UV系の高温安定化
少なくとも 1 種の放射線硬化性のα、β-エチレン性不飽和化合物と、少なくとも 1 種のフェノール系安定剤と、ヒドロペルオキシド分解剤及びフリーラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも 1 種の非フェノール系安定剤を含む熱安定性放射線硬化性組成物。該組成物及びその製造方法は、加熱によって粘度を低下させる放射線硬化性インクジェット系のような用途において有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和モノマー及び/又はオリゴマーを含む放射線硬化性組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化性組成物は、多くの用途、例えば、塗料、インク、接着剤及び電子機器用途において有用性を確立してきた。アクリル酸モノマー及び/又はオリゴマーは、放射線硬化性用途において魅力的なコスト/性能バランスを提供するので、一般に、このような組成物に使用される。このような組成物において、(メタ)アクリル酸モノマーは、放射線硬化性組成物の粘度を、基材への塗布に適した程度まで低下するために使用される。放射線硬化性組成物の塗布を、著しい低粘度が要求される噴霧又は噴射技術によって行う場合、高濃度の(メタ)アクリル酸モノマーが必要である。高いモノマー濃度は、低い硬化フィルム性能を招き得ると共に、不快臭の放出及び皮膚炎問題を起こし得る。粘度を低下するために放射線硬化性組成物を加熱することが望まれる場合、このような組成物の乏しい熱安定性故の時期尚早なゲル化がしばしば起こり得る。ある用途、例えば放射線硬化性インクジェット組成物では、従来の放射線硬化性組成物が高温において不安定であるという問題が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、エチレン性不飽和モノマー及び/又はオリゴマーを含む放射線硬化性組成物の高温での安定性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的、及び以下の開示から明らかになるであろう別の目的は、一態様として、モノマー及び/又はオリゴマーから選ばれる少なくとも 1 種の放射線硬化性のα、β-エチレン性不飽和化合物、並びに少なくとも 1 種のフェノール系安定剤と、ヒドロペルオキシド分解剤及びフリーラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも 1 種の非フェノール系安定剤とを含む安定剤系を含有する熱安定性放射線硬化性組成物を含んでなる本発明によって達成される。安定剤系は、硬化性組成物の高温安定性を増加するのに十分な量で使用される。
【0005】
このような安定剤の組合せは、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン及び PVC のような熱可塑性樹脂の押出及び加工における酸化防止剤として広範に使用されているが、放射線硬化性組成物用の安定剤としては今まで記載されていない。このような安定剤系が、高温での、放射線硬化性モノマー及びオリゴマー組成物のゲル化を防ぐことが見出された。本発明により、エネルギー硬化性モノマー及びオリゴマーを、従来は乏しい安定性を示していた高温で使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で有用な安定剤系は、1 種以上のフェノール系安定剤、並びにヒドロキシペルオキシド分解剤及びフリーラジカル捕捉剤から選ばれる 1 種以上の非フェノール系安定剤を含んでなる。
【0007】
フェノール系安定剤は、一種以上のヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ジ-t-ブチルヒドロキノン、及び他の置換ヒドロキノン誘導体であり得る。このような誘導体の例は、オクタデシル 3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート;エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-トルイル)プロピオネート;ヘキサメチレンビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート);2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)-フェノール;ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート);チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート];オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート;6,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-チオジ-p-クレゾール;N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド));ベンゼンプロパン酸;3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7〜C9 分枝アルキルエステル;カルシウムジエチルビス(((3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル-ホスホネート);4,6-ビス(オクトチオメチル)-o-クレゾール;2-(1,1-ジメチルエチル)-6-[3-(1,1-ジメチルエチル)-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]メチル-4-メチルフェニルアクリレート;1,3,5-トリス(3,5-トリ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(lH,3H,5H)-トリオン;(2,4,6-トリオキソ-1,3,5-トリアジン-1,3,5(2H,4H,6H)-トリイル)-トリエチレントリス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート;及び 1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンを含む。フェノール系安定剤は、モノフェノール、ジフェノール、トリフェノール又はテトラフェノールであり得る。
【0008】
非フェノール系安定剤は、例えば、ホスファイト又はホスホナイトのような三価の有機リン化合物であり得る、少なくとも 1 種のヒドロキシペルオキシド分解剤を含み得る。
【0009】
適当なホスファイトは、トリアリール、置換トリアリール、トリアルキル又は混合アルキル及びアリールのホスファイトである。環状ホスファイト、ジ-、トリ-、テトラ-ホスファイト、及び高級ホスファイトも適当である。適当なホスファイトの具体例は、トリフェニルホスファイト;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト;トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト;ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレン-ジホスホナイト;ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル・リン酸;テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4'-ジイルビスホスホナイト;2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチル-ホスファイト;トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト;ジフェニルホスファイト;フェニルジイソデシルホスファイト;テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト;トリイソデシルホスファイト;トリラウリルホスファイト;及び他の同様のホスファイトを含む。
【0010】
