説明

UV硬化性コーティング組成物及びその使用

本発明は、硬化性アクリレートコーティング組成物及びそれから得られる被覆物品に関する。硬化性アクリレートコーティング組成物は、2種以上の多官能性アクリレート誘導体、1種以上の光開始剤、及び1種以上のナノスケール充填材を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化コーティングに関し、さらに具体的には、硬化性アクリレートコーティング組成物、その使用、及びそれから得られる被覆物品に関する。
【背景技術】
【0002】
耐候性を向上させるためにポリマー樹脂基体(例えば、成形されたポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタンなどの物品)を被覆することは、広く受け入れられている方法である。かかるコーティングとしては、放射線硬化性ポリアクリル又はポリアクリル−ウレタンコーティングがある。
【0003】
通常の硬化ハードコート仕上は、いくつかの欠点を有している。一般に、コーティング材料及び硬化剤は、特定の順序及び特定の相対レベルで別々に塗布しなければならない。これは、成分の比率及びこれらの塗布のタイミングが共に重要だからである。したがって、通常の硬化ハードコートは、特に現行の商業的用途で要求される一貫性及び均一性をもって施工するのが困難であると共に高価であった。これらの欠点のいくつかを解消しようとして、硬化性コーティングが使用されてきた。特に、硬化性コーティング組成物は予備混合できる。例えば、活性成分への重合開始剤の添加は、コーティングの塗布時にユーザーが行うのではなく、コーティングの製造時に行うことができる。かくして、混合誤差及び測定誤差が回避でき、ばらつきの少ない製品を得ることができる。
【0004】
しかし、硬化性コーティング組成物自体も様々な問題を提起する。例えば、典型的なUVハードコートは、反応性の高いアクリレート官能基から形成される高分子量の高度架橋フィルムである。その結果、公知のUVハードコートは、限られた耐久性、低い固形分、及び硬化樹脂の収縮に悩まされてきた。また、硬化のために大量のUV光が必要となる。加えて、これらの問題を解消しようとして処方されたハードコートは、耐摩耗性や耐引っかき性の低下、密着性の不良、加工性の不良、及び不満足な耐久性の何らかの組合せに悩まれるのが通例である。
【0005】
したがって、簡便に加工可能であると共に、向上した物理的及び化学的性質(例えば、耐引っかき性、耐摩耗性、密着性及び耐久性)を示す硬化コーティングを形成する硬化性製品に対するニーズが存在している。本発明は、硬化性コーティングの製造方法及び使用方法に関する上記及び類似の問題に対する新規な解決策を提供する。
【特許文献1】米国特許第4198465号明細書
【特許文献2】米国特許第4455205号明細書
【特許文献3】米国特許第4477529号明細書
【特許文献4】米国特許第4478876号明細書
【特許文献5】米国特許第4528311号明細書
【特許文献6】米国特許第5227240号明細書
【特許文献7】米国特許第5977200号明細書
【特許文献8】米国特許第6538725号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2種以上の多官能性アクリレート誘導体、光開始剤、及びナノスケール充填材を含んでなる硬化性アクリレートコーティング組成物に関する。本発明はまた、かかるコーティングで被覆した物品にも関する。
【0007】
本発明のコーティングはまた、溶媒、UV吸収剤などのような追加の成分も含み得る。
【0008】
本発明のその他様々な特徴、態様及び利点は、以下の説明及び実施例並びに特許請求の範囲を参照することでさらに明らかとなろう。
【0009】
図面の簡単な説明
図1は、ペンタエリトリトールトリアクリレートの重量%に基づく耐摩耗性を示すグラフである。
【0010】
図2は、2種の個別の多官能性アクリレート及び2種の多官能性アクリレートのブレンドの耐摩耗性を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、以下の意味をもつものと定義される。
【0012】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0013】
「任意」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0014】
本明細書中に示される範囲の各々は、それに包含される範囲の任意の部分集合も含み得る。
【0015】
本発明に係る硬化性アクリレートコーティング組成物は、2種以上の多官能性アクリレート誘導体、1種以上の溶媒、1種以上の光開始剤、及び1種以上のナノスケール充填材を含んでなる。かかる硬化性アクリレートコーティング組成物は、密着性、耐摩耗性、良好な耐候性、及び耐熱亀裂性を有するコーティングを与える。
