説明

TPS植物遺伝子構築体及び形質転換体

本発明は、誘導性プロモーターの制御下で、低温、塩、及び水ストレスに対する耐性を増加する、トレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸で形質転換されたトランスジェニック単子葉植物、植物細胞、又はプロトプラストに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年11月6日に出願された米国仮特許出願第60/424,410号及び2002年12月4日に出願された米国仮特許出願第60/430,861号の利益を請求する。
【0002】
発明の分野
本発明は、低温ストレス、水ストレス、及び塩ストレスに対する耐性を増加させるためにトレハロース生合成経路中の酵素をコードする核酸で形質転換されるトランスジェニック単子葉植物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
世界人口の爆発的な増加は、耕地の継続的な荒廃、淡水の不足、及び環境ストレスの増加とともに、世界的な農業生産及び食料保障(food security)に対して深刻な脅威をもたらす。乾燥、過剰の塩分、及び低温などの非生物的ストレスに対する抵抗のための伝統的な品種改良によって主要作物を改良する集中的な努力にも関わらず、成功は限定的なものとなっている(Boyer, J. S., "Plant Productivity and Environment," Science, 218: 443-448 (1982))。この所望の進展の欠如は、非生物的ストレスに対する耐性が、遺伝子ネットワークの協調的かつ差分発現が影響する複雑な特性であるという事実に起因する。幸いにも、現在、トランスジェニック手法を用いて、予測されたよりもずっと少ない標的特性を有する農業的に重要な作物で、非生物的ストレス耐性を改良することが可能である(Zhangら、"Engineering Salt-Tolerant Brassica Plants: Characterization of Yield and Seed Oil Quality in Transgenic Plants with Increased Vacuolar Sodium Accumulation, "Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98:12832-12836 (2001))。
【0004】
非生物的ストレスは、代謝、生長、及び発達を変えることにより、生物の生理状態に直接的又は間接的に影響を与える。乾燥、塩分、及び低温ストレスに対するよく見られる生物応答は、糖及びその他の適合する溶質の蓄積である(Hareら、"Dissecting the Roles of Osmolyte Accumulation During Stress, "Plant Cell Environ., 21:535-553 (1998))。これらの化合物は、浸透圧保護因子として働き、ある場合では、ストレス条件下で生物分子を安定させる(Hareら、"Dissecting the Roles of Osmolyte Accumulation During Stress, "Plant Cell Environ., 21: 535-553 (1998); Yanceyら、"Living with Water Stress: Evolution of Osmolyte Systems," Science. 217:1214-1222 (1982))。そのような一化合物は、グルコースの非還元二糖であるトレハロースであり、細菌、酵母、及び無脊椎動物を含む非常に多くの生物で非生物的ストレス保護剤として重要な生理学的役割を果たす(Croweら、"Anhydrobiosis," Annu. Rev. Physiol., 54:579-599 (1992))。トレハロースは、脱水酵素、タンパク質、及び脂質膜を効率的に安定化し、さらに生物構造を乾燥中の損傷から保護することが示されている。植物世界において、ほとんどの種は検出可能な量のトレハロースを蓄積しないようであるが、乾燥耐性が高い「テマリカタヒバ(resurrection plants)」の注目すべき例外がある(Wingler, "The Function of Trehalose Biosynthesis in Plants," Phytochemistry, 60:437-440 (2002))。テマリカタヒバ(Selaginella lepidophylla)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、及びいくつかの作物植物中でのトレハロース生合成用相同遺伝子が最近発見されたことによって、トレハロース合成能は植物世界で広範に分布していることが示唆される(Goddijnら、"Trehalose Metabolism in Plants," Trends Plant Sci., 4:315-319 (1999))。トレハロース-6-ホスフェートシンターゼ(TPS)の推定植物遺伝子は、△tps1変異酵母株を補完することができ、植物及び酵母の遺伝子産物が機能的に類似していることを示唆している(Zentellaら、"A Selaginella lepidophylla Trehalose-6-Phosphate Synthase Complements Growth and Stress-Tolerance Defects in a Yeast tps1 Mutant," Plant Physiol., 119:1473-1482 (1999))。
【0005】
細菌及び酵母では、トレハロースは2工程プロセスで合成される。トレハロース-6-ホスフェートが、TPSによって触媒される反応でUDP-グルコース及びグルコース-6-ホスフェートからまず形成される。次いで、トレハロース-6-ホスフェートが、トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼ(TPP)によってトレハロースに変換される(Goddijnら、"Trehalose Metabolism in Plants," Trends Plant Sci., 4:315-319 (1999))。植物中のトレハロースの蓄積を増大するための代謝操作が、あるモデル双子葉植物で最近、注目の的となっている(Holmstromら、"Drought Tolerance in Tobacco," Nature, 379:683-684 (1996); Goddijnら、"Inhibition of Trehalase Activity Enhances Trehalose Accumulation in Transgenic Plants," Plant Physiol., 113:181-190 (1997); Romeroら、"Expression of the Yeast Trehalose-6-Phosphate Synthase Gene in Transgenic Tobacco Plants: Pleiotropic Phenotypes Include Drought Tolerance,"Planta, 201:293-297 (1997); Pilon-Smitsら、"Trehalose-Producing Transgenic Tobacco Plants Show Improved Growth Performance Under Drought Stress, J. Plant Physiol., 152:525-532 (1998))。しかしながら、これらの従前の研究において、タバコ又はジャガイモ植物中での酵母又は大腸菌由来のTPS及び/又はTPP遺伝子の構成的な過剰発現では、通常の成長条件下での成長阻害及び代謝変化を含む望ましくない多面発現効果が生じることとなる(Goddijnら、"Inhibition of Trehalase Activity Enhances Trehalose Accummulation in Transgenic Plants," Plant Physiol., 113:181-190 (1997); Romeroら、"Expression of the Yeast Trehalose-6-Phosphate Synthase Gene in Transgenic Tobacco Plants: Pleiotropic Phenotypes Include Drought Tolerance," Planta, 201:293-297 (1997); Pilon-Smitsら、"Trehalose-Producing Transgenic Tobacco Plants Show Improved Growth Performance Under Drought Stress," J. Plant Physiol., 152:525-532 (1998))。本発明は、低温ストレス、水ストレス、及び塩ストレス耐性が改善されたトランスジェニック単子葉植物の産生に対して向けられる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、誘導性プロモーターの制御下で、低温、塩、及び水ストレス耐性を単子葉植物に与える、トレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸で形質転換されたトランスジェニック単子葉植物に関する。
【0007】
本発明はさらに、誘導性プロモーターの制御下で、単子葉植物細胞又はプロトプラストから再生された単子葉植物に低温、塩、及び水ストレス耐性を与える、トレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸で形質転換された単子葉植物細胞又はプロトプラストに関する。
【0008】
本発明は、また単子葉植物細胞又はプロトプラストから再生される単子葉植物に低温、塩、又は水ストレス耐性を与えるのに有効な条件下で、誘導性プロモーターの制御下でトレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸で単子葉植物細胞又はプロトプラストを形質転換することにより、低温、塩、及び水ストレス耐性を単子葉植物に与える方法にも関する。
【0009】
本発明の別の態様はさらに、単子葉植物中のトレハロースを生合成するための酵素のレベルを増加させることによる低温、塩、及び水ストレス条件に対する単子葉植物の耐性増加方法にも関する。
【0010】
本発明は、また低温、塩、及び水ストレス耐性を単子葉植物に与えるプラスミド(該プラスミドは、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼをコードする第1の核酸;該第1の核酸の5'に位置し、かつ、該第1の核酸の発現を制御するプロモーターである第1の誘導性プロモーター;及び該第1の核酸の3'に位置する第1の終結配列を含む)で形質転換されたトランスジェニック単子葉植物に関する。
【0011】
主要作物としてのイネの重要性を考慮すると、非生物的ストレス耐性が増大した新しい品種は、世界的な食糧生産に対して多大な影響を及ぼすことは間違いない。大腸菌(E. coli)otsA及びotsB遺伝子(それぞれTPS及びTPPをコードする)のコード領域を含むトレハロース-6-ホスフェートシンターゼ/ホスファターゼ(TPSP)融合遺伝子でイネを形質転換することによって、非生物的ストレス耐性が改善されることが決定された(Seoら、"Characterization of a Bifunctional Enzyme Fusion of Trehalose-6-Phosphate Synthetase and Trehalose-6-Phosphate Phosphatase of Escherichia coli," Appl. Environ. Microbiol., 66:2484-2490(2000))。この手法は、形質転換事象を1度だけ必要とすること及びトレハロース形成に対してより高い正味の触媒効率を生ずることの二重の利点を有する(Seoら、"Characterization of a Bifunctional Enzyme Fusion of Trehalose-6-Phosphate Synthetase and Trehalose-6-Phosphate Phosphatase of Escherichia coli," Appl. Environ. Microbiol., 66:2484-2490(2000))。インディカ米変種は世界的に生育されているイネの80%に相当するので、たとえ形質転換及び再生がジャポニカ米変種より難しくても、経済的に価値のあるインディカ米であるプーサ・バスマティ−1(Pusa Basmati-1)(PB-1)を選んで形質転換した。したがって、インディカ米で達成されたことはどんなことでもジャポニカ米変種で非常に等しく機能する。
【0012】
二機能性TPSP融合酵素のストレス誘導性又は組織特異的発現によって、植物の成長又は穀物の収率に何ら有害な影響を与えることなく、イネにおけるトレハロース過剰発現の操作が達成できることが示された。非生物的ストレス中に、トランスジェニック植物は、非形質転換植物と比較して、増加したトレハロース量を蓄積し、かつ、高レベルの塩、乾燥、及び低温ストレスに対する耐性を示した。これらの結果は、非生物的ストレス耐性が増し、かつ、イネの生産性が増大した新しいイネ品種の開発におけるトランスジェニック手法の潜在的な使用を実証している。
【0013】
本発明は、低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレス(乾燥)に対する耐性が増加した単子葉植物の産生を可能とする。具体的には、低温、塩、及び水ストレスに応答した耐性増加は、誘導性プロモーターの制御下でトレハロース生合成を活性化することによって達成することができる。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、誘導性プロモーターの制御下で、低温、塩、及び水ストレス耐性を単子葉植物に与える、トレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸で形質転換されたトランスジェニック単子葉植物に関する。
【0015】
本発明は、誘導性プロモーターの制御下でトレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸で、単子葉植物細胞又はプロトプラストを形質転換することによる、低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレス耐性単子葉植物の再生に有用な単子葉植物細胞又はプロトプラストの生産方法を提供する。一度、形質転換が行なわれれば、該単子葉植物細胞又はプロトプラストを再生してトランスジェニック単子葉植物を形成することができる。
【0016】
