説明

TREM−1による炎症治療、検出およびモニタリング

本発明は、TREM−1発現活性/シグナル伝達および/またはDAP12/TyroBP発現および/または活性を阻害する/拮抗することによって対象の炎症性疾患/障害を治療する方法を提供する。対象またはそれから得られた試料におけるTREM−1および/またはDAP12/TyroBP発現および/または活性を検出することによって対象の炎症性疾患の存在を検出する方法であって、発現または活性の増加が炎症性疾患を示すところの、方法も含まれる。さらに、本発明は、分泌リンタンパク質1(SPP1)のレベルおよび/または患者もしくは患者からの試料における1種もしくは複数の他のバイオマーカーを検出することによって患者に投与されるTREM−1修飾剤の有効性を評価する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年11月2日出願の、米国仮特許出願番号第61/001,687号、2007年4月11日出願の、米国仮特許出願番号第60/923,131号、2007年2月28日出願の、米国仮特許出願番号第60/904,264号、および2007年1月16日出願の、米国仮特許出願番号第60/880,804号の優先権を主張し、その各々の全体開示を、出典明示により本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、人口の約1−2%に影響を及ぼす自己免疫炎症性疾患である(Feldman(2002) Nature Rev.Immunol.2(5):364−371;Mountら(2005) Nature Rev.Drug Discovery 4(1):11−12)。RAは、可動関節中の骨および軟骨の慢性炎症および破壊によって特徴付けられる。疾患の発症は、典型的には、25〜50歳の年齢であり、3人の患者のうち1人は、20歳までに重症身体障害者になる。
【0003】
RAの明確な病因は知られていないが、RAの発症事象が感染事象または環境暴露に関与することが提唱されている(Firestein(2005) J.Clin.Rheumatology 11(3 Supp.):S39−44)。先天性免疫の局所誘導は、滑膜表層の細胞を活性化し、遺伝的に感受性の高い個体の次の適応免疫反応の領域を刺激しうる(Firestein(2005) J.Clin.Rheumatology 11(3 Supp.):S39−44)。罹患RA患者の滑膜は、著しい滑膜の血管内膜過形成、血管増生の増加、および下内層における炎症細胞の蓄積によって特徴付けられる。RA滑膜の生検は、多数の炎症性サイトカイン、例えば、TNF−α、IL−1β、IL−6、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)の自発的産生を明らかにしている(Feldmanら(1996) Ann.Rev.Immunol.14:397−440)。TNF−α活性化を中和する抗体は、多数のサイトカインの産生を抑制するので、RAを治療するための新規抗TNF(療法を見出された。最近の臨床的所見は、RAの多様性を強調し、さらなる因子が疾患の発症に寄与しうることを示唆する。
【0004】
骨髄細胞上で発現するトリガー受容体−1(TREM−1)は、好中球および一部のCD14high単球上で主に発現する、最近になって同定された免疫グロブリン様細胞表面受容体である(Colonnaら(2000) Seminars in Immunol.12(2):121−27)。TREM−1は、短い細胞内ドメインを有し、TREM−1シグナル伝達は、アダプタータンパク質DAP12/TyproBPを介して媒介される。DAP12/TyroBPは、免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ(ITAM)を伴う膜貫通型タンパク質であり、TREM−1および他の膜貫通型受容体に関連している、アダプタータンパク質として機能する。
【0005】
TREM−1発現は、急性炎症中におよび種々のトール様受容体(TLR)リガンドによってアップレギュレートされる(Bouchonら(2001) Nature 410(6832):1103−07;Bleharskiら(2003) J.Immunol.170(7):3812−18;Murakamiら(2006) 54(2):455−62)。例えば、TREM−1は、敗血症に付随する急性炎症に関与している(Colonna(2003) Nat.Rev.Immun.3(6):445−53)。細胞表面および可溶性TREM−1の発現は、疾患重症度と相関する手法で敗血症において増大する(Gibotら(2005) New England J.Med.350(5):451−58;Gibotら(2005) Critical Care Med.33(4):792−96)。痛風の尿酸一ナトリウム(MSU)誘発性炎症モデルにおいて、TREM−1発現は、浸潤性腹腔マクロファージおよび好中球で急速に誘発される。そのため、TREM−1の活性化は、複数の炎症性サイトカインおよびケモカインの産生を刺激する。
【0006】
さらに、これらのサイトカインの産生におけるTREM−1のTLRおよびNod様受容体との相乗効果は、免疫反応を増幅する(Bouchonら(2001) Nature 410(6832):1103−07;Bleharskiら(2003) J.Immunol.170(7):3812−18;Neteaら(2006) J. Leukocyte Biol.80(6):1454−61)。これらのデータは、TREM−1発現の増大およびTREM−1発現細胞の炎症部位への移動が、炎症反応の増幅を介して急性炎症に寄与しうることを示唆する。
【0007】
急性炎症におけるTREM−1の役割は、TREM−1細胞外ドメイン−Fc融合またはTREM−1細胞外ドメインの合成ペプチドを用いてLPSまたはバクテリア誘発性敗血性ショックの致死率からマウスを保護することによってさらに立証された(Bouchonら(2001) Nature 410(6832):1103−07;Gibotら(2004) J.Exp.Med.200(11):1419−26)。TREM−1−Fcはまた、ザイモサン−A誘発性肉芽腫形成を阻止し、TREM−1が慢性炎症ならびに急性炎症に関与しうることを示唆する(Nochiら(2003) Am.J.Path.162(4):1191−201)。さらに、累積証拠は、可溶型TREM−1の濃度を循環させることが、敗血症、肺炎、急性膵炎、および消化性潰瘍疾患を含む、複数の炎症性疾患のバイオマーカーであることを示す(Gibotら(2005) Intensive Care Med.31(4):594−97;Gibotら(2004) New England J.Med.350(5):451−58;Wangら(2004) World J.of Gastroenterology 10(18):2744−46;Koussoulasら(2006) Eur. J.Gastroenterology & Hepatology 18(4):375−79)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Feldman(2002) Nature Rev.Immunol.2(5):364−371
【非特許文献2】Mountら(2005) Nature Rev.Drug Discovery 4(1):11−12
【非特許文献3】Firestein(2005) J.Clin.Rheumatology 11(3 Supp.):S39−44
【非特許文献4】Feldmanら(1996) Ann.Rev.Immunol.14:397−440
【非特許文献5】Colonnaら(2000) Seminars in Immunol.12(2):121−27
【非特許文献6】Bouchonら(2001) Nature 410(6832):1103−07
【非特許文献7】Bleharskiら(2003) J.Immunol.170(7):3812−18;Murakamiら(2006) 54(2):455−62
【非特許文献8】Colonna(2003) Nat.Rev.Immun.3(6):445−53
【非特許文献9】Gibotら(2005) New England J.Med.350(5):451−58
【非特許文献10】Gibotら(2005) Critical Care Med.33(4):792−96
【非特許文献11】Bleharskiら(2003) J.Immunol.170(7):3812−18
【非特許文献12】Neteaら(2006) J. Leukocyte Biol.80(6):1454−61
【非特許文献13】Gibotら(2004) J.Exp.Med.200(11):1419−26
【非特許文献14】Nochiら(2003) Am.J.Path.162(4):1191−201
【非特許文献15】Gibotら(2005) Intensive Care Med.31(4):594−97
【非特許文献16】Gibotら(2004) New England J.Med.350(5):451−58
【非特許文献17】Wangら(2004) World J.of Gastroenterology 10(18):2744−46
【非特許文献18】Koussoulasら(2006) Eur. J.Gastroenterology & Hepatology 18(4):375−79
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、TREM−1および/またはDAP12/TyroBPの過剰発現が自己免疫および/または炎症性疾患の存在に関連するという所見に一部基づいている。したがって、TREM−1および/またはDap12/TyroBPは、自己免疫および炎症性疾患の治療または予防のための新規の治療標的となる。1の態様において、本発明は、炎症性疾患を治療または予防するためのTREM−1および/またはDAP12/TyroBPアンタゴニストの使用に関する。本発明に用いられうるアンタゴニストには、例えば、抗体(例えば、以下にさらに詳細に記載するように、例えば、ヒト、マウス、ラクダ、ラマ、サメ、ヤギ、ウサギおよびウシを含むいずれかの種由来の抗体フラグメント、一本鎖Fv、単一ドメイン抗体を含む);可溶性受容体(切断型受容体、天然可溶性受容体、または第2タンパク質、例えば、免疫グロブリンのFc部と融合する受容体(またはそのフラグメント)を含む融合タンパク質);ペプチド阻害薬;低分子;リガンド融合;および結合タンパク質が含まれる。TREM−1およびDAP12/TyroBPはRA患者において過剰発現されるので、これらの遺伝子はRAに有効なバイオマーカーとなる。TREM−1は、特定の細胞型、例えば、好中球および一部の単球上に発現される細胞受容体であり、TREM−1はまた可溶型で存在する。TREM−1シグナル伝達は、アダプタータンパク質、DAP12/TyroBPを介して媒介される。TREM−1の活性化は、炎症性サイトカインおよびケモカインの産生を誘導する。したがって、TREM−1の発現の上昇は、RA、喘息、および他の炎症性疾患、例えば、慢性炎症性疾患および呼吸器炎症性障害/疾患で観察される炎症をもたらすかまたは寄与しうる。したがって、TREM−1および/またはDAP12/TyroBPは、RAおよび他の炎症性障害に付随する症状を治療、調節および/または予防するための有望な治療標的となる。
【0010】
1の態様において、本発明は、TREM−1媒介シグナル伝達を低下させることによって、例えば、慢性炎症性疾患(例えば、RA)または呼吸器障害/疾患(例えば、喘息)などの炎症性疾患の治療方法を提供する。TREM−1媒介シグナル伝達を低下させることには、TREM−1受容体および/またはTREM−1シグナル伝達に関与する他の分子(例えば、DAP12/TyroBP)を修飾、阻害、および/または拮抗することによって、TREM−1媒介炎症に付随する症状を軽減、治療、予防、緩和および/または改善することが含まれうる。いくつかの実施態様において、TREM−1タンパク質発現は、TREM−1転写を阻害することによって;内因性TREM−1 mRNAを選択的に切断することによって;または内因性TREM−1 mRNAの翻訳を阻害することによって低下する。例えば、TREM−1タンパク質発現は、干渉RNA、例えば、shRNA(例えば、配列番号9−22のいずれかによってコードされるshRNA)またはsiRNA(例えば、配列番号23−26のいずれか)を投与することによって低下する。他の実施態様において、TREM−1活性化は、低分子、ペプチド模倣薬、ペプチド阻害薬、リガンド融合タンパク質、TREM−1に結合する抗体または抗体フラグメント、TREM−1リガンドに結合する抗体または抗体フラグメント、可溶性TREM−1受容体またはそのリガンド結合タンパク質、あるいは可溶性TREM−1受容体融合タンパク質を投与することによって阻害される。本発明のさらなる実施態様は、TREM−1シグナル伝達経路の非TREMメンバー(例えば、TREM−1付属タンパク質DAP12/TyroBP)を直接阻害することによって、例えば、慢性炎症性疾患(例えば、RA)または呼吸器障害/疾患(例えば、喘息)などの炎症性疾患の治療方法を提供する。いくつかの実施態様において、TREM−1媒介シグナル伝達は、対象における内因性TREM−1またはDAP12/TyroBPタンパク質に対する免疫反応を誘発することによってヒト患者で低下する。例えば、アジュバントおよびTREM−1もしくはDAP12/TyroBPタンパク質またはその免疫原性フラグメントを含む免疫原性組成物は、内因性タンパク質に対する免疫反応を引き起こすために対象に投与されうる。
【0011】
本発明のさらなる態様は、受容体を活性化することなくTREM−1に結合する抗体または抗体フラグメントを提供する。抗体または抗体フラグメントは、例えば、モノクローナルでありうる。本発明のさらなる実施態様は、受容体を活性化することなくTREM−1に結合する抗体または抗体フラグメントの治療上有効な量を対象に投与する工程を含む対象(例えば、ヒト患者)の治療方法を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、配列番号9−22のいずれかによってコードされるshRNAを提供する。
【0013】
本発明は、TREM−1の活性化が、多数の遺伝子、例えば、TREM−1活性のマーカーとして用いられうる、分泌リンタンパク質1(SPP1)の差次的発現をもたらすことを提供する。したがって、別の態様において、本発明は、特異的で、TREM−1活性を示すマーカーを提供する。1種または複数のこれらのマーカーの濃度変化は、TREM−1活性の変化に相関する。したがって、本発明はまた、TREM−1活性、および/または1種もしくは複数のこれらのマーカーを検出することによって、かかる治療を必要とする患者(例えば、ヒト患者)に投与されるTREM−1修飾剤の有効性を評価する方法を提供する。例えば、分泌リンタンパク質1(SPP1;オステオポンチン(OPN)、骨シアロタンパク質I(BSPI)、早期T−リンパ球活性化1(ETA−1)、またはMGC110940としても知られている)濃度は、患者または患者からの試料で検出することができ、SPP1濃度の変化は、TREM−1シグナル伝達の変化に相関する。SPP1濃度は、患者または患者からの任意の臨床的に関連する試料、例えば、体液試料(例えば、血清、髄液、気管気管支粒体、唾液)で検出されうる。1の実施態様において、該方法には、SPP1濃度を基準濃度と比較し、基準濃度と比較したSPP1濃度の増加がTREM−1活性の増加を示し、基準濃度と比較したSPP1濃度の減少がTREM−1活性の減少を示しうるところのさらなる工程が含まれる。基準濃度は、例えば、TREM−1修飾剤の投与前に患者または患者からの試料で検出されるSPP1濃度でありうる。本発明に記載のTREM−1活性を評価するために用いられうるさらなるマーカーは、以下にさらに詳細に記載され、例えば、図8Aに記載されている。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、TREM−1シグナル伝達を調節しうる候補薬剤のスクリーニング方法を提供する。該方法には、TREM−1発現細胞を候補薬剤と接触させ、候補薬剤がTREM−1活性化を調節するか否かを決定するためにTREM−1発現細胞の分泌リンタンパク質1(SPP1)濃度を評価することが含まれる。本発明にしたがってスクリーンされうる候補薬剤には、例えば、干渉RNA、低分子、ペプチド模倣薬、ペプチド阻害薬、リガンド融合タンパク質、TREM−1に結合する抗体またはそのフラグメント、TREM−1リガンドに結合する抗体またはそのフラグメント、可溶性TREM−1受容体、可溶性TREM−1受容体融合タンパク質、およびその組み合わせが含まれる。他の実施態様において、該方法には、TREM−1発現細胞をTREM−1活性化因子(例えば、架橋抗体)と接触させることが含まれる。さらに他の実施態様において、該方法には、求めたSPP1濃度を基準濃度と比較することが含まれうる。基準濃度と比較したSPP1濃度の増加は、TREM−1シグナル伝達の増加を示し、基準濃度と比較したSPP1濃度の減少は、TREM−1シグナル伝達の減少を示しうる。1の実施態様において、基準濃度は、TREM−1発現細胞を候補薬剤と接触させる前に求められたTREM−1発現細胞のSPP1濃度に相当する。本発明に記載のTREM−1活性を評価するために用いられうるさらなるマーカーは、以下にさらに詳細に記載され、例えば、図8Aに記載されている。
【0015】
本発明の別の態様は、炎症または慢性炎症の治療を受けた患者のモニタリング方法を提供する。該方法には、それを必要とする患者(例えば、ヒト患者)にTREM−1修飾剤を投与すること、患者または患者からの試料で分泌リンタンパク質(SPP1)濃度を検出すること、および検出SPP1濃度を基準濃度と比較することが含まれる。SPP1濃度は、患者または患者からの試料、例えば、体液試料(例えば、血清、髄液、気管気管支流体、唾液)で検出されうる。基準濃度と比較したSPP1濃度の低下は、TREM−1媒介炎症の低下を示し、基準濃度と比較したSPP1濃度の変化なしまたは増加は、それぞれ、TREM−1媒介炎症の変化なしまたは増加であることを示しうる。いくつかの実施態様において、基準濃度は、TREM−1修飾剤の投与前または同時に患者または患者からの試料で検出されたSPP1濃度に相当する。他の実施態様において、基準濃度は、対照患者(例えば、ヒト)または対照患者からの試料のSPP1濃度に相当し、ここで、対照患者は、慢性炎症を伴わないことが知られている。本発明に記載のTREM−1活性を評価するために用いられうるさらなるマーカーは、以下にさらに詳細に記載され、例えば、図8Aに記載されている。
