説明

TNFα活性が有害である疾患を治療するための低用量方法

【課題】低用量のTNFαインヒビターを投与することを含んでなる、TNFαに関わる疾患の治療方法の提供。
【解決手段】TNFα活性が有害である疾患を治療するための、例えば抗TNFα抗体を含むTNFαインヒビターの低用量での投与による治療方法。該抗体は高いアフィニティーおよび遅い解離速度論で可溶性hTNFαに結合し、TNFα活性が有害である疾患を治療する能力を有する組換えヒト抗体のようなヒト抗体が好んで用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2002年10月24日に出願された米国仮出願第60/421262号の優先権を主張する。本願は、米国特許第6090382号、第6258562号および第6509015号に関連する。本願はまた、2001年3月7日に出願された米国特許出願第09/801185号、および2002年11月22日に出願された米国特許出願第10/302356号にも関連する。本願はまた、2002年6月5日に出願された米国特許出願第10/163657号、および2002年4月26日に出願された米国特許出願第10/133715号にも関連する。さらに、本願は、ともに2002年8月16日に出願された米国特許出願第10/222140号、および米国仮出願第60/403907号にも関連する。本願はまた、2002年7月19日に出願された米国仮出願第60/397275号、2002年9月16日に出願された米国仮出願第60/411081号、および2003年3月18日に出願された米国仮出願第60/455777号にも関連する。本願はまた、米国特許出願第10/622932号、第10/623039号、第10/623076号、第10/623065号、第10/622928号、第10/623075号、第10/623035号、第10/622683号、第10/622205号、第10/622210号、第10/622683号にも関連し、これらはいずれも2003年7月18日に出願されたものである。これらの特許および特許出願のそれぞれの内容全体は、本明細書中に参考として援用されている。
【0002】
本発明は、TNFα活性が有害である疾患を治療するための低用量方法に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、単球およびマクロファージを含む多数の細胞型により産生されるサイトカインであり、元々は、それが或るマウス腫瘍の壊死を誘発する能力に基づいて同定された(例えば、Old,L.(1985)Science 230:630−632を参照されたい)。その後、悪液質に関連したカケクチンと称される因子がTNFαと同じ分子であることが示された。TNFαはショックの仲介に関連づけられている(例えば、Butler,B.およびCerami,A.(1988)Annu.Rev.Biochem.57:505−518;Beutler,B.およびCerami,A.(1989)Annu.Rev.Immunol.:625−655を参照されたい)。さらに、TNFαは、敗血症、感染症、自己免疫疾患、移植拒絶反応および移植片対宿主疾患を含む種々の他のヒト疾病および疾患の病態生理に関連づけられている(例えば、Moeller,A.ら(1990)Cytokine :162−169;Moellerら,米国特許第5,231,024号;Moeller,A.ら,欧州特許公開番号260 610 Bl;Vasilli,P.(1992)Annu.Rev.Immunol.10:411−452;Tracey,K.J.およびCerami,A.(1994)Annu.Rev.Med.45:491−503を参照されたい)。
【0004】
種々のヒト疾患においてはヒトTNFα(hTNFα)が有害な働きをするため、治療方法は、hTNFα活性を阻害または相殺するように設計されている。特に、hTNFαに結合しそれを中和する抗体が、hTNFα活性を阻害するための手段として求められている。そのような抗体の最も初期のものの幾つかは、hTNFαで免疫されたマウスのリンパ球から調製されたハイブリドーマにより分泌されるマウスモノクローナル抗体(mAb)であった(例えば、Hahn Tら(1985)Proc Natl Acad Sci USA 82:3814−3818;Liang,C−M.ら,(1986)Biochem.Biophys.Res.Commun.137:847−854;Hirai,M.ら,(1987)J.Immunol.Methods 96:57−62;Fendly,B.M.ら,(1987)Hybridoma :359−370;Moeller,A.ら(1990)Cytokine :162−169;Moellerら,米国特許第5,231,024;Wallach,D.,欧州特許公開番号186 833 B1;Oldら,欧州特許出願公開番号218 868;Moeller,A.ら,欧州特許公開番号260 610 B1を参照されたい)。これらのマウス抗hTNFα抗体は、しばしば、hTNFαに対して高いアフィニティーを示し(例えば、K10−9M)、hTNFα活性を中和し得たが、それらのインビボでの使用は、ヒトへのマウス抗体の投与に関連した問題(例えば、短い血清半減期、あるヒトエフェクター機能を誘発し得ないこと、ヒトにおいてマウス抗体に対する望ましくない免疫応答(「ヒト抗マウス抗体」(HAMA)反応)を誘起することにより制限されうる。
【0005】
ヒトにおける完全マウス抗体の使用に関連する問題を克服するための試みにおいて、マウス抗hTNFα抗体が、より「ヒト様」となるよう遺伝子的に工作されてきた。例えば、抗体鎖の可変領域がマウス由来であり、抗体鎖の定常領域がヒト由来であるキメラ抗体が製造されている(Knight,D.Mら,(1993)Mol.Immunol.30:1443−1453;Daddona,P.E.ら,PCT公開番号WO 92/16553)。また、抗体可変領域の超可変ドメインはマウス由来であるが、可変領域の残部および抗体定常領域がヒト由来であるヒト抗体も製造されている(Adair,J.R.ら,PCT公開番号WO 92/11383)。しかし、これらのキメラおよびヒト化抗体は幾つかのマウス配列を尚も保有しているため、それらは、例えば慢性関節リウマチのような慢性適応症のために長期投与した場合には特に、望ましくない免疫反応、ヒト抗キメラ抗体(HACA)反応を尚も誘起しうる(例えば、Elliott,M.J.ら,(1994)Lancet 344:1125−1127;Elliot,M.J.ら,(1994)Lancet 344:1105−1110を参照されたい)。
【0006】
マウスmAbまたはその誘導体(例えば、キメラまたはヒト化抗体)より好ましいhTNFα阻害物質は完全ヒト抗hTNFα抗体であろう。なぜなら、そのような物質は、長期間の使用であってもHAMA反応を誘起しないはずだからである。ヒトハイブリドーマ技術を用いて、hTNFαに対するヒトモノクローナル自己抗体が製造されている(Boyle,P.ら,(1993)Cell.Immunol.152:556−568;Boyle,P.ら,(1993)Cell.Immunol.152:569−581;Boyleら,欧州特許出願公開番号614 984 A2)。しかし、これらのハイブリドーマ由来モノクローナル自己抗体が有する、hTNFαに対するアフィニティーは、通常の方法によっては求められない程に低く、可溶性hTNFαに結合し得ず、hTNFα誘導細胞傷害性を中和し得ないと報告された(Boyleら,前掲を参照されたい)。さらに、ヒトハイブリドーマ技術の成功は、hTNFαに特異的な自己抗体を産生するリンパ球がヒト末梢血内に天然に存在するかどうかに左右される。ヒト被験者においてhTNFαに対する血清自己抗体を検出した研究もあるが(Fomsgaard,A.ら,(1989)Scand.J.Immunol.30:219−223;Bendtzen,K.ら,(1990)Prog.Leukocyte Biol.10B:447−452)、検出していない研究もある(Leusch,H−G.ら,(1991)J.Immunol.Methods 139:145−147)。
【0007】
天然に生ずるヒト抗hTNFα抗体の代替物は、組換えhTNFα抗体であろう。比較的低いアフィニティー(すなわち、K〜10−7M)および速いオフ(off)速度(すなわち、Koff〜10−2−1)でhTNFαに結合する組換えヒト抗体が記載されている(Griffiths,A.D.ら,(1993)EMBO J.12:725−734)。しかし、それらの比較的速い解離速度論のため、これらの抗体は治療用途に適していないかもしれない。また、hTNFα活性を中和せず、むしろ、細胞表面へのhTNFαの結合を増強し、hTNFαのインターナリゼーションを増強する組換えヒト抗hTNFαが記載されている(Lidbury,A.ら,(1994)Biotechnol.Ther.:27−45;Aston,R.ら,PCT公開番号WO 92/03145)。
【0008】
したがって、高いアフィニティーおよび遅い解離速度論で可溶性hTNFαに結合し、TNFα活性が有害である疾患を治療する能力を有する組換えヒト抗体のようなヒト抗体が、尚も必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,231,024号明細書
【特許文献2】欧州特許第260 610号明細書
【特許文献3】欧州特許第186 833号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第218 868号明細書
【特許文献5】国際公開第92/16553号
【特許文献6】国際公開第92/11383号
【特許文献7】欧州特許出願公開第614 984号明細書
【特許文献8】国際公開第92/03145号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Old,L.(1985)Science 230:630−632
【非特許文献2】Beutler,B.およびCerami,A.(1988)Annu.Rev.Biochem.57:505−518
【非特許文献3】Beutler,B.およびCerami,A.(1989)Annu.Rev.Immunol.7:625−655
【非特許文献4】Moeller,A.ら(1990)Cytokine 2:162−169
【非特許文献5】Vasilli,P.(1992)Annu.Rev.Immunol.10:411−452;Tracey,K.J.
