説明

Th1バイアス応答をもたらす免疫ナノ治療薬(Immunonanotherapeutics)

Th1バイアス免疫応答をもたらすことが望ましい疾患を処置するための、合成ナノ担体組成物およびそれに関連する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年4月21日に出願された米国仮特許出願第61/214,229号明細書(その内容は、その全体が参照により本明細書中に援用される)の35U.S.C.§119の下での便益を主張する。
【0002】
本発明は、Th1バイアス免疫応答をもたらすことが望ましい疾患を処置するための、合成ナノ担体組成物およびそれに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫系自体が実際、疾患を媒介する上で有意な役割を果たすように見られる場合の疾患が多数認められる。これは、免疫刺激が、活性化CD4 T細胞が、Th2細胞に分化し、次いで、Th2関連サイトカイン、例えばインターロイキン(IL)−4、IL−5、IL−10、およびIL−13を分泌する原因になる場合に生じる。Th2サイトカインの存在下で刺激されるB細胞は、特定の抗体アイソタイプ、特にIgEを優先的に産生することによって応答する。特定の抗原に対するIgE依存性免疫応答およびTh2サイトカインの作用は、アレルギー、喘息、およびアトピー性皮膚炎などのアトピー症状に関連した臨床症状を誘発しうる。さらに、特定の慢性の感染性疾患および癌などの特定の症状においては、増幅されたTh1応答は、同症状に対するより良好な転帰をもたらすのに所望される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
望ましくないTh2バイアス免疫応答によって特徴づけられる症状のための処置には既知のものがあるが、改善された治療法が必要とされている。さらに、対象の免疫系のTh1バイアス応答が準最適または無効である疾患のための改善された治療法もまた、必要とされている。
【0005】
したがって、改善された組成物およびそれに関連する方法は、Th2媒介性疾患、および対象の免疫系の促進されたTh1バイアス応答が望ましい疾患のための改善された治療法を提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、(1)免疫特徴(immunofeature)表面、および(2)合成ナノ担体にカップリングされたTh1バイアス免疫刺激剤を含む合成ナノ担体;および薬学的に許容できる賦形剤を含む、症状を処置するための組成物に関し、ここで免疫特徴表面は、症状の処置に関連する抗原を、症状の処置に関連する抗原に対して適応免疫応答を引き起こすのに十分な量で含まない。
【0007】
別の態様では、本発明は、症状を患う対象を同定するステップと、(1)APC標的化特徴(targeting feature)、および(2)合成ナノ担体にカップリングされたTh1バイアス免疫刺激剤を含む合成ナノ担体;および薬学的に許容できる賦形剤、を含む組成物を提供するステップと、組成物を対象に投与するステップと、を含む方法に関し、ここで組成物の投与は、症状の処置に関連する抗原との同時投与をさらに含まない。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、Th1バイアス免疫刺激剤およびAPC標的化特徴を含む合成ナノ担体を含む組成物を提供するステップと、組成物を対象に投与するステップと、抗原を、組成物の対象への投与と異なる時間でのTh1バイアス応答が所望される場合の対象に投与するステップと、を含む方法に関し、ここで抗原の投与は、受動投与または能動投与を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】BALF好酸球の差動細胞数(differential cell count)(全細胞の%)を示す。
【図2A】最終のオバルブミンによるアレルギー誘発の18時間後でのBALFにおけるサイトカインを示す。
【図2B】最終のオバルブミンによるアレルギー誘発の18時間後でのBALFにおけるサイトカインを示す。
【図2C】最終のオバルブミンによるアレルギー誘発の18時間後でのBALFにおけるサイトカインを示す。
【図2D】最終のオバルブミンによるアレルギー誘発の18時間後でのBALFにおけるサイトカインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について詳述する前に、本発明が、当然変化しうるものとして、特別に例示される材料またはプロセスパラメータに限定されないことは理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語が、あくまで本発明の特定の実施形態を記述することを目的とし、本発明を説明するための代替用語の使用の限定が意図されていないことは理解されるべきである。
【0011】
本明細書中で引用されるすべての発行物、特許および特許出願は、上記または下記のいずれかであっても、あらゆる目的においてそれら全体が参照により本明細書中に援用される。
【0012】
単数形「a」、「an」および「the」は、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈において特に明示されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「ポリマー」という呼称は、2つ以上のかかる分子の混合物を含み、「溶媒」という呼称は、2つ以上のかかる溶媒の混合物を含み、「接着剤」という呼称は、2つ以上のかかる材料の混合物を含むなどである。
【0013】
A.はじめに
発明者は、想定外として、また驚くべきことに、上記の問題および制限が、本明細書で開示される本発明を実行することによって克服可能であることを発見している。特に、発明者は、想定外として、(1)免疫特徴表面、および(2)合成ナノ担体にカップリングされたTh1バイアス免疫刺激剤を含む合成ナノ担体;および薬学的に許容できる賦形剤、を含む、症状を処置するための組成物に関連する組成物および方法を提供することが可能であることを発見しており、ここで免疫特徴表面は、症状の処置に関連する抗原を、症状の処置に関連する抗原に対して適応免疫応答を引き起こすのに十分な量で含まない。
【0014】
さらに、発明者は、意外にも、ある症状を患う対象を同定するステップと;(1)APC標的化特徴、および(2)合成ナノ担体にカップリングされたTh1バイアス免疫刺激剤を含む合成ナノ担体;および薬学的に許容できる賦形剤、を含む組成物を提供するステップと;組成物を対象に投与するステップと;を含む方法に関連する組成物および方法を提供することが可能であることを発見しており、ここで組成物の投与は、症状の処置に関連する抗原の同時投与をさらに含まない。
【0015】
さらに、発明者は、想定外として、Th1バイアス免疫刺激剤およびAPC標的化特徴を含む合成ナノ担体を含む組成物を提供するステップと;組成物を対象に投与するステップと;抗原を、組成物の対象への投与と異なる時間でのTh1バイアス応答が所望される場合の対象に投与するステップと;を含む方法に関連する組成物および方法を提供することが可能であることを発見しており、ここで抗原の投与は、受動投与または能動投与を含む。
【0016】
望ましくないTh2バイアス応答または準最適/無効なTh1応答によって特徴づけられる疾患を予防または処置するための1つのアプローチが、Th2細胞の分化およびTh2サイトカインの作用と相互作用する免疫学的介入である。これは、身体を、Th1細胞およびTh1関連サイトカイン(インターフェロン−γ、IL−12およびIL−18を含む)の産生をもたらす状態に暴露させることによって得ることができる。かかる状態は、「Th1バイアス応答」と称される。樹状細胞は、アレルギー疾患の誘発および維持の双方に加え、Th1応答への処置に誘発されるスイッチング(treatment−induced switching)において重要な役割を果たすと考えられる。したがって、樹状細胞のTh1応答に対する促進能を増強する、樹状細胞に特異的な処置は、アレルギーおよび喘息の機序に基づく処置に向けての有望な手段を示す。
【0017】
本発明では、発明者は、想定外として、特定の種類の免疫ナノ治療薬を使用し、通常であれば、Th2バイアス応答または準最適/無効なTh1バイアス応答のいずれかをもたらすことになる条件下で、Th1バイアス応答を誘発することが可能であることを発見している。これは、(1)APC標的化特徴を用いて抗原提示細胞に対して標的化され、かつ(2)症状の処置に関連する抗原を含まない、免疫ナノ治療薬を含む組成物の使用を通じて達成される。それに対し、抗原は、対象に、同時投与されないばかりか、通常は本組成物の投与と異なる時間に別々に投与される。特定の関連の実施形態では、同抗原の投与であれば、能動的または受動的のいずれかであってよい。
【0018】
本組成物の投与後のTh1バイアス状態は、一般に、症状の処置に関連する抗原が能動的または受動的のいずれかで対象に投与されるのに十分に長い期間持続する。実施形態では、Th1バイアス状態は、抗原が能動的または受動的のいずれで投与されるかに無関係に長期持続性でありうる。
【0019】
実施例1〜7は、本ナノ担体を含むいくつかの異なる本発明の特定の実施形態、およびその応用について詳述する。実施例8は、実験上の喘息の処置における本発明の実施形態の使用について詳述する。
【0020】
本発明は、ここではより詳しく述べられることになる。
【0021】
B.定義
「能動投与」は、物質を対象に直接投与するかまたは対象の物質への暴露をもたらすような正の作用を発揮することによる、物質、例えば抗原の投与を意味する。例えば、アレルゲンまたは慢性感染性病原体抗原の対象への注射または経口投与は、能動投与の実施形態である。別の実施形態では、対象において、対象が暴露される腫瘍抗原の生成をもたらす様式で腫瘍細胞死を誘発することは、能動投与の実施形態である。
【0022】
「投与すること(Administering)」または「投与(Administration)」は、(1)薬理活性材料、例えば本組成物を薬理学的に有用な様式で対象に投与すること、(2)かかる材料が薬理学的に有用な様式で対象に投与されるように導くこと、または(3)対象がかかる材料を薬理学的に有用な様式で自己投与するように導くこと、を意味する。
【0023】
「アレルゲン」は、Th2型パターンのサイトカイン応答およびヒスタミン放出をもたらす、アレルゲンに特異的なIgEへの結合およびIgE受容体担持細胞の活性化によって特徴づけられる、即時型過敏反応を惹起する物質を意味する。かかる即時型過敏反応には、アレルギーおよびアレルギー性喘息などの徴候が含まれる。一実施形態では、本発明による免疫特徴表面は、アレルゲンを含まない。
【0024】
「症状の処置に関連する抗原」は、適応免疫応答(例えば先天性免疫応答と区別される)の場合、抗原の対象への投与後の対象における特定の症状を処置または緩和することになる抗原を意味する。一実施形態では、本発明による免疫特徴表面は、症状の処置に関連する抗原を含まない。一実施形態では、組成物の投与は、症状の処置に関連する抗原の投与をさらに含まず、ここで抗原は、ナノ担体にカップリングされる場合もあれば、ナノ担体にカップリングされない場合もある。一実施形態では、症状の処置に関連する抗原は、組成物が投与される時間と異なる時間に投与される。実施形態では、処置されている症状は、特定される必要がなく、それは、抗原が症状の処置に関連することが既知であるかまたは想定されることが要求されるからである。
【0025】
「Th1バイアス応答が臨床的に有益である対象に対する抗原」は、典型的には対象からTh2型サイトカイン応答を誘発することになる抗原を意味するが、対象に対するTh1型サイトカイン応答によって特徴づけられる応答へのバイアスの場合、臨床的に有用となる。一実施形態では、Th1バイアス応答が臨床的に有用である対象に対する抗原が、組成物の投与と異なる時間に対象に投与される。
【0026】
「APC標的化特徴」は、専門の(professional)抗原提示細胞(「APC」)、例えば限定はされないが、樹状細胞、SCSマクロファージ、濾胞樹状細胞、およびB細胞に対する合成ナノ担体を標的化する、本合成ナノ担体に含まれる1つ以上の部分を意味する。実施形態では、APC標的化特徴は、APC上の既知の標的に結合する免疫特徴表面および/または標的化部分を含んでもよい。
【0027】
実施形態では、マクロファージ(「Mph」)上の既知の標的における標的化部分は、マクロファージ上に顕著に発現され、および/または存在する任意の実体(例えば、タンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)に特異的に結合する任意の標的化部分(すなわち被膜下洞−Mphマーカー)を含む。典型的なSCS−Mphマーカーは、限定はされないが、CD4(L3T4、W3/25、T4);CD9(p24、DRAP−1、MRP−1);CD11a(LFA−1α、αLインテグリン鎖);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac−1);CD11c(αXインテグリン、p150、95、AXb2);CDw12(p90−120);CD13(APN、gp150、EC3.4.11.2);CD14(LPS−R);CD15(X−ハプテン、ルイス、X、SSEA−1,3−FAL);CD15s(シアリルルイスX);CD15u(3’スルホルイスX);CD15su(6スルホ−シアリルルイスX);CD16a(FCRIIIA);CD16b(FcgRIIIb);CDw17(ラクトシルセラミド、LacCer);CD18(インテグリンβ2、CD11a,b,c β−サブユニット);CD26(DPP IV外酵素、ADA結合タンパク質);CD29(血小板GPIIa、β−1インテグリン、GP);CD31(PECAM−1、Endocam);CD32(FCγRII);CD33(gp67);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD36(GpIIIb、GPIV、PASIV);CD37(gp52−40);CD38(ADP−リボシルシクラーゼ、T10);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ−1);CD40(Bp50);CD43(シアロホリン、ロイコシアリン);CD44(EMCRII、H−CAM、Pgp−1);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA;CD45RB;CD45RC;CD45RO(UCHL−1);CD46(MCP);CD47(gp42、IAP、OA3、ニューロフィリン);CD47R(MEM−133);CD48(Blast−1、Hulym3、BCM−1、OX−45);CD49a(VLA−1α、α1インテグリン);CD49b(VLA−2α、gpla、α2インテグリン);CD49c(VLA−3α、α3インテグリン);CD49e(VLA−5α、α5インテグリン);CD49f(VLA−6α、α6インテグリン、gplc);CD50(ICAM−3);CD51(インテグリンα、VNR−α、ビトロネクチン−Rα);CD52(CAMPATH−1、HE5);CD53(OX−44);CD54(ICAM−1);CD55(DAF);CD58(LFA−3);CD59(1F5Ag、H19、プロテクチン、MACIF、MIRL、P−18);CD60a(GD3);CD60b(9−O−アセチルGD3);CD61(GPIIIa、β3インテグリン);CD62L(L−セレクチン、LAM−1、LECAM−1、MEL−14、Leu8、TQ1);CD63(LIMP、MLA1、gp55、NGA、LAMP−3、ME491);CD64(FcγRI);CD65(セラミド、VIM−2);CD65s(シアリル化−CD65、VIM2);CD72(Ly−19.2、Ly−32.2、Lyb−2);CD74(Ii、不変鎖);CD75(シアロでマスク化されたラクトサミン);CD75S(α2,6シアリル化ラクトサミン);CD80(B7、B7−1、BB1);CD81(TAPA−1);CD82(4F9、C33、IA4、KAI1、R2);CD84(p75、GR6);CD85a(ILT5、LIR2、HL9);CD85d(ILT4、LIR2、MIR10);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CD85k(ILT3、LIR5、HM18);CD86(B7−2/B70);CD87(uPAR);CD88(C5aR);CD89(IgA Fc受容体、FcαR);CD91(α2M−R、LRP);CDw92(p70);CDw93(GR11);CD95(APO−1、FAS、TNFRSF6);CD97(BL−KDD/F12);CD98(4F2、FRP−1、RL−388);CD99(MIC2、E2);CD99R(CD99 