説明

URLC8のtRNA−ジヒドロウリジンシンターゼ活性によって非小細胞肺癌を診断する方法

本発明は、ポリペプチドのt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を決定する方法、およびt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性の調節物質をスクリーニングする方法を特徴とする。本発明はさらに、そのような調節物質を用いて非小細胞肺癌(NSCLC)を予防および/または処置するための方法または薬学的組成物を提供する。さらに、本発明は、指標としてIMS-E21(URLC8)タンパク質のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を用いて、非小細胞肺癌(NSCLC)を診断する方法を提供する。本発明はさらに、肺扁平上皮癌(SCC)を予測するため、および予後を検討するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、肺癌、より具体的には非小細胞肺癌ならびにその診断および処置に関する。
【0002】
優先権
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2004年9月24日に提出された米国特許仮出願第60/612,937号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
肺癌は、世界全体での癌による死亡の最も一般的な原因の一つであり、非小細胞肺癌(NSCLC)は、それらの症例のほぼ80%を占める(Greenlee, R.T., et al., (2001) CA Cancer J. Clin, 51:15〜36(非特許文献1))。肺癌の発症および進行に関連した多くの遺伝的変化が報告されているが、正確な分子メカニズムはなお不明確である(Sozzi, G. Eur. J. Cancer(2001)37 Suppl 7:S63〜73(非特許文献2))。過去10年のあいだに、パクリタキセル、ドセタキセル、ジェムシタビン、およびビノレルビンを含む新たに開発された細胞毒性剤が出現して、進行NSCLCを有する患者に多数の治療選択肢を提供している;しかし、新しい治療法のそれぞれは、シスプラチンに基づく治療と比較して多少の延命効果を提供できるに過ぎない(Schiller, J.H. et al.(2002) N Engl J Med, 346:92〜98(非特許文献3);Kelly, K., et al. (2001) J Clin Oncol, 19:3210〜3218(非特許文献4))。したがって、分子ターゲティング物質および抗体、ならびに癌ワクチンのような新しい治療戦略の開発が切望される。
【0004】
cDNAマイクロアレイ上における数千種の遺伝子の発現レベルの系統的分析は、発癌経路に関与する未知分子を同定するための有効なアプローチであり、新規治療法および診断法を開発するための標的候補を明らかにすることができる。本発明者らは、レーザー捕捉顕微解剖により癌組織37例から調製した純粋な腫瘍細胞集団を用いて、遺伝子23,040種を含むcDNAマイクロアレイ上でNSCLC細胞のゲノムワイド発現プロフィールを分析することによって、NSCLCの診断、処置、および予防のための新規分子標的を単離することを企図している(Kikuchi, T. et al., Oncogene, (2003)22:2192〜2205(非特許文献5);Zembutsu, H. et al.(2003) Int J Oncol, 23:29〜39(非特許文献6);Kakiuchi, S. et al. Mol Cancer Res, (2003)1:485〜499(非特許文献7);Suzuki, C. et al., (2003) Cancer Res, 63:7038〜7041(非特許文献8))。このゲノムワイドのcDNAマイクロアレイ分析を通して、アップレギュレートされた遺伝子642種およびダウンレギュレートされた遺伝子806種が、NSCLCの診断マーカーおよび治療標的として同定された(国際公開公報第2004/31413号(特許文献1))。
【0005】
【特許文献1】国際公開公報第2004/31413号
【非特許文献1】Greenlee, R.T., et al., (2001) CA Cancer J. Clin, 51:15〜36
【非特許文献2】Sozzi, G. Eur. J. Cancer(2001)37 Suppl 7:S63〜73
【非特許文献3】Schiller, J.H. et al.(2002) N Engl J Med, 346:92〜98
【非特許文献4】Kelly, K., et al. (2001) J Clin Oncol, 19:3210〜3218
【非特許文献5】Kikuchi, T. et al., Oncogene, (2003)22:2192〜2205
【非特許文献6】Zembutsu, H. et al.(2003) Int J Oncol, 23:29〜39
【非特許文献7】Kakiuchi, S. et al. Mol Cancer Res, (2003)1:485〜499
【非特許文献8】Suzuki, C. et al., (2003) Cancer Res, 63:7038〜7041
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
それぞれの遺伝子産物の生物学的および臨床病理学的重要性を証明するために、臨床肺癌材料の腫瘍組織マイクロアレイ分析が行われている。この系統的アプローチによって、仮にIMS-E21(URLC8: upregulated in lung caner 8としても知られる、アクセッション番号AB101210;以前のFLJ20399)と命名される新規遺伝子が、原発性NSCLCにおいて高頻度に過剰発現されることが判明した。
【0007】
URLC8遺伝子は、二本鎖RNA結合モチーフ(DSRM)ドメインをコードする。正常な組織におけるこの遺伝子の発現低下、NSCLCにおける発現上昇、およびこの遺伝子の抑制によるトランスフェクト細胞の分裂、増殖、および/または生存の低減は、共に、この遺伝子が新規診断マーカーとして、ならびに新規薬剤および免疫療法のための標的として有用である可能性があることを示唆している(国際公開公報第2004/31413号)。
【0008】
URLC8遺伝子は、染色体16q22.2に配置されており、tRNAにおけるDループ上のウリジン残基の5,6-二重結合の還元を触媒する(Xing, F. et al., RNA, (2002)8:370〜381)UPF0034(unclassified protein family 0034)のメンバーである出芽酵母(S. cerevisiae)Dus1(ジヒドロウリジンシンターゼ1)と30%の相同性を有するアミノ酸493個のタンパク質をコードし、かつ保存されたDSRM(二本鎖RNA結合モチーフ)を含む。
【0009】
5,6-ジヒドロウリジンは、古細菌(Archaea)、細菌(Bacteria)、および真核生物(Eukarya)のtRNAのDループにおいて豊富に見出される修飾塩基である。5,6-ジヒドロウリジンは、tRNA転写物におけるウリジンの還元によって転写後に形成されると考えられる。tRNAにおけるジヒドロウリジンの役割は、tRNAのコンフォメーション柔軟性を増加させることであると推定される。興味深いことに、過去に、ヒト悪性組織から精製された腫瘍特異的tRNAPheにおいてジヒドロウリジンレベルの増加が報告されたが(Kuchino, Y. and Borek, E.(1978) Nature, 271:126〜129)、その正確なメカニズムおよび腫瘍形成に対する生物学的寄与は、なお不明確である(Dalluge J.J. et al., (1996) Nucleic Acids Res, 24:1073〜1079)。
【0010】
本明細書において、本発明者らは、ヒト肺腫瘍における、新規ヒトtRNA-ジヒドロウリジンシンターゼ(DUS)タンパク質であるURLC8の同定および機能的特徴付けを報告する。本明細書における結果は、URLC8の過剰発現が、肺癌の発症/進行において重要な役割を担うこと、およびこの分子が、新規治療薬を開発するための有力な標的候補となることを示唆している。
【0011】
本発明は、肺癌細胞の増殖に関与するポリペプチドであるURLC8のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性の発見に一部基づく。
【0012】
したがって、本発明は、被験者に由来する生体試料におけるt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性および/またはt-RNAジヒドロウリジンのレベルを決定する段階を含み、正常対照レベルと比較したレベルの増加により、被験者が非小細胞肺癌を有すること、または非小細胞肺癌の発症のリスクを有することが示される、被験者における非小細胞肺癌、および非小細胞肺癌の発症に対する素因を診断する方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、肺扁平上皮癌腫(SCC)の予後を予測する方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、以下の段階を含む:
a.SCCの予後を予測すべき被験者から採取した検体におけるURLC8発現レベルを検出する段階、および
b.URLC8発現レベルの上昇が検出された場合、予後が不良であることが示される段階。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、t-RNAジヒドロウリジンの合成にとって適切な条件下でポリペプチドをインキュベートする段階、およびt-RNAジヒドロウリジン合成レベルを検出する段階によって、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を測定する方法を特徴とする。ポリペプチドは、URLC8ポリペプチドまたはその機能的同等物である。例えば、ポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含んでもよい。または、ポリペプチドは、得られたポリペプチドがSEQ ID NO:2のポリペプチドの生物活性を保持する限り、一つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失、または挿入されているSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含んでもよい。SEQ ID NO:2のポリペプチドの生物活性には、例えば、細胞増殖の促進およびt-RNAジヒドロウリジンの合成が含まれる。さらに、ポリペプチドは、SEQ ID NO:1のオープンリーディングフレームによってコードされるか、または得られたポリヌクレオチドがSEQ ID NO:2のポリペプチドの生物活性を保持するタンパク質をコードする限り、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列とストリンジェント条件(例えば低ストリンジェント条件または高ストリンジェント条件)でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる、493アミノ酸のタンパク質を含んでもよい。適切な低ストリンジェンシー条件の例には、例えば42℃、2×SSC、0.1%SDS、または好ましくは50℃、2×SSC、0.1%SDSが含まれる。好ましくは、高ストリンジェンシー条件を用いる。適切な高ストリンジェンシー条件の例には、例えば、2×SSC、0.01%SDSにおいて室温で20分間の洗浄を3回の後、1×SSC、0.1%SDSで37℃で20分間の洗浄を3回、および1×SSC、0.1%SDSにおいて50℃で20分間の洗浄を2回が含まれる。しかし、温度および塩濃度のようないくつかの要因が、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼす可能性があり、当業者は、必要なストリンジェンシーを得るための要因を適切に選択することができる。
【0015】
本発明の状況において、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性は、tRNA上のウリジン残基の5,6-二重結合の還元の触媒であると定義される(図1c)。t-RNAジヒドロウリジンの合成は、放射活性tRNA基質またはその誘導体を用いる方法のような慣例的な方法によって検出してもよい。基質は、ウリジン残基の5,6-二重結合を還元することができる任意の化合物であってよい。例示的な基質は、tRNAPheのようなDループを有するtRNAまたは他のtRNAである。補因子、例えば水素供与基は、水素原子を供与することができる任意の化合物であってよい。例えば、補因子は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の還元型またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)であってもよい。適切な合成条件には、例えばトリス-HClのような当技術分野において公知の塩基性緩衝液条件が含まれる。
【0016】
本発明はさらに、試験物質の存在下でt-RNAジヒドロウリジンの合成にとって適切な条件下でポリペプチドをインキュベートする段階、およびt-RNAジヒドロウリジン合成レベルを決定する段階によって、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を調節(例えば、増加または減少)する物質を同定する方法を提供する。正常対照合成レベルと比較した合成レベルの減少により、試験物質がt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性の阻害剤であることが示される。t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を阻害する(例えば、減少させる)化合物は、肺癌の症状を処置、予防、または緩和するために有用である。例えば、そのような化合物は、肺癌細胞の増殖を阻害する可能性がある。または、正常対照レベルと比較したレベルまたは活性の増加により、試験物質がt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性のエンハンサーであることが示される。本明細書において、「正常対照レベル」という句は、試験化合物の非存在下で検出されたt-RNAジヒドロウリジン合成レベルを指す。
【0017】
本発明はまた、上記のように同定された化合物に肺癌細胞を接触させることによって、肺癌を処置または予防するための組成物および方法をも含む。さらなる態様において、本発明は、肺癌の処置または予防に適切な薬学的組成物を製造するために、上記のように同定された化合物を使用することを提供する。例えば、肺癌を処置する方法は、哺乳動物、例えばそのような疾患状態を有すると診断されているヒト患者に上記のように同定された化合物の薬学的有効量と薬学的担体とを含む組成物を投与する段階に関し得る。