【非特許文献6】Cerami,A.(1994)Annu.Rev.Med.45:491−503
【非特許文献7】Hahn Tら(1985)Proc Natl Acad Sci USA 82:3814−3818
【非特許文献8】Liang,C−M.ら,(1986)Biochem.Biophys.Res.Commun.137:847−854
【非特許文献9】Hirai,M.ら,(1987)J.Immunol.Methods 96:57−62
【非特許文献10】Fendly,B.M.ら,(1987)Hybridoma 6:359−370
【非特許文献11】Moeller,A.ら(1990)Cytokine 2:162−169
【非特許文献12】Knight,D.Mら,(1993)Mol.Immunol.30:1443−1453
【非特許文献13】Elliott,M.J.ら,(1994)Lancet 344:1125−1127
【非特許文献14】Elliot,M.J.ら,(1994)Lancet 344:1105−1110
【非特許文献15】Boyle,P.ら,(1993)Cell.Immunol.152:556−568
【非特許文献16】Boyle,P.ら,(1993)Cell.Immunol.152:569−581
【非特許文献17】Fomsgaard,A.ら,(1989)Scand.J.Immunol.30:219−223
【非特許文献18】Bendtzen,K.ら,(1990)Prog.Leukocyte Biol.10B:447−452
【非特許文献19】Leusch,H−G.ら,(1991)J.Immunol.Methods 139:145−147
【非特許文献20】Griffiths,A.D.ら,(1993)EMBO J.12:725−734
【非特許文献21】Lidbury,A.ら,(1994)Biotechnol.Ther.5:27−45
【発明の概要】
【0011】
発明の概要
本発明は、少なくとも部分的には、TNFα活性が有害である疾患を治療するための、例えば抗TNFα抗体を含むTNFαインヒビターの低用量での投与方法に関する。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的には、TNFα活性(例えば、ヒトTNFα活性)が有害である疾患を治療するための低用量方法に関する。該方法は、該疾患が治療されるように、TNFαインヒビターの有効量を低用量で被験体に投与することを含む。本発明はまた、低用量のTNFαインヒビターを、他の治療剤と組合せて投与する方法、およびTNFαインヒビターと薬学的に許容される担体とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0013】
本明細書中で用いる「ヒトTNFα」(本明細書中ではhuTNF、hTNFα、または単にhTNFと略される)なる用語は、17kDの分泌型および26kDの膜結合型として存在するヒトサイトカインを指すものと意図され、その生物学的に活性な形態は、非共有結合した17kDの分子の三量体から構成される。hTNFαの構造は、例えば、Pennica,D.ら,(1984)Nature 312:724−729;Davis,J.M.ら,(1987)Biochemistry 26:1322−1326;およびJones,E.Y.ら,(1989)Nature 338:225−228に更に詳しく記載されている。ヒトTNFαなる用語は、組換えヒトTNFα(rhTNFα)を含むと意図され、これは、標準的な組換え発現方法により製造したり、商業的に購入(R & D Systems,Catalog No.210−TA,Minneapolis,MN)することが可能である。
【0014】
「TNFαインヒビター」なる用語は、TNFαを阻害する物質を含む。TNFαインヒビターの具体例には、エタネルセプト(etanercept)(ENBREL,Immunex)、インフリキシマブ(infliximab)(REMICADE,Johnson and Johnson)、ヒト抗TNFモノクローナル抗体(D2E7,Knoll Pharmaceuticals)、CDP 571(Celltech)およびCDP 870(Celltech)、ならびにTNFα活性が有害である疾患に罹患した又はその恐れのある被験体に投与されると該疾患が治療されるようにTNFα活性を阻害する他の化合物が含まれる。この用語はまた、本明細書ならびに米国特許第6,090,382号および第6,258,562 B1号ならびに米国特許出願第09/540,018号および第09/801,185号に記載の抗TNFαヒト抗体および抗体部分のそれぞれを含む。
【0015】
本明細書中で用いる「抗体」なる用語は、ジスルフィド結合により相互連結された2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖である、4本のポリペプチド鎖から構成される免疫グロブリン分子を意味すると意図される。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書中ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域はCH1、CH2およびCH3の3つのドメインから構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書中ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメインCLから構成される。VHおよびVL領域は更に、相補性決定領域(CDR)と称する、超可変性の領域に細分することが可能であり、それらの領域の間には、フレームワーク領域(FR)と称する、より保存的である領域が存在する。それぞれのVHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。本発明の抗体は、米国特許第6,090,382号および第6,258,562 B1号ならびに米国特許出願第09/540,018および第09/801,185号(それらのそれぞれの全体が参考として本明細書に援用されている)に更に詳しく記載されている。
【0016】
本明細書中で用いる抗体の「抗原結合部位」(または単に「抗体部分」)なる用語は、抗原(例えば、hTNFα)に特異的に結合する能力を保有する抗体の1以上のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は完全長抗体のフラグメントにより達成されうることが示されている。抗体の「抗原結合部分」なる用語に含まれる結合フラグメントの具体例には、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント、(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)フラグメント、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら,(1989)Nature 341:544−546)、ならびに(vi)単離した相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によりコードされるが、それらは、VLおよびVH領域がペアになって一価分子(一本鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照されたい)を形成する単一タンパク質鎖としてVLおよびVHが製造されるのを可能にする合成リンカーにより、組換え法を用いて連結されうる。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」なる語に含まれると意図される。他の形態の一本鎖抗体、例えば二重特異性抗体も含まれる。二重特異性抗体は、二価の二重特異性抗体であり、この場合、VHドメインおよびVLドメインは単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、同一鎖上でそれらの2つのドメイン間のペア形成が可能となるには短かすぎるリンカーを使用して、それらのドメインに別の鎖の相補性ドメインとペアを形成させ、2つの抗原結合部位を創る(例えば、Holliger,P.ら,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448;Poljak,R.J.ら,(1994)Structure 2:1121−1123を参照されたい)。本発明の抗体部分は、米国特許第6,090,382号および第6,258,562 B1号ならびに米国特許出願第09/540,018および第09/801,185号(それらのそれぞれの全体が参考として本明細書に援用されている)に更に詳しく記載されている。
【0017】
本発明の1つの実施形態においては、D2E7抗体および抗体部分、D2E7関連抗体および抗体部分、ならびにD2E7と同等の特性(例えば、低い解離速度論および高い中和能を伴った、hTNFαへの高いアフィニティー結合)を有する他のヒト抗体および抗体部分を、有害なTNF活性に関連した疾患を治療する低用量方法で使用する。もう1つの実施形態においては、共に表面プラズモン共鳴による測定で1×10−8M以下のKおよび1×10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し、標準的なインビトロL929アッセイにおいて1×10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞傷害性を中和するヒト抗体またはその抗原結合部分を、有害なTNF活性に関連した疾患を治療する低用量方法で使用する。もう1つの実施形態においては、5×10−4−1以下のKoffまたはより一層好ましくは1×10−4−1以下のKoffでヒトTNFαから解離する単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分を、有害なTNF活性に関連した疾患を治療する低用量方法で使用する。より好ましくは、単離されたヒト抗体またはその抗原結合部分は、標準的なインビトロL929アッセイにおいて1×10−8M以下のIC50、より好ましくは1×10−9M以下のIC50、更に好ましくは5×10−10M以下のIC50でヒトTNFα細胞傷害性を中和する。
【0018】
本明細書中で用いる「低用量」または「低投与量」なる用語は、通常に用いられる量より実質的に低いものである、被験体に投与されるTNFαインヒビターの量を意味する。「低用量療法」は、低用量のTNFαインヒビターを投与することに基づく治療計画を含む。本発明の1つの実施形態においては、有害であるTNFα関連疾患を治療するために、低用量のD2E7を被験体に投与する。もう1つの実施形態においては、慢性関節リウマチおよび該疾病に関連した症状を治療するために、例えばD2E7を含む低用量のTNFαインヒビターを使用する。例えば、D2E7の低用量療法を用いて治療されうる症状には、骨侵食、軟骨侵食、炎症および血管分布(vascularity)が含まれる。低用量のTNFαインヒビターは、TNFαインヒビターの通常処方量に関連づけられうる副作用の頻度および重症度の低下を含む多くの理由で好都合である。
【0019】
I.本発明のTNFαインヒビターの用途
1つの実施形態においては、本発明は、TNFα活性が有害である疾患に罹患した被験体におけるTNFα活性を阻害するための低用量方法を提供する。TNFαは多種多様な疾患の病態生理学に関与している(例えば、Moeller,A.ら,(1990)Cytokine 2:162−169;Moellerら,米国特許第5,231,024号;Moeller,A,欧州特許公開番号260 610 Bl)。本発明は、そのような疾患に罹患した被験体におけるTNFα活性を阻害するための方法であって、該被験体におけるTNFα活性が阻害されるよう、本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量を該被験体に投与することを含んでなる方法を提供する。好ましくは、該TNFαはヒトTNFαであり、該被験体はヒト被験体である。あるいは、該被験体は、本発明の抗体が交差反応するTNFαを発現する哺乳動物でありうる。本発明の抗体は、低用量(後記で詳しく考察する)にて治療目的でヒト被験体に投与することができる。さらに、低用量の本発明の抗体は、獣医学的目的で又はヒト疾病の動物モデルとして、該抗体が交差反応するTNFαを発現する非ヒト哺乳動物(例えば、霊長類、ブタまたはマウス)に投与することが可能である。後者の場合、そのような動物モデルは、本発明の抗体の治療効力を評価する(例えば、投与の量および時間経過を試験する)のに有用であろう。
