説明

TRAIL誘導アポトーシスに関する遺伝子の同定方法およびその治療適用

本発明は、TRAIL誘導アポトーシスに関する遺伝子を同定するための方法、TRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子の発現インヒビターおよびTRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現のアクチベーターに関する。本発明はまた、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にするための方法、高増殖性疾患を治療するための方法、高増殖性疾患に罹患した対象の、TRAILに対する応答性を測定する方法、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にすることができる生成物を含む薬剤組成物、ならびに高増殖性疾患に罹患した対象の予後を測定する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TRAIL誘導アポトーシスに関する遺伝子の同定方法、およびその治療適用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、広範囲の癌細胞が、TRAIL誘導アポトーシスに感受性であるため(Wang, S et al. (2003) Oncogene 22: 8628-33)、癌治療におけるTRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド)の潜在的便益に、相当の注意が払われている。さらに、化学療法剤または放射線と組み合わせたTRAILの使用が、そのアポトーシス効果を増強し、しばしば別のTRAIL抵抗性癌細胞を感受性化する。重要なことに、TRAIL暴露は、霊長類において治療上関連投与に毒性の副作用を示さないため、TRAILは正常細胞に対して毒性ではないようにみえる。
【0003】
TRAILは、5個の異なるレセプターと相互作用することができる:4個の膜アンカーレセプターTRAIL-R1 (DR4)、TRAIL-R2 (DR5)、TRAIL-R3 (DcR1)およびTRAIL-R4 (DcR2)、ならびに可溶性デコイレセプターオステオプロテゲリン(osteoprotegerin, (OPG))。レセプターTRAIL-R1および-R2は、デスドメイン(death domain (DD))として知られる細胞内細胞質配列モチーフを含み、カスパーゼの活性化を介してアポトーシスを誘導することができる(Di Pietro et al. (2004) J Cell Physiol 201: 331-40)。しかし、TRAILレセプターR1および-R2は、アポトーシスを誘起するのみではなく、細胞のタイプに依存して、増殖および分化もまた誘起する(Di Pietro et al., 2004)。この現象は、TNFファミリーの複数の他のメンバーについて記載され、1つの経路が、潜在的に前もって優勢であるが、細胞内レギュレーターの組立てにより、細胞死から増殖へ切り替えることができ、逆もまた可能であると考えられている(Di Pietro et al., 2004; Screaton et al. (2000) Curr Opin Immunol 12: 316-22)。例えば、TRAILは、上皮および血管平滑筋細胞の細胞生存および増殖を促進すること(Secchiero, P et al. (2003) Circulation 107: 2250-6; Secchiero, P et al. (2004) Cell Mol Life Sci 61: 1965-74)、ならびに赤血球および単球の成熟を制御すること(Secchiero, P et al. (2004) Blood 103: 517-22)が示されている。
【0004】
TRAILの役割はまた、関節性リウマチにおいても研究されている。関節性リウマチ(RA) (Pope, R. M. (2002) Nat. Rev. Immunol. 2, 527-535)は、進行性かつ不可逆性関節破壊に至る、関節の慢性炎症により特徴づけられる自己免疫疾患である。パンヌス(pannus)と呼ばれる滑膜組織の悪性前線(aggressive front)が、局所的関節構造を浸潤し、破壊する。パンヌスは、リンパ球およびマクロファージの大規模な侵入に組み合わされた、主に線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)からなる、滑膜異常増殖を特徴とする。増殖の増大と、不十分なアポトーシスの両方が、RA FLSの拡大に寄与し、複数の報告により、治療アプローチとしてRA FLSのアポトーシス誘導が示唆されている。TRAILが、その後生存細胞の増殖が誘導される、一連のRA FLSのみにおけるアポトーシスを誘導することが記載されている(Morel et al. (2005), J. Biol. Chem. 280: 15709-15718)。これは、RA患者のFLSが、それらの異なるTRAIL応答による異なるサブ集団からなることを示唆している。
【0005】
TRAILが、癌細胞にも複数の効果を有しているという証拠が蓄積している。例えば、Erhardtらは、非治療急性白血病を有する患者の一次細胞に対するTRAILの効果を解析した(Ehrhardt, H et al. (2003) Oncogene 22: 3842-52)。彼らは、TRAILが、試験した白血病細胞の50%のみでアポトーシスを誘導したが、残りのサンプルは生存または増殖することを観察した(Ehrhardt, H et al., 2003)。この報告に関して、ある研究は、白血病細胞におけるTRAILの効果は、アポトーシス前または増殖前のいずれかでありうることを記載している(Baader et al. (2005) Cancer Res 65: 7888-95)。より最近の出版物には、TRAILが、SCID/ベージュマウスにおけるヒト膵管腺癌を促進することが報告されている(Trauzold, A et al. (2006) TRAIL promotes metastasis of human pancreatic ductal adenocarcinoma, Oncogene)。
【0006】
これら全ての発見により、高増殖性細胞を標的とするためにTRAILを使用する戦略が提案され、そして、今までに使用されたTRAIL戦略の新しい戦略的代替法または相補法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Di Pietro et al. (2004) J Cell Physiol 201: 331-40
【非特許文献2】Screaton et al. (2000) Curr Opin Immunol 12: 316-22
【非特許文献3】Secchiero, P et al. (2003) Circulation 107: 2250-6
【非特許文献4】Secchiero, P et al. (2004) Cell Mol Life Sci 61: 1965-74
【非特許文献5】Secchiero, P et al. (2004) Blood 103: 517-22
【非特許文献6】Pope, R. M. (2002) Nat. Rev. Immunol. 2, 527-535
【非特許文献7】Morel et al. (2005), J. Biol. Chem. 280: 15709-15718
【非特許文献8】Ehrhardt, H et al. (2003) Oncogene 22: 3842-52
【非特許文献9】Baader et al. (2005) Cancer Res 65: 7888-95
【非特許文献10】(Trauzold, A et al. (2006) TRAIL promotes metastasis of human pancreatic ductal adenocarcinoma, Oncogene
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、第一に、細胞の集団において、TRAIL誘導アポトーシスに関する遺伝子を同定するための方法であって、
前記細胞の集団を、TRAILと接触させる工程、
TRAIL誘導アポトーシスに感受性である集団の細胞のサブセット(感受性サブセット)と、TRAIL誘導アポトーシスに抵抗性である集団の細胞のサブセット(抵抗性サブセット)とを単離する工程、
感受性サブセットと、抵抗性サブセットとの間で遺伝子発現を比較する工程、ならびに
感受性サブセットにおいて、および抵抗性サブセットにおいて差次的にに発現する遺伝子を同定する工程であって、前記遺伝子が、前記細胞の集団をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子として分類される感受性サブセットにおいて過剰発現し、前記遺伝子が、前記細胞の集団をTRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子として分類される抵抗性サブセットにおいて過剰発現する工程、
を含む方法に関する。
【0009】
本発明はまた、TRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子の発現のインヒビターに関し、前記遺伝子は、配列番号1、2、3、4、または5に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号1、2、3、4、および5からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0010】
本発明はまた、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現のアクチベーターに関し、前記遺伝子は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0011】
本発明はまた、配列番号17、18、19、20、21および22を含む群より選択される、単離されたヌクレオチド配列にも関する。
【0012】
本発明はまた、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にするin vitroの方法に関し、