本発明は、また、単子葉植物細胞又はプロトプラストから産生される単子葉植物に低温、塩、又は水ストレス耐性を与えるのに有効な条件下で、誘導性プロモーターの制御下でトレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸で単子葉植物細胞又はプロトプラストを形質転換することにより、低温、水、及び塩ストレス耐性を単子葉植物に与える方法にも関する。この方法は、誘導性プロモーター及びトレハロースを生合成するための酵素をコードする低温、塩、及び水ストレスに対する耐性を単子葉植物に与える核酸を含有する発現カセットで単子葉植物を形質転換することを含み、誘導性プロモーター及び核酸は、核酸の発現が可能となるように機能可能に一緒に結合されている。好ましい態様において、誘導性プロモーターは少なくとも1つのABRC単位及び最小プロモーターからなる。別の好ましい態様において、少なくとも1つの誘導性エレメントは、クロロプラストを標的とする輸送ペプチドを伴った光誘導性rbcSプロモーターフラグメントである。
【0017】
本発明の別の態様はさらに、単子葉植物中のトレハロースを生合成するための酵素のレベルを増加させることによる、低温、塩、及び水ストレス条件に対する単子葉植物の耐性増加方法にも関する。
【0018】
本発明は、また低温、塩、及び水ストレス耐性を単子葉植物に与えるプラスミド(該プラスミドは、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼをコードする第1の核酸、該第1の核酸の5'に位置し、かつ、該第1の核酸の発現を制御するプロモーターである第1の誘導性プロモーター、及び該第1の核酸の3'に位置する第1の終結配列を含む)で形質転換されたトランスジェニック単子葉植物に関する。
【0019】
本発明によって形質転換することができる単子葉植物は、イネ科(Gramineae)(イネ科(Poaceae)としても既知である)ファミリーのメンバーであり、イネ(イネ(Oryza)属)、コムギ、トウモロコシ(コーン)、オオムギ、オートムギ、ライムギ、キビ、及びモロコシを含む。穀類はイネ、コムギ、又はコーンであることが好ましく、穀類はイネであることが最も好ましい。多くの種の穀類を形質転換することができ、各々の種の中には形質転換することができる多数の亜種及び変種がある。例えば、変種のIR36、IR64、IR72、ポッカリ(Pokkali)、ノナ・ボクラ(Nona Bokra)、KDML105、スポンブリ(Suponburi)60、スポンブリ(Suponburi)90、バスマティ(Basmati)385、及びプーサ・バスマティ1(Pusa Basmati 1)を含む亜種のインディカ米(Oryza sativa ssp.Indica)は、イネ種の範囲内のものである。別のイネ亜種は、日本晴を含むジャポニカ、ケンフェング(Kenfeng)、及びタイナン(Tainung)67である。好適なトウモロコシ変種の例には、A188、B73、VA22、L6、L9、K1、509、5922、482、HNP、及びIGESが含まれる。好適なコムギ変種の例には、パボン(Pavon)、ボブ・ホワイト(Bob White)、ハイ−ライン(Hi-Line)、アンザ(Anza)、クリス(Chris)、コーカー(Coker)983、FLA301、FLA302、フレモント(Fremont)、及びハンター(Hunter)が含まれる。
【0020】
対象の植物を同定する場合、形質転換に好適な植物細胞には、成熟胚、未成熟胚、カルス、懸濁細胞、及びプロトプラストが含まれる。成熟胚及び未成熟胚を用いることが特に好ましい。
【0021】
好ましい態様において、少なくとも1つのABRC単位は、オオムギHVA22遺伝子又はオオムギHVA1遺伝子由来である。オオムギHVA22遺伝子由来の少なくとも1つのABRC単位についての配列である49-bpのABA応答性複合体は、Shenら、"Functional Dissection of an Abscisic Acid (ABA)-Inducible Gene Reveals Two Independent ABA-Responsive Complexes Each Containing a G-Box and Novel Acting Element, "The Plant Cell, 7:295-307 (1995)に説明されている(参照として全体が本明細書に組み入れられる)。オオムギHVA1遺伝子由来のABRC単位についての配列は、Shenら、"Modular Nature of Abscisic Acid (ABA) Response Complexes: Composite Promoter Units that are Necessary and Sufficient for Induction of Gene Expression in Barley," The Plant Cell, 8:1107-1119 (1996)に説明されている。最も好ましい態様において、最高で4つのABRC単位を発現カセット中で機能可能に一緒に結合する。
【0022】
単子葉植物での低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する好適な核酸は、ストレス応答性遺伝子の発現を制御する遺伝子及びトレハロース生合成に関与する酵素をコードする遺伝子である。トレハロース生合成をコードする酵素は、細菌、酵母、及び無脊椎動物を含む非常に多くの生物から単離することができる(一般には、Croweら、"Anhydrobiosis," Annu. Rev. Physiol., 54: 579-599 (1992)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)を参照されたい)。好ましい態様において、トレハロース生合成に関与する酵素をコードする核酸は、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼをコードするDNAである。酵母由来のTPS1遺伝子は、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼをコードすることが好ましい(異なる酵母TPS1遺伝子の比較については、Kwonら、"Cloning and Characterization of Genes Encoding Trehalose-6-phosphate Synthase (TPS1) and Trehalose-6-phosphate Phosphatase (TPS2) from Zygosaccharomyces rouxii," FEMS Yeast Res., 3:433-440 (2003)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)を参照されたい)。大腸菌由来のotsA遺伝子は、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼをコードすることが最も好ましい。別の好ましい態様において、トレハロース生合成に関与する酵素をコードする核酸は、トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼをコードするDNAである。酵母由来のTPS2遺伝子は、トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼをコードすることが好ましい(異なる酵母TPS2遺伝子の比較については、Kwonら、"Cloning and Characterization of Genes Encoding Trehalose-6-phosphate Synthase (TPS1) and Trehalose-6-phosphate Phosphatase (TPS2) from Zygosaccharomyces rouxii, "FEMS Yeast Res., 3:433-440 (2003)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)を参照されたい)。大腸菌由来のotsB遺伝子は、トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼをコードすることがより好ましい。より好ましい態様において、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼ(otsA)及びトレハロース-6-ホスフェートホスファターゼ(otsB)の双方を、単子葉植物中で同時発現する。最も好ましい態様において、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼ(otsA)及びトレハロース-6-ホスフェートホスファターゼ(otsB)を、単子葉植物中で融合タンパク質として発現する。otsA及びotsB遺伝子の配列は、Kaasenら、"Analysis of the otsBA Operon for Osmoregulatory Trehalose Synthesis in Escherichia coli and Homology of the OtsA and OtsB Proteins to the Yeast Trehalose-6-phosphate synthase/phosphatase complex," Gene, 145:9-15 (1994)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)に見出すことができる。
【0023】
好適な最小プロモーターには、イネのAct1、イネのrbcS、オオムギ若しくはイネの短縮化α-アミラーゼプロモーター、短縮化トウモロコシユビキチンプロモーター、又は短縮化CaMV 35Sプロモーターが含まれる。
【0024】
好ましい態様において、最小プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0025】
より好ましい態様において、最小プロモーターは光誘導性プロモーターであるイネrbcSである。
【0026】
最も好ましくは、最小プロモーターは、ストレス誘導性のイネの最小Act1プロモーターであり、配列はSuら、"Dehydration Stress-regulate Transgene Expression in Stably Transformed Rice Plants," Plant Physiol., 117:913-922 (1998(参照として全体が本明細書に組み入れられる))に見出すことができる。
【0027】
好ましい態様において、誘導性プロモーター及びトレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸を含有する発現カセットは、単子葉植物での低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する。
【0028】
これらの単子葉植物細胞は、単子葉植物での低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する分子をコードするRNA又はDNA(好ましくはcDNA)であってよい核酸で形質転換される。核酸は生物学的に単離するか合成することができ、トレハロースを生合成するための酵素をコードする。以下の例において、鍵となる生合成用酵素であるトレハロース-6-ホスフェートシンターゼ(TPS)は、大腸菌のotsA遺伝子によりコードされる。以下の例において、第2の鍵となる生合成用酵素であるトレハロース-6-ホスフェートホスファターゼ(TPP)は、大腸菌のotsB遺伝子によりコードされる。
【0029】
植物細胞の形質転換は、プラスミドを用いることによって達成することができる。プラスミドを用いて、植物での塩ストレス及び乾燥ストレスに対する耐性を増加する核酸を植物細胞中に導入する。したがって、プラスミドは、固有の制限エンドヌクレアーゼ切断部位に挿入された、植物における塩ストレス及び乾燥ストレスに対する耐性を増加するDNA分子を含むことが好ましい。本明細書中で用いられる異種DNAとは、プラスミドで形質転換する特定の宿主細胞中に通常存在しないDNAを意味する。当該技術分野で容易に知られる標準のクローニング手順を用いて、DNAをベクターに挿入する。Sambrookら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(参照として全体が本明細書に組み入れられる)記載される通り、これは一般的に制限酵素及びDNAリガーゼの使用を伴う。次いで、植物での塩ストレス及び乾燥ストレスに対する耐性を増加する核酸を含んでいる得られたプラスミドを用いて、アグロバクテリウム及び/又は植物細胞などの宿主細胞を形質転換することができる。(一般に、Plant Molecular Biology Manual, 2d Edition, Gelvinら、Eds., Kluwer Academic Press, Dordrecht, Netherlands (1994)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)を参照されたい)。
【0030】
植物形質転換のために、プラスミドが植物形質転換用の選択マーカーも含むことが好ましい。汎用される植物選択マーカーには、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(hpT)遺伝子、ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(bar)、5-エノールピルビルシキメート-3-ホスフェートシンターゼ遺伝子(EPSPS)、ネオマイシン3'-0-ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)、又はアセト乳酸シンターゼ遺伝子(ALS)が含まれる。これらの選択マーカーについての情報は、"Markers for Plant Gene Transfer" in Transgenic Plants, Kungら、Eds., Vol. 1, pp. 89-123, Academic Press, NY (1993)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)に見出すことができる。好ましい態様において、プラスミドは、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの制御下での植物形質転換用の選択マーカーとして、選択カセット中にホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(bar)を含む。
【0031】
好ましい態様において、プラスミドは、各々otsA及びotsB融合遺伝子を含む指定されたpSB109-TPSP又はpSB-RTSPである。
【0032】
