説明

UV硬化型反射防止コーティング組成物、これを用いて製造された反射防止コーティングフィルム及びその製造方法

本発明による反射防止コーティング組成物は、光重合性アクリレートモノマー(C1);屈折率1.40以下の微粒子状の金属フッ化物(metal fluoride)(C2);光重合開始剤(C3);及びMg(CF3COO)2、Na(CF3COO)、K(CF3COO)、Ca(CF3COO)2、Mg(CF2COCHCOCF32、及びNa(CF2COCHCOCF3)からなる群より選択された1種以上の液体分散強化用キレート剤(C4);を含んでなることを特徴とする。本発明の組成物は、機械的強度に優れており、基材との密着力が高いだけでなく、UV硬化方式で硬化時間が非常に短く、ダスト付着防止効果、汚れに対する消し性、ダスト除去性及び耐スクラッチ性に優れているので、ディスプレイの反射防止コーティングフィルムの製造に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV(紫外線)硬化型反射防止コーティング組成物、これを用いて製造された反射防止コーティングフィルム及びその製造方法に関するものであって、より詳しくは、UV硬化方式で常温で硬化が起こるUV硬化型反射防止コーティング組成物、これを用いて製造された反射防止コーティングフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代人はモニター用CRT(Cathode−Ray Tube)及びTV用CPT(Color Picture Tube)のようなブラウン管、TFT‐LCD(Thin Film Transistor Liquid Crystal Display)偏光板、PDP(Plasma Display Panel)フィルター、RPTS(Rear Projection TV Screen)フィルター、及び携帯電話の液晶から時計、写真、額縁用LCDなどに至るまで多様なディスプレイに接している。このようなディスプレイが光にさらされる場合、反射光が生じ目の疲労感や頭痛を引き起し、また、ディスプレイにおいてイメージが鮮明に形成されずその結果コントラスト(contrast)が低下する。
【0003】
これを解決するために、基材上にその基材より屈折率の低いフィルムを形成して反射率を低下させることを用いる反射防止コーティングフィルムの形成に対する研究が行われている。このような低屈折率フィルムは、真空蒸着による安定した低屈折率物質であるマグネシウムフッ化物(MgF2)の単層または屈折率の相異なるフィルムが積層された多層膜を備える。しかし、このような多層膜形成のための真空蒸着などの真空技術はコストが高いという問題があって実用的ではない。
【0004】
これに関わって日本公開特許平5‐105424号には、MgF2微粒子を含有するコーティング液をスピン(spin)、ディップ(dip)などの湿式コーティング方式で基材上にコートして低屈折率フィルムを形成する方法が提案されている。しかし、上記方法により得られるフィルムは機械的強度が著しく低く、基材との密着力が劣るという短所があって使いにくく、また硬化温度が100度以上であるのでPET(polyethylene terephthalate)、PC(polycarbonate)及びTAC(tri‐acetyl‐cellulose)などのプラスチック基材には用いることができない問題がある。
【0005】
なお、上記のようなMgF2微粒子を含有するコーティング液を用いる方法が有する問題点を解決するため、日本公開特許平9-208898号及び日本公開特許平8‐122501号などに他の方法が開示されている。これらの文献には、フッ素系シランとフッ素系アルキル基とを持つ化合物を用い、低反射機能及び表面エネルギーの低下による耐汚れ機能を持つコーティング液を製造する方法が開示されている。しかし、このようなフッ素系シランを含有する低反射層は、フィルム表面に位置したフッ素基により摩擦などに起因して電荷を帯びやすくなってダストが付きやすく、一度付いてしまったダストは簡単には取れない。また、この方法は熱硬化方式を採用するため、硬化温度が高いか硬化時間が長いという問題点がある。
【0006】
上記のような問題点は、UV硬化方式の材料と、屈折率1.40以下の金属フッ化物(metal fluoride)微粒子とを含有したコーティング液を用い、優れた機械的強度及び基材密着性、そして低い硬化温度が具現できれば解決することができる。しかし、一般に屈折率1.40以下の金属フッ化物微粒子は単独蒸着方式ではなく湿式方式でコートされるため、低屈折率フィルムを形成する場合機械的強度及び基材密着性に劣る。そして、そのような金属フッ化物の粒子は、高い硬化温度を必要とする。また、前記金属フッ化物の粒子は、シランなどの他の熱硬化材料のみならずアクリレートなどのUV硬化型材料とともに用いるときには、その相溶性が問題となる。すなわち、フィルム形成時に沈殿しやすいか、あるいは濁ってしまい、容易に用いることができない。
【0007】
上述したように、屈折率1.40以下の金属フッ化物微粒子、光重合性モノマー、光重合開始剤を用いたUV硬化工程を行うことで、機械的強度に優れており、基材密着性を改善し、熱硬化時間を短縮させ、ダスト付着防止機能をも持つ反射防止コーティングフィルムを製造するための努力が持続的に行われてきており、このような技術的背景の下で本発明が案出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5‐105424号公報
【特許文献2】特開平9-208898号公報
【特許文献3】特開平8‐122501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上記のような問題点を解決することである。本発明の目的は、反射防止コーティング組成物であって屈折率1.40以下の金属フッ化物、光重合性アクリレートモノマー、及び光重合開始剤を含み、さらに前記組成物の相溶性改善のための分散強化用キレート剤をさらに含み、それにより機械的強度を改善でき、基材との密着力を向上でき、UV硬化方式による短い硬化時間を確保でき、ダスト付着を防止できる反射防止コーティング組成物;これを用いた反射防止コーティングフィルム;及びこれを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するために提供される本発明による反射防止コーティング組成物は、光重合性アクリレートモノマー(C1);屈折率1.40以下の微粒子状の金属フッ化物(C2);光重合開始剤(C3);及びMg(CF3COO)2、Na(CF3COO)、K(CF3COO)、Ca(CF3COO)2、Mg(CF2COCHCOCF32、及びNa(CF2COCHCOCF3)からなる群より選択された1種以上の液体分散強化用キレート剤(C4);を含む。
【0011】
本発明の反射防止コーティング組成物において、上記光重合性アクリレートモノマー(C1)は、コーティングフィルムの強度及びディスプレイ基材との密着性を増進させるために用いられるものである。
【0012】
上記光重合性アクリレートモノマー(C1)としては、反応性アクリレートオリゴマー、多官能性アクリレートモノマー、またはフッ素含有アクリレートを用いることができ、望ましくは、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシトリアクリレート、及び下記化学式1ないし5の化合物からなる群より選択される一種類以上の物質を用いることができる。
【0013】
【化1】

