UV−A線に対する眼球内部構造保護用又は経上皮架橋術式による円錐角膜の治療用点眼液
【課題】 UV−A線に対する眼球内部構造保護用又は経上皮架橋技術による円錐角膜の新規な治療用点眼液を提供する。
【解決手段】 本発明の点眼液は、リボフラビンと共に、必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、ビタミンE、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン及びメタロプロテイナーゼ(MMP9)の産生刺激性化合物類からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含有する。これらの化合物類はUV−A線に対する眼球内部構造の保護用又は経上皮架橋術式による円錐角膜の治療用として使用できる。
【解決手段】 本発明の点眼液は、リボフラビンと共に、必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、ビタミンE、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン及びメタロプロテイナーゼ(MMP9)の産生刺激性化合物類からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を含有する。これらの化合物類はUV−A線に対する眼球内部構造の保護用又は経上皮架橋術式による円錐角膜の治療用として使用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐角膜の治療用組成物及び治療術式に関し、特に、UV−A線(紫外線A波)に対する眼球の内部構造保護用として使用するか又は角膜架橋治療で使用するのに適した新規な溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献17には、点眼液の投与及び吸収に関する問題点及び術式のレビュー(再検討)が記載されている。
【0003】
リボフラビン(ビタミンB2)による角膜架橋(Corneal cross-linking, C3)(略して「リボフラビンC3」と呼ぶ)は、円錐角膜及び角膜拡張症を患う患者を治療するための革新的術式であり、角膜組織を強化するためにリボフラビンを投与し、そして紫外線(UV−A線)を照射することからなる(非特許文献1及び2参照)。
【0004】
架橋治療は比較的簡単である。リボフラビンを点眼し、そして、角膜に適正線量のUV−A線を5分間照射し、次いで、この処置を連続的に6回繰り返し、UV−A線の総照射時間を30分間とする。
【0005】
架橋治療の適合性を確立するために考慮しなければならない最も重要な臨床上のパラメーターは角膜の厚さである。角膜の厚さは400ミクロン未満であってはならない。
【0006】
円錐角膜のこの保存治療の目的は、角膜移植の必要性を遅延させ、望むべくは、排除することであり、そして、患者の生活の質を高めることにより視覚機能を改善することである(非特許文献6及び7参照)。
【0007】
角膜を構成するコラーゲンのひだ(ラメラ)の結合力低下による角膜柔組織の異常弛緩のための角膜の進行性弱化を病理学的特徴とする円錐角膜の治療に架橋術式が使用されてきた。UV−A線とリボフラビンを使用することにより、隣接するコラーゲン分子間の新たな結合が形成され、その結果、治療角膜は厚くなり、かつ、堅くなる(非特許文献3参照)。角膜は柔組織の厚さ内にコラーゲン繊維の多数の層を有する。角膜内のコラーゲンの各種層を結びつける横断的結合(いわゆる“架橋”)は限定的な仕方で角膜剛性に寄与する。角膜架橋治療の目的は、これら横断的結合を大量に生成させることにより角膜組織の剛性度を高めることである。
【0008】
上皮欠損した角膜に約200μmの浸透深さでリボフラビンを点眼し、そして、UV−A線によりリボフラビン分子を照射すると、フリーラジカル(遊離基)の必然的生成によるリボフラビン分子の化学平衡の喪失が起こる。リボフラビン分子は不安定になり、そして、2個のコラーゲン小繊維の架橋によりリボフラビン自体を安定化させる。一連の生化学的“ブリッジ”は、角膜の総体的強化をもたらすように、コラーゲン小繊維間(すなわち架橋)で生成される(非特許文献3参照)。
【0009】
実際、治療は角膜の最外層(すなわち、角膜上皮)を除去した後に行われる。この円錐角膜及び角膜拡張症の架橋治療(C3−R)の実行方法は、下部の基質(ストローマ)へのリボフラビン−デキストラン0.1%溶液(例えば、RICROLINの商標名で、SOOFT ITALIA S.r.l.により市販されている溶液)の良好な浸透のための角膜上皮の予備的除去を企図し、そして、治療はこれらの条件下で標準化されている。この治療法の支持者によれば、角膜ストローマ内部へのリボフラビン溶液の最上の浸透を確保し、かつ、それによる治療効果の最大化を確保するために、上皮層の除去は必要であろう。
【0010】
不都合なことに、角膜上皮の除去は、治療当日及びその翌日以降に眼掻痒又は眼火傷を起こし、また、一過性の目のかすみを起こす。これらの症状は周知であり、角膜上皮が再生されるまで持続する。これらの症状は一般的に、C3−R手術後数日にわたり非ステロイド性抗炎症薬(NASID)点眼薬(この点眼薬は涙液代替物及び鎮痛剤に基づく)を使用し、かつ、角膜上に医療用コンタクトレンズを装着することにより治療される(非特許文献4、6及び7参照)。
【0011】
幾人かの著者は、角膜上皮の予備的除去無しに標準的術式を適用することによりC3−R治療の実行が可能であり、また、このような治療法が観察臨床データにより実証されるように有効かつ安全であることを支持している。この術式によれば、治療は角膜上皮の予備的除去(上皮欠損)無しに実行されなければならない。その目的は、一時的治療を実行するために従前の術式では必然的であった角膜上皮の除去による疾患を患者が経験することを避けることであり、特に、角膜の下層の結果的曝露を伴う角膜上皮の除去を企図する治療法に必然的であった術後感染の全てのリスクを避けることである。この治療法の実行方法の支持者は、UV−A線の照射前にリボフラビンの吸収量を高めるために一層長い期間にわたってリボフラビンを点眼することを示唆した(非特許文献8参照)。
【0012】
角膜上皮の除去の有無が円錐角膜及び角膜拡張症の架橋治療に関係する限り、対照的意見が文献に報告される。
【0013】
基質(ストローマ)内へのリボフラビンの浸透量を高めるために角膜上皮を除去した後のC3−R治療が研究され、かつ実行されている。本発明者が知る限りでは、角膜上皮を除去したことによる又は除去しないことによる角膜ストローマへのリボフラビンの浸透の有無及び浸透量を測定した文献は存在しない。
【0014】
予備的上皮欠損無しに架橋を実行することは多くの著者により批評されている。このような著者らは、このような方法ではリボフラビンは上皮を通過しないこと、及び、上皮の除去無しにリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液が角膜ストローマ内に効果的に浸透したか否か及びどのくらいの量が浸透したか、並びに、経上皮法におけるUV−A線による治療が角膜上皮の除去後に行われるUV−A線による治療と同等な効果を生じているか否かは未だ例証されていないことを支持する。
【0015】
角膜上皮を除去すること無く架橋術式により円錐角膜を治療するための効果的な物質を提供する試みにおいて、Sporl博士は上皮の浸透性を高めるために塩化ベンザルコニウムの使用を示唆し(非特許文献16参照)、また、Pinelli博士は特許文献1において、リボフラビンと混合された界面活性剤の使用を示唆した。
【0016】
特許文献1には、経上皮架橋術式による円錐角膜治療用の、リボフラビンと塩化ベンザルコニウムを含有する新規な溶液が開示されている。
【0017】
本願発明者らがヒト角膜で行った実験では、下記に説明される結果から次ぎのような結論が得られた。すなわち、標準溶液又は特許文献1に記載された組成物を用いて行われた第2の術式は角膜上皮の除去による問題点を解決しなかった。その理由は、感染の必然的リスクを伴う下層を露出したまま残し、かつ、修復機序の変更により、この第2の術式が無効にされたからである。
【0018】
角膜上皮を比較的短時間で横切ることができ、かつ、迷惑な術後症状の原因である角膜上皮の損傷無しに角膜架橋を実行するためのリボフラビン含有組成物の開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】イタリア特許出願第MI2007A002162号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Seiler T., Spoerl E., Huhle M., Kamouna A. Conservative therapy of keratoconus by enhancement of collagen cross-links. Invest Ophthalmol. Vis. Sci. 1996;37:S1017.
【非特許文献2】Seiler T., Quurke AW. Iatrogenic keratectasia after LASIK in a case of forme fruste keratoconus. J Cat Refract Surg. 1998;24:1007-1009.
【非特許文献3】Spoerl E., Huhle M., Seiler T. "Induction of cross-links in corneal tissue", Exp Eye Res. 1998;66:97-103.
【非特許文献4】Mazzotta C., Traversi C., Baiocchi S., Sergio P., Caporossi T., Caporossi A. "Conservative treatment of keratoconus by riboflavin-uva-induced cross-linking of corneal collagen: qualitative investigation" Eur J Ophthalmol. 2006;16:530-5.
【非特許文献5】Caporossi A., Baiocchi S., Mazzotta C., Traversi C., Caporossi T. "Parasurgical therapy for keratoconus by riboflavin-ultraviolet type A rays induced cross-linking of corneal collagen: preliminary refractive results in an Italian study" J Cataract Refract Surg. 2006;32:837-45.
【非特許文献6】Spoerl E., Seiler T. "Techniques for stiffening the cornea" j Refract Surg. 1999;15:711-713.
【非特許文献7】Hagele G., Boxer Wachler BS. "Corneal Collagen Crosslinking with Riboflavin (C3-R) for corneal stabilization" presented at the International Congress of Corneal Cross Linking (CCL). December 9-10, 2005. Zurich, Switzerland.
【非特許文献8】Pinelli, R. "C3-Riboflavin for the treatment of keratoconus" J Cataract & Refractive Surgery Today Europe. 2006;1:49-50.
【非特許文献9】Pinelli R. "Eyeword", 2007;5:34-40.
【非特許文献10】Linda J. Muller, Elisabeth Pels, Gijs F. J. M. Vrensen: "The specific architecture of the anterior stroma accounts for maintenance of corneal curvature". Br J Ophthalmol 2001;85:437-443 (April).
【非特許文献11】Mau T. Tranl, Robert N. Lausch2 and John E. Oakes: "Substance P Differentially Stimulates IL-8 Synthesis in Human Corneal Epithelial Cells" Investigative Ophthalmology and Visual Science. 2000;41:3871-3877.
【非特許文献12】L.J. Muller, L. Pels and GF. Vrensen: "Novel aspects of the ultrastructural organization of human corneal keratocytes" Investigative Ophthalmology & Visual Science, Vol 36, 2557-2567.
【非特許文献13】G. Perrella, P. Brusini, R. Spelat, P. Hossain, A. Hopkinson, H. S. Dua: "Expression of haematopoietic stem cell markers, CD133 and CD34 on human corneal keratocytes" British Journal of Ophthalmology 2007;91:94-99.
【非特許文献14】Tadashi Senoo, and Nancy C. Joyce: "Cell Cycle Kinetics in Corneal Endothelium from Old and Young Donors" Investigative Ophthalmology and Visual Science. 2000;41:660-667.
【非特許文献15】L.J. Muller, L. Pels and GF. Vrensen: "Ultrastructural organization of human corneal nerves "Investigative Ophthalmology & Visual Science, Vol 37, 476-488.
【非特許文献16】R. Pinelli, A. J. Kannellopoulos, B. S. B. Wachler, E. Spoerl, A. Ertan, S. L. Trokel, "C3-Riboflavin treatments: Where did we come from? Where are we now?, Cataract & Refractive Surgery Today Europe, Summer 2007.
