説明

VIVITポリペプチド、これを含む治療物質、および抗癌剤をスクリーニングする方法

本発明は、癌を処置および予防するために有用なポリペプチドを提供する。本発明はまた、ポリペプチドを用いて癌を処置するための治療物質または方法を提供する。本発明のポリペプチドは、VIVITを含むアミノ酸配列で構成され、好ましくはC1958タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:2)の37〜41位でモチーフ配列PxIxITがPVIVITに置換されているポリペプチドである。本発明のポリペプチドは、ポリアルギニンのようなトランスフェクション物質でポリペプチドを改変することによって、癌細胞に導入されうる。本発明は、癌の処置および予防において有用性を見出すC1958とPPP3CAとの相互作用の阻害剤を同定するための方法およびキットを提供する。同様に、本発明のスクリーニング法によって同定された癌を処置または予防するための組成物、ならびに癌の処置および予防において組成物を用いる方法も、本明細書において開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物科学の分野、より具体的には癌研究の分野に関する。より詳しくは、本方法は、C1958がカルシニューリンと相互作用するという発見に関する。
【0002】
本出願は、その内容物が全体として参照により本明細書に組み入れられる、2005年7月28日に提出された米国特許仮出願第60/703,791号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
膵管腺癌(PDACa)は、西欧世界における癌による死因の第5位であり、かつ任意の悪性疾患の最高死亡率の1つを有し、5年生存率はわずか4%に過ぎない。米国では毎年、推定で患者30,700人が膵臓癌であると診断され、ほぼ30,000人がこれらの疾患のために死亡する。患者の大多数は疾患の進行期で診断される。この時点では、現在の治療は一般的に無効であり、平均余命はわずか数ヶ月である。外科的切除のみが治癒の可能性を提供しうるが、治癒の可能性がある切除を受けることができるPDACa患者は10〜20%に過ぎない。治癒的手術の後でさえも、患者の80〜90%が疾患を再発してそのために死亡する。任意の処置に対するPDACaの強い抵抗性のために長期生存に及ぼす影響は最小であったが、ゲムシタビンを含む化学療法および/または放射線をも受ける患者では、手術の転帰または生活の質の何らかの改善が起こる。現時点では、ほとんどの患者の治療技術は、緩和に集中する。
【0004】
したがって、PDACaの新規分子治療の確立およびPDACaの新規治療的分子標的の同定は、現在の膵臓癌処置にとって緊急の問題である。
【0005】
本発明者らは、これまでヒト遺伝子23,040個を表すcDNAマイクロアレイを用いて膵臓癌患者18人からの癌細胞の遺伝子発現プロフィールを分析し、かつ膵臓癌細胞において共通に上方制御された遺伝子265個を同定した(Nakamura T, (2004) Oncogene. 23, 2385-400(非特許文献1))。この分析により、C1958V1およびC1958V2が膵臓癌において特異的に上方制御されることが判明した。半定量的RT-PCR分析の結果も同様に、正常な膵管細胞と比較して、膵臓癌患者12例中11例、および膵臓癌細胞株5例中4例において発現の上昇を示した。さらに、C1958特異的siRNAは膵臓癌細胞の成長を有意に抑制した(WO2004/31411(特許文献1))。
【0006】
【特許文献1】WO2004/31411
【非特許文献1】Nakamura T, (2004) Oncogene. 23, 2385-400
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明の目的は、癌の処置および/または予防において有用な化合物を提供することである。あるいは、本発明の目的は、化合物を用いて癌を処置および/または予防するための薬学的組成物および方法を提供することである。
【0008】
本発明者らは、C1958V1およびC1958V2発現の抑制によって、癌の増殖阻害が達成されうることを証明した。C1958は3つのスプライシング変種を有することが見出されている。これらの変種はそれぞれ、C1958V1、C1958V2、およびC1958V3と呼ばれる。C1958V1のcDNA(配列番号:1、881ヌクレオチド)は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコードし、およびC1958V2のcDNA(配列番号:3、893ヌクレオチド)は、配列番号:4に記載のアミノ酸配列をコードする。C1958V3のcDNAは1503ヌクレオチドからなる。
【0009】
C1958のcDNAをノーザンブロット分析においてプローブとして用いる場合、約1.7 kbおよび1.1 kbの2つの転写物が検出される。1.7 kb転写物は、リンパ節において高度に発現され、かつ胃、気管、および骨髄においてわずかに発現される。1.1 kb転写物は胎盤において発現され、かつ肝臓、甲状腺、気管、および骨髄においてきわめて低レベルで発現されることが観察されている。同様に、C1958V1および1958V2の発現は膵臓癌細胞株において特異的に上昇していることも確認されている。
【0010】
さらに、膵臓癌細胞株における内因性のC1958発現がC1958に対して特異的なsiRNAによって阻害される場合、細胞増殖は抑制される(WO2004/31411)。この結果は、C1958が癌細胞の増殖または生存にとって必要な分子であることを示している。これらの結果は、C1958機能を制御することによって、癌細胞増殖の制御が達成されうることを示している。したがって、本発明者らは第一に、C1958タンパク質に結合する分子を探索した。その結果、カルシニューリンAサブユニットPP2B(本明細書において以降PPP3CAと呼ぶ)が、C1958タンパク質に結合する分子として同定された。PPP3CAはまた、リン酸化C1958タンパク質に結合することも見出された。
【0011】
PPP3CAが、活性化T細胞核因子(NFAT)に結合することは公知である。双方の分子の相互作用は、T細胞増殖における重要なメカニズムであると考えられている。PPP3CAは、保存された特異的モチーフPxIxITでNFATと相互作用することが報告されている(Kiani A. et al., Immunity 2000; 12: 359-72)。実際に、このモチーフを含む合成ペプチドは、PPP3CAとNFATとの間の相互作用を有効に阻害することも観察された(Aramburu J. et al., Science 1999: 285, 2129-33)。特異的モチーフPxIxITは、C1958V1タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:2)の36〜41位(PDIIIT)で保存されている。したがって、本発明者らは、C1958がこのモチーフでPPP3CAと相互作用することを確認した。具体的には、このモチーフを有しないC1958変種(△PDIIIT-C1958)は、もはやPPP3CAに結合しない(図3A)。この結果は、配列番号:2の36〜41位(PDIIIT)のアミノ酸がPPP3CAに対する結合にとって必須であることを示している。
【0012】
一方で、モチーフPxIxITを介したNFATとPPP3CAとの間の結合は、アミノ酸配列VIVIT(Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27)を含むペプチドによって強く競合的に阻害されることが最近判明している(Aramburu, J. et al., Science 1999: 285, 2129-33)。したがって、C1958タンパク質のアミノ酸配列におけるモチーフPxIxITがVIVITで置換されているアミノ酸配列を含むオリゴペプチドを調製して、細胞に及ぼすその影響を検討した。その結果、本発明者らは、C1958ペプチドにおけるアミノ酸配列DIIITがVIVITで置換されているアミノ酸配列を含むペプチドが強力な細胞増殖阻害活性を示すことを証明し、それによって本発明が完成した。具体的には、本発明は、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含む部分配列を含むポリペプチドを提供する。いくつかの好ましい態様において、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の37〜41位で、アミノ酸配列Asp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換される。本発明はさらに、癌を予防および/または処置するためにこれらのポリペプチドを用いる薬剤または方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含むポリペプチド、例えば37〜41位で Asp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を有するポリペプチド、または該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与する段階を含む、癌を処置および/または予防するための方法にも関する。さらに、本発明は、癌を処置および/または予防するための薬学的製剤を製造することにおいて、本発明のポリペプチドを使用すること、または本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチドを使用することに関する。
【0014】
本発明は、癌の細胞増殖を阻害するポリペプチドに関する。本発明はまた、C1958とカルシニューリンとがインビボで相互作用するという知見にも基づいている。その発見、およびC1958の発現が膵臓癌に関連していることを考慮して(例えば、PCT公報番号WO2004/31411を参照されたい)、本発明は、C1958およびカルシニューリンの結合を阻害する化合物を同定することによって、癌を処置するための化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【0015】
したがって、本発明の目的は、癌を処置するおよび予防することにおいて有用な化合物をスクリーニングする方法を提供することである。1つの態様において、本発明の方法は以下の段階を含む:
(a)試験化合物の存在下で、C1958ポリペプチドのPPP3CA結合ドメイン(すなわち、特異的モチーフPxIxITを含むドメイン)を含むポリペプチドを、PPP3CAポリペプチドのC1958結合ドメインを含むポリペプチドに接触させる段階;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する段階;および
(c)ポリペプチド間の結合を阻害する試験化合物を選択する段階。
【0016】
本発明はまた、癌を処置するまたは予防することにおいて有用な化合物をスクリーニングするためのキットも提供する。いくつかの態様において、キットは以下を含む:
(a)C1958ポリペプチドのPPP3CA結合ドメインを含む第一のポリペプチド;
(b)PPP3CAポリペプチドのC1958結合ドメインを含む第二のポリペプチド;および
(c)第一と第二のポリペプチドとの間の相互作用を検出する試薬。
【0017】
いくつかの態様において、第一のポリペプチド、すなわち、PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドは、C1958ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチド、例えばC1958ポリペプチドは、リン酸化型であってもよい。あるいは、いくつかの態様において、PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸配列の36〜41位のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。同様に、いくつかの態様において、第二のポリペプチド、すなわち、C1958結合ドメインを含むポリペプチドは、PPP3CAポリペプチドを含む。
【0018】
いくつかの態様において、PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドは、生細胞中で発現される。
【0019】
いくつかの態様において、第一と第二のポリペプチドとの間の相互作用を検出する試薬は、例えばPPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドと、C1958結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合を検出する試薬を含む。
【0020】
本発明はまた、対象における癌を処置または予防するための方法を提供する。いくつかの態様において、方法は、C1958ポリペプチドとPPP3CAポリペプチドとの間の結合を阻害する化合物の薬学的有効量を投与する段階を含む。
【0021】
本発明はまた、癌を処置または予防するための組成物も提供する。いくつかの態様において、組成物は薬学的に許容される担体と、以下の段階の方法によって選択される化合物の薬学的有効量とを含む:
(a)試験化合物の存在下で、C1958ポリペプチドのPPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドを、PPP3CAポリペプチドのC1958結合ドメインを含むポリペプチドに接触させる段階;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する段階;および
(c)ポリペプチド間の結合を阻害する試験化合物を選択する段階。
【0022】
いくつかの態様において、組成物は、C1958ポリペプチドとPPP3CAポリペプチドとの間の結合を阻害する化合物の薬学的有効量、および薬学的に許容される担体を含む。
【0023】
本発明のこれらおよび他の目的および特色は、添付の図面および実施例と併せて以下の詳細な説明を読むことによってより十分に明らかとなると考えられる。しかし、本発明の前述の概要と以下の詳細な説明は両方共に、好ましい態様であり、本発明または本発明の他の代わりの態様を制限するものではないと理解すべきである。
【0024】
好ましい態様の詳細な説明
I. 定義
本明細書において用いられる「1つの(a)、(an)」および 「その(the)」という単語は、特に具体的に示されていない限り「少なくとも1つ」を意味する。
【0025】
本発明の文脈において、「C1958ポリペプチド」は、その発現が膵臓癌に関連するポリペプチドを指す。例えば、全体が参照として本明細書に組み入れられるPCT公報WO2004/31411を参照されたい。例示的なC1958ポリペプチドは、例えば、配列番号:2(配列番号:1にコードされるもの)、およびGenbankアクセッション番号AB115764と実質的に同一でありうる。配列番号:2のアミノ酸配列は、PCT公報WO2004/31411中にC1958V1として開示されている。
【0026】
本発明の文脈において、2つのタンパク質間の「結合の阻害」とは、結合を少なくとも減少させることを指し、時にはタンパク質間の結合を完全に防ぐことを指すこともある。場合によっては、試料中の結合対のパーセンテージは、適切な(例えば、試験化合物で処置されていない、または非癌試料由来の、または癌試料由来の)対照と比較して低下している。結合したタンパク質の量における減少は、例えば、対照試料中で結合した対よりも、90%、80%、70%、60%、50%、40%、25%、10%、5%、1%よりも少ない、またはより少なくなりうる。
【0027】
用語「試験化合物」は、本明細書において詳しく述べられるような、C1958とPPP3CAとの間のタンパク質-タンパク質相互作用を阻害しうる任意の(例えば化学的または組換え的に産生された)分子を指す。一部の態様において、試験化合物は1,500ダルトン未満の分子量を有し、場合によっては1,000、800、600、500、または400ダルトン未満の分子量を有する。
【0028】
化合物の「薬学的有効量」とは、個体においてC1958を介する疾患を処置および/または改善するのに十分な量である。薬学的有効量の一例は、動物に投与したときにC1958とPPP3CAとの間の相互作用を低下させて、それによって癌を減少または予防するのに必要な量でありうる。相互作用における低下とは、例えば、結合における少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、75%、80%、90%、95%、99%、または100%の変化でありうる。
【0029】
「薬学的に許容される担体」という表現は、薬物の希釈剤または賦形剤として用いられる不活性な物質を指す。
【0030】
本発明において、用語「機能的に同等」とは、対象ポリペプチドが参照ポリペプチドの生物学的活性を有することを意味する。例えば、C1958ポリペプチドの機能的同等物は、野生型C1958のようにPPP3CAとの結合活性を有するであろう。
【0031】
用語「単離」および「生物学的に純粋」とは、自然の状態で見られる通常はそれに付随する成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。しかしながら、用語「単離」は、電気泳動ゲルまたは他の分離媒体中に存在する成分を指すことを意図しない。単離された成分はそのような分離媒体を含まず、別の応用にすぐに使用可能な形態にあるか、あるいは既に新しい応用/環境に使用されている。
【0032】
「保存的に改変された変異体」という表現は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指し、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合は、本質的に同一の配列を指す。遺伝コードの縮重により、機能的に同一の核酸の多数が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUは全て、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定される全ての位置で、そのコドンは、コードするポリペプチドを変化させることなく任意の上記対応コドンに変えることができる。このような核酸変異は「サイレント変異」、つまり保存的に改変された変異の一種である。本明細書において、ポリペプチドをコードする全ての核酸配列は、その核酸の全ての可能なサイレント変異も表す。当業者は、核酸中の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUGと、通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して機能的に同一の分子を得ることができることを認識するであろう。よって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、各開示配列に暗黙のうちに記載されている。
