説明

TRPM5イオンチャネルのためのハイスループットスクリーニングアッセイ

TRPM5のような、速効型イオンチャネルの活性を特異的に調節する化合物を同定し得る、ハイスループットスクリーニングアッセイの必要性が当該分野において存在する。現在の方法は、感受性の欠如、低い処理量という欠点があり、そして大きな労働力を要する。請求される方法は、迅速な結果の読み取りを与え、高いシグナル対ノイズバックグラウンド比を有し、使用が容易であり、自動化および小型化のために改変し得、そして化合物が特異的にTRPM5を調節するという実証を提供する、光学的読み取りによる蛍光アッセイを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、味覚に影響を与える化合物のハイスループットスクリーニング方法に関連する。より具体的には、本発明は、イオンチャネルTRPM5の活性を調節することによって味覚に影響を与える化合物の同定に有用なスクリーニング方法に関連する。そのスクリーニング方法は、蛍光膜電位色素を用いて、目に見える蛍光の読み取り情報を提供することによって、数千の化合物の迅速なスクリーニングを可能にし、それは容易に自動化し得る。
【背景技術】
【0002】
背景
味覚の認知は、ヒトの栄養状態に決定的な役割を果たすだけでなく、下等および高等動物の生存にも不可欠である(Margolskee,R.F. J.Biol.Chem.277:1−4(2002);Avenet,P.およびLindemann,B. J.Membrane Biol.112:1−8(1989))。味覚の認知は、味覚受容体細胞(TRC)によって行われる。TRCは、所定の味覚と関連した多数の化合物を知覚し、そしてその知覚を脳によって解読されるシグナルに変換し、甘味、苦味、酸味、塩味、またはうま味(風味)を生じる。
【0003】
TRCは、極性を示す上皮細胞であり、それは、それらが特殊化した頂端および側底部の膜を有することを意味する。味蕾は60−100のTRCを含み、それぞれその膜のごく一部が舌の粘膜表面に露出している(Kinnamom,S.C. TINS 11:491−496(1988))。感覚の伝達は、味分子、または「味物質」によって開始され、それはTRCの頂端部の膜において微絨毛突起と相互作用する。味物質は特異的な膜受容体に結合し、細胞膜を横切る電位変化を引き起こし、これが次に細胞を脱分極させ、または電位を変化させ、伝達物質の放出および一次味覚神経線維の興奮を引き起こす。
【0004】
イオンチャネルは、膜に孔を形成し、そしてイオンを一方から他方へ通過させる膜貫通タンパク質である(B.Hille(編)、1992、Ionic Channels of Excitable Membranes 第2版、Sinauer、Sunderland、Mass.において概説されている)。いくらかのイオンチャネルは、全ての生理学的膜条件の下で開口するが(いわゆる漏出性チャネル)、多くのチャネルは、特定の刺激に反応して開口する「ゲート」を有する。例として、電位開口型チャネルは、膜を横切る電位の変化に反応し、機械刺激依存チャネルは膜の機械刺激に反応し、そしてリガンド開口型チャネルは、特異的な分子の結合に反応する。様々なリガンド開口型チャネルが、神経伝達物質(伝達物質開口型チャネル)のような細胞外因子、またはイオン(イオン開口型チャネル)またはヌクレオチド(ヌクレオチド開口型チャネル)のような細胞内因子に反応して開口し得る。さらに他のイオンチャネルは、Gタンパク質のようなタンパク質との相互作用によって調節される(Gタンパク質共役受容体またはGPCR)。
【0005】
ほとんどのイオンチャネルタンパク質は、1つの支配的なイオン種の透過を媒介する。例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、塩素(Cl)、およびカルシウム(Ca2+)チャネルが同定された。
【0006】
1つの最近発見されたイオンチャネル、TRPM5は、味覚の伝達に不可欠であることが示された。非特許文献1;非特許文献2。TRPM5は、イオンチャネルの一過性受容器電位(TRP)ファミリーのメンバーである。TRPM5は、味覚受容体細胞の膜を通してチャネルを形成し、そしてホスホリパーゼCと共役した受容体経路の活性化によって、およびIPによるCa2+の放出によって活性化されると考えられる。このチャネルの開口は、Ca2+レベルの上昇に依存する。非特許文献3。このチャネルの活性化は、TRCの脱分極を引き起こし、それが今度は伝達物質の放出および一次味覚神経線維の興奮を引き起こす。
【0007】
TRPM5は、味覚認知機構の必要な部分であるので、その阻害は、動物が特定の味を感じることを阻害する。味覚の認知は重要な機能であるが、ある状況下では、望ましくない味覚を阻害する、または遮蔽することが有用である。例えば、薬剤の多くの活性医薬品成分は、苦味のような望ましくない味覚を生じる。薬剤によって生じる苦味の阻害は、患者による認容性の改善を引き起こし得る。他の状況において、改善された人工甘味料の開発の場合、または高齢者のようなグループにおける味覚の喪失の治療におけるように、味覚の増強が望ましくあり得る。Mojetら、Chem.Senses 26:845−60(2001)。
【0008】
TRPM5は、受容体の刺激時に、電位の調節および迅速な活性化/不活性化(「開口および閉鎖」)動態を示し(非特許文献3)、それはナトリウムおよびカリウムのような、一価の陽イオンの通過を可能にする。密接に関連したタンパク質、TRPM4bも、Ca2+依存性の電位調節を示すが、開口および閉鎖はTRPM5よりかなり遅い。従って、TRPM5は、迅速な活性化/不活性化動態を有する、電位調節、Ca2+活性化、一価陽イオンチャネルの最初の例である(非特許文献3)。
【0009】
イオンチャネルの活性化または阻害を、細胞をある刺激に接触させた場合の細胞膜電位の変化を測定することによって決定し得る。細胞膜電位は複数のチャネルによって影響され得るので、これはイオンチャネル調節を評価する間接的な方法である。
【0010】
イオンチャネル活性を試験するための1つの方法は、パッチクランプ技術を用いて細胞膜電位の変化を測定することである(非特許文献4)。この技術において、細胞を、マイクロピペットチップを含む電極に付着させ、それは細胞の電気的状態を直接測定する。これは、様々な刺激に反応した膜電位の変化を、詳細に生物物理学的に特徴付けることを可能にする。従って、パッチクランプ技術を、イオンチャネルの活性を調節する化合物を同定するためのスクリーニングツールとして使用し得る。しかし、この技術は習得するのが困難であり、そして一貫した、信頼性の高いデータを得るためにはかなりの熟練の技が必要である。さらに、この技術は時間がかかり、そして1日あたり2つまたは3つより少ない化合物しか活性に関してスクリーニングできない。
【0011】
理想的には、試験化合物をスクリーニングする方法は、ハイスループットであり(すなわち、多くの化合物を迅速にスクリーニングすることを可能にする)、自動化され、使用が容易であり、感受性が高く、そして選択的である。スクリーニングアッセイはまた、高いシグナル対バックグラウンドノイズの比を提供するべきである。(非特許文献5)。バックグラウンドノイズは、そのイオンチャネルに対する効果に関わらず、化合物が産生する最低の刺激である。最も低い反応が、バックグラウンド測定値の上に見えるので、高い比は、正または負の調節物質の可視化をより簡単にする。これは、調節化合物の明確な同定につながる。
【0012】
イオンチャネルの調節を決定するための潜在的なハイスループット法は、細胞膜電位が変化した場合に蛍光シグナルを産生する蛍光色素を利用する。膜電位が変化する時に、蛍光色素が細胞膜二重層において細胞内から細胞外位置へとその方向を「変える」ので、蛍光の増加が起こる。この方向転換は蛍光の増加を引き起こし、それは通常光学的読み取り装置を用いて容易に検出および定量される。イオンチャネル機能の光学的読み取りは、潜在的に感受性が高く、多目的であり、そして小型化および自動化を受け入れられるので、ハイスループットスクリーニングに好ましい。今日の光学的読み取り装置は、複数のサンプルから短時間で蛍光を検出し、そして自動化し得る。蛍光の読み取りは、細胞内イオン濃度をモニターするために、および膜電位を測定するために広く使用される。
【0013】
従来の蛍光色素の欠点のいくつかを克服する試みにおいて、Molecular DevicesのFLIPR(登録商標)膜電位色素(FMP)のような、改変ビスオキソノール蛍光色素が開発された。FMP色素は、「スロー」イオンチャネルに関するパッチクランプ記録によって直接決定される膜電位と蛍光を関連付けるのに有効であった(非特許文献5;非特許文献6;および非特許文献7)。
【0014】
特定のイオンチャネルを調節する化合物に関するハイスループットスクリーニング(HTS)法のデザインにおける主な難点は、チャネルの活性化を決定する方法が間接的であることである。TRPM5活性の調節を通して味覚に影響を与える化合物を同定するために、その化合物の味覚に対する影響がTRPM5に特異的であり、そして細胞表面に存在する多数の他のチャネルおよび受容体の1つまたはそれ以上にも特異的ではないことを示さなければならない。それに加えて、TRPM5の活性化はカルシウム依存性であるので、TRPM5/試験化合物相互作用の特異性を、GPCR−アゴニストカルシウム流入も調節する化合物を除外することによって確認しなければならない。
【非特許文献1】Perezら、Nature Neuroscience 5:1169−1176(2002)
【非特許文献2】Zhangら、Cell 112:293−301(2003)
【非特許文献3】Hofmannら、Current Biol.13:1153−1158(2003)
【非特許文献4】Hamillら、Nature 294:462−4(1981)
【非特許文献5】Baxterら、J.Biomol.Screen.7:79−85(2002)
【非特許文献6】Behrendtら、British J.Pharmacol.141:737−745(2004)
【非特許文献7】Whiteakerら、J.Biomol.Screen.6:305−312(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、当該分野において、TRPM5に特異的に作用することによって味覚を調節する化合物を、他のメカニズムによって作用し得、そして味覚に影響を与えないかもしれない化合物と区別し得るHTSアッセイの必要性が存在する。請求される発明は、迅速および特異的な結果を生じ、高いシグナル対バックグラウンド比を有し、そして使用が簡単であるHTS法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の簡単な概要
TRPM5イオンチャネル活性を調節する化合物の迅速なスクリーニングを可能にする、新規ハイスループットスクリーニングアッセイが発見された。本発明の方法は、膜電位の変化の評価のみに頼る方法よりも選択的である。本発明は、従事者が、イオンチャネルの非特異的調節因子である薬剤を、TRPM5の調節を介して作用する薬剤と区別することを可能にする。さらに、その方法は、潜在的にこの速いイオンチャネルを調節し、そして味覚に影響する数千の化合物を、迅速におよび信頼性高くスクリーニングすることを可能にする。
【0017】