【非特許文献17】Ashim k. Mitra, "Ophthalmic Drug Delivery Systems", Second Edition: Revised And Expanded, Marcell Dekker Inc., NY, 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、UV−A線に対する眼球内部構造保護用又は経上皮架橋技術による円錐角膜の新規な治療用点眼液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
角膜上皮が予備的に除去された又はされていないヒト角膜を介する、リボフラビン単独又はリボフラビンと他の生成物(“浸透促進剤”)との混合物の浸透量、及びUV−A線による継続的治療の有効性及び安全性を決定するために、本発明者らは鋭意広範な研究を行った。
【0023】
幾つかの有用な物質が同定された。これらは、必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸(例えば、アルギニン、システイン、グリシン、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、セリン及びチロシン)、補酵素Q、ビタミンE、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩
、L−ロイシン、L−アルギニン及びメタロプロテイナーゼ(MMP9)の産生を刺激する性向の化合物類からなる群から選択される。MMP9産生刺激性化合物類は下記で更に詳細に説明する。これらの化合物類は角膜上皮を介する、リボフラビン、特にリボフラビン−デキストラン標準溶液の投与に適した点眼液における担体(“浸透促進剤”)として有効に使用することができる。例えば、目薬又はゲル、水溶液、エマルジョン若しくは医療用コンタクトレンズなどの形で市販され得る所謂点眼薬は、角膜上皮を保護する経上皮架橋術式による円錐角膜の治療に使用することができる。
【0024】
点眼液は酢酸のような賦形剤、又は酢酸或いはリボフラビンと混合される前に別の賦形剤で処理される前記のような物質類を含有できる。
【0025】
本発明は更に、UV−A線に対して眼球の内部構造を保護するように企図された又は経上皮架橋術式により円錐角膜を治療するために企図されたリボフラビン含有点眼液及びリボフラビン含有関連点眼液の製造用及び角膜上皮を介するリボフラビン投与に好適な組成物中で担体(“浸透促進剤”)用としての、必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、ビタミンE、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン及びメタロプロテナーゼ(MMP9)産生刺激性化合物類からなる群から選択される少なくとも1種類の物質の使用を提案する。
【0026】
本発明はまた、前記担体のうちの少なくとも一つをリボフラビンに添加するステップからなる点眼液の製造方法も提案する。
【0027】
前記各物質は担体として単独で又は他の提案された担体と一緒に、リボフラビン含有溶液に、下記の本発明の実施態様に記載される範囲内から選択される濃度で添加することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上述べたように、本発明によれば、UV−A線に対する眼球内部構造保護用又は経上皮架橋技術による円錐角膜の新規な治療用点眼液が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】経上皮方式で投与した後の角膜を介するリボフラビン0.1%溶液の透過量を測定するのに適した視覚的、蛍光的、比色的測定スケールを示す図である。
【図2a】第4の試験組成物が経上皮方式で投与されてから15分後の角膜断面の蛍光透視画像図である。
【図2b】第4の試験組成物が経上皮方式で投与されてから30分後の角膜断面の蛍光透視画像図である。
【図2c】第4の新規溶液を用いて経上皮架橋術式で処置された角膜断面の蛍光透視画像図であり、第4の組成物の透過による強力な蛍光及び処置後の組織の関連剛性が認められる。
【図3a】標準溶液を用いて経上皮架橋術式で処置された角膜の偏向度を示す画像図である。
【図3b】第4の新規試験溶液を用いて経上皮架橋術式で処置された角膜の偏向度を示す画像図である。
【図4】円錐角膜を患った角膜の断面内のひだ(ラメラ)の走査顕微鏡写真図である。
【図5】図4に示された角膜の断面内のひだ(ラメラ)の拡大走査顕微鏡写真図である。
【図6】第4の新規試験溶液を用いて経上皮架橋術式で処置された後の円錐角膜罹患角膜の断面内のひだ(ラメラ)の走査顕微鏡写真図である。
【図7】正常な角膜内の上皮における微絨毛及び浅葉の形態を示す走査顕微鏡写真図である。
【図8】リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液を経上皮方式で投与した後に標準線量のUV−A線で処置された角膜の走査顕微鏡写真図である。
【図9】第4の新規試験溶液を経上皮方式で投与した後に標準線量のUV−A線で処置された角膜の走査顕微鏡写真図である。
【図10】生理溶液を経上皮方式で投与した後に標準線量のUV−A線で処置された角膜の走査顕微鏡写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
【0031】
全ての試験はドナー(臓器提供者)のヒト角膜で行われた。ドナーは、倫理委員会の説明プロトコル及び許可基準に準拠した同意が得られた後に、Azienda Ospedaliera Napoli I-Banca Occhi(“アイバンク”)-Regione Campania-Ospedale dei Pellegriniから派遣された(申請書番号:第0009304/2009−決定番号:第1269)。
【0032】
ヒト角膜完全体(すなわち、上皮が予備的除去されていないヒト角膜)により試験組成物の浸透を観察した。角膜の厚さは500〜600ミクロンであり、試験組成物はリボフラビン−デキストランの標準溶液、特許文献1及び非特許文献16に記載された塩化ベンザルコニウム含有リボフラビン−デキストランからなる組成物及びビタミンE、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシンからなる群から選択される少なくとも1種類の物質を所定濃度でリボフラビンと混合することにより得られた新規な試験組成物である。
【0033】
新規な試験組成物を調製するために使用された物質の濃度は下記に示される範囲からなる。
【0034】
ビタミンE:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.01mg%ml〜1500mg%mlであり、更に好ましい濃度は10mg%ml〜1000mg%mlであり、特に好ましい濃度は約500mg%mlである。
【0035】
補酵素Q:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.01mg%ml〜1500mg%mlであり、更に好ましい濃度は1mg%ml〜1000mg%mlであり、特に好ましい濃度は約100mg%mlである。
【0036】
L−プロリン:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.001mg%ml〜100mg%mlであり、更に好ましい濃度は0.005mg%ml〜10mg%mlであり、更に一層好ましい濃度は約0.01mg%ml〜1mg%mlであり、特に好ましい濃度は約0.1mg%mlである。
【0037】
グリシン:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.001mg%ml〜100mg%mlであり、更に好ましい濃度は0.005mg%ml〜10mg%mlであり、更に一層好ましい濃度は約0.01mg%ml〜1mg%mlであり、特に好ましい濃度は約0.1mg%mlである。
【0038】
リジン塩酸塩:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.001mg%ml〜100mg%mlであり、更に好ましい濃度は0.005mg%ml〜10mg%mlであり、更に一層好ましい濃度は約0.01mg%ml〜1mg%mlであり、特に好ましい濃度は約0.05mg%mlである。
【0039】
L−ロイシン:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.001mg%ml〜100mg%mlであり、更に好ましい濃度は0.005mg%ml〜10mg%mlであり、更に一層好ましい濃度は約0.01mg%ml〜1mg%mlであり、特に好ましい濃度は約0.08mg%mlである。
【0040】
前記濃度範囲内の前記物質の一つ又は複数と、0.0001%〜0.5%の範囲内から選択される濃度のリボフラビン含有溶液(例えば、リボフラビン−デキストラン溶液)を混合することにより、経上皮架橋術式による円錐角膜の治療用又はUV−A線に対する眼球の保護用に適した新規な溶液が得られる。リボフラビン−デキストラン溶液の好ましい濃度は0.001%〜0.4%であり、一層好ましい濃度は、0.005%〜0.3%であり、更に一層好ましい濃度は0.01%〜0.2%であり、特に好ましい濃度は約0.1%である。
【0041】
試験結果から次のことが示された。すなわち、前記の群からなる物質は、リボフラビン(特にリボフラビン−デキストラン標準溶液)の浸透を助力し、また、UV−A線の対して角膜を保護するために好適である。
【0042】
移植に不適であるという理由でアイバンクから放棄され、本研究用として考慮された角膜は、適当な溶液中に保存され、そして、テスト前に光学顕微鏡及び内皮細胞試験により再度評価した。
【0043】
非特許文献10〜15に記載された示唆に従って、良好な内皮モザイクを有する厚さが500〜600ミクロンの、良好な透明度を有する角膜のみを使用した。
【0044】
ヒアルロン酸ナトリウムとキサンタンガム0.4mlからなる所定の溶液を含有する円筒状の箱を閉じるように角膜を配置させた。円筒状の箱と同じ直径を有する防水密閉金属リングを角膜表面にあてがった。次いで、蛍光物質(リボフラビン)を含有する試験すべき組成物を角膜に塗布した。様々な時点で箱内部の溶液の蛍光を測定することにより、新規溶液の角膜への浸透量及び溶液の浸透時間を決定することができる。
【0045】
経上皮方式でリボフラビンを投与するための組成物における担体としての前記物質類の有効性及びリボフラビンと前記物質類のうちの少なくとも一つを混合することにより得られた組成物の有効性を下記の試験例により具体的に説明する。しかし、本発明は下記の試験例により何らの限定も受けない。
【0046】
説明の簡潔さのために、下記の組成物による角膜処置により得られた結果だけを報告する。
(1)リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液、
(2)リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液+塩化ベンザルコニウム0.01% (特許文献1参照)、
(3)リボフラビン−デキストラン0.1%+ビタミンE TPGS(D-α-トコフェニル ポリエチレングリコール 1000 スクシネート)濃度500mg%mlからなる第1 の新規試験組成物、
(4)リボフラビン−デキストラン0.1%+ビタミンQ 100mg%mlからなる第2 の新規試験組成物、
(5)リボフラビン−デキストラン0.1%+L−プロリン 0.1mg%ml+グリシン 0.1mg%ml+リジン塩酸塩 0.5mg%ml+L−ロイシン 0.08mg %mlからなる第3の新規試験組成物、
(6)リボフラビン−デキストラン0.1%+ビタミンE(D-α-トコフェニル ポリエチ レングリコール 1000 スクシネート)500mg%ml+ビタミンQ 100mg% ml+L−プロリン 0.1mg%ml+グリシン 0.1mg%ml+リジン塩酸 塩 0.5mg%ml+L−ロイシン 0.08mg%mlからなる第4の新規試験 組成物。
【0047】
前記6個の組成物の各々を選択された角膜に表面に塗布し、前記のように配置し、そして、処置される角膜下部の容器内に配置されたヒアルロン酸ナトリウムとキサンタンガム0.4mlからなる溶液内の蛍光物質の存在下で、投与から15分間経過後及び30分間経過後に角膜ストローマの浸透を測定した。角膜ストローマへのリボフラビン浸透の測定は角膜の切開及び蛍光顕微鏡による継続的測定により行った。
【0048】
角膜の通過を例証する、ヒアルロン酸ナトリウムとキサンタンガム0.4mlからなる溶液内のリボフラビンの存在は、図1に示される視覚スケール及び蛍光検査スケールを使用することによる定性的測定と、比色定量スケールを使用することによる定量的測定の両方により測定した。各カラースケールの近い2個の番号は、顕色を生じるリボフラビン標準溶液の部分の番号と、キサンタンガム及びヒアルロン酸ナトリウム溶液の部分の番号をそれぞれ示す。基準スケールは、50/0、40/10、30/20、20/30、10/40、0/50(単位/ml)の比率で、リボフラビン−デキストラン0.1%をキサンタンガム+ヒアルロン酸ナトリウムで希釈した希釈液を調製することにより定義した。単位/mlの定義値に対応する視覚スケール及び蛍光検査スケールを作成し、そして、各希釈比率に対して10から0までのスコアを割り当てた。比色定量スケールは、希釈剤として選択された物質の比色定量スペクトルに対応する、リボフラビン不存在下でも20%に相当するイエローの割合の最小値を予想する。
【0049】
視覚スケールによる測定は、テストにより得られたサンプルと予め定義されたサンプルとを直接比較することにより、及び写真技術により標準的照明条件で行った。蛍光測定は暗室内でデジタルカメラを装備した蛍光走査顕微鏡を用いて行った。視覚及び蛍光スケールによる測定に関するスコアは2種類の方法により得られた値を平均することにより、第3の試験者により行われた。
【0050】
比色定量測定は、試験の最後に提供された材料を透明な袋内の円筒状箱に挿入(従って、角膜下部に挿入)し、そして、コンピュータ分析で、予め定義された希釈液を高解像度で走査し、かつ、ソフトウェアプログラムのPhotoshop Ver.7(登録商標)を用いてイエロー割合の測定を行うことにより行った。この方法により、試験サンプルにおける検出イエロー割合を、図1に示されるようなリボフラビン0.1%標準溶液の単位/mlで表される正確に決定された濃度値と比較することができる。
【0051】
図2aは、第4の新規溶液を塗布してから15分間経過後の経上皮架橋術式で処置された角膜断面の蛍光透視画像図である。図2bは、第4の試験組成物が投与されてから30分間経過後の経上皮架橋術式で処置された角膜断面の蛍光透視画像図である。図2cは、第4の新規溶液を用いて経上皮架橋術式で処置された角膜断面の蛍光透視画像図である。図2cによれば、リボフラビンが角膜全体に浸透されたこと、及び架橋処置後に組織が剛性になったことが認められる。
【0052】
実施された試験により下記の結果が得られた。
(a)経上皮方式でリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液を塗布してから15分間経過後、角膜ストローマは部分的に浸軟され、そして、蛍光溶液は容器内部の物質中には検出できなかった。比色定量スペクトルはヒアルロン酸ナトリウム+キサンタンガム0.4mlの溶液に対して重ね合わすことができ(図1におけるスコア0)、また、イエロー割合は20%以下であった。
(b)経上皮方式でリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液を塗布してから30分間経過後、角膜ストローマは蛍光溶液で完全に浸軟されたようであり、容器内部のヒアルロン酸ナトリウム+キサンタンガム0.4ml溶液内の蛍光が検出でき、図1のスコア2〜3に相当し、前記のコンピュータ実装解析により決定されたイエロー割合は75%〜80%の範囲内であった。
(c)経上皮方式で、リボフラビン−デキストラン0.1%+ビタミンE TPGS(D-α-トコフェニル ポリエチレングリコール 1000 スクシネート)濃度500mg%mlからなる第1の新規試験組成物を塗布してから15分間経過後、角膜ストローマは完全に浸軟され、蛍光溶液は容器内部に存在した(図1のスコア2〜3、イエロー割合72%〜76%)。
