Tc錯体と標的部分との複合体並びにMRI診断での使用
本発明は、アザ−ジアミンジオキシム配位子の改良99mTc放射性金属錯体組成物、これを含有する放射性医薬品製剤、放射性医薬品の製造用キットに関する。アザ−ジアミンジオキシム−標的分子キレート複合体のテクネチウム金属錯化学により、複数のテクネチウム種が生じることが判明した。本発明は、望ましくないテクネチウム種の存在が抑制された改良アザ−ジアミンジオキシム複合体テクネチウム金属錯体組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良99mTc放射性金属錯体組成物、該組成物を含有する放射性医薬品製剤、並びに放射性医薬品の製造用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5395608号には、99mTc、105Rh、109Pd、57Co、186Re、188Re、97Ru、111In、113mIn、67Ga及び68Gaを始めとする広範な放射性同位元素の放射性金属錯体の製造のための一群の五座配位型アザ−ジアミンジオキシム配位子が開示されている。ペンダントアリールスペーサー基を有する二官能性アザ−ジアミンジオキシム配位子が開示されており、米国特許第5395608号明細書の実施例3には、次の式Aの化合物が開示されている。
【0003】
【化1】
【0004】
式中、Ar=4−アミノベンジルである。
【0005】
米国特許第5395608号明細書には、かかるキレート剤の放射性標識法が上位概念で記載されているが、放射性金属99mTcについての標識法の具体的な実施例は記載されていない。
【0006】
Pillai et al[J.Nucl.Med.Biol.,38,527−31(1994)]には、式Aのアザ−ジアミンジオキシム類似体の99mTc標識が記載されているが、Arはベンジルである。99mTc標識は、室温で実施され、HPLC図は単一の99mTc種のみを示している。アザ−ジアミンジオキシムと標的分子との複合体は記載されていない。
【0007】
国際公開第99/60018号には、血栓イメージング用のアザ−ジアミンジオキシム配位子とペプチドとのキレート複合体が開示されている。このペプチドは酵素トランスグルタミナーゼ(即ち、XIIIa因子)の基質である。かかる好ましいキレート複合体は次式のアザ−ジアミンジオキシムであると記載されている。
【0008】
【化2】
【0009】
式中、ペプチドはα2−抗プラミン又はカゼインの断片である。
【特許文献1】米国特許第5395608号明細書
【特許文献2】国際公開第99/60018号パンフレット
【非特許文献1】Pillai et al, J.Nucl.Med.Biol.,38,527−31(1994)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
今回、かかるアザ−ジアミンジオキシム−標的分子キレート複合体のテクネチウム金属錯化学が複数のテクネチウム種を生じることが判明した。本発明は、望ましくないテクネチウム種が抑制された改良アザ−ジアミンジオキシム複合体テクネチウム金属錯体組成物を提供する。
【0011】
例えば、アザ−ジアミンジオキシムキレート複合体は、XTc(式中、x=94m、99又は99m)でキレート化すると、複数のテクネチウム種をもたらすことが判明した。これらの複数のXTc金属錯体種は、クロマトグラフィーで分離・検出することができる。複数のテクネチウム種のうちの数種は動態的生成物つまり過渡種であって、時間経過に伴って(場合によって加熱により)安定な生成物へと変化する。動力学的に優勢な(過渡)錯体から最終化学種へと変化する速度はpH依存性であり、pH9.5では2〜3時間を要するのに対して、pH10.5では通常60分で十分である。この反応は加熱によって促進できる。今回、これらの複数のXTc錯体種のうちの数種が親油性で、放射性医薬品の生体内分布に悪影響を与えかねないことも判明した。本発明は、これらの動態的及び親油性種のレベルが最小限に制御され、全体的イメージング特性が向上したテクネチウム錯体組成物を提供する。本発明は、品質の制御されたXTc錯体生成物組成物を迅速かつ再現可能に調製することができるように、所望の安定生成物への変換を最適化するための方法論も提供する。
【0012】
さらに本発明は、改良テクネチウム錯体組成物を含む放射性医薬品、並びにかかる放射性医薬品を製造するための非放射性キット処方物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の態様では、本発明は、放射性同位体XTcと以下の式(I)の配位子との金属錯体を含むテクネチウム錯体組成物であって、テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の10%未満が式Iの配位子の過渡xTc錯体である、テクネチウム錯体組成物を提供する。
【0014】
【化3】
【0015】
式中、R1及びR2は各々独立にR基であり、
xは94m、99又は99mであり、
Yは−(A)n−Zであるが、
式中、Zは分子量5000未満の生体標的部分であり、
−(A)nはリンカー基であって、各Aは独立に−CO−、−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NR−、−NRCO、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4−8シクロへテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基もしくはC3−12ヘテロアリーレン基又はポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸成分であり、
nは0〜10の整数であり、
各R基は独立にH又はC1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
【0016】
本発明の好適な放射性同位体xTcは、陽電子放射体94mTc、β放射体99Tc又はγ放射体99mTcである。好ましくはxは99mであり、つまり放射性同位体は好ましくは99mTcである。
【0017】
「配位子」という用語は、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤と生体標的分子(Z)との複合体を意味する。配位子は、生体標的分子に結合した放射線同位体xTcのアザ−ジアミンジオキシム金属錯体が形成されるように設計される。
【0018】
「生体標的分子」という用語は、3〜100量体のペプチドもしくはペプチド類似体(これらは直鎖ペプチドでも、環式ペプチドでも、これらの組合せでもよい)、又は酵素の基質もしくは阻害物質、又は合成受容体結合化合物、オリゴヌクレオチドもしくはオリゴ−DNAもしくはオリゴ−RNA断片を意味する。生体標的部分は合成品でも天然品でもよいが、好ましくは合成品である。本発明の好適な生体標的部分は、5000ダルトン未満、好ましくは200〜3000ダルトンの範囲、さらに好ましくは300〜2000ダルトンの範囲の分子量を有し、400〜1500ダルトンが特に好ましい。
【0019】
「環式ペプチド」という用語は、2つの末端アミノ酸が共有結合で結合した5〜15個のアミノ酸配列を意味し、上記共有結合は、ペプチド結合でも、ジスルフィド結合でも、或いはチオエーテル、ホスホジエステル、ジシロキサン又はウレタン結合などの合成非ペプチド結合であってもよい。
【0020】
「アミノ酸」という用語は、L−又はD−アミノ酸、アミノ酸類似体又はアミノ酸模倣物質を意味し、これらは天然のものでも、純然たる合成品であってもよく、光学的に純粋、つまり単一の鏡像異性体でキラルなものでも、鏡像異性体の混合物であってもよい。好ましくは、本発明のアミノ酸は、光学的に純粋である。「アミノ酸模倣物質」という用語は、天然アミノ酸の合成類似体を意味し、これらはアイソスターであり、つまり天然化合物の立体及び電子構造を模倣するように設計されている。かかるアイソスターは、当業者に周知であり、特に限定されないが、デプシペプチド、レトロインベルソペプチド、チオアミド、シクロアルカン又は1,5−ジ置換テトラゾールが挙げられる[M.Goodman, Biopolymers,24,137,(1985)参照]。
【0021】
好適な酵素基質又は阻害物質には、グルコース及びフルオロデオキシグルコースなどのグルコース類似体、脂肪酸又はエラスターゼ阻害物質が挙げられる。好適な酵素基質又は阻害剤は生体標的ペプチドであってもよい(後述)。
【0022】
好適な合成受容体結合化合物としては、エストラジオール、エストロゲン、プロゲスチン、プロゲステロンその他のステロイドホルモン、ドーパミンD−1又はD−2受容体のリガンド又はトロパンなどのドーパミン輸送体、及びセロトニン受容体のリガンドが挙げられる。
【0023】
本発明の好適な生体標的ペプチドは、3〜20量体のペプチド(つまり3〜20個のアミノ酸を有するペプチド)、好ましくは4〜15量体、さらに好ましくは5〜14量体などの断片である。これらのペプチドは環状でも、線状でも、これらの組合せであってもよい。ペプチドは合成品でも天然品でもよいが、好ましくは合成品である。かかるペプチドとしては、以下のものが挙げられる。
ソマトスタチン、オクトレオチド及び類似体、
ラミニン断片、例えば、YIGSR、PDSGR、IKVAV、LRE及びKCQAGTFALRGDPQG、
白血球蓄積部位を標的するためのN−ホルミルペプチド、
血小板第4因子(PF4)の断片、
RGD−含有ペプチド、
酵素トランスグルタミナーゼ(XIIIa因子)の基質であるα2−抗プラスミン、フィブロネクチン又はβカゼイン、フィブリノゲン又はトロンボスポンジンのペプチド断片。α2−抗プラスミン、フィブロネクチン、βカゼイン、フィブリノゲン及びトロンボスポンジンのアミノ酸配列は以下の参照文献に記載されている。α2−抗プラスミン前駆体[M.Tone et al.,J.Biochem,102,1033,(1987)]、βカゼイン[L.Hansson et al, Gene,139,193,(1994)]、フィブロネクチン[A.Gutman et al, FEBS Lett.,207,145,(1996)]、トロンボスポンジン−1前駆体[V.Dixit et al, Proc. Natl. Acad. Sci., USA,83,5449,(1986)]、RR.F.Doolittle, Ann. Rev. Biochem.,53,195,(1984)。
【0024】
生体標的部分がペプチドであるときは、ペプチド末端の一端又は両端を適宜適当な代謝阻害基で保護していてもよい。「代謝阻害基」という用語は、ペプチド又はアミノ酸のアミノ末端又はカルボキシル末端でのインビボ代謝を阻害又は抑制する生体適合性基を意味する。かかる基は、当業者に周知であり、ペプチドアミン末端については、アセチル、Boc(Bocはt−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(Fmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、ベンジルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde(つまり1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)又はNpys(つまり3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から好適に選択される。ペプチドアミン末端の代謝の阻害は、アミン末端をアザ−ジアミンジオキシムキレート剤に結合させることによっても達成できる。ペプチドカルボキシル末端の好適な代謝阻害基としては、カルボキサミド、t−ブチルエステル、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、アミノアルコール又はアザ−ジアミンジオキシムキレート剤への結合が挙げられる。好ましくは、1以上の代謝阻害基がアザ−ジアミンジオキシムキレート剤であるように選択される。
【0025】
ペプチドのカルボキシル末端は、カルボキシペプチダーゼ酵素によるインビボ分解を特に受け易い。そこで、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤を好ましくはカルボキシル末端に結合させる。ペプチドが環式ペプチドからなる場合には、代謝阻害基は環式ペプチド環を閉環する共有結合であってもよい。
【0026】
本発明の好ましい生体標的ペプチドは、α2−抗プラスミン又はカゼインの3〜20量体のペプチド断片であり、さらに好ましくは4〜15量体、特に5〜14量体の断片である。本発明の好ましいα2−抗プラスミン又はカゼインペプチドは、1以上の代謝阻害基と以下のいずれかのN末端から選択されるアミノ酸配列を含む。
(i)α2−抗プラスミン
即ち、NH2−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Leu−Thr−Leu−Thr−Leu−Leu−Lys−OH、又はその1個以上のアミノ酸が交換、付加又は除去されたもの、例えば、
NH2−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Leu−Thr−Leu−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly−OH、
NH2−Asn−Gln−Glu−Ala−Val−Ser−Pro−Leu−Thr−Leu−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly−OH、
NH2−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Gly−OH、或いは
(ii)カゼイン
即ち、Ac−Leu−Gly−Pro−Gly−Gln−Ser−Lys−Val−Ile−Gly。
【0027】
本発明の特に好ましいα2−抗プラスミンペプチドは、4個のアミノ酸配列Asn−Gln−Glu−Gln(NQEQ)を含むペプチド断片である。特に最も好ましいかかるα2−抗プラスミンペプチドは、以下の配列を有する。
Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly(式中、XaaはTyr又はI−Tyr(ヨードチロシン)である。)。
【0028】
かかる好ましいα2−抗プラスミンペプチドは好ましくは、両ペプチド末端に代謝阻害基を有し、該代謝阻害基の一方はアザ−ジアミンジオキシムである。この場合、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤は好ましくはカルボキシ末端に結合し、N末端は代謝阻害基、好ましくはN−アセチルで保護され、α2−抗プラスミンペプチドは好ましくは以下のものである。
Ac−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly
(式中、XaaはTyr又はI−Tyr(ヨードチロシン)である。)。
【0029】
「フルオロアルキル」という用語は、1個以上のフッ素置換基を有するアルキル基を意味し、この用語には、モノフルオロアルキル(例えば−CH2F)からペルフルオロアルキル(例えばCF3)まで包含される。
【0030】
本発明者らは、アザ−ジアミンジオキシム配位子は、望ましいテクネチウム種の他に、式Iの配位子の過渡XTc錯体と分類される他のテクネチウム錯体も形成されることを発見した。本発明のテクネチウム錯体組成物は、テクネチウム錯体処方物中に存在するXTcのの10%未満が式Iの配位子の過渡XTc錯体であることを特徴とする。これらの「過渡XTc錯体」は、式Iの配位子との動力学的に優勢なテクネチウム金属錯化反応生成物である。これらは過渡種であり、周囲条件下で、熱力学的に安定な所望の最終的錯化反応生成物へとゆっくりと変化する。過渡XTc錯体の化学構造は知られていないが、式(I)の配位子の−NY−部分の橋頭窒素原子がテクネチウムに配位したものと考えられる。かかる配位はおそらく、アザ−ジアミンジオキシム配位子が五座配位子(即ち、ジオキシムトリアミンドナーセットを有する)或いはモノオキソ核(即ち、Tc=O3+核)を有するTc(V)錯体で未配位の1個のオキシム基を有する四座配位キレートのいずれかとして機能することを伴う。かかる橋頭窒素原子による配位は、−NY−窒素原子が配位していない熱力学的生成物の8環キレート環の大きさに比べて、−NYの窒素原子が配位した5環キレート環の大きさが小さいので、動力学的に優勢になるものと思われる。
【0031】
特に放射性医薬品用途では、その正確な組成が時間経過と共に変化する複数のテクネチウム種の存在は明らかに望ましくない。投与したものの再現性が達成困難で、各化学種が異なる生体内分布特性を有しかねないからである。そこで、本発明は、も高い純度で望ましい熱力学的生成物が得られるように過渡テクネチウム錯体のレベルを制御する方法を提供する。アザ−ジアミンジオキシム配位子のテクネチウム錯体の望ましい熱力学的生成物は、以下の構造を有すると考えられる。
【0032】
【化4】
【0033】
式中、R1、R2及びYは上記の通り定義される。即ち、アザ−ジアミンジオキシム配位子はジアミンジオキシム金属ドナーセットを有するTc(V)ジオキソ錯体であり、−NY−基の窒素は配位していない。この偽大環状環構造は、過渡XTc錯体に比べて熱力学的安定性を与えると考えられる。Yが、−NY−のN原子が3級アミンとなる種類の場合、3級アミンの大部分は3級アミンの塩基性(通常、8〜10のpKa値を有する)のため、9.0未満のpHの水溶液中でプロトン化される。
【0034】
本発明者らは、望ましいテクネチウム種及び過渡XTc錯体の他に、アザ−ジアミンジオキシム配位子は、親油性テクネチウム錯体と分類される他のテクネチウム錯体も形成しかねないこと、並びにかかる親油性錯体がXTc組成物の生体内分布に悪影響を与えかねないことを発見した。「親油性テクネチウム錯体」という用語は、アザ−ジアミンジオキシムの望ましい動力学的テクネチウム錯体よりも格段に高いオクタノール/水分配係数を有する式Iの配位子をもつテクネチウムのアザ−ジアミンジオキシム金属配位錯体を意味する。かかる「親油性テクネチウム錯体」は、移動相中で50%以下の有機溶剤を使用すると、C18逆相HPLCの固定相に強く結合する。したがって、組成物にかかる「親油性テクネチウム錯体」が存在する場合には、有機含量70%以上、好ましくは90%以上の水/有機溶剤移動相を使用して、これらを逆相HPLC分析内のカラムから溶出させる必要がある。
【0035】
かかる「親油性テクネチウム錯体」は、特に式Iの凍結乾燥配位子を、合成エラストマーゴム製クロージャーを備えた薬品バイアル又は容器中で調製し、生体標的分子(Z)がアミン含有化合物などの反応性求核基、特に1級又は2級アミン(例えばペプチドのリシン基)、チオール(例えばペプチドのシステイン基)又はフェノール(例えばペプチドのチロシン基)を有する場合に、観察される可能性が高い。こうした状況では、合成ゴムからの揮発性の非極性浸出性物質は、真空中で合成クロージャーから除去され、低温の凍結乾燥プラグ上に凝縮しかねない。浸出化合物と標的分子の求核基との化学反応は、親油性の高いZの誘導体の形成をもたらす。かかる化学反応は、アルカリpHで優勢であり、求核基が比較的反応性が高い(つまり、プロトン化アミンとは対照的に遊離しているか、或いはチオレート又はフェノレート種の存在量が多い。)。XTc放射性標識を実施すると、「親油性テクネチウム錯体」不純物が観察される。凍結乾燥時の合成ゴムクロージャーからの幅広い揮発性の非極性浸出性物質の浸出は公知である[Jahnke et al, Int.J.Pharmaceut., 77,47−55(1991)及びJ.Parent.Sci.Technol., 44(5),282−288(1990)参照]が、放射性医薬品に対するこれらの浸出性物質の影響については従前報告例がない。かかるクロージャー浸出性物質は、加熱時、例えば殺菌のためのオートクレーブ処理時にも生成しかねないことが知られており[例えば、Danielson J.Parent.Sci.Technol.46(2),43−47(1992)]、凍結乾燥が最悪のシナリオではあるものの、生体標的分子(Z)とかかる浸出性物質との反応は他の状況でも起こりかねないと考えられる。
