説明

VEGFR−2受容体としてのピリジン誘導体、及びタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤

本発明は、単独、又は他の1つ若しくはそれ以上の薬学的に活性な化合物と組み合わせた使用向けであり、治療においては、癌、皮膚疾患、及び眼疾患などの調節解除された血管新生に付随した疾患を処置するための、一般式(I)(式中、W、D、E、G、J、L、R、R、R、R、R、及びYは本明細書中で定義される通りである)の化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩、水和物又は溶媒和化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規VEGFR−2受容体及びタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤、治療における使用向けの前記化合物、前記化合物を含む医薬組成物、それらを必要とする患者に前記化合物の有効量を投与することを含む疾患を処置する方法、及び医薬品の製造における前記化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、血管新生を阻害することができ、すなわち、新生血管の発生及び成熟を阻害することができる新規化合物に関する。前記化合物は、癌はもちろん、アテローム性動脈硬化症、皮膚炎、乾癬、酒さ、及びリウマチ性関節炎などの炎症症状、糖尿病性網膜症等の眼疾患、及び黄斑変性症などの様々な疾患の治療において有益であろうと考えられている。
【0003】
現在腫瘍周辺で血管新生を遮断することは、おそらく補助薬物療法として、癌治療の生存できる方法であったことが現在広く認められている。また、このことは異なる阻害性アプローチで血管新生阻害剤を用いた多くの開発プロジェクト及び臨床試験に反映されている。5つの新製品の薬、及びVEGF/VEGFRシグナル伝達を阻害することによって血管新生を制限することを目的とする開発中の30を超える作用薬が存在する。
【0004】
血管新生を阻害するこの方法は、VEGF受容体阻害剤、とりわけVEGFR−2(KDR)受容体阻害剤に関連する本発明に関して特に興味深い。ソラフェニブ及びスニチニブが2006年に新発売されており、両者は、他の受容体のうちVEGFR−2を標的としている。スニチニブは、VEGFR−2及び9nM及び8nMのIC50値を持つPDGFR−βをそれぞれ阻害する。ソラフェニブの開発者はRaf−1キナーゼに対する活性を改良するのに専念してきたが、ソラフェニブもVEGFR−2に対して22nMのIC50を示している。Kiselyovらは、“Expert Opin.Investig.Drugs(2007)16(1):83−107”において臨床実験でそのような阻害剤を再調査している。
【0005】
多くの研究で、VEGFの役割、及び酒さなどの皮膚疾患におけるその受容体であるVEGF−R1、及びVEGF−R2の調査が行われた。酒さは、顔面皮膚に主に影響し、血管が見えたりすること、顔面中央の紅斑、しばしば小丘疹、及び膿疱によって特徴付けられる一般的な慢性症状である。疾患の病変形成が完全には説明されていないが、特に非酒さ性ざ瘡の場合において、VEGFとの関連が、Smith J Rらの文献“Br J Opthalmol 2007;91:226−229”、及びGomaa A H Aらの文献“J Cutan Pathol 2007;34:748−753”によって示唆されている。
【0006】
血管新生因子の発現増加、特にVEGFが、増殖性糖尿病網膜症(PDR)の中心的原因であるということを示唆するための明らかな証拠もある。この症状及び未熟児網膜症、鎌状赤血球網膜症、加齢黄斑変性症や、網膜静脈閉塞症、イールズ病などの他の症状において、網膜前血管新生が、失明の主な原因である。新生血管は網膜内部の脈管構造から硝子体に発達する。これは、新生血管に付随する線維性の組織の収縮による硝子体の出血、及び/又は、牽引性網膜剥離により視力障害を引き起こす可能性がある。最近では、製薬会社は、現在臨床試験において加齢性の黄斑変性の処置に関してVEGFR−2及びSrcキナーゼ類を共に阻害するTG100801を用いて、血管新生経路を阻害するために、薬剤標的を調査している。眼疾患を処置することを意図したVEGF経路の他の阻害剤が、Slevinらの文献“Expert Opin.Investig.Drugs(2008)17(9):1301−1314”において議論されている。
【0007】
国際公開第01/29009号及び国際公開第01/58899号には、VEGF受容体チロシンキナーゼ及びVEGF依存性細胞増殖の阻害剤としてピリジン誘導体を記述している。
【0008】
国際公開第02/090346号には、血管新生阻害活性を持つVEGF受容体チロシンキナーゼの阻害剤としてフタラジン誘導体を記述している。
【0009】
国際公開第04/056806号には、眼疾患の治療に有用となり得るタンパク質キナーゼ阻害剤としての2−(1−H−インダゾール−6−イルアミノ)−ベンズアミド化合物を教示している。
【0010】
PCT公報の国際公開第00/27819号、国際公開第00/27820号、国際公開第01/55114号、国際公開第01/81311号、国際公開第01/85671号、国際公開第01/85691号、国際公開第01/85715号、国際公開第02/055501号、国際公開第02/066470号、国際公開第02/090349号、国際公開第02/090352号、国際公開第03/000678号、国際公開第02/068406号、国際公開第03/040101号、及び国際公開第03/040102号全てには、一般構造式Aの化合物、それらの調製、及びVEGF依存性細胞増殖に付随する疾患を処置するためのVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤としてのそれらの使用を含むアントラニル酸アミド誘導体を教示している。

【0011】
他の治療目的のためのアントラニル酸アミド誘導体の使用は、例えば、米国特許第3,409,688号(鎮痛性、抗炎症性、抗潰瘍性)、及び欧州特許第564,356号(アンジオテンシンIIアンタゴニスト)において以前に開示された。
【0012】
PCT公報の国際公開第02/06213号及び国際公開第99/01426号には、MEK阻害剤、医薬組成物、及びそれらの使用方法として、一般構造式Bの化合物を含む置換フェニルアミノベンズヒドロキサム酸誘導体を教示している。

【0013】
米国特許第5,155,110号には、シクロオキシゲナーゼ阻害特性及び5−リポキシゲナーゼ阻害特性を有するヒドロキサム酸誘導体、並びに阻害によって有利な影響を受けた症状を処置するための医薬組成物を教示している。参考文献には、開示されたヒドロキサム酸エステル誘導体のチロシンキナーゼ阻害活性を記述できていない。
【0014】
国際公開第05/054179号には、VEGF受容体、特定にVEGFR−2(KDR)受容体を阻害することによって作用する血管新生阻害剤として一般構造式Cを有するヒドロキサム酸エステル誘導体を記述している。

【0015】
更に、本発明の化合物が、Src、Yes、Fyn、Lyn、Fgr、Lck、及び/又はHck等のSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼ、及び/又はJAK−2、及び/又はRaf−1、及び/又はcKit、及び/又はFma/CSF−1Rのタンパク質チロシンキナーゼ等の他のキナーゼの阻害剤として有用である可能性があり、それ自体としては、これらのキナーゼに関与する炎症性及び非感染性の自己免疫疾患の治療において有用性を示す。
【0016】
タンパク質チロシンキナーゼは、タンパク質基質におけるチロシン残基に対してアデノシン三リン酸の末端リン酸塩の転移を触媒する酵素ファミリーである。タンパク質基質上のチロシン残基のリン酸化は、免疫系の細胞、例えばT細胞の増殖及び活性化等の多様な細胞内のプロセスを調節する細胞内シグナルの伝達を引き起こす。T細胞の活性化が、タンパク質チロシンキナーゼの活性を調節することは、炎症性疾患の対応に対して魅力的な経路であるように見えることを、多くの炎症性症状や他の免疫系の障害(例えば自己免疫疾患)において、暗示している。受容体タンパク質チロシンキナーゼ、例えば、インスリン受容体、又は非受容体タンパク質チロシンキナーゼとなり得る多数のタンパク質チロシンキナーゼが同定されている。
【0017】
Srcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼは、炎症反応に関連する細胞内シグナル伝達に対して特に重要であることが分かった(“D.Okutani et al.,Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.291,2006,pp.L129−L141”;“CA.Lowell,Mol.Immunol.41,2004,pp.631−643”を参照)。例えば、Src、Yes、及びFyn等のSrcファミリータンパク質チロシンキナーゼは、様々な細胞型や組織で発現されるものもあるが、造血細胞等の特定の細胞型に制限される発現もある。従って、タンパク質チロシンキナーゼLckは、T細胞受容体の下流を活性化させるために、最初のシグナル伝達分子としてT細胞で殆ど独占的に発現され、その活性はT細胞シグナル伝達に対して不可欠である。Hck、Lyn、及びFgrの発現が、成熟単球及びマクロファージのLPS等の炎症性刺激によって増加される。また、主なB細胞Srcファミリーキナーゼの遺伝子発現(すなわち、Lyn、Fyn、及びBlk)を破壊するなら、未成熟B細胞は成熟B細胞へ発達することができなくなる。また、Srcファミリーキナーゼは、組織細胞の炎症反応に関与するもののみならず、単球、マクロファージ、及び好中球の補充及び活性化に対して不可欠なものとして同定されている。例えば、Hck、Lyn、及びFgrの発現が、成熟単球及びマクロファージのLPS等の炎症性刺激によって増加されることが分かった。
【0018】
大多数の自己免疫疾患及び炎症性疾患が、T細胞及びB細胞、並びに単球及びマクロファージなどの免疫系の他の細胞の活性化に関与している。従って、これらの細胞型の活性化を阻害できる化合物は、そのような疾患の処置において有用な治療薬と見なされる。
【発明の概要】
【0019】
本発明者らは、驚いたことに、新規のアミド類及びチオアミド類が、特定のVEGF受容体(しばしばKDR受容体と呼ばれる)、すなわち、VEGFR−2で高い受容体チロシンキナーゼ阻害活性を示すことを発見した。
【0020】
また、本発明の新規アントラニル酸アミドは、Srcファミリー、及び/又はJAK−2、及び/又はRaf−1、及び/又はcKit、及び/又Fma/CSF−1Rタンパク質チロシンキナーゼで、高いタンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を示す可能性があることが考察される。
【0021】
本発明の新規アントラニル酸アミドには、構造的に関連のある既知のアントラニル酸アミドと比較し、また国際公開第05/054179号のヒドロキサム酸エステル誘導体に関して多くの利点がある。
【0022】
本発明の化合物は、構造的に関連のある既知のアントラニル酸アミドと比較して、溶解度及び吸収の改善、有害な副作用の減少、及び代謝安定性低下等の薬物動態の特性を改善したかもしれない。国際公開第05/054179号の化合物と比較した本発明の化合物の特有の利点は、それらがより容易に代謝されているということである。
【0023】
また、国際公開第05/054179号のヒドロキサム酸エステル誘導体に関して、本発明の化合物は、親和性増加、又は類似の受容体親和性に加えて、耐光性の改善を示す。耐光性は、医薬品の使用向けのどの化合物に対しても望ましい特性であるが、他の症状、乾癬、皮膚炎、及び酒さ等の皮膚の病気、又は、調節解除された血管新生に付随する眼疾患の中でも、治療用の化合物に対して特に重要である。
【0024】
従って、本発明は一般式I:

[式中、R、R、及びRは水素、又は直鎖若しくは分岐の、飽和若しくは不飽和のC1−6炭化水素ラジカルを表し;
Dは窒素又はCHを表し;
Eは窒素又はCHを表し;
Gは窒素又はCHを表し;
Jは窒素又はCHを表し;
Lは窒素又はCHを表し;
nは1〜2の整数を表し;
Wは酸素又は硫黄を表し;
は、水素、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−6ヒドロキシアルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルケニル、C2−7ヘテロシクロアルキル、C6−12アリール、C3−12ヘテロアリール、又はC2−7ヘテロシクロアルケニルを表す(ここで、前記C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−6ヒドロキシアルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルケニル、C2−7ヘテロシクロアルキル、C6−12アリール、C3−12ヘテロアリール、又はC2−7ヘテロシクロアルケニルは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、オキソ、ヒドロオキシ、トリフルオロメチル、カルボキシ、シアノ、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキルチオ、トリフルオロメチル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルケニル、C2−7ヘテロシクロアルキル、C2−7ヘテロシクロアルケニル、C6−12アリール、C3−12ヘテロアリール、及びC1−3アルキルアミノからなる群から選択された1又はそれ以上の、同一又は異なる置換基で任意に置換され、前記C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C1−6アルコキシル、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキルチオ、トリフルオロメチル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルケニル、C2−7ヘテロシクロアルキル、C2−7ヘテロシクロアルケニル、C6−12アリール、C3−12ヘテロアリール、及びC1−3アルキルアミノは、それぞれ独立して、ヒドロオキシ、C1−4アルキル、C1−4アルキルオキシカルボニルから選択された1又はそれ以上の、同一又は異なる置換基で任意に置換される);
又は、R及びRは結合してC3−8シクロアルキニルの一部を形成し;
Yはカルボニル又はチオキソを表し;
は水素、C1−6アルキル、C1−6アルキルアミノ、C1−6アルコキシ、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルケニル、C2−7ヘテロシクロアルキル、又はC2−7ヘテロアリールを表し、(ここで、前記C1−6アルキル、C1−6アルキルアミノ、C1−6アルコキシ、C3−8シクロアルキル、C2−7ヘテロシクロアルキル、又はC2−7ヘテロアリールは、それぞれ独立して、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシカルボニル、又はC1−6アルキルカルボニルオキシからなる群から選択された1又はそれ以上の置換基で任意に置換される)]
の化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩、水和物又は溶媒和化合物に関する。
【0025】
別の態様では、本発明は、式Iの化合物、又は薬学的に許容される媒体若しくは賦形剤と共にそれらの薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和化合物を含む医薬組成物に関する。
【0026】
別の態様では、本発明は、異常な血管新生に付随する疾患又は症状を防止し、処置し、又は改善する方法、及びそれらを必要とする患者に式Iの化合物の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0027】
また別の態様では、本発明は、治療における使用向けの式Iの化合物に関する。
【0028】
また別の態様では、本発明は、調節解除された血管新生に付随した眼又は皮膚の疾患の処置、又は改善における使用用の式Iの化合物に関する。
【0029】
また別の態様では、本発明は、急性黄斑変性、加齢性黄斑変性、脈絡膜新生血管、網膜炎、サイトメガロウイルス網膜炎、黄斑浮腫、網膜障害、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、及び静脈うっ血性網膜症等の調節解除された血管新生に付随する眼疾患又は症状の予防、処置、又は改善のための医薬品の製造用の式Iの化合物の用途に関する。
【0030】
また別の態様では、本発明は、酒さ、乾癬、皮膚炎、扁平上皮癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、悪性皮膚リンパ腫、血管肉腫、カポシ肉腫、増殖性血管腫、水疱性類天疱瘡、多形性紅斑、ウイルス性疣贅、UV損傷、及び発毛及びサイクリングに関連する症状、並びに創傷治癒に関する症状等の調節解除された血管新生に付随する皮膚疾患又は症状の予防、処置、又は改善のための、他の治療活性化合物を任意に含む、医薬品の製造用の式Iの化合物の用途に関する。
【0031】
また別の態様では、本発明は、粥状動脈硬化、血管腫、血管内皮腫、化膿性肉芽腫、瘢痕ケロイド、アレルギー性浮腫、機能性子宮出血、濾胞性嚢胞、卵巣過剰刺激、子宮内膜症、肥満、関節炎、リウマチ性関節炎、滑膜炎、骨破壊および軟骨破壊、骨髄炎、パンヌス成長、骨棘形成、炎症性及び感染性疾患(肝炎、肺炎、腎炎)、喘息、鼻ポリープ、移植、肝再生、リンパ球増殖性疾患、甲状腺炎、甲状腺腫脹、閉塞性肺疾患、又は脳虚血再灌流障害若しくはアルツハイマー病等の調節解除された血管新生に付随する疾患又は症状の予防、処置、又は改善のための医薬品の製造用の式Iの化合物の用途に関する。
【0032】
また別の態様では、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼであるSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼ活性を調節できる抗炎症薬としての式Iの化合物の用途に関する。
【0033】
また別の態様では、本発明は、JAK−2若しくはRaf−1、又はcKit若しくはFma/CSF−1Rタンパク質チロシンキナーゼ活性を調節できる抗炎症薬としての式Iの化合物の用途に関する。
【0034】
また別の態様では、本発明は、非感染性抗炎症性若しくは自己免疫の疾患又は症状の処置、改善、又は感染防御(pherophylaxis)における使用向けの、式Iの化合物に関する。ここで、前記非感染性炎症性の疾患又は症状は、急性肺損傷、急性呼吸促迫症候群、アレルギー、アナフィラキシー、敗血症、若しくは移植片対宿主病等の急性炎症性疾患、又はアトピー性皮膚炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、変形性関節症、痛風、乾癬性関節炎、肝硬変、多発性硬化症等の慢性の炎症性疾患、又は非伝染性の(例えば、アレルギー性の)結膜炎、ぶどう膜炎、虹彩炎、角膜炎、鞏膜炎、上強膜炎、交感性眼炎、眼瞼炎、乾性角結膜炎、若しくは免疫学的角膜移植拒絶反応等の眼部疾患若しくは症状からなる群から選択され、また前記自己免疫の疾患又は症状は、自己免疫性胃炎、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、慢性特発性蕁麻疹、慢性免疫性ニューロパシー、糖尿病、糖尿病性腎障害、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変、全身性エリテマトーデス、及び甲状腺眼症からなる群から選択される。
【0035】
また別の態様では、本発明は、
N−[4−(2,4−ジオキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−アセトアミド(化合物501);
[4−(2,4−ジオキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−カルバミン酸メチルエステル(化合物502);
オキサゾール−5−カルボン酸[4−(2,4−ジオキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−アミド(化合物503);
フラン−2−カルボン酸[4−(2,4−ジオキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−アミド(化合物504);
からなる群から選択される式Iの化合物を調製するための中間体に関する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
用語「炭化水素ラジカル」は、水素と炭素原子だけを含むラジカルを示すことを意図し、「炭化水素ラジカル」は1又はそれ以上の二重、及び/又は、三重炭素−炭素結合を含んでもよく、また分岐又は直鎖部分と組み合わせて環状部分を含んでもよい。前記炭化水素は、1〜20の炭素原子を含み、好ましくは1〜12又は1〜10、例えば1〜6、例えば1〜4、例えば1〜3、例えば1〜2の炭素原子を含む。該用語は、以下で示されるように、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキニル、及びアリールを含む。
【0037】
本文脈において、用語「アルキル」は、炭化水素から1個の水素原子を除去したときに得られるラジカルを意味する。前記アルキルは、1〜20の炭素原子、好ましくは、2〜6の炭素原子、3〜4の炭素原子等の1〜12の炭素原子を含む。該用語には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、及びイソヘキシル等の、ノルマルアルキル(n−アルキル)、第二級アルキル、及び第三級アルキルのサブクラスが挙げられる。
【0038】
用語「シクロアルキル」は、二環式又は三環式ラジカル等の多環式ラジカルを含む飽和シクロアルカンラジカルであって、炭素原子数3〜20、好ましくは炭素原子数3〜10、特に炭素原子数3〜8において、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルの、炭素原子数3〜6、炭素原子数4〜5を含むことを意味する。
【0039】
用語「アルケニル」は、炭素原子数2〜10、特に2〜6の炭素原子において、例えばエテニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ノネニル、又はヘキセニル等の炭素原子数2〜4を含む、モノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタの不飽和炭化水素ラジカルを意味する。
【0040】
用語「シクロアルケニル」は、多環式ラジカルを含む、モノ、ジ、トリ、又はテトラ不飽和の非芳香族環式炭化水素ラジカルであって、炭素原子数3〜20、一般的には炭素原子数3〜10、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、又はシクロヘキセニルの炭素原子数3〜6、炭素原子数4〜5を含むことを意味する。
【0041】
用語「アルキニル」は、1〜5個のC−C三重結合かつ炭素原子数2〜20を含む炭化水素ラジカルであって、典型的には炭素原子数2〜10、特に炭素原子数2〜6の、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、又はヘキシニルの炭素原子数2〜4のアルカン鎖を含むことを意味する。
【0042】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、上記で定義されたシクロアルキルラジカルであって、多環式ラジカルを含み、炭素環と任意に縮合されており、ヘテロ原子数1〜6、好ましくはヘテロ原子数1〜3で、O、N、又はSから選択され、例えば、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ジオキソラニル、モルホリン、イミダゾリジニル、又はピペリジニルを意味する。
【0043】
用語「ヘテロシクロアルケニル」は、上記で定義されたシクロアルケニルラジカルであって、多環式ラジカルを含み、炭素環と任意に縮合されており、ヘテロ原子数1〜6、好ましくはヘテロ原子数1〜3で、O、N、又はSから選択され、例えばテトラヒドロピラノールを意味する。
【0044】
用語「アリール」は、炭素原子数6〜14、好ましくは炭素原子数6〜10で、特に5員環又は6員環等の炭素原子数6〜20を含み、フェニル、ナフチル、アントラセニル、インデニル、又はインダニル等の少なくとも1つの芳香族環と任意に縮合した炭素環である芳香族炭素環のラジカルを意味する。
【0045】
用語「ヘテロアリル」は、複素環式芳香族環のラジカルであって、炭素環又は複素環と任意に縮合されており、例えばヘテロ原子数1〜5及び炭素原子数1〜10、ヘテロ原子数1〜5及び炭素原子数1〜6、ヘテロ原子数1〜5及び炭素原子数1〜3、特にO、S、若しくはNから選択されるヘテロ原子数1〜4若しくはヘテロ原子数1〜2を有する5員環若しくは6員環、又はヘテロ原子数1〜4を有する二環と任意に縮合された5員環若しくは6員環等の、ヘテロ原子数1〜6(O、S、及びNから選択される)、及び炭素原子数1〜20を含み、少なくとも一つの環は芳香族であって、例えば、ピリジル、キノリル、イソキノリル、インドリル、テトラゾリル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリミジニル、ピラゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、1,2,4−トリアゾリル、イソオキサゾリル、チエニル、ピラジニル、ピリミジニル、[1,2,3]トリアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾイミダゾリル、又はベンゾフラニルを含むことを意味する。
【0046】
用語「炭素環式」には、上記に示したように、アリール、シクロアルカニル、及びシクロアルケニルが含まれる。
【0047】
用語「複素環」には、上記に示したように、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、及びヘテロシクロアルケニルが含まれる。
【0048】
用語「ハロゲン」は、周期表の第7番目の典型元素由来の置換基、好ましくはフルオロ、クロロ、及びブロモを意味する。
【0049】
用語「アルキルアミノ」は、式−NR(式中、各Rは、上記で示したように、互いに独立して、アルキル、アルケニル、又はシクロアルキルを表す)のラジカルで、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、又はtert−ブチルアミノを意味する。
【0050】
用語「アリールアミノ」は、式−NR(式中、Rは、上記で示したように、アリールである)のラジカルで、例えば、フェニルアミノを意味する。
【0051】
用語「アルコキシ」は、式−OR(式中、Rは、上記で示したように、アルキル、又はアルケニルである)のラジカルで、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ等を意味する。
【0052】
用語「アルキルチオ」は、式−S−R(式中、Rは上記で示したようにアルキルである)のラジカルを意味する。
【0053】
用語「アルコキシカルボニル」は、式−C(O)−O−R(式中、Rは上記で示したようにアルキルである)のラジカルで、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル等を意味する。
【0054】
用語「アルキルカルボニルオキシ」は、式−O−C(O)−R(式中、Rは上記で示したようにアルキルである)のラジカルで、例えば、メチルカルボニルオキシ、又はエチルカルボニルオキシを意味する。
【0055】
用語「アルキルカルボニル」は、式−C(O)−R(式中、Rは上記で示したようにアルキルである)のラジカルで、例えば、アセチルを意味する。
【0056】
用語「ヒドロキシアルキル」は、式−R−OH(式中、Rは上記で示したようにアルキルである)のラジカルで、例えば、ヒドロキシメチル、又はヒドロキシエチルを意味する。
【0057】
用語「薬学的に許容される塩」は、式Iの化合物と、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、蟻酸、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、ガラクタル酸、乳酸、マレイン酸、L−リンゴ酸、フタル酸、クエン酸、プロピオン酸、安息香酸、グルタル酸、グルコン酸、D−グルクロン酸、メタンスルホン酸、サリチル酸、コハク酸、マロン酸、酒石酸、そして、ベンゼンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファミン酸、又はフマル酸等の適切な無機酸又は有機酸との反応によって調製された塩を意味する。また、式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化銀、アンモニア等の適切な塩基との反応によっても調製される。
【0058】
用語「溶媒和化合物」は、化合物、例えば式Iの化合物と、溶媒、例えばアルコール、グリセロール、又は水との相互作用によって形成された化学種であって、前記化学種は固体形態であることを意味する。水が溶媒の場合には、前記化学種は水和物と呼ばれる。
【0059】
用語「Src」は、様々な細胞で発現するSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼを示すのに使われ、マクロファージで誘導的に発現する。Srcは炎症性の遺伝子発現のシグナル伝達経路、例えば、LPS刺激を受けたマクロファージにおいてTNF−alpha発現を仲介することに関与している。
【0060】
用語「Yes」は、様々な細胞で発現するSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼを示すのに使われる。Yesは免疫細胞、及び炎症細胞においてサイトカインのシグナル伝達のうち下流のシグナル伝達で関係している。
【0061】
用語「Fyn」は、動脈内の、T細胞、B細胞、NK細胞、及び肥満細胞で一様に発現するSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼを示すのに使われ、T細胞受容体経由でシグナル伝達、シグナル伝達を仲介する接着に関与する。Fynは肥満細胞脱顆粒及びサイトカイン産生における重要な役割をする。
【0062】
用語「Lck」は、動脈内の、T細胞、及び、NK細胞で発現するSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼを示すのに使われ、T細胞の活性化と分化で中心的役割をする。
【0063】
用語「Lyn」は、T細胞、B細胞、NK細胞、好中球、好酸球、マクロファージ、単球、肥満細胞、及び樹状細胞等の造血細胞で発現するSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼを示すのに使われ、動脈内の、B細胞応答の調節に関与している。
【0064】
用語「Hck」は、動脈内の、好中球、好酸球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞で発現するSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼを示すのに使われ、増殖、分化、及び遊走を含む細胞プロセスに最終的に影響を及ぼす様々な細胞外シグナルを伝達することに関与している。
【0065】
用語「Fgr」は、動脈内の、好中球、好酸球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞で発現するSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼを示すのに使われ、B細胞受容体、FcR、及び受容体であるインテグリンファミリーからのシグナル伝達カスケードに関与している。
【0066】
用語「Jak−2」は、免疫細胞で高い発現をするJAK(ヤヌスタンパク質チロシンキナーゼ)ファミリーのタンパク質チロシンキナーゼを示すのに使われ、炎症促進性サイトカインIL−6、IFN−γ、IL−3、IL−5、及びGM−CSFを含む多くのサイトカイン及び増殖因子の下流のシグナル伝達に対して不可欠である。
【0067】
用語「cKit」は、幹細胞因子(SCF)に対する受容体である受容体チロシンキナーゼを示すのに使われており、正常造血に必要とされる。cKitは、SCFが肥満細胞発生、増殖、及び生存に必要であるのと同様に、肥満細胞機能における不可欠な役割を果たす。SCFは、IgE/抗原誘発的な肥満細胞脱顆粒及びサイトカイン産生に対して不可欠である。c−kitの活性化は好酸球活性化及び脱顆粒を引き起こす。
【0068】
用語「Fms/CSF−1R」は、CSF−1に対する受容体であって、単球及びマクロファージによって主に発現される受容体チロシンキナーゼを示すのに使われる。CSF−1は、炎症の間に、マクロファージのエフェクター機能で中心的役割を果たし、マクロファージの分化、生存、及び機能を調節する。
【0069】
用語「Raf−1」は、RAFファミリーメンバーのチロシンキナーゼ様セリン/スレオニンキナーゼであって、そのうちMEK−MAPキナーゼ経路を活性化するためにGTP結合型Rasによって補充された主なエフェクターであるものを示すのに使われる。この経路は炎症誘発性サイトカインGM−CSFの発現、及び好中球の長寿を妨げることによる慢性炎症の発生に関係してきた。
【0070】
式Iの化合物の好ましい実施態様
本発明の現在好ましい実施態様において、Wは酸素を表す。
【0071】
本発明の別の好ましい実施態様において、YはC(O)である。
【0072】
本発明の別の好ましい実施態様において、Rは水素又はメチルを表す。
【0073】
更に本発明の別の実施態様において、Rは水素又はメチルを表す。
【0074】
更に本発明の別の実施態様において、Rは水素又はメチルを表す。
【0075】
本発明の別の好ましい実施態様において、Rは水素を表す。
【0076】
更に本発明の別の実施態様において、Rは水素を表す。
【0077】
更に本発明の別の実施態様において、Rは水素を表す。
【0078】
更に本発明の別の実施態様において、R1、、及びRはそれぞれ水素を表す。
【0079】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、DはCHである。
【0080】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、EはCHである。
【0081】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、GはCHである。
【0082】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、JはCHである。
【0083】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、LはCHである。
【0084】
更に本発明の別の実施態様において、nは1である。
【0085】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、Wは酸素を表し、YはC(O)で、R1、、及びRはそれぞれ水素、CHを表し、nは1である。
【0086】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、DはCH、EはCH、GはCH、及びJはCHである。
【0087】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、Dは窒素、EはCH、GはCH、及びJはCHである。
【0088】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、Rは、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−4ヒドロキシアルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、C2−5ヘテロシクロアルケニル、C6−12アリール、又はC6−12ヘテロアリールであって、前記C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−4ヒドロキシアルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、C2−5ヘテロシクロアルケニル、C6−12アリール、又はC6−12ヘテロアリールは、水素、フルオロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、C2−5ヘテロシクロアルケニル、及びC1−3アルキルアミノからなる群から独立して選択される、1つ又はそれ以上の同一又は異なる置換基で任意に置換され、前記C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、C2−5ヘテロシクロアルケニル、及びC1−3アルキルアミノは、ヒドロキシ、メチル、エチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルから独立して選択される、1つ又はそれ以上の同一又は異なる置換基で任意に置換される。
【0089】
好ましくは、Rで表される基は炭素原子数1〜10を含む。より好ましくは、Rで表される基は炭素原子数3〜8を含む。
【0090】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、RはC1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、C2−5ヘテロシクロアルケニルであって、前記C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、C2−5ヘテロシクロアルケニルは、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C3−6シクロアルキル、及びC3−6シクロアルケニルからなる群から独立して選択される、1つ又はそれ以上の同一又は異なる置換基で任意に置換され、前記C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C3−6シクロアルキル、及びC3−6シクロアルケニルは、メチル及びエチルから独立して選択される、1つ又はそれ以上の同一又は異なる置換基で任意に置換される。
【0091】
別の好ましい実施態様において、Rは3以下のヘテロ原子を含み、より好ましくは1以下のヘテロ原子を含み、最も好ましくは炭素原子及び水素原子のみから構成される。
【0092】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、Rは、イソブチル、イソペンチル、メチルブチル、エチルブチル、tert−ブチル、tert−ブチルメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシイソブチル、エチルヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、エチルチオメチル、フルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、ジエチルアミノメチル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、エトキシカルボニルシクロプロピル、シクロブチル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルヒドロキシメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキセニルメチル、テトラヒドロフラニルメチル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピラニルメチル、ジメチルジオキソラニル、ピロリジニルメチル、フルフリル、チエニル、チエニルメチル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルヒドロキシメチル、ピリジルメチルである。
【0093】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、Rは、シクロペンチルメチル、2−エチル−ブチル、3−メチル−ブチル、t−ブチル−メチル、又はシクロヘキサ−1−エニルメチルである。
【0094】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、R及びRはシクロプロピル環、シクロブチル環、シクロペンチル環又はシクロヘキシル環の一部を形成する。
【0095】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、Rが水素、メチル、エチル、プロピル、C1−3アルキルアミノ、メトキシ、エトキシ、C3−6シクロアルキル、C4−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、又はC2−5ヘテロアリールであって、前記メチル、エチル、プロピル、C1−3アルキルアミノ、メトキシ、エトキシ、C3−6シクロアルキル、C4−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、又はC2−5ヘテロアリールが、シアノ、メチル、エチル、プロピル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、メチルカルボニルオキシ、又はエチルカルボニルオキシからなる群から独立して選択される、1つ又はそれ以上の置換基で任意に置換される。
【0096】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、Rが、水素、メチル、メチルアミノ、エチルアミノ、メトキシ、エトキシ、シアノメチル、シクロプロピル、メトキシカルボニルエチル、メチルカルボニルオキシメチル、テトラヒドロフラニル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾール、オキサジアゾリル、チアジアゾリル又は、トリアゾリルであって、これら全てがメチル基で任意に置換される。
【0097】
更に別の実施態様において、Rは100ダルトン以下の分子量を持つ。
【0098】
更に本発明の別の実施態様において、Rは炭素原子数5以下である。
【0099】
更に本発明の別の実施態様において、Rはメチル、フリル、メトキシ、又はオキサゾリルである。
【0100】
更に本発明の別の好ましい実施態様において、式Iの化合物は、
(4−{[2−(3,3−ジメチル−ブチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−カルバミン酸メチルエステル(化合物101);