植物形質転換のために、プラスミドはまた、プロテイナーゼインヒビター、アクチン1、又はノパリンシンターゼ(nos)をコードする遺伝子の3'非コード領域由来のものなど、3'ターミネーターをコードする核酸分子も含むことが好ましい。好ましい態様において、プラスミドは、誘導性プロモーター及びトレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸を含有する発現カセットの3'ターミネーターとして、プロテイナーゼインヒビターII遺伝子(pinII)の3'非コード領域をコードする核酸分子を含む。プラスミドは、植物形質転用の選択カセットの3'ターミネーターとして、ノパリンシンターゼ遺伝子(nos)の3'非コード領域をコードする核酸分子を含むことが好ましい。
【0033】
本発明で使用するための他の好適なプラスミドを構築することができる。例えば、制限酵素を使用してotsA遺伝子、otsB遺伝子、又はotsA/otsB融合遺伝子を取り除いた後に、トレハロース生合成を増加し、かつ単子葉植物での低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸をコードする大腸菌のotsA遺伝子又はotsB遺伝子以外の遺伝子を親プラスミドSB109-TPSP又はSB-RTSPに連結することができるであろう。プラスミドSB109-TPSP中に存在するイネアクチン1遺伝子プロモーター又はプラスミドSB-RTSP中のrbcS遺伝子プロモーターを、他の最小プロモーターに置き換えることができるであろう。あるいは、好適な選択マーカーとともに、トレハロース生合成を増加する核酸をコードする遺伝子を一般的に含有し、かつ、好適な最小プロモーターの制御下で単子葉植物での低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する他のプラスミドを、当該技術分野で周知の技術を用いて容易に構築することができる。
【0034】
プラスミドを同定する場合、植物での低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸で単子葉植物細胞を形質転換する一技術は、植物細胞を、単子葉植物での低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸を含有するプラスミドで形質転換されたアグロバクテリウム細菌の接種材料と接触させることによるものである。一般的に、この手順は、形質転換された細菌の懸濁液を植物細胞に接種すること、及び細胞を抗生物質を含まない再生培地上で25〜28℃で48〜72時間インキュベーションすることを伴う。
【0035】
アグロバクテリウム属由来の細菌を利用して植物細胞を形質転換することができる。好適な種には、アグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)及びアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)が含まれる。アグロバクテリウム・チュメファシエンス(例えば、LBA4404又はEHA105株)は、その周知の植物形質転換能力ゆえ、特に有用である。
【0036】
本発明によるアグロバクテリウム属を植物細胞に接種する場合、細菌を、トレハロースを生合成するための酵素をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換しなければならない。
【0037】
植物での低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸を含むアグロバクテリウム中の導入に好適なプラスミドは、細菌である大腸菌中での複製のための複製起点、細菌アグロバクテリウム・チュメファシエンス中での複製のための複製起点、遺伝子の植物への輸送のためのT-DNA右境界配列、及び形質転換された植物細胞の選択のためのマーカー遺伝子を含有する。ノパリンシンターゼ(NOS)プロモーター及びNOS3'ポリアデニル化シグナルとともに、低コピーRK2複製起点、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(nptII)マーカー遺伝子を含むベクターpBI121が特に好ましい。T-DNAプラスミドベクターpBI121は、Clontech Laboratories, 4030 Fabian Way, Palo Alto, California 94303から入手可能である。単子葉植物での低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸をベクターに挿入して、β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を置き換える。
【0038】
典型的には、Holstersら、"Transfection and Transformation of Agrobacterium tumefaciens, "Mol. Gen. Genet., 163:181-187 (1978)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)記載される通り、化学的及び加熱処理後のプラスミドDNAの直接取り込みにより;Shenら、"Efficient Transformation of Agrobacterium spp. by High Voltage Electroporation," Nucleic Acids Research, 17:8385 (1989)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)記載される通り、エレクトロポレーション後のDNAの直接取り込みにより;Dittaら、"Broad Host Range DNA Cloning System for Gram-negative Bacteria: Construction of a Gene Bank of Rhizobium meliloti," Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 7347-7351 (1981)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)記載される通り、Tra+ヘルプ株によって媒介される大腸菌由来のプラスミドのアグロバクテリウムへのトリペアレンタル(triparental)接合移行により;あるいは、Simonら、"A Broad Host Range Mobilization System for in vivo Genetic Engineering: Transposon Mutagenesis in Gram-Negative Bacteria," Biotechnology, 1:784-791 (1982)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)記載される通り、大腸菌からアグロバクテリウムへの直接の接合移行により、アグロバクテリウム種をプラスミドで形質転換する。
【0039】
トレハロースを生合成するための酵素をコードする含有核酸の植物細胞への別の導入方法は、パーティクル・ボンバードメント法(particle bombardment)などによる植物細胞核の形質転換によるものである。本出願全体にわたって用いられる通り、宿主細胞のパーティクル・ボンバードメント法(微粒子銃形質転換としても既知である)は、いくつかの方法のうちの1つで達成することができる。第1のものは、不活性又は生物活性粒子を細胞に噴射することを含む。この技術は、すべてSanfordらによる米国特許第4,945,050号、第5,036,006号、及び第5,100,792号(参照として全体が本明細書に組み入れられる)記載されている。一般的に、この手順は、細胞の外部表面を透過してその内部に導入するのに有効な条件下で不活性又は生物活性粒子を細胞に噴射することを伴う。不活性粒子を利用する場合、異種DNAを含有するプラスミドで粒子を被覆することによってプラスミドを細胞に導入することができる。あるいは、粒子の伴流によってプラスミドが細胞に運び込まれるように、プラスミドが標的細胞を取り囲むことができる。生物活性粒子(例えば、プラスミド及び異種DNAを含有する乾燥細菌細胞)を植物細胞に噴射することもできる。
【0040】
プラスミドの植物細胞へのさらなる導入方法は、植物細胞プロトプラストの形質転換によるもの(安定的又は一過性)である。植物プロトプラストは原形質膜だけに囲まれ、したがって異種DNAのような巨大分子を取り込む。これらの操作されたプロトプラストは、植物全体を再生することができる。異種DNAの植物細胞プロトプラストへの好適な導入方法には、エレクトロポレーション及びポリエチレングリコール(PEG)形質転換が含まれる。本出願全体にわたって用いる通り、エレクトロポレーションは、一般的に高濃度のDNA(異種DNAを含む)を宿主細胞プロトプラストの懸濁液に添加し、混合物を200〜600 V/cmの電界で感電させる形質転換方法である。エレクトロポレーション後、形質転換された細胞を選択剤を含有する適切な培地上で増殖させることによって同定する。
【0041】
本出願全体にわたって用いる通り、形質転換には、プラスミドが植物染色体に組み込まれる安定的な形質転換が包含される。
【0042】
以下の実施例において、Hieiら、"Efficient Transformation of Rice (Oryza sativa L.) Mediated by Agrobacterium and Sequence Analysis of the Boundaries of the T-DNA," The Plant Journal, 6:271-282 (1994)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)記載されるアグロバクテリウム法を用いて、イネを形質転換した。微粒子銃形質転換。プロトプラスト法(総説については、Caoら、"Regeneration of Herbicide Resistant Transgenic Rice Plants Following Microprojectile-Mediated Transformation of Suspension Culture Cells," Plant Cell Rep., 11:586-591 (1992)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))及び微粒子銃形質転換法(すべてSanfordらによる米国特許第4,945,050号、第5,036,006号、及び第5,100,792号(参照として全体が本明細書に組み入れられる)記載の通りである)を含む他の形質転換法を用いて、イネ植物を形質転換することに成功している。微粒子銃形質転換を用いて、コムギを形質転換することに成功している(総説については、Weeksら、"Rapid Production of Multiple Independent Lines of Fertile Transgenic Wheat (Triticum aestivum)," Plant Physiol., 102:1077-1084 (1993)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)を参照されたい)。微粒子銃形質転換を用いて、トウモロコシを形質転換することに成功し(総説については、Mackeyら、"Transgenic Maize," In Transgenic Plants, Kung et al., Eds., vol. 2, pp. 21-33 (1993)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)を参照されたい)、コムギを形質転換することに成功している(Vasilらの特許第5,405,765号(参照として全体が本明細書に組み入れられる)を参照されたい)。
【0043】
一度、本発明に従って単子葉植物細胞又はプロトプラストを形質転換すれば、それを再生してトランスジェニック単子葉植物が形成される。一般的に、再生は、形質転換細胞又はプロトプラストを適切な成長調節物質又は栄養分を含有する培地上で培養し、苗条成長点の開始が可能となることによって達成される。適切な抗生物質を再生培地に添加してアグロバクテリウム又は他の汚染菌の増殖を阻害して、形質転換細胞又はプロトプラストの発達について選択する。苗条開始後、苗条を組織培養中で発達させ、マーカー遺伝子活性をスクリーニングする。
【0044】
好適な形質転換法において、形質転換される単子葉植物細胞はインビトロでもよいし、インビボでもよく、すなわち、単子葉植物細胞が単子葉植物中に位置してもよい。
【0045】
本発明はまた、誘導性プロモーターに機能可能に結合された低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸で形質転換されたトランスジェニック単子葉植物にも関する。
【0046】
本発明は、またトランスジェニック単子葉植物により産生された種子も提供する。本発明は、発芽したときにトランスジェニック単子葉植物を産生する種子にも向けられる。
【0047】
また、本発明の低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸のフラグメントで形質転換されたトランスジェニック単子葉植物も本発明に包含される。適切な制限部位を用いることにより、単子葉植物に低温ストレス、塩ストレス、又は水ストレスに対する耐性を与えることができる好適なフラグメントを構築することができる。フラグメントとは、塩ストレス及び乾燥ストレスに対する耐性を増加する核酸の分子全体より小さい連続部分を意味する。
【0048】
フラグメント又は分子の機能的特性(すなわち、水ストレス及び塩ストレス耐性を増加すること)に影響を与えることなく、非必須ヌクレオチドをフラグメント(又は塩ストレス及び乾燥ストレスに対する耐性を増加する全長核酸)の5'及び/又は3'末端に置くことができる。例えば、低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸を、低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸の移行を翻訳と同時に又は翻訳後に指示するシグナル(又はリーダー)配列と、低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸のN末端(例えば)で結合させることができる。低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸を、合成、精製、又は同定を容易にするためのリンカー又はその他の配列と結合するよう、ヌクレオチド配列を変えることもできる。
【0049】
トランスジェニック穀類植物の細胞、プロトプラスト、又は植物は、形質転換体の検出を可能とするためのbar遺伝子などの核酸をコードする選択マーカー及びbar遺伝子の発現を制御するためのカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターをコードする核酸で形質転換することもできる。他の選択マーカーには、EPSPS、nptII、又はALSをコードする遺伝子が含まれる。他のプロモーターには、アクチン1、rbcS、ユビキチン、及びPINIIをコードする遺伝子由来のものが含まれる。これらの追加の核酸配列はまた、低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を与える遺伝子をコードするプラスミド及びそのプロモーターによって提供することができる。適切な場合には、多数のプラスミドによる形質転換によって種々の核酸を提供することができるであろう。
