説明

UVに関連するmtDNAの融合転写物ならびにその方法および使用

本発明は、UV曝露に関連する新規のミトコンドリア融合転写物および関連する欠失分子を提供する。mtDNA分子および関連する融合転写物をインビボおよびインビトロにて検出するための方法、ならびに、スキンケア製品のスクリーニングおよび試験におけるこれらの使用もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願に対する相互参照〕
本発明は、米国特許出願第61/309,216号(2010年3月1日出願)から優先権を主張する。上記特許出願の内容の全体が、参考として本明細書にて援用される。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、ミトコンドリアゲノミクスの分野に関する。より詳細には、本発明は、UV曝露と関連するミトコンドリア融合転写物および関連する欠失分子、ならびに生物学的サンプルにおけるそれらの検出およびモニタリングに関する。
【0003】
〔背景技術〕
〔ミトコンドリアのゲノム〕
ミトコンドリアのゲノムは、コンパクトであるが重要な核酸配列である。ミトコンドリアのDNAすなわち「mtDNA」は、33億bp(一倍体)の巨大な核ゲノムとは対照的に、16,569核酸塩基対(bp)の小さいゲノムを包含する(Anderson et al., 1981; Andrews et al., 1999)。上記mtDNAの遺伝的相補性は、核細胞メイト(nuclear cell mate)の相補性よりも実質的に小さい(0.0005%)。しかし、個々の細胞は、特定の細胞機能に依存して、概して10個から10個のミトコンドリアを有している(Singh and Modica-Napolitano, 2002)。伝達すなわち化学的シグナリングは、核ゲノムとミトコンドリアゲノムとの間で通常生じる(Sherratt et al., 1997)。さらに、核の特定の構成成分は、ミトコンドリア配列の維持および保全を担っている(Croteau et al., 1999)。受精が生じるとすぐに卵子内でミトコンドリアがクローン増殖することに起因して、所定の個体における全てのmtDNAゲノムは同一である。しかし、変異原性の事象は、体細胞変異として反映される配列多様性を誘発し得る。これらの変異は、ヘテロプラズミ―(heteroplasmy)として知られる状態において体中の種々の組織にて蓄積し得る。
【0004】
〔ミトコンドリア融合トランスクリプトーム〕
ミトコンドリアのゲノムは、通常と異なっており、環状の、イントロンが存在しないDNA分子である。このゲノムにおいては、特定の長さの配列に隣接する繰返しモチーフが散在している。これらの繰返しの間の配列は、あまりよく理解されていない環境下において欠失する傾向がある。ミトコンドリアゲノムにいくつかの繰り返しがある場合、多くの欠失が存在する。最もよく知られている例示は、4977の「共通の欠失(common deletion)」である。この欠失は、意図されたいくつかの状態および病気と関連している。この欠失は、加齢に伴って頻度が増加すると考えられている(Dai et al., 2004; Ro et al., 2003; Barron et al., 2001; Lewis et al., 2000; Muller-Hocker, 1998; Porteous et al., 1998)。
【0005】
種々の他のミトコンドリアの欠失は、前立腺癌、皮膚癌および肺癌の初期の発症、ならびに、加齢(e.g. Polyak et al., 1998)、早期老化、および発癌性物質に対する曝露(Lee et al., 1998)と関連している。さらに、研究者は、非黒色腫皮膚癌(NMSC)の発生および病因に紫外線が重要であること(Weinstock 1998; Rees, 1998)、ならびに、ヒト皮膚において紫外線がmtDNA損傷を誘発すること、を見出している(Birch-Machin, 2000a)。例えば、カナダ国特許出願番号第2,480,184号において、ミトコンドリアゲノムのマイナーアーク(minor arc)における3895bpの欠失が、UV誘発性のDNA損傷のバイオマーカーとして同定された。以来、上記3895bpの欠失もまた、皮膚癌と関連している(PCT出願番号第PCT/CA2006/000652号)。
【0006】
出願人の同時係属の国際特許出願第PCT/CA2009/000351号にて論じられているように、ヒトミトコンドリアゲノムの大規模な欠失をマッピングすることから得られる知識は、病気と関連する欠失の同定に有用である。例えば、ミトコンドリアゲノムのコンピュータ解析は、出願人が欠失サイトを同定することを可能にする。DNA分子における欠失事象の開始の際に、上記欠失サイトは、オープンリーディングフレーム(ORF)を有する融合DNA配列を生成するために、再閉鎖(re−close)または再連結(re−ligate)する。これらの研究から、出願人は、欠失分子および関連した融合転写物のサブセットを同定した。上記欠失分子および関連した融合転写物は悪性腫瘍に関連性を示す。
【0007】
出願人は、ミトコンドリアの欠失、およびUV曝露と関連する融合転写物の、さらなるサブセットを同定している。これらの研究からの結果およびUV損傷の検出へのその適用を本明細書中に記載する。
【0008】
〔発明の概要〕
一態様において、本発明は、ミトコンドリア融合転写物を検出するための方法を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、ミトコンドリア融合転写物を検出するための方法を提供し、ここで、上記転写物はUV曝露と関連する。上記方法は以下の工程を含む:(a)生物学的サンプルを提供する工程;および(b)上記サンプルにおけるミトコンドリア融合転写物の存在を検出する工程。
【0010】
本発明の別の態様によると、被験体における累積のUV曝露を測定するための方法が提供される。上記方法は以下の工程を含む:(a)被験体からの生物学的サンプルを提供する工程;および(b)UV曝露と関連するミトコンドリア融合転写物の存在を検出する工程。
【0011】
本発明の別の態様によると、UV曝露と関連した、単離されたミトコンドリ融合転写物が提供される。
【0012】
本発明の別の態様によると、UV曝露の検出のための融合転写物の使用が提供される。
【0013】
本発明の別の態様によると、UV曝露に対するバイオマーカーとしての融合転写物の使用が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によると、UV曝露を検出するためのキットが提供され、上記キットは、(a)本発明の単離された融合配列の一部に対して実質的に相補的な配列を有するプローブを備える。
【0015】
本発明の別の態様によると、ヒトmtDNAゲノムにおいて欠失を検出するための方法が提供され、上記欠失は、UV曝露に関連しており、上記方法は、(a)生物学的サンプルを提供する工程;(b)上記生物学的サンプルからmtDNAを抽出する工程;および(c)mtDNA欠失分子の存在を検出する工程を含む。
【0016】
本発明の別の態様によると、被験体における累積のUV曝露を測定するための方法が提供され、上記方法は、(a)生物学的サンプルを提供する工程;(b)上記生物学的サンプルからmtDNAを抽出する工程;および(c)UV曝露と関連したmtDNAでの欠失の存在を検出する工程を含む。
【0017】
本発明の別の態様によると、UV曝露と関連した、単離されたmtDNA欠失分子が提供される。
【0018】
本発明の別の態様によると、UV曝露を検出するためのmtDNA欠失体の使用が提供される。
【0019】
本発明の別の態様によると、UV曝露に対するバイオマーカーとしてのmtDNA欠失体の使用が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によると、UV曝露またはUV損傷を防止、最小化、回復または保護するためのスキンケア製品の効力を試験するための方法が提供され、上記方法は以下の工程を含む:(a)所望の特徴を有するスキンケア製品を調製する工程;(b)上記スキンケア製品を患者の皮膚または皮膚等価物に適用する工程;(c)上記皮膚または皮膚等価物をUVRに曝露する工程;(d)上記曝露された患者の皮膚または皮膚等価物のサンプルにおいてUV曝露と関連したミトコンドリア融合転写物の存在を検出する工程;および(e)上記転写物の存在を参照値と比較する工程。
【0021】
本発明の別の態様によると、UV曝露またはUV損傷を防止、最小化、回復または保護するための新たなスキンケア製品または処方物の効力を試験するための方法が提供され、上記方法は以下の工程を含む:(a)所望の特徴を有するスキンケア製品を調製する工程;(b)上記スキンケア製品を患者の皮膚または皮膚等価物に適用する工程;(c)上記皮膚または皮膚等価物をUVRに曝露する工程;(d)上記曝露された患者の皮膚または皮膚等価物のサンプルにおいてUV曝露と関連したmtDNA欠失分子の存在を検出する工程;および(e)上記分子の存在を参照値と比較する工程。
【0022】
本発明の別の態様によると、UV曝露またはUV損傷を防止、最小化、回復または保護するための能力についてスキンケア製品をスクリーニングするための方法が提供され、上記方法は以下の工程を含む:(a)上記スキンケア製品を患者の皮膚または皮膚等価物に適用する工程;(b)上記皮膚または皮膚等価物をUVRに曝露する工程;(c)上記曝露された患者の皮膚または皮膚等価物においてUV曝露と関連したミトコンドリア融合転写物の存在を検出する工程;ならびに(e)試験したスキンケア製品の各々に対する上記融合転写物の存在を参照値と比較するおよび/または互いに比較する工程。
【0023】
本発明の別の態様によると、UV曝露またはUV損傷を防止、最小化、回復または保護するための能力についてスキンケア製品をスクリーニングするための方法が提供され、上記方法は以下の工程を含む:(a)上記スキンケア製品を患者の皮膚または皮膚等価物に適用する工程;(b)上記皮膚または皮膚等価物をUVRに曝露する工程;(c)上記曝露された患者の皮膚または皮膚等価物においてUV曝露と関連したmtDNA欠失分子の存在を検出する工程;ならびに(e)試験したスキンケア製品の各々について上記欠失分子の存在を参照値と比較するおよび/または互いに比較する工程。
【0024】
本発明の別の態様によると、皮膚の加齢または光老化を防止、回復または保護するためのスキンケア製品の効力を試験するための方法が提供され、上記方法は以下の工程を含む:(a)所望の特徴を有するスキンケア製品を調製する工程;(b)上記スキンケア製品を患者の皮膚または皮膚等価物に適用する工程;(c)上記皮膚または皮膚等価物をUVRに曝露する工程;(d)上記曝露された患者の皮膚または皮膚等価物のサンプルにおいてUV曝露と関連したミトコンドリア融合転写物の存在を検出する工程;および(e)上記転写物の存在を参照値と比較する工程。
【0025】
本発明の別の態様によると、皮膚の加齢または光老化を防止、回復または保護するための新しいスキンケア製品または処方物の効力を試験するための方法が提供され、上記方法は以下の工程を含む:(a)所望の特徴を有するスキンケア製品を調製する工程;(b)上記スキンケア製品を患者の皮膚または皮膚等価物に適用する工程;(c)上記皮膚または皮膚等価物をUVRに曝露する工程;(d)上記曝露された患者の皮膚または皮膚等価物のサンプルにおいてUV曝露に関連したmtDNA欠失分子の存在を検出する工程;および(e)上記分子の存在を参照値と比較する工程。
【0026】
本発明の別の態様によると、皮膚の加齢または光老化を防止、回復または保護するための能力についてスキンケア製品をスクリーニングするための方法が提供され、上記方法は以下の工程を含む:(a)上記スキンケア製品を患者の皮膚または皮膚等価物に適用する工程;(b)上記皮膚または皮膚等価物をUVRに曝露する工程;(c)上記曝露された患者の皮膚または皮膚等価物においてUV曝露に関連したミトコンドリア融合転写物の存在を検出する工程;ならびに(e)試験したスキンケア製品の各々に対する上記融合転写物の存在を参照値と比較するおよび/または互いに比較する工程。