【0036】
したがって、テクネチウム錯体組成物を合成クロージャーを有するバイアル又はコンテナで調製する場合、特に後述の第3の実施形態のキットなどのように凍結乾燥を用いる場合には、かかる「親油性テクネチウム錯体」が特に問題となる。本発明は、クロージャー材料及びキット処方物を適切に選択することによって、「親油性テクネチウム錯体」を抑制又は制御する方法を提供する。
【0037】
本発明の好ましいテクネチウム錯体組成物は、過渡xTc錯体のレベルが抑制されているだけでなく、テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の5%未満が上記に定義した親油性xTc錯体であるものである。好ましくは、本発明のテクネチウム錯体組成物は、テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の3%未満が親油性xTc錯体であるものである。さらに好ましくは、これらの親油性xTc錯体のレベルは2%未満であり、1%未満が特に好ましく、0.5%未満が理想的である。
【0038】
本発明では、式Iの配位子の親油性xTc錯体がインビボで望ましくない肝臓摂取及び血液保持性をもつことを示す。肝臓摂取を最小限にすることが重要である。肝臓は、放射性医薬品イメージング、特に肺又は心臓イメージングの重要な背景臓器であるからである。標的分子(Z)が、肺塞栓(PE)などの肺内の血栓をターゲットとするように設計されている場合、イメージングの可能性は、血餅を囲む器官及び組織(即ち、肺、心臓、血液及び肝臓)内の放射能によっても影響を受ける。
【0039】
本発明の様々なテクネチウムアザ−ジアミンジオキシム錯体は、HPLC、特に逆相HPLC、即ちRP−HPLCなどの適当なクロマトグラフィー法で分離・検出できる。これらの親油性及び動態種の存在は、従前研究者には認識されていなかった。例えば、抗プラスミンペプチドとのアザ−ジアミンジオキシム複合体の所期のHPLC及びITLC分析では、90%を超える公称純度、つまり十分な純度が示されていた。しかし、以降の生体内分布の研究では、肝臓で高レベルの保持が示され、これは、放射化学的不純物の量と一致しなかった。不純物には、RHT(還元加水分解テクネチウム)が含まれるが、これは肝臓摂取を示すことが知られている。RHTはITLCで検出される固定種である。さらに識別性の高いクロマトグラフィー分析の結果、本発明の複数の化学種が判明した。
【0040】
RP−HPLCを使用すると、過渡xTc錯体は、熱動力学的生成物の保持時間未満の保持時間を示すが、親油性錯体は熱力学的生成物の保持時間よりもかなり長い保持時間を示す。ピークサイズの定量を用いれば、所定のxTc錯化反応が進行して完了へと向かっているか否か、親油性xTc錯体の存在量は当業者が容易にモニターできる。周囲温度(18〜25℃)での十分に長い錯化反応時間によるか、又は本発明に教示するようなさらに高い温度で加熱を続けることにより、所定の系のために、所望の熱力学的xTc錯体生成物の確実な試料を容易に確立することができる。次いで、かかる確実な試料を使用して、使用した特定のクロマトグラフィー系で観察されたピークを同定することができる。
【0041】
「logP」という用語は、その通常の意味を有する。即ち、オクタノール/水分配係数(P)の対数(基数10)を意味する。かかるオクタノール/水分配係数は、幅広い有機化合物について公表されており、直接測定[99mTc錯体では、A.R.Ketring et al,Int.J.Nucl.Med.Biol.,11,113−119(1984)参照]又はクロマトグラフィー[A.Hoepping et al,Bioorg.Med.Chem.,6,1663−1672(1998)]などの様々な技術で測定することができる。好ましい測定方法は、既知の標準を用いてクロマトグラフィー系(例えばHPLC)を較正して、保持時間を、logPと相関させることができるようにすることである。これは化学種の混合物を同時に測定できるという利点を有する。
【0042】
本発明の好ましいテクネチウム錯体は対称である。換言すれば、式(I)の配位子の−NY−部分の2個の−CR22R22NHCR12C(=N−OH)R1置換基として同じものを選択する。これはテクネチウム錯体がキラル中心をもたないという利点を有する。かかる中心がジアステレオマーテクネチウム錯体を生じ、特定の異性体の精製が必要となりかねないからである。
【0043】
本発明のテクネチウムアザ−ジアミンジオキシム錯体では、1個以上のR2基がHであり、さらに好ましくはR2基がすべてHであるのが好ましい。各R1は好ましくは、C1〜C3アルキル、C2〜C4アルコキシアルキル、C1〜C3ヒドロキシアルキル又はC1〜C3フルオロアルキルから選択され、さらに好ましくは、C1〜C3アルキル又はC1〜C3フルオロアルキルである。R1がすべてCH3であるのが特に好ましい。
【0044】
本発明のテクネチウム錯体の有するR基の2個以上のR基がそれらと結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成している場合、好ましい環は3〜6員環、特に5員環又は6員環を有する。かかる最も好ましい環は飽和炭素環である。好ましい炭素環は、同一又は隣接炭素原子に結合した2個のR1基が3〜6員、特に5員又は6員飽和環を形成しているものである。
【0045】
本発明の特に好ましいテクネチウムアザ−ジアミンジオキシム錯体組成物は、式(II)の配位子を有するものである。
【0046】
【化5】
【0047】
式中、R1は各々独立にC1〜C3アルキル又はC1〜C3フルオロアルキルから選択され、pは、0〜3の整数であり、Zは式Iと同様に定義される。式IIにおいて、Yは−CH2CH2(A)pZである。式(II)の好ましい配位子は、前記と同様に対称である。
【0048】
リンカー基−(A)n−の役割は、金属配位で生じる比較的嵩高いテクネチウム錯体を生体標的部分(Z)の活性部位から遠ざけ、例えば受容体結合を損なわないことであると考えられる。これは、柔軟な基(例えば簡単なアルキル鎖)を組み合わせることにより達成して、嵩高な基が活性部位から離れる自由を有するようにするか、及び/又は活性部位から離して金属錯体を配置するシクロアルキル又はアリールスペーサーなどの剛直な基を有するようにする。リンカー基の性質を使用して、生じた複合体のテクネチウム錯体の生体内分布を変更することもできる。例えば、リンカーへのエーテル基の導入は、血漿タンパク質結合を最小限にするのに役立つか、又はポリアルキレングリコール、特にPEG(ポリエチレングリコール)などのポリマーリンカー基の使用は、インビボで血中薬品寿命を延ばすのに役立つ。
【0049】
好ましいリンカー基−(A)n−は、骨格鎖(即ち、−(A)n−成分を形成する架橋原子)を有し、これは、2〜10個の原子、さらに好ましくは2〜5個の原子を有するが、2又は3個の原子が特に好ましい。2個の原子からなる最少リンカー基骨格鎖は、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤は、生体標的部分から十分に分離されて、相互作用が最小限に抑制されるという利点をもたらす。もう1つの利点は、Z基の可能なキレート環サイズは大きいので(2原子リンカー基鎖では8個以上)、これらの基は、xTcへのアザ−ジアミンジオキシムの配置に有効に競合することはないようである。このように、生体標的部分の生体標的特徴及びアザ−ジアミンジオキシムキレート剤の金属錯化能の両方が、このタイプの複合体では維持される。結合が、血中で容易に代謝されないように、生体標的部分Zが、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤に結合したことが、特に好ましい。これは、かかる代謝によって、標識された生体標的部分が、インビボで所望のターゲット部位に達する前に、xTc金属錯体が分離されてしまうためである。したがって生体標的部分は好ましくは、容易には代謝されない−(A)n−リンカー基を介して、本発明のxTc金属錯体に共有結合した。かかる好ましい結合は、炭素−炭素結合、アミド結合、尿素又はチオ尿素結合又はエーテル結合である。
【0050】
アルキレン基又はアリーレン基などの非ペプチドリンカー基は、複合生体標的部分と著しい水素結合相互作用がないので、リンカーが、生体標的部分の周りに巻きつかないという利点を有する。好ましいアルキレンスペーサー基は、−(CH2)q−であり、式中、qは、2〜5の値の整数である。好ましくは、qは、2又は3である。好ましいアリーレンスペーサーは、次式である。
【0051】
【化6】
【0052】
式中、a及びbは各々独立に0、1又は2である。
【0053】
好ましいY基は−CH2CH2−(A)p−Zであるが、pは、0〜3の整数である。Zがペプチドである場合、Yは好ましくは、式中の−(A)p−が−CO−又は−NR−である−CH2CH2−(A)p−Zである。−(A)p−が−NH−である場合、この類は、市販の対称中間体N(CH2CH2NH2)3に由来するという付加的な利点を有する。様々な鎖長を有するトリアミン前駆体は、様々なアミンを化学的に分別するための合成法(例えば、保護基を介して)を使用することを必要とする。
【0054】
式IIの好ましいアザ−ジアミンジオキシムキレート剤は好ましくは、前記のα2−抗プラスミンペプチド(及び好ましいその実施形態)に複合される。
【0055】
本発明の改良テクネチウム錯体組成物は、適当な酸化状態のxTc放射線同位体(即ち、99mTc、99Tc又は94mTc)を、適当な溶剤中の溶液の形態の式(I)又は(II)の配位子と反応させることにより調製するが、その際
(i)周囲温度での長い反応時間、又は
(ii)さらに高い温度での加熱、又は
(iii)これらの組合せ
を用いて、所望の熱力学的xTc錯体生成物への反応を促進して、「過渡xTc錯体」のレベルを最小限にする。通常のテクネチウム出発物質は、過テクネチウム酸イオン、即ち、テクネチウムがTc(VII)酸化状態にあるTcO4−である。過テクネチウム酸イオン自体は、容易には金属錯体を形成しないので、テクネチウム錯体の調製は通常、第一スズイオンなどの適当な還元剤を加えて、テクネチウムの酸化状態をより低い酸化状態へ、通常はTc(I)からTc(V)へと還元することにより、錯化を容易にすることが必要である。溶剤は、有機又は水性もしくはこれらの混合物であってもよい。溶剤が有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤は好ましくは、エタノール又はDMSOなどの生体適合性の溶剤である。好ましくは、溶剤は水性であり、さらに好ましくは、等張性生理食塩水である。本発明のテクネチウム錯体組成物を得るには、反応混合物を、50℃以上に、10分以上加熱する必要がある。適当な加熱状態は、50〜80℃の範囲で10〜20分間、好ましくは、60〜70℃で10〜15分間、さらに好ましくは60〜65℃で10〜12分間であり、60℃で10分間が理想的である。反応媒体のpHは好適には、pH8.5〜9.5、好ましくはpH8.8〜9.0の範囲、さらに好ましくはpH8.8である。加熱プロセスでは、所望の温度制御を達成することができるなら、水又は高沸点オイル(例えばシリコーン)などの液体の温浴、加熱ブロック、ホットプレート又はマイクロ波放射などの適切な方法論を使用することができる。加熱が完了した後に、反応混合物を放置して室温まで冷却するか、又は積極的に(例えば、ガス又は水などの冷却液の流中で)、又は一体型誘導冷却を備えた加熱ブロックを介して冷却することができる。
【0056】
本発明者らは、生体適合性のカチオンと弱有機酸との1種以上の塩を反応混合物中に存在させることにより、望ましくない親油性xTc錯体を抑えることができることも立証した。「弱有機酸」という用語は、3〜7の範囲のpKaを有する有機酸を意味する。「生体適合性のカチオン」という用語は、負に荷電したイオン化基と塩を形成する正に荷電した対イオンを意味し、前記の正に荷電した対イオンも、非毒性であり、したがって、哺乳類の体に、特にヒトの体に投与するのに適している。好適な生体適合性のカチオンの例には、アルカリ金属ナトリウム又はカリウム、アルカリ土類金属カルシウム及びマグネシウム、及びアンモニウムイオンが挙げられる。好ましい生体適合性のカチオンは、ナトリウム及びカリウムであり、さらに好ましくはナトリウムである。
【0057】
かかる好適な弱有機酸は、酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、安息香酸、フェノール又はホスホン酸である。したがって、好適な塩は、酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩、フェノール酸塩又はホスホン酸塩、好ましくは酢酸塩である。酢酸塩は好ましくは、酢酸ナトリウム又はカリウム、さらに好ましくは酢酸ナトリウムである。これらの塩を使用することによる付加的な利点は、この酸アニオン(酒石酸、グルコン酸又はクエン酸アニオンなど)は、テクネチウムに弱く錯化し、配位子交換又はトランスキレート化プロセスでアザ−ジアミンジオキシム配位子により置換されることである。かかる状態は、テクネチウムイオンの加水分解などの望ましくない副反応を抑えるのに役立つ。弱有機酸の塩を使用するための好適な濃度は、1〜100μmol/mlの範囲、好ましくは5〜50μmol/mlの範囲である。
【0058】
さらに本出願人らは、反応混合物に放射線防護剤を加えることにより、いったん生じたxTc錯体生成物が安定化されるだけでなく、過渡xTc錯体から所望の熱力学的テクネチウム錯体生成物への変換が予期せず促進されることを発見した。このことは、加熱時間を短くし、及び/又は加熱温度を低くすることができるという利点を有する。生体標的部分が多少でも熱に不安定性である場合に、これは特に有利となる。「放射線防護剤」という用語は、水の放射線分解により生じる酸素含有遊離基などの高反応性遊離基を捕捉することにより、レドックスプロセスなどの崩壊反応を阻害する化合物を意味する。
【0059】
本発明の放射線防護剤は、無菌酸素の源又は空気、アスコルビン酸、p−アミノ安息香酸(即ち、4−アミノ安息香酸又はPABA)、ゲンチシン酸(即ち、2,5−ジヒドロキシ安息香酸)及びそのような酸と前記で定義されたような生体適合性のカチオンとの塩から適切に選択される。好ましい放射線防護剤は、アスコルビン酸及びp−アミノ安息香酸もしくはその生体適合性カチオンとの塩である。特に好ましい放射線防護剤は、p−アミノ安息香酸及びその生体適合性カチオンとの塩、理想的にはp−アミノ安息香酸ナトリウムである。本発明の放射線防護剤は、薬品グレードで市販されている。
【0060】
さらに本発明者らは、望ましくない親油性xTc錯体のレベルは、使用した薬品グレードのバイアルクロージャーの選択により影響を受けることを立証した。かかるクロージャーは通常、ブロモブチル、クロロブチル又はブチルゴム又はこれらの混合物を含み、合成ゴムからの揮発性浸出物質(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤又はフェノール系樹脂副産物)は、アザ−ジアミンジオキシムキレート複合体と反応して、様々なレベルの親油性xTc錯体をもたらす。程度では様々であるが、多くのタイプのクロージャーはこの問題を示すので、クロージャーの選択は、親油性xTc錯体のレベルを抑える際に役立つファクターの1つである。
【0061】
本発明のテクネチウム錯体組成物の調製は好ましくは、本発明の第3の実施形態(下記)に記載されていような非放射性キットを使用して実施する。
【0062】
本発明のテクネチウム錯体組成物を調製する際に使用されるアザ−ジアミンジオキシムキレート複合体は、式IIIの二官能性キレートと、生体標的部分(Z)とを反応させることにより調製することができる。
【0063】
【化7】
【0064】
式中、R1及びR2は各々独立にR基であり、
Eは、−(A)n−Jであって、
式中、Jは、Zとの結合に適した官能基であり、
−(A)nはリンカー基であって、各Aは独立に−CO−、−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NR−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4−8シクロへテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基もしくはC3−12ヘテロアリーレン基又はポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸成分であり、
nは0〜10の整数であり、
各R基は独立にH又はC1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
【0065】
「結合に適した官能基」という用語は、Zの対応官能基(通常はアミン、カルボキシル又はチオール基)と反応して、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤をZに化学的に結合させる官能基を意味する。かかる複合に適した好ましい官能基は、−NR5R6、−CO2M、−NCS、−NCO、−SM1、−OM1、マレイミド又はアクリルアミドであり、式中、R5及びR6は独立にR基又はPGであり、
MはH、生体適合性のカチオン、PG又は活性エステルであり、
M1はH又はPGであり、PGは保護基である。
【0066】
「生体適合性のカチオン」という用語は上記の通り定義される。
【0067】
「保護基」という用語は、望ましくない化学反応は阻害又は抑制するが、分子の残りの部分を化学的に変更しない穏やかな条件下に、該当する官能基から分離され得る程度に十分に反応性であるように設計されている基を意味する。脱保護した後に、該当する基を使用して、式IIIの二官能性キレートを生体標的部分(Z)に複合させることができる。保護基は、当業者に周知であり、Jが−NR5R6である場合には、Boc(Bocはt−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(Fmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde(つまり1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)又はNpys(つまり3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から、Jが−CO2PGである場合には、メチルエステル、t−ブチルエステル、ベンジルエステルから適切に選択される。Jが−OPGである場合には、適当な保護基はアセチル、ベンゾイル、トリチル又はテトラブチルジメチルシリルである。Jが−SPGである場合には、適当な保護基はトリチル及び4−メトキシベンジルである。他の保護基の使用は、「Protective Groups in Organic Synthesis」、Theorodora W.Greene及びPeter G.M.Wuts,(John Wiley & Sons,1991)に記載されている。
