説明

TiO2のナノ粒子を含んでなる組成物

本発明は、約1〜2000g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物に関する。TiO2 粒子は組成物中のH22によって活性化されてラジカルを形成する。組成物は、抗菌及び抗炎症性を有し、例えば創傷壊死組織除去に使用し得る。本発明は、更に該組成物を含んでなる医薬品及び化粧品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷ケア製品の分野に関する。更に詳しくは、本発明は、TiO2の活性ナノ粒子を含んでなり、微生物抵抗性を生じない抗微生物及び/又は抗炎症性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現今の創傷包帯(非特許文献1、2、3)には、ガーゼ(無菌を補助し又は治癒を促進するよう企図された薬剤を含浸させてもよい)、フィルム、フォーム、親水コロイド、アルギナート、ヒドロゲル、及び多糖類ペースト、顆粒及びビーズが包含される。代表的に使用される材料は、ポリマーベースの物、例えばポリアミド、シリコン、高密度ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスルホンである。包帯は、創傷のタイプ、程度及び部位に基づいて、多くの目的を有しているが、全ての目的は、創傷からの回復の促進及び更なる危害からの予防に集中されている。創傷包帯(wound dressing(s))の肝要な目的は以下の通りである:
【0003】
1)止血 − 創傷をシールして凝固プロセスを促進させるのを補助する。
2)滲出物の吸収 − 1個所に含まれる血液、血漿及びその他の創傷から滲出する液体を吸い取る。
3)疼痛の緩和 − ある種の包帯は疼痛寛解効果を有していて、その他のものはプラセボ効果を有している。
4)創傷の壊死組織除去(debridement)− かさぶた及び異物の除去。
5)感染、炎症及び機械的損傷からの防御。
6)治癒の促進 − 肉芽化及び上皮形成による。
【0004】
5)の点は、今日、創傷治癒での最新の課題である。殆どの創傷のタイプの微生物学は、複雑であり、好気性及び嫌気性細菌の両方を包含していて、(非特許文献4、5、6)、そして、これらの微生物は、それらが生存している創傷(即ち、自家感染)及び周辺の環境(交差汚染)の双方にとって潜在的な課題を作り出すことができる。これは、特に以下の創傷を有する患者に関係がある:(1)細菌感染の徴候が増大している、(2)臭気、疼痛又は滲出物が増大している、(3)赤熱状態、(4)シュードモナスの徴候、(5)浮腫、(6)正常に進行しない治癒及び/又は(7)皮膚温の上昇。低度又は中程度の滲出性創傷、例えば、下腿及び足潰瘍、圧迫潰瘍及び部分肥厚火傷を有する患者もこれらの適応を特に受け入れやすいものである。治癒プロセスを阻害することなく、創傷での局所炎症反応を調節し、そして細菌の(再)コロニー形成を阻害することができれば、最新の創傷ケアにおける有意義なステップの進展を達成することができる。
【0005】
重篤な創傷感染の可能性を最小限とするための肝要なアプローチの一つが、局所抗微生物剤の使用である。これらの抗微生物剤の目的は、創傷でのバイオバーデン(bioburden)、ひいては感染の機会を低減させることにある。典型的には、これらは、広域抗菌スペクトラムの防腐剤(例えば、ヨード及び銀)及び抗生物質(例えば、ネオマイシン、バシトラシン及びポリミキシン配合剤)の使用を包含している(非特許文献7)。しかしながら、抗生物質に対する細菌耐性の発現のために、抗微生物効果を有する代替物質の探索が続いている。
【0006】
現在、医療デバイス工業では、抗生物質に代わって、抗細菌効果を達成するために、創傷包帯に銀(Agイオン)組み入れることが多い。銀イオンは放出され、創傷中に深く浸透する。このような包帯から放出された銀イオンは、感染症及び細菌毒素を抑制する利点を提供する(非特許文献8)。通常一つの細胞機能に向けられている抗生物質とは異なり、銀放出包帯の効能は、DNA及びRNAの改変による微生物増殖を妨害して、細菌細胞壁及び膜に致命的な構造変化をもたらすことを基本にしている(非特許文献9)。これらの銀イオンは、一層深い細菌バーデンを減少させると仮定されている。しかしながら、創傷ケア製品での銀イオンの使用は、銀感受性を有する患者はアレルギー反応を有することがあるという重大な不利点を有している。追加の欠点は、放射線治療又はX線検査、超音波、ジアテルミー又は磁気共鳴画像形成の間、又は酸化剤、例えば、次亜塩素酸塩又は過酸化水素との併用では、このものを使用できないことである。銀の使用は、また組織に傷跡を残すことがあり、また治癒創傷に近い皮膚を青色に変える入れ墨効果を有するものである。加えて、銀含有創傷ケア製品の抗菌効果が疑問視されている(非特許文献10、11)。また、銀イオンの使用は、銀イオンが毒性を保持したままであり、それで、銀イオンは細菌に対してその毒性効果の発揮を停止することが全くないので、その使用によって環境上危険を生じる不利点も有している。また、銀を伴う創傷包帯は、製造するのにコストがかかり、かつまたこれまで予期し得る結果を提供してはいなかった。それ故、当該分野では今日入手可能な創傷包帯に伴う課題を解決する改善された創傷包帯を提供する必要性が存在している。
【0007】
TiO2 、酸化チタン(IV)即ちチタニアは、チタンの天然産の酸化物であり、その化学的安定性、生物適合性及び物理的、光学的及び電気的特性のために、極めて周知であり、かつ十分に研究されたものである。二酸化チタンは、周知の天然産鉱物、ルチル、アナターゼ及び板チタン石として、天然に存在する。TiO2 は、紫外線で活性化されると、遊離ラジカルTiO−OH-を形成するとこれまで開示されている。紫外線活性化TiO2 は、大気及び廃水の除染、精製及び脱臭のための有望な技術手段であり (Yu et al. 2001, Hoffman et al. 1995, Ollis et al. 1985, Fox et al. 1993 and Somorjai et al. 1996)、不活性細菌、ウイルス及び癌細胞にも適用されている(Hur et al. 2002, Maness et al. 99, Yu et al. 2003, Sunada et al. 2003)。また、TiO−OH-は抗汚染及び抗菌効果を有することが開示されている(Byrne et al. 1998, Hur et al. 2002, Maness et al. 1999, Yu et al. 2001)。特許文献1には、1nm〜1μmのサイズを有するTiO2 のナノ粒子を含んでなり、また過酸化水素も含んでなる組成物が開示されている。この組成物は、紫外線で活性化され、表在性カビ、細菌及び/又はウイルス性疾患の治療に使用されている。紫外線の使用のために、紫外線は創傷内深くのTiO2 粒子に到達し、活性化するのが難しいので、この組成物は深部の創傷の治療に使用するのには適していない。更にまた、紫外線による皮膚火傷の危険性及び創傷包帯のポリマーの分解に危険性のために、医療用の製品とするとき、TiO2 を活性化するための紫外線の使用は必ずしも都合の良いものではない。
【0008】
セラミックTiO2 はH22の存在下に活性化されて遊離ラジカルTiO−OH-を形成し得ることもこれまでに開示されている。Silva等は、極めて低い量のH22(0.5mMまでの)と紫外線との組合せを使用して、TiO2 粒子を活性化することによって、オリーブミルの廃水の処理のためにTiO2 ナノ粒子を使用した(非特許文献12)。特許文献2には、H22と金属チタンとの反応生成物(ゲル)を抗炎症目的に使用し得ることが開示されている。このゲルは徐放性H22貯蔵所の作用をすると記載されている。
【0009】
特許文献3には、チタン、TiO2又はチタンとTiO2との合金をその表面に含んでなる顆粒が記載されている。顆粒は、一端から他端へ200マイクロメーターと5mmとの間の平均長さを有し、そして抗炎症性及び抗菌性を有すると記載されている。特許文献3では、顆粒がマクロファージによってファゴサイトーシスされて、もはや抗炎症性及び抗菌性を発揮し得ない粒子となるので、粒子が5マイクロメーター未満のサイズを有することが重要であると記載されている。
【0010】
過去何年かの間の創傷ケアの発展によっても、微生物感染の予防又は治療によって創傷治癒を助長し得るか、又は負の副作用なしで炎症反応を減少させる改善された創傷包帯に対する要望が依然として存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2008/019869
【特許文献2】WO89/06548
【特許文献3】SE531319C2
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Lait et al., Journal of clinical nursing, 7, (1998) 1 1-7,
【非特許文献2】Bishop, Critical care nursing clinics of North America, 16, (2004) 145-77
【非特許文献3】Jones, International wound journal, 3, (2006) 79-86
【非特許文献4】Gilchristet et al., The British journal of dermatology, 121, (1989) 337-44
【非特許文献5】Mousa, The Journal of hospital infection, 37, (1997) 317-23
【非特許文献6】Bowler et al. , The Journal of burn care & rehabilitation, 25, (2004) 192-6
【非特許文献7】Bowler, Jones, The Journal of burn care & rehabilitation, 25, (2004) 192-6
【非特許文献8】Lansdown AB 2004 A review of the use of silver in wound care: facts and fallacies Br J Nurs 13 S6-19
【非特許文献9】Bolton L 2006 Are silver product safe and effective for chronic wound management? J Wound Ostomy Continence Nurs 33 469-77
【非特許文献10】Chaby G et al. 2007 Dressing for acute and chronic wounds; a systematic review Arch Dermatol 143 1297-304
【非特許文献11】Lo SF et al. A systematic review of silver-releasing dressing in the management of infected chronic wounds J Clin Nurs 17 1973-85
