説明

TNF−α結合分子

本発明は、TNF-α結合分子およびTNF-α結合分子をコードする核酸配列に関する。特に、本発明はヒトTNF-αに関して高い結合親和性、高い結合速度、低い解離速度を有し、低濃度でTNF-αを中和することが出来るTNF-α結合分子に関する。好ましくは、本発明のTNF-α結合分子は完全にヒトのフレームワーク(例えば、ヒト生殖系列フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変部を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年1月8日出願の米国特許出願番号第10/338,552号および2003年1月8日出願の米国特許出願番号第10/338,627号の両方からの優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明はTNF-α結合分子およびTNF-α結合分子をコードする核酸配列に関する。特に、本発明はヒトTNF-αに関して高い結合親和性、高い結合速度、低い解離速度を有し、TNF-αに媒介される細胞毒性を低濃度で阻止することができるTNF-α結合分子に関する。好ましくは、本発明のTNF-α結合分子は完全にヒトのフレームワーク(例えば、ヒト生殖系列フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変部を含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)は単球およびマクロファージを含む様々な細胞タイプによって産生されるサイトカインであり、最初は特定のマウス腫瘍の壊死を誘導するその能力に基づいて同定された。次いでカヘキシーに関連するカケクチンと称される因子が、TNF-αと同一であることが示された。TNF-αは様々なその他のヒト疾患および障害、例えば、ショック、敗血症、感染症、自己免疫疾患、移植片拒絶反応および移植片対宿主病の病態生理に関与している。
【0004】
様々なヒトの障害におけるヒトTNF-α(hTNF-α)の有害な役割により、hTNF-α活性を阻害または対抗するような治療戦略が設計されてきた。特に、hTNF-αに結合し、それを中和する抗体は、hTNF-α活性の阻害の手段として求められてきた。かかる抗体のうちもっとも初期のものとしては、hTNF-αで免疫したマウスのリンパ球から調製されたハイブリドーマによって分泌されるマウスモノクローナル抗体(mAb)が挙げられる(例えば、米国特許第5231024号、Moeller et alを参照されたい)。これらマウス抗-hTNF-α抗体はしばしばhTNF-αに対して高親和性を示し、hTNF-α活性を中和することが出来たが、そのインビボでの使用は、マウス抗体をヒトに投与することに伴う問題によって制限されてきた。かかる問題としては、例えば、短い血清半減期、特定のヒトエフェクター機能をトリガー出来ないこと、そしてヒトにおけるマウス抗体に対する望ましくない免疫応答の誘発(「ヒト抗-マウス抗体」(HAMA)反応)が挙げられる。
【0005】
完全にマウスの抗体をヒトに使用することに関する問題を克服する試みにおいて、マウス抗-hTNF-α抗体はより「ヒト-様」になるよう遺伝子操作されてきた。例えば、抗体鎖の可変部がマウス由来であり、抗体鎖の定常部がヒト由来であるキメラ抗体が調製された(例えば、引用により本明細書に含める米国特許第5698195号)。さらに抗体可変部の超可変ドメインおよび多数のフレームワーク残基がマウス由来であるが、残りの可変部および抗体定常部がヒト由来であるヒト化抗体も調製された(例えば、引用により本明細書に含める米国特許第5994510号、Adair et al.)。しかし、これら抗体は依然としてかなりの数のマウス残基を保持しているため、これらはいまだに、特に長期間投与した場合、望ましくない免疫反応である、ヒト抗-キメラ抗体(HACA)反応を誘発しうる(例えば、Elliott、et al.、(1994) Lancet 344:1125-1127; and Elliot、et al.、(1994) Lancet 344:1105-1110を参照されたい)。
【0006】
抗-TNF-α抗体におけるマウス配列の存在をさらに制限または排除する試みがなされてきた。例えば、hTNF-αに対するヒトモノクローナル自己抗体がヒトハイブリドーマ技術を用いて調製された(例えば、引用により本明細書に含める米国特許第5654407号、Boyle)。しかし、これらのハイブリドーマ-由来のモノクローナル自己抗体は常套方法では測定できないほどhTNF-αに対する親和性が低く、可溶性 hTNF-αに結合することが出来ず、hTNF-α-誘導性細胞毒性を中和することが出来ないと報告されている(Boyle、et al.、(1993) 細胞. Immunol. 152:556-581を参照)。さらに、ヒトハイブリドーマ技術の成功は一般にhTNF-αに特異的な自己抗体を産生するリンパ球がヒト末梢血に天然に存在することに依存している。
【0007】
天然のヒト抗-hTNF-α抗体に代わるものは組換えhTNF-α抗体であろう。比較的低親和性 (即ち、Kd約10-7 M)および比較的速い解離速度(即ち、koff 約10-2 s-1)でhTNF-αに結合する組換えヒト抗体が記載されている(Griffiths、A. D.、et al. (1993) EMBO J. 12:725-734)。しかしその比較的速い解離動力学、および比較的低い親和性により、これら抗体は治療用途には好適ではなかろう。さらに、中程度の結合親和性 (Kd約 6 x 10-10 M)、解離速度 (koff 約 8.8 x 10-5 s-1)、結合速度 (kon 約 1.9 x 105 M-1 s-1)、および中和能力(IC50約 1.25 x 10-10)を有する組換えヒト抗-hTNF-α抗体が記載されている(引用により本明細書に含める米国特許第6258562号のD2E7抗体を参照されたい)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、求められているものは、ヒトTNF-αに関して高い結合親和性、高い結合速度、低い解離速度および改善された中和特性を有するTNF-α結合分子、そしてヒトにおける免疫原性がかなり抑えられたTNF-α結合分子である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、TNF-α結合分子およびTNF-α結合分子をコードする核酸配列を提供する。特に、本発明はヒトTNF-αに対して高い結合親和性、高い結合速度、低い解離速度を有し、インビトロおよびインビボで増強された中和特性を有するTNF-α結合分子を提供する。好ましくは、本発明のTNF-α結合分子は完全にヒトのフレームワークを有する軽鎖および/または重鎖可変部を含む。特に好ましい態様において、本発明のTNF-α結合分子は生殖系列フレームワーク(例えば、ヒト生殖系列フレームワーク)を有する軽鎖および/または重鎖可変部を含む。
【0010】
いくつかの態様において、本発明は、ペプチド、またはペプチドをコードする核酸配列を含む組成物を提供し、ここでペプチドは配列番号11、13、および15から選択されるアミノ酸配列を含む。別の態様において、ペプチドはさらに配列番号19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53および55から選択される1以上のアミノ酸配列を含む。
【0011】
特定の態様において、本発明はペプチド、またはペプチドをコードする核酸配列を含む組成物を提供し、ここでペプチドは配列番号21、25および27から選択されるアミノ酸配列を含む。別の態様において、ペプチドは配列番号9、11、13、15、17、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53および55から選択される1以上のアミノ酸配列を含む。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、ペプチド、またはペプチドをコードする核酸配列を含む組成物を提供し、ここで、ペプチドは配列番号33に示すアミノ酸配列を含む。特定の態様において、ペプチドはさらに配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53および55から選択される1以上のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの態様において、本発明はペプチド、またはペプチドをコードする核酸配列を含む組成物を提供し、ここでペプチドは配列番号35、37、および39から選択されるアミノ酸配列を含む。別の態様において、ペプチドはさらに配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、43、45、47、49、51、53および55から選択される1以上のアミノ酸配列を含む。
【0014】
特定の態様において、本発明はペプチド、またはペプチドをコードする核酸配列を含む組成物を提供し、ここでペプチドは配列番号45および49から選択されるアミノ酸配列を含む。別の態様において、ペプチドはさらに配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41および53から選択される1以上のアミノ酸配列を含む。
【0015】
特定の態様において、本発明はペプチド、またはペプチドをコードする核酸配列を含む組成物を提供し、ここでペプチドは配列番号53に示すアミノ酸を含む。さらなる態様において、ペプチドはさらに配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51および55から選択される1以上のアミノ酸配列を含む。
【0016】
特別の態様において、本発明はペプチド、またはペプチドをコードする核酸配列を含む組成物を提供し、ここでペプチドは配列番号87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107および109から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの態様において、TNF-α結合分子はTNF-α結合ペプチドまたはポリペプチドである。特定の態様において、TNF-α結合ペプチドは抗-TNF-α抗体または抗-TNF-α抗体断片(例えば、Fab、F(ab')2等)を含む。別の態様において、ペプチドは、軽鎖および/または重鎖可変部を含む。特別の態様において、軽鎖可変部および/または重鎖可変部はフレームワーク領域を含む。特定の態様において、少なくとも、FRL1、FRL2、FRL3、またはFRL4は完全にヒトのものである。別の態様において、少なくとも、FRH1、FRH2、FRH3、またはFRH4は完全にヒトのものである。いくつかの態様において、少なくとも、FRL1、FRL2、FRL3、またはFRL4は生殖系列配列(例えば、ヒト生殖系列)である。別の態様において、少なくとも、FRH1、FRH2、FRH3、またはFRH4は生殖系列配列(例えば、ヒト生殖系列)である。好ましい態様において、フレームワーク領域は完全にヒトのフレームワーク領域(例えば、図5および6に示すヒトフレームワーク領域)である。いくつかの態様において、フレームワーク領域は、配列番号57、58、59、60またはその組み合わせを含む。別の態様において、フレームワーク領域は、配列番号65、66、67、68、またはその組み合わせを含む。
【0018】
いくつかの態様において、本発明はオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供し、ここでオリゴヌクレオチドは配列番号12、14、または16から選択される核酸配列を含む。別の態様において、オリゴヌクレオチドはさらに配列番号20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、および56から選択される1以上の核酸配列を含む。
【0019】
特定の態様において、本発明はオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供し、ここでオリゴヌクレオチドは配列番号22、26、および28から選択される核酸配列を含む。さらなる態様において、オリゴヌクレオチドは配列番号10、12、14、16、18、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、および54から選択される1以上の核酸配列をさらに含む。
【0020】
別の態様において、本発明はオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供し、ここでオリゴヌクレオチドは配列番号34に示す核酸配列を含む。特定の態様において、オリゴヌクレオチドは配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、36、38、40、42、44、46、48、50、52および54から選択される1以上の核酸配列をさらに含む。
【0021】
特別の態様において、本発明はオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供し、ここでオリゴヌクレオチドは配列番号36、38、および40から選択される核酸配列を含む。さらなる態様において、オリゴヌクレオチドは配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、44、46、48、50、52および54から選択される1以上の核酸配列をさらに含む。
【0022】
別の態様において、本発明はオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供し、ここでオリゴヌクレオチドは配列番号46および50から選択される核酸配列を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、および54から選択される1以上の核酸配列をさらに含む。
【0023】
さらなる態様において、本発明はオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供し、ここでオリゴヌクレオチドは配列番号54に示す核酸配列を含む。特定の態様において、オリゴヌクレオチドは配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、および52から選択される1以上の核酸配列をさらに含む。
【0024】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドはさらにベクター配列を含む。別の態様において、オリゴヌクレオチドはさらに抗体可変部フレームワークをコードする核酸配列を含む。好ましい態様において、フレームワークは完全にヒトのものである。さらなる態様において、オリゴヌクレオチドはさらに抗体定常部をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは配列番号61、62、63、64、69、70、71、72、またはその組み合わせから選択されるフレームワーク領域を含む。特定の態様において、図15に示すヒト生殖系列軽鎖および/または重鎖フレームワークを用いる(即ち、軽鎖についてIGKV1-39および重鎖についてIGVH3-72)。
【0025】
いくつかの態様において、本発明はTNF-α結合分子、またはTNF-α結合分子をコードするオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供し、ここでTNF-α結合分子は以下を含む:
i) 配列番号33を含むCDRL3 配列、および、
ii) 配列番号53を含むCDRH3。
特別の態様において、TNF-α分子はhu1 Fab (例えば、hu1 Fab 断片に存在する可変部を有するIgG)を含む。
【0026】
特定の態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
iii) 配列番号11を含むCDRL1 配列、および、
iv) 配列番号21を含むCDRL2 配列。
別の態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
v) 配列番号37を含むCDRH1 配列、および、
vi) 配列番号49を含むCDRH2 配列。
いくつかの態様において、TNF-α結合分子は2C6K Fab (例えば、2C6K Fab 断片に存在する可変部を有するIgG)を含む。さらなる態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
v) 配列番号39を含むCDRH1 配列、および
vi) 配列番号49を含むCDRH2 配列。
特別の態様において、TNF-α結合分子は2C6P Fab (例えば、2C6P Fab 断片に存在する可変部を有するIgG)を含む。
【0027】
いくつかの態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
iii) 配列番号11を含むCDRL1 配列、および、
iv) 配列番号25を含むCDRL2 配列。
別の態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
v) 配列番号37を含むCDRH1 配列、および、
vi) 配列番号55を含むCDRH2 配列。
特別の態様において、TNF-α結合分子は2E7K Fab(例えば、2E7K Fab 断片に存在する可変部を有するIgG)を含む。
別の態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
v) 配列番号39を含むCDRH1 配列、および
vi) 配列番号55を含むCDRH2 配列。
特別の態様において、TNF-α結合分子は2E7P Fab (例えば、2E7P Fab 断片に存在する可変部を有するIgG)を含む。
【0028】
さらなる態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
iii) 配列番号13を含むCDRL1 配列、および、
iv) 配列番号27を含むCDRL2 配列。
いくつかの態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
v) 配列番号37を含むCDRH1 配列、および、
vi) 配列番号55を含むCDRH2 配列。
特別の態様において、TNF-α結合分子はA9K Fab (例えば、A9K Fab 断片に存在する可変部を有するIgG)を含む。特定の態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
v) 配列番号39を含むCDRH1 配列、および、
vi) 配列番号55を含むCDRH2 配列。
特別の態様において、TNF-α結合分子は A9P Fab (例えば、A9P Fab 断片に存在する可変部を有するIgG)を含む。
【0029】
いくつかの態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
iii) 配列番号15を含むCDRL1 配列、および、
iv) 配列番号25を含むCDRL2 配列。
別の態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
v) 配列番号37を含むCDRH1 配列、および、
vi) 配列番号45を含むCDRH2 配列。
特別の態様において、TNF-α結合分子はA10K Fab (例えば、A10K Fab 断片に存在する可変部を有するIgG)を含む。別の態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
v) 配列番号39を含むCDRH1 配列、および、
vi) 配列番号45を含むCDRH2 配列。
特別の態様において、TNF-α結合分子はA10P Fab (例えば、A10P Fab 断片に存在する可変部を有するIgG)を含む。
【0030】
いくつかの態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
iii) 配列番号9を含むCDRL1 配列、および、
iv) 配列番号19を含むCDRL2 配列。
別の態様において、TNF-α結合分子はさらに以下を含む:
v) 配列番号35を含むCDRH1 配列、および、
vi) 配列番号43を含むCDRH2 配列。
【0031】
特定の態様において、TNF-α結合分子はさらに軽鎖可変部を含み、ここで軽鎖可変部はフレームワーク領域を含む。いくつかの態様において、軽鎖可変部は配列番号57、58、59、60、およびその組み合わせから選択される軽鎖フレームワーク領域を含む。好ましい態様において、フレームワーク領域は完全にヒトのフレームワークである。特に好ましい態様において、フレームワーク領域は生殖系列フレームワーク (例えば、ヒトまたはその他の動物の生殖系列フレームワーク)である。
【0032】
いくつかの態様において、TNF-α結合分子はさらに重鎖可変部を含み、ここで重鎖可変部はフレームワーク領域を含む。特定の態様において、重鎖可変部は配列番号65、66、67、68、およびその組み合わせから選択される重鎖フレームワーク領域を含む。好ましい態様において、フレームワークは完全にヒトのフレームワークである。特に好ましい態様において、フレームワーク領域は生殖系列フレームワーク(例えば、ヒトまたはその他の動物の生殖系列フレームワーク)である。
【0033】
特定の態様において、本発明は、軽鎖可変部、または軽鎖可変部をコードする核酸配列を含む組成物を提供し、ここで、軽鎖可変部は配列番号1および5から選択されるアミノ酸配列を含む。別の態様において、本発明は軽鎖可変部をコードするオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供し、ここでオリゴヌクレオチドは配列番号2または配列番号6を含む。
【0034】
いくつかの態様において、本発明は重鎖可変部、または重鎖可変部をコードする核酸配列を含む組成物を提供し、ここで、重鎖可変部は配列番号3および7から選択されるアミノ酸配列を含む。特別の態様において、本発明は重鎖可変部をコードするオリゴヌクレオチドを含む組成物を提供し、ここでオリゴヌクレオチドは配列番号4または配列番号8を含む。
【0035】
いくつかの態様において、本発明は配列番号1-108から選択される核酸またはアミノ酸配列あるいはその相補鎖の表示をエンコードするコンピュータ可読媒体を提供する。特定の態様において、これら配列の表示はコンピュータ・プロセッサに送達されると、ユーザにディスプレイするものである(例えば、インターネット上)。特別の態様において、本発明は本明細書に記載するCDRコード核酸配列(例えば、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、74、76、78、80、82、84、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、および108)の相補鎖を提供する。さらなる態様において、本発明は本明細書に記載するCDRコード核酸配列(例えば、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、74、76、78、80、82、84、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、および108)に(低、中〜高ストリンジェンシーの条件下で)ハイブリダイズする核酸配列を提供する。
