説明

TOLL様受容体3アンタゴニスト

TOLL様受容体3(TLR3)抗体アンタゴニスト、TLR3抗体アンタゴニスト又はそのフラグメントをコードしたポリヌクレオチド、並びに上記を製造及び使用する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全容をいずれも本出願に参照により組み入れる、2008年10月31日出願の米国仮特許出願第61/109974号、及び2009年3月20日出願の米国仮特許出願第61/161860号、及び2009年3月31日出願の米国仮特許出願第61/165100号、及び2009年4月29日出願の米国仮特許出願第61/173686号の恩典を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、TOLL様受容体3(TLR3)抗体アンタゴニスト、TLR3抗体アンタゴニスト又はそのフラグメントをコードしたポリヌクレオチド、並びに上記を製造及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
TOLL様受容体(TLR)は、細菌、ウイルス、寄生虫、及び場合によりホスト由来のリガンドに応答して自然免疫反応の活性化を調節し、シグナル伝達カスケードを開始させることによって獲得免疫の発動に影響を及ぼす(Lancaster et al.,J Physiol.563:945〜955,2005)。細胞膜に局在するTLRであるTLR1、TLR2、TLR4及びTLR6は、細菌及び真菌のタンパク質または脂質成分を含むリガンドを認識する。主として細胞内に存在するTLRであるTLR3、TLR7及びTLR9は、それぞれ2本鎖RNA、1本鎖RNA及び非メチル化CpG DNAに対して応答する。TLRシグナル伝達の調節不全は様々な問題を引き起こすため、この系に対して治療法が開発されている(Hoffman et al.,Nat.Rev.Drug Discov.4:879〜880,2005;Rezaei,Int.Immunopharmacol.6:863〜869,2006;Wickelgren,Science 312:184〜187,2006)。例えば、TLR4、並びにTLR7及び9のアンタゴニストがそれぞれ重度の敗血症及びループスに対して臨床開発中である(Kanzler et al.,Nat.Med.13:552〜559,2007)。
【0004】
TLR3シグナル伝達は、炎症又はウイルス感染時に壊死細胞から放出される2本鎖DNA、mRNA又はRNAによって活性化される。TLR3の活性化によってインターフェロン及び炎症性サイトカインの分泌が誘導され、特定の微生物感染において保護作用のある免疫細胞の活性化及び動員が誘発される。例えば、ドミナントネガティブなTLR3対立遺伝子では、小児期におけるHSV−1による一次感染時に単純ヘルペス脳炎を発症しやすくなることが示されている(Zheng et al.,Science 317:1522〜1527 2007)。.マウスではTLR3の欠損は、コクサッキーウイルスによるチャレンジ試験における生存率の低下との関連が示されている(Richer et al.,PLoS One 4:e4127,2009)。また一方、制御不能又は調節不全のTLR3シグナル伝達が、ウェストナイル、フレボウイルス、ワクシニア、及びA型インフルエンザなどの特定のウイルス感染モデルにおいて罹患率及び死亡率に寄与することが示されている(Wang et al.,Nat.Med.10:1366〜1373,2004;Gowen et al.,J.Immunol.177:6301〜6307,2006;Hutchens et al.,J.Immunol.180:483〜491,2008;Le Goffic et al.,PloS Pathog.2:E53,2006)。
【0005】
TLR3は、広範な炎症性疾患、免疫介在性疾患、及び自己免疫疾患の発症機序を発動させることが更に示されており、こうした疾患には、例えば敗血症性ショック(Cavassani et al.,J.Exp.Med.205:2609〜2621,2008)、急性肺傷害(Murray et al.,Am.J.Respir.Crit.Care Med.178:1227〜1237,2008)、リウマチ様関節炎(Kim et al.,Immunol.Lett.124:9〜17,2009;Brentano et al.,Arth.Rheum.52:2656〜2665,2005)、喘息(Sugiura et al.,Am.J.Resp.Cell Mol.Biol.40:654〜662,2009;Morishima et al.,Int.Arch.Allergy Immunol.145:163〜174,2008;Stowell et al.,Respir.Res.10:43,2009)、クローン病及び潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(Zhou et al.,J.Immunol.178:4548〜4556,2007;Zhou et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)104:7512〜7515,2007)、自己免疫性肝疾患(Lang et al.,J.Clin.Invest.116:2456〜2463,2006)、並びにI型糖尿病(Dogusan et al.Diabetes 57:1236〜1245,2008;Lien and Zipris,Curr.Mol.Med.9:52〜68,2009)が含まれる。更に、TLR3発現の臓器特異的な増大が、肝組織の原発性胆汁性肝硬変(Takii et al.,Lab Invest.85:908〜920,2005)、リウマチ様関節炎の関節(Ospelt et al.,Arthritis Rheum.58:3684〜3692,2008)、及びアレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜(Fransson et al.,Respir.Res.6:100,2005)などの調節不全の局所炎症反応によって発動される多くの病的状態と相関していることが示されている。
【0006】
壊死状態では、内因性のmRNAを含む細胞内容物が放出されることによってサイトカイン、ケモカイン、及び局所炎症を誘導し、死細胞の残留物の除去を促進し、損傷を修復する他の因子の分泌が誘発される。壊死はしばしば炎症反応を持続させ、慢性又は過剰な炎症に寄与する(Bergsbaken et al.,Nature Reviews 7:99〜109,2009)。壊死部位におけるTLR3の活性化は、これらの異常な炎症反応に寄与し、放出されたTLR3リガンドを介して更なる炎症性のポジティブなフィードバックループを生じうる。したがって、TLR3に対する拮抗性は慢性及び過剰な炎症及び/又は壊死を含む様々な疾患において有用でありうる。
【0007】
TLR3の活性の下方調節も、腎細胞癌及び頭頸部扁平上皮癌を含む腫瘍学的適応症に対する新たな治療法を代表しうるものである(Morikawa et al.,Clin.Cancer Res.13:5703〜5709,2007;Pries et al.,Int.J.Mol.Med.21:209〜215,2008)。更に、活性が低いタンパク質をコードするTLR3L423F対立遺伝子は、進行した「萎縮型」加齢黄斑変性症に対する保護作用との関連が示されており(Yang et al.,N.Engl.J.Med.359:1456〜1463,2008)、TLR3アンタゴニストがこの疾患に有効である可能性を示唆するものである。
【0008】
炎症状態にともなう病理及び感染症にともなう病理などの他の病理が健康及び経済に及ぼす影響は多大なものである。しかしながら、多くの医学領域における進歩にも関わらず、これらの状態の多くでは、治療上の選択肢及び治療法は比較的少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、TLR3に関連する状態を治療するためにTLR3活性を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、配列番号2の残基K467、R488又はR489からなる群から選択される少なくとも1つのTLR3アミノ酸残基に結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0011】
本発明の一態様は、配列番号2の残基D116又はK145からなる群から選択される少なくとも1つのTLR3アミノ酸残基に結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0012】
本発明の別の態様は、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体であって、以下の性質の少なくとも1つを有する抗体である。すなわち、
a.インビトロのポリ(I:C)NF−kBレポーター遺伝子アッセイにおいてヒトTLR3の生物学的活性を1μg/ml未満で50%よりも大きく低減させるか、
b.100ng/ml未満のポリ(I:C)で刺激したBEAS−2B細胞からのIL−6又はCXCL10/IP−10の産生を10μg/ml未満で60%よりも大きく阻害するか、
c.100ng/ml未満のポリ(I:C)で刺激したBEAS−2B細胞からのIL−6又はCXCL10/IP−10の産生を0.4μg/ml未満で50%よりも大きく阻害するか、
d.62.5ng/mlのポリ(I:C)で刺激したNHBE細胞からのIL−6の産生を5μg/ml未満で50%よりも大きく阻害するか、
e.62.5ng/mlのポリ(I:C)で刺激したNHBE細胞からのIL−6の産生を1μg/ml未満で50%よりも大きく阻害するか、
f.ポリ(I:C)により誘導したIFN−γ、IL−6又はIL−12のPBMC細胞による産生を1μg/ml未満で20%よりも大きく阻害するか、
g.インビトロでのNF−κBレポーター遺伝子アッセイにおいてカニクイザルのTLR3の生物学的活性をIC50<10μg/mlとなるように阻害するか、又は、
h.インビトロでのISREレポーター遺伝子アッセイにおいてカニクイザルのTLR3の生物学的活性をIC50<5μg/mlとなるように阻害する。
【0013】
本発明の別の態様は、特定の重鎖相補性決定領域(CDR)1、2及び3のアミノ酸配列、特定の軽鎖CDR1、2及び3のアミノ酸配列、特定の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列、又は特定の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体とTLR3との結合について競合する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体である。
【0014】
本発明の別の態様は、重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体であって、特定の重鎖相補性決定領域(CDR)1、2及び3、並びに特定の軽鎖CDR1、2及び3のアミノ酸配列を有する抗体である。
【0015】
本発明の別の態様は、重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体であって、特定の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列、及び特定の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を有する抗体である。
【0016】
本発明の別の態様は、重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体であって、特定の重鎖のアミノ酸配列、及び特定の軽鎖のアミノ酸配列を有する抗体である。
【0017】
本発明の別の態様は、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、124、125、126、127、128、129、159、198、200、202、164、212、213、214、215又は216に示されるアミノ酸配列を有する、単離された抗体重鎖である。
【0018】
本発明の別の態様は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、122、123、197、199、201、163、209、210又は211に示されるアミノ酸配列を有する、単離された抗体軽鎖である。
【0019】
本発明の別の態様は、配列番号102、130、131、132、133、134、135、160、204、206、208、220、166又は168に示されるアミノ酸配列を有する、単離された抗体重鎖である。
【0020】
本発明の別の態様は、配列番号155、156、157、158、203、205、207、165又は167に示されるアミノ酸配列を有する、単離された抗体軽鎖である。
【0021】
本発明の別の態様は、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、124、125、126、127、128、129、159、198、200、202、164、212、213、214、215又は216に示されるアミノ酸配列を有する抗体重鎖をコードした、単離されたポリペプチドである。
【0022】
本発明の別の態様は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、122、123、197、199、201、163、209、210又は211に示されるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖をコードした、単離されたポリペプチドである。
【0023】
本発明の別の態様は、配列番号102、130、131、132、133、134、135、160、204、206、208、220、166又は168に示されるアミノ酸配列を有する抗体重鎖をコードした、単離されたポリペプチドである。
【0024】
本発明の別の態様は、配列番号155、156、157、158、203、205、207、165又は167に示されるアミノ酸配列を有する抗体軽鎖をコードした、単離されたポリペプチドである。
【0025】
本発明の別の態様は、本発明の単離された抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0026】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを含むベクターである。
【0027】
本発明の別の態様は、本発明のベクターを有するホスト細胞である。
【0028】
本発明の別の態様は、本発明のホスト細胞を培養することと、前記ホスト細胞によって産生された抗体を回収することとを含む、TLR3に対する反応性を有する抗体の製造方法である。
【0029】
本発明の別の態様は、本発明の単離された抗体の治療上の有効量を、炎症性疾患の治療又は予防を必要とする患者に、炎症性疾患を治療又は予防するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、炎症性疾患の治療又は予防方法である。
【0030】
本発明の別の態様は、本発明の単離された抗体の治療上の有効量を、全身性炎症性疾患の治療又は予防を必要とする患者に、全身性炎症性疾患を治療又は予防するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、全身性炎症性疾患の治療又は予防方法である。
【0031】
本発明の別の態様は、本発明の単離された抗体の治療上の有効量を、II型糖尿病の治療を必要とする患者にII型糖尿病を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、II型糖尿病の治療方法である。
【0032】
本発明の別の態様は、本発明の単離された抗体の治療上の有効量を、高血糖の治療を必要とする患者に高血糖を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、高血糖の治療方法である。
【0033】
本発明の別の態様は、本発明の単離された抗体の治療上の有効量を、高インスリン血症の治療を必要とする患者にインスリン抵抗性を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、高インスリン血症の治療方法である。
【0034】
本発明の別の態様は、本発明の単離された抗体の治療上の有効量を、ウイルス感染の治療又は予防を必要とする患者に、ウイルス感染を治療又は予防するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、ウイルス感染の治療又は予防方法である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】NF−κBレポーター遺伝子アッセイにおける抗ヒトTLR3(huTLR3)mAbの作用を示す。
【図2A】BEAS−2Bアッセイにおける抗huTLR3 mAbの作用(阻害率(%))を示す。
【図2B】BEAS−2Bアッセイにおける抗huTLR3 mAbの作用(阻害率(%))を示す。
【図3A】NHBEアッセイにおける抗huTLR3 mAbの作用を示す。
【図3B】NHBEアッセイにおける抗huTLR3 mAbの作用を示す。
【図4】PBMCアッセイにおける抗huTLR3 mAbの作用を示す。
【図5A】HASMアッセイにおける抗huTLR3 mAbの作用を示す。
【図5B】HASMアッセイにおける抗huTLR3 mAbの作用を示す。
【図6A】TLR3突然変異体に対する抗huTLR3 mAbの結合を示す。
【図6B】TLR3突然変異体に対する抗huTLR3 mAbの結合を示す。
【図6C】TLR3突然変異体に対する抗huTLR3 mAbの結合を示す。
【図7A】ヒトTLR3のECD上に重ね合わせたmAb 15EVQ(黒)及びC1068 mAb(灰色)のエピトープ(上の画像)、並びにmAb 12QVQ/QSV(黒、下の画像)のエピトープを示す。
【図7B】mAb 15EVQと複合体を形成させたTLR3 ECDタンパク質の局所的H/D交換撹乱マップを示す。
【図8A】A)NF−κB及びB)ISREレポーター遺伝子アッセイにおけるラット/マウス抗マウスTLR3 mAb mAb 5429(代理抗体)の作用を示す。
【図8B】A)NF−κB及びB)ISREレポーター遺伝子アッセイにおけるラット/マウス抗マウスTLR3 mAb mAb 5429(代理抗体)の作用を示す。
【図9】MEF CXCL10/IP−10アッセイにおける代理mAb(mAb 5429、mAbc 1811)の作用を示す。
【図10】TLR3に対する代理mAbの結合の特異性を示す。上側のパネル:アイソタイプコントロール;下側のパネル:mAb c1811。
【図11】AHRモデルにおけるpenHレベルに対する代理mAbの効果を示す。
【図12】AHRモデルにおけるBAL液中の全好中球数に対する代理mAbの効果を示す。
【図13】AHRモデルにおけるBAL液中のCXCL10/IP−10レベルに対する代理mAbの効果を示す。
【図14】DSSモデルにおける組織病理学スコアに対する代理mAbの効果を示す。
【図15A】T細胞移植モデルにおける、組織病理学スコアに対する代理mAbの効果を示す。
【図15B】T細胞移植モデルにおける、好中球流入に対する代理mAbの効果を示す。
【図16】CIAモデルにおける臨床スコアに対する代理mAbの効果を示す。
【図17】CIAモデルにおける臨床AUCスコアに対する代理mAbの効果を示す。
【図18】インフルエンザA/PR/8/34の鼻腔内投与後のC57BL/6マウスの生存率に対する代理mAbの効果を示す。
【図19】インフルエンザA/PR/8/34の投与後の臨床スコアに対する代理mAbの効果を示す。
【図20】インフルエンザA/PR/8/34の投与後14日間における体重に対する代理mAbの効果を示す。
【図21A】グルコースチャレンジ後の野生型DIOにおける血中グルコースレベルに対する代理mAbの効果を示す。
【図21B】グルコースチャレンジ後のTLR3ノックアウトDIO動物における血中グルコースレベルに対する代理mAbの効果を示す。
【図22】野生型DIO動物のインスリンレベルに対する代理mAbの効果を示す。
【図23】NHBE細胞における、(A)NTHi、及び(B)ライノウイルス誘導CXCL10/IP−10及びCCL5/RANTESレベルに対するmAb 15EVQの効果を示す。
【図24A】HUVEC細胞における、sICAM−1レベルに対するmAb 15EVQの効果を示す。
【図24B】HUVEC細胞における、生存率に対するmAb 15EVQの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書に引用する特許及び特許出願を含むがそれらに限定されないすべての刊行物は、あたかもその全体が記載されているのと同様に本願に参照によって組み入れるものである。
【0037】
本明細書で用いる「アンタゴニスト」なる用語は、何らかの機構によって、受容体又は細胞内メディエーターなどの別の分子の作用を部分的又は完全に阻害する分子のことを意味する。
【0038】
本明細書で用いる「TLR3抗体アンタゴニスト」又は「TLR3に対する反応性を有する」抗体とは、TLR3の生物学的活性又はTLR4受容体の活性化を直接的又は間接的に実質上相殺、低減、又は阻害する能力を有する抗体のことを言う。例えば、TLR3に対する反応性を有する抗体は、TLR3に直接結合してTLR3の活性を中和する、すなわちTLR3のシグナル伝達を遮断することによって、サイトカイン及びケモカインの放出、又はNF−κBの活性化を低減させることができる。
【0039】
本明細書で用いる「抗体」なる用語は広義に用いられ、ポリクローナル抗体、マウス、ヒト、ヒト適合化、ヒト化及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、並びに抗体フラグメントを含む、免疫グロブリン又は抗体分子を含む。
【0040】
一般に抗体とは、特定の抗原に対する結合特異性を示すタンパク質又はペプチド鎖である。完全な抗体とは、2個の同じ軽鎖と2個の同じ重鎖とからなるヘテロ4量体の糖タンパク質である。通常、それぞれの軽鎖は1個の共有ジスルフィド結合によって重鎖と結合しているが、ジスルフィド結合の数は免疫グロブリンのアイソタイプが異なる重鎖の間で異なる。それぞれの重鎖及び軽鎖はまた、規則的な間隔をおいた鎖内ジスルフィド架橋も有する。それぞれの重鎖は可変領域(VH)を一端に有し、これに多数の定常領域が続く。それぞれの軽鎖は一端に可変領域(VL)を有し、もう一方の端に定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の第1の定常領域と整列し、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と整列している。あらゆる脊椎動物種の抗体の軽鎖は、定常領域のアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)及びラムダ(λ)の2つの明確に異なるタイプのうちの1つに分類することができる。
【0041】
免疫グロブリンは、重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つの大きなクラスに分類することができる。IgA及びIgGは、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4というアイソタイプに更に分類される。
【0042】
「抗体フラグメント」なる用語は、完全な抗体の部分、通常は完全な抗体の抗原結合領域又は可変領域を意味する。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメント、二重特異性抗体、単鎖抗体分子、並びに少なくとも2個の完全な抗体から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0043】
免疫グロブリンの軽鎖又は重鎖の可変領域は、3つの「抗体結合部位」を挟んだ「フレームワーク」領域からなっている。抗原結合部位は、以下のような様々な用語を用いて定義される。すなわち、(i)相補性決定領域(CDR)という用語は、配列の変異に基づいたものである(Wu and Kabat,J.Exp.Med.132:211〜250,1970)。一般に、抗原結合部位はVH内に3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及びVL内に3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)の6つのCDRを有している(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)。(ii)[超可変領域」、「HVR」又は「HV」という用語は、クロチア(Chothia)及びレスク(Lesk)(Chothia and Lesk,Mol.Biol.196:901〜917,1987)により定義されるような構造の変化が特に大きい抗体の可変領域の特定の領域を指す。一般に抗原結合部位は、VH内に3つ(H1、H2、H3)及びVL内に3つ(L1、L2、L3)の6つの超可変領域を有している。クロチア(Chothia)及びレスク(Lesk)は構造的に保存されたHVを「カノニカル(canonical)構造」と呼んでいる。(iii)ルフランク(Lefranc et al.,Dev.Comparat.Immunol.27:55〜77,2003)によって提唱される「IMGT−CDR」は、免疫グロブリンからのV領域とT細胞受容体との比較に基づいたものである。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(http://www_imgt_org)は、これらの領域の標準化された番号及び定義を提供している。各CDR、HV、及びIMGTの表記間の対応についてはLefranc et al.,Dev.Comparat.Immunol.27:55〜77,2003に述べられている。(iv)抗原結合部位は、アルマグロ(Almagro,Mol.Recognit.17:132〜143,2004)による特異性決定残基の慣用法(Specificity Determining Residue Usage(SDRU))に基づいて表記することもできるが、この場合の抗原決定残基(SDR)とは抗原との接触に直接関与する免疫グロブリンのアミノ酸残基のことを指す。アルマグロ(Almagro)により定義されるSDRUは、抗原抗体複合体の結晶構造の分析によって定義される、異なるタイプの抗原のSDRの数及び分布の正確な目安である。
【0044】
本明細書で用いる「複合配列」なる用語は、カバット(Kabat)、クロチア(Chothia)又はIMGTによって個別に表記されるすべてのアミノ酸残基又は他の任意の好適な抗原結合領域の表記を含むものとして定義される抗原結合部位のことを意味する。
【0045】
「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」とは、可変領域の、抗原結合部位として定義される配列以外の残りの配列のことである。抗原結合部位は上記に述べたような様々な用語によって定義されうるため、フレームワークの正確なアミノ酸配列は抗原結合部位がどのように定義されるかによって決まる。
【0046】
本明細書で用いる「抗原」なる用語は、直接的又は間接的に抗体を生成する能力を有するあらゆる分子を意味する。「抗原」の定義には、タンパク質をコードした核酸も含まれる。
【0047】
本明細書で用いる「ホモログ」なる用語は、参照配列との配列同一性が40%〜100%であるタンパク質配列を意味する。ヒトTLR3のホモログには、既知のヒトTLR3配列との配列同一性が40%〜100%であるような他種由来のポリペプチドが含まれる。2つのペプチド鎖の配列の同一性(%)は、Vector NTIバージョン9.0.0(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド)のAlignXモジュールのデフォルト設定を使用して、配列をペアで並べることによって決定することができる。「TLR3」とは、ヒトTLR3(huTLR3)及びそのホモログを意味する。完全長のhuTLR3のヌクレオチド及びアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。huTLR3の細胞外ドメイン(ECD)のヌクレオチド及びアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3及び配列番号4に示す。
【0048】
本明細書で用いる「ほぼ同じ」なる用語は、比較される2つの抗体又は抗体フラグメントのアミノ酸配列が同じか、又は「ごくわずかな差」を有することを意味する。ごくわずかな差とは、抗体又は抗体フラグメントのアミノ酸配列における1、2、3、4、5又は6個のアミノ酸の置換である。本明細書で開示する配列とほぼ同じアミノ酸配列も本願の一部である。特定の実施形態では、配列の同一性は、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれよりも高い。同一性(%)は、上記に述べたようにして決定することができる。比較するペプチド鎖の例としては、重鎖又は軽鎖の可変領域がある。
【0049】
本明細書で用いる「〜と組み合わせて」なる用語は、記載される薬剤を混合物中で同時に投与するか、単独の薬剤として同時に投与するか、あるいは単独の薬剤として任意の順序で順次、動物に投与することが可能であることを意味する。
【0050】
本明細書で用いる「炎症状態」なる用語は、多くの場合、痛み、発赤、腫れ、及び組織機能の喪失によって特徴付けられる、サイトカイン、ケモカイン、又は炎症細胞(例えば好中球、単球、リンパ球、マクロファージ)の活性によって一部媒介される、細胞損傷に対する局所的な応答のことを意味する。本明細書で用いる「炎症性肺状態」なる用語は、肺を冒すか又は肺と関連した炎症状態のことを意味する。
【0051】
本明細書で用いる「モノクローナル抗体」(mAb)なる用語は、ほぼ均質な抗体の集団から得られる抗体(又は抗体フラグメント)のことを意味する。モノクローナル抗体は極めて特異性が高く、通常、単一の抗原決定基を標的とする。「モノクローナル」という修飾語は、抗体のほぼ均質な性質を指して言うものであり、抗体が特定の方法によって製造される必要はない。例えばマウスmAbは、Kohler et al.,Nature 256:495〜497,1975のハイブリドーマ法によって製造することができる。ドナー抗体(通常はマウス)由来の軽鎖及び重鎖の可変領域を、アクセプター抗体(通常、例えばヒトなどの別の哺乳動物種)由来の軽鎖及び重鎖の定常領域とともに含むキメラmAbを、米国特許第4,816,567号に開示される方法によって調製することができる。非ヒトドナー免疫グロブリン(通常はマウス)に由来するCDR、及び、1以上のヒト免疫グロブリンに由来する分子の残りの免疫グロブリン由来の部分を有するヒト適合化mAbを、米国特許第5,225,539号に開示されるような当業者には周知の方法によって調製することができる。ヒト適合化に有用なヒトフレームワーク配列は当業者であれば関連するデータベースから選択することができる。場合により、Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),86:10029〜10032,1989及びHodgson et al.,Bio/Technology,9:421,1991に開示されるような方法によって、結合親和性を維持するために変化させたフレームワーク支持残基を組み込むことによってヒト適合化mAbを更に改変することができる。
【0052】
ヒト以外のいかなる配列も有さない完全なヒトmAbは、例えば、Lonberg et al.,Nature 368:856〜859,1994、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845〜851,1996、及びMendez et al.,Nature Genetics 15:146〜156,1997に参照される方法により、ヒト免疫グロブリン形質転換マウスから調製することができる。ヒトmAbは、例えば、Knappik et al.,J.Mol.Biol.296:57〜86,2000及びKrebs et al.,J.Immunol.Meth.254:67〜84 2001に参照される方法により、ファージディスプレイライブラリーから調製及び最適化することもできる。
【0053】
本明細書で用いる「エピトープ」なる用語は、抗体が特異的に結合する抗原の部分を意味する。エピトープは通常、アミノ酸及び多糖類側鎖のような化学的に活性な(極性、非極性又は疎水性)部分の表面における集団からなり、特定の3次元構造特性及び特定の帯電特性を有しうる。エピトープは直線状のものであってもよく、あるいはアミノ酸の直線状の配列によってではなく、抗原の連続していないアミノ酸間の空間的な関係によって形成される不連続エピトープ(例えば立体構造エピトープ)であってもよい。立体構造エピトープには、抗原の直線状配列の異なる部分のアミノ酸同士が3次元空間で近接するような抗原の折り畳みによって生じるエピトープが含まれる。
【0054】
本明細書で用いる「特異的結合」なる用語は、抗体が特定の抗原と、他の抗原又はタンパク質に対するよりも高い親和性で結合することを指す。通常、抗体の結合における解離定数(KD)は10-7M以下であり、抗体が特定の抗原と結合する際のKDは、特定の抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン、又は他の任意の特定のポリペプチド)と結合する際のKDと比較して1/2以下である。本明細書では、「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」という語句を、「抗原と特異的に結合する抗体」又は「抗原特異的抗体」(例えばTLR3特異的抗体)という用語と互換可能に用いる。解離定数は後述するような標準的な方法を用いて測定することができる。
【0055】
本明細書で用いる「TLR3の生物学的活性」又は「TLR3の活性化」という用語は、リガンドとTLR3との結合によって生ずる任意の活性を指す。TLR3のリガンドには、2本鎖DNA、ポリイノシンポリシチジン酸(ポリ(I:C))、及び例えば壊死細胞から放出される内因性mRNAなどの内因性mRNAが含まれる。TLR3の活性化の一例では、TLR3のリガンドに応じてNF−κBが活性化される。NF−κBの活性化はポリ(I:C)により受容体を誘導し、レポーター遺伝子アッセイによってアッセイすることができる(Alexopoulou et al.,Nature 413:732〜738,2001;Hacker et al.,EMBO J.18:6973〜6982,1999)。別のTLR3の活性化の例では、TLR3のリガンドに応じてインターフェロン応答因子(IRF−3、IRF−7)が活性化される。TLR3によって媒介されるIRFの活性化は、インターフェロン刺激応答配列(ISRE)によって制御されるレポーター遺伝子を用いてアッセイすることができる。別のTLR3の活性化の例では、例えばTNF−α、IL−6、IL−8、IL−12、CXCL5/IP−10及びRANTESなどの炎症性サイトカイン及びケモカインが分泌される。細胞、組織からの、又は循環中へのサイトカイン及びケモカインの放出は、ELISA免疫アッセイなどのよく知られた免疫アッセイによって測定することができる。
【0056】
本明細書では以下のような従来のアミノ酸の1文字及び3文字の略号を用いる。
【0057】
【表1】