本発明の実施態様は、TRPM5を発現する細胞を、細胞内カルシウム濃度を増加させる最適未満の濃度の薬剤と接触させることであって、当該細胞は、膜電位蛍光色素で前処理されていること;当該細胞を、潜在的な増強化合物と接触させること;光学的検出器を用いて、当該潜在的増強化合物の存在下で当該細胞の蛍光強度を測定すること;および測定蛍光強度を、細胞内カルシウム濃度を増加させる最適濃度の薬剤の存在下で、TRPM5を発現する異なる細胞の蛍光強度と比較することを含む、TRPM5イオンチャネルの潜在的なエンハンサーをスクリーニングするための、ハイスループットスクリーニングアッセイである。
【0018】
本発明のさらなる実施態様は、TRPM5を発現し、膜電位蛍光色素で前処理した細胞を、塩化カリウムの存在下で試験化合物と接触させること;光学的検出器を用いて、当該潜在的調節化合物の存在下で、当該細胞の蛍光強度を測定すること;上記で決定した測定蛍光強度を、塩化カリウムの存在下で、および試験化合物の非存在下で、TRPM5を発現し、そして膜電位色素で前処理した異なる細胞の蛍光強度と比較すること;およびKClおよび試験化合物による蛍光強度の、試験化合物の非存在下におけるKClによる強度に対する比が、1より小さいかまたは大きいかを決定することによって、試験化合物がTRPM5特異的調節因子であり得るかどうかを評価することを含む、試験化合物が、TRPM5イオンチャネル特異的調節因子であるかどうかを決定するための、ハイスループットスクリーニングアッセイである。
【0019】
本発明のさらなる実施態様は、TRPM5を発現し、そして細胞内カルシウム色素で前処理した細胞を、試験化合物および細胞内カルシウム濃度を増加させる最適未満の濃度のカルシウム調節薬剤と接触させること;光学的検出器を用いて、当該カルシウム調節化合物の存在下で、当該細胞の蛍光強度を測定すること;上記で決定した、測定蛍光強度を、最適未満の濃度のカルシウム調節薬剤の存在下および試験化合物の非存在下で、TRPM5を発現し、そして細胞内カルシウム色素で前処理した異なる細胞の蛍光強度と比較すること;および最適未満の濃度のカルシウム調節薬剤および試験化合物による蛍光強度の、試験化合物の非存在下における最適未満の濃度のカルシウム調節薬剤による強度に対する比が、1より小さいかまたは大きいかを決定することによって、その試験化合物がTRPM5特異的改変因子であり得るかどうかを評価することを含む、試験化合物が、TRPM5イオンチャネル特異的調節因子であるかどうかを決定するための、ハイスループットスクリーニングアッセイである。
【0020】
請求される発明の別の実施態様は、野生型TRPM5および非機能性TRPM5の両方を発現し、そして膜電位蛍光色素で前処理した細胞を、当該細胞においてカルシウム濃度を増加させる薬剤の存在下で、潜在的なエンハンサーと接触させること;光学的検出器を用いて、当該潜在的エンハンサーの存在下で当該細胞の蛍光強度を測定すること;およびTRPM5増強の程度を決定するために、上記で決定した測定蛍光強度を、潜在的な増強化合物の存在下で、野生型TRPM5を発現し、そして膜電位色素で前処理した細胞の蛍光強度と比較することを含む、TRPM5イオンチャネルの潜在的なエンハンサーをスクリーニングするための、ハイスループットスクリーニングアッセイである。
【0021】
いくつかの実施態様において、非機能性TRPM5は、TRPM5遺伝子の最初の1000塩基対の欠失を含む。別の実施態様において、非機能性TRPM5は、TRPM5遺伝子の最初の2000塩基対の欠失を含む。
【0022】
いくつかの実施態様において、請求された方法はさらに、TRPM5活性を増強する化合物を選択することを含む。他の実施態様において、請求された方法はさらに、TRPM5活性を阻害する化合物を選択することを含む。
【0023】
さらなる実施態様において、請求された方法は、マルチウェル容器に入った細胞をスクリーニングすることに向けられる。請求された発明のマルチウェル容器は、96穴まで、および96穴と同じ数を含み得る。別の実施態様において、マルチウェル容器は、96穴より多く含む。別の実施態様において、マルチウェル容器は、384穴を含む。さらに別の実施態様において、マルチウェル容器は、1536穴を含む。
【0024】
請求された発明のいくつかの実施態様において、カルシウム濃度を増加させる薬剤を、トロンビン、アデノシン3リン酸(ATP)、カルバコール、および内因性Gタンパク質共役受容体(GPCR)のアゴニストからなるグループから選択する。本発明の1つの実施態様において、カルシウム濃度を増加させる薬剤は、カルシウムイオノフォア、例えばA23187、カルシマイシンまたはイオノマイシンである。
【0025】
請求された発明のいくつかの実施態様において、膜電位蛍光色素は、FMP色素である。
【0026】
請求された発明のさらなる実施態様において、光学的検出器は、Fluorescent Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))、FLEXStation、Voltage/Ion Probe Reader(VIPR)、蛍光顕微鏡および電荷結合素子(CCD)カメラ、およびPathwayHTからなるグループから選択される。本発明の1つの実施態様において、光学的検出器はFLIPR(登録商標)である。
【0027】
本発明のさらなる実施態様、特徴、および利点、および本発明の様々な実施態様の構造および操作は、付随する図を参照して、下記で詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
発明の詳細な説明
概観
本発明は、TRPM5の活性を調節する化合物に関するハイスループットスクリーニングアッセイである。TRPM5の制御因子は、味覚に影響を与える可能性があるので、従って本発明は、TRPM5を特異的に調節し得る、味物質の同定に有用な最初のハイスループットスクリーニング法を提供する。この方法は、カウンタースクリーニング、最適未満の投与量の使用、およびTRPM5のドミナントネガティブ変異体を採用するので、この方法は、味覚に影響を与え得る化合物に関する他のスクリーニングより選択的である。
【0029】
ハイスループットは、短時間で多くの化合物を処理することを指す。例えば、本発明を使用して、1000より多い試験化合物を、1時間以内にTRPM5活性を調節する能力に関してスクリーニングし得る。このアッセイを、TRPM5を発現する細胞を用いて行う。明細書および請求において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を規定しなければ、複数の指示を含む。例えば、「イオンチャネル」という用語は、複数のイオンチャネルを含む。「細胞」という用語は、複数の細胞を含む。
【0030】
細胞を試験化合物に接触させ、そしてその化合物のチャネルの開口を刺激する、または開口を阻害する能力を測定する。試験化合物の効果を、細胞を化合物に接触させた後の細胞膜電位の変化を測定することによって決定する。細胞膜電位の変化に反応する蛍光色素を、検出のために使用する。化合物のチャネルを調節する能力の特異性を評価する措置を、上記で記載した方法と平行して行う。これらの平行する方法は、塩化カリウムカウンタースクリーニングの使用、チャネルを刺激することが公知である最適未満の投与量の化合物の使用、および生物学的に不活性なドミナントネガティブTRPM5チャネルの使用を含む。
【0031】
特定の構成および配置が議論されるが、これは説明目的のみのためになされることが理解される。当業者は、本発明の意図および範囲から離れることなく、他の構成および配置を使用し得ることを認識する。本発明を、様々な他の適用においても採用し得ることが、当業者に明らかである。
【0032】
細胞
本発明の方法において使用するための細胞は、機能的、または非機能的TRPM5のいずれかを含む。実施者は、TRPM5が内因性である細胞を使用し得る、またはTRPM5を細胞に導入し得る。もしTRPM5が細胞に内因性であるが、発現レベルが最適でないならば、実施者は細胞におけるTRPM5の発現レベルを増加させ得る。所定の細胞が全く、または十分なレベルでTRPM5を産生しない場合、発現および細胞膜への挿入のために、TRPM5の核酸を宿主細胞に導入し得る。一般的に制限なく「形質転換」と呼び得るその導入は、あらゆる利用可能な技術を採用し得る。真核細胞に関して、適当な技術は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−Dextran、エレクトロポレーション、リポソームによるトランスフェクション、およびレトロウイルスまたは他のウイルス、例えばワクシニアウイルスまたは昆虫細胞に関してはバキュロウイルスを用いた導入を含み得る。哺乳類細胞宿主システム形質転換の一般的な局面が、米国特許第4,399,216号において記載された。哺乳類細胞を形質転換する様々な技術に関しては、Keownら、Meth.Enzym.185:527−537(1990)およびMansourら、Nature 336:348−352(1988)を参照のこと。下記で詳細に記載されるように、TRPM5を非機能的にもし得る。生物学的に不活性なTRPM5を、上記で記載した技術のいずれかを用いて細胞に導入し得る。不活性TRPM5を発現する細胞は、TRPM5活性化の特異性の確認のために有用である。
【0033】
TRPM5遺伝子は、様々な胎児および成人組織において、4.5kbの転写物として発現する(Prawittら、Hum.Mol.Gen.9:203−216(2000))。ヒトTRPM5は、24個のエキソンを含む推定リーディングフレームを有し、それは1165アミノ酸の、膜貫通ポリペプチドをコードする。The National Center for Biotechnology Information(NCBI)データベースは、それぞれTRPM5のヒトおよびマウス形式の両方に関して、核酸(NP_064673、NP_055370、AAP44477、AAP44476)およびアミノ酸(NM_014555、NM_020277、AY280364、AY280365)配列の両方に関していくつかの配列を列挙する。上記の配列を含むことは、TRPM5遺伝子配列を説明する目的のためであるが、本発明は開示された配列の1つに制限されない。
【0034】
単離された配列の供給源に依存して、遺伝子配列においてかなりの不均一性が存在し得ることが、当該分野において認識される。本発明は、TRPM5の保存的に改変された変異体の使用を企図する。保存的に改変された変異体は、アミノ酸および核酸配列の両方にあてはまる。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体は、同一の、または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一の配列を指す。遺伝コードの縮重のために、多くの機能的に同一の核酸が、あらゆる所定のタンパク質をコードする。
【0035】
例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。従って、コードされたポリペプチドを変更することなく、コドンによってアラニンが指定された全ての位置において、コドンを説明した対応するコドンのいずれかに変更し得る。そのような核酸変異は、「サイレント変異」であり、保存的に改変された変異の1つの種類である。ポリペプチドをコードする、本明細書中の全ての核酸配列は、核酸のあらゆる可能性のあるサイレント変異も説明する。当業者は、核酸における各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除いて)を、機能的に同一の分子を生じるために改変し得ることを認識する。よって、ポリペプチドをコードする、核酸の各サイレント変異は、記載された配列それぞれに潜在的に含まれる。
