説明

TLR阻害作用を有するキナゾリン誘導体

【課題】TLR3、7、及び/又は9を阻害し、自己免疫疾患、炎症、アレルギー等の予防及び治療効果に優れた新規化合物の提供。
【解決手段】次の一般式(1):


[式中、R1は、環Aまたは環A−Bを示し、{環Aは、5−7員飽和含窒素複素環基等を示し、環Bは、C6-10芳香環基を示す}を示し、R2及びR4は、どちらか一方が環Aまたは環Bを含有する特定の置換基等を示し、R2及びR4のもう一方は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、C1-10アルキル基又はC1-10アルキルオキシ基を示し、R3、R5、R6は、同一又は異なってもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、C1-10アルキル基又はC1-10アルキルオキシ基を示す]で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はToll様受容体(Toll−like receptor;TLR)阻害作用を有し、TLRシグナルの活性化に起因する疾患、例えば関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎等の自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症の予防、治療剤として有用な新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
病原体が生体に進入すると、免疫系はそれらの病原体をすみやかに識別し排除する。哺乳類では免疫系は大きく自然免疫と獲得免疫に分けることが出来る。獲得免疫では、遺伝子再構成という方法で無数の個々に異なる抗原特異性を有する受容体がT細胞やB細胞表面に発現され、あらゆる未知の外来抗原に対処する(非特許文献1)。
【0003】
一方で,マクロファージや樹状細胞等によって担われる自然免疫系は非特異的な免疫応答で微生物の排除が行われると考えられていたが、Toll様受容体(Toll−like receptor;TLR)の発見や樹状細胞を中心とした諸研究の急速な進展により,適応免疫系における抗原認識ほどの親和性や特異性は高くない、特徴的な微生物認識機構が存在していることが明らかになってきた(非特許文献2)。とくにTLRに代表される細胞内にシグナルを伝達する核酸認識受容体は、感染をいち早く前線においてキャッチするという役割のみならず、その後、細胞内にシグナルを伝え、自然免疫系活性化のスイッチをオンにする重要な役割がある。その意味において、これまで知られていた自然免疫系の活性化によって誘導されるI型インターフェロン等のサイトカインやケモカイン、そして抗原提示に関与する分子群の遺伝子発現誘導と、その後の適応免疫系の活性化へと連携させて特異的な免疫応答発動へと導くという経路が明らかとなった(非特許文献2)。
【0004】
TLRのうちTLR3はウイルス由来の二本鎖RNAを認識し、TLR7は同様にウイルス由来の一本鎖RNAを認識することが明らかとなっている。TLR9は細菌のCpG(シトシン・グアニン)DNAを認識して活性化される。CpG DNAは細菌のゲノムDNAの特徴的な配列でメチル化されてないCpG配列がある頻度で繰り返されている。哺乳類のゲノムDNAではCpG配列の頻度が少なく高頻度にメチル化されているため、免疫賦活作用はない(非特許文献3)。
【0005】
これまでRNAやDNAセンサーとして報告されてきたTLR7、及び9に関しては多くの研究がなされ、その詳細がかなり明らかになってきている。TLR7、及び9はエンドソームやライソソームにおいて細胞外に存在するRNAやDNAを認識する受容体として機能し、I型インターフェロンや炎症性サイトカインの遺伝子発現を誘導する。この両者ともMyD88依存性のシグナル伝達経路を介するが、前者がIRAK1/IKKα−IRF−7が関与するのに対し,後者では、NF−κBやIRF−5やMAPキナーゼの経路が関与する。MyD88にはIRF−7やIRF−5の他に、IRF−1やIRF−4が会合することが知られているが(非特許文献4、5、6)、TLR9下流で関与するIRF転写因子の種類や役割は細胞の種類によって異なっている。
【0006】
上記に示したようにTLRはRNAやDNAをリガンドとして認識するが、正常な状態では自己核酸はリガンドとして認識されず、自然免疫を活性化しない。これは細胞死により放出された自己核酸は血清中のヌクレアーゼによりTLRにより認識される前に分解されるからである。またTLR3、7、及び9の、細胞表面ではなく、エンドソームでの細胞内局在も、自己核酸を認識しない機構として考えられている。しかしながら、自己免疫反応や炎症が起こっている状況下ではこのような防御機構が破綻し、内在性のタンパク質と複合体を形成し、TLRシグナルを活性化することが考えられる(非特許文献7)。
【0007】
これらのことからTLRを阻害することにより、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎等の自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症を改善することが可能であると考えられる。以下に示すようにこれらのいくつかの疾患についてはTLRと具体的な関係が示されている。
【0008】
関節リウマチ(RA)についてはTLR9阻害作用を有する核酸配列を用いて、TLR9を阻害することによりプリスタン誘導性ラット関節炎モデルにおいて発症と病態が抑制されたことが報告されている(非特許文献8)。また抗マラリア薬であるヒドロキシクロロキンはエンドソームの酸性化抑制によりTLR7、9の阻害作用を有していることが知られ、日本を除くほとんどの国でRA、SLEの治療薬として承認されている(非特許文献9)。
【0009】
全身性エリテマトーデス(SLE)についてはTLR9ノックアウトマウスにおいてSLE様の病体において見られる抗核抗体の減弱が報告されており(非特許文献10)、TLR9阻害作用を有する核酸を用いた実験においても同様の結果が報告されている(非特許文献11)。さらに同様の作用を有する低分子化合物についても報告されている(CPG52364:特許文献1)。
【0010】
TLR7ノックアウトマウス(SLE様の症状を自然発症するMRL/lprマウス)においても尿中タンパク質の減少、血中IgGの減少等SLE様の症状の発症が抑制されることが知られている(非特許文献12、13)。さらに抑制性の核酸を投与することによりSLE様の症状の抑制も報告されている(非特許文献11)。これらの報告からはTLR7もSLEのターゲットとして非常に有用であることが推察される。マウスにおけるMSのモデルであるEAEモデルにおいては、TLR2、TLR9ノックアウトマウスで病態の発症が弱いという報告があり、TLRの関与が示されている(非特許文献14)。