Mabで制限);CD100(SEMA4D);CD101(IGSF2、P126、V7);CD102(ICAM−2);CD111(PVRL1、HveC、PRR1、ネクチン1、HIgR);CD112(HveB、PRR2、PVRL2、ネクチン2);CD114(CSF3R、G−CSRF、HG−CSFR);CD115(c−fms、CSF−1R、M−CSFR);CD116(GMCSFRα);CDw119(IFNγR、IFNγRA);CD120a(TNFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFRp80);CD121b(タイプ2IL−1R);CD122(IL2Rβ);CD123(IL−3Rα);CD124(IL−4Rα);CD127(p90、IL−7R、IL−7Rα);CD128a(IL−8Ra、CXCR1、(暫定的にCD181と改称));CD128b(IL−8Rb、CSCR2、(暫定的にCD182と改称));CD130(gp130);CD131(共通のβサブユニット);CD132(共通のγ鎖、IL−2Rγ);CDw136(MSP−R、RON、p158−ron);CDw137(4−1BB、ILA);CD139;CD141(トロンボモジュリン、フェトモジュリン);CD147(バシジン、EMMPRIN、M6,OX47);CD148(HPTP−η、p260、DEP−1);CD155(PVR);CD156a(CD156、ADAM8、MS2);CD156b(TACE、ADAM17、cSVP);CDw156C(ADAM10);CD157(Mo5、BST−1);CD162(PSGL−1);CD164(MGC−24、MUC−24);CD165(AD2、gp37);CD168(RHAMM、IHABP、HMMR);CD169(シアロアドヘシン、Siglec−1);CD170(Siglec5);CD171(L1CAM、NILE);CD172(SIRP−1α、MyD−1);CD172b(SIRPβ);CD180(RP105、Bgp95、Ly64);CD181(CXCR1、(以前はCD128aとして知られる));CD182(CXCR2、(以前はCD128bとして知られる));CD184(CXCR4、NPY3R);CD191(CCR1);CD192(CCR2);CD195(CCR5);CDw197(CCR7(CDw197であった));CDw198(CCR8);CD204(MSR);CD205(DEC−25);CD206(MMR);CD207(ランゲリン);CDw210(CK);CD213a(CK);CDw217(CK);CD220(インスリンR);CD221(IGF1R);CD222(M6P−R、IGFII−R);CD224(GGT);CD226(DNAM−1、PTA1);CD230(プリオンタンパク質(PrP));CD232(VESP−R);CD244(2B4、P38、NAIL);CD245(p220/240);CD256(APRIL、TALL2、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー13);CD257(BLYS、TALL1、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー13b);CD261(TRAIL−R1、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10a);CD262(TRAIL−R2、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10b);CD263(TRAIL−R3、TNBF−Rスーパーファミリー、メンバー10c);CD264(TRAIL−R4、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10d);CD265(TRANCE−R、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD277(BT3.1、B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD280(TEM22、ENDO180);CD281(TLR1、Toll様受容体1);CD282(TLR2、Toll様受容体2);CD284(TLR4、Toll様受容体4);CD295(LEPR);CD298(ATP1B3、Na K ATPase、β3サブユニット);CD300a(CMRF−35H);CD300c(CMRF−35A);CD300e(CMRF−35L1);CD302(DCL1);CD305(LAIR1);CD312(EMR2);CD315(CD9P1);CD317(BST2);CD321(JAM1);CD322(JAM2);CDw328(Siglec7);CDw329(Siglec9);CD68(gp110、マクロシアリン);および/またはマンノース受容体を含み、ここで括弧内に挙げられる名称は、代替名称を示す。
【0028】
実施形態では、樹状細胞(「DC」)の既知の標的における標的化部分は、DC上に顕著に発現され、および/または存在する任意の実体(例えば、タンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)に特異的に結合する任意の標的化部分(すなわちDCマーカー)を含む。典型的なDCマーカーは、限定はされないが、CD1a(R4、T6、HTA−1);CD1b(R1);CD1c(M241、R7);CD1d(R3);CD1e(R2);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac−1);CD11c(αXインテグリン、p150、95、AXb2);CDw117(ラクトシルセラミド、LacCer);CD19(B4);CD33(gp67);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD36(GpIIIb、GPIV、PASIV);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ−1);CD40(Bp50);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA;CD45RB;CD45RC;CD45RO(UCHL−1);CD49d(VLA−4α、α4インテグリン);CD49e(VLA−5α、α5インテグリン);CD58(LFA−3);CD64(FcγRI);CD72(Ly−19.2、Ly−32.2、Lyb−2);CD73(エクト−5’ヌクレオチダーゼ);CD74(Ii、不変鎖);CD80(B7、B7−1、BB1);CD81(TAPA−1);CD83(HB15);CD85a(ILT5、LIR3、HL9);CD85d(ILT4、LIR2、MIR10);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CD85k(ILT3、LIR5、HM18);CD86(B7−2/B70);CD88(C5aB);CD97(BL−KDD/F12);CD101(IGSF2、P126、V7);CD116(GM−CSFRα);CD120a(TMFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFR p80);CD123(IL−3Rα);CD139;CD148(HPTP−η、DEP−1);CD150(SLAM、IPO−3);CD156b(TACE、ADAM17、cSVP);CD157(Mo5、BST−1);CD167a(DDR1、trkE、cak);CD168(RHAMM、IHABP、HMMR);CD169(シアロアドヘシン、Siglec−1);CD170(Siglec−5);CD171(L1CAM、NILE);CD172(SIRP−1α、MyD−1);CD172b(SIRPβ);CD180(RP105、Bgp95、Ly64);CD184(CXCR4、NPY3R);CD193(CCR3);CD196(CCR6);CD197(CCR7(ws CDw197));CDw197(CCR7、EBI1、BLR2);CD200(OX2);CD205(DEC−205);CD206(MMR);CD207(ランゲリン);CD208(DC−LAMP);CD209(DCSIGN);CDw218a(IL18Rα);CDw218b(IL8Rβ);CD227(MUC1、PUM、PEM、EMA);CD230(プリオンタンパク質(PrP));CD252(OX40L、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー4);CD258(LIGHT、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー14);CD265(TRANCE−R、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD271(NGFR、p75、TNFRスーパーファミリー、メンバー16);CD273(B7DC、PDL2);CD274(B7H1、PDL1);CD275(B7H2、ICOSL);CD276(B7H3);CD277(BT3.1、B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD283(TLR3、Toll様受容体3);CD289(TLR9、Toll様受容体9);CD295(LEPR);CD298(ATP1B3、Na K ATPase β3サブユニット);CD300a(CMRF−35H);CD300c(CMRF−35A);CD301(MGL1、CLECSF14);CD302(DCL1);CD303(BDCA2);CD304(BDCA4);CD312(EMR2);CD317(BST2);CD319(CRACC、SLAMF7);CD320(8D6);およびCD68(gp110、マクロシアリン);クラスII MHC;BDCA−1;Siglec−Hを含み、ここで括弧内に挙げられる名称は、代替名称を示す。
【0029】
実施形態では、標的化は、B細胞上に顕著に発現され、および/または存在する任意の実体(例えば、タンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)に特異的に結合する任意の標的化部分(すなわちB細胞マーカー)によってなされうる。典型的なB細胞マーカーは、限定はされないが、CD1c(M241、R7);CD1d(R3);CD2(E−ロゼットR、T11、LFA−2);CD5(T1、Tp67、Leu−1、Ly−1);CD6(T12);CD9(p24、DRAP−1、MRP−1);CD11a(LFA−1α、αLインテグリン鎖);CD11b(αMインテグリン鎖、CR3、Mo1、C3niR、Mac−1);CD11c(αXインテグリン、P150、95、AXb2);CDw17(ラクトシルセラミド、LacCer);CD18(インテグリンβ2、CD11a,b,c β−サブユニット);CD19(B4);CD20(B1、Bp35);CD21(CR2、EBV−R、C3dR);CD22(BL−CAM、Lyb8、Siglec−2);CD23(FceRII、B6、BLAST−2、Leu−20);CD24(BBA−1、HSA);CD25(Tac抗原、IL−2Rα、p55);CD26(DPP IV外酵素、ADA結合タンパク質);CD27(T14、S152);CD29(血小板GPIIa,β−1インテグリン、GP);CD31(PECAM−1、Endocam);CD32(FCγRII);CD35(CR1、C3b/C4b受容体);CD37(gp52−40);CD38(ADPリボシルシクラーゼ、T10);CD39(ATPデヒドロゲナーゼ、NTPデヒドロゲナーゼ−1);CD40(Bp50);CD44(ECMRII、H−CAM、Pgp−1);CD45(LCA、T200、B220、Ly5);CD45RA;CD45RB;CD45RC;CD45RO(UCHL−1);CD46(MCP);CD47(gp42、IAP、OA3、ニューロフィリン);CD47R(MEM−133);CD48(Blast−1、Hulym3、BCM−1、OX−45);CD49b(VLA−2α、gpla、α2インテグリン);CD49c(VLA−3α、α3インテグリン);CD49d(VLA−4α、α4インテグリン);CD50(ICAM−3);CD52(CAMPATH−1、HES);CD53(OX−44);CD54(ICAM−1);CD55(DAF);CD58(LFA−3);CD60a(GD3);CD62L(L−セレクチン、LAM−1、LECAM−1、MEL−14、Leu8、TQ1);CD72(Ly−19.2、Ly−32.2、Lyb−2);CD73(エクト−5’−ヌクレオチダーゼ);CD74(Ii、不変鎖);CD75(シアロでマスク化されたラクトサミン);CD75S(α2、6シアリル化ラクトサミン);CD77(Pk抗原、BLA、CTH/Gb3);CD79a(Igα、MB1);CD79b(Igβ、B29);CD80;CD81(TAPA−1);CD82(4F9、C33、IA4、KAI1、R2);CD83(HB15);CD84(P75、GR6);CD85j(ILT2、LIR1、MIR7);CDw92(p70);CD95(APO−1、FAS、TNFRSF6);CD98(4F2、FRP−1、RL−388);CD99(MIC2、E2);CD100(SEMA4D);CD102(ICAM−2);CD108(SEMA7A、JMH血液群抗原);CDw119(IFNγR、IFNγRa);CD120a(TNFRI、p55);CD120b(TNFRII、p75、TNFR p80);CD121b(タイプ2 IL−1R);CD122(IL2Rβ);CD124(IL−4Rα);CD130(gp130);CD132(共通のγ鎖、IL−2Rγ);CDw137(4−1BB、ILA);CD139;CD147(バシジン、EMMPRIN、M6、OX47);CD150(SLAM、IPO−3);CD162(PSGL−1);CD164(MGC−24、MUC−24);CD166(ALCAM、KG−CAM、SC−1、BEN、DM−GRASP);CD167a(DDR1、trkE、cak);CD171(L1CMA、NILE);CD175s(シアリル−Tn(S−Tn));CD180(RP105、Bgp95、Ly64);CD184(CXCR4、NPY3R);CD185(CXCR5);CD192(CCR2);CD196(CCR6);CD197(CCR7(was CDw197));CDw197(CCR7、EBI1、BLR2);CD200(OX2);CD205(DEC−205);CDw210(CK);CD213a(CK);CDw217(CK);CDw218a(IL18Rα);CDw218b(IL18Rβ);CD220(インスリンR);CD221(IGF1R);CD222(M6P−R、IGFII−R);CD224(GGT);CD225(Leu13);CD226(DNAM−1、PTA1);CD227(MUC1、PUM、PEM、EMA);CD229(Ly9);CD230(プリオンタンパク質(Prp));CD232(VESP−R);CD245(p220/240);CD247(CD3ゼータ鎖);CD261(TRAIL−R1、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10a);CD262(TRAIL−R2、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10b);CD263(TRAIL−R3、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10c);CD264(TRAIL−R4、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー10d);CD265(TRANCE−R、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー11a);CD267(TACI、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー13B);CD268(BAFFR、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー13C);CD269(BCMA、TNF−Rスーパーファミリー、メンバー16);CD275(B7H2、ICOSL);CD277(BT3.1.B7ファミリー:ブチロフィリン3);CD295(LEPR);CD298(ATP1B3 Na K ATPase β3サブユニット);CD300a(CMRF−35H);CD300c(CMRF−35A);CD305(LAIR1);CD307(IRTA2);CD315(CD9P1);CD316(EW12);CD317(BST2);CD319(CRACC、SLAMF7);CD321(JAM1);CD322(JAM2);CDw327(Siglec6、CD33L);CD68(gp100、マクロシアリン);CXCR5;VLA−4;クラスII MHC;表面IgM;表面IgD;APRL;および/またはBAFF−Rを含み、ここで括弧内に挙げられる名称は、代替名称を示す。マーカーの例は、本明細書中の他の箇所で提供されるものを含む。
【0030】
一部の実施形態では、B細胞の標的化は、活性化時にB細胞上に顕著に発現され、および/または存在する任意の実体(例えば、タンパク質、脂質、炭水化物、小分子など)に特異的に結合する任意の標的化部分(すなわち活性化B細胞マーカー)によってなされうる。典型的な活性化B細胞マーカーは、限定はされないが、CD1a(R4、T6、HTA−1);CD1b(R1);CD15s(シアリルルイスX);CD15u(3’スルホルイスX);CD15su(6スルホ−シアリルルイスX);CD30(Ber−H2、Ki−1);CD69(AIM、EA1、MLR3、gp34/28、VEA);CD70(Ki−24、CD27リガンド);CD80(B7、B7−1、BB1);CD86(B7−2/B70);CD97(BLKDD/F12);CD125(IL−5Rα);CD126(IL−6Rα);CD138(シンデカン−1、ヘパラン硫酸プロテオグリカン);CD152(CTLA−4);CD252(OX40L、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー4);CD253(TRAIL、TNF(リガンド)スーパーファミリー、メンバー10);CD279(PD1);CD289(TLR9、Toll様受容体9);およびCD312(EMR2)を含み、ここで括弧内に挙げられる名称は、代替名称を示す。マーカーの例は、本明細書中の他の箇所で提供されるものを含む。