【0018】
本発明はまた、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼポリペプチドまたはポリペプチドを発現する生きている細胞を有する、化合物のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を検出するためのキット、およびt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を検出するための試薬を提供する。試薬は好ましくはキットの形で共にパッケージングされる。試薬は、異なる容器にパッケージングされてもよく、これには例えば、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼポリペプチド、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を検出するための試薬、対照試薬(陽性および/または陰性)、および/または検出可能な標識が含まれてもよい。アッセイを実行するための説明書(例えば、書面、テープ、VCR、CD-ROM等)は好ましくはキットに含まれる。キットのアッセイフォーマットは、当技術分野で公知の任意のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼアッセイを含んでもよい。
【0019】
さらなる態様において、本発明の方法は、低分子干渉RNA(siRNA)組成物を被験者に投与する段階を含み得る。本発明の状況において、siRNA組成物はURLC8の発現を減少させる。
【0020】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、添付の図面および実施例と共に以下の詳細な説明を読むことによってより十分に明白となるであろう。しかし、前述の発明の概要および以下の詳細な説明はいずれも、好ましい態様に関する記述であり、本発明、または本発明の他の代替の態様を制限しないことが理解されるべきである。
【0021】
特に明記されなければ、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記述のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実践または試験において用いることができるが、適切な方法および材料を以下に記述する。矛盾する場合は、定義を含めて本明細書が優先するであろう。さらに、材料、方法、および実施例は説明目的に限られ、制限することを意図されない。
【0022】
発明の詳細な説明
概説:
癌治療のための分子ターゲティング薬剤の開発は進歩しているが、反応する腫瘍タイプの範囲ならびに処置の有効性はなおも非常に限定されている(Ranson, M. et al.(2002) J Clin Oncol, 20:2240〜2250;Blackledge, G. and Averbuch, S.(2004) Br J Cancer 90:566〜572)。したがって、有害反応が最小であるかまたはない、悪性細胞に対して非常に特異的な新規抗癌物質を開発することが急務である。これらの目標に向けた効果的な戦略とは、cDNAマイクロアレイにおいて得られた遺伝子情報に基づく癌細胞においてアップレギュレートされた遺伝子のスクリーニングと、RNAiシステムによって機能喪失表現型を誘導することによって得られた細胞増殖に及ぼすそれらの効果のハイスループットスクリーニングと組み合わせること、および組織マイクロアレイにおいて数百の臨床試料を分析することにより得られた薬物標的候補の検証と組み合わせることであろう(Sauter, G. et al.(2003) Nat Rev Drug Discov, 2:962〜972;Kononen, J. et al.(1998) Nat Med, 4:844〜847)。そのような戦略を追求することによって、本発明者らは、本明細書において、IMS-E21(URLC8)が臨床NSCLC試料および細胞株においてしばしば共過剰発現されているのみならず、疾患の進行ならびにNSCLC細胞の増殖のために遺伝子産物の高レベルの発現が不可欠であることを証明した。
【0023】
IMS-E21(URLC8)は染色体16q22.2に配置され、tRNA上のウリジン残基の5,6-二重結合の還元を触媒する(Xing, F., et al.(2002) RNA, 8:370〜381)UPF0034(unclassified protein family 0034)のメンバーである出芽酵母ジヒドロウリジンシンターゼ1(DUS1)と30%の相同性を有し、保存された二本鎖RNA結合モチーフDSRMを有する、493アミノ酸のタンパク質をコードする。いくつかの研究から、tRNAの改変が構造の安定化を増強することが判明している(Bjork, G.R., et al., (1987) Annu Rev Biochem, 56:263〜287)。対照的に、局所安定性をおそらく減少させて、個々のヌクレオチド残基のコンフォメーションの柔軟性を促進する修飾にはそれほど注意が払われてこなかった。ジヒドロウリジンは、細菌および真核生物由来のtRNAにおける翻訳後修飾の単一の最も一般的な型である(Sprinzl, M. et al., (1998) Nucleic Acids Res, 26:148〜153)。tRNAのループに5,6-ジヒドロウリジンが広範に存在することは、数十年間前から公知であり、いくつかのDUS酵素が出芽酵母および大腸菌において同定されているが、哺乳動物細胞において二本鎖RNA結合モチーフを有するDUS酵素は、これまで同定されていなかった(Xing, F., et al., (2002) RNA, 8:370〜381;Kuchino, Y. and Borek, E.(1978) Nature, 271:126〜129)。
【0024】
腫瘍細胞でのtRNAにおけるジヒドロウリジンに関して、興味深いことに、ヒト悪性組織から精製された腫瘍特異的tRNAPheにおける、ジヒドロウリジンレベルの増加が以前に報告された。tRNAにおけるジヒドロウリジンの役割は、tRNAのコンフォメーションの柔軟性を増加させる可能性があるが、その正確な機能はなおも不明確である。IMS-E21(URLC8)の生物学的機能および肺の発癌に対するその関与を解明するために、LC319細胞におけるIMS-E21(URLC8)タンパク質の細胞内局在を試験したところ、ERに局在することが見出された。ヒトNSCLC細胞におけるtRNA-DUS活性のために未変性IMS-E21(URLC8)タンパク質が必要であるか否かを明確にするために、IMS-E21(URLC8)-siRNAベクターを、IMS-E21(URLC8)遺伝子が高度に発現されているA549およびLC319細胞株にトランスフェクトした。それらの肺癌細胞において、内因性のIMS-E21(URLC8)発現はsiRNAによって有意に抑制され、tRNA-DUS活性は低減し、癌細胞の増殖の抑制が引き起こされた。本明細書の結果は、IMS-E21(URLC8)がNSCLC細胞のtRNA-ジヒドロウリジンの合成において重要な役割を果たす可能性を有し、おそらく、翻訳プロセスにとって必須であること、および過剰発現された場合、NSCLC細胞の増殖および生存にとって必須であることを示唆している。本明細書のデータは、IMS-E21(URLC8)を特異的に阻害する新規抗癌剤を設計する可能性を強く暗示している。IMS-E21(URLC8)酵素活性および/またはIMS-E21(URLC8)-tRNAシンテターゼ複合体のターゲティングは、肺癌患者の処置に関する有望な治療的および診断的戦略となる可能性がある。
【0025】
URLC8およびその機能的同等物ならびにその用途:
本明細書において、本明細書において用いられる用語「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」は、特に明記していなければ「少なくとも一つ」を意味する。
【0026】
上記のように、本発明は、肺癌細胞の増殖に関与する新規t-RNAジヒドロウリジンシンターゼであるURLC8の発見に一部基づいている。本発明はまた、URLC8の高い発現レベルが肺扁平上皮癌(SCC)患者における予後不良に関連するという知見にも基づいている。本明細書に提供された根拠を考慮すると、URLC8発現は、癌患者の予後不良に関連しており、本発明はしたがって、癌患者の予後を決定するための方法を提供する。そのような方法の例は以下の段階を含む:
a.SCCの予後が予測されるべき被験者から採取した検体におけるURLC8発現レベルを検出する段階、および
b.URLC8発現レベルの上昇が検出された場合、予後が不良であることが示される段階。
【0027】
本発明の状況において、試験検体において検出されたURLC8発現レベルが対照レベルより高い場合、試験検体は上昇したURLC8発現レベルを有するとみなされる。本発明の状況において有用な対照レベルの例は、良好な予後に関連する群から収集したURLC8発現レベルの標準値を含んでもよい。標準値は、当技術分野で公知の任意の方法によって得ることができる。例えば、平均値±2S.D.または平均値±3S.D.の範囲を、標準値として用いてもよい。または、試料組織の免疫組織化学分析によって強い染色が観察された場合に、予後不良を決定することができる。
【0028】
本発明の状況において、URLC8の発現レベルは、以下からなる群より選択される方法の任意の一つによって検出し得る:
(a)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列をコードするmRNAを検出する段階;
(b)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する段階;および
(c)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むタンパク質の生物活性を検出する段階。
【0029】
本発明の状況において、mRNA、タンパク質、またはタンパク質の生物活性は任意の方法によって検出してよい。所定のタンパク質、mRNA、またはその生物活性を検出する方法は当業者に周知である。例えば、mRNAは公知のPCR、またはハイブリダイゼーションに基づく技術を用いて検出してもよい。または、タンパク質の検出のために任意のイムノアッセイフォーマットを適用してもよい。さらに、URLC8の生物活性、例えばt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性、またはEPRSとの相互作用も同様に、本明細書に記述の方法のような、任意の適切なアッセイ法を用いて検出してもよい。
【0030】
本発明の状況において、予後不良の決定を用いて、さらなる処置、例えばクオリティオブライフを低減させるさらなる処置の中止、以前に用いられた方法と異なる方法での癌の処置、またはより積極的な癌の処置を決定してもよい。言い換えれば、URLC8による予後の予測によって、臨床医は、組織サンプリングに関するごく日常的な技法を用いて、慣例的な疾患の臨床的進行段階の情報を得ることなく、個々のSCC患者に対する最も適当な処置を予め選択することができる。
【0031】
さらに、本発明の方法を用いて、処置の経過の有効性を評価してもよい。例えば、生体試料が上昇したURLC8発現レベルを有することが見出された癌を有する哺乳動物において、抗癌処置の有効性を、URLC8発現レベルを経時的にモニターすることによって評価することができる。例えば、処置開始前、または処置の初期に哺乳動物から採取した試料において観察されたレベルと比較して、処置の経過後の哺乳動物から採取した生体試料においてURLC8発現レベルが減少すれば、処置が有効であることが示され得る。
【0032】
上記のように、本発明はまた、以下からなる群より選択される任意の一つの成分を含む、肺扁平上皮癌(SCC)の予後を予測するためのキットを提供する:
(a)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列をコードするmRNAを検出するための試薬;
(b)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むタンパク質を検出するための試薬;および
(c)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むタンパク質の生物活性を検出するための試薬。
【0033】
URLC8は、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を有し、その発現レベルは、非肺癌組織と比較して肺癌細胞において顕著に上昇している。したがって、URLC8媒介性t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性は、肺癌、例えば非小細胞肺癌の診断パラメーターとして有用である。したがって、本発明は、被験者に由来する生体試料におけるt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性および/またはt-RNAジヒドロウリジンのレベルを決定する段階を含み、正常な対照レベルと比較した該レベルの増加により、該被験者が非小細胞肺癌を有すること、または非小細胞肺癌の発症のリスクを有することが示される、被験者において非小細胞肺癌または非小細胞肺癌の発症に対する素因を診断する方法を提供する。細胞におけるt-RNAジヒドロウリジンの蓄積は、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性の存在の反映である。このように、細胞内t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性は、細胞におけるt-RNAジヒドロウリジンの測定を通して評価することができる。t-RNAジヒドロウリジンは、当技術分野で公知の任意の方法によって測定してもよい。例えば、t-RNAジヒドロウリジンは、N-フェニル-p-フェニレンジアミンおよび2,3-ブタジオンモノキシムを用いる比色アッセイを通して測定することができる(Jacobson, M. and Hedgcoth, C.(1970) Anal Biochem, 34:459〜469)。本発明において、診断される患者に由来する任意の試料を用いてよい。本発明の状況において用いるために好ましい試料の例は、生検または外科的切除によって得られた肺組織である。
【0034】
本発明はまた、URLC8のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼを検出するためのキットを提供する。そのようなキットの成分の例には、基質としてDループを有するt-RNA、例えば、t-RNAPheまたは他のt-RNA(t-RNATyrおよびt-RNAGluを除く)、URLC8に結合する抗体、および細胞における抗体を検出するための検出可能な標識が含まれる。
【0035】