【非特許文献12】Silva et al. 2007 Effect of key operating parameters on phenols degradation during H202-assisted Ti02 photocatalytic treatment of simulated and actual olive mill wastewaters Appl Catalysis 73 1 1-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、抗微生物及び/又は抗炎症特性を有し、特に創傷壊死組織除去に使用するための改善された組成物を提供するにある。
【0014】
この目的は、約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物を提供することにある。組成物中のTiO2 粒子は、H22で活性化されてラジカル種、例えば、Ti−OH-、Ti−μ−過酸化物、及びTi−η2−過酸化物をナノ粒子の表面に形成する。好ましくは、ナノ粒子に平均粒径(D50)は該組成物では約20〜50nmである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従って、本発明は、約1〜2000g/Lの濃度について約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を混合することによって得られる組成物に関する。この組成物は活性化されたTiO2 ナノ粒子を含んでなる。好ましくは、ナノ粒子に平均粒径(D50)は該組成物では約20〜50nmである。
【0016】
本発明の他の局面は医薬用途の組成物に関する。本発明は、微生物増殖の防止、創傷壊死組織除去、炎症の局所的緩和及び/又は同時の微生物増殖防止及び創傷の壊死組織除去のために、医薬組成物を製造するための該組成物の使用にも関する。
【0017】
本発明の他の局面は、投与を必要とする患者に該組成物を投与する工程を含んでなる微生物増殖の防止、創傷壊死組織除去、炎症の局所的緩和及び/又は同時の微生物増殖防止及び創傷の壊死組織除去のための方法にも関する。
【0018】
本発明はまた該組成物を含んでなる医薬品又はデバイス及び/又は化粧品又はデバイスにも関する。
【0019】
本発明のさらに他の局面は、約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 を含む第一容器及びH22を含む第二容器からなり、相互に混合すると、組成物を提供するキットに関する。本発明はまた前記TiO2 のナノ粒子とH22を混合する工程を含んでなる該組成物の製法に関する。好ましくは、このキットの平均粒径(D50)は約20〜50nmである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】15% 22の溶液での異なった濃度のTiO2によるメチレンブルーの分解。
【図2】0.5g/LのTiO2の溶液での異なった濃度のH22によるメチレンブルーの分解。
【図3】5%で 22及び1.6g/Lで TiO2を含有する懸濁液と混合し、そして1.6g/L NaCl及び1.6g/L NaFでドーピングしたときのメチレンブルーの分解。
【図4】懸濁液の組成に基づく懸濁液pHの変化。
【図5】2分間4種の洗浄液に接種サンプルを暴露した後のサフラン着色によって測定したバイオマスの吸光光度分析。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、TiO2及びH22のナノ粒子を含んでなる組成物に関する。この組成物は抗微生物作用を有し、細菌の成長を阻害し得る。この組成物は、また抗炎症性及び/又は抗汚損作用を有し、特に、創傷の壊死組織除去に有用であり、有機デブリ、微生物を除去し及び/又は創傷内及び周辺の炎症を軽減し、及び/又は微生物の成長を防止する。また、本発明の組成物は、免疫調節効果を有する。従って、この組成物は、創傷を清浄化してその治癒を改善するのに有用である。その有益な医薬的特性により、本発明の組成物は、医薬組成物、抗菌、抗汚損及び/又は抗炎症組成物も意味する。
【0022】
本発明の第一の局面は、約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物に関する。TiO2 粒子及びH22の濃度は、それぞれ、本文において組成物を特定するものとして、組成物のそれぞれの最終濃度を言うものである。TiO2 の平均粒径(D50)は好ましくは約20〜50nmである。TiO2 粒子はH22と混合すると、粒子の表面が活性化されて、ラジカル種、例えば、Ti−OH-、Ti−μ−過酸化物、及びTi−η2−過酸化物がナノ粒子の表面[25]に形成される。従って、本発明の組成物は、TiO2 の活性化ナノ粒子を含んでなる組成物と記載することもでき、粒子の表面にTi−OH-、Ti−μ−過酸化物、及びTi−η2−過酸化物又はこれらの一種又はそれ以上の混合物のいずれか一つが存在することを意味する。好ましくは、本発明の組成物は、本文で定義されるそれぞれのサイズ及び濃度でのTiO2 粒子及びH22からなるものである。
【0023】
その他の抗微生物剤と比較して、TiO2 は、その特性、例えば、安定性、環境への安全性、広域抗菌性スペクトル及び抗炎症性のために、医薬用途、例えば創傷治療に特に適している。上記の通り、TiO2 を含んでなる粒子は紫外線又はH22に曝すと、活性化遊離ラジカル、Ti−OH-、Ti−μ−過酸化物、及びTi−η2−過酸化物粒子が形成される。従って、本発明の組成物は、TiO2の活性化ナノ粒子、即ち、ナノサイズとしたTi−OH-、Ti−μ−過酸化物、及びTi−η2−過酸化物粒子を含んでなる組成物としても示すことができ、ここで「活性化された」とは、TiO2粒子の少なくとも一部の遊離ラジカルの形成が生じていることを意味する。ラジカルの形成はTiO2ナノ粒子の表面で生じ、それで「活性化された」のは、TiO2ナノ粒子の表面(少なくともその一部)である。従って、本発明はTiO2 のナノ粒子の最終濃度が約1〜2000g/Lであるような約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及びH22の最終濃度が約2.5〜25容量%であるようなH22を混合することによって得られる組成物にも関する。TiO2 ナノ粒子の平均粒径(D50)は好ましくは約20〜50nmである。本発明のこの局面について、TiO2 のナノ粒子及びH22は、本文に記載の好ましい組成物に従って、TiO2 及びH22の好ましい濃度をそれぞれ提供するように、混合されてもよい。
【0024】
上記の通り、TiO2 粒子は、紫外線で活性化されてラジカルを形成し得る。しかしながら、ナノ粒子の活性化のためのH22の使用は、代わって、数多くの有利な点を有している。第一に、H22の使用は余分のデバイス、例えば、紫外線ランプの必要性をなくする。また、TiO2 ナノ粒子にH22を添加することによって、OH−形成が促進されて、反応活性が改善されることになる[16−19]。更には、紫外線への高度の暴露は皮膚に火傷を生じ、そして創傷包帯のポリマーを劣化させることさえある。これらの分解産物は典型的には炎症を生じ、治癒を妨害する。また、H22は、創傷の壊死組織除去をし、そして微生物の成長を防止するために、創傷の治療について言えば、それ自身で有利な性質を有している。過酸化水素は、その酸化効果により、消毒剤及び抗菌剤として長く使用されてきた。創傷治療に使用すると、過酸化水素は組織に緩和な損傷を生じるが、毛細血管の出血を止め、創傷を清浄化することもできる。
【0025】
本発明者等は、意外なことに、TiO2 のナノ粒子の特定の濃度間隔およびサイズを使用することによって、特別に大量のナノ粒子が活性化され、かつまた特別に大量のTi−OH-、Ti−μ−過酸化物、及びTi−η2−過酸化物ラジカルが形成されることを見出した。TiO2 粒子の活性化に紫外線を使用するときは、粒子のサイズは全く臨界的なものではない。しかしながら、本発明者等は、TiO2 ナノ粒子の表面を活性化するのにH22を使用するときは、TiO2 ナノ粒子の表面での良好な表面反応及びラジカル形成を得るために、本文で特定されている平均粒径を有するナノ粒子を選択することが肝要である。TiO2 ナノ粒子の平均粒径が約20−50nmであるときに、特に良好な表面反応が得られる。TiO2 ナノ粒子の小さいサイズにより、これらの粒子は大きな表面−対−容積比を有し、これによって一層高い抗微生物、抗炎症及び/又は壊死組織切除効果を有するものである。本発明者等は、意外なことに、本発明の組成物のTiO2 ナノ粒子の平均粒径の範囲で、TiO2 ナノ粒子とH22との間に特に高い反応が生じ、これから、特に大きなラジカル形成が得られる。
【0026】
TiO2 ナノ粒子が平均粒径(D50)が約20−50nm、例えば20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、45nm又は50nmであるときに、この効果は特に顕著である。また、本発明の組成物、即ち、TiO2 及びH22の特定の濃度比及び粒子の特別なサイズ範囲を有する組成物は、創傷に適用するのに非常に適したコンシステンシーを持つ組成物を提供する。したがって、生体組織と接触するときに、H22の7.5容量%よりも高い濃度を使用し得ない、普通H22のわずか5容量%でしか使用しえないので、本発明の組成物は、例えば創傷治療、例えば創傷壊組織除去及び/又は微生物成長の予防のために、医薬組成物として使用するときに、特に有効である。従って、より高いH22濃度で抗微生物効果を増大させることは不可能である。しかしながら、TiO2 のナノ粒子及びH22を含んでなる本発明の組成物の使用によって、H22を単独で使用すると、普通生体組織に適用し得るよりも組成物での一層高い濃度のH22を使用することが可能である。
【0027】
以下の本文では、「TiO2 のナノ粒子」は、約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 粒子を指示するのにしばしば使用される。「ナノ粒子」は、本文脈では、約3〜150nmの平均粒径(D50)を有する粒子を意味する。
【0028】
本発明の組成物でのTiO2の濃度は好ましくは約3〜10g/L、さらに好ましくは、約4〜8g/Lである。
【0029】
本発明の組成物において、H22の濃度は好ましくは約3〜25容量%、さらに好ましくは約4〜20容量%、なおさらに好ましくは約5〜15容量%である。
【0030】
本発明の組成物でのTiO2の粒子はナノサイズであり、約3〜150nmの平均粒径(D50)を有する。好ましくは、TiO2のナノ粒子は約20〜50nm、例えば約20,25,30,35,40,45、又は50nmの平均粒径(D50)を有する。従って、ナノ粒子は、好ましくは約20〜30nm、例えば約20,21,22,23,24,25,26,27,28,29及び30nmの平均粒径(D50)を有する。本発明の組成物は、平均粒径が約3〜150nm、約20〜50nm又は約20〜30nmの間にある限り、異なったサイズのTiO2ナノ粒子の混合物を含んでなっていてよい。
【0031】
