説明

VAV式空調システム

【課題】VAV式空調システムにおいて、静圧センサ及びその付属部品を追加することなく、静圧一定制御を行うことができるようにする。
【解決手段】VAV式空調システム(1)は、空調ユニット(2)の空気出口(21b)における静圧値(P)が所定の静圧設定値(Pc)になる場合の送風機(22)の回転数(Na)とモータ電力値(Ws)との相関関係と現在の送風機(22)の回転数(Na)とから、送風機(22)のモータ電力設定値(Wc)を演算する。そして、VAV式空調システム(1)は、現在の送風機(22)のモータ電力値(Ws)とモータ電力設定値(Wc)との差が小さくなるように、送風機(22)の回転数(Na)を変更する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VAV式空調システム、特に、VAV式空調システムにおける送風機の能力制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の空間の個別空調を行う空調システムとして、VAV式(可変風量式)空調システムが使用されている。VAV式空調システムは、空調ユニットの空気出口に接続された主ダクトから分岐された複数の副ダクトを通じて、空調ユニットによって空調された空気を複数の空調空間に供給するように構成されている。各副ダクトには、開度可変式の空調ダンパが設けられており、各空調空間に供給される風量が調節されるようになっている。また、空調ユニットには、空調された空気を複数の空調空間に送るための送風機が設けられており、その能力制御がなされるようになっている。
【0003】
このようなVAV式空調システムとして、特許文献1、2(特開平8−219535号公報、特開平10−47738号公報)に示すように、主ダクトに静圧センサを設けて、この静圧センサによって検出された静圧が所定の静圧設定値で一定になるように送風機の能力制御を行う(静圧一定制御)ものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような静圧一定制御を行うためには、静圧センサ及びその付属部品を設ける必要があるため、VAV式空調システムを構成する部品点数が増加することになる。
【0005】
本発明の課題は、VAV式空調システムにおいて、静圧センサ及びその付属部品を追加することなく、静圧一定制御を行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点にかかるVAV式空調システムは、回転数可変式の送風機を有する空調ユニットと、空調ユニットの空気出口に接続される主ダクトと、主ダクトから複数の空調空間に分岐される複数の副ダクトと、複数の副ダクトにそれぞれ設けられた開度可変式の複数の空調ダンパと、を有している。このVAV式空調システムは、空調ユニットの空気出口における静圧値が所定の静圧設定値になる場合の送風機の回転数とモータ電力値との相関関係と現在の送風機の回転数とから、送風機のモータ電力設定値を演算する。そして、このVAV式空調システムは、現在の送風機のモータ電力値とモータ電力設定値との差が小さくなるように、送風機の回転数を変更する制御を行う。
【0007】
このVAV式空調システムでは、送風機の回転数から空調ユニットの空気出口における静圧値が所定の静圧設定値になる場合のモータ電力設定値を演算し、この演算されたモータ電力設定値を制御目標値として、静圧一定制御を行うようにしている。
【0008】
これにより、このVAV式空調システムでは、静圧センサ及びその付属部品を追加することなく、静圧一定制御を行うことができる。
【0009】
第2の観点にかかるVAV式空調システムは、第1の観点にかかるVAV式空調システムにおいて、送風機の回転数とモータ電力値との相関関係は、空調ユニットの空気出口における静圧値ごとに準備されている。そして、モータ電力設定値の演算に使用される送風機の回転数とモータ電力値との相関関係は、静圧設定値に応じて決定される。
【0010】
このVAV式空調システムでは、送風機の回転数とモータ電力値との相関関係を静圧値ごとに準備し、これらに基づいてモータ電力設定値の演算に使用する相関関係を決定している。
【0011】
これにより、このVAV式空調システムでは、モータ電力設定値の演算に使用する相関関係を迅速に決定することができる。
【0012】
