説明

TRPA1アンタゴニスト

、R、R、およびYが本明細書において定義される式(I)の化合物はTRPA1アンタゴニストである。このような化合物を含む組成物、ならびにこのような化合物および組成物を用いて状態および障害を治療するための方法も開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、TRPA1アンタゴニスト、このような化合物を含む組成物、ならびにこのような化合物および組成物を用いて状態および障害を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TRPA1は、一過性受容器電位(TRP)イオンチャネルのスーパーファミリーに属する非選択性陽イオンチャネルである。他のファミリーメンバー同様、機能性TRPA1チャネルは、6つの膜貫通ドメイン、膜貫通ドメイン5(S5)と6(S6)の間のポアループ、ならびに細胞内N末端およびC末端を各々が含んでいる4個のサブユニットの四量体化によって形成されている。TRPA1は、感覚ニューロンにおいて発現され、TRPV1、カルシトニン遺伝子関連ペプチドおよびブラジキニン受容体などの疼痛マーカーと一緒に共存している(Nagata,K.ら、Journal of Neuroscience、2005年、25巻、4052−4061頁;Story,G.M.ら、Cell、2003年、112巻、819−829頁;Corey,D.P.ら、Nature、2004年、432巻、723−730頁;Bautista,D.M.ら、Proceedings of the National Academy of Science U.S.A.、2005年、102巻、12248−12252頁;Jaquemar,D.ら、Journal of Biological Chemistry、1999年、274巻、7325−7333頁)。疼痛モデルにおいて、遺伝子特異的アンチセンスによるTRPA1発現のノックダウンは、炎症および神経損傷によって誘発される冷痛覚過敏を防止し、逆転した(Obata,K.ら、Journal of Clinical Investigation、2005年、115巻、2393−2401頁;Jordt,S.E.ら、Nature、2004年、427巻、260−265頁;Katsura,H.ら、Exploratory Neurology、2006年、200巻、112−123頁)。さらに、TRPA1遺伝子のノックアウトは、感覚機能の損傷およびブラジキニン誘発性疼痛過敏における欠損をもたらした(Kwan,K.Y.ら、Neuron、2006年、50巻、277−289頁;Bautista,D.M.ら、Cell、2006年、124巻、1269−1282頁)。まとめると、これらのデータは、TRPA1が、感覚機能および疼痛状態において重要な役割を果たすことを示唆している。リガンド依存性チャネルとして、TRPA1は、侵害寒冷、細胞内Ca2+、内因性物質(例えば、ブラジキニン)、刺激性の天然物(例えば、イソチオシアン酸アリルすなわちAITC)、環境刺激物(例えば、アクロレイン)、両親媒性分子(例えば、トリニトロフェノールおよびクロルプロマジン)ならびに薬理学的物質(例えば、URP597)を含めた様々な刺激によって活性化され得る(Macpherson,L.J.ら、Current Biology、2005年、15巻、929−934頁;Bandell,M.ら、Neuron、2004年、41巻、849−857頁)。ブラジキニンがその受容体に結合した後、ブラジキニンはホスホリパーゼC経路を介して間接的にTRPA1を活性化する。トリニトロフェノールおよびクロルプロマジンは、脂質2重層の膜において弯曲または円鋸歯を誘発することによって、TRPA1を開口する(Xu,H.ら、Nat.Neurosci.、2006年、9巻、628−635頁;Hill,K.およびSchaefer,M.、J.Biol.Chem.、2007年、282巻、7145−7153頁;Niforatos,W.ら、Molecular Pharmacology、2007年、71巻、1209−1216頁)。ごく最近、TRPA1アゴニストがチャネルタンパク質と間接的に相互作用し得ることが示された。AITCおよびシンナムアルデヒドは、細胞質N末端において局在しているいくつかのシステイン残基およびリジン残基を共有結合によって修飾し、チャネルを活性化する(Hinman,A.、Chuang,H.H.、Bautista,D.M.、およびJulius,D.、Proceedings of the National Academy of Science U.S.A.、2006年、103巻、19564−19568頁;Macpherson,L.J.、Dubin,A.E.、Evans,M.J.、Marr,F.、Schultz,P.G.、Cravatt,B.F.、およびPatapoutian,A.、Nature、2007年、445巻、541−545頁)。さらに、細胞内Ca2+は、N末端EFハンドドメインに結合し、チャネル開口を媒介する(Zurborg,S.ら、Nature Neuroscience、2007年、10巻、277−279頁)。これらの発見はともに、TRPA1の潜在的な生理学的役割を明らかにしており、TRPA1チャネルゲーティングが様々な機序および分子決定要因を用いている可能性も指摘している。
【0003】
このように、TRPA1の調節は、多くの産業上および治療上の適用を有し得る。例えば、TRPA1アンタゴニストは、哺乳動物、特にヒトにおける侵害受容性疼痛および神経障害性疼痛の治療および/または予防に適する、当技術分野における新しい鎮痛薬に対する必要性を満たすことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nagata,K.ら、Journal of Neuroscience、2005年、25巻、4052−4061頁
【非特許文献2】Story,G.M.ら、Cell、2003年、112巻、819−829頁
【非特許文献3】Corey,D.P.ら、Nature、2004年、432巻、723−730頁
【非特許文献4】Bautista,D.M.ら、Proceedings of the National Academy of Science U.S.A.、2005年、102巻、12248−12252頁
【非特許文献5】Jaquemar,D.ら、Journal of Biological Chemistry、1999年、274巻、7325−7333頁
【非特許文献6】Obata,K.ら、Journal of Clinical Investigation、2005年、115巻、2393−2401頁
【非特許文献7】Jordt,S.E.ら、Nature、2004年、427巻、260−265頁
【非特許文献8】Katsura,H.ら、Exploratory Neurology、2006年、200巻、112−123頁
【非特許文献9】Kwan,K.Y.ら、Neuron、2006年、50巻、277−289頁
【非特許文献10】Bautista,D.M.ら、Cell、2006年、124巻、1269−1282頁
【非特許文献11】Macpherson,L.J.ら、Current Biology、2005年、15巻、929−934頁
【非特許文献12】Bandell,M.ら、Neuron、2004年、41巻、849−857頁
【非特許文献13】Xu,H.ら、Nat.Neurosci.、2006年、9巻、628−635頁
【非特許文献14】Hill,K.およびSchaefer,M.、J.Biol.Chem.、2007年、282巻、7145−7153頁
【非特許文献15】Niforatos,W.ら、Molecular Pharmacology、2007年71巻、1209−1216頁
【非特許文献16】Hinman,A.、Chuang,H.H.、Bautista,D.M.、およびJulius,D.、Proceedings of the National Academy of Science U.S.A.、2006年、103巻、19564−19568頁
【非特許文献17】Macpherson,L.J.、Dubin,A.E.、Evans,M.J.、Marr,F.、Schultz,P.G.、Cravatt,B.F.、およびPatapoutian,A.、Nature、2007年、445巻、541−545頁
【非特許文献18】Zurborg,S.ら、Nature Neuroscience、2007年、10巻、277−279頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
式(I)の化合物:
【0006】
【化1】

[式中、
化合物は
1−(イソキノリン−4−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
1−(キノリン−4−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
1−(キノリン−3−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−4−メチル−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3Z)−4−メチル−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−4,4−ジメチル−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3Z)−4,4−ジメチル−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E)−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1Z)−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(3E)−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(3Z)−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
4−(ピリジン−3−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
4−(ピリジン−4−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
4−(5−クロロピリジン−3−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
4−(3−クロロピリジン−4−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
3−メチル−4−(ピリジン−3−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
3−メチル−4−(ピリジン−4−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
3−メチル−4−(5−クロロピリジン−3−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
3−メチル−4−(3−クロロピリジン−4−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
1−(ピリジン−3−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
1−(ピリジン−4−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
1−(5−クロロピリジン−3−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;または
1−(3−クロロピリジン−4−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム
ではないという条件で、
は、その各々が、Rによって表される置換基1、2、3、4、または5個で場合によって置換されているピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チエン−2−イル、チエン−3−イル、イソキノリン−4−イル、キノリン−3−イルまたはキノリン−4−イルであり、
は、各出現時、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、−CN、ハロゲン、−OR、−NO、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)1a、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)N(R)(R)、−N(R)S(O)N(R)(R)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)(R)、−SR、−SF、−S(O)R1a、−S(O)1a、−S(O)OR1a、−S(O)N(R)(R)、−(CR−CN、ハロアルキル、−(CR−OR、−(CR−NO、−(CR−N(R)(R)、−(CR−N(R)C(O)R、−(CR−N(R)S(O)1a、−(CR−N(R)C(O)OR、−(CR−N(R)C(O)N(R)(R)、−(CR−N(R)S(O)N(R)(R)、−(CR−C(O)R、−(CR−C(O)OR、−(CR−C(O)N(R)(R)、−(CR−S(O)1a、−(CRS(O)OR1aおよび−(CRS(O)N(R)(R)であり、
は、水素、C1−6アルキルまたはハロアルキルであり、
は、C1−6アルキル、ハロアルキルまたはシクロプロピルであり、シクロプロピルは、アルキル、ハロゲン、およびハロアルキルからなる群から独立に選択される置換基1、2、3、4、または5個で場合によって置換されており、
Yは、−OR、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)または−N(R)C(O)N(R)(R)であり、
1aは、各出現時、独立に、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキル、ハロゲンまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
qは、1、2、3または4である。]
もしくは薬学的に許容される塩、溶媒和化合物、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらの組合せが本明細書に開示される。
【0007】
さらに、TRPA1の阻害によって改善される障害を治療するための方法が、本明細書に開示される。このような方法は、対象に、治療有効量の1つまたは複数のTRPA1アンタゴニストを、単独で、または1つもしくは複数の薬学的に許容される担体と組み合わせて投与することを含む。使用されるTRPA1アンタゴニストは、式(I)の化合物:
【0008】
【化2】

