説明

TNFR−Ig融合タンパク質の製法

細胞培養、特に(i)約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量、(ii)約2未満の累積アスパラギンに対するモル累積グルタミン比、(iii)約0.2未満の総累積アミノ酸に対するモル累積グルタミン比、(iv)約0.4〜1の総累積アミノ酸に対するモル累積無機イオン比、(v)約16mMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量の1つまたはそれ以上により特徴付けられるタンパク質および/またはポリペプチドの大規模生産の改善システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、仮特許出願第60/605,097、60/604,941および60/605,074号(それぞれ、2004年8月27日に出願し、これらは出典明示により本明細書に組み入れる)の優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
タンパク質およびポリペプチドは、治療剤としてますます重要になっている。大抵の場合、治療タンパク質およびポリペプチドは、目的の特定のタンパク質またはポリペプチドを非常に高レベルで産生するように設計および/または選択された細胞から、細胞培養にて生産される。細胞培養条件の制御および最適化は、タンパク質およびポリペプチドの商業生産の成功にとって非常に重要である。
【0003】
細胞培養にて生産される多くのタンパク質およびポリペプチドは、細胞を一定期間培養し、ついで、培養を終え、産生されたタンパク質またはポリペプチドを単離する、バッチまたはフェドバッチ(fed-batch)法で生産される。生産されたタンパク質またはポリペプチドの最終的な量と質は、細胞培養の条件に非常に影響を受ける。例えば、慣用的なバッチおよびフェドバッチ培養法は、しばしば、細胞成長、生存率および生産または目的のタンパク質またはポリペプチドの安定性に不利益をもたらす代謝廃棄物の産生を引き起こす。バッチおよびフェドバッチ培養法におけるタンパク質またはポリペプチドの生産を改善する努力がなされているが、さらなる改善がいまだ必要である。
【0004】
加えて、細胞、特に哺乳動物細胞の培養において用いるための合成培地(すなわち、公知の個々の成分からなり、血清および他の動物由来成分を含まない培地)の改善のために多大な努力がなされてきた。合成培地において、細胞成長特性は血清由来の培地と比較して非常に異なる。合成培地における細胞培養によるタンパク質またはポリペプチドの生産の改善されたシステムを発達させる特定のニーズがある。
【0005】
発明の概要
本発明は、細胞培養におけるタンパク質および/またはポリペプチドの大規模生産のための改善されたシステムを提供する。例えば、本発明は、1つまたはそれ以上の:i)約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量;ii)約2未満の累積アスパラギンに対するモル累積グルタミン比;iii)約0.2未満の総累積アミノ酸に対するモル累積グルタミン比;iv)約0.4〜1の総累積アミノ酸に対するモル累積無機イオン比;またはv)約16mMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギン濃度を合わせた累積量により特徴付けられる培地を利用する、商業規模の(例えば、500L以上)培養法を提供する。当業者は、上で用いられる「累積」が、培養開始時に加えられた成分およびその後加えられた成分を含む、細胞培養の過程において加えられた特定の成分(複数でも可)の総量を意味することは理解できるだろう。本発明のある種の好ましい具体例において、培養物の「フィード」を最小限にすることが望ましく、したがって、初期に存在する量を最大限にすることが望ましい。もちろん、培地成分は培養中に代謝され、同じ累積量の所定の成分の培養物は、それらの成分が異なる時間に加えられた場合には(例えば、すべて初期に存在することに対して、いくつかはフィードにより加える)、異なる絶対値を有するだろう。
【0006】
本発明により、かかる培地の使用により高レベルのタンパク質生産およびアンモニウムおよび/または乳酸塩のようなある種の望ましくない因子の蓄積を減少させることが可能となる。
【0007】
当業者は、本発明の培地が合成および非合成培地の両方を含むことは理解できるだろう。本発明のある種の好ましい具体例において、培養培地は、培地の組成が公知であり、コントロールされた合成培地である。
【0008】
本発明のある種の好ましい具体例において、培養法は、培養物を第1の培養条件から第2の培養条件に変更して、細胞の代謝シフトを行うことを含む。いくつかの具体例において、この変更は、培養が、最大限の細胞密度の約20〜80%に達した場合に行われる。いくつかの具体例において、この変更は、培養を維持する場合の温度(または温度範囲)を含む。別に、または加えて、本発明は、培養物における乳酸塩および/またはアンモニウムレベルを、ピークに達した後、時間と共に減少させるように調節した方法を提供する。他の具体例において、シフトは、pH、オスモル濃度または化学誘導剤レベル、例えばアルカン酸またはその誘導体をシフトさせることを含む。
【0009】
本発明の細胞培養は、ホルモンおよび/または他の成長因子、特にイオン(例えば、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(一般的に非常に低い最終濃度で存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質または他のエネルギー源を含む、栄養物および/または他の培地成分を補足していてもよい。本発明のある種の具体例において、化学誘導剤、例えばヘキサメチレン−ビス(アセトアミド)(「HMBA」)および酢酸ナトリウム(「NaB」)を培地に補足することは有益であり得る。これらの任意のサプリメントは、培養の開始時に加えてもよく、あるいは、消費した栄養分の補給または他の理由により後から加えてもよい。一般的には、本発明に従って、補給を最小限にするように、初期培地組成を選択することが望ましい。
【0010】
pH、細胞密度、細胞生存率、乳酸レベル、アンモニウムレベル、オスモル濃度または発現ポリペプチドまたはタンパク質の力価を含む、種々の培養条件は、本発明に従ってモニターしてもよい。
【0011】
図面の簡単な説明
図1は、抗GDF−8細胞を用いる振盪フラスコでの培地1および培地2の比較を示す。
図2は、培地1での、抗GDF−8細胞の細胞成長および生存率を示す。
図3は、対照および非グルタミンフィード培養条件での、抗GDF−8細胞培養物の細胞成長を示す。
図4は、対照および非グルタミンフィード培養条件での、抗GDF−8細胞培養物の細胞生存率を示す。
図5は、対照および非グルタミンフィード培養条件での、抗GDF−8細胞培養物のアンモニウムレベルを示す。
図6は、対照および非グルタミンフィード培養条件での、抗GDF−8細胞培養物の乳酸レベルを示す。
図7は、対照および非グルタミンフィード培養条件での、抗GDF−8力価を示す。
図8は、対照およびグルタミン不足フィード培養条件での、抗GDF−8細胞培養物の細胞密度を示す。
図9は、対照およびグルタミン不足フィード培養条件での、抗GDF−8細胞培養物の細胞生存率を示す。
図10は、対照およびグルタミン不足培養条件での、抗GDF−8細胞培養物のアンモニウムレベルを示す。
図11は、対照およびグルタミン不足培養条件での、抗GDF−8細胞培養物の乳酸レベルを示す。
図12は、対照およびグルタミン不足培養条件での抗GDF−8力価を示す。
図13は、培地1および培地2での、抗GDF−8細胞の鉄投与応答を示す。
図14は、グルタミン酸塩およびグルタミンフェド培養物の細胞密度を示す。
図15は、グルタミン酸塩およびグルタミンフェド培養物の細胞生存率を示す。
図16は、グルタミン酸塩およびグルタミンフェド培養物の抗ルイスY力価を示す。
図17は、グルタミン酸塩およびグルタミンフェド培養物における乳酸レベルを示す。
図18は、グルタミン酸塩およびグルタミンフェド培養物におけるアンモニウムレベルを示す。
図19は、グルタミン酸塩およびグルタミンフェド培養物のオスモル濃度を示す。
図20は、抗ルイスY細胞の細胞密度を示す。個々のプロットは、同じ条件を用いた2回の振盪フラスコ成長の平均値である。
図21は、抗ルイスY細胞の細胞生存率を示す。個々のプロットは、同じ条件を用いた2回の振盪フラスコ成長の平均値である。
図22は、抗ルイスY培養の平均力価を示す。個々のプロットは、同じ条件を用いた2回の振盪フラスコ成長の平均値である。
図23は、抗ルイスY細胞のアンモニウムレベルを示す。個々のプロットは、同じ条件を用いた2回の振盪フラスコ成長の平均値である。
図24は、フェドバッチ培養に用いたインペラー・ジャンプを示す。
図25は、種々の実験条件下での、抗GDF−8細胞の細胞成長を示す。
図26は、種々の実験条件下での、抗GDF−8細胞の生存率を示す。
図27は、種々の実験条件下での、抗GDF−8力価を示す。
図28は、種々の実験条件下での、抗GDF−8培養物の乳酸レベルを示す。
図29は、種々の実験条件下での、抗GDF−8培養物のアンモニウムレベルを示す。
図30は、種々の実験条件下での、抗GDF−8細胞の細胞成長を示す。
図31は、種々の実験条件下での、抗GDF−8力価を示す。
図32は、種々の実験条件下での、抗GDF−8培養物の乳酸レベルを示す。
図33は、種々の実験条件下での、抗GDF−8培養物のアンモニウムレベルを示す。
図34は、種々のレベルのグルタミンおよびアスパラギンを含有する修飾培地9での、抗GDF−8細胞の細胞成長を示す。
図35は、種々のレベルのグルタミンおよびアスパラギンを含有する修飾培地9での、抗GDF−8細胞の細胞生存率を示す。
図36は、種々のレベルのグルタミンおよびアスパラギンを含有する修飾培地9での、抗GDF−8培養物の乳酸レベルを示す。
図37は、種々のレベルのグルタミンおよびアスパラギンを含有する修飾培地9での、抗GDF−8培養物のアンモニウムレベルを示す。
図38は、種々のレベルのグルタミンおよびアスパラギンを含有する修飾培地9での、抗GDF−8培養物のグルタミンレベルを示す。
図39は、種々のレベルのグルタミンおよびアスパラギンを含有する修飾培地9での抗GDF−8力価を示す。
図40は、種々のレベルのグルタミンおよびアスパラギンを含有する修飾培地9での、抗GDF−8培養物のオスモル濃度を示す。
図41は、種々のレベルのアスパラギンおよびシステインを含有する培地での、抗GDF−8細胞の細胞成長を示す。
図42は、種々のレベルのアスパラギンおよびシステインを含有する培地での、抗GDF−8培養物の乳酸レベルを示す。
図43は、種々のレベルのアスパラギンおよびシステインを含有する培地での、抗GDF−8培養物のアンモニウムレベルを示す。
図44は、種々のレベルのアスパラギンおよびシステインを含有する培地での、抗GDF−8培養物のグルタミンレベルを示す。
図45は、種々のレベルのアスパラギンおよびシステインを含有する培地での、抗GDF−8培養物のグルタミン酸レベルを示す。
図46は、種々のレベルのアスパラギンおよびシステインを含有する培地での、抗GDF−8力価を示す。
図47は、種々のレベルのアスパラギンおよびシステインを含有する培地での、抗GDF−8培養物オスモル濃度を示す。
図48は、種々のレベルのアミノ酸およびビタミンを含有する培地での、抗GDF−8細胞の細胞成長を示す。
図49は、種々のレベルのアミノ酸およびビタミンを含有する培地での、抗GDF−8培養物の乳酸レベルを示す。
図50は、種々のレベルのアミノ酸およびビタミンを含有する培地での、抗GDF−8培養物のアンモニウムレベルを示す。
図51は、種々のレベルのアミノ酸およびビタミンを含有する培地での、抗GDF−8培養物のグルタミンレベルを示す。
図52は、種々のレベルのアミノ酸およびビタミンを含有する培地での、抗GDF−8力価を示す。
図53は、種々のレベルのビタミン、微量元素Eおよび鉄を含有する培地での、抗GDF−8細胞の細胞成長を示す。
図54は、種々のレベルのビタミン、微量元素Eおよび鉄を含有する培地での、抗GDF−8培養物の乳酸レベルを示す。
図55は、種々のレベルのビタミン、微量元素Eおよび鉄を含有する培地での、抗GDF−8培養物のアンモニウムレベルを示す。
図56は、種々のレベルのビタミン、微量元素Eおよび鉄を含有する培地での、抗GDF−8力価を示す。
図57は、培地1、3および9での、抗GDF−8細胞の細胞成長を示す。
図58は、培地1、3および9での、抗GDF−8力価を示す。
図59は、種々のレベルのグルタミン単独およびグルタミンおよびアスパラギンの組合せに関する、推定抗GDF−8力価を示す。
図60は、試験した種々の培地条件下での、抗Aベータ細胞の細胞成長を示す。
図61は、試験した種々の培地条件下での、抗Aベータ細胞の細胞生存率を示す。
図62は、試験した種々の培地条件での、抗Aベータ培養物の乳酸レベルを示す。
図63は、試験した種々の培地条件での、抗Aベータ培養物のアンモニウムレベルを示す。
図64は、試験した種々の培地条件での、抗Aベータ力価を示す。
図65は、試験した種々の培地条件での、抗Aベータ培養物のオスモル濃度を示す。
図66は、種々の実験条件下での、細胞発現TNFR−Igの細胞成長を示す。
図67は、種々の実験条件下での、細胞発現TNFR−Igの生存率を示す。
図68は、種々の実験条件下での、細胞発現TNFR−Igの培養の残存グルコースをを示す。
図69は、種々の実験条件下での、細胞発現TNFR−Igの培養のグルタミンレベルを示す。
図70は、種々の実験条件下での、細胞発現TNFR−Igの培養の乳酸濃度を示す。
図71は、種々の実験条件下での、細胞発現TNFR−Igの培養での、アンモニウムレベルを示す。
図72は、種々の実験条件下での、TNFR−Ig相対力価を示す。
図73は、6000Lおよび1Lバイオリアクターで成長させた抗GDF−8細胞の細胞密度を示す。
図74は、6000Lおよび1Lバイオリアクターで成長させた抗GDF−8細胞の力価を示す。
図75は、6000Lおよび1Lバイオリアクターで成長させた抗GDF−8細胞の乳酸レベルを示す。
図76は、6000Lおよび1Lバイオリアクターで成長させた抗GDF−8細胞のアンモニウムレベルを示す。
【0012】
定義
「約」:本明細書で用いられる場合、「約」なる用語は、1またはそれ以上の特定の細胞培養条件に適するように、その培養条件に関する規定の基準値と同様である数値の範囲を意味する。ある種の具体例において、「約」なる用語は、その培養条件に関する規定の基準値の25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1パーセント以下の範囲の値を意味する。
【0013】
「アミノ酸」:本明細書で用いられる場合、「アミノ酸」なる用語は、ポリペプチドの形成に通常用いられる20種の天然のアミノ酸、またはそれらのアミノ酸単独もしくは誘導体を意味する。本発明のアミノ酸は、培地において細胞培養物に与えられる。培地に与えられるアミノ酸は、塩または水和物の形態として提供してもよい。
【0014】
「抗体」:本明細書で用いられる場合、「抗体」なる用語は、抗原と特異的に結合(免疫反応)する1つまたはそれ以上の抗原結合部位を含む、免疫グロブリン分子または免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えばFabまたはF(ab’)フラグメントを意味する。本明細書で用いられる場合、「モノクローナル抗体」および「モノクローナル抗体組成」なる用語は、抗原の特定のエピトープと免疫反応が可能なただ1種の抗原結合部位を含有する抗体分子のクローン群を意味し、一方、「ポリクローナル抗体」および「ポリクローナル組成」は、抗原の特定の抗原と相互作用が可能な多種の抗原結合部位を含有する、抗体分子のクローン群を意味する。モノクローナル抗体の定義は、慣用的な技術により誘導されたクローン分子ならびに特定の残基を操作または変異させて誘導した合成配列の分子、例えばヒト化抗体を含む。
【0015】
「バッチ培養」:本明細書で用いられる場合、「バッチ培養」なる用語は、培地(下記の「培地」の定義を参照)ならびに細胞自体を含む、最終的に細胞の培養に用いるすべての成分を、培養工程の始めに与える細胞の培養方法を意味する。バッチ培養は、典型的には、ある時点で停止し、培地の細胞および/または成分を回収し、精製してもよい。
【0016】
「バイオリアクター」:本明細書で用いられる場合、「バイオリアクター」なる用語は、哺乳動物細胞培養物の成長に用いられる容器を意味する。バイオリアクターは、哺乳動物細胞の培養に利用する限り、いずれの大きさであってもよい。典型的には、バイオリアクターは少なくとも1リットルであり、10、100、250、500、1000、2500、5000、8000、10,000、12,000リットルまたはそれ以上、あるいはその間のいずれの体積であってもよい。限定するものではないがpHおよび温度を含むバイオリアクターの初期条件は、典型的には、培養期間中にコントロールすることができる。バイオリアクターは、本発明の培養条件下で培地中に懸濁させた哺乳動物細胞培養物を保持するのに適した、ガラス、プラスチックまたは金属を含むいずれもの物質から構成されていてもよい。本明細書で用いられる場合、「生産用バイオリアクター」なる用語は、目的のポリペプチドまたはタンパク質の生産に用いる最終的なバイオリアクターを意味する。大規模細胞培養生産用バイオリアクターの体積は、典型的には、少なくとも500リットルであり、1000、2500、5000、8000、10,000、12,0000リットルまたはそれ以上、あるいはその間のいずれの体積であってもよい。当業者は、本発明の実施に用いるのに適したバイオリアクターを選択することができるだろう。
【0017】
「細胞密度」:本明細書で用いられる場合、「細胞密度」なる用語は、培地の所定の体積中に存在する細胞の数を意味する。
「細胞生存率」:本明細書で用いられる場合、「細胞生存率」なる用語は、所定の培養条件または実験条件下で、培養物中の細胞が生存する能力を意味する。また、本明細書で用いられる場合、該用語は、ある時点の培養物中のすべての生存および死亡細胞の合計数に対する、その時点で生存している細胞の割合を意味する。
【0018】
「培養物」、「細胞培養物」および「哺乳動物細胞培養物」:本明細書で用いられる場合、これらの用語は、細胞群の生存および/または成長に適した条件下で培地(下記の「培地」の定義を参照)に懸濁した哺乳動物細胞群を意味する。当業者には明らかなように、本明細書で用いられる場合、これらの用語は、哺乳動物細胞群および群を懸濁させる培地を含む組合せも意味する。
【0019】
「フェドバッチ培養」:本明細書で用いられる場合、「フェドバッチ培養」なる用語は、付加的な成分を、培養工程開始後のある時点で培養物に与える細胞の培養方法を意味する。典型的には、与えられる成分は、培養工程中に消費される細胞用の栄養補給剤を含む。典型的には、フェドバッチ培養を、ある時点で停止して、培地中の細胞および/または成分を回収し、精製してもよい。
【0020】
「フラグメント」:本明細書で用いられる場合、「フラグメント」なる用語は、ポリペプチドを意味し、そのポリペプチドに独自のまたはそれを特徴付ける所定のポリペプチドの分離部分として定義される。また、本明細書で用いられる場合、該用語は、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも一部を保持した所定のポリペプチドの分離部分を意味する。好ましくは、保持される活性の一部とは、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも10%である。より好ましくは、保持される活性の一部とは、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%である。さらにより好ましくは、保持される活性の一部とは、完全長ポリペプチドの活性の少なくとも95%、96%、97%、98%または99%である。最も好ましくは、保持される活性の一部とは、完全長ポリペプチドの活性の100%である。また、本明細書で用いられる場合、この用語は、完全長ポリペプチドに見られる少なくとも既存の配列エレメントを含む所定のポリペプチドの部分も意味する。好ましくは、配列エレメントは、完全長ポリペプチドの、少なくとも4〜5個、より好ましくは、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50またはそれ以上のアミノ酸に及ぶ。
【0021】
「遺伝子」:本明細書で用いられる場合、「遺伝子」なる用語は、細胞代謝または細胞発達のある態様において機能する、ヌクレオチド配列、DNAまたはRNA、少なくとも、分離最終産物、典型的には、限定するものではないが、ポリペプチドをコードするその部分を意味する。該用語は、単にポリペプチドまたは他の分離最終産物をコードするコーディング配列を意味するだけでなく、発現の基礎レベルを調節するコーディング配列(下記の「遺伝子制御因子」の定義を参照)の前後、ならびに、介在配列(「イントロン」)と個々のコーディングセグメント(「エクソン」)の間の領域を含みうる。
【0022】
「遺伝子制御因子」:本明細書で用いられる場合、「遺伝子制御因子」なる用語は、操作的に結合して、遺伝子発現を調節するいずれもの配列エレメントを意味する。遺伝子制御因子は、発現レベルを増加または減少させることにより機能し、コーディング配列の前、内または後に位置することができる。遺伝子制御因子は、例えば、転写の開始、伸長または終結、細胞内でのmRNAスプライシング、mRNA編集、mRNA復元、mRNAの局在化、翻訳の開始、伸長または終結、あるいは遺伝子発現の他のいずれもの段階を調節することにより、遺伝子発現のいずれもの段階で作用しうる。遺伝子制御因子は、個別に、または他と組み合わせて機能しうる。
【0023】
「ハイブリドーマ」:本明細書で用いられる場合、「ハイブリドーマ」なる用語は、免疫学的供給源および抗体産生細胞由来の不死化細胞の融合により得られる細胞を意味する。得られたハイブリドーマは、抗体を産生する不死化細胞である。ハイブリドーマの作成に用いられる個々の細胞は、限定するものではないが、ラット、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびヒトを含むいずれもの哺乳動物源から得ることができる。また、この用語は、ヒト細胞およびマウス骨髄腫細胞株間の融合の産物であるヘテロハイブリッド骨髄腫融合の子孫が、形質細胞と融合した場合に生じる、トリオーマ細胞株を含む。さらに、該用語は、抗体を産生する不死化ハイブリッド細胞株、例えばグアドローマ(例えば、Milstein et al., Nature, 537:3053 (1983)を参照)を含む。
【0024】
「合成生存細胞密度」:本明細書で用いられる場合、「合成生存細胞密度」なる用語は、培養中の生存細胞の平均密度に、培養を行っている時間を乗じたものを意味する。生産されたポリペプチドおよび/またはタンパク質の量が、培養中に存在する生存細胞の数に比例すると過程すると、合成生存細胞密度は、培養中に生産されたポリペプチドおよび/またはタンパク質の量を推測するためのツールとして有用である。
【0025】
「培地」、「細胞培養培地」、「培養培地」:本明細書で用いられる場合、これらの用語は、成長する哺乳動物細胞に栄養分を与える、栄養分を含有する溶液を意味する。典型的には、これらの溶液は、細胞が最小限の成長および/または生存するのに必要な必須および非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質および微量元素を提供する。また、溶液は、最小限の割合以上に、成長および/または生存率を増強するホルモンおよび成長因子を含む、成分を含有していてもよい。好ましくは、溶液は、細胞の生存および増殖に最適なpHおよび塩濃度で調製される。また、培地は、「合成培地」−タンパク質、加水分解物または未知の組成の成分を含有しない、血清不含培地であってもよい。合成培地は動物由来の成分を含まず、すべての成分が公知の化学構造を有する。
【0026】
「代謝廃棄物」:本明細書で用いられる場合、「代謝廃棄物」なる用語は、細胞培養物に何らかの害を、特に所望の組み換えポリペプチドまたはタンパク質の発現または活性に関連する害を及ぼす、正常または異常代謝過程の結果物としての、細胞培養により産生される化合物を意味する。例えば、代謝廃棄物は、細胞培養物の成長または生存率に害を与え、産生される組み換えポリペプチドまたはタンパク質の量を減少させ、発現ポリペプチドまたはタンパク質の折り畳み、安定性、グリコシル化または他の翻訳後修飾を改変し、あるいは、他の多くの点で、細胞および/または組み換えポリペプチドまたはタンパク質の発現または活性に悪影響を及ぼしうる。代表的な代謝廃棄物は、グルコース代謝の結果として産生される乳酸塩およびグルタミン代謝の結果として産生されるアンモニウムが挙げられる。本発明は、哺乳動物細胞培養における代謝廃棄物の産生を遅らせ、これを減少させ、またはさらに除去することを目的とする。
【0027】
「オスモル濃度」および「重量オスモル濃度」:「重量オスモル濃度」は、水溶液に溶解した溶質粒子の浸透圧の尺度である。溶質粒子は、イオンおよび非イオン性分子を含む。重量オスモル濃度は、1kgの溶液に溶解している浸透活性粒子の濃度(例えば、オスモル)として表される(38℃で、1mOsm/kgのHOは、19mmHgの浸透圧と等価である)。これに対して、「オスモル濃度」は、1リットルの溶液に溶解した溶質粒子の数を意味する。本明細書で用いられる場合、略号「mOsm」は、「ミリオスモル/kg溶液」を意味する。
【0028】
「潅流培養」:本明細書で用いられる場合、「潅流培養」なる用語は、培養工程の開始後、培養物に持続的または半持続的に付加的な成分を供給する、細胞の培養方法を意味する。典型的には、供給される成分は、培養工程中に消費される細胞用の栄養補給剤を含む。典型的には、培地中の細胞および/または成分を継続的または半継続的に回収し、精製してもよい。
【0029】
「ポリペプチド」:本明細書で用いられる場合、「ポリペプチド」なる用語は、ペプチド結合を介して一緒に連結したアミノ酸の連続鎖を意味する。該用語は、いずれもの長さのアミノ酸鎖を表すのに用いられるが、当業者は、該用語が、非常に長い鎖に限定されるものではなく、ペプチド結合を介して一緒に結合した2つのアミノ酸を含む、最小限の鎖も意味することは理解できるだろう。
【0030】
「タンパク質」:本明細書で用いられる場合、「タンパク質」なる用語は、別個のユニットとして機能する1個またはそれ以上のポリペプチドを意味する。単一のポリペプチドが別個の機能性ユニットであり、別個の機能性ユニットを形成するのに他のポリペプチドと恒久的な物理結合を必要とする場合、本明細書で用いられる場合、該「ポリペプチド」および「タンパク質」なる用語は、ほとんど同じ意味で用いられる。別個の機能性ユニットが、他と物理的に結合した1個以上のポリペプチドからなる場合、本明細書で用いられる場合、「タンパク質」なる用語は、物理的に結合し、別個のユニットとして一緒に機能する複数のポリペプチドを意味する。
