説明

UV−A蛍光体を有する低圧水銀蒸気放電ランプ

本発明は、光透過性放電管を有する低圧水銀蒸気放電ランプであって、前記放電管は、気密方式で、水銀が充填された放電空間を取り囲み、前記放電管の壁の少なくとも一部には、発光体組成物が設置され、該発光体組成物は、一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1である第1のUV−A蛍光体を含み、さらに、当該低圧水銀蒸気放電ランプは、前記放電管内で、電気放電を開始し、持続する放電手段を有する、低圧水銀蒸気放電ランプに関する。そのようなランプは、特に、日焼け用、さらには美容用および医療用に有益である。また本発明は、一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1である、UV−A蛍光体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性放電管を有する低圧水銀蒸気放電ランプに関し、前記放電管は、気密方式で、水銀が充填された放電空間を取り囲み、放電管の内壁の少なくとも一部には、UV−A蛍光体を含む発光材料の少なくとも一つの層が設置され、さらに、当該低圧水銀蒸気放電ランプは、前記放電管内で放電を開始し、持続する放電手段を有する。
【背景技術】
【0002】
水銀は、水銀蒸気放電ランプ内で紫外線を発生させる、主要な放電持続部材を構成する。放電管の内壁には、発光材料を含む発光層が存在しており、水銀蒸気放電で生じる一次UV線を、例えば、日焼け用のUV−BおよびUV−A、または通常の照明用の可視光のような他の波長に変換する。
【0003】
本発明は、特に、特定の種類の発光材料を有する低圧蛍光水銀蒸気放電ランプに関し、この発光材料は、水銀蒸気放電で生じた紫外線により励起された際に、肌を日焼けさせる放射線を放射する。
【0004】
人間の肌の日焼けに利用される大部分の蛍光ランプは、DIN直接色素化スペクトル5031に例示されるような、緊急色素暗化(IPD)のスペクトルを有するように設計されており、主に、320ナノメートルから400ナノメートルの領域のUV−A放射線を放射する。このように設計されたランプは、通常、メラニンの形成を引き起こすと考えられている、260ナノメートルから320ナノメートルの領域の最小限のUV−B放射線を放射する。主にUV−B放射線の影響下で形成される、肌の色素メラニンは、UV−A放射線の影響下での日焼け処理によってのみ黒くなる。
【0005】
日焼け用ランプにおいて、UV−A光を発生させるのに最も好適な発光材料には、BaSi2O5:PbおよびSr2MgSi2O7:Pbが含まれる。水銀によって生じる185nmと254nmの放射線による励起下で、これらの材料は高い効率を示すからである。これらの材料は、約350nmで放射ピークを有し、半値幅は、40乃至50nmである。従って、これらの蛍光体は、主としてUV−A領域の光を放射し、実質的に、既に存在する肌の色素の黒色化にのみ寄与する。
【0006】
DIN5031による日焼け用のランプは、ランプによって放射されるUV−B放射線の量を高めるため、追加でUV−B蛍光体、すなわちSrAl12O19:CeまたはLaPO4:Ceのいずれかを有しても良く、これにより肌内に新たなメラニン色素が形成される。
【0007】
UV−A蛍光体には、主としてBaSi2O5:Pbが使用される。これは、例えば、国際公開第WO0217352号により公知であり、BaSi2O5:Pbは、主として、そのような蛍光体を有する水銀蒸気放電ランプのUV−A出力の劣化に強く関与する。BaSi2O5:Pbは、ケイ酸塩ホスト格子を有し、これは、放電時に存在する水銀に対して不活性ではない。そのようなケイ酸塩材料は、水銀を吸収する傾向があり、その結果、ランプの作動中に、吸収層が形成される。
【0008】
これにより、放電ランプが寿命まで作動し続けるようするため、放電管内に、より多くの水銀を存在させる必要が生じるばかりではなく、寿命までの放電ランプの効率が徐々に低下する。多くの水銀化合物は、UV光および/または可視光を吸収するためである。
【0009】