【0058】
物質の組成
本発明はTLR3の生物学的活性を阻害することが可能な抗体アンタゴニスト及びこうした抗体の使用法を提供する。こうしたTLR3アンタゴニストは、TLR3に結合してTLR3の活性化を阻害する性質を有しうる。こうした抗体によってTLR3活性が阻害されうる機序の例としては、TLR3へのリガンドの結合のインビトロ、インビボ、若しくはインサイチューでの阻害、受容体の2量化の阻害、エンドソーム区画へのTLR3の局在化の阻害、下流のシグナル伝達経路のキナーゼ活性の阻害、又はTLR3のmRNAの転写の阻害が挙げられる。他の機序によってTLR3の活性を阻害することが可能な他の抗体アンタゴニストもまた、本発明の異なる態様及び実施形態の範囲に含まれるものである。これらのアンタゴニストは、研究用試薬、診断用試薬及び治療薬として有用である。
【0059】
抗体の多様性は、可変領域をコードする多数の生殖細胞遺伝子及び様々な体細胞イベントが用いられることによってもたらされる。こうした体細胞イベントとしては、完全なVH領域を作るための可変(V)遺伝子セグメント、及び多様性(D)及び接合(J)遺伝子セグメントの組換え、並びに完全なVL領域を作るための可変及び接合遺伝子セグメントの組換えがある。本明細書で開示するものと同じかあるいは似たCDR配列を有する抗体及び組成物は、独立に生成されたものである可能性は低い。組み立て及び体細胞突然変異後の抗体遺伝子の配列は極めて多様であり、これらの多様な遺伝子は1010種類の異なる抗体分子をコードすると推定されている(Immunoglobulin Genes,2nd ed.,eds.Jonio et al.,Academic Press,San Diego,Calif.,1995)。
【0060】
本発明は、ヒト免疫グロブリンの遺伝子ライブラリーから誘導される抗原結合部位を提供する。抗原結合部位を担持させるための構造は一般に抗体の重鎖又は軽鎖若しくはそれらの部分であり、抗原結合部位は上記に述べたようにして調べた天然の抗原結合部位に配置される。
【0061】
本発明は、重鎖及び軽鎖の可変領域の両方を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントを提供するものであり、該抗体は表1aに示されるような重鎖の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列1、2及び3(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列1、2及び3(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を有している。
【0062】
【表2】

【0063】
特定の実施形態では、本発明は、重鎖及び軽鎖の可変領域の両方を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントを提供するものであり、該抗体は配列番号192に示されるようなHCDR2のアミノ酸配列を有し、配列番号192のHCDR2は下記式(I)に示されるように定義される。
Xaa6−I−Xaa7−Xaa8−R−S−Xaa9−W−Y−N−D−Y−A−V−S−V−K−S,
(I)
(式中、
Xaa6は、Arg又はLysであってよく、
Xaa7は、Tyr、His又はSerであってよく、
Xaa8は、Met、Arg又はTyrであってよく、
Xaa9は、Lys又はArgであってよい。)
【0064】
他の実施形態では、本発明は、重鎖及び軽鎖の可変領域の両方を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントを提供するものであり、該抗体は配列番号194に示されるようなHCDR2のアミノ酸配列を有し、配列番号194のHCDR2は下記式(III)に示されるように定義される。
I−I−Q−Xaa15−R−S−K−W−Y−N−Xaa16−Y−A−Xaa17−S−V−K−S,
(III)
(式中、
Xaa15は、Lys、Thr又はIleであってよく、
Xaa16は、Asn又はAspであってよく、
Xaa17は、Val又はLeuであってよい。)
【0065】
他の実施形態では、本発明は、重鎖及び軽鎖の可変領域の両方を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントを提供するものであり、該抗体は配列番号196に示されるようなHCDR2のアミノ酸配列を有し、配列番号196のHCDR2は下記式(V)に示されるように定義される。
Xaa24−I−D−P−S−D−S−Y−T−N−Y−Xaa25−P−S−F−Q−G,
(V)
(式中、
Xaa24は、Phe又はArgであってよく、
Xaa25は、Ala又はSerであってよい。)
【0066】
他の実施形態では、本発明は、重鎖及び軽鎖の可変領域の両方を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントを提供するものであり、該抗体は配列番号191に示されるようなLCDR3のアミノ酸配列を有し、配列番号191のLCDR3は下記式(II)に示されるように定義される。
Xaa1−S−Y−D−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−T−V,
(II)
(式中、
Xaa1は、Ala、Gln、Gly又はSerであってよく、
Xaa2は、Gly、Glu又はSerであってよく、
Xaa3は、Asp又はAsnであってよく、
Xaa4は、Glu又はSerであってよく、
Xaa5は、Phe、Ala又はLeuであってよい。)
【0067】
他の実施形態では、本発明は、重鎖及び軽鎖の可変領域の両方を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントを提供するものであり、該抗体は配列番号193に示されるようなLCDR3のアミノ酸配列を有し、配列番号193のLCDR3は下記式(IV)に示されるように定義される。
Xaa10−S−Y−D−Xaa11−P−Xaa12−Xaa13−Xaa14−V,
(IV)
(式中、
Xaa10は、Gln又はSerであってよく、
Xaa11は、Thr、Glu又はAspであってよく、
Xaa12は、Val又はAsnであってよく、
Xaa13は、Tyr又はPheであってよく、
Xaa14は、Ser、Asn又はGlnであってよい。)
【0068】
他の実施形態では、本発明は、重鎖及び軽鎖の可変領域の両方を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントを提供するものであり、該抗体は配列番号195に示されるようなLCDR3のアミノ酸配列を有し、配列番号195のLCDR3は下記式(VI)に示されるように定義される。
Q−Q−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Xaa21−Xaa22−Xaa23−T,
(VI)
(式中、
Xaa18は、Tyr、Gly又はAlaであってよく、
Xaa19は、Gly、Glu又はAsnであってよく、
Xaa20は、Ser又はThrであってよく、
Xaa21は、Val、Ile又はLeuであってよく、
Xaa22は、Ser又はLeuであってよく、
Xaa23は、Ile、Ser、Pro又はTyrであってよい。)
【0069】
本発明は、表1aに示されるような重鎖の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列1、2及び3(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列1、2及び3(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントを提供するものである。
【0070】
抗原結合部位のアミノ酸配列が表1aのもの(配列番号49〜121及び191〜196)と大きく異ならない抗体は本発明の範囲に含まれるものである。一般に、これには1以上のアミノ酸残基を、同様の電荷、疎水性又は立体化学的特性を有するアミノ酸によって置換することが含まれる。抗原結合部位ではなく、フレームワーク領域における更なる置換も、これらの置換が抗体の性質に悪影響を及ぼさない限りは行うことができる。置換は、例えば安定性又は親和性といった抗体の性質を向上させる目的で行うことができる。1、2、3、4、5又は6個の置換を抗原結合部位に行うことができる。
【0071】
保存的な改変では、こうした改変が行われた分子と同様の機能的及び化学的性質を有する分子が生ずる。分子の機能的及び/又は化学的特性における大幅な改変は、(1)置換領域における分子骨格の構造を例えばシート又はヘリックス立体構造として維持する、(2)標的部位における分子の電荷又は疎水性を維持する、又は(3)分子のサイズを維持する効果において大きく異なるアミノ酸配列中の置換を選択することによって実現することができる。例えば、「保存的アミノ酸置換」では、その位置におけるアミノ酸残基の極性又は電荷にほとんどあるいはまったく影響しないように内因性のアミノ酸残基を非内因性の残基と置換することができる。更に、アラニン系統的変異導入法についてこれまでに述べられているように(MacLennan et al.,Acta Physiol.Scand.Suppl.643:55〜67,1998;Sasaki et al.,Adv.Biophys.35:1〜24,1998)、ポリペプチド内の任意の内因性の残基をアラニンで置換することもできる。所望のアミノ酸置換(保存的又は非保存的であるかによらず)は、当業者であればこうした置換が望ましい時点で決定することができる。例えば、アミノ酸置換を用いることによってその分子の配列の重要な残基を特定したり、又は本明細書で述べる分子の親和性を増大若しくは減少させることができる。アミノ酸置換の例を表1bに示す。
【0072】
【表3】

【0073】
特定の実施形態においては、保存的アミノ酸置換には、生物学的システムによって合成されるのではなく、一般的に化学的ペプチド合成によって組み込まれる非天然のアミノ酸残基も含まれる。アミノ酸置換は、例えばPCR突然変異誘発(米国特許第4,683,195号)によって行うことができる。例えばランダムコドン(NNK)又は例えば11種類のアミノ酸(ACDEGKNRSYW)をコードするDVKコドンのような非ランダムコドンを用いて公知の方法によって変異体のライブラリーを作製し、実施例1に示されるような所望の性質を有する変異体についてライブラリーをスクリーニングすることができる。表1cは、抗体の性質を向上させるために3種類の親TLR3抗体アンタゴニストのLCDR3及びHCDR2領域内に行った置換を示す。
【0074】
抗原結合部位の表記に応じて、本発明の抗体の抗原結合部位、次いでフレームワーク残基は、各重鎖及び軽鎖ごとに若干異なりうる。表2a及び2bは、カバット(Kabat)、クロチア(Chothia)及びIMGTに基づいて表記された本発明の例示的抗体の抗原結合部位の残基及びそれらの複合配列を示したものである。
【0075】
【表4−1】

【0076】
【表4−2】

【0077】
【表4−3】

【0078】
【表5−1】

【0079】
【表5−2】

【0080】
他の実施形態において、本発明は、重鎖及び軽鎖の可変領域の両方を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントを提供するものであり、該抗体は重鎖の可変領域(VH)及び軽鎖の可変領域(VL)のアミノ酸配列を有するとともに表3aに示されるような単離された重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のそれぞれを提供するものである。F17、F18及びF19は、それぞれ、ファミリー17、18及び19のコンセンサスなアミノ酸配列を有する抗体の変異体を表す(実施例1を参照)。
【0081】
【表6−1】

【0082】
【表6−2】

【0083】
【表7】

【0084】
各実施例で説明する各実施形態は、1個が重鎖に由来し、1個が軽鎖に由来する2個の可変領域を有しているが、当業者であれば代替的な実施形態では1個の重鎖又は軽鎖の可変領域を有してもよい点は認識されるであろう。1個の可変領域を用いることで、例えばTLR3に結合することが可能な2ドメイン特異的抗原結合フラグメントを形成することが可能な可変ドメインについてスクリーニングを行うことができる。こうしたスクリーニングは、例えば国際特許出願公開第WO92/01047号に開示される階層的2重コンビナトリアルアプローチを用いたファージディスプレイスクリーニング法によって実現することが可能である。このアプローチでは、H又はL鎖のいずれかのクローンを含む個別のコロニーを用いて他方の鎖(L又はH)をコードしたクローンの完全なライブラリに感染させ、得られた2鎖特異的抗原結合ドメインを上記に述べたようなファージディスプレイ法に基づいて選択する。
【0085】
他の実施形態では、本発明は、表3aに示されるような可変領域のアミノ酸配列と少なくとも95%同じアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖の可変領域の両方を有し、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントを提供する。
【0086】
別の態様では、本発明は、表3bに示されるような特定の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を有する単離された抗体を提供する。
【0087】
本発明の別の態様は、本発明の抗体又はその補体のいずれかをコードする単離されたポリヌクレオチドである。特定のポリヌクレオチドの例を本明細書に開示するが、遺伝暗号の縮重及び特定の発現系におけるコドンの選択性を考慮すると、本発明の抗体アンタゴニストをコードする他のポリヌクレオチドも本発明の範囲内に含まれる。
【0088】
抗体アンタゴニストの例としては、IgG、IgD、IgG、IgA又はIgMアイソタイプの抗体が挙げられる。更にこうした抗体アンタゴニストは、グリコシル化、異性化、脱グリコシル化、又は、ポリエチレングリコール部分の付加(ペギレーション)及び脂質化など非天然の共有結合修飾などの反応によって翻訳後修飾されてもよい。こうした修飾はインビボあるいはインビトロで行われうる。例えば、本発明の抗体はポリエチレングリコールと接合する(ペギレート)することによって薬物動態的なプロファイルを向上させることができる。接合は当業者には周知の方法によって行うことができる。治療用抗体のPEGとの接合によって機能を低下させずに薬力学的動態が向上することが示されている。Deckert et al.,Int.J.Cancer 87:382〜390,2000;Knight et al.,Platelets 15:409〜418,2004;Leong et al.,Cytokine 16:106〜119,2001;及びYang et al.,Protein Eng.16:761〜770,2003を参照されたい。
【0089】
【表8】