【0031】
「慢性感染性病原体抗原」は、サイトカイン応答のTh2型パターンまたは抗原に対する準最適および/もしくは無効なTh1型応答によって特徴づけられる、慢性感染症をもたらす感染性病原体の抗原を意味する。一実施形態では、本発明による免疫特徴表面は、慢性感染性病原体抗原を含まない。実施形態では、慢性感染性病原体抗原は、リーシュマニア寄生虫(Leishmania parasite)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、マラリア原虫(Plasmodium parasite)、トキソプラズマ‐ゴンヂ(toxoplasma gondii)、マイコバクテリア、HIV、HBV、HCV、EBV、CMVおよび住血吸虫(schistosoma trematodes)に由来する抗原を含む。
【0032】
「同時投与する」または「同時投与」は、本合成ナノ担体を対象に、症状の処置に関連する抗原のその対象への投与の24時間以内、好ましくは12時間以内、より好ましくは6時間以内に投与することを意味する。同時投与は、同じ剤形または別々の剤形での投与を通じて行ってもよい。
【0033】
「カップリングされる」は、合成ナノ担体に付着されるかまたはその内部に含有されることを意味する。一部の実施形態では、カップリングは、共有結合である。一部の実施形態では、共有カップリングは、1つ以上のリンカーによって媒介される。一部の実施形態では、カップリングは、非共有結合である。一部の実施形態では、非共有カップリングは、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、宿主寄生体相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子−双極子相互作用、および/またはそれらの組み合わせによって媒介される。実施形態では、カップリングは、従来の技術を用い、合成ナノ担体内部でのカプセル化との関連で生じうる。実施形態では、免疫刺激剤、T細胞抗原、および本発明による免疫特徴表面が構成される部分は、合成ナノ担体に、それぞれ個別にまたはその任意の組み合わせにおいてカップリングされうる。
【0034】
「剤形」は、対象への投与に適した培地、キャリア、媒体、またはデバイスの中の薬剤を意味する。
【0035】
「ある症状を患う対象を同定すること」は、対象が特定の病状を有するかまたは有する可能性が高いかを診断または検出または確認することを意味する。
【0036】
「免疫特徴表面」は、複数の部分を含む表面を意味し、ここで(1)免疫特徴表面は、抗体のFc部分である部分以外を含み;かつ(2)同部分は、哺乳類の抗原提示細胞に対して親和性に基づく結合をもたらすのに有効な量で存在する。
【0037】
親和性に基づく結合は、親和性効果に基づく結合である(このタイプの結合は、「高親和性」結合と称される場合もある)。好ましい実施形態では、免疫特徴表面の存在は、以下のように、インビボアッセイ、次いでインビトロアッセイを用いて判定してもよい(しかし、親和性効果に基づく結合(すなわち「高親和性」結合)の存在を確認する他の方法を、本発明の実行において使用してもよい)。
【0038】
インビボアッセイでは、異なる蛍光標識を有する合成ナノ担体の2セット(一方が免疫特徴表面を有する合成ナノ担体のセットであり、もう一方が対照として機能するセットである)が使用される。免疫特徴表面がインビボで抗原提示細胞に対する合成ナノ担体を標的化しうるか否かを試験するため、合成ナノ担体の両セットは、1:1で混合され、マウスの足蹠に注射される。樹状細胞および被膜下洞マクロファージ上での合成ナノ担体の蓄積がそれぞれ、ナノ担体の注射後の1〜4時間と24時間の間の時点で、注射されたマウスの流入領域膝窩リンパ節を採取することによって測定される。リンパ節は、凍結切片の共焦点蛍光免疫組織学において処理され、マウス−CD11c(クローンHL3、BD BIOSCIENCES(登録商標))またはマウス−CD169(SEROTEC(登録商標)からのクローン3D6.112)に対する蛍光抗体で対比染色され、好適な画像処理ソフトウェア、例えばADOBE(登録商標)PHOTOSHOP(登録商標)を使用する面積測定によって分析される。免疫特徴表面による抗原提示細胞の標的化は、免疫特徴表面を含む合成ナノ担体が、樹状細胞および/または被膜下洞マクロファージと、対照ナノ担体よりも少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍の頻度で結合する場合、確立される。
【0039】
好ましい実施形態では、インビボアッセイを伴うインビトロアッセイでは、ヒトもしくはマウス樹状細胞またはマウス被膜下洞マクロファージ(集合的に「インビトロ抗原提示細胞(In Vitro Antigen Presenting Cell)」)の、免疫特徴表面が構成される部分またはインビトロ抗原提示細胞に発現される表面抗原に特異的な抗体(ヒト樹状細胞の場合:Miltenyi BIOTEC(登録商標)製の抗−CD1c(BDCA−1)クローンAD5−8E7、マウス樹状細胞の場合:抗−CD11c(αXインテグリン)クローンHL3、BD BIOSCIENCES(登録商標)、またはマウス被膜下洞マクロファージの場合:SEROTEC(登録商標)製の抗−CD169クローン3D6.112)のいずれかでコーティングされた生体適合性表面上での固定化が、(i)インビトロ抗原提示細胞の、免疫特徴表面が構成される部分でコーティングされている表面への最大固定化に対応する最適なコーティング密度が、検出不能か、または抗体でコーティングされた表面で認められる場合の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%であり、また、(ii)免疫特徴表面によるインビトロ抗原提示細胞の固定化が検出可能である場合、試験中の免疫特徴表面が、最大の半分の結合を支持する抗体コーティング密度よりも少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも4倍高い免疫特徴表面が構成される部分のコーティング密度で、最大の半分の結合を支持する、というように判定される。
【0040】
免疫特徴表面は、pH=7.2〜7.4で、正に帯電するか、負に帯電するか、または中性に帯電しうる。免疫特徴表面は、同じ部分または異なる部分の混合物から構成されうる。実施形態では、免疫特徴表面は、B細胞抗原を含みうる。免疫特徴表面において潜在的に有用な部分の例として、ニコチンおよびその誘導体、メトキシ基、正に帯電したアミン基(例えば第三級アミン)、シアリルラクトース、アビジンおよび/またはNeutrAvidinなどのアビジン誘導体、ならびに上記のいずれかの残基が含まれる。一実施形態では、免疫特徴表面が構成される部分は、本発明のナノ担体の表面にカップリングされる。別の実施形態では、免疫特徴表面は、本発明のナノ担体の表面にカップリングされる。
【0041】
免疫特徴表面が構成される部分が高親和性結合をもたらす場合、注目すべきである。本定義において詳細に定義されるように、また本明細書を通して一般に記載されるように、ナノ担体上に存在しうる部分の全部が、高親和性結合をもたらすということではない。したがって、表面が複数の部分(場合によって「アレイ」と称される)を含みうるとしても、これはかかる表面が本質的に免疫特徴表面であることを意味せず、かかる表面が本定義および本開示に従う結合をもたらすことを示すデータは存在しない。
【0042】
「免疫刺激剤」は、抗原に対する免疫応答を調節するが、抗原でないかまたは抗原に由来しない作用剤を意味する。「調節する」は、本明細書で使用される場合、免疫応答を誘発すること、促進すること、抑制すること、誘導すること、または再誘導する(redirecting)ことを示す。かかる作用剤は、抗原に対する免疫応答を刺激する(または増強する)が、抗原でないかまたは抗原に由来しない免疫刺激剤を含む。したがって、免疫刺激剤は、アジュバントを含む。一部の実施形態では、免疫刺激剤は、ナノ担体の表面上に存在し、および/または合成ナノ担体内部に組み込まれる。実施形態では、免疫刺激剤は、合成ナノ担体にカップリングされる。
【0043】
一部の実施形態では、合成ナノ担体の免疫刺激剤のすべては、互いに同一である。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、多数の異なる種類の免疫刺激剤を含む。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、複数の個別の免疫刺激剤を含み、これらのすべては、互いに同一である。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、まさに1種類の免疫刺激剤を含む。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、まさに2つの異なる種類の免疫刺激剤を含む。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、3つ以上の異なる種類の免疫刺激剤を含む。
【0044】
一部の実施形態では、合成ナノ担体は、脂質膜(例えば、脂質二重層、脂質単層など)を含み、ここで少なくとも1種類の免疫刺激剤は、脂質膜とカップリングされる。一部の実施形態では、少なくとも1種類の免疫刺激剤は、脂質膜内部に組み込まれる。一部の実施形態では、少なくとも1種類の免疫刺激剤は、脂質二重層の管腔内部に組み込まれる。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、脂質膜の内部表面とカップリングされる少なくとも1種類の免疫刺激剤を含む。一部の実施形態では、少なくとも1種類の免疫刺激剤は、合成ナノ担体の脂質膜内部にカプセル化される。一部の実施形態では、少なくとも1種類の免疫刺激剤は、合成ナノ担体の複数の位置に位置する場合がある。当業者は、前例が、複数の免疫刺激剤が合成ナノ担体の異なる位置とカップリング可能である場合の多数の異なる方法の代表にすぎないことを理解するであろう。複数の免疫刺激剤は、合成ナノ担体の位置の任意の組み合わせに位置する場合がある。
【0045】
「合成ナノ担体の最大寸法」は、合成ナノ担体の任意の軸に沿って測定されるナノ担体の最大寸法を意味する。「合成ナノ担体の最小寸法」は、合成ナノ担体の任意の軸に沿って測定される合成ナノ担体の最小寸法を意味する。例えば、回転楕円体の合成ナノ担体の場合、合成ナノ担体の最大および最小寸法は、実質的に同一となり、かつその直径のサイズとなる。同様に、立方体の合成ナノ担体の場合、合成ナノ担体の最小寸法は、その高さ、幅または長さの最小となる一方、合成ナノ担体の最大寸法は、その高さ、幅または長さの最大となる。一実施形態では、試料中の合成ナノ担体の総数に基づく、試料中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nmより大きい。一実施形態では、試料中の合成ナノ担体の総数に基づく、試料中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、5μm以下である。好ましくは、試料中の合成ナノ担体の総数に基づく、試料中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、110nmより大きく、より好ましくは120nmより大きく、より好ましくは130nmより大きく、またより好ましくは150nmよりさらに大きい。好ましくは、試料中の合成ナノ担体の総数に基づく、試料中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、3μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、またより好ましくはさらに500nm以下である。好ましい実施形態では、試料中の合成ナノ担体の総数に基づく、試料中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、100nm以上、より好ましくは120nm以上、より好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上、またより好ましくはさらに150nm以上である。合成ナノ担体サイズの測定値は、合成ナノ担体を液体(通常は水性)培地中に懸濁し、動的光散乱(例えばBrookhaven ZetaPALS機器を使用)を使用することによって得られる。
【0046】
「非抗原免疫特徴表面」は、T細胞またはB細胞を、それが合成ナノ担体の表面上に存在する場合に活性化する部分を含まないか、あるいは、T細胞またはB細胞を、それが合成ナノ担体の表面上に存在する場合でも、合成ナノ担体がT細胞またはB細胞を活性化するのに不十分な量で活性化する部分を含む免疫特徴表面を意味する。一実施形態では、ヒトおよびマウスリンパ球の活性化は、細胞表面「活性化マーカー」の分析によって検出されうる。例えば、CD69(初期早期活性化抗原)は、静止非活性化細胞上ではなく、活性化T細胞およびB細胞上で高度に発現される細胞表面分子である。ヒト末梢血単核球(PBMC)由来またはマウス脾臓由来のT細胞およびB細胞の活性化は、蛍光色素と複合された抗−CD69抗体およびフローサイトメトリーを用いる分析を用いて検出してもよい。活性化リンパ球は、蛍光強度において、非活性化対照リンパ球よりも2倍を超える増大を示す。一実施形態では、本発明による免疫特徴表面は、非抗原免疫特徴表面を含む。
【0047】
「受動投与」は、物質、例えば抗原を、対象の抗原への暴露に至ることになる様式で自己投与するように対象を導くか、またはそのために調整することによって投与することを意味する。例えば、一実施形態では、アレルゲンの受動投与は、対象が自身を、環境中に存在するアレルゲン(すなわち「環境アレルゲン」)に暴露された状態になるように導くことによって行われる。
【0048】
「薬学的に許容できる賦形剤」は、組成物の投与をさらに促進するための、本組成物に添加される薬理学的に不活性な物質を意味する。限定はされないが、薬学的に許容できる賦形剤の例として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な希釈剤、様々な糖類およびデンプンの種類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物性油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0049】
「対象」は、ヒトおよび霊長類などの哺乳類;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマおよびブタなどの家庭内または家畜動物;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;魚類などを含む動物を意味する。
【0050】
「合成ナノ担体」は、天然に見出されず、かつサイズが少なくとも5μ以下の寸法を有する個別の物体(discrete object)を意味する。アルブミンナノ粒子は、合成ナノ担体として明示的に含まれる。
【0051】
合成ナノ担体は、限定はされないが、1つまたは複数の脂質に基づくナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤に基づくエマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子、ペプチドもしくはタンパク質に基づく粒子(アルブミンナノ粒子など)、および/または、脂質−ポリマーナノ粒子などの、ナノ材料の組み合わせを用いて開発されるナノ粒子であってもよい。合成ナノ担体は、限定はされないが、回転楕円体、立方体状(cubic)、角錐形(pyramid)、長方形、円筒形、ドーナツ形などを含む種々の異なる形状であってもよい。本発明による合成ナノ担体は、1つ以上の表面を含む。本発明の実施における使用に適しうる典型的な合成ナノ担体は、(1)米国特許第5,543,158号明細書(Grefらに付与)で開示される生分解性ナノ粒子、(2)公開された米国特許出願公開第20060002852号明細書(Saltzmanら)のポリマーナノ粒子、または(4)公開された米国特許出願公開第20090028910号明細書(DeSimoneら)のリソグラフィーによって作製されるナノ粒子を含む。約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明による合成ナノ担体は、補体を活性化する水酸基を有する表面を含まないか、あるいは補体を活性化する水酸基でない部分から本質的になる表面を含む。好ましい実施形態では、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明による合成ナノ担体は、補体を実質的に活性化する表面を含まないか、あるいは補体を実質的に活性化しない部分から本質的になる表面を含む。より好ましい実施形態では、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明による合成ナノ担体は、補体を活性化する表面を含まないか、あるいは補体を活性化しない部分から本質的になる表面を含む。
【0052】
「T細胞抗原」は、T細胞における免疫応答によって認識され、それを引き起こす任意の抗原(例えば、T細胞またはNKT細胞上のT細胞受容体により、クラスIもしくはクラスII主要組織適合性複合分子(MHC)に結合されるかまたはCD1複合体に結合される抗原もしくはその一部の提示を介して特異的に認識される抗原)を意味する。一部の実施形態では、T細胞抗原である抗原は、B細胞抗原でもある。他の実施形態では、T細胞抗原は、B細胞抗原でもあることはない。T細胞抗原は、一般にタンパク質またはペプチドである。T細胞抗原は、CD8+T細胞応答、CD4+T細胞応答、またはその双方を刺激する抗原であってもよい。したがって、一部の実施形態では、ナノ担体は、両タイプの応答を有効に刺激しうる。一部の実施形態では、T細胞抗原は、「ユニバーサル」T細胞抗原(すなわち、無関係のB細胞抗原に対し、T細胞補助刺激を通じて増強された応答をもたらしうるもの)である。実施形態では、ユニバーサルT細胞抗原は、破傷風トキソイド、エプスタイン−バーウイルス、インフルエンザウイルス、またはPadreペプチドに由来する1つ以上のペプチドを含んでもよい。