本発明の好ましい組成物は、少なくとも1g/Lの濃度で約5〜100nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜7.5容量%の最終濃度でH22を含んでなる。本発明の他の好ましい組成物は、約3〜10g/Lの濃度で約20〜30nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約3〜20容量%の最終濃度でH22を含んでなる。本発明の他の好ましい組成物は、約4〜8g/Lの濃度で約20〜30nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約5〜15容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0032】
特に、本発明は、約1〜2000g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる組成物に関する。好ましくは、該組成物において、H22の濃度は約3〜25容量%、好ましくは約4〜20容量%、さらに好ましくは約5〜15容量%である。該組成物において、粒子の平均粒径は例えば約20〜30nm、例えば20,21,22,23,24,25,26,27,28,29及び30nmである。
【0033】
本発明は、また、少なくとも約1g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜7.5容量%の最終濃度でH22を含んでなる組成物に関する。
【0034】
本発明の他の好ましい組成物は、約3〜10g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約3〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0035】
本発明の他の好ましい組成物は、約3〜10g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約4〜20容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0036】
本発明の他の好ましい組成物は、約4〜8g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約3〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0037】
本発明の他の好ましい組成物は、約4〜8g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約5〜15容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0038】
本発明の他の好ましい組成物は、約10〜50g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約5〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0039】
本発明の他の好ましい組成物は、約20〜50g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約8〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0040】
本発明の他の好ましい組成物は、約20〜40g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約8.5〜23容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0041】
本発明の他の好ましい組成物は、約50〜200g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約5〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0042】
本発明の他の好ましい組成物は、約50〜150g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約9〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0043】
本発明の他の好ましい組成物は、約70〜100g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約10〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0044】
本発明の他の好ましい組成物は、約200〜1000g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約5〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0045】
本発明の他の好ましい組成物は、約400〜800g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約11〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0046】
本発明の他の好ましい組成物は、約500〜700g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約13〜25容量%の最終濃度でH22を含んでなる。
【0047】
本発明の組成物でのTiO2 のナノ粒子はまた表面層に0.01〜5原子重量%のフッ素、即ち、フッ素ドーピングされたTiO2 ナノ粒子を有していてもよい。TiO2 ナノ粒子の表面のフッ素の存在は創傷治療の粒子の有益な性質をさらに増大する、即ち、一層強力な抗微生物及び/又は抗炎症効果を生じる。
【0048】
フッ素はH22との混合前にTiO2 ナノ粒子の表面位加えてもよいし、又はTiO2 ナノ粒子をH22と混合するときにフッ素が溶液中に存在していてもよい。TiO2 のナノ粒子を前処理するために、例えば、粒子を約2〜3容量%のフッ素溶液、例えばNaF又はHF溶液に曝してもよい。あるいはまた、NaF又はHFがTiO2 のナノ粒子及びH22を0.05〜0.5質量%の濃度で含んでなる組成物に存在していてもよい。フッ素で前処理したTiO2 のナノ粒子は、例えばNaF(フッ化ナトリウム、Sigma Aldrich,Oslo,Norway)、HF(フッ化水素酸、Sigma Aldrich,Oslo,Norway)、NH4F(フッ化アンモニウム、Sigma Aldrich,Oslo,Norway)及び/又は上記のもののいずれの組合せから、商業的に入手可能でもある。
【0049】
本発明の組成物はさらに医薬上許容し得る薬剤を含んでなり得る。例えば、組成物は、一種又はそれ以上の乳化剤、例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、PEG化誘導ソルビタン及び/又は非PEG化ソルビタン及び/又はそのいずれの組合せを含んでいてもよい。組成物は、さらにまた、一種又はそれ以上の保湿剤、例えばグリシン、プロピレングリコール(E1520)及びグリセリルトリアセテート(E1518)、ソルビトールのようなポリオール(E420)、キシリトール及びマンニトール(E965)、ポリデキストロースのような高分子ポリオール(E1200)又はキラヤのような天然抽出物(E999)、乳酸、尿素お及び/又はこれらのいずれの組合せを含んでいてもよい。組成物は、さらにまた、一種又はそれ以上のゲル化剤、例えばアルギン酸(E400)、アルギン酸ナトリウム(E401)、アルギン酸カリウム(E402)、アルギン酸アンモニウム(E403)、アルギン酸カルシウム(E404)、寒天(E406、紅海草から得られる多糖類)、カラゲニン(E407、紅海草から得られる多糖類)、ローカストビーンガム(E410、イナゴマメの種子からの天然ゴム)、ペクチン(E440、リンゴ又は柑橘類果実から得られる多糖類)、ゼラチン(E441、動物コラーゲンの部分加水分解によって製造される)、ポリオキシエチレン ポリオキシプロピレン ブロックコポリマー及び/又はそれらのいずれかの組合せを含んでいてもよい。TiO2 の3種の鉱物質形態、エイスイ石、ルチル及びイタチタン石のいずれもが本発明の目的に使用可能であるが、好ましくは、TiO2 は、主にエイスイ石の形態である。「主に」は、TiO2 ナノ粒子の少なくとも50%がエイスイ石の形態であることを意味する。さらに好ましくは、TiO2 ナノ粒子の少なくとも60%がエイスイ石の形態であり、さらにそれ以上に好ましくは、少なくとも70%、なおさらに好ましくは少なくとも80%がこの形態である。また、TiO2 ナノ粒子の少なくとも85%、例えば90又は95%がエイスイ石の形態であってもよい。TiO2 の残りはルチル及び/又はイタチタン石の形態であり得る。
【0050】
本発明の組成物は、得られる組成物がTiO2及びH22のそれぞれの所望の濃度を有するような量で、前記TiO2 ナノ粒子を前記H22と混合することによって製造される。TiO2 ナノ粒子は固体として又は水性懸濁液で提供され得る。TiO2のフッ素ドーピングされたナノ粒子を有する組成物を提供するには、NaF又はHFをさらに、組成物中の得られる濃度が0.05〜0.5質量%であるような量で、添加し得る。それ故、本発明は、前記TiO2 ナノ粒子を前記H22と混合する工程を包含し、場合により、NaF又はHFを添加する工程も包含する本文に記載の通りの組成物を製造する方法にも関する。本発明は、所望の平均粒径(D50)を有する前記TiO2 ナノ粒子を前記H22と混合することによって得られる組成物にも関する。興味のあることには、TiO2 ナノ粒子を増加する濃度(上記のH22濃度の範囲内で)のH22と混合すると、付随するpH低下は生じないが、抗微生物効果は依然として増加することが認められた。
【0051】
創傷治療のためのその有益な性質によって、本発明は、医薬用途のための本文に記載の組成物にも関する。組成物は、創傷治癒を改善するために、例えば、微生物の成長を防止するために、創傷壊死組織除去をするために及び/又は創傷内の及び/又は周囲の局所的炎症を軽減させるために、創傷の治療に特に有利である。従って、本発明は、医薬用途にための約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物に関する。好ましくは、本発明のこの局面のために、本文に記載の好ましい組成物を使用する。特に、TiO2 のナノ粒子の平均粒径は約20〜50nmである。「医薬用途」なる用語は、全ての種類の医薬用途、例えば動物薬用途及びヒトの医薬用途を包含する。
【0052】
本発明に従って創傷を治療するための適当な投与計画は、言うまでもなく、例えば、創傷のサイズ、深さ、幅及び特徴のような要素に左右される。好ましくは、創傷領域の大部分は、創傷領域が大き過ぎない、例えば約>100cm2でない限り、治療時、本発明の組成物でカバーされるはずである。創傷領域が大きすぎると,患者の不快症状を避けるべく、その時点で創傷の一部のみを治療することが必要なこともあり得る。しかしながら、殆どの場合、約0.1〜1.0ml/cm2が本発明の組成物で創傷を治療するための適当な用量であるが、これは組成物の粘度、並びに使用される包帯材料がいずれであるかに基づいて、変わり得る。