【0020】
本明細書中で用いる「TNFα活性が有害である疾患」なる用語は、該疾患に罹患した被験体におけるTNFαの存在が該疾患の病態生理の原因となること又は該疾患の悪化に寄与する要因を招くことが示されている又はその疑いのある疾病および他の疾患を含むことが意図される。本発明の目的においては、TNFα活性が有害である疾患の治療には、該疾患に関連した症状の軽減が含まれるが、これらに限定されるものではない。したがって、TNFα活性が有害である疾患は、TNFα活性の阻害が該疾患の症状および/または進行を軽減すると予想される疾患である。そのような疾患は、例えば、該疾患に罹患した被験体の生物学的液体中のTNFαの濃度の増加(例えば、該被験体の血清、血漿、滑液などにおけるTNFαの濃度の増加)により実証することが可能であり、それは、例えば、前記の抗TNFα抗体を使用して検出されうる。TNFα活性が有害である疾患には多数の具体例が存在する。具体的な疾患の治療における本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターの低用量の使用は、後記で更に詳しく考察される。ある実施形態においては、本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量を、後記のとおり、他の治療剤と組合せて被験体に投与する。
【0021】
A.敗血症
腫瘍壊死因子は、低血圧、心筋阻害、血管漏出症候群(vascular leakage syndrome)、器官壊死、毒性二次メディエーター放出の刺激および凝固カスケードの活性化を含む生物学的効果を伴った、敗血症の病態生理における確立された役割を有する(例えば、Moeller,A.ら,(1990)Cytokine :162−169;Moellerら,米国特許第5,231,024号;Moeller,A.,欧州特許公開番号260 610 B1;Tracey,K.J.およびCerami,A.(1994)Annu.Rev.Med.45:491−503;Russell,DおよびThompson,R.C.(1993)Curr.Opin.Biotech.4: 714−721を参照されたい)。したがって、本発明のヒト抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、敗血性ショック、内毒素ショック、グラム陰性敗血症および毒性ショック症候群を含む敗血症の任意の臨床状況において敗血症を治療するために使用することが可能である。
【0022】
さらに、敗血症を治療するために、本発明の抗hTNFα抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターを、インターロイキン1インヒビター(例えば、PCT公開番号WO 92/16221およびWO 92/17583に記載されているもの)、サイトカインインターロイキン6(例えば、PCT公開番号WO 93/11793を参照されたい)または血小板活性化因子のアンタゴニスト(例えば、を参照されたい)のような、敗血症を更に軽減しうる1以上の他の治療剤(例えば、欧州特許出願公開番号EP 374 510)と共に同時投与することが可能である。敗血症治療のための他の併用療法は小節IIにおいて更に詳しく説明されている。
【0023】
また、1つの実施形態においては、本発明の抗TNFα抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターを、治療時に、500pg/mlを超える、より好ましくは、1000pg/mlを超えるIL−6の血清または血漿濃度を有する敗血症患者の下位群内のヒト被験体に投与する(Daum,L.ら,PCT公開番号WO 95/20978を参照されたい)。
【0024】
B.自己免疫疾患
腫瘍壊死因子は、種々の自己免疫疾患の病態生理で果す役割に関連づけられてきた。例えば、TNFαは、慢性関節リウマチにおける組織炎症の活性化および関節破壊の発生に関連づけられている(例えば、Moeller,A.ら,(1990)Cytokine :162−169;Moellerら,米国特許第5,231,024;Moeller,A.ら,欧州特許公開番号260 610 B1;TraceyおよびCerami,前掲;Arend,W.P.およびDayer,J−M.(1995)Arth.Rheum.38:151−160;Fava,R.A.ら,(1993)Clin.Exp.Immunol.94:261−266を参照されたい)。TNFαは、糖尿病における島細胞の死の促進およびインスリン抵抗性の仲介にも関連づけられている(例えば、TraceyおよびCerami,前掲;PCT公開番号WO 94/08609を参照されたい)。TNFαは、多発性硬化症における希突起膠細胞に対する細胞傷害性の仲介および炎症性斑の誘発にも関連づけられている(例えば、TraceyおよびCerami,前掲を参照されたい)。キメラおよびヒト化マウス抗hTNFα抗体は、慢性関節リウマチの治療のための臨床試験に付されている(例えば、Elliott,M.J.ら,(1994)Lancet 344:1125−1127;Elliot,M.J.ら,(1994)Lancet 344:1105−1110;Rankin,E.C.ら,(1995)Br.J.Rheumatol.34:334−342を参照されたい)。
【0025】
本発明の1つの実施形態においては、慢性関節リウマチを治療するために、低用量の本発明の抗TNFα抗体を使用することが可能である。慢性関節リウマチ疾患に関連する症状を軽減することにより、低用量の抗TNFα抗体を使用して慢性関節リウマチを治療することが可能である。慢性関節リウマチに一般に関連している症状または徴候の具体例には、関節における骨侵食、関節における軟骨侵食、関節における炎症、関節における血管分布およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。慢性関節リウマチに関連した症状の他の具体例には、体重増加、関節歪曲、関節の腫脹、屈曲(felxion)の際の強直、著しい運動疾患およびそれらの組合せが含まれる。
【0026】
本発明のヒト抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、自己免疫疾患、特に、炎症に関連した自己免疫疾患、例えば慢性関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、骨関節症および痛風関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫糖尿病、自己免疫ブドウ膜炎およびネフローゼ症候群を治療するために使用することが可能である。特定の疾患によっては、炎症部位への該抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの局所投与が有益でありうるが(例えば、単独での又はPCT公開番号WO 93/19751に記載のシクロヘキサン−イリデン誘導体と組合された、慢性関節リウマチの関節における局所投与または糖尿病性潰瘍への局所適用)、典型的には、該抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターは全身的に投与される。本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターは、小節IIにおいて更に詳しく説明するように、自己免疫疾患の治療に有用な1以上の他の治療剤と共に投与することも可能である。
【0027】
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、サルコイドーシスおよびベーチェット病を含む多系の自己免疫疾患を治療するためにも使用することが可能である。
【0028】
C.感染症
腫瘍壊死因子は、種々の感染症において認められる生物学的効果の仲介に関連づけられている。例えば、TNFαはマラリアにおける脳炎症ならびに毛細血管血栓症および梗塞の仲介に関連づけられている。TNFαは髄膜炎における脳炎症の仲介、血液脳関門の破壊の誘発、敗血性ショック症候群の誘発および静脈梗塞の活性化にも関連づけられている。TNFαは後天性免疫不全症候群(エイズ)における悪液質の誘発、ウイルス増殖の刺激および中枢神経系損傷の仲介にも関連づけられている。したがって、本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、細菌性髄膜炎(例えば、欧州特許出願公開番号EP 585 705を参照されたい)、大脳マラリア、エイズおよびエイズ関連症候群(ARC)(例えば、欧州特許出願公開番号EP 230 574を参照されたい)ならびに移植に続発するサイトメガロウイルス感染(例えば、Fietze,E.ら,(1994)Transplantation 58:675−680を参照されたい)を含む感染症の治療において使用することが可能である。本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターは、感染(例えば、インフルエンザ)による発熱および筋肉痛ならびに感染に続発する(例えば、エイズまたはARCに続発する)悪液質を含む感染症に伴なう症状を軽減するために使用することも可能である。
【0029】
D.移植
腫瘍壊死因子は、同種移植拒絶および移植片対宿主疾患(GVHD)の主メディエーターとして、ならびに腎臓移植の拒絶を阻害するためにT細胞受容体CD3複合体に対するラット抗体OKT3を使用した場合に観察されている有害な反応の仲介に関連づけられている(例えば、Eason,J.D.ら,(1995)Transplantation 59:300−305;Suthanthiran,M.およびStrom,T.B.(1994)New Engl.J.Med.331:365−375を参照されたい)。したがって、本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、同種移植および異種移植の拒絶を含む移植拒絶を阻害するために、ならびにGVHDを阻害するために使用することが可能である。該抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターは単独で使用することが可能であるが、より好ましくは、それを、同種移植に対する免疫応答を阻害する又はGVHDを阻害する1以上の他の物質と組合せて使用する。例えば、1つの実施形態においては、本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターを、OKT3誘導反応を阻害するためにOKT3と組合せて使用する。もう1つの実施形態においては、本発明の抗体、抗体部分、他のTNFαインヒビターを、免疫応答の調節に関与する他の標的、例えば細胞表面分子CD25(インターロイキン2受容体α)、CD11a(LFA−1)、CD54(ICAM−1)、CD4、CD45、CD28/CTLA4、CD80(B7−1)および/またはCD86(B7−2)に対する1以上の抗体と組合せて使用する。さらにもう1つの実施形態においては、本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαを、シクロスポリンAまたはFK506のような1以上の一般的な免疫阻害剤と組合せて使用する。
【0030】
E.悪性疾患
腫瘍壊死因子は悪性疾患における悪液質の誘発、腫瘍増殖の刺激、転移能の増強および細胞傷害性の仲介に関連づけられている。したがって、本発明の抗体および抗体部分は、悪性疾患の治療、腫瘍増殖もしくは転移の阻害、および/または悪性疾患に続発する悪液質の軽減に使用することが可能である。該抗体、抗体部分、他のTNFαインヒビターは、全身的に又は腫瘍部位へ局所的に投与することが可能である。
【0031】
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、固形腫瘍および/または白血病およびリンパ腫に関連した悪性疾患の治療に使用することが可能である。本発明の抗体で治療されうる固形腫瘍の具体例には、卵巣癌および結腸直腸癌が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の抗体で治療されうる白血病およびリンパ腫の具体例には、骨髄形成異常症候群および多発性骨髄腫が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