【0068】
「活性エステル」という用語は、より良好な脱離基であるように設計されていて、アミンなどの生体標的部分上に存在する求核基とのさらに簡単な反応を可能にするカルボン酸のエステル誘導体を意味する。好適な活性エステルの例は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ペンタフルオロフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、p−ニトロフェノール、ヒドロキシベンゾトリアゾール及びPyBOP(即ち、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)である。
【0069】
式IIIの二官能性キレートは、S.Liuら[Chem.Rev.99,2235−2268(1999)]に記載されているように生体標的部分(Z)に複合させることができる。したがって例えば、式IIIのアミン官能化アザ−ジアミンジオキシムキレート剤(即ちJ=−NR5R6)は、アミド結合を介して、生体標的部分(Z)のカルボキシル基に複合させることができる。このカップリングは、直接(例えば、固相ペプチド合成を使用して)又は、生体標的部分のカルボキシル基の活性エステルなどの当技術分野で公知の適当な中間体を介して実施することができる。もしくは、二官能性キレート剤のペンダントアミン基を初めに、イソチオシアネート(−NCS)又はイソシアネート(−NCO)基に変換し、それぞれチオ尿素の形成及び尿素結合を介して、アミン含有生体標的部分に複合させることができる。或いは、二官能性アザ−ジアミンジオキシムキレート剤のペンダントアミン基を、二酸の一方の酸官能基と反応させて、リンカー基を介して末端カルボキシル基を導入することができる。カルボキシル官能基を有する二官能性キレート剤(即ち、J=−CO2M)を同様に使用して、アミド結合を介してアミン含有生体標的部分に直接カップリングさせることができる。二官能性キレートはさらに、生体標的部分上のチオール基と反応して、安定なチオエーテル結合を生じるように設計された基を有してもよい。かかる基の例は、マレイミド(無水マレイン酸と対応するアミンとを反応させ、続いて、無水酢酸と共に加熱することにより調製することができる)及びアクリルアミド(塩化アクリリルとアミンとを反応させることにより調製することができる)である。
【0070】
本発明の二官能性アザ−ジアミンジオキシムキレート剤は、以下の式IVの化合物を、
(i)適当なクロロニトロソ誘導体Cl−C(R1)2−C(=NO)R1、
(ii)式Cl−C(R1)2−C(=NOH)R1のα−クロロオキシム、
(iii)式Br−C(R1)2−C(=O)R1のα−ブロモケトン、
を用いてアルキル化し、続いて、ヒドロキシルアミンを用いてジアミンジケトン生成物をジアミンジオキシムに変換することにより好適に調製することができる。
【0071】
【化8】
【0072】
式中、A、J、R2及びnは、前記の式IIIと同様に定義される。
【0073】
経路(i)は、S.Jurissonら[Inorg.Chem.,26,3576−82(1987)]に記載されている。クロロニトロソ化合物は、適当なアルケンを塩化ニトロシル(NOCl)で処理することにより得られる。クロロニトロソ化合物の合成に関するさらなる詳細は、Ramalingam,K. et al,Synth.Commun.(1995)25(5)743〜52、Glaser et al,J.Org.Chem.(1996)、61(3)、1047〜48、Clapp,Leallyn B.、 et al,J.Org Chem.(1971)、36(8)1169〜70、Saito,Giulichi et al,Shizen Kagaku(1995)、47、41〜9及びSchulz,Manfred Z.Chem(1981)、21(11)、404〜5に記載されている。経路(iii)は、Nowotnikら[Tetrahedron、50(29)、8617〜8632(1994)]に記載されている。市販の対応α−クロロ−ケトン又はアルデヒドをオキシム化することにより、α−クロロ−オキシムを得ることができる。α−ブロモケトンは、市販されている。
【0074】
第2の態様では、本発明は、人に投与するのに適した無菌形態の前記のアザ−ジアミンジオキシムテクネチウム錯体組成物を含む放射性医薬品を提供する。かかる放射性医薬品は、皮下注射針で1回以上穿刺するのに適している一方で(例えば、クリンプ形(crimped−on)隔膜シールクロージャーなど)、無菌の完全性を維持するシールを備えた容器中で適切に供給される。かかる容器は、一人又は多人数患者用量を含有してもよい。好ましい多人数用量容器は、多人数患者用量を含有する単一のバルクバイアル(例えば、10〜100cm3容量)を含み、これによって、臨床状況に合わせて、製剤の有効寿命の間の様々な時間間隔で、1人患者用量を臨床品質のシリンジへと取り出すことができる。
【0075】
本発明の放射性医薬品を、プレフィルドシリンジ中に供給することもできる。かかるプレフィルドシリンジは、用量をシリンジから直接に患者に投与することができる形態である1人用量を含有するように設計されている。かかるプレフィルドシリンジを、無菌製造により適切に調製して、製品が滅菌形態であるようにする。したがって、プレフィリングされたシリンジは好ましくは、使い捨てシリンジであるか、臨床使用に適していて、放射性医薬品の滅菌の完全性を維持する他のシリンジである。放射性医薬品を含有するプレフィルドシリンジは有利には、放射線量から取扱者を保護するためのシリンジシールドを備えていてよい。かかる適当な放射性医薬品シリンジシールドは、当技術分野で公知であり、好ましくは、鉛又はタングステンを含有する。かかるプレフィールドシリンジは好ましくは、シリンジシールドを既に備え、さらに、放射線シールドを備えた容器内にパッケージングされた形で顧客に運送されるので、製造者から顧客へと輸送される間の、パッケージ外側の外部放射線量は最小限される。
【0076】
99mTc画像診断用放射性医薬品に適した99mTc放射能分は、インビボでイメージングされる部位、摂取率及びターゲット−バックグラウンド比に応じて、180〜1500MBq(3.5〜42mCi)の範囲である。99mTc放射性医薬品での心臓イメージングには、負荷研究では約1110MBq(30mCi)を、安静研究では約350MBq(10mCi)を使用することができる。99mTc放射性医薬品での血栓イメージングでは、約750MBq(21mCi)が適しているであろう。
【0077】
第3の態様では、本発明は、本発明のxTc放射性医薬品組成物を調製するための非放射性キットを提供する。かかるキットを、例えば血流に直接注射することを介してヒトに投与するのに適した無菌放射性医薬品が得られるように設計する。99mTcでは、キットを好ましくは、凍結乾燥し、99mTc放射性同位体ジェネレーターからの無菌の99mTc−過テクネチウム酸イオン(TcO4−)で再構成すると、さらに操作することなくヒトに投与するのに適した溶液が得られるように設計する。適当なキットは、式(I)又は(II)の未錯化アザ−ジアミンジオキシム配位子を、亜ニチオン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、ホルムアミジンスルフィン酸、第1スズイオン、Fe(II)又はCu(I)などの薬学的に許容できる還元剤と共に、さらに、1種以上の前記のような生体適合性のカチオンと弱有機酸との塩と共に含有する容器(例えば、隔膜シールされたバイアル)を含む。弱有機酸の塩は、望ましくない親油性xTc錯体(前記のような)の形成を抑制する機能を有する。
【0078】
非放射性キットは場合によって、トランスキレート剤として機能する第2の弱有機酸又はその生体適合性カチオンとの塩をさらに含有してもよい。トランスキレート剤は、迅速に反応して、テクネチウムと弱い錯体を形成し、次いで、アザ−ジアミンジオキシムにより置換される化合物である。これにより、テクネチウム錯化と競合する過テクネチウム酸イオンの迅速な還元により、還元加水分解テクネチウム(RHT)が生じるリスクが最小限される。かかる好適なトランスキレート剤は、前記の弱有機酸及びその塩、好ましくは、酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩又はホスホン酸塩、好ましくはホスホン酸塩、さらに好ましくはジホスホン酸塩である。かかる好ましいトランスキレート剤は、MDP、即ち、メチレンジホスホン酸又はその生体適合性カチオンとの塩である。
【0079】
遊離形態で配位子を使用する代わりに、キットは場合によって、アザ−ジアミンジオキシム配位子の金属錯体を含有してもよく、これは、テクネチウムを付加されると、金属交換反応(即ち、配位子交換)を受けて、所望の生成物をもたらす。金属交換反応のためのかかる好適な錯体は、銅又は亜鉛錯体である。
【0080】
このキット中で使用される薬学的に許容できる還元剤は好ましくは、塩化第一スズ、フッ化第一スズ又は酒石酸第一スズなどの第一スズ塩であり、無水又は水和形態であってもよい。第一スズ塩は好ましくは、塩化第一スズ又はフッ化第一スズである。
【0081】
非放射性キットは場合によって、放射線防護剤、抗菌防腐剤、pH調節剤又は充填剤などの付加的な成分を含有してもよい。「放射線防護剤」という用語は上記の通り定義される。「抗菌防腐剤」という用語は、細菌、酵母又はかびなどの有害となり得る微生物の成長を阻害する薬剤を意味する。抗菌防腐剤は、用量に応じて殺菌特性を示し得る。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、再構成後のxTc放射性医薬品組成物中、即ち、放射性活性診断製品自体でかかる微生物の成長を抑制することである。しかし、抗菌防腐剤を場合によって、再構成前の本発明の非放射性キットの1種以上の成分中で、有害となり得る微生物の成長を抑制するのに使用することもできる。好適な抗菌防腐剤には、パラベン、即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベンもしくはこれらの混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールが挙げられる。好ましい抗菌防腐剤は、パラベンである。
【0082】
「pH調節剤」という用語は、再構成されたキットのpHが、ヒト又は哺乳類投与に許容できる範囲内(ほぼpH4.0〜10.5)であることを保証するために使用される化合物又は化合物混合物を意味する。かかる好適なpH調節剤には、トリシン、リン酸塩又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]などの薬学的に許容できる緩衝剤及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物などの薬学的に許容できる塩基が挙げられる。本発明のアザ−ジアミンジオキシムでは、pH調節剤が重炭酸ナトリウムを含有するのが好ましい。
【0083】
生体標的部分がα2−抗プラスミンのペプチド断片である場合には、好ましいキット処方物は、式(I)の配位子、第一スズ還元剤、生体適合性のカチオンの酢酸塩、ジホスホン酸トランスキレート剤及びpH調節剤を含有する。かかる好ましいキットは、式(II)の配位子、塩化第一スズ、酢酸ナトリウム、MDP又はその生体適合性のの塩、放射線防護剤、特に、PABA又はその生体適合性の塩、特に、PABAのナトリウム塩、及びpH調節剤としての重炭酸ナトリウムが挙げられる。かかるもっとも好ましいキットは、式中のR1は各々CH3であり、(A)pはNHであり、ZはAc−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly−(式中、Xaaは、Tyr又はI−Tyrであり、AcはN−アセチルである)である式IIの配位子を含有する。
【0084】
第4の態様では、本発明は、本発明の放射性医薬品を使用して、血栓を画像診断する方法を提供し、生体標的分子は、α2−抗プラスミンの3〜20量体ペプチド断片である。好ましくは、α2−抗プラスミンのペプチド断片は、配列Asn−Gln−Glu−Glnを含む。最も好ましくは、α2−抗プラスミンのペプチド断片は、配列Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Glyを含有し、Xaaは上記の通り定義される。肺血栓(PE)は、大量のフィブリンからなり、これは、XIIIa因子の作用により架橋されて、安定化される。フィブリン及びXIIIa因子は両方とも、特に血栓の部位に位置する非活性前駆体から生じる。本発明のα2−抗プラスミンのペプチド断片は、XIIIa因子のための有力な基質であり、したがってこの酵素の作用を介して、肺血栓内のフィブリンに共有結合する。本発明のアザ−ジアミンジオキシム−α2−抗プラスミンペプチド断片複合体の99mTc錯体はインビボで、血栓部位に選択的に摂取されて、正常な組織に対してかかる部位で、ポジ摂取又は「ホットスポット」イメージングをもたらす。同様の考え方を、インビボの他の血栓タイプ(例えば、深静脈血栓又はdvt)に当てはめることができる。XIIIa因子は、同様に機能するからである。したがって、本発明のXIIIa因子基質複合体は、インビボの血栓を、特に肺血栓及び深静脈血栓のイメージングに使用することができる。
【実施例】
【0085】
下記で、本発明を非限定的実施例により詳述する。
【0086】
実施例1は、本発明のアザ−ジアミンジオキシムキレート剤である化合物1の合成を記載している。
【0087】
実施例2は、血栓をターゲットとするためのα2−抗プラスミンのペプチド断片である好ましいペプチド標的分子の保護された形態の合成を記載している。
【0088】
実施例3は、実施例1のアザ−ジアミンジオキシムキレート剤と実施例2の標的ペプチドの複合体である化合物3の合成を記載している。実施例3はさらに、化合物4から7の合成を記載している。
【0089】
実施例4は、先行技術に教示されたような化合物3の99mTc放射線標識を示す比較例である。
【0090】
実施例5は、本発明で使用されるHPLC系を記載している。J系は、明らかに許容できるRCPをもたらすものであるが、親油性xTc錯体は、カラム上に保持された(即ち、40%以下のアセトニトリルが移動相で使用されると、これは、固定相に対して親和性が高すぎる)。H系は、移動相中により多くの有機溶剤(アセトニトリル90%以下)を含有する溶出勾配を伴い、カラムから親油性テクネチウム錯体を有効に溶出するので、これらは、分析されるようになる。J系を使用する場合の純度4%との過大評価は、未検出の親油性99mTc錯体によるものである(図3)。実施例10及び図1は、かかるレベルの親油性99mTc錯体は、インビボでの肝臓摂取率に対してかなりの作用を有することを示している。実施例6は、本発明の凍結乾燥キットの調製を記載している。処方物82/6が好ましい。凍結乾燥時に凍結乾燥されたケークが崩壊する傾向が低いからである。さらに処方物82/6は、経時99mTcジェネレーター溶出物(即ち、ジェネレーターの溶出の後6時間まで)に対しても強くて、十分な当初RCP及び製剤の良好な再構成後安定性をもたらす。
【0091】
実施例7は、本発明の99mTc錯体組成物を得るための凍結乾燥キットの再構成を記載している。
【0092】
実施例8は、リシン(K)含有ペプチド、即ちアミン基を有するペプチド(化合物3及び4)が、かなりのレベルの親油性テクネチウム錯体を示すことを示している。これらが、化合物5としての非アミン含有アミノ酸と置換されると、親油性錯体のレベルは、かなり低減される。これは、ベンズアミド誘導体(化合物6)によっても示されている。
【0093】
実施例9は、本発明の99mTc錯体組成物に対する放射線防護剤の使用の効果を示している。
【0094】
実施例10は、99mTc錯体組成物に対するバイアルクロージャーの効果を証明している。
【0095】
実施例11は、99mTc錯体組成物の生体内分布に対する親油性xTc錯体含量の効果を示している。親油性不純物におけるバリエーションは、p.i.1時間目での放射能の血中保持の著しい増加(p<0.05)をもたらし(1.88〜3.26%)、統計的には重要ではないが、同時に、尿量が減少する傾向(63.07%〜51.04%)を伴った。肝臓中に存在する放射能も、2.24%から10.24%へと著しく増加した(p<0.05)。したがって、親油性不純物レベルの上昇は、血中の99mTc−化合物3の著しく高い保持及び肝臓中での著しく高い摂取をもたらす。翻ってこのことは、尿排泄が減る傾向をもたらした。
【0096】
実施例12は、親油性テクネチウム錯体含量に対する弱有機酸塩の効果及び生じる生体内分布を示している。存在する親油性99mTc錯体の抑制された含量により予測されるように、99mTc−化合物3の処方物への酢酸ナトリウム三水和物の付加は、血液クリアランスを高め、肝臓摂取率を減らすことが判明した。したがって、組成物の画像診断能は、著しく改善される。心臓及び肺への薬剤の摂取は、無視できるほどであって、薬剤は、十分に低いバックグラウンド摂取率により、肺PEイメージングに使用することができる。
【0097】
本発明の改良xTc錯体組成物はさらに、有用な血餅摂取を示す、即ち、生体標的活性が残されていることを、実施例13は示している。実施例11及び図1から証明されたように、親油性99mTc錯体の存在から生じる主な生体特性は、肝臓での%の増加である。
【0098】
【表1】
【0099】
実施例1:3,3,11,11−テトラメチル−7−(2−アミノエチル)−4,7,10−トリアザトリデカン−2,12−ジオンジオキシム(化合物1又はPn216)の合成
トリス(2−アミノエチル)アミン(1ml、6.68mmol)のアセトニトリル(10ml)溶液に、重炭酸ナトリウム(1.12g、13.36mmol、2当量)を加えた。3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタン[R.K.Murmann,J.Am.Chem.Soc,79,521−526(1957)、1.359g、10.02mmol、1.5当量]の無水アセトニトリル(5ml)溶液を徐々に加えた。反応混合物を室温で3日間攪拌し続け、次いで、濾過した。残留物をアセトニトリルで十分に洗浄し、濾液を蒸発させた。次いで、粗製生成物を、RP−HPLC(カラム:Hamilton PRP−1、勾配:20分でB0〜100%、式中、溶出剤Aは、2%のNH3水溶液であり、溶出剤Bは、アセトニトリルである、3ml/分の流速)により精製すると、化合物1(164mg、7%)が得られた。
【0100】
δH(CD3OD、300MHz):2.77(2H、t、J6Hz、CH2NH2)、2.50〜2.58(10H、m、H2NCH2CH2N(CH2Ch2NH)2)、1.85(6H、s、2×CH3C=N)、1.23(12H、s、2×(CH3)2CNH)。
【0101】
実施例2:ペプチドAc−NQEQVSPY(3I)TLLKG(化合物2)の合成
Fmoc−Gly−を2−クロロトリチル樹脂に係留させ、続いて、適当な保護アミノ酸及びカップリング試薬DCC及びHOBtで環を脱保護/カップリングすることにより、保護されているペプチドAc−Asn(Trt)−Gln(Trt)−Glu(OtBu)−Gln(Trt)−Val−Ser(tBu)−Pro−Tyr(3I)−Thr(tBu)−Leu−Leu−Lys(Boc)−Gly−OHを2−クロロトリチル樹脂上で組み立てた。固相ペプチド合成は、P.Lloyd−Williams,F.Albericio及びE.Girald、Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and proteins、CRC Press,1997年の記載と同様に記載される。末端アスパラギンをアセチル化し、0.5%のTFAを使用して樹脂から分離し、化合物2をさらに精製することなく、トリフルオロ酢酸塩として使用した。