上記化学式1において、R1は、−Hまたは−CH3であり、aは、0ないし4の整数であり、bは、1ないし3の整数である。
【0014】
【化2】

上記化学式2において、cは、1ないし10の整数である。
【0015】
【化3】

上記化学式3において、dは、1ないし9の整数である。
【0016】
【化4】

上記化学式4において、eは、1ないし5の整数である。
【0017】
【化5】

上記化学式5において、fは、4ないし10の整数である。
【0018】
本発明の反射防止コーティング組成物において、上記金属フッ化物(C2)は、その平均粒径が10ないし100nmである微粒子の粉末状であることが好ましく、NaF、LiF、AlF3、Na5Al314、Na3AlF6、MgF2、及びYF3からなる群より選択された1種以上の物質であることが好ましい。
【0019】
上記金属フッ化物(C2)は、コーティングフィルムの低反射特性、コーティングフィルムの強度及びディスプレイ基材との密着性を維持する範囲内で用いることが好ましく、上記光重合性アクリレートモノマー(C1)100重量部に対して10ないし80重量部の金属フッ化物(C2)を用いることがより好ましい。
【0020】
本発明の反射防止コーティング組成物において、上記光重合開始剤(C3)としては、本発明が属する技術分野で通常用いられる光重合開始剤を制限なく用いることができる。ただし、具体的な使用条件はUV硬化工程で用いられるUVランプの波長帯に合わせてより最適の物質を選択して使用できることは自明である。上記光重合開始剤(C3)としては、クロロアセトフェノン(Chloroacetophenone)、ジエトキシアセトフェノン(Diethoxy Acetophenone)、ヒドロキシアセトフェノン(Hydroxy Acetophenone)、α‐アミノアセトフェノン(α‐Amino Acetophenone)、ベンゾインエーテル(Benzoin Ether)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、ベンゾフェノン(Benzo Phenone)、チオキサントン(Thioxanthone)、及び2‐2‐エチルアントラキノン(2-2‐EthylAnthraquinone,2‐ETAQ)からなる群より選択された1種以上の物質を挙げることができる。また、コーティング組成物の硬化度向上のために、上記光重合開始剤(C3)とともにジエチレントリアミン(diethylene triamine)、ジエタノールアミン(diethanol amine)及びエチレンジアミン(ethylene diamine)などのアミン類を混合して用いることができる。
【0021】
上記光重合開始剤(C3)の含有量は、コーティングフィルムの硬化速度、屈折率、及び強度を維持する範囲内で調節され、上記光重合性アクリレートモノマー(C1)100重量部に対して0.5ないし30重量部の光重合開始剤(C3)が好ましい。
【0022】
本発明の反射防止コーティング組成物において、上記分散強化用キレート剤(C4)は、上記光重合性アクリレートモノマー(C1)と上記金属フッ化物(C2)との間の相溶性を付与して金属フッ化物が容易に固まらず、コーティングフィルムが濁ってしまうのを防止するために用いられる液体成分である。上記分散強化用キレート剤(C4)としては、Mg(CF3COO)2、Na(CF3COO)、K(CF3COO)、Ca(CF3COO)2、Mg(CF2COCHCOCF32、及びNa(CF2COCHCOCF3)からなる群より選択された1種以上の物質を用いることが好ましい。
【0023】
上記分散強化用キレート剤(C4)は、金属フッ化物微粒子の分散性とコーティングフィルムの強度及びディスプレイ基材との密着性を維持する範囲内で用いることが好ましく、とりわけ、上記光重合性アクリレートモノマー(C1)100重量部に対して1ないし20重量部の分散強化用キレート剤(C4)を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の反射防止コーティング組成物は、必要に応じて、添加剤(C5)及び有機溶媒(C6)をさらに含んでもよい。
【0025】
本発明の反射防止コーティング組成物にさらに含まれ得る添加剤(C5)としては、湿潤剤及びレべリング剤などがあり、本発明において特に限定しない。代表的には、ポリエステルポリシロキサン湿潤剤、フッ素含有湿潤剤、ポリシロキサンレべリング剤、及びアクリル系レべリング剤からなる群より選択された1種以上を用いることができる。
【0026】
上記添加剤(C5)は、コーティングフィルムの強度を維持する範囲内で用いることが好ましく、とりわけ、上記光重合性アクリレートモノマー(C1)100重量部に対して0.1ないし30重量部の添加剤(C5)を用いることが好ましい。
【0027】
本発明の反射防止コーティング組成物にさらに含まれ得る有機溶媒(C6)は、コーティング組成物のコーティング性及び構成成分との相溶性を考慮して適切に混合して用いることができる。
【0028】
上記有機溶媒(C6)は、乾燥温度及び硬化温度を考慮して選択的に用いることができ、好ましくは、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、アミド類、及びエーテル類などより選択される一つの単一溶媒またはこれらのうち選択される二つ以上の混合溶媒として用いることができる。また、上記有機溶媒(C6)は、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、ベンゼン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、メチルセロソルブ、イソプロポキシセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、n‐メチルピロリジノン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、及びテトラヒドロフランからなる群より選択された1種以上の物質であることがより好ましい。
