説明

UDP−グルクロン酸転移酵素およびそれをコードするポリヌクレオチド

【課題】基質特異性の広い、新たなUDP−グルクロン酸転移酵素、該酵素の製造方法、および該酵素の用途を提供する。
【解決手段】シソ目ゴマ科ゴマ、シソ科ヤクシマタツナミソウ、ゴマノハグサ科キンギョソウ由来の新たなUDP−グルクロン酸転移酵素、およびそれをコードする特定のポリヌクレオチドで形質転換された大腸菌により生産されるUDP−グルクロン酸転移酵素、該酵素使用によるフラボノイドのグルクロン酸抱合体の製造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UDP−グルクロン酸転移酵素、それをコードするポリヌクレオチド、それを含有するベクター、形質転換体などに関する。
【背景技術】
【0002】
食経験が豊富なフラボノイドやリグナンをはじめとするポリフェノール系の植物二次代謝産物は、抗酸化性に代表される機能性から機能性素材として古くから注目され、健康食品として既に販売されている。例えば、ケルセチン(フラボノイド)、OTPP(フラボノイド)やセサミン(リグナン)などは健康食品の代表的な素材である。
【0003】
植物細胞におけるフラボノイドの生合成経路は古くから研究が進められており、代謝経路を触媒する生合成酵素およびそれをコードする遺伝子については単離され、その分子機構の理解が進んでいる。
【0004】
その一方で、植物二次代謝産物が体内(in vivo)に取り込まれた後、どのような形に代謝され機能発現するかについての知見は乏しい。
【0005】
一般に植物の二次代謝産物の配糖体化は糖の種類(グルコース、ラムノール、グルクロン酸、ガラクトースなど)を問わずUDP−糖転移酵素(UGT: UDP-glycosyltransferase)と呼ばれるスーパーファミリーに属する酵素によって触媒されることが知られている。また、セサミンの研究例において二次代謝産物は体内ではカテコール体を経て、グルクロン酸抱合体として存在することが示されたことから、このグルクロン酸抱合体が植物二次代謝産物の体内での機能発現の一端を担っていると考えられている。
【0006】
哺乳類におけるケルセチン代謝物として4種類のモノグルクロナイド(Q-3-GlcA、Q-7-GlcA、Q-3'-GlcA、Q-4'-GlcA)が存在することが確認されている(非特許文献1;Day, AJ et al. Free Radic. Res. 35, 941-952, 2001、非特許文献2; Moon, JH. et al. Free Radical Biology & Medicine 30, 1274-1285, 2001 、非特許文献3;O'Leary, KA. et al. Biochemical Pharmacology 65, 479-491, 2003、非特許文献4;van der Woude, H. et al. Chem Res Toxicol. 17, 1520-1530, 2004)が、これらの生体内での機能を知るためには十分な量の化合物を得てその活性を調べる必要がある。しかしながら、これまで基質特異性の広い適当なUDP−グルクロン酸転移酵素は知られておらず、また、結合位置特異的な反応生成物を化学合成することは現実的に不可能であった。
【0007】
シソ科コガネバナ(Scutellaria baicalensis)の根はオウゴンと呼ばれ、抗酸化性の高いフラボンの7位グルクロン酸抱合体が蓄積していることが知られているが、食薬区分では医薬品に分類される(非特許文献5:Gao, Z. et al.Biochemica et Biophysica Acta 1472, 643−650. 1999)。これまでにシソ科コガネバナからフラボンの7位グルクロン酸転移酵素としてSb7GATが精製されているが、本酵素はフラボン7位水酸基のオルト位に水酸基などの置換基を持つフラボン(バイカレイン、スクテラレインなど)にのみ活性を示し、主要なフラボンであるアピゲニンやルテオリン、さらにフラボノールの一種であるケルセチンに対しては活性を示さない(非特許文献6:Nagashima S. et al., Phytochemistry 53, 533−538, 2000.)。また、このSb7GATに対応する遺伝子はGenBankに登録されている(アクセションNo.AB042277)が、その機能については確認されていない。
【0008】
一方、食経験のあるシソ科シソ(Perilla frutescens a red−leaf variety)にはオウゴンよりも多様なフラボン7位グルクロン酸抱合体が蓄積していることが知られている(非特許文献7:Yamazaki, M. et al. Phytochemistry 62, 987−998. 2003)。
【0009】
【非特許文献1】Day, AJ et al. Free Radic. Res. 35, 941-952, 2001
【非特許文献2】Moon, JH. et al. Free Radical Biology & Medicine 30 , 1274-1285, 2001
【非特許文献3】O'Leary, KA. et al. Biochemical Pharmacology 65, 479-491, 2003
【非特許文献4】van der Woude, H. et al. Chem Res Toxicol. 17, 1520-1530, 2004
【非特許文献5】Gao, Z. et al.Biochemica et Biophysica Acta 1472, 643−650, 1999
【非特許文献6】Nagashima S. et al., Phytochemistry 53, 533−538, 2000.
