説明

TWEEN80を含まないドセタキセル可溶化製剤

ドセタキセルを含有する凍結乾燥物および濃縮液体製剤の調製におけるその使用およびすぐ使用できる注射用製剤、ならびにそのような濃縮物およびすぐ使用できる製剤自体が開示され、この製剤中には、Tween界面活性剤に対する過敏性反応が回避できるように、さらにはドセタキセルが、より高い投与量で、および/またはより長い期間に渡り、および/またはより長い治療サイクルに渡り投与できるように、Tween界面活性剤が回避されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年6月22日に出願した米国仮特許第60/936763号に関連するものである。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
適用なし。
【0003】
本発明は、ドセタキセルの凍結乾燥物と、前記を生成する方法と、それぞれがポリソルベート80を必要としない:(a)注射用液体濃縮物、(b)注射用水性担体液と合わせた前記注射用水性製剤、(c)複数のそのような注射用液体濃縮物、および(d)そのような液体製剤、すなわち注射での投与に適切なドセタキセルの濃度を有する最終希釈製剤の調製におけるその使用とに関する。
【背景技術】
【0004】
ドセタキセルは、タキソイド系に属する抗悪性腫瘍薬であり、タキソテール(登録商標)という商品名でSanofi-Aventisから市販されている。これはイチイ植物の再生可能な針葉部のバイオマスから抽出される前駆体を用いて開始される半合成により調製される。ドセタキセルの化学名は、5ベータ-20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β、13α-ヘキサヒドロキシタクス-11-エン-9-オン4-アセテート2-ベンゾエート、三水和物との(2R,3S)-N-カルボキシ-3-フェニルイソセリン、N-tert-ブチルエステル、13-エステルである。ドセタキセルは、以下の構造式を有する。
【0005】
【化1】

【0006】
Sanofi-Aventisにより現在市販されているドセタキセルは、白色から白色に近い粉末で、実験式はC43H53NO14・3H2Oであり、分子量は861.9である。ドセタキセルは、極めて親油性で、実際には水に不溶である。タキソテール(登録商標)(ドセタキセル)注射用濃縮物は、透明な黄色から茶黄色の、粘稠性の溶液である。タキソテール(登録商標)は、無菌、非発熱性であり、20mg(0.5ml)または80mg(2ml)のドセタキセル(無水ベース)を含有する単回投与用のバイアルとして販売されている。1mlにつき、ドセタキセルが40mg(無水ベース)、ポリソルベート80が1040mg含まれる。本明細書の目的のため、特定の形態(すなわち、水和物、塩など)の言及なしに、「ドセタキセル」の量が言及されている場合、文脈上明らかに他の量を意味する必要がない限り、その時点で考察中の化合物の実際の形態にかかわらず、問題の薬物の遊離した、無水の、非溶媒和した部分の記載量を意味するものとする。したがって、例えば、薬物の形態に関する言及なしに、ドセタキセル80.7mgと言及されている場合、これは、遊離した、溶媒和されていない、無水のドセタキセル80.7mgと同じモル数のドセタキセル部分に匹敵する実際の薬物形態の量が使用されたことを意味する。遊離したドセタキセル三水和物を使用するとなれば、これは、遊離したドセタキセル三水和物86.1mgを意味する。塩および溶媒和化合物に対する同様の計算は、当業者であれば明白であろう。
【0007】
タキソテール(登録商標)注射用濃縮物は、使用前の希釈が必要である。無菌、非発熱性の単回投与用希釈剤がこの目的で供給されている。タキソテール(登録商標)用希釈剤は、注射用の、水中での13%エタノールを含有し、バイアルに入れて供給される。希釈剤の調製は、2つの段階で行われる。濃縮物(2〜25℃(36および77°F)の間で保存)は、室温まで戻すが、希釈剤をまだ合わせてない場合には、任意の必要な希釈剤(市販の注射剤物質用の水中の13%エタノール)と共に、約5分間室温条件下にこれらを放置することによって、室温に戻す。希釈剤は、バイアルを部分的に反転させることによって、バイアルからシリンジへ無菌状態で取り出し(タキソテール(登録商標)20mgに対して約1.8mlおよびタキソテール(登録商標)80mgに対して約7.1ml)、タキソテール(登録商標)注射用濃縮物の適切なバイアルに移す。記述されている通りこの手順に従えば、ドセタキセル10mg/mlの初期希釈溶液が生成される。この初期希釈液を、少なくとも45秒の間反転を繰り返すことによって混合し、濃縮物と希釈剤が確実に、十分混合されるようにする。このバイアルは、振ってはならない。生成した溶液(ドセタキセル10mg/ml)は透明であるはずだが、ポリソルベート80が原因で溶液先端部にいくらかの泡がある可能性がある。この初期希釈溶液は、直ちに使用してもよいし、冷蔵庫または室温のいずれかで最大8時間保存し得る。
【0008】
現在のタキソテールのラベルの指示では、次にドセタキセルの必要量を、較正したシリンジを用いて、最初のドセタキセル10mg/ml溶液から無菌状態で取り出し、0.9%塩化ナトリウム溶液または5%ブドウ糖溶液のいずれかの250mlの点滴バッグまたはビンへ注入することによって、最終濃度を0.3から0.74mg/mlとする。200mgを超えるタキソテール(登録商標)投与が必要な場合、より多量の点滴媒体を使用して、ドセタキセル0.74mg/mlの濃度を上回らないようにする(最終点滴濃度がこの最大濃度を上回ると、ポリソルベートを可溶化剤として有する製剤からタキソテール(登録商標)が沈殿することが判明している)。次いで点滴液を、手動による回旋でよく混合する。この点滴用の最終タキソテール(登録商標)希釈液は、1時間の点滴で、周囲の室温および照明条件の下、静脈内に投与するべきである。
【0009】
タキソテール(登録商標)点滴溶液は、2および25℃(36および77°F)の間で保存した場合、4時間安定している。完全に調製されたタキソテール(登録商標)点滴溶液(0.9%塩化ナトリウム溶液中または5%ブドウ糖溶液中のいずれか)は、4時間以内に使用すべきである(1時間の静脈内投与を含む)。
【0010】
現在市販されているドセタキセル(タキソテール(登録商標))は、激しい副作用を生じる100%(w/v)ポリソルベート80(Tween-80)中に溶解されている。推奨されている3日間のデキサメタゾンの前投薬を受けていたにもかかわらず、全身性の発疹/紅斑、低血圧および/または気管支攣縮を特徴とする激しい過敏性反応、または非常にまれではあるが、致命的となるアナフィラキシーが報告された患者もいる。過敏性反応は、タキソテール(登録商標)点滴の即時中断および適切な治療の適用を必要とする。上述の過敏性反応はすべて、製剤中のポリソルベート80の存在により主に引き起こされ、これが原因である。ポリソルベート80により誘発される副作用を減少させるため、すべての患者には、治療前の3日間、デキサメタゾンによる処置を施す。デキサメタゾンは、患者の免疫反応を抑制するステロイドである。化学療法を受けている癌患者は、一般的に化学療法剤による健常な細胞の破壊が原因で、免疫レベルが低い。ステロイドでの治療は、患者の免疫をさらに弱めることになり、患者は、細菌および真菌に感染しやすくなる。このような副作用が原因で、ほとんどの患者は、2番目または3番目のサイクルが終了するまでにドセタキセルでの治療を放棄するか、または投与を抜くか、または投与量を減らして治療をさらに続行する。推奨されている治療は、3週間に一度のドセタキセルの投与を6サイクル行うことである。したがって、製剤中にポリソルベート80が存在するために、ドセタキセルの治療活性および最大耐容量(MTD)における妥協がなされている。同様のアレルギー反応がある(つまり、ステロイドおよび抗ヒスタミン剤での前投薬を必要とする)クレモフォアELなど他の可溶性薬剤(市販のパクリタキセル製品タキソール(登録商標)と関連して使用されている)は避けるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国仮特許第60/936763号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】United States Pharmacopoeia
【非特許文献2】Remington's Pharmaceutical Sciences
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって本発明の目的は、ほとんどまたはまったくポリソルベート80界面活性剤を含まない、注射に適したドセタキセル製剤を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、ほとんどまたはまったくアルコールを含まない、注射に適したドセタキセル製剤を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、ポリソルベート80界面活性剤およびアルコールを有していない、注射に適したドセタキセル製剤を提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、ポリソルベート80界面活性剤をほとんどまたはまったく有しておらず、さらにクレモフォア界面活性剤をほとんどまたはまったく有していないドセタキセルの液体濃縮物製剤を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、ポリソルベートをほとんどまたはまったく有していない、ドセタキセルの液体濃縮物を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、ポリソルベートもほとんどまたはまったく、クレモフォア成分もほとんどまたはまったく有していない、ドセタキセル液体濃縮物を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、ポリソルベート成分を完全に含まないドセタキセル液体濃縮物を提供することである。
【0020】
本発明のよりさらなる実施形態は、ポリソルベートおよびクレモフォア成分を両方とも完全に含まないドセタキセル液体濃縮物を提供することである。
【0021】