【0053】
「Th1バイアス免疫刺激剤」は、(1)Th2型サイトカイン応答によって特徴づけられる応答からTh1型サイトカイン応答によって特徴づけられる応答へ免疫応答をバイアスする、あるいは(2)準最適および/または無効なTh1型応答を増幅する、免疫刺激剤を意味する。
【0054】
特定の実施形態では、Th1バイアス免疫刺激剤は、インターロイキン、インターフェロン、サイトカインなどであってもよい。特定の実施形態では、Th1バイアス免疫刺激剤は、TLR−1、TLR−2、TLR−3、TLR−4、TLR−5、TLR−6、TLR−7、TLR−8、TLR−9、TLR−10、およびTLR−11作動薬など、Toll様受容体(TLR)に対する天然または合成作動薬であってもよい。
【0055】
特定の実施形態では、合成ナノ担体は、toll様受容体(TLR)7および8に対する作動薬(「TLR7/8作動薬」)を組み込む。米国特許第6,696,076号明細書(Tomaiらに付与)において開示されるTLR7/8作動薬化合物、例えば限定はされないが、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミンは有用である。好ましいTh1バイアス免疫刺激剤は、イミキモドおよびR848を含む。
【0056】
特定の実施形態では、合成ナノ担体は、Toll様受容体(TLR)−9に対するリガンド、例えば、タイプIインターフェロン分泌を誘導し、かつTおよびB細胞活性化を刺激することにより、抗体産生および細胞毒性T細胞応答の増大をもたらす、CpGsを含む免疫刺激性DNA分子を組み込む(Kriegら、「CpG motifs in bacterial DNA trigger direct B cell activation.」 Nature.1995年 374:546−549頁;Chuら、「CpG oligodeoxynucleotides act as adjuvants that switch on T helper 1(Th1) immunity.」 J.Exp.Med.1997年 186:1623−1631頁;Lipfordら、「CpG−containing synthetic oligonucleotides promote B and cytotoxic T cell responses to protein antigen:a new class of vaccine adjuvants.」 Eur.J.Immunol.1997年 27:2340−2344頁;Romanら、Immunostimulatory DNA sequences function as T helper−1−promoting adjuvants.」 Nat.Med.1997年 3:849−854頁;Davisら、「CpG DNA is a potent enhancer of specific immunity in mice immunized with recombinant hepatitis B surface antigen.」 J.Immunol.1998年 160:870−876頁;Lipfordら、「Bacterial DNA as immune cell activator.」 Trends Microbiol.1998年 6:496−500頁)。実施形態では、CpGsは、安定性を高めるように意図された修飾、例えばホスホロチオエート結合、または他の修飾、例えば修飾塩基を含んでもよい。例えば、米国特許第5,663,153号明細書、米国特許第6,194,388号明細書、米国特許第7,262,286号明細書、または米国特許第7,276,489号明細書を参照のこと。特定の実施形態では、寛容性ではなく免疫を刺激するため、合成ナノ担体は、(ナイーブT細胞のプライミングのために必要とされる)DC成熟と、サイトカイン、例えば抗体応答および抗ウイルス性免疫を促進するタイプIインターフェロンの産生とを促進する免疫刺激剤を組み込む。一部の実施形態では、免疫刺激剤は、TLR−4作動薬、例えば細菌リポ多糖類(LPS)、VSV−G、および/またはHMGB−1であってもよい。一部の実施形態では、免疫刺激剤はサイトカインであり、それは、細胞によって放出され、かつ、細胞−細胞相互作用、伝達および他の細胞の挙動に対して特定の効果を有する小タンパク質または生物学的因子(5kD〜20kDの範囲内)である。一部の実施形態では、免疫刺激剤は、壊死細胞から放出される炎症誘発性刺激(例えば尿酸結晶)であってもよい。一部の実施形態では、免疫刺激剤は、補体カスケードの活性化成分(例えば、CD21、CD35など)であってもよい。一部の実施形態では、免疫刺激剤は、免疫複合体の活性化成分であってもよい。免疫刺激剤はまた、補体受容体作動薬、例えばCD21またはCD35に結合する分子を含む。一部の実施形態では、補体受容体作動薬は、ナノ担体の内因性補体オプソニン化を含む。免疫刺激剤はまた、サイトカイン受容体作動薬、例えばサイトカインを含む。
【0057】
一部の実施形態では、サイトカイン受容体作動薬は、小分子、抗体、融合タンパク質、またはアプタマーである。実施形態では、免疫刺激剤はまた、免疫刺激性RNA分子、例えば限定はされないが、dsRNAまたはポリI:C(TLR3刺激剤)、および/または、F.Heilら、「Species−Specific Recognition of Single−Stranded RNA via Toll−like Receptor 7 and 8」 Science 303(5663)、1526−1529頁(2004年);J.Vollmerら、「Immune modulation by chemically modified ribonucleosides and oligoribonucleotides」 国際公開第2008033432A2号パンフレット;A.Forsbachら、「Immunostimulatory oligoribonucleotides containing specific sequence motif(s) and targeting the Toll−like receptor 8 pathway」 国際公開第2007062107A2号パンフレット;E.Uhlmannら、「Modified oligoribonucleotide analogs with enhanced immunostimulatory activity」 米国特許出願公開第2006241076号明細書;G.Lipfordら、「Immunostimulatory viral RNA oligonucleotides and use for treating cancer and infections」 国際公開第2005097993A2号パンフレット;G.Lipfordら、「Immunostimulatory G,U−containing oligoribonucleotides,compositions,and screening methods」 国際公開第2003086280A2号パンフレットにおいて開示されたものを含んでもよい。
【0058】
一部の実施形態では、本発明は、1つ以上のアジュバントと調合されたワクチンナノ担体を含む薬学的組成物を提供される。用語「アジュバント」は、本明細書で使用される場合、特定の抗原を構成しないが、投与される抗原に対する免疫応答を増強する作用剤を示す。
【0059】
一部の実施形態では、ワクチンナノ担体は、ゲル型アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウムなど)、微生物アジュバント(例えば、CpGモチーフを含む免疫調節性DNA配列;免疫刺激性RNA分子;モノホスホリル脂質Aなどの内毒素;コレラ毒素、大腸菌(E.coli)熱不安定毒素、および百日咳毒素などの外毒素;ムラミールジペプチドなど);油エマルションおよび乳化剤に基づくアジュバント(例えば、フロインドアジュバント、MF59[Novartis]、SAFなど);微粒子アジュバント(例えば、リポソーム、生分解性マイクロスフェア、サポニンなど);合成アジュバント(例えば、非イオン性ブロック共重合体、ムラミルペプチド類似体、ポリホスファゼン、合成ポリヌクレオチドなど)、および/またはそれらの組み合わせなどの1つ以上のアジュバントと調合される。
【0060】
「投与と異なる時間」または「組成物が投与される場合の時間と異なる時間」は、投与前または投与後の約30秒を超える時間、好ましくは投与前または投与後の約1分を超える時間、より好ましくは投与前または投与後の5分を超える時間、さらにより好ましくは投与前または投与後の1日を超える時間、さらにより好ましくは投与前または投与後の2日を超える時間、さらにより好ましくは投与前または投与後の1週間を超える時間、およびさらにより好ましくは投与前または投与後の1か月を超える時間を意味する。
【0061】
「腫瘍抗原」は、腫瘍が認められる対象において、特異的な免疫応答を引き起こす腫瘍の細胞表面抗原を意味する。一実施形態では、本発明による免疫特徴表面は、腫瘍抗原を含まない。
【0062】
「ベクター効果」は、症状の処置に関連する合成ナノ担体上の抗原ではなく、合成ナノ担体に対する望ましくない免疫応答の確立を意味する。合成ナノ担体の材料が、その化学組成物もしくは構造故に強力な液性免疫応答を刺激する能力がある場合、ベクター効果が生じうる。1つの環境においては、ベクター効果を誘発する合成担体は、免疫系を、症状の処置に関連する抗原以外の抗原で「満たす(flood)」ことになり、結果として関連抗原に対する応答は弱いものである。別の環境では、望ましくない免疫応答は、ナノ担体自体に対する強い応答であり、それにより、同じ対象における後の使用に関して、ナノ担体は無効であり、おそらくは危険でさえある。したがって、特定の実施形態では、合成ナノ担体の表面は、主としてまたは実質的にベクター効果を引き起こす材料(例えばウイルスコートタンパク質など)から形成されない。しかし、ウイルスコートタンパク質などの強力な免疫原性材料を使用し、本発明の合成ナノ担体を作製することが可能であり、かつ、ベクター効果が回避されるべき場合の環境下では、合成ナノ担体自体を修飾し、ベクター効果を低減または除去することが可能であることは理解されるべきである。例えば、ベクター効果を誘発する材料(例えば、ウイルス様粒子中で使用されるウイルスコートタンパク質)を、合成ナノ担体の表面から遠隔に配置するか、または免疫改変分子、例えばポリエチレングリコールでコーティングすることで、ナノ担体の実表面の免疫原性を低下させ、それにより、通常であれば生じることになるベクター効果を回避することが可能である。
【0063】
C.本免疫ナノ治療薬組成物
多種多様な合成ナノ担体は、本発明に従って使用してもよい。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、球体または回転楕円体である。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、平面または円盤状である。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、立方体または立方体状である。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、長円または楕円である。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、円筒形、円錐形、または角錐形である。
【0064】
サイズ、形状、および/または組成の点から比較的均一である合成ナノ担体の集団を、各合成ナノ担体が類似の特性を有するように使用することは望ましい場合が多い。例えば、合成ナノ担体の少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%は、平均直径または平均寸法の5%、10%、もしくは20%の範囲内に含まれる最小寸法または最大寸法を有してもよい。一部の実施形態では、合成ナノ担体の集団は、サイズ、形状、および/または組成に関して異種であってもよい。
【0065】
合成ナノ担体は、固体または空洞であってもよく、また1つ以上の層を含んでもよい。一部の実施形態では、各層は、それ以外の層に対して固有の組成および固有の特性を有する。一例だけ示すと、合成ナノ担体は、コア/シェル構造を有してもよく、ここでコアは第1層(例えばポリマーコア)であり、またシェルは第2層(例えば脂質二重層または単層)である。合成ナノ担体は、複数の異なる層を含んでもよい。
【0066】
一部の実施形態では、合成ナノ担体は、場合により、1つ以上の脂質を含んでもよい。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、リポソームを含んでもよい。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、脂質二重層を含んでもよい。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、脂質単層を含んでもよい。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、ミセルを含んでもよい。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)によって囲まれたポリマーマトリックスを含むコアを含んでもよい。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)によって囲まれた非ポリマーコア(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物など)を含んでもよい。
【0067】
一部の実施形態では、合成ナノ担体は、1つ以上のポリマーマトリックスを含んでもよい。一部の実施形態では、かかるポリマーマトリックスは、コーティング層(例えば、リポソーム、脂質単層、ミセルなど)によって囲まれうる。一部の実施形態では、合成ナノ担体の様々な成分は、ポリマーマトリックスとカップリングされうる。
【0068】
一部の実施形態では、免疫特徴表面、標的化部分、および/または免疫刺激剤は、ポリマーマトリックスと共有結合されうる。一部の実施形態では、共有結合は、リンカーによって媒介される。一部の実施形態では、免疫特徴表面、標的化部分、および/または免疫刺激剤は、ポリマーマトリックスと非共有結合されうる。例えば、一部の実施形態では、免疫特徴表面、標的化部分、および/または免疫刺激剤は、ポリマーマトリックスの内部にカプセル化され、それによって囲まれ、および/またはその全体にわたって分散されうる。その他または追加として、免疫特徴表面、標的化部分、および/または免疫刺激剤は、疎水性相互作用、電荷相互作用、ファンデルワールス力などにより、ポリマーマトリックスと結合されうる。
【0069】
多種多様なポリマーおよびそれからポリマーマトリックスを形成するための方法は、薬剤送達の当該技術分野で既知である。一般に、ポリマーマトリックスは、1つ以上のポリマーを含む。ポリマーは、天然または非天然(合成)ポリマーであってもよい。ポリマーは、2つ以上のモノマーを含むホモポリマーまたは共重合体であってもよい。配列の観点では、共重合体は、ランダム、ブロックであってもよく、またはランダムおよびブロック配列の組み合わせを含んでもよい。典型的には、本発明によるポリマーは、有機ポリマーである。
【0070】
本発明における使用に適したポリマーの例は、限定はされないが、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えば、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン))、ポリ無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物))、ポリヒドロキシ酸(例えば、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート))、ポリプロピルフメレート(polypropylfumerate)、ポリカプロラクトン、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド)、ポリ(オルソエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリ尿素、ポリスチレン、およびポリアミンを含む。
【0071】
一部の実施形態では、本発明によるポリマーは、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)(FDA)によって、21C.F.R.177.2600下でヒト使用が認可されているポリマー、例えば限定はされないが、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン));ポリ無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール);ポリウレタン;ポリメタクリル酸塩;ポリアクリル酸塩;およびポリシアノアクリレートを含む。
【0072】