【非特許文献7】Yamazaki, M. et al. Phytochemistry 62, 987−998, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の下、基質特異性の広い、新たなUDP−グルクロン酸転移酵素、およびそれをコードする遺伝子を同定することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、下記に示す、UDP−グルクロン酸転移酵素、それをコードするポリヌクレオチド、ならびに、それを含有するベクター、および形質転換体などを提供する。
【0012】
(1) 以下の(a)〜(f)のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つの塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列において1〜15個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(d)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列に対して、80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e)配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;または
(f)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
(2) 以下の(g)〜(j)のいずれかである上記(1)に記載のポリヌクレオチド:
(g)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列において10個以下(0〜10個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(h)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列に対して、90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(i)配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;または
(j)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
(3)配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(4)配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(5)配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(6)配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(7)配列番号:5のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(8)配列番号:11のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(9)配列番号:13のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(10)配列番号:23のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する、上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(11)DNAである、上記(1)〜(10)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
(12)上記(1)〜(11)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドにコードされるタンパク質。
(13)上記(1)〜(11)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
(14)上記(1)〜(11)のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドが導入された形質転換体。
(15)上記(13)に記載のベクターが導入された形質転換体。
(16)上記(14)又は(15)に記載の形質転換体を用いる上記(10)のタンパク質の製造方法。
(17)上記(12)に記載のタンパク質を触媒として、UDP−グルクロン酸とフラボノイドからグルクロン酸抱合体を生成する、グルクロン酸抱合体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、形質転換体に導入されることによって、新たなUDP−グルクロン酸転移酵素の製造に有用である。本発明の好ましい態様のUDP−グルクロン酸転移酵素は、基質特異性が広く、多様な糖受容体基質をグルクロン酸化する活性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明のUDP−グルクロン酸転移酵素、それをコードするポリヌクレオチド、それを含有するベクター、形質転換体などを詳細に説明する。
【0015】
1.本発明のポリヌクレオチド
まず、本発明は、(a) 配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つの塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド(具体的には、DNA、以下、これらを単に「DNA」とも称する);及び(b)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを提供する。本発明で対象とするDNAは、上記のUDP−グルクロン酸転移酵素をコードするDNAに限定されるものではなく、このタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードする他のDNAを含む。機能的に同等なタンパク質としては、例えば、(c)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列において1〜15個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質が挙げられる。このようなタンパク質としては、配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列において、例えば、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質が挙げられる。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加の数は、一般的には小さい程好ましい。また、このようなタンパク質としては、配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列に対して、約80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質が挙げられる。上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
【0016】
ここで、「UDP−グルクロン酸転移酵素活性」とは、フラボノイド、スチルベンおよびリグナン等の水酸基をグルクロン酸化し(例えばフラボンをその7位の水酸基でグルクロン酸化し)、グルクロン酸抱合体を生じる反応を触媒する活性をいう。
UDP−グルクロン酸転移酵素活性は、例えば、UDP−グルクロン酸と糖受容体基質(例えば、フラボン)を評価対象となる酵素の存在下で反応させ、得られる反応物をHPLC等で分析することによって測定することができる(より具体的には、後述の実施例の記載を参照)。
【0017】
また、本発明は、(e)配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び(f)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドも包含する。
【0018】
本明細書中、「ポリヌクレオチド」とは、DNAまたはRNAを意味する。
【0019】
本明細書中、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、例えば、配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、または配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイゼーションの方法としては、例えば"Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Vol. 3, Cold Spring Harbor, Laboratory Press 2001"、"Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987−1997"などに記載されている方法を利用することができる。
【0020】
本明細書中、「ストリンジェントな条件」とは、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0021】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコルにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0022】