【0031】
「組み換え発現ポリペプチド」および「組み換えポリペプチド」:本明細書で用いられる場合、これらの用語は、そのポリペプチドを発現するように遺伝子学的に設計された哺乳動物ホスト細胞から発現するポリペプチドを意味する。組み換え発現ポリペプチドは、哺乳動物ホスト細胞において正常に発現されたポリペプチドと一致するか、または同一でありうる。また、組み換え発現ポリペプチドは、ホスト細胞と異なっていてもよく、すなわち、哺乳動物ホスト細胞において正常に発現されるペプチドと異種のものであってもよい。別として、組み換え発現ポリペプチドは、ポリペプチドの一部が、哺乳動物ホスト細胞において正常に発現されるポリペプチドと一致するか、または同一である、アミノ酸配列を含有するが、他の部分がホスト細胞とは異なっているという点でキメラ性であってもよい。
【0032】
「播種」:本明細書で用いられる場合、「播種」なる用語は、バイオリアクターまたは他の容器に細胞培養物を提供する工程を意味する。細胞は、他のバイオリアクターまたは容器で前もって増殖させていてもよい。別として、細胞は冷凍され、バイオリアクターまたは容器に提供する直前に解凍してもよい。該用語は、単細胞を含む多数の細胞を意味する。
【0033】
「力価」:本明細書で用いられる場合、「力価」なる用語は、所定体積の培地により分割した哺乳動物細胞培養物により産生された、組み換え発現ポリペプチドまたはタンパク質の総量を意味する。典型的には、力価は、培地1ミリリットルあたりのポリペプチドまたはタンパク質を単位として表す。
【0034】
ある種の好ましい具体例の詳細な記載
本発明は、細胞培養によるタンパク質および/またはポリペプチドの製造に関する改善されたシステムを提供する。特に、本発明は、細胞成長、生存率および/またはタンパク質産生または質に有害である1つまたはそれ以上の代謝産物の産生を最小限にするシステムを提供する。本発明の好ましい具体例において、細胞培養は、バッチまたはフェドバッチ培養である。本発明の他のある種の好ましい具体例は、以下に詳細に記載する。しかしながら、当業者は、これらの好ましい具体例の種々の改良されたものが本発明の範囲に含まれることは理解できるだろう。本発明の請求の範囲は、具体例の記載に限定されるものではない。
【0035】
ポリペプチド
ホスト細胞において発現可能なポリペプチドは、本発明の方法に従って生産することができる。ポリペプチドは、ホスト細胞の内部の遺伝子から、または遺伝子操作によりホスト細胞に導入された遺伝子から発現することができる。ポリペプチドは、天然のものであってもよく、あるいは、人により設計されるか、または選択された配列を有するものであってもよい。人工ポリペプチドは、天然に生じる別個の他のポリペプチドセグメントから構成されていてもよく、あるいは、天然に存在しない1つまたはそれ以上のセグメントを含んでいてもよい。
本発明に従って望ましく発現されうるポリペプチドは、目的の生物学的または化学的活性に基づいて選択されるだろう。例えば、本発明は、医薬的または商業的関連がある酵素、受容体、抗体、ホルモン、調節因子、抗原、結合剤等を発現するのに用いることができる。
【0036】
抗体
現在、医薬品または他の市販の薬剤、抗体の製品として使用され、研究されている多くの所定の抗体が、本発明における特定の目的の抗体である。抗体は、特定の抗原に特異的に結合する能力を有するタンパク質である。ホスト細胞において発現することができるいずれもの抗体を、本発明に従って用いることができる。好ましい具体例において、発現される抗体は、モノクローナル抗体である。
【0037】
他の好ましい具体例において、モノクローナル抗体は、キメラ抗体である。キメラ抗体は、1つ以上の有機体から誘導されるアミノ酸フラグメントを含有する。キメラ抗体分子は、例えば、マウス、ラットまたは他の種の抗体から由来の抗原結合ドメインを、ヒト定常領域と一緒に含みうる。種々のキメラ抗体の製造方法が、例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 6851 (1985);Takeda et al., Nature 314, 452 (1985), Cabilly et al., 米国特許第4,816,567号;Boss et al., 米国特許第4,816,397号;Tanaguchi et al., 欧州特許公開EP171496;欧州特許公開EP0173494、英国特許GB2177096Bに記載されている。
【0038】
他の好ましい具体例において、モノクローナル抗体は、例えば、リボソームディスプレイ(ribosome-display)またはファージディスプレイ(phage-display)法の使用(例えば、Winter et al., 米国特許第6,291,159号およびKawasaki,米国特許第5,658,754号を参照)により、あるいは、天然抗体遺伝子が不活性化されており、機能的にヒト抗体遺伝子で置き換えられているが、天然の免疫系の他の構成要素は損なわれていない、異種移植(xenographic species)種の使用(例えば、Kucherlapati et al.,米国特許第6,657,103号を参照)により誘導されるヒト抗体である。
【0039】
他の好ましい具体例において、モノクローナル抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体は、大多数のアミノ酸残基がヒト抗体由来であり、ヒト対照にデリバリーした場合、免疫反応の可能性を最小限にするキメラ抗体である。ヒト化抗体において、相補性決定領域におけるアミノ酸残基は、少なくとも一部で、所望の抗原特異性またはアフィニティを与える非ヒト種由来の残基に置き換わっている。かかる改変免疫グロブリン分子は、当該分野で公知のいくつかの手法により製造することができ(例えば、Teng et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80, 7308-7312 (1983);Kozbor et al., Immunology Today, 4, 7279 (1983);Olsson et al., Meth. Enzymol., 92, 3-16 (1982))、好ましくは、PCT公開WO92/06193またはEP0239400(出典明示により本明細書に組み入れる)に記載の方法により製造することができる。ヒト化抗体は、例えば、Scotgen Limited, 2 Holly Road, Twickenham, Middlesex, Great Britainにより市販されている。さらなる引用文献に関しては、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)(すべて出典明示により本明細書に組み入れる)を参照のこと。
【0040】
他の好ましい具体例において、上記のモノクローナル、キメラまたはヒト化抗体は、天然の種においていずれの抗体も生じないアミノ酸残基を含有してもよい。これらの異種の残基は、モノクローナル、キメラまたはヒト化抗体に新規のまたは修飾した特異性、アフィニティまたはエフェクター機能を与えるために用いることができる。他の好ましい具体例において、上記の抗体は、全身性薬物療法、例えば毒素、低分子量細胞毒性剤、生物学的応答修飾因子および放射性核種用の薬剤とコンジュゲートしてもよい(例えば、Kunz et al., Calicheamicin derivative-carrier conjugates、US20040082764A1を参照)。
【0041】
一の具体例において、抗体は、アミロイド前駆タンパク質のAβフラグメントまたはアミロイド斑の他の成分に特異的に結合する抗体であり、アルツハイマー病を特徴つける脳におけるアミロイド斑の蓄積に対して有用である(例えば、米国仮出願番号第60/636,684号)。
【0042】
他の具体例において、本発明の抗体は、増殖性障害、例えば癌における、標的細胞および/または組織で発現する細胞表面抗原に対するものである。一の具体例において、抗体は、IgG1抗ルイスY抗体である。ルイスYは、構造:Fucα1→2Galβ1→4[Fucα1→3]GlcNacβ1→3R(Abe et al. (1983) J. Biol. Chem., 258 11793-11797)を有する、糖鎖抗原である。ルイスY抗原は、ヒト上皮腫瘍(乳房、結腸、肺および前立腺の腫瘍を含む)の60%〜90%の表面上で発現され、少なくともその40%は抗原を過剰に発現し、正常細胞においては発現が制限されている。
【0043】
Leyを標的とし、腫瘍を効果的に標的とするために、抗原に排他的特異性を有する抗体が、理想として必要とされている。かくして、好ましくは、本発明の抗ルイスY抗体は、1型構造(すなわち、血液型のラクト系(LeaおよびLeb))と交差反応を起こさず、好ましくは、他の2型エピトープ(すなわち、ネオラクト構造)様LexおよびH−2型構造と結合しない。好ましい抗ルイスY抗体の例としては、hu3S193が設計されている(米国特許第6,310,185号;第6,518,415号;第5,874,060号(出典明示により本明細書に組み入れる)を参照)。ヒト化抗体hu3S193(Attia, M.A., et al. 1787-1800)は、Leyに非常に特異的である乳癌細胞に対するマウスモノクローナル抗体である3S193からCDR−グラフティングにより生成された(Kitamura, K., 12957-12961)。Hu3S193は、単にLeyに対する3S193の特異性を残しているだけでなく、補体依存性細胞毒性(以後、CDCと称する)および抗体依存性細胞障害性(以後、ADCCと称する)を媒介する能力を獲得している(Attia, M.A., et al. 1787-1800)。この抗体は、125I、111Inまたは18Fならびにキレート剤を必要とする他の放射性標識、例えば111In、99mTcまたは90Yで標識化したhu3S193での生体内分布研究により証明されているように、ヌードマウスおいてLey発現異種移植片を標的とする(Clark, et al. 4804-4811)。
【0044】
他の具体例において、抗体は、Myo29、Myo28およびMyo22と呼ばれるヒト抗GDF−8抗体、ならびにそれ由来の抗体および抗原−結合フラグメントである。これらの抗体は、成熟GDF−8に高アフィニティで結合することができ、例えばActRIIB結合およびレポーター遺伝子アッセイの阻害により証明されるように、インビトロおよびインビボでGDF−8活性を阻害し、骨格筋量および骨密度の負の調節に関連するGDF−8活性を阻害しうる。例えば、Veldman, et al、米国特許出願第20040142382号を参照のこと。
【0045】
受容体
医薬および/または市販の薬剤として有効であることが示されているポリペプチドの他の群は、受容体を含む。受容体は、典型的には、細胞外シグナリングリガンドを認識することにより機能する膜貫通糖タンパク質である。典型的には、受容体は、リガンド認識ドメインに加え、細胞内での発育変動または代謝性変化を誘導する、結合リガンドでの標的細胞内分子のリン酸化によりシグナリング経路を開始する、タンパク質キナーゼドメインを有する。一の具体例において、目的の受容体は、膜貫通および/または細胞内ドメイン(複数でも可)を除去し、その代わりにIg−ドメインに結合できるように修飾されている。好ましい具体例において、本発明により製造される受容体は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)である。RTKファミリーは、種々の機能の多数の細胞型に欠かせない受容体を含む(例えば、Yarden and Ullrich, Ann. Rev. Biochem. 57:433-478, 1988;Ullrich and Schlessinger, Cell 61:243-254, 1990(出典明示により本明細書に組み入れる)を参照)。RTKsの非限定的な例としては、繊維芽細胞成長因子(FGF)受容体ファミリーの一員、表皮成長因子受容体(EGF)ファミリーの一員、血小板由来成長因子(PDGF)受容体、免疫グロブリンを有するチロシンキナーゼおよびEGF相同ドメイン−1(TIE−1)およびTIE−2受容体(Sato et al., Nature 376(6535):70-74 (1995)(出典明示により本明細書に組み入れる)を参照)およびc−Met受容体が挙げられ、これらのいくつかは、直接的または間接的に血管新生を促進することが示唆されている(Mustonen and Alitalo, J. Cell Biol. 129:895-898, 1995)。RTKsの他の非限定的な例としては、胎児肝臓キナーゼ1(FLK−1)(キナーゼ挿入ドメイン−含有受容体(KDR)(Terman et al., Oncogene 6:1677-83, 1991)または血管内皮細胞成長因子受容体2(VEGFR−2)とも称される)、fms−様チロシンキナーゼ−1(Flt−1)(DeVries et al. Science 255;989-991, 1992; Shibuya et al., Oncogene 5:519-524, 1990)、(血管内皮細胞成長因子受容体1(VEGFR−1)、ニューロピリン−1、エンドグリン、エンドシアリンおよびAxlとも称される)が挙げられる。当業者は、好ましくは、本発明に従って発現されうる他の受容体も把握するだろう。
【0046】
特に好ましい具体例において、腫瘍壊死因子アルファおよびベータ受容体(TNFR−1;1991年3月20日に公開されたEP417,563;およびTNFR−2、1991年3月20日に公開されたEP417,014)の形態である、腫瘍壊死因子阻害剤は、本発明に従って発現される(Naismith and Sprang, J Inflamm. 47(1-2):1-7 (1995-96)(出典明示により本明細書に組み入れる)を参照)。一の具体例により、腫瘍壊死因子阻害剤は、可溶性TNF受容体および好ましくはTNFR−Igを含む。一の具体例において、本発明の好ましいTNF阻害剤は、TNFRIおよびTNFRIIの可溶性形態、ならびに、可溶性TNF結合タンパク質であり、他の具体例において、TNFR−Ig融合は、TNFR:Fcであり、本明細書で用いられる場合、かかる用語は、「エタネルセプト」を意味し、これは、p75TNF−α受容体の細胞外部分の2分子の二量体であり、ここの分子は、ヒトIgG.sub.1の235個のアミノ酸Fc部分からなる。
【0047】
成長因子および他のシグナリング分子
医薬および/または市販の薬剤として有効であることが示されているポリペプチドの他の群は、成長因子および他のシグナリング分子を含む。成長因子は、典型的には、細胞により分泌され、他の細胞に結合し、受容体を活性化し、受容体細胞の代謝性変化または発育変動を生じさせる、糖タンパク質である。一の具体例において、目的のタンパク質は、ActRIIB受容体の細胞外ドメインおよび抗体のFc部を含有する、ActRIIB融合ポリペプチドである(例えば、Wolfman, et al., ActRIIB fusion polypeptides and uses therefor、US2004/0223966A1を参照)。他の具体例において、成長因子は、修飾GDF−8プロペプチドであってもよい(例えば、Wolfman, et al., Modifed and stabilized GDF propeptides and uses thereof、US2003/0104406A1を参照)。別として、目的のタンパク質は、ホリスタチン−ドメイン含有タンパク質であり得る(例えば、Hill, et al., GASP1: a follistatin domain containing protein, US 2003/0162714 A1, Hill, et al., GASP1: a follistatin domain containing protein, US 2005/0106154 A1, Hill, et al., Follistatin domain containing protein、US2003/0180306A1を参照)。
【0048】
哺乳動物成長因子および他のシグナリング分子の非限定的な例としては、サイトカイン;上皮細胞成長因子(EGF);血小板由来成長因子(PDGF);繊維芽細胞成長因子(FGFs)、例えばaFGFおよびbFGF;形質転換成長因子(TGFs)、例えばTGF−アルファおよびTGF−ベータ(TGF−ベータ1、TGF−ベータ2、TGF−ベータ3、TGF−ベータ4またはTGF−ベータ5を含む);インスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);デス(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えばCD−3、CD−4、CD−8およびCD−19;エリスロポエチン;骨誘導因子;抗毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えばインターフェロン−アルファ、−ベータおよび−ガンマ;コロニー刺激因子(CSFs)、例えば、M−CSF、GM−CSFおよびG−CSF;インターロイキン(TLs)、例えば、IL−1〜IL−10;腫瘍壊死因子(TNF)アルファおよびベータ;インスリンA−鎖;インスリンB−鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば因子VIIIC、因子IX、組織因子およびフォン・ヴィレブランド因子;抗凝固因子、例えばタンパク質C;心房性ナトリウム因子;肺表面活性剤;プラスミノーゲンアクチベータ、例えば、ウロキナーゼまたはヒト尿または組織型プラスミノーゲンアクチベータ(t−PA);ボンベシン;トロンビン、造血成長因子;エンケファリナーゼ;RANTES(正常T−細胞で発現、分泌され活性化を調節する);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−アルファ);ミュラー管阻害物質;レラキシンA−鎖;レラキシンB−鎖;プロレキサシン;マウスゴナドトロピン−関連ペプチド;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5または−6(NT−3、NT−4、NT−5またはNT−6)または神経成長因子、例えばNGF−ベータが挙げられる。当業者は、好ましくは、本発明に従って発現されうる他の成長因子およびシグナリング分子も把握するだろう。
【0049】
G−タンパク質共役受容体
医薬および/または市販の薬剤として有効であることが示されているポリペプチドの他の群は、成長因子および他のシグナリング分子を含む。G−タンパク質共役受容体(GPCRs)は、7回膜貫通ドメインを有するタンパク質である。リガンドのGPCRへの結合において、シグナルは、細胞の生物学的または生理学的特性の変化が生じる細胞内で伝達される。
【0050】
G−タンパク質およびエフェクター(G−タンパク質により調節される細胞内酵素およびチャンネル)と共にGPCRsは、細胞内第二メッセンジャーを細胞外インプットに接続する、モジュラーシグナリングシステムの構成要素である。これらの遺伝子および遺伝子産物は、疾患の原因物質の可能性がある。
【0051】
ロドプシン遺伝子およびV2バソプレシン受容体遺伝子の特異的欠損は、種々の形態の常染色体優性および常染色体網膜色素変性症、腎性尿崩症の原因であることが示されている。これらの受容体は、中枢神経系および末梢生理学的プロセスの両方で非常に重要である。GPCRタンパク質スーパーファミリーは、異なる種からの同じ受容体である相同分子種とは対照的に、遺伝子重複(または他のプロセス)により生成される変異体を意味する受容体である、250型を超えるパラローグを含有する。スーパーファミリーは、5つのファミリー:ファミリーI、ロドプシンおよびベータ2−アドレナリン受容体に代表され、現在200を超える独自のメンバーにより表される受容体;ファミリーII、近年特徴付けられた副甲状腺ホルモン/カルシトニン/セクレチン受容体ファミリー;ファミリーIII、哺乳動物における代謝型グルタミン受容体ファミリー;ファミリーIV、D.discoideumの走化性および発生に重要なcAMP受容体ファミリー;およびファミリーV、真菌コウビフェロモン受容体、例えばSTE2に分類することができる。
【0052】
GPCRsは、生体アミン、炎症の脂質メディエータ、ペプチドホルモンおよび知覚シグナルメディエータに対する受容体を含む。GPCRは、受容体がその細胞外リガンドと結合した場合に活性化される。GPCRにおけるリガンド受容体相互作用により生じる立体構造の変化は、Gタンパク質のGPCR細胞内ドメインに対する結合アフィニティに影響を与える。このことにより、GTPがGタンパク質に高アフィニティで結合することが可能になる。
【0053】
GTPによるGタンパク質の活性化は、Gタンパク質αサブユニットの、アデニル酸シクラーゼまたは他の第二メッセンジャー分子ジェネレーターとの相互作用を誘発する。この相互作用は、アデニル酸シクラーゼの活性化を調節し、したがって、第二メッセンジャー分子、cAMPの産生を調節する。cAMPは、他の細胞内タンパク質リン酸化および活性化を調節する。別法として、他の第二メッセンジャー分子、例えばcGMPまたはエイコサノイドの細胞レベルは、GPCRsの活性化によりアップレギュレートまたはダウンレギュレートすることができる。Gタンパク質サブユニットは、GTPaseによるGTPの加水分解により不活性化され、α、βおよびγサブユニットは再び連結する。ついで、ヘテロ三量体Gタンパク質は、アデニル酸シクラーゼまたは他の第二メッセンジャー分子ジェネレーターから解離する。また、GPCRの活性は、細胞内および細胞外ドメインまたはループのリン酸化反応によりレギュレートされうる。
【0054】
グルタミン酸塩受容体は、神経伝達において重要なGPCRsの群を形成する。グルタミン酸塩は、CNSにおける主要な神経伝達物質であり、神経可塑性、認知、記憶、学習およびいくつかの神経障害、例えば癲癇、卒中および神経変性において重要な役割を果たすと考えられている(Watson, S. and S. Arkinstall (1994) The G- Protein Linked Receptor Facts Book, Academic Press, San Diego CA, pp. 130-132)。これらのグルタミン酸塩の影響は、イオンチャンネル型および代謝調節型と称される、受容体の異なる2つの群により媒介される。イオンチャンネル型受容体は、固有のカチオンチャンネルを含有し、グルタミン酸塩の即効興奮作用を媒介する。代謝調節型受容体は修飾され、カルシウム依存性カリウムコンダクタンスを阻害し、イオンチャンネル型受容体の興奮性伝達を阻害し、増強させることによりニューロンの膜興奮性を増強させる。代謝調節型受容体は、アゴニスト薬理学およびシグナル伝達経路に基づいて5つのサブユニットに分類され、脳組織に広く分布する。
【0055】
血管活性腸管ポリペプチド(VIP)ファミリーは、その作用がGPCRsにより媒介される関連ポリペプチドの一群である。このファミリーの主要な一員は、それ自体のVIP、セクレチンおよび成長ホルモン放出因子(GRF)である。VIPは、平滑筋の弛緩、種々の組織における分泌の刺激または阻害、種々の免疫細胞活性およびCNSにおける種々の興奮性および阻害活性の調節を含む、多種の生理作用を有する。セクレチンは、膵臓および腸における酵素およびイオンの分泌を刺激し、また、脳にも少量が存在する。GRFは、下垂体前葉からの成長ホルモンの合成および放出を調節する重要な神経内分泌物質である(Watson, S. and S. Arkinstall supra, pp. 278-283)。
【0056】
GPCRへのリガンドの結合についで、立体構造変化がGタンパク質に伝達され、これにより、α−サブユニットは結合GDP分子をGTP分子と交換し、βγ−サブユニットから解離する。典型的には、α−サブユニットのGTP−結合形態は、エフェクター調節部として機能し、第二メッセンジャー、例えばサイクリックAMP(例えば、アデニル酸シクラーゼの活性化により)、ジアシルグリセロールまたはイノシトールホスフェートの産生を誘導する。20以上の異なる型のα−サブユニットが知られており、これはβおよびγサブユニットのより小さいプールに関連する。哺乳動物Gタンパク質の例としては、Gi、Go、Gq、GsおよびGtが挙げられる。Gタンパク質は、Lodish H. et al. Molecular Cell Biology, (Scientific American Books Inc., New York, N.Y., 1995)(出典明示により本明細書に組み入れる)に十分に記載されている。
【0057】
GPCRsは、薬物作用および開発において主要なターゲットである。実際、受容体は、現在公知の薬剤の半分以上に用いられており(Drews, Nature Biotechnology, 1996, 14: 1516)、GPCRsは、GPCRをアンタゴナイズまたはアゴナイズする臨床的処方薬の30%での治療行為に関して最も重要なターゲットとなっている(Milligan, G. and Rees,S., (1999) TIPS, 20:118-124)。このことは、これらの受容体が、治療的ターゲットとして確立し、立証されていることを示す。
【0058】
一般的に、本発明の実施者は、目的のポリペプチドを選択し、その正確なアミノ酸配列を知っているだろう。本発明の技術は、例えば成長および分化因子8に関連するヒトモノクローナル抗体(実施例1、3、4、7〜14)、ヒト化抗ルイスY抗体(実施例5および6)、抗Aベータ(実施例15)および腫瘍壊死因子受容体の二量体Fc−融合タンパク質(実施例16)を含む、多様なポリペプチドの生産への適当に成功しており、本発明が種々の異なるポリペプチドおよびタンパク質の発現に有用であることが示されている。本発明に従って発現される所定のタンパク質は、それ自体固有の特性を有しており、培養された細胞の細胞密度または生存率に影響を与え、同一の培養条件下での他のポリペプチドまたはタンパク質成長よりも低レベルで発現されうる。当業者は、所定のポリペプチドまたはタンパク質の細胞成長および/または産生を最適化するために、本発明の工程および組成を適当に修飾することができるだろう。
【0059】
遺伝子制御因子
当業者には明らかであるように、遺伝子制御因子は、ポリペプチドまたはタンパク質の遺伝子発現をするために用いることができる。かかる遺伝子制御因子は、関連するホスト細胞で活性化するように選択されるべきである。制御因子は、構造的に活性であってもよく、または所定の条件下で誘導性であってもよい。誘導制御因子は、発現したタンパク質が毒性であるか、または細胞成長および/または生存率に悪影響を及ぼすものである場合に、特に有用である。このような場合、誘導制御因子が、細胞生存率、細胞密度および/または発現ポリペプチドまたはタンパク質の総収率を改善することにより、ポリペプチドまたはタンパク質の発現を調節する。本発明の実施に有用な多くの制御因子は、当該分野で公知であり、入手可能である。