一部の実施形態では、ポリマーは親水性であってもよい。例えば、ポリマーは、アニオン基(例えば、リン酸基、硫酸基、カルボン酸基);カチオン基(例えば、第四級アミン基);または極性基(例えば、水酸基、チオール基、アミン基)であってもよい。一部の実施形態では、親水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノ担体は、合成ナノ担体中に親水性環境をもたらす。一部の実施形態では、ポリマーは、疎水性であってもよい。一部の実施形態では、疎水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノ担体は、合成ナノ担体中に疎水性環境をもたらす。ポリマーの親水性または疎水性の選択は、合成ナノ担体内部に組み込まれる(例えばカップリングされる)材料の性質に対して影響を有しうる。
【0073】
一部の実施形態では、ポリマーは、1つ以上の部分および/または官能基で修飾してもよい。種々の部分または官能基は、本発明に従って使用してもよい。一部の実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、炭水化物、および/または多糖類由来の非環状ポリアセタールで修飾してもよい(Papisov、2001年、ACS Symposium Series、786:301頁)。
【0074】
一部の実施形態では、ポリマーは、脂質または脂肪酸基で修飾してもよい。一部の実施形態では、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸のうちの1つ以上であってもよい。一部の実施形態では、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノール酸、γ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸のうちの1つ以上であってもよい。
【0075】
一部の実施形態では、ポリマーは、乳酸およびグリコール酸単位、例えばポリ(乳酸−コ−グリコール酸)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(集合的に本明細書中で「PLGA」と称される)を含む共重合体;ならびにグリコール酸単位(本明細書中で「PGA」と称される)および乳酸単位、例えばポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、およびポリ−D,L−ラクチド(集合的に本明細書中で「PLA」と称される)を含むホモポリマー、を含むポリエステルであってもよい。一部の実施形態では、典型的なポリエステルは、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEG共重合体ならびにラクチドおよびグリコリドの共重合体(例えば、PLA−PEG共重合体、PGA−PEG共重合体、PLGA−PEG共重合体、およびそれらの誘導体)を含む。一部の実施形態では、ポリエステルは、例えば、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリ(オルトエステル)−PEG共重合体、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)−PEG共重合体、ポリリシン、ポリリシン−PEG共重合体、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)−PEG共重合体、ポリ(L−ラクチド−コ−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]、およびそれらの誘導体を含む。
【0076】
一部の実施形態では、ポリマーは、PLGAであってもよい。PLGAは、乳酸およびグリコール酸の生体適合性および生分解性共重合体であり、かつ様々な形態のPLGAは、乳酸:グリコール酸の比によって特徴づけられる。乳酸は、L−乳酸、D−乳酸、またはD,L−乳酸であってもよい。PLGAの分解速度は、乳酸:グリコール酸比を変更することによって調節してもよい。一部の実施形態では、本発明に従って使用されるべきPLGAは、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75、または約15:85の乳酸:グリコール酸比によって特徴づけられる。
【0077】
一部の実施形態では、ポリマーは、1つ以上のアクリルポリマーであってもよい。特定の実施形態では、アクリルポリマーは、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート共重合体、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)共重合体、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート共重合体、ポリシアノアクリレート、および上記ポリマーのうちの1つ以上を含む組み合わせを含む。アクリルポリマーは、第四級アンモニウム基の含量が少ない、アクリル酸およびメタクリル酸エステルの完全に重合された共重合体を含んでもよい。
【0078】
一部の実施形態では、ポリマーは、カチオンポリマーであってもよい。一般に、カチオンポリマーは、核酸の負に帯電した鎖(例えば、DNA、RNA、またはそれらの誘導体)を濃縮し、および/または保護することができる。ポリ(リジン)(Zaunerら、1998年、Adv.Drug Del.Rev.、30:97頁;およびKabanovら、1995年、Bioconjugate Chem.、6:7頁)、ポリ(エチレンイミン)(PEI;Boussifら、1995年、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、1995年、92:7297頁)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska−Latalloら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、93:4897頁;Tangら、1996年、Bioconjugate Chem.、7:703頁;およびHaenslerら、1993年、Bioconjugate Chem.、4:372頁)などのアミン含有ポリマーは、生理的pHで正に帯電し、核酸とイオン対を形成し、種々の細胞系における形質移入を媒介する。
【0079】
一部の実施形態では、ポリマーは、カチオン側鎖を担持する分解性ポリエステルであってもよい(Putnamら、1999年、Macromolecules、32:3658頁;Barreraら、1993年、J.Am.Chem.Soc.、115:11010頁;Kwonら、1998年、Macromolecules、22:3250頁;Limら、1999年、J.Am.Chem.Soc.、121:5633頁;およびZhouら、1990年、Macromolecules、23:3399頁)。これらのポリエステルの例として、ポリ(L−ラクチド−コ−リシン)(Barreraら、1993年、J.Am.Chem.Soc.、115:11010頁)、ポリ(セリンエステル)(Zhouら、1990年、Macromolecules、23:3399頁)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)(Putnamら、1999年、Macromolecules、32:3658頁;およびLimら、1999年、J.Am.Chem.Soc.、121:5633頁)、およびポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)(Putnamら、1999年、Macromolecules、32:3658頁;およびLimら、1999年、J.Am.Chem.Soc.、121:5633頁)が挙げられる。
【0080】
これらや他のポリマーの特性およびそれらを調製するための方法は、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,123,727号明細書;米国特許第5,804,178号明細書;米国特許第5,770,417号明細書;米国特許第5,736,372号明細書;米国特許第5,716,404号明細書;米国特許第6,095,148号明細書;米国特許第5,837,752号明細書;米国特許第5,902,599号明細書;米国特許第5,696,175号明細書;米国特許第5,514,378号明細書;米国特許第5,512,600号明細書;米国特許第5,399,665号明細書;米国特許第5,019,379号明細書;米国特許第5,010,167号明細書;米国特許第4,806,621号明細書;米国特許第4,638,045号明細書;および米国特許第4,946,929号明細書;Wangら、2001年、J.Am.Chem.Soc.、123:9480頁;Limら、2001年、J.Am.Chem.Soc.、123:2460頁;Langer、2000年、Acc.Chem.Res.、33:94頁;Langer、1999年、J.Control.Release、62:7頁;およびUhrichら、1999年、Chem.Rev.、99:3181頁を参照)。より一般的には、特定の好適なポリマーを合成するための種々の方法は、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts、Goethals編、Pergamon Press、1980年;Principles of Polymerization、Odian編、John Wiley & Sons、第4版、2004年;Contemporary Polymer Chemistry、Allcockら編、Prentice−Hall、1981年;Demingら、1997年、Nature、390:386頁;および米国特許第6,506,577号明細書、米国特許第6,632,922号明細書、米国特許第6,686,446号明細書、および米国特許第6,818,732号明細書において記載がなされている。
【0081】
一部の実施形態では、ポリマーは、直鎖状または分枝状ポリマーであってもよい。一部の実施形態では、ポリマーは、デンドリマーであってもよい。一部の実施形態では、ポリマーは、実質的に互いに架橋されていてもよい。一部の実施形態では、ポリマーは、実質的に架橋を含まなくてもよい。一部の実施形態では、ポリマーは、架橋ステップを受けることなく、本発明に従って使用してもよい。さらに、本合成ナノ担体が、上記および他のポリマーのいずれかの、ブロック共重合体、グラフト共重合体、混和物、混合物、および/または付加物を含んでもよいことは理解されるべきである。当業者は、本明細書中に列挙されるポリマーが、例示的な、包括的でない、本発明に従って使用可能なポリマーのリストを示すことを理解するであろう。
【0082】
一部の実施形態では、合成ナノ担体は、ポリマー成分を含まなくてもよい。一部の実施形態では、合成ナノ担体は、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含んでもよい。一部の実施形態では、非重合体合成ナノ担体は、非重合体成分の凝集体、例えば金属原子(例えば金原子)の凝集体である。
【0083】
一部の実施形態では、合成ナノ担体は、場合により、1つ以上の両親媒性実体を含んでもよい。一部の実施形態では、両親媒性実体は、安定性が高まり、均一性が改善され、または粘度が高まった合成ナノ担体の生成を促進しうる。一部の実施形態では、両親媒性実体は、脂質膜(例えば、脂質二重層、脂質単層など)の内部表面と結合されうる。当該技術分野で既知の多数の両親媒性実体は、本発明による合成ナノ担体の作製における使用に適する。かかる両親媒性実体は、限定はされないが、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;ジアシルグリセロールスクシネート;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール;ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル;表面活性脂肪酸、例えばパルミチン酸またはオレイン酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレアート(Span(登録商標)85)グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン;ポロキサマー;ソルビタントリオレアートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;リン酸ジセチル;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシル−アミン;アセチルパルミテート(acetyl palmitate);グリセロールリシノレエート;ヘキサデシルステレート;イソプロピルミリステート;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000−ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400−モノステアレート;リン脂質;高い界面活性剤特性を有する合成および/または天然洗剤;デオキシコール酸塩;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオン対試薬;ならびにそれらの組み合わせを含む。両親媒性実体成分は、異なる両親媒性実体の混合物であってもよい。当業者は、これが、典型的であり、包括的でない、界面活性剤活性を有する物質のリストを示すことを理解するであろう。任意の両親媒性実体は、本発明に従って使用されるべき合成ナノ担体の生成において使用してもよい。
【0084】
一部の実施形態では、合成ナノ担体は、場合により、1つ以上の炭水化物を含んでもよい。炭水化物は、天然または合成であってもよい。炭水化物は、誘導体化された天然炭水化物であってもよい。特定の実施形態では、炭水化物は、限定はされないが、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクトロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、およびノイラミン酸を含む、単糖類または二糖類を含む。特定の実施形態では、炭水化物は、限定はされないが、ブルラン、セルロース、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン(cyclodextran)、グリコーゲン、デンプン、ヒドロキシエチルスターチ、カラギーナン、グリコン、アミロース、キトサン、N,O−カルボキシメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、デンプン、キチン、ヘパリン、コンニャク、グルコマンナン、プスチュラン(pustulan)、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードラン、およびキサンタンを含む多糖類である。特定の実施形態では、炭水化物は、限定はされないが、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、およびラクチトールを含む糖アルコールである。
【0085】
一実施形態では、本合成ナノ担体は、ポリマーマトリックス、ニコチンを含む免疫特徴表面、およびR848を含むTh1バイアス免疫刺激剤を含み、ここでR848は、合成ナノ担体内部にカプセル化されることにより、合成ナノ担体にカップリングされる。一実施形態では、本組成物は、対象への投与に適した剤形での薬学的に許容できる賦形剤と併用された上記の合成ナノ担体を含む。上記の実施形態では、合成ナノ担体は、回転楕円体の形状であり、ここで最大寸法、最小寸法、および直径のすべては、平均で250nmである。
【0086】
別の実施形態では、本合成ナノ担体は、ポリマーマトリックス、合成ナノ担体の表面に吸着によってカップリングされた抗−CD11c抗体を含む標的化部分、およびR848を含むTh1バイアス免疫刺激剤を含み、ここでR848は、合成ナノ担体内部にカプセル化されることにより、合成ナノ担体にカップリングされる。一実施形態では、本組成物は、対象への投与に適した剤形での薬学的に許容できる賦形剤と併用された上記の合成ナノ担体を含む。上記の実施形態では、合成ナノ担体は、300nmの最大寸法および150nmの最小寸法を有する円筒形の形状である。
【0087】
本発明による組成物は、薬学的に許容できる賦形剤と組み合わされた本合成ナノ担体を含む。組成物は、有用な剤形に到達するため、従来の医薬品製造および配合技術を用いて作製してもよい。一実施形態では、本合成ナノ担体は、防腐剤とともに注入するため、無菌生理食塩溶液中に懸濁される。
【0088】
D.本免疫ナノ治療薬を作製し、使用する方法
合成ナノ担体は、当該技術分野で既知の多種多様な方法を用いて調製してもよい。例えば、合成ナノ担体は、ナノ沈殿、流体チャネルを用いるフローフォーカシング、スプレー乾燥、単一および二重エマルション溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、ミリング、マイクロエマルション法、マイクロ加工、ナノ加工、犠牲層、単純および複合コアセルベーション、および当業者に周知の他の方法のような方法によって形成してもよい。その他または追加として、単分散半導体、導電性、磁性、有機、および他のナノ材料のための水性および有機溶媒合成については、記載がなされている(Pellegrinoら、2005年、Small、1:48頁;Murrayら、2000年、Ann.Rev.Mat.Sci.、30:545頁;およびTrindadeら、2001年、Chem.Mat.、13:3843頁)。追加的な方法が、文献において記載がなされている(例えば、Doubrow編、「Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy」 CRC Press、Boca Raton、1992年;Mathiowitzら、1987年、J.Control.Release、5:13頁;Mathiowitzら、1987年、Reactive Polymers、6:275頁;およびMathiowitzら、1988年、J.Appl.Polymer Sci.、35:755頁、さらに米国特許第5578325号明細書および米国特許第6007845号明細書を参照)。