前期方法は、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる生成物と、前記細胞を接触させる工程を含み、
前記生成物は、
本発明による、TRAILに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現のインヒビター、
本発明による、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子の発現アクチベーター、
配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む発現ベクター
細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができるタンパク質であって、
配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列により、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質
を含む群から選択される。
【0013】
本発明はまた、ヒトまたは動物の身体において細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にするための方法において使用するための、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる生成物に関し、
前記生成物は、
本発明による、TRAILに対する抵抗性を誘導する遺伝子の発現のインヒビター
本発明による、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子発現のアクチベーター、
配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む発現ベクター、ならびに
細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができるタンパク質であって、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列により、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質
を含む群から選択される。
【0014】
本発明はまた、ヒトまたは動物の身体における高増殖性疾患を治療するための方法において使用するための、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる生成物に関し、
前記生成物は、
本発明による、TRAILに対する抵抗性を誘導する遺伝子の発現のインヒビター
本発明による、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子発現のアクチベーター、
配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む発現ベクター、ならびに
細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができるタンパク質であって、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列により、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質
を含む群から選択される。
【0015】
本発明はまた、高増殖性疾患に罹患した対象の、TRAILに対する応答性を測定する方法に関し、前期方法は、
前記対象より得られる高増殖性細胞において、TRAIL誘導アポトーシスに対する前記細胞の抵抗性を誘導する遺伝子発現を検出する工程であって、
前記遺伝子が、配列番号1、2、3、4、または5に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号1、2、3、4、および5からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
TRAIL誘導アポトーシスに対する前記細胞の抵抗性を誘導する遺伝子発現の検出が、TRAILに対する前記対象の低い応答の指標となる工程
を含む。
【0016】
本発明はまた、高増殖性疾患に罹患した対象の、TRAILに対する応答性を測定する方法に関し、前期方法は、
前記対象より得られる高増殖性細胞において、TRAIL誘導アポトーシスに対する前記細胞の抵抗性を誘導する遺伝子発現を検出する工程であって、
前記遺伝子が、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
TRAIL誘導アポトーシスに対して前記細胞を感受性にする遺伝子発現の検出が、TRAILに対する前記対象の良好な応答の指標となる工程
を含む。
【0017】
本発明はまた、薬学的に受容可能な担体と一緒に、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる生成物を含む薬剤組成物にも関し、
前記生成物は、
請求項2または3に規定される、TRAILに対する抵抗性を誘導する遺伝子の発現のインヒビター、
請求項4に規定される、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子発現のアクチベーター、
配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む発現ベクター、ならびに
細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができるタンパク質であって、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列により、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質
を含む群から選択される。
【0018】
本発明はさらに、高増殖性疾患に罹患した対象の予後を測定する方法に関し、前期方法は、
前記対象より得られるサンプルにおいて、TRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子発現を検出する工程であって、
前記遺伝子が、配列番号1、2、3、4、または5に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号1、2、3、4、および5からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
前期発現が、対象が低い予後を有する指標となる工程
を含む。
【0019】
本発明はまた、高増殖性疾患に罹患した対象の予後を測定する方法に関し、前期方法は、
前記対象より得られるサンプルにおいて、TRAIL誘導アポトーシスに対して前記細胞を感受性にする遺伝子の発現を検出する工程であって、
前記遺伝子が、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、
前期発現が、対象が良好な予後を有する指標となる工程
を含む。
【課題を解決するための手段】
【0020】
定義
出願人は、別途特に示さない限り、本明細書に提供される用語および表現の定義を利用することを意図する。
【0021】
第一の態様において、本発明は、細胞の集団において、TRAIL誘導アポトーシスに関する遺伝子を同定するための方法であって、
前記細胞の集団を、TRAILと接触させる工程、
TRAIL誘導アポトーシスに感受性である集団の細胞のサブセット(感受性サブセット)と、TRAIL誘導アポトーシスに抵抗性である集団の細胞のサブセット(抵抗性サブセット)とを単離する工程、
感受性サブセットと、抵抗性サブセットとの間で遺伝子発現を比較する工程、ならびに
感受性サブセットにおいて、および抵抗性サブセットにおいて差次的にに発現する遺伝子を同定する工程であって、
前記遺伝子が、前記細胞の集団をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子として分類される感受性サブセットにおいて過剰発現し、
前記遺伝子が、前記細胞の集団をTRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子として分類される抵抗性サブセットにおいて過剰発現する工程、
を含む方法に関する。
【0022】
本明細書において、「細胞の集団」は、TRAIL治療戦略の標的となりうるいずれかのタイプの細胞、特に高増殖細胞を意味する。本発明による非限定的な例は、癌細胞および関節リウマチ線維芽細胞様滑膜細胞(RA-FLS)である。
【0023】
本発明において、上記方法の工程(1)を、当業者に既知である適切な方法のいずれかにより、TRAILと前記細胞の集団をインキュベートすることにより実行する。例えば、前記細胞を、最大アポトーシスを取得するための平均時間に相当する12から24時間の間、各ウェルが約1 x 105個の細胞を含む12ウェルプレートでインキュベートしてよい。細胞をインキュベートするために使用することができるTRAILの濃度は、典型的には0.1 nMから10 nMの範囲、特に約1 nMである。
【0024】
本発明において、上記方法の工程(2)を、当業者に既知であるアポトーシス検出方法のいずれかにより実行する。これらの方法は無数にあり、当業者により記載され、そのキットは市販されており、そして当業者は最も適切な方法を選択することができる。細胞におけるアポトーシスの検出方法の例は、アネキシンVのホスファチジルセリン(PS)と相互作用する天然特性に基づく方法である:細胞膜リン脂質におけるホスファチジルセリン(PS)のほとんどは、アポトーシスの早期段階の間、内部表面から外部表面に突き出している。PSが外部表面に現れると、アネキシンVと融合した蛍光タンパク質で染色して、例えば蛍光活性細胞ソーティング(FACS)により容易にそれらを検出することができる。アネキシンVをまた、電子顕微鏡用の金コロイド、組織レベルのオートラジオグラフィー用の放射性トレーサー、および解剖学研究用のペルオキシダーゼで標識することもできる。明白なことに、他の方法を使用して、例えば蛍光マーカーに接合したカスパーゼインヒビターで、例えば活性化カスパーゼを検出する、あるいは、例えばFACSまたは蛍光顕微鏡によりミトコンドリア膜ポテンシャルにおける変化を検出することなどにより、細胞におけるアポトーシスを検出することができる。
