説明

TOC計

【課題】
希釈水容器2の転倒を防止する機構を設ける。その際、希釈水容器2をTOC計本体1から取り外し易い構造にすると共に、TOC計に希釈水を運ぶチューブ3を希釈水容器2に挿入し易い構造にする。
【解決手段】
希釈水容器格納スペース16に格納された希釈水容器2が転倒しそうになった場合、傾いた希釈水容器2が押さえ部14に接触することで希釈水容器2の転倒を防止する。また、希釈水容器2を希釈水容器格納スペース16から取り出し易いように、TOC計本体1と希釈水容器2の間には指で希釈水容器2を掴んだり押さえたりして容器を取り出せるように、希釈水容器2周辺に指を挿入することができるスペース15を設ける。そして、スペース15は、希釈水容器格納スペース16に格納した希釈水容器2の容器口にチューブ3を挿入する作業を行うために指でチューブ3を握ることができるように、指を挿入する空間としての役割も兼ね備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水、水道水、下水、純水、その他各種用水に含まれる有機性汚濁物の総量を測定する分析装置に関するものである。
【従来の技術】
【0002】
近年、水質調査において全有機体炭素(TOC)及び全窒素(TN)の測定が重要な項目の一つになっており、TOCやTNの測定には燃焼酸化プロセスを用いたTOC計が用いられている。従来、例えば水中のTOCを測定する水質自動分析装置としては、予めバブリング等により無機体炭素(IC)が除去された試料を酸化反応管で燃焼させ、発生した二酸化炭素を測定することで直接TOC濃度を測定するもの、又はICを含んだまま試料を燃焼させ、測定された全炭素の測定値から、別途測定したICの測定値を差し引くことでTOC濃度を測定するもの等が知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
通常、燃焼酸化方式の水質計測器では、試料をキャリアガス通気のもと、一定量を600〜900℃に加熱された酸化反応管に注入し、燃焼酸化分解により検出したい元素成分をガス化することでキャリアガスと共に検出器に導入し、計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−232695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4は従来のTOC計の斜視図である。TOC計本体1には、試料の希釈や洗浄に使用する希釈水が必要であり、希釈水は2リットル程度の比較的大きな希釈水容器2に入れられている。従来、希釈水容器2はTOC計1の横にそのまま置いており、特に転倒防止の措置を施していなかったことから、希釈水容器2が転倒する事故が起こっており、特に、希釈水容器2に入れられた希釈水の容量が少なくなると、希釈水容器2は安定性がなくなりよく転倒していた。そのため、希釈水容器2の転倒を防止するための機構を設けることが必要となる。
【0006】
一方、希釈水は時間の経過により汚染され、汚染された希釈水を用いて分析を行うと分析の精度が下がることから、1週間に1回程度は希釈水を交換することが必要になる。このように定期的に希釈水容器2をTOC計本体1から取り外して希釈水を交換する作業が必要になるため、転倒を防止する機構として希釈水容器2を固定するベルト等を採用すると、TOC計本体1から希釈水容器2を取り外す際に手間や時間がかかる。そのため、希釈水容器2をTOC計本体1から取り外し難くならないような構造によって、希釈水容器2の転倒を防止する必要がある。
【0007】
また、希釈水容器2にはTOC計本体1に希釈水を送液するためのチューブ3が挿入されており、希釈水容器2をTOC計本体1から着脱する際は、チューブ3の挿入又は抜出作業が必要になるため、希釈水容器2の転倒を防止する機構を設けることによって、本作業に支障をきたさないようにしなければならない。
【0008】
さらに、転倒を防止する機構を新たな部品で設けると部品点数が増えコストも嵩むことになる。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決することができる希釈水容器の転倒防止機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明は、酸化剤の添加された試料水を酸化分解し、酸化分解された試料水の吸光度を測定することで試料水中の分析対象成分を測定するTOC計において、前記TOC計の側面部に前記試料水を希釈するための希釈水を入れた希釈水容器を格納するために設けられた凹部と、前記希釈水容器が傾いた場合に前記希釈水容器が一定以上は傾かないように、前記希釈水容器を押さえる希釈水容器転倒防止部を備えたことを特徴とするTOC計である。
【0011】
そして、前記TOC計における前記希釈水容器転倒防止部は、前記TOC計のケースの一部分によって形成してもよい。
