説明

Toll様レセプター調節因子および疾患の処置

1つ以上のtoll様レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストである小分子結合体が本明細書中に提供される。そのような結合体は、種々の方法(例えば、自己免疫、炎症および細胞増殖性の障害または疾患などの状態の処置が挙げられるがこれらに限定されない)において利用され得る。本発明はまた、被験体における炎症または自己免疫の状態(障害または疾患)(例えば、関節リウマチ)を予防するため、阻害するため、または処置するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年2月11日に出願された米国特許出願第61/151,737号の出願日の利益を主張する。この米国特許出願の全体が本明細書中で参考として援用される。
【0002】
政府の権利の陳述
本明細書中に記載される発明は、国立衛生研究所により授与された認可番号AI056453およびAI077989−01の下での政府の援助を受けてなされた。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
分野
本技術は、Toll様レセプターの機能を調節する分子、および疾患を処置する必要のある被験体にそのような分子を投与することによって疾患を処置するための方法に部分的に関するものである。
【背景技術】
【0004】
背景
Toll様レセプター(TLR)は、微生物(例えば、細菌、ウイルスまたは真菌)に存在する特異的な分子パターンを認識する、多種多様な細胞型に存在するパターン認識レセプターである(1)。TLRは、リポタンパク質(TLR2)、二本鎖RNA(TLR3)、リポ多糖(LPS、TLR4)、フラジェリン(TLR5)、一本鎖RNA(TLR7/8)および細菌またはウイルスの非メチル化CpGDNA(TLR9)を認識する。TLR3を除くすべてのTLRが、MyD88と呼ばれるアダプタータンパク質を介してシグナル伝達し、NFカッパBおよび関連するサイトカイン遺伝子の活性化をもたらす(2)。
【0005】
細胞内のエンドソーム構成要素に位置するTLR7および8は、一本鎖RNA、および宿主細胞の独特な合成グアノシンアナログを認識する(3,4)。グアニンおよびウリジンリッチな一本鎖RNAは、TLR7に対する天然リガンドとして同定されている(5)。さらに、イミダゾキノリンおよびプリン様分子を含む、TLR7のいくつかの低分子量アクチベーターが同定されている(3,6,7)。後者のうち、9−ベンジル−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)アデニン(「SM」)が、強力かつ特異的なTLR7アゴニストと同定されている(8)。SMの誘導体は、ベンジル部分にアルデヒド官能基を組み込み、その中間体を、ヒドラジンおよびN−ヒドロキシスクシンイミドを含む二官能性リンカー分子を介して種々の補助的な化学実体(auxiliary chemical entity)に結合することによって、合成されている(9)。マウス血清アルブミン(MSA)タンパク質への結合体化によって、遊離薬物と比べて、効力が10〜100倍高まり、インビボ薬力学(pharmakodynamics)が改善された。MSA結合体を、鼻腔内投与または気管内投与によって呼吸器系に送達することができた。鼻腔内による薬物送達によって、細菌感染症およびウイルス感染症という2つの感染症のマウスモデルにおいて有効であることが証明された(9)。そのSM中間体はまた、脂質であるジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)にも結合体化され、その結合体は、高いTLR7アゴニスト活性を有すると決定された(例えば、2008年2月7日出願の国際特許出願番号PCT/US2008/001631に基づく、2008年9月25日公開の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/115319号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
要旨
1つ以上のtoll様レセプターの活性を調節し得る小分子結合体が本明細書中に提供される(例えば、その結合体は、アゴニスト、アンタゴニストまたはその両方である)。用語「toll様レセプター」(TLR)とは、病原体関連分子パターン(PAMP)に結合し、哺乳動物において免疫応答を促進する、レセプターファミリーのメンバーのことを指す。10種の哺乳動物TLR、例えば、TLR1〜10が知られている。用語「toll様レセプターアゴニスト」(TLRアゴニスト)とは、TLRと相互作用してそのレセプターの活性を刺激する分子のことを指す。合成TLRアゴニストは、TLRと相互作用してそのレセプターの活性を刺激するように設計された化学物質である。TLRアゴニストの例としては、TLR−7アゴニスト、TLR−3アゴニストまたはTLR−9アゴニストが挙げられる。用語「toll様レセプターアンタゴニスト」(TLRアンタゴニスト)とは、TLRと相互作用してそのレセプターのシグナル伝達活性を阻害するかまたは中和する分子のことを指す。合成TLRアンタゴニストは、TLRと相互作用してそのレセプターの活性を干渉するように設計された化学物質である。TLRアンタゴニストの例としては、TLR−7アンタゴニスト、TLR−3アンタゴニストまたはTLR−9アンタゴニストが挙げられる。
【0008】
したがって、1つの実施形態において、式I:
【0009】
【化1】

に記載の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩(その水和物を含む)が本明細書中に提供され、ここで:
Xは、NまたはCRであり;
Rは、−OR、−SRまたは−NRであり、
は、結合であるか、または−O−、−S−もしくは−NR−であり;
は、水素、C1〜C10アルキルもしくは置換C1〜C10アルキルであるか、またはRおよびRは、窒素原子と一体となって、複素環式環または置換複素環式環を形成し得;
は、水素、C1〜C10アルキル、置換C1〜C10アルキル、C1〜C10アルコキシ、置換C1〜C10アルコキシ、C1〜C10アルキルC1〜C10アルコキシ、置換C1〜C10アルキルC1〜C10アルコキシ、C5〜C10アリール、置換C5〜C10アリール、C5〜C9複素環式、置換C5〜C9複素環式、C3〜C9炭素環式または置換C3〜C9炭素環式であり;
各Rは、独立して、水素、−OH、C1〜C6アルキル、置換C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、置換C1〜C6アルコキシ、−C(O)−C1〜C6アルキル(アルカノイル)、置換−C(O)−C1〜C6アルキル、−C(O)−C6〜C10アリール(アロイル)、置換−C(O)−C6〜C10アリール、−C(O)OH(カルボキシル)、−C(O)O−C1〜C6アルキル(アルコキシカルボニル)、置換−C(O)O−C1〜C6アルキル、−NR、−C(O)NR(カルバモイル)、置換C(O)NR、ハロ、ニトロまたはシアノであり;
上記アルキル、アリールまたは複素環式基上の置換基は、ヒドロキシ、C1〜C6アルキル、ヒドロキシC1〜C6アルキレン、C1〜C6アルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルコキシC1〜C6アルキレン、アミノ、シアノ、ハロゲンまたはアリールであり;
およびRの各々は、独立して、水素、C1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C1〜C6アルコキシ、ハロC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキルC1〜C6アルキル、C1〜C6アルカノイル、ヒドロキシC1〜C6アルキル、アリール、アリールC1〜C6アルキル、Het、HetC1〜C6アルキルまたはC1〜C6アルコキシカルボニルであり;
各Rは、独立して、−X−((R−(R、−C(O)NRまたは−CHNH−ビオチンであり;
各Xは、独立して、結合または連結基であり;
各Rは、独立して、ポリエチレングリコール(PEG)部分であり;
各Rは、独立して、H、−C1〜C6アルキル、−C1〜C6アルコキシ、−NR、−N、−OH、−CN、−COOH、−COOR、−C1〜C6アルキル−NR、−C1〜C6アルキル−OH、−C1〜C6アルキル−CN、−C1〜C6アルキル−COOH、−C1〜C6アルキル−COOR、5から6員(5〜6員)環、置換5〜6員環、−C1〜C6アルキル−5〜6員環、−C1〜C6アルキル−置換5〜6員環、C2〜C9複素環式、または置換C2〜C9複素環式であり;
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;
nは、0、1、2、3または4であり;
pは、1〜100であり;
qは、1、2、3、4または5であり;
rは、1〜1,000であり;
sは、1〜1,000であり;そして
nとqとの和は、5に等しい。
【0010】
ある特定の実施形態において、式II:
【0011】
【化2】

に記載の構造を有する化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩またはそれらの水和物も提供され、ここで、X、X、X、R、R、R、R、R、m、n、p、q、rおよびsの実施形態は、式Iについて上で記載されている。
【0012】
いくつかの実施形態において、式III:
【0013】
【化3】

に記載の構造を有する化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩またはそれらの水和物が提供され、ここで:
X、X、R、RおよびRの実施形態は、式Iについて上で記載されており;
Yは、−X−((R−(X−(X
−X−((R−(X−(X−(R
−X−((X−(X−(Rまたは
−X−((X−(X−(R−(Rであり;
、R、m、n、p、q、rおよびsの実施形態は、式Iについて上で記載されており;
各Xは、独立して、結合または連結基であり;
各Xは、独立して、高分子であり;
tは、1〜1,000であり;そして
uは、1〜1,000である。
【0014】
いくつかの実施形態において、Xは、Nである。ある特定の実施形態において、Xは、酸素であり、いくつかの実施形態において、Rは、置換C1〜C10アルキル(例えば、C1〜C10アルキルC1〜C10アルコキシ部分(例えば、−CHCHOCH))である。Rは、いくつかの実施形態において、6個以下の非水素原子からなる。いくつかの実施形態において、nは、4であり、Rは、いずれの場合も水素である。
【0015】
ある特定の実施形態において、Xおよび/またはXは、独立して、アミド連結基(例えば、−C(O)NH−または−NH(O)C−);アルキルアミド連結基(例えば、−C1〜C6アルキル−C(O)NH−、−C1〜C6アルキル−NH(O)C−、−C(O)NH−C1〜C6アルキル−、−NH(O)C−C1〜C6アルキル−、−C1〜C6アルキル−−NH(O)C−C1〜C6アルキル−、−C1〜C6アルキル−C(O)NH−C1〜C6アルキル−または−C(O)NH−(CH−(tは、1、2、3または4である));置換5〜6員環(例えば、アリール環、ヘテロアリール環(例えば、テトラゾール、ピリジル、2,5−ピロリジンジオン(例えば、置換フェニル部分で置換された2,5−ピロリジンジオン))、炭素環式環または複素環式環)または酸素含有部分(例えば、−O−、−C1〜C6アルコキシ)である。
【0016】
PEG部分は、1つ以上のPEG単位を含み得る。PEG部分は、いくつかの実施形態において、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800または900単位を含むがこれらに限定されない、約1〜約1,000PEG単位を含み得る。ある特定の実施形態において、PEG部分は、約5〜約25PEG単位、約10〜約50PEG単位、約50〜約150PEG単位、約120〜約350PEG単位、約250〜約550PEG単位または約650〜約950PEG単位を含み得る。PEG単位は、ある特定の実施形態において、−O−CH−CH−または−CH−CH−O−である。
【0017】
いくつかの実施形態において、rは、約5〜約100であり、時としてrは、約5〜約50または約5〜約25である。ある特定の実施形態において、rは、約5〜約15であり、時としてrは、約10である。いくつかの実施形態において、Rは、PEG単位であり、rは、約2〜約10である(例えば、rは、約2〜約4である)。ある特定の実施形態において、R3は、−O−CH−CH−または−CH−CH−O−である。
【0018】
いくつかの実施形態において、Rは、−O−CH−CH−または−CH−CH−O−であり、rは、約1〜約1000である(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000)。ある特定の関連実施形態において、rは、約5〜約25、約10〜約50、約50〜約150、約120〜約350、約250〜約550または約650〜約950である。
【0019】
いくつかの実施形態において、sは、約5〜約100であり、時としてsは、約5〜約50または約5〜約25である。ある特定の実施形態において、sは、約5〜約15であり、時としてsは、約10である。いくつかの実施形態において、sは、約5以下である(例えば、sは、1である)。いくつかの実施形態において、(R置換基は、線状であり、ある特定の実施形態において、(R置換基は、分枝状である。線状部分について、sは、時として、r未満であり(例えば、Rが、−O−CH−CH−または−CH−CH−O−であるとき)、時には、sは、1である。いくつかの実施形態において、Rは、線状PEG部分(例えば、約1〜約1000PEG単位を有する)であり、sは、1であり、rは、1である。分枝状部分について、sは、時として、rより小さいか、rより大きいか、またはrに等しく(例えば、Rが、−O−CH−CH−または−CH−CH−O−であるとき)、時には、rは、1であり、sは、1であり、pは、約1〜約1000である(例えば、pは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000である)。
【0020】
いくつかの実施形態において、tは、約5〜約100であり、時としてtは、約5〜約50または約5〜約25である。ある特定の実施形態において、tは、約5〜約15であり、時としてtは、約10である。いくつかの実施形態において、tは、約5以下である(例えば、tは、1である)。ある特定の実施形態において、uは、約5〜約100であり、時としてuは、約5〜約50または約5〜約25である。いくつかの実施形態において、uは、約5〜約15であり、時としてuは、約10である。ある特定の実施形態において、uは、約5以下である(例えば、uは、1である)。
【0021】
ある特定の実施形態において、R置換基は、独立して、H、C1〜C2アルキル、−C1〜C2アルコキシ(例えば、−OCH)、−NR、−OH、−CN、−COOH、−COOR、−C1〜C2アルキル−NR、C1〜C2アルキル−OH、C1〜C2アルキル−CN、C1〜C2アルキル−COOHまたはC1〜C2アルキル−COORである。いくつかの実施形態において、Rは、必要に応じて置換される5〜6員環(例えば、アリール環、ヘテロアリール環、炭素環式環、複素環式環)である。ある特定の実施形態において、Rは、水素ではなく、時としてRは、ヒドロキシルではない。
【0022】
式Iに記載の構造を有する化合物に関連するいくつかの実施形態において、mは、約1であり、Rは、水素であり、nは、4であり、qは、1であり、pは、1であり、rは、約10であり、sは、1である。
【0023】
各Xは、同じ高分子または異なる高分子であり得る。ある特定の実施形態において、高分子は、抗体、抗体フラグメント、抗原、病原体抗原(例えば、S.aureus抗原)、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンタンパク質またはそのフラグメント)、グリセロール、脂質、リン脂質(例えば、DOPE)、スフィンゴ脂質などからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、高分子は、DOPEである。
【0024】
1つの実施形態において、本発明は、被験体における炎症または自己免疫の状態(障害または疾患)(例えば、関節リウマチ)を予防するため、阻害するため、または処置するための方法を提供し、その方法は、以下の構造:
【0025】
【化4】

