Th−1プロフィールが亢進したC−糖脂質
本発明は、IL-12分泌の亢進および樹状細胞の活性化の増大を特徴とするThI型免疫応答を選択的に誘導する新規合成C-糖脂質を対象とする。それにより、本発明の化合物は、直接的にもアジュバントとしても、感染症、癌、細胞増殖性障害、および自己免疫疾患を治療するのに有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL-12分泌の亢進および樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)の活性化の増大を特徴とするTh1型免疫応答を選択的に誘導し、直接的にもアジュバントとしても、感染症、癌、細胞増殖性障害、および自己免疫疾患を治療するのに有用である新規合成C-糖脂質を対象とする。
【背景技術】
【0002】
Th1型免疫応答およびTh2型免疫応答は、元々はサイトカインの2つの異なるグループを分泌する2つの特徴的なCD4+ T細胞(ヘルパーT細胞-Th)サブセットにより媒介される免疫応答として定義された。最近の総説については、BerkersおよびOvaa、Trends Pharmacol. Sci.、2005、26 (5): 252〜257頁、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0003】
Th1細胞は、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)およびインターロイキン12(IL-12)を包含するTh1型サイトカインを分泌する。Th1型サイトカインの主要な役割は、食細胞媒介性防御を刺激し、CD8+ T細胞(細胞障害性T細胞)およびナチュラルキラー(NK)細胞の活性を高めることにより腫瘍細胞、ウイルスおよび他の細胞内病原体の排除をもたらす細胞媒介性免疫を支援することである。さらに、Th1サイトカインは、B細胞による免疫グロブリン合成のスイッチングを阻害し、IgG1およびIgEなどの特定の免疫グロブリンアイソタイプの産生を抑制し、後者は、アレルギーを引き起こすのに特に重要である。IL-12は、樹状細胞(DC)およびマクロファージを包含する抗原提示細胞(APC)により主に分泌され、CD8+ T細胞およびNK細胞を活性化する。Th2細胞は、IL-4、IL-5、IL-10、およびIL-13を包含するTh2型サイトカインを分泌する。Th2型サイトカインの主要な役割は、体液性免疫を支援し(例えば、IgEおよび好酸球/肥満細胞媒介性免疫反応を刺激し)、Th1型免疫応答をダウンレギュレートすることである。
【0004】
Th1型免疫応答とTh2型免疫応答のバランスの調節不全は、疾患を引き起こす。多くのタイプの癌は、優勢なTh2型応答を特徴とし、多くの病原体は、Th1-Th2バランスをTh2モードにシフトするサイトカインを産生することにより免疫系を逃れる(WilsonおよびDelovitch、2003、Nat. Rev. Immunol.、3: 211〜222頁; Dredge、Cancer Immunol. Immunother.、2002、51: 521〜531頁; ServetおよびZitvogel、Curr Mol. Med.、2002、2: 739〜756頁; Pinto、Pediatrics、2006年4月17日[プリント版に先立つEpub])。喘息などの多くの自己免疫疾患も、Th1-Th2バランスのTh2モードへのシフトを特徴とする。これに反して、1型糖尿病および多発性硬化症などの自己免疫疾患は、自己病原性Th1細胞により媒介され、Th1様サイトカインプロフィールにつながる反応性低下Th2細胞を特徴とする(Hayakawa他、2004、Curr. Med. Chem.、11: 241〜252頁; WilsonおよびDelovitch、2003、Nat. Rev. Immunol.、3: 211〜222頁; Van Kaer、2004、Immunol. Cell Biol.、82: 315〜322頁)。
【0005】
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、Th1型免疫応答およびTh2型免疫応答を調節する重要な役割を有する。NKT細胞は、半不変的なT細胞受容体(TCR)と一緒にNK細胞のマーカーを同時発現するリンパ球の独特な集団である。マウスにおいて、大部分のNKT細胞のTCRは、Vβ8.2、Vβ7またはVβ2遺伝子断片により主にコードされるVβ鎖の可変セットと対になったVα14およびJα18遺伝子断片によりコードされる不変Vα鎖からなる。このTCRは、NKT細胞が主要組織適合性複合体(MHC)クラスI様分子CD1dを認識することを可能にし、脂質などの疎水性分子および疎水性ペプチドをNKT細胞に提示することができる。
【0006】
これまで、ほんのわずかな分子がNKT細胞を活性することが明らかにされてきた。これらのうち、沖縄産の海綿から最初に抽出された糖脂質であるα-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)(Natori他、Tetrahedron、50: 2771〜2784頁、1994)は、最も特徴が明らかにされている。α-GalCerの合成類似体、KRN 7000(2S,3S,4R)-1-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-2-(N-ヘキサコサノイルアミノ)-1,3,4-オクタデカントリオールは、Pharmaceutical Research Laboratories、Kirin Brewery(Gumma、Japan)から入手するか、または、Morita他、J. Med. Chem.、1995、38: 2176〜2187頁に記載されているように合成することができる。他のα-GalCer誘導体は、米国特許第5,780,441号(Kirin)に記載されている。Kirinによる最初の開示の後に、α-GalCerは、原発腫瘍およびそれらの転移、マラリアおよびB型肝炎などの感染性疾患、ならびに糖尿病および喘息などのいくつかの自己免疫疾患を包含するいくつかの疾患の治療において可能性を示した(Hayakawa他、2004、Curr. Med. Chem.、11: 241〜252頁; WilsonおよびDelovitch、2003、Nat. Rev. Immunol.、3: 211〜222頁; Taniguchi他、2003、Annu. Rev. Immunol.、21: 483〜513頁; Van Kaer、2004、Immunol. Cell Biol.、82: 315〜322頁を参照)。α-GalCerは、他の抗原により誘導される防御免疫応答の持続時間を増強および/または延長することができるアジュバントとして使用することができることも立証されている(US 2003-0157135およびGonzalez-Aseguinolaza他、J Exp Med.、2002、195: 617〜24頁を参照)。
【0007】
α-GalCerは、in vitroとin vivoの両方でNKT細胞を活性化することができる(Kawano他、1997、Science、278: 1626〜1629頁; Burdin他、1998、J. Immunol.、161: 3271〜3281頁; Spada他、1998、J. Exp. Med.、188: 1529〜1534頁; Brossay他、1998、J. Exp. Med.、188: 1521〜1528頁)。図1に示すように、α-GalCerは、単球、単球由来未成熟樹状細胞およびマクロファージなどのAPCによるCD1dと共に存在する場合、NKT細胞のTCRと相互作用し、続いて、NKT細胞とAPCの両方を活性化し、NKT細胞によるTh1型サイトカインIFN-γとTh2型サイトカインIL-4の両方の産生をもたらす。次いで、IL-12受容体は、NKT細胞の細胞表面上で活性化され、同時に、IL-12は、活性化されたAPCにより産生される。APCにより産生されるIL-12は、NKT細胞からのIFN-γの第二波を誘導し、NK細胞を活性化してIFN-γも産生する(Hayakawa他、2004、Curr. Med. Chem.、11: 241〜252頁; Kawano他、1997、Science、278: 1626〜1629頁; Godfrey他、2000、Immunol. Today、21: 573〜583頁; Wilson他、2002、Trends Mol. Med.、8: 225〜231頁; Matsuda他、2000、J. Exp. Med.、192: 741〜753頁)。したがって、α-GalCerによるNKT細胞の活性化は、NK細胞、B細胞、CD8+ T細胞、樹状細胞および骨髄性細胞を包含するいくつかの他の細胞タイプの二次的活性ならびにCD4+ T細胞のTh1細胞かTh2細胞のどちらかへの分化をもたらすことがある。
【0008】
α-GalCerをマウスに投与すると、強い抗マラリア活性が速やかにもたらされ、げっ歯類マラリア寄生虫であるプラスモジウムヨエリ(P. yoeli)およびプラスモジウムベルゲイ(P. berghei)の肝細胞期の発生を阻害することが立証されている(Gonzalez-Aseguinolaza他、2000、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、97: 8461〜8466頁)。α-GalCerは、IFN-γかIFN-γ受容体のどちらかを欠くマウスの肝臓における寄生虫発生を阻害することができず、糖脂質の抗マラリア活性は、IFN-γにより主に媒介されることを示唆している。α-GalCerにより刺激されるIL-4は、糖脂質に自己免疫性1型糖尿病および自己免疫性脳脊髄炎を包含する多くの様々な自己免疫疾患を改善させる(Wilson他、2002、Trends Mol. Med.、8: 225〜231頁)。
【0009】
重要なことには、免疫応答を刺激するその能力の他に、α-GalCerは、その用量とは無関係に、げっ歯類およびサルにおいて毒性を引き起こさないことが立証されている(Nakagawa他、1998、Cancer Res.、58: 1202〜1207頁)。
【0010】
しかしながら、α-GalCer療法の有効性は、Th1型サイトカインとTh2型サイトカインの両方(すなわち、IFN-γ、IL-12およびIL-4)の同時刺激により厳しく制限される(Pal他、2001、J. Immunol.、166: 662〜668頁; BerkersおよびOvaa、Trends Pharmacol. Sci.、2005、26: 252〜257頁)。実際に、α-GalCerを使った第I相試験において、固形腫瘍のある患者で効果はほとんど観察されなかった(Giaccone他、2002、Clin. Cancer Res.、8: 3702〜3709頁)。α-GalCerによる治療は、NKT細胞のサイトカインプロフィールが、例えば、CD1dパルス樹状細胞の投与によりTh1型にシフトされる場合により有効であることが明らかにされている(Fujii他、2002、Nat. Immunol.、3: 867〜874頁)。
【0011】
したがって、Th1型免疫応答またはTh2型免疫応答を選択的に誘導することができたα-GalCer類似体は、より有望な治療可能性を有するであろう。
【0012】
炭素原子が、グリコシド結合の酸素原子と置き換わったいくつかのα-C-GalCer類似体が最近になって開発されている。例えば、米国特許第6,635,622号; Schmieg他、2003、J. Exp. Med、198 (11): 1631〜1641頁; Chen他、Org Lett.、2004、6: 4077〜80頁; Yang他、Angew Chem Int Ed Engl.、2004、43: 3818〜22頁、および所有者共通の米国特許出願第10/462,211号(US 2004-0127429); 第11/193,852号(US 2006-0019246); 第11/096,340号(US 2005-0222048)を参照されたい。そのような類似体は、脱グリコシル化に抵抗性があり、したがって、より長い貯蔵寿命を有する(Bertozzi他、Synthesis of C-glycosides: stable mimics of O-glycosidic linkages. (Modern Methods in Carbohydrate Synthesis.編集者KhanおよびO’Neill。Harwood Academic Publishers、London、UK、1996、316〜351頁); Bertozzi他、1992、J. Am. Chem. Soc.、114:10639〜10641頁; LevyおよびTang、The Chemistry of C-Glycosides、Elsevier Science Ltd.、1995; Postema、C-Glycoside Synthesis、CRC Press, Inc.、1995)。
【0013】
α-C-GalCer CRONY 101は、そのO-グリコシド対応物と比較して著しく改善された治療可能性を有するC-グリコシドの最初の例であった。Schmieg他(2003、J. Exp. Med、198: 1631〜1641頁)およびYang他(2004、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、43: 3818〜3822頁)で立証されているように、CRONY 101のin vivo投与は、Th2型サイトカインIL-4の産生減少(α-GalCerと比較して)およびTh1型サイトカインIFN-γおよびIL-12の産生の亢進、延長をもたらし、黒色腫転移およびマラリアに対してそれぞれ100倍および1000倍の活性改善をもたらす。
【0014】
Th1型サイトカインIL-12は、最近になって、炎症性応答を調節することによる自然免疫と適応免疫の両部門(arm)の相互作用、ならびに感染症および癌に対する先天的抵抗性におけるその本質的役割のために、大いに注目を集めている(ColomboおよびTrinchieri、Cytokine Growth Factor Rev.、2002、13: 155〜68頁; Watford、Cytokine Growth Factor Rev.、2003、14: 361〜368頁で概説されている)。内因性IL-12は、多くの病原体および腫瘍に対する抵抗性にとって必要とされる。実際に、実験腫瘍モデルにおいて、組み換えIL-12治療は、可移植性腫瘍、化学的に誘発した腫瘍、および遺伝子改変マウスにおいて自然発生する腫瘍に対して劇的な抗腫瘍効果を有する。
【0015】
上記で規定されているように、IL-12は、樹状細胞およびマクロファージなどの様々なAPCにより大部分が分泌され、Th1型免疫応答に寄与する(Roitt、Brostoff、Male、Immunology、Mosby編、第6版; MaおよびTrinchieri、Adv Immunol.、2001、79: 55〜92頁; Hilkens、Blood、1997、90: 1920〜1926頁; Szabo、Annu. Rev. Immunol.、2003、21: 713〜58頁)。IL-12により誘導されるIFN-γならびに一連の他の二次的および三次的炎症性サイトカインは、感染細胞および腫瘍細胞に対する直接毒性効果を有するか、または強力な抗血管新生機序を活性化することがある。抗原特異的免疫に対するIL-12の刺激活性は、大部分がそれがTh1応答および細胞障害性Tリンパ球応答を決定または増強できることを利用するものである。この能力のため、IL-12は、癌および他のワクチンにおいて強力なアジュバント活性を有する。抗腫瘍免疫療法の前臨床モデルで得られた有望なデータは、IL-12が癌に対する強力な治療薬かもしれないという大きな期待を抱かせた。しかしながら、IL-12の臨床治験で観察される過剰な毒性は、全身的よりむしろ局所的にIL-12の活性化を達成する必要性を指し示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,780,441号
【特許文献2】US 2003-0157135
【特許文献3】米国特許第6,635,622号
【特許文献4】米国特許出願第10/462,211号(US 2004-0127429)
【特許文献5】米国特許出願第11/193,852号(US 2006-0019246)
【特許文献6】米国特許出願第11/096,340号(US 2005-0222048)
【特許文献7】PCT公開第WO92/14488号
【特許文献8】米国特許第5,523,089号
【特許文献9】PCT公開第WO90/04411号
【特許文献10】PCT公開第WO91/09870号
【特許文献11】PCT公開第WO93/04175号
【特許文献12】PCT公開第WO96/06165号
【特許文献13】PCT公開第WO93/08306号
【特許文献14】PCT/US92/08697
【特許文献15】米国特許第4,722,848号
【特許文献16】米国特許第5,174,993号
【特許文献17】米国特許第5,338,683号
【特許文献18】米国特許第5,494,807号
【特許文献19】米国特許第5,503,834号
【特許文献20】米国特許第5,505,941号
【特許文献21】米国特許第5,514,375号
【特許文献22】米国特許第5,529,780号
【特許文献23】英国特許第GB 2 269 820 B号
【特許文献24】PCT公開第WO92/22641号
【特許文献25】PCT公開第WO93/03145号
【特許文献26】PCT公開第WO94/16716号
【特許文献27】PCT公開第WO96/3941号
【特許文献28】PCT/US94/06652
【特許文献29】米国特許第5,874,527号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】BerkersおよびOvaa、Trends Pharmacol. Sci.、2005、26 (5): 252〜257頁
【非特許文献2】WilsonおよびDelovitch、2003、Nat. Rev. Immunol.、3: 211〜222頁
【非特許文献3】Dredge、Cancer Immunol. Immunother.、2002、51: 521〜531頁
【非特許文献4】ServetおよびZitvogel、Curr Mol. Med.、2002、2: 739〜756頁
【非特許文献5】Pinto、Pediatrics、2006年4月17日
【非特許文献6】Hayakawa他、2004、Curr. Med. Chem.、11: 241〜252頁
【非特許文献7】Van Kaer、2004、Immunol. Cell Biol.、82: 315〜322頁
【非特許文献8】Natori他、Tetrahedron、50: 2771〜2784頁、1994
【非特許文献9】Morita他、J. Med. Chem.、1995、38: 2176〜2187頁
【非特許文献10】Taniguchi他、2003、Annu. Rev. Immunol.、21: 483〜513頁
【非特許文献11】Gonzalez-Aseguinolaza他、J Exp Med.、2002、195: 617〜24頁
【非特許文献12】Kawano他、1997、Science、278: 1626〜1629頁
【非特許文献13】Burdin他、1998、J. Immunol.、161: 3271〜3281頁
【非特許文献14】Spada他、1998、J. Exp. Med.、188: 1529〜1534頁
【非特許文献15】Brossay他、1998、J. Exp. Med.、188: 1521〜1528頁
【非特許文献16】Godfrey他、2000、Immunol. Today、21: 573〜583頁
【非特許文献17】Wilson他、2002、Trends Mol. Med.、8: 225〜231頁
【非特許文献18】Matsuda他、2000、J. Exp. Med.、192: 741〜753頁
【非特許文献19】Gonzalez-Aseguinolaza他、20002、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、97: 8461〜8466頁
【非特許文献20】Nakagawa他、1998、Cancer Res.、58: 1202〜1207頁
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【非特許文献22】Giaccone他、2002、Clin. Cancer Res.、8: 3702〜3709頁
【非特許文献23】Fujii他、2002、Nat. Immunol.、3: 867〜874頁
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
以下の通り、上記の背景技術の項から、当技術分野では、in vivo毒性が低く、in vivo安定性が高く、Th1型免疫応答、特に、局所的IL-12産生の増加を伴うTh1型免疫応答を選択的に誘導する能力を有する新たな免疫刺激化合物が大いに必要である。本発明は、新規合成C-糖脂質を提供することにより当技術分野におけるこれらおよび他の必要性に対処する。本発明の化合物は、様々な感染症、癌、増殖性障害、および自己免疫疾患を包含するがそれらに限定されない、制御にTh1型応答を必要とする疾患を治療することができる。これらの化合物は、哺乳動物において抗原の免疫原性を増強することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のC-糖脂質は、式(I)
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、-CH2-CH2-または-CH=CH-であり、
Yが-CH2-CH2-である場合、Qは、C23〜C32アルケニルまたは-R1-O-R2であり、
Yが-CH=CH-である場合、Qは、C27〜C32アルキル、C23〜C32アルケニル、-R1-O-R2、またはフェニルで置換されているC6〜C8アルキルであり、
R1およびR2は、R1およびR2が合わせて23〜32個の炭素原子を有するような、置換または非置換のアルキルまたはアルケニル基であり、
R3は、-OHもしくは単糖であり、R4はHであるか、またはR3はHであり、R4は、-OHもしくは単糖であり、
R5は、水素または単糖である)の化合物、
および薬学的に許容できるそれらの塩またはエステルを包含する。
【0022】
好ましい実施形態において、Yは、トランスまたはシス配座の-CH=CH-である。Yは、トランス配座の-CH=CH-であることがより好ましい。
【0023】
IL-12の分泌増加を刺激する化合物が好ましい。そのような化合物は、
【0024】
【化2】
【0025】
(脂肪酸Q鎖のトランス配座異性体およびシス配座異性体[それぞれ、GCK109およびGCK151とも呼ばれる]が上記に描かれている。いずれの場合にも、基Yは、トランス-エチレンである)
【0026】
【化3】
【0027】
および薬学的に許容できるそれらの塩またはエステルを包含する。これらの化合物は、CRONYに比べて、優れた特異性のTh1型応答を提供し、優れた薬物動態プロフィールを有する。いかなる特定の理論にも束縛されるわけではないが、これらの化合物は、樹状細胞によるIL-12およびNKTまたはNK細胞によるIFN-γの改善されバランスのとれた分泌をもたらし、さらに、応答の特異性を反映し化合物の安全性を改善すると考えられる。また、これらの化合物は、NKTまたはNK細胞によるIL-4の分泌を実質的に刺激することもない。
【0028】
本発明の追加のC-糖脂質は、式
【0029】
【化4】
【0030】
(式中、
Yは、-CH2-CH2-であり、
Xは、Oであり、R5は、Hであり、R3は、OHであり、R4は、Hであり、
Qは、-(CH2)27-CH3である)の化合物、
および薬学的に許容できるそれらの塩およびエステルを包含する。
【0031】
本発明の別の実施形態は、薬学的に許容できる担体と併せて上記で定義されているような化合物を含む医薬組成物である。医薬組成物は、抗原をさらに含んでよい。
【0032】
さらに別の実施形態は、哺乳動物においてNKT細胞による特異的Th1型応答を刺激し、樹状細胞を活性化する方法であって、哺乳動物に有効量の本発明の化合物を投与するステップを含む方法である。
【0033】
本発明の化合物は、非常に選択的かつ効率的にTh1型免疫応答を誘導するので、直接使用される場合と疾患特異的抗原と共同してアジュバントとして使用される場合の両方で治療に有効である。したがって、本発明のさらに別の実施形態は、その必要がある哺乳動物において制御にTh1型応答を必要とする疾患を治療するための方法であって、哺乳動物に有効量の式(I)の化合物を投与するステップを含む方法である。制御にTh1型応答を必要とする疾患の非限定的な例は、感染症、癌、細胞増殖性障害、およびTh2型自己免疫疾患を包含する。好ましい実施形態において、制御にTh1型応答を必要とする疾患は、感染性ウイルス疾患、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、B型肝炎ウイルス(HBV)感染、ヘルペスウイルス感染、または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染である。別の好ましい実施形態において、疾患は、癌、例えば、前立腺または乳房の癌などの固形腫瘍である。さらに別の好ましい実施形態において、疾患は、喘息である。
【0034】
さらに別の実施形態は、哺乳動物を抗原および式(I)の化合物を含むアジュバントで共同して免疫感作することにより哺乳動物における抗原の免疫原性を増強するための方法である。好ましい実施形態において、抗原は、HIV特異的、マラリア特異的、または前立腺癌特異的である。
【0035】
さらに別の実施形態は、本明細書に記載されているような式(I)の化合物を調製する方法である。特徴的な実施形態は、式(I)
【0036】
【化5】
【0037】
(式中、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、-CH2-CH2-または-CH=CH-であり、
Yが-CH2-CH2-である場合、Qは、C23〜C32アルケニルまたは-R1-O-R2であり、
Yが-CH=CH-である場合、Qは、C27〜C32アルキル、C23〜C32アルケニル、-R1-O-R2、またはフェニルで置換されているC6〜C8アルキルであり、
R1およびR2は、R1およびR2が合わせて23〜32個の炭素原子を有するような、置換または非置換のアルキルまたはアルケニル基であり、
R3は、-OHもしくは単糖であり、R4はHであるか、またはR3はHであり、R4は、-OHもしくは単糖であり、
R5は、水素または単糖である)の化合物、
および薬学的に許容できるその塩またはエステルを調製する方法である。
【0038】
この方法は、
(a)式(II)
【0039】
【化6】
【0040】
の化合物を反応させ、まずPg1を除去し、続いて、式III
【0041】
【化7】
【0042】
(式中、Qは、上記で定義した通りである)を有するp-ニトロフェニルエステルで処理するステップと、
(b)続いて、Pg2およびPg3を脱保護し、場合により、環状基に隣接する炭素-炭素二重結合を水素化して式(I)の化合物を形成するステップと
を含む。
【0043】
1つの好ましい実施形態によれば、式(II)の化合物は、
【0044】
【化8】
【0045】
である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】O-およびC-糖脂質によるサイトカインおよび免疫細胞活性化の略図である。
【図2A】BALB/c(図2A)およびC57BL/6(図2B〜C)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIFN-γの動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIFN-γのレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図2B】C57BL/6(図2B)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIFN-γの動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIFN-γのレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図2C】C57BL/6(図C)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIFN-γの動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIFN-γのレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図3A】BALB/c(図3A)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIL-12の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-12のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図3B】C57BL/6(図3B)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIL-12の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-12のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図3C】C57BL/6(図3C)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIL-12の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-12のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図4A】BALB/c(図4A)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh2型サイトカインIL-4の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-4のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図4B】C57BL/6(図4B)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh2型サイトカインIL-4の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-4のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図4C】C57BL/6(図4C)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh2型サイトカインIL-4の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-4のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図5A】実験的ヒトin vitro NKT細胞系においてELISAにより測定された本発明の化合物のサイトカインレベルを示す図である。IFN-γまたはIL-4の濃度は、様々な糖脂質(すなわち、GCK109[トランス-A-1]、GCK151[シス-A-1]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下、同系のCD14-末梢血単核細胞(PBMC)と共に18時間にわたって共培養した未成熟樹状細胞(DC)の培養上清中でELISAにより決定した。
【図5B】実験的ヒトin vitro NKT細胞系においてELISAにより測定された本発明の化合物のサイトカインレベルを示す図である。IFN-γまたはIL-4の濃度は、様々な糖脂質(すなわち、GCK109[トランス-A-1]、GCK151[シス-A-1]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下、同系のCD14-末梢血単核細胞(PBMC)と共に18時間にわたって共培養した未成熟樹状細胞(DC)の培養上清中でELISAにより決定した。
【図6A】実験的ヒトin vitro NKT細胞系においてELISPOTにより測定された、本発明の化合物とのインキュベーションによるサイトカイン分泌性PBMCの数を示す図である。IFN-γまたはIL-4を分泌するPBMCの数は、様々な糖脂質(すなわち、GCK142A[A-6]、GCK109[トランス-A-1]、GCK151[シス-A-1]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下、22〜26時間にわたってElSPOTプレート中で同系のCD14- PBMCと共に未成熟DCを共培養してELISPOTにより決定した。
【図6B】実験的ヒトin vitro NKT細胞系においてELISPOTにより測定された、本発明の化合物とのインキュベーションによるサイトカイン分泌性PBMCの数を示す図である。IFN-γまたはIL-4を分泌するPBMCの数は、様々な糖脂質(すなわち、GCK142A[A-6]、GCK109[トランス-A-1]、GCK151[シス-A-1]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下、22〜26時間にわたってElSPOTプレート中で同系のCD14- PBMCと共に未成熟DCを共培養してELISPOTにより決定した。
【発明を実施するための形態】
【0047】
定義
本明細書で使用する「Th1型免疫応答」および「Th2型免疫応答」という用語は、それぞれTh1 CD4+ヘルパーT細胞およびTh2 CD4+ヘルパーT細胞により媒介される免疫応答を指す。
【0048】
「Th1型サイトカイン」および「Th2型サイトカイン」という用語は、それぞれTh1細胞およびTh2細胞により産生されるサイトカインを指す。Th1型サイトカインは、IFN-γおよびIL-12を包含するが、それらに限定されない。Th2型サイトカインの非限定的な例は、IL-4である。
【0049】
「制御にTh1型応答を必要とする疾患」という用語は、優勢なTh2型免疫応答およびTh2型サイトカインプロフィールを特徴とする疾患を指す。そのような疾患の例は、HIV感染、HCV感染、HBV感染、ヘルペスウイルス感染、およびRSV感染などの感染性ウイルス疾患; 前立腺癌または乳癌などの癌; ならびに喘息およびアレルギーなどのTh2型自己免疫疾患を包含するが、それらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用する「Th1型免疫応答の選択的誘導」という用語は、Th2型免疫応答の同時誘導および/または亢進および/または持続時間増加を引き起こさないTh1型免疫応答の誘導および/または亢進および/または持続時間増加を指す。本発明の化合物の場合、Th1型免疫応答の選択的誘導は、IL-4分泌の同時亢進がない状態で起きるIL-12分泌の亢進および樹状細胞の活性化の増大(従来技術における化合物と比較して)に反映される。
【0051】
「単糖」という用語は、アルデヒド(アルドース)またはケトン(ケトース)の形態で3〜10個の炭素原子を有する糖分子を指す。本発明で使用することが企図されている適当な単糖は、天然に存在する単糖と合成単糖の両方を包含する。適当な単糖の非限定的な例は、グリセロースおよびジヒドロキシアセトンなどのトリオース; エリトロースおよびエリトルロースなどのテトロース; キシロース、アラビノース、リボース、キシルロース、リブロースなどのペントース; ラムノースおよびフコースなどのメチルペントース(6-デオキシヘキソース); グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトースおよびソルボースなどのヘキソース; ならびにグルコヘプトース、ガラマンノヘプトース、セドヘプツロースおよびマンノヘプツロースなどのヘプトースを包含する。好ましい単糖は、ヘキソースを包含するが、これに限定されない。
【0052】
疾患、例えば、癌、感染性疾患または自己免疫疾患を治療するための化合物の「有効量」は、ヒトを包含する哺乳動物において疾患の少なくとも1つの症状またはパラメーターの測定可能な改善をもたらす量である。
【0053】
本明細書で使用する「薬学的に許容できるその塩またはエステル」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などもなく患者の組織と接触して使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比に見合っており、それらの意図した使用にとって有効である、本発明の化合物の塩(例えば、カルボキシレート塩、アミノ酸付加塩)およびエステル、ならびに可能であれば、本発明の化合物の双性イオン形態を指す。
【0054】
「治療する」という用語は、本明細書において、対象において疾患を予防するか、または疾患の少なくとも1つの症状を緩和もしくは軽減することを意味するのに使用される。本発明の意味の範囲で、「治療する」という用語は、発症前(prepatency)、すなわち感染と疾患の臨床症状との間の期間を延ばすことを意味することもある。
【0055】
投与量または量に適用される「治療的に有効な」という用語は、その必要がある哺乳動物に投与して望ましい活性をもたらすのに十分な化合物または医薬組成物の量を指す。
【0056】