(d)第1の新規試験組成物を塗布してから30分間経過後、角膜の全ての層は完全に浸軟され、容器内部には高濃度のリボフラビンが存在し、上皮表面に接触する生成物自体に対する角膜組織の良好な透過性を示した(図1のスコア3〜4、イエロー割合79%〜84%)。
(e)特許文献1に記載された塩化ベンザルコニウム0.01%含有組成物、ビタミンQ100mg%mlを含有する第2の新規試験溶液及びL−プロリン0.1mg%ml+グリシン0.1mg%ml+リジン塩酸塩 0.5mg%ml+L−ロイシン 0.08mg%mlを含有する第3の新規試験溶液はそれぞれ、同じ条件下で、標準溶液(リボフラビン−デキストラン0.1%)を単独で使用して得られた対応する結果よりも、定量的にもまた、浸透の迅速性の点の両方において、リボフラビンの一層優れた浸透性を示した(15分間経過後の図1のスコア3〜4、30分間経過後の図1のスコア4〜6、15分間経過後のイエロー割合70%〜79%、30分間経過後のイエロー割合78%〜86%)。
(f)第4の新規試験組成物は他の全ての試験組成物よりも遙かに優れた結果を示した。柔組織表面への生成物の塗布から15分間経過後及び30分間経過後の容器内部の蛍光物質の蛍光透視方法及びコンピュータ実装解析で検出された色素の異なる濃度は顕著に高められた(15分間経過後の図1のスコア5〜6、イエロー割合88%〜91%、30分間経過後の図1のスコア6〜7、イエロー割合90%超)。第4の新規試験溶液を経上皮塗布した後に得られる、角膜下に配置された溶液内の蛍光物質の一層高い濃度は、15分間経過後に特に明白となる。特に、同じ時間間隔経過後に容器内部に配置された溶液内で検出不可能な標準溶液を使用して得られた結果と比較した場合に明白である。この事実は、角膜上皮を介するリボフラビンの透過を助力するために一緒に混合された時に、浸透促進剤間で相乗効果が存在するという推測を証明することができるであろう。
【0053】
前記の結果は次の事実を証明している。すなわち、少なくとも下記の化合物、
(a)ビタミンE
(式中、R1=CH3又はH、R2=CH3又はH、R3=CH3)
具体的には、例えば、ビタミンE TPGS(D-α-トコフェニル ポリエチ レングリコール 1000 スクシネート)が挙げられる。
(b)補酵素Q
酸化物形
半キノン形
還元形
何れの形態においても、補酵素Qのイソプレノイド単位の数は例えば、単なる一例として、補酵素Q10を挙げることができる。
(c)L-プロリン
(d)グリシン
(e)リジン
又はその塩酸塩
(f)L−ロイシン
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を単独で又は2種類以上と組み合わせて、場合により、酢酸のような賦形剤と共に、前記の濃度範囲内から選択される濃度で使用することにより、リボフラビン−デキストラン標準溶液により必要とされる時間間隔よりも短い時間間隔で、かつ、継続的な架橋処置に十分な量で、角膜上皮を介するリボフラビンの浸透が促進される。
【0054】
前記の全ての化合物とリボフラビンとの組合せは、角膜組織を透過する生成物の濃度及びその浸透の迅速性の観点から、良好な結果を生成する予期せざる相乗効果を示した。
【0055】
本発明者らは、標準的プロトコルに従って、第4の新規試験組成物を投与し、そして、出力3mW/cm2のUV−A線を照射することにより、ヒト角膜に対する経上皮架橋処置の有効性を試験管内で試験した。被験角膜は前記の実施例に述べたようにして作成した。すなわち、角膜を適当な支持体上に固定し、そして、30分間にわたってリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液と第4の新規試験組成物を各角膜の上皮表面に塗布した(従って、経上皮方式による投与)。引き続いて、標準的UV−A線照射を、5分間毎に分割し、その都度、角膜の表面に各溶液を再投与して30分間に亘って行った。試験の終了時点で、角膜の剛性を次のように測定した。水平線上に配列保持された角膜鉗子で長さ2mmの端部を掴むことにより角膜を保持し、水平線に関して角膜の反対端部により形成された角度を測定した。
【0056】
図3aは、リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液を用いて行われた経上皮架橋処置後の角膜を示す。図示されているように、約40゜だけ下方に屈曲している。図3bは、角膜上皮を予め除去すること無く第4の新規試験溶液を用いて行われた架橋処置後の別の角膜を示す。この二つの図を比較することにより、第4の新規試験溶液を用いて行われた経上皮架橋処置は、所望通り、25゜しか下方に屈曲していないので、角膜を強化していることが明確に理解できる。
【0057】
第4の新規試験溶液を用いて行われた経上皮架橋処置の有効性の更に別の確証として、円錐角膜を患い全層角膜移植術を受けた患者に属するヒト角膜端部について試験管内でこの処置を行った。これらの場合、破棄される代わりに患者から外植された角膜を実験室で使用した。この実験室における使用に際し、角膜層の平面の保存(全層移植)を可能にするように、ジアテルミーに対する手術時間を避けるための注意を払った。角膜周縁部を適当な支持体上に固定した。リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液を第1の角膜に塗布し、第4の新規試験溶液を第2の角膜に塗布した。この塗布は、角膜表面に各溶液を30分間にわたり塗布することにより行った。引き続いて、第4の新規試験溶液で処理された角膜に対してのみ、標準的な波長340nmのUV−A線処置を出力3mW/cm2で、5分間毎に分割し、その都度、角膜の表面に組成物溶液を再投与して30分間に亘って行った。適当な支持体上に固定された角膜の他の端部は、リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液の角膜への点眼のみで、引き続くUV−A線照射無しで処置された。試験の終了時点で、角膜柔組織の観察を走査電子顕微鏡により行った。
【0058】
図4は、未治療の円錐角膜を患った患者から入手した角膜断面のひだ(ラメラ)の状態を示す走査顕微鏡写真である。図5は図4の部分拡大写真である。これら2枚の写真は、UV−A線照射無しにリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液が塗布された角膜の端部における角膜ラメラ(ひだ)の弱体化を示す。
【0059】
図6は、第4の新規試験溶液で経上皮架橋処置した後の、円錐角膜に罹患した角膜断面のラメラの状態を示す走査顕微鏡写真である。経上皮方式で投与された第4の新規試験溶液により処置され、そして、標準的なプロトコルに従って30分間にわたってUV−A線で照射された円錐角膜は、高度に密集分布された緻密な角膜ラメラを発現した。この事実は、新規な生化学的架橋が生成されていることを例証する。
【0060】
第1、第2及び第3の新規な試験溶液でも良好な結果が得られた。
【0061】
新規な試験溶液を用いて得られた結果は、上皮はUV−A線をシールドするので経上皮方式で行われた場合の架橋処置の効果の推測的減少に関する特定の著者らにより提起された異論も打ち破る。担体(浸透促進剤)として本明細書に記載された少なくとも1種類の物質をリボフラビンに添加し、そして、標準的なプロトコルに従って照射を行った場合、得られた組織的サンプルにより証明されるように、経上皮架橋処置の効果の低下に関する推測は誤りである。
【0062】
更に、角膜の上皮層の形態学的一体性の有無及び上皮細胞の表面に存在する微絨毛の形態学的一体性の有無に関する経上皮方式による架橋処置の効果に関する比較研究も走査電子顕微鏡(7500倍)を用いて行った。この比較研究は、リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液及び標準溶液+塩化ベンザルコニウム0.01%(特許文献1参照)に関して、角膜上皮に対して経上皮方式で第4の新規試験組成物により行われた架橋処置の耐用性を評価するために行った。
【0063】
この試験を行う理由は、上皮細胞がUV−A線束により照射され、これら輻射線の吸収により損傷を受ける可能性のある最初の有機構造体だからである。このような問題点を考慮した公知文献は皆無であり、関連データも公知文献には全く開示されていない。
【0064】
上皮細胞の活力度を評価するために最も信頼性があると考慮したパラメータは、型押し術式による細胞学的試験、特に、角膜の表在上皮細胞層の微絨毛の電子顕微鏡による試験である。ムチン経膜と良好な糖衣を高濃度で含有する完全体表在細胞要素の膜(微絨毛)の外方屈曲の存在は、最適な態様で、角膜前涙膜の深層を構成する遊離ムチンとの結合を可能にする。これに対して、微絨毛の病理学的喪失は、涙層の眼表面への接着を困難にし、角膜前涙膜自体の機能不全により誘発された上皮性苦痛の現象と、その結果としての、炎症を起こさせる。
【0065】
微絨毛の形態を、標準線量によるUV−A線で試験管内で経上皮処置した後に走査電子顕微鏡で測定した。厚さが500〜600ミクロン程度のヒト角膜を、(i)平衡塩類溶液(BSS)で、(ii)リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液+塩化ベンザルコニウム0.01%で、及び(iii)第4の新規試験組成物でそれぞれ30分間培養した。
【0066】
予備的に、何の処置も施されていない角膜の角膜上皮の微絨毛及び表在層の形態も、光化学処置を全く受けずに上皮細胞及びこれらの微絨毛がどのように発現するのかを強調するために、研究した。
【0067】
図7は、正常な角膜における上皮の微絨毛及び表在層の形態を示す走査顕微鏡写真である。図8は、標準的なプロトコルに従ってリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液が塗布された後にUV−A線で処置された角膜の走査顕微鏡写真である。図7と比較すれば、全ての上皮層が喪失され、そして、ボウマン膜が被覆されていないことが明かである。
【0068】
特許文献1に記載されたような標準溶液+塩化ベンザルコニウム0.01%により構成された組成物で処置された角膜でも前記と同様な状況が発生した。
【0069】
図9は、第4の新規試験組成物で処置した後に、標準的線量のUV−A線で処理された角膜の走査顕微鏡写真である。図7及び図8と比較すれば、上皮層、細胞核及び細隙結合の保存を認めることができる。更に、微絨毛の密度の顕著な低下が存在し、残りの微絨毛は形態学的に完全体であり、深層細胞質の細胞膜は危険にさらされない。第1、第2及び第3の新規な試験組成物でも同様な結果が得られた。
【0070】
図10は、比較のために、生理溶液だけを使用し、標準線量のUV−A線で処理された角膜の走査顕微鏡写真である。上皮層は破壊され、多数の細胞がその細胞質核小体を失い、そして、殆ど全ての細隙と微絨毛も失われている。
【0071】
得られた結果を要約すれば下記の通りである。
(1)リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液で、又は標準溶液+塩化ベンザルコニウム0.01%含有組成物による標準的プロトコルに従った予備的培養と共にUV−A線により処理された角膜は、全ての上皮層の完全な喪失を被り、その結果として、ボウマン膜が被覆されない(図8参照)。実際、塩化ベンザルコニウムが最終的に添加された標準溶液だけを使用しても、上皮はUV−A線により破壊される。上皮を除去することなく、かつ、標準溶液又はリボフラビン−デキストラン+塩化ベンザルコニウム組成物の何れかを用いて行われた架橋処置は、上皮の外科液除去により引き起こされる不快症状を処置後に患者に味合わせることが避けられない、という知見がこの結果から導かれる。
(2)リボフラビン−デキストランと前記の物質類から選択された少なくとも一つの担体とからなる組成物で培養した後、特に、第4の新規な試験組成物で培養した後に、標準線量のUV−A線で処理した角膜は、その上皮層、細胞核及び細隙を維持している。微絨毛の密度の顕著な低下が認められ、残りの微絨毛は形態学的に完全体である。
(3)平衡塩類溶液(BSS)で培養した後に標準線量のUV−A線で処理された角膜は、上皮層の破壊、多数の細胞の細胞質核小体喪失及び殆ど全ての細隙と微絨毛の喪失を示した。
【0072】
これらの結果は、少なくともビタミンE、ビタミンQ又は補酵素Q、被験アミノ酸(例えば、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩及びL−ロイシン)は角膜上皮を保護する助けになり、角膜上皮を介するリボフラビンの浸透を助力するという推論を導く。本明細書に記載された新規な溶液のうち、第4の組成物は浸透時間及び角膜上皮保護の両方の点で最高性能を示した。
【0073】
本明細書に提案された物質によりこれらの顕著な結果を得ることが出来る理由及び第4の新規試験組成物内で使用される物質が相乗作用を示す理由の説明は未だ完全に明白ではない。理論に拘る訳ではないが、本発明者らは、第4の新規試験組成物で処置した後に検出される角膜上皮の低損傷は恐らく、ビタミンE(例えば、ビタミンE−TPGS)の細胞修復作用によるか又は溶液内に少なくとも必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸が存在することによるものと思料する。多分、ビタミンEは、上皮の修復作用に含まれる酵素類である、グルタチオン酸化酵素及び過酸化物不均化酵素に作用し、また、必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸は細胞修復作用を有しており、また、恐らく、架橋効果も高めるであろう。更に、第4の新規溶液による組織の一層高い浸軟性は恐らく、架橋効果の増大ばかりでなく、UV−A線の危険な作用に対する角膜上皮層の良好な保護も決定する。
【0074】
リボフラビン−デキストランと本明細書に提案された物質群から選択される少なくとも一つの担体(浸透促進剤)とからなる新規溶液によれば、角膜上皮の予防的除去無しに、例えば、円錐角膜の処置のための架橋処置を行うことができる。角膜上皮が除去されないことにより次ぎのことが避けられる。
(1)標準的プロトコルによる架橋処置後の初日に一般的に発生する炎症による病気、
(2)処置後の医療用コンタクトレンズの装着必要性、及び、特に、
(3)角膜上皮の除去による術後角膜感染のリスク。
【0075】
更に、角膜に対する外科的作用が避けられ、従って、手術室及び手術用顕微鏡を必要とすることなく、巡回治療を行うことが可能になる。
【0076】
本発明の新規溶液は点眼薬又は点眼ゲルの形状で投与することもでき、或いは、太陽光線でリボフラビンが照射されることによる自然架橋の作用を高めるような、特に夏期シーズン中に、太陽光線への曝露前に医療用コンタクトレンズに塗布することもできる。
【0077】
更に、本発明の新規溶液は、眼球の内部構造をUV−A線から保護することもできる。従って、例えば、網膜黄斑に対する保護又は太陽光線に長時間曝露されるリスクを伴うヒトにおける白内障に対する保護に使用できる。
【0078】
非単一投与量容器内の新規溶液を出来るだけ長く保存する目的のためにだけ、0.0001%〜0.02%の範囲内の濃度、好ましくは約0.01%に等しい濃度で塩化ベンザルコニウムを添加することができる。新規溶液を単一投与量の使い捨て容器で製造及び販売する場合、塩化ベンザルコニウムの添加は絶対に必要であるとは限らない。本発明の新規組成物には更に、保存剤、抗菌剤、抗真菌剤、賦形剤(例えば、酢酸のみ)及び一般的に安定的な滅菌点眼薬を製造するため又はそれらの同化を促進させるために眼科領域で使用されている任意の物質などを添加できる。
【0079】
前記のように、本発明者らは、リボフラビンに、ビタミンQ、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシンから選択された少なくとも一つの物質を添加することにより得られた組成物の優れた性能は、メタロプロテイナーゼMMP9の増加による細胞修復機能を有する最後の物質が必須又は条件付き必須アミノ酸であるという事実に部分的によるものであると考えている。おそらく0.00001%〜0.5%の範囲内の濃度で、メタロプロテイナーゼMMP9を増加させるのに適合した少なくとも1種類の物質をリボフラビン溶液に添加することにより、新規な第1、第2、第3及び第4の試験組成物についても同様な結果を得ることが出来るものと推察される。
【0080】