URLC8は、SEQ ID NO:1に記載の1,479ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを含む2,020ヌクレオチドからなる。オープンリーディングフレームは、SEQ ID NO:2に記載のアミノ酸配列を有する493アミノ酸のタンパク質をコードする。アミノ酸配列は、出芽酵母Dus1(ジヒドロウリジンシンターゼ1)と30%の相同性を示し、UPF0034(unclassified protein family 0034)のメンバーであり、保存されたDSRM(二本鎖RNA結合モチーフ)を含む。出芽酵母Dus1は、tRNAにおけるDループ上のウリジン残基の5,6-二重結合の還元を触媒する(Xing, F., et al., (2002) RNA, 8:370〜381)。URLC8は、主に細胞質に局在して、ERに豊富なタンパク質PDIと共局在する。
【0036】
本発明はまた、URLC8がt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を有するという知見にも基づいている。その目的のため、本発明の一つの局面は、URLC8媒介性t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を調節する試験化合物を同定する段階に関する。したがって、本発明は、URLC8媒介性t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を阻害することによって、例えば非小細胞肺癌の進行を遅らせるかまたは停止させる化合物を同定する新規な方法を提供する。
【0037】
本発明はこのように、URLC8 t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。方法は、URLC8、またはt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を有するその機能的同等物を、一つまたは複数の候補化合物に接触させる段階、および接触させたURLC8または機能的同等物のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性をアッセイする段階によって実施される。URLC8またはその機能的同等物のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を調節する化合物が、それによって同定される。
【0038】
本発明の状況において、「機能的同等物」という用語は、対象のタンパク質がt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を有することを意味する。対象のタンパク質が標的活性を有するか否かは、本発明に従って決定することができる。例えば、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性は、t-RNAジヒドロウリジンの合成にとって適切な条件下でポリペプチドをインキュベートする段階、およびt-RNAジヒドロウリジン合成レベルを検出する段階によって、決定することができる。
【0039】
所定のタンパク質に対して機能的に同等であるタンパク質を調製する方法は、当業者に周知であり、これには、タンパク質に変異を導入する慣例的な方法が含まれる。例えば、当業者は、部位特異的変異誘発を介してヒトURLC8タンパク質のアミノ酸配列に適切な変異を導入することによって、ヒトURLC8タンパク質に対して機能的に同等であるタンパク質を調製することができる(Hashimoto-Gotoh, T. et al., (1995), Gene 152, 271〜275;Zoller, MJ, and Smith, M.(1983), Methods Enzymol. 100, 468〜500;Kramer, W. et al., (1984), Nucleic Acids Res.12, 9441〜9456;Kramer W, and Fritz HJ.(1987) Methods. Enzymol. 154, 350〜367;Kunkel, TA(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488〜492;Kunkel(1991), Methods Enzymol. 204, 125〜139)。アミノ酸変異は天然においても起こりうる。本発明の状況において用いるために適切なタンパク質には、得られた変異タンパク質がヒトURLC8タンパク質と機能的に同等である条件で、一つまたは複数のアミノ酸が変異しているヒトURLC8タンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質が含まれる。そのような変異体において変異させるアミノ酸の数は一般的に25アミノ酸またはそれ未満、好ましくは10〜15アミノ酸またはそれ未満、より好ましくは5〜6アミノ酸またはそれ未満、およびさらにより好ましくは2〜3アミノ酸またはそれ未満である。t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を維持するために、変異タンパク質のアミノ酸配列におけるDSRM(二本鎖RNA結合モチーフ)を保存することが好ましい。
【0040】
変異または改変されたタンパク質、特定のアミノ酸配列の一つまたは複数のアミノ酸残基を欠失、付加、および/または置換することによって改変されたアミノ酸配列を有するタンパク質は、当初の生物学的活性を保持することが公知である(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81: 5662〜5666; Zoller, M. J. & Smith, M., Nucleic Acids Research (1982) 10: 6487〜6500; Wang, A. et al., Science (1984) 224: 1431〜1433; Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79: 6409〜6413)。
【0041】
変異されるアミノ酸残基は、好ましくは、アミノ酸側鎖の特性が保存される異なるアミノ酸に変異される(「保存的アミノ酸置換」として当技術分野で公知の過程)。アミノ酸側鎖の特性の例は、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、および以下の官能基または共通の特徴を有する側鎖:脂肪族側鎖(G、A、V、L、I、P);ヒドロキシル基含有側鎖(S、T、Y);硫黄原子含有側鎖(C、M);カルボン酸およびアミド含有側鎖(D、N、E、Q);塩基含有側鎖(R、K、H);ならびに芳香族含有側鎖(H、F、Y、W)である。括弧内の文字はアミノ酸の一文字コードを示すことに注意されたい。
【0042】
一つまたは複数のアミノ酸残基がヒトURLC8タンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID NO:2)に付加されるタンパク質の例は、ヒトURLC8タンパク質を含む融合タンパク質である。本発明の状況における使用に適切な融合タンパク質は、例えばヒトURLC8タンパク質と他のペプチドまたはタンパク質との融合体を含む。融合タンパク質は、当業者に周知の技術を用いて、例えば本発明のヒトURLC8タンパク質をコードするDNAを、他のペプチドまたはタンパク質をコードするDNAに、フレームが一致するように連結させ、融合DNAを発現ベクターに挿入し、宿主でそれを発現させることによって作製することができる。本発明のタンパク質に融合させるペプチドまたはタンパク質に関して制限はない。
【0043】
URLC8タンパク質に融合されるペプチドとして用いることができる公知のペプチドには、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., (1988) Biotechnology 6: 1204〜1210)、6個のHis残基を含む6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-myc断片、VSP-GP断片、p18HIV断片、T7-タグ、HSV-タグ、E-タグ、SV40T抗原断片、lckタグ、α-チューブリン断片、B-タグ、プロテインC断片等が含まれる。本発明のタンパク質に融合し得るタンパク質の例には、GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)、インフルエンザ凝集素(HA)、免疫グロブリン定常領域、β-ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が含まれる。
【0044】
融合タンパク質は、上記の融合ペプチドまたはタンパク質をコードする市販のDNAを、本発明のタンパク質をコードするDNAと融合させて、調製された融合DNAを発現させることによって調製することができる。
【0045】
機能的に同等なタンパク質を単離するための当技術分野で公知のもう一つの方法は、例えば、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook, J. et al., (1989) Molecular Cloning 2nd ed. 9.47〜9.58, Cold Spring Harbor Lab. Press)を用いる方法である。当業者は、ヒトURLC8タンパク質をコードするURLC8 DNA配列(例えば、SEQ ID NO:1)の全て、または一部と高い相同性を有するDNAを容易に単離することができ、単離されたDNAからヒトURLC8タンパク質と機能的に同等なタンパク質を単離することができる。本発明のタンパク質には、ヒトURLC8タンパク質をコードするDNA配列の全てまたは一部とハイブリダイズするDNAによってコードされるタンパク質、およびヒトURLC8タンパク質と機能的に同等であるタンパク質が含まれる。これらのタンパク質には、ヒトまたはラットに由来するタンパク質に対応する哺乳類相同体が含まれる(例えば、サル、マウス、ウサギ、およびウシ遺伝子によってコードされるタンパク質)。ヒトURLC8タンパク質をコードするDNAと高い相同性を示すcDNAを動物から単離する場合、精巣、または肺癌由来の組織を用いることが特に好ましい。
【0046】
ヒトURLC8タンパク質と機能的に同等であるタンパク質をコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーション条件は、当業者によって日常的に選択されうる。例えば、ハイブリダイゼーションは、「Rapid-hyb緩衝液」(Amersham LIFE SCIENCE)を用いて、68℃で30分またはそれ以上プレハイブリダイゼーションを行って、標識したプローブを加え、かつ68℃で1時間またはそれ以上加温することによって行ってもよい。例えば低ストリンジェンシー条件に関して、以下の洗浄段階を行うことができる。例示的な低ストリンジェンシー条件には、例えば、42℃、2×SSC、0.1%SDS、または好ましくは50℃、2×SSC、0.1%SDSが含まれる。より好ましくは、高ストリンジェンシー条件が選択される。例示的な高ストリンジェンシー条件には、例えば、2×SSC、0.01%SDSにおいて室温で20分間の洗浄を3回の後に、1×SSC、0.1%SDSにおいて37℃で20分間の洗浄を3回、および1×SSC、0.1%SDSにおいて50℃で20分間の洗浄を2回が含まれる。しかし、温度および塩濃度のようないくつかの要因がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を及ぼしうる。必要なレベルのストリンジェンシーを得るために必要な要因の選択は、当業者の視野の範囲内にある日常的な最適化の構成要素である。
【0047】
ハイブリダイゼーションの代わりに、遺伝子増幅法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用して、ヒトURLC8タンパク質(SEQ ID NO:2)をコードするDNA(SEQ ID NO:1)の配列情報に基づいて合成されたプライマーを用いて、ヒトURLC8タンパク質と機能的に同等のタンパク質をコードするDNAを単離することができる。
【0048】
上記のハイブリダイゼーション技術または遺伝子増幅技術を通して単離されたDNAによってコードされる、ヒトURLC8タンパク質と機能的に同等であるタンパク質は、通常、ヒトURLC8タンパク質のアミノ酸配列と高い相同性を有する。本発明の状況において、「高い相同性」という用語は、40%またはそれより高い相同性、好ましくは60%またはそれより高い相同性、より好ましくは80%またはそれより高い相同性、さらにより好ましくは95%またはそれより高い相同性を指す。タンパク質の相同性は、「Wilbur, W.J. and Lipman, D.J.(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, 726〜730」におけるアルゴリズムに従うことによって決定されうる。
【0049】
本発明の状況において有用なタンパク質は、その産生のために用いられる細胞もしくは宿主または用いる精製方法に依存して、アミノ酸配列、分子量、等電点、糖鎖の有無または形態に関して差異がある可能性がある。しかしながら、それがヒトURLC8タンパク質(SEQ ID NO:2)の機能と同等の機能を有する限り、それは本発明の状況において有用である。
【0050】
本発明の状況において有用なタンパク質は、当業者に周知の方法によって、組換え型タンパク質または天然のタンパク質として調製することができる。組換え型タンパク質は、例えば本発明のタンパク質をコードするDNA(例えば、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を含むDNA)を、適当な発現ベクターに挿入し、ベクターを適当な宿主細胞に導入し、抽出物を得、かつ抽出物にクロマトグラフィー、例えばイオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過、または本発明のタンパク質に対する抗体を固定したカラムを利用するアフィニティクロマトグラフィーを行うか、または上記のカラムの複数を組み合わせることにより、タンパク質を精製することによって調製され得る。
【0051】
加えて、本発明の状況において有用なタンパク質が宿主細胞(例えば、動物細胞および大腸菌(E.coli))内において、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタンパク質との融合タンパク質として、または多数のヒスチジンを加えた組換え型タンパク質として発現する場合、発現された組換え型タンパク質は、グルタチオンカラムまたはニッケルカラムを用いて精製することができる。
【0052】
融合タンパク質を精製した後、必要に応じてトロンビンまたは第Xa因子による切断によって、目的とするタンパク質以外の領域を除去することも可能である。
【0053】