を有する化合物もしくはその薬学的に許容可能な塩またはそれらの水和物を、関節リウマチを予防するか、阻害するか、または処置するのに有効な量でその必要のあるヒト被験体に投与する工程を包含する。
【0026】
式I、IIまたはIIIに記載の構造を有する化合物の薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物もまた本明細書中に提供される。被験体における炎症状態を予防するため、阻害するため、または処置するための方法もまた本明細書中に提供され、その方法は、式I、IIまたはIIIに記載の構造を有する化合物を、上記状態、例えば、自己免疫障害またはその症状を予防するか、阻害するか、または処置するのに有効な量でその必要のある被験体に投与する工程を包含する。被験体における自己免疫状態を予防するため、阻害するため、処置するための方法もまた本明細書中に提供され、その方法は、式I、IIまたはIIIに記載の構造を有する化合物を、上記状態またはその症状、例えば、炎症を予防するか、阻害するか、または処置するのに有効な量でその必要のある被験体に投与する工程を包含する。
【0027】
したがって、本発明は、必要に応じて他の化合物とともに、医学療法(例えば、炎症性障害もしくは炎症性疾患、例えば、関節リウマチ、または癌を予防するか、阻害するか、または処置する薬剤)において使用するための化合物を提供する。したがって、本発明の化合物は、自己免疫障害もしくは自己免疫疾患、炎症性障害もしくは炎症性疾患、または癌を予防するため、阻害するため、または処置するために有用である。
【0028】
炎症性障害もしくは炎症性疾患および/または自己免疫障害もしくは自己免疫疾患あるいは癌を予防するか、阻害するか、または処置する薬物を製造するための化合物の使用もまた提供される。1つの実施形態において、本発明は、被験体における癌を予防するため、阻害するため、または処置するための方法を提供し、その方法は、式I、IIまたはIIIに記載の構造を有する化合物を、癌を予防するか、阻害するか、または処置するのに有効な量でその必要のある被験体に投与する工程を包含する。1つの実施形態において、本発明の化合物は、癌を有する被験体に投与され、ここで、コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン(prednisilone)、メチルプレドニゾロンまたはヒドロコルチゾンが指示され、癌、例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、多発性骨髄腫または脳腫瘍が指示される。1つの実施形態において、癌(その発症は炎症に関連し、例えば、結腸癌である)のリスクのある被験体が、本発明の化合物を投与される。ゆえに、本発明は、必要に応じて他の化合物とともに、医学療法(例えば、癌を予防するか、阻害するか、または処置する薬剤)において使用するための化合物を提供する。したがって、本技術の化合物は、種々の自己免疫障害/疾患、炎症性障害/疾患および癌を予防するため、阻害するため、または処置するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面は、本発明の実施形態を例証するものであって、限定するものではない。例証を明確にするためおよび容易にするために、これらの図面は、共通の尺度を持って作られていないこと、および場合によっては、本発明の様々な実施形態が、特定の実施形態の理解を促すために強調されるかまたは拡大されて示され得ることに注意すべきである。
【0030】
以下の省略形が本文書全体にわたって使用される。Toll様レセプター(TLR)、リポ多糖(LPS)、ミエロイド分化一次応答(Myeloid differentiation primary response)遺伝子(88)(MyD88)、骨髄由来単核細胞(BMDM)、末梢血単核細胞(PBMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、エタノール(EtOH)、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、N,N−ジメチルメタンアミド(DMF)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、ジクロロメタン(DCM)、トリエチルアミン(TEA)、形質細胞様樹状細胞(pDC)、オボアルブミン(OVA)、マウス血清アルブミン(MSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)および免疫グロブリン(Ig)
【図1】図1は、脂質−(6)、PEG−(8)または脂質−PEG(9)TLR7結合体の合成に使用されるスキームを例証している。(6)、(8)および(9)とは、化合物の呼称を指す。
【図2】図2A〜Dは、マウスマクロファージにおけるTLR7結合体のインビトロにおける免疫学的特徴づけの結果を示している。図2Eは、LPS非応答性変異体マクロファージおよび野生型マクロファージを用いたエンドトキシン混入の評価の結果を示している。
【図3】図3A〜Bは、ヒトPBMCにおけるTLR7結合体のインビトロ免疫学的特徴づけの結果を示している。
【図4】図4A〜Bは、インビボにおけるTLR7結合体による炎症性サイトカイン誘導の動態を例証している。
【図5A】図5A〜Cは、インビボにおけるTLR7結合体のアジュバント活性(例えば、免疫学的応答を惹起する能力)を例証している。
【図5B】図5A〜Cは、インビボにおけるTLR7結合体のアジュバント活性(例えば、免疫学的応答を惹起する能力)を例証している。
【図5C】図5A〜Cは、インビボにおけるTLR7結合体のアジュバント活性(例えば、免疫学的応答を惹起する能力)を例証している。
【図6A】図6A〜Cは、TLR7結合体の潜在的有害作用の評価の結果を示している。
【図6B】図6A〜Cは、TLR7結合体の潜在的有害作用の評価の結果を示している。
【図6C】図6A〜Cは、TLR7結合体の潜在的有害作用の評価の結果を示している。
【図7】図7A〜Bは、1V136(フリーのファーマコフォア)および1V282(化合物8)での処置による腹腔好中球浸潤の減少を例証している。
【図8】図8は、誘発された実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対する、1V282(化合物(8))での処置の効果を例証している。
【図9A】図9A〜Eは、NFkBbla RAW264.7細胞および骨髄由来マクロファージ(BMDM)に対する、鎖の長さが様々なTLR7アゴニスト結合体のインビトロ活性を示している。
【図9B】図9A〜Eは、NFkBbla RAW264.7細胞および骨髄由来マクロファージ(BMDM)に対する、鎖の長さが様々なTLR7アゴニスト結合体のインビトロ活性を示している。
【図9C】図9A〜Eは、NFkBbla RAW264.7細胞および骨髄由来マクロファージ(BMDM)に対する、鎖の長さが様々なTLR7アゴニスト結合体のインビトロ活性を示している。
【図9D】図9A〜Eは、NFkBbla RAW264.7細胞および骨髄由来マクロファージ(BMDM)に対する、鎖の長さが様々なTLR7アゴニスト結合体のインビトロ活性を示している。
【図9E】図9A〜Eは、NFkBbla RAW264.7細胞および骨髄由来マクロファージ(BMDM)に対する、鎖の長さが様々なTLR7アゴニスト結合体のインビトロ活性を示している。
【図10A】図10A〜Cは、マウスに投与されたTLR7アゴニストPEG結合体のインビボ薬力学を示している。
【図10B】図10A〜Cは、マウスに投与されたTLR7アゴニストPEG結合体のインビボ薬力学を示している。
【図10C】図10A〜Cは、マウスに投与されたTLR7アゴニストPEG結合体のインビボ薬力学を示している。
【図10D】図10A〜Cは、マウスに投与されたTLR7アゴニストPEG結合体のインビボ薬力学を示している。
【図11】図11A〜Bは、血清移入関節炎モデルにおいて、毎日の胃管栄養(A)または皮下注射(B)によって投与された1V282の抗炎症性効果を例証している。
【図12】図12A〜Bは、チオグリコレートで誘発された腹膜炎モデルにおけるTLR7アゴニストPEG結合体の抗炎症性効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
1つ以上のtoll様レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストである小分子結合体が、本明細書中に提供される。そのような結合体は、種々の方法(例えば、自己免疫、炎症および細胞増殖性の障害または疾患などの状態の処置が挙げられるがこれらに限定されない)において利用され得る。
【0032】
化合物
小分子TLR調節因子(modulator)が知られている。小分子の例は、2000年5月26日出願の特許出願番号09/555,292からの2001年12月11日発行の米国特許第6,329,381号、ならびに2006年8月21日出願(WO2007/024707として2007年3月1日公開)のPCT/US2006/032371;2008年2月7日出願(WO2008/115319として2008年9月25日公開)のPCT/US2008/001631;2007年4月23日出願(WO/2007/142755として2007年12月13日公開)のPCT/US07/009840;および2008年2月7日出願の米国仮出願番号61/026,999に記載されている。
【0033】
ある特定の小分子TLRアゴニスト(例えば、本明細書中で「小分子標的」と呼ばれる)は、1つ以上のPEG部分に結合体化され得、得られる結合体は、TLRアンタゴニスト活性を示し得ることが決定されている。小分子標的を1つ以上のPEG部分で結合体化するための方法がいくつか知られている。例えば、いくつかのPEG反応物が、商業的に入手可能であり、小分子の種々の反応基への結合体化に適している(例えば、NOF Corporation,Japan(ワールドワイドウェブURL peg−drug.com/peg_product/activated_peg.html))。用語「PEG反応物」とは、本明細書中で使用されるとき、PEG−小分子標的結合体産物を生成する条件下で小分子標的と組み合わされる分子のことを指す。例えば、以下の構造を有するある特定のPEG反応物が、小分子上の種々の標的基と反応し得る:
CHO(CHCHO)−X(ここで、Xは、表1:
【0034】
【表1】

に記載の反応基であり、NHSは、N−スクシンイミジルである)
いくつかの実施形態において、PEG反応物は、構造CHO(CHCHO)−X−NHSを有し、ここで、Xは、−COCHCHCOO−、−COCHCHCHCOO−、−CHCOO−および−(CHCOO−であり得る。ある特定の実施形態において、PEG反応物は、構造
【0035】
【化5】

を有する。
【0036】
ある特定のPEG反応物は、いくつかの実施形態において、二官能性である。二官能性PEG反応物の例は、いくつかの実施形態において、構造X−(OCHCH)n−Xを有し、ここで、Xは、(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)メチル(−CHCOO−NHS)、スクシンイミジルグルタレート(−COCHCHCHCOO−NHS)、(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)ペンチル(−(CHCOO−NHS)、3−(N−マレイミジル)プロパンアミド、(−NHCOCHCH−MAL)、アミノプロピル(−CHCHCHNH)または2−スルファニルエチル(−CHCHSH)である。
【0037】
ある特定の実施形態において、いくつかのPEG反応物は、ヘテロ官能性である。ヘテロ官能性PEG反応物の例は、構造
【0038】
【化6】

を有し、ここで、Xは、いくつかの実施形態において、(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)メチル(−CHCOO−NHS)、スクシンイミジルグルタレート(−COCHCHCHCOO−NHS)、(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)ペンチル(−(CHCOO−NHS)、3−(N−マレイミジル)プロパンアミド、(−NHCOCHCH−MAL)、3−アミノプロピル(−CHCHCHNH)、2−スルファニルエチル(−CHCHSH)、5−(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)ペンチル(−(CHCOO−NHS]またはp−ニトロフェニルオキシカルボニル、(−CO−p−CNO)であり得る。
【0039】
ある特定の分枝状PEG反応物(例えば、構造:
【0040】
【化7】

(ここで、Xは、スペーサーであり、Yは、官能基(マレイミド、アミン、グルタリル−NHS、カーボネート−NHSまたはカーボネート−p−ニトロフェノールを含むがこれらに限定されない)である)を有するもの)もまた、いくつかの実施形態において利用され得る。分枝鎖PEG反応物の利点は、それらが、徐放特性を有する結合体産物をもたらし得る点である。
【0041】
PEG反応物は、ある特定の実施形態において、
【0042】
【化8】

などのヘテロ官能性反応物でもあり得る。いくつかの実施形態において、Boc保護されたアミノ−PEG−カルボキシル−NHSまたはマレイミド−PEG−カルボキシル−NHS反応物が利用され得る。
【0043】
ある特定の実施形態では、いくつかのPEG単位を結合体に組み込むために、くし形ポリマーがPEG反応物として利用され得る。くし形ポリマーの例を以下に示す。
【0044】
【化9】

「化合物」という表題のこの項において具体的に示されるPEG反応物について、PEG反応物において示される置換基「n」または「m」は、単に、いくつかの実施形態において式I、IIまたはIIIについて上で定義された「r」と等しい。PEG反応物および/またはPEG結合体産物は、約5グラム/モル〜約100,000グラム/モルの範囲の分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、PEG反応物および/またはPEG結合体産物は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000または90000グラム/モルの平均(average)分子量、平均(mean)分子量または名目上の分子量を有する。いくつかの実施形態において、本明細書中の化合物におけるPEG部分は、均質であり、そのPEG部分の分子量は、特定のバッチの化合物の各分子について同じである(例えば、Rが、1つのPEG単位であり、rは、2〜10である)。
【0045】
ある特定の実施形態において、1つ以上のR置換基が、PEG部分(例えば、式I;線状または分枝状のPEG部分)の末端をなす。各R置換基は、同じであっても異なっていてもよく、いくつかの実施形態において、−CH−CH−NH、−CH−CH−OH、−CH−CH−COOH、−CH−CH−COORからなる群から独立して選択され得る。リンカーは、本明細書中に記載されるリンカーを含む任意の適当なリンカーであり得る。
【0046】
適当なリンカーは、結合体(例えば、X、X)を構築するために利用され得、複数のリンカーが知られている。利用され得るリンカーの非限定的な例としては、以下:
【0047】
【化10】