BaSi2O5:Pbを有するUV−A/UV−B蛍光体混合物を用いたランプに付随する問題は、BaSi2O5:Pbの劣化によって、UV内のスペクトル出力分布が変化し、さらにはUV−B/UV−A比および他のランプ特性が変化することである。
【0010】
UV光の出力低下およびスペクトル変化を抑制するために広く適用されている方法は、Al2O3(alon−c)のナノ粒子を添加することである。ナノ粒子は、alon−cが1乃至8%の量となるように添加される。
【0011】
より適当な方法は、BaSi2O5:Pbのようなケイ酸塩蛍光体を、水銀消費量のより少ない発光材料に変更することである。
【特許文献1】国際公開第WO0217352号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、特に、日焼け用の低圧水銀蒸気放電ランプを提供することである。このランプは、高いUV−AおよびUV−B出力を有し、寿命が長く、光束維持が改善されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、前記目的は、光透過性放電管を有する低圧水銀蒸気放電ランプであって、
前記放電管は、気密方式で、水銀が充填された放電空間を取り囲み、前記放電管の壁の少なくとも一部には、発光体組成物が設置され、該発光体組成物は、一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1である第1のUV−A蛍光体を含み、
さらに、当該低圧水銀蒸気放電ランプは、前記放電管内で、電気放電を開始し、持続する放電手段を有する、低圧水銀蒸気放電ランプによって達成される。
【0014】
本発明による低圧水銀蒸気放電ランプは、一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1であるUV−A蛍光体を含む発光材料を有し、作動の際に、低圧水銀蒸気放電ランプの放電管に充満する水銀−希ガス雰囲気の作用に対して、極めて良好な耐性を示す。その結果、水銀とUV−A蛍光体との間の相互作用による黒ずみ発生が抑制され、光束維持が改善される。放電ランプの耐用寿命の間に、放電によって逸失する水銀の量は、僅かであり、さらに、放電ランプの水銀消費が抑制され、低圧水銀蒸気放電ランプの製造の際に、水銀投与量がより少なくて済むようになる。
【0015】
また、前記発光体組成物は、SrB4O7:Eu、LaMgAl11O19:Ceおよびこれらの混合物を含む群から選択された、第2のUV−A蛍光体を含むことが好ましい。
【0016】
また、前記発光体組成物は、UV−B蛍光体を有することが好ましい。そのようなUV−B蛍光体は、SrAl12O19:Ce、(La1-xGdx)PO4:Ceおよびこれらの混合物を含む群から選択されても良い。
【0017】
そのようなランプは、作動寿命まで、UV領域において、従来のランプに比べてより一定のスペクトル出力分布を示す。
【0018】
UV−A蛍光体が第1の発光層内に存在し、UV−B蛍光体が第2の発光層内に存在しても良い。
【0019】
また、発光体組成物は、蛍光体および放電管のガラス壁への水銀の付着を抑制するため、さらに、Al2O3、MgO、MgAl2O4を含む群から選択された添加物を含むことが好ましい。
【0020】
本発明による低圧水銀蒸気放電ランプは、日焼け用に使用されることが好ましいが、美容および医療目的で使用されても良い。
【0021】
本発明の第2の態様では、一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1である、UV−A蛍光体が提供される。
【0022】
0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1で、一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:CezのUV−A蛍光体は、極めて明るい結晶性蛍光体であり、すなわち、このUV−A放射線放射蛍光体は、VUV範囲での極めて良好な吸収と、80%を超える極めて高い放射量子収量とを兼ね備えている。他の蛍光体とは異なり、この蛍光体は、VUV放射線でほとんど劣化されない。この蛍光体は、より長い寿命を有し、鉛を含んでいないにも関わらず、改善された輝度を有する。
【0023】