メタロプロテイナーゼMMM9を増加させるのに適合した前記物質のうち、特に有用なものは、ゲニステイン(5,7−ジヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロメンー4−オン)、フィトエストロゲン、サイトカイン及びいわゆるNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)などである。リボフラビン点眼薬の製造用として使用するのに適合したNSAIDのうち、特に有用なものは、
アセチルサリチル酸:(2−アセトキシ安息香酸)、
フルフェナム酸:(2−{[3−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}安息香酸)、 メクロフェナム酸:(2−[(2,6−ジクロロ−3−メチルフェニル)アミノ]安息
香酸)、
メフェナム酸:(2−(2,3−ジメチルフェニル)アミノ安息香酸)、
ニフルム酸:(2−{[3−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}ニコチン酸)、
トルフェナム酸:(2−[(3−クロロ−2−メチルフェニル)アミノ]安息香酸)、
ベノリラート:(4−(アセチルアミノ)フェニル 2−(アセチルオキシ)ベンゾエ
ート)、
カルプロフェン:((RS)−2−(6−クロロ−9H−カルバゾール−2−イル)プ
ロパン酸)、
セレコキシブ:(4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピ
ラゾール−1−イル]ベンゼンスホンアミド)、
シノキシカム:(桂皮酸ピロキシカム又は[9−メチル−10,10−ジオキソ−8−
ピリジン−2−イルカルバモイル)−10$1^{6}−チア−9−ア
ザビシクロ[4.4.0]デカ−1,3,5,7−テトラエン−7−イ
ル](E)−3−フェニルプロ−2−ペノエート;桂皮酸ピロキシカム)、
ジフルニサル:(2’,4’−ジフロロ−4−ヒドロキシビフェニル−3−カルボン酸)、 ジクロフェナック:(2−[2−[(2,6−ジクロロフェニル)アミノ]フェニル]
酢酸)、
ドロキシカム:(2H,5H−1,3−オキサジノ(5,6−c)(1,2)ベンゾチ
アジン−2,4(3H)−ジオン, 5−メチル−3−(2−ピリジニ
ル)−6,6−ジオキシド)、
エトドラク:((RS)−2−(1,8−ジエチル−4,9−ジヒドロ−3H−ピラノ
[3,4−b]インドール−1−イル)酢酸)、
エトリコキシブ:(5−クロロ−6’−メチル−3−[4−(メチルスルホニル)フェ
ニル]−2,3’−ビピリジン)、
フェノプロフェン:(2−(3−フェノキシフェニル)プロパン酸)、
フルビプロフェン:((RS)−2−(2−フルオロビフェニル−4−イル)プロパン
酸)、
イブフェナック:(4−イソブチルフェニル酢酸)、
イブプロフェン:((RS)−2−(4−(2−メチルプロピル)フェニル)プロパン
酸)、
インドメタシン:(2−{1−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−5−メトキシ
−2−メチル−1H−インドール−3−イル}酢酸)、
ケトプロフェン:((RS)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロパン酸)、
ケトロラック:((±)−5−ベンゾイル−2,3−ジヒドロ−1H−ピロリジン−1
−カルボン酸, 2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プ
ロパンジオール)、
ロルノキシカム:((3E)−6−クロロ−3−[ヒドロキシ(ピリジン−2−イルア
ミノ)メチレン]−2−メチル−2,3,−ジヒドロ−4H−チエノ
[2,3−e][1,2]チアジン−4−オン 1,1−ジオキシド)、
ルミラコキシブ:({2−[(2−クロロ−6−フルオロフェニル)アミノ]−5−メチ
ルフェニル}酢酸)、
メロキシカム:(4−ヒドキシ−2−メチル−N−(5−メチル−2−チアゾリル)−
2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド−1,1−ジオ
キシド)、
メタミゾール:([2,3−ジヒドロ−1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル
−1H−ピラゾール−4−イル)メチルアミノ]メタンスルホン酸ナト
リウム)、
ナプロキセン:((+)−(S)−2−(6−メトキシナフタレン−2−イル)プロパ
ン酸)、
ニメスリド:(N−(4−ニトロ−2−フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド)、
オキサプロジン:(3−(4,5−ジフェニル−1,3−オキサゾールー2−イル)プ
ロパン酸)、
パレコキシブ:(N−{[4−(5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−イ
ル)フェニル]スルフォニル}プロパンアミド)、
ピロキシカム:((8E)−8−[ヒドロキシ−(ピリジン−2−イルアミノ)メチリ
デン]−9−メチル−10,10−ジオキソ−10λ6−チア−9−ア
ザビシクロ[4.4.0]デカ−1,3,5−トリエン−7−オン)、
ロフェコキシブ:(4−(4−メチルスルフォニルフェニル)−3−フェニル−5H−
フラン−2−オン)、
スリンダク:({1Z}−5−フルオロ−2−メチル−1−[4−(メチルスルフィニ
ルベンジリデン]−1H−インデン−3−イル}酢酸)、
スドキシカム:(4−ヒドロキシ−2−メチル−N(2)−チアゾリル−2H−1,2
−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド)、
テノキシカム:((3E)−3−[ヒドロキシ(ピリジン−2−イルアミノ)メチレン]
−2−メチル−2,3−ジヒドロ−4H−チエノ[2,3−e][1,
2]チアジン−4−オン 1,1−ジオキシド)、
バルデコキシブ:(4−(5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−イル)ベ
ンゼンスホンアミド)。
【0081】
更に、本発明者らは、リボフラビン溶液(例えば、リボフラビン−デキストラン溶液)に少なくとも1種類の必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸を添加することにより、新規な第1、第2、第3及び第4の試験組成物の結果と同様な結果が得られるのではないかと思料する。
【0082】
潜在的に有用な物質のうち、最も見込みがあると思われるのはL−アルギニンである。L−アルギニンはリボフラビン溶液(例えば、リボフラビン−デキストラン標準溶液)と混合することができる。また、新規溶液を得るために前記に列挙した物質のうちの1個以上を添加することもできる。前記に列挙した物質の全てについて試験したわけではないが、本発明者らは、全ての必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸を角膜上皮を介するリボフラビン浸透促進のために有効に使用することができ、斯くして、UV−A線から及びリボフラビンにより吸収される太陽光線から角膜を保護するために有効に使用できるものと考えている。特に、前記に列挙した物質と同様にL−アルギニンは有効な担体であると見做すことは合理的妥当性がある。なぜなら、窒素酸化物のアミノ酸先駆体であるL−アルギニンは、末梢レベルで窒素酸化物(NO)を送達できると考えるのが合理的だからである。NOが溶解された物質を角膜上皮に局所塗布することにより円錐角膜患者を処置するための窒素酸化物(NO)の使用はNOの低溶解性により妨げられている。
【0083】
UV−A線から上皮の微絨毛を保護するL−アルギニン及びその他の必須アミノ酸をどの位の量で架橋処置に使用すべきか未だ試験中である。その他の必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸(特に、L−アルギニン)が予期した通り、角膜上皮を保護しながら経上皮架橋処置を可能にする点眼薬の実現に有用であることが証明されたならば、本発明者らが合理的であると考えるように、これらを、0.00001%〜0.5%の範囲内の濃度で、リボフラビン溶液(例えば、リボフラビン−デキストラン溶液)に添加するであろう。
【0084】
L−アルギニン又は別の必須アミノ酸若しくは条件付き必須アミノ酸の好ましい濃度は0.001%〜0.4%の範囲内であり、更に好ましい濃度は0.005%〜0.3%の範囲内であり、更に一層好ましい濃度は0.01%〜0.2%の範囲内であり、特に好ましい濃度は約0.1%である。
【0085】
オプションとして、L−アルギニン又は別の必須アミノ酸若しくは条件付き必須アミノ酸は本発明による新規溶液の何れにも添加することができる。
【0086】
本発明の新規点眼薬の投与量は診断病理学又は症状の苛酷度に応じて変化する。一例として、投与量は1日当たり1滴点眼〜1時間当たり1滴点眼の範囲内であると思料される。
【0087】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0088】
図1:行の訳
スコア
標準視覚スケール
希釈液0.1% (単位/μl)
蛍光スケール (単位/μl)
カラースケール イエロー割合
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐角膜の治療用組成物及び治療術式に関し、特に、UV−A線(紫外線A波)に対する眼球の内部構造保護用として使用するか又は角膜架橋治療で使用するのに適した新規な溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献17には、点眼液の投与及び吸収に関する問題点及び術式のレビュー(再検討)が記載されている。
【0003】
リボフラビン(ビタミンB2)による角膜架橋(Corneal cross-linking, C3)(略して「リボフラビンC3」と呼ぶ)は、円錐角膜及び角膜拡張症を患う患者を治療するための革新的術式であり、角膜組織を強化するためにリボフラビンを投与し、そして紫外線(UV−A線)を照射することからなる(非特許文献1及び2参照)。
【0004】
架橋治療は比較的簡単である。リボフラビンを点眼し、そして、角膜に適正線量のUV−A線を5分間照射し、次いで、この処置を連続的に6回繰り返し、UV−A線の総照射時間を30分間とする。
【0005】
架橋治療の適合性を確立するために考慮しなければならない最も重要な臨床上のパラメーターは角膜の厚さである。角膜の厚さは400ミクロン未満であってはならない。
【0006】
円錐角膜のこの保存治療の目的は、角膜移植の必要性を遅延させ、望むべくは、排除することであり、そして、患者の生活の質を高めることにより視覚機能を改善することである(非特許文献6及び7参照)。
【0007】
角膜を構成するコラーゲンのひだ(ラメラ)の結合力低下による角膜柔組織の異常弛緩のための角膜の進行性弱化を病理学的特徴とする円錐角膜の治療に架橋術式が使用されてきた。UV−A線とリボフラビンを使用することにより、隣接するコラーゲン分子間の新たな結合が形成され、その結果、治療角膜は厚くなり、かつ、堅くなる(非特許文献3参照)。角膜は柔組織の厚さ内にコラーゲン繊維の多数の層を有する。角膜内のコラーゲンの各種層を結びつける横断的結合(いわゆる“架橋”)は限定的な仕方で角膜剛性に寄与する。角膜架橋治療の目的は、これら横断的結合を大量に生成させることにより角膜組織の剛性度を高めることである。
【0008】
上皮欠損した角膜に約200μmの浸透深さでリボフラビンを点眼し、そして、UV−A線によりリボフラビン分子を照射すると、フリーラジカル(遊離基)の必然的生成によるリボフラビン分子の化学平衡の喪失が起こる。リボフラビン分子は不安定になり、そして、2個のコラーゲン小繊維の架橋によりリボフラビン自体を安定化させる。一連の生化学的“ブリッジ”は、角膜の総体的強化をもたらすように、コラーゲン小繊維間(すなわち架橋)で生成される(非特許文献3参照)。
【0009】
実際、治療は角膜の最外層(すなわち、角膜上皮)を除去した後に行われる。この円錐角膜及び角膜拡張症の架橋治療(C3−R)の実行方法は、下部の基質(ストローマ)へのリボフラビン−デキストラン0.1%溶液(例えば、RICROLINの商標名で、SOOFT ITALIA S.r.l.により市販されている溶液)の良好な浸透のための角膜上皮の予備的除去を企図し、そして、治療はこれらの条件下で標準化されている。この治療法の支持者によれば、角膜ストローマ内部へのリボフラビン溶液の最上の浸透を確保し、かつ、それによる治療効果の最大化を確保するために、上皮層の除去は必要であろう。
【0010】
不都合なことに、角膜上皮の除去は、治療当日及びその翌日以降に眼掻痒又は眼火傷を起こし、また、一過性の目のかすみを起こす。これらの症状は周知であり、角膜上皮が再生されるまで持続する。これらの症状は一般的に、C3−R手術後数日にわたり非ステロイド性抗炎症薬(NASID)点眼薬(この点眼薬は涙液代替物及び鎮痛剤に基づく)を使用し、かつ、角膜上に医療用コンタクトレンズを装着することにより治療される(非特許文献4、6及び7参照)。
【0011】
幾人かの著者は、角膜上皮の予備的除去無しに標準的術式を適用することによりC3−R治療の実行が可能であり、また、このような治療法が観察臨床データにより実証されるように有効かつ安全であることを支持している。この術式によれば、治療は角膜上皮の予備的除去(上皮欠損)無しに実行されなければならない。その目的は、一時的治療を実行するために従前の術式では必然的であった角膜上皮の除去による疾患を患者が経験することを避けることであり、特に、角膜の下層の結果的曝露を伴う角膜上皮の除去を企図する治療法に必然的であった術後感染の全てのリスクを避けることである。この治療法の実行方法の支持者は、UV−A線の照射前にリボフラビンの吸収量を高めるために一層長い期間にわたってリボフラビンを点眼することを示唆した(非特許文献8参照)。
【0012】
角膜上皮の除去の有無が円錐角膜及び角膜拡張症の架橋治療に関係する限り、対照的意見が文献に報告される。
【0013】
基質(ストローマ)内へのリボフラビンの浸透量を高めるために角膜上皮を除去した後のC3−R治療が研究され、かつ実行されている。本発明者が知る限りでは、角膜上皮を除去したことによる又は除去しないことによる角膜ストローマへのリボフラビンの浸透の有無及び浸透量を測定した文献は存在しない。
【0014】
予備的上皮欠損無しに架橋を実行することは多くの著者により批評されている。このような著者らは、このような方法ではリボフラビンは上皮を通過しないこと、及び、上皮の除去無しにリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液が角膜ストローマ内に効果的に浸透したか否か及びどのくらいの量が浸透したか、並びに、経上皮法におけるUV−A線による治療が角膜上皮の除去後に行われるUV−A線による治療と同等な効果を生じているか否かは未だ例証されていないことを支持する。
【0015】
角膜上皮を除去すること無く架橋術式により円錐角膜を治療するための効果的な物質を提供する試みにおいて、Sporl博士は上皮の浸透性を高めるために塩化ベンザルコニウムの使用を示唆し(非特許文献16参照)、また、Pinelli博士は特許文献1において、リボフラビンと混合された界面活性剤の使用を示唆した。
【0016】
特許文献1には、経上皮架橋術式による円錐角膜治療用の、リボフラビンと塩化ベンザルコニウムを含有する新規な溶液が開示されている。
【0017】
本願発明者らがヒト角膜で行った実験では、下記に説明される結果から次ぎのような結論が得られた。すなわち、標準溶液又は特許文献1に記載された組成物を用いて行われた第2の術式は角膜上皮の除去による問題点を解決しなかった。その理由は、感染の必然的リスクを伴う下層を露出したまま残し、かつ、修復機序の変更により、この第2の術式が無効にされたからである。
【0018】
角膜上皮を比較的短時間で横切ることができ、かつ、迷惑な術後症状の原因である角膜上皮の損傷無しに角膜架橋を実行するためのリボフラビン含有組成物の開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】イタリア特許出願第MI2007A002162号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Seiler T., Spoerl E., Huhle M., Kamouna A. Conservative therapy of keratoconus by enhancement of collagen cross-links. Invest Ophthalmol. Vis. Sci. 1996;37:S1017.
