選択される少なくとも1つのガスとの混合物がエッチングガスとして使用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
フッ素と、窒素およびアルゴンからなる群から選択される少なくとも1つのガスとを含むかそれらからなる混合物が使用され、前記混合物におけるフッ素含有量が50から70体積%、好ましくは約60体積%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
フッ素と、酸素およびNOからなる群から選択される少なくとも1つのガスとを共に含むかそれらからなる混合物が使用され、前記混合物におけるフッ素含有量が50から70体積%、好ましくは約60体積%である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
フッ化カルボニル(COF)、Fまたはそれらの混合物を含む前記エッチング剤が、SF6代替品またはNF3代替品として使用される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
COFまたはFの含有量が、15体積%以上であり、50体積%未満であり、アモルファスシリコン上で覆われている窒化ケイ素が、選択的にエッチングされる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記エッチングプロセスの初期段階におけるFまたはCOFの濃度が、最終段階におけるよりも高い、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
フッ化カルボニルもしくはフッ素、およびNOを含むかそれらからなり、フッ化カルボニルまたはフッ素の含有量が、好ましくは50体積%以上である、混合物。
【請求項16】
不活性ガス、好ましくはアルゴンをさらに含み、不活性ガスの含有量が0から20体積%であり、NOが100体積%までの残りである、請求項15に記載の混合物。
【請求項17】
酸素をさらに含み、酸素の含有量が0を超え、20体積%までであり、NOが100体積%までの残りである、請求項15または16に記載の混合物。
【請求項18】
フッ化カルボニルもしくはフッ素、およびNOを含むかそれらからなり、フッ化カルボニルまたはフッ素の含有量が、好ましくは15体積%以上かつ50体積%未満である、混合物。
【請求項19】
不活性ガス、好ましくはアルゴンをさらに含み、不活性ガスの含有量が0から20体積%であり、NOが100体積%までの残りである、請求項18に記載の混合物。
【請求項20】
酸素をさらに含み、酸素の含有量が0を超え、20体積%までであり、NOが100体積%までの残りである、請求項18または19に記載の混合物。
【請求項21】
好ましくは、窒化ケイ素、酸化ケイ素もしくはオキシ窒化ケイ素、真性アモルファスシリコン、微晶質シリコンおよびポリシリコン、高度にドープしたアモルファスシリコン、高度にドープした微晶質シリコンならびに高度にドープしたポリシリコンからなる群から選択される材料をエッチングするために、エッチングガスまたはクリーニングガスとしての、請求項15〜17のいずれか一項に記載の混合物の使用。
【請求項22】
好ましくは、窒化ケイ素、真性アモルファスシリコン上の被覆層としての酸化ケイ素もしくはオキシ窒化ケイ素、微晶質シリコンおよびポリシリコン、高度にドープしたアモルファスシリコン、高度にドープした微晶質シリコンならびに高度にドープしたポリシリコンからなる群から選択される材料を選択的にエッチングするために、エッチングガスまたはクリーニングガスとしての、請求項18〜20のいずれか一項に記載の混合物の使用。
【請求項23】
SF代替品またはNF代替品としての、請求項15〜20のいずれか一項に記載の混合物の使用。

【公表番号】特表2013−508990(P2013−508990A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535779(P2012−535779)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066109
【国際公開番号】WO2011/051251
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】