説明

UV吸収性組成物

有機樹脂と酸化亜鉛粒子とを含んでなる、E308/E524比及び/又はE360/E524比が4を超えるUV吸収性ポリマー組成物。この組成物は、好ましくはポリマーフィルムという形の、UV吸収性と優れた透明性とを示す最終用途製品の生産において特に好適に使用される。一実施形態では、この組成物は有機樹脂と有機分散媒と酸化亜鉛粒子とを含んでなるマスターバッチ組成物から生産することができる。このマスターバッチは好ましくは有機分散媒中の酸化亜鉛粒子の予備分散体を有機樹脂と混合して調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はUV吸収性ポリマー組成物、特に有機樹脂、有機分散媒及び酸化亜鉛粒子を含んでなるマスターバッチ組成物を使用して形成されるUV吸収性ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料のマスターバッチ組成物は周知であり、通常は種々の無着色プラスチック又はポリマー材料中への希釈又は「レットダウン」のための顔料濃厚物としての使用に適した有機樹脂と顔料とを含有する。マスターバッチ又は顔料濃厚物はバルクプラスチック中に希釈されるよう設計されており、最終組成物に不透明度を、また必要なら着色や他の機能性を追加する。
【0003】
マスターバッチ法はプラスチックにブロッキング防止剤、殺生物剤、熱安定剤、光安定剤、顔料、UV吸収剤などのような添加剤を組み入れる方法としてよく使用される。そうした添加剤はプラスチック材料の物理的制約たとえば光誘起性分解を克服するのに必要である。
【0004】
マスターバッチ使用の代替法として、液体キャリア系を使用して前述の添加剤をポリマー中に、たとえば射出吹き込み成形時に導入する方法もある。添加剤は通常、相溶化剤の存在下に液体キャリア中に予め分散させ、次いでポリマー樹脂に組み込まれる。
【0005】
プラスチックは屋外などのような暴露条件下で使用することになる用途も多い。そうした環境では、安定剤無添加のプラスチックは、熱不安定性、光不安定性、風化作用(水の浸入など)、他の化学的腐食(酸性雨など)が組み合わさって、分解し、変退色することになる。そうした分解は使用ポリマーの美観、機能の両面に悪影響を及ぼす。光安定剤は非不透明(半透明/透明)プラスチックの光(特にUV光)誘起性分解を遅らせるために、他の保護剤(顔料用酸化チタンなど)が使えない場合に、よく使用される添加剤である。フィルムなど断面の薄いプラスチックを使用する用途分野では、光安定剤の所要濃度が製造又は使用時のフィルムの物理的性質に悪影響を及ぼすことが多いため、光安定性の実現がしばしば困難である。そのうえ、有機光安定剤化合物の性質は化学的に安定であることが求められるが、それは、特に生物分解性ポリマーについて、毒性又は生物分解性を考慮したときに負の特性となる可能性がある。
【0006】
プラスチックフィルムや樹脂などのような用途では酸化亜鉛などのような金属酸化物がUV光の減衰剤として使用されてきたが、そうした既存物質はUV吸収が不十分だったり、透明性に欠けたり、これらの性質が長持ちしなかったりする。
【0007】
従って、有効なUV吸収と透明性を示しかつ維持し、使用時に低又は無毒性であり、及び/又は十分に生物分解性でもあるようなポリマー材料が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
驚くべきことに、前述の問題を少なくとも1つ克服又は著しく緩和するような改良型のポリマー及びマスターバッチ組成物が見出された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は有機樹脂と酸化亜鉛粒子とを含んでなりE308/E524比及び/又はE360/E524比が4を超えるUV吸収性ポリマー組成物を提供する。
【0010】
本発明はまた、有機樹脂と有機分散媒と酸化亜鉛粒子とを含んでなるマスターバッチ組成物を提供する。
【0011】
本発明はさらに、有機分散媒中の酸化亜鉛粒子分散体を有機樹脂と混合する工程を含んでなるマスターバッチ組成物の生産方法を提供する。
【0012】
本発明はさらになお、有機樹脂と酸化亜鉛粒子とを含んでなりE308/E524比及び/又はE360/E524比が4を超えるUV吸収性ポリマー組成物の製造方法であって、(i)有機樹脂と有機分散媒と酸化亜鉛粒子とを含んでなるマスターバッチ組成物を提供し、このマスターバッチ組成物を基剤有機樹脂と混合する工程、又は(ii)有機分散媒中の酸化亜鉛粒子分散体を提供し、この分散体を基剤有機樹脂中に直接組み入れる工程を含んでなる方法を提供する。
【0013】
本発明はさらに、有機樹脂と酸化亜鉛粒子とを含んでなりE308/E524比及び/又はE360/E524比が4を超えるUV吸収性ポリマー組成物の抗菌剤としての使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態では、UV吸収性ポリマー組成物は本願開示のマスターバッチ組成物を使用して生産できる。
【0015】
本発明のマスターバッチ組成物中に存在する有機樹脂はプラスチック又はポリマー材料中へのレットダウンに適した任意の有機樹脂でよい。たとえば技術上周知の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などである。
【0016】
好適な熱可塑性樹脂の例はポリ塩化ビニルとそのコポリマー、ポリアミドとそのコポリマー、ポリオレフィンとそのコポリマー、ポリスチレンとそのコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)とそのコポリマー、アクリロニトリルブタジエン−スチレン、ポリオキシメチレン及びアセタール誘導体、ポリブチレンテレフタレート及びグリコール誘導体、ポリエチレンテレフタレート及びグリコール誘導体、ポリアクリルアミド、ナイロン(好ましくはナイロン11又は12)、ポリアクリロニトリルとそのコポリマー、ポリカーボネートとそのコポリマーなどである。ポリエチレン及びポリプロピレンは好適なポリオレフィンであり、ポリマー骨格にカルボン酸基又は酸無水物基をグラフトして改質してもよい。低密度ポリエチレンを使用してもよい。ポリ塩化ビニルは可塑化PVCでもよく、また好ましくは塩化ビニルのホモポリマーである。
【0017】