が挙げられる。
【0048】
本明細書中で使用されるとき、用語「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」は、直鎖、分枝鎖および環状の一価ヒドロカルビルラジカル、ならびにこれらの組み合わせを含み、それらは、置換されていないとき、CおよびHだけを含む。例としては、メチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2プロペニル、3ブチニルなどが挙げられる。そのような基の各々における炭素原子の総数は、時として、本明細書中に記載され、例えば、その基が、最大10個の炭素原子を含み得るとき、1〜10CまたはC1〜C10もしくはC1〜10と表され得る。ヘテロ原子(代表的には、N、OおよびS)が、ヘテロアルキル基におけるように炭素原子を置き換えることができるとき、例えば、なおもC1〜C6と記載されるがその基を説明する数字は、例えば、その基における炭素原子の数と、記載されている環または鎖の骨格における炭素原子に代わる置き換えとして含められるそのようなヘテロ原子の数との和を表す。
【0049】
代表的には、本発明のアルキル、アルケニルおよびアルキニル置換基は、1つの10C(アルキル)または2つの10C(アルケニルまたはアルキニル)を含む。好ましくは、それらは、1つの8C(アルキル)または2つの8C(アルケニルまたはアルキニル)を含む。時として、それらは、1つの4C(アルキル)または2つの4C(アルケニルまたはアルキニル)を含む。単一の基が、2つ以上のタイプの多重結合または2つ以上の多重結合を含み得る;そのような基が、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含むとき、それらは、用語「アルケニル」の定義内に含められ、それらが、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含むとき、用語「アルキニル」に含められる。
【0050】
アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、そのような置換が化学的に理にかなう限りにおいて、しばしば必要に応じて置換される。代表的な置換基としては、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR、=NR、OR、NR、SR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、CORおよびNOが挙げられるが、これらに限定されず、ここで、各Rは、独立して、H、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C6〜C10アリールまたはC5〜C10ヘテロアリールであり、各Rは、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’、SR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’およびNOで必要に応じて置換され、ここで、各R’は、独立して、H、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリールまたはC5〜C10ヘテロアリールである。アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリールまたはC5〜C10ヘテロアリールによっても置換され得、それらの各々は、特定の基にとって適した置換基によって置換され得る。
【0051】
「アセチレン」置換基は、必要に応じて置換される2〜10Cアルキニル基であり、式−C≡C−Riであり、ここで、Riは、HまたはC1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C1〜C8アシル、C2〜C8ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキルもしくはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、各Ri基は、ハロ、=O、=N−CN、=N−OR’、=NR’、OR’、NR’2、SR’、SOR’、SONR’、NR’SOR’、NR’CONR’、NR’COOR’、NR’COR’、CN、COOR’、CONR’、OOCR’、COR’およびNOから選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換され、ここで、各R’は、独立して、H、C1〜C6アルキル、C2〜C6ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C2〜C6ヘテロアシル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜12アリールアルキルまたはC6〜12ヘテロアリールアルキルであり、それらの各々は、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヘテロアルキル、C1〜C6アシル、C1〜C6ヘテロアシル、ヒドロキシ、アミノおよび=Oから選択される1つ以上の基で必要に応じて置換され;2つのR’は、連結することにより、N、OおよびSから選択される最大3つのヘテロ原子を必要に応じて含む3〜7員環を形成し得る。いくつかの実施形態において、−C≡C−RiのRiは、HまたはMeである。
【0052】
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」などは、対応するヒドロカルビル(アルキル、アルケニルおよびアルキニル)基と同様に定義されるが、「ヘテロ」という用語は、骨格残基内に1〜3個のO、SもしくはNヘテロ原子またはそれらの組み合わせを含む基のことを指し;ゆえに、対応するアルキル、アルケニルまたはアルキニル基の少なくとも1つの炭素原子が、明示されるヘテロ原子のうちの1つで置き換えられることにより、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルまたはヘテロアルキニル基が形成される。アルキル、アルケニルおよびアルキニル基のヘテロ型に対する代表的かつ好ましいサイズは、一般に、対応するヒドロカルビル基に対するサイズと同じであり、ヘテロ型に存在し得る置換基は、ヒドロカルビル基について上で記載された置換基と同じである。化学安定性を理由に、そのような基は、別段明示されない限り、オキソ基が、ニトロ基またはスルホニル基におけるようにNまたはS上に存在する場合を除いて、3つ以上連続したヘテロ原子を含まないことも理解される。
【0053】
「アルキル」は、本明細書中で使用されるとき、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキル基を含むが、用語「シクロアルキル」は、環炭素原子を介して接続される炭素環式の非芳香族基を記載するために本明細書中で使用され得、「シクロアルキルアルキル」は、アルキルリンカーを介して分子に接続される炭素環式の非芳香族基を記載するために使用され得る。同様に、「ヘテロシクリル」は、環メンバーとして少なくとも1つのヘテロ原子を含み、CまたはNであり得る環原子を介して分子に接続される、非芳香族環式基を記載するために使用され得;「ヘテロシクリルアルキル」は、リンカーを介して別の分子に接続されるそのような基を記載するために使用され得る。シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロシクリルアルキル基にとって適したサイズおよび置換基は、アルキル基について上で記載されたサイズおよび置換基と同じである。本明細書中で使用されるとき、環が芳香族でない限り、これらの用語には、1つまたは2つの二重結合を含む環も含まれる。
【0054】
本明細書中で使用されるとき、「アシル」は、カルボニル炭素原子の2つの利用可能な原子価位置のうちの1つにおいて結合されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアリールアルキルラジカルを含む基を包含し、ヘテロアシルとは、カルボニル炭素以外の少なくとも1つの炭素が、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子によって置き換えられている対応する基のことを指す。したがって、ヘテロアシルには、例えば、−C(=O)ORおよび−C(=O)NRならびに−C(=O)−ヘテロアリールが含まれる。
【0055】
アシルおよびヘテロアシル基は、それらが空いている原子価(open valence)のカルボニル炭素原子を介して結合される任意の基または分子に結合される。代表的には、アシルおよびヘテロアシル基は、ホルミル、アセチル、ピバロイルおよびベンゾイルを含むC1〜C8アシル基、ならびにメトキシアセチル、エトキシカルボニルおよび4−ピリジノイルを含むC2〜C8ヘテロアシル基である。アシル基またはヘテロアシル基を構成するヒドロカルビル基、アリール基およびそのような基のヘテロ型は、そのアシルまたはヘテロアシル基の対応する構成要素の各々に対する一般に適当な置換基として本明細書中に記載される置換基で置換され得る。
【0056】
「芳香族」部分または「アリール」部分とは、芳香族性の周知の特徴を有する、単環式の部分または縮合された二環式の部分のことを指す;例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。同様に、「ヘテロ芳香族」および「ヘテロアリール」とは、O、SおよびNから選択される1つ以上のヘテロ原子を環メンバーとして含む、そのような単環式の環系または縮合された二環式の環系のことを指す。ヘテロ原子を含むことにより、5員環ならびに6員環において芳香族性がもたらされる。代表的なヘテロ芳香族系としては、単環式C5〜C6芳香族基(例えば、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリルおよびイミダゾリル)、およびC8〜C10二環式基(例えば、インドリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ピラゾロピリジル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニルなど)を形成するためにこれらの単環式基の1つをフェニル環または任意のヘテロ芳香族の単環式基と縮合することによって形成される縮合された二環式の部分が挙げられる。環系全体にわたる電子分布に関して芳香族性の特徴を有する任意の単環式または縮合環二環式の系が、この定義に含められる。この定義には、分子の残りの部分に直接結合される環が芳香族性の特徴を少なくとも有する二環式基も含まれる。代表的には、その環系は、5〜12個の環メンバー原子を含む。好ましくは、単環式ヘテロアリールは、5〜6個の環メンバーを含み、二環式ヘテロアリールは、8〜10個の環メンバーを含む。
【0057】
アリールおよびヘテロアリール部分は、C1〜C8アルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルキニル、C5〜C12アリール、C1〜C8アシルおよびこれらのヘテロ型(それらの各々は、それ自体がさらに置換され得る)を含む種々の置換基で置換され得;アリールおよびヘテロアリール部分に対する他の置換基としては、ハロ、OR、NR、SR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、CORおよびNOが挙げられ、ここで、各Rは、独立して、H、C1〜C8アルキル、C2〜C8ヘテロアルキル、C2〜C8アルケニル、C2〜C8ヘテロアルケニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C8ヘテロアルキニル、C6〜C10アリール、C5〜C10ヘテロアリール、C7〜C12アリールアルキルまたはC6〜C12ヘテロアリールアルキルであり、各Rは、アルキル基について上で記載されたように必要に応じて置換される。アリール基またはヘテロアリール基における置換基は、当然、そのような置換基の各タイプまたはその置換基の各構成要素に適するような本明細書中に記載される基でさらに置換され得る。したがって、例えば、アリールアルキル置換基は、アリール基にとって典型的であるような本明細書中に記載される置換基でアリール部において置換され得、アルキル基にとって典型的であるかまたは適当であるような本明細書中に記載される置換基でアルキル部においてさらに置換され得る。
【0058】
同様に、「アリールアルキル」および「ヘテロアリールアルキル」とは、アルキレンなどの連結基(置換されているかまたは置換されておらず、飽和または不飽和であり、環式または非環式のリンカーを含む)を介して結合点に結合される芳香族環系および複素芳香族環系のことを指す。代表的には、リンカーは、C1〜C8アルキルまたはそのヘテロ型である。これらのリンカーは、カルボニル基も含むことがあり、ゆえに、そのリンカーが置換基をアシルまたはヘテロアシル部分として提供することが可能になる。アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基におけるアリール環またはヘテロアリール環は、アリール基について上で記載された同じ置換基で置換され得る。好ましくは、アリールアルキル基には、アリール基について上で定義された基で必要に応じて置換されるフェニル環、および置換されていないかまたは1つもしくは2つのC1〜C4アルキル基もしくはヘテロアルキル基(ここで、そのアルキル基またはヘテロアルキル基は、必要に応じて環化することにより、シクロプロパン、ジオキソランまたはオキサシクロペンタンなどの環を形成し得る)で置換されたC1〜C4アルキレンで必要に応じて置換されるフェニル環が含まれる。同様に、ヘテロアリールアルキル基には、好ましくは、アリール基における典型的な置換基のような、および置換されていないかまたは1つもしくは2つのC1〜C4アルキル基もしくはヘテロアルキル基で置換されたC1〜C4アルキレンのような、上に記載された基で必要に応じて置換されるC5〜C6単環式ヘテロアリール基が含まれるか、あるいはヘテロアリールアルキル基には、必要に応じて置換されるフェニル環またはC5〜C6単環式ヘテロアリール、および置換されていないかまたは1つもしくは2つのC1〜C4アルキル基もしくはヘテロアルキル基(ここで、そのアルキル基またはヘテロアルキル基は、必要に応じて環化することにより、シクロプロパン、ジオキソランまたはオキサシクロペンタンなどの環を形成し得る)で置換されたC1〜C4ヘテロアルキレンが含まれる。
【0059】
アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル基が、必要に応じて置換されると記載される場合、その置換基は、その基のアルキル部またはヘテロアルキル部に存在してもよいし、その基のアリール部またはヘテロアリール部に存在してもよい。アルキル部またはヘテロアルキル部に必要に応じて存在する置換基は、通常、アルキル基について上で記載された置換基と同じであり;アリール部またはヘテロアリール部に必要に応じて存在する置換基は、通常、アリール基について上で記載された置換基と同じである。
【0060】
「アリールアルキル」基は、本明細書中で使用されるとき、置換されていない場合、ヒドロカルビル基であり、環およびアルキレンリンカーまたは類似のリンカーにおける炭素原子の総数によって記載される。したがって、ベンジル基は、C7−アリールアルキル基であり、フェニルエチルは、C8−アリールアルキルである。
【0061】
上に記載されたような「ヘテロアリールアルキル」とは、連結基を介して結合されたアリール基を含む部分のことを指し、それは、アリール部分の少なくとも1つの環原子または連結基内の1つの原子が、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子である点において「アリールアルキル」とは異なる。ヘテロアリールアルキル基は、組み合わされる環およびリンカー内の原子の総数に従って本明細書中に記載され、それらとしては、ヘテロアルキルリンカーを介して連結されたアリール基;アルキレンなどのヒドロカルビルリンカーを介して連結されたヘテロアリール基;およびヘテロアルキルリンカーを介して連結されたヘテロアリール基が挙げられる。したがって、例えば、C7−ヘテロアリールアルキルとしては、ピリジルメチル、フェノキシおよびN−ピロリルメトキシが挙げられる。
【0062】
「アルキレン」とは、本明細書中で使用されるとき、二価のヒドロカルビル基のことを指し;それは、二価であるので、他の2つの基を同時に連結し得る。代表的には、アルキレンとは、−(CH−のことを指し、ここで、nは、明示される場合もあるが、1〜8であり、好ましくは、nは、1〜4であり、アルキレンは、他の基によっても置換され得、また、他の長さであり得、鎖の反対端が空いている原子価である必要はない。したがって、−CH(Me)−および−C(Me)−は、シクロプロパン−1,1−ジイルなどの環式基であり得るので、アルキレンと呼ばれることもある。アルキレン基が置換される場合、その置換基としては、代表的には、本明細書中に記載されるようなアルキル基において存在する置換基が挙げられる。
【0063】
通常、任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、アシルまたはアリールもしくはアリールアルキル基、あるいは置換基に含められるこれらの基のうちの1つの任意のヘテロ型は、それ自体が、必要に応じてさらなる置換基によって置換され得る。これらの置換基の性質は、その置換基が別段記載されない場合、主要な置換基自体に関して列挙された性質と似たものである。したがって、例えば、R2がアルキルである実施形態の場合は、化学的に意味をなす場合およびアルキル自体に対して提供されたサイズ限度を壊さない場合、このアルキルは、R2に対する実施形態として列挙される残りの置換基によって必要に応じて置換され得る;例えば、アルキルまたはアルケニルによって置換されたアルキルは、これらの実施形態に対する炭素原子の上限を単純に拡張するものであり、含められない。しかしながら、アリール、アミノ、アルコキシ、=Oなどによって置換されたアルキルは、本発明の範囲内に含められ、これらの置換基の原子は、説明されているアルキル、アルケニルなどの基を記載するために使用される数の中に数えられない。置換基の数が明示されない場合、そのようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アシルまたはアリール基の各々は、その利用可能な原子価に従っていくつかの置換基で置換され得る;特に、任意のこれらの基が、例えば、その利用可能な原子価のいずれかまたはすべてにおいて、フッ素原子で置換され得る。
【0064】
「ヘテロ型」とは、本明細書中で使用されるとき、アルキル、アリールまたはアシルなどの基の誘導体のことを指し、ここで、指摘される炭素環式基の少なくとも1つの炭素原子が、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子によって置き換えられている。したがって、アルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリールおよびアリールアルキルのヘテロ型は、それぞれ、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアシル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルである。オキソ基がNまたはSに結合することにより、ニトロ基またはスルホニル基を形成する場合を除いて、2つ以下のN、OまたはS原子は、通常、連続して接続されることが理解される。ヘテロ型部分は、時として本明細書中で「Het」と呼ばれる。
【0065】
「ハロ」または「ハロゲン」は、本明細書中で使用されるとき、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含む。フルオロおよびクロロが好ましいことが多い。「アミノ」とは、本明細書中で使用されるとき、NHのことを指すが、アミノが、「置換」または「必要に応じて置換される」と記載される場合、この用語は、NR’R”を含み、ここで、R’およびR”の各々は、独立してHであるか、あるいはアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリールもしくはアリールアルキル基またはこれらの基のうちの1つのヘテロ型であり、そのアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリールもしくはアリールアルキル基またはこれらの基のうちの1つのヘテロ型の各々は、対応する基にとって適当であると本明細書中に記載される置換基で必要に応じて置換される。この用語はまた、R’およびR”が一体となって連結することにより、3〜8員環を形成する形態も含み、その形態は、飽和であっても、不飽和であっても、芳香族であってもよく、N、OおよびSから独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を環メンバーとして含み、アルキル基にとって適当であると記載される置換基で必要に応じて置換されるか、または、NR’R”が芳香族基である場合、ヘテロアリール基にとって代表的であると記載される置換基で必要に応じて置換される。
【0066】