【0033】
アミノ酸配列に関し、コードされた配列中の1個のアミノ酸を、または少ないパーセンテージのアミノ酸を変化、付加、または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列に対する置換、欠失、または付加はそれぞれ、その変化がアミノ酸を化学的に類似のアミノ酸と置換する「保存的に改変された変異体」であることを当業者は認識するであろう。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は当技術分野において周知である。このような保存的に改変された変異体は、本発明の多型変異体、種間ホモログ、および対立遺伝子に加えられるものであって、これらを排除するものではない。
【0034】
以下の8群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、スレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton, Proteins (1984) を参照されたい)。
【0035】
本発明の文脈において、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適に整列された配列を比較ウィンドウにわたって比較することにより決定され、このとき比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列部分は、2つの配列の最適な整列について、付加または欠失を含まない参照配列(例えば本発明のポリペプチド)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含んでもよい。このパーセンテージは、同一核酸塩基またはアミノ酸残基が両配列に現れる位置の数を決定して一致する位置の数を出し、一致する位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で割り、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを出すことによって計算される。
【0036】
2つもしくはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、用語「同一」またはパーセント「同一性」は、同じ配列である2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。2つの配列が、下記の配列比較アルゴリズムの1つを用いてまたはマニュアル整列と目視検査によって測定された比較ウィンドウまたは指定領域にわたって最大一致するように比較整列された際に、同じアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定のパーセンテージで有する(すなわち、特定領域にわたって、あるいは特定されていない場合は全配列にわたって、60%同一性、任意で65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一性)場合、2つの配列は「実質的に同一」である。任意で、同一性は長さが少なくとも約50ヌクレオチドである領域にわたって存在し、またはより好ましくは長さが100〜500または1000ヌクレオチド以上である領域にわたって存在する。
【0037】
配列比較には、典型的には1つの配列を参照配列とし、これに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分配列座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを用いてもよく、また、代替的なパラメータを指定してもよい。そして配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づいて、試験配列について参照配列に対するパーセント配列同一性を計算する。
【0038】
本明細書において用いられる「比較ウィンドウ」は、20〜600、一般的には約50〜約200、より一般的には約100〜約150からなる群より選択される連続位置の数のいずれか1つのセグメントに対する参照を含み、この内部において、ある配列が同じ数の連続位置の参照配列と最適に整列された後、これら2つの配列が比較されうる。比較するために配列を整列する方法は当技術分野において周知である。例えば、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482-489の局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性整列アルゴリズム、Pearson and Lipman (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索法、これらアルゴリズムのコンピュータによる実施(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、またはマニュアル整列と目視検査(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement) を参照されたい)によって比較用に配列を最適に整列できる。
【0039】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適したアルゴリズムの2つの例がBLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschul et al. (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402、およびAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワード(word)と整列させた場合にいくつかの正の値の閾値スコアTに一致するかまたはそれを満たす、クエリー(query)配列中の長さの短いワードWを同定することによって、高スコア配列対(HSP)をまず同定することを含む。Tは近傍ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)(Altschul et al.、上記)と呼ばれる。これら初期近傍ワードヒットが、これらを含むさらに長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシード(seed)となる。ワードヒットは、累積整列スコアを増加できる限り、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関しては、パラメータM(一致する残基対に対するリワード(reward)スコア;常に>0)およびパラメータN(不一致残基に対するペナルティ(penalty)スコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列に関しては、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向におけるワードヒットの延長は以下の場合に停止される:累積整列スコアが最大達成値から量X分減少する場合;累積スコアが、1つまたは複数の負のスコアの残基整列の蓄積によってゼロ以下になる場合;あるいは、いずれかの配列の終わりに達する場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、整列の感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)はデフォルトとして、word length(ワード長)(W)11、expectation(期待値)(E)10、M=5、N=-4、およびcomparison of both strands(両鎖の比較)を用いる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムはデフォルトとして、word length 3、expectation(E)10、BLOSUM62 scoring matrix(スコアリング マトリックス)(Henikoff and Henikoff (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915を参照されたい)alignment(アライメント)(B)50、expectation(E)10、M=5、N=-4、およびcomparison of both strandsを用いる。
【0040】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的解析を行う(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-7を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度が最小合計確率(smallest sum probability, P(N))であり、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸の参照核酸との比較における最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、この核酸は参照配列に類似すると見なされる。
【0041】
用語「有機低分子」は、薬剤に一般的に用いられる有機分子に相当するサイズの分子を指す。この用語は生物学的高分子(例えば、タンパク質、核酸など)を除外する。好ましい有機低分子はサイズが約5000Daまで、例えば、2000Daまで、あるいは約1000Daまでの範囲である。
【0042】
用語「標識」および「検出可能な標識」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、または化学的手段によって検出可能な任意の組成物を指すために本明細書において用いられる。このような標識としては、標識されたストレプトアビジン結合体での染色のためのビオチン、磁気ビーズ(例えばDYNABEADS(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射標識(例えば、3H、125I、.35S、14C、または32P)、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAで一般的に用いられる他のもの)、および金コロイドまたは着色ガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなどの)ビーズなどの熱量測定標識が挙げられる。このような標識の使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;および第4,366,241号が挙げられる。このような標識を検出する手段は当業者に周知である。したがって、例えば、放射標識は感光フィルムまたはシンチレーションカウンターを用いて検出することができ、蛍光マーカーは放出された光を検出する光検出器を用いて検出しうる。酵素標識は典型的には、酵素に基質を提供して酵素の基質に対する作用によって産生された反応産物を検出することによって検出され、熱量測定標識は着色された標識を単純に視覚化することによって検出される。
【0043】
本明細書において用いられる用語「抗体」は、天然抗体および非天然抗体を包含し、例えば、単鎖抗体、キメラ、二機能性、およびヒト化抗体、ならびにそれらの抗原結合断片(例えば、Fab'、F(ab')2、Fab、Fv、およびrIgG)を含む。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, IL) も参照されたい。例えば、Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York (1998) も参照されたい。このような非天然抗体は固相ペプチド合成を用いて構築することができ、組換えによって産生することも、あるいは例えば、参照として本明細書に組み入れられる、Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989) に記載されているように、可変重鎖と可変軽鎖とからなるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって得ることもできる。例えば、キメラ、ヒト化、CDR移植、単鎖、および二機能性抗体を作成するこれらおよび他の方法は当業者に周知である(Winter and Harris, Immunol. Today 14:243-246 (1993); Ward et al., Nature 341:544-546 (1989); Harlow and Lane, Antibodies: a laboratory manual, Cold Spring Harbor, NY, 1988; Hilyard et al., Protein Engineering: A practical approach (IRL Press 1992); Borrabeck, Antibody Engineering, 2d ed. (Oxford University Press 1995);これらは各々参照として本明細書に組み入れられる)。
【0044】
用語「抗体」は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を含む。この用語はまた、キメラ抗体(例えばヒト化マウス抗体)およびヘテロ結合抗体(heteroconjugate antibody)(例えば二重特異性抗体)などの遺伝的に操作された形態を含む。この用語はまた、組換え単鎖Fv断片(scFv)も指す。抗体という用語はまた、二価または二重特異性分子、二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体(triabody)、および四重特異性抗体(tetrabody)を含む。二価および二重特異性分子は、例えば、Kostelny et al. (1992) J Immunol 148:1547, Pack and Pluckthun (1992) Biochemistry 31:1579, Hollinger et al. (1993) Proc Natl Acad Sci U S A. 90:6444, Gruber et al. (1994) J Immunol :5368, Zhu et al. (1997) Protein Sci 6:781, Hu et al. (1996) Cancer Res. 56:3055, Adams et al. (1993) Cancer Res. 53:4026、および McCartney, et al. (1995) Protein Eng. 8:301に記載されている。
【0045】
典型的には、抗体は重鎖および軽鎖を有する。重鎖および軽鎖はそれぞれ定常領域および可変領域(これら領域は「ドメイン」としても知られる)を含む。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる、3つの超可変領域によって中断される4つの「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域およびCDRの範囲は規定されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成軽鎖と重鎖のフレームワーク領域を合わせたものは、CDRを3次元空間に位置付け、整列させる。
【0046】
CDRは主として抗原エピトープへの結合を担っている。各鎖のCDRは、典型的にはN末端から順に番号がつけられてCDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、また典型的には、その特定のCDRが位置する鎖によって同定される。したがって、VH CDR3はそれが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、VL CDR1はそれが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインのCDR1である。
【0047】
「VH」に関しては抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を指し、Fv、scFv、またはFabの重鎖を含む。「VL」に関しては免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指し、Fv、scFv、dsFv、またはFabの軽鎖を含む。
【0048】
「単鎖Fv」または「scFv」という表現は、通常の2鎖抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインが連結して1つの鎖を形成した抗体を指す。典型的にはリンカーペプチドが2つの鎖の間に挿入されており、適正なフォールディングと活性な結合部位の形成とを可能にする。
【0049】
「キメラ抗体」は、(a)異なるまたは変えられた、クラス、エフェクター機能、および/または種の定常領域に、あるいはキメラ抗体に新しい特性を付与する全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などに、抗原結合部位(可変領域)が結合するように、定常領域またはその一部分が変えられた、置き換えられた、または交換された;あるいは(b)可変領域またはその一部分が、異なるまたは変えられた抗原特異性を有する可変領域に変えられた、置き換えられた、または交換された、免疫グロブリン分子である。
【0050】