2−[(2−アセチルアミノ−ピリジン−4−イルメチル)−アミノ]−N−(2−シクロペンチル−エチル)−ベンズアミド(化合物102);
2−[(2−アセチルアミノ−ピリジン−4−イルメチル)−アミノ]−N−(3−エチル−ペンチル)−ベンズアミド(化合物103);
オキサゾール−5−カルボン酸(4−{[2−(3−エチル−ペンチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物104);
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(2−シクロペンチル−エチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物105);
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(4−メチル−ペンチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物106);
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(3,3−ジメチル−ブチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物107);
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(2−シクロヘキサ−1−エニル−エチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物108);
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(3−エチル−ペンチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物109);
からなる群から選択される。
【0101】
更に別の現在の好ましい実施態様において、一般式Iの化合物は、例えば800ダルトン未満、例えば700ダルトン未満、例えば600ダルトン未満、例えば500ダルトン未満の900ダルトン未満等の、1300ダルトン未満の分子量を持つ。
【0102】
更に別の好ましい実施態様において、医薬組成物は他の治療活性化合物を含んでもよい。
【0103】
式Iの化合物は、有機溶媒から濃縮によって直接結晶形態で得ることができ、又は有機溶媒、若しくは前記溶媒、及び有機物若しくは水等の無機物であってよい共溶媒の混合物から結晶化若しくは再結晶化によって、結晶形態で得てもよい。結晶は、基本的に溶剤フリーの形態で、又は水和物等の溶媒和化合物で単離される。本発明は、すべての結晶変態及び結晶形態、並びにそれらの混合物にも及ぶ。
【0104】
式Iの化合物は、非対称置換(キラル)炭素原子、及び異性体の存在、例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何異性体を生じるおそれのある炭素―炭素二重結合を含んでいてもよい。本発明は、純粋な形態で、又はそれらの混合物のような異性体全てに関する。また、本発明は式Iの化合物の可能な互変異性体全てに関する。
【0105】
新生血管の形成は、この形成の可否に作用する因子間の均衡、すなわち、血管新生促進化合物と抗血管新生化合物との均衡において行われる。初期の発生において、内皮細胞を増殖し分化すると、以前は無血管性であった組織において血管が形成される。この第一段階は、成熟血管に達するまで再構築されなければならない漏出しやすいネットワークである。このプロセスは脈管形成と呼ばれる。また、新生血管の形成は、血管新生の発芽と呼ばれるプロセスで、既存の血管から起こるかも知れない。ここで、「古い」血管は、最初はある位置の部位で不安定な状態にあり、新しい血管はそこから形成され、その後成熟される。
【0106】
上記のプロセスは一般的に、血管内皮に関与しており、その血管内皮は血管の管腔を覆う平滑細胞の単一層によって構成される特定の型の内皮である。前記の血管内皮で作用する特異的な増殖因子の多くは同定されており、血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーの5つのメンバー、アンジオポエチンファミリーの4つのメンバー、及び大きなエフリンファミリーのうち1つのメンバーを含んでいる。しかし、VEGFは、脈管形成及び血管新生の発芽の両方によって未成熟な血管の形成を始めるのに必要であるため、血管形成のなかで最も重要なドライバーとしての地位を保持している[Yancopoulos,Nature,407,242−248,2000]。VEGFは、本来「血管透過性因子」(VPF)と命名されているが、血管新生因子であって、脈管系の発生及び分化、並びに胚発生、つまり正常発生の期間であって、かつその細胞受容体と共に大多数の病理学的異常状態にある脈管系の構成成分を調節するネットワークの中心に位置する[G.Breier et al.,Trends in Cell Biology 6,454−6,1996]。
【0107】
VEGFは「血小板由来性増殖因子」(PDGF)に関連する、二量体の、ジスルフィド結合の46−kDa糖タンパク質であって;正常な細胞株及び腫瘍細胞株によって生産され;内皮細胞特異的な分裂促進因子であって;in vivoの試験系(例えば、ウサギの角膜)において血管新生活性を示し;内皮細胞及び単球に対して走化性で;そして、内皮細胞の中でプラスミノーゲン活性化因子を引き起こし、そのプラスミノーゲン活性化因子は毛細血管の形成の間、細胞外基質のタンパク分解に関与する。VEGFのアイソフォームの多くは、同等の生物学的活性を示すことが知られているが、それらを分泌する細胞の型、及びそのヘパリン結合能において異なる。更に、例えば、「胎盤増殖因子」(PIGF)及びVEGF−C等のVEGFファミリーの他のメンバーが存在する。
【0108】
VEGFは、血管透過性亢進及び浮腫の形成に寄与すると知られている唯一の血管新生増殖因子であるという点で珍しい。実際に、血管性透過性亢進、及び他の多くの増殖因子の発現又は管理に付随している浮腫は、VEGF産生を通じて仲介されているように見える。
【0109】
炎症性サイトカインはVEGF産生を刺激する。低酸素症は、多数の組織におけるVEGFの著しい発現上昇を引き起こし、それ故に、梗塞、閉塞、乏血、貧血、又は循環障害を伴う状況が、VEGF/VPFを介した応答、血管透過性亢進、関連浮腫、変化した経内皮交換、及びしばしば血管外漏出によって伴われる巨大分子の血管外遊出を典型的にもたらし、過度のマトリクス沈着、異常な間質増殖、繊維症等が生じ得る。従って、VEGFを介した透過性亢進は、これらの病原性の特徴を持つ疾患に著しく寄与することができる。このように、血管新生の制御因子は重要な治療薬になっている。
【0110】
VEGFR−1(又は、fms様チロシンキナーゼ受容体(Flt−1))、VEGFR−2及びVEGFR−3の、3つのVEGF受容体が知られおり、それらは内皮細胞で殆ど独占的に発現する。VEGFR−2は、以前はKDR(キナーゼ挿入ドメイン含有受容体)と呼ばれており、この受容体がVEGFによる細胞増殖の誘導において極めて重要な役割を果たすように見える[Ellis,Seminars in Oncology,28,94−104,2001]。VEGF受容体はチロシンキナーゼ受容体の群に属し、VEGF結合部位を内部に持つ、7つの細胞外Ig様ドメイン、及び細胞内チロシンキナーゼドメインから構成される。細胞内ドメイン及び細胞外ドメインは短い膜貫通領域によって連結される[Shawver,DDT,2,50−63,1997]。他の受容体チロシンキナーゼのように、VEGFR−2はVEGFに結合するとすぐに二量体化し、そのチロシンキナーゼドメインは自己リン酸化される。続いて、この活性型は、例えばさらに別のリン酸化によって、活性化される他の分子と結合する。このカスケードは、最終的に、内皮細胞の増殖の引き金となり、新生血管の形成の引き金となる。
【0111】
成人健常者の血管は大部分が静止状態であるが、成人の皮膚は、組織修復の期間であって、かつ乾癬、様々なタイプの皮膚炎、水疱症、扁平上皮癌、悪性黒色腫、及びカポジ肉腫を含む皮膚腫瘍、並びに幼児期の増殖性血管腫を含む多くの疾患の状態にある、血管新生を迅速に開始するための能力を保持する。また、皮膚における血管新生は、酒さ、及び基底細胞癌等の、肉眼で見えて、突出した血管によって特徴付けられる数多くの疾患に関係している。本発明の化合物は特にこれらそれぞれの処置に有用であろう。
【0112】
研究では、正常な皮膚において、血管静止状態が内因性血管新生阻害剤の影響により維持され、その影響は血管新生の刺激の影響を上回ることが示唆された。従って、血管新生は、血管新生因子の分泌の増加によって、又は血管新生阻害剤の発現低下によって生じ得る。
【0113】
血管内皮増殖因子は、皮膚の中の血管新生の増加に関連する疾患に関係した重要な血管新生因子である。正常な皮膚において、VEGFが低レベルで発現することが分かったが、一方で、乾癬、接触皮膚炎、複数水疱性疾患、ウイルス性パピローマ、及び扁平上皮癌等の、新脈管形成に付随する皮膚疾患において、表皮角化細胞によるVEGF発現の顕著な増加があることが分かった。
【0114】
皮膚血管新生におけるVEGFの役割に関する詳細な議論は、Detmarの文献Journal of Dermatological Science 24 Suppl.1(2000);78−84でされている。
【0115】
本発明において特に関心があるのは酒さである。酒さは、顔面皮膚及び眼の炎症及び血管異常によって特徴付けられる一般によくある症状である。紅斑と発赤は、一過性から持続性に発達する恐れがあり、毛細血管拡張症又は丘疹及び膿疱が伴うことがよくある。場合によっては、持続性の浮腫の結果、鼻の組織が厚くなることがあるかもしれない。大抵の場合、これらの特徴のいくつかだけが存在し、これは酒さの包括をサブクラスに分けることが必要となる。ある種の酒さを患っている患者に対して非常に効果的な処置が、他の患者に対してはるかに効果がないこともあるかもしれないため、これは特に重要である。酒さは4つのサブタイプに分割される: 紅斑毛細血管拡張性型、丘疹膿疱性、瘤腫性、及び眼性(Crawford G H et al.J Am Acad Dermatol 2004;51:327−41を参照)。
【0116】
酒さにおけるVEGFの役割がGomaa A H Aら(J Cutan Pathol 2007;34:748−753)及び、Smith J Rら(Br J Opthalmol 2007;91:226−229)によって調査されており、後者には、非瘤腫性酒さの患者からの損傷性皮膚標本中で真皮性のVEGFの発現が増加することが発見され、VEGFが、非瘤腫性酒さにおける血管新生の増加に必然的に関連しているかもしれないということが示唆されている。
【0117】
従って、本発明の化合物は、酒さの治療、特に非瘤腫性酒さに対して有用であろう。
【0118】
以下で議論するように、ヒト癌の大部分が、腫瘍細胞によるVEGFの過剰発現によって、また腫瘍に付随する血管のVEGF受容体の過剰発現によって特徴付けられている。また、VEGFは、皮膚の扁平上皮癌で非常に早期の腫瘍発生に影響するように見える。またVEGF−Cも、VEGFR−3と同様、VEGFR−2で作用し、その発現はカポシ肉腫において重要であると考えられる。
【0119】
腫瘍細胞は、増殖及び転移するのに酸素を必要とする。酸素は、非常に限られた拡散範囲を有しており、そのため腫瘍に対して非常に限られた大きさを超えて増殖するためには、受動的な酸素運搬に依存することはできないが、むしろ能動的に酸素輸送を確立しなければならず、すなわち、宿主から血管を誘引しなければならない。栄養分は、腫瘍が必要とするが、血管を通しても供給される。腫瘍が無血管野で始まり、又は最終的に無血管野にまで拡大し、低いpOとpHをもたらし、これらの要因が、例えば、腫瘍細胞中のVEGFの発現上昇の引き金となる。十分な酸素と栄養供給がなければ、腫瘍細胞が壊死、又は細胞死となり、その結果、腫瘍は増殖しなくなり、退行さえするかもしれない。血管新生は、直径約1−2mmを超えて増殖する腫瘍に対する絶対必要条件と見なされ;この限度になるまで、酸素と栄養分は拡散によって腫瘍細胞に供給され得る。従って、あらゆる腫瘍は、その起源及び原因に関わらず、ある大きさに達した後に、それが増殖するために血管新生に依存している。大多数のヒト腫瘍、特に神経膠腫、及び細胞腫が、高いレベルのVEGFを発現する。このことは、腫瘍細胞によって放出されたVEGFが毛細血管の成長を刺激し、そして腫瘍血管内皮がパラクリン様式で、かつ改善された血液供給を通じて増殖することが腫瘍増殖を加速する、と言う仮説を導いた。VEGF発現の増加は、神経膠腫の患者の脳浮腫の発生について説明できるであろう。in vivoの腫瘍血管新生因子としてのVEGFの役割に関する直接な証拠は、VEGF発現、又はVEGF活性化を阻害した研究において示されている。これは、抗VEGF抗体、シグナル伝達を阻害するドミナントネガティブなVEGFR−2変異体、及びアンチセンスVEGF RNA手法を用いて達成された。すべてのアプローチで、腫瘍血管新生を阻害した結果、in vivoで神経膠腫細胞株、又は他の腫瘍細胞株の増殖の低減となった。既に、1971年にFolkmanは、血管新生の阻害が固形腫瘍によって顕在化された癌の治療のための戦略であったであろうことを示唆した[Folkman,in Cancer Medicine,(Eds Holland et al),132−152,Decker Ontario,Canada,2000]。この見解は、血管新生が腫瘍の周辺で発生するということが以前でも観察されたこと、及び「血管新生の」原則が腫瘍によって作り出されたという仮説に基づいていた。
【0120】
3つの主な機序が新脈管形成抑制剤の活動で重要な役割:1)アポトーシスと増殖との間で達成されるバランスによる網状腫瘍の増殖が存在しないという結果となって、血管静止腫瘍内での血管、特に毛細血管の増殖阻害;2)血流が存在しないことによる腫瘍への、及び腫瘍からの腫瘍細胞の移動の阻止;及び3)内皮細胞増殖の阻害、すなわち、血管を正常に覆う内皮細胞により周辺の組織に影響を及ぼすパラクリン増殖刺激効果を回避するという役割を果たす[R.Connell et al.,Exp.Opin.Ther.Patents,11,77−114,2001]。上記で述べたように、本発明の化合物はVEGFR−2(KDR)を阻害し、それ故、血管新生、すなわち、新しい血管の形成を妨げ、その結果、腫瘍に増殖を止めさせ、あるいは退行さえさせるであろう。
【0121】
本発明の化合物は、扁平上皮癌、基底細胞癌、悪性の黒色腫、悪性の皮膚リンパ腫、血管肉腫、カポシ肉腫、および増殖性血管腫等の腫瘍又は腫瘍性疾患の予防、処置、又は改善等の調節解除された血管新生に付随する疾患又は症状の予防、処置、又は改善に対して有用である。
【0122】
また、多くの眼病は、血管新生、例えば、増殖糖尿病網膜症、未熟児網膜症、網膜分枝静脈閉塞症後及び網膜中心静脈閉塞症後の虹彩血管新生及び続発緑内障、加齢黄斑症、並びに角膜血管新生のプロセスに関連している。血管新生調節の複合系がまだ完全に理解されるというわけではないが、VEGFのレベルの増加とこれらの多くの症状とが関連させられてきた。組織低酸素、及び炎症がその分泌を刺激することができること及び、おそらく酸素センシングヘムタンパク質によって調節されたVEGF mRNAのレベルの増加が、網膜剥離の低酸素領域で発見されたことが知られている。糖尿病性網膜症においても、網膜の低酸素の非灌流領域がVEGFを分泌し、この症状の中で最も重要な因子であると思われる。
【0123】
ミュラー細胞及び網膜色素上皮細胞に加えて、網膜の毛細血管壁の細胞(内皮細胞、周皮細胞、及び平滑筋細胞)は、VEGFを分泌するだけで、又、VEGF受容体は眼の内皮細胞で高い濃度において発見された。VEGFは網膜で局所的に作用するか(例えば、増殖性の糖尿病性硝子体網膜症のように)、又は前方のセグメントに拡散するかもしれない(ただし、虹彩角膜角の虹彩血管新生を生じるおそれがある)。血管新生を引き起こすのと同様、VEGFもまた、血管透過性を増加させるという効果を持ち、そのため、血管新生に付随する炎症性疾患に関係し、血液網膜関門が損傷する。
【0124】
VEGFの阻害に対する4つの標的候補がある。これらは、VEGF分泌の阻害をすること、VEGFを不活性化すること、眼の内皮細胞でVEGF受容体を遮断すること、及び細胞活性化を誘発したシナプス後VEGFを阻害することである。本発明は、VEGF受容体、特にVEGFR−2を遮断することに関する。
【0125】
しかしながら、血管新生シグナル伝達経路及び多数の血管新生の因子の性質が複雑であるため、シグナル因子又はシグナル受容体を遮断することは、血管新生を減少させるのに十分ではないかもしれない。従って、本発明の化合物は、他の抗血管新生化合物、特に血管新生の調節系の異なる部分を標的にする抗血管新生化合物と協同した使用に適している。
【0126】
眼疾患における血管新生及びVEGFの役割について、Cursiefen及びSchonherrの文献Klin Monatsbl Augenheilkd 1997; 210: 341−351にて更に詳しく議論している。
【0127】
調節解除した血管新生は、多種多様な病理学的症状又は疾患と関連付けられてきた(参照:“P.Carmeliet & R.K.Jain,Nature,Vol.407,2000,pp.249−257”;“A.H. Vagnucci & W.W.Li,The Lancet,Vol.361,2003,605−608”;“B.Xuan et al.,J.Ocular Pharmacology & Therapeutics,Vol.15(2),1999,pp.143−152”)。本発明の化合物は有用であるが、阻止、予防、処置、又は調節解除された血管新生に付随又は関連する疾患や症状の回復だけに限らない。これらの症状又は疾患は、異常血管新生、又は血管機能不全、酒さ、アテローム性動脈硬化症、血管腫、血管内脾腫、いぼ、化膿性肉芽腫、発毛、瘢痕ケロイド、アレルギー性浮腫、機能性子宮出血、卵胞嚢胞、卵巣過刺激、子宮内膜症、肥満、関節炎、リウマチ性関節炎、滑膜炎、骨及び軟骨破壊、骨髄炎、パンヌス成長、骨棘形成、炎症性及び感染性疾患(肝炎、肺炎、腎炎)、喘息、鼻ポリープ、移植、肝再生、網膜症、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、子宮内膜症、乾癬、リンパ球増殖性疾患、甲状腺炎、甲状腺腫脹、閉塞性肺疾患、又は脳虚血再灌流障害、アルツハイマー病、並びに急性黄斑変性、加齢性黄斑変性、脈絡膜新生血管、網膜炎、サイトメガロウイルス網膜炎、黄斑浮腫、及び静脈うっ血性網膜症等の眼疾患によって特徴づけられる症状又は疾患が挙げられる。
【0128】
式Iの化合物は現在、Src、Yes、Fyn、Lyn、Fgr、Lck、及び/又はHck等のSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼ、及び/又はJAK−2、及び/又はRaf−1、及び/又はcKit、及び/又はFma/CSF−1Rのタンパク質チロシンキナーゼ等の他のキナーゼの阻害剤としても有用であると考えられており、更に、これらのキナーゼに関与する非感染性炎症性、又は自己免疫性の疾患又は症状の処置、改善又は予防において有用であると考えられる。
【0129】
前記非感染性炎症性疾患又は症状の例は、急性肺損傷、急性呼吸促迫症候群、アレルギー、アナフィラキシー、敗血症、若しくは移植片対宿主病等の急性炎症性疾患、又はアトピー性皮膚炎、クローン病、病潰瘍性結腸炎、変形性関節症、痛風、乾癬性関節炎、肝硬変、又は多発性硬化症からなる群から選択される。
【0130】
前記自己疾患の例は、自己免疫性胃炎、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、慢性特発性蕁麻疹、慢性免疫性ニューロパシー、糖尿病、糖尿病性腎障害、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変、全身性エリテマトーデス、及び甲状腺眼症からなる群から選択される。
【0131】
式Iの化合物は現在、非伝染性の(例えば、アレルギー性の)結膜炎、ぶどう膜炎、虹彩炎、角膜炎、鞏膜炎、上強膜炎、交感性眼炎、眼瞼炎、乾性角結膜炎、又は免疫学的角膜移植拒絶反応等の非感染性炎症性の眼部疾患又は症状の処置に特に有用であると考えられている。
【0132】
また本発明の化合物は、ヒトの処置に役立つことの他、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ等の哺乳動物を含む動物の獣医学処置に有用であるかもしれない。
【0133】
治療において使用するため、本発明の化合物は、一般的に医薬品組成物、又は医薬製剤の形態である。従って、ビタミンD誘導体及びオールトランスレチノイン酸等の分化誘導薬;デキサメタゾン及びプレドニゾン等の副腎皮質ステロイド、化学療法剤、抗癌剤、細胞毒性剤等の、1つ又はそれ以上の他の治療活性化合物と任意に一緒に、薬学的に許容される賦形剤、又は溶媒と一緒に、本発明は式Iの化合物を包む医薬組成物に関する。賦形剤は、組成物の他の成分と適合性があるという意味で「許容され」なければならなく、それらのレシピエントに有害であってはならない。
【0134】
処置が別の治療活性化合物の投与を必要とするならば、前記化合物の有効用量について、“Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,9th Ed.,J.G.Hardman and L.E.Limbird(Eds.),McGraw−Hill 1995”を調べることを推奨する。
【0135】
好都合なことに、活性成分は組成物の重さの0.1から99.9%を包む。
【0136】
用語「用量単位」は、単位、すなわち、患者に投与させることができ、また、活性物質それ自体、又は活性物質と固体、若しくは液体の医薬希釈剤、若しくは医薬担体との混合物のどちらかを含む、物理的かつ化学的に安定した単位投与として残存しながら、容易に取り扱い包装することができる単回投与を意味する。用量単位の形態において、常に患者の症状に応じ、かつ開業医の処方箋に従いながらであるが、化合物を適切な間隔で1日1回又はそれ以上の回数で投与することができる。ある治療計画において、長間隔で、例えば、1日置き、毎週で、なおより長い間隔での投与は有益であるかもしれないことも考えられる。
【0137】
好都合なことに、製剤の投与単位は、式Iの化合物0.01mg〜10000mgを含み、好ましくは200mg〜1000mg等の100mg〜3000mgを含む。
【0138】
製剤は、例えば、点眼用投与(持続投与、又は時間放出投与を含む)、経口投与(持続投与、又は時間放出投与を含む)直腸投与、非経口投与(皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与、関節内投与、及び静脈内投与を含む)、経皮性投与、外用投与、経鼻投与、又は頬側投与に適した形態におけるものが挙げられる。
【0139】
製剤は、簡易に投与単位の形態で提示してもよく、また、例えば、Remingtonの“The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,2000”で開示された、薬学の分野において周知ないずれか方法で調製してもよい。全ての方法は、活性成分を1つ又はそれ以上の副成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体、若しくは微細固体担体、又はその両方と一様にかつ親密に会合させることによって調製され、その後、必要であれば、生成物を望ましい製剤に成形することによって調製される。
【0140】
点眼投与に適した製剤は、有効成分の無菌水性調製の形態であってもよく、それは微結晶懸濁液の形態であってもよく、例えば、水性の微結晶懸濁液の形態であってもよい。また、例えば、“Encyclopedia of Pharmaceutical Tehcnology,vol.2,1989”に開示された、リポソーム製剤、又は生分解性ポリマー系は、点眼投与用の活性成分を表示するのに使用してもよい。
【0141】
局所投与又は点眼投与に適した製剤は、リニメント剤、ローション剤、ゲル剤、外用剤、水中油剤等の液体若しくは半液体状の調製、又はクリーム剤、軟膏剤、若しくはペースト剤等の油中水乳剤;又は、滴剤、硝子体内注射、及び時間放出剤系等の液剤、若しくは懸濁剤が挙げられる。
【0142】
経口投与に適切な本発明の製剤は、それぞれ活性成分のあらかじめ定められた量を含む、カプセル剤、サシェ剤、錠剤、又はロゼンジ剤の形態;散剤又は顆粒剤の形態;水性液体、又はエタノール、若しくはグリセロール等の非水性液体の溶液又は懸濁液の形態形態;又は、水中油型乳剤、若しくは油中水乳剤の形態である。前記油剤は、例えば、綿実油、胡麻油、ココナツ油、又はピーナッツ油等の食用油であってもよい。水性懸濁液に適切な散布剤、又は懸濁剤は、トラガント、アルギン酸塩、アラビアゴム、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、及びポリビニルピロリドン等の合成ゴム、又は天然ゴムが挙げられる。また、活性成分は巨丸剤、舐剤、又はペースト剤の形態で投与してもよい。
【0143】
錠剤は、活性成分と任意の1つ又はそれ以上の副成分とを圧縮加工すること、又は成形することによって作ってもよい。圧縮錠は、適切な機械において、例えば乳糖、ブドウ糖、デンプン、ゼラチン、アラビアゴム、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレン・グリコール、又は蜜蝋等の結合剤;例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、又は塩化ナトリウム等の潤滑剤;例えば、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、又はクロスポビドン等の崩壊剤、又はポリソルベート80等の分散剤によって任意に混合された、散剤や顆粒剤等の自由流動性形態の活性成分を圧縮加工することによって調製される。成形錠剤は、適切な機械で、粉末状の活性成分及び不活性な液体希釈剤で湿らせた適切な担体の混合物を成形することによって作られる。
【0144】
直腸投与用の製剤は、坐剤の形態であって、坐剤中の本発明の化合物が、ココアバター、水添植物油、ポリエチレングリコール、又はポリエチレングリコール脂肪酸エステル類等の低融点水溶性固体、又は低融点不水溶性固体と混合されもよいが、エリキシル剤は、パルミチン酸ミリスチルを使用することによって調製されてもよい。
【0145】
非経口投与に適した製剤は、活性成分の無菌油性液剤又は無菌水性液剤を都合よく含み、無菌水性液剤は、好ましくは移植患者の血液と等張で、例えば、等張食塩水、等張グルコース溶液、又は等張緩衝液である。製剤は、例えば細菌保持フィルターの濾過、滅菌剤の製剤への付加、製剤の照射、又は製剤の加熱によって簡便に滅菌してもよい。また、例えば、“Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,vol.9,1994”において開示されたリポソーム製剤は、非経口投与に適している。
【0146】
また代わりに、式Iの化合物を、例えば、使用する直前に滅菌溶剤中に容易に溶解される、凍結乾燥粉末の滅菌の固体剤として表示してもよい。
【0147】
経皮製剤が硬膏剤、又はパッチ剤の形態であってもよい。
【0148】
経鼻投与、又は、口腔内投与に適した製剤は、粉末、自己噴射型製剤、及びエアゾール剤及び噴霧剤等のスプレー製剤が挙げられる。そのような製剤は、例えば、“Modern Pharmaceutics,2nded.,G.S.Banker and C.T.Rhodes(Eds.)Marcel Dekker,New York,427−432”;“Modern Pharmaceutics,3thed.,G.S.Banker and C.T.Rhodes(Eds.),Marcel Dekker,New York,618−619,718−721”;“Encyclopedia of Pharmaceutical Technology vol.10,J Swarbrick and J.C Boylan(Eds),Marcel Dekker,New York,191−221”により詳しく開示されている。
【0149】
上記成分に加えて、式Iの化合物の製剤は、賦形剤、緩衝剤、香味剤、着色剤、界面活性剤、濃厚剤、保存剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル(抗酸化剤を含む)、乳化剤等の1つ又はそれ以上の追加成分を含んでもよい。
【0150】
活性成分が薬学的に許容される無毒性の酸又は塩基を持つ塩の形態で投与される場合、好ましい塩は、特定の適切な吸収速度を得るために、例えば、易水溶性、又は難水溶性である。
【0151】
調製方法
本発明の化合物は、有機合成の分野における当業者に周知な多くの方法で調製できる。本発明の化合物は、合成有機化学の分野で公知な方法、又はその分野における当業者によって理解されるそれらのバリエーションと共に、以下に概略した方法を用いることによって合成することができる。好ましい方法は以下に記載するものを含むが、これらに限定されない。
【0152】
式(I)の新規化合物は、この節に記述する反応及び手法を用いて調製してもよい。前記反応は、試薬、及び用いる物質に適切で、かつ形質転換をもたらすのに適した溶媒中で実行される。また、以下に記述する合成方法において、溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験期間、後処理手順を含むすべての提案された反応条件が、その反応の基準の条件になるように選ばれることが理解されなければならなく、それは当業者によって容易に認識できるものであろう。反応における出発分子の様々な部分に存在する官能性は、試薬と提案した反応との適合性がなければならないということが、有機合成の分野の当業者によって理解される。所定のクラスに分類される式(I)の化合物の全てが、記述した方法のいくつかにおいて必要とされる反応条件のいくつかと適合性があるというわけでなくてもよい。反応条件と適合性のある置換基に対してそのような限定をすることは、当業者に対して容易に明らかであって、代替法を使うことができる。
【0153】
式(I)の化合物を、当業者に容易に利用可能な手法及び手順によって、例えば、次のスキームで出発した手順に従うことによって調製できる。これらのスキームは何等かの方法で本発明の範囲を限定することを意図していない。全ての置換基は、ほかの方法で示されていない限り、前もって定義している。試薬及び出発物質は、当業者にとって容易に利用可能である。
【0154】
式(I)の化合物は、スキーム1に示したように、式(II)の化合物と式(III)のアミンとを反応させることによって一般的に得られる。好ましい溶媒はDMF及びピリジン等の非プロトン性溶媒である。
【0155】
反応は、一般的に、約−78℃〜約60℃の温度で、しばしば室温程度で行われ、通常、約2時間〜約5日で完了する。ろ過及び溶媒を減圧下で蒸発させ、生成物を産出し、望むなら、クロマトグラフィー、結晶化、又は蒸留等の標準的な方法によってその生成物を更に精製してもよい。また代わりに、反応の実施に使用された溶媒を取り除くことによって、例えば、減圧蒸発によって、生産物を単離することができ、更に上記のように精製することができる。
【0156】