【0016】
別の態様において、本発明は、対象(例えば、ヒト患者)における、例えば、慢性炎症性疾患(例えば、RA)または呼吸器障害/疾患(例えば、喘息)などの炎症性疾患の存在の検出方法に関する。炎症性疾患には、例えば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、ループス性関節炎、強直性脊椎炎を含む)、強皮症、全身性エリテマトーデス、血管炎、多発性硬化症、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹様皮膚炎を含む)、自己免疫性皮膚疾患、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、潰瘍性大腸炎、糖尿病(I型);例えば、皮膚(例えば、乾癬、急性および慢性じんま疹(じんましん))、心臓血管系(例えば、アテローム性動脈硬化症)、神経系(例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症)、肝臓(例えば、肝炎)、腎臓(例えば、腎炎)および膵臓(例えば、膵炎)の炎症性疾患;心臓血管疾患、例えば、コレステロール代謝性障害、酸素フリーラジカル損傷;損傷治癒に付随する障害;高級胃障害、例えば、喘息およびCOPD(例えば、嚢胞性線維症);急性炎症性疾患(例えば、内毒素血症、敗血症、敗血性ショック、毒素性ショック症候群および感染性疾患);移植片拒絶反応およびアレルギー(例えば、アナフィラキシー、血管性浮腫、アトピー、虫さされアレルギー、アレルギー性鼻炎)が含まれる。本発明にしたがって検出されうるさらなる病態には、虚血が含まれる。該方法には、対象または対象から得られた試料において、TREM−1(例えば、膜結合型TREM−1、可溶性TREM−1)またはDAP12/TyroBP発現または活性を検出する工程が含まれる。(本願において、「または」は「および/または」を意味しうるので、該方法には、TREM−1およびDAP12/TyroBPの両方の検出が含まれ、必要に応じて、発現および活性の検出が含まれうる)。本発明の該方法および他の方法の実施に有用な試料は、例えば、免疫系の組織における、または慢性炎症の部位に予め曝された組織もしくは流体における(例えば、血液、血漿、またはリンパ液)を循環しようと慢性炎症の部位に局在しようと、例えば、関節組織、滑液、滑膜、または他の臨床的に関連のある体液または組織を含む試料を含む、TREM−1および/またはDAP12/TyroBPが検出されうる任意の試料である。TREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性の上昇の検出は、例えば、慢性炎症性疾患、例えば、RAなどの炎症性疾患の存在を示す。該方法には、対象、または対象由来の試料におけるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性を既知の基準濃度と比較するさらなる工程が含まれうる。比較結果(例えば、発現または活性の増加)は、炎症性疾患の存在を示す。基準濃度は、例えば、炎症性疾患の存在、または正常発現と増大した発現を区別するための閾値を示しうる。
【0017】
本発明はまた、対象または対象からの試料でTREM−1またはDAP12/TyroBP発現を検出すること、および対象または試料におけるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現を基準濃度と比較することによって、対象(例えば、ヒト患者)における、例えば、慢性炎症性疾患、例えば、RAまたは喘息などの炎症性疾患の存在を検出する方法を提供する。比較結果(例えば、発現の増加)は、炎症性疾患の存在を示す。基準濃度は、炎症性疾患の存在、または正常と増大した発現を区別するための閾値などを示しうる。
【0018】
別の態様において、本発明は、対象(例えば、ヒト患者)における、例えば、慢性炎症性疾患(例えば、RA)または呼吸器障害/疾患(例えば、喘息)などの炎症性疾患のモニタリング方法を提供する。該方法は、(対象において異なる時間で決定されるようにまたは異なる時間で対象から得られた試料で決定されるように)時間による対象におけるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性の変化が病態の変化の指標として用いられうるという認識の恩恵を受ける。該方法には、2もしくは複数の異なる時間(最初および第2の、後の時間と本明細書で称される時々)の対象または2もしくは複数の異なる時間の対象から得られた試料における、TREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性を検出することならびに観察された発現または活性を比較することが含まれる。時間によるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性の低下は、炎症性疾患の低下を示しうる、一方、時間によるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性の増加は、炎症性疾患の増加を示しうる。
【0019】
モニタリング方法はまた、対象(例えば、ヒト患者)における、例えば、慢性炎症性疾患(例えば、RA)または呼吸器障害/疾患(例えば、喘息)などの炎症性疾患の治療を評価するのに有用である。治療は、対象におけるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性を検出する第2の、後の時間前あるいは第2の、後の試料を得る前に行われる。治療は、モニタリング方法を開始する前または後(対象における最初の検出または対象からの最初の試料を得る前または後)に行われうる。そのため、治療方針は、最初または最初の試料のTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性と第2の、後の時間または第2の試料のTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性との比較に基づき変更されうる。
【0020】
これらのおよび他の本発明の態様および実施態様はまた、本願の以下の項目に記載されており、本発明の特定の実施態様を強調するために提供され、本発明を限定することを意図とするものではなく、その範囲は、特許請求の範囲によってのみ特定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
特許または出願ファイルは、少なくとも1つの彩色図面を含有する。彩色図面(複数)を伴う該特許公報または特許出願公開公報の写しは、請求および必要な手数料の支払に応じて特許庁によって提供されるであろう。
【0022】
【図1】図1は、RA患者からの滑膜におけるTREM−1およびDAP12/TyroBP発現を示す棒グラフである。
【図2】図2は、マウスコラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルにおけるTREM−1およびDAP12/TyroBP mRNA発現を示す棒グラフである。
【図3A】図3Aは、TREM−1陽性指数>1000を有するRA陽性滑膜部分におけるヒトTREM−1の免疫組織化学染色の典型的な画像を示す。
【図3B】図3Bは、TREM−1陽性指数<20を有する変形性関節炎(OA)対照部分におけるヒトTREM−1の免疫組織化学染色の典型的な画像を示す。
【図4】図4は、RAおよび対照(HVOS)患者から得られたヒト血漿試料におけるELISAによって検出された可溶性TREM−1濃度を示すグラフである。
【図5】図5は、TREM−1の架橋後のマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)活性化の経時変化を図示する典型的なウエスタンブロットを示す。
【図6】図6は、p<0.01を有する>2倍に調節された遺伝子の典型的なANOVAヒートマップクラスタ分析を示す。個々のドナーを左側に示し、平均強度を右側に示す。
【図7】図7は、全ての存在遺伝子(「コール」)の典型的な散布図を示す。Ln率変化は、負の値に変換されたダウンレギュレーションを伴って、TREM−1(x軸)およびLPS(y軸)にプロットされた。選択遺伝子を強調する。45°軸は、両処理により同等に調節された遺伝子を画定する。
【図8A】図8Aは、TREM−1活性化で>4倍アップレギュレートされる典型的な遺伝子を記載する表を示す。
【図8B】図8Bは、LPSでの処置で>4倍アップレギュレートされる典型的な遺伝子を記載する表を示す。
【図9A】図9Aは、一般に>4倍アップレギュレートされる典型的な遺伝子、すなわち、TREM−1活性化およびLPS処理の両方でアップレギュレートされる遺伝子を記載する表を示す。
【図9B】図9Bは、TREM−1活性化またはLPS処理のいずれかで>4倍ダウンレギュレートされる典型的な遺伝子を記載する表を示す。
【図10】図10A−Bは、GFP発現ヒト単球THP−1細胞での典型的なファゴサイトーシスアッセイの結果を示す。1μMビーズは赤色で生じる。図10Aは、処理後のTHP−1細胞の形態変化を示す。図10Bは、α−TREM−1およびLPSでの処理が、マイクロスフィアファゴサイトーシスを誘発することを示す。
【図11】図11A−Fは、典型的な経時的ELISAを示すグラフである。図11AはGM−CSFを示し、図11BはM−CSFを示し、図11CはG−CSFを示し、図11DはINHBA(インヒビン、βA(アクチビンA、アクチビンAB、αペプチド))を示し、図11EはSPP1を示し、図11FはIL−23を示す。
【図12】図12は、TREM−1の架橋結合が用量依存的にRA組織試料中の多数のサイトカインの産生を誘導することを示す一連の棒グラフである。
【図13】図13A−Bは、3つの異なるドナーから調製された組織試料における複数の産生サイトカインを示すチャートである。図13Aは、3つのドナー試料における自発的サイトカイン産生の比較を示す。図13Bは、3つのドナー試料におけるTREM−1の架橋におけるサイトカイン産生の比較を示す。
【図14】図14は、K/BxN足におけるTREM−1発現の増大を示す棒グラフである。
【図15】図15は、K/BxN血清輸送に対する反応における、mTREM−1−hFCトランスジェニックマウスおよび野生型マウスの足首肥厚を示すグラフである。
【図16】図16は、K/BxN血清輸送に対する反応における、14日目のmTREM−1−hFCトランスジェニックマウスの足首肥厚を示すグラフを示す。
【図17】図17は、mTREM−1−hFc融合タンパク質を発現するトランスジェニックマウスにおける抗IgE抗体投与後の耳の腫脹を示すグラフである。
【図18】図18は、mTREM−1−mFcタンパク質で前処理したマウスにおける抗IgE抗体投与後の耳の腫脹を示すグラフである。
【図19】図19は、mTREM−1−mFcタンパク質で前処理したマウスにおける抗IgE抗体投与後の耳の腫脹の用量反応を示すグラフである。
【図20】図20は、抗IgE抗体投与後のTREM−1ノックアウトマウスにおける耳の腫脹を示すグラフである。
【図21】図21は、shRNAまたはsiRNAノックダウン後のRT−PCRによってTREM−1発現を示す棒グラフである。
【図22】図22A−Bは、TREM−1過剰発現細胞株におけるTREM−1のレンチウイルスshRNAノックダウン後のTREM−1発現を図示する典型的なウエスタンブロットを示す。
【図23】図23は、Affymetrix(登録商標) Human Genome U133_プラス2.0アレイを用いて精製ヒト単球の全遺伝子発現プロファイリングからの結果を要約する表である(実施例6を参照)。
【図24】図24は、Affymetrix(登録商標) Human Genome U133_プラス2.0アレイを用いて精製ヒト単球の全遺伝子発現プロファイリングからの結果をさらに要約する表である(実施例6を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に用いられる、「核酸」なる語は、ポリヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)および、必要に応じて、リボ核酸(RNA)をいう。該用語はまた、記載されている実施態様に適用できるように、一本鎖(例えば、センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドを含むことを理解する必要がある。
【0024】
本明細書に用いられる、「RA陽性」、「RA試料」、および「RA組織」は、対象、または任意の組織、流体、あるいは関節リウマチを伴う対象由来の他の試料をいう。「RA陰性」は、対象、または任意の組織、流体、あるいは疾患に罹患していない対象由来の他の試料をいう。
【0025】
本明細書に用いられる、「RA」なる語は関節リウマチをいう。本明細書に用いられる、「OA」なる語は変形性関節炎をいう。
【0026】
「抗体」なる語には、無傷分子ならびにその機能的フラグメント、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fc、Fd、Fd’、Fv、一本鎖抗体(例えば、scFv)、単一変数ドメイン抗体(Dab)、ダイアボディ(二価および二重特異性)、およびキメラ(例えば、ヒト化)抗体が含まれ、それらは、組換えDNA技術を用いて全抗体またはデノボ合成された抗体の修飾によって産生されうる。これらの機能的抗体フラグメントは、それらの各抗原または受容体と選択的に結合する能力を保有する、抗体および抗体フラグメントは、限定されるものではないが、IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgEを含む任意のクラスの抗体ならびに任意のサブクラスの抗体(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)由来でありうる。本発明の抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルでありうる。抗体はまた、ヒト、ヒト化、CDR移植、またはインビトロ生成抗体でありうる。抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有しうる。抗体はまた、例えば、κまたはλから選択される軽鎖を有しうる。抗体の定常領域は、抗体の性質を修飾するために(例えば、1種または複数のFc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基数、エフェクター細胞機能、または補体機能を増加または減少するために)変化、例えば、変異しうる。典型的には、抗体は、所定の抗原、例えば、障害、例えば、神経変性、代謝性、炎症性、自己免疫および/または悪性疾患に付随する抗原に特異的に結合する。
【0027】
本発明の抗体はまた、単一ドメイン抗体でありうる。単一ドメイン抗体には、相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体が含まれうる。例として、限定されるものではないが、重鎖抗体、軽鎖が天然に欠損している抗体、通常4鎖抗体由来の単一ドメイン抗体、改変抗体および抗体由来のもの以外の単一ドメインスキャフォールドが挙げられる。単一ドメイン抗体は、先行技術のいずれか、または任意の次世代の単一ドメイン抗体でありうる。単一ドメイン抗体は、限定されるものではないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、魚、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含む、任意の種から得られうる。本発明の1の態様において、単一ドメイン抗体は、魚で見出された免疫グロブリンの可変領域から得られうる、例えば、サメの血清中で見出された新規抗原抗体(NAR)として知られている免疫グロブリンアイソタイプから得られる。NAR(「IgNAR」)の可変領域から得られる単一ドメイン抗体の産生方法は、WO03/014161およびStreltsov(2005) Protein Sci.14:2901−2909に記載されている。本発明の別の態様にしたがって、単一ドメイン抗体は、軽鎖が欠損している重鎖抗体として知られている天然単一ドメイン抗体である。かかる単一ドメイン抗体は、例えば、WO9404678に記載されている。明確な理由で、該軽鎖を天然に欠損している重鎖抗体から得られる可変ドメインは、4鎖免疫グロブリンの通常VHと区別するためにVHHまたはナノ体として本明細書で知られている。かかるVHH分子は、ラクダ科種、例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびグアナコでもたらされる抗チアから得られうる。ラクダ科に加えて他の種は、軽鎖を天然に欠損している重鎖抗体を産生しうる;かかるVHHは、本発明の範囲内にある。
【0028】
本発明はまた、CH1以外の、免疫グロブリン重鎖からの1つまたは複数の天然または改変定常領域、例えば、IgGおよびIgAのCH2およびCH3領域、またはIgEのCH3およびCH4領域に順に融合するかあるいは結合する、典型的には、免疫グロブリンヒンジまたはヒンジ作用領域ポリペプチドに融合するかまたは結合する結合ドメインポリペプチドを含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質を表す低分子免疫医薬品(「SMIPsTM」)の使用を意図とする(さらに詳細な記載については、例えば、Ledbetter,J.らによるU.S.2005/0136049を参照)。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質には、ヒンジ領域ポリペプチドに融合するかあるいは結合する天然または改変免疫グロブリン重鎖CH2定常領域ペプチド(またはIgEから全体でもしくは部分で得られた構築物の場合、CH3)ならびにCH2定常領域ポリペプチド(またはIgEから全体でもしくは部分で得られた構築物の場合、CH3)に融合するかあるいは結合する天然または改変免疫グロブリン重鎖CH3定常領域ポリペプチド(またはIgEから全体でもしくは部分で得られた構築物の場合、CH4)を含む領域がさらに含まれうる。典型的には、かかる結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害、補体結合、および/または標的、例えば、標的抗原への結合からなる群より選択される少なくとも1つの免疫学的活性能がある。