【0050】
本明細書中で言及する低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を増加する核酸は、例えば、低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレスに対する耐性を与える遺伝子をコードする一方、低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレス遺伝子に対して以前に配列決定されたヌクレオチドとの同一性は必要ではない。当業者に容易に明らかである通り、沈黙突然変異である(すなわち、特定のコドンによりコードされるアミノ酸が変化しない)種々のヌクレオチド置換が可能である。特定のコドンによりコードされるアミノ酸を変化するヌクレオチドの置換(置換されるアミノ酸は保存的置換である(すなわち、アミノ酸の「相同性」が保存される))も可能である。低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレス遺伝子ヌクレオチド及び/又はコードされる低温ストレス、塩ストレス、及び水ストレス遺伝子の特性、2次構造、及び親水性/疎水性に対して最小の影響を及ぼすアミノ酸配列における軽微なヌクレオチド及び/又はアミノ酸の付加、欠失、及び/又は置換も可能である。これらの変異体は本発明に包含される。
【0051】
実施例
実施例1-イネ形質転換用プラスミド構築体
標準のクローニング及びプラスミド操作手順を用いて、各々がTPSP融合遺伝子を含有する2つのバイナリープラスミドpSB109-TPSP及びpSB-RTSP(Seoら、"Characterization of a Bifunctional Enzyme Fusion of Trehalose-6-Phosphate Synthetase and Trehalose-6-Phosphate Phosphatase of Escherichia coli," Appl. Environ. Microbiol., 66:2484-2490 (2000)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))を、pSB11ベクター(Komariら、"Vectors Carrying Two Separate T-DNAs for Co-Transformation of Higher Plants Mediated by Agrobacterium tumefaciens and Segregation of Transformants Free from Selection Markers," Plant J., 10:165-174 (1996)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))中に構築した。T-DNA内のプラスミドの成分及び選択した制限酵素部位を図1A、B、及びCに示す。pSB109-TPSP中の発現カセットは、最小イネアクチン1プロモーター(0.18kb)及びHVA22イントロン(0.24kb)とカップリングしたABA誘導性エレメントABRC1(0.18kb)の4つのタンデムコピーを含むアブシジン酸(ABA)誘導性プロモーターからなる(Suら、"Dehydration-Stress-Regulated Transgene Expression in Stably Transformed Rice Plants," Plant Physiol., 117:913-922 (1998)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。それは、PCRによってotsA遺伝子の停止コドンが取り除かれ(Seoら、"Characterization of a Bifunctional Enzyme Fusion of Trehalose-6-Phosphate Synthetase and Trehalose-6-Phosphate Phosphatase of Escherichia coli," Appl. Environ. Microbiol., 66: 2484-2490 (2000)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))、次いでジャガイモプロテアーゼインヒビターII遺伝子(pinII)3'非コード配列(1.0 kb)に連結された後に大腸菌由来のotsA及びotsB遺伝子を融合することにより構築されたTPSPコード領域(2.2 kb)に結合される。選択カセットは、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(0.74 kb)、ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(bar、0.59 kb)、及びノパリンシンターゼ遺伝子3'非コード配列(Nos 3'、0.28 kb)を含む。pSB-RTSPでは、クロロプラスト標的輸送ペプチド(0.16 kb)を伴ったイネrbcSプロモーターの1.3 kbフラグメント(Kyozukaら、"Light-Regulated and Cell-Specific Expression of Tomato rbcS-gusA and Rice rbcS-gusA Fusion Genes in Transgenic Rice," Plant Physiol., 102:991-1000 (1993)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))がTPSPコード領域に結合されており、残りの成分は、pSB109-TPSP中のものと同様である。rbcSプロモーター/輸送ペプチド及びTPSP融合遺伝子を含有する約3.7 kbのDNAフラグメントのクローニング及び連結の間、3つの追加の制限部位(SacI、Sa1I、及びHindIII)をTPSP及び3'pinIIの間に付加した。プラスミド(pSB109-TPSP及びpSB-RTSP)の双方を、ヘルパープラスミドpRK2013を用いたトリペアレンタル・メイティング(triparental mating)により、pSB1ベクターを保有するアグロバクテリウム・チュメファシエンス株LBA4404に別々に移行した(Komariら、"Vectors Carrying Two Separate T-DNAs for Co-Transformation of Higher Plants Mediated by Agrobacterium tumefaciens and Segregation of Transformants Free from Selection Markers," Plant J., 10:165-174 (1996)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。共培養のため、細菌を50 mg/リットルのスペクチノマイシンを含有する液体AB培地中で単一コロニーから30℃で3日間増殖させ、イネ形質転換のため、AAM培地中1 mlあたり3×109個の細胞密度で懸濁した(Hieiら、"Efficient Transformation of Rice (Oryza sativa L.) Mediated by Agrobacterium and Sequence Analysis of the Boundaries of the T-DNA," Plant J., 6:271-282 (1994)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。
【0052】
実施例2-トランスジェニックイネ植物の産生
インディカ米変種PB-1の成熟種子を脱殻し、70%(vol/vol)エタノール中で2〜3分間滅菌し、次いで穏やかに振盪しながら50%(vol/vol)クロロックス(Clorox)溶液に40分間移した。種子を滅菌水で数回すすいだ。次いで、滅菌したPB-1種子を3.0 mg/リットルの2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)/0.2 mg/リットルの6-ベンジルアミノプリン(BAP)/300 mg/リットルのカゼイン加水分解物(CH)/30 g/リットルのマルトース/3.0 g/リットルのフィタゲル(phytagel)を補足したムラシゲ・スクーグ(Murashige and Skoog)(MS)培地(pH5.8)(MSC1)(Sigma)上でカルス誘導のために平板培養し、暗所で25℃において21日間成長させた。イネ胚の胚盤領域由来のカルス誘導から3週間後に、150個の胚形成カルスをA.チュメファシエンス懸濁液に10分間浸した。感染したカルスを10 g/リットルのグルコース/100μMのアセトシリンゴンを補足したMSC1培地(MSCC)(pH5.2)中で共培養した。3日間の共培養後、カルスを250 mg/リットルのセフォタキシムを含有する滅菌水で洗浄し、濾紙上でブロッティングした。カルスを6 mg/リットルのビアラホス及び250 mg/リットルのセフォタキシムを含有する選択培地のMSC1培地(MSS)(pH5.8)上で直ぐに平板培養し、暗所で25℃において2〜3週間インキュベーションした。最初の選択後に繁殖した微小カルスを、2つの選択サイクルのために新鮮なMSS培地上で2週毎にさらに継代培養した。活発に分裂しているビアラホス抵抗性カルスを、2.5 mg/リットルのBAP/1.0 mg/リットルのカイネチン/0.5 mg/リットルのナフタレン酢酸(NAA)/300 mg/リットルのCH/30 g/リットルのマルトース/4 mg/リットルのビアラホス/250 mg/リットルのセフォタキシム/2.0 g/リットルのフィタゲルを含有するMS植物再生培地(MSPR)(pH5.8)上で平板培養し、25℃において10時間の明期/14時間の暗期の光周期で3〜4週間成長させた。再生植物を、ヨシダ栄養溶液(Yoshidaら、Laboratory Manual for Physiological Studies of Rice, International Rice Research Institute, Manila, Philippines, pp. 61-66 (1976)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))中で10日間、水耕法により順化した。後に、推定一次形質転換体(T0世代)をポットに移し、バスタ(Basta)除草剤の抵抗性について試験し(Roy and Wu, "Arginine Decarboxylase Transgene Expression and Analysis of Environmental Stress Tolerance in Transgenic Rice," Plant Sci. 160:869-875 (2001)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))、さらなる分析のために、トランスジェニック植物を温室で成長させて成熟させた。
【0053】
実施例3-トランスジェニックイネ植物のDNAブロットハイブリダイゼーション分析
非形質転換対照(NTC)植物由来の葉、並びにプラスミドpSB109-TPSP及びpSB-RTSPでそれぞれ形質転換された9個のA系(ABA誘導性プロモーター)及び5つのR系(rbcSプロモーター)の代表的な(T0)形質転換体を、液体窒素中で乳鉢及び乳棒を用いて磨りつぶした。DNAzolES(Molecular Research Center, Cincinnati)を用いたグアニジン界面活性剤溶解法により、製造者の指示に従い、イネゲノムDNAを単離した。ゲノムDNA5マイクログラムをHindIII制限酵素で一晩消化し、0.8%アガロースゲルを介して分別し、ハイボンド(Hybond)N+ナイロンメンブラン(Amersham Pharmacia)上にアルカリ-トランスファーし、プローブとしてのα-32P標識した2.2kbのTPSP融合遺伝子とハイブリダイゼーションした(Seoら、"Characterization of a Bifunctional Enzyme Fusion of Trehalose-6-Phosphate Synthetase and Trehalose-6-Phosphate Phosphatase of Escherichia coli," Appl. Environ. Microbiol., 66:2484-2490 (2000)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。DNAプローブ調製、ハイブリダイゼーション、及びメンブランの洗浄を記載の通りに行なった(Roy and Wu, "Arginine Decarboxylase Transgene Expression and Analysis of Environmental Stress Tolerance in Transgenic Rice," Plant Sci. 160:869-875 (2001)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。α-32P標識したメンブランをオートラジオグラム上に曝した。
【0054】
実施例4-トレハロース及び可溶性炭水化物の検出
可溶性炭水化物を記載の通りに抽出した(Goddijnら、"Inhibition of Trehalase Activity Enhances Trehalose Accumulation in Transgenic Plants," Plant Physiol., 113:181-190 (1997)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。ホモゲナイズした新鮮な葉組織0.5 g由来の抽出物を遠心分離し(3,220×gで10分間)、上清をDowex50W(水素型))1 ml上に重層したAmberliteIR-68(酢酸型)1 mlを含有するイオン交換カラムに通過させて、荷電した化合物を取り除いた。凍結乾燥後、試料をHPLCグレードの水に溶解し、カルボパック(Carbopac)PA-1分析用カラム及びカルボパック(Carbopac)PA-1ガードカラム(Dionex)を伴うディオネックス(Dionex)DX-500シリーズクロマトグラフを用いることによって、パルス電流滴定検出を伴う高速アニオン交換クロマトグラフィーを施した。炭水化物を、1分あたり1.0 mlの流速において1,400 psiで100 mM NaOHにより34分間溶出した。存在する主な可溶性炭水化物を、信頼できる(authentic)標準糖(Sigma)を用いることにより定量化した。植物抽出物中のトレハロースの同一性を、ブタ腎由来のトレハラーゼ酵素(Sigma)とともに試料をインキュベーションすることによって確認した。