本発明のまた別の目的は、現在入手可能な製剤が、ポリソルベート80界面活性剤成分を有している場合、この現在市販されている製剤よりも過敏性反応の少ないドセタキセル製剤を提供することである。
【0022】
本発明のまた別の目的は、現在入手可能な製剤が、ポリソルベート界面活性剤成分を有している場合、この現在市販されている製剤よりも過敏性反応の少ないドセタキセル製剤を提供することである。
【0023】
本発明のまた別の目的は、現在入手可能な製剤が、ポリソルベート80界面活性剤成分およびアルコール成分を有している場合、この現在市販されている製剤よりも過敏性反応の少ないドセタキセル製剤を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、実質的にポリソルベート非含有の、しかもヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーを実質的に含まないドセタキセル液体濃縮物製剤を提供することである。
【0025】
本発明のよりさらなる目的は、実質的にポリソルベート非含有の、実質的にクレモフォア非含有の、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーを含まないドセタキセル液体濃縮物製剤を提供することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、実質的にポリソルベート非含有の、しかも置換セルロース系ポリマーを実質的に含まないドセタキセル液体濃縮物製剤を提供することである。
【0027】
本発明のよりさらなる目的は、実質的にポリソルベート非含有の、実質的にクレモフォア非含有の、置換セルロース系ポリマーを含まない、ドセタキセル液体濃縮物製剤を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、実質的にポリソルベート非含有の、しかもセルロース系ポリマーを実質的に含まないドセタキセル液体濃縮物製剤を提供することである。
【0029】
本発明のよりさらなる目的は、実質的にポリソルベート非含有の、実質的にクレモフォア非含有の、セルロース系ポリマーを含まないドセタキセル液体濃縮物製剤を提供することである。
【0030】
本発明のさらに別の目的は、上述のドセタキセル液体濃縮物の調製における使用に適切な第1希釈製剤を提供することである。
【0031】
本発明のよりさらなる目的は、ポリソルベート80界面活性剤が実質的に存在しないかまたは完全に存在しないドセタキセル含有生成物の注射用最終希釈液を提供することである。
【0032】
本発明のよりさらなる目的は、ポリソルベート80が実質的に存在しないかまたは完全に存在せず、クレモフォアが実質的に存在しないドセタキセル含有生成物の注射用最終希釈液を提供することである。
【0033】
本発明のよりさらなる目的は、ポリソルベート80界面活性剤が実質的に存在しないかまたは完全に存在せず、クレモフォアが実質的または完全に存在せず、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーが実質的または完全に存在しないドセタキセル含有生成物の注射用最終希釈液を提供することである。
【0034】
本発明のよりさらなる目的は、ポリソルベート80界面活性剤が実質的に存在しないかまたは完全に存在せず、クレモフォアが実質的または完全に存在せず、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーが実質的または完全に存在せず、アルコールが実質的または完全に存在しないドセタキセル含有生成物の注射用最終希釈液を提供することである。
【0035】
本発明のよりさらなる目的は、ポリソルベート界面活性剤が実質的に存在しないかまたは完全に存在しないドセタキセル含有生成物の注射用最終希釈液を提供することである。
【0036】
本発明のよりさらなる目的は、ポリソルベートが実質的に存在しないかまたは完全に存在せず、クレモフォアが実質的に存在しないドセタキセル含有生成物の注射用最終希釈液を提供することである。
【0037】
本発明のよりさらなる目的は、ポリソルベート界面活性剤が実質的に存在しないかまたは完全に存在せず、クレモフォアが実質的または完全に存在せず、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーが実質的または完全に存在しないドセタキセル含有生成物の注射用最終希釈液を提供することである。
【0038】
本発明のよりさらなる目的は、ポリソルベート界面活性剤が実質的に存在しないかまたは完全に存在せず、クレモフォアが実質的または完全に存在せず、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーが実質的または完全に存在せず、アルコールが実質的または完全に存在しないドセタキセル含有する生成物の注射用最終希釈液を提供することである。
【0039】
本発明のさらなる別の目的は、ドセタキセルの注射製剤用の上述の最終希釈液の調製に使用するのに適した第1希釈液を提供することである。
【0040】
本発明のよりさらなる目的は、ポリソルベート80界面活性剤を実質的に含まないまたは完全に含まない、再構成用のドセタキセル凍結乾燥物を提供することである。
【0041】
本発明のまた別の目的は、ポリソルベート80界面活性剤を実質的に含まないまたは完全に含まず、クレモフォア界面活性剤を実質的に含まないまたは完全に含まない、再構成用のドセタキセル凍結乾燥物を提供することである。
【0042】
本発明のまた別の目的は、ポリソルベート80界面活性剤を実質的に含まないまたは完全に含んでおらず、クレモフォア界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まず、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーを実質的に含まないかまたは完全に含まない、再構成用のドセタキセル凍結乾燥物を提供することである。
【0043】
本発明のまた別の目的は、ポリソルベート80界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まず、クレモフォア界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まず、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーを実質的に含まないかまたは完全に含まず、アルコールを実質的に含まない、再構成用のドセタキセル凍結乾燥物を提供することである。
【0044】
本発明のよりさらなる目的は、ポリソルベート界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まない、再構成用のドセタキセル凍結乾燥物を提供することである。
【0045】
本発明のまた別の目的は、ポリソルベート界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まず、クレモフォア界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まない、再構成用のドセタキセル凍結乾燥物を提供することである。
【0046】
本発明のまた別の目的は、ポリソルベート界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まず、クレモフォア界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まず、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーを実質的に含まないかまたは完全に含まない、再構成用のドセタキセル凍結乾燥物を提供することである。
【0047】
本発明のまた別の目的は、ポリソルベート80界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まず、クレモフォア界面活性剤を実質的に含まないかまたは完全に含まず、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーを実質的に含まないかまたは完全に含まず、アルコールを実質的に含まない、再構成用のドセタキセル凍結乾燥物を提供することである。
【0048】
本発明のさらに別の目的は、再構成用の凍結乾燥物中または希釈剤中のポリソルベート80界面活性剤を使用せずに再構成することができるドセタキセルの凍結乾燥物を提供することである。
【0049】
本発明のまた別の目的は、凍結乾燥物中または再構成用の希釈剤中の、ポリソルベート80界面活性剤を使用せずに、およびクレモフォア界面活性剤を使用せずに再構成することができるドセタキセルの凍結乾燥物を提供することである。
【0050】
本発明の別の目的は、凍結乾燥物中または再構成用の希釈剤中の、ポリソルベート80、クレモフォアおよびヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーのいずれも使用せずに再構成することができるドセタキセルの凍結乾燥物を提供することである。
【0051】
本発明のさらなる別の目的は、凍結乾燥物中または再構成用の希釈剤中の、ポリソルベート80、クレモフォア、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーおよびアルコールのいずれも使用せずに再構成することができるドセタキセルの凍結乾燥物を提供することである。
【0052】
本発明のさらなる別の目的は、再構成用の凍結乾燥物中または希釈剤中のポリソルベート界面活性剤を使用せずに再構成することができるドセタキセルの凍結乾燥物を提供することである。
【0053】
本発明のまた別の目的は、再構成用の凍結乾燥物中または希釈剤中の、ポリソルベート界面活性剤を使用せずに、およびクレモフォア界面活性剤を使用せずに再構成することができるドセタキセルの凍結乾燥物を提供することである。
【0054】
本発明の別の目的は、再構成用の凍結乾燥物中または希釈剤中の、ポリソルベート界面活性剤、クレモフォア、および置換セルロース系ポリマーのいずれも使用せずに再構成することができるドセタキセルの凍結乾燥物を提供することである。
【0055】