【0060】
本発明により用いることができる代表的な構成的哺乳動物プロモーターは、限定するものではないが、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPTR)プロモーター、アデノシンデアミナーゼプロモーター、ピルビン酸キナーゼプロモーター、ベータアクチンプロモーターならびに当業者に公知の他の構造的プロモーターを含む。加えて、真核細胞におけるコーディング配列の構造的発現を促進することが示されているウイルスプロモーターは、例えば、サルウイルスプロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、乳頭腫ウイルスプロモーター、アデノウイルスプロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、モロニーマウス白血病ウイルスおよび他のレトロウイルスの長末端反復(LTRs)、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターウイルスならびに当業者に公知の他のウイルスプロモーターを含む。
【0061】
誘導プロモーターは、誘発剤の存在下で人工的に結合したコーディング配列の発現を促進し、また、本発明に従って用いることもできる。例えば、哺乳動物細胞において、メタロチオネインプロモーターは、ある種の金属イオンの存在下で下流コーディング配列の転写を誘発する。他の誘発プロモーターは、当業者に認識され、および/または公知である。
【0062】
一般的に、遺伝子発現配列は、また、それぞれ、転写および翻訳の開始に関連する5’非転写および5’非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等を含む。エンハンサーエレメントは、発現されるポリペプチドまたはタンパク質の発現レベルを増加されるために用いることができる。哺乳動物細胞において機能することが示されているエンハンサーエレメントの例としては、Dijkema et al., EMBO J. (1985) 4: 761に記載されているようなSV40初期遺伝子エンハンサーおよびGorman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982b) 79:6777に記載のようなラウス肉腫ウイルス(RSV)の長末端反復(LTR)由来のエンハンサー/プロモーターおよびBoshart et al., Cell (1985) 41:521に記載のようなヒトサイトメガロウイルスが挙げられる。
【0063】
制御因子がコーディング配列に結合する機構は、当該分野では公知である(一般的な分子生物学的および組み換えDNA技法は、Sambrook, Fritsch, and Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989(出典明示により本明細書に組み入れる)に記載されている)。種々の成長および誘発条件下での哺乳動物細胞における発現に関する好ましいコーディング配列の挿入に適した市販のベクターは、当該分野でよく知られている。
【0064】
コーディング配列および関連制御因子のホスト細胞への導入
目的のポリペプチドまたはタンパク質の発現を行うの十分な哺乳動物ホスト細胞核酸の導入に適した方法は、当該分野でよく知られている。例えば、Gething et al., Nature, 293:620-625 (1981); Mantei et al., Nature, 281:40-46 (1979); Levinson et al.;EP117,060;およびEP117,058(出典明示により本明細書に組み入れる)を参照のこと。
【0065】
哺乳動物細胞に関して、好ましい、形質転換法は、Graham and van der Erb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈殿法またはHawley−Nelson、Focus15:73(1193)のリポフェクトアミン(lipofectamine)(登録商標)(Gibco BRL)法を含む。哺乳動物細胞ホストシステム形質転換の一般的な態様は、Axelによる米国特許第4,399,216号(1983年8月16日に取得)に記載されている。哺乳動物細胞の形質転換の種々の方法に関しては、Keown et al., Methods in Enzymology (1989), Keown et al., Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)およびMansour et al., Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。哺乳動物細胞におけるポリペプチドまたはタンパク質の発現に適したベクターの非限定的代表例としては、pCDNA1;pCD(Okayama, et al. (1985) Mol. Cell Biol. 5:1136-1142を参照);pMClneoPoly−A(Thomas, et al. (1987) Cell 51:503-512を参照);およびバキュロウイルスベクター、例えばpAC373またはpAC610が挙げられる。
【0066】
好ましい具体例において、ポリペプチドまたはタンパク質は、ホスト細胞に安定にトランスフェクトされる。しかしながら、本発明は、一過性または安定性トランスフェクト哺乳動物細胞で用いることができることは当業者には明らかだろう。
【0067】
細胞
細胞培養およびポリペプチドの発現に感受性であるいずれの哺乳動物細胞または細胞型を、本発明の方法に従って利用することができる。本発明の方法により用いることができる哺乳動物細胞の非限定的な例としては、BALB/cマウス骨髄腫細胞株(NSO/l、ECACCNo:85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6(CruCell, Leiden, The Netherlands));SV40によりトランスフェクトされたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCCCRL1651);ヒト胚腎臓株(懸濁培養物の成長に関する、サブクローン化した293または293細胞、Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベイビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/−DHFR(CHO、Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカモドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝臓癌株(HepG2)が挙げられる。特に好ましい具体例において、本発明は、CHO細胞株からのポリペプチドおよびタンパク質の培養および発現に用いることができる。
【0068】
加えて、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する多くの市販のまたは非売品のハイブリドーマ細胞株を、本発明に従って用いることができる。ハイブリドーマ細胞株が、成長およびポリペプチドまたはタンパク質発現を最適化するために、異なる栄養分を必要とし、および/または異なる培養条件を必要とし、要すれば条件を修飾することができることは、当業者には明らかだろう。
【0069】
上記したように、多くの場合において、細胞は、高レベルでのタンパク質またはポリペプチドの生産のために、選択され、設計されるだろう。しばしば、細胞は、例えば目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする遺伝子を導入することにより、および/または目的のポリペプチドをコードする遺伝子(内在性遺伝子または導入遺伝子)の発現を制御する制御因子を導入することにより、高レベルのタンパク質を生産するために遺伝子操作される。
【0070】
ある種のポリペプチドは、多くの点で目的のポリペプチドまたはタンパク質の産生を最終的に制限する、細胞成長、細胞生存率または他の細胞特性に悪影響を及ぼしうる。特定のポリペプチドを発現するように改変された一の特定の型の細胞群においてさえも、ある個体細胞がより成長し、および/または目的のポリペプチドをより生産する、細胞群内の多様性が存在する。本発明のある種の好ましい具体例において、細胞株は、細胞を培養するのに選択された特定の条件下で着実に成長するように、実施者により経験的に選択される。特に好ましい具体例において、特定のポリペプチドを発現するように改変された個々の細胞は、細胞成長、最終細胞密度、細胞生存率、発現ポリペプチドの力価またはその組合せ、あるいは実施者が重要であるとみなす他の条件に基づいて、大規模生産に選択される。
【0071】
細胞培養フェーズ
目的のポリペプチドを製造する典型的な方法は、バッチおよびフェドバッチ培養の両方を含む。バッチ培養法は、慣用的には、大規模生産培養物を特定の細胞密度の種培養で接種し、細胞成長および生存を促す条件下で細胞を培養し、細胞が特定の細胞密度に達した場合に回収し、発現したポリペプチドを精製することを含む。フェドバッチ培養法は、細胞の成長の間に消費される栄養分および他の成分をバッチ培養物に供給する付加的な工程を含む。慣用的なバッチおよびフェドバッチ培養に付随する難解な問題は、代謝廃棄物の産生であり、これは、細胞成長、生存率および発現ポリペプチドの産生に悪影響を及ぼす。特に悪影響を及ぼす2つの代謝廃棄物は、乳酸塩およびアンモニウムであり、これらは、それぞれ、グルコースおよびグルタミン代謝の結果として産生される。グルタミン代謝の結果としてのアンモニウムの酵素産生に加えて、また、アンモニウムは、時間とともに非代謝性分解の結果としても細胞培養物中に蓄積される。本発明は、細胞培養物におけるこれらの廃棄物の蓄積を遅らせ、逆進さえさせることにより、アンモニウムおよび乳酸塩の悪影響を最小限にした、ポリペプチドの改善された大規模生産法を提供する。限定するものではないが、バッチ、フェドバッチおよび潅流システムを含む、細胞を培養するいずれのシステムにおいても用いることができることは、当業者には明らかだろう。本発明のある種の好ましい具体例において、細胞を、バッチまたはフェドバッチシステムにおいて成長させる。
【0072】
培地
市販されている培地、例えばハムF10(Sigma)、Minimal Essential培地([MEM]、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)およびダルベッコ修飾イーグル培地([DMEM]、Sigma)を含む、慣用的な培地組成は、他のアミノ酸と比較して、相対的に高レベルのグルコースおよびグルタミンを含有していた。これらの成分は、細胞の一次代謝エネルギー源であるので、大量に必要とされることが考えられる。しかしながら、これらの栄養分の急激な消費により、上記したような乳酸塩およびアンモニウムの蓄積が誘発される。加えて、高い初期濃度のグルコースおよびグルタミンならびにその後の乳酸塩およびアンモニウムの蓄積の結果として、高オスモル濃度となり、この環境が、細胞成長、細胞生存率およびポリペプチドの産生に悪影響を与える。
【0073】
本発明は、本明細書に記載の他の培養工程で用いた場合に、乳酸塩およびアンモニウムの蓄積を最小限にし、逆進さえさせる種々の培地組成物を提供する。細胞成長および/または生存率またはポリペプチドまたはタンパク質の発現に有利な影響を与えることが示されている本発明の培地組成は、1つまたはそれ以上の:i)約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量、ii)約2未満の累積アスパラギンに対するモル累積グルタミン比、iii)約0.2未満の総累積アミノ酸に対するモル累積グルタミン比、iv)約0.4〜1の総累積アミノ酸に対するモル累積無機イオン比、およびv)約16mMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量を含む。当業者は、上記に用いる場合「累積」が、特定の成分または培養の開始時に添加される成分およびその後に添加される成分を含む、細胞培養中に添加される成分の総量であることは理解できるだろう。当業者には、本発明の培地組成物が、合成培地および非合成培地の両方を含むことは理解できるだろう。
【0074】
従来の培地組成は、本発明の培地組成と比較して、相対的に低レベルの総アミノ酸を含有して開始される。例えば、DME−F12として知られる従来の細胞培養培地(ダルベッコ修飾イーグル培地およびハムF12培地の50:50混合物)は、7.29mMの総アミノ酸含有量を有し、RPMI−1640として知られる従来の細胞培養培地は、6.44mMの総アミノ酸含有量を有する(例えば、H.J. Morton, In Vitro, 6:89-108 (1970), R.G. Ham, Proc. Nat. Assoc. Sci. (USA), 53:288-293 (1965);G.E. Moore et al., J. Am. Medical Assn., 199:519-24 (1967)(出典明示により本明細書に組み入れる)を参照)。本発明のある種の具体例において、培養培地中のアミノ酸濃度は、好ましくは、約70mM以上である。より好ましくは、本発明の培地組成は、出発培地において約70mMを超えるアミノ酸濃度を含有する。開示時の培地のアミノ酸濃度がこの範囲である場合、細胞密度および力価は、培養の成長期間を通して増加することが示される(実施例13を参照)。
【0075】
加えて、本発明のある種の具体例において、培養培地におけるアスパラギンに対するグルタミンのモル比は、他の市販の培地または市販されていない培地と比較して減少する。好ましくは、培養培地における、アスパラギンに対するグルタミンのモル比は、約2未満である。
【0076】
加えて、本発明のある種の具体例において、培養培地における総アミノ酸に対するグルタミンのモル比は、他の市販の培地または市販されていない培地と比較して減少する。好ましくは、培養培地における、総アミノ酸に対するグルタミンのモル比は、約0.2未満である。
【0077】
本発明の出発培地におけるアスパラギンに対するグルタミンのモル比または総アミノ酸濃度が低いという興味深い予期せぬ結果は、アンモニウムの蓄積の減少が観察されたことに加え、乳酸塩の蓄積の減少もまた同様に見られてことである。ある種の具体例において、アンモニウムおよび乳酸塩の蓄積レベルは、対照培地と比較して単に低いだけでなく、初期蓄積後に実際に減少する(例えば、実施例3および7を参照)。
【0078】
Boraston(米国特許第5,871,999号)は、総アミノ酸に対する総無機イオンのモル比が1〜10である培養培地を開示している。Borastonは、総アミノ酸に対する総無機イオンのモル比がこの範囲である培養培地を提供することによって、培地におけるCHO細胞成長の凝集が減少することを示した。本発明の他の好ましい具体例において、培養培地における総アミノ酸に対する総無機イオンのモル比を、約0.4〜1までさらに少なくしている。実施例13に示されるように、1.75〜約0.7の比において、培養の成長期間にわたって、細胞密度および発現ポリペプチドまたはタンパク質の産生が著しく増加している。
【0079】
本発明の他の好ましい具体例において、濃度培養は、合わせて約16〜36mMの濃度であるグルタミンおよびアスパラギンを含有する。実施例14、表22に示すように、この範囲の組合せ総濃度のグルタミンおよびアスパラギンを含有する培地は、この範囲外の組合せ総濃度のグルタミンおよびアスパラギンを含有する培地よりも高い発現ポリペプチドの力価を示す。当業者は、細胞成長および/または生存率を最適化し、発現ポリペプチドの産生を最大限にするためにこの範囲内で的確な組合せグルタミンおよびアスパラギン濃度を選択できるだろう。
【0080】
さらに、当業者は、上記に挙げたいずれもの条件を、単独または他の条件と種々組み合わせて利用できることは、当業者には明らかだろう。上記特性の1または複数またはすべてを示す培地組成物を利用することにより、当業者は、細胞成長および/または生存率を最適化し、発現ポリペプチドの産生を最大限にすることができるだろう。
【0081】
本発明に開示する培地組成物は、要すれば、ホルモンおよび/または他の成長因子、特にイオン(例えば、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびホスフェート)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(通常非常に低い最終濃度で存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、タンパク質加水分解物またはグルコースあるいは他のエネルギー源を補足してもよい。本発明のある種の具体例において、化学誘導剤、例えばヘキサメチレン−ビス(アセトアミド)(「HMBA」)および酪酸ナトリウム(「NaB」)を培地に補足することは有益でありうる。これらの任意の補足剤は、培養の開始時に加えてもよく、あるいは、消費された栄養分を補給するためまたは他の理由から培養後のある時点で添加してもよい。開示した培地組成物に含まれうる所望のまたは必要な補足剤は、当業者には明らかだろう。
【0082】
哺乳動物細胞培養物の提供
バッチおよびフェドバッチ培養によるタンパク質またはポリペプチドの生産用の哺乳動物細胞の種々の製造方法は、当該分野でよく知られている。上記したように、発現するのに十分な核酸(典型的には、目的のポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子およびいずれもの作用的に結合した遺伝子制御因子を含有するベクター)を、ホスト細胞株に多くのよく知られた技術のいずれかにより導入することができる。典型的には、細胞は、ベクターを取り込み、目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現するホスト細胞を決定するために、細胞をスクリーニングする。哺乳動物細胞により発現された特定の目的のポリペプチドまたはタンパク質を検出する慣用的な方法は、限定するものではないが、免疫組織化学、免疫沈降、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査法、SDS−PAGE、ウエスタンブロット、酵素免疫測定吸着法(ELISA)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法、生物活性アッセイおよびアフィニティクロマトグラフィーを含む。発現ポリペプチドまたはタンパク質を検出する他の適当な方法は、当業者には明らかだろう。複数のホスト細胞が目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する場合、記載した方法のいくつかまたはすべてを、ポリペプチドまたはタンパク質を最も高レベルに発現する細胞を決定するのに用いることができる。
【0083】
一旦、目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する細胞を同定すると、細胞を当業者によく知られた種々の方法のいずれかにより培養物中で増殖させる。目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する細胞は、典型的には、細胞の成長および生存を促す温度および培地で成長させることにより増殖させる。初期培養体積はいずれの体積でもよいが、目的のポリペプチドまたはタンパク質の最終生産に用いる生産バイオリアクターの培養体積よりも小さく、生産バイオリアクターに播種する前に、より大きな体積のバイオリアクターに細胞を数回移してもよい。細胞培養は、培地の酸素化および栄養分の細胞への分散を増加させるために、撹拌または振盪することができる。別として、または加えて、当該分野でよく知られた特定の散布デバイスを、培養物の酸素化を増加または制御するのに用いることができる。本発明に従って、限定するものではないが、pH、温度、酸素化等を含むバイオリアクターの所定の初期条件を制御または調節することが有益であることを当業者は理解できるだろう。
【0084】
生産バイオリアクターにおける出発細胞密度は、当業者により選択することができる。本発明に従って、生産バイオリアクターにおける出発細胞密度は、培養体積あたり1の細胞まで低くてもよい。本発明の好ましい具体例において、生産バイオリアクターにおける出発細胞密度は、1mlあたり約2×10生存細胞〜1mlあたり約2×10、2×10、2×10、2×10、5×10または10×10生存細胞以上の範囲でありうる。
【0085】
初期および中間細胞培養物は、次の中間または最終生産バイオリアクターに播種する前に、望ましい密度まで成長させてもよい。すべてまたはほとんどの生存が必要ではないが、細胞のほとんどが播種前に生存していることが好ましい。本発明の一の具体例において、細胞は、例えば低速遠心分離により上清から除去してもよい。また、望ましくない代謝廃棄物または培地成分を除去するために、次のバイオリアクターに播種する前に、培地で除去した細胞を洗浄することが望ましい。培地は、細胞を予め成長させた培地であってもよく、あるいは、本発明の実施者により選択される別個の培地または線上溶液であってもよい。
【0086】
ついで、細胞を、播種生産バイオリアクターに播種するのに適当な密度に希釈してもよい。本発明の好ましい具体例において、細胞を、生産バイオリアクターで用いられる同様の培地で希釈する。別として、細胞を、本発明の実施者の要求または希望に応じて、あるいは、細胞自体の特定の要求に適合するように、例えば、生産バイオリアクターに播種する前の短期間貯蔵する場合、他の培地または溶液で希釈することができる。
【0087】
初期成長フェーズ
一旦、生産バイオリアクターに上記のように播種すると、細胞培養物を、細胞培養物の成長および生存に適した条件下で、初期成長フェーズにおいて保持する。正確な条件は、細胞型、細胞をデリバリーする生物および発現ポリペプチドまたはタンパク質の性質および特性に応じて変化するだろう。
【0088】
本発明に従って、生産バイオリアクターは、ポリペプチドまたはタンパク質の大規模生産に適したいずれもの体積でありうる。好ましい具体例において、生産バイオリアクターの体積は、少なくとも500リットルである。好ましい他の具体例において、生産バイオリアクターの体積は、1000、2500、5000、8000、10,000、12,000リットルまたはそれ以上、あるいはその間のいずれもの体積である。当業者は、本発明の実施に用いるのに適当なバイオリアクターを選択することができるだろう。生産バイオリアクターは、細胞成長および生存を促し、産生ポリペプチドまたはタンパク質の発現または安定性に干渉しないいずれもの物質で構成されていてもよい。
【0089】
初期成長フェーズにおける細胞培養の温度は、主に細胞培養物が生存可能な温度範囲に基づいて選択されるだろう。例えば、初期成長フェーズの期間、CHO細胞は、37℃で良好に成長する。一般的に、ほとんどの哺乳動物細胞は、約25℃〜42℃の範囲内で良好に成長する。好ましくは、哺乳動物細胞は、約35℃〜40℃の範囲内で良好に成長するだろう。当業者は、細胞の要求および実施者の要求生産量に応じて、細胞が成長する適当な温度を選択することができるだろう。
【0090】
本発明の一の具体例において、初期成長フェーズの温度は、ある一定の温度に維持される。他の具体例において、初期成長フェーズの温度は、ある温度範囲内に維持される。例えば、温度は、初期成長フェーズの期間に、徐々に高くしても、低くしてもよい。別として、温度は、初期成長フェーズのある時点で一定の温度だけ高くしても、低くしてもよい。当業者は、単一または複数の温度を用いるべきかどうか、温度を徐々に調節すべきか、不連続に一定の温度だけ調節すべきかどうか決定することができるだろう。
【0091】
初期成長フェーズの間、実施者の要求および細胞自体の要求に応じて、より長くまたは短い時間、細胞を成長させることができる。一の具体例において、細胞の成長が妨害されない場合に最終的に到達する最大生存細胞密度の所定のパーセントである、生存細胞密度に達するのに十分な期間、細胞を培養する。例えば、最大生存細胞密度の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または99パーセントである所望の生存細胞密度を得るのに十分な期間、細胞を成長させることができる。
【0092】
他の具体例において、所定の期間、細胞を成長させることができる。例えば、細胞培養の初期濃度、細胞成長の温度および細胞の本質的な成長速度に応じて、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日またはそれ以上の間、細胞を成長させてもよい。ある場合には、1ヶ月またはそれ以上の間、細胞を成長させてもよい。シードバイオリアクター中、初期成長フェーズ温度での細胞の成長が、その接種時点で生産バイオリアクターにおける生存細胞密度が、すでに最大生存細胞密度の所望のパーセントである場合、生産バイオリアクターにおいて細胞は0日間成長させらるだろう。本発明の実施者は、ポリペプチドまたはタンパク質産生要求量および細胞自体の要求に応じて、初期成長フェーズの期間を選択することができるだろう。
【0093】
酸素化および細胞への栄養分の分散を増加させるために、初期培養フェーズの期間、細胞培養物を撹拌または振盪してもよい。本発明に従って、限定するものではないが、pH、温度、酸素化等を含む、初期成長フェーズ期間のバイオリアクターにおけるある内部条件を制御または調節することが有益でありうることは、当業者には理解できるだろう。例えば、pHは、適当な量の酸または塩基をスプレーすることにより制御することができ、酸素化は、当該分野でよく知られた散布デバイスにより制御することができる。
【0094】
培養条件のシフト
本発明の教示に従って、初期成長フェーズの終わりに、第2の培養条件を適用し、培養物に代謝シフトが生じるように、少なくとも1つの培養条件をシフトしてもよい。阻害代謝物、最も顕著には乳酸塩およびアンモニアの蓄積は、成長を阻害する。細胞培養物の温度、pH、重量オスモル濃度または化学誘導剤レベルを変更することにより為される代謝シフトは、特定のグルコース消費速度に対する特定の乳酸塩産生速度の割合を減少させることにより特徴付けられる。一の非限定的具体例において、培養温度をシフトさせることにより培養条件をシフトする。しかしながら、当該分野で知られているように、温度のシフトは、適当な代謝シフトを達成することができるただ一つのメカニズムというわけではない。例えば、かかる代謝シフトは、限定するものではないが、pH、重量オスモル濃度および酪酸ナトリウムレベルを含む他の培養条件をシフトすることによっても達成することができる。上記したように、培養シフトのタイミングは、本発明の実施者により、ポリペプチドまたはタンパク質生産要求量または細胞自体の要求に基づいて決定されるだろう。