本発明の組成物に関連して使用する互換的に使用される「薬学的に許容できる」および「生理学的に許容できる」という用語は、ヒトに投与される場合、生理学的に耐容性があり、典型的には、有害な反応を生じない、そのような組成物の分子的実体および他の成分を指す。本明細書で使用する「薬学的に許容できる」という用語は、連邦政府または州政府の規制機関により認可されているか、米国薬局方または哺乳動物、より詳細にはヒトで使用するための他の一般的に認められた薬局方に列挙されていることを意味することが好ましい。
【0057】
「担体」という用語は、本発明の化合物と一緒に投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、水およびラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物もしくは合成起源の油を包含する油などの無菌の液体であってよい。水または水溶液、食塩溶液、ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、特に注射液のための担体として使用されることが好ましい。適当な医薬担体は、E. W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第18版に記載されている。
【0058】
「アジュバント」および「免疫アジュバント」という用語は、互換的に使用され、宿主へ単独で投与された場合、非免疫原性であってよいが、その抗原と共同して投与された場合、別の抗原に対する宿主の免疫応答を増強する化合物または混合物を指す。
【0059】
本明細書で使用する「共同投与」、「共同して投与された」、および「共同して投与すること」という用語は、免疫アジュバントおよび抗原などの2つの作用物質を、1つの組成物で同時に、または異なる組成物で同時に、または逐次に投与することを指す。しかしながら、「共同」と見なされる逐次投与の場合、抗原およびアジュバントは、アジュバントが抗原に対する免疫応答を依然として増強することができる時間間隔を隔てて投与されなければならない。例えば、抗原がポリペプチドである場合、抗原およびアジュバントは、同じ日に、好ましくは互いに1時間以内に、最も好ましくは同時に投与される。しかしながら、核酸が対象に送達され、ポリペプチド抗原が対象の細胞内で発現される場合、アジュバントは、核酸投与の24時間以内、より好ましくは6時間以内に投与される。
【0060】
本明細書で使用する「対象」という用語は、免疫系を有する動物、好ましくは哺乳動物を指す。本発明を適用することができる対象は、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、家禽(例えば、ニワトリ)、ヤギ、ネコ、イヌ、げっ歯類(例えば、ハムスター、マウス、ラット、ウサギ)、サル、霊長類、およびヒトを包含するが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、対象は、ヒトである。
【0061】
「約」または「おおよそ」という用語は、当業者により決定されるような特定の値についての許容できる誤差範囲内にあることを意味し、値を測定または決定する方法、すなわち、測定システムの制限に部分的に依存するであろう。例えば、「約」は、当技術分野における実施について、1または1を超える標準偏差内にあることを意味することがある。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、より好ましくは1%までの範囲を意味することがある。あるいは、特に生物学的なシステムまたはプロセスに関して、この用語は、ある値の大きさの次数以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内であることを意味することがある。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に指定のない限り、特定の値について許容できる誤差範囲内にあることを意味する「約」という用語が想定されるべきである。
【0062】
本発明によれば、当業者の範囲内にある従来の分子生物学、微生物学、および組み換えDNA技術を用いることができる。そのような技術は、よく知られており、文献で十分に説明されている。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York. (本明細書では「Sambrook他、1989」); DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes IおよびII (D. N. Glover編1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編1984); Nucleic Acid Hybridization [B. D. HamesおよびS. J. Higgins編(1985)]; Transcription And Translation [B. D. HamesおよびS. J. Higgins、編(1984)]; Animal Cell Culture [R. I. Freshney、編(1986)]; Immobilized Cells And Enzymes [IRL Press、(1986)]; B. Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); F. M. Ausubel他(編), Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, Inc. (1994)を参照されたい。
【0063】
本発明の化合物
XがOであり、R5がHであり、R3がOHであり、R4がHである式(I)の化合物が好ましい。
【0064】
本発明の化合物は、脂質側鎖(すなわち、基Q)内に少なくとも1個の求核性結合を有することが好ましい。各求核性結合は、エーテル結合(すなわち、Qは、-R1-O-R2である)または二重結合(すなわち、Qは、アルケニルである)であることが好ましい。求核性結合は、側鎖Qの末端炭素原子から最小限6個の炭素原子に位置していることが好ましい。例えば、二重結合は、側鎖Qの末端炭素から6〜22個の炭素原子の任意の位置に位置することができる。
【0065】
一実施形態によれば、Qは、23〜32個の炭素原子、好ましくは25〜32個、より好ましくは28〜32個の炭素原子を含有し、1、2、または3個の二重結合を有するC23〜C32アルケニルである。Qは、1個の二重結合しか有さないことが好ましい。二重結合は、C7〜C12(カルボニル基に結合しているQ基の末端から)、より好ましくはC7〜C10(例えば、C9〜C10)に位置していることが好ましい。Qは、-C8H16-CH=CH- C18H37であることが好ましい。化合物の特定のファミリーは、Qが、C23〜C32アルケニルであり、Yが、好ましくはトランス配座の-CH=CH-である場合である。
【0066】
別の実施形態において、Qは、-R1-O-R2である。酸素原子は、Q基内のどこに位置していてもよいが、C1〜C25(カルボニル基に結合しているQ基の末端から)(例えば、C1〜C2またはC9〜C10)、より好ましくはC18〜C25(例えば、C19〜C20)に位置していることが好ましい。例えば、Qは、-C19H38-O-C6H13であってよい。化合物の特定のファミリーは、Qが、-R1-O-R2であり、Yが、-CH2-CH2-である場合である。好ましい実施形態において、Qは、-R1-O-R2であり、R1とR2は共に、アルキル基である。
【0067】
さらに別の実施形態において、Qは、-R1-O-R2であり、R1およびR2のうちの少なくとも1つは、アルケニルである。Q基は、1〜3個の二重結合、より好ましくは1個だけの二重結合を含有することが好ましい。二重結合および酸素原子は、Q基内のどこに位置していてもよい。R1は、アルケニルであることが好ましく、R1は、アルケニルであり、R2は、アルキルであることがより好ましい。Q基が1個の二重結合を含有する場合、二重結合は、C7〜C12(カルボニル基に結合しているQ基の末端から)、より好ましくはC7〜C10、さらにより好ましくはC9〜C10に位置していることが好ましい。酸素原子は、C1〜C25(カルボニル基に結合しているQ基の末端から)(例えば、C1〜C2またはC9〜C10)、より好ましくはC18〜C25(例えば、C19〜C20)に位置していることが好ましい。例えば、Qは、-C8H16-CH=CH-C9H18-O-C6H13であってよい。
【0068】
別の好ましい実施形態によれば、Yは、-CH=CH-であり、Qは、C27〜C32アルキル、好ましくはC27またはC28アルキルである。
【0069】
別の好ましい実施形態によれば、Yは、-CH=CH-であり、Qは、-R1-O-R2であり、R1およびR2は、上記で定義した通りである。Qは、23〜32個の炭素原子、より好ましくは25〜32個の炭素原子、さらにより好ましくは28〜32個の炭素原子を含有することが好ましい。例えば、Qは、-C19H38-O-C6H13であってよい。
【0070】
本発明の好ましい化合物は、
【0071】
【化9A】
【0072】
【化9B】
【0073】
ならびに薬学的に許容できるそれらの塩およびエステルを包含するが、これらに限定されない。
【0074】
本発明の他の好ましい化合物は、以下の表Bに示す化合物ならびに薬学的に許容できるそれらの塩およびエステルを包含するが、これらに限定されない。
【0075】
【表1】
【0076】
本発明の特徴的な化合物は、式
【0077】
【化10】
【0078】
を有する化合物または薬学的に許容できるその塩もしくはエステルである。
【0079】
治療的用途
本発明の化合物は、Th1型免疫応答の選択的誘導から、特に、IL-4分泌の実質的な同時亢進がない状態で起きるIL-12分泌の亢進および樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)の活性化増大に伴うTh1型免疫応答から恩恵を受ける任意の疾患を治療するのに有用である。
【0080】
いかなる特定の理論にも束縛されるわけではないが、本発明の発明者他は、本発明の化合物が、APCのTCRに結合することによりTh1免疫応答の選択的誘導を媒介し、NKT細胞を活性化してNKT細胞によるIFN-γの分泌をもたらすと考えている。しかしながら、そのようにして活性化されたNKT細胞は、有意な量のIL-4を実質的に分泌しない。活性化されたNKT細胞は、CD40リガンドを介して樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)にさらに結合し、IL-12の局所分泌亢進を引き起こす。IL-12のそのような局所放出は、IL-12の毒性に伴う負の効果を避けることを可能にし、例えば、腫瘍または病原体に対する極めて効率的かつ特異的なTh1型免疫応答の発生を可能にする。発明者他は、本発明の化合物が、樹状細胞に対して間接的に作用し、α-GalCerまたはα-C-GalCer(CRONY)と比較した場合に、二次的NK細胞活性化に対してあまり活性を示さないとも考えている。したがって、NK細胞の非特異的活性化は、実質的に制限され、従来技術の化合物を上回って本発明の化合物の安全性および耐容性を改善する。
【0081】
これらの特性は、本発明の化合物を、制御にTh1型応答を必要とする疾患を治療するのに特に有用にする。
【0082】
一実施形態において、本発明の化合物は、例えば、腫瘍の成長を阻害するための抗腫瘍剤として癌の治療に、および細胞増殖性障害の治療に有用である。本発明の化合物は、単独で、または化学療法、放射線療法もしくは免疫療法と組み合わせて使用することができる。
【0083】
より具体的には、本発明の化合物は、膀胱癌、乳癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌を包含する肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、精巣癌、胃癌、腎臓癌、肝臓癌、頸癌、甲状腺癌、前立腺癌、および扁平上皮細胞癌を包含する皮膚癌などの癌; 白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を包含するリンパ系の造血器腫瘍; 急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群および前骨髄球性白血病を包含する骨髄系の造血器腫瘍; 線維肉腫および横紋筋肉腫を包含する間葉起源の腫瘍; 星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫およびシュワン細胞腫を包含する中枢および末梢神経系の腫瘍; 黒色腫、精上皮腫、奇形腫、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、甲状腺濾胞癌およびカポジ肉腫を包含する他の腫瘍を包含するがこれらに限定されない様々な癌の治療に有用である。好ましい実施形態において、癌は、前立腺癌または乳癌などの固形癌である。
【0084】
化合物が有用である細胞増殖性障害は、良性前立腺肥大、家族性腺腫性ポリポーシス、神経線維腫症、乾癬、アテローム性動脈硬化症に伴う血管平滑筋細胞増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎、ならびに術後狭窄および再狭窄を包含するが、これらに限定されない。
【0085】
別の実施形態において、本発明の化合物は、ウイルス性と非ウイルス性の両方の感染症を包含する感染性疾患を治療するのにも有用である。
【0086】
例えば、化合物は、レトロウイルス科(例えば、HIV-1(HTLV-III、LAVもしくはHTLV-III/LAV、またはHIV-IIIとも呼ばれる)などのヒト免疫不全ウイルス); およびHIV-LPなどの他の分離株; ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス; エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス); カルシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす株); トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス); フラビウイルス科(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス); コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス); ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス); フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス); パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス); オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス); ブニヤウイルス科(例えば、ハンターンウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス); アレナウイルス科(出血性熱ウイルス); レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルスおよびロタウイルス); ビルナウイルス科; ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス); パルボウイルス科(パルボウイルス); パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス); アデノウイルス科(大部分のアデノウイルス); ヘルペスウイルス科(1型および2型単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス); ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス); およびイリドウイルス科(例えば、アフリカブタ熱ウイルス); および未分類ウイルス(例えば、海綿状脳症の病原因子、デルタ肝炎の因子(B型肝炎ウイルスの欠陥サテライトである考えられている)、非A非B型肝炎の因子(クラス1=経口感染、クラス2=非経口感染(すなわち、C型肝炎)); ノーウォークおよび関連ウイルス、およびアストロウイルス)により引き起こされるウイルス感染を治療するのに有用である。
【0087】
本発明の化合物は、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、在郷軍人病菌(Legionella pneumophila)、マイコバクテリア種(例えば、結核菌(M. tuberculosis)、トリ結核菌(M. avium)、マイコバクテリウムイントラセルラレ(M. intracellulare)、マイコバクテリウムカンサシ(M. kansasii)、マイコバクテリウムゴルドナエ(M. gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカスアガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、連鎖球菌(ビリダンス群)、糞便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、ウシ連鎖球菌(Streptococcus bovis)、連鎖球菌(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター種、腸球菌種、シュードモナス種、肺炎球菌種、クラミジア種、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ジフテリア菌(corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム種、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクターエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラムルトシダ(Pasteurella multocida)、バクテロイデス種、フソバクテリウムヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラスモニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、トレポネーマペルテヌエ(Treponema pertenue)、レプトスピラ、イスラエル放線菌(Actinomyces israelii)および野兎病菌(Francisella tularensis)により引き起こされる細菌感染を治療するのにも有用である。クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマカプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデスイミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミセスデルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、クラミジアトラコマティス(Chlamydia trachomatis)、カンジダアルビカンス(Candida albicans)により引き起こされる真菌および原虫感染。
【0088】
本発明の化合物は、プラスモジウム種、リーシュマニア種、住血吸虫種およびトキソプラズマ種を包含する原生生物などの他の感染性生物体ならびに酵母および他の真菌により引き起こされる感染症を治療するのにも有用である。
【0089】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヘルペスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)により引き起こされる感染症、またはマラリアを治療するのに有用である。
【0090】
他の実施形態において、本発明の化合物は、喘息およびアレルギーなどの制御にTh1型応答を必要とする自己免疫疾患を治療するのに有用である。
【0091】
本発明の治療的および予防的方法は、他の治療と併せて使用することができる。例えば、本発明の化合物を用いる抗癌治療は、化学療法および/または放射線療法と組み合わせて使用することができる。本発明の化合物を用いる抗ウイルス治療は、IFN-α治療と組み合わせて使用することができる。
【0092】
本発明の方法と併せて、本発明は、免疫原性的に有効な量の式(I)の化合物および、場合により、追加の免疫刺激薬、担体または賦形剤(好ましくはすべてが薬学的に許容できる)を含む医薬組成物およびワクチン組成物も提供する。
【0093】
投与様式
本発明の化合物および組成物の投与様式は、経口、腸内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、経皮、鼻腔内、経粘膜(経腸および口腔内を包含する)、および吸入を包含するが、これらに限定されない。経口、経皮、皮下、または吸入もしくは鼻腔内経路が使用される(例えば、それぞれ固体または液体経口製剤、皮膚パッチ、または鼻腔用スプレーを介して)ことが好ましい。一部の場合に、化合物を同系の樹状細胞にパルスし、続いて、静脈内で患者に移すことができる。すなわち、樹状細胞を化合物と一緒にインキュベートし、それらのCD1d分子を介して樹状細胞に化合物を結合させることができる。次いで、これらの化合物を負荷した樹状細胞を、静脈内で患者に移すことができる。静脈内移行は、局所的か全身的のどちらかであってよい。
【0094】
医薬組成物
本発明の化合物および組成物を経口投与するための固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、および坐剤を包含する。そのような固体剤形において、本発明の活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な通常の賦形剤(または担体); または(a)例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸のような充填剤または増量剤; (b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアのような結合剤; (c)例えば、グリセロールのような保湿剤; (d)例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤; (e)例えば、パラフィンのような溶解遅延剤; (f)例えば、四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤; (g)例えば、セチルアルコール、およびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤; (h)例えば、カオリンおよびベントナイトのような吸着剤; (i)例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物のような滑沢剤と混合することができる。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含むこともある。そのような固体組成物または記載されているものと同様の固体組成物は、ラクトースすなわち乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる軟質および硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤としても用いることができる。
【0095】
錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤などの固体剤形は、腸溶コーティングまたは他の適当なコーティングもしくはシェルなどのコーティングおよびシェルと共に調製することができる。いくつかのそのようなコーティングおよび/またはシェルは、当技術分野においてよく知られており、乳白剤を含有することがあり、それらが、遅延様式で腸管の特定部分において活性な1種または複数の化合物を放出するような組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例は、ポリマー物質およびワックスである。活性化合物は、適切な場合、上述の賦形剤のうちの1種または複数と共に、マイクロカプセル化された形態で使用することもできる。
【0096】
経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容できる乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を包含する。液体剤形は、活性化合物の他に、水または他の溶媒などの当技術分野において一般に使用される不活性な希釈剤、可溶化剤ならびに、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルまたはこれらの物質の混合物のような乳化剤を含有することができる。望ましい場合、組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、矯味剤および/または着香剤などの補助剤を包含することもできる。
【0097】
組成物は、本明細書で定義されているように、担体を包含することがある。適当な担体は、本明細書で定義されているように、循環系に可溶であり、生理学的に許容できる高分子を包含する。担体は、クリアランスのための許容できる血漿中半減期で循環系において比較的安定であることが好ましい。そのような高分子は、大豆レクチン、オレイン酸およびソルビタントリオレエートを包含するが、これらに限定されるものではなく、ソルビタントリオレエートが好ましい。
【0098】
懸濁剤は、活性化合物の他に、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガカントなどの懸濁化剤を含有することができる。望ましい場合、懸濁化剤の混合物を使用することができる。
【0099】
直腸投与のための組成物は、本発明の化合物を、カカオ脂、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックスなどの、通常の温度では固体であるが、体温では液体であるため、直腸腔または膣腔で融解して活性成分を放出する適当な非刺激性の賦形剤または担体と混ぜることにより調製することができる坐剤であることが好ましい。
【0100】
非経口注射に適している組成物は、生理学的に許容できる無菌の水性または非水性液剤、分散剤、懸濁剤または乳剤、および無菌の注射用液剤または分散剤に再構成するための無菌の散剤を含むことができる。適当な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの適当な混合物、植物油(オリーブ油など)およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを包含する。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散剤の場合は必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。
【0101】
本発明の化合物を局所投与するための剤形は、軟膏剤、散剤、スプレー剤および吸入剤を包含する。活性化合物を、適当な条件(例えば、無菌条件)下、生理学的に許容できる担体および必要とされるような保存料、緩衝剤、または噴射剤と混合することができる。眼用製剤、眼軟膏剤、散剤、および液剤も、本発明の範囲内にあることが企図されている。
【0102】
本発明の化合物は、吸入によりまたは鼻腔内に投与するのに適している形態で有利に製剤化することができ、喘息またはアレルギー性呼吸器疾患を治療する場合に特に有用である。そのような製剤における特定の賦形剤の選択は、望ましい剤形、すなわち、溶液が、点滴剤で、またはスプレー(エアゾール)として、または鼻腔に適用される懸濁液、軟膏もしくはゲルとして使用されるか否かによって異なる。
【0103】
エアゾールまたは加圧パッケージをこの目的のために用いることができる。そのようなエアゾール製剤は、治療的応用部位へ圧力を受けて噴射剤ガスにより運搬される極めて細かい液体または固体の粒子を含む。医薬エアゾールが本発明において用いられる場合、エアゾールは、流動性担体と噴射剤の混合物に溶解、懸濁、または乳化することができる治療活性化合物を含有する。エアゾールは、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、または半固体調製物の形態であってよい。本発明において用いられるエアゾール剤は、患者の気道を介して細かい固体粒子として、または液体ミストとして投与することを意図している。当業者に知られている様々なタイプの噴射剤を利用することができる。適当な噴射剤の例は、炭化水素または他の適当なガスを包含するが、それらに限定されない。加圧エアゾールの場合、用量単位は、一定量を送達する値を提供することにより決定することができる。本発明は、ガス中に実質的に均一なサイズの極めて細かい液体粒子を発生する装置であるネブライザーを使って行うこともできる。本発明の化合物を含有する液体は、液滴として分散されることが好ましい。小さな液滴は、ネブライザーの排出管を通って空気の流れにより運搬することができる。得られるミストは、患者の気道に浸透する。
【0104】
代替方法として、本発明の化合物を含有する粉末組成物は、滑沢剤、担体、または噴射剤の有無にかかわらず、治療の必要がある哺乳動物に投与することができる。本発明のこの実施形態は、吸入により粉末医薬組成物を投与するための従来の装置を使って行うことができる。例えば、化合物とラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤の粉末混合物を、例えば、カプセル剤またはカートリッジ剤、例えば、ゼラチン、またはブリスターパック中の単位剤形で提供することができ、インヘイラーを用いて粉末を投与することができる。
【0105】
エアゾール投与の場合、本発明の化合物は、約1〜約20μm、好ましくは約3〜約10μmの微粉化粒子の形態であってよい。
【0106】
具体的実施形態において、本発明の化合物は、リポソームまたはミセル粒子により送達される。
【0107】
静脈内、皮下または筋肉内経路により非経口的に投与される場合、リポソームは、血流における遊離薬物の濃度を制限することにより、長時間にわたってカプセル化された薬物の制御された「デポー」放出を提供し、薬物の副作用を軽減することができる。リポソームは、治療的に好ましい方法で薬物の組織分布および取り込みを変化させ、頻度の低い薬物投与を可能にすることにより治療の利便性を高めることができる。
【0108】
吸入により投与される場合、リポソームは、脂質組成に従って、数時間から数日まで半減期が変わることがある選択された放出速度で封入薬物を放出するように調整することができる。さらに、薬物がリポソーム中に隔離されている限り、気道および血流中への急速な取り込みに関連する副作用は軽減される。
【0109】
粘膜組織に薬物を送達するためのリポソームの付加的利点は、リポソーム表面を、組織付着の増大のために修飾し、標的組織部位におけるリポソームの滞留時間を増強することができることである。
【0110】
薬物が封入されたリポソームを調製するためのいくつかの方法が知られている。1つの方法において、小胞形成脂質を、フラスコの側面上に薄膜として沈着させ、水性緩衝液の添加によりゆっくりと再水和する。封入すべき薬物は、脂質薄膜(親油性薬物の場合)中か水性水和媒体(親水性薬物の場合)中のどちらかに包含させることができる。形成するリポソームは、約0.05〜10ミクロンの不均一なサイズを有する多重ラメラ小胞(MLV)である。続いて、MLVは、典型的には均質化、超音波処理、または膜押し出しにより処理し、より小さく、より均一なサイズの懸濁液を製造することができる。約0.2〜0.4ミクロンまでサイズを落としたリポソームが一般的に好ましい。このサイズ範囲のリポソームは、0.45ミクロンのデプスフィルターを通過させることにより滅菌することができ、凝集する傾向は少なく、静脈内投与された場合により好ましい臓器分布を示すこともある(Gabizon)。一旦リポソーム製剤が調製されたら、リポソームの内部媒体ならびに外部媒体中の両方に存在する好ましくは凍結防止剤を用い、凍結乾燥することができる。
【0111】
これらの凍結防止剤は、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、マンニトール、シクロデキストリンおよびその誘導体などの糖から選択することができる。
【0112】
これらの凍結防止剤は、ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシエチルデンプンなどのポリマーであってもよい。
【0113】
これらの凍結防止剤は、単独でまたは組合せとして使用することができる。
【0114】
リポソーム製剤を凍結乾燥する場合、アミノ酸をさらに使用することができる。
【0115】
凍結防止剤は、水和媒体中に溶解したこれらの凍結防止剤を用いることにより、空のリポソームを調製する間にリポソーム内の水層に導入される。外部からは、凍結防止剤は、薬物負荷プロセスの完了後に行われる透析濾過中に導入される。望ましい凍結防止剤は、任意のリポソーム懸濁液製剤の外部緩衝液を透析濾過により交換することにより導入することもできる。リポソーム懸濁液をバイアルに充填し、凍結乾燥する。
【0116】
本発明の化合物を含む他の非リポソーム製剤もまた凍結乾燥することができる。
【0117】
アジュバント使用
本発明は、哺乳動物において抗原の免疫原性を増強するための方法であって、哺乳動物を抗原および式Iの化合物を含むアジュバントで共同して免疫感作するステップを含む方法を提供する。
【0118】
本発明によれば、アジュバントとしての式Iの化合物の使用は、抗原により誘導される防御免疫の持続時間の増強および/または延長をもたらす。例えば、本明細書に開示されているように、式Iの化合物と腫瘍もしくはウイルス抗原のT細胞またはB細胞エピトープに対応するペプチド、またはこれらの抗原を発現するDNA構築物との共同投与は、抗原特異的免疫応答を亢進する。
【0119】
式Iのアジュバントは、任意の抗原、特に、感染因子または腫瘍に由来する抗原と共同して投与することができる。
【0120】
上記で規定されているように、本発明の化合物のアジュバント活性は、NKT媒介性および樹状細胞媒介性抗原特異的Th1型T細胞応答およびCD8+ T細胞応答を増強および/または延長するそれらの能力に少なくとも部分的に起因している。
【0121】
従来技術の化合物(KRN7000およびCRONY101を包含する)と比較して、本発明の化合物がTh1型免疫応答の選択的誘導を達成する(すなわち、IL-4分泌の亢進のない状態でNKT細胞系の効率的、特異的かつ局所的な活性化、特に、IL-12分泌の亢進および樹状細胞の効率的かつ局所的な二次的活性化を達成する)ことができることにより、非特異的細胞障害性のない状態で活性化NKT細胞の局所的細胞障害性が増大し、このことから、本発明の化合物が、低い免疫原性を特徴とする様々な腫瘍および感染性抗原の免疫原性を亢進するのに極めて有効なものとなる。さらに、本発明の化合物によるNKT細胞の活性化は、個体間で単形性であるCD1d分子に依存しており(Porcelli、Adv. Immunol.、59: 1〜98頁、1995)、本発明のアジュバントが、MHCハプロタイプに関係なく、すべての患者により利用することができることを示している。
【0122】
本発明によれば、抗原および式(I)の化合物を含むアジュバントは、共同して投与される。抗原およびアジュバントの投与様式は、経口、腸内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、経皮、鼻腔内、経粘膜(経腸および口腔内を包含する)、および吸入を包含するが、これらに限定されない。経口、経皮、皮下、または吸入もしくは鼻腔内経路が使用される(例えば、それぞれ固体または液体経口製剤、皮膚パッチ、または鼻腔用スプレーを介して)ことが好ましい。静脈内移行は、局所的か全身的のどちらかであってよい。本発明の化合物を含むアジュバントと抗原の同時投与が好ましく、一般的に、最も効率的な免疫刺激を可能にする。2つの異なる組成物に含有される場合、本発明のアジュバントおよび抗原は、同じ部位、好ましくは互いに1センチメートル以内に投与されることが好ましい。
【0123】
本発明のアジュバントは、複数の異なる抗原との組合せでその免疫刺激活性を発揮するため、予防的応用と治療的応用の両方に有用である。したがって、他の態様において、本発明は、哺乳動物において制御にTh1型応答を必要とする疾患を治療するための予防的および/または治療的方法であって、前記哺乳動物に抗原および式(I)の化合物を含むアジュバントを共同して投与することを含む方法を提供する。この方法は、例えば、様々な感染症を防ぎかつ/または治療するため、ならびに様々な新生物性疾患を治療するのに有用なことがある。
【0124】
一実施形態は、ウイルス特異的抗原および式(I)のアジュバント化合物を哺乳動物に共同して投与することにより、哺乳動物においてヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、B型肝炎ウイルス(HBV)感染、ヘルペスウイルス感染、または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染に対する免疫応答を亢進するための方法である。別の実施形態は、癌特異的抗原および式(I)のアジュバント化合物を哺乳動物に共同して投与することにより、哺乳動物において前立腺癌または乳癌に対する免疫応答を亢進するための方法である。
【0125】
