説明

TNFαを阻害する安定かつ可溶性の抗体

本発明は、安定性、溶解性、インビトロおよびインビボでのTNF結合、ならびに低免疫原性に対して最適化されている特定の軽鎖配列および重鎖配列を含む、TNFに特異的な、とりわけ安定かつ可溶性のscFv抗体およびFabフラグメントに関する。前記抗体は、TNF媒介性障害の診断および/または処置のためにデザインされている。本発明の組換え抗体を発現するための核酸、ベクター、および宿主細胞、これらを単離するための方法、ならびに医薬における前記抗体の使用も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2008年6月25日のUS61/075,640および2008年6月26日のUS61/075,956の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
腫瘍壊死因子アルファ(TNFα、カケクチンとしても公知である)は、内毒素または他の刺激に反応して、単球およびマクロファージを含めた多数の細胞型によって産生される、天然に存在する哺乳動物のサイトカインである。TNFαは、炎症反応、免疫反応、および病態生理学的反応の主要なメディエーターである(非特許文献1)。
【0003】
可溶性TNFαは、前駆の膜貫通型タンパク質の切断によって形成され(非特許文献2)、分泌された17kDaのポリペプチドは可溶性のホモトリマー複合体へと集合する(非特許文献3;TNFAの総説には非特許文献4を参照されたい;非特許文献5)。次いで、これらの複合体は、様々な細胞上に見られる受容体に結合する。結合により、(i)インターロイキンIL−6、IL−8、およびIL−1などの他のプロ炎症性(pro−inflammatory)サイトカインの放出、(ii)マトリックスメタロプロテイナーゼの放出、ならびに(iii)内皮接着分子の発現の上方制御を含めた一連のプロ炎症効果がもたらされ、白血球を血管外組織中に引きつけることによって炎症および免疫のカスケードがさらに増幅される。
【0004】
TNFαレベルの上昇には多数の障害が関連しており、その多くは医学的に極めて重要である。TNFαは、慢性関節リウマチ(RA)、クローン病および潰瘍性大腸炎を含めた炎症性腸障害、敗血症、うっ血性心不全、気管支喘息、ならびに多発性硬化症などの慢性疾患を含めた数々のヒト疾患において上方制御されることが示されている。ヒトTNFαについてトランスジェニックであるマウスは、高レベルのTNFαを恒常的に生成し、RAに類似する自発性、破壊性の多発性関節炎を発症する(非特許文献6)。それゆえTNFαはプロ炎症性サイトカインと呼ばれている。
【0005】
TNFαは、今やRAの病因における鍵として十分に確立されており、RAは、多関節性の関節の炎症および破壊を特徴とする、慢性、進行性、消耗性の疾患であり、発熱および倦怠感および疲労の全身症状がある。RAはまた、慢性の滑膜炎をもたらし、関節軟骨および骨の破壊に頻繁に進行する。RAに罹患している患者の滑液および末梢血の両方において、TNFαレベルの上昇が見られる。RAに罹患している患者にTNFα遮断薬を投与すると、これらは炎症を低減し、症状を改善し、関節の損傷を遅らせる(非特許文献7)。
【0006】
生理学的に、TNFαは特定の感染からの保護にも関連する(非特許文献8)。TNFαは、グラム陰性細菌のリポ多糖によって活性化されたマクロファージによって放出される。そのため、TNFαは、細菌性敗血症に付随する内毒素ショックの発症および病原に関与する中心的に重要な内因性メディエーターであると思われる(非特許文献9;非特許文献10;Simpsonら、(1989年)Crit.Care Clin.、5巻、27〜47頁;Waageら、(1987年)、Lancet、1巻、355〜357頁;Hammerle.ら、(1989年)Second Vienna Shock Forum、715〜718頁;Debets.ら、(1989年)、Crit. Care Med.、17巻、489〜497頁;Calandra.ら、(1990年)、J.Infect.Dis.、161巻、982〜987頁;Revhaugら、(1988)、Arch.Surg.、123巻、162〜170頁)。
【0007】
TNFαは、他の器官系同様、中枢神経系において、とりわけ、多発性硬化症、ギランバレー症候群、および重症筋無力症を含めた神経系の炎症性障害および自己免疫障害において、ならびにアルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病を含めた神経系の変性障害において重要な役割を果たすことも示された。TNFαはまた、視神経炎、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、皮膚筋炎、筋萎縮性側索硬化症、および筋ジストロフィーを含めた網膜および筋肉の関連系の障害、ならびに外傷性脳損傷、急性脊髄損傷、および脳卒中を含めた神経系に対する損傷に関与する。
【0008】
肝炎は、他の誘因の中でもエプスタインバー、サイトメガロウイルス、およびA〜E型肝炎ウイルスを含めたウイルス感染によって引き起こされ得る別のTNFα関連炎症性障害である。肝炎は、門脈および小葉の領域において肝臓の急性炎症を引き起こし、線維症および腫瘍の進行が続く。TNFαはがんにおける悪液質も媒介することがあり、悪液質はほとんどのがんの病的状態および死亡をもたらす(Tisdale M. J.(2004年)、Langenbecks Arch Surg.、389巻、299〜305頁)。
【0009】
炎症、細胞免疫反応、および多くの疾患の病理においてTNFαが果たす重要な役割は、TNFαのアンタゴニストの探索を導いている。TNFα媒介性疾患の処置用にデザインされた1クラスのTNFαアンタゴニストは、TNFαに特異的に結合し、それによってその機能を阻止する抗体または抗体フラグメントである。抗TNFα抗体の使用によって、TNFαの遮断はTNFαに起因する作用を取り消し得る(IL−1、GM−CSF、IL−6、IL−8、接着分子、および組織破壊における低減を含む)ことが示された(Feldmannら(1997年)、Adv. Immunol.、1997巻、283〜350頁)。最近市販されるようになったTNFαの特異的なインヒビターの中で、TNFαに対する、モノクローナルの、キメラのマウス−ヒト抗体(インフリキシマブ(infliximab)、RemicadeTM;Centocor Corporation/Johnson & Johnson)は、RAおよびクローン病の処置における臨床的効能を実証している。市販されているTNFαインヒビターは全て、ボーラス注射として、週1回、またはそれより長い間隔において静脈内投与または皮下投与され、高い開始濃度(これは次回の注射までに着実に低減する)をもたらす。これらの分布容積は限られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Grell, M.ら、Cell、1995年、83巻、793〜802頁
【非特許文献2】Krieglerら、Cell、1988年、53巻、45〜53頁
【非特許文献3】Smithら、J.Biol. Chem.、1987年、262巻、6951〜6954頁
【非特許文献4】Butlerら、Nature、1986年、320巻、584頁
【非特許文献5】Old、Science、1986年、230巻、630頁
【非特許文献6】Kefferら、EMBO J、1991年、10巻、4025〜4031頁
【非特許文献7】McKownら、Arthritis Rheum、1999年、42巻、1204〜1208頁
【非特許文献8】Ceramiら、Immunol. Today、1988年、9巻、28頁
【非特許文献9】Michieら、Br.J.Surg.、1989年、76巻、670〜671頁
【非特許文献10】Debets.ら、Second Vienna Shock Forum、1989年、463〜466頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような進歩にもかかわらず、RAなどのTNFα関連障害を処置するための、新しく、有効な形態の抗体または他のイムノバインダーが依然として必要とされている。とりわけ、より柔軟な投与および処方を可能にし、組織浸透を改善し、それによって分布容積を増大させる、関節炎および他のTNFα媒介性障害の有効かつ継続的な処置に最適な機能特性を有するイムノバインダーが緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の概要)
したがって、本発明の全般的目的は、インビトロおよびインビボでTNFαに特異的に結合する、安定かつ可溶性の抗体または他のイムノバインダーを提供することである。好ましい実施形態において、前記イムノバインダーはscFv抗体またはFabフラグメントである。
【0013】
本発明は、安定性、可溶性、インビトロおよびインビボでのTNFαの結合、ならびに低免疫原性に対して最適化されており、特定の軽鎖配列および重鎖配列を含む、TNFαに特異的な、安定かつ可溶性のscFv抗体およびFabフラグメントを提供する。前記抗体は、TNFα媒介性障害の診断および/または処置のためにデザインされている。本発明の組換え抗体を発現するための核酸、ベクター、および宿主細胞、これらを単離するための方法、ならびに医薬における前記抗体の使用も開示する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1は、TNFαへの結合(Biacoreアッセイ)、およびその活性の中和(L929アッセイ)における、44個の抗TNF RabMabハイブリドーマからの上清の相対的能力を示す図である。
【図1B】図1は、TNFαへの結合(Biacoreアッセイ)、およびその活性の中和(L929アッセイ)における、44個の抗TNF RabMabハイブリドーマからの上清の相対的能力を示す図である。
【図2】図2は、TNFαへの選択的結合における、20個の抗TNF RabMab単鎖抗体および7個のヒト化抗TNF単鎖抗体の能力を示す図である(ELISA分泌アッセイ、このアッセイでは細菌培養からの上清を用い、これは、単鎖抗体の含有量について正規化しなかったことに留意されたい)。
【図3a】図3は、ヒトTNFαに対するEP43maxの結合動態(図3A)およびEP34maxの結合動態(図3B)を示す図である。
【図3b】図3は、ヒトTNFαに対するEP43maxの結合動態(図3A)およびEP34maxの結合動態(図3B)を示す図である。
【図4】図4は、EP43maxの効力(白四角)、ESBA105の効力(黒丸)を示す図である。EP43maxのEC50は1ng/mlであり、ESBA105のEC50は6.5ng/mlである。
【図5】図5は、熱アンフォールディングアッセイ(FTIR)における、EP43max、EP6max、およびEP19maxの成績を示す図である。
【図6】図6は、FTIR分析によって比較した、EP43maxおよびその誘導体の熱変性曲線を示す図である。
【図7】図7は、熱ストレス試験におけるEP43max(図7A)およびそのEP43minmax改変体(図7B)の比較を示す図である。
【図8】図8は、ウサギモノクローナル抗体からの抗原結合性部位を、高度に可溶性かつ安定なヒト抗体フレームワーク中に融合させるのに本明細書で用いられるCDR H1の定義を示す図である。
【図9】図9aは、組換えヒトTNFα1000pg/mlの細胞毒性活性を阻止する、Epi34maxおよびアダリムマブ(Adalimumab)の効力を示す図である(マウスL929細胞)。Ep34maxおよびアダリムマブに対するIC50はそれぞれ1.03ng/mlおよび8.46ng/mlであると決定された。図9bは、組換えヒトTNFα10pg/mlの細胞毒性活性を阻止する、アダリムマブおよびEp34maxの効力を示す図である(ヒトKym−1細胞)。インフリキシマブおよびEp34max(791)に対するIC50はそれぞれ66.2ng/mlおよび0.69ng/mlであると決定された。
【図10】図10aは、組換えヒトTNFα1000pg/mlの細胞毒性活性を阻止する、Epi34maxおよびインフリキシマブの効力を示す図である(マウスL929細胞)。Ep34maxおよびインフリキシマブに対するIC50はそれぞれ1.04ng/mlおよび13.9ng/mであると決定された。図10bは、組換えヒトTNFα10pg/mlの細胞毒性活性を阻止する、インフリキシマブおよびEp34max(791)の効力を示す図である(ヒトKym−1細胞)。インフリキシマブおよびEp34maxに対するIC50はそれぞれ14.8ng/mlおよび0.63ng/mlであると決定された。
【図11】図11は、ESBA903と比較したEp34maxのアミドIバンド領域における、フーリエ変換赤外線スペクトルからフィットさせたBioATR FT−IR熱変性プロファイルを示す図である。ESBA903のV50は71.12であり、EP34maxでは71.50であり、ESBA903の勾配は2.481、EP34maxでは2.540であった。
【図12】図12は、Ep34maxおよびESBA903 scFv抗体のDSC熱アンフォールディング曲線を示す図である。EP34maxのTmは78.11℃であり、ESBA903に対するTmは76.19℃である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明の全般的目的は、インビトロおよびインビボでTNFαに特異的に結合する、安定かつ可溶性のイムノバインダーを提供することである。好ましい一実施形態において、前記抗体誘導体は、scFv抗体またはFabフラグメントである。本発明のイムノバインダーは軽鎖および/または重鎖を含んでいるのが好ましい。
【0016】
(定義)
本発明がより容易に理解され得るために、ある種の用語を以下の通りに定義する。さらなる定義を、詳細な説明を通して記載する。
【0017】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、「免疫グロブリン」の同義語である。本発明による抗体は、免疫グロブリン全体、または、単一可変ドメインであるFv(Skerra A.およびPluckthun, A.(1988年)Science、240巻、1038〜41頁)、scFv(Bird, R. E.ら(1988年)Science、242巻423〜26頁;Huston, J. S.ら(1988年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85巻、5879〜83頁)、Fab、(Fab’)2、もしくは当業者には周知の他のフラグメントなどの、免疫グロブリンの可変ドメインを少なくとも1つ含む、免疫グロブリンのフラグメントであってよい。
【0018】
「CDR」という用語は、抗原の結合に主に寄与する抗体の可変ドメイン内の6つの超可変領域の1つを意味する。6つのCDRに対して最も一般的に用いられる定義の1つは、Kabat E.A.ら、(1991年)Sequences of proteins of immunological interest.、NIH Publication、91〜3242頁によって提供されたものである。本明細書で用いられるように、CDRのKabatの定義は、軽鎖可変ドメインのCDR1、CDR2、およびCDR3(CDR L1、CDR L2、CDR L3、またはL1、L2、L3)ならびに重鎖可変ドメインのCDR2およびCDR3(CDR H2、CDR H3、またはH2、H3)に対してのみあてはまる。しかし、本明細書で用いられる場合、重鎖可変ドメインのCDR1(CDR H1またはH1)は以下の残基によって定義される(Kabatナンバリング):位置26で始まり位置36の前で終了する残基。これは、基本的には、KabatおよびChotiaにより異なって定義されるCDR H1の融合物である(説明のために図8も参照されたい)。
【0019】
本明細書で用いられる「抗体フレームワーク」という用語は、この可変ドメインの抗原結合性ループ(CDR)に対する骨格として働く、VLまたはVHいずれかの可変ドメインの部分を意味する。本質的に、これはCDRのない可変ドメインである。
【0020】
「単鎖抗体」、「単鎖Fv」、または「scFv」という用語は、リンカーによって連結されている抗体重鎖可変ドメイン(または領域;V)および抗体軽鎖可変ドメイン(または領域;V)を含む分子を意味するものとされる。このようなscFv分子は、一般構造:NH−V−リンカー−V−COOHまたはNH−V−リンカー−V−COOHを有することができる。
【0021】
「イムノバインダー」という用語は、抗体の抗原結合部位の全てまたは一部分(例えば、重鎖および/または軽鎖の可変ドメインの全てまたは一部分)を含む分子を意味し、そのためイムノバインダーは、標的の抗原を特異的に認識する。イムノバインダーの非限定的な例としては、全長の免疫グロブリン分子およびscFv、および、これらに限定されないが、(i)V、V、C、およびC1ドメインからなる1価のフラグメントであるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結されている2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメントであるF(ab’)フラグメント、(iii)Fab’フラグメント、(iv)VおよびC1ドメインからなるFdフラグメント、(v)抗体の単腕のVおよびVドメインからなるFvフラグメント、(vi)VもしくはVドメインからなるDabフラグメント、ラクダ抗体、またはサメ抗体(例えば、shark Ig−NARs Nanobodies(登録商標))などの単一のドメインの抗体、ならびに(vii)可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含む重鎖領域であるナノボディ、を含む抗体フラグメントが挙げられる。
【0022】
抗体の重鎖および軽鎖の可変領域におけるアミノ酸残基の位置を同定するのに本明細書で用いられるナンバリングシステムは、A. Honegger、J.Mol.Biol.、309巻(2001年)657〜670頁によって定義されるものに相当する(AHoシステム)。AHoシステムとKabatら(Kabat, E. A.ら(1991年)、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication、第91〜3242)によって定義される最も一般的に用いられているシステムとの間の変換表は、A.Honegger、J. Mol. Biol.、309巻(2001年)、657〜670頁にもたらされる。
【0023】
「エピトープ」または「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリンまたは抗体が特異的に結合する抗原(例えば、TNF)上の部位を意味する。エピトープは、典型的には、独特の空間的な立体配置における、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のアミノ酸を含む。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、66巻、G. E. Morris編集(1996年)を参照されたい。
【0024】
「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」、および「特異的に結合する」という用語は、抗体が所定の抗原上のエピトープに結合することを意味する。典型的には、抗体は、約10−8M、約10−9M、もしくは約10−10M未満、またはそれよりさらに低いなどの、約10−7未満の親和性(K)で結合する。
【0025】
「K」という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離平衡定数を意味する。典型的には、本発明の抗体は、例えば、BIACORE機器において表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いて決定するとき、約10−8M、約10−9M、もしくは約10−10M未満、またはそれよりさらに低いなどの、約10−7未満の解離平衡定数(K)でTNFに結合する。
【0026】
本明細書で用いられる「同一性」は、2つのポリペプチド間、分子間、または2つの核酸間でマッチする配列を意味する。比較された2つの配列の両方における位置が同じ塩基、または同じアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合(例えば、各々の2つのDNA分子におけるある位置がアデニンによって占められている場合、または各々の2つのポリペプチドにおけるある位置がリジンによって占められている場合)、それぞれの分子はその位置で同一である。2つの配列間の「パーセント同一性」は、2つの配列が共有するマッチする位置(matching position)数を、比較する位置数によって除して100をかけた関数である。例えば、2つの配列における10個の位置のうち6個がマッチした場合、この2つの配列は60%の同一性を有する。一例として、DNA配列CTGACTとCAGGTTとは50%の同一性を共有する(全部で6個の位置のうち3個がマッチしている)。一般的に、2つの配列を、最大の同一性をもたらすように整列させた場合に比較が行われる。このようなアラインメントは、例えば、Alignプログラム(DNAstar,Inc.)などのコンピュータプログラムによって便利に実行される、Needlemanら、(1970年)J. Mol. Biol.、48巻、443〜453頁の方法を用いて提供され得る。2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、PAM120ウェイト残基表、ギャップレングスペナルティ12、およびギャップペナルティ4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み入れられたE. MeyersおよびW. Millerのアルゴリズム(Comput. Appl. Biosci.、4巻11〜17頁(1988年))を用いてやはり決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、およびギャップウェイト16、14、12、10、8、6、または4、およびレングスウェイト1、2、3、4、5、または6を用いて、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comにて入手可能)においてGAPプログラム中に組み入れられた、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol.、48巻、444〜453頁(1970年))のアルゴリズムを用いて決定され得る。