【0102】
実施例3:化合物3〜7の合成
保護されているAc−NQEQVSPY(3I)TLLKGペプチド(化合物2)を、実施例2に記載されているように固相樹脂から分離し、次いで、カップリング剤としてPyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)及びHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)を使用して、溶液の形態の化合物1とカップリングさせた。試薬K[試薬Kは、82.5%のTFA、5%のフェノール、5%の処理済水、5%のチオアニソール、2.5%のエタンジチオール(EDT)である]で脱保護することにより、化合物3を得た。粗製複合体を、TFAを使用するRP−HPLCにより初めに精製し、第2の精製及び酢酸を用いての塩交換、凍結乾燥、0.22μフィルターでの濾過及び最終凍結乾燥を続けると、化合物3が得られた。
【0103】
MSによる分子量 1970±1ダルトン。
【0104】
化合物4及び5で使用されるペプチドは、同様の方法で調製される。DMF中で無水グルタル酸を用いて化合物1(Pn216)を誘導体化することにより、化合物7を調製した。アセトニトリル中、トリエチルアミンの存在下に、化合物1(Pn216)と無水安息香酸とを反応させることにより、化合物6を調製した。
【0105】
例4:化合物3のTc−99m放射性標識[比較例]
H2O中に溶かした化合物3(1mg/ml)の0.1mlアリコットを、脱酸素生理食塩水(0.9%w/v、1ml)及びNaOH水溶液(0.1M)0.035mlと共に、窒素充填10mlガラスバイアルに移した。この溶液に、テクネチウムジェネレーター溶出液(1ml、約4GBq)を、次いで、塩化第一スズ水溶液(0.1ml、約10μg)を加えた。標識pHは、9.0〜10.0であった。周囲実験室温度(15〜25℃)で30分間バイアルをインキュベーションして、標識を行った。生じた製剤を、所望の放射性濃度まで希釈するか、HPLC精製を行って(B系)、未標識出発物質及び放射性不純物を試験前に除去した。精製の後に、有機溶剤を真空中で除去し、試料を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)約5mlに再溶解させて、6〜9MBq/mlの処理濃度を得た。下記の薄層クロマトグラフィー(TLC)系により、使用前に放射化学的純度を評価した。
i) 0.9%w/v生理食塩水で溶出されるITLC SG2cm×20cm
ii) アセトニトリル:H2O=50:50v/vで溶出されるWhatman No.1 2cm×20cm。
【0106】
標識された物質は、TLC系(i)では元の所に、又はその近くに残り、系(ii)では溶剤フロントの近くに移動する。
【0107】
実施例5:HPLC系
流速:全ての系で1ml/分及びTFA=トリフルオロ酢酸。
【0108】
A系
カラム:Waters C18 250×4.5mm。粒径4ミクロン。
勾配:25分で、B10〜60%の溶出プロファイル。
溶出剤A:0.1%TFA水溶液。
溶出剤B:0.1%TFAアセトニトリル溶液。
【0109】
B系
カラム:Waters Novapak C18 150×3.9mm。粒径4ミクロン。
勾配:22分で、B0〜100%の溶出プロファイル。
溶出剤A:0.1%TFA水溶液。
溶出剤B:0.1%TFAアセトニトリル溶液。
【0110】
H系
カラム:Phenomenex C18(2)Luna 25×0.46cm、5μm。
勾配:0〜20分で、B16〜40%、20〜22分でB40〜90%、22〜30分でB90%、次いで、30〜31分でB90〜16%の溶出プロファイル。次いでカラムを、B16%で14分間再平衡させる。
溶出剤A:0.05%TFA水溶液。
溶出剤B:0.04%TFAアセトニトリル溶液。
【0111】
J系
カラム:Phenomenex C18(2)Luna 25×4.6cm、5μm、
勾配:0〜20分で、B16〜40%、20〜22分でB40〜16の溶出プロファイル。カラムを、B16%で8分間再平衡させる。
溶出剤A:0.05%TFA水溶液。
溶出剤B:0.05%TFAアセトニトリル溶液。
【0112】
再構成された凍結乾燥キット(Lot58、実施例6)のHPLC J系による分析(実施例5)は、J系(先行技術)を使用すると、94%のRCPを示したが、H系(本発明)を使用すると、90%−RCPを示した−図3参照。
【0113】
実施例6:凍結乾燥キットの調製
注射用の水(WFI)の全容量のうちの約90%を、調製容器に装入し、窒素パージにより脱酸素化した。メチレンジホスホン酸、塩化第一スズ二水和物、化合物3(酢酸塩として)、酢酸ナトリウム三水和物及びp−アミノ安息香酸、ナトリウム塩を順番に加えて、各々を溶かす一方で、窒素パージを続けた。溶液の窒素パージを、溶液のヘッドスペース上の窒素流に代えた。次いで、炭酸水素ナトリウム及び無水炭酸ナトリウムもしくは炭酸水素ナトリウムのみを加え、溶解させた。次いで、このバルク溶液を、脱酸素WFIを用いて100%の最終容量(〜5リットル)に調整した。次いで、バルク溶液を、無菌0.2μmフィルターで濾過して、充填容器に入れた。充填操作の間、充填容器のヘッドスペースを、無菌濾過(0.2μm)された窒素又はアルゴンでパージした。1.0mlのアリコットを、無菌でバイアルに分取した。バイアルをクロージャーA、B又はCで半分栓をし、予め冷却しておいた凍結乾燥機シェルフに移した。次いで、バイアルを凍結乾燥させ、無菌濾過(0.2μm)された窒素ガスを充填し、栓をし、シーリングした。
【0114】
【表2】
【0115】
実施例7:凍結乾燥されたキットからの99mTc錯体の調製
実施例6の凍結乾燥キットを、99mTcの過テクネチウム酸イオン(テクネチウムジェネレーター溶出液2〜8ml、0.5〜2.5GBq)で再構成した。溶液を60℃の水浴中で10分間加熱し、次いで、室温で放置した。放射化学的純度を、実施例5のH系に記載されているHPLC法により決定し(図2参照)、下記のITLC法により、RHTを決定した。
【0116】
ITLC SG2cm×20cmを、50:50(v/v)のメタノール:酢酸アンモニウム溶液(1M)で溶出した。配位子ベースの放射線標識された種は、溶剤フロントに移動する。RHTは、元の位置に残る。
【0117】
溶液をHPLCのH系により分析し、結果を、下記の表3に示すが、%RCPは、熱力学的99mTc錯体の放射化学的純度である。
【0118】
【表3】
【0119】
実施例8:99mTc親油性錯体含量に対する標的分子の作用
凍結乾燥キット製剤を、Lot63(実施例6)の処方物を使用して、様々な標的分子(Z)で実施例6に従い調製した。再構成後のバッチからの3個のバイアルの試験及び実施例7による分析に関して、結果を表4に示す:
【0120】
【表4】
【0121】
実施例9:99mTc錯体製剤に対する放射線防護剤の効果
99mTc錯体製剤の純度に対する放射線防護剤p−アミノ安息香酸ナトリウム(Na−PABA)の効果を研究した(溶液の形態でも、凍結乾燥キット製剤としても)。全ての製剤を、1083 4023/50灰色クロージャーを備えた10Rバイアル中で、0.5GBq/mlの最終放射性濃度(RAC)になるまで製造した。この製剤を、HPLCのH系を使用して、様々な再構成後(PR)の時点で分析し、結果を、放射性組成物のパーセンテージとして表5に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
実施例10:RCP及び99mTc親油性錯体に対するクロージャーの作用
放射性標識に対するバイアルクロージャーの効果を、様々な凍結乾燥されたキット処方物で研究した。2種の異なるゴムクロージャー(West Pharmaceutical Services)を使用して製造された凍結乾燥キットを、実施例7に記載の方法に従い再構成した。RCP及び放射性標識された不純物における差異を記載した(10RCP定量の平均を示す表6参照)。
【0124】
【表6】
【0125】
実施例11:生体内分布に対する親油性テクネチウム錯体含量の作用
正常なオスのウィスターラット(体重150〜250g)で実験を実施し、99mTc−化合物3製剤を静脈内注射した後の1時間目に、解剖を行った。99mTc−化合物3製剤は、ロット♯58と記載される凍結乾燥キット処方物から調製し(詳細については実施例6参照)、加熱しないか、様々な時間90℃に加熱し、投与前に周囲温度まで冷却した。H系(実施例5)を使用するHPLC分析により、表6(下記)に示されている様々なレベルの親油性不純物が確認された。生体内分布データを、各製剤、器官/組織に関して算出し、データを、個々の動物に関して、及び3匹の群の平均及び標準偏差に関して報告した。Microsoft Excel 97 SR−2スプレッドシートパッケージを使用して、単一因子/一元(single factor/one way)分散分析(ANOVA)試験又は不対2テール(2tailed)スチューデントt検定(2サンプル、不等分散)をこのデータに適用した。p値が0.05未満であると、結果は、著しく異なると思われた。結果を、表7に示す:
【0126】
【表7】
【0127】
実施例12:親油性テクネチウム錯体含量及び生体内分布に対する弱酸塩の効果
処方物に酢酸ナトリウム三水和物を加えることにより生じた生体内分布の変化を、凍結乾燥キットロット番号58と65とを比較することにより評価した。ついで、実施例10の場合と同様に、キット再構成及び生体内分布研究を実施した。不対2テールスチューデントt検定を使用して、このデータを分析した。放射能の血中残留に著しい低下(p<0.05)(2.95から2.12%)があり、さらに、6.10%から2.82%への肝臓随伴放射能(p<0.05)の著しい低下があった。
【0128】
【表8】
【0129】
実施例13:静脈血栓塞栓症のラットモデルでの血餅摂取率の比較
親油性xTc錯体の既知のバリエーションを伴う製剤(ロット58及び65、実施例7参照)を研究した。ラット(オスのウィスター、250〜350g)に、ウレタン15%で麻酔をかけた。開腹した後に、大静脈を単離し、回りの脂肪組織を除去した。白金線(1.5cm×0.5mm)を、下部大静脈に挿入し、5分後に、エラグ酸0.4ml(1.2×10−4M)を、大腿静脈を介して静脈内注射して、血餅形成を開始させた。60分後に、ロット58又は65(実施例7により調製)のいずれか0.1ml(動物1匹当り50MBq)を、同じ静脈を介して注射して、さらに60分後に、動物を犠牲にして、血餅を除去し、秤量し、カウンティングした。他の組織、例えば血液、肺、心臓も解剖して、カウンティングした。血餅へのトレーサーの摂取を、相対濃度(cpm/血餅g割る用量/動物g)及び血餅:バックグラウンド組織として決定した。このモデルで生じた血餅の平均重量は、約27mg、n=32(5〜50mg範囲)であった。
【0130】
血餅中の放射能の相対濃度は、ロット58では8.01(n=4、SD=3.33)、ロット65では7.49(n=4、SD=1.84)であった。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】肝臓摂取率に対する、組成物中の親油性99mTc錯体含量の作用を示すグラフである。
【図2】アザ−ジアミンジオキシム99mTc錯体組成物の典型的なHPLC図を示すグラフであり、本発明に記載の様々な種を示している。図2Aは、通常の原寸ピーク表示であり、図2Bは、拡大比率ピーク表示である。
【図3】同じアザ−ジアミンジオキシム99mTc錯体製剤に関して、2種の異なる系、J系及びH系を使用した場合のHPLC図を比較するグラフである。親油性xTc錯体は、H系を使用すると検出されるが(存在する放射性標識物質のうちの約5%のレベルで)、J系を使用すると検出されない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良99mTc放射性金属錯体組成物、該組成物を含有する放射性医薬品製剤、並びに放射性医薬品の製造用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5395608号には、99mTc、105Rh、109Pd、57Co、186Re、188Re、97Ru、111In、113mIn、67Ga及び68Gaを始めとする広範な放射性同位元素の放射性金属錯体の製造のための一群の五座配位型アザ−ジアミンジオキシム配位子が開示されている。ペンダントアリールスペーサー基を有する二官能性アザ−ジアミンジオキシム配位子が開示されており、米国特許第5395608号明細書の実施例3には、次の式Aの化合物が開示されている。
【0003】
【化1】
【0004】
式中、Ar=4−アミノベンジルである。
【0005】
米国特許第5395608号明細書には、かかるキレート剤の放射性標識法が上位概念で記載されているが、放射性金属99mTcについての標識法の具体的な実施例は記載されていない。
【0006】
Pillai et al[J.Nucl.Med.Biol.,38,527−31(1994)]には、式Aのアザ−ジアミンジオキシム類似体の99mTc標識が記載されているが、Arはベンジルである。99mTc標識は、室温で実施され、HPLC図は単一の99mTc種のみを示している。アザ−ジアミンジオキシムと標的分子との複合体は記載されていない。
【0007】
国際公開第99/60018号には、血栓イメージング用のアザ−ジアミンジオキシム配位子とペプチドとのキレート複合体が開示されている。このペプチドは酵素トランスグルタミナーゼ(即ち、XIIIa因子)の基質である。かかる好ましいキレート複合体は次式のアザ−ジアミンジオキシムであると記載されている。
【0008】
【化2】
【0009】
式中、ペプチドはα2−抗プラミン又はカゼインの断片である。
【特許文献1】米国特許第5395608号明細書
【特許文献2】国際公開第99/60018号パンフレット
【非特許文献1】Pillai et al, J.Nucl.Med.Biol.,38,527−31(1994)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
今回、かかるアザ−ジアミンジオキシム−標的分子キレート複合体のテクネチウム金属錯化学が複数のテクネチウム種を生じることが判明した。本発明は、望ましくないテクネチウム種が抑制された改良アザ−ジアミンジオキシム複合体テクネチウム金属錯体組成物を提供する。
【0011】
例えば、アザ−ジアミンジオキシムキレート複合体は、XTc(式中、x=94m、99又は99m)でキレート化すると、複数のテクネチウム種をもたらすことが判明した。これらの複数のXTc金属錯体種は、クロマトグラフィーで分離・検出することができる。複数のテクネチウム種のうちの数種は動態的生成物つまり過渡種であって、時間経過に伴って(場合によって加熱により)安定な生成物へと変化する。動力学的に優勢な(過渡)錯体から最終化学種へと変化する速度はpH依存性であり、pH9.5では2〜3時間を要するのに対して、pH10.5では通常60分で十分である。この反応は加熱によって促進できる。今回、これらの複数のXTc錯体種のうちの数種が親油性で、放射性医薬品の生体内分布に悪影響を与えかねないことも判明した。本発明は、これらの動態的及び親油性種のレベルが最小限に制御され、全体的イメージング特性が向上したテクネチウム錯体組成物を提供する。本発明は、品質の制御されたXTc錯体生成物組成物を迅速かつ再現可能に調製することができるように、所望の安定生成物への変換を最適化するための方法論も提供する。
【0012】
さらに本発明は、改良テクネチウム錯体組成物を含む放射性医薬品、並びにかかる放射性医薬品を製造するための非放射性キット処方物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の態様では、本発明は、放射性同位体XTcと以下の式(I)の配位子との金属錯体を含むテクネチウム錯体組成物であって、テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の10%未満が式Iの配位子の過渡xTc錯体である、テクネチウム錯体組成物を提供する。
【0014】
【化3】
【0015】
式中、R1及びR2は各々独立にR基であり、
xは94m、99又は99mであり、
Yは−(A)n−Zであるが、
式中、Zは分子量5000未満の生体標的部分であり、
−(A)nはリンカー基であって、各Aは独立に−CO−、−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NR−、−NRCO、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4−8シクロへテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基もしくはC3−12ヘテロアリーレン基又はポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸成分であり、
nは0〜10の整数であり、
各R基は独立にH又はC1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
【0016】
本発明の好適な放射性同位体xTcは、陽電子放射体94mTc、β放射体99Tc又はγ放射体99mTcである。好ましくはxは99mであり、つまり放射性同位体は好ましくは99mTcである。
【0017】
「配位子」という用語は、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤と生体標的分子(Z)との複合体を意味する。配位子は、生体標的分子に結合した放射線同位体xTcのアザ−ジアミンジオキシム金属錯体が形成されるように設計される。
【0018】
「生体標的分子」という用語は、3〜100量体のペプチドもしくはペプチド類似体(これらは直鎖ペプチドでも、環式ペプチドでも、これらの組合せでもよい)、又は酵素の基質もしくは阻害物質、又は合成受容体結合化合物、オリゴヌクレオチドもしくはオリゴ−DNAもしくはオリゴ−RNA断片を意味する。生体標的部分は合成品でも天然品でもよいが、好ましくは合成品である。本発明の好適な生体標的部分は、5000ダルトン未満、好ましくは200〜3000ダルトンの範囲、さらに好ましくは300〜2000ダルトンの範囲の分子量を有し、400〜1500ダルトンが特に好ましい。
【0019】
「環式ペプチド」という用語は、2つの末端アミノ酸が共有結合で結合した5〜15個のアミノ酸配列を意味し、上記共有結合は、ペプチド結合でも、ジスルフィド結合でも、或いはチオエーテル、ホスホジエステル、ジシロキサン又はウレタン結合などの合成非ペプチド結合であってもよい。
【0020】
「アミノ酸」という用語は、L−又はD−アミノ酸、アミノ酸類似体又はアミノ酸模倣物質を意味し、これらは天然のものでも、純然たる合成品であってもよく、光学的に純粋、つまり単一の鏡像異性体でキラルなものでも、鏡像異性体の混合物であってもよい。好ましくは、本発明のアミノ酸は、光学的に純粋である。「アミノ酸模倣物質」という用語は、天然アミノ酸の合成類似体を意味し、これらはアイソスターであり、つまり天然化合物の立体及び電子構造を模倣するように設計されている。かかるアイソスターは、当業者に周知であり、特に限定されないが、デプシペプチド、レトロインベルソペプチド、チオアミド、シクロアルカン又は1,5−ジ置換テトラゾールが挙げられる[M.Goodman, Biopolymers,24,137,(1985)参照]。
【0021】
