TRAILセンシタイザー標的遺伝子であるTIP41の発現または活性を抑制するための抑制剤を含有するTRAIL感受性増進用組成物
本発明は、TIP41タンパク質の発現または活性を抑制するための抑制剤を含むTRAIL感受性増進用組成物に関するものである。より詳細には、TRAIL耐性を有する肝細胞癌細胞株をTIP41 siRNAとTRAILで処理した時、癌細胞特異的アポトーシスが誘導され、TRAIL耐性を有する肝癌のみならず肺癌及び結腸直腸癌でも、アポトーシスが誘導されることを明らかにし、かつ動物実験を通じて腫瘍のサイズが減少し、癌細胞アポトーシスが誘導され、このように誘導されたアポトーシスがTIP41発現抑制によるMKK7/JNK伝達経路の活性化に起因することを明らかにした。そのため、TIP41タンパク質の発現または活性を抑制するための抑制剤を含有する組成物を癌の予防及び治療においてまたは抗癌補助制として有用に使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TIP41の発現または活性抑制剤を含有するTRAIL感受性増進用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌は、人類の健康を脅かす最大の疾病の1つであり、細胞株が一連の突然変異過程を経て、無制限に非調整的な方法で増殖し、不死化して発生する疾病である。癌の発生の原因としては、化学物質、ウイルス、細菌、電離放射線などの環境または外的な要因と先天性の遺伝子突然変異等の内的な要因を挙げることができる(Klaunig&Kamendulis,Annu Rev Pharmacol Toxicol.,2004年、第44巻、p.239−267(非特許文献1))。
【0003】
初期に発見された癌の場合は、手術、放射線療法、化学療法などの治療法があるが、その副作用もまた大きな問題であり、末期癌や転移した癌の場合は、特別な治療法はなく、時限付で人生を終えるような状況である。また、癌に関連する多様な生化学的機序が解明され、それによる治療剤が開発されてきていますが、まだ癌に対する根本的な治療方法は解明されていない。
【0004】
TRAIL(TNF related apoptosis inducing ligand)は、腫瘍壊死因子(TNF)に属するサイトカインで、細胞死受容体経路(death receptor pathway)を活性化させることによってアポトーシスを誘導するリガンドである。TRAILは、4つの受容体を有していて、その中で細胞死受容体4/5(death receptor 4/5、DR4/5)は、癌細胞株で、デコイ受容体(decoy receptor 1/2、DcR1/2)は、正常な細胞株で過発現することが知られている。デコイ受容体の場合は、c−ターミナル末端に細胞死ドメインを有しておらず、アポトーシス信号伝達が細胞内に伝えられない。したがって、TRAILをベースとする治療法は、正常細胞株には副作用がない次世代の抗癌治療法として注目されている。
【0005】
現在までに報告されている多くの抗癌剤や癌阻害剤は、非特異性による正常組織への深刻な副作用、高い突然変異率による癌細胞株の耐性獲得などの問題点を有している。しかし、1997年にTRAILが正常な細胞には活性せず、癌細胞株にのみに作用してアポトーシスを誘導することが発見されて以来、TRAILは、癌細胞株特異的抗癌剤であるのみならず、既存の抗癌薬に対して抵抗性を獲得した癌細胞株の治療剤としての可能性が浮上してきた。しかし、乳癌、前立腺癌、子宮癌、肺癌、肝癌、脳腫瘍などの癌では、TRAIL耐性が現れていて、TRAILを癌細胞株に持続的に処理すると、TRAILに感受性を示していた癌細胞株も、だんだんTRAILに対して耐性を有するようになることが明らかになった。
【0006】
TRAIL耐性の機序は、デコイ受容体1と2の過発現などによる細胞死受容体4/5の作用阻害、細胞内アポトーシス信号伝達の阻害等が予想され、その中でも、細胞内信号伝達体系の変化による耐性の獲得が、より説得力のある機序として認識されている。これらの信号伝達体系の変化は、アポトーシス促進タンパク質(proapoptotic protein)の作用を阻害する抗アポトーシスタンパク質(antiapoptotic protein)の過発現が主な原因として報告された。これにより、新規TRAILの耐性を克服する治療法の発掘によってTRAIL耐性が克服され、癌細胞株特異的アポトーシスを増進させるTRAILセンシタイザー(sensitizer)の開発は必須的に求められる研究分野である。
【0007】
癌だけでなく、TRAILが媒介したアポトーシス経路が、リウマチ性関節炎、糖尿病性腎疾患、退行性脳疾患の疾病において重要な役割を果たすことが知られている(大韓リウマチ会誌Vol.12, No.2,2005年、6月(非特許文献2)、J AM Sco Nephrol,2008年、第19巻、p.904−914(非特許文献3)、Cell Death Differ.2003年1月、第10(1)巻、p.134−41(非特許文献4))。自己免疫疾患の一種である関節炎などにおいて、過多に活性化した免疫細胞の死滅を誘導し、病状の緩和と治療のためにTRAILを用いる多様な試みが行なわれている。したがって、TRAILは、前記の様々な癌の治療のみならず、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、関節リウマチ、1型糖尿病などのT細胞起因性の自己免疫疾患の治療等にも有用に用いることができる。
【0008】
TIP41遺伝子は、TIPRL(TOR signalling pathway regulator−like)とも呼ばれ、酵母から初めて分離された。TIP41タンパク質は、酵母でTAP42タンパク質と相互作用することにより、ラパマイシンに反応するTOR信号伝達体系を陰性的に調節することが知られている(Jacinto Eら,Mol cell、2001年、第8(5)巻、p.1017−26(非特許文献5))。ヒトのTIP41遺伝子は、酵母のTIP41遺伝子と37%の相同性を有し、NF−κ(kappa)B信号伝達体系とMAPK信号伝達体系を活性化することが知られている(Matsuda Aら,Oncogene,2003年、第22(21)巻、p.3307−3318(非特許文献6))。ヒトのTIP41遺伝子の機能は、酵母で表れるTIP41遺伝子の機能とは異なり、細胞株の増殖を活性化すると予想されるが、今までヒトのTIP41遺伝子の機能として報告された中で、肝癌や胃癌または癌の発生などと関連しては、いかなる報告もないのが実情である。
【0009】
それで、本発明者らは、従来のTRAIL耐性を示す肝癌細胞株にTIP41 siRNA(small interfering RNA)を処理して、TIP41の発現を抑制した後、TRAILを処理した時、癌細胞株の特異的アポトーシスが誘導され、それが肝癌のみならず、TRAILに対する耐性を有する肺癌と大腸癌でもアポトーシスが観察され、腫瘍を移植したマウスにTIP41 siRNAとTRAILを注入した時、腫瘍のサイズが減少、および癌細胞の死滅を誘導する効果を確認することによって、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Klaunig&Kamendulis,Annu Rev Pharmacol Toxicol.,2004年、第44巻、p.239−267
【非特許文献2】大韓リウマチ会誌Vol.12, No.2,2005年、6月
【非特許文献3】J AM Sco Nephrol,2008年、第19巻、p.904−914
【非特許文献4】Cell Death Differ.2003年1月、第10(1)巻、p.134−41
【非特許文献5】Jacinto Eら,Mol cell、2001年、第8(5)巻、p.1017−26
【非特許文献6】Matsuda Aら,Oncogene,2003年、第22(21)巻、p.3307−3318
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有する、TRAIL感受性増進用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有する、TRAIL感受性の増進用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、TIP41タンパク質の発現や活性抑制剤を含有する、抗癌補助剤(補助剤)を提供する。
【0014】
また、本発明は、本発明の抗癌補助剤を含む癌の治療または予防用組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、癌の予防や治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤をTRAIL媒介アポトーシスと関連した疾病にかかった個体に投与する工程を含む、TRAILに対する感受性を改善する方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を投与するための工程を含む、癌の予防方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を抗癌補助として、癌にかかった個体に投与する工程を含む、癌の治療方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、TRAIL媒介アポトーシスと関連する疾病の治療時にTRAIL感受性増進のために使用するための、TIP41の発現または活性抑制剤を提供する。
【0020】
また、本発明は、抗癌補助剤として使用するためのTIP41の発現または活性抑制剤を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のTRAIL耐性を示す肝癌細胞株にTIP41 siRNAを処理し、その発現を抑制した後、TRAILを処理した時、癌細胞株特異的アポトーシスが誘導され、肝癌のみならず、TRAILの耐性を有する肺癌、大腸癌にも効果が観察され、腫瘍を移植したマウスにTIP41 siRNAとTRAILを投与した時、腫瘍のサイズが減少して、癌細胞株の死滅を誘導する効果を有するので、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有するTRAIL感受性増進用組成物または抗癌補助剤として有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、肝癌組織におけるTIP41の発現増加様相とHuh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを処理してTIP41発現抑制を確認した図。図1のAは、肝癌組織に発現するTIP41を示した図。図1のBは、肝癌組織(HBV感染または非感染肝癌組織)とそれに隣接した正常組織におけるTIP41の発現量をウエスタンブロットを用いて示した図。図1のCは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した時のTIP41タンパク質の発現抑制を示した図。Si−cont:対照群siRNA、およびsi−TIP41:TIP41 siRNA。
【図2】図2は、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後に誘導されるアポトーシスを確認した図。図2のAは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後、アポトーシスを核染色法を用いて確認した図。Si−cont:対照群siRNA、si−1017:TIP41 siRNA。図2のBは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを時間帯別に処理した後、アネキシンV−FITc/PI染色法を用いたFACS分析した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図2のCは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを濃度別に処理した後、アネキシンV−FITc/PI染色法を用いたFACS分析した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。
【図3】図3は、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後、アポトーシスに関与するタンパク質の発現を確認した図。図3のAは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後、カスパーゼ(Casepase)−3、−8、−9、PARPの活性を確認した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図3のBは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後、シトクロムC(Cytochrome C)が細胞質(cytosol)に放出されることを確認した図。Si−cont:対照群siRNA、およびsi−TIP41:TIP41 siRNA。
【図4】図4は、TIP41 siRNAとTRAILを処理したHuh7肝癌細胞株のアポトーシス経路でJNK伝達経路の関連性を確認した図。図4のAは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを時間帯別に処理した後、JNKの活性化を確認した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図4のBは、TIP41 siRNAとTRAILを処理したHuh7肝癌細胞株でのJNK阻害剤によるアポトーシスの減少を示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。ビヒクル(Vehicle):0.3%ジメチルスルホキシド(DMSO)、SP600125:JNK阻害薬。
【図5】図5は、Huh7肝癌細胞株でTIP41 siRNAとTRAILで誘導されるアポトーシスがp53伝達経路非依存的な信号経路であることを示した図。図5のAは、Huh7肝癌細胞株でTIP41 siRNAとTRAILで誘導されるアポトーシスがp53伝達経路非依存的な信号経路であることを示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図5のBは、p53細胞株(ヌル細胞(null cell))にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAIL処理によるアポトーシスがp53とは無関係に誘導されることを確認した図。
【図6】図6は、TIP41のタンパク質の発現抑制とTRAIL受容体との関係を示した図。図6のAは、細胞株別TRAIL受容体の発現を示した図。図6のBは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後、TRAIL受容体の発現を示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図6のCは、肝癌の段階別の臨床組織でのTRAIL受容体の発現を示した図。
【図7】図7は、正常細胞株であるHAECにTIP41 siRNAとTRAILによってアポトーシスが誘導されていないことを示した図。図7のAは、正常細胞株であるHAECにTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを時間帯別に処理した後に誘導されるアポトーシスを示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA、Human Aortic Endothelial cell:ヒト大動脈内皮細胞株。図7のBは、正常細胞株であるHAECにTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを処理した後、アポトーシスに関与するアポトーシス促進性(pro−apoptotic)タンパク質の活性を確認した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。
【図8A】図8は、TIP41のタンパク質発現抑制後、TRAILを処理した肺癌、大腸癌細胞で増加することを示した図。図8AのAは、A549肺癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせることにより、TRAILを時間別に処理した後、カスパーゼ−3、−8、−9およびPARPの活性を確認した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図8AのBは、HCT116大腸癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを濃度別に処理した後に誘導されるアポトーシスが、対照群siRNAに比べて増加していることを示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。
【図8B】図8は、TIP41のタンパク質発現抑制後、TRAILを処理した肺癌、大腸癌細胞で増加することを示した図。図8Bは、肺癌細胞株で細胞株の染色分析(8BのA)とFACS分析(8BのB、およびC)を通じて、TIP41 siRNAがTRAIL感受性を増大させ癌細胞の死滅を増加させる結果を示した図。
【図8C】図8は、TIP41のタンパク質発現抑制後、TRAILを処理した肺癌、大腸癌細胞で増加することを示した図。図8Cは、多様な肝癌細胞株でTIP41 siRNAがTRAIL感受性を増大させ、癌細胞の死滅を増加させる効果を確認した図。
【図9A】図9は、動物実験によるTIP41 siRNAの機能を検証した図。図9Aは、ヌードマウスに腫瘍を移植して、TIP41 siRNAとTRAILを注入した後、腫瘍のサイズが減少することを示した図とグラフ。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。
【図9B】図9は、動物実験によるTIP41 siRNAの機能を検証した図。図9Bは、ヌードマウスの腫瘍を染色によって、アポトーシスを示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。
【図9C】図9は、動物実験によるTIP41 siRNAの機能を検証した図。図9Cは、ヌードマウスの腫瘍の溶解物からアポトーシスに関与しているカスパーゼ−8タンパク質の活性をウエスタンブロットで示した図。
【図10】図10は、TIP41とPP2Acとの相互作用を確認した図。図10のAは、PP2Acを過発現させた後、TIP41とPP2Acとの相互作用を確認したウエスタンブロット結果の分析図。図10のBは、TIP41とPP2Ac複合体間、およびTIP41とMKK7間の相互作用を確認した図。
【図11】図11は、TIP41とPP2Ac複合体とMKK7間の相互作用を確認した図。図11のAは、MKK7を過発現させた後、TIP41とPP2Ac複合体およびMKK7間の相互作用を確認した図。図11のBは、免疫沈降法を用いた、TIP41とPP2Ac複合体およびMKK7間の相互作用を確認した図。図11のCは、試験管内GST免疫沈降法を用いた、TIP41とPP2Ac複合体およびMKK7間の相互作用を確認した図。
【図12】図12は、MKK7と相互作用するTIP41の結合部位を確認した図。図12のAは、MKK7と相互作用するTIP41の結合部位を確認するために制作されたTIP41の断片を示した図。図12のBは、MKK7と相互作用するTIP41の結合部位をウエスタンブロットを通じて示した図。
【図13】図13は、TIP41と相互作用するMKK7の結合部位を確認した図。図13のAは、TIP41と相互作用するMKK7の結合部位を確認するために制作されたMKK7の断片を示した図。図13のBは、TIP41と相互作用するMKK7の結合部位をウエスタンブロットを通じて示した図。
【図14】図14は、TIP41と相互作用するMKK7によるアポトーシス経路を確認した図。図14のAは、MKK7発現抑制後に減少するアポトーシスの減少を確認した図。図14のBは、TIP41発現抑制後、MKK7/JNK経路の活性化を示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−MKK7:MKK7 siRNA。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明は、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有するTRAIL感受性増進用組成物を提供する。
【0025】
前記のTIP41タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を特徴とすることが好ましいが、これに限定されない。
【0026】
前記のTIP41タンパク質発現または活性阻害剤は、TRAILセンシタイザー(sensitizer)であることが好ましいが、これに限定されない。
【0027】
前記のTIP41タンパク質の発現抑制剤は、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNA(short interfering RNA)および低分子ヘアピン型RNA(short hairpin RNA)からなる群から選択されたいずれか1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0028】
前記のTIP41タンパク質の活性剤は、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体、および天然物からなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とするが、これに限定されない。
【0029】
前記の組成物は、TRAILを用いた癌、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療時に使用されることが好ましい。
【0030】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0031】
また、前記の炎症性疾患は、皮膚炎、アレルギー、アトピー、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽頭炎、扁桃腺炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大腸炎、痔、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛症(fibromyalgia)、乾癬性関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、腱周囲炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群(sjogren's syndrome)、多発性硬化症、急性および慢性の炎症性疾患からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0032】
また、前記の自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、重度の筋無力症、クレブス病、橋本氏甲状腺炎、アジソン病、白斑症、硬皮症、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、クローン病、強直性脊椎炎、ブドウ膜炎、血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、幼児糖尿病、自己免疫溶血性貧血、クリオグロブリン血症、副腎白質異栄養症および全身性紅斑性狼瘡からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0033】
アンチセンスヌクレオチド
アンチセンスヌクレオチドは、ワトソン・クリック型塩基対で定義されることによって、DNA、未成熟−mRNAまたは成熟したmRNAの相補的塩基配列に結合(混成化)して、DNAからタンパク質として遺伝子情報の流れを妨げるものである。標的配列に特定性があるアンチセンスヌクレオチドの性質は、それらを例外的に多機能にする。アンチセンスのヌクレオチドは、モノマー単位の長い鎖であるため、これらの標的RNA配列に対して簡単に合成することができる。最近の多くの研究は、標的タンパク質の研究のための生化学的手段としてアンチセンスヌクレオチドの有用性を証明した(Rothenbergら.,J.Natl.Cancer Inst,1999年,第81巻,p.1539−1544)。オリゴヌクレオチド化学および向上した細胞株吸着、標的結合親和度およびヌクレアーゼ耐性を示すヌクレオチド合成分野で、最近多くの進歩があったため、アンチセンスヌクレオチドの使用は、新しい形の抑制剤として考慮することができる。
【0034】
ペプチドミネティックス(Peptide Minetics)
前記のペプチドミネティックスは、TIP41活性を率いるTIP41タンパク質の結合ドメインを抑制するペプチドまたはペプチドである。非加水分解性ペプチド類似体の重要な残基としては、βターンペプチドコア(Nagaiら,Tetrahedron Lett,1985年,第26巻,p.647)、ケトメチレンシュードペプチド類(Ewensonら,J Med chem,1986年,第29巻,p.295;およびEwensonら,in Peptides:Structure and Function(Proceedings of the 9th AmeriCan Peptide Symposium)Pierce chemiCal co.Rockland,IL,1985年)、アゼピン(Huffmanら,in Peptides:chemistry and Biology,G.R.Marshall ed.,EScOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988年)、ベンゾジアゼピン(Freidingerら,in Peptides;chemistry and Biology,G.R.Marshall ed.,EScOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988年)、βアミノアルコール(Gordonら,Biochem Biophys Res commun,1985年,第126巻,p.419)、および置換されたγ−ラクタム環(Garveyら,in Peptides:chemistry and Biology,G.R.,Marshell ed.,EScOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988年)を用いて作成することができる。
【0035】
SiRNA分子
センスRNAとアンチセンスRNAが二重鎖RNA分子を形成し、ここで、センスRNAがTIP41 mRNA中の一部の連続ヌクレオチドの標的配列と同一な核酸配列を含むsiRNA分子であることが好ましい。前記のsiRNA分子は、TIP41遺伝子の塩基配列内で選択される10〜30個の塩基からなるセンス配列および、前記のセンス配列に相補的に結合するアンチセンス配列からなることが好ましいが、これに限られるわけではなく、TIP41遺伝子の塩基配列を対象に相補的に結合できるセンス配列を有する二重鎖RNA分子ならすべて使用可能である。前記のセンス配列は、センス配列と相補的な配列を有していることが最も好ましい。
【0036】
抗体
TIP41抗体は、TIP41注入によって製造されたもの、または市販され購入したものなどすべて使用可能である。また、前記の抗体は、多クローン抗体、モノクローナル抗体およびエピトープと結合することのできる断片等を含む。
【0037】
多クローン抗体は、前記TIP41を動物に注入し、その動物から採血して抗体を含む血清を得る従来の方法で生成することができる。このような多クローン抗体は、当業界で知られている任意の方法によって精製することができ、ヤギ、ウサギ、猿、馬、牛、豚、犬などの任意の動物種の宿主から作ることができる。
【0038】
モノクローナル抗体は、継続的な細胞株の培養による抗体分子の生成を提供するいかなる技術を用いても製造することができる。これらの技術は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術およびEBVハイブリドーマ技術が含まる(Kohler Gら,Nature,1975年,第256巻,p.495−497;Kozbor Dら,J Immunol Methods,1985年,第81巻,p.31−42;cote RJら,Proc Natl ACad Sci,1983年,第80巻,p.2026−2030;cole SPら,Mol cell Biol,1984年,第62巻,p.109−126)。
【0039】
また、前記のTIP41に対する特定結合部位を含んだ抗体の断片を製造することができる。たとえば、これらに限定されるものではないが、F(ab')2断片は、抗体分子をペプシンで分解させて製造することができ、Fab断片は、F(ab')2断片のジスルフィドブリッジを還元させることにより製造することができる。他の方法として、Fab発現ライブラリを小さくして、所望する特異性を有するモノクローナルFab断片を迅速かつ容易に同定することができる(Huse WDら,Science,1989年,第254巻,p.1275−1281)。
【0040】
前記の抗体は、洗浄や複合体の分離など、それ以降の工程を容易にするために、固形基質(solid substrate)に結合することができる。固形基質は、たとえば、合成樹脂、ニトロセルロース、ガラス基板、金属基板、ガラス繊維、微細球体、微細ビーズなどがある。また、前記の合成樹脂には、ポリエステル、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン、ポリプロピレン、PVDFおよびナイロンなどがある。
【0041】
アプタマー(Aptamer)
アプタマーは、それ自体で安定した三次構造を有しながら標的分子に高い親和性と特異性で結合することができる特性を有する単一鎖核酸(DNA、RNA、または変形核酸)である。アプタマーは、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)と呼ばれるアプタマー発掘技術が最初に開発された後(Ellington,AD and Szostak,JW,Nature,1990年,第346巻,p.818−822)、低分子有機物、ペプチド、膜タンパク質まで、多様な標的分子に結合することができる多くのアプタマーが、継続して発掘された。アプタマーは、固有の高い親和性(普通pM水準)と特異性で標的分子に結合することができるという特性によって、単一抗体と比較され、特に「化学抗体」と呼ばれる程、代替抗体としての高い可能性がある。
【0042】
本発明の一実験例では、肝癌組織でTIP41タンパク質が正常組織に比べて過発現されることを、免疫組織染色法とウエスタンブロットを用いて確認した。また、肝癌細胞株でのTIP41発現抑制は、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた肝癌細胞株で確認することができた(図1を参照)。
【0043】
本発明の一実験例では、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせて、細胞内TIP41発現量を減少させた後にTRAILを時間別に処理した時、アポトーシスが増加することを、核染色法とFACS分析方法を用いて確認した。また、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを濃度別に処理してアポトーシスを誘導した後、FACS方法を用いて分析した結果、TIP41 siRNAとTRAILを一緒に処理した時、TRAILのみを処理した時よりアポトーシスが大幅に増加していることを確認することができた(図2を参照)。
【0044】
本発明の一実験例では、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを時間帯別に処理した時、アポトーシスに関与するタンパク質の発現を観察した結果、カスパーゼ−3、−8、−9およびポリ(ADPリボース)重合酵素(Poly ADP ribose polymelase、PARP)が活性化することを確認することができた。また、シトクロムCの発現が細胞質(cytosol)で確認されたことで、Huh7肝癌細胞株でTIP41タンパク質発現抑制とTRAIL媒介アポトーシスは、外因性経路と内因性経路が混在した形で起こることを確認することができた(図3を参照)。
【0045】
本発明の一実験例では、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを時間帯別に処理した時に、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)伝達経路の活性化を確認することができた、JNK阻害剤を処理した時に、TIP41タンパク質発現の抑制とTRAIL媒介アポトーシスの減少が観察されるので、このようなJNK伝達経路がTIP41タンパク質発現抑制を通じてTRAIL媒介アポトーシスに重要な役割を担っていることを知ることができた(図4を参照)。
【0046】
本発明の一実験例では、TIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理によって誘導されるアポトーシスが正常細胞株の死滅を誘導せず、癌細胞株に特異的に発生することを確認するために、自己アポトーシス経路に関与するp53タンパク質の影響を確認した結果、p53タンパク質の15と392番セリンにリン酸化が起きることを確認することができた。ただし、p53欠損HCTC同質遺伝子細胞株(p53−defecient HCT116 isogenic HCC cell)にTIP41タンパク質発現を抑制した後にTRAILを処理してアポトーシスを誘導した時、アポトーシスが誘導されることを確認した。これは、TIP41とTRAIL媒介アポトーシスは、p53非依存的経路を通じて起きることを示唆している(図5を参照)。
【0047】
本発明の一実験例では、細胞株別にTRAIL受容体の発現パターンを確認した結果、肝癌、肺癌細胞株でTRAIL−R2(DR5)の発現が正常な細胞株よりも、肝癌、肺癌細胞株で過発現することを確認した。また、肝癌細胞株でTIP41タンパク質発現を抑制させた後、肝癌細胞株でTRAIL受容体の発現を確認した結果、TRAIL受容体の発現が類似であることを確認した。これは、TIP41のタンパク質発現の抑制を通じたアポトーシスの増加が、TRAIL受容体発現の変化によるものでないことを示唆する(図6を参照)。
【0048】
本発明の一実験例では、正常な細胞株のTIP41 siRNAとTRAILを処理した後、アポトーシスを観察した結果、TIP41 siRNA処理に関係なく、アポトーシスの差異がなく、アポトーシスに関与するタンパク質の活性に差異がないことを確認することができた。したがって、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAIL媒介アポトーシスは、癌細胞株に特異的に発生することを確認することができた(図7を参照)。