【0036】
いくつかの態様において、本発明は本明細書に記載する核酸配列(例えば表1-3および6参照)の相補鎖を提供する。いくつかの態様において、本発明は本明細書に記載する核酸配列(例えば表1-3および6参照) に高、中〜低ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする核酸配列を提供する。
【0037】
特定の態様において、本発明はヒトTNF-αに対する結合速度定数 (kon)が3.0 x 106 M-1 s-1以上であるTNF-α結合分子を含む組成物を提供する。別の態様において、結合速度定数は、4.0 x 106 M-1 s-1以上である (例えば、約 4.1 x 106 M-1 s-1 、約 5.5 x 106 M-1 s-1 、または約 7.0 x 106 M-1 s-1 )。別の態様において、結合速度定数は約 3.0 x 106 M-1 s-1 〜約 7.5 x 106 M-1 s-1 である(例えば、約 3.5 x 106 M-1 s-1 〜約 7.0 x 106 M-1 s-1 、または約 4.0 x 106 M-1 s-1 〜約 6.0 x 106 M-1 s-1 )。
【0038】
いくつかの態様において、結合速度定数は動力学排除(kinetic exclusion)アッセイ(例えば、Chiu et al.、(2001) Anal. Chem.、73:5477-5484; Blake、et al.、(1996) Journal of Biological Chemistry、271:27677-27685; Hongo、et al.、(2000) Hybridoma、19:303-315; Khosraviani、et al.、(2000) Bioconjugate Chemistry、11:267-277; and Powers、et al.、(2001) Journal of Immunological Methods、251:123-135を参照、そのすべては引用により本明細書に含める)によって測定される。特別の態様において、動力学排除アッセイはKinExA装置 (例えば、KinExA(商標)3000、Sapidyne Instruments、Boise、Idaho)、または類似の装置を用いて行う。
【0039】
さらなる態様において、TNF-α結合分子はヒトTNF-αに対する結合親和性 (Kd)が 約 7.5 x 10-12 M以下である。別の態様において、結合親和性は約 5.0 x 10-12 M 以下である。特定の態様において、結合親和性は約 3.0 x 10-12 M以下である。いくつかの態様において、結合親和性は2.2 x 10-12 M以下である。さらに別の態様において、結合親和性は 約 7.2 x 10-12 M 〜 約 2.0 x 10-12 M (例えば、約 6.0 x 10-12 M〜約 3.0 x 10-12 M、または約 5.0 x 10-12 M 〜 約 4.0 x 10-12 M)である。特別の態様において、結合親和性は動力学排除アッセイ (例えば、KinExA 装置を用いる)によって測定される。
【0040】
特定の態様において、TNF-α結合分子はヒトTNF-αに対する解離速度定数 (koff)が約 1.0 x 10-4 s-1 以下である。いくつかの態様において、解離速度定数は約 1.0 x 10-5 s-1 以下、約 9.0 x 10-6 s-1以下または約 7.0 x 10-6 s-1以下である。別の態様において、解離速度定数は約 1.0 x 10-4 s-1 〜約 8.0 x 10-6 s-1 (例えば、約 1.0 x 10-5 s-1 〜 約 6.0 x 10-6 s-1)である。特定の態様において、解離速度は動力学排除アッセイによって測定される。
【0041】
いくつかの態様において、本発明はインビトロ、細胞ベースアッセイ (例えば実施例2参照)においてヒトTNF-α 細胞毒性をEC50 1.0 x 10-10 以下 (例えば、1.0 x 10-10 - 1.0 x 10-11)にて中和するTNF-α結合分子を含む組成物を提供する。別の態様において、TNF-α結合分子はインビトロ、細胞ベースアッセイにおいてヒトTNF-α細胞毒性をEC50 7.0 x 10-11以下(例えば、7.0 x 10-11 - 3.0 x10-11)にて中和する。 いくつかの態様において、TNF-α結合分子はインビトロ、細胞ベースアッセイにおいてヒトTNF-α細胞毒性をEC50 2.0 x 10-12以下 (例えば、1.9 x 10-12以下、1.8 x 10-12以下、1.7 x 10-12以下、1.6 x 10-12以下、1.5 x 10-12以下、1.4 x10-12以下、1.3 x 10-12以下、1.2 x 10-12以下、1.1 x 10-12以下、1.0 x 10-12以下、0.9 x10-12以下、0.8 x 10-12以下等)にて中和する。さらなる態様において、TNF-α結合分子はインビトロ、細胞ベースアッセイにおいてヒトTNF-α 細胞毒性を EC503.0 x10-12以下(例えば、3.0 x 10-12 - 2.0 x 10-12)にて中和する。特別の態様において、中和アッセイはL929 マウス線維芽細胞を本発明の分子で処理し、次いでTNF-α媒介細胞死を阻止することができる有効濃度を測定することによって行う。
【0042】
いくつかの態様において、TNF-α結合分子は軽鎖可変部および重鎖可変部を含む。特定の態様において、軽鎖可変部は完全にヒトのフレームワークを含む(例えば、図5を参照)。いくつかの態様において、軽鎖可変部は生殖系列フレームワーク (例えば、ヒト生殖系列フレームワーク)を含む。別の態様において、重鎖可変部は完全にヒトのフレームワーク (例えば、図6参照)を含む。さらなる態様において、重鎖可変部は生殖系列フレームワーク (例えば、ヒト生殖系列フレームワーク)を含む。特定の態様において、図15に示すヒト生殖系列軽鎖および/または重鎖フレームワークを用いる(即ち、軽鎖についてIGKV1-39 および重鎖についてIGVH3-72)。
【0043】
特別の態様において、TNF-α結合分子はFabまたはF(ab')2を含む。別の態様において、TNF-α結合分子はFabを含み、そしてさらに1以上の定常部を含む(例えば、CH2および/またはCH3、図13参照)。特別の態様において、TNF-α結合分子は抗体 (例えば、合成のCDR 配列を有する完全にヒトのフレームワークを含む抗体)を含む。特定の態様において、抗体は変化した(例えば突然変異した) Fc領域を含む。例えば、いくつかの態様において、Fc領域は変化して抗体のエフェクター機能が上昇または低下している。いくつかの態様において、Fc領域はIgM、IgA、IgG、IgEから選択されるアイソタイプまたはその他のアイソタイプである。
【0044】
いくつかの態様において、本発明は TNF-α結合分子、またはTNF-α結合分子をコードする核酸配列を含む組成物を提供し、ここで該TNF-α結合分子は少なくとも1つの以下のCDR 配列を含む;
i) 配列番号93を含むCDRL1 配列;
ii) 配列番号95を含むCDRL2 配列;
iii) 配列番号97を含むCDRL3 配列;
iv) 配列番号87を含むCDRH1 配列;
v) 配列番号89を含むCDRH2 配列、および、
vi) 配列番号91を含むCDRH3 配列。
別の態様において、TNF-α結合分子は少なくとも2つまたは少なくとも3つまたは少なくとも4つまたは少なくとも5つのCDR 配列を含む。いくつかの態様において、TNF-α結合分子は6つのすべてのCDR 配列を含む。特定の態様において、TNF-α結合分子は配列番号109に示す重鎖配列を含む(図15参照)。別の態様において、TNF-α結合分子は配列番号110に示す軽鎖配列を含む(図15参照)。好ましい態様において、TNF-α結合分子はAME 3-2であり、配列番号109 (重鎖)と配列番号110 (軽鎖)の両方を含む。
【0045】
いくつかの態様において、アミノ酸修飾がTNF-α結合分子のFc領域のCH2ドメインに導入される。Fc ガンマ受容体 (FcγR) 結合親和性または活性が変化したバリアントIgG Fc領域を作るのに有用な修飾のためのアミノ酸位置には以下の1以上のいずれかのアミノ酸位置が含まれる: TNF-α結合分子のFc領域 の268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、300 301、303、305、307、309、331,333、334、335、337、338、340、360、373、376、416、419、430、434、435、437、438または439。好ましい態様において、かかるバリアントを作成するためのテンプレートとして用いられる親 Fc領域はヒト IgG Fc領域を含む。いくつかの態様において、FcγR に対する結合性が低下したFc領域 バリアントを作るには、1以上の以下のいずれかのアミノ酸位置におけるアミノ酸修飾を導入すればよい: TNF-α結合分子のFc領域の252、254、265、268、269、270、272、278、289、292、293、294、295、296、298、300、301、303、322、324、327、329、333、335、338、340、373、376、382、388、389、414、416、419、434、435、437、438 または439。特別の態様において、1以上の FcγR に対する結合性の上昇したFc領域 バリアントを作ることも出来る。かかるFc領域 バリアントは以下の1以上のアミノ酸位置におけるアミノ酸修飾を含む: TNF-α結合分子のFc領域の280、283、285、286、290、294、295、298、300、301、305、307、309、312、315、331、333、334、337、340、360、378、398 または 430。
【0046】
特定の態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含むTNF-α結合分子を提供し、ここでバリアントは、該親ポリペプチドより高い親和性でFcγRに結合する、および/または、高いアッセイシグナルでFcγRと相互作用する、および/またはエフェクター細胞の存在下で抗体依存的細胞媒介細胞毒性 (ADCC)を媒介し、そしてFc領域の300位に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。特定の態様において、アミノ酸修飾はY300Iである。別の態様において、アミノ酸修飾はY300Lである。
【0047】
いくつかの態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含むTNF-α結合分子を提供し、ここでバリアントは親ポリペプチドよりも高い親和性でFc ガンマ受容体 III (FcγRIII)に結合するかまたはより高いアッセイシグナルで FcγRIIIと相互作用し、および/またはエフェクター細胞の存在下で抗体依存的細胞媒介細胞毒性 (ADCC)を媒介し、そしてFc領域の295位に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。特定の態様において、アミノ酸修飾はQ295KまたはQ295Lである。
【0048】
特定の態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含むTNF-α結合分子を提供し、ここでバリアントは親ポリペプチドと比べてより高い親和性でFcγRIIIと結合するか、またはバリアントはより高いアッセイシグナルでFcγRIIIと相互作用するか、および/または、エフェクター細胞の存在下で抗体依存的細胞媒介細胞毒性 (ADCC)を媒介し、そしてFc領域の294位に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。特定の態様において、アミノ酸修飾はE294Nである。
【0049】
別の態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含むTNF-α結合分子を提供し、ここでバリアントはELISA FcγR 結合アッセイにおいて測定しておよそ0.25 以下のFcγRIIまたはFcγRIIbについての結合親和性、即ちアッセイシグナルを有する。特定の態様において、バリアントはFc領域の296位に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。特定の態様において、296位におけるアミノ酸修飾はY296Pである。別の態様において、バリアントはFc領域の298位に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。いくつかの態様において、298位のアミノ酸修飾はS298Pである。
【0050】
特別の態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含むTNF-α結合分子を提供し、ここで バリアントは親ポリペプチドと比べて高い親和性でFcγRIIIと結合し、低い親和性でFcγRIIbと結合し、そしてバリアントはFc領域においてS298N アミノ酸修飾を含む。いくつかの態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含む組成物を提供し、ここでバリアントは親ポリペプチドと比べて高いアッセイシグナルでFcγRIIIと相互作用し、低いアッセイシグナルでFcγRIIbと相互作用し、そしてバリアントはFc領域においてS298N アミノ酸修飾を含む。
【0051】
別の態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含むTNF-α結合分子を提供し、ここでバリアントは親ポリペプチドと比べて高い親和性でFcγRIIIと結合し、低い親和性でFcγRIIbと結合し、そしてバリアントはFc領域においてS298V アミノ酸修飾を含む。いくつかの態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含む組成物を提供し、ここでバリアントは親ポリペプチドと比べて高いアッセイシグナルでFcγRIIIと相互作用し、低いアッセイシグナルでFcγRIIbと相互作用し、そしてバリアントはFc領域においてS298V アミノ酸修飾を含む。
【0052】
いくつかの態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含むTNF-α結合分子を提供し、ここでバリアントは親ポリペプチドと比べて高い親和性でFcγRIIIと結合し、低い親和性でFcγRIIbと結合し、そして、バリアントはFc領域においてS298D アミノ酸修飾を含む。別の態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含む組成物を提供し、ここでバリアントは親ポリペプチドと比べて高いアッセイシグナルでFcγRIIIと相互作用し、低いアッセイシグナルでFcγRIIbと相互作用し、そしてバリアントはFc領域においてS298D アミノ酸修飾を含む。
【0053】
特定の態様において、本発明はFc領域を有する親ポリペプチドのバリアントを含むTNF-α結合分子を提供し、ここでバリアントはELISA FcγR 結合アッセイで測定するとFcγRIIまたはFcγRIIbについての結合親和性、即ちアッセイシグナルおよそ0.25以下であり、そしてバリアントはFc領域の298位において少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。特定の態様において、298位のアミノ酸修飾はS298Pである。
【0054】
上記ポリペプチドバリアントは所望により、またはポリペプチドの用途に応じてさらに修飾に供してもよい。かかる修飾としては、例えば、さらなるアミノ酸配列変化(アミノ酸残基の置換、挿入および/または欠失)、異種ポリペプチドとの融合および/または共有結合修飾が含まれ得る。かかるさらなる修飾は上記アミノ酸修飾の前、同時または後のいずれに行ってもよく、Fc受容体結合および/または ADCC 活性の変化がもたらされる。
【0055】
代替的あるいは追加的に、アミノ酸修飾と、TNF-α結合分子のFc領域のC1q結合性および/または補体依存的細胞毒性機能を変化させるさらなる1以上のアミノ酸修飾とを組み合わせることが有用であり得る。特に興味深い開始ポリペプチドは、C1qに結合し、補体依存的細胞毒性 (CDC)を示すものであり得る。本明細書に記載するアミノ酸置換は、C1qに結合する開始ポリペプチドの能力の変化および/またはその補体依存的細胞毒性機能の改変に役立つものであり得る(例えば、これらエフェクター機能を低下させ、好ましくはなくすもの)。しかし、1以上の既述の位置における置換を含む、C1q結合性および/または補体依存的細胞毒性 (CDC) 機能が上昇したポリペプチドも本明細書において意図される。例えば、開始ポリペプチドはC1qへの結合および/またはCDCの媒介を行うことができないものであり得、明細書の教示に従って改変してかかるさらなるエフェクター機能を獲得し得る。さらに、既存の C1q 結合活性を有し、さらに所望によりCDCを媒介する能力を有するポリペプチドをこれらの一方または両方の活性を増進するように改変することが出来る。C1qを変化させる、および/またはその補体依存的細胞毒性機能を改変するアミノ酸修飾は例えば、WO0042072に記載されており、これは引用により本明細書に含まれる。
【0056】
上記のように、改変されたエフェクター機能を有するTNF-α結合分子のFc領域を設計することが出来、例えばそれはC1q 結合性および/またはFcγR結合性の改変により、それによってCDC 活性および/またはADCC 活性を変化させる。例えば、C1q 結合性が上昇し、FcγRIII結合性が上昇した(例えば、ADCC 活性とCDC 活性の両方が上昇した) TNF-α結合分子のバリアントFc領域を作ることが出来る。あるいは、エフェクター機能の低下または除去を望む場合、CDC 活性の低下および/またはADCC 活性の低下したバリアント Fc領域を操作して作ればよい。別の態様において、これら活性の一方のみを上昇させることも出来、そして所望により他方の活性を低下させることも出来る(例えば、ADCC 活性が上昇しているが、CDC 活性が低下したFc領域 バリアントの作成、およびその逆)。
【0057】
Fc 突然変異を本発明のTNF-α結合分子に導入して、その新生児 Fc 受容体 (FcRn)との相互作用を変化させ、その薬物動態学的特性を改善することが出来る。いくつかの実験により、抗体のFc領域とFcRnとの相互作用が血清中の免疫グロブリンの持続に役割を果たしていることが示唆されている。例えば、異常に短い血清半減期がマウスにおける機能性 FcRnを欠失したIgG 分子について観察されている。FcRnへの結合性を上昇させるFc 突然変異は血清半減期を長くするようであり、逆に、ラットFcRnにおけるIgG結合性をより強固にする突然変異も血清半減期を長くする。FcRnに対する結合性が上昇したヒト Fc バリアントの集まりも記載されている(Shields et al.、(2001) High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for FcγRI、FcγRII、FcγRIII、and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the FcγR、J. Biol. Chem. 276:6591-6604)。低pHで観察されるIgG 分子のFcRnに対する結合親和性の上昇 (例えば、血清からのIgG 分子のピノサイトーシスまたは液相エンドサイトーシスの際)が血清半減期に影響を与えることが報告されている (Ghetie et al.、(1997) Increasing the serum persistence of an IgG fragment by random mutagenesis、Nat. Biotechnol. 15:637-640; Medesan et al.、(1998) Comparative studies of rat IgG to further delineate the Fc:FcRn interaction site. Eur. J. Immunol. 28:2092-2100; Kim et al.、(1999) Mapping the site on human IgG for binding of the MHC class I-related receptor、FcRn、Eur. J. Immunol. 29:2819-2825; Acqua et al.、(2002) Increasing the affinity of a human IgG1 for the neonatal Fc receptor: biological consequences、J. Immunol. 169:5171-5180)。しかし、高pHにおける結合性を上昇させる突然変異は血清半減期に逆に影響するようである(Acqua et al.、(2002) Increasing the affinity of a human IgG1 for the nepnatal Fc receptor: biological consequences、J. Immunol. 169:5171-5180)。上記文献のすべてを引用により本明細書に含める。それゆえ、本発明のTNF-α結合分子にFc 突然変異を導入して低pHにおけるFcRnへのその親和性を上昇させ、高pHにおけるFcRnへのその親和性を維持または低下させることができる。
【0058】
別のタイプのアミノ酸置換はTNF-α結合分子のFc領域のグリコシル化パターンを変化させるのに役立つ。これは、例えば、ポリペプチドにみられる1以上のグリコシル化部位の欠失および/またはポリペプチドに存在しない1以上のグリコシル化部位の付加により達成することが出来る。Fc領域のグリコシル化は典型的にはN-結合型またはO-結合型である。N-結合型とはアスパラギン残基の側鎖に炭水化物部分が結合していることを言う。ペプチド配列、アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン、(ここでXはプロリン以外のいずれのアミノ酸でもよい)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素による結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチドにおけるこれらペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的グリコシル化部位を作る。O-結合型グリコシル化とは、糖、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのいずれかのヒドロキシアミノ酸、もっとも一般的にはセリンまたはスレオニン、(しかし5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンも用いられる)への結合を言う。
【0059】
TNF-α結合分子のFc領域へのグリコシル化部位の付加は1以上の上記トリペプチド配列 (N-結合型グリコシル化部位について)を含むようにアミノ酸配列を変化させることによって簡単に達成される。例示的なグリコシル化バリアントは重鎖の残基Asn 297のアミノ酸置換を有する。かかる変化は1以上のセリンまたはスレオニン残基の、元のポリペプチド配列への付加またはそれらによる置換によっても行うことが出来る(O-結合型グリコシル化部位について)。