本発明のさらなる別の目的は、再構成用の凍結乾燥物中または希釈剤中の、ポリソルベート界面活性剤、クレモフォア、置換セルロース系ポリマーおよびアルコールのいずれも使用せずに再構成することができるドセタキセルの凍結乾燥物を提供することである。
【0056】
本発明のまた別の目的は、いかなるセルロース系ポリマーも実質的に含まないかまたは完全に含まず、セルロース系ポリマーを相当量使用せずまたはいかなる量も使用せずに、再構成または希釈することができるドセタキセルを含有する製剤、液体濃縮物、凍結乾燥物などを提供することである。
【0057】
本発明の別の目的は、ドセタキセルの投与開始前にデキサメタゾンもしくは他のいかなるステロイドの投与も必要とせず、および/または抗ヒスタミン剤の投与を必要としない、ドセタキセルを患者に投与する手段を提供することである。
【0058】
本発明のまた別の目的は、現在市販されているドセタキセル注射用製品に存在するポリソルベートに起因する、ドセタキセル投与に伴う下痢の副作用を、完全とまではいかないまでも、主に回避することである。
【0059】
本発明のよりさらなる目的は、ドセタキセル投与開始前にデキサメタゾンまたは他のいかなるステロイドの投与も必要とせず、および/または抗ヒスタミン剤の投与を必要とせず、ならびにドセタキセル投与中または投与後にデキサメタゾンまたは他のいかなるステロイドもしくは抗ヒスタミン剤の投与も必要としない、ドセタキセルを患者に投与する手段を提供することである。
【0060】
本発明のよりさらなる目的は、当業者により認識されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0061】
本発明のこれらおよび他の目的は、ドセタキセルと、(a)少なくとも55mg/mlの量のドセタキセルを溶解できる、少なくとも1種の医薬的に許容される可溶化賦形剤、または(b)同時に(別々ではなく)少なくとも55mg/mlの量のドセタキセルを溶解することが可能な医薬的に許容されるヒドロトロープの混合物、または(c)これらの混合物、または(d)少なくとも1種の医薬的に許容される可溶化補助剤(この可溶化補助剤は、単独で、または他の可溶化補助剤と組み合わせて、少なくとも55mg/mlの量のドセタキセルを溶解しない)と組み合わせた少なくとも55mg/mlの量のドセタキセルを溶解できる少なくとも1種の医薬的に許容される可溶化賦形剤、とを含む組成物により達成することができる。このようなドセタキセル溶液は、医薬的に許容される可溶化剤、ヒドロトロープ、またはこれらをそのまま混合したもしくはこれらの水溶液での混合物のいずれかの状態であり、通常さらなる可溶化補助剤は含まないが、必要に応じてさらにそのような可溶化補助剤を含んでもよい。本発明の各溶液は、ポリソルベート80が完全に不在とまではいかなくとも、ポリソルベート80が実質的に存在せず、任意選択で、ポリエトキシ化された植物油、ポリエトキシ化されたヒマシ油、ポリエトキシ化され部分的に水素付加された植物油、ポリエトキシ化され部分的に水素付加されたヒマシ油、ポリエトキシ化され水素付加された植物油、ポリエトキシ化され水素付加されたヒマシ油のうちの1種または複数が実質的に存在しないかまたは完全に存在せず、任意選択で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(好ましくはヒドロキシアルキルアルキルセルロース、より好ましくは置換セルロース系ポリマー)が、実質的に存在しないかまたは完全に存在せず、任意選択で、エタノールが実質的に存在しない。エタノールは、凍結乾燥物の調製に使用し得るが、凍結乾燥プロセスの間に、完全とはいかなくとも実質的に取り除かれる。ポリソルベート80およびクレモフォア系の可溶化剤を回避することによって、現存のタキサン製剤の悩みの種である過敏性反応を回避し、治療前および/または治療後のステロイドおよび/または抗ヒスタミン剤を削減または排除することができる。ポリソルベート80を回避することで、ポリソルベート80によって起こる下痢の副作用がさらに回避
される。これらはそれぞれ、より良い、より効果的な投与計画を可能とし、現在市販されているタキサン注射剤と比較して、推奨投薬に対する患者のコンプライアンスが改善される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
適用なし
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、(a)ドセタキセル製剤、(b)ドセタキセルの注射用製剤を調製するための濃縮物、(c)そのような注射用組成物へと再構成されるドセタキセル凍結乾燥物またはそのような組成物へとさらに希釈されることになる濃縮物へと再構成されるドセタキセル凍結乾燥物、さらに(d)それぞれを製造する方法を対象とする。ドセタキセルによる治療可能な状態をドセタキセル製剤で治療する方法、特にステロイドによる前治療を行う必要としない治療、または少なくともドセタキセルを投与する現在の方法と比較して、ステロイドによる前治療での量を削減することも、治療前/治療後の抗ヒスタミン剤を必要としない治療と同様に、本発明の一部である。製剤、濃縮物、凍結乾燥物、中間希釈液および最終投与用の注射剤での提示は、ポリソルベート80を実質的に含まない、好ましくは完全に含まない、より好ましくはいかなるポリソルベート界面活性剤も実質的に含まない、さらにより好ましくは完全に含まない。
【0064】
ドセタキセルを非毒性の医薬的に許容される賦形剤と共に配合する場合、ドセタキセルは、癌患者に、より多量の投与量で(現在の投薬範囲である75から100mg/m2を超えて)、またはより高い注入速度で(点滴時間10から15分間で少なくとも1mg/mlまで)、薬物により長く曝露し(6サイクルより多く)、および/または各サイクル間を3週間未満として投与でき、さらに副作用が原因で、いかなる投薬サイクルを抜かしたりまたは投与量を削減したりせずに、投与することができる。換言すれば、ドセタキセルを医薬的に許容される無害な賦形剤と共に配合する場合、癌患者は、ドセタキセルに対してより良い耐容性を示すことになり、彼らは、投与を中断および削減することなく、現在の製剤と比較してより長い期間に渡り薬物適用を受けることができるので(したがって全体的および累積的な投与量は、潜在的により高くなる)、癌患者にとって極めて有益である。ドセタキセルへのより長い曝露により、腫瘍において投薬密度をより長い期間維持し、これによって癌細胞を首尾よく根絶するのを助け、疾患の再発を最小限に抑える。さらに、ステロイドによる前治療段階(通常、現存する市販のドセタキセル製品を使用)の削減または排除は、免疫系の低下、患者が摂取している可能性のある他の薬物との薬物間での相互作用およびステロイド投与の副作用の回避に対する懸念が少なくなることを意味する。さらに、Tween成分(ポリソルベート成分)の回避は、下痢の実質的な原因および現在のドセタキセル点滴において見られる紅斑副作用を排除することを意味する。最後に、ポリソルベート成分の除去および現在の適量よりも高い投与量での投与を可能にすることにより、現在のタキソテール製剤のポリソルベートおよび/またはアルコール成分により課される投与制限のために、以前はドセタキセルを使用して治療できなかった状態も、ドセタキセルを使用して現在治療することもできる。
【0065】
本発明の目的のため、「可溶化剤」および「ヒドロトロープ」という用語は、以下の定義を有することになる:「可溶化剤」は、溶媒中または溶媒の水溶液中で、溶液1mlにつき少なくとも55mgを超えるドセタキセルの濃度で液体濃縮物を調製するために、ドセタキセルを溶解することが可能である溶媒であり、一方で「ヒドロトロープ」は、親油性薬物を可溶化するため(さらには、液体濃縮物が低い濃度にさらに希釈される場合、ドセタキセル(または製剤中の他の親油性薬剤)の沈殿を阻止するため)に多量に存在する物質として定義される。ヒドロトロープは、ドセタキセルまたは他の任意のそのような親油性薬剤を可溶化し、薬物を溶解するために多量に必要とされるが、それでも可溶化剤が溶解する程度までには薬物を溶解しない。しかし、2種以上のヒドロトロープを、溶解度において相乗的に作用させることができ、これによってこの組合せを本発明の文脈における「可溶化剤」として使用することができる(やはりこの場合もドセタキセルは、この相乗的組合せで少なくとも55mg/mlの溶解度を有するものとする)。場合によって可溶化剤は、十分な溶解度を提供できるので、別個のヒドロトロープまたは他の可溶化補助剤を必要としないこともあるが、これは一般的なことではない(すなわち、別個のヒドロトロープが通常望ましい)。明確には、溶媒を使用して、少なくともドセタキセル55mg/ml、好ましくは少なくとも60mg/ml以上のドセタキセルを直接溶媒に入れるか、またはその水溶液中に入れて溶液を生成することができれば、これは、本発明による「可溶化剤」である。例えば、Tween80、グリコフロール、エタノールなどは可溶化剤と分類できる一方、TPGS1000、PEG400およびプロピレングリコールはヒドロトロープに分類される。可溶化剤中の薬物濃度は、薬物の親油性に応じて変化する。以下の表は、ドセタキセルを用いたいくつかの溶解度の実験を示している。少なくとも約55mg/ml、好ましくは少なくとも約60mg/mlの量までドセタキセルを溶解することができると報告された各溶媒は、本発明による「可溶化剤」である。当業者であれば、文献を参照するか、または以下の実施例に示されているものなど簡単な溶解度の実験を行うかのいずれかによって、他の適切な物質がわかる。ドセタキセル溶解度が、以下