【0090】
本発明の抗体の薬物動態的性質は、当業者には周知の方法により、Fc修飾によって向上させることも可能である。例えばIgG4アイソタイプの重鎖は、ヒンジ領域に重鎖間又は重鎖内ジスルフィド結合を形成することが可能なCys−Pro−Ser−Cys(CPSC)というモチーフを含んでいる。すなわち、CPSCモチーフ内の2個のCys残基が他の重鎖の対応するCys残基とジスルフィド結合する(重鎖間)か、あるいは特定のCPSCモチーフ内の2個のCys残基が互いにジスルフィド結合しうる(重鎖内)。生体内のイソメラーゼ酵素は、IgG4分子の重鎖間結合を重鎖内結合に変換し、またその逆反応を行うことが可能であると考えられている(Aalberse and Schuurman,Immunology 105:9〜19,2002)。したがって、ヒンジ領域に重鎖内結合を有するこうしたIgG4分子内の重鎖:軽鎖(H:L)の各ペアは互いに共有結合していないことからH:Lモノマーに解離し、更に他のIgG4分子に由来するH:Lモノマーと再結合して、2重特異的なヘテロダイマーのIgG4分子を形成する。2重特異的なIgG抗体では、抗体分子の2個のFabはそれらが結合するエピトープが異なる。IgG4のヒンジ領域のCPSCモチーフのSer残基をProで置換することによって「IgG1様挙動」が生じる。すなわち、これらの分子は重鎖同士の間に安定したジスルフィド結合を形成するために他のIgG4分子とのH:L交換が起きない。一実施形態では、本発明の抗体はCPSCモチーフ内にS〜Pの突然変異を有するIgG4のFcドメインを有する。CPSCモチーフの位置は通常、成熟した重鎖の残基228に見いだされるが、CDRの長さに応じて変化しうる。
【0091】
更に、本発明の抗体のFcRnサルベージ受容体以外のFc受容体への結合に影響する部位を除去することもできる。例えば、ADCC活性に関与するFc受容体結合領域を本発明の抗体において除去することができる。例えば、IgG1のヒンジ領域のLeu234/Leu235のL234A/L235Aへの突然変異、又はIgG4のヒンジ領域のPhe235/Leu236のP235A/L236Aへの突然変異によって、FcRへの結合性が最小となり、補体依存性細胞傷害活性及びADCCを媒介する免疫グロブリンの能力が低減する。一実施形態では、本発明の抗体は、P235A/L236A突然変異を有するIgG4のFcドメインを有する。上記で特定したこれらの残基の位置は成熟した重鎖においては典型的なものであるが、CDRの長さに応じて変化しうる。P235A/L236A突然変異を有する抗体の例としては、配列番号218、219又は220に示される配列によってコードされる重鎖を有する抗体がある。
【0092】
完全なヒト、ヒト適合化、ヒト化、及び親和性成熟抗体分子又は抗体フラグメントは、融合タンパク質及びキメラタンパク質と同様、本発明の範囲に含まれる。抗原に対する抗体親和性は、ランダム又は部位特異的な突然変異誘発などの周知の方法を用いた合理的設計(rational design)又はランダムな親和性成熟によるか、あるいはファージディスプレイライブラリーを用いることによって高めることができる。例えば、米国特許第6,639,055号に示されるように多くがフレームワーク領域に存在するベルニエ領域(Vernier Zone)残基の変異を用いて抗体の親和性を調節することができる。近年、アルマグロ(Almagro)らは、CDRに存在し、これを操作することによって親和性を高めることができる「親和性決定残基」(ADR)を定義している(Cobaugh et al.,J Mol Biol.378:622〜633,2008)。
【0093】
安定性、選択性、交差反応性、親和性、免疫原性、又はタンパク質の所望の生物学的若しくは生物物理学的性質を高めるように改変された完全なヒト、ヒト適合化、ヒト化、親和性成熟抗体分子又は抗体フラグメントは本発明の範囲に含まれる。抗体の安定性は、(1)内在的な安定性に影響する個々のドメインのコアパッキング、(2)重鎖と軽鎖とのペアリングに影響するタンパク質/タンパク質の界面相互作用、(3)極性及び荷電残基の埋め込み、(4)極性及び荷電残基の水素結合ネットワーク、及び(5)分子内及び分子間力の中でも特に表面電荷及び極性残基の分布、などの多くの因子によって影響される。構造を不安定化させる可能性のある残基は、抗体の結晶構造に基づいて、あるいは場合によっては分子モデリングによって特定することが可能であり、抗体の安定性に対するこれらの残基の影響を、特定された残基に突然変異を有する変異体を生成して評価することによって試験することができる。抗体の安定性を高める方法の1つは、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される熱転移中点(Tm)を高くすることである。一般に、タンパク質のTmはその安定性との相関を示し、溶液中でのアンフォールディング及び変性のしやすさ、並びにそのタンパク質のアンフォールドのしやすさに依存する分解プロセスと負の相関を示す(Remmele et al.,Biopharm.,13:36〜46,2000)。多くの研究によって、DSCにより熱安定性として測定される複数の配合物の物理的安定性の順位と、他の方法によって測定される物理的安定性との間に相関が示されている(Gupta et al.,AAPS PharmSci.5E8,2003;Zhang et al.,J.Pharm.Sci.93:3076〜3089,2004;Maa et al.,Int.J.Pharm.,140:155〜168,1996;Bedu−Addo et al.,Pharm.Res.,21:1353〜1361,2004;Remmele et al.,Pharm.Res.,15:200〜208,1997)。これらの配合物の研究は、FabのTmが対応するmAbの長期の物理的安定性と密接な関係があることを示唆している。フレームワーク又はCDR内におけるアミノ酸の違いは、Fabドメインの熱安定性に大きく影響しうる(Yasui,et al.,FEBS Lett.353:143〜146,1994)。
【0094】
本発明の抗体アンタゴニストは、約10-7、10-8、10-9、10-10、10-11又は10-12M以下のKdでTLR3と結合することができる。抗体などの特定の分子のTLR3に対する親和性は、任意の適当な方法によって実験的に求めることができる。こうした方法では、当業者には周知であるBiacore又はKinExa装置、ELISA又は競合的結合アッセイを使用することができる。
【0095】
特定のTLR3ホモログと所望の親和性で結合する抗体アンタゴニストは、抗体親和性成熟などの方法によって変異体又はフラグメントのライブラリーから選択することができる。抗体アンタゴニストは、任意の適当な方法を用いてTLR3の生物学的活性の阻害に基づいて同定することができる。こうした方法では、周知の方法を用いた、本願に述べるようなレポーター遺伝子アッセイ又はサイトカイン産生を測定するアッセイを利用することができる。
【0096】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを含むベクターである。こうしたベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロウイルス発現ベクター、トランスポゾンに基づいたベクター、又は任意の手段によって特定の生物又は遺伝子的バックグラウンドに本発明のポリヌクレオチドを導入するのに適した他の任意のベクターであってよい。
【0097】
本発明の別の実施形態は、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、124、125、126、127、128、129、159、198、200、202、164、212、213、214、215又は216に示されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリン重鎖の可変領域、又は配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、122、123、197、199、201、163、209又は210に示されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリン軽鎖の可変領域を含むポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドなどの、本発明のポリヌクレオチドのいずれかを有するホスト細胞である。
【0098】
本発明の別の実施形態は、配列番号102、130、131、132、133、134、135、160、204、206、208、220、166又は168に示されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリン重鎖の可変領域、又は配列番号155、156、157、158、203、205、207、165又は167に示されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリン軽鎖の可変領域を含むポリペプチドをコードしたポリヌクレオチドを有するホスト細胞である。こうしたホスト細胞は、真核細胞、細菌細胞、植物細胞又は古細菌細胞であってよい。真核細胞の例としては、哺乳動物、昆虫、鳥類又は他の動物由来のものでよい。哺乳動物真核細胞としては、SP2/0(ATCC(American Type Culture Collection)、バージニア州マナッサス、CRL−1581)、NS0(ECACC(European Collection of Cell Cultures)、英国、ウィルトシア、ソールズベリー、ECACC No.85110503)、FO(ATCC CRL−1646)及びAg653(ATCC CRL−1580)マウス細胞株などのハイブリドーマ又はミエローマなどの不死化細胞株が挙げられる。ヒトミエローマ細胞株の一例として、U266(ATTC CRL−TIB−196)がある。他の有用な細胞株としては、CHO−K1SV(ロンザ・バイオロジックス社(Lonza Biologics)、メリーランド州ウォーカーズビル)、CHO−K1(ATCC CRL−61)、又はDG44などのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に由来するものが挙げられる。
【0099】
本発明の別の実施形態は、本発明のホスト細胞を培養することと、前記ホスト細胞によって産生された抗体を回収することとを含む、TLR3と反応性を有する抗体の製造方法である。抗体を製造して精製する方法は当該技術分野では周知のものである。
【0100】
本発明の別の実施形態は、本発明の抗体を産生するハイブリドーマ細胞株である。
【0101】
本発明の別の実施形態は、(a)配列番号2の残基K467、R488又はR489、(b)配列番号2の残基K467、(c)配列番号2の残基R489、(d)配列番号2の残基K467及びR489、並びに(e)配列番号2の残基K467、R488、及びR489からなる群から選択される少なくとも1つのTLR3のアミノ酸残基と結合する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントである。単離された抗体は、配列番号2の残基Y465、Y468、N517、D536、Q538、H539、N541、E570又はK619から選択される少なくとも1つのTLR3のアミノ酸残基と更に結合しうる。
【0102】
本発明の別の実施形態は、配列番号2の残基D116又はK145からなる群から選択される少なくとも1つのTLR3のアミノ酸残基と結合する、単離された抗体又はそのフラグメントである。
【0103】
幾つかの周知の方法を用いて本発明の抗体の結合エピトープを決定することができる。例えば、両方の個別の要素の構造が分かっている場合、インシリコでタンパク質−タンパク質のドッキングを行って適合する相互作用の部位を同定することができる。抗原抗体複合体において水素−重水素(H/D)交換を行うことによって抗体が結合しうる抗原の領域をマッピングすることができる。抗原のセグメント及び点突然変異誘発を用いることにより、抗体の結合に重要なアミノ酸の位置を特定することができる。TLR3のような大きなタンパク質では、最初にドッキング、セグメント突然変異誘発、又はH/D交換などによって結合部位の位置をそのタンパク質の特定の領域に限定することで点突然変異誘発によるマッピングが単純化される。
【0104】
本発明の別の態様は、特定の重鎖相補性決定領域(CDR)1、2及び3のアミノ酸配列、特定の軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、特定の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列、又は特定の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体とTLR3との結合について競合する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はそのフラグメントである。本発明のモノクローナル抗体の例としては、配列番号216に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号41に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する単離された抗体、並びに配列番号214に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号211に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列を有する抗体がある。
【0105】
TLR3との結合についての競合は公知の方法によってインビトロでアッセイすることができる。例えば、非標識抗体の存在下でのMSD Sulfo−Tag(商標)NHS−エステル標識抗体のTLR3に対する結合をELISAによって評価することができる。本発明の抗体の例としては、mAb 12、mAb 15及びmAb c1811がある(表3aを参照)。これまでに述べられている抗TLR3抗体c1068及びその誘導体(国際特許出願公開第WO06/060513A2号)、TLR3.7(イー・バイオサイエンシーズ社(eBiosciences)、カタログ番号14−9039)、並びにImgenex IMG−315A(Imgenex IMG−315A;ヒトTLR3のアミノ酸55〜70(VLNLTHNQLRRLPAAN)に対して作製されたもの)は、実施例5に示されるようにmAb 12、15、c1811のいずれともTLR3に対する結合について競合しない。
【0106】
本発明の別の態様は、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体であって、以下の性質の少なくとも1つを有する抗体である。すなわち、
a.インビトロのポリ(I:C)NF−κBレポーター遺伝子アッセイにおいてヒトTLR3の生物学的活性を1μg/ml未満で50%よりも大きく低減させるか、
b.100ng/ml未満のポリ(I:C)で刺激したBEAS−2B細胞からのIL−6又はCXCL5/IP−10の産生を10μg/ml未満で60%よりも大きく阻害するか、
c.100ng/ml未満のポリ(I:C)で刺激したBEAS−2B細胞からのIL−6又はCXCL5/IP−10の産生を0.4μg/ml未満で50%よりも大きく阻害するか、
d.62.5ng/mlのポリ(I:C)で刺激したNHBE細胞からのIL−6の産生を5μg/ml未満で50%よりも大きく阻害するか、
e.62.5ng/mlのポリ(I:C)で刺激したNHBE細胞からのIL−6の産生を1μg/ml未満で50%よりも大きく阻害するか、
f.ポリ(I:C)により誘導したIFN−γ、IL−6又はIL−12のPBMC細胞による産生を1μg/ml未満で20%よりも大きく阻害するか、
g.インビトロでのNF−κBレポーター遺伝子アッセイにおいてカニクイザルのTLR3の生物学的活性をIC50<10μg/mlとなるように阻害するか、又は、
h.インビトロでのISREレポーター遺伝子アッセイにおいてカニクイザルのTLR3の生物学的活性をIC50<5μg/mlとなるように阻害する。
【0107】
治療方法
本発明のTLR3アンタゴニスト、例えばTLR3抗体アンタゴニストは、免疫系を調節する目的で使用することができる。何らの特定の理論に束縛されることも望むものではないが、本発明のアンタゴニストは、TLR3へのリガンドの結合、TLR3の2量化、TLR3の細胞内移行、又はTLR3の輸送を防止又は低減することによって免疫系を調節しうるものと考えられる。本発明の方法を用いて任意の分類に属する動物患者を治療することができる。こうした動物の例としては、ヒト、齧歯類、犬、猫、及び家畜などの哺乳動物が挙げられる。例えば本発明の抗体は、TLR3活性の中和、炎症、炎症性及び代謝性疾患の治療に有用であるだけでなく、更にこうした治療のための薬剤の調製においても有用であり、その場合、薬剤は本明細書で定義する用量で投与されるように調製される。
【0108】
一般的に、本発明のTLR3抗体アンタゴニストの投与によって予防又は治療することが可能な炎症状態、感染にともなう状態、又は免疫介在性炎症性疾患には、サイトカイン又はケモカインによって媒介されるもの、及びTLR3の活性化又はTLR3経路を介したシグナル伝達に全体的又は部分的に起因する状態が含まれる。こうした炎症性状態の例としては、敗血症にともなう状態、炎症性腸疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患、及び感染にともなう状態が挙げられる。更に、本発明のTLR3抗体アンタゴニストの投与によって癌、心血管及び代謝性の状態、神経病及び線維症の状態を予防又は治療することも可能であると考えられる。炎症は組織を冒し、全身性の症状となりうる。罹患する組織の例としては、気道、肺、消化管、小腸、大腸、結腸、直腸、心血管系、心組織、血管、関節、骨及び滑膜組織、軟骨、上皮、内皮、肝又は脂肪組織が挙げられる。全身性の炎症状態の例としては、サイトカインストームすなわち高サイトカイン血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、移植片対宿主病(GVHD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、劇症型抗リン脂質症候群、重篤なウイルス感染、インフルエンザ、肺炎、ショック、又は敗血症がある。
【0109】
炎症は、侵入する病原体を撃退するための生物による防御反応である。炎症は、多くの細胞性及び体液性のメディエーターが関与するカスケードイベントである。一方で炎症反応の抑制はホストを免疫無防備状態とするものであるが、炎症はそのまま放置しておくと慢性炎症性疾患(例えば、喘息、感染、関節炎、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患など)、敗血性ショック、及び多臓器不全などの重篤な合併症を引き起こしうる。重要な点として、これらの多様な疾患状態は、サイトカイン、ケモカイン、炎症細胞、及びこれらの細胞によって分泌される他のメディエーターなどの共通の炎症性メディエーターを共有している。
【0110】
リガンドであるポリ(I:C)、2本鎖RNA又は内因性のmRNAによってTLR3が活性化されるとシグナル伝達経路が活性化され、これにより炎症性サイトカインの合成及び分泌、マクロファージ、顆粒球、好中球及び好酸球などの炎症細胞の活性化及び動員、細胞死、並びに組織の破壊が引き起こされる。TLR3は、IL−6、IL−8、IL−12、TNF−α、MIP−1、CXCL5/IP−10及びRANTES、並びに免疫細胞の動員及び活性化に関わる他の炎症性サイトカイン及びケモカインの分泌を誘導することにより、自己免疫疾患及び他の炎症性疾患における組織の破壊に寄与する。TLR3のリガンドである内因性のmRNAは炎症時に壊死細胞から放出され、ポジティブフィードバックループを引き起こすことによってTLR3を活性化し、炎症及び更なる組織破壊を持続させる。TLR3抗体アンタゴニストのようなTLR3アンタゴニストはサイトカインの分泌を正常化し、炎症細胞の動員を低減し、組織破壊及び細胞死を低減させると考えられる。したがって、TLR3アンタゴニストは炎症及び広範な炎症性状態を治療するうえで治療上の可能性を有するものである。
【0111】
炎症性状態の1つの例は、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血性ショック又は多臓器不全症候群(MODS)が含まれうる、敗血症にともなう状態である。ウイルス、細菌、真菌、又は寄生虫感染によって、及び壊死細胞によって放出される2本鎖RNAは敗血症の発症に寄与しうる。特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、TLR3アンタゴニストによる治療は、敗血症にともなう炎症状態を有する患者における生存時間を延ばすか又は局所的な炎症性イベント(例えば肺の)が広がって全身症状となることを防止することにより、あるいは内在的な抗微生物活性を強化することにより、あるいは抗微生物剤と組み合わされる場合に相乗的な活性を示すことにより、あるいは病状に寄与する局所的炎症状態を抑制することにより、あるいは上記の任意の組合わせにより、所定の治療効果を与えうるものと考えられる。こうした介入は、患者の生存を確実にするために必要とされる更なる治療(例えば基礎となる炎症の治療又はサイトカインレベルの低減)を可能とするうえで充分なものとなりうる。敗血症はD−ガラクトサミン及びポリ(I:C)を投与することによってマウスなどの動物でモデル化することができる。こうしたモデルにおいて、D−ガラクトサミンは、敗血症感作物質として機能する肝臓毒素であり、ポリ(I:C)は2本鎖RNAを模倣してTLR3を活性化させる敗血症誘導分子である。TLR3アンタゴニストによる治療は敗血症のマウスモデルにおける動物の生存率を高めうるものであり、したがってTLR3アンタゴニストは敗血症の治療に有用であると考えられる。
【0112】
消化管の炎症は消化管の粘膜走の炎症であり、急性及び慢性の炎症状態が含まれる。急性炎症は、短時間の発症及び好中球の浸潤又は流入によって一般的に特徴付けられる。慢性炎症は、比較的長期の発症及び単核球の浸潤又は流入によって一般的に特徴付けられる。粘膜層は、腸(小腸及び大腸を含む)、直腸、胃(胃部)壁、又は口腔の粘膜であってよい。慢性の消化管炎症状態の例としては、炎症性腸疾患(IBD)、外界からの刺激によって誘導される大腸炎(例えば、化学療法、放射線療法などの投与のような治療レジメンによって引き起こされるかあるいはこれにともなう(例えば副作用として)消化管炎症(例えば大腸炎))、感染性大腸炎、虚血性大腸炎、膠原性又はリンパ性大腸炎、壊死性腸炎、慢性肉芽腫症又はセリアック病などの状態における大腸炎、食品アレルギー、胃炎、感染性胃炎又は小腸結腸炎(例えばヘリコバクター・ピロリの感染による慢性活動性胃炎)、及び感染性病原体によって引き起こされる消化管炎症の他の形態がある。
【0113】
炎症性腸疾患(IBD)には、例えば潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)などの、一般に病因が不明の一群の慢性炎症性疾患が含まれる。臨床的及び実験的証拠は、IBDの病因が感受性遺伝子及び環境因子が関与する多因子的なものであることを示唆している。炎症性腸疾患では、組織の傷害は、腸内の微生物叢の抗原に対する不適切又は過剰な免疫反応によってもたらされる。炎症性腸疾患の幾つかの動物モデルが存在している。最も広く用いられているモデルとしては、結腸に慢性炎症及び潰瘍形成を誘発する2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸/エタノール(TNBS)誘発大腸炎モデル又はオキサゾロンモデルがある(Neurath et al.,Intern.Rev.Immunol 19:51〜62,2000)。別のモデルでは、血性下痢、体重減少、結腸の短縮、及び好中球の浸潤をともなう粘膜の潰瘍形成として発現する急性大腸炎を誘発する硫酸デキストランナトリウム(DSS)を使用する。DSS誘発大腸炎は、リンパ組織過形成、陰窩傷害(focal crypt damage)、及び上皮潰瘍形成をともなう、基底膜内への炎症細胞の浸潤によって組織学的に特徴付けられる(Hendrickson et al.,Clinical Microbiology Reviews 15:79〜94,2002)。別のモデルでは、ナイーブなCD45RBhigh CD4 T細胞をRAG又はSCIDマウスに養子移入する。このモデルでは、ドナーのナイーブT細胞がレシピエントの腸を攻撃することにより、ヒトの炎症性腸疾患に似た慢性腸炎症及び症状を引き起こす(Read and Powrie,Curr.Protoc.Immunol.Chapter15 unit 15.13,2001)。これらのモデルのいずれかにおける本発明のアンタゴニストの投与を用いることによって、これらのアンタゴニストが、炎症性腸疾患などの腸内の炎症にともなう症状を改善し、疾患の経過を変化させる潜在的な有効性を評価することができる。IBDに対しては幾つかの治療の選択肢が存在し、例えば抗TNFα抗体による治療法がクローン病を治療する目的で10年前から用いられている(Van Assche et al.,Eur.J.Pharmacol.Epub Oct 2009)。しかしながら、かなりの割合の患者が現在の治療法に応答しない(Hanauer et al.,Lancet 359:1541〜1549,2002;Hanauer et al.,Gastroenterology 130:323〜333,2006)ことから、難治性の患者集団を標的とした新たな治療法が求められている。
【0114】
炎症状態の別の一例は炎症性の肺状態である。炎症性の肺状態の例としては、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫又はプリオンによる感染にともなうものなどの感染により誘発される肺状態、アレルゲンにより誘発される肺状態、アスベスト症、珪肺症、又はベリリウム肺症などの汚染物質により誘発される肺状態、胃吸引により誘発される肺状態、嚢胞性線維症などの遺伝的素因にともなう免疫調節不全炎症状態、及び人工呼吸器傷害などの物理的外傷により誘発される肺状態が挙げられる。これらの炎症状態には更に、喘息、気腫、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、サルコイドーシス、ヒスチオサイトーシス、リンパ管筋腫症、急性肺傷害、急性呼吸窮迫症候群、慢性肺疾患、気管支肺異形成症、院外感染性肺炎、院内肺炎、人工呼吸器関連肺炎、敗血症、ウイルス性肺炎、インフルエンザ感染、パラインフルエンザ感染、ロタウイルス感染、ヒトメタニューモウイルス感染、呼吸系発疹ウイルス感染、及びアスペルギルス又は他の真菌感染も含まれる。感染にともなう炎症性疾患の例としては、重症肺炎、嚢胞性線維症、気管支炎、気道増悪、及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含むウイルス又は細菌性肺炎が挙げられる。こうした感染にともなう状態は、一次ウイルス感染及び二次ウイルス感染のように複数の感染をともなう場合がある。
【0115】
喘息は、気道過敏症(AHR)、気管支収縮、喘鳴、好酸球又は好中球性炎症、粘液分泌過多、上皮下線維症、及び高いIgEレベルによって特徴付けられる肺の炎症性疾患である。喘息の患者は、最も一般的には気道の微生物感染(例えばライノウイルス、インフルエンザウイルス、ヘモフィルスインフルエンザなど)による症状の悪化である「増悪」を経験する。喘息の発作は、環境因子(例えば、回虫、昆虫、動物(例えばネコ、イヌ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット及び鳥)、真菌、空気汚染物質(例えば煙草の煙))、刺激性ガス、フューム、蒸気、エアゾール、化学物質、花粉、運動、又は冷気によって誘発される。喘息以外にも、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、細菌性肺炎及び嚢胞性線維症などの幾つかの肺の慢性炎症性疾患が、気道への好中球の浸潤によって特徴付けられており(Linden et al.,Eur.Respir.J.15:973〜977,2000;Rahman et al.,Clin.Immunol.115:268〜276,2005)、COPD、アレルギー性鼻炎及び嚢胞性線維症などの疾患が気道過敏症によって特徴付けられている(Fahy and O’Byrne,Am.J.Respir.Crit.Care Med.163:822〜823,2001)。喘息及び気道炎症の一般的に用いられる動物モデルとしては、オボアルブミンチャレンジモデル及びメタコリン感作モデル(Hessel et al.,Eur.J.Pharmacol.293:401〜412,1995)がある。培養したヒト気管支上皮細胞、気管支線維芽細胞又は気道平滑筋細胞からのサイトカイン及びケモカインの産生の阻害をインビトロモデルとして用いることもできる。本発明のアンタゴニストをこれらのモデルのいずれかに投与することによって、喘息、気道炎症、COPDなどの症状を改善し、経過を変化させるためのこれらのアンタゴニストの使用を評価することができる。
【0116】
本発明の方法によって予防又は治療しうる他の炎症状態及び神経障害は、自己免疫疾患によって引き起こされるものである。これらの状態及び神経障害としては、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、並びに、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、双極性疾患、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性及び中枢神経系(CNS)疾患、原発性胆汁性硬変、原発性硬化性胆管炎、非アルコール性脂肪性肝疾患/脂肪性肝炎、線維症、C型肝炎ウイルス(HCV)、及びB型肝炎ウイルス(HBV)などの肝臓疾患、糖尿病及びインスリン抵抗性、アテローム性動脈硬化症、脳出血、脳卒中、及び心筋梗塞などの心血管疾患、関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎及び若年性関節リウマチ(JRA)、骨粗鬆症、変形性関節症、膵炎、線維症、脳炎、乾癬、巨細胞動脈炎、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、炎症性の皮膚状態、移植、癌、アレルギー、内分泌疾患、創傷治癒、他の自己免疫性疾患、気道過敏症、並びに、細胞、ウイルス又はプリオンによって媒介される感染症又は疾患が挙げられる。
【0117】
変形性関節症、関節リウマチ、怪我による関節炎を有する関節などを含む関節炎は、本発明のアンタゴニストのような抗炎症性タンパク質の治療的使用によって利するところのある一般的な炎症状態である。例えば、関節リウマチ(RA)は全身を冒す全身性疾患であり、関節炎の最も一般的な形態の1つである。関節リウマチは組織の傷害を引き起こすため、TLR3リガンドが炎症部位に存在しうる。TLR3シグナル伝達の活性化によって、炎症を起こした関節の炎症及び更なる組織傷害が持続しうる。関節リウマチの幾つかの動物モデルが当該技術分野において知られている。例えばコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルでは、ヒト関節リウマチとよく似た慢性炎症性関節炎をマウスに発症させる。本発明のTLR3アンタゴニストをCIAモデルマウスに投与することによって、疾患の症状を改善して疾患の経過を変化させるためのこれらのアンタゴニストの使用を評価することができる。
【0118】
真性糖尿病すなわち糖尿病は、複数の原因因子によって誘導される、高血糖によって特徴付けられる疾患プロセスのことを指し(LeRoith et al.,(eds.),Diabetes Mellitus,Lippincott−Raven Publishers,Philadelphia,Pa.U.S.A.1996)、すべての参考文献を本明細書に援用する。制御されない高血糖は、腎障害、神経障害、網膜障害、高血圧、脳血管疾患及び冠状動脈性心疾患などの微小血管及び大血管性疾患のリスクが増大するために死亡率が増加し、若年死をともなう。したがって、グルコースホメオスタシスの制御は糖尿病の治療にとって極めて重要なアプローチである。
【0119】
基礎となる欠陥により、糖尿病は、患者の膵線にインスリンを産生するβ細胞が存在しない場合に発症する1型糖尿病(インスリン依存性糖尿病、IDDM)と、β細胞のインスリン分泌不全及び/又はインスリンの作用に対する抵抗性を有する患者において発症する2型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病、NIDDM)の2つの大きなグループに分類される。
【0120】
2型糖尿病は、絶対的ではなく、相対的なインスリン欠乏をともなうインスリン抵抗性によって特徴付けられる。インスリン抵抗性の患者では、身体はこの欠陥を補償するために異常に高量のインスリンを分泌する。インスリン抵抗性を補償し、血糖値を適正に制御するために不適切な量のインスリンが存在すると、境界型糖尿病の状態が現れる。多くの患者でインスリン分泌は更に低下し、血漿グルコース濃度が上昇し、糖尿病の臨床状態がもたらされる。肥満症にともなう炎症は、インスリン抵抗性、2型糖尿病、脂質代謝異常、及び心血管疾患の発症に深く関わっていることが示唆されている。肥満脂肪はマクロファージを動員及び維持し、TNF−α及びIL−6などの炎症性サイトカイン、遊離脂肪酸及びアディポカインを過剰に産生しうるが、これらはインスリンシグナル伝達を妨害してインスリン抵抗性を誘発しうる。マクロファージのTLR3活性化は、こうした脂肪の炎症誘発状態に寄与しうる。インスリン抵抗性の幾つかの動物モデルが知られている。例えば、食餌誘発肥満モデル(DIO)では、動物は体重増加をともなう高血糖症及びインスリン抵抗性を発症する。DIOモデルに本発明のTLR3アンタゴニストを投与することによって、2型糖尿病にともなう合併症を改善して疾患の経過を変化させるためのこれらのアンタゴニストの使用を評価することができる。
【0121】
癌の例としては、白血病、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞又はT細胞のALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、直腸結腸癌、膵臓癌、腎細胞癌、乳癌、鼻咽頭癌、悪性組織球増殖症、悪性の腫瘍随伴症候群/高カルシウム血症、固形腫瘍、腺癌、扁平上皮細胞癌、肉腫、悪性黒色腫、特に転移性黒色腫、血管腫、転移性疾患、癌関連骨吸収、及び癌関連骨痛を含む(ただしこれらに限定されない)、細胞、組織、臓器、動物、又は患者における少なくとも1つの悪性疾患が挙げられる。
【0122】
心血管疾患の例としては、心臓性昏倒症候群、心筋梗塞、鬱血性心不全、卒中、虚血性卒中、出血、動脈硬化症、アテローム性硬化症、再狭窄、糖尿病性動脈硬化疾患、高血圧、動脈高血圧、腎血管性高血圧、失神、ショック、心血管系の梅毒、心不全、肺性心、原発性肺高血圧、心臓不整脈、心房異所性収縮、心房粗動、心房細動(持続性または痙攣性)、潅流後症候群、心肺バイパス炎症反応、多源性(chaotic or multifocal)心房頻拍、規則的で狭いQRS頻拍、特異的不整脈、心室細動、ヒス束不整脈、房室ブロック、脚ブロック、心筋虚血性障害、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞、心筋症、拡張型うっ血性心筋症、拘束型心筋症、心臓弁疾患、心内膜炎、心臓周囲疾患、心臓腫瘍、大動脈および抹消動脈瘤、大動脈解離、大動脈の炎症、腹部大動脈およびその分枝の閉塞、抹消血管障害、閉塞性動脈障害、抹消性アテローム硬化疾患、閉塞性血栓血管炎、機能性抹消動脈障害、レイノー現象および障害、先端チアノーゼ、先端紅痛症、静脈疾患、静脈血栓症、静脈瘤血管、動静脈瘤、リンパ水腫、脂肪性浮腫、不安定狭心症、再潅流傷害、ポンプ後症候群、及び虚血性再潅流傷害を含む(ただしこれらに限定されない)、細胞、組織、臓器、動物または患者における心血管疾患が挙げられる。
【0123】
神経性疾患の例としては、神経変性疾患、多発性硬化症、偏頭痛、AIDS痴呆複合症、例えば多発性硬化症及び急性横断性脊髄炎などの髄鞘脱落性疾患;例えば皮質脊髄系の病変などの錐体外路及び小脳疾患;基底核の疾患又は小脳疾患;脳幹神経節の障害;例えばハンチントン舞踏病及び老年舞踏病などの運動亢進性運動障害;例えばCNSドーパミンレセプターを遮断する薬物によって誘導される運動障害などの薬物誘導性運動障害;例えばパーキンソン病などの運動低下性運動障害;進行性核上性麻痺;小脳の構造的病変;例えば脊髄性運動失調、フリードライヒ運動失調、小脳皮質変性、多発性系変性(Mencel,Dejerine−Thomas,Shi−Drager及びMachado−Joseph)などの脊髄小脳の変性;全身性疾患(Refsum’s疾患、無β−リポタンパク血症、麻痺、毛細管拡張症及びミトコンドリア性多系疾患);例えば多発性硬化症、急性横断性脊髄炎などの髄鞘脱落性コア疾患;及び神経性筋萎縮などの運動ユニットの障害(例えば筋委縮性測索硬化症、小児性脊髄性筋委縮及び若年性脊髄性筋委縮などの前角細胞変性);アルツハイマー病;中年のダウン症候群;びまん性レビー小体病;レビー小体型の老年性認知症;ウェルニッケ‐コルサコフ症候群;慢性アルコール中毒;クロイツフェルト・ヤコブ病;亜急性硬化性全脳炎、ハラーフォルデン・シュパッツ病;ボクサー痴呆を含む(ただしこれらに限定されない)細胞、組織、臓器、動物又は患者における神経疾患が挙げられる。
【0124】
線維症状態の例としては、肝臓線維症(アルコール性肝硬変、ウイルス性肝硬変、自己免疫性肝炎を含むがこれらに限定されない);肺線維症(強皮症、特発性肺線維症を含むがこれらに限定されない);腎臓線維症(強皮症、糖尿病性腎炎、糸球体腎炎、ループス腎炎を含むがこれらに限定されない);皮膚線維症(強皮症、肥厚性及びケロイド瘢痕、火傷を含むがこれらに限定されない);骨髄線維症;神経線維腫症;線維腫;腸線維症;及び外科手術による線維化付着などが挙げられる。こうした方法では、線維症は器官特異的な線維症又は全身性線維症でありうる。器官特異的な線維症は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心線維症、血管線維症、皮膚線維症、眼線維症、骨髄線維症、又はその他の線維症の少なくとも1つにともないうる。肺線維症は、特発性肺線維症、薬剤誘発性肺線維症、喘息、サルコイドーシス、又は慢性閉塞性肺疾患のうち少なくとも1つにともないうる。肝臓線維症は、肝硬変、住血吸虫症、又は胆管炎のうち少なくとも1つにともないうる。肝硬変は、アルコール性肝硬変、C型肝炎後肝硬変、原発性胆汁性肝硬変の中から選択されうる。胆管炎は硬化性胆管炎である。腎線維症は、糖尿病性腎障害又はループス糸球体腎炎にともないうる。心線維症は、心筋梗塞にともないうる。血管線維症は、血管形成術後動脈再狭窄、又はアテローム性動脈硬化にともないうる。皮膚線維症は、火傷瘢痕化、肥厚性瘢痕化、ケロイド、又は腎性線維性皮膚症にともないうる。眼線維症は、後眼窩線維症、白内障手術後又は増殖性硝子体網膜症にともないうる。骨髄線維症は、特発性骨髄線維症又は薬剤誘発性骨髄線維症にともないうる。他の線維症は、ペイロニー病、デュピュイトラン拘縮又は皮膚筋炎から選択されうる。全身性線維症は、全身性硬化症及び移植片体宿主病から選択されうる。
【0125】
投与/医薬組成物
TLR3活性の抑制が望ましい状態の治療又は予防に有効な薬剤の「治療上の有効量」は、標準的な研究法によって決定することができる。例えば、喘息、クローン病、潰瘍性大腸炎又は関節リウマチなどの炎症状態の治療又は予防において有効となる薬剤の用量は、本明細書に述べるモデルのような関連する動物モデルに薬剤を投与することによって決定することができる。
【0126】
更に、場合によりインビトロアッセイを用いて最適な用量範囲を特定することができる。特定の有効用量の選択は、当業者であれば幾つかの因子の考慮に基づいて(例えば臨床試験によって)決定することができる。こうした因子には、治療又は防止しようとする疾患、関与する症状、患者の体重、患者の免疫状態、及び当業者には周知の他の因子が含まれる。製剤に使用される正確な用量は、投与経路、及び疾患の重篤度にも依存し、医師の判断及び各患者の状況に基づいて決定されなければならない。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導出される用量反応曲線から外挿することができる。
【0127】
本発明の方法では、TLR3アンタゴニストは単独で、又は少なくとも1種類の他の分子と組み合わせて投与することができる。こうした更なる分子は、他のTLR3アンタゴニスト分子か、又はTLR3受容体のシグナル伝達によって媒介されない治療効果を有する分子であってよい。抗生剤、抗ウイルス剤、緩和剤、及びサイトカインのレベル又は活性を低減する他の化合物はこうした更なる分子の例である。
【0128】
本発明の薬剤の治療上の使用のための投与方法は、薬剤をホストに送達する任意の好適な経路でよい。これらの薬剤の医薬組成物は、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、又は鼻腔内などの非経口投与に特に有用である。
【0129】
本発明の薬剤は、有効量の薬剤を薬学的に許容される担体中の有効成分として含有する医薬組成物として調製することができる。「担体」なる用語は、活性化合物が一緒に投与される希釈剤、助剤、賦形剤、又は溶媒のことを指す。こうした医薬用溶媒は、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などの、石油、動物、植物又は合成物由来の水及び油などの液体であってよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを使用することができる。これらの溶液は滅菌され、粒子状物質を含まないものである。これらの溶液は、従来の公知の滅菌法(例えば濾過)によって滅菌することができる。前記組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされるpH調整剤及び緩衝剤などの薬学的に許容される補助物質を含むことができる。こうした医薬製剤中の本発明の薬剤の濃度は、重量にして約0.5%未満、通常は約1%又は少なくとも約1%から、最大で15又は20%までと大きく異なってよく、選択される投与方法にしたがって、主として必要とされる用量、液体の体積、粘度などに基づいて選択される。
【0130】
したがって、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mLの滅菌緩衝水、及び約1ng〜約100mg、例えば約50ng〜約30mg、又はより好ましくは約5mg〜約25mgの本発明のTLR3アンタゴニストを含むように調製することができる。同様に、静脈内注射用の本発明の医薬組成物は、250mLの滅菌リンゲル溶液、及び約1mg〜約30mg、好ましくは5mg〜約25mgの本発明のアンタゴニストを含むように調製することができる。非経口投与可能な組成物を調製する実際の方法は周知のものであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,マック・パブリッシング社(Mack Publishing Company)ペンシルベニア州イーストン)により詳細に記載されている。
【0131】
本発明の抗体アンタゴニストは凍結乾燥して保存することができ、使用の前に適切な溶媒中で還元することができる。この方法は従来の免疫グロブリン及びタンパク質の調製において有効であることが示されており、当該技術分野では周知の凍結乾燥及び還元の技術を使用することができる。
【0132】
次に以下の具体的かつ非限定的な実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0133】
(実施例1)
抗huTLR3アンタゴニストmAbの同定及び誘導
MorphoSys Human Combinatorial Antibody Library(HuCAL(登録商標))Goldファージディスプレイライブラリー(モルフォシス社(Morphosys AG)、マルティンスリート、ドイツ)をヒト抗体フラグメントの供給源として使用し、C末端にポリヒスチジンタグを有するヒトTLR3(huTLR3)(配列番号4)のアミノ酸1〜703の発現によって生成された精製TLR3抗原に対してパンニングし、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。アミノ酸1〜703はhuTLR3の予想される細胞外ドメイン(ECD)と一致している。huTLR3と特異的に結合するFabフラグメント(Fab)を、多様な抗体フラグメント群を固有のものとして同定、配列決定及び確認できるように様々な方法でTLR3タンパク質を提示することによって選択した。異なるパンニングの手法により、62種類の候補物質(V領域配列が異なる)がhTLR3のECDに結合する固有の物質として同定された。
【0134】
huTLR3のECDの結合物質として同定されたこれら62種類の候補物質を、抗炎症活性の特定に関する広範な細胞アッセイにおいて中和活性についてスクリーニングした。予備活性データ(下記実施例2を参照)を用いて、ファミリー16〜19を形成する4種類の候補物質(Fab 16〜19)を、重鎖CDR2(HCDR2)及び軽鎖CDR2(LCDR2)のCDR成熟の親として62種類の候補物質から選択した。これらの親候補物質の1つ(候補物質19)でHCDR2にN結合型グリコシル化部位が認められたため、この候補物質にSer〜Ala(S〜A)の突然変異を導入してこの部位を除去した。4種類の親候補物質のCDR成熟の後、全部で15種類の子孫候補物質(候補物質1〜15)が同定され、これを下記実施例2で述べるように更なる特性評価に供した。19種類の候補物質のそれぞれに存在する軽鎖及び重鎖の可変領域のリストを上記表3に示した。ここで各候補物質は、Fabであるか完全長の抗体鎖としてクローニングされた(実施例3)ものであるかに応じてmAb 1〜19又はFab 1〜19と呼ぶものとする。発現ベクターの設計のため、すべての候補物質について可変領域の成熟したアミノ末端は重鎖ではQVEであり、軽鎖ではDIであった。これらの末端の好ましい配列は、候補配列と高い相同性を有するそれぞれの生殖細胞遺伝子内の配列である。ファミリー17及び18では、生殖細胞系の配列はVHでQVQ、VLでSYである。ファミリー19ではこの配列はVHでEVQ、VLでDIである。SY配列はλサブグループ3に固有であり、アミノ末端残基としてのS又はYは種間で異なることが報告されている。したがって、有名なλサブグループ1からのQSVコンセンサス末端は、ファミリー17及び18のVLのDIEのより好適な置換になるものと考えられる。これらの改変を、ファミリー18から候補物質9、10及び12に、ファミリー19から候補物質14及び15に導入した。このプロセスでは、これらの抗体のVH及びVL領域のコドンを最適化した。候補物質9、10及び11の軽鎖可変領域のN末端生殖細胞変異体のアミノ酸配列を配列番号209〜211に示し、候補物質9、10、12、14及び15の重鎖可変領域のN末端生殖細胞変異体のアミノ酸配列を配列番号212〜216にそれぞれ示す。これらの候補物質のN末端変異体をここでは、候補物質/mAb/Fab 9QVQ/QSV、10QVQ/QSV、12QVQ/QSV、14EVQ又は15EVQと呼ぶ。これらのN末端生殖細胞変異体をmAbとして発現させたところ、それぞれの親候補物質と比較した場合にTLR3への結合についても、TLR3の生物学的活性を阻害する能力においても何らの影響を示さなかった(データは示されていない)。
【0135】
(実施例2)
インビトロでのTLR3アンタゴニスト活性の判定
上記に述べた15種類のCDR成熟させた候補物質を潜在的なヒトの治療物質として選択し、広範な結合及び中和活性を調べた。4種類の親FabであるFab 16〜19及び15種類のCDR成熟であるFab 1〜15又はこれらの非生殖細胞V領域変異体について、活性のアッセイ及び結果を下記に述べる。
【0136】
NF−κB及びISREシグナル伝達カスケードの阻害
熱で不活化したFBSを添加したDMEM及びGlutaMax培地(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド)中で293T細胞を増殖させ、30ngのpNF−κB又はISREホタルルシフェラーゼレポータープラスミド、13.5ngのpcDNA3.1ベクター、5ngのphRL−TK、及び1.5ngのFL TLR3をコードしたpCDNA(配列番号2)をトランスフェクトした。phRL−TKプラスミドは、HSV−1チミジンキナーゼプロモーターによって制御されるウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有している(プロメガ社(Promega)ウィスコンシン州マディソン)。TLR3抗体を30〜60分インキュベートした後、ポリ(I:C)(ジー・イー・ヘルスケア社(GE Healthcare)ニュージャージー州ピスカタウェイ)を加えた。各プレートを37度で6時間又は24時間インキュベートした後、Dual−Gloルシフェラーゼ試薬を加えて各プレートをFLUOstarプレートリーダーで読み取った。ホタルの相対発光量(RLU)をウミシイタケのRLUで割ることによって正規化された値(ルシフェラーゼ比)を求めた。TLR3アゴニストであるポリ(I:C)で刺激したところ、NF−κB又はISREシグナル伝達カスケードによって刺激されるホタルルシフェラーゼの産生は、刺激前に細胞を抗TLR3抗体(0.4、2.0及び10μg/ml)とインキュベートすることによって特異的に阻害された。NF−κBアッセイの結果を図1に示し、5465をポジティブコントロール(抗ヒトTLR3 Mabを中和する)として、また抗ヒト組織因子mAb(859)をヒトIgG4アイソタイプコントロールとして、ホタル/ウミシイタケ比の阻害率(%)として表した。0.4〜10μgのmAbの濃度で50%よりも高い阻害率が得られた。c1068及びTLR3.7は、10μg/mlでTLR3の生物学的活性の約38%及び8%を阻害した。同様の結果がISREレポーター遺伝子アッセイで得られた(データは示されていない)。
【0137】
BEAS−2B細胞におけるサイトカイン放出
BEAS−2B細胞(SV−40で形質転換した正常なヒト気管支上皮細胞)を、I型コラーゲンをコーティングした培養皿に播種し、抗ヒトTLR3抗体の存在下又は非存在下でインキュベートした後、ポリ(I:C)を加えた。処理の24時間後に上清を回収し、カスタム多重ビーズアッセイを用いてサイトカイン及びケモカインレベルについてアッセイして、IL−6、IL−8、CCL−2/MCP−1、CCL5/RANTES及びCXCL10/IP−10を検出した。結果を、0.4、2.0及び10μg/mlのmAb処理後の個々のサイトカイン/ケモカインの阻害率(%)として図2に示す。5465はポジティブコントロールであり、859はアイソタイプコントロールである。
【0138】
NHBE細胞におけるサイトカイン放出
サイトカインの放出を、正常なヒト気管支上皮(NHBE)細胞(ロンザ社(Lonza)、メリーランド州ウォーカーズビル)においてもアッセイした。NHBE細胞を増殖させ、コラーゲンコーティングした培養皿に移して48時間インキュベートした後、培地を除去して0.2mlの新鮮な培地を補充した。次いで細胞を抗ヒトTLR3 mAbの存在下又は非存在下で60分間インキュベートした後、ポリ(I:C)を加えた。24時間後に上清を回収して−20℃で保存するか、直ちにIL−6のレベルについてアッセイした。結果を、0.001〜50μg/mlの用量を用いたmAb処理後のIL−6の分泌の阻害率(%)として図3にグラフで示す。5465はポジティブコントロールであり、859はアイソタイプコントロールである。多くのmAbは1μg/mlでIL−6の産生の少なくとも50%を阻害し、5μg/mlで75%の阻害率を達成した。
【0139】
PBMC細胞におけるサイトカイン放出
サイトカインの放出を、ヒト末梢血単核球細胞(PBMC)においてもアッセイした。ヒトドナーから全血をヘパリン回収試験管に回収し、これにFicoll−PaquePlus溶液を下側に層を形成するようにゆっくりと加えた。試験管を遠心してFicollの直ぐ上に白色の層を形成しているPBMCを回収して播種した。この後、PBMCを抗ヒトTLR3mAbの存在下又は非存在下でインキュベートした後、25μg/mlのポリ(I:C)を加えた。24時間後に上清を回収し、Luminex法によってサイトカインのレベルを調べた。結果を、5465をポジティブコントロールとし、hIgG4をアイソタイプコントロールとして、mAbの単回用量(0.4μg/ml)を用いてIFN−γ、IL−12及びIL−6の累積阻害率(%)として図4にグラフに示す。
【0140】
HASM細胞におけるサイトカイン放出
簡単に述べると、ヒト気道平滑筋(HASM)細胞を抗ヒトTLR3 mAbの存在下又は非存在下でインキュベートした後、500ng/mlのポリ(I:C)及び10ng/mlのTNF−αの相乗的な組合わせを加えた。24時間後に上清を回収し、Luminex法によってサイトカインのレベルを調べた。結果を、mAbの3つの用量(0.4、2及び10μg/ml)を用いてCCL5/RANTESのレベルとして図5にグラフで示す。5465はポジティブコントロールであり、hIgG4はアイソタイプコントロールである。
【0141】
ヒト細胞におけるインビトロアッセイからの結果によって、huTLR3に結合することによりサイトカイン及びケモカインの放出を低減させる本発明の抗体の能力が確認された。
【0142】
(実施例3)
完全長の抗体コンストラクト
4種類の親Fab(候補物質番号16〜19)及び15種類の子孫Fab(候補物質番号1〜15)の重鎖をS229P Fc突然変異を有するヒトIgG4バックグラウンド上にクローニングした。候補物質9QVQ/QSV、10QVQ/QSV、12QVQ/QSV、14EVQ又は15EVQを、F235A/L236及びS229P Fc突然変異を有するヒトIgG4バックグラウンド上にクローニングした。
【0143】
成熟した完全長の重鎖アミノ酸配列を以下のように配列番号90〜102及び218〜220に示す。
【0144】
【表9】