第3の観点にかかるVAV式空調システムは、第1又は第2の観点にかかるVAV式空調システムにおいて、複数の空調空間とは別の空間に分岐される流調ダクトが主ダクトからさらに分岐されている。この流調ダクトには、開度可変式のベースダンパが設けられている。そして、このVAV式空調システムは、送風機の最低風量に達した場合又は送風機の回転数が最低風量に相当する回転数に達した場合に、ベースダンパを開ける制御を行う。
【0013】
空調ユニットが有する送風機は、最低風量又は最低風量に相当する回転数に制限がある。このため、VAV式空調システムでは、空調空間から要求される空調負荷が小さい場合において、送風機の最低風量の制限から送風機の能力を小さくことができない状況が生じるおそれがある。すなわち、空調空間から要求される空調負荷が小さい場合には、空調ダンパが閉操作されるため、それに従って送風機の能力(回転数)が小さくなるが、この場合において、送風機の最低風量の制限によって送風機の能力を小さくすることができなくなる。
【0014】
これに対して、このVAV式空調システムでは、上記のように、流調ダクトをベースダンパとともに設けて、送風機の最低風量又はそれに相当する回転数に達した場合に、ベースダンパを開ける制御を行うようにしている。
【0015】
このため、このVAV式空調システムでは、送風機の最低風量又はそれに相当する回転数に達した場合であっても、流調ダクトに空気を流し、かつ、空調空間に送る風量を小さくすることができる。
【0016】
これにより、このVAV式空調システムでは、送風機の最低風量を確保しつつ、空調空間の空調負荷の低減要求を満たすことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0018】
第1の観点にかかるVAV式空調システムでは、静圧センサ及びその付属部品を追加することなく、静圧一定制御を行うことができる。
【0019】
第2の観点にかかるVAV式空調システムでは、モータ電力設定値の演算に使用する相関関係を迅速に決定することができる。
【0020】
第3の観点にかかるVAV式空調システムでは、送風機の最低風量を確保しつつ、空調空間の空調負荷の低減要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態にかかるVAV式空調システムの概略構成図である。
【図2】VAV式空調システムにおける静圧一定制御の制御ブロック図である。
【図3】VAV式空調システムにおける静圧一定制御のフローチャートである。
【図4】送風機の風量−モータ電力値特性を示すグラフである。
【図5】送風機の回転数−モータ電力値特性を示すグラフである。
【図6】変形例にかかるVAV式空調システムの概略構成図である。
【図7】変形例にかかるVAV式空調システムにおける静圧一定制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明にかかるVAV式空調システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかるVAV式空調システムの具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0023】
(1)VAV式空調システムの構成
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態にかかるVAV式空調システム1の構成について説明する。ここで、図1は、本発明の一実施形態にかかるVAV式空調システム1の概略構成図である。
【0024】
VAV式空調システム1は、建物内の複数の空調空間(ここでは、4つの空調空間A〜D)の個別空調を行うために設けられた空調システムであり、主として、空調ユニット2と、主ダクト3と、複数(ここでは、4つ)の副ダクト4a〜4dとを有している。
【0025】
<空調ユニット>
空調ユニット2は、建物の天井裏空間等に設けられるダクト型の空調ユニットである。空調ユニット2は、主として、ユニットケーシング21と、送風機22と、熱交換器23とを有している。
【0026】
ユニットケーシング21には、屋外や屋内の空気を吸入する空気入口21aと、空調した空気を吐出する空気出口21bとが形成されている。空気入口21aは、吸入ダクト5に接続されており、空気出口21bは、主ダクト3に接続されている。
【0027】
送風機22は、ユニットケーシング21内に設けられており、空気入口21aから空気を吸入して空気出口21bから吐出する送風動作を行う送風機である。送風機22は、主として、多翼羽根車等からなる羽根車(図示せず)を有しており、この羽根車がモータ24によって回転駆動されるようになっている。モータ24は、回転数可変式のモータである。このため、送風機22は、モータ24の回転数を変更することによって能力制御を行うことが可能な回転数可変式の送風機を構成している。