【0036】
機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表が、当該分野で周知である。例えば、保存的置換を選択するための1つの典型的なガイドラインは、(もとの残基に続いて典型的な置換):アラニン/グリシンまたはセリン;アルギニン/リジン;アスパラギン/グルタミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸/グルタミン酸;システイン/セリン;グルタミン/アスパラギン;グリシン/アスパラギン酸;グリシン/アラニンまたはプロリン;ヒスチジン/アスパラギンまたはグルタミン;イソロイシン/ロイシンまたはバリン;ロイシン/イソロイシンまたはバリン;リジン/アルギニンまたはグルタミンまたはグルタミン酸;メチオニン/ロイシンまたはチロシンまたはイソロイシン;フェニルアラニン/メチオニンまたはロイシンまたはチロシン;セリン/スレオニン;スレオニン/セリン;トリプトファン/チロシン;チロシン/トリプトファンまたはフェニルアラニン;バリン/イソロイシンまたはロイシンを含む。第2の典型的なガイドラインは、それぞれお互いに保存的置換であるアミノ酸を含む、以下の6つのグループを使用する:1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);(例えばCreighton、Proteins、W.H.Freeman and Company(1984);SchultzおよびSchimer、Principles of Protein Structure、Springer−Verlag(1979)も参照のこと)。当業者は、上記で同定された置換が唯一可能な保存的置換ではないことを認識する。例えば、ある目的のために、陽性または陰性のいずれにせよ、全ての荷電アミノ酸をお互いに保存的置換であると見なし得る。それに加えて、コードされたアミノ酸において、単一のアミノ酸または少ないパーセンテージのアミノ酸を変化、追加、または欠失させる個々の置換、欠失、または追加も、「保存的に改変された変異」と判断し得る。
【0037】
TRPM5のドミナントネガティブ形式も、TRPM5を特異的に調節する化合物を同定するためのハイスループットスクリーニングアッセイにおいて使用し得る。本明細書中で、「ドミナントネガティブ」によって、そのタンパク質がイオンチャネルを形成する能力は保持するが、1価陽イオンの流入を調節できないような、野生型のサブユニットに対する結合に関して競合する少なくとも1つの変異体TRPM5モノマーを含むタンパク質を意味する。イオンチャネルの組成に依存して、1価陽イオンの流入が阻害される程度は変動する。
【0038】
本発明の変異TRPM5タンパク質は、非保存的改変(例えば置換)を含む。本明細書中で、「非保存的」改変によって、野生型残基および変異残基が、疎水性、電荷、大きさ、および形を含む、1つまたはそれ以上の物理的性質においてかなり異なる改変を意味する。例えば、極性残基から非極性残基への改変またはその逆、陽性荷電残基から陰性荷電残基への改変またはその逆、および大きな残基から小さな残基への改変またはその逆は、非保存的改変である。例えば、変更領域におけるポリペプチドバックボーンの構造、例えばアルファへリックスまたはベータシート構造;標的部位における分子の電荷または疎水性;または側鎖の大きさに、より有意に影響を与える置換をし得る。一般的にポリペプチドの性質に最も大きな変化を起こすことが期待される置換は、(a)親水性残基、例えばセリンまたはスレオニンが、疎水性残基、例えばロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンまたはアラニンで置換される(または置換する);(b)システインまたはプロリンが、あらゆる他の残基で置換される(または置換する);(c)正に帯電した側鎖を有する残基、例えばリジン、アルギニン、またはヒスチジンが、負に帯電した残基、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸で置換される(または置換する);または(d)大きな側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、側鎖を有さない残基、例えばグリシンで置換される(または置換する)ものである。1つの実施態様において、本発明の変異TRPM5タンパク質は、少なくとも1つの非保存的改変を有する。1つの実施態様において、変異TRPM5タンパク質は、TRPM5遺伝子の最初の1000塩基対が欠失したポリヌクレオチドの翻訳から生じる。別の実施態様において、変異TRPM5タンパク質は、TRPM5遺伝子の最初の2000塩基対が欠失したポリヌクレオチドの翻訳から生じる。
【0039】
例えば、以前に米国特許第6,188,965;6,296,312;6,403,312号において記載された、PDATMシステム;アラニンスキャニング(米国特許第5,506,107号を参照のこと)、遺伝子シャッフリング(WO01/25277)、部位飽和的変異誘発(site saturation mutagenesis)、平均場(mean field)、配列相同性、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または点突然変異または欠失変異部位および型を選択する指針となる、当業者に公知の他の方法によって、変異タンパク質を産生し得る。
【0040】
本発明の方法において使用する細胞は、生物体に存在し得る、またはそれから抽出し得る、適当なタンパク質またはそれらをコードする核酸で一時的に、または持続的にトランスフェクトまたは形質転換された細胞または細胞系統であり得る、または内因性(すなわち人工的に導入されていない)遺伝子から必要なTRPM5を発現する細胞または細胞系統であり得る。
【0041】
TRPM5タンパク質の発現は、内因性遺伝子または細胞に導入された核酸のいずれか由来の、TRPM5遺伝子配列からのTRPM5ポリペプチドの翻訳を指す。本明細書中で使用される「インサイツ」という用語は、これら全ての可能性を含む。従って、インサイツ方法を、TRPM5を発現する(天然のチャネルとして、または細胞に導入された核酸から)、適切に反応性の細胞系統において行い得る。その細胞系統は、組織培養中であり得る、または例えば非ヒト動物対象における細胞系統異種移植片であり得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「細胞膜」という用語は、生物学的区画を囲む脂質二重層を指し、そして膜、または細胞の一部を含む細胞全体を含む。
【0043】
哺乳類細胞の安定したトランスフェクションに関して、使用する発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存して、少しの細胞のみがそのゲノムに外来性DNAを組み込み得る。これらの組み込み体を同定および選択するために、一般的に選択マーカー(例えば抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が、関心のある遺伝子と共に宿主細胞に導入される。好ましい選択マーカーは、G418、ハイグロマイシン、およびメトトレキサートのような、薬剤に対する耐性を与えるものを含む。選択マーカーをコードする核酸を、TRPM5をコードするものと同じベクターで宿主細胞に導入し得る、または別々のベクターで導入し得る。導入核酸で安定にトランスフェクトされた細胞を、薬剤選択によって同定し得る(例えば、選択マーカーを組み込んだ細胞は生存し、一方他の細胞は死ぬ)。
【0044】
TRPM5の発現はまた、テトラサイクリン反応エレメント、TREのような、当該分野で公知の多くの誘導プロモーターのいずれかによっても調節され得ることに注意するべきである。例えば、TRPM5は、Clonetechによって提供されるTet−onおよびTet−off発現システムを用いた発現の調節によって、細胞膜に選択的に提示され得る(Gossen,M.およびBujard,H.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−5551(1992))。Tet−onシステムにおいて、遺伝子発現は、テトラサイクリン誘導体ドキシサイクリン(Dox)の添加によって活性化され、一方Tet−offシステムにおいて、遺伝子発現はテトラサイクリン(Tc)またはDoxの中止によって活性化される。あらゆる他の誘導哺乳類遺伝子発現システムも使用し得る。例は、哺乳類細胞において条件的に遺伝子を発現するための、熱ショック転写因子、ステロイドホルモン、重金属イオン、ホルボールエステルおよびインターフェロンを用いるシステムを含む。
【0045】
本発明のアッセイにおいて使用される細胞系統を、TRPM5の一時的な発現を達成するために使用し得る、またはTRPM5ペプチドを発現する構築物で安定にトランスフェクトし得る。安定に形質転換した細胞系統を産生する手段は、当該分野で周知であり、そしてそのような手段を本明細書中で使用し得る。細胞の例は、Chinese Hamster Ovary(CHO)細胞、COS−7、HeLa、HEK293、PC−12、およびBAFを含むがこれに限らない。
【0046】
TRPM5核酸を細胞に導入することによって、またはTRPM5をコードする異種核酸からの発現を引き起こすまたは可能にすることによって、細胞におけるTRPM5の発現レベルを増加させ得る。異種遺伝子を導入せず、内因性にTRPM5を発現する細胞を使用し得る。そのような細胞は、本発明の方法において使用するために十分なレベルのTRPM5を内因性に発現し得る、または低レベルのTRPM5しか発現せず、本明細書中で記載されるような補充を必要とし得る。
【0047】
細胞におけるTRPM5の発現レベルをまた、内因性遺伝子の発現レベルを増加させることによって増加させ得る。内因性遺伝子活性化技術は当該分野で公知であり、そしてウイルスプロモーター(WO93/09222;WO94/12650およびWO95/31560)、および人工転写因子(Parkら、Nat.Biotech.21:1208−1214(2003))の使用を含むがこれに限らない。
【0048】
細胞におけるTRPM5の発現レベルを、核酸ハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応、リボヌクレアーゼプロテクション、ドットブロッティング、免疫細胞化学、およびウェスタンブロッティングを含むがこれに限らない、当該分野で公知の技術によって決定し得る。あるいは、TRPM5の発現を、リポーター遺伝子システムを用いて測定し得る。例えば赤色または緑色蛍光タンパク質(例えばMistiliおよびSpector、Nature Biotechnology 15:961−964(1997)を参照のこと)を含む、そのようなシステムは、当業者に公知の標準的な技術、例えば蛍光顕微鏡を用いて、リポーター遺伝子の可視化を可能にする。さらに、トロンビンのような公知の正に調節する化合物によって活性化されるTRPM5の能力を、TRPM5発現細胞の操作の後に決定し得る。
【0049】