天然のタンパク質は、当業者に公知の方法、例えば下記のURLC8タンパク質に結合する抗体を結合させたアフィニティカラムを、本発明のタンパク質を発現する組織または細胞の抽出物に接触させることによって単離することができる。抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。
【0054】
本発明において、URLC8またはその機能的同等体のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性は、当技術分野において公知の方法によって決定されうる。例えば、URLC8および基質、例えばDループを有するtRNAを、t-RNAジヒドロウリジン合成にとって適切なアッセイ条件下で、水素供与体と共にインキュベートすることができる。本発明において、t-RNAジヒドロウリジンの合成に関する例示的な条件には、基質、水素供与体をt-RNAジヒドロウリジンシンターゼまたは試料に接触させる段階、およびそれらをインキュベートする段階が含まれる。tRNAPheおよびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの還元型(NADH)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)はそれぞれ、適切な基質および水素供与体の例である。好ましくは、基質または供与体の水素原子は、t-RNAジヒドロウリジンを追跡するために標識される。具体的には、本発明の状況において、放射標識tRNAは好ましい基質である。還元された放射標識tRNA(t-RNAジヒドロウリジン)は、任意の適切な方法によって検出されてよい。水素原子を付加することによるtRNAの分子量の増加を、例えば、適切なクロマトグラフィー、例えば薄層クロマトグラフィーによって検出することができる。例えば、t-RNAジヒドロウリジン合成にとって適切な条件を以下に記載する:
反応混合物:
100 mMトリス-HCl(pH 8.0)、
100 mM酢酸アンモニウム、
5 mM MgCl2
2 mM DTT、
0.1 mM EDTA、
1 mM NADPH、
1 mM NADH、および
50,000 cpmのtRNA(6 fmol)の標識転写物
【0055】
反応混合物を、決定されるべきt-RNAジヒドロウリジンシンターゼを含む試料と混合して、30℃で30分間インキュベートする。滴定アッセイにおいて、抽出物および精製タンパク質を、好ましくは50 mMトリス-HCl、pH 8.0、250 μg/mlウシ血清アルブミン、および2 mM DTTを含む緩衝液において希釈する。いくつかのアッセイにおいて、250 μMフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)も同様に含まれてもよい。インキュベーション後、RNAを混合物から抽出して、P1ヌクレアーゼによって処理する。次に、硫酸アンモニウム(74 g/100 ml H2O 、pH 3.5):H2O:イソプロパノール(80:18:2、v/v/v)を含む溶媒により一次元で展開したセルロースプレート、または一次元目は1 M酢酸、pH 3.5により、かつ二次元目は74 g硫酸アンモニウム/100 ml H2O(H2SO4によってpH 3.5に調整)を含む緩衝液により、二次元で展開したPEI-セルロースプレート(Bochner & Ames, (1982) J Biol Chem 257:9759〜9769)のいずれかを用いる薄層クロマトグラフィーによって、ヌクレオチドを分解する。滴定アッセイにおいて、活性1 Uは、tRNAの半分を変換するために必要なタンパク質の量であると定義される。
【0056】
または、URLC8のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性は、t-RNAジヒドロウリジンの蓄積に基づいて評価することができる。t-RNAジヒドロウリジンは、比色法によって検出することができる。さらに、URLC8のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性は、反応の際に消費されたNADHおよび/またはNADPHによって決定することができる。NADHおよび/またはNADPHを決定するための適切な方法が当業者に周知である。または、反応後、tRNAおよび還元型tRNAのいずれかまたは双方を、質量分析、例えばMALDI-TOF-MSによって検出することができる。
【0057】
様々なロースループットおよびハイスループット酵素アッセイフォーマットが当技術分野において公知であり、URLC8のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性の検出または測定のために容易に適合させることができる。ハイスループットアッセイに関して、tRNA基質を好ましくは、マルチウェルプレート、スライドガラス、またはチップのような固相支持体に固定する。反応後、還元された産物(t-RNAジヒドロウリジン)を固相支持体上で検出することができる。または、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ反応は、溶液中で行うことができ、その後t-RNAジヒドロウリジンを固相支持体に固定し、かつ検出することができる。tRNAの還元を検出するために、例えばH3標識NADHおよび/またはNADPHを水素供与体として用いてもよい。還元された産物(t-RNAジヒドロウリジン)を、放射活性H3によって追跡することができる。そのようなアッセイを容易とするために、固相支持体をストレプトアビジンによってコーティングして、t-RNAをビオチンによって標識してもよい。当業者は、スクリーニングの所望の処理能力に応じて適切なアッセイフォーマットを決定することができる。
【0058】
細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産物、海洋生物由来の抽出物、植物抽出物、精製または粗タンパク質、ペプチド、非ペプチド化合物、合成マイクロ分子(micromolecular)化合物、および天然化合物が含まれるがそれらに限定されない任意の試験化合物を、本発明のスクリーニング法において用いることができる。本発明の試験化合物はまた、(1)生物ライブラリ、(2)空間的に位置特定可能な平行固相または液相ライブラリ、(3)デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ法、(4)「1ビーズ、1化合物」ライブラリ法、および(5)アフィニティクロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリ法を含む、当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリ法における多数の任意のアプローチを用いて得ることができる。アフィニティクロマトグラフィー選択を用いる生物ライブラリ法は、ペプチドライブラリに限定されるが、他の四つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー、または低分子化合物ライブラリに適用可能である(Lam(1997) Anticancer Drug Des. 12:145)。分子ライブラリの合成法の例は、当技術分野において見出されうる(DeWitt et al.(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909;Erb et al.(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422;Zuckermann et al.(1994) J. Med. Chem. 37:2678;Cho et al.(1993) Science 261:1303;Carell et al.(1994) Angrew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059;Carell et al.(1994) Angrew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;Gallop et al.(1994) J. Med. Chem. 37:1233)。化合物のライブラリは、溶液中(Houghten(1992) Bio/Techniques 13:412)またはビーズ上(Lam(1991) Nature 354:82)、チップ上(Fodor(1993) Nature 364:555)、細菌上(米国特許第5,223,409号)、胞子上(米国特許第5,571,698号、第5,403,484号、および第5,223,409号)、プラスミド上(Cull et al.(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865)、またはファージ上(Scott and Smith(1990) Science 249:386;Devlin(1990) Science 249:404;Cwirla et al.(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378;Felici(1991) J. Mol. Biol. 222:301;米国特許出願第2002103360号)において存在し得る。
【0059】
本発明のスクリーニング法によって単離された化合物は、URLC8のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を阻害する薬物の候補であり、NSCLCの処置または予防に適用することができる。
【0060】
さらに、URLC8のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を阻害する化合物の構造の一部が、付加、欠失、および/または置換によって変換された化合物も同様に、本発明のスクリーニング法によって得られる化合物に含まれる。
【0061】
肺癌の処置および予防:
本発明は、本発明のスクリーニング法によって選択される任意の化合物を含む、NSCLCを処置または予防するための組成物を提供する。
【0062】
本発明の方法によって単離された化合物を、ヒトおよび他の哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、およびチンパンジーに対して製剤として投与する場合、単離された化合物を直接投与してもよく、または慣例的な薬学的調製法を用いて剤形に製剤化してもよい。例えば、必要に応じて、薬剤を糖衣錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、およびマイクロカプセルとして経口投与することもでき、または水もしくは他の任意の薬学的に許容される液体との滅菌溶液もしくは懸濁液である注射剤の形態として非経口的に投与することもできる。例えば、化合物を、一般に認められる薬剤の実現のために必要な単位用量の形で、薬学的に許容される担体または媒体、具体的には滅菌水、生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、媒質、保存料、結合剤などと混合することができる。これらの製剤における有効成分の量により、指定された範囲内にある適した投与量が得られる。
【0063】
錠剤およびカプセル剤を形成するために混合し得る添加剤の例には、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴムおよびアラビアゴムなどの結合剤;結晶セルロースなどの媒質;コーンスターチ、ゼラチンおよびアルギン酸などの膨潤剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;スクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味料;ならびにペパーミント、冬緑油、およびチェリーなどの香味剤が含まれる。単位用量剤形がカプセル剤である場合、油などの液体担体も上記の成分にさらに含めることができる。注射用の滅菌混合物は、通常の薬剤の実現に倣って、注射用の蒸留水などの媒体を用いて製剤化することができる。
【0064】
生理食塩水、グルコース、ならびにD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトールおよび塩化ナトリウムなどのアジュバントを含むその他の等張液を、注射用の水溶液として用いることができる。これらは適した可溶化剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなどの多価アルコール、Polysorbate 80(商標)およびHCO-50などの非イオン性界面活性剤などと組み合わせて用いることができる。
【0065】
ゴマ油またはダイズ油は適切な油脂性液体の例であり、これらを可溶化剤としての安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールと組み合わせて用いることもできる。さらにこれらをリン酸緩衝液または酢酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液;塩酸プロカインなどの鎮痛薬;ベンジルアルコールまたはフェノールなどの安定剤;ならびに抗酸化剤と共に製剤化することもできる。調製された注射剤は適したアンプルに充填することができる。
【0066】
本発明の薬学的組成物を、例えば動脈内注射、静脈内注射、または皮下注射として、および同じく鼻腔内投与、経気管支投与、筋肉内投与または経口投与として患者に投与するために、当業者に周知の方法を用いることができる。投与量および投与方法は患者の体重および年齢ならびに選択された投与方法に応じて異なり得る。しかしながら、当業者はルーチン的に適切な投与方法および投与量を選択することができる。前記化合物がDNAによってコードされ得る場合、DNAを遺伝子治療用のベクターに挿入し、治療を行うためにそのベクターを患者に投与することができる。投与量および投与方法はまた、患者の体重、年齢および症状に応じて異なり得るが、当業者はそれらを適切に選択することができる。
【0067】
例えば、URLC8と結合してその活性を調節する化合物の投与量は、その症状に依存するとはいえ、標準的な成人(体重60 kg)に対して経口投与する場合、適切な投与量は、一般的に、約0.1 mg〜約100 mg/日、好ましくは約1.0 mg〜約50 mg/日、およびより好ましくは約1.0 mg〜約20 mg/日である。
【0068】
標準的な成人(体重60 kg)に対して注射剤の形態として非経口的に投与する場合、患者、標的臓器、症状および投与方法に応じて若干の違いはあるものの、約0.01 mg〜約30 mg/日、好ましくは約0.1〜約20 mg/日、およびより好ましくは約0.1〜約10 mg/日の用量を静脈注射することが好都合である。同じく、他の動物の場合にも、体重60 kgに換算した量を投与することが可能である。
【0069】