適当なホスホナイトの具体例は、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレン-ジホスホナイト;ビス[2,4-ビス(1,l-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル・リン酸;及びテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4'-ジイルビスホスホナイトを含む。
【0011】
非フェノール系安定剤は、ラクトン又はヒドロキシルアミンであり得る少なくとも 1 種のフリーラジカル捕捉剤も含み得る。ラクトンは、好ましくは置換ベンゾフラノン、より好ましくはベンゾフラン-2-オンである。具体的なラクトンの例は、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンと o-キシレンとの反応生成物を包含し、該反応生成物は、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-(3,4-ジメチルフェニル)-2(3H)ベンゾフラノンを含む。
【0012】
ヒドロキシルアミンの適当な例は、ジエチルヒドロキシルアミン;N,N-ジベンジルヒドロキシルアミン;N,N-ジオクチルヒドロキシルアミン;N,N-ジラウリルヒドロキシルアミン;N,N-ジドデシルヒドロキシルアミン;N,N-ジテトラデシルヒドロキシルアミン;N,N-ジヘキサデシルヒドロキシルアミン;N,N-ジオクタデシルヒドロキシルアミン;N-ヘキサデシル-N-テトラデシルヒドロキシルアミン;N-ヘキサデシル-N-ヘプタ-デシル-ヒドロキシルアミン;N-ヘキサデシル-N-オクタデシルヒドロキシルアミン;N-ヘプタ-デシル-N-オクタデシルヒドロキシルアミン;及び N,N-ジ(水素化獣脂)ヒドロキシルアミンを含む。とりわけ、非フェノール系安定剤は、少なくとも 1 種のラクトン及び少なくとも 1 種のホスファイト安定剤を含み得る。
【0013】
本発明において有用なフェノール類、ラクトン類及びホスファイト類は、例えば、Ciba Specialty Chemicals から商品名 Irgafos(登録商標)及び Irganox(登録商標)で入手可能な全てのタイプ、及び他社から入手可能な類似品であり得る。
【0014】
好ましいラクトン安定剤は、5,7-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンと o-キシレンとの反応生成物(Ciba Specialty Chemicals 製の商品名 HP-136)であり、好ましいホスファイト安定剤は、3,9-ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノキシ]2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ{5,5}ウンデカン(Irgafos(登録商標)126)であり、好ましいフェノール系安定剤は、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート]メタン](Irganox(登録商標)1010)である。これら 3 物質の混合物が、Irganox(登録商標)及び Irgafos(登録商標)の商品名で市販されている。Irganox(登録商標)XP620 は、1 部の HP-136、2 部の Irgafos(登録商標)126、及び 3 部の Irganox(登録商標)1010 の混合物である。Irgafos(登録商標)XP60 は、1 部の HP-136 及び 2 部の Irgafos(登録商標)126 の混合物である。このような市販混合物が特に好ましい。
【0015】
好ましい安定剤は優れた溶解性を有し、それ故、混合によってモノマー及びオリゴマーに容易に配合される。例えば、安定剤は、500 rpm に設定した電動撹拌機を用い、60 ℃で放射線硬化性モノマー及びオリゴマーに溶解できる。得られたモノマー及び/又はオリゴマーと安定剤との混合物は、冷却しても、濁り又は粘度の増加を示さない。
【0016】
高温で、α、β-エチレン性不飽和エネルギー硬化性物質を使用できることは、インクジェット用途で特に有用である。インクジェット用途では、配合物は、ほとんどのインクジェット印字ヘッドによって噴射できるように、低粘度、一般的には 5〜18 mPa・s(cps)を有さなければならない。本発明の材料(組成物)を用いて製造したインクジェットインクは、放射線硬化性モノマー及び/又はオリゴマー、顔料、光開始剤、及び分散剤、フロー剤又は湿潤剤のような添加剤を含む放射線硬化性インクである。低粘度は、低粘度物質の配合によって、又は高温での配合物の使用によって達成できる。低粘度物質は、一分子あたり 1 又は 2 個のアクリレート基を有する傾向がある。これらの物質を過剰量使用することにより、配合物を硬化するのに多量のエネルギーが必要になり、物理特性の低い最終フィルムとなる。粘度を低下させる方法として利用される温度上昇は、インクジェット印字ヘッドを加熱することによって実現できる。そこで、高機能性材料及び耐久性化学物質、例えばウレタンアクリレートが、配合物に組み込まれ得る。高温で長期間重合せず、安定なエネルギー硬化性配合物を有することが特に有利である。
【0017】
アクリレート官能基が存在するエネルギー硬化性系の安定化では、物質中に存在するラジカル種を制御することが重要である。一般に、エネルギー硬化性物質は、使用する原料及び製造過程に起因する微量(ppm オーダー)のヒドロペルオキシドを含む。高温では、物質が分解して過酸化物を形成する速度が増し、過酸化物の総濃度が上昇する。他のラジカル種、例えば、炭素中心ラジカル、酸素中心ラジカル及びフリーラジカルは、様々な化学的過程及び不純物が原因となって、組成物中に存在し得る。従来の安定剤の多くが有する問題は、安定剤が光開始剤によって生じたフリーラジカル種を中和して UV 硬化の進行を著しく妨げることである。系が安定化され、かつ時期尚早に硬化はしないが、硬化が開始すると完全に硬化するというバランスは、本発明によって実現される必要がある。安定剤系の、放射線硬化性化合物、例えばモノマー及び/又はオリゴマーに対する適当な重量比は、0.0001/100〜10/90、より好ましくは 0.5/100〜5/95 である。
【0018】
本発明の組成物は、放射線硬化性インクジェット組成物としての使用に特に適している。インクジェット組成物は、顔料、光開始剤、及び分散剤、フロー剤又は湿潤剤のような添加剤を更に含み、100 ℃で約 5〜18 cps の粘度を有する。しかし、本発明の組成物は、塗料又は接着剤を噴霧によって塗布することが望まれ得る、放射線硬化性の塗料及び接着剤のような分野でも使用できる。放射線硬化性インクジェットインクと同様に、噴霧するために十分な低粘度を有するように製造された塗料又は接着剤配合物は、しばしば、低い特性、強い臭気又は他の望ましくない特徴を有する。粘度を低下させるために加熱でき、かつ良好な安定性も有する高粘度の配合物が、これらの用途に望ましい。
【0019】
本発明で使用される適当な放射線硬化性化合物は、一分子あたりに少なくとも 1 個のアクリレート基及び/又はメタクリレート基を有するモノマー及び/又はオリゴマーから選ばれる物質を含み、各々アクリレート及び/又はメタクリレートとして、ここでは定義される。放射線硬化性物質(モノマー及び/又はオリゴマー)の骨格鎖は変化し得、アクリル化及び/又はメタクリル化された構造、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ウレタン、エポキシド、ポリカーボネート又はアクリルを含み得る。
【0020】
このようなモノマーの例は、分枝及び/又は直鎖脂肪族アルコール、例えば、イソオクタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、イソデカノール、n-デカノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール、イソボルネオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、並びにこのようなアルコール及びポリオールのアルコキシル化誘導体、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、高級ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、高級ポリエチレングリコール、混合エチレン/プロピレングリコール、及びアルコキシル化ビスフェノール A 誘導体の(メタ)アクリル酸エステルである。
【0021】