本明細書中で記載された細胞を、あらゆる従来の栄養培地で培養し得る。培地、温度、pH等のような培養条件は、過剰な実験無しに当業者によって選択され得る。一般的に、細胞培養の生産性を最大限にする原理、プロトコールおよび実用的な技術は、「Mammalian Cell Biotechnology:a Practical Approach」、M.Butler編、JRL Press(1991)およびSambrookら、前出において見出し得る。
【0050】
細胞内カルシウム活性化
TRPM5は、ナトリウムのような1価陽イオンを透過させる、カルシウム活性化イオンチャネルである。従って、チャネル活性を観察するために、細胞内貯蔵カルシウムを最初に活性化しなければならない。細胞内貯蔵カルシウムを活性化する多くの方法が存在し、そして多くのカルシウム活性化薬剤が当該分野で公知であり、そしてトロンビン、アデノシン3リン酸(ATP)、カルバコール、およびカルシウムイオノフォア(例えばA23187)を含むがこれに限らない。カルシウム濃度範囲のナノモルの増加がTRPM5チャネル活性化に必要であるが、請求される発明のために有用な濃度範囲は当該分野で公知であり、例えばATPに関して10−10から10−4Mであるが、正確な濃度は、細胞の型およびインキュベーション時間を含む様々な因子に依存して変動し得る。増加したカルシウム濃度を、カルシウム感受性色素、例えばFluo3、Fluo4、またはFLIPRカルシウム3色素、およびFura2と組み合わせた単一細胞イメージング技術を用いて確認し得る。
【0051】
下記で記載するように、最適未満の投与量のカルシウム活性化薬剤の適用を、TRPM5調節特異性の2次スクリーニングとして使用し得る。最大限達成可能な反応より低い蛍光反応が生じるように、試験細胞を、より低用量の上記で記載したカルシウム活性化薬剤とインキュベートする。一般的に、その用量は有効濃度またはEC20−30と呼ばれ、それは有効条件と関連し、ここでその蛍光強度は最大反応の20−30%である。本明細書中で使用される場合、「EC」は有効条件を指し、EC20は最大反応の20%の蛍光強度を生じる有効条件を指す。TRPM5特異的活性化化合物の添加時に、この低い反応が、最高レベルの活性化まで、またはその付近まで増加する。
【0052】
TRPM5特異的調節化合物を同定するために、カウンタースクリーニング技術も有用である。TRPM5の阻害および活性化に特異的な化合物を、TRPM5に加えて、またはTRPM5の代わりに、他のイオンチャネル、特に味覚の伝達に関係しないチャネルを調節する化合物と区別する能力が重要である。下記でより詳細に記載されるように、塩化カリウムは、非特異的に多くのイオンチャネルを活性化するが、TRPM5は活性化しない。従って、KCl活性化を、TRPM5特異的調節化合物を同定するためにカウンタースクリーニングとして使用し得る。
【0053】
蛍光色素
本発明のアッセイおよび方法において使用し得る電位感受性色素は、細胞膜電位に取り組むために使用されてきた(Zochowskiら、Biol.Bull.198:1−21(2000))。膜電位色素または電位感受性色素は、脱分極した細胞に入り、細胞内タンパク質または膜に結合し、そして蛍光の増強を示す分子または分子の組み合わせを指す。これらの色素を使用して、細胞に発現するTRPM5のようなイオンチャネルの活性の変化を検出し得る。電位感受性色素は、改変ビスオキソノール色素、ナトリウム色素、カリウム色素、およびトリウム色素を含むがこれに限らない。その色素は細胞に入り、そして細胞内タンパク質または膜に結合し、そこで蛍光の増強および赤色スペクトルシフトを示す(Eppsら、Chem.Phys.Lipids 69:137−150(1994))。脱分極の増加は、陰イオン色素のより多くの流入、そして従って蛍光の増加を引き起こす。
【0054】
そのアッセイのTRPM5細胞を、試験化合物を添加する前に30−240分間、膜電位色素で前処理する。前処理は、試験化合物の添加の前に一定時間蛍光色素を加えることを指し、その間に色素は細胞に入り、そして細胞内の親油性部分に結合する。
【0055】
1つの実施態様において、その膜電位色素は、Molecular Devicesから入手可能なFMP色素である(カタログ番号R8034、R8123)。他の実施態様において、適当な色素は、DiSBAC2、DiSBAC3、およびCC−2−DMPE(Invitrogen カタログ番号K1016)のような、二波長FRETに基づく色素を含み得る。[化学名Pacific BlueTM 1,2−ジテトラデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、トリエチルアンモニウム塩]。典型的には、細胞を色素の1から10μMの緩衝化溶液で、37℃で20から60分間処理する。
【0056】
細胞内カルシウムレベルを測定する色素も、TRPM5特異性を確認するために使用する。1つの実施態様において、細胞内カルシウム色素は、Molecular Devicesから入手可能なFLIPRカルシウム3色素である(パーツ番号:R8091)。他の実施態様において、Fluo−3、Fluo−4(Invitrogen(カタログ番号F14242およびF14202))のような適当な色素を、細胞内カルシウムの増加を測定するために使用し得る。典型的には、細胞を色素の1から10μMの緩衝化溶液で、37℃で20から60分間処理する。色素溶液を細胞から除去して、そしてアッセイを続ける前に、新しいアッセイ緩衝液を加える必要がある場合もある。
【0057】
アッセイ検出
膜電位における変化に反応した色素のスペクトルの特徴の変化の検出および記録を、当業者に公知のあらゆる手段で行い得る。本明細書中で使用される場合、「記録」は、蛍光イメージング分析において得られるような、処理された蛍光シグナルから得られたデータを集めることおよび/または保存することを指す。
【0058】
いくつかの実施態様において、本発明のアッセイを、スペクトル(すなわち蛍光)性質の変化を検出するために、顕微鏡イメージングを用いて、単離された細胞において行う。他の実施態様において、そのアッセイを、マルチウェル形式で行い、そしてスペクトルの特徴を、マイクロプレートリーダーを用いて決定する。
【0059】
「ウェル」によって、一般的に容器内の境界のある領域を意味し、それは分離している(例えば、単離された試料を提供するために)か、あるいは1つまたはそれ以上の他の境界のある領域と連絡している(例えばウェル内の1つまたはそれ以上の試料間の液体の連絡を提供するために)かのいずれかであり得る。例えば、基質上に増殖した細胞は通常ウェル内に含まれ、それはまた生きた細胞のための培地も含む。基質は、プラスチック、ガラス等のような、あらゆる適当な物質を含み得る。インビトロにおける細胞の維持および/または増殖のために、プラスチックが便利に使用される。
【0060】
上記で述べたような「マルチウェル容器」は、アレイ中に1つ以上のウェルを含む基質の例である。本発明において有用なマルチウェル容器は、様々な標準的形式(例えば2、4、6、24、96、384、または1536個等のウェルを有するプレート)のいずれかであり得るが、非標準的な形式(例えば3、5、7個等のウェルを有するプレート)でもあり得る。
【0061】
単一細胞イメージングのために適当な配置は、コンピューターシステムを備えた顕微鏡の使用を含む。そのような配置の1つの例、Carl ZeissのATTO’s Attofluor(登録商標)RatioVision(登録商標)リアルタイムデジタル蛍光分析計は、生きた細胞および調製された標本中の蛍光プローブを分析するための、完全に統合されたワークステーションである(ATTO、Rockville、MD)。そのシステムは、使用するプローブの光学的性質によってのみ制限される組み合わせで、個別に、または同時にイオンを観察し得る。標準的なイメージングシステムは、同じ時間に、同じ細胞において、GFP(トランスフェクションのため)と組み合わせたFMP(ナトリウムのため)のような、複数の色素実験を行い得る。複数の色素からの比画像および図データを、オンラインで示す。
【0062】
本発明のアッセイをマルチウェル形式で行う場合、使用する色素のスペクトル性質の変化を検出するための適当な装置は、マルチウェルマイクロプレートリーダーである。適当な装置が、例えばMolecular Devices(FLEXstation(登録商標)マイクロプレートリーダーおよび液体移動システムまたはFLIPR(登録商標)システム)、Hamamatsu(FDSS6000)、およびAurora、Bioscience Corp.CA、USA(「VIPR」電位イオンプローブリーダー)から、市販で入手可能である。FLIPR−TetraTMは、第2世代のリーダーであり、1536個までの同時液体移動システムを用いて、細胞に基づくリアルタイムの動態アッセイを提供する。これらのシステムを全て、可視波長範囲で励起するFMPのような、市販で入手可能な色素と共に使用し得る。
【0063】
FLIPR(登録商標)システムを用いて、蛍光強度の変化を時間につれてモニターし、そして例えば図9A−9Cにおいて示すように、図表で示す。TRPM5増強化合物の添加は、蛍光の増加を引き起こし、一方TRPM5阻害化合物は、この増加を阻害する。
【0064】
単一のウェルに、または複数のウェルに同時に液体を注入し得る、いくつかの市販の蛍光検出器が利用可能である。これらは、Molecular Devices FlexStation(8ウェル)、BMG NovoStar(2ウェル)、およびAurora VIPR(8ウェル)を含むがこれに限らない。典型的には、これらの装置は、フラッシュ発光または蛍光モード(1分/ウェル)で、96穴プレートを読むために12から96分必要とする。第2の方法は、カルシウム反応を、FLIPR(登録商標)、FLIPR−384またはFLIPR−TetraTM装置においてカルシウム感受性蛍光色素によって読む方法と同様の、調節因子を全ての試料ウェルに同時に注入し、そして電荷結合素子(CCD)カメラでイメージングすることによってプレート全体の発光を測定することである。統合された液体操作を有する他の蛍光イメージングシステムは、Amershamの第2世代LEADSEEKER、Perkin Elmer CellLux−Cellular Fluorescence WorkstationおよびHamamatsu FDSS6000システムのような、他の市販の供給業者から期待される。これらの装置を、一般的に、FMP色素(540ex±15nm、570em±15nm)およびカルシウム色素(490ex±15nm、530em±15nm)を読むために適当な励起および発光設定に設定し得る。励起/発光の特徴は各色素で異なり、従って、各アッセイのために選択した色素を検出するために装置を設定する。
【0065】
試験化合物
本発明のスクリーニング法において採用する試験化合物は、例えば、制限無しに、合成有機化合物、化学的化合物、天然に存在する産物、ポリペプチドおよびペプチド、核酸等を含む。
【0066】
実質的にあらゆる化学的化合物を、本発明のアッセイにおける潜在的な調節物質またはリガンドとして使用し得る。最も多くの場合、水性または有機性(特にジメチルスルホキシドまたはDMSOに基づく)溶液に溶解した化合物を使用する。アッセイ工程を自動化することによって、大きなケミカルライブラリーをスクリーニングするためにアッセイをデザインする。化合物を、あらゆる簡便な供給源から細胞に提供する。アッセイは、典型的には平行して行う(例えば、同じプレートの異なるウェルに異なる試験化合物を含む、ロボットアッセイにおけるマイクロタイタープレート上のマイクロタイター形式において)。ChemDiv(San Diego、CA)、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)、Fluka Chemika−Biochemica−Analytika(Buchs Switzerland)等を含む、化学的化合物の多くの供給業者が存在することが認識される。