【0012】
また、前記TOC計には、前記TOC計のケースと前記希釈水容器の間に、手の指を入れて前記希釈水容器に挿入されたチューブを掴んで指を動かすことが可能な大きさの空間を設けてもよい。
【0013】
あるいは、前記TOC計のケースと前記希釈水容器の間に、手の指を入れて前記希釈水容器を押さえ又は掴んで前記希釈水容器を前記TOC計から取り外すことができる大きさの空間を設けてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、希釈水容器転倒防止部によって希釈水容器の転倒を防ぐことができる。また、TOC計のケース側面に設けられた凹部に希釈水容器を格納することで、希釈水容器2をTOC計から簡単に取り外しすることができるため、ベルト等を利用した転倒防止機構と比べて、簡単に希釈水容器を着脱することが可能になる。
【0015】
また、TOC計のケースで希釈水容器を押さえれば、新たな部品を使用しなくて済むため、TOC計のケースの一部の形状を希釈水容器の形状に合わせて形成して、希釈水容器をTOC計のケースの一部で転倒しないように押さえることで、TOC計のケースを希釈水容器転倒防止部にすることができる。
【0016】
さらに、希釈水容器から希釈水をTOC計に送り出すためにTOC計に装着されたチューブを希釈水容器の容器口に挿入する際にTOC計と希釈水容器の容器口の間にスペースを設けることで、TOC計に希釈水容器が装着された状態で、チューブを指で握りながら、チューブを希釈水容器に挿入することや、チューブの位置を調整することが可能になる。
【0017】
また、TOC計と希釈水容器の間のスペースに指を入れて希釈水容器を掴んだり押さえたりすることで、TOC計から希釈水容器を簡易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用するTOC計の側面図。
【図2】本発明を適用するTOC計の正面図。
【図3】TOC計の概略構成図。
【図4】従来のTOC計の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3はTOC計としての全有機体炭素測定装置の概略構成図である。4は試料調製槽であり、試料水が常時流れており、チューブを介してマルチポートバルブ5の1つのポートに接続されており、測定時に試料水が採水される。
【0020】
マルチポートバルブ5の他のポートには、試料水から無機体炭素を除去するための酸試薬容器6と、試料水を希釈するための希釈水容器2と、測定値の校正などに用いる標準液容器7が接続されている。マルチポートバルブ5の共通ポートにはシリンジポンプ8が接続されている。シリンジポンプ8はマルチポートバルブ5の切り替えにより、各容器からの液を計量したり混合したり撹拌したりする。
【0021】
試料水を酸化して気化するための酸化反応管9(燃焼管)は、マルチポートバルブ5のポートの一つに接続されている。コンプレッサー10はシリンジポンプ8又は酸化反応管9に空気を送るための機構であり、空気の流量を制御する流量制御部11を介して、シリンジポンプ8のスパージガス導入部8aと酸化反応管9の試料水導入部9aに接続されている。シリンジポンプ8に送られる空気は爆気処理により試料水中の無機体炭素を除去するスパージガスとして、酸化反応管9に送られる空気は試料水を導通するためのキャリアガスとして用いられる。
【0022】
酸化反応管9の排出部9bは二酸化炭素検出部9に接続されている。二酸化炭素検出部12では、例えばNDIR(非分散形赤外分光光度計)により二酸化炭素が測定されるようになっている。二酸化炭素検出部9で測定された値はデータ処理部13によりTOC濃度に変換される。
【0023】
図1は本発明を適用するTOC計の側面図であり、図2は本発明を適用するTOC計の正面図である。図1、図2を用いて希釈水容器2の転倒を防止する機構について説明する。
【0024】
TOC計本体1は、ケース20の中に酸化反応管9等の各部品を格納しており、ケース20は一部が凹んでおり、その凹み側面には酸試薬容器6を取り付ける酸試薬容器ホルダー17、標準液容器7を取り付ける標準液容器ホルダー18が設けられている。また、その凹み部分には、希釈水容器2を格納する希釈水容器格納スペース16が設けられている。希釈水容器2に入れられる希釈水は1週間に1回程度交換する必要があることから、希釈水容器2を簡単にTOC計本体1から出し入れできる必要がある。そのため、希釈水容器2を希釈水容器格納スペース16に簡単に出し入れできるように、希釈水容器格納スペース16にカバーやフタ等は設けられていない。また、希釈水容器2を希釈水容器格納スペース16から取り出し易くするために、希釈水容器2を手で掴んだり押さえたりしながら希釈水容器2を取り出せるように、TOC計本体1と希釈水容器2の間にはスペース15が設けられている。
【0025】