【0060】
いくつかの態様において、本発明は本発明のTNF-α結合分子を対象 (例えば、ヒト)に投与することを含むTNF-α媒介疾患の治療方法を提供する。特定の態様において、投与はTNF-α 媒介疾患の症状が低減または排除されるような条件下である。特別の態様において、TNF-α 媒介疾患は以下から選択される:敗血症、自己免疫疾患、関節リウマチ、過敏症、多発性硬化症、自己免疫ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群、感染症、悪性腫瘍、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、全身性エリテマトーデス、甲状腺炎、強皮症、真性糖尿病、グレーブス病、肺障害、骨障害、腸障害、心臓障害、カヘキシー、循環虚脱、急性または慢性細菌感染症に起因するショック、急性および慢性寄生虫病および/または感染症、慢性炎症性症状、血管炎症性症状、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、播種性血管内血液凝固、アテローム性動脈硬化症、川崎病、神経変性疾患、脱髄性疾患、多発性硬化症、急性横断性脊髄炎、錐体外路および小脳障害、皮質脊髄系の障害、基底核の障害、多動障害、ハンチントン舞踏病、老年性舞踏病、薬物誘導性運動障害(例えば、CNSドーパミン受容体をブロックする薬物に誘導されるもの)、運動不足障害、パーキンソン病、進行性核上麻痺、脊髄小脳障害、小脳の器質性病変、脊髄小脳変性症、脊髄性運動失調症、フリードライヒ失調症、小脳皮質変性症、多系統変性症、シャイ・ドレーガー症候群、メンセル(Mencel)、デジェリン・ソッタス、およびマシャド・ジョセフ(Machado-Joseph)病、全身性障害、レフサム症候群、無βリポタンパク質血症、運動失調、末梢血管拡張、ミトコンドリア多システム障害、運動単位の障害、神経性筋萎縮症、前角細胞変性症、筋萎縮性側索硬化症、小児性脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症、アルツハイマー病、ダウン症候群、瀰漫性レビ小体疾患、レビ小体型老人性痴呆症、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、慢性アルコール依存症、クロイツフェルト・ヤコブ病、亜急性硬化性全脳炎、ハレルフォルデン・スパッツ病、拳闘家痴呆、TNF-α-分泌腫瘍を伴う悪性病状またはその他のTNFを伴う悪性腫瘍、例えば、白血病(急性、慢性骨髄球性、慢性リンパ性および/または骨髄異形性症候群)、リンパ腫(例えば、ホジキン、非ホジキンおよびバーキットリンパ腫)、菌状息肉症、アルコール誘導性肝炎、乾癬、乾癬性関節炎、ウェジナー肉芽腫症、強直性脊椎炎、心不全、再灌流傷害、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、およびC型肝炎感染。好ましい態様において、TNF-α媒介疾患は以下からなる群から選択される:若年性および成人性関節リウマチ、クローン病、乾癬、潰瘍性大腸炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、およびその他の脊椎関節症、ウェジナー肉芽腫症、特発性肺線維症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、癌および移植片対宿主病。
【0061】
いくつかの態様において、TNF-α結合分子は免疫抑制剤、例えば、メトトレキサートと組み合わせて投与される。別の態様において、TNF-α結合分子は静脈内に投与される。
【0062】
特定の態様において、本発明は以下を含むキットを提供する:
a) 本発明のTNF-α結合分子;および、
b) 対象における疾患の治療のためのTNF-α結合分子の使用の指示書、または科学的研究または診断目的のためのTNF-α結合分子の使用のための指示書(例えば、ELISAアッセイを行うためなど)。いくつかの態様において、本発明は本発明のTNF-α結合分子をコードする核酸配列で安定にまたは一過性にトランスフェクトされた細胞株を提供する。
【0063】
定義
本発明の理解を促すために、多数の用語を以下に定義する。
【0064】
本明細書において用いる「抗体」の語は、4つのポリペプチド鎖からなる免疫グロブリン分子を意味し、2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖がジスルフィド結合で相互に連結している。各重鎖は重鎖可変部 (本明細書において、HCVRまたはVHと略称する)と重鎖定常部とからなる。重鎖定常部は3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3からなる(図13参照)。各軽鎖は軽鎖可変部(本明細書において、LCVRまたはVLと略称する)と軽鎖定常部とからなる。軽鎖定常部は1つのドメイン、CLからなる(図13参照)。VHおよびVL 領域は相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分され、それらはフレームワーク領域(FR)と称される領域に分散して保存されている。各可変部(VHまたはVL)は3つのCDRを含み、これらはCDR1、CDR2およびCDR3 (図5、6、および13参照)と称される。各可変部はまた4つのフレームワーク小領域を含み、これらはFR1、FR2、FR3およびFR4(図5、6、および13参照)と称される。
【0065】
本明細書において用いる、「抗体断片」の語はインタクトな抗体の一部をいう。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、FabおよびF(ab')2 断片、および抗体断片から形成される多選択性抗体が挙げられる。抗体断片は好ましくは、重鎖および/または軽鎖可変部の少なくとも一部を保持する。
【0066】
本明細書において用いる、「相補性決定領域」および「CDR」の語は、抗原結合に第一の要因となる領域をいう。軽鎖可変部において3つのCDR (CDRL1、CDRL2、およびCDRL3)、そして重鎖可変部において3つのCDR (CDRH1、CDRH2、およびCDRH3)がある。これら6つのCDRを作る残基はKabat およびChothiaによって以下のように特徴づけられている: 軽鎖可変部における残基 24-34 (CDRL1)、50-56 (CDRL2)および 89-97 (CDRL3)そして重鎖可変部における31-35 (CDRH1)、50-65 (CDRH2)および95-102 (CDRH3); 引用により本明細書に含める Kabat et al.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed. Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD.; そして軽鎖可変部における残基 26-32 (CDRL1)、50-52 (CDRL2)および 91-96 (CDRL3)そして重鎖可変部における26-32 (CDRH1)、53-55 (CDRH2) and 96-101 (CDRH3); 引用により本明細書に含める、 Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196: 901-917。特に断りのない限り、本明細書において用いる「相補性決定領域」および「CDR」の語は、Kabatと Chothia の定義の両方を含む残基を含む(即ち、軽鎖可変部における残基 24-34 (CDRL1)、50-56 (CDRL2)、および89-97 (CDRL3); そして 26-35 (CDRH1)、50-65 (CDRH2)、および 95-102 (CDRH3))。また特に断りのない限り、本明細書において用いる、CDR 残基の番号付けはKabatにしたがう。
【0067】
本明細書において用いる、「フレームワーク」の語は、本明細書に定義するCDR 残基以外の可変部の残基をいう。フレームワークを構成する4つの離れたフレームワーク小領域がある: FR1、FR2、FR3、およびFR4 (図5、6、および13参照)。フレームワーク小領域が軽鎖または重鎖可変部のいずれにあるかを示すために、小領域の略語に「L」または「H」を付加する (例えば、「FRL1」は軽鎖可変部のフレームワーク小領域 1を示す)。断りのない限り、フレームワーク残基の番号付けはKabatにしたがう。
【0068】
本明細書において用いる、「完全にヒトのフレームワーク」の語は、ヒトにおいて天然にみられるアミノ酸配列を有するフレームワークを意味する。完全にヒトのフレームワークの例としては、これらに限定されないが、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAYおよびPOM が挙げられる(例えば、Kabat et al.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and ヒト Services、NIH、USA; and Wu et al.、(1970) J. Exp. Med. 132、211-250を参照、これら両方を引用により本明細書に含める)。
【0069】
本明細書において用いる、「対象」および「患者」の語は、あらゆる動物をいい、例えば哺乳類、例えばイヌ、ネコ、トリ、家畜であり、好ましくはヒト (例えばTNF-α 媒介疾患のヒト)である。
【0070】
本明細書において用いる、「をコードする核酸配列」、「をコードするDNA 配列」および「をコードするDNA」は、デオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序または配列をいう。これらデオキシリボヌクレオチドの順はポリペプチド(タンパク質) 鎖に沿ったアミノ酸の順を決定する。したがって、DNA配列はアミノ酸配列をコードする。
【0071】
DNA分子は「5'末端」および「3'末端」を有するといわれる。というのは、モノヌクレオチドが、モノヌクレオチドペントース環の1つの5' ホスフェートがホスホジエステル結合を介して一方向に隣の3'酸素に結合するように反応してオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを作るからである。それゆえ、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの末端は、その5'ホスフェートがモノヌクレオチドペントース環の3'酸素に結合していなければ「5'末端」と称され、その3'酸素が次のモノヌクレオチドペントース環の5'ホスフェートに結合していなければ「3'末端」と称される。本明細書において用いる、核酸配列は、より長いオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの内部であっても、5'および3'末端を有すると言われる。直鎖状または環状DNA分子のいずれにおいても、別々の要素は 「上流」または「下流」の5'または3'要素というように称される。この用語法は、転写がDNA鎖にそって5'から3'へと進行するという事実を反映する。連結した遺伝子の転写を引き起こすプロモーターおよびエンハンサー要素は一般にコード領域の5'即ち上流に位置する。しかし、エンハンサー要素はプロモーター要素およびコード領域の3'側に位置していてもその効果を発揮し得る。転写終結およびポリアデニル化シグナルはコード領域の3'即ち下流に位置する。
【0072】
本明細書において用いる、「コドン」または「トリプレット」の語は、ポリペプチドにみられる天然のアミノ酸の1つを特定する3つの隣接ヌクレオチドモノマーの群をいう。この語はまた、アミノ酸を特定しないコドンも含む。
【0073】
本明細書において用いる、「ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」、「ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」および「ペプチドをコードする核酸配列」の語は、特定のポリペプチドのコード領域を含む核酸配列を意味する。コード領域はcDNA、ゲノムDNA、またはRNAの形態で存在しうる。DNA形態で存在する場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖でも(即ち、センス鎖)二本鎖でもよい。好適な制御要素、例えば、エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどが、適切な転写の開始および/または一次RNA転写産物の正確なプロセシングを可能にするために必要な場合、遺伝子のコード領域に近接して配置していてもよい。あるいは、本発明の発現ベクターにおいて利用されるコード領域は内在性エンハンサー/プロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリアデニル化シグナル等、または内因および外因制御要素の両方の組み合わせを含んでいてもよい。
【0074】
本明細書において用いる場合、「オリゴヌクレオチド」と「ポリヌクレオチド」の語の間でサイズの制限やサイズの区別はない。両方の語は単にヌクレオチドからなる分子をいう。同様に、「ペプチド」と「ポリペプチド」の語の間にサイズの区別はない。両方の語は単にアミノ酸残基からなる分子をいう。
【0075】
本明細書において用いる、「相補的」または「相補性」の語は塩基対則に合致するポリヌクレオチド(即ちヌクレオチド配列)について用いられる。例えば、配列「5'-A-G-T 3」は、配列「3-T-C-A-5'」に相補的である。相補性は「部分的」であってもよく、ここで、、核酸塩基のいくらかのみが塩基対則に合致するのもでもよく、あるいは「完全に」または「すべて」核酸どうしが相補性であってもよい。核酸鎖どうしの相補性の程度はハイブリダイゼーションの効率と強度に有意に影響を与える。これは増幅反応において、そして核酸どうしの結合に依存する検出方法において、特に重要である。
【0076】
本明細書において用いる、所与の配列の「相補鎖」の語は、その全長に渡って該配列に完全に相補的な配列に言及する場合に用いられる。例えば、配列 5'-A-G-T-A-3'は配列 3'-T-C-A-T-5'の「相補鎖」である。本発明はまた、本明細書に記載する配列の相補鎖 (例えば、配列番号1-84における核酸配列の相補鎖)も提供する。
【0077】
「相同性」の語は(核酸配列に関する場合)、相補性の程度をいう。部分的相同性または完全な相同性 (即ち同一性)があり得る。部分的に相補的な配列は、完全に相補的配列が標的核酸にハイブリダイズするのを少なくとも部分的に阻害するものであり、機能的用語を用いると「実質的に相同的」であるといわれる。
【0078】
核酸の結合について用いられる場合、「結合の阻害」の語は、標的配列への結合について相同的配列の競合によってもたらされる結合の阻害をいう。完全に相補的な配列の標的配列へのハイブリダイゼーションの阻害は、低ストリンジェンシーの条件下でのハイブリダイゼーションアッセイ (サザンまたはノザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど)を用いて調べることが出来る。実質的に相同的な配列またはプローブは低ストリンジェンシー条件下で完全に相同的な配列の標的への結合 (即ち、ハイブリダイゼーション)に競合し阻害するであろう。これは低ストリンジェンシーの条件が非特異的結合を許容するということをいうのではない; 低ストリンジェンシー条件は、2つの配列の互いへの結合が特異的(即ち選択的)相互作用であることを必要とする。非特異的結合の非存在は部分的な程度の相補性さえも有さない第二の標的の使用によって試験し得る(例えば、約 30% 未満の同一性);非特異的結合の非存在下ではプローブは第二の非相補的標的にハイブリダイズしないであろう。
【0079】
当該技術分野において低ストリンジェンシー条件を含むために多数の同等の条件を用いることが出来ることが周知であろう;因子、例えば、プローブの長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成)および標的の長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成、溶液中か固定化されているかなど)および塩濃度その他の成分(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコールの存在または不在)が考慮され、ハイブリダイゼーション溶液は上記条件と異なるが同等である低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションの条件を作るために変動し得る。さらに、当該技術分野において高ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションを促進する条件が知られている(例えば、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄工程の温度の上昇、ハイブリダイゼーション溶液におけるホルムアミドの使用など)。
【0080】
本明細書において用いる、「ハイブリダイゼーション」の語は、相補的核酸の対合をいうのに用いられる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション強度(即ち、核酸の間の結合の強度)は以下のような因子によって影響される:核酸間の相補性の程度、用いる条件のストリンジェンシー、形成されたハイブリッドのTmおよび核酸中のG:C比。
【0081】
本明細書において用いる「ストリンジェンシー」の語は、核酸ハイブリダイゼーションが行われる、温度、イオン強度および有機溶媒などのその他の成分の存在の条件について用いられる。当業者であれば「ストリンジェンシー」条件は、上記パラメーターを別々にまたは組み合わせて変動させることによって変更しうることを認識しているであろう。「高ストリンジェンシー」条件では、核酸塩基対合は高頻度な相補的塩基配列を有している場合にのみおこる(例えば、「高ストリンジェンシー」条件下でのハイブリダイゼーションは、約 85-100% 同一性、好ましくは 約 70-100% 同一性を有するホモログ間で起こりうる)。中程度のストリンジェンシーの条件では、核酸塩基対合は、中程度の頻度の相補的塩基配列を有する核酸の間で起こるであろう(例えば、「中ストリンジェンシー」条件下でのハイブリダイゼーションは約 50-70% 同一性を有するホモログ間で起こり得る)。したがって「弱」または「低」ストリンジェンシーの条件が遺伝的に異なる生物に由来する核酸に必要とされることが多い。というのは相補的配列の頻度が通常低いからである。
【0082】
「高ストリンジェンシー条件」は核酸ハイブリダイゼーションについて用いられる場合、約 500 ヌクレオチド長のプローブを用いる場合、42℃での5X SSPE (43.8 g/l NaCl、6.9 g/l NaH2PO4 H2Oおよび1.85 g/l EDTA、NaOH でpH 7.4に調整)、0.5% SDS、5X デンハルト試薬 [500 ml 当たり以下を含む50X デンハルト: 5 g フィコール (Type 400、Pharmacia)、5 g BSA (Fraction V; Sigma)] および 100 μg/ml 変性サケ精子 DNAからなる溶液中での結合またはハイブリダイゼーション、次いで0.1X SSPE、1.0% SDS を含む溶液での42℃での洗浄と同等の条件を含む。
【0083】
「中ストリンジェンシー条件」は核酸ハイブリダイゼーションについて用いられる場合、約 500 ヌクレオチド長のプローブを用いる場合、42℃での5X SSPE、0.5% SDS、5X デンハルト試薬および 100μg/ml 変性サケ精子 DNAからなる溶液中での結合またはハイブリダイゼーション、次いで1.0X SSPE、1.0% SDSを含む溶液での42℃での洗浄と同等の条件を含む。
【0084】
「低ストリンジェンシー条件」は約 500 ヌクレオチド長のプローブを用いる場合、5X SSPE、0.1% SDS、5X デンハルト試薬および100 g/ml 変性サケ精子 DNAからなる溶液中での42℃での結合またはハイブリダイゼーション、次いで42℃での5X SSPE、0.1% SDSを含む溶液中での洗浄と同等の条件を含む。
【0085】
本明細書において用いる、「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)の語は、米国特許第4683195号、4683202号および4965188号(引用により本明細書に含める)に記載された方法をいい、これらはゲノムDNAの混合物中の標的配列のセグメントをクローニングまたは精製することなしにその濃度を上昇させる方法を記載する。標的配列を増幅させるこの方法は、大過剰の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、所望の標的配列を含むDNA混合物に導入すること、次いでDNA ポリメラーゼの存在下での正確な配列のサーマルサイクリングからなる。2つのプライマーは二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅を行うために、混合物を変性し、次いでプライマーを標的分子内のその相補的配列とアニーリングさせる。アニーリングの後、プライマーをポリメラーゼによって伸長させ、相補的鎖の新しい対を形成する。変性、プライマーアニーリング、およびポリメラーゼ伸長の工程を多数回繰り返し(即ち、変性、アニーリングおよび伸長が1つの「サイクル」を構成し;多数の「サイクル」を行いうる)、所望の標的配列の高濃度の増幅されたセグメントを得る。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、互いに対するプライマーの相対位置によって決定され、それゆえこの長さは制御可能なパラメーターである。工程の反復的な側面によって、この方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以下「PCR」)と称される。標的配列の所望の増幅されたセグメントは混合物中で卓越した配列(濃度の点で)となり、これらは「PCR増幅された」と称される。
【0086】
PCRによると、ゲノムDNA中の単一コピーの特異的標的配列を様々な方法で検出可能なレベルにまで増幅することが可能である(例えば、標識化プローブによるハイブリダイゼーション;ビオチン化プライマーの取り込み、次いでアビジン-酵素結合体検出; 32P-標識化デオキシヌクレオチド三リン酸、例えば、dCTPまたはdATP、の増幅セグメントへの組込み)。ゲノムDNAに加えて、あらゆるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を適当なセットのプライマー分子を用いて増幅することが出来る。特に、PCR 工程によって作られた増幅セグメントはそれ自体、次のPCR増幅のための有効なテンプレートである。
【0087】