【0067】
本明細書中で使用される「調節する」は、TRPM5の機能的活性に対するあらゆる効果を含む。これは、適当な刺激物質の存在下における、またはそれに反応した、チャネルの活性の遮断または阻害を含む。あるいは、調節物質は、チャネルの活性を増強し得る。本明細書中で使用される「増強する」は、TRPM5の機能的活性のあらゆる増加を含む。
【0068】
1つの実施態様において、ハイスループットスクリーニング法は、多数の潜在的なTRPM5調節因子を含む、小さい有機分子またはペプチドライブラリーを提供することを含む。そのような「ケミカルライブラリー」を次いで、本明細書中で記載したように、1つまたはそれ以上のアッセイにおいてスクリーニングして、望ましい特徴的な活性を示すライブラリーメンバー(特定の化学的種またはサブクラス)を同定する。そのように同定された化合物は、伝統的な「リード化合物」として役立ち得る、またはそれ自身を潜在的な、または実際の産物として使用し得る。
【0069】
コンビナトリアルケミカルライブラリーは、化学的合成または生物学的合成のいずれかによって、試薬のような多くの化学的「基礎単位」を連合することによって産生された、多様な化学的化合物の集合である。例えば、ポリペプチドライブラリーのような、直鎖状のコンビナトリアルケミカルライブラリーは、化学的基礎単位(アミノ酸)のセットを、所定の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)で、あらゆる可能性のある方法で組み合わせることによって形成される。数百万の化学的化合物を、化学的基礎単位のそのようなコンビナトリアルミキシングによって合成し得る。
【0070】
コンビナトリアルケミカルライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者に周知である。そのようなコンビナトリアルケミカルライブラリーは、ペプチドライブラリー(例えば米国特許第5,010,175号;Furka Int.J.Pept.Prot.Res.37:487−493(1991)およびHoughtonら、Nature 354:84−88(1991)を参照のこと)を含むがこれに限らない。化学的多様性ライブラリーを産生する他の化学も使用し得る。そのような化学は、ペプトイド(例えば、PCT公開番号WO91/19735)、コードされたペプチド(例えばPCT公開番号WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えばPCT公開番号WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドのようなダイバーソマー(Hobbsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909−6913(1993))、ビニロガス(vinylogous)ポリペプチド(Hagiharaら、J.Amer.Chem.Soc.114:6568(1992))、グルコース足場を有する非ペプチド性ペプチド模倣物(Hirschmannら、J.Amer.Chem.Soc.114:9217−9218(1992))、小化合物ライブラリーの類似有機合成(Chenら、J.Amer.Chem.Soc.116:2661(1994))、オリゴカルバメート(Choら、Science 261:1303(1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbellら、J.Org.Chem.59:658(1994))、核酸ライブラリー(Ausubel、BergerおよびSambrook、全て前出を参照のこと)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば米国特許第5,539,083号を参照のこと)、抗体ライブラリー(例えばVaughnら、Nature Biotechnology 14:309−314(1996)およびPCT/US96/10287を参照のこと)、炭水化物ライブラリー(例えばLiangら、Science 274:1520−1522(1996)および米国特許第5,593,853号を参照のこと)、有機小分子ライブラリー(例えばイソプレノイド、米国特許第5,569,588号;チアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735および5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号等を参照のこと)を含むがこれに限らない。
【0071】
コンビナトリアルライブラリーを調製するための装置が、市販で入手可能である(例えば、357MPS、390MPS、Advanced Chem Tech、Louisville KY;Symphony、Rainin、Woburn、MA;433A Applied Biosystems、Foster City、CA;9050 Plus、Millipore、Bedford、MAを参照のこと)。それに加えて、多数のコンビナトリアルライブラリーが、それ自身市販で入手可能である(例えば、ComGenex、Princeton、NJ;Asinex、Moscow、Russia;Tripos,Inc.、St Louis、MO;ChemStar,Ltd.、Moscow、Russia;3D Pharmaceuticals、Exton、PA;Martek Biosciences、Columbia、MD;等を参照のこと)。
【0072】
候補薬剤、化合物、薬物等は、多数の化学的クラスを含むが、典型的にはそれらは有機分子、好ましくは100以上および約10,000ダルトン未満、好ましくは約2000から5000ダルトン未満の分子量を有する、小さい有機化合物である。候補化合物は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み得、そして典型的には少なくとも1つのアミン、カルボニル、ヒドロキシル、またはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの化学的官能基を含む。候補化合物は、1つまたはそれ以上の上記の官能基で置換された、環状炭素またはヘテロ環構造、および/または芳香族または多環式芳香族構造を含み得る。候補化合物はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造的アナログ、またはその組み合わせを含む生体分子から見出される。
【0073】
様々な他の試薬を、本発明によるスクリーニングアッセイに含み得る。そのような試薬は、塩、溶媒、中立タンパク質、例えばアルブミン、界面活性剤等を含むがこれに限らず、それを使用して最適なタンパク質−タンパク質結合を促進し得る、および/または非特異的またはバックグラウンド相互作用を抑制し得る。溶媒の例は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノールおよびアセトンを含むがこれに限らず、そして一般的に全アッセイ容量の1%(v/v)より少ない、またはそれと等しい濃度で使用する。それに加えて、プロテアーゼ阻害剤、抗菌薬等のような、別の方法でアッセイの有効性を改善する試薬を使用し得る。さらに、本方法における構成要素の混合物を、必要な結合を提供するあらゆる順番で加え得る。
【0074】
開示されたアッセイを用いて同定された化合物は、摂取する組成物、すなわち食物および飲料、および経口投与される薬剤において、成分または香料として潜在的に有用である。味の知覚を調節する化合物を、単独で、または食物または飲料における香料として組み合わせて使用し得る。そのような化合物の量は、望ましい程度の味の知覚の調節を引き起こす量であり、その開始濃度は一般的に0.1および1000μMの間であり得る。
【実施例】
【0075】
実施例1:一時的にトランスフェクトした細胞を用いた、イメージングに基づくハイスループットスクリーニングアッセイ
下記でより詳細に記載するように、ヒトTRPM5遺伝子を有するプラスミドで一時的にトランスフェクトしたHEK293細胞を使用して、ハイスループットスクリーニングアッセイを開発した。HEK293細胞内のNaイオンの変化の間接的な測定を、FMP色素およびカルシウム活性化薬剤を用いた細胞の刺激を用いて行った。
【0076】
プラスミドの構築
ヒト小腸ポリA+RNA(BD Biosciences)から、Thermoscript RT−PCR System(Invitrogen)によって、第1鎖cDNAを合成し、そして全長hTRPM5を、GC Melt(BD Biosciences)を用いてPCRによって増幅した。Pure Link PCR Purification(Invitrogen)によって産物をPCR精製し、そしてTOPO TA Cloning Kit(Invitrogen)を用いてベクターへ挿入した。配列決定後、6個の変異が見出され、そしてQuick Change Multi Site Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を2回用いて、その変異を修正した。各回で3つの変異を修正した。全長TRPM5を、EcoRIおよびNotI制限酵素を用いてTOPO TAベクターから切り出し、そしてそれもEcoRIおよびNotIで消化したpENTR 3Cベクターにライゲーションした。挿入断片およびベクターのバンドをゲル抽出し、そしてSNAP Gel Purification Kit(Invitrogen)を用いて精製した。最後に、LR Recombination Reaction(Invitrogen)を用いて、エントリークローンを、関心のあるデスティネーションベクターへ挿入した(例えば、pT−Rex−DEST 30、pcDNA−DEST 53、pcDNA3.2/v5−DESTおよびpcDNA6.2/V5−DEST)。
【0077】
トランスフェクション
1.0×10のHEK293細胞(ATCC)を、6ウェル組織培養皿の各ウェルに一晩まいた。次の日、製造会社のプロトコールに従って、TRPM5 cDNAを含む4μgのpcDNA3.2ベクター、および8μlのリポフェクタミン2000(Invitrogen)で、細胞をトランスフェクトし、そして一晩インキュベートした。次の日、トランスフェクトした細胞をトリプシン処理し、そして96穴黒色、透明底、ポリ−D−リジンプレート(Corning)に、100μlの容量中70,000細胞/ウェルの密度でまき、そして37℃/5%COインキュベーターで一晩インキュベートした。
【0078】
蛍光顕微鏡
HEKトランスフェクト細胞がTRPM5を発現することを確認するために、TRPM5を発現する6μgのプラスミドDNA(上記で記載したような)で一時的にトランスフェクトし、そしてLab TekII Chamberスライド上で増殖させた細胞を評価した。コントロール、未トランスフェクト細胞を、トランスフェクト細胞と平行して増殖させた。GFP−TRPM5発現細胞の蛍光発光を、蛍光顕微鏡の緑色検出チャネル(515−530nm)を用いて検出した。