[式中、
は、その各々が、Rによって表される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されているピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チエン−2−イル、チエン−3−イル、イソキノリン−4−イル、キノリン−3−イルまたはキノリン−4−イルであり、
は、各出現時、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、−CN、ハロゲン、−OR、−NO、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)1a、N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)N(R)(R)、−N(R)S(O)N(R)(R)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)(R)、−SR、−SF、−S(O)R1a、−S(O)1a、−S(O)OR1a、−S(O)N(R)(R)、−(CR−CN、ハロアルキル、−(CR−OR、−(CR−NO、−(CR−N(R)(R)、−(CR−N(R)C(O)R、−(CR−N(R)S(O)1a、−(CR−N(R)C(O)OR、−(CR−N(R)C(O)N(R)(R)、−(CR−N(R)S(O)N(R)(R)、−(CR−C(O)R、−(CR−C(O)OR、−(CR−C(O)N(R)(R)、−(CR−S(O)1a、−(CRS(O)OR1aおよび−(CRS(O)N(R)(R)であり、
は、水素、C1−6アルキルまたはハロアルキルであり、
は、C1−6アルキル、ハロアルキルまたはシクロプロピルであり、シクロプロピルは、アルキル、ハロゲンおよびハロアルキルからなる群から独立に選択される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されており、
Yは、−OR、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)または−N(R)C(O)N(R)(R)であり、
1aは、各出現時、独立に、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキル、ハロゲンまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
qは、1、2、3または4である。]
もしくは溶媒和化合物、薬学上の塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらの任意の組合せから選択される。
【0009】
一部の方法は、それだけには限定されないが、急性脳虚血、慢性疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、帯状疱疹後疼痛、ニューロパチー、神経痛、糖尿病性ニューロパチー、HIV関連ニューロパチー、神経損傷、関節リウマチ痛、骨関節炎痛、火傷、背痛、内臓痛、癌性疼痛、歯痛、頭痛、片頭痛、手根管症候群、線維筋痛症、神経炎、坐骨神経痛、骨盤過敏症、骨盤痛、生理痛、膀胱疾患(例えば、失禁、排尿異常、腎仙痛および膀胱炎)、炎症(例えば、火傷、関節リウマチおよび骨関節炎)、神経変性疾患(例えば、脳卒中、卒中後疼痛および多発性硬化症)、肺疾患(例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および気管支収縮)、消化器疾患(例えば、胃食道逆流症(GERD)、嚥下障害、潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、腸炎およびクローン病)、虚血(例えば、脳血管虚血)、嘔吐(癌化学療法誘発性嘔吐)または肥満などの障害または状態を治療することを目的とし、前記方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の1つまたは複数の式(I)の化合物、もしくは溶媒和化合物、または薬学的に許容されるそれらの塩を、1つもしくは複数の薬学的に許容される担体と一緒に、またはそれなしで投与するステップを含む。一部の方法において、治療される対象はヒトである。一部の方法は、1つまたは複数の第2の疼痛緩和薬と同時投与することをさらに含む。
【0010】
本発明の別の一態様は、1つもしくは複数の式(I)の化合物、もしくは溶媒和化合物、または薬学的に許容されるそれらの塩、および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む薬剤組成物を目的とする。一部の薬剤組成物は、1つまたは複数の第2の疼痛緩和剤をさらに含み得る。
【0011】
本発明は、本明細書に開示する状態および障害を治療するための薬物の製造における、1つまたは複数の式(I)の化合物、もしくは溶媒和化合物、または薬学的に許容されるそれらの塩の、単独の、または1つもしくは複数の第2の疼痛緩和剤と組み合わせた使用をさらに提供する。
【0012】
例えば、第2の疼痛緩和剤は、アセトアミノフェン、もしくは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)から選択される鎮痛薬、またはこれらの組合せであってよい。一部の実施形態において、非ステロイド性抗炎症薬はイブプロフェンである。第2の疼痛緩和剤はオピオイドであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、式(I)の化合物:
【0014】
【化3】

[式中、R、R、R、およびYは、概要において上記に、および発明を実施するための形態において下記に定義される。]が開示される。好ましくは、本発明の化合物はTRPA1アンタゴニストである。さらに、このような化合物を含む組成物、ならびにこのような化合物および組成物を用いて状態および障害を治療するための方法も開示される。
【0015】
本明細書に開示される化合物は、あらゆる置換基において、または本明細書の式において1回を超えて生じる1つまたは複数の変数を含むことができる。各出現時の変数の定義は、別の出現時のその定義と独立している。さらに、置換基の組合せは、そのような組合せが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容できる。安定な化合物は、反応混合物から単離され得る化合物である。
【0016】
a.定義
反対のことが明示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる以下の語は、以下に示される意味を有する。
【0017】
本明細書で用いられる「アルケニル」の語は、炭素2個から10個を含み、少なくとも1つの炭素間2重結合を含む、直鎖または分枝鎖の炭化水素を意味する。アルケニルの代表例は、それだけには限定されないが、エテニル、2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、3−ブテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、2−ヘプテニル、2−メチル−1−ヘプテニル、および3−デセニルを含む。
【0018】
本明細書で用いられる「アルキル」の語は、炭素原子1個から10個を含む直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素鎖を意味する。「C1−6アルキル」の語は、炭素原子1個から6個を含む、直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素鎖を意味する。「C1−4アルキル」の語は、炭素原子1個から4個を含む、直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素鎖を意味する。アルキルの代表例は、それだけには限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニルおよびn−デシルを含む。
【0019】
本明細書で用いられる「アルキニル」の語は、炭素原子2個から10個を含み、少なくとも1つの炭素間3重結合を含む、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。アルキニルの代表例は、それだけには限定されないが、アセチレニル、1−プロピニル、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ペンチニル、および1−ブチニルを含む。
【0020】
本明細書で用いられる「ハロ」または「ハロゲン」の語は、−Cl、−Br、−I、または−Fを意味する。
【0021】
本明細書で用いられる「ハロアルキル」の語は、本明細書で定義されるアルキル基によって親分子部分に付加している、本明細書で定義される少なくとも1つのハロゲンを意味する。ハロアルキルの代表例は、それだけには限定されないが、クロロメチル、2−フルオロエチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、4,4,4−トリフルオロブチル、および2−クロロ−3−フルオロペンチルが含む。
【0022】
「対象」の語は、哺乳動物、特にヒト、および他の非ヒトの動物、例えば、ウマ、イヌ、ネコ、およびサカナを含む。
【0023】
b.化合物
本発明の化合物は、上記に記載される一般式(I)を有する。
【0024】
式(I)の化合物における可変の基の特定の値は、以下の通りである。このような値は、任意の他の値、定義、特許請求の範囲、または本明細書中で以上または以下に規定される実施形態と併せて適している場合に使用され得る。
【0025】
式(I)の化合物において、Rは発明の概要において記載する値を有する。特定の実施形態において、Rはピリジン−3−イルまたはピリジン−4−イルである。一部の実施形態は、Rがチエン−2−イルまたはチエン−3−イルである化合物を目的とする。さらに他の実施形態は、Rがイソキノリン−4−イル、キノリン−3−イルまたはキノリン−4−イルである化合物を目的とする。Rによって表される各環は、発明の概要において記載されている通り、独立に非置換であり、または置換されている。特定の実施形態は、Rの場合による置換基(R)が、ハロゲン(例えば、それだけには限定されないが、F)、アルキル(例えば、それだけには限定されないが、メチル)、ハロアルキル(例えば、それだけには限定されないが、トリフルオロメチル)、またはRが発明の概要に記載されている通りである−ORである化合物を目的とする。例えば、Rは、それだけには限定されないが、メチルなどのアルキルである。
【0026】
は、水素、C1−6アルキル、またはハロアルキルである。例えば、Rは、それだけには限定されないが、メチルなどのC1−6アルキルである。一部の実施形態において、Rは水素である。
【0027】
は、C1−6アルキル、ハロアルキル、または場合によって置換されているシクロプロピルである。例えば、Rは、それだけには限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチル、およびイソプロピルなどのC1−6アルキルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。
【0028】
Yは、−OR、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)、または−N(R)C(O)N(R)(R)であり、RおよびRは、発明の概要において記載された通りである。特定の実施形態において、Yは−OHまたは−O(C1−4アルキル)であり、例えば、Yは−OHまたは−O(メチル)である。Yは、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)、または−N(R)C(O)N(R)(R)であり、RおよびRは発明の概要において記載された通りの化合物を特定の実施形態は、対象とする。RおよびRは、例えば、各々独立に、水素またはC1−4アルキル(例えば、メチル)である。特定の実施形態において、Yは−OHである。他の実施形態において、Yは、−O(C1−4アルキル)であり、例えば、Yは−O(メチル)である。
【0029】
本発明は、具体的な実施形態、より具体的な実施形態、および好ましい実施形態を含めた上記の実施形態と組み合わせて、式(I)の化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、溶媒和化合物、またはこれらの任意の組合せを企図することが理解される。
【0030】
したがって、式(I)の化合物の基の例は、それだけには限定されないが、RがC1−6アルキルであり、RがC1−6アルキルであるものを含む。例えば、Rはメチルである。例えば、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチル、またはイソプロピルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。
【0031】
式(I)の化合物の基の他の例は、それだけには限定されないが、Rが水素であり、RがC1−6アルキルであるものを包含する。例えば、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチル、およびイソプロピルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。
【0032】
式(I)の化合物の基のさらに他の例は、それだけには限定されないが、Yが−ORであり、RがC1−6アルキルであり、RがC1−6アルキルであり、Rが発明の概要において記載されている通りであるものを含む。例えば、Rはメチルである。Rは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチルまたはイソプロピルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。Rは、例えば、ハロゲンまたはC1−4アルキルである。
【0033】
式(I)の化合物の基の他の例は、それだけには限定されないが、Yが−ORであり、Rが水素であり、RがC1−6アルキルであり、Rが発明の概要において記載されている通りであるものを含む。Rは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチルまたはイソプロピルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。Rは、例えば、水素またはC1−4アルキルである。
【0034】
式(I)の化合物の基のさらに他の例は、それだけには限定されないが、Yが−OHであり、RがC1−6アルキルであり、RがC1−6アルキルであるものを含む。例えば、Rはメチルである。Rは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチルまたはイソプロピルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。
【0035】
式(I)の化合物の基の他の例は、それだけには限定されないが、Yが−O(C1−4アルキル)であり、RがC1−6アルキルであり、RがC1−6アルキルであるものを含む。例えば、Rはメチルである。Rは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチルまたはイソプロピルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。Yは、例えば、−O(メチル)である。
【0036】
式(I)の化合物の基のさらに他の例は、それだけには限定されないが、Yが−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)または−N(R)C(O)N(R)(R)であり、RがC1−6アルキルであり、RがC1−6アルキルであり、RおよびRが発明の概要および発明を実施するための形態の項において記載されている通りであるものを含む。例えば、Rはメチルである。Rは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチルまたはイソプロピルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。
【0037】
式(I)の化合物の基のさらなる例は、それだけには限定されないが、Yが−OHであり、Rが水素であり、RがC1−6アルキルであるものを含む。Rは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチルまたはイソプロピルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。
【0038】
式(I)の化合物の基の他の例は、それだけには限定されないが、Yが−O(C1−4アルキル)であり、Rが水素であり、RがC1−6アルキルであるものを含む。Rは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチルまたはイソプロピルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。Yは、例えば、−O(メチル)である。
【0039】
式(I)の化合物の基のさらに他の例は、それだけには限定されないが、Yが−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)または−N(R)C(O)N(R)(R)であり、Rが水素であり、RがC1−6アルキルであり、RおよびRが発明の概要および発明を実施するための形態の項において記載されている通りであるものを含む。Rは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、tert−ブチル、n−ブチルまたはイソプロピルである。特定の実施形態において、Rはエチルである。
【0040】
本明細書上記に記載されている式(I)の化合物の基の範囲内において、Rは発明の概要および発明を実施するための形態において記載されている値を有する。したがって、式(I)の化合物のサブグループの例は、Rが、その各々が発明の概要および発明を実施するための形態において記載されている通り、場合によって置換されているピリジン−3−イルまたはピリジン−4−イルであるものを含む。
【0041】
サブグループの他の例は、それだけには限定されないが、Rが、その各々が発明の概要および発明を実施するための形態において記載されている通り、場合によって置換されているチエン−2−イルまたはチエン−3−イルであるものを含む。
【0042】
サブグループのさらに他の例は、それだけには限定されないが、Rが、その各々が発明の概要および発明を実施するための形態において記載されている通り、場合によって置換されているイソキノリン−4−イル、キノリン−3−イルまたはチエン−4−イルであるものを含む。
【0043】
式(I)の化合物は、1つまたは複数の非対称的に置換されている原子を含有し得る。本発明は、様々な個々の立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む)ならびにそれらの混合物を企図するものである。本発明の化合物の個々の立体異性体は、当業者に知られている方法を用いて、不斉中心もしくはキラル中心を含有する市販の出発材料から合成によって、またはラセミ混合物の調製およびその後の個々の立体異性体の分割によって調製され得る。分割の例は、例えば、(i)エナンチオマーの混合物のキラル補助基への付着、再結晶もしくはクロマトグラフィーによる得られたジアステレオマーの混合物の分離、その後の光学的に純粋な生成物の遊離、または(ii)キラルクロマトグラフィーカラム上の、エナンチオマーもしくはジアステレオマーの混合物の分離である。
【0044】
本発明は、炭素間2重結合、炭素−窒素2重結合、シクロアルキル基、または複素環基周辺の置換基の配置に起因する、様々な幾何異性体およびそれらの混合物も企図するものである。炭素間2重結合または炭素−窒素2重結合周辺の置換基は、ZまたはE立体配置であると呼ばれ、シクロアルキルまたは複素環周辺の置換基は、シスまたはトランス立体配置であると呼ばれる。
【0045】
式(I)の化合物の可能な幾何異性体の一部の例は、それだけには限定されないが、(Ia)、(Ib)、(Ic)、および(Id)
【0046】
【化4】