【非特許文献2】Seiler T., Quurke AW. Iatrogenic keratectasia after LASIK in a case of forme fruste keratoconus. J Cat Refract Surg. 1998;24:1007-1009.
【非特許文献3】Spoerl E., Huhle M., Seiler T. "Induction of cross-links in corneal tissue", Exp Eye Res. 1998;66:97-103.
【非特許文献4】Mazzotta C., Traversi C., Baiocchi S., Sergio P., Caporossi T., Caporossi A. "Conservative treatment of keratoconus by riboflavin-uva-induced cross-linking of corneal collagen: qualitative investigation" Eur J Ophthalmol. 2006;16:530-5.
【非特許文献5】Caporossi A., Baiocchi S., Mazzotta C., Traversi C., Caporossi T. "Parasurgical therapy for keratoconus by riboflavin-ultraviolet type A rays induced cross-linking of corneal collagen: preliminary refractive results in an Italian study" J Cataract Refract Surg. 2006;32:837-45.
【非特許文献6】Spoerl E., Seiler T. "Techniques for stiffening the cornea" j Refract Surg. 1999;15:711-713.
【非特許文献7】Hagele G., Boxer Wachler BS. "Corneal Collagen Crosslinking with Riboflavin (C3-R) for corneal stabilization" presented at the International Congress of Corneal Cross Linking (CCL). December 9-10, 2005. Zurich, Switzerland.
【非特許文献8】Pinelli, R. "C3-Riboflavin for the treatment of keratoconus" J Cataract & Refractive Surgery Today Europe. 2006;1:49-50.
【非特許文献9】Pinelli R. "Eyeword", 2007;5:34-40.
【非特許文献10】Linda J. Muller, Elisabeth Pels, Gijs F. J. M. Vrensen: "The specific architecture of the anterior stroma accounts for maintenance of corneal curvature". Br J Ophthalmol 2001;85:437-443 (April).
【非特許文献11】Mau T. Tranl, Robert N. Lausch2 and John E. Oakes: "Substance P Differentially Stimulates IL-8 Synthesis in Human Corneal Epithelial Cells" Investigative Ophthalmology and Visual Science. 2000;41:3871-3877.
【非特許文献12】L.J. Muller, L. Pels and GF. Vrensen: "Novel aspects of the ultrastructural organization of human corneal keratocytes" Investigative Ophthalmology & Visual Science, Vol 36, 2557-2567.
【非特許文献13】G. Perrella, P. Brusini, R. Spelat, P. Hossain, A. Hopkinson, H. S. Dua: "Expression of haematopoietic stem cell markers, CD133 and CD34 on human corneal keratocytes" British Journal of Ophthalmology 2007;91:94-99.
【非特許文献14】Tadashi Senoo, and Nancy C. Joyce: "Cell Cycle Kinetics in Corneal Endothelium from Old and Young Donors" Investigative Ophthalmology and Visual Science. 2000;41:660-667.
【非特許文献15】L.J. Muller, L. Pels and GF. Vrensen: "Ultrastructural organization of human corneal nerves "Investigative Ophthalmology & Visual Science, Vol 37, 476-488.
【非特許文献16】R. Pinelli, A. J. Kannellopoulos, B. S. B. Wachler, E. Spoerl, A. Ertan, S. L. Trokel, "C3-Riboflavin treatments: Where did we come from? Where are we now?, Cataract & Refractive Surgery Today Europe, Summer 2007.
【非特許文献17】Ashim k. Mitra, "Ophthalmic Drug Delivery Systems", Second Edition: Revised And Expanded, Marcell Dekker Inc., NY, 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、UV−A線に対する眼球内部構造保護用又は経上皮架橋技術による円錐角膜の新規な治療用点眼液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
角膜上皮が予備的に除去された又はされていないヒト角膜を介する、リボフラビン単独又はリボフラビンと他の生成物(“浸透促進剤”)との混合物の浸透量、及びUV−A線による継続的治療の有効性及び安全性を決定するために、本発明者らは鋭意広範な研究を行った。
【0023】
幾つかの有用な物質が同定された。これらは、必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸(例えば、アルギニン、システイン、グリシン、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、セリン及びチロシン)、補酵素Q、ビタミンE、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩
、L−ロイシン、L−アルギニン及びメタロプロテイナーゼ(MMP9)の産生を刺激する性向の化合物類からなる群から選択される。MMP9産生刺激性化合物類は下記で更に詳細に説明する。これらの化合物類は角膜上皮を介する、リボフラビン、特にリボフラビン−デキストラン標準溶液の投与に適した点眼液における担体(“浸透促進剤”)として有効に使用することができる。例えば、目薬又はゲル、水溶液、エマルジョン若しくは医療用コンタクトレンズなどの形で市販され得る所謂点眼薬は、角膜上皮を保護する経上皮架橋術式による円錐角膜の治療に使用することができる。
【0024】
点眼液は酢酸のような賦形剤、又は酢酸或いはリボフラビンと混合される前に別の賦形剤で処理される前記のような物質類を含有できる。
【0025】
本発明は更に、UV−A線に対して眼球の内部構造を保護するように企図された又は経上皮架橋術式により円錐角膜を治療するために企図されたリボフラビン含有点眼液及びリボフラビン含有関連点眼液の製造用及び角膜上皮を介するリボフラビン投与に好適な組成物中で担体(“浸透促進剤”)用としての、必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、ビタミンE、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン及びメタロプロテナーゼ(MMP9)産生刺激性化合物類からなる群から選択される少なくとも1種類の物質の使用を提案する。
【0026】
本発明はまた、前記担体のうちの少なくとも一つをリボフラビンに添加するステップからなる点眼液の製造方法も提案する。
【0027】
前記各物質は担体として単独で又は他の提案された担体と一緒に、リボフラビン含有溶液に、下記の本発明の実施態様に記載される範囲内から選択される濃度で添加することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上述べたように、本発明によれば、UV−A線に対する眼球内部構造保護用又は経上皮架橋技術による円錐角膜の新規な治療用点眼液が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】経上皮方式で投与した後の角膜を介するリボフラビン0.1%溶液の透過量を測定するのに適した視覚的、蛍光的、比色的測定スケールを示す図である。
【図2a】第4の試験組成物が経上皮方式で投与されてから15分後の角膜断面の蛍光透視画像図である。
【図2b】第4の試験組成物が経上皮方式で投与されてから30分後の角膜断面の蛍光透視画像図である。
【図2c】第4の新規溶液を用いて経上皮架橋術式で処置された角膜断面の蛍光透視画像図であり、第4の組成物の透過による強力な蛍光及び処置後の組織の関連剛性が認められる。
【図3a】標準溶液を用いて経上皮架橋術式で処置された角膜の偏向度を示す画像図である。
【図3b】第4の新規試験溶液を用いて経上皮架橋術式で処置された角膜の偏向度を示す画像図である。
【図4】円錐角膜を患った角膜の断面内のひだ(ラメラ)の走査顕微鏡写真図である。
【図5】図4に示された角膜の断面内のひだ(ラメラ)の拡大走査顕微鏡写真図である。
【図6】第4の新規試験溶液を用いて経上皮架橋術式で処置された後の円錐角膜罹患角膜の断面内のひだ(ラメラ)の走査顕微鏡写真図である。
【図7】正常な角膜内の上皮における微絨毛及び浅葉の形態を示す走査顕微鏡写真図である。
【図8】リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液を経上皮方式で投与した後に標準線量のUV−A線で処置された角膜の走査顕微鏡写真図である。
【図9】第4の新規試験溶液を経上皮方式で投与した後に標準線量のUV−A線で処置された角膜の走査顕微鏡写真図である。
【図10】生理溶液を経上皮方式で投与した後に標準線量のUV−A線で処置された角膜の走査顕微鏡写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
【0031】
全ての試験はドナー(臓器提供者)のヒト角膜で行われた。ドナーは、倫理委員会の説明プロトコル及び許可基準に準拠した同意が得られた後に、Azienda Ospedaliera Napoli I-Banca Occhi(“アイバンク”)-Regione Campania-Ospedale dei Pellegriniから派遣された(申請書番号:第0009304/2009−決定番号:第1269)。
【0032】
ヒト角膜完全体(すなわち、上皮が予備的除去されていないヒト角膜)により試験組成物の浸透を観察した。角膜の厚さは500〜600ミクロンであり、試験組成物はリボフラビン−デキストランの標準溶液、特許文献1及び非特許文献16に記載された塩化ベンザルコニウム含有リボフラビン−デキストランからなる組成物及びビタミンE、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシンからなる群から選択される少なくとも1種類の物質を所定濃度でリボフラビンと混合することにより得られた新規な試験組成物である。
【0033】
新規な試験組成物を調製するために使用された物質の濃度は下記に示される範囲からなる。
【0034】
ビタミンE:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.01mg%ml〜1500mg%mlであり、更に好ましい濃度は10mg%ml〜1000mg%mlであり、特に好ましい濃度は約500mg%mlである。
【0035】
補酵素Q:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.01mg%ml〜1500mg%mlであり、更に好ましい濃度は1mg%ml〜1000mg%mlであり、特に好ましい濃度は約100mg%mlである。
【0036】
L−プロリン:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.001mg%ml〜100mg%mlであり、更に好ましい濃度は0.005mg%ml〜10mg%mlであり、更に一層好ましい濃度は約0.01mg%ml〜1mg%mlであり、特に好ましい濃度は約0.1mg%mlである。
【0037】
グリシン:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.001mg%ml〜100mg%mlであり、更に好ましい濃度は0.005mg%ml〜10mg%mlであり、更に一層好ましい濃度は約0.01mg%ml〜1mg%mlであり、特に好ましい濃度は約0.1mg%mlである。
【0038】
リジン塩酸塩:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.001mg%ml〜100mg%mlであり、更に好ましい濃度は0.005mg%ml〜10mg%mlであり、更に一層好ましい濃度は約0.01mg%ml〜1mg%mlであり、特に好ましい濃度は約0.05mg%mlである。
【0039】
L−ロイシン:0.0001mg%ml〜2000mg%ml。好ましい濃度は0.001mg%ml〜100mg%mlであり、更に好ましい濃度は0.005mg%ml〜10mg%mlであり、更に一層好ましい濃度は約0.01mg%ml〜1mg%mlであり、特に好ましい濃度は約0.08mg%mlである。
【0040】
前記濃度範囲内の前記物質の一つ又は複数と、0.0001%〜0.5%の範囲内から選択される濃度のリボフラビン含有溶液(例えば、リボフラビン−デキストラン溶液)を混合することにより、経上皮架橋術式による円錐角膜の治療用又はUV−A線に対する眼球の保護用に適した新規な溶液が得られる。リボフラビン−デキストラン溶液の好ましい濃度は0.001%〜0.4%であり、一層好ましい濃度は、0.005%〜0.3%であり、更に一層好ましい濃度は0.01%〜0.2%であり、特に好ましい濃度は約0.1%である。
【0041】
試験結果から次のことが示された。すなわち、前記の群からなる物質は、リボフラビン(特にリボフラビン−デキストラン標準溶液)の浸透を助力し、また、UV−A線の対して角膜を保護するために好適である。
【0042】
移植に不適であるという理由でアイバンクから放棄され、本研究用として考慮された角膜は、適当な溶液中に保存され、そして、テスト前に光学顕微鏡及び内皮細胞試験により再度評価した。
【0043】
非特許文献10〜15に記載された示唆に従って、良好な内皮モザイクを有する厚さが500〜600ミクロンの、良好な透明度を有する角膜のみを使用した。
【0044】
ヒアルロン酸ナトリウムとキサンタンガム0.4mlからなる所定の溶液を含有する円筒状の箱を閉じるように角膜を配置させた。円筒状の箱と同じ直径を有する防水密閉金属リングを角膜表面にあてがった。次いで、蛍光物質(リボフラビン)を含有する試験すべき組成物を角膜に塗布した。様々な時点で箱内部の溶液の蛍光を測定することにより、新規溶液の角膜への浸透量及び溶液の浸透時間を決定することができる。
【0045】
経上皮方式でリボフラビンを投与するための組成物における担体としての前記物質類の有効性及びリボフラビンと前記物質類のうちの少なくとも一つを混合することにより得られた組成物の有効性を下記の試験例により具体的に説明する。しかし、本発明は下記の試験例により何らの限定も受けない。
【0046】
説明の簡潔さのために、下記の組成物による角膜処置により得られた結果だけを報告する。
(1)リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液、