使用してもよい熱硬化性樹脂の例はエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ハイブリッドのエポキシ−ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などである。
【0018】
有機樹脂は好ましくは、生物分解性をもつ又はもたないポリマーフィルムにしばしば使用される次のポリマー又はモノマーより選択又は重合される樹脂である:アルキルビニルアルコール、アルキルビニルアセテート、炭水化物、カゼイン、コラーゲン、セルロース、セルロースアセテート、グリセロール、リグニン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ナイロン、ポリアルキレンエステル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリグリセロール、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリプロピレン、ポリ乳酸、多糖、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、タンパク質、大豆タンパク質、トリグリセリド、及びそれらの変異体又はコポリマー。
【0019】
有機樹脂は好ましくは融点が40℃超、より好ましくは50〜500℃、特に75〜400℃とりわけ90〜300℃の範囲内である。有機樹脂は好ましくはガラス転移点(Tg)が−200〜500℃、より好ましくは−150〜400℃、特に−125〜300℃の範囲内である。
【0020】
有機樹脂の濃度はマスターバッチ組成物の全質量を基準にして、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは30〜90質量%、特に40〜80質量%とりわけ50〜70質量%の範囲内である。
【0021】
本発明の粒子状酸化亜鉛は、好適には平均粒径(本願開示の要領で測定)120nm未満、好ましくは90nm未満、より好ましくは35〜70nm特に40〜60nmとりわけ45〜55nmの範囲内の一次粒子を含んでなる。一次酸化亜鉛粒子の粒径分布はマスターバッチ組成物又はUV吸収性ポリマー組成物の最終特性に著しい影響を及ぼす可能性もある。本発明の好ましい実施形態では、好適には粒子数の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%とりわけ少なくとも90%が前記の平均粒径に関する好ましい範囲内の粒径である。
【0022】
一次酸化亜鉛粒子は形状が好ましくはほぼ球形であり、平均アスペクト比d1:d2(ただしd1とd2はそれぞれ、本願開示の要領で測定した粒子の長さと幅である)が好ましくは0.6〜1.4:1、より好ましくは0.7〜1.3:1、特に0.8〜1.2:1、とりわけ0.9〜1.1:1の範囲内である。本発明の好ましい実施形態では、好適には粒子数の少なくとも40%、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%とりわけ少なくとも90%が前記の平均アスペクト比に関する好ましい範囲内のアスペクト比である。
【0023】
本発明の一実施形態では、一次酸化亜鉛粒子は凝集して、複数の一次酸化亜鉛粒子を含んでなる二次粒子のクラスター又は凝集体を形成する。一次酸化亜鉛粒子の凝集は実際の酸化亜鉛合成時及び/又は後処理時に起こりうる。本発明の二次粒子中に存在する一次酸化亜鉛粒子の平均個数は好適には40未満、好ましくは2〜30、より好ましくは4〜20、特に6〜15とりわけ7〜11の範囲内である。用語「二次」粒子は部分的には、特定の技法を用いて本願開示の要領で得られる粒径結果に関連付けるラベルとして使用される。
【0024】
本発明の粒子状酸化亜鉛は、好適には(本願開示の要領で測定した)二次粒子の体積中位径(全粒子の体積の50%に対応する等体積球相当径、体積%と粒径の関係を示す累積分布曲線で示され、しばしば”D(v,0.5)”として表記される)が150nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは60〜95nm特に70〜90nmとりわけ75〜85nmの範囲内である。
【0025】
二次酸化亜鉛粒子の粒径分布もまた、要求特性をもつマスターバッチ及びUV吸収性ポリマー組成物を得る際の重要なパラメーターとなりうる。好適には16体積%未満の酸化亜鉛粒子の、体積径が体積中位径を下回る幅は55nm超、好ましくは45nm超、より好ましくは35nm超、特に25nm超とりわけ15nm超である。さらに、好適には30体積%未満の酸化亜鉛粒子の、体積径が体積中位径を下回る幅は35nm超、好ましくは25nm超、より好ましくは18nm超、特に12nm超とりわけ8nm超である。
【0026】
さらに、好適には84体積%超の二次酸化亜鉛粒子の、体積径が体積中位径を上回る幅は75nm未満、好ましくは60nm未満、より好ましくは45nm未満、特に35nm未満とりわけ25nm未満である。また、好適には70体積%超の酸化亜鉛粒子の、体積径が体積中位径を上回る幅は35nm未満、好ましくは25nm未満、より好ましくは20nm未満、特に15nm未満とりわけ10nm未満である。
【0027】
二次酸化亜鉛粒子はいずれも実際の粒径が200nm以下であるのが好ましい。そうした粒径を超える粒子は技術上周知のミリング法により無くすことができる。しかし、特定粒径を超える粒子をすべてミリング作業で無くせるとは限らない。従って、実際には95体積%好ましくは99体積%の粒子の粒径が200nm以下、好ましくは150nm以下であればよい。
【0028】
本発明に使用される粒子状酸化亜鉛は任意好適の方法で形成させてよい。一般的な方法は、金属亜鉛を溶解、蒸発させ、気相で酸化させるフランス法;亜鉛鉱を焼結しコークスで還元して得られた亜鉛を酸化させて酸化亜鉛とするアメリカ法;及び水溶性亜鉛塩たとえば塩化亜鉛又は硫酸亜鉛を結晶化させ、次いでたとえば亜鉛塩の焼結、気相酸化により、亜鉛塩を酸化させて酸化亜鉛粉とし、粉砕法で大きな粒子の酸化亜鉛を機械的に粉砕し適正な粒径及び粒径分布の酸化亜鉛粉とする湿式法である。技術上周知の分別法を用いて、本願開示の好ましい粒径及び粒径分布の酸化亜鉛を得るようにしてもよい。
【0029】