「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体には、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の相補性決定領域(CDR)に由来する残基でヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)のCDR由来の残基が置き換えられているヒト免疫グロブリンが含まれる。一部の例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、導入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見られない残基を含みうる。一般に、ヒト化抗体は少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、これらCDR領域の全てまたは実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク(FR)領域の全てまたは実質的に全てはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は最適にはまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部分を含む(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988)、 および Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992))。ヒト化は本質的には、Winterと共同研究者ら(Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988))の方法にしたがって、齧歯類のCDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応配列を置換することによって行うことができる。したがって、このようなヒト化抗体はキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、実質的に完全でないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応配列によって置換されている。
【0051】
用語「エピトープ」および「抗原決定基」は、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは連続アミノ酸から、またはタンパク質の三次フォールディングによって近接して並べられた非連続アミノ酸から形成されうる。連続アミノ酸から形成されたエピトープは典型的には変性溶媒にさらされても保持され、三次フォールディングによって形成されたエピトープは典型的には変性溶媒処置で失われる。エピトープは典型的には、独自の空間的高次構造中に少なくとも3、より一般的には少なくとも5または8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的高次構造を決定する方法には、例えばx線結晶解析および2次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed (1996) を参照されたい。
【0052】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指して本明細書において相互に交換可能に用いられる。これら用語は、天然アミノ酸ポリマー、修飾残基を含むもの、および非天然アミノ酸ポリマーに適用されるのに加え、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0053】
用語「アミノ酸」は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸とは、遺伝コードによってコードされるもの、ならびに例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、およびO-ホスホセリンで後に修飾されるアミノ酸である。アミノ酸アナログとは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合されたα炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム、を有する化合物を指す。このようなアナログは修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有しうるが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが天然アミノ酸と同様に機能する化学的な化合物を指す。
【0054】
アミノ酸は本明細書において、一般的に知られる3文字表記で表されることもあり、またIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission推奨の1文字表記で表されることもある。ヌクレオチドは同様に、一般的に認められた1文字コードで表されうる。
【0055】
用語「組換え」は、例えば細胞、あるいは核酸、タンパク質、またはベクターなどへの言及と共に用いられる場合、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種核酸またはタンパク質の導入、あるいは元来の核酸またはタンパク質の変化によって修飾されていること、あるいは細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって例えば、組換え細胞は元来の(非組換え)形態の細胞では見られない遺伝子を発現するか、または元来の遺伝子を異常に発現する、より少なく発現する、または全く発現しない。本明細書における用語「組換え核酸」とは、一般に核酸の操作によって、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いて、最初からインビトロで形成された、天然に普通では見られない形態にある核酸を意味する。このようにして異なる配列の機能的な連結が達成される。このように、通常は繋がっていないDNA分子を連結してインビトロで形成した線状形態の単離核酸または発現ベクターは両方とも、本発明の目的に関して組換え型と見なされる。組換え核酸を作製して宿主細胞または生物体に再び導入すると、これは非組換え的に、すなわちインビトロ操作ではなく宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて、複製する;しかし、このような核酸は組換えによって産生され、続いて非組換えによって複製されるが、それでも本発明の目的に関して組換え型と見なされると理解される。同様に、「組換えタンパク質」は、組換え技術を用いて、すなわち上記のような組換え核酸の発現を通じて作製されたタンパク質である。
【0056】
特に定義しない限り、本明細書において用いられる技術的および科学的用語は全て本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合は、本明細書が定義を含めて統御する。
【0057】
II VIVITポリペプチド
本発明は、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含むポリペプチドに関する。いくつかの好ましい態様において、ポリペプチドは、 37〜41位でAsp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を含む。配列番号:2に記載のアミノ酸配列は、WO2004/31411において開示される。癌細胞増殖は、アミノ酸配列の発現を阻害することによって制御されうることは公知である。しかし、上記のアミノ酸配列において特異的変異を有する配列を含む断片が癌細胞増殖を阻害することは、本発明者らによって証明された新規な知見である。
【0058】
本発明のポリペプチドには、以下の2つの条件AおよびBのいずれかを満たすポリペプチドが含まれる。以下本明細書において、以下の2つの条件AおよびBのいずれかを満たすポリペプチドのアミノ酸配列を、「選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチド」と呼ぶことがある。
A:配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の37〜41位で Asp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27(VIVIT)に置換されているアミノ酸配列を含むこと、および
B:アミノ酸配列Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含むこと。
【0059】
本発明の選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドは、ポリペプチドが癌細胞増殖を阻害する限り、いかなる長さともなりうる。具体的には、アミノ酸配列の長さは、5〜70残基、例えば5〜50、好ましくは5〜30、より具体的には5〜20、さらにより具体的には5〜16残基の範囲であってもよい。例えば、アミノ酸配列 KHLDVPVIVITPPTPT (配列番号: 26)は、上記の選択されたアミノ酸配列として好ましい。したがって、アミノ酸配列 KHLDVPVIVITPPTPT (配列番号: 26)を含む、またはそれからなるポリペプチドは、本発明におけるポリペプチドの好ましい例である。アミノ酸配列VIVITを含むことにより特徴づけられる本発明のポリペプチドはまた、「VIVITポリペプチド」と呼ばれることもある。
【0060】
本発明のポリペプチドは、2つまたはそれ以上の「選択されたアミノ酸配列」を含んでもよい。2つまたはそれ以上の「選択されたアミノ酸配列」は、同じまたは異なるアミノ酸配列であってもよい。さらに、「選択されたアミノ酸配列」は、直接連結されうる。あるいは、それらの間に任意の介在配列が配置されてもよい。
【0061】
さらに、本発明は、本明細書において具体的に開示されるVIVITポリペプチドと相同的なポリペプチドに関する。本発明において、VIVITポリペプチドと相同的なポリペプチドは、1つまたはいくつかのアミノ酸残基の付加、欠失、置換、および挿入から選択される任意の変異を含み、およびVIVITポリペプチドと機能的に同等であるポリペプチドである。「VIVITポリペプチドと機能的に同等」という句は、PPP3CAに対するC1958の結合を阻害する機能を有することを指す。VIVIT配列は好ましくは、VIVITポリペプチドと機能的に同等であるポリペプチドを構成するアミノ酸配列において保存される。したがって、本発明におけるVIVITペプチドと機能的に同等であるポリペプチドは、好ましくはVIVIT配列以外の部位でアミノ酸変異を有する。本発明におけるVIVITペプチドと機能的に同等であるポリペプチドのアミノ酸配列は、VIVIT配列を保存し、かつ「選択されたアミノ酸配列」に対して、60%もしくはそれより高い、通常70%もしくはそれより高い、好ましくは80%もしくはそれより高い、より好ましくは90%もしくはそれより高い、または95%もしくはそれより高い相同性を有し、およびさらにより好ましくは98%もしくはそれより高い相同性を有する。アミノ酸配列相同性は、当技術分野において周知のアルゴリズムを用いて決定されうる。
【0062】
あるいは、変異されてもよいアミノ酸の数は、VIVITペプチド活性が維持される限り、特に制限されない。一般的に、約50アミノ酸まで、好ましくは約30アミノ酸まで、より好ましくは約10アミノ酸まで、およびさらにより好ましくは約3アミノ酸までが変異してもよい。同様に、変異部位は、変異によってVIVITペプチド活性の妨害が起こらない限り、特に制限されない。
【0063】
好ましい態様において、VIVITペプチドの活性は、C1958発現細胞、すなわち膵臓癌細胞においてアポトーシス誘導効果を含む。アポトーシスは、細胞自身によって引き起こされる細胞死を意味し、時にプログラムされた細胞死と呼ばれる。アポトーシスを受けつつある細胞では、核染色体の凝集、核の断片化、または細胞質の濃縮が観察される。アポトーシスを検出するための方法は周知である。例えば、アポトーシスは、TUNEL染色(ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼビオチン-dUTPニック末端標識;Gavriela, Y., et al., J. Cell Biol. 119: 493-501, 1992.Mori, C., et al., Anat. & Embryol. 190: 21-28, 1994)によって確認してもよい。あるいは、DNAラダーアッセイ、アネキシンV染色、カスパーゼアッセイ、電子顕微鏡法、または核もしくは細胞膜に及ぼすコンフォメーションの変化の観察を、アポトーシスを検出するために用いてもよい。アポトーシスによって誘導される細胞におけるこれらの挙動を検出するために任意の市販のキットを用いてもよい。例えば、そのようなアポトーシス検出キットは、以下の提供元から市販されている可能性がある:
LabChem Inc.、
Promega、
BD Biosciences Pharmingen、
Calbiochem、
Takara Bio Company(CLONTECH Inc.)、
CHEMICON International, Inc、
Medical & Biological Laboratories Co., Ltd.等。
【0064】
本発明のポリペプチドは、選択されたアミノ酸配列に基づいていかなる位置からも化学合成されうる。通常のペプチド化学において用いられる方法を、ポリペプチドを合成する方法のために用いることができる。具体的には、以下の文書および日本国特許公報において記述される方法が含まれる:
Peptide Synthesis, Interscience, New York, 1966; The Proteins, Vol. 2, Academic Press Inc., New York, 1976;
Peputido gousei (Peptide Synthesis), Maruzen (Inc.), 1975;
Peputido gousei no kiso to jikken (Fundamental and Experimental Peptide Synthesis), Maruzen (Inc.), 1985;
Iyakuhin no kaihatsu (Development of Drug), Sequel, Vol. 14: Peputido gousei (Peptide Synthesis), Hirokawa Shoten, 1991;
国際特許公報WO99/67288。
【0065】
本発明のポリペプチドはまた、公知の遺伝子工学技術によって合成することができる。遺伝子工学技術の例は、以下の通りである。具体的には、所望のペプチドをコードするDNAを適当な宿主細胞に導入して形質転換された細胞を調製する。本発明のポリペプチドは、この形質転換された細胞によって産生されるポリペプチドを回収することによって得ることができる。あるいは、所望のポリペプチドは、タンパク質合成に関する必要な要素がインビトロで再構成される、インビトロ翻訳系で合成されうる。
【0066】
遺伝子工学技術を用いる場合、本発明のポリペプチドは、異なるアミノ酸配列を有するペプチドとの融合タンパク質として発現されうる。所望の融合タンパク質を発現するベクターは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、異なるペプチドをコードするポリヌクレオチドに、それらが同じ読み取り枠に存在するように連結させる段階、および次に得られたヌクレオチドを発現ベクターに導入する段階によって得ることができる。融合タンパク質は、得られたベクターで適当な宿主を形質転換することによって発現される。融合タンパク質を形成することにおいて用いられる異なるペプチドには、以下のペプチドが含まれる:
FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210)、
His(ヒスチジン)残基6個からなる6×His、10×His、
インフルエンザ血球凝集素(HA)、
ヒトc-myc断片、
VSV-GP断片、
p18 HIV断片、
T7-タグ、
HSV-タグ、
E-タグ、
SV40T抗原断片、
lckタグ、
α-チューブリン断片、
B-タグ、
プロテインC断片、
GST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)、
HA(インフルエンザ血球凝集素)、
免疫グロブリン定常領域、
β-ガラクトシダーゼ、および
MBP(マルトース結合タンパク質)。
【0067】
本発明のポリペプチドは、このように産生された融合タンパク質を適当なプロテアーゼで処置する段階、および次に所望のポリペプチドを回収する段階によって得ることができる。ポリペプチドを精製するために、融合タンパク質に結合するアフィニティクロマトグラフィーで、融合タンパク質を予め捕獲した後、捕獲された融合タンパク質をプロテアーゼによって処置することができる。プロテアーゼ処置によって、所望のポリペプチドをアフィニティクロマトグラフィーから分離して、高純度の所望のポリペプチドを回収する。
【0068】
本発明のポリペプチドには、上記の条件AおよびBのいずれかを満たす改変ポリペプチドが含まれる。本発明において、「改変」という用語は、例えば他の物質との結合を指す。他の物質には、ペプチド、脂質、糖類、および様々な天然に存在する、または合成高分子のような有機化合物が含まれる。本発明のポリペプチドは、PPP3CAに対するC1958の結合を阻害する所望の活性をポリペプチドが保持する限り、任意の改変を有してもよい。改変はまた、本発明のポリペプチドに対して付加的な機能を付与しうる。付加的な機能の例には、標的化能(targetability)、送達能(deliverability)、および安定化が含まれる。
【0069】
本発明における改変の好ましい例には、例えば、細胞膜透過性物質の導入が含まれる。通常、細胞内構造は、細胞膜によって外側から切り離される。したがって、細胞外物質を細胞内に効率よく導入することは難しい。細胞膜透過性は、ポリペプチドを細胞膜透過性物質で改変することによって、本発明のポリペプチドに付与されうる。その結果、本発明のポリペプチドを細胞に接触させることによって、ポリペプチドは、細胞内に送達されて、そこで作用することができる。
【0070】
「細胞膜透過性物質」は、哺乳動物の細胞膜を浸透して細胞質に入ることができる物質を指す。例えば、特定のリポソームは細胞膜と融合して、その内容物を細胞内に放出する。その間に、特定のタイプのポリペプチドは、哺乳動物細胞の細胞質膜に浸透して細胞内部に入る。そのような細胞内に入る活性を有するポリペプチドに関して、本発明における細胞質膜等は、物質として好ましい。具体的には、本発明には、以下の一般式を有するポリペプチドが含まれる。
[R]-[D];
式中、