【0055】
実施例5-塩ストレス耐性及び植物無機栄養分の決定
各々T4世代のトランスジェニック系(R22、R38、R80、A05、A07、及びA27)及びNTCの10個の実生を、成長用チャンバー中、25±3℃において、10時間の明期/14時間の暗期の光周期(m/s当たり280μmol光子の光子束密度)にて、50〜60%の相対湿度を用いて、ヨシダ栄養分溶液(Yoshidaら、Laboratory Manual for Physiological Studies of Rice, International Rice Research Institute, Manila, Philippines, pp. 61-66 (1976)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))中で水耕法により成長させた(穏やかに通気する)。5週間後、実生の50%に100 mM NaClのストレス(10〜12 dS/mの導電率)を施した。栄養溶液は毎週取り替えた。4週間の継続的な塩ストレス後、新鮮及び乾燥重量の決定のために苗条及び根試料を別々に回収した。無機栄養分分析のため、磨りつぶした乾燥物150 mgを濃HNO3中で120℃において一晩消化した。次いで、試料を220℃でHNO3:HClO4(1:1、vol/vol)に溶解し、5%(vol/vol)HNO3に再懸濁し、同時誘導結合アルゴン-プラズマ発光分光法(ICP微量成分分析装置;植物、土、及び栄養分実験室(Plant, Soil, and Nutrition Laboratory)、米国農業部門-農業調査サービス(U. S. Department of Agriculture-Agriculture Research Service)、Cornel University, Ithaca, NY)によってナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)、及び鉄(Fe)の元素組成について分析した。
【0056】
実施例6-乾燥及び低温ストレス耐性の決定
乾燥又は低温ストレス実験を行う前に、6つの独立したT4トランスジェニック系及び非形質転換系由来の実生を、ヨシダ栄養分溶液を潅注した10 cm×10 cmのポット中で5週間独立して成長させた。まず3日間潅注を止めてポット中の土を乾燥させることにより乾燥ストレス(水欠乏)を行った。次いで、最初の100時間の乾燥サイクルを開始し、続いて2日間給水した。乾燥ストレスサイクルをさらに100時間繰り返し、3週間毎日給水することにより植物を回復させた。10時間の明期/14時間の暗期の光周期(m/s当たり280μmol光子の光子束密度)及び50〜60%の相対湿度下で10℃に72時間曝すことにより、低温ストレスを5週齢の実生に施した;次いで、25±3℃の通常の成長条件下で実生を回復させた。
【0057】
実施例7-タンパク質抽出及び免疫ブロッティング
タンパク質抽出用緩衝液(20 mM Tris・HCl、pH8.0/10 mM EDTA/30 mM NaCl/2 mM フェニルメタンスルホニルフッ化物、1時間、4℃)中でホモゲナイズした新鮮な葉組織0.2 gからタンパク質を抽出した。ホモジェネートを12,000×gで4℃で15分間の遠心分離によって清澄化した。イムノブロッティング手順は、記載のものと本質的に同じにした(Xuら、"Expression of a Late Embryogenesis Abundant Protein Gene, HVA1, from Barley Confers Tolerance to Water Deficit and Salt Stress in Transgenic Rice," Plant Physiol. 110:249-257 (1996)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。製造者(Bio-Rad)の指示通り、タンパク質検出用にアルカリホスファターゼ発色反応を用いたウエスタンブロット分析用に、抗TPSPタンパク質ポリクローナル抗体を1:1,500稀釈で用いた。
【0058】
実施例8-クロロフィル蛍光パラメーター
記載の通り(Saijoら、"Over-Expression of a Single Ca2+-Dependent Protein Kinase Confers Both Cold and Salt/Drought Tolerance on Rice Plants," Plant J., 23:319-327 (2000)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))、パルス振幅変調蛍光計(FMS2, Hansatech Instruments, Pentney King's Lynn, U.K.)を用いて、Fv/Fm及びφPSIIを測定し、周辺光条件下での光化学系II(PSII)反応中心に対する光酸化損傷及びPSII光化学の量子効率をそれぞれ評価した。最も若くて十分に広がった葉について測定を行った。周辺光下でφPSIIの測定値をまず決定し、次いで、Fv/Fmの測定前に同じ葉を10分間暗闇に順化した。
【0059】
実施例9-トレハロースレベルが増大したトランスジェニックイネ植物は正常な表現型でありかつ稔性である
各々がTPSP融合遺伝子を含有する2つのプラスミド構築体pSB109-TPSP(図1A及びC)及びpSB-RTSP(図1B及びC)を、アグロバクテリウムによって媒介されるアグロバクテリウム媒介遺伝子移行(Hieiら、"Efficient Transformation of Rice (Oryza sativa L.) Mediated by Agrobacterium and Sequence Analysis of the Boundaries of the T-DNA," Plant J., 6:271-282 (1994)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))によってPB-1のインディカ米細胞に導入した。プラスミド構築体pSB109-TPSPでは、ABA及びストレス誘導性プロモーター(Suら、"Dehydration-Stress- Regulated Transgene Expression in Stably Transformed Rice Plants," Plant Physiol., 117:913- 922 (1998)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))が細胞質ゾル発現のための融合遺伝子を駆動する。他方のプラスミドpSB-RTSPでは、輸送ペプチドを有するイネ(Oryza sativa)由来のRubiscoの小サブユニット遺伝子rbcSの光調節プロモーター(Kyozukaら、"Light-Regulated and Cell-Specific Expression of Tomato rbcS-gusA and Rice rbcS-gusA Fusion Genes in Transgenic Rice,"Plant Physio, 102:991-1000 (1993)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))が葉肉細胞中のクロロプラスト標的のための融合遺伝子を駆動する。多数の推定トランスジェニックPB-1植物(T0世代)が再生された(表1);これらの植物は、28A系(ABA誘導性プロモーター)及び76R系(rbcSプロモーター)を含んでいた。
【0060】
(表1)プラスミドpSB109-TPSP及びpSB-RTSP中にTPSP融合遺伝子を含有するアグロバクテリウム・チュメファシエンス株LBA4404(pSB1)を用いたイネ形質転換効率

丸括弧中の数は完全に稔性である植物のパーセンテージを示す。
【0061】
TPSP導入遺伝子の組込みはDNAブロットハイブリダイゼーション分析によって確認した(図1D及びE)。T-DNA接合フラグメント分析に基づき、いずれかのプラスミドで形質転換された約40%のトランスジェニック植物は単一のコピーを保有し、植物の35〜45%は導入遺伝子の2つ又は3つのコピーを保有していた。
【0062】
低コピー数の導入遺伝子を含有する90個の独立した一次形質転換体(T0)のほとんどは正常な表現型を示し、完全に稔性であった。個々のTPS及び/又はTPP遺伝子を駆動する構成プロモーターを用いた従前の報告とは対照的に、この研究におけるストレス誘導性又は組織特異的プロモーターの使用は、植物の成長に対する導入遺伝子の負の効果を最小にするようである。T0植物を自家受粉して、遺伝子及びHPLCの分析用の分離したT1後代を得た。45個のトランスジェニック系は、バスタ除草剤抵抗性マーカー遺伝子について3:1の分離パターンを示した。葉抽出物のHPLC分析によって、トランスジェニック系は、非トランスジェニック植物のトレハロース含量の3倍及び8倍の間のトレハロース含量を有していることが示された(新鮮重量1 gあたりトレハロース17±5μg)。植物組織抽出物中のトレハロースの同一性は、ブタトレハラーゼ中での試料のインキュベーションに続いて単糖産物のクロマトグラフ分析によって確認した(図6)。T2及びT1世代植物が沈黙化されなくても遺伝子サイレンシングがT3世代で起こることが報告されていたので(Iyerら、"Transgene Silencing in Monocots," Plant Mol. Biol., 43:323-346 (2000)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))、T4世代を介したホモ接合性植物に対する非生物的ストレス耐性について生理学的実験を行なった。多くの独立したトランスジェニック系から得られる結果は、多コピーの導入遺伝子を有していたわずかなトランスジェニック系を除き、各世代において塩及び乾燥ストレス耐性について一致した。
【0063】
実施例10-トランスジェニックイネ植物は塩耐性であり、バランスのとれた無機栄養分を維持する
導入遺伝子の1つ又は2つのコピーを有するT4トランスジェニック植物は、4週間の水耕法の成長条件下での100 mM NaCl処理中及びその後に顕著に増大した塩耐性を示した。6つの独立したトランスジェニック植物系(3つのA系及び3つのR系)を詳細に調べた。提示の明確化のため、2つの代表的なトランスジェニック系(R80及びA05)の結果を示す(図2)。他の4つの系の結果は、提示した2つの系のものと非常に類似していた。塩ストレスに長期間曝した後、ほとんどすべてのトランスジェニック植物は生存し、活発な根及び苗条の生長を示した。対照的に、ストレスを受けた非形質転換(NTS)植物はすべて、葉に深刻な塩の損傷があり、かつ、クロロフィルが同時に失われたため、枯れたか、ほとんど枯れた。トランスジェニック植物は、塩ストレス後にNTS植物よりも長く、かつ、より太い根を発達した(図2A)。NTC植物と比較して乾燥重量がより低いことによって示される通り、塩ストレスによってNTS植物の苗条及び根の成長は大きく阻害された。双方のトランスジェニック系の苗条及び根の乾燥重量(図2B)はNTC植物のものと近似し、塩ストレスを取り除いた後には、トランスジェニック植物は成長し、花を咲かせ、正常な生存能力のある種子をつけることができた。塩ストレスを受けた植物中にTPSP遺伝子産物が存在するかを決定するため、葉試料から全タンパク質をウエスタンブロット分析用に単離した。融合タンパク質に対して生じたポリクローナル抗体を用いた免疫ブロット分析によって、トランスジェニック植物中だけに88 KDaと予測される見かけの分子質量を有するタンパク質の存在が示された。(図2C)。
【0064】
トランスジェニックイネ中のトレハロースの蓄積が塩ストレス中に植物無機栄養分に如何にして影響を及ぼすかを決定するため、6個の独立したトランスジェニック系及び2つの非トランスジェニック系の苗条及び根の無機含量を誘導結合プラズマ発光分光法を用いて決定した(表2)。
【0065】
(表2)塩ストレスを受けた又は塩ストレスを受けていないトランスジェニック系(R22、R38、R80A05、A07、及びA27)及び非形質転換対照系の苗条及び根中の植物無機栄養分含量(ナトリウム、カリウム、カルシウム、及び鉄イオン)


イオン濃度はmg/g苗条又は根乾燥重量として表される。値は、平均値±SD(n=5)である。
【0066】
4週間の継続的な塩ストレス(100 mM NaCl)後、NTS植物は、NTCと比較して苗条及び根の双方でNa+含量の非常に大きな増加を示したのに対し、すべてのトランスジェニック植物の苗条の増加は非常に小さかった(図2D)。トランスジェニック植物苗条のNa+含量は、塩ストレス後、NTS植物の30〜35%だけであった。トランスジェニック及びNTS植物の間の苗条Na+含量で観察された相違は、部分的には、塩ストレス下でのトランスジェニック植物の非常により早い成長速度に起因する成長の希釈によって生じ得たのであろう。あるいは、トレハロースは、イオン選択性を維持すること、およびそれにしたがって細胞のNa+除外を促進することにおいて、直接的又は間接的な役割を果たしていたのであろう。この可能性は、塩ストレスを受けたイネ実生において葉組織中のNa+の蓄積は外因性プロリンによって妨げられなかったとの報告と一致する。対照的に、外因性トレハロースによる処理によって、塩誘導される葉中のNa+の蓄積が有意に減少した(Garciaら、"Effects of Osmoprotectants Upon NaCl Stress in Rice," Plant Physiol., 115:159-169 (1997)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。
【0067】
トランスジェニック系R80及びA05は、非ストレス及び塩ストレスの双方の条件下で苗条から根までK+ホメオスタシスを維持した(表2)。塩ストレス後、トランスジェニック植物中の苗条及び根のK+含量のレベルは非ストレス対照と同様であった一方、NTS植物中の根のK+では4倍の減少が見られた(図2E)。したがって、トランスジェニック植物は、NTS植物と比較して、根中でのNa+取り込み及び苗条からのNa+排除より高いレベルのK+に対する選択性を維持することができた。トランスジェニック植物の苗条及び根の双方でのNa+/K+比の維持(図2F)は、ほぼ正常な植物成長と相関していたため、塩ストレス下でのNa+毒性を最小にするための基礎でありうる。Na+/K+ホメオスタシスの維持は、塩耐性の重要な側面であることが一般に容認されている(Rusら、"AtHKTl is a Salt Tolerance Determinant that Controls Na+ Entry into Plant Roots," Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98:14150-14155 (2001) and Epstein, "Plant Biology: How Calcium Enhances Plant Salt Tolerance," Science, 280:1906-1907 (1998)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。