このUV−A蛍光体のホストマトリクスは、ケイ酸塩を含んでいない。いかなるケイ酸塩も含んでいない蛍光層では、Hg吸収量が低いため、低Hg含有量のランプが製作できる。
【0024】
また、蛍光体組成およびそのスペクトルは、スペクトルのUV−A/UV−B領域でのスペクトル出力分布に関しては、日焼け用ランプの必要な仕様に合致するように、実質的に変化させることができる。
【0025】
従来のものと比べた際の本発明の特に有意な効果は、一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、x=0.5、y=0、0<z≦0.1で、x+y+z<1であるUV−A蛍光体によって得られ、これは、スペクトルのUV−B領域において、付随的な高い収率を有する。
【0026】
本発明の範囲内で、UV−A蛍光体は、ホスト格子に、Tb(III)、Eu(II)、Mn(II)およびSb(III)を含む群から選択された共活性化剤を含むことが好ましい。
【0027】
本発明によるUV−A蛍光体は、追加で、ヒ酸塩およびバナジウム酸塩を含む群から選択されたアニオンを有しても良い。
【0028】
本発明の好適実施例では、UV−A蛍光体は、10nm<d<500nmの粒径(粒子寸法)を有する。
【0029】
粒径がナノ領域にあるUV−A蛍光体を含む蛍光層は、極めて緻密な層を形成し、水銀プラズマから蛍光体を十分に保護する。また、この極めて緻密な層は、蛍光層の表面での、水銀イオンと電子の再結合を抑制する。
【0030】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以下に記載の実施例を参照することにより、明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、低圧水銀蒸気放電ランプのあらゆる構造内の蛍光体として、ガドリニウム、イットリウムおよびルテニウムの群から選択された希土類金属の、セリウム活性化されたオルトリン酸塩であって、一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1である蛍光体に着目している。
【0032】
本発明によるUV−A蛍光体、またはそのような蛍光体を含む発光材料は、低圧水銀蒸気放電によって放射された放射線を吸収し、前記放射線を、より波長の長い放射線に変換する。一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1であるUV−A放射線放射蛍光体の好適な選択によって、低圧ガス放電ランプで放射される光は、300ナノメートルから325ナノメートルの領域におけるいかなる所望の波長をも有することができる。
【0033】
現在の蛍光体は、多様な照明、特に美容および医療目的を考慮して使用されるが、本発明では、特に、日焼け用の低圧水銀蒸気放電ランプについて説明しており、特に、この用途についての適用が見出される。
【0034】
通常、本発明に使用されるUV−A蛍光体および発光体組成物は、自然の太陽光によく似た、日焼け用ランプの光を発生する。
【0035】
あるいは、UV−A放射量の多いスペクトルを有する医療用のランプを製造するため、UV−A放射蛍光体として、発光材料に、一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1であるUV−A蛍光体を使用することが好ましい。
【0036】
図1を参照すると、この図には、本発明の一実施例による低圧水銀蒸気放電ランプが示されている。
【0037】
低圧水銀蒸気放電ランプは、ロッド状、リング状またはU型の管状ランプバルブ1で構成され、このバルブは、低圧水銀蒸気放電用のガス放電管を構成する。
【0038】
放電組立体として、通常の電極構造2は、バルブの両端で密閉されており、この電極構造を介して、ガス放電が開始される。2本のピンキャップ3は、接続手段として作用する。
【0039】
密閉ガラス管内の放電持続充填剤は、低圧力の、アルゴンまたはアルゴンと他のガスの混合物のような不活性ガスとともに少量の水銀を含んでおり、低蒸気圧式ランプ動作が可能である。
【0040】
さらに、低圧水銀放電ランプは、チョークおよびスターターのような、低圧水銀ガス放電の発生および持続手段を有する。