スキーム1:一般式(II)の化合物から一般式(I)の化合物を調製する一般的な方法
【0157】
一般式(II)の化合物は、一般的に、一般式(IV)のアミンと式(V)の化合物とを反応させることによって調製される。好ましい溶媒は、ピリジンのような非プロトン性溶媒である。
【0158】
反応は、一般的に、約−78℃〜約60℃の温度で、しばしば室温程度で行われ、通常、約2時間〜約5日で完了する。
【0159】

スキーム2:一般式(II)の化合物の一般的な調製方法
【0160】
一般式[IV]の窒素置換酸無水物は、スキーム3に示した一般式[VI]の酸無水物から調製することができる。一般式[VI]の酸無水物は、アルコール[VII]との処理で、光延反応においてはLG=OHであり、トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)又はアゾジカルボン酸ジイソプロピルと共に、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテル等だけに限られないが、適切な溶媒中で処理される。あるいは、一般式[IV]のN−アルキル化した酸無水物は、[VI]を炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウム等の適切な塩基で処理し、次いで、適切なハロゲン化アルキル[VII](ここで、LG=Cl,Br,I)でアルキル化することによって調製できる。そのような調製の非限定的実施例は、例えば、Synthetic Communications(2002),32,1009−1013、本明細書中、及び国際公開第00/27819号の参考文献においてG.M.Coppolaによって記述されている。
【0161】
一般式[VI]の酸無水物は、商業的に利用可能であるか、又は当業者が周知な手順を用いることによって容易に調製できるものである。そのような調製方法の非限定的実施例は、G.M.Coppolaによる“Synthesis(1980),505−536”;Jonssonらによる“J.Med.Chem.(2004),47,2075−2088”;J.Clewsらによる“Tetrahedron(2000),56,8735−8746”、及び米国特許第3,887,550号に記述されている。
【0162】