本発明の治療的および予防的方法は、他の治療と併せて使用することができる。例えば、腫瘍特異的抗原および本発明のアジュバントを用いる抗癌治療は、化学療法および/または放射線療法と組み合わせて使用することができる。本発明のアジュバントを含む抗ウイルスワクチンは、IFN-α治療と組み合わせて使用することができる。
【0126】
本発明の方法と併せて、本発明は、免疫原性的に有効な量の抗原および免疫原性的に有効な量の式(I)の化合物を含むアジュバントおよび、場合により、追加の免疫刺激薬、担体または賦形剤(好ましくはすべてが薬学的に許容できる)を含む医薬組成物およびワクチン組成物を提供する。前記抗原およびアジュバントは、単一組成物か2つの別々の組成物のどちらかとして製剤化することができる。
【0127】
本発明の免疫原性(例えば、ワクチン)組成物において使用される抗原は、真核細胞(例えば、腫瘍または寄生虫ならびに酵母および他の真菌)、細菌細胞、ウイルス粒子、またはそれらの任意の部分に由来してよい。免疫原性応答の対象とされる材料が抗原性に乏しい場合(例えば、合成またはサブユニット抗原)、例えば、いくつかの市販試薬キットのうちの1つで、標準的な共有結合技術を用い、アルブミンまたはハプテンなどの担体分子に追加的にコンジュゲートすることができる。さらに、志賀毒素のβサブユニット、特異的樹状細胞親和性を持つペプチド(Haicheur N、Bismuth E、Bosset S、Adotevi O、Warnier G、Lacabanne V、Regnault A、Desaymard C、Amigorena S、Ricciardi-Castagnoli P、Goud B、Fridman WH、Johannes L、Tartour E. The B subunit of Shiga toxin fused to a tumor antigen elicits CTL and targets dendritic cells to allow MHC class I-restricted presentation of peptides derived from exogenous antigens. J Immunol. 2000年9月15日: 165 (6): 3301〜8頁)、DEC-205受容体に対する親和性を持つペプチド(Sevilla他、J. Exp. Med.、2000、192: 1249〜1260頁)、DC-SIGNに対する抗体(Tacken PJ、de Vries IJ、Gijzen K、Joosten B、Wu D、Rother RP、Faas SJ、Punt CJ、Torensma R、Adema GJ、Figdor CG. Effective induction of naive and recall T-cell responses by targeting antigen to human dendritic cells via a humanized anti-DC-SIGN antibody. Blood. 2005年8月15日; 106 (4): 12
78〜85頁)などの、APCに対する特異的標的化を誘導する特異的分子実体を包含することがある。
【0128】
本発明の好ましい抗原の例は、(i)照射プラスモジウムスポロゾイトまたはマラリアスポロゾイト周囲(CS)タンパク質の少なくとも1つのT細胞および/またはB細胞エピトープを含む合成ペプチド抗原などのマラリア特異的抗原(以下を参照); (ii)インフルエンザウイルスに由来するものなどのウイルスタンパク質またはペプチド抗原(例えば、表面糖タンパク質ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)[シチメンチョウインフルエンザHAおよび鳥インフルエンザHA]); 免疫不全ウイルス(例えば、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)抗原、サル免疫不全ウイルス(SIV)抗原、またはgp120、gp160、p18抗原、Gag p17/p24、Tat、Pol、Nef、およびEnvなどのヒト免疫不全ウイルス抗原(HIV)); ヘルペスウイルス(例えば、糖タンパク質、例えば、ネコヘルペスウイルス、ウマヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、イヌヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV、例えば、HSV tk、gB、gD)、マレック病ウイルス、シチメンチョウのヘルペスウイルス(HVT)、またはサイトメガロウイルス(CMV)、またはエプスタイン-バーウイルス); 肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原(HBsAg)); (iii)グラム陰性菌細胞壁から単離されたリポ多糖などの細菌性抗原およびブドウ球菌特異的、連鎖球菌特異的、肺炎球菌特異的(例えば、PspA[PCT公開第WO92/14488号を参照])、淋菌特異的、ボレリア特異的(例えば、ライム病ボレリア、ボレリアアフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリアガリニ(Borrelia garinii)などのライム病に関係するボレリアのOspA、OspB、OspC抗原[例えば、米国特許第5,523,089号; PCT公開第WO90/04411号、第WO91/09870号、第WO93/04175号、第WO96/06165号、第WO93/08306号; PCT/US92/08697; Bergstrom他、Mol. Microbiol.、3: 479〜486頁; Johnson他、Infect. and Immun. 60: 1845〜1853頁、1992; Johnson他、Vaccine 13: 1086〜1094頁、1995; The Sixth International Conference on Lyme Borreliosis: Progress on the Development of Lyme Disease Vaccine、Vaccine 13: 133〜135頁、1995を参照])、および(iv)ErbB受容体、Melan A[MARTI]、gp100、チロシナーゼ、TRP-1/gp75、およびTRP-2(黒色腫における); MAGE-1およびMAGE-3(膀胱癌、頭頸部癌、および非小細胞癌における); HPV EGおよびE7タンパク質(子宮頸癌における); ムチン[MUC-1](乳癌、膵臓癌、大腸癌、および前立腺癌における); 前立腺特異的抗原[PSA](前立腺癌における); 癌胎児性抗原[CEA](大腸癌、乳癌、および消化管癌における)などの腫瘍特異的タンパク質およびMAGE-2、MAGE-4、MAGE-6、MAGE-10、MAGE-12、BAGE-1、CAGE-1、2、8、CAGE-3〜7、LAGE-1、NY-ESO-1/LAGE-2、NA-88、GnTV、TRP--INT2、およびWT-1(ウィルムス腫瘍遺伝子)などの共通腫瘍特異的抗原を包含する。
【0129】
抗原の上記のリストは、例示的であることを意図しており、対象の抗原は、いかなる動物またはヒトの病原体または腫瘍に由来してもよい。対象の病原体由来抗原をコードするDNAに関しては、例えば、米国特許第4,722,848号; 第5,174,993号; 第5,338,683号; 第5,494,807号; 第5,503,834号; 第5,505,941号; 第5,514,375号; 第5,529,780号; 英国特許第GB 2 269 820 B号; およびPCT公開第WO92/22641号; 第WO93/03145号; 第WO94/16716号; 第WO96/3941号; PCT/US94/06652に注意を向けられたい。腫瘍ウイルスに由来する抗原に関しては、Weiss他により編集されたMolecular Biology of Tumor Viruses, RNA Tumor Viruses、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1982も参照されたい。本発明の組成物において有用な追加の抗原のリストについては、Stedman's Medical Dictionary(第24版、1982)も参照されたい。
【0130】
一実施形態において、本発明の組成物は、マラリア、特にプラスモジウムヨエリ(Plasmodium yoelii)および主要なヒトプラスモジウム種熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)および三日熱マラリア原虫(P. vivax)に対する防御免疫を提供する。これらの組成物は、以下の成分; (i)好ましくは多様な遺伝的背景の哺乳動物において抗マラリアT細胞応答を誘発することができるT細胞エピトープを含む少なくとも1つのマラリア特異的ペプチド(例えば、YNRNIVNRLLGDALNGKPEEK[配列番号1]またはSYVPSAEQI[配列番号2]プラスモジウムヨエリCSタンパク質のT細胞エピトープ[Renia他、J. Immunol.、22: 157〜160頁、1993; Rodrigues他、Int. Immunol.、3: 579〜585頁、1991]または(NVDPNANP)n[配列番号3]またはEYLNKIQNSLSTE WSPCSVT[配列番号4]熱帯熱マラリア原虫CSタンパク質のT細胞エピトープ[Nardin他、Science、246: 1603頁、1989; Moreno他、Int. Immunol.、3: 997頁: 1991; Moreno他、J. Immunol.、151: 489頁、1993]); および/または(ii)抗マラリア(すなわち、中和)抗体の産生を刺激することができる(例えば、マラリア生物体のスポロゾイト期を対象にして) B細胞エピトープ(例えば、(NANP)3[配列番号5])熱帯熱マラリア原虫のCSタンパク質の反復領域内に位置しているB細胞エピトープ[Nardin他、J. Exp. Med.、156: 20頁、1982; Nardin他、Ann. Rev. Immunol.、11: 687、1993])を含む少なくとも1つのマラリア特定的ペプチドのうちの1つまたは複数を含む。本発明の免疫原性組成物は、少なくとも1つのB細胞エピトープおよび少なくとも1つのT細胞エピトープを含むことが好ましい。B細胞エピトープは、マラリアスポロゾイト周囲(CS)タンパク質を特異的に認識しそれに結合する抗体の産生を誘発することが好ましい。あるいは、またはさらに、本発明の組成物は、例えば、三日熱マラリア原虫赤血球分泌性タンパク質-1または-2(PvESP-1またはPvESP-2)(米国特許第5,874,527号を参照)、スポロゾイト表面タンパク質2(SSP2)とも呼ばれるトロンボスポンジン関連接着(無名)タンパク質(TRAP)と命名された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト表面タンパク質、LSA-1、hsp70、SALSA、STARP、Hep17、MSA、RAP-1、およびRAP-2などの他のマラリア成分に由来し、それらと反応するB細胞および/またはT細胞エピトープを含むことがある。一実施形態において、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープ成分は、多抗原ペプチド(MAP)に組み込まれ、高密度のエピトープを含有する合成高分子ポリペプチドを形成する。MAP合成の方法は、当技術分野においてよく知られている(例えば、Tam、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85: 5409、1988; Tam、Meth. Enzymol.、168: 7、1989)。
【0131】
本発明は、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)、プラスモジウムレイケノウィ(P. reichenowi)、サルマラリア原虫(P. knowlesi)、サル三日熱マラリア原虫(P. cynomolgi)、プラスモジウムブラシリアヌム(P. brasilianum)、ネズミマラリア原虫(P. berghei)、およびネズミマラリア原虫(P. chabaudi)を包含するがこれらに限定されない他のプラスモジウム種に由来するB細胞およびT細胞エピトープも包含する。これらのエピトープは、典型的には、プラスモジウムタンパク質に由来する8〜18個のアミノ酸残基を含む。
【0132】
別の具体的実施形態において、本発明の好ましい抗原は、HIV特異的である(p18タンパク質のT細胞エピトープRGPGRAFVTI[配列番号6]など)。
【0133】
具体的実施形態において、本発明の抗原は、抗原を発現する組み換えウイルスにより提供することができる。ウイルスは、組み換えアデノウイルス、組み換えポックスウイルス、および組み換えシンドビスウイルスからなる群から選択されることが好ましい。
【0134】
アジュバントとして使用される場合、本発明の化合物は、抗原を含む医薬組成物またはワクチン組成物の一部としてまたは別々の製剤として投与することができ、抗原を含有する第二の組成物と共同して投与される。これらの組成物のいずれかにおいて、本発明の化合物は、他のアジュバントおよび/または賦形剤/担体と組み合わせることができる。これらの他のアジュバントは、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、MF59、またはSAFなどの油-エマルジョンおよび乳化剤ベースのアジュバント; 水酸化アルミニウム(ミョウバン)、リン酸アルミニウムまたはリン酸カルシウムなどのミネラルゲル; コレラ毒素(CT)、百日咳毒素、大腸菌(Escherichia coli)易熱性毒素(LT)、変異毒素(例えば、LTK63またはLTR72)、カルメットゲラン桿菌(BCG)、コリネバクテリウムパルブム(Corynebacterium parvum)、DNA CpGモチーフ、ムラミルジペプチド、またはモノホスホリル脂質Aなどの微生物由来のアジュバント; 免疫刺激複合体(ISCOM)、リポソーム、生分解性ミクロスフェア、またはサポニン(例えば、QS-21)などの粒子状アジュバント; IFN-γ、IL-2、IL-12またはGM-CSFなどのサイトカイン; 非イオン性ブロックコポリマーなどの合成アジュバント、ムラミルペプチド類似体(例えば、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン[thr-MDP]、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-[1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ]-エチルアミン)、ポリホスファゼン、または合成ポリヌクレオチド、ならびにリゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、炭化水素エマルジョン、またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を包含するが、これらに限定されない。これらの追加のアジュバントは、ヒトにおける使用に薬学的に許容できることも好ましい。
【0135】
組成物の純度
本発明の化合物は、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の純度レベルまで精製されることが好ましい。
【0136】
有効用量
疾患を治療するのに有効な量は、用量および投与頻度のマトリクスを策定し、一群の実験的な単位または対象をマトリクス中の各点と比較することなどにより、当業者に知られている経験的方法により容易に決定することができる。患者に投与するべき正確な量は、特定の疾患、疾患の状態および重症度、および患者の身体的条件に応じて変わるであろう。任意の症状またはパラメーターの測定可能な改善は、当技術分野に熟練した医師が決定するか、または患者が医師に報告することができる。臨床的に有意な減弱または改善は、患者および/または医師に認知可能であることを意味する。
【0137】
任意の特定の患者にとっての具体的な剤形および投与量が、用いられる具体的な化合物の活性; 治療されている個体の年齢、体重、一般的健康、および性別; 投与の時間および経路; 排泄の速度; 以前に投与された他の薬物; ならびに治療を受けている特定の疾患の重症度を包含する様々な要素によって異なるであろうことも理解されるであろう。
【0138】
投与するべき薬剤の量は、約0.1〜約500μg/kg/投与、好ましくは約0.5〜約100μg/kg/投与、最も好ましくは約1〜約50μg/kg/日の範囲であってよい。本発明の医薬組成物が、それ自体で、障害を治療するのに有効である薬剤の全量を含有する必要がなく、そのような医薬組成物の複数の投与量を投与することにより、そのような有効量に達することができることは理解されるであろう。
【0139】
例えば、本発明の化合物は、各々が、本発明の化合物0.06〜3.00mgを含有することが好ましいカプセル剤または錠剤に製剤化することができる。
【0140】
本発明の化合物を含有する組成物の毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手順により、例えば、LD50(母集団の50%に対して致死的な投与量)およびED50(母集団の50%において治療的に有効な投与量)を決定することにより決定することができる。毒性効果と治療効果の間の投与量比は、治療係数であり、治療係数は、比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療係数を示す組成物が好ましい。毒性の副作用を示す治療薬を使用することがあるが(例えば、重症の癌または生命にかかわる感染症を治療する場合)、そのような免疫原性組成物が特定の部位(例えば、免疫応答を媒介するリンパ系組織、腫瘍または感染性因子の複製を支える臓器)を標的にする送達システムを設計し、他の組織または臓器に対する潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を軽減するように注意するべきである。
【0141】
上記で規定されているように、動物試験から得られるデータは、ヒトにおいて使用するための用量範囲を策定するのに使用することができる。ヒトにおける本発明の化合物の治療的に有効な用量は、毒性がほとんど、または全くないED50を包含する循環濃度の範囲内にあることが好ましい。用量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変わることがある。理想的には、単回投与を用いるべきである。
【0142】
(実施例)
以下の実施例は、その範囲を限定することなく本発明を例示している。
【0143】
I.合成実施例
A.中間体の調製
脂質鎖-C(O)-Qを形成するための中間体は、以下の合成スキーム1Aおよび1Bに示すように調製することができる。
【0144】
【化11】
【0145】
【化12】
【0146】
スキーム1Aおよび1Bにおいて、Alkの各出現は、脂肪酸中の炭素原子の総数が23〜32個の炭素原子であるようなアルキル鎖を表す。スキーム1Aにおいて、カルボン酸(A)は、DICの存在下にパラニトロフェノールを用いてパラニトロフェノールエステル(B)に変換される。同様に、アルケノール(E)は、水素化ナトリウムおよび適切なハロゲン化アルカンで処理することによりアルケン-エーテル(F)に変換される。最後に、パラニトロフェノールエステル(B)は、第二世代グラブス触媒の存在下に(B)を適切なアルケン化合物と反応させることにより最終的な脂肪酸(D)または(G)に変換される。中間体(D)または(G)は、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーなどにより、当技術分野において知られている方法により精製することができる。
【0147】
具体的中間体の合成を以下のスキーム2A〜2Eに示す。
【0148】
【化13】
【0149】
【化14】
【0150】
【化15】
【0151】
【化16】
【0152】
化合物2: 無水DCM(120ml)中の出発ウンデシレン酸(4.1g、22.2mmol、1.1当量)の溶液にパラニトロフェノール(2.9g、20.9mmol)を加えた。DIC(3.6ml、1.2当量)および4-DMAP(60mg)の存在下に、反応混合物を一夜にわたって室温にて撹拌すると、t.l.c.(PE-EA 6:1、Rf: 0.52)は、反応が終了したことを示した。懸濁液をDCMで希釈し、セライトに通して濾過した。濾液を濃縮すると、残渣が得られた。残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル-CHCl3 2:1)により精製すると、エステル2(6.23g、98%)が得られた。
1H NMR (300MHz, CDCl3) 8.31 (d, J = 9.2Hz, 2H)、7.32 (d, J = 9.2Hz, 2H)、5.84 (m, 1H, H-10)、5.03 (m, 2H, H-11)、2.64 (t, J = 7.5Hz, 2H, H-2)、2.09 (m, 2H, H-9)、1.80 (m, 2H, H-3)、1.48〜1.35 (m, 10H, H-4-8)、3.96 (br s, 1H)、3.87 (dd, J = 9.8, 2.4Hz, 1H)、3.51 (m, 2H)、2.50 (d, J = 2.1Hz, 1H)。13C NMR (75MHz, CDCl3): 171.1、155.5、145.2、139.0、125.1、122.3、114.2、34.4、33.8、29.3、29.2、29.1、29.0、24.9。
【0153】
化合物2a: メタノール中の出発ウンデシレン酸の溶液にDCCおよび4-DMAPを加える。反応混合物を室温にて一夜にわたって撹拌する。
【0154】
化合物4: 乾燥CH2Cl2(15ml)中の化合物2(197mg、0.646mmol)および1-エイコセン(850mg、4.2当量)の撹拌した溶液に、第二世代グラブス触媒(65mg、12mol%)を加え、混合物を1日にわたって還流すると、t.l.c.(PE-DCM 1:1、Rf: 0.40)は、エステル2の消費を示した。反応物を真空中で濃縮し、次いで、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(PE-DCM 2:1)にかけると、表題化合物4(190mg、53%、トランス/シス: 4:1)が得られた。
1H NMR (500MHz, CDCl3) 8.27 (d, J = 9.1Hz, 2H)、7.28 (d, J = 9.1Hz, 2H)、5.35 (m, 2H, H-10, H-11)、2.59 (t, J = 7.5Hz, 2H, H-2)、2.02 (m, 4H, H-9, H-12)、1.76 (五重線, J = 7.5Hz, 2H, H-3)、1.42〜1.25 (m, 42H, H-4-8, H-13-H-28)、0.88 (t, J = 6.7Hz, 3H, H-29)、13C NMR (125MHz, CDCl3): 171.3、155.6、145.3、130.5、130.2、125.2、122.4、34.3、32.6、32.6、31.9、29.7、29.7、29.6、29.5、29.4、29.3、29.2、29.1、29.0、24.7、22.7、14.1。
【0155】
化合物4a: 乾燥CH2Cl2中の化合物2aおよび1-エイコセンの撹拌した溶液に、第二世代グラブス触媒を加え、混合物を1日にわたって還流する。次いで、反応物を真空中で濃縮し、次いで、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにかけると、表題化合物4aが得られる。
【0156】
化合物6: 無水THF(15ml)およびDMF(5ml)中のω-ウンデシレニルアルコール(2ml、98%、9.74mmol)の溶液に、10分で0℃にて水素化ナトリウム(鉱油中60%、584mg、1.5当量)を加え、続いて、TBAI(80mg)および1-ブロモペンタン(1.82ml、1.5当量)を加えた。還流下で一夜にわたって撹拌した後、t.l.c.(PE-EA 6:1)は、アルコールの消費を示した。混合物をDCMで希釈し、水でクエンチした。水相をDCM(3×)で抽出し、飽和重炭酸ナトリウム、次いで、食塩水で洗浄した。有機相を乾燥し(硫酸ナトリウム)、濃縮し、残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル-DCM、3:1)により精製すると、エーテル6(2.21g、99%、PE-DCM 3:1でRf: 0.12)が得られた。化合物7は、94%の収率で6と同じように製造した。
【0157】
6: 1H NMR (500MHz, CDCl3) 5.81 (m, 1H, H-10)、4.95 (m, 2H, H-11)、3.38 (t, J = 7.0Hz, 4H, H-1, H-1')、2.03 (m, 2H, H-9)、1.56 (m, 4H, H-2, H-2')、1.37〜1.27 (m, 16H, H-3-8; H-3'-4')、0.88 (t, J = 6.9Hz, 3H, H-5')。13C NMR (125MHz, CDCl3): 138.9、114.1、71.0、70.6、33.8、31.9、29.8、29.5、29.5、29.4、29.1、28.9、26.2、19.4、14.1。
【0158】
化合物8: 乾燥クロロホルム(20ml)中のエステル2(190mg、0.623mmol)およびエーテル6(200mg、0.833mmol、1.3当量)の撹拌した溶液に第二世代グラブス触媒(36mg、7mol%)を加え、混合物を1日にわたって還流し、反応物を真空中で濃縮し、次いで、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(PE-DCM 3: 2)にかけると、表題化合物8(174mg、84%、トランス/シス: 4:1、PE-DCM 1:1でRf: 0.16)が得られた。化合物9は、81%の収率で8と同じように製造した。
【0159】
8: 1H NMR (500MHz, CDCl3) 8.26 (d, J = 9.0Hz, 2H)、7.27 (d, J = 9.1Hz, 2H)、5.37 (m, 2H, H-10, H-11)、3.38 (t, J = 6.7Hz, 4H, H-20, H-22)、2.58 (t, J = 7.5Hz, 2H, H-2)、1.96 (m, 4H, H-9, H-12)、1.75 (五重線, J = 7.4Hz, 2H, H-3)、1.56 (m, 4H, H-19, H-23)、1.39 (m, 2H, H-4)、1.32〜1.25 (m, 24H, H-5-8, H-13-18, H-24-25)、0.88 (t, J = 6.7Hz, 3H, H-26)。13C NMR (125MHz, CDCl3): 171.1、155.6、145.3、130.5、130.2、125.2、122.4、71.0、34.3、32.6、32.7、29.8、29.7、29.6、29.5、29.3、29.2、29.0、26.2、25.8、24.7、22.6、14.1。
【0160】
化合物13: 化合物4aをDCM/MeOH(1:1)中に溶解し、その溶液に5%炭素上Pd(30mol%)を加える。次いで、反応混合物を、反応がTLC分析により完了していると判断されるまで水素下で撹拌する。次いで、反応物を真空中で濃縮し、次いで、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにかけると、表題化合物13が得られる。
【0161】
化合物14: メチルエステル13(147mg、0.32mmol)をiPrOH/THF(1:1) 10 ml中に溶解し、それに水(2ml)中のNaOH 100mgを加えた。混合物を5時間にわたって60℃にて撹拌すると、tlc(PE/EA 12:1)は、加水分解が完了したことを示した。2N HClで中和した後、溶液を真空中で直接濃縮した。DCM(10ml)中の上記脂肪酸残渣の溶液にパラニトロフェノール(160mg、0.5mmol)を加えた。DCC(160mg)および4-DMAP(35mg)の存在下に、反応混合物を一夜にわたって室温にて撹拌すると、t.l.c.(PE-EA 10:1)は、反応が終了したことを示した。懸濁液をDCMで希釈し、それに少量のシリカゲルを加えた。蒸発させた後、残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA 20:1)により精製すると、エステル14(154mg、86%)が得られた。
【0162】
1H NMR (500MHz, CDCl3) 8.27 (d, J = 9.1Hz, 2H)、7.28 (d, J = 9.1Hz, 2H)、2.59 (t, J = 7.5Hz, 2H, H-2)、1.76 (五重線, J = 7.5Hz, 2H, H-3)、1.41 (五重線, J = 7.0Hz, 2H, H-4)、1.37〜1.22 (m, 48H, H-5〜H-28)、0.88 (t, J = 7.0Hz, 3H, H-29)。13C NMR (125MHz, CDCl3): 171.3、155.6、145.3、125.2、122.4、34.4、33.7、31.9、30.2、29.7、29.7、29.6、29.6、29.5、29.4、29.4、29.2、29.2、29.1、26.7、24.8、22.7、14.1。
【0163】
ジュリア-リスゴー-コシェンスキーカップリング化学反応を用いる具体的中間体の合成への代替アプローチをスキーム2Eに記載する。このアプローチを用い、市販の臭化アルキル18を市販のベンゾチアゾールチオール19と反応させ、臭化物の置換後にカルボン酸20を形成する。次いで、カルボン酸20上のチオエーテルをmCPBAで酸化し、スルホン21を形成する。次いで、スルホン21をジュリア-リスゴー-コシェンスキー条件下でリチウムヘキサメチルジシラジドの存在下にアルデヒド23(例えば、Swern条件を用いて市販のアルコール22から合成する)と反応させる。これにより、アルケンカルボン酸24が得られる。次いで、カルボン酸24を、DCCおよびDMAPの存在下にp-ニトロフェノールで処理して不飽和p-ニトロフェニルエステル4へ直接、または(1)水素の存在下に例えば5%炭素上パラジウムを使って水素化し、(2)得られる飽和酸25をDCCおよびDMAPの存在下にp-ニトロフェノールで処理することにより飽和p-ニトロフェニルエステル14のどちらかへ変換することができる。
【0164】
【化17】
【0165】
B.糖脂質の調製
本発明の糖脂質は、以下のスキーム3に示す方法により調製することができる。
【0166】
【化18】
【0167】
スキーム3において、Zは、-CH=CH-、O、-O-Alk-CH=CH-、または-CH=CH-O-であり、Alkの各出現は、独立して、脂肪酸鎖中の炭素原子の総数が23〜32個の炭素原子であるようなアルキル鎖を表す。化合物(H)を、好ましくはジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸およびトリエチルシランで処理することにより脱保護し(すなわち、BOCおよびイソプロピリデン保護基が除去される)、脂肪酸エステル(D)または(G)と反応させて化合物(I)を製造する。次いで、化合物(I)を、例えば、ナトリウムおよびアンモニアで脱保護し、アルケン-リンカー化合物(J)を製造するか、または炭素上パラジウムの上で例えば水素で還元してアルカン結合型化合物(K)を製造する。化合物は、フラッシュカラムクロマトグラフィーなどにより、当技術分野において知られている方法により精製することができる。
【0168】
化合物(H)は、以下のスキーム3aに概説されているように塩基に不安定な糖アルデヒド(L)とスルホン(M)の間のワンポットジュリア-リスゴー-コシェンスキー反応を用いることにより調製することができる。
【0169】
【化19】
【0170】
化合物(H)の-CH2-CH2-結合型類似体である化合物(T)の代替合成を以下のスキーム3bに描く。
【0171】
【化20】
【0172】
スキーム3bにおいて、アルデヒド(O)は、アルケン(N)から誘導する。Wittig化学反応を介するホモログ化と、続くアルコールへの還元により、エポキシ(Q)を形成するための確立したシャープレスエポキシ化で処理するためのアリル型アルコールが得られる。反転を伴うアジ化ナトリウム開環により、保護されたアミノヒドロキシアルデヒド(S)が生じる。次いで、グリニャール化学反応により、アルコール(T)が得られる。
【0173】
具体的糖脂質の合成を以下のスキーム4に示す。
【0174】
【化21】
【0175】
アミド形成のための典型的手順: 化合物10(53mg、0.054mmol)をDCM(4ml)中に溶解し、それに、0℃にて適当な量のトリフルオロ酢酸(0.2ml)およびトリエチルシラン(0.1ml)を加えた。2時間にわたって室温にて撹拌した後、混合物を真空中で直接濃縮した。THF中の上記残渣の溶液に、脂肪酸のp-ニトロフェニルエステル4(31mg、1.03当量)および触媒量のDMAPを加えた。次いで、混合物を2時間にわたって室温にて撹拌すると、t.l.c.(石油エーテル-EtOAc、2:1)は、アミド化が終了したことを示した。混合物を蒸発させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル-EtOAc-CHCl3、2.5:1:0.5)により精製すると、化合物11(39mg、2ステップで58%)が得られた。
【0176】
化合物11(E-アミド鎖): 1H NMR(500MHz, CDCl3): 7.37〜7.23 (m, 20H, 4 Ph)、5.97 (dd, 1H, J2,1 = 15.3Hz, J2,3 = 6.7Hz, H-2)、5.89 (m, 2H, NH, H-1)、5.37 (s, 2H, H-10", H-11")、4.75および4.53 (2d, 2H, J = 11.9Hz, PhCH2)、4.73 (t, 1H, J3,NHおよび3,2 = 7.0Hz, H-3)、4.66 (s, 2H, PhCH2)、4.65および4.60 (2d, 2H, J = 12.2Hz, PhCH2)、4.57 (br s, 1H, H-1')、4.50および4.44 (2d, 2H, J = 11.9Hz, PhCH2)、3.99 (br s, 2H, H-2', H-5')、3.89 (s, 1H, H-4')、3.69 (dd, 1-H, J6'a,6'b = 9.2Hz, J6'a,5 = 7.3Hz,H-6'a)、3.59 (dd, 1H, J3',2' = 8.2Hz, J3',4' = 2.1Hz, H-3')、3.48 (dd, 1H, J6'b,6'a = 10.3Hz, J6'b,5 = 4.7Hz, H-6'b)、3.45 (br, 2H, H-4, H-5)、2.99 (d, 1H, J = 7.0Hz, OH-4)、2.16 (t, 2H, J2",3" = 7.3Hz, H-2")、1.95 (br s, 4H, H-9", H-12")、1.79 (d, J = 6.1Hz, OH-5)、1.62 (m, 2H, 2×H-3")、1.42〜1.18 (m, 68H, 2×H-4"〜2×H-8", 2×H-13"〜2×H-28", 2×H-6〜2×H-18)、0.88 (t, 6H, J = 6.9Hz, 3×H-19, 3×H-26"); 13C NMR (125MHz, CDCl3) 173.1、138.4、138.3、138.2、138,0、130.4、130.2、129.8、128.4、128.3、128.1、127.8、127.8、127.7、127.6、127.4、126.2、115.6、78.2、76.9、76.7、74.5、73.6、73.2、73.3、73.1、72.9、68.7、53.7、36.8、33.8、32.6、31.9、29.7、29.7、29.5、29.4、29.2、25.7、25.7、22.7、14.1。
【0177】
化合物13(E/Zアミド鎖4:1): 1H NMR(500MHz, CDCl3): 7.34〜7.22 (m, 20H, 4 Ph)、5.97 (dd, 1H, J2,1 = 15.6Hz, J2,3 = 6.5Hz, H-2)、5.91〜5.86 (m, 2H, NH, H-1)、5.37 (s, 2H, H-10", H-11")、4.76および4.54 (2d, 2H, J = 11.6Hz, PhCH2)、4.72 (t, 1H, J3,NHおよび3,2 = 7.0Hz, H-3)、4.67 (s, 2H, PhCH2)、4.65および4.60 (2d, 2H, J = 12.2Hz, PhCH2)、4.57 (br s, 1H, H-1')、4.50および4.44 (2d, 2H, J = 11.9Hz, PhCH2)、4.00 (br s, 2H, H-2', H-5')、3.90 (t, 1H, J = 2.6Hz, H-4')、3.69 (dd, 1-H, J6'a,6'b = 9.9Hz, J6'a,5 = 7.4Hz, H-6'a)、3.59 (dd, 1H, J3',2' = 8.4Hz, J3',4' = 5.9Hz, H-3')、3.50 (dd, 1H, J6'b,6'a = 10.2Hz, J6'b,5 = 4.5Hz, H-6'b)、3.46 (br, 2H, H-4, H-5)、3.39 (t, 4H, J = 6.7Hz, H-20", H-22")、2.98 (br s, 1H, OH-4)、2.16 (t, 2H, J2",3" = 7.5Hz, H-2")、1.95 (br s, 4H, H-9", H-12")、1.80 (br s, OH-5)、1.62 (m, 2H, 2×H-3")、1.56 (m, 4H, H-19", H-23")、1.42〜1.20 (m, 54H, 2×H-4"〜2×H-8", 2×H-13"〜2×H-18",2×H-24"〜2×H-26", 2×H-6〜2×H-18)、0.88 (t, 6H, J = 6.9Hz, 3×H-19, 3×H-27"); 13C NMR (125MHz, CDCl3) 173.1、138.5、138.3、138.2、138.1、130.4、130.3、129.8、128.4、128.4、128.3、128.3、128.1、127.8、127.8、127.7、127.6、127.6、127.5、78.2、76.9、76.7、74.7、73.76、73.3、73.2、73.0、71.0、53.8、36.9、33.8、32.6、31.9、31.7、29.8、29.8、29.7、29.7、29.7、29.6、29.6、29.5、29.5、29.4、29.3、29.2、29.2、29.2、26.2、25.9、25.7、22.7、22.6、14.1、14.0。