【0079】
膜電位アッセイ
一旦HEK細胞におけるTRPM5の発現を確認したら、100μgのBlueまたはRed FMP色素(Molecular Devices)を、一時的にトランスフェクトした細胞をまいたプレートの各ウェルに加えた。次いでそのプレートを37℃/5%COインキュベーターで1時間インキュベートした。そのプレートを、FLEXStationマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で、530nmの励起および565nmの発光で測定した。細胞をカルシウム活性化薬剤(カルバコール、トロンビンペプチドまたはATP)と接触させた時に、蛍光を3分間モニターした。
【0080】
結果
GFP−TRPM5プラスミドでトランスフェクトされた、明るい緑色のHEK293細胞の出現によって示されるように、TRPM5プラスミドは容易に発現した(図2)。
【0081】
刺激に対するTRPM5反応の表示を、図3A−3Cに示す。TRPM5トランスフェクト細胞を、FMP色素で処置し、そして次いでトロンビン(図3A)、カルバコール(図3B)、またはATP(図3C)で処理して、そしてFLEXStationで細胞の蛍光の増加をモニターした。3つの薬剤は全て、アゴニストの添加から最初の30秒以内に、相対的蛍光における強いスパイクを生じた。アゴニスト添加から約1分後までに、蛍光レベルがベースラインレベル付近まで戻ったので、その反応は天然と同様一時的であった。偽処理細胞は、ATPおよびカルバコール処理細胞の両方において低い反応を生じたが、トロンビン処理グループにおいては高い程度のバックグラウンド蛍光が観察された。トロンビン処理細胞の蛍光は、バックグラウンドの4倍大きかったので、バックグラウンド蛍光は、データの解釈を妨げなかった。
【0082】
本発明のスクリーニング方法の、ハイスループット形式への適用性を、図4に示し、ここで384ウェルプレート中の試料を、FLIPR−TetraTM(Molecular Devices)において5分間のアッセイで評価した。15,000/ウェルのTRPM5トランスフェクトHEK細胞を、20μlの培地中で、ポリ−D−リジンでコートされた384ウェルプレートに一晩まいた。20μl/ウェルの膜電位色素を加え、そしてプレートを37℃で1時間インキュベートした。プレートをFLIPR−TetraTMに置き、そして適当なフィルターを用いて蛍光を測定した。10秒後、10μlの緩衝液または不活性化薬剤(ATP)のいずれかを細胞に加えた(最初の添加)。200秒において、10μlのATPの2回目の添加を、全ての細胞に加えた。強い、再現性のあるTRPM5反応が、緩衝液を加えた細胞(ハイコントロール)で見られ、一方最初にATPで刺激されたものは不活性化され、そして2回目のATPの添加に反応しなかった(ローコントロール)。ハイおよびローコントロール間には、ピークの高さ(各ピークの最高−最低の値)に5倍以上の違いがあり、そのアッセイがハイスループットスクリーニングに適当であることを示した。さらに、Z’の計算は、HTSの容認可能な値の0.5より大きな、0.76の値を与えた(Z’=1−((3SDハイコントロール+3SDローコントロール)/(ハイコントロール−ローコントロール)))。
【0083】
実施例2:安定にトランスフェクトした細胞を用いた、イメージングに基づくハイスループットスクリーニングアッセイ
TRPM5の刺激は、TRPM5を安定に発現するHEK細胞でも見えた。TRPM5発現の確認の後、TRPM5活性を調節する能力を、上記で記載したように分析した。
【0084】
プラスミド構築およびトランスフェクション
TRPM5を安定に発現するHEK細胞を、上記で記載した技術を用いて、hTRPM5を含むpcDNA3.2ベクターを用いて産生した。35mmの組織培養皿において、1.0×10のHEK293細胞を、4μgのpcDNA3.2−TrpM5でトランスフェクトすることによって、安定なクローンを産生した。トランスフェクションの2日後、細胞をトリプシン処理し、そして1mg/mlのジェネティシン(Invitrogen)を含む増殖培地中で1:10および1:100に希釈して単一クローンを選択した。単一の個々のクローンを単離および拡張するまで、細胞をこの培地中で維持した。個々のクローンを選択する時、選択圧を維持するために、0.25mg/mlのジェネティシンを含む培地中で細胞を維持した。次いで個々のクローンを、上記で記載したように、FLEXStationまたはFLIPR(登録商標)において、膜電位色素を用いて調査した。次いでATPおよびカルバコールに対して最も大きな蛍光反応を有するクローンを選択し、そしてさらなる分析のために調査した。次いでATPおよびカルバコールに対する最も高いEC50を有する選択されたクローンを拡張し、そしてハイスループットスクリーニングアッセイのために使用した。
【0085】
結果
HEK細胞において安定に発現したTRPM5を、異なる濃度のいくつかのGPCRアゴニストに対して反応する能力に関して分析した。そのアッセイを、FLIPR(登録商標)において、励起510−545nmおよび発光565−625nmフィルターセットを用いて行った。安定に発現するHEK細胞を含むアッセイプレートを、1×Membrane Potential Assay Dye Red(Molecular Devices)で、37℃および5%COインキュベーターで1時間処置した。次いでそのプレートをインキュベーターから出し、そして15分間室温まで平衡化してから、FLIPR(登録商標)で測定した。プレートを、全部で3分間、FLIPR(登録商標)において測定した。ベースライン蛍光を、FLIPR(登録商標)で10秒間得てから、FLIPR(登録商標)によって各アゴニストを添加し、そしてさらに2分50秒間測定した。図5は、偽トランスフェクト細胞と比較して、TRPM5発現細胞の相対的蛍光の増加によって証明されるように、2つのTRPM5発現クローンが、様々な濃度のGPCRアゴニストによって刺激されたことを示す。グラフの値は、アゴニスト添加時の、最高マイナス最低蛍光の差を示す。個々のクローンは、クローン番号によって示されるが、クローンのプールは選択に抵抗性の全ての細胞の和を示す。全ての場合において、クローン1が、3つのアゴニスト全てに対して最も強い反応を示した(ATP、カルバコール、およびトロンビンペプチド、それぞれ図5A−5C)。クローン5およびプールされたクローンは、クローン1と比較してより低い反応を生じた。しかし、クローン5およびプールの反応はどちらも、非トランスフェクト細胞の蛍光より最低3倍高かった。偽、非トランスフェクト細胞は、どのアゴニスト濃度においても、ほとんど反応を示さなかった、または反応を示さなかった。
【0086】
実施例3:最適未満の濃度のカルシウム活性化薬剤を用いた、ハイスループットスクリーニングアッセイ
潜在的な活性化化合物の特異性を、細胞内カルシウムレベルを増加させる、最適未満の濃度の薬剤を用いて同定し得る。このタイプのアッセイにおいて、高濃度の、例えばカルバコールを用いるよりも、抑制された濃度を、さらなる試験化合物ありまたは無しで、TRPM5発現細胞に加える。TRPM5活性のエンハンサーは、抑制されたカルバコール処理細胞の蛍光強度を、高用量で処理した細胞で見られるレベルまで増加させる試験化合物である。
【0087】
最適未満の濃度範囲を決定できるように、カルバコールの用量反応曲線を、TRPM5発現細胞に関して産生した。TRPM5を発現する細胞を、試験化合物を加える前に、EC20−EC30レベルのカルバコール(0.3から1μM)とインキュベートした。偽インキュベートおよびEC100処理細胞を、コントロールとして使用した。EC20−EC30処理細胞の蛍光強度を、EC100処理細胞に近づくレベルまで増加させた試験化合物を、TRPM5の活性化剤として分類した。
【0088】
実施例4:TRPM5特異性に関するKClカウンタースクリーニング
TRPM5活性化の増強された特異性アッセイの必要性を、図6に示す。85,000個以上の化合物を、上記で記載したハイスループットスクリーニングアッセイを用いてスクリーニングし、そして阻害値のガウス分布をプロットした。図において見られるように、ほとんどの化合物は、コントロール反応の阻害の−25から+25パーセントの範囲内であった。従って、より高い特異性を有するTRPM5調節化合物を同定するために、他のイオンチャネルにも作用する化合物を、分析から除かなければならない。
【0089】
KClは、多くのイオンチャネルを活性化するが、TRPM5は活性化しない。従って、KClをカウンタースクリーニングとして使用して、TRPM5に特異的な調節化合物を同定し得る。
【0090】
理想的な遮断薬は、TRPM5を遮断するが、他のチャネルは遮断しない。TRPM5アッセイを、膜電位色素を利用して、実施例3で記載したように行う。試験化合物を加え、そして次いで細胞をATPで刺激してチャネルの引き金を引き、色素の反応を引き起こす。その過程を図7で模式的に示す。KClカウンタースクリーニングを、同じ化合物で前処理した同一の細胞で、実施例3で記載したように行うが、刺激はATPではなく、20mMのKClであった。KCl刺激および非刺激反応を、コントロールとして使用する。KClカウンタースクリーニングを用いて同定された非選択的阻害化合物の例を、図8Aに示す。化合物F001344,A3(構造を下記に示す)は、TRPM5を阻害するが、KCl反応も阻害する(矢印)。さらなる特異性アッセイは、Ca++流入色素(カルシウム3色素、パーツ番号R8091)を利用して、その化合物がアゴニスト誘発Ca++流入反応を阻害するかどうかを決定する。Ca++流入アッセイによって同定された非選択的阻害化合物の例を、図8Bに示す。化合物F001348,C13(構造を下記に示す)は、TRPM5を阻害するが、Ca++流入反応も活性化する(矢印)。
【0091】
【化1】

図9Aは、4つの濃度の試験化合物、化合物1(構造を下記に示す)のTRPM5アッセイにおけるFLIPRトレースを示す。パネル1は、TRPM5反応の用量反応性阻害を示す。パネル2および3は、化合物の用量の増加は、KClまたはCa++反応を変化させないことを示す。これらの結果の定量を、図9Bに示す。TRPM5の非特異的阻害を示す、2つのさらなる試験化合物の例(化合物2および3)を、図9Cに示し、ここで化合物2はKCl反応も阻害し、そして化合物3はCa++反応を阻害する。
【0092】
【化2】

KClカウンタースクリーニングはまた、選択的TRPM5増強化合物の同定にも有用である。図10は、TRPM5の選択的増強を示す。カウンタースクリーニング実験を、試験化合物4の存在下で、上記で記載したように行った。TRPM5発現HEKおよびCHO細胞は、試験化合物4の添加時に、それぞれ131%および135%の最大刺激を示した。増加する量の試験化合物4の添加はまた、TRPM5活性の用量依存性の増加を引き起こした(図11)。さらに、化合物5を用いて、最適未満の(EC10)濃度のATPアゴニストで、非常に強力な増強が見られる(図12)。
【0093】
実施例5:ドミナントネガティブTRPM5を用いたハイスループットアッセイ