本発明はさらに、対象におけるNSCLCを治療するための方法を提供する。投与は、URLC8の異常なt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性と関連する障害に対するリスクのある(もしくは感受性のある)またはそのような障害を有する対象に対して、予防的または治療的に行うことができる。本方法は、非小細胞肺癌(NSCLC)細胞におけるURLC8の機能を低下させる段階を含む。機能は、本発明のスクリーニング方法によって得られた化合物の投与によって阻害することができる。
【0070】
同様に、URLC8遺伝子に対するsiRNAを用いて発現レベルを低減させることができる。本明細書において、「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を防止する二本鎖RNA分子を指す。DNAがsiRNAの転写される鋳型である技術を含む、siRNAを細胞に導入するための標準的な技術が用いられる。本発明の状況において、siRNAは、センス核酸配列およびURLC8に対するアンチセンス核酸配列を含む。本発明のsiRNA法は、細胞においてアップレギュレートされたNSCLC遺伝子の発現、例えば細胞の悪性のトランスフォーメーションに起因するアップレギュレーションを変化させるために用いることができる。標的細胞においてURLC8に対応する転写物にsiRNAが結合することにより、細胞によるタンパク質産生の低減が起こる。オリゴヌクレオチドの長さは好ましくは少なくとも10ヌクレオチドであり、天然に存在する転写物と同じ長さであってもよい。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、長さが約19〜25ヌクレオチドである。より好ましくは、オリゴヌクレオチドは長さが75ヌクレオチド未満、50ヌクレオチド未満、または25ヌクレオチド未満である。A549およびLC319細胞において発現を阻害するURLC8 siRNAオリゴヌクレオチドの例には、SEQ ID NO:11を含む標的配列が含まれる。
【0071】
本発明のsiRNAは、単一の転写物が、標的遺伝子由来のセンス配列および相補的アンチセンス配列の双方を有するように、例えばヘアピンとして構築することができる。
【0072】
URLC8のsiRNAは標的mRNAにハイブリダイズし、それによって通常は一本鎖のmRNA転写物に結合し、それにより翻訳を、したがってタンパク質の発現を妨害することにより、URLC8ポリペプチドの産生を減少させまたは阻害する。siRNAの阻害活性を増強するために、標的配列のアンチセンス鎖の3'末端にヌクレオチド「u」を付加することができる。付加される「u」の数は、少なくとも2個、一般的に2〜10個、好ましくは2〜5個である。付加された「u」は、siRNAのアンチセンス鎖の3'末端で一本鎖を形成する。
【0073】
URLC8のsiRNAは、mRNA転写物に結合することができる形で細胞に直接導入することができる。または、siRNAをコードするDNAをベクターにおいて運搬してもよい。
【0074】
ベクターは、例えばURLC8遺伝子標的配列を、双方の鎖を(DNA分子の転写によって)発現させるように配列に隣接する機能的に結合した調節配列を有する発現ベクターにクローニングすることによって産生してもよい(Lee, N.S. et al., (2002) Nature Biotechnology 20:500〜505)。URLC8遺伝子のmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子を第一のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの3'のプロモーター配列)によって転写し、URLC8遺伝子のmRNAに対してセンス鎖であるRNA分子を第二のプロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5'のプロモーター配列)によって転写する。センス鎖およびアンチセンス鎖はインビボでハイブリダイズして、URLC8遺伝子をサイレンシングするためのsiRNA構築物を生成する。または、二つの構築物を利用して、siRNA構築物のセンス鎖およびアンチセンス鎖を作製することができる。クローニングされたURLC8遺伝子は、二次構造、例えば単一の転写物が標的遺伝子由来のセンス鎖および相補的アンチセンス配列の双方を有するヘアピンを有する構築物をコードすることができる。
【0075】
ヘアピンループ構造を形成するために、任意のヌクレオチド配列からなるループ配列を、センス配列とアンチセンス配列との間に配置することができる。このように、本発明はまた、一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有するsiRNAを提供し、式中[A]はSEQ ID NO:11のヌクレオチドからなる群より選択される配列に対応するリボヌクレオチド配列である。
[B]は3〜23ヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり;かつ
[A']は、[A]の相補的配列からなるリボヌクレオチド配列である。領域[A]は[A']とハイブリダイズし、そして領域[B]からなるループが形成される。ループ配列は、好ましくは長さが3〜23ヌクレオチドであってもよい。ループ配列は、例えば以下の配列(http://www.ambion.com/techlib/tb/tb_506.html)からなる群より選択されうる。さらに、23ヌクレオチドからなるループ配列も同様に活性なsiRNAを提供する(Jacque, J.M., et al., (2002)Nature 418:435〜438)。
【0076】
CCC、CCACC、またはCCACACC:Jacque, J.M., et al., (2002) Nature 418:435〜438。
UUCG:Lee, N.S. et al., (2002) Nature Biotechnology 20:500〜505;Fruscoloni, P., et al., (2003)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:1639〜1644。
UUCAAGAGA:Dykxhoorn, D.M., (2003)Nature Reviews Molecular Cell Biology 4:457〜467。
【0077】
本発明のヘアピンループ構造を有する好ましいsiRNAの例を下記に示す。以下の構造において、ループ配列は、CCC、UUCG、CCACC、CCACACC、およびUUCAAGAGAからなる群より選択されうる。好ましいループ配列はUUCAAGAGA(DNAにおける「ttcaagaga」)である。本発明の状況において用いるために適切な例としてのヘアピンsiRNAには以下が含まれる:
ugaggugcucagcacagug-[b]-cacugugcugagcaccuca (SEQ ID NO:10の標的配列)
guuggcacagccuguguau-[b]-auacacaggcugugccaac (SEQ ID NO:11の標的配列)
【0078】
URLC8遺伝子に隣接する調節配列は、それらの発現が独立に、または時間的もしくは空間的様式で調節されうるように、同一であるかまたは異なりうる。siRNAは、URLC8遺伝子鋳型を、例えば低分子核RNA(snRNA)U6またはヒトH1 RNAプロモーター由来のRNAポリメラーゼIII転写単位を含むベクターにクローニングすることによって、細胞内で転写される。ベクターを細胞に導入するために、トランスフェクション増強剤を用いることができる。FuGENE6(Roche diagnostics)、Lipofectamine 2000(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)およびNucleofector(Wako pure Chemical)は、トランスフェクション増強剤として有用である。
【0079】
本発明のsiRNAは、本発明のポリペプチドの発現を阻害して、それによって本発明のポリペプチドの生物活性を抑制するために有用である。同様に、本発明のsiRNAを含む発現阻害物質は、それらが本発明のポリペプチドの生物活性を阻害することができるという点において有用である。したがって、siRNAのような本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む組成物は、NSCLCを処置するために有用である。
【0080】
このように、本発明は、標的配列としてヌクレオチド配列
5’-TGAGGTGCTCAGCACAGTG-3’ (SEQ ID NO:10)、および
5’-GTTGGCACAGCCTGTGTAT-3’ (SEQ ID NO:11)
を含む、URLC8遺伝子に対する低分子干渉RNA(siRNA)の薬学的有効量を含む、非小細胞肺癌(NSCLC)を処置または予防するための組成物を提供する。または、本発明はさらに、低分子干渉RNAの薬学的有効量を投与する段階を含む、NSCLCを処置または予防するための方法をさらに提供する。
【0081】
URLC8の過剰発現を特徴とする腫瘍を有する患者は、URLC8-siRNAを投与することによって処置してもよい。siRNA治療は、非小細胞肺癌(NSCLC)を有する、または非小細胞肺癌の発症のリスクを有する患者におけるURLC8の発現を阻害するために用いられる。そのような患者は、特定の腫瘍タイプに関する標準的な方法によって同定される;例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)は、典型的に、断層撮影、超音波、または生検によって診断される。
【0082】
処置が、URLC8の発現の低減、または被験者における腫瘍の大きさ、有病率、または転移能の減少のような、臨床的利益に至る場合、処置は有効である。処置が予防的に適用される場合、「有効な」とは、腫瘍の形成を遅らせるもしくは予防する、または腫瘍の臨床症状を予防もしくは緩和することを意味する。有効性は、特定の腫瘍タイプを診断または処置するための任意の公知の方法に関連して決定してもよい。
【0083】
siRNA治療は、標準的なベクターおよび/または遺伝子送達系を用いてsiRNAを患者に投与することによって行われる。適切な遺伝子送達系には、リポソーム、受容体媒介送達系、および中でもヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスのようなウイルスベクターが含まれてもよい。URLC8産生の低減によって、URLC8タンパク質発現の減少が起こる。治療的核酸組成物は好ましくは薬学的に許容される担体と共に製剤化される。治療的組成物にはまた、上記の遺伝子送達系が含まれてもよい。薬学的に許容される担体は、動物への投与に適切な生体適合性の媒体、例えば生理食塩液である。化合物の治療的有効量は、処置される動物におけるURLC8遺伝子産物の産生の低減、細胞増殖、例えば分裂の低減、または腫瘍増殖の低減のような、医学的に望ましい結果を生じることができる量である。
【0084】
静脈内、皮下、筋肉内、および腹腔内送達経路のような非経口投与を用いて、URLC8-siRNA組成物を送達してもよい。
【0085】
任意の1人の患者の用量は、患者の体格、体表面積、投与される特定の核酸、性別、投与期間および経路、全身健康状態、および同時投与される他の薬剤を含む、多くの要因に依存する。核酸の静脈内投与のための適切な用量は、ポリヌクレオチド約106〜1022コピーの範囲である。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドは、筋肉もしくは皮膚のような組織の間隙空間への注射、循環中もしくは体腔への導入、または吸入もしくは吹送によるような、標準的な方法によって投与してもよい。ポリヌクレオチドは、好ましくは、薬学的に許容される液体担体、例えば水性または部分的に水性である液体担体と組み合わせて動物に注射されるか、またはそうでなければ送達される。本発明のポリヌクレオチドは、リポソーム(例えば、陽イオンまたは陰イオンリポソーム)に結合させてもよい。本発明のポリヌクレオチドには、好ましくはプロモーターのような標的細胞による発現にとって必要な遺伝子情報が含まれる。
【0087】
他の局面において、本発明は本明細書に記載の一つまたは複数の薬学的化合物を含む薬学的または治療的組成物を含む。薬学的製剤には、経口、直腸、鼻、局所(頬および舌下を含む)、膣、もしくは非経口(筋肉内、皮下、および静脈内を含む)の投与に適したもの、または吸入もしくは通気による投与に適したものが含まれ得る。製剤は、適宜、個別の投与量単位で都合良く提示でき、薬学分野における慣例的な方法のいずれかによって調製できる。そのような薬学の方法は、全て、必要に応じて、液状担体もしくは微細に粉砕された固形担体またはその両方と活性化合物とを会合させる段階を含み、かつ必要であれば、次いで、その生成物を所望の製剤へと成形する段階を含む。
【0088】
経口投与に適した薬学的製剤は、所定の量の活性成分を各々含有しているカプセル剤、カシェ剤、もしくは錠剤のような個別の単位として;散剤もしくは顆粒剤として;または液剤、懸濁剤、もしくは乳濁剤として、都合良く提示できる。活性成分は、ボーラス舐剤またはペースト剤として提示してもよく、そして純粋な(即ち、担体を含まない)形態であってもよい。経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤、または湿潤剤のような従来の賦形剤を含有し得る。錠剤は、任意で、1個以上の製剤化成分を用いて、圧縮または成型により作成してもよい。圧縮錠剤は、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、滑沢、界面活性、または分散剤と任意に混合された散剤または顆粒剤のような流動性の高い形態の活性成分を適当な機械で圧縮することにより調製できる。成型錠剤は、不活性液状希釈剤で湿らされた粉末化合物の混合物を適当な機械で成型することにより作成できる。錠剤は、当技術分野における周知の方法に従い、剤皮を施してもよい。経口液状調製物は、例えば、水性もしくは油性の懸濁剤、液剤、乳濁剤、シロップ剤、もしくはエリキシル剤の形態であってもよいし、または乾燥生成物として提示し、使用前に水もしくはその他の適当な媒体で調製してもよい。そのような液状調製物は、懸濁化剤、乳化剤、非水性媒体(食用油を含み得る)、または保存剤のような従来の添加剤を含有し得る。さらに、錠剤は、任意で、含まれる活性成分を徐放するようにまたは放出が制御されるように製剤化してもよい。
【0089】
非経口投与用の製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および対象となるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性および非水性の無菌の注射液剤;ならびに懸濁化剤および濃化剤を含み得る水性および非水性の無菌の懸濁剤が含まれる。製剤は、単位用量容器または多回用量容器、例えば、密封されたアンプルおよびバイアルで提示でき、使用直前に無菌の液状担体、例えば、生理食塩水、注射用水の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管してもよい。または、製剤は連続注入用に提示してもよい。即席の注射用の液剤および懸濁剤は、前記の種類の無菌の散剤、顆粒剤、および錠剤から調製できる。
