説明

U管及び蛍光ランプ

【課題】器具装着率を低下させず、製造不良率を上げず、最冷点温度を最適な温度に下げることができる低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプを提供することを目的とする。
【解決手段】管外径16mm以下、かつランプ電流290mA以上で、U管を使用したもので、各U管は互いに平行に接近した間隔で延びている2個の直線状の縦方向管区分と、それぞれの縦方向管区分を連結する1個の横方向管区分と、縦方向管区分と横方向管区分との間の移行部の管屈曲部とを有し、水銀蒸気圧規制を行わない低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプにおいて、縦方向管区分と前記横方向管区分との間の移行部の管屈曲部の外側母線MLQ側に、放電路になりにくい絞り部を設け、横方向管区分の中央部の管内径をD、管屈曲部における放電路に直交する断面の管内径(管屈曲部の内側母線から外側母線MLQ方向の管内距離)をDLQとしたとき、
LQ>D
を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、U管を用いた低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプに係わり、周囲温度が25℃において、放電管内の最も温度の低い部分である最冷点の温度が自己発熱と周囲温度との相関において最適になるようにして、ランプの明るさを最大にした、水銀アマルガム規制を行わない低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のU管を用いた低圧放電灯は、例えば、図6及び図7の1回折り曲げられた低圧放電灯を示す図のように構成され、U管からなる発光管1は、2つの縦方向管区分2、3及び横方向管区分4を備える。発光管1のU字形屈曲部は、横方向管区分4の外側母線Mが直線であり、かつ両方の縦方向管区分2、3の外側母線Mに対してほぼ垂直に延びるように構成されている。縦方向管区分2、3の直径Dは12mmであり、横方向管区分4の直径Dはその中央で、D/Dは約1.2であるように選択されるが、直径Dが直径Dと同じか又はそれより大きければよい。更に、縦方向管区分2、3と横方向管区分4との間の管移行部は、管屈曲部における直径DLQの直径Dに対する比が約1.2であるように延びている。直径DLQは直径Dより大きければよい。
【0003】
図8は図6、7の1回折り曲げられた低圧放電灯の温度分布を示す図で、周囲温度約25℃で測定したものである。図から、ランプ作動中の水銀蒸気圧を決定する冷たい個所は管屈曲部5及び6内に存在し、その温度はほぼ40℃である。温度は電極のある密閉端部の方向に70℃まで高まる。横方向管区分4の中央部は、冷たい個所とは異なり5℃高い45℃である。
【0004】
このように、外側の管屈曲部5、6における冷たい個所によりランプ作動中に最適な水銀蒸気圧が達成される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平2−53906号公報
【特許文献2】特開2002−15701号公報
【特許文献3】特開2002−270134号公報
【特許文献4】実開平9−70号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のU管を用いた低圧放電灯は、直径Dが直径Dと同じか又はそれより大きく、かつ、直径DLQは直径Dより大きくして、縦方向管区分2、3と横方向管区分4との間の管移行部を外側に延ばすことにより、最冷点温度を下げるようにしているが、検証した結果では(詳しくは後述する)、最冷点温度がまだ5〜10℃高すぎる。
【0006】
これの改善策として、例えば横方向管区分4に山形の部分をランプ長さ方向に追加する手段があり、最冷点温度を下げる効果はあるが、全長が長くなるため、互換性がなく実用性に欠ける。
【0007】
また、他の改善策として、横方向管区分4近傍の縦方向管区分2、3に、その直角方向に突出部を設けることでも最冷点温度を下げることができるが、例えば、3個のU管を用いたランプでは、互いの突出部が接触して割れることがあり、生産性が悪く、これも不可である。
【0008】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、器具装着率を低下させず、製造不良率を上げず、最冷点温度を最適な温度に下げることができる低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプは、管外径16mm以下、かつランプ電流290mA以上で、U管を使用したもので、各U管は互いに平行に接近した間隔で延びている2個の直線状の縦方向管区分と、それぞれの縦方向管区分を連結する1個の横方向管区分と、縦方向管区分と横方向管区分との間の移行部の管屈曲部とを有し、水銀蒸気圧規制を行わない低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプにおいて、縦方向管区分と前記横方向管区分との間の移行部の管屈曲部の外側母線MLQ側に、放電路になりにくい絞り部を設け、横方向管区分の中央部の管内径をD、管屈曲部における放電路に直交する断面の管内径(管屈曲部の内側母線から外側母線MLQ方向の管内距離)をDLQとしたとき、
LQ>D
を満たすことを特徴とする。
【0010】
また、この発明に係る低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプは、管外径16mm以下、かつランプ電流290mA以上で、U管を使用したもので、各U管は互いに平行に接近した間隔で延びている2個の直線状の縦方向管区分と、それぞれの縦方向管区分を連結する1個の横方向管区分と、縦方向管区分と横方向管区分との間の移行部の管屈曲部とを有し、水銀蒸気圧規制を行わない低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプにおいて、縦方向管区分と横方向管区分との間の移行部の管屈曲部の外側母線MLQ側に絞り部を設け、管内径をD、横方向管区分の中央部の管内径をD、管屈曲部における放電路に直交する断面の管内径(管屈曲部の内側母線から外側母線MLQ方向の管内距離)をDLQ、絞り部の幅をw、絞り部の長さ(DLQと同じ方向)をhとしたとき、