【0028】
熱交換器23は、ユニットケーシング21内に設けられており、送風機22の送風動作によってユニットケーシング21内に吸入される空気の温度や湿度の調節を行う熱交換器である。
【0029】
空調ユニット2には、送風機22等の機器の運転制御を行うための制御部25が設けられている。制御部25は、送風機22等の機器を動作させるための電気回路、マイクロコンピュータやメモリ等を有している。また、制御部25には、空調ユニット2の運転・停止操作を遠隔で行うための空調リモコン26が接続されている。
【0030】
<主ダクト>
主ダクト3は、建物の天井裏空間等に設けられており、空調ユニット2の空気出口21bに接続されるダクトである。
【0031】
<副ダクト>
副ダクト4a〜4dは、建物の天井裏空間等に設けられており、主ダクト3から空調空間A〜Dに分岐されるダクトである。各副ダクト4a〜4dには、開度可変式の空調ダンパ41a〜41dが設けられている。空調ダンパ41a〜41dは、それぞれに対応するダンパリモコン42a〜42dに接続されている。ダンパリモコン42a〜42dは、例えば、それぞれ空調空間A〜Dに設けられており、対応する空調ダンパ41a〜41dの開度を変更する制御を行うことができるようになっている。このため、空調ダンパ41a〜41dは、各副ダクト4a〜4d内を通過する風量、すなわち、各空調空間A〜Dに供給される風量を変更する制御を行うことができるようになっている。ここで、空調ダンパ41a〜41dは、対応するダンパリモコン42a〜42dの操作信号に応じて開度を変更する制御だけが行われるようになっており、空調ダンパ41a〜41dの開度信号を空調ユニット2の制御部25に送信して、送風機22の能力制御に反映する等の複雑な制御は行っていない。
【0032】
このVAV式空調システム1では、送風機22の回転数から空調ユニット2の空気出口21bにおける静圧値が所定の静圧設定値になる場合のモータ電力設定値を演算し、この演算されたモータ電力設定値を制御目標値として、静圧一定制御を行うようにしている。この静圧一定制御の内容について、以下に詳述する。
【0033】
(2)静圧一定制御
次に、図2〜図5を用いて、VAV式空調システム1における静圧一定制御について説明する。ここで、図2は、VAV式空調システム1における静圧一定制御の制御ブロック図である。図3は、VAV式空調システム1における静圧一定制御のフローチャートである。図4は、送風機22の風量−モータ電力値特性を示すグラフである。図5は、送風機22の回転数−モータ電力値特性を示すグラフである。
【0034】
まず、ステップS1において、制御部25は、空調ユニット2の空気出口21bにおける静圧値Pが所定の静圧設定値Pcになる場合の送風機22の回転数Naとモータ電力値Wとの相関関係である回転数−モータ電力値関係式を決定する。ここで、静圧設定値Pcは、VAV式空調システム1の試運転等において、送風機22の風量−モータ電力値特性から決定される(図4参照)。具体的には、制御部25は、静圧設定値決定部25aとして機能し(図2参照)、送風機22の風量を所定の決定風量(例えば、送風機22の定格風量)で一定に保持するように回転数を制御する運転(風量一定制御)を行う。そして、制御部25は、この決定風量時におけるモータ電力値を検出する。そして、制御部25は、決定風量、及び、決定風量において検出されたモータ電力値から静圧設定値Pcを決定する。尚、図4においては、静圧値P6が静圧設定値Pcになる場合を示しているが、例えば、静圧値P6と静圧値P7との間の値が静圧設定値Pcになる場合には、P6とP7との補間によって静圧設定値Pcを決定する。また、静圧設定値Pcは、上記のような風量一定制御を用いた決定手法に限られるものではなく、主ダクト3及び副ダクト4a〜4c等の通風抵抗から演算される決定風量における静圧値を静圧設定値Pcとする決定手法を用いてもよい。これにより、VAV式空調システム1の静圧一定制御における静圧設定値Pcが決定される。そして、制御部25は、空調ユニット2の空気出口21bにおける静圧値Pごとに準備されている回転数−モータ電力値関係式の中から、決定された静圧設定値Pcに対応する回転数−モータ電力値関係式を選択する。ここで、回転数−モータ電力値関係式は、次に示すような回転数Naを変数とする多項式W=f(Na)の形で準備されているため、静圧値ごとに異なる多項式の係数a、b、cが選択されることになる。