【0016】
多官能性アクリレート誘導体は、アクリル酸基、メタクリル酸基、エタクリル酸基などを有すると共に、2以上の官能価を有する任意のモノマー又はオリゴマー分子からなる群から選択できる。好ましくは、アクリレート誘導体は、六官能性ウレタンアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、二官能性ウレタンアクリレート、テトラアクリレートモノマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー及びこれらの組合せからなる群から選択される。本発明の別の実施形態では、多官能性アクリレート誘導体は、特に限定されないが、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート及びこれらの組合せのような低分子量アクリレートであり得る。
【0017】
一実施形態では、第一の多官能性アクリレート誘導体は六官能性ウレタンアクリレートであり、第二の多官能性アクリレート誘導体はペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びブタンジオールシアクリレートからなる群から選択される。
【0018】
通例、本発明の硬化アクリレートコーティング組成物中に存在するすべての多官能性アクリレートの総量は、硬化性アクリレートコーティング組成物の約30〜約95重量%の範囲内、又はその間の任意の範囲内にある。別法として、本発明の一実施形態では、本発明の硬化アクリレートコーティング組成物中に存在するすべての多官能性アクリレートの総量は、硬化性アクリレートコーティング組成物の約50〜約90重量%の範囲内にある。さらに別の実施形態では、本発明の硬化アクリレートコーティング組成物中に存在するすべての多官能性アクリレートの総量は、硬化性アクリレートコーティング組成物の約70〜約80重量%の範囲内にある。
【0019】
本発明の一実施形態では、多官能性アクリレートは六官能性アクリレート誘導体である。好ましくは、六官能性アクリレート誘導体は、硬化性アクリレートコーティング組成物の約0.1〜約80重量%の量又はその間の任意の範囲内の量で存在する。別の実施形態では、六官能性アクリレート誘導体は、硬化性アクリレートコーティング組成物の約15〜約60重量%の範囲内の量で存在する。本発明のさらに別の実施形態では、六官能性アクリレート誘導体は、硬化性アクリレートコーティング組成物の約20〜約40重量%の範囲内の量で存在する。
【0020】
一実施形態では、多官能性ウレタンアクリレートは種々の異なる分子量を有する。好ましくは、第一の多官能性ウレタンアクリレート誘導体は700以上、好ましくは約700〜約2000の範囲内の分子量を有する。さらに別の実施形態では、第一の多官能性ウレタンアクリレート誘導体は約900〜約1100の分子量を有する。追加の多官能性ウレタンアクリレート誘導体は700未満、好ましくは約100〜約800の範囲内の分子量を有する。追加の多官能性ウレタンアクリレート誘導体は、好ましくは約156〜約700の分子量を有する。ポリウレタンアクリレート誘導体の各々が異なる分子量を有することは要件ではない。ポリウレタンアクリレートの各々は同一又は類似の分子量を有していてもよく、かかる分子量は約150〜約1100の分子量及びその間の分子量の任意の1種又は組合せを含む。
【0021】
硬化性アクリレートコーティング組成物中に存在する光開始剤には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、プロピオフェノン、アセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、エチルフェニルピロキシレート、フェナントラキノン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンのようなカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド及びテトラメチルチウラムジスルフィドのような硫黄化合物、アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド及びジ−tert−ブチルペルオキシドのようなペルオキシド化合物、7−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン及び2,4−ジイソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン光開始剤、並びにアシロホスフィンオキシド光開始剤(例えば、下記の式(I)で表されるようなアシロホスフィンオキシド)がある。
【0022】
【化1】