【0049】
本発明の一実験例では、肝癌以外のTRAILに耐性を有する肺癌、大腸癌細胞株にsiRNAを用いたTIP41 4ノックダウン(knock down)とTRAIL処理による、アポトーシス誘導が確認された(図8を参照)。
【0050】
本発明の一実験例では、動物実験によるTIP41の機能を確認するために、肝癌細胞株をヌードマウスの背中に移植した後、TIP41 siRNAとTRAILを注入して、腫瘍のサイズの減少および癌細胞株の死滅を確認し、アポトーシスに関与するタンパク質の活性が、TRAILのみを注入した時より、TIP41 siRNAとTRAILをともに注入したした時に、アポトーシス関連タンパク質の活性化がさらに増加することを確認することができた(図9を参照)。
【0051】
また、TRAILセンシタイザーとしてTIP41 siRNAによって誘導されるアポトーシスの経路を確認するために、TIP41と結合するタンパク質として知られているMKK7とPP2Ac複合体間の相互作用を確認した(図10と図11を参照)。
【0052】
また、より具体的にTIP41と結合するMKK7の結合部位を確認するために、MKK7の多様な部分を含む断片を作成し、その結合部位を確認した(図12と図13を参照)。
【0053】
さらに、TIP41発現の抑制とTRAIL処理によって誘導されるアポトーシスの経路が前記TIP41とMKK7間の相互作用のためかどうかを確認するために、Huh7肝癌細胞株でMKK7の発現を抑制した後、アポトーシスを分析した。この場合、アポトーシスが減少する結果を確認することができた。より具体的には、本発明者らは、アポトーシスがMKK7活性によって誘導されるJNKの活性化によって起こるのかどうか実験した時、TIP41の抑制によるMKK7/JNK信号機序活性化が確認された(図14を参照)。
【0054】
したがって、TRAIL耐性を示す肝癌細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを処理した時、TRAILに対する耐性がある肝癌、肺癌、大腸癌でもアポトーシスが誘導された。また、腫瘍を移植したマウスにTIP41 siRNAとTRAILを注入した時、腫瘍のサイズの減少および癌細胞の死滅誘導が観察された。したがって、TIP41タンパク質発現または活性阻害剤は、TRAIL感受性増進用組成物の有効成分として有用に使用することができる。
【0055】
前記の組成物は、TIP41の発現、または活性阻害剤に同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含むことができる。
【0056】
前記の組成物は、臨床投与時に経口または非経口で投与が可能であり、非経口投与時は、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、子宮内硬膜注射、脳血管内注射や胸部内注射で投与することができ、一般的な医薬品製剤の形で使用することができる。
【0057】
前記の組成物は、単独で、または手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法および生物学的反応調節剤を使用する方法等と併用して使用することができる。
【0058】
前記の組成物の一日の投与量は、約0.0001〜100mg/kgで、好ましくは0.001〜10mg/kgであり、1日1回ないし数回に分けて投与することが好ましいが、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度等によってその範囲が多様である。
【0059】
本発明の組成物は、実際の臨床投与時に非経口の多様な剤形で投与することができ、製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤や賦形剤を用いて調剤する。非経口投与のための製剤には、殺菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを使用することができる。座薬の基剤としては、ハードファット(ウィテップゾール(witepsol))、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0060】
また、本発明は、TIP41タンパク質の発現や活性抑制剤を含有する抗癌補助剤を提供する。
【0061】
前記のTIP41タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸を有していることが好ましいか、これに限定されない。
【0062】
前記のTIP41タンパク質発現または活性阻害剤は、TRAILセンシタイザー(sensitizer)であることが好ましいが、これに限定されない。
【0063】
前記のTIP41タンパク質の発現の抑制剤は、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNA(short interfering RNA)および低分子ヘアピン型RNA(short hairpin RNA)からなる群から選択されたいずれか1つであることが好ましいか、これに限定されない。
【0064】
前記のTIP41タンパク質の活性抑制剤は、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体、および天然物からなる群から選択されたいずれか1つであることが好ましいか、これに限定されない。
【0065】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、癌、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましく、肝癌、肺癌または大腸癌であることがさらに好ましいがこれに限定されず、TRAILに対する耐性を有する癌はすべて含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0066】
また、前記の抗癌補助剤において、TIP41タンパク質の発現または活性阻害剤は、TRAIL感受性を増進することが好ましいが、これに限定されない。
【0067】
本発明の実験例では、TIP41のタンパク質が肝癌組織で過発現し(図1を参照)、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを時間帯別に処理した場合、アポトーシスがTRAILのみ処理した特よりもさらに増加した(図2を参照)。また、TIP41 siRNAとTRAIL媒介アポトーシス経路を調べるためにカスパーゼ−3、−8、−9およびポリ(ADPリボース)重合酵素活性と、JNK伝達経路関連タンパク質およびp53タンパク質を観察した結果、アポトーシスはTIP41 siRNAとTRAILをともに処理した時にTRAILを単独で処理した時よりも、アポトーシスがさらに増加しており、これは癌細胞株特異的アポトーシスであることを確認することができた(図3、図4、図5および図7を参照)。また、TIP41タンパク質の発現を抑制した場合、TRAIL受容体の発現は変化がないことを確認した(図6を参照)。また、肝癌以外のTRAILに耐性を有する他の細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを処理し、アポトーシスが誘導されることを確認した(図8を参照)。さらに、ヌードマウスの背中に移植した腫瘍のサイズが、TIP41 siRNAとTRAILを注入した時に、TIP41、TRAIL siRNAを単独注入した時よりも減少し、腫瘍組織から分離した、癌細胞株のアポトーシスとアポトーシスに関与するタンパク質の活性化が、TIP41 siRNAとTRAILを注入した時に最も多く観察された。
【0068】
したがって、TRAIL耐性を示す肝癌細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを処理した時、癌細胞株特異的アポトーシスTRAILに対する耐性を有する肝癌、肺癌、大腸癌でもアポトーシスが誘導され、腫瘍を移植したマウスでもTIP41 siRNAとTRAILを注入した時、腫瘍のサイズの減少および癌細胞株の死滅を誘導する効果を有するので、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有する抗癌補助剤として有用に使用できる。
【0069】
前記の抗癌補助剤は、TIP41の発現または活性阻害剤にさらに同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含むことができる。
【0070】
前記の抗癌補助剤は、臨床投与時に経口または非経口で投与が可能であり、非経口投与時は、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、子宮内硬膜注射、脳血管内注射や胸部内注射で投与することができ、一般的な医薬品製剤の形で使用することができる。
【0071】
前記の抗癌補助剤は、単独で、または手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法および生物学的反応調節剤を使用する方法等と併用して使用することができる。
【0072】
前記の抗癌補助剤の一日の投与量は、約0.0001〜100mg/kgで、好ましくは0.001〜10mg/kgであり、1日1回ないし数回に分けて投与することが好ましいが、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度等によってその範囲が多様である。
【0073】
本発明の抗癌補助剤は、実際の臨床投与時に非経口の多様な剤形で投与することができ、製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤や賦形剤を用いて調剤する。非経口投与のための製剤には、殺菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを使用することができる。座薬の基剤としては、ハードファット、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0074】
また、本発明は、本発明の抗癌補助剤を含む癌の治療または予防用組成物を提供する。
【0075】
本発明の実施例では、本発明のTIP41の発現または活性抑制剤をTRAILとともに処理した時、TRAILに耐性を有する多様な肝癌、肺癌、大腸癌細胞株の癌特異的なアポトーシスが増加した。また、本発明のTIP41の発現または活性抑制剤の癌特異的アポトーシスの生体内(in vivo)効果が、腫瘍を移植したヌードモデルで観察された。
【0076】
したがって、本発明のTIP41の発現または活性抑制剤を含有する抗癌補助剤は、癌の治療または予防用組成物の有効成分として有用に使用できる。
【0077】
前記の癌の治療または予防用組成物は、TIP41の発現または活性阻害剤に同一または類似の機能を有する有効成分を1種以上を含むことができる。
【0078】
前記の癌の治療または予防用組成物は、臨床投与時に経口または非経口で投与が可能であり、非経口投与時は、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、子宮内硬膜注射、脳血管内注射や胸部内注射で投与することができ、一般的な医薬品製剤の形で使用することができる。
【0079】
前記の癌の治療または予防用組成物は、単独で、または手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法および生物学的反応調節剤を使用する方法等と併用して使用することができる。
【0080】
前記の癌の治療または予防用組成物の一日の投与量は、約0.0001〜100mg/kgで、好ましくは0.001〜10mg/kgであり、1日1回ないし数回に分けて投与することが好ましいが、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度等によってその範囲が多様である。
【0081】
本発明の癌の治療または予防用組成物は、実際の臨床投与時に非経口の多様な剤形で投与することができ、製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤や賦形剤を用いて調剤する。非経口投与のための製剤には、殺菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを使用することができる。座薬の基剤としては、ハードファット、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0082】
また、本発明は、癌の予防や治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0083】
本発明の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法は、下記の工程を含む方法であることが好ましいが、これに限定されない。
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)の処理された細胞でTIP41とPP2Acタンパク質間の結合水準またはTIP41とMKK7タンパク質間の結合水準を確認する工程、および
(3)工程(2)のTIP41とPP2Acタンパク質間の結合水準またはTIP41とMKK7タンパク質間の結合水準を対照群と比較して減少させる被険物質を選別する工程。
【0084】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、癌、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌や膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましく、肝癌、肺癌または大腸癌であることがさらに好ましいがこれに限定されず、TRAILに対する耐性を有する癌はすべて含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0085】
本発明の癌の予防や治療剤のスクリーニング方法において、請求項第16項において、工程(2)のタンパク質の結合水準は、免疫沈降法(immunoprecipitation)、酵素免疫分析法(ELISA)、ウエスタンブロット法(Western Blotting)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(Glutathione−S−Transferase)(GST)プルダウン分析、タンパク質チップ(Protein Chip)、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer、FRET)、蛍光蛋白質再構成法(Bimolecular fluorescence complementation、BiFC)および酵母ツーハイブリッド(Yeast two−hybrid、Y2H)からなる群から選択されたいずれか1つで測定することが好ましいが、これに限定されない。
【0086】
また、本発明は、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0087】
本発明の癌の予防や治療剤のスクリーニング方法は、下記の工程を含む方法であることが好ましいが、これに限定されない。
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)で処理された細胞株でMKK7タンパク質の活性程度を測定する工程、および
(3)工程(2)のMKK7タンパク質の活性を対照群と比較して増加した被険物質を選別する工程を含む、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【0088】
前記の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法において、MMK7タンパク質の活性程度は、免疫蛍光法、酵素免疫分析法(ELISA)、質量分析およびタンパク質チップからなる群から選択されたいずれか1つで測定することが好ましいが、これに限定されない。
【0089】
また、本発明は、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0090】
本発明の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法は、下記の工程を含む方法であることが好ましいが、これに限定されない。
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)で処理された細胞株でPP2Acタンパク質の発現程度を測定する工程、および
(3)工程(2)のPP2Acタンパク質の発現量を対照群と比較して減少させた被検物質を選別する工程。
【0091】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、癌、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌や膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましく、肝癌、肺癌または大腸癌であることがさらに好ましいがこれに限定されず、TRAILに対する耐性を有する癌はすべて含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0092】
本発明の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法において、工程(2)のPP2Acタンパク質の発現程度は、逆転写重合酵素の連鎖反応(Reverse Transcription−Polymerase chain Reaction、RT−PCR)、酵素免疫分析法(ELISA)、免疫組織化学、ウエスタンブロット(Western Blotting)および流細胞分析法(FACS)からなる群から選択されたいずれか1つで測定することが好ましいが、これに限定されない。
【0093】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤をTRAIL媒介アポトーシスと関連した疾病にかかった個体に投与する工程を含む、TRAILへの感受性を増進させる方法を提供する。
【0094】
前記のTIP41タンパク質の発現または活性阻害剤は、TRAILセンシタイザーであることが好ましいが、これに限定されない。
【0095】
前記のTIP41タンパク質の発現の抑制剤は、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNAおよび低分子ヘアピン型RNAからなる群から選択されるいずれか1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0096】
前記のTIP41タンパク質の活性剤は、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体、および天然物から選択されるいずれか1つであることを特徴とするが、これに限定されない。
【0097】
前記のTRAIL媒介アポトーシスと関連する疾病は、癌、炎症性疾患や自己免疫疾患であることが好ましいが、これに限定されない。
【0098】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0099】
また、前記の炎症性疾患は、皮膚炎、アレルギー、アトピー、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽頭炎、扁桃腺炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大腸炎、痔、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛症、乾癬性関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、腱周囲炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、急性および慢性の炎症性疾患からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0100】
また、前記の自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、重度の筋無力症、クレブス病、橋本氏甲状腺炎、アジソン病、白斑症、硬皮症、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、クローン病、強直性脊椎炎、ブドウ膜炎、血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、幼児糖尿病、自己免疫溶血性貧血、クリオグロブリン血症、副腎白質異栄養症および全身性紅斑性狼瘡からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0101】
本発明の一実施例では、本発明のTIP41の発現または活性抑制剤をTRAILとともに処理した時、TRAILに耐性を有する多様な肝癌、肺癌、大腸癌細胞株の癌特異的なアポトーシスが増加した。また、本発明のTIP41発現または活性抑制剤の癌特異的アポトーシスの生体内(インビボ)効果が腫瘍を移植したヌードモデルで観察された。
【0102】
したがって、本発明のTIP41の発現または活性阻害剤は、TRAILに対する感受性を増進させる手段として有用に用いることができる。
【0103】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を個体に投与する工程を含む、癌の予防方法を提供する。
【0104】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を抗癌補助剤として、癌にかかった個体に投与する工程を含む、癌の治療方法を提供する。
【0105】
前記の個体は、脊椎動物、好ましくは哺乳類であり、より好ましくは、ラット、ウサギ、ギニアピッグ、ハムスター、犬、猫などの実験動物で、最も好ましいのは、チンパンジー、ゴリラのような類人猿動物である。
【0106】
前記のTIP41の発現または活性抑制剤の治療学的に有効な量は、いくつかの要素は、例えば投与方法、目的部位、患者の状態によって異なり得る。したがって、人体に使用時の投与量は、安全性と効率性を考慮して適正な量に決定する必要がある。動物実験によって決定された有効な量からヒトに使用される量を推定することも可能である。有効な量の決定時に考慮する事項は、例えば、Hardman and Limbird,eds., Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th ed.(2001年),Pergamon Press;およびE.W.Martin ed.,Remington's Pharmaceutical Sciences,18th ed.(1990年),Mack Publishing Co.に記述されている。
【0107】
本発明のTIP41発現または活性阻害剤は、生物学的製剤に通常使用される担体、希釈剤、賦形剤、またはこれらを二つ以上組み合わせたものを含むことができる。薬学的に許容可能な担体は、TIP41の発現または活性抑制剤を生体内に伝達するのに適合したものなら特別に制限されず、例えば、Merck Index,13th ed.,Merck&Co.Inc.に記載されている化合物、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝生理食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、およびこれらの成分中、1成分以上を混合して使用でき、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など、他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤をさらに添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。さらに、当分野の適正な方法で、またはRemington's Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company,Easton PA,18th,1990年)に開示されている方法を用いて、それぞれの疾患や成分によって好ましく製剤化することができる。
【0108】
本発明のTIP41発現または活性阻害剤にさらに同一または類似の機能を有する有効成分を1種以上含むことができる。本発明の組成物は、組成物の総重量に対して前記のタンパク質を0.0001ないし10重量%、好ましくは0.001〜1重量%含む。
【0109】
本発明のTIP41発現または活性阻害剤は、目的とする方法によって非経口投与(たとえば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)したり経口投与したりでき、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与、投与方法、排泄率と疾患の重症度によってその範囲が多様である。本発明の組成物の一日の投与量は、0.001μg〜10mg/kgで、好ましくは0.01μg〜10mg/kgであり、1回ないし数回に分けて投与することが好ましい。
【0110】
また、本発明は、TRAIL媒介アポトーシスと関連する疾病治療時のTRAIL感受性を増進するために使用するためのTIP41の発現または活性抑制剤を提供する。
【0111】
さらに、本発明は、抗癌補助剤として使用するためのTIP41の発現または活性抑制剤を提供する。
【0112】
前記のTIP41タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を特徴とすることが好ましいが、これに限定されない。
【0113】
前記のTIP41タンパク質発現または活性阻害剤は、TRAILセンシタイザーであることが好ましいが、これに限定されない。
【0114】
前記のTIP41タンパク質の発現の抑制剤は、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNAおよび低分子ヘアピン型RNAからなる群から選択されたいずれか1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0115】
また、前記のTIP41タンパク質の活性剤は、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体、および天然物から選択されるいずれか1つであることを特徴とするが、これに限定されない。
【0116】
前記のTRAIL媒介アポトーシスと関連する疾病は、癌、炎症性疾患または自己免疫疾患であることが好ましいが、これに限定されない。
【0117】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0118】
また、前記の炎症性疾患は、皮膚炎、アレルギー、アトピー、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽頭炎、扁桃腺炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大腸炎、痔、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛症、乾癬性関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、腱周囲炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、急性および慢性の炎症性疾患からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0119】
また、前記の自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、重度の筋無力症、クレブス病、橋本氏甲状腺炎、アジソン病、白斑症、硬皮症、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、クローン病、強直性脊椎炎、ブドウ膜炎、血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、幼児糖尿病、自己免疫溶血性貧血、クリオグロブリン血症、副腎白質異栄養症および全身性紅斑性狼瘡からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0120】
以下、本発明を実験例と製造例によって詳しく説明する。ただし、下記の実験例と製造例は、本発明を説明するだけのもので、本発明の内容が下記の実験例と製造例によって限定されるものではない。
【0121】
<実験例1>肝癌および肺癌組織でのTIP41タンパク質発現の確認
<1−1>免疫染色方法を用いたTIP41発現の確認
患者の肝癌組織(忠南大学校医科大学キム・ジンマン教授チーム)を10%中性バッファーホルマリン溶液で固定して、パラフィンを添加した後、5μm厚に切断した。切断されたセクション(section)を10mMのクエン酸バッファー(pH6.0)で、4分間処理した後、3%過酸化水素(H2O2)が含まれている0.1M Tris緩衝食塩水(TBS、pH7.4)に30分間置いた。前記のセクションをProtein Block Solution(DAKO)で、常温で20分間処理した後、アンチTIP41抗体と30分間反応させた。0.1M TBST(0.01% ツイーン20を含む0.1M TBS)で洗浄し、セクションをエヌビジョンアンチウサギポリマー(nVision anti−rabbit polymer)(DAKO)と30分間反応させた。ペルオキシダーゼが結合した抗体を3,3'−ジアミノベンジジン色原体基質溶液(3,3 '−diaminobenzidine(DAB)chromogen substrate solution)(DAKO)と反応させて、可視化した。顕微鏡下で観察して、適切に染色された時、0.1M TBSで洗浄して反応を終了させた後、オリンパスBX51顕微鏡(オリンパス、日本)を用いて観察し、オリンパスDP70カメラ(オリンパス、日本)でイメージを得た。
【0122】
その結果、一般の肝臓組織に比べて肝癌組織でTIP41が過発現することを確認することができた(図1のA)。また、肝癌、肺癌患者の周辺正常組織に比べて、TIP41タンパク質がこれらの患者の癌組織で過発現した(表1および表2)。TIP41発現と癌段階間の関係分析は、TIP41陽性発現がNSCLC、肺癌の高い段階と顕著に関連していることを示し(P=0.045)、これはTIP41の発現とNSCLC進行との間の関係を示す(表2)。このデータは、TIP41発現がHCCおよびNSCLC細胞で過発現することを示す。
【0123】
(表1)肝癌(HCC)臨床組織でのTIP41の発現量(IHC方法)
【0124】
(表2)肺癌(非小細胞性肺癌、NSCLC)の臨床組織での、TIP41の発現量(IHC方法)
【0125】
<1−2>ウエスタンブロットを用いたTIP41発現の確認
B型肝炎ウイルス(HBV)によって発病した肝癌患者7人とそうでない肝癌患者7人の肝癌組織および隣接正常組織(忠南大学校医科大学)から抽出されたタンパク質を用いて、TIP41タンパク質発現量をウエスタンブロット方法を用いて確認した。
【0126】
組織を溶解バッファー(lysis buffer)[20mM HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)(pH7.5)、150 mM塩化ナトリウム(Nacl)、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2mMエチレングリコール四酢酸(EGTA)、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]に組織を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸(cell debris)を削除し、タンパク質を得た。タンパク質は、SDS−PAGEを通じて分子量によって分離し、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜でトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間の非特異的反応を防ぐためにブロックした。1時間後、ニトロセルロース膜は1:2,000 TIP41(Betyl Laboratories,米国)および1:5,000GAPDH(Abforntier,韓国)で4℃で12時間以上の反応後、0.1%のTBST(Tris−Buffered Saline ツイーン−20)で10分ずつ3回洗浄した後、抗マウス(Pierce,米国)および抗ウサギ(Pierce,米国)二次抗体を常温で1時間反応させた。それを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄して、化学発光試薬を用いて発現を確認した。各組織の定量的対照群にハウスキーピング遺伝子のGAPDH(グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)を用いた。
【0127】
その結果、B型肝炎ウイルス(HBV)によって発病した肝癌患者7人とそうでない肝癌患者7人の肝癌組織でTIP41が過発現されていることを確認することができた(図1のB)。
【0128】
<1−3>肝癌細胞株の培養
韓国の細胞株銀行から分譲されたヒトのHuh7肝癌細胞株は、10%の牛胎児血清を含んだダルベッコの改変イーグル培地(Dulbecco's modified eagle's medium)(DMEM)で37℃、5%CO2で培養した。SiRNAをトランスフェクションさせるためにHuh7肝癌細胞株1×106細胞/100mm皿に植えて24時間培養し、その後、トランスフェクションを行なった。
【0129】
<1−4>siRNAのトランスフェクション
TIP41のTRAILセンシタイザーとしての機能を確認するためにsiRNA(Dharmacon RNAi Technologies,米国)を選別して効果的にTIP41タンパク質の発現を抑制する配列を構築した。
【0130】