上記以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメーターを用いて計算したときに、配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つの塩基配列、または配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列をコードするDNAと約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、または99.9%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
【0023】
なお、アミノ酸配列や塩基配列の相同性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(proc. Natl. Acad. Sci. USA 872264−2268, 1990; proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0024】
上記した本発明のポリヌクレオチドは、公知の遺伝子工学的手法または公知の合成手法によって取得することが可能である。
【0025】
2.本発明のタンパク質
本発明は、さらに別の実施形態において、上記ポリヌクレオチド(a)〜(f)のいずれかにコードされるタンパク質も提供する。本発明の好ましいタンパク質は、配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列において1〜15個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質である。このようなタンパク質としては、配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列において、上記したような数のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質が挙げられる。また、このようなタンパク質としては、配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列と上記したような相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質が挙げられる。このようなタンパク質は、「モレキュラークローニング第3版」、「カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー」、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0026】
本発明のタンパク質のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加があることを意味し、欠失、置換、挿入及び付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン; B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸; C群:アスパラギン、グルタミン; D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸; E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン; F群:セリン、スレオニン、ホモセリン; G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0027】
また、本発明のタンパク質は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
【0028】
ここで、本発明のタンパク質は、UDP−グルクロン酸転移酵素である。「UDP−グルクロン酸転移酵素」は、UDP−グルクロン酸を糖供与体として糖受容体基質にグルクロン酸残基を転移し、グルクロン酸抱合体とUDPとを生じる反応を触媒する。本発明において、糖受容体基質は、例えばフラボノイド、スチルベン、およびリグナンである。
【0029】
フラボノイドには、フラボン、フラボノール、フラバノン、イソフラボン、フラボンC配糖体、オーロン、およびカテキン等が含まれる。このうち、フラボンとしては、例えば、バイカレイン、スクテラレイン、アピゲニン、ルテオリン、トリセチン、ジオスメチン、およびクリソエリオールを挙げることができる。フラボノールとしては、例えば、ケルセチン、ミリセチン、およびケンフェロールを挙げることができる。フラバノンとしては、例えば、ナリンゲニンを挙げることができる。イソフラボンとしては、例えば、ゲニステイン、ダイゼインおよびホルモノネチンを挙げることができる。フラボンC配糖体としては、例えば、ビテキシン、イソビテキシンおよびオリエンチンを挙げることができる。オーロンとしては、例えば、オーレウシジンを挙げることができる。カテキンとしては、例えば、カテキンおよびエピガロカテキンガレートを挙げることができる。
スチルベンには、レスベラトロール(Resveratrol)およびその配糖体のピセイド(piceid)等が含まれる。
リグナンには、(+)-ピノレジノール((+)-Pinoresinol)、(+)-ピペリトール((+)-Piperitol)、(+)-セサミノール((+)-Sesaminol)、(+)-セコイソラリシレジノール((+)-Secoisolariciresinol)、(+)-セサミンカテコール1((+)-Sesamim catecol1)(SC1)、(+)-セサミンカテコール2((+)-Sesamim catecol2)(SC2)、(+)-エピセサミンカテコール2((+)-Episesamim catecol2)(EC2)、およびマタイレジノール(matairesinol)等が含まれる。
【0030】
そして、例えば、配列番号:5のアミノ酸配列を有するUDP−グルクロン酸転移酵素(PfUGT50)は、糖受容体基質が、バイカレイン、アピゲニン、スクテラレイン、ルテオリン、トリセチン、ジオスメチン、クリソエリオール、ケルセチン、ミリセチン、ケンフェロール、ナリンゲニン、およびオーレウシジン等のフラボノイドのとき、レスベラトロール等のスチルベンのとき、ならびにSC1等のリグナンのときに活性を示し、特に、バイカレイン、アピゲニン、スクテラレイン、ルテオリン、トリセチン、ジオスメチン、クリソエリオール、ケルセチン、およびオーレウシジンのときに他の糖受容体基質と比較して強い活性を示す。
【0031】
配列番号:11のアミノ酸配列を有するUDP−グルクロン酸転移酵素(SlUGT)は、糖受容体基質が、バイカレイン、アピゲニン、スクテラレイン、ルテオリン、トリセチン、ジオスメチン、クリソエリオール、ケルセチン、ケンフェロール、ナリンゲニン、ゲニステイン、ダイゼイン、ホルモビテキシン、およびミリセチン等のフラボノイド、エスクレチン等のクマリンのとき、レスベラトロール等のスチルベンのとき、ならびにSC1、SC2、およびEC2等のリグナンのときに活性を示し、特に、バイカレインおよびアピゲニンのときに他の糖受容体基質と比較して強い活性を示す。
【0032】
配列番号:13のアミノ酸配列を有するUDP−グルクロン酸転移酵素(AmUGTcg10)は、糖受容体基質が、バイカレイン、アピゲニン、スクテラレイン、ルテオリン、トリセチン、ジオスメチン、クリソエリオール、ケルセチン、ケンフェロール、ナリンゲニン、およびオーレウシジン等のフラボノイドのとき、ならびにレスベラトロール等のスチルベンのときに活性を示し、特に、バイカレイン、アピゲニン、スクテラレイン、ルテオリン、トリセチン、ジオスメチン、クリソエリオール、ケンフェロール、およびナリンゲニン等のフラボノイドのときに他の糖受容体基質と比較して強い活性を示す。
【0033】
配列番号:23のアミノ酸配列を有するUDP−グルクロン酸転移酵素(SiUGT23)は、糖受容体基質が、バイカレイン、アピゲニン、スクテラレイン、ルテオリン、トリセチン、ジオスメチン、クリソエリオール、イソビテキシン、ケルセチン、ケンフェロール、ナリンゲニン、オーレウシジン、ホルモノネチン等のフラボノイドのとき、エスクレチン等のクマリンのとき、レスベラトロール等のスチルベンのとき、ならびにSC1等のリグナンのときに活性を示し、特に、バイカレイン、スクテラレイン、ルテオリン、トリセチン、ケンフェロール、およびオーレウシジン等のフラボノイドのときに他の糖受容体基質と比較して強い活性を示す。
【0034】
3.ベクター及びこれを導入した形質転換体
本発明はまた、別の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターは、上記(a)〜(f)のいずれかのポリヌクレオチドを含有する。好ましくは、本発明の発現ベクターは、(g)〜(j)のいずれかのポリヌクレオチドを含有する。さらに好ましくは、本発明の発現ベクターは、配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなるポリヌクレオチド、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つのポリヌクレオチド、又は、配列番号:5のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、配列番号:11のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、配列番号:13のアミノ酸配列からなるタンパク質、及び配列番号:23のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドからなる群から選択される1つのポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有する。
【0035】
本発明のベクターは、通常、(i)宿主細胞内で転写可能なプロモーター;(ii)該プロモーターに結合した、上記(a)〜(j)のいずれかに記載のポリヌクレオチド;及び(iii)RNA分子の転写終結およびポリアデニル化に関し、宿主細胞内で機能するシグナルを構成要素として含む発現カセットを含むように構成される。このように構築されるベクターは、宿主細胞に導入される。発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが特に限定されない。