式中、R、R及びRは各々独立にC〜Cアルキル又はC〜Cオキシアルキル基、フェニル又は置換フェニル基、ベンジル又は置換ベンジル基、及びこれらの混合物を表す。置換フェニル基は、特に限定されないが、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及びベンゾイルジエトキシホスフィンオキシドを含み得る。本発明のさらに別の実施形態では、光開始剤は2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン又は2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシドからなる。
【0023】
通例、光開始剤は組成物の全重量の約0.1〜約10重量%に相当する量又はその間の任意の範囲内の量で存在する。一実施形態では、光開始剤は組成物の全重量の約1〜約5重量%に相当する量で存在する。別の実施形態では、光開始剤はプラスチック保護フィルムを構成する組成物の全重量を基準にして約2〜約4重量%に相当する量で存在する。
【0024】
通例、光開始剤は約350〜約420ナノメートルの波長を有する入射光で活性化される。特定の実施形態では、光開始剤は約360〜約400nmの波長を有する光で活性化される。本発明の他の実施形態では、光開始剤は約390nm未満の波長を有する光で活性化される。
【0025】
一実施形態では、本発明の方法は、対象となるプラスチック基体を容易に溶解しない1種以上の溶媒を使用する。様々な実施形態では、基体に塗布した際にコーティングの平滑化を容易にするため、前記溶媒は約35℃を超える沸点を有する。この種の好適な溶媒は、特に限定されないが、脂肪族アルコール、グリコールエーテル、脂環式アルコール、脂肪族エステル、脂環式エステル、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族化合物、ハロゲン化脂環式化合物、ハロゲン化芳香族化合物、脂肪族エーテル、脂環式エーテル、アミド溶剤及びスルホキシド溶剤からなる群を包含する。別の特定の実施形態では、溶媒は1−メトキシ−2−プロパノールである。一般に、コーティング溶液中での溶媒の濃度は約10〜約60重量%、好ましくは約20〜約40重量%、又はその間の任意の範囲内にある。
【0026】
硬化性アクリレートコーティング中には、ナノスケール充填材も存在している。かかる充填材は、可視光を散乱させない程度に小さい粒度を有するナノスケールサイズのものである。好ましくは、充填材は250ナノメートル(nm)以下の粒度を有する。一実施形態では、粒度は好ましくは約10〜約100ナノメートル又はその間の任意の範囲内にある。本発明のさらに別の実施形態では、粒度は約15〜約50ナノメートルである。前述の通り、代わりの範囲として、その間の任意の部分集合も含まれる。
【0027】
ナノスケール充填材として使用するのに適した材料の例には、特に限定されないが、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、アルミナ、酸化アンチモン及びこれらの混合物がある。本発明の一実施形態では、ナノスケール充填材はさらに有機官能基を含む。有機官能基には、下記の構造(II)に対応する構造単位を含むアクリレートがある。
【0028】
【化2】

式中、Rは水素、メチル又はエチルである。
【0029】
本発明の別の実施形態では、ナノスケール充填材はアクリレート官能化シリカである。アクリレート官能化シリカは、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン又はこれらの混合物のようなアクリレート官能性アルコキシシランを水性シリカコロイドに添加し、混合物を加熱してシランの加水分解及びシリカナノ粒子上に存在するシラノール基とアクリレート官能性シランシラノール基又はアルコキシシラン基との縮合を促進させ、真空ストリッピングで水性相を有機相と交換することで製造できる。水性相を有機相で置換することは、官能化シリカ粒子と他のコーティング成分との溶液ブレンドを可能にするために必要である。有機相用として好適な物質は、水より高い沸点を有するアクリレート又は有機溶剤である。
【0030】
硬化性アクリレートコーティング組成物中のナノスケール充填材の量は、所望の可使時間及び所要特性(若干の例を挙げれば、密着性、耐摩耗性、良好な耐候性及び耐熱亀裂性)に応じて調整できる。硬化性アクリレートコーティング組成物中のナノスケール充填材は、硬化性コーティング組成物の全重量を基準にして約1〜約65重量%の量で存在する。一実施形態では、ナノスケール充填材は約1〜約40重量%、好ましくは約3〜約35重量%、さらに好ましくは約5〜約30重量%、さらに一段と好ましくは約15重量%、又はその間の任意の範囲内の量で存在する。
【0031】