【0145】
発現のため、これらの重鎖はMAWVWTLLFLMAAAQSIQA(配列番号103)のようなN末端のリーダー配列を有してもよい。リーダー配列を有する候補物質14EVQ及び15EVQの重鎖、及び成熟型(リーダー配列を有さない)をコードするヌクレオチド配列の例を、配列番号104及び105にそれぞれ示す。同様に、発現のため、本発明の抗体の軽鎖の配列は、MGVPTQVLGLLLLWLTDARC(配列番号106)のようなN末端のリーダー配列を有してもよい。リーダー配列を有するコドン最適化された候補物質15の軽鎖、及び成熟型(リーダー配列を有さない)をコードするヌクレオチド配列の例を、配列番号107及び108にそれぞれ示す。
【0146】
(実施例4)
抗TLR3 mAbの結合の特性評価
ヒトTLR3の細胞外ドメイン(ECD)に対するmAbの結合のEC50値をELISAによって求めた。ヒトTLR3のECDタンパク質をPBSで2μg/mlに希釈し、100μlの一定分量を96穴プレート(コーニング社(Corning Inc.)、マサチューセッツ州アクトン)の各ウェルに分配した。4℃で一晩インキュベートした後、PBSに0.05%のTween−20(シグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich))を加えた洗浄緩衝液中で3回プレートを洗った。各ウェルを、2%のI−Block(アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems)カリフォルニア州フォスターティー)及び0.05%のTween−20をPBSに加えた200μlのブロッキング溶液でブロッキングした。室温で2時間ブロッキングした後、プレートを3回洗ってから、抗TLR3 mAbの候補物質1〜19をブロッキング緩衝液で希釈した連続希釈液を加えた。この抗TLR3 mAbを室温で2時間インキュベートして3回洗った。この後、ブロッキング緩衝液で1:4000に希釈したペルオキシダーゼ接合ヒツジ抗ヒトIgG(ジー・イー・ヘルスケア社(GE Healthcare)ニュージャージー州ピスカタウェイ)を加え、室温で1時間インキュベートした後、洗浄緩衝液中で3回洗った。結合は、TMB−S(フィッツジェラルド・インダストリーズ・インターナショナル社(Fitzgerald Industries International,Inc.)マサチューセッツ州コンコード)中で10〜15分間インキュベートすることによって検出した。反応を25μlの2N H2SO4によって停止させ、吸光度をSPECTRA Max分光光度計(モレキュラー・デバイシーズ社(Molecular Devices Corp.,)カリフォルニア州サニーベイル)を用いて450nmで読み取り、650nmで差をとった。EC50値をGraphPad Prismプリズムソフトウェア(グラフパッド・ソフトウェア社(GraphPad Software, Inc.)、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して非線形回帰によって求めた。
【0147】
mAbを2.5μg/ml〜0.6pg/mlまで4倍ずつ希釈した100μlの連続希釈液とインキュベートすることにより、huTLR3に対する結合についてEC50値を求めた(表4)。抗ヒト組織因子mAb 859及びhu IgG4κをネガティブコントロールとして含めた。
【0148】
【表10】