[R]は細胞膜透過性物質を表し;[D]はVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含む断片配列を表す(例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の37〜41位でAsp Ile Ile Ile Thrが、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されているアミノ酸配列)。上記の一般式において、[R]および[D]は、直接連結することができ、またはリンカーを通して間接的に連結することができる。ペプチド、多数の官能基を有する化合物等をリンカーとして用いることができる。具体的には-GGG-を含むアミノ酸配列をリンカーとして用いることができる。あるいは、細胞膜透過性物質および選択された配列を含むポリペプチドを微細な粒子の表面に結合させることができる。[R]は、[D]の任意の位置に連結させることができる。具体的には、[R]は、[D]のN-末端もしくはC末端に、または[D]を構成するアミノ酸の側鎖に連結させることができる。さらに、1つより多い[R]分子を1つの[D]分子に連結させることができる。[R]分子を、[D]分子上の異なる位置に導入することができる。あるいは、[D]は、互いに連結した多数の[R]で改変されうる。
【0071】
例えば、細胞膜透過性を有する多様な天然に存在する、または人工的に合成されたポリペプチドが報告されている(Joliot A. & Prochiantz A., Nat Cell Biol. 2004; 6:189-96)。これらの公知の細胞膜透過性物質は全て、本発明におけるポリペプチドを改変するために用いることができる。本発明において、例えば、以下の群から選択される任意の物質を、上記の細胞透過性物質として用いることができる。
ポリアルギニン; Matsushita et al., J. Neurosci.; 21, 6000-6007 (2003)。
[Tat / RKKRRQRRR] (配列番号: 12) Frankel, A. et al., Cell 55,1189-1193 (1988)。
Green, M. & Loewenstein, P. M. Cell 55, 1179-1188 (1988)。
[ペネトラチン / RQIKIWFQNRRMKWKK] (配列番号: 13)
Derossi, D. et al., J. Biol. Chem. 269, 10444-10450 (1994)。
[ブフォリンII / TRSSRAGLQFPVGRVHRLLRK] (配列番号: 14)
Park, C. B. et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 97, 8245-8250 (2000)。
[トランスポータン/ GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL] (配列番号: 15)
Pooga, M. et al., FASEB J. 12, 67-77 (1998)。
[MAP (モデル両親媒性ペプチド) / KLALKLALKALKAALKLA] (配列番号: 16)
Oehlke, J. et al., Biochim. Biophys. Acta. 1414, 127-139 (1998)。
[K-FGF / AAVALLPAVLLALLAP] (配列番号 17)
Lin, Y. Z. et al., J. Biol. Chem. 270, 14255-14258 (1995)。
[Ku70 / VPMLK] (配列番号: 18)
Sawada, M. et al. Nature Cell Biol. 5, 352-357 (2003)。
[Ku70 / PMLKE] (配列番号: 25)
Sawada, M. et al. Nature Cell Biol. 5, 352-357 (2003)。
[プリオン / MANLGYWLLALFVTMWTDVGLCKKRPKP] (配列番号: 19)
Lundberg, P. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 299, 85-90 (2002)。
[pVEC / LLIILRRRIRKQAHAHSK] (配列番号: 20)
Elmquist, A. et al., Exp. Cell Res. 269, 237-244 (2001)。
[Pep-1 / KETWWETWWTEWSQPKKKRKV] (配列番号: 21)
Morris, M. C. et al., Nature Biotechnol. 19, 1173-1176 (2001)。
[SynB1 / RGGRLSYSRRRFSTSTGR] (配列番号: 22)
Rousselle, C. et al. Mol. Pharmacol. 57, 679-686 (2000)。
[Pep-7 / SDLWEMMMVSLACQY] (配列番号: 23)
Gao, C. et al., Bioorg. Med. Chem. 10, 4057-4065 (2002)。
[HN-1 / TSPLNIHNGQKL] (配列番号: 24)
Hong, F. D. & Clayman, G. L. Cancer Res. 60, 6551-6556 (2000)。
【0072】
本発明において、細胞膜透過性物質の例として先に記載したポリアルギニンは、任意の数のアルギニン残基によって構成される。具体的には、例えば、これは連続した5〜20アルギニン残基によって構成される。アルギニン残基の好ましい数は11個(配列番号:11)である。
【0073】
VIVITポリペプチドを含む薬学的組成物
本発明のポリペプチドは、癌細胞の増殖を阻害する。したがって、本発明は、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含むポリペプチド(例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の37〜41位でAsp Ile Ile Ile Thrが、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されているアミノ酸配列)、またはこれをコードするポリヌクレオチドを活性成分として含む、癌のための治療物質および/または予防物質を提供する。あるいは、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する段階を含む、癌を処置および/または予防するための方法に関する。さらに、本発明は、癌を処置および/または予防するための薬学的組成物を製造することにおける本発明のポリペプチドの使用に関する。本発明によって処置または予防されうる癌は、C1958の発現が癌細胞において上方制御されている限り、限定されない。例えば、本発明のポリペプチドは、膵臓癌、肺癌、腎臓癌、または精巣腫瘍を処置するために有用である。それらの中で、膵臓癌は、本発明における処置または予防のための標的として特に好ましい。
【0074】
あるいは、本発明のポリペプチドは、癌細胞のアポトーシスを誘導するために用いることができる。したがって、本発明は、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含むポリペプチド(例えば、配列番号:2に記載されるアミノ酸配列(C1958)の37〜41位でAsp Ile Ile Ile Thrが、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されているアミノ酸配列)、またはこれをコードするポリヌクレオチドを活性成分として含む、細胞のアポトーシス誘導物質を提供する。本発明のアポトーシス誘導物質は、癌のような細胞増殖疾患を処置するために用いてもよい。本発明によって処置または予防されうる癌は、C1958の発現が癌細胞において上方制御されている限り、限定されない。例えば、本発明のポリペプチドは、膵臓癌、肺癌、腎臓癌、または精巣腫瘍を処置することにおいて有用である。それらの中で、膵臓癌は、本発明における処置または予防のための標的として特に好ましい。あるいは、本発明は、本発明のポリペプチドを投与する段階を含む、細胞のアポトーシスを誘導するための方法に関する。さらに、本発明は、細胞においてアポトーシスを誘導するための薬学的組成物を製造することにおける本発明のポリペプチドの使用に関する。
【0075】
本発明のポリペプチドは、膵臓癌のようなC1958発現細胞においてアポトーシスを誘導する。その間に、C1958発現は、ほとんどの正常臓器において観察されていない。いくつかの正常臓器において、C1958の発現レベルは、癌組織と比較して比較的低い。したがって、本発明のポリペプチドは、癌細胞において特異的にアポトーシスを誘導する可能性がある。
【0076】
本発明のポリペプチドを、癌を処置するため、または細胞においてアポトーシスを誘導するために、調製された薬剤としてヒトならびにマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、およびチンパンジーのような他の哺乳動物に投与する場合、単離化合物を直接、または薬剤を調製するための公知の方法を用いて適当な投与剤形に製剤化して投与することができる。例えば、必要であれば、薬剤を糖衣錠、カプセル、エリキシル剤、およびマイクロカプセルとして経口投与することができ、または一方、水もしくは他の任意の薬学的に許容される液体による滅菌溶液もしくは懸濁液である注射形態で非経口投与することができる。例えば、化合物は、一般的に許容される薬剤を産生するために必要な単位投与剤形で、薬理学的に許容される担体または培地、具体的には、滅菌水、生理的食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定化剤、矯味矯臭剤、添加物、賦形剤、保存剤、および結合剤と混合することができる。これらの製剤において活性成分の量に応じて、明記された範囲内の適した用量を決定することができる。
【0077】
錠剤およびカプセルにおいて混合することができる添加剤の例は、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴム、およびアラビアゴムのような結合剤;結晶セルロースのような培地;コーンスターチ、ゼラチン、およびアルギン酸のような膨張剤;ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;ショ糖、乳糖、またはサッカリンのような甘味料;およびペパーミント、ウィンターグリーン油、およびサクランボのような矯味矯臭剤である。単位投与剤形がカプセルである場合、上記の成分に油のような液体担体をさらに含めることができる。注射用の滅菌混合物は、通常の薬剤の実現にしたがって注射用蒸留水のような培地を用いて製剤化することができる。
【0078】
生理食塩液、グルコース、ならびにD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、および塩化ナトリウムのような補助剤を含む他の等張液を、注射用水溶液として用いることができる。それらは適切な溶解剤、例えばアルコール、具体的にはエタノールならびにプロピレングリコールおよびポリエチレングリコールのような多価アルコール、Polysorbate 80(商標)およびHCO-50のような非イオン性界面活性剤と併用して用いることができる。
【0079】
ゴマ油または大豆油は、油性の液体として用いることができ、および同様に溶解剤として安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールと併用して用いることができる。さらに、それらは、リン酸緩衝液および酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝液;塩酸プロカインのような鎮痛剤;ベンジルアルコールおよびフェノールのような安定化剤;ならびに抗酸化剤と共にさらに処方することができる。このように調製された注射剤は、適当なアンプルに充填することができる。
【0080】
本発明の薬学的化合物を患者に、例えば、動脈内注射、静脈内注射、または皮下注射によって、および同様に鼻腔内投与、経気管投与、筋肉内投与、または経口投与によって投与するために、当業者に周知の方法を用いることができる。用量および投与法は、投与法と同様に患者の体重および年齢に応じて変えられる。しかし、当業者はそれらを日常的に選択することができる。本発明のポリペプチドをコードするDNAを遺伝子治療のためにベクターに挿入することができ、かつベクターを処置のために投与することができる。用量および投与法は患者の体重、年齢、および症状に依存して変えられるが、当業者はそれらを適切に選択することができる。例えば、その活性を調節するために、本発明のポリペプチドに結合する化合物の用量は、正常な成人(体重60 kg)に経口投与する場合、約0.1 mg〜約100 mg/日、好ましくは約1.0 mg〜約50 mg/日、より好ましくは約1.0 mg〜約20 mg/日であるが、これは症状に応じてわずかに変化する。
【0081】
化合物が注射形態で正常な成人(体重60 kg)に非経口投与される場合、約0.01 mg〜約30 mg/日、好ましくは約0.1 mg〜約20 mg/日、より好ましくは約0.1 mg〜約10 mg/日の用量を静脈内に注射することが簡便であるが、これは患者、標的臓器、症状、および投与法に応じてわずかに変化する。同様に、化合物は、体重60 kgに対しての用量から変換された量で他の動物に投与することができる。
【0082】
III. 癌を処置する化合物の産生および同定
例として提供される事項を考慮し、本発明の一局面は、C1958とPPP3CAとの結合を減少または防ぐ試験化合物を同定することに関する。
【0083】
C1958/PPP3CA結合を決定するための方法には、2つのタンパク質の相互作用を決定するための任意の方法が含まれる。このようなアッセイとしては、従来のアプローチ、例えば、架橋、共免疫沈降、および勾配またはクロマトグラフィーカラムを通した同時精製が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、タンパク質-タンパク質相互作用は、Fieldsと共同研究者によって述べられている酵母ベースの遺伝学的システム(Fields and Song, Nature 340:245-246 (1989); Chien et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 9578-9582 (1991))を用い、Chevray and Nathans (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5789-5793 (1992))に開示されているようにモニターすることができる。酵母GALAなどの多くの転写アクチベーターは2個の物理的に別個のモジュラードメインからなり、片方がDNA結合ドメインとして働き、もう片方が転写活性化ドメインとして機能する。上記刊行物に記載の酵母発現システム(一般に「ツーハイブリッドシステム」と呼ばれる)はこの特性を利用して2つのハイブリッドタンパク質を使用しており、片方は標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合しており、もう片方は候補活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GALA活性化プロモーターの制御下にあるGAL1-lacZレポーター遺伝子の発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介するGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素産生性基質で検出される。ツーハイブリッド技術を用いて2つの特異的なタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER(商標))がClontechから市販されている。このシステムを拡張して、特異的タンパク質相互作用に関わるタンパク質ドメインをマッピングすることもできるし、これら相互作用に非常に重要なアミノ酸残基を正確に特定することもできる。
【0084】
本出願では「C1958」または「PPP3CA」と言及していても、両者の相互作用が解析または操作される場合、これらタンパク質の片方または両方の結合部分を、これらタンパク質の全長コピーの代わりに用いることができることが理解される。PPP3CAに結合するC1958の断片は、C1958の標準的な欠失解析および/または突然変異誘発を用いてPPP3CAに結合する断片を同定することによって容易に同定しうる。具体的には、先に述べたように、C1958ポリペプチドは、そのPDIIITモチーフでPPP3CAと相互作用することが確認された。したがって、配列番号:2のアミノ酸配列のPDIIITモチーフを含むいかなる断片も、C1958ポリペプチドのPPP3CA結合断片として用いることができる。例えば、配列番号:2のアミノ酸配列の36〜41位のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、PPP3CA結合断片として簡便に用いられる。さらに、本発明において、C1958ポリペプチドまたはC1958のPPP3CA結合断片はリン酸化型であってもよい。C1958ポリペプチドのリン酸化型は、C1958キナーゼ活性を有するタンパク質で調製してもよい。類似の分析を用いて、PPP3CAのC1958結合断片を同定してもよい。
【0085】
本明細書に開示されるように、例えば、タンパク質(抗体を含む)、ムテイン(mutein)、ポリヌクレオチド、核酸アプタマー、ならびにペプチドおよび非ペプチド有機低分子を含む任意の試験化合物が、本発明の試験化合物となりうる。試験化合物は、天然の供給源から単離されてもよく、合成的にもしくは組換えによって、またはこれらの任意の組み合わせで調製されてもよい。
【0086】
例えばペプチドは、"Solid Phase Peptide Synthesis" by G. Barany and R. B. Merrifield in Peptides, Vol. 2, edited by E. Gross and J. Meienhoffer, Academic Press, New York, N.Y., pp. 100-118 (1980) に記載されているような固相技術を用いて合成的に産生しうる。同様に核酸も、Beaucage, S.L., & Iyer, R.P. (1992) Tetrahedron, 48, 2223-2311; および Matthes et al., EMBO J., 3:801-805 (1984) に記載されているように固相技術を用いて合成することができる。
【0087】
阻害ペプチドが同定されれば、インビボでのペプチドの安定性を増加させるために、様々なアミノ酸模倣体または非天然アミノ酸で本発明のペプチドを修飾することが特に有用である。安定性は数々の方法でアッセイできる。例えば、ペプチダーゼおよび様々な生物学的媒体、例えばヒト血漿および血清などを用いて安定性が試験されている。例えば、Verhoef et al., Eur. J. Drug Metab Pharmacokin. 11:291-302 (1986) を参照されたい。当技術分野で公知の他の有用なペプチド修飾にはグリコシル化およびアセチル化が含まれる。