本明細書中で使用されるとき、用語「炭素環」とは、その環に炭素原子だけを含む環式化合物のことを指す一方で、「複素環」とは、ヘテロ原子を含む環式化合物のことを指す。炭素環式構造および複素環式構造は、単環式、二環式または多環式の系を有する化合物を含む。本明細書中で使用されるとき、用語「ヘテロ原子」とは、炭素または水素ではない任意の原子(例えば、窒素、酸素または硫黄)のことを指す。複素環の例証的な例としては、テトラヒドロフラン、1,3ジオキソラン、2,3ジヒドロフラン、ピラン、テトラヒドロピラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、1,3ジヒドロイソベンゾフラン、イソオキサゾール、4,5ジヒドロイソオキサゾール、ピペリジン、ピロリジン、ピロリジン2オン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、オクタヒドロピロロ[3,4b]ピリジン、ピペラジン、ピラジン、モルホリン、チオモルホリン、イミダゾール、イミダゾリジン2,4ジオン、1,3ジヒドロベンズイミダゾール2オン、インドール、チアゾール、ベンゾチアゾール、チアジアゾール、チオフェン、テトラヒドロチオフェン1,1ジオキシド、ジアゼピン、トリアゾール、グアニジン、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3,4,4a,9,9aヘキサヒドロ1Hベータカルボリン、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ラクトン、アジリジン、アゼチジン、ピペリジン、ラクタムが挙げられるがこれらに限定されず、ヘテロアリールも包含され得る。ヘテロアリールの他の例証的な例としては、フラン、ピロール、ピリジン、ピリミジン、イミダゾール、ベンズイミダゾールおよびトリアゾールが挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
場合によっては、本明細書中に記載される化合物は、1つ以上のキラル中心を含む。本発明は、単離された各立体異性体、ならびに様々な程度のキラル純度での立体異性体の混合物(ラセミ混合物を含む)を含む。本発明はまた、形成され得る様々なジアステレオマーおよび互変異性体も包含する。本発明の化合物は、1つ以上の互変異性体として存在してもよい。例えば、Rが−OHであるとき、本明細書中に記載される化合物は、1つ以上の互変異性体として存在し得る。
【0068】
用語「必要に応じて置換される」は、本明細書中で使用されるとき、記載される特定の1つの基または複数の基が、非水素置換基を有しなくてもよいし、1つ以上の非水素置換基を有してもよいことを示す。別段明示されない限り、存在し得るそのような置換基の総数は、記載される基の非置換型に存在するH原子の数に等しい。任意の置換基が、二重結合(例えば、カルボニル酸素(=O))を介して結合される場合、その基は、2つの利用可能な原子価を要するので、含められ得る置換基の総数は、利用可能な原子価の数に従って減少する。
【0069】
薬学的組成物および製剤
本明細書中に記載される化合物は、薬学的に許容可能な塩として調製され得る。本明細書中で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能な塩」とは、親化合物が、その酸または塩基の塩を生成することによって改変された、開示される化合物の誘導体のことを指す。薬学的に許容可能な塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩;などが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容可能な塩には、例えば、無毒性の無機酸または有機酸から形成される親化合物の従来の無毒性の塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、従来の無毒性の塩としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸など)から得られる塩;および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸など)から調製される塩が挙げられる。他の例では、従来の無毒性の塩には、塩基(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、カフェイン、様々なアミンなど)から得られる塩が含まれる。薬学的に許容可能な塩は、従来の化学的な方法によって、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から合成され得る。一般に、そのような塩は、遊離酸または遊離塩基の形態のこれらの化合物を化学量論的な量の適切な塩基または酸と水もしくは有機溶媒またはそれら2つの混合物中で反応させることによって調製され得る;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が、好ましい。適当な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,p.1418(1985)(この開示は、本明細書によって参考として援用される)に見られる。
【0070】
用語「薬学的に許容可能」とは、本明細書中で使用されるとき、妥当な利点/リスク比に見合った、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー性応答または他の問題もしくは合併症なしに、人間および動物の組織と接触させて使用することに適している、まっとうな医学的判断の範囲内の、化合物、材料、組成物および/または剤形のことを指す。
【0071】
用語「安定な化合物」および「安定な構造」は、有用な程度の純度への反応混合物からの単離および有効な治療薬への製剤化に耐えるのに十分強い化合物のことを示すことが意味される。安定な化合物は、記載される処置法において使用されることについて本明細書中で企図される。
【0072】
本明細書中に記載される化合物は、1つ以上の他の薬剤とともに製剤化され得る。その1つ以上の他の薬剤としては、本明細書中に記載される別の化合物、抗細胞増殖性薬剤(例えば、化学療法剤)、抗炎症剤および抗原が挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0073】
本明細書中に記載される化合物は、薬学的組成物として製剤化され得、選択される投与経路、例えば、経口的または非経口的、静脈内、筋肉内、局所的または皮下の経路に適応された種々の形態で哺乳動物宿主(例えば、ヒト患者または非ヒト動物)に投与され得る。ある特定の実施形態において、組成物は、局所的、例えば、小胞内に投与される。組成物は、しばしば、希釈剤、ならびに場合によっては、アジュバント、緩衝剤、保存剤などを含む。化合物は、リポソーム組成物として、またはある特定の実施形態ではマイクロエマルジョンとしても投与され得る。薬物に対する様々な徐放系も考えられ、本明細書中に記載される化合物に適用され得る。例えば、米国特許第5,624,677号(その方法が、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0074】
したがって、化合物は、全身的に、例えば、経口的に、薬学的に許容可能なビヒクル(例えば、不活性な希釈剤または同化できる可食キャリア)と組み合わせて投与され得る。
【0075】
本明細書中に記載される化合物は、ハードシェルまたはソフトシェルゼラチンカプセル内に封入されてもよいし、錠剤に圧縮されてもよいし、患者の食餌の食物とともに直接取り込まれてもよい。経口による治療的な投与の場合、活性な化合物は、1つ以上の賦形剤と組み合わされ得、摂取可能な錠剤、頬側錠剤、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、オブラートなどの形態で使用され得る。そのような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性な化合物を含むべきである。その組成物および調製物のパーセンテージは、当然のことながら、変動することがあり、都合よく、所与の単位剤形の重量の約2〜約60%であり得る。そのような治療的に有用な組成物中の活性な化合物の量は、有効な投薬量レベルが得られるほどの量である。
【0076】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセルなどは、以下のもの:結合剤(例えば、トラガカントゴム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチン);賦形剤(例えば、リン酸二カルシウム);崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸など);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);および甘味剤(例えば、スクロース、フルクトース、ラクトースまたはアスパルテーム)も含んでもよいし、香味料(例えば、ペパーミント、ウインターグリーン油またはサクランボ香料)が加えられてもよい。単位剤形が、カプセルであるとき、そのカプセルは、上記のタイプの材料に加えて、液体キャリア(例えば、植物油またはポリエチレングリコール)を含み得る。他の様々な材料が、コーティング剤として存在してもよいし、固体の単位剤形の物理的形状を別途改変するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤またはカプセルは、ゼラチン、ろう、シェラックまたは糖などでコーティングされ得る。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性な化合物、甘味剤としてスクロースまたはフルクトース、保存剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびに香料(例えば、サクランボまたはオレンジのフレーバー)を含み得る。当然のことながら、任意の単位剤形を調製する際に使用される任意の材料は、使用される量において、薬学的に許容可能かつ実質的に無毒であるべきである。さらに、活性な化合物は、徐放の調製物およびデバイスに組み込まれ得る。
【0077】
活性な化合物は、注入または注射によって投与され得る。活性な化合物またはその薬学的に許容可能な塩の溶液は、水において調製され得、必要に応じて、無毒性の界面活性剤と混合され得る。また、分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびそれらの混合物、ならびに油において調製され得る。これらの調製物は、貯蔵および使用の通常の条件下において微生物の成長を防止する保存剤を含む。
【0078】
薬学的剤形としては、活性成分を含む滅菌された水溶液もしくは分散物または滅菌された粉末が挙げられ得、それらは、滅菌された溶液または分散物の即時調製に適応され、必要に応じて、リポソーム内に被包される。最終の剤形は、時として、滅菌された流体であり、製造および貯蔵の条件下で安定である。液体キャリアまたはビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、無毒性グリセリルエステルおよびそれらの適当な混合物を含む、溶媒または液体分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成によって、分散物の場合は必要とされる粒径の維持によって、または界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって、もたらされ得る。等張剤、例えば、糖、緩衝剤または塩化ナトリウムが、いくつかの実施形態において含められる。注射可能な組成物の長時間にわたる吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することによってもたらされ得る。滅菌された溶液は、活性な化合物を必要量で、時として上に列挙された他の成分の1つ以上とともに、適切な溶媒に組み込むことによって、調製された後、濾過滅菌されることが多い。滅菌された注射可能な溶液を調製するための滅菌された粉末の場合、時として利用される調製方法は、真空乾燥法および凍結乾燥法であり、それによって、あらかじめ濾過滅菌された溶液中に存在する任意の所望のさらなる成分が追加された活性成分の粉末が得られる。
【0079】
局所的投与の場合、本明細書中の化合物は、純粋な形態で、例えば、液体形態のときに、適用され得る。しかしながら、許容可能なキャリアと組み合わされた、固体または液体であり得る組成物または製剤として化合物を投与することが一般に望ましい。有用な固体キャリアとしては、微粉化された(finely divided)固体(例えば、タルク、粘土、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナなど)が挙げられる。有用な液体キャリアとしては、水、アルコールもしくはグリコールまたは水−アルコール/グリコール混和物が挙げられ、ここで、本化合物は、必要に応じて無毒性の界面活性剤の助けを借りて、有効なレベルで溶解され得るかまたは分散され得る。芳香剤および追加の抗菌剤などのアジュバントが加えられることにより、所与の用途に対する特性が最適化され得る。得られた液体組成物は、吸収性のパッドから適用され得るか、得られた液体組成物を使用して帯具および他の包帯に含浸させ得るか、またはポンプタイプもしくはエアロゾルの噴霧器を用いて患部に噴霧され得る。
【0080】
増粘剤(例えば、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸の塩およびエステル、脂肪アルコール、修飾セルロースまたは修飾された無機物材料)もまた、液体キャリアとともに使用されることにより、使用者の皮膚に直接塗布するための塗り広げることのできるペースト、ゲル、軟膏、石鹸などが形成され得る。本化合物の有用な投薬量は、それらのインビトロ活性および動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定され得る。マウスおよび他の動物における有効な投薬量をヒトに対して外挿するための方法は、当該分野で公知である;例えば、米国特許第4,938,949号を参照のこと。本明細書中の化合物がTLRアゴニストまたはTLRアンタゴニストとして作用する能力は、Leeら、PNAS,100:6646(2003)によって開示されている手順を含む、公知の薬理学的モデルを用いて決定され得る。一般に、液体組成物中の化合物(複数可)の濃度は、約0.1〜25重量%、好ましくは、約0.5〜10重量%である。ゲルまたは粉末などの半固体組成物中または固体組成物中の濃度は、約0.1〜5重量%、好ましくは、約0.5〜2.5重量%である。
【0081】
処置に使用するために必要とされる本化合物またはその活性な塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の塩だけでなく、投与経路、処置される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態によっても変動し、最終的には担当の医師または臨床医の自由裁量による。一般に、適当な用量は、時として、約0.5〜約100mg/kg、例えば、約10〜約75mg/kg体重/日(例えば、レシピエントの体重1キログラムあたり1日あたり3〜約50mg)の範囲であり、しばしば、6〜90mg/kg/日または約15〜60mg/kg/日の範囲である。化合物は、単位剤形で都合よく投与され得、例えば、1単位剤形あたり5〜1000mgまたは10〜750mgまたは50〜500mgの活性成分を含む。活性成分は、約0.01〜約100pM、約0.5〜約75pM、約1〜50pMまたは約2〜約30pMという活性な化合物のピーク血漿濃度を達成するように投与され得る。そのような濃度(contcentrations)は、例えば、活性成分の0.05〜5%溶液(必要に応じて食塩水における溶液)の静脈内注射によって達成され得るか、または約1〜100mgの活性成分を含むボーラスとして経口投与され得る。望ましい血中濃度は、約0.01〜5.0mg/kg/時をもたらす持続注入、または約0.4〜15mg/kgの活性成分(複数可)を含む間欠的注入によって維持され得る。所望の用量は、単一用量、または適切な間隔で、例えば、2、3、4またはそれより多い、1日あたりの分割用量(sub−doses)として、投与される分割量として都合よく表され得る。分割用量自体が、例えば、注入器からの複数回の吸入または複数回の点眼によって、例えば、いくつかのゆるく間隔のあいた不連続な投与にさらに分割されてもよい。
【0082】
処置
用語「処置する(treat)」および「処置する(treating)」とは、本明細書中で使用されるとき、(i)病的状態が発生するのを防ぐこと(例えば、予防);(ii)病的状態を阻害するか、またはその発症を抑止すること;(iii)病的状態を軽減すること;および/または(iv)ある状態の症状を回復すること、緩和すること、減らすこと、および取り除くことを指す。本明細書中に記載される候補分子または候補化合物は、製剤中または医薬中に治療有効量で存在し得、その治療有効量は、生物学的効果(例えば、炎症の阻害)をもたらし得るか、または例えば、ある状態、例えば、疾患の症状を回復させ得るか、緩和し得るか、減らし得るか、軽減し得るか、減少させ得るか、もしくは取り除き得る量である。これらの用語は、細胞増殖速度を低下させることもしくは停止すること(例えば、腫瘍成長を遅延することまたは休止すること)または増殖中の癌細胞の数を減少させること(例えば、腫瘍の一部または全部を除去すること)も指し得る。これらの用語は、微生物に感染した系(例えば、細胞、組織または被験体)における微生物の力価を低下させること、微生物の繁殖速度を低下させること、微生物感染に関連する症状の数もしくはその症状の作用を低減すること、および/または検出可能な量の微生物をその系から除去することにも適用可能である。微生物の例としては、ウイルス、細菌および真菌が挙げられるがこれらに限定されない。
【0083】
用語「治療有効量」とは、本明細書中で使用されるとき、被験体における疾患もしくは障害を処置するためもしくは予防するために、または疾患もしくは障害の症状を処置するために、本明細書中に提供される化合物の量、または本明細書中に提供される化合物の組み合わせの量のことを指す。本明細書中で使用されるとき、用語「被験体」および「患者」とは、通常、本明細書中に記載される方法に従って処置(例えば、本明細書中に記載される化合物の投与)を受けるかまたは受けている個体のことを指す。
【0084】
本明細書中に記載される化合物は、1つ以上の炎症障害を潜在的に予防するため、阻害するため、または処置するために、その必要のある被験体に投与され得る。本明細書中以後使用されるとき、用語「処置する」、「処置」および「治療効果」とは、炎症応答を低減させるか、阻害するか、または停止(防止)すること(例えば、特定の抗原に対する抗体産生または抗体の量を遅延することまたは休止すること)、炎症組織の量を減少させること、および炎症状態を完全または部分的に緩和することを指し得る。炎症状態としては、アレルギー、喘息、自己免疫障害、慢性炎症、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、ミオパシー(例えば、全身性硬化症、皮膚筋炎、多発性筋炎および/または封入体筋炎と併発するもの)、骨盤炎症性疾患、再灌流傷害、関節リウマチ、移植片拒絶、血管炎および白血球障害(例えば、チェディアック・東症候群、慢性肉芽腫症)が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の自己免疫障害は、炎症障害(例えば、関節リウマチ)でもある。いくつかの実施形態において、炎症障害は、慢性炎症、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、ミオパシー、骨盤炎症性疾患、再灌流傷害、移植片拒絶、血管炎および白血球障害からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、炎症状態としては、気管支拡張症、細気管支炎、嚢胞性線維症、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、アテローム性動脈硬化症および敗血症性ショック(例えば、多臓器不全を伴う敗血症)が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、炎症状態は、アレルギー、喘息、ARDSおよび自己免疫障害からなる群から選択される状態ではない。ある特定の実施形態において、炎症状態は、消化管の炎症、脳の炎症、皮膚の炎症および関節の炎症からなる群から選択される状態ではない。ある特定の実施形態において、炎症状態は、好中球媒介性の障害である。
【0085】