【0095】
培養温度をシフトした場合、温度シフトは相対的に徐々に行ってもよい。例えば、温度変化が完了するまでに数時間または数日かかってもよい。別として、温度シフトは、相対的に急激に行ってもよい。例えば、温度変化を、数時間未満で完了させてもよい。適当な生産物および制御装置が、例えばポリペプチドまたはタンパク質の商業的大規模生産である場合、温度変化は1時間以内に完了してもよい。
【0096】
次成長フェーズの細胞培養温度は、主に細胞培養物が生存し、商業的に十分なレベルで組み換えポリペプチドまたはタンパク質を発現できる温度範囲に基づいて選択されるだろう。一般的に、ほとんどの哺乳動物細胞は、約25℃〜42℃の範囲内で生存し、組み換えポリペプチドまたはタンパク質を商業的に十分なレベルで発現することができる。好ましくは、哺乳動物細胞は、約25℃〜35℃の範囲内で生存し、商業的に十分なレベルで組み換えポリペプチドまたはタンパク質を発現することができる。当業者であれば、細胞の要求および実施者の生産要求量に応じて、細胞を成長させる適当な温度を選択することができるだろう。
【0097】
本発明の一の具体例において、次成長フェーズの温度は、ある一定の温度に維持される。他の具体例において、次成長フェーズの温度は、ある温度範囲内に維持される。例えば、温度は、次成長フェーズの期間に、徐々に高くしても、低くしてもよい。別として、温度は、次成長フェーズのある時点で一定の温度だけ高くしても、低くしてもよい。当業者は、この具体例に複数回の温度シフトが含まれることは理解できるだろう。例えば、温度を1回シフトして、この温度またはこの温度範囲である期間、細胞を保持し、その後、温度を再び低温または高温側のいずれにシフトしてもよい。個々のシフト後の培養温度は、一定であってもよく、またはある温度範囲内で維持されてもよい。
【0098】
実施例16において、データにより、2回の逐次的な温度変化を用いる効果が示されているが、本発明に従って、3回またはそれ以上の逐次的な温度変化が、細胞生存率または密度を増加する、および/または組み換えポリペプチドまたはタンパク質の発現を増加するために用いることができることが当業者には理解できるだろう。個々の逐次温度シフト後の細胞培養温度または温度範囲は、シフト前の温度または温度範囲より高くても、または低くてもよい。本発明の好ましい具体例において、個々の逐次的温度または温度範囲は、前の温度または温度範囲よりも低い。
【0099】
次生産フェーズ
本発明に従って、一旦、細胞培養条件を上記したようにシフトさせると、細胞培養物を、細胞培養物の生存および商業的に十分なレベルでの所望のポリペプチドまたはタンパク質の発現に適した、第2の培養条件下で、次生産フェーズの間保持する。
【0100】
上記したように、限定するものではないが、温度、pH、重量オスモル濃度および酪酸ナトリウムレベルを含む多くの培養条件の1つまたはそれ以上をシフトされることにより、培養をシフトさせることができる。一の具体例において、培養温度をシフトさせる。この具体例により、次生産フェーズの期間、培養物を、初期成長フェーズの温度または温度範囲より低い温度または温度範囲で維持する。例えば、次生産フェーズの期間、CHO細胞は、25℃〜35℃の範囲内で良好に組み換えポリペプチドおよびタンパク質を発現する。上記したように、細胞密度または生存率を増加させるため、あるいは組み換えポリペプチドまたはタンパク質の発現を増加させるために、複数回の温度シフトを行うことができる。
【0101】
本発明により、所望の細胞密度または生産力価に達するまで、次生産フェーズにおいて細胞を維持してもよい。一の具体例において、組み換えポリペプチドまたはタンパク質の力価が最大になるまで、細胞を次生産フェーズにて保持した。他の具体例において、実施者の生産要求量または細胞自体の必要性に応じて、この時点までに培養物を回収してもよい。例えば、最大生存細胞密度の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または99パーセントの生存細胞密度を達成するのに十分な期間細胞を保持してもよい。ある場合において、生存細胞密度を最大にし、ついで、培養物を回収する前に、生存細胞密度をあるレベルまで減少させることが望ましい。極端な例として、培養物を回収する前に、生存細胞密度を0に近づけるか、または0にすることが望ましい。
【0102】
本発明の他の具体例において、所定の次生産フェーズの期間、細胞を成長させてもよいる。例えば、次成長フェーズの開始時の細胞培養物の濃度、細胞が成長する温度および細胞の固有の成長速度に応じて、細胞を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日またはそれ以上の間成長させてもよい。ある場合において、細胞を1ヶ月またはそれ以上成長させてもよい。本発明の実施者は、ポリペプチドまたはタンパク質の生産必要量および細胞自体の要求に応じて、次生産フェーズの期間を選択することができるだろう。
【0103】
ある場合において、次生産フェーズの期間、細胞により消費または代謝される栄養物または他の培地成分を、細胞培養に補足することは、有益または必要でありうる。例えば、細胞培養に、細胞培養のモニタリングの期間、消費が観察された栄養物または他の培地成分を補足することは有利である(下記する「培養条件のモニタリング」の項を参照)。別として、または加えて、次生産フェーズの前に、細胞培養物を補足することは、有益または必要でありうる。非限定的例として、細胞培養に、ホルモンおよび/または他の成長因子、特にイオン(例えば、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウムおよびホスフェート、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(通常、非常に低濃度で存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質またはグルコースあるいは他のエネルギー源を補足することは、有益または必要でありうる。
【0104】
これらの補足成分は、細胞培養に1回ですべてを加えてもよく、あるいは、一連の添加として細胞培養に提供してもよい。本発明の一の具体例において、補足成分は、比例した量で、複数回で細胞培養に提供する。別の具体例において、最初にある補足成分を提供し、後に残りの成分を加えることも望ましい。本発明のさらなる別の具体例において、細胞培養を、これらの補足成分を継続的に流し込んでもよい。
【0105】
発明により、細胞培養物に添加される総体積は、最適には、最小量に保たれるべきである。例えば、細胞培養物に添加した補足成分を含有する培地または溶液の総体積は、補足成分を加える前の細胞培養物の体積の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45または50%であってもよい。
【0106】
細胞培養物を、細胞の酸素化および栄養物の分散を増加させるために、次生産フェーズの期間、撹拌または振盪してもよい。本発明により、当業者は、限定するものではないが、pH、温度、酸素化等を含む、次成長フェーズ期間のバイオリアクターのある種の初期条件、を制御または調節することが有益であり得ることは理解できるだろう。例えば、pHは、適当な量の酸または塩基をスプレーすることにより調節することができ、酸素化は、当該分野でよく知られた散布デバイスで制御することができる。
【0107】
培養条件のモニタリング
本発明のある種の具体例において、実施者は、成長細胞培養物の特定の条件を定期的にモニターすることが有益または必要であると感じるかもしれない。細胞培養条件をモニタリングすることにより、実施者は、細胞培養物が、組み換えポリペプチドまたはタンパク質を最適なレベルで産生しているがどうか、あるいは、培養物が、最適な産生フェーズに入っているかどうかを判断することができる。ある細胞培養条件をモニターするために、分析用の少量の培養物アリコートを取り出す必要があるだろう。当業者は、かかる採取により、細胞培養が汚染される可能性があることは理解でき、かかる汚染のリスクを最小限にするために適切に注意すべきだろう。
【0108】
非限定的例として、温度、pH、細胞密度、細胞生存率、合成生存細胞密度、乳酸レベル、アンモニウムレベル、オスモル濃度または発現ポリペプチドまたはタンパク質の力価をモニターすることは有益または必要でありうる。当業者がこれらの条件を測定するための多くの方法が当該分野で知られている。例えば、細胞密度は、血球計、コールター・カウンターまたは細胞密度試験(CEDEX)を用いて測定することができる。生存細胞密度は、Trypan blueで培養試料を染色することにより測定することができる。死亡細胞だけが、Trypan blueを取り込むことができるので、生存細胞密度は、細胞の総数をカウントし、染色された細胞数を細胞の総数で除し、その逆数を得ることにより測定することができる。HPLCは、乳酸塩、アンモニアまたは発現ポリペプチドまたはタンパク質のレベルを測定するのに用いることができる。別法として、発現ポリペプチドまたはタンパク質のレベルを、標準的な分子生物的方法、例えばSDS−PAGEゲルのクマーシー(coomassie)染色、ウエスタンブロッティング(Western blotting)、Bradfordアッセイ、Lowryアッセイ、BiuretアッセイおよびUV吸収により、測定することができる。リン酸化およびグリコシル化を含むポリペプチドまたはタンパク質、発現の翻訳後修飾をモニターすることも有益または必要でありうる。
【0109】
発現ポリペプチドの単離
一般的に、典型的には、本発明により発現したタンパク質またはポリペプチドを単離および/または精製することが望ましいだろう。好ましい具体例において、発現ポリペプチドまたはタンパク質は培地中に産生され、かくして、細胞および他の固体を、例えば精製工程の最初に、遠心分離または濾過除去により除去してもよい。この具体例は、特に、本明細書に記載の方法および組成物は高い細胞生存率を与えるので、本発明において用いる場合に有用である。結果として、培養プロセスの間に死亡する細胞がより少なく、発現ポリペプチドまたはタンパク質の収率を減少させる可能性がある培地中へのタンパク質分解酵素の放出がより少なくなる。
【0110】
別法として、発現ポリペプチドまたはタンパク質を、ホスト細胞の表面に結合させる。この具体例において、精製工程の最初の工程として、培地を取り出し、ポリペプチドまたはタンパク質を発現するホスト細胞を溶解する。哺乳動物ホスト細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的破壊および高pH条件への曝露を含む、当業者によく知られた多くの手段により行うことができる。
【0111】
ポリペプチドまたはタンパク質は、限定するものではないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、サイズ排除およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、ゲル濾過、遠心分離または溶解度の差異、エタノール沈殿を含む標準的な方法により、あるいは、他のタンパク質の精製法(例えば、Scopes, Protein Purification Principles and Practice 2nd Edition, Springer-Verlag, New York, 1987;Higgins, S.J. and Hames, B.D. (eds.), Protein Expression : A Practical Approach, Oxford Univ Press, 1999;およびDeutscher, M.P., Simon, M.I., Abelson, J.N. (eds.), Guide to Protein Purification : Methods in Enzymology (Methods in Enzymology Series, Vol 182), Academic Press, 1997(すべて出典明示により本明細書に組み入れる)を参照)により単離、精製することができる。特に、イムノアフィニティクロマトグラフィーに関して、タンパク質を、そのタンパク質に対して作用し、固定相に貼り付けられた抗体を含むアフィニティカラムにタンパク質を結合されることにより単離することができる。別法として、アフィニティタグ、例えばインフルエンザコート配列、ポリ−ヒスチジンまたはグルタチオン−S−トランスフェラーゼを、標準的な組み換え法によりタンパク質に結合させ、適当なアフィニティカラムを通すことにより容易に精製することができる。プロテアーゼ阻害剤、例えばフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチンまたはアプロチニンを、精製工程の間のポリペプチドまたはタンパク質の崩壊を減少させる、または解消するために、いずれかまたはすべての工程において添加してもよい。プロテアーゼ阻害剤は、発現ポリペプチドまたはタンパク質の単離、精製のために、細胞を溶解しなければならない場合に特に好ましい。精製すべきポリペプチドまたはタンパク質の特性、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する細胞の特性および細胞を成長させる培地の組成に応じて変化するだろうことは、当業者には明らかだろう。
【0112】
医薬処方
本発明のある種の好ましい具体例において、産生ポリペプチドまたはタンパク質は、薬理活性を有し、医薬の製造において有用であるだろう。上記した本願の組成物は、対象に投与されるか、あるいは、最初に、限定するものではないが、非経口(例えば、静脈内)、皮内、皮下、経口、経鼻、気管支、眼、経皮(局所)、経粘膜、直腸および膣経路を含む可能な経路によるデリバリー用に処方することができる。本発明の医薬組成物は、典型的には、哺乳動物細胞株から発現した精製ポリペプチドまたはタンパク質、デリバリー剤(すなわち、上記したカチオン性ポリマー、ペプチド分子トランスポーター、界面活性剤等)を医薬上許容される担体と組み合わせて含みうる。本明細書で用いられる場合、「医薬上許容される担体」なる用語は、医薬投与に適当しうる、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等を含む。また、追加の活性化合物を、組成物中に組み入れることもできる。
【0113】
医薬組成物は、意図する投与経路に適合するように処方される。非経口、皮内または皮下投与に用いられる溶液または懸濁液は、下記成分:滅菌希釈剤、例えば注射用水、セイライン溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸;緩衝液、例えばアセテート、シトレートまたはホスフェートおよび等張性調製剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースを含みうる。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムにより調節することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨てシリンジまたはガラスもしくはプラスチックの複数回投与用バイアルに封入することができる。
【0114】
注射用途に適した医薬組成物は、典型的には、滅菌水溶液(水溶性である場合)または分散液および滅菌注射可能溶液もしくは分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。静脈内投与に関して適当な担体は、生理食塩水、精菌水、CremophorEL(登録商標)(BASF、Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝化セイライン(PBS)を含む。すべての場合において、組成物は滅菌されるべきであり、容易に注入可能である程度に流動性であるべきである。好ましい医薬処方は、製造および貯蔵条件下で安定であり、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保護されていなければならない。一般的に、関連する担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)およびそれらの適当な混合物を含む、溶媒または分散媒でありうる。適当な流動性を、例えば、レシチンのようなコーティング剤を用いることにより、分散剤である場合には要求粒度を管理することにより、および界面活性剤を用いることにより、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等により達成することができる。多くの場合において、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを組成物中に含むことが望ましいだろう。注射用組成物の持続的吸収は、組成物に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることにより実現できる。
【0115】
滅菌注射可能溶液は、必要量の精製ポリペプチドまたはタンパク質を、適当な溶媒中に、必要に応じて上記した成分の1つまたは組合せと一緒に溶解し、ついで、濾過滅菌することにより調製することができる。一般的に、分散液は、哺乳動物細胞株から発現された精製ポリペプチドまたはタンパク質を、基礎分散媒および上記した必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに入れることにより調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製法は、予め滅菌濾過した溶液から活性成分と所望の付加的な成分の粉末を得る、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0116】
一般的に、経口組成物は、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療投与の目的に関して、精製ポリペプチドまたはタンパク質は、賦形剤と一緒に組み入れ、錠剤、トローチまたはカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態で用いることができる。また、経口組成物は、口腔洗浄剤として用いられる液体担体を用いて製造することもできる。医薬上適合する結合剤および/またはアジュバントを、組成物の一部として含ませることができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、いずれもの以下の成分:結合剤、例えば、微結晶セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチン;賦形剤、例えばスターチまたはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステロート;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばシュークロースまたはサッカリン;またはフレーバー剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー、あるいはこれらと同様の性質を有する化合物を含みうる。経口デリバリー用の処方は、有利には、胃腸管内での安定性を改善するため、および/または吸収性を増強するために薬剤を含んでいてもよい。
【0117】
吸入による用途の場合、哺乳動物細胞株により発現される精製ポリペプチドまたはタンパク質およびデリバリー剤を含む本発明の組成物は、好ましくは、適当な推進剤、例えば二酸化炭素のようなガスを含有する加圧容器もしくはディスペンサーまたはネブライザーから、エアロゾールスプレー形態でデリバリーされる。本発明は、特に、鼻腔用スプレー、吸入または他の上気道および/または下気道への直接デリバリーを用いる組成物のデリバリーに適合する。インフルエンザウイルスに対するDNAワクチンの鼻腔内投与は、CD8T細胞応答を誘発することが示されており、この経路によりデリバリーされた場合、気道内の少なくともいくつかの細胞がDNAを取り込み、本発明のデリバリー剤は細胞摂取を増強するだろうことを示している。本発明のある種の具体例により、組成物は、哺乳動物細胞株から発現した精製ポリペプチドおよびデリバリー剤を含む組成物を、エアロゾール投与用の大きな多孔質粒子として処方される。
【0118】
また、全身性投与は、経粘膜または経皮法により行うことができる。経粘膜または経皮投与に関して、浸透すべきバリアに適した浸透剤を処方に用いる。かかる浸透剤は、一般的に当該分野で知られており、例えば、経粘膜投与に関しては、洗浄剤、胆汁塩およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐剤を用いることにより行うことができる。経皮投与に関して、精製ポリペプチドまたはタンパク質およびデリバリー剤が、当該分野で一般に知られた、軟膏、ゲルまたはクリームに処方される。
【0119】
また、組成物は、直腸デリバリー用に、坐剤(例えば、慣用的な坐剤基剤、例えばココアバターおよび他のグリコライドと一緒に)または停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0120】
一の具体例において、例えば、埋め込みおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む、制御放出処方である組成物は、ポリペプチドまたはタンパク質が体内から急速に除去されることを防止する担体を用いて調製される。生分解可能で生体適合性のポリマー、例えば酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を用いることができる。かかる処方の調製方法は、当業者には明らかだろう。また、物質は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から市販されている。また、リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する、感染細胞に標的化したリポソームを含む)は、医薬上許容される担体として用いることができる。これらは、当業者に公知の方法、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されている方法により調製することができる。
【0121】
投与および投与量を均一にすることを容易にするために、単位剤形で経口または非経口組成物に処方することが有利である。本明細書で用いられる場合、単位剤形は、治療されるべき対象とって単一用量として適した、物理的に別個の単位を意味する。かかる単位は、必要な医薬担体と関連して望ましい治療効果を誘発するように計算された活性ポリペプチドまたはタンパク質の所定量を含有する。
【0122】
本発明により発現されたポリペプチドまたはタンパク質は、例えば、約1〜10週、2〜8週、約3〜7週、約4、5または6週の期間、1週間に1回というように、必要に応じて種々の間隔および種々の期間、投与することができる。当業者には、限定するものではないが、疾患または障害の重篤度、前処理、対象の全体的な健康状態および/または年齢および他の疾患の存在を含むある種の因子が、対象を効果的に治療するのに必要とされる投与量および時期に影響を与えうることは明らかだろう。一般的に、本明細書に記載のポリペプチドまたはタンパク質での対象の治療は、単一の治療を含むか、あるいは、多くの場合、一連の治療を含みうる。さらに、適当な投与量が、ポリペプチドまたはタンパク質の能力に依存し、例えば、予め選択した望ましい応答が得られるまで投与量を増加して投与することにより、特定の受容者に最適に合わせうることは理解されるだろう。特定の動物対象に対する特定の投与レベルは、用いられる特定のポリペプチドまたはタンパク質活性、対象の年齢、体重、全体的な健康状態、性別および食事、投与回数、投与経路、排泄速度、薬剤の組合せおよび調節される発現または活性の程度を含む、種々の因子に依存しうることは理解されるだろう。
【0123】
本発明は、非ヒト哺乳動物の治療用の本発明の化合物の使用を含む。したがって、投与量および投与方法は、よく知られた獣医学的原則に従って選択されうる。ガイダンスは、例えば、Adams, R. (ed.), Veterinary Pharmacology and Therapeutics, 8th edition, Iowa State University Press; ISBN: 0813817439; 2001にて見ることができる。
【0124】
本発明の医薬組成物は、容器、パックまたはディスペンサーに投与の指示書と一緒に含まれうる。
【0125】
以下の記載は、本発明を単に説明し、代表的なものであって、なんら限定を意図するものではない。本発明を実施するための別法および別の物質、また、付加的な適用は、当業者には明らかであり、特許請求の範囲内に含まれる。
【0126】
実施例
実施例1:抗GDF−8フェドパッチ法に関する、強化培地1
細胞株を培養する慣用的なフェドバッチ法は、供給物を与えるのに必要な時間と労力および大規模バイオリアクターにおいて特別な装置を必要とすることを含む、いくつかの欠点を有する。本願の目的は、最低限の供給で、大規模バイオリアクターにおける目的のタンパク質の生産用のバッチ培地を構築することである。
【0127】
物質および方法
株および培地:チャイニーズ・ハムスター・卵巣(「CHO」)細胞を、成長および分化因子8(「抗GDF−8細胞」)に対するモノクローナル抗体を発現するために設計した(Veldman et al., Neutralizing Antibodies Against GDF-8 and Uses Therefor、US20040142382A1を参照)。抗GDF−8細胞を、新規バッチ培地の試験に用いた。培地1および培地2を、高細胞密度および生存率を裏付けるために、その能力を比較した。これらの培地ならびに培地3の組成は、表1に記載する。培地は、FeSO・7HOを除くすべての成分を添加することにより作成した。ついで、培地を、pH7.25に調節し、オスモル濃度を記録し、ついで、FeSO・7HOを加えた。
【0128】
培養条件:フラスコ実験に関して、抗GDF−8細胞を振盪フラスコで成長させ、3回継代させた。バイオリアクター実験に関して、抗GDF−8細胞を、5日目以降、毎日、2体積%の20X培地4フィード培地(表3)または3体積%の16X培地4(表4)を補足して、12日間培地で成長させた。最初の4日間、細胞を37℃で成長させた。5日目に、細胞を31℃にシフトした。
【0129】
試料分析:毎日、試料を培地から採集し、アミノ酸、ビタミン、鉄、ホスフェート、グルコースおよびグルタミンレベルに関して分析した。
【0130】
【表1−1】