「単離」の語は、「単離オリゴヌクレオチド」または「単離ポリヌクレオチド」または「TNF-α結合分子をコードする単離核酸配列」のように核酸について用いられる場合、少なくとも1つのその天然源においてはもともと結合している混入核酸から同定および分離された核酸配列をいう。単離核酸はそれが天然にみられるものとは異なる形態または環境にて存在する。単離核酸分子はそれゆえ、核酸分子と、それが天然細胞中に存在することから、区別される。しかし、単離核酸分子は通常ポリペプチドを発現する細胞に含まれる核酸分子も含み、ここで、例えば、核酸分子は天然細胞とは異なる染色体位置にある。単離核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドは一本鎖または二本鎖形態で存在しうる。単離核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドがタンパク質の発現のために用いられる場合、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは少なくともセンス即ちコード鎖を含むであろうが(即ち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖であり得る)、センスおよびアンチセンス鎖の両方を含んでいてもよい(即ち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは二本鎖でありうる)。
【0088】
本明細書において用いる、「部分」の語は、(「所与のヌクレオチド配列の部分」というように)ヌクレオチド配列に関して用いられる場合、その配列の断片をいう。断片は10ヌクレオチドから全長ヌクレオチド配列-1ヌクレオチド (例えば、10 ヌクレオチド、20、30、40、50、100、200、等)とサイズにおいて変動し得る。
【0089】
本明細書において用いる、「部分」の語は(「所与のアミノ酸配列の部分」というように)アミノ酸配列に関して用いられる場合、その配列の断片をいう。断片は6アミノ酸から全長アミノ酸配列-1アミノ酸 (例えば、6 アミノ酸、10、20、30、40、75、200、等)とサイズにおいて変動し得る。
【0090】
本明細書において用いる、「精製」または「精製する」の語は、サンプルから混入物を除くことをいう。例えば、TNF-α特異的抗体は、混入する非免疫グロブリンタンパク質を除去することによって精製しうる; これらはまた同抗原に結合しない免疫グロブリンを除くことによっても精製される。非免疫グロブリンタンパク質の除去および/または特定の抗原に結合しない免疫グロブリンの除去は、抗原特異的免疫グロブリンのサンプル中でのパーセンテージの上昇をもたらす。別の例において、組換え抗原-特異的ポリペプチドは細菌宿主細胞中で発現され、ポリペプチドは宿主細胞タンパク質の除去によって精製される;組換え抗原-特異的ポリペプチドのパーセンテージはそれによってサンプル中で上昇する。
【0091】
本明細書において用いる「組換えDNA分子」の語は、分子生物学技術によって互いに結合したDNAのセグメントから構成されるDNA分子をいう。
【0092】
本明細書において用いる「組換えタンパク質」または「組換えポリペプチド」の語は、組換えDNA分子から発現したタンパク質分子をいう。
【0093】
本明細書において用いる、「ベクター」の語は、DNA セグメントを1つの細胞から別の細胞へ移動させる核酸分子に関して用いられる。「媒体」の語がしばしばベクターと互換可能に用いられる。
【0094】
本明細書において用いる「発現ベクター」の語は、所望のコード配列と、特に宿主生物において作動可能に連結したコード配列の発現に必要な適当な核酸配列を含む組換えDNA分子をいう。原核生物における発現に必要な核酸配列には通常、しばしばその他の配列とともにプロモーター、オペレーター(所望による)、およびリボゾーム結合部位が含まれる。真核細胞はプロモーター、エンハンサー、終止およびポリアデニル化シグナルを用いることが知られている。
【0095】
本明細書において用いる、「宿主細胞」の語は、はあらゆる真核または原核細胞 (例えば、細菌細胞、例えば、大腸菌、酵母細胞、哺乳類細胞、例えば、PER.C6(商標)(Crucell、The Netherlands) および CHO 細胞、トリ細胞、両生類細胞、植物細胞、魚類細胞、および昆虫細胞)をいい、インビトロであってもインビボであってもよい。例えば、宿主細胞はトランスジェニック動物中にあってもよい。
【0096】
本明細書において用いる「形質移入」および「形質転換」の語は、外来DNAを細胞 (例えば、真核および原核細胞)に導入することをいう。形質移入は当該技術分野に公知の様々な手段で達成でき、例えば、リン酸カルシウム-DNA 共沈、DEAE-デキストラン-媒介形質移入、ポリブレン-媒介形質移入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、および遺伝子銃が挙げられる。
【0097】
「安定な形質移入」または「安定に形質移入した」の語は、形質移入細胞のゲノムに外来DNAが導入され組み込まれることをいう。「安定な形質移入体」とはゲノムDNAに外来DNAが安定に組み込まれた細胞をいう。
【0098】
「一過性形質移入」または「一過性形質移入した」の語は、細胞に外来DNAが導入されたが、外来DNAが形質移入細胞のゲノムに組み込まれていないことをいう。外来DNAは形質移入細胞の核に数日間保持される。この間、外来DNAは染色体中の内因性遺伝子の発現を制御する調節性制御に供される。「一過性形質移入体」の語は、外来DNAを取り込んでいるがこのDNAを組み込んでいない細胞をいう。
【0099】
本明細書において用いる、「コンピュータメモリ」および「コンピュータメモリ装置」の語は、はコンピュータ・プロセッサによって読み取り可能なあらゆる記憶媒体をいう。コンピュータメモリの例としては、これらに限定されないが、RAM、ROM、コンピュータ・チップ、デジタルビデオディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、ハードディスクドライブ(HDD)および磁気テープが挙げられる。
【0100】
本明細書において用いる、「コンピュータ可読媒体」の語は、コンピュータ・プロセッサに情報(例えば、データや指令)を記憶させ提供する装置またはシステムをいう。コンピュータ可読媒体の例としては、これらに限定されないが、DVD、CD、ハードディスクドライブ、磁気テープおよびネットワーク上でのストリーミング・メディアのサーバーが挙げられる。
【0101】
本明細書において用いる、核酸またはアミノ酸配列の「表示をエンコードするコンピュータ可読媒体」の語は情報を記憶したコンピュータ可読媒体をいい、プロセッサに移されると、核酸またはアミノ酸配列をユーザに対して表示するものである(例えば、プリントアウトするかディスプレースクリーン上に表示する)。
【0102】
本明細書において用いる、「プロセッサ」および「中央演算処理装置」または「CPU」の語は、互換的に用いられ、コンピュータメモリ (例えば、ROMまたはその他のコンピュータメモリ)からプログラムを読み取ることが出来、プログラムにしたがって一連の工程を実行させることが出来る装置をいう。
【0103】
本明細書において用いる、「Fc領域」の語は、免疫グロブリン重鎖のC-末端領域である(例えば図13参照)。「Fc領域」はネイティブな配列のFc領域でもバリアントFc領域 (例えば、エフェクター機能が上昇または低下している)でもよい。
【0104】
本明細書において用いる、Fc領域は生理活性(例えば対象における)の活性化または低下の原因である「エフェクター機能」を有し得る。エフェクター機能の例としては、これらに限定されないが以下が挙げられる: C1q 結合性; 補体依存的細胞毒性 (CDC); Fc 受容体結合性; 抗体依存的細胞媒介細胞毒性 (ADCC); ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体; BCR)の下方制御、等。かかるエフェクター機能にはFc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わさることが必要であり、様々なアッセイ(例えば、Fc 結合アッセイ、ADCC アッセイ、CDC アッセイ等)を用いて評価できる。
【0105】
本明細書において用いる、「単離」ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、天然の環境の成分から同定および分離および/または回収されたものをいう。その天然の環境の混入成分はポリペプチドの診断または治療用途に邪魔となる物質であり、酵素、ホルモン、およびその他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含む。特定の態様において、単離ポリペプチドは以下の程度まで精製される:
(1) Lowry法によって判定してポリペプチドの95重量%を超えるまで、好ましくは、99重量%を超えるまで、
(2)回転カップシークエネーター(spinning cup sequenator)を用いてN-末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15 残基を得るのに十分な程度まで、または、
(3)クーマシーブルー、または銀染色を用いて還元または非還元条件下でSDS-pageによって均一となるまで。
単離ポリペプチドは組換え細胞内の生体内のポリペプチドも含む。というのはポリペプチドの天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないからである。しかし通常、単離ポリペプチドは少なくとも1回の精製工程によって調製されるだろう。
【0106】
本明細書において用いる、「治療」の語は、治療的処置と予防的または阻止的手段の両方を含む。治療が必要なものとしては既に障害を有するものと障害を阻止すべきものとが含まれる。
【0107】
本明細書において用いる、核酸は別の核酸配列と互いに機能性連関に配置された場合に「作動可能に連結した」といわれる。例えば、プレ配列または分泌リーダーのためのDNA はそれがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現する場合にポリペプチドのためのDNAと作動可能に連結している;プロモーターまたはエンハンサーはそれが配列の転写に影響を与える場合コード配列に作動可能に連結している;あるいはリボゾーム結合部位はそれが翻訳を促進するように位置している場合コード配列と作動可能に連結している。好ましい態様において、「作動可能に連結した」とは結合したDNA 配列が近接しており、分泌リーダーの場合は、リーディングフレーム中で近接していることをいう。しかし、エンハンサー、例えば、近接している必要はない。連結は例えば、適当な制限部位におけるライゲーションによって達成される。かかる部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを常套の手段にしたがって用いるとよい。
【0108】
「症状が低減する条件下」の語は、いずれかのTNF-α 媒介疾患の検出可能な症状のあらゆる程度の定性的または定量的低減をいい、これらに限定されないが、検出可能な疾患からの回復速度に対する影響(例えば、体重回復速度)、または特定の疾患に通常関連する少なくとも1つの症状の低減 (例えば、TNF-α 媒介疾患がクローン病の場合、少なくとも1つの以下の症状の低減: 腹痛、下痢、直腸出血、体重減少、発熱、食欲減退、脱水、貧血、膨張、線維症、腸炎症および栄養失調)。
【0109】
本明細書において用いる、「ヒトTNF-α」の語は(本明細書において、hTNF-α、あるいは単にhTNFと略称する)は、17 kDaの分泌形態および26 kDaの膜結合形態として存在するヒトサイトカインであり、その生理活性形態は17 kDa 分子の非共有結合した三量体から構成される。hTNF-αの構造はさらに、例えば、Jones、et al. (1989) Nature、338:225-228に記載されている。ヒトTNF-αの語は組換えヒトTNF-α(rhTNF-α)も含み、これは標準的組換え発現方法によって調製でき、あるいは市販源から購入してもよい。
【0110】
「親和性」、「結合親和性」および「Kd」の語は、各TNF-α結合分子 TNF-α タンパク質複合体に関連する平衡解離定数をいう(濃度の単位で表現したもの)。結合親和性は直接off-速度定数(一般に時間の逆数の単位で表される、例えば、秒-1) のon-速度定数 (一般に単位時間当たりの濃度単位として表される、例えばモル/秒)に対する比と関係する。結合親和性は、例えば、動力学排除アッセイまたは表面プラスモン共鳴によって測定できる。
【0111】
本明細書において用いる、「解離」、「解離速度」および「koff」は、抗体/抗原複合体からのTNF-α結合分子の解離についてのoff 速度定数をいう。
【0112】
本明細書において用いる、「結合」、「結合速度」および「kon」は、TNF-α結合分子と抗原との抗体/抗原複合体を形成する結合についてのon速度定数をいう。
【0113】
本明細書において用いる、「有効濃度」および「EC50」の語は、TNF-α結合分子がTNF-α分子と相互作用し、十分な量のTNF-α分子を中和でき、およそ50% の処理細胞に影響を与えることが出来る濃度をいう。例えば、L929 アッセイ (実施例2参照)において、EC50 は、およそ50%の細胞をTNF-a に媒介される細胞毒性から保護するのに必要な濃度である。かかるアッセイにおいて、用いるTNF-αの濃度は90%以上の細胞集団に細胞毒性効果を発揮するために実験的に調べた濃度である。ここでもまた、有効濃度(EC50)と阻害濃度(IC50 )は区別しない。
【0114】
発明の説明
本発明は、TNF-α結合分子およびTNF-α結合分子をコードする核酸配列を提供する。特に、本発明はヒトTNF-αに関して高結合親和性、高結合速度、低解離速度そして低EC50値(例えばL929 細胞アッセイにおいて)のTNF-α結合分子を提供する。好ましくは、本発明のTNF-α結合分子は完全にヒトのフレームワークを有する軽鎖および/または重鎖可変部を含む。特に好ましい態様において、本発明のTNF-α結合分子はヒト生殖系列フレームワークを有する軽鎖および/または重鎖可変部を含む。本発明の説明は便宜上以下の節に分ける:I. TNF-α結合分子; II. TNF-α結合分子の作成; III. 治療製剤および用途;および IV. さらなるTNF-α結合分子の用途。
【0115】
I.TNF-α結合分子
本発明は望ましい特徴を有するTNF-α結合分子を提供する。特に、いくつかの態様において、TNF-α結合分子はヒトTNF-αに関して高い結合親和性 (Kd)を有する。別の態様において、TNF-α結合分子はヒトTNF-αに関して高い結合速度定数 (kon)を有する。特定の態様において、TNF-α結合分子はヒトTNF-αに関して低い解離速度 (koff)を有する。別の態様において、TNF-α結合分子は細胞ベースアッセイにおいて低い有効濃度(EC50)を有する。好ましい態様において、本発明のTNF-α結合分子は高い結合親和性、高い結合速度、低い解離速度を有し低濃度において有効である。本発明を実施または理解する必要はないが、高い結合親和性、高い結合速度、低い解離速度および低いEC50を有する本発明のTNF-α結合分子は、特にヒトにおける治療用途に好適であろう (例えばTNF-α 媒介疾患の治療のため)。
【0116】
さらなる態様において、本発明のTNF-α結合分子はマウスTNF-αには結合しない。別の態様において、本発明のTNF-α結合分子はラット、ブタまたはアカゲザル、マカクザルTNF-αには結合しない。
【0117】
好ましい態様において、本発明のTNF-α結合分子は、好ましくは、完全にヒトのフレームワークを有する軽鎖および/または重鎖可変部を含む。特に好ましい態様において、本発明のTNF-α結合分子は好ましくはヒト生殖系列フレームワークを有する軽鎖および/または重鎖可変部を含む。本発明を実施または理解する必要はないが、本発明のTNF-α結合分子(例えば以下の実施例参照)は(例えば疾患の治療のために)ヒトに投与した場合、非常にわずかな免疫原性応答が誘発しないか、全く誘発しないと考えられる。
【0118】
以下の表1、2、3、および6に記載のように、本発明はTNF-α結合分子の作成に有用な多数のCDRを提供する。例えば、1以上の示したCDRをフレームワーク小領域(例えば完全にヒトのFR1、FR2、FR3、またはFR4)と組み合わせることが出来、それによってTNF-α結合ペプチド、またはTNF-α結合ペプチドをコードする核酸配列が作られる。また、以下の表に示すCDRは、例えば、3つのCDRが軽鎖可変部に存在する、および/または3つのCDRが重鎖可変部に存在するように組み合わせてもよい。
【0119】
以下に示すCDRはヒトフレームワークに挿入すればよく(例えば組換え技術により)、図5および6に示す軽鎖および重鎖フレームワークに挿入してTNF-α結合分子またはTNF-α結合分子をコードする核酸配列を作ることが出来る。例えば、図 5A に示すCDRL1を表1に示す配列番号9、11、13、15、または17によって置換することが出来る。同様に図 5B に示すCDRL1を表1に示す配列番号10、12、14、16、または18によって置換することが出来る。これと同じ手順を表1-3および6に示すCDRのすべてに用いることが出来る。かかる3つの表は直下に示す。
【0120】
表1 - 軽鎖 CDR
【表1】

【0121】
* Kabatの研究を残基の番号付けに用いた。CDRはKabat およびChothia 残基を含む。
** hu1からの変化は、hu1アミノ酸、次いで位置、そして新しいアミノ酸によって命名した(例えば、S31Lは31位におけるSからLへの変化)。
***「Xaa」はこの位置はいずれのアミノ酸でもよいことを示し、「n」はこの位置がいずれのヌクレオチドでもよいことを示す。
【0122】
表2 - 重鎖 CDR
【表2】

【0123】
* Kabatの研究を残基の番号付けに用いた。CDRはKabatおよびChothia残基を含む。
** hu1からの変化は、hu1アミノ酸、次いで位置、そして新しいアミノ酸によって命名した(例えば、T28Kは28位におけるTからKへの変化)。
***「Xaa」はこの位置はいずれのアミノ酸でもよいことを示し、「n」はこの位置がいずれのヌクレオチドでもよいことを示す。
【0124】
表3-さらなる有用なCDR
【表3】

【0125】
* Kabatの研究を残基の番号付けに用いた。CDRはKabat およびChothia 残基を含む。
** hu1からの変化は、hu1アミノ酸、次いで位置、そして新しいアミノ酸によって命名した(例えば、T28Kは28位におけるTからKへの変化)。
***「Xaa」はこの位置はいずれのアミノ酸でもよいことを示し、「n」はこの位置がいずれのヌクレオチドでもよいことを示す。
【0126】
表6−さらなる有用なCDR
【表4】

【0127】
* Kabatの研究を残基の番号付けに用いた。CDRはKabat およびChothia 残基を含む。
【0128】
本発明はまた、上記表に示すCDR 配列 (アミノ酸と核酸の両方)と実質的に同じ配列を提供する。例えば、1または2のアミノ酸を表に示す配列において変化させてもよい。また例えば、多数のヌクレオチド塩基を表に示す配列において変化させてもよい。アミノ酸配列への変化は、アミノ酸配列をコードする核酸配列の変化によって作ることが出来る。所与のCDRのバリアントをコードする核酸は特定の配列についての本明細書の教示を用いて当該技術分野に公知の方法を用いて調製できる。これら方法には、限定されないが以下が含まれる:先に調製したCDRをコードする核酸の部位特異的(またはオリゴヌクレオチド特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、およびカセット突然変異誘発による調製。部位特異的突然変異誘発は、置換バリアントの調製に好ましい方法である。この技術は当該技術分野に周知である(例えば、Carter et al.、(1985) Nucleic Acids Res. 13: 4431-4443 and Kunkel et. al.、(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-492を参照、これら両方を引用により本明細書に含める)。
【0129】
簡単に説明すると、DNAの部位特異的突然変異誘発の実行において、出発DNAを所望の突然変異をコードするオリゴヌクレオチをかかる出発DNAの一本鎖にハイブリダイズさせることによって変化させる。ハイブリダイゼーションの後、DNA ポリメラーゼを用いて、出発DNAの一本鎖をテンプレートとして、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて完全な二番目の鎖を合成する。したがって、所望の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドがその結果得られる二本鎖 DNAに組み込まれる。
【0130】
PCR突然変異誘発も出発CDRのアミノ酸配列バリアントを作るのに好適である(例えば、引用により本明細書に含める、Vallette et. al.、(1989) Nucelic Acids Res. 17: 723-733を参照)。簡単に説明すると、少量のテンプレート DNAをPCRにおける出発物質として用いる場合、テンプレート DNAにおける対応する領域から配列においてわずかに異なるプライマーを用いてプライマーがテンプレートとは異なる位置においてのみテンプレート 配列と異なる特異的 DNA 断片を比較的大量に作ることが出来る。
【0131】
バリアントを調製するもう一つの方法は、カセット突然変異誘発であり、これは引用により本明細書に含めるWells et al.、(1985) Gene 34: 315-323に記載の技術に基づく。出発物質は突然変異させるべき出発CDR DNAを含むプラスミド (またはその他のベクター)である。突然変異させるべき出発DNAにおけるコドンを同定する。同定された突然変異部位の各側に特有の制限エンドヌクレアーゼ部位がなければならない。かかる制限部位が無ければ、上記オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発方法を用いてそれを作り、開始ポリペプチド DNAの適当な位置に導入する。プラスミド DNAをこれらの部位で切断して直鎖状にする。制限部位の間のDNAの配列をコードするが所望の突然変異を含む二本鎖オリゴヌクレオチドを標準的方法を用いて合成する。ここでオリゴヌクレオチドの二本の鎖は別々に合成し、標準的技術を用いて互いにハイブリダイズさせる。二本鎖オリゴヌクレオチドはカセットと称される。このカセットを直鎖状のプラスミドの末端と適合する5'および3'末端を有するよう設計し、それをプラスミドに直接ライゲーションすればよい。このプラスミドは突然変異したDNA配列を含む。
【0132】
あるいは、または追加的に、ポリペプチドバリアントをコードする望ましいアミノ酸配列を決定することが出来、かかるアミノ酸配列バリアントをコードする核酸配列を合成により作成してもよい。 CDRのアミノ酸配列における保存的修飾も行うことが出来る。天然の残基は共通の側鎖の性質に基づいてクラスに分類される:
(1) 疎水性: ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2) 中性親水性: cys、ser、thr;
(3) 酸性: asp、glu;
(4) 塩基性: asn、gln、his、lys、arg;
(5) 鎖方向に影響する残基: gly、pro;および、
(6) 芳香族: trp、tyr、phe.