【0178】
化合物トランス-(A-1): 1H NMR(500MHz, ピリジン-d5): δ 8.67 (d, 1H, J = 8.7Hz, NH)、6.92 (m, 2H, H-1, H-2)、6.86 (br s, 1H, 2'-OH)、6.57 (br s, 1H, 4-OH)、6.52 (br s, 1H, 3'-OH)、6.43 (br s, 1H, 6'-OH)、6.35 (br s, 1H, 4'-OH)、6.28 (br s, 1H, 5-OH)、5.93 (m, 1H, H-3)、5.53 (m, 2H, H-10", H-11")、5.15 (m, 1H, H-1')、4.84 (dd, 1H, J3',2' = 9.1Hz, J1',2' = 6.1Hz, H-2')、4.61 (br s, 1H, H-4')、4.58 (t, 1H, J = 6.0Hz, H-5')、4.37 (m, 2H, H-6a', H-6b')、4.28 (m, 3H, H-3', H-4, H-5,)、2.45 (t, 2H, J = 7.5Hz, H-2")、2.31 (m, 1H, H-6a)、2.06 (m, 4H, H-9", H-12")、1.93 (m, 2H, H-7a, H-6b)、1.83 (m, 2H, H-3")、1.70 (m, 1H, H-7b)、1.44〜1.17 (m, 62H, H-8〜H-18, H-4"〜H-8", H-13"〜H-28")、0.88 (t, 6H, J = 6.8Hz, 3×H-19, 3×H-29")。
【0179】
A-2: 1H NMR(500MHz, ピリジン-d5): 8.55 (d, 1H, J = 9.5Hz, NH)、6.90 (m, 2H, H-1, H-2)、6.71 (br s, 1H, 2'-OH)、6.44 (br s, 1H, 4-OH)、6.37 (br s, 1H, 3 '-OH)、6.29 (br s, 1H, 6'-OH)、6.22 (d, 1H, J = 4.0Hz, 4'-OH)、6.13 (br s, 1H, 5-OH)、5.89 (m, 1H, H-3)、5.15 (m, 1H, H-1')、4.84 (m, 1H, H-2')、4.60 (br s, 1H, H-4')、4.56 (dt, 1H, J = 5.9Hz, 1.7Hz, H-5')、4.41 (m, 2H, H-6a', H-6b')、4.29 (m, 3H, H-3')、4.26 (m, 2H, H-4, H-5,)、2.45 (t, 2H, J = 7.5Hz, H-2")、2.28 (m, 1H, H-6a)、1.93 (m, 2H, H-7a, H-6b)、1.84 (m, 2H, H-3")、1.71 (m, 1H, H-7b)、1.46〜1.17 (m, 72H, H-8〜H-18, H-4"〜H-28")、0.89 (t, 6H, J = 6.9Hz, 3×H-19, 3×H-29")。13C NMR (125MHz, ピリジン-d5) 175.1、132.4、127.8、78.7、76.8、74.9、73.1、73.0、71.3、70.6、63.0、54.3、37.4、34.9、34.5、32.5、30.9、30.7、30.5、30.5、30.4、30.3、30.3、30.2、30.2、30.2、30.0、27.5、26.9、26.8、23.3、14.6。
【0180】
A-3: MS(ES、m/z): 896.7(M+H)+; 1H NMR(500MHz, ピリジン-d5): 8.39 (d, 1H, J = 8.8Hz, NH)、6.61 (d, 1H, J = 4.0Hz, 2'-OH)、6.45 (d, 1H, J = 4.8Hz, 4-OH)、6.33 (m, 2H, 3'-OH, 6'-OH)、6.12 (d, 1H, J = 4.1Hz, 4'-OH)、5.94 (d, 1H, J = 4.2Hz, 5-OH)、5.53 (m, 2H, H-11", H-12")、5.13 (m, 1H, H-3)、4.72 (m, 1H, J3',2' = 9.3Hz, H-2')、4.52 (m, 3H, H-1', H-4', H-6a')、4.36 (m, 1H, H-6b')、4.23 (m, 4H, H-3', H-4, H-5, H-5')、2.72 (m, 1H, H-2a)、2.58 (m, 1H, H-1a)、2.46 (m, 2H, H-2")、2.33 (m, 2H, H-6a, H-1b)、2.31 (m, 1H, H-1b)、2.22 (m, 1H, H-2b)、2.06 (m, 4H, H-10", H-13")、1.94 (m, 2H, H-7a, H-6b)、1.85 (m, 2H, H-3")、1.71 (m, 1H, H-7b)、1.48〜1.17 (m, 64H, H-8〜H-18, H-4"〜H-9", H-14"〜H-28")、0.89 (t, 6H, J = 6.8Hz, 3×H-19, 3×H-29"); 13C NMR (125MHz, ピリジン-d5) 173.8、131.2、131.1、78.9、77.4、74.2、73.1、72.6、71.0、70.8、63.1、53.1、37.4、34.9、33.3、32.5、30.8、30.6、30.5、30.4、30.4、30.3、30.3、30.2、30.2、30.2、30.1、30.0、30.3、29.9、27.0、26.9、26.9、23.3、23.0、14.6。
【0181】
A-5(およびA-4): 1H NMR(500MHz, ピリジン-d5): δ 8.49 (d, 1H, J = 9.0Hz, NH)、6.73 (d, 1H, J = 4.7Hz, 2'-OH)、6.56 (d, 1H, J = 4.7Hz, 4-OH)、6.46 (m, 2H, 3'-OH, 6'-OH)、6.24 (d, 1H, J = 4.4Hz, 4'-OH)、6.07 (d, 1H, J = 4.7Hz, 5-OH)、5.13 (m, 1H, H-3)、4.72 (dd, 1H, J3',2' = 8.7Hz, J1',2' = 5.5Hz, H-2')、4.50 (m, 3H, H-1', H-4', H-6a')、4.36 (dd, 1H, J6a',6b' = 11.3Hz, J5',6b' = 4.5Hz, H-6b')、4.23〜4.19 (m, 4H, H-3', H-4, H-5, H-5')、3.39 (m, 4H, H-20", H-22")、2.71 (m, 1H, H-2a)、2.58 (m, 1H, H-1a)、2.45 (m, 2H, H-2")、2.30 (m, 2H, H-6a, H-1b)、2.19 (m, 1H, H-2b)、1.91 (m, 2H, H-7a, H-6b)、1.83 (m, 2H, H-3")、1.68 (m, 1H, H-7b)、1.60 (m, 4H, H-19", H-23")、1.51〜1.18 (m, 56H (またはA-4の58H)、H-8〜H-18, H-4"〜H-18", H-24"-H-25" (またはA-4のH-26))、0.85 (t, 6H, J = 6.9Hz, 3×H-19, 3×H-26"); 13C NMR (125MHz, ピリジン-d5) 173.8、78.8、77.5、74.1、73.0、72.5、71.3、71.0、70.7、63.1、53.0、37.3、34.8、32.5、32.3、30.7、30.6、30.5、30.4、30.3、30.2、30.2、30.0、27.0、26.9、26.6、23.3、14.6。
【0182】
A-6: 化合物A-6は、化合物10を化合物16と反応させてベンジル保護A-6を形成することを除いて、化合物A-1について上記に記載したのと同じ手順を用いて調製する。次いで、ベンジル基を、アンモニア中のナトリウムで除去すると、表題化合物A-6が得られる。
【0183】
A-7: 化合物A-7は、化合物10をp-ニトロフェニル-ω-フェニルヘプタノエートと反応させてベンジル保護A-7を形成することを除いて、化合物A-1について上記に記載したのと同じ手順を用いて調製する。次いで、ベンジル基を、アンモニア中のナトリウムで除去すると、表題化合物A-7が得られる。
【0184】
p-ニトロフェニル-ω-フェニルヘプタノエートは、1当量のDCCおよび5mol%のDMAPの存在下にジクロロメタン中の等モルのp-ニトロフェノールおよびフェニルヘプタン酸を反応させることにより調製する。ジシクロヘキシル尿素の沈殿を、反応が完了した後で濾去し、ジクロロメタンを真空中で除去する。次いで、材料を、精製のためにシリカゲル上で素早くクロマトグラフを行う。
【0185】
II.生物学的実施例
(実施例1)
本発明の化合物のin vivo投与により放出されるTh1型およびTh2型サイトカインの動態的プロフィールの決定
材料および方法
供試化合物
α-GalCer(KRN7000)は、Kirin Brewery(Gumma、Japan)により合成された。α-C-GalCer(CRONY 101)は、Schmieg J、Yang G、Franck RW、Tsuji M. 2003. Superior protection against malaria and melanoma metastases by a C-glycoside analogue of the natural killer T cell ligand α-galactosylceramide. J Exp Med 198: 1631〜1641頁に記載されているように合成した。
【0186】
【化22】
【0187】
他の供試合成C-糖脂質は、上記に記載されているように合成した。
【0188】
In vivo化合物投与
5〜6週齢雌性C57BL/6マウスおよびBALB/cマウスは、Taconicから購入した。各糖脂質は、100% DMSO中で1mg/mlにて保存した。マウスに、200μLの無菌リン酸塩緩衝食塩水(PBS)で希釈した各糖脂質1μgを静脈内注射した。指示された時点で、血清を各動物から集め、血清中のIFN-γ、IL-4、およびIL-12の濃度を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により評価した。
【0189】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によるサイトカイン評価
IFN-γ、IL-4、およびIL-12の血清濃度は、ELISAキット(eBioscience、San Diego、CA)を用いて評価した。手短に言えば、96ウエル平底ELISAプレート(NUNC)を、製造業者の推奨に従って捕捉抗体でコーティングし、4℃にて一夜にわたってインキュベートした。プレートをPBS + 0.05% Tween 20(PBS-T)で洗浄し、次いで、室温にて1時間にわたって製造業者提供のブロッキング溶液と共にインキュベートし、非特異的結合部位をブロックした。PBS-Tで洗浄した後、1:10に希釈した血清をウエルに加え、室温にて2時間にわたってインキュベートした。次いで、プレートを、ビオチン化検出抗体と共に1時間にわたって室温にてインキュベートし、洗浄し、室温にて30分にわたって西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたアビジンと共にインキュベートし、洗浄し、最後に、室温にて10分にわたり、暗所においてテトラメチルベンジジン基質溶液と共にインキュベートした。抗体、アビジン-HRP、および基質溶液はすべて、製造業者の推奨に従って希釈した。反応を2.0 N硫酸で停止させ、各ウエル中のサイトカイン濃度を、各ウエル中の450nmにおける吸光度を、知られている標準品と比較することにより決定した。
【0190】
結果
Th1型およびTh2型サイトカインのレベルを、2種の異なる遺伝的背景、すなわち、C57BL/6マウスおよびBALB/cマウスにおいて決定した。以下の化合物: A=化合物(A-1トランス-配座異性体)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)、GCK152(A-7)を投与した。サイトカインのレベルは、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。Th1型サイトカインIFN-γおよびIL-12のレベルを、それぞれ図2A〜Cおよび3A〜Cに要約する。Th2型サイトカインIL-4のレベルを、図4A〜Cに要約する。対応する数値も以下の表1〜6に提供する。表7は、Th1型免疫応答を選択的に刺激するそれらの能力の指標として使用することができる、様々な化合物についてのIFN-γ/IL-4およびIL-12/IL-4比を提供する。
【0191】
以下の通り、図および表から、α-GalCer(KRN)と比較した場合、本発明のいくつかの供試合成C-糖脂質は、(i)Th1型サイトカインIFN-γとIL-12の両方の同等かそれ以上のレベルおよび長時間分泌ならびに(ii)Th2型サイトカインIL-4のかなり低いレベルを生じた。この効果は、化合物A-1(トランス-配座異性体)、A-2、およびA-5の場合に特に顕著であった。
【0192】
本発明の化合物が、Th2型サイトカイン誘導のない状態で高レベルのIL-12 Th1型サイトカインを選択的に誘導することができることから、これらの化合物が、局所的であり、樹状細胞の二次的活性化に伴うTh1型免疫応答の強力な選択的刺激因子であることを示唆される。したがって、本発明の化合物は、直接使用する場合でもアジュバントとして使用する場合でも、制御にTh1型応答を必要とする様々な疾患の治療に有用である。
【0193】
【表2】
【0194】
【表3】
【0195】
【表4A】
【表4B】
【0196】
【表5A】
【表5B】
【0197】
【表6A】
【表6B】
【0198】
【表7A】
【表7B】
【0199】
【表8】
【0200】
(実施例2)
マラリア感染および腫瘍転移を阻害する本発明の新規合成C-糖脂質の能力の決定
マウスに、単回投与の本発明の合成C-糖脂質GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)およびGCK127(A-2)または対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCerをi.m.、s.c.、i.v.またはi.p.で投与する。化合物の防御効果は、免疫感作から2〜8週後に決定する。
【0201】
マラリア感染に対する防御を試験する場合、感染した蚊の切開した唾液腺から得られるプラスモジウムヨエリスポロゾイトを投与誘発に使用する。血液期マラリア感染の発生を決定するための合成C-糖脂質または対照化合物で免疫感作されたマウスの投与誘発は、尾静脈への75個の生存スポロゾイトの静脈内(i.v.)注射により行う。投与誘発から4日後に始め、毎日、末梢血塗沫を各マウスから取得し、投与誘発後17日目まで血液期寄生虫の存在について顕微鏡的に検査する。マウスは、少なくとも1個の血液期寄生虫が検査時に観察された場合、寄生虫血症が陽性であると見なされる。
【0202】
肝臓期マラリア感染の発生を決定するための合成C-糖脂質または対照化合物で免疫感作されたマウスの投与誘発は、尾静脈への10,000個の生存スポロゾイトのi.v.注射により行う。投与誘発の結果は、Bruna-Romero他、Int. J. Parasitol. 31、1449〜1502頁、2001に教示されているように、定量的リアルタイムRT-PCR法を用いてマウスの肝臓におけるプラスモジウムヨエリ特異的18S rRNA分子を測定することにより40〜42時間後に決定する。手短に言うと、抽出RNAの逆転写後、cDNAが生成され、その量を、GeneAmp(登録商標) 5700 配列検出システム(PE Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いるリアルタイムPCRにより分析する。プライマーおよび蛍光プローブは、プラスモジウムヨエリ(17XNL) 18S rRNA配列を用い、ABI Prismプライマーエクスプレスソフトウェア(PE Biosystems)を用いて特注設計する。例えば、プライマー5’-GGGGATTGGTTTTGACGTTTTTGCG-3’(54nM)[配列番号7]および5’-AAGCATTAAATAAAGCGAATACATCCTTAT-3’(60nM)[配列番号8]を、生成されるPCR産物を検出するためにPCR反応緩衝液(PE Biosystems、Foster City、CA)中に組み入れられるdsDNA特異的色素SYBR Green Iと一緒に使用することができる。反応の温度プロフィールは、95℃で10分間と、続いて、95℃で15秒間の変性および60℃で1分間のアニーリング/伸長の35サイクルである。このアッセイにおいて検出される寄生虫由来18S cDNA分子の正確な量は、両方の肝臓試料から得られるCT値および既知量のプラスミド18S cDNAで作成される標準曲線から得られるCT値を用いる線形回帰分析により決定される。
【0203】
黒色腫肺転移の発生に対する合成C-糖脂質または対照化合物で免疫感作されたマウスの防御のレベルは、10% FCSを添加したDMEMに懸濁した5×104個の同系B16黒色腫細胞で、最初にマウスを静脈内投与誘発することにより決定する。投与誘発から2週間後、Fujii他、Natl. Immunol.、3、867〜874頁(2002)に記載されているように、マウスを屠殺し、肺を摘出し、転移性結節の数を数える。
【0204】
本発明のすべての合成C-糖脂質は、生マラリア投与誘発および黒色腫転移に対してマウスを防御する強力な活性を示す。
【0205】
(実施例3)
本発明の新規合成C-糖脂質のアジュバント効果の決定
マウスに、単回投与の本発明の合成C-糖脂質GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)およびGCK127(A-2)または対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer、ならびにプラスモジウムヨエリCSタンパク質を発現する組み換えアデノウイルス、AdPyCS(Rodrigues他、J. Immunol.、158: 1268〜1274頁、1997)の最適以下の投与量(1×107 p.f.u.)をi.m.、s.c.、i.v.またはi.p.で投与する。免疫感作から2〜8週後、一部のマウスを屠殺し、それらの脾臓を摘出し、ELISPOTアッセイによりマラリア特異的CD8+ T細胞応答のレベルを測定するためにリンパ球を得る。AdPyCS単独で免疫感作されたマウスを対照として使用する。
【0206】
AdPyCSおよび合成C-糖脂質または対照化合物で免疫感作されたマウス、または対照マウス(AdPyCS単独で免疫感作された)からの脾細胞をアッセイし、(i) IFN-γを産生するCS特異的CD8+ T細胞(Th1細胞)および(ii) IL-4を産生するCS特異的CD8+ T細胞(Th2細胞)の数を決定する。CS特異的CD8+ T細胞の数は、ELISPOTアッセイ(Miyahira他、J. Immunol. Methods 1995; 181: 45〜54頁)を用いて決定する。手短に言うと、96ウエルニトロセルロースプレート(Millipore、Bedford、MA)を、ビオチン化した抗マウスIFN-γまたは抗マウスIL-4モノクローナル抗体(mAb)で室温にて一夜にわたってコーティングする。PBSで数回洗浄後、CD8+エピトープに対応するペプチドの存在下または非存在下の培養培地中の脾細胞の段階希釈液を、抗マウスIFN-γまたは抗マウスIL-4 mAbでコーティングされたプレートにおいて5% CO2インキュベーター中で37℃にて20〜24時間にわたってインキュベートする。インキュベーション後、プレートをPBS-Tで洗浄する。次いで、プレートを、それぞれプレート中でビオチン化した抗マウスIFN-γまたは抗マウスIL-4 mAbと共に室温にて3時間にわたってインキュベートする。プレートをPBS-Tで洗浄した後、ストレプトアビジン-APコンジュゲートを加え、室温にて1時間にわたってインキュベートする。PBS-Tによる追加の洗浄および蒸留水による1回の洗浄後、スポットを、ワンステップBCIP/NBT試薬で発色させる。スポットを、Immune Spot Reader(Cellular Technology Ltd.、Cleveland、Ohio)を用いてカウントする。
【0207】
抗マラリア防御の達成レベルは、生きているプラスモジウムヨエリスポロゾイトのi.v.注射で免疫感作マウスを投与誘発することにより2〜8週後に決定する。非免疫感作マウスを対照として使用する。
【0208】
上記の実施例2で規定されているように、防御は、寄生虫の血液期および肝臓期を測定することにより測定する。血液期は、75個の生きているプラスモジウムヨエリスポロゾイトの投与誘発後3日目から14日目まで毎日得られるギムザ染色血液塗沫の顕微鏡検査によりモニターする。肝臓期は、10,000個のプラスモジウムヨエリスポロゾイトの投与誘発から42時間後にマウスから肝臓を摘出することにより測定し、肝臓における寄生虫負荷は、上記の実施例2に開示されているようなリアルタイムRT-PCRによりプラスモジウムrRNAを測定することにより決定する。
【0209】
本発明のすべての合成C-糖脂質は、強力なアジュバント効果を示す。
【0210】
(実施例4)
実験的ヒトin vitro NKT細胞系における本発明の化合物のサイトカインプロフィールの決定
材料および方法
未成熟樹状細胞(DC)およびCD14- PBMCの作成。CD14+細胞は、抗CD14モノクローナル抗体と結合した磁気ビーズ(Miltenyi biotec、Aubum、CA)を用い、ロイコパック(leukopak)から単離した。次いで、未成熟樹状細胞(DC)を、300 U/ml GM-CSF(R&D systems、Minneapolis、MN)および100 U/ml IL-4(R&D systems、Minneapolis、MN)の存在下で3日間のインキュベーション後にCD14+細胞から作成した。CD14-細胞は、以下の実験のための末梢血単核細胞(PBMC)として使用した。
【0211】
PBMCおよび未成熟DCを用いるin vitro IFN-γおよびIL-4 ELISA。3000ラドの照射後、5×104個の未成熟樹状細胞を、96ウエルプレートにおいて、10 ng/mlの様々な糖脂質(すなわち、GCK109[A-1トランス-配座異性体]、GCK151[A-1シス-配座異性体]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下に5×105個の同系CD14- PBMCと一緒に共培養した。18時間にわたる培養後、培養上清中のIFN-γまたはIL-4の濃度を、製造業者の使用説明書に従ってELISA(BD Pharmingen、San Diego、CA)により決定した。
【0212】
PBMCおよび未成熟DCを用いるin vitro IFN-γおよびIL-4 ELISPOTアッセイ。96ウエルニトロセルロースプレート(Milititer HA、Millipore)を、75μlのPBS中に含有される10μg/mlの抗ヒトインターフェロンγmAb(Mabtech、OH)でコーティングした。室温にて一夜にわたってインキュベートした後、ウエルを繰り返し洗浄し、37℃にて1時間にわたって培養培地でブロックした。3000ラドの照射後、5×104個の未成熟樹状細胞を、37℃および5% CO2にて22〜26時間にわたってELISPOTプレートにおいて、100 ng/mlの様々な糖脂質(すなわち、GCK109[A-1トランス-配座異性体]、GCK151[A-1シス-配座異性体]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下に5×105個の同系CD14- PBMCと一緒に共培養した。PBS 0.05% Tween 20(PBS T)でプレートを十分に洗浄した後、PBS-T中のビオチン化抗ヒトインターフェロンγmAb(Mabtech、OH) 1μg/mlを加え、4℃にて一夜にわたってインキュベートした。PBSTで洗浄した後、プレートを、製造業者の使用説明書に従って希釈したペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Kirkegaard & Perry Laboratories) 100μLと共にインキュベートした。スポットを、1 mg/mlの3 3’ジアミノベンジジン四塩酸塩二水和物(DAB)と5μg/10mlの30% H2O2を含有する50 mM Tris HCl pH7.5を加えることにより、1時間のインキュベーション後に発色させた。10〜15分後、IFN-γ分泌細胞に対応するスポットの数を、立体顕微鏡を用いて決定した。エピトープ特異的IL-4産生NKT細胞の数を決定するため、一対の抗ヒトIL-4 mAb(Mabtech、OH)を使用したことを除いて、同様の手順に従った。
【0213】
結果
ELISAアッセイでは、図5A〜Bに示すように、GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)、GCK127(A-2)、およびGCK152(A-7)は、PBMCを活性化し、in vitroでの未成熟DCとの18時間の共培養後に、KRN(α-GalCer)と比較して同等レベルのIFN-γ、ならびにIL-4を産生した。
【0214】
ELISPOTアッセイでは、図6A〜Bに示すように、GCK151(A-1シス-配座異性体)およびGCK152[A-7]は、PBMCを高頻度で一貫して刺激し、IFN-γとIL-4の両方を分泌し、活性化PBMCの頻度は、KRNにより刺激された頻度と同様である。GCK109(A-1トランス-配座異性体)およびGCK127(A-2)も、未成熟DCとの共培養から24時間後に同様の頻度のPBMCを刺激することができた。
【0215】
上記のデータは、本発明の供試C-糖脂質の、一方ではCD1dとの、他方では不変NKT受容体との相互作用を示している。このことは、化合物が、in vivoでヒトにおいて活性であるという重要な指標である。
【0216】
しかしながら、記載したヒトin vitro細胞系は、それらのin vivo能力についての予測を提供するようなやり方で様々な化合物の活性を比較することができない可能性がある。例えば、このin vitro細胞系は、in vivoにおける化合物分解の異なる速度およびそれらの効果の異なる動態を包含するin vivoにおける真の生物学的応答に影響を与えるいくつかの重要な要素を考慮に入れていない。また、この実験系において試験される相互作用は、NKT細胞およびCD1d抗原提示細胞に限定される。In vivoでは、他のDCおよびNK細胞が、IL-12およびIFN-γをさらに放出することを妨害する。最後に、対照化合物KRNは、より親油性の本発明の供試化合物に比べて水溶液により可溶性であり、このことにより、対照化合物が細胞培養におけるin vitro試験にとってより生物的に利用されやすくなり、試験化合物がより持続性の効果を有しているin vivo状態を反映しない可能性がある。
【0217】
本発明は、本明細書に記載されている具体的な実施形態により範囲を限定されない。実際に、本明細書に記載されている実施形態の他に、本発明の様々な変更形態は、上記の説明および添付の図から当業者に明らかになるであろう。そのような変更形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図している。
【0218】
さらに、すべての値は概数であり、説明のために提供されていることが理解されるべきである。
【0219】
特許、特許出願、刊行物、製品説明、およびプロトコルが本出願を通じて引用されており、それらの開示は、すべての目的で参照により全体として組み込まれるものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL-12分泌の亢進および樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)の活性化の増大を特徴とするTh1型免疫応答を選択的に誘導し、直接的にもアジュバントとしても、感染症、癌、細胞増殖性障害、および自己免疫疾患を治療するのに有用である新規合成C-糖脂質を対象とする。
【背景技術】
【0002】
Th1型免疫応答およびTh2型免疫応答は、元々はサイトカインの2つの異なるグループを分泌する2つの特徴的なCD4+ T細胞(ヘルパーT細胞-Th)サブセットにより媒介される免疫応答として定義された。最近の総説については、BerkersおよびOvaa、Trends Pharmacol. Sci.、2005、26 (5): 252〜257頁、およびその中で引用されている参考文献を参照されたい。
【0003】
Th1細胞は、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)およびインターロイキン12(IL-12)を包含するTh1型サイトカインを分泌する。Th1型サイトカインの主要な役割は、食細胞媒介性防御を刺激し、CD8+ T細胞(細胞障害性T細胞)およびナチュラルキラー(NK)細胞の活性を高めることにより腫瘍細胞、ウイルスおよび他の細胞内病原体の排除をもたらす細胞媒介性免疫を支援することである。さらに、Th1サイトカインは、B細胞による免疫グロブリン合成のスイッチングを阻害し、IgG1およびIgEなどの特定の免疫グロブリンアイソタイプの産生を抑制し、後者は、アレルギーを引き起こすのに特に重要である。IL-12は、樹状細胞(DC)およびマクロファージを包含する抗原提示細胞(APC)により主に分泌され、CD8+ T細胞およびNK細胞を活性化する。Th2細胞は、IL-4、IL-5、IL-10、およびIL-13を包含するTh2型サイトカインを分泌する。Th2型サイトカインの主要な役割は、体液性免疫を支援し(例えば、IgEおよび好酸球/肥満細胞媒介性免疫反応を刺激し)、Th1型免疫応答をダウンレギュレートすることである。
【0004】
Th1型免疫応答とTh2型免疫応答のバランスの調節不全は、疾患を引き起こす。多くのタイプの癌は、優勢なTh2型応答を特徴とし、多くの病原体は、Th1-Th2バランスをTh2モードにシフトするサイトカインを産生することにより免疫系を逃れる(WilsonおよびDelovitch、2003、Nat. Rev. Immunol.、3: 211〜222頁; Dredge、Cancer Immunol. Immunother.、2002、51: 521〜531頁; ServetおよびZitvogel、Curr Mol. Med.、2002、2: 739〜756頁; Pinto、Pediatrics、2006年4月17日[プリント版に先立つEpub])。喘息などの多くの自己免疫疾患も、Th1-Th2バランスのTh2モードへのシフトを特徴とする。これに反して、1型糖尿病および多発性硬化症などの自己免疫疾患は、自己病原性Th1細胞により媒介され、Th1様サイトカインプロフィールにつながる反応性低下Th2細胞を特徴とする(Hayakawa他、2004、Curr. Med. Chem.、11: 241〜252頁; WilsonおよびDelovitch、2003、Nat. Rev. Immunol.、3: 211〜222頁; Van Kaer、2004、Immunol. Cell Biol.、82: 315〜322頁)。
【0005】
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、Th1型免疫応答およびTh2型免疫応答を調節する重要な役割を有する。NKT細胞は、半不変的なT細胞受容体(TCR)と一緒にNK細胞のマーカーを同時発現するリンパ球の独特な集団である。マウスにおいて、大部分のNKT細胞のTCRは、Vβ8.2、Vβ7またはVβ2遺伝子断片により主にコードされるVβ鎖の可変セットと対になったVα14およびJα18遺伝子断片によりコードされる不変Vα鎖からなる。このTCRは、NKT細胞が主要組織適合性複合体(MHC)クラスI様分子CD1dを認識することを可能にし、脂質などの疎水性分子および疎水性ペプチドをNKT細胞に提示することができる。
【0006】
これまで、ほんのわずかな分子がNKT細胞を活性することが明らかにされてきた。これらのうち、沖縄産の海綿から最初に抽出された糖脂質であるα-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)(Natori他、Tetrahedron、50: 2771〜2784頁、1994)は、最も特徴が明らかにされている。α-GalCerの合成類似体、KRN 7000(2S,3S,4R)-1-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-2-(N-ヘキサコサノイルアミノ)-1,3,4-オクタデカントリオールは、Pharmaceutical Research Laboratories、Kirin Brewery(Gumma、Japan)から入手するか、または、Morita他、J. Med. Chem.、1995、38: 2176〜2187頁に記載されているように合成することができる。他のα-GalCer誘導体は、米国特許第5,780,441号(Kirin)に記載されている。Kirinによる最初の開示の後に、α-GalCerは、原発腫瘍およびそれらの転移、マラリアおよびB型肝炎などの感染性疾患、ならびに糖尿病および喘息などのいくつかの自己免疫疾患を包含するいくつかの疾患の治療において可能性を示した(Hayakawa他、2004、Curr. Med. Chem.、11: 241〜252頁; WilsonおよびDelovitch、2003、Nat. Rev. Immunol.、3: 211〜222頁; Taniguchi他、2003、Annu. Rev. Immunol.、21: 483〜513頁; Van Kaer、2004、Immunol. Cell Biol.、82: 315〜322頁を参照)。α-GalCerは、他の抗原により誘導される防御免疫応答の持続時間を増強および/または延長することができるアジュバントとして使用することができることも立証されている(US 2003-0157135およびGonzalez-Aseguinolaza他、J Exp Med.、2002、195: 617〜24頁を参照)。
【0007】
α-GalCerは、in vitroとin vivoの両方でNKT細胞を活性化することができる(Kawano他、1997、Science、278: 1626〜1629頁; Burdin他、1998、J. Immunol.、161: 3271〜3281頁; Spada他、1998、J. Exp. Med.、188: 1529〜1534頁; Brossay他、1998、J. Exp. Med.、188: 1521〜1528頁)。図1に示すように、α-GalCerは、単球、単球由来未成熟樹状細胞およびマクロファージなどのAPCによるCD1dと共に存在する場合、NKT細胞のTCRと相互作用し、続いて、NKT細胞とAPCの両方を活性化し、NKT細胞によるTh1型サイトカインIFN-γとTh2型サイトカインIL-4の両方の産生をもたらす。次いで、IL-12受容体は、NKT細胞の細胞表面上で活性化され、同時に、IL-12は、活性化されたAPCにより産生される。APCにより産生されるIL-12は、NKT細胞からのIFN-γの第二波を誘導し、NK細胞を活性化してIFN-γも産生する(Hayakawa他、2004、Curr. Med. Chem.、11: 241〜252頁; Kawano他、1997、Science、278: 1626〜1629頁; Godfrey他、2000、Immunol. Today、21: 573〜583頁; Wilson他、2002、Trends Mol. Med.、8: 225〜231頁; Matsuda他、2000、J. Exp. Med.、192: 741〜753頁)。したがって、α-GalCerによるNKT細胞の活性化は、NK細胞、B細胞、CD8+ T細胞、樹状細胞および骨髄性細胞を包含するいくつかの他の細胞タイプの二次的活性ならびにCD4+ T細胞のTh1細胞かTh2細胞のどちらかへの分化をもたらすことがある。
【0008】
α-GalCerをマウスに投与すると、強い抗マラリア活性が速やかにもたらされ、げっ歯類マラリア寄生虫であるプラスモジウムヨエリ(P. yoeli)およびプラスモジウムベルゲイ(P. berghei)の肝細胞期の発生を阻害することが立証されている(Gonzalez-Aseguinolaza他、2000、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、97: 8461〜8466頁)。α-GalCerは、IFN-γかIFN-γ受容体のどちらかを欠くマウスの肝臓における寄生虫発生を阻害することができず、糖脂質の抗マラリア活性は、IFN-γにより主に媒介されることを示唆している。α-GalCerにより刺激されるIL-4は、糖脂質に自己免疫性1型糖尿病および自己免疫性脳脊髄炎を包含する多くの様々な自己免疫疾患を改善させる(Wilson他、2002、Trends Mol. Med.、8: 225〜231頁)。
【0009】
重要なことには、免疫応答を刺激するその能力の他に、α-GalCerは、その用量とは無関係に、げっ歯類およびサルにおいて毒性を引き起こさないことが立証されている(Nakagawa他、1998、Cancer Res.、58: 1202〜1207頁)。