【0029】
本明細書に用いられる「アンチセンス」なる語は、特異的DNAまたはRNA配列に相補的であるヌクレオチド配列をいう。「アンチセンス鎖」なる語は、「センス」鎖に相補的である核酸鎖について用いられる。アンチセンス分子は、相補鎖の合成を可能にするウイルスプロモーターに逆方向である目的遺伝子(複数)を連結することによる合成を含む、任意の方法によって産生されうる。細胞に導入されるとすぐに、転写鎖は、二本鎖を形成するために細胞によって産生される天然配列を組み合わせる。次いで、これらの二本鎖は、さらなる転写または翻訳のいずれかを阻害する。「負」なる表示は、アンチセンス鎖について時々用いられ、「正」は、センチ鎖について時々用いられる。
【0030】
本明細書に用いられる、「対象」および「患者」なる語は、任意のヒトまたは非ヒト哺乳動物をいう。
【0031】
本明細書に用いられる、「検出する」なる語および「検出する」なる語幹の他の全ての形態は、1つまたは複数の標的の存在または不存在の確認、1つまたは複数の標的の定量化、あるいは1つまたは複数のバイオマーカーの閾値の存在または不存在の決定をいう。
【0032】
本明細書に用いられる、「関節組織」なる語は、非限定的な例として、腱、靱帯、および滑膜を含む、接合面から得られる任意の組織または流体をいう。
【0033】
本明細書に用いられる、「炎症性疾患」なる語には、非限定的な例として、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、ループス性関節炎または強直性脊椎炎を含む)、強皮症、全身性エリテマトーデス、血管炎、多発性硬化症、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹様皮膚炎を含む)、自己免疫性皮膚疾患、重症筋無力症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、潰瘍性大腸炎、糖尿病(I型);例えば、皮膚(例えば、乾癬、急性および慢性じんま疹(じんましん))、心臓血管系(例えば、アテローム性動脈硬化症)、神経系(例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症)、肝臓(例えば、肝炎)、腎臓(例えば、腎炎)および膵臓(例えば、膵炎)の炎症性疾患;心臓血管疾患、例えば、コレステロール代謝性障害、酸素フリーラジカル損傷;損傷治癒に付随する障害;呼吸器障害、例えば、喘息およびCOPD(例えば、嚢胞性線維症);急性炎症性疾患(例えば、内毒素血症、敗血症、敗血性ショック、毒素性ショック症候群および感染性疾患);移植片拒絶反応およびアレルギー(例えば、アナフィラキシー、血管性浮腫、アトピー、虫さされアレルギー、アレルギー性鼻炎)が含まれる。
【0034】
本明細書に用いられる、「慢性炎症性疾患」なる語は、炎症反応の持続時間が長い場合(例えば、数週間、数ヶ月、あるいは無期限)ならびに時間的経過の延長が組織の炎症の原因刺激の持続によって引き起こされる場合の任意の疾患をいう。「慢性炎症性疾患」なる語には、例えば、関節リウマチが含まれる。
【0035】
本明細書に用いられる、「示す」なる語(例えば、炎症性疾患を示す)は、それ自体は決定的証拠であることとは対照的に、考えられる兆しまたは指標または因子を意味する。一般的に、TREM−1発現レベルの増大は、炎症性疾患(例えば、RA)の可能性の増大と相関する、そのため、TREM−1発現の増大は、炎症性疾患(例えば、RA)の存在を示す。同様に、正常TREM−1発現レベルは、一般的に、炎症性疾患(例えば、RA)の不在の可能性の増大と相関する。
【0036】
本明細書に用いられる、「PCR」なる語は、ポリメラーゼ連鎖反応をいう。
【0037】
本発明は、例えば、慢性炎症性疾患などの炎症性疾患のバイオマーカーとして、より具体的には、RAのバイオマーカーとしてのTREM−1およびDAP12/TyroBPの同定を含む。RAの転写プロファイリングと正常滑膜組織の比較は、TREM−1 mRNA発現が、ヒトRA試料にて正常の6.5倍以上アップレギュレートされ、DAP12/TyroBP mRNA発現が、ヒトRA試料にて正常の2倍以上アップレギュレートされることを明らかにした(実施例1を参照)。コラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルにおいて、TREM−1 mRNAは、正常マウスの足に比べてCIAの足では132倍アップレギュレートされ、DAP12/TyroBP mRNAは、正常マウスの足に比べてCIAの足では8.21倍アップレギュレートされた(実施例2を参照)。免疫組織化学によって、ヒトRA滑膜試料は、増加したTREM−1発現細胞を含有していた(実施例3を参照)。そのため、滑膜培地におけるTREM−1の活性化は、用量依存的手法で炎症性サイトカインおよびサイトカイン産生を誘導した(実施例9を参照)。さらに、可溶性TREM−1レベルは、対照患者と比較してRA患者からのヒト臨床血漿試料で上昇する(実施例4を参照)。RAのバイオマーカーとしてのTREM−1およびDAP12/TyroBPの同一性ならびにTREM−1の炎症反応を誘導する能力は、TREM−1およびTREM−1シグナル経路のメンバーを、例えば、慢性炎症性疾患、特にRAなどの、炎症性疾患の望ましい治療標的にする。
【0038】
遺伝子発現の検出
本発明は、TREM−1またはDAP12/TyroBPの発現または活性を検出するかまたは定量化することによって、例えば、慢性炎症性疾患などの炎症性疾患の検出およびモニタリング方法を提供する。定量化の有無に関わらず、目的のタンパク質、核酸、または活性レベルの多数の検出方法は、既知であり、本発明の実施に用いられうる。
【0039】
標的遺伝子転写物は、当該分野にて既知である多数の技法を用いて検出されうる。いくつかの有用な核酸検出システムは、試料の精製された核酸画分を調製すること、および該試料を直接検出アッセイまたは増幅過程、次いで、検出アッセイ、例えば、関節組織中TREM−1 mRNAのアッセイを対象とすることに関与する。増幅は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素(RT)および共役RT−PCRによって達成されうる。核酸の検出は、例えば、目的核酸にハイブリダイズするプローブを有する精製された核酸画分を探索することによって達成することができ、多くの場合、検出は、同様に増幅に関与する。ノーザンブロット法、ドットブロット法、マイクロアレイ、定量的PCR、および定量的RT−PCRは、全ての既知の試料中の核酸を検出する方法である。核酸はまた、リガーゼ連鎖反応、SDA法(strand displacement amplification)、自家持続配列複製法または核酸配列増幅法によって増幅されうる。例えば、Lewis(1992) Genetic Engineering News 12(9):l;Guatelliら(1990) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878;およびWeiss(1991) Science 254:1292を参照のこと。核酸はまた、スプライシングによって検出することができ、スプライシングは、標的核酸に特異的なプライマー(例えば、TREM−1 cDNA配列)または標的核酸に結合したアダプター配列に対するプライマーを用いうる。無作為に選択されたmRNAまたはcDNAのスプライシングは、バイオマーカー(例えば、TREM−1 cDNAまたはmRNA配列)に対応する核酸配列を含有する全ての配列転写物の割合によって示されるバイオマーカーの相対的発現の指標を提供しうる。あるいは、核酸は、抽出または精製することなく、例えば、ハイブリダイゼーションによって、インサイツで検出されうる。
【0040】
標的タンパク質は、例えば、1種または複数の抗体を用いて免疫学的に検出されうる。免疫アッセイにおいて、バイオマーカーに対し特異的結合アフィニティーを有する抗体またはかかる抗体に結合する二次抗体は、直接的または間接的のいずれかで標識されうる。抗体は完全である必要はない:抗体可変ドメインまたはその人工アナログ、例えば、一本鎖抗体は、十分である。適当な標識には、限定されるものではないが、放射性核種(例えば、125I、131I、35S、3H、32P、33P、または14C)、蛍光部分(例えば、フルオレセイン、FITC、PerCP、ローダミン、またはPE)、発光部分(例えば、Quantum Dot Corporation,Palo Alto,CAが提供するQdot(商標)ナノ粒子)、所定の波長の光を吸収する化合物、または酵素(例えば、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)が含まれる。抗体は、ビオチンとの抱合によって間接的に標識され、次いで、上記分子で標識されたアビジンまたはストレプトアビジンで検出されうる。標識の検出または定量化方法は、標識の特性に依存し、当該分野にて既知である。検出器の例として、限定されるものではないが、X線フィルム、放射能カウンター、シンチレーションカウンター、分光光度計、比色計、蛍光光度計、照度計、および密度計が挙げられる。当業者に既知のこれらのアプローチの組み合わせ(「多層」アッセイを含む)は、アッセイの感度を高めるために用いられうる。
【0041】
標的タンパク質を検出するための免疫アッセイは、サンドイッチ分析、競合アッセイ(競合RIA)、またはブリッジ免疫アッセイを含む、種々の既知の形式で実施されうる。例えば、米国特許番号第5,296,347号;第4,233,402号;第4,098,876号;および第4,034,074号を参照のこと。標的タンパク質の検出方法は、一般的に、生物試料をタンパク質に結合する抗体と接触させることおよびタンパク質の抗体に対する結合を含む。例えば、TREM−1に特異的な結合アフィニティーを有する抗体は、種々の当該分野にて既知の方法のいずれかによって固定基質上で固定され、次いで、生物試料に曝されうる。固体基質上のTREM−1の抗体に対する結合は、表面プラズモン共鳴の現象を利用することによって検出することができ、適当な装置、例えば、Biacore(登録商標)装置(Biacore International AB,Rapsgatan,Sweden)によって定性的または定量的に検出されうる結合における表面プラズモン共鳴の強度の変化をもたらす。あるいは、抗体は、上記のように、標識および検出されうる。既知のタンパク質量を用いる標準曲線は、バイオマーカーレベルの定量化に役立てるために作成されうる。
【0042】
他の実施態様において、捕捉抗体が固体基質上で固定される「サンドイッチ」分析は、標的タンパク質の濃度を検出するために用いられる。固体基質は、試料中の任意の標的タンパク質が固定化抗体に結合しうるように生物試料と接触されうる。抗体に結合する標的タンパク質の濃度は、標的タンパク質に特異的な結合アフィニティーを有する「検出」抗体および上記の方法を用いて測定されうる。これらのサンドイッチ分析において、捕捉抗体が、検出抗体として同一エピトープ(またはポリクローナル抗体の場合、エピトープの範囲)に結合する必要がないことは理解される。したがって、モノクローナル抗体が、捕捉抗体として用いられるならば、検出抗体は、捕捉モノクローナル抗体が結合するエピトープから完全に物理的に分離されるかまたはそれと部分的にのみ重複するエピトープに結合する別のモノクローナル抗体、あるいは捕捉モノクローナル抗体が結合するもの以外のまたはそれを加えたエピトープに結合するポリクローナル抗体でありうる。ポリクローナル抗体が捕捉抗体として用いられるならば、検出抗体は、捕捉ポリクローナル抗体が結合するエピトープのいずれかから完全に物理的に分離されるかまたはそれと部分的に重複するエピトープに結合するモノクローナル抗体、あるいは捕捉ポリクローナル抗体が結合するもの以外のまたはそれを加えたエピトープに結合するモノクローナル抗体のいずれかでありうる。サンドイッチ分析は、サンドイッチELISAアッセイ、サンドイッチウエスタンブロット法アッセイ、またはサンドイッチ免疫磁性検出アッセイとして実施されうる。
【0043】
抗体(例えば、捕捉抗体)に対する適当な固体基質は、限定されるものではないが、マイクロタイタープレート、チューブ、膜、例えば、ナイロンまたはニトロセルロース膜、およびビーズまたは粒子(例えば、アガロース、セルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、磁気、または磁化可能なビーズまたは粒子)を含みうる。磁気または磁化可能な粒子は、自動免疫アッセイシステムを用いる場合に特に有用でありうる。
【0044】
標的ポリペプチドを検出する他の方法には、質量−分光光度法、例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)が含まれる。例えば、Gevaertら(2001) Electrophoresis 22(9):1645−51;Chaurandら(1999) J.Am.Soc.Mass Spectrom.10(2):91−103を参照のこと。かかる用途に有用な質量分光計は、Applied Biosystems(Foster City,CA);Bruker Daltronics(Billerica,MA);およびGE Healthcare(Piscataway,NJ)から入手可能である。
【0045】
本発明に記載の任意の標的遺伝子転写物または標的タンパク質の発現が、1つまたは複数の上記方法を用いて容易に検出されうることは明らかであろう。
【0046】
TREM−1活性の検出
TREM−1またはDAP12/TyroBPの活性は、例えば、1種または複数(例えば、2種もしくは2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、10種以上、または20種以上)のTREM−1応答遺伝子の発現レベルを求めることによって評価されうる。発現レベルは、例えば、対照試料または基準レベルと比較して絶対的または相対的でありうる。差次的遺伝子発現は、試験試料および、所望により、対照試料の転写プロファイリングによって決定されうる。基準レベルは、既知の病態の試料に対応する転写プロファイリングでありうる。正の対照は、例えば、TREM−1および/またはDAP12/TyroBPが、1種または複数の細胞で意図的に過剰発現されている試料、内因性または組換え技術によって発現したTREM−1またはDAP12/TyroBPが、例えば、架橋抗体、重症度が知られている炎症性疾患または慢性炎症性疾患(例えば、RA)を伴う対象から得られる試料の付加によって活性化されている細胞の試料でありうる。負の対照は、例えば、TREM−1および/またはDAP12/TyroBPが発現または活性化されていない試料あるいは炎症性疾患または慢性炎症性疾患(例えば、RA)を伴わない対象からの試料でありうる。
【0047】
多数のプロトコールは、転写プロファイリングの核酸マイクロアレイを用いるのに利用可能である。プロトコールの例として、GeneChip(登録商標)アレイの使用に関するAffymetrixによって提供されるものが挙げられる。核酸マイクロアレイハイブリダイゼーションに適している試料は、任意のヒト細胞または組織から調製されうる。核酸マイクロアレイが、非ヒト薬物標的遺伝子のプローブを含む場合、試料は、対応する非ヒト種の細胞または組織を調製しうる。
【0048】
核酸マイクロアレイに対するハイブリダイゼーションの試料は、RNA(例えば、mRNAまたはcRNA)またはDNA(例えば、cDNA)のいずれかでありうる。種々の方法は、組織からRNAを単離するのに利用可能である。これらの方法には、限定されるものではないが、RNeasy(登録商標)キット(Qiagen,Hilden,Germanyによって得られる),MasterPureTMキット(Epicentre Technologiesによって得られる)、およびTrizol(登録商標)(Gibco BRL,Carlsbad,CAによって得られる)が含まれる。Affymetrixによって得られるRNA単離プロトコールはまた、用いられうる。
【0049】
1の実施態様において、核酸マイクロアレイにハイブリダイズする前に、単離されたRNAは、増幅または標識される。適当なRNA増幅法には、限定されるものではないが、逆転写PCR、等温増幅法、リガーゼ連鎖反応、およびQβレプリカーゼ法が含まれる。増幅生成物は、cDNAまたはcRNAのいずれかでありうる。1の実施態様において、単離されたmRNAは、逆転写酵素およびオリゴd(T)およびファージT7プロモーターをコードする配列からなるプライマーを用いてcDNAに逆転写される。cDNAは一本鎖である。第二鎖のcDNAは、DNAポリメラーゼを用いて合成され、DNA/RNAハイブリッドを分解するRNアーゼと組み合わされうる。二本鎖cDNAの合成後、T7 RNAポリメラーゼを、第二鎖の二本鎖cDNAからcRNAを転写するために付加される。1の実施態様において、最初に単離されたRNAは、増幅することなく核酸マイクロアレイにハイブリダイズされうる。
【0050】
cDNA、cRNA、または他の核酸試料は、ハイブリッドポリヌクレオチド複合体の検出を可能にするために1つまたは複数の標識部分で標識されうる。標識部分には、分光的、光化学的、生化学的、生体電子的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的方法によって検出可能である組成物が含まれうる。標識部分には、放射性同位体、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、分光学的マーカー、例えば、蛍光マーカーおよび染料、磁気標識、結合酵素、質量分析タグ、スピン標識、電子移動供与体および受容体などが含まれる。
【0051】