【0133】
保存的置換はこれらクラスの1つのメンバーから同じクラスの別のメンバーへの置換を意味する。本発明はまた表1-3および6に示す核酸配列の相補鎖およびかかる核酸配列に低、中および高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸配列を提供する。
【0134】
本発明のCDRはあらゆるタイプのフレームワークとともに用いることが出来る。好ましくは、CDRは完全にヒトのフレームワーク、またはフレームワーク小領域とともに用いる。特に好ましい態様において、フレームワークはヒト生殖系列配列である。完全にヒトのフレームワークの一例を図5および6に示す。別の例を図15に示す。その他の完全にヒトのフレームワークまたはフレームワーク小領域も用いることが出来る。例えば、NCBIウェブサイトは、現在知られているヒトフレームワーク領域の配列を含む。ヒト VH 配列の例としてはこれらに限定されないが以下が含まれる:VH1-18、VH1-2、VH1-24、VH1-3、VH1-45、VH1-46、VH1-58、VH1-69、VH1-8、VH2-26、VH2-5、VH2-70、VH3-11、VH3-13、VH3-15、VH3-16、VH3-20、VH3-21、VH3-23、VH3-30、VH3-33、VH3-35、VH3-38、VH3-43、VH3-48、VH3-49、VH3-53、VH3-64、VH3-66、VH3-7、VH3-72、VH3-73、VH3-74、VH3-9、VH4-28、VH4-31、VH4-34、VH4-39、VH4-4、VH4-59、VH4-61、VH5-51、VH6-1、およびVH7-81、これらはヒト免疫グロブリン鎖可変部座位の完全なヌクレオチド配列を含み、これらのVH 配列はMatsuda et al.、(1998) J. Exp. Med. 188:1973-1975において提供されこれを引用により本明細書に含める。ヒト VK 配列の例はこれらに限定されないが以下を含む:A1、A10、A11、A14、A17、A18、A19、A2、A20、A23、A26、A27、A3、A30、A5、A7、B2、B3、L1、L10、L11、L12、L14、L15、L16、L18、L19、L2、L20、L22、L23、L24、L25、L4/18a、L5、L6、L8、L9、O1、O11、O12、O14、O18、O2、O4、およびO8、これらはKawasaki et al.、(2001) Eur. J. Immunol. 31:1017-1028; Schable and Zachau、(1993) Biol. Chem. Hoppe Seyler 374:1001-1022;およびBrensing-Kuppers et al.、(1997) Gene 191:173-181において提供され、これらすべては引用により本明細書に含める。ヒト VL 配列の例としてはこれらに限定されないが以下を含む:V1-11、V1-13、V1-16、V1-17、V1-18、V1-19、V1-2、V1-20、V1-22、V1-3、V1-4、V1-5、V1-7、V1-9、V2-1、V2-11、V2-13、V2-14、V2-15、V2-17、V2-19、V2-6、V2-7、V2-8、V3-2、V3-3、V3-4、V4-1、V4-2、V4-3、V4-4、V4-6、V5-1、V5-2、V5-4、および V5-6、これらはKawasaki et al.、(1997) Genome Res. 7:250-261において提供され、これを引用により本明細書に含める。完全にヒトのフレームワークはかかる機能性生殖系列遺伝子のいずれから選択してもよい。一般にこれらフレームワークは限られた数のアミノ酸変化によって互いに異なっている。これらフレームワークは本明細書に記載するCDRとともに用いることが出来る。例えば、Vk3 サブファミリーのなかでしばしば用いられる遺伝子であるL6を本発明のTNF-α結合分子の軽鎖のための交互のフレームワークとして選択することが出来る。本発明のCDRとともに用いることが出来るさらなるヒトフレームワークの例としてはこれらに限定されないが、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY およびPOMが挙げられる(例えば、 Kabat et al.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、NIH、USA; and Wu et al.、(1970)、J. Exp. Med. 132:211-250を参照、これらはともに引用により本明細書に含める)。
【0135】
また、本発明を実施または理解する必要はないが、多くの個体における有害な免疫応答を排除するのを助けると考えられている生殖系列配列を用いる理由は以下の通りである。体細胞突然変異は通常の免疫応答の過程に起こる親和性成熟工程の結果として免疫グロブリンの可変部において頻繁に起こる。これら突然変異は主に超可変 CDRのまわりにかたまっているが、フレームワーク領域における残基にも影響を与える。これらフレームワーク突然変異は生殖系列遺伝子には存在せず、患者において免疫原性であるようである。一方、一般集団は生殖系列遺伝子から発現する大多数のフレームワーク配列にさらされ、免疫寛容の結果、これら生殖系列フレームワークには患者における免疫原性が低いか無いと考えられる。寛容の可能性を最大にするため、可変部をコードする遺伝子を一般に起こる、機能性生殖系列遺伝子の集団から選択することが出来、およびVHおよび VL 領域をコードする遺伝子を免疫グロブリン分子の特異的重鎖および 軽鎖の間の既知の結合に合致するようにさらに選択するとよい。
【0136】
II. TNF-α結合分子の作成
好ましい態様において、本発明のTNF-α結合分子は(例えば、1以上の本明細書に記載するCDRを含む)抗体または抗体断片を含む。本発明の抗体、または抗体断片は、免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子の宿主細胞中での組換え発現によって調製できる。例えば、抗体を組換えにより発現するためには、宿主細胞に抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖をコードするDNA 断片を保持する1以上の組換え発現ベクターを形質移入して、軽鎖および重鎖を宿主細胞にて発現させ、好ましくは、宿主細胞が培養されている培地に分泌させ、その培地から抗体を回収するとよい。標準的な組換えDNA法を用いて抗体重鎖および軽鎖遺伝子を得て、これら遺伝子を組換え発現ベクターに組込み、ベクターを宿主細胞に導入する。これは、すべて引用により本明細書に含める、Sambrook、Fritsch and Maniatis (eds)、Molecular Cloning; A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor、N.Y.、(1989)、Ausubel、F. M. et al. (eds.) Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates、(1989)および米国特許第4816397、Boss et alに記載のように行う。
【0137】
本発明の1以上のCDRを有する抗体を発現させるために、軽鎖および重鎖可変部をコードするDNA 断片をまず得る。これらDNAはポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)を用いて生殖系列軽鎖および重鎖可変配列を増幅および修飾することによって得ることが出来る。ヒト重鎖および軽鎖可変部遺伝子についての生殖系列DNA配列は当該技術分野で知られている(上記参照)。
【0138】
生殖系列 VH および VL 断片を得たら、これら配列を突然変異させて本明細書に開示の1以上のCDRアミノ酸配列をコードするようにする (例えば、表1-3および6参照)。生殖系列 VHおよびVL DNA 配列によってコードされるアミノ酸配列を所望のCDR配列と比較して生殖系列配列と異なっているアミノ酸残基を同定する。次いでどのヌクレオチド変化を行うべきかを決定するために遺伝コードを用いて、生殖系列 DNA 配列の適当なヌクレオチドを突然変異させて生殖系列配列が選択したCDRをコードするようにする(例えば、表1-3および6から選択した6つのCDR)。生殖系列配列の突然変異誘発は標準方法、例えば、PCR-媒介突然変異誘発 (突然変異されるヌクレオチドがPCR プライマーに組み込まれ、PCR 産物が突然変異を含むようになる)または部位特異的突然変異誘発によって行うことが出来る。別の態様において、可変部を新たに合成する(例えば、核酸合成機を用いる)。
【0139】
所望のVHおよびVLセグメントをコードするDNA 断片が得られると(例えば、上記のように生殖系列VHおよびVL遺伝子の増幅および突然変異誘発、または合成的合成による)、これらDNA 断片をさらに標準的組換え DNA技術によって操作してもよく、例えば可変部遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fab 断片遺伝子またはscFv遺伝子に変換させてもよい。これら操作において、VL-または VH-コードDNA 断片を別のポリペプチド、例えば抗体定常部または柔軟なリンカーをコードする別のDNA 断片に作動可能に連結する。VH 領域 をコードする単離DNAはVH-コードDNAを重鎖定常部 (CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって全長重鎖遺伝子に変換できる。ヒト重鎖定常部遺伝子の配列は当該技術分野に知られており(例えば、Kabat、E. A.、et al.、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S. Department of Health and human Services、NIH Publication No. 91-3242参照)、これら領域を含むDNA 断片は標準的PCR 増幅によって得られる。重鎖定常部は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM または IgD 定常部であってよいがもっとも好ましくはIgG1またはIgG4 定常部である。Fab 断片重鎖遺伝子について、VH-コードDNA は重鎖 CH1 定常部のみをコードする別のDNA分子と作動可能に連結してもよい。
【0140】
VL 領域をコードする単離DNAは全長軽鎖遺伝子 (およびFab 軽鎖遺伝子)に変換できる。これはVL-コードDNAと軽鎖定常部、CLをコードする別のDNA分子とを作動可能に連結することによって行うことが出来る。ヒト軽鎖定常部遺伝子の配列は当該技術分野に知られており(例えば、Kabat、E. A.、et al.、(1991) Sequences of Proteins of immunological Interest、Fifth Edition、U.S. Department of Health and Human Services. NIH Publication No. 91-3242を参照)、かかる領域を含むDNA 断片は標準的PCR 増幅によって得ることが出来る。軽鎖定常部はカッパまたはラムダ定常部のいずれでもよいが、もっとも好ましくははカッパ定常部である。
【0141】
scFv遺伝子を作るために、VHおよびVL-コードDNA 断片を柔軟なリンカーをコードする別の断片、例えばアミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードするものと作動可能に連結させて、VHおよびVL 配列を連続した一本鎖タンパク質として発現させてもよく、ここでVLおよび VH 領域は柔軟なリンカーによって連結される (例えば、Bird et al.、(1988) Science 242:423-426; Huston et al.、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al.、(1990) Nature 348:552-554を参照、これらすべてを引用により本明細書に含める)。
【0142】
本発明の抗体、または抗体断片を発現させるため、上記のようにして得られる部分長または全長軽鎖および重鎖をコードするDNAを発現ベクターに挿入して遺伝子を転写および翻訳制御配列と作動可能に連結させてもよい。この場合、「作動可能に連結した」の語は、抗体遺伝子がベクターにライゲーションされ、ベクター中の転写および翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を制御する意図された機能を果たすことをいう。発現ベクターおよび発現制御配列は、用いる発現宿主細胞に適合するように一般に選択する。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は別々のベクターに挿入してもよいが、より一般的には両方の遺伝子を同一の発現ベクターに挿入する。抗体遺伝子は発現ベクターに標準的方法によって挿入される(例えば、抗体遺伝子断片とベクターの相補的制限部位のライゲーション 、または制限部位が存在しない場合は平滑末端ライゲーション)。軽鎖または重鎖配列の挿入の前に、発現ベクターは既に抗体定常部配列を保持しているのがよい。例えば、VHおよびVL 配列を全長抗体遺伝子に変換する1つのアプローチは、それらを重鎖定常部および軽鎖定常部を既にそれぞれコードしている発現ベクターに挿入し、VH セグメントをベクター中のCH セグメントに作動可能に連結させ、VL セグメントをベクター中のCL セグメントに作動可能に連結させる。追加的または代替的に、組換え発現ベクターは宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードするものでもよい。抗体鎖遺伝子はベクターにクローニングされて、シグナルペプチドがインフレームにて抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結される。シグナルペプチドは免疫グロブリンシグナルペプチドでもよいし異種シグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)でもよい。
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を保持していてもよい。「調節配列」の語は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御する、プロモーター、エンハンサーおよびその他の制御要素 (例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。かかる調節配列は、例えば引用により本明細書に含める、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif. (1990)に記載されている。当業者であれば調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は以下のような因子に依存することを理解しているであろう:形質転換する宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなど。哺乳類宿主細胞発現に好ましい調節配列には以下が含まれる:哺乳類細胞におけるタンパク質発現の高レベルをもたらすウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス (CMV) (例えば、CMV プロモーター/エンハンサー)、サルウイルス 40 (SV40) (例えば、SV40 プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス、(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター (AdMLP))およびポリオーマウイルス由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー。ウイルス調節要素のさらなる説明、およびその配列についてはすべて引用により本明細書に含める米国特許第5168062号、Stinski、4510245 号、Bell et al. および第4968615号、 Schaffner et al.を参照。
【0143】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターはさらなる配列、例えば、宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列 (例えば複製起点)および選択マーカー遺伝子を保持していてもよい。選択マーカー遺伝子はベクターが組み込まれた宿主細胞の選択を可能にする(例えば、米国特許第4399216号、4634665号および5179017号、すべて Axel et al.)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子はベクターが導入された宿主細胞に対して薬剤抵抗性、例えばG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートへの抵抗性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子にはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を用いるdhfr-宿主細胞用)およびネオマイシン遺伝子(G418選択用)が含まれる。
【0144】
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを標準的技術によって宿主細胞に形質移入するとよい。「形質移入」の語の様々な形態が、外来DNAを原核または真核宿主細胞に導入するのに一般に用いられる様々な技術を含むよう意図され、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降、DEAE-デキストラン形質移入等が挙げられる。
【0145】
本発明の組換え抗体の発現のために好ましい哺乳類宿主細胞には、PER.C6(商標)細胞 (Crucell、The Netherlands)、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO 細胞) (dhfr- CHO 細胞を含む、 Urlaub and Chasin、(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載、DHFR選択マーカーと共に使用、例えば、R. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621に記載)、NSOミエローマ細胞、COS細胞およびSP2細胞。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞に導入する場合、抗体は一般に宿主細胞における抗体の発現を可能とするのに十分な時間宿主細胞を培養することによって産生されるか、あるいはより好ましくは、抗体が宿主細胞が培養されている培地に分泌されるのに十分な時間宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は培地から標準的タンパク質精製方法によって回収できる。
【0146】
宿主細胞を用いてインタクトな抗体の部分、例えば Fab 断片またはscFv 分子も産生できる。上記手順の改変は本発明の範囲内であると理解されたい。例えば、本発明の抗体の軽鎖または重鎖の何れかをコードするDNAを宿主細胞に形質移入するのが望ましい。組換え DNA 技術はhTNF-αへの結合に必要でない軽鎖および重鎖の一方または両方をコードするDNAの一部ままたは全部を除くのにも利用できる。かかる切形(truncated)DNA分子から発現する分子も本発明の抗体に含まれる。さらに1つの重鎖および1つの軽鎖が本発明の抗体であり、他方の重鎖および軽鎖がhTNF-α以外の抗原に特異的な二機能性抗体を、本発明の抗体と第二の抗体との標準的化学架橋方法による架橋によって産生することもできる。
【0147】
抗体またはその断片の組換え発現の1つの好適な形において、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターをリン酸カルシウム媒介形質移入によってdhfr- CHO 細胞に導入する。組換え発現ベクターにおいて、抗体重鎖および軽鎖遺伝子はそれぞれエンハンサー/プロモーター調節要素(例えば、SV40、CMV、アデノウイルス等由来、例えば、CMV エンハンサー/AdMLP プロモーター調節要素またはSV40 エンハンサー/AdMLP プロモーター調節要素) に作動可能に連結し、高レベルの遺伝子の転写が駆動される。組換え発現ベクターはDHFR遺伝子を保持していてもよく、これはメトトレキサート選択/増幅を用いたベクターが形質移入されたCHO 細胞の選択を可能にする。選択された形質転換宿主細胞を抗体重鎖および軽鎖の発現を可能にするように培養し、インタクトな抗体が培地から回収される。標準的分子生物学技術を用いて組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞に形質移入し、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収する。
【0148】
特定の態様において、本発明の抗体および抗体断片はトランスジェニック動物において産生される。例えば、トランスジェニックヒツジおよびウシを操作してその乳汁中に抗体または抗体断片を産生させることが出来る (例えば引用により本明細書に含める、Pollock DP、et al.、(1999) Transgenic milk as a method for the production of recombinabt antibody. J. Immunol. Methods 231:147-157)。本発明の抗体および抗体断片は植物において産生させることも出来る (例えば引用により本明細書に含める、Larrick et al.、(2001) Production of secretory IgA antibofy in plants. Biomol. Eng. 18:87-94参照)。さらなる方法および精製プロトコールは引用により本明細書に含めるHumphreys et al.、(2001) Therapeutic antibody production technologies: Molecules applications、expression and purification、Curr. Opin. Drug Discov. Devel. 4:172-185に提供されている。特定の態様において、本発明の抗体または抗体断片はトランスジェニックニワトリによって産生される(例えば、その両方を引用により本明細書に含める米国特許公開第20020108132 号および20020028488号参照)。
【0149】
III.治療製剤および用途