(2)リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液+塩化ベンザルコニウム0.01% (特許文献1参照)、
(3)リボフラビン−デキストラン0.1%+ビタミンE TPGS(D-α-トコフェニル ポリエチレングリコール 1000 スクシネート)濃度500mg%mlからなる第1 の新規試験組成物、
(4)リボフラビン−デキストラン0.1%+ビタミンQ 100mg%mlからなる第2 の新規試験組成物、
(5)リボフラビン−デキストラン0.1%+L−プロリン 0.1mg%ml+グリシン 0.1mg%ml+リジン塩酸塩 0.5mg%ml+L−ロイシン 0.08mg %mlからなる第3の新規試験組成物、
(6)リボフラビン−デキストラン0.1%+ビタミンE(D-α-トコフェニル ポリエチ レングリコール 1000 スクシネート)500mg%ml+ビタミンQ 100mg% ml+L−プロリン 0.1mg%ml+グリシン 0.1mg%ml+リジン塩酸 塩 0.5mg%ml+L−ロイシン 0.08mg%mlからなる第4の新規試験 組成物。
【0047】
前記6個の組成物の各々を選択された角膜に表面に塗布し、前記のように配置し、そして、処置される角膜下部の容器内に配置されたヒアルロン酸ナトリウムとキサンタンガム0.4mlからなる溶液内の蛍光物質の存在下で、投与から15分間経過後及び30分間経過後に角膜ストローマの浸透を測定した。角膜ストローマへのリボフラビン浸透の測定は角膜の切開及び蛍光顕微鏡による継続的測定により行った。
【0048】
角膜の通過を例証する、ヒアルロン酸ナトリウムとキサンタンガム0.4mlからなる溶液内のリボフラビンの存在は、図1に示される視覚スケール及び蛍光検査スケールを使用することによる定性的測定と、比色定量スケールを使用することによる定量的測定の両方により測定した。各カラースケールの近い2個の番号は、顕色を生じるリボフラビン標準溶液の部分の番号と、キサンタンガム及びヒアルロン酸ナトリウム溶液の部分の番号をそれぞれ示す。基準スケールは、50/0、40/10、30/20、20/30、10/40、0/50(単位/ml)の比率で、リボフラビン−デキストラン0.1%をキサンタンガム+ヒアルロン酸ナトリウムで希釈した希釈液を調製することにより定義した。単位/mlの定義値に対応する視覚スケール及び蛍光検査スケールを作成し、そして、各希釈比率に対して10から0までのスコアを割り当てた。比色定量スケールは、希釈剤として選択された物質の比色定量スペクトルに対応する、リボフラビン不存在下でも20%に相当するイエローの割合の最小値を予想する。
【0049】
視覚スケールによる測定は、テストにより得られたサンプルと予め定義されたサンプルとを直接比較することにより、及び写真技術により標準的照明条件で行った。蛍光測定は暗室内でデジタルカメラを装備した蛍光走査顕微鏡を用いて行った。視覚及び蛍光スケールによる測定に関するスコアは2種類の方法により得られた値を平均することにより、第3の試験者により行われた。
【0050】
比色定量測定は、試験の最後に提供された材料を透明な袋内の円筒状箱に挿入(従って、角膜下部に挿入)し、そして、コンピュータ分析で、予め定義された希釈液を高解像度で走査し、かつ、ソフトウェアプログラムのPhotoshop Ver.7(登録商標)を用いてイエロー割合の測定を行うことにより行った。この方法により、試験サンプルにおける検出イエロー割合を、図1に示されるようなリボフラビン0.1%標準溶液の単位/mlで表される正確に決定された濃度値と比較することができる。
【0051】
図2aは、第4の新規溶液を塗布してから15分間経過後の経上皮架橋術式で処置された角膜断面の蛍光透視画像図である。図2bは、第4の試験組成物が投与されてから30分間経過後の経上皮架橋術式で処置された角膜断面の蛍光透視画像図である。図2cは、第4の新規溶液を用いて経上皮架橋術式で処置された角膜断面の蛍光透視画像図である。図2cによれば、リボフラビンが角膜全体に浸透されたこと、及び架橋処置後に組織が剛性になったことが認められる。
【0052】
実施された試験により下記の結果が得られた。
(a)経上皮方式でリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液を塗布してから15分間経過後、角膜ストローマは部分的に浸軟され、そして、蛍光溶液は容器内部の物質中には検出できなかった。比色定量スペクトルはヒアルロン酸ナトリウム+キサンタンガム0.4mlの溶液に対して重ね合わすことができ(図1におけるスコア0)、また、イエロー割合は20%以下であった。
(b)経上皮方式でリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液を塗布してから30分間経過後、角膜ストローマは蛍光溶液で完全に浸軟されたようであり、容器内部のヒアルロン酸ナトリウム+キサンタンガム0.4ml溶液内の蛍光が検出でき、図1のスコア2〜3に相当し、前記のコンピュータ実装解析により決定されたイエロー割合は75%〜80%の範囲内であった。
(c)経上皮方式で、リボフラビン−デキストラン0.1%+ビタミンE TPGS(D-α-トコフェニル ポリエチレングリコール 1000 スクシネート)濃度500mg%mlからなる第1の新規試験組成物を塗布してから15分間経過後、角膜ストローマは完全に浸軟され、蛍光溶液は容器内部に存在した(図1のスコア2〜3、イエロー割合72%〜76%)。
(d)第1の新規試験組成物を塗布してから30分間経過後、角膜の全ての層は完全に浸軟され、容器内部には高濃度のリボフラビンが存在し、上皮表面に接触する生成物自体に対する角膜組織の良好な透過性を示した(図1のスコア3〜4、イエロー割合79%〜84%)。
(e)特許文献1に記載された塩化ベンザルコニウム0.01%含有組成物、ビタミンQ100mg%mlを含有する第2の新規試験溶液及びL−プロリン0.1mg%ml+グリシン0.1mg%ml+リジン塩酸塩 0.5mg%ml+L−ロイシン 0.08mg%mlを含有する第3の新規試験溶液はそれぞれ、同じ条件下で、標準溶液(リボフラビン−デキストラン0.1%)を単独で使用して得られた対応する結果よりも、定量的にもまた、浸透の迅速性の点の両方において、リボフラビンの一層優れた浸透性を示した(15分間経過後の図1のスコア3〜4、30分間経過後の図1のスコア4〜6、15分間経過後のイエロー割合70%〜79%、30分間経過後のイエロー割合78%〜86%)。
(f)第4の新規試験組成物は他の全ての試験組成物よりも遙かに優れた結果を示した。柔組織表面への生成物の塗布から15分間経過後及び30分間経過後の容器内部の蛍光物質の蛍光透視方法及びコンピュータ実装解析で検出された色素の異なる濃度は顕著に高められた(15分間経過後の図1のスコア5〜6、イエロー割合88%〜91%、30分間経過後の図1のスコア6〜7、イエロー割合90%超)。第4の新規試験溶液を経上皮塗布した後に得られる、角膜下に配置された溶液内の蛍光物質の一層高い濃度は、15分間経過後に特に明白となる。特に、同じ時間間隔経過後に容器内部に配置された溶液内で検出不可能な標準溶液を使用して得られた結果と比較した場合に明白である。この事実は、角膜上皮を介するリボフラビンの透過を助力するために一緒に混合された時に、浸透促進剤間で相乗効果が存在するという推測を証明することができるであろう。
【0053】
前記の結果は次の事実を証明している。すなわち、少なくとも下記の化合物、
(a)ビタミンE
(式中、R1=CH3又はH、R2=CH3又はH、R3=CH3)
具体的には、例えば、ビタミンE TPGS(D-α-トコフェニル ポリエチ レングリコール 1000 スクシネート)が挙げられる。
(b)補酵素Q
酸化物形
半キノン形
還元形
何れの形態においても、補酵素Qのイソプレノイド単位の数は例えば、単なる一例として、補酵素Q10を挙げることができる。
(c)L-プロリン
(d)グリシン
(e)リジン
又はその塩酸塩
(f)L−ロイシン
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物を単独で又は2種類以上と組み合わせて、場合により、酢酸のような賦形剤と共に、前記の濃度範囲内から選択される濃度で使用することにより、リボフラビン−デキストラン標準溶液により必要とされる時間間隔よりも短い時間間隔で、かつ、継続的な架橋処置に十分な量で、角膜上皮を介するリボフラビンの浸透が促進される。
【0054】
前記の全ての化合物とリボフラビンとの組合せは、角膜組織を透過する生成物の濃度及びその浸透の迅速性の観点から、良好な結果を生成する予期せざる相乗効果を示した。
【0055】
本発明者らは、標準的プロトコルに従って、第4の新規試験組成物を投与し、そして、出力3mW/cm2のUV−A線を照射することにより、ヒト角膜に対する経上皮架橋処置の有効性を試験管内で試験した。被験角膜は前記の実施例に述べたようにして作成した。すなわち、角膜を適当な支持体上に固定し、そして、30分間にわたってリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液と第4の新規試験組成物を各角膜の上皮表面に塗布した(従って、経上皮方式による投与)。引き続いて、標準的UV−A線照射を、5分間毎に分割し、その都度、角膜の表面に各溶液を再投与して30分間に亘って行った。試験の終了時点で、角膜の剛性を次のように測定した。水平線上に配列保持された角膜鉗子で長さ2mmの端部を掴むことにより角膜を保持し、水平線に関して角膜の反対端部により形成された角度を測定した。
【0056】
図3aは、リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液を用いて行われた経上皮架橋処置後の角膜を示す。図示されているように、約40゜だけ下方に屈曲している。図3bは、角膜上皮を予め除去すること無く第4の新規試験溶液を用いて行われた架橋処置後の別の角膜を示す。この二つの図を比較することにより、第4の新規試験溶液を用いて行われた経上皮架橋処置は、所望通り、25゜しか下方に屈曲していないので、角膜を強化していることが明確に理解できる。
【0057】
第4の新規試験溶液を用いて行われた経上皮架橋処置の有効性の更に別の確証として、円錐角膜を患い全層角膜移植術を受けた患者に属するヒト角膜端部について試験管内でこの処置を行った。これらの場合、破棄される代わりに患者から外植された角膜を実験室で使用した。この実験室における使用に際し、角膜層の平面の保存(全層移植)を可能にするように、ジアテルミーに対する手術時間を避けるための注意を払った。角膜周縁部を適当な支持体上に固定した。リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液を第1の角膜に塗布し、第4の新規試験溶液を第2の角膜に塗布した。この塗布は、角膜表面に各溶液を30分間にわたり塗布することにより行った。引き続いて、第4の新規試験溶液で処理された角膜に対してのみ、標準的な波長340nmのUV−A線処置を出力3mW/cm2で、5分間毎に分割し、その都度、角膜の表面に組成物溶液を再投与して30分間に亘って行った。適当な支持体上に固定された角膜の他の端部は、リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液の角膜への点眼のみで、引き続くUV−A線照射無しで処置された。試験の終了時点で、角膜柔組織の観察を走査電子顕微鏡により行った。
【0058】
図4は、未治療の円錐角膜を患った患者から入手した角膜断面のひだ(ラメラ)の状態を示す走査顕微鏡写真である。図5は図4の部分拡大写真である。これら2枚の写真は、UV−A線照射無しにリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液が塗布された角膜の端部における角膜ラメラ(ひだ)の弱体化を示す。
【0059】
図6は、第4の新規試験溶液で経上皮架橋処置した後の、円錐角膜に罹患した角膜断面のラメラの状態を示す走査顕微鏡写真である。経上皮方式で投与された第4の新規試験溶液により処置され、そして、標準的なプロトコルに従って30分間にわたってUV−A線で照射された円錐角膜は、高度に密集分布された緻密な角膜ラメラを発現した。この事実は、新規な生化学的架橋が生成されていることを例証する。
【0060】
第1、第2及び第3の新規な試験溶液でも良好な結果が得られた。
【0061】
新規な試験溶液を用いて得られた結果は、上皮はUV−A線をシールドするので経上皮方式で行われた場合の架橋処置の効果の推測的減少に関する特定の著者らにより提起された異論も打ち破る。担体(浸透促進剤)として本明細書に記載された少なくとも1種類の物質をリボフラビンに添加し、そして、標準的なプロトコルに従って照射を行った場合、得られた組織的サンプルにより証明されるように、経上皮架橋処置の効果の低下に関する推測は誤りである。
【0062】
更に、角膜の上皮層の形態学的一体性の有無及び上皮細胞の表面に存在する微絨毛の形態学的一体性の有無に関する経上皮方式による架橋処置の効果に関する比較研究も走査電子顕微鏡(7500倍)を用いて行った。この比較研究は、リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液及び標準溶液+塩化ベンザルコニウム0.01%(特許文献1参照)に関して、角膜上皮に対して経上皮方式で第4の新規試験組成物により行われた架橋処置の耐用性を評価するために行った。
【0063】
この試験を行う理由は、上皮細胞がUV−A線束により照射され、これら輻射線の吸収により損傷を受ける可能性のある最初の有機構造体だからである。このような問題点を考慮した公知文献は皆無であり、関連データも公知文献には全く開示されていない。
【0064】
上皮細胞の活力度を評価するために最も信頼性があると考慮したパラメータは、型押し術式による細胞学的試験、特に、角膜の表在上皮細胞層の微絨毛の電子顕微鏡による試験である。ムチン経膜と良好な糖衣を高濃度で含有する完全体表在細胞要素の膜(微絨毛)の外方屈曲の存在は、最適な態様で、角膜前涙膜の深層を構成する遊離ムチンとの結合を可能にする。これに対して、微絨毛の病理学的喪失は、涙層の眼表面への接着を困難にし、角膜前涙膜自体の機能不全により誘発された上皮性苦痛の現象と、その結果としての、炎症を起こさせる。
【0065】
微絨毛の形態を、標準線量によるUV−A線で試験管内で経上皮処置した後に走査電子顕微鏡で測定した。厚さが500〜600ミクロン程度のヒト角膜を、(i)平衡塩類溶液(BSS)で、(ii)リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液+塩化ベンザルコニウム0.01%で、及び(iii)第4の新規試験組成物でそれぞれ30分間培養した。
【0066】
予備的に、何の処置も施されていない角膜の角膜上皮の微絨毛及び表在層の形態も、光化学処置を全く受けずに上皮細胞及びこれらの微絨毛がどのように発現するのかを強調するために、研究した。
【0067】
図7は、正常な角膜における上皮の微絨毛及び表在層の形態を示す走査顕微鏡写真である。図8は、標準的なプロトコルに従ってリボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液が塗布された後にUV−A線で処置された角膜の走査顕微鏡写真である。図7と比較すれば、全ての上皮層が喪失され、そして、ボウマン膜が被覆されていないことが明かである。
【0068】
特許文献1に記載されたような標準溶液+塩化ベンザルコニウム0.01%により構成された組成物で処置された角膜でも前記と同様な状況が発生した。
【0069】
図9は、第4の新規試験組成物で処置した後に、標準的線量のUV−A線で処理された角膜の走査顕微鏡写真である。図7及び図8と比較すれば、上皮層、細胞核及び細隙結合の保存を認めることができる。更に、微絨毛の密度の顕著な低下が存在し、残りの微絨毛は形態学的に完全体であり、深層細胞質の細胞膜は危険にさらされない。第1、第2及び第3の新規な試験組成物でも同様な結果が得られた。
【0070】
図10は、比較のために、生理溶液だけを使用し、標準線量のUV−A線で処理された角膜の走査顕微鏡写真である。上皮層は破壊され、多数の細胞がその細胞質核小体を失い、そして、殆ど全ての細隙と微絨毛も失われている。
【0071】
得られた結果を要約すれば下記の通りである。
(1)リボフラビン−デキストラン0.1%標準溶液で、又は標準溶液+塩化ベンザルコニウム0.01%含有組成物による標準的プロトコルに従った予備的培養と共にUV−A線により処理された角膜は、全ての上皮層の完全な喪失を被り、その結果として、ボウマン膜が被覆されない(図8参照)。実際、塩化ベンザルコニウムが最終的に添加された標準溶液だけを使用しても、上皮はUV−A線により破壊される。上皮を除去することなく、かつ、標準溶液又はリボフラビン−デキストラン+塩化ベンザルコニウム組成物の何れかを用いて行われた架橋処置は、上皮の外科液除去により引き起こされる不快症状を処置後に患者に味合わせることが避けられない、という知見がこの結果から導かれる。