【0149】
huTLR3 ECDに対する結合親和性もBiacore分析によって求めた。データ(示されていない)は、mAb 1〜19ではhuTLR3 ECDに対するKdが10-8M未満であることを示した。
【0150】
(実施例5)
競合的エピトープ結合
抗TLR3抗体競合グループ又は「エピトープビン」を決定するためにエピトープ結合実験を行った。
【0151】
競合的ELISAを行うため、実施例1に述べるようにして作製した5μl(20μg/ml)の精製ヒトTLR3 ECDタンパク質をMSD HighBindプレート(メソ・スケール・ディスカバリー社(Meso Scale Discovery)、メリーランド州ゲイザースバーグ)上に2時間室温で各ウェルにコーティングした。150μlの5% MSDブロッカーA緩衝液(メソ・スケール・ディスカバリー社(Meso Scale Discovery))を各ウェルに加えて室温で2時間インキュベートした。プレートを0.1M HEPES緩衝液(pH 7.4)で3回洗った後、標識した抗TLR3 mAbと異なる競合物質との混合液を加えた。標識した抗体(10nM)を濃度が増大する(1nM〜2μM)非標識抗TLR3抗体とインキュベートした後、25μlの量の混合液を指定されたウェルに加えた。室温で穏やかに振盪しながら2時間インキュベートした後、プレートを0.1M HEPES緩衝液(pH 7.4)で3回洗った。MSD Read緩衝液Tを蒸留水で希釈し(4倍)、150μl/ウェルの量で分配してSECTOR Imager 6000によって分析した。抗体を製造者(メソ・スケール・ディスカバリー社(Meso Scale Discovery))の指示にしたがってMSD Sulfo−Tag(商標)NHS−エステルで標識した。
【0152】
以下の抗TLR3抗体を評価した。すなわち、MorphoSys Human Combinatorial Antibody Libraryより得たmAb 1〜19(表3に示すもの);c1068(国際特許出願公開第WO06/060513A2号に述べられるもの)、c1811(マウスTLR3タンパク質で免役したラットから作製されるハイブリドーマが産生するラット抗マウスTLR3 mAb)、TLR3.7(イー・バイオサイエンシーズ社(eBiosciences)、カリフォルニア州サンディエゴ、カタログ番号14−9039)、及びIMG−315A(イムジェネックス社(Imgenex)、カリフォルニア州サンディエゴより入手されるヒトTLR3アミノ酸55〜70(VLNLTHNQLRRLPAAN)に対して作製されたもの)。mAb 9、10、12、14及び15については、変異体9QVQ/QSV、10QVQ/QSV、12QVQ/QSV、14EVQ、又は15EVQをこの実験で使用した。
【0153】
競合アッセイに基づき、抗TLR3抗体を5つの異なるビンに割り当てた。ビンA:mAb 1、2、13、14EVQ、15EVQ、16、19;ビンB:mAb 3、4、5、6、7、8、9QVQ/QSV、10QVQ/QSV、11、12QVQ/QSV、17、18;ビンC:抗体Imgenex IMG−315A;ビンD:抗体TLR3.7、c1068;及びビンE:抗体c1811。
【0154】
(実施例6)
エピトープマッピング
実施例5で述べた異なるエピトープビンからの代表的な抗体を更なるエピトープマッピングのために選択した。エピトープマッピングは、TLR3分節スワッピング実験、突然変異誘発、H/D交換、及びインシリコタンパク質−タンパク質ドッキングを含む各種のアプローチを用いて行った(The Epitope Mapping Protocols,Methods in Molecular Biology,Volume 6,Glen E.Morris ed.,1996)。
【0155】
TLR3セグメントスワッピングTLR3ヒト−マウスキメラタンパク質を用いてTLR3上の全体の抗体結合ドメインの位置を特定した。ヒトTLR3タンパク質の細胞外ドメインを3つのセグメントに分割した(GenBankアクセッション番号NP_003256のヒトTLR3アミノ酸配列に基づくアミノ酸番号にしたがってaa 1−209、aa 210−436、aa 437−708)。ヒトTLR3のアミノ酸210〜436及び437〜708を対応するマウスのアミノ酸(マウスTLR3、GenBankアクセッション番号NP_569054、アミノ酸211〜437及び438〜709)と置き換えることによってMT5420キメラタンパク質を作製した。ヒトアミノ酸の位置437〜708をマウスTLR3のアミノ酸(マウスTLR3、GenBankアクセッション番号NP_569054、アミノ酸438−709)で置き換えることによってMT6251キメラを作製した。コンストラクトはすべて、標準的なクローニング手法を用いてpCEP4ベクター(ライフ・テクノロジーズ社(Life Technologies)、カリフォルニア州カールスバッド)内で作製した。各タンパク質をHEK293細胞内でV5−His6 C末端融合タンパク質として一過性に発現させ、実施例1で述べたようにして精製した。
【0156】
mAb c1068:mAb c1068は、ヒトTLR3 ECDに高い親和性で結合したがマウスTLR3にはよく結合しなかった。c1068はMT5420及びMT6251のいずれにも結合する能力を失ったが、このことは結合部位が野生型ヒトTLR3タンパク質のアミノ酸437〜708内に位置していることを示している。
【0157】
mAb 12QVQ/QSV:mAb 12QVQ/QSVは両方のキメラに結合したが、このことはmAb 12QVQ/QSVの結合部位が配列番号2に示される配列を有するヒトTLR3タンパク質のアミノ酸1〜209内に位置していることを示している。
【0158】
インシリコタンパク質−タンパク質ドッキングmAb 15EVQの結晶構造(下記参照)及び公表されているヒトTLR3の構造(Bell et al.,J.Endotoxin Res.12:375〜378,2006)を、ドッキングの開始モデルとして使用するためにCHARMm内でエネルギー極小化した(Brooks et al.,J.Computat.Chem.4:187〜217,1983)。タンパク質ドッキングは、ZDOCK 2.1(Chen and Weng,Proteins 51:397〜408,2003)と同様のZDOCKpro 1.0(アクセルリス社(Accelrys)、カリフォルニア州サンディエゴ)により6°の角度グリッドで行った。ヒトTLR3の公知のN結合型グリコシル化部位であるAsn残基(Asn 52、70、196、252、265、275、291、398、413、507及び636)(Sun et al.,J.Biol.Chem.281:11144〜11151,2006)をZDOCKアルゴリズムのエネルギー項によって抗体−抗原複合体界面に参加しないようにブロックした。2000個の最初のポーズを出力してクラスター化し、ドッキングポーズをリファインしてRDOCKで再スコアリングを行った(Li et al.,Proteins 53:693〜707,2003)。最初のZDOCKスコアが最も高かった200個のポーズ及びRDOCKの上位200個のポーズを視覚的に調べた。
【0159】
mAb 15EVQの結晶化を20℃で蒸気拡散法によって行った(Benvenuti and Mangani,Nature Protocols 2:1633〜51,2007)。最初のスクリーニングは、96穴プレートでHydraロボットを使用してセットアップした。実験は、0.5μlのタンパク質溶液を0.5μlのリザーバ溶液と混合した液滴で構成した。液滴は90μlのリザーバ溶液に対して平衡化した。50mMのNaClを含む20mM Tris緩衝液(pH 7.4)中のFab溶液をAmicon Ultra−5kDaセルを使用して14.3mg/mlにまで濃縮した。スクリーニングは、Wizard I & II(エメラルド・バイオシステムズ社(Emerald BioSystems)、ワシントン州ベインブリッジアイランド)及びインハウス結晶化スクリーンによって行った。
【0160】
X線回折データを収集し、Osmic(商標)VariMax(商標)共焦光学系、Saturn 944 CCD検出器、及びX−stream(商標)2000低温冷却システムを備えたRigaku MicroMax(商標)−007HFマイクロフォーカスX線発生装置(リガク社(Rigaku)、テキサス州ウッドランズ)を使用して処理した。回折強度は、1/2°のイメージ当たり120秒の露光時間で270°の結晶回転にわたって検出した。X線データをD*TREKプログラム(リガク社(Rigaku))により処理した。構造は、Phaser又はCNXプログラム(アクセルリス社(Accelrys)、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して分子置換法によって決定した。原子配置及び温度因子は、すべてのデータをmAb 15については15〜2.2オングストーム、mAb 12については50〜1.9オングストロームの解像度範囲で使用してREFMACによりリファインした。水分子をカットオフレベルとして3σを用いて(Fo−Fc)電子密度ピークに加えた。すべての結晶学的計算は、CCP4プログラムパッケージ(Collaborative Computational Project,Number 4.1994.The CCP4 suite:programs for protein crystallography.Acta Crystallogr.D50:760〜763)により行った。モデル調整は、COOTプログラム(Emsley et al.,Acta Crystallogr.D60:2126〜2132,2004)を使用して行った。
【0161】
解像されたmAb 15EVQの結晶構造は、抗体結合部位が重鎖の多数の負に帯電した残基(D52、D55、E99、D106及びD109)によって特徴付けられることを示すものであった。したがってmAb 15EQVとTLR3との間の認識には、正に帯電した残基が関与している可能性が高いと考えられた。行ったタンパク質−タンパク質ドッキングシミュレーションは、複数の正に帯電した残基を含むTLR3上の2個の大きなパッチが、抗体に対して優れた相補性を示すことを示唆するものであった。シミュレートしたTLR3−抗TLR3抗体複合体の界面内のTLR3上の残基は、R64、K182、K416、K467、Y468、R488、R489及びK493であった。
【0162】
突然変異誘発実験単一及び組合わせの突然変異をTLR3 ECDの、上記でmAb 12及びmAb 15EVQのエピトープを含んでいることが特定された領域内の表面残基に導入し、突然変異タンパク質を抗体結合について試験した。
【0163】
ヒトTLR3のアミノ酸1〜703(ECD)をコードするヌクレオチド配列(配列番号4、GenBankアクセッション番号NP_003256)を標準的なプロトコールを用いてクローニングした。突然変異体はすべて、表5aに示されるオリゴヌクレオチドを用い、製造者のプロトコールにしたがって、Strategene Quickchange II XLキット(ストラタジーン社(Stratagene)、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用した部位特異的突然変異誘発によって作製した。突然変異はDNAの配列決定によって確認した。タンパク質はCMVプロモーターの制御下で、HEK293細胞内でC末端HIs−タグ融合タンパク質として発現させ、実施例1で述べたようにして精製した。
【0164】
【表11】

【0165】
結合アッセイヒトTLR3に対するmAb 12QVQ/QSV及びmAb 15EVQの結合活性及び生成された変異体をELISAによって評価した。プロセスを促進するため、C末端HisタグをmAb 12QVQ/QSVとともに含むTLR3 ECD突然変異体をコトランスフェクトすることによって、予想されるmAb 15EVQ結合部位における突然変異体をHEK細胞内で同時発現させた後、金属アフィニティークロマトグラフィーにより精製した。回収された試料は、TLR3突然変異体とmAbとの複合体であった。このアプローチは、mAb 12QVQ/QSV及びmAb 15EVQの結合部位が互いに離れており、したがって一方の部位における点突然変異が他方の部位のエピトープに影響する可能性が低いことから実行可能である。これらの複合体をELISA結合アッセイで使用した。PBSに加えた20μg/ml野生型TLR3 ECD又は突然変異タンパク質を各ウェル当たり5μlずつ、MSD HighBindプレート(メソ・スケール・ディスカバリー社(Meso Scale Discovery)、メリーランド州ゲイザースバーグ)にコーティングした。プレートを室温で60分間インキュベートし、MSDブロッカーA緩衝液(Meso Scale Discovery)、メリーランド州ゲイザースバーグ)中、4℃で一晩ブロッキングした。翌日、プレートを洗い、MSD Sulfo−タグ標識したmAb 15EVQを500pM〜1pMの濃度で1.5時間加えた。洗浄後、MSD Read緩衝液Tを使用して標識抗体を検出し、SECTOR Imager 6000を使用してプレートを読み取った。ヒトTLR3及び変異体に対するmAb 12QVQ/QSVの結合活性を評価するため、mAb 15EVQとの同時発現を行い、検出抗体を標識mAb 12QVQ/QSVとした以外はmAb 15EVQについて述べたのと同様にして結合ELISAを行った。
【0166】
mAb 12QVQ/QSV:mAb 12QVQ/QSVの結合部位は、セグメントスワップ実験において決定されたようにヒトTLR3のアミノ酸1〜109内に位置が特定された。以下のTLR3突然変異体について評価を行った。すなわち、D116R、N196A、N140A、V144A、K145E、K147E、K163E、及びQ167A。野生型TLR3及びV144A突然変異体は、mAb 12QVQ/QSVに対して同等の結合性を示した(図6A)。抗体はTLR3 D116R突然変異体には結合せず、K145E突然変異体に対しては大幅に低い結合親和性を示した。したがって、TLR3上で近接して配置されている残基D116及びK145は、mAb 12QVQ/QSVに対する中心的なエピトープ部位と特定された(図7A)。
【0167】
mAb 12QVQ/QSV結合エピトープのこれら2つの重要な残基は、TLR3のエクトドメインのN末端セグメントの2本差RNA結合部位の面の近くに位置が特定されている(Pirher,et al.,Nature Struct.& Mol.Biol.,15:761〜763,2008)。完全なエピトープは隣接領域に、実施した突然変異分析によっては明らかにされなかった他の残基を含むと考えられる。いずれの理論に束縛されることも望むものではないが、mAb 12QVQ/QSVがそのTLR3エピトープに結合すると、TLRエクトドメインへの2本鎖RNAの結合と直接的又は間接的に干渉することにより、受容体の2量化及び下流のシグナル伝達経路の活性化が妨害されるものと考えられる。
【0168】
mAb 15EVQ:以下のTLR3突然変異体について評価を行った。すなわち、R64E、K182E、K416E、Y465A、K467E、R488E、R489E、N517A、D536A、D536K、Q538A、H539A、H539E、N541A、E570R、K619A、K619E、2重突然変異体K467E/Y468A、3重突然変異体T472S/R473T/N474S、及び3重突然変異体R488E/R489E/K493E。野生型TLR3、R64E、K182E、K416E突然変異体及び3重突然変異体T472S/R473T/N474Sは、mAb 15EVQに対して同等の結合性を示した(図6B及び表5b)。抗体は、TLR3突然変異体K467E、R489E、K467E/Y468A及びR488E/R489E/K493Eには結合しなかった(図6B及び6C)。残りの変異体は中間的な結合性を示し、R488Eが最も高い作用を示した。これらの突然変異体のすべてがmAb 12QVQ/QSVに結合した。これらの結果は、残基K467及びR489がmAb 15EVQエピトープの重要な決定因子であることを示すものである。残基R488もエピトープに寄与した。これらの残基は、TLR3の同じ表面上に近接して配置されていた(図7A)。この結果はまた、いずれもK467、R488及びR489と同じ表面上に位置する残基Y465、Y468、N517、D536、Q538、H539、N541、E570、及びK619がエピトープに寄与することを示している。この結果は、mAb 15EVQを用いたH/D交換実験によって更に支持された。図7Aは、mAb 12QVQ/QSV及び15EVQ(黒)に対する結合エピトープ部位と、C1068 mAb(灰色)に対する結合エピトープ部位とがヒトTLR3の構造上で重なっていることを示している。mAb 15EVQに対するエピトープは、残基Y465、K467、Y468、R488、R489、N517、D536、Q538、H539、N541、E570、及びK619の範囲にわたっている。
【0169】
H/D交換実験H/D交換において抗体の撹乱を分析するために用いた方法は、過去に述べられた方法(Hamuro et al.,J.Biomol.Techniques 14:171〜182,2003;Horn et al.,Biochemistry 45:8488〜8498,2006)と同様の方法にいくつかの改変を行ったものである。組換えTLR3 ECD(C末端Hisタグを付加してSf9細胞で発現させて精製したもの)を重水素化水溶液中で所定の時間インキュベートして、交換可能な水素原子に重水素を取り込ませた。重水素化TLR3 ECDを、固定されたmAb 15EVQを含むカラムで捕捉した後、水性緩衝液で洗った。逆交換したTLR3 ECDタンパク質をカラムから溶出し、重水素含有フラグメントの局在性をプロテアーゼ消化及び質量分析により調べた。基準コントロールとして、TLR3 ECD試料を、抗体カラムで捕捉した後に重水素化水と接触させてから実験試料と同様にして洗浄及び溶出した点を除いて同様に処理した。抗体と結合する領域は比較的交換から保護される部位であり、そのため、基準TLR3 ECD試料と比較して高い割合の重水素を含むものと推測された。タンパク質の約80%を特定のペプチドにマッピングすることができた。mAb 15EVQによるTLR3 ECDのH/D交換の攪乱のマップを図7Bに示す。分かりやすさのために、TLR3の、mAb 15EVQに影響される部分の周囲のセグメントのみを示した。TLR3 ECDのアミノ末端及びカルボキシル末端に延びるタンパク質の残りの部分は大きく影響されなかった。
【0170】
H/D交換実験により、配列番号2のペプチドセグメント465YNKYLQL471514SNNNIANINDDML526及び529LEKL532が、mAb 15EVQとの結合によってTLR3上の交換が特に変化する領域として特定された。その性質上、H/D交換は線形マッピング法であり、ペプチド内のどの残基が抗体結合によって最も影響されるかを定義することは通常できない。しかしながら、H/D交換と突然変異の結果が大きく重なっていることは、図7Aに示される表面がmAb 15の結合部位であることの更なる確証を与えるものである。この結合部位は、mAb c1068について過去に述べられているもの(国際特許出願公開第WO06/060513A2号)と同じ直線状アミノ酸配列領域内にあったが、まったく重ならない表面(図7A)上に位置することが判明し、これらの抗体間で交叉競合が見られないことと一致する。
【0171】
mAb 15EVQ結合エピトープは、TLR3のC末端セグメントの2本鎖RNAと空間的に近接していた(Bell et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)103:8792〜8797,2006;Ranjith−Kumar et al.,J Biol Chem,282:7668〜7678,2007;Liu et al.,Science,320:379〜381,2008)。いずれの特定の理論に束縛されることも望むものではないが、mAb 15EVQがそのTLR3エピトープと結合すると、リガンドである2本鎖RNA分子及び/又は2量体のもう一方との立体障害を生じ、リガンドの結合及びリガンドによって誘発される受容体の2量化が妨げられるものと考えられる。
【0172】
【表12】

【0173】
(実施例7)
熱安定性が向上した変異体の作製
結晶構造に基づいた機能改変(Structure-based engineering)を行って高い熱安定性を有する抗体の変異体を作製すると同時に、生物学的活性を維持して免疫原性を最小に抑えることを試みた。
【0174】
mAb 15EVQを機能改変用に選択した。免疫原性を最小に抑えるため、構造的考慮に基づいて有益であることが予想される生殖細胞の突然変異のみを行った。mAb 15EVQのVL及びVHの配列(それぞれ配列番号41及び配列番号216)を、BLASTサーチを使用してヒト生殖細胞の遺伝子と並べた。同定された最も近い生殖細胞の配列は、VH及びVLについてそれぞれGenBankアクセッション番号AAC09093及びX59318のものであった。生殖細胞のVH及びVLとmAb 15EVQのVH及びVL配列との間で以下の違いが特定された。すなわち、(VH)V34I、G35S、F50R、A61S、及びQ67H;(VL)G30S、L31S、及びA34N。特定された配列の違いをmAb 15EVQの結晶構造上にマッピングし、パッキング及び界面相互作用を変化させることが予測される残基を機能改変用に選択した。抗体の結晶構造(実施例6を参照)に基づいて、構造を不安定化させる可能性のある残基を特定した。(1)VHのコア内のV34の近くに小さな包囲空洞が特定された。この空洞は、Ileのようなわずかに大きな側鎖が収まるだけの充分な大きさを有していた。(2)VH CDR3のE99は、水素結合ネットワークなしでVH/VL界面に埋め込まれていた。E99の負に帯電したカルボキシレート基は概ね疎水性環境にあり、周囲の残基と主としてファンデルワールス(vds)接触状態にあった。荷電基を埋め込むことは通常はエネルギー的に好ましくなく、したがって不安定化作用をもたらす。(3)VHのF50は、VH/VLの界面残基である。その芳香族側鎖は嵩張るため、ペアリングに負の影響を及ぼしうる。Fvの水素結合及びvdwパッキングネットワークを計算し、Pymolにより視覚的に調べた(www://_pymol_org)。VH及びVLドメイン内の埋め込まれた空洞はCaver(Petrek et al.,BMC Bioinformatics,7:316,2006)によって計算した。分子のグラフィック図はすべてPymolで作製した。Quick Change II XL部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン社(Stratagene)、カリフォルニア州サンディエゴ)Change−IT多重突然変異部位特異的突然変異誘発キット(ユー・エス・ビー社(USB Corporation)、オハイオ州クリーブランド)、又はQuick Change II部位特異的突然変異誘発キット(ストラタジーン社(Stratagene)、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用し、標準的なクローニング法によって実施例3で述べたようにして作製したFabフラグメント又はIgG4完全ヒト抗体をコードした発現ベクターに突然変異を導入した。反応は、それぞれの製造者の推奨するところにしたがって行った。得られたクローンは確認のために配列決定し、得られた機能改変された変異体をmAb 15−1〜15−9と命名した。mAb 15EVQ及びその機能改変された変異体のCDR、軽鎖及び重鎖の可変領域、並びに完全長の重鎖及び軽鎖の配列番号のリストを表6に示す。表7は、各変異体の作製用のプライマーを示す。
【0175】
【表13】

【0176】
TLR3に対するmAb 15−1〜15−9の結合性をELISA免疫アッセイによって評価した。ヒトTLR3 ECD(100μlの2μg/ml TLR3 ECD)を黒色のMaxisorbプレート(イー・バイオサイエンス社(eBioscience))に4℃で一晩結合させた。プレートを洗ってブロッキングし、希釈した抗体をウェル上に各ウェル当たり50μlで2重に一定分量に分配した。プレートを穏やかに振盪しながら室温で2時間インキュベートした。発光POD基質(ロシュ・アプライド・サイエンス社(Roche Applied Science)、マンハイム、ドイツ、カタログ番号11 582 950 001)及びヤギ抗ヒトFc:HRP(ジャクソン・イミュノリサーチ社(Jackson ImmunoResearch)、ペンシルベニア州ウェストグローブ、カタログ番号109−035−098)を使用して結合を検出し、プレートをSpectraMaxプレートリーダー(モレキュラー・デバイシーズ社(Molecular Devices Corp.,)カリフォルニア州サニーベイル)によって読み取った。
【0177】
【表14】

*p5069は重鎖の1個の遺伝子p5069の可変領域をp5070のバックボーンに交換。
【0178】
DSC実験をMicroCal’s AutoVP−capillary DSCシステム(マイクロカル社(MicroCal,LLC)マサチューセッツ州ノーザンプトン)で行って基準細胞と試料細胞との間の温度差を継続的に測定して出力単位に較正した。試料は10℃〜95℃まで60℃/時の加熱速度で加熱した。前走査時間は15分とし、フィルタリング時間は10秒間とした。DSC実験で使用した濃度は約0.5mg/mlである。得られたサーモグラムの分析はMicroCal Origin 7ソフトウェア(マイクロカル社(MicroCal, LLC))を用いて行った。
【0179】
作製した変異体の熱安定性(Tm)をDSCによって測定した(表8)。TLR3に対する抗体の変異体の結合性は親抗体の結合性と同等であった。
【0180】
【表15】