酸化亜鉛粒子はほぼ純粋な酸化亜鉛でもよいが、本発明の一実施形態では粒子は無機及び/又は有機被膜をもつ。無機被膜は好ましくはたとえばアルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、マグネシウム又は亜鉛の1つ又は複数の酸化物又は水和酸化物である。有機被膜は脂肪酸、有機ケイ素化合物、ポリオール、アミン及び/又はアルカノールアミンでもよい。被膜は通常、酸化亜鉛粒子と併用される特定媒体との相溶性を確保するように選択される。従って通常、酸化亜鉛粒子を混和するのが極性媒体なら親水性無機被膜が、また無極性媒体特に油なら疎水性有機被膜が、それぞれ好ましい。
【0030】
酸化亜鉛粒子の純度は特定用途への使用では重要になる可能性がある。好ましい実施形態では、(無被覆及び/又は被覆)酸化亜鉛粒子の鉛含有量は好ましくは15ppm未満、より好ましくは13ppm未満、特に10ppm未満とりわけ6ppm未満である。
【0031】
本発明に使用される好ましい酸化亜鉛粒子は使用時、透明であり、好適には524nmでの吸光係数(E524)(本願開示の要領で測定)が4.5L/g/cm未満、好ましくは3.0L/g/cm未満、より好ましくは0.1〜2.0、特に0.3〜1.5とりわけ0.5〜1.0L/g/cmの範囲内である。また、酸化亜鉛粒子は好適には450nmでの吸光係数(E450)(本願開示の要領で測定)が7L/g/cm未満、好ましくは5L/g/cm未満、より好ましくは0.5〜3、特に1.0〜2.5とりわけ1.5〜2.0L/g/cmの範囲内である。
【0032】
酸化亜鉛粒子は有効UV吸収を示し、好適には360nmでの吸光係数(E360)(本願開示の要領で測定)が10L/g/cm超、好ましくは12〜20、より好ましくは13〜18、特に14〜17とりわけ15〜16L/g/cmの範囲内である。また、酸化亜鉛粒子は好適には308nmでの吸光係数(E308)(本願開示の要領で測定)が10L/g/cm超、好ましくは12〜20、より好ましくは13〜18、特に14〜16とりわけ14.5〜15.5L/g/cmの範囲内である。
【0033】
酸化亜鉛粒子は好適には最大吸光係数E(max)(本願開示の要領で測定)が10〜25L/g/cm、好ましくは12〜20、より好ましくは13〜18、特に14〜17とりわけ15〜16L/g/cmの範囲内である。酸化亜鉛粒子は好適にはλ(max)(本願開示の要領で測定)が350〜380nm、好ましくは355〜375、より好ましくは360〜372、特に364〜370とりわけ366〜368nmの範囲内である。
【0034】
酸化亜鉛粒子は好適にはE308/E524比が4を超え、好ましくは10を超え、より好ましくは12〜30の、特に14〜25とりわけ16〜20の範囲内である。
【0035】
さらに、酸化亜鉛粒子は好適にはE360/E524比が4を超え、好ましくは10を超え、より好ましくは13〜35の、特に15〜27とりわけ17〜22の範囲内である。
【0036】
酸化亜鉛粒子は白色度の低下を呈してもよく、この粒子を含んでなる分散体の白色度の変化ΔL(本願開示の要領で測定)は好適には10未満、好ましくは1〜7、より好ましくは2〜6、特に3.5〜5とりわけ3〜4の範囲内である。さらに、酸化亜鉛粒子を含んでなる分散体は好適には白色度指数(本願開示の要領で測定)が100%未満、好ましくは70%未満、より好ましくは5〜45%、特に10〜35%とりわけ15〜25%の範囲内である。
【0037】
本願開示の酸化亜鉛粒子の二次(又は分散体)粒子径は電子顕微鏡、コールター・カウンター、沈降分析、静的又は動的光散乱法で測定することができる。好ましいのは沈降分析法である。中位径は、特定粒径を下回る粒子体積の%を表す累積分布曲線を作成し、50番目のパーセンタイル値として求めることができる。分散体中の酸化亜鉛粒子の体積中位径と粒径分布は好適には本願開示の要領で、Brookhaven粒径測定器を使用して求める。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、酸化亜鉛粒子は好適にはBET法比表面積(本願開示の要領で測定)が10〜40m2/gの範囲内、好ましくは15〜35、より好ましくは20〜30、特に23〜27とりわけ24〜26m2/gの範囲内である。
【0039】
本発明のマスターバッチ組成物の酸化亜鉛粒子濃度は好ましくはマスターバッチ組成物の全質量の1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、特に10〜35質量%とりわけ20〜30質量%の範囲内である。
【0040】
酸化亜鉛粒子は有機分散媒中に分散させるのが好ましい。有機分散媒は好ましくは融点がマスターバッチ組成物中の有機樹脂の融点よりも低く、より好ましくはガラス転移点(Tg)よりも低い。
【0041】
有機分散媒は好ましくは融点が400℃未満、より好ましくは300℃未満、特に270℃未満とりわけ250℃未満である。分散媒は好ましくは周囲温度(25℃)で液体である。
【0042】
好適な分散媒の例は無極性物質たとえばC13−14のイソパラフィン、イソヘキサデカン、流動パラフィン(ミネラルオイル)、スクアラン、スクアレン、水素化ポリイソブテン、ポリデセン;シリコーン油及び極性物質たとえばC12−15の安息香酸アルキル、イソノナン酸セテアリル、イソステアリン酸エチルヘキシル、パルミチン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、ネオペンタン酸イソステアリル、オクチルドデカノール、テトライソステアリン酸ペンタエリトリチル、PPG−15ステアリルエーテル、トリエチルヘキシルトリグリセリド、炭酸ジカプリリル、ステアリン酸エチルヘキシル、helianthus annus(ひまわり)種子油、パルミチン酸イソプロピル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、グリセロールモノエステル(C4〜C24脂肪酸たとえばモノステアリン酸グリセロール、モノイソステアリン酸グリセロール)、グリセロールジエステル(C4〜C24脂肪酸)、グリセロールトリエステル又はトリグリセリド(C4〜C24脂肪酸たとえばカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド又はEstol 1527)、エチレンビスアミド(C4〜C24脂肪酸たとえばエチレンビスステアルアミド)、C4〜C24脂肪酸アミド(例:エルカ酸アミド)、ポリグリセロールエステル(C4〜C24脂肪酸)及びオルガノシリコーンなどである。好ましくは、分散媒はグリセロールエステル、グリセロールエーテル、グリコールエステル、グリセロールエーテル、アルキルアミド、アルカノールアミン、及びそれらの混合物からなる群より選択される。より好ましくは、分散媒はモノステアリン酸グリセロール、モノイソステアリン酸グリセロール、ジエタノールアミン、ステアルアミド、オレアミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスステアルアミド、エチレンビスイソステアルアミド、ステアリン酸ポリグリセロール、イソステアリン酸ポリグリセロール、ポリグリコールエーテル、トリグリセリド、又はそれらの混合物である。