【0027】
「類似の」配列は、整列した場合に、同一および類似のアミノ酸残基を共有する配列であり、この場合、類似の残基は、整列した参照配列における対応するアミノ酸残基に対する保存的置換である。この点において、参照配列における残基の「保存的置換」は、対応する参照の残基に物理的または機能的に類似する残基、例えば、類似のサイズ、形状、電荷、化学的特性(共有結合または水素結合を形成する能力などを含む)を有する残基による置換である。したがって、「保存的置換改変」配列は、1つまたは複数の保存的置換が存在する点で、参照配列または野生型の配列とは異なるものである。2つの配列間の「パーセント類似性」は、2つの配列が共有するマッチする残基または保存的置換を含む位置の数を、比較する位置の数によって除して100をかけた関数である。例えば、2つの配列における10個の位置のうち6個がマッチし、10個の位置のうち2個が保存的置換を含んでいる場合、この2つの配列は80%ポジティブな類似性を有する。
【0028】
本明細書で用いられる「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合性の特徴にネガティブな影響を及ぼさず、またはそれを変更しないアミノ酸の改変を意味するものとされる。このような保存的配列改変には、ヌクレオチドおよびアミノ酸の置換、付加、および欠失が含まれる。例えば、改変は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介性の変異誘発など、当該分野で公知の標準技術によって導入されてよい。アミノ酸の保存的置換には、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものが含まれる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、無極性の側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝した側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、ヒト抗VEGF抗体における予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同一の側鎖のファミリーからの別のアミノ酸残基で置換される。抗原結合性を除去しない、ヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換を同定する方法は当該分野において周知である(例えば、Brummellら、Biochem.、32巻、1180〜1187頁(1993年);Kobayashiら、Protein Eng.、12巻(10):879〜884頁(1999年);およびBurksら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、94巻、412〜417頁(1997年)を参照されたい)。
【0029】
本明細書で用いられる「アミノ酸コンセンサス配列」は、少なくとも2つ、好ましくはそれを超える整列しているアミノ酸配列のマトリックスを用い、各位置の最も高頻度のアミノ酸残基を決定することが可能であるように、アラインメントにおけるギャップを可能にすることで産生することができるアミノ酸配列を意味する。コンセンサス配列は、各位置で最も高頻度に現れるアミノ酸を含む配列である。2つまたはそれを超えるアミノ酸が単一の位置で等しく現れる場合は、コンセンサス配列にはこれらのアミノ酸の両方または全てが含まれる。
【0030】
タンパク質のアミノ酸配列は、様々なレベルで分析することができる。例えば、保存または変動性は、単一残基レベルで、複数残基レベルで、ギャップを有する複数の残基などで表されてよい。残基は、同一の残基の保存を示すことがあり、またはクラスレベルで保存されることがある。アミノ酸のクラスの例としては、極性無電荷R群(セリン、スレオニン、アスパラギン、およびグルタミン)、正電荷R群(リジン、アルギニン、およびヒスチジン)、負電荷R群(グルタミン酸、およびアスパラギン酸)、疎水性R群(アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、バリン、およびチロシン)、ならびに特別なアミノ酸(システイン、グリシン、およびプロリン)が挙げられる。他のクラスは当業者には公知であり、構造決定または置換可能性を評価するための他のデータを用いて定義し得る。この意味において、置換可能なアミノ酸は、その位置で、置換され得、機能的保存を維持し得る、任意のアミノ酸を意味し得る。
【0031】
しかし、同じクラスのアミノ酸は、その生物物理学的特性によってある程度変動することがあることが理解される。例えば、ある種の疎水性R群(例えば、アラニン、セリン、またはスレオニン)は、他の疎水性R群(例えば、バリンまたはロイシン)よりも親水性である(すなわち、親水性が高いか、または疎水性が低い)ことが理解される。相対的な親水性または疎水性は、当該分野で認められている方法を用いて決定することができる(例えば、Roseら、Science、229巻、834〜838頁(1985年)、およびCornetteら、J. Mol. Biol.、195巻、659〜685頁(1987年)を参照されたい)。
【0032】
本明細書で用いられる通り、1つのアミノ酸配列(例えば、最初のVまたはVの配列)が1つまたは複数のさらなるアミノ酸配列(例えば、データベースにおける1つまたは複数のVHまたはVLの配列)と整列する場合、1つの配列(例えば、最初のVまたはVの配列)におけるアミノ酸の位置は、上記の1つまたは複数のさらなるアミノ酸配列における「対応する位置」と比較されてよい。本明細書で用いられる「対応する位置」は、配列を最適に整列した場合の、すなわち、最高のパーセント同一性またはパーセント類似性を達成するように配列を整列した場合の、比較される(1つまたは複数の)配列における等しい位置を意味する。
【0033】
本明細書で用いられる「キメラの」イムノバインダーは、特定の種に由来するか、または特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に同一かまたは相同である、重鎖および/または軽鎖の部分を有し、一方(1つまたは複数の)鎖の残りは、別の種に由来するか、または別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体およびそのような抗体のフラグメントにおける対応する配列に同一かまたは相同である。本明細書で用いられるヒト化抗体は、キメラ抗体のサブセットである。
【0034】
本明細書で用いられる「ヒト化抗体」は、外来の抗原に対する免疫反応を回避するために組換えDNA技術を用いて合成されたイムノバインダーである。ヒト化は、外因性供給源のモノクローナル抗体の免疫原性を低減するために十分に確立されている技術である。ヒト化抗体は、ヒト化重鎖可変領域、ヒト化軽鎖可変領域、および完全ヒト定常ドメインからなる。可変領域のヒト化は、アクセプターフレームワークの選択、典型的にはヒトアクセプターフレームワークの選択、可変ドメインアクセプターフレームワーク中に挿入すべきドナーのイムノバインダーからのCDRの程度、およびドナーのフレームワークからアクセプターフレームワーク中への残基の置換に関連する。CDRをヒトアクセプターフレームワーク中に融合させるための一般的方法は、その全文が参照によって本明細書に援用されるWinterによる米国特許第5,225,539号によって開示されている。その教示が参照によってその全文において援用される米国特許第6,407,213号は、ドナーのイムノバインダーからの置換が好ましいフレームワークの数々のアミノ酸位置を開示している。
【0035】
本明細書で用いられる「機能特性」という用語は、例えば、ポリペプチドの製造上の特性または治療効能を改善するために、改善(例えば、従来のポリペプチドに比べて)が望ましく、かつ/または当業者にとって有利であるポリペプチド(例えば、イムノバインダー)の特性である。一実施形態において、機能特性は改善された安定性(例えば、熱安定性)である。別の一実施形態において、機能特性は改善された溶解性(例えば、細胞性条件下の)である。さらに別の一実施形態において、機能特性は非凝集性である。なお別の一実施形態において、機能特性は、(例えば、原核細胞における)発現における改善である。さらに別の一実施形態において、機能特性は、封入体精製プロセス後のリフォールディング収率の改善である。ある実施形態において、機能特性は抗原結合親和性における改善ではない。
【0036】
「核酸分子」という用語は、DNA分子およびRNA分子を意味する。核酸分子は一本鎖でも、または二本鎖でもよいが、二本鎖DNAが好ましい。核酸は、別の核酸配列と機能的関係において配置された場合、「作動可能に連結して」いる。例えば、プロモーターまたはエンハンサーがコード配列の転写に影響を及ぼす場合、その配列に作動可能に連結している。
【0037】
「ベクター」という用語は、連結している別の核酸を運搬することができる核酸分子を意味する。ベクターの1タイプが「プラスミド」であり、これはその中にさらなるDNAセグメントをライゲーション(ligate)することができる環状の二本鎖DNAのループを意味する。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノム中にライゲーションすることができる。ある種のベクターは、導入される宿主細胞において、自律的に複製することできる(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター、およびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)を、宿主細胞中への導入に際し宿主細胞のゲノム中に組み込むことができ、それによって、それらのベクターは宿主のゲノムと一緒に複製される。
【0038】
「宿主細胞」という用語は、その中に発現ベクターが導入されている細胞を意味する。宿主細胞としては、細菌細胞、微生物細胞、植物細胞、または動物細胞が挙げられ得る。形質転換を受けやすい細菌としては、Escherichia coliまたはサルモネラ属の菌株などの腸内細菌科のメンバー、Bacillus subtilisなどのバチルス属、肺炎球菌、連鎖球菌およびHaemophilus influenzaeが挙げられる。適切な微生物としては、Saccharomyces cerevisiaeおよびPichia pastorisが挙げられる。適切な動物宿主細胞系としては、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞系)およびNS0細胞が挙げられる。
【0039】
「処置する(treat)」、「処置する(treating)」、および「処置(treatment)」という用語は、本明細書に記載する治療的手段または予防的手段を意味する。「処置(treatment)」の方法は、障害または再発性の障害の1つまたは複数の症状を予防、治癒、遅延、症状の重症度の低減、または回復させるために、あるいは処置の非存在下で予想されるものを上回って被験体の生存を延長するために、処置を必要とする被験体、例えば、TNFα媒介性障害を有する被験体またはそのような障害を最終的に得る可能性がある被験体に対する本発明の抗体の投与を使用する。
【0040】
「TNF媒介性障害」または「TNF媒介性疾患」という用語は、症状または疾患状態の発症、進行、または持続がTNFの関与を必要とする任意の障害を意味する。例示的TNF媒介性障害としては、それだけには限定されないが、炎症の慢性状態および/または自己免疫状態全般、免疫媒介性炎症性障害全般、炎症性CNS疾患、眼、関節、皮膚、粘膜、中枢神経系、消化管、尿路、または肺を冒す炎症性疾患、ブドウ膜炎の状態全般、網膜炎、HLA−B27+ブドウ膜炎、ベーチェット病、眼乾燥症候群、緑内障、シェーグレン症候群、真性糖尿病(糖尿病性神経障害を含む)、インスリン抵抗性、関節炎の状態全般、慢性関節リウマチ、変形性関節症、反応性関節炎およびライター症候群、若年性関節炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、ギランバレー症候群、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、サルコイドーシス、糸球体腎炎、慢性腎疾患、膀胱炎、乾癬(乾癬性関節炎を含む)、汗腺膿瘍、皮下脂肪組織炎、壊疽性膿皮症、SAPHO症候群(滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨化過剰症、および骨炎)、ざ瘡、スウィート症候群、天疱瘡、クローン病(腸外の症状発現(manifestastation)を含む)、潰瘍性大腸炎、気管支喘息、過敏性肺臓炎、一般的なアレルギー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、ウェジナー肉芽腫症、川崎病、巨細胞性動脈炎、チャーグストラウス脈管炎、結節性多発性動脈炎、火傷、対宿主性移植片病、宿主対移植片反応、臓器または骨髄移植後の拒絶反応の発現、脈管炎の全身的および局所的状態全般、全身性および円板状エリテマトーデス、多発性筋炎および皮膚筋炎、強皮症、子癇前症、急性および慢性膵炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、眼の手術(例えば、白内障(眼水晶体置換)もしくは緑内障手術)、関節手術(関節鏡視下手術を含む)、関節関連構造(例えば、靭帯)の手術、口および/または口腔外科手術、侵襲性が最小である心血管手技(例えば、PTCA、アテレクトミー、ステント置換)、腹腔鏡下および/または内視鏡下の腹腔内および婦人科手技、内視鏡下の泌尿器科手技(例えば、前立腺手術、尿管鏡検査、膀胱鏡検査、間質性膀胱炎)後などの手術後炎症全般、または手術時の炎症(予防)全般、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ベル麻痺、クロイツフェルトヤコブ病、がんに関連する骨溶解、がんに関連する炎症、がんに関連する疼痛、がんに関連する悪液質、骨転移、TNFαの中枢効果によって引き起こされているか、または末梢効果によって引き起こされているかにかかわりなく、炎症型疼痛、または侵害受容性疼痛、または神経障害性疼痛のタイプと分類されているかにかかわりなく、急性型および慢性型の疼痛、坐骨神経痛、腰痛、手根管症候群、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、痛風、疱疹後神経痛、線維筋痛症、局所的疼痛状態、腫瘍の転移による慢性疼痛症候群、月経困難症(dismenorrhea)、細菌性、ウイルス性、または真菌性敗血症、結核、AIDS、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患、高血圧、脂質異常症(dyslipidemia)、心不全、および慢性心不全が挙げられる。「有効用量(dose)」、または「有効投与量(dosage)」という用語は、所望の効果を達成するのに、または少なくとも部分的に達成するのに十分な量を意味する。「治療有効量」という用語は、すでに疾患に罹患している患者における疾患およびその合併症を治すか、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量と定義される。この使用に効果的な量は、処置する障害の重症度、および患者自身の免疫系の全体的状態による。
【0041】
「被験体」という用語は、任意のヒトまたは非ヒトの動物を意味する。例えば、本発明の方法および組成物を、TNF媒介性障害を有する被験体を処置するのに用いることができる。
【0042】
「ウサギ類(lagomorph)」という用語は、Leporidae科(例えば、ノウサギおよびウサギ(rabbit))ならびにOchotonidae科(ナキウサギ)を含めた、分類学上のLagomorpha目のメンバーを意味する。最も好ましい一実施形態において、ウサギ類はウサギである。本明細書で用いられる「ウサギ」という用語は、leporidae科に属する動物を意味する。
【0043】
産生したイムノバインダーに対して様々な用語体系を用いた。これらは、数字(例えば、♯34)によって通常同定される。EPまたはEPiなどの接頭辞を用いた場合は(例えば、Epi34もしくは♯34と同一であるEP34)、それらによって同じイムノバインダーが示される。
【0044】
別段の定義がなければ、本明細書で用いる技術用語および科学用語は全て、本発明が属する技術分野における通常の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明を実施または試験する上で、本明細書に記載したものと類似または等価の方法および材料を用いることができるが、適切な方法および材料を下に記載する。矛盾する場合には、定義を含めた本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0045】
本発明の様々な態様を、以下のサブセクションにおいてさらに詳しく記載する。様々な実施形態、選択、および範囲を任意に組み合わせることができることが理解される。さらに、特定の実施形態によっては、選択された定義、実施形態、または範囲を適用しなくてもよい。
【0046】
(抗TNFα抗体)
一態様において、本発明は、TNFαに結合し、したがってインビボでTNFαの機能を阻止するのに適するイムノバインダーを提供する。これらイムノバインダーのCDRは、米国特許第7,431,927号に開示されるウサギ抗TNFαモノクローナル抗体に由来する。ウサギ抗体は特に高い親和性を有することが公知である。さらに、本明細書に開示するCDR配列は天然の配列であり、これは、得られたイムノバインダーの親和性成熟は行われる必要がないことを意味している。好ましい一実施形態において、イムノバインダーはインビボでTNFαを中和する。
【0047】
ある実施形態において、本発明はCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、またはCDRL3のアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含む、TNFαに特異的に結合するイムノバインダーを提供する。本発明のイムノバインダーにおいて用いるための例示的CDRアミノ酸配列を、配列番号3〜50(表1)に記載する。配列番号3〜50に記載するCDRは、当該分野で認められている任意の方法を用いて、任意の適切な結合性骨格上に融合させることができる(例えば、Riechmann, L.ら、(1998年)Nature、332巻、323〜327頁;Jones, P.ら(1986年)Nature、321巻、522〜525;Queen, C.ら(1989年)Proc. Natl. Acad. See. U.S.A.、86巻、10029〜10033頁;Winterへの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらへの米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号を参照されたい)。異なる親の抗体からのCDRを1つの抗体中に合わせて、さらなる抗体種を産生してもよい。しかし、本明細書に開示するイムノバインダーは、ヒト化され、したがって治療的適用に適することが好ましい。
【0048】
したがって、一実施形態において、本発明は、
(i)重鎖可変領域が、ヒト重鎖可変フレームワーク配列、ならびにウサギイムノバインダーに由来するCDR H1、CDR H2、およびCDR H3配列を含む、ヒト化重鎖可変領域(VH)、ならびに/または
(ii)軽鎖可変領域が、ヒト軽鎖可変フレームワーク配列、ならびにウサギイムノバインダーに由来するCDR L1、CDR L2、およびCDR L3配列を含む、ヒト化軽鎖可変領域(VL)
を含む、ヒトTNFαに特異的に結合するイムノバインダーを提供する。
【0049】
当該分野では公知のように、ウサギVH鎖の多くは、マウスおよびヒトの対応物と比較して、余分なシステイン対を有する。cys22とcys92との間に形成される保存されているジスルフィド架橋のほかに、cys21−cys79架橋、ならびにいくつかのウサギ鎖におけるCDR H1の最後の残基とCDR H2の最初の残基との間に形成されるCDR間S−S架橋も存在する。さらに、システイン残基の対は、しばしばCDR−L3に見られる。さらに、ウサギ抗体CDRの多くは、あらゆる以前に公知の標準的構造に属さない。とりわけ、CDR−L3は、ヒトまたはマウスの対応物のCDR−L3よりもずっと長いことが多い。
【0050】
ウサギに加えて、本発明は、任意のウサギ類のCDRを融合させるのに用いることができる。
【0051】
抗体の場合は、配列番号3〜50に記載したウサギCDRを、任意の種からの任意の抗体のフレームワーク領域中に融合させてもよい。しかし、いわゆる「品質管理」スクリーニング(WO148017)において同定されたフレームワークを含む抗体または抗体誘導体は、一般的に高い安定性および/または溶解性を特徴としており、したがって、ヒトTNFαの中和などの細胞外の適用の状況においても有用であり得ることが以前に発見されている。さらに、これらVL(可変軽鎖)およびVH(可変重鎖)の可溶性かつ安定性のフレームワークの1つの特定の組合せが、ウサギCDRを収容するのにとりわけ適していることがさらに発見されている。驚くべきことに、前記フレームワークまたはその誘導対中に融合させる際に、多種多様なウサギCDRのループコンフォメーションが、ドナーのフレームワークの配列とは殆ど無関係に、完全に維持され得ることが見出された。さらに、様々なウサギCDRを含む前記フレームワークまたはその誘導体は、ウサギ野生型単鎖とは反対に良好に発現されて良好に生成され、オリジナルのドナーのウサギ抗体の親和性を依然として殆ど完全に保持している。したがって、一実施形態において、配列番号3〜50に記載したCDRを、EP1479694に開示される「品質管理」スクリーニングに由来するヒト抗体フレームワーク中に融合させる。本発明で用いるための例示的フレームワークのアミノ酸配列を、以下の配列番号1および2
【0052】
【化1】