【0036】
ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターが適宜選択され得る。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明のポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明のポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
【0037】
本発明の発現ベクターは、導入されるべき宿主の種類に依存して、発現制御領域(例えば、プロモーター、ターミネーター、および/または複製起点等)を含有する。細菌用発現ベクターのプロモーターとしては、慣用的なプロモーター(例えば、trcプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーター等)が使用され、酵母用プロモーターとしては、例えば、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、PH05プロモーター等が挙げられ、糸状菌用プロモーターとしては、例えば、アミラーゼ、trpC等が挙げられる。また動物細胞宿主用プロモーターとしては、ウイルス性プロモーター(例えば、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター等)が挙げられる。
【0038】
発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、栄養要求性マーカー(ura5、niaD)、薬剤耐性マーカー(hygromycine、ゼオシン)、ジェネチシン耐性遺伝子(G418r)、銅耐性遺伝子(CUP1)(Marin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 337 1984)、セルレニン耐性遺伝子(fas2m, PDR4)(それぞれ猪腰淳嗣ら, 生化学, 64, 660, 1992; Hussain et et al., gene, 101, 149, 1991)などが利用可能である。
【0039】
また、本発明は、上記(a)〜(j)のいずれかに記載のポリヌクレオチドが導入された形質転換体を提供する。
【0040】
形質転換体の作製方法(生産方法)は特に限定されないが、例えば、上述した組換えベクターを宿主に導入して形質転換する方法が挙げられる。ここで用いられる宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫(Caenorhabditis elegans)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞等を挙げることができる。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は当分野で周知である。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記宿主細胞で例示した各種微生物、植物または動物が挙げられる。
【0041】
宿主細胞の形質転換方法としては一般に用いられる公知の方法が利用できる。例えば、エレクトロポレーション法(Mackenxie D. A. et al. Appl. Environ. Microbiol., 66, 4655-4661, 2000)、パーティクルデリバリー法(特開2005−287403「脂質生産菌の育種方法」に記載の方法)、スフェロプラスト法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929(1978))、酢酸リチウム法(J.Bacteriology, 153, p163(1983))、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929 (1978)、Methods in yeast genetics, 2000 Edition : A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manualなどに記載の方法)で実施可能であるが、これらに限定されない。
【0042】
4.本発明のタンパク質の製造方法
本発明はまた、別の実施形態において、上記の形質転換体を用いる本発明のタンパク質の製造方法を提供する。
【0043】
具体的には、上記形質転換体の培養物から、本発明のタンパク質を分離・精製することによって、本発明のタンパク質を得ることができる。ここで、培養物とは、培養液、培養菌体もしくは培養細胞、または培養菌体もしくは培養細胞の破砕物のいずれをも意味する。本発明のタンパク質の分離・精製は、通常の方法に従って行うことができる。
【0044】
具体的には、本発明のタンパク質が培養菌体内もしくは培養細胞内に蓄積される場合には、培養後、通常の方法(例えば、超音波、リゾチーム、凍結融解など)で菌体もしくは細胞を破砕した後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により本発明のタンパク質の粗抽出液を得ることができる。本発明のタンパク質が培養液中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により菌体もしくは細胞と培養上清とを分離することにより、本発明のタンパク質を含む培養上清を得ることができる。
【0045】
このようにして得られた抽出液もしくは培養上清中に含まれる本発明のタンパク質の精製は、通常の分離・精製方法に従って行うことができる。分離・精製方法としては、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、透析法、限外ろ過法などを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
【0046】
5.グルクロン酸抱合体の製造方法
さらに、本発明は、本発明のタンパク質を用いてグルクロン酸抱合体を製造する方法を提供する。本発明のタンパク質は、糖受容体基質(例えば、フラボノイド、スチルベン、またはリグナン)にUDP−グルクロン酸からグルクロン酸を転移する反応を触媒するので、本発明のタンパク質を用いることにより、糖受容体基質およびUDP−グルクロン酸を原料として、グルクロン酸抱合体を製造することができる。糖受容体基質は、好ましくは、フラボノイドである。
例えば、1mMの糖受容体基質、2mMのUDP−グルクロン酸、50mMのリン酸カルシウムバッファー(pH7.5)、および20μMの本発明のタンパク質を含む溶液を調製し、30℃で、30分間反応させることにより、グルクロン酸抱合体を製造することができる。この溶液から、グルクロン酸抱合体は、公知の方法により分離・精製することができる。具体的には、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、透析法、限外ろ過法などを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。
このようにして得られるグルクロン酸抱合体は、その生体内での機能を調べるための試薬や、抗酸化剤などとして有用である(Gao, Z., Huang, K., Yang, X., and Xu, H. (1999) Biochimica et Biophysica Acta 1472, 643−650.)。
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これらに限定されるべきではない。
【実施例1】
【0047】
1.実施例1の概要
本実施例では、シソ科ヤクシマタツナミソウからPCRによりSb7GATホモログ遺伝子(SlUGT)をクローニングし、この遺伝子をプローブとしてフラボノイドの7位グルクロン酸抱合体を蓄積するシソ科シソの葉由来cDNAライブラリーからフラボノイドの7位グルクロン酸転移酵素の単離を試みた。
スクリーニングの結果、シソ由来配糖化酵素(PfUGT)の中にフラボンの7位の水酸基に対してグルクロン酸を転移する活性を有するPfUGT50を同定した。このPfUGT50はバイカレイン、スクテラレイン、アピゲニン、ルテオリンなどのフラボン類だけなく、フラボノールであるケルセチンに対してもグルクロン酸転移活性を有していた。従って、PfUGT50を用いることでフラボンを含む多様なフラボノイドの7位を試験管内(in vitro)においてグルクロン酸化することができるようになる。
さらにスクリーニングプローブとして単離したヤクシマタツナミソウ由来のSlUGTについても多様なフラボノイドに対してグルクロン酸転移活性を示した。また、ゴマノハグサ科キンギョソウについても、PfUGT50およびSlUGTと相同性の高いUGT(UDP− glucuronosyltransferase)を探索し、キンギョソウ由来のUGTであるAmUGTcg10を同定した。大腸菌発現させたAmUGTcg10タンパク質はアピゲニン、ケルセチン、ナリンゲニンに対してグルクロン酸転移活性を示した。したがって構造的に類似した上記のシソPfUGT50、タツナミソウSlUGTおよびキンギョソウAmUGTcg10はフラボノイドの7位グルクロン酸転移活性を有する酵素であることが示された。
【0048】
2.シソcDNAライブラリーからの配糖体化酵素遺伝子の単離
(1)プローブの調整
本実施例において用いる分子生物学的手法は、他で詳述しない限り、Molecular Cloning(Sambrookら、Cold Spring Harbour Laboratory Press,2001)に記載の方法に従った。
RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を使用して、ヤクシマタツナミソウの根から総RNAを抽出した後、SuperScriptTM First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen社)を製造業者が推奨する条件に従って使用して、総RNA 1μgからcDNAを合成した。コガネバナのSb7GATの配列(GenBankアクセションNo.AB042277)を基にプライマー−Fw(配列番号:1)とプライマー−Rv(配列番号:2)を設計し、これを用いてヤクシマタツナミソウcDNAを鋳型にPCRを行った。
【0049】
配列番号:1:SlUGT−Fw:5’ −AAACATATGGCGGTGCTGGCGAAGTTC−3’ (下線はNdeIサイト)
配列番号:2:SlUGT−Rv:5’ −TTTTGATCATTAATCCCGAGTGGCGTGAAG−3’ (下線はBclIサイト)
【0050】
具体的にはPCR反応液(50μl)は、ヤクシマタツナミソウ(Scutellaria laeteviolacea v. yakusimensis)cDNA 1μl、1×Taq buffer(TaKaRa)、0.2mM dNTPs、プライマー(配列番号:1および2)各0.4pmol/μl、rTaq polymerase 2.5Uからなる。PCR反応は94℃で3分間反応させた後、94℃で1分間、53℃で1分間、72℃で2分間の反応を30サイクルの増幅を行った。
【0051】
増幅した断片をpCR−TOPOIIベクター(Invitrogen)のマルチクローニングサイトに挿入し、挿入断片の塩基配列DNA Sequencer model 3100(Applied Biosystems)を使用して、合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いるプライマーウォーキング法によって塩基配列を決定した。得られた塩基配列のCLUSTAL−Wプログラム(MACVECTOR 7.2.2ソフトウェア、Accerly社)で解析した結果、コガネバナと高い相同性を有するヤクシマタツナミソウUGTの部分配列が得られたこと確認した(配列番号:3)。このヤクシマタツナミソウ由来UGTをSlUGT部分配列としてスクリーニングプローブの鋳型とした。
【0052】
非ラジオアイソトープDIG−核酸検出システム(ロシュ社)を、製造者が推奨するPCR条件に従って使用して、RT−PCRによって得られたフラグメントにDIG標識を導入した。具体的にはPCR反応液(50μl)は、各cDNA 1μl、1×Taq buffer(TaKaRa)、0.2mM dNTPs、プライマー(配列番号:1および2)各0.4pmol/μl、rTaq polymerase 2.5Uからなる。PCR反応は94℃で5分間反応させた後、94℃で1分間、53℃で1分間、72℃で2分間の反応を30サイクルの増幅を行った。アガロース電気泳動によりSlUGT断片がラベル標識されていることを確認し、このDIG標識化フラグメントを、ハイブリダイゼーション用プローブとして以下の実験に用いた。
【0053】
(2)ハイブリダイゼーション
非ラジオアイソトープDIG−核酸検出システム(ロシュ)を製造者の推奨する方法に従って使用して、シソ(品種:赤縮緬紫蘇)の葉由来cDNAライブラリー(Yonekura−Sakakibara, K. et al., Plant Cell Physiol. 41, 495−502. 2000)を、前述のSlUGTプローブを用いてスクリーニングした。
【0054】
ハイブリダイゼーション緩衝液(5×SSC、30%ホルムアミド、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1%SDS、2%ブロッキング試薬(ロシュ)、0.1%ラウロイルサルコシン、80g/mlサケ精子DNA)を用いて40℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った後、変性したプローブを添加して、さらに一晩インキュベートした。メンブレンを、1%SDSを含む4×SSC洗浄液中にて58℃で30分間洗浄した。約1×106pfuのプラークをスクリーニングして、約300個の陽性クローンを得た。
【0055】
(3)遺伝子同定
陽性クローンをニ次スクリーニングによってシングルプラーク化し、M13RVおよびM13M4(−20)のプライマー対を用いて、挿入物断片を増幅し、挿入部分のDNA配列を決定した。得られたDNA配列に基づいて得た推定のアミノ酸配列を用いてBlast xによるデータベース検索した結果、SlUGTおよびSb7GATと高い相同性を示すシソUGT(PfUGT50)を得た(配列番号:4、5)。
【0056】
得られた完全長のPfUGT50とSlUGTおよびSb7GATをCLUSTAL-Wプログラム(MACVECTOR 7.2.2ソフトウェア、Accerly社)で解析した結果、SlUGTおよびSb7GATは共に5’領域が欠損している不完全ORF(Open Reading Frame)であることが強く示唆された。そこで、Gene Racer kit(Invitrogen社)を製造業者の推奨する方法に従ってRapid Amplification of cDNA End(以下、RACE)を行い、SlUGTの5’および3’領域を増幅した。RACEには以下に示す各SlUGT遺伝子に特異的なプライマーセットを用いた(配列番号:6〜9)。
【0057】
配列番号:6:GR−SlUGT−Rv: 5’ −TGG GAG GCA AAC CAG GGA TCT CGA CAA
配列番号:7:SlUGT−nest−Rv: 5’ −AAT CAT CCA AAT CTT TAA GGT
【0058】
配列番号:8:GR−SlUGT−Fw: 5’ −AGA AGG GGT GTG TTC TCC GCT GAG CAA
配列番号:9:SlUGT−nest−Fw: 5’ −GAA CAG CGG TCA CAG ATT TCT
【0059】
各増幅産物について、合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いるプライマーウォーキング法によって塩基配列を決定し、完全長ORFを含むSlUGT遺伝子およびアミノ酸配列を得た(配列番号:10、11)。
【0060】
シソおよびヤクシマタツナミソウに加え、ゴマノハグサ科キンギョソウ(Antirrhinum majus)においてもフラボンの一種であるアピゲニン7位グルクロン酸抱合体が報告されている(Harborne, J. B. Phytochemistry 2, 327−334. 1963)。以前に単離していた配列番号:12および13で示す機能未知のキンギョソウ配糖体化酵素、AmUGTcg10が本実施例で単離したPfUGT50およびSlUGTと高い相同性を示すことから、AmUGTcg10も酵素解析の候補遺伝子とした (Ono, E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103, 11075−11080. 2006)。
【0061】
上記で取得したキンギョソウ由来AmUGTcg10、ヤクシマタツナミソウ由来SlUGT、およびシソ由来PfUGT50のアライメントを図1に示す。尚、図1には、コガネバナ由来のSb7GATを併記した。
【0062】
3.シソ葉からのフラボノイドの抽出と精製
(1)Scutellarein 7−glucuronideの精製
青シソの葉(愛知産・豊橋温室連合)、200枚、144.4gを液体窒素中で粉砕し、1.5Lの50%CH3CN、0.1%HCOOHに一晩、浸漬しセライトろ過した。ろ液を減圧濃縮し、濃縮液を600mlのCHP−20Pに負荷し、水、10,20,30,40,50%CH3CN/H2O各300mlx2でステップワイズ溶出を行い、ポリフェノール類の溶出が認められた10%−2から50%−1までの各画分を濃縮、凍結乾燥を行いHPLCで分析した。収量は10%−2(12.1mg)、20%−1(52.5mg)、20%−2(122.4mg)、30%−1(227.5mg)、30%−2(262.8mg)、40%−1(632.4mg)、40%−2(192.0mg)、50%−1(113.2mg)で40%−1はrosmarinic acidが高純度で含まれており、他はすべてフラボンを含む画分であった。30%−2画分を下記の分取HPLCで精製しScutellarein 7−glucuronide、16mgが得られた。
【0063】
分取HPLC条件
カラム:Develosil C−30−UG5, 20mm x 250mm,
移動相:A−0.1%TFA, B−0.05% TFA/90% CH3CN,
流速:6ml/min.
グラジエント:B20→B60%(100min),B60%iso(20min)
検出:A280nm
【0064】
(2)Scutellarein 7−glucuronideの加水分解とアグリコンの精製
上記(1)で得られたScutellarein 7−glucuronideのうち3mgを100μLのDMSOに溶解し、15mlのファルコンチューブに二分した。各チューブに10mLのH2Oと0.2Mの酢酸Na緩衝液(pH5.0)、2.5mLおよびβ−Glucronidase/Arylsulfatase(EC3.2.1.31/EC3.1.6.1、Roche Diagnostics GmbH製)溶液、0.8mlを加え37℃で2時間インキュベートした。反応終了液をSep−Pak−C18(20cc)に負荷し、水、20mlの後、10%EtOH、20mlで塩類、タンパク類を除去し、80%CH3CN+0.05%TFA、40mlで生成したアグリコンを溶出し、濃縮、凍結乾燥した。この画分を下記の分取HPLCで精製し、0.4mgのScutellarein(アグリコン)を得た。
【0065】
分取HPLC条件
カラム:Develosil C−30−UG5, 20mm x 250mm,
移動相:A−0.1%TFA, B−0.05% TFA/90% CH3CN,
流速:6ml/min.
グラジエント:B15→B70%(60min),B70%iso(10min)
検出:A330nm
【0066】
4.組換えシソ配糖体化酵素の発現と活性測定
(1)発現ベクター構築