【0029】
上記有機溶媒(C6)は、本発明による反射防止コーティング組成物の固形分含量が0.1ないし30重量%になるようにする希釈溶媒として用いることができる。
【0030】
本発明の反射防止コーティング組成物全体の固形分含量が0.1ないし30重量%になるように希釈して用いることができ、より好ましくは、0.5ないし20重量%になるように希釈して用いることができる。
【0031】
また、本発明はもう一つの態様において、上述した反射防止コーティング組成物を用いて製造されうる反射防止コーティングフィルムを提供する。
【0032】
すなわち、本発明の反射防止コーティング組成物は、反射防止コーティング層の材料として用いることができる。またハードコーティング層または高屈折率層をさらに含むことで多層構造をなし得る。
【0033】
本発明が属する技術分野で通常用いられるディスプレイ基材としては、ガラス基材、プラスチック基材、プラスチックフィルムなどがあり、上記組成物のコーティング方式は基材の種類に応じて自由に選択できる。また、上記ハードコーティング層は、紫外線硬化型樹脂を用いるか、または耐磨耗性の改善のために無機ナノ微粒子を紫外線硬化型樹脂に分散させて用いることができる。
【0034】
本発明の反射防止コーティングフィルムの厚みは、用いられるディスプレイ基材及び他の物質層の屈折率並びに入射光の波長に応じて定められるので特に限定されないが、50ないし200nmであることが好ましい。
【0035】
例えば、ディスプレイ基材上にハードコーティング層と反射防止コーティング層とを塗布する場合、ハードコーティング層の屈折率が1.51であり、反射防止コーティング層の屈折率が1.38であり、入射光の設計波長が550nmであるとすれば、光学設計によって反射防止コーティング層の厚みは100nmになるように塗布することが好ましい。また、一般に反射防止コーティング層の屈折率は低いほど好ましく、特に下部層との屈折率差が大きいほど反射防止効果が大きくなる。
【0036】
本発明は、さらなる態様において、反射防止コーティングフィルムの製造方法を提供し、前記製造方法は、(S1)上述したような本発明による反射防止コーティング組成物をディスプレイ基材上に乾燥厚み50ないし200nmになるように塗布(コーティング)する段階;(S2)上記(S1)段階の結果物であるコートされたディスプレイ基材を20ないし150℃の温度で0.5ないし10分間乾燥させる段階;及び(S3)上記(S2)段階の結果物であるコートされ乾燥されたディスプレイ基材を紫外線照射量0.2ないし2J/cm2で1ないし30秒間硬化させる段階;を含む。
【0037】
本発明による反射防止コーティングフィルムの製造方法は、後述する実施例により詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は様々な形態に変形され得、本発明の範囲が以下で詳述する実施例により限定されるものとして解釈されてはいけない。本発明の実施例は当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0039】
下記表1に示すように、下記実施例1及び2と比較例1ないし3に区分設定される組成物の成分及び含量を有する各々の組成物を用意し、これを用いてコーティングフィルムをそれぞれ製造した。
【0040】
実施例1
ペンタエリスリトールテトラアクリレート100重量部、10% MgF2分散液(Nissan MFS‐10P)250重量部、マグネシウムトリフルオロアセテート5重量部、光重合開始剤としてイルガキュア(IRGACURE)‐127 10重量部、湿潤剤(Tego‐453)1重量部、及び有機溶媒としてメチルエチルケトン1000重量部とブチルセロソルブ400重量部とを混合して反射防止コーティング組成物を製造した。
【0041】
上記方法で製造されたコーティング組成物をハードコーティングフィルム上にロールコーティング方式で乾燥厚み100nmになるように塗布(コート)した。コートされたフィルムを60℃のオーブンで2分間乾燥した後、窒素雰囲気で中圧水銀ランプを用いて紫外線照射量0.5J/cm2で紫外線硬化した。
【0042】
実施例2
10% MgF2分散液(Nissan MFS‐10P)を500重量部、マグネシウムトリフルオロアセテートを10重量部を用いた以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、これを用いてコーティングフィルムを製造した。
【0043】
比較例1
10% MgF2分散液(Nissan MFS‐10P)を添加していないことを除いては、実施例1と同一の過程でコーティング組成物を調製した後、コーティングフィルムを製造した。
【0044】
比較例2
分散強化用キレート剤であるマグネシウムトリフルオロアセテートを添加していないことを除いては、実施例1と同一の過程でコーティング組成物を調製した後、コーティングフィルムを製造した。
【0045】
比較例3
10% MgF2分散液(Nissan MFS‐10P)及びマグネシウムトリフルオロアセテートを用いていないことを除いては、実施例1と同一の過程でコーティング組成物を調製した後、コーティングフィルムを製造した。
【0046】
【表1】