【0131】
【表1−2】

【0132】
結果および結論
図1は、フラスコ実験における、抗GDF−8細胞の成長速度は、培地1および培地2で同じであったことを示している。
図2は、バイオリアクターにおいて、培地1が、培地3よりも、有意に高い最終細胞密度および生存率を示すことを示す。また、最終力価は、基本的な方法の551mg/Lから培地1で976mg/Lまで有意に増加した(データは示していない)。温度を、5日目に37℃から31℃にシフトした。予期せぬ高い細胞成長のため、培養物を、2体積%の20X培地4または3体積%の16X培地4のいずれかを、5日目以降、毎日供給した。かくして、これは、当初予定したバッチ実験とは正確には異なる。フィード培地へのアスパラギンおよびチアミンの供給を10日目から開始した。
【0133】
濃縮バッチ培地の構築において、いくつかの可能性ある問題を考慮する必要がある。第1に、濃縮栄養物は、細胞に毒性である可能性がある。この実施例において構築した培地において、すべての栄養物および成分は、毒性限界以下になるように決定した(データには示していない)。
【0134】
第2に、濃縮バッチ培地は、必然的に、非濃縮培地よりも高オスモル濃度を有し、このことは細胞成長および生存率に有害な影響を与えることが示されている。この問題は、開始時の培地中のNaCl量を少なくすることにより回避することができる。さらに、濃縮バッチ培地は、培養期間全体にわたって成長を持続するのにグルコースのレベルが不十分である。かくして、グルコースフィードを培養物に、5日目以降、毎日補足する。
【0135】
第3に、インスリンおよびグルタミンは、12日の培養期間の間に分解されやすい。かくして、グルコースに加えてこれらの成分を培養物に補足した。
【0136】
最後に、鉄は、高pHで高濃度のホスフェートを含有する溶液で沈殿するだろう。この問題は、培地調製工程の最後に、適当なレベルにpHを調節した後に、鉄を添加することにより解決できる。
【0137】
実施例2:フェドバッチ法における、抗GDF−8細胞用の濃縮フィード培地(培地5)の構築
実施例1において、培地1に用いる抗GDF−8細胞を培養するバッチ法を構築した。そのプロセスにおいて得られた高細胞密度のため、グルコースおよびグルタミンに加えて栄養物を供給することが有益であることが分かった。しかしながら、8X培地4フィード培地を有するバッチを補足することにより、培養物が過剰に希釈される。より濃縮したフィード培地を、この問題を解決するために構築した。
【0138】
物質および方法および結果
表2は、表3〜4の処方に用いられる、培地4A−1、培地4B、トレースBおよびトレースDの組成を示す。
【0139】
【表2−1】

【0140】
【表2−2】

【0141】
20X培地4
第1の濃縮培地を、20X培地4として構築した。20X培地4の培地の構成を表3に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
培地の構成は、3つのパート:I、II、IIIからなる。パートIは、ビタミンの溶解度の問題のために葉酸を除いた培地4Bの個々の成分を含む8X培地4の濃縮バージョンである。パートIIは、パートIに加えた場合、鉄が沈殿する可能性を回避するための、鉄ストック、トレースDおよび酸性システインである。パートIIIは葉酸ストックである。パートIを、5日目から2体積%で毎日加え、パートIIおよびIIIを、パート1と一緒に5日目に1回加える。
フィード培地の最終pHを7.0に調節し、オスモル濃度は約1064mOsmであった。2%フィードにより、培養物が2g/Lのグルコース、2mMのグルタミンおよび14mOsmのオスモル濃度、増加する。
【0144】
2.16X培地4.
オスモル濃度の増加を軽減するために、フィード培地を、20X培地4(毎日2体積%)から16X培地4(毎日3体積%)に変更した。16X培地4の培地構成を、表4に示す。
【0145】
【表4】

