説明

VOCを含まないかまたはVOC含量が低いポリウレタンコーティング

本発明は、湿気硬化性コンパウンドであって、イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリウレタンポリマーPと、前記コンパウンドのうちのイソシアネート基を有する成分の合計量に対して少なくとも22重量%の少なくとも1種の式(I)のポリアルジミンALDと、必要に応じてポリイソシアネートオリゴマーOPとを含有するコンパウンドに関する。この湿気硬化性コンパウンドは、コーティングおよびライニングに特に好適である。イミンの使用によって、VOCを含まないかまたはVOC含量が低いコンパウンドが可能になり、これは、屋内用途に非常に有利である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一成分形湿気硬化性ポリウレタン組成物、およびこれらの使用、特に弾性コーティングとしての使用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一成分形湿気硬化性ポリウレタン組成物、およびこれらの弾性コーティングとしての使用は知られている。これらの組成物は、イソシアネート基を有するオリゴマーおよび/またはポリマーをベースとしていて、比較的高い固有粘度を有する。それにもかかわらず良好な加工特性、特に高い流動性を達成するために、一般に、かなりの量、典型的には10重量%〜20重量%の揮発性有機溶媒が組成物に添加される。組成物を発泡せずに硬化させるために、これらの組成物はさらに、通常、いわゆる「潜在性硬化剤」と混合される。「潜在性硬化剤」は、湿気の進入だけによって、加水分解反応において、通常アミン基および/またはアルコール基を有する実際の硬化剤を放出し、炭酸ガスを形成することなくイソシアネート基と反応する物質である。これらの潜在性硬化剤の多くは、組成物の貯蔵安定性を低減させ、硬化反応の過程で、揮発性の、強い臭気を有するアルデヒド(例えば、イソブチルアルデヒドまたはベンズアルデヒドなど)を放出する。この種の組成物を、平面にコーティングの形態で適用すると、大量の揮発性有機化合物(VOC)を放出し、強い臭気を引き起こし、使用者および/または居住者に障害を与え、健康を脅かす可能性がある。屋内の部分における適用は、大多数の場合において選択の対象にならない。VOCの放出の規制の増加が、このような組成物の使用をさらに制限し、これらをさらに高価にする。VOC含量を、例えば、より揮発性の溶媒を揮発性のより低い溶媒に置き換えることによって、あるいは可塑剤を使用することによって低減させると、一般に、不十分な特性、特に強度および耐久性の点で不十分なコーティングがもたらされる。
【0003】
したがって、既存のVOC含量が低いかまたはVOCを含まないポリウレタンコーティングは、一般に、2成分形配合物である。モノマー性またはオリゴマー性の、比較的低分子量の反応性成分が比較的高濃度である結果として、これらの配合物は、かなり低い粘度を有し、したがって、VOCを添加しなくとも効果的に加工することができる。しかし、2成分系システムのための必須条件は、2つの成分の混合が完全であり、かつ、混合比および可使時間が順守されることである。これらの条件が満たされないと、得られるコーティングは機械的に不十分であるかまたは耐久性がなく、不均一であり、かつ、体積によって硬化において平坦でなくなる。これらの条件を順守することは、実際問題として問題があることが多く、これが、使用者に1成分系システムが好まれる理由である。
【0004】
国際公開第2004/013200号には、一成分形の、特定の無臭のポリアルジミンを含む、無臭の硬化性ポリウレタン組成物が記載されている。これらの組成物は、高い固有粘度を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/013200号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、VOCを含まないかまたはVOC含量が低い1成分形組成物であって、弾性ポリウレタンコーティングとして使用することができ、良好な貯蔵安定性を有し、良好な加工特性を示すために十分に粘性が低く、湿気の影響下で厄介な臭気なしに硬化し、硬化した状態では十分に高い硬度と共に良好な弾性を有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の組成物が、所望するこれらの特性を示すことが見出された。
驚くべきことに、特定の無臭のポリアルジミンが高濃度である結果として、組成物が、さらなる希釈剤(例えば、揮発性有機溶媒など)を添加しなくても、組成物が良好な加工特性、特に高い流動性を有し、弾性ポリウレタンコーティング、特にフロアカバーリングとしての用途に際だって好適である程度にまで希釈されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、湿気硬化性組成物であって、
a) イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリウレタンポリマーPと、
b) 少なくとも1種の式(I):
【化1】

のポリアルジミンALDと、
c) 場合により、オリゴマー性ポリイソシアネートOPと
を含み、
式中、Xは、分子量が300 g/モル以下のn-官能性ポリアミンの全てのNH2基を除去した後の有機基であり、前記有機基は、水の非存在下でイソシアネートと反応性がある部分、特に、ヒドロキシル基、第二級アミノ基、尿素基、および活性水素を有するその他の基を全く有さず、
nは、2、3、または4であり、
R1 およびR2は、互いに独立に、それぞれ、1〜12個のC原子を有する一価の炭化水素基であるか、あるいは、
一緒になって、5〜8個、好ましくは6個のC原子を有する置換されていないかまたは置換された炭素環の一部である、4〜20個のC原子を有する二価の炭化水素基であるか
のいずれかであり、
R3は、水素原子、アルキル基、またはアリールアルキル基であり、かつ、
R4は、11〜30個のC原子を有し、場合によりヘテロ原子を含む炭化水素基であるか、あるいは、
式(II):
【化2】

(式中、R5は、11〜30個のC原子を有する直鎖または分枝状アルキル基であって、場合により環状部分を有し、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、特にエーテル基、エステル基、またはアルデヒド基の形態の酸素を有する基であるか、あるいは、
11〜30個のC原子を有する単独もしくは多重不飽和の直鎖もしくは分枝状炭化水素基であるか、あるいは、
置換されていないかまたは置換された5または6員環の芳香族環またはヘテロ芳香族環である)
の基であるか
のいずれかである、湿気硬化性組成物を提供する。
【0009】
ポリアルジミンALDの割合は、組成物のうちのイソシアネート基を有する成分の合計量に基づいて少なくとも22重量%、より特に少なくとも30重量%である。
【0010】
この湿気硬化性組成物は、VOCを含まないかまたはVOC含量が低い、無臭で硬化する、セルフレベリング性(self-leveling)の、好ましくは床用の弾性コーティングとして特に好適である。
【0011】
本明細書において用語「ポリマー」は、第一に、重合反応(重合反応、重付加反応、重縮合反応)によって調製される、化学的に均一であるが、重合の程度、分子量、および鎖の長さの点で異なる高分子群であって、重合反応(付加重合、重付加、重縮合)によって調製されるものを包含する。第二に、この用語「ポリマー」は、このような重合反応からの高分子群の誘導体、すなわち、既存の高分子上の官能基の反応(例えば、付加反応または置換反応等)によって得られる化合物であって化学的に均一であっても化学的に不均一であってもよいものも包含する。しかし、この用語「ポリマー」はさらに、プレポリマーと称されるもの、すなわち、その官能基が高分子の合成に関与する反応性オリゴマー性プレ付加体(preadduct)も包含する。
【0012】
用語「ポリウレタンポリマー」は、いわゆるジイソシアネート重付加法として知られている方法によって調製されるあらゆるポリマーを包含する。この語は、実質的にまたは完全にウレタン基を含まないポリマーも含む。ポリウレタンポリマーの例としては、ポリエーテル-ポリウレタン、ポリエステル-ポリウレタン、ポリエーテル-ポリウレア、ポリウレア、ポリエステル-ポリウレア、ポリイソシアヌレート、およびポリカルボジイミドが挙げられる。
【0013】
本明細書において以下に、「ポリアミン」は、脂肪族第一級ポリアミン、すなわち、場合によりヘテロ原子を含有する、脂肪族、環状脂肪族、または芳香-脂肪族基に結合した第一級アミノ基(NH2基)のみを有するポリアミンを指す。したがって、本明細書における「ポリアミン」は、芳香族またはヘテロ芳香族基に結合したNH2基を有する芳香族第一級ポリアミン(例えば、ジアミノトルエンなど)とは異なる。
【0014】
用語「揮発性有機化合物」、略して「VOC」は、293.15ケルビンにおいて少なくとも0.01キロパスカルの蒸気圧を有する化合物を表す。