上記のお互いに相同性の高い、シソ由来PfUGT50、ヤクシマタツナミソウ由来SlUGT、およびキンギョソウ由来AmUGTcg10の3種の配糖体化酵素の完全長ORFを含むcDNAを、それぞれの遺伝子特異的なプライマーセット(PfUGT50,配列番号:14−15;SlUGT,配列番号:16−17;AmUGTcg10,配列番号:18−19)によって増幅した。鋳型にはそれぞれシソ葉,ヤクシマタツナミソウ根,キンギョソウ花弁から抽出したTotal RNAを用いて合成したcDNAを用いた。
【0067】
配列番号:14:PfUGT50−fw: 5’ −AAACATATGGAAGGCGTCATACTTC−3’ (下線はNdeIサイト)
配列番号:15:PfUGT50−rv: 5’ −TTTTGATCATTAATCACGAGTTACGGAATC−3’ (下線はBclIサイト)
配列番号:16:SlUGT−fw: 5’ −AAACATATGGAGGACACGATTGTTATC−3’ (下線はNdeIサイト)
配列番号:17:SlUGT−rv: 5’ −TTCATATGTCAATCCCTCGTGGCCAGAAG−3’ (下線はNdeIサイト)
配列番号:18:AmUGTcg10−fw: 5’ −AAACATATGGAGGACACTATCGTTCTC−3’ (下線はNdeIサイト)
配列番号:19:AmUGTcg10−rv: 5’ − TTGGATCCTTAAGAAACCACCATATCAAC−3’ (下線はBamHIサイト)
【0068】
PCR反応 (KOD −Plus−, TOYOBO)は94℃, 2 min; [94℃, 15 sec; 50℃, 30 sec; 68℃, 1.5 min]×35 cyclesで行った。増幅されたDNA断片をpCR−Blunt II−TOPO vector(Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit, invitrogen)へサブクローニングし、ABI3100Avant (Applied Biosystems)によって塩基配列の確認を行った。PfUGT50に関しては得られたプラス株を形質転換することで非メチル化プラスミドを得た。得られたプラスミドはPfUGT50ではNdeIとBclI,SlUGTではNdeI,、AmUGTcg10ではNdeIとBamHIにてそれぞれ消化し、生じた約1.5 kbのDNA断片をPfUGT50とAmUGTcg10ではNdeIとBamHI、SlUGTではNdeIで消化したpET−15に連結した。
【0069】
(2)組換え大腸菌の培養とタンパクの精製
上記3−(1)で得られたそれぞれのプラスミドを用い大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。得られた形質転換体を、50 μg/mlのアンピシリンを含むLB培地(10 g/l tryptone,5 g/l yeast extract,1 g/l NaCl)4 mlに、37℃で一晩振盪培養した。静止期に達した培養液4 mlを同組成の培地80 mlに接種し,37℃で振盪培養した。菌体濁度(OD600)がおよそ0.5に達した時点で終濃度0.4 mMのIPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド)を添加し,22℃で20時間振盪培養した。以下のすべての操作は4℃で行った。培養した形質転換体を遠心分離(7,000×g,15 min)にて集菌し,Buffer S[20 mM リン酸ナトリウムバッファー(pH 7.4),20 mM imidazol,0.5 M NaCl,14 mMβ−メルカプトエタノール]2 ml/gcellを添加し,懸濁した。続いて超音波破砕(15 sec×8回)を行い,遠心分離(15,000×g,10 min)した。得られた上清に終濃度0.12% (w/v) ポリエチレンイミンを添加して懸濁し,30 min静置した。遠心分離(15,000×g,10 min)を行い,上清を粗酵素液として回収した。粗酵素液をBuffer Sにて平衡化したHis SpinTrap (GE Healthcare)にアプライし,遠心(70×g,30 sec)した。Buffer S 600μlで洗浄後,100,200,500 mM imidazoleを含むBuffer S 各600μlにてカラムに結合したタンパク質を段階的に溶出した。各溶出画分をMicrocon YM−30 (Amicon)を用いて20 mM リン酸カリウムバッファー(pH 7.5),14 mMβ−メルカプトエタノールにバッファー置換した。SDS−PAGE解析の結果,100 mMおよび200 mM imidazole溶出画分に目的のサイズのタンパク質を確認したので,これらの画分を混合し解析に用いた。なお,これらの画分では目的タンパク質単一ではなかった。
【0070】
(3)酵素反応とHPLC分析条件
標準的な反応条件は以下の通りである。反応液(2 mM UDP−グルクロン酸,100 μM 糖受容体基質,50 mM リン酸カリウムバッファー(pH 7.5),酵素溶液)50μlを調製し,酵素溶液を添加することで反応を開始させ,30℃,30分間反応させた。0.5% TFA in CH3CN 50μl を添加することにより反応を停止させ,HPLCにて分析した。HPLC条件は以下の通りである。カラム,Develosil C30−UG−5(4.6×150 mm); 溶離液A,0.1% TFA / H2O;溶離液B,0.08% TFA / 90% CH3CN;溶離条件A(オーロン,カテキン,クマリン,フェニルプロパノイド以外),0 min/5%B→18 min/100%B液→18.1 min/5%B→25 min/5%B;溶離条件B(オーロン,カテキン,クマリン,フェニルプロパノイド),0 min/5%B→20 min/50%B液→20.5 min/5%B→25 min/5%B;流速,1 ml/min;検出波長:280, 350 nm。以下に各キャラクタリゼーションの方法及び結果を示す。
【0071】
糖受容体基質特異性解析
上記の方法に従い,各種糖受容体基質に対する特異性を解析した(図2〜4)。
図2は、PfUGT50の糖受容体基質の基質特異性の解析の結果を示す図である。図2では、Scutellareinに対する活性を100%としたときの各基質に対する相対活性を示した。解析の結果,PfUGT50はScutellareinに対し最大の活性を示し,配糖体以外のフラボンによく反応した(Baicalein(Scutellareinに対する相対活性,73%),Apigenin(44%),Luteolin(41%),Tricetin(87.9%),Diosmetin(62%),Chrysoeriol(18%))。さらにフラボノール(Quercetin(26%),Myricetin(9%),Kaempferol(3%)),フラバノン(Naringenin(3%))およびオーロン(Aureusidin(40%))に対しても活性を示した。しかしながら,フラボンC配糖体(Vitexin,Isovitexin,Orientin),イソフラボン(Genistein,Daidzein,Formononetin),カテキン(Catechin,Epigallocatechin gallate),クマリン(Esculetin)およびフェニルプロパノイド(Coniferyl alcohol)に対しては活性を示さなかった。また,HPLCにおいてScutellarein,Baicalein,Apigenin,Quercetinはその反応生成物がそれぞれの7位グルクロノシル化物の保持時間と一致した。
【0072】
図3は、SlUGTの糖受容体基質の基質特異性を解析した結果を示す図である。図3では、Scutellareinに対する活性を100%としたときの各基質に対する相対活性を示した。解析の結果、SlUGTはScutellareinに対し最大の活性を示し,Baicalein(Scutellareinに対する相対活性,63%)以外のフラボンに対する反応性は低かった(Apigenin(3%),Luteolin(0.6%),Tricetin(1.1%),Diosmetin(0.3%),Chrysoeriol(0.02%))。またフラボノール(Quercetin(1%),Kaempferol(14%)),フラバノン(Naringenin(6%)),イソフラボン(Genistein(1%),Daidzein(0.3%),Formononetin(0.08%)),クマリン(Esculetin(0.3%))に対する活性も低く,フラボンC配糖体(Vitexin,Isovitexin,Orientin),オーロン(Aureusidin),カテキン(Catechin,Epigallocatechin gallate)およびフェニルプロパノイド(Coniferyl alcohol)に対しては活性を示さなかった。つまり,SlUGTの活性にはフラボノイドの7位のオルト位の修飾が重要であることが示唆された。また,HPLCにおいてScutellarein,Baicalein,Apigeninはその反応生成物がそれぞれの7位グルクロノシル化物の保持時間と一致した。一方,Quercetinでは複数の反応生成物が検出され,その1つは7位グルクロノシル化物の保持時間と一致した。
【0073】
図4は、AmUGTcg10の糖受容体基質の基質特異性を解析した結果を示す図である。図4では、Scutellareinに対する活性を100%としたときの各基質に対する相対活性を示した。解析の結果、AmUGTcg10はScutellareinに対し最大の活性を示し,配糖体以外のフラボンにも反応した(Baicalein(Scutellareinに対する相対活性,22%),Apigenin(40%),Luteolin(34%),Tricetin(23.8%),Diosmetin(26%),Chrysoeriol(18%))。さらにフラボノール(Quercetin(4%),Kaempferol(28%)),フラバノン(Naringenin(15%))およびオーロン(Aureusidin(2%))に対しても活性を示した。しかしながら,フラボンC配糖体(Vitexin,Isovitexin,Orientin),イソフラボン(Genistein,Daidzein,Formononetin),カテキン(Catechin,Epigallocatechin gallate),クマリン(Esculetin)およびフェニルプロパノイド(Coniferyl alcohol)に対しては活性を示さなかった。また,HPLCにおいてScutellarein,Baicalein,Apigenin,Quercetinはその反応生成物がそれぞれの7位グルクロノシル化物の保持時間と一致した。