【0041】
作動条件下で発光が行われると、放電持続充填剤は、ほぼ以下の波長で、Hg共鳴線を放射する:185.0nm、253.7nm、406nmおよび436nm。(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezを含み、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1である発光体組成物によって、この放射線は、UV−A/UV−B放射線に変換される。
【0042】
所望のUV−A/UV−B比に応じて、本発明によるUV−A蛍光体を含む、異なる単一の紫外線発光体組成物を使用することが可能である。
【0043】
その他、本発明によるUV−A蛍光体と、異なる強度の放射線を発生する従来の蛍光材料とを混合することによって、異なる紫外線スペクトルエネルギー分布または日焼け強度を形成する異なる発光体組成物が容易に得られ、これにより、所望の放射線強度を形成するコーティングが提供される。
【0044】
特に、SrAl12O19:Ceおよび(La1-xGdx)PO4:Ceは、UV−A放射線を発生する、公知の蛍光リン光材料であり、SrB4O7:EuまたはLaMgAl11O19:Ceは、UV−Bを発生する、公知の蛍光リン光材料である。
【0045】
これらの公知のUV-発生蛍光リン光材料は、異なる割合で混合しても良く、これにより所望のUV放射線の比および強度が形成され、さらには所定の日焼け強度が形成される。
【0046】
図1に示した本発明の実施例では、ガラス管の内部には、第1の蛍光層4が設置されている。前記第1の蛍光層4は、UV−A蛍光体またはUV−A蛍光体混合物を含む。第1の蛍光層の外側には、UV−B蛍光体を含む第2の蛍光層4’が設置される。
【0047】
UV−A蛍光体を含む内側の蛍光層は、水銀放電によって生じる放射線から、外側の蛍光層を保護する。これは、特に、UV−A蛍光体がナノ領域の粒径を有する場合に適用される。このような蛍光層は、極めて緻密で稠密であるからである。
【0048】
従って、2種類の蛍光層からなる蛍光体コーティングを提供することは、有意である。
【0049】
あるいは、蛍光体コーティングは、ガラス放電管の内壁に、単一の蛍光層で構成されても良く、この蛍光層は、UV−A蛍光体のみを含み、またはUV−A蛍光体と第2の蛍光体とを含む。
【0050】
この実施例では、UV−A蛍光体は、光放射を均一にするため慣習的に蛍光層に添加される充填剤を変更しても良い。これは、特に、粒径がナノ領域にある蛍光体を、UV−A蛍光体として使用する場合に適用される。
【0051】
発光材料は、常時所望の放射を示すコーティングが形成されるように構成される。UV−A蛍光体は、蛍光体コーティングに対して、重量比で75乃至85%の量となるように添加されることが好ましい。
【0052】
最も好適な蛍光体混合物は、本発明によるUV−A蛍光体を81%と、UV−B型蛍光体を16.5%と、残りの少量の赤色放射蛍光体を含んでいる。
【0053】
電極に交流電圧が印加されると、水銀およびアルゴンを含むガス充填剤内で、電気ガス放電が開始される。その結果、励起またはイオン化された気体原子もしくは分子を有するプラズマが形成される。原子が基底状態に戻る際に、電子とイオンが再結合して、ポテンシャルエネルギーのおおよその実質的な部分が、104nm(Ar)、106nm(Ar)、185nm(Hg)、254nm(Hg)の波長を有するUV放射線、および可視光に変換される。
【0054】
水銀低圧ガス放電では、この電子エネルギーのUV放射線への変換は、極めて効率的に生じる。
【0055】
104nm(Ar)、106nm(Ar)、185nm(Hg)の波長を有する発生VUV光子は、UV−A蛍光体によって吸収され、スペクトルのより長いUV−A波長領域において、再度、励起エネルギーが放出される。Ce3+で活性化された蛍光体の吸収係数は、スペクトルのVUV領域での波長に対して極めて高く、量子収率が高くなる。ホスト格子は、活性化剤イオンのエネルギーレベルの正確な位置、さらには放射スペクトルに影響を及ぼす。
【0056】