の表において10mg/ml以上である物質の中で残りのもののいくつかは、本発明の定義による「ヒドロトロープ」と見なすことができ、可溶化剤でもヒドロトロープでもないが、ドセタキセルを溶解する能力がいくらかある他の物質は、「可溶化補助剤」である。ポリソルベート(Tweens)は、優れた可溶化剤ではあるが、注射用溶液成分としてのその耐容性問題のため、本発明では、ポリソルベート(Tweens)を使用しない。よって、本発明は、ポリソルベート界面活性剤を使用せずに同様またはより良い結果(タキソテール製剤よりも)を得る試みである。N-メチル2-ピロリドン、ラブラファック、ペセオールおよびマイシン35-1など試験した溶媒のいくつかは、非経口の治療に使用されておらず、本発明における使用のための物質ではない。異なる官能基を含有する異なる賦形剤によって、ドセタキセルの溶解度がいかに変わるかを理解するためにこのような賦形剤の溶解度実験を行った。可溶化剤は、十分に多くの量で使用した場合、ヒドロトロープとしても作用することができる(点滴液体で希釈)。例えば、グリコフロール中のドセタキセル溶解度は、約200mg/mlである。この液体濃縮物を投与濃度まで水で希釈した場合、ドセタキセルは沈殿する。よって、ドセタキセルの沈殿を防ぐために液体濃縮物を希釈する特別な希釈剤が必要となる。ドセタキセルをグリコフロール中約10mg/ml溶液として調製した場合、IV液体で投与濃度まで希釈すれば沈殿しない。したがって、薬物とグリコフロールの比を200:1から約10:1に下げる(グリコフロール濃度は20倍の増加)ことによって、グリコフロールは、可溶化剤として(濃縮物中で)、さらにヒドロトロープとして(希釈された点滴溶液濃度で)作用する。以下の表においておよび本明細書の残りの部分で、「可溶化剤」および「ヒドロトロープ」という用語は、特に具体的な明記がなく、または文脈上必要でない限り、濃縮物に関連して(初期濃縮物でも中間濃縮物でも)使用されることになる。
【0066】
【表1】

【0067】
試験した溶媒の中には、非常に高いドセタキセル溶解度を示すもの、液体濃縮物の製造を可能とするようなものもあったが、いくつかの例において、水および他の通常の希釈剤での希釈の際に(注射用製品、例えば生理食塩水または5%ブドウ糖溶液などの調製のため)、ドセタキセルは溶液から出てしまった。したがって、溶媒が、可溶化剤として単に適合しているだけでは、本発明を完成するのに十分ではない。適切な生成物を得るためにも、適切な注射用希釈剤溶液(注射用の水、生理食塩水溶液または注射用ブドウ糖溶液)で希釈した際の挙動も、研究する必要がある。このようなさらなる研究は、本発明の開示を受けた当業者であれば、能力の範囲内である。
【0068】
上記にかかわらず、本発明のための可溶化剤は、グリコフロール、酢酸、N-β-ヒドロキシエチルラクトアミドおよびベンジルアルコールからなる群から選択することができる(無制限に)。ドセタキセルの凍結乾燥および/またはドセタキセルのある製造手順および精製手順から生じる、ある実施形態に存在し得るエタノールは、これらのプロセスにおける溶媒としての使用に限られ、したがって少量のエタノールが活性薬剤に残っている可能性がある。ほとんどの実施形態において、エタノールは、いかなる有意な量(通常、約2000ppm未満、好ましくは約1000ppm未満、より好ましくは約500ppm未満、さらにより好ましくは約250ppm未満、最も好ましくは約200ppm以下)でも存在せず、多くの実施形態では完全に不存である。ドセタキセルに対し他の溶媒(注射用最終製剤中に存在することが許容されないもの)を凍結乾燥プロセスに使用し得るが、ただし、これらの溶媒は、凍結乾燥プロセス中に取り除かれるものとする。しかし、これらの溶媒は、凍結乾燥手順の中でさえも使用しないことが好ましい。グリコフロールは、テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテルとしても知られており、以下の構造を有する:
【0069】
【化2】

【0070】
(式中、nは、グリコフロール75に対して平均して2であるが、他のグリコフロールに対しては他の整数であってよい。)。グリコフロール、特にグリコフロール75は、ドセタキセルが、これに極めて可溶性であることから(グリコフロール75中200mg/ml)、最も好ましい可溶化剤の1つである。一方でグリコフロール75は、グリコフロールの中で最も好ましく、上記式において、nの平均が、約2〜約8、好ましくは2〜約6、より好ましくは2〜約4、より好ましくは約2または約3または約4であるものも適切である。より大きい値のnを使用できるが、より大きいグリコフロール(nの平均が約8を超える)の妥当性は、急速に低下する。
【0071】
本発明のためのヒドロトロープは、ポリエチレングリコール、特にPEG400、プロピレングリコール、PEG中(特にPEG400中)ルトロール2%、トコフェロール化合物、特にトコフェロール-ポリエチレングリコール、より詳細にはトコフェロールポリエチレングリコールジ酸(例えばコハク酸、マレイン酸など)のエステル、特にトコフェロールポリエチレングリコールスクシネート、最も好ましくはトコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート(TPGS1000)、ラブラファック、ペセオール、マイシン35-I、N-メチル-2-ピロリドン、安息香酸ベンジル、炭酸エチル、プロピレンカーボネート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、C12〜18の飽和脂肪酸、一不飽和脂肪酸または二不飽和脂肪酸のC1〜4アルキルエステル、特にエチルオレエート、ジオキソラン、グリセロールホルマール、ジメチルイソソルビド、ソルケタール、ゲンチシン酸およびこれらの混合物からなる群から一般的に選択される(無制限に)。ラブラファック、ペセオール、マイシン35-I、およびN-メチル-2-ピロリドンは、注射による使用には一般的に適しておらず、したがって、このような物質を使用するのは一番望ましくなく、一般的に避けるべきである。ヒドロトロープの混合物の中には、ドセタキセルの溶解度に相乗的に作用するので、組合せにより本発明の「可溶化剤」として使用できるものもある。ヒドロトロープのどの組合せが、可溶化剤として使用できるくらい溶解度に相乗的に作用することになるかの立証は、完全に当技術分野の通常の技量の範囲内である通例の溶解度実験で行うことができる。それだけで可溶化剤である物質の代わりにこのような組合せを用いる場合、製剤は、(a)ヒドロトロープの相乗的組合せのうちの1つを追加量で含有するか、もしくは(b)異なるヒドロトロープを含有するか、もしくは(c)どちらも含有しないか、または所望する場合、可溶化補助剤をさらに含有してもよい。
【0072】
ドセタキセル活性薬剤を、可溶化剤(可溶化剤には、混合物を可溶化剤として認定するために必要なドセタキセル溶解度を有するヒドロトロープ混合物も含まれる)の単独中、または可溶化剤とヒドロトロープの混合物中に溶解することによって、透明な溶液(すなわち初期の高濃縮物製剤)を得ることができる。これは、水の存在下でもまたは不存在下でも行うことができるが、水が存在しないことが好ましい。ヒドロトロープが、初期の高濃縮物溶液中に存在する場合、他の添加順序で適切なものもあるが、まず第1にヒドロトロープを可溶化剤に加え、ドセタキセル(単独でまたは可溶化剤との溶液中のいずれかで)を可溶化剤/ヒドロトロープ溶液に加えることが好ましい。これらは、次いで凍結乾燥することができ、この凍結乾燥物は、以前に記載した物質から、回避するように具体的に示されたものおよび注射用製剤と相容性のないものを除いた物質の群から選択される溶媒、ヒドロトロープ、可溶化補助剤を用いて濃縮物を形成するために再構成することができる。初期の高濃縮物溶液は、室温または冷蔵条件下で保存することができるが、冷蔵条件下(好ましくは約3〜8℃)が好ましい。この濃縮物溶液は、次いで可溶化剤と任意選択でヒドロトロープ(初期濃縮物にすでにヒドロトロープが存在するか否かを問わず)とを含有する第1希釈剤で希釈するか、または可溶化剤/ヒドロトロープの両方がすでに存在する場合には、注射用希釈剤液のみを単独で、またはさもなければ可溶化剤/ヒドロトロープが存在するか否かを問わず、可溶化剤および/またはヒドロトロープのうちの1つまたは両方を有する希釈剤で希釈することによって、ドセタキセル5〜20mg/ml以上、好ましくは約10mg/ml(ただし、他の中間濃縮物も形成できる)の濃度範囲の中間濃縮溶液を一般に得ることができる。この中間濃縮物は、現在市販されているタキソテール(登録商標)製品において推奨されているものと同じ濃度範囲となるよう意図された投与用に、注射用希釈剤溶液(一般的に注射用の水、生理食塩水溶液、または注射用ブドウ糖5%)で濃度0.3から0.74mg/mlまでさらに希釈するが、以前論じたように、ポリソルベート成分は存在しないので、より高い点滴濃度(少なくともドセタキセル1mg/ml以上まで)さらにより速い注入速度も本発明には適切である。ヒドロトロー
プが濃縮物製剤内に存在しない場合には、中間濃縮物を調製するための希釈剤溶液に、適量のヒドロトロープが存在すべきか、または注射用希釈剤溶液での希釈を行う前の時点で、ヒドロトロープを別々に濃縮物に加えてもよい。初期の高濃度溶液に十分な量の可溶化剤およびヒドロトロープの両方が存在する場合、必要に応じて、初期の高濃縮物溶液を注射用希釈剤(例えば、生理食塩水、注射用の水またはD5W)で直接希釈することによって、タキソテール(登録商標)が推奨する投与可能な濃度である、1mlにつきドセタキセル約0.74mg以下(または必要に応じてこれより高い濃度)を達成することもできる。ただし、上記に提示した2つのステップ工程で希釈液を調製するのが最も良い。極めて好ましい実施形態において、ドセタキセルは、可溶化剤(好ましくはグリコフロール)中で、濃度約40mg/ml以上に溶解することによって第1濃縮物溶液を形成する。別個に、ヒドロトロープ(好ましくはTPGS1000)を可溶化剤(好ましくはグリコフロール)/水の混合物中に溶解することによって可溶化剤/水の混合物(本明細書中では、ドセタキセル濃縮物用の希釈剤の一実施形態と呼ばれている)において、ヒドロトロープ濃度約215mg/mlに到達する。この液体濃縮物および希釈剤溶液は、次いで包装を施し、商品流通用に保存することもできる。次いで希釈剤溶液を使用して、ドセタキセル濃縮物を、ドセタキセル約5〜約20mg/ml、好ましくはドセタキセル約8〜約15mg/ml、より好ましくはドセタキセル約10mg/mlの中間濃度に希釈する。次いでこの中間濃度溶液を、患者への投与用に、生理食塩水、5%ブドウ糖または他の適切な注射用希釈剤で、投与濃度に希釈する。すべての場合において、ポリソルベート80は、非常に少量に限定されるか(実質的にポリソルベート80を含まない)、または完全に存在しないが、好ましくは完全に存在せず、より好ましくはいかなるポリソルベートも実質的には存在せず、最も好ましくは前述のものには完全に存在しない。一部の実施形態において、凍結乾燥物、液体濃縮物、中間濃縮物および投与製剤用に希釈された物は、クレモフォアを実質的に含まず、より好ましくはまったく含まず、好ましくはすべてのポリエトキシ化された植物油(全部水素付加されているか、部分的に水素付加されているか、ま