ハイブリッド形成反応は、絶対的または異なるハイブリッド形式で実施されうる。絶対的ハイブリッド形式では、1つの試料から得られるポリヌクレオチドは、核酸マイクロアレイ中でプローブにハイブリダイズされる。ハイブリッド複合体の形成後に検出されたシグナルは、試料中のポリヌクレオチド濃度に相関する。異なるハイブリッド形式では、2つの試料から得られるポリヌクレオチドは、異なる標識部分で標識される。これらの異なって標識されたポリヌクレオチドの混合物は、核酸マイクロアレイに付加される。次いで、核酸マイクロアレイは、2つの異なる標識からの放射を個々に検出可能である条件下で試験される。1の実施態様において、フルオロフォアCy3およびCy5(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ)は、異なるハイブリッド形式の標識部分として用いられる。
【0052】
核酸マイクロアレイから得られるシグナルは、商業的に入手可能なソフトウェア、例えば、AffymetrixまたはAgilent Technologiesによって得られるものを用いて分析されうる。走査感度、プローブ標識、およびcDNAまたはcRNA定量化の対照は、ハイブリッド実験に含まれうる。ハイブリッドシグナルは、さらに分析する前に、計算されうるかまたは正常化されうる。例えば、個々のプローブのハイブリッドシグナルは、1以上のマイクロアレイが同様の試験条件下で用いられる場合にハイブリッド強度の変化を考慮するために標準化されうる。ハイブリッドシグナルはまた、各マイクロアレイ上に含まれる内部正常化対照から得られる強度を用いて正常化されうる。さらに、試料を通して比較的一致する発現レベルを有する遺伝子は、他の遺伝子の発現レベルを正常化にするために用いられうる。1の実施態様において、ある保守遺伝子のプローブは、核酸マイクロアレイに含まれる。多様な集合の組織を通して安定な発現レベルを示すので、これらの遺伝子は選択される。ハイブリッドシグナルは、これらの保守遺伝子の発現レベルに基づき、正常化または計算されうる。
【0053】
疾患または治療のモニタリングおよび評価
本発明は、対象における、例えば、慢性炎症性疾患、例えば、RNAなどの炎症性疾患のモニタリング方法を提供する。対象における炎症性疾患の進行は、1種または複数のバイオマーカー、例えば、TREM−1またはDAP12/TyroBPに対応するmRNAの発現レベル、またはそれによってコードされるタンパク質、またはその活性を測定することによって観測されうる。標的遺伝子mRNAまたはタンパク質発現レベルは、インビボまたは例えば、関節組織、滑液、滑膜、または他の臨床的に関連のある源で検出されうる。標的遺伝子に対応するmRNAおよび/またはタンパク質の発現レベルは、上記の標準的方法によって検出されうる。対象における病態は、対象における標的遺伝子タンパク質またはRNAのレベルを対象の標的タンパク質またはRNAの基準濃度と比較することによって(例えば、疾患の改善、悪化、または再発について)観測されうる。例えば、最初の対象におけるTREM−1発現レベルは、第2の、後の時間の対象におけるTREM−1発現レベルと比較されうる。時間によるTREM−1 mRNAまたはタンパク質の発現レベルの増大は、炎症性疾患の進行を示す。時間によるTREM−1 mRNAまたはタンパク質の発現レベルの減少は、炎症性疾患の低下を示す。
【0054】
対象における、例えば、TREM−1またはDAP12/TyroBPタンパク質またはRNAの濃度はまた、治療の有効性を観測するために用いられうる。典型的には、対象の標的タンパク質またはRNAの基準濃度は、(例えば、治療前に)得られ、治療後または治療中の種々の時点(例えば、治療1日または数日、数週間、または数ヶ月後)の標的タンパク質またはRNAの濃度と比較される。比較の結果は、過去の治療の有効性を明らかにすることができ、将来の治療は、それに応じて修正されうる。例えば、予め検出された濃度と比較したTREM−1タンパク質またはRNA濃度の減少は、一般的に、治療計画に対して好反応を示すので、同様の治療を継続する必要がある。同様に、対象における病態は、対象における標的タンパク質またはRNAの濃度を標的タンパク質またはRNAの対象の基準濃度、または予め検出した濃度と比較することによって(例えば、疾患の改善、悪化、または再発について)観測されうる。
【0055】
治療
本発明は、TREM−1媒介シグナル伝達を阻害および/または拮抗することによって、例えば、慢性炎症性疾患(例えば、RA)または呼吸器障害/疾患(例えば、喘息)などの炎症性疾患の治療方法を提供する。TREM−1媒介シグナル伝達の阻害および/または拮抗は、TREM−1を直接阻害することによってあるいはTREM−1シグナル経路の非TREM−1メンバー、例えば、TREM−1付属タンパク質DAP12/TyroBPを阻害および/または拮抗することによって達成されうる。適当な阻害薬および/または拮抗薬は、例えば、TREM−1をコードする核酸の発現を減少させうるか、TREM−1タンパク質の濃度を減少させうるか、またはTREM−1活性を阻害しうる。阻害薬および/または拮抗薬の例として、限定されるものではないが、アンチセンスオリゴヌクレオチド;干渉RNA;TREM−1に対する抗体;TREM−1リガンドに対する抗体;TREM−1受容体およびそのリガンド結合フラグメント、可溶性切断TREM−1受容体、および可溶性TREM−1受容体融合タンパク質、例えば、IgG免疫グロブリンのFc部を含有するTREM−1融合、リガンド融合タンパク質を含む、TREM−1リガンド結合部位のコンペティター;ペプチド模倣薬;ペプチド阻害薬;低分子;およびその組み合わせが挙げられる。
【0056】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的mRNAおよびタンパク質濃度を減少させることによって、TREM−1、DAP12/TyroBP、またはTREM−1もしくはDAP12/TyroBPシグナル経路の他のメンバーを阻害するために用いられうる。アンチセンス抑制は、例えば、転写および/または翻訳を阻害することによって、標的対立遺伝子の発現を阻害するように1種または複数の対象標的対立遺伝子をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと一緒に、特に細胞条件下でハイブリダイズするかまたは結合する核酸配列またはその誘導体の投与またはインサイツ生成をいう。結合は、通常の塩基対相補性によるものであってもよく、または、例えば、DNA二本鎖への結合の場合、二重らせんの主溝における特異的な相互作用を介するものであってもよい。一般的に、アンチセンス抑制は、当該分野にて一般的に用いられる方法の範囲をいい、核酸配列への特異的結合による任意の抑制を含む。本発明のアンチセンス構築物は、例えば、細胞中で転写される場合に、内在性遺伝子の標的配列または標的対立遺伝子をコードする細胞mRNAの少なくとも固有部分に相補的であるRNAを産生する発現プラスミドとして輸送されうる。あるいは、アンチセンス構築物は、エクスビボで生成され、細胞に導入される場合に、内在性遺伝子の標的対立遺伝子のmRNAおよび/またはゲノム配列でハイブリダイズすることによって発現の阻害をもたらす、核酸でありうる。かかる核酸は、好ましくは、内因性ヌクレアーゼ、例えば、エキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに耐性である、そのため、インビボで安定である修飾オリゴヌクレオチドである。修飾、例えば、ホスホロチオエートは、ヌクレアーゼ分解、結合アフィニティーおよび取り込みに対するその抵抗性を増大させるために核酸で行われている。アンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いるための核酸分子の例は、DNAのホスホロアミダート、ホスホロチオエートおよびメチルホスホネートアナログである(米国特許番号第5,176,996号;第5,264,564号;および第5,256,775号も参照のこと)。
【0057】
アンチセンス核酸は、一本鎖または二本鎖の、DNAまたはRNAまたはキメラ混合物または誘導体または「その修飾体」でありうる。本明細書に用いられる、「その修飾体」は、例えば、安定性、半減期、ハイブリダイゼーション、有効性などを改善するために、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格で修飾される核酸をいう。可能な修飾には、限定されるものではないが、分子の5’および/または3’末端へのリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのフランキング配列の付加あるいはオリゴデオキシリボヌクレオチド骨格内のホスホジエステラーゼ結合よりむしろホスホロチオエートまたは2’ O−メチルの使用が含まれる。核酸は、他の付加基、例えば、(例えば、インビボにおける標的宿主細胞受容体についての)ペプチド、または細胞膜(例えば、1988年12月15日公開の、PCT公開番号WO88/09810を参照)もしくは血液−脳関門(例えば、1988年4月25日公開の、PCT公開番号WO89/10134を参照)内外の輸送を促進する薬剤、ハイブリッド誘発性切断剤もしくは挿入剤を含みうる。そのために、オリゴヌクレオチドは、別の分子、例えば、ペプチド、ハイブリッド誘発性架橋剤、輸送剤、ハイブリッド誘発性切断剤などと接合されうる。
【0058】
アンチセンス核酸には、所望により、限定されるものではないが、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、疑似ウラシル(pseudouracil)、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、−5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンを含む、群から選択される少なくとも1つの塩基部分が含まれうる。
【0059】
固相合成法を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドの合成方法は、既知である。かかる合成装置は、例えば、Applied Biosystems(Foster City,CA)を含む、いくつかの製造業者から商業的に入手可能である。あるいは、アンチセンス転写物の産生を誘導する調節要素を含有する発現ベクターは、アンチセンス分子を産生するために用いられうる。
【0060】
生理的条件下でハイブリダイズするのに、アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列が、その標的核酸の配列と100%相補的である必要がないことは当該分野では理解されている。TREM−1核酸に対するオリゴヌクレオチドの結合がTREM−1核酸の正常機能を阻害し、非標的配列に対する非特異的結合が最小限である場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドは生理的条件下でハイブリダイズする。
【0061】
RNAi
本発明は、TREM−1、DAP12/TyroBP、またはTREM−1もしくはDAP12/TyroBPシグナル経路の他のメンバーの発現を阻害するためのRNA干渉(RNAi)の使用をさらに意図とする。本発明のRNAi分子は、TREM−1、DAP12/TyroBP、またはTREM−1もしくはDAP12/TyroBPシグナル経路の他のメンバーを特異的に阻害するように設計されうる。いかなるタイプのRNAi配列も本発明に用いられうる。非限定的な例として、低分子干渉RNA(siRNA)分子または低分子ヘアピン型RNA(shRNA)が挙げられる。種々のアルゴリズムは、RNAi配列設計に利用可能である。1の実施態様において、siRNAの標的配列には、約18、19、20またはそれ以上のヌクレオチドが含まれる。2dT’sは、「AA」突出を引き起こす、siRNA合成中に3’末端に付加されうる。多くの場合、標的配列のGC含量は、35%〜55%であり、該配列には、任意の4連続のAまたはT(すなわち、AAAAまたはTTTT)、3連続のGまたはC(すなわち、GGGまたはCCC)、あるいは連続して7つの「GC」を含まない。より厳しい基準としても用いられうる。例えば、標的配列のGC含量は、45%〜55%に制限することができ、3連続の同一塩基(すなわち、GGG、CCC、TTT、またはAAA)を有する任意の配列あるいは5またはそれ以上の塩基を有するパリンドローム配列は除外されうる。さらに、標的配列は、他の変種または遺伝子に対し低い配列相同性を有するように選択されうる。RNAi分子の有効性は、標的遺伝子生成物を発現する細胞中でRNAi配列を導入または発現することによって評価されうる。標的遺伝子生成物のmRNAまたはタンパク質濃度の実質的な変化は、遺伝子の発現を阻害するRNAi分子の有効性を示す。細胞におけるRNAi分子の発現方法は、当該分野にて既知であり、例えば、レンチウイルスベクターを含む。
【0062】
免疫原性組成物
TREM−1またはDAP12/TyroBPに対する免疫反応を誘発する組成物は、TREM−1シグナル伝達を低下させるのに用いられうる。組成物は、ヒトTREM−1またはヒトDAP12/TyroBPに対する免疫反応を誘発するのに有用なTREM−1もしくはDAP12/TyroBPタンパク質またはそのフラグメントもしくは変種(例えば、その変種またはフラグメントは、ヒトMHC分子への結合を促進している)を含みうる。タンパク質、フラグメントまたは変種は、単離したポリペプチドとして得られうるかまたは例えば、融合タンパク質または担体タンパク質などの別のポリペプチドとの複合体として付加的なペプチド配列で得られうる。いくつかの実施態様において、タンパク質、フラグメントまたは変種をコードする核酸は、タンパク質、フラグメントまたは変種自体を提供する代わりに免疫原性組成物中に提供される。免疫原性組成物はまた、好ましくは、アジュバントを含有する。アジュバントは、外来性抗原に対する免疫反応(抗体および/または細胞媒介性)を促進するかまたは強化する任意の基質でありうる。免疫刺激剤の例として、アルミニウム塩;生分解性マイクロスフィア(例えば、ポリ乳酸ガラクトシド);リポソーム(その中に化合物を組み込む);サイトカイン(例えば、GM−CSFまたはIL−2、IL−7、またはIL−12、またはそれらをコードする核酸など);およびCpGポリヌクレオチドが挙げられる。
【0063】
上記のように、ワクチンは、ポリペプチドまたは複数のポリペプチドがインビボで生成されるような、TREM−1もしくはDAP12/TyroBPタンパク質またはその一部もしくは変種をコードするDNAを含有し、サイトカインなどのアジュバントタンパク質をコードするDNAも含有しうる。DNAは、核酸発現ベクター、遺伝子導入ベクター、および細菌発現系を含む、当業者に既知の種々の導入系のいずれかに存在しうる。多数の遺伝子導入法は当該分野にて既知である。適当な核酸発現系は、対象における発現に必要なDNA配列を含有する(例えば、適当なプロモーターおよび末端シグナル)。細菌導入系は、その細胞表面上の免疫原性部分のポリペプチドを発現するかまたはかかるエピトープを分泌するバクテリア属(例えば、バシルス・カルメット・ゲラン菌(Bacillus−Calmette−Guerrin))の投与に関与する。1の実施態様において、DNAは、ウイルス発現系(例えば、ワクシニアまたは他のポックス・ウイルス、レトロウイルス、またはアデノウイルス)を用いて導入され、非病原性(欠損)で、複製可能なウイルスの使用に関与しうる。DNAをかかる発現系に組み込む方法は、当業者に既知である。DNAはまた、例えば、Ulmerら(1993) Science 259:1745−1749に記載されるように「ネイキッド」でありうる。ネイキッドDNAの取り込みは、生分解性ビーズ上でDNAをコーティングすることによって増加させることができ、細胞中に効率的に輸送される。ワクチンは、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド成分の両方を含みうる。かかるワクチンは、免疫反応の促進を提供しうる。
【0064】
リガンド結合コンペティター
TREM−1シグナル伝達はまた、TREM−1のリガンドへの結合のコンペティターの投与によって阻害されうる。これは、例えば、当該分野にて既知のIgG免疫グロブリンなどの担体タンパク質と所望により結合する、TREM−1細胞外ドメインの可溶性フラグメントの投与によって達成されうる。例えば、TREM−1フラグメントおよびヒトIgG1 Fc部を用いるTREM−1−Fc融合タンパク質の投与は、記載されており、細菌性敗血症を阻止するのに有効であることが示されている(例えば、その全体を出典明示により本明細書の一部とする、米国特許出願公開第2005−0260670号を参照)。融合タンパク質のIgG Fc部は、任意のIgGサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)に由来しうる。TREM−1/IgG融合タンパク質の作製方法は既知である。例えば、Bouchonら(2000) Am.Assoc.Immun.164(10):4991−95は、可溶性TREM−1−Fc融合タンパク質の産生方法を記載および教唆する。現在、TREM−1およびDAP12/TyroBPとRAとの関連性に基づき、RA患者における適当なTREM−1フラグメントの同様の投与が、疾患の重篤度を低下させうると期待されている。重要なことに、ヒトの治療は、野生型ヒトTREM−1のフラグメントの投与を必ずしも必要としない:フラグメントが、リガンドとの結合のために内因性ヒトTREM−1と競合する能力を保有する限り、TREM−1:他の哺乳動物からの他のTREM−1フラグメントは用いられ、1つまたは複数のアミノ酸置換は組み込まれうる。
【0065】
結合パートナー