本発明の第2の態様では、発光材料は、UV−A放射蛍光体として、無水のセリウム活性化ガドリニウム−イットリウム−ルテニウム−オルトリン酸塩を有するようにして提供される。蛍光体は、一般式(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezを満たし、ここで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1である。
【0057】
この種類の蛍光材料は、3元系希土類金属オルトリン酸塩の活性発光性に基づいており、この材料は、希土類金属として、ガドリニウム、セリウムを有し、さらにイットリウムとルテニウムを含む群から選択された、少なくとも一つのアルカリ土類金属を有する。
【0058】
セリウム活性化ガドリニウム−イットリウム−ルテニウム−オルトリン酸塩は、少量(例えば、Luに対して0.2原子%のCe)の希土類金属ドーパントセリウム(Ce)で活性化された、ガドリニウム−イットリウム−ルテニウム−オルトリン酸塩のホスト格子からなる結晶性固体である。
【0059】
ガドリニウム、イットリウムおよびルテニウムの特定の割合に応じて、ホスト格子は、リン酸イットリウム型またはモナザイト型のいずれかの結晶構造を構成する。
【0060】
両結晶構造は、パープライトおよびリチオフィライトと同様に、無水リン酸塩と呼ばれるリン酸塩の非公式群に属する。また、リン酸イットリウム鉱およびモナザイトは、水分子、水酸化物または塩化物を含まないいくつかのリン酸塩ミネラルの中に含まれることに留意する必要がある。
【0061】
この構造は、リン酸塩アニオンと置換された、少量のバナジウム酸塩およびヒ酸塩を含んでも良い。実際には、この構造は、これらのアニオンを有する固溶体系を構成する。固溶体系がこの基本アニオンを含むことは珍しいが、この場合、これは、完全な固溶体系ではない。
【0062】
さらに、この構造は、微量不純物を有し、例えばTi;Er;La、Al;Si、Zrである。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

特定の蛍光体の組成物中に、大きなカチオン、すなわち、ガドリニウムが多く含まれる場合、モナザイト型構造が選ばれ、カチオンは、不規則な9配位(nine−fold coordination)を有する。
【0065】
特定の蛍光体の組成物中に、小さなカチオンであるイットリウムおよびルテニウムが多く含まれる場合、カチオンは、規則的な8配位(eight−fold coordination)を有する。
【0066】
モナザイト型構造の存在により、320nmで強い放射バンドが現れるため、相転移は、放射スペクトルによって容易に視認できる。これは、(Y1-xCex)PO4において、xが0.15よりも大きい場合、すなわち、Ce3+濃度が15%を超える場合である。
【0067】
一般式が(Y1-x-y-zGdxLuy)PO4:Cezで、0<x≦0.7、0<y<1、0<z≦0.2で、x+y+z<1であるUV−A蛍光体のホスト格子には、活性化剤として数%のセリウムがドープされている。
【0068】
セリウムは、優れた活性化剤であり、基底状態と励起状態の両方が、ホスト格子の約6eVのバンドギャップ範囲内にある。
【0069】
共活性化剤が含まれても良い。しばしば、そのような共活性化剤は、例えば、Eu(II)、Tb(III)のような希土類金属イオンであり、またはMn(II)もしくはSb(III)のような主族元素である。
【0070】
前述の組成のUV−A蛍光体は、高い量子効率(>80%)を示し、185nmおよび254nmの放射線に対して、強い吸収を示す。これらの蛍光体は、325nmと365nmの間の波長領域において、2つのバンドを有するUV−A放射線を放射する。
【0071】
UV−A蛍光体(Gd1-x-y-zYy)PO4:Cezの放射スペクトルは、YPO4:Ceのものと類似しており、すなわちこの放射スペクトルは、Ce3+の5d4f遷移による、335nmと355nmの2つの放射バンドを示す。しかしながら、xが0.5よりも大きい場合、320nmに、モナザイト相の存在を示唆するさらなる放射バンドが現れ、これが支配的となる。それに加えて、Gd3+の導入によって、311nmに、Gd3+の4f−4f遷移による弱い放射線が得られる。この放射線は、(Gd1-x-y-zYy)PO4:Cez放射スペクトル内でのUV−B放射線の相対量を高める。