F.肺疾患
腫瘍壊死因子は、白血球−内皮活性化の刺激、肺細胞に対する細胞傷害性の誘発および血管漏出症候群の誘発を含む成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の病態生理に関連づけられている。したがって、本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、成人呼吸窮迫症候群(例えば、PCT公開番号WO 91/04054)、ショック肺、慢性肺炎症疾患、肺サルコイドーシス、肺線維症、珪肺症(asilicosis)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および特発性肺線維症(UIPまたは腸肺疾患)を含む種々の肺疾患を治療するために使用することが可能である。該抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターは、全身的に又は例えばエアゾールとして肺表面に局所的に投与することが可能である。本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターは、小節IIにおいて更に詳しく説明するとおり、肺疾患の治療に有用な1以上の他の治療剤と共に投与することも可能である。
【0033】
G.腸疾患
腫瘍壊死因子は炎症性腸疾患の病態生理に関連づけられている(例えば、Tracy,K.J.ら,(1986)Science 234:470−474; Sun,X−M.ら,(1988)J.Clin.Invest.81:1328−1331;MacDonald,T.T.ら,(1990)Clin.Exp.Immunol.81:301−305を参照されたい)。キメラマウス抗hTNFα抗体はクローン病の治療のための臨床試験に付されている(van Dullemen,H.M.ら,(1995)Gastroenterology 109:129−135)。本発明のヒト抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、クローン病および潰瘍性大腸炎の2つの症候群を含む特発性炎症性腸疾患のような腸疾患を治療するために使用することも可能である。本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、小節IIにおいて更に詳しく説明するとおり、腸疾患の治療に有用な1以上の他の治療剤と共に投与することも可能である。
【0034】
H.心臓疾患
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、心臓の虚血(例えば、欧州特許出願公開番号EP 453 898を参照されたい)および心不全(心筋の虚弱)(例えば、PCT公開番号WO 94/20139を参照されたい)を含む種々の心臓疾患を治療するために使用することも可能である。
【0035】
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、慢性アテローム性動脈硬化症、心筋症、うっ血性心不全およびリウマチ性心疾患を含む(これらに限定されるものではない)心臓血管疾患を治療するために使用することも可能である。
【0036】
I.神経学的疾患
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、例えばアルツハイマー病、坐骨神経痛、末梢性ニューロパチーおよび神経障害性疼痛を含む神経学的疾患を治療するために使用することが可能である。
【0037】
J.代謝性疾患
腫瘍壊死因子は、種々の代謝性疾患において観察される生物学的効果の仲介に関連づけられている。例えば、本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、悪液質を治療するために使用することが可能である。
【0038】
腫瘍壊死因子は、糖尿病および糖尿病に関連した合併症において観察される生物学的効果の仲介にも関連づけられている。糖尿病状態には、1型糖尿病、2型糖尿病、糖尿病性血管疾患および神経障害性疼痛が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
K.肝臓疾患
腫瘍壊死因子は、種々の肝臓疾患において観察される生物学的効果の仲介に関連づけられている。本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは,例えばC型肝炎、硬化性胆管炎、自己免疫肝炎および慢性肝不全を含む肝臓疾患を治療するために使用することが可能である。
【0040】
L.腎臓疾患
腫瘍壊死因子は、種々の腎臓疾患において観察される生物学的効果の仲介に関連づけられている。本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、例えば進行性腎不全を含む腎臓疾患を治療するために使用することが可能である。本発明の抗体は、例えば連鎖球菌感染後糸球体腎炎およびIgA腎症を含む糸球体腎炎を治療するために使用することも可能である。
【0041】
M.炎症性疾患
1.炎症性関節疾患
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、例えば成人スチル病、若年性慢性関節リウマチ、スチル病、ライター症候群および脊椎関節症を含む炎症性関節疾患を治療するために使用することも可能である。本発明の抗体は、脊椎関節症を治療するために使用することも可能である。脊椎関節症の具体例には、例えば強直性脊椎炎、乾癬性関節炎および未分化脊椎関節症が含まれる。
【0042】
2.炎症性結合組織疾患
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、例えば皮膚/多発性筋炎、強皮症、混合結合組織疾患、再発性多発性軟骨炎および脈管炎を含む炎症性結合組織疾患を治療するために使用することも可能である。脈管炎の具体例には、ウェジナー肉芽腫症、側頭動脈炎(GCA)およびリウマチ性多発性筋痛、高安動脈炎、結節性多発性動脈炎、顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ−シュトラウス症候群、川崎症候群が含まれる。
【0043】
3.炎症性皮膚および粘膜疾患
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、例えば乾癬、尋常性天疱瘡、ヤーリッシュ−ヘルクスハイマー反応、壊疽性膿皮症、ならびに薬物反応、例えば多形紅斑およびスチーブンス−ジョンソン症候群を含む炎症性皮膚および粘膜疾患を治療するために使用することも可能である。
【0044】
4.感覚器官の炎症性疾患
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、ブドウ膜炎および自己免疫難聴を含む感覚器官の炎症性疾患を治療するために使用することも可能である。本発明の抗体は、コレステリン腫を伴う又は伴わない慢性中耳炎、慢性耳炎および小児耳炎を含む、耳に関連した炎症性疾患を治療するために使用することも可能である。臨床研究は、TNFαを含むサイトカインが、コレステリン腫を伴う慢性中耳炎の患者においてアップレギュレーションされることを示している(Yetiserら(2002)Otology and Neurotology 23:647−652)。本発明の抗体は、中耳炎に関連した炎症およびコレステリン腫を治療するために使用することが可能である。
【0045】
5.他の器官系の炎症性/自己免疫疾患
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、例えば家族性周期熱、前立腺炎、フェルティー症候群、シェーグレン症候群、急性膵炎、慢性膵炎および精巣炎を含む、他の器官系の炎症性/自己免疫疾患を治療するために使用することが可能である。
【0046】
N.変性骨および関節疾患
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、例えば偽性痛風、骨関節炎、歯周病、およびプロテーゼ、例えば人工股関節(金属大腿骨頭など)の緩み、または骨溶解を含む、変性骨および関節疾患に関連した種々の疾患を治療するために使用することが可能である。
【0047】
O.再潅流障害
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、例えば卒中および心筋梗塞を含む、再潅流障害に関連した種々の疾患を治療するために使用することが可能である。
【0048】
P.その他
本発明の抗体および抗体部分は、TNFα活性が有害である種々の他の疾患を治療するために使用することも可能である。TNFα活性が関連した病態生理を有し従って本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターを使用して治療されうる他の疾病および疾患の具体例には、炎症性骨疾患および骨吸収疾患(例えば、Bertolini,D.R.ら,(1986)Nature 319:516−518;Konig,A.ら,(1988)J.Bone Miner.Res.:621−627;Lerner,U.H.およびOhlin,A.(1993)J.Bone Miner.Res.:147−155;ならびにShankar,G.およびStern,P.H.(1993)Bone 14:871−876を参照されたい)、肝炎、例えばアルコール性肝炎(例えば、McClain,C.J.およびCohen,D.A.(1989)Hepatology :349−351;Felver,M.E.ら,(1990)Alcohol.Clin.Exp.Res.14:255−259;ならびにHansen,J.ら,(1994)Hepatology 20:461−474を参照されたい)、ウイルス性肝炎(Sheron,N.ら,(1991)J.Hepatol.12:241−245;およびHussain,M.J.ら,(1994)J.Clin.Pathol.47:1112−1115)および劇症肝炎;凝固疾患(例えば、van der Poll,T.ら,(1990)N.Engl.J.Med.322:1622−1627;およびvan der Poll,T.ら,(1991)Prog.Clin.Biol.Res.367:55−60を参照されたい)、熱傷(例えば、Giroir,B.P.ら,(1994)Am.J.Physio.267:H118−124;およびLiu,X.S.ら,(1994)Burns 20:40−44を参照されたい)、再潅流損傷(例えば、Scales,W.E.ら,(1994)Am.J.Physio.267:G1122−1127;Serrick,C.ら,(1994)Transplantation 58:1158−1162;およびYao,Y.M.ら,(1995)Resuscitation 29:157−168を参照されたい)、ケロイド形成(例えば、McCauley,R.L.ら,(1992)J.Clin.Immunol.12:300−308を参照されたい)、瘢痕組織形成;発熱;歯周病;肥満および放射線毒性が含まれる。
【0049】
TNFα活性が有害である他の疾患には、肝毒性、成人スチル病、アルツハイマー病、強直性脊椎炎、喘息、癌および悪液質、アテローム性動脈硬化症、慢性アテローム性動脈硬化症、慢性疲労症候群、肝不全、慢性肝不全、閉塞性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全、皮膚多発性筋炎、糖尿病性巨大血管疾患(diabetic macrovasculopathy)、子宮内膜症、家族性周期熱、線維症、血液透析、ヤーリッシュ−ヘルクスハイマー反応、若年性RA、川崎症候群、骨髄形成異常症候群、心筋梗塞、尋常性少数関節(panciaticular vulgaris)、歯周病、末梢性ニューロパチー、多関節、多発性筋炎、進行性腎不全、乾癬、乾癬性関節炎、ライター症候群、サルコイドーシス、強皮症、脊椎関節症、スチル病、卒中、治療関連症候群、治療誘発性炎症症候群、IL2投与に続発する炎症症候群、胸腹大動脈瘤修復(TAAA)、バスロ(Vasulo)−ベーチェット病、黄熱病ワクチン接種、1型糖尿病、2型糖尿病、神経障害性疼痛、坐骨神経痛、脳浮腫、脊髄内および/または周囲の浮腫、脈管炎、ウェジナー肉芽腫症、側頭動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、高安動脈炎、結節性多発性動脈炎、顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ−シュトラウス症候群、フェルティー症候群、シェーグレン症候群、混合結合組織疾患、再発性多発性軟骨炎、偽性痛風、プロテーゼの緩み、自己免疫肝炎、硬化性胆管炎、急性膵炎、慢性膵炎、糸球体腎炎、連鎖球菌感染後糸球体腎炎またはIgA腎症、リウマチ性心疾患、心筋症、精巣炎、壊疽性膿皮症、多発性骨髄腫、TNF受容体関連周期性症候群[TRAPS]、アテローム性動脈硬化症、ステロイド依存性巨細胞動脈炎筋炎、ブドウ膜炎および薬物反応が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