モータ電力値W = a×Na^2 + b×Na + c

尚、図5においては、静圧値P6が静圧設定値Pcになる場合を示しているが、例えば、静圧値P6と静圧値P7との間の値が静圧設定値Pcになる場合には、P6とP7との補間によって多項式の係数a、b、cを決定する。また、回転数−モータ電力値関係式の多項式の形は、上式に限定されるものではない。
【0035】
次に、ステップS2において、制御部25は、送風機22の現在のモータ電力値Ws及び回転数Naを検出する。
【0036】
次に、ステップS3において、制御部25は、ステップS1において選択した回転数−モータ電力値関係式と、ステップS2において検出した送風機22の現在の回転数Naとから、送風機22のモータ電力値を演算する。この演算によって得られるモータ電力値は、空調ユニット2の空気出口21bにおける静圧値Pが静圧設定値Pcになる場合のモータ電力値、すなわち、静圧値Pが静圧設定値Pcで一定に保持するために要求されるモータ電力設定値Wcである。尚、制御部25は、ステップS1における回転数−モータ電力値関係式を選択する処理、及び、ステップS3におけるモータ電力設定値Wcを演算する処理を合わせてモータ電力設定値演算部25bとして機能している(図2参照)。
【0037】
次に、ステップS4において、制御部25は、送風機22の現在のモータ電力値Wsとモータ電力設定値Wcとの差が所定範囲内である場合には、静圧値Pが静圧設定値Pcで保たれているものとして、送風機22の回転数Naを変更することなく、ステップS2の処理に戻る。ここで、モータ電力値Wsとモータ電力設定値Wcとの差が所定範囲内であるかどうかは、モータ電力値Wsからモータ電力設定値Wcを差し引いた電力差ΔWが判定電力差−ΔWc〜+ΔWcの範囲以内であるかどうかによって判定する。一方、制御部25は、電力差ΔWが所定範囲外、すなわち、電力差ΔWが判定電力差−ΔWc〜+ΔWcの範囲を超える場合には、静圧値Pが静圧設定値Pcで保たれていないものとして、送風機22の回転数Naを変更する制御を行うステップS5の処理に移行する。
【0038】
次に、ステップS5において、制御部25は、現在の送風機22のモータ電力値Wsとモータ電力設定値Wcとの差が小さくなるように、送風機22の回転数Naを変更する制御を行う。具体的には、制御部25は、電力差ΔWが−ΔWcよりも小さい場合には、モータ電力値Wsがモータ電力設定値Wcよりも低く、静圧値Pが静圧設定値Pcよりも低いものとして、送風機22の回転数Naを大きくする変更を行う。一方、制御部25は、電力差ΔWが+ΔWcよりも大きい場合には、モータ電力値Wsがモータ電力設定値Wcよりも高く、静圧値Pが静圧設定値Pcよりも高いものとして、送風機22の回転数Naを小さくする変更を行う。そして、制御部25は、電力差ΔWに応じて送風機22の回転数Naを変更する制御を行った後に、ステップS2の処理に戻る。尚、制御部25は、ステップS4における電力差ΔWを判定する処理、及び、ステップS5における送風機22の回転数Naを変更する制御を行う処理を合わせて送風機回転数制御部25cとして機能している(図2参照)。
【0039】
以上のような静圧一定制御を行うと、空調空間A〜Dから要求される空調負荷が変化しない場合、例えば、空調ダンパ41a〜41dの開度変更が行われない場合には、静圧値Pの変化は生じない。このため、モータ電力値Wsとモータ電力設定値Wcとの電力差ΔWが−ΔWc〜+ΔWc内に収まり、静圧値Pが静圧設定値Pcで保たれていることが検知される(ステップS4)。これにより、静圧値Pが静圧設定値Pcで保たれることになる。また、空調空間A〜Dから要求される空調負荷が大きくなった場合、例えば、空調ダンパ41a〜41dの少なくとも1つの開度が大きくなった場合には、静圧値Pが小さくなる方向に変化する。このため、電力差ΔWが−ΔWcよりも小さくなり、静圧値Pが静圧設定値Pcよりも小さくなったことが検知される(ステップS4)。この場合には、送風機22の回転数Naを大きくする変更が行われるため(ステップS5)、これにより、再び、電力差ΔWが−ΔWc〜+ΔWc内に収まり、静圧値Pが静圧設定値Pcで保たれることになる。また、空調空間A〜Dから要求される空調負荷が小さくなった場合、例えば、空調ダンパ41a〜41dの少なくとも1つの開度が小さくなった場合には、静圧値Pが大きくなる方向に変化する。このため、電力差ΔWが+ΔWcよりも大きくなり、静圧値Pが静圧設定値Pcよりも大きくなったことが検知される(ステップS4)。この場合には、送風機22の回転数Naを小さくする変更が行われるため(ステップS5)、これにより、再び、電力差ΔWが−ΔWc〜+ΔWc内に収まり、静圧値Pが静圧設定値Pcで保たれることになる。