前記の<1−3>で培養された2×105肝癌細胞株を60mm培養皿に植えてリポフェクタミンRNAimax(invitrogen)を用いて、製造元の指示に従って、siRNA(Small interfering RNA)をトランスフェクションした。72時間後に、トランスフェクションさせた細胞はTRAIL(100ng/ml)を0、0.5、1、2、3、4、6時間処理した後、細胞株をそれぞれの時間帯に溶解バッファーを用いて、細胞株からタンパク質を得てウエスタンブロットした。溶解バッファー([20mM HEPES(pH7.5)、150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2mMエチレングリコール四酢酸(EGTA)、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]で細胞を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸を削除して、タンパク質を得た。タンパク質は、SDS−PAGEによって分子量によって分離した後、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜でトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間非特異的反応を防ぐためにブロックした。1時間後、ニトロセルロース膜は1:2,000 TIP41(Bethyl Laboratories、米国)および1:5,000 チューブリン(Sigma aldrich、米国)で4℃で12時間以上の反応後、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄した後、抗マウス(Pierce、米国)および抗ウサギ(Pierce、米国)の二次抗体を常温で1時間反応させた。それを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、化学発光試薬を用いて発現を確認した。各組織の定量的対照群にハウスキーピング遺伝子であるGAPDHを用いた。
【0131】
使用されたTIP41 siRNA配列は、5'−CCT AAT GAA ATA TCC CAG TAT−3'(配列番号2)だった。
【0132】
その結果、TRAIL処理の有無に関係なく、TIP41 siRNAを処理した後、TIP41タンパク質の発現が完全に抑制されることを確認することができた(図1のC)。
【0133】
<実験例2>TIP41タンパク質発現の抑制とTRAL処理によるアポトーシス誘導
<2−1>核染色法を用いたTIP41タンパク質発現抑制で誘導されるアポトーシス分析
6ウェルプレートで前記実験例<1−1>の方法で培養されたTIP41発現抑制された細胞株を2×105細胞/ウェルずつ分注した。24時間後、TRAILを100ng/mlで各々0、2、4、6、8時間処理した後、Hoechst33342を5μg/mlで30分間室温で染色した。Hoechst33342で核を染色した後、蛍光顕微鏡で死滅した細胞数をカウントして、アポトーシスを測定した。
【0134】
その結果、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを同時に処理した時、TRAILのみを処理した時よりアポトーシスが増加した。TRAILを処理する時間が長くなるほど、アポトーシスが増加し、TIP41 siRNAを処理した群では、対照群にsiRNAを処理時より約30%程度のアポトーシスの増加が観察された。これにより、Huh7肝癌細胞株でTIP41 siRNAの処理は、TRAIL抵抗を減少させることを確認することができた(図2のA)。
【0135】
<2−2>FACSを用いたTIP41タンパク質発現抑制で誘導されるアポトーシスの分析
前記の実験例<1−1>の方法で培養したHuh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせて、細胞内TIP41発現量を減少させた後、TRAILを100ng/mlで処理した後、0、2、4、6、8時間帯にアポトーシスをアネキシンV−FITc/PI染色法で死滅した細胞株と正常細胞株を区別して染色した後、FACS(蛍光活性化セルソーター)を用いてアポトーシスを測定した。
【0136】
アポトーシスを測定するために、トリプシンEDTAを用いて細胞株を得た後、FITc融合したアネキシンV(50μg/ml)とPI(ヨウ化プロピジウム)(50ng/ml)で20分間染色後、FACS Calibur(BD)を用いて細胞株を分離し、アネキシンV−FITc/PI染色された細胞株の比率を分析した。
【0137】
その結果、TRAILを時間別に処理した後、アポトーシスが起こることをFACS分析を通じて確認することができた(図2のB)、同一の実験方法で、TRAILを0、25、50、100、200ng/ml濃度別に4時間処理した時、処理濃度によってアポトーシスが増加することを確認することができた(図2のC)。
【0138】
<実験例3>TIP41タンパク質発現の抑制およびTRAIL処理によって誘導されたアポトーシス経路確認
<3−1>カスパーゼの活性化
TIP41 siRNAとTRAILを処理した後に誘導されるアポトーシスの経路を確認するために、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた72時間後、TRAILを100ng/mlで0、0.5、1、2、4、6時間処理した後、カスパーゼ−3、−9、−9およびポリ(ADPリボース)重合酵素(PARP)の発現をウエスタンブロットを用いて測定した。
【0139】
前記の実験例<1−1>で培養した細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた72時間後、TRAILを100ng/mlで時間帯別に処理した。溶解バッファー[20mM HEPES(pH7.5)、150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2mMエチレングリコール四酢酸(EGTA)、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]で細胞を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸を削除してタンパク質を得た。タンパク質はSDS−PAGEを通じて分子量によって分離した後、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜でトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間非特異的反応を防ぐためにブロックした。1時間後、ニトロセルロース膜は1:1,000 カスパーゼ−3、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9および1:2,000 PARP(cell signaling technology、米国)で4℃で12時間以上の反応させた後、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄した後、抗マウス(Pierce、米国)および抗ウサギ(Pierce、米国)の二次抗体を常温で1時間反応させた。これを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、化学発光試薬を用いて発現を確認した。
【0140】
その結果、TIP41タンパク質の発現が抑制された後、TRAILの時間別処理によってカスパーゼ−9、−8、−3とPARPが活性化していることを確認することができた(図3のA)。これから、TIP41のタンパク質発現抑制によるアポトーシスがTRAILの濃度および時間に依存的に増加することを確認することができた。
【0141】
<3−2>ミトコンドリアのシトクロムCの細胞質への放出
アポトーシスの経路を確認するために、ミトコンドリア(mitochondria)のシトクロムC(Cytochrome C)が細胞質に放出されるかどうかを確認するために、細胞分画(subcellular fractionation)およびウエスタンブロットを用いた。前記の実験例<1−1>の方法で培養したHuh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせて、細胞内TIP41発現量を減少させた後、60mm皿にTIP41の発現が抑制された細胞株を2×106細胞/皿に分注した。24時間後、TRAILを100ng/mlで、各々0、1、2、4時間処理した後、細胞分画を行なった。細胞分画は、Subcellular Proteome Extraction kit(Calbiochem社)を用いて行ない、キット(kit)は、4種類のバッファーで構成され、各バッファーの使用に応じて細胞質、ミトコンドリア、核および細胞骨格タンパク質の順で細胞分画が分離された。溶出バッファー1(extraction buffer 1)500μlを各々の細胞株に添加して、4℃で10分間撹拌した後、遠心分離して細胞質分画を得、溶出バッファー2 500μlを4℃で30分間撹拌した後、遠心分離してミトコンドリアの分画を得た。分画された細胞質とミトコンドリアにウエスタンブロットを用いた。
【0142】
前記の実験例<1−1>の培養細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた72時間後、TRAILを0、2、4、6時間に処理した。溶解バッファー(lysisバッファー)[20mM HEPES(pH7.5)、150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸、2mMエチレングリコール四酢酸、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]で細胞を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸を削除してタンパク質を得た。タンパク質はSDS−PAGEを通じて分子量によって分離した後、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜にトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間非特異的反応を防ぐためにブロックした。細胞質分画マーカーには、チューブリンを用いて、ミトコンドリアはペルオキシレドキシン IIIを用いた。1時間後、ニトロセルロース膜は1:1,000 シトクロムC(BD、米国)、1:5,000 チューブリン(Sigma aldrich,米国)および1:2,000 ペルオキシレドキシン3(Abfrontier、韓国)で4℃で12時間以上反応させた後、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄した後、抗マウス(Pierce、米国)および抗ウサギ(Pierce,米国)の二次抗体を1:2,000の比率で常温で1時間反応させた。これを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、化学発光試薬を用いて発現を確認した。
【0143】
その結果、TIP41 siRNAを処理した後、シトクロムCが細胞質に放出されることを確認することができた(図3のB)。つまり、カスパーゼ−8と−9が活性化して、ミトコンドリオン(mitochondrion)からの細胞質にシトクロムCが放出されることを確認した。これらの結果は、Huh7肝癌細胞株でTIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理によって誘導されるアポトーシスがカスパーゼ/ミトコンドリア依存性アポトーシス経路と密接に関連していることを示す。
【0144】
<実験例4>TIP41タンパク質発現抑制およびTRAIL処理で誘導されるJNK伝達経路の活性
<4−1>TIP41タンパク質発現抑制およびTRAIL処理で誘導されるJNK伝達経路のタンパク質活性
自己アポトーシスの場合、JNKリン酸化による経路が多くの論文で報告されており、p38の活性化もまたアポトーシスを誘導する可能性があるという報告があった。
【0145】
JNKおよびp38の活性がアポトーシスを誘導すると報告されている。これにより、前記の<実験例>で確認されたTIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシスとミトゲン活性化プロテインキナーゼ(Mitogen−Activated Protein,MAP)伝達経路、特にJNKとp38との関連性を確認するために、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAIL(100ng/ml)を、0、1、2、4時間処理した。その後、ウエスタンブロットを用いて、TIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシスとJNKとp38との関連性を確認した。
【0146】
前記の実験例<1−1>の培養細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションした72時間後、TRAILを前記の時間帯別に処理した。溶解バッファー[20mM HEPES(pH7.5)、150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸、2mMエチレングリコール四酢酸、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]で細胞を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸を削除してタンパク質を得た。タンパク質は、SDS−PAGEを通じて分子量によって分離した後、分離したタンパク質をニトロセルロース膜でトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間非特異的反応を防ぐためにブロックした。1時間後、ニトロセルロース膜は1:1,000の比率でp−MKK7(cST Inc.,米国)とp−p38(cST Inc.,米国)を用い、1:1,000の比率でp−JNK(cST Inc.,米国)を用い、1:5,000の割合でチューブリン(Sigma aldrich,米国)を用いて4℃で12時間以上の反応させた後、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、抗マウス(Pierce,米国)および抗ウサギ(Pierce,米国)の二次抗体を1:2,000の比率で常温で1時間反応させた。それを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、化学発光試薬を用いて発現を確認した。
【0147】
その結果、図4のAに示すように、RNAiによるTIP1の下方調整は、TRAILによって誘導されるMKK7/JNK活性を延長するために十分であることが分かった(図4のA)。
【0148】
<4−2>JNK阻害剤処理によるアポトーシスの減少
JNK伝達経路とTIP41抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシス間の関連性を確認するために、実験例<4−1>と同一な方法で細胞株を培養し、TIP41 siRNAを処理した後、JNK阻害剤であるSP600125(10μg/ml)を1時間処理してJNK伝達経路を遮断した。TRAIL刺激で誘導されるアポトーシスをアネキシンV−FITc/PI染色法を用いたFACS分析法を用いて測定した。
【0149】
その結果、JNK阻害剤を処理してJNK伝達経路を遮断した後、TRAILを処理した実験で、アポトーシスが減少した。これにより、JNK伝達経路がTIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシスに重要な役割を遂行していることが分かった(図4のB)。
【0150】
<実験例5>TIP41タンパク質発現抑制とp53非依存的アポトーシス経路の確認
<5−1>肝癌細胞でp53非依存的アポトーシス経路の確認
現在使用されている抗癌剤の最も大きな問題点は、正常細胞株と癌細胞株を区別できず、正常細胞株を殺すという副作用を有しており、このような正常細胞の死滅機序は、p53経路の活性化を通して起きることが報告された。P53依存的アポトーシスを誘導する抗癌剤は、癌細胞株のみならず、正常細胞株にも影響を与えるので、TIP41 siRNAを処理した後、TRAILによって誘導されるアポトーシスがp53を通じて行なわれるのかどうかを確認した。
【0151】
TIP41 siRNAをHuh7肝癌細胞株にトランスフェクションした72時間後、100ng/mlのTRAILを0、2、4、および6時間処理した。ホスホp53(phospho−p53)抗体を用いたウエスタンブロット方法を実行して、アポトーシスがp53伝達経路を経由して行われるかどうかを確認するために、p53のリン酸化を確認する抗体を用いた。P−p53(Ser6)、p−p53(Ser9)、p−p53(Ser15)、p−p53(Ser20)、p−p53(Ser37)、p−p53(Ser46)およびp−p53(Ser392)を用いて、p53のセリン6、9、15、20、37、46、392番のリン酸化を確認した。
【0152】
溶解バッファー[20mM HEPES(pH7.5)、150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸、2mMエチレングリコール四酢酸、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]に細胞を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸を削除してタンパク質を得た。タンパク質は、SDS−PAGEを通じて分子量によって分離した後、分離したタンパク質をニトロセルロース膜でトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間非特異的反応を防ぐためにブロックした。1時間後、ニトロセルロース膜はすべて1:1,000の比率でp−p53(Ser6)、p−p53(Ser9)、p−p53(Ser15)、p−p53(Ser20)、p−p53(Ser37)、p−p53(Ser46)とp−p53(Ser392)(cST Inc,米国)で4℃で12時間以上の反応させた後、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、抗マウス(Pierce、米国)および抗ウサギ(Pierce,米国)の二次抗体を1:2,000の比率で常温で1時間反応させた。それを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、化学発光試薬を用いて発現を確認した。
【0153】
その結果、細胞にTIP41 siRNAとTRAIL処理した時、p53タンパク質の15番と392番セリンにリン酸化が起きることを確認することができた(図5のA)。セリン15番のリン酸化は、DNA損傷などによるアポトーシスに関与するATM(Ataxia telangiectasia mutated)/ATR(ATM and RAD3−related)経路の活性化またはDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA−dependent protein kinase,DNA−PK)によって起きるようになり、アポトーシスとの関連が報告されていて、Ser392番のリン酸化は、核内でp53タンパク質がDNA配列に結合するのに関与することが知られている。したがって、TIP41タンパク質発現抑制を通じたTRAILによって誘導されるアポトーシスがp53依存的である可能性があるが、JNK伝達経路で活性化されるセリンが発現されない結果を考慮する時、p53の非依存的である可能性も排除することができなかった。
【0154】
<5−2>p53欠損細胞の培養
HCT116細胞株は、正常的にp53タンパク質を作る大腸癌細胞株であり、TRAIL耐性細胞株にTRAIL単一処理によってアポトーシスが頻繁に発生しないことが知られている。HCT116 p53欠如細胞は、Dr.B.Vogelsteinによって1998年に確立された細胞株で、p53遺伝子が欠損している(Vogelstein,B.,Science,1998年)。前記の細胞株の分譲を受けて実験に用い、細胞株は10%牛胎児血清、100mg/ml、ストレプトマイシン、そして100 IU/mlアンピシリンを含んだDMEM(Hyclone,米国)培地に、安定な抗生剤マーカーG418を100μg/ml添加して、3日周期で継代培養した。
【0155】
<5−3>p53欠損細胞株でp53非依存的アポトーシス経路の確認
P53非依存的である可能性を確認するために、前記の実験例<5−2>制作したHCT116 p53欠損細胞株にTIP41 siRNAをHuh7肝癌細胞株の場合と同じ実験方法でトランスフェクションした後、同一な条件でTRAILを処理して、アポトーシスを誘導した後、アネキシンV−FITc/PI染色法を用いたFACS分析法を行なった。
【0156】
その結果、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後にTRAILを処理した時、Huh7肝癌細胞株と同様にHCT116 p53欠損細胞株でもアポトーシスが良く誘導されており、これはTIP41のタンパク質発現抑制によるアポトーシスは、p53非依存的経路を通じてアポトーシスが誘導されることを意味する。したがって、図5のAに示されたp53セリン15番の活性化は、TIP41タンパク質発現抑制によるTRAILによって誘導されるアポトーシスに及ぼす影響は微々であり、p53が核に移動して、転写活性を高めることを推定することができた(図5のB)。
【0157】
<実験例6>TRAIL受容体の発現様相の測定
<6−1>細胞毎週TRAIL受容体の発現の確認
TRAIL抵抗性を克服させて、癌細胞株特異的な治療剤としての効能を高めるために、癌細胞株のアポトーシスを増加させる方法として、TRAIL受容体の発現を増加させる研究結果が報告された。このような研究と関連してTIP41遺伝子の発現抑制を通じたアポトーシスとTRAIL受容体との相関関係を確認するために、正常細胞株と肝癌および肺癌細胞株でTRAIL受容体の発現様相を確認した。TRAIL受容体は4種類に区分され、TRAIL−R1(DR4)、TRAIL−R2(DR5)、TRAIL−R3(DcR1)およびTRAIL−R4(DcR2)で、R1とR2は、細胞死受容体に作用してTRAILが結合すると、細胞株を自己アポトーシスが起きるように誘導するが、R3とR4はデコイ受容体で、TRAILがR1とR2に結合することを阻害してTRAILによるアポトーシスを阻害すると報告されている。
【0158】
定量的リアルタイムPCR(qPCR)は、Huh7肝癌細胞株、HAEC正常細胞株(Human aortic endothelial cell,clonetics 社)、A549肺癌細胞株(韓国細胞株銀行)をトリゾールを用いてRNAを抽出した後、抽出したRNA1μgの逆転写酵素superscript II(invitrogen)を用いてcDNAを合成し、それを鋳型に、TIP41、TRAIL−R1(Death receptor(DR)4)、TRAIL−R2(DR5)、TRAIL−R3(DcR1)およびTRAIL−R4(DcR2)遺伝子のプライマーを用いて、定量的リアルタイムPCRを行なった。PCRの結果は、2−DDct比較法(2−DDct comparative method)を通じて各遺伝子の相対的な発現量を確認した。TIP41正方向プライマー(配列番号3:5'−att gaa agc cag aga aca ga−3')とTIP41逆方向プライマー(配列番号4:5'−tct cgt gtc att cat tct ga−3')、DR4正方向プライマー(配列番号5:5'−ctc agc gga atc aat cag ctg tg−3')、DR4逆方向プライマー(配列番号6:5'−aga gga aca cga caa tca gcc tta g−3')、DR5正方向プライマー(配列番号7:5'−atc aag cgg ccc cct ttt ttt cac−3')、DR5逆方向プライマー(配列番号8:5'−ctc att gtc aca ctc ctc gac agc−3')、DcR1正方向プライマー(配列番号9:5'−tcc cca aga ccc taa agt tc−3')、DcR1逆方向プライマー(配列番号10:5'−ggc acc aaa ttc ttc aac ac−3')、DcR2正方向プライマー(配列番号11:5'−gca cag agg gtg tgg att ac−3')、およびDcR2逆方向プライマー(配列番号12:5'−gag cag atg cct ttg agg ta−3')を用いて、定量的リアルタイム PCRを行なった。ここで、定量的対照群としてベータ−2−マイクログロブリン(beta−2−microglobulin,B2M)の正方向プライマー(配列番号13:5'−ctc gct ccg tgg cct tag−3')および逆方向プライマー(配列番号14:5'−caa atg cgg cat ctt caa−3')で表されるプライマー対を用いて、定量的リアルタイムPCRを行った。前記のPCRの条件は、95℃で10分間で変性させた後、95℃で30秒、60℃で30秒、72℃で1分の条件で40サイクル反復した後、72℃で8分間伸長させた後、常温まで冷やした。定量的リアルタイムPCRの結果は、各試料別のTRAIL受容体発現量をB2M発現量に補正する2−DDct比較方法で分析した後、正常肝臓組織でのTRAIL受容体発現量に対する肝癌組織での発現量の倍数を図6に示した。
【0159】
その結果、TRAIL耐性癌細胞株の肝癌および肺癌細胞株でTRAIL−R3(DcR1)は、正常細胞株より低く発現し、TRAIL−R4(DcR2)は、正常細胞株と類似の水準で発現した。TRAIL−R1(DR4)の場合は、正常細胞株に比べて肝癌、肺癌細胞株で発現量が少し高いが全体の発現量は低く、TRAIL−R2(DR5)は、正常細胞株に比べて、肝癌、肺癌細胞株で過量に発現することを確認した。したがって、一般的に知られているように、細胞死受容体が肝癌、肺癌細胞株で多く発現し、このことからTRAIL耐性が受容体の発現とは関係がないことを確認することができた(図6のA)。
【0160】
<6−2>TIP41タンパク質発現抑制とTRAILを処理後、TRAIL受容体の発現確認
TIP41タンパク質のノックダウン(knockdown)で誘導されたアポトーシスとTRAIL受容体との相関関係を確認するために、TRAILおよびTIP41 siRNAで処理されたHuh7肝癌細胞株でのTRAIL受容体の発現水準を測定した。TIP41 siRNAをHuh7肝癌細胞株にトランスフェクション72時間後、100ng/mlのTRAILを4時間および6時間処理した。TRAILを処理した後、定量的リアルタイムPCRを行なうためにHuh7肝癌細胞株をトリゾールを用いてRNAを抽出した後、抽出したRNA1μgの逆転写酵素superscriptII(invitrogen)を用いてcDNAを合成し、それを鋳型に、TIP41、TRAIL−R1(Death receptor(DR)4)、TRAIL−R2(DR5)、TRAIL−R3(DcR1)およびTRAIL−R4(DcR2)遺伝子のプライマーを用いて、定量的リアルタイムPCRを行なった。PCRの結果は、2−DDct比較法を用いて、各遺伝子の相対的発現量を測定した。
【0161】
その結果、図6のBに示されているように、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた群と対照群とを比較してみると、TIP41タンパク質発現抑制後、TRAIL受容体(TRAIL−R1、−R2、−R3および−R4)の発現の差異は、ほとんど表れないことを確認することができた(図6のB)。
【0162】
<6−3>肝癌細胞組織別TRAIL受容体の発現確認
肝癌組織とそれに隣接する組織で、TRAIL受容体の発現様相をリアルタイム逆転写重合反応(Reverse Transcriptase−PCR)法で測定した。実験に使用した組織は、エドモンソン(Edmondson)及びステイナー(Steiner)分類法によってI(n=5)、II(n=5)、III(n=5)およびIV(n=4)に分類した、各肝癌段階にある患者の肝癌組織(hepatocellular Carcinoma、HCC)と周辺の正常組織を含む19の組織を、カトリック医大(Catholic University of Medicine in Seoul,韓国)で外科手術前の患者の同意の下で採取した。
【0163】
リアルタイム逆転写PCRは、トリゾールを用いて肝癌組織からRNAを抽出した後、抽出したRNA1μgを逆転写酵素superscript II(invitrogen)を用いてcDNAを合成し、それを鋳型にTRAIL−R1(Death receptor(DR)4)、TRAIL−R2(DR5)、TRAIL−R3(DcR1)およびTRAIL−R4(DcR2)遺伝子のプライマーを用いて、リアルタイムPCRを行なった。PCRの結果は、2−DDct比較法によって各遺伝子の相対的発現量を確認した。
【0164】
その結果、TRAIL−R1(DR4)の発現量が正常組織と比較して、肝癌組織で有意な増加を肝癌1段階で最も多く観察され、その次に、肝癌3段階の組織、肝癌2段階および4段階で、発現量の差異が有意に観察された。TRAIL−R2(DR5)の場合は、肝癌1段階と肝癌5段階で、正常組織に比べて肝癌組織で発現が有意に増加することが確認されたが、TRAIL−R3(DcR1)は、ほぼすべての段階で発現量が少なく、正常組織と肝癌組織間の差異が観察されなかった。また、TRAIL−R4(DcR2)は、肝癌の2段階でのみ正常組織に比べて肝癌組織で有意に増加することが観察され、それ以外の場合は、正常な組織と同じか、むしろ、正常組織で発現が増加することを確認することができた(図6のC)。
【0165】
<実験例7>正常細胞株でアポトーシスを確認
<7−1>FACS分析によるTIP41発現の抑制とTRAIL処理による正常細胞株でのアポトーシス分析
TIP41は、癌細胞株に特異的に発現するが、正常細胞株でも発現するため、TIP41の発現を抑制した時、癌細胞株のように正常細胞株のアポトーシスが誘導される可能性があるため、TIP41タンパク質の発現抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシスが癌細胞株特異的な反活性であることを確認するために、正常細胞株であるHAECにTIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理によってアポトーシスを誘導した。
【0166】
正常細胞株であるHAECにTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後72時間が経過した後、TRAILを100ng/mlで0、2、4時間処理し、アポトーシスを誘導した。死滅した細胞を前記で記載された方法と同一にアネキシンV−FITc/PI染色で分析した。
【0167】
その結果、TRAILを処理した後、TIP41 siRNAの処理の有無に関係なく、アポトーシスする程度に差異がないことを確認することができた。したがって、癌細胞株特異的に過発現するTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを処理して誘導されるアポトーシスが癌細胞株特異的に発生することを確認することができた(図7のA)。
【0168】
<7−2>TIP41発現抑制とTRAIL処理による正常細胞株のアポトーシスタンパク質分析
TIP41 siRNAを前記と同一な実験方法で正常細胞株にトランスフェクションさせた後、カスパーゼ−8、−3、JNK、PARPタンパク質の活性化を確認した。正常細胞株に100ng/TRAILを0、2、4時間処理し、その後、アポトーシス促進性タンパク質の発現および活性を前記で記載したウエスタンブロット方法を用いて確認した。
【0169】
その結果、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TIP41タンパクの発現が抑制さることを確認することができたが、その他のアポトーシス伝達経路に関与する、カスパーゼ−8、カスパーゼ−3、JNK、pJNK(リン酸化したJNK、phosphorylation JNK)の変化が観察されなかった。また、これらのタンパク質が活性化されないことを確認することにより、TIP41 siRNAとTRAILによるアポトーシスが癌細胞株特異的な反応であることを確認することができた(図7のB)。
【0170】
<実験例8>癌細胞株でTRAIL発現抑制を通じたTIP41媒介アポトーシス
<8−1>肺癌細胞株でTIP41タンパク質発現抑制を通じたTIP41媒介アポトーシス
<8−1−1>ウエスタンブロット方法によるTIP41タンパク質発現抑制で誘導される肺癌細胞株のアポトーシスの確認
前記の<実験例>で用いた肝癌細胞株以外のTRAIL耐性癌細胞株でTIP41タンパク質発現抑制によるTRAILの耐性克服するセンシタイザーとしての機能を検証するために、肺癌細胞株のA549細胞株で肝癌細胞の場合と同じ方法でTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、72時間経過後に100ng/mlのTRAILを0、1、2、3、4時間処理した後、アポトーシスに関連したタンパク質の活性化をウエスタンブロット方法を用いて確認した。
【0171】
その結果、肝癌の場合と同様に、JNKおよびカスパーゼ−8、PARPなどが活性化してアポトーシスが起きることを確認することができた(図8AのA)。
【0172】
<8−1−2>核染色法によるTIP41のタンパク質発現抑制で誘導される肺癌細胞株のアポトーシスの確認
肺癌細胞株のA549細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせて、細胞内TIP41発現量を減少させた後、TRAILを100ng/mlで処理した後、0、1、2、4、6時間帯にアポトーシスを核染色法を用いて測定した。
【0173】
アポトーシスの測定は、Hoechst33342で核を染色した後、蛍光顕微鏡で観察して死滅した細胞株を計数した。6ウェルプレートにTIP41発現抑制された細胞株を2×105細胞/ウェルずつ分注した。24時間後、前記の細胞に100ng/mlのTRAILを各々0、1、2、4、6時間処理した後、Hoechst33342を5μg/mlで30分間室温で染色した。核が染色された細胞株を蛍光顕微鏡で死滅した細胞株を計数して、アポトーシスを測定した。
【0174】
その結果、図8BのAに示すように、A549肺癌細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを処理した時、TRAILのみを処理した時よりアポトーシスが増加した。TRAILを処理する時間が長くなるほど、アポトーシスが増加し、TIP41 siRNAを処理した群では、対照群にsiRNAを処理時より約30%程度のアポトーシスの増加が観察された。したがって、A549肺癌細胞株でTIP41 siRNAがTRAIL抵抗を減少させることを確認することができた(図8BのA)。
【0175】
<8−1−3>FACS分析方法を用いて肺癌細胞でTIP41タンパク質発現抑制を通じたTRAIL媒介アポトーシスの確認
細胞内TIP41発現量を減少させるために、A549細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションして、TRAILを100ng/mlで処理した後、0、1、2、4、6時間帯にアポトーシスをアネキシンV−FITc/PI染色法で死滅した細胞株と正常細胞株を区別して染色した後、FACSを用いてアポトーシスを測定した。
【0176】