【0088】
組換えおよび化学的合成技術は両方とも、本発明の試験化合物を産生するために用いうる。例えば、試験化合物の核酸は適切なベクターへ挿入して産生することができ、これをコンピテント細胞にトランスフェクトして発現させうる。または、核酸はPCR技術または適した宿主中での発現を用いて増幅しうる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, USAを参照されたい)。
【0089】
ペプチドおよびタンパク質も、当技術分野において周知の組換え技術を用いて、例えば、Morrison, J. Bact., 132:349-351 (1977)および Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology, 101:347-362 (Wu et al., eds, 1983) に記載されているように適した宿主細胞を組換えDNAコンストラクトで形質転換することによって、発現しうる。
【0090】
抗C1958および抗PPP3CA抗体
本発明の一部の局面において、試験化合物は抗C1958または抗PPP3CA抗体である。一部の態様において、これら抗体は、ヒト化抗体を含むがこれに限定されないキメラである。場合によっては、本発明の抗体の態様は、これらタンパク質の片方がもう一方に会合する境界面でC1958またはPPP3CAのいずれかに結合する。一部の態様において、これら抗体は、生理的条件下で少なくとも約105 mol-1、106 mol-1以上、107 mol-1以上、108 mol-1以上、または109 mol-1以上のKaでC1958またはPPP3CAに結合する。このような抗体は、例えばChemicon, Inc. (Temecula Calif.) などの商業的供給元から購入することができ、あるいは実質的に精製されたC1958またはPPP3CAタンパク質、例えばヒトタンパク質またはその断片などを、免疫原として用いて作製することができる。提供された免疫原からモノクローナルおよびポリクローナル抗体の両方を調製する方法は、当技術分野において周知である。精製技術、および特定の免疫原に対する抗体を同定するための方法については、例えば、その内容が参照として本明細書に組み入れられるPCT/US02/07144 (WO/03/077838) を参照されたい。例えば親和性カラムを形成するために抗体親和性マトリックスを用いる抗体精製法も当技術分野において周知で、市販されている(AntibodyShop, Copenhagen, Denmark)。C1958/PPP3CAの会合を阻害しうる抗体の同定は、試験化合物について全般的に以下に詳述するものと同じ試験アッセイを用いて行われる。
【0091】
変換酵素
変換酵素は本発明の試験化合物となりうる。本発明の文脈において、変換酵素とは、C1958、またはPPP3CA、またはそれらの両方に対して共有結合性翻訳後修飾を行う分子触媒である。本発明の変換酵素は、C1958および/またはPPP3CAの1つまたは複数のアミノ酸残基を、修飾タンパク質の構造中のアロステリック変化を引き起こすように、あるいはC1958とPPP3CAとの間の結合を妨害するようにC1958/PPP3CA分子結合部位の化学的性質もしくは修飾タンパク質の構造を変えて、共有結合的に修飾する。これら2分子間の結合の妨害とは、結合のKaにおいて、30℃、イオン強度0.1、界面活性剤の非存在下で測定したこれらタンパク質間の結合のKaと比べて、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、70%またはそれ以上低下させることを指す。本発明の例示的な変換酵素には、キナーゼ、ホスファターゼ、アミダーゼ、アセチラーゼ、グリコシダーゼなどが含まれる。
【0092】
試験化合物ライブラリーの構築
試験化合物ライブラリーの構築は当技術分野において周知であるが、本セクションでは、試験化合物の同定と、C1958/PPP3CA相互作用の有効な阻害剤をスクリーニングするためのこのような化合物のライブラリーの構築とにおけるさらなる手引きを提供する。
【0093】
分子モデリング
試験化合物ライブラリーの構築は、求められる特性を有することが知られている化合物の分子構造、ならびに/または阻害する標的分子、すなわちC1958およびPPP3CAの分子構造の知識によって促進される。さらなる評価に適した試験化合物の予備スクリーニングに対する1つのアプローチが、試験化合物とその標的との間の相互作用のコンピュータモデリングである。本発明において、C1958および/またはPPP3CAの間の相互作用をモデリングすることにより、自身の相互作用の詳細への洞察が提供され、また、可能性のある、相互作用の分子阻害剤を含む、相互作用を阻害するために可能な方法が示唆される。
【0094】
コンピュータモデリングテクノロジーにより、選択した分子の3次元原子構造の視覚化と、その分子と相互作用するであろう新しい化合物の合理的設計とが可能である。3次元構築物は典型的には、選択した分子のX線結晶構造解析またはNMRイメージングのデータに依存する。分子動態は力場データを必要とする。コンピュータグラフィックシステムは、新しい化合物がどのように標的分子と関連するかを予測することができ、結合特異性を完全にするように化合物および標的分子の構造を実験操作することが可能である。片方または両方に小さな変化を起こしたときに分子-化合物間相互作用がどうなるかの予測には、通常ユーザーが使いやすい、分子設計プログラムとユーザーとの間のメニュー駆動型インターフェースと連係した、分子力学ソフトウェアおよび計算集約型コンピュータが必要である。
【0095】
一般的に述べた上記の分子モデリングシステムの一例は、CHARMmおよびQUANTAプログラム(Polygen Corporation, Waltham, Mass)からなる。CHARMmはエネルギー最小化および分子動態機能を行う。QUANTAは分子構造の構築、グラフィックモデリング、および解析を行う。QUANTAによって、分子の互いの挙動の相互的な構築、修飾、視覚化、および解析が可能である。
【0096】
特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピュータモデリングが多くの論文に概説されている。例えば、Rotivinen, et al. Acta Pharmaceutica Fennica 97, 159-166 (1988); Ripka, New Scientist 54-57 (Jun. 16, 1988); McKinaly and Rossmann, Annu. Rev. Pharmacol. Toxiciol. 29, 111-122 (1989); Perry and Davies, Prog Clin Biol Res.291:189-93(1989); Lewis and Dean, Proc. R. Soc. Lond. 236, 125-140 and 141-162 (1989);および、核酸成分に対するモデル受容体に関し、Askew, et al., J. Am. Chem. Soc. 111, 1082-1090 (1989)。
【0097】
化学物質をスクリーニングし、画像として描写する他のコンピュータプログラムが、BioDesign, Inc., Pasadena, Calif.、Allelix, Inc, Mississauga, Ontario, Canada、およびHypercube, Inc., Cambridge, Ontarioなどの会社から利用可能である。例えば、DesJarlais et al. (1988) J. Med. Chem. 31:722; Meng et al. (1992) J. Computer Chem. 13:505; Meng et al. (1993) Proteins 17:266; Shoichet et al. (1993) Science 259:1445を参照されたい。
【0098】
C1958/PPP3CA相互作用の推定阻害剤が同定されれば、以下に詳述するように、同定された推定阻害剤の化学的構造に基づき、コンビナトリアルケミカル技術を使用して任意の数の変異体を構築することができる。こうして得られる推定阻害剤または「試験化合物」のライブラリーを本発明の方法を用いてスクリーニングし、C1958/PPP3CAの会合を阻害するライブラリーの試験化合物を同定することができる。
【0099】
コンビナトリアルケミカル合成
試験化合物のコンビナトリアルライブラリーは、C1958/PPP3CA相互作用の公知の阻害剤に存在するコア構造の知識を含む合理的薬物設計プログラムの一部として産生しうる。このアプローチは、ライブラリーを妥当なサイズに維持することが可能であり、ハイスループットスクリーニングを促進する。または、単純な、特に短いポリマー分子ライブラリーは、ライブラリーを構成する分子ファミリーの全ての並べ換えを単純に合成することによって構築しうる。この後者のアプローチの一例は、全てのペプチドが6アミノ酸長のライブラリーであろう。このようなペプチドライブラリーは、全ての6アミノ酸配列の並べ換えを含みうる。このタイプのライブラリーは直線的コンビナトリアルケミカルライブラリーと呼ばれる。
【0100】
コンビナトリアルケミカルライブラリーの調製は当業者に周知であり、化学的または生物学的合成によって生成されうる。コンビナトリアルケミカルライブラリーには、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号, Furka, Int. J. Pept. Prot. Res. 37:487-493 (1991) および Houghten et al., Nature 354:84-86 (1991) を参照されたい)が挙げられるが、これに限定されない。化学的多様性ライブラリーを生成するための他の化学も用いることができる。このような化学としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ペプチド(例えばPCT公報WO91/19735)、コードされるペプチド(例えばPCT公報WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えばPCT公報WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドなどのディバーソマー(diversomer)(DeWitt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909-6913 (1993))、ビニル性(vinylogous)ポリペプチド(Hagihara et al., J. Am. Chem. Soc. 114:6568 (1992))、グルコース骨格を有する非ペプチド性ペプチド模倣体(Hirschmann et al., J. Am. Chem. Soc. 114:9217-9218 (1992))、低分子化合物ライブラリーの類似の有機合成(Chen et al., J. Amer. Chem. Soc. 116:2661 (1994))、オリゴカルバメート(Cho et al., Science 261:1303 (1993))、および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J. Org. Chem. 59:658 (1994))、核酸ライブラリー(Ausubel、BergerおよびSambrook(全て上記)を参照されたい)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば米国特許第5,539,083号を参照されたい)、抗体ライブラリー(例えばVaughan et al., Nature Biotechnology, 14(3):309-314 (1996) およびPCT/US96/10287を参照されたい)、炭水化物ライブラリー(例えばLiang et al., Science, 274:1520-1522 (1996) および米国特許第5,593,853号を参照されたい)、有機低分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN, Jan 18, page 33 (1993); イソプレノイド、米国特許第5,569,588号; チアゾリジノン(thiazolidinone)およびメタチアザノン(metathiazanone)、米国特許第5,549,974号; ピロリジン、米国特許第5,525,735号および第5,519,134号; モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号; ベンゾジアゼピン、米国特許第5,288,514号などを参照されたい)。
【0101】
ファージディスプレイ
別のアプローチは、組換えバクテリオファージを用いてライブラリーを産生する。この「ファージ法」(Scott and Smith, Science 249:386-390, 1990; Cwirla, et al, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:6378-6382, 1990; Devlin et al., Science, 249:404-406, 1990)を用いて、非常に大きなライブラリーを構築することができる(例えば106〜108化学単位)。第二のアプローチは主に化学的方法を用いるものであり、Geysen法(Geysen et al., Molecular Immunology 23:709-715, 1986; Geysen et al. J. Immunologic Method 102:259-274, 1987)およびFodorらの方法(Science 251:767-773, 1991)がその例である。Furka et al. (14th International Congress of Biochemistry, Volume #5, Abstract FR:013, 1988; Furka, Int. J. Peptide Protein Res. 37:487-493, 1991)、Houghten (米国特許第4,631,211号、 December 1986 発行) 、およびRutter et al. (米国特許第5,010,175号、Apr. 23, 1991 発行)が、アゴニストまたはアンタゴニストとして試験されうるペプチドの混合物を産生するための方法を記載している。
【0102】
コンビナトリアルライブラリー調製用の装置が市販されている(例えば、357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville KY, Symphony, Rainin, Woburn, MA, 433A Applied Biosystems, Foster City, CA, 9050 Plus, Millipore, Bedford, MAを参照されたい)。また、多数のコンビナトリアルライブラリー自体が市販されている(例えばComGenex, Princeton, N.J., Tripos, Inc., St. Louis, MO, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, MDなどを参照されたい)。
【0103】
試験化合物ライブラリーのスクリーニング
本発明のスクリーニング方法は、C1958/PPP3CAの会合を妨害する確率が高い試験化合物の効率的で迅速な同定を提供する。一般に、C1958/PPP3CAの会合を妨害する試験化合物の能力を決定する方法はいずれも本発明と共に使用するのに適する。例えば、ELISA形式の競合および非競合阻害アッセイを利用しうる。対照実験を行ってシステムの最大結合能を決定すべきである(例えば、下記の例においては、結合させたC1958をPPP3CAと接触させ、C1958に結合するPPP3CAの量を決定する)。
【0104】
競合アッセイ形式
本発明の試験化合物をスクリーニングするために競合アッセイを用いうる。例として、競合ELISA形式は、固体支持体に結合されたC1958(またはPPP3CA)を含みうる。この結合されたC1958(またはPPP3CA)は、PPP3CA(またはC1958)および試験化合物とインキュベートされる。試験化合物および/またはPPP3CA(もしくはC1958)をC1958(またはPPP3CA)に結合させるのに十分な時間の後、基質を洗浄して非結合物質を除く。そしてC1958に結合したPPP3CAの量を決定する。これは、当技術分野で公知の様々な方法のいずれか、例えば、検出可能な標識でタグ化されたPPP3CA(またはC1958)種を用いて、あるいは洗浄した基質を標識化抗PPP3CA(またはC1958)抗体と接触させて、遂行しうる。C1958(またはPPP3CA)に結合したPPP3CA(またはC1958)の量は、PPP3CA/C1958の会合を妨害する試験化合物の能力に反比例するであろう。抗体を含むがそれに限定されないタンパク質の標識は、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988) に記載されている。
【0105】
あるバリエーションでは、C1958(またはPPP3CA)は親和性タグで標識される。標識されたC1958(またはPPP3CA)を次に、試験化合物およびPPP3CA(またはC1958)とインキュベートし、免疫沈降する。そして免疫沈降物を抗PPP3CA(またはC1958)抗体を用いたウェスタンブロッティングに供する。前記の競合アッセイ形式のように、C1958(またはPPP3CA)と会合することが見出されたPPP3CA(またはC1958)の量は、C1958/PPP3CAの会合を妨害する試験化合物の能力と反比例する。
【0106】
非競合アッセイ形式
非競合結合アッセイも、本明細書に記載されるもののような競合アッセイを用いたスクリーニングに容易に適用できない形式で構築された化合物ライブラリーを試験するための初期スクリーニングとして有用でありうる。このようなライブラリーの一例は、ファージディスプレイライブラリーである(例えば、Barret, et al. (1992) Anal. Biochem 204, 357-364を参照されたい)。
【0107】