スキーム3:一般式[VI]の酸無水物から一般式[IV]の窒素置換酸無水物の調製の一般的な方法
【0163】
出発物質[III]及び[VIII]は、商業的に利用可能であるか、又は有機合成の当業者に精通した標準的な方法によって合成できるものである。
【0164】
上記のスキーム1、2、及び3は、可能な合成ルートの1つを示したが、他の合成ルートもまた可能であることが理解されるであろう。例えば、スキーム1及び2に示されたステップの順番は、そのため、アシル化又はチオアシル化が最終ステップになるように、その直前でアミド形成又はチオアミド形成と取り換えることができるであろう。
【実施例】
【0165】
一般手順、調製、及び実施例
H核磁気共鳴(NMR)スペクトルは通常300MHzで記録され、13C NMRスペクトルは75.6MHzで記録された。化学シフト値(δ,in ppm)は、特定の溶媒において内部標準テトラメチルシラン(δ=0.00)、若しくはクロロホルム(δ=7.25)、又は重水素化クロロホルム(13C NMRに対してδ=76.81)に関連して引用される。多重項の値、定義されたもののうちいずれか(二重項(d)、三重項(t)、四重項(q))、又は範囲が引用されない場合を除いて、約中点での定義されていない(m)が与えられる。(bs)は幅広い一重項を示す。用いられた有機溶媒は通常無水物であった。クロマトグラフィーはMerck silica gel 60(0.040−0−063mm)で行われた。示された溶媒比は他の方法で特に言及されていない限り、v:vを指す。
【0166】
次の略称は終始、使用されている:
ATP アデノシン三リン酸
BSA ウシ血清アルブミン
DCM ジクロロメタン
DMF N,N’−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
Et エチル
Eq 当量
h 時間
L リットル
LG 脱離基
m ミリ
M モル濃度(mol/l)
Me メチル
MHz メガヘルツ
NMR 核磁気共鳴
o/n 一晩
rt 室温
SEB 補充酵素緩衝液(Supplement enzymatic buffer)
RT 保持時間
TBS トリス緩衝生理食塩水
THF テトラヒドロフラン
Tris トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
v 体積
【0167】