[式中、R、R、R、およびYは、発明の概要および発明を実施するための形態において定義された意味を有する。]を包含する。R、R、R、およびYに対する実施形態ならびに式(I)について記載された具体的な実施形態およびより具体的な実施形態を含めた実施形態の組合せは、式(Ia)、(Ib)、(Ic)および(Id)の化合物についても企図されることが理解される。
【0047】
本発明の範囲内で、本明細書に開示する化合物は、互変異性の現象を表すことがあり、互変異性の異性体全てが本発明の範囲内に含まれることを理解されたい。
【0048】
したがって、本明細書内の式の図は、ただ1つの可能な、互変異性の、幾何異性の、または立体異性の形態を表すものであり得る。本発明は、あらゆる互変異性の、幾何異性の、または立体異性の形態、およびこれらの混合物を包含し、式の図の範囲内に利用されるあらゆる1つの互変異性の、幾何異性の、または立体異性の形態だけに限定されないことを理解されたい。
【0049】
式(I)の例示の化合物には、それだけには限定されないが、
(1E,3E)−1−(6−フルオロピリジン−3−イル)−2−メチルペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−2−メチル−1−チエン−2−イルペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−1−(6−メトキシピリジン−3−イル)−2−メチルペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−2−メチル−1−チエン−3−イルペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−2−メチル−1−ピリジン−3−イルペント−1−エン−3−オンオキシム;および
(1E,3E)−2−メチル−1−ピリジン−4−イルペント−1−エン−3−オンオキシム。
【0050】
以下の化合物も想定されている:
(1E,3E)−2−メチル−1−(6−メチルピリジン−3−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−2−メチル−1−キノリン−3−イルペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−2−メチル−1−(4−メチルピリジン−3−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−2−メチル−1−[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル]ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−1−(イソキノリン−4−イル)−2−メチルペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−2−メチル−1−ピリジン−4−イルヘクス−1−エン−3−オンオキシム;
(2E,3Z)−4−ピリジン−4−イル−3−(トリフルオロメチル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
(1Z,3E)−1−ピリジン−4−イル−2−(トリフルオロメチル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(2E,3E)−3−メチル−4−ピリジン−4−イルブト−3−エン−2−オンO−メチルオキシム;
(1E,3E)−2−メチル−1−ピリジン−4−イルペント−1−エン−3−オンO−メチルオキシム;
(1E,3Z)−2−メチル−1−ピリジン−4−イルペント−1−エン−3−オンオキシム;および
(1E,3E)−2−メチル−1−(2−メチルピリジン−4−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム
が含まれる。
【0051】
c.生物学的データ
(i)インビトロデータ−阻害の作用強度の測定
Chen,J.ら、Journal of Biomolecular Screening、2007年、12巻、61−69頁において記載されている通りに、分子生物学および一過性の発現を行った。簡潔に述べると、TRPA1全長cDNAを、ヒト後根神経節全RNA(BD Bioscience Clontech、Palo Alto、CA、米国)から増幅し、pcDNA3.1/V5−His Topoベクター(Invitrogen、Carlsbad、CA)中にクローニングした。製造元(Invitrogen)によって推奨されるFreeStyle(商標)293 Expression Systemを用いて、大規模の一過性のトランスフェクションを行った。HEK293−F細胞を、フラスコ(細胞体積30mLから1リットル)中、またはWave Bioreactor(Wave Biotech、Somerset、NJ)(6リットル)中の懸濁液中で増殖させた。高密度、懸濁培養液、およびトランスフェクションを支持するために、細胞を、最適化された無血清処方であるFreeStyle293培地中で培養した。トランスフェクション試薬として293fectin(商標)を用いた。3×10細胞(体積30mL)のトランスフェクションにおいて、プラスミドDNA30μgおよび293フェクチン40μLを用いた。より大きな体積のトランスフェクションに対して、各試薬を比例的にスケールアップした。トランスフェクション2日後、細胞を遠心分離(1000×g、5分)によって回収し、凍結培地(Freestyle培地/10%血清/10%DMSO)中1.5×10細胞/mLの密度に再懸濁した。細胞を、2mLのアリコートでクライオバイアル中に移し、これらのバイアルを、−80℃のNalgene Mr.Frostyスローフリーズ装置(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)中に配置した。必要に応じてバイアルを−80℃から除去し、37℃水浴中で速やかに解凍した。細胞を、Freestyle培地を含むコニカルチューブ中に無菌的に移した(10mL/バイアル)。1000×gで3−5分間遠心後、吸引によって培地を除去し、細胞を、所望の密度(典型的には1×10細胞/mL)でFreestyle培地中に再懸濁した。再懸濁した細胞を、黒色壁透明底の96ウェルBiocoat(商標)ポリ−D−リジンアッセイプレート(BD Biosciences、Bedford、MA)中に接種し(10細胞/ウェル)、加湿した5%CO雰囲気下、37℃で一夜インキュベートした。
【0052】
FLIPRベースの細胞内Ca2+アッセイおよび膜電位アッセイ
FLIPRカルシウムアッセイキット(R8033、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いてCa2+流入を測定した。Ca2+指示染料を、製造元の指示にしたがって、20mM HEPESバッファーを補ったHanks平衡塩溶液(HBSS/HEPES)中に溶解した。アッセイ開始前に培地を吸引によって除去し、室温で2時間から3時間、細胞にCa2+染料100μLをローディングした。AITC(イソチオシアン酸アリル)を用いてチャネルを活性化および開口した。試験化合物の(4×)溶液をHBSS/HEPES中調製し、50μLを10μL/秒の送達速度で細胞に加えた。蛍光における変化を、蛍光測定画像解析用プレートリーダー(FLIPR、Molecular Devices)において経時的に測定した。実験運転の経過にわたって追加を2つ行った。アゴニスト実験では、アッセイバッファーを10秒の時間点で加え、引き続き3分10秒の時間点でアゴニストを加えた。アンタゴニスト実験では、アンタゴニストを10秒の時間点で加え、引き続き3分後にアゴニストを加えた。アゴニスト実験およびアンタゴニスト実験両方に対する最終のアッセイ体積は200μLであった。実験運転の長さの合計は6.5分であった。
【0053】
曲線適合した濃度−効果データおよび派生するEC50およびIC50値に対する4パラメータのロジスティックなHillの等式を用いてGraphPad Prism(登録商標)ソフトウエア(GraphPad Software、San Diego、CA)でデータを分析した。数値を平均±SEM(n=実験数)として報告する。SEMは、標準偏差を試料サイズ(マイナス1)の平方根によって除すことによって算出される。
【0054】
膜電位における変化を、FLIPR膜電位アッセイキット(R8034、Molecular Devices)を用いて、hTRPA1発現性LSTT細胞において測定した。LSTT細胞を解凍およびプレーティングするための手順は、Ca2+流入アッセイ(上記を参照されたい)と同じであった。膜電位染料を、製造元の指示にしたがってHBSS/HEPESバッファー中に溶解し、次いで、室温で45分から2時間、細胞に染料をローディングした(100μL/ウェル)。化学薬剤を添加するためのプロトコール、および蛍光における変化の測定は、発光フィルターの設定をのぞいてCa2+流入アッセイと同じであった。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
式(I)の特定の化合物を上記に記載したアッセイにおいて試験したが、本発明の特定の化合物は、約100μMから約1μMまでの、例えば約25μMから約2μMまでのIC50値で、有効なTRPA1アンタゴニストである。
【0057】
d.化合物を用いる方法
本明細書に記載する化合物はTRPA1アンタゴニストであり、TRPA1の発現、修飾、制御、もしくは活性化を妨害することができ、またはTRPA1の通常の生物学的活性(例えば、そのイオンチャネル)の1つもしくは複数を下方制御することができる。
【0058】
本発明の一実施形態は、そのような治療を必要とする対象におけるTRPA1受容体を阻害することによって改善され得る障害を治療するための方法を提供する。方法は、治療有効量の1つまたは複数の式(I)の化合物、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらのあらゆる組合せを、単独で、または1つもしくは複数の薬学的に許容される担体と組み合わせて投与することを含む。
【0059】
本発明の別の一実施形態は、このような治療を必要とする対象における、疼痛(例えば、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、骨関節炎痛など)を治療するための方法を提供する。上記方法は、治療有効量の1つまたは複数の式(I)の化合物、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらのあらゆる組合せを、単独で、または1つもしくは複数の薬学的に許容される担体と組み合わせて投与することを含む。
【0060】
本発明のさらに別の一実施形態は、哺乳動物、特にヒトにおける、急性脳虚血を含む虚血、慢性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、異痛症、炎症性疼痛、炎症性痛覚過敏、帯状疱疹後神経痛、ニューロパチー、神経痛、糖尿病性ニューロパチー、HIV関連ニューロパチー、神経損傷、関節リウマチ痛、骨関節炎痛、火傷、背痛、内臓痛、癌性疼痛、歯痛、頭痛、片頭痛、手根管症候群、線維筋痛症、神経炎、坐骨神経痛、骨盤過敏症、骨盤痛および生理痛を含めた疼痛;膀胱疾患(例えば、失禁および膀胱過活動、膀胱炎、排尿異常および腎仙痛)、炎症(例えば、火傷、口腔粘膜炎、関節リウマチおよび骨関節炎)、神経変性疾患(例えば、脳卒中、脳卒中後疼痛および多発性硬化症)、肺疾患(例えば、喘息、咳、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および気管支収縮)、皮膚疾患(例えば、乾癬、湿疹および皮膚炎)、消化器疾患(例えば、胃食道逆流症(GERD)、嚥下障害、潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、腸炎およびクローン病)、虚血(例えば、脳血管虚血)、嘔吐(例えば、癌化学療法誘発性嘔吐)を予防または治療するための方法を提供する。例えば、式(I)の化合物は、疼痛、特に、侵害受容性疼痛、および炎症性疼痛、より詳しくは骨関節炎痛を治療するのに有用である。この方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の1つもしくは複数の式(I)の化合物、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらのあらゆる組合せを、単独で、または1つもしくは複数の薬学的に許容される担体と組み合わせて投与するステップを含む。
【0061】
それだけには限定されないが、実施例において特定されるもの、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらのあらゆる組合せを含めた式(I)の化合物は、Bautista,D.、Cell、2006年、124巻、1269−1282頁;Trevisani,M.ら、Proceedings of the National Academy of Sciences USA、2007、104巻、13519−13524頁;Dai,Y.ら、Journal of Clinical Investigation、2007年、117巻、1979−1987頁;Diogenes,A.ら、Journal of Dental Research、2007年、86巻、550−555頁;Katsura,H.ら、Journal of Neurochemistry、2007年、102巻、1614−1624頁;ならびにMcMahon,S.B.ら、Cell、2006年、124巻、1123−1125頁によって示されている通り、炎症性疼痛、侵害受容性疼痛および神経障害性疼痛の予防または治療に用いられ得る。
【0062】
それだけには限定されないが、実施例において特定されるもの、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらのあらゆる組合せを含めた式(I)の化合物は、Kimball,E.S.ら、Neurogastroenterology & Motility、2007年、19巻、90−400頁によって示されている通り、大腸炎およびクローン病の予防または治療に用いられ得る。
【0063】
それだけには限定されないが、実施例において特定されるもの、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらのあらゆる組合せを含めた式(I)の化合物は、Andreら、Journal of Clinical Investigation、2008年、118巻、2574−2582頁;Bessacら、Journal of Clinical Investigation、2008年、118巻、1899−1910頁;およびSimon and Liedtke、Journal of Clinical Investigation、2008年、118巻、2383−2386頁によって実証されているように、咳、喘息、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器過敏症の予防または治療に用いられ得る。
【0064】
それだけには限定されないが、実施例において特定されるもの、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらのあらゆる組合せを含めた式(I)の化合物は、Penuelas,A.ら、European Journal of Pharmacology、2007年、576巻、143−150頁、およびHayashi,S.、Inflammopharmacology、2007年、15巻、218−222頁によって示されている通り、過敏性腸症候群(IBS)および炎症性腸疾患(IBD)などの消化器疾患の予防または治療に用いられ得る。
【0065】
それだけには限定されないが、実施例において特定されるもの、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらのあらゆる組合せを含めた式(I)の化合物は、Story,G.M.、Current Neuropharmacology、2006年、4巻、183−196頁、ならびにStory,G.M.およびGereau,R.W.、Neuron、2006年、50巻、177−180頁によって示されている通り、冷痛覚過敏または低温感受性の予防または治療に用いられ得る。
【0066】
それだけには限定されないが、実施例において特定されるもの、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらのあらゆる組合せを含めた式(I)の化合物は、Kwan,K.Y.ら、Neuron、2006年、50巻、277−289頁によって示されている通り、男性型多毛を防止または逆転するための脱毛薬として用いられ得る。
【0067】
本明細書に記載される化合物は、単独で投与されても、または第2の疼痛緩和剤などの1つもしくは複数のさらなる薬剤と組み合わせて投与(すなわち同時投与)されてもよい。例えば、第2の疼痛緩和剤は、それだけには限定されないが、アセトアミノフェン、または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、またはこれらの組合せなどの鎮痛薬であってよい。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の例は、それだけには限定されないが、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサル、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド、ニトロフルルビプロフェン、オルサラジン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スルファサラジン、スリンダク、トルメチンおよびゾメピラクを含む。第2の疼痛緩和剤のさらに他のクラスにはオピオイドが含まれる。抗痙攣薬および抗うつ薬を含めた局所麻酔薬などの他の鎮痛薬も併用治療において用いられ得る。TRPA1アンタゴニストの他に1つまたは複数のクラスの薬物を投与することは、疼痛のより効果的な改善をもたらすことができる。併用治療には、1つまたは複数の式(I)の化合物を含有する単一の薬学的用量の製剤、および1つまたは複数のさらなる薬剤の投与、ならびにそれ自体の別々の薬学的用量の製剤における、式(I)の化合物およびさらなる各薬剤の投与が含まれる。例えば、1つもしくは複数の式(I)の化合物および1つもしくは複数のさらなる薬剤は、錠剤もしくはカプセル剤など一定比率の各有効成分を有する単回経口用量の組成物において患者に一緒に投与されてもよく、または各薬剤が別々の経口用量の製剤において投与されてもよい。
【0068】
別々の用量の製剤が用いられる場合、各有効成分は、本質的に同時に(例えば、同時に)投与されてもよく、または別々に時をずらして(例えば、逐次に)投与されてもよい。
【0069】
本発明の医薬組成物における有効成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物、および投与の様式に望ましい治療反応を達成するのに効果的である、ある量の(1つまたは複数の)有効成分の量を得るために変化されてもよい。選択される用量レベルは、特定の化合物、投与経路、治療される状態の重症度、ならびに治療される患者の状態および以前の治療歴による。しかし、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低レベルの化合物の用量から開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増大するのは、当業者の範囲内である。
【0070】
本明細書に記載されるTRPA1アンタゴニストは、単独で投与されてもよく、または治療有効量の1つもしくは複数のTRPA1アンタゴニストを、1つもしくは複数の第2の疼痛緩和薬と一緒に、またはそれなしで、1つもしくは複数の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物として投与され得る。「治療有効量」の句は、あらゆる治療に適用できる妥当な損益比で障害を治療するのに十分な量のTRPA1アンタゴニストを意味する。しかし、本発明の化合物および組成物の毎日の使用の合計は、担当の医師によって、健全な医薬上の判断の範囲内で決定される。あらゆる特定の患者に特異的な治療有効用量レベルは、治療される障害および障害の重症度、使用される特定の化合物の活性、使用される特定の組成物、患者の年齢、体重、全身的な健康、性別および食事、投与時間、投与経路、および使用される特定の化合物の排泄速度、治療の持続時間、使用される特定の化合物と組み合わせて、または同時に用いられる薬物、ならびに医療技術分野においてよく知られている同様のファクターを含めた様々なファクターに依存する。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低レベルの化合物の用量から開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増大するのは十分に当業者の範囲内である。
【0071】
ヒトまたは下等動物に投与される式(I)の化合物の1日用量の合計は、約0.10μg/kg体重から約50mg/kg体重までの範囲である。より好ましい用量は、約0.10μg/kg体重から約10mg/kg体重までの範囲であってよい。所望であれば、有効1日用量は、投与の目的に対して複数の用量に分割されてもよい。したがって、単回用量の組成物は、1日用量となすためのこのような量またはその約数を含んでいてよい。
【0072】
e.医薬組成物
本発明は、本発明のTRPA1アンタゴニストを含む医薬組成物をさらに提供する。医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体と一緒に調合され得る1つまたは複数の式(I)の化合物、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらの組合せを含む。
【0073】
本発明の別の一態様は、1つまたは複数の式(I)の化合物、溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらの組合せ、および1つまたは複数の薬学的に許容される担体を、1つまたは複数の第2の疼痛緩和剤と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。ある実施形態において、第2の疼痛緩和剤は、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)またはこれらの組合せなどの鎮痛薬である。ある実施形態において、非ステロイド性抗炎症薬はイブプロフェンである。他の実施形態において、第2の疼痛緩和剤はオピオイドである。抗痙攣薬および抗うつ薬を含めた局所麻酔薬などの他の鎮痛薬も企図される。
【0074】
本発明の医薬組成物は、ヒトを含めた哺乳動物における本明細書に記載される障害の治療に用いられ得る。
【0075】
本発明の医薬組成物は、ヒトおよび他の哺乳動物に、経口的に、直腸に、非経口的に、大槽内に、膣内に、腹腔内に、局所に(散剤、軟膏剤、もしくは滴剤によって)、バッカルで、または経口もしくは経鼻スプレーとして投与され得る。本明細書で用いられる「非経口的に」の語は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与様式を意味する。
【0076】
本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」の語は、非毒性の、不活性な固体の、半流動の、または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料またはあらゆるタイプの製剤補助剤を意味する。薬学的に許容される担体として役立つことができる材料のいくつかの例は、糖(それだけには限定されないが、ラクトース、グルコースおよびショ糖など)、デンプン(それだけには限定されないが、コーンスターチおよびバレイショデンプンなど)、セルロースおよびその誘導体(それだけには限定されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど)、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、賦形剤(それだけには限定されないが、カカオ脂および坐剤用ロウなど)、油(それだけには限定されないが、ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油など)、グリコール(プロピレングリコールなど)、エステル(それだけには限定されないが、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど)、寒天、緩衝化剤(それだけには限定されないが、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど)、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに他の非毒性の適合性の滑沢剤(それだけには限定されないが、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど)、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤である。保存剤および酸化防止剤も、調合者の判断にしたがって、組成物中に存在してよい。
【0077】
非経口の注射用の本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される無菌の水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液または乳液、および使用直前に無菌の注射用溶液または分散液に再構成するための無菌の粉末を含んでいる。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶剤、またはビヒクルの例は、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、植物油(オリーブ油など)、注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)およびこれらの適切な混合物を含む。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。
【0078】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤も含んでいてよい。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの様々な抗細菌剤および抗真菌剤の含有によって確実になり得る。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むのが望ましいこともある。注射用の薬剤形態の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど、吸収を遅らせる物質を含むことによりもたらされ得る。
【0079】
場合によって、薬物の効果を延長するために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くするのが望ましい。これは、水溶性の不十分な結晶または非結晶材料の懸濁液の使用によって達成され得る。そのときの薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、溶解速度は、今度は結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口的に投与された薬物形態の吸収の遅れは、薬物を油性のビヒクル中に溶解または懸濁することによって達成される。
【0080】
注射用のデポー形態は、マイクロカプセル化した薬物のマトリクスを、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に形成することによって作られる。薬物対ポリマーの比率に応じて、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物の放出速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポー注射用製剤は、薬物を、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕捉することによっても調製される。
【0081】
注射用製剤は、例えば、細菌保持性のフィルターを通してろ過することによって、または使用直前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体中に溶解もしくは分散され得る滅菌固体組成物の形態の滅菌薬剤に組み入れることによって滅菌され得る。
【0082】
経口投与用の固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤を含む。このような固体剤形において、有効化合物は少なくとも1つの不活性な、薬学的に許容される賦形剤もしくは担体(例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム)、ならびに/またはa)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖およびアラビアゴム、c)保湿剤、例えば、グリセロール、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および炭酸ナトリウム、e)溶液遅延剤、例えば、パラフィン、f)吸収促進剤、例えば、4級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土、ならびにi)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物と混合されてよい。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は緩衝化剤も含むことができる。
【0083】
同様のタイプの固体組成物も、ラクトースまたは乳糖(milk sugar)および高分子量ポリエチレングリコールなどの担体を用いて、軟充填および硬充填のゼラチンカプセル中の充填剤として用いられ得る。
【0084】
錠剤、ドラジェ剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤形は、腸溶コーティングなどのコーティングおよびシェル、ならびに薬剤調合の技術分野においてよく知られている他のコーティングと一緒に調製され得る。これらは、乳白剤を場合によって含むことができ、(1つまたは複数の)有効成分だけを、または優先的に、腸管のある部分において、場合によって遅延性の様式において放出するような組成物であってもよい。用いることができる埋め込みの組成物の例は、ポリマー性物質およびロウを含む。
【0085】
有効化合物は、適切な場合には、1つまたは複数の上記に記載した担体とマイクロカプセル化されている形態であってよい。
【0086】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含んでいる。有効化合物の他に、液体剤形は、当技術分野において一般に用いられている不活性の希釈剤、例えば、水または他の溶媒、溶解補助剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルならびにこれらの混合物を含むことができる。
【0087】
不活性な希釈剤の他に、経口用組成物は、加湿剤、乳化剤および懸濁化剤などの補助剤、甘味剤、香味剤ならびに芳香剤も含むことができる。
【0088】
懸濁剤は、有効化合物の他に、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガカントゴムならびにこれらの組合せなどの懸濁化剤を含むことができる。
【0089】
直腸または膣内投与用の組成物は、本発明の化合物を、適切な非刺激性の担体、またはカカオ脂、ポリエチレングリコールもしくは坐剤用ロウなど、室温で固体であるが体温で液体であり、したがって直腸または膣腔中で溶け、有効化合物を放出する担体と混合することによって調製され得る坐剤であるのが好ましい。
【0090】
本発明の化合物は、リポソームの形態において投与されてもよい。当技術分野において知られているように、リポソームは、一般的にリン脂質または他の脂質物質に由来する。リポソームは、水性媒体中で分散される、単層または多層の水和されている液晶によって形成される。あらゆる非毒性の生理学的に許容される、代謝可能な、リポソームを形成することができる脂質が用いられてよい。リポソームの形態における本発明の組成物は、本発明の化合物の他に、安定化剤、保存剤、賦形剤などを含むことができる。好ましい脂質は、天然および合成のリン脂質、ならびに別々にまたは一緒に用いられるホスファチジルコリン(レシチン)である。
【0091】
リポソームを形成するための方法は、当技術分野では知られている。例えば、Prescott編集、Methods in Cell Biology、第XIV巻、Academic Press、New York、N.Y.、(1976年)33頁以下を参照されたい。
【0092】
本発明の化合物の局所投与用剤形は、散剤、スプレー剤、軟膏剤、および吸入剤を含む。有効化合物は、無菌条件下、薬学的に許容される担体およびあらゆる必要とされる保存剤、バッファー、または必要とされ得る噴射剤と混合されてよい。眼科用製剤、眼軟膏、散剤および液剤も、本発明の範囲内であることが企図される。
【0093】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態において用いられ得る。「薬学的に許容される塩」の句は、健全な医薬上の判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなしにヒトおよび下等動物の組織と接触させて用いるのに適しており、妥当な損益比で相応する塩を意味する。
【0094】
薬学的に許容される塩は当技術分野においてよく知られている。例えば、S.M.Bergeらは、薬学的に許容される塩を(J.Pharmaceutical Sciences、1977、66巻:1以下参照)において詳しく記載している。
【0095】
本発明の化合物は、塩基性もしくは酸性いずれか、または両方の官能性を含むことがあり、所望により、適切な酸または塩基を用いることによって、薬学的に許容される塩に変換され得る。塩は、本発明の化合物の最終の単離および精製の間にインサイチューで調製され得る。
【0096】
代表的な酸付加塩は、それだけには限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、カンホレート(camphorate)、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イソチオネート)、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルミトエート(palmitoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩を含む。また、塩基性の窒素含有基は、それだけには限定されないが、塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチルなどのハロゲン化低級アルキル;硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミルなどの硫酸ジアルキル;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジブチル硫酸およびジアミル硫酸などのジアルキル硫酸;それだけには限定されないが、塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルなどの長鎖ハロゲン化物;臭化ベンジルおよびフェネチルなどのハロゲン化アリールアルキルなどの薬剤で4級化されていてよい。水溶性もしくは油溶性、または水分散性もしくは油分散性の生成物も、それによって得られる。薬学的に許容される酸付加塩を形成するのに用いられ得る酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、ならびに酢酸、フマル酸、マレイン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、コハク酸およびクエン酸などの有機酸を含む。
【0097】
カルボキシル酸含有部分を、それだけには限定されないが、薬学的に許容される金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩、もしくは重炭酸塩などの適切な塩基と、またはアンモニアもしくは有機1級、2級または3級アミンと反応させることによって、塩基付加塩が本発明の化合物の最終の単離および精製の間にインサイチューで調製され得る。薬学的に許容される塩は、それだけには限定されないが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をベースにした陽イオン(例えば、それだけには限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウム塩など)ならびに非毒性の4級アンモニアおよびアミン陽イオン(アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミンなどを含む)を含む。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどを含む。
【0098】
本明細書で用いられる「薬学的に許容されるプロドラッグ」または「プロドラッグ」の語は、健全な医薬上の判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなしにヒトおよび下等動物の組織と接触させて用いるのに適しており、妥当な損益比で相応し、これらの意図された使用に効果的である、本発明の化合物のプロドラッグを意味する。
【0099】
本発明は、合成手段によって形成され、またはプロドラッグのインビボの生体内変換によって形成される式(I)の化合物を企図する。
【0100】
本発明の化合物は、非溶媒和形態、および半水化物などの水和されている形態を含めた溶媒和形態で存在することができる。一般に、数ある中で水およびエタノールなどの薬学的に許容される溶媒和化合物との溶媒和形態は、本発明の目的では非溶媒和の形態に相当する。
【0101】
f.一般的合成
本発明は、合成プロセスによって、または代謝プロセスによって調製される場合、本発明の化合物を含むことが意図される。代謝プロセスによる本発明の化合物の調製は、ヒトもしくは動物の体内(インビボ)において生じるもの、またはインビトロで生じるプロセスを含む。
【0102】
別段の記載がなければ、R、R、R、R、R、R、mおよびYが発明の概要の項において述べられた意味を有する一般式(I)の化合物の合成を、添付のスキーム1−5において例示する。
【0103】
スキームおよび実施例の記載において用いられる通り、ある種の略語は以下の意味を有するものとされる。Dibal−Hは水素化ジイソブチルアルミニウム、DMAPは(4−ジメチルアミノ)ピリジン、DMFはN,N−ジメチルホルムアミド、DBUは1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデク−7−エン、EDCIは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、HOBtは1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、NMOは4−メチルモルホリンN−オキシド、NMPはN−メチルピロリジン、PDCは二クロム酸ピリジウム、PdCl(PPhはビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)二塩酸、Pd(PPhはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、Phはフェニル、およびTRAPはテトラプロピルアンモニウム過ルテニウム酸塩。
【0104】
Yが−OR基である一般式(I)の化合物は、スキーム1に図示する一般的手順を用いて調製され得る。
【0105】
【化5】