【0025】
本発明において、上記方法の工程(3)を、既知の遺伝子発現プロファイリング法のいずれかにより実行する。遺伝子発現プロファイリング法は、数千の遺伝子発現を一度に検出し、細胞機能の全体図を作成することに存する。例えばこれらのプロファイルにより、活発に分裂している細胞の間を区別したり、あるいは特定の処理に細胞がどのように反応するかを示すことができる。このソーティングの多くの方法が、全ゲノム、すなわち、特定の細胞に存在するあらゆる遺伝子を同時に測定する。最も一般的でよく知られた、遺伝子発現プロファイリングのために本発明において使用することができる方法は、DNAマイクロアレイである。マイクロアレイは市販されており、当業者は特定の細胞集団を研究するために最も適するマイクロアレイを選択することができる。遺伝子発現の連続解析(SAGE, SuperSAGE、Velculescu VE et al. (1995) Science 270 (5235): 484-7 ; Saha S et al. (2002) Nat Biotechnol 20 (5): 508-12; Gowda M. et al. (2004) Plant Physiol 134 (3): 890-7; Matsumura H. et al. (2005). Cell Microbiol 7 (1): 11-8参照)のようなタグベースの技術もまた、遺伝子発現プロファイリングのために使用することができる。他の方法は、マイクロアレイ遺伝子プロファイリングの代替物として現れているディープシークエンスである(Burnside J. et al (April 2008) BMC Genomics 9 (1): 185)。
【0026】
本発明において、遺伝子の差異発現を、典型的にはマイクロアレイデータパッケージ、あるいはLIMMAパッケージ(Bioconductor)用の線形方法で測定する。LIMMAは、遺伝子発現マイクロアレイデータの解析、特に設計した実験を解析するための線形モデルの使用および差異発現の評定のためのソフトウェアパッケージである。前記パッケージは、2色スポットアレイのためのプレ処理能力を含む。差異発現法を、全てのアレイプラットフォームに適用し、Affymetrix、統一した方法における一チャンネルおよび二チャンネル実験を処理する(Gentleman RC et al. Genome Biol 2004, 5: R80; http://www.bioconductor.org/; Smyth, G. K. et al. (2003) Methods 31, 265-273; Smyth, G. K. (2004) Statistical Applications in Genetics and Molecular Biology 3, No. 1, Article 3; Smyth, G. K. (2005) in: Bioinformatics and Computational Biology Solutions using R and Bioconductor, R. Gentleman, et al., Springer, New York, pages 397-420; R. Gentleman, V. et al. Springer, New York, pages 397-420; http://bioinf.wehi.edu.au/limma/; Tusker V.G. et al., PNAS 2001 Apr 24;98(9):5116-21)。
【0027】
特定の実施態様において、上述の統計方法により測定して、細胞の2個のサブセットの間の差異発現を有する可能性が60%より大きい場合、前記サブセットの間で「発現の差異がある」遺伝子と考えられる。
【0028】
本発明のある実施態様において、上述の遺伝子発現プロファイリングにより得られる結果を、当業者に古典的に記載されるように、QPCR(定量リアルタイムポリメラーゼ鎖反応)により評価する。差異発現遺伝子のタンパク質生成物のいくつかのウェスタンブロットのような他の実験もまた実行して、発現プロファイルに基づく結論を確認することができる。
【0029】
特定の実施態様において、上記の遺伝子を同定する方法は、癌細胞のためのものである。この実施態様において、癌細胞におけるTRAIL誘導アポトーシスに関する遺伝子を同定する方法は、特に、
1) 前記癌細胞を、TRAILと接触させる工程、
2) TRAIL誘導アポトーシスに感受性である癌細胞(感受性細胞)と、TRAIL誘導アポトーシスに抵抗性である癌細胞(抵抗性細胞)とを単離する工程、
3) 感受性細胞と、抵抗性細胞との間で遺伝子発現を比較する工程、ならびに
4) 感受性細胞において、および抵抗性細胞において差次的にに発現する遺伝子を同定する工程であって、前記遺伝子が、前記癌細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子として分類される感受性細胞において過剰発現し、前記遺伝子が、前記癌細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子として分類される抵抗性細胞において過剰発現する工程
を含む。
【0030】
別の実施態様において、上記の遺伝子を同定する方法は、間接リウマチ線維芽細胞様滑膜細胞(RA-FLS)のためのものである。この実施態様において、RA-FLSにおけるTRAIL誘導アポトーシスに関する遺伝子を同定する方法は、特に、
1) RA-FLSを、TRAILと接触させる工程、
2) TRAIL誘導アポトーシスに感受性であるRA-FLS(RA-FLS-S)と、TRAIL誘導アポトーシスに抵抗性であるRA-FLS(RA-FLS-R)とを単離する工程、
3) RA-FLS-Sと、RA-FLS-Rとの間で遺伝子発現を比較する工程、ならびに
4) RA-FLS-Sにおいて、およびRA-FLS-Rにおいて差次的にに発現する遺伝子を同定する工程であって、前記遺伝子が、RA-FLSをTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子として分類されるRA-FLS-Sにおいて過剰発現し、前記遺伝子が、RA-FLSをTRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子として分類されるRA-FLS-Rにおいて過剰発現する工程
を含む。
【0031】
本発明の方法により同定された、TRAIL誘導アポトーシスに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の例は、配列番号1、2、3、4、または5に示すヌクレオチド配列を含む。
【0032】
特定の実施態様において、TRAIL誘導アポトーシスに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子は、典型的には、配列番号1、2、3、4、および5からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0033】
本発明の方法により同定された、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子の例は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0034】
典型的には、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0035】
本発明によれば、2つの核酸配列の間の同一性のパーセントを決定するために、配列を最適化比較のためにアライン(align)する。例えば、第一の核酸配列の配列に、第二の核酸配列との最適アラインメントのためにギャップを導入することができる。そして、対応するヌクレオチド部位を比較する。第一の配列の部位が、第二の配列の対応する部位で同じヌクレオチドにより占められている場合、核酸はその部位で同一である。2つの配列の間の同一性のパーセントは、配列により共有される同一ヌクレオチドの関数である。
【0036】
従って、
%同一性=[同一ヌクレオチド数/重なる部位の総数]x 100
である。従って、配列同一性のパーセンテージはこの式により、同一の核酸塩基(例えば、A, T, G, C)が、両方の配列に存在し、マッチした部位の数(上記式の「同一ヌクレオチド数」)が得られる部位の数を決定し、マッチした部位の数を、比較の窓(例えば、ウィンドウサイズ)における部位の総数(上記式の「重なる部位の総数」)で割り、得られた数を100でかけて、配列同一性のパーセンテージを得ることにより、算出される。
【0037】
この比較において、配列は同一の長さである可能性もあるし、異なる長さであってもよい。比較ウィンドウを決定するために最適な配列アラインメントを、Smith and Watermanの局所ホモロジーアルゴリズム(1981)により、Needleman and Wunsh (1972)のホモロジーアラインメントアルゴリズム(1988)により、これらのアルゴリズムの計算された導入(GAP, BESTFIT, FASTA and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetic Computer Group, 575, Science Drive, Madison, Wisconsin)により、または検査により、実行してよい。
【0038】
本発明はまた、TRAIL誘導アポトーシスに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現のインヒビターに関し、前記遺伝子は、配列番号1、2、3、4、または5に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号1、2、3、4、および5からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0039】