硬化性アクリレートコーティング組成物は、任意には光安定剤又はUV安定剤を含み得る。これらの物質は、所望の特定使用目的又は用途に従って様々な量で含まれる。含まれる場合、その量は向上した耐候性を与えながら組成物に関して適切な硬化応答を得るのに十分なものである。一実施形態では、紫外線吸収剤としては、ヒドロキシベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート、トリアジン類、オキサニリド誘導体、ポリ(エチレンナフタレート)、ヒンダードアミン、ホルムアミジン、シンナメート、マロネート誘導体及びこれらの混合物がある。本発明の方法に従って使用できるUV−可視吸収剤の例には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル−5−オクチルオキシ)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4,2’,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、フェニルサリチレート、フェニルベンゾエート、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニルサリチレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1,3−ジベンゾエート、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール及びこれらの混合物がある。
【0032】
一実施形態では、硬化性アクリレートコーティング組成物は、任意にはつや消し剤(例えば、BYK−Chemie社から入手できるBYK−353)、界面活性剤(例えば、BHK−Chemie社から入手できるBYK−Siclean3700)、チキソトロープ剤(例えば、Aldrich Chemicals社から入手できる酢酸酪酸セルロース)などの各種添加剤、並びに上述の添加剤の1種以上を含む反応生成物及び組合せも含み得る。
【0033】
硬化性アクリレートコーティング組成物は、通常の塗布技術を用いて物品上に塗布できる。これらの技術には、例えば、流し塗り、漬け塗り、ロール塗り、吹付け塗り、又はドクターブレードを用いる基体上へのコーティングの塗布がある。
【実施例】
【0034】
以下の実施例は、本発明の一態様として特許請求の範囲に記載した方法をいかに実施し評価するかの詳しい説明を当業者に提供するために記載するものであり、本発明者らが発明として把握している範囲を限定するものではない。表1は、本発明の以下の実施例で使用する各種材料を例示している。
【0035】
【表1】


実施例1
コーティングの形成方法。複数の液状コーティングを基体上にアレイ状に自動堆積させる段階、遠心力を用いて基体上に液を広げる段階、及びUV光でアレイを硬化させる段階でコーティングを形成した。
【0036】
1−メトキシ−2−プロパノール中に六官能性ウレタンアクリレート(EB1290)及びペンタエリトリトールトリアクリレート(SR444)(各アクリレート0.2グラム/ミリリットル)、DAROCUR4365(0.02グラム/ミリリットル)並びにFCS100(0.1グラム/ミリリットル)を含む原液10ミリリットルを調製した。さらに、1−メトキシ−2−プロパノール中で0.0001グラム/ミリリットルの濃度を有するLumogen F Redの原液100ミリリットルを調製した。PACKARD MULTIPROBE II EXロボット式液体取扱い装置を用いてコーティングを形成した。ロボットは、コーティングからすべての溶媒を蒸発させた場合に各コーティングが表2に示す組成物を含むようにプログラムされていた。各コーティング溶液の固形分含有量は、コーティング溶液の25マイクロリットルアリコートが厚さ10ミクロンのコーティングを形成するのに十分な1−メトキシ−2−プロパノールをロボット添加することで調整した。コーティング溶液は、各コーティング溶液を吸引してその容器内に放出することを繰り返して混合した。液体取扱いロボットを用いて、各コーティング溶液の0.3ミリリットルアリコートを48ウェルタイタープレートに移した。次いで、液体取扱いロボットにより、コーティング溶液をタイタープレートから、13cm×9cm×15ミルの寸法を有するポリカーボネートフィルムからなる基体に移した。前記ポリカーボネートフィルムの表面は、厚さ0.3cm、長さ12.4cm及び幅8.2cmの寸法を有するシリコーンゴム型板により、9mmの直径を有する48の円形「ウェル」に分割されていた。ウェルは規則正しい8×6のアレイとして構成されていた。シリコーンゴム型板によってポリカーボネート基体の表面上に形成されたウェルは、基体上に分配されたコーティング溶液を閉じ込めるのに役立った。
【0037】
【表2】