【0043】
本発明のマスターバッチ組成物の有機分散媒濃度は好ましくはマスターバッチ組成物の全質量の1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、特に12〜30質量%とりわけ15〜25質量%の範囲内である。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、粒子状酸化亜鉛は前述の好適な有機分散媒中でスラリー、より好ましくは液状分散体にしてから前述の有機樹脂と混合する。
【0045】
液状分散体は、固体粒子が凝集に安定である真の分散体を意味する。分散体中の粒子は比較的一様に分散しており、また静置状態でも沈殿しにくいが、たとえ若干の沈殿が起きても、撹拌するだけで粒子はすぐに再分散可能である。
【0046】
分散体はその性質を改善するための分散剤を含んでもよい。分散剤の存在量は好適には酸化亜鉛粒子の全質量の1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは3〜150質量%、特に4〜9質量%とりわけ5〜7質量%である。
【0047】
好適な分散剤の例は置換カルボン酸、せっけん基剤、ポリヒドロキシ酸などである。一般に分散剤は一般式X.CO.AR(式中Aは二価の架橋基であり、Rは1級、2級もしくは3級アミノ基又は酸とのその塩、又は四級アンモニウム塩であり、またXはポリエステル鎖の残基であって、−CO−基と共に、一般式HO−R’−COOHで表されるヒドロキシカルボン酸に由来する)で表されるものでもよい。分散剤の代表例はベースがリシノール酸、ヒドロキシステアリン酸、(12−ヒドロキシステアリン酸に加えて少量のステアリン酸とパルミチン酸を含む)水素添加ひまし油脂肪酸である。ヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシ基を欠くカルボン酸の1つ又は複数のポリエステル又は塩をベースにした分散剤を使用してもよい。種々の分子量の化合物が使用可能である。
【0048】
他の好適な分散剤は脂肪酸アルカノールアミド及びカルボン酸のモノエステル並びにそれらの塩である。アルカノールアミドはたとえばエタノールアミン、プロパノールアミン又はアミノエチルエタノールアミンをベースにしている。代替分散剤はアクリル酸又はメタクリル酸のポリマー又はコポリマーたとえばそうしたモノマーのブロックコポリマーをベースにしている。同様に一般的な他の分散剤は成分基中にエポキシ基をもつ分散剤たとえばエトキシル化リン酸エステルをベースにした分散剤である。分散剤は商業的にハイパー分散剤と呼ばれているものでもよい。ポリヒドロキシステアリン酸は特に好ましい分散剤である。
【0049】
本発明に使用される分散体は、好適には分散体の全質量の少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも45質量%、より好ましくは少なくとも50質量%、特に少なくとも55質量%とりわけ少なくとも60質量%であり、かつ一般に多くとも70質量%の、酸化亜鉛粒子を含有する。
【0050】
本発明のマスターバッチ組成物中の酸化亜鉛分散体濃度は好ましくはマスターバッチ組成物の全質量の5〜80質量%、より好ましくは10〜70質量%、特に20〜60質量%とりわけ30〜50質量%の範囲内である。
【0051】
本発明のマスターバッチ及びUV吸収性ポリマー組成物はさらに、そうした組成物にしばしば使用される他の追加成分たとえば顔料、染料、触媒及び硬化促進剤、流れ調整剤、消泡剤、つや消し剤、抗酸化剤、滑り止め剤及び特に他のUV吸収剤を含んでもよい。
【0052】
マスターバッチ及びUV吸収性ポリマー組成物は、本願開示の酸化亜鉛粒子を単独のUV吸収剤として含んでもよいし、また酸化亜鉛粒子を他のUV吸収剤たとえば他の金属酸化物及び/又は有機化合物及び/又は有機金属錯体と共に使用してもよい。たとえば酸化亜鉛粒子と他の既存市販の二酸化チタン及び/又は酸化亜鉛粒子を併用してもよい。
【0053】
本願開示の酸化亜鉛粒子及び分散体は有機UV吸収剤たとえばベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ヒンダードベンゾエート、ヒンダードアミン(HALS)又は配位有機ニッケル錯体などとの二元系、三元系又は多元系混合物として使用してもよい。そうした有機UV吸収剤の例は、2−ヒドロキシ−4−n−ブチルオクチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ(1,1−ジメチルベンジル))−2H−ベンゾトリアゾール、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリデニル)及び[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)]N−ブチルアミン−ニッケルなどである。
【0054】
マスターバッチ組成物の有機UV吸収剤濃度は好ましくはマスターバッチ組成物の全質量の0.1〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%、特に5〜30質量%とりわけ10〜20質量%の範囲内である。
【0055】
一般に、本発明のマスターバッチ組成物は、十分に一様な最終濃度とするには成分を混和する必要がある。混和物を作る一般的な方法には溶融混合法とドライブレンド法がある。
【0056】
溶融混合法では、乾燥成分(例:有機樹脂や他の添加剤)を計量してバッチミキサーたとえば高負荷インペラーミキサー、中負荷プラウシェアミキサー又はタンブルミキサーに投入する。混合時間は使用設備次第で、高負荷ミキサーなら通常1〜5分の範囲内であり、またタンブルミキサーなら一般に30〜60分の範囲内である。こうして形成されたプレミックスを次に、液状成分(例:酸化亜鉛分散体)と共に高剪断押出機たとえば一軸スクリュー押出機(Buss Ko−kneeder [RTM]など)又は二軸スクリュー押出機にかけて配合する。熱硬化性組成物では、混合物の温度と滞留時間の組み合わせにより、温度は通常、有機樹脂の融点をやや上回るものの、押出機内で硬化がほとんど又はまったく起こらないようにすることが特に重要である。適正作業温度は組成物中の樹脂に合わせて選定するが、通常は60〜300℃の範囲内である。