【0146】
また、この修飾16X培地4において、さらにオスモル濃度を減少させるためにグルコースを除き、グルコースフィードに融通性を与えた。フィード培地の総オスモル濃度は、この時点で295mOsmである。
【0147】
3.16X培地4
16X培地4の構成を変更した。鉄ストック溶液をフィードに加え、結果として、個々のフィードに0.45μMを添加した。さらに、グルコースを戻し、フィード毎に1.5g/Lを加えた。この修飾16X培地4の培地構成を表5に示す。
【0148】
【表5】

【0149】
4.16X培地4
ここで、フィード培地(16X培地4)を、いくつかのバッチと同様に、3つの別個のフィードの代わりに複合培地で作成した。葉酸を必要な濃度で溶解できることを確実にし、鉄または葉酸がいずれも、4℃または室温のいずれかで6日間貯蔵した後も溶液から沈殿しないことを確実にするために試験を行った。複合16X培地4の培地構成を表6に示す。
【0150】
【表6】

【0151】
1日あたり2g/Lのグルコース添加および1.5mMのグルタミンの添加で、培地の最終オスモル濃度は724mOsmである。
【0152】
5.12X培地4.
ここで、フィード培地をいくらか変更する。培地4B粉末を、培地4Bにおける個々の成分を添加する代わりに用いた。培地4B粉末を、グルコースと混ぜ合わせ、溶液をpH10.25まで滴定することにより、塩基性条件下で別々に溶解した。アミノ酸およびビタミン分析結果が、フェドバッチプロセスの終わりまでに、これらの二つの成分が排出されることを示したので、付加的なアスパラギンおよびチアミンを加えた。12Xの培地4の使用は、さらに、培養物に供給する場合、オスモル濃度の増加を軽減した。12X培地4の培地構成を表7に示す。
【0153】
【表7】

【0154】
採取オスモル濃度は566mOsmである。4体積%の1日のフィードが、適度に、オスモル濃度を8.6、グルコースを2g/Lおよびグルタミンを1.5mM増加させる。また、12X培地4培地構成物が、培地5として知られている。培地5は、20X培地4または16X培地4と比較して容易に作成でき、室温または4℃で10日以上安定である(データは示していない)。
【0155】
実施例3:グルタミン抗GDF−8細胞培養物に関する、グルタミン不足フェドバッチプロセス
CHO細胞は、生存するために初期の培地にグルタミンを必要とする。慣用的には、初期グルタミンレベルは高く、グルタミンは、5日目以降フェドパッチ工程の最後まで毎日供給される。慣用的なフェドバッチプロセスは、通常、細胞培養において、高い乳酸濃度およびアンモニウムレベルを生じ、このことが、細胞成長、細胞密度および組み換えタンパク質発現の効果を阻害することが知られている。グルコースを培養物にゆっくりと添加するフェドバッチ工程は、乳酸産物を低下させ、細胞成長、細胞密度および組み換えタンパク質発現を改善することが示された。しかしながら、グルコース添加の操作に関する従来の方法は、大規模製造で実用化されていない。そこで、低い初期グルタミンレベルおよびフィードからグルタミンを除いた培養培地を利用することにより、アンモニウムおよび乳酸の産生が低レベルであり、細胞生存率を増加させることが示された。加えて、グルタミン不足培地において、組み換えタンパク質発現は増加し、最終オスモル濃度は減少した。
【0156】
物質および方法
株および培地:抗GDF−8細胞を、1Lバイオリアクター中、培地1においてフェドバッチモードで培養した。
培養条件:細胞を、1Lバイオリアクターにおいて12日間成長させた。温度を、細胞成長に応じて、4日目または5日目に37℃から31℃にシフトした。3つのフェドバッチプロセス:通常(対照)プロセス、非グルタミンフィードプロセスおよびグルタミン不足プロセスを試験した。これらのプロセスの関連細目を、表8および表9に示す。
【0157】
【表8】

【0158】
【表9】

【0159】
試料分析:培養物から毎日試料を採取し、細胞密度、細胞生存率、乳酸、グルタミンおよびアンモニウムレベルに関して分析した。また、発現抗GDF−8抗体の力価を毎日測定した。
【0160】
結果および結論
図3は、非グルタミンフィードまたは対照フェドバッチ条件において成長した培養物の細胞密度を示す。両方の場合において、細胞密度は、実験期間中同様であった。
図4は、非グルタミンフィードまたは対照フェドバッチ条件において成長した培養物の細胞生存率を示す。非グルタミンフィード培養物は、6日目から実験の終わりにかけて非常に高い細胞生存率を示した。
図5は、非グルタミンフィードまたは対照フェドバッチ条件において成長した培養物中のアンモニウムレベルを示す。非グルタミンフィード培地は、4日目から実験の終わりにかけてアンモニウムレベルの顕著な減少を示した。
図6は、非グルタミンフィードまたは対照フェドバッチ条件において成長した培養物中の乳酸レベルを示す。乳酸レベルは、実験の期間中、非グルタミンフィード培養物においてわずかに低下した。
図7は、非グルタミンフィードまたは対照フェドバッチ条件において成長した培養物における抗GDF−8抗体力価を示す。最終抗GDF−8抗体力価は、非グルタミンフィード培養物においてより高かった。
図8は、グルタミン不足または対照フェドバッチ条件において成長した培養物の細胞密度を示す。両方の場合において、細胞密度は、実験期間中同様であった。
図9は、グルタミン不足または対照フェドバッチ条件において成長した培養物における細胞生存率を示す。両方の場合において、細胞生存率は、実験期間中同様であった。
図10は、グルタミン不足または対照フェドバッチ条件において成長した培養物におけるアンモニウムレベルを示す。グルタミン不足培養物は、実験期間中、アンモニウムレベルの顕著な減少をを示した。
図11は、グルタミン不足または対照フェドバッチ条件において成長した培養物における乳酸レベルを示す。グルタミン不足培養物は、4日目から実験の終わりにかけて、乳酸レベルの顕著な減少をを示した。
図12は、グルタミン不足または対照フェドバッチ条件における抗GDF−8抗体力価を示す。最終抗GDF−8抗体力価は、グルタミン不足培養物においてより高かった。
【0161】
総合すると、これらの結果は、低いグルタミンレベルが、アンモニウム産物の量を減少させ、細胞生存率を増加させ、発現抗GDF−8抗体の力価を増加させることにより、細胞培養に有益であることを示している。加えて、グルタミン不足培養物において、場合により、低グルコース消費速度により、低乳酸レベルが観察された。また、低いアンモニウムおよび乳酸レベルは、トータルのオスモル濃度を減少させる効果を有する。高いオスモル濃度は、また、細胞成長および生存率に対して阻害効果を有することが知られている。グルタミンフィードを除くと共に、低い初期グルタミンレベルは、また、貯蔵培地における非酵素グルタミン分解の結果として生じるアンモニウムを減少させる優れた効果を有する。フィードにおいてグルタミンを排除することは、また、抗GDF−8細胞の培養プロセスを単純化する。
【0162】
実施例4.培地1および培地2における抗GDF−8細胞の鉄投与応答
培地1を、培地2よりも栄養物でさらに濃縮した。培地1における細胞成長最適な鉄レベルを、細胞培養期間の鉄欠乏に関する問題を回避するために測定した。
【0163】
物質および方法
抗GDF−8細胞を、培地1または培地2においてディッシュ中で、1継代培養した。これらの培地の鉄濃度を、異なる量の貯蔵鉄溶液を添加することにより操作した。最終細胞密度を、CEDEXにより測定した。
【0164】
結果および結論
図13は、異なる鉄濃度を有する培地1および培地2における抗GDF−8細胞のFe投与応答を示す。培地2において、細胞密度は、3μM〜15μMの範囲の鉄濃度に対して相対的に一定であった。培地1において、細胞密度は、鉄濃度の増加と共に増加したが、約5μMで最大に達した。この違いは、培地1は高含有量で栄養分を含み、培地における鉄のキレート化の結果として、細胞が利用できる鉄が減少したためと考えられる。これらの結果は、培地1にける鉄欠乏に関する問題を回避するために、5μM以上を維持すべきであることを示している。
【0165】
実施例5:バイオリアクタープロセスにおける、グルタミンのグルタミン酸塩への置換
抗ルイスY細胞培養プロセスにおいて、グルタミンをグルタミン酸に置換することによる効果を、3つの実験で試験した。
【0166】
物質および方法
実験を、10Lバイオリアクター中、pH7.1、30%酸素溶解および開始温度37℃、5日目に31℃にシフトの条件で行った。散布ガスおよびヘッドスペースガスは、88%の93%空気/7%CO混合物および12%酸素であった。すべての実験において、出発培地は、グルタミンを含有する培地1であった。補足グルコースおよびグルタミンフィードを含む、フィード培地およびフィードスケジュールを、表10に示す。「グルタミン酸塩」のカラムは、グルタミンを含有しないが、標準培地5におけるモルグルタミン濃度と等しいモル濃度のグルタミン酸塩を含有する、修飾培地5で与える。
【0167】
【表10】

【0168】
結果および結論
各々の実験において、細胞密度は、図14に示すように同様であった。グルタミン2およびグルタミン酸塩2の実験において、pHが3日後に約6.7になったために細胞密度が低い。グルタミン3およびグルタミン酸塩3の実験における、6および7日目の間の密度の低下は、6日目での29%培地フィードによるものである。
【0169】
図15は、グルタミン酸塩およびグルタミンフェド培養物の細胞生存率を示す。細胞生存率は、グルタミン酸塩フェド培養物を含有するバイオリアクターにおける工程の後半の期間、高レベルを維持した。
【0170】
実験1において、抗ルイスY力価は、グルタミン酸塩およびグルタミンフェド培養物間で同様である。図16は、実験2および3において、抗ルイスY力価が、グルタミンフェドリアクターにおいてより低いことを示している。これらのリアクターで観察された低抗ルイスY力価は、図17に示すように産生された高レベルの乳酸によるものであると考えられる。
【0171】
フィード培地にグルタミン酸塩を有するバイオリアクターでは、低アンモニウム濃度(図18)および低オスモル濃度(図19)であった。
【0172】
結合ELISAアッセイを、グルタミン1およびグルタミン酸塩1実験からの試料の活性を試験するのに用いた。活性は、グルタミン1試料のリファレンスが110%およびグルタミン酸塩1試料のリファレンスが122%と同様であった(データは示していない)。
【0173】
3つの実験におけるグルタミンのグルタミン酸塩への置換は、細胞密度に有意な影響を与えなかった。しかしながら、細胞生存率は、グルタミンをフィードしたバイオリアクターがより低い。アンモニウム、乳酸塩およびオスモル濃度は、グルタミンをフィードしたものと比較して、グルタミン酸塩をフィードしたバイオリアクターが低い。平均して、抗ルイスY力価は、グルタミン酸塩をフィードしたバイオリアクターにおいてより高く、活性は、本質的に両方の条件下で同じである。
【0174】
実施例6.抗ルイスY細胞培養プロセルにおけるグルコースおよびグルタミンの置換
この実験の目的は抗ルイスY細胞の培養において、グルコースおよびグルタミンを下記表11に示すフィード培地で置き換えることによる効果を試験することであった(Bogheart et al., Antibody-targeted chemotherapy with the calicheamicin conjugate hu3S193-N-acetyl gamma calicheamicin dimethyl hydrazide targets Lewisy and eliminates Lewisy-positive human carcinoma cells and xenografts, Clin. Can. Res. 10:4538-49 (2004)を参照)。細胞密度、細胞生存率、抗ルイスY力価およびアンモニウムレベルを測定した。
【0175】
物質および方法
実験を、250mlの振盪フラスコ開始容量75mlで行った。すべての振盪フラスコに、培地2で0.25×10細胞/mlで播種した。フラスコを、インキュベーターにおいて、37℃、7%のCOで、14日間インキュベートした。3および4日目に、フラスコに、5体積%の培地6フィード培地をフィードした。培地6の組成を表11に示す。5〜13日目に、フラスコに、表12に示すフィード溶液の1つをフィードした。各々の条件で、2回行った。試料を毎日採取し、細胞をCEDEXにより計数し、アンモニウム、グルコースおよび乳酸塩に関してアッセイした。
【0176】
【表11】

【0177】
【表12】

【0178】
結果および結論
フィード培地中グルコースまたはガラクトースの存在下、グルタミン酸塩またはグリシルグルタミンをグルタミンの代わりに用いた場合に、最も高い細胞密度が観察された。細胞密度は、グルコース/グルタミン、ガラクトース/グルタミンまたはグルコース単独をフィードする培養物において、一般的に低い(図20)。最終生存率は、グルコース単独をフィードする培養物で最も高く、ついで、グルコース/グルタミン酸塩をフィードする培養物で高かった。グルコースまたはガラクトースと組み合わせたグルタミンまたはアスパラギンをフィードする培養物において最も低い生存率が観察された(図21)。
【0179】
14日での力価は、グルコース/グリシルグルタミンおよびグルコース/グルタミン酸塩フェド培養物において約700μg/mlで最も高かった。力価は、ガラクトース/グリシルグルタミンおよびガラクトース/アスパラギンフェド培養物において約500μg/mlで最も低かった。グルコース/グルタミン対照における力価は約570μg/mlであった(図22)。
【0180】
グルコース/グルタミン酸塩またはグルコース単独をフィードするフラスコにおいて最も低いアンモニウムレベルが観察された。ガラクトース/グルタミン酸塩、グルコース/グルタミン、グルコース/グリシルグルタミンおよびグルコース/アスパラギンをフィードするフラスコは、中間レベルのアンモニウムを示した。ガラクトース/アスパラギン、ガラクトース/グリシルグルタミンおよびガラクトース/グルタミンをフィードしたフラスコは、最も高いレベルのアンモニウムを有していた(図23)。
【0181】
グルコースレベルは、ガラクトースをフィードしたすべてのフラスコにおいて11日目まで1g/L以上残っていた。11〜14日目にかけては、これらの培養物のグルコースは完全には消費されず、個々の培養物間で有意な違いはなく、0.6〜1g/L残っていた。
【0182】
グルコースレベルは、他の基質と組み合わせたグルコースまたはグルコースをフィードしたすべてのフラスコにおいて、10日目まで増加した。10〜14日目に、これらの培養物において、グルコースレベルは、ほぼ一定であり、お互いに同様であった。14日目には、グルコース/グルタミン酸塩フェド培養物において、約8.4g/Lグルコースが残っており、グルコースのみをフィードする培養物においては、約10.8g/Lグルコースが残っていた。
【0183】
乳酸レベルは、5日目に約2.4g/Lのレベルに達し、このとき条件がすべての細胞で同じになり、14日目までにすべての培養物において本質的に0になった。乳酸塩レベルは、グルコース/グルタミン対照において、10〜14日目に最も高くなったが、この期間1g/L未満であった(データは示していない)。
【0184】
この実験で試験したすべての条件は、対照グルコース/グルタミン条件よりも高い細胞密度であった。ガラクトース/アスパラギン条件を除いて、試験したすべての条件は、グルコース/グルタミン対照またはガラクトース/グルタミンフィード条件よりも、より高い最終生存率であった。グルコース/グルタミン対照における力価は、グルコース/グリシルグルタミンフィード条件およびグルコース/グルタミン酸塩フィード条件における最高値約700μg/mlと比較して、約570μg/mlであった。
【0185】
実施例7:抗GDF−8の産生に関するグルタミン欠乏バッチプロセスの評価
典型的なフェドバッチ生成法は、培養期間の間複数回のフィードを必要とする。これらのフィードは、細胞により消費されるか、あるいはバッチ期間中分解されうる培地中の栄養物を元に戻すように設計される。これらのフィードにより、大きなリアクターにスケールアップした場合に、インペラー・ジャンプ(impeller jump)(図24を参照)の必要性のような複雑な問題が生じる。さらに、フィードは、すでに培養物に分泌された抗GDF−8の量を希釈し、したがって、採集力価に影響を与える。バッチプロセスの使用により、フィードに適合するように部分容量で植菌する代わりに最大容量でバイオリアクターの植菌をすることが可能になり、インペラー・ジャンプの必要性が取り除かれ、生産性への希釈影響を大きく減少させるだろう。
【0186】
グルタミンは、37℃で不安定であり、バッチ培養において補充される必要性があると考えられることがフェドバッチ法を用いる最も大きな理由の1つである。しかしながら、グルタミン欠乏法を試験した実施例2、5および6の結果は、グルタミンをフィードした対照リアクターと比較して、生産性を有意に向上させたことを示した。この結果を、この実施例において試験したグルタミン欠乏バッチ法と組み合わせた。
【0187】
物質および方法
抗GDF−8細胞を、以下の4つの成長条件に従って、12日間、lLのバイオリアクター中で成長させた。すべての条件に関するバイオリアクターパラメータを、同一に維持した。空気を散布することにより、溶解した酸素を維持し、空気飽和度の23%より高く維持し、pHを、0.58Mの二酸化炭素および0.71Mの炭酸ナトリウムを含有する溶液を添加することにより、7.00で維持した。すべての培養物の温度を、バッチの最初の4日間37度に維持した。バッチの4日目に、すべてのバイオリアクターの温度を31度に下げ、バッチ期間中この温度を維持した。対照およびフェドバッチ培養物に、8%、12%および8%の総リアクター容量のフィード培地を、それぞれ、5、7および10日目にフィードした。
【0188】
1)対照
− インキュベーション培地、培地7(表13を参照)
− フィード培地8を5、7および10日目にフィード(表13を参照)
− 5mMのグルタミンを4日目にフィード
− 温度を4日目に31℃に下げる
2)フェドバッチグルタミン欠乏
− インキュベーション培地、4mMのグルタミンだけを有する培地7(表13を参照)
− グルタミン無しの培地8を、5、7および10日目にフィード(表13を参照).
− 4日目に非グルタミンフィード
− 温度を4日目に31℃に下げる
3)バッチグルタミン欠乏
− インキュベーション培地、4mMのグルタミンだけを揺する新規バッチ培地(表13を参照)
− フィード培地無し
− 非グルタミンフィード
− 温度を4日目に31℃に下げる
− 8日目に5g/Lのグルコースを加える
4)8日目に補給されるバッチグルタミン欠乏
− インキュベーション培地、4mMのグルタミンだけを有する新規培地(表13を参照)
− フィード培地無し
− グルタミンフィード無し
− 4日目に温度を31℃に下げる
− 8日目に、4gのグルコース、375mgのアスパラギン、3mLの1mMのFeSOストック、3.33mLの5g/LのNucellin(登録商標)ストック、2.57mLの36mg/Lヒドロコルチゾンおよび1.0g/Lプトレシンストック溶液、0.23mLの50mg/Lの亜セレン酸ナトリウムストックおよび13.1mgのチアミンを加える。
【0189】
【表13−1】