ファージライブラリーは、数多くの異なる組換えペプチドの作業量(working quantity)を素早く産生しうる点において有用である。ファージライブラリーはそれ自体は本発明の競合アッセイに向いてはいないが、非競合形式で効率的にスクリーニングされ、どの組換えペプチド試験化合物がC1958またはPPP3CAに結合するかを決定することができる。次いで、結合すると同定された試験化合物を産生し、競合アッセイ形式を用いてスクリーニングすることができる。ファージおよび細胞ディスプレイライブラリーの産生およびスクリーニングは当技術分野において周知であり、例えば、Ladner et al., WO 88/06630; Fuchs et al. (1991) Biotechnology 9:1369-1372; Goward et al. (1993) TIBS 18:136-140; Charbit et al. (1986) EMBO J 5, 3029-3037; Cull et al. (1992) PNAS USA 89:1865-1869; Cwirla, et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87, 6378-6382に考察されている。
【0108】
例示的な非競合アッセイは、成分の1つ(C1958またはPPP3CA)の添加なしで、競合アッセイに関して記載したものと類似の手順に従う。しかしながら、非競合形式はC1958またはPPP3CAに対する試験化合物の結合を決定するので、C1958およびPPP3CAの両方に結合する試験化合物の能力を各候補について決定する必要がある。したがって、例として、固定化されたC1958への試験化合物の結合は、結合していない試験化合物を洗い流し、結合した試験化合物を支持体から溶出させた後に、例えば、質量分析、タンパク質測定(BradfordもしくはLowryアッセイ法、または280nmの吸光度測定)によって溶出物を解析することによって、決定しうる。または、溶出工程を省いて、支持体表面での有機層の分光学的特性における変化をモニターすることによって試験化合物の結合を決定してもよい。表面の分光学的特性をモニターするための方法としては以下のものが含まれるが、これらに限定されない:吸光度、反射率、透過率、複屈折、屈折率、回折、表面プラズモン共鳴、偏光解析法、共鳴ミラー法、格子共役導波管(grating coupled waveguide)技術、および多極共鳴分光法(これらは全て当業者に公知である)。溶出工程の必要を省くために、標識された試験化合物もアッセイに用いうる。この場合、非結合物質を洗い流した後に支持体に会合している標識の量が試験化合物の結合に直接比例する。
【0109】
多くの周知のロボットシステムが液相化学用に開発されてきた。これらシステムとしては、Takeda Chemical Industries, LTD.(Osaka, Japan)によって開発された自動合成装置のような自動ワークステーションが挙げられ、多くのロボットシステムがロボットアーム(Zymate II, Zymark Corporation, Hopkinton, Mass.; Orca, Hewlett Packard, Palo Alto, Calif.)を利用しており、化学者によって行われるマニュアル合成操作を模倣する。上記装置はいずれも、本発明と共に使用するのに適している。本明細書において述べられているように操作可能になるようなこれら装置に対する修飾(もしあれば)の性質および実施は、関連技術分野の当業者には明らかであろう。加えて、多数のコンビナトリアルライブラリーはそれ自体が市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, N.J., Asinex, Moscow, Ru, Tripos, Inc., St. Louis, MO, ChemStar, Ltd, Moscow, RU, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, MDなどを参照されたい)。
【0110】
変換酵素のスクリーニング
変換酵素である試験化合物は、アッセイする変換酵素に特異的なコファクターおよび補助基質を用いて非競合形式でアッセイしうる。このようなコファクターおよび補助基質は、調べる変換酵素のタイプが与えられれば、当業者に公知である。
【0111】
変換酵素の1つの例示的なスクリーニング手順は、まず、変換酵素に特徴的なタンパク質の共有結合性修飾を行うのに必要なコファクターおよび補助基質の存在下、好ましくは生理的条件下で、C1958および/またはPPP3CAを変換酵素と接触させることを含む。修飾されたタンパク質を次に、結合パートナーに結合する能力(すなわちC1958のPPP3CAに対する結合)について試験する。次に、修飾されたタンパク質の結合パートナーに対する結合を、未修飾の対照対の結合と比較し、上記のKaにおいて要求される変化が達成されたかどうかを決定する。
【0112】
アッセイを行う上でタンパク質の検出を促進するために、当業者に周知の技術を用いて、1つまたは複数のタンパク質を上記のような検出可能な標識で標識してもよい。
【0113】
スクリーニング方法
上記のスクリーニングの態様は、さらなる調査に適する試験化合物のハイスループットな決定に適する。特に、本発明のスクリーニングは、好ましくはC1958とPPP3CAとの間の会合を検出する段階を含む。
【0114】
あるいは、調査中の試験化合物を増殖中の細胞に加えて、試験化合物を与えていない対照集団の増殖に対する処置細胞の増殖をモニターしてもよい。試験化合物のスクリーニングに適した細胞株は、本明細書に提供される教示から当業者には明らかである。
【0115】
インビボ試験に関しては、認められた動物モデルに試験化合物を投与すればよい。例えば、以下に記載されるように、本発明の細胞透過性阻害ペプチドは、細胞成長を抑制する可能性がある。
【0116】
IV. 同定された試験化合物からの薬剤の製剤化
よって、本発明は、癌の予防または処置に有用な薬剤および方法を含む。これら薬剤および方法は、C1958/PPP3CA相互作用を阻害するとして同定された少なくとも1つの本発明の試験化合物を、疾患細胞増殖の減弱化または停止を達成するのに有効な量で含む。より具体的には、本発明の文脈において治療的に有効な量とは、処置対象の進行を防ぐのに、あるいはその既存の症状を改善するのに、有効な量を意味する。
【0117】
本発明の方法で処置される個体としては、例えば、膵臓癌を含む癌に罹患した任意の個体が含まれる。このような個体は、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはヤギを含む哺乳動物などの脊椎動物、あるいは任意の他の動物、特に商業的に重要な動物または家畜化された動物でありうる。本発明の目的に関し、マーカータンパク質の発現の上昇とは、一方または両方のマーカータンパク質について、マーカータンパク質の正常細胞での平均濃度よりも、少なくとも10%、好ましくは15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、またはそれよりも多い、平均細胞マーカータンパク質濃度を指す。
【0118】
治療用量範囲の決定
本発明の薬剤のための有効な用量範囲の決定は、特に本明細書に提供される詳述された開示を鑑みれば、十分に当業者の能力の範囲内である。試験化合物の治療的に有効な用量は、まず細胞培養アッセイおよび/または動物モデルから推定できる。例えば、細胞培養で決定されるIC50(50%の細胞が所望の効果を示す用量)を含む循環濃度域へ到達するように、動物モデルにおける用量を算出することができる。また、試験化合物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比が、治療指数(すなわちLD50とED50の比)である。高い治療指数を示す化合物が好ましい。これら細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトに用いる用量範囲を定める際に用いうる。このような化合物の用量は、毒性がほとんどないかまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲内に収まるであろう。用量は、使用される剤形および利用される投与経路に従い、この範囲内で変わりうる。厳密な処方、投与経路、および用量は、患者の状態を考慮して個別の医師によって選択されうる。例えばFingl et al., 1975, in "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1 p1を参照されたい。用量および間隔は、所望の効果を維持するのに十分な活性試験化合物の血漿レベルを提供するように個別に調整しうる。
【0119】
薬学的に許容される添加物
哺乳動物(例えばヒト)に投与する薬剤は、薬学的に許容される添加物、または担体を含みうる。適した添加物およびそれらの製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., 1980, Mack Publishing Co., edited by Oslo et al.に記載されている。水溶性の調製物には、製剤を等張にするために、適切な量の薬学的に許容される塩が製剤中に典型的に用いられる。薬学的に許容される等張添加物の例としては、生理的食塩水、リンゲル液、ハンクス液、およびデキストロース溶液などの液体が含まれるが、これらに限定されない。等張添加物は、注射用製剤に特に重要である。
【0120】
経粘膜投与には、透過させる障壁に適切な浸透剤を製剤に用いる。このような浸透剤は当技術分野において一般的に知られている。
【0121】
添加物は製剤の適正なpHを維持するために用いうる。最適な有効期間のためには、試験化合物を含む溶液のpHは好ましくは約5〜約8、より好ましくは約7〜約7.5である。製剤はまた、凍結乾燥粉末、または、マトリックスが成形品、例えば、フィルム、リポソーム、もしくは微粒子の形態にある、固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性調製物を含む本発明に適した他の選択的な添加物を含みうる。例えば、投与経路、投与される試験化合物の濃度、または、処置がタンパク質、試験化合物をコードする核酸、もしくは試験化合物を分泌することができる細胞を有効成分として含む薬剤を用いるかどうかによって、特定の添加物がより好ましい場合があることが当業者には明らかであろう。
【0122】
本発明の薬学的組成物は、それ自体公知の様式で、例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠形成、研和、乳化、カプセル化、封入(entrapping)、または凍結乾燥プロセスによって、製造しうる。適正な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0123】
経口投与には、担体によって、本発明の化合物の処置患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することが可能である。経口用の薬学的調製物は、試験化合物を固体の拡散性添加物と共に製剤化し、得られた混合物を任意ですりつぶして、所望であれば錠剤または糖衣錠コアを得るために、適した補助剤を加えた後に顆粒の混合物を加工することによって得ることができる。適した添加物は特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類などの増量剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩などの崩壊剤を加えてもよい。
【0124】
本発明の化合物の多くは薬学的に適合性の対イオンとの塩として提供してもよい。薬学的に適合性の塩は、用途によって、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定されない多くの酸と共に形成しうる。塩は、水性または対応する遊離塩基形態である他のプロトン性溶媒に、より可溶性である傾向がある。
【0125】
許容可能な添加物に加えて、本発明の製剤は、同定された試験化合物以外の治療剤を含みうる。例えば、製剤は、抗炎症剤、鎮痛剤、化学療法剤、粘液溶解薬(例えばn-アセチル-システイン)などを含みうる。薬剤自体に他の治療剤を含むことに加え、本発明の薬剤はまた、1つまたは複数の他の薬理的物質に連続的にまたは同時に投与しうる。薬剤および薬理的物質の量は、例えば、どのタイプの薬理的物質を用いるか、また、処置される疾患、ならびにスケジュールおよび投与経路に依存する。
【0126】
本発明の薬剤の投与に続いて、熟練した施術者に周知の様々な方法で哺乳動物の生理的状態をモニターすることができる。
【0127】
遺伝子療法
C1958/PPP3CAの会合の阻害物質(disruptor)として同定されたタンパク質およびペプチド試験化合物は、癌に苦しむ患者に遺伝子療法を用いて治療的に送達しうる。遺伝子療法技術に適用できる例示的試験化合物としては、変換酵素や、立体またはアロステリック阻害によってC1958/PPP3CAの会合を直接変化させるペプチドが含まれる。あるいは、本発明のVIVITポリペプチドもまたC1958/PPP3CAの会合を直接変化させるペプチドとして用いられ得る。一部の局面において、遺伝子療法の態様は、本発明の適した同定された試験化合物をコードする核酸配列を含む。好ましい態様において、核酸配列は、標的細胞における試験化合物の発現に必要な調節エレメントを含む。核酸は、標的細胞のゲノムに安定に挿入されるように準備されうる(例えば、相同組換えカセットベクターの記載について、Thomas, K. R. and Capecchi, M. R. (1987) Cell 51:503を参照されたい)。
【0128】
患者への核酸の送達は直接的でもよいし(この場合、患者は核酸または核酸を含むベクターに直接さらされる)、間接的でもよい(この場合、細胞がまずインビトロで核酸によって形質転換されてから患者に移植される)。これら2つのアプローチはそれぞれインビボまたはエクスビボ遺伝子療法として知られている。
【0129】
遺伝子療法の方法の全般的概説については、Goldspiel et al., (1993) Clinical Pharmacy 12:488-505; Wu and Wu, (1991) Biotherapy 3:87-95; Tolstoshev, (1993) Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 33:573-596; Mulligan, (1993) Science 260:926-932; および Morgan and Anderson, (1993) Ann. Rev. Biochem. 62:191-217; May,(1993) TIBTECH 11(5):155-215を参照されたい。用いうる組換えDNA技術の分野で一般的に知られる方法は、Ausubel et al. (eds.), 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY; および Kriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NYに記載されている。
【0130】
V. スクリーニングおよび処置キット
ある態様において、本発明は、製品、または、癌の処置もしくは予防に有用な化合物をスクリーニングするためのキットであって、以下のものを含むキットを提供する:(a)C1958ポリペプチドのPPP3CA結合ドメイン;(b)PPP3CAポリペプチドのC1958結合ドメイン、および(c)これら2つのポリペプチド間の相互作用を検出する試薬。上記のように、PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドは、全長C1958ポリペプチドまたはそのPPP3CA結合部分を含みうる。同様に、C1958結合ドメインを含むポリペプチドは、全長PPP3CAポリペプチドまたはそのC1958結合部分を含みうる。
【0131】
2つのポリペプチド間の相互作用を検出する試薬は、好ましくはPPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドとC1958結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合を検出する。
【0132】
本発明のさらなる態様において、本明細書に記載の病理学的状態を処置するのに有用な物質を含む製品およびキットが提供される。この製品は、本明細書に記載されるような薬剤の容器をラベルと共に含みうる。適した容器には、例えば、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。本発明の文脈において、容器とは、細胞増殖性疾患、例えば癌を処置するために有効な活性物質を有する組成物を保持するものである。ある態様においては、組成物中の活性物質は、インビボでC1958/PPP3CAの会合を阻害しうる同定された試験化合物(例えば、抗体、低分子など)である。容器上のラベルは、異常な細胞増殖によって特徴づけられる1つまたは複数の状態を処置するために組成物が用いられることを示すべきである。ラベルはまた、本明細書に記載するもののような投与およびモニタリング技術に関する指示を示しうる。
【0133】
上記の容器に加え、本発明のキットは、任意で薬学的に許容される希釈剤を収容する第二の容器を含んでもよい。さらに、使用説明書と共に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、およびパッケージ挿入物を含む、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の材料を含みうる。
【0134】
所望であれば、組成物は、有効成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含みうるパックまたはディスペンサー装置で提供されうる。パックは、例えば、ブリスターパック(blister pack)などの金属またはプラスチックのフォイルを含みうる。パックまたはディスペンサー装置は投与のための説明書を伴いうる。また、適合性の薬学的担体中に製剤化された本発明の化合物を含む組成物は、指示された状態の処置のために調製し、適切な容器に入れてラベルされうる。
【0135】
以下に、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、以下の材料、方法、および例は、本発明の局面を例示するのみであって、本発明の範囲を限定する意図は全くない。このように、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができる。
【0136】
実施例
上記に提供した開示から理解できるように、本発明は広範な応用を有する。よって、以下の実施例は例示目的のために提供するものであって、いずれにしても本発明を限定するものと見なす意図はない。当業者は、本質的に類似の結果を得るために変化または修飾しうる様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【0137】