たは水素付加されていないかにかかわらず)を実質的に含まず、さらにより好ましくはまったく含まない。他の実施形態では、凍結乾燥物、液体濃縮物、中間濃縮物および投与製剤用に希釈されたものは、エタノールを実質的に含まず、さらにより好ましくはエタノールをまったく含まない。よりさらなる実施形態において、凍結乾燥物、液体濃縮物、中間濃縮物および投与製剤用に希釈された物は、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマー(好ましくは置換セルロース系ポリマー、より好ましくはセルロース系ポリマー)を実質的に含まず、好ましくはまったく含まない。さらに他の実施形態において、上述のポリソルベート、ポリエトキシ化された植物油(全体的もしくは部分的に水素付加されているか、または水素付加されていない)、置換セルロース系ポリマーおよびエタノールをそれぞれ、まったく含まないとまではいかなくとも、実質的に含まない。
【0073】
ドセタキセルを単に溶解することに加えて、未加工のドセタキセルは、凍結乾燥し、濃縮物質へ(凍結乾燥物が可溶化剤および/またはヒドロトロープのいずれかまたは両方を要求された量で含有しているかどうかに応じて、以下のいずれかの濃縮物:高濃度の初期濃縮物製剤、またはそのまま中間濃縮物製剤へ、またはさらにそのまま投与可能な濃縮物へ)と再構成されるよう、凍結乾燥物として提供することもできる。この凍結乾燥手順は、凍結乾燥目的の適切な溶媒を用いた通例の凍結乾燥であってよい。凍結乾燥手順の過程で、凍結乾燥溶媒が退却しない限り、凍結乾燥では、非経口投与に適切ではない溶媒が使用され得るが、一般的には非経口の使用に適切な物質が使用されることになる。可溶化剤およびヒドロトロープは、凍結乾燥物が形成された後、その前の任意の時点、または再構成の時点で、加えることもできるので、凍結乾燥用のドセタキセル溶液は、本発明の可溶化剤またはヒドロトロープを使用している溶液である必要はない。しかし、必要に応じて、凍結乾燥手順中またこれを介して、凍結乾燥物中に残った特定の可溶化剤および/またはヒドロトロープおよび/または可溶化補助剤を、凍結乾燥前にドセタキセル溶液に加えることによって、凍結乾燥物が適量のドセタキセルと、任意選択で1種または複数の可溶化剤および/またはヒドロトロープと、任意選択で1種または複数の本発明の可溶化補助剤を含有するようにすることもできる。凍結乾燥物が可溶化剤およびヒドロトロープの両方を適量で含有するような場合には、適量の注射用希釈剤溶液による再構成によって、本発明のいくつかの実施形態の完全な製剤が得られる。それぞれの場合、凍結乾燥物、これから生成される濃縮物、これから生成される中間濃縮物および投与濃度の製剤は、凍結乾燥を用いずに生成される製剤に関してさらによく記載されている通り、それぞれが、ポリソルベート、クレモフォア、ポリエトキシ化された植物油、ヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマー、置換セルロース系ポリマー、セルロース系ポリマーおよびエタノールに関して上記に説明されている独立したまたは同時発生的な制限の対象となる。
【0074】
本発明の製剤に取り込み得る追加の成分として、注射目的に適していることが当技術分野で知られているものの中でも、例えば酸化分解反応に対する保護剤などの補助的助剤、例えば制限なしで、抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーなど、例えば制限なしで、α-リポ酸(チオクト酸としても知られている)、サルファアミノ酸(例えば、制限なしで、メチオニンおよびシステイン)、アセトン重亜硫酸およびそのアルカリ塩、アスコルビン酸が挙げられる。TPGS成分は、その合成中に形成される少量のペルオキシド分子で汚染される可能性があり、これはバッチによって異なるので、このような任意選択の物質が、役に立つ。保護剤またはフリーラジカルスカベンジャーを組み入れることによって、上記により引き起こされる可能性のある酸化分解プロセスおよびフリーラジカルによる分解プロセスからドセタキセルを保護する。組み入れる場合、リポ酸は、中間濃縮物を作るための初期濃縮物の希釈に使用される希釈剤溶液に含まれることが好ましいが、凍結乾燥バイアル溶液に含まれていてもよい。好ましい製剤において、リポ酸は、中間濃度製剤中に通常、約50mg/mlまで、好ましくは約20〜約40mg/ml、より好ましくは約20〜約36.6mg/ml、さらにより好ましくは約22.5〜約30mg/ml、最も好ましくは約25mg/mlの量で存在する。したがって、中間濃縮物ドセタキセルが約10mg/mlで、リポ酸濃度が約25mg/mlである場合、最終投与濃度である点滴中のドセタキセル約0.3mg/mlへと希釈すると、リポ酸濃度は、約0.75mg/mlであり、中間濃縮物から点滴投与濃度であるドセタキセル0.74mg/mlへ希釈すると、リポ酸濃度は約1.88mg/mlである。中間濃縮物1mlにつきリポ酸25mgを達成するためには、希釈する初期濃縮物から中間濃縮物を調製するために、初期濃縮物2mlにつき6ml使用される希釈剤に対して、200mgのリポ酸を加える必要がある(すなわち、ドセタキセル40mg/mlの濃縮物と合わせるための希釈剤のリポ酸濃度は、33.3mg/mlである)、または中間濃縮物もしくは中間濃縮物において同じ有効濃度を達成する組合せ(例えば、事前に凍結乾燥した溶液中に適量が含有されている場合など)へと希釈する前に、濃縮物1mlにつきリポ酸25mgを濃縮物に加える必要がある。初期濃縮物2ml(ドセタキセル約40mg/ml)を、中間濃縮物(ドセタキセル10mg/ml)へとを希釈するための例示的な希釈剤組成物は、以下の通りであるが、これに限らない。
TPGS1000 1.5g
グリコフロール 1.5ml
リポ酸 200mg
水 3.0ml
合計 6.0ml
【0075】
好ましい実施形態において、ドセタキセル40mg/mlの初期濃縮物2mlにつき、上記例示的な希釈剤溶液6mlを加えることによって、ドセタキセル10mg/mlの好ましい中間濃縮物が生成され、次いでこれを点滴に適切な液体で投与濃度へと希釈する。リポ酸の代わりまたはリポ酸に加えて、サルファアミノ酸を用いる場合には、通常リポ酸とサルファアミノ酸の合計が上記リポ酸の制限を満たすような量で使用することができる。上記に示されたようなリポ酸に対する残りの代替物は、製剤が、ドセタキセルの投与濃度へと希釈されれば、代替物は、結果として生じる濃度および全点滴投与量での点滴に適した量で存在するような量で使用され得る。静脈内点滴投与分野の当業者は、このような量を、例えばUnited States PharmacopoeiaおよびRemington's Pharmaceutical Sciencesなどの標準的な医薬参考文献を参照することによって知ることになる。
【0076】
リポ酸成分に加えて、酸性の性質を埋め合わせる手段として、リン酸緩衝剤などの緩衝剤(または炭酸/重炭酸塩緩衝剤などを含むが、これに限らない他の適切な緩衝剤)を加えることができ、一般的に量は、製剤中のリポ酸または他の酸性の酸化保護剤、各約200mgにつき、リン酸緩衝剤が約100〜400mgである。緩衝剤はまた、事前に凍結乾燥された溶液に入れることもできるが、再構成または希釈のステップにおいて加えることが好ましい。緩衝剤は、中間濃縮物を緩衝することができるよう、さらには最終点滴溶液のpHが、約5〜約7.5、好ましくは約5.5〜約7.2、より好ましくは約6〜約7、最も好ましくは約6.5〜約7となるように選択する。緩衝剤を生成するために使用される遊離酸または遊離塩基およびその共役塩の適量は、当業者の能力の範囲内で決めることができる。酸類のアルカリ金属塩に関しては、カリウムが好ましい。これは、希釈剤中に使用されているTPGSのため、カリウムイオンは、TPGSにより誘発される粘度の上昇を増加させる傾向にあるナトリウムイオンと比較して、TPGSにより引き起こされる点滴粘度の上昇を低下させるからである。代替の有機系緩衝物質は、その共役塩と一緒になった以下の物質(遊離化合物/塩の結合体は、緩衝剤物質の分野で知られているように、単独で加えられる遊離化合物または共役塩のいずれかからその場で形成し得る)アジピン酸、アミノ酸、例えば、制限なしに、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンなどを含むがこれらに限らない。水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム、好ましくは水酸化カリウムを使用することによって、最終のpH調整を上向きにすることができる。5から7.5のpH領域をもたらすために使用される水酸化カリウムの量は、好ましくは25〜40mgであるが、これ以上でもこれ以下でも適量として使用することができる。塩酸または追加のリン酸は、必要に応じて最終pH調整を下向きにするために使用することができる。重炭酸塩または炭酸塩、特にそのナトリウム塩またはカリウム塩、最も好ましくはそのカリウム塩も、pHを調整するために使
用し得る。
【0077】
本発明は、ドセタキセルの送達を対象としているので、適切な注射用(特に点滴、最も特にIV点滴)濃度に希釈してしまえば、当技術分野で知られているドセタキセルに応答する状態を治療するために適量で投与することができる。加えて本発明により、現在市販されているタキソテールよりも高い投与量および濃度が可能となるので、本発明により生成される濃縮物および投与可能なその剤形は、当技術分野で知られている、非臨床データによるドセタキセルの適応症の多くにも有用となるが、これら適応症に対しては、短時間でも累積的にも、ドセタキセルを十分に高い投与量で投与することができないため、現在市販のタキソテール製剤は推奨されていない。これら適応症には、結腸直腸癌、前立癌、膵癌などの癌ならびにリンパ腫および白血病などの液体腫瘍が含まれるがこれらに限らない。
【0078】
以下の実施例は、本明細書に付随する特許請求の範囲のみによって限定される、本発明の範囲を例証するために提示されるもので、制限するものではない。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