好適な酵素基質又は阻害物質には、グルコース及びフルオロデオキシグルコースなどのグルコース類似体、脂肪酸又はエラスターゼ阻害物質が挙げられる。好適な酵素基質又は阻害剤は生体標的ペプチドであってもよい(後述)。
【0022】
好適な合成受容体結合化合物としては、エストラジオール、エストロゲン、プロゲスチン、プロゲステロンその他のステロイドホルモン、ドーパミンD−1又はD−2受容体のリガンド又はトロパンなどのドーパミン輸送体、及びセロトニン受容体のリガンドが挙げられる。
【0023】
本発明の好適な生体標的ペプチドは、3〜20量体のペプチド(つまり3〜20個のアミノ酸を有するペプチド)、好ましくは4〜15量体、さらに好ましくは5〜14量体などの断片である。これらのペプチドは環状でも、線状でも、これらの組合せであってもよい。ペプチドは合成品でも天然品でもよいが、好ましくは合成品である。かかるペプチドとしては、以下のものが挙げられる。
ソマトスタチン、オクトレオチド及び類似体、
ラミニン断片、例えば、YIGSR、PDSGR、IKVAV、LRE及びKCQAGTFALRGDPQG、
白血球蓄積部位を標的するためのN−ホルミルペプチド、
血小板第4因子(PF4)の断片、
RGD−含有ペプチド、
酵素トランスグルタミナーゼ(XIIIa因子)の基質であるα2−抗プラスミン、フィブロネクチン又はβカゼイン、フィブリノゲン又はトロンボスポンジンのペプチド断片。α2−抗プラスミン、フィブロネクチン、βカゼイン、フィブリノゲン及びトロンボスポンジンのアミノ酸配列は以下の参照文献に記載されている。α2−抗プラスミン前駆体[M.Tone et al.,J.Biochem,102,1033,(1987)]、βカゼイン[L.Hansson et al, Gene,139,193,(1994)]、フィブロネクチン[A.Gutman et al, FEBS Lett.,207,145,(1996)]、トロンボスポンジン−1前駆体[V.Dixit et al, Proc. Natl. Acad. Sci., USA,83,5449,(1986)]、RR.F.Doolittle, Ann. Rev. Biochem.,53,195,(1984)。
【0024】
生体標的部分がペプチドであるときは、ペプチド末端の一端又は両端を適宜適当な代謝阻害基で保護していてもよい。「代謝阻害基」という用語は、ペプチド又はアミノ酸のアミノ末端又はカルボキシル末端でのインビボ代謝を阻害又は抑制する生体適合性基を意味する。かかる基は、当業者に周知であり、ペプチドアミン末端については、アセチル、Boc(Bocはt−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(Fmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、ベンジルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde(つまり1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)又はNpys(つまり3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から好適に選択される。ペプチドアミン末端の代謝の阻害は、アミン末端をアザ−ジアミンジオキシムキレート剤に結合させることによっても達成できる。ペプチドカルボキシル末端の好適な代謝阻害基としては、カルボキサミド、t−ブチルエステル、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、アミノアルコール又はアザ−ジアミンジオキシムキレート剤への結合が挙げられる。好ましくは、1以上の代謝阻害基がアザ−ジアミンジオキシムキレート剤であるように選択される。
【0025】
ペプチドのカルボキシル末端は、カルボキシペプチダーゼ酵素によるインビボ分解を特に受け易い。そこで、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤を好ましくはカルボキシル末端に結合させる。ペプチドが環式ペプチドからなる場合には、代謝阻害基は環式ペプチド環を閉環する共有結合であってもよい。
【0026】
本発明の好ましい生体標的ペプチドは、α2−抗プラスミン又はカゼインの3〜20量体のペプチド断片であり、さらに好ましくは4〜15量体、特に5〜14量体の断片である。本発明の好ましいα2−抗プラスミン又はカゼインペプチドは、1以上の代謝阻害基と以下のいずれかのN末端から選択されるアミノ酸配列を含む。
(i)α2−抗プラスミン
即ち、NH2−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Leu−Thr−Leu−Thr−Leu−Leu−Lys−OH、又はその1個以上のアミノ酸が交換、付加又は除去されたもの、例えば、
NH2−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Leu−Thr−Leu−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly−OH、
NH2−Asn−Gln−Glu−Ala−Val−Ser−Pro−Leu−Thr−Leu−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly−OH、
NH2−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Gly−OH、或いは
(ii)カゼイン
即ち、Ac−Leu−Gly−Pro−Gly−Gln−Ser−Lys−Val−Ile−Gly。
【0027】
本発明の特に好ましいα2−抗プラスミンペプチドは、4個のアミノ酸配列Asn−Gln−Glu−Gln(NQEQ)を含むペプチド断片である。特に最も好ましいかかるα2−抗プラスミンペプチドは、以下の配列を有する。
Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly(式中、XaaはTyr又はI−Tyr(ヨードチロシン)である。)。
【0028】
かかる好ましいα2−抗プラスミンペプチドは好ましくは、両ペプチド末端に代謝阻害基を有し、該代謝阻害基の一方はアザ−ジアミンジオキシムである。この場合、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤は好ましくはカルボキシ末端に結合し、N末端は代謝阻害基、好ましくはN−アセチルで保護され、α2−抗プラスミンペプチドは好ましくは以下のものである。
Ac−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly
(式中、XaaはTyr又はI−Tyr(ヨードチロシン)である。)。
【0029】
「フルオロアルキル」という用語は、1個以上のフッ素置換基を有するアルキル基を意味し、この用語には、モノフルオロアルキル(例えば−CH2F)からペルフルオロアルキル(例えばCF3)まで包含される。
【0030】
本発明者らは、アザ−ジアミンジオキシム配位子は、望ましいテクネチウム種の他に、式Iの配位子の過渡XTc錯体と分類される他のテクネチウム錯体も形成されることを発見した。本発明のテクネチウム錯体組成物は、テクネチウム錯体処方物中に存在するXTcのの10%未満が式Iの配位子の過渡XTc錯体であることを特徴とする。これらの「過渡XTc錯体」は、式Iの配位子との動力学的に優勢なテクネチウム金属錯化反応生成物である。これらは過渡種であり、周囲条件下で、熱力学的に安定な所望の最終的錯化反応生成物へとゆっくりと変化する。過渡XTc錯体の化学構造は知られていないが、式(I)の配位子の−NY−部分の橋頭窒素原子がテクネチウムに配位したものと考えられる。かかる配位はおそらく、アザ−ジアミンジオキシム配位子が五座配位子(即ち、ジオキシムトリアミンドナーセットを有する)或いはモノオキソ核(即ち、Tc=O3+核)を有するTc(V)錯体で未配位の1個のオキシム基を有する四座配位キレートのいずれかとして機能することを伴う。かかる橋頭窒素原子による配位は、−NY−窒素原子が配位していない熱力学的生成物の8環キレート環の大きさに比べて、−NYの窒素原子が配位した5環キレート環の大きさが小さいので、動力学的に優勢になるものと思われる。
【0031】
特に放射性医薬品用途では、その正確な組成が時間経過と共に変化する複数のテクネチウム種の存在は明らかに望ましくない。投与したものの再現性が達成困難で、各化学種が異なる生体内分布特性を有しかねないからである。そこで、本発明は、も高い純度で望ましい熱力学的生成物が得られるように過渡テクネチウム錯体のレベルを制御する方法を提供する。アザ−ジアミンジオキシム配位子のテクネチウム錯体の望ましい熱力学的生成物は、以下の構造を有すると考えられる。
【0032】
【化4】
【0033】
式中、R1、R2及びYは上記の通り定義される。即ち、アザ−ジアミンジオキシム配位子はジアミンジオキシム金属ドナーセットを有するTc(V)ジオキソ錯体であり、−NY−基の窒素は配位していない。この偽大環状環構造は、過渡XTc錯体に比べて熱力学的安定性を与えると考えられる。Yが、−NY−のN原子が3級アミンとなる種類の場合、3級アミンの大部分は3級アミンの塩基性(通常、8〜10のpKa値を有する)のため、9.0未満のpHの水溶液中でプロトン化される。
【0034】
本発明者らは、望ましいテクネチウム種及び過渡XTc錯体の他に、アザ−ジアミンジオキシム配位子は、親油性テクネチウム錯体と分類される他のテクネチウム錯体も形成しかねないこと、並びにかかる親油性錯体がXTc組成物の生体内分布に悪影響を与えかねないことを発見した。「親油性テクネチウム錯体」という用語は、アザ−ジアミンジオキシムの望ましい動力学的テクネチウム錯体よりも格段に高いオクタノール/水分配係数を有する式Iの配位子をもつテクネチウムのアザ−ジアミンジオキシム金属配位錯体を意味する。かかる「親油性テクネチウム錯体」は、移動相中で50%以下の有機溶剤を使用すると、C18逆相HPLCの固定相に強く結合する。したがって、組成物にかかる「親油性テクネチウム錯体」が存在する場合には、有機含量70%以上、好ましくは90%以上の水/有機溶剤移動相を使用して、これらを逆相HPLC分析内のカラムから溶出させる必要がある。
【0035】
かかる「親油性テクネチウム錯体」は、特に式Iの凍結乾燥配位子を、合成エラストマーゴム製クロージャーを備えた薬品バイアル又は容器中で調製し、生体標的分子(Z)がアミン含有化合物などの反応性求核基、特に1級又は2級アミン(例えばペプチドのリシン基)、チオール(例えばペプチドのシステイン基)又はフェノール(例えばペプチドのチロシン基)を有する場合に、観察される可能性が高い。こうした状況では、合成ゴムからの揮発性の非極性浸出性物質は、真空中で合成クロージャーから除去され、低温の凍結乾燥プラグ上に凝縮しかねない。浸出化合物と標的分子の求核基との化学反応は、親油性の高いZの誘導体の形成をもたらす。かかる化学反応は、アルカリpHで優勢であり、求核基が比較的反応性が高い(つまり、プロトン化アミンとは対照的に遊離しているか、或いはチオレート又はフェノレート種の存在量が多い。)。XTc放射性標識を実施すると、「親油性テクネチウム錯体」不純物が観察される。凍結乾燥時の合成ゴムクロージャーからの幅広い揮発性の非極性浸出性物質の浸出は公知である[Jahnke et al, Int.J.Pharmaceut., 77,47−55(1991)及びJ.Parent.Sci.Technol., 44(5),282−288(1990)参照]が、放射性医薬品に対するこれらの浸出性物質の影響については従前報告例がない。かかるクロージャー浸出性物質は、加熱時、例えば殺菌のためのオートクレーブ処理時にも生成しかねないことが知られており[例えば、Danielson J.Parent.Sci.Technol.46(2),43−47(1992)]、凍結乾燥が最悪のシナリオではあるものの、生体標的分子(Z)とかかる浸出性物質との反応は他の状況でも起こりかねないと考えられる。
【0036】
したがって、テクネチウム錯体組成物を合成クロージャーを有するバイアル又はコンテナで調製する場合、特に後述の第3の実施形態のキットなどのように凍結乾燥を用いる場合には、かかる「親油性テクネチウム錯体」が特に問題となる。本発明は、クロージャー材料及びキット処方物を適切に選択することによって、「親油性テクネチウム錯体」を抑制又は制御する方法を提供する。
【0037】
本発明の好ましいテクネチウム錯体組成物は、過渡xTc錯体のレベルが抑制されているだけでなく、テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の5%未満が上記に定義した親油性xTc錯体であるものである。好ましくは、本発明のテクネチウム錯体組成物は、テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の3%未満が親油性xTc錯体であるものである。さらに好ましくは、これらの親油性xTc錯体のレベルは2%未満であり、1%未満が特に好ましく、0.5%未満が理想的である。
【0038】
本発明では、式Iの配位子の親油性xTc錯体がインビボで望ましくない肝臓摂取及び血液保持性をもつことを示す。肝臓摂取を最小限にすることが重要である。肝臓は、放射性医薬品イメージング、特に肺又は心臓イメージングの重要な背景臓器であるからである。標的分子(Z)が、肺塞栓(PE)などの肺内の血栓をターゲットとするように設計されている場合、イメージングの可能性は、血餅を囲む器官及び組織(即ち、肺、心臓、血液及び肝臓)内の放射能によっても影響を受ける。
【0039】
本発明の様々なテクネチウムアザ−ジアミンジオキシム錯体は、HPLC、特に逆相HPLC、即ちRP−HPLCなどの適当なクロマトグラフィー法で分離・検出できる。これらの親油性及び動態種の存在は、従前研究者には認識されていなかった。例えば、抗プラスミンペプチドとのアザ−ジアミンジオキシム複合体の所期のHPLC及びITLC分析では、90%を超える公称純度、つまり十分な純度が示されていた。しかし、以降の生体内分布の研究では、肝臓で高レベルの保持が示され、これは、放射化学的不純物の量と一致しなかった。不純物には、RHT(還元加水分解テクネチウム)が含まれるが、これは肝臓摂取を示すことが知られている。RHTはITLCで検出される固定種である。さらに識別性の高いクロマトグラフィー分析の結果、本発明の複数の化学種が判明した。
【0040】
RP−HPLCを使用すると、過渡xTc錯体は、熱動力学的生成物の保持時間未満の保持時間を示すが、親油性錯体は熱力学的生成物の保持時間よりもかなり長い保持時間を示す。ピークサイズの定量を用いれば、所定のxTc錯化反応が進行して完了へと向かっているか否か、親油性xTc錯体の存在量は当業者が容易にモニターできる。周囲温度(18〜25℃)での十分に長い錯化反応時間によるか、又は本発明に教示するようなさらに高い温度で加熱を続けることにより、所定の系のために、所望の熱力学的xTc錯体生成物の確実な試料を容易に確立することができる。次いで、かかる確実な試料を使用して、使用した特定のクロマトグラフィー系で観察されたピークを同定することができる。
【0041】
「logP」という用語は、その通常の意味を有する。即ち、オクタノール/水分配係数(P)の対数(基数10)を意味する。かかるオクタノール/水分配係数は、幅広い有機化合物について公表されており、直接測定[99mTc錯体では、A.R.Ketring et al,Int.J.Nucl.Med.Biol.,11,113−119(1984)参照]又はクロマトグラフィー[A.Hoepping et al,Bioorg.Med.Chem.,6,1663−1672(1998)]などの様々な技術で測定することができる。好ましい測定方法は、既知の標準を用いてクロマトグラフィー系(例えばHPLC)を較正して、保持時間を、logPと相関させることができるようにすることである。これは化学種の混合物を同時に測定できるという利点を有する。
【0042】
本発明の好ましいテクネチウム錯体は対称である。換言すれば、式(I)の配位子の−NY−部分の2個の−CR22R22NHCR12C(=N−OH)R1置換基として同じものを選択する。これはテクネチウム錯体がキラル中心をもたないという利点を有する。かかる中心がジアステレオマーテクネチウム錯体を生じ、特定の異性体の精製が必要となりかねないからである。
【0043】
本発明のテクネチウムアザ−ジアミンジオキシム錯体では、1個以上のR2基がHであり、さらに好ましくはR2基がすべてHであるのが好ましい。各R1は好ましくは、C1〜C3アルキル、C2〜C4アルコキシアルキル、C1〜C3ヒドロキシアルキル又はC1〜C3フルオロアルキルから選択され、さらに好ましくは、C1〜C3アルキル又はC1〜C3フルオロアルキルである。R1がすべてCH3であるのが特に好ましい。
【0044】
本発明のテクネチウム錯体の有するR基の2個以上のR基がそれらと結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成している場合、好ましい環は3〜6員環、特に5員環又は6員環を有する。かかる最も好ましい環は飽和炭素環である。好ましい炭素環は、同一又は隣接炭素原子に結合した2個のR1基が3〜6員、特に5員又は6員飽和環を形成しているものである。
【0045】
本発明の特に好ましいテクネチウムアザ−ジアミンジオキシム錯体組成物は、式(II)の配位子を有するものである。
【0046】
【化5】
【0047】
式中、R1は各々独立にC1〜C3アルキル又はC1〜C3フルオロアルキルから選択され、pは、0〜3の整数であり、Zは式Iと同様に定義される。式IIにおいて、Yは−CH2CH2(A)pZである。式(II)の好ましい配位子は、前記と同様に対称である。
【0048】
リンカー基−(A)n−の役割は、金属配位で生じる比較的嵩高いテクネチウム錯体を生体標的部分(Z)の活性部位から遠ざけ、例えば受容体結合を損なわないことであると考えられる。これは、柔軟な基(例えば簡単なアルキル鎖)を組み合わせることにより達成して、嵩高な基が活性部位から離れる自由を有するようにするか、及び/又は活性部位から離して金属錯体を配置するシクロアルキル又はアリールスペーサーなどの剛直な基を有するようにする。リンカー基の性質を使用して、生じた複合体のテクネチウム錯体の生体内分布を変更することもできる。例えば、リンカーへのエーテル基の導入は、血漿タンパク質結合を最小限にするのに役立つか、又はポリアルキレングリコール、特にPEG(ポリエチレングリコール)などのポリマーリンカー基の使用は、インビボで血中薬品寿命を延ばすのに役立つ。
【0049】
好ましいリンカー基−(A)n−は、骨格鎖(即ち、−(A)n−成分を形成する架橋原子)を有し、これは、2〜10個の原子、さらに好ましくは2〜5個の原子を有するが、2又は3個の原子が特に好ましい。2個の原子からなる最少リンカー基骨格鎖は、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤は、生体標的部分から十分に分離されて、相互作用が最小限に抑制されるという利点をもたらす。もう1つの利点は、Z基の可能なキレート環サイズは大きいので(2原子リンカー基鎖では8個以上)、これらの基は、xTcへのアザ−ジアミンジオキシムの配置に有効に競合することはないようである。このように、生体標的部分の生体標的特徴及びアザ−ジアミンジオキシムキレート剤の金属錯化能の両方が、このタイプの複合体では維持される。結合が、血中で容易に代謝されないように、生体標的部分Zが、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤に結合したことが、特に好ましい。これは、かかる代謝によって、標識された生体標的部分が、インビボで所望のターゲット部位に達する前に、xTc金属錯体が分離されてしまうためである。したがって生体標的部分は好ましくは、容易には代謝されない−(A)n−リンカー基を介して、本発明のxTc金属錯体に共有結合した。かかる好ましい結合は、炭素−炭素結合、アミド結合、尿素又はチオ尿素結合又はエーテル結合である。