このようなオリゴマーの例は、ビスフェノール A ジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル又はフェノキシグリシジルエーテルから誘導されたエポキシ(メタ)アクリレート;ポリエステル、ポリエーテル又はポリカーボネートポリオールと組み合わせたトルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、水素化メチレンジフェニルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたウレタン(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシ(メタ)アクリレート又はポリカプロラクトン(メタ)アクリレート;及びジ-又はポリ-ヒドロキシ化合物、ジ-又はポリ-カルボン酸官能性化合物又は有機無水物から誘導されたポリエステルアクリレートである。
【0022】
本発明の組成物の熱安定性は著しく改善され、60 ℃で少なくとも 30 日間、とりわけ 100 ℃で少なくとも 30 日間の安定性(ゲル化なし)を有する。
【0023】
本発明のもう 1 つの主題は、少なくとも 1 種の放射線硬化性モノマー及び/又はオリゴマーを含む放射線硬化性組成物を安定化させる方法に関する。該方法は、本発明に従って上述したような少なくとも 1 種の安定剤系を前記組成物に添加する工程を含む。とりわけ、安定剤系が、ラクトン類、ホスファイト類及びフェノール類から選ばれる安定剤を、放射線硬化性組成物を安定化するのに十分な量で含む方法に関する。
【0024】
別の主題は、組成物の粘度が約 5〜18 mPa・s(cps)まで低下するように、本発明に従う上述の組成物をインクジェット印字ヘッド内で加熱し、次いで、基材に組成物を塗布し、最後に、基材上の組成物を放射線硬化する工程を含んでなる印字方法に関する。
【0025】
本発明の幾つかの具体例を説明するために以下の非限定的な実施例を提供する。全ての部及びパーセントは、特に記載がない限り、重量による。
【実施例1】
【0026】
安定化オリゴマーの製造
5,7-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンと o-キシレンとの反応生成物、3,9-ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノキシ]-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ{5,5}ウンデカン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタンの UV モノマー中 1.0 %混合物(Irganox(登録商標)XP620)を、下記のように製造した。
【0027】
この実施例では、2 モルのプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer SR9003)中で、本発明に従った安定剤系を、100 ℃での長期安定性及び硬化への悪影響について試験した。長期安定性は、安定剤系不含有の同じプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートと比較して、著しく改善された。硬化速度及びリアルタイム FTIR 試験は、安定剤系が硬化に悪影響を及ぼさなかったことを示した。
【0028】
99.0 g のプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer SR9003)を、500 rpm で撹拌しながら 60 ℃まで加熱した。60 ℃になった時点で、Irganox(登録商標)XP620 安定剤系 1.0 g を添加し、混合物が透明になるまで撹拌した。冷却すると、混合物は透明で、10 mPa・s(cps)の粘度を有していた。
【実施例2】
【0029】
Irganox(登録商標)XP620 及び Irgafos(登録商標)XP60 の UV モノマー中での安定性試験
実施例 1 に記載した方法を用いて、Irganox(登録商標)XP620 又は Irgafos(登録商標)XP60 の混合物を、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003)中、1.00 %、0.50 %、0.25 %、及び 0.10 %の濃度で製造した。各混合物 20 g を茶色いガラスジャーに入れて密閉し、100 ℃のオーブンに入れた。安定性は、目視検査によって 24 時間毎に判断した。
【0030】
XP620 又は XP60 安定剤系を含む混合物の全てが、100 ℃で 672 時間を超えて、ゲル化に対する優れた安定性を示した。安定剤を添加しなかったプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003)は、100 ℃で 24 時間未満にゲル化した。
【実施例3】
【0031】
安定剤として Irganox(登録商標)XP620 を用いた UV インクジェット配合物
44.25 %のプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、35.00 %の Sartomer SR399LV(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)、8.00 %の Sartomer Sarclure(登録商標)SR1135(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、及びオリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、7.00 %の Sartomer CN2279(ポリエステルアクリレート)、5.00 %の Degussa Special Black(登録商標)250(カーボンブラック顔料)、0.50 %の Solsperse(登録商標)32000(重合体アミド)、及び 0.25 %の Irganox(登録商標)XP620 を含むインクを、ステンレス・スチールショットが入ったペイントシェーカーを用いて製造した。インクは、1 ミクロン未満の粒度を有し、60 ℃で 20 cps、80 ℃で 11 mPa・s(cps)の粘度を有した。
【実施例4】
【0032】
比較例
0.25 %の Irganox(登録商標)XP620 を、0.25 %の プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003)に代えた以外は、実施例 3 のように製造した。
【実施例5】
【0033】
比較例
実施例 2 に記載した方法を用い、100 ℃での熱安定性について、両方のインクを試験した。Irganox(登録商標)XP620 を含む第一のインクは、672 時間後にゲル形成を示さなかった。一方、安定剤系不含有の第二のインクは、288 時間後に完全にゲル化した。
【実施例6】
【0034】
安定剤として Irganox(登録商標)XP620 を用いた噴霧可能な UV 塗料
36.80 %の Sartomer CN963(脂肪族ウレタンアクリレート)、34.50 %の Sartomer SR508(ジプロピレングリコールジアクリレート)、15.00 %の Sartomer SR351(トリメチロールプロパントリアクリレート)、9.20 %の Sartomer SR238(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)、4.00 %の Sartomer Sarcure(登録商標)SR1135(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、及びオリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノンの混合物)、及び 0.50 %の Irganox(登録商標)XP620(上記参照)の混合物を、撹拌機を用いて 60 ℃で 混合した。混合後、塗料は透明であり、60 ℃で 110 cps、80 ℃で 76 cps の粘度を有した。0.50 %の Irganox(登録商標)XP620 に代えて 0.50 %の Sartomer SR508 を含む、第二の塗料を混合した。実施例 2 に記載した方法を用い、100 ℃での熱安定性について、両方の塗料を試験した。Irganox(登録商標)XP620 を含む第一の塗料は、1344 時間後にゲル形成を示さなかった。一方、安定剤系不含有の第二の塗料は、621 時間後に完全にゲル化した。