【0027】
本発明の別の態様によると、皮膚の加齢または光老化に対する防止、回復または保護するための能力についてスキンケア製品をスクリーニングするための方法が提供され、上記方法は以下の工程を含む:(a)上記スキンケア製品を患者の皮膚または皮膚等価物に適用する工程;(b)上記皮膚または皮膚等価物をUVRに曝露する工程;(c)上記曝露された患者の皮膚または皮膚等価物においてUV曝露に関連したmtDNA欠失分子の存在を検出する工程;ならびに(e)試験したスキンケア製品の各々に対する上記欠失分子の存在を参照値と比較するおよび/または互いに比較する工程。
【0028】
〔図面の簡単な説明〕
本発明のこれらおよび他の特徴は、添付の図面を参照してなされる以下の詳細な説明においてより明確になる。
【0029】
図1は、ヌクレオチド548〜4442位の除去後における、386〜547位:4443〜5511位からのフレーム2のアミノ酸配列を示す。
【0030】
図2は、ヌクレオチド548〜4442位の除去後に生成される読み枠を示す図である。ヌクレオチド382は赤い四角によって示されている。上記赤い四角は、ミトコンドリアゲノムの1位に関する読み枠2の開始を特定している。
【0031】
図3は、ヌクレオチド548〜4442位の除去によって形成されるフレーム2融合転写物の寄与配列を示す。
【0032】
図4は、ヌクレオチド548〜4442位の欠失による融合転写物形態の最終アミノ酸配列を示す。上記配列は、ミトコンドリアゲノムの、再結合したヌクレオチド470〜547位および4443〜5511位を含む。
【0033】
図5Aは、mtDNA欠失体解析を使用したインビボでのUVR線量応答を示す。
【0034】
図5Bは、UV損傷を測定するためのサンプルの計算を示す。
【0035】
図6〜9は、皮膚等価物における、UV照射に続く本発明の融合転写物2、3、11、12、20および32の発現を示す。
【0036】
図10〜12は、3つのUV処方物のインビボ実験およびインビトロ試験を示す。
【0037】
図13および14は、UV曝露に続く種々の日焼け止めおよび抗加齢銘柄のスクリーニングを示す。
【0038】
図15は、実施例3の疑似太陽照射のために使用されるUVスペクトルを示す。
【0039】
図16は実施例4の疑似太陽照射のために使用されるUVスペクトルを示す。
【0040】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、UV曝露と関連している、新規のミトコンドリア融合転写物および関連するmtDNA分子を提供する。本発明はまた、生物学的サンプルにおいて融合転写物および関連するmtDNA分子の検出およびモニタリングを提供する。本発明はさらに、スキンケア製品のスクリーニングおよび試験における、融合転写物および関連するmtDNAの欠失体の使用を提供する。
【0041】
本発明の技術および手順は、概して、当該分野における慣用的方法および種々の一般的な参考文献(例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., and Lakowicz, J. R. Principles of Fluorescence Spectroscopy, New York: Plenum Press (1983)参照)に従って行われる。
【0042】
〔定義〕
他で規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって広く理解されるものと同一の意味を有する。以下の用語は、他で指示されない限り、以下の意味を有することが理解されるべきである。
【0043】
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、一定の値および係数からの変動をいうことが意図される。このことが特に言及されているか否かにかかわらず、上記用語が特に参照されるか否かにかかわらず、本明細書中にて提供されている任意の所定の値および係数に常に含まれることが理解されるべきである。例として、上記変動は、およそ+/−10%であってもよい。測定に必然的に関連するある程度の誤差が存在することもまた、全ての当業者に周知である。上記誤差の程度は、記録を取得するために使用される機器の精度に依存して変動する。出願人は、本発明を行う者によって使用される機器の精度を知り得ないので、測定誤差の程度を必然的に規定し得ない。同様に、本明細書中にて提示されているヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の精度は、使用される装置およびプロセスの精度に依存する。したがって、配列の些細な変異は、本願の教示の範囲外とみなされない。
【0044】
本明細書で用いられる場合、「ミトコンドリア融合転写物」または「融合転写物」という表現は、変異したミトコンドリアDNA配列の転写の結果として生成されるRNA転写産物をいう。ここで、上記変異は、ミトコンドリア欠失および他の大規模なミトコンドリアDNAの再編成を含み得る。
【0045】
本明細書で用いられる場合、核酸の「ハイブリダイズする(hybridize)」という用語は、検出可能にかつ特異的に第2の核酸に結合する能力をいう。ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびこれらの断片は、非特異的な核酸に検出可能に結合するかなりの量を最小化するハイブリダイゼーション条件下および洗浄条件下において直接的な標的核酸鎖にハイブリダイズする。高ストリンジェンシーの条件は、当該分野において公知の選択的ハイブリダイゼーション条件を達成するために使用され得る。典型的には、ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件は、慣用的なハイブリダイゼーション手順に従って高ストリンジェンシーにおいて行われる。洗浄条件は、一般に、1〜3×SSC、0.1〜1% SDS、50〜70℃であり、約5〜30分間の後に洗浄溶液を交換する。
【0046】
「回復する」という用語は、UV損傷の一つ以上の症状、徴候または特徴において、一過性および長期間の両方の停止、防止、低減または改善を含む。
【0047】
本明細書で用いられる場合、「異常」または「変異」は、野生型ミトコンドリアのDNA配列における改変を含む。上記改変は、融合転写物を生じ、そして、限定されることなく実質的なmtDNA欠失体または大規模なmtDNA欠失体を含む。
【0048】
本明細書で用いられる場合、「ミトコンドリアDNA」または「mtDNA」は、ミトコンドリアに存在するか、またはミトコンドリアにおいて生じている。
【0049】
本明細書で用いられる場合、「被験体」または「患者」という用語は、治療が必要な動物または試験される動物をいう。
【0050】
本明細書で用いられる場合、「動物」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物の両方をいい、制限されないが、哺乳類、鳥類および魚類を含む。
【0051】
本明細書で用いられる場合、物体に適用されるような「由来する」という用語は、その物体が特定の供給源から得られることを示し、その供給源から直接的に得られることを必ずしも必要としない。
【0052】
本明細書で用いられる場合、「診断の(diagnostic)」または「診断すること(diagnosing)」は、UV曝露の診断またはUV曝露の管理における因子として、変異、または変異の組合せの存在または非存在あるいは変異の組合せの量を使用することを意味する。
【0053】
「皮膚」という用語は、体の外部を保護的に覆うことをいう。皮膚は、真皮および表皮からなり、汗、皮脂腺および毛嚢構造を含むことが理解される。一実施態様において、皮膚は哺乳類の皮膚であり、ヒトであることが好ましい。
【0054】
本明細書で用いられる場合、「生物学的サンプル」は、細胞を含む組織または体液をいう。上記細胞からは、目的の分子が得られ得る。例えば、生物学的サンプルは、皮膚細胞または組織に由来し得る。上記組織は、真皮もしくは表皮、またはこれら両方の組合せから採取され得る。生物学的サンプルは、その供給源から得られた状態で直接的に使用されても、サンプルの特性を改変させる前処理に続いて、使用されてもよい。サンプルは、種々の方法によって得られ得る。上記方法は、制限されないが、以下が含まれる:皮膚組織の微小核(micro−cores)を採集するための、パンチ生検法、外科的切除法および非侵襲的または最小限に侵襲性の皮膚の採集方法(例えば、ウェットスビング(wet swabbing)、テープリフト(tapelift)、コットンチップスワビング、滅菌したメスを用いた皮膚のかきとり、木製のスクレーパーを用いた皮膚のかきとり、粘着パッドの接着面(CapSureTMClean−up Pad、Arcturus)、LCM MacroCapTM(Arcturus)からのフィルム、LCM MacroCapTM(Arcturus)からの加熱フィルムおよび小さなゲージ(例えば、28ゲージ)の針の使用)。これらの方法は、当該分野において周知である(例えば、出願人の同時係属出願第PCT/CA2007/001790およびPCT/CA2008/001801(上記同時係属出願は、皮膚を採集するための種々の方法を開示している。)参照)。
【0055】
〔ゲノムの変異〕
mtDNAsは、危険因子、または崩壊性の細胞プロセスを同定するに有用なバイオマーカーである。上記危険因子または細胞プロセスは、疾患の開始、ならびに因子(例えば、毒素、発癌性物質または有害な放射線)への環境的な曝露に関連するものである。本発明によると、ミトコンドリアゲノムにおける大規模な再構成の変異が、UV曝露と関連した融合転写物を同定する。したがって、UV曝露の検出、診断およびモニタリングのための、上記の転写物をコードするmtDNAおよびこのmtDNAを指向するプローブの使用が、本明細書中に提供される。
【0056】
本発明の方法論はまた、mtDNA欠失体またはそれらに関連する融合転写物のいずれを介しても、スキンケア製品の同定において有効である。したがって、本願は、生物学的サンプルにおけるUVに関連した損傷の量を検出(および計測)するための種々の方法、ならびに上記損傷を低減または防止し得る製品をスクリーニングおよび試験するための種々の方法を提供する。
【0057】
当業者は、本発明の方法における使用のためのmtDNA分子が、天然に存在する変異体の単離を介して得られても、本明細書中に記載された融合転写物の何れかの相補配列に基づいてもよい、ということを正しく認識する。例示的なmtDNA配列および融合転写物は、出願人の同時係属のPCT出願(PCT/CA2009/000351)に開示されており、この同時係属のPCT出願は、参考として本明細書にて援用される。
【0058】
〔変異ゲノム配列の検出〕
本発明による、UV曝露と関連した変異配列は、融合転写物を生成するmtDNA欠失体を含む。その改変または変化は、わずか数ベースから数キロベースまで、サイズを顕著に変更し得るで、好ましくは、上記改変が、実質的または大規模なmtDNA欠失(ゲノム異常とも呼ばれる。)を生じる。
【0059】
異常なmtDNA分子を抽出および単離するための技術は、出願人の同時係属の特許出願(PCT/CA2009/000351号)に開示されている。上記方法は、適切なプライマー、プローブおよびゲノム配列(例えば、それらは新規のmtDNA結合ポイントを有する)を選択するための技術も含んでおり、参考として本明細書に参照にて援用される。
【0060】
本発明の一態様によると、候補ゲノム配列を決定するために、配列欠失の結合ポイントが初めに同定される。配列の欠失は5’末端および3’末端にて欠失されるべき配列に隣接する直接的および間接的な繰返しエレメントによって、最初に同定される。ゲノムからの一区切りのヌクレオチドを除去し、次いでゲノムをライゲーションすることによって、オープンリーディングフレーム(ORF)および新規の結合ポイントを有する融合DNA配列が生じる。
【0061】