【0106】
一般式(1)のアルデヒドを、R’’がアルキルである一般式(2)のリンイリドと、トルエンなどの溶媒中、還流温度で反応させて一般式(3)の不飽和エステルを得ることができる(Adam,W.ら、Journal of Organic Chemistry、2002年、67巻、8395−8399頁)。化合物(3)から(4)への変換は、(a)水素化ジイソブチルアルミニウム(diisobutylaluminum)または水素化アルミニウムリチウムなどの試薬を用いた(3)の対応するアルデヒドへの還元、(b)グリニャール試薬または有機リチウム試薬の形態の有機金属求核試薬の添加、および(c)過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(Ley,S.V.ら、Synthesis、1994年、7巻、639−966頁)または二クロム酸ピリジニウム(PDC)などの酸化試薬を用いた、ステップ(b)からの生成物の対応するケトン誘導体への変換を含む段階的な反応の連続である。ステップ(b)は、約−78℃から約0℃までの範囲の温度で、テトラヒドロフランまたはジエチルエーテルなどの溶媒中で行われてよい。ステップ(a)および(b)両方からの粗製生成物を単離し、精製あり、またはなしでその後のステップにかけてもよい。ステップ(c)は、典型的には周囲温度で、ジクロロメタンなどの非極性溶媒中、当業者には知られている様々な酸化剤を用いて用いられ得る。それだけには限定されないがトリエチルアミンなどの塩基の存在下、ベンゼンまたはテトラヒドロフランなどの溶媒中の、約25℃から約80℃までの範囲の温度で、ケトン(4)の、Rが水素またはアルキルである式RONHのヒドロキシルアミンまたはアルコキシアミンの塩酸塩との縮合により、一般式(5)または(6)のオキシムが得られる。化合物(5)および(6)は、当業者には馴染みのある標準のクロマトグラフィー法によって分離および精製され得る幾何異性体である。
【0107】
あるいは、ケトン(4)は、スキーム2に図示する一般的手順を用いて調製されてよい。
【0108】
【化6】