【0072】
(Gd1-x-y-zYy)PO4:Cez系は、パラメータx、y、zに依存する放射スペクトルを示し、これらの知見が確認された。xが有効放射スペクトルにほとんど影響を及ぼさないのに対して、放射スペクトルの相対UV−B量は、yおよびzの増加とともに増大する。このように、蛍光日焼けランプの所望の仕様に対して、蛍光体組成を最適化することができる。
【0073】
以下の表には、(Gd1-x-y-zYy)PO4:Cezで、x=0.0である、異なる組成の単一の蛍光体を有する日焼けランプの効率および仕様をまとめて示す。
【0074】
【表3】

これらのUV−A蛍光体には、平均粒径が10乃至500nmであって、ナノ領域に粒度分布を有するものが使用されることが好ましい。
【0075】
粒径は、蛍光体のUV放射線を吸収し、散乱可視光線を吸収する際の特性によって定められるが、さらに、ガラス壁に良好に密着する蛍光体コーティングを形成するように、定められても良い。後者の要求は、極めて小さな粒子によってのみ満たされるが、幾分大きな粒子に比べて、その光出力は小さくなる。
【0076】
通常の場合、蛍光体の製造は、0.5と1μmの間に粒径分布を有する、微細粒粉末状開始化合物の固体反応によって行われる。
【0077】
ガラス放電管の壁に蛍光体を設置するため、通常の場合、流体処理法が使用される。流体処理用のコーティングサスペンションは、溶媒として、水または酢酸ブチルのような有機化合物を含む。このサスペンションは、例えば、セルロース誘導体、ポリメタクリル酸またはポリプロピレン酸化物のような助剤を添加することにより安定化され、その流動特性に影響される。通常の場合、さらに、アルミニウム酸化物、アルミニウムオキシ窒化物またはホウ酸のような、分散剤、消泡剤、および粉末調整剤等の添加物が使用される。蛍光体サスペンションは、注入法、フラッシュ法またはスプレー法により、ガラス放電管の内部に薄い層として設置される。その後、コーティングは、高温空気によって乾燥され、約600℃で焼成される。通常の場合、層は、厚さが1〜50μmの範囲である。
(実施例1)
a.(Gd0.5Y0.5)PO4:5%Ceの合成
平均粒径が5乃至10nmのUV−A蛍光体(Gd0.5Y0.5)PO4:5%Ceを製造するため、開始材料として、15.00g(41.38mmol)のGd2O3と、9.344gのY2O3(41.38mmol)と、3.783g(8.71mmol)のCe(NO3)36(H2O)を、脱イオン水中に懸濁させた。サスペンションを、10分間超音波処理した。その後、強撹拌状態下で、21.092g(182.94mmol)のH3PO4を添加した。その後、蒸留により溶媒を除去した。残留粉末を100℃で乾燥させ、さらに、大気中で、600℃で1時間の熱処理を行った。十分な研磨処理後、0.5gのLiFを添加し、粉末に対して2度、大気中で、1000℃で2時間の熱処理を実施した。その中間には、研磨処理を実施した。
【0078】
最後に、再度粉末をミル処理し、650mlの水で、60℃で数時間の間洗浄し、これを100℃で乾燥させた。前記(Gd0.5Y0.5)PO4:5%Ceは、結晶質であり、平均結晶粒径は、15nmであった。
b.(Y0.5Gd0.5)PO4:5%Ceを有する日焼け用ランプ
99%の(Y0.5Gd0.5)PO4:5%Ceと、1%のalon−cとを含む酢酸ブチル系の蛍光体サスペンションを調製し、36μmのメッシュでろ過した。フローコート関連の操作法を用いて、290ガラス管の内壁に、サスペンションを設置した。サスペンションの粘性は、得られる蛍光層がスクリーン重量で、0.5から5.0mg/cm2となるように調整した。
【0079】
コーティング処理の後、550℃から600℃での熱処理により、有機残渣(バインダー等)を除去した。その後、ランプに、数mbarのアルゴンと、1乃至50mgの水銀とを充填した。最後に、ランプに電極を取り付け、管を密閉した。
【0080】
このようにして製作した日焼け用ランプは、CIE色度図において以下の座標を示した:xは0.300、yは0.232。
【0081】