【0015】
用語「溶媒」は、液状揮発性有機化合物、言い換えればVOCであって、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーを溶解することができ、イソシアネート基との反応性を有する基、特に、ヒドロキシル基、第二級アミノ基、尿素基、および活性水素を有するその他の基を全く有さない化合物を表す。
【0016】
用語「コーティング」および「カバーリング」は、二次元的に適用された硬化性ポリマー組成物であって、膜厚が少なくとも0.1 mm、特に0.5 mm、好ましくは1〜2 mmである組成物に使用する。
【0017】
本湿気硬化性組成物は、イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリウレタンポリマーPを含む。
【0018】
ポリウレタンポリマーPは、例えば、少なくとも1種のポリイソシアネートと少なくとも1種のポリオールとの反応によって得ることができる。この反応は、ポリオールとポリイソシアネートとを、通常の方法、例えば、50℃〜100℃の温度にて、場合により好適な触媒を併用させて反応させることによって行うことができる。この場合において、ポリイソシアネートは、そのイソシアネート基がポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論的過剰で存在するように計り入れる。有利には、1.5〜5のNCO/OH比、より特に1.8〜3のNCO/OH比が観測されるように、ポリイソシアネートを計り入れる。本明細書においてNCO/OH比は、用いるヒドロキシル基の数に対する用いるイソシアネート基の数の比を意味する。好ましくは、ポリオールのすべてのヒドロキシル基が反応した後、ポリウレタンポリマーP中に、遊離のイソシアネート基が0.5重量%〜15重量%、より好ましくは3.5重量%〜10重量%の含有量で残存する。
【0019】
ポリウレタンポリマーPの製造のために用いることができるポリオールの例は、以下の商業的に入手可能なポリオールまたはその混合物である:
【0020】
− ポリオキシアルキレンポリオール。ポリエーテルポリオールまたはオリゴエーテルオールとも呼ばれ、これらは、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-もしくは2,3-ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物の重合生成物である。これらは、2個以上の活性水素原子を有する開始剤分子、例えば、水、アンモニアあるいは、2つ以上のOH基またはNH基を有する化合物(例えば、1,2-エタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体のジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコール、異性体のブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン、ならびにまた前述の化合物の混合物など)などを用いて重合することができる。不飽和度(ASTM D-2849-69に従って測定され、ポリオール1g当たりの不飽和のミリ当量(ミリ当量/g)で報告されたもの)が低いポリオキシアルキレンポリオール〔例えば、二重金属シアニド錯体触媒(DMC触媒)として知られているものを用いて製造されるもの〕、および、不飽和度が高いポリオキシアルキレンポリオール〔例えば、NaOH、KOH、CsOH、またはアルカリ金属アルコキシドなどのアニオン性触媒を用いて製造されるもの〕の双方を使用することができる。
【0021】
ポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、より特にポリオキシプロピレンジオールまたはポリオキシプロピレントリオールが特に適している。
【0022】
低い粘度を有し、400〜8000 g/モルの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオールが特に好適である。
【0023】
同様に、ポリテトラヒドロフランが、その良好な光安定性により特に好適である。
【0024】
同様に、エチレンオキシド末端化(「EOでエンドキャップされた」、エチレンオキシドでエンドキャップされた)ポリオキシプロピレンポリオールとして知られているものが特に適している。これは、例えば、純粋なポリオキシプロピレンポリオール、より特にポリオキシプロピレン-ジオールおよび-トリオールを、ポリプロポキシ化反応の終点後に、エチレンオキシドでさらにアルコキシル化させることによって得られ、この結果、一級ヒドロキシル基を有している、特定のポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン-ポリオールである。
【0025】
− スチレン-アクリロニトリル-またはアクリロニトリル-メチルメタクリレート-グラフト化ポリエーテルポリオール。
【0026】
− ポリエステルポリオール。オリゴエステルオールとも呼ばれ、例えば、二価から三価アルコール(例えば、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパンまたは前述のアルコールの混合物など)と、有機ジカルボン酸またはその無水物またはエステル(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロフタル酸または前述の酸の混合物など)とから製造される。ラクトン(例えばε-カプロラクトンなど)から形成されるポリエステルポリオールも挙げることができる。
【0027】
− ポリカーボネートポリオール。例えば、上記アルコール(ポリエステルポリオールを合成するために使用されるもの)と、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはホスゲンとを反応させることによって得られる種類のもの。
【0028】
− ポリアクリレートポリオールおよびポリメタクリレートポリオール。
【0029】
− ポリヒドロカーボンポリオール。オリゴヒドロカーボンオールとも呼ばれる。例えば、ポリヒドロキシ官能性のエチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-ブチレンコポリマーもしくはエチレン-プロピレン-ジエンコポリマー(例えば、Kraton Polymers社によって製造される種類のもの)、または、ジエン(例えば、1,3-ブタンジエンまたはジエン混合物など)とビニルモノマー(例えば、スチレン、アクリロニトリル、またはイソブチレンなど)とのポリヒドロキシ官能性コポリマー、またはポリヒドロキシ官能性ポリブタジエンポリオール(例えば、1,3-ブタジエンとアリルアルコールとの共重合によって製造されるものであって、水素化されていてもよいものなど)など。
【0030】
− ポリヒドロキシル官能性アクリロニトリル/ポリブタジエンコポリマーであって、例えば、エポキシドまたはアミノアルコールと、カルボキシル末端化されたアクリロニトリル/ポリブタジエンコポリマー(Noveon社から商品名Hycar(登録商標)CTBNの下で入手可能)とから製造可能な種類のもの。
【0031】
上述したポリオールは、好ましくは、250〜12000 g/モル、より特に400〜8000 g/モルの平均分子量を有し、好ましくは、1.7〜3個の範囲の平均OH官能性を有する。
【0032】
上述したポリオールに加えて、少量の低分子質量二価または多価アルコール、例えば、1,2-エタンジオール、1,3-および1,4-ブタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールの異性体類、ブタンジオールの異性体類、ペンタンジオールの異性体類、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、二量体脂肪アルコール、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、糖アルコール、(例えば、キシリトール、ソルビトール、またはマンニトールなど)、糖(例えば、ショ糖など)、他の多価アルコール、前述の二価および多価アルコール類の低分子質量アルコキシル化生成物、ならびに、前述のアルコール類の混合物などを、ポリウレタンポリマーPの製造に使用することが可能である。3より高い平均OH官能性を有するポリオール、例えば糖ポリオールも同様に、少量使用することができる。
【0033】
ポリウレタンポリマーPを製造するためのポリイソシアネートとして、商業的に通例の、脂肪族、脂環族、または芳香族のポリイソシアネート、より特にジイソシアネートを使用することが可能であり、例には以下のものがある:
各場合において、脂肪族、脂環族、または芳香-脂肪族の1つのC原子に結合したイソシアネート基を有するジイソシアネートであって、「脂肪族ジイソシアネート」とも称されるもの、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2,2,4-および2,4,4-トリメチル1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネートおよびリシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-および1,4-ジイソシアネートおよびその異性体の任意の所望の混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(すなわち、イソホロンジイソシアネートすなわちIPDI)、パーヒドロ2,4'-および-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4-ジイソシアナト-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m-およびp-キシリレンジイソシアネート(m-およびp-XDI)、m-およびp-テトラメチル-1,3-および-1,4-キシリレンジイソシアネート(m-およびp-TMXDI)、ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ナフタレンなど;および、各場合において芳香族の1つのC原子に結合したイソシアネート基を有するジイソシアネートであって、「芳香族ジイソシアネート」とも称されるもの、例えば、2,4-および2,6-トリレンジイソシアネートおよびその異性体の任意の所望の混合物(TDI)、4,4'-、2,4'-、および2,2'-ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその異性体の任意の所望の混合物(MDI)、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアナトベンゼン、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジイソシアナトビフェニル(TODI)、前述のイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、ならびに、前述のイソシアネートの任意の所望の混合物。
【0034】
光安定性コーティングの組成物に対しては、脂肪族ジイソシアネートが好ましく、特に、HDIおよびIPDIが好ましい。
【0035】
芳香族ジイソシアネートのうちで好ましいのは、MDIおよびTDIである。
【0036】
ポリオールおよびポリイソシアネートは、これらから形成されるポリウレタンポリマーPが低い粘度を有するように選択する。低粘度のポリウレタンポリマーPは、高い流動性を有するコーティングを得るために特に好ましい。本明細書において「低粘度」は、20℃で、25 Pa・秒以下、より特に20 Pa・秒以下、好ましくは15 Pa・秒以下の粘度を意味する。
【0037】
典型的には、ポリウレタンポリマーPは、組成物全体に基づいて10重量%〜80重量%の量、好ましくは15重量%〜70重量%の量で存在する。
【0038】
本湿気硬化性組成物は、ポリウレタンポリマーPに加えて、少なくとも1種の式(I) のポリアルジミンALDを、前記組成物のうちのイソシアネート基を有する成分の合計量に基づいて少なくとも22重量%、より好ましくは少なくとも30重量%の量で含む。
【0039】
【化3】

【0040】
式(I)中、Xは、300 g/モル以下の分子量を有するn-官能性ポリアミンの全てのNH2基を除去した後の有機基であり、この有機基は、水の非存在下でイソシアネートと反応性がある部分、特に、ヒドロキシル基、第二級アミノ基、尿素基、および活性水素を有するその他の基を全く有さない。
【0041】
好ましくは、Xは、炭化水素基であり、この炭化水素基は、場合により置換されていて、かつ、場合によりヘテロ原子を、より特にエーテルの酸素、三級アミンの窒素、またはチオエーテルの硫黄の形態で含む。
【0042】
nは、2、3、または4であり、好ましくは2または3、より好ましくは2である。
【0043】
R1 およびR2は、互いに独立に、第一に、それぞれ、1〜12個のC原子を有する一価の炭化水素基である。
【0044】
第二に、R1 およびR2は、一緒になって、5〜8個、好ましくは6個のC原子を有する置換されていないかまたは置換された炭素環の一部である、4〜20個のC原子を有する二価の炭化水素基である。
【0045】
R3は、水素原子、アルキル基、またはアリールアルキル基である。好ましくは、R3は水素原子である。
【0046】
R4は、11〜30個のC原子を有し、場合によりヘテロ原子を含む炭化水素基であるか、あるいは、
式(II):
【化4】

の基であるかのいずれかであり、式中、R5基には3つの可能性がある。
【0047】
第一に、R5は、11〜30個のC原子を有する直鎖または分枝状アルキル基であって、適切な場合には環状部分を有し、かつ、場合により少なくとも1個のヘテロ原子、より特にエーテル基、エステル基、またはアルデヒド基の形態の酸素を有する基である、
【0048】
第二に、R5は、11〜30個のC原子を有する単独もしくは多重不飽和の直鎖もしくは分枝状炭化水素基である。
【0049】
第三に、R5は、置換されていないかまたは置換された5または6員環の芳香族環またはヘテロ芳香族環である。
【0050】
ポリアルジミンALDは、式(III)のポリアミンと、式(IV)のアルデヒドとの間の水の脱離を伴う縮合反応によって得ることができる(式中、X、n、ならびにR1、R2、R3、およびR4は、上述した定義を有する)。この反応において、式(IV)のアルデヒドは、式(III)のポリアミンのアミノ基に対して化学量論的にまたは化学量論的過剰で用いる。
【化5】

【0051】
式(III)のポリアミンは、2、3、または4個の脂肪族第一級アミノ基を有し、かつ、300 g/モル以下、好ましくは250 g/モル以下、より好ましくは200 g/モル以下の分子量、適切な場合には平均分子量を有するポリアミンである。X基は、水の非存在下でイソシアネート基と反応する部分を全く含まない。特に、Xは、ヒドロキシル基、第二級アミノ基、尿素基、および活性水素を有するその他の基を全く含まない。
【0052】
良好な品質の弾性コーティング、特にフロアカバーリングは、硬化した状態で、比較的高い硬度を有していなければならない。300 g/モル以下、好ましくは250 g/モル以下、より好ましくは200 g/モル以下の分子量を有する極めて小さな式(III)のポリアミンの使用によって、組成物を硬化すると、互いに近接した位置にある尿素基を有するハードセグメントが生じ、これによって、低い伸びと共に比較的高い弾性率がもたらされ、したがって比較的高い硬度がもたらされる。300 g/モルより高い分子量を有するポリアミンを使用すると、通常、フロアコーティングのために所望される高い硬度が得られない。高い硬度レベルを得るために特に好適なポリアミンは、環式脂肪族ジアミンであり、不飽和の、アミノ基とアミノ基との間に偶数のアルキレン鎖を有する脂肪族ジアミンも好ましい。
【0053】
式(III)の好適なポリアミンの例は、脂肪族ポリアミン〔例えば、エチレンジアミン、1,2-および1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,2-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,3-および1,4-ブタンジアミン、1,3-および1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンおよびこれらの混合物、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、メチルビス(3-アミノプロピル)アミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD)、1,3-ジアミノペンタン(DAMP)、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン等〕;環状脂肪族ポリアミン〔例えば、1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミンすなわちIPDA)、2-および4-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサンおよびこれらの混合物、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-シクロヘキシルアミノ-3-アミノプロパン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA)、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDA)、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等〕; 1,3-および1,4-キシリレンジアミン、エーテル基を有する脂肪族ポリアミン〔例えば、ビス(2-アミノエチル)エーテル、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン等〕;理論的に2または3個のアミノ基を有するポリオキシアルキレンポリアミン〔例えば、Jeffamin(登録商標)D-230、Jeffamin(登録商標)XTJ-504、およびJeffamin(登録商標)XTJ-511(3つはいずれもHuntsman Chemicals製)の名称で入手可能なもの〕である。