本発明の方法における使用のための例示的なmtDNA分子が、以下に提供される。以前に述べられてるように(PCT/CA2009/000351参照)、これらのmtDNAは、公知のミトコンドリアゲノム(配列番号1)の改変に基づいており、融合または「FUS」の呼称が割り当てられている。ここで、A:Bは第一のスプライシングされた遺伝子の最後のミトコンドリアヌクレオチドと第二のスプライシングされた遺伝子の最初のミトコンドリアヌクレオチドとの間の結合ポイントを示す。スプライシングされた遺伝子の同定が、対応する配列の識別子に続く括弧書きにて提供される。以下に提供される場合、(AltMet)および(OrigMet)はそれぞれ、代替えの翻訳開始部位および元々の翻訳開始部位をいう。
【0062】
FUS 469:13447(AltMet)(ATPシンターゼF0サブユニット8(ATPase8)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号2)
FUS 0744:14124(NADHデヒドロゲナーゼサブユニット4L(ND4L)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号3)
FUS7974:15496(シトクロムcオキシダーゼサブユニットIl(COII)−シトクロムb(Cytb))(配列番号4)
FUS 992:15730(シトクロムcオキシダーゼサブユニットIl(COM)−シトクロムb(Cytb))(配列番号5)
FUS 210:15339(シトクロムcオキシダーゼサブユニットIl(COM)−シトクロムb(Cytb))(配列番号6)
FUS 828:14896(ATPシンターゼFOサブユニット6(ATPase6)−シトクロムb(Cytb))(配列番号7)
FUS10665:14856(NADHデヒドロゲナーゼサブユニット4L(ND4L)−シトクロムb(Cytb))(配列番号8)
FUS 075:13799(シトクロムcオキシダーゼサブユニットI(COI)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号9)
FUS 325:13989(シトクロムcオキシダーゼサブユニットI(COI)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号10)
FUS 7438:13476(シトクロムcオキシダーゼサブユニットI(COI)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号11)
FUS 775:13532(シトクロムcオキシダーゼサブユニットIl(COM)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5 (ND5))(配列番号12)
FUS 213:13991(シトクロムcオキシダーゼサブユニットIl (COM)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号13)
FUS 144:13816(ATPシンターゼFOサブユニット6(ATPアーゼ6)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号14)
FUS 191:12909(ATPシンターゼFOサブユニット6(ATPアーゼ6)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号15)
FUS 574:12972(シトクロムcオキシダーゼサブユニットIII(COIII)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号16)
FUS 0367:12829(NADHデヒドロゲナーゼサブユニット3(ND3)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号17)
FUS 11232:13980(NADHデヒドロゲナーゼサブユニット4(ND4)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号18)
FUS 8469:13447(OrigMet)(ATPシンターゼFOサブユニット8(ATPase8)−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット5(ND5))(配列番号19)
FUS 547:4443(Met−NADHデヒドロゲナーゼサブユニット2(ND2))(配列番号20)。
【0063】
以下の実施例に記載されているように、一旦配列が同定されると、それらの配列のUV曝露との関連性が解析される。このような試験が、被験体または患者においてインビボで行われてもよく(実施例5参照)、増殖されそして種々のレベルのUVRが照射される皮膚培養物の試験を介して行われてもよい(実施例3および4参照)。これらの配列の発現はまた、1時間またはそれより長い時間にわたってハウスキーピング(keeper)遺伝子についてモニタリングされてもよい、上記ハウスキーピング遺伝子としては、限定されないが、ヒトPPIB、ヒトPGK−1、ヒトACTB(ベータアクチン)、ヒトGUSB(ベータグルクロ二ダーゼ)、ヒトB2M(ベータ−2−ミクログロブリン)、ヒトPPIA(ペプチジルプロリルイソメラーゼA(シクロフィリンA))、ヒトGAPD(グリセルアルデヒド(glyeraldehyde)−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、ヒトHPRT1(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1)、ヒトRPLPO=LRP(リボソームタンパク質、ラージ(large)、PO)、ヒトHMBS=PBGD(ヒドロキシメチルビランシンターゼ)、ヒトTBP(TATAボックス結合タンパク質)、ヒトTRFC(トランスフェリン受容体(p90、CD71)、および、ヒトABCC13(染色体13 偽遺伝子)が挙げられる。
【0064】
本発明の一実施形態において、以下のmtDNA配列が、UV損傷を予測、診断またはモニタリングすること、ならびに、UV損傷の防止または回復に効果的なスキンケア製品を試験およびスクリーニングすること、に対して有用であると判断される。:
配列番号3(FUS 10744:14124)
配列番号4(FUS 7974:15496)
配列番号12(FUS 7775:13532)
配列番号13(FUS 8213:13991)
配列番号19(FUS 8469:13447;OrigMet)
配列番号20(FUS 547:4443)。
【0065】
本発明の他の実施形態において、配列番号19および20を有するmtDNA配列が、本発明の方法を行う際に、好ましく使用される。
【0066】
上記配列に加えて、本発明はまた、UV損傷またはUV曝露を予測、診断および/またはモニタリングするための、これらの配列の改変体または断片の使用を提供する。
【0067】
本明細書で用いられる場合、「改変体」は本発明のmtDNA配列とは異なる核酸をいうが、その本質的な特性を保持している。一般に、改変体は、選んだmtDNA配列に対して、全体的に密接に類似しており、そして、多くの領域において同一である。詳細には、本発明の改変体は、スプライシングされた遺伝子の結合ポイントのヌクレオチドを少なくとも一つ含む。上記改変体は、上記結合ポイントに隣接した一つ以上のヌクレオチドをさらに含んでもよい。本発明の一実施形態において、改変体配列は、本発明のmtDNA配列のいずれか一つまたはそれらの相補鎖に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。
【0068】
本発明において、「断片」は、開示されたゲノム配列またはその相補鎖に含まれている核酸配列の一部である短い核酸配列をいう。この一部は、スプライシングされた遺伝子の結合ポイントを含むヌクレオチドの少なくとも一つを含む。この一部はさらに、隣接する一つ以上のヌクレオチドを含んでもよい。本発明の断片は,少なくとも約15ntの長さであることが好ましく、より好ましくは少なくとも約20ntの長さであり、なおより好ましくは少なくとも約30ntの長さであり、さらにより好ましくは、少なくとも約40ntの長さ、少なくとも約50ntの長さ、少なくとも約75ntの長さまたは少なくとも約150ntの長さである。「少なくとも20ntの長さ」の断片は、例えば、上記に挙げられたmtDNA配列のいずれか一つの20個以上連続する塩基を含むことが意図される。この内容において、「約」は、詳細に記載されている値、および数個(5、4、3、2、または1)のヌクレオチドだけ大きい値または小さい値を、どちらか一方の末端または両方の末端に含む。これらの断片は、用途を有し、上記用途としては、限定されないが、本明細書中に記載されるような診断プローブおよびプライマーが挙げられる。もちろん、より大きな断片(例えば、50、150、500、600、2000ヌクレオチド)もまた企図される。
【0069】
〔プライマーおよびプローブ〕
本発明の他の態様は、本発明のmtDNA配列を認識し得るプライマーおよびプローブを提供することである。本発明に用いられる場合、「プライマー」および「プローブ」という用語は、上記プライマーおよびプローブにおける少なくとも一つの配列の上記標的領域との相補性に起因して標的核酸における配列と二重鎖構造を形成するオリゴヌクレオチドをいう。当該分野において公知の方法によると、上記プローブは標識化されてもよい。
【0070】
一旦UV曝露と関連した異常型のmtDNAが同定されると、例えば、オリゴヌクレオチドのアレイに対するmtDNAのハイブリダイゼーションが、特定の変異の同定のために使用され得るが、公知の任意のハイブリダイゼーション法が使用され得る。
【0071】
本発明にて使用するために好適なプライマーおよびプローブの調製が、出願人の同時係属のPCT出願に記載されているように生成され得る。この点において、プローブは、本発明の例示的なmtDNA融合分子に対して、またはそれらの断片もしくは改変体に対して、直接的に生成され得る。例えば、配列番号3、4、12、13、19および20に記載の配列は、目的の融合配列を含む核酸配列を検出するプライマーまたはプローブの設計のために使用され得る。当業者に理解されるように、これらの核酸分子にハイブリダイズするプライマーまたはプローブは、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下またはより低いストリンジェンシーの条件下で、ハイブリダイズしてもよい。上記条件は当業者に公知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York (1989)),6.3.1-6.3.6.において見出される。本発明のプライマーおよびプローブはまた、標的配列のDNAスリッページが存在する箇所または類似の配列変更事象が生じた箇所にハイブリダイズし得る。
【0072】
本発明の特定の実施形態において、本発明のプローブは、スプライシングされた遺伝子の結合ポイントを含む異常型mtDNAの少なくとも一部に対して相補的な配列を含む。この一部は、結合ポイントA:Bに含まれる少なくとも一つのヌクレオチドを含み、隣接する1個以上のヌクレオチドをさらに含んでもよい。この点について、本発明は、任意の好適な標的化メカニズムを含む。上記メカニズムは、結合ポイントA:Bに含まれているおよび/または隣接しているヌクレオチドを使用してmtDNA分子を選択する。
【0073】
種々のタイプのプローブ(出願人の同時係属のPCT出願において記載されているような)が、本発明によって企図される。本発明のプローブは,好ましくは少なくとも約15ntの長さであり、より好ましくは少なくとも約20ntの長さであり、なおより好ましくは少なくとも約30ntの長さであり、さらにより好ましくは、少なくとも約40ntの長さ、少なくとも約50ntの長さ、少なくとも約75ntの長さまたは少なくとも約150ntの長さである。「少なくとも20ntの長さ」のプローブは、例えば、20個以上の連続する塩基を含むことが意図される。上記連続する塩基は、本発明のmtDNA配列に対して相補的である。もちろん、より大きなプローブ(例えば、50、150、500、600、2000ヌクレオチド)もまた好ましい。
【0074】