【0035】
本発明を、詳細に記載し、例示したが、様々な代替、変更及び改良が、本発明の意図及び範囲から外れることなく、当業者によって容易に明らかにされるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和モノマー及び/又はオリゴマーを含む放射線硬化性組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線硬化性組成物は、多くの用途、例えば、塗料、インク、接着剤及び電子機器用途において有用性を確立してきた。アクリル酸モノマー及び/又はオリゴマーは、放射線硬化性用途において魅力的なコスト/性能バランスを提供するので、一般に、このような組成物に使用される。このような組成物において、(メタ)アクリル酸モノマーは、放射線硬化性組成物の粘度を、基材への塗布に適した程度まで低下するために使用される。放射線硬化性組成物の塗布を、著しい低粘度が要求される噴霧又は噴射技術によって行う場合、高濃度の(メタ)アクリル酸モノマーが必要である。高いモノマー濃度は、低い硬化フィルム性能を招き得ると共に、不快臭の放出及び皮膚炎問題を起こし得る。粘度を低下するために放射線硬化性組成物を加熱することが望まれる場合、このような組成物の乏しい熱安定性故の時期尚早なゲル化がしばしば起こり得る。ある用途、例えば放射線硬化性インクジェット組成物では、従来の放射線硬化性組成物が高温において不安定であるという問題が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、エチレン性不飽和モノマー及び/又はオリゴマーを含む放射線硬化性組成物の高温での安定性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的、及び以下の開示から明らかになるであろう別の目的は、一態様として、モノマー及び/又はオリゴマーから選ばれる少なくとも 1 種の放射線硬化性のα、β-エチレン性不飽和化合物、並びに少なくとも 1 種のフェノール系安定剤と、ヒドロペルオキシド分解剤及びフリーラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも 1 種の非フェノール系安定剤とを含む安定剤系を含有する熱安定性放射線硬化性組成物を含んでなる本発明によって達成される。安定剤系は、硬化性組成物の高温安定性を増加するのに十分な量で使用される。
【0005】
このような安定剤の組合せは、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン及び PVC のような熱可塑性樹脂の押出及び加工における酸化防止剤として広範に使用されているが、放射線硬化性組成物用の安定剤としては今まで記載されていない。このような安定剤系が、高温での、放射線硬化性モノマー及びオリゴマー組成物のゲル化を防ぐことが見出された。本発明により、エネルギー硬化性モノマー及びオリゴマーを、従来は乏しい安定性を示していた高温で使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で有用な安定剤系は、1 種以上のフェノール系安定剤、並びにヒドロキシペルオキシド分解剤及びフリーラジカル捕捉剤から選ばれる 1 種以上の非フェノール系安定剤を含んでなる。
【0007】
フェノール系安定剤は、一種以上のヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ジ-t-ブチルヒドロキノン、及び他の置換ヒドロキノン誘導体であり得る。このような誘導体の例は、オクタデシル 3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート;エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-トルイル)プロピオネート;ヘキサメチレンビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート);2,6-ジ-t-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)-フェノール;ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート);チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート];オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート;6,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-チオジ-p-クレゾール;N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド));ベンゼンプロパン酸;3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-C7〜C9 分枝アルキルエステル;カルシウムジエチルビス(((3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル-ホスホネート);4,6-ビス(オクトチオメチル)-o-クレゾール;2-(1,1-ジメチルエチル)-6-[3-(1,1-ジメチルエチル)-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]メチル-4-メチルフェニルアクリレート;1,3,5-トリス(3,5-トリ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(lH,3H,5H)-トリオン;(2,4,6-トリオキソ-1,3,5-トリアジン-1,3,5(2H,4H,6H)-トリイル)-トリエチレントリス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオネート;及び 1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンを含む。フェノール系安定剤は、モノフェノール、ジフェノール、トリフェノール又はテトラフェノールであり得る。
【0008】
非フェノール系安定剤は、例えば、ホスファイト又はホスホナイトのような三価の有機リン化合物であり得る、少なくとも 1 種のヒドロキシペルオキシド分解剤を含み得る。
【0009】
適当なホスファイトは、トリアリール、置換トリアリール、トリアルキル又は混合アルキル及びアリールのホスファイトである。環状ホスファイト、ジ-、トリ-、テトラ-ホスファイト、及び高級ホスファイトも適当である。適当なホスファイトの具体例は、トリフェニルホスファイト;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト;トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト;ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト;テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレン-ジホスホナイト;ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル・リン酸;テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4'-ジイルビスホスホナイト;2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチル-ホスファイト;トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト;ジフェニルホスファイト;フェニルジイソデシルホスファイト;テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト;トリイソデシルホスファイト;トリラウリルホスファイト;及び他の同様のホスファイトを含む。
【0010】
適当なホスホナイトの具体例は、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレン-ジホスホナイト;ビス[2,4-ビス(1,l-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル・リン酸;及びテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4'-ジイルビスホスホナイトを含む。