【0054】
式(III)の好ましいポリアミンは、1,6-ヘキサメチレンジアミン、MPMD、DAMP、IPDA、4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミン、1,3-キシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン、ならびに短鎖ポリオキシアルキレン-ジアミンJeffamine(登録商標)D-230(CAS No. 9046-10-0)およびJeffamine(登録商標)XTJ-504(CAS No. 929-59-9)、ならびに、特に、前述のポリアミンの少なくとも2種以上の混合物である。
【0055】
特に、1,6-ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0056】
ポリアルジミンALDは、式(IV)のアルデヒドを用いて調製する。これらのアルデヒドの特徴は、これらの基R1、R2、R3、およびR4が、水の非存在下でイソシアネート基と反応性であるいかなる部分も有さないこと、特に、R1、R2、R3、およびR4が、ヒドロキシル基、第二級アミノ基、尿素基、および活性水素を有するその他の基を全く有さないことである。
【0057】
第一の実施態様において、好ましい式(IV)のアルデヒドは、R4として11〜30個のC原子を有し、場合によりヘテロ原子を含む炭化水素基を有するアルデヒドである。これらのアルデヒドは、脂肪族、芳香-脂肪族、または脂環族2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒドと、長鎖アルコール(例えば、脂肪族アルコール)とのエーテルからなる。ここで、好ましい2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒドは、一級または二級脂肪族アルデヒド(特にホルムアルデヒド)と、二級脂肪族、二級芳香-脂肪族、または二級脂環族アルデヒド〔例えば、2-メチルブチルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、2-エチルカプロアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,2,3,6-テトラヒドロベンズアルデヒド、2-メチル-3-フェニルプロピオンアルデヒド、2-フェニルプロピオンアルデヒド(ヒドラトロパアルデヒド)、またはジフェニルアセトアルデヒドなど〕との間のアルドール反応、特に交差アルドール反応によって得ることができる。例えば、2,2-ジメチル-3-ラウロキシプロパナールおよび2,2-ジメチル-3-ステアロキシプロパナールを挙げることができる。
【0058】
第二の実施態様において、好ましい式(IV)のアルデヒドは、式(V)の化合物である。
【化6】

式中、R1、R2、R3、およびR4は、上述した定義を有する。
【0059】
式(V)の化合物は、上述した2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒド(例えば、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロパナール、2-ヒドロキシメチル-2-メチルブタナール、2-ヒドロキシメチル-2-エチルブタナール、2-ヒドロキシメチル-2-メチルペンタナール、2-ヒドロキシメチル-2-エチルヘキサナール、1-ヒドロキシメチルシクロペンタンカルボキシアルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボキサルデヒド、1-ヒドロキシメチルシクロヘキサ-3-エンカルボキサルデヒド、2-ヒドロキシメチル-2-メチル-3-フェニルプロパナール、
3-ヒドロキシ-2-メチル-2-フェニルプロパナール、および3-ヒドロキシ-2,2-ジフェニルプロパナールなど)と、適切なジカルボン酸とのエステルからなる。
【0060】
好適なカルボン酸は、第一に、少なくとも12個のC原子を有する飽和脂肪族カルボン酸(例えば、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸等)、天然の油および脂肪(例えば、菜種油、ヒマワリ油、アマニ油、オリーブ油、ヤシ油、アブラヤシ核油、およびアブラヤシ油等)の工業的鹸化に由来する脂肪酸、ならびに、これらの酸を含む工業的脂肪酸混合物である。好ましいカルボン酸は、二級、芳香族カルボン酸であり、例えば、安息香酸もしくはトルイル酸の一異性体類、エチル-、イソプロピル-、tert-ブチル-、メトキシ-、またはニトロ安息香酸を挙げることができる。
【0061】
好適な式(V)の化合物は、2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ミリストイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-パルミトイルオキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ステアロイルオキシプロパナール、および2,2-ジメチル-3-ベンゾイルオキシプロパナール、ならびに他の2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒドのエステル類似体である。
【0062】
特に好ましい一実施態様では、R4は、式(II)の基であり、式中、R5は、フェニル基、ならびにC11、C13、C15、およびC17アルキル基からなる群から選択される。
【0063】
特に、2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールが好ましい。
【0064】
式(V)のアルデヒドの好ましい製造方法では、2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒド、例えば、2,2-ジ置換3-ヒドロキシプロパナール〔例えば、ホルムアルデヒド(またはパラホルムアルデヒド)とイソブチルアルデヒドとから、場合により系内で製造することができる〕を、カルボン酸と反応させて相当するエステルを得る。このエステル化反応は、Houben-Weylの「Methoden der organischen Chemie」(vol. VIII, 516-528頁)に記載されているように、溶媒を使用することなく公知の方法で行うことができる。
【0065】
式(V)のアルデヒドは、2,2-ジ置換3-ヒドロキシアルデヒドのエステル化反応を、脂肪族または脂環族のジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸あるいはセバシン酸など)を用いて行うことによって製造することもできる。このようにして、相当する脂肪族または脂環族のジアルデヒドを得る。
【0066】
ポリアルジミンALDとして、異なるポリアルジミンの混合物、特に、異なる式(III)のポリアミンおよび異なる式(IV)または(V)のアルデヒドから形成された異なるポリアルジミンの混合物を用いることも可能である。異なるnの値を有する複数種の式(III)のポリアミンから形成されたポリアルジミンALDの混合物を用いることが確実に有利であり得る。
【0067】
ポリアルジミンALDの特徴は、これらが、イミノ基のC原子のα位に水素置換基を有さないため、互変異性エナミンを形成することができないことである。この種のアルジミンは、ポリウレタンポリマーPと共に、例え混合物中に反応性が高い芳香族イソシアネート基(例えば、TDIおよびMDIのイソシアネート基など)が存在している場合であっても、貯蔵可能な混合物を形成する。
【0068】
ポリアルジミンALDのさらなる特徴は、これらが無臭であり、かつ、これらの製造に用いる式(IV)または(V)のアルデヒドも無臭であることである。
【0069】
「無臭」である物質とは、ほとんどの人間に臭気が感じられない、すなわち嗅覚により感知できないほど臭気がわずかである物質を意味する。
【0070】
組成物が硬化すると、ポリアルジミンALDの製造に用いるアルデヒド、すなわち式(IV)または(V)のアルデヒドが放出される。ポリアルジミンALDおよびこれらのアルデヒドが無臭であることにより、無臭で硬化する組成物が得ることが可能である。
【0071】