【0011】
シェーグレン症候群(SS)患者の唾液腺上皮細胞では、TLR3の活性化によるアポトーシスに感受性が高いという報告がなされており、TLRの関与が考えられる(非特許文献15)。
【0012】
炎症性腸疾患(IBD)等の腸炎では様々なTLRが炎症に関与していることがマウスの腸炎モデルを用いて示されており、TLR阻害により病体に抑制的に働く場合、TLRの活性化が病体に抑制的に働く場合が報告されており、一概に阻害作用のみが病態回復に機能するとは考えられないが、TLRとの関与は示されている(非特許文献16)。
【0013】
リガンドであるCpG−B DNAにより産生される炎症性サイトカインにより、心筋細胞の収縮性が失われたとされる報告があり、TLR9ノックアウトマウスではその作用が減弱された(非特許文献17)。このようなことから敗血症に起因する心筋症に関与していると考えられる。
【0014】
ヒドロキシクロロキンはTLR9阻害作用を有することが公知であり、すでに臨床でも使用されている薬剤であるが、TLR9阻害作用としてはそれほど強くなく、さらに強いTLR9阻害作用を有する薬剤により、より強力な薬効が期待できる。またヒドロキシクロロキンはクロロキン網膜症等の副作用の懸念があるが、異なる骨格の化合物により、このような副作用の懸念は払拭できる可能性も考えられる。
【0015】
したがって、強いTLR阻害作用を示し、経口投与可能な低分子性の薬剤が、今後の関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎等の自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症の治療において有用であると考えられる。
【0016】
キナゾリン化合物としては、例えば、Naチャネルモジュレート能を有し、炎症性腸疾患や多発性骨髄腫の治療薬としての効果が知られている(特許文献2)。また、リゾホスファチジン酸受容体アンタゴニストとしての作用(非特許文献18)や、心血管系治療薬(特許文献3)、糖尿病治療薬(特許文献4)としての作用も知られている。また、キナゾリン化合物は、TLR9阻害剤としての用途も知られている(特許文献5)。しかしながら、本願発明に係るキナゾリノン化合物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO2008/152471号パンフレット
【特許文献2】US20040248890号公報
【特許文献3】特表2001−526273号公報
【特許文献4】特表2008−526734号公報
【特許文献5】特表2007−524615号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】植松智ら ウイルス,54:145−152(2004)
【非特許文献2】高岡晃教ら ウイルス,58:37−46(2008)
【非特許文献3】Takeda K et al.,Annu., Rev. Immunol., 21: 335−376 (2003)
【非特許文献4】Honda K et al.,Proc. Natl. Acad. Sci.USA, 101: 15416−15421 (2004)
【非特許文献5】Negishi H et al.,Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 102: 15989−15994 (2005)
【非特許文献6】Negishi H et al.,Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 103: 15136−15141 (2006)
【非特許文献7】Kim, Y.M et al., Nature, 452: 234−238 (2008)
【非特許文献8】S Herman et al.,Ann. Rheum. Dis., 70 : A39 doi:10.1136/ard.2010.148973.8 (2011)
【非特許文献9】横川直人、Current Therapy, 28: 85−91,2010
【非特許文献10】Sean R. Christensen et al.,J. Exp. Med., 202: 321−331 (2005)
【非特許文献11】Rahul D. Pawaret al.,J Am Soc Nephrol 18: 1721-1731 (2007)
【非特許文献12】Sean R. Christensenet al.,Immunity, 25: 417-428 (2006)
【非特許文献13】Kevin M. Nickerson al.,J. Immunol, 184: 1840−1848 (2010)
【非特許文献14】Socorro Miranda−Hernandez, al.,J Immunol, 187: 791−804 (2011)
【非特許文献15】Manoussakis MN, al., J Autoimmun, 35(3): 212−218 (2010)
【非特許文献16】Elke Cario, Inflamm Bowel Dis, 14(3): 411−21 (2008)
【非特許文献17】Pascal Knuefermannal., Cardiovascular Research, 78: 26-35 (2008)
【非特許文献18】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 18 (2008) 1037-1041
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、TLR阻害作用を有する低分子性の新規化合物を提供することにある。さらに詳細には、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎等の自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症の予防及び/又は治療に有用な医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記実情に鑑み、本発明者らは、鋭意TLR阻害作用を持つ化合物を探索した結果、下記一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体が、内在的にヒトTLR3を発現しているヒト血管内皮細胞由来のECV304を用いた試験、ヒトTLR7を発現させたヒト胎児腎臓細胞由来のHEK293細胞を用いた試験、ヒトTLR9を発現させたヒト胎児腎臓細胞由来のHEK293細胞を用いた試験においてTLR阻害作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
即ち、本発明は、次の一般式(1):
【0022】
【化1】