材料および方法
細胞株および臨床材料
ヒト膵臓癌細胞株、Capan-1、Capan-2、Panc-1、Aspc-1、MIApaca-2、KLM-1、PK-1、およびPK59は、Jae-Gahb Park博士(Korean Cell Line Bank, Cancer Research Institute, Seoul National University College of Medicine, Korea)により友好的に提供された。細胞は全て適当な培地において培養した:すなわち、Capan-1、Capan-2、Panc-1、PK-1、およびAspc-1に関してはRPMI-1640(Sigma, St. Louis, MO);正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)、MIApaca-2、HEK293T、およびCos-7に関してはダルベッコ変法イーグル培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)。それぞれの培地には、10%ウシ胎児血清(Cansera)および1%抗生物質/抗真菌剤溶液(Sigma)を添加した。細胞は、5%CO2を含む湿潤空気雰囲気中で37℃で維持した。臨床試料(膵臓癌および正常膵管)は、外科標本から得て、そのことに関して患者全員からインフォームドコンセントを得た。
【0138】
発現ベクターの構築
C1958V1 cDNAの完全なコード配列は、以下のプライマー、C1958V1フォワード(5’-CCGGAATTCGACATGGGGCTTAAGATGTCC-3’(配列番号:5))およびC1958V1リバース(5’-CCGCTCGAGGGCTTCTGGGTCGATTTCTCC-3’(配列番号:6))によってRT-PCRによって増幅した。産物をpcDNA3.1(+).myc.his(Invitrogen)またはpCAGGS発現ベクターのEcoRIおよびXhoI部位に挿入した。
【0139】
免疫沈降およびウェスタンブロット分析
Cos-7細胞およびHEK293T細胞に、FuGENE 6(Roche)を用いて製造元の説明書に従って発現ベクターを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトされたCos-7細胞および他の膵臓癌細胞をPBSによって洗浄して、RIPA緩衝液(150 mM NaCl、1% NP-40、50 mM Tris-HCl(pH 8.0)、0.1% SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、および1×プロテアーゼ阻害剤カクテルセットIII(Calbiochem))で回収した。上清を、DCタンパク質アッセイ(Bio-Rad)によってタンパク質濃度に関して標準化した。ラット抗HA抗体(Roche)によって免疫沈降を行い、抗体をプロテインGセファロース(Zymed)によって回収した。タンパク質を10〜20%勾配SDS-PAGEで分離して、マウス抗myc抗体(Santa Cruz)、抗Flag抗体(Sigma)、抗HA抗体およびウサギ抗C1958(完全長の組換え型C1958タンパク質によって免疫)抗体によってイムノブロットを行った。
【0140】
免疫化学染色
PK-1細胞およびKLM-1細胞を、4%パラホルムアルデヒドを含むPBSによって4℃で20分間固定して、0.1%Triton X-100を含むPBSによって室温で2.5分間透過性にした。細胞を3%BSA入りPBSによって1時間ブロックし、次にウサギ抗C1958抗体と共に室温で1時間インキュベートした後、Alexa488-共役二次抗体と共にインキュベートした。核を、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)によって対比染色した。蛍光画像は共焦点顕微鏡法(Leica)によって得た。
【0141】
パラフィン抱埋切片をキシレンで処理した後、抗原回収緩衝液(DAKO)においてマイクロ波によって抗原を回収した。内因性のペルオキシダーゼ活性をPeroxidase Blocking Reagent(DAKO)と共にインキュベートすることによりブロックした。切片をProtein Block Serum-Free(DAKO)で30分間ブロックした後、抗C1958抗体と共に室温で30分間インキュベートした。PBSによる洗浄後、切片をHRP共役抗ウサギIgG(DAKO)と共にインキュベートし、DABで発色させた。最後に、切片をヘマトキシリンによって対比染色した。顕微鏡(Olympus)に取り付けたCCDカメラによって画像を得た。
【0142】
TAPシステム
TAP(タンデムアフィニティ精製)発現ベクターの構築物に関して、免疫グロブリンG結合ドメインと、3'末端のSalIでのタバコエッチ(Tobacco etch)ウイルスプロテアーゼ(TEV)の切断部位で分離したカルモジュリン結合ペプチドとからなるTAPタグ配列のcDNAをPCR増幅した。最初に、TAPタグをpcDNA-3.1(+)-myc-His発現ベクターにクローニングした。次に、pcDNA-3.1(+)-myc-His-TAPをXhoIおよびSalIで消化して、得られたmyc-His-TAP断片をpCAGGS/neoベクターに挿入した。C1958V1 ORF cDNAをpCAGGS-myc-His-TAP/neo発現ベクターにサブクローニングした。TAP-システム精製を、既に記述された通りに行った。簡単に説明すると、pCAGGS/neo-C1958V1-TAPまたは対照としてのpCAGGS/neo-TAP(偽)をPanc-1細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの72時間後、細胞をIPP緩衝液(10 mM Tris-HCl(pH 8.0)、0.1%NP-40、150 mM NaCl、1 mM NaF、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含む)によって溶解した。上清画分をIgG-セファロース(Amersham Biosciences)と共にインキュベートした。結合したタンパク質をTEVプロテアーゼ(Invitrogen)と共に4℃で終夜インキュベートして、溶出したタンパク質を1 mM CaCl2を含むカルモジュリンアフィニティ樹脂(Stratagene)と共にさらにインキュベートした。最後に、結合したタンパク質を1 mM EGTAで溶出して、12%SDS-PAGEに供した。タンパク質を銀染色「Daiichi」(Daiichi Pure Chemicals)を用いた銀染色によって可視化した。対照TAPに対して示差的なタンパク質バンドをゲルから切り出して、PMF-MSをAproscience Co.(Tokushima, Japan)に委託して行った(custom-operated)。
【0143】
阻害ペプチドを評価するための細胞-成長アッセイ
PK-1細胞、Capan-1細胞、Panc-1細胞、NHDF細胞、およびHEK293T細胞を細胞継代の翌日(0日目と表示される)にペプチド(Sigma)によって処置した。細胞生存率を定量するためにMTTアッセイを行った。2日目またはそれ以降の日に、MTT溶液(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(Sigma)を0.5 mg/mlの濃度で加えた。37℃で4時間インキュベートした後、酸-SDS(0.01 N HCl/10%SDS)を加えた;浮遊液を激しく混合した後、37℃で終夜インキュベートし、暗青色結晶を溶解した。マイクロプレートリーダー550(BioRad)によって570 nmでの吸光度を測定した。
【0144】
細胞透過性ペプチドを用いた膵臓癌異種移植片の処置
本発明者らの動物施設において施設内ガイドラインに従って、インビボ実験を行った。浮遊PK-1細胞(5×106細胞)0.1 mlアリコートを6週齢の雌性無胸腺マウス(BALB/cA Jcl-nu)の側腹部に皮下注射した。腫瘍の体積は、以下の式を用いて決定した:0.52×(長径)×(短径)×(深さ)。異種移植片の大きさが100 mm3に達した場合、動物を2群または3群に無作為に分けて、11R-C1958VIVIT、11R-VEET、またはPBS 180μgを21日間連続して腫瘍内または静脈内注射した。腫瘍の成長は、処置開始時に計算した体積に対する表記の日の腫瘍体積比を計算することによって評価した。
【0145】
フローサイトメトリー分析
PK-1細胞を既に記述したように維持した(10%FBSを含むRPMI)。細胞を陰性対照(最終濃度として40μM)、またはC1958VIVIT(10、20、および40μM)ペプチドと共に、または無しで12時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をトリプシンによって剥離させ、試験管に回収し、PBSで3回洗浄した。次に、細胞を67%エタノールで室温(RT)で30分間固定し、PBSで1回洗浄し、RNase(2 mg/ml PBS溶液)でRTで30分間処置した。最後に、細胞核をヨウ化プロピジウム(PI)でRTで30分間染色した。フローサイトメトリー分析は、FACS calibur(BD)を用いて行った。
【0146】
結果
膵臓癌細胞および組織切片におけるC1958タンパク質の発現
C1958タンパク質の細胞内局在性を調べるために、膵臓癌細胞株であるPK-1細胞およびKLM-1細胞における内因性のC1958の発現を観察した(図1a、1b)。抗C1958ポリクローナル抗体を用いる免疫細胞化学分析により、内因性のC1958が双方の細胞の細胞質膜下に位置することが明らかとなった。膵臓癌組織および様々な正常ヒト組織切片(膵管、心臓、肝臓、肺、および腎臓)を用いるC1958の免疫組織化学分析を行った。ノーザンブロット分析の結果から予想されるように、C1958タンパク質の強い染色が膵臓癌組織において観察されたが、正常膵管細胞では観察されなかった(図1c)。検討した他の正常組織におけるC1958の染色も同様に、検出されなかったか、またはほとんど検出されなかった(図1d〜1g)。
【0147】
COS-7細胞において外因性に発現されたC1958のウェスタンブロット分析では、明らかな2つのバンドが観察された(図2a)。C1958の異なる2つの分子量型が、膵臓癌細胞において抗C1958抗体を用いるウェスタンブロットによって確認された(図2b)。上のバンドは、細胞抽出物をλホスファターゼによって処置した場合に消失したことから、より大きいC1958タンパク質は、リン酸化型に変化した(データは示さず)。次に、リン酸化部位を決定するために、本発明者らは、C1958プラスミドをKLM-1細胞にトランスフェクトして、ポリクローナルC1958抗体で免疫沈降した。質量分析により、C1958タンパク質上のThr44がリン酸化されることが明らかとなった(データは示さず)。
【0148】
C1958とPPP3CAとの相互作用
膵臓癌細胞成長におけるC1958タンパク質の機能的メカニズムを解明するために、本発明者らは、質量分析と組み合わせたTAP(タンデムアフィニティ精製)システム(材料および方法を参照されたい)を用いてC1958と相互作用するタンパク質を探索して、C1958と相互作用する候補分子としてPPP3CA(カルシニューリンAサブユニット、PP2B)を同定した。本発明者らは、COS7細胞において外因性に発現されたFlagタグ化C1958およびHAタグ化PPP3CAを利用して、免疫沈降アッセイによってこれらのタンパク質の相互作用を確認した(図3)。このように、本発明者らは、PPP3CAがC1958のリン酸化型に選択的に結合することを見出した。
【0149】
PPP3CAはまた、活性化T細胞核因子(NFAT)にも結合すること、および相互作用がT細胞の増殖にとって重要であることは公知である。PPP3CAは、保存された独自の配列モチーフPxIxITを通じてNFATと相互作用して(Kiani A. et al., Immunity 2000;12(4):359-72、概説として)、この領域に対応する合成ペプチドは、PPP3CA/NFAT相互作用の有効な阻害剤であることが示された(Aramburu J. et al., Science 1999;285:2129-33)。C1958も同様にこの保存配列(PDIIIT)を有することから、本発明者らはC1958が本モチーフを通じてPPP3CAと相互作用するかどうかを検討した。本発明者らは、HA-タグ化PPP3CAを、PDIIIT配列が欠失しているFlagタグ化△PDIIIT-C1958構築物と共にCOS7細胞に同時導入し、免疫沈降実験を行った。この結果は、△PDIIIT-C1958がPPP3CAに結合しないが、野生型C1958は結合したことを証明し(図3)、C1958のPDIIITモチーフがPPP3CAとの相互作用にとって必須であることを示唆している。
【0150】
C1958とPPP3CAとの相互作用の特異的ペプチドによる阻害
膵臓癌細胞の成長におけるC1958とPPP3CAとの間の相互作用の重要性を調べるために、本発明者らは、相互作用のドッキング部位を標的として、それを妨害するために、C1958のPxIxITモチーフがアルギニン残基11個(11R)のC末端に融合している細胞透過性ペプチドを設計した。11R配列は、高い効率で哺乳動物細胞へのペプチドの取り込みを促進することが示された。最近、NFAT/PPP3CA相互作用において、VIVIT配列は、PxIxIT配列において相互作用の最も有効な阻害活性を有することが見出された(Aramburu J. et al., Science 1999;285:2129-33)。したがって、C1958PxIxITモチーフに対応するペプチドに加えて、本発明者らは、PDIIITがVIVITによって置換されている改変C1958ペプチド(11R-C1958VIVIT)を設計した。陰性対照として、本発明者らは、ドッキング部位でVEET配列を有するペプチド11R-C1958VEETを設計した。実験において用いられた対照ペプチドを含む合成ペプチドの配列を表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
膵臓癌細胞の増殖に及ぼす阻害効果に関して、これらの設計されたペプチドを検討した。 11R-C1958、11R-C1958VIVIT、11R-VEET、または11R-VIVITペプチドを有するPK-1細胞をこれらのペプチドによって処置して、MTTアッセイを行った(図4)。11R-C1958VIVITペプチド(25μM)は、細胞の成長を有意に阻害したが、11R-C1958(25μM)ペプチドも11R-VEET(40μM)ペプチドも阻害しなかった。11R-C1958VIVITは、元々のVIVITペプチドの25μMより成長抑制に対してより有効であった。類似の結果がCapan-1細胞およびKLM-1細胞において得られた(データは示さず)。しかし、C1958の発現を示さないかまたは弱い発現を有するPanc-1、HEK293T、および正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)細胞株を用いた対照実験において、C1958VIVITペプチド(25μM)は、Pac-1細胞株およびHEK293T細胞株の細胞成長を予想外に抑制したが、NHDF細胞ではほとんど抑制は観察されず(図5)、C1958VIVITペプチドもまた何らかの状況においてC1958非依存的成長抑制活性を有する可能性を示唆した。したがって、インビトロ実験は、C1958とPPP3CAとの結合を阻害するのみならず、免疫沈降アッセイにおいてNFATとPPP3CAとの結合を阻害する(データは示さず)C1958VIVITペプチドの活性における多数の標的を暗示した。このように、ペプチドはまた、膵臓癌細胞においてPPP3CA/C1958以外のPPP3CA/NFAT増殖経路にも影響を及ぼす可能性がある。
【0153】
C1958 VIVITペプチドはインビボでの腫瘍成長を抑制する
本発明者らは次に、マウス皮下異種移植片モデルを用いて11R-C1958VIVITペプチドのインビボ成長阻害効果を調べた。本発明者らは、ペプチド9 mg/kg/日を腫瘍内に局所的に、または静脈内に、連続21日間注射した。膵臓癌異種移植片(PK-1細胞)の成長は、双方の場合において11R-VEET対照ペプチドまたはPBSによる処置と比較して11R-C1958VIVITペプチドによる処置によって有意に減弱され(図6)、C1958 VIVITペプチドがインビボで抗腫瘍成長活性を有することを示している。これらの連続21日間の処置において、体重変化も、またはマウスの状態に対する明白な負の効果も観察されず(データは示さず)、このように、ペプチドは強力な抗癌剤であることが証明された。
【0154】
C1958VIVITによって誘導されたアポトーシス細胞死
C1958 VIVITによる膵臓癌細胞の細胞成長の減少のメカニズムを解明するために、本発明者らは、フローサイトメトリー分析を行って、アポトーシス細胞死誘導を試験した。図7に示すように、C1958VIVITは、処置した細胞のサブ-G1画分を用量依存的様式で増加させたが、対照ペプチドは40 μMでさえも影響を及ぼさなかった。本結果は、C1958VIVITがアポトーシス細胞死を誘導し、その結果細胞成長を阻害したことを示唆する。
【0155】
産業上の利用可能性
本発明者らは、C1958がPPP3CAと相互作用すること、および相互作用の阻害によって、癌細胞の細胞増殖の阻害が起こることを示した。このように、C1958とPPP3CAとの間の結合を阻害して、かつその活性を妨げる物質は、抗癌剤として治療的有用性を有する。
【0156】
このように、本発明者は、癌を処置または予防することにおいて有用な新規ポリペプチドおよび他の化合物を提供する。本発明のポリペプチドは、VIVITを含むアミノ酸配列、例えば配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958V1タンパク質)の37〜41位でモチーフ配列PxIxITがPVIVITに置換されているアミノ酸配列を有するポリペプチドで構成される。本発明のポリペプチドは、癌細胞の増殖を阻害するために、または癌細胞においてアポトーシスを誘導するために投与されうる。本発明のポリペプチドは、様々な癌に対する細胞増殖阻害効果を示すと期待される。特に、本発明のポリペプチドは、膵臓癌に対して細胞増殖阻害効果を有することが確認されている。膵臓癌は、有効な処置方法がなおも提供されることが望まれる重要な癌である。したがって、本発明はまた、膵臓癌を処置および/または予防するための有効な方法を提供するという点において重要である。
【0157】