【0068】
NTCと比較して、ストレス耐性における間接的な役割を有していたであろう植物の無機質状態のいくつか他の変化がトランスジェニック系に見られた。塩ストレスによってNTS系での根及び苗条のCa2+含量の有意な増加がもたらされるのに対し、トランスジェニック系では、Naによって媒介されるこのCa2+含量増加は苗条のみで観察され、根では観察されないことが見出された(表2)。このCa2+の上昇は、高濃度Naでの輸送体のイオン選択性の変化によって生じ得る(Epstein, "Plant Biology: How Calcium Enhances Plant Salt Tolerance," Science, 280: 1906-1907 (1998)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。NTCと比較して有意に高いレベルの苗条Feイオン含量もトランスジェニック系で見出された(表2)。Fe、Cu、及びZnイオンは、多くの非生物的ストレス中に反応性酸素種を除去する役割を果たすスーパーオキシドジスムターゼなどの重要な抗酸化酵素の機能に必須であることは十分に証明されている(Epstein, "Plant Biology: How Calcium Enhances Plant Salt Tolerance," Science, 280:1906-1907 (1998), Alscher et al. ,"Role of Superoxide Dismutases (SODs) in Controlling Oxidative Stress in Plants, "J. Exp. Bot., 53:1331-1341 (2002))(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。一般的に、塩ストレス及び植物無機含量の間の関係は複雑であり、塩ストレス中のトレハロース含量の増加及び無機質状態の改善の間の関連は知られていない。
【0069】
実施例11-トランスジェニックイネ植物は水ストレス耐性である
乾燥耐性を研究するため、土中で成長した5週齢の非形質転換及びトランスジェニック実生に100時間の乾燥ストレスを2サイクル施した。乾燥処理後、各系の15個の植物のすべてで、若葉のしおれ及び乾燥により誘導された若葉のロールが示された。トランスジェニック植物では同じ期間中で目に見える症状がほとんどなかったことと比較して、非トランスジェニック植物ではストレスの48時間以内に葉のロールが見られた。2サイクルの100時間の乾燥ストレス及びその後の3週間の給水の後、トランスジェニック系のR80及びA05の双方の成長(図3B)はストレスを受けなかった対照植物とほぼ同一であった(図3A)。対照的に、乾燥ストレスを受けたNTSの成長は大きく阻害された(図3B)。
【0070】
実施例12-トランスジェニックイネ植物は増加した量のトレハロース及びその他の可溶性炭水化物を産生した
植物中のトレハロースの蓄積が、ストレス耐性の正の調節因子として作用するかを評価するために、トレハロース及びその他の可溶性炭水化物のレベルを測定した(表3)。
【0071】
(表3)ストレスがない、塩ストレスを受けた(4週間の100 mM NaCl)、又は乾燥ストレスを受けた(最初の100時間の乾燥ストレスサイクル後)条件下で成長させた非形質転換(NT)及び6つのトランスジェニックイネ系(R22、R38、R80、A05、A07、及びA27)の苗条中のトレハロース、グルコース、フルクトース、スクロース、及び全可溶性炭水化物の含量のレベル

平均値±SD(n=3)を示す。μg/g新鮮重量として表すトレハロースの場合を除き、可溶性炭水化物含量データをmg/g苗条新鮮重量として表す。
【0072】
低量であるが有意な量のトレハロース(17μg/g新鮮重量)がNTC植物の苗条中に検出され、これらのレベルは、塩又は乾燥ストレス下で有意に増加した。対照条件下で成長したトランスジェニック植物は、NTS植物に匹敵するトレハロースレベルを示した(図4)。塩ストレス後には、トランスジェニック系(R80及びA05)はNTS植物と比較して2.5〜3倍高い苗条トレハロースレベルを示したのに対し、乾燥ストレス後には、トランスジェニック系中のトレハロースレベルは3〜9倍増加した(図4)。細胞質ゾル又はクロロプラスト中のトレハロース合成を増加するために操作されたトランスジェニック植物によって示される耐性レベルの類似性にかかわらず、R系では、非常により低いトレハロース濃度において乾燥ストレス中の顕著な保護が示された(表3)。一般的に、評価したトランスジェニック系のうち、トレハロース蓄積及びストレス耐性の間に明らかな関係性はなかった。他方、トランスジェニック系及び非トランスジェニック系の間のトレハロースレベルの相違は、非生物的ストレスに対する耐性の増加と相関していることは明らかである。
【0073】
実施例13-トランスジェニックイネ植物は、改善された光化学系II機能を示す
多くの異なる非生物的ストレス中において、光合成の減少及びその後の反応性酸素種の生成は、植物性能の減少及び光酸化損傷の主な原因であると思われる。インビボクロロフィル蛍光技術を用いることによってPSII光化学(φPSII)の量子収量を決定することにより、乾燥ストレス中の光合成に対するトレハロース蓄積の増加の効果を評価した(Saijoら、"Over-Expression of a Single Ca2+-Dependent Protein Kinase Confers Both Cold and Salt/Drought Tolerance on Rice Plants," Plant J., 23:319-327 (2000)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。φPSIIは、周辺光条件下での植物の光合成性能の測度である。100時間の乾燥ストレスの最初のサイクルの後、NTS植物でのPSII光化学の量子収量は約68%減少したのに対し、2つの最良の性能のトランスジェニック系(R80及びA05)の活性は、非ストレス対照と比較して29〜37%しか減少しなかった(図3C)。同様に、PSIIに対する累積光酸化損傷の測度である蛍光パラメーターFv/Fmの乾燥によって誘導された減少は、NTS植物よりもトランスジェニック系で顕著に小さかった(図3D)。他の独立した実験において、低温ストレス(図7)及び塩ストレスの双方について同様の結果が得られ、光合成能力の維持がこれらのストレスに対する耐性に役割を果たすという一般的な役割を示している。
【0074】
実施例14-トランスジェニックイネ植物は非ストレス条件下で増加した能力を有する
非生物的ストレス条件下での光合成の改善は、光酸化損傷を制限し、かつ、成長の継続を可能とすることが知られており(Owens, "Processing of Excitation Energy by Antenna Pigments," in Photosynthesis and the Environment, Baker, ed., Kluwer, Dordrecht, The Netherlands, pp. 1-23 (1996)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))、図3のデータによって明らかに示唆されている。同じ条件下で、トランスジェニック植物は、グルコース、フルクトース、及びスクロースのレベルのわずかな変化を含め、対応するNTC植物の可溶性炭水化物レベルよりも約20%高い可溶性炭水化物レベルを示した(表3)。これらの結果の双方は、トレハロースが糖感知(sugar sensing)及び炭素代謝の調節に関与することができるとの示唆と一致する(Goddijnら、"Trehalose Metabolism in Plants," Trends Plant Sci., 4:315-319 (1999), Thevelein and Hohmann, "Trehalose Synthase: Guard to the Gate of Glycolysis in Yeast?" Trends Biochem. Sci., 20:3-10 (1995)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)。トレハロースの光合成能調節能力は、大腸菌トレハロース生合成遺伝子を発現するトランスジェニックタバコ植物で最近実証されている(Paulら、"Enhancing Photosynthesis with Sugar Signals," Trends Plant Sci., 6:197-200 (2001)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。TPS発現が増大した植物では、非トランスジェニック対照より高い葉面積単位あたりの光合成が示されたのに対し、TPPを過剰発現している植物では、光合成速度が小さくなったことが示された。これらのデータにより、トレハロースではなくトレハロース-6-Pが光合成能を調節しているとの結論が導かれる((Paulら、"Enhancing Photosynthesis with Sugar Signals," Trends Plant Sci., 6:197-200 (2001)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。
【0075】
図5は、対照(非ストレス)条件下で測定された非トランスジェニックイネ並びにトランスジェニック系R80及びA05についてφPSII測定(Saijoら、"Over-Expression of a Single Ca2+-Dependent Protein Kinase Confers Both Cold and Salt/Drought Tolerance on Rice Plants, Plant J. 23: 319-327 (2000)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))によって決定されたPSII電子伝達率に依存する光強度を示している。制限された光強度では、光合成の違いは小さいものの、トランスジェニック植物での光合成速度はNTCより5〜15%高い。光飽和では、暗反応能力、具体的には、細胞質中でのカルビンサイクル及びトリオースリン酸の利用によって光合成速度が制限される(Owens, "Processing of Excitation Energy by Antenna Pigments," in Photosynthesis and the Environment, Baker, ed., Kluwer, Dordrecht, The Netherlands, pp. 1-23 (1996)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。ストレス及び非ストレスの双方の条件下で観察されたより高いレベルの可溶性炭水化物とともに(表3)、トランスジェニック植物での光飽和光合成のレベルの上昇によって、トレハロースが、植物中で、糖感知の調節因子、およびそれにしたがって炭素代謝に関連する遺伝子の発現の調節因子として作用するとの示唆が裏付けられる(Paulら、"Enhancing Photosynthesis with Sugar Signals, "Trends Plant Sci., 6: 197-200 (2001)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))。ストレス前により高い光合成能が存在することによって、ストレス中に光合成産物用のより大きな光合成産物需要部が提供され、これによって過剰な光によって誘導される光酸化損傷の度合いが制限され、かつ、このことがストレス中にトランスジェニック系がより活発に成長することの一部の原因となる。興味深いことに、TPSP融合遺伝子産物によるトレハロース合成の効率がより高いこと(Seoら、"Characterization of a Bifunctional Enzyme Fusion of Trehalose-6-Phosphate Synthetase and Trehalose-6-Phosphate Phosphatase of Escherichia coli," Appl. Environ. Microbiol, 66:2484-2490 (2000)(参照として全体が本明細書に組み入れられる))は、トレハロース-6-Pではなくトレハロースが光合成能の増大をもたらすことを示唆していると考えられる。
【0076】
実施例15-トランスジェニックコムギ植物の産生
Weeksら、"Rapid Production of Multiple Independent Lines of Fertile Transgenic Wheat (Triticum aestivum), Plant Physiol. 102:1077-1084 (1993)(参照として全体が本明細書に組み入れられる)によって報告されている通り、温室で成長させたコムギ(Triticum aestivum L.)cv. ボブ・ホワイト春コムギ変種から未成熟胚を単離し、ボンバードメント前にMS調整培地中で暗い中で1〜4日間事前培養した。金粒子の調製及びプラスミドDNAによる被覆を製造者の指示に従って行った(Bio-Rad, Hercules, CA, USA)。ボンバードメント前及びボンバードメント後に標的組織の浸透圧処理を行なった。5 mg l-1ビアラホスを補足した同じ培地(Dr.H.Anzaiからの寄贈物、明治製薬会社、日本)上に、ボンバードメントを施した組織を暗所で25℃において4週間置いた。ビアラホス抵抗性カルスを、16時間の光周期(66μmol m-2 s-1)下、25℃で2〜3週間、再生培地(2%スクロース、0.15 mg l-1チジアズロン、及び1 mg l-1ビアラホスを含有するMS培地)に移した。約2週間後、再生した苗条を、上記の光条件下、25℃で2〜4週間、発根培地(半強度MS培地及び2 mg l-1ビアラホス)を含有するマゼンタ(Magenta)(登録商標)ボックス(Sigma, St. Louis, MO, USA)に移した。
【0077】
苗木を発根培地から温室のポッティングミックス(Sunshine mix番号1;Fison's, Canada)に移し、移植後最初の数日間ビーカーで被覆して乾燥を妨げた。温室の昼/夜の温度は、150μmol m-2 s-1の光強度を与える補足光を用いて16時間の光周期下で25±2/19℃とした。一次形質転換体及び後代の除草剤抵抗性を、葉塗布アッセイ及び/又は20%アンモニウムグルホシネートを含有する市販の除草剤グルホシネート(Glufosinate)200(登録商標)(AgrEvo, NJ, USA)の1000倍希釈による噴射によって試験した。