【0050】
アルキレン基又はアリーレン基などの非ペプチドリンカー基は、複合生体標的部分と著しい水素結合相互作用がないので、リンカーが、生体標的部分の周りに巻きつかないという利点を有する。好ましいアルキレンスペーサー基は、−(CH2)q−であり、式中、qは、2〜5の値の整数である。好ましくは、qは、2又は3である。好ましいアリーレンスペーサーは、次式である。
【0051】
【化6】
【0052】
式中、a及びbは各々独立に0、1又は2である。
【0053】
好ましいY基は−CH2CH2−(A)p−Zであるが、pは、0〜3の整数である。Zがペプチドである場合、Yは好ましくは、式中の−(A)p−が−CO−又は−NR−である−CH2CH2−(A)p−Zである。−(A)p−が−NH−である場合、この類は、市販の対称中間体N(CH2CH2NH2)3に由来するという付加的な利点を有する。様々な鎖長を有するトリアミン前駆体は、様々なアミンを化学的に分別するための合成法(例えば、保護基を介して)を使用することを必要とする。
【0054】
式IIの好ましいアザ−ジアミンジオキシムキレート剤は好ましくは、前記のα2−抗プラスミンペプチド(及び好ましいその実施形態)に複合される。
【0055】
本発明の改良テクネチウム錯体組成物は、適当な酸化状態のxTc放射線同位体(即ち、99mTc、99Tc又は94mTc)を、適当な溶剤中の溶液の形態の式(I)又は(II)の配位子と反応させることにより調製するが、その際
(i)周囲温度での長い反応時間、又は
(ii)さらに高い温度での加熱、又は
(iii)これらの組合せ
を用いて、所望の熱力学的xTc錯体生成物への反応を促進して、「過渡xTc錯体」のレベルを最小限にする。通常のテクネチウム出発物質は、過テクネチウム酸イオン、即ち、テクネチウムがTc(VII)酸化状態にあるTcO4−である。過テクネチウム酸イオン自体は、容易には金属錯体を形成しないので、テクネチウム錯体の調製は通常、第一スズイオンなどの適当な還元剤を加えて、テクネチウムの酸化状態をより低い酸化状態へ、通常はTc(I)からTc(V)へと還元することにより、錯化を容易にすることが必要である。溶剤は、有機又は水性もしくはこれらの混合物であってもよい。溶剤が有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤は好ましくは、エタノール又はDMSOなどの生体適合性の溶剤である。好ましくは、溶剤は水性であり、さらに好ましくは、等張性生理食塩水である。本発明のテクネチウム錯体組成物を得るには、反応混合物を、50℃以上に、10分以上加熱する必要がある。適当な加熱状態は、50〜80℃の範囲で10〜20分間、好ましくは、60〜70℃で10〜15分間、さらに好ましくは60〜65℃で10〜12分間であり、60℃で10分間が理想的である。反応媒体のpHは好適には、pH8.5〜9.5、好ましくはpH8.8〜9.0の範囲、さらに好ましくはpH8.8である。加熱プロセスでは、所望の温度制御を達成することができるなら、水又は高沸点オイル(例えばシリコーン)などの液体の温浴、加熱ブロック、ホットプレート又はマイクロ波放射などの適切な方法論を使用することができる。加熱が完了した後に、反応混合物を放置して室温まで冷却するか、又は積極的に(例えば、ガス又は水などの冷却液の流中で)、又は一体型誘導冷却を備えた加熱ブロックを介して冷却することができる。
【0056】
本発明者らは、生体適合性のカチオンと弱有機酸との1種以上の塩を反応混合物中に存在させることにより、望ましくない親油性xTc錯体を抑えることができることも立証した。「弱有機酸」という用語は、3〜7の範囲のpKaを有する有機酸を意味する。「生体適合性のカチオン」という用語は、負に荷電したイオン化基と塩を形成する正に荷電した対イオンを意味し、前記の正に荷電した対イオンも、非毒性であり、したがって、哺乳類の体に、特にヒトの体に投与するのに適している。好適な生体適合性のカチオンの例には、アルカリ金属ナトリウム又はカリウム、アルカリ土類金属カルシウム及びマグネシウム、及びアンモニウムイオンが挙げられる。好ましい生体適合性のカチオンは、ナトリウム及びカリウムであり、さらに好ましくはナトリウムである。
【0057】
かかる好適な弱有機酸は、酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、安息香酸、フェノール又はホスホン酸である。したがって、好適な塩は、酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩、フェノール酸塩又はホスホン酸塩、好ましくは酢酸塩である。酢酸塩は好ましくは、酢酸ナトリウム又はカリウム、さらに好ましくは酢酸ナトリウムである。これらの塩を使用することによる付加的な利点は、この酸アニオン(酒石酸、グルコン酸又はクエン酸アニオンなど)は、テクネチウムに弱く錯化し、配位子交換又はトランスキレート化プロセスでアザ−ジアミンジオキシム配位子により置換されることである。かかる状態は、テクネチウムイオンの加水分解などの望ましくない副反応を抑えるのに役立つ。弱有機酸の塩を使用するための好適な濃度は、1〜100μmol/mlの範囲、好ましくは5〜50μmol/mlの範囲である。
【0058】
さらに本出願人らは、反応混合物に放射線防護剤を加えることにより、いったん生じたxTc錯体生成物が安定化されるだけでなく、過渡xTc錯体から所望の熱力学的テクネチウム錯体生成物への変換が予期せず促進されることを発見した。このことは、加熱時間を短くし、及び/又は加熱温度を低くすることができるという利点を有する。生体標的部分が多少でも熱に不安定性である場合に、これは特に有利となる。「放射線防護剤」という用語は、水の放射線分解により生じる酸素含有遊離基などの高反応性遊離基を捕捉することにより、レドックスプロセスなどの崩壊反応を阻害する化合物を意味する。
【0059】
本発明の放射線防護剤は、無菌酸素の源又は空気、アスコルビン酸、p−アミノ安息香酸(即ち、4−アミノ安息香酸又はPABA)、ゲンチシン酸(即ち、2,5−ジヒドロキシ安息香酸)及びそのような酸と前記で定義されたような生体適合性のカチオンとの塩から適切に選択される。好ましい放射線防護剤は、アスコルビン酸及びp−アミノ安息香酸もしくはその生体適合性カチオンとの塩である。特に好ましい放射線防護剤は、p−アミノ安息香酸及びその生体適合性カチオンとの塩、理想的にはp−アミノ安息香酸ナトリウムである。本発明の放射線防護剤は、薬品グレードで市販されている。
【0060】
さらに本発明者らは、望ましくない親油性xTc錯体のレベルは、使用した薬品グレードのバイアルクロージャーの選択により影響を受けることを立証した。かかるクロージャーは通常、ブロモブチル、クロロブチル又はブチルゴム又はこれらの混合物を含み、合成ゴムからの揮発性浸出物質(例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤又はフェノール系樹脂副産物)は、アザ−ジアミンジオキシムキレート複合体と反応して、様々なレベルの親油性xTc錯体をもたらす。程度では様々であるが、多くのタイプのクロージャーはこの問題を示すので、クロージャーの選択は、親油性xTc錯体のレベルを抑える際に役立つファクターの1つである。
【0061】
本発明のテクネチウム錯体組成物の調製は好ましくは、本発明の第3の実施形態(下記)に記載されていような非放射性キットを使用して実施する。
【0062】
本発明のテクネチウム錯体組成物を調製する際に使用されるアザ−ジアミンジオキシムキレート複合体は、式IIIの二官能性キレートと、生体標的部分(Z)とを反応させることにより調製することができる。
【0063】
【化7】
【0064】
式中、R1及びR2は各々独立にR基であり、
Eは、−(A)n−Jであって、
式中、Jは、Zとの結合に適した官能基であり、
−(A)nはリンカー基であって、各Aは独立に−CO−、−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NR−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4−8シクロへテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基もしくはC3−12ヘテロアリーレン基又はポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸成分であり、
nは0〜10の整数であり、
各R基は独立にH又はC1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
【0065】
「結合に適した官能基」という用語は、Zの対応官能基(通常はアミン、カルボキシル又はチオール基)と反応して、アザ−ジアミンジオキシムキレート剤をZに化学的に結合させる官能基を意味する。かかる複合に適した好ましい官能基は、−NR5R6、−CO2M、−NCS、−NCO、−SM1、−OM1、マレイミド又はアクリルアミドであり、式中、R5及びR6は独立にR基又はPGであり、
MはH、生体適合性のカチオン、PG又は活性エステルであり、
M1はH又はPGであり、PGは保護基である。
【0066】
「生体適合性のカチオン」という用語は上記の通り定義される。
【0067】
「保護基」という用語は、望ましくない化学反応は阻害又は抑制するが、分子の残りの部分を化学的に変更しない穏やかな条件下に、該当する官能基から分離され得る程度に十分に反応性であるように設計されている基を意味する。脱保護した後に、該当する基を使用して、式IIIの二官能性キレートを生体標的部分(Z)に複合させることができる。保護基は、当業者に周知であり、Jが−NR5R6である場合には、Boc(Bocはt−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(Fmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde(つまり1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)又はNpys(つまり3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から、Jが−CO2PGである場合には、メチルエステル、t−ブチルエステル、ベンジルエステルから適切に選択される。Jが−OPGである場合には、適当な保護基はアセチル、ベンゾイル、トリチル又はテトラブチルジメチルシリルである。Jが−SPGである場合には、適当な保護基はトリチル及び4−メトキシベンジルである。他の保護基の使用は、「Protective Groups in Organic Synthesis」、Theorodora W.Greene及びPeter G.M.Wuts,(John Wiley & Sons,1991)に記載されている。
【0068】
「活性エステル」という用語は、より良好な脱離基であるように設計されていて、アミンなどの生体標的部分上に存在する求核基とのさらに簡単な反応を可能にするカルボン酸のエステル誘導体を意味する。好適な活性エステルの例は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ペンタフルオロフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、p−ニトロフェノール、ヒドロキシベンゾトリアゾール及びPyBOP(即ち、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)である。
【0069】
式IIIの二官能性キレートは、S.Liuら[Chem.Rev.99,2235−2268(1999)]に記載されているように生体標的部分(Z)に複合させることができる。したがって例えば、式IIIのアミン官能化アザ−ジアミンジオキシムキレート剤(即ちJ=−NR5R6)は、アミド結合を介して、生体標的部分(Z)のカルボキシル基に複合させることができる。このカップリングは、直接(例えば、固相ペプチド合成を使用して)又は、生体標的部分のカルボキシル基の活性エステルなどの当技術分野で公知の適当な中間体を介して実施することができる。もしくは、二官能性キレート剤のペンダントアミン基を初めに、イソチオシアネート(−NCS)又はイソシアネート(−NCO)基に変換し、それぞれチオ尿素の形成及び尿素結合を介して、アミン含有生体標的部分に複合させることができる。或いは、二官能性アザ−ジアミンジオキシムキレート剤のペンダントアミン基を、二酸の一方の酸官能基と反応させて、リンカー基を介して末端カルボキシル基を導入することができる。カルボキシル官能基を有する二官能性キレート剤(即ち、J=−CO2M)を同様に使用して、アミド結合を介してアミン含有生体標的部分に直接カップリングさせることができる。二官能性キレートはさらに、生体標的部分上のチオール基と反応して、安定なチオエーテル結合を生じるように設計された基を有してもよい。かかる基の例は、マレイミド(無水マレイン酸と対応するアミンとを反応させ、続いて、無水酢酸と共に加熱することにより調製することができる)及びアクリルアミド(塩化アクリリルとアミンとを反応させることにより調製することができる)である。
【0070】
本発明の二官能性アザ−ジアミンジオキシムキレート剤は、以下の式IVの化合物を、
(i)適当なクロロニトロソ誘導体Cl−C(R1)2−C(=NO)R1、
(ii)式Cl−C(R1)2−C(=NOH)R1のα−クロロオキシム、
(iii)式Br−C(R1)2−C(=O)R1のα−ブロモケトン、
を用いてアルキル化し、続いて、ヒドロキシルアミンを用いてジアミンジケトン生成物をジアミンジオキシムに変換することにより好適に調製することができる。
【0071】
【化8】
【0072】
式中、A、J、R2及びnは、前記の式IIIと同様に定義される。
【0073】
経路(i)は、S.Jurissonら[Inorg.Chem.,26,3576−82(1987)]に記載されている。クロロニトロソ化合物は、適当なアルケンを塩化ニトロシル(NOCl)で処理することにより得られる。クロロニトロソ化合物の合成に関するさらなる詳細は、Ramalingam,K. et al,Synth.Commun.(1995)25(5)743〜52、Glaser et al,J.Org.Chem.(1996)、61(3)、1047〜48、Clapp,Leallyn B.、 et al,J.Org Chem.(1971)、36(8)1169〜70、Saito,Giulichi et al,Shizen Kagaku(1995)、47、41〜9及びSchulz,Manfred Z.Chem(1981)、21(11)、404〜5に記載されている。経路(iii)は、Nowotnikら[Tetrahedron、50(29)、8617〜8632(1994)]に記載されている。市販の対応α−クロロ−ケトン又はアルデヒドをオキシム化することにより、α−クロロ−オキシムを得ることができる。α−ブロモケトンは、市販されている。
【0074】
第2の態様では、本発明は、人に投与するのに適した無菌形態の前記のアザ−ジアミンジオキシムテクネチウム錯体組成物を含む放射性医薬品を提供する。かかる放射性医薬品は、皮下注射針で1回以上穿刺するのに適している一方で(例えば、クリンプ形(crimped−on)隔膜シールクロージャーなど)、無菌の完全性を維持するシールを備えた容器中で適切に供給される。かかる容器は、一人又は多人数患者用量を含有してもよい。好ましい多人数用量容器は、多人数患者用量を含有する単一のバルクバイアル(例えば、10〜100cm3容量)を含み、これによって、臨床状況に合わせて、製剤の有効寿命の間の様々な時間間隔で、1人患者用量を臨床品質のシリンジへと取り出すことができる。
【0075】
本発明の放射性医薬品を、プレフィルドシリンジ中に供給することもできる。かかるプレフィルドシリンジは、用量をシリンジから直接に患者に投与することができる形態である1人用量を含有するように設計されている。かかるプレフィルドシリンジを、無菌製造により適切に調製して、製品が滅菌形態であるようにする。したがって、プレフィリングされたシリンジは好ましくは、使い捨てシリンジであるか、臨床使用に適していて、放射性医薬品の滅菌の完全性を維持する他のシリンジである。放射性医薬品を含有するプレフィルドシリンジは有利には、放射線量から取扱者を保護するためのシリンジシールドを備えていてよい。かかる適当な放射性医薬品シリンジシールドは、当技術分野で公知であり、好ましくは、鉛又はタングステンを含有する。かかるプレフィールドシリンジは好ましくは、シリンジシールドを既に備え、さらに、放射線シールドを備えた容器内にパッケージングされた形で顧客に運送されるので、製造者から顧客へと輸送される間の、パッケージ外側の外部放射線量は最小限される。
【0076】
99mTc画像診断用放射性医薬品に適した99mTc放射能分は、インビボでイメージングされる部位、摂取率及びターゲット−バックグラウンド比に応じて、180〜1500MBq(3.5〜42mCi)の範囲である。99mTc放射性医薬品での心臓イメージングには、負荷研究では約1110MBq(30mCi)を、安静研究では約350MBq(10mCi)を使用することができる。99mTc放射性医薬品での血栓イメージングでは、約750MBq(21mCi)が適しているであろう。
【0077】
第3の態様では、本発明は、本発明のxTc放射性医薬品組成物を調製するための非放射性キットを提供する。かかるキットを、例えば血流に直接注射することを介してヒトに投与するのに適した無菌放射性医薬品が得られるように設計する。99mTcでは、キットを好ましくは、凍結乾燥し、99mTc放射性同位体ジェネレーターからの無菌の99mTc−過テクネチウム酸イオン(TcO4−)で再構成すると、さらに操作することなくヒトに投与するのに適した溶液が得られるように設計する。適当なキットは、式(I)又は(II)の未錯化アザ−ジアミンジオキシム配位子を、亜ニチオン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、ホルムアミジンスルフィン酸、第1スズイオン、Fe(II)又はCu(I)などの薬学的に許容できる還元剤と共に、さらに、1種以上の前記のような生体適合性のカチオンと弱有機酸との塩と共に含有する容器(例えば、隔膜シールされたバイアル)を含む。弱有機酸の塩は、望ましくない親油性xTc錯体(前記のような)の形成を抑制する機能を有する。
【0078】
非放射性キットは場合によって、トランスキレート剤として機能する第2の弱有機酸又はその生体適合性カチオンとの塩をさらに含有してもよい。トランスキレート剤は、迅速に反応して、テクネチウムと弱い錯体を形成し、次いで、アザ−ジアミンジオキシムにより置換される化合物である。これにより、テクネチウム錯化と競合する過テクネチウム酸イオンの迅速な還元により、還元加水分解テクネチウム(RHT)が生じるリスクが最小限される。かかる好適なトランスキレート剤は、前記の弱有機酸及びその塩、好ましくは、酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩又はホスホン酸塩、好ましくはホスホン酸塩、さらに好ましくはジホスホン酸塩である。かかる好ましいトランスキレート剤は、MDP、即ち、メチレンジホスホン酸又はその生体適合性カチオンとの塩である。