【0047】
[実験例]
上記実施例1,2及び比較例1〜3で製造された各々のコーティングフィルムに対して、下記のように基材密着性、ペン消し性、汚れ除去性、耐スクラッチ性、反射率及び光沢度を各々測定して、各々のコーティングフィルムの汚れ除去容易性と光特性とを相対的に評価した。
【0048】
実験例1:基材密着性
JIS K5400に従って、コートし硬化して得られたコーティング膜に1mmの間隔で縦横10個の格子縞の切削部を入れ、セロハンテープ(ニチバン(株)、セロテープ)を強く付着した後、テープの一端をつかんで表面から90゜方向に力強く引っぱってハードコーティング層の剥離程度を肉眼で観察して、剥離されないものを「上」、剥離されるものを「下」で示した。
【0049】
実験例2:ペン消し性
油性ペンで字を書いた後綿布で擦りながら(rubbing)消し性を肉眼観察して、消し性が良好な場合には「上」、そうでない場合には「下」で示した。
【0050】
実験例3:ダスト除去性
横と縦の長さがそれぞれ10cm角であるコーティングフィルムを綿布で往復20回擦った後、30cm距離でスプレーパウダーを1分間隔で5回噴射した。パウダーが付着したコーティング面を2気圧のエアで10秒間ブローした後残っているパウダーを肉眼で観察してパウダーが少ない順で「上」、「下」で示した。
【0051】
実験例4:耐スクラッチ性
鋼綿(#0000)を設けた研磨器に250gの荷重をかけてコーティングフィルムに擦った後、スクラッチの有無を肉眼で観察して、スクラッチに対する耐性が強い場合を「上」、中間程度を「中」、スクラッチに対する耐性が弱い場合を「下」で示した。
【0052】
実験例5:反射率
コーティングフィルムの裏面を黒色で処理した後、N&K社の分光光度計(spectrophotometer)で反射率を測定して下記表2の最小反射率値を求め反射特性を評価した。
【0053】
実験例6:光沢度(Haze)
コーティングフィルムを光沢度測定器(Hazemeter)でヘイズ(haze)値を測定して下記表2に示した。
【0054】
【表2】