(2)リボフラビン−デキストランと前記の物質類から選択された少なくとも一つの担体とからなる組成物で培養した後、特に、第4の新規な試験組成物で培養した後に、標準線量のUV−A線で処理した角膜は、その上皮層、細胞核及び細隙を維持している。微絨毛の密度の顕著な低下が認められ、残りの微絨毛は形態学的に完全体である。
(3)平衡塩類溶液(BSS)で培養した後に標準線量のUV−A線で処理された角膜は、上皮層の破壊、多数の細胞の細胞質核小体喪失及び殆ど全ての細隙と微絨毛の喪失を示した。
【0072】
これらの結果は、少なくともビタミンE、ビタミンQ又は補酵素Q、被験アミノ酸(例えば、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩及びL−ロイシン)は角膜上皮を保護する助けになり、角膜上皮を介するリボフラビンの浸透を助力するという推論を導く。本明細書に記載された新規な溶液のうち、第4の組成物は浸透時間及び角膜上皮保護の両方の点で最高性能を示した。
【0073】
本明細書に提案された物質によりこれらの顕著な結果を得ることが出来る理由及び第4の新規試験組成物内で使用される物質が相乗作用を示す理由の説明は未だ完全に明白ではない。理論に拘る訳ではないが、本発明者らは、第4の新規試験組成物で処置した後に検出される角膜上皮の低損傷は恐らく、ビタミンE(例えば、ビタミンE−TPGS)の細胞修復作用によるか又は溶液内に少なくとも必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸が存在することによるものと思料する。多分、ビタミンEは、上皮の修復作用に含まれる酵素類である、グルタチオン酸化酵素及び過酸化物不均化酵素に作用し、また、必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸は細胞修復作用を有しており、また、恐らく、架橋効果も高めるであろう。更に、第4の新規溶液による組織の一層高い浸軟性は恐らく、架橋効果の増大ばかりでなく、UV−A線の危険な作用に対する角膜上皮層の良好な保護も決定する。
【0074】
リボフラビン−デキストランと本明細書に提案された物質群から選択される少なくとも一つの担体(浸透促進剤)とからなる新規溶液によれば、角膜上皮の予防的除去無しに、例えば、円錐角膜の処置のための架橋処置を行うことができる。角膜上皮が除去されないことにより次ぎのことが避けられる。
(1)標準的プロトコルによる架橋処置後の初日に一般的に発生する炎症による病気、
(2)処置後の医療用コンタクトレンズの装着必要性、及び、特に、
(3)角膜上皮の除去による術後角膜感染のリスク。
【0075】
更に、角膜に対する外科的作用が避けられ、従って、手術室及び手術用顕微鏡を必要とすることなく、巡回治療を行うことが可能になる。
【0076】
本発明の新規溶液は点眼薬又は点眼ゲルの形状で投与することもでき、或いは、太陽光線でリボフラビンが照射されることによる自然架橋の作用を高めるような、特に夏期シーズン中に、太陽光線への曝露前に医療用コンタクトレンズに塗布することもできる。
【0077】
更に、本発明の新規溶液は、眼球の内部構造をUV−A線から保護することもできる。従って、例えば、網膜黄斑に対する保護又は太陽光線に長時間曝露されるリスクを伴うヒトにおける白内障に対する保護に使用できる。
【0078】
非単一投与量容器内の新規溶液を出来るだけ長く保存する目的のためにだけ、0.0001%〜0.02%の範囲内の濃度、好ましくは約0.01%に等しい濃度で塩化ベンザルコニウムを添加することができる。新規溶液を単一投与量の使い捨て容器で製造及び販売する場合、塩化ベンザルコニウムの添加は絶対に必要であるとは限らない。本発明の新規組成物には更に、保存剤、抗菌剤、抗真菌剤、賦形剤(例えば、酢酸のみ)及び一般的に安定的な滅菌点眼薬を製造するため又はそれらの同化を促進させるために眼科領域で使用されている任意の物質などを添加できる。
【0079】
前記のように、本発明者らは、リボフラビンに、ビタミンQ、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシンから選択された少なくとも一つの物質を添加することにより得られた組成物の優れた性能は、メタロプロテイナーゼMMP9の増加による細胞修復機能を有する最後の物質が必須又は条件付き必須アミノ酸であるという事実に部分的によるものであると考えている。おそらく0.00001%〜0.5%の範囲内の濃度で、メタロプロテイナーゼMMP9を増加させるのに適合した少なくとも1種類の物質をリボフラビン溶液に添加することにより、新規な第1、第2、第3及び第4の試験組成物についても同様な結果を得ることが出来るものと推察される。
【0080】
メタロプロテイナーゼMMM9を増加させるのに適合した前記物質のうち、特に有用なものは、ゲニステイン(5,7−ジヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)クロメンー4−オン)、フィトエストロゲン、サイトカイン及びいわゆるNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)などである。リボフラビン点眼薬の製造用として使用するのに適合したNSAIDのうち、特に有用なものは、
アセチルサリチル酸:(2−アセトキシ安息香酸)、
フルフェナム酸:(2−{[3−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}安息香酸)、 メクロフェナム酸:(2−[(2,6−ジクロロ−3−メチルフェニル)アミノ]安息
香酸)、
メフェナム酸:(2−(2,3−ジメチルフェニル)アミノ安息香酸)、
ニフルム酸:(2−{[3−(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}ニコチン酸)、
トルフェナム酸:(2−[(3−クロロ−2−メチルフェニル)アミノ]安息香酸)、
ベノリラート:(4−(アセチルアミノ)フェニル 2−(アセチルオキシ)ベンゾエ
ート)、
カルプロフェン:((RS)−2−(6−クロロ−9H−カルバゾール−2−イル)プ
ロパン酸)、
セレコキシブ:(4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)ピ
ラゾール−1−イル]ベンゼンスホンアミド)、
シノキシカム:(桂皮酸ピロキシカム又は[9−メチル−10,10−ジオキソ−8−
ピリジン−2−イルカルバモイル)−10$1^{6}−チア−9−ア
ザビシクロ[4.4.0]デカ−1,3,5,7−テトラエン−7−イ
ル](E)−3−フェニルプロ−2−ペノエート;桂皮酸ピロキシカム)、
ジフルニサル:(2’,4’−ジフロロ−4−ヒドロキシビフェニル−3−カルボン酸)、 ジクロフェナック:(2−[2−[(2,6−ジクロロフェニル)アミノ]フェニル]
酢酸)、
ドロキシカム:(2H,5H−1,3−オキサジノ(5,6−c)(1,2)ベンゾチ
アジン−2,4(3H)−ジオン, 5−メチル−3−(2−ピリジニ
ル)−6,6−ジオキシド)、
エトドラク:((RS)−2−(1,8−ジエチル−4,9−ジヒドロ−3H−ピラノ
[3,4−b]インドール−1−イル)酢酸)、
エトリコキシブ:(5−クロロ−6’−メチル−3−[4−(メチルスルホニル)フェ
ニル]−2,3’−ビピリジン)、
フェノプロフェン:(2−(3−フェノキシフェニル)プロパン酸)、
フルビプロフェン:((RS)−2−(2−フルオロビフェニル−4−イル)プロパン
酸)、
イブフェナック:(4−イソブチルフェニル酢酸)、
イブプロフェン:((RS)−2−(4−(2−メチルプロピル)フェニル)プロパン
酸)、
インドメタシン:(2−{1−[(4−クロロフェニル)カルボニル]−5−メトキシ
−2−メチル−1H−インドール−3−イル}酢酸)、
ケトプロフェン:((RS)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロパン酸)、
ケトロラック:((±)−5−ベンゾイル−2,3−ジヒドロ−1H−ピロリジン−1
−カルボン酸, 2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プ
ロパンジオール)、
ロルノキシカム:((3E)−6−クロロ−3−[ヒドロキシ(ピリジン−2−イルア
ミノ)メチレン]−2−メチル−2,3,−ジヒドロ−4H−チエノ
[2,3−e][1,2]チアジン−4−オン 1,1−ジオキシド)、
ルミラコキシブ:({2−[(2−クロロ−6−フルオロフェニル)アミノ]−5−メチ
ルフェニル}酢酸)、
メロキシカム:(4−ヒドキシ−2−メチル−N−(5−メチル−2−チアゾリル)−
2H−1,2−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド−1,1−ジオ
キシド)、
メタミゾール:([2,3−ジヒドロ−1,5−ジメチル−3−オキソ−2−フェニル
−1H−ピラゾール−4−イル)メチルアミノ]メタンスルホン酸ナト
リウム)、
ナプロキセン:((+)−(S)−2−(6−メトキシナフタレン−2−イル)プロパ
ン酸)、
ニメスリド:(N−(4−ニトロ−2−フェノキシフェニル)メタンスルホンアミド)、
オキサプロジン:(3−(4,5−ジフェニル−1,3−オキサゾールー2−イル)プ
ロパン酸)、
パレコキシブ:(N−{[4−(5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−イ
ル)フェニル]スルフォニル}プロパンアミド)、
ピロキシカム:((8E)−8−[ヒドロキシ−(ピリジン−2−イルアミノ)メチリ
デン]−9−メチル−10,10−ジオキソ−10λ6−チア−9−ア
ザビシクロ[4.4.0]デカ−1,3,5−トリエン−7−オン)、
ロフェコキシブ:(4−(4−メチルスルフォニルフェニル)−3−フェニル−5H−
フラン−2−オン)、
スリンダク:({1Z}−5−フルオロ−2−メチル−1−[4−(メチルスルフィニ
ルベンジリデン]−1H−インデン−3−イル}酢酸)、
スドキシカム:(4−ヒドロキシ−2−メチル−N(2)−チアゾリル−2H−1,2
−ベンゾチアジン−3−カルボキシアミド 1,1−ジオキシド)、
テノキシカム:((3E)−3−[ヒドロキシ(ピリジン−2−イルアミノ)メチレン]
−2−メチル−2,3−ジヒドロ−4H−チエノ[2,3−e][1,
2]チアジン−4−オン 1,1−ジオキシド)、
バルデコキシブ:(4−(5−メチル−3−フェニルイソオキサゾール−4−イル)ベ
ンゼンスホンアミド)。
【0081】
更に、本発明者らは、リボフラビン溶液(例えば、リボフラビン−デキストラン溶液)に少なくとも1種類の必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸を添加することにより、新規な第1、第2、第3及び第4の試験組成物の結果と同様な結果が得られるのではないかと思料する。
【0082】
潜在的に有用な物質のうち、最も見込みがあると思われるのはL−アルギニンである。L−アルギニンはリボフラビン溶液(例えば、リボフラビン−デキストラン標準溶液)と混合することができる。また、新規溶液を得るために前記に列挙した物質のうちの1個以上を添加することもできる。前記に列挙した物質の全てについて試験したわけではないが、本発明者らは、全ての必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸を角膜上皮を介するリボフラビン浸透促進のために有効に使用することができ、斯くして、UV−A線から及びリボフラビンにより吸収される太陽光線から角膜を保護するために有効に使用できるものと考えている。特に、前記に列挙した物質と同様にL−アルギニンは有効な担体であると見做すことは合理的妥当性がある。なぜなら、窒素酸化物のアミノ酸先駆体であるL−アルギニンは、末梢レベルで窒素酸化物(NO)を送達できると考えるのが合理的だからである。NOが溶解された物質を角膜上皮に局所塗布することにより円錐角膜患者を処置するための窒素酸化物(NO)の使用はNOの低溶解性により妨げられている。
【0083】
UV−A線から上皮の微絨毛を保護するL−アルギニン及びその他の必須アミノ酸をどの位の量で架橋処置に使用すべきか未だ試験中である。その他の必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸(特に、L−アルギニン)が予期した通り、角膜上皮を保護しながら経上皮架橋処置を可能にする点眼薬の実現に有用であることが証明されたならば、本発明者らが合理的であると考えるように、これらを、0.00001%〜0.5%の範囲内の濃度で、リボフラビン溶液(例えば、リボフラビン−デキストラン溶液)に添加するであろう。
【0084】
L−アルギニン又は別の必須アミノ酸若しくは条件付き必須アミノ酸の好ましい濃度は0.001%〜0.4%の範囲内であり、更に好ましい濃度は0.005%〜0.3%の範囲内であり、更に一層好ましい濃度は0.01%〜0.2%の範囲内であり、特に好ましい濃度は約0.1%である。
【0085】
オプションとして、L−アルギニン又は別の必須アミノ酸若しくは条件付き必須アミノ酸は本発明による新規溶液の何れにも添加することができる。
【0086】
本発明の新規点眼薬の投与量は診断病理学又は症状の苛酷度に応じて変化する。一例として、投与量は1日当たり1滴点眼〜1時間当たり1滴点眼の範囲内であると思料される。
【0087】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0088】
図1:行の訳
スコア
標準視覚スケール
希釈液0.1% (単位/μl)
蛍光スケール (単位/μl)
カラースケール イエロー割合
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(i)必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン、及び(ii)ゲニステイン、フィトエストロゲン、サイトカイン及び非ステロイド性抗炎症薬様のメタロプロテイナーゼMMP9産生刺激性化合物からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物と、
(B)リボフラビンとを含有し、
前記非ステロイド性抗炎症薬は、アセチルサリチル酸、 フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ベノリラート、カルプロフェン、セレコキシブ、シノキシカム、ジフルニサル、ジクロフェナック、ドロキシカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルビプロフェン、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロルノキシカム、ルミラコキシブ、メロキシカム、メタミゾール、ナプロキセン、ニメスリド、オキサプロジン、パレコキシブ、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、スドキシカム、テノキシカム又はバルデコキシブであり、
UV−A線から眼球の内部構造の保護用、又は経上皮架橋術式による円錐角膜の治療用であることを特徴とする点眼薬。
【請求項2】
必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン及びL−アルギニンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物と、ビタミンEとを含有する、
ことを特徴とする請求項1記載の点眼薬。
【請求項3】
0.0001%〜0.5%の範囲内から選択される濃度のリボフラビン−デキストラン溶液と、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度のビタミンE、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度の補酵素Q、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度のL−プロリン、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度のグリシン、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度のリジン塩酸塩、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度のL−ロイシン、及び
0.00001%〜0.5%の範囲内から選択される濃度のL−アルギニン又は任意のその他の必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸、