に記載する。
【0053】
Xは、任意の天然に存在するアミノ酸であってよい。少なくとも3個から最高50個のアミノ酸が存在してよい。CDRは、典型的にXが存在する部位中に挿入される。
【0054】
他の実施形態において、本発明は、少なくとも1つのVHまたはVLアミノ酸配列を含む、TNFαに特異的に結合するイムノバインダーを提供する。本発明のイムノバインダーにおいて用いるための例示的VHまたはVLのアミノ酸配列を、配列番号51〜111に記載する。
【0055】
ある実施形態において、本発明は、配列番号51〜111に記載するアミノ酸配列に実質的な類似性を有するアミノ酸配列を含む、TNFαに特異的に結合するイムノバインダーをさらに提供し、イムノバインダーは本発明の抗TNFαイムノバインダーの所望の機能特性を保持または改善する。例示的類似性パーセント値としては、それだけには限定されないが、約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性が挙げられる。
【0056】
ある実施形態において、本発明は、配列番号51〜111に記載するアミノ酸配列に実質的な同一性を有するアミノ酸配列を含む、TNFαに特異的に結合するイムノバインダーをさらに提供し、イムノバインダーは本発明の抗TNFαイムノバインダーの所望の機能特性を保持または改善する。例示的同一性パーセント値としては、それだけには限定されないが、約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性が挙げられる。
【0057】
ある実施形態において、本発明は、配列番号51〜111に記載するアミノ酸配列に対する保存的置換を有するアミノ酸配列を含む、TNFαに特異的に結合するイムノバインダーをさらに提供し、イムノバインダーは本発明の抗TNFαイムノバインダーの所望の機能特性を保持または改善する。
【0058】
最も好ましい一実施形態において、本発明のイムノバインダーは、配列番号3〜50のいずれか1つに少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、95%、または100%同一であるCDR配列を少なくとも1つ含む。
【0059】
本発明の好ましい一実施形態において、配列番号3〜8からなる群のCDRを少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、または最も好ましくは6つ含むイムノバインダーを提供する。
【0060】
本発明の別の好ましい一実施形態において、配列番号9〜14からなる群のCDRを少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、または最も好ましくは6つ含むイムノバインダーを提供する。
【0061】
本発明の別の好ましい一実施形態において、配列番号15〜20からなる群のCDRを少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、または最も好ましくは6つ含むイムノバインダーを提供する。
【0062】
本発明の別の好ましい一実施形態において、配列番号21〜26からなる群のCDRを少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、または最も好ましくは6つ含むイムノバインダーを提供する。
【0063】
本発明の別の好ましい一実施形態において、配列番号27〜32からなる群のCDRを少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、または最も好ましくは6つ含むイムノバインダーを提供する。
【0064】
本発明の別の好ましい一実施形態において、配列番号33〜38からなる群のCDRを少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、または最も好ましくは6つ含むイムノバインダーを提供する。
【0065】
本発明の別の好ましい一実施形態において、配列番号39〜44からなる群のCDRを少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、または最も好ましくは6つ含むイムノバインダーを提供する。
【0066】
本発明の別の好ましい一実施形態において、配列番号45〜50からなる群のCDRを少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ、5つ、または最も好ましくは6つ含むイムノバインダーを提供する。
【0067】
本明細書の配列番号3〜50において提供するCDR配列は、置換をさらに含むことができる。
【0068】
【表1−1】

【0069】
【表1−2】

好ましくは、配列は、3つ、より好ましくは2つ、最も好ましくはたった1つの置換を有する。前記置換は、イムノバインダーの選択的結合能力は損なわれないが、イムノバインダーの親和性は変化され、好ましくは増強されるような置換であるのが好ましい。
【0070】
別の一実施形態において、本発明は、表1に記載する1セットのCDR(Rabmabクローンの1つに属するH1〜H3、L1〜L3)を含むモノクローナル抗体によって認識されるヒトTNFα上のエピトープに結合する抗体を提供する。このような抗体は、標準のTNF結合アッセイにおいて表1の抗体と交差競合(cross−compete)するその能力に基づいて同定することができる。表1の抗体のヒトTNFαに対する結合を阻害する試験抗体の能力は、試験抗体がヒトTNFαに対する結合に対して表1の抗体と競合することができ、したがって表1の抗体と同じヒトTNFα上のエピトープに関与することを実証している。好ましい一実施形態において、表1に記載する抗体と同じヒトTNFα上のエピトープに対して結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このようなヒトモノクローナル抗体を、本明細書に記載する通りに調製、単離することができる。
【0071】
一実施形態において、本発明の抗体および抗体フラグメントは、単鎖抗体(scFv)またはFabフラグメントである。scFv抗体の場合は、選択されたVLドメインが、柔軟なリンカーによっていずれかの配向において選択されたVHドメインに連結することができる。適切な最先端のリンカーは、GGGGSアミノ酸配列の繰返し、またはその改変体からなる。本発明の好ましい一実施形態において、(GGGGS)リンカー(配列番号72)またはその誘導体が用いられるが、1〜3回の繰返しの改変体も可能である(Holligerら、(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻、6444〜6448頁)。本発明のために用いることができる他のリンカーは、Alfthanら、(1995年)、Protein Eng.、8巻、725〜731頁、Choiら、(2001年)、Eur. J. Immunol.、31巻、94〜106頁、Huら、(1996年)、Cancer Res.、56巻、3055〜3061頁、Kipriyanovら、(1999年)、J.Mol.Biol.、293巻、41〜56頁、およびRooversら、(2001年)、Cancer Immunol. Immunother.、50巻、51〜59頁に記載されている。配置は、NH−VL−リンカー−VH−COOHまたはNH−VH−リンカー−VL−COOHのいずれかであってよく、前者の配向が好ましいものである。Fabフラグメントの場合は、選択された軽鎖可変ドメインVLがヒトIgκ鎖の定常領域に融合しており、適切な重鎖可変ドメインVHがヒトIgGの最初の(N末端の)定常ドメインCH1に融合している。C末端では、2つの定常ドメイン間に鎖間ジスルフィド架橋が形成する。
【0072】
本発明の抗体または抗体誘導体は、1fM〜10μMの範囲の解離定数KでヒトTNFに対する親和性を有することができる。本発明の好ましい一実施形態において、Kは≦1nMである。抗原に対する抗体の親和性は、適切な方法(Fundamental Immunology、Paul, W.E.編集、Raven Press、New York、NY(1992)におけるBerzofskyら、「Antibody−Antigen Interactions」;Kuby, J.、Immunology、W.H. Freeman and Company、New York、NY)およびそこに記載される方法を用いて実験的に決定することができる。
【0073】
好ましい抗体としては、以下のVH配列およびVL配列からの可変重鎖(VH)および/または可変軽鎖(VL)の領域を有する抗体が挙げられる:
【0074】
【化2】

【0075】
【化3】

【0076】
【化4】

【0077】
【化5】

【0078】
【化6】

(CDR配列には下線)。
【0079】
(抗TNF抗体の生成)
本発明は、品質管理(QC)アッセイによって同定された非常に可溶性かつ安定なヒト抗体フレームワークが、他の非ヒトの動物種からのCDR、例えば、ウサギCDRを収容するのにとりわけ適するフレームワークであるという発見に、少なくとも部分的に基づくものである。とりわけ、本発明は、特定のヒト抗体(いわゆる「FW1.4」抗体)の軽鎖および重鎖の可変領域は、異なる結合特異性の様々なウサギ抗体からのCDRに対するアクセプターとしてとりわけ適するという発見に基づくものである。ESBATechのヒト単鎖フレームワークFW1.4は、HeLa細胞において発現され、そのオリジナルのCDR(WO03097697において開示される)と一緒に用いた場合、品質管理アッセイにおいて明らかに期待以下の作用であったが、ウサギCDRなどの他のCDRと組み合わせた場合、非常に安定的かつ可溶性で、良好に生成できる単鎖抗体を生じることが驚くべきことに見出された。さらに、ウサギCDRをこれらの高度に適合性の軽鎖および重鎖フレームワーク中に融合させることによって産生したヒト化イムノバインダーは、ドナーのCDRが由来するウサギ抗体の結合性の性質を一貫して、かつ確実に保持する。さらに、本発明の方法によって産生したイムノバインダーは、溶解性および安定性などの優れた機能特性を確実に示す。したがって、本発明の全般的な一目的は、ウサギCDRおよび他の非ヒトのCDRを、配列番号1(K127)および配列番号2(a43)の可溶性かつ安定なそれぞれ軽鎖および/または重鎖ヒト抗体フレームワーク中に融合させ、それによって優れた生物物理学的性質を有するヒト化抗体を産生するための方法を提供することである。
【0080】
好ましい一実施形態において、フレームワークは、重鎖フレームワーク(VH)の位置H24、H25、H56、H82、H84、H89、およびH108(AHoナンバリングシステム)からなる群からの位置における1つまたは複数の置換を含む。さらに、またはあるいは、フレームワークは、AHoナンバリングシステムによる軽鎖フレームワーク(VH)の位置L87における置換を含んでいてよい。前記置換の存在は、オリジナルのドナーの抗体の親和性を殆ど完全に保持するアクセプターフレームワークを提供することを示している。より好ましい実施形態において、AHoナンバリングシステムによる位置H24のスレオニン(T)、位置H25のバリン(V)、位置H56のグリシン(G)またはアラニン(A)、位置H82のリジン(K)、位置H84のスレオニン(T)、位置H89のバリン(V)、および位置H108のアルギニン(R)、ならびに位置L87のスレオニン(T)からなる群より選択される1つまたは複数の置換がフレームワーク配列中に存在する。
【0081】
したがって、さらにより好ましい一実施形態において、アクセプターフレームワークは以下、
【0082】
【化7】