本明細書中に記載される化合物は、その必要のある被験体に投与されることにより、1つ以上の自己免疫障害を潜在的に処置し得る。そのような処置において、用語「処置する」、「処置」および「治療効果」とは、自己免疫応答を低減させるか、阻害するか、または停止すること(例えば、特定の抗原に対する抗体産生または抗体の量を遅延することまたは休止すること)、炎症組織の量を減少させること、および自己免疫障害を完全または部分的に緩和することを指し得る。自己免疫障害としては、自己免疫性の脳脊髄炎、大腸炎、自己免疫性(automimmune)インスリン依存性糖尿病(IDDM)およびウェゲナー肉芽腫症および高安動脈炎が挙げられるがこれらに限定されない。そのような疾患に対して化合物を試験するためのモデルとしては、(a)(i)ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)ペプチドによって誘発されるC5BL/6、(ii)SJLマウスPLP139−151または178−191EAE、および(iii)自己免疫性脳脊髄炎に対する、MOGまたはPLPペプチドによって誘発されるEAEの養子移入モデル;(b)自己免疫性IDDMに対する非肥満糖尿病(NOD)マウス;(c)大腸炎に対する、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘発される大腸炎モデルおよびトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によって誘発される大腸炎モデル;および(d)ウェゲナー肉芽腫症および高安動脈炎に対するモデルとしての全身性の小血管炎障害が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書中に記載される化合物は、被験体に投与されることにより、以下の障害の1つ以上を潜在的に処置し得る:急性散在性脳脊髄炎(ADEM);アジソン病;円形脱毛症;強直性脊椎炎;抗リン脂質抗体症候群(APS);自己免疫性溶血性貧血;自己免疫性肝炎;自己免疫性内耳疾患;水疱性類天疱瘡;セリアック病(coeliac disease);シャーガス病;慢性閉塞性肺疾患;クローン病(特発性炎症性腸疾患「IBD」の2タイプのうちの1つ);皮膚筋炎;1型真性糖尿病;子宮内膜症;グッドパスチャー症候群;グレーヴズ病;ギラン・バレー症候群(GBS);橋本病;化膿性汗腺炎;特発性血小板減少性紫斑病;間質性膀胱炎;エリテマトーデス;混合結合組織病;モルヘア;多発性硬化症(MS);重症筋無力症;ナルコレプシー;神経性筋緊張症;尋常性天疱瘡;悪性貧血;多発性筋炎;原発性胆汁性肝硬変;関節リウマチ;統合失調症;強皮症;シェーグレン症候群;側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られる);潰瘍性大腸炎(特発性炎症性腸疾患「IBD」の2タイプのうちの1つ);血管炎;白斑;およびウェゲナー肉芽腫症。いくつかの実施形態において、自己免疫障害または自己免疫疾患は、クローン病(Chrohns disease)(またはクローン病(Chrohn’s disease))、関節リウマチ、狼瘡および多発性硬化症からなる群から選択される障害および疾患ではない。
【0086】
本明細書中に記載される化合物は、被験体において免疫応答を誘導するために、その必要のある被験体に投与され得る。その免疫応答は、ある特定の実施形態において、外来抗原(例えば、病原体感染)に対して被験体によって自発的にもたらされ得る。いくつかの実施形態において、抗原が、本明細書中に記載される化合物と同時に投与され、その抗原に対する免疫応答が被験体において開始される。ある特定の実施形態において、抗原は、特定の細胞増殖性状態(例えば、特定の癌抗原)または特定の病原体(例えば、グラム陽性菌細胞壁抗原(gram positive bacteria wall antigen);S.aureus抗原)に対して特異的であり得る。
【0087】
本明細書中に記載される化合物は、1つ以上の細胞増殖性障害を潜在的に処置するために、その必要のある被験体に投与され得る。そのような処置において、用語「処置する」、「処置」および「治療効果」とは、細胞増殖速度を低下させるかまたは停止すること(例えば、腫瘍成長を遅延させることまたは休止すること)、増殖中の癌細胞の数を減少させること(例えば、腫瘍の一部または全部を切除すること)および細胞増殖状態を完全または部分的に緩和することを指し得る。細胞増殖性状態としては、結腸直腸、乳房、肺、肝臓、膵臓、リンパ節、結腸、前立腺、脳、頭頚部、皮膚、肝臓、腎臓および心臓の癌が挙げられるが、これらに限定されない。癌の例としては、造血起源の過形成細胞/新生細胞が関わる(例えば、骨髄性、リンパ系もしくは赤血球系またはそれらの前駆体細胞から生じる)疾患である造血性の新生物性障害が挙げられる。これらの疾患は、未分化型急性白血病、例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生じ得る。さらなる骨髄性障害としては、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)(Vaickus,Crit.Rev.in Oncol./Hemotol.11:267−297(1991)に概説)が挙げられるが、これらに限定されず;リンパ系悪性疾患としては、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(B細胞型ALLおよびT細胞型ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、ヘアリーセル白血病(HLL)およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)が挙げられるが、これらに限定されない。悪性リンパ腫のさらなる形態としては、非ホジキンリンパ腫およびそのバリアント、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病およびリード・シュテルンベルク病が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、細胞増殖性障害は、非内分泌腫瘍または内分泌腫瘍である。非内分泌腫瘍の例証的な例としては、腺癌、腺房細胞癌腫、腺扁平上皮癌腫、巨細胞腫瘍、腺管内乳頭粘液性新生物、粘液性嚢胞腺癌、膵芽腫、漿液性嚢胞腺腫、充実性偽乳頭状腫瘍(solid and pseudopapillary tumors)が挙げられるがこれらに限定されない。内分泌腫瘍は、島細胞腫瘍であり得る。
【0088】
細胞増殖性状態には、皮膚の炎症状態(例えば、湿疹、円板状エリテマトーデス、扁平苔癬、硬化性苔癬、菌状息肉腫、光線皮膚症、バラ色粃糠疹、乾癬を含む)などの炎症状態も含まれる。肥満症(例えば、脂肪細胞の増殖)に関連する細胞増殖性状態も含まれる。
【0089】
細胞増殖性状態としては、例えば、後天性免疫不全症候群、アデノウイルス科感染症、アルファウイルス感染症、アルボウイルス感染症、Borna病、ブンヤウイルス科感染症、カリシウイルス科感染症、水疱、Ccoronaviridae感染症、コクサッキーウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症、デング熱、DNAウイルス感染症、伝染性膿痂疹、アルボウイルス脳炎、エプスタイン・バーウイルス感染症、伝染性紅斑、ハンタウイルス感染症、出血熱、ウイルス性肝炎、ウイルス性ヒト単純疱疹、帯状疱疹、耳帯状疱疹、ヘルペスウイルス科感染症、感染性単核球症、インフルエンザ、例えば、鳥類またはヒトにおけるもの、ラッサ熱、麻疹、伝染性軟属腫、耳下腺炎、パラミクソウイルス科(oaramyxoviridae)感染症、サシチョウバエ熱、ポリオーマウイルス感染症、狂犬病、呼吸器合胞体ウイルス感染症、リフトバレー熱、RNAウイルス感染症、風疹、遅発型ウイルス病、痘瘡、亜急性硬化性汎脳炎、腫瘍ウイルス感染症、疣贅、ウェストナイル熱、ウイルス病および黄熱を含むウイルス性疾患も挙げられる。例えば、SV40形質転換ウイルスのラージT抗原は、UBFに対して作用し、UBFを活性化し、他のウイルス性タンパク質をPol I複合体にリクルートし、それによって、細胞増殖を刺激することにより、確実にウイルスが繁殖する。細胞増殖性状態には、新脈管形成に関する状態(例えば、癌)、ならびに脂肪細胞(adipocyte)および他の脂肪細胞(fat cell)の増殖によって引き起こされる肥満症も含まれる。
【0090】
細胞増殖性状態には、心臓のストレスに起因する心臓の状態(例えば、高血圧症、バルーン(baloon)血管形成術、弁疾患および心筋梗塞)も含まれる。例えば、心筋細胞は、心室壁の大部分を構成する、心臓における分化した筋細胞であり、血管平滑筋細胞は、血管を裏打ちしている。これらの両方が、筋細胞型であるが、心筋細胞および血管平滑筋細胞は、それらの収縮、成長および分化のメカニズムが異なる。心筋細胞は、心臓形成のすぐ後に高分化型となり、ゆえに分裂する能力を失っている(loose)一方、血管平滑筋細胞は、収縮性の表現型から増殖性の表現型へと絶えず調節を受けている。様々な病態生理学的ストレス(例えば、高血圧症、バルーン血管形成術、弁疾患および心筋梗塞)下において、例えば、心臓および血管は、心機能を低下させて最終的には心不全として顕われ得る形態学的な増殖関連の変質を起こす。したがって、本明細書中に記載される化合物を、心臓の細胞増殖性状態を処置するのに有効な量で投与することによって、その心臓の状態を処置するための方法が、本明細書中に提供される。本化合物は、心臓ストレスが起きるかまたは検出される前または後に投与され得、本化合物または核酸は、例えば、高血圧症、バルーン血管形成術、弁疾患または心筋梗塞の発生または検出の後に投与され得る。そのような化合物の投与によって、血管筋細胞および/または平滑筋細胞の増殖が低下し得る。
【0091】
ある特定の実施形態は、本明細書中に記載される候補分子または候補核酸を投与することによって、加齢の症状を処置すること、および/または細胞老化に属する状態を処置することにも関する。例えば、ウェルナー症候群という早老疾患は、WRN DNAヘリカーゼをコードするウェルナー遺伝子の変質に起因する。理論によって限定されないが、このタンパク質は、核小体に局在すること、および四重のGに特異的に結合することが知られており、WRN DNAヘリカーゼの変異は、老化をもたらす。
【実施例】
【0092】
以下に示される実施例は、本発明を例証するものであって、限定するものではない。
【0093】
TLR分子は、レセプターの局在性、細胞の活性化およびサイトカインの産生に影響し得る。TLR4および9については、TLRの位置は、著しいプロファイルのサイトカイン誘導に応答性である(10−12)。薬物への脂質の結合体化によって、極性脂質キャリアを介した細胞への薬物の移行が促進され得、それによって、従来の送達系よりも効率的かつ特異的に、薬物の有効な細胞内濃度が得られる。薬用の軟膏(ointment)または軟膏(salve)を用いて製剤化される、脂質への薬物の結合体化によって、皮膚障害を処置するための皮膚への浸透がもたらされ得る。PEG化は、インビボでの安定性を高めることによって薬物の血液循環を延長し得、さらには毒性を低下させる(13)。本明細書中では、脂質およびポリエチレングリコールをTLR7アゴニスト(SM)に結合体化し、その結合体の免疫活性を試験した。個別のTLR7アゴニスト結合体は、インビボおよびインビトロにおいて、異なる免疫賦活性プロファイルを示した。脂質へのTLR7アゴニストの結合体化は、非結合体化TLR7アゴニスト(SM)と比べて、先天免疫を刺激する能力を改善した。迅速に発生し、かつ持続性であるアジュバント作用を、脂質−TLR7アゴニスト結合体はインビボにおいて示した。これらのデータから、脂質−TLR7結合体が、治療のためのワクチン接種用アジュバントとしての潜在的な応用性を有することが示唆される。しかしながら、PEGへのTLR7アゴニストの結合体化は、SMファーマコフォアの特性を改変し、その代わりその結合体は、TLR7アンタゴニスト活性を示した。
【0094】
実施例1:結合体の合成および特徴づけ
材料
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)は、Avanti Polar Lipids(Alabaster,AL)から購入した。他のすべての試薬は、さらなる精製なしの少なくとも試薬グレードとしてSigma−Aldrich(St.Louis MO)から購入した。溶媒は、Fischer Scientific(Pittsburgh,PA)から購入し、購入したまま使用したか、または適切な乾燥剤を用いて再蒸留した。オボアルブミン(OVA,グレードV)は、Sigma−Aldrichから購入した。
【0095】
免疫学的活性の実験用の試薬中および結合体中のエンドトキシンレベルを、BioWhittaker(Walkerville,Maryland,USA)から購入したQCL1000(登録商標)Endopoint色素形成LALアッセイを用いて測定した。1マイクログラム(μg)のタンパク質または薬物あたり1ピコグラム(pg)未満のエンドトキシンを含む試薬を実験全体にわたって使用した。DOPEが、LALアッセイにおいて偽陽性の結果をもたらしたので、エンドトキシンによる汚染を試験するために、リポサッカライド非応答性変異体マウス(C3H/HeJ)から得られた骨髄由来単核(BMDM)細胞を使用した(図1Bを参照のこと)。C3H/HeJマウスから得られたBMDMによるサイトカイン産生のレベルは、野生型C3H/HeOuJ系統から得られた細胞におけるレベルと似ていたことから、エンドトキシン混入が無視し得るものであったことが示唆される(図2Bを参照のこと)。すべての結合体を、−80℃において乾燥粉末で保存した。それらの結合体をDMSOに100mMで溶解し、免疫学的アッセイの前にさらに希釈した。
【0096】
分析用TLCを、EMD(Gibbstown,NJ)から購入した予めコーティングされたTLCシリカGel 60 F254アルミニウムシートを用いて行い、UV光を用いて可視化した。フラッシュクロマトグラフィを、明示される溶媒系を用いてEMDシリカゲル60(40〜63μm)において行った。脂質を含まない化合物に対するクロマトグラフィおよび質量スペクトル(ESI)を、パーセント範囲で98%超の純度を有するSupelco Discovery HS C18カラム(Sigma−Aldrich)を備えた1100LC/MSD(Agilent Technologies,Inc.,Santa Clara CA)において記録した。脂質含有化合物の質量スペクトル(ESI)は、Finnigan LCQDECA(Thermo Fisher Scientific Inc.Waltham,MA)において記録した。1H NMRスペクトルは、Varian Mercury Plus 400(Varian,Inc.,Palo Alto CA)において得た。化学シフトは、0ppmにおけるTMSを基準として、適当な重水素化されたNMR溶媒を用いたときの百万分率(ppm)で表される。
【0097】
C57BL/6(B6)マウスは、Charles River Laboratories(Wilmington,MA)から購入した。C3H/HeJおよびC3H/HeOuJマウスは、Jackson Laboratories(Bar Harbor,ME)から購入した。TLR7欠損マウス(C57BL/6バックグラウンド)は、Dr.S.Akira(Osaka University,Osaka,Japan)から寄贈されたものであり、C57BL/6バックグラウンドに対して10世代戻し交雑されたものである。動物を、UCSDにおける22±0.5℃、午前7時から午後7時の12:12時間の明暗サイクルの部屋で飼育し、維持した。すべての手順およびプロトコルは、Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたものである。
【0098】
化学合成
本明細書中に記載される化学合成スキームは、図1中の化合物を指すとき、括弧内の数字を使用し、反応工程(例えば、加えられる化学物質(複数可)および/または反応条件)を指すとき、括弧内の文字を使用する。例えば、(a)とは、ある反応物を加えることにより、化合物(1)と組み合わされ、反応するとき、化合物(2)を形成し得る工程を包含する、反応工程のことを指す。反応条件、および各反応工程に対して加えられる化合物は;(a)リチウムN,N’−メチルエチレンジアミノアルミニウム水素化物(Cha,J.ら(2002)Selective conversion of aromatic nitriles to aldehydes by lithium N,N’−dimethylethylenediaminoaluminum hydride,Bull.Korean Chem.Soc.23,1697−1698)、THF,0℃;(b)NaI、クロロトリメチルシラン、CHCN,r.t.;(c)PBS,r.t.;(d)NaOH:EtOH 1:1,還流;(e)DOPE、HATU、トリエチルアミン、DMF/DCM 1:1,r.t.;(f)O−(2−アミノエチル)−O’−(2−アジドエチル)ノナエチレングリコール、HATU、トリエチルアミン、DMF,r.t.;(g)4ペンチン酸、アスコルビン酸ナトリウム、Cu(OAc)2、t−BuOH/HO/THF 2:2:1,r.t.;および(h)DOPE、HATU、トリエチルアミン、DMF/DCM 1:1,r.t.。
【0099】
4−((6−アミノ−2−(2−メトキシエトキシ)−8−オキソ−7H−プリン−9(8H)−イル)メチル)安息香酸の合成(図1を参照のこと,化合物5)。20mLの1:1のエタノール:水混合物を、0.10g(0.28mmol)の4−((6−アミノ−8−メトキシ−2−(2−メトキシエトキシ)−9H−プリン−9イル)メチル)ベンゾニトリル(図1を参照のこと,化合物1)に加え、その組み合わせたものを8時間還流した。その反応混合物を冷却し、濃HClでpH2に酸性化した。その水溶液をDCMでさらに抽出し(3×20mL)、MgSO4で乾燥し、真空中で蒸発させることにより、8−オキソ−9−安息香酸(化合物5)と、8−メトキシ−9−安息香酸と、8−オキソ−9−エチルベンゾエートとの混合物を得た。その生成物を乾燥させたら、CHCN(25mL)に溶解し、NaI(0.14g,0.96mmol)を加えた(図1,反応工程(b))。撹拌しながらこの溶液に12μL(0.96mmol)のクロロトリメチルシランを滴下して加えた。その反応混合物を40℃で4時間加熱し、次いで冷却し、濾過し、水(20mL)次いでジエチルエーテル(20mL)で洗浄することにより、白色固体を85%収率で得た。生じた生成物に対して核磁気共鳴(NMR)解析を行ったところ、以下の結果が得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 10.33 (s, 1H), 7.89(d, J = 8 Hz, 2H), 7.37 (d, J = 8 Hz, 2H), 6.65 (s, 2H), 4.92 (s, 2H), 4.24 (t,J = 4 Hz, 2H), 3.56 (t, J = 4 Hz, 2H), 3.25 (s, 3H)。HPLCにおける保持時間(Rt)=14.3分。ESI−MS(陽イオンモード):C1617についての計算値m/z[M+1]360.34;実測値360.24。
【0100】
2−(4−((6−アミノ−2−(2−メトキシエトキシ)−8−オキソ−7H−プリン−9(8H)−イル)メチル)ベンズアミド)エチル2,3−ビス(オレオイルオキシ)プロピルホスフェートの合成(図1を参照のこと,化合物6)。1mLの無水N,N−ジメチルメタンアミド(DMF)中の0.022g(0.06mmol)の化合物5の溶液に、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)(0.026g,0.067mmol)および無水トリエチルアミン(TEA)(17.0μL,0.12mmol)を加えた。無水1:1ジクロロメタン(DCM):DMF(1mL)中の、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(0.05g,0.067mmol)の溶液を調製し、上記反応混合物にゆっくり加えた(図1反応工程(e))。完了するまでその反応混合物を室温で撹拌し、次いで、真空中で蒸発させた。その生成物を、DCM中の15%メタノール(MeOH)を用いるフラッシュクロマトグラフィで精製することにより、0.038gの白色固体を58%収率で得た。生じた生成物に対してNMR解析を行ったところ、以下の結果が得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 9.7 (s, 1H), 7.87 (d,J = 8.3 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.61 (s, 2H), 5.30 (m, 4H), 5.05 (m,1H), 4.88 (s, 2H), 4.26 (m, 4H), 4.06 (m, 1H), 3.77 (m, 4H), 3.57 (m, 2H), 3.35(m, 2H), 3.26 (s, 3H), 2.23 (m, 4H), 1.95 (m, 8H), 1.46 (m, 4H), 1.22 (m, 40H),0.83 (m, 6H)。ESI−MS(陰イオンモード):C579212Pについての計算値m/z[M−1]1083.35;実測値1083.75。
【0101】
4−((6−アミノ−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)−9H−プリン−9−イル)メチル)−N−(32−アジド−3,6,9,12,15,18,21,24,27,30−デカオキサドトリアコンチル)ベンズアミドの合成(図1を参照のこと,化合物7)。無水DMF(5mL)中の化合物5(0.100g,0.278mmol)の溶液に、HATU(0.117g,0.306mmol)および無水TEA(77.014μL,0.556mmol)を加えた(図1を参照のこと,反応工程(f))。無水DMF(1mL)中のO−(2−アミノエチル)−O’−(2−アジドエチル)ノナエチレングリコール(0.150g,0.306mmol)の溶液を調製し、上記反応混合物にゆっくり加えた。完了するまでその反応混合物を室温で撹拌し、次いで、真空中で蒸発させた。その生成物を、DCM中の5%MeOHを用いるフラッシュクロマトグラフィで精製することにより、0.224gの不透明な油状物を93%収率で得た。HPLCにおける保持時間=12分。生じた生成物に対してNMR解析を行ったところ、以下の結果が得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 10.01 (s, 1H), 8.45(t, J = 5.6 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.49(s, 2H), 4.90 (s, 2H), 4.25 (t, J = 4 Hz, 2H), 3.57 (m, 4H), 3.5 (m, 36H), 3.4(M, 6H), 3.26 (s, 3H)。ESI−MS(陽イオンモード):C386114についての計算値m/z[M+1]868.94;実測値868.59。