本発明において、TRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子の発現のインヒビターは、典型的には、前記遺伝子の発現に干渉する核酸である。そのようなインヒビターの例は、アンチセンス分子またはそのようなアンチセンス分子を含むベクターである。アンチセンス分子は、mRNAの小セグメントの相補鎖である。効果的なアンチセンス分子を設計する公知の方法は(例えばUS6165990参照)、上記規定される細胞のTRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子の発現をダウンレギュレートすることができるアンチセンス分子を設計する、当業者に可能な方法の範囲内にある。さらなる例は、例えば、ショート干渉RNA(siRNA)およびショートヘアピンRNA(shRNA)のようなRNA干渉(RNAi)分子である。siRNAは、遺伝子産物、この場合、細胞のTRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子を特異的に標的とし、ナルまたはハイポモルフ(hypomorphic)表現型となる相同性二重鎖RNAの導入を指す。効果的なRNAiを設計する公知の方法は(例えばHannon and Rossi Nature. 2004 Sep 16; 431(7006):371-8参照)、IL4I1発現細胞においてIL4I1の発現をダウンレギュレートすることができるRNAi分子を設計する、当業者に可能な方法の範囲内にある。
【0040】
本発明の特定の実施態様において、TRAIL誘導アポトーシスに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現のインヒビターは、配列番号17、18、19、20、21、および22を含む群から選択されるヌクレオチド配列を含むsiRNAである。
【0041】
本発明はまた、配列番号17、18、19、20、21、および22を含む群から選択される、単離ヌクレオチド配列にも関する。
【0042】
本発明はまた、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現のアクチベーターに関し、前記遺伝子は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0043】
本発明において、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現のアクチベーターは、典型的には、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、PI3キナーゼ、またはIL-8のようなサイトカインのアクチベーターである。
【0044】
本発明はまた、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む発現ベクターにも関する。
【0045】
本明細書において、「発現ベクター」の語は、発現制御配列またはプロモーターに動作可能に連結している所与の核酸配列を発現させることができる核酸を指す。特に、本発明の発現ベクターは、所与の核酸配列を、真核宿主細胞において前記核酸にコードされるタンパク質に発現させることができるベクターである。前記発現ベクターのプロモーターは、典型的には真核生物プロモーターである。本発明の発現ベクターによって、TRAIL誘導アポトーシスに細胞を感受性にすることができるタンパク質を発現することができる。
【0046】
本発明の発現ベクターは、プラスミドまたはウィルスベクターである可能性がある。プラスミドは、自律的に複製することができる環状二重鎖DNAループである。ウィルスベクターは、ウィルス粒子に封入することができるウィルス配列を含む核酸分子である。例えば、AAV、レトロウィルス、アデノAAV、レンチウィルスなどを含む、種々のウィルスベクターが当業者に知られており、本発明の粒子に適用してよい。慣用的な実験を行うことにより、当業者は、本発明の方法を実行するために適するものを、種々の利用可能なベクターから選択することができる。
【0047】
本発明はまた、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができるタンパク質であって、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列により、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質に関する。
【0048】
本発明はまた、TRAIL誘導アポトーシスに対して抵抗性である細胞を、TRAIL誘導アポトーシスに感受性にする方法にも関する。
【0049】
本発明はそして、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にするin vitroの方法に関し、前期方法は、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる生成物と、前記細胞を接触させる工程を含む。
【0050】
本発明において、「細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる生成物」は、本発明による、TRAILに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現のインヒビター、本発明による、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子の発現アクチベーター、本発明による発現ベクター、ならびに本発明による、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができるタンパク質を含む群から選択される生成物である。
【0051】
本発明はまた、ヒトまたは動物の身体において細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にするための、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる本発明による生成物にも関する。
【0052】
特定の実施態様において、TRAIL誘導アポトーシスに対して抵抗性の細胞は、癌細胞である。特定の実施態様において、本発明は、癌細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にするための方法に関する。
【0053】
別の特定の実施態様において、TRAIL誘導アポトーシスに対して抵抗性の細胞は、間接リウマチ線維芽細胞様滑膜細胞(RA-FLS)である。この特定の実施態様において、本発明は、RA-FLSをTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にするための方法に関する。
【0054】
さらに別の態様において、本発明は、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる本発明による有効量の生成物を、投与する必要がある患者に投与する工程を含む、高増殖性疾患を治療するための方法に関する。
【0055】
本発明はまた、ヒトまたは動物の身体における高増殖性疾患を治療するための、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる本発明による生成物にも関する。
【0056】
本明細書において、「高増殖性疾患」は、急速な細胞分裂をもたらす疾患を意味する。高増殖性疾患は、癌、関節リウマチ、乾癬、光線性角化症および葉状魚鱗癬、全身性エリテマトーデス(SLE)を含むが、それに限定されない。
【0057】
本発明の特定の実施態様において、治療する高増殖性疾患は、癌である。この実施態様において、治療する細胞は、癌細胞である。本明細書において、「癌」は、全てのタイプの癌を意味する。特に、癌は固形または非固形癌でありうる。癌の非限定的例は、乳癌、前立腺癌、肺癌、または結腸癌のような癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、生殖細胞癌および芽細胞腫である。
【0058】
別の特定の実施態様において、治療する高増殖性疾患は、関節リウマチである。この実施態様において、治療する細胞は、FLSである。
【0059】
ある実施態様において、高増殖性疾患を治療するための本発明の方法はさらに、前記対象における、有効量のTRAILの同時、順次、または分離投与を含む。
【0060】
別の実施態様において、癌を治療するための本発明の方法は、他の癌を治療するための方法と同時に、別々に、または順次、ヒトまたは動物に適用される。前記他の癌を治療するための方法は、典型的には、手術、外部放射線治療、化学治療、ホルモン治療およびサイトカイン治療を含む群から選択される。特定の実施態様において、癌を治療するための本発明の方法は、少なくとも1つの抗癌剤の投与を含む化学療法と組み合わせられる。
【0061】
本明細書において、「抗癌剤」の表現は、癌の治療に使用される化合物を指す。特に、「抗癌剤」の表現は、TRAIL誘導アポトーシスに相乗作用を与えると報告された化合物を指す。これらの薬剤は、(シスプラチンのような)DNAモジュレーター、ヒストン脱アセチル化インヒビター、PI3キナーゼ経路インヒビター、NFカッパBインヒビター、IAP(アポトーシスタンパク質のインヒビター)を含む (Johnstone, R.W. et al. 2008, Nat Rev Cancer 8:782-798)。本発明の特定の抗癌剤は、フルダラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、メトトレキセート、タキソール、タキソテル、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、シタラビン、シクロホスファミド、イホスフアミド、ニトロソウレア類、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンのようなプラチナ複合体、マイトマイシン、ダカルバジン、プロカルビジン、エトポシド、テニポシド、カンパテシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、L-アスパラギナーゼ、ドキソルビシン、エピンビクム、5-フルオロウラシル、ドセタキセルおよびパクリタキセルのようなタキサン類、ロイコボリン、レバミソール、イリノテカン、エストラムスチン、エトポシド、窒素マスタード、BCNU、カルムストムおよびロムスチンのようなニトロソウレア類、ビンブラスチンおよびビノレルビンのようなビンカアルカロイド類、イマチムブメシレート、ヘキサメチネルアミン、トポテカン、キナーゼインヒビター、ホスファターゼインヒビター、ATPアーゼインヒビター、タイロフォスチン、プロテアーゼインヒビター、インヒビターヘルブマイシンA、ゲニスタイン、エルブスタイン、ならびにラベンダスチンを含むがそれに限定されない。