【0079】
遊離形態で配位子を使用する代わりに、キットは場合によって、アザ−ジアミンジオキシム配位子の金属錯体を含有してもよく、これは、テクネチウムを付加されると、金属交換反応(即ち、配位子交換)を受けて、所望の生成物をもたらす。金属交換反応のためのかかる好適な錯体は、銅又は亜鉛錯体である。
【0080】
このキット中で使用される薬学的に許容できる還元剤は好ましくは、塩化第一スズ、フッ化第一スズ又は酒石酸第一スズなどの第一スズ塩であり、無水又は水和形態であってもよい。第一スズ塩は好ましくは、塩化第一スズ又はフッ化第一スズである。
【0081】
非放射性キットは場合によって、放射線防護剤、抗菌防腐剤、pH調節剤又は充填剤などの付加的な成分を含有してもよい。「放射線防護剤」という用語は上記の通り定義される。「抗菌防腐剤」という用語は、細菌、酵母又はかびなどの有害となり得る微生物の成長を阻害する薬剤を意味する。抗菌防腐剤は、用量に応じて殺菌特性を示し得る。本発明の抗菌防腐剤の主な役割は、再構成後のxTc放射性医薬品組成物中、即ち、放射性活性診断製品自体でかかる微生物の成長を抑制することである。しかし、抗菌防腐剤を場合によって、再構成前の本発明の非放射性キットの1種以上の成分中で、有害となり得る微生物の成長を抑制するのに使用することもできる。好適な抗菌防腐剤には、パラベン、即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベンもしくはこれらの混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールが挙げられる。好ましい抗菌防腐剤は、パラベンである。
【0082】
「pH調節剤」という用語は、再構成されたキットのpHが、ヒト又は哺乳類投与に許容できる範囲内(ほぼpH4.0〜10.5)であることを保証するために使用される化合物又は化合物混合物を意味する。かかる好適なpH調節剤には、トリシン、リン酸塩又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]などの薬学的に許容できる緩衝剤及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物などの薬学的に許容できる塩基が挙げられる。本発明のアザ−ジアミンジオキシムでは、pH調節剤が重炭酸ナトリウムを含有するのが好ましい。
【0083】
生体標的部分がα2−抗プラスミンのペプチド断片である場合には、好ましいキット処方物は、式(I)の配位子、第一スズ還元剤、生体適合性のカチオンの酢酸塩、ジホスホン酸トランスキレート剤及びpH調節剤を含有する。かかる好ましいキットは、式(II)の配位子、塩化第一スズ、酢酸ナトリウム、MDP又はその生体適合性のの塩、放射線防護剤、特に、PABA又はその生体適合性の塩、特に、PABAのナトリウム塩、及びpH調節剤としての重炭酸ナトリウムが挙げられる。かかるもっとも好ましいキットは、式中のR1は各々CH3であり、(A)pはNHであり、ZはAc−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly−(式中、Xaaは、Tyr又はI−Tyrであり、AcはN−アセチルである)である式IIの配位子を含有する。
【0084】
第4の態様では、本発明は、本発明の放射性医薬品を使用して、血栓を画像診断する方法を提供し、生体標的分子は、α2−抗プラスミンの3〜20量体ペプチド断片である。好ましくは、α2−抗プラスミンのペプチド断片は、配列Asn−Gln−Glu−Glnを含む。最も好ましくは、α2−抗プラスミンのペプチド断片は、配列Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Glyを含有し、Xaaは上記の通り定義される。肺血栓(PE)は、大量のフィブリンからなり、これは、XIIIa因子の作用により架橋されて、安定化される。フィブリン及びXIIIa因子は両方とも、特に血栓の部位に位置する非活性前駆体から生じる。本発明のα2−抗プラスミンのペプチド断片は、XIIIa因子のための有力な基質であり、したがってこの酵素の作用を介して、肺血栓内のフィブリンに共有結合する。本発明のアザ−ジアミンジオキシム−α2−抗プラスミンペプチド断片複合体の99mTc錯体はインビボで、血栓部位に選択的に摂取されて、正常な組織に対してかかる部位で、ポジ摂取又は「ホットスポット」イメージングをもたらす。同様の考え方を、インビボの他の血栓タイプ(例えば、深静脈血栓又はdvt)に当てはめることができる。XIIIa因子は、同様に機能するからである。したがって、本発明のXIIIa因子基質複合体は、インビボの血栓を、特に肺血栓及び深静脈血栓のイメージングに使用することができる。
【実施例】
【0085】
下記で、本発明を非限定的実施例により詳述する。
【0086】
実施例1は、本発明のアザ−ジアミンジオキシムキレート剤である化合物1の合成を記載している。
【0087】
実施例2は、血栓をターゲットとするためのα2−抗プラスミンのペプチド断片である好ましいペプチド標的分子の保護された形態の合成を記載している。
【0088】
実施例3は、実施例1のアザ−ジアミンジオキシムキレート剤と実施例2の標的ペプチドの複合体である化合物3の合成を記載している。実施例3はさらに、化合物4から7の合成を記載している。
【0089】
実施例4は、先行技術に教示されたような化合物3の99mTc放射線標識を示す比較例である。
【0090】
実施例5は、本発明で使用されるHPLC系を記載している。J系は、明らかに許容できるRCPをもたらすものであるが、親油性xTc錯体は、カラム上に保持された(即ち、40%以下のアセトニトリルが移動相で使用されると、これは、固定相に対して親和性が高すぎる)。H系は、移動相中により多くの有機溶剤(アセトニトリル90%以下)を含有する溶出勾配を伴い、カラムから親油性テクネチウム錯体を有効に溶出するので、これらは、分析されるようになる。J系を使用する場合の純度4%との過大評価は、未検出の親油性99mTc錯体によるものである(図3)。実施例10及び図1は、かかるレベルの親油性99mTc錯体は、インビボでの肝臓摂取率に対してかなりの作用を有することを示している。実施例6は、本発明の凍結乾燥キットの調製を記載している。処方物82/6が好ましい。凍結乾燥時に凍結乾燥されたケークが崩壊する傾向が低いからである。さらに処方物82/6は、経時99mTcジェネレーター溶出物(即ち、ジェネレーターの溶出の後6時間まで)に対しても強くて、十分な当初RCP及び製剤の良好な再構成後安定性をもたらす。
【0091】
実施例7は、本発明の99mTc錯体組成物を得るための凍結乾燥キットの再構成を記載している。
【0092】
実施例8は、リシン(K)含有ペプチド、即ちアミン基を有するペプチド(化合物3及び4)が、かなりのレベルの親油性テクネチウム錯体を示すことを示している。これらが、化合物5としての非アミン含有アミノ酸と置換されると、親油性錯体のレベルは、かなり低減される。これは、ベンズアミド誘導体(化合物6)によっても示されている。
【0093】
実施例9は、本発明の99mTc錯体組成物に対する放射線防護剤の使用の効果を示している。
【0094】
実施例10は、99mTc錯体組成物に対するバイアルクロージャーの効果を証明している。
【0095】
実施例11は、99mTc錯体組成物の生体内分布に対する親油性xTc錯体含量の効果を示している。親油性不純物におけるバリエーションは、p.i.1時間目での放射能の血中保持の著しい増加(p<0.05)をもたらし(1.88〜3.26%)、統計的には重要ではないが、同時に、尿量が減少する傾向(63.07%〜51.04%)を伴った。肝臓中に存在する放射能も、2.24%から10.24%へと著しく増加した(p<0.05)。したがって、親油性不純物レベルの上昇は、血中の99mTc−化合物3の著しく高い保持及び肝臓中での著しく高い摂取をもたらす。翻ってこのことは、尿排泄が減る傾向をもたらした。
【0096】
実施例12は、親油性テクネチウム錯体含量に対する弱有機酸塩の効果及び生じる生体内分布を示している。存在する親油性99mTc錯体の抑制された含量により予測されるように、99mTc−化合物3の処方物への酢酸ナトリウム三水和物の付加は、血液クリアランスを高め、肝臓摂取率を減らすことが判明した。したがって、組成物の画像診断能は、著しく改善される。心臓及び肺への薬剤の摂取は、無視できるほどであって、薬剤は、十分に低いバックグラウンド摂取率により、肺PEイメージングに使用することができる。
【0097】
本発明の改良xTc錯体組成物はさらに、有用な血餅摂取を示す、即ち、生体標的活性が残されていることを、実施例13は示している。実施例11及び図1から証明されたように、親油性99mTc錯体の存在から生じる主な生体特性は、肝臓での%の増加である。
【0098】
【表1】
【0099】
実施例1:3,3,11,11−テトラメチル−7−(2−アミノエチル)−4,7,10−トリアザトリデカン−2,12−ジオンジオキシム(化合物1又はPn216)の合成
トリス(2−アミノエチル)アミン(1ml、6.68mmol)のアセトニトリル(10ml)溶液に、重炭酸ナトリウム(1.12g、13.36mmol、2当量)を加えた。3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタン[R.K.Murmann,J.Am.Chem.Soc,79,521−526(1957)、1.359g、10.02mmol、1.5当量]の無水アセトニトリル(5ml)溶液を徐々に加えた。反応混合物を室温で3日間攪拌し続け、次いで、濾過した。残留物をアセトニトリルで十分に洗浄し、濾液を蒸発させた。次いで、粗製生成物を、RP−HPLC(カラム:Hamilton PRP−1、勾配:20分でB0〜100%、式中、溶出剤Aは、2%のNH3水溶液であり、溶出剤Bは、アセトニトリルである、3ml/分の流速)により精製すると、化合物1(164mg、7%)が得られた。
【0100】
δH(CD3OD、300MHz):2.77(2H、t、J6Hz、CH2NH2)、2.50〜2.58(10H、m、H2NCH2CH2N(CH2Ch2NH)2)、1.85(6H、s、2×CH3C=N)、1.23(12H、s、2×(CH3)2CNH)。
【0101】
実施例2:ペプチドAc−NQEQVSPY(3I)TLLKG(化合物2)の合成
Fmoc−Gly−を2−クロロトリチル樹脂に係留させ、続いて、適当な保護アミノ酸及びカップリング試薬DCC及びHOBtで環を脱保護/カップリングすることにより、保護されているペプチドAc−Asn(Trt)−Gln(Trt)−Glu(OtBu)−Gln(Trt)−Val−Ser(tBu)−Pro−Tyr(3I)−Thr(tBu)−Leu−Leu−Lys(Boc)−Gly−OHを2−クロロトリチル樹脂上で組み立てた。固相ペプチド合成は、P.Lloyd−Williams,F.Albericio及びE.Girald、Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and proteins、CRC Press,1997年の記載と同様に記載される。末端アスパラギンをアセチル化し、0.5%のTFAを使用して樹脂から分離し、化合物2をさらに精製することなく、トリフルオロ酢酸塩として使用した。
【0102】
実施例3:化合物3〜7の合成
保護されているAc−NQEQVSPY(3I)TLLKGペプチド(化合物2)を、実施例2に記載されているように固相樹脂から分離し、次いで、カップリング剤としてPyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート)及びHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)を使用して、溶液の形態の化合物1とカップリングさせた。試薬K[試薬Kは、82.5%のTFA、5%のフェノール、5%の処理済水、5%のチオアニソール、2.5%のエタンジチオール(EDT)である]で脱保護することにより、化合物3を得た。粗製複合体を、TFAを使用するRP−HPLCにより初めに精製し、第2の精製及び酢酸を用いての塩交換、凍結乾燥、0.22μフィルターでの濾過及び最終凍結乾燥を続けると、化合物3が得られた。
【0103】
MSによる分子量 1970±1ダルトン。
【0104】
化合物4及び5で使用されるペプチドは、同様の方法で調製される。DMF中で無水グルタル酸を用いて化合物1(Pn216)を誘導体化することにより、化合物7を調製した。アセトニトリル中、トリエチルアミンの存在下に、化合物1(Pn216)と無水安息香酸とを反応させることにより、化合物6を調製した。
【0105】
例4:化合物3のTc−99m放射性標識[比較例]
H2O中に溶かした化合物3(1mg/ml)の0.1mlアリコットを、脱酸素生理食塩水(0.9%w/v、1ml)及びNaOH水溶液(0.1M)0.035mlと共に、窒素充填10mlガラスバイアルに移した。この溶液に、テクネチウムジェネレーター溶出液(1ml、約4GBq)を、次いで、塩化第一スズ水溶液(0.1ml、約10μg)を加えた。標識pHは、9.0〜10.0であった。周囲実験室温度(15〜25℃)で30分間バイアルをインキュベーションして、標識を行った。生じた製剤を、所望の放射性濃度まで希釈するか、HPLC精製を行って(B系)、未標識出発物質及び放射性不純物を試験前に除去した。精製の後に、有機溶剤を真空中で除去し、試料を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)約5mlに再溶解させて、6〜9MBq/mlの処理濃度を得た。下記の薄層クロマトグラフィー(TLC)系により、使用前に放射化学的純度を評価した。
i) 0.9%w/v生理食塩水で溶出されるITLC SG2cm×20cm
ii) アセトニトリル:H2O=50:50v/vで溶出されるWhatman No.1 2cm×20cm。
【0106】
標識された物質は、TLC系(i)では元の所に、又はその近くに残り、系(ii)では溶剤フロントの近くに移動する。
【0107】
実施例5:HPLC系
流速:全ての系で1ml/分及びTFA=トリフルオロ酢酸。
【0108】
A系
カラム:Waters C18 250×4.5mm。粒径4ミクロン。
勾配:25分で、B10〜60%の溶出プロファイル。
溶出剤A:0.1%TFA水溶液。
溶出剤B:0.1%TFAアセトニトリル溶液。
【0109】
B系
カラム:Waters Novapak C18 150×3.9mm。粒径4ミクロン。
勾配:22分で、B0〜100%の溶出プロファイル。
溶出剤A:0.1%TFA水溶液。
溶出剤B:0.1%TFAアセトニトリル溶液。
【0110】
H系
カラム:Phenomenex C18(2)Luna 25×0.46cm、5μm。
勾配:0〜20分で、B16〜40%、20〜22分でB40〜90%、22〜30分でB90%、次いで、30〜31分でB90〜16%の溶出プロファイル。次いでカラムを、B16%で14分間再平衡させる。
溶出剤A:0.05%TFA水溶液。
溶出剤B:0.04%TFAアセトニトリル溶液。
【0111】
J系
カラム:Phenomenex C18(2)Luna 25×4.6cm、5μm、
勾配:0〜20分で、B16〜40%、20〜22分でB40〜16の溶出プロファイル。カラムを、B16%で8分間再平衡させる。
溶出剤A:0.05%TFA水溶液。
溶出剤B:0.05%TFAアセトニトリル溶液。
【0112】
再構成された凍結乾燥キット(Lot58、実施例6)のHPLC J系による分析(実施例5)は、J系(先行技術)を使用すると、94%のRCPを示したが、H系(本発明)を使用すると、90%−RCPを示した−図3参照。
【0113】
実施例6:凍結乾燥キットの調製
注射用の水(WFI)の全容量のうちの約90%を、調製容器に装入し、窒素パージにより脱酸素化した。メチレンジホスホン酸、塩化第一スズ二水和物、化合物3(酢酸塩として)、酢酸ナトリウム三水和物及びp−アミノ安息香酸、ナトリウム塩を順番に加えて、各々を溶かす一方で、窒素パージを続けた。溶液の窒素パージを、溶液のヘッドスペース上の窒素流に代えた。次いで、炭酸水素ナトリウム及び無水炭酸ナトリウムもしくは炭酸水素ナトリウムのみを加え、溶解させた。次いで、このバルク溶液を、脱酸素WFIを用いて100%の最終容量(〜5リットル)に調整した。次いで、バルク溶液を、無菌0.2μmフィルターで濾過して、充填容器に入れた。充填操作の間、充填容器のヘッドスペースを、無菌濾過(0.2μm)された窒素又はアルゴンでパージした。1.0mlのアリコットを、無菌でバイアルに分取した。バイアルをクロージャーA、B又はCで半分栓をし、予め冷却しておいた凍結乾燥機シェルフに移した。次いで、バイアルを凍結乾燥させ、無菌濾過(0.2μm)された窒素ガスを充填し、栓をし、シーリングした。
【0114】
【表2】
【0115】
実施例7:凍結乾燥されたキットからの99mTc錯体の調製
実施例6の凍結乾燥キットを、99mTcの過テクネチウム酸イオン(テクネチウムジェネレーター溶出液2〜8ml、0.5〜2.5GBq)で再構成した。溶液を60℃の水浴中で10分間加熱し、次いで、室温で放置した。放射化学的純度を、実施例5のH系に記載されているHPLC法により決定し(図2参照)、下記のITLC法により、RHTを決定した。
【0116】
ITLC SG2cm×20cmを、50:50(v/v)のメタノール:酢酸アンモニウム溶液(1M)で溶出した。配位子ベースの放射線標識された種は、溶剤フロントに移動する。RHTは、元の位置に残る。
【0117】
溶液をHPLCのH系により分析し、結果を、下記の表3に示すが、%RCPは、熱力学的99mTc錯体の放射化学的純度である。
【0118】
【表3】
【0119】
実施例8:99mTc親油性錯体含量に対する標的分子の作用
凍結乾燥キット製剤を、Lot63(実施例6)の処方物を使用して、様々な標的分子(Z)で実施例6に従い調製した。再構成後のバッチからの3個のバイアルの試験及び実施例7による分析に関して、結果を表4に示す:
【0120】
【表4】
【0121】
実施例9:99mTc錯体製剤に対する放射線防護剤の効果
99mTc錯体製剤の純度に対する放射線防護剤p−アミノ安息香酸ナトリウム(Na−PABA)の効果を研究した(溶液の形態でも、凍結乾燥キット製剤としても)。全ての製剤を、1083 4023/50灰色クロージャーを備えた10Rバイアル中で、0.5GBq/mlの最終放射性濃度(RAC)になるまで製造した。この製剤を、HPLCのH系を使用して、様々な再構成後(PR)の時点で分析し、結果を、放射性組成物のパーセンテージとして表5に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
実施例10:RCP及び99mTc親油性錯体に対するクロージャーの作用
放射性標識に対するバイアルクロージャーの効果を、様々な凍結乾燥されたキット処方物で研究した。2種の異なるゴムクロージャー(West Pharmaceutical Services)を使用して製造された凍結乾燥キットを、実施例7に記載の方法に従い再構成した。RCP及び放射性標識された不純物における差異を記載した(10RCP定量の平均を示す表6参照)。
【0124】
【表6】
【0125】
実施例11:生体内分布に対する親油性テクネチウム錯体含量の作用