【0053】
本文に記載の通りの本発明の組成物は、選択した鎮痛治療、例えばリドカイン又はブピバカインと組み合わせて、創傷治療時の患者の疼痛及び/又は炎症を軽減させることもできる。
【0054】
上記の通り、本発明の組成物の有利な性質の一つは、それが抗微生物性であり、そして、好ましくは、創傷の内部及び/又は周囲で、微生物の成長を阻止し、及び/又は微生物を殺滅することである。本文脈における「抗微生物性」とは、患者内外での微生物の成長を抑制及び/又は防止する能力を言うものである。この用語はまた微生物の殺滅をも言うものである。本文脈では、金属酸化物、例えば酸化チタンは、光活性化後に放出され(即ち、本文脈ではH22による活性化)、微生物払拭の助けとなる遊離ラジカルの生成によって、抗微生物効果を呈する。活性ラジカルは、微生物、例えば細菌及びカビの細胞膜を攻撃する。一旦ラジカルが細菌を死滅させると、これらのラジカルは元の形態TiO2に戻る。微生物の例は、細菌、カビ及びウイルスである。従って、本発明は、微生物の成長を防止するための医薬組成物を製造するための本文に記載の通りの組成物を使用することにも関する。それ故、本発明は、約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物を、微生物の成長を防止するための医薬組成物の製造のための使用にも関する。したがって、本発明は、微生物の成長、例えば細菌、カビ及び/又はウイルスの成長及び増殖を防止するのに使用するための本発明の組成物にも関する。また、本発明の別の局面は、本発明の組成物を治療上有効な量でそれを必要とする患者に投与する工程を含んでなる創傷内及び/又は周辺の微生物の成長を防止する方法に関する。好ましくは、本発明の該局面にとって、本文に記載の通りの好ましい組成物を使用する。特に、TiO2ナノ粒子の平均粒径(D50)は、約20〜50nmである。
【0055】
また、本発明の組成物は創傷の壊死組織切除に使用し得る。従って、本発明の別の局面は、創傷の壊死組織切除のための医薬組成物を製造するための本発明の組成物の使用に関する。それ故、本発明は、創傷の壊死組織除去のための医薬組成物の製造のため、約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物の使用に関する。本発明はまた創傷の壊死組織除去に使用するための本発明の組成物に関する。また、本発明の別の局面は、本発明の組成物を治療上有効な量でそれを必要とする患者に投与する工程を含んでなる創傷の壊死組織除去の方法に関する。好ましくは、本発明の該局面にとって、本文に記載の通りの好ましい組成物を使用する。特に、TiO2ナノ粒子の平均粒径(D50)は、約20〜50nmである。
【0056】
「創傷の壊死組織除去」とは、本文脈において、患者の死滅、損傷及び/又は感染組織を医療上除去して残りの健全な組織の治癒能力を改善することを意味する。
【0057】
本発明の組成物はまた局所的な炎症を軽減し得る。即ち、該組成物は抗炎症性組成物である。従って、本発明は、好ましくは創傷内及び/又は周囲で、炎症を局所的に軽減するための医薬組成物を製造するための本発明の組成物の使用に関する。それ故、本発明は、炎症を局所的に軽減するための医薬組成物の製造のため、約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物の使用に関する。本発明はまた、好ましくは創傷内及び/又は周囲で、炎症の局所的な軽減に使用するための本発明の組成物に関する。また、本発明の別の局面は、本発明の組成物を治療上有効な量でそれを必要とする患者に投与する工程を含んでなる創傷内及び/又は周囲で、局所的な炎症を治療及び/又は軽減する方法に関する。好ましくは、本発明の該局面にとって、本文に記載の通りの好ましい組成物を使用する。特に、TiO2ナノ粒子の平均粒径(D50)は、約20〜50nmである。
【0058】
本発明の組成物の抗微生物および創傷の壊死組織除去性質に因り、本発明はまた同時に微生物の成長を防止しかつ創傷の壊死組織除去をするための医薬組成物を製造するための本発明の組成物の使用に関する。それ故、本発明は、同時に微生物の成長を防止しかつ創傷の壊死組織切除をするための医薬組成物の製造のため、約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物の使用に関する。本発明はまた、同時に微生物の成長を防止しかつ創傷の壊死組織除去をするのに使用するための本発明の組成物に関する。また、本発明の別の局面は、本発明の組成物を治療上有効な量でそれを必要とする患者に投与する工程を含んでなる同時に微生物の成長を防止しかつ創傷の壊死組織除去をする方法に関する。好ましくは、本発明の該局面にとって、本文に記載の通りの好ましい組成物を使用する。特に、TiO2ナノ粒子の平均粒径(D50)は、約20〜50nmである。
【0059】
本発明の組成物は、創傷、即ち創傷領域に投与し得るが、創傷に隣接する領域に投与して、壊死組織除去をし、及び/又は微生物成長を防止し、及び/又は創傷周辺の局所的炎症を軽減することができる。投与により、創傷及び/又は創傷周囲の領域が清浄化され、そして有機壊死組織片、微生物等が創傷から除去される。また、以下にさらに記載するように、組成物は、医療用又は化粧用製品又はデバイスに存在し得る。また、本発明の組成物は注射器を介して創傷に適当に適用することもできる。
【0060】
本発明の組成物は、本文で特定するような医療用途に特に適している。それは、組成物が創傷の表面に正しく存在しているのみではなく、創傷に浸透し、そしてTiO2粒子のナノサイズに因り、創傷部位でより深部で細菌を殺滅するからである。より深部に存在する細菌は慢性創傷の主因であることが科学者達の間で良く認められており、そして、それ故に、これらの細菌にも到達することが重要であり、本発明の組成物の使用によって可能となる重要なことのである。加えて、好ましくない副作用、例えばアレルギーの危険性が、TiO2の綿密に引証された生体適合性に因り最小限とされる。また、例えば銀イオンによる創傷治療に比して、本発明の組成物は創傷の傷跡を残さないか、または創傷を変色させない。加えて、例えば銀を創傷治療に使用すると生じ得るような、感作は本発明の組成物では生じることがなく、それ故に、本発明の組成物は頻繁に、かつまた長期にわたって使用し得る。抗生物質に比して、創傷治療のための本発明の組成物の使用は、それに対する抵抗性の発現の危険性を生じることがなく、そしてまた、抗生物質に比して、活性化TiO2ナノ粒子を含んでなる組成物は、非選択的に微生物を殺滅し、及び/又はその成長を防止する。本発明の組成物は、紫外線によりTiO2ナノ粒子を活性化する必要がないので、深部の創傷の治療に特に適している。前述の通り、紫外線は、TiO2ナノ粒子の活性化を可能とするために、創傷中の十分に深部に到達することが可能ではなく、そしてまた本文に記載のように、その他の不利な点ももたらすものである。従って、本発明の組成物は、従来は治療が難しかった創傷を治療するのに有利に使用できる。
【0061】
本発明の組成物のTiO2ナノ粒子のサイズが小さい故に、ナノ粒子がマクロファージによりファゴサイトーシスされることがあり、このために組成物を適用した後に洗い落とす必要がなく、創傷から除去され、そして創傷内で作用する時間を持っているものである。しかしながら、TiO2ナノ粒子は、細胞壁を貫通する危険性があるほど小さくはない。また、TiO2の活性化ナノ粒子(即ち、上記の通りのラジカル)その仕事を達成、例えば微生物を殺滅したときに、これらの粒子は素のより低活性な状態、即ち不活性化TiO2に戻ってしまう。これは、例えば、生物学的活性が持続する(これはまたその仕事を達成した後に不活性化されないので、環境に対して毒性を持続することを意味する)銀イオンと対照的である。しかしながら、本発明の組成物のTiO2ナノ粒子は、例えば創傷又は適用した本発明の組成物を有する創傷包帯に慎重に紫外線を当てることによって、再活性化されて活性ラジカル種を形成し得る。何らかの理論に束縛されることなく、TiO2ナノ粒子は細胞により自然形成されたH22によって再活性化され得ることも可能である。また、TiO2ナノ粒子は活性状態でなくても抗炎症性であり、そのままで抗炎症効果を有し得る。
【0062】
また、本発明の組成物の活性化ナノ化TiO2粒子は免疫反応を調節し、マクロファージをアクリベートし(acribate)、治癒プロセスを促進する。これは、該粒子が創傷内で微生物を殺滅はしないが、治癒プロセスにおいても創傷を刺激しないことを意味する。
【0063】
本文脈において、「創傷」は、例えば皮膚が裂傷を受け、創傷を受け又は穴が開いている(開放創)か、又は鈍力外傷が挫傷を起している(閉鎖創)傷害のタイプである。病理学では、創傷は、皮膚の真皮を損傷する鋭い傷害を特に称する。創傷は、往々にして細菌感染を受ける。本発明の組成物は、特に、細菌の影響、赤熱状態、臭気、疼痛及び/又は滲出物の徴候の増大を伴う患者に適している。また、組成物は、シュードモナス及び浮腫の徴候が示されるとき、創傷治癒が正常に進行しないとき、又は創傷の周囲の皮膚温度が増加しているときに、特に有用である。
【0064】
本発明の組成物から特に利益を蒙る疾病のタイプの例は、皮膚がんの創傷、細菌のコロニー形成による慢性の創傷及び糖尿病性潰瘍である。また、外科的な創傷、例えばマイクロサージェリーの創傷は、特に細菌感染を受けやすく、創傷の壊死組織を除去し、局所的炎症を軽減し及び/又は微生物の成長を防止するために、本発明の組成物で清浄化することで利益を蒙っている。
【0065】
本発明の組成物は、好ましくは医薬品又はデバイス及び/又は化粧用製品及び/又はデバイスに添加される。従って、本発明は、本文記載の組成物を含んでなる医薬品又はデバイス及び/又は化粧用製品及び/又はデバイスに関する別の局面にある。
【0066】
本発明の組成物を含んでなるは医薬及び/又は化粧用製品及びデバイスの以下の実施例において、製品及び/又はデバイスの用途を基にして、医薬または化粧用製品/デバイスとも示される。
【0067】
本発明の組成物は、好ましくは湿性創傷包帯、所謂湿潤創傷ケア(MWC)製品に添加される。このような創傷包帯には以下のものが包含される:
・親水コロイド創傷包帯 − ペクチン、ゼラチン、カルボキシメチルセルローセナトリウム及び最後にエラストマーの混合物からなる防水性閉鎖包帯を言う。
この包帯は、かさぶたであるか、又は壊死性である創傷を壊死組織除去するために、自己分解を促進する環境を確保するものである。
・親水ファイバー創傷包帯 − 完全親水コロイドから作製された高度に吸収性の創傷包帯。ここでは、親水コロイドをファイバーに紡糸し、ニードルしてシート又はリボン形態の軟質、非織、フリース様包帯を作り出す。抗菌効果は銀で増幅される。親水ファイバーは、アルギン酸塩包帯の代替品であると考えられる。
・ヒドロゲル創傷包帯 − 表在又は低滲出性の創傷に使用されるシート又はゲル形態の包帯。このヒドロゲルは窩洞には理想的であり、創傷の皮膚脱落及び壊死組織除去に有効である。