【0023】
[式中、
1は、式(2)又は(3):
【0024】
【化2】

【0025】
{式中、
環Aは、5−7員飽和含窒素複素環基又は5−7員部分飽和含窒素複素環基を示し、ここで環Aは、ハロゲン原子、C1-3アルキル基、水酸基及びC1-3アルキルオキシ基からなる群より選択される置換基を有してもよく、
環Bは、C6-10芳香環基を示す}
を示し、
2及びR4は、いずれか一方が式(4):
【0026】
【化3】

【0027】
{式中、
環Cは、前記環Aで示されたものと同一であり、環Dは、前記環Aで示されたもの又は前記環Bで示されたものと同一であり、
Xは、C1-6アルキレン基を示し、
Yは、単結合、−NHC(O)−又は−C(O)NH−を示し、
Zは、単結合又はC1-6アルキレン基を示し、
m及びnは、0又は1を示し、但し、m+n=1を満たす}
を示し、
2及びR4のもう一方は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、C1-10アルキル基又はC1-10アルキルオキシ基を示し、
3、R5、R6は、同一又は異なってもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、C1-10アルキル基、C1-10アルキルオキシ基を示す]
で示される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物に関する。また、前記一般式(1)に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、TLR3、7、及び/又は9阻害剤に関する。さらに、前記一般式(1)に記載の化合物もしくはその塩、又はそれらの溶媒和物、及び製薬上許容される担体を含有してなる医薬組成物に関する。
【0028】
さらに詳細には、本発明は、
N1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-N4-(4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キナゾリン-6-イル)スクシンアミド、
N-(3-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)アミノ)-3-オキソプロピル)-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン-4-カルボキサミド、及び
N-(3-([1,4'-ビピペリジン]-1'-イル)プロピル)-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン-4-カルボキサミド
からなる群から選択される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物に関する。
【0029】
また、本発明は、
N1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-N4-(4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キナゾリン-6-イル)スクシンアミド、
N-(3-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)アミノ)-3-オキソプロピル)-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン-4-カルボキサミド、及び
N-(3-([1,4'-ビピペリジン]-1'-イル)プロピル)-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン-4-カルボキサミド
からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を有効成分として含有してなる、医薬組成物、又は、TLR3、7、及び/又は9阻害剤に関する。
【0030】
また、本発明は、前記一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、TLR3、7、及び/又は9シグナルの活性化に起因する疾患の予防及び/又は治療剤に関する。より詳細には、本発明は、前記一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎等の自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症の予防及び/又は治療剤に関する。
【0031】
また、本発明は、TLR3、7、及び/又は9シグナルの活性化に起因する疾患、例えば、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎等の自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症等の予防及び/又は治療剤の製造のための、前記一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の使用に関する。
【0032】
また、本発明は、前記一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物の有効量を患者に投与することを特徴とする、TLR3、7、及び/又は9シグナルの活性化に起因する疾患、例えば、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎等の自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症等の予防及び/又は治療方法に関する。
【発明の効果】
【0033】
本発明のTLR3、7、及び/又は9阻害剤の有効成分である、一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎等の自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症等の予防及び/又は治療剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明における用語の定義は以下のとおりである。
【0035】
本明細書で使用するとき、「5−7員飽和含窒素複素環基」とは、隣接する環員間で多重結合を有さず、1個以上の窒素原子環員を含有し、残りの環員が炭素原子である単環の5−7員の飽和環状基を示す。具体的には、例えば、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼピン、ピペラジン、N−メチルピペラジン基等が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用するとき、「5−7員部分飽和含窒素複素環基」とは、隣接する環員間で1以上の多重結合を有するが芳香環ではなく、1個以上の窒素原子環員を含有し、残りの環員が炭素原子である単環の5−7員の部分飽和環状基を示す。具体的には、例えば、アゼチン、ピロリン、ピペリデイン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピラジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロアゼピン基等が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用するとき、「C6-10芳香環基」とは、炭素数6〜10の環員がすべて炭素原子である芳香族基を意味する。具体的には、例えば、フェニル基、アズレニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用するとき、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0039】
本明細書中で使用するとき、「アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を意味する。「アルキル基」は、好ましくは「C1-10アルキル基」、より好ましくは「C1-6アルキル基」、さらにより好ましくは「C1-3アルキル基」である。ここで、「C1-10アルキル基」は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜10の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。「C1-6アルキル基」は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、2−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。「C1-3アルキル基」は、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜3の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0040】
本明細書で使用するとき、「アルキルオキシ基」は、好ましくは「C1-10アルキルオキシ基」、より好ましくは「C1-6アルキルオキシ基」、さらにより好ましくは「C1-3アルキルオキシ基」である。ここで、「アルキルオキシ基」における「アルキル」部分は、上記で定義したものであってもよい。具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
【0041】
本明細書で使用するとき、「C1-6アルキレン基」とは、2価の直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜6の飽和炭化水素基を意味する。具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、t−ブチレン基、n−ペンチレン基、2−メチルブチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基等が挙げられる。
【0042】
一般式(2)、(3)、(4)中、環A、C及びDにおける5−7員飽和含窒素複素環基としては、ピペリジン,ピペラジンが好ましい。
【0043】
一般式(3)、(4)中、環B及びDにおけるC6-10芳香環基としては、フェニル基が好ましい。
【0044】
一般式(4)中、XにおけるC1-6アルキレン基としては、好ましくは「C1-3アルキレン基」であり、メチレン、エチレン基、n−プロピレン基が好ましい。
【0045】
一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体の具体例として、
N1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-N4-(4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キナゾリン-6-イル)スクシンアミド(実施例1)、
N-(3-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)アミノ)-3-オキソプロピル)-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン-4-カルボキサミド(実施例2)、又は
N-(3-([1,4'-ビピペリジン]-1'-イル)プロピル)-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン-4-カルボキサミド(実施例3)
を挙げることができる。
【0046】
本発明の一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物は、本発明のキナゾリン誘導体のみならず、その医薬として許容される塩、それらの各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形を有する物質、及びこれらの物質のプロドラッグとなる物質を包含している。
【0047】
本発明の一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体として許容される塩としては、具体的には、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等)や有機酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)との酸付加塩等が挙げられる。
【0048】
本発明の一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体やその医薬として許容される塩の溶媒和物としては、水和物や各種の溶媒和物(例えば、エタノール等のアルコールとの溶媒和物等)が挙げられる。
【0049】
本発明の一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体は、公知の方法を組み合わせて製造することができる。キナゾリン誘導体の製造方法を下記反応工程図に示すが、製造法はこれに限定されるものではない。また、必要に応じて官能基を保護して各反応を行ってもよい。保護、脱保護条件としては一般に用いられる方法(Protective Groups in Organic Synthesis Third Edition, John Wiley & Sons, Inc.)を参考にして行うことができる。
【0050】
一般式(1)中、R2が式(4)を示し、m=1、n=0を示す時、本発明化合物(1)はキナゾリン誘導体(I)から製造することができる。
【0051】
【化4】