【0090】
直腸投与用の製剤は、カカオバターまたはポリエチレングリコールのような通常の担体を含む坐剤として提示できる。口内、例えば、頬または舌下への局所投与用の製剤には、ショ糖およびアラビアゴムもしくはトラガカントゴムのような風味付きの基剤中に活性成分が含まれたロゼンジ剤、ならびにゼラチンおよびグリセリンもしくはショ糖およびアラビアゴムのような基剤中に活性成分が含まれた香錠が挙げられる。鼻腔内投与の場合、本発明の化合物は、液状スプレーもしくは分散可能な散剤として、または滴剤の形態で使用できる。滴剤は、1つ以上の分散剤、可溶化剤、または懸濁化剤も含む水性または非水性の基剤を用いて製剤化できる。液状スプレーは、加圧パックから都合良く送達される。
【0091】
吸入による投与の場合、本発明の化合物は、注入器、ネブライザー、加圧パック、またはその他の便利なエアロゾルスプレー送達手段により都合良く送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の適当なガス等の適当な噴霧剤を含み得る。加圧エアロゾル剤の場合、投与量単位はバルブによって決定され、計量された量が送達される。
【0092】
または、吸入または通気による投与の場合、本発明の化合物は、乾燥粉末組成物、例えば、化合物と乳糖またはデンプンのような適当な粉末基剤との粉末混合物の形態をとり得る。粉末組成物は、単位剤形、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチン、またはブリスター包装で提示でき、それらから、吸入器または注入器を使用して粉末を投与できる。
【0093】
所望の場合、活性成分を徐放するよう適合させた上記の製剤が利用されてもよい。本発明の薬学的組成物は、抗微生物剤、免疫抑制剤、または保存剤のようなその他の活性成分を含有していてもよい。
【0094】
特に上で言及した成分に加え、本発明の製剤には、問題となる製剤の型を考慮した上で、当技術分野において一般的なその他の薬剤が含まれていてもよいこと、例えば、経口投与に適した薬剤には着香料が含まれていてもよいことが理解される。
【0095】
好ましい単位投与量製剤は、下記のような有効量またはその活性成分の適切な画分を含有しているものとする。
【0096】
前記の各条件のため、組成物は、1日当たり約0.1〜約250 mg/kgの範囲の用量で経口的にまたは注射により投与され得る。成人のヒトに対する用量範囲は、一般に、約5 mg〜約17.5 g/日、好ましくは約5 mg〜約10 g/日、最も好ましくは約100 mg〜約3 g/日である。個別の単位で提供される錠剤またはその他の単位剤形には、そのような投与量またはその多回数の投与量で有効量となる量、例えば、約5 mg〜約500 mg、通常約100 mg〜約500 mgを含有する単位が都合良く含まれる。
【0097】
薬学的組成物は、好ましくは、経口的にまたは注射(静脈内もしくは皮下)により投与され、対象へ投与される正確な量は、担当医師の責任であろう。しかしながら、用いられる用量は、対象の年齢および性別、治療が施される正確な障害およびその重傷度を含む多数の要因によるものと考えられる。加えて、投与経路も、状態およびその重症度によって変動し得る。
【0098】
実施例
実施例1:材料および方法
(a)肺癌細胞株および組織試料
本研究において用いたヒトNSCLC細胞株19種およびSCLC細胞株4種は、以下の通りであった:肺ADC A427、A549、LC319、PC3、PC9、PC14、およびNCI-H1373;気管支肺胞細胞癌(BAC)NCI-H1666およびNCI-H1781;肺腺扁平上皮癌(ASC)NCI-H226およびNCI-H647;肺SCC RERF-LC-AI、SK-MES-1、EBC-1、LU61、NCI-H520、NCI-H1703、およびNCI-H2170;肺大細胞癌(LCC)LX1;ならびにSCLC DMS114、DMS273、SBC-3、およびSBC-5。細胞は全て、10%ウシ胎児血清(FCS)を添加した適切な培地において単層で増殖させて、5%CO2を含む湿潤雰囲気中で37℃で維持した。ヒト小気道上皮細胞、SAECは、Cambrex Bio Science Inc.(Walkersville, MD)から購入した最適化培地(SAGM)において増殖させた。
【0099】
22例がADC、14例がSCC、および1例がASCと分類された原発性NSCLC試料は、当初、書面でのインフォームドコンセントを得た患者37人から、他に記載された研究のために得た(Kikuchi, T. et al.(2003) Oncogene, 22:2192〜2205)。ADC 7例およびSCC 7例を含むさらなる原発性NSCLC 14例の独立した組を、手術を受けた患者から、隣接する正常肺組織試料と共に得た。
【0100】
組織マイクロアレイ上での免疫染色およびさらなる統計分析のために用いた、NSCLCおよび隣接正常肺組織試料の合計292例も同様に、手術を受けた患者から得た。
【0101】
(b)半定量的RT-PCR分析
総RNAを、Trizol試薬(Life Technologies, Inc.)を用いて製造元のプロトコールに従って培養細胞および臨床組織から抽出した。抽出したRNAおよび正常ヒト組織ポリ(A)RNAをDNアーゼI(Nippon Gene)によって処理して、オリゴ(dT)プライマーおよびSuperScript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いて逆転写した。以下の合成された遺伝子特異的プライマーによって、または内部対照としてACTB特異的プライマーによって半定量的RT-PCR実験を行った。
【0102】
(c)IMS-E21(URLC8)
以下のプライマーを用いてIMS-E21(URLC8)を単離した:
5’- GACCACATCCAACAGTATTCG-3’ (SEQ ID NO:3) および
5’- TGCCAGGACATCTAACTTCTG -3’ (SEQ ID NO:4);
ACTB、
5’-GAGGTGATAGCATTGCTTTCG-3’ (SEQ ID NO:5) および
5’-CAAGTCAGTGTACAGGTAAGC-3’ (SEQ ID NO:6)。
対数増幅相において産物の強度を確保するために、PCR反応をサイクル数に関して最適化した。
【0103】
(d)ノザンブロット分析
ヒト多組織ブロット(BD Biosciences Clontech)を、IMS-E21(URLC8)の32P標識PCR産物とハイブリダイズさせた。IMS-E21(URLC8)のcDNAプローブを、上記と同じプライマーを用いてRT-PCRによって調製した。供給業者の推奨に従って、プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、および洗浄を行った。ブロットを増感BASスクリーン(BIO-RAD, Hercules, CA)によって室温で30時間オートラジオグラフに供した。
【0104】
(e)全長IMS-E21(URLC8)cDNAのクローニングおよびDNAシークエンシング
最初に、IMS-E21(URLC8)配列を、BLASTプログラムによってESTデータベースに対して検索したところ、一つのESTクローン(FLJ20399、NM_017803)と高度に相同であることが見出された。製造業者の使用説明書に従ってSuperScript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いるランダムプライミングによって正常な臓器混合試料12例に由来する総RNAからcDNAを生成した。RT-PCR産物をpcDNA3.1-myc-Hisベクター(Invitrogen)にクローニングして、シークエンシングによって確認した。
【0105】
(f)抗IMS-E21(URLC8)抗体の作製
個々のタンパク質のNH2末端でHisタグエピトープを含むIMS-E21(URLC8)(全長)を発現するプラスミドを、pET28ベクター(Novagen, Madison, WI)を用いて調製した。組換え型タンパク質を大腸菌BL21 codon-plus株(Stratagene, LaJolla, CA)において発現させて、TALON樹脂(BD Bioscience)を用いて供給業者のプロトコールに従って精製した。SDS-PAGEゲルにおいて抽出したタンパク質をウサギに接種して、免疫血清を標準的な方法論に従ってアフィニティーカラム上で精製した。アフィニティー精製した抗IMS-E21(URLC8)抗体を、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、および免疫染色のために用いた。
【0106】
(g)IMS-E21(URLC8)関連タンパク質の共免疫沈降およびMALDI-TOF-MSマッピング
N末端FLAGタグおよびC末端HAタグ-pCAGGS-IMS-E21(URLC8)ベクター、またはモックベクター(対照)を発現するプラスミドをトランスフェクトした肺癌細胞株LC319由来の細胞抽出物を、プロテナーゼ阻害剤の存在下で、IP緩衝液(0.5%NP-40、50 mMトリス-HCl、150 mM NaCl)の最終容積2 mlにおいてプロテインG-アガロースビーズ100μlと共に4℃で1時間インキュベートすることによって、予備清浄した。4℃で1000 rpm、5分間遠心分離した後、上清を抗Flag M2アガロースと共に4℃で2時間インキュベートした。次に、ビーズを5000 rpmで2分間の遠心分離によって回収して、免疫沈降緩衝液各1mlによって6回洗浄した。次に、洗浄したビーズをFlag-ペプチド(Sigma-Aldrich Co., St. Louis, MO)によって溶出した。溶出液を抗HAアガロースと共に4℃で2時間インキュベートした。洗浄したビーズをLaemmli試料緩衝液50μlに再懸濁させ、5分間沸騰させて、タンパク質を5〜10%SDS-PAGEゲル(BIO RAD)によって分離した。電気泳動後、ゲルを銀染色した。IMS-21(URLC8)トランスフェクト抽出物において特異的に見出されたタンパク質バンドを切り出して、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)(AXIMA-CFR plus, SHIMADZU BIOTECH, Kyoto, Japan)に供した。
【0107】
(h)RNA干渉アッセイ
ベクターに基づくRNA干渉(RNAi)システム、psiH1BX3.0は、哺乳動物細胞においてsiRNAの合成を方向付けるために既に確立された(Suzuki, C. et al.(2003)Cancer Res, 63:7038〜7041)。本明細書において、siRNA発現ベクター10μgを、Lipofectamine 2000(Invitrogen)30μlを用いて、いずれも内因性にIMS-E21(URLC8)を過剰発現するNSCLC細胞株A549およびLC319にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞の80%超が合成siRNAを発現して、それらの細胞において、IMS-E21(URLC8)遺伝子の内因性の発現は有効に抑制された。トランスフェクトされた細胞を適当な濃度のジェネティシン(G418)の存在下で7日間培養した後、細胞数および生存率をギムザ染色および三連のMTTアッセイによって測定した。RNAiに関する合成オリゴヌクレオチドの標的配列は以下の通りであった:
【0108】
対照1(EGFP:増強緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、オワンクラゲ(Aequorea victoria)GFPの変異体)、
5’-GAAGCAGCACGACTTCTTC-3’ (SEQ ID NO:7);
対照2(ルシフェラーゼ、ホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼ遺伝子)、
5’-CGTACGCGGAATACTTCGA-3’ (SEQ ID NO:8);
対照3(Scramble:5Sおよび16S rRNAをコードする葉緑体ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)遺伝子)
5’-GCGCGCTTTGTAGGATTCG-3’ (SEQ ID NO:9);
siRNA-IMS-E21-#2(si-IMS-E21-#2)
5’-TGAGGTGCTCAGCACAGTG-3’ (SEQ ID NO:10);
siRNA-IMS-E21-#3(si-IMS-E21-#3)
5’-GTTGGCACAGCCTGTGTAT-3’ (SEQ ID NO:11)。
【0109】
siRNA発現ベクターのインサート配列は以下の通りであった:
対照1(EGFP)
5’-TCCCGAAGCAGCACGACTTCTTCTTCAAGAGAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3’ (SEQ ID NO:12);
5’-AAAAGAAGCAGCACGACTTCTTCTCTCTTGAAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3’ (SEQ ID NO:13);
対照2(ルシフェラーゼ)
5’-TCCCCGTACGCGGAATACTTCGATTCAAGAGATCGAAGTATTCCGCGTACG-3’ (SEQ ID NO:15);
5’-AAAACGTACGCGGAATACTTCGATCTCTTGAAATCGAAGTATTCCGCGTACG-3’ (SEQ ID NO:16);
対照3(Scramble)
5’-TCCCGCGCGCTTTGTAGGATTCGTTCAAGAGACGAATCCTACAAAGCGCGC-3’ (SEQ ID NO:18);
5’-AAAAGCGCGCTTTGTAGGATTCGTCTCTTGAACGAATCCTACAAAGCGCGC-3’ (SEQ ID NO:19);
siRNA-IMS-E21-#2(si-IMS-E21-#2)
5’-TCCCTGAGGTGCTCAGCACAGTGTTCAAGAGACACTGTGCTGAGCACCTCA-3’ (SEQ ID NO:21);
5’-AAAATGAGGTGCTCAGCACAGTGTCTCTTGAACACTGTGCTGAGCACCTCA-3’ (SEQ ID NO:22);
siRNA-IMS-E21-#3(si-IMS-E21-#3)
5’-TCCCGTTGGCACAGCCTGTGTATTCAAGAGAATACACAGGCTGTGCCAAC-3’ (SEQ ID NO:24);
5’-AAAAGTTGGCACAGCCTGTGTATCTCTTGAAATACACAGGCTGTGCCAAC-3’ (SEQ ID NO:25);
【0110】
(i)免疫組織化学および組織マイクロアレイ分析