湿気硬化性組成物中のポリアルジミンALDの量は、組成物のうちのイソシアネート基を有する成分の合計量に基づいて、少なくとも22重量%、好ましくは少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%である。この場合において、ポリアルジミンが、組成物中の遊離のイソシアネート基に対して、化学量論的量または化学量論以下の量、より特に、イソシアネート基1当量当たりアルジミン基0.3〜1.0当量、好ましくは0.4〜0.9当量、より好ましくは0.4〜0.8当量存在することを確実にするべきである。
【0072】
室温で一般に液体であるポリアルジミンALDは、ポリウレタンポリマーPを驚くほど良好に希釈する。したがって、ポリアルジミンALD濃度が組成物中で比較的高いと、良好な加工特性、特に流動性を有するコーティングがもたらされる。
【0073】
ポリウレタンポリマーPおよびポリアルジミンALDに加えて、本湿気硬化性組成物は、オリゴマー性ポリイソシアネートOPを含むことができる。
【0074】
オリゴマー性ポリイソシアネートOPとしては、脂肪族オリゴマー性ポリイソシアネートおよび芳香族オリゴマー性ポリイソシアネートの両方が好適であり、脂肪族-芳香族混合形態も好適であり、脂肪族オリゴマー性ポリイソシアネートが好ましい。
【0075】
好ましい脂肪族オリゴマー性ポリイソシアネートOPは、例えば、以下のジイソシアネートから誘導される:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-および1,4-ジイソシアネートおよびこれらの異性体の任意の所望の混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートすなわちIPDI)、ペルヒドロ-2,4’-および-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4-ジイソシアナト-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、m-およびp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3-および1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル) シクロヘキサン、好ましくはHDIおよびIPDI。
【0076】
好ましい芳香族オリゴマー性ポリイソシアネートOPは、ポリウレタンポリマーPの製造のために上述したものと同じ芳香族ジイソシアネートから誘導される。
【0077】
これらのオリゴマーの工業的な形態は、通常、異なるオリゴマー化の程度および化学構造を有する物質の混合物からなる。好ましくは2.4〜4.0の平均NCO官能性を有し、特に、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレトジオン(uretdione)基、またはビウレット基を有する工業的なオリゴマー混合物が好ましい。加えて、アロファネート基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、あるいはオキサジアジントリオン基を有していてもよい。
【0078】
好適な、商業的に入手可能な、脂肪族ジイソシアネートの工業的オリゴマー混合物は、HDIビウレット〔例えば、Desmodur(登録商標)N 100およびN 3200 (Bayer)、Tolonate(登録商標)HDBおよびHDB-LV (Rhodia)、およびDuranate(登録商標)24A-100 (Asahi Kasei)の形態のもの〕;HDIイソシアネート〔例えば、Desmodur(登録商標)N 3300、N 3600、およびN 3790 BA (いずれもBayer)、Tolonate(登録商標)HDT、HDT-LV、およびHDT-LV2 (Rhodia)、Duranate(登録商標)TPA-100およびTHA-100 (Asahi Kasei)、およびCoronate(登録商標)HX (Nippon Polyurethane)の形態のもの〕;HDIウレトジオン〔例えば、Desmodur(登録商標)N 3400 (Bayer)の形態のもの〕;HDIイミノオキサジアジンジオン〔例えば、Desmodur(登録商標)XP 2410 (Bayer)の形態のもの〕;HDIアロファネート〔例えば、Desmodur(登録商標)VP LS 2102 (Bayer)の形態のもの〕;ならびにIPDIイソシアヌレート〔例えば、Desmodur(登録商標)Z 4470 (Bayer)の溶液、またはVestanat(登録商標)T1890/100 (Degussa)の固体形態のもの〕
【0079】
HDIおよび/またはIPDIの三量体が好ましく、特にイソシアヌレートが好ましい。
【0080】
芳香族ジイソシアネートの工業的オリゴマー混合物の1つは、TDIイソシアヌレートであり、例えば、Desmodur(登録商標)IL(Bayer)として入手可能である。
【0081】
同様に、TDI/HDIをベースとした混合芳香族-脂肪族イソシアヌレートが、例えば、Desmodur(登録商標)HL(Bayer)の形態で商業的に入手可能である。
【0082】
通例、オリゴマー性ポリイソシアネートOPは、組成物全体に基づいて0.5重量%〜20重量%、好ましくは1.0重量%〜15重量%の量で存在する。
【0083】
オリゴマー性ポリイソシアネートOPを添加することは、第一に、これが組成物の粘度を低減させること、第二に、これが硬化した組成物の硬度を高めることから有利である。これは、オリゴマー性ポリイソシアネートの高いイソシアネート基の含量および比較的高い平均NCO官能性のためである。
【0084】
本湿気硬化性組成物は、有利には、溶媒を全く含まないか、あるいは、組成物全体に基づいて最高で5重量%までの溶媒Lを含有する。
【0085】
溶媒Lの例としては、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メシチルオキサイド、シクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン);エステル〔例えば、アセテート(例えば、エチルアセテート、プロピルアセテートまたはブチルアセテートなど)、ホルメート、プロピオネート、およびマロネート(例えば、ジエチルマロネートなど)〕;エーテル(例えば、ジアルキルエーテル、ケトンエーテル、エステルエーテルなど)(例えば、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、およびエチレングリコールジエチルエーテル);脂肪族および芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、へプタン、オクタンなど)およびさまざまな石油留分(例えば、ナフサ、揮発油、石油エーテル、またはベンジンなど);ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレンなど);ならびにN-アルキル化ラクタム(例えば、N-メチルピロリドンなど)。
【0086】
キシレン、トルエン、揮発油、および100℃〜200℃の沸点範囲の石油留分が好ましい。
【0087】
セルフレベリングフロアコーティングとして、本組成物は、ポリアルジミンALDの希釈効果とポリウレタンポリマーPの低粘度とにより、溶媒Lを用いない場合でも一般に良好な加工特性を有する。しかし、加工特性をさらに改善するためには、上述した溶媒Lを少量、最高で5重量%まで添加することが有利であり得る。
【0088】
本組成物は、有利には、少なくとも1種の充填剤Fを含む。この充填剤Fは、未硬化の組成物のレオロジー特性に影響を与えるのみならず、硬化した組成物の機械的特性および表面の性質にも影響を与える。好適な充填剤Fは、有機および無機充填剤、例えば、天然、粉砕、または沈降の炭酸カルシウム〔適切な場合、脂肪酸(特にステアレート)でコーティングされたもの〕、またはバライト(BaSO4、重晶石とも呼ばれる)、焼成カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ(特に、熱分解処理からの高分散シリカ)、カーボンブラック、より特に工業的に製造されたカーボンブラック(以下、「カーボンブラック」と呼ぶ)、PVC粉末または中空のビーズである。好ましい充填剤は、バライトおよび炭酸カルシウム、ならびに難燃性充填剤(例えば、水和物または水酸化物など、より特に水酸化アルミニウムおよび焼成水酸化アルミニウムなど)である。
【0089】
充填剤Fの好ましい量は、組成物全体に基づいて、10量%〜70量%、好ましくは20重量%〜60重量%の範囲の量で用いることが好ましい。
【0090】
異なる充填剤Fの混合物を用いることが可能であり、有利でさえある。
【0091】
組成物は、有利には、アルジミン基の加水分解および/またはイソシアネート基の反応を促進する、少なくとも1種の触媒Kを含む。
【0092】
アルジミン基の加水分解を促進する触媒Kの例は、有機カルボン酸(例えば、安息香酸およびサリチル酸等)、有機カルボン酸無水物(例えば、フタル酸無水物またはヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロメチルフタル酸無水物等)、有機カルボン酸のシリルエステル、有機スルホン酸(例えば、p-トルエンスルホン酸および4-ドデシルベンゼンスルホン酸等)等〕、スルホン酸エステル、他の有機または無機酸、または前述の酸および酸エステルの混合物である。