アポトーシスを測定するために、細胞株をトリプシンEDTAを用いて細胞株を得た後、FITc融合したアネキシンV(annexin v)(50μg/ml)とPI(50ng/ml)で20分間染色した後、アネキシンV−FITc/PI染色された細胞株の比率を分析するためにFACS Calibur(BD)を用いて、分析した。
【0177】
その結果、対照群のsiRNAを肺癌細胞株のA549細胞株に処理したものに比べて、本発明のTIP41 siRNAを処理した時、A549細胞株のアポトーシスが顕著に増加することを確認することができた(図8BのB)。また、図8BのCに示すように、TRAIL濃度を0、25、50、100および200ng/mlで処理し、4時間処理してアポトーシスを観察した結果、TRAIL処理濃度が高い程、TRAILとTIP41 siRNAを一緒に処理した時、アポトーシスが増加することを確認することができた(図8BのC)。
【0178】
これらの結果を通じて、本発明のTIP41 siRNAは、TRAILの耐性を有する肺癌細胞株のTRAIL耐性を減少させ、癌特異的アポトーシスを誘発する効果を有していることを確認することができた。
【0179】
<8−2>TIP41発現抑制による大腸癌細胞株でのTRAIL媒介アポトーシス
HCT116大腸癌細胞での場合と同一な方法で、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、72時間経過後、TRAILを0、50、100ng/mlで処理し、ビヒクル(vehicle)には、0.3%DMSOを処理した後、アポトーシスを誘導する実験を行った。死滅した細胞株を前記記載の方法と同一にアネキシンV−FITc/PI染色した後、アポトーシスを測定するためにFACS分析法を用いた。
【0180】
その結果、TRAILの処理濃度が高くなる程アポトーシスが増加することを確認することができ、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた群で、対照群と比較してアポトーシスが増加することを確認することができた。つまり、大腸癌細胞株でも肝癌細胞株の場合と同様に、アポトーシスが誘導されることを確認することにより、TIP41遺伝子はTRAIL耐性を有する癌のTRAILセンシタイザーとして使用が可能であることを確認した(図8AのB)。
【0181】
<8−3>TIP41発現抑制を通じた肝癌細胞株でのTRAIL媒介アポトーシス
前記の<実験例>で用いたHuh肝癌細胞株以外のTRAIL耐性癌細胞株でTIP41タンパク質発現抑制によるTRAILの耐性を克服するセンシタイザーとしての機能を検証するために、HepG2(肝臓肝細胞の細胞(liver hepatocellular cell))細胞とSK−Hep1細胞にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、72時間経過後、100ng/mlのTRAILを0、1、2、4、6時間処理した後、アポトーシスに関連したタンパク質の活性化をウエスタンブロット方法を用いて測定した。
【0182】
その結果、図8CのAおよびBに示すように、HepG2およびSK−Hep1細胞でTIP41 siRNAによってカスパーゼ−8とPARPが活性化してアポトーシスが起きることを確認することができた(図8CのAおよびB)。
【0183】
<実験例9>動物実験によるTIP41機能検証
<9−1>Huh7肝癌細胞株をヌードマウスに移植
ヌードマウスの右側の背部分に肝癌細胞株のHuh7肝癌細胞株を2×106程度移植した後、腫瘍を一定のサイズ(50〜100mm3)に成長させた。実験は、個体群ごとに7匹ずつ(n=7)、総28匹のヌードマウスをJapan SLc Inc.から購入して行なった。
【0184】
<9−2>TIP41発現抑制とTRAIL処理による腫瘍サイズの変化の測定
実験例<9−1>に記載した方法でHuh7肝癌細胞株をヌードマウスの背に移植して、腫瘍を形成した後、12日間、0、4、6、8日に対照 siRNA(control siRNA)とTIP41 siRNAをヌードマウスの背に形成した腫瘍に注入し、2、5、7、9、10、11日にTRAILを注入した後、12日にマウスを犠牲にした。50nMの濃度でリポフェクタミンRNAiMax試薬を用いて混合物を作成し、形成された腫瘍に注入し、2、5、7、9、10、11日にTRAILを2.5μg/kgずつ注入した後、4つのグループ(control siRNA+vehicle、control siRNA+TRAIL、TIP41 siRNA+vehicle、TIP41 siRNA+TRAIL)に分け、TIP41 siRNAとTRAIL処理による腫瘍のサイズを確認した。
【0185】
その結果、TIP41 siRNAを注入した群でcontrol siRNAを注入した群と比較して、腫瘍のサイズが減少することを確認することができ、TRAILを注入した時、control siRNAに比べてTIP41 siRNAを処理した後、さらに減少する腫瘍サイズを確認することができた(図9A)。
【0186】
<9−3>癌組織でアポトーシスの観察
SiRNAを処理していないヌードマウスと、control siRNA、TIP41 siRNAを処理したヌードマウスにTRAILを処理した群と、処理しない群に分けて、6群で生成された腫瘍を採取してホルマリンに固定した後、パラフィンに包埋した。5μmの厚さに切片をつくり、キシレンを用いてパラフィンを除去した後、エタノール濃度による再水和(rehydration)させた。4%パラホルムアルデヒド溶液を処理して、組織切片を固定し、プロテイナーゼK溶液を処理して、組織を透過可能にした後、4%パラホルムアルデヒド溶液に再度固定した後、TUNEL staining kit(promega,米国)を用いて、実験を行なった。平衡バッファーを用いて組織切片を平衡化させ、その間にrTdT反応溶液を準備して平衡化した部位にそれを処理した。最後に、ストレプトアビジンHRP溶液を処理してDAB混合物を用いて発色反応させた後、光学顕微鏡で観察した。
【0187】
その結果、siTIP RNAをトランスフェクションさせた群でアポトーシスが明確に増加していることを確認することができた(図6のB)。
【0188】
<9−4>腫瘍のアポトーシス測定
4つのグループ(control siRNA+vehicle、control siRNA+TRAIL、TIP41 siRNA+vehicle、TIP41 siRNA+TRAIL)から採取した腫瘍を溶解させてタンパク質を抽出した後、アポトーシスの標識因子であるカスパーゼ−8抗体を用いて、ウエスタンブロット方法でアポトーシスを確認した。
【0189】
その結果、TIP41タンパク質の発現量の減少でTIP41 siRNAの効果を確認することができ、TRAIL処理によって増加しなかったカスパーゼ−8の活性がTIP41 siRNAトランスフェクションさせた後、発現が明確に増加していることを確認することができた。これにより、TIP41 siRNAが生体内でも作用することができ、TRAILに耐性を有する癌に対して効果的にアポトーシスを誘導することにより、TRAIL耐性克服の効果を有する化学剤として使用できることを確認した(図9C)。
【0190】
<実験例10>TIP41とPP2Acとの相互結合測定
<10−1>発現ベクターの構成
TIP41、PP2Ac、MKK7、α(alpha)4およびPR65遺伝子を発現するベクターを製造するために、前記の肝癌細胞株からRNAを分離して、発現ベクターにクローニングした。逆向RNA(reserved RNA)を鋳型に用いて、個々の遺伝子に該当するプライマーを用いてPCRを行なった。TIP41正方向プライマー(配列番号 15:5'−cg ggt acc aa atg atg atc cac ggc ttc'−3')とTIP41逆方向プライマー(配列番号16:5'−ccc gga tcc tta ttc cac ttg tgt act−3')、PP2Ac正方向プライマー(配列番号17:5'−cg gga tcc atg gac gag aag gtg ttc−3')、PP2Ac逆方向プライマー(配列番号18:5'−a tag ttt agc ggc cgc tta cag gaa gta gtc tgg−3')、MKK7正方向プライマー(配列番号19:5'−ccg ctc gag atg gcg gcg tcc tcc ctg−3')、MKK7逆方向プライマー(配列番号20:5'−gg ggt acc cct gaa gaa ggg cag gtg−3')、α4正方向プライマー(配列番号21:5'−cg gga tcc atg gct gct gag gac gag−3')、α4逆方向プライマー(配列番号22:5'−a tag ttt agc ggc cgc tca gcc cat gtt ctg tcg−3')、PR65正方向プライマー(配列番号23:5'−cg gga tcc atg gcg gcg gcc gac ggc−3')、およびPR65逆方向プライマー(配列番号24:5'−a tag ttt agc ggc cgc tca ggc gag aga cag aac−3')を用いてPCRを行なった。前記のPCRの条件は、95℃で3分間で変性させた後、95℃で1分、58℃で1分、72℃で1分30秒の条件で30サイクル反復した後、72℃で10分間伸長した後、4℃に冷やした。
【0191】
TIP41に対するベクターの場合は、抽出されたPCR産物をKpnIとBamHI制限酵素で切断し、その後、pHAベクター(pcDNA3.1;Invitrogen社のベクターにHAタグ(HA tag)を挿入製造したベクター)に挿入した。使用したプライマーには、KpnIとBamHI制限部位が含まれていた。PP2Ac、PR65、MKK7、α4の場合、BamHIとNot I制限酵素認知部位を含むプライマーを用いて増幅させた後、生成されたPCR産物を精製した後、BamHIとNot I制限酵素でカットした後、pGSTベクター(pEBGベクター)(Mayerら,Current Biology,1995年,第5(3)巻,p.296−305)、また組換えタンパク質を製造するために、前述と同一のプライマーを用いてPCRを行った。MKK7およびPP2Acに対するPCR産物をE.coli発現ベクターであるpET21a(Novagen社)ベクターに各々挿入し、TIP41に対するPCR産物は、pGEX4T−1(GE helthcare社)ベクターに挿入した。前記のプロセスによって、pET21−MKK7、pET21−PP2Ac、およびpEGX4T−TIP41を製造した。
【0192】
<10−2>HEK293T細胞株の培養
韓国細胞株銀行から分譲されたHEK293T細胞株に10%の牛胎児血清を含んだダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)で37℃、5%CO2で培養した。SiRNAをトランスフェクションするためにHEK293T細胞株を1×106細胞/100mm皿に植えて24時間培養し、その後、トランスフェクションを行なった。
【0193】
<10−3>TIP41とPP2Acとの相互結合確認
本発明者らは、前記の実験を通じて、TIP41発現抑制およびTRAIL処理によるアポトーシスの原因が、JNKの継続的な活性化の結果であることを解明したが、それは、TIP41の発現抑制がJNK活性化作用機序を誘導するということを意味する。TIP41と結合することが知られているタンパク質によってJNK活性が調整されるかどうかを確認するために、最近の報告で、TIP41と結合することが知られたタンパク質ホスファターゼ2Ac(Protein phosphatase 2Ac、PP2Ac)を発現させる発現ベクターを、前記の実験例<10−1>で製造した。
【0194】
PP2Acタンパク質は、セリン/スレオニンホスファターゼで、いくつかのタンパク質のSer/Thrアミノ酸にリン酸化(phosphorylation)しているリン酸塩を除去する機能を実行する。PP2Acタンパク質の基質としてFoxo1、NF−κB(p65)、AMPK、MKK4などが知られている。
【0195】
まず、TIP41と結合することが知られているPP2Acとの結合を確認するために、HEK293T細胞株を2×105で100mmの培養皿に分注した後、前記の細胞株にリポフェクタミンLTX試薬を用いて実験例<10−1>で製造したPP2Ac発現ベクターを細胞にトランスフェクションさせてPP2Acを過発現させた。トランスフェクションした細胞から細胞溶解物を抽出して、GSTプルダウン分析を行なった。GSTプルダウン分析は、細胞溶解物1mg/mlにGSH−ビーズ40μlを添加した後、4℃で12時間注意深く撹拌した後、PBST[0.1%のツイーン20を含むPBS]バッファーを1mlずつ入れて洗浄し、それを6回反復した。その後、洗浄されたビーズに1×サンプルバッファー(ウエスタンブロット用)を100μlずつ添加した後、95℃ヒーティングブロックで5分間沸かした後、氷で2分間冷却した。その後、各々の抗体を用いて、前記記載と同一な条件で、ウエスタンブロットを行なった。
【0196】
その結果、図10のAに示すように、TIP41は陽性対照群として提供されたα4と同様に、PP2Acと結合することを確認することができた。また、GSTプルダウン前、全体細胞溶解物(WcL)を通じて各発現ベクターの発現量も確認した(図10のA)。
【0197】
<10−4>TIP41とPP2Ac複合体の相互作用確認
TIP41とJNKキナーゼとして知られているPP2Acとの結合を確認するために、実験例<10−1>で製造された発現ベクターをHEK293T細胞株に前記と同一な方法でトランスフェクションさせた後、GSTプルダウンしてウエスタンブロットを行なった。
【0198】
その結果、図10のBに示すように、TIP41とPP2Ac複合体の結合すなわち、PP2Ac、PR65とα4の結合を確認できた(図10のB)。
【0199】
<実験例11>TIP41とMKK7間の相互作用確認
<11−1>MKK7過発現後、TIP41とMKK7間の相互作用確認
TIP41とJNKキナーゼとして知られているMKK7との間の結合を確認するために、前記の<実験例10>で製造したMKK7発現ベクターをHEK293T細胞にトランスフェクションさせて過発現させた後、<実験例10>と同一な方法でGSTプルダウン分析を行なった。
【0200】
その結果、図11のAに示すように、TIP41とMKK7の結合を確認することができた(図11のA)。
【0201】
<11−2>免疫沈降法を用いたTIP41とMKK7の相互作用確認
TIP41とMKK7間の相互作用を確認するために、各々の抗体を用いて、免疫沈降法を行なった後、ウエスタンブロットを行なってTIP41とMKK7間の結合を確認した。免疫沈降法は、沈降させたタンパク質の抗体を細胞溶解物1mgに2μgずつ入れて、4℃で2時間反応させた後、プロテインGセファロースビーズ30μlずつ入れて、4℃で12時間反応させる。その後、PBST[0.1%のツイーン20を含むPBS]バッファーを1mlずつ入れて洗浄し、それを4回反復した。その後、洗浄されたビーズに1×サンプルバッファー(ウエスタンブロット用)100μlずつ添加した後、95℃ヒーティングブロックで5分間沸かした後、氷で2分間冷却した。その後、MKK7、TIP41の抗体を用いて、ウエスタンブロットを行なった。
【0202】
その結果、図11のBに示すように、TIP41がMKK7と結合することを確認することができた(図11のB)。
【0203】
<実験例12>TIP41とPP2AcまたはTIP41とMKK7間の相互作用確認
TIP41とPP2AcおよびMKK7間の相互作用をより正確に確認するために、細胞内でTIP41とMKK7の相互作用ではない、E.coliで組換えタンパク質を合成し、合成されたタンパク質を1:1の反応率に反応させるGSTプルダウン分析を行なった。組換えタンパク質は、前記の実験例<10−1>で製造されたE.coli用発現ベクターをBL21 E.coli菌株に形質転換させて製造した。誘導は、形質転換したE.coliをLB培地に接種して、O.D値が0.4〜0.6の間になるように培養した後、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度が1mMになるように添加した後、2時間30℃で培養した。その後、超音波破砕を用いて溶解物を得てGSTプルダウンに用いた。
【0204】
その結果、図11のCに示すように、TIP41とMKK7が直接的に相互結合することを確認することができ、また、TIP41とPP2Acが直接的に相互結合することを確認した(図11のC)。
【0205】
また、TIP41とPP2AcおよびMKK7間の相互作用は、実験例<10−4>と同様に、行なった結果でも確認された(図10のB)。
【0206】
<実験例13>MKK7と結合するTIP41の結合部位の確認
MKK7と結合するTIP41の結合部位を確認するために、TIP41の断片発現ベクターを前記<実験例10>に記載されている方法でクローニングした。
【0207】
図12のAに示すように、全長TIP41をD1〜D6の六つの断片に分離し、それぞれに対応する下記のプライマーを用いて増幅させた後、pHA発現ベクターに挿入した。TIP41−D1正方向プライマー(配列番号15)とTIP41−D1逆方向プライマー(配列番号25:5'−cg gga tcc cag gct tga aac tcc atg−3')、TIP41−D2正方向プライマー(配列番号15)、TIP41−D2逆方向プライマー(配列番号26:5'−cg gga tcc g gaa ggt gga aca tgc atc−3')、TIP41−D3正方向プライマー(配列番号27:5'−gg ggt acc atg ctt aaa gtg gcc tgt g−3')、TIP41−D3逆方向プライマー(配列番号16)、TIP41−D4正方向プライマー(配列番号28:5'−cg gga tcc atg ctt aaa gtg gcc tgt−3')、TIP41−D4逆方向プライマー(配列番号29:5'−ccg ctc gag cag gct tga aac tcc atg−3')、TIP41−D5正方向プライマー(配列番号15)およびTIP41−D5逆方向プライマー(配列番号30:5'−cg gga tcc gtg ttc acc ctc cgt cct−3')、TIP41−D6正方向プライマー(配列番号31:5'−cg gga tcc aaa ttg aaa gcc aga gaa c−3')およびTIP41−D6逆方向プライマー(配列番号16)を用いてPCRを行った。
【0208】
D1〜D6のTIP41断片を発現するベクターを過発現させるために、HEK293T 3×106細胞株を100mm培養皿に植えた後、リポフェクタミンLTX試薬を用いて、クローニングされたTIP41 D1〜D6断片発現ベクターを細胞株に各々トランスフェクションした。トランスフェクションした細胞から細胞溶解物を抽出し、GSTプルダウン分析を行なった。GSTプルダウン分析は、前記と同一な方法で実行した。
【0209】
その結果、図12のBに示すように、MKK7と結合する断片は、全長TIP41タンパク質と断片D3とD6だった。したがって、MKK7は、記載されたTIP41タンパク質(配列番号1)のN末端から、230番〜272番部位に結合することを確認することができた(図12)。
【0210】
<実験例14>TIP41と結合するMKK7の結合部位確認
TIP41と結合するMKK7の結合部位を確認するために、MKK7断片発現ベクターを前記<実験例10>に記載されている方法でクローニングした。MKK7−D1正方向プライマー(配列番号32:5'−cg gga tcc cgc agc atg gag agc att−3')とMKK7−D1逆方向プライマー(配列番号20)、MKK7−D5正方向プライマー(配列番号33:5'−cg gga tcc gcc ggc tgt gcc gcc tac−3')、MKK7−D5逆方向プライマー(配列番号20)、MKK7−D6正方向プライマー(配列番号19)、MKK7−D6逆方向プライマー(配列番号34:5'−at agt tta gcg gc cg cta aat gcg ctc ggg gat ggg−3')を用いてPCRを行なった。図13のAに示すように、全長MKK7をD1、D5およびD6の3つの断片に分けて、それぞれに該当する前記のプライマーを用いて増幅させた後、pGST発現ベクターに挿入した。
【0211】
D1、D5およびD6のMKK7断片を発現するベクターを過発現させるために、HEK293T 3×106細胞株を100mm培養皿に植えた後、リポフェクタミンLTX試薬を用いて、クローニングされたMKK7 D1、D5およびD6断片発現ベクターを細胞株に各々トランスフェクションした。トランスフェクションした細胞から細胞溶解物を抽出し、GSTプルダウン分析を行なった。GSTプルダウン分析は、前記と同一な方法で行なった。
【0212】
その結果、図13のBに示すように、TIP41に対するMKK7の結合断片は、全長MKK7タンパク質と断片D6だった。したがって、TIP41は、MKK7(配列番号35)のアミノ酸配列でN末端1番〜85番部位に結合することが分かった(図13のB)。
【0213】
<実験例15>MKK7/JNK経路によって媒介されたアポトーシス
<15−1>MKK7発現抑制によるアポトーシスの減少
アポトーシス耐性がMKK7とTIP41間の相互作用によって媒介されることを確認するために、MKK7に対するsiRNAによるアポトーシス耐性の減少を調べた。
【0214】
Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNA、MKK7 siRNA各々および混合して導入した後、TRAILを100ng/mlの濃度で0、3、6時間刺激を与えた後に、アポトーシスをアネキシンV−FITc/PI染色法を用いたFACS分析法を用いて測定した。
【0215】
その結果、図14のAに示すように、MKK7発現抑制によってアポトーシスが減少することを確認することができた。これにより、TIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシスは、MKK7の役割が重要であることを確認することができた(図14のA)。
【0216】
<15−2>TIP41発現抑制によるMKK7/JNK経路活性化
実際にTIP41発現抑制が直接的にMKK7の活性化に関与して、それによってMKK7下部信号伝達に与える影響を確認するために、試験管内(in vitro)共免疫キナーゼ(immuno−co−kinase)分析を行なった。共免疫キナーゼの分析は、免疫沈降法の一種で、MKK7を沈降させた後、それを分離して試験管内(in vitro)状態で人為的にMKK7の基質およびMKK7の下部信号伝達に関与する基質を同時に定量的に添加して、リン酸化される程度を確認する実験方法である。前記のような方法でMKK7抗体を用いて免疫沈降をさせ、MKK7タンパク質に結合しているプロテインGビーズを得た後、キナーゼバッファーにMKK7の基質である組換えGST−JNK1とJNK1の基質であるGST−c−Junおよび標識因子して同位元素(−32P)を入れて、37℃で30分間反応させた。その後、1×タンパク質ローディングダイ(protein loading dye)を添加した後、95℃で5分間沸かした。10%のSDS−PAGEゲルに電気泳動した後、ゲルドライヤー機でゲルを乾燥させた後、BASリーダー(放射線測定機器、富士通、日本)で感光した。
【0217】
その結果、図14のBに示すように、TIP41発現抑制によってMKK7が活性化し、MKK7の基質であるGST−JNK1をリン酸化させ、また活性化したJNK1はJNKの下部経路の基質GST−c−junタンパク質をリン酸化させた。したがって、TIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理でMKK7が活性化され、それによりJNK伝達経路が活性化されることを証明した(図14のB)。
【0218】
下記に本発明の組成物のための製造例を提示する。
【0219】
<製造例1>薬学的製剤の製造
<1−1>散剤の製造
TIP41タンパク質発現または活性阻害剤 2g
乳糖 1g
前記の成分を混合し、気密包に充填して散剤を製造した。
【0220】
<1−2>錠剤の製造
TIP41タンパク質発現または活性阻害剤 100mg
トウモロコシ澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法によって、打錠して錠剤を製造した。
【0221】
<1−3>カプセル剤の製造
TIP41タンパク質発現または活性阻害剤 100mg
トウモロコシ澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法によって、ゼラチンカプセルに充填して、カプセル剤を製造した。
【0222】
<1−4>丸薬の製造
TIP41タンパク質発現または活性阻害剤 1g
乳糖 1.5g
グリセリン 1g
キシリトール 0.5g
前記の成分を混合した後、通常の方法によって1丸薬当り4gになるように製造した。
【0223】
<1−5>顆粒製造
TIP41タンパク質発現または活性阻害剤 150mg
大豆エキス 50mg
ブドウ糖 200mg
澱粉 600mg
前記の原料を混合し、30%のエタノール100mgを追加して、60℃で乾燥して顆粒形成した後、包に充填した。
【産業上の利用可能性】
【0224】
前記でみたように、TRAIL耐性を示す肝癌細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを処理した時、癌細胞株特異的アポトーシスが誘導され、それは肝癌のみならず、TRAIL耐性の肺癌および大腸癌でもアポトーシスを誘導し、腫瘍を移植したマウスにTIP41 siRNAとTRAILを注入した時、腫瘍のサイズ減少および癌細胞株の死滅を誘導する効果を有しているので、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有するTRAIL感受性増進用組成物または抗癌補助剤として有用に用いることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、TIP41の発現または活性抑制剤を含有するTRAIL感受性増進用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌は、人類の健康を脅かす最大の疾病の1つであり、細胞株が一連の突然変異過程を経て、無制限に非調整的な方法で増殖し、不死化して発生する疾病である。癌の発生の原因としては、化学物質、ウイルス、細菌、電離放射線などの環境または外的な要因と先天性の遺伝子突然変異等の内的な要因を挙げることができる(Klaunig&Kamendulis,Annu Rev Pharmacol Toxicol.,2004年、第44巻、p.239−267(非特許文献1))。
【0003】
初期に発見された癌の場合は、手術、放射線療法、化学療法などの治療法があるが、その副作用もまた大きな問題であり、末期癌や転移した癌の場合は、特別な治療法はなく、時限付で人生を終えるような状況である。また、癌に関連する多様な生化学的機序が解明され、それによる治療剤が開発されてきていますが、まだ癌に対する根本的な治療方法は解明されていない。
【0004】
TRAIL(TNF related apoptosis inducing ligand)は、腫瘍壊死因子(TNF)に属するサイトカインで、細胞死受容体経路(death receptor pathway)を活性化させることによってアポトーシスを誘導するリガンドである。TRAILは、4つの受容体を有していて、その中で細胞死受容体4/5(death receptor 4/5、DR4/5)は、癌細胞株で、デコイ受容体(decoy receptor 1/2、DcR1/2)は、正常な細胞株で過発現することが知られている。デコイ受容体の場合は、c−ターミナル末端に細胞死ドメインを有しておらず、アポトーシス信号伝達が細胞内に伝えられない。したがって、TRAILをベースとする治療法は、正常細胞株には副作用がない次世代の抗癌治療法として注目されている。
【0005】
現在までに報告されている多くの抗癌剤や癌阻害剤は、非特異性による正常組織への深刻な副作用、高い突然変異率による癌細胞株の耐性獲得などの問題点を有している。しかし、1997年にTRAILが正常な細胞には活性せず、癌細胞株にのみに作用してアポトーシスを誘導することが発見されて以来、TRAILは、癌細胞株特異的抗癌剤であるのみならず、既存の抗癌薬に対して抵抗性を獲得した癌細胞株の治療剤としての可能性が浮上してきた。しかし、乳癌、前立腺癌、子宮癌、肺癌、肝癌、脳腫瘍などの癌では、TRAIL耐性が現れていて、TRAILを癌細胞株に持続的に処理すると、TRAILに感受性を示していた癌細胞株も、だんだんTRAILに対して耐性を有するようになることが明らかになった。
【0006】
TRAIL耐性の機序は、デコイ受容体1と2の過発現などによる細胞死受容体4/5の作用阻害、細胞内アポトーシス信号伝達の阻害等が予想され、その中でも、細胞内信号伝達体系の変化による耐性の獲得が、より説得力のある機序として認識されている。これらの信号伝達体系の変化は、アポトーシス促進タンパク質(proapoptotic protein)の作用を阻害する抗アポトーシスタンパク質(antiapoptotic protein)の過発現が主な原因として報告された。これにより、新規TRAILの耐性を克服する治療法の発掘によってTRAIL耐性が克服され、癌細胞株特異的アポトーシスを増進させるTRAILセンシタイザー(sensitizer)の開発は必須的に求められる研究分野である。
【0007】
癌だけでなく、TRAILが媒介したアポトーシス経路が、リウマチ性関節炎、糖尿病性腎疾患、退行性脳疾患の疾病において重要な役割を果たすことが知られている(大韓リウマチ会誌Vol.12, No.2,2005年、6月(非特許文献2)、J AM Sco Nephrol,2008年、第19巻、p.904−914(非特許文献3)、Cell Death Differ.2003年1月、第10(1)巻、p.134−41(非特許文献4))。自己免疫疾患の一種である関節炎などにおいて、過多に活性化した免疫細胞の死滅を誘導し、病状の緩和と治療のためにTRAILを用いる多様な試みが行なわれている。したがって、TRAILは、前記の様々な癌の治療のみならず、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、関節リウマチ、1型糖尿病などのT細胞起因性の自己免疫疾患の治療等にも有用に用いることができる。
【0008】
TIP41遺伝子は、TIPRL(TOR signalling pathway regulator−like)とも呼ばれ、酵母から初めて分離された。TIP41タンパク質は、酵母でTAP42タンパク質と相互作用することにより、ラパマイシンに反応するTOR信号伝達体系を陰性的に調節することが知られている(Jacinto Eら,Mol cell、2001年、第8(5)巻、p.1017−26(非特許文献5))。ヒトのTIP41遺伝子は、酵母のTIP41遺伝子と37%の相同性を有し、NF−κ(kappa)B信号伝達体系とMAPK信号伝達体系を活性化することが知られている(Matsuda Aら,Oncogene,2003年、第22(21)巻、p.3307−3318(非特許文献6))。ヒトのTIP41遺伝子の機能は、酵母で表れるTIP41遺伝子の機能とは異なり、細胞株の増殖を活性化すると予想されるが、今までヒトのTIP41遺伝子の機能として報告された中で、肝癌や胃癌または癌の発生などと関連しては、いかなる報告もないのが実情である。
【0009】
それで、本発明者らは、従来のTRAIL耐性を示す肝癌細胞株にTIP41 siRNA(small interfering RNA)を処理して、TIP41の発現を抑制した後、TRAILを処理した時、癌細胞株の特異的アポトーシスが誘導され、それが肝癌のみならず、TRAILに対する耐性を有する肺癌と大腸癌でもアポトーシスが観察され、腫瘍を移植したマウスにTIP41 siRNAとTRAILを注入した時、腫瘍のサイズが減少、および癌細胞の死滅を誘導する効果を確認することによって、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Klaunig&Kamendulis,Annu Rev Pharmacol Toxicol.,2004年、第44巻、p.239−267
【非特許文献2】大韓リウマチ会誌Vol.12, No.2,2005年、6月
【非特許文献3】J AM Sco Nephrol,2008年、第19巻、p.904−914
【非特許文献4】Cell Death Differ.2003年1月、第10(1)巻、p.134−41
【非特許文献5】Jacinto Eら,Mol cell、2001年、第8(5)巻、p.1017−26
【非特許文献6】Matsuda Aら,Oncogene,2003年、第22(21)巻、p.3307−3318
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有する、TRAIL感受性増進用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有する、TRAIL感受性の増進用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、TIP41タンパク質の発現や活性抑制剤を含有する、抗癌補助剤(補助剤)を提供する。
【0014】
また、本発明は、本発明の抗癌補助剤を含む癌の治療または予防用組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、癌の予防や治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤をTRAIL媒介アポトーシスと関連した疾病にかかった個体に投与する工程を含む、TRAILに対する感受性を改善する方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を投与するための工程を含む、癌の予防方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を抗癌補助として、癌にかかった個体に投与する工程を含む、癌の治療方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、TRAIL媒介アポトーシスと関連する疾病の治療時にTRAIL感受性増進のために使用するための、TIP41の発現または活性抑制剤を提供する。
【0020】
また、本発明は、抗癌補助剤として使用するためのTIP41の発現または活性抑制剤を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のTRAIL耐性を示す肝癌細胞株にTIP41 siRNAを処理し、その発現を抑制した後、TRAILを処理した時、癌細胞株特異的アポトーシスが誘導され、肝癌のみならず、TRAILの耐性を有する肺癌、大腸癌にも効果が観察され、腫瘍を移植したマウスにTIP41 siRNAとTRAILを投与した時、腫瘍のサイズが減少して、癌細胞株の死滅を誘導する効果を有するので、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有するTRAIL感受性増進用組成物または抗癌補助剤として有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、肝癌組織におけるTIP41の発現増加様相とHuh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを処理してTIP41発現抑制を確認した図。図1のAは、肝癌組織に発現するTIP41を示した図。図1のBは、肝癌組織(HBV感染または非感染肝癌組織)とそれに隣接した正常組織におけるTIP41の発現量をウエスタンブロットを用いて示した図。図1のCは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した時のTIP41タンパク質の発現抑制を示した図。Si−cont:対照群siRNA、およびsi−TIP41:TIP41 siRNA。