【0078】
実施例16-形質転換されたコムギ植物中のSB109-TPSP及びBar遺伝子の検出
プラスミドpSB109-TPSP(TPSP融合遺伝子を駆動するABAストレス誘導性プロモーターを含有する)を含有する合計35個の推定トランスジェニックコムギ系の再生は成功した。温室中のポットに移した1ヶ月齢の植物を、0.5%バスタ(登録商標)(Hoechst-Roussel Agri-Vet Company, Somerville, NJ)を葉に塗布することによってホスフィノスリシンを基剤とした除草剤の抵抗性について試験した。57%のトランスジェニック植物では、葉は緑のままであって、バスタ除草剤抵抗性を示すが、感受性の高い非トランスジェニック対照植物では、葉は黄色に変わった。TPSP遺伝子の組込みは、PCR分析によって確認した。ゲノムDNAのPCR分析のために、2組のプライマーをTPSP遺伝子から設計した(TPS1/TPS2、TPP1/TPP2)。いずれかのプライマーの組を用いて分析した20個の植物DNA試料のうち、9個の植物で予想されたPCR産物が示され、導入遺伝子の存在が確認された。興味深いことに、トレハロース遺伝子を構成的に発現したときに多数の表現型変化/多面発現効果が観察された双子葉類での他の報告と異なり、ほとんどの一次形質転換体は正常な表現型であるようである。これは、コムギ中のトレハロース生合成遺伝子の制御された発現によるものであろう。
【0079】
実施例17-トランスジェニックコムギ植物は塩ストレス耐性である
TPSP遺伝子を保有するトランスジェニック植物を塩耐性について分析した。長さ0.5 cmの葉セグメントをトランスジェニック植物及び非トランスジェニック植物から切り取り、ディスクの上部表面を溶液と接触させてNaClの異なる溶液(200、400、及び800 mM)上に浮遊し、白色光下で72時間保持した。次いで、葉セグメントを蒸留水ですすぎ、乳棒及び乳鉢によってDMF 1 mlと共に磨りつぶすことによってDMF(N,N'-ジメチルホルムアミド)で抽出した。ホモジェネート及び溶媒を含む洗浄溶液(1ml)を2,500 rpmで10分間遠心分離した。次いで、ペレットを溶媒0.5 mlと共にボルテックスし、プールした上清を最終体積3mlに調整した。664 nm及び647 nmでの葉抽出物の吸収(A)を分光計で測定した。Chl-a、Chl-b、及びChl-a+Chl-b濃度(μg/ml)を以下の等式によって計算した:Chl-a=12.00 A-664マイナス3.11 A-647、Chl-b=20.78 A-664マイナス4.88 A-647、及びChl-a+Chl-b=17.67 A-647+7.12 A-664。
【0080】
結果により、TPSP遺伝子を発現する植物由来の葉セグメントは、有意な退色がほとんどまたは全くなく、NaClに対する耐性を表わすのに対し、野生型の葉セグメントは、激しい退色を表わすことが示された。次いで、塩処理していない対照試料及び72時間のNaCl処理後の試料からクロロフィルを単離した。塩処理していない植物中のクロロフィル含量を決定し、100と設定した。結果により、非トランスジェニック対照植物では、クロロフィル含量が400 mMの塩で約15%減少し、800 mMのNaClで25%減少したことが示された。対照的に、トランスジェニック系の場合、塩ストレス後のクロロフィル含量は塩ストレスがないときのクロロフィル含量とほとんど同じであった。
【0081】
実施例18-トランスジェニックコムギ植物は水ストレス耐性である
葉試料の浸漬後に溶液の電解質導電率を測定することにより、水ストレス耐性について試験を行なった。葉セグメントを植物から切り出した。2つの非トランスジェニック植物の各々及び4つのトランスジェニック植物の各々由来の二つ組の試料(それぞれ5 mg)を植物から切除した。葉試料を直径9 cmのペトリ皿中の乾燥濾紙上に置き、層流フード内部で乾燥させた。6時間後、試料を蒸留水2mlを含有する異なる試験管に移した。試験管を5分間隔で60 psiの真空に3回施し、葉の表面に付着した空気の泡を取り除いた。次いで、管を傾斜位置にして300 rpmで2時間振盪した。振盪後、導電率計測器(VWR International, West Chester, PA)を用いて溶液の導電率を測定した。
【0082】
これらの結果により、非トランスジェニック植物由来の葉の浸漬に用いた溶液の導電率は5,400μmho/mg葉であったのに対し、異なるトランスジェニック系由来のものは3,100及び3,700μmho/mg葉の間であったことが示された。これらの結果により、トランスジェニック植由来の葉は乾燥による損傷が少ないことが示された。言い換えれば、トランスジェニック植物由来の葉は水ストレスにより耐性である。
【0083】
本発明を例示の目的で詳細記載したが、そのような詳細はその目的のためだけのものであって、特許請求の範囲で定義された本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者によってそれに変更を加えることができると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1A〜Eは、発現ベクター及びDNAブロットハイブリダイゼーション分析を図示したものを示している。大腸菌otsA及びotsB遺伝子(それぞれTPS及びTPPをコードする)のコード領域を含むトレハロース生合成融合遺伝子(TPSP)を各々が含有する2つのバイナリープラスミドを構築し、インディカ米に形質転換した。図1Aは、pSB109-TPSPプラスミドを示している。図1Bは、pSB-RTSPプラスミドを示している。影付きのボックスは、プロモーターエレメント(ABA、ABA誘導性;rbcS、イネrbcS;35S、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター)を表し;RB及びLBはそれぞれ右側及び左側のT-DNA境界を表す。図1Cは、いくつかの制限エンドヌクレオチド部位を含むpSB109-TPSP及びpSB-RTSPをより詳細に図示したものを示している。図1は、非形質転換対照(NTC)植物、並びにそれぞれプラスミドpSB109-TPSP及びpSB-RTSPで形質転換された9つのA系(図1D)及び5つのR系(図1E)の代表的なトランスジェニック植物のDNAブロットハイブリダイゼーション分析を示している。イネゲノムDNAをHindIIIで消化し(プラスミドpSB109-TPSP中には単一の部位が存在し、プラスミドpSB-RTSP中には2つの部位が存在する)、2.2 kbのTPSP融合遺伝子をプローブとして用いて、DNAブロットハイブリダイゼーション分析を行った。分子量(kb)を示す。
【図2】図2A〜Fは、イネ植物の塩耐性及び塩ストレスにより引き起こされる無機栄養分の変化を示している。図2Aは、4週間にわたる継続的な100 mM NaClストレス後の植物の根を示している;NTCでは、植物はストレスを受けていない。図2Bは、塩ストレス(NTS、R80、及びA05)又はストレスのない(NTC)条件下で成長した植物の苗条(黒色のバー)及び根(白色のバー)の乾燥重量を示している。図2Cは、植物の塩ストレス直後の葉抽出物(タンパク質20μg)のウエスタンブロットを示している。(図2D〜F)は、塩ストレス(NTS、R80、及びA05)又はストレスのない(NTC)条件下での苗条(黒色のバー)及び根(白色のバー)中の植物無機栄養分の含量を示している。図2Dは、Na+を示している。図2Eは、K+を示している。図2Fは、Na+/K+比を示している。イオン濃度をmg/g乾燥重量で表す。値は平均値±SD(n=5)である。
【図3】図3A〜Dは、乾燥ストレス中の植物の外観及びクロロフィル蛍光パラメーターを示している。土中で成長した5週齢の非形質転換及びT4世代トランスジェニック(R80及びA05)の実生に、2サイクルの100時間の乾燥ストレスに続いて3週間給水を施した。図3Aは、給水条件下で成長した植物(NTC、非トランスジェニック植物)を示している。図3Bは、2サイクルの乾燥ストレス処理後の同じ齢の植物(NTS、乾燥ストレス後の非トランスジェニック植物)を示している。図3C及びDは、100時間の継続的な乾燥ストレスの最初のサイクル中の若くて十分に広がった葉についてのクロロフィル蛍光測定を示している。図3Cは、周囲成長条件下でのPSII光化学効率の測度(measure)であるφPSIIを示している。図3Dは、Fv/Fmの減少がPSIIに対する光酸化損傷の測度であることを示している。▲、非形質転換植物;■、R80;●、A05。点線は、ストレスを受けていない対照植物のすべての系についての値の範囲を表す。データは、独立した植物から得た平均値±SD(n=5)を表す。
【図4】ストレスあり又はストレスなしのトランスジェニック植物(R80及びA05)及び非トランスジェニック植物の苗条中のトレハロース含量を示している。ストレスを受けていない(白色のバー)、塩ストレスを受けた(4週間の100 mM NaCl、斜線のバー)、又は乾燥ストレスを受けた(100時間、黒色のバー)条件下でのトレハロースの蓄積。
【図5】制御条件下で成長させた非形質転換植物及び2つの独立した5世代のトランスジェニック植物における光化学系II電子伝達率を示している。放射照度の増加下での電子伝達率を、成長10週後に、360 ppmのCO2、25℃、及び50%相対湿度でのNTC(▲)、R80(■)、及びA05(●)の最も若くて十分に広がった葉に対するクロロフィル蛍光測定から計算した。値は、平均値±SD(n=9)である。データは、非トランスジェニック対照植物の平均の光飽和率に対して規格化した。
【図6】図6A及びBは、トランスジェニックイネ系でのトレハロース蓄積のパルス電流滴定検出(HPAEC-PAD)分析を伴った高速アニオン交換クロマトグラフィーを示している。図6Aでは、クロマトグラムはトランスジェニック系A05の葉組織抽出物由来のPAD応答プロフィールを示している。図6Bで、クロマトグラムは同じ試料のトレハラーゼ酵素による消化後のPAD応答プロフィールを示している。矢印は、トレハロースのピークを示している。
【図7】図7A及びBはそれぞれ、低温ストレス中の光化学系II(φpsII)の活性及び可変蛍光収量と最大蛍光収量との比(Fv/Fm)の変化を示している。5週齢の非形質転換及びT4世代トランスジェニック系(R22、R38、R80、A05、A07、及びA27)の実生を、10時間の明期/14時間の暗期の光周期(280μmol光子m-2 s-1の光子束密度)及び50〜60%の相対湿度の下で10℃に72時間曝し、次いで25±3℃で24時間の通常の成長条件下で回復させた。低温ストレス中及び低温ストレス後に、φpsIIの活性及びFv/Fmを異なる時間間隔でモニタリングした。データは、独立した植物から得た平均値±SD(n=5)を表す。図7Aは、Fv/Fmを示している。図7Bは、φpsIIを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導性プロモーターの制御下で、低温ストレス、塩ストレス、又は水ストレス耐性を植物に与える、トレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸で形質転換されたトランスジェニック単子葉植物。
【請求項2】
イネ、コムギ、トウモロコシ(コーン)、オオムギ、オートムギ、ライムギ、キビ、及びモロコシから成る群より選択される、請求項1記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項3】
イネ植物である、請求項2記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項4】
コムギ植物である、請求項2記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項5】
トレハロースを生合成するための酵素が、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼである、請求項1記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項6】
トレハロース-6-ホスフェートシンターゼが、大腸菌(E. coli)otsA遺伝子によりコードされる、請求項5記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項7】
トレハロースを生合成するための酵素が、トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼである、請求項1記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項8】
トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼが、大腸菌otsB遺伝子によりコードされる、請求項7記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項9】
トレハロースを生合成するための酵素をコードする第2の核酸でさらに形質転換された、請求項1記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項10】
トレハロース-6-ホスフェートシンターゼ/トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼ融合遺伝子で形質転換された、請求項1記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項11】
誘導性プロモーターが、ストレス誘導性プロモーター又は光誘導性プロモーターである、請求項1記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項12】
誘導性プロモーターが、ストレス誘導性及びアブシジン酸誘導性プロモーターである、請求項11記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項13】
誘導性プロモーターが、光誘導性RbcSプロモーターである、請求項11記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項14】
トランスジェニック単子葉植物が、選択マーカーをコードする核酸を含む、請求項1記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項15】
請求項1記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項16】
発芽したときに、請求項1記載のトランスジェニック単子葉植物を産生する種子。
【請求項17】