【0052】
[式中、
1、R3、R4、R5、R6、X、Y、Z、C、Dは、前記定義と同じものを示し、X1は塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を示す。]
【0053】
[工程I]一酸化炭素存在下、ハロゲノキナゾリン誘導体(I)とアミン誘導体(II)とのカップリング反応によって、キナゾリン誘導体(1)を製造することができる。使用される金属触媒としては特に制限は無いが、例えば、酢酸パラジウム(II)、パラジウム(0)ジベンジリデンアセトン、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)(クロロホルム)ジパラジウム(0)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等のパラジウム錯体であり、好ましくは、酢酸パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)である。必要に応じて、配位子を添加しても良く、たとえばジフェニルホスフィノフェロセンを添加する。必要に応じて、塩基を添加しても良く、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウム等であり、好ましくはトリエチルアミンである。溶媒としては反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド系溶媒を単独または組合わせて使用することができる。好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン及びそれらの混合溶媒である。反応温度は、0〜200℃、好ましくは60℃〜120℃である。反応時間は、30分間〜48時間、好ましくは1時間〜36時間である。上記反応で用いるハロゲノキナゾリン誘導体(I)は、市販の入手可能なものをそのまま使用するか、或いは、WO2005/007672等に記載の公知の方法により適宜製造できるが、これに限定されるものではない。上記反応で用いるアミン誘導体(II)は、市販の入手可能なものをそのまま使用するか、或いは、公知の方法により適宜製造できるが、これに限定されるものではない。
【0054】
一般式(1)中、R2が式(4)を示し、m=1、n=0を示す時、本発明化合物(1)は次のルートによっても製造することができる。
【0055】
【化5】

【0056】
[式中、
1、R3、R4、R5、R6、X、Y、Z、C、Dは、前記定義と同じものを示し、X1は塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を示す。]
【0057】
[工程II]ハロゲノキナゾリン誘導体(I)をリチオ化し、その後二酸化炭素と反応させることで、キナゾリンカルボン酸誘導体(III)を製造することができる。リチオ化試薬としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド等を用いることができる。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒を単独又は組み合わせて使用することができる。好ましくはテトラヒドロフランである。反応温度は、−100〜30℃、好ましくは−80℃〜0℃である。反応時間は、30分間〜48時間、好ましくは1時間〜20時間である。
【0058】
[工程III] キナゾリンカルボン酸誘導体(III)とアミン誘導体(II)の脱水縮合反応によって、キナゾリン誘導体(1)を製造することができる。脱水縮合反応は、溶媒中塩基の存在下又は非存在下、縮合促進剤の存在下又は非存在下において縮合剤を用いて行うか、カルボン酸を反応性誘導体としたのち縮合を行うことが出来る。溶媒としては特に制限はないが、例えば、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;水等を単独又は組み合わせて使用することができる。塩基としては特に制限はないが、例えば、ピリジン、DMAP(4−(ジメチルアミノ)ピリジン)、コリジン、ルチジン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、DBN(ジアザビシクロノネン)、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルペンチルアミン、トリメチルアミン等の有機塩基、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸アルカリ金属類、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の重炭酸アルカリ金属等を使用することができる。縮合促進剤としては特に制限はないが、DMAP、HOAt(1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、HODhbt(3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン)、HONB(N−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、HOPfp(ペンタフルオロフェノール)、HOPht(ヒドロキシフタルイミド)、HOSu(N−ヒドロキシスクシンイミド)等を使用することができる。縮合剤としては特に制限はないが、DCC(N,N′−ジシクロヘキシルメタンジイミン)、DIPCI(1,3−ジイソプロピルカルボジイミド)、WSCI(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、WSC・HCl(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)、DEPC(ジエチルピロカルボナート)、BOP(ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム)、PyBOP(ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム)、TBTU(O−ベンゾトリアゾリル−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウム)等を使用することができる。反応性誘導体としては特に制限はないが、酸ハロゲン化物、ピバリル酸等との混合酸無水物、若しくはp−ニトロフェニルエステル等を使用することができる。反応温度は、−20〜100℃、好ましくは0〜40℃である。反応時間は、5分〜24時間、好ましくは10分〜12時間である。
【0059】
一般式(1)中、R2が式(4)を示し、m=0、n=1を示す時、本発明化合物(1)はキナゾリン誘導体(I)から製造することができる。
【0060】
【化6】