【図2】図2は、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後に誘導されるアポトーシスを確認した図。図2のAは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後、アポトーシスを核染色法を用いて確認した図。Si−cont:対照群siRNA、si−1017:TIP41 siRNA。図2のBは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを時間帯別に処理した後、アネキシンV−FITc/PI染色法を用いたFACS分析した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図2のCは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを濃度別に処理した後、アネキシンV−FITc/PI染色法を用いたFACS分析した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。
【図3】図3は、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後、アポトーシスに関与するタンパク質の発現を確認した図。図3のAは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後、カスパーゼ(Casepase)−3、−8、−9、PARPの活性を確認した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図3のBは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後、シトクロムC(Cytochrome C)が細胞質(cytosol)に放出されることを確認した図。Si−cont:対照群siRNA、およびsi−TIP41:TIP41 siRNA。
【図4】図4は、TIP41 siRNAとTRAILを処理したHuh7肝癌細胞株のアポトーシス経路でJNK伝達経路の関連性を確認した図。図4のAは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを時間帯別に処理した後、JNKの活性化を確認した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図4のBは、TIP41 siRNAとTRAILを処理したHuh7肝癌細胞株でのJNK阻害剤によるアポトーシスの減少を示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。ビヒクル(Vehicle):0.3%ジメチルスルホキシド(DMSO)、SP600125:JNK阻害薬。
【図5】図5は、Huh7肝癌細胞株でTIP41 siRNAとTRAILで誘導されるアポトーシスがp53伝達経路非依存的な信号経路であることを示した図。図5のAは、Huh7肝癌細胞株でTIP41 siRNAとTRAILで誘導されるアポトーシスがp53伝達経路非依存的な信号経路であることを示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図5のBは、p53細胞株(ヌル細胞(null cell))にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAIL処理によるアポトーシスがp53とは無関係に誘導されることを確認した図。
【図6】図6は、TIP41のタンパク質の発現抑制とTRAIL受容体との関係を示した図。図6のAは、細胞株別TRAIL受容体の発現を示した図。図6のBは、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせ、TRAILを処理した後、TRAIL受容体の発現を示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図6のCは、肝癌の段階別の臨床組織でのTRAIL受容体の発現を示した図。
【図7】図7は、正常細胞株であるHAECにTIP41 siRNAとTRAILによってアポトーシスが誘導されていないことを示した図。図7のAは、正常細胞株であるHAECにTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを時間帯別に処理した後に誘導されるアポトーシスを示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA、Human Aortic Endothelial cell:ヒト大動脈内皮細胞株。図7のBは、正常細胞株であるHAECにTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを処理した後、アポトーシスに関与するアポトーシス促進性(pro−apoptotic)タンパク質の活性を確認した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。
【図8A】図8は、TIP41のタンパク質発現抑制後、TRAILを処理した肺癌、大腸癌細胞で増加することを示した図。図8AのAは、A549肺癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせることにより、TRAILを時間別に処理した後、カスパーゼ−3、−8、−9およびPARPの活性を確認した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。図8AのBは、HCT116大腸癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを濃度別に処理した後に誘導されるアポトーシスが、対照群siRNAに比べて増加していることを示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。
【図8B】図8は、TIP41のタンパク質発現抑制後、TRAILを処理した肺癌、大腸癌細胞で増加することを示した図。図8Bは、肺癌細胞株で細胞株の染色分析(8BのA)とFACS分析(8BのB、およびC)を通じて、TIP41 siRNAがTRAIL感受性を増大させ癌細胞の死滅を増加させる結果を示した図。
【図8C】図8は、TIP41のタンパク質発現抑制後、TRAILを処理した肺癌、大腸癌細胞で増加することを示した図。図8Cは、多様な肝癌細胞株でTIP41 siRNAがTRAIL感受性を増大させ、癌細胞の死滅を増加させる効果を確認した図。
【図9A】図9は、動物実験によるTIP41 siRNAの機能を検証した図。図9Aは、ヌードマウスに腫瘍を移植して、TIP41 siRNAとTRAILを注入した後、腫瘍のサイズが減少することを示した図とグラフ。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。
【図9B】図9は、動物実験によるTIP41 siRNAの機能を検証した図。図9Bは、ヌードマウスの腫瘍を染色によって、アポトーシスを示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−TIP41:TIP41 siRNA。
【図9C】図9は、動物実験によるTIP41 siRNAの機能を検証した図。図9Cは、ヌードマウスの腫瘍の溶解物からアポトーシスに関与しているカスパーゼ−8タンパク質の活性をウエスタンブロットで示した図。
【図10】図10は、TIP41とPP2Acとの相互作用を確認した図。図10のAは、PP2Acを過発現させた後、TIP41とPP2Acとの相互作用を確認したウエスタンブロット結果の分析図。図10のBは、TIP41とPP2Ac複合体間、およびTIP41とMKK7間の相互作用を確認した図。
【図11】図11は、TIP41とPP2Ac複合体とMKK7間の相互作用を確認した図。図11のAは、MKK7を過発現させた後、TIP41とPP2Ac複合体およびMKK7間の相互作用を確認した図。図11のBは、免疫沈降法を用いた、TIP41とPP2Ac複合体およびMKK7間の相互作用を確認した図。図11のCは、試験管内GST免疫沈降法を用いた、TIP41とPP2Ac複合体およびMKK7間の相互作用を確認した図。
【図12】図12は、MKK7と相互作用するTIP41の結合部位を確認した図。図12のAは、MKK7と相互作用するTIP41の結合部位を確認するために制作されたTIP41の断片を示した図。図12のBは、MKK7と相互作用するTIP41の結合部位をウエスタンブロットを通じて示した図。
【図13】図13は、TIP41と相互作用するMKK7の結合部位を確認した図。図13のAは、TIP41と相互作用するMKK7の結合部位を確認するために制作されたMKK7の断片を示した図。図13のBは、TIP41と相互作用するMKK7の結合部位をウエスタンブロットを通じて示した図。
【図14】図14は、TIP41と相互作用するMKK7によるアポトーシス経路を確認した図。図14のAは、MKK7発現抑制後に減少するアポトーシスの減少を確認した図。図14のBは、TIP41発現抑制後、MKK7/JNK経路の活性化を示した図。Si−cont:対照群siRNA、si−MKK7:MKK7 siRNA。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明は、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有するTRAIL感受性増進用組成物を提供する。
【0025】
前記のTIP41タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を特徴とすることが好ましいが、これに限定されない。
【0026】
前記のTIP41タンパク質発現または活性阻害剤は、TRAILセンシタイザー(sensitizer)であることが好ましいが、これに限定されない。
【0027】
前記のTIP41タンパク質の発現抑制剤は、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNA(short interfering RNA)および低分子ヘアピン型RNA(short hairpin RNA)からなる群から選択されたいずれか1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0028】
前記のTIP41タンパク質の活性剤は、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体、および天然物からなる群から選択されるいずれか1つであることを特徴とするが、これに限定されない。
【0029】
前記の組成物は、TRAILを用いた癌、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療時に使用されることが好ましい。
【0030】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0031】
また、前記の炎症性疾患は、皮膚炎、アレルギー、アトピー、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽頭炎、扁桃腺炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大腸炎、痔、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛症(fibromyalgia)、乾癬性関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、腱周囲炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群(sjogren's syndrome)、多発性硬化症、急性および慢性の炎症性疾患からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0032】
また、前記の自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、重度の筋無力症、クレブス病、橋本氏甲状腺炎、アジソン病、白斑症、硬皮症、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、クローン病、強直性脊椎炎、ブドウ膜炎、血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、幼児糖尿病、自己免疫溶血性貧血、クリオグロブリン血症、副腎白質異栄養症および全身性紅斑性狼瘡からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0033】
アンチセンスヌクレオチド
アンチセンスヌクレオチドは、ワトソン・クリック型塩基対で定義されることによって、DNA、未成熟−mRNAまたは成熟したmRNAの相補的塩基配列に結合(混成化)して、DNAからタンパク質として遺伝子情報の流れを妨げるものである。標的配列に特定性があるアンチセンスヌクレオチドの性質は、それらを例外的に多機能にする。アンチセンスのヌクレオチドは、モノマー単位の長い鎖であるため、これらの標的RNA配列に対して簡単に合成することができる。最近の多くの研究は、標的タンパク質の研究のための生化学的手段としてアンチセンスヌクレオチドの有用性を証明した(Rothenbergら.,J.Natl.Cancer Inst,1999年,第81巻,p.1539−1544)。オリゴヌクレオチド化学および向上した細胞株吸着、標的結合親和度およびヌクレアーゼ耐性を示すヌクレオチド合成分野で、最近多くの進歩があったため、アンチセンスヌクレオチドの使用は、新しい形の抑制剤として考慮することができる。
【0034】
ペプチドミネティックス(Peptide Minetics)
前記のペプチドミネティックスは、TIP41活性を率いるTIP41タンパク質の結合ドメインを抑制するペプチドまたはペプチドである。非加水分解性ペプチド類似体の重要な残基としては、βターンペプチドコア(Nagaiら,Tetrahedron Lett,1985年,第26巻,p.647)、ケトメチレンシュードペプチド類(Ewensonら,J Med chem,1986年,第29巻,p.295;およびEwensonら,in Peptides:Structure and Function(Proceedings of the 9th AmeriCan Peptide Symposium)Pierce chemiCal co.Rockland,IL,1985年)、アゼピン(Huffmanら,in Peptides:chemistry and Biology,G.R.Marshall ed.,EScOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988年)、ベンゾジアゼピン(Freidingerら,in Peptides;chemistry and Biology,G.R.Marshall ed.,EScOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988年)、βアミノアルコール(Gordonら,Biochem Biophys Res commun,1985年,第126巻,p.419)、および置換されたγ−ラクタム環(Garveyら,in Peptides:chemistry and Biology,G.R.,Marshell ed.,EScOM Publisher:Leiden,Netherlands,1988年)を用いて作成することができる。
【0035】
SiRNA分子
センスRNAとアンチセンスRNAが二重鎖RNA分子を形成し、ここで、センスRNAがTIP41 mRNA中の一部の連続ヌクレオチドの標的配列と同一な核酸配列を含むsiRNA分子であることが好ましい。前記のsiRNA分子は、TIP41遺伝子の塩基配列内で選択される10〜30個の塩基からなるセンス配列および、前記のセンス配列に相補的に結合するアンチセンス配列からなることが好ましいが、これに限られるわけではなく、TIP41遺伝子の塩基配列を対象に相補的に結合できるセンス配列を有する二重鎖RNA分子ならすべて使用可能である。前記のセンス配列は、センス配列と相補的な配列を有していることが最も好ましい。
【0036】
抗体
TIP41抗体は、TIP41注入によって製造されたもの、または市販され購入したものなどすべて使用可能である。また、前記の抗体は、多クローン抗体、モノクローナル抗体およびエピトープと結合することのできる断片等を含む。
【0037】
多クローン抗体は、前記TIP41を動物に注入し、その動物から採血して抗体を含む血清を得る従来の方法で生成することができる。このような多クローン抗体は、当業界で知られている任意の方法によって精製することができ、ヤギ、ウサギ、猿、馬、牛、豚、犬などの任意の動物種の宿主から作ることができる。
【0038】
モノクローナル抗体は、継続的な細胞株の培養による抗体分子の生成を提供するいかなる技術を用いても製造することができる。これらの技術は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術およびEBVハイブリドーマ技術が含まる(Kohler Gら,Nature,1975年,第256巻,p.495−497;Kozbor Dら,J Immunol Methods,1985年,第81巻,p.31−42;cote RJら,Proc Natl ACad Sci,1983年,第80巻,p.2026−2030;cole SPら,Mol cell Biol,1984年,第62巻,p.109−126)。
【0039】
また、前記のTIP41に対する特定結合部位を含んだ抗体の断片を製造することができる。たとえば、これらに限定されるものではないが、F(ab')2断片は、抗体分子をペプシンで分解させて製造することができ、Fab断片は、F(ab')2断片のジスルフィドブリッジを還元させることにより製造することができる。他の方法として、Fab発現ライブラリを小さくして、所望する特異性を有するモノクローナルFab断片を迅速かつ容易に同定することができる(Huse WDら,Science,1989年,第254巻,p.1275−1281)。
【0040】
前記の抗体は、洗浄や複合体の分離など、それ以降の工程を容易にするために、固形基質(solid substrate)に結合することができる。固形基質は、たとえば、合成樹脂、ニトロセルロース、ガラス基板、金属基板、ガラス繊維、微細球体、微細ビーズなどがある。また、前記の合成樹脂には、ポリエステル、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン、ポリプロピレン、PVDFおよびナイロンなどがある。
【0041】
アプタマー(Aptamer)
アプタマーは、それ自体で安定した三次構造を有しながら標的分子に高い親和性と特異性で結合することができる特性を有する単一鎖核酸(DNA、RNA、または変形核酸)である。アプタマーは、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)と呼ばれるアプタマー発掘技術が最初に開発された後(Ellington,AD and Szostak,JW,Nature,1990年,第346巻,p.818−822)、低分子有機物、ペプチド、膜タンパク質まで、多様な標的分子に結合することができる多くのアプタマーが、継続して発掘された。アプタマーは、固有の高い親和性(普通pM水準)と特異性で標的分子に結合することができるという特性によって、単一抗体と比較され、特に「化学抗体」と呼ばれる程、代替抗体としての高い可能性がある。
【0042】
本発明の一実験例では、肝癌組織でTIP41タンパク質が正常組織に比べて過発現されることを、免疫組織染色法とウエスタンブロットを用いて確認した。また、肝癌細胞株でのTIP41発現抑制は、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた肝癌細胞株で確認することができた(図1を参照)。
【0043】
本発明の一実験例では、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせて、細胞内TIP41発現量を減少させた後にTRAILを時間別に処理した時、アポトーシスが増加することを、核染色法とFACS分析方法を用いて確認した。また、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを濃度別に処理してアポトーシスを誘導した後、FACS方法を用いて分析した結果、TIP41 siRNAとTRAILを一緒に処理した時、TRAILのみを処理した時よりアポトーシスが大幅に増加していることを確認することができた(図2を参照)。
【0044】
本発明の一実験例では、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを時間帯別に処理した時、アポトーシスに関与するタンパク質の発現を観察した結果、カスパーゼ−3、−8、−9およびポリ(ADPリボース)重合酵素(Poly ADP ribose polymelase、PARP)が活性化することを確認することができた。また、シトクロムCの発現が細胞質(cytosol)で確認されたことで、Huh7肝癌細胞株でTIP41タンパク質発現抑制とTRAIL媒介アポトーシスは、外因性経路と内因性経路が混在した形で起こることを確認することができた(図3を参照)。
【0045】
本発明の一実験例では、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを時間帯別に処理した時に、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)伝達経路の活性化を確認することができた、JNK阻害剤を処理した時に、TIP41タンパク質発現の抑制とTRAIL媒介アポトーシスの減少が観察されるので、このようなJNK伝達経路がTIP41タンパク質発現抑制を通じてTRAIL媒介アポトーシスに重要な役割を担っていることを知ることができた(図4を参照)。
【0046】
本発明の一実験例では、TIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理によって誘導されるアポトーシスが正常細胞株の死滅を誘導せず、癌細胞株に特異的に発生することを確認するために、自己アポトーシス経路に関与するp53タンパク質の影響を確認した結果、p53タンパク質の15と392番セリンにリン酸化が起きることを確認することができた。ただし、p53欠損HCTC同質遺伝子細胞株(p53−defecient HCT116 isogenic HCC cell)にTIP41タンパク質発現を抑制した後にTRAILを処理してアポトーシスを誘導した時、アポトーシスが誘導されることを確認した。これは、TIP41とTRAIL媒介アポトーシスは、p53非依存的経路を通じて起きることを示唆している(図5を参照)。
【0047】
本発明の一実験例では、細胞株別にTRAIL受容体の発現パターンを確認した結果、肝癌、肺癌細胞株でTRAIL−R2(DR5)の発現が正常な細胞株よりも、肝癌、肺癌細胞株で過発現することを確認した。また、肝癌細胞株でTIP41タンパク質発現を抑制させた後、肝癌細胞株でTRAIL受容体の発現を確認した結果、TRAIL受容体の発現が類似であることを確認した。これは、TIP41のタンパク質発現の抑制を通じたアポトーシスの増加が、TRAIL受容体発現の変化によるものでないことを示唆する(図6を参照)。
【0048】
本発明の一実験例では、正常な細胞株のTIP41 siRNAとTRAILを処理した後、アポトーシスを観察した結果、TIP41 siRNA処理に関係なく、アポトーシスの差異がなく、アポトーシスに関与するタンパク質の活性に差異がないことを確認することができた。したがって、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAIL媒介アポトーシスは、癌細胞株に特異的に発生することを確認することができた(図7を参照)。
【0049】
本発明の一実験例では、肝癌以外のTRAILに耐性を有する肺癌、大腸癌細胞株にsiRNAを用いたTIP41 4ノックダウン(knock down)とTRAIL処理による、アポトーシス誘導が確認された(図8を参照)。
【0050】
本発明の一実験例では、動物実験によるTIP41の機能を確認するために、肝癌細胞株をヌードマウスの背中に移植した後、TIP41 siRNAとTRAILを注入して、腫瘍のサイズの減少および癌細胞株の死滅を確認し、アポトーシスに関与するタンパク質の活性が、TRAILのみを注入した時より、TIP41 siRNAとTRAILをともに注入したした時に、アポトーシス関連タンパク質の活性化がさらに増加することを確認することができた(図9を参照)。
【0051】
また、TRAILセンシタイザーとしてTIP41 siRNAによって誘導されるアポトーシスの経路を確認するために、TIP41と結合するタンパク質として知られているMKK7とPP2Ac複合体間の相互作用を確認した(図10と図11を参照)。
【0052】
また、より具体的にTIP41と結合するMKK7の結合部位を確認するために、MKK7の多様な部分を含む断片を作成し、その結合部位を確認した(図12と図13を参照)。
【0053】
さらに、TIP41発現の抑制とTRAIL処理によって誘導されるアポトーシスの経路が前記TIP41とMKK7間の相互作用のためかどうかを確認するために、Huh7肝癌細胞株でMKK7の発現を抑制した後、アポトーシスを分析した。この場合、アポトーシスが減少する結果を確認することができた。より具体的には、本発明者らは、アポトーシスがMKK7活性によって誘導されるJNKの活性化によって起こるのかどうか実験した時、TIP41の抑制によるMKK7/JNK信号機序活性化が確認された(図14を参照)。
【0054】
したがって、TRAIL耐性を示す肝癌細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを処理した時、TRAILに対する耐性がある肝癌、肺癌、大腸癌でもアポトーシスが誘導された。また、腫瘍を移植したマウスにTIP41 siRNAとTRAILを注入した時、腫瘍のサイズの減少および癌細胞の死滅誘導が観察された。したがって、TIP41タンパク質発現または活性阻害剤は、TRAIL感受性増進用組成物の有効成分として有用に使用することができる。
【0055】
前記の組成物は、TIP41の発現、または活性阻害剤に同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含むことができる。
【0056】
前記の組成物は、臨床投与時に経口または非経口で投与が可能であり、非経口投与時は、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、子宮内硬膜注射、脳血管内注射や胸部内注射で投与することができ、一般的な医薬品製剤の形で使用することができる。
【0057】
前記の組成物は、単独で、または手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法および生物学的反応調節剤を使用する方法等と併用して使用することができる。
【0058】
前記の組成物の一日の投与量は、約0.0001〜100mg/kgで、好ましくは0.001〜10mg/kgであり、1日1回ないし数回に分けて投与することが好ましいが、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度等によってその範囲が多様である。
【0059】
本発明の組成物は、実際の臨床投与時に非経口の多様な剤形で投与することができ、製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤や賦形剤を用いて調剤する。非経口投与のための製剤には、殺菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを使用することができる。座薬の基剤としては、ハードファット(ウィテップゾール(witepsol))、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0060】
また、本発明は、TIP41タンパク質の発現や活性抑制剤を含有する抗癌補助剤を提供する。
【0061】
前記のTIP41タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸を有していることが好ましいか、これに限定されない。
【0062】
前記のTIP41タンパク質発現または活性阻害剤は、TRAILセンシタイザー(sensitizer)であることが好ましいが、これに限定されない。
【0063】
前記のTIP41タンパク質の発現の抑制剤は、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNA(short interfering RNA)および低分子ヘアピン型RNA(short hairpin RNA)からなる群から選択されたいずれか1つであることが好ましいか、これに限定されない。
【0064】
前記のTIP41タンパク質の活性抑制剤は、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体、および天然物からなる群から選択されたいずれか1つであることが好ましいか、これに限定されない。
【0065】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、癌、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましく、肝癌、肺癌または大腸癌であることがさらに好ましいがこれに限定されず、TRAILに対する耐性を有する癌はすべて含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0066】
また、前記の抗癌補助剤において、TIP41タンパク質の発現または活性阻害剤は、TRAIL感受性を増進することが好ましいが、これに限定されない。
【0067】
本発明の実験例では、TIP41のタンパク質が肝癌組織で過発現し(図1を参照)、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを時間帯別に処理した場合、アポトーシスがTRAILのみ処理した特よりもさらに増加した(図2を参照)。また、TIP41 siRNAとTRAIL媒介アポトーシス経路を調べるためにカスパーゼ−3、−8、−9およびポリ(ADPリボース)重合酵素活性と、JNK伝達経路関連タンパク質およびp53タンパク質を観察した結果、アポトーシスはTIP41 siRNAとTRAILをともに処理した時にTRAILを単独で処理した時よりも、アポトーシスがさらに増加しており、これは癌細胞株特異的アポトーシスであることを確認することができた(図3、図4、図5および図7を参照)。また、TIP41タンパク質の発現を抑制した場合、TRAIL受容体の発現は変化がないことを確認した(図6を参照)。また、肝癌以外のTRAILに耐性を有する他の細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを処理し、アポトーシスが誘導されることを確認した(図8を参照)。さらに、ヌードマウスの背中に移植した腫瘍のサイズが、TIP41 siRNAとTRAILを注入した時に、TIP41、TRAIL siRNAを単独注入した時よりも減少し、腫瘍組織から分離した、癌細胞株のアポトーシスとアポトーシスに関与するタンパク質の活性化が、TIP41 siRNAとTRAILを注入した時に最も多く観察された。
【0068】
したがって、TRAIL耐性を示す肝癌細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを処理した時、癌細胞株特異的アポトーシスTRAILに対する耐性を有する肝癌、肺癌、大腸癌でもアポトーシスが誘導され、腫瘍を移植したマウスでもTIP41 siRNAとTRAILを注入した時、腫瘍のサイズの減少および癌細胞株の死滅を誘導する効果を有するので、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有する抗癌補助剤として有用に使用できる。
【0069】
前記の抗癌補助剤は、TIP41の発現または活性阻害剤にさらに同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含むことができる。
【0070】
前記の抗癌補助剤は、臨床投与時に経口または非経口で投与が可能であり、非経口投与時は、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、子宮内硬膜注射、脳血管内注射や胸部内注射で投与することができ、一般的な医薬品製剤の形で使用することができる。
【0071】
前記の抗癌補助剤は、単独で、または手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法および生物学的反応調節剤を使用する方法等と併用して使用することができる。
【0072】
前記の抗癌補助剤の一日の投与量は、約0.0001〜100mg/kgで、好ましくは0.001〜10mg/kgであり、1日1回ないし数回に分けて投与することが好ましいが、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度等によってその範囲が多様である。
【0073】
本発明の抗癌補助剤は、実際の臨床投与時に非経口の多様な剤形で投与することができ、製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤や賦形剤を用いて調剤する。非経口投与のための製剤には、殺菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを使用することができる。座薬の基剤としては、ハードファット、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0074】
また、本発明は、本発明の抗癌補助剤を含む癌の治療または予防用組成物を提供する。
【0075】
本発明の実施例では、本発明のTIP41の発現または活性抑制剤をTRAILとともに処理した時、TRAILに耐性を有する多様な肝癌、肺癌、大腸癌細胞株の癌特異的なアポトーシスが増加した。また、本発明のTIP41の発現または活性抑制剤の癌特異的アポトーシスの生体内(in vivo)効果が、腫瘍を移植したヌードモデルで観察された。