【0109】
スキーム1またはスキーム3の方法にしたがって調製した一般式(3)の不飽和エステルを、約−40℃から約25℃までの範囲の温度で、トルエンまたはジクロロメタンなどの溶媒中、N−メトキシ−N−メチルアミン塩酸塩およびトリメチルアルミニウムと反応させて(Lipton,M.F.ら、Organic Syntheses、1980年、59巻、49−53頁)、一般式(7)のアミドを得ることができる。あるいは、(7)は、約−20℃から約0℃までの範囲の温度でテトラヒドロフランなどの溶媒中、(3)をN−メトキシ−N−メチルアミン塩酸塩およびイソプロピルマグネシウムクロリドと反応させることによって(Williams,J.M.ら、Tetrahedron Letters、1995年、36巻(31)、5461−5464頁)調製され得る。
【0110】
(7)を、約−78℃から約0℃までの範囲の温度でテトラヒドロフランなどの溶媒中、X101がClまたはBrである式RMgX101のグリニャード試薬で処理して一般式(4)のケトンを得る。
【0111】
中間体(7)は、スキーム(3)に示される合成の連続にしたがって、やはり調製されてもよい。エステル(3)は、周囲温度で、それだけには限定されないがテトラヒドロフランおよびエタノールを含めた共溶媒を用いて、リチウムまたは水酸化カリウムの水溶液などの試薬を用いて、カルボキシル酸(8)にけん化され得る。カルボキシル酸(8)は、HOBtまたはDMAPと組み合わせたEDCIなどの脱水カップリング試薬(Montalbetti,C.A.G.N.、Tetrahedron、2005年、61巻、10827−10852頁)、およびそれだけには限定されないがトリエチルアミンなどの塩基を用いて、N−メトキシ−N−メチルアミン塩酸塩と反応させてもよい(Basha,A.ら、Tetrahedron Letters、1977年、48巻、4171−4174頁)。これらの反応は、トルエンまたはジクロロメタンなどの溶媒中、約0℃から約25℃までの範囲の温度で行われて、一般式(7)のアミドをもたらす。
【0112】
【化7】