【0061】
[式中、
1、R3、R4、R5、R6、X、Y、Z、C、Dは、前記定義と同じものを示し、X1は塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を示し、Pはアミンの保護基を示す。]
【0062】
[工程IV]ハロゲノキナゾリン誘導体(I)と保護基を有するアミン誘導体(IV)との反応によって、アミノキナゾリン誘導体(V)を製造することができる。必要に応じて、ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムを加え反応させてもよい。アミン誘導体(IV)としては、市販されているものを用いればよい。例えば、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、4-メトキシベンジルアミン、2,4−ジメトキシベンジルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン等である。反応溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド系溶媒;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。反応温度は、室温〜120℃、好ましくは50℃〜100℃であり、反応時間は、1時間〜3日間、好ましくは3時間〜24時間である。
【0063】
[工程V]アミノキナゾリン誘導体(V)の保護基Pを脱保護することにより、アミノキナゾリン誘導体(VI)を製造することができる。脱保護の方法及び条件は保護基Pの種類によって異なり、例えばベンジル系保護基は接触水素付加により、脱保護することができる。脱保護は有機化学で一般に用いられる方法(Protective Groups in Organic Synthesis Third Edition, John Wiley & Sons, Inc.)を参考にして行うことができる。
【0064】
[工程VI] アミノキナゾリン誘導体(VI)とカルボン酸誘導体(VII)の脱水縮合反応によって、キナゾリン誘導体(1)を製造することができる。この工程は工程IIIと同様にして行うことができる。
【0065】
一般式(1)中、R4が式(4)を示し、m=0、n=1を示す時、本発明化合物(1)はキナゾリン誘導体(IX)から製造することができる。
【0066】
【化7】

【0067】
[式中、
1、R2、R3、R5、R6、X、Y、Z、C、Dは、前記定義と同じものを示す。]
【0068】
[工程VII]キナゾリン誘導体(IX)のニトロ化によって、ニトロキナゾリン誘導体(X)を製造することができる。ニトロ化は硫酸酸性条件下で硝酸もしくは発煙硝酸を作用させることで行うことができる。反応は無溶媒で行うが、必要に応じてクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒や水等を単独又は組み合わせて使用することができる。反応温度は、−50〜150℃、好ましくは−40℃〜50℃である。反応時間は、1時間〜48時間、好ましくは2時間間〜20時間である。上記反応で用いるキナゾリン誘導体(IX)は、市販の入手可能なものをそのまま使用するか、或いは、Synthesis (2009), (16), 2679−2688等に記載の公知の方法により適宜製造できるが、これに限定されるものではない。
【0069】
[工程VIII]ニトロキナゾリン誘導体(X)のニトロ基の還元によって、アミノキナゾリン誘導体(XI)を製造することができる。還元剤としては、例えば、水素、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、塩酸、ヒドラジン等を用いることができ、好ましくは水素である。触媒としては、例えば、パラジウム炭素、ラネーニッケル、塩化ニッケル、スズ、鉄、亜鉛等を用いることができ、好ましくは、パラジウム炭素である。溶媒としては、反応条件に安定なものであれば良く、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒や水等を単独又は組み合わせて使用することができる。好ましくはメタノール、テトラヒドロフランである。反応温度は、一般に0〜100℃、好ましくは0〜40℃である。反応時間は、5分〜1日、好ましくは10分〜12時間である。
【0070】
[工程IX]アミノキナゾリン誘導体(XI)とカルボン酸誘導体(VII)の脱水縮合反応によって、キナゾリン誘導体(1)を製造することができる。この工程は工程IIIと同様にして行うことができる。
【0071】
一般式(1)中、R4が式(4)を示し、m=1、n=0を示す時、本発明化合物(1)はアミノキナゾリン誘導体(XI)から製造することができる。
【0072】
【化8】