【0010】
しかしながら、α-GalCer療法の有効性は、Th1型サイトカインとTh2型サイトカインの両方(すなわち、IFN-γ、IL-12およびIL-4)の同時刺激により厳しく制限される(Pal他、2001、J. Immunol.、166: 662〜668頁; BerkersおよびOvaa、Trends Pharmacol. Sci.、2005、26: 252〜257頁)。実際に、α-GalCerを使った第I相試験において、固形腫瘍のある患者で効果はほとんど観察されなかった(Giaccone他、2002、Clin. Cancer Res.、8: 3702〜3709頁)。α-GalCerによる治療は、NKT細胞のサイトカインプロフィールが、例えば、CD1dパルス樹状細胞の投与によりTh1型にシフトされる場合により有効であることが明らかにされている(Fujii他、2002、Nat. Immunol.、3: 867〜874頁)。
【0011】
したがって、Th1型免疫応答またはTh2型免疫応答を選択的に誘導することができたα-GalCer類似体は、より有望な治療可能性を有するであろう。
【0012】
炭素原子が、グリコシド結合の酸素原子と置き換わったいくつかのα-C-GalCer類似体が最近になって開発されている。例えば、米国特許第6,635,622号; Schmieg他、2003、J. Exp. Med、198 (11): 1631〜1641頁; Chen他、Org Lett.、2004、6: 4077〜80頁; Yang他、Angew Chem Int Ed Engl.、2004、43: 3818〜22頁、および所有者共通の米国特許出願第10/462,211号(US 2004-0127429); 第11/193,852号(US 2006-0019246); 第11/096,340号(US 2005-0222048)を参照されたい。そのような類似体は、脱グリコシル化に抵抗性があり、したがって、より長い貯蔵寿命を有する(Bertozzi他、Synthesis of C-glycosides: stable mimics of O-glycosidic linkages. (Modern Methods in Carbohydrate Synthesis.編集者KhanおよびO’Neill。Harwood Academic Publishers、London、UK、1996、316〜351頁); Bertozzi他、1992、J. Am. Chem. Soc.、114:10639〜10641頁; LevyおよびTang、The Chemistry of C-Glycosides、Elsevier Science Ltd.、1995; Postema、C-Glycoside Synthesis、CRC Press, Inc.、1995)。
【0013】
α-C-GalCer CRONY 101は、そのO-グリコシド対応物と比較して著しく改善された治療可能性を有するC-グリコシドの最初の例であった。Schmieg他(2003、J. Exp. Med、198: 1631〜1641頁)およびYang他(2004、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、43: 3818〜3822頁)で立証されているように、CRONY 101のin vivo投与は、Th2型サイトカインIL-4の産生減少(α-GalCerと比較して)およびTh1型サイトカインIFN-γおよびIL-12の産生の亢進、延長をもたらし、黒色腫転移およびマラリアに対してそれぞれ100倍および1000倍の活性改善をもたらす。
【0014】
Th1型サイトカインIL-12は、最近になって、炎症性応答を調節することによる自然免疫と適応免疫の両部門(arm)の相互作用、ならびに感染症および癌に対する先天的抵抗性におけるその本質的役割のために、大いに注目を集めている(ColomboおよびTrinchieri、Cytokine Growth Factor Rev.、2002、13: 155〜68頁; Watford、Cytokine Growth Factor Rev.、2003、14: 361〜368頁で概説されている)。内因性IL-12は、多くの病原体および腫瘍に対する抵抗性にとって必要とされる。実際に、実験腫瘍モデルにおいて、組み換えIL-12治療は、可移植性腫瘍、化学的に誘発した腫瘍、および遺伝子改変マウスにおいて自然発生する腫瘍に対して劇的な抗腫瘍効果を有する。
【0015】
上記で規定されているように、IL-12は、樹状細胞およびマクロファージなどの様々なAPCにより大部分が分泌され、Th1型免疫応答に寄与する(Roitt、Brostoff、Male、Immunology、Mosby編、第6版; MaおよびTrinchieri、Adv Immunol.、2001、79: 55〜92頁; Hilkens、Blood、1997、90: 1920〜1926頁; Szabo、Annu. Rev. Immunol.、2003、21: 713〜58頁)。IL-12により誘導されるIFN-γならびに一連の他の二次的および三次的炎症性サイトカインは、感染細胞および腫瘍細胞に対する直接毒性効果を有するか、または強力な抗血管新生機序を活性化することがある。抗原特異的免疫に対するIL-12の刺激活性は、大部分がそれがTh1応答および細胞障害性Tリンパ球応答を決定または増強できることを利用するものである。この能力のため、IL-12は、癌および他のワクチンにおいて強力なアジュバント活性を有する。抗腫瘍免疫療法の前臨床モデルで得られた有望なデータは、IL-12が癌に対する強力な治療薬かもしれないという大きな期待を抱かせた。しかしながら、IL-12の臨床治験で観察される過剰な毒性は、全身的よりむしろ局所的にIL-12の活性化を達成する必要性を指し示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,780,441号
【特許文献2】US 2003-0157135
【特許文献3】米国特許第6,635,622号
【特許文献4】米国特許出願第10/462,211号(US 2004-0127429)
【特許文献5】米国特許出願第11/193,852号(US 2006-0019246)
【特許文献6】米国特許出願第11/096,340号(US 2005-0222048)
【特許文献7】PCT公開第WO92/14488号
【特許文献8】米国特許第5,523,089号
【特許文献9】PCT公開第WO90/04411号
【特許文献10】PCT公開第WO91/09870号
【特許文献11】PCT公開第WO93/04175号
【特許文献12】PCT公開第WO96/06165号
【特許文献13】PCT公開第WO93/08306号
【特許文献14】PCT/US92/08697
【特許文献15】米国特許第4,722,848号
【特許文献16】米国特許第5,174,993号
【特許文献17】米国特許第5,338,683号
【特許文献18】米国特許第5,494,807号
【特許文献19】米国特許第5,503,834号
【特許文献20】米国特許第5,505,941号
【特許文献21】米国特許第5,514,375号
【特許文献22】米国特許第5,529,780号
【特許文献23】英国特許第GB 2 269 820 B号
【特許文献24】PCT公開第WO92/22641号
【特許文献25】PCT公開第WO93/03145号
【特許文献26】PCT公開第WO94/16716号
【特許文献27】PCT公開第WO96/3941号
【特許文献28】PCT/US94/06652
【特許文献29】米国特許第5,874,527号
【非特許文献】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
以下の通り、上記の背景技術の項から、当技術分野では、in vivo毒性が低く、in vivo安定性が高く、Th1型免疫応答、特に、局所的IL-12産生の増加を伴うTh1型免疫応答を選択的に誘導する能力を有する新たな免疫刺激化合物が大いに必要である。本発明は、新規合成C-糖脂質を提供することにより当技術分野におけるこれらおよび他の必要性に対処する。本発明の化合物は、様々な感染症、癌、増殖性障害、および自己免疫疾患を包含するがそれらに限定されない、制御にTh1型応答を必要とする疾患を治療することができる。これらの化合物は、哺乳動物において抗原の免疫原性を増強することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のC-糖脂質は、式(I)
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、-CH2-CH2-または-CH=CH-であり、
Yが-CH2-CH2-である場合、Qは、C23〜C32アルケニルまたは-R1-O-R2であり、
Yが-CH=CH-である場合、Qは、C27〜C32アルキル、C23〜C32アルケニル、-R1-O-R2、またはフェニルで置換されているC6〜C8アルキルであり、
R1およびR2は、R1およびR2が合わせて23〜32個の炭素原子を有するような、置換または非置換のアルキルまたはアルケニル基であり、
R3は、-OHもしくは単糖であり、R4はHであるか、またはR3はHであり、R4は、-OHもしくは単糖であり、
R5は、水素または単糖である)の化合物、
および薬学的に許容できるそれらの塩またはエステルを包含する。
【0022】
好ましい実施形態において、Yは、トランスまたはシス配座の-CH=CH-である。Yは、トランス配座の-CH=CH-であることがより好ましい。
【0023】
IL-12の分泌増加を刺激する化合物が好ましい。そのような化合物は、
【0024】
【化2】
【0025】
(脂肪酸Q鎖のトランス配座異性体およびシス配座異性体[それぞれ、GCK109およびGCK151とも呼ばれる]が上記に描かれている。いずれの場合にも、基Yは、トランス-エチレンである)
【0026】
【化3】
【0027】
および薬学的に許容できるそれらの塩またはエステルを包含する。これらの化合物は、CRONYに比べて、優れた特異性のTh1型応答を提供し、優れた薬物動態プロフィールを有する。いかなる特定の理論にも束縛されるわけではないが、これらの化合物は、樹状細胞によるIL-12およびNKTまたはNK細胞によるIFN-γの改善されバランスのとれた分泌をもたらし、さらに、応答の特異性を反映し化合物の安全性を改善すると考えられる。また、これらの化合物は、NKTまたはNK細胞によるIL-4の分泌を実質的に刺激することもない。
【0028】
本発明の追加のC-糖脂質は、式
【0029】
【化4】
【0030】
(式中、
Yは、-CH2-CH2-であり、
Xは、Oであり、R5は、Hであり、R3は、OHであり、R4は、Hであり、
Qは、-(CH2)27-CH3である)の化合物、
および薬学的に許容できるそれらの塩およびエステルを包含する。
【0031】
本発明の別の実施形態は、薬学的に許容できる担体と併せて上記で定義されているような化合物を含む医薬組成物である。医薬組成物は、抗原をさらに含んでよい。
【0032】
さらに別の実施形態は、哺乳動物においてNKT細胞による特異的Th1型応答を刺激し、樹状細胞を活性化する方法であって、哺乳動物に有効量の本発明の化合物を投与するステップを含む方法である。
【0033】
本発明の化合物は、非常に選択的かつ効率的にTh1型免疫応答を誘導するので、直接使用される場合と疾患特異的抗原と共同してアジュバントとして使用される場合の両方で治療に有効である。したがって、本発明のさらに別の実施形態は、その必要がある哺乳動物において制御にTh1型応答を必要とする疾患を治療するための方法であって、哺乳動物に有効量の式(I)の化合物を投与するステップを含む方法である。制御にTh1型応答を必要とする疾患の非限定的な例は、感染症、癌、細胞増殖性障害、およびTh2型自己免疫疾患を包含する。好ましい実施形態において、制御にTh1型応答を必要とする疾患は、感染性ウイルス疾患、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、B型肝炎ウイルス(HBV)感染、ヘルペスウイルス感染、または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染である。別の好ましい実施形態において、疾患は、癌、例えば、前立腺または乳房の癌などの固形腫瘍である。さらに別の好ましい実施形態において、疾患は、喘息である。
【0034】
さらに別の実施形態は、哺乳動物を抗原および式(I)の化合物を含むアジュバントで共同して免疫感作することにより哺乳動物における抗原の免疫原性を増強するための方法である。好ましい実施形態において、抗原は、HIV特異的、マラリア特異的、または前立腺癌特異的である。
【0035】
さらに別の実施形態は、本明細書に記載されているような式(I)の化合物を調製する方法である。特徴的な実施形態は、式(I)
【0036】
【化5】
【0037】
(式中、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、-CH2-CH2-または-CH=CH-であり、
Yが-CH2-CH2-である場合、Qは、C23〜C32アルケニルまたは-R1-O-R2であり、
Yが-CH=CH-である場合、Qは、C27〜C32アルキル、C23〜C32アルケニル、-R1-O-R2、またはフェニルで置換されているC6〜C8アルキルであり、
R1およびR2は、R1およびR2が合わせて23〜32個の炭素原子を有するような、置換または非置換のアルキルまたはアルケニル基であり、
R3は、-OHもしくは単糖であり、R4はHであるか、またはR3はHであり、R4は、-OHもしくは単糖であり、
R5は、水素または単糖である)の化合物、
および薬学的に許容できるその塩またはエステルを調製する方法である。
【0038】
この方法は、
(a)式(II)
【0039】
【化6】
【0040】
の化合物を反応させ、まずPg1を除去し、続いて、式III
【0041】
【化7】
【0042】
(式中、Qは、上記で定義した通りである)を有するp-ニトロフェニルエステルで処理するステップと、
(b)続いて、Pg2およびPg3を脱保護し、場合により、環状基に隣接する炭素-炭素二重結合を水素化して式(I)の化合物を形成するステップと
を含む。
【0043】
1つの好ましい実施形態によれば、式(II)の化合物は、
【0044】
【化8】
【0045】
である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】O-およびC-糖脂質によるサイトカインおよび免疫細胞活性化の略図である。
【図2A】BALB/c(図2A)およびC57BL/6(図2B〜C)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIFN-γの動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIFN-γのレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図2B】C57BL/6(図2B)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIFN-γの動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIFN-γのレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図2C】C57BL/6(図C)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIFN-γの動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIFN-γのレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図3A】BALB/c(図3A)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIL-12の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-12のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図3B】C57BL/6(図3B)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIL-12の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-12のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図3C】C57BL/6(図3C)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh1型サイトカインIL-12の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-12のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図4A】BALB/c(図4A)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh2型サイトカインIL-4の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-4のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図4B】C57BL/6(図4B)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh2型サイトカインIL-4の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-4のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図4C】C57BL/6(図4C)マウスへの本発明の化合物または対照化合物の投与で放出されるTh2型サイトカインIL-4の動態的プロフィールを示す図である。図で表される化合物は、A=化合物(トランス-A-1)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(トランス-A-1)、GCK151(シス-A-1)、およびGCK152[A-7]である。血清中のIL-4のレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。データは、プールした血清の2つの異なる希釈液の平均+/-標準偏差(SD)として表す。
【図5A】実験的ヒトin vitro NKT細胞系においてELISAにより測定された本発明の化合物のサイトカインレベルを示す図である。IFN-γまたはIL-4の濃度は、様々な糖脂質(すなわち、GCK109[トランス-A-1]、GCK151[シス-A-1]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下、同系のCD14-末梢血単核細胞(PBMC)と共に18時間にわたって共培養した未成熟樹状細胞(DC)の培養上清中でELISAにより決定した。
【図5B】実験的ヒトin vitro NKT細胞系においてELISAにより測定された本発明の化合物のサイトカインレベルを示す図である。IFN-γまたはIL-4の濃度は、様々な糖脂質(すなわち、GCK109[トランス-A-1]、GCK151[シス-A-1]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下、同系のCD14-末梢血単核細胞(PBMC)と共に18時間にわたって共培養した未成熟樹状細胞(DC)の培養上清中でELISAにより決定した。
【図6A】実験的ヒトin vitro NKT細胞系においてELISPOTにより測定された、本発明の化合物とのインキュベーションによるサイトカイン分泌性PBMCの数を示す図である。IFN-γまたはIL-4を分泌するPBMCの数は、様々な糖脂質(すなわち、GCK142A[A-6]、GCK109[トランス-A-1]、GCK151[シス-A-1]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下、22〜26時間にわたってElSPOTプレート中で同系のCD14- PBMCと共に未成熟DCを共培養してELISPOTにより決定した。
【図6B】実験的ヒトin vitro NKT細胞系においてELISPOTにより測定された、本発明の化合物とのインキュベーションによるサイトカイン分泌性PBMCの数を示す図である。IFN-γまたはIL-4を分泌するPBMCの数は、様々な糖脂質(すなわち、GCK142A[A-6]、GCK109[トランス-A-1]、GCK151[シス-A-1]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下、22〜26時間にわたってElSPOTプレート中で同系のCD14- PBMCと共に未成熟DCを共培養してELISPOTにより決定した。
【発明を実施するための形態】
【0047】
定義
本明細書で使用する「Th1型免疫応答」および「Th2型免疫応答」という用語は、それぞれTh1 CD4+ヘルパーT細胞およびTh2 CD4+ヘルパーT細胞により媒介される免疫応答を指す。
【0048】
「Th1型サイトカイン」および「Th2型サイトカイン」という用語は、それぞれTh1細胞およびTh2細胞により産生されるサイトカインを指す。Th1型サイトカインは、IFN-γおよびIL-12を包含するが、それらに限定されない。Th2型サイトカインの非限定的な例は、IL-4である。
【0049】
「制御にTh1型応答を必要とする疾患」という用語は、優勢なTh2型免疫応答およびTh2型サイトカインプロフィールを特徴とする疾患を指す。そのような疾患の例は、HIV感染、HCV感染、HBV感染、ヘルペスウイルス感染、およびRSV感染などの感染性ウイルス疾患; 前立腺癌または乳癌などの癌; ならびに喘息およびアレルギーなどのTh2型自己免疫疾患を包含するが、それらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用する「Th1型免疫応答の選択的誘導」という用語は、Th2型免疫応答の同時誘導および/または亢進および/または持続時間増加を引き起こさないTh1型免疫応答の誘導および/または亢進および/または持続時間増加を指す。本発明の化合物の場合、Th1型免疫応答の選択的誘導は、IL-4分泌の同時亢進がない状態で起きるIL-12分泌の亢進および樹状細胞の活性化の増大(従来技術における化合物と比較して)に反映される。
【0051】
「単糖」という用語は、アルデヒド(アルドース)またはケトン(ケトース)の形態で3〜10個の炭素原子を有する糖分子を指す。本発明で使用することが企図されている適当な単糖は、天然に存在する単糖と合成単糖の両方を包含する。適当な単糖の非限定的な例は、グリセロースおよびジヒドロキシアセトンなどのトリオース; エリトロースおよびエリトルロースなどのテトロース; キシロース、アラビノース、リボース、キシルロース、リブロースなどのペントース; ラムノースおよびフコースなどのメチルペントース(6-デオキシヘキソース); グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトースおよびソルボースなどのヘキソース; ならびにグルコヘプトース、ガラマンノヘプトース、セドヘプツロースおよびマンノヘプツロースなどのヘプトースを包含する。好ましい単糖は、ヘキソースを包含するが、これに限定されない。
【0052】
疾患、例えば、癌、感染性疾患または自己免疫疾患を治療するための化合物の「有効量」は、ヒトを包含する哺乳動物において疾患の少なくとも1つの症状またはパラメーターの測定可能な改善をもたらす量である。
【0053】
本明細書で使用する「薬学的に許容できるその塩またはエステル」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などもなく患者の組織と接触して使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比に見合っており、それらの意図した使用にとって有効である、本発明の化合物の塩(例えば、カルボキシレート塩、アミノ酸付加塩)およびエステル、ならびに可能であれば、本発明の化合物の双性イオン形態を指す。
【0054】
「治療する」という用語は、本明細書において、対象において疾患を予防するか、または疾患の少なくとも1つの症状を緩和もしくは軽減することを意味するのに使用される。本発明の意味の範囲で、「治療する」という用語は、発症前(prepatency)、すなわち感染と疾患の臨床症状との間の期間を延ばすことを意味することもある。
【0055】
投与量または量に適用される「治療的に有効な」という用語は、その必要がある哺乳動物に投与して望ましい活性をもたらすのに十分な化合物または医薬組成物の量を指す。
【0056】
本発明の組成物に関連して使用する互換的に使用される「薬学的に許容できる」および「生理学的に許容できる」という用語は、ヒトに投与される場合、生理学的に耐容性があり、典型的には、有害な反応を生じない、そのような組成物の分子的実体および他の成分を指す。本明細書で使用する「薬学的に許容できる」という用語は、連邦政府または州政府の規制機関により認可されているか、米国薬局方または哺乳動物、より詳細にはヒトで使用するための他の一般的に認められた薬局方に列挙されていることを意味することが好ましい。
【0057】
「担体」という用語は、本発明の化合物と一緒に投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬担体は、水およびラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物もしくは合成起源の油を包含する油などの無菌の液体であってよい。水または水溶液、食塩溶液、ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、特に注射液のための担体として使用されることが好ましい。適当な医薬担体は、E. W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第18版に記載されている。
【0058】
「アジュバント」および「免疫アジュバント」という用語は、互換的に使用され、宿主へ単独で投与された場合、非免疫原性であってよいが、その抗原と共同して投与された場合、別の抗原に対する宿主の免疫応答を増強する化合物または混合物を指す。
【0059】
本明細書で使用する「共同投与」、「共同して投与された」、および「共同して投与すること」という用語は、免疫アジュバントおよび抗原などの2つの作用物質を、1つの組成物で同時に、または異なる組成物で同時に、または逐次に投与することを指す。しかしながら、「共同」と見なされる逐次投与の場合、抗原およびアジュバントは、アジュバントが抗原に対する免疫応答を依然として増強することができる時間間隔を隔てて投与されなければならない。例えば、抗原がポリペプチドである場合、抗原およびアジュバントは、同じ日に、好ましくは互いに1時間以内に、最も好ましくは同時に投与される。しかしながら、核酸が対象に送達され、ポリペプチド抗原が対象の細胞内で発現される場合、アジュバントは、核酸投与の24時間以内、より好ましくは6時間以内に投与される。
【0060】
本明細書で使用する「対象」という用語は、免疫系を有する動物、好ましくは哺乳動物を指す。本発明を適用することができる対象は、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、家禽(例えば、ニワトリ)、ヤギ、ネコ、イヌ、げっ歯類(例えば、ハムスター、マウス、ラット、ウサギ)、サル、霊長類、およびヒトを包含するが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、対象は、ヒトである。
【0061】
「約」または「おおよそ」という用語は、当業者により決定されるような特定の値についての許容できる誤差範囲内にあることを意味し、値を測定または決定する方法、すなわち、測定システムの制限に部分的に依存するであろう。例えば、「約」は、当技術分野における実施について、1または1を超える標準偏差内にあることを意味することがある。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、より好ましくは1%までの範囲を意味することがある。あるいは、特に生物学的なシステムまたはプロセスに関して、この用語は、ある値の大きさの次数以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内であることを意味することがある。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に指定のない限り、特定の値について許容できる誤差範囲内にあることを意味する「約」という用語が想定されるべきである。
【0062】
本発明によれば、当業者の範囲内にある従来の分子生物学、微生物学、および組み換えDNA技術を用いることができる。そのような技術は、よく知られており、文献で十分に説明されている。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York. (本明細書では「Sambrook他、1989」); DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes IおよびII (D. N. Glover編1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編1984); Nucleic Acid Hybridization [B. D. HamesおよびS. J. Higgins編(1985)]; Transcription And Translation [B. D. HamesおよびS. J. Higgins、編(1984)]; Animal Cell Culture [R. I. Freshney、編(1986)]; Immobilized Cells And Enzymes [IRL Press、(1986)]; B. Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); F. M. Ausubel他(編), Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, Inc. (1994)を参照されたい。
【0063】
本発明の化合物
XがOであり、R5がHであり、R3がOHであり、R4がHである式(I)の化合物が好ましい。
【0064】
本発明の化合物は、脂質側鎖(すなわち、基Q)内に少なくとも1個の求核性結合を有することが好ましい。各求核性結合は、エーテル結合(すなわち、Qは、-R1-O-R2である)または二重結合(すなわち、Qは、アルケニルである)であることが好ましい。求核性結合は、側鎖Qの末端炭素原子から最小限6個の炭素原子に位置していることが好ましい。例えば、二重結合は、側鎖Qの末端炭素から6〜22個の炭素原子の任意の位置に位置することができる。
【0065】
一実施形態によれば、Qは、23〜32個の炭素原子、好ましくは25〜32個、より好ましくは28〜32個の炭素原子を含有し、1、2、または3個の二重結合を有するC23〜C32アルケニルである。Qは、1個の二重結合しか有さないことが好ましい。二重結合は、C7〜C12(カルボニル基に結合しているQ基の末端から)、より好ましくはC7〜C10(例えば、C9〜C10)に位置していることが好ましい。Qは、-C8H16-CH=CH- C18H37であることが好ましい。化合物の特定のファミリーは、Qが、C23〜C32アルケニルであり、Yが、好ましくはトランス配座の-CH=CH-である場合である。
【0066】
別の実施形態において、Qは、-R1-O-R2である。酸素原子は、Q基内のどこに位置していてもよいが、C1〜C25(カルボニル基に結合しているQ基の末端から)(例えば、C1〜C2またはC9〜C10)、より好ましくはC18〜C25(例えば、C19〜C20)に位置していることが好ましい。例えば、Qは、-C19H38-O-C6H13であってよい。化合物の特定のファミリーは、Qが、-R1-O-R2であり、Yが、-CH2-CH2-である場合である。好ましい実施形態において、Qは、-R1-O-R2であり、R1とR2は共に、アルキル基である。
【0067】
さらに別の実施形態において、Qは、-R1-O-R2であり、R1およびR2のうちの少なくとも1つは、アルケニルである。Q基は、1〜3個の二重結合、より好ましくは1個だけの二重結合を含有することが好ましい。二重結合および酸素原子は、Q基内のどこに位置していてもよい。R1は、アルケニルであることが好ましく、R1は、アルケニルであり、R2は、アルキルであることがより好ましい。Q基が1個の二重結合を含有する場合、二重結合は、C7〜C12(カルボニル基に結合しているQ基の末端から)、より好ましくはC7〜C10、さらにより好ましくはC9〜C10に位置していることが好ましい。酸素原子は、C1〜C25(カルボニル基に結合しているQ基の末端から)(例えば、C1〜C2またはC9〜C10)、より好ましくはC18〜C25(例えば、C19〜C20)に位置していることが好ましい。例えば、Qは、-C8H16-CH=CH-C9H18-O-C6H13であってよい。
【0068】
別の好ましい実施形態によれば、Yは、-CH=CH-であり、Qは、C27〜C32アルキル、好ましくはC27またはC28アルキルである。
【0069】
別の好ましい実施形態によれば、Yは、-CH=CH-であり、Qは、-R1-O-R2であり、R1およびR2は、上記で定義した通りである。Qは、23〜32個の炭素原子、より好ましくは25〜32個の炭素原子、さらにより好ましくは28〜32個の炭素原子を含有することが好ましい。例えば、Qは、-C19H38-O-C6H13であってよい。
【0070】
本発明の好ましい化合物は、
【0071】
【化9A】
【0072】
【化9B】
【0073】
ならびに薬学的に許容できるそれらの塩およびエステルを包含するが、これらに限定されない。
【0074】
本発明の他の好ましい化合物は、以下の表Bに示す化合物ならびに薬学的に許容できるそれらの塩およびエステルを包含するが、これらに限定されない。
【0075】
【表1】
【0076】
本発明の特徴的な化合物は、式
【0077】
【化10】
【0078】
を有する化合物または薬学的に許容できるその塩もしくはエステルである。
【0079】
治療的用途
本発明の化合物は、Th1型免疫応答の選択的誘導から、特に、IL-4分泌の実質的な同時亢進がない状態で起きるIL-12分泌の亢進および樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)の活性化増大に伴うTh1型免疫応答から恩恵を受ける任意の疾患を治療するのに有用である。
【0080】
いかなる特定の理論にも束縛されるわけではないが、本発明の発明者他は、本発明の化合物が、APCのTCRに結合することによりTh1免疫応答の選択的誘導を媒介し、NKT細胞を活性化してNKT細胞によるIFN-γの分泌をもたらすと考えている。しかしながら、そのようにして活性化されたNKT細胞は、有意な量のIL-4を実質的に分泌しない。活性化されたNKT細胞は、CD40リガンドを介して樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)にさらに結合し、IL-12の局所分泌亢進を引き起こす。IL-12のそのような局所放出は、IL-12の毒性に伴う負の効果を避けることを可能にし、例えば、腫瘍または病原体に対する極めて効率的かつ特異的なTh1型免疫応答の発生を可能にする。発明者他は、本発明の化合物が、樹状細胞に対して間接的に作用し、α-GalCerまたはα-C-GalCer(CRONY)と比較した場合に、二次的NK細胞活性化に対してあまり活性を示さないとも考えている。したがって、NK細胞の非特異的活性化は、実質的に制限され、従来技術の化合物を上回って本発明の化合物の安全性および耐容性を改善する。
【0081】
これらの特性は、本発明の化合物を、制御にTh1型応答を必要とする疾患を治療するのに特に有用にする。
【0082】
一実施形態において、本発明の化合物は、例えば、腫瘍の成長を阻害するための抗腫瘍剤として癌の治療に、および細胞増殖性障害の治療に有用である。本発明の化合物は、単独で、または化学療法、放射線療法もしくは免疫療法と組み合わせて使用することができる。
【0083】
より具体的には、本発明の化合物は、膀胱癌、乳癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌を包含する肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、精巣癌、胃癌、腎臓癌、肝臓癌、頸癌、甲状腺癌、前立腺癌、および扁平上皮細胞癌を包含する皮膚癌などの癌; 白血病、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヘアリー細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を包含するリンパ系の造血器腫瘍; 急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群および前骨髄球性白血病を包含する骨髄系の造血器腫瘍; 線維肉腫および横紋筋肉腫を包含する間葉起源の腫瘍; 星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫およびシュワン細胞腫を包含する中枢および末梢神経系の腫瘍; 黒色腫、精上皮腫、奇形腫、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、甲状腺濾胞癌およびカポジ肉腫を包含する他の腫瘍を包含するがこれらに限定されない様々な癌の治療に有用である。好ましい実施形態において、癌は、前立腺癌または乳癌などの固形癌である。