【0011】
非フェノール系安定剤は、ラクトン又はヒドロキシルアミンであり得る少なくとも 1 種のフリーラジカル捕捉剤も含み得る。ラクトンは、好ましくは置換ベンゾフラノン、より好ましくはベンゾフラン-2-オンである。具体的なラクトンの例は、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンと o-キシレンとの反応生成物を包含し、該反応生成物は、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-(3,4-ジメチルフェニル)-2(3H)ベンゾフラノンを含む。
【0012】
ヒドロキシルアミンの適当な例は、ジエチルヒドロキシルアミン;N,N-ジベンジルヒドロキシルアミン;N,N-ジオクチルヒドロキシルアミン;N,N-ジラウリルヒドロキシルアミン;N,N-ジドデシルヒドロキシルアミン;N,N-ジテトラデシルヒドロキシルアミン;N,N-ジヘキサデシルヒドロキシルアミン;N,N-ジオクタデシルヒドロキシルアミン;N-ヘキサデシル-N-テトラデシルヒドロキシルアミン;N-ヘキサデシル-N-ヘプタ-デシル-ヒドロキシルアミン;N-ヘキサデシル-N-オクタデシルヒドロキシルアミン;N-ヘプタ-デシル-N-オクタデシルヒドロキシルアミン;及び N,N-ジ(水素化獣脂)ヒドロキシルアミンを含む。とりわけ、非フェノール系安定剤は、少なくとも 1 種のラクトン及び少なくとも 1 種のホスファイト安定剤を含み得る。
【0013】
本発明において有用なフェノール類、ラクトン類及びホスファイト類は、例えば、Ciba Specialty Chemicals から商品名 Irgafos(登録商標)及び Irganox(登録商標)で入手可能な全てのタイプ、及び他社から入手可能な類似品であり得る。
【0014】
好ましいラクトン安定剤は、5,7-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンと o-キシレンとの反応生成物(Ciba Specialty Chemicals 製の商品名 HP-136)であり、好ましいホスファイト安定剤は、3,9-ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノキシ]2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ{5,5}ウンデカン(Irgafos(登録商標)126)であり、好ましいフェノール系安定剤は、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート]メタン](Irganox(登録商標)1010)である。これら 3 物質の混合物が、Irganox(登録商標)及び Irgafos(登録商標)の商品名で市販されている。Irganox(登録商標)XP620 は、1 部の HP-136、2 部の Irgafos(登録商標)126、及び 3 部の Irganox(登録商標)1010 の混合物である。Irgafos(登録商標)XP60 は、1 部の HP-136 及び 2 部の Irgafos(登録商標)126 の混合物である。このような市販混合物が特に好ましい。
【0015】
好ましい安定剤は優れた溶解性を有し、それ故、混合によってモノマー及びオリゴマーに容易に配合される。例えば、安定剤は、500 rpm に設定した電動撹拌機を用い、60 ℃で放射線硬化性モノマー及びオリゴマーに溶解できる。得られたモノマー及び/又はオリゴマーと安定剤との混合物は、冷却しても、濁り又は粘度の増加を示さない。
【0016】
高温で、α、β-エチレン性不飽和エネルギー硬化性物質を使用できることは、インクジェット用途で特に有用である。インクジェット用途では、配合物は、ほとんどのインクジェット印字ヘッドによって噴射できるように、低粘度、一般的には 5〜18 mPa・s(cps)を有さなければならない。本発明の材料(組成物)を用いて製造したインクジェットインクは、放射線硬化性モノマー及び/又はオリゴマー、顔料、光開始剤、及び分散剤、フロー剤又は湿潤剤のような添加剤を含む放射線硬化性インクである。低粘度は、低粘度物質の配合によって、又は高温での配合物の使用によって達成できる。低粘度物質は、一分子あたり 1 又は 2 個のアクリレート基を有する傾向がある。これらの物質を過剰量使用することにより、配合物を硬化するのに多量のエネルギーが必要になり、物理特性の低い最終フィルムとなる。粘度を低下させる方法として利用される温度上昇は、インクジェット印字ヘッドを加熱することによって実現できる。そこで、高機能性材料及び耐久性化学物質、例えばウレタンアクリレートが、配合物に組み込まれ得る。高温で長期間重合せず、安定なエネルギー硬化性配合物を有することが特に有利である。
【0017】
アクリレート官能基が存在するエネルギー硬化性系の安定化では、物質中に存在するラジカル種を制御することが重要である。一般に、エネルギー硬化性物質は、使用する原料及び製造過程に起因する微量(ppm オーダー)のヒドロペルオキシドを含む。高温では、物質が分解して過酸化物を形成する速度が増し、過酸化物の総濃度が上昇する。他のラジカル種、例えば、炭素中心ラジカル、酸素中心ラジカル及びフリーラジカルは、様々な化学的過程及び不純物が原因となって、組成物中に存在し得る。従来の安定剤の多くが有する問題は、安定剤が光開始剤によって生じたフリーラジカル種を中和して UV 硬化の進行を著しく妨げることである。系が安定化され、かつ時期尚早に硬化はしないが、硬化が開始すると完全に硬化するというバランスは、本発明によって実現される必要がある。安定剤系の、放射線硬化性化合物、例えばモノマー及び/又はオリゴマーに対する適当な重量比は、0.0001/100〜10/90、より好ましくは 0.5/100〜5/95 である。
【0018】
本発明の組成物は、放射線硬化性インクジェット組成物としての使用に特に適している。インクジェット組成物は、顔料、光開始剤、及び分散剤、フロー剤又は湿潤剤のような添加剤を更に含み、100 ℃で約 5〜18 cps の粘度を有する。しかし、本発明の組成物は、塗料又は接着剤を噴霧によって塗布することが望まれ得る、放射線硬化性の塗料及び接着剤のような分野でも使用できる。放射線硬化性インクジェットインクと同様に、噴霧するために十分な低粘度を有するように製造された塗料又は接着剤配合物は、しばしば、低い特性、強い臭気又は他の望ましくない特徴を有する。粘度を低下させるために加熱でき、かつ良好な安定性も有する高粘度の配合物が、これらの用途に望ましい。
【0019】
本発明で使用される適当な放射線硬化性化合物は、一分子あたりに少なくとも 1 個のアクリレート基及び/又はメタクリレート基を有するモノマー及び/又はオリゴマーから選ばれる物質を含み、各々アクリレート及び/又はメタクリレートとして、ここでは定義される。放射線硬化性物質(モノマー及び/又はオリゴマー)の骨格鎖は変化し得、アクリル化及び/又はメタクリル化された構造、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、ウレタン、エポキシド、ポリカーボネート又はアクリルを含み得る。
【0020】
このようなモノマーの例は、分枝及び/又は直鎖脂肪族アルコール、例えば、イソオクタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、イソデカノール、n-デカノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール、イソボルネオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、並びにこのようなアルコール及びポリオールのアルコキシル化誘導体、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、高級ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、高級ポリエチレングリコール、混合エチレン/プロピレングリコール、及びアルコキシル化ビスフェノール A 誘導体の(メタ)アクリル酸エステルである。
【0021】