【0190】
【表13−2】

【0191】
結果および結論
最初の4日間の細胞成長は、対照とバッチプロセスにおいて同様であるが、グルタミン欠乏フェドバッチプロセスは、細胞密度が有意に低く、バッチ後には少し低めであった。両方のバッチプロセスは、恐らく、有意な希釈が無かったために、バッチ期間中、高い細胞密度を維持した(図25を参照)。すべての培養物の生存率は、8日目まで同じであった。しかしながら、11日目に、補給がないバッチプロセスの生存率は、他の3つのバイオリアクターよりも低く、最終日までに有意に減少することに注目することは興味深い。このことは、補給バッチプロセスがフェドバッチバイオリアクターと同様の生存率を示しているので、バッチ培地はさらに最適化されうることを示唆している(図26を参照)。
【0192】
グルタミン不足バッチプロセスまたはグルタミン不足フェドバッチプロセスにおいて培養した細胞は、対照フェドバッチプロセスにおいて培養された同じ細胞よりも、生産性において優れていた。対照フェドバッチプロセスは、予想通り、685μg/mLの採取日力価を有していたが、グルタミン欠乏フェドバッチプロセスは、1080μg/mLの採取力価を有しており、対照よりも約58%高かった。これは、前に見られた結果と同様である。グルタミン欠乏非補給バッチプロセスは、960μg/mLの採取日力価を有しており、グルタミン欠乏フェドバッチプロセスと同様に対照よりも40%高かったが、補給グルタミン欠乏バッチプロセスは、最も高い採取力価、1296μg/mLを有していた。これは、対照よりも89%増加している(図27を参照)。
【0193】
4つの条件での阻害剤レベルを分析した場合、その結果は、3つすべてのグルタミン欠乏プロセスにおける乳酸およびアンモニウムレベルが対照よりも有意に低いことを示していた。実際、4日後、これらの3つの条件は、乳酸の産生が停止するか、または乳酸の消費が開始されたが、対照はバッチ期間中乳酸を産生し続けた(図28を参照)。予想通り、アンモニアレベルは、グルタミン欠乏プロセスにおいて非常に低く、4日後に低下したが、対照はアンモニアを生産し続けた(図29を参照)。
【0194】
この実施例において、グルタミン欠乏法をバッチプロセスと組み合わせると、フェドバッチプロセスよりも、抗GDF−8細胞の生産性が40%向上した。また、データは、バッチ培地を最適化することにより、生産性を約2倍改善しうることを示唆している。この生産性の改善は、2つの因子に起因しうる。第1は、グルタミン欠乏が、直接生産性を向上させるか、またはアンモニアおよび乳酸レベルを非常に低く保つことにより生産性を向上させる。第2に、フィードがないので、力価がバッチ期間中に薄まらない。バッチプロセスの本来の操作の容易さに加え、高い生産性により、バッチプロセスは組み換えポリペプチドの生産において魅力ある選択肢である。
【0195】
実施例8:バッチ中のグルタミンおよびアスパラギン濃度の抗GDF−8細胞培養プロセスに対する影響
実施例2、5および6において、グルタミン欠乏が、2つの細胞において、フェドバッチ培養に、細胞成長、細胞生存率および力価の増加ならびに乳酸塩およびアンモニウムの産生の減少を含む有益性をもたらすことが実証された。また、アスパラギンもバッチ培地において同様の役割を果たすと考えられる。
【0196】
物質および方法
抗GDF−8細胞を、異なる濃度のグルタミンおよびアスパラギンを有する修飾培地9において、1Lのバイオリアクター中で12日間培養した。基本培地9の組成を表14に示す。この基本組成の実験バリエーションを、表15に示す。培養物を、温度コントロールの問題のために最初の日に30℃であってリアクター4を除き、最初の5日間37℃でインキュベートした。培養物を、6日目に31℃にした。7日目に、培養物に、1回、グルタミンを欠く5体積%の培地5をフィードした。培養物を、毎日、細胞密度、抗GDF−8力価、乳酸塩およびアンモニウムレベルに関して測定した。
【0197】
【表14−1】

【0198】
【表14−2】

【0199】
【表15】

【0200】
結果および結論
図30、31、32および33は、それぞれ、種々の実験条件下での実験における、抗GDF−8細胞の細胞成長、抗GDF−8力価、乳酸レベルおよびアンモニウムレベルを示す。
【0201】
すべての実験条件下で、4mMのグルタミンが、1mMのグルタミンよりも、試験したすべてのアスパラギンレベルで良好であった。同等のグルタミンレベルで、12mMおよび20mMアスパラギン条件が、8mMアスパラギン条件よりも良好であった。乳酸塩およびNHレベルの減少が、すべての試験条件の培養の終わりに観察された。
【0202】
実施例9.バッチ培地におけるグルタミンおよびアスパラギン濃度の抗GDF−8細胞培養プロセスに対する影響
実施例8において、アスパラギンレベルに拘わらず、初期濃度4mMのグルタミンを含有する培地9が、1mMのグルタミンを含有する培地よりも良好であることが実証された。この実施例は、13mMグルタミンレベルおよび種々のアスパラギンレベルを含有する培地の影響を実証する。
【0203】
物質および方法
抗GDF−8細胞を、表16に示す異なる濃度のグルタミンおよびアスパラギンを有する修飾培地9において、1Lバイオリアクター中で12日間培養した。この培養物を、最初の3日間37℃でインキュベートした。ついで、培養物を、4日目に31℃にシフトした。7日目に、培養物に、1回、グルタミンを欠く5体積%の培地5をフィードした。培養物を、毎日、細胞密度、細胞生存率、乳酸塩、アンモニウムレベルおよびグルタミンレベル、抗GDF−8力価およびオスモル濃度に関して測定した。
【0204】
【表16】

【0205】
結果および結論
図34、35、36、37、38、39および40は、それぞれ、それぞれ、種々の実験条件下での実験における、抗GDF−8細胞の細胞成長、抗GDF−8細胞の生存率パーセント、乳酸レベル、アンモニウムレベル、グルタミンレベル、抗GDF−8力価およびオスモル濃度を示す。
【0206】
試験したすべての条件下の中で、13mMのグルタミンおよび20mMのアスパラギンを含有する培地9だけが、細胞成長および力価に対して有意な悪影響を示した。グルタミンは、4mMまたは13mMのグルタミンで開始されたかどうかに拘わらず、ほとんど同時期にすべての培養物で使い果たされた。最も高い抗GDF−8力価は、13mMのグルタミンおよび12mMのアスパラギンを含有する培養物で得られる。すべての培養条件は、培養の終わり付近で、低い乳酸塩およびアンモニウムレベルを示す。アンモニウムレベルは、13mMのグルタミンおよび20mMのアスパラギンを含有する培地において最も高い。
【0207】
実施例10:アスパラギンおよびシステインレベルの、培地9で培養された抗GDF−8細胞における低い乳酸塩およびアンモニウムレベルに対する影響
実施例2、5および6において、グルタミン欠乏条件下で成長した培養物が、培養プロセスの最後に、低い乳酸塩およびアンモニウムレベルを示すことが見出された。しかしながら、非グルタミン欠乏条件下で培地9にて成長した培養物が、培養プロセスの最後に、さらに低い乳酸塩およびアンモニウムレベルを示した。この効果は、グルタミン欠乏が乳酸塩およびアンモニウムのレベルの低下に必要であると考えられる培地1のような他の培地では観察されなかった。培地9と培地1は、アスパラギン(培地9において20mMに対して、培地1+フィードで合計11mM)および酸性システイン(培地9において1.5mMに対して、培地1において0.95mM)のレベルの点で異なる。この実施例は、これら2つの成分が培養の終わりで観察される乳酸塩およびアンモニウムレベルの減少に関与するかどうかを試験する。
【0208】
物質および方法
抗GDF−8細胞を、1Lのバイオリアクターで12日間培養した。細胞を、最初に37℃で培養し、4日目または5日目に、8〜10×10/mlで、31℃にシフトした。表17に、試験した種々の実験条件を示す。試料を毎日採取し、力価分析をタンパク質A HPLCで行った。
【0209】
【表17】

【0210】
結果および結論
培地9において成長した抗GDF−8細胞は、培養を4mMまたは13mMのグルタミンのいずれかで開始したかに拘わらず、培養工程の最後で、低い乳酸塩およびアンモニウムレベルを示した(図42および43を参照)。対照的に、培地1は、培養が4mMのグルタミンで開始された場合にのみ培養工程の最後で、低い乳酸塩およびアンモニウムレベルを示した(図42および43を参照)。追加のアスパラギンおよびシステインを13mMのグルタミンを含有する培地1に添加すると、培養工程の最後で、乳酸塩およびアンモニウムレベルは低くなかった(図42および43を参照)。
【0211】
培養工程の終わりに低い乳酸塩およびアンモニウムレベル培養物(4mMのグルタミンを有する培地1、4mMのグルタミンを有する培地9および13mMのグルタミンを有する培地9)は、また、培養工程の終わりに低い総オスモル濃度を有することが示された(図47を参照)。
【0212】
4mMのグルタミンを有する培地9は、最も高い抗GDF−8力価を示し、ついで、4日目にフィードされる13mMのグルタミンを有する培地9が高かった(図46を参照)。フィードによる希釈の影響を考慮すると、4mMのグルタミンを含有する培地9は、13mMのグルタミンを含有する培地9と、等価の抗GDF−8力価を有していた。
【0213】
実施例11:培地9において培養された抗GDF−8細胞において観察された乳酸塩およびアンモニウムレベルの減少に対する、アミノ酸およびビタミンレベルの影響
実施例10は、培地1および培地9間のアスパラギンおよびシステインレベルの違いが、グルタミンが欠乏していない培地9における培養工程の最後での乳酸塩およびアンモニウムレベルの減少に関係しているかどうかを試験する。これらの因子が観察された減少に関与していないことが示された。培地1および培地9は、また、これらのアミノ酸およびビタミン濃度が異なる。この実施例は、2つの培地間のアミノ酸およびビタミン濃度の違いが、観察された減少に関係しているかどうかを試験する。
【0214】
物質および方法
抗GDF−8細胞を、1Lのバイオリアクター中で12日間試験した。細胞を、最初に37℃で培養し、4日目に8〜10×10/mlで31℃にシフトした。表18に、種々の試験した実験条件を示す。アミノ酸、ビタミン、ヒドロコルチゾンおよびプトレシン、微量元素E(組成を表19に示す)および鉄を、種々の実験培地1条件に加え、これらの成分のレベルを培地9のレベルと等しくした。試料を毎日採取し、タンパク質A HPLCにより力価分析を行った。
【0215】
【表18】

【0216】
【表19】

【0217】
結果および結論
試験したすべての条件は、付加的なアミノ酸を含有する培地1を除いて培養工程の最後に、低い乳酸塩およびアンモニウムレベルを示し、培地1と比較して高い培地9のアミノ酸レベルは、恐らく、乳酸塩およびアンモニウムレベルの減少に関与していないことを示している(図49および50を参照)。しかしながら、付加的なビタミン、ヒドロコルチゾンおよびプトレシン、微量元素Eおよび鉄を含有する培地1は、付加的なアミノ酸を含有する培地1を比較して、培養工程の最後に、より低い乳酸塩およびアンモニウムレベルを示した(図49および50を参照)。これは、これらの成分が、培地9で観察された減少に関与しうることを示している。
【0218】
付加的なビタミン、ヒドロコルチゾンおよびプトレシン、微量元素Eおよび鉄を含有する培地1で成長した培養物は、出発培地においてアスパラギンおよびグルタミンの総量がより低いために、実験全体において最も低いレベルのアンモニウムを示した(図50を参照)。
【0219】
実施例12:ビタミン、微量元素Eおよび鉄レベルの、培地9で培養された抗GDF−8細胞において観察された乳酸塩およびアンモニウムレベルの減少に対する影響
実施例11において、培地1に対して高いレベルの培地9におけるビタミン、ヒドロコルチゾンおよびプトレシン、微量元素Eおよび鉄は、培養工程の最後に観察される乳酸塩およびアンモニウムレベルの減少に関与しうることが決定された。ここでは、これらの成分を、個々におよび組み合わせて、減少に影響を与えるかを決定するために試験する。
【0220】
物質および方法
抗GDF−8細胞を、1Lのバイオリアクター中で12日間培養した。細胞を、最初37℃で培養し、4日目に約6×10細胞/mlでシフトする、微量元素Eを含有する培地1を除いて、4日目に8〜10×10細胞/mlで31℃にシフトした。表20に、試験した種々の実験条件を示す。ヒドロコルチゾンおよびプトレシンを、すべての培地1条件に加え、これらの成分のレベルを培地9のレベルと等しくした。ビタミン、微量元素E(組成は表19に示す)および鉄を種々の実験培地1条件に加え、これらの成分のレベルを培地9のレベルと等しくした。試料を毎日採取し、タンパク質A HPLCにより力価分析を行った。
【0221】
【表20】

【0222】
結果および結論
試験したすべての条件の内、13mMのグルタミンを含有する培地9および微量元素Eを含有する培地1だけが、培養工程の最後で、乳酸塩およびアンモニウムのレベルの減少を示した(図54および55を参照)。微量元素Eを含有する培地1で観察されたレベルの減少は、この培養物が、細胞が約6×10細胞/mLである時に温度シフトされた事実によるものでありうることを注意すべきである。
13mMのグルタミンを含有する培地9は、培地1構成物より高い抗GDF−8力価を示した。
【0223】
実施例13:培地1、3および9の細胞成長および抗GDF−8力価に関する比較
この実験は、培地1、3および9を用いる細胞成長および抗GDF−8力価の違いを測定するために行った。
【0224】
物質および方法
抗GDF−8細胞は、種々の培地、表21に記載のフィード条件下で培養した。関連する培地の情報を表22に示す。細胞を1Lのバイオリアクター中で12日間成長させ、4日目に37℃から31℃にシフトした。
【0225】
【表21】

【0226】
【表22】

【0227】
結果および結論
培地9で培養した抗GDF−8細胞は、最も高い細胞密度および抗GDF−8力価を示し、一方、培地3で培養した抗GDF−8細胞は、最も低い細胞密度および抗GDF−8力価を示した(図57および58を参照)。培地9が培地1よりも結果が優れているという事実から、複数回フィードにより培地成分を供給するより、むしろ出発培地に培地成分を提供することがより好ましいことが示されている。加えて、培地1および培地9の両方が、培地3よりも良好に行われるという事実から、70mM未満の濃度でアミノ酸を提供するよりも、約70mMより高い濃度でアミノ酸を提供することがより優れた結果をもたらすことが示されている。最後に、約70mMより高い濃度で出発物質にアミノ酸を提供することが、最も高い細胞密度および力価を与えた(培地1と培地9を比較した)。
【0228】
実施例14:バイオリアクターにおける抗GDF−8細胞培養に関する培地9における最適なグルタミンおよびアスパラギン総レベルの統計的分析
物質および方法
抗GDF−8細胞を、1Lのバイオリアクター中で培養し、表23に示す日に37℃から31℃にシフトした。最終力価を、グルタミン単独の最適レベルおよびグルタミンおよびアスパラギンを合わせた最適レベルを決定するために、T−テストに付した。表23に、培地9で成長した抗GDF−8細胞の関連実験条件および最終結果を要約した。
【0229】
【表23】

【0230】
結果および結論
図59は、種々のレベルのグルタミン単独およびグルタミンおよびアスパラギンの組合せの推定抗GDF−8力価を示す。表24は、2〜15mMのグルタミンレベルおよびこの範囲外のグルタミンレベルの標準化力価を比較する、T−試験の結果を示す。表25は、16〜36mMのグルタミンおよびアスパラギンレベルの組合せおよびこの範囲外のレベルのグルタミンおよびアスパラギンの組合せを比較するT−試験の結果を示す。
【0231】
両方のT−試験結果は、比較した2つの群の間の抗GDF−8力価に有意な違いがることを示している。2〜15mMのグルタミンおよび16〜36mMのグルタミンおよびアスパラギンの組合せを含有する培地9において成長した培養物は、これらの範囲外のグルタミンおよびグルタミンおよびアスパラギン組合せレベルを有する培地において成長した培地よりも、より高い抗GDF−8力価を示す。すべての実験において、アスパラギンレベルは、9mMよりも高かった。
【0232】
【表24】

【0233】
【表25】

【0234】
実施例15:培地の細胞培養物に対する影響
この実施例は、高密度播種培養物を用いる中規模での3つの細胞培養培地バリエーションの能力を評価する。試験したすべての培地は、小規模バイオリアクターデータに基づいて、フェーズ1培地(培地11フィード培地をフィードした培地10)において改善が見られることが期待された。
【0235】
物質および方法
ヒト化抗AベータペプチドIgG1モノクローナル抗体(「抗Aベータ細胞」)を発現するCHO細胞を、表26に示すように、種々の培地で試験した(Basi et al., Humanized Antibodies that Recognize Beta Amyloid Peptide、WO02/46237を参照)。pHの下点を、フェーズ1を除いて0.95MのNaCO+0.05MのKCOで制御して7.0に設定し、フェーズ1は、0.58Mの重炭酸ナトリウムおよび0.71Mの炭酸ナトリウムを含有する溶液で制御した。溶存酸素を、必要により空気を散布することにより30%に制御し、60rpmで撹拌し、フィード培地は培地5(上記のように、グルタミンを含む、または含まない)であった。03P49B501を除くすべての培養物を130L規模で成長させ、03P49B501は500L規模で成長させた。簡単には、培地1は、相対的な取り込み速度の考慮なしにすべての栄養物が豊富であり、一方、培地12は、栄養分が無差別に豊富なバージョンから明らかに不必要な栄養分を除去することによりバランスをとった。培地10、11および12の比較を表27に示す。
【0236】
【表26】

【0237】
【表27−1】

【0238】
【表27−2】

【0239】
【表27−3】

【0240】
結果および結論
これらの実験を通じて、培地の変更により一様に改善された。細胞成長、生存率、低乳酸レベル、低アンモニウムレベルおよび力価の点で、低グルタミンレベルは、高いもの(図60〜64を参照)よりもより優れており、バランス化(バッチ)培地は、リッチ培地(培地1、図60〜64を参照)よりも優れていた。高密度接種で開始した培養物は、低密度接種で開始した培養物よりも高い最終力価を示した(図64を参照)。
【0241】
小規模バイオリアクターにおいて観察されるものとは異なって、第1の培地(高Glnを有する培地1)は、オリジナルプロセスよりも低い力価であった(図64を参照)。また、温度変化後の乳酸塩取り込みのシフトはなかった(図62を参照)。これは、この培地である程度の規模感受性が存在しうることを示唆している。この結論は、これらの中間規模実験と同様に、小規模(2L)並列運転によって指示されている(データは示していない)。グルタミンをあまり含まない後の培地組成は、規模に対して、少なくともこれらの実験において感受性がなかった(図60〜65を参照)。プロセスの繰り返し(バッチ2および3およびバッチ5および6)は、非常によい再現性を示しており(図60〜65を参照)、この計画で得られたすべてのデータは信頼性が高い。
【0242】
実施例16:培地9を用いるTNFR−Igの産生
物質および方法
IgG1のFc部位に結合したヒト75キロダルトン(p75)腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外リガンド−結合部からなる二量体融合タンパク質を発現するCHO細胞(「TNFR−Ig細胞」)を、潅流バイオリアクターから高密度で播種し、生産バイオリアクター工程に関して培地9で3×10生存細胞/mlに希釈した。
【0243】
結果および結論
図66、67、68、69、70、71および72は、それぞれ、細胞成長、細胞生存率、残存グルコース、グルタミンレベル、乳酸塩濃度、アンモニウム濃度および相対生産力価を示す。プロセスの軽い修飾の範囲では、すべての条件で、良好な細胞成長、高い細胞生存率および高い総最終力価が得られた。
【0244】
この実験のすべての条件に関して、代謝阻害性副産物の乳酸塩を消費するか、または濃度を頭打ちにし、乳酸塩産生を阻害することを示唆している。同様に、阻害性代謝産物アンモニウムに関して、濃度は最初に増加するが、温度シフト後しばらくして、アンモニウムは細胞により消費され始める。この実施例において、TNFR−Ig細胞培養物を、化学誘導物、酪酸ナトリウムおよびHMBAに付した。
【0245】
実施例17.大規模および小規模培養条件の比較
物質および方法
培養のサイズが、関連する培養特性に影響を与えるかどうかを決定するために、抗GDF−8細胞を、小規模1リットルバイオリアクターまたは大規模6000リットルバイオリアクターで成長させた。細胞を37℃で成長させ、4日目に31℃にシフトした。
【0246】
結果および結論
図73、74、75および76(それぞれ、細胞密度、力価、乳酸レベルおよびアンモニウムレベルを示す)に見ることができるように、6000リットルの大規模および1リットルの小規模培養間にこれらの特定に関して違いはなかった。乳酸塩およびアンモニウムレベルの両方とも、4日目に温度をシフトした後減少が始まった。これらの実施例は、培養物が同様の成長条件に付される場合、培養の規模が、細胞密度、細胞生存率、乳酸レベルおよびアンモニウムレベルに影響を与えないことを実証している。
【図面の簡単な説明】
【0247】
(原文に記載無し)
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】