・フォーム創傷包帯 − 非接着性であり、そして、二次包帯としての利用に加えて、大量の滲出物を吸収し得るポリウレタンから指示される包帯につけられた名称。このフォーム包帯は、防水性裏打ち材と一緒に、木炭を含浸させて利用され得る。
・透明創傷包帯 − 一般に二次包帯として使用される吸収性が限定されている柔軟性のある包帯。
【0068】
本発明の組成物が添加される他のタイプの創傷包帯は、好ましくは、被覆された固体(柔軟な材料)の一種又は数種からなる創傷包帯であり、前記被膜は、主として酸化チタンを含んでなり(即ち、酸化チタン50%又はそれ以上)、かつ200nm又はそれ以下、好ましくは100nm又はそれ以下の厚さを有する均一かつ実質的に無定形の金属酸化物を含んでなる。金属酸化物層は、さらに、N,C,S,Clからなる群から選択される化合物の一種又はそれ以上、及び/又はCl及びNからなる群から選択される化合物の一種又はそれ以上、及び/又はAg, Au, Pd, Pt, Fe, CI, F, Pb, Zn, Zr, B, Br, Si, Cr, Hg, Sr, Cu, I, Sn, Ta, V, W, Co, Mg, Mn 及びCd 又は該金属のいずれかの酸化物からなる群から選択される化合物の一種又はそれ以上、及び/又はSn02, CaSn03, FeGa03, BaZr03, ZnO, Nb205, CdS, Zn02, SrBi205, BiAIV07, ZnlnS4, K6Nb1 0.8030からなる群から選択される化合物の一種又はそれ以上,及び/又は前記化合物群から選択される化合物の組合せを含んでなり、ここで化合物の一種又はそれ以上から選択される前記化合物の一種又はそれ以上は前記金属酸化物層内に実質的に分散されている。創傷包帯の部分を形成している固体の柔軟な材料は、ここでは、好ましくは、ポリウレタン(PUR,TPU,PCU)、ポリアミド(PA)、ポリエーテル ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、シリコン、セルロース、絹及び木綿から選択される。このような創傷包帯は、また固体の柔軟な材料と金属酸化物層との間に内部結合層を含んでなっていてもよい。好ましくは、前記結合層は、化合物、Al203、N又はその酸化物、S又はその酸化物、Al203, Si02, Ta205, Zr02, Hf02, ZnO, MgO, Cr203, Co203, NiO, FeO, Ga203, Ge02, V205, Y203, 希土類酸化物, CaO, ln203, Sn02, PbO, Mo03 及び W03 、TiN, TaN, SiN4, AIN, Hf3N4 及び Zr3N4又はこれらのいずれの組合せの一種又はそれ以上を含んでなる。固体の柔軟な材料に結合層を添加することによって、金属酸化物が前記柔軟材料にさらに強固に付着される利点、及び紫外線暴露の損傷に対する、また層の光活性化の過程で生成する潜在的に有害な反応性酸素種に対する保護を提供する利点を提供する。また、結合層の存在は、光触媒層を該材料にさらに強固に接着させるので、固体の柔軟な材料に改良された性質を提供する。それ故、材料は創傷から除去することなく、何回か光活性化によって再活性化することができ、それによってたびたびの包帯交換による患者の不快感及び疼痛を軽減し、そして同時に創傷を障害なしに治癒するようにさせる。このような創傷包帯は好ましくはALD技術(原子層堆積=Atomic Layer Deposition)の使用によって製造される。ALDは、様々の組成の基体に材料のコンフォーマルな薄いフィルムを沈着させる自己制御式、連続表面化学方法である。ALDフィルム成長は自己制御式であり、表面反応に基づくものであり、これによって原子スケール堆積の制御をなし得る。被覆プロセス全体を通して先躯体を別個に保持することによって、フィルム成長の原子層制御が、単層当り〜0.1オングストロームほどに微細に得ることができる。ALD成長フィルムはコンフォーマルであり、ピンホールがなくかつ化学的に基体に結合される。ALDによって、被膜を深い溝内部、多孔性媒体及び粒子周辺に均一な厚さで完璧に均一に堆積することが可能である。ALD技術によって提供されるフィルム厚さは、通常1〜500nmである。ALD技術を固体の柔軟な材料に適用するときは、実質的に一層低い温度が使用され、典型的には、300℃よりも低い範囲である。
【0069】
本発明の組成物は、好ましくは、創傷包帯に添加して、創傷の壊死組織除去を行い、及び/又は微生物感染及び/又はその炎症を防止する助けをする。また、TiO2ナノ粒子は紫外線への暴露によって再活性化することができるので、この再活性化は、通常必要とされるほど頻繁に包帯を交換する必要がないことを意味し、これによって、患者の快適さを増進し、そして創傷を更に支障なく治癒させるようにする。湿性創傷包帯はまたその上にTiO2ナノ粒子を含んでなり得、そして創傷に使用する直前に、H22を、TiO2ナノ粒子を活性化する正確な量及び濃度で、創傷包帯に添加し得る。
【0070】
本発明の組成物は普通に入手可能な創傷壊死組織除去製品に添加することもできる。
【0071】
また、本発明の組成物は好ましくは医薬製品、例えばクリーム又は軟膏に添加する。同様に、組成物は、例えば乾癬に罹っているか、又はふけを生じている患者に使用するために、シャンプーに添加することもできる。組成物を有する脱臭剤は体臭を防止する製品となる。
【0072】
本発明の組成物を添加するのに適した製品又はデバイスについては、その他数多くの例があり、例えば、創傷の壊死組織除去を行い、及び/又は微生物感染及び/又はその炎症を防止するために、リニメント剤、浣腸剤、クリーム剤及び座そう治療及び予防のための洗浄液がある。
【0073】
本発明の組成物は好ましくは医薬上又は化粧上許容し得る添加剤、担体及び/又は佐剤の一種又はそれ以上と共に処方することができる。
【0074】
本発明の組成物を含んでなる製品又はデバイスは、例えば、固形、半固形又は流体組成物の形態であってよく、例えば以下のものがある:
生体吸収性貼付剤、灌注剤、包帯、ヒドロゲル包帯、親水コロイド包帯、フィルム、フォーム、シート、帯具(bandages)、硬膏剤、送達デバイス、インプラント、
スプレー剤、エアゾール剤、吸入デバイス、
ゲル、ヒドロゲル、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、石鹸、坐剤、膣剤、
液剤、分散剤、懸濁剤、乳剤、混合剤、ローション、シャンプー、浣腸剤、
及びその他の適当な形態、例えばインプラント又はインプラントの被覆又は埋植また移植に関連して使用するのに適した形態。
【0075】
皮膚又は粘膜に適用するための製品は、本発明に関して、最も重要と考えられる。それで、本発明の組成物を含んでなる製品は、何れの適用なルート、例えば局所(皮膚)、口腔、経鼻、経耳、経腸又は経腟投与による投与に適合させることができる。更には、本発明の組成物は、外科に関係する、例えば内部創傷及び軟組織損傷の治癒を促進するための体内での切開に関係する投与に適合させることができる。
【0076】
本発明の組成物を含んでなる医薬/化粧用途のための製品及びデバイスは通常の製薬手段に従って処方し得る。例えば、“Remington's Pharmaceutical Sciences” 及び“Encyclopedia of Pharmaceutical Technology”, edited by Swarbrick, J. & J. C. Boylan, Marcel Dekker, Inc., New York, 1988.を参照されたい。
【0077】
製薬上又は化粧上許容し得る添加剤は、組成物を投与する固体に対して実質的に無害の物質である。この添加剤は、通常は、国家の保健当局で定められた要件を充足している。公定の薬局方、例えば英国薬局方(the British Pharmacopoeia)、米国薬局方(the United States of America Pharmacopoeia)及びヨーロッパ薬局方(the European Pharmacopoeia)では、製薬上許容し得る添加剤の基準を定めている。
【0078】
製薬上許容し得る添加剤は、溶媒、緩衝剤、保存剤、保湿剤、キレート化剤、抗酸化剤、安定剤、乳化剤、懸濁剤、ゲル形成剤、軟膏基材、浸透エンハンサー、香料及び皮膚保護剤を包含し得る。
【0079】
溶剤の例には、例えば、水、アルコール、植物又は海産油、(例えば、アーモンド油、ヒマシ油、カカオ脂、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、ヤシ油、ラッカセイ油、ケシの実油、セイヨウアブラナ油実油、ゴマ油、大豆油、ひまわり油及び椿油のような食用油)、鉱油、脂肪油、流動パラフィン、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、液状ポリアルキルシロキサン及びこれらの混合物がある。
【0080】
緩衝剤の例は、例えばクエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、リン酸水素(hydrogenphosphoric acid)、ジエチルアミン等である。
【0081】
組成物に使用するための適当な保存剤の例は、パラベン、例えばp−ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル、プロピル、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、イソプロピルバラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、安息香酸、安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ブルノポール、ブロニドックス、MDMヒダントイン、ヨードプロピルブチルカルバメート、EDTA、塩化ベンザルコニウム、及びベンジルアルコール、又は保存剤の混合物である。
【0082】
保湿剤の例は、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、乳酸、尿素、及びこれらの混合物である。
【0083】
キレート化剤の例は、EDTAナトリウム及びクエン酸である。
【0084】
抗酸化剤の例は、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、システイン、及びこれらの混合物である。
【0085】
乳化剤の例は、天然ゴム類、例えばアラビアゴム、又はトラガントゴム;天然ホスファチド、例えば大豆レチシン;ソルビタンモノオレエート誘導体;木質脂肪;木質アルコール;ソルビタンエステル;モノグリセリド;脂肪族アルコール;脂肪酸エステル(例えば、脂肪酸のトリグリセリド);及びこれらの混合物である。
【0086】
懸濁剤の例は、例えばセルロース及びセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラゲニン、アラビアゴム、トラガカント、及びこれらの混合物である。
【0087】