【0057】
押出機内の滞留時間は通常0.5〜2分の範囲内である。得られた混合物は次に、ストランドダイから押し出すのが一般的である。押出材は通常、水槽などによる水冷法で急冷し、5〜10mm程度の大きさのペレット又はチップに細断する。これらのペレット又はチップは次に、乾燥し、必要に応じて通常の技法により適正粒径へとさらに粉砕することができる。熱可塑性樹脂はしばしば低温技術を用いて粉砕する必要がある。
【0058】
マスターバッチ組成物はドライブレンド法で調製してもよい。有機樹脂が可塑化ポリ塩化ビニルであれば、この方法が特に好適である。混和を実現するには、全成分を高速ミキサーにより高温で撹拌する。
【0059】
本発明に従って生産されるマスターバッチは配合時の水分又は揮発分の混入に由来する穴又は空隙を含まないのが望ましい。そのための方法(真空等による配合押出機バレルのガス抜き)は技術上周知である。
【0060】
本発明のマスターバッチ組成物は好適には524nmでの吸光係数(E524)(本願開示の要領で測定)が4.5L/g/cm未満、好ましくは3.0L/g/cm未満、より好ましくは0.1〜2.0、特に0.3〜1.5とりわけ0.5〜1.0L/g/cmの範囲内である。
【0061】
このマスターバッチ組成物は有効UV吸収を示し、好適には(i)360nmでの吸光係数(E360)(本願開示の要領で測定)が10L/g/cm超、好ましくは12〜20、より好ましくは13〜18、特に14〜17とりわけ15〜16L/g/cmの範囲内である、及び/又は(ii)308nmでの吸光係数(E308)(本願開示の要領で測定)が10L/g/cm超、好ましくは12〜20、より好ましくは13〜18、特に14〜16とりわけ14.5〜15.5L/g/cmの範囲内である。
【0062】
本発明の特に好ましい実施形態では、マスターバッチ組成物は好適には(i)E308/E524比が4を超え、好ましくは10を超え、より好ましくは12〜30の、特に14〜25とりわけ16〜20の範囲内である、及び/又は(ii)E360/E524比が4を超え、好ましくは10を超え、より好ましくは13〜35の、特に15〜27とりわけ17〜22の範囲内である。
【0063】
本発明の驚くべき特長は、酸化亜鉛粒子を含んでなるマスターバッチ組成物が、E308/E524比及び/又はE360/E524比(本願開示の要領で(分散体中で)測定)を、酸化亜鉛粒子自体の値の、好適には少なくとも45%、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも65%、特に少なくとも75%とりわけ少なくとも85%として生産できることである。
【0064】
本発明のマスターバッチ組成物は、マスターバッチによる基剤着色に通常使用される任意の方法を用いた基剤樹脂中へのレットダウンに好適である。その用途に最適な条件を決めるのはしばしば、基剤又は第2有機樹脂の厳密な性質である。レットダウン及び用途に適正な温度は主に実際の使用樹脂に依存し、また当業者により容易に求められる。基剤有機樹脂は熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。マスターバッチを添加するのに好適な基剤樹脂の例はポリ塩化ビニルとそのコポリマー、ポリアミドとそのコポリマー、ポリオレフィンとそのコポリマー、ポリスチレンとそのコポリマー、ポリ(フッ化ビニリデン)とそのコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリオキシメチレン及びアセタール誘導体、ポリブチレンテレフタレート及びグリコール誘導体、ポリエチレンテレフタレート及びグリコール誘導体、ポリアクリルアミド、ナイロン(好ましくはナイロン11又は12)、ポリアクリロニトリルとそのコポリマー、ポリカーボネートとそのコポリマーなどである。ポリエチレン及びポリプロピレンは好適なポリオレフィンであり、ポリマー骨格にカルボン酸基又は酸無水物基をグラフトして改質してもよい。低密度ポリエチレンを使用してもよい。ポリ塩化ビニルは可塑化PVCでもよく、また好ましくは塩化ビニルのホモポリマーである。
【0065】
基剤又は第2有機樹脂は好ましくは、生物分解性をもつ又はもたないポリマーフィルムにしばしば使用される次のポリマー又はモノマーより選択又は重合される樹脂である:アルキルビニルアルコール、アルキルビニルアセテート、炭水化物、カゼイン、コラーゲン、セルロース、セルロースアセテート、グリセロール、リグニン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ナイロン、ポリアルキレンエステル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリカプロラクトン、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリグリセロール、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリプロピレン、ポリ乳酸、多糖、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、タンパク質、大豆タンパク質、トリグリセリドとその変異体又はコポリマー。
【0066】
最終用途で所期の酸化亜鉛濃度を実現するためのマスターバッチ組成物のレットダウンは、マスターバッチ組成物を、ある量の、希釈剤としての相溶性基剤樹脂とタンブルミキサーで混合するという形で実行してもよい。混合物は次に、一軸又は二軸スクリュー配合押出機に送り、(マスターバッチ組成物の調製に関連する)前述の要領で処理して最終用途で要求される添加剤濃度の完全配合樹脂とするか、又は形材もしくはシート押出機、インフレートもしくはキャスト・ポリマーホイルもしくはフィルム成形機にかけて、所期の製品形態に変換する。
【0067】
あるいはマスターバッチと希釈剤としての相溶性基剤樹脂を、業界内で一般的なタイプの自動計量装置を介して、一軸又は二軸スクリュー配合押出機に送り、前述の要領で処理して最終用途で要求される添加剤濃度の完全配合樹脂とするか、又は形材もしくはシート押出機、インフレートもしくはキャスト・ポリマーホイルもしくはフィルム成形機にかけて所期の製品形態に変換してもよい。