II.医薬組成物および医薬投与
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターは、被験体への低用量投与に適した医薬組成物に含有させることが可能である。典型的には、該医薬組成物は、本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターと、薬学的に許容される担体とを含む。本明細書中で用いる「薬学的に許容される担体」は、生理的に許容されうる任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを包含する。薬学的に許容される担体の具体例には、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1以上およびそれらの組合せが含まれる。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを該組成物中に含有させるのが好ましい。薬学的に許容される担体は更に、該抗体抗体部分または他のTNFαインヒビターの貯蔵寿命または有効性を増強する少量の補助物質、例えば湿潤または乳化剤、保存剤または緩衝剤を含みうる。
【0051】
本発明の組成物は、低用量投与に適した種々の形態でありうる。これらには、例えば液体、半固体および固体剤形、例えば液体溶液(例えば、注射可能な溶液および注入可能な溶液)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソームおよび坐剤が含まれる。好ましい形態は、意図される投与方法および治療用途に左右される。典型的な好ましい組成物は、注射可能または注入可能な溶液、例えば、他の抗体または他のTNFαインヒビターでヒトに受動免疫するのに使用されるものに類似した組成物の形態である。好ましい投与方法は非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)投与である。好ましい実施形態においては、該抗体または他のTNFαインヒビターの低用量を静脈内注入または注射により投与する。もう1つの好ましい実施形態においては、該抗体または他のTNFαの低用量を筋肉内または皮下注射により投与する。
【0052】
治療用組成物は、典型的には、製造および保存条件下で無菌かつ安定でなければならない。該組成物は、溶液、ミクロエマルション、分散液、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の整った構造体として製剤化されうる。無菌注射溶液は、必要量の該活性化合物(すなわち、抗体、抗体部分または他のTNFα)の低用量を、必要に応じて前記成分の1つ又は組合せと共に、適当な溶媒に含有させ、ついで濾過滅菌することにより製造されうる。一般に、分散液は、基本分散媒と必要な他の前記成分とを含有する無菌ビヒクルに該活性化合物を含有させることにより製造される。無菌注射溶液の製造のための無菌散剤の場合には、好ましい製剤化方法は、該活性成分および任意の所望の追加的成分の粉末を、予め滅菌濾過されたそれらの溶液から与える真空乾燥および凍結乾燥である。適当な溶液流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用、分散液の場合には必要粒径の維持、および界面活性剤の使用により維持されうる。注射用組成物の延長性吸収は、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを該組成物に含有させることにより達成されうる。
【0053】
本発明はまた、本発明のTNFαインヒビターの低用量と、前記のとおりのTNFα活性が有害である特定の疾患を治療するための該インヒビターの使用説明書とを含んでなる、パッケージされた医薬組成物に関する。
【0054】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体または抗体部分の「治療的有効量」または「予防的有効量」を含みうる。「治療的有効量」は、前記疾患を消失させる又は前記疾患の症状を軽減および/または改善するのに必要であると判定される任意の量である。本発明の好ましい実施形態においては、「治療的有効量」は、所望の治療効果を達成するのに必要な期間にわたり低用量で有効である量を意味する。該抗体、抗体部分または他のTNFαの治療的有効量は、個体の病態、年齢、性別および体重、ならびに該抗体、抗体部分、他のTNFαインヒビターが所望の応答を該個体において誘起する能力のような要因に応じて様々となりうる。治療的有効量はまた、該抗体、抗体部分または他のTNFαの任意の毒性または有害な効果よりも、治療的に有益な効果のほうが勝っている量である。
【0055】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療的または予防的応答)が得られるように調節されうる。例えば、単一の丸塊を投与することが可能であり、あるいは幾つかに分割された低用量を時間経過と共に投与することが可能であり、あるいは該低用量を、治療状況の緊急性に応じて比例的に減少または増加させることが可能である。投与の容易さ及び投与の均一性のために低用量投与単位形の非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書中で用いる投与単位形は、治療すべき哺乳類被験体への単位投与として適した物理的に分離した単位を意味し、各単位は、所望の治療効果が得られるように算出された活性化合物の所定量と、必要な医薬担体とを含有する。本発明の投与単位形の詳細は、(a)達成すべき具体的な治療または予防効果および該活性化合物の特有の特性、ならびに(b)個体における感受性の治療のためのそのような活性化合物を調合する技術に固有の制約によって決まり、それらに直接左右される。
【0056】
本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの治療的または予防的有効量の典型的で非限定的な範囲は0.01〜2.0mg/kgである。投与量値は、改善すべき状態のタイプおよび重症度に応じて変動しうることに注目すべきである。さらに、いずれかの特定の被験体に対する具体的な投与計画は、個体の要求性、および該組成物を投与する又は投与を監督する者の専門的判断に従い時間経過と共に調節すべきであり、また、本明細書に記載の投与範囲は単なる典型例であり、特許請求されている組成物の範囲や実施を限定するものではないと理解されるべきである。
【0057】
本発明の1つの実施形態においては、抗TNFα抗体の治療的有効量は低用量である。1つの実施形態においては、TNFαが有害である疾患に罹患した被験体に投与する抗体の低用量は約0.01〜2.0mg/kg、約0.06〜1.9mg/kg、約0.11〜1.8mg/kg、約0.16〜1.7mg/kg、約0.21〜1.6mg/kg、約0.26〜1.5mg/kg、約0.31〜1.4mg/kg、約0.36〜1.3mg/kg、約0.41〜1.2mg/kg、約0.46〜1.1mg/kg、約0.51〜1.0mg/kg、約0.56〜0.9mg/kg、約0.61〜0.8mg/kg、および約0.66〜0.7mg/kgである。好ましい実施形態においては、該抗体はD2E7である。前記投与量の中間的な範囲、例えば、約0.17〜1.65mg/kgも、本発明の一部であると意図される。例えば、上限および/または下限としての前記値のいずれかの組合せを用いた値の範囲も含まれると意図される。
【0058】
本発明の抗体、抗体部分および他のTNFαインヒビターの低用量は、当技術分野で公知の種々の方法により投与することが可能であるが、多数の治療用途には、好ましい投与経路/方法は静脈内注射または注入である。当業者には理解されるとおり、投与経路/方法は、望まれる結果に応じて様々なものとなる。ある実施形態においては、該活性化合物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化運搬系を含む制御放出製剤のように、急速な放出に対して該化合物を保護する担体を使用して調製されうる。エチレンビニルアセタート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸のような生分解性生物適合性高分子を使用することが可能である。そのような製剤の製造のための多数の方法が特許されており、または当業者に概ね公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0059】
ある実施形態においては、本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量を、例えば不活性希釈剤または同化可能な可食性担体と共に経口投与することが可能である。該化合物(および所望により他の成分)を硬または軟殻ゼラチンカプセル内に封入し、錠剤に圧縮し、または被験体の食事に直接含有させることが可能である。経口治療投与の場合には、該化合物を賦形剤と共に含有させ、消化可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用することが可能である。非経口投与以外で本発明の化合物の低用量を投与するためには、該化合物を、その不活性化を防ぐ物質でコーティングしたり、あるいは該化合物をそのような物質と共に同時投与する必要があるかもしれない。
【0060】
補助活性化合物を該組成物に含有させることも可能である。ある実施形態においては、本発明の抗体または抗体部分の低用量を、TNFα活性が有害である疾患の治療に有用な1以上の他の治療剤と共に製剤化および/または投与する。例えば、本発明の抗hTNFα抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量を、他の標的に結合する1以上の他の抗体(例えば、他のサイトカインに結合する又は細胞表面分子に結合する抗体)、サイトカイン、可溶性TNFα受容体(例えば、PCT公開番号WO 94/06476を参照されたい)、および/またはhTNFαの産生または活性を阻害する1以上の化合物(例えば、PCT公開番号WO 93/19751に記載のシクロヘキサン−イリデン誘導体)と共に同時製剤化および/または同時投与することが可能である。さらに、本発明の1以上の抗体または他のTNFαインヒビターの低用量を、前記治療剤の2以上と組合せて使用することが可能である。そのような組合せ療法においては、好都合にも、より一層低い用量の投与治療剤を使用することが可能であり、したがって、種々の単独療法に伴う考えられうる毒性または合併症を回避することが可能である。
【0061】
III.他の治療剤
治療剤との「組合せ」なる表現は、本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量と該治療剤との共投与、最初に本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量の投与およびそれに続く該治療剤の投与、ならびに最初に該治療剤の投与およびそれに続く本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量の投与を含む。具体的な治療剤は、一般には、後記のとおり、治療される個々の疾患に基づいて選ばれる。
【0062】