【0168】

1−(2−アミノ−ピリジン−4−イルメチル)−1H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−2,4−ジオン(5mmol)(国際公開第2005054179号の手順に従い調製した)を乾燥ピリジン(20mL)中に溶かした。アシル化試薬(15mmol、3eq)を10分間滴下した。反応を室温で一晩放置した。減圧下で溶剤を取り除いた。粗生成物をEtOAc(100mL)に再度溶かし、水(3×30mL)、及びNaCl(飽和、30mL)で洗浄し、次いで、NaSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。化合物は更に精製しないで使用した。
【0169】
調製1(化合物501)
N−[4−(2,4−ジオキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−アセトアミド
アシル化試薬:塩化アセチル
化合物501は、白色結晶として得られ、更に精製しないで使用した。
H NMR(DMSO−d)δ=10.49(1H,s),8.22(1H,d),8.07(2H,m),7.75(1H,m),7.33(1H,t),7.20(1H,d),7.09(1H,m),5.32(2H,s),2.07(3H,s).
【0170】
調製2(化合物502)
[4−(2,4−ジオキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−カルバミン酸メチルエステル
アシル化試薬:クロロギ酸メチル
化合物502は、出発物質:化合物502の割合が57:43である混合物としてそれぞれ得られた。この混合物は更に精製しないで使用した。
【0171】
調製3(化合物503)
オキサゾール−5−カルボン酸[4−(2,4−ジオキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−アミド
アシル化試薬:DCM中の1.5当量の塩化オキサリル及びDMFの触媒量を用いて、標準的な処理を行うことにより、オキサゾール−5−カルボン酸から生成されたオキサゾール−5−カルボニルクロリド。
化合物503は、出発物質の不純物:化合物503の割合がが70:30である混合物としてそれぞれ得られた。この混合物は更に精製しないで使用した。
【0172】
調製4(化合物504)
フラン−2−カルボン酸[4−(2,4−ジオキソ−4H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−1−イルメチル)−ピリジン−2−イル]−アミド
アシル化試薬:フラン−2−カルボニルクロリド
化合物504は、出発物質:化合物504の割合が71:29である混合物としてそれぞれ得られた。この混合物は更に精製しないで使用した。
【0173】
調製5(化合物505)
3−エチルペンタンニトリル