【0068】
一般に、(マスターバッチに使用される)第1有機樹脂は基剤樹脂(レッドタウン)と同じである。しかし、常にそうとは限らず、第1有機樹脂が基剤又は第2有機樹脂とは異なっていてもよい。
【0069】
本願開示の酸化亜鉛粒子を含んでなるマスターバッチを首尾よくレットダウンした後の分析で得られたデータは、透過率、曇り度、透明度、L*、a*、b*の値並びに他の物理的性質(60°及び20°での光沢など)、機械的及び毒物学的性質が本願開示のマスターバッチを含まないポリマーと十分に同等であるか、又はそれ自体単独で商業的使用に十分適する値であることを示す。一般的なマスターバッチ組成物は開発に際して経済的な経路で製造されるように工夫される。従って、本発明によって提供される添加剤の使用はそうした工程に極力影響を及ぼさないのが望ましい。これは一般に混合機/押出機ユニットの電力消費と生産速度の計測により評価される。
【0070】
プラスチックのレットダウンにおけるマスターバッチの使用では、最終生成物の作業効率及び品質のいずれにも経済的に悪影響を及ぼさない材料を作ることが必要である。レットダウン生成物の品質の計測はマスターバッチ自体に準じる(不透明度、L*、a*、b*、光沢(60°及び20°)、及びその他の機械的データ)。レットダウン生成物の生産効率の計測はマスターバッチ組成物に準じる(電力消費と生産速度)。
【0071】
本発明の代替実施形態では、UV吸収性ポリマー組成物は本願開示の酸化亜鉛分散体を液体キャリア系として使用して生産してもよい。液体キャリア系は通常、射出吹き込み成形に使用するが、ポリマーフィルム及び繊維の生産に使用してもよい。ペリスタポンプ、ギアポンプ又は他の好適なポンプにより予備分散系を押出機部分に送り、そこでポリマー樹脂へと直接射出することが可能である。好適なポリマー樹脂の例は、本願開示の1つ又は複数の基剤又は第2有機樹脂である。
【0072】
たとえばポリマーフィルムの形をとる、本発明の最終又は最終用途UV吸収性ポリマー組成物は、好適には524nmでの吸光係数(E524)(本願開示の要領で測定)が4.5L/g/cm未満、好ましくは3.0L/g/cm未満、より好ましくは0.1〜2.0、特に0.3〜1.5とりわけ0.5〜1.0L/g/cmの範囲内である。
【0073】
たとえばポリマーフィルムの形をとる、UV吸収性ポリマー組成物は、有効UV吸収を示し、好適には(i)360nmでの吸光係数(E360)(本願開示の要領で測定)が10L/g/cm超、好ましくは12〜20、より好ましくは13〜18、特に14〜17とりわけ15〜16L/g/cmの範囲内である、及び/又は(ii)308nmでの吸光係数(E308)(本願開示の要領で測定)が10L/g/cm超、好ましくは12〜20、より好ましくは13〜18、特に14〜16とりわけ14.5〜15.5L/g/cmの範囲内である。
【0074】
本発明の特に好ましい実施形態では、たとえばポリマーフィルムの形をとる、UV吸収性ポリマー組成物は、好適には(i)E308/E524比が4を超え、好ましくは10を超え、より好ましくは12〜30の、特に14〜25とりわけ16〜20の範囲内である、及び/又は(ii)E360/E524比が4を超え、好ましくは10を超え、より好ましくは13〜35の、特に15〜27とりわけ17〜22の範囲内である。
【0075】
本発明の驚くべき特長は、たとえばポリマーフィルムの形をとる、酸化亜鉛粒子を含んでなるUV吸収性ポリマー組成物が、E308/E524比及び/又はE360/E524比(本明細書に記載の要領で(分散体中で)測定)を、酸化亜鉛粒子自体の値の、好適には少なくとも45%、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも65%、特に少なくとも75%とりわけ少なくとも85%として生産しうることである。
【0076】
本発明の好ましい一実施形態では、酸化亜鉛粒子を含んでなるUV吸収性ポリマー組成物は抗菌性を示し、好ましくは少なくとも細菌、真菌及び酵母菌に対して、より好ましくは少なくとも細菌と真菌特に細菌に対して抗菌性を示す。
【0077】
一実施形態では、最終又は最終用途UV吸収性ポリマー組成物は、好ましくはポリマーフィルムの形をとり、好適には(i)60〜99.9質量%、好ましくは80〜99.7質量%、より好ましくは90〜99.6質量%特に98〜99.5質量%の有機樹脂、(ii)0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%特に0.3〜2質量%の有機分散媒、及び(iii)0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%特に0.3〜2質量%の酸化亜鉛を含んでなる。
【0078】
本発明のUV吸収性ポリマー組成物は数多くの用途分野たとえば作物の覆いや保護を目的とした農業用の、食品包装用の、及び医療用のプラスチックフィルムなどに使用できる。この組成物の用途には容器たとえば飲料用ボトルなどや、衣類又は他の繊維製品たとえばカーペットやカーテン生地のための紡績なども含まれる。
【0079】
本願明細書で使用した試験方法は以下のとおりである。
【0080】
1)一次酸化亜鉛粒子の粒径測定
スティールスパチュラの先端を用いて、少量一般に2mgの酸化亜鉛を平らな表面上の約2滴のオイル中に1〜2分かけて混入した。得られた懸濁液を溶媒で希釈し、この懸濁液で透過型電子顕微鏡用のカーボン被覆グリッドを濡らし、ホットプレート上で乾燥させた。約18cm×21cmの写真を適正、正確な倍率で撮影した。一般に約300〜500個の粒子が直径×2程度の間隔で表示された。球形の粒子を表し次第に直径を増していく一連の円からなる透明粒径グリッドを使用して、最少300個の一次粒子の粒径を手作業で求めた。各円は、アスペクト比を次第に増しながらもその下の体積は等しい複数の楕円を有する。各粒子の輪郭を適当な球又は楕円に当てはめ、等体積球相当径を求めた。平均粒径と粒径分布は以上の測定値から計算した。さらに、粒子のアスペクト比は少なくとも100個の粒子の長径と短径から求めた。なお、これらの測定はコンピュータ画像解析で行ってもよい。
【0081】