【0084】
化合物が有用である細胞増殖性障害は、良性前立腺肥大、家族性腺腫性ポリポーシス、神経線維腫症、乾癬、アテローム性動脈硬化症に伴う血管平滑筋細胞増殖、肺線維症、関節炎、糸球体腎炎、ならびに術後狭窄および再狭窄を包含するが、これらに限定されない。
【0085】
別の実施形態において、本発明の化合物は、ウイルス性と非ウイルス性の両方の感染症を包含する感染性疾患を治療するのにも有用である。
【0086】
例えば、化合物は、レトロウイルス科(例えば、HIV-1(HTLV-III、LAVもしくはHTLV-III/LAV、またはHIV-IIIとも呼ばれる)などのヒト免疫不全ウイルス); およびHIV-LPなどの他の分離株; ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス; エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス); カルシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす株); トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス); フラビウイルス科(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス); コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス); ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス); フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス); パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス); オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス); ブニヤウイルス科(例えば、ハンターンウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス); アレナウイルス科(出血性熱ウイルス); レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルスおよびロタウイルス); ビルナウイルス科; ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス); パルボウイルス科(パルボウイルス); パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス); アデノウイルス科(大部分のアデノウイルス); ヘルペスウイルス科(1型および2型単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス); ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス); およびイリドウイルス科(例えば、アフリカブタ熱ウイルス); および未分類ウイルス(例えば、海綿状脳症の病原因子、デルタ肝炎の因子(B型肝炎ウイルスの欠陥サテライトである考えられている)、非A非B型肝炎の因子(クラス1=経口感染、クラス2=非経口感染(すなわち、C型肝炎)); ノーウォークおよび関連ウイルス、およびアストロウイルス)により引き起こされるウイルス感染を治療するのに有用である。
【0087】
本発明の化合物は、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、在郷軍人病菌(Legionella pneumophila)、マイコバクテリア種(例えば、結核菌(M. tuberculosis)、トリ結核菌(M. avium)、マイコバクテリウムイントラセルラレ(M. intracellulare)、マイコバクテリウムカンサシ(M. kansasii)、マイコバクテリウムゴルドナエ(M. gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカスアガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、連鎖球菌(ビリダンス群)、糞便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、ウシ連鎖球菌(Streptococcus bovis)、連鎖球菌(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター種、腸球菌種、シュードモナス種、肺炎球菌種、クラミジア種、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ジフテリア菌(corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム種、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクターエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラムルトシダ(Pasteurella multocida)、バクテロイデス種、フソバクテリウムヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラスモニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、トレポネーマペルテヌエ(Treponema pertenue)、レプトスピラ、イスラエル放線菌(Actinomyces israelii)および野兎病菌(Francisella tularensis)により引き起こされる細菌感染を治療するのにも有用である。クリプトコッカスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマカプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデスイミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミセスデルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、クラミジアトラコマティス(Chlamydia trachomatis)、カンジダアルビカンス(Candida albicans)により引き起こされる真菌および原虫感染。
【0088】
本発明の化合物は、プラスモジウム種、リーシュマニア種、住血吸虫種およびトキソプラズマ種を包含する原生生物などの他の感染性生物体ならびに酵母および他の真菌により引き起こされる感染症を治療するのにも有用である。
【0089】
好ましい実施形態において、本発明の化合物は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヘルペスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)により引き起こされる感染症、またはマラリアを治療するのに有用である。
【0090】
他の実施形態において、本発明の化合物は、喘息およびアレルギーなどの制御にTh1型応答を必要とする自己免疫疾患を治療するのに有用である。
【0091】
本発明の治療的および予防的方法は、他の治療と併せて使用することができる。例えば、本発明の化合物を用いる抗癌治療は、化学療法および/または放射線療法と組み合わせて使用することができる。本発明の化合物を用いる抗ウイルス治療は、IFN-α治療と組み合わせて使用することができる。
【0092】
本発明の方法と併せて、本発明は、免疫原性的に有効な量の式(I)の化合物および、場合により、追加の免疫刺激薬、担体または賦形剤(好ましくはすべてが薬学的に許容できる)を含む医薬組成物およびワクチン組成物も提供する。
【0093】
投与様式
本発明の化合物および組成物の投与様式は、経口、腸内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、経皮、鼻腔内、経粘膜(経腸および口腔内を包含する)、および吸入を包含するが、これらに限定されない。経口、経皮、皮下、または吸入もしくは鼻腔内経路が使用される(例えば、それぞれ固体または液体経口製剤、皮膚パッチ、または鼻腔用スプレーを介して)ことが好ましい。一部の場合に、化合物を同系の樹状細胞にパルスし、続いて、静脈内で患者に移すことができる。すなわち、樹状細胞を化合物と一緒にインキュベートし、それらのCD1d分子を介して樹状細胞に化合物を結合させることができる。次いで、これらの化合物を負荷した樹状細胞を、静脈内で患者に移すことができる。静脈内移行は、局所的か全身的のどちらかであってよい。
【0094】
医薬組成物
本発明の化合物および組成物を経口投与するための固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、および坐剤を包含する。そのような固体剤形において、本発明の活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な通常の賦形剤(または担体); または(a)例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸のような充填剤または増量剤; (b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアのような結合剤; (c)例えば、グリセロールのような保湿剤; (d)例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定の複合ケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤; (e)例えば、パラフィンのような溶解遅延剤; (f)例えば、四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤; (g)例えば、セチルアルコール、およびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤; (h)例えば、カオリンおよびベントナイトのような吸着剤; (i)例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物のような滑沢剤と混合することができる。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤を含むこともある。そのような固体組成物または記載されているものと同様の固体組成物は、ラクトースすなわち乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる軟質および硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤としても用いることができる。
【0095】
錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤などの固体剤形は、腸溶コーティングまたは他の適当なコーティングもしくはシェルなどのコーティングおよびシェルと共に調製することができる。いくつかのそのようなコーティングおよび/またはシェルは、当技術分野においてよく知られており、乳白剤を含有することがあり、それらが、遅延様式で腸管の特定部分において活性な1種または複数の化合物を放出するような組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例は、ポリマー物質およびワックスである。活性化合物は、適切な場合、上述の賦形剤のうちの1種または複数と共に、マイクロカプセル化された形態で使用することもできる。
【0096】
経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容できる乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を包含する。液体剤形は、活性化合物の他に、水または他の溶媒などの当技術分野において一般に使用される不活性な希釈剤、可溶化剤ならびに、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルまたはこれらの物質の混合物のような乳化剤を含有することができる。望ましい場合、組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、矯味剤および/または着香剤などの補助剤を包含することもできる。
【0097】
組成物は、本明細書で定義されているように、担体を包含することがある。適当な担体は、本明細書で定義されているように、循環系に可溶であり、生理学的に許容できる高分子を包含する。担体は、クリアランスのための許容できる血漿中半減期で循環系において比較的安定であることが好ましい。そのような高分子は、大豆レクチン、オレイン酸およびソルビタントリオレエートを包含するが、これらに限定されるものではなく、ソルビタントリオレエートが好ましい。
【0098】
懸濁剤は、活性化合物の他に、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガカントなどの懸濁化剤を含有することができる。望ましい場合、懸濁化剤の混合物を使用することができる。
【0099】
直腸投与のための組成物は、本発明の化合物を、カカオ脂、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックスなどの、通常の温度では固体であるが、体温では液体であるため、直腸腔または膣腔で融解して活性成分を放出する適当な非刺激性の賦形剤または担体と混ぜることにより調製することができる坐剤であることが好ましい。
【0100】
非経口注射に適している組成物は、生理学的に許容できる無菌の水性または非水性液剤、分散剤、懸濁剤または乳剤、および無菌の注射用液剤または分散剤に再構成するための無菌の散剤を含むことができる。適当な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例は、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの適当な混合物、植物油(オリーブ油など)およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを包含する。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散剤の場合は必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。
【0101】
本発明の化合物を局所投与するための剤形は、軟膏剤、散剤、スプレー剤および吸入剤を包含する。活性化合物を、適当な条件(例えば、無菌条件)下、生理学的に許容できる担体および必要とされるような保存料、緩衝剤、または噴射剤と混合することができる。眼用製剤、眼軟膏剤、散剤、および液剤も、本発明の範囲内にあることが企図されている。
【0102】
本発明の化合物は、吸入によりまたは鼻腔内に投与するのに適している形態で有利に製剤化することができ、喘息またはアレルギー性呼吸器疾患を治療する場合に特に有用である。そのような製剤における特定の賦形剤の選択は、望ましい剤形、すなわち、溶液が、点滴剤で、またはスプレー(エアゾール)として、または鼻腔に適用される懸濁液、軟膏もしくはゲルとして使用されるか否かによって異なる。
【0103】
エアゾールまたは加圧パッケージをこの目的のために用いることができる。そのようなエアゾール製剤は、治療的応用部位へ圧力を受けて噴射剤ガスにより運搬される極めて細かい液体または固体の粒子を含む。医薬エアゾールが本発明において用いられる場合、エアゾールは、流動性担体と噴射剤の混合物に溶解、懸濁、または乳化することができる治療活性化合物を含有する。エアゾールは、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、または半固体調製物の形態であってよい。本発明において用いられるエアゾール剤は、患者の気道を介して細かい固体粒子として、または液体ミストとして投与することを意図している。当業者に知られている様々なタイプの噴射剤を利用することができる。適当な噴射剤の例は、炭化水素または他の適当なガスを包含するが、それらに限定されない。加圧エアゾールの場合、用量単位は、一定量を送達する値を提供することにより決定することができる。本発明は、ガス中に実質的に均一なサイズの極めて細かい液体粒子を発生する装置であるネブライザーを使って行うこともできる。本発明の化合物を含有する液体は、液滴として分散されることが好ましい。小さな液滴は、ネブライザーの排出管を通って空気の流れにより運搬することができる。得られるミストは、患者の気道に浸透する。
【0104】
代替方法として、本発明の化合物を含有する粉末組成物は、滑沢剤、担体、または噴射剤の有無にかかわらず、治療の必要がある哺乳動物に投与することができる。本発明のこの実施形態は、吸入により粉末医薬組成物を投与するための従来の装置を使って行うことができる。例えば、化合物とラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤の粉末混合物を、例えば、カプセル剤またはカートリッジ剤、例えば、ゼラチン、またはブリスターパック中の単位剤形で提供することができ、インヘイラーを用いて粉末を投与することができる。
【0105】
エアゾール投与の場合、本発明の化合物は、約1〜約20μm、好ましくは約3〜約10μmの微粉化粒子の形態であってよい。
【0106】
具体的実施形態において、本発明の化合物は、リポソームまたはミセル粒子により送達される。
【0107】
静脈内、皮下または筋肉内経路により非経口的に投与される場合、リポソームは、血流における遊離薬物の濃度を制限することにより、長時間にわたってカプセル化された薬物の制御された「デポー」放出を提供し、薬物の副作用を軽減することができる。リポソームは、治療的に好ましい方法で薬物の組織分布および取り込みを変化させ、頻度の低い薬物投与を可能にすることにより治療の利便性を高めることができる。
【0108】
吸入により投与される場合、リポソームは、脂質組成に従って、数時間から数日まで半減期が変わることがある選択された放出速度で封入薬物を放出するように調整することができる。さらに、薬物がリポソーム中に隔離されている限り、気道および血流中への急速な取り込みに関連する副作用は軽減される。
【0109】
粘膜組織に薬物を送達するためのリポソームの付加的利点は、リポソーム表面を、組織付着の増大のために修飾し、標的組織部位におけるリポソームの滞留時間を増強することができることである。
【0110】
薬物が封入されたリポソームを調製するためのいくつかの方法が知られている。1つの方法において、小胞形成脂質を、フラスコの側面上に薄膜として沈着させ、水性緩衝液の添加によりゆっくりと再水和する。封入すべき薬物は、脂質薄膜(親油性薬物の場合)中か水性水和媒体(親水性薬物の場合)中のどちらかに包含させることができる。形成するリポソームは、約0.05〜10ミクロンの不均一なサイズを有する多重ラメラ小胞(MLV)である。続いて、MLVは、典型的には均質化、超音波処理、または膜押し出しにより処理し、より小さく、より均一なサイズの懸濁液を製造することができる。約0.2〜0.4ミクロンまでサイズを落としたリポソームが一般的に好ましい。このサイズ範囲のリポソームは、0.45ミクロンのデプスフィルターを通過させることにより滅菌することができ、凝集する傾向は少なく、静脈内投与された場合により好ましい臓器分布を示すこともある(Gabizon)。一旦リポソーム製剤が調製されたら、リポソームの内部媒体ならびに外部媒体中の両方に存在する好ましくは凍結防止剤を用い、凍結乾燥することができる。
【0111】
これらの凍結防止剤は、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、マンニトール、シクロデキストリンおよびその誘導体などの糖から選択することができる。
【0112】
これらの凍結防止剤は、ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシエチルデンプンなどのポリマーであってもよい。
【0113】
これらの凍結防止剤は、単独でまたは組合せとして使用することができる。
【0114】
リポソーム製剤を凍結乾燥する場合、アミノ酸をさらに使用することができる。
【0115】
凍結防止剤は、水和媒体中に溶解したこれらの凍結防止剤を用いることにより、空のリポソームを調製する間にリポソーム内の水層に導入される。外部からは、凍結防止剤は、薬物負荷プロセスの完了後に行われる透析濾過中に導入される。望ましい凍結防止剤は、任意のリポソーム懸濁液製剤の外部緩衝液を透析濾過により交換することにより導入することもできる。リポソーム懸濁液をバイアルに充填し、凍結乾燥する。
【0116】
本発明の化合物を含む他の非リポソーム製剤もまた凍結乾燥することができる。
【0117】
アジュバント使用
本発明は、哺乳動物において抗原の免疫原性を増強するための方法であって、哺乳動物を抗原および式Iの化合物を含むアジュバントで共同して免疫感作するステップを含む方法を提供する。
【0118】
本発明によれば、アジュバントとしての式Iの化合物の使用は、抗原により誘導される防御免疫の持続時間の増強および/または延長をもたらす。例えば、本明細書に開示されているように、式Iの化合物と腫瘍もしくはウイルス抗原のT細胞またはB細胞エピトープに対応するペプチド、またはこれらの抗原を発現するDNA構築物との共同投与は、抗原特異的免疫応答を亢進する。
【0119】
式Iのアジュバントは、任意の抗原、特に、感染因子または腫瘍に由来する抗原と共同して投与することができる。
【0120】
上記で規定されているように、本発明の化合物のアジュバント活性は、NKT媒介性および樹状細胞媒介性抗原特異的Th1型T細胞応答およびCD8+ T細胞応答を増強および/または延長するそれらの能力に少なくとも部分的に起因している。
【0121】
従来技術の化合物(KRN7000およびCRONY101を包含する)と比較して、本発明の化合物がTh1型免疫応答の選択的誘導を達成する(すなわち、IL-4分泌の亢進のない状態でNKT細胞系の効率的、特異的かつ局所的な活性化、特に、IL-12分泌の亢進および樹状細胞の効率的かつ局所的な二次的活性化を達成する)ことができることにより、非特異的細胞障害性のない状態で活性化NKT細胞の局所的細胞障害性が増大し、このことから、本発明の化合物が、低い免疫原性を特徴とする様々な腫瘍および感染性抗原の免疫原性を亢進するのに極めて有効なものとなる。さらに、本発明の化合物によるNKT細胞の活性化は、個体間で単形性であるCD1d分子に依存しており(Porcelli、Adv. Immunol.、59: 1〜98頁、1995)、本発明のアジュバントが、MHCハプロタイプに関係なく、すべての患者により利用することができることを示している。
【0122】
本発明によれば、抗原および式(I)の化合物を含むアジュバントは、共同して投与される。抗原およびアジュバントの投与様式は、経口、腸内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、経皮、鼻腔内、経粘膜(経腸および口腔内を包含する)、および吸入を包含するが、これらに限定されない。経口、経皮、皮下、または吸入もしくは鼻腔内経路が使用される(例えば、それぞれ固体または液体経口製剤、皮膚パッチ、または鼻腔用スプレーを介して)ことが好ましい。静脈内移行は、局所的か全身的のどちらかであってよい。本発明の化合物を含むアジュバントと抗原の同時投与が好ましく、一般的に、最も効率的な免疫刺激を可能にする。2つの異なる組成物に含有される場合、本発明のアジュバントおよび抗原は、同じ部位、好ましくは互いに1センチメートル以内に投与されることが好ましい。
【0123】
本発明のアジュバントは、複数の異なる抗原との組合せでその免疫刺激活性を発揮するため、予防的応用と治療的応用の両方に有用である。したがって、他の態様において、本発明は、哺乳動物において制御にTh1型応答を必要とする疾患を治療するための予防的および/または治療的方法であって、前記哺乳動物に抗原および式(I)の化合物を含むアジュバントを共同して投与することを含む方法を提供する。この方法は、例えば、様々な感染症を防ぎかつ/または治療するため、ならびに様々な新生物性疾患を治療するのに有用なことがある。
【0124】
一実施形態は、ウイルス特異的抗原および式(I)のアジュバント化合物を哺乳動物に共同して投与することにより、哺乳動物においてヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、B型肝炎ウイルス(HBV)感染、ヘルペスウイルス感染、または呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染に対する免疫応答を亢進するための方法である。別の実施形態は、癌特異的抗原および式(I)のアジュバント化合物を哺乳動物に共同して投与することにより、哺乳動物において前立腺癌または乳癌に対する免疫応答を亢進するための方法である。
【0125】
本発明の治療的および予防的方法は、他の治療と併せて使用することができる。例えば、腫瘍特異的抗原および本発明のアジュバントを用いる抗癌治療は、化学療法および/または放射線療法と組み合わせて使用することができる。本発明のアジュバントを含む抗ウイルスワクチンは、IFN-α治療と組み合わせて使用することができる。
【0126】
本発明の方法と併せて、本発明は、免疫原性的に有効な量の抗原および免疫原性的に有効な量の式(I)の化合物を含むアジュバントおよび、場合により、追加の免疫刺激薬、担体または賦形剤(好ましくはすべてが薬学的に許容できる)を含む医薬組成物およびワクチン組成物を提供する。前記抗原およびアジュバントは、単一組成物か2つの別々の組成物のどちらかとして製剤化することができる。
【0127】
本発明の免疫原性(例えば、ワクチン)組成物において使用される抗原は、真核細胞(例えば、腫瘍または寄生虫ならびに酵母および他の真菌)、細菌細胞、ウイルス粒子、またはそれらの任意の部分に由来してよい。免疫原性応答の対象とされる材料が抗原性に乏しい場合(例えば、合成またはサブユニット抗原)、例えば、いくつかの市販試薬キットのうちの1つで、標準的な共有結合技術を用い、アルブミンまたはハプテンなどの担体分子に追加的にコンジュゲートすることができる。さらに、志賀毒素のβサブユニット、特異的樹状細胞親和性を持つペプチド(Haicheur N、Bismuth E、Bosset S、Adotevi O、Warnier G、Lacabanne V、Regnault A、Desaymard C、Amigorena S、Ricciardi-Castagnoli P、Goud B、Fridman WH、Johannes L、Tartour E. The B subunit of Shiga toxin fused to a tumor antigen elicits CTL and targets dendritic cells to allow MHC class I-restricted presentation of peptides derived from exogenous antigens. J Immunol. 2000年9月15日: 165 (6): 3301〜8頁)、DEC-205受容体に対する親和性を持つペプチド(Sevilla他、J. Exp. Med.、2000、192: 1249〜1260頁)、DC-SIGNに対する抗体(Tacken PJ、de Vries IJ、Gijzen K、Joosten B、Wu D、Rother RP、Faas SJ、Punt CJ、Torensma R、Adema GJ、Figdor CG. Effective induction of naive and recall T-cell responses by targeting antigen to human dendritic cells via a humanized anti-DC-SIGN antibody. Blood. 2005年8月15日; 106 (4): 12
78〜85頁)などの、APCに対する特異的標的化を誘導する特異的分子実体を包含することがある。
【0128】
本発明の好ましい抗原の例は、(i)照射プラスモジウムスポロゾイトまたはマラリアスポロゾイト周囲(CS)タンパク質の少なくとも1つのT細胞および/またはB細胞エピトープを含む合成ペプチド抗原などのマラリア特異的抗原(以下を参照); (ii)インフルエンザウイルスに由来するものなどのウイルスタンパク質またはペプチド抗原(例えば、表面糖タンパク質ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)[シチメンチョウインフルエンザHAおよび鳥インフルエンザHA]); 免疫不全ウイルス(例えば、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)抗原、サル免疫不全ウイルス(SIV)抗原、またはgp120、gp160、p18抗原、Gag p17/p24、Tat、Pol、Nef、およびEnvなどのヒト免疫不全ウイルス抗原(HIV)); ヘルペスウイルス(例えば、糖タンパク質、例えば、ネコヘルペスウイルス、ウマヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、イヌヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV、例えば、HSV tk、gB、gD)、マレック病ウイルス、シチメンチョウのヘルペスウイルス(HVT)、またはサイトメガロウイルス(CMV)、またはエプスタイン-バーウイルス); 肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原(HBsAg)); (iii)グラム陰性菌細胞壁から単離されたリポ多糖などの細菌性抗原およびブドウ球菌特異的、連鎖球菌特異的、肺炎球菌特異的(例えば、PspA[PCT公開第WO92/14488号を参照])、淋菌特異的、ボレリア特異的(例えば、ライム病ボレリア、ボレリアアフゼリ(Borrelia afzelii)、ボレリアガリニ(Borrelia garinii)などのライム病に関係するボレリアのOspA、OspB、OspC抗原[例えば、米国特許第5,523,089号; PCT公開第WO90/04411号、第WO91/09870号、第WO93/04175号、第WO96/06165号、第WO93/08306号; PCT/US92/08697; Bergstrom他、Mol. Microbiol.、3: 479〜486頁; Johnson他、Infect. and Immun. 60: 1845〜1853頁、1992; Johnson他、Vaccine 13: 1086〜1094頁、1995; The Sixth International Conference on Lyme Borreliosis: Progress on the Development of Lyme Disease Vaccine、Vaccine 13: 133〜135頁、1995を参照])、および(iv)ErbB受容体、Melan A[MARTI]、gp100、チロシナーゼ、TRP-1/gp75、およびTRP-2(黒色腫における); MAGE-1およびMAGE-3(膀胱癌、頭頸部癌、および非小細胞癌における); HPV EGおよびE7タンパク質(子宮頸癌における); ムチン[MUC-1](乳癌、膵臓癌、大腸癌、および前立腺癌における); 前立腺特異的抗原[PSA](前立腺癌における); 癌胎児性抗原[CEA](大腸癌、乳癌、および消化管癌における)などの腫瘍特異的タンパク質およびMAGE-2、MAGE-4、MAGE-6、MAGE-10、MAGE-12、BAGE-1、CAGE-1、2、8、CAGE-3〜7、LAGE-1、NY-ESO-1/LAGE-2、NA-88、GnTV、TRP--INT2、およびWT-1(ウィルムス腫瘍遺伝子)などの共通腫瘍特異的抗原を包含する。
【0129】
抗原の上記のリストは、例示的であることを意図しており、対象の抗原は、いかなる動物またはヒトの病原体または腫瘍に由来してもよい。対象の病原体由来抗原をコードするDNAに関しては、例えば、米国特許第4,722,848号; 第5,174,993号; 第5,338,683号; 第5,494,807号; 第5,503,834号; 第5,505,941号; 第5,514,375号; 第5,529,780号; 英国特許第GB 2 269 820 B号; およびPCT公開第WO92/22641号; 第WO93/03145号; 第WO94/16716号; 第WO96/3941号; PCT/US94/06652に注意を向けられたい。腫瘍ウイルスに由来する抗原に関しては、Weiss他により編集されたMolecular Biology of Tumor Viruses, RNA Tumor Viruses、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1982も参照されたい。本発明の組成物において有用な追加の抗原のリストについては、Stedman's Medical Dictionary(第24版、1982)も参照されたい。
【0130】
一実施形態において、本発明の組成物は、マラリア、特にプラスモジウムヨエリ(Plasmodium yoelii)および主要なヒトプラスモジウム種熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)および三日熱マラリア原虫(P. vivax)に対する防御免疫を提供する。これらの組成物は、以下の成分; (i)好ましくは多様な遺伝的背景の哺乳動物において抗マラリアT細胞応答を誘発することができるT細胞エピトープを含む少なくとも1つのマラリア特異的ペプチド(例えば、YNRNIVNRLLGDALNGKPEEK[配列番号1]またはSYVPSAEQI[配列番号2]プラスモジウムヨエリCSタンパク質のT細胞エピトープ[Renia他、J. Immunol.、22: 157〜160頁、1993; Rodrigues他、Int. Immunol.、3: 579〜585頁、1991]または(NVDPNANP)n[配列番号3]またはEYLNKIQNSLSTE WSPCSVT[配列番号4]熱帯熱マラリア原虫CSタンパク質のT細胞エピトープ[Nardin他、Science、246: 1603頁、1989; Moreno他、Int. Immunol.、3: 997頁: 1991; Moreno他、J. Immunol.、151: 489頁、1993]); および/または(ii)抗マラリア(すなわち、中和)抗体の産生を刺激することができる(例えば、マラリア生物体のスポロゾイト期を対象にして) B細胞エピトープ(例えば、(NANP)3[配列番号5])熱帯熱マラリア原虫のCSタンパク質の反復領域内に位置しているB細胞エピトープ[Nardin他、J. Exp. Med.、156: 20頁、1982; Nardin他、Ann. Rev. Immunol.、11: 687、1993])を含む少なくとも1つのマラリア特定的ペプチドのうちの1つまたは複数を含む。本発明の免疫原性組成物は、少なくとも1つのB細胞エピトープおよび少なくとも1つのT細胞エピトープを含むことが好ましい。B細胞エピトープは、マラリアスポロゾイト周囲(CS)タンパク質を特異的に認識しそれに結合する抗体の産生を誘発することが好ましい。あるいは、またはさらに、本発明の組成物は、例えば、三日熱マラリア原虫赤血球分泌性タンパク質-1または-2(PvESP-1またはPvESP-2)(米国特許第5,874,527号を参照)、スポロゾイト表面タンパク質2(SSP2)とも呼ばれるトロンボスポンジン関連接着(無名)タンパク質(TRAP)と命名された熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト表面タンパク質、LSA-1、hsp70、SALSA、STARP、Hep17、MSA、RAP-1、およびRAP-2などの他のマラリア成分に由来し、それらと反応するB細胞および/またはT細胞エピトープを含むことがある。一実施形態において、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープ成分は、多抗原ペプチド(MAP)に組み込まれ、高密度のエピトープを含有する合成高分子ポリペプチドを形成する。MAP合成の方法は、当技術分野においてよく知られている(例えば、Tam、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85: 5409、1988; Tam、Meth. Enzymol.、168: 7、1989)。
【0131】
本発明は、四日熱マラリア原虫(P. malariae)、卵形マラリア原虫(P. ovale)、プラスモジウムレイケノウィ(P. reichenowi)、サルマラリア原虫(P. knowlesi)、サル三日熱マラリア原虫(P. cynomolgi)、プラスモジウムブラシリアヌム(P. brasilianum)、ネズミマラリア原虫(P. berghei)、およびネズミマラリア原虫(P. chabaudi)を包含するがこれらに限定されない他のプラスモジウム種に由来するB細胞およびT細胞エピトープも包含する。これらのエピトープは、典型的には、プラスモジウムタンパク質に由来する8〜18個のアミノ酸残基を含む。
【0132】