【0083】
【化8】

である。
【0084】
Xは任意の天然に存在するアミノ酸であってよく、少なくとも3個から最大50個のアミノ酸が存在してよい。CDRは典型的に、Xが存在する部位中に挿入される。
【0085】
本発明の抗体または抗体誘導体は、組換え遺伝学の分野における日常的な技術を用いて産生することができる。ポリペプチドの配列を知り、これらをコードするcDNAを、当該分野では周知の方法によって遺伝子合成により産生することができる。これらのcDNAを適切なベクタープラスミド中にクローニングすることができる。VLおよび/またはVHドメインをコードするDNAを得た後は、例えば、変異促進性のプライマーを用いたPCRによって、部位特異的変異誘発を行って様々な誘導体を得ることができる。最良の「開始」配列は、VLおよび/またはVH配列における望ましい変化の数に応じて選択することができる。好ましい配列はTB−A配列であり、その誘導体、例えば、scFv配列またはFab融合ペプチド配列を、PCRが駆動する変異誘発および/またはクローニングに対するテンプレートとして選択してよい。
【0086】
CDRをフレームワーク領域中に組み入れるかまたは融合させるための方法には、例えば、Riechmann, L.ら、(1998年)Nature、332巻、323〜327頁;Jones,P.ら、(1986年)Nature、321巻、522〜525頁;Queen,C.ら、(1989年)Proc. Natl. Acad. See. U.S.A.、86巻、10029〜10033頁;Winterへの米国特許第5,225,539号、ならびにQueenらへの米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号、および同第6,180,370号に記載されているもの、ならびに「Humanization of Rabbit Antibodies Using Universal Antibody Frameworks」という名称の、それぞれ2008年6月25日出願および2009年2月4日出願の米国仮特許出願第61/075,697号および同第61/155,041号に開示されているものが含まれる。
【0087】
当業者には周知の標準のクローニング技術および変異誘発技術を用いて、Fabフラグメントを生成するために、リンカーを付着し、ドメインをシャッフルし、または融合物を構築してよい。本発明の全般的方法を開示する基本的プロトコールは、Molecular Cloning, A Laboratory Manual(Sambrook & Russell、第3版、2001年)に、およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら、1999年)に記載されている。
【0088】
scFvポリペプチドをコードする遺伝子を内部に持つDNA配列、またはFabフラグメントの場合はVL−CκおよびVH−CH1融合物に対する2つの遺伝子を含む2つの別々の遺伝子またはバイシストロン性オペロンのいずれかをコードする遺伝子を内部に持つDNA配列が、適切な発現ベクターに、好ましくは誘導プロモーターを伴なう発現ベクターにクローニングされる。各遺伝子の前には翻訳を確実にする好適なリボゾーム結合部位が存在するよう、注意を払わなければならない。本発明の抗体は、開示した配列からなるのではなく、開示した配列を含むことが理解される。例えば、クローニングの戦略は、N末端の1つまたは少数のさらなる残基を伴なう抗体から構築物が作製されることを必要とし得る。具体的には、開始コドンに由来するメチオニンが翻訳後に切断されなかった場合、最終のタンパク質中に存在することがある。scFv抗体についてのほとんどの構築物は、N末端にさらなるアラニンを生じる。本発明の好ましい一実施形態において、E.coliにおけるペリプラズム発現のための発現ベクターが選択される(Krebber、1997年)。前記ベクターは、切断可能なシグナル配列の前にプロモーターを含む。次いで、抗体ペプチドについてのコード配列を、インフレーム(in frame)で切断可能なシグナル配列に融合する。これにより、細菌のペリプラズム(ここでシグナル配列が切断される)への、発現されたポリペプチドのターゲティングが可能になる。次いで、抗体はフォールディングされる。Fabフラグメントの場合は、VL−Cκ融合物のペプチドおよびVH−CH1融合物のペプチドの両方が移行シグナルに連結していなければならない。ペプチドがペリプラズムに到達した後、C末端のシステインでS−S共有結合が形成される。抗体の細胞質内発現が好ましい場合、前記抗体は通常、封入体から高収率で得ることができ、封入体は他の細胞フラグメントおよびタンパク質から容易に分離され得る。この場合、封入体は、例えば塩酸グアニジン(GndHCl)などの変性剤中に可溶化され、次いで当業者には周知の復元手順によってリフォールディングされる。
【0089】
scFvまたはFabポリペプチドを発現するプラスミドを、適切な宿主、好ましくは細菌、酵母、または哺乳動物の細胞、最も好ましくは適切なE.coli菌株(例えば、ペリプラズムの発現についてJM83、または封入体中の発現についてBL21)の中に導入する。ポリペプチドを、ペリプラズムまたは封入体のいずれかから収集し、当業者には公知の、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、および/またはゲルろ過などの標準技術を用いて精製してよい。
【0090】
本発明の抗体または抗体誘導体を、収率、溶解性、およびインビトロの安定性に関して特徴付けることができる。TNFに対する、好ましくはヒトTNFαに対する結合可能性を、WO9729131に記載されている通り、組換えヒトTNFを用いて、インビトロでELISAまたは表面プラズモン共鳴法(BIACore)によって試験することができ、表面プラズモン共鳴法はまた、koff速度定数の決定を可能にし、これは好ましくは10−3−1未満であるべきである。≦10nMのK値が好ましい。
【0091】
ヒトTNFに対する強力な結合親和性を有する抗体の他に、治療上の観点からの有益な性質を有する抗TNF抗体を産生するのも望ましい。例えば、抗体は、L929 TNFα媒介性細胞毒性アッセイにおいて中和活性を示すものであってもよい。このアッセイにおいて、アクチノマイシンで処理したマウスL929線維芽細胞の毒性を組換えヒトTNF(hTNF)で誘発した。最大hTNF誘発性細胞毒性の90%は、1000pg/mlのTNF濃度のときであることが決定された。
【0092】
L929細胞を全て、ウシ胎仔血清(10%v/v)を補ったL−グルタミン培地を含むフェノールレッドを含むRPMI1640中で培養した。抗TNFαバインダーの中和活性を、フェノールレッドおよび5%ウシ胎仔血清を含まないRPMI1640において評価した。アンタゴニスト効果が最大半量阻害(EC50%)に到達する濃度を決定するために、様々な濃度(0〜374ng/mL)の抗TNFバインダーを、hTNF1000pg/mlの存在下でL929細胞に加える。用量反応曲線を可変勾配を伴なう非線形シグモイド回帰とフィットさせ、EC50を計算した。
【0093】
(最適化された改変体)
本発明の抗体を、機能特性の増強に対して、例えば、溶解性および/または安定性の増強に対してさらに最適化してよい。
【0094】
ある実施形態において、本発明の抗体を、本明細書に参照によって援用される、「Sequence Based Engineering and Optimization of Single Chain Antibodies」という名称の、2008年3月12日出願のPCT出願番号PCT/EP2008/001958に開示されている「機能的コンセンサス」方法論に従って最適化する。
【0095】
例えば、本発明のTNFαイムノバインダーを、機能的に選択されたscFvのデータベースと比較してVEGFイムノバインダーにおける対応する(1つまたは複数の)位置よりも変動性への耐性が大きいかまたは小さいアミノ酸残基の位置を同定することができ、それによって、このように同定された残基の(1つまたは複数の)位置が、安定性および/または溶解性などの機能性を改善するように操作するのに適することがあることを指摘している。
【0096】
置換のための例示的フレームワーク位置は、「Methods of Modifying Antibodies,and Modified Antibodies with Improved Functional Properties」という名称の、2008年6月25日出願のPCT出願番号PCT/CH2008/000285、および「Sequence Based Engineering and Optimization of Single Chain Antibodies」という名称の、2008年6月25日出願のPCT出願番号PCT/CH2008/000284に記載されている。例えば、以下の置換の1つまたは複数を、本発明のイムノバインダーの重鎖可変領域におけるアミノ酸の位置に導入することができる(以下に列挙する各アミノ酸位置に対してAHoナンバリングが参照される):
(a)アミノ酸位置1のQまたはE;
(b)アミノ酸位置6のQまたはE;
(c)アミノ酸位置7の、T、S、またはA、より好ましくはTまたはA、さらにより好ましくはT;
(d)アミノ酸位置10の、A、T、P、V、またはD、より好ましくはT、P、V、またはD、
(e)アミノ酸位置12の、LまたはV、より好ましくはL、
(f)アミノ酸位置13の、V、R、Q、M、またはK、より好ましくはV、R、Q、またはM;
(g)アミノ酸位置14の、R、M、E、Q、またはK、より好ましくはR、M、EまたはQ、さらにより好ましくはRまたはE;
(h)アミノ酸位置19の、LまたはV、より好ましくはL;
(i)アミノ酸位置20の、R、T、K、またはN、より好ましくはR、T、またはN、さらにより好ましくはN;
(j)アミノ酸位置21の、I、F、L、またはV、より好ましくはI、F、またはL、さらにより好ましくはIまたはL;
(k)アミノ酸位置45の、RまたはK、より好ましくはK;
(l)アミノ酸位置47の、T、P、V、AまたはR、より好ましくはT、P、V、またはR、さらにより好ましくはR;
(m)アミノ酸位置50の、K、Q、H、またはE、より好ましくはK、H、またはE、さらにより好ましくはK;
(n)アミノ酸位置55の、MまたはI、より好ましくはI;
(o)アミノ酸位置77の、KまたはR、より好ましくはK;
(p)アミノ酸位置78の、A、V、L、またはI、より好ましくはA、L、またはI、さらにより好ましくはA;
(q)アミノ酸位置82の、E、R、T、またはA、より好ましくはE、T、またはA、さらにより好ましくはE;
(r)アミノ酸位置86の、T、S、I、またはL、より好ましくはT、S、またはL、さらにより好ましくはT;
(s)アミノ酸位置87の、D、S、N、またはG、より好ましくはD、N、またはG、さらにより好ましくはN;
(t)アミノ酸位置89の、A、V、L、またはF、より好ましくはA、V、またはF、さらにより好ましくはV;
(u)アミノ酸位置90の、F、S、H、D、またはY、より好ましくはF、S、H、またはD;
(v)アミノ酸位置92の、D、Q、またはE、より好ましくはDまたはQ、さらにより好ましくはD;
(w)アミノ酸位置95の、G、N、T、またはS、より好ましくはG、N、またはT、さらにより好ましくはG;
(x)アミノ酸位置98の、T、A、P、F、またはS、より好ましくはT、A、P、またはF、さらにより好ましくはF;
(y)アミノ酸位置103の、R、Q、V、I、M、F、またはL、より好ましくはR、Q、I、M、F、またはL、さらにより好ましくはY、さらにより好ましくはL;および
(z)アミノ酸位置107の、N、S、またはA、より好ましくはNまたはS、さらにより好ましくはN。
【0097】
さらに、またはあるいは、以下の置換の1つまたは複数を、本発明のイムノバインダーの軽鎖可変領域中に導入することができる:
(aa)アミノ酸位置1の、Q、D、L、E、S、またはI、より好ましくはL、E、S、またはI、さらにより好ましくはLまたはE;
(bb)アミノ酸位置2の、S、A、Y、I、P、またはT、より好ましくはA、Y、I、P、またはT、さらにより好ましくはPまたはT;
(cc)アミノ酸位置3の、Q、V、T、またはI、より好ましくはV、T、またはI、さらにより好ましくはVまたはT;
(dd)アミノ酸位置4の、V、L、I、またはM、より好ましくはVまたはL;
(ee)アミノ酸位置7の、S、E、またはP、より好ましくはSまたはE、さらにより好ましくはS;
(ff)アミノ酸位置10の、TまたはI、より好ましくはI;
(gg)アミノ酸位置11の、AまたはV、より好ましくはA;
(hh)アミノ酸位置12の、SまたはY、より好ましくはY;
(ii)アミノ酸位置14の、T、S、またはA、より好ましくはTまたはS、さらにより好ましくはT;
(jj)アミノ酸位置18の、SまたはR、より好ましくはS;
(kk)アミノ酸位置20の、TまたはR、より好ましくはR;
(ll)アミノ酸位置24の、RまたはQ、より好ましくはQ;
(mm)アミノ酸位置46の、HまたはQ、より好ましくはH;
(nn)アミノ酸位置47の、K、R、またはI、より好ましくはRまたはI、さらにより好ましくはR;
(oo)アミノ酸位置50の、R、Q、K、E、T、またはM、より好ましくはQ、K、E、TまたはM;
(pp)アミノ酸位置53の、K、T、S、N、Q、またはP、より好ましくはT、S、N、Q、またはP;
(qq)アミノ酸位置56の、IまたはM、より好ましくはM;
(rr)アミノ酸位置57の、H、S、F、またはY、より好ましくはH、S、またはF;
(ss)アミノ酸位置74の、I、V、またはT、より好ましくはVまたはT、R、さらにより好ましくはT;
(tt)アミノ酸位置82の、R、Q、またはK、より好ましくはRまたはQ、さらにより好ましくはR;
(uu)アミノ酸位置91の、LまたはF、より好ましくはF;
(vv)アミノ酸位置92の、G、D、T、またはA、より好ましくはG、D、またはT、さらにより好ましくはT;
(xx)アミノ酸位置94の、SまたはN、より好ましくはN;
(yy)アミノ酸位置101の、F、Y、またはS、より好ましくはYまたはS、さらにより好ましくはS;および
(zz)アミノ酸位置103の、D、F、H、E、L、A、T、V、S、G、またはI、より好ましくはH、E、L、A、T、V、S、G、またはI、さらにより好ましくはAまたはV。
【0098】
他の実施形態において、本発明のイムノバインダーは、「Solubility Optimization of Immunobinders」という名称の、2008年6月25日出願の、米国仮出願第61/075,692号に記載されている、溶解性および/または安定性を増強する変異を1つまたは複数含んでいる。ある好ましい実施形態において、イムノバインダーは、12、103、および144(AHoナンバリング慣例)からなる重鎖アミノ酸位置の群より選択されるアミノ酸位置に溶解性を増強する変異を含んでいる。好ましい一実施形態において、イムノバインダーは、(a)重鎖アミノ酸位置12のセリン(S);(b)重鎖アミノ酸位置103のセリン(S)またはスレオニン(T);および(c)重鎖アミノ酸位置144のセリン(S)またはスレオニン(T)からなる群より選択される置換を1つまたは複数含んでいる。別の一実施形態において、イムノバインダーは、以下の置換:(a)重鎖アミノ酸位置12のセリン(S);(b)重鎖アミノ酸位置103のセリン(S)またはスレオニン(T);および(c)重鎖アミノ酸位置144のセリン(S)またはスレオニン(T)を含んでいる。
【0099】
上記で言及した通り、VL配列およびVH配列の組合せを、とりわけ同じかまたは本質的に同じCDR配列のセットを有するが、例えば上記で言及した置換が存在するために、フレームワーク配列の異なるものを、シャッフルし、リンカー配列によって組み合わせることができる。例示的組合せは、それだけには限定されないが、以下、
【0100】
【化9】