例えば、RAおよび喘息などの炎症性疾患を治療するさらなる方法には、治療標的と相互作用する、例えば、結合および/または中和する結合剤、例えば、タンパク質、ペプチドおよび/または抗体またはその部分(例えば、Fab、F(ab’)、Fvまたは一本鎖Fvフラグメント)投与が含まれる。本発明の治療標的には、例えば、TREM−1、TREM−1リガンド、DAP12/TyroBP、およびTREM−1シグナル経路の他のメンバーが含まれる。RAまたは喘息患者への抗TREM−1結合剤、例えば、抗TREM−1抗体の投与は、TREM−1またはDAP12/TyroBP活性またはTREM−1シグナル伝達を阻害および/または拮抗することによって疾患の症状を低下させうる。抗体は、単離した抗体でありうる。1の実施態様において、抗体はアンタゴニスト抗体である。別の実施態様において、抗体は中和抗体である。さらなる実施態様において、抗体は、限定されるものではないが、TREM−1リガンドおよび/またはDAP12/TyroBPとのTREM−1相互作用を調節、低下および/または阻害すること;TREM−1媒介シグナル伝達を調節、低下および/または阻害すること;TREM−1活性化炎症性サイトカインおよび/またはケモカインの発現を調節、低下および/または阻害すること;ならびに、例えば、SPP1などの、TREM−1活性化遺伝子の発現を調節、低下および/または阻害することを含む、1つまたは複数のTREM−1関連活性を調節、低下および/または阻害する。本発明の抗TREM−1抗体には、例えば、TREM−1と特異的に結合する抗体、および/またはTREM−1受容体を活性化することなく膜貫通型TREM−1受容体と結合する抗体が含まれる。特定の実施態様において、抗体またはそのフラグメントは、結合または非結合抗体の検出を促進するために検出可能な基質で直接的または間接的に標識される。適当な検出可能な基質には、例えば、酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質が含まれる。抗体の作製方法およびスクリーニング方法、例えば、本発明を実施するのに有用な方法は、当該分野にて既知である(例えば、Harlowら(1988) Antibodies:A Laboratory Manual,(New York:Cold Spring Harbor Laboratory)を参照のこと)。本発明の抗TREM−1抗体はまた、いずれかの種由来の単一ドメイン抗体を含みうる。例えば、SMIP(登録商標)などの、代替結合ドメインポリペプチドはまた、TREM−1もしくはDAP12/TyroBP活性またはTREM−1シグナル伝達を阻害および/または拮抗するために用いられうる。抗体、またはそのフラグメントはまた、例えば、RAおよび喘息などの、炎症性疾患を対象において診断、モニタリング、および/または予防するのに有用でありうる。
【実施例】
【0066】
実施例1:TREM−1およびDAP12/TyroBPの転写プロファイリング分析
遺伝子発現分析によるメッセンジャーRNAの全体分析は、疾患病因に寄与し、新規療法の潜在的標的である遺伝子を同定する多数の疾患にうまく適用されている(Battiwallaら(2005) Genes and Immunity 6(5):388−97)。遺伝子発現分析を用いて、TREM−1およびDAP12/TyroBPは、例えば、RAなどの炎症性疾患の療法の潜在的標的として同定された。
【0067】
簡単に言えば、24の滑膜組織試料は、地方研究倫理委員会から事前に承認を得て、米国リウマチ学会基準で定義されているように外科手術時にRA患者から得られた。これらの24の試料のうち、10の試料は、関節滑膜から得られ、14の試料は、腱鞘滑膜から得られた。8の非関与(例えば、正常)滑膜組織は、非RA患者から得られた。非関与滑膜組織は、鈍的外傷により切断術を必要とする3人の患者から単離され、滑膜は、外傷部から離れた部位から単離された。RA患者および非RA患者からの滑膜試料を採取し、液体窒素ですぐに急速冷凍し、処理するまで−80℃で保存した。全RNAを単離し、Affymetrix(商標)(Santa Clara,CA) HG_U95AおよびB(ヒト試料) GeneChip(商標)オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて分析した。アレイからの発現測定値を、Affymetrix(商標)MAS4アルゴリズムによってもたらし、急上昇した基準値を基準として100万ごとに転写物の予測値に標準化した(Hillら(2001) Genome Biol.2(12):RESEARCH0055)。
【0068】
RNA単離
冷凍試料を分離し、組織溶解緩衝液(RNAgents(登録商標)Kit,Promega,Madison,WI)中にてPowerGen(登録商標)700ホモジナイザー(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)で溶解した。全RNAを、製造業者の説明書を変更して単離した。簡単に言えば、RNAを、イソプロパノールを加えて沈殿させ、75%冷却エタノールで2回洗浄した。ペレットを、RNeasy(登録商標)minikit試料溶解緩衝液(RLT)で溶解し、RNAを、製造業者の説明書(Qiagen,Hilden,Germany)にしたがって生成した。各試料について、全RNAを、260nmのUV吸収から定量化し、アリコートを、RNA完全性を決定するために、Agilent(登録商標)2100 Bioanalyzer(商標)(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)で分析した。
【0069】
オリゴヌクレオチドアレイ分析のハイブリダイゼーション溶液の調製
二本鎖cDNAを、SuperScript(登録商標)Choice(商標)キット(Invitrogen,Carlsbad,CA)および33pMolのT7 RNAポリメラーゼプロモーターを含有するオリゴ−dTプライマー(Proligo,LLC,Boulder,CO)を用いて、5μgの全RNAから調製した。第一鎖cDNA合成は、以下のキット成分:1Xの第一鎖緩衝液、10mMのDTT、500μMのdNTP、400UのSuperscript(登録商標)RT II、および40UのRNアーゼ阻害薬を添加して開始された。反応は47℃で1時間進行した。第二鎖合成は、以下のキット成分:1Xの第二鎖緩衝液、200μMの付加的なdNTP、40Uのイー・コリ(E.coli)DNAポリメラーゼI、2Uのイー・コリRNアーゼH、10Uのイー・コリDNAリガーゼを添加して進行した。反応は15.8℃で2時間進行した。6Uの最終濃度の、T4 DNAポリメラーゼ(New England BioLabs,Beverly,MA)を、第二鎖反応の最後の5分間で加えた。二本鎖cDNAを、固相、可逆的固定化方法を用いて精製し、20μl量の10mMトリス酢酸塩、pH7.8で回収した。精製したcDNA(10μl)を、製造業者のプロトコール(Enzo,Farmingdale,NY)にしたがって、BioArray(商標)High Yield(商標)RNA転写物標識キット(T7)で転写した。ビオチン標識アンチセンスcRNAを、製造業者(Qiagen,Hilden,Germany)によって記載されるように、RNeasy(登録商標)ミニキットを用いて精製した。cRNA収率を、260nmのUV吸収の測定値から決定した。
【0070】
オリゴヌクレオチドマイクロアレイハイブリダイゼーション法
ハイブリダイゼーション効率を改善するために、15μgのcRNAを断片化した。断片化cRNAプローブを、製造業者(Affymetrix,Santa Clara,CA)が示唆しているように、オリゴヌクレオチドマイクロアレイハイブリダイゼーション溶液を作製するのに用いた。ハイブリダイゼーション溶液は、各々、異なる既知の濃度で、11の原核生物RNAの混合物を含有し、各マイクロアレイの内部標準曲線を作成するのに用いられ、検出した遺伝子の頻度を決定するために補間された。ハイブリダイゼーション溶液を、45℃で一晩2つのガラスビーズ(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)に予めハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション溶液を、無菌管に除去し、1−2分間95℃で加熱し、2分間最大速度でペレット不溶性残渣に微小遠心分離した。標識cRNA溶液を、128のヒト遺伝子配列の、25の配列に配置するAffymetrix(登録商標)(Santa Clara,CA) Hg_U95Av2 & B GeneChip(登録商標)オリゴヌクレオチドマイクロアレイにハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション後、cRNA溶液を回収し、マイクロアレイを洗浄し、Affymetrixプロトコールにしたがって走査のために調製した。生蛍光データを回収し、GeneChip(登録商標)3.2アプリケーション(Affymetrix,Santa Clara,CA)を使用して減らした。
【0071】
発現プロファイリングデータの分析
一次データを、Hillら(2001) Genome Biol.2(12):RESEARCH0055で記載されるハイブリッドスケール頻度標準化を用いて処理した。スケール頻度データを減らし、GeneSpringGX(商標)v7.3(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)を用いて分析した。2種類の分析を実施した。第1では、全ての病的試料を、全ての正常試料に対して比較した。第2では、関節RA滑液を、対照関節滑膜試料の平均値に標準化し、腱鞘滑膜RA試料を、対照腱鞘滑膜試料の平均値に標準化するように、データを、疾患部位に基づき細分化した。
【0072】
RAに関連する転写物を同定するために、各病的試料からの遺伝子転写物スケール頻度を、全ての非リウマチ遺伝子転写物頻度の平均値に標準化した。対照の平均値と比べて発現レベルが増加または減少した遺伝子転写物を識別することによって、データを減らした。データ標準化工程に加えて、いくつかの統計分析を、識別データで実施した。偽発見率(FDR)およびボンフェローニ家族単位過誤率(Bonferroni family−wise error rate)(FWER)を、0.05のカットオフp値を用いて決定した。さらに、データセットの教師なし階層的クラスタ分析およびk−最近傍分析を、GeneSpring(商標)で実施した。得られたデータセットを、教師なし階層的クラスタ分析で視覚化した。
【0073】
第2の分析において、関節および腱の試料を、別々に分析した。関節滑膜および腱鞘滑膜の試料を、その各部位特異的対照の平均値に標準化した。同一識別および統計パラメータを、上記の各分析に適用した。2つの得られたデータセットを、Venn分析を用いて組み合わせ、遺伝子および試料の教師なし階層的クラスタ分析にかけた。k−最近傍分析を、4つのパラメータ:疾患、非疾患、関節、および腱の間を識別するために用いた。該分析方法は、以下に記載されている。次いで、一番識別されている遺伝子を、試料および遺伝子の教師なし階層的クラスタ分析にかけた。
【0074】
log2変換発現測定に基づき、発現データの統計分析を実行した。試料のグループ間の倍率変化を、各グループにおけるlog2発現レベルの平均値の差をとり、得られたlog変化率を均等スケールに戻すことによって算出した。グループ間の差次的発現の有意性を、並べ替え検定によって決定した。簡単に言えば、F統計値を、同様の強度レベルを有するプローブセットの誤差評価の蓄積から得られた群間誤差評価を用いて、目的の各比較における各プローブセットについて算出した。測定F統計値は、試料ラベルを無作為に並べ替えた後、同一データセットから同様に計算したF統計値のヌル分布に言及した。差次的発現のp値を、各プローブセットの測定F統計値以上である並べ替えF統計値の割合として定義した(Edington(1995) Randomization Tests(New York:Marcel Dekker);Zar(1999) Biostatistical Analysis(New Jersey:Simon & Shuster))。
【0075】
結果
滑膜生検の遺伝子発現分析は、TREM−1およびDAP12/TyroBP mRNA発現がRA患者にて有意にアップレギュレートされることを明らかにした。図1は、RA患者からの滑膜におけるTREM−1およびDAP12/TyroBPの発現を示す棒グラフである。TREM−1の倍率変化を、正常な滑膜検体に標準化した。TREM−1 mRNAは、非関与試料(n=8)に比べてRA陽性試料(n=24)において6.5倍(1.98x10−6のp値)アップレギュレートされた(図1)。さらに、DAP12/TyroBP mRNAは、非関与試料(n=8)に比べてRA陽性試料(n=24)において2倍(7.83x10−4のp値)アップレギュレートされた(図1)。
【0076】
RAでアップレギュレートされることに加えて、TREM−1およびDAP12/TyroBP mRNA発現レベルは、RAの重篤度によって変化する。14のRA患者からの腱試料は、2つの臨床的に定義された疾患サブタイプ、浸潤性および被嚢性に分類され、浸潤性RAは、より進行性の形態である。TREM−1 mRNAは、被嚢性腱鞘滑膜試料(n=7)に比べて浸潤性腱鞘滑膜試料(n=7)にて2.64倍(1.36x10−4のp値)アップレギュレートされた(図1)。同様に、DAP12/Tyro12 mRNAは、被嚢性腱鞘滑膜試料(n=7)に比べて浸潤性試料(n=7)にて1.4倍(1.67x10 −2のp値)アップレギュレートされた(図1)。
【0077】
単球、好中球、およびマクロファージにおける細胞特異的遺伝子発現の比較は、炎症性細胞浸潤が、RA陽性滑膜組織におけるTREM−1発現レベルの増加に部分的にのみ関与することを示す。TREM−1発現の増大が、RA滑膜におけるTREM−1陽性炎症性細胞の浸潤によるかどうかを確認するために、本発明者らは、単球(182遺伝子)、好中球(328遺伝子)およびマクロファージ(34遺伝子)で特異的に発現する遺伝子の発現レベルに全体的に目を向けた。これらの遺伝子の平均発現レベルは、1.22〜1.59の範囲であり、広い標準偏差を伴う。TREM−1発現の増大は、主に、細胞浸潤の大幅な増加によってよりむしろTREM−1遺伝子発現のアップレギュレーションによってもたらされた。
【0078】
実施例2:TREM−1およびDAP12/TyroBPの定量的リアルタイムPCR
TREM−1およびDAP12/TyroBP mRNAは、コラーゲン誘導関節炎モデルにおいて過剰発現される。コラーゲン誘導関節炎(CIA)は、ウシII型コラーゲン(Chondrex,Redmond,WA)を用いて雄DBA/1マウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor,ME)で行われた。マウスを、1週間に少なくとも3回疾患の進行についてモニターした。個々の肢を、以下の指標:(0)正常;(1)1〜2本の指の腫れを伴う目に見える紅斑;(2)足の腫れおよび/または複数の指の腫れによって特徴付けられる顕著な紅斑;(3)足首または手首関節に及ぶひどい腫れ;および(4)手足または関節硬直の使用の困難、に基づき臨床スコアを決定した。任意の所定のマウスの全ての肢スコアの和は、16の潜在的最大全身スコアを生じる。動物を安楽死させ、組織を種々の病期で採取した。疾患動物からのRNAを、3つのスコア3の足および1つのスコア4の足から調製した。正常な動物から抽出されたRNAを、4つのスコア0の足から調製した。TREM−1 mRNAを、以下のプライマーおよびプローブを用いて定量化した:
順方向プライマー CAGATGTGTTCACTCCTGTCATCA(413−436)(配列番号:1);
逆方向プライマー CTGGGTGAGTATTTTGTGGTAATAAGG(494−468)(配列番号:2);
プローブ CCTATTACAAGGCTGACAGAGCGTCCCA(439−466)(配列番号:3)。
標準曲線を、mTREM−1の既知の濃度を用いて作成した。
DAP12/TyroBP mRNAを、以下のプライマーおよびプローブを用いて定量化した:
順方向プライマー CCTGGTCTCCCGAGGTCAA(255−273)(配列番号:4);
逆方向プライマー GGCGACTCAGTCTCAGCAATG(323−302)(配列番号:5);
プローブ TTGTTTCCGGGTCCCTTCCGCT(300−279)(配列番号:6)。
【0079】
発現の倍率変化を算出するために、TREM−1 RNAレベルおよびDAP12/TyroBP RNAレベルを、GAPDH mRNAに標準化した。RT−PCRによって、TREM−1 mRNAは、正常マウスからの足に比べてCIAの足にて132倍アップレギュレートされ(図2)、一方、DAP12/TyroBPは、8.21倍アップレギュレートされた(図2)。これらの結果は、TREM−1およびTREM−1シグナル伝達に付随するタンパク質の発現がRA疾患部位で上昇することをさらに確認する。
【0080】
実施例3:免疫組織化学によるTREM−1発現
種々の滑膜試料の免疫組織化学は、TREM−1発現がタンパク質濃度で増大するかどうかを決定するために行われた。簡単に言えば、5のRA滑膜試料を、ケネディ・リウマチ研究所(Kennedy Institute of Rheumatology)を通じて外科手術中に患者から得、2つのOA組織を、New England Baptist病院から得た。組織をホルマリン中に入れ、パラフィンに組み込んだ。免疫組織化学を、4μm組織断片上で行った。断片を、最初にキシレンで脱パラフィン処理し、グレードエタノール系で再水和した。PBSでの洗浄後、抗原を採取し、細胞をツイーン20で透過処理した。試料を、標準プロトコールにしたがって、BiogenexTM i6000TMシステムにおいてマウス抗TREM−1抗体(R&D Systems,Minneapolis,MN)で免疫染色した。二次抗体および用いる検出試薬を、Mach3TM−マウスプローブHRPポリマーキット(Biocare,Concord,CA)から得た。免疫組織化学染色陽性細胞を、褐色色素を有するものとして定義した。各スライドについて、滑膜表面に隣接した10個の200倍領域の画像(view)を無作為に選択し、免疫組織化学陽性細胞を計測し、免疫組織化学陽性細胞指標として合計した。
【0081】
5人のRA患者からの断片における免疫組織化学は、5人の患者のうち3人においてTREM−1レベルが高いことを明らかにし、1人の患者RA4で非常に高レベルを観測した(表1)。RA試料の2つ(RA1およびRA2)は、低TREM−1レベルを有し、変形性関節炎患者からの対照試料(OA1およびOA2)と同様であった(表1)。図3Aは、抗TREM−1標識RA滑膜組織試料の1の典型的な領域を図示する。図3Bは、対照、OA患者からの抗TREM−1標識滑膜組織試料の1の典型的な領域を図示する。
【0082】