【0055】
上記表2に示すように、実施例1及び2は、金属フッ化物と分散強化用キレート剤とを同時に含む組成物を適用した本発明によるコーティングフィルムであって、基材密着性、耐スクラッチ性及び反射率が比較例1ないし3のコーティングフィルムに比べて優れていることが分かり、分散強化用キレート剤を含まない比較例2及び3のコーティングフィルムは、膜が濁ってしまい望ましくないことが確認できる。
【0056】
上述のように本発明の最適な実施例が開示された。ここで特定の用語が用いられているが、これはただ当業者に本発明を詳しく説明するために用いたことにすぎず、意味の限定や特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するために用いたことではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
上述したように、本発明によるUV硬化型反射防止コーティング組成物は、光重合性アクリレートモノマー及び屈折率1.40以下の金属フッ化物の相溶性改善のための分散強化用キレート剤をともに用いることで、機械的強度に優れており、基材との密着力が高いだけでなく、UV硬化方式で硬化時間が非常に短く、ダスト付着防止効果、汚れに対する消し性、ダスト除去性及び耐スクラッチ性に優れているので、反射防止コーティングフィルムの製造に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性アクリレートモノマー(C1);
屈折率1.40以下の微粒子状の金属フッ化物(C2);
光重合開始剤(C3);及び
Mg(CF3COO)2、Na(CF3COO)、K(CF3COO)、Ca(CF3COO)2、Mg(CF2COCHCOCF32、及びNa(CF2COCHCOCF3)からなる群より選択された1種以上の液体分散強化用キレート剤(C4);を含む、反射防止コーティング組成物。
【請求項2】
上記光重合性アクリレートモノマー(C1)100重量部に対して、
上記金属フッ化物(C2)は、10ないし80重量部で含まれ、
上記光重合開始剤(C3)は、0.5ないし30重量部で含まれ、
上記分散強化用キレート剤(C4)は、1ないし20重量部で含まれる、請求項1に記載の反射防止コーティング組成物。
【請求項3】
上記光重合性アクリレートモノマー(C1)は、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシトリアクリレート、及び下記化学式1ないし5の化合物からなる群より選択された1種以上の物質である、請求項1に記載の反射防止コーティング組成物:
【化1】

上記化学式1において、R1は、−Hまたは−CH3であり、aは、0ないし4の整数であり、bは、1ないし3の整数であり、
【化2】

上記化学式2において、cは、1ないし10の整数であり、
【化3】

上記化学式3において、dは、1ないし9の整数であり、
【化4】

上記化学式4において、eは、1ないし5の整数であり、
【化5】

上記化学式5において、fは、4ないし10の整数である。
【請求項4】
上記金属フッ化物(C2)は、NaF、LiF、AlF3、Na5Al314、Na3AlF6、MgF2及びYF3からなる群より選択された1種以上の物質である、請求項1に記載の反射防止コーティング組成物。
【請求項5】
上記金属フッ化物(C2)は、その平均粒径が10ないし100nmである、請求項1に記載の反射防止コーティング組成物。
【請求項6】
さらに、
湿潤剤及びレべリング剤からなる群より選択された1種以上である添加剤(C5)であって、上記光重合性アクリレートモノマー(C1)100重量部に対して、0.1ないし30重量部の添加剤(C5);及び
上記添加剤(C5)を含んでなる反射防止コーティング組成物の固形分含量が0.1ないし30重量%になるようにする有機溶媒(C6);を含み、
上記有機溶媒(C6)は、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、アミド類及びエーテル類からなる群より選択された1種以上の物質である、請求項1に記載の反射防止コーティング組成物。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の反射防止コーティング組成物を用いて製造された、反射防止コーティングフィルム。
【請求項8】
(S1)請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の反射防止コーティング組成物をディスプレイ基材上に乾燥厚み50ないし200nmになるように塗布(コーティング)する段階;
(S2)上記(S1)段階の結果物であるコートされたディスプレイ基材を20ないし150℃の温度で0.5ないし10分間乾燥させる段階;及び
(S3)上記(S2)段階の結果物であるコーティングされ乾燥されたディスプレイ基材を紫外線照射量0.2ないし2J/cm2で1ないし30秒間硬化させる段階;を含む、反射防止コーティングフィルムの製造方法。

【公表番号】特表2009−543156(P2009−543156A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519369(P2009−519369)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003286
【国際公開番号】WO2008/007874
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】