【0089】
特定の実施形態では、合成ナノ担体は、ナノ沈殿プロセスまたはスプレー乾燥によって調製される。合成ナノ担体の調製に使用される条件を変更することにより、所望されるサイズまたは特性(例えば、疎水性、親水性、外的形態、「粘性」、形状など)の粒子が生成されうる。合成ナノ担体を調製する方法および使用される条件(例えば、溶媒、温度、濃度、気流速度など)は、合成ナノ担体にカップリングされるべき材料および/またはポリマーマトリックスの組成物に依存する場合がある。
【0090】
上記の方法のいずれかによって調製される粒子が所望される範囲外のサイズ範囲を有する場合、粒子を、例えばふるいを使用してサイジングしてもよい。
【0091】
カップリングは、種々の異なる方法で行ってもよく、また共有または非共有のいずれであってもよい。かかるカップリングは、表面上または本合成ナノ担体内部に存在するように調製してもよい。本合成ナノ担体の成分(例えば、免疫特徴表面が構成される部分、標的化部分、ポリマーマトリックスなど)は、例えば1つ以上の共有結合により、互いに直接カップリングされうるか、または1つ以上のリンカーを用いてカップリングされうる。合成ナノ担体を機能化する追加的な方法は、公開された米国特許出願公開第2006/0002852号明細書(Saltzmanら)、公開された米国特許出願公開第2009/0028910号明細書(DeSimoneら)、または公表された国際特許出願の国際公開第2008/127532A1号パンフレット(Murthyら)から調整可能である。
【0092】
任意の好適なリンカーは、本発明に従って使用してもよい。リンカーを使用し、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合などを形成することが可能である。リンカーは、炭素原子またはヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄など)を含有しうる。一部の実施形態では、リンカーは、脂肪族または複素脂肪族リンカーである。一部の実施形態では、リンカーは、ポリアルキルリンカーである。特定の実施形態では、リンカーは、ポリエーテルリンカーである。特定の実施形態では、リンカーは、ポリエチレンリンカーである。特定の具体的な実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーである。
【0093】
一部の実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーである。ほんの数例を挙げると、切断可能なリンカーは、プロテアーゼ切断可能なペプチドリンカー、ヌクレアーゼ感受性核酸リンカー、リバーゼ感受性脂質リンカー、グリコシダーゼ感受性炭水化物リンカー、pH感受性リンカー、低酸素感受性リンカー、光切断可能なリンカー、熱不安定性リンカー、酵素切断可能なリンカー(例えば、エステラーゼ切断可能なリンカー)、超音波感受性リンカー、X線切断可能なリンカーなどを含む。一部の実施形態では、リンカーは、切断可能なリンカーではない。
【0094】
種々の方法を用い、リンカーまたは合成ナノ担体の他の成分を合成ナノ担体とカップリングさせてもよい。一般的方法として、受動吸着(例えば静電相互作用を介する)、多価キレート化、特異的結合対のメンバー間の高親和性非共有結合、共有結合形成などが挙げられる(Gaoら、2005年、Curr.Op.Biotechnol.、16:63頁)。一部の実施形態では、クリック化学を用い、材料を合成ナノ担体と結合させてもよい。
【0095】
非共有の特異的結合相互作用を用いてもよい。例えば、粒子または生体分子のいずれかをビオチンで機能化するとともに、他方をストレプトアビジンで機能化してもよい。これら2つの部分は、非共有的にかつ高親和性で互いに特異的に結合することで、粒子および生体分子が結合する。他の特異的結合対であっても同様に用いることができる。あるいは、ヒスチジンで標識された生体分子は、ニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)に複合された粒子と結合しうる。
【0096】
カップリングに関する追加的な一般的情報については、Pierceウェブサイトで入手可能であり、また最初に1994−95年 Pierce Catalogにおいて公表された、雑誌Bioconjugate Chemistry(American Chemical Society,Columbus OH,PO Box 3337,Columbus,OH,43210によって発行;「Cross−Linking」、Pierce Chemical Technical Library)、およびそこで引用された参考文献;Wong S.S.、「Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking」、CRC Press Publishers,Boca Raton、1991年;およびHermanson G.T.、「Bioconjugate Techniques」、Academic Press,Inc.、San Diego、1996年、を参照のこと。
【0097】
その他または追加として、合成ナノ担体は、免疫特徴表面、標的化部分、免疫刺激剤、および/または他の成分と、非共有相互作用を介し、直接的または間接的にカップリングさせてもよい。非共有相互作用は、限定はされないが、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、宿主−寄生体相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子−双極子相互作用、および/またはそれらの組み合わせを含む。かかるカップリングは、表面上または本合成ナノ担体内部に存在するように調製してもよい。
【0098】
本発明の組成物が任意の好適な方法で作製可能であり、かつ本発明が本明細書中に記載の方法を用いて生成可能な組成物に決して限定されないことは理解されるべきである。適切な方法の選択には、結合されている特定の部分の特性への注意が必要な場合がある。
【0099】
一部の実施形態では、本合成ナノ担体は、無菌条件下で作製される。これは、得られる組成物が無菌性および非感染性を示すことから、非滅菌組成物と比較される場合、安全性が改善されることを保証しうる。これは、特に、合成ナノ担体を受ける対象が、免疫不全を有し、感染症を患っており、および/または感染症にかかりやすい場合において、貴重な安全性尺度を提供する。一部の実施形態では、本合成ナノ担体は、凍結乾燥させ、長期間活性を低下させることのない調合方法に応じて、懸濁液中にまたは凍結乾燥粉末として保存してもよい。
【0100】
本組成物は、限定はされないが、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、または皮内など);経口;経鼻、経粘膜、直腸;眼、または経皮を含む種々の投与経路によって投与してもよい。
【0101】
本組成物を使用して処置可能な徴候は、限定はされないが、サイトカイン放出のTh2パターンからサイトカイン放出のTh1パターンに向けてバイアスすることが望ましい場合の徴候を含む。かかる徴候は、限定はされないが、アレルギー、アレルギー性喘息、またはアトピー性皮膚炎などのアトピー症状;喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD、例えば気腫または慢性気管支炎);ならびに慢性リーシュマニア症、カンジダ症または住血吸虫症などの慢性感染性病原体に起因する慢性感染およびプラスモジウム、トキソプラズマ−ゴンヂ(toxoplasma gondii)、マイコバクテリア、HIV、HBV、HCV EBVもしくはCMV、またはそれらのいずれか、またはそれらの任意のサブセットによって引き起こされる感染を含む。
【0102】
本組成物を使用して処置可能な他の徴候は、限定はされないが、対象のTh1応答が準最適および/または無効である場合の徴候を含む。本発明の使用は、対象のTh1免疫応答を高めうる。かかる徴候は、様々な癌、および免疫不全または準最適免疫を有する集団、例えば幼児、高齢者、癌患者、免疫抑制薬または放射線を受けている個人、血液透析患者、ならびに遺伝性もしくは特発性の免疫機能障害を有する患者を含む。
【0103】
本組成物が従来の免疫療法とは異なる方法で作用することは、本発明の一態様である。従来の免疫療法では、抗原および免疫刺激剤は、同時投与される。
【0104】
それに対し、本発明の実施形態では、適応免疫応答が所望される抗原は、本組成物内部に組み込まれない。好ましい実施形態では、かかる抗原が本免疫特徴表面から除去されることで、免疫特徴表面は症状の処置に関連する抗原を含まない。
【0105】
さらに、本発明の実施形態では、本組成物の投与は、症状の処置に関連する抗原(ナノ担体にカップリングされるかまたはナノ担体にカップリングされない)の投与をさらに含まない。
【0106】
特定の実施形態では、Th1バイアス応答が所望される抗原が組成物の投与と異なる時間に投与され、ここで抗原の投与は、受動投与または能動投与を含む。
【0107】
各例においては、1つ以上の抗原の投与とは時間が異なる1つ以上の免疫刺激剤の投与が1つ以上の抗原の投与に対してTh1バイアス応答をもたらすことは想定外である。
【実施例】
【0108】
実施例1:PLA−R848複合体
撹拌棒およびコンデンサーを備えた二口丸底フラスコに、イミダゾキノリンのレシキモド(R−848、100mg、3.18×10−4モル)、D/Lラクチド(5.6gm、3.89×10−2モル)および無水硫酸ナトリウム(4.0gm)を添加した。フラスコおよび内容物を、真空下、50℃で8時間乾燥させた。次いで、フラスコをアルゴンでフラッシュし、トルエン(100mL)を添加した。反応物を、120℃に設定した油槽内で、ラクチドの全部が溶解するまで撹拌し、次いでエチルヘキサン酸スズ(75mg、60μL)を、ピペットを介して添加した。次いで、加熱を、アルゴン下で16時間継続した。冷却後、水(20mL)を添加し、攪拌を30分間継続した。反応物を、追加のトルエン(200mL)で希釈し、次いで水(200mL)で洗浄した。次いで、それに代わり、トルエン溶液を、5%濃度の塩酸を含有する10%塩化ナトリウム溶液(200mL)、その後に飽和重炭酸ナトリウム(200mL)で洗浄した。TLC(シリカ、塩化メチレン中10%メタノール)は、溶液が遊離R−848を全く含有しないことを示した。溶液を、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で蒸発させ、3.59gのポリ乳酸−R−848複合体を得た。ポリマーの一部を、塩基で加水分解し、HPLCにより、R−848含量について試験した。R−848濃度対HPLC応答の標準曲線に対する比較により、ポリマーが、ポリマー1gあたり4.51mgのR−848を含有することが判定された。ポリマーの分子量が、GPCにより、約19,000であることが判定された。
【0109】
実施例2:ニコチン−PEG−PLA複合体
3−ニコチン−PEG−PLAポリマーを、次のように合成した。
【0110】
まず、3.5KDの分子量を有するJenKem(登録商標)からのモノアミノポリ(エチレングリコール)(0.20gm、5.7×10−5モル)および過剰の4−カルボキシコチニン(0.126gm、5.7×10−4モル)を、ジメチルホルムアミド(5.0mL)中に溶解した。溶液を撹拌し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.124gm、6.0×10−4モル)を添加した。この溶液を、室温で一晩撹拌した。水(0.10mL)を添加し、攪拌をさらに15分間継続した。ジシクロヘキシル尿素の沈殿物を濾過によって取り出し、濾過物を真空下で蒸発させた。残留物を塩化メチレン(4.0mL)中に溶解し、この溶液をジエチルエーテル(100mL)に添加した。溶液を冷蔵庫内で2時間冷却し、沈殿したポリマーを濾過によって単離した。ジエチルエーテルで洗浄後、固形の白色ポリマーを高真空下で乾燥させた。収量は0.188gmであった。このポリマーを、次のステップ用に、さらに精製せずに使用した。
【0111】
コチニン/PEGポリマー(0.20gm、5.7×10−5モル)を、窒素下で乾燥テトラヒドロフラン(10mL)中に溶解し、溶液を、テトラヒドロフラン中、水素化アルミニウムリチウムの溶液(1.43mLの2.0M、2.85×10−3モル)を添加する際、撹拌した。水素化アルミニウムリチウムの添加により、ポリマーがゼラチン状の塊として沈殿した。反応物を、ゆっくりと流れる窒素下で80℃まで加熱し、テトラヒドロフランを蒸発させておいた。次いで、残留物を、80℃で2時間加熱した。冷却後、水(0.5mL)を慎重に添加した。一旦水素の発生が停止すると、塩化メチレン(50mL)中10%メタノールを添加し、反応混合物をポリマーが溶解するまで撹拌した。この混合物を、Celite(登録商標)ブランドの珪藻土(EMD Inc.からCelite(登録商標)545、パート番号CX0574−3として入手可能)を通して濾過し、濾過物を、真空下で蒸発させ、乾燥させた。残留物を塩化メチレン(4.0mL)中に溶解し、この溶液をジエチルエーテル(100mL)に徐々に添加した。ポリマーを、白色綿状固体として分離し、遠心分離によって単離した。ジエチルエーテルで洗浄後、固体を真空下で乾燥させた。収量は0.129gmであった。
【0112】
次いで、撹拌棒および還流コンデンサーを備えた100mLの丸底フラスコに、PEG/ニコチンポリマー(0.081gm、2.2×10−5モル)、D/Lラクチド(0.410gm、2.85×10−3モル)および無水硫酸ナトリウム(0.380gm)を負荷した。これを、真空下、55℃で8時間乾燥させた。フラスコを、アルゴンで冷却し、フラッシュし、次いで乾燥トルエン(10mL)を添加した。フラスコを120℃に設定した油槽内に置き、一旦ラクチドが溶解すると、エチルヘキサン酸スズ(5.5mg、1.36×10−5モル)を添加した。反応を、120℃で16時間進行させておいた。室温まで冷却後、水(15mL)を添加し、攪拌を30分間継続した。塩化メチレン(200mL)を添加し、分液漏斗内で撹拌後、各相を静置しておいた。塩化メチレン相を、単離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。濾過して乾燥剤を除去後、濾過物を真空下で蒸発させ、ポリマーを無色泡状物として得た。ポリマーをテトラヒドロフラン(10mL)中に溶解し、この溶液を、攪拌しながら水(150mL)に徐々に添加した。沈殿ポリマーを遠心分離によって単離し、固体を塩化メチレン(10mL)中に溶解した。塩化メチレンを真空下で取り出し、残留物を真空下で乾燥させた。3−ニコチン−PEG−PLAポリマーの収量は0.38gmであった。
【0113】
実施例3:机上のナノ担体調合物−アレルギー
レシキモド(別名R848)は、米国特許第5,389,640号明細書(Gersterらに付与)の実施例99において提供される合成に従って合成する。PLA−PEG−ニコチン複合体は、実施例2に従って調製する。PLAは、D,L−ラクチドを用いる開環重合によって調製する(MW=約15KD〜18KD)。PLA構造は、NMRによって確認する。ポリビニルアルコール(Mw=11KD−31KD、85%が加水分解)は、VWR scientificから購入する。オバルブミンペプチド323〜339は、Bachem Americas Inc.(3132 Kashiwa Street、Torrance、CA90505)、パート番号4064565)から入手する。これらを使用し、次の溶液を調製した。
1.塩化メチレン中のレシキモド(7.5mg/mL)
2.塩化メチレン中のPLA−PEG−ニコチン(100mg/mL)
3.塩化メチレン中のPLA(100mg/mL)
4.水中のオバルブミンペプチド323〜339(10mg/mL)
5.水中のポリビニルアルコール(50mg/mL)
【0114】
溶液#1(0.4mL)、溶液#2(0.4mL)、溶液#3(0.4mL)および溶液#4(0.1mL)を小バイアル内で結合させ、混合物を、Branson Digital Sonifier 250を使用し、50%の振幅で40秒間超音波処理する。このエマルションに溶液#5(2.0mL)を添加し、Branson Digital Sonifier 250を使用する、35%の振幅で40秒間の超音波処理により、第2のエマルションを形成する。これを、水(30mL)を有するビーカーに添加し、この混合物を室温で2時間撹拌し、ナノ担体を形成する。ナノ担体分散体の一部(1.0mL)を水(14mL)で希釈し、これを、100KDの膜カットオフを有するAmicon Ultra遠心濾過装置での遠心分離によって濃縮する。容量が約250μLである場合、水(15mL)を添加し、粒子を、Amicon装置を使用して再び約250μLに濃縮する。リン酸塩緩衝生理食塩水(pH=7.5、15mL)での2回目の洗浄を同様にして行い、最終濃縮物を全容量が1.0mLになるまでリン酸塩緩衝生理食塩水で希釈する。これにより、濃度が約2.7mg/mLの最終ナノ担体分散体が得られる。
【0115】
次いで、合成ナノ担体を、筋肉内注射によって対象に投与する。対象を、後に環境アレルゲン、例えばブタクサ花粉に暴露された状態になるように導く。環境アレルゲンへの暴露後、対象に対し、環境アレルゲンにもう一回暴露させることによってアレルギーを誘発する。環境アレルゲンへの暴露に対するTh1バイアス応答の任意の生成を記録する。