【0062】
ある実施態様において、抗癌剤は、タキソール;タキソテル;シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンのようなプラチナ複合体;ドキソルビシン;ドセタキセルおよびパクリタキセルのようなタキサン類;ビンブラスチンおよびビノレルビンのようなビンカアルカロイド類;ゲニスタイン;エルブスタイン;ならびにラベンダスチンからなる群に対して選択される。
【0063】
本発明の文脈において、本明細書の「治療する」または「治療」の語は、そのような語を適用する疾患もしくは状態の進行を、逆転する、回避する、阻害する、またはそのような語を適用する疾患もしくは状態予防する、あるいは癌の一つ以上の兆候の進行を、逆転する、回避する、阻害する、または癌の一つ以上の兆候を予防することを意味する。
【0064】
本明細書において「対象」は、本明細書に記載される化合物、組成物、または方法の投与を享受してよいヒトまたは動物を指す。最も多くは、対象は、ヒトであろうが、いずれかの動物でありうる。
【0065】
「化合物」は、上記規定される方法で同定される、TRAIL誘導アポトーシスに対する高増殖性細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現インヒビター、ならびに上記規定される方法で同定される、TRAIL誘導アポトーシスに対して高増殖性細胞を感受性にする遺伝子の発現アクチベーターを意味する。
【0066】
前述の化合物の「治療上有効量」は、いずれかの医学治療に適用可能な、合理的便益/リスク比で、疾患を治療するために十分な量を意味する。しかし、本発明の化合物の総一日投与量は、正常な医学的判断の範囲内で、治療する医師により決定されるであろうことは理解されるであろう。治療の必要がある特定の対象のいずれかに対する特定の治療効果投与レベルは、治療する疾患のステージ、対象の年齢、体重、一般的健康、性別および食事、投与の時間、投与の経路、治療の持続時間を含む種々の要素;医療の当業者に既知の要素および類似の要素と組み合わせてまたは同時に使用される薬物に依存するであろう。例えば、所望の治療効果を達成するために必要な投与量よりも低いレベルの化合物の投与量で出発し、所望の治療効果を達成するまで徐々に投与量を増大することが当業者に知られている。
【0067】
本発明はさらに、対象から得られる高増殖性細胞において、TRAIL誘導アポトーシスに対する前記細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現を検出する工程であって、前記遺伝子は、配列番号1、2、3、4、または5に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号1、2、3、4、および5からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、TRAIL誘導アポトーシスに対する前記細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現の検出が、前記対象のTRAILに対する応答性を示すことである、工程を含む、高増殖性疾患に罹患した対象のTRAILに対する応答性を測定するための方法に関する。
【0068】
本発明はさらに、対象から得られる高増殖性細胞において、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現を検出する工程であって、前記遺伝子は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現の検出が、前記対象のTRAILに対して非応答性であることを示すことである、工程を含む、高増殖性疾患に罹患した対象のTRAILに対する応答性を測定するための方法に関する。
【0069】
特定の実施態様において、高増殖性疾患は、癌である。対象より得られるサンプルの例は、リンパ節、ならびに場合により全血サンプルを含むいずれかのタイプの癌生検である。
【0070】
別の特定の実施態様において、高増殖性疾患は、関節リウマチである。関節リウマチに罹患している対象より得られるサンプルの例は、典型的には、滑膜組織または滑膜液の生検である。
【0071】
高増殖性疾患に罹患している対象のTRAILに対する応答性を測定するための本発明の方法において、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現が検出された場合に、対象は応答性である、すなわち感受性であると考えられるであろう。逆に、TRAIL誘導アポトーシスに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現が検出された場合に、対象は非応答性である、すなわち抵抗性であると考えられるであろう。
【0072】
本発明による遺伝子の発現の検出を実行することは、当業者に可能な範囲内にある。実際、そのような発現を、当業者に既知のいずれかの方法により検出することができる。特に、発現をRT-PCTおよびQPCRを使用して測定してよい。発現を、例えば生物学的液体(全血サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、滑膜液体サンプルなど)において、ELISAおよびウェスタンブロットのような免疫学的技術により検出してもよい。
【0073】
本発明はさらに、薬学的に受容可能な担体と一緒に、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる本発明の生成物を含む薬剤組成物にも関する。
【0074】
「生成物を含む」により、組成物は、細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる本発明の1つまたは複数の生成物を含む可能性があることを意味する。
【0075】
特定の実施態様において、本発明の薬剤組成物は、さらにTRAILを含む。
【0076】
別の態様において、本発明は、高増殖性疾患を治療する方法において使用するための、本発明の組成物に関する。
【0077】
別の態様において、本発明は、ヒトまたは動物の身体において高増殖性疾患を治療するための方法において、同時に、別々に、または順次使用するために組み合わせた調製物として、RAIL、ならびに本発明の細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にすることができる生成物を含む。
【0078】
ある実施態様において、本発明の高増殖性細胞は、癌細胞、および関節リウマチ線維芽細胞様滑膜細胞(RA FLS)を含む群から選択される。
【0079】
本発明はまた、高増殖性疾患に罹患した対象の予後を測定する方法に関し、前期方法は、前記対象より得られるサンプルにおいて、TRAIL誘導アポトーシスに対する前記細胞の抵抗性を誘導する遺伝子発現を検出する工程であって、前記遺伝子が、配列番号1、2、3、4、または5に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号1、2、3、4、および5からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、前期発現が、対象が予後不良であることを示す、工程を含む。
【0080】
本発明はまた、高増殖性疾患に罹患した対象の予後を測定する方法に関し、前期方法は、前記対象より得られるサンプルにおいて、前記遺伝子が、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み、前期発現が、対象が良好な予後であることを示す、工程を含む。
【0081】
特定の実施態様において、高増殖性疾患は、癌である。この実施態様において、対象より得られるサンプルの例は、リンパ節および場合により全血サンプルを含む、いずれかのタイプの癌生検である。
【0082】
別の特定の実施態様において、高増殖性疾患は、関節リウマチである。この実施態様において、対象より得られるサンプルの例は、典型的には滑膜組織または滑膜液の生検である。
【0083】
本発明による予後を測定する方法において、前記遺伝子の発現の検出を、例えば生物学的液体(全血サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、滑膜液体サンプルなど)に対して、サンプルの細胞における前記遺伝子のmRNAの存在を検出することにより、特にRT-PCT、あるいはQPCR、ならびにELISAおよびウェスタンブロットのような免疫学的技術のような他の当業者に公知の方法により検出して実行することができる。
【0084】
本発明において使用される「検出する」の語は、コントロールに参照してまたは参照しない、定性および/または定量検出(測定レベル)を含む。
【0085】
本明細書において「予後」の語は、高増殖性疾患に起因する死または進行の可能性を指して使用される。進行は、再発、転移拡散、および薬剤耐性を含む。
【0086】
本明細書において「予後不良」の語は、高増殖性疾患に起因する死または進行の可能性の増大を示す。
【0087】
本明細書において「良好な予後」の語は、高増殖性疾患に起因する死または進行の可能性の減少を示す。
【0088】
本発明の方法により得られる予後の結果をまた、患者の「リスク分類」に関連付ける、あるいは患者の「リスク分類」に対する基礎とすることもできる。本明細書において「リスク分類」は、対象が特定の臨床結果を経験する危険または予測のレベルを意味する。対象を、リスク群に分類してよく、本発明の予想方法に基づくリスクのレベルで分類してよい。「リスク群」は、特定の臨床結果に対して同様のリスクのレベルを有する対象または個人の群である。
【0089】