【図32】

【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】

【図51】

【図52】

【図53】

【図54】

【図55】

【図56】

【図57】

【図58】

【図59】

【図60】

【図61】

【図62】

【図63】

【図64】

【図65】

【図66】

【図67】

【図68】

【図69】

【図70】

【図71】

【図72】

【図73】

【図74】

【図75】

【図76】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含有する哺乳動物細胞;および
グルタミンを含有し、(i)約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量、(ii)約2未満の累積アスパラギンに対するモル累積グルタミン比、(iii)約0.2未満の総累積アミノ酸に対するモル累積グルタミン比、(iv)約0.4〜1の総累積アミノ酸に対するモル累積無機イオン比、(v)約16mMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量、およびその組合せからなる群から選択される培地特性を有する培地;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%の範囲内の生存細胞密度まで該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下で該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下、第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項2】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含有する哺乳動物細胞;および
約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量を含有する培地;
ここに、該培地は、グルタミンを含有し;
さらに、該培地は、(i)約2未満の累積アスパラギンに対するモル累積グルタミン比、(ii)約0.2未満の総累積アミノ酸に対するモル累積グルタミン比、(iii)約0.4〜1の総累積アミノ酸に対するモル累積無機イオン比、(iv)約16mMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量、およびその組合せからなる群から選択される2つの培地特性を有する;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%の範囲内の生存細胞密度まで該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下、該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下、第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項3】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含む哺乳動物細胞;および
累積アスパラギンに対する比が約2未満であるモル累積グルタミンを含有する培地;
ここに、該培地は、グルタミンを含有し;
さらに、該培地は、(i)約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量を含有する培地、(ii)約0.2未満の総累積アミノ酸に対するモル累積グルタミン比、(iii)約0.4〜1の総累積アミノ酸に対するモル累積無機イオン比、(iv)約16mMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量、およびその組合せからなる群から選択される2つの培地特性を有する;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%の範囲内の生存細胞密度まで該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下で該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下で第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項4】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含有する哺乳動物細胞;および
総累積アミノ酸に対する比が約0.2未満であるモル累積グルタミンを含有する培地;
ここに、該培地は、グルタミンを含有し;
さらに、該培地は、(i)約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量を含有する培地、(ii)約2未満の累積アスパラギンに対するモル累積グルタミン比、(iii)約0.4〜1の総累積アミノ酸に対するモル累積無機イオン比、(iv)約16mMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量、およびその組合せからなる群から選択される2つの培地特性を有する;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%の範囲内の生存細胞密度まで該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下、該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下、第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項5】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含有する哺乳動物細胞;および
総累積アミノ酸に対する比が約0.4〜1であるモル累積無機イオンを含有する培地;
ここに、該培地は、グルタミンを含有し;
さらに、該培地は、(i)約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量を含有する培地、(ii)約2未満の累積アスパラギンに対するモル累積グルタミン比、(iii)約0.2未満の総累積アミノ酸に対するモル累積グルタミン比、(iv)約16mMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量、およびその組合せからなる群から選択される2つの培地特性を有する;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%の範囲内の生存細胞密度まで該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下、該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下、第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項6】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含有する哺乳動物細胞;および
約16mMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量を含有する培地;
ここに、該培地は、グルタミンを含有し;
さらに、該培地は、(i)約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量、(ii)約2未満の累積アスパラギンに対するモル累積グルタミン比、(iii)約0.2未満の総累積アミノ酸に対するモル累積グルタミン比、(iv)約0.4〜1の総累積アミノ酸に対するモル累積無機イオン比、およびその組合せからなる群から選択される2つの培地特性を有する;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%の範囲内の生存細胞密度まで該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下、該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下、第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項7】
少なくとも1つの培養条件を変更する工程における該細胞培養条件が、(i)温度、(ii)pH、(iii)重量オスモル濃度、(iv)化学誘導剤レベル、およびその組合せからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該培地の初期グルタミン濃度が13mM以下である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該培地の初期グルタミン濃度が10mM以下である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該培地の初期グルタミン濃度が7mM以下である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
該培地の初期グルタミン濃度が4mM以下である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
該培地のグルタミンの単位体積あたりの総累積量が13mM以下である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
該培地のグルタミンの単位体積あたりの総累積量が10mM以下である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
該培地のグルタミンの単位体積あたりの総累積量が7mM以下である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
該培地のグルタミンの単位体積あたりの総累積量が4mM以下である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
グルタミンが、細胞培養の開始時に初期培地にのみ与えられる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
培地における溶解鉄濃度が5μMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項18】
該培養の生存細胞密度を定期的に測定する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
該培養の生存率を定期的に測定する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
該培地の該乳酸レベルを定期的に測定する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
該培養の該アンモニウムレベルを定期的に測定する、請求項1記載の方法。
【請求項22】
該培養の該力価を定期的に測定する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
該培養のオスモル濃度を定期的に測定する、請求項1記載の方法。
【請求項24】
該測定が毎日行われる、請求項18〜23記載の方法。
【請求項25】
該哺乳動物細胞の初期密度が少なくとも2×10細胞/mLである、請求項1記載の方法。
【請求項26】
該哺乳動物細胞の初期密度が少なくとも2×10細胞/mLである、請求項1記載の方法。
【請求項27】
該哺乳動物細胞の初期密度が少なくとも2×10細胞/mLである、請求項1記載の方法。
【請求項28】
該哺乳動物細胞の初期密度が少なくとも2×10細胞/mLである、請求項1記載の方法。
【請求項29】
該哺乳動物細胞の初期密度が少なくとも2×10細胞/mLである、請求項1記載の方法。
【請求項30】
該哺乳動物細胞の初期密度が少なくとも5×10細胞/mLである、請求項1記載の方法。
【請求項31】
該哺乳動物細胞の初期密度が少なくとも10×10細胞/mLである、請求項1記載の方法。
【請求項32】
供給工程が少なくとも約1000Lの培養物を供給することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項33】
供給工程が少なくとも約2500Lの培養物を供給することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項34】
供給工程が少なくとも約5000Lの培養物を供給することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項35】
供給工程が少なくとも約8000Lの培養物を供給することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項36】
供給工程が少なくとも約10,000Lの培養物を供給することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項37】
供給工程が少なくとも約12,000Lの培養物を供給することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項38】
該第1の条件が約30〜42℃の第1の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項39】
該第1の条件が約32〜40℃の第1の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項40】
該第1の条件が約34〜38℃の第1の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項41】
該第1の条件が約36〜37℃の第1の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項42】
該第1の条件が約37℃の第1の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項43】
該第2の条件が約25〜41℃の第2の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項44】
該第2の条件が約27〜38℃の第2の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項45】
該第2の条件が約29〜35℃の第2の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項46】
該第2の条件が約29〜33℃の第2の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項47】
該第2の条件が約30〜32℃の第2の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項48】
該第2の条件が約31℃の第2の温度範囲を含む、請求項1記載の方法。
【請求項49】
さらに、少なくとも1つの培養条件を変更する第1の変更に続く、少なくとも1つの培養条件を変更し、第3の条件を培養物に適用する第2の変更段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項50】
第2の変更段階が、(i)温度、(ii)pH、(iii)重量オスモル濃度、(iv)化学誘導剤レベル、およびその組合せからなる群から選択される、少なくとも1つの培養条件を変更することを含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
該第3の条件が約25〜40℃の第3の温度範囲を含む、請求項49記載の方法。
【請求項52】
該第3の条件が約27〜37℃の第3の温度範囲を含む、請求項49記載の方法。
【請求項53】
該第3の条件が約29〜34℃の第3の温度範囲を含む、請求項49記載の方法。
【請求項54】
該第3の条件が約30〜32℃の第3の温度範囲を含む、請求項49記載の方法。
【請求項55】
該第1の期間が0〜8日である、請求項1記載の方法。
【請求項56】
該第1の期間が1〜7日である、請求項1記載の方法。
【請求項57】
該第1の期間が2〜6日である、請求項1記載の方法。
【請求項58】
該第1の期間が3〜5日である、請求項1記載の方法。
【請求項59】
該第1の期間が約4日である、請求項1記載の方法。
【請求項60】
該第1の期間が約5日である、請求項1記載の方法。
【請求項61】
該第1の期間が約6日である、請求項1記載の方法。
【請求項62】
該第1の期間と第2の期間の合計が少なくとも5日である、請求項1記載の方法。
【請求項63】
第2の期間、該培養物を維持する工程において、培地における乳酸レベルが最大限のレベルに到達した後に減少する、請求項1記載の方法。
【請求項64】
第2の期間、該培養物を維持する工程において、培地におけるアンモニウムレベルが最大限のレベルに到達した後に減少する、請求項1記載の方法。
【請求項65】
該生産されたTNFR−Igの総量が、該培地特性を欠くが他は同一の培地における他は同一の条件下で生産されたTNFR−Igの量の少なくとも1.5倍を超える、請求項1記載の方法。
【請求項66】
該生産されたTNFR−Igの総量が、該培地特性を欠くが他は同一の培地における他は同一の条件下で生産されたTNFR−Igの量の少なくとも2倍を超える、請求項1記載の方法。
【請求項67】
さらに、該細胞培養物に補足成分を供給する、請求項1記載の方法。
【請求項68】
該補足成分を複数回供給する、請求項67記載の方法。
【請求項69】
該補足成分が、ホルモンおよび/または他の成長因子、特定のイオン(例えば、ナトリウムイオン、塩化物イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンまたはリン酸イオン)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(通常、非常に低い最終濃度で存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質またはグルコースあるいは他のエネルギー源からなる群から選択される、請求項67記載の方法。
【請求項70】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含有する哺乳動物細胞;および
グルタミンを含有し、i)約70mMを超える出発アミノ酸濃度、ii)約2未満のアスパラギンに対するモルグルタミン比、iii)約0.2未満の総アミノ酸に対するモルグルタミン比、iv)約0.4〜1の総アミノ酸に対するモル無機イオン比、およびv)約16mMを超えるグルタミンとアスパラギンの組合せ濃度からなる群から選択される少なくとも2つの培地特性を有する合成培地;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%の範囲内まで該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下で該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下、第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項71】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含有する哺乳動物細胞;および
グルタミンを含有し、i)約70mMを超える出発アミノ酸濃度、ii)約2未満のアスパラギンに対するモルグルタミン比、iii)約0.2未満の総アミノ酸に対するモルグルタミン比、iv)約0.4〜1の総アミノ酸に対するモル無機イオン比およびv)約16mMを超えるグルタミンとアスパラギンの組合せ濃度からなる群から選択される少なくとも3つの培地特性を有する合成培地;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%内で該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下、該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下、第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項72】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含有する哺乳動物細胞;および
グルタミンを含有し、i)約70mMを超える出発アミノ酸濃度、ii)約2未満のアスパラギンに対するモルグルタミン比、iii)約0.2未満の総アミノ酸に対するモルグルタミン比、iv)約0.4〜1の総アミノ酸に対するモル無機イオン比およびv)約16mMを超えるグルタミンとアスパラギンの組合せ濃度からなる群から選択される少なくとも4つの培地特性を有する合成培地;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%内で該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下、該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下、第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項73】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含有する哺乳動物細胞;および
グルタミンを含有し、i)約70mMを超える出発アミノ酸濃度、ii)約2未満のアスパラギンに対するモルグルタミン比、iii)約0.2未満の総アミノ酸に対するモルグルタミン比、iv)約0.4〜1の総アミノ酸に対するモル無機イオン比、およびv)約16mMを超えるグルタミンとアスパラギンの組合せ濃度により特徴付けられる合成培地;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%の範囲内まで該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下で該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下、第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項74】
大規模生産細胞培養におけるTNFR−Igの製造方法であって、下記工程:
細胞培養条件下で発現し、TNFR−Igをコードする遺伝子を含有する哺乳動物細胞;および
グルタミンを含有し、約16mMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量を有する培地;
を含む細胞培養物を供給すること;
初期成長フェーズにおいて、該培養物が第1の培養条件下に維持された場合に、可能な最大生存細胞密度の約20%〜80%内で該細胞に再生産させるのに十分な第1の期間、第1の培養条件下、該培養物を維持すること;
少なくとも1つの培養条件を変更して、第2の培養条件を適用すること;
第2の条件下、第2の期間、該培養物を維持して、TNFR−Igを細胞培養物中に堆積させること;
を含む方法。
【請求項75】
該培地が、グルタミンを含有し、(i)約70mMを超える出発アミノ酸濃度、(ii)約2未満の出発アスパラギンに対する出発グルタミン比、(iii)約0.2未満の出発総アミノ酸に対するモル出発グルタミン比、(iv)約0.4〜1の出発総アミノ酸に対するモル出発無機イオン比、(v)約16mMを超える出発グルタミンと出発アスパラギンの組合せ濃度、およびその組合せからなる群から選択される培地特性を有する培地を含む、請求項1記載の方法。
【請求項76】
該乳酸レベルが、該培地特性を欠くが他は同一の培地における他は同一の条件下で観察される乳酸レベルよりも低く、
該アンモニウムレベルが、該培地特性を欠くが他は同一の培地における他は同一の条件下で観察されるアンモニウムレベルよりも低く、
生産されたTNFR−Igの総量が、該培地特性を欠くが他は同一の培地における他は同一の条件下で観察される量より少なくとも多い、
請求項1〜6または70〜75いずれか1項記載の方法。
【請求項77】
該培養物に、該TNFR−Igの生産の間さらなる成分を補足しない、請求項1記載の方法。
【請求項78】
該培養物に、該TNFR−Igの生産の間さらなるグルタミンを補足しない、請求項1記載の方法。
【請求項79】
該培養物におけるグルタミン濃度が、第2の培養条件に変更する段階の前に実質的に無くなる、請求項1記載の方法。
【請求項80】
該培養物におけるグルタミン濃度が、第2の培養条件に変更する段階とほぼ同時に実質的に無くなる、請求項1記載の方法。
【請求項81】
該培養物において、グルタミンの代わりにグリシルグルタミンを用いる、請求項1記載の方法。
【請求項82】
該培地が、(i)約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量、(ii)累積アスパラギンに対して約2未満の比であるモル累積グルタミン、(iii)総累積アミノ酸に対して約0.2未満の比であるモル累積グルタミン、(iv)総累積アミノ酸に対して約0.4〜1の比であるモル累積無機イオンおよび(v)約16mMを超えるグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項83】
該培地が、(i)約70mMを超える単位体積あたりの累積アミノ酸量、(ii)総累積アミノ酸に対して約0.2未満の比であるモル累積グルタミン、(iii)総累積アミノ酸に対して約0.4〜1の比であるモル累積無機イオンおよび(iv)約16amMを超える単位体積あたりのグルタミンおよびアスパラギンを合わせた累積量を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項84】
該培地における、単位体積あたりのヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシンおよびプロリンの総累積量が約25mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項85】
該培地における、単位体積あたりのヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシンおよびプロリンの総累積量が約35mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項86】
該培地における、単位体積あたりのヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシンおよびプロリンの初期総量が約25mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項87】
該培地における、単位体積あたりのヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシンおよびプロリンの初期総量が約35mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項88】
該培地が:
(i)約1.7mMを超える、単位体積あたりのヒスチジンの総累積量;
(ii)約3.5mMを超える、単位体積あたりのイソロイシンの総累積量;
(iii)約5.5mMを超える、単位体積あたりのロイシンの総累積量;
(iv)約2.0mMを超える、単位体積あたりのメチオニンの総累積量;
(v)約2.5mMを超える、単位体積あたりのフェニルアラニンの総累積量;
(vi)約2.5mMを超える、単位体積あたりのプロリンの総累積量;
(vii)約1.0mMを超える、単位体積あたりのトリプトファンの総累積量;
(viii)約2.0mMを超える、単位体積あたりのチロシンの総累積量;および
(ix)約2.5mMを超える、単位体積あたりのプロリンの総累積量、
からなる群から選択される培地特性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項89】
該培地が:
(i)約1.7mMを超える、単位体積あたりのヒスチジンの初期容量;
(ii)約3.5mMを超える、単位体積あたりのイソロイシンの初期容量;
(iii)約5.5mMを超える、単位体積あたりのロイシンの初期容量;
(iv)約2.0mMを超える、単位体積あたりのメチオニンの初期容量;
(v)約2.5mMを超える、単位体積あたりのフェニルアラニンの初期容量;
(vi)約2.5mMを超える、単位体積あたりのプロリンの初期容量;
(vii)約1.0mMを超える、単位体積あたりのトリプトファンの初期容量;
(viii)約2.0mMを超える、単位体積あたりのチロシンの初期容量;および
(ix)約2.5mMを超える、単位体積あたりのプロリンの初期容量、
からなる群から選択される培地特性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項90】
該培地における単位体積あたりのセリンの総累積量が約7mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項91】
該培地における単位体積あたりのセリンの総累積量が約10mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項92】
該培地における単位体積あたりのアスパラギンの総累積量が約8mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項93】
該培地における単位体積あたりのアスパラギンの総累積量が約12mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項94】
該培地における単位体積あたりのアスパラギンの総累積量が約8mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項95】
該培地における単位体積あたりのアスパラギンの総累積量が約12mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項96】
該培地における単位体積あたりのリンの総累積量が約2.5mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項97】
該培地における単位体積あたりのリンの総累積量が約5mMを超える、請求項1記載の方法。
【請求項98】
該培地における単位体積あたりのグルタミン酸塩の総累積量が約1mM未満である、請求項1記載の方法。
【請求項99】
該培地における単位体積あたりのパントテン酸カルシウムの総累積量が約8mg/Lを超える、請求項1記載の方法。
【請求項100】
該培地における単位体積あたりのパントテン酸カルシウムの総累積量が約20mg/Lを超える、請求項1記載の方法。
【請求項101】
該培地における単位体積あたりのニコチンアミドの総累積量が約7mg/Lを超える、請求項1記載の方法。
【請求項102】
該培地における単位体積あたりのニコチンアミドの総累積量が約25mg/Lを超える、請求項1記載の方法。
【請求項103】
該培地における単位体積あたりのピリドキシンおよびピリドキサルの総累積量が約5mg/Lを超える、請求項1記載の方法。
【請求項104】
該培地における単位体積あたりのピリドキシンおよびピリドキサルの総累積量が約35mg/Lを超える、請求項1記載の方法。
【請求項105】
該培地における単位体積あたりのリボフラビンの総累積量が約1.0mg/Lを超える、請求項1記載の方法。
【請求項106】
該培地における単位体積あたりのリボフラビンの総累積量が約2.0mg/Lを超える、請求項1記載の方法。
【請求項107】
該培地における単位体積あたりのチアミン塩酸塩の総累積量が約7mg/Lを超える、請求項1記載の方法。
【請求項108】
該培地における単位体積あたりのチアミン塩酸塩の総累積量が約35mg/Lを超える、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2008−511330(P2008−511330A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530167(P2007−530167)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/030439
【国際公開番号】WO2006/026447
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(507063300)ワイス・リサーチ・アイルランド・リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】WYETH RESEARCH IRELAND LIMITED
【Fターム(参考)】