【0074】
以上の結果からフラボン等のフラボノイドに対しPfUGT50とAmUGTcg10は低い特異性を示すのに対し,SlUGTは高い特異性を示すことが明らかになった。そして、シソ由来のPfUGT50が、特に低い特異性を示すこと、すなわち、基質特異性の広い酵素であることが分かった。
【0075】
糖供与体基質特異性解析
Apigeninを糖受容体基質として用い,各種UDP活性化糖供与体に対する特異性を解析した。その結果,PfUGT50,SlUGTおよびAmUGTcg10はUDP−グルクロン酸に対してのみ活性を示し,UDP−グルコース,UDP−ガラクトースに対しては活性を示さなかった。
以上の結果からこれらの酵素はフラボンに特異性の高い7位グルクロン酸転移酵素(フラボン 7−O−グルクロノシルトランスフェラーゼ)であると考察した。
【0076】
pHおよび温度特性解析
温度安定性は以下のようにして解析した。酵素溶液を15〜55℃,1時間処理後,4℃に冷却した。冷却後のサンプルを用い,標準的な反応条件で残存活性を算出した。pH安定性は以下のようにして解析した。酵素溶液に終濃度 167 mM 緩衝液(pH 4, 4.5, 5,Acetate−NaOH;pH 5.5, 6, 6.5, 7, 7.5,NaH2PO4−NaOH;pH 8, 8.5, 9,Tris−HCl)を添加し,4℃,1時間処理後,終濃度500 mM リン酸カリウムバッファー(pH 7.5)を添加した。処理後のサンプルを用い,標準的な反応条件で残存活性を算出した。反応温度依存性は反応温度を10〜55℃にした標準的な反応条件で反応を行い解析した。 反応pH依存性はリン酸カリウムバッファー(pH 7.5)の代わりに緩衝液(pH 4, 4.5, 5,Acetate−NaOH;pH 5.5, 6, 6.5, 7, 7.5,NaH2PO4−NaOH;pH 8, 8.5, 9,Tris−HCl)を用いた標準的な反応条件で反応を行い解析した。以上の解析の結果,PfUGT50はpH 7〜9の範囲において安定で,その触媒活性はpH 7〜8の範囲において最大で,酸性領域ではあまり活性を示さなかった。また,30℃以下において安定で(1時間,pH 7.5),30分間における活性測定では反応至適温度は30℃であった。SlUGTはpH 4.5〜8の範囲において安定で,その触媒活性はpH 7〜8の範囲において最大で,酸性領域ではあまり活性を示さなかった。また,本酵素は40℃以下において安定で(1時間,pH 7.5),30分間における活性測定では反応至適温度は35℃であった。AmUGTcg10はpH 7.5〜9.5の範囲において安定で,その触媒活性はpH 8.5〜9.5の範囲において最大で,酸性領域ではあまり活性を示さなかった。また,本酵素は30℃以下において安定で(1時間,pH 7.5),30分間における活性測定では反応至適温度は45℃であった。これらの性質は既知の植物2次代謝に関わるGTと類似していた。
【0077】
5.結果
上記のように、構造的に類似したシソ科シソ由来PfUGT50、シソ科ヤクシマタツナミソウ由来SlUGTおよびゴマノハグサ科キンギョソウ由来AmUGTcg10を同定した。PfUGT50およびAmUGTcg10配糖体化酵素はコガネバナSb7GATと比べ糖受容体基質特異性が広く、フラボン、フラボノール、オーロンなどの多様なフラボノイドの7位グルクロン酸転移活性を有していた。一方、SlUGTはSb7GATと類似した基質特異性を示した。これらの配糖体化酵素を用いることで安価にフラボノイドの7位をグルクロン酸抱合化することができるようになる。
このため、Quercetin 7−glucronideなどの生体内に存在するグルクロン酸抱合体をin vitroで大量に生成し、生理活性の評価を行うことが可能である。
【実施例2】
【0078】
1.実施例2の概要
本実施例では、シソ目ゴマ科ゴマ(Sesamum indicum)からタツナミソウSlUGTおよびキンギョソウAmUGTcg12と相同性の高いSiUGT23を同定し、その大腸菌発現タンパク質にスクテラレインおよびルテオリンに対してグルクロン酸転移活性を有していることを確認した。
【0079】
2.SiUGT23遺伝子の同定
タツナミソウおよびキンギョソウのフラボノイド7位グルクロン酸転移酵素遺伝子(UGT遺伝子)の配列保存性に着目しこれらの遺伝子と相同性の高い遺伝子を調査した結果、シソ目ゴマ科ゴマにおいても、これらのUGT遺伝子と高い相同性を示すゴマUGT遺伝子、SiUGT23があること見出した。ゴマcDNAライブラリー内から単離されたSiUGT23は完全長配列を有していなかった為、下記配列番号:20および21のプライマーを用いて前記実施例1の2(3)で述べたRACE法によりSiUGT23の完全長配列を決定した(配列番号:22および23)。
【0080】
配列番号:20:GR−SiUGT23−Rv
5'−GGCCAAACGCGCCGGAGCTGATGTAGA−3'
配列番号:21:SiUGT23-nest-Rv
5'-AGTGGGTATATTCAAGCCTGT-3'
【0081】
3.ゴマ由来SiUGT23の発現と活性測定
ゴマ由来SiUGT23の完全長ORFを含むcDNAを、遺伝子特異的なプライマーセット(配列番号:24および25)によって増幅した。鋳型にはゴマ種子から抽出したTotal RNAを用いて合成したcDNAを用いた。前記実施例1のシソ、タツナミソウ、およびキンギョソウのUGTと同様に大腸菌発現ベクターに組み込み、同様の方法によって組み換えSiUGT23タンパク質を発現させ、酵素活性を測定した。
【0082】
配列番号:24: SiUGT23−fw: 5' −CACCATATGGAAGACACCGTTGTCCTCTA−3'(下線はNdeIサイト)
配列番号:25:SiUGT23−rv: 5' −GGATCCTAACATCACTCAAACCCGAGTCA−3' (下線はBamHIサイト)
【0083】
図5は、SiUGT23の糖受容体基質の基質特異性を解析した結果を示す図である。図5では、Scutellareinに対する活性を100%としたときの各基質に対する相対活性を示した。解析の結果、SiUGT23はScutellareinに対し最大の活性を示し,以下のフラボンにも反応した(Baicalein(Scutellareinに対する相対活性(以下同様)、24%)、Apigenin(7%)、Luteolin(29%)、Tricetin(14.0%)、Diosmetin(4%)、Chrysoeriol(6%)、Isovitexin(0.3%))。さらにフラボノール(Quercetin(4%)、Kaempferol(18%))、フラバノン(Naringenin(2%))、オーロン(Aureusidin(13%)),クマリン(Esculetin(0.03%))および以下のイソフラボン(Formononetin(0.03%))に対しても活性を示した。しかしながら,Isovitexin以外のフラボンC配糖体(Vitexin、Orientin)、Formononetin以外のイソフラボン(Genistein、Daidzein)、カテキン(Catechin、Epigallocatechin gallate)およびフェニルプロパノイド(Caffeic acid)に対しては活性を示さなかった。また,HPLCにおいてScutellarein、Baicalein、Apigenin、Quercetinはその反応生成物がそれぞれの7位グルクロノシル化物の保持時間と一致した。
【0084】
以上の結果からゴマSiUGT23はシソPfGT50およびキンギョソウAmUGTcg10と同様にフラボン等のフラボノイドに対し低い特異性を示すフラボノイド7位グルクロン酸転移酵素であることが示された。
【実施例3】
【0085】
シソPfUGT50、ヤクシマタツナミソウSlUGT、キンギョソウAmUGTcg10組換えタンパク質およびゴマのSiUGT23組換えタンパク質を用いて植物性ポリフェノールであるスチルベンおよびリグナンに対するグルクロン酸転移活性について検討した。スチルベンの基質としてはResveratrol、リグナンの基質には(+)-Pinoresinol、(+)-Piperitol、(+)-Sesaminol、(+)-Secoisolariciresinol、(+)-Sesamim catecol1(SC1), (+)-Sesamim catecol2(SC2),および(+)-Episesamim catecol2(EC2)を用い(Nakai M, et al. (2003) J Agric Food Chem. 51, 1666-1670.)、先述と同様の条件で酵素反応を行った。
【0086】
HPLC分析の結果、シソPfUGT50、ヤクシマタツナミソウSlUGT、キンギョソウAmUGTcg10およびゴマのSiUGT23との反応液全てにおいて生成物が得られた(図2−5参照)。また、リグナン類に関しては、SC1および SC2を基質にした際に、新たに生成物が得られた。最も生成物が多く得られたSlUGTとSC1との反応をLC-MS分析した結果、SC1はR.T.=12.8分に溶出し、反応生成物はR.T.=10.8分(図6)、m/z=517.1328 [M‐H]-(C25H25O12、calcd.517.1346、err. -2.5ppm)のSC1モノグルクロナイドであることが確認された(図7)。LC−MSの条件は下記の通りである。
カラム:Develosil C30-UG3, 3mm x 150 mm
移動相:A; H2O, B; CH3CN, C; 2.5%HCOOH, 0.2ml/min.