誘導性プロモーターの制御下で、単子葉植物細胞又はプロトプラストから再生された単子葉植物に低温ストレス、塩ストレス、又は水ストレス耐性を与える、トレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸で形質転換された単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項18】
イネ、コムギ、トウモロコシ(コーン)、オオムギ、オートムギ、ライムギ、キビ、及びモロコシから成る群より選択される植物に由来する、請求項17記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項19】
イネ植物に由来する、請求項18記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項20】
コムギ植物に由来する、請求項18記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項21】
トレハロースを生合成するための酵素が、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼである、請求項17記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項22】
トレハロース-6-ホスフェートシンターゼが、大腸菌otsA遺伝子によりコードされる、請求項21記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項23】
トレハロースを生合成するための酵素が、トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼである、請求項17記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項24】
トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼが、大腸菌otsB遺伝子によりコードされる、請求項23記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項25】
トレハロースを生合成するための酵素をコードする第2の核酸でさらに形質転換された、請求項17記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項26】
トレハロース-6-ホスフェートシンターゼ/トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼ融合遺伝子で形質転換された、請求項17記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項27】
誘導性プロモーターが、ストレス誘導性プロモーター又は光誘導性プロモーターである、請求項17記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項28】
プロモーターが、ストレス誘導性及びアブシジン酸誘導性プロモーターである、請求項27記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項29】
プロモーターが、光誘導性RbcSプロモーターである、請求項27記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項30】
選択マーカーをコードする核酸を含む、請求項17記載の単子葉植物細胞又はプロトプラスト。
【請求項31】
請求項17記載の単子葉植物細胞又はプロトプラストから再生されたトランスジェニック単子葉植物。
【請求項32】
イネ植物である、請求項31記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項33】
コムギ植物である、請求項31記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項34】
請求項31記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項35】
トランスジェニック単子葉植物がイネ植物である、請求項34記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項36】
トランスジェニック単子葉植物がコムギ植物である、請求項34記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項37】
請求項25記載の単子葉植物細胞又はプロトプラストから再生されたトランスジェニック単子葉植物。
【請求項38】
イネ植物である、請求項37記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項39】
コムギ植物である、請求項37記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項40】
請求項37記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項41】
トランスジェニック単子葉植物がイネ植物である、請求項40記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項42】
トランスジェニック単子葉植物がコムギ植物である、請求項40記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項43】
請求項26記載の単子葉植物細胞又はプロトプラストから再生されたトランスジェニック単子葉植物。
【請求項44】
イネ植物である、請求項43記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項45】
コムギ植物である、請求項43記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項46】
請求項43記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項47】
トランスジェニック単子葉植物が、イネ植物である、請求項46記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項48】
トランスジェニック単子葉植物が、コムギ植物である、請求項46記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項49】
低温ストレス、水ストレス、又は塩ストレス耐性を単子葉植物に与える方法であって、
単子葉植物細胞又はプロトプラストから産生される単子葉植物に低温ストレス、塩ストレス、又は水ストレス耐性を与えるのに有効な条件下で、トレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸で単子葉植物細胞又はプロトプラストを形質転換する段階
を含む方法。
【請求項50】
単子葉植物細胞又はプロトプラストが、イネ、コムギ、トウモロコシ(コーン)、オオムギ、オートムギ、ライムギ、キビ、及びモロコシから成る群より選択される植物に由来する、請求項49記載の方法。
【請求項51】
単子葉植物細胞又はプロトプラストが、イネ植物に由来する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
単子葉植物細胞又はプロトプラストが、コムギ植物に由来する、請求項50記載の方法。
【請求項53】
トレハロースを生合成するための酵素が、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼである、請求項49記載の方法。
【請求項54】
トレハロース-6-ホスフェートシンターゼが、大腸菌otsA遺伝子によりコードされる、請求項53記載の方法。
【請求項55】
トレハロースを生合成するための酵素が、トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼである、請求項49記載の方法。
【請求項56】
トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼが、大腸菌otsB遺伝子によりコードされる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
単子葉植物細胞又はプロトプラストを、トレハロースを生合成するための酵素をコードする第2の核酸で形質転換する段階をさらに含む、請求項49記載の方法。
【請求項58】
単子葉植物細胞又はプロトプラストが、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼ/トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼ融合遺伝子で形質転換される、請求項49記載の方法。
【請求項59】
形質転換する段階が、
粒子が細胞内部を貫通するのに有効な条件下で粒子を単子葉植物細胞に噴射する段階;及び
トレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸を含むプラスミドを細胞内部に導入する段階
を含む、請求項49記載の方法。
【請求項60】
プラスミドが、粒子に付随することによって、プラスミドが粒子と共に細胞又はプロトプラスト内部に運ばれる、請求項59記載の方法。
【請求項61】
形質転換する段階が、
トレハロースを生合成するための酵素をコードする核酸を含むプラスミドで形質転換されたアグロバクテリウム属細菌の接種材料に単子葉植物の組織を接触させる段階
を含む、請求項49記載の方法。
【請求項62】
形質転換された単子葉植物細胞又はプロトプラストを再生してトランスジェニック単子葉植物を形成する段階をさらに含む、請求項49記載の方法。
【請求項63】
請求項62記載の方法により産生されたトランスジェニック単子葉植物。
【請求項64】
請求項63記載のトランスジェニック単子葉植物により産生された種子。
【請求項65】
低温ストレス、塩ストレス、又は水ストレス条件に対する単子葉植物の耐性を増加させる方法であって、単子葉植物中のトレハロースを生合成するための酵素のレベルを増加させる段階を含む、方法。
【請求項66】
単子葉植物が、イネ、コムギ、トウモロコシ(コーン)、オオムギ、オートムギ、ライムギ、キビ、及びモロコシから成る群より選択される、請求項65記載の方法。
【請求項67】
単子葉植物がイネ植物である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
単子葉植物がコムギ植物である、請求項66記載の方法。
【請求項69】
トレハロースを生合成するための酵素が、トレハロース-6-ホスフェートシンターゼである、請求項65記載の方法。
【請求項70】
トレハロース-6-ホスフェートシンターゼが、大腸菌otsA遺伝子によりコードされる、請求項69記載の方法。
【請求項71】
トレハロースを生合成するための酵素が、トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼである、請求項65記載の方法。
【請求項72】
トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼが、大腸菌otsB遺伝子によりコードされる、請求項71記載の方法。
【請求項73】
低温ストレス、塩ストレス、又は水ストレス耐性を単子葉植物に与えるプラスミドで形質転換されたトランスジェニック単子葉植物であって、プラスミドが、
トレハロース-6-ホスフェートシンターゼをコードする第1の核酸;
該第1の核酸の5'に位置し、かつ、該第1の核酸の発現を制御する第1の誘導性プロモーター;及び
該第1の核酸の3'に位置する第1の終結配列
を含む、トランスジェニック単子葉植物。
【請求項74】
プラスミドが、トレハロース-6-ホスフェートホスファターゼをコードする第2の核酸をさらに含み、該第2の核酸が、該第2の核酸の発現を制御する第1の誘導性プロモーターの3'に位置し、第1の核酸の3'に位置し、かつ、第1の終結配列の5'に位置する、請求項73記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項75】
第2の核酸が、第1の核酸と融合され、第1の誘導性プロモーターの制御下で同時発現する、請求項74記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項76】
プラスミドが、
選択マーカーをコードし、第1の終結配列の3'に位置する第3の核酸;
第3の核酸の5'および第1の終結配列の3'に位置し、第3の核酸の発現を制御する、第2のプロモーター;ならびに
第3の核酸の3'に位置する第2の終結配列
をさらに含む、請求項73記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項77】
誘導性プロモーターが、ストレス誘導性プロモーター又は光誘導性プロモーターである、請求項73記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項78】
プロモーターが、ストレス誘導性及びアブシジン酸誘導性プロモーターである、請求項77記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項79】
プロモーターが、光誘導性RbcSプロモーターである、請求項77記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項80】
プラスミドが、pSB109-TPSPと命名されている、請求項76記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項81】
プラスミドが、pSB-RTSPと命名されている、請求項76記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項82】
誘導性プロモーターが、ストレス誘導性及びアブシジン酸誘導性プロモーターである、請求項80記載のトランスジェニック単子葉植物。
【請求項83】
プロモーターが光誘導性RbcSプロモーターである、請求項81記載のトランスジェニック単子葉植物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−505279(P2006−505279A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551741(P2004−551741)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/035233
【国際公開番号】WO2004/044143
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(504311394)コーネル リサーチ ファンデーション, インコーポレーティッド (4)
【出願人】(505167129)グリーンジェン バイオテック インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】