本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量と組合されうる慢性関節リウマチの治療剤の非限定的な具体例には以下のものが含まれる:非ステロイド抗炎症薬(NSAID);サイトカイン阻害抗炎症薬(CSAID);CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;Celltech/Bayer);cA2(キメラ抗TNFα抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Immunex;例えば、Arthritis & Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照されたい);55kdTNFR−IgG(55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche);IDEC−CE9.1/SB 210396(非枯渇霊長類化抗体抗CD4抗体;IDEC/SmithKline;例えば、Arthritis & Rheumatism(1995)Vol.38,S185を参照されたい);DAB 486−IL−2および/またはDAB 389−IL−2(IL−2融合タンパク質;Seragen;例えば、Arthritis & Rheumatism(1993)Vol.36,1223を参照されたい);抗Tac(ヒト化抗IL−2Rα;Protein Design Labs/Roche);IL−4(抗炎症サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10(SCH 52000;組換えIL−10,抗炎症サイトカイン;DNAX/Schering);IL−4;IL−10および/またはIL−4アゴニスト(例えば、アゴニスト抗体);IL−1RA(IL−1受容体アンタゴニスト;Synergen/Amgen);TNF−bp/s−TNFR(可溶性TNF結合タンパク質;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S284;Amer.J.Physiol.−Heart and Circulatory Physiology(1995)Vol.268,pp.37−42を参照されたい);R973401(ホスホジエステラーゼIV型インヒビター;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S282を参照されたい);MK−966(COX−2インヒビター;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S81を参照されたい);イロプロスト(Iloprost)(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S82を参照されたい);メトトレキセート;サリドマイド(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S282を参照されたい)およびサリドマイド関連薬(例えば、セルゲン(Celgen));レフルノミド(leflunomide)(抗炎症およびサイトカインインヒビター;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S131;Inflammation Research(1996)Vol.45,pp.103−107を参照されたい);トラネキサム酸(プラスミノーゲン活性化のインヒビター;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S284を参照されたい);T−614(サイトカインインヒビター;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S282を参照されたい);プロスタグランジンE1(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S282を参照されたい);テニダップ(Tenidap)(非ステロイド抗炎症薬;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S280を参照されたい);ナプロキセン(非ステロイド抗炎症薬;例えば、Neuro Report(1996)Vol.,pp.1209−1213);メロキシカム(Meloxicam)(非ステロイド抗炎症薬);イブプロフェン(非ステロイド抗炎症薬);ピロキシカム(非ステロイド抗炎症薬);ジクロフェナック(非ステロイド抗炎症薬);インドメタシン(非ステロイド抗炎症薬);スルファサラジン(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S281を参照されたい);アザチオプリン(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S281を参照されたい);ICEインヒビター(酵素インターロイキン1β変換酵素のインヒビター);zap−70および/またはlckインヒビター(チロシンキナーゼzap−70またはlckのインヒビター);VEGFインヒビターおよび/またはVEGF−Rインヒビター(血管内皮細胞増殖因子または血管内皮細胞増殖因子受容体のインヒビター;血管新生のインヒビター);コルチコステロイド抗炎症薬(例えば、SB203580);TNF−コンバターゼインヒビター;抗IL12抗体;インターロイキン11(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S296を参照されたい);インターロイキン13(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S308を参照されたい);インターロイキンインヒビター(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39,No.9(supplement),S120を参照されたい);金;ペニシルアミン;クロロキン;ヒドロキシクロロキン;クロラムブシル;シクロホスファミド;シクロスポリン;全リンパ系照射;抗胸腺細胞グロブリン;抗CD4抗体;CD5毒素;経口投与ペプチドおよびコラーゲン;ロベンザリット二ナトリウム;サイトカイン調節物質(CRA)HP228およびHP466(Houghten Pharmaceuticals,Inc.);ICAM−1アンチセンスホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;Isis Pharmaceuticals,Inc.);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences,Inc.);プレドニゾン;オルゴテイン;グリコサミノグリカン ポリスルファート;ミノサイクリン;抗IL2R抗体;海洋性および植物性脂質(魚類および植物種子脂肪酸;例えば、DeLucaら(1995)Rheum.Dis.Clin.North Am.21:759−777を参照されたい);オーラノフィン;フェニルブタゾン;メクロフェナム酸;フルフェナム酸;静脈内免疫グロブリン;ジレウトン(zileuton);ミコフェノール酸(RS−61443);タクロリムス(FK−506);シロリムス(sirolimus)(ラパマイシン);アミプリロース(テラフェクチン);クラドリビン(2−クロロデオキシアデノシン);およびアザリビン。
【0063】
本発明の抗体、抗体部分、他のTNFαインヒビターの低用量が組合されうる炎症性腸疾患の治療剤の非限定的な具体例には以下のものが含まれる:ブデノシド(budenoside);上皮増殖因子;コルチコステロイド;シクロスポリン、スルファサラジン;アミノサリチル酸;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼインヒビター;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;抗酸化剤;トロンボキサンインヒビター;IL1受容体アンタゴニスト;抗IL1βモノクローナル抗体;抗IL6モノクローナル抗体;増殖因子;エラスターゼインヒビター;ピリジニル−イミダゾール化合物;CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;Celltech/Bayer);cA2(キメラ抗TNFα抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Immunex;例えば、Arthritis & Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照されたい);55kdTNFR−IgG(55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche);インターロイキン10(SCH 52000;Schering Plough);IL4;IL10および/またはIL4アゴニスト(例えば、アゴニスト抗体);インターロイキン11;プレドニゾロン、デキサメタゾンまたはブデソニドのグルクロニド−またはデキストラン−結合プロドラッグ;ICAM−1アンチセンスホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;Isis Pharmaceuticals,Inc.);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences,Inc.);徐放性メサラジン;メトトレキセート;血小板活性化因子(PAF)のアンタゴニスト;シプロフロキサシン;およびリグノカイン。
【0064】
本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量が組合されうる多発性硬化症の治療剤の非限定的な具体例には以下のものが含まれる:コルチコステロイド、プレドニゾロン;メチルプレドニゾロン;アザチオプリン;シクロホスファミド;シクロスポリン;メトトレキセート;4−アミノピリジン;チザニジン;インターフェロンβ1a(AvonexTM;Biogen);インターフェロンβlb(Betaseron(商標);Chiron/Berlex);コポリマー(Copolymer)1(Cop−1;Copaxone(商標);Teva Pharmaceutical Industries,Inc.);高圧酸素;静脈内免疫グロブリン;クラブリビン(clabribine);CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;Celltech/Bayer);cA2(キメラ抗TNFα抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG(75 kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Immunex;例えば、Arthritis & Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照されたい);55kdTNFR−IgG(55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche);IL−10;IL−4;ならびにIL−10および/またはIL−4アゴニスト(例えば、アゴニスト抗体)。
【0065】
本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量が組合されうる敗血症の治療剤の非限定的な具体例には以下のものが含まれる:高張塩溶液;抗生物質;静脈内ガンマグロブリン;持続性血液濾過;カルバペネム(例えば、メロペネム);TNFα、IL−1β、IL−6および/またはIL−8のようなサイトカインのアンタゴニスト;CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;Celltech/Bayer);cA2(キメラ抗TNFα抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Immunex;例えば、Arthritis & Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照されたい);55kdTNFR−IgG(55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche);サイトカイン調節物質(CRA)HP228およびHP466(Houghten Pharmaceuticals,Inc.);SK&F 107647(低分子量ペプチド;SmithKline Beecham);四価グアニルヒドラゾンCNI−1493(Picower Institute);組織因子経路インヒビター(Tissue Factor Pathway Inhibitor)(TFPI;Chiron);PHP(化学修飾ヘモグロビン;APEX Bioscience);鉄キレーターおよびキレート、例えばジエチレントリアミン五酢酸−鉄(III)複合体(DTPA鉄(III);Molichem Medicines);リソフィリン(lisofylline)(合成小分子メチルキサンチン;Cell Therapeutics,Inc.);PGG−グルカン(水性可溶性β1,3グルカン;Alpha−Beta Technology);脂質で再構成されるアポリポタンパク質A−1;キラル ヒドロキサム酸(リピドA生合成を阻害する合成抗細菌剤);抗内毒素抗体;E5531(合成リピドAアンタゴニスト;Eisai America,Inc.);rBPI21(ヒト殺細菌/透過性促進タンパク質の組換えN末端断片);および合成抗内毒素ペプチド(Synthetic Anti−Endotoxin Peptides)(SAEP;BiosYnth Research Laboratories)。