【0040】
(3)VAV式空調システムの特徴
本実施形態のVAV式空調システム1には、以下のような特徴がある。
【0041】
<A>
本実施形態のVAV式空調システム1では、上記のように、送風機22の回転数Naから空調ユニット2の空気出口21bにおける静圧値Pが所定の静圧設定値Pcになる場合のモータ電力設定値Wcを演算し、この演算されたモータ電力設定値Wcを制御目標値として、静圧一定制御を行うようにしている。
【0042】
これにより、本実施形態のVAV式空調システム1では、静圧センサ及びその付属部品を追加することなく、静圧一定制御を行うことができる。
【0043】
<B>
本実施形態のVAV式空調システム1では、上記のように、送風機22の回転数Naとモータ電力値Wとの相関関係(すなわち、回転数−モータ電力値関係式)を静圧値Pごとに準備し、これらに基づいてモータ電力設定値Wcの演算に使用する相関関係を決定している。
【0044】
これにより、本実施形態のVAV式空調システム1では、モータ電力設定値Wcの演算に使用する相関関係を迅速に決定することができる。
【0045】
(4)変形例
上記実施形態における空調ユニット2が有する送風機22は、最低風量又は最低風量に相当する回転数に制限がある。このため、上記実施形態におけるVAV式空調システム1では、空調空間A〜Dから要求される空調負荷が小さい場合において、送風機22の最低風量の制限から送風機22の能力を小さくことができない状況が生じるおそれがある。すなわち、空調空間A〜Dから要求される空調負荷が小さい場合には、空調ダンパ41a〜41dが閉操作されるため(ステップS5)、それに従って送風機22の能力(回転数Na)が小さくなるが、この場合において、送風機22の最低風量の制限によって送風機22の能力を小さくすることができなくなる。
【0046】
これに対して、本変形例のVAV式空調システム1では、図6に示すように、複数の空調空間A〜Dとは別の空間(廊下等)に空気を送る流調ダクト6を主ダクト3からさらに分岐させるようにしている。この流調ダクト6には、ベースダンパ61を設けられている。ベースダンパ61は、空調ユニット2の制御部25に接続されており、制御部25からの指令によって開閉動作するようになっている。
【0047】
そして、本変形例のVAV式空調システム1では、図7に示すように、上記実施形態と同様の静圧一定制御を行うとともに、ステップS5〜S8のベースダンパ61の開閉操作を行うようにしている。
【0048】
具体的には、制御部25は、ステップS5の回転数Naの変更を行った後に、ステップS6の処理に移行する。ステップS6では、送風機22の風量が最低風量Gm又はそれに相当する回転数Nmに達したかどうかを判定される。
【0049】
例えば、空調空間A〜Dのいずれかの空調を停止する等によって空調空間A〜Dから要求される空調負荷を小さくする場合には、空調ダンパ41a〜41dのいずれかが全閉の状態に変更される。これに伴って、ステップS5において、回転数Naが小さくなるように変更されて、送風機22の風量が最低風量Gm又はそれに相当する回転数Nmまで小さくなる場合がある。このような場合には、ステップS6の判定条件を満たすことになる。
【0050】
そして、ステップS6の判定条件を満たす場合(すなわち、送風機22の風量が最低風量Gmに達した場合)には、ステップS7の処理に移行して、制御部25は、ベースダンパ61を開操作する。このベースダンパ61の開操作によって、静圧値Pが小さくなる方向に変化するため、電力差ΔWが−ΔWcよりも小さくなり、静圧値Pが静圧設定値Pcよりも小さくなったことが検知される(ステップS4)。これにより、送風機22の回転数Naを大きくする変更が行われるため(ステップS5)、これにより、再び、電力差ΔWが−ΔWc〜+ΔWc内に収まり、静圧値Pが静圧設定値Pcで保たれるとともに、送風機22の風量を最低風量Gmよりも大きな風量に保つことができる。
【0051】