【0073】
[式中、
1、R2、R3、R5、R6、X、Y、Z、C、Dは、前記定義と同じものを示し、X2は塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を示す。]
【0074】
[工程X]アミノキナゾリン誘導体(XI)のザンドマイヤー反応によって、ハロゲノキナゾリン誘導体(XII)を製造することができる。ジアゾ化は、酸性条件化、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アミル等を作用させることで行うことができる。酸としては塩酸、臭化水素酸、硫酸等を用いることができる。ジアゾニウム塩にハロゲン化剤を作用させることでハロゲノキナゾリン誘導体(XII)を得ることができる。ハロゲン化剤として、塩化銅、臭化銅、ヨウ化カリウム、ヨウ素等を用いることができる。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば良く、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒や水等を単独又は組み合わせて使用することができる。好ましくは水である。反応温度は、一般に−10〜100℃、好ましくは0〜40℃である。反応時間は、5分〜1日、好ましくは1時間〜12時間である。
【0075】
[工程XI]一酸化炭素存在下、ハロゲノキナゾリン誘導体(XII)とアミン誘導体(II)とのカップリング反応によって、キナゾリン誘導体(1)を製造することができる。この工程は工程Iと同様にして行うことができる。
【0076】
[工程XII]ハロゲノキナゾリン誘導体(XII)をリチオ化し、その後二酸化炭素と反応させることで、キナゾリンカルボン酸誘導体(XIII)を製造することができる。この工程は工程 IIと同様にしておこうなうことができる。
【0077】
[工程XII]キナゾリンカルボン酸誘導体(XII)とアミン誘導体(II)の脱水縮合反応によって、キナゾリン誘導体(1)を製造することができる。この工程は工程 IIIと同様にしておこうなうことができる。
【0078】
前記の各反応で得られた中間体及び目的物は、有機合成化学で常用されている精製法、例えば、ろ過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して必要に応じて単離、精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次反応に供することもできる。
【0079】
さらに、各種の異性体は異性体間の物理化学的性質の差を利用した常法を適用して単離できる。例えば、ラセミ混合物は、例えば、酒石酸等の一般的な光学活性酸とのジアステレオマー塩に導き光学分割する方法、又は、光学活性カラムクロマトグラフィーを用いた方法等の一般的ラセミ分割法により、光学的に純粋な異性体に導くことができる。また、ジアステレオマー混合物は、例えば、分別結晶化又は各種クロマトグラフィー等により分割できる。また、光学活性な化合物は適当な光学活性な原料を用いることにより製造することもできる。
【0080】
本発明のTLR3、7、及び/又は9阻害剤、又は自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症の予防及び/又は治療剤は、一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体、その塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有するものであって、医薬組成物として使用することができる。その場合、本発明の化合物を単独で用いてもよいが、通常は医薬として許容される担体、及び/又は希釈剤を配合して使用される。
【0081】
投与経路は、特に限定されないが、治療目的に応じて適宜選択することができる。例えば、経口剤、注射剤、坐剤、吸入剤等のいずれでもよい。これらの投与形態に適した医薬組成物は、公知の製剤方法を利用することによって製造できる。
【0082】
経口用固形製剤を調製する場合は、一般式(1)で表される化合物に医薬として許容される賦形剤、更に必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法を利用して、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。添加剤は、当該分野で一般的に使用されているものでよい。例えば、賦形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられる。結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。矯味剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0083】
経口用液体製剤を調製する場合は、一般式(1)で表される化合物に、矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法を利用して内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。矯味剤としては上記に挙げられたものでよく、緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム等が、安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
【0084】
注射剤を調製する場合は、一般式(1)で表される化合物にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法を利用して皮下、筋肉及び静脈内注射剤を製造することができる。pH調製剤及び緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA(エデト酸ナトリウム)、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。
【0085】
坐剤を調製する場合は、一般式(1)で表される化合物に公知の坐剤用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセライド等、更に必要に応じて界面活性剤(例えば、ツイーン(登録商標))等を加えた後、常法を利用して製造することができる。
【0086】
上記以外に、常法を利用して適宜好ましい製剤とすることもできる。
【0087】
本発明の一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体の投与量は年齢、体重、症状、投与形態及び投与回数等によって異なるが、通常は成人に対して一般式(1)で表わされる化合物として1日あたり0.1mg〜1000mg、好ましくは1mg〜1000mg、より好ましくは1mg〜500mgを、1回又は数回に分けて経口投与又は非経口投与するのが好ましい。
【実施例】
【0088】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例中で用いられている略号は下記の意味を示す。
s:シングレット(singlet)
d:ダブレット(doublet)
t:トリプレット(triplet)
m:マルチプレット(multiplet)
brs:ブロードシングレット(broad singlet)
J:カップリング定数(coupling constant)
Hz:ヘルツ(Hertz)
CDCl3:重クロロホルム
1H-NMR:プロトン核磁気共鳴
TEA:トリエチルアミン
WSC・HCl:1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド 塩酸塩
HOBt・H2O:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール・一水和物
THF:テトラヒドロフラン
DMF:ジメチルホルムアミド
PLC:分取用薄層クロマトグラフィー
【0089】
実施例1
N1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-N4-(4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キナゾリン-6-イル)スクシンアミドの製造
【0090】
【化9】

【0091】
工程1:
4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-6-ニトロキナゾリンの製造
【0092】
【化10】