【0076】
したがって、本発明のTIP41の発現または活性抑制剤を含有する抗癌補助剤は、癌の治療または予防用組成物の有効成分として有用に使用できる。
【0077】
前記の癌の治療または予防用組成物は、TIP41の発現または活性阻害剤に同一または類似の機能を有する有効成分を1種以上を含むことができる。
【0078】
前記の癌の治療または予防用組成物は、臨床投与時に経口または非経口で投与が可能であり、非経口投与時は、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、子宮内硬膜注射、脳血管内注射や胸部内注射で投与することができ、一般的な医薬品製剤の形で使用することができる。
【0079】
前記の癌の治療または予防用組成物は、単独で、または手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法および生物学的反応調節剤を使用する方法等と併用して使用することができる。
【0080】
前記の癌の治療または予防用組成物の一日の投与量は、約0.0001〜100mg/kgで、好ましくは0.001〜10mg/kgであり、1日1回ないし数回に分けて投与することが好ましいが、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度等によってその範囲が多様である。
【0081】
本発明の癌の治療または予防用組成物は、実際の臨床投与時に非経口の多様な剤形で投与することができ、製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤や賦形剤を用いて調剤する。非経口投与のための製剤には、殺菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどを使用することができる。座薬の基剤としては、ハードファット、マクロゴール、ツイーン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用することができる。
【0082】
また、本発明は、癌の予防や治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0083】
本発明の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法は、下記の工程を含む方法であることが好ましいが、これに限定されない。
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)の処理された細胞でTIP41とPP2Acタンパク質間の結合水準またはTIP41とMKK7タンパク質間の結合水準を確認する工程、および
(3)工程(2)のTIP41とPP2Acタンパク質間の結合水準またはTIP41とMKK7タンパク質間の結合水準を対照群と比較して減少させる被険物質を選別する工程。
【0084】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、癌、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌や膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましく、肝癌、肺癌または大腸癌であることがさらに好ましいがこれに限定されず、TRAILに対する耐性を有する癌はすべて含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0085】
本発明の癌の予防や治療剤のスクリーニング方法において、請求項第16項において、工程(2)のタンパク質の結合水準は、免疫沈降法(immunoprecipitation)、酵素免疫分析法(ELISA)、ウエスタンブロット法(Western Blotting)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(Glutathione−S−Transferase)(GST)プルダウン分析、タンパク質チップ(Protein Chip)、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer、FRET)、蛍光蛋白質再構成法(Bimolecular fluorescence complementation、BiFC)および酵母ツーハイブリッド(Yeast two−hybrid、Y2H)からなる群から選択されたいずれか1つで測定することが好ましいが、これに限定されない。
【0086】
また、本発明は、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0087】
本発明の癌の予防や治療剤のスクリーニング方法は、下記の工程を含む方法であることが好ましいが、これに限定されない。
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)で処理された細胞株でMKK7タンパク質の活性程度を測定する工程、および
(3)工程(2)のMKK7タンパク質の活性を対照群と比較して増加した被険物質を選別する工程を含む、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【0088】
前記の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法において、MMK7タンパク質の活性程度は、免疫蛍光法、酵素免疫分析法(ELISA)、質量分析およびタンパク質チップからなる群から選択されたいずれか1つで測定することが好ましいが、これに限定されない。
【0089】
また、本発明は、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【0090】
本発明の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法は、下記の工程を含む方法であることが好ましいが、これに限定されない。
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)で処理された細胞株でPP2Acタンパク質の発現程度を測定する工程、および
(3)工程(2)のPP2Acタンパク質の発現量を対照群と比較して減少させた被検物質を選別する工程。
【0091】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、癌、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌や膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましく、肝癌、肺癌または大腸癌であることがさらに好ましいがこれに限定されず、TRAILに対する耐性を有する癌はすべて含むことが好ましいが、これに限定されない。
【0092】
本発明の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法において、工程(2)のPP2Acタンパク質の発現程度は、逆転写重合酵素の連鎖反応(Reverse Transcription−Polymerase chain Reaction、RT−PCR)、酵素免疫分析法(ELISA)、免疫組織化学、ウエスタンブロット(Western Blotting)および流細胞分析法(FACS)からなる群から選択されたいずれか1つで測定することが好ましいが、これに限定されない。
【0093】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤をTRAIL媒介アポトーシスと関連した疾病にかかった個体に投与する工程を含む、TRAILへの感受性を増進させる方法を提供する。
【0094】
前記のTIP41タンパク質の発現または活性阻害剤は、TRAILセンシタイザーであることが好ましいが、これに限定されない。
【0095】
前記のTIP41タンパク質の発現の抑制剤は、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNAおよび低分子ヘアピン型RNAからなる群から選択されるいずれか1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0096】
前記のTIP41タンパク質の活性剤は、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体、および天然物から選択されるいずれか1つであることを特徴とするが、これに限定されない。
【0097】
前記のTRAIL媒介アポトーシスと関連する疾病は、癌、炎症性疾患や自己免疫疾患であることが好ましいが、これに限定されない。
【0098】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0099】
また、前記の炎症性疾患は、皮膚炎、アレルギー、アトピー、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽頭炎、扁桃腺炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大腸炎、痔、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛症、乾癬性関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、腱周囲炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、急性および慢性の炎症性疾患からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0100】
また、前記の自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、重度の筋無力症、クレブス病、橋本氏甲状腺炎、アジソン病、白斑症、硬皮症、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、クローン病、強直性脊椎炎、ブドウ膜炎、血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、幼児糖尿病、自己免疫溶血性貧血、クリオグロブリン血症、副腎白質異栄養症および全身性紅斑性狼瘡からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0101】
本発明の一実施例では、本発明のTIP41の発現または活性抑制剤をTRAILとともに処理した時、TRAILに耐性を有する多様な肝癌、肺癌、大腸癌細胞株の癌特異的なアポトーシスが増加した。また、本発明のTIP41発現または活性抑制剤の癌特異的アポトーシスの生体内(インビボ)効果が腫瘍を移植したヌードモデルで観察された。
【0102】
したがって、本発明のTIP41の発現または活性阻害剤は、TRAILに対する感受性を増進させる手段として有用に用いることができる。
【0103】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を個体に投与する工程を含む、癌の予防方法を提供する。
【0104】
また、本発明は、薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を抗癌補助剤として、癌にかかった個体に投与する工程を含む、癌の治療方法を提供する。
【0105】
前記の個体は、脊椎動物、好ましくは哺乳類であり、より好ましくは、ラット、ウサギ、ギニアピッグ、ハムスター、犬、猫などの実験動物で、最も好ましいのは、チンパンジー、ゴリラのような類人猿動物である。
【0106】
前記のTIP41の発現または活性抑制剤の治療学的に有効な量は、いくつかの要素は、例えば投与方法、目的部位、患者の状態によって異なり得る。したがって、人体に使用時の投与量は、安全性と効率性を考慮して適正な量に決定する必要がある。動物実験によって決定された有効な量からヒトに使用される量を推定することも可能である。有効な量の決定時に考慮する事項は、例えば、Hardman and Limbird,eds., Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th ed.(2001年),Pergamon Press;およびE.W.Martin ed.,Remington's Pharmaceutical Sciences,18th ed.(1990年),Mack Publishing Co.に記述されている。
【0107】
本発明のTIP41発現または活性阻害剤は、生物学的製剤に通常使用される担体、希釈剤、賦形剤、またはこれらを二つ以上組み合わせたものを含むことができる。薬学的に許容可能な担体は、TIP41の発現または活性抑制剤を生体内に伝達するのに適合したものなら特別に制限されず、例えば、Merck Index,13th ed.,Merck&Co.Inc.に記載されている化合物、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝生理食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、およびこれらの成分中、1成分以上を混合して使用でき、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など、他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤をさらに添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。さらに、当分野の適正な方法で、またはRemington's Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company,Easton PA,18th,1990年)に開示されている方法を用いて、それぞれの疾患や成分によって好ましく製剤化することができる。
【0108】
本発明のTIP41発現または活性阻害剤にさらに同一または類似の機能を有する有効成分を1種以上含むことができる。本発明の組成物は、組成物の総重量に対して前記のタンパク質を0.0001ないし10重量%、好ましくは0.001〜1重量%含む。
【0109】
本発明のTIP41発現または活性阻害剤は、目的とする方法によって非経口投与(たとえば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)したり経口投与したりでき、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与、投与方法、排泄率と疾患の重症度によってその範囲が多様である。本発明の組成物の一日の投与量は、0.001μg〜10mg/kgで、好ましくは0.01μg〜10mg/kgであり、1回ないし数回に分けて投与することが好ましい。
【0110】
また、本発明は、TRAIL媒介アポトーシスと関連する疾病治療時のTRAIL感受性を増進するために使用するためのTIP41の発現または活性抑制剤を提供する。
【0111】
さらに、本発明は、抗癌補助剤として使用するためのTIP41の発現または活性抑制剤を提供する。
【0112】
前記のTIP41タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を特徴とすることが好ましいが、これに限定されない。
【0113】
前記のTIP41タンパク質発現または活性阻害剤は、TRAILセンシタイザーであることが好ましいが、これに限定されない。
【0114】
前記のTIP41タンパク質の発現の抑制剤は、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNAおよび低分子ヘアピン型RNAからなる群から選択されたいずれか1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0115】
また、前記のTIP41タンパク質の活性剤は、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体、および天然物から選択されるいずれか1つであることを特徴とするが、これに限定されない。
【0116】
前記のTRAIL媒介アポトーシスと関連する疾病は、癌、炎症性疾患または自己免疫疾患であることが好ましいが、これに限定されない。
【0117】
前記の癌は、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0118】
また、前記の炎症性疾患は、皮膚炎、アレルギー、アトピー、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽頭炎、扁桃腺炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大腸炎、痔、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛症、乾癬性関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、腱周囲炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、急性および慢性の炎症性疾患からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0119】
また、前記の自己免疫疾患は、関節リウマチ、多発性硬化症、重度の筋無力症、クレブス病、橋本氏甲状腺炎、アジソン病、白斑症、硬皮症、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、クローン病、強直性脊椎炎、ブドウ膜炎、血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、幼児糖尿病、自己免疫溶血性貧血、クリオグロブリン血症、副腎白質異栄養症および全身性紅斑性狼瘡からなる群から選択される1つであることが好ましいが、これに限定されない。
【0120】
以下、本発明を実験例と製造例によって詳しく説明する。ただし、下記の実験例と製造例は、本発明を説明するだけのもので、本発明の内容が下記の実験例と製造例によって限定されるものではない。
【0121】
<実験例1>肝癌および肺癌組織でのTIP41タンパク質発現の確認
<1−1>免疫染色方法を用いたTIP41発現の確認
患者の肝癌組織(忠南大学校医科大学キム・ジンマン教授チーム)を10%中性バッファーホルマリン溶液で固定して、パラフィンを添加した後、5μm厚に切断した。切断されたセクション(section)を10mMのクエン酸バッファー(pH6.0)で、4分間処理した後、3%過酸化水素(H2O2)が含まれている0.1M Tris緩衝食塩水(TBS、pH7.4)に30分間置いた。前記のセクションをProtein Block Solution(DAKO)で、常温で20分間処理した後、アンチTIP41抗体と30分間反応させた。0.1M TBST(0.01% ツイーン20を含む0.1M TBS)で洗浄し、セクションをエヌビジョンアンチウサギポリマー(nVision anti−rabbit polymer)(DAKO)と30分間反応させた。ペルオキシダーゼが結合した抗体を3,3'−ジアミノベンジジン色原体基質溶液(3,3 '−diaminobenzidine(DAB)chromogen substrate solution)(DAKO)と反応させて、可視化した。顕微鏡下で観察して、適切に染色された時、0.1M TBSで洗浄して反応を終了させた後、オリンパスBX51顕微鏡(オリンパス、日本)を用いて観察し、オリンパスDP70カメラ(オリンパス、日本)でイメージを得た。
【0122】
その結果、一般の肝臓組織に比べて肝癌組織でTIP41が過発現することを確認することができた(図1のA)。また、肝癌、肺癌患者の周辺正常組織に比べて、TIP41タンパク質がこれらの患者の癌組織で過発現した(表1および表2)。TIP41発現と癌段階間の関係分析は、TIP41陽性発現がNSCLC、肺癌の高い段階と顕著に関連していることを示し(P=0.045)、これはTIP41の発現とNSCLC進行との間の関係を示す(表2)。このデータは、TIP41発現がHCCおよびNSCLC細胞で過発現することを示す。
【0123】
(表1)肝癌(HCC)臨床組織でのTIP41の発現量(IHC方法)
【0124】
(表2)肺癌(非小細胞性肺癌、NSCLC)の臨床組織での、TIP41の発現量(IHC方法)
【0125】
<1−2>ウエスタンブロットを用いたTIP41発現の確認
B型肝炎ウイルス(HBV)によって発病した肝癌患者7人とそうでない肝癌患者7人の肝癌組織および隣接正常組織(忠南大学校医科大学)から抽出されたタンパク質を用いて、TIP41タンパク質発現量をウエスタンブロット方法を用いて確認した。
【0126】
組織を溶解バッファー(lysis buffer)[20mM HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)(pH7.5)、150 mM塩化ナトリウム(Nacl)、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2mMエチレングリコール四酢酸(EGTA)、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]に組織を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸(cell debris)を削除し、タンパク質を得た。タンパク質は、SDS−PAGEを通じて分子量によって分離し、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜でトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間の非特異的反応を防ぐためにブロックした。1時間後、ニトロセルロース膜は1:2,000 TIP41(Betyl Laboratories,米国)および1:5,000GAPDH(Abforntier,韓国)で4℃で12時間以上の反応後、0.1%のTBST(Tris−Buffered Saline ツイーン−20)で10分ずつ3回洗浄した後、抗マウス(Pierce,米国)および抗ウサギ(Pierce,米国)二次抗体を常温で1時間反応させた。それを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄して、化学発光試薬を用いて発現を確認した。各組織の定量的対照群にハウスキーピング遺伝子のGAPDH(グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)を用いた。
【0127】
その結果、B型肝炎ウイルス(HBV)によって発病した肝癌患者7人とそうでない肝癌患者7人の肝癌組織でTIP41が過発現されていることを確認することができた(図1のB)。
【0128】
<1−3>肝癌細胞株の培養
韓国の細胞株銀行から分譲されたヒトのHuh7肝癌細胞株は、10%の牛胎児血清を含んだダルベッコの改変イーグル培地(Dulbecco's modified eagle's medium)(DMEM)で37℃、5%CO2で培養した。SiRNAをトランスフェクションさせるためにHuh7肝癌細胞株1×106細胞/100mm皿に植えて24時間培養し、その後、トランスフェクションを行なった。
【0129】
<1−4>siRNAのトランスフェクション
TIP41のTRAILセンシタイザーとしての機能を確認するためにsiRNA(Dharmacon RNAi Technologies,米国)を選別して効果的にTIP41タンパク質の発現を抑制する配列を構築した。
【0130】
前記の<1−3>で培養された2×105肝癌細胞株を60mm培養皿に植えてリポフェクタミンRNAimax(invitrogen)を用いて、製造元の指示に従って、siRNA(Small interfering RNA)をトランスフェクションした。72時間後に、トランスフェクションさせた細胞はTRAIL(100ng/ml)を0、0.5、1、2、3、4、6時間処理した後、細胞株をそれぞれの時間帯に溶解バッファーを用いて、細胞株からタンパク質を得てウエスタンブロットした。溶解バッファー([20mM HEPES(pH7.5)、150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2mMエチレングリコール四酢酸(EGTA)、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]で細胞を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸を削除して、タンパク質を得た。タンパク質は、SDS−PAGEによって分子量によって分離した後、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜でトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間非特異的反応を防ぐためにブロックした。1時間後、ニトロセルロース膜は1:2,000 TIP41(Bethyl Laboratories、米国)および1:5,000 チューブリン(Sigma aldrich、米国)で4℃で12時間以上の反応後、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄した後、抗マウス(Pierce、米国)および抗ウサギ(Pierce、米国)の二次抗体を常温で1時間反応させた。それを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、化学発光試薬を用いて発現を確認した。各組織の定量的対照群にハウスキーピング遺伝子であるGAPDHを用いた。
【0131】
使用されたTIP41 siRNA配列は、5'−CCT AAT GAA ATA TCC CAG TAT−3'(配列番号2)だった。
【0132】
その結果、TRAIL処理の有無に関係なく、TIP41 siRNAを処理した後、TIP41タンパク質の発現が完全に抑制されることを確認することができた(図1のC)。
【0133】
<実験例2>TIP41タンパク質発現の抑制とTRAL処理によるアポトーシス誘導
<2−1>核染色法を用いたTIP41タンパク質発現抑制で誘導されるアポトーシス分析
6ウェルプレートで前記実験例<1−1>の方法で培養されたTIP41発現抑制された細胞株を2×105細胞/ウェルずつ分注した。24時間後、TRAILを100ng/mlで各々0、2、4、6、8時間処理した後、Hoechst33342を5μg/mlで30分間室温で染色した。Hoechst33342で核を染色した後、蛍光顕微鏡で死滅した細胞数をカウントして、アポトーシスを測定した。
【0134】
その結果、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを同時に処理した時、TRAILのみを処理した時よりアポトーシスが増加した。TRAILを処理する時間が長くなるほど、アポトーシスが増加し、TIP41 siRNAを処理した群では、対照群にsiRNAを処理時より約30%程度のアポトーシスの増加が観察された。これにより、Huh7肝癌細胞株でTIP41 siRNAの処理は、TRAIL抵抗を減少させることを確認することができた(図2のA)。
【0135】
<2−2>FACSを用いたTIP41タンパク質発現抑制で誘導されるアポトーシスの分析
前記の実験例<1−1>の方法で培養したHuh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせて、細胞内TIP41発現量を減少させた後、TRAILを100ng/mlで処理した後、0、2、4、6、8時間帯にアポトーシスをアネキシンV−FITc/PI染色法で死滅した細胞株と正常細胞株を区別して染色した後、FACS(蛍光活性化セルソーター)を用いてアポトーシスを測定した。
【0136】
アポトーシスを測定するために、トリプシンEDTAを用いて細胞株を得た後、FITc融合したアネキシンV(50μg/ml)とPI(ヨウ化プロピジウム)(50ng/ml)で20分間染色後、FACS Calibur(BD)を用いて細胞株を分離し、アネキシンV−FITc/PI染色された細胞株の比率を分析した。
【0137】
その結果、TRAILを時間別に処理した後、アポトーシスが起こることをFACS分析を通じて確認することができた(図2のB)、同一の実験方法で、TRAILを0、25、50、100、200ng/ml濃度別に4時間処理した時、処理濃度によってアポトーシスが増加することを確認することができた(図2のC)。
【0138】
<実験例3>TIP41タンパク質発現の抑制およびTRAIL処理によって誘導されたアポトーシス経路確認
<3−1>カスパーゼの活性化
TIP41 siRNAとTRAILを処理した後に誘導されるアポトーシスの経路を確認するために、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた72時間後、TRAILを100ng/mlで0、0.5、1、2、4、6時間処理した後、カスパーゼ−3、−9、−9およびポリ(ADPリボース)重合酵素(PARP)の発現をウエスタンブロットを用いて測定した。
【0139】
前記の実験例<1−1>で培養した細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた72時間後、TRAILを100ng/mlで時間帯別に処理した。溶解バッファー[20mM HEPES(pH7.5)、150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2mMエチレングリコール四酢酸(EGTA)、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]で細胞を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸を削除してタンパク質を得た。タンパク質はSDS−PAGEを通じて分子量によって分離した後、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜でトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間非特異的反応を防ぐためにブロックした。1時間後、ニトロセルロース膜は1:1,000 カスパーゼ−3、カスパーゼ−8、カスパーゼ−9および1:2,000 PARP(cell signaling technology、米国)で4℃で12時間以上の反応させた後、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄した後、抗マウス(Pierce、米国)および抗ウサギ(Pierce、米国)の二次抗体を常温で1時間反応させた。これを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、化学発光試薬を用いて発現を確認した。
【0140】
その結果、TIP41タンパク質の発現が抑制された後、TRAILの時間別処理によってカスパーゼ−9、−8、−3とPARPが活性化していることを確認することができた(図3のA)。これから、TIP41のタンパク質発現抑制によるアポトーシスがTRAILの濃度および時間に依存的に増加することを確認することができた。
【0141】
<3−2>ミトコンドリアのシトクロムCの細胞質への放出
アポトーシスの経路を確認するために、ミトコンドリア(mitochondria)のシトクロムC(Cytochrome C)が細胞質に放出されるかどうかを確認するために、細胞分画(subcellular fractionation)およびウエスタンブロットを用いた。前記の実験例<1−1>の方法で培養したHuh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせて、細胞内TIP41発現量を減少させた後、60mm皿にTIP41の発現が抑制された細胞株を2×106細胞/皿に分注した。24時間後、TRAILを100ng/mlで、各々0、1、2、4時間処理した後、細胞分画を行なった。細胞分画は、Subcellular Proteome Extraction kit(Calbiochem社)を用いて行ない、キット(kit)は、4種類のバッファーで構成され、各バッファーの使用に応じて細胞質、ミトコンドリア、核および細胞骨格タンパク質の順で細胞分画が分離された。溶出バッファー1(extraction buffer 1)500μlを各々の細胞株に添加して、4℃で10分間撹拌した後、遠心分離して細胞質分画を得、溶出バッファー2 500μlを4℃で30分間撹拌した後、遠心分離してミトコンドリアの分画を得た。分画された細胞質とミトコンドリアにウエスタンブロットを用いた。
【0142】
前記の実験例<1−1>の培養細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた72時間後、TRAILを0、2、4、6時間に処理した。溶解バッファー(lysisバッファー)[20mM HEPES(pH7.5)、150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸、2mMエチレングリコール四酢酸、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]で細胞を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸を削除してタンパク質を得た。タンパク質はSDS−PAGEを通じて分子量によって分離した後、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜にトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間非特異的反応を防ぐためにブロックした。細胞質分画マーカーには、チューブリンを用いて、ミトコンドリアはペルオキシレドキシン IIIを用いた。1時間後、ニトロセルロース膜は1:1,000 シトクロムC(BD、米国)、1:5,000 チューブリン(Sigma aldrich,米国)および1:2,000 ペルオキシレドキシン3(Abfrontier、韓国)で4℃で12時間以上反応させた後、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄した後、抗マウス(Pierce、米国)および抗ウサギ(Pierce,米国)の二次抗体を1:2,000の比率で常温で1時間反応させた。これを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、化学発光試薬を用いて発現を確認した。
【0143】
その結果、TIP41 siRNAを処理した後、シトクロムCが細胞質に放出されることを確認することができた(図3のB)。つまり、カスパーゼ−8と−9が活性化して、ミトコンドリオン(mitochondrion)からの細胞質にシトクロムCが放出されることを確認した。これらの結果は、Huh7肝癌細胞株でTIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理によって誘導されるアポトーシスがカスパーゼ/ミトコンドリア依存性アポトーシス経路と密接に関連していることを示す。