【0102】
3−(1−(1−(4−((6−アミノ−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)−9H−プリン−9−イル)メチル)フェニル)−1−オキソ−5,8,11,14,17,20,23,26,29,32−デカオキサ−2−アザテトラトリアコンタン−34−イル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)プロパン酸の合成(図1を参照のこと,化合物8)。化合物7(0.218g,0.251mmol)および4−ペンチン酸(0.074g,0.753mmol)を1:1のt−ブタノール:H2O(3mL)に溶解した(図1を参照のこと,反応工程(g))。1:1のt−ブタノール:H2O(1mL)中のアスコルビン酸ナトリウム(0.02g,100mmol)およびCu(OAc)2(0.009g,50mmol)を上記反応混合物にゆっくり加え、TLCによって化合物7が完全に反応するまで、室温で撹拌した。その生成物をDCM(10mL)およびH2O(10mL)で抽出し、有機層をMgSOで乾燥することにより、0.230gの不透明な油状物を95%収率で得た。HPLCにおける保持時間=11.5分。生じた生成物に対してNMR解析を行ったところ、以下の結果が得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 13.48 (s, 1H), 7.76(d, J = 8.29 Hz, 2H), 7.75 (s, 1H), 7.23 (d, J = 8.29, 2H), 4.88 (s, 2H), 4.41(t, J = 5.12 Hz, 2H), 4.23 (t, J = 4 Hz, 2H), 3.74 (t, J = 5.12 Hz, 2H), 3.57 (t,J = 4 Hz, 2H), 3.51 (m, 8H), 3.42 (m, 36H), 3.26 (s, 3H), 2.79 (t, J = 7.56 Hz,2H), 2.24 (t, J = 7.56 Hz, 2H)。ESI−MS(陽イオンモード):C436716についての計算値m/z[M+1]966.04;実測値966.67。
【0103】
2−(3−(1−(1−(4−((6−アミノ−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)−9H−プリン−9−イル)メチル)フェニル)−1−オキソ−5,8,11,14,17,20,23,26,29,32−デカオキサ−2−アザテトラトリアコンタン−34−イル)−1H−1,2,3トリアゾール−4−イル)プロパンアミド)エチル2,3−ビス(オレオイルオキシ)プロピルホスフェートの合成(図1を参照のこと,化合物9)。無水DMF(1mL)中の、化合物8(96mg,0.1mmol)、HATU(42mg,0.11mmol)の溶液に、無水TEA(2.7μL,0.2mmol)を加えた。1:1のDCM:DMF(1mL)中のDOPE(81.4mg,0.11mmol)の溶液を上記反応混合物に滴下して加え、完了するまで室温で撹拌した(図1を参照のこと,反応工程(h))。完了したら、その生成物を、真空中での蒸発の後、DCM中の15%MeOHを用いたフラッシュクロマトグラフィによって単離することにより、155mgの不透明な油状物を92%収率で得た。生じた生成物に対してNMR解析を行ったところ、以下の結果が得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 8.5 (s, 2H), 8.39 (s,1H), 7.79 (m, 3H), 7.33 (d, J = 6.23 Hz, 2H), 6.91 (s, 2H), 5.31 (m, 4H), 5.05(m, 1H), 4.89 (s, 2H), 4.46 (m, 2H), 4.23 (m, 4H), 4.08 (t, J = 8 Hz, 2 H),3.76 (m, 4H), 3.63 (t, J = 8 Hz, 2H), 3.56 (t, J = 8 Hz, 2H), 3.48 (m, 36H),3.26 (m, 5H), 3.17 (m, 2H), 2.82 (t, J = 8 Hz, 2H), 2.39 (t, J = 8 Hz, 2H),2.24 (m, 4H), 1.96 (m, 8H), 1.48 (m, 4H), 1.23 (m, 40H), 0.84 (m, 6H)。ESI−MS(陽イオンモード):C84H142N10O23Pについての計算値m/z[M+1]1691.05;実測値1692.82。
【0104】
同様の手法を用いて他の化合物を合成した(例えば、表2に示される化合物)。例えば、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンの代わりに一置換および二置換のヘキサデシルアミンを使用したことを除いて、それぞれ4−((6−アミノ−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)−9H−プリン−9−イル)メチル0−N−ヘキサデシルベンザミン(化合物1Z7)および4−((6−アミノ−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)−9H−プリン−9−イル)メチル0−N,N−ジヘキサデシルベンザミン(化合物1Z9)を、図1における化合物6の調製について上に記載したように調製し、精製した。ESI−MSを用いて化合物1Z7について583.7という質量が観察された(陽イオンモード;C3250についての質量の計算値m/z[M+1]は582.78である)。ESI−MSを用いて化合物1Z9について808.2という質量が観察された(陽イオンモード;C4882についての質量の計算値m/z[M+1]は807.20である)。
【0105】
ビオチン化誘導体N−(4−((6−アミノ−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)−9H−プリン−9−イル)ベンジル)−5−((3aS,4S,6aR)−2−オキソヘキサヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イル)ペンタンアミド(化合物1Z18)をアミノメチル誘導体(1V184)から調製し、上に記載した手順と同じ手順を用いてビオチンに結合体化した。ESI−MSを用いて571.5という質量が観察された(陽イオンモード;C2634Sについての質量の計算値m/z[M+1]は570.66である)。
【0106】
実験方法
インビトロ方法
サイトカイン誘導のインビトロにおける測定を、マウス白血病単球マクロファージ細胞系であるRAW264.7を用いて行った。Raw264.7マウスは、American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD)から入手し、DMEM完全培地[10%熱不活化ウシ胎仔血清、2mM L−グルタミンおよび100U/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシンが補充されたダルベッコ変法イーグル培地(Irvine Scientific,Irvine,CA)]中で培養した。Wu,C.Cら、(2007)“Immunotherapeutic activity of a conjugate of a Toll−like receptor 7 ligand”,Proc Natl Acad Sci USA 104,3990−5に記載されているように、BMDMをC57BL/6マウスおよびTLR7欠損マウスから調製した。
【0107】
通常は、RAW264.7細胞またはBMDMを、37℃、5%CO2において様々な濃度の結合体とともに18時間インキュベートし、培養上清を回収した。その上清中のサイトカイン(IL−6、IL−12またはTNF−α)のレベルをELISA(BD Biosciences Pharmingen,La Jolla,CA)によって測定し(Cho,H.Jら、“Immunostimulatory DNA−based vaccines induce cytotoxic lymphocyte activity by a T−helper cell−independent mechanism”[コメントを参照のこと],Nat Biotechnol 18,509−14(2000))、結果を図2A〜Dに示した。データは、3つ組の平均値±SEMであり、3回の独立した実験の代表である。これらのサイトカインの最小検出レベルは、15pg/mLであった。
【0108】
上に記載されたように約1×10/mLのRAW264.7細胞を様々な結合体またはコントロールとともにインキュベートすることによって、TNFαレベルを測定した(図2Aを参照のこと)。上に記載されたように0.5×10/mL BMDMを様々な結合体またはコントロールとともにインキュベートすることによって、IL−6およびIL12のレベルを測定した(図2B〜Dを参照のこと)。結合体を、原液(SMならびに化合物(6)、(8)および(9)に対しては10μm、化合物(4a)に対しては0.1μm)およびそれらから調製された段階希釈物(1:5)として調製した。
【0109】
BMDMはまた、本明細書中に記載される合成スキームを用いて合成されたTLR7結合体のエンドトキシン混入のレベルを評価するためにも使用された。C3H/HeJ(LPS非応答性変異体)またはC3H/HeOuJ(野生型)に由来する0.5×10/mLのBMDMを、TLR7結合体(10μM SM、0.1μM化合物4a、10μM化合物6、10μM化合物8または10μM化合物9)とともに18時間インキュベートした。培養上清中のIL−6またはIL−12のレベルをELISAによって測定し、結果を図2Bに示した。TLR7結合体の各々は、TLR4変異体マウスと野生型マウスの両方において同様のレベルのIL−6を誘導したことから、これらの結合体のLPS混入が最小であることが示唆される。
【0110】
ヒト血液の末梢単核細胞(PBMC)を、Hayashi,Tら、“Enhancement of innate immunity against Mycobacterium avium infection by immunostimulatory DNA is mediated by indoleamine 2,3−dioxygenase”,Infect Immun 69:6156−64,(2001)に記載されているように、The San Diego Blood Bank(San Diego,CA)から購入したヒトバフィーコートから単離した。PBMC(1×10/mL)を、37℃、5%CO2において、様々な濃度のTLR7結合体とともに18時間インキュベートし、培養上清を回収した。その上清中のサイトカイン(IL−6、TNF−αまたはIFNα1)のレベルをLuminexビーズアッセイ(Invitrogen,Carlsbad,CA)によって測定し、結果を図3A〜Bに示した。データは、3つ組の平均値±SEMであり、3回の独立した実験の代表である。IL−6、TNF−αおよびIFNα1の最小検出レベルは、それぞれ6pg/mL、10pg/mLおよび15pg/mLであった。
【0111】
インビボ方法
TLR7結合体による炎症性サイトカイン誘導の薬物動態を、6〜8週齢のC57BL/6マウスを用いて調べた。それらのマウスに、TLR7アゴニストおよびそれらの結合体(マウス1匹あたり40nmolの化合物(4a)または200nmolのSMおよび化合物(6)、(8)もしくは(9))を静脈内注射した。血液サンプルを注射の2、4、6、24または48時間後に回収した。血清を分離し、使用するまで−20℃で維持した。その血清中のサイトカイン(例えば、IL−6およびTNF−α)のレベルを、Luminexビーズマイクロアッセイによって測定し、結果を図4A〜Bに示した。データは、5匹のマウスの平均値±SEMであり、2回の独立した実験の代表である。IL−6およびTNF−αの最小検出レベルは、それぞれ5pg/mLおよび10pg/mLである。
【0112】
TLR7結合体による免疫学的反応の開始(例えば、アジュバント活性)もまた調べた。0および7日目にC57BL/6マウスの群(n=5)の皮下に、約10nmolの様々なTLR7結合体と混合された20μgのオボアルブミン(OVA)で免疫した(ここで、10nmolは、その結合体のTLR7部分に対する目標の投薬量であり、実際の量は、各結合体の実際の化学式に依存する)。TLR9を活性化する免疫賦活性オリゴヌクレオチド配列(ISS−ODN;1018)を、Th1誘導アジュバントについてのポジティブコントロールとして使用した(Roman,Mら、Immunostimulatory DNA sequences function as T helper−1−promoting adjuvants(1997),Nat Med 3:849−54)。血清を0、7、14、21、28、42および56日目に回収した。食塩水、またはビヒクルと混合されたOVAで免疫されたマウスをコントロールとして用いた。56日目にマウスを屠殺し、脾細胞(spleenocyte)および組織学的スライドを調製するために脾臓を回収した。約200マイクロリットルの2.5×10/mL脾臓細胞ストックを、総体積200μlのRPMI1640完全培地[10%熱不活化FCS、2mM L−グルタミンおよび100U/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシンが補充されたRPMI1640(Irvine Scientific,Irvine,CA)]中に3つ組で丸底組織培養マイクロタイタープレートに等分し、100μg/mLのOVAまたは培地のみで再刺激した。いくつかの実験では、免疫の24時間後に炎症または局所反応の徴候について注射部位を調べた。免疫に対する潜在的な「不調(sickness)」の応答の基準として活動についてマウスを観察し、次いで、毎週体重を測定した。脾臓の回収に加えて、肺、肝臓、心臓および腎臓もまた56日目に回収し、10%緩衝ホルマリン(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)中で固定し、パラフィンに包埋した。5μm厚の切片を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、顕微鏡下で評価した。
【0113】
IgGサブクラス(および、いくつかの実施形態において、具体的にはIgG1およびIgG2)の抗OVA抗体を、Cho,H.Jら、“Immunostimulatory DNA−based vaccines induce cytotoxic lymphocyte activity by a T−helper cell−independent mechanism”[コメントを参照のこと],Nat Biotechnol 18,509−14(2000)に記載されているようにELISAによって測定し、結果を図5Aおよび5Bに示した。各ELISAプレートに、以前に定量化された血清の滴定結果を含めることにより、検量線を作成した。この標準の力価を、バックグラウンドの2倍の吸光度の読みを与える血清の最高希釈度として算出した。様々な血清サンプルを1:100希釈において試験した。結果は、標準血清の単位/mLに基づいて計算された、1mLあたりの単位として表され、各群の5匹の動物の平均値+SEMを意味する。およびTは、ビヒクルと混合されたOVAで免疫されたマウスと比較した1元配置分散分析による、それぞれP<0.05およびP<0.01を表す。
【0114】
脾細胞を、回収した脾臓から調製した。次いで、脾細胞培養物(100μg/mLのOVAまたは培地のみで再刺激したもの)を37℃、5%COでインキュベートし、72時間後に上清を回収した。培養上清中のIFNγのレベルを、製造者の指示書に従ってELISA(BD Bioscience PharMingen)によって測定し(Kobayashi,Hら、Prepriming:a novel approach to DNA−based vaccination and immunomodulation”,Springer Semin Immunopathol 22:85−96(2000)、結果を、図5Cに図示した。各群における総脾臓細胞数の平均を計算し、脾臓細胞増殖をモニターするためにPBSで免疫された群と比較した。データは、5匹のマウスの平均値±SEMであり、3回の独立した実験の代表である。
【0115】
TLR7結合体の潜在的有害作用の評価は、3つの部分からなる解析(three−fold analysis)(全脾細胞の計数、組織学的検査、ならびに注射領域と一般的な全身の健康状態の両方および処置されたマウスの行動の視覚的観察)によって行われた。C57BL/6マウスを、TLR7結合体、ビヒクルまたはコントロールアゴニスト(オリゴヌクレオチド配列ISS−ODN)と混合された20μgのOVAで免疫した。56日目に、マウスを屠殺し、全脾細胞数を計数し、結果を図6Aに示した。脾臓を回収し、図6B(倍率=100×)に示されるような組織学的検査にかけた。図6Cに示されるように、注射部位の皮膚を注射の24時間後に視診した。OVA+TLR7結合体で免疫されたマウスとOVA単独で免疫されたマウスとの間には、計数された脾細胞の数に有意差はない(図6Aを参照のこと)。TLR7結合体と混合されたOVAで免疫されたマウス由来の脾臓の組織学的検査は、いかなる白脾髄の破壊または赤脾髄の細胞性の増大も示さなかった(図6Bを参照のこと)。注射部位の皮膚は、目に見える発赤または肉芽腫性(glaucomatous)の反応を有しなかった(図6Cを参照のこと)。
【0116】
処置されたマウスの腹膜を浸潤する好中球の数の減少を測定することによって、また、誘発された実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対する効果によって、化合物(8)による処置の有効性を評価した。腹腔好中球の浸潤の減少は、50nmolのフリーのファーマコフォア(1V136)または化合物(8)の静脈内注射(i.v.)でC57BL/6マウスを3日間処置することによって測定された。好中球のリクルートを誘導するために、2mlの3%チオグリコレート(TG)を、最後の化合物注射の18時間後に腹腔内(i.p.)注射した。TG注射の4時間後に腹腔細胞を回収した。血球計数器によって全細胞を計数し、好中球を形態学的に同定した。結果を図7Aおよび7Bに示す。
【0117】
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対する化合物(8)の効果を、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)で処置されたC57BL/6マウスを用いて決定した。MOGは、乏突起膠細胞の細胞表面およびミエリン鞘の最外側の表面に発現される膜タンパク質である。MOGは、破壊されたときに、例えば、多発性硬化症に伴う症状に類似した、ニューロンの脱髄を特徴とする疾患をもたらし得る自己抗原タンパク質である。MOGは、高度に脳炎誘発性であることが示されており、げっ歯類において強力なT細胞応答およびB細胞応答を誘導し得る。EAEは、中枢神経系(CNS)の炎症性脱髄性疾患であり、多発性硬化症および急性散在性脳脊髄炎(ADEM)という疾患を含むヒトCNS脱髄性疾患の動物モデルならびに有用な脳の炎症の研究として広く研究されている。
【0118】
MOG(またはMOGペプチド)による処置を用いて、EAEが誘発され得る。マウスをMOGタンパク質で6日間処置した。6日目以降に(図8を参照のこと)、50nmolの化合物(8)またはPBSを毎日、静脈内(i.v.)に注射した。EAE臨床スコアを、脱髄に対する臨床上の測定規準として使用し、視覚的に決定した。統計的に有意な臨床スコアが、図8に示されるように化合物(8)処置の11〜17日目に観察された(データ点の上にを伴うデータ点を参照のこと)。
【0119】
いくつかの実験において、統計的評価を行うことにより、観察された結果の統計的有意性を決定した。統計ソフトウェアパッケージ(Prism4.0,GraphPad,San Diego CA)を、回帰分析を含む統計解析に使用した。データをプロットし、非線形回帰にあてはめることにより、群間で均一な標準偏差を有するガウス分布を仮定した。アジュバント活性実験では、OVAで免疫されたマウスとコントロールマウスとを比較するために、ボンフェローニの事後検定(Bonferroni post−test)を用いて2元配置分散分析によって群間の統計的有意差を解析した。P<0.05の値を統計的に有意とみなした。
【0120】
結果および考察
化学合成
化合物(1)からの化合物(4)の合成によって、5:1のUC1V150とMSAタンパク質という一貫した結合体化比が得られた(Wu,C.Cら、“Immunotherapeutic activity of a conjugate of a Toll−like receptor 7 ligand”,Proc Natl Acad Sci USA 104,3990−5(2007))。化合物(1)の9−ベンジルニトリルの塩基性加水分解(図1,反応工程(d))は、多用途の安息香酸官能基(化合物(5))を提供し、結合体(6)、(8)および(9)の組み立てを可能にする。無水DMF中のTEAの存在下におけるHATUを用いた活性化によって、その安息香酸をDOPEと結合させることにより(図1,反応工程(e))、58%収率で化合物6を得た。
【0121】
試験に適した溶媒に化合物(6)を溶解することが困難であるため、溶解性を改善するために、PEGスペーサーを結合させた。無水DMF中のTEAの存在下におけるHATUを用いた活性化によって、容易に入手可能なアミン/アジド二官能性PEGを上記安息香酸に結合させた(化合物(7)を生じる図1,反応工程(f)を参照のこと)。4−ペンチン酸を用いた、銅(I)に触媒されるアジド−アルキン付加環化を介した1,2,3−トリアゾールの形成(図1,反応工程(g))によって、95%収率で化合物(8)が得られた。最後に、DOPE(図1,反応工程(h))および化合物(8)を用いたHATU活性化アミド形成によって、化合物(9)を調製した。