【0113】
あるいは、式(3)の不飽和エステルは、スキーム4に記載する手順にしたがって調製され得る。
【0114】
【化8】

【0115】
Z基が塩素、臭素、またはヨウ素原子である一般式(9)のハロゲン化ヘテロアリールを、それだけには限定されないが酢酸パラジウム(II)などのパラジウム触媒の存在下、式(10)の不飽和エステルと反応させて、(3)を得ることができる(Knowles,J.P.、Organic&Biomolecular Chemistry、2007年、5巻、31−44頁)。これらの反応は、一般的に、約50℃から約100℃までの範囲の温度で、アセトニトリルもしくはトルエン、またはDMFなどの溶媒中、それだけには限定されないが、ジイソプロピルエチルアミンまたはDBUなどのアミン塩基を用いて行われる。一般式(9)から一般式(3)の不飽和エステルを合成するための関連の取組みは、R’’’がアルキルである一般式(11)の置換されているアルケンとの反応を伴う。この場合、置換されているアルケン(11)は、トリメチルスタンニルまたはトリブチルスタンニルなどのトリアルキルチン(trialkyltin)部分を含んでいる(Yin,L.ら、Chemical Reviews、2007年、107巻、133−173頁)。これらの反応は、一般に、触媒量のパラジウム(II)またはパラジウム(0)試薬、例えば、それぞれジクロロパラジウムビス(トリフェニルホスフィン)またはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムの存在下、約25℃から約125℃までの範囲の温度で、DMFまたはNMPなどの極性非プロトン性溶媒中で行われる。
【0116】
YがNRである一般式(I)の化合物は、スキーム5に例示する一般的手順を用いて調製され得る。
【0117】
【化9】

【0118】
スキーム1および2に例示する方法にしたがって調製されたケトン(4)の、約0℃から約80℃までの範囲の温度で、ベンゼンまたはテトラヒドロフランなどの溶媒中、一般式RNNHの置換されているヒドラジンとの反応により、一般式(12)または(13)のヒドラゾンがもたらされる。化合物(12)および(13)は、当業者には馴染みのある標準のクロマトグラフィー法によって分離および精製され得る幾何異性体である。
【0119】
実施例の項において例示される合成スキームおよび具体的な例は例にすぎず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲において定義されるものであるから、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならないことが理解されよう。合成方法および具体的な例の代替、修飾、および等価物は全て、特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【0120】
個々の各ステップに最適な反応条件および反応時間は、用いられる特定の反応物、および用いられる反応物中に存在する置換基に応じて変化することがある。別段の特定がなければ、溶媒、温度、および他の反応条件は、当業者の一人によって容易に選択され得る。具体的な手順を、合成の実施例の項において提供する。反応は、従来のやり方において、例えば、残渣から溶媒を除去することによってワークアップされてよく、それだけには限定されないが、結晶化、蒸留、抽出、研和およびクロマトグラフィーなど、当技術分野では一般に知られている方法にしたがってさらに精製され得る。別段の記載がなければ、出発材料および試薬はどちらも市販されており、または当業者であれば、市販の材料から化学文献に記載されている方法を用いて調製することができる。
【0121】
反応条件の好適な操作を含めたルーチンの実験法、合成経路の試薬および順序、反応条件と適合しないことがあるあらゆる化学官能基の保護、ならびに方法の反応順序における適切なポイントの脱保護が、本発明の範囲に含まれる。適切な保護基ならびにこのような適切な保護基を用いて様々な置換基を保護および脱保護するための方法は当業者にはよく知られており、その例は、その全文において参照により本明細書に組み込まれる、T.Greene and P. Wuts、Protecting Groups in Chemical Synthesis(第3版)John Wiley&Sons、NY、(1999年)において見いだされ得る。本発明の化合物の合成は、本明細書上記に記載されている合成スキームにおいて、および具体的な実施例において記載されているものに類似の方法によって達成され得る。
【0122】
出発材料が市販されていない場合、標準の有機化学技術、知られている合成に類似である技術、構造的に類似の化合物、または上記に記載されているスキームもしくは合成の実施例の項において記載されている手順に類似である技術から選択されている手順によって調製され得る。
【0123】
光学活性な形態の本発明の化合物が必要とされる場合、光学活性な出発材料(適切な反応ステップの不斉誘導などによって調製される)を用いて本明細書に記載されている手順の1つを行うことによって、または化合物もしくは中間体の立体異性体の混合物を標準の手順(例えば、クロマトグラフィー分離、再結晶、または酵素的な分割)を用いて分割することによって得ることができる。
【0124】
同様に、本発明の化合物の純粋な幾何異性体が必要とされる場合、出発材料として純粋な幾何異性体を用いて上記の手順の1つを行うことによって、またはクロマトグラフィー分離などの標準の手順を用いて化合物もしくは中間体の幾何異性体の混合物を分割することによって得られ得る。
【実施例】
【0125】
実施例1−11を、以下に概要する一般的手順を用いて調製した。
【0126】
【化10】