希釈水容器格納スペース16に格納された希釈水容器2は、外部からの振動や衝撃によって傾いて転倒しそうになった場合、一定の角度まで傾いた時点で、希釈水容器2は押さえ部14によってそれ以上傾いて転倒しないように押さえられる。また、押さえ部14を希釈水容器2の上面に設けることで希釈水容器2がどちらの方向に倒れそうになっても、一定以上傾いた時点で希釈水容器2が押さえ部14に接触するため、希釈水容器2の転倒を防止することができる。そして、押さえ部14は、TOC計本体1のケースの一部分で希釈水容器2を押さえることができるようにしているため、新しい部品を設ける必要もなく、部品点数やコスト面において優れている。なお、押さえ部14は希釈水容器2と接触しておらず、希釈水容器2を押さえ部14と地面の間で挟むことで、希釈水容器2が一定以上に傾くことを防止しているが、希釈水容器2が傾いていない状態で希釈水容器2と押さえ部14を接触させ、希釈水容器2が傾かないように押さえておくようにしてもよい。
【0026】
また、希釈水容器2の容器口には、希釈水をTOC計本体1に導入するためのチューブ3が挿入されているが、希釈水容器格納スペース16に格納した希釈水容器2の容器口にチューブ3を挿入し又は抜出す作業を行うために、容器口周辺にはチューブ3を手で掴んだ状態で容器口周辺で手を動かすための空間が必要になることから、TOC計本体1と希釈水容器2の間にはスペース15が設けられている。このようにして、TOC計本体1に希釈水容器2が格納された状態で、チューブを指で握りながら、チューブ3を希釈水容器2に挿入することや、チューブ3の位置を調整すること等が可能になる。また、スペース15には水平方向へ広がる第2スペース19が設けられており、作業者はこの空間に指をいれてチューブの挿入や調整作業を行うことで、指でチューブを隠すことなく、これらの作業を行うことが出来る。
【0027】
なお、本実施例においては、スペース15を使って、希釈水容器2の取り出し作業及びチューブ3を希釈水容器2に挿入し調整等をする作業を行うために、スペース15の配置、大きさは、希釈水容器2の取り出し作業が行えるように、希釈水容器2を手で掴んだり押さえたりしながら希釈水容器2を取り出せる配置、大きさとし、チューブ3を希釈水容器2に挿入し調整等する作業を行えるように、指でチューブを握れ、指でチューブを隠さないように指を挿入する空間を形成できるような位置、大きさとしている。ただ、本実施例のように一つの空間で2つの作業空間を兼ねるのではなく、それぞれの作業用に別々の空間を設けるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 TOC計本体
2 希釈水容器
3 チューブ
4 試料調製槽
5 マルチポートバルブ
6 酸試薬容器
7 標準液容器
8 シリンジポンプ
8a スパージガス導入部
9 酸化反応管
9a 試料水導入部
9b 排出部
10 コンプレッサー
11 流量制御部
12 二酸化炭素検出部
13 データ処理部
14 押さえ部
15 スペース
16 希釈水容器格納スペース
17 酸試薬容器ホルダー
18 標準液容器ホルダー
19 第2スペース
20 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤の添加された試料水を酸化分解し、酸化分解された試料水の吸光度を測定することで試料水中の分析対象成分を測定するTOC計において、
前記TOC計の側面部に前記試料水を希釈するための希釈水を入れた希釈水容器を格納するために設けられた凹部と、
前記希釈水容器が傾いた場合に前記希釈水容器が一定以上は傾かないように、前記希釈水容器を押さえる希釈水容器転倒防止部を備えたことを特徴とするTOC計。
【請求項2】
前記希釈水容器転倒防止部は、前記TOC計のケースの一部分によって形成したことを特徴とする請求項1に記載されたTOC計。
【請求項3】
前記TOC計のケースと前記希釈水容器の間に、手の指を入れて前記希釈水容器に挿入されたチューブを掴んで指を動かすことが可能な大きさの空間を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載されたTOC計。
【請求項4】
前記TOC計のケースと前記希釈水容器の間に、手の指を入れて前記希釈水容器を押さえ又は掴んで前記希釈水容器を前記TOC計から取り外すことができる大きさの空間を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載されたTOC計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−103189(P2012−103189A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253547(P2010−253547)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】