このようなオリゴマーの例は、ビスフェノール A ジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル又はフェノキシグリシジルエーテルから誘導されたエポキシ(メタ)アクリレート;ポリエステル、ポリエーテル又はポリカーボネートポリオールと組み合わせたトルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、水素化メチレンジフェニルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたウレタン(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシ(メタ)アクリレート又はポリカプロラクトン(メタ)アクリレート;及びジ-又はポリ-ヒドロキシ化合物、ジ-又はポリ-カルボン酸官能性化合物又は有機無水物から誘導されたポリエステルアクリレートである。
【0022】
本発明の組成物の熱安定性は著しく改善され、60 ℃で少なくとも 30 日間、とりわけ 100 ℃で少なくとも 30 日間の安定性(ゲル化なし)を有する。
【0023】
本発明のもう 1 つの主題は、少なくとも 1 種の放射線硬化性モノマー及び/又はオリゴマーを含む放射線硬化性組成物を安定化させる方法に関する。該方法は、本発明に従って上述したような少なくとも 1 種の安定剤系を前記組成物に添加する工程を含む。とりわけ、安定剤系が、ラクトン類、ホスファイト類及びフェノール類から選ばれる安定剤を、放射線硬化性組成物を安定化するのに十分な量で含む方法に関する。
【0024】
別の主題は、組成物の粘度が約 5〜18 mPa・s(cps)まで低下するように、本発明に従う上述の組成物をインクジェット印字ヘッド内で加熱し、次いで、基材に組成物を塗布し、最後に、基材上の組成物を放射線硬化する工程を含んでなる印字方法に関する。
【0025】
本発明の幾つかの具体例を説明するために以下の非限定的な実施例を提供する。全ての部及びパーセントは、特に記載がない限り、重量による。
【実施例1】
【0026】
安定化オリゴマーの製造
5,7-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンと o-キシレンとの反応生成物、3,9-ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェノキシ]-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ{5,5}ウンデカン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタンの UV モノマー中 1.0 %混合物(Irganox(登録商標)XP620)を、下記のように製造した。
【0027】
この実施例では、2 モルのプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer SR9003)中で、本発明に従った安定剤系を、100 ℃での長期安定性及び硬化への悪影響について試験した。長期安定性は、安定剤系不含有の同じプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートと比較して、著しく改善された。硬化速度及びリアルタイム FTIR 試験は、安定剤系が硬化に悪影響を及ぼさなかったことを示した。
【0028】
99.0 g のプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(Sartomer SR9003)を、500 rpm で撹拌しながら 60 ℃まで加熱した。60 ℃になった時点で、Irganox(登録商標)XP620 安定剤系 1.0 g を添加し、混合物が透明になるまで撹拌した。冷却すると、混合物は透明で、10 mPa・s(cps)の粘度を有していた。
【実施例2】
【0029】
Irganox(登録商標)XP620 及び Irgafos(登録商標)XP60 の UV モノマー中での安定性試験
実施例 1 に記載した方法を用いて、Irganox(登録商標)XP620 又は Irgafos(登録商標)XP60 の混合物を、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003)中、1.00 %、0.50 %、0.25 %、及び 0.10 %の濃度で製造した。各混合物 20 g を茶色いガラスジャーに入れて密閉し、100 ℃のオーブンに入れた。安定性は、目視検査によって 24 時間毎に判断した。
【0030】
XP620 又は XP60 安定剤系を含む混合物の全てが、100 ℃で 672 時間を超えて、ゲル化に対する優れた安定性を示した。安定剤を添加しなかったプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003)は、100 ℃で 24 時間未満にゲル化した。
【実施例3】
【0031】
安定剤として Irganox(登録商標)XP620 を用いた UV インクジェット配合物
44.25 %のプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、35.00 %の Sartomer SR399LV(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)、8.00 %の Sartomer Sarclure(登録商標)SR1135(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、及びオリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、7.00 %の Sartomer CN2279(ポリエステルアクリレート)、5.00 %の Degussa Special Black(登録商標)250(カーボンブラック顔料)、0.50 %の Solsperse(登録商標)32000(重合体アミド)、及び 0.25 %の Irganox(登録商標)XP620 を含むインクを、ステンレス・スチールショットが入ったペイントシェーカーを用いて製造した。インクは、1 ミクロン未満の粒度を有し、60 ℃で 20 cps、80 ℃で 11 mPa・s(cps)の粘度を有した。
【実施例4】
【0032】
比較例
0.25 %の Irganox(登録商標)XP620 を、0.25 %の プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003)に代えた以外は、実施例 3 のように製造した。
【実施例5】
【0033】
比較例
実施例 2 に記載した方法を用い、100 ℃での熱安定性について、両方のインクを試験した。Irganox(登録商標)XP620 を含む第一のインクは、672 時間後にゲル形成を示さなかった。一方、安定剤系不含有の第二のインクは、288 時間後に完全にゲル化した。
【実施例6】
【0034】
安定剤として Irganox(登録商標)XP620 を用いた噴霧可能な UV 塗料
36.80 %の Sartomer CN963(脂肪族ウレタンアクリレート)、34.50 %の Sartomer SR508(ジプロピレングリコールジアクリレート)、15.00 %の Sartomer SR351(トリメチロールプロパントリアクリレート)、9.20 %の Sartomer SR238(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)、4.00 %の Sartomer Sarcure(登録商標)SR1135(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、及びオリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノンの混合物)、及び 0.50 %の Irganox(登録商標)XP620(上記参照)の混合物を、撹拌機を用いて 60 ℃で 混合した。混合後、塗料は透明であり、60 ℃で 110 cps、80 ℃で 76 cps の粘度を有した。0.50 %の Irganox(登録商標)XP620 に代えて 0.50 %の Sartomer SR508 を含む、第二の塗料を混合した。実施例 2 に記載した方法を用い、100 ℃での熱安定性について、両方の塗料を試験した。Irganox(登録商標)XP620 を含む第一の塗料は、1344 時間後にゲル形成を示さなかった。一方、安定剤系不含有の第二の塗料は、621 時間後に完全にゲル化した。
【0035】