本発明のプローブはまた、生物学的サンプル中の核酸分子にハイブリダイズし、これにより、本発明の方法を可能にする。よって、本発明の一態様において、UV損傷またはUV曝露の検出、診断および/またはモニタリングに使用するためのハイブリダイゼーションプローブが提供される。ここで、上記プローブは、異常型mtDNA分子の少なくとも一部に対して相補的である。他の態様において、本発明は、プローブおよび上記プローブの使用(または使用方法)を提供し、上記使用は、UV損傷またはUV曝露を防止または回復することに効果的なスキンケア製品をスクリーニングまたは検証するための、上記プローブの使用である。
【0075】
〔アッセイ〕
生物学的サンプルにおいて異常型のmtDNAのレベルを測定することは、被験体におけるUV曝露のレベルを決定し得る。したがって、本発明は、UV損傷およびUV曝露を検出、診断またはモニタリングするための方法を含み、上記方法は一つ以上の生物学的サンプルを得る工程、上記サンプルからmtDNAを抽出する工程、および上記サンプルにおける一つ以上の異常型mtDNA配列の量を定量し、検出された量を参照値と比較することによって異常型mtDNAについて上記サンプルをアッセイする工程を含む。
【0076】
当業者に理解されるように、上記参照値は、上記方法が、UV損傷およびUV曝露の検出、診断またはモニタリングを要求するか否かに基づく。よって、上記参照値は、一つ以上の公知のUV曝露された生物学的サンプルから、一つ以上の公知のUV曝露されていない生物学的サンプルから、および/または一つ以上の生物学的サンプルから、一定の期間にわたって収集されたmtDNAデータに関してもよい。上記サンプルは、太陽にまれに曝露される皮膚、太陽に時折曝露される皮膚、または太陽にたいてい曝露される皮膚または血液に由来し得る。上記サンプルは、限定されないが、以下の方法を含む種々の方法によって採集され得る:皮膚組織の微小核を採集するための、パンチ生検法、外科的切除法、および非侵襲的または最小限に侵襲性の皮膚の採集方法(例えば、ウェットスワビング、テープリフト、コットンチップスワビング、滅菌したメスを用いた皮膚のかきとり、木製のスクレーパーを用いた皮膚のかきとり、粘着パッドの接着面(CapSureTMClean−up Pad、Arcturus)、LCM MacroCapTM(Arcturus)からのフィルム、LCM MacroCapTM(Arcturus)からの加熱フィルム、および小さなゲージ(例えば、28ゲージ)の針の使用)。
【0077】
mtDNAにおける変異の存在を検出する工程は、当業者に公知の任意の技術から選択され得る。例えば、mtDNAを解析することは、mtDNAの配列決定、PCRによるmtDNAの増幅、サザンブロットハイブリダイゼーション、ノザンブロットハイブリダイゼーション、ウエスタンサウス−ウエスタンブロットハイブリダイゼーション、変性HPLC、マイクロアレイ、バイオチップまたはジーンチップに対するハイブリダイゼーション、分子マーカー解析、バイオセンサー、融点プロファイリング、または上述した解析のいずれかの組合せを含み得る。
【0078】
一態様において、本発明は、哺乳類におけるUV曝露を検出するための方法を提供する。上記方法は、上記の異常型ミトコンドリアDNAの存在について哺乳類からの組織サンプルをアッセイする工程を含む。本発明はまた、哺乳類からの組織サンプルを少なくとも一つのハイブリダイゼーションプローブとハイブリダイズすることによって、上記サンプルをアッセイする工程を含む方法を提供する。上記プローブは、本明細書中に記載されたような本発明の変異ミトコンドリアDNA配列に対して生成され得る。
【0079】
他の態様において、本発明は、上述したような方法を提供する。上記アッセイは、以下を含む:a)少なくとも一つのプロ―ブが相補的な異常型ミトコンドリアDNA配列にハイブリダイズすることを可能にするために本発明の少なくとも一つのプローブを使用するハイブリダイゼーション反応を行う工程;b)上記サンプルにおける上記少なくとも一つの異常型ミトコンドリアDNA配列の量を、上記少なくとも一つのプローブにハイブリダイズしたミトコンドリアDNAの量を定量することによって定量する工程;およびC)上記サンプルにおけるミトコンドリアDNAの量を少なくとも一つの既知の参照値と比較する工程。
【0080】
当業者に公知のような画像診断アッセイを含む、UV損傷またはUV曝露を検出、診断またはモニタリングするための方法もまた本発明に含まれる。本発明の診断アッセイは、高スル―プットに容易に適合され得る。高スル―プットアッセイは、多くのサンプルを同時に処理するという利点を提供し、多数のサンプルをスクリーニングするために必要な時間を顕著に減少させる。よって、本発明は、複数の試験サンプルにおける標的ヌクレオチド配列の検出および/または定量のための、高スループットスクリーニングまたは高スループットアッセイにおける本発明のヌクレオチドの使用を企図する。
【0081】
〔融合転写物〕
本発明の他の態様は、UV損傷またはUV曝露を予測、診断および/またはモニタリングするための方法に有用な、融合転写物および関連するハイブリダイゼーションプローブの同定である。出願人の同時係属のPCT出願において開示されているように、上記分子は、天然の転写物の単離を介して、あるいは、本発明の方法に従って単離されるmtDNAsのリコンビナント発現によって、生成され得る。これらのmtDNAsは、典型的には、スプライシングされた遺伝子を含む。上記スプライシングされた遺伝子は、第一の遺伝子に由来する開始コドンおよび第二の遺伝子の終止コドンを有する。よって、スプライシングされた遺伝子から得られた融合転写物は、スプライシングされた遺伝子と関連する結合ポイントを含む。
【0082】
〔融合転写物の検出〕
天然の融合転写物は、任意の好適な当該分野にて公知の方法に従って、生物学的サンプルから抽出され得、そして同定され得る。または、出願人の同時係属のPCT出願に記載されている方法に従って処理されてもよい。本発明の一実施形態において、ポリAテイルを有する転写物を標的化するオリゴ(dt)プライマーを使用し、続いて標的転写物に対して設計されたプライマー対を使用したRT−PCRによって、安定的なポリアデニル化した融合転写物が同定される。
【0083】
以下の例示的な融合転写物が、これらの方法を使用して検出された:
配列番号22(転写物2;10744:14124)
配列番号38(転写物20;8469:13447;OrigMet)。
【0084】
融合転写物はまた、当該分野にて公知のリコンビナント技術によって生成され得る。典型的には、上記リコンビナント技術は、目的のmtDNA配列を含む発現ベクターを用いる好適な宿主細胞の形質転換(トランスフェクション、形質導入または感染を含む。)を含む。
【0085】
〔予期しない融合転写物の検出〕
予期しない特性の融合転写物もまた出願人によって同定されており、本発明の方法に有用であることが証明されている。現在までに、同定された融合転写物の各々が、ミトコンドリアゲノムにおける欠失事象の結果として生じており、新規配列を形成するための2つの遺伝子の融合体を生じ、次いでミトコンドリアによって転写される。対照的に、以下に詳しく記載されている3895bpの欠失は、D−loopの融合体を生じる。上記融合体はmtDNAの非コード領域に位置している。
【0086】
〔融合転写物と関連した3895bpの欠失の検出が予期されない理由〕
ミトコンドリア融合転写物は、その大多数が、隣接している2つの遺伝子または隣接していない2つの遺伝子の間に含まれているヌクレオチドが欠失することによって形成される(上述したゲノムの変異の項および出願人の同時係属のPCT出願参照)。欠失したDNAの除去の後、ミトコンドリアゲノムの残余物が、次いで、再結合され、新しい遺伝子すなわち転写物を生じる。これまでに記載したように、このスプライシングされた遺伝子は、5’末端側(most)の元々の遺伝子の開始コドン、元々の2つの遺伝子からの遺伝物質の種々の貢献、および3’末端側の遺伝子の元々の終止コドンから構成される。
【0087】
対照的に、ヌクレオチド547−4443位の間の遺伝物質の欠失からの融合転写物(転写物32;配列番号39)は、予期されない。なぜなら、5’部分が、ミトコンドリアゲノムの非コード置換ループ(Displacement Loop)(D−Loop)(16024−576)内に位置しているからである。この事実にもかかわらず、548−444位が除去される場合、フレーム2におけるインタクトな読み枠は、386−547位:4443−5511位から観察される(図1および2参照)。フレーム1および3は、多くの末端コドンを有し、よって、読み枠を生成し損なう(図2)。
【0088】
フレーム2の融合転写物の5’部分(content)は、超可変セグメント3(438−574)内に位置する470位の最初のメチオニンにて開始するのでなく、386位のプロリンで開始する。上記融合転写物の3’部分は、tRNAのメチオニン(4402−5511)内の4443位で開始し、NADHデヒドロゲナーゼサブユニット2(4470−5511)の5511位にて終止する(図3)。図4は、ミトコンドリアゲノムの548−4442位の欠失によって形成される、470位にて開始する融合転写物が生じたことを示す。
【0089】
よって、本発明は、種々の内容物を含む融合転写物を含み、すなわち、上記融合転写物が、2つのコード領域のスプライシングされた配列を含み、そして上記融合転写物がスプライシングされたコード領域および非コード領域を含む。
【0090】
〔UVRと関連した融合転写物〕
一旦ミトコンドリア融合転写物が同定されると、その配列は、次いで、以下の実施例に記載されるように、UVRとの関連について試験される。このような試験は、インビボで、すなわち培養された皮膚等価物にて実行され得る。上記皮膚等価物は、増殖され、そして種々のレベルのUVRを照射される(実施例6参照)。これらの配列の発現がまた、一つ以上のハウスキーピング遺伝子に関してモニタリングされ得る、上記ハウスキーピング遺伝子としては、限定されないが、ヒトPPIB、ヒトPGK−1、ヒトACTB(ベータアクチン)、ヒトGUSB(ベータグルクロ二ダーゼ)、ヒトB2M(ベータ−2−ミクログロブリン)、ヒトPPIA(ペプチジルプロリルイソメラーゼA(シクロフィリンA))、ヒトGAPD (グリセルアルデヒド(glyeraldehyde)−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、ヒトHPRT1(ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1)、ヒトRPLPO=LRP(リボソームタンパク質、ラージ(large)、PO)、ヒトHMBS=PBGD(ヒドロキシメチルビランシンターゼ)、ヒトTBP(TATAボックス結合タンパク質)、ヒトTRFC(トランスフェリン受容体(p90、CD71)、および、ヒトABCC13(染色体13 偽遺伝子)が挙げられる。
【0091】
本発明の一実施形態において、以下のミトコンドリア融合転写物が、UV損傷を予測、診断およびモニタリングすることに有用であること、ならびに、UV損傷の防止または回復に効果的なスキンケア製品を試験およびスクリーニングすることに有用であることが同定されている:
配列番号22(転写物2;10744:14124)
配列番号23(転写物3;7974:15496)
配列番号31(転写物11;7775:13532)
配列番号32(転写物12;8213:13991)
配列番号38(転写物20;8469:13447;OrigMet)
配列番号39(転写物32;547:4443)
上記配列に加えて、本発明は、UV曝露を予測、診断およびモニタリングするための上記配列の改変体または断片の使用を提供する。本明細書中にて同定された融合転写物の改変体または断片は、ゲノム改変体および断片に関して上述されたサイズ制限および同一性パーセントに、または当業者によって好適に決定されるようなサイズ制限および同一性パーセントに、従う。
【0092】
さらに、本発明の転写物2、3、11、12、20および32に対応する推定のタンパク質配列が、以下に挙げられる。これらの配列は、仮想の融合タンパク質をコードしており、本発明のさらなる実施形態として提供され、そして本発明の方法に有用であるとみなされるべきである.