【0144】
<実験例4>TIP41タンパク質発現抑制およびTRAIL処理で誘導されるJNK伝達経路の活性
<4−1>TIP41タンパク質発現抑制およびTRAIL処理で誘導されるJNK伝達経路のタンパク質活性
自己アポトーシスの場合、JNKリン酸化による経路が多くの論文で報告されており、p38の活性化もまたアポトーシスを誘導する可能性があるという報告があった。
【0145】
JNKおよびp38の活性がアポトーシスを誘導すると報告されている。これにより、前記の<実験例>で確認されたTIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシスとミトゲン活性化プロテインキナーゼ(Mitogen−Activated Protein,MAP)伝達経路、特にJNKとp38との関連性を確認するために、Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAIL(100ng/ml)を、0、1、2、4時間処理した。その後、ウエスタンブロットを用いて、TIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシスとJNKとp38との関連性を確認した。
【0146】
前記の実験例<1−1>の培養細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションした72時間後、TRAILを前記の時間帯別に処理した。溶解バッファー[20mM HEPES(pH7.5)、150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸、2mMエチレングリコール四酢酸、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]で細胞を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸を削除してタンパク質を得た。タンパク質は、SDS−PAGEを通じて分子量によって分離した後、分離したタンパク質をニトロセルロース膜でトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間非特異的反応を防ぐためにブロックした。1時間後、ニトロセルロース膜は1:1,000の比率でp−MKK7(cST Inc.,米国)とp−p38(cST Inc.,米国)を用い、1:1,000の比率でp−JNK(cST Inc.,米国)を用い、1:5,000の割合でチューブリン(Sigma aldrich,米国)を用いて4℃で12時間以上の反応させた後、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、抗マウス(Pierce,米国)および抗ウサギ(Pierce,米国)の二次抗体を1:2,000の比率で常温で1時間反応させた。それを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、化学発光試薬を用いて発現を確認した。
【0147】
その結果、図4のAに示すように、RNAiによるTIP1の下方調整は、TRAILによって誘導されるMKK7/JNK活性を延長するために十分であることが分かった(図4のA)。
【0148】
<4−2>JNK阻害剤処理によるアポトーシスの減少
JNK伝達経路とTIP41抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシス間の関連性を確認するために、実験例<4−1>と同一な方法で細胞株を培養し、TIP41 siRNAを処理した後、JNK阻害剤であるSP600125(10μg/ml)を1時間処理してJNK伝達経路を遮断した。TRAIL刺激で誘導されるアポトーシスをアネキシンV−FITc/PI染色法を用いたFACS分析法を用いて測定した。
【0149】
その結果、JNK阻害剤を処理してJNK伝達経路を遮断した後、TRAILを処理した実験で、アポトーシスが減少した。これにより、JNK伝達経路がTIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシスに重要な役割を遂行していることが分かった(図4のB)。
【0150】
<実験例5>TIP41タンパク質発現抑制とp53非依存的アポトーシス経路の確認
<5−1>肝癌細胞でp53非依存的アポトーシス経路の確認
現在使用されている抗癌剤の最も大きな問題点は、正常細胞株と癌細胞株を区別できず、正常細胞株を殺すという副作用を有しており、このような正常細胞の死滅機序は、p53経路の活性化を通して起きることが報告された。P53依存的アポトーシスを誘導する抗癌剤は、癌細胞株のみならず、正常細胞株にも影響を与えるので、TIP41 siRNAを処理した後、TRAILによって誘導されるアポトーシスがp53を通じて行なわれるのかどうかを確認した。
【0151】
TIP41 siRNAをHuh7肝癌細胞株にトランスフェクションした72時間後、100ng/mlのTRAILを0、2、4、および6時間処理した。ホスホp53(phospho−p53)抗体を用いたウエスタンブロット方法を実行して、アポトーシスがp53伝達経路を経由して行われるかどうかを確認するために、p53のリン酸化を確認する抗体を用いた。P−p53(Ser6)、p−p53(Ser9)、p−p53(Ser15)、p−p53(Ser20)、p−p53(Ser37)、p−p53(Ser46)およびp−p53(Ser392)を用いて、p53のセリン6、9、15、20、37、46、392番のリン酸化を確認した。
【0152】
溶解バッファー[20mM HEPES(pH7.5)、150mM塩化ナトリウム、1mMエチレンジアミン四酢酸、2mMエチレングリコール四酢酸、1%トリトンX−100、10%のグリセロール、プロテアーゼ阻害剤のカクテル、ホスファターゼ阻害剤のカクテルI/II]に細胞を溶解させた後、15,000rpmで10分間遠心分離して細胞の残骸を削除してタンパク質を得た。タンパク質は、SDS−PAGEを通じて分子量によって分離した後、分離したタンパク質をニトロセルロース膜でトランスファーさせた後、5%のスキムミルクで1時間非特異的反応を防ぐためにブロックした。1時間後、ニトロセルロース膜はすべて1:1,000の比率でp−p53(Ser6)、p−p53(Ser9)、p−p53(Ser15)、p−p53(Ser20)、p−p53(Ser37)、p−p53(Ser46)とp−p53(Ser392)(cST Inc,米国)で4℃で12時間以上の反応させた後、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、抗マウス(Pierce、米国)および抗ウサギ(Pierce,米国)の二次抗体を1:2,000の比率で常温で1時間反応させた。それを、0.1%のTBSTで10分ずつ3回洗浄し、化学発光試薬を用いて発現を確認した。
【0153】
その結果、細胞にTIP41 siRNAとTRAIL処理した時、p53タンパク質の15番と392番セリンにリン酸化が起きることを確認することができた(図5のA)。セリン15番のリン酸化は、DNA損傷などによるアポトーシスに関与するATM(Ataxia telangiectasia mutated)/ATR(ATM and RAD3−related)経路の活性化またはDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA−dependent protein kinase,DNA−PK)によって起きるようになり、アポトーシスとの関連が報告されていて、Ser392番のリン酸化は、核内でp53タンパク質がDNA配列に結合するのに関与することが知られている。したがって、TIP41タンパク質発現抑制を通じたTRAILによって誘導されるアポトーシスがp53依存的である可能性があるが、JNK伝達経路で活性化されるセリンが発現されない結果を考慮する時、p53の非依存的である可能性も排除することができなかった。
【0154】
<5−2>p53欠損細胞の培養
HCT116細胞株は、正常的にp53タンパク質を作る大腸癌細胞株であり、TRAIL耐性細胞株にTRAIL単一処理によってアポトーシスが頻繁に発生しないことが知られている。HCT116 p53欠如細胞は、Dr.B.Vogelsteinによって1998年に確立された細胞株で、p53遺伝子が欠損している(Vogelstein,B.,Science,1998年)。前記の細胞株の分譲を受けて実験に用い、細胞株は10%牛胎児血清、100mg/ml、ストレプトマイシン、そして100 IU/mlアンピシリンを含んだDMEM(Hyclone,米国)培地に、安定な抗生剤マーカーG418を100μg/ml添加して、3日周期で継代培養した。
【0155】
<5−3>p53欠損細胞株でp53非依存的アポトーシス経路の確認
P53非依存的である可能性を確認するために、前記の実験例<5−2>制作したHCT116 p53欠損細胞株にTIP41 siRNAをHuh7肝癌細胞株の場合と同じ実験方法でトランスフェクションした後、同一な条件でTRAILを処理して、アポトーシスを誘導した後、アネキシンV−FITc/PI染色法を用いたFACS分析法を行なった。
【0156】
その結果、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後にTRAILを処理した時、Huh7肝癌細胞株と同様にHCT116 p53欠損細胞株でもアポトーシスが良く誘導されており、これはTIP41のタンパク質発現抑制によるアポトーシスは、p53非依存的経路を通じてアポトーシスが誘導されることを意味する。したがって、図5のAに示されたp53セリン15番の活性化は、TIP41タンパク質発現抑制によるTRAILによって誘導されるアポトーシスに及ぼす影響は微々であり、p53が核に移動して、転写活性を高めることを推定することができた(図5のB)。
【0157】
<実験例6>TRAIL受容体の発現様相の測定
<6−1>細胞毎週TRAIL受容体の発現の確認
TRAIL抵抗性を克服させて、癌細胞株特異的な治療剤としての効能を高めるために、癌細胞株のアポトーシスを増加させる方法として、TRAIL受容体の発現を増加させる研究結果が報告された。このような研究と関連してTIP41遺伝子の発現抑制を通じたアポトーシスとTRAIL受容体との相関関係を確認するために、正常細胞株と肝癌および肺癌細胞株でTRAIL受容体の発現様相を確認した。TRAIL受容体は4種類に区分され、TRAIL−R1(DR4)、TRAIL−R2(DR5)、TRAIL−R3(DcR1)およびTRAIL−R4(DcR2)で、R1とR2は、細胞死受容体に作用してTRAILが結合すると、細胞株を自己アポトーシスが起きるように誘導するが、R3とR4はデコイ受容体で、TRAILがR1とR2に結合することを阻害してTRAILによるアポトーシスを阻害すると報告されている。
【0158】
定量的リアルタイムPCR(qPCR)は、Huh7肝癌細胞株、HAEC正常細胞株(Human aortic endothelial cell,clonetics 社)、A549肺癌細胞株(韓国細胞株銀行)をトリゾールを用いてRNAを抽出した後、抽出したRNA1μgの逆転写酵素superscript II(invitrogen)を用いてcDNAを合成し、それを鋳型に、TIP41、TRAIL−R1(Death receptor(DR)4)、TRAIL−R2(DR5)、TRAIL−R3(DcR1)およびTRAIL−R4(DcR2)遺伝子のプライマーを用いて、定量的リアルタイムPCRを行なった。PCRの結果は、2−DDct比較法(2−DDct comparative method)を通じて各遺伝子の相対的な発現量を確認した。TIP41正方向プライマー(配列番号3:5'−att gaa agc cag aga aca ga−3')とTIP41逆方向プライマー(配列番号4:5'−tct cgt gtc att cat tct ga−3')、DR4正方向プライマー(配列番号5:5'−ctc agc gga atc aat cag ctg tg−3')、DR4逆方向プライマー(配列番号6:5'−aga gga aca cga caa tca gcc tta g−3')、DR5正方向プライマー(配列番号7:5'−atc aag cgg ccc cct ttt ttt cac−3')、DR5逆方向プライマー(配列番号8:5'−ctc att gtc aca ctc ctc gac agc−3')、DcR1正方向プライマー(配列番号9:5'−tcc cca aga ccc taa agt tc−3')、DcR1逆方向プライマー(配列番号10:5'−ggc acc aaa ttc ttc aac ac−3')、DcR2正方向プライマー(配列番号11:5'−gca cag agg gtg tgg att ac−3')、およびDcR2逆方向プライマー(配列番号12:5'−gag cag atg cct ttg agg ta−3')を用いて、定量的リアルタイム PCRを行なった。ここで、定量的対照群としてベータ−2−マイクログロブリン(beta−2−microglobulin,B2M)の正方向プライマー(配列番号13:5'−ctc gct ccg tgg cct tag−3')および逆方向プライマー(配列番号14:5'−caa atg cgg cat ctt caa−3')で表されるプライマー対を用いて、定量的リアルタイムPCRを行った。前記のPCRの条件は、95℃で10分間で変性させた後、95℃で30秒、60℃で30秒、72℃で1分の条件で40サイクル反復した後、72℃で8分間伸長させた後、常温まで冷やした。定量的リアルタイムPCRの結果は、各試料別のTRAIL受容体発現量をB2M発現量に補正する2−DDct比較方法で分析した後、正常肝臓組織でのTRAIL受容体発現量に対する肝癌組織での発現量の倍数を図6に示した。
【0159】
その結果、TRAIL耐性癌細胞株の肝癌および肺癌細胞株でTRAIL−R3(DcR1)は、正常細胞株より低く発現し、TRAIL−R4(DcR2)は、正常細胞株と類似の水準で発現した。TRAIL−R1(DR4)の場合は、正常細胞株に比べて肝癌、肺癌細胞株で発現量が少し高いが全体の発現量は低く、TRAIL−R2(DR5)は、正常細胞株に比べて、肝癌、肺癌細胞株で過量に発現することを確認した。したがって、一般的に知られているように、細胞死受容体が肝癌、肺癌細胞株で多く発現し、このことからTRAIL耐性が受容体の発現とは関係がないことを確認することができた(図6のA)。
【0160】
<6−2>TIP41タンパク質発現抑制とTRAILを処理後、TRAIL受容体の発現確認
TIP41タンパク質のノックダウン(knockdown)で誘導されたアポトーシスとTRAIL受容体との相関関係を確認するために、TRAILおよびTIP41 siRNAで処理されたHuh7肝癌細胞株でのTRAIL受容体の発現水準を測定した。TIP41 siRNAをHuh7肝癌細胞株にトランスフェクション72時間後、100ng/mlのTRAILを4時間および6時間処理した。TRAILを処理した後、定量的リアルタイムPCRを行なうためにHuh7肝癌細胞株をトリゾールを用いてRNAを抽出した後、抽出したRNA1μgの逆転写酵素superscriptII(invitrogen)を用いてcDNAを合成し、それを鋳型に、TIP41、TRAIL−R1(Death receptor(DR)4)、TRAIL−R2(DR5)、TRAIL−R3(DcR1)およびTRAIL−R4(DcR2)遺伝子のプライマーを用いて、定量的リアルタイムPCRを行なった。PCRの結果は、2−DDct比較法を用いて、各遺伝子の相対的発現量を測定した。
【0161】
その結果、図6のBに示されているように、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた群と対照群とを比較してみると、TIP41タンパク質発現抑制後、TRAIL受容体(TRAIL−R1、−R2、−R3および−R4)の発現の差異は、ほとんど表れないことを確認することができた(図6のB)。
【0162】
<6−3>肝癌細胞組織別TRAIL受容体の発現確認
肝癌組織とそれに隣接する組織で、TRAIL受容体の発現様相をリアルタイム逆転写重合反応(Reverse Transcriptase−PCR)法で測定した。実験に使用した組織は、エドモンソン(Edmondson)及びステイナー(Steiner)分類法によってI(n=5)、II(n=5)、III(n=5)およびIV(n=4)に分類した、各肝癌段階にある患者の肝癌組織(hepatocellular Carcinoma、HCC)と周辺の正常組織を含む19の組織を、カトリック医大(Catholic University of Medicine in Seoul,韓国)で外科手術前の患者の同意の下で採取した。
【0163】
リアルタイム逆転写PCRは、トリゾールを用いて肝癌組織からRNAを抽出した後、抽出したRNA1μgを逆転写酵素superscript II(invitrogen)を用いてcDNAを合成し、それを鋳型にTRAIL−R1(Death receptor(DR)4)、TRAIL−R2(DR5)、TRAIL−R3(DcR1)およびTRAIL−R4(DcR2)遺伝子のプライマーを用いて、リアルタイムPCRを行なった。PCRの結果は、2−DDct比較法によって各遺伝子の相対的発現量を確認した。
【0164】
その結果、TRAIL−R1(DR4)の発現量が正常組織と比較して、肝癌組織で有意な増加を肝癌1段階で最も多く観察され、その次に、肝癌3段階の組織、肝癌2段階および4段階で、発現量の差異が有意に観察された。TRAIL−R2(DR5)の場合は、肝癌1段階と肝癌5段階で、正常組織に比べて肝癌組織で発現が有意に増加することが確認されたが、TRAIL−R3(DcR1)は、ほぼすべての段階で発現量が少なく、正常組織と肝癌組織間の差異が観察されなかった。また、TRAIL−R4(DcR2)は、肝癌の2段階でのみ正常組織に比べて肝癌組織で有意に増加することが観察され、それ以外の場合は、正常な組織と同じか、むしろ、正常組織で発現が増加することを確認することができた(図6のC)。
【0165】
<実験例7>正常細胞株でアポトーシスを確認
<7−1>FACS分析によるTIP41発現の抑制とTRAIL処理による正常細胞株でのアポトーシス分析
TIP41は、癌細胞株に特異的に発現するが、正常細胞株でも発現するため、TIP41の発現を抑制した時、癌細胞株のように正常細胞株のアポトーシスが誘導される可能性があるため、TIP41タンパク質の発現抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシスが癌細胞株特異的な反活性であることを確認するために、正常細胞株であるHAECにTIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理によってアポトーシスを誘導した。
【0166】
正常細胞株であるHAECにTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後72時間が経過した後、TRAILを100ng/mlで0、2、4時間処理し、アポトーシスを誘導した。死滅した細胞を前記で記載された方法と同一にアネキシンV−FITc/PI染色で分析した。
【0167】
その結果、TRAILを処理した後、TIP41 siRNAの処理の有無に関係なく、アポトーシスする程度に差異がないことを確認することができた。したがって、癌細胞株特異的に過発現するTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TRAILを処理して誘導されるアポトーシスが癌細胞株特異的に発生することを確認することができた(図7のA)。
【0168】
<7−2>TIP41発現抑制とTRAIL処理による正常細胞株のアポトーシスタンパク質分析
TIP41 siRNAを前記と同一な実験方法で正常細胞株にトランスフェクションさせた後、カスパーゼ−8、−3、JNK、PARPタンパク質の活性化を確認した。正常細胞株に100ng/TRAILを0、2、4時間処理し、その後、アポトーシス促進性タンパク質の発現および活性を前記で記載したウエスタンブロット方法を用いて確認した。
【0169】
その結果、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、TIP41タンパクの発現が抑制さることを確認することができたが、その他のアポトーシス伝達経路に関与する、カスパーゼ−8、カスパーゼ−3、JNK、pJNK(リン酸化したJNK、phosphorylation JNK)の変化が観察されなかった。また、これらのタンパク質が活性化されないことを確認することにより、TIP41 siRNAとTRAILによるアポトーシスが癌細胞株特異的な反応であることを確認することができた(図7のB)。
【0170】
<実験例8>癌細胞株でTRAIL発現抑制を通じたTIP41媒介アポトーシス
<8−1>肺癌細胞株でTIP41タンパク質発現抑制を通じたTIP41媒介アポトーシス
<8−1−1>ウエスタンブロット方法によるTIP41タンパク質発現抑制で誘導される肺癌細胞株のアポトーシスの確認
前記の<実験例>で用いた肝癌細胞株以外のTRAIL耐性癌細胞株でTIP41タンパク質発現抑制によるTRAILの耐性克服するセンシタイザーとしての機能を検証するために、肺癌細胞株のA549細胞株で肝癌細胞の場合と同じ方法でTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、72時間経過後に100ng/mlのTRAILを0、1、2、3、4時間処理した後、アポトーシスに関連したタンパク質の活性化をウエスタンブロット方法を用いて確認した。
【0171】
その結果、肝癌の場合と同様に、JNKおよびカスパーゼ−8、PARPなどが活性化してアポトーシスが起きることを確認することができた(図8AのA)。
【0172】
<8−1−2>核染色法によるTIP41のタンパク質発現抑制で誘導される肺癌細胞株のアポトーシスの確認
肺癌細胞株のA549細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせて、細胞内TIP41発現量を減少させた後、TRAILを100ng/mlで処理した後、0、1、2、4、6時間帯にアポトーシスを核染色法を用いて測定した。
【0173】
アポトーシスの測定は、Hoechst33342で核を染色した後、蛍光顕微鏡で観察して死滅した細胞株を計数した。6ウェルプレートにTIP41発現抑制された細胞株を2×105細胞/ウェルずつ分注した。24時間後、前記の細胞に100ng/mlのTRAILを各々0、1、2、4、6時間処理した後、Hoechst33342を5μg/mlで30分間室温で染色した。核が染色された細胞株を蛍光顕微鏡で死滅した細胞株を計数して、アポトーシスを測定した。
【0174】
その結果、図8BのAに示すように、A549肺癌細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを処理した時、TRAILのみを処理した時よりアポトーシスが増加した。TRAILを処理する時間が長くなるほど、アポトーシスが増加し、TIP41 siRNAを処理した群では、対照群にsiRNAを処理時より約30%程度のアポトーシスの増加が観察された。したがって、A549肺癌細胞株でTIP41 siRNAがTRAIL抵抗を減少させることを確認することができた(図8BのA)。
【0175】
<8−1−3>FACS分析方法を用いて肺癌細胞でTIP41タンパク質発現抑制を通じたTRAIL媒介アポトーシスの確認
細胞内TIP41発現量を減少させるために、A549細胞株にTIP41 siRNAをトランスフェクションして、TRAILを100ng/mlで処理した後、0、1、2、4、6時間帯にアポトーシスをアネキシンV−FITc/PI染色法で死滅した細胞株と正常細胞株を区別して染色した後、FACSを用いてアポトーシスを測定した。
【0176】
アポトーシスを測定するために、細胞株をトリプシンEDTAを用いて細胞株を得た後、FITc融合したアネキシンV(annexin v)(50μg/ml)とPI(50ng/ml)で20分間染色した後、アネキシンV−FITc/PI染色された細胞株の比率を分析するためにFACS Calibur(BD)を用いて、分析した。
【0177】
その結果、対照群のsiRNAを肺癌細胞株のA549細胞株に処理したものに比べて、本発明のTIP41 siRNAを処理した時、A549細胞株のアポトーシスが顕著に増加することを確認することができた(図8BのB)。また、図8BのCに示すように、TRAIL濃度を0、25、50、100および200ng/mlで処理し、4時間処理してアポトーシスを観察した結果、TRAIL処理濃度が高い程、TRAILとTIP41 siRNAを一緒に処理した時、アポトーシスが増加することを確認することができた(図8BのC)。
【0178】
これらの結果を通じて、本発明のTIP41 siRNAは、TRAILの耐性を有する肺癌細胞株のTRAIL耐性を減少させ、癌特異的アポトーシスを誘発する効果を有していることを確認することができた。
【0179】
<8−2>TIP41発現抑制による大腸癌細胞株でのTRAIL媒介アポトーシス
HCT116大腸癌細胞での場合と同一な方法で、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、72時間経過後、TRAILを0、50、100ng/mlで処理し、ビヒクル(vehicle)には、0.3%DMSOを処理した後、アポトーシスを誘導する実験を行った。死滅した細胞株を前記記載の方法と同一にアネキシンV−FITc/PI染色した後、アポトーシスを測定するためにFACS分析法を用いた。
【0180】
その結果、TRAILの処理濃度が高くなる程アポトーシスが増加することを確認することができ、TIP41 siRNAをトランスフェクションさせた群で、対照群と比較してアポトーシスが増加することを確認することができた。つまり、大腸癌細胞株でも肝癌細胞株の場合と同様に、アポトーシスが誘導されることを確認することにより、TIP41遺伝子はTRAIL耐性を有する癌のTRAILセンシタイザーとして使用が可能であることを確認した(図8AのB)。
【0181】
<8−3>TIP41発現抑制を通じた肝癌細胞株でのTRAIL媒介アポトーシス
前記の<実験例>で用いたHuh肝癌細胞株以外のTRAIL耐性癌細胞株でTIP41タンパク質発現抑制によるTRAILの耐性を克服するセンシタイザーとしての機能を検証するために、HepG2(肝臓肝細胞の細胞(liver hepatocellular cell))細胞とSK−Hep1細胞にTIP41 siRNAをトランスフェクションさせた後、72時間経過後、100ng/mlのTRAILを0、1、2、4、6時間処理した後、アポトーシスに関連したタンパク質の活性化をウエスタンブロット方法を用いて測定した。
【0182】
その結果、図8CのAおよびBに示すように、HepG2およびSK−Hep1細胞でTIP41 siRNAによってカスパーゼ−8とPARPが活性化してアポトーシスが起きることを確認することができた(図8CのAおよびB)。
【0183】
<実験例9>動物実験によるTIP41機能検証
<9−1>Huh7肝癌細胞株をヌードマウスに移植
ヌードマウスの右側の背部分に肝癌細胞株のHuh7肝癌細胞株を2×106程度移植した後、腫瘍を一定のサイズ(50〜100mm3)に成長させた。実験は、個体群ごとに7匹ずつ(n=7)、総28匹のヌードマウスをJapan SLc Inc.から購入して行なった。
【0184】
<9−2>TIP41発現抑制とTRAIL処理による腫瘍サイズの変化の測定
実験例<9−1>に記載した方法でHuh7肝癌細胞株をヌードマウスの背に移植して、腫瘍を形成した後、12日間、0、4、6、8日に対照 siRNA(control siRNA)とTIP41 siRNAをヌードマウスの背に形成した腫瘍に注入し、2、5、7、9、10、11日にTRAILを注入した後、12日にマウスを犠牲にした。50nMの濃度でリポフェクタミンRNAiMax試薬を用いて混合物を作成し、形成された腫瘍に注入し、2、5、7、9、10、11日にTRAILを2.5μg/kgずつ注入した後、4つのグループ(control siRNA+vehicle、control siRNA+TRAIL、TIP41 siRNA+vehicle、TIP41 siRNA+TRAIL)に分け、TIP41 siRNAとTRAIL処理による腫瘍のサイズを確認した。
【0185】
その結果、TIP41 siRNAを注入した群でcontrol siRNAを注入した群と比較して、腫瘍のサイズが減少することを確認することができ、TRAILを注入した時、control siRNAに比べてTIP41 siRNAを処理した後、さらに減少する腫瘍サイズを確認することができた(図9A)。
【0186】
<9−3>癌組織でアポトーシスの観察
SiRNAを処理していないヌードマウスと、control siRNA、TIP41 siRNAを処理したヌードマウスにTRAILを処理した群と、処理しない群に分けて、6群で生成された腫瘍を採取してホルマリンに固定した後、パラフィンに包埋した。5μmの厚さに切片をつくり、キシレンを用いてパラフィンを除去した後、エタノール濃度による再水和(rehydration)させた。4%パラホルムアルデヒド溶液を処理して、組織切片を固定し、プロテイナーゼK溶液を処理して、組織を透過可能にした後、4%パラホルムアルデヒド溶液に再度固定した後、TUNEL staining kit(promega,米国)を用いて、実験を行なった。平衡バッファーを用いて組織切片を平衡化させ、その間にrTdT反応溶液を準備して平衡化した部位にそれを処理した。最後に、ストレプトアビジンHRP溶液を処理してDAB混合物を用いて発色反応させた後、光学顕微鏡で観察した。
【0187】
その結果、siTIP RNAをトランスフェクションさせた群でアポトーシスが明確に増加していることを確認することができた(図6のB)。
【0188】
<9−4>腫瘍のアポトーシス測定
4つのグループ(control siRNA+vehicle、control siRNA+TRAIL、TIP41 siRNA+vehicle、TIP41 siRNA+TRAIL)から採取した腫瘍を溶解させてタンパク質を抽出した後、アポトーシスの標識因子であるカスパーゼ−8抗体を用いて、ウエスタンブロット方法でアポトーシスを確認した。
【0189】
その結果、TIP41タンパク質の発現量の減少でTIP41 siRNAの効果を確認することができ、TRAIL処理によって増加しなかったカスパーゼ−8の活性がTIP41 siRNAトランスフェクションさせた後、発現が明確に増加していることを確認することができた。これにより、TIP41 siRNAが生体内でも作用することができ、TRAILに耐性を有する癌に対して効果的にアポトーシスを誘導することにより、TRAIL耐性克服の効果を有する化学剤として使用できることを確認した(図9C)。
【0190】
<実験例10>TIP41とPP2Acとの相互結合測定
<10−1>発現ベクターの構成
TIP41、PP2Ac、MKK7、α(alpha)4およびPR65遺伝子を発現するベクターを製造するために、前記の肝癌細胞株からRNAを分離して、発現ベクターにクローニングした。逆向RNA(reserved RNA)を鋳型に用いて、個々の遺伝子に該当するプライマーを用いてPCRを行なった。TIP41正方向プライマー(配列番号 15:5'−cg ggt acc aa atg atg atc cac ggc ttc'−3')とTIP41逆方向プライマー(配列番号16:5'−ccc gga tcc tta ttc cac ttg tgt act−3')、PP2Ac正方向プライマー(配列番号17:5'−cg gga tcc atg gac gag aag gtg ttc−3')、PP2Ac逆方向プライマー(配列番号18:5'−a tag ttt agc ggc cgc tta cag gaa gta gtc tgg−3')、MKK7正方向プライマー(配列番号19:5'−ccg ctc gag atg gcg gcg tcc tcc ctg−3')、MKK7逆方向プライマー(配列番号20:5'−gg ggt acc cct gaa gaa ggg cag gtg−3')、α4正方向プライマー(配列番号21:5'−cg gga tcc atg gct gct gag gac gag−3')、α4逆方向プライマー(配列番号22:5'−a tag ttt agc ggc cgc tca gcc cat gtt ctg tcg−3')、PR65正方向プライマー(配列番号23:5'−cg gga tcc atg gcg gcg gcc gac ggc−3')、およびPR65逆方向プライマー(配列番号24:5'−a tag ttt agc ggc cgc tca ggc gag aga cag aac−3')を用いてPCRを行なった。前記のPCRの条件は、95℃で3分間で変性させた後、95℃で1分、58℃で1分、72℃で1分30秒の条件で30サイクル反復した後、72℃で10分間伸長した後、4℃に冷やした。
【0191】
TIP41に対するベクターの場合は、抽出されたPCR産物をKpnIとBamHI制限酵素で切断し、その後、pHAベクター(pcDNA3.1;Invitrogen社のベクターにHAタグ(HA tag)を挿入製造したベクター)に挿入した。使用したプライマーには、KpnIとBamHI制限部位が含まれていた。PP2Ac、PR65、MKK7、α4の場合、BamHIとNot I制限酵素認知部位を含むプライマーを用いて増幅させた後、生成されたPCR産物を精製した後、BamHIとNot I制限酵素でカットした後、pGSTベクター(pEBGベクター)(Mayerら,Current Biology,1995年,第5(3)巻,p.296−305)、また組換えタンパク質を製造するために、前述と同一のプライマーを用いてPCRを行った。MKK7およびPP2Acに対するPCR産物をE.coli発現ベクターであるpET21a(Novagen社)ベクターに各々挿入し、TIP41に対するPCR産物は、pGEX4T−1(GE helthcare社)ベクターに挿入した。前記のプロセスによって、pET21−MKK7、pET21−PP2Ac、およびpEGX4T−TIP41を製造した。
【0192】
<10−2>HEK293T細胞株の培養
韓国細胞株銀行から分譲されたHEK293T細胞株に10%の牛胎児血清を含んだダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)で37℃、5%CO2で培養した。SiRNAをトランスフェクションするためにHEK293T細胞株を1×106細胞/100mm皿に植えて24時間培養し、その後、トランスフェクションを行なった。
【0193】
<10−3>TIP41とPP2Acとの相互結合確認