【0127】
実施例A
ヘテロアリールアルデヒド
雰囲気下、−78℃のジエチルエーテル(50mL)中好適なハロゲン化ヘテロアリール(1.0eq)の混合物を撹拌しているところにn−BuLi(1.0eq)を加えた。反応混合物を−78℃で30分間撹拌し、次いでDMF(1.3eq)を加えた。混合物を1時間撹拌し、その間反応物を室温に温めた。反応混合物を5%KCO水溶液中に注ぎ、生成物を酢酸エチルで抽出した(4×50mL)。有機層を合わせ、食塩水で洗浄し、乾燥し、濃縮した。粗製生成物を、石油エーテル/酢酸エーテル(約10:1から約4:1)を用いてシリカゲル上クロマトグラフィーによって精製して表題化合物(収率15%−30%)を得た。
【0128】
実施例B
(E)−(メチルまたはエチル)−2−メチル−3−(ヘテロアリール)アクリレート
方法A
室温の、実施例A(1.0eq)の無水THF(20mL)中溶液に、(1−エトキシカルボニルエチリデン)トリフェニルホスホラン(1.0eq)を加えた。反応混合物を、N雰囲気下60℃で、3時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を除去した。残渣を石油エーテル中に懸濁し、得られた固体をろ過し、石油エーテルで洗浄した。次いでろ液を濃縮して、(E)−エチル−2−メチル−3−(ヘテロアリール)アクリレート(収率40%−70%)を得た。
【0129】
方法B
好適なハロゲン化ヘテロアリール(1.0eq)のジメチルアセトアミド(20mL)中溶液を撹拌しているところに、メタクリル酸メチル(1.1eq)、テトラエチルアンモニウムクロリド(1.1eq)、N−シクロヘキシル−N−メチルシクロヘキサンアミン(1.5eq)および酢酸パラジウム(II)(0.02eq)を加えた。反応混合物を、N雰囲気下で一夜、100℃で加熱した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、水および食塩水で洗浄した。分離した有機相をNaSO上で乾燥し、ろ過し、蒸発させた。粗製生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、石油エーテル/酢酸エチルで溶出して(E)−メチル−2−メチル−3−(ヘテロアリール)アクリレート(収率20−70%)を得た。
【0130】
実施例C
(E)−N−メトキシ−N,2−ジメチル−3−(ヘテロアリール)アクリルアミド
実施例B(1.0eq)およびN−メトキシ−N−メチルアミン塩酸塩(1.55eq)を、THF20mL中スラリー状にし、N雰囲気下、−20℃に冷却した。温度を−5℃未満に維持しながら、イソプロピルマグネシウムクロリド溶液(THF中2.0M、1.5eq)を15分かけて加えた。混合物を−10℃で30分間撹拌し、20重量%NHCl水溶液でクエンチした。混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層をNaSO上で乾燥し、ろ過し、濃縮して表題化合物を得た。
【0131】
実施例D
(E)−2−メチル−1−(ヘテロアリール)ペント−1−エン−3−オン
実施例C(1.0eq)のTHF(20mL)中溶液に、約−20℃のN雰囲気下、エチルマグネシウムブロミド(3.0M、3eq)を加えた。混合物を、約−10℃で1.5時間撹拌し、次いで、20重量%NHCl水溶液でクエンチした。室温に温めた後、2相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を合わせ、食塩水で洗浄し、NaSO上乾燥し、濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、濃縮して表題化合物(収率15−40%)を得た。
【0132】
実施例E
(1E,3E)−2−メチル−1−アリールペント−1−エン−3−オンオキシム
実施例D(1.0eq)のエタノール(5mL)中溶液に、HONHHCL(1.2eq)および酢酸ナトリウム(1.5eq)を加えた。反応混合物を室温で一夜撹拌した。溶媒を除去した後、残渣を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、NaSO上乾燥し、濃縮した。粗製生成物を、Prep−TLCによって精製して表題化合物(10−40%)を得た。
【0133】
実施例1
(1E,3E)−1−(6−フルオロピリジン−3−イル)−2−メチルペント−1−エン−3−オンオキシム
5−ブロモ−2−フルオロピリジンおよびメタクリル酸メチルで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(300MHz,DMSO−d)δ 11.18(s,1H)、8.25(d,J=2.1Hz,1H)、8.00(td,J=8.3,2.5Hz,1H)、7.21(dd,J=8.5,2.9Hz,1H)、6.90(s,1H)、2.62(q,J=7.5Hz,2H)、1.99(s,3H)、1.05(t,J=7.5Hz,3H);MS(DCI)209(M+H)
【0134】
実施例2
(1E,3E)−2−メチル−1−チエン−2−イルペント−1−エン−3−オンオキシム
2−ブロモチオフェンおよびメタクリル酸メチルで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(300MHz,DMSO−d)δ 11.11(d,J=3.3Hz,1H)、7.62(d,J=5.0Hz,1H)、7.29(d,J=3.4Hz,1H)、7.13(dd,J=5.1,3.6Hz,1H)、7.10(s,1H)、2.60(q,J=7.5Hz,2H)、2.14(d,J=0.8Hz,3H)、1.02(t,J=7.5Hz,3H);MS(DCI)196(M+H)
【0135】
実施例3
(1E,3E)−1−(6−メトキシピリジン−3−イル)−2−メチルペント−1−エン−3−オンオキシム
5−ブロモ−2−メトキシピリジンおよびメタクリル酸メチルで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(300MHz,DMSO−d)δ 11.06(s,1H)、8.20(d,J=2.4Hz,1H)、7.74(dd,J=8.6,2.4Hz,1H)、6.88−6.79(m,2H)、3.87(s,3H)、2.61(q,J=7.5Hz,2H)、2.00(d,J=1.0Hz,3H)、1.05(t,J=7.5Hz,3H);MS(DCI)221(M+H)
【0136】
実施例4
(1E,3E)−2−メチル−1−チエン−3−イルペント−1−エン−3−オンオキシム
3−ブロモチオフェンおよびメタクリル酸メチルで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(300MHz,DMSO−d)δ 11.02(s,1H)、7.58−7.53(m,2H)、7.26(dd,J=4.3,2.0Hz,1H)、6.86(d,J=1.0Hz,1H)、2.58(q,J=7.5Hz,2H)、2.07(d,J=1.0Hz,3H)、1.03(t,J=7.5Hz,3H);MS(DCI)196(M+H)
【0137】
実施例5
(1E,3E)−2−メチル−1−ピリジン−3−イルペント−1−エン−3−オンオキシム
3−ブロモピリジンおよびメタクリル酸メチルで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(500MHz,DMSO/DO)δ 8.57(br s,1H)、8.48−8.43(m,1H)、7.82(dd,J=7.9,2.1Hz,1H)、7.44(dd,J=7.9,4.8Hz,1H)、6.91(s,1H)、2.63(q,J=7.5Hz,2H)、2.01(d,J=1.2Hz,3H)、1.10−1.01(m,3H);MS(DCI)191(M+H)
【0138】
実施例6
(1E,3E)−2−メチル−1−ピリジン−4−イルペント−1−エン−3−オンオキシム
4−ブロモピリジンおよび1−エトキシカルボニルエチリデン)トリフェニルホスホランで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(500MHz,DMSO/DO)δ 8.58−8.53(m,2H)、7.41−7.36(m,2H)、6.87(s,1H)、2.62(q,J=7.5Hz,2H)、2.03(d,J=1.2Hz,3H)、1.05(t,J=7.5Hz,3H);MS(ESI)191(M+H)
【0139】
実施例7
(1E,3E)−2−メチル−1−(6−メチルピリジン−3−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム
5−ブロモ−2−メチルピリジンおよびメタクリル酸メチルで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(300MHz,DMSO−d)δ 11.12(s,1H)、8.45(d,J=2.0Hz,1H)、7.68(dd,J=8.1,2.3Hz,1H)、7.26(d,J=8.0Hz,1H)、6.86(s,1H)、2.61(q,J=7.5Hz,2H)、2.47(s,3H)、2.00(s,3H)、1.05(t,J=7.5Hz,3H);MS(DCI)205(M+H)
【0140】
実施例8
(1E,3E)−2−メチル−1−キノリン−3−イルペント−1−エン−3−オンオキシム
3−ブロモキノリンおよびメタクリル酸メチルで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(500MHz,DMSO/DO)δ 8.92(d,J=2.2Hz,1H)、8.38(d,J=2.1Hz,1H)、8.06−8.00(m,2H)、7.78(ddd,J=8.4,6.9,1.5Hz,1H)、7.68−7.61(m,1H)、7.10(s,1H)、2.69(q,J=7.5Hz,2H)、2.12(d,J=1.1Hz,3H)、1.11(t,J=7.5Hz,3H);MS(DCI)241(M+H)
【0141】
実施例9
(1E,3E)−2−メチル−1−(4−メチルピリジン−3−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム
3−ブロモ−4−メチルピリジンおよびメタクリル酸メチルで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(500MHz,DMSO/DO)δ 8.38−8.28(m,2H)、7.31(d,J=4.9Hz,1H)、6.86(s,1H)、2.64(q,J=7.5Hz,2H)、2.25(s,3H)、1.83(d,J=1.1Hz,3H)、1.08(t,J=7.5Hz,3H);MS(ESI)205(M+H)
【0142】
実施例10
(1E,3E)−2−メチル−1−[6−(トリフルオロメチル)ピリジン−3−イル]ペント−1−エン−3−オンオキシム
5−ブロモ−2−(トリフルオロメチル)ピリジンおよびメタクリル酸メチルで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(500MHz,DMSO/DO)δ 8.92−8.83(m,2H)、8.18(s,1H)、7.00(s,1H)、2.64(q,J=7.6Hz,2H)、2.03(d,J=0.7Hz,3H)、1.07(t,J=7.5Hz,3H);MS(DCI)259(M+H)
【0143】
実施例11
(1E,3E)−1−(イソキノリン−4−イル)−2−メチルペント−1−エン−3−オンオキシム
4−ブロモイソキノリンおよびメタクリル酸メチルで開始して、一般的手順にしたがって表題化合物を調製した。H NMR(500MHz,CDCl)δ 9.22(s,1H)、8.44(s,1H)、8.08(s,1H)、8.02−8.04(m,1H)、7.87−7.89(m,1H)、7.72−7.77(m,1H)、7.64−7.68(m,1H)、7.22(s,1H)、2.83(q,J=7.5Hz,2H)、1.95(s,3H)、1.28(t,J=7.5Hz,3H);MS(DCI)241(M+H)
【0144】
以上の、発明を実施するための形態およびそれに続く実施例は例示にすぎず、本発明の範囲に対する限定と解釈されてはならず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびこれらの等価物によってのみ規定されることが理解される。開示されている実施形態への様々な変更および改変は、当業者には明らかである。制限なく、本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、製剤、および/または使用方法に関するものを含めたこのような変更および改変は、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有する化合物:
【化1】