RA試料におけるTREM−1陽性細胞の細胞型を確認するために、TREM−1およびCD163、CD14、CD68またはミエロペルオキシダーゼの二重免疫組織化学を、最初にTREM−1抗体、次いで、CD163(Labvision,Freemont,CAからの10D16)、CD14(Labvision,Freemont,CA)、CD68(Biocare,Concord,CAからのPG−M1)、またはミエロペルオキシダーゼ(Abcam,Cambridge,UK)抗体それぞれで染色することによって連続して行った。断片は、好中球の欠損を示唆するミエロペルオキシダーゼで染色しなかった。驚くべきことに、RA5からの断片のみCD68で染色したが、これらの断片は、TREM−1で共染色しなかった。RA3およびRA5からの少量(3−10%)のTREM−1陽性細胞は、CD14またはCD163で共染色した。5つのRA滑膜断片におけるこれらのマーカーおよびTREM−1の存在の違いは、疾患の不均一性を示した。
【表1】

【0083】
実施例4:ヒト臨床血漿試料における可溶性TREM−1の検出
酵素免疫測定法(ELISA)は、TREM−1タンパク質濃度が、検出可能であって、ヒトRA試料において上昇することを立証するために行われた。RA患者からの血漿を、活性RAおよび安定な用量のメトトレキサート(MTX)(1週に1回7.5〜20mg)に対する不十分な反応を伴う対象におけるフェーズIIの、二重盲検、プラセボ対照、並行、ランダム化、多施設、外来患者、比較研究から得た。対象は、世界81カ所で登録された。選択された場所で、予備的バイオマーカー研究のための自発的試料採取に参加することに同意した32人の対象は、血液試料を提供した。ここで記録されたデータは、第1日目(投与前)に得られた血漿試料からのものである。対照群血漿を、健常ボランティア多施設、前向き、非介入解析に登録された対象から採取した。各臨床施設の施設内治験審査委員会または倫理委員会は、これらの研究を承認し、各患者からインフォームド・コンセントを得る前には手続を行わなかった。
【0084】
ヒト臨床血漿試料において可溶性TREM−1を検出するためのELISAプロトコールは、DuoSet(登録商標)ELISA開発システムから適合させ、R&D Systems(Minneapolis,MN;catalog number DY1278)から商業的に入手可能である。適合ELISAプロトコールは、誤検出を減少させ、標準曲線の線形動的範囲を改良した。簡単に言えば、ELISAは、4.0ug/mlの捕捉抗体および200ng/mlの検出抗体でサンドイッチ形式にて行われた。血漿試料を、GF1緩衝液で1:2比率にて希釈し、Meso Scale Discovery(Gaithersburg,Maryland;catalog number R54BB−3)から商業的に入手可能である。基準はまた、ニート血漿のGF1緩衝液中1:2希釈液で希釈された。検出の限界は、1.37〜1000pg/mlの範囲内で0.999のRと一緒に4パラメータ曲線適合(XL−Fit IDBS,Burlington,MA)を用いると1.37pg/mlであった。
【0085】
上記のELISA法を用いて、RA患者からの32の試料および健常ボランティアからの25の試料(HVOS)を試験した。図4は、RAおよび対照患者(HVOS)から得られたヒト血漿試料においてELISAによって検出された可溶性TREM−1のタンパク質濃度を示すグラフである。図4に見られるように、RA血漿における可溶性TREM−1の平均値は、10.04±1.626(n=32)pg/mlであったが、健常ボランティア(HVOS)における可溶性TREM−1の平均値は、2.549±0.6253(n=25)pg/mlであった。RA血漿における可溶性TREM−1の濃度は、<0.0001のp値(対応のないt検定)を有する、健常ボランティアのものより高い(3倍以上)。したがって、血漿中ヒト可溶性TREM−1の濃度の増加の検出は、RAと相関し、そして、RAを示す。
【0086】
さらに、血漿TREM−1濃度の上昇とリウマチ因子の濃度の上昇との間の有意な関連性を検出した。
【0087】
実施例5:TREM−1の架橋後のマイトジェン活性化プロテインキナーゼの活性化
TREM−1受容体活性化がマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性化を引き起こすか否かを決定するために、精製したヒト単球を、アイソタイプ適合対照抗体またはα−TREM−1架橋抗体のいずれかで予め被覆したウェルに播種した。簡単に言えば、健常ボランティアからのヒトロイコパック(leukopack)(軟膜)を、Massachusetts General Hospital Clinical Hematology Laboratory(Boston,MA)から得た。次の日、細胞を単離するために、軟膜を4℃で一晩保存した。単球を、Histopaque(登録商標)(SIGMA,H8889)の密度遠心分離によって製造業者のプロトコールにより、RosetteSep(登録商標)(StemCell Technologies,Vancouver,BC;15068)を用いて陰性選択によって単離した。全て、5%COで維持した組織培養インキュベーター中で37℃にてインキュベートした。精製した単球を、10%熱不活化ウシ胎仔血清が補充されたRPMI 1640培地で保持した。組織培養処理プレートを、組織培養インキュベーター中、5μg/mlのα−TREM−1架橋抗体(R&D Systems,Minneapolis,MN;MAB1278)のPBS中溶液で一晩処理した。対照ウェルを、イー・テネラ(E.tenella)(Wyeth,Madison,NJ)に対するアイソタイプ適合抗体で同様に処理した。ウェルを、細胞添加の直前にPBSで2回洗浄した。ウエスタンブロット法を、5〜180分の時間経過の間に標準的プロトコールを用いて行った(図5を参照)。α−ホスホ−ERK、α−ホスホ−p38、およびα−ホスホ−JNK抗体を、Cell Signaling Technologies(Danvers,MA;各々9101、9211および9251)から購入した。α−アクチン抗体を、Sigma(St.Louis,MO;A2103)から購入した。図5に見られるように、架橋抗体とTREM−1の活性化は、MAPKの活性化を広範囲にもたらす。p38およびJNKは、TREM−1活性化に反応することを以前は知られていなかった。これらの広範囲の炎症反応は、精製したヒト単球におけるTREM−1活性化から生じる広範囲の遺伝子発現変化によって裏付けられた(実施例10を参照)。
【0088】
実施例6:α−TREM−1およびLPS処理後の転写プロファイリング分析
TREM−1受容体の活性化により異なった形で発現される遺伝子を同定するために、転写プロファイリング分析を用いた。転写プロファイリングを用いて、偏性炎症性読み出しであるのとは対照的に、炎症性分泌リンタンパク質1(SPP1;オステオポンチン(OPN)、骨シアロタンパク質I(BSPI)、早期T−リンパ球活性化1(ETA−1)、またはMGC110940としても既知)を、TREM−1活性化に特異的なマーカーとして同定した。
【0089】
組織培養調製物およびRNA単離
多数のドナーから精製したヒト単球を、実施例9に記載されるように調製し、組織培養処理ウェルに播種した。組織培養処理ウェルを、処理しなかったか(未処理対照およびリポ多糖(LPS)処理)、または実施例9に記載されるようにアイソタイプ対照抗体もしくはα−TREM−1架橋抗体のいずれかで予め被覆した。LPS処理について、エス・エンテリカ(S.enterica)(Sigma,St.Louis,MO;L2262)からのゲル濾過クロマトグラフィー精製したLPSを、最終濃度が1ng/mlになるように添加した。次いで、5x10単球を未処理または抗体被覆12ウェル組織培養処理プレート中に蒔いた。処理の2時間後、全RNAを、製造業者のプロトコールにより、Qiagen(登録商標)QIAshredder(商標)カラムおよびRNeasy(登録商標)ミニキット(Valencia,CA;各々79654および74104)を用いて単離した。高信頼分析に適している遺伝子発現変化をもたらしながら、二次的および/または分化効果の寄与を最小限にするために2時間の時点を選択した。全RNA収量は、1−6μgの範囲であった。全RNAを、標準的プロトコールを用いて、DNアーゼ処理、次いで、フェノール−クロロホルム抽出およびエタノール沈殿によりさらに精製した。マイクロアレイ分析を、確立したプロトコールにしたがってAffymetrix(登録商標)HG_U133 2.0プラスアレイを用いて行った。各アレイについて、全プローブセットを、100の平均強度値に標準化した。デフォルトGeneChip(登録商標)オペレーティング・システム(GCOS)統計値を、全分析に用いた。合計11人の健常ドナーからの単球を分析した。
【0090】
発現プロファイリングデータの分析
>50シグナルで存在し、>66%の処理群で存在するといわれる修飾子(Qualifier)は、分析用とみなされた。標準化シグナル値を、ANOVA分析前にlog値に変換した。p<0.01および任意の処理群間の発現の2倍以上の変化を有する修飾子(FC)を、図6のヒートマップを作製するためおよびその後の分析のために用いた。倍率低下は、負の倍率変化として記録される。多数の修飾子によって示される遺伝子について、未処理試料における最大の平均強度を有する修飾子を、さらなる分析のために選択した。
【0091】
図6は、転写プロファイリングデータのヒートマップクラスタ分析を示す。図6において、個々のドナーを左側に示し(各カラムは個々のドナーを示す)、平均強度を右側に示す;各列は個々の修飾子を示す。蛍光強度を示す。α−TREM−1−処理試料を対照抗体処理試料と比べ、LPS処理試料を未処理と比べた。階層的クラスタ化アルゴリズムを、発現の同様のパターンを有する修飾子を分類するために用いた。図6において、ブラケット領域は、TREM−1活性化によりアップレギュレート、LPSによりアップレギュレート、共通ダウンレギュレート、TREM−1活性化によりダウンレギュレート、またはLPSによりダウンレギュレートされた修飾子に対応するヒートマップ領域を示す。
【0092】
図7は、全ての存在コールの典型的な散布図を示す。散布図分析について、ln率変化は、ダウンレギュレーションで負の値に変換され、TREM−1(x軸)およびLPS(y軸)にプロットした。ln(−1/FC)としてプロットした遺伝子をダウンレギュレートして、全ての存在コールに対するlnFC(α−TREM−1/対照抗体およびLPS/未処理)を算出し、プロットした。選択遺伝子を強調する。45°軸は、両処理によって同様に調製された遺伝子を画定する。
【0093】
図23および24は、TREM−1活性化および/またはLPS処理に反応することが決定された遺伝子を記載する表である。図23は、修飾子、遺伝子名、遺伝子解説、および様々な処理をした同定遺伝子の平均強度を示す。処理には、未処理(対照)、アイソタイプ抗体(対照)、α−TREM−1抗体、LPS、アイソタイプ抗体+α−TREM−1抗体、およびα−TREM−1抗体+LPSが含まれる。図24は、同定遺伝子の修飾子ならびに異なる処理間の比較のp値および比率を示す。以下の処理を比較した:α−TREM−1 v.アイソタイプ;LPS v.未処理;α−TREM−1 v.LPS;α−TREM−1+LPS v.アイソタイプ;α−TREM−1 v.α−TREM−1+LPS;およびLPS v.α−TREM−1+LPS。
【0094】
結果
複数の遺伝子は、α−TREM−1処理および/またはLPS処理に反応して特異的に発現するものとして同定されたので(図7、8A−B、9A−B、および23−34を参照)、TREM−1および/またはLPSシグナル伝達を調節する物質を評価するためにバイオマーカーとして用いられうる。特異的に発現した遺伝子は、主要な3種類:TREM−1バイアス遺伝子、LPSバイアス遺伝子、ならびにα−TREM−1およびLPS両方の処理に反応して同等に発現された遺伝子に分類された。図8A−Bに記載の遺伝子は、TREM−1/LPS率またはLPS/TREM−1率それぞれによってランクされる。TREM−1/LPS率(図8Aを参照)およびLPS/TREM−1率(図8Bを参照)は、直接対比較から算出され、個々の処理における倍数変化に関する任意の変化を占める。二重処理、すなわち、α−TREM−1抗体およびLPS両方での処理がもたらす遺伝子発現の倍率変化はまた、図8A−B、9A−B、23および24に示される。
【0095】
上記の識別基準に合格し、>4倍の発現の変化が立証された遺伝子は、さらなる分析について検討された。これらの基準によって、238の遺伝子は、TREM−1活性化またはLPSのいずれかで>4倍アップレギュレートされた。これらのうち、69の遺伝子は、両処理にて>4倍、または1つだけの処理にて>4倍だが2つの処理の間の直接対比較で2倍以内に誘導された;これらの遺伝子は、一般にアップレギュレートしたとして分類されている。TREM−1活性化(62遺伝子)またはLPS処理(101遺伝子)のいずれかで>4倍アップレギュレートされた残りの遺伝子は、処理特異的(すなわち、処理バイアス)であるとして分類されている。
【0096】
TREM−1活性化に反応して>4倍アップレギュレートされるTREM−1バイアス遺伝子の概略は、図8Aに示される。TREM−1/LPSの比率で分類された、TREM−1活性化(TREM)、LPS(LPS)、および組み合わせTREM−1活性化+LPS(二重)で倍率変化が得られる。TREM−1活性化で>4倍アップレギュレートされた遺伝子のp値は、7.7x10−4〜2.6x10−12の範囲であった。TREM−1活性化によって特異的に誘発される同定された遺伝子には、SPRY2、サイトカインおよび関連分子(TNFSF14、CSF1、SPP1、CCL7、IL1F5、LIF)、メタロチオネイン(MT1K、MT1E、MT1F)、ホスファターゼ(DUSP14、DUSP4)、転写因子(EGR2、ATF3)、糖質代謝および/またはシグナル伝達に関与する因子(EDG3、LPL、PPAP2B、PLCXD1、NPC1、FABP3、ACSL3)、MMP19、およびPPARGが含まれる。これらの遺伝子のうち、SPP1は、TREM−1活性化に反応して28.0倍(p=1.2x10−07)アップレギュレートされるが(図8Aおよび11Eを参照)、LPS処理後あまりアップレギュレートされない。したがって、SPP1は、偏性炎症性読み出しではなく、患者(または患者試料)およびTREM−1修飾剤を同定するためのスクリーニングアッセイにおける、TREM−1活性のマーカーとして有用でありうる。さらに、SPP1はまた、患者における、炎症または慢性炎症、例えば、RAの治療のためのTREM−1療法の有効性または潜在的有効性の指標として有用でありうる。TREM−1活性のマーカーとして用いられうるさらなる遺伝子は、図8A、23および24に記載されている。識別基準を満たすが、図8Aに記載されていない遺伝子には、C6orf114、C6org128、C9orf47、KIAA1199、KIAA1393、LOC440995、およびMGC33212が含まれる。一般的に、TREM−1活性化により特異的に誘発された遺伝子は、LPS処理によっては大体影響がなかった。
【0097】
LPS処理に反応して>4倍アップレギュレートされるLPSバイアス遺伝子の概略は、図8Bに示される。LPS/TREM−1の比率で分類された、TREM−1活性化(TREM)、LPS(LPS)、および組み合わせTREM−1活性+LPS(二重)で倍率変化が得られる。該表におけるLPSで>4倍アップレギュレートされた遺伝子のp値は、1.2x10−3〜3.6x10−14の範囲であった。LPSによって特異的に誘発される同定された遺伝子には、インターロイキン(IL23A、IL12B、EBI3、IL1F9、IL10、IL1A、IL18)、インターロイキン受容体(IL15RA、IL2RA、IL7R)、サイトカインおよび関連分子(CSF3、CCL23、CXCL1、TSLP、CCL5、CLC、EREG、TNFSF9)、脂質代謝および/またはシグナル伝達に関与する因子(SGPP2、PLA1A、MGLL)、キナーゼ(MAP3K8、RIPK2、MAP3K4、TBK1、PIM3)、NF−κBシグナル伝達のレギュレーター(TNIP3、NFKBIZ)、CCR7、およびCIAS1が含まれる。識別基準を満たすが、図8Bに記載されていない遺伝子には、C10orf78、C21orf71、FLJ14490、FLJ23231、FLJ25590、FLJ32499、KIAA0286、KIAA0376、LOC90167、LOC123872、LOC285628、LOC338758、LOC341720、LOCLOC374443、LOC387763、LOC400581、LOC441366、MGC10744、およびMGC11082が含まれる。
【0098】
図9Aは、共通アップレギュレート遺伝子(すなわち、TREM−1活性化およびLPS処理によりアップレギュレートされた遺伝子)の概略を示す。TREM−1活性化での誘導率で分類された、TREM−1活性化(TREM)、LPS(LPS)、および組み合わせTREM−1活性化+LPS(二重)で倍率変化が得られる。TREM−1活性化で>4倍アップレギュレートされた遺伝子のp値は1.7x10−3〜1.5x10−10の範囲であり、LPSのp値は4.1x10−3〜2.0x10−14の範囲であった。共通にアップレギュレートされる同定された遺伝子には、TNFスーパーファミリーメンバーおよびモジュレーター(TNFSF15、BRE、TNF)、ケモカイン(CXCL3、CXCL2、CCL20、CXCL5、CCL3)、他のサイトカインおよびマイトジェン因子(CSF2、IL−6、AREG)、マトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP1、MMP10)、およびPTGS2/COX2が含まれる。これらの結果は、TREM−1活性化およびLPS誘発炎症反応の両方と一致している。INHBA、凝固および血管新生因子(F3、EDN1、TFPI2、SERPINB2)、転写およびDNA結合因子(HES4、EGR1、FOSL1、E2F7、EGR3、MAFF、ETS2、HES1)、および脂質代謝および/またはシグナル伝達に関与する因子(PLD1、ELOVL7、SYNJ2、GLA、STARD4)もまた存在する。識別基準を満たすが、図9Aに記載されていない遺伝子には、C20orf139、KIAA1718、LOC348938、LOC401151、LOC401588、LOC92162、およびMGC4504が含まれる。
【0099】
組み合わせ(二重)処理において、図9Aの遺伝子の大部分の発現変化は、個々の処理の変化の和の2倍以内であった。ある例外は、mRNA誘導が、個々の処理に対して組み合わせ処理で有意に増加した(TREM−1活性化、LPS、および組み合わせ処理でそれぞれ9.6倍、18.9倍、および192.4倍)、CSF2(すなわち、GM−CSF)であった。