LQ>D
0.1D≦w≦0.2D
0.03DLQ≦h≦0.10DLQ
を満たすことを特徴とする。
【0011】
また、この発明に係る低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプは、管外径12mmの2U管で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプは、上記のように構成することにより、器具装着率を低下させず、製造不良率を上げず、最冷点温度を最適な温度に下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1〜5は実施の形態1を示す図で、図1は低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプの構成を示す図、図2は従来のものと比較した低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプ先端部付近の斜視図、図3は検証に用いた3U管蛍光ランプの1つのU管の部分断面図、図4は縦方向管区分と横方向管区分との間の管移行部における放電路に直交する断面の形状を示す図、図5は周囲温度と相対照度を従来のものと比較した図である。
【0014】
実施の形態1における低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプは、縦方向管区分2、3と横方向管区分4との間の管移行部を外側に延ばすこと共に、縦方向管区分2、3と横方向管区分4との間の移行部の管屈曲部5、6の形状に特徴がある。この管屈曲部5、6に絞り部を設け、この絞り部が放電路になりにくいため、ここに最冷点が形成され、最冷点温度を顕著に下げることができるものである。
【0015】
低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプの全体構成は、図1に示すように、従来のものと同様である。但し、発光管1は3個のU管を用い、それぞれのU管は2つの縦方向管区分2、3及び横方向管区分4を備える。U管の管外径は12mmである。
【0016】
図2に示すように、本実施の形態の蛍光ランプは、同図に示す従来例と比べると解るように、縦方向管区分2、3と横方向管区分4との間の移行部の管屈曲部5、6を外側に延ばすと共に、縦方向管区分2、3と横方向管区分4との間の移行部の管屈曲部5、6に絞り部7を設ける。絞り部7は、発光管1が点灯中に放電路になりにくく、液状水銀を溜めることができる形状であればよい。
【0017】
次ぎに、実際に試作した、低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプ(形名FHT57EX−N)の実施例の仕様について説明する。
図3、4に示すように、試作した3U管の蛍光ランプの各U管は、管外径が12mm、管内径D=9.4mm、横方向管区分4の中央部の管内径D=11.5mm、管屈曲部5、6における放電路に直交する断面の管内径(内側母線から外側母線MLQ方向の管内距離)DLQ=14.85mm、絞り部7の幅w=1.9mm、絞り部7の長さ(DLQと同じ方向)h=0.45mmである。絞り部7は、管屈曲部5、6の外側母線MLQ側に設ける。
【0018】
比較のため、管屈曲部5、6に絞り部7を設けないものも、合わせて試作した(従来例とする)。管屈曲部5、6に絞り部7がないこと以外は、実施例と同一仕様である。従って、
LQ=14.85mm>D=11.5mm>D=9.4mm
であるから、背景技術で示した特許文献1の条件を満たすものである。
【0019】
上記実施例及び従来例のランプの点灯試験を行った結果を図5に示す。
管外径12mmの3U管蛍光ランプでは、周囲温度25℃において、最冷点温度が52℃の時、相対照度は最も大きくなる。
従来例の3U管蛍光ランプでは、周囲温度25℃において、最冷点温度が60℃になり、相対照度は図5に示すようにピークからずれる。
それに対して、実施例の3U管蛍光ランプでは、周囲温度25℃において、最冷点温度が52℃になり、相対照度は図5に示すようにピークとほぼ一致する。
実施例と従来例とでは、相対照度がピークになる周囲温度に約8℃の差がある。これは、周囲温度25℃における最冷点温度の差(60−52=8℃)に相当する。
【0020】
この検証から、実施例のように、管屈曲部5、6の外側母線MLQ側に絞り部7を設けることにより、最冷点温度が大幅に下がることが解る。
【0021】
上記検証結果から、最冷点温度を下げるための条件をまとめると、
絞り部7の幅w≦0.2D(実施例では、幅w=1.9mm、D=9.4mmであるから、w=0.2Dであり、絞り部7が放電路となりにくいためには、技術常識からw≦0.2Dとなる)。
但し、あまりも絞り部7のwが小さいと、ガラスが薄くなり、強度面で支障が生じる。従って、下限があり、結局、
0.1D≦w≦0.2D
が一つの条件である。
【0022】
また、絞り部7の長さhは、0.03DLQ≦h(実施例では、h=0.45mm、DLQ=14.85mmであるから、0.03DLQ=hであり、絞り部7が最冷点となるためには、技術常識から0.03DLQ≦hとなる)。
但し、あまりも絞り部7のhが大きいと、ガラスが薄くなり、強度面で支障が生じる。従って、上限があり、結局、
0.03DLQ≦h≦0.10DLQ
が他の一つの条件である。
【0023】
また、管屈曲部5、6における放電路に直交する断面の管内径DLQと、管内径Dの関係は、
LQ/D>1.2(実施例では、DLQ=14.85mm、D=11.5mmであり、DLQ/D=1.29であり、DLQは長い方がよいことは明らかである)。従って、
LQ/D>1.2
はさらに他の一つの条件である。
【0024】