【0101】
【化10】

【0102】
【化11】

【0103】
【化12】

【0104】
【化13】

【0105】
【化14】

【0106】
【化15】

を含む。
【0107】
好ましい一実施形態において、配列は、配列番号94〜121のいずれか1つの配列に、少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは100%の同一性を有する。
【0108】
(抗TNF抗体の使用)
治療的適用のために、本発明の抗TNF抗体は、哺乳動物、好ましくはヒトに、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、鞘内、経口、局所的または吸入経路によって、ボーラスとしてかまたはある期間にわたる持続的注入によって、ヒトに静脈内投与できる形態を含む、上で議論された形態などの、薬学的に許容される投薬形態で投与する。抗体はまた、腫瘍内、腫瘍周囲(peritumoral)、病巣内または病変周囲(perilesional)の経路によって適切に投与され、局所性および全身性治療効果をもたらす。
【0109】
疾患を予防または処置するための、抗体の適切な投与量は、上で定義したように、処置する疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体を予防または治療のどちらの目的で投与するか、以前の治療、患者の病歴および抗体への応答、ならびに主治医の自由裁量に依存する。抗体は、1回でまたは一連の処置にわたって適切に患者に投与する。
【0110】
抗TNF抗体は、TNF媒介性疾患の処置において有用である。疾患のタイプおよび重症度に応じて、抗体約1μg/kgから約50mg/kg(例えば、0.1〜20mg/kg)が、例えば、1回もしくは複数回の別々の投与によるとしても、または持続的な注入によるとしても、患者に投与するための最初の候補の投与量である。典型的な毎日のまたは毎週の投与量は、上に記載した因子に応じて、約1μg/kgから約20mg/kgの範囲であってよく、またはそれを超えてよい。数日にわたる、またはそれを超える繰返し投与に関して、状態に応じて、疾患症状の望ましい抑制が生じるまで処置を繰り返す。しかし、他の投薬レジメンも有用であり得る。この治療の進行は、例えばX線撮影腫瘍イメージングを含めた、従来の技術およびアッセイによって容易にモニターされる。
【0111】
本発明の別の実施形態により、疾患の予防または処置における抗体の有効性は、抗体を連続的に投与することによって、またはそれらの目的に有効である別の薬剤、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、酸性もしくは塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF)または肝細胞増殖因子(HGF)の新脈管形成活性を阻害または中和できる抗体、組織因子、プロテインCまたはプロテインSの血液凝固活性を阻害または中和できる抗体(1991年2月21日に公開された、EsmonらのPCT特許出願WO91/01753を参照されたい)、HER2受容体に結合できる抗体(1989年7月27日に公開された、HudziakらのPCT特許出願WO89/06692を参照されたい)、または例えばアルキル化剤、葉酸拮抗剤、核酸代謝の代謝拮抗薬、抗生物質、ピリミジン類似体、5−フルオロウラシル、シスプラチン、プリンヌクレオシド、アミン、アミノ酸、トリアゾールヌクレオシドもしくはコルチコステロイドなどの1つまたは複数の従来の治療剤などと抗体とを組み合わせて投与することによって改善することができる。かかる他の薬剤は、投与する組成物中に存在し得、または別々に投与することができる。また、放射性物質の照射または投与を含んだとしても、抗体は、連続的にまたは放射線学的処置と組み合わせて適切に投与される。
【0112】
本発明の抗体は、親和性精製剤として使用することができる。このプロセスにおいて、抗体は、当該分野で周知の方法を用いて、セファデックス樹脂または濾紙のような固相上に固定化する。固定化した抗体を、TNFタンパク質(またはそのフラグメント)を含む試料と接触させて精製し、その後、担体を適切な溶媒で洗浄し、これにより固定化した抗体に結合するTNFタンパク質以外の、試料中の実質的に全ての物質が除去される。最後に、担体をpH5.0のグリシン緩衝液などの別の適切な溶媒で洗浄し、これにより抗体からTNFタンパク質が放出される。
【0113】
抗TNF抗体はまた、TNFタンパク質の診断アッセイ、例えば特定の細胞、組織または血清中でのその発現を検出するのにも有用な場合がある。かかる診断方法は、がんの診断に有用な場合がある。
【0114】
診断的適用のために、抗体は、一般的に検出可能な部分により標識される。非常に多くの標識が利用でき、それらは概して次のカテゴリーに分類することができる:
(a)111In、99Tc、14C、131I、125I、H、32Pまたは35Sなどの放射性同位元素。抗体は、例えばCurrent Protocols in Immunology、1および2巻、Coligenら編、Wiley−Interscience、New York、N.Y.、Pubs.(1991年)に記載の技法を用いて、放射性同位元素により標識でき、放射活性は、シンチレーション計数器を用いて測定することができる。
【0115】
(b)希土類キレート(ユーロピウムキレート)またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリンおよびテキサスレッドなどの蛍光標識を利用することができる。蛍光標識は、例えば上記のCurrent Protocols in Immunologyに開示されている技法を用いて、抗体と結合体化することができる。蛍光は、蛍光計を用いて定量化することができる。
【0116】
(c)様々な酵素−基質標識を利用でき、米国特許第4,275,149号ではこれらのいくつかの概説が提供されている。酵素は、一般的に、様々な技法を用いて測定できる、色素形成基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光光度的に測定できる、基質における色の変化を触媒することができる。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を変えることができる。蛍光における変化を定量化するための技法は、上に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起状態になり、次いで(例えば、ケミルミノメーター(chemiluminometer)を用いて)測定できる光を放射し得、または蛍光アクセプターにエネルギーを供与する。酵素標識の例としては、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類酸化酵素(例えば、グルコース酸化酵素、ガラクトース酸化酵素およびグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、複素環酸化酵素(ウリカーゼおよびキサンチン酸化酵素など)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。酵素を抗体に結合体化するための技法は、O’Sullivanら、Methods for the Preparation of Enzyme−Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay、Methods in Enzym.(J. Langone & H. Van Vunakis編)、Academic press、New York、73巻:147〜166頁(1981年)に記載されている。酵素−基質の組合せの例としては、例えば:
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と、基質としての水素ペルオキシダーゼであり、水素ペルオキシダーゼが、色素前駆体(例えば、オルトフェニレンジアミン(OPD)または3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する、
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、色素形成基質としてのパラ−ニトロフェニルホスフェート、および
(iii)β−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)と色素形成基質(例えば、P−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼ、が挙げられる。
【0117】
当業者には、多数の他の酵素−基質の組合せが可能である。これらの全般的総説には、米国特許第4,275,149号および同第4,318,980号を参照されたい。標識が抗体に間接的に結合体化していることがある。当業者であれば、これを実現するための様々な技術を認識する。例えば、抗体はビオチンと結合体化していてよく、上記で言及した標識の3つの広範なカテゴリーのうちの任意のものがアビジンと結合体化していてよく、またはその反対も同様である。ビオチンはアビジンに対して選択的に結合し、したがって標識は、この間接的な様式において抗体と結合体化していてよい。あるいは、標識の、抗体との間接的な結合体化を実現するために、抗体が小型のハプテン(例えば、ジゴキシン)と結合体化し、上記で言及した様々なタイプの標識の1つが抗ハプテン抗体(例えば、抗ジゴキシン抗体)と結合体化する。このように、標識の、抗体との間接的な結合体化を実現することができる。
【0118】
本発明の別の実施形態では、抗TNF抗体を標識する必要はなく、その存在は、TNF抗体に結合する標識抗体を使用して検出することができる。
【0119】
本発明の抗体には、競合的結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイおよび免疫沈降アッセイなどの任意の公知のアッセイ方法も採用することができる。Zola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques、147〜158頁(CRC Press、Inc. 1987年)。
【0120】
競合的結合アッセイは、制限された量の抗体と結合するために試験試料分析物と競合する、標識した標準物質の能力に依存する。試験試料中のTNFタンパク質の量は、抗体と結合状態になる標準物質の量に反比例する。結合状態になる標準物質の量の決定を容易にするために、抗体を、一般的に競合の前または後に不溶化し、抗体に結合する標準物質および分析物を、結合しないままの標準物質および分析物から都合良く分離できるようにする。
【0121】
サンドイッチアッセイは、検出されるタンパク質の異なる免疫原性部分またはエピトープにそれぞれが結合できる2つの抗体の使用を含む。サンドイッチアッセイでは、試験試料分析物は、固体担体上に固定化する第1抗体によって結合され、その後、第2抗体が分析物に結合し、したがって不溶性の3部分の複合体が形成される。例えば、米国特許第4,376,110号を参照されたい。第2抗体は、それ自体、検出可能な部分で標識でき(直接的サンドイッチアッセイ)、検出可能な部分で標識される抗免疫グロブリン抗体を使用して測定することもできる(間接的サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1種にELISAアッセイがあり、これは検出可能な部分が酵素の場合である。
【0122】
免疫組織化学に関しては、腫瘍試料は新鮮または凍結であってよく、例えば、パラフィン中に包埋し、例えばホルマリンなどの保存剤で固定してもよい。
【0123】
抗体は、インビボの診断アッセイに使用することもできる。一般的に、抗体は、放射性核種(111In、99Tc、14C、131I、125I、H、32Pまたは35Sなど)で標識し、免疫シンチグラフィ(immunoscintiography)を使用して腫瘍の場所を突き止められるようにする。
【0124】
本発明の抗体は、キット、すなわち診断アッセイを行うための説明書と所定量の試薬をパッケージした組合せで提供され得る。抗体が酵素で標識される場合、キットには酵素に必要な基質および補因子が含まれる(例えば、検出可能な発色団またはフルオロフォアをもたらす基質前駆体)。さらに、安定剤、緩衝液(例えば、ブロック緩衝液または溶解緩衝液)などの他の添加剤を含むことができる。様々な試薬の相対量は、幅広く変えることができ、アッセイの感度を実質的に最適にする、溶液中の試薬の濃度を可能にする。特に試薬は、通常、凍結乾燥した乾燥粉末として提供でき、溶解状態で適切な濃度を有する試薬溶液をもたらす賦形剤を含む。
【0125】
(薬学的調製物)
1つの態様では、本発明は、TNF媒介性疾患の処置のための抗TNF抗体を含む薬学的処方物を提供する。用語「薬学的処方物」とは、明白に有効である抗体または抗体誘導体の生物活性を可能にするような形態であり、処方物を投与した被験体に毒性のある追加の成分を含まない調製物をいう。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)とは、被験体である哺乳動物に合理的に投与し、採用する活性成分の有効用量を実現できるものである。
【0126】
「安定的な」処方物とは、処方物中の抗体または抗体誘導体が、保存に際しその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物活性を本質的に保持するものである。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技法は、当該分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery、247〜301頁、Vincent Lee編、Marcel Dekker, Inc.、New York、N.Y.、Pubs.(1991年)、およびJones, A. Adv. Drug Delivery Rev.10巻:29〜90頁(1993年)に概説されている。安定性は、選択した期間の間、選択した温度で測定することができる。好ましくは、処方物は、少なくとも1カ月間、室温(約30℃)または40℃で安定であり、および/または少なくとも1年間または少なくとも2年間、約2〜8℃で安定である。その上、処方物は、好ましくは、処方物の凍結(例えば−70℃まで)および解凍の後も安定である。
【0127】
色および/または透明さの視覚的検査で、あるいはUV光散乱またはサイズ排除クロマトグラフィーによって測定したときに、凝集、沈殿および/または変性の徴候を示さない場合、抗体または抗体誘導体は、薬学的処方物において「その物理的安定性を保持する」。
【0128】
抗体または抗体誘導体は、所与の時間での化学的安定性が、タンパク質が以下に定義されるようなその生物活性をなおも保持すると考えられるほどであれば、薬学的処方物において「その化学的安定性を保持する」。化学的安定性は、化学変化したタンパク質の形態を検出および定量化することによって評価することができる。化学変化は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、SDS−PAGEおよび/またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)を用いて評価できる、サイズ修正(例えばクリッピング(clipping))に関わり得る。他のタイプの化学変化には、例えばイオン交換クロマトグラフィーによって評価できる電荷変化(例えば、脱アミドに起因して起こる)が挙げられる。
【0129】
抗体または抗体誘導体は、所与の時間での抗体の生物活性が、例えば、薬学的処方物を抗原結合アッセイで決定されるように調製したときに示される生物活性の、約10%以内(アッセイのエラー内)であれば、薬学的処方物において「その生物活性を保持する」。抗体に関する他の「生物活性」アッセイは、本明細書で以下に詳しく述べる。
【0130】
「等張」とは、目的の処方物が、本質的にヒト血液と同じ浸透圧を有することを意味する。等張処方物は、一般的に約250から350mOsmの浸透圧を有する。等張性は、例えば、蒸気圧またはアイスフリージング型浸透圧計を用いて測定することができる。
【0131】
「ポリオール」は、複数のヒドロキシル基を有する物質であり、糖(還元および非還元糖)、糖アルコールおよび糖酸が挙げられる。本明細書における好ましいポリオールは、約600kD未満(例えば、約120から約400kDの範囲)の分子量を有する。「還元糖」とは、金属イオンを還元できるか、またはタンパク質中のリジンおよび他のアミノ基と共有結合的に反応できるヘミアセタール基を含むものであり、「非還元糖」とは、還元糖のこれらの特性をもたないものである。還元糖の例は、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトースおよびグルコースである。非還元糖には、スクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトースおよびラフィノースが挙げられる。マンニトール、キシリトール、エリスリトール、トレイトール、ソルビトールおよびグリセロールは、糖アルコールの例である。糖酸について、これには、L−グルコネートおよびその金属塩が挙げられる。処方物が凍結−解凍に対して安定であることが望まれる場合、ポリオールは、好ましくは処方物中の抗体が不安定になるような凍結温度(例えば−20℃)での結晶化をしないものである。スクロースおよびトレハロースなどの非還元糖は、本明細書において好ましいポリオールであり、トレハロースの優れた溶液安定性の理由から、スクロースよりトレハロースが好ましい。
【0132】
本明細書で使用するとき、「緩衝液」とは、酸−塩基の結合体化成分の作用によるpHの変化に耐える緩衝溶液をいう。本発明の緩衝液は、約4.5から約6.0、好ましくは約4.8から約5.5の範囲のpHを有し、最も好ましくは約5.0のpHを有する。この範囲でpHを制御する緩衝液の例には、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩および他の有機酸の緩衝液が挙げられる。凍結−解凍に対して安定的な処方物が望まれる場合、緩衝液は、好ましくはホスフェートではない。
【0133】
薬理学的な意味において、本発明に関連して、抗体または抗体誘導体の「治療有効量」とは、抗体または抗体誘導体が有効である処置に関して、障害の予防または処置に有効な量をいう。「疾患/障害」とは、抗体または抗体誘導体を用いた処置により利益を得る任意の状態である。これには、哺乳動物を問題の障害にかからせる病理学的状態を含む、慢性および急性の障害または疾患が含まれる。
【0134】
「保存剤」とは、処方物中に含まれ得、本質的にそこで細菌の作用を減少できる化合物であり、したがって、例えばマルチユーズ(multi−use)の処方物の製造を容易にすることができる。可能性のある保存剤の例には、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド(アルキル基が長鎖の化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドの混合物)、およびベンゼトニウムクロリドが挙げられる。保存剤の他のタイプには、フェノール、ブチルおよびベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノールならびにm−クレゾールが挙げられる。本明細書における最も好ましい保存剤は、ベンジルアルコールである。
【0135】
本発明はまた、生理学的に許容される少なくとも1つの担体または賦形剤と一緒に、1つまたは複数の抗体または抗体誘導体化合物を含む薬学的組成物も提供する。薬学的組成物は、例えば、1つまたは複数の水、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水またはホスフェート緩衝生理食塩水)、エタノール、鉱油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、ポリペプチド、またはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAもしくはグルタチオンなどのキレート剤、および/または保存剤を含むことができる。上述のように、他の活性成分を、(必ずしも必要ではないが)本明細書で提供される薬学的組成物中に含めることができる。
【0136】
担体は、しばしば化合物の安定性または生物学的利用能を制御する目的のため、患者に投与する前に、抗体または抗体誘導体に関連し得る物質である。かかる処方物内部で使用するための担体は、一般的に生体適合性を有し、生分解性も有し得る。担体には、例えば、血清アルブミン(例えばヒトまたはウシ)、卵アルブミン、ペプチド、ポリリジンなどの一価または多価分子、およびアミノデキストランなどの多糖類およびポリアミドアミンが挙げられる。担体はまた、例えば、ポリラクテート、ポリグリコレート、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリアクリレート、ラテックス、デンプン、セルロースまたはデキストランを含む、ビーズおよびミクロ粒子(microparticle)などの固体担体物質も含む。担体は、共有結合(直接的またはリンカー基を介してのいずれか)、非共有結合の相互作用または混合を含む、様々な方法において化合物を有し得る。
【0137】
薬学的組成物は、例えば、局所、経口、経鼻、直腸または非経口投与を含む、任意の適切な投与方式に関して処方することができる。ある種の実施形態では、経口使用に適切な形態の組成物が好ましい。このような形態には、例えば、丸剤、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁物、分散性粉末もしくは顆粒、エマルジョン、硬もしくは軟カプセル、またはシロップもしくはエリキシル剤が挙げられる。さらなる他の実施形態内では、本明細書で提供される組成物は、凍結乾燥物として処方することができる。本明細書で使用されるような非経口という用語は、皮下、皮内、血管内(例えば静脈内)、筋肉内、脊髄、頭骸内、くも膜下腔内および腹腔内注射、ならびに任意の類似の注射または注入技法を含む。
【0138】
経口使用を意図する組成物は、薬学的組成物の製造のための当該分野では公知の任意の方法にしたがって調製することができ、魅力的かつ風味のよい調製物を提供するために、甘味剤、矯味矯臭薬、着色剤、および保存剤などの1つまたは複数の薬剤を含むことができる。錠剤は、錠剤の製造に適する生理学的に許容される賦形剤と混合した有効成分を含む。このような賦形剤としては、例えば、不活性な希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム)、造粒剤および崩壊剤(例えば、コーンスターチ、またはアルギン酸)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、またはアカシア)、ならびに潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルク)が挙げられる。錠剤はコーティングされていなくてもよく、または消化管における崩壊および吸収を遅らせ、それによって長期間にわたって作用の持続を提供するために公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を使用してもよい。
【0139】
経口の使用のための処方物は、有効成分が不活性な固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、もしくはカオリン)と混合されている硬ゼラチンカプセル剤として、あるいは有効成分が水または油の媒体(例えば、ピーナツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油)と混合されている軟ゼラチンカプセル剤として与えられてもよい。水性懸濁物は、水性懸濁物の製造に適する賦形剤と混合された抗体または抗体誘導体を含んでいる。このような賦形剤には、懸濁化剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース(hydropropylmethylcellulose)、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴム)、ならびに分散剤または加湿薬(例えば、レシチンなどの天然に存在するホスファチド、ポリオキシエチレンステアレートなどのアルキレンオキシドの脂肪酸との縮合生成物、ヘプタデカエチレンオキシセタノールなどのエチレンオキシドの長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどの脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、もしくはポリエチレンソルビタンモノオレエートなどの脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物)が挙げられる。水性懸濁物は、1つまたは複数の保存剤(例えば、エチルもしくはn−プロピルp−ヒドロキシ安息香酸)、1つまたは複数の着色剤、1つまたは複数の矯味矯臭薬、および1つまたは複数の甘味剤(例えば、ショ糖もしくはサッカリン)を含むこともできる。シロップ剤およびエリキシル剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはショ糖などの甘味剤と一緒に調合されてもよい。このような処方物は、1つもしくは複数の粘滑剤、保存剤、矯味矯臭薬、および/または着色剤も含むことができる。
【0140】
油性懸濁物は、有効成分を植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはココナツ油)中に、または流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁することによって処方することができる。油性懸濁物は、ミツロウ、硬パラフィン、またはセチルアルコールなどの増粘剤を含むことができる。上に記載したものなどの甘味剤、および/または矯味矯臭薬を添加して風味のよい経口調製物を提供してもよい。このような懸濁物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存することができる。
【0141】
水の添加による水性懸濁物の調製に適する分散性の粉末および顆粒は、分散剤または加湿薬、懸濁化剤、および1つまたは複数の保存剤と混合した有効成分を提供する。適切な分散剤または加湿薬、および懸濁化剤は、すでに上記で言及したものによって例示される。さらなる賦形剤、例えば、甘味剤、矯味矯臭薬、および着色剤も存在してよい。
【0142】
薬学的組成物は水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は植物油(例えば、オリーブ油もしくはラッカセイ油)、鉱油(例えば、流動パラフィン)、またはこれらの組合せであってよい。適切な乳化剤としては、天然に存在するゴム(例えば、アカシアゴムまたはトラガカントゴム)、天然に存在するホスファチド(例えば、大豆、レシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトールに由来するエステルまたは部分エステル)、無水物(例えば、ソルビタンモノオレエート)、ならびに脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルのエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。乳剤はまた、1つまたは複数の甘味剤および/または矯味矯臭薬を含むことができる。
【0143】
薬学的組成物は、使用するビヒクルおよび濃度に依存して、モジュレータがビヒクル中に懸濁または溶解されている、無菌注射が可能な水性または油性懸濁物として調製することができる。かかる組成物は、上述のものなどの、適切な分散剤、加湿薬および/または懸濁化剤を使用する公知の技術に従って処方することができる。採用できる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、1,3−ブタンジオール、リンゲル液および等張食塩水がある。さらに、無菌の固定油は、溶媒または懸濁媒体として採用することができる。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む、刺激の少ない任意の固定油を採用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を、注射可能な組成物の調製に使用でき、局所麻酔剤などのアジュバント、保存剤および/または緩衝剤を、ビヒクル中に溶解することができる。
【0144】