本発明のTNF-α結合分子 (例えば、抗体および抗体断片)はTNF-α結合分子と反応性の物質の異常なレベルに関連する病状または症状を有する対象の治療に有用である。かかる異常なレベルとは、例えば、TNF-αが正常な健康対象に存在するレベルよりも過剰かまたは少ないことであり、かかる過剰または少ないレベルが、全身性、局所性または体内の特定の組織型または位置に起こることを言う。かかる組織型にはこれらに限定されないが以下が含まれる:血液、リンパ、CNS、肝臓、腎臓、脾臓、心筋または血管、脳または脊髄、白質または灰白質、軟骨、靱帯、腱、肺、膵臓、卵巣、精巣および前立腺。正常レベルに比較してのTNF-α濃度の上昇または低下は体内の特定の領域または細胞に局在し得、例えば、関節、滑膜、神経血管接合部、骨、特定の腱または靱帯、あるいは感染部位、例えば細菌またはウイルス感染部位が挙げられる。
【0150】
TNF-関連病状にはこれらに限定されないが以下が含まれる:
(A) 急性および慢性免疫および自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、甲状腺炎、移植片対宿主病、強皮症、真性糖尿病、グレーブス病、等;
(B) 敗血症、カヘキシー、循環虚脱 および/または急性または慢性の細菌、ウイルス寄生体または真菌感染症に起因するショック;
(C) 炎症性疾患、例えば、慢性炎症性症状および血管炎症性症状、例えば、慢性炎症性症状、例えばこれらに限定されないが、サルコイドーシス、炎症性腸疾患 (即ち、潰瘍性大腸炎およびクローン病)ならびに血管炎症性症状、例えばこれらに限定されないが、播種性血管内血液凝固、アテローム性動脈硬化症、および川崎病;
(D) 神経変性疾患、例えばこれらに限定されないが、脱髄性疾患、例えば、多発性硬化症および急性横断性脊髄炎; 錐体外路および小脳障害、例えば皮質脊髄系の傷害; 基底核の障害; 多動障害、例えばハンチントン病、および老年性舞踏病; 薬物誘導性運動障害、例えば、 CNS ドーパミン受容体をブロックする薬剤に誘導されるもの; 運動低下障害、例えば、パーキンソン病; 進行性核上麻痺; 小脳および脊髄小脳障害、例えば小脳の器質性病変;脊髄小脳変性症(脊髄性運動失調症、フリードライヒ失調症、小脳皮質変性症、多系統変性症(シャイ・ドレーガー症候群、、デジェリン・ソッタス、およびマシャド-ジョセフ疾患));および全身性障害(レフサム症候群、運動失調、末梢血管拡張、およびミトコンドリア多システム障害); 脱髄性核障害、例えば、多発性硬化症、急性横断性脊髄炎; 運動単位の障害、例えば、神経性筋萎縮症 (前角細胞変性症、例えば、筋萎縮性側索硬化症、小児性脊髄性筋萎縮症および若年性脊髄性筋萎縮症 ); アルツハイマー病;中年のダウン症候群; 瀰漫性レビ小体疾患; レビ小体型の老人性痴呆症; ウェルニッケ・コルサコフ症候群 ; 慢性アルコール依存症; クロイツフェルト・ヤコブ病; 亜急性硬化性全脳炎、ハレルフォルデン・スパッツ病; および拳闘家痴呆、またはこれらのサブセット;
(E) TNF-分泌腫瘍またはその他のTNFを伴う悪性腫瘍に関する悪性病状、例えばこれらに限定されないが、白血病(急性、慢性骨髄球性、慢性リンパ性および/または骨髄異形性症候群 ); リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、例えば悪性リンパ腫(バーキットリンパ腫または菌状息肉症));および、
(F) アルコール誘導性肝炎。
【0151】
さらなるTNF-α病状には、これらに限定されないが以下が挙げられる:乾癬、乾癬性関節炎、ウェジナー肉芽腫症、強直性脊椎炎、心不全、再灌流傷害、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、およびC型肝炎感染症。例えば引用により本明細書に含める、Berkow et al.、eds.、The Merck Manual、16th edition、chapter 11、pp 1380-1529、Merck and Co.、Rahway、N.J.、1992を参照。
【0152】
本発明のTNF-α結合分子はいずれの好適な手段で投与してもよく、例えば以下のような投与が挙げられる: 非経口、非-非経口、皮下、局所、腹腔内、肺内、鼻腔内および病巣内投与 (例えば、局所免疫抑制治療用)。非経口注入にはこれらに限定されないが以下のような投与が挙げられる:筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与。さらに、TNF-α結合分子は好適に、パルス注入、特に用量を低下させて投与できる。好ましくは、投与は注射によって行い、もっとも好ましくは投与が短期か長期であるかに応じて静脈内または皮下注射により行う。
【0153】
用法・用量は最適な所望の応答を提供するように調整するとよい (例えば、治療または予防応答)。例えば、単一のボーラスを投与してもよいし、いくつかに分割した用量を一定期間にわたって投与してもよいし、用量は治療状況の緊急性に応じて比例的に増減してもよい。投与の便宜および用量の均一性のために用量単位形態における非経口組成物を製剤するのが便利である。本発明のTNF-α結合分子の用量は(a)活性化合物の特有の特性および達成すべき特定の治療または予防効果、および(b)個体における敏感性の治療のためのかかる活性化合物の配合の当該技術分野に固有の制限に一般に依存する。
【0154】
抗体または抗体断片 (またはその他の本発明のTNF-α結合分子)の治療または予防有効量の例示的非限定的な範囲は0.1-20 mg/kg、より好ましくは 1-10 mg/kgである。用量値は軽減すべき症状のタイプと重篤度に応じて変化することに注意されたい。いずれの特定の対象についても、特定の用法・用量は個人の要求および投与または組成物の投与を監督する専門家の判断に応じて調整すべきであり、本明細書に示す用量範囲は単に例示的なものであって本発明を限定するものではないことをさらに理解されたい。
【0155】
投与する用量はもちろん、以下のような公知の因子に依存する:特定の薬剤の薬力学特性、投与の態様および経路、レシピエントの年齢、健康および体重、症状の性質と程度、併用治療の種類、治療頻度、および所望の効果。例えば、活性成分の一日用量は約 0.01 〜100 mg/kg体重であり得る。通常、1.0 〜5、そして好ましくは 1〜10 mg/kg/日を分割用量で1日1〜6回、または徐放性形態が、所望の結果を得るのに有効である。
【0156】
非限定的な例として、ヒトまたは動物におけるTNF関連症状の治療は本発明のTNF-α結合分子を以下の一日用量で提供しうる: 0.1 〜100 mg/kg、例えば、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90または100 mg/kg/日、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40日間のいずれか、あるいは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20週間のいずれか、またはその組み合わせ、そして単一用量または分割用量を24、12、8、6、4、または 2時間ごとあるいはその組み合わせ。
【0157】
内部投与に好適な剤形(組成物)は一般に約 0.1 mg〜 約 500 mgの活性成分を単位あたりに含む。かかる医薬組成物において、活性成分は通常組成物の総重量に対して約 0.5-95重量%の量で存在する。
【0158】
本発明のTNF-α結合分子は対象への投与に好適な医薬組成物に組み込むとよい。例えば、医薬組成物はTNF-α結合分子 (例えば、抗体または抗体断片)および医薬上許容される担体を含んでいてもよい。本明細書において用いる、「医薬上許容される担体」には、生理的に適合性の溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌薬、等張化剤および吸収遅延剤等が含まれる。医薬上許容される担体の例としては1以上の以下のものが挙げられる:水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、およびそれらの組み合わせ。多くの場合、等張化剤、例えば、糖類、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物に含めるのが好ましい。医薬上許容される担体はさらにTNF-α結合分子の有効期限または有効性を高める少量の補助剤、例えば、湿潤剤または乳化剤、保存料または緩衝剤を含んでいてもよい。
【0159】
本発明の組成物は様々な形態であってよい。かかる形態としては、例えば以下のものが挙げられる:液体、半固体および固体剤形、例えば、液体溶液(例えば、注射可能および注入可能溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソームおよび坐薬。好ましい形態は所望の投与態様および治療用途に依存する。典型的な好ましい組成物は注射可能または注入可能な溶液、例えば、その他の抗体によるヒトの受動免疫に用いられるのに類似の組成物である。
【0160】
治療用組成物は典型的には無菌であり製造および保存条件下で安定なものである。組成物は以下のように製剤すればよい:溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、またはその他の高薬剤濃度に好適な秩序構造。無菌の注射可能な溶液は、活性化合物 (即ち、抗体または抗体断片)を要求される量、適当な溶媒に、所望により上記の成分の1または組み合わせと共に組み込み、次いで無菌ろ過することにより調製できる。一般に、分散液は、基本分散媒および上記のその他の所望の成分を含む無菌媒体に活性化合物を組み込むことにより調製される。無菌注射可能溶液の調製のための無菌の粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥を行って、先に滅菌ろ過したその溶液からの活性成分と所望のさらなる成分との粉末を得るものである。溶液の適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用により維持できる。これは分散液の場合に要求される粒子サイズを維持すること、および、界面活性剤の使用により行われる。注射可能組成物の持続性吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによりもたらしうる。
【0161】
特定の態様において、活性化合物を、化合物を迅速な放出から保護する担体とともに調製して、徐放性製剤、例えば、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系とすればよい。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を利用してもよい。かかる製剤の多くの調製方法が特許されており、あるいは当業者に一般に知られている(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J. R. Robinson. ed.、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978を参照)。
【0162】
特定の態様において、本発明のTNF-α結合分子は、例えば、不活性希釈剤または吸収可能食用担体とともに経口投与してもよい。化合物 (および所望により、その他の成分)は硬殻または軟殻ゼラチンカプセルに入れてもよいし、圧縮して錠剤にしてもよいし、あるいは対象の食事に直接組み込んでもよい。経口治療用投与のために、化合物は賦形剤と共に組み込んでもよく、摂取可能錠剤、頬側錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、ウェーハーなどの形態にて用いられる。本発明の化合物を非経口投与以外で投与するには、その不活性化を阻止する物質で化合物を被覆するか、それと化合物を共投与する必要があろう。
【0163】
補助的な活性化合物を組成物に組み込んでもよい。特定の態様において、本発明のTNF-α結合分子 (例えば、抗体または抗体断片)はTNF-α 活性が有害である障害の治療に有用な1以上のさらなる治療薬と共製剤および/または共投与される。例えば、本発明のTNF-α結合分子は以下のものと共製剤および/または共投与するとよい:その他の標的と結合する1以上の抗体(例えば、その他のサイトカインに結合する抗体または細胞表面分子に結合する抗体)、1以上のサイトカイン、可溶性TNF-α受容体 (例えば、PCT 公開WO 94/06476を参照)および/または1以上のhTNF-α産生または活性を阻害する化学物質(例えば、PCT公開WO 93119751に記載のシクロヘキサン-イリデン誘導体)。さらに、本発明のTNF-α結合分子は1以上の上記治療薬と組み合わせて用いてもよい。かかる併用療法は投与される治療薬を低用量で有益に用いるものであり、それによって可能性のある毒性または様々な単剤療法による合併症を避けることが出来る。
【0164】
本発明のTNF-α結合分子と組み合わせることが出来る関節リウマチの治療薬の非限定的な例としてはこれらに限定されないが以下のものが挙げられる:非ステロイド抗-炎症薬(NSAID); サイトカイン抑制性抗-炎症薬(CSAID); CDP-571/BAY-10-3356 (ヒト化抗-TNF-α抗体; Celltech/Bayer); cA2 (キメラ抗-TNF-α抗体; Centocor); 75 kDa TNFR-IgG (75 kDaTNF 受容体-IgG融合タンパク質; Immunex;例えば、Arthritis & Rheumatism (1994) Vol. 37. S295; J. Invest Med. (1996) Vol. 44 235Aを参照); 55 kDa TNFR-IgG (55 kDa TNF 受容体-IgG 融合タンパク質; Hoffmann-LaRoche); IDEC-CE9.I/SB 210396 (非破壊性霊長類化抗-CD4 抗体; IDEC/SmithKline;例えば、Arthritis & Rheumatism (1995) Vol. 38、S185を参照); DAB 486-IL-2 および/または DAB 389-IL-2 (IL-2 融合タンパク質; Seragen;例えば、Arthritis & Rheumatism (1993) Vol. 36、1223を参照); 抗-Tac (ヒト化抗-IL-2R.α; Protein Design Labs/Roche); IL-4 (抗-炎症性サイトカイン; DNAX/Schering); IL-10 (SCH 52000; 組換えIL-10、抗-炎症性サイトカイン; DNAX/Schering); IL-10 および/または IL-4 アゴニスト(例えば、アゴニスト 抗体); IL-1 RA (IL-1 受容体 アンタゴニスト; Synergen/Amgen); TNF-bp/s-TNFR (可溶性 TNF結合性タンパク質; 例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39 No. 9 (supplement)、S284; Heart and Circulatory Physiology (1995) Vol. 268、pp. 3742を参照); R973401 (ホスホジエステラーゼIV型阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39. No. 9 (supplement)、S282を参照); MK-966 (COX-2 阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 3、No. 9 (supplement)、S81を参照); イロプロスト(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39. No. 9 (supplement)、S82を参照); メトトレキサート: サリドマイド (例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 9、No. 9 (supplement)、S282を参照) およびサリドマイド-関連薬(例えば、Celgen);レフルノミド(leflunomide)(抗-炎症性およびサイトカイン阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39 No. 9 (supplement)、S131; Inflammation Research (1996) Vol. 4、pp. 103-107を参照); トラネキサム酸 (プラスミノーゲン活性化阻害剤; 例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39、No. 9 (supplement)、S284参照); T614 (サイトカイン阻害剤; 例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39 No. 9 (supplement)、S282参照); プロスタグランジンE1 (例えば、Arthritis & Rheumatism(1996) Vol. 39、No. 9 (supplement)、S282参照); テニダップ(Tenidap)(非ステロイド抗-炎症薬; 例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39 No. 9 (supplement)、S280参照); ナプロキセン (非ステロイド抗-炎症薬; 例えば、Neuro Report (1996) Vol. 7、pp. 1209-1213参照); メロキシカム (非ステロイド抗-炎症薬); イブプロフェン(非ステロイド抗-炎症薬); ピロキシカム(非ステロイド抗-炎症薬); ジクロフェナク(非ステロイド抗-炎症薬); インドメタシン(非ステロイド抗-炎症薬); スルファサラジン(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 9、No. 9 (supplement)、S281参照); アザチオプリン(例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39 No. 9 (supplement)、S281参照); ICE 阻害剤 (酵素インターロイキン-1ベータ変換酵素の阻害剤); zap-70 および/または Ick 阻害剤 (チロシンキナーゼzap-70 またはIckの阻害剤); VEGF 阻害剤および/またはVEGF-R阻害剤 (血管内皮細胞増殖因子または血管内皮細胞増殖因子受容体の阻害剤; 血管新生の阻害剤); 副腎皮質ステロイド抗-炎症薬 (例えば、SB203580); TNF-転換酵素阻害剤; 抗-IL-12 抗体; インターロイキン-11 (例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39、No. 9 (supplement)、S296参照); インターロイキン-13 (例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39、No. 9 (supplement)、S308参照); インターロイキン-17 阻害剤 (例えば、Arthritis & Rheumatism (1996) Vol. 39. No. 9 (supplement)、S120参照); 金; ペニシラミン; クロロキン; ヒドロキシクロロキン; クロランブシル ; シクロホスファミド; シクロスポリン; 全身リンパ組織放射線照射; 抗-胸腺細胞グロブリン; 抗-CD4 抗体; CD5-毒素; 経口投与用ペプチドおよびコラーゲン; ロベンザリット2ナトリウム ; サイトカイン制御薬 (CRA) HP228および HP466 (Houghten Pharmaceuticals、Inc.); ICAM-1 アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302; Isis Pharmaceuticals、Inc.); 可溶性補体受容体 1 (TP10; T Cell Sciences、Inc.); プレゾニドン.オルゴテイン(orgotein); グリコサミノグリカンポリスルフェート; ミノサイクリン; 抗-IL-2R 抗体;海洋および植物脂質(魚類および植物種子脂肪酸; 例えば、DeLuca et al. (1995) Rheum. Dis. Clin. North Am. 21:759-777参照); アウラノフム(auranofm); フェニルブタゾン; メクロフェナム酸 ; フルフェナム酸; 静脈内免疫グロブリン; ジレウトン; ミコフェノール酸 (RS-61443); タクロリムス(FK-506); シロリムス (ラパマイシン); アミプリロース(amiprilose) (テラフェクチン(therafectin));クラドリビン(cladribine)(2-クロロデオキシアデノシン); アザリビン、およびD2E7 抗体 (引用により本明細書に含める米国特許第6258562号参照)。
【0165】
本発明のTNF-α結合分子と組み合わせ得る炎症性腸疾患の治療薬の非限定的な例としては、これらに限定されないが以下が含まれる: ブデノシド(budenoside); 上皮増殖因子; 副腎皮質ステロイド; シクロスポリン、スルファサラジン; アミノサリチル酸; 6-メルカプトプリン; アザチオプリン; メトロニダゾール ; リポキシゲナーゼ阻害剤; メサラミン; オルサラジン(olsalazine); バルサラジド(balsalazide); 抗酸化剤; トロンボキサン阻害剤; IL-1 受容体アンタゴニスト; 抗-IL-1ベータモノクローナル抗体; 抗-IL-6モノクローナル抗体; 増殖因子; エラスターゼ阻害剤; ピリジニル-イミダゾール化合物; CDP-571/BAY-10-3356 (ヒト化抗-TNF-α抗体;Celltech/Bayer); cA2 (キメラ抗-TNF-α抗体; Centocor); 75 kDa TNFR-IgG (75 kDa TNF 受容体-IgG 融合タンパク質; Immunex; 例えば、Arthritis & Rheumatism (1994) Vol. 7、S295; J. Invest. Med. (1996) Vol. 44 235A参照); 55 kDa TNFR-IgG (55 kDa TNF 受容体-IgG融合タンパク質; Hoffmann-LaRoche); インターロイキン-10 (SCH 52000; Schering Plough); IL-4 (抗-炎症性サイトカイン; DNAX/Schering); IL-10 および/または IL4 アゴニスト(例えば、アゴニスト抗体); インターロイキン-11; プレドニゾロン、デキサメタゾンまたはブデソニドのグルクロニド- またはデキストラン-結合プロドラッグ; ICAM-1 アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302; Isis Pharmaceuticals、Inc.); 可溶性補体受容体 1 (TP10; T Cell Sciences、Inc.); 徐放性メサラジン;メトトレキサート;血小板活性化因子 (PAF)のアンタゴニスト; シプロフロキサシン ;およびリグノカイン。