1.濃縮物
ドセタキセル ..... 80.0mg
TPGS1000 ......... 1900.0mg
【0080】
調製法:
1.TPGS1000をビーカーに取り、約70℃に加熱し、完全に溶融する。
2.ドセタキセルをこの溶融したTPGSに加え、60℃で約15分間継続して加熱する。
3.次いでこれを室温で冷却させ、希釈を研究する。
【0081】
2.希釈剤 ..... WFI
観察:
1.濃縮物は、室温、すなわち、22℃より低い温度で保存すると、蝋状で粘稠性になる。この粘稠性の塊を分散させるため、その後の希釈に適切な系を作製するために多量のWFIが必要となる。よって10mg/ml溶液を作製する第1のステップは、液体濃縮物では達成できない。
2.ドセタキセル10mg/mlの第1希釈液を獲得するために、上記濃縮物は、水浴内加熱することによって粘稠の液体を形成し、次いでこれを注射用に、水8mlで希釈した。第1希釈液は、少なくとも8時間の間は安定しており、これは、発明者らの製品において保証された安定状態であった。この溶液は、NSでさらに希釈した場合、投与用の最終溶液中の標的濃度範囲であるドセタキセル0.3〜0.74mg/mlを達成する。発明者らの製品での4時間の安定性とは反対に、この溶液は24時間の間安定している。本実施例において、ポリソルベート80の存在なしで、投与用ドセタキセルの標的濃度を実現した。
3.液体濃縮物の組成物においてTPGS1000の量を低下することを試みた結果、初期の希釈液または最終希釈液のいずれかにおいて、物理的安定性が喪失すること(薬物の沈殿)となった。
4.第1および第2の希釈剤として水を使用する場合、TPGS1000の濃度は、ドセタキセル1部につき、少なくとも23.75部でなければならない。
【0082】
(実施例2)
実施例1に引用された製剤について加熱ステップを避けるため、この実施例は、TPGS1000の含量を低下させ、濃縮物中にエタノールを添加している。TPGS1000の量の有意な減少と合わせて、エタノールを包含することによって、保存中に蝋状プラグが形成することがなくなった。
【0083】
濃縮物:
ドセタキセル 80mg
TPGS1000 200mg
エタノール 0.6ml
【0084】
調製の方法:
1.TPGSをエタノール中に溶解する。
2.これにドセタキセルを、添加および撹拌することによって、透明溶液を得る。
【0085】
2.希釈剤組成物:
TPGS1000 注射用で、水中に100mg/ml
1.濃縮物は、室温で液体であり、5℃またはこれより低い温度で保存する場合にのみ蝋状となるが、室温に置いた場合、5分で流動性の液体に戻った。
2.10mg/mlを得るための初期の希釈ステップの間に、バイアルの内容物は、バイアル内でチキソトロピー液になった。これは、約25分の超音波処理または約10分の加熱のいずれかによって透明な溶液へ戻すことができる。この溶液は、最初は透明であるが、3時間以内に沈殿が生じる。
3.希釈の第1段階において、TPGS1000濃度は、120mg/mlであり、ドセタキセル濃度は、10mg/mlである。
4.最初に希釈した溶液は、NSでさらに希釈することによって、標的濃度0.3〜0.74mg/mlを得ることができる。この溶液は、8時間安定している。対応するTPGS1000の濃度範囲は、3.6〜8.9mg/mlである。
【0086】
(実施例3)
実施例2における製剤の希釈中のゲル化作用を回避するために、アルコールを添加し、TPGS1000を10.0mlにつき2.0gmへと倍増することによって、新しい希釈剤を調製した。
【0087】
希釈剤組成物:
TPGS ............. 2000.0mg
エタノール ..... 3.0ml
WFI ................ 10.0mlまで十分量
1.10mg/mlを得るための初期の希釈段階が達成され、透明溶液には、沈殿物が約6時間観察されなかった。TPGS1000濃度は220mg/mlである。ドセタキセルを溶液中で少なくとも8時間保つための、薬物とTPGS1000との比は、1:22である。
2.ステップ1の希釈溶液は、NSでさらに希釈することによって、0.3〜0.74mg/mlの標的範囲を得ることができる。この溶液は、24時間安定している。対応するTPGS1000の範囲は、6.6〜16.3mg/mlである。
【0088】
(実施例4)
次の実験では、実施例2の製剤の液体濃縮物中および実施例3の希釈剤中で、エタノールをグリコフロールに置き換えた。ドセタキセルは、エタノール(120mg/ml)と比較してグリコフロール(200mg/ml)へのより良い溶解度を示したので、エタノールをグリコフロールで置き換えることによって、特定の系により、濃縮物中ならびに第1および第2の希釈段階においてドセタキセルが沈殿しないかどうか判定した。
【0089】
1.濃縮物:
ドセタキセル ........ 80.0mg
TPGS1000 ............ 200.0mg
グリコフロール ..... 0.5ml
【0090】
2.希釈剤組成物:
TPGS .................... 2000.0mg
グリコフロール ..... 2.5ml
WFI ....................... 10.0mlまで十分量
1.濃縮物は、室温で液体であり、5℃以下で保存された場合のみ蝋状となる。しかし、室温に置いた場合2分で流動性の液体に戻った。
2.10mg/mlを得るための初期の希釈が試みられる場合、透明な溶液として容易に達成される。生成物は、約6時間物理的に安定している。
3.最初に希釈された溶液をNSでさらに希釈することによって、標的濃度範囲0.3〜0.74mg/mlを得た。この溶液は、冷蔵条件下で24時間安定しており、室温で6時間安定している。
【0091】
(実施例5、6および7)
凍結乾燥のために、リン脂質(ホスホリポン90G)(または実施例7Aの場合、ソルビトールを用いて)および溶媒としてエタノールを用いて、以下の表に記載されている組成物を用いて、いくつかのバッチを凍結乾燥した。
【0092】
【表2】

【0093】
調製の方法:
ドセタキセルのエタノール中溶液100mg/mlを調製する。TPGS溶液は、エタノール中で500mg/mlの濃度で調製する。エタノール中にリン脂質保存液を、100mg/mlの濃度で調製する。本明細書に記載されているような組成物を入れた様々なバイアルを、以下に記載の条件下で凍結乾燥する。
【0094】
凍結乾燥条件:
1.バイアル内に導入した熱電対に示された生成物の温度が最低-30℃まで到達するまで、棚温度を-35℃まで低下させる。棚温度をこの温度で約8時間維持する。
2.チャンバーを約50ミリトールに排気する。
3.次いで生成物の温度が0℃に到達するまで棚温度を上昇させ、次いでこの温度を約10時間維持する。
4.最後に、この生成物を30℃で乾燥させる。
【0095】
凍結乾燥したケーキのテクスチャーは、3種類すべての製剤において優れている。凍結乾燥されたバイアルは、初期の希釈の場合にはドセタキセル10mg/mlを目標に、この初期の希釈に続いてNSで希釈する場合にはドセタキセル0.3〜0.74mg/mlの間を目標にして、異なる希釈剤を用いて再構成し、沈殿の開始時間を観測した。
【0096】
(実施例8)
実施例6の凍結乾燥したバイアルを、初期の希釈のため以下の希釈剤で再構成することによって、10mg/mlのドセタキセルを得て、ドセタキセルの沈殿開始時間を観測した。
【0097】
希釈剤組成物:
1.乳酸(濃度88%):グリコフロール 1:1
再構成した溶液0.75mlを、最終濃度である0.75mg/mlに生理食塩水でさらに希釈した。この最終希釈試料に対しても、沈殿開始時間を観測した。
【0098】
再構成した初期溶液は、発明者の試料の8時間と比較して、96時間超もの間、透明で、粒子を含まない状態である。希釈した最終試料の沈殿開始時間は、発明者の製品が4時間であったの対して、約8時間であった。
【0099】
TPGS1000の濃度は、希釈の第1段階において100mg/mlであり、希釈の第2段階で、7.5mg/mlにさらに希釈する。TPGS1000の濃度は、非凍結乾燥の液体濃縮物製剤の濃度と比べ、凍結乾燥した製剤において有意に減少した。
【0100】
(実施例9)
実施例5〜7の凍結乾燥物は、乳酸/グリコフロール希釈剤を用いて再構成することもでき、再構成した溶液は、透明で、微粒子を含まず、少なくとも4時間安定している。希釈した最終溶液も4時間安定している。
【0101】
(実施例10)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、100〜250mg/mlのTPGS1000を用いて再構成することによって、透明で微粒子を含まない溶液を生成することができる。
【0102】
(実施例11)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、薄めていないグリコフロールを用いて再構成することによって、透明で微粒子を含まない溶液を生成することができる。
【0103】
(実施例12)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、薄めていない乳酸を用いて再構成することによって、透明な微粒子溶液を生成することができる。
【0104】
(実施例13)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、希釈した乳酸を用いて再構成することによって、透明で微粒子を含まない溶液を生成することができる。
【0105】
(実施例14)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、TPGSと乳酸の混合物を用いて再構成することによって、透明な微粒子溶液を生成することができる。
【0106】
(実施例15)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、TPGSとグリコフロールの混合物を用いて再構成することによって、透明な微粒子溶液を生成することができる。
【0107】
(実施例16)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、異なる濃度のN-(β-ヒドロキシエチル)-ラクトアミド溶液を用いて再構成することによって、透明で微粒子を含まない溶液を生成することができる。