【0116】
実施例4:机上のナノ担体調合物−アレルギー
レシキモド(別名R848)は、米国特許第5,389,640号明細書(Gersterらに付与)の実施例99において提供される合成に従って合成する。カルボキシル化ポリ乳酸は、PLA−COOHをもたらすD,L−ラクチドの開環重合を用いて調製する(目標MW=15〜18KD)。構造は、NMRによって確認する。PLA−PEG−メトキシポリマーは、D,L−ラクチドの開環重合を開始するために使用されるメトキシ−PEG(ポリエチレングリコールメチルエーテル、Aldrich ChemicalからのItem 20509、PEGのMW=約2KD)を使用して調製する(最終ポリマーのMW目標=18〜20KD)。構造は、NMRによって確認する。オバルブミンペプチド323〜339は、Bachem Americas Inc.(3132 Kashiwa Street(Torrance,CA90505)、パート番号4064565)から入手する。ポリビニルアルコール(Mw=11KD〜31KD、85%が加水分解)は、VWR scientificから購入する。これらを使用し、次の溶液を調製する。
1.塩化メチレン中のレシキモド(7.5mg/mL)
2.塩化メチレン中のPLA−PEG−メトキシ(100mg/mL)
3.塩化メチレン中のPLA−COOH(100mg/mL)
4.水中のオバルブミンペプチド323〜339(10mg/mL)
5.水中のポリビニルアルコール(50mg/mL)
【0117】
溶液#1(0.4mL)、溶液#2(0.4mL)、溶液#3(0.4mL)および溶液#4(0.1mL)を小バイアル内で結合させ、混合物を、50%の振幅で40秒間のBranson Digital Sonifier 250によって超音波処理する。このエマルションに溶液#5(2.0mL)を添加し、Branson Digital Sonifier 250を使用する、35%の振幅で40秒間の超音波処理により、第2のエマルションを形成する。これを、水(30mL)を有するビーカーに添加し、この混合物を室温で2時間撹拌し、ナノ担体を形成する。ナノ担体分散体の一部(1.0mL)を水(14mL)で希釈し、これを、100KDの膜カットオフを有するAmicon Ultra遠心濾過装置での遠心分離によって濃縮する。容量が約250μLである場合、水(15mL)を添加し、粒子を、Amicon装置を使用して再び約250μLに濃縮する。リン酸塩緩衝生理食塩水(pH=6.5、15mL)での2回目の洗浄を同様にして行い、最終濃縮物を全容量が5.0mLになるまでリン酸塩緩衝生理食塩水(pH=6.5)で希釈する。これにより、濃度が約0.6mg/mLの最終ナノ担体分散体が得られる。ナノ担体分散体に、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、200mg)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、70mg)を加え、この混合物を室温で30分間インキュベートする。ナノ担体を、遠心分離により、PBSで3回洗浄する。最終の洗浄後、粒子を容量が1.0mLになるまでPBSで希釈し、約3.0mg/mLの濃度を有する、NHS−活性化ナノ担体の懸濁液を得る。この懸濁液に、抗−CD11c抗体(50μL(5μg/mL)、Miltenyi Biotecから入手可能な抗−CD11c抗体クローンMJ4−27G12)を加える。懸濁液を、冷蔵庫内で一晩インキュベートする。得られた置換ナノ担体を、遠心分離により、PBSで3回洗浄する。最終の洗浄後、粒子を、容量が1.0mLになるまでPBSで希釈し、約2.7mg/mLの濃度を有する、抗−CD169で置換されたナノ担体の懸濁液を得る。
【0118】
次いで、合成ナノ担体を、筋肉内注射によって対象に投与する。対象を、後に環境アレルゲン、例えばブタクサ花粉に暴露された状態になるように導く。環境アレルゲンへの暴露後、対象に対し、環境アレルゲンにもう一回暴露させることによってアレルギーを誘発する。環境アレルゲンへの暴露に対するTh1バイアス応答の任意の生成を記録する。
【0119】
実施例5:机上のナノ担体調合物−アレルギー
台形の合成ナノ担体を、以下の米国特許出願公開第2009/0028910号明細書の変更された教示内容に従って調製する。
【0120】
パターン化されたペルフルオロポリエーテル(PFPE)型は、200nmの台形形状でパターン化されたシリコン基板上に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを有するPFPE−ジメタクリレート(PFPE−DMA)を注入することによって生成される。ポリ(ジメチルシロキサン)型を使用し、液体PFPE−DMAを所望される領域に制限する。次いで、装置を、窒素パージ下で10分間、UV光(365nm)に暴露する。次いで、完全に硬化されたPFPE−DMA型を、シリコンマスターから放出させる。それとは別に、ポリ(エチレングリコール)(PEG)ジアクリレート(n=9)を、1wt%の光開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンと混和させる。ナノ担体中の全ポリマー重量を基準として1wt%の量で添加されるレシキモド(R848、米国特許第5,389,640号明細書(Gersterらに付与)の実施例99に提供された合成に従って合成される)を、このPEG−ジアクリレート単量体溶液に添加し、その組み合わせを完全に混合する。平坦で均一な非湿潤表面を、「ピラニア」溶液(1:1濃硫酸:30%過酸化水素(水性)溶液)で洗浄されたシリコンウエーハを、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチル)シランでデシケーター内での蒸着を介して20分間処理することによって生成する。この後、ここで50μLのPEGジアクリレート/R848/トキソイド溶液を処理したシリコンウエーハ上に載せ、パターン化されたPFPE型をその最上部に置く。次いで、基板を成形装置内に入れ、低い圧力を加え、余分なPEG−ジアクリレート/R848/トキソイド溶液を排除する。次いで、装置全体を、窒素パージ下で10分間、UV光(365nm)に暴露する。次いで、合成ナノ担体を、型から取り出し、アセトン中、5wt%カルボニルジイミダゾールの溶液を有するフラスコに加える。合成ナノ担体を、24時間緩やかに撹拌後、合成ナノ担体を、アセトン溶液から分離し、室温で水に懸濁する。この懸濁液に、過剰な抗−CD11c抗体(Miltenyi Biotecから入手可能なクローンMJ4−27G12)を加え、懸濁液を37℃に加熱し、24時間緩やかに撹拌する。次いで、標識合成ナノ担体を、懸濁液から分離する。
【0121】
次いで、合成ナノ担体を、筋肉内注射により、対象に投与する。対象を、後に環境アレルゲン、例えばブタクサ花粉に暴露された状態になるように導く。環境アレルゲンへの暴露後、対象に対し、環境アレルゲンにもう一回暴露させることによってアレルギーを誘発する。環境アレルゲンへの暴露に対するTh1バイアス応答の任意の生成を記録する。
【0122】
実施例6:机上のナノ担体調合物−癌
レシキモド(別名R848)は、米国特許第5,389,640号明細書(Gersterらに付与)の実施例99に提供された合成に従って合成する。PLAは、D,L−ラクチドを使用する開環重合によって調製する(MW=約15KD〜18KD)。構造は、NMRによって確認する。PLA−PEG−メトキシポリマーは、D,L−ラクチド(最終ポリマーのMW目標=18〜20KD)の開環重合を開始するために使用されるメトキシ−PEG(ポリエチレングリコールメチルエーテル、Aldrich Chemical製のItem 20509、PEGのMW=約2KD)を使用して調製する。構造は、NMRによって確認する。オバルブミンペプチド323〜339は、Bachem Americas Inc.(3132 Kashiwa Street、Torrance CA 90505、パート番号4064565)から入手する。ポリビニルアルコール(Mw=11KD〜31KD、85%加水分解)は、VWR scientificから購入する。これらを使用し、次の溶液を調製する。
1.塩化メチレン中のレシキモド(7.5mg/mL)
2.塩化メチレン中のPLA−PEG−メトキシ(100mg/mL)
3.塩化メチレン中のPLA(100mg/mL)
4.水中のオバルブミンペプチド323〜339(10mg/mL)
5.水中のポリビニルアルコール(50mg/mL)
【0123】
溶液#1(0.4mL)、溶液#2(0.4mL)、溶液#3(0.4mL)および溶液#4(0.1mL)を小バイアル内で結合させ、混合物を、50%の振幅で40秒間のBranson Digital Sonifier 250を使用して超音波処理する。このエマルションに溶液#5(2.0mL)を添加し、Branson Digital Sonifier 250を使用する、35%の振幅で40秒間の超音波処理により、第2のエマルションを形成する。これを、水(30mL)を有するビーカーに添加し、この混合物を室温で2時間撹拌し、ナノ担体を形成する。ナノ担体分散体の一部(1.0mL)を水(14mL)で希釈し、これを、100KDの膜カットオフを有するAmicon Ultra遠心濾過装置での遠心分離によって濃縮する。容量が約250μLである場合、水(15mL)を添加し、粒子を、Amicon装置を使用して再び約250μLに濃縮する。リン酸塩緩衝生理食塩水(pH=7.5、15mL)での2回目の洗浄を同様にして行い、最終濃縮物を全容量が1.0mLになるまでリン酸塩緩衝生理食塩水で希釈する。これにより、濃度が約2.7mg/mLの最終ナノ担体分散体が得られる。
【0124】
次いで、合成ナノ担体を、筋肉内注射により、固形腫瘍を有する対象に投与する。合成ナノ担体の注射の48時間後、対象を、固形腫瘍の破壊を引き起こすのに十分な放射線に暴露させる。任意の抗腫瘍細胞毒性T細胞の生成を記録する。
【0125】
実施例7:机上のナノ担体調合物−慢性リーシュマニア症
合成ナノ担体を、以下の米国特許出願公開第20060002852号明細書の変更された教示内容に従って調製する。
【0126】
10mg/mlでのアビジンを、2%デオキシコール酸塩緩衝液を含有するPBS中の10倍過剰なNHS−パルミチン酸と反応させる。混合物を、短時間超音波処理し、37℃で12時間緩やかに混合する。過剰な脂肪酸および加水分解エステルを除去するため、反応物を、0.15%デオキシコール酸塩を含有するPBSに対して透析する。
【0127】
改良された二重エマルション法を、脂肪酸PLGA粒子の調製に用いる。この方法では、100μLのPBS中、ナノ担体中の全ポリマー重量を基準として1wt%の量で添加されるレシキモド(R848、米国特許第5,389,640号明細書(Gersterらに付与)の実施例99に提供される合成に従って合成)を、ボルテックス中のPLGA溶液(2ml MeCl中、100mg PLGA)に滴下添加する。次いで、この混合物を、氷上で、10秒間隔で3回超音波処理する。この時点で、4mlのアビジン−パルミチン酸塩/PVA混合物(2mlの5%PVA中、2mlのアビジン−パルミチン酸塩)を、PLGA溶液に緩やかに添加する。次いで、これを、氷上で、10秒間隔で3回超音波処理する。超音波処置後、材料を、攪拌中の100mlの0.3%PVAに滴下添加する。これに、一定の室温で4時間の激しい攪拌を施し、塩化メチレンを蒸発させる。次いで、得られたエマルションを、12,000gで15分間の遠心分離によって精製し、次いでDI水で3回洗浄する。
【0128】
ビオチン化抗−CD11c抗体を、以下のように調製する。ビオチン−NHSを、使用直前に、1mg/mlでのDMSO中に溶解する。抗−CD11c抗体(Miltenyi Biotecから入手可能なクローンMJ4−27G12)を、1/10希釈で溶液に添加し、ビオチン−NHS用の7.5〜8.5のpHで、氷上で30分間または室温で2時間インキュベートする。PBSまたはHEPESは、緩衝液として使用してもよい。反応物を、トリスで急冷する。
【0129】
次いで、得られた合成ナノ担体を室温で水に懸濁し、過剰なビオチン化抗−CD169抗体(50μL(5μg/mL)、上記のように調製)を懸濁液に添加する。懸濁液を37℃に加熱し、緩やかに24時間撹拌する。次いで、標識合成ナノ担体を、懸濁液から分離する。
【0130】
次いで、合成ナノ担体を、筋肉内注射により、サイトカイン発現のTh2バイアスのパターンによって特徴づけられる慢性リーシュマニア症を患う対象に投与する。任意の適切な抗体の産生を記録する。
【0131】
実施例8:R848を有するナノ担体を使用する喘息の処置
R848を有する合成ナノ担体を使用し、R848含有ナノ担体を使用し、Th2表現型からTh1表現型への喘息応答を修飾することが可能であるか否かを判定した。マウス(BALB/c;1群あたりマウス5匹)に対し、腹腔内(i.p.)に、200μLのPBS中、20μgのオバルブミンおよび2mgのImject(登録商標)ミョウバン(Pierce(Rockford,IL))で、0および14日目にオバルブミンで前感作する(群3〜9;実験用マウス群およびナノ担体組成物を含む各々の処置の説明については表1および2を参照)。対照マウスは、200μLのPBS(群1)または200μLのPBS中、2mgのImject(登録商標)ミョウバン(腹腔内)(群2)のいずれかの投与を受けた。27、28、および29日目、マウスは、PBS(処置における陰性対照)(群1〜4)、CpG(OD1826、100μL中30μg(腹腔内);処置における陽性対照)(群5)、R848を有するニコチン−ナノ担体(100μL中100μg(腹腔内))(群6)、R848を有するニコチン−ナノ担体(60μL中100μg、鼻腔内(i.n.))(群7)、R848を有しないニコチン−ナノ担体(100μL中100μg(腹腔内))(群8)、またはR848を有しないニコチン−ナノ担体(60μL中100μg(鼻腔内))(群9)のいずれかで処置を受けた。R848を有するニコチン−ナノ担体は、4.4%のR848を含有した。R848を、PLGA(Mw4.1kD)に複合した。ナノ担体ポリマー組成物を、一般に実施例1〜3の教示に従って作製し、それは、25%のPLA−PEG−ニコチンおよび75%のPLAポリマー(Boehringer Ingelheim製のR202HまたはLakeshore Biomaterials製の100DL2Aのいずれか;両バージョンとも、20kDの分子量および遊離カルボキシル酸末端を有する)を含有した。
【0132】
肺への白血球浸潤の測定のため、28、29、および30日目、マウスに対し、鼻腔内により、60μLのPBS中、50μgのオバルブミンでアレルギーを誘発した(群2および4〜9)。対照マウス(群1および3)は、鼻腔内に60μLのPBSを受けた。32日目、最終のオバルブミンによるアレルギー誘発の48時間後、マウスを安楽死させ、試料を採取した。サイトカイン分析においては、試料を、31日目、最終のオバルブミンによるアレルギー誘発の18時間後に採取した。肺を、3mM EDTAを含有する1mLのPBSで3回洗浄し、差動細胞数のためのサイトスピンおよびサイトカイン分析のため、気管支肺胞洗浄流体(BALF)を採取した。BALFのサイトスピンスライドをDiff−Quik(Dade Behring)で染色し、差動細胞数を計数した。BALFの残りを、サイトカイン分析のために必要になるまで、−20℃で保存した。BALFサイトカイン(IL−12p40、IL−4、IL−13、およびIL−5)を、製造業者(BD BiosciencesおよびR&D Systems)の使用説明書に従い、ELISAによって測定した。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
結果:差動細胞数を計数し、最終のオバルブミンによるアレルギー誘発の48時間後、BALF中に存在する好酸球の相対数を判定した。オバルブミンで前感作しかつオバルブミンでアレルギーを誘発したマウス(群4)は、最終のアレルギー誘発の48時間後、対照マウス(群1、2、および3;全細胞の1%未満の好酸球)に対して好酸球のBALFへの有意な流入(全細胞の68.4%±7.6%)を有した(p<0.0001;図1)。CpGでの処置(腹腔内)(群5)により、オバルブミンによるアレルギー誘発後、オバルブミンで前感作しかつオバルブミンでアレルギーを誘発したマウスに対して好酸球が有意に低下した(29.2%±12.4%)(p<0.0001;図1)。腹腔内(群6)または鼻腔内(群7)のいずれかによる、R848を有するナノ担体での処置により、オバルブミンによるアレルギー誘発後、オバルブミンで前感作しかつオバルブミンでアレルギーを誘発したマウスに対して好酸球が有意に低下した(それぞれ、28.0%±15.2%および21.2%±7.3%)(p<0.0001;図1)。腹腔内(群8)または鼻腔内(群9)のいずれかによる、ナノ担体(R848を有しない)での処置は、オバルブミンで前感作しかつオバルブミンでアレルギーを誘発したマウスに対し、好酸球の流入に影響を与えなかった(それぞれ、67.3%±4.1%および52.5%±10.7%)(p>0.05;図1)。
【0136】