ゲルベース、粘度増加剤又は創傷から滲出物を吸収し得る成分の例には以下の物がある:流動パラフィン、ポリエチレン、脂肪油、コロイド状シリカ又はアルミニウム、亜鉛石鹸、グリセロール、プロピレングリコール、トラガカント、カルボキシビニルポリマー、マグネシウム−アルミニウムシリケート、Carbopol(R)、親水性ポリマー、例えば澱粉、またはセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びその他のセルロース誘導体、水膨潤性親水コロイド、カラゲニン、ヒアルロネート(例えば場合によって塩化ナトリウムを含有するヒアルロネート)及びプロピレングリコールアルギネートを包含するアルギネート(アルギン酸塩)。
【0088】
軟膏基剤の例は、例えば、蜜蝋、パラフィン、セタノール、セチルパルミテート、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル(Span)、ポリエチレングリコール、及び脂肪酸のソルビタンエステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween)である。
【0089】
疎水性又は水乳化性軟膏基剤の例は、パラフィン、植物油、動物脂肪、合成グリセリド、ろう、ラノリン、及び液状ポリアルキルシロキサンである。
【0090】
親水性軟膏基剤の例は、固体マクロゴール(ポリエチレングリコール)である。
【0091】
軟膏基剤のその他の例は、トリエタノールアミン石鹸、硫酸化脂肪族アルコール及びポリソルベートである。
【0092】
その他の添加剤の例は、ポリマー、例えばカルメロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、キサンタンゴム、ローカストビーンゴム、アラビアゴム、ゼラチン、カルボマー、ビタミンEのような乳化剤、グリセロールステアレート、セタニルグルコシド、コラーゲン、カラゲニン、ヒアルロン酸塩及びアルギン酸塩である。
【0093】
適当な分散又は湿潤剤は、例えば天然のホスファチド、例えばレシチン又は大豆レシチン;エチレンオキシドと例えば脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、又は脂肪酸から誘導された部分エステルとの縮合生成物及びヘキシトール又はヘキシトール無水物、例えばポリオキセチレンステアレート、ポリオキシメチレンソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート等である。
【0094】
適当な懸濁剤は、例えば天然ゴム、例えばアラビアゴム、キサンタンゴム、またはトラガントゴム;セルロース例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース(例えばAvicel(R) RC 591、メチルセルロース);アルギネート例えばアルギン酸ナトリウム等である。
【0095】
直腸又は膣粘膜に適用するために、本発明の適当な組成物には、坐剤(乳濁液又は懸濁液タイプ)、浣腸剤、及び直腸ゼラチンカプセル(溶液又は懸濁液)が包含される。適当な製薬上許容し得る坐剤基剤には、カカオ脂、エステル化脂肪酸、グリセリンゼラチン、及びポリエチレングリコール及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのような種々の水溶性又は分散性基剤が包含される。例えばエンハンサー又は界面活性剤のような種々の添加剤を組み入れることができる。
【0096】
鼻粘膜(並びに口内粘膜)に適用するために、スプレー剤及びエアゾール剤が適当である。
【0097】
別の局面で、本発明は、約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 を含んでなる第一の容器及びH22を含んでなる第二の容器を含んでなり、相互に混合すると、本文に例示された及び/又は好ましい組成物による組成物を提供するキットに関する。TiO2ナノ粒子は好ましくは水溶液で存在している。二つの容器の内容物を混合することによって、TiO2ナノ粒子がかっせいかされ、そして活性ラジカルナノ粒子が形成される。本発明のキットは、組成物の投与のために、例えば注射器のようなデバイスの一つ又はそれ以上を含んでなっていてもよい。また、キットは、混合及び/又は患者に組成物を投与するための指示を含んでいてよい。好ましくは、このキットでのTiO2ナノ粒子の平均粒径(D50)は20〜50nmである。
【0098】
本発明は、また、前記TiO2ナノ粒子を前記H22と混合する工程を含んでなる本文に記載の組成物の製造方法に関する。
【0099】
ここで、本発明を以下の実施例によって例示する。これらの実施例は本発明の範囲を限定すると解すべきものではない。
【0100】
〔実験の部〕
意外なことには、過酸化水素(H22)中の懸濁液の二酸化チタンナノ粒子はH22で活性化された。TiO2ナノ粒子とH22との間の相乗効果が際立っていた。反応を触媒するのに紫外線(UV)照射は必要ではなかった。創製された懸濁液を数種の材料について試験した。一旦活性化されると、粒子は遊離ラジカルを曝し、これらのラジカルが懸濁液の抗汚損及び抗微生物特性の理由であると考えられる。
【0101】
実施例1 15容量%でのH22及び様々の濃度でのTiO2と混合したときのメチレンブルーの分解
メチレンブルー(MB)は、分子式:C16183SClを有する複素環芳香族化合物である(Aldrich Sigma Aldrich,Oslo, Norway)。このものは様々な分野、例えば生物学及び化学の分野の領域で多くの用途を有している。MBは有機材料を例示し、何件かの刊行物にみられるように、細菌をシミュレーションする薬剤として使用することができ、TiO2の分解性を検討するときに普通に使用されている。従って、MBの分解は、有機物、例えば細菌、或いは死滅、損傷及び/又は感染組織のインビボ分解のモデルとして使用することができる。室温では、このものは固体、無臭、暗緑色粉末であり、水に溶解すると、青色の溶液となる。溶液で分解すると、メチレンブルーは無色になる。メチレンブルーを紫外・可視分光法で分析すると(Lambda 25,Perkin Elmer,USA)、このものは690cmで光を吸収する。この機器は、MBの分解を定量するのに使用した。
【0102】
目的は、メチレンブルーがH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)15%のみで、TiO2又はUV照射なしで、分解し得るかどうかを測定することであった。それで、TiO2(Aeroxide P25, Evonik AG, Essen, Germany)を、増加した濃度で最大濃度8g/Lまで、溶液に加えた。測定は1時間の間3分毎に行った。MB含有懸濁液のpHもまた記録した。TiO2粒子の析出を防止するために各々の測定前に懸濁液を撹拌した。結果を図1に示す。
【0103】
15容量%のH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)のみをMBと混合すると、分解は殆ど見られなかった。意外なことには、懸濁液中に0.25g/LでTiO2が存在するとMBの分解が可能となった。懸濁液中のTiO2ナノ粒子の濃度を増大すると、MBの分解が増大した。TiO2粒子の濃度の増大は、TiO2無しの3.7から1MのTiO2の存在下の2.8にpHを若干減少させた。H22単独では、MB分子を分解することはできず:意外なことには、TiO2は、この目的を達成するために、存在していなければならない。
【0104】
実施例2 15容量%でのH22及び様々の濃度でのTiO2と混合したときのメチレンブルーの分解
目的は、メチレンブルーがTiO2(Aeroxide P25,Evonik AG,Essen,Germany)ナノ粒子のみで、H22又はUV照射なしで、分解し得るかどうかを測定することであった。それで、H22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)を増加した濃度で最大濃度15容量%まで懸濁液に加えた。実験操作は実施例1に説明したのと同じであった。
結果を図2に示す。TiO2のみを0.5g/LでMBと混合すると、分解は殆ど見られなかった。5容量%濃度のH22の添加はMBの分解を増大した。懸濁液中のH22の濃度の増大は直線様式でMBの分解を増大した。H22の濃度の増大はH22なしの4.9から15容量%のH22の存在下の3.3にpHを減少させた。TiO2単独では、MB分子を分解することはできず:H22は、この目的を達成するのに存在していなければならない。
【0105】
実施例3 15容量%でのH22及び0.8g/LのNaCl又は0.4g/LのNaFでドーピングした1.6g/LのTiO2の懸濁液と混合したときのメチレンブルーの分解
実施例1及び2から、H22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway) 及びTiO2(Aeroxide P25,Evonik AG,Essen,Germany)の濃度を、この相乗効果を使用するが、同様に生理学的環境([H22]<6容量%及びpH>3)で使用できるような懸濁液を創製するために、選択した。
目的は、NaCl及びNaF塩が選択された懸濁液に導入されたときに、更にMB分解を増大させるか否かを知るためであった。
結果を図3に示す。
興味深いことは、懸濁液をNaClでドーピングすると、H22及びTiO2のみを伴う懸濁液と比較して半分だけMB分解を減少させた。NaF(Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)でのドーピングは、MB分解の低減が更に強化し、H22及びTiO2のみを伴う懸濁液と比較して、殆どの場合この分解の発現を防止した。
NaF(Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)及びNaCl(Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)塩によるH22/TiO2懸濁液のドーピングはMB分解を増大させなかった。
【0106】
実施例4 種々の懸濁液のpH測定
創傷治癒でのpHは重要な因子であり、懸濁液のpHは様々のTiO2(Aeroxide P25,Evonik AG,Essen,Germany)濃度及びその他の添加成分によって変えることができる。実験室用pHメーター(pH Meter Lab 850 Set with
Blueline 14pH Electrode, Scott Glass Ltd, Stafford, UK)を使用して様々な溶液のpHを測定した。以下は、所定の濃度後に得られたpHのリストである :
1. 5容量% H202 及び1.6g/L 1.6g/L Ti02 の混合物は pH=4.4 ± 0.1となった。
2. 5容量% H202 + 1.6 g/L NaCIの混合物は pH = 5.2 ± 0.1となった。
3. 5容量% H202 2 + 1.6 g/L NaF の混合物は pH = 6.1 ± 0.0となった。
4. 5容量% H202 + 1.6g/L NaCI + 1.6g/L Ti02 の混合物は pH = A 4.2 ±
0.1となった。