【0100】
TREM−1活性化またはLPS処理のいずれかで<−4(すなわち、>4倍ダウンレギュレートされた)倍率変化を伴う遺伝子の概略は、図9Bに示される。TREM−1活性化での誘導率で分類された、TREM−1活性化(TREM)、LPS(LPS)、および組み合わせTREM−1活性化+LPS(二重)で倍率変化が得られる。TREM−1活性化で>4倍ダウンレギュレートされる遺伝子のp値は5.6x10−3〜5.7x10−12の範囲であり、LPSのp値は2.4x10−3〜1.1x10−14の範囲であった。図6に見られるように、これらの遺伝子の間に処理特異性はあまりなかったけれども、同数の遺伝子を、アップレギュレートしたように本分析においてダウンレギュレートした。ダウンレギュレートされる同定された遺伝子には、ケモカイン受容体(CCR2、CX3CR1)、転写因子(OLIG1、ZNF555、OLIG2)、免疫関連タンパク質のGTPアーゼ(GIMAP6、GIMAP7、GIMAP8、GIMAP1)、およびCCL8が含まれる。ダウンレギュレーションが単球からマクロファージへの分化のマーカーである、CCR2は、α−TREM−1およびLPS処理の両方でダウンレギュレートされる(図9Bを参照)。さらに、TLR1およびNOD様受容体(CARD12、NALP12)はまた、ダウンレギュレートされる。識別基準を満たすが、図9Bに記載されていない遺伝子には、C9orf59、FLJ12442、FLJ33641、LOC90120、MGC2941、およびMGC17791が含まれる。分析に対するmRNA半減期の制限動力学的関与を考慮すると、ダウンレギュレーションのダイナミック・レンジは、予想通り、アップレギュレーションのものより低い。
【0101】
一般に、相対的に少ない遺伝子は、ある処理でダウンレギュレートしたが、他ではしなかった。一般にダウンレギュレートしなかったある遺伝子は、オリゴデンドロサイト転写因子OLIG2であり、TREM−1活性化により3.1倍アップレギュレートし、LPSにより5.6倍ダウンレギュレートした(図9Bを参照)。
【0102】
さらに、TREM−1およびLPSは、TREM−1−バイアスであるM−CSFおよびLPS−特異的であるG−CSFを伴う、CSF産生を特異的に調節する(図7、8A−Bを参照)。
【0103】
実施例7:ファゴサイトーシスアッセイ
ヒトTHP−1細胞を、THP−1細胞形態学および行動におけるα−TREM−1処理およびLPS処理の効果を比較するために、α−TREM−1およびLPSで処理した。ヒトTHP−1細胞(ATCC;TIB−202)を、推奨増殖指針にしたがって維持した。視覚化の強化について、THP−1細胞は、指示された処理前に、組織培養処理ウェル中で5日間GFP発現レンチウイルスが形質導入された。Fluoresbrite(商標)多染色性赤色1.0ミクロンマイクロスフィア(Polysciences,Inc.,Warrington,PA;18660)を加え、組織培養インキュベーター中で30分間インキュベートし、成長培地で洗浄し、イメージング前に非オプソニン化ビーズを除去することによってファゴサイトーシスアッセイを行った。α−TREM−1処理は、THP−1細胞の形態変化を誘導した(図10A)。さらに、α−TREM−1処理およびLPS処理の両方は、免疫反応の刺激におけるTREM−1活性化の役割が一致している、標識マイクロスフィア(1μMビーズは赤色で生じる)のファゴサイトーシスを誘発した(図10B)。
【0104】
実施例8:遺伝子発現のELISAプロファイリング
α−TREM−1およびLPS処理に反応する選択遺伝子の差次的発現を、ELISAにより確認した。製造業者のプロトコールにより訓化培地上でELISAを実施した。TREM−1活性化またはLPSのいずれかの後に細胞培養基中に分泌されるタンパク質濃度を、8時間経過の間に測定した。GM−CSFは、Meso Scale Discovery(Gaithersburg,MD)に発注したカスタム被覆プレート上の検体であった。M−CSF、G−CSF、INHBA、およびSPP1検出キットを、R&D Systemsから購入した(Minneapolis,MN;各々DMC00、DCS50、DY338、およびDOST00)。IL−23検出キットをeBioscienceから購入した(San Diego,CA;88−7237)。
【0105】
標的タンパク質濃度の検出(括弧内は、TREM−1およびLPSそれぞれの転写レベルの倍率変化)は、SPP1(28.0および3.7;図11E)およびM−CSF(22.0および1.8;図11B)が、TREM−1活性化には反応するが、LPS処理には反応せずにアップレギュレートされることを確認した。これらの結果はまた、分泌SPP1タンパク質が細胞外液、例えば、組織培養基で検出可能であることを立証する。さらに、G−CSF(1.3および45.2;図11C)およびIL−23(−1.1および31.8;図11F)のタンパク質濃度は、これらの遺伝子がLPS処理に反応してアップレギュレートされることを確認した。最終的に、INHBA(96.7および97.0;図11D)およびGM−CSF(9.6および18.9;図11A)のタンパク質濃度は、これらの遺伝子が、TREM−1活性化およびLPS処理の両方に反応して同等にアップレギュレートされることを確認した。
【0106】
これらのELISA結果は、TREM−1活性化およびLPS処理に反応する遺伝子を同定するために、転写プロファイリング分析の用途を立証する。これらの結果はまた、最初に、サイトカインまたはTREM−1活性化により誘導されるが、LPSによっては誘導されない関連因子を同定する。さらに、ELISA結果は、SPP1がTREM−1活性化に応答してタンパク質濃度でアップレギュレートされることおよびSPP1がTREM−1活性化マーカーとして用いられうることを示す。TREM−1活性のマーカーとして用いられうるさらなる遺伝子は、図8A、23および24に記載されている。
【0107】
実施例9:TREM−1活性化によるRA患者の滑膜からのサイトカイン産生の分析
架橋抗体でのTREM−1の活性化は、ヒト単球および好中球の両方において炎症性因子の産生をもたらすことが示されている。したがって、本発明者らは、TREM−1活性化が、RA陽性滑膜培養物において同様の炎症誘発効果を有するか否かを試験した。滑膜培養アッセイを、Brennanら(1989) J. Autoimmunity 2 Supp:177−86で最初に記載されるように行った。簡単に言えば、滑膜組織を、3人の異なるRA患者の関節化鏡視下膝手術中に得た(Arthritis and Osteoporosis Center of Maryland in Frederick,MD)。試料を、輸送のために5%ウシ胎仔血清(FCS)を有するRPMI中に置いた。組織を分離し、細胞を放出するために、ドナー1およびドナー2からの組織を、50mlの5mg/mlコラゲナーゼIV(Invitrogen,Carlsbad,CA)および0.15mg/ml DNアーゼI(Sigma,St.Louis,MO)を含有する5%FCSを有するRPMIで処理し、37℃で90分間回転させた。ドナー3からの組織は、リベラーゼブレンザイム4(Roche)がコラゲナーゼ/DNアーゼと置換されたことを除き、同様に調製され、製造業者の提案プロトコールにしたがって用いられた。リベラーゼブレンザイム4は、実質的にエンドトキシン不含であるとして促進される。100μmナイロンメッシュにかけて試料を通過させることによって断片を除去した。細胞を洗浄し、プレーティングのために0.5%FCSでRPMIにて再懸濁した。TREM−1の抗体活性化について、組織培養処理プレートを、細胞添加前に3時間指示濃度で、抗hTREM−1抗体(MAB1278,R&D Systems,Minneapolis,MN)またはアイソタイプ適合対照抗体、抗イー・テネラ(Wyeth,Madison,New Jersey)のいずれかを含有する100μlの抗体溶液で被覆した。抗hTREM−1抗体は、0.12、0.37、1.11、3.33、および10μg/mlの濃度でアッセイした;対照抗体は、0.12、1.11、および10μg/mlの濃度でアッセイした。6x10細胞/mlの細胞密度で100μlの細胞懸濁液を添加する前に、ウェルをPBSで2回洗浄した。24時間後、上清を、多重ELISAプレート(Meso−Scale Discovery,Gaithersburg,Maryland)を用いて指示因子についてアッセイした。
【0108】
1個体からのデータを示す、図12に見られるように、架橋抗体を用いるこれらの培養物におけるTREM−1の活性化は、用量依存的手法でTNF−α、IL−6、IL−1βおよびGM−CSFの産生を誘導した。全3つのドナー試料から同様の結果を得た。さらに、図13Aは、3つの各ドナー試料における自発的サイトカイン産生の比較を示し、図13Bは、3つの各ドナー試料におけるTREM−1の架橋におけるサイトカイン産生の比較を示す。図13に示されるように、ドナー3自発的サイトカイン濃度は、少量のエンドトキシン混入が共通している、ドナー1および2のものよりかなり低いが、ドナー変異性も原因でありうる。全3つのドナーからの結果は、TREM−1がRA培養物に機能的に存在することおよびTREM−1が滑膜における炎症反応を増幅しうることを示している。
【0109】
実施例10:mTREM−1−hFcトランスジェニックマウス
トランスジェニックマウスは、マウスTREM−1の細胞外ドメインおよびヒトIgG1のFc部(「mTREM−1−hFc」)を含む融合タンパク質を構成的に発現するために作製された。融合構築物ヌクレオチドおよびタンパク質配列は、配列番号7および配列番号8それぞれに示されている。あるいは、トランスジェニックマウスは、TREM−1−hFc構築物が、構成的に発現されるよりむしろ誘導性プロモーターの支配下にある場合に作製されうる。可溶性TREM−1−Fc融合タンパク質はまた、当該分野にてよく知られており、LPSおよび敗血性ショックならびにザイモサンA誘導性肉芽腫形成に有効であることが示されている。
【0110】
mTREM−1−hFcトランスジェニックマウスにおけるK/BxN移動
マウスK/BxNモデルは、RAを含む、多数の形態のヒト炎症性関節炎に類似するマウスモデルである(Ditzel(2004) Trends Mol.Med.10(1):40−45)。図14に示されるように、TREM−1 mRNA発現は、正常な足と比べてK/BxN足で著しく増大した。したがって、関節炎K/BxNマウスからの血清または抗体は、mTREM−1−hFc構築物がK/BxN血清または抗体に対する炎症反応を阻害するかどうかを決定するために、実験動物に移植されうる。
【0111】
1の実施態様において、可溶性mTREM−1−hFc融合タンパク質を発現するトランスジェニックマウスは、TREM−1が関節性炎症を減少させるか否かを評価するために、可溶性TREM−1は、K/BxN血清が投与された。簡単に言えば、TREM−1トランスジェニック(“Tg)マウスを、CMVエンハンサーおよびβ−アクチンプロモーターからなる偏在的に強力な融合プロモーターである、CAGGSプロモーターの支配下で可溶性mTREM−1−hFc融合タンパク質を発現するために、C57BL/6バックグラウンド上で作製した。全ての構築物は、CAGGS/mTREM−1−hFc/ウサギβ−グロブリンポリAであった。トランスジェニックマウスの血漿における可溶性mTREM−1−hFcタンパク質濃度は、約1−2mg/mlであった。TREM−1トランスジェニック雄マウス(n=7)および野生型雄マウス(n=7)を、0日目および2日目に150μlのK/BxN血清で腹腔内(ip)注射した。足首の直径を、14日目まで定期的に測定した。
【0112】
図15は、野生型対照と比べたC57BL/6−TREM−1トランスジェニックマウスの平均足首肥厚を示す。図15に示されるように、TREM−1トランスジェニックマウスは、6日目までに野生型マウスとして同様の表現型を発現した。7日目になると、TREM−1トランスジェニックマウスでは足首の腫れは治まったが、野生型対照では腫れは継続した。次いで、足首の腫れの有意な減少は、野生型対照に比べてTREM−1トランスジェニックマウスの9−14日目(p<0.05)から観察された。さらに、TREM−1トランスジェニックマウスの最大の腫れは、野生型対照において観察された最大の腫れの約半分であった。14日目まで、TREM−1トランスジェニックマウスの足首の腫れは、野生型対照で観察された腫れの量の約1/4であった(図16)。したがって、可溶性TREM−1は、炎症性関節炎に付随する炎症の量を有意に低下させるのに有効であり、TREM−1および/またはTREM−1シグナル伝達を調節、低下および/または阻害するために、TREM−1アンタゴニスト、例えば、TREM−1融合タンパク質および/または抗TREM−1抗体の使用が、例えば、RAを含む炎症性障害の有効な治療方法であることを立証している。
【0113】
本発明の融合タンパク質を作製するのに用いられる転写および翻訳制御配列には、限定されるものではないが、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始および終止配列、翻訳開始および終止配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が含まれうる。1の実施態様において、制御配列には、プロモーターならびに転写開始および終止配列が含まれる。
【0114】
プロモーター配列は、構成的または誘導性プロモーターをコードしうる。プロモーターは、天然プロモーターまたはハイブリッドプロモーターのいずれかでありうる。1つ以上のプロモーターの要素を組み合わせる、ハイブリッドプロモーターはまた、当該分野にて知られており、本発明に用いられうる。
【0115】
付加的な実験動物は、mTREM−1−hFc接合体マウスを野生型マウスに戻し交配させることによって作製され、野生型子孫は、子をはらんだ対照として役割を果たしうる。種々のmTREM−1−hFc構築物が炎症性疾患を保護するかどうかを決定するために、実験動物は、当該分野にて知られている種々の炎症性疾患の動物モデル、例えば、LPS、およびCIAなどで試験されうる。mTREM−1−hFc構築物は構成的に発現されうるか、またはmTREM−1−hFc構築物の発現は、LPSおよびCIAの投与前に、投与と同時に、および/または投与後の1もしくは複数の時点で誘導されうる。TREM−1受容体の安定形態を発現するトランスジェニックマウスはまた、炎症性疾患の推定阻害薬をスクリーンするために作製されうる。
【0116】
内毒素性ショックのリポ多糖(LPS)モデルにおいて、実験動物は、LPS誘発性ショックに対する炎症性反応を減少させるのにmTREM−1−hFc構築物の有効性を決定するために、LPSが注射される。さらに、実験動物は、CIAに対する炎症反応を減少させるのにmTREM−1−hFc構築物の有効性を決定するために、例えば、実施例2における、CIAモデルで試験されうる。
【0117】
TREM−1およびDAP12/TyroBPとRAとの関連性に基づき、mTREM−1−hFc構築物は、マウスにおけるLPSおよびCIA投与を保護することが期待されている。同様に、炎症性疾患、例えば、RAに罹患するヒト対象に対する適当なTREM−1構築物および/または適当なTREM−1タンパク質の投与は、炎症性疾患の重篤度を低下させうる。
【0118】
実施例11:抗hTREM−1抗体
抗hTREM−1抗体は、ヒトRA滑膜培養アッセイにおいて炎症性サイトカインの産生を阻害する能力を識別される。例えば、実施例9および実施例12における、RAおよび喘息モデルは、炎症反応の1または複数の態様を中和する治療抗体を開発するための炎症性疾患のモデルとしてうまく用いられている。TREM−1と炎症性疾患、例えば、RAおよび喘息との関連性に一部基づき、抗hTREM−1抗体は、RA滑膜培養アッセイおよび喘息モデルにおける炎症性サイトカインの産生を阻害することが期待されている。同様に、炎症性疾患、例えば、RAまたは喘息に罹患するヒト対象に対する適当な抗体の投与は、炎症性疾患の重篤度を低下および/または疾患の症状を減少させることが必要である。
【0119】
実施例12:TREM−1および抗IgE抗体での投与
肥満細胞の表面上のIgEの架橋が、肥満細胞活性化および脱顆粒をもたらすシグナル伝達現象を誘発するであろうという理由から、肥満細胞およびIgEは、アレルギー反応、例えば、喘息またはアナフィラキシーなどの急性呼吸器障害の確立したプレーヤーである。該シグナル伝達系および肥満細胞活性化および脱顆粒の下流結果は、ラット抗マウスIgEを耳に皮内(id)注射する受動皮膚アナフィラキシー(PCA)モデルを用いてマウスにおいてインビボで調査されうる。抗IgE抗体は、肥満細胞活性化および脱顆粒を誘導する肥満細胞の表面上のFcεRI受容体に結合するIgEと結合および交差結合するであろう。次の炎症性浮腫反応は、技術者のマイクロメータを用いて算出されうる耳の中の測定可能な腫れをもたらす。Inagakiら「Mouse ear PCA as a model for evaluating antianaphylactic agents」,Int Arch Allergy Appl Immunol.,74(1):91−2(1984)。
【0120】
トランスジェニックTREM−1マウスにおける抗IgE投与
トランスジェニックTREM−1マウスおよび野生型マウスは、耳の腫脹モデルを用いて抗IgEが投与された。トランスジェニックマウスは、実施例10と同様に生産された。該実験に用いられるトランスジェニックマウス株は、約200μg/mlのmTREM−1−hFcタンパク質の血液血漿濃度を含有していた。イソフルラン麻酔中に、TREM−1野生型マウスおよびトランスジェニックヘテロ接合体mTREM−1−hFcマウスの耳を、耳厚について測定した。抗マウスIgEは、0.9%セイラインで10ng/20ulに希釈された。表2に示されるように、トランスジェニックおよび野生型マウスは、左耳において0時間に抗IgE抗体(BD PharMingen,San Diego,CA;カタログ553413)が投与され、一方、別群のトランスジェニックおよび野生型マウスは、エンドトキシン不含0.9%正常セイラインビヒクルが投与された。投与後+1時間、+2時間、+4時間、および+6時間で耳測定値を得た。
【表2】

【0121】