本発明者らは、前記の実験を通じて、TIP41発現抑制およびTRAIL処理によるアポトーシスの原因が、JNKの継続的な活性化の結果であることを解明したが、それは、TIP41の発現抑制がJNK活性化作用機序を誘導するということを意味する。TIP41と結合することが知られているタンパク質によってJNK活性が調整されるかどうかを確認するために、最近の報告で、TIP41と結合することが知られたタンパク質ホスファターゼ2Ac(Protein phosphatase 2Ac、PP2Ac)を発現させる発現ベクターを、前記の実験例<10−1>で製造した。
【0194】
PP2Acタンパク質は、セリン/スレオニンホスファターゼで、いくつかのタンパク質のSer/Thrアミノ酸にリン酸化(phosphorylation)しているリン酸塩を除去する機能を実行する。PP2Acタンパク質の基質としてFoxo1、NF−κB(p65)、AMPK、MKK4などが知られている。
【0195】
まず、TIP41と結合することが知られているPP2Acとの結合を確認するために、HEK293T細胞株を2×105で100mmの培養皿に分注した後、前記の細胞株にリポフェクタミンLTX試薬を用いて実験例<10−1>で製造したPP2Ac発現ベクターを細胞にトランスフェクションさせてPP2Acを過発現させた。トランスフェクションした細胞から細胞溶解物を抽出して、GSTプルダウン分析を行なった。GSTプルダウン分析は、細胞溶解物1mg/mlにGSH−ビーズ40μlを添加した後、4℃で12時間注意深く撹拌した後、PBST[0.1%のツイーン20を含むPBS]バッファーを1mlずつ入れて洗浄し、それを6回反復した。その後、洗浄されたビーズに1×サンプルバッファー(ウエスタンブロット用)を100μlずつ添加した後、95℃ヒーティングブロックで5分間沸かした後、氷で2分間冷却した。その後、各々の抗体を用いて、前記記載と同一な条件で、ウエスタンブロットを行なった。
【0196】
その結果、図10のAに示すように、TIP41は陽性対照群として提供されたα4と同様に、PP2Acと結合することを確認することができた。また、GSTプルダウン前、全体細胞溶解物(WcL)を通じて各発現ベクターの発現量も確認した(図10のA)。
【0197】
<10−4>TIP41とPP2Ac複合体の相互作用確認
TIP41とJNKキナーゼとして知られているPP2Acとの結合を確認するために、実験例<10−1>で製造された発現ベクターをHEK293T細胞株に前記と同一な方法でトランスフェクションさせた後、GSTプルダウンしてウエスタンブロットを行なった。
【0198】
その結果、図10のBに示すように、TIP41とPP2Ac複合体の結合すなわち、PP2Ac、PR65とα4の結合を確認できた(図10のB)。
【0199】
<実験例11>TIP41とMKK7間の相互作用確認
<11−1>MKK7過発現後、TIP41とMKK7間の相互作用確認
TIP41とJNKキナーゼとして知られているMKK7との間の結合を確認するために、前記の<実験例10>で製造したMKK7発現ベクターをHEK293T細胞にトランスフェクションさせて過発現させた後、<実験例10>と同一な方法でGSTプルダウン分析を行なった。
【0200】
その結果、図11のAに示すように、TIP41とMKK7の結合を確認することができた(図11のA)。
【0201】
<11−2>免疫沈降法を用いたTIP41とMKK7の相互作用確認
TIP41とMKK7間の相互作用を確認するために、各々の抗体を用いて、免疫沈降法を行なった後、ウエスタンブロットを行なってTIP41とMKK7間の結合を確認した。免疫沈降法は、沈降させたタンパク質の抗体を細胞溶解物1mgに2μgずつ入れて、4℃で2時間反応させた後、プロテインGセファロースビーズ30μlずつ入れて、4℃で12時間反応させる。その後、PBST[0.1%のツイーン20を含むPBS]バッファーを1mlずつ入れて洗浄し、それを4回反復した。その後、洗浄されたビーズに1×サンプルバッファー(ウエスタンブロット用)100μlずつ添加した後、95℃ヒーティングブロックで5分間沸かした後、氷で2分間冷却した。その後、MKK7、TIP41の抗体を用いて、ウエスタンブロットを行なった。
【0202】
その結果、図11のBに示すように、TIP41がMKK7と結合することを確認することができた(図11のB)。
【0203】
<実験例12>TIP41とPP2AcまたはTIP41とMKK7間の相互作用確認
TIP41とPP2AcおよびMKK7間の相互作用をより正確に確認するために、細胞内でTIP41とMKK7の相互作用ではない、E.coliで組換えタンパク質を合成し、合成されたタンパク質を1:1の反応率に反応させるGSTプルダウン分析を行なった。組換えタンパク質は、前記の実験例<10−1>で製造されたE.coli用発現ベクターをBL21 E.coli菌株に形質転換させて製造した。誘導は、形質転換したE.coliをLB培地に接種して、O.D値が0.4〜0.6の間になるように培養した後、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度が1mMになるように添加した後、2時間30℃で培養した。その後、超音波破砕を用いて溶解物を得てGSTプルダウンに用いた。
【0204】
その結果、図11のCに示すように、TIP41とMKK7が直接的に相互結合することを確認することができ、また、TIP41とPP2Acが直接的に相互結合することを確認した(図11のC)。
【0205】
また、TIP41とPP2AcおよびMKK7間の相互作用は、実験例<10−4>と同様に、行なった結果でも確認された(図10のB)。
【0206】
<実験例13>MKK7と結合するTIP41の結合部位の確認
MKK7と結合するTIP41の結合部位を確認するために、TIP41の断片発現ベクターを前記<実験例10>に記載されている方法でクローニングした。
【0207】
図12のAに示すように、全長TIP41をD1〜D6の六つの断片に分離し、それぞれに対応する下記のプライマーを用いて増幅させた後、pHA発現ベクターに挿入した。TIP41−D1正方向プライマー(配列番号15)とTIP41−D1逆方向プライマー(配列番号25:5'−cg gga tcc cag gct tga aac tcc atg−3')、TIP41−D2正方向プライマー(配列番号15)、TIP41−D2逆方向プライマー(配列番号26:5'−cg gga tcc g gaa ggt gga aca tgc atc−3')、TIP41−D3正方向プライマー(配列番号27:5'−gg ggt acc atg ctt aaa gtg gcc tgt g−3')、TIP41−D3逆方向プライマー(配列番号16)、TIP41−D4正方向プライマー(配列番号28:5'−cg gga tcc atg ctt aaa gtg gcc tgt−3')、TIP41−D4逆方向プライマー(配列番号29:5'−ccg ctc gag cag gct tga aac tcc atg−3')、TIP41−D5正方向プライマー(配列番号15)およびTIP41−D5逆方向プライマー(配列番号30:5'−cg gga tcc gtg ttc acc ctc cgt cct−3')、TIP41−D6正方向プライマー(配列番号31:5'−cg gga tcc aaa ttg aaa gcc aga gaa c−3')およびTIP41−D6逆方向プライマー(配列番号16)を用いてPCRを行った。
【0208】
D1〜D6のTIP41断片を発現するベクターを過発現させるために、HEK293T 3×106細胞株を100mm培養皿に植えた後、リポフェクタミンLTX試薬を用いて、クローニングされたTIP41 D1〜D6断片発現ベクターを細胞株に各々トランスフェクションした。トランスフェクションした細胞から細胞溶解物を抽出し、GSTプルダウン分析を行なった。GSTプルダウン分析は、前記と同一な方法で実行した。
【0209】
その結果、図12のBに示すように、MKK7と結合する断片は、全長TIP41タンパク質と断片D3とD6だった。したがって、MKK7は、記載されたTIP41タンパク質(配列番号1)のN末端から、230番〜272番部位に結合することを確認することができた(図12)。
【0210】
<実験例14>TIP41と結合するMKK7の結合部位確認
TIP41と結合するMKK7の結合部位を確認するために、MKK7断片発現ベクターを前記<実験例10>に記載されている方法でクローニングした。MKK7−D1正方向プライマー(配列番号32:5'−cg gga tcc cgc agc atg gag agc att−3')とMKK7−D1逆方向プライマー(配列番号20)、MKK7−D5正方向プライマー(配列番号33:5'−cg gga tcc gcc ggc tgt gcc gcc tac−3')、MKK7−D5逆方向プライマー(配列番号20)、MKK7−D6正方向プライマー(配列番号19)、MKK7−D6逆方向プライマー(配列番号34:5'−at agt tta gcg gc cg cta aat gcg ctc ggg gat ggg−3')を用いてPCRを行なった。図13のAに示すように、全長MKK7をD1、D5およびD6の3つの断片に分けて、それぞれに該当する前記のプライマーを用いて増幅させた後、pGST発現ベクターに挿入した。
【0211】
D1、D5およびD6のMKK7断片を発現するベクターを過発現させるために、HEK293T 3×106細胞株を100mm培養皿に植えた後、リポフェクタミンLTX試薬を用いて、クローニングされたMKK7 D1、D5およびD6断片発現ベクターを細胞株に各々トランスフェクションした。トランスフェクションした細胞から細胞溶解物を抽出し、GSTプルダウン分析を行なった。GSTプルダウン分析は、前記と同一な方法で行なった。
【0212】
その結果、図13のBに示すように、TIP41に対するMKK7の結合断片は、全長MKK7タンパク質と断片D6だった。したがって、TIP41は、MKK7(配列番号35)のアミノ酸配列でN末端1番〜85番部位に結合することが分かった(図13のB)。
【0213】
<実験例15>MKK7/JNK経路によって媒介されたアポトーシス
<15−1>MKK7発現抑制によるアポトーシスの減少
アポトーシス耐性がMKK7とTIP41間の相互作用によって媒介されることを確認するために、MKK7に対するsiRNAによるアポトーシス耐性の減少を調べた。
【0214】
Huh7肝癌細胞株にTIP41 siRNA、MKK7 siRNA各々および混合して導入した後、TRAILを100ng/mlの濃度で0、3、6時間刺激を与えた後に、アポトーシスをアネキシンV−FITc/PI染色法を用いたFACS分析法を用いて測定した。
【0215】
その結果、図14のAに示すように、MKK7発現抑制によってアポトーシスが減少することを確認することができた。これにより、TIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理で誘導されるアポトーシスは、MKK7の役割が重要であることを確認することができた(図14のA)。
【0216】
<15−2>TIP41発現抑制によるMKK7/JNK経路活性化
実際にTIP41発現抑制が直接的にMKK7の活性化に関与して、それによってMKK7下部信号伝達に与える影響を確認するために、試験管内(in vitro)共免疫キナーゼ(immuno−co−kinase)分析を行なった。共免疫キナーゼの分析は、免疫沈降法の一種で、MKK7を沈降させた後、それを分離して試験管内(in vitro)状態で人為的にMKK7の基質およびMKK7の下部信号伝達に関与する基質を同時に定量的に添加して、リン酸化される程度を確認する実験方法である。前記のような方法でMKK7抗体を用いて免疫沈降をさせ、MKK7タンパク質に結合しているプロテインGビーズを得た後、キナーゼバッファーにMKK7の基質である組換えGST−JNK1とJNK1の基質であるGST−c−Junおよび標識因子して同位元素(−32P)を入れて、37℃で30分間反応させた。その後、1×タンパク質ローディングダイ(protein loading dye)を添加した後、95℃で5分間沸かした。10%のSDS−PAGEゲルに電気泳動した後、ゲルドライヤー機でゲルを乾燥させた後、BASリーダー(放射線測定機器、富士通、日本)で感光した。
【0217】
その結果、図14のBに示すように、TIP41発現抑制によってMKK7が活性化し、MKK7の基質であるGST−JNK1をリン酸化させ、また活性化したJNK1はJNKの下部経路の基質GST−c−junタンパク質をリン酸化させた。したがって、TIP41タンパク質発現抑制とTRAIL処理でMKK7が活性化され、それによりJNK伝達経路が活性化されることを証明した(図14のB)。
【0218】
下記に本発明の組成物のための製造例を提示する。
【0219】
<製造例1>薬学的製剤の製造
<1−1>散剤の製造
TIP41タンパク質発現または活性阻害剤 2g
乳糖 1g
前記の成分を混合し、気密包に充填して散剤を製造した。
【0220】
<1−2>錠剤の製造
TIP41タンパク質発現または活性阻害剤 100mg
トウモロコシ澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法によって、打錠して錠剤を製造した。
【0221】
<1−3>カプセル剤の製造
TIP41タンパク質発現または活性阻害剤 100mg
トウモロコシ澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法によって、ゼラチンカプセルに充填して、カプセル剤を製造した。
【0222】
<1−4>丸薬の製造
TIP41タンパク質発現または活性阻害剤 1g
乳糖 1.5g
グリセリン 1g
キシリトール 0.5g
前記の成分を混合した後、通常の方法によって1丸薬当り4gになるように製造した。
【0223】
<1−5>顆粒製造
TIP41タンパク質発現または活性阻害剤 150mg
大豆エキス 50mg
ブドウ糖 200mg
澱粉 600mg
前記の原料を混合し、30%のエタノール100mgを追加して、60℃で乾燥して顆粒形成した後、包に充填した。
【産業上の利用可能性】
【0224】
前記でみたように、TRAIL耐性を示す肝癌細胞株にTIP41 siRNAとTRAILを処理した時、癌細胞株特異的アポトーシスが誘導され、それは肝癌のみならず、TRAIL耐性の肺癌および大腸癌でもアポトーシスを誘導し、腫瘍を移植したマウスにTIP41 siRNAとTRAILを注入した時、腫瘍のサイズ減少および癌細胞株の死滅を誘導する効果を有しているので、TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有するTRAIL感受性増進用組成物または抗癌補助剤として有用に用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有する、TRAIL感受性増進用組成物。
【請求項2】
前記のTIP41タンパク質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有していることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記のTIP41タンパク質の発現抑制剤が、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNA(short interfering RNA)および低分子ヘアピン型RNA(short hairpin RNA)からなる群から選択されたいずれか1つであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記のTIP41タンパク質の活性剤が、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体、および天然物からなる群から選択されたいずれか1つであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
TRAILを用いた癌、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に使用されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記の癌が、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有する抗癌補助剤。
【請求項8】
前記のTIP41タンパク質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有していることを特徴とする、請求項7に記載の抗癌補助剤。
【請求項9】
前記のTIP41タンパク質の発現抑制剤が、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNA(short interfering RNA)および低分子ヘアピン型RNA(short hairpin RNA)からなる群から選択されたいずれか1つであることを特徴とする、請求項7に記載の抗癌補助剤。
【請求項10】
前記のTIP41タンパク質の活性剤が、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体および天然物からなる群から選択されたいずれか1つであることを特徴とする、請求項7に記載の抗癌補助剤。
【請求項11】
前記の癌が、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項7に記載の抗癌補助剤。
【請求項12】
前記のTIP41タンパク質の発現または活性阻害剤が、TRAIL感受性を増進させることを特徴とする、請求項7に記載の抗癌補助剤。
【請求項13】
請求項7〜請求項12のいずれか1項に記載の抗癌補助剤を含む、癌の治療または予防用組成物。
【請求項14】
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)の処理された細胞株でTIP41とPP2AcまたはMKK7タンパク質の結合水準を確認する工程、および
(3)工程(2)のTIP41とPP2AcまたはMKK7タンパク質の結合水準を対照群と比較して減少させる被検物質を選別する工程
を含む、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項15】
癌細胞株が、TRAIL耐性の癌細胞株であることを特徴とする、請求項14に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項16】
工程(2)のタンパク質の結合水準が、免疫沈降法(immunoprecipitation)、酵素免疫分析法(ELISA)、ウエスタンブロット法(Western Blotting)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(Glutathione−S−Transferase)(GST)プルダウン分析、タンパク質チップ(Protein Chip)、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer、FRET)、蛍光蛋白質再構成法(Bimolecular fluorescence complementation、BiFC)および酵母ツーハイブリッド(Yeast two−hybrid、Y2H)からなる群から選択されたいずれか1つで測定することを特徴とする、請求項14に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項17】
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)の処理された細胞株でMKK7タンパク質の活性程度を測定する工程、および
(3)工程(2)のMKK7タンパク質活性が対照群と比較して増加した被検物質を選別する工程
を含む、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項18】
癌細胞株が、TRAIL耐性癌細胞株であることを特徴とする、請求項17に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項19】
MKK7タンパク質の活性程度が、免疫蛍光法、酵素免疫分析法(ELISA)、質量分析およびタンパク質チップからなる群から選択されたいずれか1つで測定することを特徴とする、請求項17に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項20】
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)で処理された細胞株でPP2Acタンパク質の発現程度を測定する工程、および
(3)工程(2)のPP2Acタンパク質の発現量を対照群と比較して減少させた被検物質を選別する工程
を含む、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項21】
癌細胞株が、TRAIL耐性癌細胞株であることを特徴とする、請求項20に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項22】
工程(2)のPP2Acタンパク質の発現程度が、逆転写重合酵素の連鎖反応(Reverse Transcription−Polymerase chain Reaction、RT−PCR)、酵素免疫分析法(ELISA)の免疫組織化学、ウエスタンブロット法(Western Blotting)および流細胞分析法(FACS)からなる群から選択されたいずれか1つで測定することを特徴とする、請求項20に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項23】
薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を、TRAIL媒介アポトーシスと関連した疾病にかかった個体に投与する工程を含む、TRAILに対する感受性を増進させる方法。
【請求項24】
前記のTRAIL媒介アポトーシスと関連した疾病が、癌、炎症性疾患または自己免疫疾患であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記の癌が、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記の炎症性疾患が、皮膚炎、アレルギー、アトピー、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽頭炎、扁桃腺炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大腸炎、痔、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛症(fibromyalgia)、乾癬性関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、腱周囲炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群(sjogren's syndrome)、多発性硬化症、急性および慢性の炎症性疾患からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記の自己免疫疾患が、関節リウマチ、多発性硬化症、重度の筋無力症、クレブス病、橋本氏甲状腺炎、アジソン病、白斑症、硬皮症、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、クローン病、強直性脊椎炎、ブドウ膜炎、血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、幼児糖尿病、自己免疫溶血性貧血、クリオグロブリン血症、副腎白質異栄養症および全身性紅斑性狼瘡からなる群から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を個体に投与する工程を含む、癌の予防方法。
【請求項29】
薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を抗癌補助剤として癌にかかった個体に投与する工程を含む、癌の治療方法。
【請求項30】
TRAIL媒介アポトーシスと関連した疾病の治療時にTRAIL感受性増進のために使用するための、TIP41の発現または活性抑制剤。
【請求項31】
抗癌補助剤として使用するためのTIP41の発現または活性抑制剤。
【請求項1】
TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有する、TRAIL感受性増進用組成物。
【請求項2】
前記のTIP41タンパク質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有していることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記のTIP41タンパク質の発現抑制剤が、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNA(short interfering RNA)および低分子ヘアピン型RNA(short hairpin RNA)からなる群から選択されたいずれか1つであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記のTIP41タンパク質の活性剤が、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体、および天然物からなる群から選択されたいずれか1つであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
TRAILを用いた癌、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に使用されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記の癌が、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
TIP41タンパク質の発現または活性抑制剤を含有する抗癌補助剤。
【請求項8】
前記のTIP41タンパク質が、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有していることを特徴とする、請求項7に記載の抗癌補助剤。
【請求項9】
前記のTIP41タンパク質の発現抑制剤が、TIP41遺伝子のmRNAに相補的に結合するアンチセンスヌクレオチド、低分子干渉RNA(short interfering RNA)および低分子ヘアピン型RNA(short hairpin RNA)からなる群から選択されたいずれか1つであることを特徴とする、請求項7に記載の抗癌補助剤。
【請求項10】
前記のTIP41タンパク質の活性剤が、TIP41タンパク質に特異的に結合する化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、アプタマー、抗体および天然物からなる群から選択されたいずれか1つであることを特徴とする、請求項7に記載の抗癌補助剤。
【請求項11】
前記の癌が、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項7に記載の抗癌補助剤。
【請求項12】
前記のTIP41タンパク質の発現または活性阻害剤が、TRAIL感受性を増進させることを特徴とする、請求項7に記載の抗癌補助剤。
【請求項13】
請求項7〜請求項12のいずれか1項に記載の抗癌補助剤を含む、癌の治療または予防用組成物。
【請求項14】
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)の処理された細胞株でTIP41とPP2AcまたはMKK7タンパク質の結合水準を確認する工程、および
(3)工程(2)のTIP41とPP2AcまたはMKK7タンパク質の結合水準を対照群と比較して減少させる被検物質を選別する工程
を含む、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項15】
癌細胞株が、TRAIL耐性の癌細胞株であることを特徴とする、請求項14に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項16】
工程(2)のタンパク質の結合水準が、免疫沈降法(immunoprecipitation)、酵素免疫分析法(ELISA)、ウエスタンブロット法(Western Blotting)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(Glutathione−S−Transferase)(GST)プルダウン分析、タンパク質チップ(Protein Chip)、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer、FRET)、蛍光蛋白質再構成法(Bimolecular fluorescence complementation、BiFC)および酵母ツーハイブリッド(Yeast two−hybrid、Y2H)からなる群から選択されたいずれか1つで測定することを特徴とする、請求項14に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項17】
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)の処理された細胞株でMKK7タンパク質の活性程度を測定する工程、および
(3)工程(2)のMKK7タンパク質活性が対照群と比較して増加した被検物質を選別する工程
を含む、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項18】
癌細胞株が、TRAIL耐性癌細胞株であることを特徴とする、請求項17に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項19】
MKK7タンパク質の活性程度が、免疫蛍光法、酵素免疫分析法(ELISA)、質量分析およびタンパク質チップからなる群から選択されたいずれか1つで測定することを特徴とする、請求項17に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項20】
(1)実験群として、癌細胞株に被検物質を処理する工程、
(2)工程(1)で処理された細胞株でPP2Acタンパク質の発現程度を測定する工程、および
(3)工程(2)のPP2Acタンパク質の発現量を対照群と比較して減少させた被検物質を選別する工程
を含む、癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項21】
癌細胞株が、TRAIL耐性癌細胞株であることを特徴とする、請求項20に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項22】
工程(2)のPP2Acタンパク質の発現程度が、逆転写重合酵素の連鎖反応(Reverse Transcription−Polymerase chain Reaction、RT−PCR)、酵素免疫分析法(ELISA)の免疫組織化学、ウエスタンブロット法(Western Blotting)および流細胞分析法(FACS)からなる群から選択されたいずれか1つで測定することを特徴とする、請求項20に記載の癌の予防または治療剤のスクリーニング方法。
【請求項23】
薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を、TRAIL媒介アポトーシスと関連した疾病にかかった個体に投与する工程を含む、TRAILに対する感受性を増進させる方法。
【請求項24】
前記のTRAIL媒介アポトーシスと関連した疾病が、癌、炎症性疾患または自己免疫疾患であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記の癌が、肝癌、大腸癌、子宮頸癌、腎臓癌、胃癌、前立腺癌、乳癌、脳腫瘍、肺癌、子宮癌、結腸癌、膀胱癌、血液の癌および膵臓癌からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記の炎症性疾患が、皮膚炎、アレルギー、アトピー、結膜炎、歯周炎、鼻炎、中耳炎、咽頭炎、扁桃腺炎、肺炎、胃潰瘍、胃炎、クローン病、大腸炎、痔、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ熱、ループス、線維筋痛症(fibromyalgia)、乾癬性関節炎、骨関節炎、関節リウマチ、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、腱周囲炎、筋肉炎、肝炎、膀胱炎、腎臓炎、シェーグレン症候群(sjogren's syndrome)、多発性硬化症、急性および慢性の炎症性疾患からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記の自己免疫疾患が、関節リウマチ、多発性硬化症、重度の筋無力症、クレブス病、橋本氏甲状腺炎、アジソン病、白斑症、硬皮症、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、クローン病、強直性脊椎炎、ブドウ膜炎、血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、幼児糖尿病、自己免疫溶血性貧血、クリオグロブリン血症、副腎白質異栄養症および全身性紅斑性狼瘡からなる群から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を個体に投与する工程を含む、癌の予防方法。
【請求項29】
薬学的に有効な量のTIP41の発現または活性抑制剤を抗癌補助剤として癌にかかった個体に投与する工程を含む、癌の治療方法。
【請求項30】
TRAIL媒介アポトーシスと関連した疾病の治療時にTRAIL感受性増進のために使用するための、TIP41の発現または活性抑制剤。
【請求項31】
抗癌補助剤として使用するためのTIP41の発現または活性抑制剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2013−515717(P2013−515717A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545874(P2012−545874)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【国際出願番号】PCT/KR2011/002300
【国際公開番号】WO2011/122916
【国際公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(508139457)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【国際出願番号】PCT/KR2011/002300
【国際公開番号】WO2011/122916
【国際公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(508139457)コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (19)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]