薬学的組成物は、持続放出処方物(すなわち、投与後にモジュレータの徐放をもたらすカプセルなどの処方物)として処方することができる。かかる処方物は、一般的に周知の技術を用いて調製でき、例えば、経口、直腸もしくは皮下移植によって、または所望の標的部位に移植することによって投与することができる。かかる処方物内で使用するための担体は、生体適合性を有し、生分解性も有し得て、好ましくは、処方物は比較的一定レベルのモジュレータ放出を可能にする。持続放出処方物内に含まれる抗体または抗体誘導体の量は、例えば、移植の部位、放出の速度および期待される持続期間、ならびに処置または予防する疾患/障害の特性によって決まる。
【0145】
本明細書で提供される抗体または抗体誘導体は、一般的に、検出可能な程度にTNFに結合し、TNF媒介性疾患/障害を予防または阻害するのに十分な、体液(例えば、血液、血漿、血清、CSF、滑液、リンパ、細胞間質液、涙または尿)中の濃度に達する量で投与する。用量は、本明細書に記載のような認識できる患者の利益をもたらすとき、有効であると考えられる。好ましい全身の用量は、1日につき、体重1キログラムにつき約0.1mgから約140mg(1日につき患者1人につき約0.5mgから約7g)の範囲であり、経口での用量は、一般的に静脈内での用量より約5〜20倍多い。担体物質と組み合わせて単一投薬形態を産出できる抗体または抗体誘導体の量は、処置される受給者(host)および特定の投与様式によって変化する。投薬単位形態には、一般的に約1mgから約500mgの間の活性成分が含まれる。
【0146】
薬学的組成物は、TNFに向けられる抗体または抗体誘導体に応答する状態を処置するためにパッケージすることができる。パッケージされた薬学的組成物は、本明細書に記載のような少なくとも1つの抗体または抗体誘導体の有効量を保持する容器、および患者への投与後に、1つの抗体または抗体誘導体に応答する疾患/障害を処置するために含有組成物を使用することを示す説明書(例えばラベル)を含むことができる。
【0147】
本発明の抗体または抗体誘導体は、化学的に修飾することもできる。好ましい修飾基は、例えば、場合によって置換した直鎖もしくは分岐鎖ポリアルケン、ポリアルケニレンもしくはポリオキシアルキレンポリマー、または分岐したかもしくは分岐していない多糖類などのポリマーである。かかるエフェクター基は、インビボでの抗体の半減期を長くすることができる。合成ポリマーの特定の例には、場合によって置換した直鎖または分岐鎖ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)またはその誘導体が挙げられる。天然に存在する特定のポリマーには、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコゲンまたはその誘導体が挙げられる。ポリマーのサイズは、所望のように変化できるが、一般的に平均分子量は500Daから50000Daの範囲である。局所適用のために、抗体を組織に浸透するようにデザインする場合、ポリマーの好ましい分子量は、約5000Daである。ポリマー分子は、抗体、特に、WO0194585に記載のように、共有結合的に連結するヒンジペプチドを介して、Fabフラグメントの重鎖のC末端部に付着することができる。PEG部分の付着に関しては、「Poly(ethyleneglycol)Chemistry, Biotechnological and Biomedical Applications」、1992年、J. Milton Harris(編)、Plenum Press、New York、および「Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences」、1998年、M. Aslam and A. Dent、Grove Publishers、New Yorkを参照されたい。
【0148】
上記のように目的の抗体または抗体誘導体を調製した後、それを含む薬学的処方物を調製する。処方される抗体は、事前の凍結乾燥に供さず、本明細書で目的の処方物は、水性処方物である。好ましくは、処方物中の抗体または抗体誘導体は、scFvなどの抗体フラグメントである。処方物中に存在する抗体の治療有効量は、例えば、所望の用量体積および投与様式(複数可)を考慮に入れて決定する。約0.1mg/mlから約50mg/ml、好ましくは約0.5mg/mlから約25mg/ml、および最も好ましくは約2mg/mlから約10mg/mlが、処方物中の典型的な抗体濃度である。
【0149】
水性処方物は、pH緩衝溶液中の抗体または抗体誘導体を含めて調製する。本発明の緩衝液は、約4.5から約6.0、好ましくは約4.8から約5.5の範囲のpHを有し、最も好ましくは約5.0のpHを有する。この範囲内でpHを制御する緩衝液の例には、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩および他の有機酸の緩衝液が挙げられる。緩衝液の濃度は、約1mMから約50mM、好ましくは約5mMから約30mMであってよく、例えば緩衝液および処方物の所望の等張性によって決めることができる。好ましい緩衝液は、酢酸ナトリウム(約10mM)、pH5.0である。
【0150】
トニシファイアー(tonicifier)として働き、抗体を安定化できるポリオールは、処方物中に含まれる。好ましい実施形態では、抗体または抗体誘導体の沈殿を引き起こし得、および/または低pHで酸化を引き起こし得るため、処方物は塩化ナトリウムなどの塩をトニシファイ量(tonicifying amount)で含まない。好ましい実施形態では、ポリオールは、スクロースまたはトレハロースなどの非還元糖である。ポリオールは、処方物の所望の等張性に対して変化できる量で処方物中に添加する。好ましくは、水性処方物は等張であり、この場合、処方物中の適切なポリオール濃度は、例えば、約1%から約15%w/vの範囲、好ましくは約2%から約10%whvの範囲である。しかし、高張性または低張性処方物も適切であり得る。添加するポリオールの量も、ポリオールの分子量に対して変えることができる。例えば、二糖(トレハロースなど)と比較して、より少量の単糖(例えばマンニトール)を添加することができる。
【0151】
界面活性剤も、抗体または抗体誘導体処方物に添加する。典型的な界面活性剤には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80など)またはポロキサマー(例えばポロキサマー188)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。添加する界面活性剤の量は、処方した抗体/抗体誘導体の凝集を減少させ、および/または処方物中の粒子の形成を最小化し、および/または吸着を低下させるほどの量である。例えば、界面活性剤は、約0.001%から約0.5%、好ましくは約0.005%から約0.2%、および最も好ましくは約0.01%から約0.1%の量で処方物中に存在し得る。
【0152】
一実施形態では、処方物は、上記で同定した薬剤(すなわち、抗体または抗体誘導体、緩衝液、ポリオールおよび界面活性剤)を含み、本質的に、ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、クロロブタノールおよび塩化ベンゼトニウムなどの1つまたは複数の保存剤を含まない。別の実施形態では、特に処方物が複数用量の処方物である場合、保存剤を処方物中に含むことができる。保存剤の濃度は、約0.1%から約2%、最も好ましくは約0.5%から約1%の範囲であってよい。Remington’s Pharmaceutical Sciences 21st edition、Osol, A.編(2006年)に記載のものなどの、1つまたは複数の他の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を、それらが処方物の所望の特徴に悪影響を及ぼさないという条件で、処方物中に含めることができる。許容される担体、賦形剤または安定剤は、採用する投与量および濃度でレシピエントに毒性がなく、追加の緩衝剤、共溶媒、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤、EDTAなどのキレート剤、金属錯体(例えばZn−タンパク質複合体)、ポリエステルなどの生分解性ポリマー、ならびに/またはナトリウムなどの塩形成対イオンを含む。
【0153】
インビボの投与に使用する処方物は、無菌でなければならない。これは、処方物を調製する前または後に、無菌ろ過膜を通すろ過によって容易に成し遂げられる。
【0154】
処方物は、抗体を用いる処置が必要な哺乳動物、好ましくはヒトに、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑膜内、鞘内、経口、局所または吸入経路による、ボーラスとしてかまたはある期間にわたる持続的注入による静脈内投与などの公知の方法に従って投与する。好ましい実施形態では、処方物は、静脈内投与によって、哺乳動物に投与する。かかる目的のために、処方物は、例えば注射器を用いて、またはIVラインを介して注射することができる。
【0155】
抗体の適切な投与量(「治療有効量」)は、例えば、処置する病状、病状の重症度および経過、抗体を予防または治療のどちらの目的で投与するか、以前の治療、患者の病歴および抗体への応答、使用する抗体のタイプ、ならびに主治医の自由裁量によって決まる。抗体または抗体誘導体は、1回または1連の処置にわたって患者に適切に投与し、診断以降の任意の時間に患者に投与することができる。抗体または抗体誘導体は、単独の処置としてか、または問題とする病状の処置に有用な他の薬物もしくは治療と併せて投与することができる。
【0156】
一般的な提案として、投与する抗体または抗体誘導体の治療有効量は、1回投与かまたは複数回投与かは別にして、患者の体重に対して約0.1から約50mg/kgの範囲となり、使用する抗体の典型的な範囲は、例えば、毎日の投与で約0.3から約20mg/kg、より好ましくは約0.3から約15mg/kgとなる。しかし、他の投薬レジメンも有用であり得る。この治療の進行は、従来の技法によって容易にモニターされる。
【0157】
(製造品)
本発明の別の実施形態では、本発明の薬学的処方物を、好ましくは水性薬学的処方物を保持する容器を含む、製造品が提供され、その使用に関する説明書が場合によって提供される。適切な容器には、例えば、ボトル、小瓶および注射器が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。典型的な容器は、3〜20ccの単回使用のガラスの小瓶である。あるいは、複数用量処方物用に、容器は3〜100ccのガラス小瓶であってよい。容器は処方物を保持し、容器上のラベルにより、または容器に付随したラベルにより、使用に関する指示を示すことができる。製造品は、商業および使用者の視点から望まれる他の物質をさらに含むことができ、これには、他の緩衝液、希釈液、フィルタ、針、注射器、および使用に関する説明の付いた添付文書が挙げられる。
【実施例】
【0158】
(例示)
本開示を、さらに限定するものと解釈すべきではない以下の実施例によってさらに説明する。全ての図ならびにこの出願全体にわたって引用される全ての参考文献、特許および公開された特許出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に援用される。
【0159】
実施例全体にわたり、特に明記しない限り、以下の材料および方法を使用した。
【0160】
(一般的な材料および方法)
一般的に、本発明の実施では、特に示さない限り、化学、分子生物学、組換えDNA技術、免疫学(特に、例えば抗体技術)の従来技法、およびポリペプチド調製の標準技法を採用する。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning: Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年);Antibody Engineering Protocols(Methods in Molecular Biology)、510巻、Paul, S.、Humana Pr(1996年);Antibody Engineering: A Practical Approach(Practical Approach Series、169巻)、McCafferty編、Irl Pr(1996年);Antibodies: A Laboratory Manual、Harlowら、C.S.H.L. Press, Pub.(1999年);およびCurrent Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons(1992年)を参照されたい。
【0161】
(熱安定性の測定)
減衰全反射フーリエ変換IR(FTIR−ATR)スペクトルを、Tensor BrukerにおけるFT−IR Bio−ATRセルを使用して、様々な単鎖および追加の分子に関して入手した。分子を、3mg/mlまで濃縮し、PBS(pH6.5)に対して4℃で一晩中透析し、緩衝液のフロースルー(flow through)をブランクとして採取した。変性プロファイルを、5℃ステップ(25から95℃)の広範な温度で分子を熱チャレンジ(challenge)することによって入手した。全てのスペクトルの操作は、OPUSソフトウェアを用いて行った。主な緩衝液および一過性の雰囲気(COおよびHO)のバックグラウンドは、タンパク質スペクトルから差し引いた。結果のタンパク質スペクトルを、次いでベースライン補正し、タンパク質アミドIスペクトルを、期待される領域における最大幅の分解可能なピークの幅から決定した。第2の誘導体スペクトルを、平滑関数による3次多項式関数を用いて、アミドIバンドスペクトルに関して入手した。タンパク質構造における変化を、3つの低度測定に関して0%の変性、および3つの高度測定に関して100%変性と仮定する、初期カーブフィット(curve−fit)計算についての直線検定曲線を用いて、アミドIの第2誘導体分析によって、推定した。変性プロファイルを、ボルツマンシグモイドモデル(Boltzmann sigmoidal model)に適用する改変体毎の熱アンフォールディング転移(TM)の中間点を概算するのに使用した。
【0162】
(溶解性の測定)
様々なscFv分子の相対的な溶解性を、硫酸アンモニウムの存在下でタンパク質の凝集および沈殿を増強させた後、測定した。硫酸アンモニウムを水溶液中のタンパク質に添加し、塩−タンパク質の最終混合物における飽和を5%増加させた。動的な範囲における沈殿を実験的に決定し、飽和間隔は、最終混合物において2.5%の飽和間隔までこの範囲で減少した。硫酸アンモニウムの添加後、試料を静かに混合し、6000rpmで30分遠心分離した。上清中に残ったタンパク質を、硫酸アンモニウムの飽和のパーセント毎に回収した。溶解曲線を、NanoDropTM1000 Spectrophotometerを使用して、上清中のタンパク質濃度を測定することによって決定した。上清中に残った可溶性タンパク質の測定を正規化し、ボルツマンシグモイドモデルに適用する改変体毎の相対的な溶解性の中間点を推定するのに使用した。
【0163】
(短期間の安定性試験)
タンパク質を、可溶性凝集物および分解産物に関して、40℃で2週間インキュベーションした後、調べた。10mg/mlの濃度のタンパク質を、広範なpH(3.5、4.5、5.5、6.5、7.0、7.5および8.5)のPBSに対して4℃で一晩中透析した。標準緩衝液PBS(pH6.5)中の同じ濃度の対照タンパク質を、2週間の間−80℃で保管した。SDS−PAGEによる分解のバンドの決定は、t=0およびt=14d時点で行い、可溶性凝集物をSEC−HPLCにおいて評価した。40℃で2週間後、残った活性の決定を、Biacoreを使用して行った。
【0164】
(効力アッセイ)
抗TNFaバインダーの中和活性を、L929 TNFa媒介性細胞毒性アッセイにおいて評価した。アクチノマイシンで処理したマウスL929線維芽細胞の毒性を、組換えヒトTNF(hTNF)で誘発した。最大hTNF誘発性細胞毒性の90%は、TNF濃度1000pg/mlのときであると決定した。L929細胞を全て、ウシ胎仔血清(10%v/v)を補ったL−グルタミン培地を含む、フェノールレッドを含むRPMI1640中で培養した。抗TNFaバインダーの中和活性を、フェノールレッドおよび5%ウシ胎仔血清を含まないRPMI1640中で評価した。アンタゴニスト効果が最大半量阻害(EC50%)に到達する濃度を決定するために、様々な濃度の(0〜374ng/mL)抗TNFバインダーを、hTNF1000pg/mlの存在下でL929細胞に加える。用量反応曲線を可変勾配を伴う非線形シグモイド回帰とフィットさせ、EC50を計算した。
【0165】
(抗TNF scFvのBiacore結合分析)
pH5およびpH7.4(データは示さず)での結合親和性を測定するために、NTAセンサーチップおよびHisでタグ付けしたTNF(ESBATechで生成)を用いて、BIAcoreTM−T100での表面プラズモン共鳴測定を使用した。NTAセンサーチップの表面は、Ni2+NTAキレート化によってヒスチジンタグ付けした分子を捕獲するためニトリロ三酢酸(NTA)で予め固定化したカルボキシメチル化デキストランマトリックスからなっている。ヒトTNFa N−hisトリマー(5nM)を、これのN末端hisタグを介しニッケルによって捕獲し、ESBA105(分析物)を、3倍の連続希釈ステップにおいて30nMから0.014nMまでの範囲のいくつかの濃度で注入した。再生のステップでは、ニッケル、リガンド、および分析物によって形成された複合体を洗い流した。これにより、様々な試料に対して同じ再生条件が使用できるようになる。反応シグナルは、表面プラズモン共鳴(SPR)法によって産生され、共鳴単位(RU)において測定される。測定は全て25℃で行われる。インライン参照のセル補正に続いて緩衝液試料を差し引いた後、センサーグラム(sensorgram)を抗TNF scFv試料の各々に対して作成した。見かけの解離速度定数(k)、見かけの会合速度定数(k)、および見かけの解離平衡定数(K)を、BIAcore T100評価ソフトウェアバージョン1.1を用いて、1対1Langmuir結合モデル(one−to−one Langmuir binding model)を使用して計算した。
【0166】
(実施例1:CDR融合およびモノクローナルウサギ抗TNF抗体の機能的ヒト化)
(ウサギCDRの融合)
非ヒトのドナー抗体と最大の配列相同性を共有するヒト抗体アクセプターフレームワークを用いる伝統的なヒト化方法と異なり、ウサギCDRを、Min−graftを産生するためのフレームワークFW1.4((GGGGS)リンカーによって連結されている配列番号1および2)の中、またはMax−graftを産生するための「ウサギ化」フレームワークrFW1.4(配列番号92)もしくはその改変体であるrFW1.4(v2)(配列番号93)の中のいずれかに融合させた。両方のフレームワークとも、主に、所望の機能特性(溶解性および安定性)、広範囲のウサギCDRを収容するための構造適合性、ならびにウサギ可変ドメインコンセンサス配列に対する妥当な相同性に対して選択した。フレームワークrFW1.4は、実質的にあらゆるセットのウサギCDRに対する普遍的なアクセプターフレームワークとして役割を果たす目的でさらに操作されたFW1.4の誘導体である。安定かつ可溶性のフレームワーク配列FW1.4はウサギ抗体に対して高い相同性を示すが、これが入手可能な最も相同な配列というわけではない。
【0167】
(潜在的に結合に関与する残基の同定)
ウサギ可変ドメイン配列の各々に対して、最も近いウサギ生殖系列の対応物を同定した。最も近い生殖系列を確立することができなかった場合は、配列を、サブグループのコンセンサスまたは高いパーセント値の類似性を有するウサギ配列のコンセンサスに対して比較した。稀なフレームワーク残基は、起こり得る体細胞性の過剰変異の結果であって、したがって抗原の結合において役割を果たすとみなした。したがって、このような残基は、Max−graftを産生するためアクセプターフレームワークrFW1.4またはrFW1.4(v2)上へ融合させるためのものとみなされた。とりわけ、直接的な抗原接触に潜在的に関係付けられるか、またはVLおよびVHの配置に影響を及ぼす残基を融合させた。CDR構造に影響を及ぼすと記載されているさらなる残基を、必要に応じて置換した。CDRをFW1.4上に融合させた場合(Min−graft)、フレームワークの置換をしなかった。本明細書に開示するMax−graftを得るために融合させられたフレームワーク位置の例は、rFW1.4、rFW1.4(v2)、および本明細書で提供する目的のscFv配列のフレームワーク領域の配列アラインメントを作成することによって同定することができる。例えば、当該分野では公知のウェブツールを前記の目的に用いてもよい(例えば、http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/index.htmlで2009年6月23日に入手可能なClustal W、またはhttp://bioinfo.genotoul.fr/multalinで2009年6月23日に入手可能なMultiAlin)。rFW1.4およびrFW1.4(v2)が同じ残基を含み、目的のscFvが異なる残基を明らかにするフレームワーク位置は全て、Max−graftを得るために融合させられたフレームワーク位置である。
【0168】
(ドメインシャッフリング)
Min−graftの可変軽鎖を、可変重鎖Max−graftと組み合わせて、生物物理学的性質(溶解性および安定性)ならびに活性の点で最適の組合せを同定した。
【0169】
(scFvのクローニングおよび発現)
本明細書に記載し、特徴付けたscFvを以下の通りに生成した。ヒト化VL配列およびヒト化VH配列(配列番号72以外の、配列番号51〜88)を配列番号72のリンカーによって連結して以下の配向:NH−VL−リンカー−VH−COOHのscFvを得た(例えば、配列番号94〜121を参照されたい)。多くの場合において、様々なscFvをコードするDNA配列を、サービスプロバイダーであるEntelechon GmbH(www.entelechon.com)で新規に合成した。得られたDNA挿入物を、scFvのDNA配列の5’末端および3’末端に導入したそれぞれNcoIおよびHindIII制限酵素認識部位によって、細菌の発現ベクターであるpGMP002中にクローニングした。VLドメインのDNA配列とVHドメインのDNA配列との間に、BamHI制限酵素認識部位が位置する。いくつかの場合において、scFvをコードするDNAを新規に合成しなかったが、scFvを発現する構築物をドメインシャッフリングによってクローニングした。したがって、VLドメインを切り取り、NcoIおよびBamHI制限酵素認識部位によって新しい構築物中に導入し、VHドメインを切り取り、BamHIおよびHindIII制限酵素認識部位によって新しい構築物中に導入した。他の場合において、点変異を、最先端のアセンブリングPCR(assembling PCR)法を用いてVHドメインおよび/またはVLドメイン中に導入した。GMP002のクローニングは、WO2008006235の実施例1に記載されている。scFvの生成は、WO2008006235の実施例1に記載されているESBA105と同様に行った。
【0170】
(実施例2:ウサギCDRドナー抗体のプロファイリングおよび選択)
TNF阻害活性を有するウサギ抗体(「RabMab」)の選択のためにしたがった全般的な実験手順は以下の通りである:非常に可溶性のTNFイムノバインダーの産生におけるCDRについてのドナー抗体として、ウサギ抗体を用いた。ウサギをTNFαで免疫化した後、脾摘出術を行った。ハイブリドーマを産生するために、脾細胞をウサギから単離した。合計44のハイブリドーマを単離し、これらのハイブリドーマからの上清を結合親和性、生物学的効力、および結合特異性に対してプロファイリングした。
【0171】
図1は、44個の抗TNF RabMabハイブリドーマからの上清の、インビボでTNFαを中和する相対的能力を示す。培養したマウスL929線維芽細胞中TNFαの細胞毒性の阻害を測定することによって、中和を試験した。L929アッセイにおいて、上清は様々な効力を示した。EC50値(50%阻害を達成するのに有効な濃度)を、第1スクリーニング(青色バー)および第2スクリーニング(赤色バー)において決定し、各アッセイにおいて最高の成績を示したものに対して正規化した。TNF結合親和性をまた、各RabMabに関してBIACore分析によって測定した(緑色バー)。
【0172】
各ハイブリドーマによってコードされるRabMabについて配列決定も行い、配列を、エピトープクラスターの予測に基づいた系統学的分析に供した。結合活性が高く、中和活性が強力な4つの代表的なRabmab(EPI−6、EPI−19、EPI−34、およびEPI−43)を、CDR融合についてのドナー抗体として種々の系統学的ファミリーから選択した。さらなる4つのRabmab(EPI−1、EPI−15、EP−35、およびEP−42)を、分泌ELISAにおけるこれらの好ましい活性に基づいて、CDR融合のために選択した(図2を参照されたい)。
【0173】
(実施例3:CDR融合およびウサギドナー抗体の機能的ヒト化)
非ヒトのドナー抗体と最大の配列相同性を共有するヒト抗体アクセプターフレームワークを用いる伝統的なヒト化方法と異なり、品質管理アッセイを用いて所望の機能特性(溶解性および安定性)に対して予め選択されたヒトフレームワーク(FW1.4)中に、ウサギCDRを融合させた。可溶性かつ安定性のフレームワーク配列はRabMabとの高い相同性を示したが、選択されたアクセプター抗体が、入手可能な最も相同な配列ではない。
【0174】
rabmabの各々に対して数々のCDR融合片を産生した。本明細書で用いられる「Min−graft」または「min」の用語は、ウサギの可変ドメインからのウサギCDRを、天然に存在するヒトアクセプターフレームワーク(FW1.4、配列番号172)中に融合させることによって産生されたヒト化可変ドメインを意味する。フレームワーク領域における変更は行っていない。フレームワーク自体を所望の機能特性(溶解性および安定性)に対して予め選択した。本明細書で用いられる「Max−graft」または「max」という用語は、ウサギの可変ドメインからのウサギCDRを、「ウサギ化した」ヒトアクセプターフレームワークである「RabTor」(rFW1.4、配列番号173)中に、またはrFW1.4(v2)(配列番号174)と呼ばれるその誘導体中に融合させることによって産生されたヒト化可変ドメインを意味する。「RabTor」フレームワークは、推定可能なその前駆配列において異なる位置(例えば、体細胞の過剰変異の間に変化し、したがって抗原の結合におそらく寄与する位置)以外のドナーのフレームワーク残基を融合させる必要なしに、実質的に任意のセットのウサギCDRを受け入れる普遍的に適用可能なフレームワークを産生する目的で、ウサギ可変ドメインの構造および安定性に一般に関与するフレームワーク位置に、保存されているウサギの残基を組み入れることによって(そうでなければ、他の種においてかなり可変である)、調製したものである。推定可能な前駆配列を、最も近いウサギの生殖系列の対応物であると定義し、最も近い生殖系列の対応物を確立できなかった場合は、ウサギのサブグループのコンセンサスまたは高パーセント値の類似性を有するウサギ配列のコンセンサスであると定義する。「Min−Max」または「minmax」は、「Max−graft」の可変重鎖と組み合わされた「Min−graft」の可変軽鎖からなるヒト化可変ドメインを意味し、「Max−Min」または「maxmin」は、「Min−graft」の可変重鎖と組み合わされた「Max−graft」の可変軽鎖からなるヒト化可変ドメインを意味する。
【0175】
表2は、8つの異なるウサギモノクローナル抗体またはrabmab(EP1、EP6、EP15、EP19、EP34、EP35、EP42、およびEP43)から生じるヒト化単鎖抗体についての詳しい特徴付けのデータの要約を示すものである。いわゆる「min」融合片(例えば、EP1min)は、ウサギのドナーCDRだけが融合された構築物を意味し、いわゆる「max」融合片は、CDRだけではなくドナーフレームワークにおけるいくつかのアミノ酸位置も融合されたものを意味する。さらに、表2は、2つのHisでタグ付けされた単鎖抗体に対するデータ(EP34min_C−HisおよびEP19max_C−His)、ならびにWO2006/131013に記載される参照単鎖抗体ESBA105を示す。「L929」と表される第3の列は、ESBA105の効力と比べて、L929アッセイにおいて決定された様々な単鎖抗体の相対的な効力を示すものである。kon、koff、およびKについての値は、それぞれM−1−1、s−1、およびMの単位において示す。7番目の列は、FT−IRで決定した熱誘発アンフォールディングの中間点を示す。最後の列は、リフォールディングの取組み後、可溶化した封入体から得られる正確にフォールディングされたタンパク質の相対的収率を示す。
【0176】
表2
【0177】
【表2】