【0108】
(実施例17)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、TPGSとN-(β-ヒドロキシエチル)-ラクトアミドの混合物を用いて再構成することによって、透明な微粒子溶液を生成することができる。
【0109】
(実施例18)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、N-(β-ヒドロキシエチル)-ラクトアミドとグリコフロールの混合物を用いて再構成することによって、透明な微粒子溶液を生成することができる。
【0110】
(実施例19)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、N-(β-ヒドロキシエチル)-ラクトアミド、TPGSおよびグリコフロールの混合物を用いて再構成することによって、透明な微粒子溶液を生成することができる。
【0111】
(実施例20)
実施例5〜7の凍結乾燥物はまた、以下の溶媒を組み合わせた混合物を用いて再構成することによって、透明な微粒子溶液を生成することができる。
1.炭酸エチル
2.プロピレングリコール
3.ポリエチレングリコール400
4.1,3-ブチレングリコール
5.オレイン酸エチル
6.ジオキソラン
7.グリセロールホルマール
8.ジメチルイソソルビド
9.ソルケタール
10.ゲンチシン酸
【0112】
(実施例21)
我々は、病院の職員には取り扱いやすいであろう0.74mg/mlの液体濃縮物への直接の希釈も研究した。グリコフロール中のドセタキセル10mg/mlの液体濃縮物を調製し、この濃縮物7.4mlを、TPGS1000を20mg/mlおよび生理食塩水を9mg/ml含有する希釈剤99mlで希釈した。この希釈溶液は、1週間に渡り透明である。
【0113】
(実施例22)
実施例21の液体濃縮物は、実施例20に記載の賦形剤を用いて調製することができ、同実施例に記載の希釈剤の組合せを用いて所望の濃度に希釈することもできる。
【0114】
(実施例23)
ドセタキセルをグリコフロール中に溶解することによって、ドセタキセル40mg/mlの濃度を有する透明な溶液が得られる。次いでこの初期の濃縮ドセタキセル溶液を、ドセタキセル溶液1ml/希釈剤溶液3mlの比の希釈剤溶液(水3.0mlおよびグリコフロール1.5ml中に溶解したトコフェロールポリエチレングリコールスクシネート1000、1500mgを有する)で希釈することによって、ドセタキセル10mg/mlを有する中間濃縮物溶液を得る。次いでこの中間体濃縮物を利用して、生理食塩水または5%ブドウ糖の点滴バッグ250ml内に中間濃度溶液(損失量が比較的少ない)の3つのバイアル(80mg/バイアルでの提示)をためることによって得られる中間濃縮物20ml(200mgドセタキセル)を溶解することによって、濃度0.74mg/mlのドセタキセルを送達する。80mg/バイアル液体濃縮物または20mg/バイアル液体濃縮物のいずれから調製された中間濃縮物のより少ない量を、250mlまたは100ml点滴バッグ内で溶解して、比例してより低い濃度で送達する。
【0115】
(実施例24〜29)
グリコフロール中に40mgドセタキセル/mlを有する濃縮物へ、以下に記載の成分を有する希釈剤を、ドセタキセル10mg/mlを有する中間濃縮物を生成するのに十分な量で加える。
【0116】
【表3】

【0117】
(実施例30)
ドセタキセルを、グリコフロール中で、10mg/mlの濃度で溶解する。この溶液を、IV点滴液に直接希釈することによって、0.3〜0.75mg/mlの濃度範囲を得る。得られた溶液は、安定している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種または複数の可溶化剤、および(b)1種または複数のヒドロトロープのうちの少なくとも1種と共にドセタキセルを含み、前記ヒドロトロープが、(1)前記可溶化剤と組み合わされているか、または(2)前記可溶化剤の有無にかかわらず、2種以上のヒドロトロープの混合物である、ドセタキセルの凍結乾燥物。
【請求項2】
前記可溶化剤が、少なくとも約55mg/mlの濃度までドセタキセルを溶解する物質である、請求項1に記載の凍結乾燥物。
【請求項3】
前記可溶化剤が、少なくとも60mg/mlの濃度までドセタキセルを溶解する物質である、請求項1に記載の凍結乾燥物。
【請求項4】
前記可溶化剤が、エタノール、グリコフロール、酢酸、ベンジルアルコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の凍結乾燥物。
【請求項5】
前記可溶化剤が少なくともグリコフロールである、請求項4に記載の凍結乾燥物。
【請求項6】
前記ヒドロトロープが、アスコルビン酸トコフェロール、トコフェロールホスフェートポリエチレングリコール、トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)、炭酸エチル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール400、1,3-ブチレングリコール、オレイン酸エチル、ジオキソラン、グリセロールホルマール、ジメチルイソソルビド、ソルケタール、ゲンチシン酸およびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の凍結乾燥物。
【請求項7】
前記ヒドロトロープが、少なくともTPGSであり、このTPGSのポリエチレングリコール部分は400〜8000の範囲の分子量を有する、請求項6に記載の凍結乾燥物。
【請求項8】
前記ヒドロトロープが、TPGS1000である、請求項6に記載の凍結乾燥物。
【請求項9】
前記ヒドロトロープが、リン脂質である、請求項6に記載の凍結乾燥物。
【請求項10】
前記ヒドロトロープが、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、アミノ酸およびモノカルボン酸からなる群から選択される、請求項6に記載の凍結乾燥物。
【請求項11】
前記ヒドロキシカルボン酸が、乳酸または濃縮乳酸である、請求項10に記載の凍結乾燥物。
【請求項12】
(a)緩衝剤、および(b)任意選択で、抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャー剤から選択される1種または複数の保護剤から選択されるメンバーのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の凍結乾燥物。
【請求項13】
前記抗酸化剤が、リポ酸および他のサルファアミノ酸からなる群から選択される、請求項12に記載の凍結乾燥物。
【請求項14】
ドセタキセルに加えて、少なくとも1種の可溶化剤および任意選択で少なくとも1種のヒドロトロープを有するドセタキセルの濃縮溶液であって、ポリソルベート80を実質的に含まない濃縮物。
【請求項15】
いかなるポリソルベート界面活性剤も実質的に含まない、請求項14に記載の濃縮物。
【請求項16】
前記ドセタキセルが、少なくともドセタキセル約22mg/ml溶液の濃度で存在する、請求項14に記載の濃縮物。
【請求項17】
水をさらに含み、前記ドセタキセルが、約5mg/ml〜約20mg/ml溶液の濃度で存在する、請求項14に記載の濃縮物。
【請求項18】
前記ドセタキセルが約10mg/mlの濃度で存在する、請求項17に記載の濃縮物。
【請求項19】
ドセタキセル、水、少なくとも1種の可溶化剤および少なくとも1種のヒドロトロープを含み、ポリソルベート界面活性剤を実質的に含まない、すぐ使用できるドセタキセル溶液。
【請求項20】
ポリソルベート界面活性剤を完全に含まない、請求項19に記載のすぐ使用できる溶液。
【請求項21】
ドセタキセルを含む、再構成される凍結乾燥物であって、グリコフロール50%/濃縮乳酸50%から実質的になる第1希釈剤で再構成される凍結乾燥物。
【請求項22】
ポリソルベート界面活性剤を含まない製剤中のドセタキセルを投与するステップを含み、ポリソルベート界面活性剤の存在が原因で起こる過敏症に関連した現在のガイドラインよりも過剰にドセタキセルを投与する方法。
【請求項23】
ポリソルベート界面活性剤を含まない製剤中のドセタキセルを投与するステップを含み、ポリソルベートをその中に有するドセタキセル製剤を投与するためのガイドラインと比較して、ステロイドを用いた前治療なしで、またはより少量のステロイドを用いた前治療と共にドセタキセルを投与する方法。
【請求項24】
ドセタキセル55mg/mlよりも過剰にドセタキセルを溶解することによって、第1濃縮物を形成することができるドセタキセル用の可溶化剤中にドセタキセルを溶解するステップと、
任意選択で、前記第1濃縮物を中間濃度まで希釈し、前記第1濃縮物または前記中間濃縮物を、注射用担体液で、ドセタキセル約0.3〜約0.74mg/mlの濃度へと希釈するステップとを含み、前記担体液が、水を含み、少なくとも1種の可溶化ヒドロトロープを、(a)前記第1濃縮物を形成する過程で、(b)前記第1濃縮物の形成後ではあるが、前記注射用担体液によるさらなる希釈の前に、または(c)前記担体液の一部として加える、ポリソルベート80の不存在下でドセタキセル注射用溶液を調製する方法。
【請求項25】
前記可溶化剤中に溶解されている前記ドセタキセルが、ドセタキセルの凍結乾燥物である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1濃縮物が、10mg/mlを超える濃度でドセタキセルを含有し、前記ドセタキセル0.3〜0.74mg/mlの濃度へとさらに希釈される前に、約10mg/mlの濃度でドセタキセルを有する第2濃縮物へと希釈される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ポリソルベートを実質的に含まず、(a)ポリエトキシ化された植物油、(b)エタノール、および(c)ヒドロキシルアルキル置換セルロース系ポリマーから選択される少なくとも1つのメンバーを実質的に含まない、請求項1に記載の凍結乾燥物。
【請求項28】
ポリソルベートを完全に含まず、(a)ポリエトキシ化された植物油、(b)エタノール、および(c)ヒドロキシルアルキル置換セルロース系ポリマーから選択される少なくとも1つのメンバーを完全に含まない、請求項1に記載の凍結乾燥物。