正常なオスのウィスターラット(体重150〜250g)で実験を実施し、99mTc−化合物3製剤を静脈内注射した後の1時間目に、解剖を行った。99mTc−化合物3製剤は、ロット♯58と記載される凍結乾燥キット処方物から調製し(詳細については実施例6参照)、加熱しないか、様々な時間90℃に加熱し、投与前に周囲温度まで冷却した。H系(実施例5)を使用するHPLC分析により、表6(下記)に示されている様々なレベルの親油性不純物が確認された。生体内分布データを、各製剤、器官/組織に関して算出し、データを、個々の動物に関して、及び3匹の群の平均及び標準偏差に関して報告した。Microsoft Excel 97 SR−2スプレッドシートパッケージを使用して、単一因子/一元(single factor/one way)分散分析(ANOVA)試験又は不対2テール(2tailed)スチューデントt検定(2サンプル、不等分散)をこのデータに適用した。p値が0.05未満であると、結果は、著しく異なると思われた。結果を、表7に示す:
【0126】
【表7】
【0127】
実施例12:親油性テクネチウム錯体含量及び生体内分布に対する弱酸塩の効果
処方物に酢酸ナトリウム三水和物を加えることにより生じた生体内分布の変化を、凍結乾燥キットロット番号58と65とを比較することにより評価した。ついで、実施例10の場合と同様に、キット再構成及び生体内分布研究を実施した。不対2テールスチューデントt検定を使用して、このデータを分析した。放射能の血中残留に著しい低下(p<0.05)(2.95から2.12%)があり、さらに、6.10%から2.82%への肝臓随伴放射能(p<0.05)の著しい低下があった。
【0128】
【表8】
【0129】
実施例13:静脈血栓塞栓症のラットモデルでの血餅摂取率の比較
親油性xTc錯体の既知のバリエーションを伴う製剤(ロット58及び65、実施例7参照)を研究した。ラット(オスのウィスター、250〜350g)に、ウレタン15%で麻酔をかけた。開腹した後に、大静脈を単離し、回りの脂肪組織を除去した。白金線(1.5cm×0.5mm)を、下部大静脈に挿入し、5分後に、エラグ酸0.4ml(1.2×10−4M)を、大腿静脈を介して静脈内注射して、血餅形成を開始させた。60分後に、ロット58又は65(実施例7により調製)のいずれか0.1ml(動物1匹当り50MBq)を、同じ静脈を介して注射して、さらに60分後に、動物を犠牲にして、血餅を除去し、秤量し、カウンティングした。他の組織、例えば血液、肺、心臓も解剖して、カウンティングした。血餅へのトレーサーの摂取を、相対濃度(cpm/血餅g割る用量/動物g)及び血餅:バックグラウンド組織として決定した。このモデルで生じた血餅の平均重量は、約27mg、n=32(5〜50mg範囲)であった。
【0130】
血餅中の放射能の相対濃度は、ロット58では8.01(n=4、SD=3.33)、ロット65では7.49(n=4、SD=1.84)であった。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】肝臓摂取率に対する、組成物中の親油性99mTc錯体含量の作用を示すグラフである。
【図2】アザ−ジアミンジオキシム99mTc錯体組成物の典型的なHPLC図を示すグラフであり、本発明に記載の様々な種を示している。図2Aは、通常の原寸ピーク表示であり、図2Bは、拡大比率ピーク表示である。
【図3】同じアザ−ジアミンジオキシム99mTc錯体製剤に関して、2種の異なる系、J系及びH系を使用した場合のHPLC図を比較するグラフである。親油性xTc錯体は、H系を使用すると検出されるが(存在する放射性標識物質のうちの約5%のレベルで)、J系を使用すると検出されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位体XTcと以下の式(I)の配位子との金属錯体を含むテクネチウム錯体組成物であって、テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の10%未満が式Iの配位子の過渡xTc錯体である、テクネチウム錯体組成物。
【化1】
式中、R1及びR2は各々独立にR基であり、
xは94m、99又は99mであり、
Yは−(A)n−Zであるが、
式中、Zは分子量5000未満の生体標的部分であり、
−(A)nはリンカー基であって、各Aは独立に−CO−、−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NR−、−NRCO、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4−8シクロへテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基もしくはC3−12ヘテロアリーレン基又はポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸成分であり、
nは0〜10の整数であり、
各R基は独立にH又はC1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
【請求項2】
テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の5%未満が式Iの配位子の過渡xTc錯体である、請求項1記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項3】
テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の5%未満が式Iの配位子の親油性xTc錯体であることをさらに特徴とする、請求項1又は請求項2記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項4】
テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の3%未満が式Iの配位子の親油性xTc錯体である、請求項3記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項5】
xが99mである、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項6】
Zが3〜20個のアミノ酸のペプチドである、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項7】
3〜20個のアミノ酸のペプチドがα2−抗プラスミンの断片である、請求項6記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項8】
α2−抗プラスミンの断片がテトラペプチドAsn−Gln−Glu−Glnを含む、請求項7記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項9】
α2−抗プラスミンの断片が、ペプチド:Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly(式中、XaaはTyr又はI−Tyrである)を含む、請求項8記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項10】
Yが−CH2CH2−NR−(A)m−Z(式中、mは0〜5の整数である。)である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項11】
R1が各々独立にC1〜C3アルキル、C2〜C4アルコキシアルキル、C1〜C3ヒドロキシアルキル又はC1〜C3フルオロアルキルである、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項12】
配位子が次の式(II)の配位子である、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【化2】
式中、R1は各々独立にC1〜C3アルキル又はC1〜C3フルオロアルキルであり、pは0〜3の整数である。
【請求項13】
(A)pが−CO−又は−NR−である、請求項12記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項14】
R1が各々CH3であり、(A)pがNHであり、ZがAc−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly−(式中、XaaがTyr又はI−Tyrであり、AcがN−アセチルである)である、請求項12又は請求項13記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項15】
放射線防護剤をさらに含有する、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項16】
放射線防護剤がp−アミノ安息香酸又はその生体適合性の塩である、請求項15記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物を哺乳類への投与に適した形態で含有する放射性医薬品。
【請求項18】
xTcが99mTcである、請求項17記載の放射性医薬品。
【請求項19】
以下の成分(i)〜(iii)を備える、請求項17又は請求項18記載のテクネチウム放射性医薬品の製造用キット。
(i)請求項1記載の式(I)の配位子、
(ii)生体適合性還元剤、及び
(iii)弱有機酸又はその生体適合性カチオンとの塩。
【請求項20】
配位子が請求項6乃至請求項11のいずれか1項に記載した通りである、請求項19記載のキット。
【請求項21】
式IIの配位子が請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載した通りである、請求項19記載のキット。
【請求項22】
pH調節剤をさらに備える、請求項19乃至請求項21のいずれか1項記載のキット。
【請求項23】
生体適合性還元剤が第1スズを含有する、請求項19乃至請求項22のいずれか1項記載のキット。
【請求項24】
弱有機酸が酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、安息香酸、フェノール又はホスホン酸である、請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載のキット。
【請求項25】
放射線防護剤をさらに含有する、請求項19乃至請求項24のいずれか1項記載のキット。
【請求項26】
放射線防護剤がp−アミノ安息香酸又はその生体適合性の塩を含有する、請求項25記載のキット。
【請求項27】
凍結乾燥されている、請求項19乃至請求項26のいずれか1項記載のキット。
【請求項28】
以下の成分(i)〜(v)を備える、請求項19乃至請求項27のいずれか1項記載のキット。
(i)請求項14記載の式IIの配位子、
(ii)第一スズを含有する生体適合性還元剤、
(iii)メチレンジホスホン酸を含む弱有機酸又はその生体適合性カチオンとの塩、
(iv)p−アミノ安息香酸又はその生体適合性の塩を含む放射線防護剤、
(v)重炭酸ナトリウムを含むpH調節剤。
【請求項29】
テクネチウム錯体組成物が請求項7乃至請求項9のいずれか1項に規定される請求項17記載の放射性医薬品を使用して、血栓を画像診断する方法。
【請求項1】
放射性同位体XTcと以下の式(I)の配位子との金属錯体を含むテクネチウム錯体組成物であって、テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の10%未満が式Iの配位子の過渡xTc錯体である、テクネチウム錯体組成物。
【化1】
式中、R1及びR2は各々独立にR基であり、
xは94m、99又は99mであり、
Yは−(A)n−Zであるが、
式中、Zは分子量5000未満の生体標的部分であり、
−(A)nはリンカー基であって、各Aは独立に−CO−、−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NR−、−NRCO、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−、−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4−8シクロへテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基もしくはC3−12ヘテロアリーレン基又はポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸成分であり、
nは0〜10の整数であり、
各R基は独立にH又はC1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環、飽和又は不飽和環を形成するものである。
【請求項2】
テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の5%未満が式Iの配位子の過渡xTc錯体である、請求項1記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項3】
テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の5%未満が式Iの配位子の親油性xTc錯体であることをさらに特徴とする、請求項1又は請求項2記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項4】
テクネチウム錯体組成物中に存在するxTc錯体の3%未満が式Iの配位子の親油性xTc錯体である、請求項3記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項5】
xが99mである、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項6】
Zが3〜20個のアミノ酸のペプチドである、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項7】
3〜20個のアミノ酸のペプチドがα2−抗プラスミンの断片である、請求項6記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項8】
α2−抗プラスミンの断片がテトラペプチドAsn−Gln−Glu−Glnを含む、請求項7記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項9】
α2−抗プラスミンの断片が、ペプチド:Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly(式中、XaaはTyr又はI−Tyrである)を含む、請求項8記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項10】
Yが−CH2CH2−NR−(A)m−Z(式中、mは0〜5の整数である。)である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項11】
R1が各々独立にC1〜C3アルキル、C2〜C4アルコキシアルキル、C1〜C3ヒドロキシアルキル又はC1〜C3フルオロアルキルである、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項12】
配位子が次の式(II)の配位子である、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【化2】
式中、R1は各々独立にC1〜C3アルキル又はC1〜C3フルオロアルキルであり、pは0〜3の整数である。
【請求項13】
(A)pが−CO−又は−NR−である、請求項12記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項14】
R1が各々CH3であり、(A)pがNHであり、ZがAc−Asn−Gln−Glu−Gln−Val−Ser−Pro−Xaa−Thr−Leu−Leu−Lys−Gly−(式中、XaaがTyr又はI−Tyrであり、AcがN−アセチルである)である、請求項12又は請求項13記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項15】
放射線防護剤をさらに含有する、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項16】
放射線防護剤がp−アミノ安息香酸又はその生体適合性の塩である、請求項15記載のテクネチウム錯体組成物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載のテクネチウム錯体組成物を哺乳類への投与に適した形態で含有する放射性医薬品。
【請求項18】
xTcが99mTcである、請求項17記載の放射性医薬品。
【請求項19】
以下の成分(i)〜(iii)を備える、請求項17又は請求項18記載のテクネチウム放射性医薬品の製造用キット。
(i)請求項1記載の式(I)の配位子、
(ii)生体適合性還元剤、及び
(iii)弱有機酸又はその生体適合性カチオンとの塩。
【請求項20】
配位子が請求項6乃至請求項11のいずれか1項に記載した通りである、請求項19記載のキット。
【請求項21】
式IIの配位子が請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載した通りである、請求項19記載のキット。
【請求項22】
pH調節剤をさらに備える、請求項19乃至請求項21のいずれか1項記載のキット。
【請求項23】
生体適合性還元剤が第1スズを含有する、請求項19乃至請求項22のいずれか1項記載のキット。
【請求項24】
弱有機酸が酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、安息香酸、フェノール又はホスホン酸である、請求項19乃至請求項23のいずれか1項記載のキット。
【請求項25】
放射線防護剤をさらに含有する、請求項19乃至請求項24のいずれか1項記載のキット。
【請求項26】
放射線防護剤がp−アミノ安息香酸又はその生体適合性の塩を含有する、請求項25記載のキット。
【請求項27】
凍結乾燥されている、請求項19乃至請求項26のいずれか1項記載のキット。
【請求項28】
以下の成分(i)〜(v)を備える、請求項19乃至請求項27のいずれか1項記載のキット。
(i)請求項14記載の式IIの配位子、
(ii)第一スズを含有する生体適合性還元剤、
(iii)メチレンジホスホン酸を含む弱有機酸又はその生体適合性カチオンとの塩、
(iv)p−アミノ安息香酸又はその生体適合性の塩を含む放射線防護剤、
(v)重炭酸ナトリウムを含むpH調節剤。
【請求項29】
テクネチウム錯体組成物が請求項7乃至請求項9のいずれか1項に規定される請求項17記載の放射性医薬品を使用して、血栓を画像診断する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公表番号】特表2006−508084(P2006−508084A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546174(P2004−546174)
【出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004573
【国際公開番号】WO2004/037297
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004573
【国際公開番号】WO2004/037297
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】
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