【0181】
(実施例8)
代理抗TLR3抗体の作製
実施例1で作製したヒト化抗体がマウスTLR3にたいして充分な特異性もアンタゴニスト活性も有さなかったことから、ここではmAb 5429と命名するキメラアンタゴニストであるラット/マウス抗マウスTLR3抗体を作製して様々なインビボモデルにおいてTLR3シグナル伝達を阻害する作用について評価を行った。この代理キメラmAb 5429及びその親ラット抗マウスTLR3抗体c1811はインビトロ及びインビボでマウスのTLR3シグナル伝達を阻害し、いくつかのマウスの疾患モデルにおいて発症機構を改善した。
【0182】
以下に考察するデータは、有害な炎症の誘発及び持続化におけるTLR3の役割を示唆するものであり、例えば高サイトカイン血症、喘息及び気道炎症、炎症性腸疾患及び関節リウマチ、ウイルス感染、及びII型糖尿病などの急性及び慢性の炎症状態におけるTLR3アンタゴニスト及びTLR3抗体アンタゴニストの治療的使用の根拠を与えるものである。
【0183】
代理mAb 5429の作製
CDラットを常法によって作製した組換えマウスTLR3エクトドメイン(配列番号162のアミノ酸1〜703、GenBankアクセッション番号NP_569054)で免疫した。マウスTLR3に特異的な抗体価を示す2匹のラットからのリンパ球を融合してFOミエローマとした。マウスTLR3に反応性を示すモノクローナル抗体群を同定し、マウスルシフェラーゼレポーター及びマウス胚性線維芽細胞アッセイにおいてインビトロでのアンタゴニスト活性について試験を行った。ハイブリドーマ株C1811Aを更なる研究のために選択した。機能する可変領域遺伝子をハイブリドーマによって分泌されるmAb c1811から配列決定した。次いでクローニングされた重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子をプラスミド発現ベクターにそれぞれ挿入したところ、このベクターによってmAb 5429と指定するキメララット/BalbC muIgG1/κ mAbを常法によって作製するためのコード配列が与えられた。抗体を実施例3で述べたようにして発現させた。mAb 5429の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号164及び配列番号163にそれぞれ示し、重鎖及び軽鎖の完全長の配列を配列番号166及び配列番号165にそれぞれ示す。mAb c1811の重鎖及び軽鎖の完全長の配列を配列番号168及び配列番号167にそれぞれ示す。
【0184】
mAb 5429の特性評価
mAb 5429を、TLR3シグナル伝達に対する中和能力について一連のインビトロアッセイにおいて特性評価した。活性のアッセイ及び結果を以下に述べる。
【0185】
マウスルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ
マウスTLR3のcDNA(配列番号161、GenBankアクセッション番号NM_126166)をマウス脾臓cDNA(ビー・ディー・バイオサイエンシーズ社(BD Biosciences)、マサチューセッツ州ベッドフォード)からPCRによって増幅し、標準的な方法によってpCEP4ベクター(ライフ・テクノロジーズ社(Life Technologies)、カリフォルニア州カールスバッド)にクローニングした。200μlのHEK293T細胞を、完全DMEM中、4×104細胞/ウェルの濃度で96穴白色透明底プレートに播種し、Lipofectamine 2000(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド)を使用し、30ngのpNF−κBホタルルシフェラーゼ(ストラタジーン社(Stratagene)、カリフォルニア州サンディエゴ)又は30ngのpISREホタルルシフェラーゼ(ビー・ディー・バイオサイエンシーズ社(BD Biosciences)、マサチューセッツ州ベッドフォード)、5ngのphRL−TKコントロールウミシイタケルシフェラーゼ(プロメガ社(Promega)ウィスコンシン州マディソン)レポータープラスミド、1.5ngの完全長マウスTLR3をコードしたpCEP4、及び13.5ngの空のpcDNA3.1ベクター(ライフ・テクノロジーズ社(Life Technologies)、カリフォルニア州カールスバッド)を使用して翌日トランスフェクションに使用して、全DNA量を50ng/ウェルとした。トランスフェクションの24時間後、細胞を37℃で30分〜1時間、抗マウスTLR3抗体と新鮮な無血清DMEM中でインキュベートした後、0.1又は1μg/μlのポリ(I:C)を加えた。24時間後にDual−Gloルシフェラーゼアッセイシステム(プロメガ社(Promega)、ウィスコンシン州マディソン)を使用してプレートを収穫した。相対的な光量単位を、FLUOstar OPTIMA多重検出リーダーを使用し、OPTIMAソフトウェア(ベー・エム・ゲー・ラブテック社(BMG Labtech GmbH)、ドイツ)により測定した。標準化された値(ルシフェラーゼ比)はホタルの相対光量単位(RLU)をウミシイタケのRLUで割ることによって得た。mAb 5429、並びにその親mAb c1811及びmAb 15(表3a)は、用量依存的にポリ(I:C)誘発NF−κB及びISRE活性化を低下させ(図8A及び8B)、TLR3の活性を中和するこれらの抗体の能力が実証された。ISREアッセイにおいて測定されたIC50は、mAb 5249、mAb 15及びmAb c1811についてそれぞれ0.5、22、及び0.7μg/mlであった。
【0186】
マウス胚性線維芽細胞(MEF)アッセイ
C57BL/6 MEF細胞をアーティス・オプティマス社(Artis Optimus)より入手した(Opti−MEF(商標)C57BL/6−0001)。細胞を、200μlのMEF培地(glutamax、10%熱失活FBS、1x NEAA、及び10μg/mlゲンタマイシンを加えたDMEM)中、96穴平底プレート(ビー・ディー・ファルコン社(BD Falcon))に20000細胞/ウェルで播種した。インキュベーションはすべて、37℃/5%CO2で行った。播種の24時間後に、mAb 5429又はmAb c1811を各ウェルに加えた。プレートをmAbと1時間インキュベートした後、各ウェルにポリ(I:C)を1μg/mlで加えた。24時間のインキュベーションの後、上清を回収した。製造者のプロトコールにしたがってビーズキット(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド)を使用してサイトカインレベルを求めてCXCL10/IP−10を検出した。結果をGraphPad Prismソフトウェアを使用してグラフ化した。いずれの抗体もポリ(I:C)誘発CXCL10/IP−10レベルを用量依存的に低下させ、これらの抗体が内因性のTLR3を中和してTLR3シグナル伝達を阻害する能力が実証された(図9)。
【0187】
フローサイトメトリー−表面染色
各群10匹ずつのC57BL/6及びTLR3ノックアウトマウス(TLR3KO)(C57BL/6バックグラウンド;雌、8〜12週齢、エース・アニマルズ社(Ace Animals,Inc.))に1mlの3%チオグリコレート培地(シグマ社(Sigma))を腹腔内投与し、96時間後にマウスを安楽死させ、各マウスからの腹膜を10mlの滅菌PBSで洗浄した。チオグリコレートにより腹膜に誘導されたマクロファージをPBS中に再懸濁し、細胞の生存率をTrypan Blue染色によって評価した。細胞を遠心してペレットとし、250μlのFACS緩衝液(PBS−Ca2+−Mg2+、1%熱失活FBS、0.09%アジ化ナトリウム)に再懸濁し、濡れた氷上に保持した。CD16/32試薬(イー・バイオサイエンス社(eBioscience))を10μg/106細胞で10分間使用してマクロファージ上のFc受容体をブロッキングした。細胞を100μl/ウェル中、106細胞で分配して表面染色を行った。Alexa−Fluor 647(モレキュラー・プローブズ社(Molecular Probes))−接合mAb c1811及びmAb 1679(TLR3特異性を有さないことからアイソタイプコントロールとして用いられるラット抗マウスTLR3抗体)を0.25μg/106細胞で加え、氷上、暗所で30分間インキュベートした。細胞を洗い、250μlのFACS緩衝液に再懸濁した。生存率染色として7−AAD(ビー・ディー・バイオサイエンシーズ社(BD Biosciences)、マサチューセッツ州ベッドフォード)を5μl/ウェルで30分を超えないように加えた後、FACS Caliburで試料を取得して死細胞集団を検出した。試料はCell Quest Proソフトウェアを使用してFACS Caliburによって採取した。FCS Expressを使用して収集したデータをヒストグラムを作成することによって分析した。
【0188】
C57BL/6及びTLR3ノックアウトマウスからのマウスチオグリコレート誘導腹膜マクロファージに対するmAb c1811の結合性をフローサイトメトリーにより評価して結合特異性を調べた。mAb 5429は、このキメラ抗体のFc領域が非特異的結合に寄与することが予想されることからこのアッセイでは用いなかった。mAb c1811はTLR3ノックアウトマクロファージに対する結合性を示さず、これはTLR3に対するこのmAbの特異性を示唆するものである(図10)。mAb c1811と同じ結合領域を有するmAb 5429は、mAb c1811と同じ結合特異性を有するものと考えられる。
【0189】
(実施例9)
TLR3抗体アンタゴニストはTLR3媒介性全身性炎症から防御する
モデル
ポリ(I:C)誘発全身性サイトカイン/ケモカインモデルをTLR3媒介性全身性炎症のモデルとして用いた。このモデルでは、腹腔内投与したポリ(I:C)(PIC)により、TLR3によって一部媒介される全身性のサイトカイン及びケモカイン応答を誘導した。
【0190】
雌C57BL/6マウス(8〜10週齢)又は雌TLR3ノックアウトマウス(C57BL/6バックグラウンド;8〜10週齢、エース・アニマルズ社(Ace Animals,Inc.))に、mAb 5429を0.5mlのPBS中、10、20又は50mg/kgで、mAb c1811を、0.5mlのPBS中、2、10又は20mg/kgで、又は0.5mlのPBSを単独(溶媒コントロール)で皮下に投与した。抗体投与の24時間後、マウスに、0.1mlのPBSに加えた50μgのポリ(I:C)(アマシャム社(Amersham)カタログ番号26−4732、ロット番号IH0156)を腹腔内投与した。ポリ(I:C)チャレンジの1及び4時間後に後眼窩より血液を採取した。全血より血清を調製してLuminexによりサイトカイン及びケモカインの濃度について分析した。
【0191】
結果
腹腔内投与されたポリ(I:C)は、TLR3ノックアウト動物におけるケモカイン及びサイトカイン群の産生が大幅に低減されたことによって示されるように、TLR3によって一部媒介される全身性のサイトカイン及びケモカイン応答を誘導した(表9A)。TLR3依存性のポリ(I:C)誘導メディエーターは、ポリ(I:C)チャレンジの1時間後では、IL−6、KC、CCL2/MCP−1及びTNF−αであり、ポリ(I:C)チャレンジの4時間後では、IL−1α、CCL5/RANTES及びTNF−αであった。mAb c1811及びmAb 5429はいずれもこれらのTLR3依存性メディエーターのレベルを大幅に低下させ、これらの抗体がインビボでTLR3シグナル伝達を低減させる能力が実証された(表9B)。表9の値は、1群当たり6匹の動物の平均のサイトカイン又はケモカイン濃度±平均値の標準誤差(SEM)をpg/mlで示したものである。これらのデータは、TLR3の拮抗作用が、サイトカインストーム又は致死的ショックなどの状態における過剰なTLR3媒介サイトカイン及びケモカインレベルを低減させるうえで有用となりうることを示唆するものである。
【0192】
【表16】