【0093】
4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キナゾリン(500 mg, 2.06 mmol)に、-35℃で発煙硝酸(20 mL)を滴下した。適下終了後、同温度で、4時間攪拌した。反応液に氷を加えた後、8N NaOH水溶液を加え、pH12とした。析出物をろ取し、乾燥させ、表題化合物(980 mg, 定量的)を得た。
【0094】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ:2.37 (3H, s), 2.50-2.54 (4H, m), 2.84 (3H, s), 4.05-4.11 (4H, m), 7.54 (1H, d, J = 9.2 Hz), 8.38 (1H, dd, J = 9.2, 2.8 Hz), 8.78 (1H, d, J = 2.8 Hz).
【0095】
工程2:
4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キナゾリン-6-アミンの製造
【0096】
【化11】

【0097】
4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-6-ニトロキナゾリン(980 mg, crude)をメタノール(10 mL)及びTHF(10 mL)に溶解し、10%Pd−C(200 mg)を加えた。系中を水素で置換し、室温で4時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた残渣に水(10 mL)及び8N NaOH水溶液(5 mL)を加え、クロロホルムにて抽出を行った。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮し、表題化合物(523 mg, 98%, 2工程収率)を得た。
【0098】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ:2.36 (3H, s), 2.50-2.54 (4H, m), 2.70 (3H, s), 3.73 (2H, brs), 3.90-3.95 (4H, m), 7.01 (1H, d, J = 2.8 Hz), 7.14 (1H, dd, J = 9.0, 3.0 Hz), 7.47 (1H, d, J = 9.6 Hz).
【0099】
工程3:
N1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-N4-(4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キナゾリン-6-イル)スクシンアミドの製造
4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キナゾリン-6-アミン(100 mg, 0.39 mmol)、4-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)アミノ)-4-オキソブタン酸(136 mg, 0.47 mmol)、WSC・HCl(90 mg, 0.47 mmol)、HOBT・H2O(74 mg, 0.55 mmol)及びTEA(81 mg, 0.8 mmol)をDMF(3 mL)に溶解し、室温で一晩攪拌した。反応液に水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をPLC(クロロホルム:アンモニア飽和メタノール=15:1)を用いて精製し、表題化合物(169 mg, 82%)を淡黄色固体として得た。
【0100】
実施例2
N-(3-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)アミノ)-3-オキソプロピル)-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン-4-カルボキサミドの製造
【0101】
【化12】

【0102】
4-クロロ-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン (30 mg, 75 μmol)のDMF(0.5 mL)溶液に、酢酸パラジウム (3.4 mg, 7.5 μmol)、ジフェニルホスフィノフェロセン(4.2 mg, 7.5 μmol)、トリエチルアミン(22.8 mg, 226 μmol)、3-アミノ-N-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)プロパンアミド (23.6 mg, 90 μmol)を加えた。反応系中を一酸化炭素で置換し、80℃で一日攪拌した。室温に戻し、水を加えて、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をPLC(クロロホルム:アンモニア飽和メタノール=15:1)を用いて精製し、表題化合物(8.3 mg, 17%)を黄色固体として得た。
【0103】
実施例3
N-(3-([1,4'-ビピペリジン]-1'-イル)プロピル)-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン-4-カルボキサミドの製造
【0104】
【化13】