【0093】
イソシアネート基の水との反応を促進する触媒Kの例には、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジクロライド、およびジブチルスズジアセチルアセトネート等)、有機ビスマス化合物もしくはビスマス錯体、または三級アミノ基を有する化合物(例えば、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテルおよび1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]-オクタン等)、または、ポリウレタン化学においてイソシアネート基の反応に対して典型的な他の触媒が含まれる。
【0094】
組成物は、有利には、2種以上の触媒Kの混合物(より特に、酸性化合物と有機金属化合物または金属錯体との混合物、酸性化合物と三級アミノ基を有する化合物との混合物、または、酸性化合物と有機金属化合物または金属錯体と三級アミノ基を有する化合物との混合物)を含む。
【0095】
触媒Kの典型的な量は、通例、組成物全体に基づいて0.005重量%〜2重量%であり、当業者には、どのような触媒についてどれくらいの量の使用が賢明であるかは明らかである。
【0096】
さらなる成分として組成物中に存在させることができるものとして、以下の助剤および補助剤が挙げられる:
− 可塑剤、例えば、有機カルボン酸またはその無水物のエステル、例えば、フタレート(例えば、フタル酸ジオクチルまたはフタル酸ジイソデシルなど)、アジペート(例えば、アジピン酸ジオクチルなど)、アゼレート、およびセバケート;有機リン酸およびスルホン酸エステル、ならびにポリブテン;
− 繊維、例えばポリエチレン繊維;
− 顔料、例えば、酸化チタン、酸化鉄、またはクロミニウム化合物;
− ポリウレタン化学において慣例のさらなる触媒;
− 反応性希釈剤および架橋剤。例えば、ポリイソシアネート(例えば、MDI、PMDI、TDI、HDI、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-または1,4-ジイソシアネート、IPDI、パーヒドロ2,4'-および-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-および1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど)、これらのポリイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、ポリイソシアネートと短鎖ポリオールとの付加体、ならびに、アジピン酸ジヒドラジドおよび他のジヒドラジド類;
− さらなる潜在性硬化剤、例えば、他のアルジミンまたはオキサゾリジン;
− 乾燥剤、例えば、p-トシルイソシアネート、オルトギ酸エステル、酸化カルシウム、ビニルトリメトキシシラン、および他の易加水分解性シラン(例えば、シラン基のα位に官能基を有する有機アルコキシシランなど)、またはモレキュラーシーブ;
− 接着促進剤、特に、有機アルコキシシラン(以下、「シラン」と称する)、例えば、エポキシシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリロシラン、イソシアナトシラン、カルバマトシラン、S-(アルキルカルボニル)-メルカプトシラン、およびアルジミノシラン、およびこれらのシランのオリゴマー形態など;
− 熱、光照射およびUV線照射に対する安定剤;
− 難燃剤;
− 界面活性物質、例えば、湿潤剤、フロー制御剤、脱気剤、または脱泡剤など;
− 殺生物剤、例えば、殺藻剤、殺真菌剤、または真菌増殖阻害剤;
加えて、1成分形ポリウレタン組成物において典型的に用いられるさらなる物質。
【0097】
ポリアルジミンALDだけでなく、存在するすべての溶媒L、存在する全ての充填剤F、存在する全ての触媒K、および組成物中に存在する全てのさらなる成分が、貯蔵安定性に悪影響を及ぼさないことを確保することが有利である。言い換えれば、貯蔵の間に、これらが、架橋(例えば、アルジミン基の加水分解またはイソシアネート基の架橋)をもたらす反応を有意に開始させてはならない。特に、このことは、これらの成分がいずれも水、少なくとも痕跡量の水も含有していてはならないことを意味する。特定の成分を組成物に組み込む前に、その成分の物理的または化学的な乾燥を実施することが賢明であり得る。
【0098】
組成物は、湿分の非存在下で製造および保存する。組成物は、貯蔵安定性を有する。すなわち、湿分のない条件下、適切な包材または施設、例えばドラム、バケツ、または小袋中で、数ヵ月から1年以上にわたる期間中、その適用特性またはその硬化後の特性において、使用に影響があるいかなる変化をも受けることなく保存することができる。通例、貯蔵安定性は、粘度の測定によって測定する。
【0099】
組成物は、さらなる助剤および補助剤、特に顔料、フロー制御剤、脱泡剤、安定剤、および乾燥剤を含むことが好ましい。
【0100】
ポリアルジミンALDのアルジミン基の特徴は、湿気と接触すると加水分解することである。組成物中に存在するイソシアネート基は、化学式的には、放出された式(III)のポリアミンと反応し、同時に相当する式(IV)および(V)のアルデヒドが放出される。アルジミン基に対して過剰のイソシアネート基は、存在する水と反応する。最終的には、これらの反応の結果として組成物が硬化する:このプロセスは、架橋とも呼ばれる。イソシアネート基と加水分解性ポリアルジミンADLとの反応は、必ずしもポリアミンを介して起こる必要はない。ポリアルジミンALDは、ポリアミンを形成する加水分解の中間体とも反応すると考えられる。例えば、加水分解中のポリアルジミンALDが、へミアミナールの形態で、直接イソシアネート基と反応することが考えられる。
【0101】
硬化反応に必要な水は、1つの場合には、大気中から得られる(大気中の湿気)。あるいは、組成物を、スプレーその他の方法によって、水を含有する成分と接触させることができる。あるいは、水を含有する成分を適用時に組成物に添加することができる。
【0102】
組成物は、湿気と接触すると硬化する。硬化速度は、触媒Kの種類および量によって制御することができる。
【0103】
硬化の過程で放出された式(IV)および(V)のアルデヒドは、揮発性が低く、硬化した組成物中に使用特性に悪影響を及ぼすことなく留まる。
【0104】
組成物は、液状のコンシステンシーを有すると共に、良好な流動特性を有する。この結果、組成物は、大部分が平滑な表面へのセルフレベリングコーティングとして、例えば、フロアカバーリングとして、容易に適用することができる。組成物は2層以上適用することができる。適用する層の膜厚は、通常、1層当たり0.5〜3 mm、より特に0.5〜2 mmである。
【0105】
硬化した状態で、組成物は、弾性特性を有し、比較的高い硬度を有する。典型的には、硬化した組成物は、30%〜700%の範囲の破断伸び、3〜10 N/mm2の範囲の引張強度、および45〜90の範囲のショアA硬度を有する。
【0106】
組成物の経時安定性(aging stability)は、熱、湿気、およびUV光の影響下においても良好である。組成物中に脂肪族イソシアネート基だけを使用すると、光曝露に対して変色しないコーティングが得られる。
【0107】
フロアカバーリングは、複数の異なる層構造を有することが多い。1つの典型的な構造は、例えば、プライマーと呼ばれる構造から始まる。このプライマーの機能は、弾性ポリウレタンコーティングのために基材を下処理することである。これに続いて、例えば、記載した組成物を弾性層として適用する。この適用は、基材の性質および所望の膜厚に応じて、1回または2回の操作で行うことが可能である。その後、最後に、いわゆるシーラント(sealer)を適用することができる。このシーラントは、薄い層、例えば、数マイクロメートルから数十分の一ミリメートルまでの範囲の厚さで、フロアカバーリングの表面品質にさらなる影響を及ぼす。このシーラントは、透明であっても着色されていてもよい。高い破断伸びを有する本発明の組成物の硬化した層の上に、いわゆる磨耗層を適用することも可能である。この方法では、本発明の組成物がその高い弾性によって亀裂の架橋を確実にし、磨耗層が高い表面硬度を提供するため、良好な動的亀裂架橋性および高い表面硬度を特徴とするカバーリングが形成される。ここで、必要に応じて、磨耗層をさらにシール(seal)することもできる。この方法では、German Reinforced Concrete Committeeの「Guidelines for Protection and Repair of Concrete Components」におけるOS 11に準拠したフロア構造を得ることが可能である。ここで、「OS」は、「表面保護システム」(Oberflachenschutzsystem)を表す。
【0108】