【0066】
本発明の抗体、抗体部分または他のTNFαインヒビターの低用量が組合されうる成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療剤の非限定的な具体例には以下のものが含まれる:抗IL−8抗体;界面活性剤置換療法;CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;Celltech/Bayer);cA2(キメラ抗TNFα抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Immunex;例えば、Arthritis & Rheumatism(1994)Vol.37,S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44,235Aを参照されたい);および55kdTNFR−IgG(55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche)。
【0067】
他の治療剤には、TNFα活性が有害である個々の疾患の治療に有用でありうる化学療法剤、放射線療法、神経保護剤および抗感染剤が含まれる。
【0068】
「化学療法剤」なる用語は、細胞または組織の成長が望ましくない増殖細胞または組織の成長を阻害する又はそのような成長により生じる少なくとも1つの症状を治療する化学試薬を含むと意図される。化学療法剤は当技術分野でよく知られており(例えば、Gilman A.G.ら,The Pharmacological Basis of Therapeutics,8th Ed.,Sec 12:1202−1263(1990)を参照されたい)、典型的には、腫瘍疾患を治療するために使用される。化学療法剤の具体例には、ブレオマイシン、ドセタキセル(Taxotere)、ドキソルビシン、エダトレキセート、エトポシド、フィナステリド(finasteride)(Proscar)、フルタミド(Eulexin)、ゲムシタビン(Gemzar)、酢酸ゴセレリン(Zoladex)、グラニセトロン(Kytril)、イリノテカン(Campto/Camptosar)、オンダンセトロン(Zofran)、パクリタクセル(Taxol)、ペガスパラガーゼ(pegaspargase)(Oncaspar)、塩酸ピロカルピン(Salagen)、ポルフィマーナトリウム(Photofrin)、インターロイキン2(Proleukin)、リツキシマブ(rituximab)(Rituxan)、トポテカン(topotecan)(Hycamtin)、トラスツズマブ(trastuzumab)(Herceptin)、トレチノイン(Retin−A)、トリアピン(Triapine)、ビンクリスチンおよび酒石酸ビノレルビン(Navelbine)が含まれる。
【0069】
化学療法剤の他の具体例には、アルキル化薬、例えばナイトロジェンマスタード(例えば、メクロルエタミン(HN)、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン(L−サルコリシン)、クロラムブシルなど);エチレンイミン、メチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパなど);アルキルスルホナート(例えば、ブスルファンなど)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)など、トリアゼン(例えば、デカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド))、アルキレーター(例えば、シス−ジアミンジクロロ白金II(CDDP))などが含まれる。
【0070】
化学療法剤の他の具体例には、代謝拮抗剤、例えば葉酸類似体(例えば、メトトレキセート(アメトプテリン));ピリミジン類似体(例えば、フルオロウラシル(‘5−フルオロウラシル;5−FU);フロクスウリジン(フルオロド−オキシウリジン);FUdr;シタラビン(シトシンアラビノシド)など);プリン類似体(例えば、メルカプトプリン(6−メルカプトプリン;6−MP);チオグアニン(6−チオグアニン;TG);およびペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン))などが含まれる。
【0071】
化学療法剤の他の具体例には、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン(VLB)およびビンクリスチン);トポイソメラーゼインヒビター(例えば、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、トポテカン、9−アミノ−カンプトテシンCPT−11など);抗体(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、アドリアマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシン(マイトマイシンC)、タキソール、タキソレートなど);酵素(例えば、L−アスパラギナーゼ);および生体応答調節薬(例えば、インターフェロン;インターロイキン2など)も含まれる。他の化学療法剤には、シス−ジアミンジクロロ白金II(CDDP);カルボプラチン;アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン);ヒドロキシ尿素;プロカルバジン(N−メチルヒドラジン);および副腎皮質阻害剤(例えば、ミトタン、アミノグルテチミドなど)が含まれる。
【0072】
他の化学療法剤には、副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン);プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲステロールなど);エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロール;エテニルエストラジオールなど);抗エストロゲン(例えば、タモキシフェンなど);アンドロゲン(例えば、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロンなど);抗アンドロゲン(例えば、フルタミド);および性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体(例えば、ロイプロリド)が含まれる。
【0073】
「放射線療法」なる用語には、癌または他の望ましくない細胞増殖に関連した症状または状態を阻害、軽減または予防するための、被験体に対する限局的および非限局的の両方の、遺伝的および身体的に安全なレベルのx線の適用が含まれる。「x線」なる用語は、臨床的に許容される放射性元素およびその同位体、ならびにそれらからの放射性放出を含む。放出のタイプの具体例には、α線、β線、例えば硬β、高エネルギー電子、およびγ線が含まれる。放射線療法は当技術分野でよく知られており(例えば、Fishbach,F.,Laboratory Diagnostic Tests,3rd Ed.,Ch.10:581−644(1988)を参照されたい)、典型的には、腫瘍疾患を治療するために用いられる。
【0074】
神経保護剤の具体例には、タンパク質の構築を排除する化合物(例えば、ゲルダナマイシン)、抗炎症剤(例えば、グルココルチコイド、非ステロイド抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、アスピリンなど)、オメガ−3脂肪酸(例えば、EPA、DHAなど)、ミノサイクリン、デキサナビオノール(dexanabionol)など)、細胞に利用されうるエネルギーを増加させる化合物(例えば、クレアチン、クレアチンリン酸、ジクロロ酢酸、ニコチンアミド、リボフラビン、カルニチンなど)、抗酸化剤(例えば、植物抽出物(例えば、イチョウ(gingko biloba)、補酵素Q10、ビタミンE(αトコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンA(βカロテン)、セレン、リポ酸、セレジンなど)、抗グルタミン酸療法(例えば、レマセミド、リルゾール、ラモトリジン、ガバペンチンなど)、GABA−エルジック(ergic)療法(例えば、バクロフェン、ムシモールなど)、遺伝子転写調節物質(例えば、グルココルチコイド、レチノイン酸など)、エリスロポエチン、TNFαアンタゴニスト、コリンエステラーゼインヒビター、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)アンタゴニスト、オピオイドアンタゴニスト、ニューロン膜安定化剤(例えば、CDP−コリンなど)、カルシウムおよびナトリウムチャンネルブロッカー、プレドニゾンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
抗感染剤には、ウイルス、真菌、寄生生物または細菌の感染を治療するための、当技術分野で公知の物質が含まれる。
【0076】
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明することとするが、これらの実施例は限定的なものと解釈されるべきではない。本出願の全体において引用されているすべての参考文献、特許および公開特許出願は、参考として本明細書に援用されている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、種々の用量のD2E7を投与した治療群における各マウスの関節炎スコアを示す。第1週齢から毎週、関節炎スコアを記録した。このグラフには、各治療群について、関節炎スコアの平均±標準誤差が示されている。治療群は以下のとおりであった:対照群:11匹の雌マウス、9匹の雄マウス(n=20);10mg/kg用量群:2匹の雌マウス、2匹の雄マウス(n=4);5mg/kg用量群:6匹の雌マウス、1匹の雄マウス(n=7);1mg/kg用量群:5匹の雌マウス、3匹の雄マウス(n=8);0.5mg/kg用量群:3匹の雌マウス、2匹の雄マウス(n=5);0.1mg/kg用量群:3匹の雌マウス、3匹の雄マウス(n=6);0.01mg/kg用量群:4匹の雌マウス、2匹の雄マウス(n=6)。
【図2】図2は、種々の用量のレミカド(Remicade)を投与した治療群における各マウスの関節炎スコアを示す。第1週齢から毎週、関節炎スコアを記録した。このグラフには、各治療群について、関節炎スコアの平均±標準誤差が示されている。治療群は以下のとおりであった:対照群:11匹の雌マウス、9匹の雄マウス(n=20);10mg/kg用量群:4匹の雌マウス、1匹の雄マウス(n=5);5mg/kg用量群:3匹の雌マウス、4匹の雄マウス(n=7);1mg/kg用量群:6匹の雌マウス、2匹の雄マウス(n=8);0.5mg/kg用量群:4匹の雌マウス、2匹の雄マウス(n=6);0.1mg/kg用量群:1匹の雌マウス、4匹の雄マウス(n=5);0.01mg/kg用量群:2匹の雌マウス、3匹の雄マウス(n=5)。
【図3】図3は、種々の用量のエンブレル(Enbrel)を投与した治療群における各マウスの関節炎スコアを示す。第1週齢から毎週、関節炎スコアを記録した。このグラフには、各治療群について、関節炎スコアの平均±標準誤差が示されている。治療群は以下のとおりであった:対照群:11匹の雌マウス、9匹の雄マウス(n=20);10mg/kg用量群:3匹の雌マウス、2匹の雄マウス(n=5);5mg/kg用量群:3匹の雌マウス、3匹の雄マウス(n=6);1mg/kg用量群:5匹の雌マウス、1匹の雄マウス(n=6);0.5mg/kg用量群:4匹の雌マウス、3匹の雄マウス(n=7);0.1mg/kg用量群:2匹の雌マウス、3匹の雄マウス(n=5);0.01mg/kg用量群:2匹の雌マウス、4匹の雄マウス(n=6)。