【0166】
本発明のTNF-α結合分子と組み合わせてもよい多発性硬化症の治療薬の非限定的な例にはこれらに限定されないが以下が含まれる: 副腎皮質ステロイド; プレドニゾロン; メチルプレドニゾロン; アザチオプリン; シクロホスファミド; シクロスポリン; メトトレキサート; 4-アミノピリジン; チザニジン ; インターフェロン-ベータ1a (Avonex.TM.; Biogen); インターフェロン-ベータ1b (Betaseron.TM.; Chiron/Berlex); コポリマー 1 (Cop1; Copaxone.TM.; Teva Pharmaceutical Industries、Inc.); 高圧酸素; 静脈内免疫グロブリン; クラブリビン(clabribine); CDP-571/BAY-10-3356 (ヒト化抗-TNF-α抗体; Celltech/Bayer); cA2 (キメラ抗-TNF-α抗体; Centocor); 75 kDa TNFR-IgG (75 kDa TNF 受容体-IgG 融合タンパク質; Immunex; 例えば、Arthritis & Rheumatism (1994) Vol. 37、S295; J Invest. Med. (1996) Vol. 44、235A参照); 55 kDa TNFR-IgG (55 kDa TNF 受容体-IgG 融合タンパク質; Hoffmann-LaRoche); IL-10; IL-4 (抗-炎症性サイトカイン; DNAX/Schering); およびIL-10 および/または IL-4 アゴニスト(例えば、アゴニスト抗体)。
【0167】
本発明のTNF-α結合分子と組み合わせてもよい敗血症の治療薬の非限定的な例としては、これらに限定されないが以下が含まれる: 高張食塩水溶液; 抗生物質; 静脈内ガンマグロブリン; 連続血液ろ過; カルバペネム (例えば、メロペネム);サイトカイン、例えば、TNF-α、IL-6 および/または IL-8のアンタゴニスト; CDP-571/BAY-10-3356 (ヒト化抗-TNF-α抗体; Celltech/Bayer); cA2 (キメラ抗-TNF-α抗体; Centocor); 75 kDa TNFR-IgG (75 kDa TNF 受容体-IgG 融合タンパク質; lmmunex; 例えば、Arthritis & Rheumatism (1994) Vol. 37、S295; J Invest. Med. (1996) Vol. 44、235A参照); 55 kDa TNFR-IgG (55 kDa TNF 受容体-IgG 融合タンパク質; Hoffmann-LaRoche); サイトカイン制御薬 (CRA) HP228およびHP466 (Houghten Pharmaceuticals、Inc.); SK&F 107647 (低分子量ペプチド; SmithKline Beecham);四価グアニルヒドラゾンCNI-1493 (Picower Institute); 組織因子経路阻害剤 (TFPI; Chiron); PHP (化学修飾されたヘモグロビン; APEX Bioscience); 鉄キレート化剤およびキレート、例えば、 ジエチレントリアミンペンタ酢酸-鉄(III)複合体(DTPA鉄(III); Molichem Medicines);リソフィリン(lisofylline)(合成低分子 メチルキサンチン; Cell Therapeutics、Inc.); PGG-グルカン(水溶性 β-1,3グルカン; Alpha-Beta Technoligy); 脂質で再構成されたアポリポタンパク質 A-1;キラルヒドロキサム酸(脂質A生合成を阻害する合成抗菌薬); 抗-内毒素抗体; E5531 (合成脂質Aアンタゴニスト; Eisai America、Inc.); rBPI21 (ヒト殺菌性/透過性-上昇タンパク質の組換え N-末端断片); D2E7 抗体、および合成抗-内毒素ペプチド(SAEP; Bios Ynth Research Laboratories)。
【0168】
本発明のTNF-α結合分子と組み合わせることが出来る成人性呼吸窮迫症候群 (ARDS)の治療薬の非限定的な例としては以下が含まれる: 抗-IL-8 抗体; サーファクタント置換療法; CDP-571/BAY-10-3356 (ヒト化抗-TNF-α抗体; Celltech/Bayer); cA2 (キメラ抗-TNF-α抗体; Centocor); 75 kDa TNFR-IgG (75 kDa TNF 受容体-IgG 融合タンパク質; Immunex; 例えば、Arthritis & Rheumatism (1994) Vol. 3.7 S295; J. Invest. Med. (1996) Vol. 44、235A参照);および 55 kDa TNFR-IgG (55 kDa TNF 受容体-IgG 融合タンパク質; Hoffmann-LaRoche)。
【0169】
本発明の医薬組成物は「治療上有効量」または「予防上有効量」の本発明の抗体または抗体断片を含むとよい。「治療上有効量」とは、必要な用量および時期において、所望の治療結果を達成するのに有効な量をいう。抗体または抗体断片の治療上有効量は以下のような因子に応じて変動する:例えば、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、そして抗体または抗体断片が個体において所望の応答を誘発する能力。治療上有効量はまた、抗体または抗体断片の毒性または有害効果よりも治療上有益な効果が上回る量である。「予防上有効量」は必要な用量および時期において、所望の予防結果を達成するのに有効な量をいう。典型的には、予防用量は対象に 疾患の前または初期段階に用いられるため、予防上有効量は治療上有効量よりも少ない。
【0170】
IV.さらなるTNF-α結合分子の用途
本発明はまた、TNF-α-媒介疾患であることが知られているか該疾患であると予想される患者におけるTNF-αの検出のために診断方法に用いられる、以下に記載するように検出可能に標識されたTNF-α結合分子 (例えば、抗-TNF-α ペプチドおよび抗体)を提供する。
【0171】
本発明のTNF-α結合分子、例えば、抗-TNF-α ペプチドおよび/または抗体は、サンプル中のTNF-αを検出または定量するイムノアッセイに有用である。TNF-αについてのイムノアッセイは典型的には、TNF-αに選択的に結合することが出来る本発明の検出可能に標識した高親和性抗-TNF-αペプチドおよび/または抗体の存在下で生物サンプルをインキュベートする工程、およびサンプル中で結合した標識化ペプチドまたは抗体を検出する工程を含む。様々な臨床アッセイ方法が当該技術分野に周知であり、例えば、Immunoassays for the 80's、A. Voller et al.、eds.、University Park、1981に記載されている。
【0172】
したがって、抗-TNFペプチドまたは抗体はニトロセルロース上、または可溶性タンパク質を固定化することが出来るその他の固体支持体上に捕捉することが出来る。TNF-α-含有サンプルを次いで支持体に添加し、支持体を次いで好適なバッファーで洗浄して非結合タンパク質を除く。次に、検出可能に標識した、TNF-α特異的ペプチドまたは抗体を固相支持体に添加し、これをバッファーでもう一度洗浄し、非結合の検出可能に標識したペプチドまたは抗体を除く。固体支持体上の結合標識の量は公知の方法によって検出することが出来る。
【0173】
「固相支持体」または「担体」は、ペプチド、抗原または抗体に結合することが出来るあらゆる支持体をいう。周知の支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトが含まれる。担体の性質は本発明の目的のためにある程度可溶性でもよいし不溶性でもよい。支持体材料は結合分子がそのTNF-αに結合する能力を保持する限り実質的にいずれの構造でもよい。したがって、支持体の構造はビーズにおけるように球状でもよいし、試験管内面または棒の外面のように筒状でもよい。あるいは、表面は、シート、培養皿、試験片、マイクロタイタープレートのように平面でもよい。好ましい支持体には、ポリスチレンビーズが含まれる。当業者であれば、抗体、ペプチドまたは抗原の結合に好適な多くの他の担体を知っているであろうし、またはルーチン実験によりそれを確かめることが出来る。周知方法を用いて所与の抗-TNF-α ペプチドおよび/または抗体のロットの結合活性を測定することが出来る。当業者であれば実効性および最適アッセイ条件をルーチン実験により決定することが出来る。
【0174】
TNF-α結合分子、例えばTNF-特異的ペプチド および/または抗体の検出可能な標識は、酵素イムノアッセイ(EIA)、または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)に使用する酵素に結合させることによって達成できる。結合した酵素は曝された基質と反応して例えば、分光光度的、蛍光定量的または可視手段によって検出できる化学部分を生じる。本発明のTNF-α結合分子を検出可能に標識するのに用いられる酵素としてはこれらに限定されないが、以下が挙げられる:リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼ。
【0175】
TNF-α結合分子を放射性標識することによって、ラジオイムノアッセイ (RIA)の使用によりTNF-αを検出することが可能となる(例えば、Work、et al.、(1978) Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology、North Holland Publishing Company、N.Y.を参照)。放射性同位体はガンマカウンターまたはシンチレーションカウンターの使用などの手段によりまたはオートラジオグラフィーにより検出することが出来る。
【0176】
蛍光化合物によってTNF-α結合分子を標識することも可能である。蛍光標識された分子が適当な波長の光に曝されると、その存在が蛍光により検出できる。もっとも一般的に用いられている蛍光標識化合物は、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒドおよびフルオレサミンである。
【0177】
TNF-α結合分子は、蛍光-放射金属、例えば、125Eu、またはその他のランタニド系列を用いて検出可能に標識することも出来る。これら金属はかかる金属のキレート化基、例えばジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン-テトラ酢酸(EDTA)を用いてTNF-α結合分子に結合させることが出来る。
【0178】
TNF-α結合分子は化学発光化合物と結合させることによって検出可能に標識することも出来る。化学発光標識した分子の存在は化学反応の過程で生じる発光の存在を検出することによって判定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、テロマテッィック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0179】
同様に生物発光化合物を用いて本発明のTNF-α結合分子を標識することが出来る。生物発光は生物系にみられ、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高める化学発光の型である。生物発光タンパク質の存在は発光の存在を検出することによって判定される。標識の目的に重要な生物発光化合物はルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0180】
TNF-α結合分子の検出は、例えば、検出可能な標識が放射性ガンマ放出体の場合、シンチレーションカウンターによって、あるいは例えば標識が蛍光物質の場合蛍光光度計によって達成することが出来る。酵素標識の場合、検出は酵素の基質を用いる比色定量法によって達成できる。検出は同様に調製した標準と基質の酵素反応の程度の目視比較によっても達成できる。
【0181】
本発明のいくつかの態様において、上記アッセイによって検出されるTNF-αは生物サンプル中に存在してもよい。TNF-αを含有するいずれのサンプルを用いてもよい。好ましくは、サンプルは生物学的液体、例えば、血液、血清、リンパ、尿、脳脊髄液、羊水、滑液、組織抽出液またはホモジネートなどである。しかし、本発明はこれらサンプルのみを用いるアッセイに限定されない。というのは当業者であればその他のサンプルの使用を可能にする好適な条件を判定することができるからである。
【0182】
インサイチュ検出は、組織切片を患者から取り出し、本発明の標識化TNF-α結合分子の組み合わせをかかる切片に提供することにより達成できる。TNF-α結合分子は好ましくは標識化TNF-α結合分子を生物サンプル上にのせるか、サンプル表面を覆うことによって提供する。かかる手順の使用により、TNF-αの存在だけでなく、TNF-αの調べた組織における分布も調べることが可能となる。本発明を用いると、当業者であれば、様々な組織学的方法のいずれも(例えば染色方法)かかるインサイチュ検出を達成するために改変することが出来ることを容易に理解するであろう。
【0183】
本発明のTNF-α結合分子は「ツーサイト」または「サンドイッチ」アッセイともよばれる免疫測定(immunometric)アッセイにおける使用のために用いることが出来る。典型的な免疫測定アッセイにおいて、多量の非標識TNF-α結合分子 (例えば、抗-TNF-α抗体)を試験する液体に不溶性の固体支持体に結合させ、多量の検出可能に標識した可溶性抗体を添加して、固相抗体、抗原、および標識化抗体の間で形成された三元複合体の検出および/または定量を可能にする。
【0184】
典型的かつ好ましい免疫測定アッセイには「フォワード」アッセイが含まれ、ここで固相に結合したTNF-α結合分子 (例えば、抗体)はまず被験サンプルと接触されて、TNF-α がサンプルから、二成分固相抗体-TNF-α複合体の形成によって抽出される。好適なインキュベーション時間の後、固体支持体を洗浄して、未反応のTNF-αを含む残余の液体サンプルを除き(存在するなら)、次いで、既知量の標識抗体 (これは「レポーター分子」として機能する)を含む溶液と接触させる。標識化抗体と、非標識抗体を介して固体支持体に結合したTNF-αとの複合体を形成させる第二のインキュベーション期間の後、固体支持体を洗浄して再び未反応標識化抗体を除く。このタイプのフォワードサンドイッチアッセイは、TNF-αが存在するかを判定する簡便なイエス/ノーアッセイであり得、あるいは、既知量のTNF-αを含む標準的サンプルについて得た測定値と標識化抗体の測定値を比較することによって定量的とすることが出来る。かかる「ツーサイト」または「サンドイッチ」アッセイはWide (Radioimmune Assay Method、Kirkham、ed.、Livingstone、Edinburgh、1970、pp. 199-206)に記載されている。
【0185】
TNF-αについて有用であり得る別のタイプの「サンドイッチ」アッセイは、いわゆる「同時」および「リバース」アッセイである。同時アッセイは一回のインキュベーション工程を含み、ここで固体支持体に結合した抗体と、標識化抗体はともに被験サンプルに同時に添加される。インキュベーションが完了した後、固体支持体を洗浄して残余の液体サンプルおよび複合体形成していない抗体を除く。固体支持体と結合した標識化抗体の存在を次いで常套の「フォワード」サンドイッチアッセイと同様にして判定する。「リバース」アッセイにおいて、段階的添加、まず標識化抗体の溶液の液体サンプルへの添加、次いで適当なインキュベーション時間後の固体支持体に結合した非標識抗体の添加が用いられる。第二のインキュベーションの後、固相を常套手段で洗浄して残余の被験サンプルおよび未反応標識化抗体の溶液が含まれないようにする。固体支持体に結合した標識化抗体の判定を「同時」および「フォワード」アッセイと同様に行う。
【0186】
いくつかの態様において、固体支持体に結合させた本発明のTNF-α結合分子は、液体または組織または細胞抽出物からTNF-αを除くのに用いることが出来る。好適な態様において、これらを用いて血液または血漿産物からTNF-αを除去する。別の好適な態様においてTNF-α結合分子は当該技術分野に公知の体外免疫吸着装置に好適に用いることが出来る例えば、Seminars in Hematology、26 (2 Suppl. 1)(1989)参照)。患者の血液またはその他の体液を結合したTNF-α結合分子に曝し、その結果、循環性TNF-α(遊離または免疫複合体)が部分的または完全に除去され、その後液体が体内に戻される。この免疫吸着は細胞遠心分離工程を挟むかあるいは挟まずに、連続的流動配列において使用しうる。例えば、Terman、et al.、(1976) J. Immunol. 117:1971-1975参照。
【0187】
実験例
以下の実施例は本発明の好ましい態様をさらに示すものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0188】
以下の実験の説明において、以下の略語を用いる: M (モル); mM (ミリモル); nM (ナノモル); pM (ピコモル); mg (ミリグラム);μg (マイクログラム); pg (ピコグラム); ml (ミリリットル); μl (マイクロリットル);℃ (摂氏温度); OD (吸光度); nm (ナノメーター); BSA (ウシ血清アルブミン);およびPBS (リン酸緩衝食塩水)。
【0189】
実施例1
合成CDRおよびヒトフレームワークを有する抗-TNF-α Fab 断片の構築およびスクリーニング
この実施例は、完全にヒトのフレームワーク領域および合成CDRを有する抗-TNF-α Fab 断片の構築を記載する。hu1 CDRおよびフレームワーク領域をコードする核酸配列をそれぞれ配列番号2および4に示す。用いた6つのhu1 CDRは以下の通りである: CDRL1 (配列番号10); CDRL2 (配列番号20); CDRL3 (配列番号34); CDRH1 (配列番号36); CDRH2 (配列番号44); およびCDRH3 (配列番号54)。
【0190】
hu1の結合特性を向上させる突然変異を同定するために、合成CDRのライブラリーを下記のデリーションテンプレートに挿入した。標準的突然変異誘発技術(引用により本明細書に含める、Kunkel、T.A.、(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82: 488-492)を用いて個々に各hu1 CDRを変異原性オリゴヌクレオチドのプールで置換した。この実施例において、CDRはKabatとChothiaの定義の両方を含む残基である(例えば、CDRH1については残基 26-35)。CDRH2の長さにより、全領域をカバーするために2つの別々のライブラリーの構築が必要であった。
【0191】
変異原性オリゴヌクレオチドを、対応するhu1 CDRが欠失しているウリジン化(uridinylated)ファージテンプレートにアニーリングした。このテンプレートは hu1 軽鎖可変部配列 (配列番号2、適当にhu1 CDRが欠失) および配列番号85に示すヒトCL 配列ならびに hu1 重鎖可変部配列 (配列番号4、適当に hu1 CDRが欠失)および配列番号86に示すヒト CH1 配列から構成される。
【0192】
アニーリングは反応物を75℃で5分間インキュベートし、45分かけて20℃へとゆっくり冷却することによって達成した。アニーリングしたサンプルを氷上におき、T4 DNA ポリメラーゼおよびT4 DNAリガーゼを添加して二本鎖 DNAを作り、反応物を4℃で5分間次いで37℃で90分間インキュベートした。反応物をフェノールで抽出し、エタノール沈殿を行い、DNAをDH10B 細胞にエレクトロポレーションした。XL1 Blue 細胞を反応物に加えてファージを増幅させた後、ライブラリーをプレーティングした。ファージストックを8 mlの培地をプレートに添加し、4℃で最低4時間インキュベーションすることによって調製した。ファージ-含有培地を回収し、遠心分離によって清澄にし、アジ化ナトリウム (0.02%)を保存料として添加した。
【0193】
抗-TNF-α Fab ライブラリーの最初のスクリーニングは引用により本明細書に含めるWatkins、J.D. et al.、(1998) Anal. Biochem.、256: 169-177に記載のようにプラークリフトによって行った。簡単に説明すると、ニトロセルロースフィルターをヤギ抗-ヒトカッパ抗体でコーティングし、1% BSAでブロッキングし、ファージ ライブラリーから作成したプラークを含むプレートに16時間22℃でおいた。フィルターをPBS中ですすぎ、様々な濃度のビオチン化 ヒトTNF-αと様々な時間インキュベートした。フィルターを0.1% Tween 20を含むPBSで洗浄し、NeutrAvidin アルカリホスファターゼ結合体と2-60分間インキュベートし同じバッファーで洗浄した。アルカリホスファターゼの標準比色定量基質によって明らかになったシグナル強度の相違を用いて結合特性が上昇したバリアントを同定した。このスクリーニング手順の結果、いくつかのFab 断片が同定され、これをさらに以下のように特性解析をした:
【0194】
陽性プラークをパスツールピペットでとり、ファージを1時間37℃で100μlの 10 mM Tris HCl、pH 7.4 および100 mM NaCl中に溶出した。高い力価のストックを標準的増幅技術によって得た。XL1 Blue 細胞をOD600が 1になるまで培養し、IPTGを終濃度1 mMで添加した。15 ml の細菌培養物と10μlの高い力価のファージストックによる感染の後、細胞を37 ℃で1時間、次いで22℃で16時間インキュベートした。細菌を回収し、30 mM Tris HCl、pH 8および150 mM NaClで洗浄した。ペレットを640 μlの30 mM Tris HCl、pH 8、2 mM EDTA および20% スクロースに再懸濁し、4℃で15分間インキュベートした。溶解した細胞をペレットにし、周辺質内容物およびFab 断片を含む上清をELISA 型式でアッセイして、およそのoff-速度を測定した。COSTAR #3366 マイクロタイタープレートを炭酸バッファー中16時間4℃で1μg/ml of hTNF-αでコーティングした。プレートを0.1% Tween 20 を含むPBSで3回洗浄し、1% BSAで1時間22℃でブロッキングした。細胞膜周辺腔から放出されたFab 断片を0.05% Tween 20を含むPBSで段階希釈し、1時間22℃でプレートに入れた。プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼに結合させたヤギ抗-ヒトカッパ抗体と、0.05% Tween 20を含むPBS中で1時間 22℃でインキュベートした。プレートを0.1% Tween 20を含むPBSで洗浄し、アルカリホスファターゼの標準比色定量基質を用いて現像した(例えば引用により本明細書に含める、Watkins、J.D. et al.、(1997) Anal. Biochem.、253: 37-45、参照)。