5. 5容量% H202 + 1 .6g/L NaF + 1.6g/L Ti02 の混合物は pH = 5.9 ± 0.0となった。
種々の供試懸濁液の範囲は4.2から6.1までとなった。
【0107】
実施例5 粘度がより高い懸濁液
実施例1及び2からのTiO2(Aeroxide P25,Evonik AG,Essen,Germany)2g/L及びH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)5容量%の溶液を、より高い粘度を得るために、TiO2(Aeroxide P25,Evonik AG,Essen,Germany)のより多くの量を添加することによって変性した。
懸濁液は1000g/Lで濃厚なスラリーとなった。
【0108】
実施例6 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する活性化TiO2ナノ粒子の抗菌効果
この実施例では、活性化TiO2ナノ粒子の抗菌能力を記載する。
細菌:
黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、広範囲の感染症の原因となる重要なヒトの共生かつ日和見病原体である。これらの細菌は、術後感染の原因となる最もよく知られた細菌の一つである。それで、黄色ブドウ球菌(S.aureus)を本実験では選択する。手順:
創傷包帯を小さい正方形(5x5mm2)に裁断する。
【0109】
三つの創傷包帯の抗菌効果を、0.5、1.6及び20g/LでTiO2(Aeroxide P25,Evonik AG,Essen,Germany)と混合される3.5及び25容量%のH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)の懸濁液で処理する。比較対照は、懸濁液を有していない5容量%のH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)のみで処理した創傷包帯である。
【0110】
これらの創傷包帯は、S.aurerusのブロスからの500μlを装填した懸濁液を混合する前に、PBS(Dulbecco’s PBS,Sigma−Aldrich,St Louis,MO,USA)4mlで希釈する(原液)。この原液10μlの1滴を創傷包帯の頂部に載せる。一旦試験グループの紫外線暴露が到達すると、創傷包帯の小正方形を、Invitrogen(GIBCO MEM,Invitrogen,Carlbad,CA,USA)からの細胞培養培地(抗生物質を含まない)500μlの入った1.5mlEppendorf チューブに個別に入れる。創傷包帯及び細菌の入ったEppendorfチューブを全て暗所、37℃,20時間恒温器に入れる。20時間後に、全ての試料を恒温器から取り出す。スペクトロメーター(Perkin Elmer UV−Vis 200,Oslo,Norway)で、細胞培地700μlのみでこのベースラインについて検量する。次いで、細胞培地500μl+原液10μlのみ入った3個のEppendorfチューブを分析する。次いで、試験管を一本ずつ振盪し、そして各試験管から400μlの容量を細胞培地300μlと混合する。液体700μlを分析のために1.5mlキュベットに入れた。
【0111】
実施例7 緑膿菌(Pseudomonas aeroginosa)細菌に対する活性化TiO2ナノ粒子の抗菌効果
この実施例では、活性化TiO2ナノ粒子の抗菌能力を記載する。
細菌:
緑膿菌細菌は、広範囲の感染症の原因となる日和見病原体であり、慢性の創傷によく見られる。
手順:
創傷包帯を小さい正方形(5x5mm2)に裁断する。
三つの創傷包帯の抗菌効果を、0.5、1.6及び20g/LでTiO2(Aeroxide P25,Evonik AG,Essen,Germany)と混合される3.5及び25容量%のH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)の懸濁液で処理する。比較対照は、懸濁液を有していない5容量%のH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)のみで処理した創傷包帯である。
【0112】
これらの創傷包帯は、P.aeroginosaのブロスからの500μlを装填した懸濁液を混合する前に、PBS(Dulbecco’s PBS,Sigma−Aldrich,St Louis,MO,USA)4mlで希釈する(原液)。この原液10μlの1滴を創傷包帯の頂部に載せる。一旦試験グループの紫外線暴露が到達すると、創傷包帯の小正方形を、Invitrogen(GIBCO MEM,Invitrogen,Carlbad,CA,USA)からの細胞培養培地(抗生物質を含まない)500μlの入った1.5mlEppendorf チューブに個別に入れる。創傷包帯及び細菌の入ったEppendorfチューブを全て暗所、37℃,20時間恒温器に入れる。20時間後に、全ての試料を恒温器から取り出す。スペクトロメーター(Perkin Elmer UV−Vis 200,Oslo,Norway)で、細胞培地700μlのみでこのベースラインについて検量する。次いで、細胞培地500μl+原液10μlのみ入った3個のEppendorfチューブを分析する。次いで、試験管を一本ずつ振盪し、そして各試験管から400μlの容量を細胞培地300μlと混合する。液体700μlを分析のために1.5mlキュベットに入れた。
【0113】
実施例8 大腸菌(E.coli)細菌に対する活性化TiO2ナノ粒子の抗菌効果
この実施例では、活性化TiO2ナノ粒子の抗菌能力を記載する。
細菌:
大腸菌は、慢性の創傷に時折存在するものである。
手順:
創傷包帯を小さい正方形(5x5mm2)に裁断する。
三つの創傷包帯の抗菌効果を、0.5、1.6及び20g/LでTiO2(Aeroxide P25,Evonik AG,Essen,Germany)と混合される3.5及び25容量%のH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)の懸濁液で処理する。比較対照は、懸濁液を有していない5容量%のH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)のみで処理した創傷包帯である。
これらの創傷包帯は、E.coliのブロスからの500μlを装填した懸濁液を混合する前に、PBS(Dulbecco’s PBS,Sigma−Aldrich,St Louis,MO,USA)4mlで希釈する(原液)。この原液10μlの1滴を創傷包帯の頂部に載せる。一旦試験グループの紫外線暴露が到達すると、創傷包帯の小正方形を、Invitrogen(GIBCO MEM,Invitrogen,Carlbad,CA,USA)からの細胞培養培地(抗生物質を含まない)500μlの入った1.5mlEppendorf チューブに個別に入れる。創傷包帯及び細菌の入ったEppendorfチューブを全て暗所、37℃,20時間恒温器に入れる。20時間後に、全ての試料を恒温器から取り出す。スペクトロメーター(Perkin Elmer UV−Vis 200,Oslo,Norway)で、細胞培地700μlのみでこのベースラインについて検量する。次いで、細胞培地500μl+原液10μlのみ入った3個のEppendorfチューブを分析する。次いで、試験管を一本ずつ振盪し、そして各試験管から400μlの容量を細胞培地300μlと混合する。液体700μlを分析のために1.5mlキュベットに入れた。
【0114】
実施例9 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対するフッ素でドーピングした活性化TiO2ナノ粒子の抗菌効果
この実施例では、活性化TiO2ナノ粒子の抗菌能力を記載する。
細菌:
黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、広範囲の感染症の原因となる重要なヒトの共生かつ日和見病原体である。これらの細菌は、術後感染の原因となる最もよく知られた細菌の一つである。それで、S.aureusを本実験では選択する。
手順:
創傷包帯を小さい正方形(5x5mm2)に裁断する。
三つの創傷包帯の抗菌効果を、1.6g/LでTiO2(Aeroxide P25,Evonik AG,Essen,Germany)と混合される5容量%のH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)の懸濁液で処理する。更に、この懸濁液を表面層で0.01,0.5,1及び3原子重量%のフッ素でドーピングする。ドーピングは等量のNaFを懸濁液に加えることによって行う。表面のフッ素の量は、X線スペクトロメトリー(XPS)で検知し、定量する。比較対照は、懸濁液を有していない5容量%のH22(PERDROGEN(R) 30% H202 (w/w), Sigma Aldrich AS, Oslo, Norway)のみで処理した創傷包帯である。
これらの創傷包帯は、S.aurerusのブロスからの500μlを装填した懸濁液を混合する前に、PBS(Dulbecco’s PBS,Sigma−Aldrich,St Louis,MO,USA)4mlで希釈する(原液)。この原液10μlの1滴を創傷包帯の頂部に載せる。一旦試験グループの紫外線暴露が到達すると、創傷包帯の小正方形を、Invitrogen(GIBCO MEM,Invitrogen,Carlbad,CA,USA)からの細胞培養培地(抗生物質を含まない)500μlの入った1.5mlEppendorf チューブに個別に入れる。創傷包帯及び細菌の入ったEppendorfチューブを全て暗所、37℃,20時間恒温器に入れる。20時間後に、全ての試料を恒温器から取り出す。スペクトロメーター(Perkin Elmer UV−Vis 200,Oslo,Norway)で、細胞培地700μlのみでこのベースラインについて検量する。次いで、細胞培地500μl+原液10μlのみ入った3個のEppendorfチューブを分析する。次いで、試験管を一本ずつ振盪し、そして各試験管から400μlの容量を細胞培地300μlと混合する。液体700μlを分析のために1.5mlキュベットに入れた。
【0115】
実施例10バイオフィルムの除去
この実施例では、活性化TiO2ナノ粒子の抗菌能力を記載する。
インビトロ試験:洗浄後のバイオマス評価
試料調製
直径6.2mm及び高さ2mmの化学的に純粋な(cp)チタンディスクを使用した。これらのディスクは同じような機械加工表面トポグラフィー(リプルを伴って変えられた)有した。
製作後、ディスクを40容量%のNaCl、50容量%のHNO3で超音波浴によって洗浄して、汚染物を除去し、次いで脱イオン化水で洗浄して中性のpHとし、そして70容量%エタノール中室温で保存した。その後に、コインをeppendorfチューブに入れ、滅菌のために蒸気オートクレーブ処理した。
4種の化学汚染除去剤をインビトロ試験のために選択した:滅菌生理食塩水H2O(VWR,Oslo,Norway)、クロルヘキサジン、3容量%H22(VWR,Oslo,Norway)、3容量%H22と2g/L TiO2の混合物(2g ナノ粒子:
P25 Aeroxide,Degussa Evonik,Evonik Industries AG,Esssen,Germany)。
【0116】
接種、洗浄及び分析
グループ当り15個の滅菌チタンディスクを接種した。比較対照グループは、ブレインハートインヒュージョン培地(BHI)のみで接種し、一方試験グループ(4グループ)は、細菌培養物(10μl Staphylococcus epidermis+5mlDHI)で接種した。インキュベーション時間は、好気性雰囲気中35℃で24時間に設定した。次に、ディスクを新しいウエルに移し、滅菌生理食塩水で洗滌し、次に4種の選択された化学薬剤に2分間暴露し、次いで滅菌生理食塩水で再び洗滌した。チタン試料の表面に存在するバイオフィルムの量はサフラニン染色法を使用して評価した:サフラニンの0.1%溶液に10分暴露し、次いで蒸留水で洗滌し、風乾し、そして30%酢酸溶液に暴露してチタン表面から着色したバイオマスを遊離させた。染色の強度を、530nmの波長でSynergy HT Multi−Detection Microplate Reader (Biotek,VT,USA)を使用して分析した。
【0117】
結果
Synergy HT Multi−Detection Microplate Readerでの光学濃度から、3容量%H22と2g/L TiO2の混合物に暴露した試料は、比較対照よりも顕著には相違していないことを示した。また、このグループの試料は、3%H22の単独溶液で洗浄した後は、顕著に一層低いバイオマスを示した(図5)。
【0118】
実施例11 活性化TiO2ナノ粒子に暴露した後のバイオフィルムの再成長
この実施例では、殺菌後のバイオフィルム再成長の防止における活性化TiO2ナノ粒子の抗菌能力を記載する。
【0119】
インビトロ試験:細菌再成長
殺菌後のバイオフィルムの生存度を測定するために、別の試験を行う。この方法は、同じ4種の製品を使用して、接種から殺菌までの上記実施例10で行ったサフラニン染色分析と同様である。しかしながら、今回は、殺菌工程後、試料をNaClで洗滌し、そして純粋なBHI培地中4時間35℃で再びインキュベーションする。培地を採取し、サフラニン染色分析と同様の分光光度計を使用して分析する(今回は、600nmの波長)。吸光度の強度を比較対照グループと試験グループとの間で比較する。
【0120】
この実験の結果から、比較対照グループ及びH22のみに暴露した試料グループと比較して、3容量%H22と2g/L TiO2の混合物に暴露した試料では、細菌の再成長が顕著に一層低いレベルであることが示される。
【0121】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1〜2000g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物。
【請求項2】
TiO2 の濃度が約3〜10g/L、好ましくは約4〜8g/Lである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
22の濃度が約3〜25容量%、好ましくは約4〜20容量%、更に好ましくは約5〜15容量%である請求項1又は2に記載の組成物
【請求項4】
TiO2 のナノ粒子が約20〜30nm、例えば約20,21,22,23,24,25,26,27,28,29及び30nmの平均粒径(D50)を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1g/Lの濃度で約20〜50nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜7.5容量%の最終濃度のH22を含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記TiO2 のナノ粒子が表面層で0.01〜5原子質量%のフッ素を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、さらに乳化剤、例えばポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、PEG化誘導ソルビタン及び/又は非PEG化ソルビタン及び/又はそのいずれの組合せの一種又はそれ以上を含んでなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、さらに保湿剤、例えばグリシン、プロピレングリコール(E1520)及びグリセリルトリアセテート(E1518)、ソルビトールのようなポリオール(E420)、キシリトール及びマンニトール(E965)、ポリデキストロースのような高分子ポリオール(E1200)又はキラヤのような天然抽出物(E999)、乳酸、尿素及び/又はこれらのいずれの組合せの一種又はそれ以上を含んでなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、さらにゲル化剤、例えばアルギン酸(E400)、アルギン酸ナトリウム(E401)、アルギン酸カリウム(E402)、アルギン酸アンモニウム(E403)、アルギン酸カルシウム(E404)、寒天(E406)、カラゲニン(E407)、ローカストビーンガム(E410)、ペクチン(E440)、ゼラチン(E441)、ポリオキシエチレン ポリオキシプロピレン ブロックコポリマー及び/又はそれらのいずれかの組合せの一種又はそれ以上を含んでなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
医薬用途のための請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
微生物の成長を防止するための医薬組成物の製造のための請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
微生物の成長を防止するのに使用するための請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
創傷壊死組織除去のための医薬組成物の製造のための約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物、又は請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物、又は創傷壊死組織除去に使用するための請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を含んでなる組成物。
【請求項15】
炎症を局所的に軽減するための医薬組成物の製造のための約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物又は請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
炎症を局所的に軽減するために使用するための約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物、又は請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
微生物の成長の防止及び創傷壊死組織除去を同時に行うための医薬組成物の製造のための約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物又は請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
微生物の成長の防止及び創傷壊死組織除去を同時に行うのに使用するための約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物又は請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を必要とする患者に投与する工程を含んでなる創傷内部及び/又は周囲の微生物の成長を防止する方法。
【請求項20】
約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物、又は請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を必要とする患者に投与する工程を含んでなる創傷の壊死組織除去を行う方法。
【請求項21】
約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物、又は請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を必要とする患者に投与する工程を含んでなる創傷内部及び/又は周囲の局所的炎症を治療及び/又は軽減する方法。
【請求項22】
約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物、又は請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を必要とする患者に投与する工程を含んでなる微生物の成長の防止及び創傷内部及び/又は周囲の壊死組織除去を同時に行う方法。
【請求項23】
約1〜2000g/Lの濃度で約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子及び約2.5〜25容量%の最終濃度のH22を含んでなる組成物、又は請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を含んでなる医薬製品又はデバイス及び/又は化粧製品又はデバイス。
【請求項24】
前記デバイスが湿性創傷包帯である請求項23に記載の医薬デバイス。
【請求項25】
前記製品が創傷壊死組織除去製品である請求項23に記載の医薬製品。
【請求項26】
前記製品がクリーム剤又は軟膏剤である請求項23に記載の医薬製品。
【請求項27】
前記製品がシャンプー又は脱臭剤である請求項23に記載の医薬製品。
【請求項28】
約3〜150nmの平均粒径(D50)を有するTiO2 のナノ粒子を含んでなる第一の容器及びH22 を含んでなる第二の容器を含んでなるキット。
【請求項29】
前記TiO2 のナノ粒子が約20〜50nmの平均粒径(D50)を有し、前記H22と混合すると、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を提供する請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記TiO2 のナノ粒子を前記H22と混合する工程を含んでなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−513648(P2013−513648A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543732(P2012−543732)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069808
【国際公開番号】WO2011/080080
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(510179537)
【Fターム(参考)】