TRPM5の特異性を、チャネルのドミナントネガティブ形式を用いて達成し得るかどうかを調べるために、欠失変異体を産生した。N1000欠失変異体は、遺伝子の最初の1000塩基対が欠失したmTRPM5の形式であり、そしてN2000欠失変異体は、遺伝子の最初の2000塩基対の欠失を含む。遺伝子の最初の2000塩基対は、mTRPM5イオンチャネルのアミノ末端ドメインに対応する。この領域の欠失は、アミノ末端ドメイン全体が除去されたタンパク質の短縮バージョンを生じ、そしてタンパク質はイオンチャネルの最初の膜貫通領域から始まる。欠失変異体を、それぞれ最初の1000塩基対が欠失した、および最初の2000塩基対が欠失した遺伝子を増幅するようデザインしたプライマーを用いて、PCRによって構築した。下記で記載する実験を、使用した細胞の数、インキュベーション時間および色素に関して以前に記載したように行った。
【0094】
ヌルベクターを有する野生型mTRPM5と比較して、異なる比の欠失変異体対野生型mTRPM5のトランスフェクションを比較することによって、実験を行った。トランスフェクトしたDNAの全量は、4μgで一定に維持した。1×10のHEK293細胞を、6ウェル皿に一晩まいた。いくつかの比の欠失変異体mTRPM5/野生型mTRPM5および野生型mTRPM5/pSV3−neoを、次いで表1に示したように、リポフェクタミン2000を用いて、HEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、15,000細胞/ウェルを384ウェルプレートにまき、そしてインキュベーターで一晩維持した。次の日、細胞を膜電位色素で、37℃で処置し、そしてA23187に対する反応およびカルバコール用量反応性を比較した。
【0095】
表1:HEK293細胞におけるトランスフェクションに続くTRPM5アッセイ
【0096】
【表1】

図13A−13Bに示すように、欠失変異体の濃度が増加するにつれて、A23187(図13A)またはカルバコール(図13B)に反応した相対的蛍光は減少する。しかし、ヌルベクター(pSV3−neo)の存在下では、その減少はない。それに加えて、リガンドに対するカルシウム反応には影響がなく、膜電位反応の減少は、カルシウム濃度の変化に起因し得ないことを示す。
【0097】
本発明の様々な実施態様を上記で記載したが、それらは例示のためにのみ示され、そして制限ではないことが理解される。本発明の意図および範囲から離れることなく、その中で形式および詳細において様々な変更をし得ることが当業者に明らかである。従って、本発明の幅および範囲は、上記で記載された代表的な実施態様のいずれによっても制限されず、以下の請求およびそれに相当するものによってのみ規定されるべきである。本明細書中で引用された全ての出版物、特許、および特許出願は、本開示に、その全体として参考文献に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
本明細書中に組み込まれ、そして明細書の一部を形成する、付随する図は、本発明の1つまたはそれ以上の実施態様を説明し、そして説明と共に、本発明の原理を説明するために、および当業者が本発明を作成および使用することを可能にするためにさらに役立つ。
【図1】図1は、Chinese Hamster Ovary(CHO)細胞におけるTRPM5依存性蛍光シグナル伝達の証明を示す。ヒトTRPM5イオンチャネルおよびムスカリン性1(M1)Gタンパク質共役受容体(GPCR)の両方でトランスフェクトしたCHO細胞に、膜電位色素を加え、そしてM1アゴニストであるカルバコールで刺激した。このGPCR活性化は、その細胞において細胞内カルシウムイオンの増加を引き起こし、それが次にTRPM5イオンチャネルを開口させ、主にナトリウムイオンを細胞内に入れる。この脱分極は、色素の蛍光シグナルを増加させ、それをFluorescent Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))で測定する。TRPM5に対する化合物の効果を分析するアッセイにおいて、その化合物をTRPM5の活性化の前に加えることに注意する。
【図2】図2は、蛍光顕微鏡による、一時的にトランスフェクトしたHEK293細胞におけるTRPM5−GFPの発現を示す。
【図3】図3は、一時的にトランスフェクトしたHEK293細胞におけるTRPM5イオンチャネル反応を示す。図3A−Cは、FLEXstationを用いて測定した、3つのGPCRアゴニスト:トロンビン(図3A)、カルバコール(図3B)、およびアデノシン3リン酸(ATP)(図3C)に反応した、トランスフェクトした細胞におけるTRPM5反応を示す。
【図4】図4は、FLIPR−TetraTMを用いた、TRPM5ハイスループットスクリーニングアッセイのハイおよびローコントロールを示す。そのアッセイは、0.76のZ’値で、高いシグナル対ノイズ比を有する(ハイコントロール対ローコントロール)。Z’>0.5の値は、ハイスループットスクリーニングのための確固としたアッセイを示す。(Zhang,J.H.ら。J.Biomol.Screen.4:67−73(1999))。(Z’=1−((3*SDHC+3*SDLC)/(AVGHC−AVGLC))。
【図5】図5A−5Cは、FLIPR(登録商標)を用いて測定した、ATP(図5A)、カルバコール(図5B)またはトロンビン(図5C)を用いた、安定にTRPM5を発現する細胞の刺激を示す。
【図6】図6は、85,000個より多い化合物に対するTRPM5ハイスループットスクリーニングの結果を示す。コントロール反応の阻害パーセントの頻度分布としてそのデータを示す。各化合物を、10μMの濃度で試験した。
【図7】図7は、Ca++反応およびKClカウンタースクリーニングアッセイを用いたTRPM5特異性フィルターの図解表示を示す。
【図8A】図8A−8Bは、KClカウンタースクリーニング(図8A)およびCa++流入(図8B)フィルターは、非選択的阻害化合物を同定することを示す。
【図8B】図8A−8Bは、KClカウンタースクリーニング(図8A)およびCa++流入(図8B)フィルターは、非選択的阻害化合物を同定することを示す。
【図9A】図9A−9Cは、TRPM5特異的阻害剤を同定するために、TRPM5アッセイにおいてKClカウンタースクリーニングが有用であることを示す。図9Aは、FLIPR(登録商標)を用いて測定した、TRPM5特異的阻害剤の同定を示す。図9Bは、KCl脱分極の阻害またはカルシウム流入活性化の阻害無しの、化合物によるTRPM5の用量反応性阻害を示す。図9Cは、TRPM5の非特異的阻害の2つの例を示す。
【図9B】図9A−9Cは、TRPM5特異的阻害剤を同定するために、TRPM5アッセイにおいてKClカウンタースクリーニングが有用であることを示す。図9Aは、FLIPR(登録商標)を用いて測定した、TRPM5特異的阻害剤の同定を示す。図9Bは、KCl脱分極の阻害またはカルシウム流入活性化の阻害無しの、化合物によるTRPM5の用量反応性阻害を示す。図9Cは、TRPM5の非特異的阻害の2つの例を示す。
【図9C】図9A−9Cは、TRPM5特異的阻害剤を同定するために、TRPM5アッセイにおいてKClカウンタースクリーニングが有用であることを示す。図9Aは、FLIPR(登録商標)を用いて測定した、TRPM5特異的阻害剤の同定を示す。図9Bは、KCl脱分極の阻害またはカルシウム流入活性化の阻害無しの、化合物によるTRPM5の用量反応性阻害を示す。図9Cは、TRPM5の非特異的阻害の2つの例を示す。
【図10】図10は、TRPM5アッセイにおけるKClカウンタースクリーニングの、TRPM5特異的エンハンサー化合物を同定する能力を示す。
【図11】図11は、TRPM5特異的エンハンサー(化合物4)を用いた、TRPM5活性の用量反応性の刺激を示す。
【図12】図12は、化合物5(30μM)が、特に最適未満の濃度のATPにおいて、TRPM5の非常に強力な増強(EC10において17倍)を生ずることを示す。
【図13A】図13A−13Bは、TRPM5欠失変異体の、カルシウムイオノフォアA23187(図13A)またはカルバコール(図13B)の、TRPM5による刺激を引き起こす能力に対する影響を示す。
【図13B】図13A−13Bは、TRPM5欠失変異体の、カルシウムイオノフォアA23187(図13A)またはカルバコール(図13B)の、TRPM5による刺激を引き起こす能力に対する影響を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TRPM5イオンチャネルの潜在的なエンハンサーをスクリーニングするための、ハイスループットスクリーニングアッセイであって、
(a)TRPM5を発現する細胞を、細胞内カルシウム濃度を増加させる最適未満の濃度の薬剤と接触させることであって、該細胞は、膜電位蛍光色素で前処理されていること;
(b)該細胞を、潜在的な増強化合物と接触させること;
(c)光学的検出器を用いて、該潜在的増強化合物の存在下で該細胞の蛍光強度を測定すること;および
(d)該測定蛍光強度を、細胞内カルシウム濃度を増加させる最適濃度の薬剤の存在下で、TRPM5を発現する異なる細胞の蛍光強度と比較すること
を含む、アッセイ。
【請求項2】
請求項1に記載のアッセイであって、TRPM5活性を増強する1種以上の試験化合物を選択することをさらに含む、アッセイ。
【請求項3】
請求項1に記載のアッセイであって、前記細胞は、マルチウェル容器に入っている、アッセイ。
【請求項4】
請求項3に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、96穴までを含む、アッセイ。
【請求項5】
請求項3に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、96穴より多くを含む、アッセイ。
【請求項6】
請求項3に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、384穴を含む、アッセイ。
【請求項7】
請求項3に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、1536穴を含む、アッセイ。
【請求項8】
請求項1に記載のアッセイであって、前記カルシウム濃度を増加させる薬剤が、トロンビン、アデノシン3リン酸(ATP)、カルバコール、カルシウムイオノフォア、および内因性Gタンパク質共役受容体分子のアゴニストからなるグループから選択される、アッセイ。
【請求項9】
請求項8に記載のアッセイであって、前記薬剤は、トロンビンである、アッセイ。
【請求項10】
請求項8に記載のアッセイであって、前記薬剤は、ATPである、アッセイ。
【請求項11】
請求項8に記載のアッセイであって、前記薬剤は、カルバコールである、アッセイ。
【請求項12】
請求項1に記載のアッセイであって、前記膜電位蛍光色素は、Fluorescent Imaging Plate Reader膜電位(FMP)色素である、アッセイ。
【請求項13】
請求項1に記載のアッセイであって、前記光学的検出器は、Fluorescent Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))、FLEXStation、Voltage/Ion Probe Reader(VIPR)、蛍光顕微鏡および電荷結合素子(CCD)カメラ、およびPathwayHTからなるグループから選択される、アッセイ。
【請求項14】
請求項13に記載のアッセイであって、前記光学的検出器は、FLIPR(登録商標)である、アッセイ。
【請求項15】
試験化合物がTRPM5イオンチャネル特異的調節因子であるかどうかを決定するための、ハイスループットスクリーニングアッセイであって、