【0105】
4-クロロ-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン (30 mg, 75 μmol)のDMF(0.5 mL)溶液に、酢酸パラジウム (3.4 mg, 7.5 μmol)、ジフェニルホスフィノフェロセン(4.2 mg, 7.5 μmol)、トリエチルアミン(22.8 mg, 226 μmol)、3-([1,4'-ビピペリジン]-1'-イル)プロパン-1-アミン (30.2 mg, 90 μmol)を加えた。反応系中を一酸化炭素で置換し、80℃で一日攪拌した。室温に戻し、水を加えて、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をPLC(クロロホルム:アンモニア飽和メタノール=15:1)を用いて精製し、表題化合物(7.9 mg, 17%)を黄色固体として得た。
【0106】
上記実施例によって得られた化合物を表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
[実施例4]TLR9発現レポーター細胞を用いたTLR9活性化阻害試験
1)TLR9発現レポーター細胞の樹立
ヒトTLR9発現細胞は、ヒト胎児腎臓細胞株であるHEK293にヒトTLR9を発現させた細胞をInvivogen社より購入した(hTLR9/293xL)。hTLR9/293xLは10%ウシ胎仔血清、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM(sigma))を用いて継代培養した。NFκB認識配列の4回繰り返しにホタルルシフェラーゼ遺伝子を連結したpGL4.28(Promega社)をFugene6(Roche社)を用いてリポフェクションにより遺伝子導入した。ハイグロマイシン、ブラストサイジン耐性細胞クローンを選択し、TLR9発現レポーター細胞とした(hTLR9 NFκB−luc/293xL)。
2)TLR9活性化阻害試験
hTLR9 NFκB−luc/293xLを96ウェルホワイトマイクロタイタープレートに1.0×104/80μLで播き、CO2インキュベータ中で37℃、1晩培養した。DMEMにより希釈した被検化合物(10μL)を添加し、終濃度0.01,0.03,0.1,0.3,1μMとした。1時間後にTLR9リガンドであるCpG−B DNA(ODN2006)(Invivogen社)を終濃度1μMとなるように添加した(10μL)。合計100μLとして4時間CO2インキュベータ中でインキュベート後にルシフェラーゼ活性をTLR9活性として測定した。ルシフェラーゼ活性はBright Glo(Promega社)を60μL添加し、マルチマイクロプレートリーダーARVO(Perkin Elmer社)により発光量を測定した。被検化合物を添加していない場合のルシフェラーゼ活性を100%として、各被検化合物の50%阻害濃度(IC50値)を計算した。
【0109】
3)結果
化合物1は0.41μM、化合物2は0.40μM、化合物3は0.11μMのIC50値を示した。以上より、本発明の化合物は強いTLR9阻害作用を有していることが確認された。したがって、本発明の一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体は、TLR9阻害剤として、TLR9シグナルの活性化に関連する疾患、例えば、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎等の自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症の予防剤や治療剤の有効成分として有用であることがわかった。
【0110】
[実施例5]TLR7発現レポーター細胞を用いたTLR7活性化阻害試験
1)TLR7発現レポーター細胞の樹立
ヒトTLR7発現細胞は、ヒト胎児腎臓細胞株であるHEK293にヒトTLR7を発現させた細胞をInvivogen社より購入した(hTLR7/293xL)。hTLR7/293xLは10%ウシ胎仔血清、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM(sigma))を用いて継代培養した。NFκB認識配列の4回繰り返しにホタルルシフェラーゼ遺伝子を連結したpGL4.28(Promega)をFugene6(Roche)を用いてリポフェクションにより遺伝子導入した。ハイグロマイシン、ブラストサイジン耐性細胞クローンを選択し、TLR7発現レポーター細胞とした(hTLR7 NFκB−luc/293xL)。
2)TLR7活性化阻害試験
hTLR7 NFκB−luc/293xLを96ウェルホワイトマイクロタイタープレートに1.0×104/80μLで播き、CO2インキュベータ中で37℃、1晩培養した。DMEMにより希釈した被検化合物(10μL)を添加し、終濃度0.03,0.1,0.3,1,3,10μMとした。1時間後にTLR7リガンドであるImiquimod(Invivogen)を終濃度10μMとなるように添加した(10μL)。合計100μLとして4時間CO2インキュベータ中でインキュベート後にルシフェラーゼ活性をTLR7活性として測定した。ルシフェラーゼ活性はBright Glo(Promega)を60μL添加し、マルチマイクロプレートリーダーARVO(Perkin Elmer)により発光量を測定した。被検化合物を添加していない場合のルシフェラーゼ活性を100%として、各被検化合物の50%阻害濃度(IC50値)を計算した。
【0111】
3)結果
化合物1は3.07μM、化合物2は0.45μM、化合物3は0.17μMのIC50値を示した。以上より、本発明の化合物は強いTLR7阻害作用を有していることが確認された。したがって、本発明の一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体は、TLR7阻害剤として、TLR7シグナルの活性化に関連する疾患、例えば、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、多発性硬化症(MS)、炎症性腸疾患(IBD)、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群、血管炎等の自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症の予防剤や治療剤の有効成分として有用であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、一般式(1)で表されるキナゾリン誘導体若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物が、優れたTLR3、7、及び/又は9阻害作用を有していることを初めて見出し、自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症の予防及び/又は治療剤を提供するものである。本発明は、自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病(GvHD)及び敗血症に起因する心筋症の予防及び/又は治療剤を提供し、製薬工業において有用であり、産業上の利用可能性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1):
【化1】

[式中、
1は、次式(2)又は(3):
【化2】

{式中、
環Aは、5−7員飽和含窒素複素環基又は5−7員部分飽和含窒素複素環基を示し、ここで環Aは、ハロゲン原子、C1-10アルキル基、水酸基及びC1-10アルキルオキシ基からなる群より選択される置換基を有してもよく、
環Bは、C6-10芳香環基を示す}
を示し、
2及びR4は、いずれか一方が式(4):
【化3】

{式中、
環Cは、前記環Aで示されたものと同一であり、
環Dは、前記環Aで示されたもの又は前記環Bで示されたものと同一であり、
Xは、C1-6アルキレン基を示し、
Yは、単結合、−NHC(O)−、又は−C(O)NH−を示し、
Zは、単結合又はC1-6アルキレン基を示し、
m及びnは、0又は1を示し、但し、m+n=1を満たす}
を示し、
2及びR4のもう一方は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、C1-10アルキル基又はC1-10アルキルオキシ基を示し、
3、R5、R6は、同一又は異なってもよく、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、C1-10アルキル基又はC1-10アルキルオキシ基を示す]
で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物が、N1-(1-ベンジルピペリジン-4-イル)-N4-(4-メチル-2-(4-メチルピペラジン-1-イル)キナゾリン-6-イル)スクシンアミド、
N-(3-((1-ベンジルピペリジン-4-イル)アミノ)-3-オキソプロピル)-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン-4-カルボキサミド、及び
N-(3-([1,4'-ビピペリジン]-1'-イル)プロピル)-6,7-ジメトキシ-2-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)キナゾリン-4-カルボキサミド
から選ばれる少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載の化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、TLR3、7及び/又は9阻害剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分とする、自己免疫疾患、炎症、アレルギー、喘息、移植片拒絶、移植片対宿主病又は敗血症に起因する心筋症の予防及び/又は治療剤。
【請求項5】
自己免疫疾患が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、多発性硬化症、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、ベーチェット症候群又は血管炎である、請求項4に記載の予防及び/又は治療剤。

【公開番号】特開2013−91624(P2013−91624A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235425(P2011−235425)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】