で詳述したBIACoreデータについてのいくつかの例を図3に示す:ヒトTNFαに結合するESBA105(図3a)、EP43max(図3b)、およびEP34max(図3c)に対する結合動態を示す。細胞の効力アッセイについての例を図4に示すが、これはL929アッセイにおいてESBA105(黒丸)対EP43max(白四角)を比較するものである。EP34max対市販の抗体であるインフリキシマブおよびアダリムマブを比較する細胞効力アッセイのさらなる例を図9および10に示す。
【0178】
(実施例4:強力なTNFαバインダーであるEP43maxの溶解性および安定性の最適化)
EP43maxを、その強力なTNF結合活性に基づき、さらなる最適化のために選択した。このイムノバインダーを生物物理学的に特徴付けることで、このイムノバインダーが熱アンフォールディングアッセイ(FTIR)において高温の変性中間点(Tm>70℃)を示すことを明らかにした(図5を参照されたい)。それでも、EP43maxを、熱アンフォールディングにおけるその広範囲の転移相を狭めるために、溶解性の最適化に供した。天然のEP43maxの溶解性を改善するために、VH鎖における12、103、または144の3つの残基位置をより親水性の高いアミノ酸で置換した。この組合せは、安定性または結合活性に影響を及ぼさずに天然のタンパク質の溶解性を増大させることが示された。(AHo位置12のV→S、AHo位置103のV→T、およびAHo位置144のL→T)を導入して、EP43maxの可変重鎖(VH)領域のV−Cドメインの境界面における疎水性残基を置換した。溶解性強化変異のほかに、9つの安定化変異(VLにおけるT10S、K47R、Y57S、L91F、およびT103V、ならびにVHにおけるE1Q、E6Q、S7T、およびV103LI)をEP43maxにおいて同定した(表3を参照されたい)。
【0179】
【表3−1】

【0180】
【表3−2】

これらの安定化の残基を、ESBATechの品質管理(QC)フレームワークの機能的コンセンサス分析から同定した。VLにおける位置1および3、ならびにVHにおける位置89の安定化の残基はEP43max分子に前から存在していた。さらなる安定化変異(M→L)をVL位置4で同定したが、抗原結合において予測されるその役割に基づいて考慮すべきことからはずした。
【0181】
(実施例5:強力なTNFαバインダーであるEP43maxの最適化された改変体)
表4および表5は、EP43maxの最適化された改変体3つに対する特徴付けデータを示す。
【0182】
【表4】

【0183】
【表5】

EP43_maxDHPはEP43maxの溶解性を増強した改変体であり、上記の3つの溶解性強化変異を含んでいる(AHo位置12のV→S、AHo位置103のV→T、およびAHo位置144のL→T)。EP43_maxminおよびEP43_minmaxの改変体を、「min」融合片と「max」融合片との間のドメインシャッフリングによって産生した。例えば、「minmax」改変体は、軽鎖の最小の融合片(CDR融合片のみ)のバージョンおよび重鎖の最大の融合片バージョン(すなわち、融合されたウサギCDRおよび抗原結合に関与するウサギフレームワーク残基)を含んでおり、「maxmin」改変体は軽鎖の最大の融合片バージョンおよび重鎖の最小の融合片バージョンを含んでいた。
【0184】
EP43maxおよびその最適化された改変体の熱変性曲線を、FTIR分析によって比較した(図6および表6を参照されたい)。
【0185】
【表6】