ホルマリン固定NSCLCを用いる腫瘍組織マイクロアレイを、他に刊行されたように構築した。試料採取の組織領域は、スライドガラス上で対応するHE染色切片との視覚的アラインメントに基づいて選択した。ドナー腫瘍ブロックから採取した組織コア3、4、または5個(直径0.6 mm;高さ3〜4 mm)を、組織マイクロアレイアー(Beecher Instruments, Sun Prairie, WI)を用いてレシピエントパラフィンブロックに配置した。正常組織のコアを各症例から穿孔した。得られたマイクロアレイブロックの5μm切片を免疫組織化学分析のために用いた。IMS-E21(URLC8)の陽性率は、臨床追跡データを前もって知らない異なる試験者3人により、なし(スコア0)、弱い(スコア1+)、または強い陽性(スコア2+)として染色強度を記録し、半定量的に評価した。症例は、検査者が独立にそのように定義した場合に限って陽性であると認められた。
【0111】
臨床組織試料におけるIMS-E21(URLC8)タンパク質の存在を調べるために、切片をENVISION+Kit/HRP(DakoCytomation)を用いて染色した。内因性のペルオキシダーゼおよびタンパク質をブロックした後、アフィニティー精製抗IMS-E21(URLC8)抗体を加えて、二次抗体としてHRP標識抗ウサギIgGと共に切片をインキュベートした。基質-色素原を加えて、検体をヘマトキシリンによって対比染色した。
【0112】
実施例2:IMS-E21(URLC8)遺伝子のクローニング、ならびに肺腫瘍、細胞株、および正常組織におけるその発現
NSCLCの治療物質および/または診断マーカーを開発するための新規標的分子を得るために、cDNAマイクロアレイにおいて分析したNSCLC 37例の50%超の症例において5倍高い発現を示した遺伝子をスクリーニングした(Kikuchi, et al.(2003) Oncogene, 22:2192〜2205)。スクリーニングした遺伝子23,040種において、一つのEST転写物(FLJ20399、NM_017803)が、NSCLCにおいて頻繁に過剰発現されていると同定され;その過剰発現は半定量的RT-PCR実験によって代表的な8例において確認された。この転写物の全長クローンを得るために、cDNAマイクロアレイ実験によって当初単離されたcDNA断片を用いてFASTAデータベースをスクリーニングして、いくつかのESTを同定した。これらのクローンのDNA配列を集合させて、この遺伝子の全コードヌクレオチド配列を決定した。cDNAは、493アミノ酸のペプチドをコードする1,479ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを含む2,020ヌクレオチドからなった。FASTAプログラムを用いる相同性検索によって、この予想タンパク質が、tRNA-ジヒドロウリジンシンターゼ(DUS)ファミリーに属するタンパク質、特にtRNA上のウリジン残基の5,6-二重結合の還元を触媒する出芽酵母のDus1(ジヒドロウリジンシンターゼ1)と相同であることが判明した(それぞれ、アミノ酸において30%の同一性、図1、a〜c)。したがって、この遺伝子は、仮にIMS-E21(URLC8:up-regulated in lung cancer 8とも呼ばれる、アクセッション番号AB101210)と命名された。SMARTプログラム(http://smart.embl-heidelberg.de/)(Letunic I, et al., (2004)Nucleic Acids Res, 32(Database issue):D142〜4;Schultz J, et al., (1998)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.;95:5857〜64)を用いてIMS-E21(URLC8)の配列内に二つのモチーフが同定された;それぞれ、N末端DusドメインおよびC末端DSRM(図1、a)である。ヒトIMS-E21(URLC8)は、ネズミ(マウス(M. musculus)およびラット(R. Norvegicus))の産物とアミノ酸において90%の同一性、キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)タンパク質と48%の同一性、およびC.エレガンス(C. elegans)タンパク質と40%の同一性を保存すると考えられた(図1、b)。
【0113】
IMS-E21(URLC8)発現の増加は、さらなるNSCLC症例14例中11例(腺癌(ADC)7例中4例、扁平上皮癌(SCC)7例中7例)において確認され(図2、a)、試験したNSCLCおよび小細胞肺癌(SCLC)細胞株23例中21例においてIMS-E21(URLC8)のアップレギュレーションが記録されたが、正常気管支上皮に由来するSAEC細胞では発現が見出されなかった(図2、b)。
【0114】
プローブとしてIMS-E21(URLC8)cDNAを用いるノザンブロッティングにより、試験した正常ヒト組織23例において主に精巣において認められるバンドとして2.4kbの転写物が同定された(図2、c)。
【0115】
実施例3:IMS-E21(URLC8)タンパク質の過剰発現はSCCにおけるより悪い転帰に関連する
入手可能なNSCLC 292例の組織マイクロアレイにおいて、アフィニティー精製抗IMS-E21(URLC8)ポリクローナル抗体によって免疫組織化学分析を行った。本研究から、細胞質においてIMS-E21(URLC8)の陽性染色を示した症例数が、それぞれ、NSCLC症例292例中254例(87%);ADC症例158例中132例(84%)、SCC症例99例中89例(90%)、LCC症例21例中19例(90%)、BAC症例10例中10例(100%)、およびASC症例4例中4例(100%)であったことが示された。それらの腫瘍は全て外科的に切除可能なNSCLCであり、それらが隣接する任意の正常肺組織において染色は観察されなかった(図3、a)。IMS-E21(URLC8)の発現パターンを、組織アレイにおいて、なし/弱い(スコア0〜1+)から強い(スコア+2)の範囲で分類した。次に、IMS-E21(URLC8)発現と臨床転帰との関連を試験した。統計分析によって、試験した肺癌患者において、任意のIMS-E21(URLC8)発現レベルとpTまたはpN因子との有意な相関がないことが判明した。しかし、SCCにおけるIMS-E21(URLC8)の発現は、カプラン-メイヤー法を用いて、腫瘍特異的5年生存率に有意に関連することが見出された(Log-rank検定によってP=0.0091)(図3、b)。単変量分析によって、pT、pN、性別、およびIMS-E21(URLC8)発現(P=0.0111)は、それぞれSCC患者における不良な腫瘍特異的生存と有意に関連した。さらに、IMS-E21(URLC8)染色は、SCC患者のコックス比例ハザードモデルを用いる多変量分析によって、独立した予後因子であることが決定された(P=0.0234)。
【0116】
実施例4:IMS-E21(URLC8)に対する特異的siRNAによるNSCLC細胞の増殖阻害
IMS-E21(URLC8)が肺癌細胞の増殖または生存にとって必須であるか否かを評価するために、IMS-E21(URLC8)に対するsiRNA(si-IMS-E21)を発現するプラスミドおよび対照プラスミド(EGFP、Scramble、およびルシフェラーゼに関するsiRNA)を設計して構築し、それらをA549およびLC319細胞にトランスフェクトして内因性のIMS-E21(URLC8)の発現を抑制した。si-IMS-E21-#2および-#3をトランスフェクトした細胞におけるIMS-E21(URLC8)転写物の量およびタンパク質レベルは、対照をトランスフェクトした細胞と比較して有意に減少した(図3、c、左のパネル);si-IMS-E21-#2および-#3のトランスフェクションはまた、コロニー形成アッセイにおけるコロニー数(図3、c、下のパネル)およびMTT細胞生存率アッセイによって測定したコロニー数(図3、c、右のパネル)の有意な減少を引き起こした。
【0117】
実施例5:IMS-E21(URLC8)は主に細胞質に局在して、ERに豊富なタンパク質PDIと共局在した
肺癌細胞における内因性のIMS-E21(URLC8)の細胞内局在を決定するために、アフィニティー精製抗IMS-E21(URLC8)ポリクローナル抗体を用いて免疫細胞化学を行った。共焦点顕微鏡により、IMS-E21(URLC8)タンパク質がA549細胞の細胞質に分布することが判明した(データは示していない)。IMS-E21(URLC8)タンパク質の細胞内局在をさらに調べるために、本発明者らは、ヒトIMS-E21(URLC8)タンパク質のC-末端にc-myc-Hisエピトープ配列(LDEESILKQE-HHHHHH)を含むプラスミドをLC319細胞にトランスフェクトした。抗c-myc抗体および小胞体(ER)において豊富に発現される内因性のタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)に対する抗体を用いる共免疫染色により、IMS-E21(URLC8)タンパク質が主にERに分布することが示唆された(図4、a)。
【0118】
実施例6:IMS-E21(URLC8)と相互作用するタンパク質としてのEPRSの同定
肺癌細胞におけるIMS-E21(URLC8)の機能を解明するために、IMS-E21(URLC8)と相互作用するタンパク質を同定した。N末端FLAG-タグおよびC末端HAタグpCAGGS-IMS-E21ベクターまたはモックベクター(対照)をトランスフェクトしたLC319細胞の溶解物を抽出して、抗FLAG M2モノクローナル抗体によって免疫沈降した後、抗HAモノクローナル抗体による免疫沈降を行った。IMS-E21(URLC8)を含むタンパク質複合体を、SDS-PAGEゲルにおいてSilverQuest(Invitrogen)によって染色した。IMS-E21(URLC8)発現プラスミドをトランスフェクトした細胞溶解物の免疫沈降物において認められるが、モックプラスミドをトランスフェクトした細胞溶解物においては認められない180 kDaのバンドを抽出して、MALDI-TOF質量分析シークエンシング(データは示していない)によってEPRS(グルタミル-プロリルtRNAシンテターゼ)であると決定した。内因性のIMS-E21(URLC8)とEPRSとの相互作用が、共免疫沈降および免疫細胞化学によって確認され(図4、bおよびc)、ER依存的翻訳においてIMS-E21(URLC8)-アミノアシルtRNAシンテターゼ複合体が存在する可能性を示唆した。
【0119】
実施例7:肺癌細胞におけるIMS-E21(URLC8)のtRNA-DUS活性
IMS-E21(URLC8)がジヒドロウリジンシンターゼ酵素ファミリーをコードするという仮説を試験するために、NSCLC細胞株におけるDUS活性に対するsiRNAによるIMS-E21(URLC8)遺伝子の抑制効果を調べた。総tRNAを、HPLC技術によって、siRNA構築物をトランスフェクトしたA549およびLC319細胞の総RNAから精製して、各細胞株のジヒドロウリジン含有量に関して試料を分析した(Jacobson, M. and Hedgcoth, C.(1970)Anal Biochem, 34:459〜469;Hunninghake, D. and Grisolia, S.(1966)Anal Biochem. 16:200〜205)。上記のようにIMS-E21(URLC8)の転写物レベルを抑制することができる最も有効なIMS-E21(URLC8)siRNA構築物(siRNA-IMS-E21-#2)はまた、対応する対照siRNA構築物(si-EGFP)と比較した場合に、tRNA-ジヒドロウリジン含有量のレベルの低減を引き起こした(図4、d)。これらの腫瘍細胞においてsiRNA-IMS-E21-#2によって誘導されたt-RNAジヒドロウリジンの欠損は、腫瘍増殖抑制に密接に関連し(図3、c)、IMS-E21(URLC8)のtRNA-DUS活性が腫瘍細胞の生存および/または進行にとって不可欠であることを意味している。
【0120】
産業上の利用可能性
本発明者らは、URLC8がt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を有すること、および活性の抑制によって肺癌細胞の細胞増殖の阻害が起こることを示した。このように、URLC8のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を阻害する物質は、NSCLCのような肺癌を処置するための抗癌物質として治療的に有用である。
【0121】
さらに、NSCLC細胞をURLC8に対するsiRNAによって処理すると、その発現と共にtRNA-DUS活性も抑制され、癌細胞の増殖が抑制された。さらなる実験から、URLC8タンパク質がNSCLC細胞においてEPRS(グルタミル-プロリルtRNAシンテターゼ)と物理的に相互作用することが判明した。これらのデータは、URLC8機能のアップレギュレーションおよびtRNA-DUS活性の増加が、肺の発癌の一般的な特徴であることを意味する。したがって、URLC8酵素活性および/またはURLC8-tRNAシンテターゼ複合体の形成の選択的抑制は、肺癌患者の処置のための有望な治療戦略である可能性がある。
【0122】
または、肺癌は、診断指標としてURLC8のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を用いて検出することができる。
【0123】
さらに、本発明者らは、URLC8(IMS-E21)発現の高レベルが、肺扁平上皮癌(SCC)患者の予後不良に有意に関連することを明らかにした。したがって、肺癌の予後は、URLC8(IMS-E21)発現レベルの測定によって予測することができる。
【0124】
本明細書において引用した特許、特許出願、および刊行物は全て、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる。さらに、本発明は詳細に、およびその特異的態様を参照して記述されてきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、様々な変更および改変を本発明において行うことができることは、当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】IMS-E21(URLC8)の構造およびt-RNAジヒドロウリジンの構造の特徴を示す。a.IMS-E21(URLC8)タンパク質の構造の概略。UPF0034(unclassified protein family 0034)のメンバー、N末端のDusドメイン、およびC末端のDSRM(二本鎖RNA結合モチーフ)が、そのタンパク質構造において保存され、t-RNA上のウリジン残基の5,6-二重結合の還元を触媒する出芽酵母ジヒドロウリジンシンターゼ1(DUS1)と30%の相同性を示す。b.IMS-E21(URLC8)の予想アミノ酸配列のアラインメント。影を付けた部分は相同な残基を示す。c.tRNAにおけるジヒドロウリジンの構造。d.Dループヌクレオチドを有する一般的なtRNAの二次元表示。