[式中、
化合物は
1−(イソキノリン−4−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
1−(キノリン−4−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
1−(キノリン−3−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−4−メチル−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3Z)−4−メチル−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3E)−4,4−ジメチル−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E,3Z)−4,4−ジメチル−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1E)−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(1Z)−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(3E)−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
(3Z)−1−(チエン−2−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
4−(ピリジン−3−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
4−(ピリジン−4−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
4−(5−クロロピリジン−3−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
4−(3−クロロピリジン−4−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
3−メチル−4−(ピリジン−3−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
3−メチル−4−(ピリジン−4−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
3−メチル−4−(5−クロロピリジン−3−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
3−メチル−4−(3−クロロピリジン−4−イル)ブト−3−エン−2−オンオキシム;
1−(ピリジン−3−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
1−(ピリジン−4−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;
1−(5−クロロピリジン−3−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム;または
1−(3−クロロピリジン−4−イル)ペント−1−エン−3−オンオキシム
ではないという条件で、
は、その各々が、Rによって表される置換基1、2、3、4、または5個で場合によって置換されているピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チエン−2−イル、チエン−3−イル、イソキノリン−4−イル、キノリン−3−イルまたはキノリン−4−イルであり、
は、各出現時、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、−CN、ハロゲン、−OR、−NO、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)1a、N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)N(R)(R)、−N(R)S(O)N(R)(R)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)(R)、−SR、−SF、−S(O)R1a、−S(O)1a、−S(O)OR1a、−S(O)N(R)(R)、−(CR−CN、ハロアルキル、−(CR−OR、−(CR−NO、−(CR−N(R)(Rb)、−(CR−N(R)C(O)R、−(CRN(R)S(O)1a、−(CR−N(R)C(O)OR、−(CR−N(R)C(O)N(R)(R)、−(CR−N(R)S(O)N(R)(R)、−(CR−C(O)R、−(CR−C(O)OR、−(CR−C(O)N(R)(R)、−(CR−S(O)1a、−(CRS(O)OR1aおよび−(CRS(O)N(R)(R)であり、
は、水素、C1−6アルキルまたはハロアルキルであり、
は、C1−6アルキル、ハロアルキルまたはシクロプロピルであり、シクロプロピルは、アルキル、ハロゲン、およびハロアルキルからなる群から独立に選択される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されており、
Yは、−OR、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)または−N(R)C(O)N(R)(R)であり、
1aは、各出現時、独立に、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキル、ハロゲンまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
qは、1、2、3または4である。]
もしくは溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらの任意の組合せ。
【請求項2】
がC1−6アルキルであり、
がC1−6アルキルである、
請求項1に記載の化合物、溶媒和化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩。
【請求項3】
がC1−6アルキルであり、
がC1−6アルキルであり、
Yが−ORである、
請求項1に記載の化合物、溶媒和化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩。
【請求項4】
がC1−6アルキルであり、
がC1−6アルキルであり、
Yが−OHであり、
が、その各々が、Rによって表される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されているピリジン−3−イルまたはピリジン−4−イルである、
請求項1に記載の化合物、溶媒和化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩。
【請求項5】
がC1−6アルキルであり、
がC1−6アルキルであり、
Yが−OHであり、
が、その各々が、Rによって表される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されているチエン−2−イルまたはチエン−3−イルである、
請求項1に記載の化合物、この溶媒和化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩。
【請求項6】
がC1−6アルキルであり、
がC1−6アルキルであり、
Yが−OHであり、
が、その各々が、Rによって表される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されているイソキノリン−4−イル、キノリン−3−イルまたはキノリン−4−イルである、
請求項1に記載の化合物、溶媒和化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩。
【請求項7】
が水素であり、
がC1−6アルキルであり、
Yが−ORである、
請求項1に記載の化合物、溶媒和化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩。
【請求項8】
(1E,3E)−1−(6−フルオロピリジン−3−イル)−2−メチルペント−1−エン−3−オンオキシム、
(1E,3E)−2−メチル−1−チエン−2−イルペント−1−エン−3−オンオキシム、
(1E,3E)−1−(6−メトキシピリジン−3−イル)−2−メチルペント−1−エン−3−オンオキシム、
(1E,3E)−2−メチル−1−チエン−3−イルペント−1−エン−3−オンオキシム、
(1E,3E)−2−メチル−1−ピリジン−3−イルペント−1−エン−3−オンオキシム、および
(1E,3E)−2−メチル−1−ピリジン−4−イルペント−1−エン−3−オンオキシム
からなる群から選択される、請求項1の化合物、もしくは溶媒和化合物、または薬学的に許容されるこれらの塩。
【請求項9】
そのような治療を必要とする対象における障害または病状を治療するための方法であって、TRPA1の阻害によって障害または状態が改善され、治療有効量の、1つまたは複数の式(I)の化合物:
【化2】

[式中、
は、その各々が、Rによって表される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されているピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チエン−2−イル、チエン−3−イル、イソキノリン−4−イル、キノリン−3−イルまたはキノリン−4−イルであり、
は、各出現時、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、−CN、ハロゲン、−OR、−NO、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)1a、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)N(R)(R)、−N(R)S(O)N(R)(R)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)(R)、−SR、−SF、−S(O)R1a、−S(O)1a、−S(O)OR1a、−S(O)N(R)(R)、−(CR−CN、ハロアルキル、−(CR−OR、−(CR−NO、−(CR−N(R)(R)、−(CR−N(R)C(O)R、−(CR−N(R)S(O)1a、−(CR−N(R)C(O)OR、−(CR−N(R)C(O)N(R)(R)、−(CR−N(R)S(O)N(R)(R)、−(CR−C(O)R、−(CR−C(O)OR、−(CR−C(O)N(R)(R)、−(CR−S(O)1a、−(CRS(O)OR1aおよび−(CRS(O)N(R)(R)であり、
は、水素、C1−6アルキルまたはハロアルキルであり、
は、C1−6アルキル、ハロアルキルまたはシクロプロピルであり、シクロプロピルは、アルキル、ハロゲンおよびハロアルキルからなる群から独立に選択される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されており、
Yは、−OR、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)または−N(R)C(O)N(R)(R)であり、
1aは、各出現時、独立に、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキル、ハロゲンまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
qは、1、2、3または4である。]
もしくは溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらの任意の組合せを投与することを含む方法。
【請求項10】
障害または状態が、急性脳虚血、疼痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、異痛症、炎症性疼痛、帯状疱疹後疼痛、ニューロパチー、神経痛、糖尿病性ニューロパチー、HIV関連ニューロパチー、神経損傷、関節リウマチ痛、骨関節炎痛、火傷、背痛、内臓痛、癌性疼痛、歯痛、頭痛、片頭痛、手根管症候群、線維筋痛症、神経炎、坐骨神経痛、骨盤過敏症、骨盤痛、生理痛、膀胱疾患、排尿異常、腎仙痛、炎症、神経変性疾患、肺疾患、消化器疾患、虚血、嘔吐または肥満である、請求項10に記載の方法。
【請求項11】
1つまたは複数の第2の疼痛緩和剤を同時投与するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項12】
そのような治療を必要とする対象における疼痛を治療するための方法であって、治療有効量の、1つまたは複数の式(I)の化合物:
【化3】

[式中、
は、その各々が、Rによって表される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されているピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チエン−2−イル、チエン−3−イル、イソキノリン−4−イル、キノリン−3−イルまたはキノリン−4−イルであり、
は、各出現時、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、−CN、ハロゲン、−OR、−NO、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)1a、N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)N(R)(R)、−N(R)S(O)N(R)(R)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)(R)、−SR、−SF、−S(O)R1a、−S(O)1a、−S(O)OR1a、−S(O)N(R)(R)、−(CR−CN、ハロアルキル、−(CR−OR、−(CR−NO、−(CR−N(R)(R)、−(CR−N(R)C(O)R、−(CR−N(R)S(O)1a、−(CR−N(R)C(O)OR、−(CR−N(R)C(O)N(R)(R)、−(CR−N(R)S(O)N(R)(R)、−(CR−C(O)R、−(CR−C(O)OR、−(CR−C(O)N(R)(R)、−(CR−S(O)1a、−(CRS(O)OR1aおよび−(CRS(O)N(R)(R)であり、
は、水素、C1−6アルキルまたはハロアルキルであり、
は、C1−6アルキル、ハロアルキルまたはシクロプロピルであり、シクロプロピルは、アルキル、ハロゲン、およびハロアルキルからなる群から独立に選択される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されており、
Yは、−OR、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)または−N(R)C(O)N(R)(R)であり、
1aは、各出現時、独立に、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキル、ハロゲンまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
qは、1、2、3または4である。]
もしくは溶媒和化合物、薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、またはこれらの任意の組合せを投与することを含む方法。
【請求項13】
1つまたは複数の第2の疼痛緩和剤を同時投与するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項14】
第2の疼痛緩和剤が、アセトアミノフェンもしくは非ステロイド性抗炎症薬、またはこれらの組合せである、請求項14に記載の方法。
【請求項15】
非ステロイド性抗炎症薬がイブプロフェンである、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
がC1−6アルキルであり、RがC1−6アルキルである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
がC1−6アルキルであり、RがC1−6アルキルであり、YがORである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
治療有効量の、1つまたは複数の式(I)の化合物:
【化4】

[式中、
は、その各々が、Rによって表される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されているピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チエン−2−イル、チエン−3−イル、イソキノリン−4−イル、キノリン−3−イルまたはキノリン−4−イルであり、
は、各出現時、独立にアルキル、アルケニル、アルキニル、−CN、ハロゲン、−OR、−NO、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)1a、−N(R)C(O)OR、−N(R)C(O)N(R)(R)、−N(R)S(O)N(R)(R)、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)N(R)(R)、−SR、−SF、−S(O)R1a、−S(O)1a、−S(O)OR1a、−S(O)N(R)(R)、−(CR−CN、ハロアルキル、−(CR−OR、−(CR−NO、−(CR−N(R)(R)、−(CR−N(R)C(O)R、−(CR−N(R)S(O)1a、−(CR−N(R)C(O)OR、−(CR−N(R)C(O)N(R)(R)、−(CR−N(R)S(O)N(R)(R)、−(CR−C(O)R、−(CR−C(O)OR、−(CR−C(O)N(R)(R)、−(CR−S(O)1a、−(CRS(O)OR1aおよび−(CRS(O)N(R)(R)であり、
は、水素、C1−6アルキルまたはハロアルキルであり、
は、C1−6アルキル、ハロアルキルまたはシクロプロピルであり、シクロプロピルは、アルキル、ハロゲンおよびハロアルキルからなる群から独立に選択される置換基1、2、3、4または5個で場合によって置換されており、
Yは、−OR、−N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−N(R)S(O)または−N(R)C(O)N(R)(R)であり、
1aは、各出現時、独立に、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキル、ハロゲンまたはハロアルキルであり、
およびRは、各出現時、各々独立に、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、
qは、1、2、3または4である。]
もしくは溶媒和化合物、または薬学的に許容されるそれらの塩、および薬学的に許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項19】
1つまたは複数の第2の疼痛緩和剤をさらに含む、請求項19に記載の薬剤組成物。

【公表番号】特表2011−508784(P2011−508784A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541568(P2010−541568)
【出願日】平成21年1月2日(2009.1.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/030006
【国際公開番号】WO2009/089083
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】