EP43minmaxは、EP43maxよりも低いアンフォールディングの中間点を有することを見出した。
【0186】
さらに、mimax改変体は1段階のアンフォールディング転移を示し、このことは、両方のドメインが非常に類似した温度でアンフォールディングすることを指摘した。EP43max(図7A)およびそのEP43minmax改変体(図7B)を、熱ストレス試験においてさらに比較した。高温(50℃、60℃、および70℃)の熱濃度(thermal concentration)の後、βシート含量量および可溶性タンパク質の濃度を評価した。EP43minmaxは、60℃の中間温度においてEP43maxよりもかなり安定であった。
【0187】
(実施例6:EP34maxと市販のTNFαバインダーとの比較)
EP34max、アダリムマブ、およびインフリキシマブが組換えヒトTNFα1000pg/mlの細胞毒性活性を阻止する能力を、L929アッセイにおいて上記に詳述した通りに比較した。EP43max、アダリムマブ、およびインフリキシマブが組換えヒトTNFα10pg/mlの細胞毒性活性を阻止する能力を、Kym−1アッセイにおいて評価した。結果を、図9a、b、および図10a、bにそれぞれ示す。
【0188】
図9aは、EP34maxおよびアダリムマブが、組換えヒトTNFα1000pg/mlの細胞毒性活性を阻止する効力を示す(マウスL929細胞)。EP34maxおよびアダリムマブについてのIC50を、それぞれ1.03ng/mlおよび8.45ng/mlと決定した。図9bは、アダリムマブおよびEP34maxが、組換えヒトTNFα10pg/mlの細胞毒性活性を阻止する効力を示す(ヒトKym−1細胞)。アダリムマブおよびEP34max(791)についてのIC50を、それぞれ66.2ng/mlおよび0.69ng/mlと決定した。
【0189】
図10aは、EP34maxおよびインフリキシマブが、組換えヒトTNFα1000pg/mlの細胞毒性活性を阻止する効力を示す(マウスL929細胞)。EP34maxおよびインフリキシマブについてのIC50を、それぞれ1.04ng/mlおよび13.9ng/mと決定した。図10bは、インフリキシマブおよびEP34max(791)が、組換えヒトTNFα10pg/mlの細胞毒性活性を阻止する効力を示す(ヒトKym−1細胞)。インフリキシマブおよびEP34maxについてのIC50を、それぞれ14.98ng/mlおよび0.63ng/mlと決定した。このように、両方の場合において、EP34maxはインフリキシマブより優れた成績を示した。
【0190】
(他の実施形態)
本発明は、添付の付加物AからEに記載するあらゆる方法、参考文献、および/または組成物も含むことが理解される。
【0191】
(等価物)
前述の記載を考慮すると、本発明の多くの修正および代替の実施形態が、当業者に明らかである。したがって、この記載は、単なる例示として解釈すべきであり、本発明を実施するのに最良の様式を当業者に教示するためのものである。構造の詳細は、本発明の精神から逸脱することなく実質的に変えることができ、添付の特許請求の範囲内となる全ての修正の独占的使用権を保有する。本発明は、添付の特許請求の範囲および適用可能な法律の規則によって要求される程度にのみ制限されるものであると意図する。
【0192】
特許、特許出願、論説、書籍、論文、論述、ウェブページ、図および/または添付書類を含む、本出願に引用された全文献および類似物は、かかる文献および類似物の書式に関わらず、参照によりそれらの全体が明示的に援用される。援用された文献および類似物の1つまたは複数が、定義された用語、用語の使用法、記載された技法または同様のものを含む本明細書と異なるか相反する場合には、本明細書が優先される。
【0193】
本明細書で使用される節の見出しは、単に構成のためのものであり、記載された主題を限定するものと決して解釈すべきではない。
【0194】
本発明は、様々な実施形態および実施例と併せて記載されているが、本教示がかかる実施形態または実施例に限定されるという意図はない。それどころか、当業者に理解されるように、本発明は、様々な代替、修正および等価物を包含する。
【0195】
特許請求の範囲は、その趣旨を述べない限り、記載された順番または要素に限定されると読むべきではない。形態および詳細の様々な変更は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、行うことができると理解すべきである。したがって、以下の特許請求の範囲およびその等価物の範囲および精神内となる全実施形態が特許請求される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ヒト重鎖可変フレームワーク配列、ならびにウサギイムノバインダーに由来するCDR H1、CDR H2、およびCDR H3配列、ならびに/または
(ii)ヒト軽鎖可変フレームワーク配列、ならびにウサギイムノバインダーに由来するCDR L1、CDR L2、およびCDR L3配列
を含む、ヒトTNFαに特異的に結合するイムノバインダー。
【請求項2】
前記ヒト重鎖可変領域フレームワークが配列番号1に少なくとも90%の同一性を有し、かつ/または前記ヒト軽鎖可変領域フレームワーク配列が配列番号2に少なくとも85%の同一性を有する、請求項1に記載のイムノバインダー。
【請求項3】
前記ヒト重鎖可変領域フレームワークが配列番号1であるか、もしくは配列番号1を含み、かつ/または前記ヒト軽鎖可変領域フレームワーク配列が配列番号2であるか、もしくは配列番号2を含む、請求項2に記載のイムノバインダー。
【請求項4】
前記ヒト重鎖可変領域フレームワークが配列番号89もしくは配列番号90であるか、または配列番号89もしくは配列番号90を含み、かつ/または前記ヒト軽鎖可変領域フレームワーク配列が配列番号91であるか、もしくは配列番号91を含む、請求項2に記載のイムノバインダー。
【請求項5】
AHoナンバリングシステムによる、前記重鎖フレームワーク(VH)における位置H24、H25、H56、H82、H84、H89、およびH108からなる群からの位置に1つもしくは複数の置換を含み、かつ/または前記軽鎖フレームワーク(VL)における位置L87に置換を含む、請求項1または2のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項6】
前記置換が、AHoナンバリングシステムによる、位置H24のスレオニン(T)、位置H25のバリン(V)、位置H56のグリシン(G)またはアラニン(A)、位置H82のリジン(K)、位置H84のスレオニン(T)、位置H89のバリン(V)および位置H108のアルギニン(R)、ならびに位置L87のスレオニン(T)からなる群より選択される、請求項5に記載のイムノバインダー。
【請求項7】
イムノバインダーが、重鎖のアミノ酸の位置12、103、および144(AHoナンバリング)の少なくとも1つにおいて溶解性強化置換を含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項8】
前記溶解性強化置換が、(a)位置12のセリン(S)、(b)位置103のスレオニン(T)、および(c)位置144のスレオニン(T)からなる群より選択される、請求項7に記載のイムノバインダー。
【請求項9】
配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8からなる群より選択される配列に少なくとも80%同一であるCDR配列を1つまたは複数さらに含む、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項10】
AHoナンバリングシステムによる、前記軽鎖可変領域(VL)の位置22、74、95、97、および99の少なくとも1つに、好ましくは位置L22のスレオニン(T)、位置L74のフェニルアラニン(F)またはチロシン(Y)、L95のグルタミン酸(E)、および位置L99のアラニン(A)の少なくとも1つの置換を有する、請求項9に記載のイムノバインダー。
【請求項11】
配列番号51、配列番号53、および配列番号55からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに/または配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号57、配列番号58、および配列番号59からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項9から10のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項12】
配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、および配列番号102に少なくとも90%、好ましくは100%の配列同一性を有する、請求項9から11のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項13】
配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群より選択される配列に少なくとも80%同一であるCDR配列を1つまたは複数さらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項14】
配列番号60および配列番号62からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに/または配列番号61および配列番号63からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項13に記載のイムノバインダー。
【請求項15】
配列番号103、配列番号104、または配列番号105に少なくとも90%、好ましくは100%の配列同一性を有する、請求項14に記載のイムノバインダー。
【請求項16】
配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、および配列番号20からなる群より選択される配列に少なくとも80%同一であるCDR配列を1つまたは複数さらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項17】
AHoナンバリングシステムによる、前記軽鎖可変領域(VL)の位置87、89、および92の少なくとも1つにおける置換を有する、請求項15に記載のイムノバインダー。
【請求項18】
配列番号64および配列番号66からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに/または配列番号65および配列番号67からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項16から17のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項19】
配列番号106、配列番号107、または配列番号108に少なくとも90%、好ましくは100%の配列同一性を有する、請求項15から18のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項20】
配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、および配列番号26からなる群より選択される配列に少なくとも80%同一であるCDR配列を1つまたは複数さらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項21】
前記重鎖フレームワークが、AHoナンバリングシステムによる、フレームワーク位置85および88に欠失を有する、請求項20に記載のイムノバインダー。
【請求項22】
配列番号68および配列番号70からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに/または配列番号69および配列番号71からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項20から21のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項23】
配列番号109、配列番号110、または配列番号111に少なくとも90%、好ましくは100%の配列同一性を有する、請求項19から22のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項24】
配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、および配列番号32からなる群より選択される配列に少なくとも80%同一であるCDR配列を1つまたは複数さらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項25】
前記重鎖フレームワークが、AHoナンバリングシステムによる、フレームワーク位置85および88に欠失を有する、請求項24に記載のイムノバインダー。
【請求項26】
AHoナンバリングシステムによる、前記軽鎖可変領域(VL)の位置86および87の少なくとも1つに、好ましくは位置L87のスレオニン(T)および位置L88のグルタミン(Q)の少なくとも1つの置換を有する、請求項24から25のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項27】
配列番号73および配列番号75からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに/または配列番号74および配列番号76からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項24から26のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項28】
配列番号112または配列番号113に少なくとも90%、好ましくは100%の配列同一性を有する、請求項24から27のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項29】
配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、および配列番号38からなる群より選択される配列に少なくとも80%同一であるCDR配列を1つまたは複数さらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項30】
前記重鎖フレームワークが、AHoナンバリングシステムによる、フレームワーク位置85および88に欠失を有する、請求項29に記載のイムノバインダー。
【請求項31】
AHoナンバリングシステムによる、前記軽鎖可変領域(VL)の位置15、48、90の少なくとも1つに置換を有する、請求項29から30のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項32】
配列番号77および配列番号79からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに/または配列番号78および配列番号80からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項29から31のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項33】
配列番号114または配列番号115に少なくとも90%、好ましくは100%の配列同一性を有する、請求項29から32のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項34】
配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、および配列番号44からなる群より選択される配列に少なくとも80%同一であるCDR配列を1つまたは複数さらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項35】
AHoナンバリングシステムによる、前記軽鎖可変領域(VL)の位置57および87の少なくとも1つに、好ましくは位置L57のバリン(V)および位置L87のスレオニン(T)の少なくとも1つの置換を有する、請求項34に記載のイムノバインダー。
【請求項36】
前記重鎖フレームワークが、AHoナンバリングシステムによる、フレームワーク位置85および88に欠失を有する、請求項34から35のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項37】
AHoナンバリングシステムによる、前記軽鎖可変領域の位置1、3、4、10、47、57、91、および103の少なくとも1つにおける安定性強化置換、好ましくは、(a)位置1のグルタミン酸(E)、(b)位置3のバリン(V)、(c)位置4のロイシン(L)、(d)位置10のセリン(S)、(e)位置47のアルギニン(R)、(e)位置57のセリン(S)、(f)位置91のフェニルアラニン(F)、および(g)位置103のバリン(V)からなる群より選択される少なくとも1つの安定性強化置換を有する、請求項34から36のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項38】
配列番号81および配列番号83からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに/または配列番号82および配列番号84からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項34から37のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項39】
配列番号116、配列番号117、または配列番号118に少なくとも90%、好ましくは100%の配列同一性を有する、請求項34から38のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項40】
配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、および配列番号50からなる群より選択される配列に少なくとも80%同一であるCDR配列を1つまたは複数さらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項41】
前記重鎖フレームワークが、AHoナンバリングシステムによる、フレームワーク位置85および88に欠失を有する、請求項40に記載のイムノバインダー。
【請求項42】
AHoナンバリングシステムによる、前記軽鎖可変領域の位置1、3、4、10、47、57、91、および103の少なくとも1つに安定性強化置換、好ましくは、(a)位置1のグルタミン酸(E)、(b)位置3のバリン(V)、(c)位置4のロイシン(L)、(d)位置10のセリン(S)、(e)位置47のアルギニン(R)、(e)位置57のセリン(S)、(f)位置91のフェニルアラニン(F)、および(g)位置103のバリン(V)からなる群より選択される少なくとも1つの安定性強化置換を有する、請求項40から41のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項43】
配列番号85および配列番号87からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)、ならびに/または配列番号86および配列番号88からなる群より選択される配列に少なくとも90%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項40から42のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項44】
配列番号119、配列番号120、または配列番号121に少なくとも90%、好ましくは100%の配列同一性を有する、請求項40から43のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項45】
抗体、scFv、Fab、またはDabである、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー。
【請求項46】
ヒトTNFαに対する結合を、前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダーと競合する、配列番号3から50のいずれかのCDRと異なるCDRを有するイムノバインダー。
【請求項47】
前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダーと同じヒトTNFα上のエピトープに結合する、配列番号3から50のいずれかのCDRと異なるCDRを有するイムノバインダー。
【請求項48】
前述の請求項のいずれか一項に記載のイムノバインダー、および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項49】
前述の請求項のいずれか一項に記載の可変重鎖(VH)領域および/または可変軽鎖(VL)領域をコードする、単離された核酸分子。
【請求項50】
請求項49に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項51】
請求項50に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項52】
被験体がTNFα媒介性疾患について処置されるように、前述の請求項のいずれか一項に記載の抗体を該被験体に投与することを含む、被験体におけるヒトTNFα媒介性疾患を処置または予防する方法。
【請求項53】
前記TNFα媒介性疾患が、炎症の慢性状態および/または自己免疫状態全般、免疫媒介性炎症性障害全般、炎症性CNS疾患、眼、関節、皮膚、粘膜、中枢神経系、消化管、尿路、または肺を冒す炎症性疾患、ブドウ膜炎の状態全般、網膜炎、HLA−B27+ブドウ膜炎、ベーチェット病、眼乾燥症候群、緑内障、シェーグレン症候群、真性糖尿病(糖尿病性神経障害を含む)、インスリン抵抗性、関節炎の状態全般、慢性関節リウマチ、変形性関節症、反応性関節炎およびライター症候群、若年性関節炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、ギランバレー症候群、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、サルコイドーシス、糸球体腎炎、慢性腎疾患、膀胱炎、乾癬(乾癬性関節炎を含む)、汗腺膿瘍、皮下脂肪組織炎、壊疽性膿皮症、SAPHO症候群(滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨化過剰症、および骨炎)、ざ瘡、スウィート症候群、天疱瘡、クローン病(腸外の症状発現を含む)、潰瘍性大腸炎、気管支喘息、過敏性肺臓炎、一般的なアレルギー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、ウェジナー肉芽腫症、川崎病、巨細胞性動脈炎、チャーグストラウス脈管炎、結節性多発性動脈炎、火傷、対宿主性移植片病、宿主対移植片反応、臓器または骨髄移植後の拒絶反応の発現、脈管炎の全身的および局所的状態全般、全身性および円板状エリテマトーデス、多発性筋炎および皮膚筋炎、強皮症、子癇前症、急性および慢性膵炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、眼の手術(例えば、白内障(眼水晶体置換)もしくは緑内障手術)、関節手術(関節鏡視下手術を含む)、関節関連構造(例えば、靭帯)の手術、口および/または口腔外科手術、侵襲性が最小である心血管手技(例えば、PTCA、アテレクトミー、ステント置換)、腹腔鏡下および/または内視鏡下の腹腔内および婦人科手技、内視鏡下の泌尿器科手技(例えば、前立腺手術、尿管鏡検査、膀胱鏡検査、間質性膀胱炎)後などの手術後炎症全般、または手術時の炎症(予防)全般、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ベル麻痺、クロイツフェルトヤコブ病、がんに関連する骨溶解、がんに関連する炎症、がんに関連する疼痛、がんに関連する悪液質、骨転移、TNFαの中枢効果によって引き起こされていているか、または末梢効果によって引き起こされているかにかかわりなく、炎症型疼痛、または侵害受容性疼痛、または神経障害性疼痛のタイプと分類されているかにかかわりなく、急性型および慢性型の疼痛、坐骨神経痛、腰痛、手根管症候群、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、痛風、疱疹後神経痛、線維筋痛症、局所的疼痛状態、腫瘍の転移による慢性疼痛症候群、月経困難症、細菌性、ウイルス性、または真菌性敗血症、結核、AIDS、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈疾患、高血圧、脂質異常症、心不全、および慢性心不全からなる群より選択される、請求項52に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−525358(P2011−525358A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515048(P2011−515048)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000219
【国際公開番号】WO2009/155723
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(502233344)エスバテック、アン アルコン バイオメディカル リサーチ ユニット、エルエルシー (19)
【氏名又は名称原語表記】ESBATech, an Alcon Biomedical Research Unit, LLC
【Fターム(参考)】