500時間の使用後、ランプは、その初期ルーメン出力の95%に相当するルーメン出力を有し、色ずれは極僅かであった(3SDCM未満)。
【0082】
これは、従来から大部分の日焼け用に使用されている、色ずれの大きなランプの光束維持率である、82%に匹敵する。
【0083】
前述の特定の実施例から明らかなように、本発明では、ルーメン出力および光束維持率が改善され、色ずれがほとんど生じない日焼け用放射線が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】2つの蛍光層を有する、水銀が充填された低圧ガス放電ランプ、すなわち蛍光ランプの一例を示す図である。
【図2】(Y0.5Gd0.5)PO4:5%Ceの放射スペクトルを示す図である。
【図3】(Y0.5Gd0.5)PO4:10%Ceの放射スペクトルを示す図である。
【図4】(Y0.5Gd0.5)PO4:5%Ceを有する100W日焼け用ランプのスペクトルを示す図である。
【図5】BaSi2O5:Pbを有する100W日焼け用ランプのスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性放電管を有する低圧水銀蒸気放電ランプであって、
前記放電管は、気密方式で、水銀が充填された放電空間を取り囲み、前記放電管の壁の少なくとも一部には、発光体組成物が設置され、該発光体組成物は、一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1である第1のUV−A蛍光体を含み、
さらに、当該低圧水銀蒸気放電ランプは、前記放電管内で、電気放電を開始し、持続する放電手段を有する、低圧水銀蒸気放電ランプ。
【請求項2】
さらに、前記発光体組成物は、SrB4O7:Eu、LaMgAl11O19:Ceおよびこれらの混合物を含む群から選択された、第2のUV−A蛍光体を含むことを特徴とする請求項1に記載の低圧水銀蒸気放電ランプ。
【請求項3】
さらに、前記発光体組成物は、UV−B蛍光体を含むことを特徴とする請求項1に記載の低圧水銀蒸気放電ランプ。
【請求項4】
前記UV−B蛍光体は、SrAl12O19:Ce、(La1-xGdx)PO4:Ceおよびこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の低圧水銀蒸気放電ランプ。
【請求項5】
前記UV−A蛍光体は、第1の発光層内に存在し、前記前記UV−B蛍光体は、第2の発光層内に存在することを特徴とする請求項3に記載の低圧水銀蒸気放電ランプ。
【請求項6】
さらに、前記発光体組成物は、Al2O3、MgOおよびMgAl2O4を含む群から選択された添加物を含むことを特徴とする請求項1に記載の低圧水銀蒸気放電ランプ。
【請求項7】
美容および医療目的での、請求項1に記載の低圧水銀蒸気放電ランプの使用。
【請求項8】
一般式が(Gd1-x-y-zYxLuy)PO4:Cezで、0≦x<1.0、0≦y<1.0、0<z≦0.2で、x+y+z<1である、UV−A蛍光体。
【請求項9】
x=0.5、y=0、0<z≦0.1で、x+y+z<1であることを特徴とする請求項10に記載のUV−A蛍光体。
【請求項10】
Tb(III)、Eu(II)、Mn(II)およびSb(III)を含む群から選択された共活性化剤を含むことを特徴とする請求項10に記載のUV−A蛍光体。
【請求項11】
追加で、ヒ酸塩およびバナジウム酸塩を含む群から選択されたアニオンを含むことを特徴とする請求項10に記載のUV−A蛍光体。
【請求項12】
10nm<d<500nmの粒径を有することを特徴とする請求項10に記載のUV−A蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−500422(P2008−500422A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514235(P2007−514235)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051601
【国際公開番号】WO2005/116164
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】