本発明は、以下の実施例を使用してよりよく説明される。これらの実施例は、本発明の主題の説明のためのみのものであり、制限のためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】「DICER SUITE」ダイアグラム。FLS-SおよびFLS-RのmRNAを、単一プレート上で2対2でハイブリダイズする。各FLS-Sは2個のFLS-Rにハイブリダイズし、逆もまたそうであり、最終的に合計12個のハイブリダイゼーションとなる。
【図2】A.年齢の関数としての、女性の滑膜組織から単離されたFLSの応答(1:アポトーシス、-1:アポトーシスなし/少)。Y軸:TRAILに対する応答;X軸:患者の年齢。B.FLSの一次培養物の、TRAIL誘導アポトーシスに対する感受性(Y軸)は、関節リウマチ患者の疾患活性(DAS28;X軸)と相関する。FLSのTRAIL誘導アポトーシスを、下記のようにFACS解析により測定する。
【図3】定量PCRによる、GALNT1、SULF2、AcheronおよびLiprinの発現の比較。各群(FLS-RおよびFLS-S)における平均発現を、患者の総体の平均(ここで対照と示す)と比較する。*p<0.05、ウイルコクソン検定n=6。
【図4】TRAIL誘導アポトーシスにおける、GALNT-1およびSULF-2の発現を標的とするsiRNAの効果の解析。細胞を、GALNT1、SULF2を標的とするsiRNA、または対照siRNAで60時間形質転換し、その後24時間TRAILで刺激する。アポトーシス%を、アネキシンV固定試験およびTOPRO-3の取り込みにより測定する。結果を、総細胞死の%で示す(*p<0.05、ウイルコクソン検定n=5)ボックスは、GALNT1およびSULF2を標的とするsiRNAで処理したFLSにおけるGALNT1およびSULF2に対するコードmRNAにおける、対照siRNAで処理した細胞と比較した減少を示す。
【図5】TRAIL誘導アポトーシスにおける、ORP-4の発現を標的とするsiRNAの効果の解析。細胞を、ORP-4を標的とするsiRNA、対照siRNAまたは形質転換薬剤のみで60時間形質転換し、その後24時間TRAILで刺激する。アポトーシス%を、アネキシンV固定試験およびTOPRO-3の取り込みにより測定する。結果を、総細胞死の%で示す(*p<0.05、ウイルコクソン検定n=9)。
【図6】FLS-S (S)とFLS-R (R)の間の定量PCRによる、配列番号15(PLTP)全アイソフォーム(A)、配列番号15(PLTP) アイソフォーム1(B)、配列番号4(EIF1AX) アイソフォーム1および2(C)、配列番号4アイソフォーム2(D)、配列番号9(SULF2) (E) 、配列番号3(リプリン-β1)(F)の発現レベルの比較。mRNAレベルを、β-2ミクログロブリン発現に対する任意単位(AU)で表現する。各群の平均を、マンホイットニー検定を使用して、FLS- RとFLS- Sの間で比較する。
【図7】関節リウマチ(RA)患者および変形性関節症(OA) 患者由来の滑膜液におけるPLTP活性の比較。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下の記載において、詳細なプロトコールが与えられていない全ての分子生物学実験を、標準プロトコールにより実行する。
【実施例】
【0092】
材料と方法
生物学材料
線維芽細胞を、RAの患者の滑膜生検から単離する(Morel, J. et al. 2005. J Biol Chem 280:15709-15718)。そして、確立した異なる培養物のTRAIL誘導アポトーシスに対する感受性を、アネキシンV試験によって評価する。TRAIL誘導アポトーシスのパーセンテージに依存して、滑膜細胞は、TRAIL誘導アポトーシスに対して高い(30-50%)または低い(0-10%)感受性を提示する2つの群に分類される。
【0093】
総タンパク質およびRNAを、TRAILによる刺激実験のために以前記載されたように(Morel, J. et al. 2005. J Biol Chem 280: 15709-15718)、血清中で漸進的に除去(5%後1%)後に抽出する。TRAIL誘導アポトーシスに対するFLSの感受性を、並行して測定する。FLSの感受性または抵抗性特性を、2回のアポトーシス測定実験で評価する。
【0094】
アポトーシスの測定
アポトーシス実験を、およそ1x105細胞/ウェルに相当する、12個のウェルアッセイプレート上で実行する。細胞を、最大アポトーシスが観測される際の時間に相当する、12および24時間処理する。刺激後、懸濁物及び接着物中の細胞を回収し、(懸濁物中に細胞を保存し、よく分離させ、操作に関連する細胞死を制限するために)冷PBS 2% BSA中で二回洗浄する。その後細胞を、100 μlのアネキシンV-Fluos (Roche)中に再懸濁する。細胞を氷上で15分間インキュベートする。TOPRO-3 (Molecular Probes)を含むABBバッファーを150 μlの容量で添加し、その後細胞を、アネキシンV- FITC(520 nmで測定する発光)およびTOPRO-3(660 nmで測定する発光)に関連する蛍光を測定するFASCaliburで測定する。TOPRO-3は、浸透性の細胞をマークし、そしてネクローシス細胞と、アポトーシスの最終段階にある細胞とを区別することを可能にするDNA相互作用物である。
【0095】
マイクロアレイ
メッセンジャーRNA(mRNA)の抽出
総RNAを、TRIZol法 (Invitrogen, Cergy Pontoise, France)により抽出し、LiCl中で沈殿させることにより精製する。そして、得られるmRNAの精製を、Agilent Bioanalyserにより確認する。
【0096】
その後総RNAを、「Montpellier LR Genopole」のトランスクリプトームプラットフォームにより採取する。DNAチップ技術(スポッティング、ハイブリダイゼーション、スキャン、および統計処理)によるトランスクリプトーム解析を、プラットフォームパーソネルにより実行する。使用したチップは、~25,100個の遺伝子および39,600個の転写物を示す35,035個のプローブを含む「Human V4 OpArray」チップである。
【0097】
異なる患者のFLSを、2個ずつトランスクリプトームを比較することができるように、Dicer suiteモデルで比較する(図1)。
【0098】
定量PCR
mRNAをTRIZol法により抽出し、提供されるプロトコールに従って、SUPERSCRIPT (登録商標) II RNAse H-RTキット (Invitrogen)により逆転写反応を実行する。そして、このように合成したcDNAを定量PCRで解析する。
【0099】
この実験の重要な段階の一つは、PCRプライマーの選択である。プライマーとして働く配列の選択は、「primer 3」ソフトウェア(Rozen and Skaletsky 2000)により行われる。このソフトウェアにより、試験する遺伝子の全長cDNA配列から、以下の基準:75から100bpの間に含まれるアンプリコンのサイズ、およそ40から50%のGCパーセンテージ、およびおよそ60°Cの融合温度で、標的遺伝子の増幅を可能とすると思われるプライマーペアのリストを得ることが可能となる。さらに、選択するプライマーペアはまた、古典的なPCRと同じ、すなわち、同じペアのプライマー間の融合温度における差異(TM)が5°Cを越えないというルールに従わなければならない。オリゴは、cDNAのみを増幅し、総RNAの調製物、そしてcDNAの調製物に混入しうるゲノムDNAを増幅しないよう選択される。それゆえ、増幅配列は、2つ以上のエクソンにわたって重ならなければならない。この条件、ならびに標的遺伝子に対するプライマーペアの特異性は、サイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で確認される。
【0100】
プライマーペアの適性は、上記のように、試験される細胞から得られるcDNA希釈曲線で最初に各人される。希釈曲線により、定量PCRにおけるプライマーペアの効率を推論し、ペアの特異性を解離曲線で確認する正しいキャリブレーションを得ることが可能となる。
【0101】
出願人は、以下のプライマーペア、および試験する各遺伝子それぞれに対する最適伸長温度を評価した。
【0102】
定量PCR反応を、IGMMで製造され、2006 (Luftalla and Uze, 2006)に記載される反応混合物により実行する。
【0103】
【表1】

【0104】
干渉小RNA(siRNA)のトランスフェクション
干渉RNA (siRNA)は、相補性により標的mRNA上の配列を認識し、それを分解させる小RNAである。Eurogentecにより、その効率、有効なsiRNA濃度、および必要な培養時間を決定するために出願人が試験したsiRNAが提案されている。
【0105】
【表2】

【0106】
予想される消滅:名前
トランスフェクションを、Lipofectamine (登録商標) (Invitrogen)およびCell Signallingにより市販されるトランスフェクションキットに比較してもっとも良好なトランスフェクション効率を示したEffecten (登録商標) (Quioagen, Courtabeuf, France)により実行する。トランスフェクションの前日、細胞をトリプシン処理し、75%から80%の集合(すなわち、12ウェルアッセイプレート上に75,000個の細胞)中に設置した。細胞を、0.5 mlの容量で6時間、100 nMの濃度のsiRNAでトランスフェクトし、その後培地を除去し、1 mlの10% SVF培地で交換する。機能的アポトーシス試験を実行する前に、細胞を54時間培養する。
【0107】
リン脂質輸送活性の測定(図7)