シリコーンゴム型板を備えた基体上の液状コーティングのアレイを遠心機(米国特許出願公開第20030134033号、欧州特許公開第1242192号、国際公開第WO01/33211号及び国際公開第WO01/03230号に記載されているようなOmega Coater)内に配置し、アレイ全体を高速でさせることで個々のウェル内において基体上に液を広げた。これは、一様な厚さを有する直径9mmの被覆領域を形成した。次いで、FUSION EPIC6000 UV Processorを用いてコーティングのアレイを硬化させた。ランプから基体までの距離は4インチであり、ベルト速度は11フィート/分であり、アレイはランプの下方を2回通過させた。硬化後、シリコーンゴム型板をポリカーボネート基体から剥離することで、ポリカーボネート上に48のコーティングのアレイを得た。
【0038】
同様な方法を用いることで、六官能性ウレタンアクリレート(EB1290)を1,4−ブタンジオールジアクリレートと共に含む硬化性アクリレートコーティング組成物及び六官能性ウレタンアクリレート(EB1290)をトリメチロールプロパントリメタクリレート(SR350)と共に含む硬化性アクリレートコーティング組成物を製造した。
【0039】
実施例2
ASTM方法D3359の修正版を用いて、ポリカーボネート基体に対する硬化コーティングの密着性を測定した。ロボットを用いて、各コーティング上に平行線模様を刻んだ。各列の8つのコーティングに、3M社からのScotch Brand(商標)プレミアムグレード透明セロファンテープを貼り付け、次いで180°の角で一気に素早くはぎ取った。蛍光顕微鏡を用いてコーティングと基体とのコントラストを調べることで、除去されたコーティングの量を測定した。コーティングを約500nmの波長で照明した場合、コーティング中に少量存在するLumogen F Redが強い蛍光を示した。顕微鏡を用いてアレイ中の各コーティングを観察し、除去されたコーティングの量に基づきながらASTM D3359に従って評価した。
【0040】
実施例3
Glas−Col Multipulse Shakerを用いてコーティングのアレイ全体を摩擦することでコーティングの摩耗試験を行った。アレイがトレーの中央に位置するようにしてコーティングアレイをトレーの底にテープで留め、Global Drilling Supply社から入手したけい砂(#4Sand,Quartz)1000mlをアレイ上に注ぎ込んだ。次いで、アレイ及び砂を入れたトレーを50の速度設定値で円運動をするように振動させた。特記しない限り、振動時間は20分であった。
【0041】
米国特許第6538725号に記載のように、散乱光の強度から摩耗度を測定した。使用した計器は、白色光源(450W Xeアークランプ、SLM Instruments,Inc.(アーバナ、米国イリノイ州)、Model FP−024)、波長選択用モノクロメーター(SLM Instruments,Inc.、Model FP−092)及びポータブル分光蛍光計(Ocean Optics,Inc.(ダニーディン、米国フロリダ州)、Model ST2000)であった。分光蛍光計には、200μmのスリット、400nmのブレーズ波長を有すると共に30パーセントを超える効率で250〜800nmのスペクトル範囲をカバーする600本/mmの回折格子、及び線形CCDアレイ検出器が備わっていた。「シックス・アラウンド・ワン」二又ファイバーオプティック反射プローブ(Ocean Optics,Inc.、Model R400−7−UV/VIS)の一方のアームに白色光を集束させ、ファイバーバンドルの別のプローブアームから360°後方散乱光を検出した。
【0042】
各コーティングをプローブの下方に自動的に配置して散乱光のスペクトルの検出を可能にするプログラマブルX−Y並進ステージ上にアレイを取り付けた。耐摩耗性は、各試料に関する散乱光の強度を比較することで測定した。散乱光の強度が高くなるほど、耐摩耗性は不良であった。表3には、10分の振動時間を有する高スループット摩耗試験を用いて耐摩耗性を評価したウレタンアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートの各種コーティング組成物を示す。
【0043】
【表3】


図1からわかる通り、ウレタンアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートを含むコーティング組成物では、ペンタエリトリトールトリアクリレートの重量パーセントが増加するのに伴って耐摩耗性は高くなる。これらのコーティングは、2種のアクリレート材料を単独で使用したコーティングより良好な耐摩耗性を有することが判明した。コーティングの耐摩耗性は、下記の高スループット摩耗試験を用いて評価した。即ち、コーティングのアレイをまず10分間摩擦し、散乱光の強度を測定した。さらに10分間にわたって追加の摩擦を行った後、最後に散乱光の強度を測定した。図2に見られる通り、ウレタンアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートのブレンドを基材とするコーティングの耐摩耗性は、アクリレート成分としてウレタンアクリレート又はペンタエリトリトールトリアクリレートのみを含むコーティングのどちらよりも良好であり、本発明の材料の相乗効果を示している。