別の具体的実施形態において、本発明の好ましい抗原は、HIV特異的である(p18タンパク質のT細胞エピトープRGPGRAFVTI[配列番号6]など)。
【0133】
具体的実施形態において、本発明の抗原は、抗原を発現する組み換えウイルスにより提供することができる。ウイルスは、組み換えアデノウイルス、組み換えポックスウイルス、および組み換えシンドビスウイルスからなる群から選択されることが好ましい。
【0134】
アジュバントとして使用される場合、本発明の化合物は、抗原を含む医薬組成物またはワクチン組成物の一部としてまたは別々の製剤として投与することができ、抗原を含有する第二の組成物と共同して投与される。これらの組成物のいずれかにおいて、本発明の化合物は、他のアジュバントおよび/または賦形剤/担体と組み合わせることができる。これらの他のアジュバントは、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、MF59、またはSAFなどの油-エマルジョンおよび乳化剤ベースのアジュバント; 水酸化アルミニウム(ミョウバン)、リン酸アルミニウムまたはリン酸カルシウムなどのミネラルゲル; コレラ毒素(CT)、百日咳毒素、大腸菌(Escherichia coli)易熱性毒素(LT)、変異毒素(例えば、LTK63またはLTR72)、カルメットゲラン桿菌(BCG)、コリネバクテリウムパルブム(Corynebacterium parvum)、DNA CpGモチーフ、ムラミルジペプチド、またはモノホスホリル脂質Aなどの微生物由来のアジュバント; 免疫刺激複合体(ISCOM)、リポソーム、生分解性ミクロスフェア、またはサポニン(例えば、QS-21)などの粒子状アジュバント; IFN-γ、IL-2、IL-12またはGM-CSFなどのサイトカイン; 非イオン性ブロックコポリマーなどの合成アジュバント、ムラミルペプチド類似体(例えば、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン[thr-MDP]、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-[1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ]-エチルアミン)、ポリホスファゼン、または合成ポリヌクレオチド、ならびにリゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、炭化水素エマルジョン、またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を包含するが、これらに限定されない。これらの追加のアジュバントは、ヒトにおける使用に薬学的に許容できることも好ましい。
【0135】
組成物の純度
本発明の化合物は、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の純度レベルまで精製されることが好ましい。
【0136】
有効用量
疾患を治療するのに有効な量は、用量および投与頻度のマトリクスを策定し、一群の実験的な単位または対象をマトリクス中の各点と比較することなどにより、当業者に知られている経験的方法により容易に決定することができる。患者に投与するべき正確な量は、特定の疾患、疾患の状態および重症度、および患者の身体的条件に応じて変わるであろう。任意の症状またはパラメーターの測定可能な改善は、当技術分野に熟練した医師が決定するか、または患者が医師に報告することができる。臨床的に有意な減弱または改善は、患者および/または医師に認知可能であることを意味する。
【0137】
任意の特定の患者にとっての具体的な剤形および投与量が、用いられる具体的な化合物の活性; 治療されている個体の年齢、体重、一般的健康、および性別; 投与の時間および経路; 排泄の速度; 以前に投与された他の薬物; ならびに治療を受けている特定の疾患の重症度を包含する様々な要素によって異なるであろうことも理解されるであろう。
【0138】
投与するべき薬剤の量は、約0.1〜約500μg/kg/投与、好ましくは約0.5〜約100μg/kg/投与、最も好ましくは約1〜約50μg/kg/日の範囲であってよい。本発明の医薬組成物が、それ自体で、障害を治療するのに有効である薬剤の全量を含有する必要がなく、そのような医薬組成物の複数の投与量を投与することにより、そのような有効量に達することができることは理解されるであろう。
【0139】
例えば、本発明の化合物は、各々が、本発明の化合物0.06〜3.00mgを含有することが好ましいカプセル剤または錠剤に製剤化することができる。
【0140】
本発明の化合物を含有する組成物の毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手順により、例えば、LD50(母集団の50%に対して致死的な投与量)およびED50(母集団の50%において治療的に有効な投与量)を決定することにより決定することができる。毒性効果と治療効果の間の投与量比は、治療係数であり、治療係数は、比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療係数を示す組成物が好ましい。毒性の副作用を示す治療薬を使用することがあるが(例えば、重症の癌または生命にかかわる感染症を治療する場合)、そのような免疫原性組成物が特定の部位(例えば、免疫応答を媒介するリンパ系組織、腫瘍または感染性因子の複製を支える臓器)を標的にする送達システムを設計し、他の組織または臓器に対する潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を軽減するように注意するべきである。
【0141】
上記で規定されているように、動物試験から得られるデータは、ヒトにおいて使用するための用量範囲を策定するのに使用することができる。ヒトにおける本発明の化合物の治療的に有効な用量は、毒性がほとんど、または全くないED50を包含する循環濃度の範囲内にあることが好ましい。用量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変わることがある。理想的には、単回投与を用いるべきである。
【0142】
(実施例)
以下の実施例は、その範囲を限定することなく本発明を例示している。
【0143】
I.合成実施例
A.中間体の調製
脂質鎖-C(O)-Qを形成するための中間体は、以下の合成スキーム1Aおよび1Bに示すように調製することができる。
【0144】
【化11】
【0145】
【化12】
【0146】
スキーム1Aおよび1Bにおいて、Alkの各出現は、脂肪酸中の炭素原子の総数が23〜32個の炭素原子であるようなアルキル鎖を表す。スキーム1Aにおいて、カルボン酸(A)は、DICの存在下にパラニトロフェノールを用いてパラニトロフェノールエステル(B)に変換される。同様に、アルケノール(E)は、水素化ナトリウムおよび適切なハロゲン化アルカンで処理することによりアルケン-エーテル(F)に変換される。最後に、パラニトロフェノールエステル(B)は、第二世代グラブス触媒の存在下に(B)を適切なアルケン化合物と反応させることにより最終的な脂肪酸(D)または(G)に変換される。中間体(D)または(G)は、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーなどにより、当技術分野において知られている方法により精製することができる。
【0147】
具体的中間体の合成を以下のスキーム2A〜2Eに示す。
【0148】
【化13】
【0149】
【化14】
【0150】
【化15】
【0151】
【化16】
【0152】
化合物2: 無水DCM(120ml)中の出発ウンデシレン酸(4.1g、22.2mmol、1.1当量)の溶液にパラニトロフェノール(2.9g、20.9mmol)を加えた。DIC(3.6ml、1.2当量)および4-DMAP(60mg)の存在下に、反応混合物を一夜にわたって室温にて撹拌すると、t.l.c.(PE-EA 6:1、Rf: 0.52)は、反応が終了したことを示した。懸濁液をDCMで希釈し、セライトに通して濾過した。濾液を濃縮すると、残渣が得られた。残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル-CHCl3 2:1)により精製すると、エステル2(6.23g、98%)が得られた。
1H NMR (300MHz, CDCl3) 8.31 (d, J = 9.2Hz, 2H)、7.32 (d, J = 9.2Hz, 2H)、5.84 (m, 1H, H-10)、5.03 (m, 2H, H-11)、2.64 (t, J = 7.5Hz, 2H, H-2)、2.09 (m, 2H, H-9)、1.80 (m, 2H, H-3)、1.48〜1.35 (m, 10H, H-4-8)、3.96 (br s, 1H)、3.87 (dd, J = 9.8, 2.4Hz, 1H)、3.51 (m, 2H)、2.50 (d, J = 2.1Hz, 1H)。13C NMR (75MHz, CDCl3): 171.1、155.5、145.2、139.0、125.1、122.3、114.2、34.4、33.8、29.3、29.2、29.1、29.0、24.9。
【0153】
化合物2a: メタノール中の出発ウンデシレン酸の溶液にDCCおよび4-DMAPを加える。反応混合物を室温にて一夜にわたって撹拌する。
【0154】
化合物4: 乾燥CH2Cl2(15ml)中の化合物2(197mg、0.646mmol)および1-エイコセン(850mg、4.2当量)の撹拌した溶液に、第二世代グラブス触媒(65mg、12mol%)を加え、混合物を1日にわたって還流すると、t.l.c.(PE-DCM 1:1、Rf: 0.40)は、エステル2の消費を示した。反応物を真空中で濃縮し、次いで、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(PE-DCM 2:1)にかけると、表題化合物4(190mg、53%、トランス/シス: 4:1)が得られた。
1H NMR (500MHz, CDCl3) 8.27 (d, J = 9.1Hz, 2H)、7.28 (d, J = 9.1Hz, 2H)、5.35 (m, 2H, H-10, H-11)、2.59 (t, J = 7.5Hz, 2H, H-2)、2.02 (m, 4H, H-9, H-12)、1.76 (五重線, J = 7.5Hz, 2H, H-3)、1.42〜1.25 (m, 42H, H-4-8, H-13-H-28)、0.88 (t, J = 6.7Hz, 3H, H-29)、13C NMR (125MHz, CDCl3): 171.3、155.6、145.3、130.5、130.2、125.2、122.4、34.3、32.6、32.6、31.9、29.7、29.7、29.6、29.5、29.4、29.3、29.2、29.1、29.0、24.7、22.7、14.1。
【0155】
化合物4a: 乾燥CH2Cl2中の化合物2aおよび1-エイコセンの撹拌した溶液に、第二世代グラブス触媒を加え、混合物を1日にわたって還流する。次いで、反応物を真空中で濃縮し、次いで、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにかけると、表題化合物4aが得られる。
【0156】
化合物6: 無水THF(15ml)およびDMF(5ml)中のω-ウンデシレニルアルコール(2ml、98%、9.74mmol)の溶液に、10分で0℃にて水素化ナトリウム(鉱油中60%、584mg、1.5当量)を加え、続いて、TBAI(80mg)および1-ブロモペンタン(1.82ml、1.5当量)を加えた。還流下で一夜にわたって撹拌した後、t.l.c.(PE-EA 6:1)は、アルコールの消費を示した。混合物をDCMで希釈し、水でクエンチした。水相をDCM(3×)で抽出し、飽和重炭酸ナトリウム、次いで、食塩水で洗浄した。有機相を乾燥し(硫酸ナトリウム)、濃縮し、残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル-DCM、3:1)により精製すると、エーテル6(2.21g、99%、PE-DCM 3:1でRf: 0.12)が得られた。化合物7は、94%の収率で6と同じように製造した。
【0157】
6: 1H NMR (500MHz, CDCl3) 5.81 (m, 1H, H-10)、4.95 (m, 2H, H-11)、3.38 (t, J = 7.0Hz, 4H, H-1, H-1')、2.03 (m, 2H, H-9)、1.56 (m, 4H, H-2, H-2')、1.37〜1.27 (m, 16H, H-3-8; H-3'-4')、0.88 (t, J = 6.9Hz, 3H, H-5')。13C NMR (125MHz, CDCl3): 138.9、114.1、71.0、70.6、33.8、31.9、29.8、29.5、29.5、29.4、29.1、28.9、26.2、19.4、14.1。
【0158】
化合物8: 乾燥クロロホルム(20ml)中のエステル2(190mg、0.623mmol)およびエーテル6(200mg、0.833mmol、1.3当量)の撹拌した溶液に第二世代グラブス触媒(36mg、7mol%)を加え、混合物を1日にわたって還流し、反応物を真空中で濃縮し、次いで、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィー(PE-DCM 3: 2)にかけると、表題化合物8(174mg、84%、トランス/シス: 4:1、PE-DCM 1:1でRf: 0.16)が得られた。化合物9は、81%の収率で8と同じように製造した。
【0159】
8: 1H NMR (500MHz, CDCl3) 8.26 (d, J = 9.0Hz, 2H)、7.27 (d, J = 9.1Hz, 2H)、5.37 (m, 2H, H-10, H-11)、3.38 (t, J = 6.7Hz, 4H, H-20, H-22)、2.58 (t, J = 7.5Hz, 2H, H-2)、1.96 (m, 4H, H-9, H-12)、1.75 (五重線, J = 7.4Hz, 2H, H-3)、1.56 (m, 4H, H-19, H-23)、1.39 (m, 2H, H-4)、1.32〜1.25 (m, 24H, H-5-8, H-13-18, H-24-25)、0.88 (t, J = 6.7Hz, 3H, H-26)。13C NMR (125MHz, CDCl3): 171.1、155.6、145.3、130.5、130.2、125.2、122.4、71.0、34.3、32.6、32.7、29.8、29.7、29.6、29.5、29.3、29.2、29.0、26.2、25.8、24.7、22.6、14.1。
【0160】
化合物13: 化合物4aをDCM/MeOH(1:1)中に溶解し、その溶液に5%炭素上Pd(30mol%)を加える。次いで、反応混合物を、反応がTLC分析により完了していると判断されるまで水素下で撹拌する。次いで、反応物を真空中で濃縮し、次いで、シリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにかけると、表題化合物13が得られる。
【0161】
化合物14: メチルエステル13(147mg、0.32mmol)をiPrOH/THF(1:1) 10 ml中に溶解し、それに水(2ml)中のNaOH 100mgを加えた。混合物を5時間にわたって60℃にて撹拌すると、tlc(PE/EA 12:1)は、加水分解が完了したことを示した。2N HClで中和した後、溶液を真空中で直接濃縮した。DCM(10ml)中の上記脂肪酸残渣の溶液にパラニトロフェノール(160mg、0.5mmol)を加えた。DCC(160mg)および4-DMAP(35mg)の存在下に、反応混合物を一夜にわたって室温にて撹拌すると、t.l.c.(PE-EA 10:1)は、反応が終了したことを示した。懸濁液をDCMで希釈し、それに少量のシリカゲルを加えた。蒸発させた後、残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA 20:1)により精製すると、エステル14(154mg、86%)が得られた。
【0162】
1H NMR (500MHz, CDCl3) 8.27 (d, J = 9.1Hz, 2H)、7.28 (d, J = 9.1Hz, 2H)、2.59 (t, J = 7.5Hz, 2H, H-2)、1.76 (五重線, J = 7.5Hz, 2H, H-3)、1.41 (五重線, J = 7.0Hz, 2H, H-4)、1.37〜1.22 (m, 48H, H-5〜H-28)、0.88 (t, J = 7.0Hz, 3H, H-29)。13C NMR (125MHz, CDCl3): 171.3、155.6、145.3、125.2、122.4、34.4、33.7、31.9、30.2、29.7、29.7、29.6、29.6、29.5、29.4、29.4、29.2、29.2、29.1、26.7、24.8、22.7、14.1。
【0163】
ジュリア-リスゴー-コシェンスキーカップリング化学反応を用いる具体的中間体の合成への代替アプローチをスキーム2Eに記載する。このアプローチを用い、市販の臭化アルキル18を市販のベンゾチアゾールチオール19と反応させ、臭化物の置換後にカルボン酸20を形成する。次いで、カルボン酸20上のチオエーテルをmCPBAで酸化し、スルホン21を形成する。次いで、スルホン21をジュリア-リスゴー-コシェンスキー条件下でリチウムヘキサメチルジシラジドの存在下にアルデヒド23(例えば、Swern条件を用いて市販のアルコール22から合成する)と反応させる。これにより、アルケンカルボン酸24が得られる。次いで、カルボン酸24を、DCCおよびDMAPの存在下にp-ニトロフェノールで処理して不飽和p-ニトロフェニルエステル4へ直接、または(1)水素の存在下に例えば5%炭素上パラジウムを使って水素化し、(2)得られる飽和酸25をDCCおよびDMAPの存在下にp-ニトロフェノールで処理することにより飽和p-ニトロフェニルエステル14のどちらかへ変換することができる。
【0164】
【化17】
【0165】
B.糖脂質の調製
本発明の糖脂質は、以下のスキーム3に示す方法により調製することができる。
【0166】
【化18】
【0167】
スキーム3において、Zは、-CH=CH-、O、-O-Alk-CH=CH-、または-CH=CH-O-であり、Alkの各出現は、独立して、脂肪酸鎖中の炭素原子の総数が23〜32個の炭素原子であるようなアルキル鎖を表す。化合物(H)を、好ましくはジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸およびトリエチルシランで処理することにより脱保護し(すなわち、BOCおよびイソプロピリデン保護基が除去される)、脂肪酸エステル(D)または(G)と反応させて化合物(I)を製造する。次いで、化合物(I)を、例えば、ナトリウムおよびアンモニアで脱保護し、アルケン-リンカー化合物(J)を製造するか、または炭素上パラジウムの上で例えば水素で還元してアルカン結合型化合物(K)を製造する。化合物は、フラッシュカラムクロマトグラフィーなどにより、当技術分野において知られている方法により精製することができる。
【0168】
化合物(H)は、以下のスキーム3aに概説されているように塩基に不安定な糖アルデヒド(L)とスルホン(M)の間のワンポットジュリア-リスゴー-コシェンスキー反応を用いることにより調製することができる。
【0169】
【化19】
【0170】
化合物(H)の-CH2-CH2-結合型類似体である化合物(T)の代替合成を以下のスキーム3bに描く。
【0171】
【化20】
【0172】
スキーム3bにおいて、アルデヒド(O)は、アルケン(N)から誘導する。Wittig化学反応を介するホモログ化と、続くアルコールへの還元により、エポキシ(Q)を形成するための確立したシャープレスエポキシ化で処理するためのアリル型アルコールが得られる。反転を伴うアジ化ナトリウム開環により、保護されたアミノヒドロキシアルデヒド(S)が生じる。次いで、グリニャール化学反応により、アルコール(T)が得られる。
【0173】
具体的糖脂質の合成を以下のスキーム4に示す。
【0174】
【化21】
【0175】
アミド形成のための典型的手順: 化合物10(53mg、0.054mmol)をDCM(4ml)中に溶解し、それに、0℃にて適当な量のトリフルオロ酢酸(0.2ml)およびトリエチルシラン(0.1ml)を加えた。2時間にわたって室温にて撹拌した後、混合物を真空中で直接濃縮した。THF中の上記残渣の溶液に、脂肪酸のp-ニトロフェニルエステル4(31mg、1.03当量)および触媒量のDMAPを加えた。次いで、混合物を2時間にわたって室温にて撹拌すると、t.l.c.(石油エーテル-EtOAc、2:1)は、アミド化が終了したことを示した。混合物を蒸発させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル-EtOAc-CHCl3、2.5:1:0.5)により精製すると、化合物11(39mg、2ステップで58%)が得られた。
【0176】
化合物11(E-アミド鎖): 1H NMR(500MHz, CDCl3): 7.37〜7.23 (m, 20H, 4 Ph)、5.97 (dd, 1H, J2,1 = 15.3Hz, J2,3 = 6.7Hz, H-2)、5.89 (m, 2H, NH, H-1)、5.37 (s, 2H, H-10", H-11")、4.75および4.53 (2d, 2H, J = 11.9Hz, PhCH2)、4.73 (t, 1H, J3,NHおよび3,2 = 7.0Hz, H-3)、4.66 (s, 2H, PhCH2)、4.65および4.60 (2d, 2H, J = 12.2Hz, PhCH2)、4.57 (br s, 1H, H-1')、4.50および4.44 (2d, 2H, J = 11.9Hz, PhCH2)、3.99 (br s, 2H, H-2', H-5')、3.89 (s, 1H, H-4')、3.69 (dd, 1-H, J6'a,6'b = 9.2Hz, J6'a,5 = 7.3Hz,H-6'a)、3.59 (dd, 1H, J3',2' = 8.2Hz, J3',4' = 2.1Hz, H-3')、3.48 (dd, 1H, J6'b,6'a = 10.3Hz, J6'b,5 = 4.7Hz, H-6'b)、3.45 (br, 2H, H-4, H-5)、2.99 (d, 1H, J = 7.0Hz, OH-4)、2.16 (t, 2H, J2",3" = 7.3Hz, H-2")、1.95 (br s, 4H, H-9", H-12")、1.79 (d, J = 6.1Hz, OH-5)、1.62 (m, 2H, 2×H-3")、1.42〜1.18 (m, 68H, 2×H-4"〜2×H-8", 2×H-13"〜2×H-28", 2×H-6〜2×H-18)、0.88 (t, 6H, J = 6.9Hz, 3×H-19, 3×H-26"); 13C NMR (125MHz, CDCl3) 173.1、138.4、138.3、138.2、138,0、130.4、130.2、129.8、128.4、128.3、128.1、127.8、127.8、127.7、127.6、127.4、126.2、115.6、78.2、76.9、76.7、74.5、73.6、73.2、73.3、73.1、72.9、68.7、53.7、36.8、33.8、32.6、31.9、29.7、29.7、29.5、29.4、29.2、25.7、25.7、22.7、14.1。
【0177】
化合物13(E/Zアミド鎖4:1): 1H NMR(500MHz, CDCl3): 7.34〜7.22 (m, 20H, 4 Ph)、5.97 (dd, 1H, J2,1 = 15.6Hz, J2,3 = 6.5Hz, H-2)、5.91〜5.86 (m, 2H, NH, H-1)、5.37 (s, 2H, H-10", H-11")、4.76および4.54 (2d, 2H, J = 11.6Hz, PhCH2)、4.72 (t, 1H, J3,NHおよび3,2 = 7.0Hz, H-3)、4.67 (s, 2H, PhCH2)、4.65および4.60 (2d, 2H, J = 12.2Hz, PhCH2)、4.57 (br s, 1H, H-1')、4.50および4.44 (2d, 2H, J = 11.9Hz, PhCH2)、4.00 (br s, 2H, H-2', H-5')、3.90 (t, 1H, J = 2.6Hz, H-4')、3.69 (dd, 1-H, J6'a,6'b = 9.9Hz, J6'a,5 = 7.4Hz, H-6'a)、3.59 (dd, 1H, J3',2' = 8.4Hz, J3',4' = 5.9Hz, H-3')、3.50 (dd, 1H, J6'b,6'a = 10.2Hz, J6'b,5 = 4.5Hz, H-6'b)、3.46 (br, 2H, H-4, H-5)、3.39 (t, 4H, J = 6.7Hz, H-20", H-22")、2.98 (br s, 1H, OH-4)、2.16 (t, 2H, J2",3" = 7.5Hz, H-2")、1.95 (br s, 4H, H-9", H-12")、1.80 (br s, OH-5)、1.62 (m, 2H, 2×H-3")、1.56 (m, 4H, H-19", H-23")、1.42〜1.20 (m, 54H, 2×H-4"〜2×H-8", 2×H-13"〜2×H-18",2×H-24"〜2×H-26", 2×H-6〜2×H-18)、0.88 (t, 6H, J = 6.9Hz, 3×H-19, 3×H-27"); 13C NMR (125MHz, CDCl3) 173.1、138.5、138.3、138.2、138.1、130.4、130.3、129.8、128.4、128.4、128.3、128.3、128.1、127.8、127.8、127.7、127.6、127.6、127.5、78.2、76.9、76.7、74.7、73.76、73.3、73.2、73.0、71.0、53.8、36.9、33.8、32.6、31.9、31.7、29.8、29.8、29.7、29.7、29.7、29.6、29.6、29.5、29.5、29.4、29.3、29.2、29.2、29.2、26.2、25.9、25.7、22.7、22.6、14.1、14.0。
【0178】
化合物トランス-(A-1): 1H NMR(500MHz, ピリジン-d5): δ 8.67 (d, 1H, J = 8.7Hz, NH)、6.92 (m, 2H, H-1, H-2)、6.86 (br s, 1H, 2'-OH)、6.57 (br s, 1H, 4-OH)、6.52 (br s, 1H, 3'-OH)、6.43 (br s, 1H, 6'-OH)、6.35 (br s, 1H, 4'-OH)、6.28 (br s, 1H, 5-OH)、5.93 (m, 1H, H-3)、5.53 (m, 2H, H-10", H-11")、5.15 (m, 1H, H-1')、4.84 (dd, 1H, J3',2' = 9.1Hz, J1',2' = 6.1Hz, H-2')、4.61 (br s, 1H, H-4')、4.58 (t, 1H, J = 6.0Hz, H-5')、4.37 (m, 2H, H-6a', H-6b')、4.28 (m, 3H, H-3', H-4, H-5,)、2.45 (t, 2H, J = 7.5Hz, H-2")、2.31 (m, 1H, H-6a)、2.06 (m, 4H, H-9", H-12")、1.93 (m, 2H, H-7a, H-6b)、1.83 (m, 2H, H-3")、1.70 (m, 1H, H-7b)、1.44〜1.17 (m, 62H, H-8〜H-18, H-4"〜H-8", H-13"〜H-28")、0.88 (t, 6H, J = 6.8Hz, 3×H-19, 3×H-29")。
【0179】
A-2: 1H NMR(500MHz, ピリジン-d5): 8.55 (d, 1H, J = 9.5Hz, NH)、6.90 (m, 2H, H-1, H-2)、6.71 (br s, 1H, 2'-OH)、6.44 (br s, 1H, 4-OH)、6.37 (br s, 1H, 3 '-OH)、6.29 (br s, 1H, 6'-OH)、6.22 (d, 1H, J = 4.0Hz, 4'-OH)、6.13 (br s, 1H, 5-OH)、5.89 (m, 1H, H-3)、5.15 (m, 1H, H-1')、4.84 (m, 1H, H-2')、4.60 (br s, 1H, H-4')、4.56 (dt, 1H, J = 5.9Hz, 1.7Hz, H-5')、4.41 (m, 2H, H-6a', H-6b')、4.29 (m, 3H, H-3')、4.26 (m, 2H, H-4, H-5,)、2.45 (t, 2H, J = 7.5Hz, H-2")、2.28 (m, 1H, H-6a)、1.93 (m, 2H, H-7a, H-6b)、1.84 (m, 2H, H-3")、1.71 (m, 1H, H-7b)、1.46〜1.17 (m, 72H, H-8〜H-18, H-4"〜H-28")、0.89 (t, 6H, J = 6.9Hz, 3×H-19, 3×H-29")。13C NMR (125MHz, ピリジン-d5) 175.1、132.4、127.8、78.7、76.8、74.9、73.1、73.0、71.3、70.6、63.0、54.3、37.4、34.9、34.5、32.5、30.9、30.7、30.5、30.5、30.4、30.3、30.3、30.2、30.2、30.2、30.0、27.5、26.9、26.8、23.3、14.6。
【0180】
A-3: MS(ES、m/z): 896.7(M+H)+; 1H NMR(500MHz, ピリジン-d5): 8.39 (d, 1H, J = 8.8Hz, NH)、6.61 (d, 1H, J = 4.0Hz, 2'-OH)、6.45 (d, 1H, J = 4.8Hz, 4-OH)、6.33 (m, 2H, 3'-OH, 6'-OH)、6.12 (d, 1H, J = 4.1Hz, 4'-OH)、5.94 (d, 1H, J = 4.2Hz, 5-OH)、5.53 (m, 2H, H-11", H-12")、5.13 (m, 1H, H-3)、4.72 (m, 1H, J3',2' = 9.3Hz, H-2')、4.52 (m, 3H, H-1', H-4', H-6a')、4.36 (m, 1H, H-6b')、4.23 (m, 4H, H-3', H-4, H-5, H-5')、2.72 (m, 1H, H-2a)、2.58 (m, 1H, H-1a)、2.46 (m, 2H, H-2")、2.33 (m, 2H, H-6a, H-1b)、2.31 (m, 1H, H-1b)、2.22 (m, 1H, H-2b)、2.06 (m, 4H, H-10", H-13")、1.94 (m, 2H, H-7a, H-6b)、1.85 (m, 2H, H-3")、1.71 (m, 1H, H-7b)、1.48〜1.17 (m, 64H, H-8〜H-18, H-4"〜H-9", H-14"〜H-28")、0.89 (t, 6H, J = 6.8Hz, 3×H-19, 3×H-29"); 13C NMR (125MHz, ピリジン-d5) 173.8、131.2、131.1、78.9、77.4、74.2、73.1、72.6、71.0、70.8、63.1、53.1、37.4、34.9、33.3、32.5、30.8、30.6、30.5、30.4、30.4、30.3、30.3、30.2、30.2、30.2、30.1、30.0、30.3、29.9、27.0、26.9、26.9、23.3、23.0、14.6。
【0181】
A-5(およびA-4): 1H NMR(500MHz, ピリジン-d5): δ 8.49 (d, 1H, J = 9.0Hz, NH)、6.73 (d, 1H, J = 4.7Hz, 2'-OH)、6.56 (d, 1H, J = 4.7Hz, 4-OH)、6.46 (m, 2H, 3'-OH, 6'-OH)、6.24 (d, 1H, J = 4.4Hz, 4'-OH)、6.07 (d, 1H, J = 4.7Hz, 5-OH)、5.13 (m, 1H, H-3)、4.72 (dd, 1H, J3',2' = 8.7Hz, J1',2' = 5.5Hz, H-2')、4.50 (m, 3H, H-1', H-4', H-6a')、4.36 (dd, 1H, J6a',6b' = 11.3Hz, J5',6b' = 4.5Hz, H-6b')、4.23〜4.19 (m, 4H, H-3', H-4, H-5, H-5')、3.39 (m, 4H, H-20", H-22")、2.71 (m, 1H, H-2a)、2.58 (m, 1H, H-1a)、2.45 (m, 2H, H-2")、2.30 (m, 2H, H-6a, H-1b)、2.19 (m, 1H, H-2b)、1.91 (m, 2H, H-7a, H-6b)、1.83 (m, 2H, H-3")、1.68 (m, 1H, H-7b)、1.60 (m, 4H, H-19", H-23")、1.51〜1.18 (m, 56H (またはA-4の58H)、H-8〜H-18, H-4"〜H-18", H-24"-H-25" (またはA-4のH-26))、0.85 (t, 6H, J = 6.9Hz, 3×H-19, 3×H-26"); 13C NMR (125MHz, ピリジン-d5) 173.8、78.8、77.5、74.1、73.0、72.5、71.3、71.0、70.7、63.1、53.0、37.3、34.8、32.5、32.3、30.7、30.6、30.5、30.4、30.3、30.2、30.2、30.0、27.0、26.9、26.6、23.3、14.6。
【0182】
A-6: 化合物A-6は、化合物10を化合物16と反応させてベンジル保護A-6を形成することを除いて、化合物A-1について上記に記載したのと同じ手順を用いて調製する。次いで、ベンジル基を、アンモニア中のナトリウムで除去すると、表題化合物A-6が得られる。
【0183】
A-7: 化合物A-7は、化合物10をp-ニトロフェニル-ω-フェニルヘプタノエートと反応させてベンジル保護A-7を形成することを除いて、化合物A-1について上記に記載したのと同じ手順を用いて調製する。次いで、ベンジル基を、アンモニア中のナトリウムで除去すると、表題化合物A-7が得られる。
【0184】
p-ニトロフェニル-ω-フェニルヘプタノエートは、1当量のDCCおよび5mol%のDMAPの存在下にジクロロメタン中の等モルのp-ニトロフェノールおよびフェニルヘプタン酸を反応させることにより調製する。ジシクロヘキシル尿素の沈殿を、反応が完了した後で濾去し、ジクロロメタンを真空中で除去する。次いで、材料を、精製のためにシリカゲル上で素早くクロマトグラフを行う。
【0185】
II.生物学的実施例
(実施例1)
本発明の化合物のin vivo投与により放出されるTh1型およびTh2型サイトカインの動態的プロフィールの決定
材料および方法
供試化合物
α-GalCer(KRN7000)は、Kirin Brewery(Gumma、Japan)により合成された。α-C-GalCer(CRONY 101)は、Schmieg J、Yang G、Franck RW、Tsuji M. 2003. Superior protection against malaria and melanoma metastases by a C-glycoside analogue of the natural killer T cell ligand α-galactosylceramide. J Exp Med 198: 1631〜1641頁に記載されているように合成した。
【0186】
【化22】
【0187】
他の供試合成C-糖脂質は、上記に記載されているように合成した。
【0188】
In vivo化合物投与
5〜6週齢雌性C57BL/6マウスおよびBALB/cマウスは、Taconicから購入した。各糖脂質は、100% DMSO中で1mg/mlにて保存した。マウスに、200μLの無菌リン酸塩緩衝食塩水(PBS)で希釈した各糖脂質1μgを静脈内注射した。指示された時点で、血清を各動物から集め、血清中のIFN-γ、IL-4、およびIL-12の濃度を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により評価した。
【0189】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によるサイトカイン評価
IFN-γ、IL-4、およびIL-12の血清濃度は、ELISAキット(eBioscience、San Diego、CA)を用いて評価した。手短に言えば、96ウエル平底ELISAプレート(NUNC)を、製造業者の推奨に従って捕捉抗体でコーティングし、4℃にて一夜にわたってインキュベートした。プレートをPBS + 0.05% Tween 20(PBS-T)で洗浄し、次いで、室温にて1時間にわたって製造業者提供のブロッキング溶液と共にインキュベートし、非特異的結合部位をブロックした。PBS-Tで洗浄した後、1:10に希釈した血清をウエルに加え、室温にて2時間にわたってインキュベートした。次いで、プレートを、ビオチン化検出抗体と共に1時間にわたって室温にてインキュベートし、洗浄し、室温にて30分にわたって西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とコンジュゲートしたアビジンと共にインキュベートし、洗浄し、最後に、室温にて10分にわたり、暗所においてテトラメチルベンジジン基質溶液と共にインキュベートした。抗体、アビジン-HRP、および基質溶液はすべて、製造業者の推奨に従って希釈した。反応を2.0 N硫酸で停止させ、各ウエル中のサイトカイン濃度を、各ウエル中の450nmにおける吸光度を、知られている標準品と比較することにより決定した。