配列番号40(転写物2)
配列番号41(転写物3)
配列番号42(転写物11)
配列番号43(転写物12)
配列番号44(転写物20)
配列番号45(転写物32)。
【0093】
〔プライマーおよびプローブ〕
一旦融合転写物を特徴付けると、プライマーまたはプローブが、生物学的サンプル中の上記転写物を標的化するように開発され得る。このようなプライマーおよびプローブは、(上述したような)任意の公知の方法を用いて調製されても、または出願人の同時係属のPCT出願に提供される実施例に示されるように、調製されてもよい。プローブは、例えば、融合転写物に対して作製され得、そして、サンプル中の転写物の存在を検出するために検出技術(例えば、PanomicsTMによるQuantiGene 2.0TM)が使用され得る。プライマーおよびプローブは、本発明の例示的な融合転写物、または、それらの断片もしくは改変体に対して直接に生成され得る。例えば、配列番号22、23、31、32、38および39に示される配列を使用して、目的の融合配列を含む核酸配列を検出するプローブを設計し得る。
【0094】
当業者によって理解されるように、本発明の融合転写物にハイブリダイズするために設計されたプローブは、上記転写物の少なくとも一部に相補的な配列を含み、好ましくは、上記一部は、スプライシングされた遺伝子の結合ポイントを発現する。この部分は、上記発現される結合ポイントに対して相補的なヌクレオチドの少なくとも一つを含み、上記一部は、隣接する1個以上の相補的なヌクレオチドをさらに含み得る。この点において、本発明は、任意の好適な標的化メカニズムを含み、上記メカニズムは、スプライシングされた遺伝子の結合ポイントに含まれているかまたは隣接しているヌクレオチドを使用する融合転写物を選択する。
【0095】
種々のタイプのプローブ、および当該分野において公知の標識化方法が、転写物プローブの調製のために企図される。このようなタイプおよび方法は、ゲノム配列の検出に関して上述されている。本発明の転写プローブは、少なくとも約15ntの長さであるが好ましく、より好ましくは少なくとも約20ntの長さであり、なお好ましくは、少なくとも約30ntの長さであり、皿により好ましくは、少なくとも約40ntの長さ、少なくとも約50ntの長さ、少なくとも約75ntの長さまたは少なくとも約150ntの長さである。「少なくとも20ntの長さ」のプローブは、例えば、20個以上の連続する塩基を含むことが意図される。上記隣接する塩基は、本発明のmtDNA配列に対して相補的である。もちろん、より大きなプローブ(例えば、50、150、500、600、2000ヌクレオチド)もまた好ましい。
【0096】
本発明のプローブは、生物学的サンプルにおける核酸分子にもまたハイブリダイズする。したがって、本発明の方法を可能にする。よって、本発明の一態様において、UV損傷または曝露を検出すること、診断することおよび/またはモニタリングすることにおいての使用のための提供されたハイブリダイゼーションプローブが存在する。上記プローブは、本発明融合転写物の少なくとも一部に対して相補的である。他の一態様において、提供されるプローブおよびその利用方法(または使用の方法)が存在する。上記プローブはUV損または曝露の防止または改善において効果的なスキンケア製品の試験およびスクリーニングのためのものである。
【0097】
〔アッセイ〕
本発明に従って、疑似太陽光を用いた照射に対して曝露することに続いて新規融合転写物が多量に増加することが実証された(例えば、図6参照)。これらの新規転写物のインビトロおよびインビボの両方での検出は、UV照射(UVBおよびUVAの両方)に対する曝露の定量化を可能にする。よって、本発明は、UV損傷およびUV曝露を検出、診断またはモニタリングするための方法を含み、上記方法は、一つ以上の生物学的サンプルを得る工程、上記サンプルからミトコンドリアRNAを抽出する工程、および上記サンプルにおける一つ以上の融合転写物の量を定量し、検出された量を参照値と比較することによって融合転写物について上記サンプルをアッセイする工程を含む。
【0098】
当業者に理解されるように、上記参照値は、上記方法が、UV損傷およびUV曝露の検出、診断またはモニタリングを要求するか否かに基づく。よって、上記参照値は、一つ以上の既知のUV曝露された生物学的サンプルから、一つ以上の公知のUV曝露されていない生物学的サンプルから、および/または一つ以上の生物学的サンプルから一定の期間にわたって収集された転写物データに関してもよい。上記サンプルは、太陽にまれに曝露される皮膚、太陽に時折曝露される皮膚、または太陽にたいてい曝露される皮膚または血液に由来し得る。上記サンプルは、上述した種々の方法によって採集され得る。
【0099】
一態様において、本発明は、哺乳類におけるUV曝露を検出するための方法を提供する。上記方法は、上記の融合転写物の存在について哺乳類からの組織サンプルをアッセイする工程を含む。本発明はまた、哺乳類からの組織サンプルを少なくとも一つのハイブリダイゼーションプローブとハイブリダイズすることによって、上記サンプルをアッセイする工程を含む方法を提供する。上記プローブは、本明細書中に記載されたような本発明の融合転写物に対して生成され得る。
【0100】
他の態様において、本発明は、上述したような方法を提供する。上記アッセイは、以下を含む:a)少なくとも一つのプロ―ブが相補的な融合転写物の配列にハイブリダイズすることを可能にするために少なくとも一つのプローブを使用するハイブリダイゼーション反応を行う工程;b)上記サンプルにおける上記少なくとも一つの融合転写物の配列の量を、上記少なくとも一つのプローブにハイブリダイズした融合転写物の配列量を定量することによって定量する工程;およびC)上記サンプルにおける上記転写物の量を少なくとも一つの既知の参照値と比較する工程。
【0101】
上述したように、本発明の診断アッセイはまた、本明細書中に記載されたような診断方法およびスクリーニングツールを含み得、高スル―プットに対し容易に適合され得る。よって、本発明は、複数の試験サンプルにおける標的ヌクレオチド配列の検出および/または定量のための、高スループットスクリーニングまたは高スループットアッセイにおける本発明の融合転写物および関連するプローブの使用を企図する。
【0102】
〔スキンケア製品の試験およびスクリーニング〕
〔新しい処方物〕
特定の活性物質または処方物(例えば、日焼け止め、抗酸化物質または抗加齢の製品)の適用を介した、多くの新規のUV関連融合転写物および関連するmtDNA分子における変化の調節は、UV照射による損傷から皮膚を保護する際の製品の効力を評価するために使用され得る。このような評価は、皮膚等価物モデルを使用した、新しい処方物のインビトロでの試験の形式(図10および11参照)を採用しても、生物学的サンプルを使用した、製品のインビボでの試験(図12参照)を介した形式を採用してもよい。
【0103】
よって、本発明は、以下の工程を実行することによって、UV曝露またはUV損傷に対して防止、最小化、回復または保護するスキンケア製品の効力を調製および試験する方法を企図する:所望の特徴(例えば、UVAフィルターおよび/またはUVBフィルター)を有する製品を調製する工程;スキンケア製品を、患者の皮膚または皮膚等価物モデルに適用する工程;上記皮膚または皮膚等価物モデルをUVRに曝露する工程;太陽にまれに曝露される皮膚、太陽に時折曝露される皮膚、または太陽にたいてい曝露される皮膚から採取したサンプルにおける少なくとも一つのミトコンドリア欠失分子および/または融合転写物の存在を検出する工程;ならびに、上記欠失体すなわち転写物の存在を参照値(例えば、コントロール遺伝子および/または転写物)と比較する工程。コントロール患者または皮膚等価物モデル(スキン製品を受けていないもの)がまた、参照値として使用されてもよい。
【0104】
UV損傷の一つ以上の症状、徴候または特徴において、一過性および長期間の両方における停止、防止、減少または改善は、UV曝露またはUV損傷に対する防止、最小化、改善または保護のための新しい製品(処方物)の能力を示す、ということを当業者は理解する。本発明の一実施形態において、以下に提供される実施例にて示されるような製品解析が行われる。
【0105】
本発明の好ましい実施形態において、新しい製品を試験するための方法は、mtDNA欠失体または融合転写物の存在を検出する工程の前に、被験体の皮膚または皮膚等価物モデルを致死線量よりも低い線量の紫外線(UVR)に少なくとも1回曝露する工程を含む。さらに、試験する前に、皮膚および皮膚等価物は、一連の反復性の、致死線量よりも低い線量のUVR(例えば、毎日のUVR照射)に曝露され得る。概して、上記UVRは、疑似太陽のUVR光源に由来する。ここで、上記UVRは、UVA、UVBまたはUVA/UVBを含む。しかし、本明細書において太陽曝露がまた企図される。コントロール配列(上述したハウスキーピング遺伝子および転写物が挙げられるが、これらに限定されない。)がまた企図される。mtDNA欠失体および融合転写物マーカーに関する限りでは、記載された方法の最後においてそれらを単独またはタンデムのどちらかによって挿入し得る。
【0106】
〔皮膚サンプル〕
患者の皮膚サンプルが、皮膚の真皮層または表皮層から採集され得、以下の方法によって得られてもよい:皮膚組織の微小核を採集するための、パンチ生検法、外科的切除法、および非侵襲的または最小限に侵襲性の皮膚の採集方法(例えば、ウェットスワビング、テープリフト、コットンチップスワビング、滅菌したメスを用いた皮膚のかきとり、木製のスクレーパーを用いた皮膚のかきとり、粘着パッドの接着面(CapSureTMClean−up Pad、Arcturus)、LCM MacroCapTM(Arcturus)からのフィルム、LCM MacroCapTM(Arcturus)からの加熱フィルム、および小さなゲージ(例えば、28ゲージ)の針の使用)。サンプルは、供給源から得られたまま直接的に用いられても、サンプルの特性を改変させる前処理に続いて用いられてもよい。よって、皮膚サンプルは、使用する前に、例えば、保存薬、試薬などを用いて前処理され得る。
【0107】
一つよりも多い採集技術が同時に使用され得ることは当業者に明らかである。さらに、採集の経過が、例えば、一定の期間にわたって製品のモニタリングに必要とされる場合、同一または異なる技術が、試験期間を通して単独または一緒に使用され得る。これに関して、皮膚の採集が、一度だけ、または規則的な間隔にて(例えば、1日毎、1週毎または1月毎に)行われ得る。
【0108】
〔皮膚等価物モデル〕