横方向管区分4の中央部の管内径Dと、管内径Dとの関係については、実施例のように管屈曲部5、6の外側母線MLQ側に絞り部7を設ける場合は、D<Dでも絞り部7により最冷点温度は下がると推測されるため、特に条件とはしない。
【0025】
検証は、管外径12mmの3U管蛍光ランプで行ったが、周囲温度25℃において、最適な最冷点温度が50℃の管外径16mmの2U管蛍光ランプにおいても、上記の条件を満たせば、最冷点温度を最適に近い温度に下げることができる。従って、管外径16mmのものが、対象となる。
【0026】
また、ランプ電流であるが、290mA未満では、ランプの発熱が小さいので、最冷点に関わる問題は発生しない。従って、ランプ電流290mA以上の蛍光ランプが対象となる。
【0027】
また、対象とする片口金蛍光ランプは、水銀蒸気圧規制を行わない低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態1を示す図で、低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプの構成を示す図である。
【図2】実施の形態1を示す図で、従来のものと比較した低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプ先端部付近の斜視図である。
【図3】実施の形態1を示す図で、検証に用いた3U管蛍光ランプの1つのU管の部分断面図である。
【図4】実施の形態1を示す図で、縦方向管区分と横方向管区分との間の移行部の管区極部における放電路に直交する断面の形状を示す図である。
【図5】実施の形態1を示す図で、周囲温度と相対照度を従来のものと比較した図である。
【図6】従来の口金付き端部を有する低圧放電灯の図である。
【図7】従来の1回折り曲げられた放電管を備えた口金を付けていない低圧放電管の断面図である。
【図8】従来の低圧放電灯の温度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 発光管、2,3 縦方向管区分、4 横方向管区分、5,6 管屈曲部、7 絞り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光ランプに用いられるU管において、
管屈曲部と、
前記管屈曲部の外側に成形された絞り部とを備え、
前記絞り部は、前記U管の縦方向の全長を長くすることがないように、管屈曲部に設けられたことを特徴とするU管。
【請求項2】
前記絞り部は、さらに、前記U管の縦方向管より直角方向に突出することがないように、管屈曲部に設けられたことを特徴とする請求項1記載のU管。
【請求項3】
前記U管は、前記絞り部が成形されていないU管と比べて、放電路の長さが同一であることを特徴とする請求項1又は2記載のU管。
【請求項4】
前記U管は、前記絞り部が成形されていないU管と比べて、外形寸法が同一であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のU管。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載のU管を備えたことを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項6】
前記蛍光ランプは、ランプ電流290mA以上で、水銀蒸気圧規制を行わない低圧水銀蒸気放電片口金蛍光ランプであることを特徴とする請求項5記載の蛍光ランプ。
【請求項7】
前記蛍光ランプを、管外径12mmの3U管、又は、管外径16mmの2U管で構成したことを特徴とする請求項5または6記載の蛍光ランプ。
【請求項8】
放電路となるパイプ状の縦方向管区分と、放電路となるパイプ状の横方向管区分と、前記縦方向管区分と前記横方向管区分とをつなぐパイプ状の管屈曲部とを有するU管を備え、
縦方向管区分と、横方向管区分と、管屈曲部とは、一つのパイプ状の放電路を形成し、
前記管屈曲部は、横方向管区分の両側であって管屈曲部の外側の一部に、こぶ状を呈する部分を有することを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項9】
放電路となるパイプ状の1対の縦方向管区分と、放電路となるパイプ状の横方向管区分と、前記1対の縦方向管区分と前記横方向管区分とをつなぐパイプ状の1対の管屈曲部とを有するU管を備え、
前記1対の縦方向管区分の放電路に直交する断面が、円形または楕円形の環形状をしており、
前記横方向管区分の放電路に直交する断面が、円形または楕円形の環形状をしており、
前記1対の管屈曲部の放電路に直交する断面が、円形または楕円形の環形状をしており、
前記1対の管屈曲部は、管内壁から管外壁に向かって形成された突部を有し、前記突部が形成された管屈曲部における放電路に直交する断面が、突部が形成された部分において前記円形または楕円形の環形状の一部が膨らんだ形状をしていることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項10】
横方向管区分と、前記横方向管区分の両側に連結された1対の縦方向管区分とを有するU管を備え、
前記U管は、前記横方向管区分の両側に管内壁から管外壁に向かって形成された突部であって、前記横方向管区分によって区切られた不連続の1対の突部を備えたことを特徴とする蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−38046(P2009−38046A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296847(P2008−296847)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【分割の表示】特願2004−17523(P2004−17523)の分割
【原出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【出願人】(591015625)オスラム・メルコ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】