DMSO(150mL)中の3−クロロメチルペンタン(25g,207mmol)及びNaCN(15g,306.1mmol)の混合物を18時間100℃で撹拌した。混合物はEtOで2回抽出した。有機相をかん水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、黄色液体の標記化合物(23g)を得た。
H NMR(DMSO−d):δ(ppm)=2.48(2H,d),1.58−1.23(5H,m),0.87(6H,d)
【0174】
調製6(化合物506)
3−エチルペンチルアミン塩酸塩

3−エチルペンタンニトリル(23g,207mmol)の溶液に、Na(15g、652.2mmol)を1時間かけて加えた。混合物は1時間加熱還流した。次いで、反応溶液をHOに注ぎ、CHClで2回抽出した。合わせた有機相をMgSOで乾燥させ、元の体積の半分になるまで濃縮し、1,4−ジオキサン中の4N HClで酸性化させた。溶液を濃縮乾固した。残留物をCHCNから結晶化することにより精製し、白色固体の標記化合物(10g)を得た。
H NMR(DMSO−d):δ(ppm)=8.20−8.00(3H,bs),2.80−2.65(2H,m),1.60−1.50(2H,m),1.32−1.19(5H,m),0.83(6H,t)
【0175】
式Zを有する化合物の調製の一般手順:

【0176】
イサト酸誘導体(0.07mmol、不純物を補正しないで調製1〜4で記述した通りに得た)を乾燥DMF(0.2mL)に溶かした。ピリジン(0.2mL)に溶かしたアミン(0.077mmol)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧濃縮した。粗生成物を、DMF(0.5mL)に再度溶かし、調製用HPLC/MSによって精製した。
【0177】
この手順を用いて、本発明の次の化合物を得た:
【0178】
実施例1(化合物101)
(4−{[2−(3,3−ジメチル−ブチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−カルバミン酸メチルエステル
アミン:3,3−ジメチルブチルアミン
イサト酸誘導体:実施例2の化合物502
LC/MS:(m/z)385.2(MH+);RT=6.21min;純度(UV)=100%.
H NMR(DMSO−d)δ=10.11(IH,s),8.33(2H,m),8.16(1H,d),7.82(1H,d),7.53(1H,d),7.16(1H,m),6.98(1H,m),6.56(1H,t),6.47(1H,d),4.41(2H,d),3.64(3H,s),0.93(9H,s)
【0179】
実施例2(化合物102)
2−[(2−アセチルアミノ−ピリジン−4−イルメチル)−アミノ]−N−(2−シクロペンチル−エチル)−ベンズアミド
アミン:2−シクロペンチルエチルアミン
イサト酸誘導体:実施例1の化合物501
LC/MS:(m/z)381.2(MH+);RT=5.74min;純度(UV)=100%
H NMR(DMSO−d)δ=10.43(1H,s),8.20(1H,d),8.07(1H,s),7.54(1H,d),7.17(1H,t),7.01(1H,d),6.56(1H,t),6.48(1H,d),4.40(2H,d),3.24(2H,m),2.06(3H,s),1.78(3H,m),1.55(6H,m),1.10(2H,m).
【0180】
実施例3(化合物103)
2−[(2−アセチルアミノ−ピリジン−4−イルメチル)−アミノ]−N−(3−エチル−ペンチル)−ベンズアミド
アミン:調製6で得られた3−エチルペンチルアミン塩酸塩
イサト酸誘導体:実施例1の化合物501
H NMR(DMSO−d)δ=10.43(1H,s),8.32(2H,m),8.20(1H,d),8.05(1H,s),7.52(1H,d),7.17(1H,t),7.01(1H,d),6.56(1H,t),6.48(1H,d),4.41(2H,d),3.23(2H,m),1.49(2H,m),1.31(5H,m),0.85(6H,d)
【0181】
実施例4(化合物104)
オキサゾール−5−カルボン酸(4−{[2−(3−エチル−ペンチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド
アミン:調製6で得られた3−エチルペンチルアミン塩酸塩
イサト酸誘導体:調製3で得られた化合物503
H NMR(DMSO−d)δ=10.95(1H,s),8.63(1H,s),8.32(3H,m),8.20(1H,s),8.11(1H,s),7.54(1H,d),7.18(1H,t),7.12(1H,d),6.57(1H,t),6.50(1H,d),4.48(2H,d),3.24(2H,m),1.49(2H,m),1.29(5H,m),0.84(6H,d)
【0182】
実施例5(化合物105)
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(2−シクロペンチル−エチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド
アミン:2−シクロペンチルエチルアミン
イサト酸誘導体:調製4で得られた化合物504
LC/MS:(m/z)433.2(MH+);RT=6.64min;純度(UV)=100%
【0183】
実施例6(化合物106)
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(4−メチル−ペンチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド
アミン:4−メチルペンチルアミン
イサト酸誘導体:調製4で得られた化合物504
LC/MS:(m/z)421.2(MH+);RT=6.51min;純度(UV)=100%
【0184】
実施例7(化合物107)
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(3,3−ジメチル−ブチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド
アミン:3,3−ジメチルブチルアミン
イサト酸誘導体:調製4で得られた化合物504
LC/MS:(m/z)421.1(MH+);RT=6.44min;純度(UV)=100%
【0185】
実施例8(化合物108)
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(2−シクロヘキサ−1−エニル−エチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド
アミン:2−シクロヘキサ−1−エニル−エチルアミン
イサト酸誘導体:調製4で得られた化合物504
LC/MS:(m/z)445.1(MH+);RT=6.67min;純度(UV)=98%
【0186】
実施例9(化合物109)
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(3−エチル−ペンチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド
アミン:調製6で得られた3−エチルペンチルアミン塩酸塩
イサト酸誘導体:調製4で得られた化合物504
LC/MS:(m/z)435.1(MH+);RT=6.81min;純度(UV)=100%
【0187】
実施例10
KDRアッセイ−HTRF KinEASE−TK
試験すべき化合物をDMSOに溶かして10mMにし、−20℃で保管し、光から保護した。in vitroアッセイにおいてDMSOの最大濃度は0.75%であった。コントロールサンプルは、試験化合物で処置したサンプルと同じ溶媒濃度にした。
【0188】
キナーゼアッセイのために、HTRF KinEase(商標)−TKキット(CisBio(#62TKOPEJ)が使われた。HTRF KinEase(商標)−TKキットにおける全ての構成成分を、供給メーカーの説明書に従って取り扱った。簡潔に言うと、室温で384ウェルのプロキシプレート(Perkin Elmer(#6008289)にlμl移す前に、化合物のDMSO保存溶液(100% DMSO)を、50mM Hepesbuffer+0.05%BSA(Sigma Aldrich(A3294))中で6%のDMSOにまで事前希釈した。プロキシプレートにキナーゼ基質(2μl,CisBio)と化合物とを加えた。Enzyme mix(5μl,Millipore(14−630))とATP(100μM,Sigma Aldrich(A7699))、MgCl(5mM;Sigma Aldrich M1028)、及びSEB(50nM,CisBio)とを加え、反応を始めた。プレートを室温で15分間インキュベートした。Detection mix(4μl,CisBio)を添加してアッセイを停止し、プレートを密封して、1分間1000rpmで振とうした。プレートを室温一晩暗い状態でインキュベートした。プレートはEnvision(Perkin Elmer)プレートリーダーで解析した。製造者指定に従い、340nmの励起状態の2波長(665及び620nm)のシグナルを検出した。簡潔に言うと、400μsの遅延時間の後のフラッシュ間の400μsで蛍光を測定した。酵素が存在しない状態で測定したバックグラウンドを、すべてのサンプルから差し引いた。最大酵素活性(IC50)の50%を阻害するモル濃度は、次の等式に基づいて、用量反応曲線の4パラメターシグモイド曲線の適合モデルを用いて計算された:
y=((a−d)/(1+(x/c)))+d;ここで、aは最小値、dは最大値、cはIC50値、及びdはスロープファクターである。
【0189】
本発明の一般式(I)の化合物のin vitro KDR阻害活性を表2に列挙する。

【0190】
実施例11 代謝安定性
代謝安定性をヒト肝ミクロソームにおいて試験する(In Vitro Technologies,pooled mixed sexes,20 mg/mL);主要な薬物代謝フェーズI酵素を含む細胞成分分画で、シトクロムP450(CYP)ファミリー、及びフラビンモノオキシゲナーゼ(FMO)が挙げられる。肝臓からの試験化合物排泄の測定として、見かけのクリアランス(mL/min/kg)を計算する。
【0191】
手順:リン酸塩緩衝液(pH7.4,100mM KHPO/10mM MgCl)中のヒトミクロソームインキュベーション混合物(0.5mg ミクロソームタンパク質/mL)と、NADPH (1mM)とを混合する。混合物を37℃まで予熱し(7分)、試験化合物(0.5μM)を加え、その混合物を30分間インキュベートする。インキュベーションを繰り返し、Tecan RSPによって行う。サンプルを、0、5、10、20、及び30分で取り出し、全ての酵素活性を終えて、タンパク質を沈降するために内部標準を含むメタノールと混ぜる。NADPHのないネガティブコントロール(非特異的タンパク質結合、又は熱不安定性を検出するため)及び、ミクロソームのないネガティブコントロール(活性酵素の不存在下における化合物の安定性を評価するため)を実施する。サンプルをLC−MS/MSで解析する。
【0192】
データ解析:内部標準対インキュベーション時間に対する試験化合物のピーク面積比の対数をグラフにプロットする。試験化合物喪失の速度定数(k)を曲線(Eq.1)の直線部分から計算し、半減期(t1/2)を勾配(Eq.2)から計算する。
速度定数(k)(min−1)=−勾配 Eq.1
半減期(t1/2)(min)=In2/k Eq.2
【0193】
内因性クリアランス(Clint)を速度定数(k)(min−1)及びタンパク質濃度(0.5mg/mL)から計算する(Eq.3)。
Clint(mL/min/mg タンパク質)=k/タンパク質濃度 Eq.3
【0194】
Clintとg肝臓当たりのミクロソームタンパク質の量(45mg/g)、及びkg体重当たりの肝臓重量(20g/kg)とを掛けることによって、見かけのクリアランス(Clapp)への変換を行った(Eq.4)。
Clapp(mL/min/kg)=Clint×(mg ミクロソームタンパク質/g肝臓)×(g肝臓/kg体重) Eq.4
【0195】
解釈:約10mL/min/kg(約30%の除去率に対応する)未満の見かけの内因性クリアランスは、低いクリアランス(高い代謝安定性)であるとみなされる。約60mL/min/kg(約75%の除去率に対応する)を超見かけの内因性クリアランスは、高いクリアランス(低い代謝安定性)であるとみなされる。次のHLMアッセイ参照化合物は次の内因性クリアランス値を与える:
ワルファリン(Sigma−Aldrich A 2250)=<10mL/min/kg(低クリアランス)
塩酸プロプラノロール(Sigma−Aldrich P0884)=25−35mL/min/kg(中クリアランス)
ミダゾラム(Ultrafine Chemicals UC−429)=>200mL/min/kg(高クリアランス)
【0196】
本発明の一般式[I]の化合物の代謝安定性を表3に列挙する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:

[式中、R、R、及びRは水素、又は直鎖若しくは分岐の、飽和若しくは不飽和のC1−6炭化水素ラジカルを表し;
Dは窒素又はCHを表し;
Eは窒素又はCHを表し;
Gは窒素又はCHを表し;
Jは窒素又はCHを表し;
Lは窒素又はCHを表し;
nは1〜2の整数を表し;
Wは酸素又は硫黄を表し;
は、水素、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−6ヒドロキシアルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルケニル、C2−7ヘテロシクロアルキル、C6−12アリール、C3−12ヘテロアリール、又はC2−7ヘテロシクロアルケニルを表す(ここで、前記C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−6ヒドロキシアルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルケニル、C2−7ヘテロシクロアルキル、C6−12アリール、C3−12ヘテロアリール、又はC2−7ヘテロシクロアルケニルは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、オキソ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、カルボキシ、シアノ、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキルチオ、トリフルオロメチル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルケニル、C2−7ヘテロシクロアルキル、C2−7ヘテロシクロアルケニル、C6−12アリール、C3−12ヘテロアリール、及びC1−3アルキルアミノからなる群から選択された1又はそれ以上の、同一又は異なる置換基で任意に置換され、前記C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルキルチオ、トリフルオロメチル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルケニル、C2−7ヘテロシクロアルキル、C2−7ヘテロシクロアルケニル、C6−12アリール、C3−12ヘテロアリール、及びC1−3アルキルアミノは、ヒドロキシ、C1−4アルキル、C1−4アルキルオキシカルボニルから選択された1又はそれ以上の、同一又は異なる置換基で任意に置換される);
又は、R及びRは結合してC3−8シクロアルキルの一部を形成し;
Yはカルボニル又はチオキソを表し;
は水素、C1−6アルキル、C1−6アルキルアミノ、C1−6アルコキシ、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルケニル、C2−7ヘテロシクロアルキル、又はC2−7ヘテロアリールを表し、(ここで、前記C1−6アルキル、C1−6アルキルアミノ、C1−6アルコキシ、C3−8シクロアルキル、C2−7ヘテロシクロアルキル、又はC2−7ヘテロアリールは、シアノ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシカルボニル、又はC1−6アルキルカルボニルオキシからなる群から独立して選択された1又はそれ以上の置換基で任意に置換される)]
の化合物、それらの薬学的に許容される塩、水和物又は溶媒和化合物。
【請求項2】
Wが酸素を表す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
YがC(O)である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
、R、及びRが水素である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
nが1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Wが酸素、Yが−C(O)−、R、R、及びRが水素を表し、nが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
LがCHを表す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
DがCHであり、EがCHであり、GがCHであり、及びJがCHである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
Dが窒素であり、EがCHであり、GがCHであり、及びJがCHである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
がC1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−4ヒドロキシアルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、C2−5ヘテロシクロアルケニル、C6−12アリール、又はC6−12ヘテロアリールであって、前記C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−4ヒドロキシアルキル、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、C2−5ヘテロシクロアルケニル、C6−12アリール、又はC6−12ヘテロアリールが、水素、フルオロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、シアノ、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、C2−5ヘテロシクロアルケニル、及びC1−3アルキルアミノからなる群から独立して選択される、1つ又はそれ以上の同一又は異なる置換基で任意に置換され、前記C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C3−6シクロアルキル、C3−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、C2−5ヘテロシクロアルケニル、及びC1−3アルキルアミノが、ヒドロキシ、メチル、エチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルから独立して選択される、1つ又はそれ以上の同一又は異なる置換基で任意に置換される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
が、イソブチル、イソペンチル、メチルブチル、エチルブチル、tert−ブチル、tert−ブチルメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシイソブチル、エチルヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、エチルチオメチル、フルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、ジエチルアミノメチル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、エトキシカルボニルシクロプロピル、シクロブチル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルヒドロキシメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキセニルメチル、テトラヒドロフラニルメチル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピラニルメチル、ジメチルジオキソラニル、ピロリジニルメチル、フルフリル、チエニル、チエニルメチル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルヒドロキシメチル、ピリジルメチルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
が水素、メチル、エチル、プロピル、C1−3アルキルアミノ、メトキシ、エトキシ、C3−6シクロアルキル、C4−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、又はC2−5ヘテロアリールであって、前記メチル、エチル、プロピル、C1−3アルキルアミノ、メトキシ、エトキシ、C3−6シクロアルキル、C4−6シクロアルケニル、C2−5ヘテロシクロアルキル、又はC2−5ヘテロアリールが、シアノ、メチル、エチル、プロピル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、メチルカルボニルオキシ又はエチルカルボニルオキシからなる群から独立して選択される、1つ又はそれ以上の置換基で任意に置換される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
が、水素、メチル、メチルアミノ、エチルアミノ、メトキシ、エトキシ、シアノメチル、シクロプロピル、メトキシカルボニルエチル、メチルカルボニルオキシメチル、テトラヒドロフラニル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、又は、トリアゾリルであって、これら全てがメチル基で任意に置換される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
及びRが、シクロプロピル環、シクロブチル環、シクロペンチル環又はシクロヘキシル環の一部を形成する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
(4−{[2−(3,3−ジメチル−ブチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−カルバミン酸メチルエステル(化合物101);
2−[(2−アセチルアミノ−ピリジン−4−イルメチル)−アミノ]−N−(2−シクロペンチル−エチル)−ベンズアミド(化合物102);
2−[(2−アセチルアミノ−ピリジン−4−イルメチル)−アミノ]−N−(3−エチル−ペンチル)−ベンズアミド(化合物103);
オキサゾール−5−カルボン酸(4−{[2−(3−エチル−ペンチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物104);
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(2−シクロペンチル−エチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物105);
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(4−メチル−ペンチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物106);
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(3,3−ジメチル−ブチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物107);
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(2−シクロヘキサ−1−エニル−エチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物108);
フラン−2−カルボン酸(4−{[2−(3−エチル−ペンチルカルバモイル)−フェニルアミノ]−メチル}−ピリジン−2−イル)−アミド(化合物109);
からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物、又は薬学的に許容される媒体若しくは賦形剤と共にそれらの薬学的に許容される塩、水和物若しくは溶媒和化合物を含む医薬組成物。
【請求項17】
更に他の治療活性化合物を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
治療における使用向けの、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
調節解除された血管新生に付随した眼又は皮膚の疾患の処置、又は改善における使用向けの、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
急性黄斑変性、加齢性黄斑変性、脈絡膜新生血管、網膜炎、サイトメガロウイルス網膜炎、黄斑浮腫、網膜障害、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、及び静脈うっ血性網膜症等の調節解除された血管新生に付随する眼疾患又は症状の予防、処置、又は改善のための医薬品の製造用の、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項21】
酒さ、乾癬、皮膚炎、扁平上皮癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、悪性皮膚リンパ腫、血管肉腫、カポシ肉腫、増殖性血管腫、水疱性類天疱瘡、多形性紅斑、ウイルス性疣贅、UV損傷、及び発毛及びサイクリングに関連する症状、並びに創傷治癒に関する症状等の調節解除された血管新生に付随する皮膚疾患又は症状の予防、処置、又は改善のための医薬品の製造用の、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項22】
前記医薬品が更に他の治療活性化合物を含む、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
タンパク質チロシンキナーゼであるSrcファミリーのタンパク質チロシンキナーゼ活性を調節できる抗炎症薬として使用するための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
JAK−2若しくはRaf−1、又はcKit若しくはFma/CSF−1Rタンパク質チロシンキナーゼ活性を調節できる抗炎症薬として使用するための、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
非感染性抗炎症性若しくは自己免疫の疾患又は症状の処置、改善、又は感染防御(pherophylaxis)における使用向けであって、前記非感染性炎症性の疾患又は症状は、急性肺損傷、急性呼吸促迫症候群、アレルギー、アナフィラキシー、敗血症、若しくは移植片対宿主病等の急性炎症性疾患、又はアトピー性皮膚炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、変形性関節症、痛風、乾癬性関節炎、肝硬変、多発性硬化症、等の慢性の炎症性疾患、又は非伝染性の(例えば、アレルギー性の)結膜炎、ぶどう膜炎、虹彩炎、角膜炎、鞏膜炎、上強膜炎、交感性眼炎、眼瞼炎、乾性角結膜炎、若しくは免疫学的角膜移植拒絶反応等の眼部疾患若しくは症状からなる群から選択され、また前記自己免疫の疾患又は症状は、自己免疫性胃炎、アジソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、慢性特発性蕁麻疹、慢性免疫性ニューロパシー、糖尿病、糖尿病性腎障害、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、原発性胆汁性肝硬変、全身性エリテマトーデス、及び甲状腺眼症からなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
異常な血管新生に付随する疾患又は症状を防止し、処置し、又は改善する方法であって、それらを必要とする患者に請求項1〜15のいずれか1項に記載の化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項27】
前記異常な血管新生の疾患又は症状が、急性黄斑変性、加齢性黄斑変性、脈絡膜新生血管、網膜炎、サイトメガロウイルス網膜炎、黄斑浮腫、網膜障害、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、及び静脈うっ血性網膜症、酒さ、乾癬、アトピー性皮膚炎、扁平上皮癌、基底細胞癌、悪性黒色腫、悪性皮膚リンパ腫、血管肉腫、カポシ肉腫、増殖性血管腫、水疱性類天疱瘡、多形性紅斑、ウイルス性疣贅、UV損傷、及び発毛及びサイクリングに関連する症状、並びに創傷治癒である、請求項26に記載の方法。

【公表番号】特表2012−500812(P2012−500812A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524184(P2011−524184)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/DK2009/000190
【国際公開番号】WO2010/022725
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(508069752)レオ ファーマ アクティーゼルスカブ (22)
【Fターム(参考)】