本発明において、癌に対する処置または予防効果は、例えば、短いアミノ酸配列で構成されるポリペプチドを投与することによって達成される。本発明の短いポリペプチドは、大規模で容易に安価に合成することができる。さらに、トランスフェクション物質を用いる場合、膵臓癌のような癌の処置は、血液中に本発明のポリペプチドを投与することによって達成されうる。このように、本発明のポリペプチドは、製造する段階から投与する段階まで、およびさらに罹患領域に薬物を送達する段階までの全ての段階を容易に実現するために用いることができる。
【0158】
さらに、ポリペプチドは、それらが血液中で分解された場合でさえも単にアミノ酸を生じるに過ぎない。このことは、ポリペプチドの分解産物による副作用のリスクが小さいことを意味する。
【0159】
本明細書に引用される全ての刊行物、データベース、Genbank配列、特許、および特許出願は、これによって参照として本明細書に組み入れられる。
【0160】
本発明は詳細にその具体的な態様を参照して記載されているが、本発明の要旨および範囲から逸脱することなく様々な変化および修飾をその内に施すことができることは当業者には明らかであり、その境界および範囲は添付の請求の範囲によって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】C1958タンパク質の免疫細胞化学分析(a、b)および免疫組織化学分析(c〜g)の結果を示す。(a、b)PK-1およびKLM-1膵臓癌細胞を用いたC1958タンパク質の免疫細胞化学分析。完全長のC1958組換え型タンパク質に対して作製したウサギポリクローナル抗体による染色(緑色)は、C1958が原形質膜に局在することを示す。青色、DAPI。(c〜g)膵臓癌および正常ヒト組織切片を用いたC1958タンパク質の免疫組織化学分析。(c)膵臓癌、(d)腎臓、(e)肝臓、(f)心臓、(g)肺。茶色;C1958、青色;ヘマトキシリン対比染色。
【図2】様々な細胞株における外因性のC1958のウェスタンブロット分析の結果を示す。Cos-7細胞における外因性のC1958(a)および膵臓癌細胞株における内因性のC1958(b)に関するウェスタンブロット分析。上および下の矢印はそれぞれ、C1958のリン酸化型および非リン酸化型を指す。ACTB:内部対照として用いたb-アクチン。
【図3】免疫沈降アッセイの結果を示す。C1958とPPP3CAとの間の相互作用を示す免疫沈降アッセイ。Flagタグ化C1958、△PDIIIT変異体、およびHAタグ化PPP3CAをCos-7細胞において外因性に発現させた。PPP3CA/C1958(変異体)複合体を、抗HA抗体によって免疫沈降させて、抗Flag抗体を用いてイムノブロットした。上および下の矢印はそれぞれ、C1958のリン酸化型および非リン酸化型を指す。
【図4】PXIXITモチーフを含む阻害ペプチドの抗細胞成長効果を表す。C1958のPPP3CAに対する結合部位PXIXITモチーフに隣接する細胞透過性阻害ペプチドの抗細胞成長活性。PK-1細胞をペプチドで処置して、表記の日にMTTアッセイを行った。ペプチドのアミノ酸配列を表1に示す。
【図5】C1958VIVITペプチドのC1958非依存的抗細胞成長活性を表す。C1958陰性、またはC1958を弱く発現する、Panc-1、NHDF、およびHEK293T細胞をペプチドと共にインキュベートして、図4と同様に細胞生存率をMTTアッセイによって定量した。
【図6】C1958VIVITペプチドのインビボ抗腫瘍成長活性を表す。ペプチドをマウスの静脈内(上段)または皮下異種移植片(PK-1細胞)腫瘍に腫瘍内(下段)に21日間連続して注射した。腫瘍の体積を0日目の体積の百分率として示す。
【図7】C1958VIVIT-処置細胞のフローサイトメトリー分析。PK-1細胞を、非存在下(-)でインキュベートするか、または40 μM陰性対照(対照)もしくは10、20、および40μM C1958 VIVIT(CV)と共に12時間インキュベートした。インキュベーション後、サブ-G1画分の細胞数をFACS caliburによって計数して、全ての画分における全細胞の百分率として示した。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
37〜41位でAsp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を含む、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含むポリペプチド、該ポリペプチドと機能的に同等なポリペプチド、または該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを活性成分として含む、癌を処置および/または予防するための作用物質。
【請求項2】
ポリペプチドが5〜30残基からなる、請求項1記載の作用物質。
【請求項3】
ポリペプチドが、アミノ酸配列 KHLDVPVIVITPPTPT/配列番号: 26を含む、請求項1記載の作用物質。
【請求項4】
ポリペプチドが、アミノ酸配列 KHLDVPVIVITPPTPT/配列番号: 26からなる、請求項3記載の作用物質。
【請求項5】
活性成分がポリペプチドであって、該ポリペプチドが細胞膜透過性物質によって改変される、請求項1記載の作用物質。
【請求項6】
ポリペプチドが以下の一般式を有する、請求項5記載の作用物質:
[R]-[D];
式中、[R]は、細胞膜透過性物質を表し、かつ[D]は、ポリペプチドが、37〜41位でAsp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を含む、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含む断片配列のアミノ酸配列、または断片配列を含む該ポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドのアミノ酸配列を表す。
【請求項7】
細胞膜透過性物質が以下からなる群より選択される任意の1つである、請求項6記載の作用物質:
ポリアルギニン;
Tat / RKKRRQRRR/配列番号: 12;
ペネトラチン / RQIKIWFQNRRMKWKK/配列番号: 13;
ブフォリンII / TRSSRAGLQFPVGRVHRLLRK/配列番号: 14;
トランスポータン / GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL/配列番号: 15;
MAP (モデル両親媒性ペプチド)/ KLALKLALKALKAALKLA/配列番号: 16;
K-FGF / AAVALLPAVLLALLAP/配列番号: 17;
Ku70 / VPMLK/配列番号: 18 または PMLKE/配列番号: 25;
プリオン / MANLGYWLLALFVTMWTDVGLCKKRPKP/配列番号: 19;
pVEC / LLIILRRRIRKQAHAHSK/配列番号: 20;
Pep-1 / KETWWETWWTEWSQPKKKRKV/配列番号: 21;
SynB1 / RGGRLSYSRRRFSTSTGR/配列番号: 22;
Pep-7 / SDLWEMMMVSLACQY/配列番号: 23;および
HN-1 / TSPLNIHNGQKL/配列番号: 24。
【請求項8】
ポリアルギニンがArg 11(配列番号:11)である、請求項7記載の作用物質。
【請求項9】
癌が、膵臓癌、肺癌、腎臓癌、および精巣腫瘍からなる群より選択される任意の1つである、請求項1記載の作用物質。
【請求項10】
37〜41位でAsp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を含む、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含むポリペプチド、該断片配列を含むポリペプチドと機能的に同等なポリペプチド、またはそれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与する段階を含む、癌を処置および/または予防する方法。
【請求項11】
癌を処置および/または予防するための薬学的組成物を製造することにおける、37〜41位でAsp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を含む、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含むポリペプチド、該断片配列を含むポリペプチドと機能的に同等なポリペプチド、またはそれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用。
【請求項12】
37〜41位でAsp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を含む、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含むポリペプチド、または該ポリペプチドと機能的に同等なポリペプチド、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項13】
Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含むポリペプチドであって、該ポリペプチドが、37〜41位でAsp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を含むか、または該断片配列を含むポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドのアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項14】
ポリペプチドが5〜30残基からなる、請求項13記載のポリペプチド。
【請求項15】
ポリペプチドがアミノ酸配列 KHLDVPVIVITPPTPT/配列番号: 26を含む、請求項13記載のポリペプチド。
【請求項16】
アミノ酸配列 KHLDVPVIVITPPTPT/配列番号: 26からなる、請求項15記載のポリペプチド。
【請求項17】
細胞膜透過性物質によって改変されている、請求項13記載のポリペプチド。
【請求項18】
以下の一般式を有する、請求項13記載のポリペプチド:
[R]-[D];
式中、[R]は、細胞膜透過性物質を表し、かつ[D]は、ポリペプチドが、37〜41位でAsp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている、配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を含む、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含む断片配列のアミノ酸配列、または該断片配列を含むポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドのアミノ酸配列を表す。
【請求項19】
細胞膜透過性物質が以下からなる群より選択される任意の1つである、請求項18記載のポリペプチド:
ポリアルギニン;
Tat / RKKRRQRRR/配列番号: 12;
ペネトラチン / RQIKIWFQNRRMKWKK/配列番号: 13;
ブフォリンII / TRSSRAGLQFPVGRVHRLLRK/配列番号: 14;
トランスポータン / GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL/配列番号: 15;
MAP (モデル両親媒性ペプチド) / KLALKLALKALKAALKLA/配列番号: 16;
K-FGF / AAVALLPAVLLALLAP/配列番号: 17;
Ku70 / VPMLK/配列番号: 18;
Ku70 / PMLKE/配列番号: 25;
プリオン / MANLGYWLLALFVTMWTDVGLCKKRPKP/配列番号: 19;
pVEC / LLIILRRRIRKQAHAHSK/配列番号: 20;
Pep-1 / KETWWETWWTEWSQPKKKRKV/配列番号: 21;
SynB1 / RGGRLSYSRRRFSTSTGR/配列番号: 22;
Pep-7 / SDLWEMMMVSLACQY/配列番号: 23;および
HN-1 / TSPLNIHNGQKL/配列番号: 24。
【請求項20】
ポリ-アルギニンがArg 11 (RRRRRRRRRRR/配列番号: 11)である、請求項19記載のポリペプチド。
【請求項21】
以下の段階を含む、癌を処置または予防することにおいて有用な化合物をスクリーニングする方法:
(a)試験化合物の存在下で、C1958ポリペプチドのPPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドを、PPP3CAポリペプチドのC1958結合ドメインを含むポリペプチドに接触させる段階;
(b)ポリペプチド間の結合を検出する段階;および
(c)ポリペプチド間の結合を阻害する試験化合物を選択する段階。
【請求項22】
PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドが、C1958ポリペプチドを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸配列の36〜41位のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
C1958結合ドメインを含むポリペプチドがPPP3CAポリペプチドを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドが、生細胞中で発現される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
ポリペプチド間の結合が、PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドと、C1958結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合を検出する段階を含む方法によって検出される、請求項21記載の方法。
【請求項27】
以下を含む、癌を処置するまたは予防するための化合物をスクリーニングするためのキット:
(a)C1958ポリペプチドのPPP3CA結合ドメインを含むポリペプチド;
(b)PPP3CAポリペプチドのC1958結合ドメインを含むポリペプチド;および
(c)ポリペプチド間の相互作用を検出するための試薬。
【請求項28】
PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドが、C1958ポリペプチドを含む、請求項27記載のキット。
【請求項29】
PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸配列の36〜41位のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項27記載のキット。
【請求項30】
C1958結合ドメインを含むポリペプチドがPPP3CAポリペプチドを含む、請求項27記載のキット。
【請求項31】
PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドが、生細胞中で発現される、請求項27記載のキット。
【請求項32】
ポリペプチド間の相互作用を検出する試薬が、PPP3CA結合ドメインを含むポリペプチドと、C1958結合ドメインを含むポリペプチドとの間の会合を検出する試薬を含む、請求項27記載のキット。
【請求項33】
請求項21記載の方法によって選択される化合物の薬学的有効量を投与する段階を含む、対象において癌を処置または予防するための方法。
【請求項34】
C1958ポリペプチドとPPP3CAポリペプチドとの間の結合を阻害する化合物の薬学的有効量を投与する段階を含む、対象において癌を処置または予防するための方法。
【請求項35】
請求項21記載の方法によって選択される化合物の薬学的有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、癌を処置または予防するための組成物。
【請求項36】
C1958ポリペプチドとPPP3CAポリペプチドとの間の結合を阻害する化合物の薬学的有効量と、薬学的に許容される担体とを含む、癌を処置または予防するための組成物。
【請求項37】
ポリペプチドが、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含む断片配列を含み、37〜41位でAsp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を含む、C1958に対してドミナントネガティブ効果を有するポリペプチド、もしくはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入する段階、または該ポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを導入する段階を含む、細胞においてアポトーシスを誘導するための方法。
【請求項38】
細胞が、膵臓癌細胞、肺癌細胞、腎臓癌細胞、および精巣セミノーマ細胞からなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
ポリペプチドが、Val Ile Val Ile Thr/配列番号:27を含む断片配列を含み、37〜41位でAsp Ile Ile Ile ThrがVal Ile Val Ile Thr/配列番号:27に置換されている配列番号:2に記載のアミノ酸配列(C1958)の少なくとも断片を含むC1958に対してドミナントネガティブ効果を有するポリペプチド、もしくは該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むか、または該ポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを含む、細胞においてアポトーシスを誘導するための組成物。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−502735(P2009−502735A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503313(P2008−503313)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/JP2006/314442
【国際公開番号】WO2007/013358
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】