図17に示されるように、野生型対照と比べてTREM−1トランスジェニックマウスにおいて耳の腫脹の減少が観察された。したがって、mTREM−1−hFCキメラタンパク質を過剰発現するC57BL/6マウスは皮膚の耳の腫脹を減少させているので、TREM−1はインビボにおけるアレルギー反応に関与しうる。したがって、可溶性TREM−1は、抗IgE投与に付随する炎症を減少させるのに有効である。例えば、可溶性TREM−1は、喘息、アナフィラキシー、急性および慢性じんま疹(じんましん)、血管性浮腫、アレルギー性鼻炎、虫さされアレルギー、およびアトピーを調節するのに有効であることが期待されている。
【0122】
可溶性TREM−1で前処理した野生型マウスにおける抗IgE投与
可溶性TREM−1の投与が、耳の腫脹モデルにおいて炎症を保護するか否かを評価するために、マウスを可溶性TREM−1融合タンパク質で前処理した。研究前日、マウスを、表3に示されるように、0.9%セイライン、mTREM−1−mFc(500ug/400ul、250ug/400ul、または100ug/400ul)または抗イー・テネラ−IgG 2a(500ug/400ul)のいずれかで腹腔内注射した。抗マウスIgEを、0.9%セイラインで10ng/20ulに希釈した。マウスTREM−1の細胞外ドメインおよび突然変異マウスIgG2aのFc部(「mTREM−1−mFc」)(配列番号27)を含む組換えmTREM−1−mFcを作製した。Fc領域を、補体およびFc受容体結合を減少させるために突然変異させた。mTREM−1−mFcおよび抗イー・テネラ−IgG 2a(Wyeth,Madison NJ)を、所望の用量レベルにPBSで希釈した。投与前に、全マウスの耳を、基準耳厚を決定するために測定した。マウスは、左耳において0時間に抗IgE(10ng/20ul/皮内)が投与され、一方、右耳は、0.9%正常セイライン(20ul/皮内)が投与された。投与後+1時間、+2時間、+4時間、および+5時間で耳測定値を得た。
【表3】

【0123】
図18に示されるように、可溶性mTREM−1−mFcタンパク質を有するマウスの前処理は、対照と比べて耳の腫脹を減少させた。さらに、図19に示されるように、耳の腫脹の減少は、用量依存的である。これらのデータは、可溶性TREM−1が、抗IgE投与に付随する炎症を減少させることおよび例えば、可溶性TREM−1融合タンパク質および/または抗TREM−1抗体などのTREM−1および/またはTREM−1シグナル伝達のアンタゴニストが、抗IgE投与に付随する炎症の治療のために患者に投与されうることをさらに立証している。例えば、可溶性TREM−1および/または抗TREM−1抗体は、喘息、アナフィラキシー、急性および慢性じんま疹(じんましん)、血管性浮腫、アレルギー性鼻炎、虫さされアレルギー、およびアトピーを調節するのに有効であると期待されている。
【0124】
TREM−1ノックアウトマウスにおける抗IgE投与
TREM−1ヘテロ接合体(+/−)およびホモ接合体(−/−)ノックアウトマウスを、耳の腫脹が機能的TREM−1の欠損で減少するか否かを評価するために作製した。ストレートTREM−1ノックアウトマウスを、TREM−1遺伝子のエキソン1およびエキソン2を、lox P−隣接二重プロモーター駆動性Neo耐性遺伝子で置換して作製し、TREM−1遺伝子におけるリーティング・フレーム移動をもたらす。遺伝子ターゲッティングを、C57BL/6胚幹細胞で行った。TREM−1ノックアウトマウスは、プロタミン−Creマウスと交配され、Neo検出TREM−1ノックアウトマウスを作製した。0日目に、イソフルラン麻酔中に、全てのマウスの耳を、基準耳厚を決定するために測定した。表4に示されるように、マウスは、左耳において0時間に抗IgE(10ng/20ul/皮内)が投与され、一方、右耳は、0.9%正常セイライン(20ul/皮内)が投与された。抗マウスIgEを0.9%セイラインで10ng/20ulに希釈した。投与後+1時間で耳測定値を得た。
【表4】

【0125】
図20に示されるように、TREM−1遺伝子にヘテロ接合体(+/−)であるマウスおよびTREM−1ヘテロ接合体(−/−)ノックアウトマウスは、野生型(+/+)対応物と比べて抗IgGの皮内投与後の耳の腫脹反応が減少した。これは、TREM−1が炎症反応に関与すること、およびTREM−1が、例えば、喘息、アナフィラキシー、急性および慢性じんま疹(じんましん)、血管性浮腫、アレルギー性鼻炎、虫さされアレルギー、およびアトピーなどの、IgE媒介炎症性疾患/障害の治療標的となることをさらに立証している。したがって、TREM−1および/またはTREM−1シグナル伝達の拮抗および/または阻害は、IgE媒介炎症性疾患/障害に付随する炎症の程度を有意に減少させるのに有効であり、TREM−1および/またはTREM−1シグナル伝達を調節、低下および/または阻害するための、TREM−1アンタゴニスト、例えば、TREM−1融合タンパク質および/または抗TREM−1抗体の使用が、IgE媒介炎症性疾患/障害の有効な治療方法であることを立証している。
【0126】
実施例13:TREM−1のshRNAおよびsiRNAノックダウン
炎症性疾患に対する干渉RNAによる治療の有用性を立証するために、THP−1単球におけるTREM−1発現を、shRNAおよびsiRNAノックダウン後に測定した。簡単に言えば、種々のヒトTREM−1およびマウスTREM−1 shRNA配列を生成し、TREM−1発現を減少させる能力について個々に試験した。典型的なshRNA配列を表5に示す。shRNAを、レンチウイルス形質導入によりTHP−1単球で発現した。ヒトTREM−1 siRNAは、Dharmacon(Lafayette,CO)から商業的に入手可能であり、ヌクレオフェクション(nucleofection)によりTHP−1単球中に導入された。典型的なsiRNA配列を表6に示す。ノックダウン後、TREM−1発現を、形質導入の72時間後(shRNAの場合)またはヌクレオフェクションの48時間後(siRNAの場合)にTaqMan(登録商標)RT−PCRにより測定した。
【0127】
図21は、shRNAまたはsiRNAノックダウン後のRT−PCRによってTREM−1発現を示す棒グラフである。図21に示されるように、sh247、sh533、sh382、およびプールTREM−1 siRNAは、vGFPおよびスクランブルsiRNA対照に比べて有効にTHP−1単球における内因性TREM−1発現をノックダウンした。したがって、shRNAおよびsiRNAノックダウンは、TREM−1発現を低下させる有効な手段であるので、炎症性疾患の治療に用いられうる。
【0128】
RNAによる治療がTREM−1過剰発現を有効にノックダウンしうることを立証するために、レンチウイルスshRNAノックダウン前に、TREM−1をCHO細胞で過剰発現した。1の実験において、ヒトTREM−1−FLAG融合タンパク質を、CHO細胞株で安定に過剰発現した。別の実験において、マウスTREM−1−FLAG融合タンパク質を、CHO細胞株で安定に過剰発現した。TREM−1−FLAG過剰発現の後で、shRNAを、レンチウイルスを用いて各CHO細胞株で発現した。種々のヒトおよびマウスTREM−1 shRNA配列を生成し、TREM−1過剰発現を低下させる能力について個々に試験した。典型的なshRNA配列を表5に示している。レンチウイルスshRNAを暴露した後、TREM−1発現レベルを、プローブとして抗FLAG抗体を用いてウエスタンブロットによって測定した。
【0129】
図22A−Bは、TREM−1過剰発現細胞株におけるTREM−1のレンチウイルスshRNAノックダウン後のTREM−1発現を図示する典型的なウエスタンブロットを示す。図22Aに示されるように、sh114、sh247、sh247、sh280、sh315、sh360、sh450、およびsh533は、対照に比べて有効にヒトTREM−1−FLAG過剰発現をノックダウンし、一方、sh382およびsh600は、ヒトTREM−1−FLAG過剰発現のノックダウンに効果がなかった。図22Bに示されるように、sh75、sh284、およびsh414は、対照に比べて有効にマウスTREM−1−FLAG過剰発現をノックダウンし、一方、sh591は、マウスTREM−1−FLAG過剰発現のノックダウンに効果がなかった。したがって、shRNAノックダウンは、TREM−1過剰発現を低下させるのに有効な手段であるので、TREM−1関連炎症性疾患を治療する。
【表5】

【0130】
【表6】

【0131】
参照の一部
本願で引用されるすべての刊行物および特許文献は、個々の刊行物または特許文献の内容を本明細書の一部とするかの如く同一範囲で全ての目的に応じてその全体を出典明示により本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の炎症性疾患の治療方法であって、TREM−1媒介シグナル伝達を低下させる工程を含む方法。
【請求項2】
炎症性疾患がIgEによって媒介される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
炎症性疾患が呼吸器疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
疾患が喘息である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
炎症性疾患が関節リウマチである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
低下させる工程が、TREM−1発現を低下させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
低下させる工程が、対象に干渉RNAを投与することを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
干渉RNAがshRNAである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
shRNAが、配列番号9−18のいずれかによってコードされるRNAを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
干渉RNAがsiRNAである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
siRNAが、配列番号23−26のいずれかを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
低下させる工程が、TREM−1活性化を阻害することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
TREM−1活性化が、低分子、ペプチド模倣薬、ペプチド阻害薬、リガンド融合タンパク質、TREM−1に特異的に結合する抗体またはそのフラグメント、TREM−1リガンドに特異的に結合する抗体またはそのフラグメント、可溶性TREM−1受容体、可溶性TREM−1受容体融合タンパク質、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物を投与することによって阻害される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
低下させる工程が、TREM−1媒介シグナル伝達に関与する非TREM−1タンパク質の発現または活性化を直接阻害することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
非TREM−1タンパク質がDAP12/TyroBPである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
低下させる工程が、対象において内因性TREM−1またはDAP12/TyroBPタンパク質に対する免疫反応を誘発することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
低下させる工程が、アジュバントおよびTREM−1もしくはDAP12/TyroBPタンパク質またはその免疫原性フラグメントを含む、免疫原性組成物を対象に投与することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
TREM−1に特異的に結合する抗体またはそのフラグメント。
【請求項19】
抗体またはそのフラグメントがモノクローナルである、請求項18記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項20】
抗体またはそのフラグメントが単一ドメイン抗体である、請求項18記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項21】
対象の治療方法であって、治療上有効な量の請求項19記載の抗体またはそのフラグメントを対象に投与する工程を含む方法。
【請求項22】
配列番号9−22のいずれかによってコードされるRNAを含むshRNA。
【請求項23】
治療を必要とする対象の炎症性疾患の治療方法であって、低分子、ペプチド模倣薬、ペプチド阻害薬、リガンド融合タンパク質、TREM−1に特異的に結合する抗体またはそのフラグメント、TREM−1リガンドに特異的に結合する抗体またはそのフラグメント、可溶性TREM−1受容体、可溶性TREM−1受容体融合タンパク質、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物を投与することによってTREM−1媒介シグナル伝達を低下させる工程を含む、方法。
【請求項24】
治療を必要とする患者に投与されるTREM−1修飾剤の有効性を評価する方法であって、患者または患者からの試料における分泌リンタンパク質1(SPP1)濃度を検出することを含む、方法。
【請求項25】
SPP1濃度が患者から体液試料中で検出される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
SPP1濃度を基準と比較する工程をさらに含み、基準と比較したSPP1濃度の増加がTREM−1活性の増加を示し、基準と比較したSPP1濃度の減少がTREM−1活性の減少を示すところの、請求項24記載の方法。
【請求項27】
基準が、TREM−1修飾剤の投与前に患者または患者からの試料にて検出されたSPP1濃度に相当する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
TREM−1シグナル伝達を調節しうる候補薬剤のスクリーニング方法であって、
TREM−1発現細胞を候補薬剤と接触させる工程;および
候補薬剤がTREM−1活性化を調節するかどうかを決定するためにTREM−1発現細胞の分泌リンタンパク質1(SPP1)濃度を評価する工程を含む、方法。
【請求項29】
慢性炎症の治療を受ける患者のモニタリング方法であって、
TREM−1修飾剤をそれを必要とする患者に投与する工程;
患者または患者からの試料における分泌リンタンパク質1(SPP1)濃度を検出する工程;および
検出SPP1濃度を基準と比較し、患者をモニタリングする工程を含む、方法。
【請求項30】
SPP1濃度が患者からの体液試料中で検出される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
基準と比較したSPP1濃度の低下がTREM−1媒介炎症の低下を示す、請求項29記載の方法。
【請求項32】
基準と比較したSPP1濃度の変化なしがTREM−1媒介炎症の変化なしを示す、請求項29記載の方法。
【請求項33】
基準と比較したSPP1濃度の増加がTREM−1媒介炎症を示す、請求項29記載の方法。
【請求項34】
基準が、TREM−1修飾剤の投与前または同時に患者または患者からの試料で検出されたSPP1濃度に相当する、請求項29記載の方法。
【請求項35】
基準が、慢性炎症を伴わないことが知られている対照患者におけるSPP1濃度に相当する、請求項29記載の方法。
【請求項36】
対象における炎症性疾患の存在の検出方法であって、対象または対象から得られた試料におけるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性を検出する工程を含み、発現または活性の増加が炎症性疾患を示すところの、方法。
【請求項37】
対象における炎症性疾患のモニタリング方法であって、
(a)最初の対象または対象から得られた最初の試料におけるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性を検出する工程;
(b)第2の、後の対象または対象から得られた第2の、後の試料におけるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性を検出する工程;および
(c)(a)および(b)の発現または活性を比較する工程を含み、発現または活性の変化が病態の変化を示すところの、方法。
【請求項38】
炎症性疾患が関節リウマチである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
対象における炎症性疾患の治療の評価方法であって、
(a)最初の対象または対象から得られた最初の試料におけるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性を検出する工程;
(b)第2の、後の対象または対象から得られた第2の、後の試料におけるTREM−1またはDAP12/TyroBP発現または活性を検出する工程;
(c)第2の、後または第2の、後の試料前に治療を行う工程;および
(d)(a)および(b)の発現または活性を比較する工程を含み、発現または活性の変化が病態の変化を示すところの、方法。
【請求項40】
治療が、最初または最初の試料後に行われる、請求項39記載の方法。
【請求項41】
比較の結果に基づき対象の治療方針を修正することをさらに含む、請求項39記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−516678(P2010−516678A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546423(P2009−546423)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/000629
【国際公開番号】WO2008/088849
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】