【0193】
【表17】

【0194】
(実施例10)
TLR3抗体アンタゴニストは気道過敏症を軽減する
モデル
気道過敏症をポリ(I:C)によって誘発させた。
【0195】
雌C57BL/6マウス(12週齢)又は雌TLR3ノックアウトマウス(C57BL/6バックグラウンド;12週齢、エース・アニマルズ社(Ace Animals,Inc.))をイソフルランで麻酔し、50μlの滅菌PBSに加えたポリ(I:C)を数回の投与(10〜100μg)で鼻腔内投与した。各投与の間に24時間の休止時間を置いてポリ(I:C)(又はPBS)を3回マウスに投与した。最後のポリ(I:C)(又はPBS)の投与の24時間後に、全身プレチスモグラフィー(ブクスコ・システム社(BUXCO system))を用いて肺機能及びメタコリンに対する気道過敏症を測定した。マウスを全身プレチスモグラフチャンバに入れ、少なくとも5分間順応させた。ベースラインの読み取りの後、増加する量の霧状化したメタコリン(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州セントルイス)にマウスを暴露した。霧状化メタコリンを2分間投与した後、5分間のデータ収集時間、その後、10分間の休止時間を置いた後、メタコリンの用量を増大させた後続のチャレンジを行った。空気流の抵抗の増加をエンハンストポーズ(Enhanced Pause)(Penh)として測定し、5分間の記録時間にわたった平均のPenh値として表した(ブクスコ・システム社(BUXCO system))。肺機能の測定の後、マウスを安楽死させ、肺にカニューレを挿管した。肺に1mlのPBSを注入し、流出液を回収することによって気管支肺胞洗浄(BAL)を行った。肺組織を切除して凍結した。BAL液を遠心(1200rpm、10分)し、細胞を含まない上清を回収して−80℃で分析を行うまでの間保存した。細胞ペレットを200μlのPBSに再懸濁して全細胞計数及び分画別の細胞計数を行った。製造者のプロトコール及びMultiplex Immunoassayキット(ミリポア社(Millipore)、マサチューセッツ州ビレリカ)にしたがって多重アッセイを行った。
【0196】
結果
過去の観察により、ポリ(I:C)の鼻腔内投与はマウスの肺機能にTLR3によって媒介される障害を誘発し、全身プレチスモグラフィー(ブクスコ社(BUXCO))におけるベースラインのエンハンストポーズ(PenH)測定値が高くなり、霧状化されたメタコリンに対する応答性が高くなることが示されている(国際特許出願公開第WO06/060513A2号)。肺機能のこうした障害は、肺への好中球の動員、及び肺における炎症性サイトカイン/ケモカインのレベルの上昇をともなった。この実験では、肺機能におけるポリ(I:C)誘発障害におけるmAb 1811及びmAb 5429の作用を、ポリ(I:C)チャレンジに先立ってそれぞれの抗体を50mg/kgで皮下投与することによって評価した。
【0197】
TLR3によって媒介される肺機能の障害は、ポリ(I:C)チャレンジに先立って動物をTLR3抗体アンタゴニストで処置することによって大幅に軽減された。TLR3によって媒介される、ベースラインPenH及びメタコリンに対する気道の感受性の増大は、抗TLR3抗体で処置された動物では防止された(図11)。更に、TLR3によって媒介される、マウスの肺への好中球の動員及び気道におけるケモカインの生成は、抗TLR3抗体で処置した動物では低減された。好中球の数(図12)及びCXCL10/IP−10のレベル(図13)は、回収した気管支肺胞洗浄液(BALF)から測定した。この実験を少なくとも3回繰り返して同様の結果を得た。図11、12、及び13に示されるデータは、1つの代表的な実験からのものである。各記号は1匹のマウスからのデータポイントを表し、横棒線は群の平均を示す。この実験によって、使用したモデルにおいて全身投与されたTLR3抗体アンタゴニストが肺に達し、TLR3によって媒介される肺機能の障害、気道内への好中球の浸潤、ケモカインの生成及び気道の炎症を軽減したことが示された。したがって、TLR3アンタゴニストは、喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び嚢胞性線維症などの、気道過敏症によって特徴付けられる呼吸器疾患の治療又は予防に有用でありうる。
【0198】
(実施例11)
TLR3抗体アンタゴニストは炎症性腸疾患から防御する
モデル
DSS大腸炎モデルを炎症性腸疾患のモデルとして用いた。
【0199】
雌C57BL/6マウス(8週齢未満)又は雌TLR3ノックアウトマウス(C57BL/6バックグラウンド;8週齢未満で体重16.5g〜18g、エース・アニマルズ社(Ace Animals,Inc.))にγ線照射した餌を−1日目から与えた。DSS(硫酸デキストラン)(エム・ピー・バイオメディカルズ社(MP Biomedicals)、オハイオ州オーロラ、カタログ番号:160110;35〜50kDa;硫黄18〜20%、ロット番号:8247J)をオートクレーブした酸性化飲用水で5%の最終濃度に希釈した。DSS水を5日間投与し、その後、普通の水に代えた。マウスには実験全体を通じて自由に水を飲ませた。すべての水ボトルの重量を毎日測定して水の消費量を記録した。0、2、及び4日目にマウスに5mg/kg(0.1ml PBSに0.1mgを加えた)のmAb 5429、マウス抗TNF−α抗体、又はコントロールとしてのPBSを腹腔内投与した。マウスを実験の全体を通じて毎日監視し、0〜4日目及び7日目に体重を測定した。マウスを実験の2日目及び7日目に安楽死させた。腹腔を開き、上行結腸を盲腸と接合する位置で切断した。結腸を採取し、10%中性緩衝ホルマリン中で固定した。結腸をパラフィンに埋め込み、薄片にスライスし、H&E染色(カルテック・モレキュラー・ラブズ社(Qualtek Molecular Labs)、カリフォルニア州サンタバーバラ)した。下記に述べるように獣医病理学者によって盲検により結腸の組織病理学的評価を行った(パソメトリクス社(PathoMetrix)カリフォルニア州サンホセ)。
【0200】
組織病理学的評価
大腸、結腸、及び直腸の2つの切片を評価し、以下の変化についてスコア化した。すなわち、(i)単一の細胞の壊死、(ii)上皮の潰瘍形成、(iii)j上皮の脱落、(iv)陰窩腫瘍、(v)細胞増殖、(vi)陰窩細胞増殖、(vii)粘膜固有層における肉芽組織形成、(viii)粘膜下組織における肉芽組織、(ix)粘膜下炎症細胞の浸潤物、好中球優勢、及び(x)粘膜下浮腫。
【0201】
重篤度の単一の全体的スコアを以下の基準に基づいて与えた。すなわち、
0−所見を認めず。
1−軽度、限局性、又は時折認められる。
2−軽度、多病巣である。
3−中度、頻繁だが限定された領域に認められる。
4−重度、提供された組織の多くの領域又は広範囲に認められる。
5−極めて重度、提供された組織の大部分に拡がっている。
【0202】
結果
過去の観察によれば、TLR3ノックアウト動物は、DSSの摂取によって誘発された炎症性腸疾患のモデルにおいて野生型マウスと比較して大幅に軽減された組織病理学的所見を示すことが実証されており(国際特許出願公開第WO06/60513A2号)、このことはTLR3シグナル伝達がこのモデルにおける病因に一定の役割を有することを示唆するものである。壊死細胞から放出された共生細菌のRNA又は哺乳動物RNAがTLR3シグナル伝達を刺激する内因性のリガンドとして働きうることが報告されており(Kariko et al.,Immunity 23165〜231175 2005;Kariko et al.,J.Biol.Chem.279:12542〜12550 2004)、したがって腸内の内因性リガンドによるTLR3刺激はDSS大腸炎モデルにおいて炎症を促進及び持続化させうるものである。
【0203】
化合物組織病理学スコア(図14)によって評価されるように、DSSに曝露した動物における疾患重篤度は、抗TLR3抗体による処置によって改善された。図14は、疾患重篤度スコアについて平均、標準偏差及び95%信頼区間を横棒線として示している。抗TLR3抗体で処置した野生型のDSS曝露動物では、非処置の野生型動物と比較してスコアの有意な低下が認められた(p<0.05)。DSSに曝露したTLR3ノックアウト動物は、DSSによって誘発される変化から防御された。抗マウスTNF−α mAbを投与したDSS曝露動物では、DSSモデルにおいて組織病理学的所見の改善は認められなかった。したがって、DSSモデルは、抗TNF−αによる治療に応答しないヒト患者集団を対象とする治療法の評価において有用であることが考えられ、抗TLR3抗体を中和することは、抗TNF−αによる治療に応答しない炎症性腸疾患の患者にとって利益となる可能性を有すると考えられる。
【0204】
モデル
T細胞移植モデルを炎症性腸疾患のモデルとして用いた。このモデルでは、免疫応答能のあるマウスから得た制御性T細胞を含まないナイーブT細胞(腸粘膜の抗原提示細胞を攻撃する)の集団を移植することによってSCIDマウスに腸の炎症を誘発した。
【0205】
ナイーブT細胞(CD4+CD45RBhigh T細胞)をSCIDレシピエントに腹腔内注射することによって慢性大腸炎を誘発した。マウスに、PBS(500μl/マウスを腹腔内投与;溶媒コントロール)、mAb 5429(0.1mg/マウスを腹腔内投与)、又は抗−TNF−α抗体(0.05mg/マウスを腹腔内投与;ポジティブコントロール)のいずれかを、T細胞の移植48時間後から開始して毎週2回、8週間の実験期間全体を通じて投与した。T細胞の移植から8週間後(又はマウスが初期の体重の15%以上を失った時点)に、動物を安楽死させて結腸を取り出した。結腸を固定し、パラフィンに埋め込んでH&E染色した。組織病理学的所見(細胞浸潤、陰窩腫瘍、上皮びらん、杯細胞喪失、及び腸壁の肥厚)を盲検的に定量的に評価した。
【0206】
結果
コントロール動物と比較した場合の組織病理学的スコアの合計の有意な低下(p<0.05)(図15A)によって評価されるように、疾患重篤度はT細胞移植を受けた動物で抗TLR3抗体による処置によって改善された。スコアの合計には、陰窩腫瘍、潰瘍形成、好中球流入、杯細胞喪失、異常陰窩、粘膜固有層の炎症、及び経壁併発(transmural involvement)を評価した。陰窩腫瘍、潰瘍形成、及び好中球流入では有意な低下が認められた(いずれもp<0.05)(図15B)。抗TNFα抗体を、最適な効果を与えることが知られている用量でポジティブコントロールとして用いた。
【0207】
DSS及びT細胞移植モデルという2つの広く知られた炎症性腸疾患のモデルを用いた実験により、全身投与されたTLR3抗体アンタゴニストは腸粘膜に達し、2つの異なる病因機構によって誘発された消化管の炎症を軽減させることが実証された。したがって、TLR3アンタゴニストは、抗TNFα不応性の症例及び消化管の他の免疫媒介性の病態を含む炎症性腸疾患の治療に有益であると考えられる。
【0208】
(実施例12)
TLR3抗体アンタゴニストはコラーゲン誘発関節炎から防御する
モデル
コラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルを関節リウマチのモデルとして用いた。
【0209】
雄B10RIIIマウス(6〜8週齢、ジャクソン・ラボラトリーズ社(Jackson Labs))を1群当たり15匹(関節炎群)及び1群当たり4匹(コントロール群)の群に分けた。関節炎群をイソフルランで麻酔し、II型コラーゲン(エラスチン・プロダクツ社(Elastin Products))、及び結核菌(M.tuberculosis)(ディフコ社(Difco))を添加したフロイント完全アジュバントを0及び15日目に投与した。12日目にII型コラーゲン関節炎を発症したマウスを治療群に体重についてランダム化し、mAb 5429(25mg/kg)、ネガティブコントロール抗体としてCVAM(マウスに既知の特異性を示さない組換えmAb)(5mg/kg)、又は抗TNF−α抗体(5mg/kg、ポジティブコントロール)を、12、17、及び22日目(d12、d17、d22)に皮下投与(SC)した。更に、マウスのコントロール群に溶媒(PBS)又はデキサメタゾン(0.5mg/kg、Dex、基準化合物)を12〜25日目まで毎日(QD)皮下投与(SC)した。動物を12〜26日まで毎日観察した。前足及び後足を臨床スコアシステム(下記に示す)によって評価した。実験26日目に動物を安楽死させ、組織病理学的所見を盲検的に評価した(下記にスコアシステムを述べる)。有効性評価は、動物の体重及び臨床的関節炎スコアに基づいて行った。すべての動物が実験終了時まで生存した。
【0210】
前足及び後足の臨床的スコア基準
0−正常
1−後足又は前足関節が冒されるか、わずかなびまん性紅斑及び腫脹。
2−後足又は前足関節が冒されるか、軽度のびまん性紅斑及び腫脹。
3−後足又は前足関節が冒されるか、中度のびまん性紅斑及び腫脹。
4−顕著なびまん性紅斑及び腫脹又は4本の指の関節が冒される。
5−足全体に重篤なびまん性紅斑及び重篤な腫脹、指を曲げられない。
【0211】
II型コラーゲン関節炎を有するマウス関節の組織病理学的スコアリング方法
II型コラーゲン関節炎の病変を有するマウスの足又は足関節をスコア化する場合、変化の重篤度及び冒された個々の関節の数を考慮する。中手骨/中足骨/指又は足根骨/脛足根骨の多数の関節の可能性のうち、1〜3個のみの足又は足関節の関節が冒されている場合には、変化の重篤度に応じて下記のパラメータの1、2又は3の最大スコアが任意に与えられる。2個よりも多い関節が関与している場合には、最も重く冒された/大多数の関節に下記の基準を適用する。
【0212】
足スコアの臨床データは、1〜15日目についてAUCによて分析し、コントロールからの阻害率(%)を計算した。
【0213】
炎症
0−正常
1−冒された関節の滑膜及び関節周囲組織への炎症細胞の最小の浸潤。
2−足の場合には冒された関節に限定された軽度の浸潤。
3−足の場合には冒された関節に限定された中度の浸潤。
4−大部分の領域を侵す、顕著な浮腫をともなう顕著な浸潤。
5−重篤な浮腫をともなう重篤なびまん性浸潤。
【0214】
パンヌス
0−正常
1−軟骨及び肋軟骨下骨へのパンヌスの最小の浸潤。
2−冒された関節の硬組織の周辺帯の破壊をともなう浸潤。
3−冒された関節の中度の高組織破壊をともなう中度の浸潤。
4−大部分の関節で顕著な関節構造の破壊をともなう顕著な浸潤。
5−全体的又はほぼ全体的な関節構造の破壊をともなう重篤な浸潤がすべての関節を冒す。
【0215】
軟骨の傷害
0−正常
1−冒された関節に明らかな軟骨細胞の損失もコラーゲン破壊も認めない、トルイジンブルー染色の最小〜軽度の損失。
2−冒された関節に限局性の軽度(表在性)の軟骨細胞の損失及び/又はコラーゲン破壊を認める、トルイジンブルー染色の軽度の損失。
3−冒された関節に多病巣性の中度(深部又は中間層)の軟骨細胞の損失及び/又はコラーゲン破壊を認める、トルイジンブルー染色の中度の損失。
4−大部分の関節に多病巣性の顕著な(深部〜深層)軟骨細胞の損失及び/又はコラーゲン破壊を認める、トルイジンブルー染色の顕著な喪失。
5−すべての関節に多病巣性の重度(深部〜タイドマーク)の軟骨細胞の損失及び/又はコラーゲン破壊を認める、トルイジンブルー染色の重度の喪失。
【0216】
骨吸収
0−正常
1−小さい範囲の吸収を認める最小の程度。低倍率では容易に確認できず、冒された関節に破骨細胞をほとんど認めない。
2−より多くの範囲の吸収を認める軽度。低倍率では容易に確認できず、冒された関節により多くの破骨細胞を認める。
3−皮質の厚さ全体の欠損をともなわない髄様骨梁(medullary trabecular)及び皮質骨の明らかな吸収を認める中度。一部の髄様骨梁が喪失し、低倍率で病変が明らかに確認できる。冒された関節により多くの破骨細胞を認める。
4−残存する皮質表面の断面の歪みをしばしばともなう、皮質骨の厚さ全体の欠損をともなう顕著な程度。髄様骨の顕著な損失、多数の破骨細胞を認める。大部分の関節が冒される。
5−皮質骨の厚さ全体の欠損及びすべての関節の関節構造の破壊をともなう重度。
【0217】
結果
デキサメタゾン(Dex)及び抗マウスTNF−α抗体をポジティブコントロールとして用い、PBSを溶媒コントロールとして用い、CVAMをネガティブコントロール抗体として用いた。すべての処置は、実験の12日目の関節疾患が進行する間に開始した。溶媒で処置した疾患コントロール動物では疾患発症率は実験22日目までに100%となった。溶媒又はCVAM抗体で処置したネガティブコントロール群では臨床スコアは最も高かった。Dex(d18〜d26についてp<0.05)、5mg/kgの抗TNF−α抗体(d18〜26についてp<0.05)、又は25mg/kgのmAb 5429(d18〜d23及びd25〜d26についてp<0.05)で処置した各群では有意に低い臨床スコアが認められた(図16)。曲線下面積(AUC)として表した臨床的関節炎スコアは、25mg/kgのmAb 5429(低下率43%)、5mg/kgの抗TNF−α抗体(52%)、又はDex(69%)による処置により、溶媒コントロールと比較して有意に低下した。図17は、各群についてAUCの平均及び標準偏差を示す。
【0218】
各処置の組織病理学的作用についても評価を行った。足の骨吸収は、25mg/kgのmAb 5429(低下率47%)による処置によって溶媒コントロールと比較して有意に低下した。.5mg/kgの抗TNF−α抗体で処置したポジティブコントロールマウスでは、足の炎症(33%)、軟骨傷害(38%)、及び足スコアの合計(37%)は有意に低下した。Dexによる処置によって、足の組織病理学的パラメータのすべてが有意に低下した(合計スコアにおいて73%の低下率)。
【0219】
これらのデータは、TLR3抗体アンタゴニストが、CIAモデルにおいて臨床的及び組織病理学的疾患症状を改善することを示すものであり、関節リウマチの治療におけるTLR3アンタゴニストの使用を示唆するものである。
【0220】
(実施例14)
TLR3抗体アンタゴニストは急性致死性ウイルス感染から防御する
モデル
インフルエンザAウイルスチャレンジモデルを急性致死性ウイルス感染のモデルとして使用した。
【0221】
−1、4、8及び12日目に雌C57BL/6マウス(12週齢)又は雌TLR3ノックアウトマウス(C57BL/6バックグラウンド;12週齢、エース・アニマルズ社(Ace Animals,Inc.)、1群当たり15匹のマウス)に20mg/kgのmAb 5429又はPBS単独を皮下投与した。0日目にイソフルランでマウスを麻酔し、インフルエンザA/PR/8/34ウイルス(ATCC、メリーランド州ロックランド、ロット番号218171)を25μlのPBSに加えたもの(105.55 CEID50に相当)を鼻腔内投与した。動物を体重変化及び生存率について1日2回、14日間の期間にわたって観察した。臨床的スコアリングシステムを用いて疾患の進行のレベル及びインフルエンザAウイルス治療に対するわずかな改善を評価した。
【0222】
臨床スコア
0−正常。機敏で反応性があり、目に見える病気の兆候を認めない。
1−逆立った毛皮。歩行のわずかな低下を認める、または認めない。
2−歩行時に曲がった背中。歩行をいやがる。困難な呼吸。
3−逆立った毛皮、呼吸困難、運動失調、震え。
4−逆立った毛皮。そっと突いても歩行不可能。意識不明。触れると冷たく感じる。
5−死亡。
【0223】
結果
この実験では、生存率、毎日の臨床スコア、及び体重変化を評価した。mAb 5429(20mg/kg)を投与したインフルエンザA感染野生型マウス及びmAb 5429を投与しないインフルエンザA感染TLR3ノックアウトマウスのいずれも、インフルエンザウイルスを接種したC57BL/6マウスと比較して生存率が統計的に有意に増大した(それぞれp<0.001及びp<0.01)が、このことは、TLR3の阻害又は欠損がインフルエンザによって誘発される死を予防しうることを示すものである(図18)。臨床スコアは、20mg/kgのmAb 5429を投与した群、及びTLR3ノックアウト群において有意に低下した(図19)。マウスの体重をインフルエンザウイルス投与後14日間にわたって観察した。インフルエンザAウイルスを投与したC57BL/6マウスでは体重は安定的に減少した。しかしながら、20mg/kgのmAb 5429を投与したC57BL/6マウス及びTLR3ノックアウトマウスのいずれも、インフルエンザウイルスを接種した野生型C57BL/6マウスに対して有意に大きな体重を示した(図20)。これらの結果は、TLR3抗体アンタゴニストが急性致死性インフルエンザウイルス感染モデルにおける臨床症状及び死亡率を低下させることを示すものであり、TLR3アンタゴニストが急性の感染状態にあるヒトに防御を与えることを示唆するものである。
【0224】
(実施例15)
TLR3抗体アンタゴニストは高血糖を改善し、血症インスリンを低下させる
モデル
食餌誘発肥満(DIO)モデルを高血糖及びインスリン抵抗性、並びに肥満のモデルとして用いた。
【0225】
C57BL/6野生型動物(約3週齢、ジャクソン・ラボラトリーズ社(Jackson Labs))及びTLR3ノックアウト動物(C57BL/6バックグラウンド;約3週齢、エース・アニマルズ社(Ace Animals,Inc.))を高脂肪の食餌に12〜16週間維持した。TLR3ノックアウト及び野生型C57BL/6マウスの両方に、通常の固形飼料又は60.9%kcalの脂肪及び20.8%kcalの炭水化物からなる高脂肪食餌(Purina TestDietカタログ番号58126)のいずれかを与えた。マウスは、水及び食餌を自由摂取させ、12時間/12時間の明暗サイクルに維持した。各群の各マウスの体重を毎週測定した。mAb 5429を第1週に週2回、その後は週1回全体で7週間腹腔内投与した。空腹時に後眼窩から採取した血清試料を、示した時点でのインスリンの測定に用いた。7週目に一晩絶食させた後、1.0mg/g(体重)のグルコースを腹腔内投与することによって耐糖試験を行った。更に、空腹時のインスリン及びグルコースレベルを測定した。
【0226】
以下の式を用いて、空腹時グルコースレベル及びインスリンレベルに基づきHOMA−IRを式から求めた。すなわち、HOMA−IR=((空腹時グルコース(mmol/l)x空腹時インスリン(mU/l))/22.5(Wallace et al.,Diabetes Care 27:1487〜1495,,2004)。空腹時血中グルコース(血糖値)(BG)をグルコースオキシダーゼアッセイによって求めた。空腹時インスリンレベルをインスリンラット/マウスELISAキット(クリスタル・ケム社(Crystal Chem)カタログ番号90060)を使用して求めた。
【0227】
結果
12〜16週間の高脂肪の食餌の後、野生型DIO動物は高血糖及び高インスリンとなった。mAb 5429による処置により、野生型DIO動物では耐糖能が改善したがTLR3ノックアウトDIO動物では改善が見られなかった。グルコースチャレンジの60、90、120及び180分後に、mAb 5429で処置した動物においてコントロール(PBSのみ)と比較して有意に低い血中グルコースレベルが観察された(図21A)。mAb 5429で処置した野生型DIO動物では、mAbを投与しない野生型DIOマウスと比較してAUCの約21%の低下が観察された。mAb 5429で処置した野生型DIO動物では空腹時インスリンレベルも低下した(図22)。TLR3ノックアウトDIO動物では、mAb 5429による処置により空腹時インスリンに改善は認められなかった。インスリン抵抗性指数(Homeostatic model assessment)(HOMA)分析は、mAb 5429で処置した野生型DIO動物においてインスリン感受性の改善を示したが、TLR3ノックアウトDIO動物では改善を示さなかった。.HOMA−IR値は、野生型DIO、5mg/kgの野生型DIO(mAb 5429投与)、及び20mg/kgの野生型DIO(mAb 5429投与)動物で、それぞれ14.0±9.8、8.7±4.9、9.0±3.0であった。TLR3ノックアウトDIO動物では何らの効果も認められなかった。
【0228】
この実験により、TLR3抗体アンタゴニストがDIOモデルにおいて体重の損失をともなわずにインスリン抵抗性を改善し、空腹時グルコースを低下させることが示されたが、このことは、TLR3アンタゴニストが高血糖症、インスリン抵抗性、及びII型糖尿病の治療に有用でありうることを示唆するものである。
【0229】
(実施例16)
TLR3抗体アンタゴニストは細菌及びウイルス誘発炎症反応から防御する
試薬
細菌性増悪のCOPD患者から単離された分類不能型ヘモフィルスインフルエンザ(Nontypeable Haemophilus influenza)(HNTHi)株35をDr.T.F.Murphyより入手した(バッファロー・VA・メディカルセンター(Buffalo VA Medical Center)、ニューヨーク州バッファロー)。ヒトライノウイルス16をアメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)よりTCID(50)=2.8×107/mlのものを入手した。
【0230】
NTHi刺激アッセイ
NHBE細胞(ロンザ社(Lonza)、メリーランド州ウォーカーズビル)をMicrotest 96穴組織培養プレート(ビー・ディー・バイオサイエンシーズ社(BD Biosciences)、マサチューセッツ州ベッドフォード)に1×105/ウェルで播いた。寒天プレート上で16〜20時間増殖させたNTHiを増殖培地に約2×108cfu/mlで再懸濁し、100μg/mlのゲンタマイシンで30分間処理してから約2×107/ウェルでNHBEを含む96穴プレートに加えた。3時間後に上清を除去し、抗体(0.08〜50μg/mlの最終濃度)を加えた培地又は加えない新鮮な増殖培地に交換した。更に24時間インキュベートした後、細胞上清中のサイトカイン及びケモカインの存在について、Luminex 100IS多重蛍光分析器及びリーダーシステム(ルミネックス社(Luminex Corporation)、テキサス州オースチン)内でCytokine 25重ABビーズキット、ヒト(IL−1β、IL−1RA、IL−2、IL−2R、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL12p40p70、IL−13、IL−15、IL−17、TNF−α、IFN−α、IFN−γ、GM−CSF、MIP−1α、MIP−1β、IP−10、MIG、エオタキシン、RANTES及びMCP−1を含む)によって3重にアッセイした。
【0231】
ライノウイルス刺激アッセイ
NHBE細胞をMicrotest 96穴組織培養プレート(ビー・ディー・バイオサイエンシーズ社(BD Biosciences)、マサチューセッツ州ベッドフォード)に1×105細胞/ウェルで播いた。翌日、抗体(0.08〜50μg/mlの最終濃度)をNHBE又はBEAS−2B細胞に加えて1時間インキュベートした後、10μl/ウェルのライノウイルスを加えた。更に24時間アッセイした後、細胞上清中のサイトカイン及びケモカインの存在について上記に述べたようにluminexアッセイによってアッセイを行った。
【0232】
結果
mAb 15EVQが、NTHiにより誘導されたIP−10/CXCL10及びRANTES/CCL5の産生を用量依存的に阻害したのに対して、コントロール抗体であるヒトIgG4(シグマ社(Sigma)ミズーリ州、セントルイス)はNTHiによる刺激に対して阻害作用を示さなかった(図23A)。mAb 15EVQは、ライノウイルスにより誘導されたCXCL10/IP−10及びCCL5/RANTESの産生も阻害した(図23B)。
【0233】
(実施例17)
TLR3抗体アンタゴニストは星状細胞における炎症反応を抑制する
方法
2人のドナーから得た正常なヒト星状細胞(ロンザ社(Lonza)、メリーランド州ウォーカーズビル)を24穴プレートに75,000細胞/ウェルで播き、一晩付着させた。翌日、星状細胞を200ng/mlのポリ(I:C)及び/又は10μg/mlのmAb 18で24時間処理した。サイトカインをLuminexによって測定した。
【0234】
結果
表10に示されるように、ポリ(I:C)により誘導されたIL−6、IL−8、IL−12、IFN−α、IFN−γ、CXCL9/MIG、CCL3/MIP−1a、CCL4、CCL5/RANTES及びCXCL10/IP−10の産生はmAb 18によって阻害された。
【0235】
【表18】

【0236】
(実施例18)
TLR3抗体アンタゴニストは上皮細胞における炎症反応を抑制する
方法
HUVEC細胞(ロンザ社(Lonza)、メリーランド州ウォーカーズビル)をロンザ社の推奨する血清含有増殖培地中で培養した。細胞を無血清培地(ロンザ社(Lonza)、メリーランド州ウォーカーズビル)に再懸濁し、96穴プレートに3×105細胞/mlで播き、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。ポリ(I:C)(ジー・イー・ヘルスケア社(GE Healthcare)ニュージャージー州ピスカタウェイ)を濃度を増大させながら(1.5〜100μg/ml)加え、更に24時間37℃でインキュベートした。サイトカイン阻害アッセイを行うため、mAb 15EVQを細胞に異なる濃度(0〜50μg/ml)で加えて30分間インキュベートし、その後、20μg/mlのポリ(I:C)を24時間加えた。細胞上清を回収し、ヒトサイトカイン30重キット及びLuminex MAP技術(インビトロジェン社(Invitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド)を用いてサイトカインレベルを測定した。sICAM−1の発現を測定するため、HUVEC細胞を20μg/mlのポリ(I:C)及び異なる濃度のmAb 15EVQ(0.8〜50μg/ml)で処理した。細胞上清をELISA(アール・アンド・ディー・システムズ社(R&D Systems))によりsICAM−1の発現について分析した。細胞の生存率をCellTiterGloキット(プロメガ社(Promega)、ウィスコンシン州マディソン)により測定した。
【0237】
結果
HUVEC細胞は、ポリ(I:C)に応答して以下のサイトカインを産生した。すなわち、IL−1RA、IL−2、IL−2R、IL−6、IL−7、CXCL8/IL−8、IL−12(p40/p70)、IL−15、IL−17、TNF−α、IFN−α、IFN−γ、GM−CSF、CCL3/MIP−1α、CCL4/MIP−1β、CXCL10/IP−10、CCL5/RANTES、CCL2/MCP−1、VEGF、G−CSF、塩基性FGF、及びHGF(表11)。mAb 15EVQは、ポリ(I:C)により誘導されたすべてのサイトカインのレベルを用量依存的に低下させた(表12)。ポリ(I:C)により誘導されるTNF−α、CCL2/MCP−1、CCL5/RANTES、及びCXCL10/IP−10の産生を低下させるmAb 15EVQの能力は、TLR3により媒介される活性の阻害が、アテローム性動脈硬化症につながりうる白血球及びT細胞の浸潤に対する防御を与えうることを示唆するものである。更に、mAb 15EVQによるVEGFの阻害は、各種の癌及び加齢性黄斑変性などの眼疾患における脈管形成を含む、VEGFによって媒介される病態におけるTLR3の遮断の潜在的な効果を示唆するものである。
【0238】
TNF−α及びIFN−γは白血球の動員において機能するとともに、活性化された内皮上の接着分子の発現を増大させる(Doukas et al.,Am.J.Pathol.145:137〜47,1994;Pober et al.,Am.J.Pathol.133:426〜33,1988)。CCL2/MCP−1、CCL5/RANTES及びCXCL10/IP−10は、単球及びT細胞の動員に関与していることが示されており、アテローム性動脈硬化症の発症に寄与する(Lundgerg et al.,Clin.Immunol.2009)。内皮細胞によるVEGFの生成は、各種の癌において脈管形成時の異常な組織増殖又は腫瘍との関連が示されている(Livengood et al.,Cell.Immunol.249:55〜62,2007)。
【0239】
可溶性細胞内接着分子1(sICAM−1)はタンパク質切断によって生成し、内皮細胞活性化のマーカーである。ICAM−1は白血球の遊走及び活性化において重要な役割を有し、炎症時に内皮細胞及び上皮細胞において発現が上昇して、インテグリン分子LFA−1及びMac−1を介した白血球への接着を媒介する。ポリ(I:C)は内皮細胞を活性化してsICAM−1の発現を上昇させたが、この発現上昇はmAb 15EVQによる処理によって低減された(図24A)。
【0240】
【表19】