本発明を、詳細に記載し、例示したが、様々な代替、変更及び改良が、本発明の意図及び範囲から外れることなく、当業者によって容易に明らかにされるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも 1 種の放射線硬化性のα、β-エチレン性不飽和化合物、並びに少なくとも 1 種のフェノール系安定剤と、ヒドロペルオキシド分解剤及びフリーラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも 1 種の非フェノール系安定剤とを含む安定剤系を含んでなる熱安定性放射線硬化性組成物。
【請求項2】
放射線硬化性化合物がアクリレート及び/又はメタクリレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
非フェノール系安定剤が、三価の有機リン化合物である少なくとも 1 種のヒドロペルオキシド分解剤を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
非フェノール系安定剤が、ホスファイト又はホスホナイトである少なくとも 1 種のヒドロペルオキシド分解剤を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
非フェノール系安定剤が、ラクトン又はヒドロキシルアミンである少なくとも 1 種のフリーラジカル捕捉剤を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
安定剤系が、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレン-ジホスホナイト、及び 2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチル-ホスファイトからなる群から選ばれるヒドロペルオキシド分解剤を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
安定剤系が、モノフェノール、ジフェノール、トリフェノール及びテトラフェノールからなる群から選ばれる少なくとも 1 種のフェノール系安定剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
安定剤系がオクタデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメートを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
安定剤系がベンゾフラン-2-オンを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
安定剤系が更に、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンと o-キシレンとの反応生成物を含有し、該反応生成物が、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-(3,4-ジメチルフェニル)-2(3H)ベンゾフラノンを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
非フェノール系安定剤が、少なくとも 1 種のラクトン及び少なくとも 1 種のホスファイトを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
安定剤系の放射線硬化性化合物に対する重量比が 0.0001/100〜10/90 である、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
安定剤系の放射線硬化性化合物に対する重量比が 0.5/100〜5/95 である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
60 ℃で少なくとも 30 日間の安定性を有する請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
100 ℃で少なくとも 30 日間の安定性を有する請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
放射線硬化性化合物が、分枝及び/又は直鎖脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる、請求項1〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
放射線硬化性化合物が、イソオクタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、イソデカノール、n-デカノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール、イソボルネオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる脂肪族ジオール;トリメチロールプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、混合エチレン/プロピレングリコールからなる群から選ばれるトリオール、アルコキシル化ビスフェノール A 誘導体、及びこれらのアルコキシル化誘導体のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルからなる群から選ばれる、請求項1〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
放射線硬化性化合物が、(A)ビスフェノール A ジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル又はフェノキシグリシジルエーテルのエポキシ(メタ)アクリレート、(B)トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、水素化メチレンジフェニルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選ばれるイソシアネートと、ポリエステル、ポリエーテル又はポリカーボネートポリオール、及びヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート、(C)ジ-又はポリ-ヒドロキシ化合物、ジ-又はポリ-カルボン酸官能性化合物又は有機無水物から誘導されたポリエステルアクリレートからなる群から選ばれる、請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
顔料、光開始剤、並びに分散剤、フロー剤及び湿潤剤から選ばれる少なくとも 1 種の添加剤を更に含み、100 ℃で約 5〜18 mPa・s(cps)の粘度を有する放射線硬化性インクジェット組成物としての使用に適する、請求項1〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
放射線硬化性のインクジェットインク、塗料又は接着剤での、請求項1〜18のいずれかに記載の少なくとも 1 つの組成物の使用。
【請求項21】
少なくとも 1 種の放射線硬化性モノマー及び/又はオリゴマーを含む放射線硬化性組成物の安定化方法であって、請求項1〜13のいずれかで定義された少なくとも 1 種の安定剤系を添加する工程を含む方法。
【請求項22】
安定剤系が、ラクトン類、ホスファイト類及びフェノール類から選ばれる安定剤を、放射線硬化性組成物を安定化するのに十分な量で含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
組成物の粘度が約 5〜18 mPa・s(cps)まで低下するように、請求項1〜18のいずれかで定義された組成物をインクジェット印字ヘッド内で加熱し、次いで、基材に組成物を塗布し、最後に、基材上の組成物を放射線硬化する工程を含んでなる印字方法。
【請求項1】
少なくとも 1 種の放射線硬化性のα、β-エチレン性不飽和化合物、並びに少なくとも 1 種のフェノール系安定剤と、ヒドロペルオキシド分解剤及びフリーラジカル捕捉剤からなる群から選ばれる少なくとも 1 種の非フェノール系安定剤とを含む安定剤系を含んでなる熱安定性放射線硬化性組成物。
【請求項2】
放射線硬化性化合物がアクリレート及び/又はメタクリレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
非フェノール系安定剤が、三価の有機リン化合物である少なくとも 1 種のヒドロペルオキシド分解剤を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