【0195】
ELISA アッセイをおよそのon-速度の測定に用いた。COSTAR #3366 マイクロタイター プレートを、炭酸バッファー中2μg/mlのヤギ抗-ヒトカッパ 抗体で16時間4℃でコーティングした。細胞膜周辺腔から放出されたFab 断片を0.05% Tween 20を含むPBS中に段階希釈し、ウェルに添加し、1時間22℃でインキュベートした。プレートを3回0.1% Tween 20 を含むPBSで洗浄し5 nM ビオチン化 hTNF-αとともに22℃で2分間インキュベートした。プレートを1回洗浄し、NeutrAvidin アルカリホスファターゼ結合体を2分間22℃で添加した。プレートを洗浄し、上記のように現像した。最初のフィルターリフトスクリーニング手順および続くELISA アッセイにおける陽性バリアントの特性解析により、いくつかのFab 断片における個々のCDRの単一アミノ酸変化が明らかとなり、完全にヒトのフレームワークにおいてTNF-αに対する親和性が上昇した。これらアミノ酸変化を表1、2および3に示す。
【0196】
単一の有益な突然変異を組み合わせて相加性を評価するライブラリーを上記手順を用いて構築した。このライブラリーを前節に記載した3つのアッセイを用いてスクリーニングし結合特性が上昇したコンビナトリアルバリアントのパネルを図7に示す。同定した特定のクローンの名を有益な突然変異 (hu1における最初の残基、そして特定のクローンの新しい残基によって示す)とともに以下の表4に示す。
【0197】
【表5】

【0198】
次に、表4に記載の3つのFab 断片の結合動力学を動力学排除アッセイにおいて測定した。親和性の測定はKinExA(商標)3000装置(Sapidyne Instruments、Inc.、Boise、Idaho)で行った。細胞膜周辺腔から放出されたFab 断片(A10K、A9K、およびA10P)を用い、その濃度は定量 ELISAによって測定した。簡単に説明すると、抗原および抗体断片を溶液中で反応させ、非結合試薬の画分を捕獲により判定しビーズ支持体上で測定した。結合動力学を測定または非結合試薬の量から計算することが出来る。例えば、溶液中でTNF-αとFab 断片との相互作用が起こった後、未反応の遊離のFab 断片の、TNF-αコーティングしたビーズへの結合を装置で測定することができる。これはFab 断片 (例えば、ヤギ抗-IgG (重鎖および軽鎖))に対する標識化二次抗体の検出により行われる。Kdを測定するために一定濃度のFab 断片と様々な濃度のヒトTNF-αを含む個々の試験管を、0.1% BSAを追加したPBS中で20℃で20時間インキュベートした。各Kd測定のために全部で13の試験管を用いた。A10KおよびA10Pについては、Fab濃度を10 pMとし、ヒトTNF-α濃度は160 pMから開始して0.078 pMまで限界希釈し、最後の試験管にはヒトTNF-αを含めなかった。A9Kインキュベーションも同様に設定し、Fabは一定濃度20 pMとし、ヒトTNF-αは500 pMから開始して限界希釈し、終濃度0.24 pMとした。インキュベーションの後、平衡化サンプル中の未結合Fabの量をKinEx(商標)3000装置で製造業者の指示に従って測定した。Kd値を装置のソフトウェアで決定した。結果を表5に示す。
【0199】
konを測定するため40 pM濃度の個々のFab 断片を400 pMのhTNF-αと混合した。一連の測定についてタイムコースを取った。その結果得られたデータを用いて装置のソフトウェアを用いてkonを計算した。koffは式 Kd = koff/konによって計算した。結果を表5に示す。
【0200】
【表6】

【0201】
実施例2
結合特性が向上した抗-TNF-α結合分子の特性解析
この実施例は実施例1からの8つの抗-TNF-α結合分子の特徴を同定するために用いた様々なインビトロ試験手順を記載する。まず、これらFab 断片がTNF-α-媒介細胞死を阻止する能力をそのL929 マウス 線維芽細胞に対する保護効果を評価することによって調べた。具体的には、L929 マウス 線維芽細胞を96-ウェルプレートの個々のウェルに20,000 細胞/ウェルの密度で播き、ATCCの推奨に従って維持した。一晩のインキュベーション後、細胞膜周辺腔から放出されたFab 断片を培地中で段階希釈し、滅菌ろ過し、 50 μlを終濃度1μg/mlのアクチノマイシン D とともに添加した。その直後、hTNF-αを終濃度80 pg/mlにて添加し、プレートを37℃5% CO2雰囲気の加湿インキュベーターに入れた。一晩のインキュベーション後、様々なFab 断片の保護効果を細胞生存をモニターすることによって評価した。これにはCell Titer 96(登録商標)AQueous One 溶液試薬(Promega、Madison WI)を製造業者の指示に従って用いた。個々のウェルの吸光度を490 nmで測定した結果を 図8に示す。用いたTNF-α濃度においては、およそ90%のL929 細胞が一晩のインキュベーション後に死に、非関連コントロールFab 断片の添加によっては何らの保護も与えられなかった。一方、表4に記載の8つの抗-TNF-α Fab 断片のそれぞれは細胞死を阻止することができた。これらTNF-α結合分子の中で、A10K および A10Pはもっとも低い濃度で細胞を保護することが出来、TNF-αへの向上した結合特性を反映していた。有効濃度(EC50)を曲線当てはめ関数およびSigmaPlot(登録商標)ソフトウェア(SPSS Science、Chicago、IL)のEC50 誘導能力を用いて決定した。図8に示す実験において、A10K Fab 断片のEC50はおよそ25 pMと見積もられた。
【0202】
Fab 断片ではなく完全なIgG 分子としての表4のクローン (例えば、A10K)を更に評価するため、以下の手順を用いた。まず、軽鎖可変部 (VL) および重鎖可変部 (VH) をA10K Fab発現ファージから例えば、重鎖および軽鎖定常部を含む発現ベクターに移すことができる。あるいは、可変部を2つの別々の発現ベクターにクローニングすることができ、各ベクターは最終的に2つの鎖の1つのみを発現する。VL 領域は以下のプライマーを用いるPCRによって増幅できる: VL 5' プライマー: TGGCTCCCAGGTGCCAAATGTGAAATTGTGCTGACTCAG (配列番号109); VL 5' ビオチン化 プライマー: ビオチン-TGGCTCCCAGGTGCCAAATGT (配列番号110);およびVL 3' プライマー: GACAGATGGTGCAGCCACAGT (配列番号111)。同様にVH 領域は以下のプライマーを用いて増幅することが出来る:VH 5' プライマー: CTCTCCACAGGTGTCCACT CCCAGGTCCAACTGCAGGTC (配列番号112); VH 5' ビオチン化 プライマー: ビオチン-CTCTCCACAGGTGTCCACTCC (配列番号113);およびVH 3' プライマー: GAAGACCGATGGGCCCTTGGT (配列番号114)。PCR 増幅の後、ビオチン化 DNA鎖を除き、非-ビオチン化鎖を、発現ベクターから調製した一本鎖ウリジン化テンプレートにアニーリング 比20:1でアニーリングさせ、次いで、T4 DNA リガーゼの存在下でT4 DNA ポリメラーゼによって合成した。DH10B 細胞において、ウリジン化テンプレートは失われ、例えばA10K IgGを有する二本鎖プラスミドが得られる。
【0203】
次に、哺乳類細胞 (例えば、CHO-K1 細胞)に発現ベクターを形質移入し、安定に移入されたものを、形質移入細胞を適当な培地で適当な選択下で培養することによって選択することが出来る。 IgG発現のELISAによる確認の際、例えばローラーボトルにおいてプールを拡張させてもよく、選択下に維持する。培地は通常2日に1回交換し、A10K IgG を含む培養上清をIgG精製に用いる。この同じ手順を用いて hu1 IgG またはその他の IgG 分子を作ることが出来る。
【0204】
L929 細胞保護アッセイを用いてA10K およびhu1をともにFab 断片およびインタクトなIgG 分子として特性解析し、コントロールFabとコントロールIgGも特性解析した。アッセイは前節に記載のように行った。図9に示すように、両方のTNF-α結合分子は、Fab 断片としてもインタクトなIgGとしても、TNF-αの有害効果から細胞を保護することが出来た。しかし同じ保護を達成するのに必要なA10Kの濃度はhu1よりも有意に低く、タンパク質工学により達成される結合特性の向上が細胞に対する低い有効用量に反映されていることを示す。この実験において、A10K Fab 断片のEC50はおよそ67 pMと見積もられた。
【0205】
図10 はA10Kと関節リウマチおよびクローン病の治療の標準であるレミケード(REMICADE)(Oncology Supply、Dothan、Alabama)の直接比較を示す。同様にA10Kとレミケードの両方が完全にL929 線維芽細胞を保護することが出来るが、A10Kは非常に低い濃度で同じ保護を達成することが出来、A10Kがより強力な分子でありTNF-αの中和においてより有効であることが示される。A10K IgG 分子のEC50はおよそ2.7 pMと見積もられた。
【0206】
実施例3
A10Kを用いたインビボ実施例
この実施例は、A10KインタクトIgGを用いた2つのインビボアッセイを記載する。特に、この実施例はマウスにおけるインビボでのA10KのTNF-α中和効果、およびマウスにおけるA10KのTNF-α媒介多発性関節炎に対する保護効果を記載する。
【0207】
インビボでのA10KのTNF-α中和能力を以下のように評価した。雌性C3H/HeN マウス (〜9週齡)の腹腔内に組換えヒトTNF-α (5 μg/マウス)を感作薬であるガラクトサミン (18 mg/マウス)と組み合わせて注射した。非処置マウスにおいては、かかる条件の結果、およそ90 パーセントの死亡率が48時間以内にみられた。A10Kの中和効果をマウスに、0.8および4 mg/kg、静脈内に、hTNF-α攻撃の24時間前に注射することによって評価した。A10Kは死亡率の用量依存的阻害を示し、完全な保護が調べた高い用量で観察された。これらの結果を図11に示す。
【0208】
A10KのTNF-α媒介多発性関節炎に対する効果を以下のように評価した。ヒト hTNF-αについてのC57BL/6NTac-TgN (TNF) マウス トランスジェニックは重篤な慢性関節炎をおよそ20週齡に発症する(引用により本明細書に含めるKeffer、J. et al.、(1991) EMBO J.、10:4025-4031)。用量増大研究を非常に初期段階の関節腫脹を示すマウス(9週齡)に対して行ってA10Kの疾患進行に対する効果を調べた。後関節の幅を調べ、動物を無作為に群分けし、最初の関節の大きさについて平衡を取った。動物に次に腹腔内に0.1、0.3または1 mg/kgのA10Kまたはコントロールとしてレミケード(Cancer Supply、Dothan、Alabama)を注射した。関節腫脹を関節幅の上昇(txでの関節幅toでの関節幅)を測定することによって毎週モニターした。A10Kは多発性関節炎の進行において用量依存的阻害を示し、レミケード (Cancer Supply、Dothan、Alabama)よりも同様の用量において有効であった。これら結果を図12に示す。
【0209】
実施例4
AME 3-2の作成およびスクリーニング
この実施例はAME-3-2 抗体の構築について記載する。PCR プライマーを用いてA10K 軽鎖フレームワークを、ヒト集団に頻繁にみられるヒト生殖系列フレームワーク IGKV1-39 (O2またはDP-K9としても知られる)に変換した。AME-3-2の重鎖はIGVH3-72 (3-72またはDP-29としても知られる)である。このコンストラクトに突然変異をかけ、スクリーニングし、 上記実施例1および2と同様に試験した。この手順によりAME 3-2 についての6つの新しいCDRが同定された(図15に示す): CDRL1 - 配列番号93; CDRL2 - 配列番号95; CDRL3 - 配列番号97; CDRH1 - 配列番号87; CDRH2 - 配列番号89; およびCDRH3 - 配列番号91。図15はまたAME 3-2 抗体の完全な軽鎖および重鎖も示す。
【0210】
KinExA(商標)3000装置(Sapidyne Instruments、Inc.、Boise、Idaho)でのAME 3-2 の試験結果を表7に示す。また、AME 3-2 について計算したEC50はA10Kと同様であることが判明した。
【0211】
【表7】

【0212】
実施例5
TNF-α 媒介疾患の治療のためのTNF-α結合分子の使用
この実施例はヒト患者におけるTNF-α 媒介疾患 (例えば、若年性および成人性関節リウマチ、乾癬性関節炎、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、乾癬、強直性脊椎炎、ウェジナー肉芽腫症および敗血症)の治療的および予防的処置のためのTNF-α結合分子の使用を記載する。例えば、TNF-α 媒介疾患を患う患者に単一用量の抗-TNF-α結合分子、例えば2C6K、2C6P、2E7K、2E7P、A9K、A9P、A10K、A10P、AME 3-2、またはhu1を、静脈内に、1-15 mg/kg患者体重にて投与してもよい。この患者にはしかし、ある期間複数用量を投与してもよい(例えば、数日または数週間3 mg/kg)。治療に対する応答をモニターすることにより用量の増減の必要性および治療の反復の必要性が決定できる。治療応答および用量計画に対するさらなる教示は引用により本明細書に含める米国特許第5698195号にみられる。患者にTNF-α結合分子と組み合わせて免疫抑制剤、例えば、メトトレキサートを投与してもよい。
【0213】
上記明細書に記載のすべての文献および特許を引用により本明細書に含める。本発明の記載した方法およびシステムの様々な修飾および改変が本発明の範囲と精神を逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明を特定の好ましい態様に関して記載してきたが、請求する本発明はかかる特定の態様に限定されないことを理解すべきである。実際、本発明の実施の記載した態様の様々な改変が化学、薬学、分子生物学または関連分野の当業者に明らかであり、これらは添付の請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0214】
【図1−A】図1Aはhu1の軽鎖可変部のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【図1−B】図1Bはhu1の軽鎖可変部の核酸配列を示す(配列番号2)。
【図2−A】図2Aはhu1の重鎖可変部のアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【図2−B】図2Bはhu1の重鎖可変部の核酸配列(配列番号4)を示す。
【図3−A】図3AはA10Kの軽鎖可変部のアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
【図3−B】図3BはA10Kの軽鎖可変部の核酸配列(配列番号6)を示す。
【図4−A】図4AはA10Kの重鎖可変部のアミノ酸配列(配列番号7)を示す。
【図4−B】図4BはA10Kの重鎖可変部の核酸配列(配列番号8)を示す。
【図5−A】図5AはCDRが分散している完全なヒト軽鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列を示す。4つのフレームワーク小領域を以下のように表示する:FRL1 (配列番号57)、FRL2 (配列番号58)、FRL3 (配列番号59)、およびFRL4 (配列番号60)。
【図5−B】図5BはCDRが分散している完全なヒト軽鎖フレームワーク領域の核酸配列を示す。4つのフレームワーク小領域を以下のように表示する:FRL1 (配列番号61)、FRL2 (配列番号62)、FRL3 (配列番号63)、およびFRL4 (配列番号64)。
【図6−A】図6AはCDRが分散している完全なヒト重鎖フレームワーク領域のアミノ酸配列を示す。4つのフレームワーク小領域を以下のように表示する:FRH1 (配列番号65)、FRH2 (配列番号66)、FRH3 (配列番号67)、およびFRH4 (配列番号68)。
【図6−B】図6BはCDRが分散している完全なヒト 重鎖 フレームワーク領域の核酸配列を示す。4つのフレームワーク小領域を以下のように表示する: FRH1 (配列番号69)、FRH2 (配列番号70)、FRH3 (配列番号71)、およびFRH4 (配列番号72)。
【図7】図7は実施例1に記載のELISAの結果を示す。
【図8】図8は実施例2に記載のL929細胞保護アッセイの結果を示す。
【図9】図9は実施例2に記載のL929細胞保護アッセイの結果を示す。
【図10】図10は実施例2に記載のL929細胞保護アッセイの結果を示す。
【図11】図11は実施例3に記載のインビボ TNF-α 中和アッセイの結果を示す。
【図12】図12は実施例3に記載のように、マウスにおけるTNF-α媒介多発性関節炎の進行の低減におけるTNF-α結合分子の効果を示す。
【図13】図13は表示した様々な領域およびセクションを有するIgG 分子の模式図を示す。2つの可変部軽鎖の1つおよび2つの可変部重鎖の1つのCDRおよびフレームワーク領域(FR)も表示する。
【図14】図14は実施例1記載のFab 断片の構築に用いたヒトCL 配列およびヒトCH1 配列の核酸配列を示す。
【図15】図15はAME 3-2の完全な軽鎖および重鎖アミノ酸配列を示し、CDRは太字で示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNF-α結合分子、またはTNF-α結合分子をコードする核酸配列を含む組成物、ここで該TNF-α結合分子は;
i) 配列番号33を含むCDRL3 配列、および
ii) 配列番号53を含むCDRH3、
を含む。
【請求項2】
該TNF-α結合分子がさらに、
iii) 配列番号15を含むCDRL1 配列、および、
iv) 配列番号25を含むCDRL2 配列、
を含む請求項1の組成物。
【請求項3】
該TNF-α結合分子がさらに、
v) 配列番号37を含むCDRH1 配列、および、
vi) 配列番号45を含むCDRH2 配列、
を含む請求項2の組成物。
【請求項4】
該TNF-α結合分子がさらに、
v) 配列番号39を含むCDRH1 配列、および、
vi) 配列番号45を含むCDRH2 配列、
を含む請求項2の組成物。
【請求項5】
該TNF-α結合分子がさらに
iii) 配列番号13を含むCDRL1 配列、および、
iv) 配列番号27を含むCDRL2 配列、
を含む請求項1の組成物。
【請求項6】
該TNF-α結合分子がさらに、
v) 配列番号37を含むCDRH1 配列、および、
vi) 配列番号55を含むCDRH2 配列、
を含む請求項5の組成物。
【請求項7】
該TNF-α結合分子がさらに軽鎖可変部を含み、該軽鎖可変部がヒト生殖系列フレームワーク領域を含む請求項1の組成物。
【請求項8】
該TNF-α結合分子がさらに重鎖可変部を含み、該重鎖可変部がヒト生殖系列フレームワーク領域を含む請求項1の組成物。
【請求項9】
TNF-α結合分子、またはTNF-α結合分子をコードする核酸配列を含む組成物であって、該TNF-α結合分子がインビトロ、細胞ベースアッセイでEC50、2.0 x 10-11以下にてヒトTNF-α 細胞毒性を中和する組成物。
【請求項10】
該TNF-α結合分子のヒトTNF-αに対する結合親和性 (Kd)が 7.5 x 10-12 M以下である請求項9の組成物。
【請求項11】
該TNF-α結合分子のヒトTNF-αに対する結合速度 (kon)が3.0 x 106 M-1 s-1以上である請求項9の組成物。
【請求項12】
該TNF-α結合分子のヒトTNF-αに対する解離速度 (koff)が1.0 x 10-4 s-1以下である請求項9の組成物。
【請求項13】
該TNF-α結合分子が軽鎖可変部を含み、該軽鎖可変部がヒト生殖系列フレームワーク領域を含む請求項9の組成物。
【請求項14】
該TNF-α結合分子が重鎖可変部を含み、該重鎖可変部がヒト生殖系列フレームワーク領域を含む請求項9の組成物。
【請求項15】
以下の工程を含むTNF-α 媒介疾患の治療方法;
a)以下のi)およびii)を提供する工程;
i)対象、
ii)組成物、ここで該組成物はインビトロ、細胞ベースアッセイでEC50、2.0 x 10-11以下にてヒトTNF-α 細胞毒性を中和するTNF-α結合分子を含む;そして、
b)該組成物を該対象に投与する工程。
【請求項16】
該TNF-α 媒介疾患が敗血症、自己免疫疾患、および関節リウマチから選択される請求項15の方法。
【請求項17】
該TNF-α結合分子のヒトTNF-αに対する結合親和性 (Kd) が7.5 x 10-12 M以下である請求項15の方法。
【請求項18】
該TNF-α結合分子のヒトTNF-αに対する結合速度 (kon)が3.0 x 106 M-1 s-1以上である請求項15の方法。
【請求項19】
該TNF-α結合分子のヒトTNF-αに対する解離速度 (koff)が1.0 x 10-4 s-1以下である請求項15の方法。
【請求項20】
該TNF-α結合分子が軽鎖可変部を含み、該軽鎖可変部がヒト生殖系列フレームワーク領域を含む請求項15の方法。
【請求項21】
該TNF-α結合分子が重鎖可変部を含み、該重鎖可変部がヒト生殖系列フレームワーク領域を含む請求項15の方法。
【請求項22】
TNF-α結合分子、またはTNF-α結合分子をコードする核酸配列を含む組成物であり、該TNF-α結合分子が少なくとも1つの以下のCDR 配列を含む組成物;
i) 配列番号93を含むCDRL1 配列;
ii) 配列番号95を含むCDRL2 配列;
iii) 配列番号97を含むCDRL3 配列;
iv) 配列番号87を含むCDRH1 配列;
v) 配列番号89を含むCDRH2 配列、および、
vi) 配列番号91を含むCDRH3 配列。
【請求項23】
該TNF-α結合分子が該CDR配列の少なくとも3つを含む請求項22の組成物。
【請求項24】
該TNF-α結合分子が該CDR 配列の6つのすべてを含む請求項22の組成物。

【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−525409(P2007−525409A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500817(P2006−500817)
【出願日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/000290
【国際公開番号】WO2004/063335
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(501061858)アプライド モレキュラー エボリューション,インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Applied Molecular Evolution,Inc.
【Fターム(参考)】