グラジエント:B20%→B70%(10分)、B70%(5分)、C4%
検出:A280nm
MS条件:Q-TOF-Premier (Micromass、Manchester、UK製)
Vモード、negative、キャピラリー電圧:2.3KV、コーン電圧:45V
【0087】
以上の結果より、シソPfUGT50、ヤクシマタツナミソウSlUGT、キンギョソウAmUGTcg10およびゴマのSiUGT23を用いることで多様なフラボノイドに加え、スチルベンおよびリグナンのグルクロナイドを生産できることを確認した。
【実施例4】
【0088】
ヤクシマタツナミソウ由来SlUGTはケルセチン(QU)と反応させた際にその7位グルクロン酸以外に複数の生成物を与えた(図8)。
これらはゴマ由来SiUGT23、キンギョソウ由来AmUGTcg10、およびシソ由来PfUGT50では認められない特徴的な生成物である。LC-MS分析の結果、保持時間7〜9分の間にはケルセチンに対して二つグルクロン酸が転移したと思われるm/z= 653.1009 [M‐H]-(C27H25O19, calcd. 653.0990, err. 2.9ppm)を示すケルセチンジグルクロナイドが検出された。保持時間9〜11分の間にはケルセチンに対してグルクロン酸が一つ転移したと思われるm/z= 477.06 [M‐H]-のケルセチンモノグルクロナイドが3種類検出された。R.T.=10.12分の成分はシソのGATによる反応生成物を精製し構造解析したものと一致したことから、Quercetin 7-O-glucuronideであることがわかった。またR.T.=10.34分の成分はブドウの葉の主フラボノールを精製し構造解析したものと一致したことから、Quercetin 3-O-glucronideであることがわかった。(Hmamouch, M. et al. (1996) Am J Enol Vitic., 47, 186-192)主反応生成物であるR.T.=11.3分の成分は逆相HPLCで精製しNMRで構造解析した結果、Quercetin 3'-O-glucronideであることが明らかになった。主要な3つのピークはそれぞれケルセチンの7位、3位、3'位のモノグルクロナイドであることが確認された。
【0089】
LC−MSの条件は下記の通りである。
カラム:YMC-pack polymer C18, 2mm x 150 mm,6μm
移動相:A; H2O, B; CH3CN, C; 2.5%HCOOH, 0.2ml/min.
グラジエント:B10%→B50%(10分)、B50%(5分)、C4%
検出:A350nm
MS条件:Q-TOF-Premier (Micromass、Manchester、UK製)
Vモード、negative、キャピラリー電圧:3.0KV、コーン電圧:30V
【0090】
以上の結果から、ヤクシマタツナミソウSlUGTを用いることで、ケルセチンから多様なケルセチングルクロナイドが得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のUDP−グルクロン酸転移酵素は、基質特性が広く、種々のグルクロン酸抱合体の製造に有用である。製造したグルクロン酸抱合体は、例えば、その生体内での機能を調べるための試薬や、抗酸化剤などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】キンギョソウ由来AmUGTcg10、ヤクシマタツナミソウ由来SlUGT、およびシソ由来PfUGT50、およびコガネバナ由来のSb7GATのアミノ酸配列のアライメントである。
【図2】PfUGT50の糖受容体基質の基質特異性を解析した結果を示す図である。
【図3】SlUGTの糖受容体基質の基質特異性を解析した結果を示す図である。
【図4】AmUGTcg10の糖受容体基質の基質特異性を解析した結果を示す図である。
【図5】SiUGT23の糖受容体基質の基質特異性を解析した結果を示す図である。
【図6】SlUGTとSC1との反応液中の生成物についてのLC-MS分析結果の図である。図中の矢印は生成物を示す。
【図7】SC1とSlUGT1との反応生成物のMS分析結果の図である。
【図8】ケルセチンとSlUGT1との反応生成物のLC分析結果の図である。
【配列表フリーテキスト】
【0093】
配列番号:1:合成DNA
配列番号:2:合成DNA
配列番号:6:合成DNA
配列番号:7:合成DNA
配列番号:8:合成DNA
配列番号:9:合成DNA
配列番号:14:合成DNA
配列番号:15:合成DNA
配列番号:16:合成DNA
配列番号:17:合成DNA
配列番号:18:合成DNA
配列番号:19:合成DNA
配列番号:20:合成DNA
配列番号:21:合成DNA
配列番号:24:合成DNA
配列番号:25:合成DNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(f)のいずれかに記載のポリヌクレオチド:
(a)配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つの塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列において1〜15個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(d)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列に対して、80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e)配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;または
(f)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項2】
以下の(g)〜(j)のいずれかである請求項1に記載のポリヌクレオチド:
(g)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列において10個以下のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(h)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列に対して、90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(i)配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列、配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列、配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列、及び配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなる群から選択される1つの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;または
(j)配列番号:5、11、13及び23からなる群から選択される1つのアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつUDP−グルクロン酸転移酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号:4で表される塩基配列の第1番目〜第1359番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号:10で表される塩基配列の第1番目〜第1365番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号:12で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
配列番号:22で表される塩基配列の第1番目〜第1371番目の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号:5のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号:11のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
配列番号:13のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
配列番号:23のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
DNAである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドにコードされるタンパク質。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドが導入された形質転換体。
【請求項15】
請求項13に記載のベクターが導入された形質転換体。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の形質転換体を用いる請求項12のタンパク質の製造方法。
【請求項17】
請求項12に記載のタンパク質を触媒として、UDP−グルクロン酸とフラボノイドからグルクロン酸抱合体を生成する、グルクロン酸抱合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−106265(P2009−106265A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67185(P2008−67185)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000001904)サントリー酒類株式会社 (319)
【Fターム(参考)】