一方、例えば、空調空間A〜Dのうち空調を行っていなかった空調空間の空調を開始する等によって空調空間A〜Dから要求される空調負荷を大きくする場合には、空調ダンパ41a〜41dのうち空調を開始する空調ダンパが開状態に変更される。これに伴って、ステップS5において、回転数Naが大きくなるように変更されて、ベースダンパ61を開けなくても、送風機22の風量が最低風量Gm又はそれに相当する回転数Nmまで小さくなる状態を避けることができるようになる場合がある。このような場合には、ステップS6の判定条件を満たさなくなる。
【0052】
そして、ステップS6の判定条件を満たさない場合(すなわち、送風機22の風量が最低風量Gmに達しない場合)には、ステップS8の処理に移行して、制御部25は、ベースダンパ61を閉操作する。このベースダンパ61の閉操作によって、静圧値Pが大きくなる方向に変化するため、電力差ΔWが+ΔWcよりも大きくなり、静圧値Pが静圧設定値Pcよりも大きくなったことが検知される(ステップS4)。これにより、送風機22の回転数Naを小さくする変更が行われるため(ステップS5)、これにより、再び、電力差ΔWが−ΔWc〜+ΔWc内に収まり、静圧値Pが静圧設定値Pcで保たれるとともに、流調ダクト6に空気を流すことなく、送風機22の風量を最低風量Gmよりも大きな風量に保つことができる。
【0053】
このように、本変形例のVAV式空調システム1では、送風機22の最低風量Gm又はそれに相当する回転数Nmに達した場合であっても、流調ダクト6に空気を流し、かつ、空調空間A〜Dに送る風量を小さくすることができる。
【0054】
これにより、本変形例のVAV式空調システム1では、送風機22の最低風量Gmを確保しつつ、空調空間A〜Dの空調負荷の低減要求を満たすことができる。また、空調ユニット2の運転を停止することなく、空調空間A〜Dの空調を停止させることも可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、VAV式空調システムに対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 VAV式空調システム
2 空調ユニット
3 主ダクト
4a〜4d 副ダクト
6 流調ダクト
21b 空気出口
22 送風機
41a〜41d 空調ダンパ
61 ベースダンパ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】
【特許文献1】特開平8−219535号公報
【特許文献2】特開平10−47738号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転数可変式の送風機(22)を有する空調ユニット(2)と、
前記空調ユニットの空気出口(21b)に接続される主ダクト(3)と、
前記主ダクトから複数の空調空間(A〜D)に分岐される複数の副ダクト(4a〜4d)と、
前記複数の副ダクトにそれぞれ設けられた開度可変式の複数の空調ダンパ(41a〜41d)と、を備え、
前記空調ユニットの空気出口における静圧値(P)が所定の静圧設定値(Pc)になる場合の前記送風機の回転数(Na)とモータ電力値(Ws)との相関関係と現在の前記送風機の回転数とから、前記送風機のモータ電力設定値(Wc)を演算し、
現在の前記送風機のモータ電力値と前記モータ電力設定値との差が小さくなるように、前記送風機の回転数を変更する制御を行う、
VAV式空調システム(1)。
【請求項2】
前記送風機(22)の回転数(Na)とモータ電力値(Ws)との相関関係は、前記空調ユニット(2)の空気出口(21b)における静圧値(P)ごとに準備されており、
前記モータ電力設定値(Wc)の演算に使用される前記送風機の回転数とモータ電力値との相関関係は、前記静圧設定値(Pc)に応じて決定される、
請求項1に記載のVAV式空調システム(1)。
【請求項3】
前記複数の空調空間(A〜D)とは別の空間に分岐される流調ダクト(6)が前記主ダクト(3)からさらに分岐されており、
前記流調ダクトには、開度可変式のベースダンパ(61)が設けられており、
前記送風機(22)の最低風量(Wm)に達した場合又は前記送風機の回転数(Na)が前記最低風量に相当する回転数(Nm)に達した場合に、前記ベースダンパを開ける制御を行う、
請求項1又は2に記載のVAV式空調システム(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104578(P2013−104578A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246668(P2011−246668)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】