【0241】
【表20】

【0242】
このことは、TLR3抗体アンタゴニストが白血球のトラフィッキング、したがって炎症細胞の流入によって引き起こされる組織障害を阻害しうることを示すものである。
【0243】
生存率アッセイを行うため、上記で述べたようにHUVECを培養、播種し、ポリ(I:C)で刺激した。mAb 15EVQはポリ(I:C)により誘導されたHUVEC細胞の生存率の低下を用量依存的に回復させた(図24B)。
【0244】
内皮細胞の活性化の下方調節は、過剰な免疫細胞の浸潤を抑制し、炎症状態において増加するサイトカインによって引き起こされる組織障害を低減させうる。炎症及び内皮細胞におけるサイトカイン及び接着分子の過剰発現は、アテローム性動脈硬化症及び高血圧の発症の主要な寄与因子である。これらのデータは、脈管炎及び内皮機能不全をともなう血管疾患などの血管の疾患におけるTLR3アンタゴニストの使用の潜在的な有用性を探求することの根拠を与えるものである。炎症及び過剰発現したサイトカインによって引き起こされる別の疾患として、免疫抑制患者及びHIV感染患者において一般的に見られ、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)によって引き起こされるカポジ肉腫(KS)がある。VEGF及びサイトカインの産生はKS細胞の生存に寄与する(Livengood et al.,Cell Immunol.249:55〜62,2007)。TLR3アンタゴニストは、KS及び他の腫瘍にともなう血管新生のリスクを低減するうえで有用であるばかりでなく、細胞生存率の低下を防止し、内皮バリアの完全性を保護することによって、臓器不全及び敗血症などの重篤な炎症状態にともなう潜在的に重大な状態である血管漏出を防止するうえでも有用でありうる。TLR3の阻害は、フラビウイルス科(例、デングウイルス、黄熱病ウイルス)、フィロウイルス科(エボラウイルス、マールブルグウイルス)、ブニヤウイルス科(例、ハンタウイルス、ナイロウイルス、フレボウイルス)、及びアレナウイルス科(例、ルヨ(Lujo)ウイルス、ラッサウイルス、アルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス)のウイルスによって引き起こされるウイルス性出血熱などの内皮細胞の病理が関与するウイルス感染においても有用でありうる(Sihibamiya et al.,Blood 113:714〜722,2009)。
【0245】
(実施例19)
TLR3抗体アンタゴニストのカニクイザル及びマウスTLR3との交叉反応性
実施例2で述べたようにISREレポーター遺伝子アッセイを用いて、カニクイザル又はマウスTLR3に対する活性を評価した。上記に述べたようにしてカニクイザル(配列番号217)及びマウスTLR3 cDNA(配列番号161)を全血から増幅し、pCEP3ベクター(クロンテック社(Clontech))にクローニングして発現させた。mAb 15EVQは、それぞれヒトTLR3 NF−κB及びISREアッセイにおけるIC50の値0.44及び0.65μg/mlと比較して、カニクイザルNF−κB及びISREアッセイにおけるIC50の値はそれぞれ4.18μg/ml及び1.74μg/mlであった。アイソタイプコントロール抗体はこれらのアッセイでは何らの作用も示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2の残基K467、R488及びR489からなる群から選択される少なくとも1つのToll様受容体3(TLR3)のアミノ酸残基と結合する、単離された抗体又はそのフラグメント。
【請求項2】
前記TLR3アミノ酸残基が、
a.配列番号2の残基K467、
b.配列番号2の残基R489、
c.配列番号2の残基K467及びR489、並びに、
d.配列番号の残基K467、R488、及びR489、からなる群から選択される、請求項1に記載の単離された抗体又はフラグメント。
【請求項3】
配列番号2の残基Y465、Y468、N517、D536、Q538、H539、N541、E570及びK619からなる群から選択される少なくとも1つのTLR3アミノ酸残基と更に結合する、請求項1に記載の単離された抗体又はフラグメント。
【請求項4】
配列番号2の残基D116及びK145からなる群から選択される少なくとも1つのTLR3アミノ酸残基と結合する、単離された抗体又はそのフラグメント。
【請求項5】
前記TLR3アミノ酸残基が、
a.配列番号2の残基D116、並びに、
b.配列番号2の残基D116及びK145、からなる群から選択される、請求項3に記載の単離された抗体又はフラグメント。
【請求項6】
TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、以下の性質:
a.インビトロのポリ(I:C)NF−κBレポーター遺伝子アッセイにおいてヒトTLR3の生物学的活性を1μg/ml未満で50%よりも大きく低減させるか、
b.100ng/ml未満のポリ(I:C)で刺激したBEAS−2B細胞からのIL−6又はCXCL10/IP−10の産生を10μg/ml未満で60%よりも大きく阻害するか、
c.100ng/ml未満のポリ(I:C)で刺激したBEAS−2B細胞からのIL−6又はCXCL10/IP−10の産生を0.4μg/ml未満で50%よりも大きく阻害するか、
d.62.5ng/mlのポリ(I:C)で刺激したNHBE細胞からのIL−6の産生を5μg/ml未満で50%よりも大きく阻害するか、
e.62.5ng/mlのポリ(I:C)で刺激したNHBE細胞からのIL−6の産生を1μg/ml未満で50%よりも大きく阻害するか、
f.ポリ(I:C)により誘導したIFN−γ、IL−6又はIL−12のPBMC細胞による産生を1μg/ml未満で20%よりも大きく阻害するか、
g.インビトロでのNF−κBレポーター遺伝子アッセイにおいてカニクイザルのTLR3の生物学的活性をIC50<10μg/mlとなるように阻害するか、又は、
h.インビトロでのISREレポーター遺伝子アッセイにおいてカニクイザルのTLR3の生物学的活性をIC50<5μg/mlとなるように阻害する、の少なくとも1つを有する抗体又はフラグメント。
【請求項7】
TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、
a.配列番号214の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号211の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号214の重鎖可変領域及び配列番号211の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号70、77及び72に示される重鎖相補性決定領域(CDR)1、2及び3(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号67、68及び78に示される軽鎖相補性決定領域(CDR)1、2及び3(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号70、77及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号67、68及び78に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号214のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号211のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有するモノクローナル抗体とTLR3との結合について競合する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項8】
TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、
a.配列番号216の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号216の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号82、86及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号79、80及び87に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号82、86及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号79、80及び87に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号216のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号41のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有するモノクローナル抗体とTLR3との結合について競合する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項9】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号61、192及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号192のHCDR2は、式(I)に示されるように更に定義される:
Xaa6−I−Xaa7−Xaa8−R−S−Xaa9−W−Y−N−D−Y−A−V−S−V−K−S,
(I)
式中、
Xaa6は、Arg又はLysであってよく、
Xaa7は、Tyr、His又はSerであってよく、
Xaa8は、Met、Arg又はTyrであってよく、
Xaa9は、Lys又はArgであってよい。)、又は、
b.配列番号55、56及び191に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号191のLCDR3は、式(II)に示されるように更に定義される:
Xaa1−S−Y−D−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−T−V,
(II)
式中、
Xaa1は、Ala、Gln、Gly又はSerであってよく、
Xaa2は、Gly、Glu又はSerであってよく、
Xaa3は、Asp又はAsnであってよく、
Xaa4は、Glu又はSerであってよく、
Xaa5は、Phe、Ala又はLeuであってよい。)、又は、
c.配列番号61、192及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号192のHCDR2は、式(I)に示されるように更に定義される:
Xaa6−I−Xaa7−Xaa8−R−S−Xaa9−W−Y−N−D−Y−A−V−S−V−K−S,
(I)
式中、
Xaa6は、Arg又はLysであってよく、
Xaa7は、Tyr、His又はSerであってよく、
Xaa8は、Met、Arg又はTyrであってよく、
Xaa9は、Lys又はArgであってよい)、及び、
配列番号55、56及び191に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号191のLCDR3は、式(II)に示されるように更に定義される:
Xaa1−S−Y−D−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−T−V,
(II)
式中、
Xaa1は、Ala、Gln、Gly又はSerであってよく、
Xaa2は、Gly、Glu又はSerであってよく、
Xaa3は、Asp又はAsnであってよく、
Xaa4は、Glu又はSerであってよく、
Xaa5は、Phe、Ala又はLeuであってよい。)、又は、
d.配列番号70、194及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号194のHCDR2は、式(III)に示されるように更に定義される:
I−I−Q−Xaa15−R−S−K−W−Y−N−Xaa16−Y−A−Xaa17−S−V−K−S,
(III)
式中、
Xaa15は、Lys、Thr又はIleであってよく、
Xaa16は、Asn又はAspであってよく、
Xaa17は、Val又はLeuであってよい。)、又は、
e.配列番号67、68及び193に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号193のLCDR3は、式(IV)に示されるように更に定義される:
Xaa10−S−Y−D−Xaa11−P−Xaa12−Xaa13−Xaa14−V,
(IV)
式中、
Xaa10は、Gln又はSerであってよく、
Xaa11は、Thr、Glu又はAspであってよく、
Xaa12は、Val又はAsnであってよく、
Xaa13は、Tyr又はPheであってよく、
Xaa14は、Ser、Asn又はGlnであってよい。)、又は、
f.配列番号70、194及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号194のHCDR2は、式(III)に示されるように更に定義される:
I−I−Q−Xaa15−R−S−K−W−Y−N−Xaa16−Y−A−Xaa17−S−V−K−S,
(III)
式中、
Xaa15は、Lys、Thr又はIleであってよく、
Xaa16は、Asn又はAspであってよく、
Xaa17は、Val又はLeuであってよい。)、及び、
配列番号67、68及び193に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号193のLCDR3は、式(IV)に示されるように更に定義される:
Xaa10−S−Y−D−Xaa11−P−Xaa12−Xaa13−Xaa14−V,
(IV)
式中、
Xaa10は、Gln又はSerであってよく、
Xaa11は、Thr、Glu又はAspであってよく、
Xaa12は、Val又はAsnであってよく、
Xaa13は、Tyr又はPheであってよく、
Xaa14は、Ser、Asn又はGlnであってよい。)、
g.配列番号82、196及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号196のHCDR2は、式(V)に示されるように更に定義される:
Xaa24−I−D−P−S−D−S−Y−T−N−Y−Xaa25−P−S−F−Q−G,
(V)
式中、
Xaa24は、Phe又はArgであってよく、
Xaa25は、Ala又はSerであってよい。)、又は、
h.配列番号79、80及び195に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号195のLCDR3は、式(VI)に示されるように更に定義される:
Q−Q−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Xaa21−Xaa22−Xaa23−T,
(VI)
式中、
Xaa18は、Tyr、Gly又はAlaであってよく、
Xaa19は、Gly、Glu又はAsnであってよく、
Xaa20は、Ser又はThrであってよく、
Xaa21は、Val、Ile又はLeuであってよく、
Xaa22は、Ser又はLeuであってよく、
Xaa23は、Ile、Ser、Pro又はTyrであってよい。)、又は、
i.配列番号82、196及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号196のHCDR2は、式(V)に示されるように更に定義される:
Xaa24−I−D−P−S−D−S−Y−T−N−Y−Xaa25−P−S−F−Q−G,
(V)
式中、
Xaa24は、Phe又はArgであってよく、
Xaa25は、Ala又はSerであってよい。)、及び、
j.配列番号79、80及び195に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号195のLCDR3は、式(VI)に示されるように更に定義される:
Q−Q−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Xaa21−Xaa22−Xaa23−T,
(VI)
(式中、
Xaa18は、Tyr、Gly又はAlaであってよく、
Xaa19は、Gly、Glu又はAsnであってよく、
Xaa20は、Ser又はThrであってよく、
Xaa21は、Val、Ile又はLeuであってよく、
Xaa22は、Ser又はLeuであってよく、
Xaa23は、Ile、Ser、Pro又はTyrであってよい。)、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項10】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号6の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号5の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号6の重鎖可変領域及び配列番号5の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号52、88及び54に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号49、50及び51に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号52、88及び54に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号49、50及び51に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号7のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号6のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項11】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号8の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号7の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号8の重鎖可変領域及び配列番号7の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号58、64及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号55、56及び57に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号58、64及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号55、56及び57に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号8のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号7のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項12】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号10の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号9の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号10の重鎖可変領域及び配列番号9の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号70、77及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号67、68及び69に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号70、77及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号67、68及び78に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号10のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号9のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項13】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号12の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号11の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号12の重鎖可変領域及び配列番号11の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号82、83及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号79、80及び89に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号82、83及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号79、80及び89に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号12のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号11のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項14】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号14の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号13の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号14の重鎖可変領域及び配列番号13の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号46、47及び48に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号43、44及び45に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号46、47及び48に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号43、44及び45に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号14のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号13のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項15】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号16の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号15の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号16の重鎖可変領域及び配列番号15の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号52、53及び54に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号49、50及び51に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号52、53及び54に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号49、50及び51に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号16のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号15のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項16】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号18の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号17の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号18の重鎖可変領域及び配列番号17の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号58、59及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号55、56及び57に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号58、59及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号55、56及び57に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号18のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号17のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項17】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号20の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号19の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号20の重鎖可変領域及び配列番号19の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号61、62及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号55、56及び57に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号61、62及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号55、56及び57に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号20のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号19のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項18】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号22の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号21の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号22の重鎖可変領域及び配列番号21の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号61、64及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号55、56及び63に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号61、64及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号55、56及び63に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号22のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号21のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項19】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号24の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号23の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号24の重鎖可変領域及び配列番号23の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号61、64及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号55、56及び65に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号61、64及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号55、56及び65に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号24のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号23のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項20】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号26の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号25の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号26の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号61、64及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号55、56及び66に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号61、64及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号55、56及び66に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号26のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号25のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項21】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号28の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号27の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号28の重鎖可変領域及び配列番号27の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号70、71及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号67、68及び69に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号70、71及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号67、68及び69に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号28のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号27のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項22】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号30の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号29の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号30の重鎖可変領域及び配列番号29の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号70、73及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号67、68及び69に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号70、73及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号67、68及び69に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号30のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号29のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項23】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号32の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号31の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号32の重鎖可変領域及び配列番号31の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号70、75及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号67、68及び74に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号70、75及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号67、68及び74に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号32のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号31のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項24】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号34の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号33の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号34の重鎖可変領域及び配列番号33の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号70、77及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号67、68及び76に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号70、77及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号67、68及び76に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号34のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号33のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項25】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号36の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号35の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号36の重鎖可変領域及び配列番号35の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号70、77及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号67、68及び78に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号70、77及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号67、68及び78に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号36のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号35のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項26】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号38の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号37の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号38の重鎖可変領域及び配列番号37の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号82、83及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号79、80及び81に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号82、83及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号79、80及び81に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号38のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号37のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項27】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号40の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号39の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号40の重鎖可変領域及び配列番号39の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号82、86及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号79、80及び85に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号82、86及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号79、80及び85に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号40のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号39のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、
i.配列番号102の重鎖、又は、
j.配列番号155の軽鎖、又は、
k.配列番号102の重鎖及び配列番号155の軽鎖を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項28】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号42の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号42の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号82、86及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
e.配列番号79、80及び87に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
f.配列番号82、86及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号79、80及び87に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
g.配列番号42のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する重鎖可変領域、又は、
h.配列番号41のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも95%一致する軽鎖可変領域、
i.配列番号102の重鎖、又は、
j.配列番号156の軽鎖、又は、
k.配列番号102の重鎖及び配列番号155の軽鎖を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項29】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号216の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号216の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
d.配列番号220の重鎖、又は、
e.配列番号156の軽鎖、又は、
f.配列番号220の重鎖及び配列番号156の軽鎖を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項30】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号124の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号125の重鎖可変領域、又は、
c.配列番号126の重鎖可変領域、又は、
d.配列番号127の重鎖可変領域、又は、
e.配列番号128の重鎖可変領域、又は、
f.配列番号129の重鎖可変領域、又は、
g.配列番号124の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
h.配列番号125の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
i.配列番号126の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
j.配列番号127の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
k.配列番号128の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
l.配列番号129の重鎖可変領域及び配列番号41の軽鎖可変領域、又は、
m.配列番号122の軽鎖可変領域、又は、
n.配列番号123の軽鎖可変領域、又は、
o.配列番号42の重鎖可変領域及び配列番号122の軽鎖可変領域、又は、
p.配列番号42の重鎖可変領域及び配列番号123の軽鎖可変領域、又は、
q.配列番号111、112及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
r.配列番号111、114及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
s.配列番号115、112及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
t.配列番号116、112及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
u.配列番号111、117及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
v.配列番号116、118及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
w.配列番号116、112及び119に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
x.配列番号116、118及び119に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
y.配列番号111、112及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号109、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
z.配列番号111、114及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号109、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
aa.配列番号115、112及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号109、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
bb.配列番号116、112及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号109、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
cc.配列番号111、117及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号109、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
dd.配列番号116、118及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号109、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
ee.配列番号116、112及び119に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号109、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
ff.配列番号120、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
gg.配列番号121、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
hh.配列番号111、112及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号120、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
ii.配列番号111、112及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、並びに、配列番号121、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、又は、
jj.配列番号130の重鎖、又は、
kk.配列番号131の重鎖、又は、
ll.配列番号132の重鎖、又は、
mm.配列番号133の重鎖、又は、
nn.配列番号134の重鎖、又は、
oo.配列番号135の重鎖、又は、
pp.配列番号160の重鎖、又は、
qq.配列番号130の重鎖及び配列番号156の軽鎖、又は、
rr.配列番号131の重鎖及び配列番号156の軽鎖、又は、
ss.配列番号132の重鎖及び配列番号156の軽鎖、又は、
tt.配列番号133の重鎖及び配列番号156の軽鎖、又は、
uu.配列番号134の重鎖及び配列番号156の軽鎖、又は、
vv.配列番号135の重鎖及び配列番号156の軽鎖、又は、
ww.配列番号160の重鎖及び配列番号156の軽鎖、又は、
xx.配列番号157の軽鎖、又は、
yy.配列番号158の軽鎖、又は、
zz.配列番号102の重鎖及び配列番号157の軽鎖、又は、
aaa.配列番号102の重鎖及び配列番号158の軽鎖を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項31】
前記抗体が完全なヒト抗体である、請求項7又は8に記載の単離された抗体又はフラグメント。
【請求項32】
前記抗体又はフラグメントがヒト適合化されている、請求項7又は8に記載の単離された抗体又はフラグメント。
【請求項33】
前記抗体がポリエチレングリコールと接合されている、請求項7又は8に記載の単離された抗体又はフラグメント。
【請求項34】
IgG4アイソタイプを有する、請求項7又は8に記載の単離された抗体又はフラグメント。
【請求項35】
Fcドメインが、S229P、P235A又はL236A突然変異を含む、請求項7又は8に記載の単離された抗体又はフラグメント。
【請求項36】
請求項7又は8に記載の単離された抗体又はフラグメント及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項37】
重鎖及び軽鎖可変領域を有する、TLR3に対する反応性を有する単離された抗体又はフラグメントであって、該抗体が、
a.配列番号164の重鎖可変領域、又は、
b.配列番号163の軽鎖可変領域、又は、
c.配列番号164の重鎖可変領域、及び、
d.配列番号163の軽鎖可変領域、又は、
e.配列番号166の重鎖、又は、
f.配列番号165の軽鎖、又は、
g.配列番号166の重鎖及び配列番号165の軽鎖、又は、
h.配列番号168の重鎖、又は、
i.配列番号167の軽鎖、又は、
j.配列番号168の重鎖及び配列番号167の軽鎖を有する、単離された抗体又はフラグメント。
【請求項38】
a.配列番号61、192及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号192のHCDR2は式(I)に示されるように更に定義される:
Xaa6−I−Xaa7−Xaa8−R−S−Xaa9−W−Y−N−D−Y−A−V−S−V−K−S
式中、
Xaa6は、Arg又はLysであってよく、
Xaa7は、Tyr、His又はSerであってよく、
Xaa8は、Met、Arg又はTyrであってよく、
Xaa9は、Lys又はArgであってよい。)、
b.配列番号70、194及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号194のHCDR2は式(III)に示されるように更に定義される:
I−I−Q−Xaa15−R−S−K−W−Y−N−Xaa16−Y−A−Xaa17−S−V−K−S
式中、
Xaa15は、Lys、Thr又はIleであってよく、
Xaa16は、Asn又はAspであってよく、
Xaa17は、Val又はLeuであってよい。)、
c.配列番号82、196及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号196のHCDR2は、式(V)に示されるように更に定義される:
Xaa24−I−D−P−S−D−S−Y−T−N−Y−Xaa25−P−S−F−Q−G
式中、
Xaa24は、Phe又はArgであってよく、
Xaa25は、Ala又はSerであってよい。)、
d.配列番号52、88及び54に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
e.配列番号58、64及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
f.配列番号70、77及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
g.配列番号82、83及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
h.配列番号46、47及び48に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
i.配列番号52、53及び54に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
j.配列番号58、59及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
k.配列番号61、62及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
l.配列番号61、64及び60に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
m.配列番号70、71及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
n.配列番号70、73及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
o.配列番号70、75及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
p.配列番号70、77及び72に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
q.配列番号82、83及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
r.配列番号82、86及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
s.配列番号111、114及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
t.配列番号115、112及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
u.配列番号116、112及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
v.配列番号111、117及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
w.配列番号116、118及び84に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
x.配列番号116、112及び119に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
y.配列番号116、118及び119に示される重鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
からなる群から選択されるCDRアミノ酸配列を有する抗体の重鎖をコードした単離されたポリヌクレオチド。
【請求項39】
a.配列番号55、56及び191に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号191のLCDR3は、式(II)に示されるように更に定義される:
Xaa1−S−Y−D−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Xaa5−T−V,
(II)
式中、
Xaa1は、Ala、Gln、Gly又はSerであってよく、
Xaa2は、Gly、Glu又はSerであってよく、
Xaa3は、Asp又はAsnであってよく、
Xaa4は、Glu又はSerであってよく、
Xaa5は、Phe、Ala又はLeuであってよい。)、又は、
b.配列番号67、68及び193に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号193のLCDR3は、式(IV)に示されるように更に定義される:
Xaa10−S−Y−D−Xaa11−P−Xaa12−Xaa13−Xaa14−V,
(IV)
式中、
Xaa10は、Gln又はSerであってよく、
Xaa11は、Thr、Glu又はAspであってよく、
Xaa12は、Val又はAsnであってよく、
Xaa13は、Tyr又はPheであってよく、
Xaa14は、Ser、Asn又はGlnであってよい。)、又は、
c.配列番号79、80及び195に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列(ただし、配列番号193のLCDR3は、式(VI)に示されるように更に定義される:
Q−Q−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Xaa21−Xaa22−Xaa23−T,
(VI)
式中、
Xaa18は、Tyr、Gly又はAlaであってよく、
Xaa19は、Gly、Glu又はAsnであってよく、
Xaa20は、Ser又はThrであってよく、
Xaa21は、Val、Ile又はLeuであってよく、
Xaa22は、Ser又はLeuであってよく、
Xaa23は、Ile、Ser、Pro又はTyrであってよい。)、又は、
d.配列番号49、50及び51に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
e.配列番号55、56及び57に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
f.配列番号67、68及び69に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
g.配列番号79、80及び89に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
h.配列番号43、44及び45に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
i.配列番号49、50及び51に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
j.配列番号55、56及び57に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
k.配列番号55、56及び63に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
l.配列番号55、56及び65に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
m.配列番号55、56及び66に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
n.配列番号67、68及び69に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
o.配列番号67、68及び74に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
p.配列番号67、68及び76に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
q.配列番号67、68及び78に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
r.配列番号79、80及び81に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
s.配列番号79、80及び85に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
t.配列番号79、80及び87に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
u.配列番号109、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
v.配列番号120、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、及び、
w.配列番号121、110及び113に示される軽鎖CDR 1、2及び3のアミノ酸配列、
からなる群から選択されるCDRアミノ酸配列を有する抗体の軽鎖をコードした単離されたポリヌクレオチド。
【請求項40】
配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、124、125、126、127、128、129、159、198、200、202、164、212、213、214、215又は216に示されるアミノ酸配列を有する抗体の重鎖をコードした単離されたポリヌクレオチド。
【請求項41】
配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、122、123、197、199、201、163、209、210又は211に示されるアミノ酸配列を有する抗体の軽鎖をコードした単離されたポリヌクレオチド。
【請求項42】
配列番号102、130、131、132、133、134、135、160、204、206、208、220、166又は168に示されるアミノ酸配列を有する抗体の重鎖をコードした単離されたポリヌクレオチド。
【請求項43】
配列番号155、156、157、158、203、205、207、165又は167に示されるアミノ酸配列を有する抗体の軽鎖をコードした単離されたポリヌクレオチド。
【請求項44】
配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、124、125、126、127、128、129、159、198、200、202、164、212、213、214、215又は216に示されるアミノ酸配列を有する単離された抗体の重鎖。
【請求項45】
配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、122、123、197、199、201、163、209、210又は211に示されるアミノ酸配列を有する単離された抗体の軽鎖。
【請求項46】
配列番号102、130、131、132、133、134、135、160、204、206、208、220、166又は168に示されるアミノ酸配列を有する単離された抗体の重鎖。
【請求項47】
配列番号155、156、157、158、203、205、207、165又は167に示されるアミノ酸配列を有する単離された抗体の軽鎖。
【請求項48】
請求項7又は8に記載の単離された抗体の治療上の有効量を、炎症状態の治療を必要とする患者に炎症状態を治療又は予防するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、炎症状態の治療方法。
【請求項49】
前記炎症状態が、気道、肺、消化管、小腸、大腸、結腸、直腸、心血管系、心組織、血管、関節、骨及び滑膜組織、軟骨、上皮、内皮、肝又は脂肪組織からなる群から選択される組織を冒すものである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記炎症状態が、TLR3によって媒介される組織への好中球の浸潤の増加をともなう、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記炎症状態が炎症性肺状態である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記炎症性肺状態が、喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記炎症性肺状態が分類不能型ヘモフィルスインフルエンザによって誘導される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記炎症性肺状態が気道過敏症である、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記気道過敏症が、喘息、アレルギー性鼻炎、COPD、又は嚢胞性線維症をともなう、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記炎症状態が炎症性腸疾患である、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記炎症状態が消化管潰瘍をともなう、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記消化管潰瘍が、炎症性大腸炎、虚血性大腸炎、コラーゲン形成大腸炎又はリンパ球性大腸炎をともなう、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記炎症状態が自己免疫疾患である、請求項48に記載の方法。
【請求項60】
前記自己免疫疾患が関節リウマチである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
請求項7又は8に記載の単離された抗体の治療上の有効量を、全身性炎症状態の治療又は予防を必要とする患者に全身性炎症状態を治療又は予防するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、全身性炎症状態の治療又は予防方法。
【請求項62】
前記全身性炎症状態が、サイトカインストームすなわち高サイトカイン血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、移植片対宿主病(GVHD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、劇症型抗リン脂質症候群、重篤なウイルス感染、インフルエンザ、肺炎、ショック、又は敗血症である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
請求項7又は8に記載の単離された抗体の治療上の有効量を、II型糖尿病の治療を必要とする患者にII型糖尿病を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、II型糖尿病の治療方法。
【請求項64】
請求項7又は8に記載の単離された抗体の治療上の有効量を、高血糖の治療を必要とする患者に高血糖を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、高血糖の治療方法。
【請求項65】
請求項7又は8に記載の単離された抗体の治療上の有効量を、高インスリン血症の治療を必要とする患者にインスリン抵抗性を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、高インスリン血症の治療方法。
【請求項66】
請求項7又は8に記載の単離された抗体の治療上の有効量を、ウイルス感染の治療又は予防を必要とする患者にウイルス感染を治療又は予防するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、ウイルス感染の治療又は予防方法。
【請求項67】
前記ウイルス感染がA型インフルエンザウイルス感染である、請求項66に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【公表番号】特表2012−507564(P2012−507564A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534819(P2011−534819)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/062813
【国際公開番号】WO2010/051470
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(509087759)ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】