非フェノール系安定剤が、ホスファイト又はホスホナイトである少なくとも 1 種のヒドロペルオキシド分解剤を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
非フェノール系安定剤が、ラクトン又はヒドロキシルアミンである少なくとも 1 種のフリーラジカル捕捉剤を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
安定剤系が、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレン-ジホスホナイト、及び 2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチル-ホスファイトからなる群から選ばれるヒドロペルオキシド分解剤を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
安定剤系が、モノフェノール、ジフェノール、トリフェノール及びテトラフェノールからなる群から選ばれる少なくとも 1 種のフェノール系安定剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
安定剤系がオクタデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメートを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
安定剤系がベンゾフラン-2-オンを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
安定剤系が更に、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2(3H)-ベンゾフラノンと o-キシレンとの反応生成物を含有し、該反応生成物が、5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-(3,4-ジメチルフェニル)-2(3H)ベンゾフラノンを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
非フェノール系安定剤が、少なくとも 1 種のラクトン及び少なくとも 1 種のホスファイトを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
安定剤系の放射線硬化性化合物に対する重量比が 0.0001/100〜10/90 である、請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
安定剤系の放射線硬化性化合物に対する重量比が 0.5/100〜5/95 である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
60 ℃で少なくとも 30 日間の安定性を有する請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
100 ℃で少なくとも 30 日間の安定性を有する請求項1〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
放射線硬化性化合物が、分枝及び/又は直鎖脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる、請求項1〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
放射線硬化性化合物が、イソオクタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、イソデカノール、n-デカノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール、イソボルネオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる脂肪族ジオール;トリメチロールプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、混合エチレン/プロピレングリコールからなる群から選ばれるトリオール、アルコキシル化ビスフェノール A 誘導体、及びこれらのアルコキシル化誘導体のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルからなる群から選ばれる、請求項1〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
放射線硬化性化合物が、(A)ビスフェノール A ジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル又はフェノキシグリシジルエーテルのエポキシ(メタ)アクリレート、(B)トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、水素化メチレンジフェニルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選ばれるイソシアネートと、ポリエステル、ポリエーテル又はポリカーボネートポリオール、及びヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート、(C)ジ-又はポリ-ヒドロキシ化合物、ジ-又はポリ-カルボン酸官能性化合物又は有機無水物から誘導されたポリエステルアクリレートからなる群から選ばれる、請求項1〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
顔料、光開始剤、並びに分散剤、フロー剤及び湿潤剤から選ばれる少なくとも 1 種の添加剤を更に含み、100 ℃で約 5〜18 mPa・s(cps)の粘度を有する放射線硬化性インクジェット組成物としての使用に適する、請求項1〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
放射線硬化性のインクジェットインク、塗料又は接着剤での、請求項1〜18のいずれかに記載の少なくとも 1 つの組成物の使用。
【請求項21】
少なくとも 1 種の放射線硬化性モノマー及び/又はオリゴマーを含む放射線硬化性組成物の安定化方法であって、請求項1〜13のいずれかで定義された少なくとも 1 種の安定剤系を添加する工程を含む方法。
【請求項22】
安定剤系が、ラクトン類、ホスファイト類及びフェノール類から選ばれる安定剤を、放射線硬化性組成物を安定化するのに十分な量で含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
組成物の粘度が約 5〜18 mPa・s(cps)まで低下するように、請求項1〜18のいずれかで定義された組成物をインクジェット印字ヘッド内で加熱し、次いで、基材に組成物を塗布し、最後に、基材上の組成物を放射線硬化する工程を含んでなる印字方法。
【公表番号】特表2007−503502(P2007−503502A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524491(P2006−524491)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051478
【国際公開番号】WO2005/019354
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(502433287)サートーマー・テクノロジー・カンパニー・インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Sartomer Technology Company, Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051478
【国際公開番号】WO2005/019354
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(502433287)サートーマー・テクノロジー・カンパニー・インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Sartomer Technology Company, Inc.
【Fターム(参考)】
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