【0190】
結果
Th1型およびTh2型サイトカインのレベルを、2種の異なる遺伝的背景、すなわち、C57BL/6マウスおよびBALB/cマウスにおいて決定した。以下の化合物: A=化合物(A-1トランス-配座異性体)、B=化合物(A-2)、C=化合物(A-3)、D=化合物(A-4)、E=化合物(A-5)、Z=対照(PBS単独)、CRONY=α-C-GalCer、KRN=α-GalCer、GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)、GCK152(A-7)を投与した。サイトカインのレベルは、化合物投与から0、2、6、12、24、48、および72時間後に測定した。Th1型サイトカインIFN-γおよびIL-12のレベルを、それぞれ図2A〜Cおよび3A〜Cに要約する。Th2型サイトカインIL-4のレベルを、図4A〜Cに要約する。対応する数値も以下の表1〜6に提供する。表7は、Th1型免疫応答を選択的に刺激するそれらの能力の指標として使用することができる、様々な化合物についてのIFN-γ/IL-4およびIL-12/IL-4比を提供する。
【0191】
以下の通り、図および表から、α-GalCer(KRN)と比較した場合、本発明のいくつかの供試合成C-糖脂質は、(i)Th1型サイトカインIFN-γとIL-12の両方の同等かそれ以上のレベルおよび長時間分泌ならびに(ii)Th2型サイトカインIL-4のかなり低いレベルを生じた。この効果は、化合物A-1(トランス-配座異性体)、A-2、およびA-5の場合に特に顕著であった。
【0192】
本発明の化合物が、Th2型サイトカイン誘導のない状態で高レベルのIL-12 Th1型サイトカインを選択的に誘導することができることから、これらの化合物が、局所的であり、樹状細胞の二次的活性化に伴うTh1型免疫応答の強力な選択的刺激因子であることを示唆される。したがって、本発明の化合物は、直接使用する場合でもアジュバントとして使用する場合でも、制御にTh1型応答を必要とする様々な疾患の治療に有用である。
【0193】
【表2】
【0194】
【表3】
【0195】
【表4A】
【表4B】
【0196】
【表5A】
【表5B】
【0197】
【表6A】
【表6B】
【0198】
【表7A】
【表7B】
【0199】
【表8】
【0200】
(実施例2)
マラリア感染および腫瘍転移を阻害する本発明の新規合成C-糖脂質の能力の決定
マウスに、単回投与の本発明の合成C-糖脂質GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)およびGCK127(A-2)または対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCerをi.m.、s.c.、i.v.またはi.p.で投与する。化合物の防御効果は、免疫感作から2〜8週後に決定する。
【0201】
マラリア感染に対する防御を試験する場合、感染した蚊の切開した唾液腺から得られるプラスモジウムヨエリスポロゾイトを投与誘発に使用する。血液期マラリア感染の発生を決定するための合成C-糖脂質または対照化合物で免疫感作されたマウスの投与誘発は、尾静脈への75個の生存スポロゾイトの静脈内(i.v.)注射により行う。投与誘発から4日後に始め、毎日、末梢血塗沫を各マウスから取得し、投与誘発後17日目まで血液期寄生虫の存在について顕微鏡的に検査する。マウスは、少なくとも1個の血液期寄生虫が検査時に観察された場合、寄生虫血症が陽性であると見なされる。
【0202】
肝臓期マラリア感染の発生を決定するための合成C-糖脂質または対照化合物で免疫感作されたマウスの投与誘発は、尾静脈への10,000個の生存スポロゾイトのi.v.注射により行う。投与誘発の結果は、Bruna-Romero他、Int. J. Parasitol. 31、1449〜1502頁、2001に教示されているように、定量的リアルタイムRT-PCR法を用いてマウスの肝臓におけるプラスモジウムヨエリ特異的18S rRNA分子を測定することにより40〜42時間後に決定する。手短に言うと、抽出RNAの逆転写後、cDNAが生成され、その量を、GeneAmp(登録商標) 5700 配列検出システム(PE Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いるリアルタイムPCRにより分析する。プライマーおよび蛍光プローブは、プラスモジウムヨエリ(17XNL) 18S rRNA配列を用い、ABI Prismプライマーエクスプレスソフトウェア(PE Biosystems)を用いて特注設計する。例えば、プライマー5’-GGGGATTGGTTTTGACGTTTTTGCG-3’(54nM)[配列番号7]および5’-AAGCATTAAATAAAGCGAATACATCCTTAT-3’(60nM)[配列番号8]を、生成されるPCR産物を検出するためにPCR反応緩衝液(PE Biosystems、Foster City、CA)中に組み入れられるdsDNA特異的色素SYBR Green Iと一緒に使用することができる。反応の温度プロフィールは、95℃で10分間と、続いて、95℃で15秒間の変性および60℃で1分間のアニーリング/伸長の35サイクルである。このアッセイにおいて検出される寄生虫由来18S cDNA分子の正確な量は、両方の肝臓試料から得られるCT値および既知量のプラスミド18S cDNAで作成される標準曲線から得られるCT値を用いる線形回帰分析により決定される。
【0203】
黒色腫肺転移の発生に対する合成C-糖脂質または対照化合物で免疫感作されたマウスの防御のレベルは、10% FCSを添加したDMEMに懸濁した5×104個の同系B16黒色腫細胞で、最初にマウスを静脈内投与誘発することにより決定する。投与誘発から2週間後、Fujii他、Natl. Immunol.、3、867〜874頁(2002)に記載されているように、マウスを屠殺し、肺を摘出し、転移性結節の数を数える。
【0204】
本発明のすべての合成C-糖脂質は、生マラリア投与誘発および黒色腫転移に対してマウスを防御する強力な活性を示す。
【0205】
(実施例3)
本発明の新規合成C-糖脂質のアジュバント効果の決定
マウスに、単回投与の本発明の合成C-糖脂質GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)およびGCK127(A-2)または対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer、ならびにプラスモジウムヨエリCSタンパク質を発現する組み換えアデノウイルス、AdPyCS(Rodrigues他、J. Immunol.、158: 1268〜1274頁、1997)の最適以下の投与量(1×107 p.f.u.)をi.m.、s.c.、i.v.またはi.p.で投与する。免疫感作から2〜8週後、一部のマウスを屠殺し、それらの脾臓を摘出し、ELISPOTアッセイによりマラリア特異的CD8+ T細胞応答のレベルを測定するためにリンパ球を得る。AdPyCS単独で免疫感作されたマウスを対照として使用する。
【0206】
AdPyCSおよび合成C-糖脂質または対照化合物で免疫感作されたマウス、または対照マウス(AdPyCS単独で免疫感作された)からの脾細胞をアッセイし、(i) IFN-γを産生するCS特異的CD8+ T細胞(Th1細胞)および(ii) IL-4を産生するCS特異的CD8+ T細胞(Th2細胞)の数を決定する。CS特異的CD8+ T細胞の数は、ELISPOTアッセイ(Miyahira他、J. Immunol. Methods 1995; 181: 45〜54頁)を用いて決定する。手短に言うと、96ウエルニトロセルロースプレート(Millipore、Bedford、MA)を、ビオチン化した抗マウスIFN-γまたは抗マウスIL-4モノクローナル抗体(mAb)で室温にて一夜にわたってコーティングする。PBSで数回洗浄後、CD8+エピトープに対応するペプチドの存在下または非存在下の培養培地中の脾細胞の段階希釈液を、抗マウスIFN-γまたは抗マウスIL-4 mAbでコーティングされたプレートにおいて5% CO2インキュベーター中で37℃にて20〜24時間にわたってインキュベートする。インキュベーション後、プレートをPBS-Tで洗浄する。次いで、プレートを、それぞれプレート中でビオチン化した抗マウスIFN-γまたは抗マウスIL-4 mAbと共に室温にて3時間にわたってインキュベートする。プレートをPBS-Tで洗浄した後、ストレプトアビジン-APコンジュゲートを加え、室温にて1時間にわたってインキュベートする。PBS-Tによる追加の洗浄および蒸留水による1回の洗浄後、スポットを、ワンステップBCIP/NBT試薬で発色させる。スポットを、Immune Spot Reader(Cellular Technology Ltd.、Cleveland、Ohio)を用いてカウントする。
【0207】
抗マラリア防御の達成レベルは、生きているプラスモジウムヨエリスポロゾイトのi.v.注射で免疫感作マウスを投与誘発することにより2〜8週後に決定する。非免疫感作マウスを対照として使用する。
【0208】
上記の実施例2で規定されているように、防御は、寄生虫の血液期および肝臓期を測定することにより測定する。血液期は、75個の生きているプラスモジウムヨエリスポロゾイトの投与誘発後3日目から14日目まで毎日得られるギムザ染色血液塗沫の顕微鏡検査によりモニターする。肝臓期は、10,000個のプラスモジウムヨエリスポロゾイトの投与誘発から42時間後にマウスから肝臓を摘出することにより測定し、肝臓における寄生虫負荷は、上記の実施例2に開示されているようなリアルタイムRT-PCRによりプラスモジウムrRNAを測定することにより決定する。
【0209】
本発明のすべての合成C-糖脂質は、強力なアジュバント効果を示す。
【0210】
(実施例4)
実験的ヒトin vitro NKT細胞系における本発明の化合物のサイトカインプロフィールの決定
材料および方法
未成熟樹状細胞(DC)およびCD14- PBMCの作成。CD14+細胞は、抗CD14モノクローナル抗体と結合した磁気ビーズ(Miltenyi biotec、Aubum、CA)を用い、ロイコパック(leukopak)から単離した。次いで、未成熟樹状細胞(DC)を、300 U/ml GM-CSF(R&D systems、Minneapolis、MN)および100 U/ml IL-4(R&D systems、Minneapolis、MN)の存在下で3日間のインキュベーション後にCD14+細胞から作成した。CD14-細胞は、以下の実験のための末梢血単核細胞(PBMC)として使用した。
【0211】
PBMCおよび未成熟DCを用いるin vitro IFN-γおよびIL-4 ELISA。3000ラドの照射後、5×104個の未成熟樹状細胞を、96ウエルプレートにおいて、10 ng/mlの様々な糖脂質(すなわち、GCK109[A-1トランス-配座異性体]、GCK151[A-1シス-配座異性体]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下に5×105個の同系CD14- PBMCと一緒に共培養した。18時間にわたる培養後、培養上清中のIFN-γまたはIL-4の濃度を、製造業者の使用説明書に従ってELISA(BD Pharmingen、San Diego、CA)により決定した。
【0212】
PBMCおよび未成熟DCを用いるin vitro IFN-γおよびIL-4 ELISPOTアッセイ。96ウエルニトロセルロースプレート(Milititer HA、Millipore)を、75μlのPBS中に含有される10μg/mlの抗ヒトインターフェロンγmAb(Mabtech、OH)でコーティングした。室温にて一夜にわたってインキュベートした後、ウエルを繰り返し洗浄し、37℃にて1時間にわたって培養培地でブロックした。3000ラドの照射後、5×104個の未成熟樹状細胞を、37℃および5% CO2にて22〜26時間にわたってELISPOTプレートにおいて、100 ng/mlの様々な糖脂質(すなわち、GCK109[A-1トランス-配座異性体]、GCK151[A-1シス-配座異性体]、GCK127[A-2]、GCK152[A-7]、および対照化合物CRONY=α-C-GalCerおよびKRN=α-GalCer)の存在下に5×105個の同系CD14- PBMCと一緒に共培養した。PBS 0.05% Tween 20(PBS T)でプレートを十分に洗浄した後、PBS-T中のビオチン化抗ヒトインターフェロンγmAb(Mabtech、OH) 1μg/mlを加え、4℃にて一夜にわたってインキュベートした。PBSTで洗浄した後、プレートを、製造業者の使用説明書に従って希釈したペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Kirkegaard & Perry Laboratories) 100μLと共にインキュベートした。スポットを、1 mg/mlの3 3’ジアミノベンジジン四塩酸塩二水和物(DAB)と5μg/10mlの30% H2O2を含有する50 mM Tris HCl pH7.5を加えることにより、1時間のインキュベーション後に発色させた。10〜15分後、IFN-γ分泌細胞に対応するスポットの数を、立体顕微鏡を用いて決定した。エピトープ特異的IL-4産生NKT細胞の数を決定するため、一対の抗ヒトIL-4 mAb(Mabtech、OH)を使用したことを除いて、同様の手順に従った。
【0213】
結果
ELISAアッセイでは、図5A〜Bに示すように、GCK109(A-1トランス-配座異性体)、GCK151(A-1シス-配座異性体)、GCK127(A-2)、およびGCK152(A-7)は、PBMCを活性化し、in vitroでの未成熟DCとの18時間の共培養後に、KRN(α-GalCer)と比較して同等レベルのIFN-γ、ならびにIL-4を産生した。
【0214】
ELISPOTアッセイでは、図6A〜Bに示すように、GCK151(A-1シス-配座異性体)およびGCK152[A-7]は、PBMCを高頻度で一貫して刺激し、IFN-γとIL-4の両方を分泌し、活性化PBMCの頻度は、KRNにより刺激された頻度と同様である。GCK109(A-1トランス-配座異性体)およびGCK127(A-2)も、未成熟DCとの共培養から24時間後に同様の頻度のPBMCを刺激することができた。
【0215】
上記のデータは、本発明の供試C-糖脂質の、一方ではCD1dとの、他方では不変NKT受容体との相互作用を示している。このことは、化合物が、in vivoでヒトにおいて活性であるという重要な指標である。
【0216】
しかしながら、記載したヒトin vitro細胞系は、それらのin vivo能力についての予測を提供するようなやり方で様々な化合物の活性を比較することができない可能性がある。例えば、このin vitro細胞系は、in vivoにおける化合物分解の異なる速度およびそれらの効果の異なる動態を包含するin vivoにおける真の生物学的応答に影響を与えるいくつかの重要な要素を考慮に入れていない。また、この実験系において試験される相互作用は、NKT細胞およびCD1d抗原提示細胞に限定される。In vivoでは、他のDCおよびNK細胞が、IL-12およびIFN-γをさらに放出することを妨害する。最後に、対照化合物KRNは、より親油性の本発明の供試化合物に比べて水溶液により可溶性であり、このことにより、対照化合物が細胞培養におけるin vitro試験にとってより生物的に利用されやすくなり、試験化合物がより持続性の効果を有しているin vivo状態を反映しない可能性がある。
【0217】
本発明は、本明細書に記載されている具体的な実施形態により範囲を限定されない。実際に、本明細書に記載されている実施形態の他に、本発明の様々な変更形態は、上記の説明および添付の図から当業者に明らかになるであろう。そのような変更形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図している。
【0218】
さらに、すべての値は概数であり、説明のために提供されていることが理解されるべきである。
【0219】
特許、特許出願、刊行物、製品説明、およびプロトコルが本出願を通じて引用されており、それらの開示は、すべての目的で参照により全体として組み込まれるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、-CH2-CH2-または-CH=CH-であり、
Yが-CH2-CH2-である場合、Qは、C23〜C32アルケニルまたは-R1-O-R2であり、
Yが-CH=CH-である場合、Qは、C27〜C32アルキル、C23〜C32アルケニル、-R1-O-R2、またはフェニルで置換されているC6〜C8アルキルであり、
R1およびR2は、R1およびR2が合わせて23〜32個の炭素原子を有するような、置換または非置換のアルキルまたはアルケニル基であり、
R3は、-OHもしくは単糖であり、R4はHであるか、またはR3はHであり、R4は、-OHもしくは単糖であり、
R5は、水素または単糖である)の化合物、
および薬学的に許容できるそれらの塩またはエステル。
【請求項2】
XがOであり、R5がHであり、R3がOHであり、R4がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yが-CH=CH-であり、化合物が、トランス配座を有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Qが、-C8H16-CH=CH-C18H37である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Yが、-CH=CH-であり、Qが、C27〜C28アルキルまたはC28〜C32アルケニルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
Qが、1、2または3個の二重結合を有するC28〜C32アルケニルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Qが、1個の二重結合を有するC28〜C32アルケニルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
二重結合が、カルボニル基から7番目の炭素原子とカルボニル基から12番目の炭素原子の間に位置している、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
二重結合が、カルボニル基から7番目の炭素原子とカルボニル基から10番目の炭素原子の間に位置している、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
二重結合が、カルボニル基から9番目の炭素原子およびカルボニル基から10番目の炭素原子に位置している、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
式
【化2】
を有する、請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できるその塩。
【請求項12】
Yが、-CH=CH-であり、Qが、-R1-O-R2である、請求項1、2または3に記載の化合物。
【請求項13】
-R1-O-R2中のO原子が、カルボニル基から1番目の炭素原子と25番目の炭素原子の間に位置している、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
-R1-O-R2中のO原子が、カルボニル基から18番目の炭素原子と25番目の炭素原子の間に位置している、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Qが、-C19H38-O-C6H13である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
式
【化3】
を有する、請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できるその塩。
【請求項17】
式
【化4】
を有する、請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できるその塩。
【請求項18】
式
【化5】
を有する、請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できるその塩。
【請求項19】
式
【化6】
を有する、請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できるその塩。
【請求項20】
式
【化7】
を有する、化合物および薬学的に許容できるその塩またはエステル。
【請求項21】
薬学的に許容できる担体と併せて、請求項1から20のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項22】
抗原をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
抗原が、ウイルスまたは腫瘍抗原である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
哺乳動物においてTh1型免疫応答を選択的に誘導する方法であって、哺乳動物に有効量の請求項1から20のいずれかに記載の化合物を投与するステップを含む方法。
【請求項25】
化合物が、IL-12の分泌亢進を誘導する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
その必要がある哺乳動物において制御にTh1型応答を必要とする疾患を治療するための方法であって、哺乳動物に有効量の請求項1から20のいずれかに記載の化合物を投与するステップを含む方法。
【請求項27】
疾患が、感染症、癌、細胞増殖性障害、および自己免疫疾患からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
疾患が、感染性非ウイルス疾患である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
疾患が、感染性ウイルス疾患である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
疾患が、HIVによる感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
疾患が、HCVによる感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
疾患が、HBVによる感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
疾患が、マラリアによる感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
疾患が癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
疾患が、前立腺の癌または黒色腫である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
疾患が、喘息またはアレルギーである、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物において抗原の免疫原性を増強するための方法であって、哺乳動物を抗原および請求項1から20のいずれかに記載の化合物を含むアジュバントで共同して免疫感作するステップを含む方法。
【請求項38】
抗原およびアジュバントが、同時に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗原が、HIV特異的である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
抗原が、マラリア特異的である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
式(I)
【化8】
(式中、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、-CH2-CH2-または-CH=CH-であり、
Yが-CH2-CH2-である場合、Qは、C23〜C32アルケニルまたは-R1-O-R2であり、
Yが-CH=CH-である場合、Qは、C27〜C32アルキル、C23〜C32アルケニル、-R1-O-R2、またはフェニルで置換されているC6〜C8アルキルであり、
R1およびR2は、R1およびR2が合わせて23〜32個の炭素原子を有するような、置換または非置換のアルキルまたはアルケニル基であり、
R3は、-OHもしくは単糖であり、R4はHであるか、またはR3はHであり、R4は、-OHもしくは単糖であり、
R5は、水素または単糖である)の化合物、
および薬学的に許容できるそれらの塩またはエステルを調製する方法であって、
(a)式(II)
【化9】
の化合物を反応させて、まずPg1を除去し、続いて、式III
【化10】
(式中、Qは、上記で定義した通りである)を有するp-ニトロフェニルエステルで処理するステップと、
(b)続いて、Pg2およびPg3を脱保護し、場合により、環状基に隣接する炭素-炭素二重結合を水素化して、式(I)の化合物を形成し、場合により、ステップ(b)からの化合物を薬学的に許容できるその塩またはエステルに変換するステップと
を含む方法。
【請求項42】
式(II)の化合物が、
【化11】
である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
式
【化12】
を有する化合物および薬学的に許容できるその塩またはエステル。
【請求項44】
式
【化13】
を有する化合物および薬学的に許容できるその塩またはエステル。
【請求項45】
式
【化14】
を有する化合物および薬学的に許容できるその塩またはエステル。
【請求項46】
式
【化15】
を有する化合物および薬学的に許容できるその塩またはエステル。
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、-CH2-CH2-または-CH=CH-であり、
Yが-CH2-CH2-である場合、Qは、C23〜C32アルケニルまたは-R1-O-R2であり、
Yが-CH=CH-である場合、Qは、C27〜C32アルキル、C23〜C32アルケニル、-R1-O-R2、またはフェニルで置換されているC6〜C8アルキルであり、
R1およびR2は、R1およびR2が合わせて23〜32個の炭素原子を有するような、置換または非置換のアルキルまたはアルケニル基であり、
R3は、-OHもしくは単糖であり、R4はHであるか、またはR3はHであり、R4は、-OHもしくは単糖であり、
R5は、水素または単糖である)の化合物、
および薬学的に許容できるそれらの塩またはエステル。
【請求項2】
XがOであり、R5がHであり、R3がOHであり、R4がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yが-CH=CH-であり、化合物が、トランス配座を有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Qが、-C8H16-CH=CH-C18H37である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Yが、-CH=CH-であり、Qが、C27〜C28アルキルまたはC28〜C32アルケニルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
Qが、1、2または3個の二重結合を有するC28〜C32アルケニルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Qが、1個の二重結合を有するC28〜C32アルケニルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
二重結合が、カルボニル基から7番目の炭素原子とカルボニル基から12番目の炭素原子の間に位置している、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
二重結合が、カルボニル基から7番目の炭素原子とカルボニル基から10番目の炭素原子の間に位置している、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
二重結合が、カルボニル基から9番目の炭素原子およびカルボニル基から10番目の炭素原子に位置している、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
式
【化2】
を有する、請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できるその塩。
【請求項12】
Yが、-CH=CH-であり、Qが、-R1-O-R2である、請求項1、2または3に記載の化合物。
【請求項13】
-R1-O-R2中のO原子が、カルボニル基から1番目の炭素原子と25番目の炭素原子の間に位置している、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
-R1-O-R2中のO原子が、カルボニル基から18番目の炭素原子と25番目の炭素原子の間に位置している、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Qが、-C19H38-O-C6H13である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
式
【化3】
を有する、請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できるその塩。
【請求項17】
式
【化4】
を有する、請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できるその塩。
【請求項18】
式
【化5】
を有する、請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できるその塩。
【請求項19】
式
【化6】
を有する、請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できるその塩。
【請求項20】
式
【化7】
を有する、化合物および薬学的に許容できるその塩またはエステル。
【請求項21】
薬学的に許容できる担体と併せて、請求項1から20のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項22】
抗原をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
抗原が、ウイルスまたは腫瘍抗原である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
哺乳動物においてTh1型免疫応答を選択的に誘導する方法であって、哺乳動物に有効量の請求項1から20のいずれかに記載の化合物を投与するステップを含む方法。
【請求項25】
化合物が、IL-12の分泌亢進を誘導する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
その必要がある哺乳動物において制御にTh1型応答を必要とする疾患を治療するための方法であって、哺乳動物に有効量の請求項1から20のいずれかに記載の化合物を投与するステップを含む方法。
【請求項27】
疾患が、感染症、癌、細胞増殖性障害、および自己免疫疾患からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
疾患が、感染性非ウイルス疾患である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
疾患が、感染性ウイルス疾患である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
疾患が、HIVによる感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
疾患が、HCVによる感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
疾患が、HBVによる感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
疾患が、マラリアによる感染である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
疾患が癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
疾患が、前立腺の癌または黒色腫である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
疾患が、喘息またはアレルギーである、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
哺乳動物において抗原の免疫原性を増強するための方法であって、哺乳動物を抗原および請求項1から20のいずれかに記載の化合物を含むアジュバントで共同して免疫感作するステップを含む方法。
【請求項38】
抗原およびアジュバントが、同時に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗原が、HIV特異的である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
抗原が、マラリア特異的である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
式(I)
【化8】
(式中、
Xは、OまたはNHであり、
Yは、-CH2-CH2-または-CH=CH-であり、
Yが-CH2-CH2-である場合、Qは、C23〜C32アルケニルまたは-R1-O-R2であり、
Yが-CH=CH-である場合、Qは、C27〜C32アルキル、C23〜C32アルケニル、-R1-O-R2、またはフェニルで置換されているC6〜C8アルキルであり、
R1およびR2は、R1およびR2が合わせて23〜32個の炭素原子を有するような、置換または非置換のアルキルまたはアルケニル基であり、
R3は、-OHもしくは単糖であり、R4はHであるか、またはR3はHであり、R4は、-OHもしくは単糖であり、
R5は、水素または単糖である)の化合物、
および薬学的に許容できるそれらの塩またはエステルを調製する方法であって、
(a)式(II)
【化9】
の化合物を反応させて、まずPg1を除去し、続いて、式III
【化10】
(式中、Qは、上記で定義した通りである)を有するp-ニトロフェニルエステルで処理するステップと、
(b)続いて、Pg2およびPg3を脱保護し、場合により、環状基に隣接する炭素-炭素二重結合を水素化して、式(I)の化合物を形成し、場合により、ステップ(b)からの化合物を薬学的に許容できるその塩またはエステルに変換するステップと
を含む方法。
【請求項42】
式(II)の化合物が、
【化11】
である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
式
【化12】
を有する化合物および薬学的に許容できるその塩またはエステル。
【請求項44】
式
【化13】
を有する化合物および薬学的に許容できるその塩またはエステル。
【請求項45】
式
【化14】
を有する化合物および薬学的に許容できるその塩またはエステル。
【請求項46】
式
【化15】
を有する化合物および薬学的に許容できるその塩またはエステル。
【図5A】
【図5B】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図6A】
【図6B】
【図5B】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図6A】
【図6B】
【公表番号】特表2009−538337(P2009−538337A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512262(P2009−512262)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/069461
【国際公開番号】WO2007/137258
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(594032322)ニューヨーク・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】New York University
【出願人】(508071180)リサーチ・ファウンデーション・オブ・ザ・シティー・ユニヴァーシティー・オブ・ニュー・ヨーク (6)
【出願人】(508346789)ジ・アーロン・ダイアモンド・エイズ・リサーチ・センター・フォー・ザ・シティー・オブ・ニュー・ヨーク・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/069461
【国際公開番号】WO2007/137258
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(594032322)ニューヨーク・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】New York University
【出願人】(508071180)リサーチ・ファウンデーション・オブ・ザ・シティー・ユニヴァーシティー・オブ・ニュー・ヨーク (6)
【出願人】(508346789)ジ・アーロン・ダイアモンド・エイズ・リサーチ・センター・フォー・ザ・シティー・オブ・ニュー・ヨーク・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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