対照患者の滑膜液に比較して、RA患者の滑膜液のPLTPの活性が増大していること(OA、すなわち変形性関節症)を検出した。これは、RAにおけるPLTPの役割を強く示唆する。リン脂質輸送活性を、市販の蛍光活性アッセイ(Cardiovascular targets, New York, NY, USA)を、製造者の説明書に従って使用して測定した。PLTP活性キットは、ドナーとアクセプターの粒子を含む。PLTP源と、ドナーおよびアクセプターをインキュベートすることにより、蛍光リン脂質のPLTP介在移動がもたらされる。蛍光リン脂質(NBD標識リン脂質)は、ドナーと連結した場合、自己クエンチ状態で存在する。PLTP介在移動を、蛍光リン脂質が、ドナーから除去され、アクセプターに移動するのに伴う、蛍光強度の増大により測定する。簡単には、血清サンプル(5μl)、蛍光標識ドナー(3μl)および非標識アクセプター(50μl)を、96穴マイクロプレートの最終容量100μl TBS中で37°Cでインキュベートした。蛍光の変動を、465 nmの励起波長と535 nmの放出波長で、Victor2(登録商標)蛍光カウンター (PerkinElmer Life Sciences)を使用して毎分30分間モニターした。精漿中のPLTP活性(蛍光の増大)を、0分から20分の間の蛍光の増大として算出した。最初のリン脂質移動速度(蛍光の増大/分)を、0分から5分の間のサンプルにおける蛍光の増大を、インキュベーション時間で割ることにより算出した。
【0108】
結果
1.患者
患者の年齢及び性別を調査する際、TRAIL誘導アポトーシスに抵抗性のFLSを、主に60より若い女性の滑膜組織生検から単離する(表3、図2A)。1つだけのFLS-S培養物を、60歳より若い女性の組織から単離する(F、36歳、表3太字参照)。5つの他のFLS-Sを、60歳以上の女性の生検から単離し、4つの残りを、60歳より若い男性の生検から単離する。男性の生検から得られる7つのFLS培養物は、高い(4/7)または中程度(2/7)の感受性を有している。
【0109】
【表3】

【0110】
さらに、出願人は、RA FLSのTRAIL感受性が、由来する患者によって変動することを観察した。複数の患者由来の滑膜線維芽細胞は、TRAILに暴露した際にアポトーシスにほぼ抵抗性であるが、非処理細胞に比較して、増殖が増大する応答を示す(図2B)。顕著なことに、TRAIL誘導アポトーシスに抵抗性のFLSは、TRAIL感受性FLSのものよりもより重篤な疾患兆候を有する患者に由来するものであった。さらに、TRAIL誘導アポトーシスに対するFLSの感受性は、関節リウマチ患者(DAS28)の疾患活性の指標に逆相関した。そして、滑膜線維芽細胞のTRAIL応答は、疾患活性と相関するようである。
【0111】
2.マイクロアレイ技術により決定される候補遺伝子
FLSの収集は、得られる滑膜組織性研の頻度に依存する。それゆえ出願人は、最初各群に少なくとも10のFLSを使用する計画であったが、群あたり6つのFLSに関する第一の実験を行うことを選択した。それらの感受性は、表4に示される。
【0112】
【表4】

【0113】
DNAチップ技術により、膨大な数の遺伝子の発現レベルを制御することが可能となる。差異解析により、TRAIL誘導アポトーシスに抵抗性の細胞と、感受性の細胞との間で差異的に発現する12個の因子が明らかになった。マイクロアレイで検出するオリゴを、配列番号23から配列番号35として列挙する配列にリスト化する(表6も参照)。候補を、FLSの2つの群の間で顕著に差異的に発現する蛍光により分類する。これらの因子は、種々の機能、特に呼吸鎖(ATPase 6, NADH 3)、脂質の輸送又は代謝(ORP-4、リン脂質輸送タンパク質II)、ならびに細胞外因子(Sulfatase 2, GalNac-T1, Sialate OAE, Liprin β1)に連結するシグナルの制御に関する。PRAMEファミリーの遺伝子(例えば、PRAME 5, 3, 9, 18および19)、Acheron、eIF-1AならびにTET-1の機能はよく知られていない。Sialate OAEおよび特にPRAMEは、腫瘍に関連しているという便益を有するが、腫瘍細胞はTRAILの特別な標的である。
【0114】
FLS-RおよびFLS-Sのトランスクリプトームの比較の間に同定された3つの候補遺伝子は、糖鎖付加メカニズムに介在する:GALNT-1, SULF-2およびシアル糖鎖付加は、接着、レセプター活性化、細胞間シグナルのような細胞メカニズムを実質的に制御するのを助けるタンパク質および脂肪の修飾である。さらに、糖鎖付加タンパク質は、しばしば、無数のレセプター、特にTRAILレセプターのシグナル制御のために重要なプラットフォームである脂質ラフトに関連する。しかし、ORP-4は、それ自身脂質ラフトの組成物の一部を形成する脂肪、特にコレステロールおよびセラミドの代謝を制御するタンパク質である。
【0115】
【表5−1】


【表5−2】


【表5−3】

【0116】
TRAIL誘導アポトーシスに抵抗性であるか感受性であるかのどちらかである関節リウマチ(RA FLS)患者の滑膜線維芽細胞の遺伝子発現解析の結果
表には、少なくとも64%の傾向で2群の線維芽細胞間で差異的に発現している遺伝子を示す。
【0117】
候補の評価
統計解析に由来する12個の遺伝子または遺伝子ファミリー(PRAME)のうち、出願人は最初に4個の候補遺伝子、スルファターゼ2(SULF-2)、GalNTトランスフェラーゼ1(GALNT-1)、リプリンβ1、およびアセロン(Acheron) (LARP6)を選択し、これらは、TRAILに対する応答において、細胞生存および細胞死の問題において興味の対象となるようである。出願人は、定量PCR (RT-QPCR)により差異発現の検証を実行した。出願人の実験により、GALNT-1およびSULF-2およびPLTPは、FLS-Sで過剰発現し、アセロンおよびリプリンβ1およびEiF1AはFLS-R過剰発現していることが示された(図3および6)。さらに、RA患者の滑膜液中に見られるPLTPの活性増大は、この疾患におけるその重要性を示す。
TRAIL誘導アポトーシスにおける候補遺伝子の減衰効果
【0118】
TRAIL誘導アポトーシスにおける候補の機能性及び影響を、それにより候補遺伝子に相当するタンパク質の発現を消滅させることができるようにsiRNAを使用することにより、あるいはその過剰発現を可能とするベクターをトランスフェクションさせることにより、確認する。出願人は、3つの候補(ORP-4, GALNT-1およびSULF-2)に対するsiRNAを設計し、これらの遺伝子を消滅させるそれらの効果を評価し、TRAIL誘導アポトーシスの制御におけるそれらの役割を確認した。最初の実験により、トランスフェクションに最も良い条件を規定することができた。GALNT-1およびSULF-2遺伝子の発現の消滅効果を、定量PCRにより確認する。SULF-2およびGALNT-1に関して、出願人は、mRNAレベルの発現の消滅を確認することができ、その減少はおよそ80-90%である(ボックス、図4)。ORP-4に関して、出願人は、その発現をおよそ50%消失させることができた(ボックス、図5)。GALNT-1およびSULF-2を標的とするsiRNAは、FLS-SのTRAIL誘導アポトーシスを、非感染FLSにおけるTRAIL誘導アポトーシスに比較して、それぞれ67%および75%まで、顕著に減少させる。対照siRNAおよび感染試薬のいずれも、TRAIL誘導アポトーシスを有意に変化させることはない(図4)。対照siRNAおよび感染試薬のいずれも、TRAIL誘導アポトーシスを有意に変化させることはない(図4および5)。一方、ORP-4における減少は、非感染細胞に比較して、TRAIL誘導アポトーシスを167%まで顕著に増大させる。
【0119】
結論
FLS-SをFLS-Rから差異加化する分子要素を決定するために、出願人は、広範囲の遺伝子発現を比較することを可能とするDNAチップ技術により、2群のトランスクリプトームの比較を行った。後者により、出願人は、12個の差異的に発現する遺伝子または遺伝子のファミリー(PRAME)を同定することができた。これらのうち、出願人は、3個の遺伝子、GALNT-1、SULF-2およびORP-4の機能性を、siRNA技術により試験した。GALNT-1、SULF-2およびORP-4を標的とするsiRNAは、非感染細胞のTRAIL誘導アポトーシスに比べて、それぞれ67%、75%および167%の細胞死を伴うTRAIL誘導アポトーシスに影響するため、標的遺伝子の発現減少は細胞効果を観察するには十分である。
【0120】
そして、GALNT-1およびSULF-2は、TRAIL誘導アポトーシスに関連する要素である一方、ORP-4は、TRAIL誘導アポトーシスに対して抵抗性である。
【0121】
【表6】

【0122】
参照
本出願において、種々の参考文献に、本発明が関連する当該分野の形態が記載される。これらの参考文献の開示は、本明細書の開示に参照して取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の集団において、TRAIL誘導アポトーシスに関する遺伝子を同定するための方法であって、
1)前記細胞の集団を、TRAILと接触させる工程、
2)TRAIL誘導アポトーシスに感受性である前記集団の細胞のサブセット(感受性サブセット)と、TRAIL誘導アポトーシスに抵抗性である前記集団の細胞のサブセット(抵抗性サブセット)とを単離する工程、
3)感受性サブセットにおける遺伝子発現と、抵抗性サブセットにおける遺伝子発現とを比較する工程、ならびに
4)感受性サブセットにおいて、および抵抗性サブセットにおいて差次的にに発現する遺伝子を同定する工程であって、前記遺伝子が、感受性サブセットにおいて過剰発現し、前記集団の細胞をTRAIL誘導アポトーシスに対して感受性にする遺伝子として分類され、ならびに前記遺伝子が、抵抗性サブセットにおいて過剰発現し、前記集団の細胞のTRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子として分類される工程、
を含む方法。
【請求項2】
TRAIL誘導アポトーシスに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現インヒビターであって、前記遺伝子は、配列番号1、2、3、4、または5に示されるヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号1、2、3、4、および5からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、インヒビター。
【請求項3】
配列番号17または18に示されるヌクレオチド配列を含むsiRNAである、請求項2に記載のインヒビター。
【請求項4】
TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現アクチベーターであって、前記遺伝子は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、アクチベーター。
【請求項5】
配列番号17、18、19、20、21および22を含む群より選択される、単離されたヌクレオチド配列。
【請求項6】
TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にするin vitroの方法であって、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にすることができる生成物と、前記細胞を接触させる工程を含み、
前記生成物は、
−請求項2または3に記載の、TRAILに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現インヒビター、
−請求項4に記載の、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現アクチベーター、
−配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、発現ベクター、ならびに
−TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にすることができるタンパク質であって、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列により、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列により、コードされるタンパク質
を含む群から選択される、方法。
【請求項7】
ヒトまたは動物の身体において、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にするための方法において使用するための、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にすることができる生成物であって、
−請求項2または3に記載の、TRAILに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現インヒビター、
−請求項4に記載の、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現アクチベーター、
−配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、発現ベクター、ならびに
−TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にすることができるタンパク質であって、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列により、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列により、コードされるタンパク質
を含む群から選択される、生成物。
【請求項8】
ヒトまたは動物の身体における高増殖性疾患を治療するための方法において使用するための、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にすることができる生成物であって、
−請求項2または3に記載の、TRAILに対する抵抗性を誘導する遺伝子の発現インヒビター、
−請求項4に記載の、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現アクチベーター、
−配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、発現ベクター、ならびに
−TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にすることができるタンパク質であって、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列により、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列により、コードされるタンパク質
を含む群から選択される、生成物。
【請求項9】
前記高増殖性疾患が、癌及び関節リウマチを含む群より選択される、請求項8に記載の生成物。
【請求項10】
前期方法が、前記ヒトまたは哺乳動物の身体において有効量のTRAILを、同時、順次、または分離投与する工程をさらに含む、請求項8または9に記載の生成物。
【請求項11】
高増殖性疾患に罹患した対象のTRAILに対する応答性を測定するための方法であって、前記対象から得られる高増殖性細胞において、TRAIL誘導アポトーシスに対して前記細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現を検出する工程であって、前記遺伝子は、配列番号1、2、3、4または5に示されるヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号1、2、3、4および5からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、工程を含み、TRAIL誘導アポトーシスに対する前記細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現の検出が、前記対象がTRAILに対して非応答性であることを示す、方法。
【請求項12】
高増殖性疾患に罹患した対象のTRAILに対する応答性を測定するための方法であって、前記対象から得られる高増殖性細胞において、TRAIL誘導アポトーシスに対して前記細胞を感受性にする遺伝子の発現を検出する工程であって、前記遺伝子は、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、工程を含み、TRAIL誘導アポトーシスに対して前記細胞を感受性にする遺伝子の発現の検出が、前記対象がTRAILに対して応答性であることを示す、方法。
【請求項13】
薬学的に受容可能な担体と一緒に、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にすることができる生成物を含む薬剤組成物であって、
前記生成物は、
−請求項2または3に規定される、TRAILに対する細胞の抵抗性を誘導する遺伝子の発現インヒビター、
−請求項4に規定される、TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にする遺伝子の発現アクチベーター、
−配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む発現ベクター、ならびに
−TRAIL誘導アポトーシスに対して細胞を感受性にすることができるタンパク質であって、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列により、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列により、コードされるタンパク質
を含む群から選択される、薬剤組成物。
【請求項14】
さらにTRAILを含む、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
前記細胞が、癌細胞および関節リウマチ線維芽細胞様滑膜細胞を含む群から選択される高増殖性細胞である、請求項1、6、11または12のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項7、8、9または10のいずれか一項に記載の生成物、あるいは請求項13または14に記載の薬剤組成物。
【請求項16】
高増殖性疾患に罹患した対象の予後を測定する方法であって、
前記対象より得られるサンプルにおいて、TRAIL誘導アポトーシスに対する抵抗性を誘導する遺伝子の発現を検出する工程であって、前記遺伝子が、配列番号1、2、3、4、または5に示されるヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号1、2、3、4、および5からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、工程を含み、
前期発現が、対象が悪い予後を有することを示す、方法。
【請求項17】
高増殖性疾患に罹患した対象の予後を測定する方法であって、
前記対象より得られるサンプルにおいて、TRAIL誘導アポトーシスに対して前記細胞を感受性にする遺伝子の発現を検出する工程であって、前記遺伝子が、配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16に示されるヌクレオチド配列を含む、あるいは配列番号6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および16からなる群より選択されるヌクレオチド配列に少なくとも70%の同一性、特に少なくとも80%の同一性、より特に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、工程を含み、
前期発現が、対象が良好な予後を有することを示す、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−512642(P2012−512642A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541471(P2011−541471)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067517
【国際公開番号】WO2010/079084
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【出願人】(511148422)ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ・2・シアンス・エ・テクニーク (1)
【出願人】(508346778)ユニバーシテ・ドゥ・モンペリエ・1 (3)
【Fターム(参考)】