【0044】
実施例4
ペンタエリトリトールトリアクリレートとブレンドしたウレタンアクリレートをLEXAN(登録商標)シート(GE社)上に塗布し、TABER摩耗試験を用いて摩耗試験を施した。この方法では、試験試料の元の重量を測定した。次いで、試験試料を摩耗試験機上に配置した。摩耗輪上に500グラムの重りを載せ、500サイクルにわたり回転させた。次いで、最終重量を記録した。図3に示す通り、多官能性アクリレートのブレンドで被覆したLEXAN(登録商標)シートは、単一アクリレートのコーティングで被覆したものより良好な耐摩耗性を有していた。
【0045】
以上、典型的な実施形態で本発明を例示し説明してきたが、本発明の技術思想から決して逸脱することなく様々な修正及び置換を行い得るので、本発明は示された細部に限定されることはない。したがって、日常的な実験を用いるだけで、当業者は本明細書中に開示された本発明のさらなる修正例及び同等例を想起することができ、かかる修正例及び同等例のすべてが特許請求の範囲に定義された本発明の技術思想及び技術的範囲に含まれると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の多官能性アクリレート誘導体、光開始剤、及びナノスケール充填材を含んでなる硬化性アクリレートコーティング組成物。
【請求項2】
前記2種以上の多官能性アクリレート誘導体が、六官能性ウレタンアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、二官能性ウレタンアクリレート、テトラアクリレートモノマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー及びこれらの組合せからなる群から選択され、前記光開始剤が2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンからなる群から選択され、前記ナノスケール充填材がシリカ、ジルコニア、チタニア、アルミナ、セリア及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の硬化性アクリレートコーティング組成物。
【請求項3】
前記多官能性アクリレート誘導体が1種以上の六官能性アクリレート誘導体を含む、請求項2記載の硬化性アクリレートコーティング組成物。
【請求項4】
当該コーティング組成物がさらに、脂肪族アルコール、グリコールエーテル、脂環式アルコール、脂肪族エステル、脂環式エステル、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族化合物、ハロゲン化脂環式化合物、ハロゲン化芳香族化合物、脂肪族エーテル、脂環式エーテル、アミド溶剤及びスルホキシド溶剤からなる群から選択される溶媒を含む、請求項1記載の硬化性アクリレートコーティング組成物。
【請求項5】
前記溶媒が1−メトキシ−2−プロパノールである、請求項4記載の硬化性アクリレートコーティング組成物。
【請求項6】
前記ナノスケール充填材が約10〜約250ナノメートルの粒度を有する、請求項1記載の硬化性アクリレートコーティング組成物。
【請求項7】
前記ナノスケール充填材がアクリレート官能化シリカからなる、請求項1記載の硬化性アクリレートコーティング組成物。
【請求項8】
さらに、ヒドロキシベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート、トリアジン類、オキサニリド誘導体、ポリ(エチレンナフタレート)、ヒンダードアミン、ホルムアミジン、シンナメート、マロネート誘導体及びこれらの組合せからなる群から選択されるUV吸収剤を含む、請求項1記載の硬化性アクリレートコーティング組成物。
【請求項9】
請求項1記載の硬化性アクリレートコーティング組成物で被覆した物品。
【請求項10】
光開始剤、ナノスケール充填材、1種以上の六官能性ウレタンアクリレート、並びに1,4−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメタノールトリメタクリレート誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の追加多官能性アクリレート誘導体を含んでなる硬化性アクリレートコーティング組成物。

【公表番号】特表2007−517935(P2007−517935A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547077(P2006−547077)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/041261
【国際公開番号】WO2005/066287
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】