出願人はまた、皮膚等価物モデルを使用した、スキンケア製品をインビトロで試験するための新規システムを開発している。これらのモデルは、例えば、実施例2に記載されるように生成され、そして増殖され、続いて、上記モデルは、スキンケア製品を用いて処理され、種々の変化量のUVRによって照射される。試験されるべき製品は、皮膚等価物の表面に単純にアプライされ(例えば、2mg/cm2の濃度にて)、そして細胞の表面にわたって均一に広げられる。皮膚等価物は、疑似太陽の下に配置され、一つ以上のUV光の照射に曝露される。照射は、個々の実験設定および試験されるべき製品に依存する。しかし、典型的な照射レジメンのいくつかの例が、以下の表1および2に提供される。
【0109】
〔製品のスクリーニングおよび個別のスキンケア〕
融合転写物および関連mtDNA欠失体の発生に対して保護するためのスキンケア製品の能力に対するデータの収集を介して、日焼け防止および抗加齢に関してより効果的な製品が開発され得る。なお、つい最近まで、太陽への曝露の間に個人によって定期的に適用される日焼け止めおよび日焼け止めクリーム(sunblock)は、概して、UVBの変異誘発効果に対して保護されるが、UVA照射の有害な効果に指向される因子を含んでいなかった。よって、スキンケア製品の標的になるスクリーニングは、それらのUVA照射およびUVB照射の両方に対して保護し得る製品を同定する際に役立つ。
【0110】
これらの要素はとりわけ、市場に入る新しい製品の効力を測定すること、ならびに、研究の経過を介して、皮膚に対するUVR損傷を防止するための現行の測定の成功および適合性をモニタリングすることの両方を目的としたツールの利用可能性を必要とする。製品を適用し規則的な間隔でUVRを照射した後に皮膚サンプルを採取することによって、患者の皮膚および皮膚等価物モデルにおいてミトコンドリDNA欠失体のレベルを測定することは、DNAおよび皮膚損傷の防止に対する上記製品の効力を決定することを補助し得る。上記DNAおよび皮膚の損傷は、関連する光老化および皮膚癌を含む。
【0111】
本発明の方法はまた、医療目的および化粧目的の両方のための、広く行きわたった皮膚スクリーニングに使用され得る。例えば、任意の時点での、外側の解剖学的な任意の位置からのUV照射に起因する、被験体の皮膚におけるDNA損傷のレベルを評価するための能力は、現存するスキンケア製品および新しいスキンケア製品、ならびに所定の被験体に対するスキンケアレジメンの、安全性および効力を評価するために、独特かつ有益なスクリーニング試験のための基礎を提供する。さらに、UV曝露と関連した特定の遺伝子変化を同定することによって、特定のスキンケア製品またはレジメンが提供されるべきか否か、そしてどの程度提供されるべきかが、容易に決定され得る。
【0112】
すでに市場にあるスキンケア製品について、本発明の方法は、UV曝露またはUV損傷に対して防止、最小化、回復または保護するための、それらのスキンケア製品の能力を測定するための因子をスクリーニングすることを助ける。これは、熟練者または消費者が、それらの特定のスキンケアにおける要求性にどの商品が最も適しているのかを評価することを可能にする。本発明の方法によってスクリーニングされる製品としては、限定されないが、日焼け止め、ならびに、抗加齢の血清およびクリームが挙げられ、ペアにて、あるいは3つ以上の製品のバッチにて評価され得る。新しい処方物、または以下の実施例に詳述されているようなものを試験するためのスクリーニング方法が、上述されるように実行され得る。
【0113】
〔キット〕
本発明は、被験体のUV曝露を検出またはモニタリングするための診断キットを提供する。本発明に従う一つ以上のプライマーもしくはプローブの組合せにおいて、上記キットは、一つ以上のサンプリング手段を備えてもよい。このようなキットはまた、その内容物を使用するための指示書を備え得る。
【0114】
上記キットは、必要に応じて、診断アッセイを行うために必要な試薬(例えば、緩衝液、塩、検出試薬など)を備える。他の構成要素(例えば、生物学的サンプルの単離および/または処理のための溶液)がまた、上記キットに備えられ得る。上記キットの一つ以上の構成要素は、凍結乾燥されていてもよく、凍結乾燥された構成要素の再構築に好適な試薬をさらに備えていてもよい。
【0115】
場合によっては、上記キットはまた、反応容器、混合容器、および試験サンプルの調製を容易にする他の構成要素を備えていてもよい。上記キットはまた、必要に応じて、使用のための指示書を備えていてもよく、上記指示書は、紙形態出提供されても、コンピュータ読取り可能な形態(例えば、ディスク、CD、DVDなど)で提供されてもよい。
【0116】
本発明の一実施形態において、UV曝露を診断するためのキットが提供される。上記キットは、サンプリング手段および本発明のプローブまたはプライマーを備える。
【0117】
本明細書中に記載された本発明をより良く理解するために、以下の実施例が示される。これらの実施例は、本発明の例示的な実施形態を記載することが意図され、本発明の範囲を限定することが決して意図されていない、ということが理解される。
【0118】
〔実施例〕
〔実施例1:HpEKp細胞の増殖〕
〔材料〕
1.HpEKp細胞<15継代(CellnTec)
2.T75組織培養フラスコ(IWAKI)
3.TrypLETMSelect(12563−011、Invitrogen)
4.10ml滅菌Stripettes(Star Labs)
5.自動ピペッター
6.倒立TC顕微鏡
7.滅菌15mlファルコンチューブ(Falcon)
8.クラス2組織培養キャビネット(37℃、5%CO)(Binder)
9.ウォーターバス(37℃)
10.滅菌リン酸緩衝化生理食塩水
11.PCM完全培地(CnT−57)(CellnTec)。
【0119】
〔プロトコル〕
1.HpEKp細胞(90%コンフルエンス)のフラスコからCnT−57培地を除去する
2.滅菌PBS(2ml)を用いて細胞を洗浄する。吸引オフ
3.細胞を覆うために、TrypLETMSelectを1フラスコ当たり1.5ml加える
4.細胞が剥離するまで、2〜3分間インキュベーターに戻して静置する(顕微鏡を用いて確認する。)
5.細胞を再懸濁するために、5mlのCnT−57培地中で細胞を再懸濁する。2、3回激しくピペッティングする
6.160×gで5分間細胞をスピンする
7.培地を除去し、新鮮なCnT−57培地5ml中で再懸濁する。2、3回激しくピペッティングする
8.細胞を計数するために20μlの細胞懸濁液を移す
9.細胞を希釈し、4×10細胞/cmの濃度にて播種する
10.37℃および5%CO2の加湿されたインキュベーターの中にフラスコを置く
11.2〜3日毎に15mlのCnT−57培地を用いて給餌することによって細胞を維持する
12.90%コンフルエントまで増殖させ、次いで再び継代する。
【0120】
〔実施例2:表皮性の皮膚等価物の生成〕
〔材料〕
1.90%コンフルエントにまで増殖させたHpEKp細胞<15継代(CellnTec)(実施例1参照)
2.T75組織培養フラスコ(IWAKI)
3.TrypLETMSelect(12563−011、Invitrogen)
4.10ml滅菌Stripettes(Star Labs)
5.自動ピペッター
6.倒立TC顕微鏡
7.滅菌15mlファルコンチューブ(Falcon)
8.6ウエル培養プレート(Millipore)
9.Millicell PCF 0.4 μm Inserts(Millipore)
10.RapiDiff II stain Pack (BioStain)
11.24ウエル培養プレート(Millipore)
12.クラス2組織培養キャビネット(37℃、5%CO)(Binder)
13.ウォーターバス(37℃)
14.滅菌リン酸緩衝化生理食塩水
15.滅菌ピンセット
16.PCM完全培地(CnT−57)(CellnTec)
17.3D−Prime完全培地(CNT−02−3DP)(CellnTec)。
【0121】
〔プロトコル〕
1.4つのMillicell PCF 0.4μm 12mm インサート(Millipore Cat♯:PIHP01250)を、6ウエル培養プレートの各ウエル内に置き、実験に必要な数をプレートアウト(plating out)する。予備インサートを2つ準備する(コンフルエンシーをモニタリングするため−ステップ15)
2.HpEKp細胞のフラスコからCnT−57培地を除去する
3.滅菌PBS(2ml)を用いて細胞を洗浄する。吸引オフ
4.細胞を覆うために、TrypLETMSelectを1フラスコ当たり1.5ml加える
5.細胞が剥離するまで、2〜3分間インキュベーターに戻して静置する(顕微鏡を用いて確認する。)
6.細胞を再懸濁するために、5mlのCnT−57培地中で細胞を再懸濁する。2、3回激しくピペッティングする
7.160×gで5分間細胞をスピンする
8.培地を除去し、新鮮なCnT−57培地5ml中で再懸濁する。2、3回激しくピペッティングする
9.細胞を計数するために20μlの細胞懸濁液を移す
10.5×10細胞/mlの濃度に細胞を希釈する
11.インサート1つ当たりに、400μlのCnT−57(またはCnT−07)中にて2×105個の細胞を添加する
12.インサートの内側および外側の培地のレベルが等しくなりかつ細胞を埋もれるように、インサートの外側(プレートのウエル内)に適量(約2ml)のCnT−57を添加する;上記膜の底部に、気泡が閉じ込められていないことを確認する
13.37℃および5%CO2の加湿されたインキュベーターの中にインサートを置く
14.2〜3日間細胞を増殖させる
15.RAPI−DIFF II染色を用いて一つの予備インサートを染色する
16.単層がコンフルエントの場合、ステップ17に進む。そうでなければ、残存しているインサートにおいて培地を交換し、さらに1日間培養し、次いで、第2の予備インサートを用いて別の染色を行う
17.インサートの内側および外側の培養培地を3D 培地(CnT−02−3DP)に取り換える(播種した時と同量、ステップ12)
18.細胞が細胞間接着構造を形成することを可能にするために、インキュベーターの中にインサートを一晩(15−16h)置く。
【0122】
19.インサートの内側から全ての培地を吸引することによって3D培養を開始し、24ウエルプレートの個々のウエルに置く。(CNT−02−3DP)外側培地を加える(250μl)
20.経時的な検討を行う場合、インサートを同一プレートに残して、おいて2〜3日毎に培地交換をしてもよい。放射線照射処理を開始する前に、乾燥雰囲気下において14日間細胞を増殖させる。
【0123】
〔実施例3:表皮性の皮膚等価物の放射線照射−UVA照射〕
〔材料〕
1.Oriel 1000W UV Solar Simulator(Newport Corp.)