【図2】肺腫瘍および正常組織におけるIMS-E21(URLC8)の発現を示す。a.半定量的RT-PCRによって試験したNSCLCの臨床試料および対応する正常肺組織におけるIMS-E21(URLC8)の発現。b.半定量的RT-PCRによる、肺癌細胞株におけるIMS-E21(URLC8)の発現。c.多組織ノザンブロット分析によって検出したヒト正常組織におけるIMS-E21(URLC8)の発現。
【図3】NSCLCにおけるIMS-E21(URLC8)の発現の免疫組織化学的試験、およびIMS-E21(URLC8)に対するsiRNAによるNSCLC細胞の増殖阻害の結果を示す。a.組織マイクロアレイ上で抗IMS-E21(URLC8)ポリクローナル抗体を用いることによる、外科的に切除したNSCLC組織由来の代表的な試料の免疫組織化学的評価。b.IMS-E21(URLC8)発現に従う肺SCC患者における腫瘍特異的生存度のカプラン-メイヤー分析。c.(左のパネル)半定量的RT-PCR(上のパネル)によって分析したLC319細胞におけるsi-IMS-E21(URLC8)または対照siRNAに応答したmRNAノックダウン効果、およびウェスタンブロッティング(中央のパネル)による内因性IMS-E21(URLC8)タンパク質ノックダウン効果、およびコロニー形成アッセイ(下のパネル)。(右のパネル)特異的siRNAまたは対照プラスミド(EGFP、Scramble、またはルシフェラーゼ)をトランスフェクトしたLC319細胞のMTTアッセイ。
【図4】NSCLC細胞におけるIMS-E21(URLC8)機能の特徴を示す。a.LC319細胞における内因性IMS-E21(URLC8)の細胞内局在;染色は主に細胞質において可視(ローダミン)。mycタグ-IMS-E21(URLC8)(ローダミン)と、小胞体(ER)に豊富なタンパク質である内因性PDI(タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ)(FITC)との共局在が観察された。b.IMS-E21(URLC8)相互作用タンパク質としてのEPRSの同定。双方がLC319細胞抽出物にトランスフェクトされているIMS-E21(URLC8)およびEPRSの相互共免疫沈降。抗FLAG M2モノクローナル抗体によって免疫沈降した細胞抽出物のウェスタンブロット分析により、免疫沈降物においてmycタグ-IMS-E21(URLC8)タンパク質を検出した。抗myc抗体によって免疫沈降した抽出物のウェスタンブロットにより、免疫沈降物においてFLAGタグEPRSタンパク質を検出した。c.LC319細胞におけるmyc-タグIMS-E21(URLC8)およびFLAG-タグ-EPRSの共局在。d.IMS-E21(URLC8)に対するsiRNAによって処理したA549細胞およびLC319細胞におけるtRNAジヒドロウリジン含有量の低減。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図3a】

【図3b】

【図3c】

【図4a】

【図4b】

【図4c】

【図4d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、肺扁平上皮癌(SCC)の予後を予測する方法:
a.SCCの予後を予測すべき被験者から採取した検体におけるURLC8発現レベルを検出する段階、および
b.対照レベルと比較して上昇したURLC8発現レベルが検出される場合、予後が不良であることが示される段階。
【請求項2】
発現レベルが以下からなる群より選択される方法の任意の一つによって検出される、請求項1記載の方法:
(a)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列をコードするmRNAを検出する段階;
(b)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むタンパク質を検出する段階;および
(c)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むタンパク質の生物活性を検出する段階。
【請求項3】
(c)の生物活性がt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
以下からなる群より選択される任意の一つの成分を含む、肺扁平上皮癌(SCC)の予後を予測するためのキット:
(a)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列をコードするmRNAを検出するための試薬;
(b)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むタンパク質を検出するための試薬;および
(c)SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むタンパク質の生物活性を検出するための試薬。
【請求項5】
被験者に由来する生体試料においてt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性および/またはt-RNAジヒドロウリジンのレベルを決定する段階を含み、正常対照レベルと比較して増加したレベルにより、被験者が非小細胞肺癌を有すること、または非小細胞肺癌の発症のリスクを有することが示される、被験者における非小細胞肺癌または非小細胞肺癌の発症の素因を診断する方法。
【請求項6】
URLC8のt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性および/またはt-RNAジヒドロウリジンを検出するための試薬を含む、肺扁平上皮癌(SCC)の予後を予測するためのキット。
【請求項7】
以下の段階を含む、ポリペプチドのt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を測定する方法:
a.以下からなる群より選択されるポリペプチドを、t-RNAジヒドロウリジンの合成にとって適切な条件下でインキュベートする段階:
i.SEQ ID NO:2(URLC8)のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
ii.ポリペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等の生物活性を有する条件で、一つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失、または挿入されているSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
iii.ポリペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等の生物活性を有する条件で、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;
b.t-RNAジヒドロウリジン合成レベルを検出する段階;および
c.段階(b)において検出されたt-RNAジヒドロウリジン合成レベルをt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性と関連付けることによって、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を測定する段階。
【請求項8】
条件が、ポリペプチドを発現する細胞を培養する段階を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
細胞が、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有する形質転換細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
以下の段階を含む、t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を調節する物質を同定する方法:
a.以下からなる群より選択されるポリペプチドをt-RNAジヒドロウリジンの合成にとって適切な条件下、試験化合物の存在下でインキュベートする段階:
i.SEQ ID NO:2(URLC8)のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
ii.ポリペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等の生物活性を有する条件で、一つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失、または挿入されているSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
iii.ポリペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等の生物活性を有する条件で、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;
b.t-RNAジヒドロウリジン合成レベルを検出する段階;および
c.t-RNAジヒドロウリジン合成レベルを対照レベルと比較する段階であって、対照レベルと比較したt-RNAジヒドロウリジン合成レベルの増加または減少により、試験化合物がt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を調節することが示される、段階。
【請求項11】
以下の段階を含む、非小細胞肺癌を処置および/または予防するための化合物をスクリーニングする方法:
a.請求項10記載の方法によってt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を調節する試験化合物を同定する段階、および
b.対照レベルと比較して、t-RNAジヒドロウリジン合成レベルを減少させる化合物を選択する段階。
【請求項12】
以下の成分を含む、試験化合物がt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を調節する能力を検出するためのキット:
A)以下からなる群より選択されるポリペプチド:
i.SEQ ID NO:2(URLC8)のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
ii.ポリペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等の生物活性を有する条件で、一つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失、または挿入されているSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
iii.ポリペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等の生物活性を有する条件で、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;および
B)t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を検出するための試薬。
【請求項13】
以下の成分を含む、試験化合物がt-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を調節する能力を検出するためのキット:
A)以下からなる群より選択されるポリペプチドを発現する細胞:
i.SEQ ID NO:2(URLC8)のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
ii.ポリペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等の生物活性を有する条件で、一つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失、または挿入されているSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むポリペプチド;
iii.ポリペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等の生物活性を有する条件で、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;および
B)t-RNAジヒドロウリジンシンターゼ活性を検出するための試薬。
【請求項14】
URLC8媒介性t-RNAジヒドロウリジン合成を減少させる化合物の薬学的有効量と薬学的に許容される担体とを含む、非小細胞肺癌(NSCLC)を処置または予防するための組成物。
【請求項15】
非小細胞肺癌(NSCLC)細胞を、URLC8媒介性t-RNAジヒドロウリジン合成を減少させる化合物の薬学的有効量に接触させる段階を含む、非小細胞肺癌(NSCLC)を処置または予防するための方法。
【請求項16】
標的配列としてヌクレオチド配列
5’-GTTGGCACAGCCTGTGTAT-3’ (SEQ ID NO:11)
を含む、URLC8遺伝子に対する低分子干渉RNAの薬学的有効量を含む、非小細胞肺癌(NSCLC)を処置または予防するための組成物。
【請求項17】
siRNAが一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、
式中、
[A]は、SEQ ID NO:11のヌクレオチド配列に対応するリボヌクレオチド配列であり;
[B]は、3〜23ヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり;かつ
[A']は、[A]の相補的配列からなるリボヌクレオチド配列である、
請求項16記載の組成物。
【請求項18】
トランスフェクション増強剤を含む、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
標的配列としてヌクレオチド配列
5’-GTTGGCACAGCCTGTGTAT-3’ (SEQ ID NO:11)
を含む、URLC8遺伝子に対する低分子干渉RNAの薬学的有効量を投与する段階を含む、非小細胞肺癌(NSCLC)を処置または予防するための方法。
【請求項20】
siRNAが一般式5'-[A]-[B]-[A']-3'を有し、
式中、
[A]は、SEQ ID NO:11のヌクレオチド配列に対応するリボヌクレオチド配列であり;
[B]は、3〜23ヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり;かつ
[A']は、[A]の相補的配列からなるリボヌクレオチド配列である、
請求項19記載の方法。

【公表番号】特表2008−514186(P2008−514186A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509810(P2007−509810)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/JP2005/017915
【国際公開番号】WO2006/033460
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】