BALFサイトカインレベルを、最終のオバルブミンによるアレルギー誘発の18時間後に測定した。Th2サイトカイン(IL−4、IL−5、およびIL−13)およびTh1サイトカイン(IL−12p40)を測定し、処置が、Th2サイトカイン特性からTh1サイトカイン特性へのサイトカイン発現における変化をもたらすか否かを判定した。オバルブミンで前感作しかつオバルブミンでアレルギーを誘発したマウス(群4)は、対照マウス(群1、2、および3)に対し、IL−4、IL−5、およびIL−13のレベルの増加を有した(図2A〜C)。CpGの腹腔内(群5)またはR848の腹腔内(群8)による処置により、オバルブミンによるアレルギー誘発後、オバルブミンで前感作しかつオバルブミンでアレルギーを誘発したマウスに対してIL−4、IL−5、およびIL−13のBALFレベルが低下した(図2A〜C)。腹腔内(群6)または鼻腔内(群7)のいずれかによる、R848を有するナノ担体での処置により、オバルブミンによるアレルギー誘発後、オバルブミンで前感作しかつオバルブミンでアレルギーを誘発したマウスに対してBALF IL−4、IL−5、およびIL−13のレベルが低下した(図2A〜C)。鼻腔内(群9)による(R848を有しない)ナノ担体での処置により、オバルブミンで前感作しかつオバルブミンでアレルギーを誘発したマウスに対し、IL−4レベルは低下しなかったが、IL−5およびIL−13レベルは低下した(図2A〜C)。R848を有するナノ担体で鼻腔内によって処置したマウスは、すべての他のマウス群に対し、IL−12p40のレベルの増加を有した(図2D)。
【0137】
まとめると、これらの結果は、(腹腔内または鼻腔内のいずれかによる)R848を有するナノ担体での、オバルブミンで前感作したマウスの処置により、BALF中での好酸球が低下し、Th2サイトカイン(IL−4、IL−5、およびIL−13)が低下し、かつTh1サイトカイン(IL−12p40)が増加したことを示す。これらのナノ担体での処置は、腹腔内によるCpGまたはR848のいずれかでの処置に匹敵した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
症状を処置するための組成物であって、
(1)免疫特徴(immunofeature)表面、および(2)合成ナノ担体にカップリングされたTh1バイアス免疫刺激剤、を含む前記合成ナノ担体、ならびに
薬学的に許容できる賦形剤
を含み、
ここで、前記免疫特徴表面は、前記症状の処置に関連する抗原を、前記症状の処置に関連する前記抗原に対して適応免疫応答を引き起こすのに十分な量で含まない、
症状を処置するための組成物。
【請求項2】
前記免疫特徴表面は、前記症状の処置に関連する抗原を全く含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、アレルゲンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、腫瘍抗原を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、慢性感染性病原体抗原を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記免疫特徴表面は、非抗原免疫特徴表面を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記合成ナノ担体は、T細胞抗原をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記合成ナノ担体は、ポリマーマトリックスを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記Th1バイアス免疫刺激剤は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、CpG、免疫刺激性RNA、リポ多糖類、VSV−G、またはHMGB−1のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫特徴表面は、ニコチンおよびその誘導体、メトキシ基、正に帯電したアミン基、シアリルラクトース、ならびにアビジンおよび/またはアビジン誘導体、ならびに上記のいずれかの残基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記合成ナノ担体は、回転楕円体、立方体、円筒形、円錐形、または角錐形(pyramid)である合成ナノ担体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
試料中の前記合成ナノ担体の少なくとも75%の最小寸法は、前記試料中の合成ナノ担体の総数に基づくと、100nmを超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、アレルゲンを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、腫瘍抗原を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、慢性感染性病原体抗原を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記免疫特徴表面は、非抗原免疫特徴表面を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記合成ナノ担体は、T細胞抗原をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記合成ナノ担体は、ポリマーマトリックスを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記Th1バイアス免疫刺激剤は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、CpG、免疫刺激性RNA、リポ多糖類、VSV−G、またはHMGB−1のうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
前記免疫特徴表面は、ニコチンおよびその誘導体、メトキシ基、正に帯電したアミン基、シアリルラクトース、ならびにアビジンおよび/またはアビジン誘導体、ならびに上記のいずれかの残基を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項21】
前記合成ナノ担体は、回転楕円体、立方体、円筒形、円錐形、または角錐形である合成ナノ担体を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、アレルゲンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、腫瘍抗原を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、慢性感染性病原体抗原を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、非抗原免疫特徴表面を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記合成ナノ担体は、T細胞抗原をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記合成ナノ担体は、ポリマーマトリックスを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記Th1バイアス免疫刺激剤は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、CpG、免疫刺激性RNA、リポ多糖類、VSV−G、またはHMGB−1のうちの1つ以上を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記免疫特徴表面は、ニコチンおよびその誘導体、メトキシ基、正に帯電したアミン基、シアリルラクトース、ならびにアビジンおよび/またはアビジン誘導体、ならびに上記のいずれかの残基を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記合成ナノ担体は、回転楕円体、立方体、円筒形、円錐形、または角錐形である合成ナノ担体を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
試料中の前記合成ナノ担体の少なくとも75%の最小寸法は、前記試料中の合成ナノ担体の総数に基づくと、100nmを超える、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、アレルゲンを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、腫瘍抗原を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、慢性感染性病原体抗原を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫特徴表面は、非抗原免疫特徴表面を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記合成ナノ担体は、T細胞抗原をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記合成ナノ担体は、ポリマーマトリックスを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記Th1バイアス免疫刺激剤は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、CpG、免疫刺激性RNA、リポ多糖類、VSV−G、またはHMGB−1のうちの1つ以上を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫特徴表面は、ニコチンおよびその誘導体、メトキシ基、正に帯電したアミン基、シアリルラクトース、ならびにアビジンおよび/またはアビジン誘導体、ならびに上記のいずれかの残基を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記合成ナノ担体は、回転楕円体、立方体、円筒形、円錐形、または角錐形である合成ナノ担体を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
ある症状を患う対象を同定するステップと、
(1)APC標的化特徴(targeting feature)、および(2)合成ナノ担体にカップリングされたTh1バイアス免疫刺激剤、を含む前記合成ナノ担体、ならびに薬学的に許容できる賦形剤を含む組成物を提供するステップと、
前記組成物を前記対象に投与するステップと、
を含み、ここで前記組成物の投与が、症状の処置に関連する抗原の同時投与をさらに含まない、方法。
【請求項43】
前記合成ナノ担体は、T細胞抗原をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記合成ナノ担体は、ポリマーマトリックスを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記Th1バイアス免疫刺激剤は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、CpG、免疫刺激性RNA、リポ多糖類、VSV−G、またはHMGB−1のうちの1つ以上を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記APC標的化特徴は、免疫特徴表面を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記免疫特徴表面は、ニコチンおよびその誘導体、メトキシ基、正に帯電したアミン基、シアリルラクトース、ならびにアビジンおよび/またはアビジン誘導体、ならびに上記のいずれかの残基を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記合成ナノ担体は、回転楕円体、立方体、円筒形、円錐形、または角錐形である合成ナノ担体を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
試料中の前記合成ナノ担体の少なくとも75%の最小寸法は、前記試料中の合成ナノ担体の総数に基づくと、100nmを超える、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
前記症状の処置に関連する前記抗原は、前記組成物が投与される場合の時間と異なる時間に投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記合成ナノ担体は、T細胞抗原をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記合成ナノ担体は、ポリマーマトリックスを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記Th1バイアス免疫刺激剤は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、CpG、免疫刺激性RNA、リポ多糖類、VSV−G、またはHMGB−1のうちの1つ以上を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記APC標的化特徴は、免疫特徴表面を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記免疫特徴表面は、ニコチンおよびその誘導体、メトキシ基、正に帯電したアミン基、シアリルラクトース、ならびにアビジンおよび/またはアビジン誘導体、ならびに上記のいずれかの残基を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記合成ナノ担体は、回転楕円体、立方体、円筒形、円錐形、または角錐形である合成ナノ担体を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
Th1バイアス免疫刺激剤およびAPC標的化特徴を含む合成ナノ担体を含む組成物を提供するステップと、
前記組成物を対象に投与するステップと、
抗原を、前記対象に対する前記組成物の投与と異なる時間でのTh1バイアス応答が臨床的に有益である場合の前記対象に投与するステップと、
を含み、ここで前記抗原の投与は、受動投与または能動投与を含む、
方法。
【請求項58】
前記合成ナノ担体は、ポリマーマトリックスを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記Th1バイアス免疫刺激剤は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、CpG、免疫刺激性RNA、リポ多糖類、VSV−G、またはHMGB−1のうちの1つ以上を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記APC標的化特徴は、免疫特徴表面を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記免疫特徴表面は、ニコチンおよびその誘導体、メトキシ基、正に帯電したアミン基、シアリルラクトース、ならびにアビジンおよび/またはアビジン誘導体、ならびに上記のいずれかの残基を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記合成ナノ担体は、回転楕円体、立方体、円筒形、円錐形、または角錐形である合成ナノ担体を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
試料中の前記合成ナノ担体の少なくとも75%の最小寸法は、前記試料中の合成ナノ担体の総数に基づくと、100nmを超える、請求項57に記載の方法。
【請求項64】
前記合成ナノ担体は、ポリマーマトリックスを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記Th1バイアス免疫刺激剤は、イミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、6,7−縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、および1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、CpG、免疫刺激性RNA、リポ多糖類、VSV−G、またはHMGB−1のうちの1つ以上を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記APC標的化特徴は、免疫特徴表面を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記免疫特徴表面は、ニコチンおよびその誘導体、メトキシ基、正に帯電したアミン基、シアリルラクトース、ならびにアビジンおよび/またはアビジン誘導体、ならびに上記のいずれかの残基を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記合成ナノ担体は、回転楕円体、立方体、円筒形、円錐形、または角錐形である合成ナノ担体を含む、請求項63に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公表番号】特表2012−524780(P2012−524780A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507217(P2012−507217)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/001203
【国際公開番号】WO2010/123569
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511254321)セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】SELECTA BIOSCIENCES,INC.
【住所又は居所原語表記】480 Arsenal Street,Building One,Watertown,MA 02472,U.S.A.
【Fターム(参考)】