2.Atmospheric Attenuationフィルター(Newport Corp.−81017)
3.Vis IRフィルター(Newport corp−87066)
4.PETGフィルター(RVI Medical Physics)
5.International Light UVA 光線療法放射計(Able Instruments−IL1402)
6.表皮性の皮膚等価物(実施例2参照)
7.3D−Prime完全培地(CNT−02−3DP)(CellnTec)
8.24ウエル培養プレート(Millipore)
9.滅菌リン酸緩衝化生理食塩水
10.滅菌ピンセットおよびメス。
【0124】
〔使用したUVスペクトル(疑似太陽)〕
Atmospheric Attenuationフィルター+Vis IRフィルター+PETGフィルター:図15に示すように。
【0125】
〔手順〕
1.実施例2に示したように、皮膚等価物を作製しそして増殖させる。
【0126】
2.14日間の乾燥雰囲気下での増殖の後に、上記SEを放射線照射/処理するために準備する
3.皮膚等価物を増殖培地から移し、新しい24ウエルプレート内に配置する。上記24ウエルプレートは200μlの滅菌PBSを含む
4.必要であれば、試験されるべき製品を、2mg/cmの濃度(または任意の特定の濃度)にて上記皮膚等価物の表面にアプライする。上記製品を曲がった200μlの滅菌ピペットチップを用いてアプライし、表面にわたって均等に広げる
5.皮膚等価物を準備したら直ちに、UV光に対する曝露の前に、それら皮膚等価物をインキュベーター内へ戻して、20分間静置する
6.疑似太陽を点灯し、処理の前に10分間暖めておく。放射計を用いてUV出力を測定し、上記強度を用いて曝露に必要な時間を算出する
7.上記皮膚等価物を疑似太陽下に置き、(実験上の要求に応じて上記6にて計算されるような)X SEDのUV光に曝露する
8.曝露に続いて、上記皮膚等価物を3D培地中に再度配置し、インキュベーター内へ戻す
9.放射線照射は個々の実験の設定に依存する。いくつかの例を表1に示す
10.SEへの放射線照射に続いて、SEを3D培地から移し、抽出の前に−80℃にて保存する。
【0127】
【表1】

【0128】
〔実施例4:表皮性の皮膚等価物の放射線照射−疑似太陽光〕
〔材料〕
1. 1.Oriel 1000W UV Solar Simulator(Newport Corp.)
2.Atmospheric Attenuationフィルター(Newport Corp.−81017)
3.Vis IRフィルター(Newport corp−87066)
4.International Light UVA 光線療法放射計(Able Instruments−IL1402)
5.表皮性の皮膚等価物(実施例2参照)
6.3D−Prime完全培地(CNT−02−3DP)(CellnTec)
7.24ウエル培養プレート(Millipore)
8.滅菌リン酸緩衝化生理食塩水
9.滅菌ピンセットおよびメス。
【0129】
〔使用したUVスペクトル(疑似太陽)〕
Atmospheric Attenuationフィルター+Vis IRフィルター:図16に示すように。
【0130】
〔手順〕
1.実施例2に示したように、皮膚等価物を作製しそして増殖させる
2.14日間の乾燥雰囲気下での増殖の後に、上記SEを放射線照射/処理するために準備する
3.皮膚等価物を増殖培地から移し、新しい24ウエルプレート内に配置する。上記24ウエルプレートは200μlの滅菌PBSを含む
4.必要であれば、試験されるべき製品を、2mg/cmの濃度(または任意の特定の濃度)にて上記皮膚等価物の表面にアプライする。上記製品を曲がった200μlの滅菌ピペットチップを用いてアプライし、表面にわたって均等に広げる
5.皮膚等価物を準備したら直ちに、UV光に対する曝露の前に、それら皮膚等価物をインキュベーター内へ戻して、20分間静置する
6.疑似太陽を点灯し、処理の前に10分間暖めておく。放射計を用いてUV出力を測定し、上記強度を用いて曝露に必要な時間を算出する
7.上記皮膚等価物を疑似太陽下に置き、(実験上の要求に応じて上記6にて計算されるような)X SEDのUV光に曝露する
8.曝露に続いて、上記皮膚等価物を3D培地中に再度配置し、インキュベーター内へ戻す
9.放射線照射は個々の実験の設定に依存する。いくつかの例を表1に示す
10.SEへの放射線線量に続いて、SEを3D培地から移し、抽出の前に−80℃にて保存する。
【0131】
【表2】

【0132】
〔実施例5:インビボでのUVR線量応答〕
種々のレベルのUVRを用いて放射線照射を行い、次いで、拭き取って皮膚サンプルを収集することによって、個体に対するインビボでの試験を行った。図5を参照して、SEDは標準的な紅斑線量(erythemal dose)をいう。上記線量は、紅斑(または皮膚の発赤)を生じさせるために必要とされるUVRの量である。図5Aは、3.0 SEDまでのUVR照射に続く皮膚拭取りサンプルにおける定量的リアルタイムPCRによって行われた、mtDNA欠失体の解析についての線量応答の結果を示す。この実験は、紅斑が生じ始める時点まで、漸増量のUVRの線量を用いて、UVR誘導性のmtDNA損傷が増加することを実証する。紅斑が生じ始める時点で、おそらく紅斑組織における増加したレベルのアポトーシスに起因して、サンプルにおけるmtDNA損傷は低下する。このことは、皮膚に対する長期間にわたる損傷の観点で、それが紅斑線量よりも低い線量であることを示し、この線量は、皮膚において観察されるmtDNAの長期間にわたる損傷を生成する。図5Bに示すように、損傷における変化度(fold change)を算出する。
【0133】
〔実施例6:UV曝露と関連した融合転写物の同定〕
培養した皮膚等価物を増殖させ、上記の実施例に記載したような疑似太陽を使用した種々のレベルのUVRを用いて照射した。
【0134】
QuantiGene Sample Processing Kit:Cultured Cells(Panomics QS0100)およびthe QuantiGene 2.0 Reagent System(Panomics QS0008)の製造業者のプロトコルに従いサンプルを処理した。詳細には、300μlの希釈した溶解混合液を皮膚等価物の各々に加え、その後、上記皮膚等価物を50℃にて1.5時間または細胞の膜が完全に溶解されている外観を細胞が呈するまで、インキュベートした。各々を1:10に希釈し、プロトコルの残りを実行し、ハウスキーパーとしてACBTベータアクチンを用いて融合転写物2、3、11、12、20および32を標的化した。全ての転写物について、各サンプルを三連にてアッセイし、各サンプル/転写物のペアについて、テンプレートのないバックグラウンドを設けた。
【0135】
図6〜9を参照して、0.5 SEDおよび1.0 SEDを、種々の回数の反復性の照射(0×、15×、18×、21×、24×、27×)での本実験の目的のために使用した。明確に記載すると、1.0 SED 27×に曝露されたこれらの皮膚等価物が、最大のレベルのUVRを受けた。
【0136】
これらの結果は、試験された融合転写物の各々が、反復性の放射線照射を増やす場合およびUVR曝露との関連を示す0.5 SED〜1.0 SEDの場合の両方にて、量的に増加したことを実証する。
【0137】
〔実施例7:製品の処方および試験〕
異なるレベルのUVAフィルターの3つのブラインド処方物を2mg/cm2にて試験した。各処方物のサンプルを、14日間経過した皮膚等価物に対して、UVAおよび疑似太陽光源の両方を用いて試験した。同時に、上記サンプルをin vivoにおいて試験した。サイバーグリーン(sybr green)定量的リアルタイムPCRによって欠失解析を行った。
【0138】
実験に用いる所望物を、標準的な化粧用成分から構成される化粧用の化粧用ローションエマルションにて、調製した。各製品は、一定のレベルのUVBフィルターを含むが、UVAフィルターのレベルを以下のように変化させた。
【0139】
【表3】

【0140】
図10は、処方物(A、BまたはC)の適用に続く、UVA(図10)および疑似太陽光(図11)に曝露したインビトロのサンプルに対するPCR解析の結果を示す。図12に、処方物のインビボ試験に続く結果を提供する。これらのデータは、疑似太陽光からのUVR損傷の多因子的性質を示し、UVAのみの曝露を用いて分離した時、損傷レベルは、日焼け止めによって与えられたUVA保護の割合に追従する。しかしながら、疑似太陽光において曝露がUVAのUVRおよびUVBのUVRの両方を結合させた場合、サンプル間の損傷率は変化する。サンプルAおよびBについては、UVAフィルターの欠如および疑似太陽光におけるUVBの併用は、紅斑の閾値を超える損傷を受けているので(前出の00121)、Aが予想よりも高いというよりもむしろ、Bが予想よりも低いのかもしれない。このことは、上記サンプルにおいて、より少ない損傷が記録されたことを意味する。
【0141】
これらの結果はまた、この化合物において、欠失のレベルによって示されているような損傷のレベルとUVAフィルターの量との間に逆相関関係が存在していることを実証する。明確に記載すると、化合物BのようなUVAフィルターの欠失は、より高いレベルの欠失を生じる。
【0142】
〔実施例8:日焼け止めおよび抗加齢の商品のスクリーニング〕
UVA光に対する反復性の曝露の前に、種々の日焼け止めおよび抗加齢の製品のサンプルを2mg/cm2にてアプライした。日焼け止め剤のパネルは、UK/北アメリカのトップブランドからのspf 15の製品を含んでいた。抗加齢の製品は、多くのトップブランドからの広範なナイトクリーム/血清を含んでいた(図13)。上記結果は、全ての製品が同じSPF規格を有するにもかかわらず(15)、UVAおよび疑似太陽UVRの両方を用いた放射線照射に続く、これらの製品によって与えられる保護レベルがかなり変動したことを示す。これは、mtDNA損傷において(SPF規格によって測定される)UVB曝露の要素(例えば、UVA保護および抗酸化活性)が重要であるので、日焼け止めによって与えられたUVR保護の効力を評価するためにはSPF単独では不十分であることを示唆する。抗加齢の製品は、多くのトップブランドからの広範なナイトクリーム/血清を含んでいた(図14)。これらのデータは、高加齢型の製品によって与えられる保護において、mtDNAに関するかぎりで、顕著な変量が存在することを示す。これらの製品の多くは、これらの主な活性成分として抗酸化化合物を含み、このことは、mtDNA損傷の測定が、上述した処方物、さらに、個々の活性成分を効果的であるものと、保護をほとんどもしくは全く示さないものとの間で差別化し得ることを示す。
【0143】
本発明は、いくつかの特定の実施形態を参照して記載されているが、本発明の目的および範囲を逸脱することなく、本明細書に添付の特許請求の範囲で述べるような上記実施形態の種々改変が、当業者に明白である。本明細書中に提供される任意の実施例は、単に本発明を例示する目的のために含まれており、本発明を限定することを決して意図するものでない。本明細書とともに提供される任意の図面は、単に本発明の種々の態様を例示するための目的であり、本発明を縮小するまたは限定することを決して意図するものでない。本明細書中に挙げられた全ての先行技術の開示は、それらの全てが参考として本明細書にて援用される。
【0144】
〔引用文献〕
以下の参考文献が、他にも文献は存在するが、これまでの記載の中で引用された。これらの参考文献の内容の全体が、本明細書に対する参照の目的で、本明細書にて援用される。
【0145】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】ヌクレオチド548〜4442位の除去後の、386〜547位:4443〜5511位からのフレーム2のアミノ酸配列を示す図である。
【図2】ヌクレオチド548〜4442位の除去後に生成される読み枠を示す図である。ヌクレオチド382は赤い四角によって示されている。上記赤い四角は、ミトコンドリアゲノムの1位に関する読み枠2の開始を特定している。
【図3】ヌクレオチド548〜4442位の除去によって形成されるフレーム2融合転写物の寄与配列を示す図である。
【図4】ヌクレオチド548〜4442位の欠失による融合転写物形態の最終アミノ酸配列を示す図である。上記配列は、ミトコンドリアゲノムの、再結合したヌクレオチド470〜547位および4443〜5511位を含む。
【図5A】は、mtDNA欠失体解析を使用したインビボでのUVR線量応答を示す図である。
【図5B】は、UV損傷を測定するためのサンプルの計算を示す図である。