【0122】
脂質結合体化TLR7アゴニストによるサイトカイン誘導のインビトロ測定
TLR7アゴニスト化合物(4a)は、マウス血清アルブミンと共有結合されるとき、非結合体化薬物(SM)と比べて、インビトロおよびインビボにおいて10以上のサイトカイン誘導の効力を示した(Wu,C.Cら、“Immunotherapeutic activity of a conjugate of a Toll−like receptor 7 ligand”,Proc Natl Acad Sci USA 104,3990−5(2007))。同様のアッセイを用いて、脂質−TLRアゴニスト結合体(図1,化合物6)、PEG−TLR7アゴニスト結合体(図1,化合物8)およびPEG−脂質(図1,化合物9)結合体のインビトロにおける効力を、マウスマクロファージ細胞系RAW264および一次骨髄由来マクロファージ(BMDM)を用いて比較した。それぞれの細胞を、段階希釈されたTLR7結合体で18時間刺激し、培地中に放出されたサイトカインのレベルをELISAによって測定し、非結合体化TLR7アゴニスト(SM)と比較した(図2A,パネルA〜Dを参照のこと)。
【0123】
化合物(4a)(例えば、TLR7−MSA結合体)は、非結合体化アゴニストと比較した場合、サイトカイン誘導物質として100倍強力であると以前に示されたのに対し、脂質−TLR7結合体は、モル濃度レベルの非結合体化アゴニストに対して正規化されたとき、10倍強力であった。PEG−TLR7結合体(化合物8)は、非結合体化TLR7(SM)に比べてより低い効力を示したが、PEG−TLR7結合体への脂質の結合体化(脂質PEG−TLR7)(化合物9)は、非結合体化TLR7(SM)と同様のレベルに効力を回復した。TLR7結合体化を有しない、実質的に類似の濃度のMSA、脂質またはPEG(結合体化型における最高レベルのもの)をネガティブコントロールとして使用し、それらは、それぞれRAW264.7細胞およびBMDMにおいて最低のサイトカインレベルを誘導したかまたはサイトカインを誘導しなかった(データ示さず)。
【0124】
非TLR7マクロファージ刺激とは対照的に、結合体化型のTLR7アゴニストが単独でマクロファージ刺激を誘導しているか否かを評価するために、野生型マウスおよびTLR7欠損マウス(TLR7−KOまたはノックアウトマウス)由来のBMDMを化合物(4a)、(6)、(8)、(9)およびSMで処理した。化合物(4a)、(6)、(8)、(9)およびSMは、IL−12およびIL−6をほとんどまたは全く誘導しなかった一方で、これらの結合体は、野生型BMDMにおいて活性であったことから、そのアゴニスト活性は、これらの結合体のTLR7活性に起因したことが示唆された(図2C〜Dを参照のこと)。エンドトキシン評価(図2Bおよび上に記載されたもの)は、そのアゴニスト活性がこれらの結合体のTLR7活性に起因したという結論をさらに支持した(例えば、産生されたIL−6のレベルの統計的有意差はなかった)。
【0125】
ヒト細胞における免疫学的活性をさらに調べるために、3人のドナー由来のヒトPBMCをTLR7結合体で処理し、IL−6およびIFNa1のレベルをLuminexアッセイによって測定した(図3A〜B)。この実験では、TLR7(4b)に結合体化されたヒト血清アルブミン(HSA)をMSA結合体(4a)の代わりに用いた。TLR7結合体の効力の順序は、マウスマクロファージにおいて観察された順序と似ていた((4b)>(6)>(9)>/=SM>(8))(図3A)。化合物の効力の傾向は、すべてのドナーに由来するPBMCにおいて矛盾なく観察された。化合物(4a)とは異なり、化合物(4b)(例えば、TLR7−HSA結合体)は、ヒトPBMCにおいて最低レベルのIFNa1を誘導した(3人のドナーにおいて観察された)(図3B)。
【0126】
TLR結合体による炎症性サイトカインの誘導のインビボ動態
TLR7結合体のインビボにおける免疫学的特性を比較するために、C57BL/5マウスにTLR7アゴニスト結合体を静脈内投与し、血清中の炎症性サイトカインの動態を調べた(図4Aおよび4B)。以前の研究(Wu,C.Cら、Proc Natl Acad Sci USA 104,3990−5(2007))に基づいて、化合物(4a)を、化合物SM、(6)、(8)および(9)(動物1匹あたり200nmol)よりも低い濃度(動物1匹あたり40nmol)で使用した。TNFαおよびIL−6の最大の誘導は、すべてのTLR7結合体について注射の2時間後に観察された(それぞれ図4A〜B)。非結合体化TLR7(SM)によって誘導されたサイトカインのレベルは、2時間後に急速に低下した。化合物(4a)、(6)および(9)によるサイトカイン誘導は、6時間後まで持続した。化合物(8)は、低レベルのIL−6しか誘導せず(図4Bを参照のこと)、注射後のいずれの時点においても顕著なTNFα誘導はなかった(図4Bを参照のこと)。食塩水、MSAまたはDOPEを投与されたコントロールマウス由来の血清は、検出可能なサイトカインレベルをほとんどまたは全く表さなかった(データ示さず)。
【0127】
脂質−TLR7結合体は迅速かつ持続性の体液性(humeral)応答を促進する
アジュバント活性の効率を、ワクチンが誘導する抗原特異的IgG、特に、IgG1およびIgG2のレベルおよびアイソタイプを測定することによって評価した(Mosmann,T.R.およびCoffman,R.L.,‘TH1 and TH2 cells: different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties’,Annual Review Immunology 7:145−73(1989))。C57BL/6マウスの群(1群あたりn=5匹の動物)の皮下に、TLR7結合体と混合されたOVA(オボアルブミン)で免疫した。ISS−ODNを強力なTh1アジュバントポジティブコントロールとして使用した。食塩水またはOVA+ビヒクル(0.1%DMSO)で免疫されたマウスをネガティブコントロールとして使用した。OVA特異的なIgG1およびIgG2aの血清誘導動態を0、7、14、21、28、42および56日目にELISAによってモニターした(図5A〜B)。化合物(4a)または化合物(6)と混合されたOVAで免疫されたマウスでは、IGサブクラスの抗体の誘導が早くも14日目に観察された(図5Aを参照のこと)。抗OVA IgG2aレベルは、OVA/化合物(6)混合物で免疫されたマウスでは継続的に増加したのに対し、図5Aに例証されるように、OVA/化合物(4a)混合物で免疫されたマウスにおけるレベルは、その後低下した。これらのデータは、化合物(4a)または(6)と組み合わされたOVAで免疫されたマウスの脾臓細胞によるOVA特異的IFNγの分泌の増加と一致する(図5Cを参照のこと)。
【0128】
有害作用のインビボ評価
TLR7アゴニスト(SM)は、マウスにおいて食欲不振作用および低体温を誘導し得(Hayashi,Tら、“Mast cell dependent anorexia and hypothermia induced by mucosal activation of Toll like Receptor 7”,Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 295,R123−32(2008))、マウスにおいて体重減少を引き起こし得る。ゆえに、実験プロトコルの一部として、脂質−TLR7アゴニスト結合体で免疫されたマウスの体重および皮膚反応(注射部位におけるもの)をモニターした。マウスにおいて食欲不振反応を誘発した非結合体化TLR7アゴニスト(SM)の最小用量は、粘膜投与において、マウス1匹あたり50nmolであった(Hayashi,Tら、Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 295,R123−32(2008))。TLR7アゴニストによって引き起こされる不調の反応を回避するために、アジュバント実験に対する用量(マウス1匹あたり10nmol)が選択された。化合物(6)と混合されたOVAで免疫されたマウスと食塩水を注射されたマウスの平均体重との間に有意差は認められなかった(データ示さず)。
【0129】
TLR7の慢性投与は、骨髄性細胞の増殖も誘導し得る(Baenziger,Sら、“Triggering TLR7 in mice induces immune activation and lymphoid system disruption,resembling HIV−mediated pathology”,Blood 113:377−388(2009)。脾臓の骨髄性細胞の増殖の指標として脾臓細胞の総数を計算した(図6Aを参照のこと)。OVA、TLR7アゴニスト結合体および食塩水コントロールで免疫されたマウス間の脾細胞の総数に有意差はなかった(図6Bを参照のこと)。TLR7アゴニストと混合されたOVAで免疫されたマウス由来の脾臓の組織学的検査は、白脾髄(胚中心)の構造的破壊および赤脾髄における細胞性の増加を示さなかった(図6Bを参照のこと)。さらに、各群から回収された肝臓、肺、心臓および腎臓サンプルの組織学的検査において、有意差は認められなかった(データ示さず)。また、脂質−TLR7結合体の注射の部位または注射部位付近に巨視的に可視の発赤または肉芽腫性の反応はなかった(図6Cを参照のこと)。
【0130】
炎症部位に白血球およびマクロファージをリクルートする誘発剤としてチオグリコレート(TG)が使用され得る。感染または炎症に応答して、代表的には好中球が、感染または炎症の部位に到達する最初の顆粒球細胞型である。ゆえに、チオグリコレートで処置することにより、多くの免疫応答細胞型のリクルートメント(TLR7結合体の投与に関連する潜在的な悪影響を決定するために有用であり得る)が引き起こされる。本研究に使用された方法は、マウスを様々なTLR7結合体化合物で3日間、前処置した後に、2mLのチオグリコレートの3%溶液を、最後のTLR7結合体処置の18時間後に注射することであった。TG注射の4時間後、全腹腔細胞を回収し、計数した。好中球を形態学的に同定し、計数した。結果を図7A〜Bに示す。
【0131】
食塩水だけで処置されたマウスをネガティブコントロールとして使用し、そのマウスによって、全腹腔細胞の基礎レベル、および未処置マウスに対してリクルートされた好中球の総数が確立された。TG(食塩水中のもの)で処置されたがTLR7結合体で前処置されていないマウスを、リクルートに対するポジティブコントロールとして使用し、そのマウスは、腹膜にリクルートされた約5×10個の総細胞を示し、その約90%が好中球であった(5×10個の全細胞のうち、4×10個を超える好中球)。フリーのTLR7ファーマコフォア(1V136)またはTLR7結合体(1V282,化合物(8))で前処置されたマウスが、リクルートされた全細胞とリクルートされた好中球の両方の減少を示したことから、フリーのファーマコフォアまたは化合物(8)による処置が、炎症/感染反応のレベル(白血球、顆粒球およびマクロファージが応答するが、リクルートされる細胞型の分布(例えば、各細胞型の相対量)にほとんどまたは全く影響しないことがある)を低下させ得ることが示唆される。ゆえに、フリーのファーマコフォアおよび化合物(8)は、TGと比べた場合、追加の有害反応を示さず(例えば、上に記載されたような不調の反応を示さず)、白血球、顆粒球およびマクロファージのリクルートを減少させ得る。
【0132】
上に記載されたように、様々なTLR7結合体の潜在的な有害作用を評価するためにMOGタンパク質も使用した。結果の評価は、MOG誘発EAEに関連する様々な症状(例えば、脳の炎症、ニューロンの脱髄など)の観察によって行った。症状の重症度を「臨床スコア」として記録し、MOG処置の最初の6日間の後に、未処置マウス(PBS)と化合物(8)で処置されたマウスとを比較した(図8を参照のこと)。臨床スコアの統計的有意差は、11〜17日目の上のによって示される。化合物(8)での処置によって、11〜17日目にEAE症状の重症度が有意に低下し、ならびに、2本の線(8日目から始まり11日目を通る線)の傾きの差によって示されるように、症状の重症度の最初の上昇が低下した。ゆえに、化合物8は、追加の有害反応を引き起こさない(例えば、上に記載されたような不調の反応を引き起こさない)ということができ、また、MOG誘発EAEに関連する症状の重症度も低下させ得る。
【0133】
結論
非結合体化TLR7(SM)は、水溶液に不溶性である。水溶解性は、薬物拡散を高めるかまたは細胞への取り込みを促すことによって薬物の可用性の制御に関与し得る。PEG化は、薬物溶解性を改善し得、免疫原性を低下させ得る(Veronese,F.M.およびMero,A,“The impact of PEGylation on biological therapies”,BioDrugs 22,315−29(2008))。PEG化はまた、血液中での結合体の滞留時間である薬物安定性も高め得、タンパク質分解および腎排泄を低減し得る(Veronese,F.M.およびMero,A,BioDrugs 22,315−29(2008))。TLR7が、PEGに結合体化されるとき(例えば、化合物(8))、溶解性は、劇的に改善する(データ示さず)。しかしながら、サイトカイン誘導の効力は、インビトロ(図2A,パネルAおよびB)およびインビボ(図4Aおよび4B)において、無改変TLR7アゴニストと比較して、減弱される。インビトロとインビボの両方における活性は、DOPEへのさらなる結合体化によって回復し得る(化合物(9))。化合物(9)は、最小のTh1応答を示しつつ(IgG2aレベルによって示される)、Th2免疫応答を誘導し得る(IgG1レベルによって示される)。
【0134】
TLR7アゴニスト結合体である化合物(4a)(MSA結合体)および(6)(脂質結合体)は、IgG2a力価の迅速な上昇を促進した(図5A)。MSA−TLR7結合体(化合物(4a))で免疫されたマウスにおけるIgG2aのレベルは、最後の免疫の3週間後に低下したが、脂質TLR7結合体(化合物(6))と混合されたOVAで免疫されたマウスは、持続していてさらに加速されたレベルの抗原特異的IgG2aを示した(図5A)。化合物(4a)は、IgG2aのレベルを維持しなかったが、化合物(4a)と混合されたOVAで免疫されたマウスの脾臓細胞によるOVA特異的IFNγの分泌は、比較的高いレベルを維持した(図5C)。区別可能な免疫プロファイルを与える、種々の部分に結合体化された同じTLR7アゴニストは、区別可能な疾患カテゴリー(例えば、感染症および自己免疫疾患など)を処置するためのアジュバントの設計において有用であり得る。
【0135】
TLR7アゴニストの様々な結合体を合成し、それが、インビボとインビトロの両方において区別可能な免疫学的プロファイルを有することが見出された。報告されるTLR7アゴニスト結合体の物理的特性が多様であることによって、種々の疾患の処置においてより広い範囲に応用できる可能性がある。水溶性結合体は、全身投与のための経路を提供し得る。脂質含有結合体は、近接した免疫細胞の持続的な刺激を必要とする局所投与に適していることがある(例えば、感染症のためのアジュバントの適用)。脂質部分は、皮膚バリアへの薬物の浸透を促進し得、皮膚障害の処置に有益であり得る。脂質またはPEG部分へのTLR7アゴニストの結合体化は、感染症、癌または自己免疫疾患の臨床的な処置を拡大する有望なストラテジーであり得る。
【0136】
本明細書中に提示されるデータから、化合物(8)が、ある特定の条件下ではアンタゴニスト活性を有すると結論づけられる。図4A〜Bは、化合物(8)が、IL−6またはTNFαを刺激する活性をほとんどまたは全く有しないこと、およびIL−6またはTNFαの活性の上昇に通常関連する炎症応答または感染応答のある特定の局面を低減し得ること(図7A〜Bおよび図8を参照のこと)を示している。これらの観察結果は、アンタゴニスト活性と一致する(例えば、化合物は、結合し得るが、レセプター活性化を刺激しない)。
【0137】
先天性免疫系の細胞におけるToll様レセプター(TLR)の活性化は、抗原特異的な獲得免疫応答を惹起し、増幅し、指示する。ゆえに、TLRを刺激するリガンドは、潜在的な免疫アジュバントに該当する。本研究では、強力なTLR7アゴニストを、多用途の安息香酸官能基を介してポリエチレングリコール(PEG)、脂質または脂質−PEGと結合体化した。無改変TLR7アゴニストと比べて、各結合体は、インビトロおよびインビボにおいて、特徴的な免疫学的プロファイルを示した。マウスマクロファージおよびヒト末梢血単核細胞では、脂質−TLR7結合体は、フリーのTLR7リガンド(free TLR7 ligand)よりも少なくとも100倍強力であったが、PEG結合体およびPEG−脂質結合体の効力は、そのフリーの形態(the free form)と同様であった。それらの結合体をインビボにおいて全身投与したとき、脂質TLR7結合体および脂質−PEG TLR7結合体は、無改変TLR7アクチベーターと比べて、持続したレベルの免疫賦活性サイトカインを血清中に提供した。それらの結合体をワクチン接種においてアジュバントとして使用したとき、脂質−TLR7結合体だけが、持続したTh1ならびにTh2の抗原特異的応答を誘導した。これらのデータは、TLR7リガンドの免疫賦活性の活性が、結合体化によって増幅され、集中され得、ゆえに、これらの薬剤の潜在的な治療的実用性が広がる可能性があることを示している。
【0138】
追加の化合物およびその特性
生物学的活性
様々な長さの鎖を有するPEGに結合体化されたTLR7アゴニストのインビトロ活性を、GeneBlazerCellSensor細胞系NFkB−bla RAW264.7(Invitrogen)および初代マウスBMDMによって測定した。細胞を様々な濃度のTLR7アゴニストPEG結合体とともにインキュベートした。Cellsensor細胞系のNFkB活性化を製造者の指示書に従って測定した。BMDMを上記結合体とともに一晩インキュベートし、上清中のIL−6のレベルをELISAによって評価した。Prismを用いてEC50推定値を計算した。
【0139】
6、10および18PEG鎖を有する結合体は、NFkB−bla RAW細胞とBMDMの両方において同様の効力を示した(図9A〜D)。NFkB−bla RAW細胞を用いたアッセイでは、より長いPEG鎖を含む結合体ほど、NFkB活性化に対して活性が低かった(図9D〜E)。対照的に、より長い鎖の結合体は、BMDMによるIL−6分泌に対してより高い活性を示した(図9D〜E)。6PEG鎖を有する結合体のうち、NH末端基を有する結合体が、COOHまたはNの末端基を有する結合体よりもわずかに高い活性を示した(図9A)。
【0140】
100μLの食塩水中の200nmolの様々なTLR7アゴニスト−PEG結合体をC57BL/6マウスに注射した。記載されている時点において血清を回収し、サイトカイン(TNFアルファ、IL−6、IL−12)のレベルをluminexビーズアッセイによって測定した(図10A〜B)。本研究において使用したすべての化合物が、0.1〜0.2%DMSO−食塩水溶液に明らかに可溶性であった。フリーのTLR7アゴニストを6PEG鎖に結合体化したとき(1Z2)、活性は低下した(図10A〜B)。より長い鎖を含む結合体(例えば、1V303(18PEG鎖)および1Z3(約47PEG鎖))は、非結合体化アゴニスト(1V136)のレベルでサイトカインを誘導した。約271PEG鎖を含む1Z5は、非結合体化TLR7アゴニストよりも高いレベルのサイトカインを誘導した。
【0141】
NH末端基とCOOH末端基とのインビボでの生物活性を比較するために、TLR7アゴニストに結合体化された6PEG鎖および10PEG鎖を使用した(図10C)。NH末端基を含む1Z2および1V298は、COOH末端基を含む対応する結合体よりも相対的に高いサイトカイン誘導を示した(図10C〜D)。
【0142】
TLR7アゴニスト−PEG結合体の抗炎症性の有効性を、ヒト炎症性疾患(血清移入関節炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)(上記を参照のこと)およびチオグリコレート誘発腹膜炎)のマウスモデルにおいて試験した。血清移入関節炎の場合(図11)、K/BxN血清を0日目にC57BL/6マウスに注射し、胃管栄養(図11A)または皮下注射(図11B)によって毎日、1V282で処置した。1V282を毎日投与することによって、皮下注射による処置と胃管栄養による処置の両方において足の腫脹が減少した。
【0143】
チオグリコレート腹膜炎の場合(図12)、C57BL/6マウスに1V282を3日間、静脈内投与または経口投与した。最後の処置の1日後に、マウスに2mlのチオグリコレート媒質を腹腔内注射した。1V136の静脈内投与および皮下投与をポジティブコントロールとして使用した。チオグリコレート注射の3時間後に、腹膜への好中球浸潤を評価した。全身経路と経口経路の両方による1V282の投与が、腹膜腔への細胞の浸潤、特に、好中球の浸潤を減少させた。
【0144】
ヒトの1型糖尿病は、免疫介在性損傷に通常関連する、膵β細胞の特異的な破壊によって特徴づけられている。化学的に誘発された糖尿病モデルを使用することにより、TLR7アゴニスト−PEG結合体の慢性投与が、この疾患の重症度または発生を減少させ得るか否かが試験される。複数回におよぶ小用量のストレプトゾトシン(アルキル化剤)を用いる(例えば、5日間連続での40mg/kg)。感受性のげっ歯類では、これによって、ヒト1型糖尿病におけるように免疫破壊が関連するインスリン不足性糖尿病が誘発される。他の関連疾患において認められる作用様式に基づいても、TLR7−PEG結合体は、この疾患の経過を回復する。
【0145】
【表2−1】