記載した組成物を、適用前にさらなる充填剤、より特に石英砂と混合することもできる。同様に、組成物の表面だけに、組成物がまだ液状である間に石英砂を撒き散らすか、あるいは石英砂を組成物中に撒き散らすこともできる。両方の方法において、ざらざらした、高い滑り抵抗性、耐磨耗性を有する表面が得られ、必要に応じてシールすることができる。
【0109】
記載した組成物を、傾斜した表面にコーティングすべき場合には、適用前に、いわゆる標準化剤を組成物に混合することができる。この標準化剤は、組成物の粘度を高くする充填剤の形態(例えば、ポリエチレン繊維の形態)である。
【0110】
記載した組成物は、典型的には、コーティングすべき基材上に注ぎ、液体状態で、例えばコーティングナイフまたは歯状こての助けを借りて平らに広げることによって適用する。加えて、バーブドローラー(barbed roller)を使用して、材料を水平にし、脱泡することができる。しかし、機械、例えばスプレー塗布の形態の機械によって適用することもできる。
【0111】
本組成物が典型的に適用される好適な基材は、例えば、コンクリート、セメント、アスファルト、スチール、木材、セラミック、またはプラスチックである。基材は、洗浄、ブラッシング、またはサンドブラストによって前処理されていることができ、かつ/あるいはプライマーを有していることができる。好適なプライマーの例には、接着促進剤溶液またはアンダーコートが含まれる。
【0112】
記載した組成物は、コーティングまたはカバーリングとして、より特に、建物または建造物の屋内または屋外部分のコーティングまたはカバーリングとして、例えば、オフィス、産業用ホール、屋内競技場、もしくは低温室などの内部部分のためのフロアカバリング、またはバルコニー、テラス、橋、駐車場、または運動場および遊戯場のための屋外部分におけるフロアカバリングとして特に好適である。
【実施例】
【0113】
[試験方法の説明]
粘度は、Physica UMサーモスタット付きコーン/プレート粘度計(コーン直径20 mm、コーン角度1°、コーンチップ/プレート間隔0.05 mm、剪断速度10〜1000秒-1)上で測定した。
【0114】
ショアA硬度は、DIN 53505に準拠して測定した。
【0115】
引張強さおよび破断伸びは、標準条件(23±1℃、50±5%の相対大気湿度)下で14日間硬化させた、1.1 mmの厚さのフィルムについて、DIN 53504(引張速度:200 mm/分)に準拠して決定した。
【0116】
[使用原材料]
【表1】

【0117】
[a)ポリウレタンポリマーP1の調製]
湿気の非存在下で、1060 gのDesmophen(登録商標)1111 BD、650 gのDesmophen(登録商標)2061 BD、770 gのVestanat(登録商標)IPDI、および0.25 gのジブチルスズジラウレートを、80℃にて、混合物のイソシアネート含量が6.7重量%の一定値になるまで撹拌した。得られたポリマーを、室温に冷却し、湿気の非存在下で貯蔵した。これは、20℃で11.6 Pa・秒の粘度を有していた。
【0118】
[b)ポリアルジミンALD1の調製]
丸底フラスコに、窒素雰囲気下、298.7 g(1.05モル)の2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを入れた。激しく撹拌しながら、58.1 g(0.50モル)の1,6-ヘキサメチレンジアミンを加熱した滴下漏斗からゆっくりと添加した。その後、80℃にて揮発性成分を真空蒸留によって完全に除去した。これにより、室温で液体であり、2.95 mmol NH2/gのアルジミン含量(アミン含量として測定)を有し、20℃で78 mPa・秒の粘度を有する黄色反応生成物338.2 gが得られた。
【0119】
[c)未充填組成物の調製]
(実施例1)
30重量部のDesmodur(登録商標)XP 2599(20℃で3.7 Pa・秒の粘度)および1.5重量部のDesmodur(登録商標)N 3600を互いに混合した。この混合物の粘度は、20℃で3.6 Pa・秒であった。
次いで、12重量部のポリアルジミンALD1を均一に混合した。この混合物の粘度は、20℃で1.26 Pa・秒であった。
【0120】
(実施例2)
24.85重量部のポリウレタンポリマーP1および8重量部のDesmodur(登録商標)Z 4470を互いに混合した。この混合物の粘度は、20℃で7.5 Pa・秒であった。
次いで、12重量部のポリアルジミンALD1を均一に混合した。この混合物の粘度は、20℃で1.66 Pa・秒であった。
【0121】
実施例1および2は、式(I)のポリアルジミンの、各場合におけるポリウレタンポリマーP1およびオリゴマー性ポリイソシアネートOPとの混合物中における、良好な希釈効果を明らかにしている。
【0122】
[d)充填組成物の調製、コーティング剤としての適用]
(実施例3)
実施例3の組成物は、1成分形組成物であり、無臭で硬化し、VOCを含まず、かつ、耐黄変性を有するコーティングとして、例えば、室内部分における弾性フロアカバーリングとして好適である。
真空ミキサー中で、300 gのDesmodur(登録商標)XP 2599、15 gのDesmodur(登録商標)N 3600、5 gのp-トルエンスルホニルイソシアネート、500.4 gの乾燥バライト(天然の硫酸バリウム)、4 gのTego(登録商標)Foamex N(Tego Chemie)、1.6 gの安息香酸、4 gのByk(登録商標)A 555(Byk Chemie)、40 gの二酸化チタン、10 gのTinuvin(登録商標)292(Ciba)、および120 gのポリアルジミンALD1を加工して、均一な液体組成物とし、湿気の非存在下で貯蔵した。
この組成物の粘度は、20℃で3 Pa・秒であった。
【0123】
この組成物を、平坦なPTFE基材上に、1.1 mmの膜厚になるように注ぎ、23℃、相対湿度50%に置いた。適用の24時間後に、不粘着性の弾性コーティングが形成された。このコーティングは、23℃、相対大気湿度50%で7日間硬化させた後で、
80のショアA硬度、
5.8 N/mm2の引張強度、および
50%の破断伸び
を有した。
【0124】
(実施例4)
実施例4の組成物は、1成分形組成物であり、低VOCであり、かつ、耐黄変性を有するポリウレタンをベースとするコーティングとして、例えば、室外部分における弾性フロアカバーリングであって亀裂架橋性を有するもの(例えば、バルコニーコーティング)として好適である。
真空ミキサー中で、250 gのポリウレタンポリマーP1、80 gのDesmodur(登録商標)Z 4470、10 gのキシレン、479 gの乾燥バライト(天然の硫酸バリウム)、4 gのTego(登録商標)Foamex N(Tego Chemie)、1.6 gの安息香酸、4 gのByk(登録商標)A 555(Byk Chemie)、40 gの二酸化チタン、10 gのTinuvin(登録商標)292(Ciba)、1.4 gのジブチルスズジラウレート、および120 gのポリアルジミンALD1を加工して、均一な液体組成物とし、湿気の非存在下で貯蔵した。
この組成物の粘度は、20℃で4.5 Pa・秒であった。
【0125】
この組成物を、平坦なPTFE基材上に、1.1 mmの膜厚になるように注ぎ、23℃、相対湿度50%に置いた。適用の24時間後に、不粘着性の弾性コーティングが形成された。このコーティングは、23℃、相対大気湿度50%で7日間硬化させた後で、
65のショアA硬度、
4.5 N/mm2の引張強度、および
390%の破断伸び
を有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化性組成物であって、
a) イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリウレタンポリマーPと、
b) 少なくとも1種の式(I):
【化1】

のポリアルジミンALDと、
c) 場合により、オリゴマー性ポリイソシアネートOPと
を含み、
式中、Xは、300 g/モル以下の分子量を有するn-官能性ポリアミンの全てのNH2基を除去した後の有機基であり、前記有機基は、水の非存在下でイソシアネートと反応性がある部分、特に、ヒドロキシル基、第二級アミノ基、尿素基、および活性水素を有するその他の基を全く有さず、
nは、2、3、または4であり、
R1 およびR2は、互いに独立に、それぞれ、1〜12個のC原子を有する一価の炭化水素基であるか、あるいは、
一緒になって、5〜8個、好ましくは6個のC原子を有する置換されていないかまたは置換された炭素環の一部である、4〜20個のC原子を有する二価の炭化水素基であるか
のいずれかであり、
R3は、水素原子、アルキル基、またはアリールアルキル基であり、かつ、
R4は、11〜30個のC原子を有し、場合によりヘテロ原子を含む炭化水素基であるか、あるいは、
式(II):
【化2】

(式中、R5は、11〜30個のC原子を有する直鎖または分枝状アルキル基であって、所望により環状部分を有し、所望により少なくとも1個のヘテロ原子、特にエーテル基、エステル基、またはアルデヒド基の形態の酸素を有する基であるか、あるいは、