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物とからなる、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の点眼薬。
【請求項4】
約0.1%の濃度のリボフラビン−デキストラン溶液と、
約500mg%mlの濃度のビタミンE、
約100mg%mlの濃度の補酵素Q、
約0.1mg%mlの濃度のL−プロリン、
約0.1mg%mlの濃度のグリシン、
約0.1mg%mlの濃度のリジン塩酸塩、
約0.1mg%mlの濃度のL−ロイシン、及び
約0.1%の濃度のL−アルギニン又は任意のその他の必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸、からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物とからなる、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の点眼薬。
【請求項5】
リボフラビン−デキストラン0.1%、ビタミンE TPGS(D-α-トコフェニル ポリエチレングリコール 1000 スクシネート)500mg%ml、補酵素Q100mg%ml、L−プロリン0.1mg%ml、グリシン0.1mg%ml、リジン塩酸塩0.05mg%ml、及びL−ロイシン0.08mg%mlからなる、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の点眼薬。
【請求項6】
点眼液又は点眼ゲルの剤形若しくは医療用コンタクトレンズに塗布するのに適合した剤形である、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の点眼薬。
【請求項7】
(i)必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン、及び(ii)ゲニステイン、フィトエストロゲン、サイトカイン及び非ステロイド性抗炎症薬様のメタロプロテイナーゼMMP9産生刺激性化合物、
前記非ステロイド性抗炎症薬は、アセチルサリチル酸、 フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ベノリラート、カルプロフェン、セレコキシブ、シノキシカム、ジフルニサル、ジクロフェナック、ドロキシカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルビプロフェン、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロルノキシカム、ルミラコキシブ、メロキシカム、メタミゾール、ナプロキセン、ニメスリド、オキサプロジン、パレコキシブ、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、スドキシカム、テノキシカム又はバルデコキシブである、
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物の、UV−A線から眼球の内部構造を保護するために、又は経上皮架橋術式により円錐角膜を治療するために企図されたリボフラビン含有点眼液の調製用としての用途。
【請求項8】
前記点眼液はビタミンEと、必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン及びL−アルギニンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物とを含有する請求項7記載の用途。
【請求項9】
(i)必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン、及び(ii)ゲニステイン、フィトエストロゲン、サイトカイン及び非ステロイド性抗炎症薬様のメタロプロテイナーゼMMP9産生刺激性化合物、
前記非ステロイド性抗炎症薬は、アセチルサリチル酸、 フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ベノリラート、カルプロフェン、セレコキシブ、シノキシカム、ジフルニサル、ジクロフェナック、ドロキシカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルビプロフェン、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロルノキシカム、ルミラコキシブ、メロキシカム、メタミゾール、ナプロキセン、ニメスリド、オキサプロジン、パレコキシブ、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、スドキシカム、テノキシカム又はバルデコキシブである、
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物をリボフラビン溶液に添加するステップからなる、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の点眼薬の製造方法。
【請求項10】
(i)必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン、及び(ii)ゲニステイン、フィトエストロゲン、サイトカイン及び非ステロイド性抗炎症薬様のメタロプロテイナーゼMMP9産生刺激性化合物、
前記非ステロイド性抗炎症薬は、アセチルサリチル酸、 フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ベノリラート、カルプロフェン、セレコキシブ、シノキシカム、ジフルニサル、ジクロフェナック、ドロキシカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルビプロフェン、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロルノキシカム、ルミラコキシブ、メロキシカム、メタミゾール、ナプロキセン、ニメスリド、オキサプロジン、パレコキシブ、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、スドキシカム、テノキシカム又はバルデコキシブである、
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物の、リボフラビン含有点眼薬の浸透用の浸透促進剤としての用途。
【請求項1】
(A)(i)必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン、及び(ii)ゲニステイン、フィトエストロゲン、サイトカイン及び非ステロイド性抗炎症薬様のメタロプロテイナーゼMMP9産生刺激性化合物からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物と、
(B)リボフラビンとを含有し、
前記非ステロイド性抗炎症薬は、アセチルサリチル酸、 フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ベノリラート、カルプロフェン、セレコキシブ、シノキシカム、ジフルニサル、ジクロフェナック、ドロキシカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルビプロフェン、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロルノキシカム、ルミラコキシブ、メロキシカム、メタミゾール、ナプロキセン、ニメスリド、オキサプロジン、パレコキシブ、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、スドキシカム、テノキシカム又はバルデコキシブであり、
UV−A線から眼球の内部構造の保護用、又は経上皮架橋術式による円錐角膜の治療用であることを特徴とする点眼薬。
【請求項2】
必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン及びL−アルギニンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物と、ビタミンEとを含有する、
ことを特徴とする請求項1記載の点眼薬。
【請求項3】
0.0001%〜0.5%の範囲内から選択される濃度のリボフラビン−デキストラン溶液と、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度のビタミンE、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度の補酵素Q、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度のL−プロリン、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度のグリシン、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度のリジン塩酸塩、
0.0001mg%ml〜2000mg%mlの範囲内から選択される濃度のL−ロイシン、及び
0.00001%〜0.5%の範囲内から選択される濃度のL−アルギニン又は任意のその他の必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸、
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物とからなる、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の点眼薬。
【請求項4】
約0.1%の濃度のリボフラビン−デキストラン溶液と、
約500mg%mlの濃度のビタミンE、
約100mg%mlの濃度の補酵素Q、
約0.1mg%mlの濃度のL−プロリン、
約0.1mg%mlの濃度のグリシン、
約0.1mg%mlの濃度のリジン塩酸塩、
約0.1mg%mlの濃度のL−ロイシン、及び
約0.1%の濃度のL−アルギニン又は任意のその他の必須アミノ酸又は条件付き必須アミノ酸、からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物とからなる、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の点眼薬。
【請求項5】
リボフラビン−デキストラン0.1%、ビタミンE TPGS(D-α-トコフェニル ポリエチレングリコール 1000 スクシネート)500mg%ml、補酵素Q100mg%ml、L−プロリン0.1mg%ml、グリシン0.1mg%ml、リジン塩酸塩0.05mg%ml、及びL−ロイシン0.08mg%mlからなる、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の点眼薬。
【請求項6】
点眼液又は点眼ゲルの剤形若しくは医療用コンタクトレンズに塗布するのに適合した剤形である、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の点眼薬。
【請求項7】
(i)必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン、及び(ii)ゲニステイン、フィトエストロゲン、サイトカイン及び非ステロイド性抗炎症薬様のメタロプロテイナーゼMMP9産生刺激性化合物、
前記非ステロイド性抗炎症薬は、アセチルサリチル酸、 フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ベノリラート、カルプロフェン、セレコキシブ、シノキシカム、ジフルニサル、ジクロフェナック、ドロキシカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルビプロフェン、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロルノキシカム、ルミラコキシブ、メロキシカム、メタミゾール、ナプロキセン、ニメスリド、オキサプロジン、パレコキシブ、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、スドキシカム、テノキシカム又はバルデコキシブである、
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物の、UV−A線から眼球の内部構造を保護するために、又は経上皮架橋術式により円錐角膜を治療するために企図されたリボフラビン含有点眼液の調製用としての用途。
【請求項8】
前記点眼液はビタミンEと、必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン及びL−アルギニンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物とを含有する請求項7記載の用途。
【請求項9】
(i)必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン、及び(ii)ゲニステイン、フィトエストロゲン、サイトカイン及び非ステロイド性抗炎症薬様のメタロプロテイナーゼMMP9産生刺激性化合物、
前記非ステロイド性抗炎症薬は、アセチルサリチル酸、 フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ベノリラート、カルプロフェン、セレコキシブ、シノキシカム、ジフルニサル、ジクロフェナック、ドロキシカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルビプロフェン、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロルノキシカム、ルミラコキシブ、メロキシカム、メタミゾール、ナプロキセン、ニメスリド、オキサプロジン、パレコキシブ、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、スドキシカム、テノキシカム又はバルデコキシブである、
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物をリボフラビン溶液に添加するステップからなる、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の点眼薬の製造方法。
【請求項10】
(i)必須アミノ酸、条件付き必須アミノ酸、補酵素Q、L−プロリン、グリシン、リジン塩酸塩、L−ロイシン、L−アルギニン、及び(ii)ゲニステイン、フィトエストロゲン、サイトカイン及び非ステロイド性抗炎症薬様のメタロプロテイナーゼMMP9産生刺激性化合物、
前記非ステロイド性抗炎症薬は、アセチルサリチル酸、 フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ベノリラート、カルプロフェン、セレコキシブ、シノキシカム、ジフルニサル、ジクロフェナック、ドロキシカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルビプロフェン、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロルノキシカム、ルミラコキシブ、メロキシカム、メタミゾール、ナプロキセン、ニメスリド、オキサプロジン、パレコキシブ、ピロキシカム、ロフェコキシブ、スリンダク、スドキシカム、テノキシカム又はバルデコキシブである、
からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物の、リボフラビン含有点眼薬の浸透用の浸透促進剤としての用途。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2013−500302(P2013−500302A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522123(P2012−522123)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060752
【国際公開番号】WO2011/012557
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512017176)
【出願人】(512017202)
【出願人】(512017213)
【出願人】(512017224)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060752
【国際公開番号】WO2011/012557
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512017176)
【出願人】(512017202)
【出願人】(512017213)
【出願人】(512017224)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]