【図4】図4は、D2E7、レミカド(Remicade)およびエンブレル(Enbrel)で治療した10週齢のhuTNF−Tg197マウスにおける最終関節炎スコアを示す。
【図5】図5A〜Dは、関節炎の関節から採取した種々の組織の組織病理学的評価を示す。
【図6】図6A、6Bおよび6Cは、D2E7、レミカド(Remicade)およびエンブレル(Enbrel)で治療したhuTNF−Tg197マウスにおける循環huTNFレベルを示す。
【実施例1】
【0078】
D2E7の低用量での投与の効力の研究
慢性関節リウマチ(RA)のトランスジェニック(Tg197)マウスモデルを使用した多発性関節炎の予防における低用量のD2E7、インフリキシマブ(infliximab)およびエタネルセプト(etanercept)の効力を判定するための研究を行った。インフリキシマブはヒト−マウスキメラ抗体であり、エタネルセプトはp75 TNF受容体構築物である。D2E7は、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから誘導された完全ヒト抗体である。トランスジェニックマウスTg197はヒトTNF遺伝子を含有し、ヒト慢性関節リウマチに類似した疾患を自然に発症する(Keffer,J.ら,1991,EMBO J.10:4025)。慢性関節リウマチを含む関節炎疾患の徴候には、体重増加の低下、関節歪曲および腫脹、関節変形および強直ならびに運動阻害が含まれる。組織病理学的所見には、滑膜の過形成、白血球浸潤、パンヌス形成、関節軟骨および骨破壊が含まれる。抗TNF剤の投与は多発性関節炎の発生を用量依存的に妨げる。
【0079】
A.D2E7、レミカドおよびエンブレルの結合特性の比較
、インフリキシマブ(レミカド(Remicade))およびエンタネルセプト(エンブレル(Enbrel))は、慢性関節リウマチに関して承認されている2つの抗TNF薬である。レミカドはヒト−マウスキメラIgG抗体であり、エンブレルは、p75 TNF受容体の細胞外ドメインとIgG分子の定常領域とから構成される融合タンパク質である。D2E7は、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから選択されたIgGκクラスの完全ヒト抗体である。3つ全ての抗TNF剤が、比較的類似した強度でヒトTNFに結合する。TNFに対するD2E7、レミカドおよびエンブレルの固有アフィニティーはそれぞれ8.6×10−11、9.5×10−11および15.7×10−11M(Kd値)である。TNFへの結合の速度論は抗体D2E7およびレミカドに関しては類似している。一方、エンブレルはTNFに速く結合し、TNFから速く解離する。したがって、エンブレル:TNF複合体の16分間の半減期は、レミカドおよびD2E7:TNF複合体のそれぞれ184分間および255分間の半減期よりかなり短い。
【0080】
BIAcore 3000装置を使用して、ヒトTNFと抗TNF剤との結合の速度論的パラメーターを誘導した。バイオセンサーチップをヤギ抗ヒトFc抗体に共有結合させた。ついで抗TNF剤(D2E7、レミカドおよびエンブレル)を該チップ上に捕捉し、種々の濃度のhuTNFを加えた。
【0081】
結合データを解析して速度論的パラメーターを誘導した。それを表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
B.関節炎の症状の予防
慢性関節リウマチに一般に関連している症状の軽減に対するD2E7、レミカドおよびエンブレルの低用量法の効果を研究するためのモデルとして、Tg197マウスを使用した。ヒトTNFトランスジェニックマウスはPCRにより同定し確認した。1週齢から、Tg197マウスの別々の同腹子を、異なる研究群に割り当てた。ヒトTNF遺伝子に関してヘテロ接合であるTg197マウスにはD2E7、レミカドまたはエンブレルを毎週腹腔内投与した。各薬物処理群は、単一の同腹子からのマウスよりなるものであった。対照群にはリン酸緩衝食塩水希釈剤を投与し、該対照群は、4匹の同腹子からのマウスよりなるものであった。各群の動物の体重を、投与前に毎週記録した。以下のとおり、各群には毎週1回のi.p.注射を行った。
【0084】
【表2】

【0085】
以下のスコア系を用いて、各群における関節炎スコアを毎週記録した:
0 関節炎は認められない;
1 軽度の関節炎(関節歪曲);
2 中等度の関節炎(腫脹、関節変形);
3 重度の関節炎(屈曲の際の強直および著しい運動阻害)。
【0086】
処理を10週間継続した。該スコアアッセイからの結果を図1、2および3に示す。図4は、処理Tg197マウスにおける第10週でのそれらの3つの抗体に関する最終関節炎スコアを示す。これらの結果は、関節炎スコアの発生を妨げるためには、より高いエンブレル用量が必要であったことを示している。エンブレルのED50値は1mg/kgに近かった。一方、D2E7およびレミカドのED50値は0.5mg/kg未満であった。それらの2つの抗体においては、D2E7は、同じ用量で、レミカドより優れた防御をもたらした。さらに、0.5mg/kgのD2E7で処理したマウスでは5週まで、0.1mg/kg用量のD2E7で処理したマウスでは4週まで、疾患の発症が遅延した(図1)。これに対して、0.1mg/kgまたは0.5mg/kgのレミカドで処理したマウスにおいては、疾患の発症は僅か3週間遅延したに過ぎなかった(図2)。
【0087】
要約すると、D2E7、レミカドおよびエンブレルの3つ全ての物質がTg197マウスにおける関節炎の発症を用量依存的に予防した。処理マウスは、未処理マウスより低い関節炎スコアおよびより軽い炎症および関節損傷を有し、より大きな体重増加を示した。応答のパターンは全3種のTNFアンタゴニストで類似していたが、防御の程度はそれらの3つの物質の間で様々であった。最高の飽和用量はそれらの物質間の違いを示さなかったが、中間用量での防御効力はD2E7処理マウスにおいて最高であり、これはインフリキシマブ(レミカド)処理マウスの場合より高く、エタネルセプト(エンブレル)処理マウスでは最低であった。
【0088】
C.処理マウスにおける循環huTNFレベルの分析
該研究の5週および10週の時点で血液を集めた。血清を準備し、ヒトTNFのレベルをMedgenixヒトTNF ELISAキットで測定した。TNFレベルは、処理群の各マウスについて測定した。該研究の結果を図6に示す。このグラフには、各処理群について、TNFレベルの平均±標準誤差が示されている。各グラフにおいては、基準値を示す目的で、2ng/mL TNFレベルに実線が引かれている。未処理群においては、血清huTNFレベルは低く、5週および10週でそれぞれ0.1および0.2ng/mLであった。抗TNF剤の毎週の投与は該血清中のTNFの隔離(sequestration)をもたらした。血清huTNFのレベルはD2E7処理マウスまたはレミカド処理マウスでは類似していた。平均huTNFレベルは投与量の関数として2ng/mLから0.1ng/mLへと減少した。一方、エンブレル処理マウスは、遥かに高い血清huTNFを示し、20ng/mLのレベルに達した。
【0089】
要約すると、遊離TNFおよび結合TNFの両方を検出するMedgenix ELISAによるヒトTNFの測定は、これらの抗TNF剤がTNFを複合体内に隔離していることを示した。処理マウスの血清においては、検出可能なレベルのTNFが認められたが、未処理マウスにおいてはそれは非常に低レベルであった。興味深いことに、エタネルセプトに関する未クリアランスTNF複合体のレベルは、インフリキシマブまたはD2E7で処理されたマウスの場合より10倍高かった。エタネルセプトの場合のTNFのクリアランスの遅延は、公開されている動物モデルおよび臨床研究において認められている。
【0090】
D.処理マウスの顕微鏡的分析
10週間の処理の後、すべてのマウスを犠死させた。各処理群の2匹のマウスから右および左の後脚を摘出した。脚を10% 中性緩衝ホルマリンで固定し、ついで脱灰した。各脚サンプルからの3つの連続的な断片をスライド上にマウントし、記号が付されたそれらのスライドを、病理学者による独立した評価に送った。
【0091】
スライドはヘマトキシリン/エオシンで染色された。該病理学者は、血管分布、炎症、軟骨および骨侵食の程度に関して1〜4のスケールで各スライドをスコア化した。結果を以下の表2に示す。
【0092】
【表3】

【0093】
この実験からの結果を図5にも示す。図5においては、各脚からの3枚のスライドを検査した。したがって、各マウスに6枚のスライドおよび各処理群に12枚のスライドを組織病理学に関してスコア化した。このグラフには、各処理群について、組織病理学的スコアの平均±標準偏差が示されている。該病変のほとんどは脚関節に伴っており、すべては対称に出現した(すなわち、ある与えられたマウスの左および右の脚に関して類似したスコアが認められた)。軟骨分解は主に骨内膜の侵食病変から生じ、一般には骨侵食ほど広範ではなかった。炎症は主に、少数のPMNを伴う単核細胞であったが、稠密なPMN座は認められなかった。
【0094】
それらの3つの抗TNF剤の間の相違は、関節炎スコアとして測定される外的徴候よりも、関節炎関節における疾患活性の顕微鏡的徴候において最も顕著であった。関節における骨侵食は0.5mg/kg用量のD2E7により完全に阻止された。レミカドまたはエンブレルで同じ効果を達成するためには、遥かに高い用量(5mg/kg)が必要であった。関節における軟骨侵食は0.1mg/kg用量のD2E7により完全に阻止された。レミカドまたはエンブレルで同じ効果を達成するためには、遥かに高い用量(レミカドは1mg/kg、エンブレルは5mg/kg)が必要であった。関節における炎症は0.5mg/kg用量のD2E7により完全に阻止された。他の薬物で同じ効果を達成するためには、遥かに高い用量(レミカドは5mg/kg、エンブレルは10mg/kg)が必要であった。関節における血管分布は0.5mg/kg用量のD2E7またはレミカドにより完全に阻止された。エンブレルで同じ効果を達成するためには、遥かに高い用量(5mg/kg)が必要であった。
【0095】
顕微鏡的関節損傷の予防における用量−反応においては、D2E7,インフリキシマブおよびエタネルセプトの間で明らかな相違が認められた。D2E7は0.5−mg/kg用量で骨侵食、軟骨分解、炎症および血管分布を完全に予防したが、インフリキシマブおよびエタネルセプトは共に、同様の効力レベルに達するためには1または5mg/kgの用量を要した。要約すると、ヒトTNFトランスジェニックマウスTg197においては、D2E7は特に低用量で、エタネルセプトまたはインフリキシマブより強力に多発性関節炎を予防した。
【0096】
等価物
当業者は、通常の実験のみを用いて、本明細書に記載の発明の具体的な実施形態の多数の等価物を認識し又は確認しうるであろう。そのような等価物は特許請求の範囲に含まれると意図される。本出願の全体において引用されている全ての参考文献、特許および特許出願の内容は、参考として本明細書に援用されている。米国特許第6,090,382号および第6,258,562 Bl号ならびに米国特許出願第09/540,018号および第09/801,185号の全体は、参考として本明細書に援用されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFα活性が有害である疾患の治療方法であって、該疾患が治療されるよう、低用量の療法にてTNFαインヒビターの有効量を被験体に投与することを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−21001(P2012−21001A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−161229(P2011−161229)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2004−547181(P2004−547181)の分割
【原出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願人】(503448572)アボツト・バイオテクノロジー・リミテツド (30)
【Fターム(参考)】