この基本的な方法では対数正規分布の標準偏差を1.2〜1.6の範囲内と仮定している(結晶粒径分布がもっと広くなれば、粒径測定する結晶をもっと多くする、たとえば1000個程度にする必要があろう)。前述の懸濁法は、結晶破壊を最小限にとどめながら、一次酸化亜鉛粒子をほぼ完全に分散分布させるのに好適であることが判明している。残留凝集体(又は二次粒子)は、小さな破片と共に、無視しうることが十分にはっきりとしており、粒径測定には事実上一次粒子だけが含まれる。
【0082】
2)二次酸化亜鉛粒子の体積中位径と粒径分布
ポリヒドロキシステアリン酸3.6gをカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド36.4gと混合し、次いで混合物に酸化亜鉛粉末60gを加えて、分散体を生成させた。混合物は、粉砕媒体としてジルコニアビーズを入れた横型ビーズミルに1500rpmで15分間かけた。酸化亜鉛粒子の分散体はミリスチン酸イソプロピルと混合して30〜40g/Lに希釈した。次いでこの希釈試料をBrookhaven BI−XDC粒径測定器により遠心モードで分析し、体積中位径と粒径分布を測定した。
【0083】
3)酸化亜鉛粒子のBET法比表面積
Micromeritics Flowsorb II 2300を使用して、BET一点法比表面積を測定した。
【0084】
4)白色度の変化と白色度指数
No.2 Kバーコーターを用いて、酸化亜鉛分散体たとえば前記2)で生成させた酸化亜鉛分散体を光沢のある黒色カードの表面にコートし、ドローダウンして、濡れ厚さが12μmのフィルムを形成した。フィルムを室温で10分間乾燥させ、黒色表面の被膜の白色度(LF)を、Minolta CR300比色計で測定した。被膜の白色度(LF)から基材の白色度(LS)を差し引いて白色度の変化ΔLを計算した。白色度指数は標準酸化亜鉛(元BASFのZ−Cote)を100%とした場合のパーセント白色度ΔLである。
【0085】
5)透過率、曇り度及び透明度の測定
Byk Haze−gard PLUSメーター(Cat.No.4725)を用いて、ポリマーフィルム(好ましくは65μm厚)の透過率、曇り度及び透明度を求めた。透過率は入射光に対する全透過光の比である。透明度は狭角拡散であり、具体的には入射光束から平均2.5度未満逸れる透過光の百分率である。曇り度は広角拡散であり、具体的には入射光束から2.5度を超えて逸れる透過光の百分率である。
【0086】
6)吸光係数
a)分散体中の酸化亜鉛粒子
酸化亜鉛分散体たとえば前記2)で生成させた酸化亜鉛分散体の試料0.1gをシクロヘキサン100mLで希釈した。次にこの希釈試料をシクロヘキサンでさらに希釈し、試料:シクロヘキサン比が1:19となるようにした。トータル希釈比は1:20,000であった。希釈試料を次に光路長1cmの分光光度計(Perkin−Elmer Lambda 2 UV/VIS)にセットし、UV光と可視光の吸光度を測定した。式A=E・c・l(ただしA=吸光度、E=吸光係数(L/g/cm)、c=酸化亜鉛粒子濃度(g/L)及びl=光路長(cm))から吸光係数を求めた。
b)マスターバッチ組成物及びUV吸収性ポリマー組成物
1cm×5cm片の65μm厚フィルムたとえば(実施例の要領で調製した)酸化亜鉛マスターバッチ組成物を使用して成形したフィルムを、酸化亜鉛粒子を含まないブランク又は対照フィルムで予め校正しておいた分光光度計(Perkin−Elmer Lambda 2 UV/VIS)にセットし、専用の試料ホルダーで所定位置に固定した。無作為に10個所でフィルム試料の吸光度測定値をとり、平均吸光係数を求めた。
【0087】
以下、非限定的な実施例をもって本発明を説明する。
【実施例】
【0088】
例1
ポリヒドロキシステアリン酸3.6gをカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド36.4gと混合し、次いで混合物に酸化亜鉛粉末60gを加えて、分散体を生成させた。混合物は、粉砕媒体としてジルコニアビーズを入れた横型ビーズミルに1500rpmで15分間かけた。
【0089】
分散体を本願開示の試験にかけた。酸化亜鉛粒子の吸光係数は次のとおりであった。
【0090】
【表1】

【0091】
例2
例1で生成させた酸化亜鉛分散体を使用してエチレンビニルアセテート(EVA)マスターバッチ組成物を調製した。EVA(Evatene 2020、元Arkema社)(MFI=20、ビニルアセテート含量=20%)198gと酸化亜鉛分散体118gをプラスチック袋に入れ、(手で)混合し、一様な混合物とした。この混合物を次に、運転温度85〜100℃(供給部85℃、圧縮部90℃、計量部100℃)のThermo Prism 16mm二軸スクリュー押出機にかけた。押出マスターバッチが3kg/時の速度で連続的に生産された。この16mm径マスターバッチ押出材を6〜10℃の水槽に通してただちに冷却した。押出作業時は35〜40%のスクリュートルク値を常に維持した。次に押出マスターバッチ試料をさらに処理(細断)し、押出材の平均長さを約5mmにした。得られたペレットを回収し、オーブンに入れ約40℃で30分間乾燥した。これにより、組成がEVA62.5%、酸化亜鉛分散体37.5%(酸化亜鉛22.5%)の最終マスターバッチ試料が得られた。
【0092】
例3
EVAの代りに低密度ポリエチレン(LDPE)(Exxon PLX6101RQP、MFI=26)を使用して例2の手順を繰り返した。作業条件の変化はThermo Prism 16mm二軸スクリュー押出機の運転温度を105〜125℃(供給部105℃、圧縮部115℃、計量部125℃)としたことだけである。
【0093】
例4
例2のマスターバッチ組成物を使用して65μm厚のLDPEインフレートフィルム試料を作製した。
【0094】
フィルムを作製するために、例2で調製したマスターバッチ組成物の一様なレットダウン混合物25gとLDPE(Exxon LD165BW1)975gとをプラスチック袋に入れ、手で混合した。この混和物を次に3段階プレダイ加熱部(B1、B2及びB3、B1がフィルムダイに最も近い)と3段階ダイ加熱部(Die1、Die2及びDie3)、それに外径50mm/内径49.5mmの調整可能フィルムダイを備えたSecor 25mm一軸スクリュー押出機にかけた。作業は下記の条件で行い、65μm厚のインフレート・ポリエチレンフィルムを得た。次いで、通常のフィルムタワーの案内板とニップロールとを経由してフィルムを回収した。フィルム試料は板紙の巻き芯に手作業で回収し、静電気によるダストの付着を防ぐため、ただちにポリエチレン袋に収納した。押出温度とスクリュー速度は一定に保った。
【0095】