(a)TRPM5を発現し、膜電位蛍光色素で前処理されている細胞を、塩化カリウムの存在下で試験化合物と接触させること;
(b)光学的検出器を用いて、潜在的調節化合物の存在下で、該細胞の蛍光強度を測定すること;
(c)工程(b)で決定された該測定蛍光強度を、塩化カリウムの存在下で、および該試験化合物の非存在下で、TRPM5を発現しそして膜電位色素で前処理されている異なる細胞の蛍光強度と比較すること;および
(d)塩化カリウムおよび該試験化合物による該蛍光強度 対 該試験化合物の非存在下における塩化カリウムによる該強度の比が、1より小さいかまたは1より大きいかを決定することによって、該試験化合物がTRPM5特異的調節因子であり得るかどうかを評価すること
を含む、アッセイ。
【請求項16】
請求項15に記載のアッセイであって、TRPM5活性を増強する試験化合物を選択することをさらに含む、アッセイ。
【請求項17】
請求項15に記載のアッセイであって、TRPM5活性を阻害する試験化合物を選択することをさらに含む、アッセイ。
【請求項18】
請求項15に記載のアッセイであって、前記細胞は、マルチウェル容器に入っている、アッセイ。
【請求項19】
請求項18に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、96穴までを含む、アッセイ。
【請求項20】
請求項18に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、96穴より多くを含む、アッセイ。
【請求項21】
請求項18に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、384穴を含む、アッセイ。
【請求項22】
請求項18に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、1536穴を含む、アッセイ。
【請求項23】
請求項15に記載のアッセイであって、前記カルシウム濃度を増加させる薬剤が、トロンビン、アデノシン3リン酸(ATP)、カルバコール、カルシウムイオノフォア、および内因性Gタンパク質共役受容体分子のアゴニストからなるグループから選択される、アッセイ。
【請求項24】
請求項23に記載のアッセイであって、前記薬剤は、トロンビンである、アッセイ。
【請求項25】
請求項23に記載のアッセイであって、前記薬剤は、ATPである、アッセイ。
【請求項26】
請求項23に記載のアッセイであって、前記薬剤は、カルバコールである、アッセイ。
【請求項27】
請求項15に記載のアッセイであって、前記膜電位蛍光色素は、Fluorescent Imaging Plate Reader膜電位(FMP)色素である、アッセイ。
【請求項28】
請求項15に記載のアッセイであって、前記光学的検出器は、Fluorescent Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))、FLEXStation、Voltage/Ion Probe Reader(VIPR)、蛍光顕微鏡および電荷結合素子(CCD)カメラ、およびPathwayHTからなるグループから選択される、アッセイ。
【請求項29】
請求項28に記載のアッセイであって、前記光学的検出器は、FLIPR(登録商標)である、アッセイ。
【請求項30】
試験化合物が、TRPM5イオンチャネル特異的調節因子であるかどうかを決定するための、ハイスループットスクリーニングアッセイであって、
(a)TRPM5を発現し、そして細胞内カルシウム色素で前処理されている細胞を、試験化合物および細胞内カルシウム濃度を増加させる最適未満の濃度のカルシウム調節薬剤と接触させること;
(b)光学的検出器を用いて、カルシウム調節化合物の存在下で、該細胞の蛍光強度を測定すること;
(c)工程(b)で決定した該測定蛍光強度を、最適未満の濃度のカルシウム調節薬剤の存在下および該試験化合物の非存在下で、TRPM5を発現しそして細胞内カルシウム色素で前処理されている異なる細胞の蛍光強度と比較すること;および
(d)最適未満の濃度のカルシウム調節薬剤および該試験化合物による該蛍光強度 対 該試験化合物の非存在下における最適未満の濃度のカルシウム調節薬剤による該強度の比が、1より小さいかまたは大きいかを決定することによって、該試験化合物がTRPM5特異的改変因子であり得るかどうかを評価することを含む、
アッセイ。
【請求項31】
請求項30に記載のアッセイであって、TRPM5活性を増強する試験化合物を選択することをさらに含む、アッセイ。
【請求項32】
請求項30に記載のアッセイであって、TRPM5活性を阻害する試験化合物を選択することをさらに含む、アッセイ。
【請求項33】
請求項30に記載のアッセイであって、前記細胞は、マルチウェル容器に入っている、アッセイ。
【請求項34】
請求項33に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、96穴までを含む、アッセイ。
【請求項35】
請求項33に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、96穴より多くを含む、アッセイ。
【請求項36】
請求項33に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、384穴を含む、アッセイ。
【請求項37】
請求項33に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、1536穴を含む、アッセイ。
【請求項38】
請求項30に記載のアッセイであって、前記カルシウム調節薬剤が、トロンビン、アデノシン3リン酸(ATP)、カルバコール、カルシウムイオノフォア、および内因性Gタンパク質共役受容体分子のアゴニストからなるグループから選択される、アッセイ。
【請求項39】
請求項38に記載のアッセイであって、前記カルシウム調節薬剤は、トロンビンである、アッセイ。
【請求項40】
請求項38に記載のアッセイであって、前記カルシウム調節薬剤は、ATPである、アッセイ。
【請求項41】
請求項38に記載のアッセイであって、前記カルシウム調節薬剤は、カルバコールである、アッセイ。
【請求項42】
請求項30に記載のアッセイであって、前記細胞内カルシウム色素は、Fluorescent Imaging Plate Reader(FLIPR)カルシウム3色素である、アッセイ。
【請求項43】
請求項30に記載のアッセイであって、前記光学的検出器は、Fluorescent Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))、FLEXStation、Voltage/Ion Probe Reader(VIPR)、蛍光顕微鏡および電荷結合素子(CCD)カメラ、およびPathwayHTからなるグループから選択される、アッセイ。
【請求項44】
請求項43に記載のアッセイであって、前記光学的検出器は、FLIPR(登録商標)である、アッセイ。
【請求項45】
TRPM5イオンチャネルの潜在的なエンハンサーをスクリーニングするための、ハイスループットスクリーニングアッセイであって、
(a)野生型TRPM5および非機能性TRPM5の両方でトランスフェクトされており、そして膜電位蛍光色素で前処理されている細胞を、該細胞においてカルシウム濃度を増加させる薬剤の存在下で、潜在的なエンハンサーと接触させること;
(b)光学的検出器を用いて、該潜在的エンハンサーの存在下で該細胞の蛍光強度を測定すること;および
(c)TRPM5増強の程度を決定するために、工程(b)からの該測定蛍光強度を、潜在的な増強化合物の存在下での、野生型TRPM5を発現しそして膜電位色素で前処理されている細胞の蛍光強度と比較することを含む、
アッセイ。
【請求項46】
請求項45に記載のアッセイであって、前記非機能性TRPM5は、TRPM5遺伝子の最初の1000塩基対の欠失を含む、アッセイ。
【請求項47】
請求項45に記載のアッセイであって、前記非機能性TRPM5は、TRPM5遺伝子の最初の2000塩基対の欠失を含む、アッセイ。
【請求項48】
請求項45に記載のアッセイであって、TRPM5活性を増強する化合物を選択することをさらに含む、アッセイ。
【請求項49】
請求項45に記載のアッセイであって、前記細胞は、マルチウェル容器に入っている、アッセイ。
【請求項50】
請求項49に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、96穴までを含む、アッセイ。
【請求項51】
請求項49に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、96穴より多くを含む、アッセイ。
【請求項52】
請求項49に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、384穴を含む、アッセイ。
【請求項53】
請求項49に記載のアッセイであって、前記マルチウェル容器は、1536穴を含む、アッセイ。
【請求項54】
請求項45に記載のアッセイであって、前記カルシウム濃度を増加させる薬剤が、トロンビン、アデノシン3リン酸(ATP)、カルバコール、カルシウムイオノフォア、および内因性Gタンパク質共役受容体分子のアゴニストからなるグループから選択される、アッセイ。
【請求項55】
請求項54に記載のアッセイであって、前記薬剤は、トロンビンである、アッセイ。
【請求項56】
請求項54に記載のアッセイであって、前記薬剤は、ATPである、アッセイ。
【請求項57】
請求項54に記載のアッセイであって、前記薬剤は、カルバコールである、アッセイ。
【請求項58】
請求項54に記載のアッセイであって、前記薬剤は、カルシウムイオノフォアA23187である、アッセイ。
【請求項59】
請求項45に記載のアッセイであって、前記膜電位蛍光色素は、Fluorescent Imaging Plate Reader膜電位(FMP)色素である、アッセイ。
【請求項60】
請求項45に記載のアッセイであって、前記光学的検出器は、Fluorescent Imaging Plate Reader(FLIPR(登録商標))、FLEXStation、Voltage/Ion Probe Reader(VIPR)、蛍光顕微鏡および電荷結合素子(CCD)カメラ、およびPathwayHTからなるグループから選択される、アッセイ。
【請求項61】
請求項60に記載のアッセイであって、前記光学的検出器は、FLIPR(登録商標)である、アッセイ。
【請求項62】
TRPM5遺伝子の最初の1000塩基対が欠失している、単離された核酸。
【請求項63】
TRPM5遺伝子の最初の2000塩基対が欠失している、単離された核酸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【公表番号】特表2009−514535(P2009−514535A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539067(P2008−539067)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/042989
【国際公開番号】WO2007/056160
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(507414557)レッドポイント バイオ コーポレイション (6)
【Fターム(参考)】