【図6】皮膚等価物における、UV照射に続く本発明の融合転写物2、3、11、12、20および32の発現を示す図である。
【図7】皮膚等価物における、UV照射に続く本発明の融合転写物2、3、11、12、20および32の発現を示す図である。
【図8】皮膚等価物における、UV照射に続く本発明の融合転写物2、3、11、12、20および32の発現を示す図である。
【図9】皮膚等価物における、UV照射に続く本発明の融合転写物2、3、11、12、20および32の発現を示す図である。
【図10】3つのUV処方物のインビボ実験およびインビトロ試験を示す図である。
【図11】3つのUV処方物のインビボ実験およびインビトロ試験を示す図である。
【図12】3つのUV処方物のインビボ実験およびインビトロ試験を示す図である。
【図13】UV曝露に続く種々の日焼け止めおよび抗加齢銘柄のスクリーニングを示す図である。
【図14】種々の日焼け止め商品および抗加齢商品の、UV曝露に続くスクリーニングを示す図である。
【図15】実施例3の疑似太陽照射のために使用されるUVスペクトルを示す図である。
【図16】実施例4の疑似太陽照射のために使用されるUVスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV曝露と関連した、単離されたミトコンドリア融合転写物。
【請求項2】
上記転写物は、配列番号22、配列番号23、配列番号31、配列番号32、配列番号38または配列番号39に対応する核酸配列を有する、請求項1に記載の融合転写物。
【請求項3】
上記転写物は、配列番号39に対応する核酸配列を有する、請求項1に記載の融合転写物。
【請求項4】
生物学的サンプルにおける紫外線(UVR)の曝露を検出またはモニタリングするための方法であって、上記生物学的サンプルにおけるミトコンドリア融合転写物の存在を検出する工程を含み、上記転写物はUVRの曝露と関連している、方法。
【請求項5】
上記生物学的サンプルが被験体から採取された皮膚サンプルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記生物学的サンプルが組織培養サンプルである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
上記皮膚サンプルが上記被験体の表皮層から採取される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
上記融合転写物の存在を検出する工程の前に、致死線量よりも低い線量の紫外線(UVR)に少なくとも1回上記サンプルを曝露する工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
一連の反復性の、致死線量よりも低い線量のUVRに上記生物学的サンプルを曝露する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記一連の反復性の、致死線量よりも低い線量が、上記生物学的サンプルを毎日のUVR照射に曝露することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記UVRが、疑似太陽のUVR光源に由来する、請求項8から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
上記UVRがUVA、UVBまたはUVA/UVBを含む、請求項8から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
上記転写物は、配列番号22、配列番号23、配列番号31、配列番号32、配列番号38または配列番号39に対応する核酸配列を有する、請求項4から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
上記転写物が配列番号39に対応する核酸配列を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
被験体から得られた生物学的サンプルにおけるUV曝露に関連するミトコンドリア融合転写物の存在を一定期間にわたって検出する工程を含む、被験体における累積のUV曝露を測定するための方法。
【請求項16】
上記サンプルは、太陽にまれに曝露される皮膚、太陽に時折曝露される皮膚、または太陽にたいてい曝露される皮膚に由来する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
生物学的サンプルにおける上記転写物の存在を、生物学的な参照サンプルにおける転写物の存在と、またはコントロール転写物と比較する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記生物参照サンプルが、めったに太陽に曝露しない皮膚サンプル、時折太陽に曝露した皮膚サンプル、常々太陽に曝露した皮膚サンプルまたは血液を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
UV曝露の検出のための、またはUV曝露に対するバイオマーカーとしての、融合転写物の使用。
【請求項20】
UV曝露を検出するためのキットであって、上記キットは、配列番号3、配列番号4、配列番号12、配列番号13、配列番号19、配列番号22、配列番号23、配列番号31、配列番号32、配列番号38または配列番号39に対応する核酸配列の一部に対して実質的に相補的な配列を有するプローブを備えている、キット。
【請求項21】
生物学的サンプルのヒトmtDNAゲノムにおいて欠失を検出するための方法であって、上記欠失はUV曝露に関連しており、上記方法は、上記生物学的サンプルにおけるmtDNA欠失分子の存在を検出する工程を含み、上記mtDNA欠失分子は、配列番号3、配列番号4、配列番号12、配列番号13または配列番号19に対応する核酸を有する、方法。
【請求項22】
上記生物学的サンプルが被験体から採取された皮膚サンプルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記生物学的サンプルが組織培養サンプルである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
上記皮膚サンプルが上記被験体の表皮層から採取される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記方法は、UV曝露を検出またはモニタリングするために使用される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
mtDNA欠失分子の存在を検出する工程の前に、致死線量よりも低い線量の紫外線(UVR)に少なくとも1回上記サンプルを曝露する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
上記生物学的サンプルが、一連の反復性の、致死線量よりも低い線量のUVRに曝露される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記一連が、上記生物学的サンプルを毎日のUVR照射に曝露する工程を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項29】
上記UVRが、疑似太陽のUVR光源に由来する、請求項26から28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
上記UVRがUVA、UVBまたはUVA/UVBを含む、請求項26から29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
UV曝露と関連した、単離されたmtDNA欠失分子であって、配列番号3、配列番号4、配列番号12、配列番号13または配列番号19に対応する核酸を有する、mtDNA欠失分子。
【請求項32】
被験体における累積のUV曝露を測定するための方法であって、被験体から得られた生物学的サンプルにおけるUV曝露に関連するmtDNAでの欠失の存在を一定期間にわたって検出する工程を含み、上記欠失が、配列番号3、配列番号4、配列番号12、配列番号13または配列番号19に対応する核酸配列を有する、方法。
【請求項33】
上記生物学的サンプルは、太陽にまれに曝露される皮膚、太陽に時折曝露される皮膚、または太陽にたいてい曝露される皮膚由来である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
上記生物学的サンプルにおける上記欠失の存在を、生物学的な参照サンプルにおける上記欠失の存在と、またはコントロール配列と比較する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
上記生物学的な参照サンプルが、太陽にまれに曝露される皮膚サンプル、太陽に時折曝露される皮膚サンプル、太陽にたいてい曝露される皮膚サンプル、および血液を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
UV曝露を検出するための、またはUV曝露に対するバイオマーカーとしての、配列番号3、配列番号4、配列番号12、配列番号13または配列番号19に対応する核酸配列を有するmtDNA欠失体の、使用。
【請求項37】
UV曝露、UV損傷、皮膚の加齢または光老化に対する防止、最小化、回復または保護におけるスキンケア製品の能力を試験またはスクリーニングするための方法であって、上記方法は以下の工程:
(a)上記スキンケア製品を試験サンプルに適用する工程であって、上記試験サンプルが皮膚または皮膚等価物を含む、工程;
(b)上記試験サンプルを紫外線(UVR)に曝曝する工程;
(c)上記試験サンプルにおける以下の(i)または(ii)の存在を検出する工程:
(i)UV曝露に関連するミトコンドリア融合転写物;または
(ii)UV曝露に関連し、かつ配列番号3、配列番号4、配列番号12、配列番号13、配列番号19または配列番号20に対応する核酸配列を有する、mtDNA欠失分子;および
(e)上記検出する工程の結果を参照値と比較する工程
を含む、方法。
【請求項38】
上記融合転写物または上記mtDNA欠失分子の存在を検出する工程の前に、上記試験サンプルが、致死線量よりも低い線量のUVRに少なくとも1回曝露される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
上記試験サンプルが、一連の反復性の、致死線量よりも低い線量のUVRに曝露される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
上記一連の反復性の、致死線量よりも低い線量のUVRが、上記試験サンプルを毎日のUVRに曝露する工程を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
上記UVRが、疑似太陽のUVR光源に由来する、請求項38から40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
上記UVRがUVA、UVBまたはUVA/UVBを含む、請求項38から41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
上記ミトコンドリア融合転写物が、配列番号22、配列番号23、配列番号31、配列番号32、配列番号38または配列番号39に対応する核酸配列を有する、請求項37から42の何れか一項に記載の方法。
【請求項44】
上記参照値が、コントロール、または別のスキンケア製品において検出された値である、請求項37から43の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−520965(P2013−520965A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555266(P2012−555266)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【国際出願番号】PCT/CA2011/050120
【国際公開番号】WO2011/106892
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(510100508)ミトミクス インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】GENESIS GENOMICS INC.
【住所又は居所原語表記】Suite 1000,290 Munro Street,Thunder Bay,Ontario P7A 7T1
【Fターム(参考)】