作業条件
スクリュー押出機
B1 169℃
B2 180℃
B3 190℃
Die 1 190℃
Die 2 191℃
Die 3 185℃
ポリマー滞留時間 5分
スクリュー速度 36rpm
モーター電流 13A
押出速度 3.42m/分
押出速度 52g/分
フィルムの物理的性質
単層フィルム 65μm
フィルム幅 130mm
【0096】
例5
例3で調製したマスターバッチ組成物25gを使用した以外は例4の手順を繰り返して、65μm厚のLDPEインフレートフィルム試料を作製した。
【0097】
例6
比較例として、マスターバッチ組成物を使用せずLDPE(Exxon LD165BW1)1000gだけを使用して、例4の手順で65μm厚のLDPEインフレートフィルム試料を作製した。
【0098】
これらのフィルムは、本願開示の試験にかけると、下記の物性を示した。
【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
以上の実施例は本発明のマスターバッチ及びUV吸収性ポリマー組成物の物性の改善を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機樹脂と酸化亜鉛粒子とを含んでなる、E308/E524比及び/又はE360/E524比が4を超えるUV吸収性ポリマー組成物。
【請求項2】
524nmでの吸光係数(E524)が4.5L/g/cm未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
308nm及び/又は360nmでの吸光係数(E308及び/又はE360)が10L/g/cmを超える請求項1〜2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
308/E524比及び/又はE360/E524比が10を超える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
308/E524比及び/又はE360/E524比が酸化亜鉛粒子自体の値の少なくとも55%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
(i)60〜99.9質量%の有機樹脂、(ii)0.05〜20質量%の有機分散媒、及び(iii)0.05〜20質量%の酸化亜鉛粒子を含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
分散媒が、グリセロールエステル、グリセロールエーテル、グリコールエステル、グリセロールエーテル、アルキルアミド、アルカノールアミン、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
二次酸化亜鉛粒子の体積中位径が60〜95nmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
有機樹脂と有機分散媒と酸化亜鉛粒子とを含んでなるマスターバッチ組成物。
【請求項10】
有機樹脂の融点が75〜400℃である、請求項9に記載のマスターバッチ。
【請求項11】
有機分散媒が、モノステアリン酸グリセロール、モノイソステアリン酸グリセロール、ジエタノールアミン、ステアルアミド、オレアミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスステアルアミド、エチレンビスイソステアルアミド、ステアリン酸ポリグリセロール、イソステアリン酸ポリグリセロール、ポリグリコールエーテル、トリグリセリド、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項9〜10のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項12】
308/E524比及び/又はE360/E524比が4を超える酸化亜鉛粒子から形成される、請求項9〜11のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項13】
524nmでの吸光係数(E524)が3.0L/g/cm未満である、並びに/又は308nm及び/又は360nmでの吸光係数(E308及び/又はE360)が10L/g/cmを超える、請求項9〜12のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項14】
308/E524比及び/又はE360/E524比が10を超える、請求項9〜13のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項15】
308/E524比及び/又はE360/E524比が酸化亜鉛粒子自体の値の少なくとも55%である、請求項9〜14のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項16】
有機分散媒中の酸化亜鉛粒子分散体を有機樹脂と混合する工程を含んでなる、請求項9〜15のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物の製造方法。
【請求項17】
有機樹脂と酸化亜鉛粒子とを含んでなりE308/E524比及び/又はE360/E524比が4を超えるUV吸収性ポリマー組成物の製造方法であって、(i)有機樹脂と有機分散媒と酸化亜鉛粒子とを含んでなるマスターバッチ組成物を提供し、該マスターバッチ組成物を基剤有機樹脂と混合する工程、又は(ii)有機分散媒中の酸化亜鉛粒子分散体を提供し、該分散体を基剤有機樹脂中に直接混入する工程を含んでなる方法。
【請求項18】
有機樹脂と酸化亜鉛粒子とを含んでなりE308/E524比及び/又はE360/E524比が4を超えるUV吸収性ポリマー組成物の抗菌剤としての使用。

【公表番号】特表2009−540091(P2009−540091A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514878(P2009−514878)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002114
【国際公開番号】WO2007/144576
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(506352278)クローダ インターナショナル パブリック リミティド カンパニー (24)
【Fターム(参考)】