11〜30個のC原子を有する単独もしくは多重不飽和の直鎖もしくは分枝状炭化水素基であるか、あるいは、
置換されていないかまたは置換された5または6員環の芳香族環またはヘテロ芳香族環である)
の基であるか
のいずれかであり、
前記式(I) のポリアルジミンALDの割合が、前記組成物のうちのイソシアネート基を有する成分の合計量に基づいて少なくとも22重量%である、湿気硬化性組成物。
【請求項2】
nが2または3、特に2であることを特徴とする、請求項1に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項3】
Xが、ヘキサメチレンジアミン、5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD)、1,3-ジアミノペンタン(DAMP)、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(すなわち、イソホロンジアミンすなわちIPDA)、4-アミノメチル-1,8-オクタンジアミン、1,3-キシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン、2個または3個のアミノ基を理論的に有するポリオキシアルキレン-ポリアミン、および前述のポリアミンの2種以上の混合物からなる群から選択されるアミンの1つの、全てのNH2基を除去した後の基であることを特徴とする、請求項1または2に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項4】
Xが、1,6-ヘキサメチレンジアミンの両方のNH2基を除去した後の基であることを特徴とする、請求項1または2に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項5】
R1 およびR2が、それぞれメチル基であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項6】
R3が水素原子であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項7】
R4が式(II)の基であり、R5が、フェニル基、ならびにC11、C13、C15、およびC17アルキル基からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項8】
イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPの割合が、組成物全体に基づいて10重量%〜80重量%であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項9】
イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーPが、ポリオールと、脂肪族ポリイソシアネート、より特に、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)とから調製されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項10】
前記式(I) のポリアルジミンALDの割合が、前記組成物のうちのイソシアネート基を有する成分の合計量に基づいて少なくとも25重量%、より特に少なくとも30重量%であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項11】
前記オリゴマー性ポリイソシアネートOPの割合が、組成物全体に基づいて0重量%〜20重量%、0.5重量%〜20重量%、好ましくは1.0重量%〜15重量%であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項12】
前記オリゴマー性ポリイソシアネートOPが、脂肪族オリゴマー性ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項13】
前記組成物が溶媒を含まないことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項14】
前記組成物が、組成物全体に基づいて最高で5重量%までの溶媒を含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項15】
前記溶媒が、キシレン、トルエン、揮発油、および100℃〜200℃の沸点範囲の石油留分からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項16】
前記組成物が、少なくとも1種の充填剤、より特に、組成物全体に基づいて10重量%〜70重量%、好ましくは20重量%〜60重量%の範囲の充填剤を含むことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項17】
前記充填剤が、硫酸バリウム(バライト)または炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項16に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項18】
前記充填剤が、難燃性充填剤、より特に、水酸化物または水和物、好ましくはアルミニウムの水酸化物または水和物、より好ましくは水酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項16に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項19】
前記組成物が、室温でセルフレベリング性であることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の湿気硬化性組成物。
【請求項20】
水、特に大気中の湿気の形態の水と、請求項1から19のいずれか一項の湿気硬化性組成物との反応によって得られる、硬化した組成物。
【請求項21】
カバーリングまたはコーティングを製造するための、請求項1から19のいずれか一項の湿気硬化性組成物の使用。
【請求項22】
建物または建造物の屋内または屋外における、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
i) 請求項1から19のいずれか一項の湿気硬化性組成物を、基材に適用する工程と、
ii) 適用した前記湿気硬化性組成物を、水、特に大気中の湿気の形態の水を使って硬化させる工程と
を含む、コーティング、より特に、フロアカバーリングの製造方法。
【請求項24】
前記基材が、コンクリート、セメント、アスファルト、スチール、木材、セラミック、またはプラスチックであることを特徴とする、請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
前記基材が、プライマーのコーティングを有することを特徴とする、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
湿気硬化性組成物を適用する前記工程i)を、連続して複数回行うことを特徴とする、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
組成物を適用する前記最後の工程の後に、シーラントを適用する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
組成物を適用する前記最後の工程の後であって、かつ、前記組成物が完全に硬化する前に、粒状充填剤、より特に石英砂を散布によって導入する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項23から28のいずれか一項に記載の方法によって得られるカバーリングまたはコーティング。
【請求項30】
請求項29に記載のカバーリングまたはコーティングを有する建物または建造物。
【請求項31】
イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーの希釈剤としての、請求項1から19のいずれか一項に定義した式(I)のポリアルジミンALDの使用。
【請求項32】
イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーを含む組成物における溶媒代替物としての、請求項1から19のいずれか一項に定義した式(I)のポリアルジミンALDの使用。

【公表番号】特表2009−541563(P2009−541563A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517230(P2009−517230)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056599
【国際公開番号】WO2008/000831
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】