【0146】
【表2−2】

【0147】
【表2−3】

【0148】
【表2−4】

【0149】
【表2−5】

【0150】
【数1】

【0151】
【数2】

【0152】
【数3】

本明細書中で参照された特許、特許出願、刊行物および文書の各々の全体が、本明細書によって参考として援用される。上記の特許、特許出願、刊行物および文書の引用は、どの前述のものも適切な従来技術であるという承認ではないし、これらの刊行物または文書の内容または日付に関していかなる承認を構成するともみなされない。
【0153】
本発明の基本的な局面から逸脱することなく、前述のものに対して改変が行われ得る。本発明は、1つ以上の特定の実施形態を参照して実質的に詳細に記載されてきたが、本願に具体的に開示された実施形態に対して変更が行われてもよく、なおもこれらの改変および改良が、本発明の範囲内および精神内であることを当業者は認識する。
【0154】
例証的に適切に本明細書中に記載された本発明は、本明細書中に具体的に開示されていない任意のエレメント(複数可)の非存在下において実施され得る。したがって、例えば、本明細書中のいずれの場合でも、用語「〜を含む」、「〜から本質的になる」および「〜からなる」のいずれかは、他の2つの用語のいずれとも置き換えられてもよい。使用されている用語および表現は、説明の用語であって限定ではない用語として使用され、そのような用語および表現の使用は、示される特徴および記載される特徴またはそれらの一部のいかなる等価物も排除せず、特許請求される本発明の範囲内で様々な改変が可能である。用語「a」または「an」は、1つのエレメントまたは2つ以上のエレメントが記載されていることが文脈上明らかでない限り、それが修飾する1つまたは複数のエレメントのことを指し得る(例えば、「試薬(a reagent)」は、1つ以上の試薬を意味し得る)。用語「約」とは、本明細書中で使用されるとき、基礎をなすパラメータの10%以内(すなわち、プラスまたはマイナス10%)の値のことを指し、一連の値の始めに用語「約」を使用することにより、それらの値の各々が修飾される(すなわち、「約1、2および3」は、約1、約2および約3である)。例えば、「約100グラム」という重量は、90グラム〜110グラムの重量を含み得る。したがって、本発明は、代表的な実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示されてきたが、本明細書中に開示される概念の改変および変更が当業者によって行われてもよく、そのような改変および変更は本発明の範囲内であると考えられると理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その水和物を含む、式I:
【化11】

に記載の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩であって、ここで:
Xは、NまたはCRであり;
Rは、−OR、−SRまたは−NRであり、
は、−O−、−S−または−NR−であり;
は、水素、C1〜C10アルキルもしくは置換C1〜C10アルキルであるか、またはRおよびRは、窒素原子と一体となって、複素環式環または置換複素環式環を形成し得;
各Rは、独立して、水素、C1〜C10アルキル、置換C1〜C10アルキル、C1〜C10アルコキシ、置換C1〜C10アルコキシ、C1〜C10アルキルC1〜C10アルコキシ、置換C1〜C10アルキルC1〜C10アルコキシ、C5〜C10アリール、置換C5〜C10アリール、C5〜C9複素環式、置換C5〜C9複素環式、C3〜C9炭素環式または置換C3−C9炭素環式であり;
各Rは、独立して、水素、−OH、C1〜C6アルキル、置換C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、置換C1〜C6アルコキシ、−C(O)−C1〜C6アルキル(アルカノイル)、置換−C(O)−C1〜C6アルキル、−C(O)−C6〜C10アリール(アロイル)、置換−C(O)−C6〜C10アリール、−C(O)OH(カルボキシル)、−C(O)O−C1〜C6アルキル(アルコキシカルボニル)、置換−C(O)O−C1〜C6アルキル、−NR、−C(O)NR(カルバモイル)、置換C(O)NR、ハロ、ニトロまたはシアノであり;
該アルキル、アルコキシ、アリールまたは複素環式基における置換基は、ヒドロキシ、C1〜C6アルキル、ヒドロキシC1〜C6アルキレン、カルボキシC1〜C6アルキレン、C1〜C6アルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルコキシC1〜C6アルキレン、アミノ、シアノ、ハロゲンまたはアリールであり;
およびRの各々は、独立して、水素、C1〜C20アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C1〜C6アルコキシ、ハロC1〜C6アルキル、C3〜C8シクロアルキルC1〜C6アルキル、C1〜C6アルカノイル、ヒドロキシC1〜C6アルキル、アリール、アリールC1−C6アルキル、Het、HetC1〜C6アルキルまたはC1〜C6アルコキシカルボニルであり;
各Rは、独立して、−X−((R−(R、−C(O)NRまたは−CHNH−ビオチンであり;
各Xは、独立して、結合または連結基であり;
各Rは、独立して、ポリエチレングリコール(PEG)部分であり;
各Rは、独立して、H、−C1〜C6アルキル、−C1〜C6アルコキシ、−NR、−N、−OH、−CN、−COOH、−COOR、−C1〜C6アルキル−NR、C1〜C6アルキル−OH、C1〜C6アルキル−CN、C1〜C6アルキル−COOH、C1〜C6アルキル−COOR、5〜6員環、置換5〜6員環、−C1〜C6アルキル−5〜6員環、−C1〜C6アルキル−置換5〜6員環、C2〜C9複素環式または置換C2〜C9複素環式であり;
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり;
nは、0、1、2、3または4であり;
pは、1から100であり;
qは、1、2、3、4または5であり;
rは、1から1,000であり;
sは、1から1,000であり;そして
nとqとの和は、5に等しい、
化合物、またはその水和物を含むその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
が、酸素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、置換C1〜C6アルキルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が、C1〜C10アルキルC1〜C10アルコキシ部分である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、−CHCHOCHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が、アミド連結基である、請求項1から5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
が、−C(O)NH−、−NH(O)C−、−C1〜C6アルキル−C(O)NH−、−C1〜C6アルキル−NH(O)C−、−C(O)NH−C1〜C6アルキル−、−NH(O)C−C1〜C6アルキル−、−C1〜C6アルキル−−NH(O)C−C1〜C6アルキル−、−C1〜C6アルキル−C(O)NH−C1〜C6アルキル−または−C(O)NH−(CH−であり、ここで、tは、1、2、3または4である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
nが、4であり、Rが、いずれの場合も水素である、請求項1から7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
前記PEG部分が、約1から約1,000個のPEG単位を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
各PEG単位が、−O−CH−CH−または−CH−CH−O−である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
rが、約5から約100である、請求項1から10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
rが、約5から約50である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
rが、約5から約25である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
rが、約5から約15である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
rが、約10である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
sが、約5から約100である、請求項1から15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
sが、約5から約50である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
sが、約5から約25である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
sが、約5から約15である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
sが、約10である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記PEG部分の1つ以上が、線状である、請求項1から20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
前記PEG部分の1つ以上が、分枝状である、請求項1から21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
各R置換基が、独立して、H、C1〜C2アルキル、−C1〜C2アルコキシ(例えば、−OCH)、−NR、−OH、−CN、−COOH、−COOR、−C1〜C2アルキル−NR、C1〜C2アルキル−OH、C1〜C2アルキル−CN、C1〜C2アルキル−COOHまたはC1〜C2アルキル−COORである、請求項1から22のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
mが、1である、請求項1から23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
が、水素であり、nが、4であり、qが、1であり、pが、1であり、rが、約10であり、sが、1である、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか1項に記載の化合物の薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
【請求項27】
前記薬学的に許容可能な塩が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸からなる群から選択される酸を用いて調製される、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記薬学的に許容可能な塩が、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸およびイセチオン酸からなる群から選択される酸を用いて調製される、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記薬学的に許容可能な塩が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、カフェインおよびアミンからなる群から選択される塩基を用いて調製される、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
哺乳動物における自己免疫状態を予防するため、阻害するため、または処置するための方法であって、該方法は、その必要のある哺乳動物に、該自己免疫状態を予防するか、阻害するか、または処置するのに有効な量で請求項1から25のいずれか1項に記載の化合物または請求項26から29のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項31】
哺乳動物における炎症状態を予防するため、阻害するため、または処置するための方法であって、該方法は、その必要のある哺乳動物に、該炎症状態を予防するか、阻害するか、または処置するのに有効な量で請求項1から25のいずれか1項に記載の化合物または請求項26から29のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項32】
前記哺乳動物が、ヒトである、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
自己免疫障害もしくは自己免疫疾患または炎症性障害もしくは炎症性疾患の医学療法における、ポリエチレングリコール部分を介してリン脂質に結合体化されたTLR7アゴニストを含む化合物の使用。
【請求項34】
前記化合物が、請求項1から25に記載の化合物のうちのいずれか1つであるか、または請求項26から29のいずれか1項に記載の薬学的組成物に含まれる、請求項33に記載の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−517428(P2012−517428A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549168(P2011−549168)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/000369
【国際公開番号】WO2010/093436
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】