【請求項29】
ポリソルベート、ポリエトキシ化された植物油、エタノールおよびヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーそれぞれを完全に含まない、請求項1に記載の凍結乾燥物。
【請求項30】
ポリソルベートを実質的に含まず、(a)ポリエトキシ化された植物油、(b)エタノール、および(c)ヒドロキシルアルキル置換セルロース系ポリマーから選択される少なくとも1つのメンバーを実質的に含まない、請求項14に記載の濃縮物。
【請求項31】
ポリソルベートを完全に含まず、(a)ポリエトキシ化された植物油、(b)エタノール、および(c)ヒドロキシルアルキル置換セルロース系ポリマーから選択される少なくとも1つのメンバーを完全に含まない、請求項14に記載の濃縮物。
【請求項32】
ポリソルベート、ポリエトキシ化された植物油、エタノールおよびヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーをそれぞれ完全に含まない、請求項14に記載の濃縮物。
【請求項33】
ポリソルベートを実質的に含まず、(a)ポリエトキシ化された植物油、(b)エタノール、および(c)ヒドロキシルアルキル置換セルロース系ポリマーから選択される少なくとも1つのメンバーを実質的に含まない、請求項19に記載のすぐ使用できる製剤。
【請求項34】
ポリソルベートを完全に含まず、(a)ポリエトキシ化された植物油、(b)エタノール、および(c)ヒドロキシルアルキル置換セルロース系ポリマーから選択される少なくとも1つのメンバーを完全に含まない、請求項19に記載のすぐ使用できる製剤。
【請求項35】
ポリソルベート、ポリエトキシ化された植物油、エタノールおよびヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーをそれぞれ完全に含まない、請求項19に記載のすぐ使用できる製剤。
【請求項36】
ポリエトキシ化された植物油、エタノールおよびヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーのうちの少なくとも1つの使用が回避される、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
ポリエトキシ化された植物油、エタノールおよびヒドロキシアルキル置換セルロース系ポリマーがそれぞれ回避されている、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項19に記載の注射用溶液中のドセタキセルの有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、ドセタキセルで治療可能な状態を治療する方法。
【請求項39】
請求項33に記載の注射用溶液中のドセタキセルの有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、ドセタキセルで治療可能な状態を治療する方法。
【請求項40】
請求項34に記載の注射用溶液中のドセタキセルの有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、ドセタキセルで治療可能な状態を治療する方法。
【請求項41】
請求項35に記載の注射用溶液中のドセタキセルの有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、ドセタキセルで治療可能な状態を治療する方法。
【請求項42】
請求項19に記載の注射用溶液中のドセタキセルの有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、ドセタキセルで治療可能な状態を治療する方法であって、前記患者へステロイドを用いた前治療を行わない方法。
【請求項43】
請求項19に記載の注射用溶液中のドセタキセルの有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、ドセタキセルで治療可能な状態を治療する方法であって、前記患者へステロイドを用いた前治療および前記患者へ抗ヒスタミン剤を用いた前治療を行わない方法。
【請求項44】
ドセタキセルによる治療の特発性下痢の副作用を回避しながら、請求項19に記載の注射用溶液中のドセタキセルの有効量を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、ドセタキセルで治療可能な状態を治療する方法。
【請求項45】
ドセタキセル凍結乾燥物を再構成するステップを含み、任意選択で、前記再構成した凍結乾燥物を、点滴液を用いてドセタキセルの点滴投与可能な濃度まで希釈するステップを含む、ドセタキセル点滴溶液を調製する方法であって、
(a)前記凍結乾燥物が、ドセタキセルを含み、前記再構成用の希釈剤が、少なくとも1種のドセタキセル可溶化剤もしくはドセタキセルヒドロトロープのブレンド、任意選択で、1種もしくは複数のドセタキセルヒドロトロープ、任意選択で、1種もしくは複数のドセタキセル可溶化補助剤、任意選択で、1種もしくは複数の緩衝剤、ならびに任意選択で、抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーから選択される1種もしくは複数のメンバーを含むか、または
(b)前記凍結乾燥物が、ドセタキセルと、少なくとも1種のドセタキセル可溶化剤もしくはドセタキセルヒドロトロープのブレンドのうちの1種または複数と、任意選択で、1種もしくは複数のドセタキセルヒドロトロープと、任意選択で1種もしくは複数のドセタキセル可溶化補助剤と、任意選択で1種もしくは複数の緩衝剤と、任意選択で、抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーから選択される1種もしくは複数のメンバーとを含み、前記再構成用の希釈剤が、少なくとも1種のドセタキセル可溶化剤もしくはドセタキセルヒドロトロープのブレンドと、任意選択で、1種もしくは複数のドセタキセルヒドロトロープと、任意選択で、1種もしくは複数のドセタキセル可溶化補助剤と、任意選択で、1種もしくは複数の緩衝剤と、任意選択で、抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーから選択される1種もしくは複数のメンバーとを含む方法。
【請求項46】
ドセタキセル点滴溶液の調製方法であって、
(a)任意選択で、1種もしくは複数のドセタキセル用ヒドロトロープをさらに含有し、任意選択で、1種もしくは複数のドセタキセル可溶化補助剤を含有し、任意選択で、1種もしくは複数の緩衝剤を含有し、任意選択で、抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーから選択される1種もしくは複数のメンバーを含有する、1種もしくは複数のドセタキセル可溶化剤またはドセタキセルヒドロトロープのブレンド中で、ドセタキセルを溶解することにより濃縮物を形成するステップと、
(b)(1)前記濃縮物を中間濃縮物へ希釈し、点滴液を用いて点滴投与濃度へとさらにその後の希釈を行うステップ、または
(b)(2)前記濃縮物を、少なくとも前記点滴液を用いて点滴投与濃度に直接希釈するステップと
を含み、前記点滴液が、任意選択で、(A)1種もしくは複数のドセタキセル用ヒドロトロープ、(B)1種もしくは複数のドセタキセル可溶化補助剤、(C)1種もしくは複数の緩衝剤、ならびに(D)抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーから選択される1種もしくは複数のメンバーからなる群から選択される1種または複数の成分を含有し、
前記点滴液中にポリソルベート80が、実質的に存在しない方法。
【請求項47】
グリコフロール中に約5mg/ml〜約20mg/mlの量のドセタキセルを含み、(a)ポリソルベートが実質的または完全に存在せず、(b)任意選択で、クレモフォア、置換セルロース系ポリマーおよびエタノールの少なくとも1つが実質的または完全に存在せず、(c)ドセタキセル用の任意のヒドロトロープがさらに存在しない濃縮物。
【請求項48】
ドセタキセルとグリコフロールとを含み、(a)ポリソルベート、(b)クレモフォア、(c)置換セルロース系ポリマー、(d)エタノール、および(e)ドセタキセル用の任意のヒドロトロープがそれぞれ実質的または完全に存在しない、請求項47に記載の濃縮物。
【請求項49】
ドセタキセルとグリコフロールとから本質的になる、請求項47に記載の濃縮物。
【請求項50】
ドセタキセルとグリコフロールとからなる、請求項47に記載の濃縮物。
【請求項51】
前記ドセタキセルが約10mg/mlの量で存在する、請求項47に記載の濃縮物。
【請求項52】
前記ドセタキセルが、約0.754mg/mlまでの量で存在するように、請求項47に記載の濃縮物と点滴用希釈剤液とを含む点滴溶液。
【請求項53】
前記ドセタキセルが、約0.754mg/mlまでの量で存在するように、請求項48に記載の濃縮物と点滴用希釈剤液とを含む点滴溶液。
【請求項54】
前記ドセタキセルが、約0.754mg/mlまでの量で存在するように、請求項49に記載の濃縮物と点滴用希釈剤液とを含む点滴溶液。
【請求項55】
前記ドセタキセルが、約0.754mg/mlまでの量で存在するように、請求項47に記載の濃縮物と点滴用希釈剤液とを含み、(a)ポリソルベート、(b)クレモフォア、(c)置換セルロース系ポリマー、(d)エタノール、および(e)ドセタキセル用の任意のヒドロトロープがそれぞれ実質的または完全に存在しない点滴溶液。

【公表番号】特表2010−530872(P2010−530872A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513241(P2010−513241)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/007619
【国際公開番号】WO2009/002425
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(508148334)サイドース・エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】